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特表2024-531093セルロースナノファイバー(CNF)で安定化された膜及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】セルロースナノファイバー(CNF)で安定化された膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20240822BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240822BHJP
   D21H 11/20 20060101ALI20240822BHJP
   D21H 17/67 20060101ALI20240822BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240822BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
D21H11/18
G01N1/00 101F
D21H11/20
D21H17/67
C08L1/00
C08L97/00
C08K3/26
C08K3/22
C08K7/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505571
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 US2022039575
(87)【国際公開番号】W WO2023014973
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/229,872
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511226580
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ メイン システム ボード オブ トラスティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】メイソン, マイケル ダリン
(72)【発明者】
【氏名】ホッセン, ムハンマド ラドワン
【テーマコード(参考)】
2G052
4J002
4L055
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AD06
2G052BA14
2G052CA39
2G052GA11
2G052JA13
4J002AB003
4J002AB012
4J002AD003
4J002AH001
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DE288
4J002DL006
4J002EF057
4J002EL087
4J002FA046
4J002FD206
4J002FD313
4J002FD317
4J002FD328
4J002GD00
4J002HA06
4L055AA01
4L055AF04
4L055AF46
4L055AG10
4L055AG17
4L055AG19
4L055AG34
4L055AG43
4L055AG44
4L055AG53
4L055AG54
4L055AG99
4L055AH01
4L055AH29
4L055AH34
4L055AH50
4L055EA03
4L055EA10
4L055EA12
4L055EA26
4L055EA32
4L055FA19
(57)【要約】
本発明は、1種以上のセルロース材料及び湿潤剤(複数可)を含む膜、及びそのような膜を作製する方法を含む。特に、いくつかの実施形態において、本発明は、1種以上のセルロース材料(例えば、木材パルプ及び/またはセルロースナノフィブリル(CNF))を1種以上の無機ミネラルと組み合わせて含む組成物及び膜を提供する。材料は、結果として得られる材料が、内部及び表面湿潤現象、内部細孔容積、表面均一性、及び他の改善された物理的特性を含むがこれらに限定されない、迅速かつ制御された水吸い上げ特性を示すように、組み合わされて膜に形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質マトリックス材料を含む膜であって、前記多孔質マトリックス材料が、
(i)木材パルプと、
(ii)セルロースナノフィルブリル(CNF)と、
(iii)1種以上の湿潤ミネラルと、を含む、前記膜。
【請求項2】
前記1種以上の湿潤ミネラルが、炭酸カルシウム(CaCO)、TiO2、アルミナ、ファイバーグラス、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記CNFが、乾燥質量ベースで0.1~1.5重量%の範囲内の濃度で存在する、請求項1または2に記載の膜。
【請求項4】
前記1種以上の湿潤ミネラルが、前記多孔質マトリックス材料の0.1~20重量%の範囲内の濃度で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
前記CNFが、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)媒介酸化によって得られるCNFを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
分析物を含む流体と接触した場合、分析物溶液が毛管作用により前記膜を横切って移動する、請求項1~5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
前記分析物が、前記膜の特定の部位上に固定化される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分析物が、毎秒約0.5mmを超える速度で前記膜を横切って移動する、請求項6に記載の膜。
【請求項9】
前記分析物が生物学的材料であるか、または生物学的材料を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項10】
前記多孔質マトリックス材料が、実質的に均質である、請求項1~9のいずれか一項に記載の膜。
【請求項11】
前記多孔質マトリックス材料が、少なくとも60~90%の多孔度を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の膜。
【請求項12】
前記多孔質マトリックス材料が、1種以上の添加剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の膜。
【請求項13】
前記1種以上の添加剤が、起泡剤、発泡剤、テンプレーティング剤、可塑剤、またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の膜。
【請求項14】
前記1種以上の添加剤が、乾燥質量ベースで0.1~10重量%の範囲内の濃度で存在する、請求項12または13に記載の膜。
【請求項15】
前記起泡剤が、界面活性剤を含む、請求項13に記載の膜。
【請求項16】
前記界面活性剤が、グルコシド及び/またはミリスチン酸を含む、請求項15に記載の膜。
【請求項17】
前記界面活性剤が、真菌、細菌、酵母、糖脂質、リン脂質、糖ペプチド、サポニン、脂肪酸、タンパク質、多糖類またはそれらの組み合わせなどの生物界面活性剤を含む、請求項15に記載の膜。
【請求項18】
前記発泡剤が、重炭酸ナトリウムを含む、請求項13に記載の膜。
【請求項19】
前記テンプレーティング剤が、塩、氷、ドライアイスまたはそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の膜。
【請求項20】
前記可塑剤が、アセチル化モノグリセリド、クエン酸アルキル、エポキシ化大豆油、タンパク質、ポリエチレングリコール、脂肪酸、またはそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の膜。
【請求項21】
(i)木材パルプ及び水を含むスラリーを提供することと、
(ii)セルロースナノフィルブリル(CNF)及び1種以上の湿潤ミネラルを前記スラリーに混合することと、
(iii)前記スラリーを乾燥させて、多孔質マトリックス材料を形成することと、を含む、方法。
【請求項22】
前記1種以上の湿潤ミネラルが、炭酸カルシウム(CaCO)、TiO2、アルミナ、ファイバーグラス、またはそれらの組み合わせを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記スラリーを乾燥させることが、毛管脱水、赤外線乾燥、凍結乾燥、及び/またはマイクロ波照射を含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
CNFの濃度が、前記多孔質マトリックス材料の0.1~1.5重量%である、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記1種以上の湿潤ミネラルが、前記多孔質マトリックス材料の0.1~20重量%の範囲内の濃度で存在する、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
流体から分析物を分離する方法であって、
(i)多孔質マトリックス材料を含む膜を提供することと、
(ii)前記膜を、分析物を含む流体と接触させることであって、前記流体が毛管作用により前記膜に入り、それによって前記分析物を分離する、前記接触させることと、を含み、
ここで、前記多孔質マトリックス材料が、木材パルプ、CNF、及び1種以上の湿潤ミネラルを含む複合材料である、前記方法。
【請求項27】
前記1種以上の湿潤ミネラルが、炭酸カルシウム(CaCO)、TiO2、アルミナ、ファイバーグラス、またはそれらの組み合わせを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記接触させる工程が、前記膜を、隣接する空間または隣接する材料に含まれる流体と接触させることであるか、または接触させることを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記流体が、前記膜を横切って移動する、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記流体が、前記膜を横切って受動的に移動する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記流体が、真空または前記流体に対する正圧を用いて前記膜を横切って移動する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記分析物が前記膜上に固定化される、請求項26~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記固定化された分析物が、生物学的材料であるか、または生物学的材料を含む、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月5日に出願された米国仮特許出願第63/229,872号の利益を主張するものであり、参照により、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
セルロース材料(例えば、ニトロセルロース)で作製された膜は、例えば、診断及び他のポイントオブケア装置のために、横流装置において利用されてきた(Mansfield 2005)Drugs of abuse. Ch. 4. pp. 71-85)。しかしながら、そのような装置は、その吸い上げ能力が制限され、特定の添加剤の分散を改善し、かつセルロース膜における吸い上げ能力を最適化する方法は、依然として課題である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Mansfield 2005)Drugs of abuse. Ch. 4. pp. 71-85
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
特に、いくつかの実施形態において、本発明は、1種以上のセルロース材料(例えば、木材パルプ及び/またはセルロースナノフィブリル(CNF))を1種以上の無機ミネラルと組み合わせて含む組成物及び膜を提供する。材料は、結果として得られる材料が、内部及び表面湿潤現象、内部細孔容積、表面均一性、及び他の改善された物理的特性を含むがこれらに限定されない、迅速かつ制御された水吸い上げ特性を示すように、組み合わされて膜に形成される。
いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、側方流動装置、診断装置及び他のポイントオブケア装置(例えば、ELISA試験)、自動サンプリング装置(例えば、環境試験ストリップ)、生物学的または環境サンプルを濃縮するための装置、分析物を分離及び固定化するための装置、ならびに普遍的水平及び垂直吸い上げ基材としての使用に十分に適した膜を提供する。
【0005】
本発明はまた、特に、該固有の特性を示す膜を作製する方法を提供する。本開示の一態様は、多孔質マトリックス材料を含む膜であって、該多孔質マトリックス材料が、(i)木材パルプと、(ii)セルロースナノフィルブリル(CNF)と、(iii)1種以上の湿潤ミネラルとを含む、該膜を提供する。いくつかの実施形態では、該1種以上の湿潤ミネラルは、炭酸カルシウム(CaCO)、TiO2、アルミナ、ファイバーグラス、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、該CNFは、乾燥質量ベースで0.1~1.5重量%の範囲内の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、該1種以上の湿潤ミネラルは、該多孔質マトリックス材料の0.1~20重量%の範囲内の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、該CNFは、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)媒介酸化によって得られるCNFを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、分析物を含む流体と接触すると、該分析物溶液は、毛管作用により該膜を横切って移動する。いくつかの実施形態では、該分析物は、該膜の特定の部位に固定される。いくつかの実施形態では、該分析物は、約0.5mm/秒を超える速度で該膜を横切って移動する。いくつかの実施形態では、該分析物は、生物学的材料であるか、またはそれを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、該多孔質マトリックス材料は、実質的に均質である。いくつかの実施形態では、該多孔質マトリックス材料は、少なくとも60~90%の多孔度を含む。いくつかの実施形態では、該多孔質マトリックス材料は、1種以上の添加剤を含む。いくつかの実施形態では、該1種以上の添加剤は、起泡剤、発泡剤、テンプレーティング剤、可塑剤、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、該1種以上の添加剤は、乾燥質量ベースで0.1~10重量%の範囲内の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、該起泡剤は、界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、該界面活性剤は、グルコシド及び/またはミリスチン酸を含む。いくつかの実施形態では、該界面活性剤は、真菌、細菌、酵母、糖脂質、リン脂質、糖ペプチド、サポニン、脂肪酸、タンパク質、多糖類、またはそれらの組み合わせなどの生物界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、該発泡剤は、重炭酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、該テンプレーティング剤は、塩、氷、ドライアイスまたはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、該可塑剤は、アセチル化モノグリセリド、クエン酸アルキル、エポキシ化大豆油、タンパク質、ポリエチレングリコール、脂肪酸、またはそれらの組み合わせを含む。
【0008】
別の態様では、本開示は、(i)木材パルプ及び水を含むスラリーを提供することと、(ii)セルロースナノフィルブリル(CNF)及び1種以上の湿潤ミネラルをスラリーに混合することと、(iii)該スラリーを乾燥させて、多孔質マトリックス材料を形成することと、を含む方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、該1種以上の湿潤ミネラルは、炭酸カルシウム(CaCO)、TiO2、アルミナ、ファイバーグラス、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、該スラリーを乾燥させることは、毛管脱水、赤外線乾燥、凍結乾燥、及び/またはマイクロ波照射を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、CNFの濃度は、該多孔質マトリックス材料の0.1~1.5重量%である。いくつかの実施形態では、該1種以上の湿潤ミネラルは、該多孔質マトリックス材料の0.1~20重量%の範囲内の濃度で存在する。
【0010】
別の態様では、本開示は、分析物を流体から分離する方法であって、(i)多孔質マトリックス材料を含む膜を提供することと、(ii)流体が毛管作用を通して膜に入るように、該膜を分析物を含む流体と接触させ、それによって該分析物を分離することとを含み、該多孔質マトリックス材料が、木材パルプ、CNF、及び1種以上の湿潤性ミネラルを含む複合材料である、該方法を特徴とする。
【0011】
いくつかの実施形態では、該1種以上の湿潤ミネラルは、炭酸カルシウム(CaCO)、TiO2、アルミナ、ファイバーグラス、またはそれらの組み合わせを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、接触工程は、該膜を、隣接する空間または隣接する材料に含まれる流体と接触させることである、または接触させることを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、該流体は、該膜を横切って移動する。いくつかの実施形態では、該流体は、該膜を横切って受動的に移動する。いくつかの実施形態では、該流体は、真空または該流体に対する正圧を用いて、該膜を横切って移動する。いくつかの実施形態では、該分析物は、該膜上に固定される。いくつかの実施形態では、該固定された分析物は、生物学的材料であるか、またはそれを含む。
【0014】
図面は、例示のみを目的としており、限定を目的としていない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】1重量%のCNFを有するパルプ膜(パネルa)、5重量%のCNFを有するパルプ膜(パネルb)、及びCNF膜(パネルc)のSEM画像を示す。
【0016】
図2】パルプ膜、CNF膜、パルプ+CNF膜、CNF+CaCO、及びパルプ+CNF+CaCO、を含む様々な材料に対して実施された垂直吸上試験の結果を示す。吸い上げ結果は、垂直吸い上げ時間(秒)(y軸)、吸い上げ高さ(mm)(x軸)として表される。
【0017】
図3】CNFの重量%を変化させた、様々なパルプ-CNF-CaCO膜の吸い上げ速度を示す。結果は、CNF(x軸)対垂直吸い上げ速度(mm/sec)(y軸)の重量%として表される。
【0018】
図4】例示的な膜上の分析物-標的相互作用の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本発明がより容易に理解されるために、ある特定の用語が、まず、以下に定義される。以下の用語及び他の用語の追加の定義は、本明細書全体に記載される。本発明の背景を記載し、その実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で参照される刊行物及び他の参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
およそまたは約:本明細書で使用される場合、「およそ」または「約」という用語は、目的の1つ以上の値に適用される場合、記載された基準値に類似した値を表す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段の記載がない限り、または異なる意味が文脈から明らかでない限り、記載された参照値のいずれかの方向(上回るまたは下回る)で、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下以内に収まる値の範囲を指す(ただし、そのような数が、取り得る値の100%を超える場合を除く)。
【0021】
生物学的試料:本明細書で使用される場合、「生物学的試料」という用語は、典型的には、本明細書に記載される目的の生物学的源(例えば、組織または生物または細胞培養物)から得られた、またはそれに由来する試料を意味する。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、動物またはヒトなどの生物を含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、細胞学的組織もしくは流体であるか、または細胞学的組織もしくは流体を含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、骨髄、血液、血液細胞、腹水(ascites)、組織または細針生検試料、細胞含有体液、浮遊核酸、喀痰、唾液、尿、脳脊髄液、腹水(peritoneal fluid)、胸水、糞便、リンパ、婦人科体液、皮膚スワブ、膣スワブ、口腔スワブ、鼻腔スワブ、乳管洗浄液もしくは気管支肺胞洗浄液などの洗液もしくは洗浄液、吸引液、擦過物、骨髄標本、組織生検標本、手術標本、糞便、他の体液、分泌物、及び/または排泄物、及び/またはそれら由来の細胞などであり得るか、またはこれらを含み得る。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、個体から得られた細胞であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、得られた細胞は、試料の取得元となる個体からの細胞であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、試料は、任意の適切な手段によって、目的の供給源から直接取得される「一次試料」である。例えば、いくつかの実施形態では、一次生物学的試料は、生検(例えば、細針吸引液または組織生検)、手術、体液(例えば、血液、リンパ、糞便など)の収集、口腔または経鼻スワブなどからなる群から選択される方法によって得られる。いくつかの実施形態では、文脈から明らかになるように、「試料」という用語は、一次試料の加工によって(例えば、1以上の成分を除去すること及び/または1以上の作用因子を加えることによって)得られる調製物を意味する。例えば、半透膜を使用する濾過。かかる「加工試料」は、例えば、試料から抽出された、またはmRNAの増幅もしくは逆転写、ある特定の成分の単離及び/または精製などのような技術に一次試料を供することによって得られた、核酸またはタンパク質を含み得る。
【0022】
バイオマーカー:「バイオマーカー」という用語は、該技術分野での使用と一致して、存在、レベル、程度、タイプ、及び/または形態が、特定の目的の生物学的事象または状態と相関するため、その事象または状態の「マーカー」であるとみなされる実体、事象または特徴を意味するように本明細書で使用される。いくつかの例を挙げると、いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、特定の疾患状態、または特定の疾患、障害もしくは状態が発生し得る尤度についてのマーカーであるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、特定の疾患もしくは治療転帰、またはそれらの尤度についてのマーカーであるか、またはそれを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、バイオマーカーには、関連する目的の生物学的事象または状態の、予測能があり、いくつかの実施形態では、バイオマーカーには、予後判定能があり、いくつかの実施形態では、バイオマーカーには、診断能がある。バイオマーカーは、任意の化学クラスの実体であってもよく、または含んでもよく、実体の組み合わせであってもよく、または含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、核酸、ポリペプチド、脂質、炭水化物、小分子、無機作用因子(例えば、金属またはイオン)、もしくはそれらの組み合わせであるか、またはそれらを含み得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、細胞表面マーカーである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、細胞内にある。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、細胞の外側で検出される(例えば、細胞の外側に、例えば、血液、尿、涙、唾液、脳脊髄液などのような体液中に、分泌される、または別様に生成される、もしくは存在する)。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、遺伝的またはエピジェネティックなシグネチャーであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、遺伝子発現シグネチャーであり得るか、またはそれを含み得る。
【0023】
セルロースナノフィブリル:本明細書で使用される用語「セルロースナノフィブリル」は、セルロース材料の少なくとも75%が「微細物」であると考えられるセルロース材料の状態を指す。いくつかの実施形態では、微細物と考えられ得るセルロース材料の割合は、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上のように非常に高くてもよい。本開示において、「ナノフィブリル」、「ナノセルロース」、「高度にフィブリル化されたセルロース」、及び「超フィブリル化されたセルロース」という用語は、全て、セルロースナノフィブリルと同義であると考えられる。
【0024】
検出可能な実体:「検出可能な実体」という用語は、本明細書で使用される場合、検出可能な任意の要素、分子、官能基、化合物、断片または部分を指す。いくつかの実施形態では、検出可能な実体は、単独で提供または利用される。いくつかの実施形態では、検出可能な実体は、別の薬剤と関連して(例えば、それに結合されて)提供及び/または利用される。検出可能な実体には、様々なリガンド、放射性核種(例えば、H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu、89Zrなど)、蛍光染料、化学発光剤(例えば、アクリジニウムエステル、安定化ジオキセタンなど)、生物発光剤、スペクトル分解性無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット)、金属ナノ粒子(例えば、金、銀、銅、白金など)ナノクラスター、常磁性金属イオン、酵素(酵素の特定例については下記を参照)、比色分析標識(例えば、染料、コロイド金など)、ビオチン、ジオキシゲニン、ハプテン、及び抗血清またはモノクローナル抗体が利用可能なタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
微細物:本明細書で使用される微細物とは、セルロース材料、または0.2mm未満の重み付き繊維長を有するセルロース繊維の一部を指す。いくつかの実施形態では、「微細物」は、5nm~100nm(両端を含む)の間の直径を有し、かつ高い表面対体積比及び高い長さ/直径(アスペクト)比を有するセルロース材料を指し得る。
【0026】
「改善する」、「増加する」、または「減少する」:本明細書で使用される場合、「改善する」、「増加する」、もしくは「減少する」、または文法的等価物は、本明細書に記載される治療またはプロセス工程の開始前の同じ試料における測定値、または本明細書に記載される治療の不在下での対照試料(または複数の対照試料)における測定値などのベースライン測定値に対する値を示す。
【0027】
多孔度:「多孔度」という用語は、本明細書で使用される場合、材料中の空隙空間の尺度を指し、0~100%の間の百分率として、全体積にわたる空隙の体積の一部である。多孔度の決定は、標準化された技術、例えば、水銀多孔度測定及びガス吸着(例えば、窒素吸着)を用いて当業者に公知である。
【0028】
試料:いくつかの実施形態では、対象の供給源は、生物学的供給源または環境的供給源である。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、微生物、植物、動物(例えば、ヒト)などの細胞または生物であるか、またはそれらを含み得る。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、生物学的組織または流体であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、生体組織または流体は、羊水、房水、腹水、胆汁、骨髄、血液、母乳、脳脊髄液、子宮腔、乳糜、糜粥(chime)、精液、腸内リンパ液、滲出液、糞便、胃酸、胃液、リンパ液、粘液、心膜液、リンパ膜外リンパ液、腹膜液、胸膜液、膿、眼脂、唾液、皮脂、精子、血清、塗抹、痰、滑液、汗、涙、尿、膣分泌液、硝子体液、嘔吐物、及び/またはそれらの組み合わせまたはそれらの成分を含み得る。いくつかの実施形態では、生物学的流体は、細胞内流体、細胞外流体、血管内流体(血漿)、間質液、リンパ液、及び/または経細胞流体であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、生物学的流体は、植物滲出液であるか、または植物滲出液を含み得る。いくつかの実施形態では、生物学的組織または試料は、例えば、吸引、生検(例えば、微細針または組織生検)、スワブ(例えば、口腔、経鼻、皮膚、または膣スワブ)、擦過、手術、洗浄または灌流(例えば、卵胞、管、鼻、眼、経口、子宮、膣、または他の洗浄または灌流)によって得られ得る。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、個体から得られた細胞であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、試料は、任意の適切な手段によって、目的の供給源から直接取得される「一次試料」である。いくつかの実施形態では、文脈から明らかになるように、「試料」という用語は、一次試料の加工によって(例えば、1以上の成分を除去すること及び/または1以上の作用因子を加えることによって)得られる調製物を意味する。例えば、半透膜を使用する濾過。かかる「加工試料」は、例えば、試料から抽出された、または核酸の増幅もしくは逆転写、ある特定の成分の単離及び/または精製などのような1つ以上の技術に一次試料を供することによって得られた、核酸またはタンパク質を含み得る。
【0029】
実質的に:本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、目的の特徴または特性の全または近完全(near-total)程度または度合いを示すという定量的状態を指す。化学分野の当業者は、生物学的現象及び化学的現象が完了すること、及び/または完全な状態まで進むこと、または絶対的な結果を達成もしくは回避することは、あったとしてもまれであることを理解するであろう。したがって、「実質的に」という用語は、本明細書では、多くの生物学的現象及び化学的現象に本質的に備わる完全性の潜在的欠如を捉えるために使用される。
【0030】
本発明は、一般に、セルロース材料(例えば、パルプ、繊維、及びナノファイバー)、例えば、内部及び表面濡れ現象、表面均一性、及び改善された物理的特性を含むがこれらに限定されない、迅速かつ制御された水性吸い上げ特性を示す膜から作製される製品の分野に関する。
【0031】
ナノフィブリル化セルロースは、木材及びポリマー複合体中の強化材料として、紙、板紙及び他の基材のためのバリアコーティングとして、ならびに多孔性及び結合依存性特性を制御するための製紙添加剤として有用であることが以前に示されている。多くのグループが、紙または他の製品へのナノセルロース材料の組み込みを調べている一方、他の研究グループは、特定のプラスチック複合材の強化材に対して低濃度でこの材料を使用することを調べている。
【0032】
本開示より以前には、大部分の吸い上げ膜は、ニトロセルロース、または著しく化学的に修飾された(すなわち、ニトロ化、硫酸化などによって)他のセルロース材料から作製されていた。加えて、これらのニトロセルロース膜は、典型的には、凍結乾燥によって作製されるので、それらの吸い上げ能力が制限されている。
【0033】
本開示は、1種以上のセルロース成分を使用して、改善された吸い上げ能力及び他の改善された物理的特性を有する膜を製造するための新しい膜組成物及び方法を提供する。これらの膜は、生物医学用途を含む異なる用途に合わせて調整することができる。さらに、これらの新しい膜組成物は、例えば、オーブンまたはマイクロ波乾燥などの単純な乾燥方法によって形成することができ、膜の物理的特性のより良好な制御を可能にする。
【0034】
本発明者らは、膜の特定の特性が吸い上げ能力を付与することを確認した。例えば、優れたウィッキングを達成する材料は、多くの場合、より高い多孔度を含み、及び/またはラメラ状チャネルを形成する(例えば、図1aに示される多孔質パルプ系材料を参照)。さらに、形成された膜を通しての各成分(添加剤及び湿潤性ミネラルを含む)の均一な分布は、例えば、ラテラルフローアッセイ及びポイントオブケア/診断デバイスに望ましい。
【0035】
本発明者らは、1種以上のセルロース材料(例えば、木材パルプ及びCNF)、及び1種以上の湿潤ミネラルを含み、膜に形成された場合、優れた吸い上げ能力を示す組成物を首尾よく同定した。本発明者らは、実質的に均質な膜材料を達成し、湿潤ミネラル(複数可)は、特定の量のCNFの添加によって膜全体に均一に分布される。本発明者らは、高いCNF含有量(例えば、約1.5重量%を超えるCNF)を有する膜が、ウェブ様構造(CNFベースの材料と同様)を含有し、パルプ材料の細孔によって形成されるラメラ様チャネルを妨害することを見出した。対照的に、提供される材料及び膜は、より低い濃度のCNFを用いて、優れた吸い上げ特性を達成することができる。
【0036】
さらに、本発明者らは、少量のCNFの膜組成物への添加が、膜における湿潤ミネラルの保持を改善することを見出した。いくつかの実施形態では、CNFは、膜が乾燥される前に、水性懸濁液中で0.1~1.5重量%の範囲内の濃度で、木材パルプ及び湿潤ミネラルの組成物に添加される。驚くべきことに、本発明者らは、膜成分(パルプ、CNF、及び湿潤ミネラル)の特定の比が、1)湿潤ミネラルを膜材料全体に均一に保持する能力、及び2)液体を効果的に吸い上げることができる多孔質チャネル様構造を維持する能力の両方を可能にすることを見出した。
【0037】
セルロース材料
種々の実施形態によれば、種々のセルロース材料のいずれも、提供される組成物及び膜において使用され得る。セルロース材料は、セルロースを含む任意の材料であり得る。セルロースは、植物の茎、葉、さや、殻及び穂、または木の葉、枝及び木部に天然に見出される。セルロース材料は、草本材料、農業残留物、林業残留物でもあり得る。いくつかの実施形態では、セルロース材料は、パルプ繊維、微結晶性セルロース、及びセルロースフィブリル凝集体であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、セルロース材料は、ミクロンスケールのセルロースであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、セルロース材料は、ナノスケールセルロース(すなわち、ナノセルロース)であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、ナノセルロースは、セルロースナノフィブリルであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、セルロースナノフィブリルは、ミクロフィブリル化セルロース、ナノ結晶性セルロース、及び細菌ナノセルロースであるか、またはそれを含む。
【0038】
リグノセルロース材料
種々の実施形態によれば、提供される組成物及び膜に使用されるセルロース材料は、種々のリグノセルロース材料のいずれかであるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、リグノセルロース材料は、木質、木質廃棄物、使用済みパルプ化/分画液、藻類バイオマス、食品廃棄物、草、藁、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ繊維、農業製品及び残留物、森林残留物、鋸の粉塵、木の削り屑、スラッジ及び都市固形廃棄物、細菌セルロース及びこれらの混合物などの材料から得られるリグニン、セルロース及びヘミセルロースに基づく天然ポリマーを含む及び/または天然ポリマーから誘導される材料である。いくつかの実施形態では、リグノセルロース材料は、化学的に漂白された木材パルプ(軟材または硬材)、及び木材残留物(木粉)などの木材パルプであるか、または木材パルプを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、提供される膜の調製前及び/または調製中に、リグノセルロース材料からミクロンスケールのセルロースまたはナノスケールのセルロースを得る。
【0040】
セルロースナノフィブリル(CNF)
様々な実施形態によれば、様々な用途-適切なセルロースナノフィブリルのいずれも使用され得る。セルロースのナノフィブリルは、マイクロフィブリル化セルロース(MFC)、セルロースマイクロフィブリル(CMF)、ナノフィブリル化セルロース(NFC)及びセルロースナノフィブリル(CNF)としても文献で公知であるが、これらはナノ結晶性セルロース(NCC)またはセルロースナノ結晶(CNC)とは異なる。いくつかの実施形態では、CNFは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)酸化CNFを含む。いくつかの実施形態では、CNFは、リグニン含有CNF(L-CNF)を含む。
【0041】
命名法の変動にかかわらず、少なくとも1つの寸法(典型的には繊維幅)がナノメートルの範囲にあるという条件で、実際の物理的寸法とは無関係に、ナノセルロース繊維に様々な実施形態が適用可能である。CNFは、一般に、最終的な長さ及び長さ分布を支配する、以下に記載される精製、粉砕、または均質化プロセスによって、木材パルプから製造される。繊維は、ナノメートル範囲の少なくとも1つの寸法(例えば、直径)を有する傾向があるが、繊維長は、供給源として使用される木材または植物のタイプ及び精練の程度に応じて、0.1μmから約4.0mm程度まで変化し得る。いくつかの実施形態では、「精製したままの」繊維長は約0.2mm~約0.5mmである。繊維長は、TechPap Morii Fiber Length Analyzerなどの業界標準の試験器を使用して測定される。限度内で、繊維がより精練されると、微細物%が増加し、繊維長が減少する。
【0042】
CNFまたはリグノセルロース材料は、例えば、酸化及び/または均質化によって処理されて、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)酸化CNFのようなCNF材料の特定の形態を生成し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、CNFは、木材ベースの材料または残留物から得られる。いくつかの実施形態では、木材ベースの残留物は、鋸屑を含む。いくつかの実施形態では、木材ベースの残留物は、木粉を含む。いくつかの実施形態では、木材ベースの残留物は、木の削り屑を含む。いくつかの実施形態では、木材ベースの残留物は、ウッドチップを含む。これらのタイプのCNF材料は、通常、リグニン含有セルロースナノフィブリル(LCNF)として知られている。
【0044】
湿潤剤
いくつかの実施形態では、本開示の膜は、本明細書に記載の膜上の試料の吸い上げを改善するために、1種以上の湿潤剤をさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、湿潤剤は、無機ミネラルまたは湿潤ミネラルである。湿潤ミネラル、例えば、天然で親水性である任意の金属酸化物であり得る。セルロース膜に湿潤ミネラルを加えることで、通常は疎水性である膜に、親水性が付与される。いくつかの実施形態では、1種以上の湿潤剤は、膜が形成される前に、1種以上のセルロース材料を含むスラリー中に添加される。
【0046】
例示的な湿潤ミネラルは、天然において親水性である任意の金属酸化物、例えば、CaCO、SiO、アルミナ、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、及びTiOを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、1種以上の湿潤剤は、約0.01重量%~約80重量%(総重量または乾燥重量ベースのいずれか)の濃度でスラリーまたは膜に存在し得る。いくつかの実施形態では、1種以上の湿潤剤は、約0.01重量%~約20重量%(総重量または乾燥重量ベースのいずれか)の濃度でスラリーまたは膜に存在し得る。いくつかの実施形態では、1種以上の湿潤剤は、スラリーまたは膜の中に、約0.01~75重量%、0.01~70重量%、0.01~65重量%、0.01~60重量%、0.01~55重量%、0.01~50重量%、0.01~45重量%、0.01~40重量%、0.01~35重量%、0.01~30重量%、0.01~25重量%、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~10重量%、0.01~5重量%、0.01~1重量%、0.01~0.5重量%(総重量または乾燥重量ベースのいずれか)から変動する濃度で存在し得る。
【0048】
添加剤
いくつかの実施形態では、本開示の膜は、1種以上の添加剤を含む。いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上のセルロース材料を含むスラリーに添加され、このスラリーは膜に形成される。
【0049】
いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、1種以上の添加剤を含まない同一の膜と比較して、膜の物理的、機械的または化学的特性を変更する。いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、木材誘導体、金属粒子、ラテックス粒子、バイオセラミック、ガラス材料、タンパク質、蛍光色素、ミネラル、天然繊維、ポリマー材料、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、添加剤は、木材誘導体であるか、またはそれを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上の起泡剤、発泡剤、及び/またはテンプレーティング剤を含む。起泡剤としては、例えば、合成界面活性剤(イオン性及び非イオン性の両方)、生物界面活性剤、例えば、真菌、細菌、酵母、糖脂質、リン脂質、糖ペプチド、サポニン、脂肪酸、タンパク質、多糖類が挙げられる。発泡剤としては、例えば、CO、ベーキングソーダなどが挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上の可塑剤を含む。可塑剤の例としては、例えば、アセチル化モノグリセリド、アルキルクエン酸塩、エポキシ化大豆油、タンパク質、PEG、脂肪酸などまたは界面活性剤(グルコシド(ココ、デシル、ラウリルなど)、及びミリスチン酸など)が挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上の難燃剤を含む。難燃剤の例としては、例えば、炭素(グラファイト、グラフェン、ナノチューブ)、臭素化ポリマー、塩素化無水物、酸及びパラフィン、ミネラル(クレイ、ホウ酸塩、アルミニウム及びマグネシウムの水酸化物、スズ酸亜鉛)、窒素(メラミン)、リン(赤リン、有機リン酸、ハロゲン化リン酸、ポリリン酸アンモニウム、ホスフィンオキシド)、ケイ素ベースの添加剤、有機酸、及び炭酸塩が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、添加剤は、金属粒子であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、添加剤は、金属酸化物粒子であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、金属粒子は銀粒子である。いくつかの実施形態では、金属粒子は金粒子である。いくつかの実施形態では、金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子である。いくつかの実施形態では、金属粒子は酸化鉄粒子である。いくつかの実施形態では、金属粒子は二酸化銀粒子である。いくつかの実施形態では、金属酸化物粒子は、酸化アルミニウム粒子である。
【0054】
いくつかの実施形態では、添加剤は、安定化剤であるか、またはそれを含む。安定化剤の例としては、クエン酸が挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、添加剤は、ラテックス粒子であるか、またはそれを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上のバイオセラミック材料であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、バイオセラミック材料は、リン酸三カルシウム、リン酸三カルシウム誘導体、リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム誘導体、またはそれらの任意の組み合わせの1つ以上であるか、またはそれらを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上のガラス材料を含む。いくつかの実施形態では、ガラス材料は生物活性である。いくつかの実施形態では、ガラス材料は、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラス粒子、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上のタンパク質であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は成長因子を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上の蛍光色素であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、蛍光色素は、1種以上の蛍光タグを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上のミネラルを含む。いくつかの実施形態では、ミネラルは、ヒドロキシアパタイト、ヒドロキシアパタイト誘導体、セメント、コンクリート、粘土、またはそれらの任意の組み合わせであるか、またはそれらを含み得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上の天然繊維を含む。いくつかの実施形態では、添加剤は、ポリマー繊維を含む。
【0062】
他の添加剤は当業者に公知であり、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の構造物への添加に関して考慮することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、約0.01重量%~約80重量%の範囲の濃度で存在し得る。いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、約0.01~75重量%、0.01~70重量%、0.01~65重量%、0.01~60重量%、0.01~55重量%、0.01~50重量%、0.01~45重量%、0.01~40重量%、0.01~35重量%、0.01~30重量%、0.01~25重量%、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~10重量%、0.01~5重量%、0.01~1重量%、0.01~0.5重量%、0.01~0.1重量%、0.01~0.09重量%、0.01~0.08重量%、0.01~0.07重量%、0.01~0.06重量%、0.01~0.05重量%、0.01~0.04重量%、0.01~0.03重量%、または0.01~0.02重量%の範囲の濃度で存在し得る。いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、約0.05~80重量%、0.1~80重量%、0.5~80重量%、1~80重量%、5~80重量%、10~80重量%、15~80重量%、20~80重量%、25~80重量%、30~80重量%、35~80重量%、40~80重量%、45~80重量%、50~80v%、55~80重量%、60~80重量%、65~80重量%、70~80重量%、71~80重量%、72~80重量%、73~80重量%、74~80重量%、75~80重量%、76~80重量%、77~80重量%、78~80重量%、または79~80重量%の範囲の濃度で存在し得る。
【0064】
組成物の化学的特性に変化を与える例示的な添加剤は、セルロース構造への試薬の添加である。診断用途における試薬は、抗体またはその断片などの分析物捕捉試薬を含み得る。環境用途における試薬は、環境汚染物質または他の検体と反応し、その存在を検出することが知られている任意の化学試薬を含み得る。分解特性及び多孔度の制御により、試薬は周囲に徐々に放出され得る。
【0065】
一般的なパルプ化及びCNFプロセス
提供される膜及び組成物の製造に使用されるパルプは、任意の公知のパルプ化プロセスによって得ることができる。化学パルプ化プロセスの例には、(a)Kraftプロセス、(b)亜硫酸プロセス、及び(c)ソーダプロセスが挙げられ、これらは、文献、例えば、Smook, Giry A., Handbook for Pulp & Paper Technologies, Tappi Press, 1992(例えば、第4章)、及び論文“Overview of the Wood Pulp Industry,” Market Pulp Association, 2007に十分に記載されている。
【0066】
提供される膜及び組成物の製造に使用されるCNFは、ナノセルロースまたはフィブリル化セルロースを製造するための任意の公知のプロセス、例えば、米国特許第10,563,352号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるプロセスを介して得ることができる。いくつかの実施形態では、CNFを得るプロセスは、木材パルプを、繊維を粉砕して分離する任意の種類のミルまたは装置で機械的に粉砕する工程を含む。そのようなミルは当技術分野で公知であり、限定するものではないが、Valleyビータ、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、広角及び狭角の両方を含む円錐リファイナー、円筒形リファイナー、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、及び他の同様のミリングまたは粉砕装置を含む。機械的粉砕装置の例は、例えば、Smook, Giry A., Handbook for Pulp & Paper Technologists, Tappi Press, 1992(例えば、第13章)に見出すことができる。機械的な分解または粉砕のプロセスは、器具の種類に関係なく、パルプの文献では「精練」と呼ばれることもある。
【0067】
精練の程度は、いくつかの手段のいずれかによって、プロセス中に監視されてもよい。特定の光学機器は、繊維長さ分布及び微細物パーセントに関する連続データを提供することができ、それらのいずれも、粉砕段階の終点を定義するために使用することができる。限度内で、繊維がより精練されると、微細物%が増加し、繊維長が減少する。繊維長は、特定の「平均」繊維長を読み取るTechPap Morii Fiber Length Analyzerなどの業界標準テスタを使用して測定される。いくつかの実施形態では、「精練されたままの」繊維長は、約0.1mm~約0.6mm、または約0.2mm~約0.5mmである。
【0068】
いくつかの実施形態では、精練の前に(例えば、均質化によって)、パルプを化学的に(例えば、硫酸化またはニトロ化によって)修飾することができる。
【0069】
高度にフィブリル化されたセルロースを生成するためのパルプの精練は、ホモジナイザー及び/または超微細粉砕機を用いるなど、様々な機械的処理を用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第7,381,294号(Suzuki et al.)に記載されているように、低コンシステンシー精製器を使用してCNFを製造することができる。いくつかの実施形態では、ミクロフィブリル化セルロースまたはCNFは、精練機を通して繊維スラリーを再循環させることによって製造することができる。いくつかの実施形態では、2つの精練機が逐次的に使用される。
【0070】
非限定的な例として、米国特許第9,988,762号は、木材製品からCNFを調製するための精練プロセスを記載しており、その全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、CNFを得るプロセスは、パルプ化プロセスを使用してリグノセルロースマトリックスから遊離したセルロース繊維、好ましくは木材繊維のスラリーを処理することを含む。パルプ化プロセスは、硫酸塩(例えば、Kraft)または亜硫酸塩プロセスなどの化学パルプ化プロセスであり得る。このプロセスは、繊維に剪断を適用する第1及び第2の機械的精練機を含み得る。精練機は、低一貫性精練機であり得る。そのような実施形態では、剪断力は、繊維のセル壁を破壊するのを助け、壁構造中に含有されるフィブリル及びナノフィブリルを露出させる。機械的処理は、所望の量のフィブリルが繊維から遊離するまで継続してもよい。
【0071】
特定の精練プロセスでは、大量の水が使用される。上述のように、スラリーは、90~99%(重量)の水と、1~10%の繊維のみを含むことができる。所望であれば、完全な水除去は、通常の手段(蒸発、凍結乾燥、エレクトロスプレー、オーブン加熱、マイクロ波など)を介して日常的に達成され、及び/または特定の最終形態(例えば、膜材料)を達成するために他の材料と組み合わされる。
【0072】
膜を形成する方法
本開示は、特に、1種以上のセルロース成分を含む膜を作製する方法であって、1種以上のセルロース成分が、ミクロンスケールのセルロースまたはセルロースナノフィブリル(CNF)、木材パルプ、及び湿潤剤(複数可)を含み、該方法が、(i)セルロース成分及び湿潤剤(複数可)の1つ以上を液体成分と組み合わせることによってセルローススラリーを作製する工程と、(ii)セルローススラリーの成分を混合する工程と、(iii)セルローススラリーを乾燥条件に曝露し、それによって膜を形成する工程と、を含む方法を提供する。
【0073】
セルローススラリー
本発明の種々の実施形態によれば、セルローススラリーは、膜を製造するための組成物に使用される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、水などの液体成分に懸濁された1種以上のセルロース材料を含む。いくつかの実施形態では、スラリーは、懸濁液、コロイド、混合物、エマルジョン、またはヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態では、セルロース成分は、ミクロンスケールのセルロースを含む。いくつかの実施形態では、セルロース成分はCNF(CNF)を含む。いくつかの実施形態では、セルロース成分は、木材ベースの残留物を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、木材及び/または他のリグノセルロース誘導体を含む。いくつかの実施形態では、木材誘導体は、木粉、木材パルプ、またはそれらの組み合わせであるか、またはそれらを含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、乾燥質量ベースで0.01重量%~約10重量%(例えば、0.01~0.1重量%、0.1~1.5重量%、0.1~2重量%、0.1~5重量%、1~10重量%)のCNFを含み、重量%は、スラリー中に存在する全ての固体成分の総重量に基づいて計算される(液体成分の重量を除外する)。
【0076】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、乾燥質量ベースで0.01重量%~約10重量%(例えば、0.01~0.1重量%、0.1~1.5重量%、0.1~2重量%、0.1~5重量%、1~10重量%)のパルプ(例えば、軟質及び/または硬質木材パルプ)を含み、重量%は、スラリー中に存在する全ての固体成分の総重量に基づいて計算される(液体成分の重量を除外する)。
【0077】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、CNF及び湿潤剤(例えば、湿潤ミネラル)を含む。いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在するCNF:湿潤ミネラルの比は、約1:0.0001~約1:1000の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在するCNF:湿潤ミネラルの比は、約1:0.0001~0.001、1:0.001~0.1、1:0.1~1、1:1~5、1:5~10、1:10~20、1:20~50、1:50~100、または約1:100~1000の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在するCNF:湿潤ミネラルの比は、約1:0.0001、1:001、1:0.01、1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:12、1:14、1:15、1:20、1:50、1:100または約1:1000である。
【0078】
いくつかの実施形態では、湿潤剤を乾燥CNFに添加し、続いて水と混合して懸濁液を形成する。
【0079】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、パルプ及びCNFを含む。いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在するパルプ:CNFの比は、約1:0.0001~約1:1000の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在するパルプ:CNFの比は、約1:0.0001~0.001、1:0.001~0.1、1:0.1~1、1:1~5、1:5~10、1:10~20、1:20~50、1:50~100、または約1:100~1000の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在するパルプ:CNFの比は、約1:0.0001、1:001、1:0.01、1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:12、1:14、1:15、1:20、1:50、1:100または約1:1000である。
【0080】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、添加剤を含む。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、0.01~95重量%の添加剤(複数可)を含み、ここで、重量%は、乾燥質量に基づいて計算され、重量%は、スラリー中に存在する全ての固体成分の総重量に基づいて計算される(そして、液体成分の重量を除外する)。例えば、いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、0.01~95%(例えば、0.01~90%、0.01~80%、0.01~70%、0.01~60%、0.01~50%、0.01~40%、0.01~30%、0.01~20%、0.01~10%、または0.01~5%)の重量%の添加剤(複数可)を含み得る。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、少なくとも0.01重量%(例えば、少なくとも0.01重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%)の添加剤(複数可)を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在する別の固体成分(例えば、パルプ及び/またはCNFなどのセルロース材料):添加剤の比は、約1:0.0001~約1:1000の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在する別の固体成分(例えば、パルプ及び/またはCNFなどのセルロース材料):添加剤の比は、約1:0.001~約1:100の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在する他の固体成分(例えば、パルプ及び/またはCNFなどのセルロース材料):添加剤の比は、約1:0.0001、1:0.001、1:0.01、1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:12、1:14、1:15、1:20、1:50、1:100または約1:1000である。いくつかの実施形態では、セルローススラリー中に存在する他の固体成分(例えば、パルプ及び/またはCNFなどのセルロース材料):添加剤の比は、約1:0.0001~0.001、1:0.001~0.1、1:0.1~1、1:1~5、1:5~10、1:10~20、1:20~50、1:50~100、または約1:100~1000の範囲内である。
【0082】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーの総固体含有量は、0.01~10重量%(例えば、0.01~0.1重量%、0.1~1.5重量%、0.1~2重量%、0.1~5重量%、1~10重量%)の範囲であり、重量%は、乾燥質量に基づいて計算され、乾燥質量は、スラリー中に存在する全固体成分の総重量に基づいて計算される(液体成分の重量を除外する)。
【0083】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、液体成分を含み、液体成分は水である。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、液体成分を含み、液体成分はアルコールである。いくつかの実施形態では、アルコールはエタノールである。いくつかの実施形態では、逆溶媒は、水とアルコールとの混合物を含む。いくつかの実施形態では、液体成分はアセトンである。
【0084】
いくつかの実施形態では、パルプは、液体(例えば、DI水)中に、さらに処理される前の期間にわたって浸漬される。いくつかの実施形態では、パルプは、1時間~7日間の範囲の時間、例えば24時間、液体に浸漬される。いくつかの実施形態では、パルプは、少なくとも、例えば、1、2、3、4、8、16、24時間、48時間、72時間またはそれ以上の時間、液体に浸漬される。
【0085】
混合
本開示の膜は、例えば、1種以上のセルロース材料、湿潤剤、及び液体を含むスラリーを提供することと、スラリーの成分を混合して成分を分配及び組み合わせることとにより形成することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、スラリーは、機械的混合により調製される。いくつかの実施形態では、混合は、例えば、自動分散機、ブレンダー、自動振盪機、超音波ミキサーまたは遊星ミキサーなどの装置を使用して、自動混合により達成される。
【0087】
いくつかの実施形態では、パルプスラリーと、CNF及び湿潤ミネラル懸濁液を含有するスラリーとを、任意の用途に適した方法、例えば、機械的混合などの混合技術を使用して混合する。いくつかの実施形態では、混合は、例えば、自動分散機、ブレンダー、自動振盪機、超音波ミキサーまたは遊星ミキサーなどの装置を使用して、自動混合により達成される。
【0088】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーの成分の混合は、1種以上の混合セッションを含む。いくつかの実施形態では、1種以上の混合セッション(例えば、3つの混合セッション)は、数分~数日の範囲の間隔(例えば、少なくとも1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、1時間、2時間、24時間、40時間、またはそれ以上)で時間的に分離される。
【0089】
いくつかの実施形態では、第1の混合セッションを使用して、CNFを添加剤(例えば、湿潤ミネラル)と混合し、第1の混合物を形成する。いくつかの実施形態では、第2の混合セッションを使用して、パルプを水と混合し、第2の混合物を形成する。いくつかの実施形態では、別の混合セッションを使用して、第1の混合物と第2の混合物とを混合する。いくつかの実施形態では、各混合セッションは約30分である。
【0090】
いくつかの実施形態では、1種以上の混合セッションは、同一の混合条件を含む。いくつかの実施形態では、1種以上の混合セッションは、少なくとも1つの他の混合セッションからの1種以上のパラメータ(例えば、時間、強度、材料の体積、混合に使用される混合/装置の種類)において変化する条件を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約3時間を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約2時間を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約1時間を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約55分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約50分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約45分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約40分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約35分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約30分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約25分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約20分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約15分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約10分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約9分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約8分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約7分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約6分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約5分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約4分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約3分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約2分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約1分を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約55秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約50秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約45秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約40秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約35秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約30秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約25秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約20秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約19秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約18秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約17秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約16秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約15秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約14秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約13秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約12秒を含む時間にわたって混合される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約11秒を含む時間にわたって混合される。
【0092】
乾燥
本開示の膜は、例えば、1種以上のセルロース材料、湿潤剤(複数可)、及び液体を含むスラリーを提供し、スラリーの成分を混合して成分を分配及び組み合わせ、及び毛管脱水、重力及び真空濾過、電気オーブン、赤外線加熱、マイクロ波加熱、凍結乾燥、周囲加熱、またはそれらの組み合わせなどの技法を使用してセルローススラリーを乾燥させることによって形成することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、乾燥条件は、1種以上の乾燥セッションを含む。いくつかの実施形態では、1種以上の乾燥セッションは、数分~数日の範囲の間隔(例えば、少なくとも1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、1時間、2時間、24時間、40時間、またはそれ以上)で時間的に分離される。
【0094】
いくつかの実施形態では、1種以上の乾燥セッションは、同一の乾燥条件を含む。いくつかの実施形態では、1種以上の乾燥セッションは、少なくとも1つの他の乾燥セッションから1種以上のパラメータ(例えば、時間、強度、材料の体積)が変化する条件を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーを1種以上の乾燥条件に曝露するプロセスは、少なくとも80重量%のセルロース固体(例えば、少なくとも85重量%、90重量%、95重量%、99重量%のセルロース固体)を含む膜を達成することができる。いくつかの実施形態では、セルローススラリーを1種以上の乾燥条件に曝露するプロセスは、約95重量%のセルロース固体を含む膜を達成することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、第1の乾燥条件をリグノセルローススラリーに適用して、約1~60%の固形分(例えば、約1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、または約50~60%の固形分)のヒドロゲルを達成することができる。いくつかの実施形態では、第2の乾燥条件を、完全またはほぼ完全な脱水(例えば、少なくとも90%の固形分の膜)のためにヒドロゲルに適用することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、第1の乾燥条件は、毛細管脱水、重力及び真空濾過、電気オーブン、赤外線加熱、マイクロ波加熱、凍結乾燥、及び/または周囲加熱を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、第2の乾燥条件は、毛細管脱水、重力及び真空濾過、電気オーブン、赤外線加熱、マイクロ波加熱、凍結乾燥、及び/または周囲加熱を含む。
【0099】
毛細管作用
種々の実施形態によれば、提供される方法は、セルロース材料(例えば、CNF及びパルプ)を含有するスラリーを、スラリーを多孔質脱水材料の表面と接触させることによって脱水するための毛管作用の使用、及び毛管作用を介して水性懸濁液中の水の少なくとも一部を除去し、それによって多孔質ナノセルロース材料を形成することを含む。いくつかの実施形態では、除去ステップは、少なくとも8時間継続する。
【0100】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーの毛管脱水は、例えば、懸濁液を多孔質容器中に置き、毛管圧力、静水圧、及びエンタルピーの影響をバランスさせることによって行うことができる。
【0101】
種々の実施形態のいずれかに従って、任意の用途に適した多孔質脱水材料が使用され得る。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って有用であるためには、多孔質脱水材料は、水が水性懸濁液から出て、多孔質脱水材料を横切って、例えば、外面(すなわち、水性懸濁液と接触しない表面)に移動することを容易にすることができなければならない。いくつかの実施形態では、多孔質脱水材料は、親水性表面を含む。いくつかの実施形態では、多孔質脱水材料は、耐火煉瓦、キルン煉瓦、シンダーブロック、テラコッタセラミック、及び多孔質石膏ベースの材料(例えば、焼き石膏)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、多孔質脱水材料は、剛性材料(例えば、剛性材料)と組み合わせて使用され、その結果、セルロース材料は、剛性材料の表面に対して同時に乾燥及び成形される。
【0102】
いくつかの実施形態では、毛細管脱水方法は、形成された膜の多孔度を制御するために、多孔質脱水材料の第2の表面からの水除去速度を制御するために、圧力及び温度の少なくとも一方を制御する工程をさらに含む。
【0103】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、毛管力の緩やかで制御された性質は、例えば溶液中でより高い割合の固体を達成する試みにおいて以前に使用されたより厳しい方法(例えば、ホットプレス成型など)とは対照的に、提供された材料の生成を可能にする可能性が高い。
【0104】
いくつかの実施形態では、圧力及び/または温度が操作される。いくつかの実施形態では、温度を調節することは、温度を上昇させることを含む。いくつかの実施形態では、温度を調節することは、温度を低下させることを含む。いくつかの実施形態では、圧力を調節することは、圧力を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、圧力を調節することは、圧力を低下させることを含む。いくつかの実施形態では、圧力を制御することは、少なくとも部分的な真空を生成することを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、スラリーは、毛管作用によって部分的に脱水されて、部分的に乾燥された膜を形成し、次いで、他の方法を使用してさらに乾燥される。いくつかの実施形態では、残りの水は、部分的に乾燥された膜において凍結され、次いで、凍結された残りの水を膜から蒸発させることによって、さらに乾燥される。
【0106】
いくつかの実施形態では、毛細管脱水は、米国特許出願第16/086,988号(米国特許出願公開第2019/0093288A1号として公開)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される通り、型を使用して行われる。
【0107】
マイクロ波放射
いくつかの実施形態では、乾燥条件は、マイクロ波放射を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の乾燥セッションは、同一の混合条件を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の乾燥セッションは、少なくとも1つの他の乾燥セッションから1種以上のマイクロ波パラメータで変化するマイクロ波条件を含む。いくつかの実施形態では、1種以上のマイクロ波パラメータは、マイクロ波電力、マイクロ波波長、マイクロ波周波数、マイクロ波指向性、マイクロ波流束及びマイクロ波照射持続時間を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の乾燥セッションは、1つの乾燥セッションを含み、1つの乾燥セッション中に、マイクロ波放射は、電力、波長、周波数、指向性、及び流束のうちの1つ以上において変化する。
【0108】
いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、約5W/kgのセルローススラリーから約100kW/kgのセルローススラリーまでの出力を有する。いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、約5~90,000、5~80,000、5~70,000、5~60,000、5~50,000、5~40,000、5~30,000、5~20,000、5~10,000、5~9,000、5~8,000、5~7,000、5~6,000、5~5,000、5~4,000、5~3,000、5~2,000、5~1,000、5~900、5~800、5~700、5~600、5~500、5~400、5~300、5~200、5~100、5~95、5~90、5~85、5~80、5~75、5~70、5~65、5~60、5~55、5~50、5~45、5~40、5~35、5~30、5~25、5~20、5~19、5~18、5~17、5~16、5~15、5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、5~8、5~7、または5~6W/kgの出力を有する。
【0109】
いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、約1ミリメートル~約1メートルの波長を有する。いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、約1~900、1~850、1~800、1~750、1~700、1~650、1~600、1~550、1~500、1~450、1~400、1~350、1~300、1~250、1~200、1~150、1~100、1~90、1~85、1~80、1~75、1~70、1~65、1~60、1~55、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2ミリメートルの波長を有する。いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、約0.005~1、0.01~1、0.015~1、0.02~1、0.025~1、0.03~1、0.035~1、0.04~1、0.045~1、0.05~1、0.055~1、0.06~1、0.065~1、0.07~1、0.075~1、0.08~1、0.085~1、0.09~1、0.095~1、0.1~1、0.2~1、0.25~1、0.3~1、0.35~1、0.4~1、0.45~1、0.5~1、0.55~1、0.6~1、0.65~1、0.7~1、0.75~1、0.8~1、0.85~1、または0.9~1メートルの波長を有する。
【0110】
いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、500MHz~100GHz、500MHz~50GHz、500MHz~10GHz、または500MHz~5GHzの周波数を有し得る。いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、915MHzの周波数を有し得る。いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、2,450MHzの周波数を有し得る。いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、915MHz~2,450MHzの周波数を有し得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約3時間を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約2時間を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約1時間を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約55分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約50分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約45分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約40分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約35分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約30分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約25分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約20分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約15分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約10分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約9分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約8分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約7分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約6分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約5分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約4分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約3分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約2分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約1分を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約55秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約50秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約45秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約40秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約35秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約30秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約25秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約20秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約19秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約18秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約17秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約16秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約15秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約14秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約13秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約12秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、約10秒~約11秒を含む時間にわたってマイクロ波放射に曝露される。
【0112】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、少なくとも1回の乾燥セッション(例えば、マイクロ波放射セッション)の間、マイクロ波放射に曝露される場合に、型に含まれる。いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、少なくとも1回の乾燥セッションの間、マイクロ波放射に曝露された場合に鋳型内に含まれない。
【0113】
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、液体成分含有量が約0.01重量%~約20重量%(例えば、0.05重量%~20重量%、0.05重量%~10重量%、0.1重量%~20重量%、0.1重量%~10重量%、1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%)になるまで、マイクロ波放射に曝露される。
【0114】
いくつかの実施形態では、マイクロ波放射の変動は、体積当たり均質な内部空隙を有するセルロース組成物をもたらす。いくつかの実施形態では、マイクロ波放射の変動は、均質な多孔度を有するセルロース組成物をもたらす。
【0115】
本開示のセルローススラリーは、当技術分野で公知の任意の方法に従って乾燥させることができ、本明細書に提供される特定の例に限定されない。
【0116】
モールド成形
いくつかの実施形態では、セルローススラリーは、少なくとも1回の乾燥セッション後に押し出される。いくつかの実施形態では、型は円筒形である。いくつかの実施形態では、型は、球、円錐、立方体、シートまたは薄膜である。いくつかの実施形態では、膜の形状は、第1の乾燥条件と第2の乾燥条件との間で、半固体組成物が依然として幾分か展性である(例えば、最大約80重量%の水)間に鋳型から除去される場合、鋳型の形状に対して改変または変更されてもよい。いくつかの実施形態では、半固体組成物は、組成物が後続の乾燥条件で完全に乾燥される前に、非型形状(non-mold shape)に成形され得る。いくつかの実施形態では、半固体組成物は、ある形態に成形され、次いで、型なしで、所望の形状を得るために乾燥条件に曝され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、乾燥または部分的に乾燥された膜は、別の膜(例えば、同じまたは異なる材料の)に付着され、結合され、及び/または組み合わされ得る。いくつかの実施形態では、膜は、膜の最終用途に基づいて選択される別の材料と組み合わせることができる。例えば、膜は、例えば、ラテラルフローアッセイで使用するための可撓性の裏材と組み合わせることができる。
【0118】
提供される膜と組み合わせて使用される材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、例えば、Dacron(登録商標)繊維、ニトロセルロース、ポリエステル、ナイロン、酢酸セルロース、ヒドロゲル、ポリプロピレン、ガラス繊維などが挙げられる。いくつかの実施形態では、膜は、1種以上の他の材料と組み合わされ、次いで、最終膜材料を形成するように成形され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、膜は、同じ膜材料の1つ以上の層を含む(例えば、同量のセルロース材料及び湿潤ミネラルから作製される膜)。
【0120】
いくつかの実施形態では、膜は、膜材料の第1の層(例えば、1種以上のセルロース材料及び湿潤ミネラルから作製される膜)と、異なる膜材料を含む1つ以上の追加の層とを含む。
【0121】
物理的特性
本開示は、様々な物理的特性を含む膜を提供する。本開示は、膜に特定の量のCNFを含めることにより、水中の木材パルプの分散性が改善されることを認識する。さらに、CNFは、膜の機械的特性及び膜における湿潤ミネラルの保持を増強する。
【0122】
いくつかの実施形態では、膜は、約0.01g/cm~約2.5g/cm、例えば、約0.01g/cm~約1.0g/cmの密度を有する。いくつかの実施形態では、膜は、約0.02~2.4、0.02~2.3、0.02~2.2、0.02~2.1、0.02~2.0、0.02~1.9、0.02~1.8、0.02~1.7、0.02~1.6、0.02~1.5、0.02~1.4、0.02~1.3、0.02~1.2、0.02~1.1、0.02~1.0、0.02~0.9、0.02~0.8、0.02~0.7、0.02~0.6、0.02~0.5、0.02~0.4、0.02~0.3、0.02~0.2、0.02~0.1、0.02~0.09、0.02~0.08、0.02~0.07、0.02~0.06、0.02~0.05、0.02~0.04、または0.02~0.03g/cmgの密度を有する。いくつかの実施形態では、膜は、約0.01~1.0、0.02~1.0、0.03~1.0、0.04~1.0、0.05~1.0、0.06~1.0、0.07~1.0、0.08~1.0、0.09~1.0、0.1~1.0、0.2~1.0、0.3~1.0、0.4~1.0、0.5~1.0、0.6~1.0、0.7~1.0、0.8~1.0、または0.9~1.0g/cmの密度を有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、膜内のパルプの最終量は、乾燥質量ベースで約0.01重量%~約10重量%(例えば、0.01~0.1重量%、0.1~1.5重量%、0.1~2重量%、0.1~5重量%、1~10重量%)のパルプ(例えば、軟質及び/または硬質木材パルプ)であり、重量%は、乾燥質量に基づいて計算され、重量%は、スラリー中に存在する全ての固体成分の総重量に基づいて計算される(液体成分の重量を除外する)。
【0124】
いくつかの実施形態では、セルロース膜は、0.01~95重量%の添加剤(複数可)を含み、ここで、重量%は、乾燥質量に基づいて計算され、重量%は、スラリー中に存在する全ての固体成分の総重量に基づいて計算される(そして、液体成分の重量を除外する)。例えば、いくつかの実施形態では、セルロース膜は、0.01~95%(例えば、0.01~90%、0.01~80%、0.01~70%、0.01~60%、0.01~50%、0.01~40%、0.01~30%、0.01~20%、0.01~10%、または0.01~5%)の重量%の添加剤(複数可)を含み得る。いくつかの実施形態では、セルロース膜は、少なくとも0.01重量%(例えば、少なくとも0.01重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%)の添加剤(複数可)を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、セルロース膜は、CNF及び湿潤剤(例えば、湿潤ミネラル)を含む。いくつかの実施形態では、セルロース膜中に存在するCNF:湿潤ミネラルの比は、約1:0.0001~約1:1000の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルロース膜中に存在するCNF:湿潤ミネラルの比は、約1:0.0001~0.001、1:0.001~0.1、1:0.1~1、1:1~5、1:5~10、1:10~20、1:20~50、1:50~100、または約1:100~1000の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルロース膜中に存在するCNF:湿潤ミネラルの比は、約1:0.0001、1:001、1:0.01、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:10、1:12、1:14、1:15、1:20、1:50、1:100または約1:1000である。
【0126】
いくつかの実施形態では、セルロース膜中に存在するパルプ:CNFの最終比は、約1:0.0001~約1:1000の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルロース膜中に存在するパルプ:CNFの比は、約1:0.0001~0.001、1:0.001~0.1、1:0.1~1、1:1~5、1:5~10、1:10~20、1:20~50、1:50~100、または約1:100~1000の範囲内である。いくつかの実施形態では、セルロース膜中に存在するパルプ:CNFの比は、約1:0.0001、1:001、1:0.01、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:10、1:12、1:14、1:15、1:20、1:50、1:100または約1:1000である。
【0127】
いくつかの実施形態では、膜は、約0.01、0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95重量%のナノセルロース繊維固形分を有する。いくつかの実施形態では、膜は、約0.01重量%~約10重量%(例えば、0.01重量%~0.1重量%、0.1重量%~1.5重量%、0.1重量%~2重量%、0.1重量%~5重量%、1重量%~10重量%)のナノセルロース繊維固形分を有する。いくつかの実施形態では、膜は、約1~90重量%、1~85重量%、1~80重量%、1~75重量%、1~70重量%、1~65重量%、1~60重量%、1~55重量%、1~50重量%、1~45重量%、1~40重量%、1~35重量%、1~30重量%、1~25重量%、1~20重量%、1~15重量%、1~10重量%、1~9重量%、1~8重量%、1~7重量%、1~6重量%、1~5重量%、1~4重量%、1~3重量%、または1~2重量%のナノセルロース繊維固形分を有する。いくつかの実施形態では、膜は、約0.01~95重量%、0.1~95重量%、5~95重量%、10~95重量%、15~95重量%、20~95重量%、25~95重量%、30~95重量%、35~95重量%、40~95重量%、45~95重量%、50~95重量%、55~95重量%、60~95重量%、65~95重量%、70~95重量%、75~95重量%、80~95重量%、85~95重量%、90~95重量%、91~95重量%、92~95重量%、93~95重量%、または94~95重量%のナノセルロース繊維固形分を有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、本開示の膜は、1種以上の添加剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、該1種以上の添加剤を含まない同一の膜と比較して膜の物理的、機械的または化学的特性を変更する。いくつかの実施形態では、添加剤は、1種以上の起泡剤、発泡剤、及び/またはテンプレーティング剤を含む。
【0129】
多孔度
本明細書に記載の膜は、その向上した吸い上げ能力を特徴とする。膜の多孔度は、吸い上げ能力に寄与し、セルローススラリーを乾燥させるために使用される乾燥時間及び方法を含む種々の方法によって制御及び調整することができる。膜内のセルロース材料の量は、多孔度(及び孔形態にも)影響を及ぼし得る。ラメラ様チャネルを形成する細孔は、吸い上げ能力を増加させることが示されている。
【0130】
いくつかの実施形態では、膜は、実質的に均質な多孔度及び/または孔径を含む。いくつかの実施形態では、膜は、多孔度及び/または孔径の勾配を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、膜の多孔度は、少なくとも60~90%の範囲内である。いくつかの実施形態では、膜の多孔度は、少なくとも10~90%、20~90%、30~90%、40~90%、50~90%、60~90%、70~90%、または80~90%の範囲内である。いくつかの実施形態では、膜の多孔度は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、または少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、膜の多孔度は、膜の嵩対絶対密度によって決定される。いくつかの実施形態では、多孔度及び孔径分布は、水銀ポロシメトリー、またはBET及び/またはBJH分析を使用して試験される。
【0132】
いくつかの実施形態では、膜内の細孔は、1nm~1000ミクロン(例えば、10nm~1000ミクロン、100nm~100ミクロン、1~10ミクロン)の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、膜内の細孔は、1nm~1000nm(例えば、1~10nm、10~20nm、20~100nm、100~200nm、200~300nm、300~400nm、400~500nm、500~600nm、600~700nm、700~800nm、800~900nm、900~1000nm)の平均直径を有する。いくつかの実施形態において、膜内の細孔は、1~1000μm(例えば、1~10μm、10~20μm、20~100μm、100~200μm、200~300μm、300~400μm、400~500μm、500~600μm、600~700μm、700~800μm、800~900μm、900~1000μm)の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔サイズ/形態は、走査型電子顕微鏡(SEМ)を用いて調べることができる。
【0133】
吸い上げ
本開示は、改善された吸い上げ能力を含む、様々な改善された特性を示すセルロース材料を含む膜を提供する。吸い上げは、一般に、液体(例えば、検体を含む液体試料)が毛管作用によって材料を通して引き込まれる能力として理解することができる。
【0134】
吸い上げは、例えば、吸い上げ距離対時間で測定することができる。いくつかの実施形態では、吸い上げ能力の試験は、垂直吸い上げ試験、側方吸い上げ試験、または双方向吸い上げ試験(毛管作用による膜内の溶媒、例えば、水の進行が測定される)を含む。いくつかの実施形態では、吸い上げは、真空を使用して補助される。いくつかの実施形態では、双方向吸い上げ試験は、1つ以上の方向における吸い上げ能力を試験するための真空の補助を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、速度は、膜を通って移動する液体の溶媒前部の進行を観察することによって視覚的に測定される。いくつかの実施形態では、液体が膜上の特定の点に到達すると、視覚インジケータが現れることがある。
【0136】
いくつかの実施形態では、視覚インジケータは、例えば、比色標識(例えば、染料、コロイド金など)、蛍光剤、化学発光剤(例えば、アクリジニウムエステル、安定化ジオキセタンなど)、及び生物発光剤であり得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、膜は、少なくとも0.1mm/sの速度で膜を通して液体を吸い上げる能力を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、膜は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10、または20mm/s、またはそれ以上の速度で膜を通して液体を吸い上げることができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、改善された吸い上げ能力は、吸い上げ速度の増加である(例えば、垂直吸い上げ試験)。いくつかの実施形態では、吸い上げ速度の増加は、CNFを含まない膜と比較して少なくとも0.1mm/sの増加である。いくつかの実施形態では、吸い上げ速度の増加は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10、または20mm/s、またはそれ以上の増加である。
【0139】
いくつかの実施形態では、膜の吸い上げ能力は、CNF、パルプ、及び湿潤ミネラルのうちの1つ以上を含まない膜に対して改善される。いくつかの実施形態では、添加剤を含む膜の吸い上げ能力は、添加剤を含まない膜に関して改善される。
【0140】
分析物固定化
いくつかの実施形態では、液体試料中の1つ以上の分析物を膜上に固定化(すなわち、検出)することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、検体の固定化は、流体中の検体と検出剤との相互作用に基づく。いくつかの実施形態では、検知剤は、検出可能な実体を含む。いくつかの実施形態では、感知剤は、酵素、抗原、または抗体などの化学的に反応性の種である。
【0142】
酵素の例には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、カタラーゼ、ウレアーゼ、及びグルコースオキシダーゼが含まれる。
【0143】
例示の検出可能な実体には、様々なリガンド、放射性核種(例えば、H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu、89Zrなど)、蛍光染料、化学発光剤(例えば、アクリジニウムエステル、安定化ジオキセタンなど)、生物発光剤、スペクトル分解性無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット)、金属ナノ粒子(例えば、金、銀、銅、白金など)ナノクラスター、常磁性金属イオン、酵素(酵素の特定例については下記を参照)、比色分析標識(例えば、染料、コロイド金など)、ビオチン、ジオキシゲニン、ハプテン、及び抗血清またはモノクローナル抗体が利用可能なタンパク質が挙げられる。検出可能な物質を測定する方法としては、可視検出、蛍光、化学発光、放射能、比色測定、重量測定、X線回折、X線吸収、磁気、及び酵素活性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
分析物のタイプは、例えば、病原体、酵素、免疫媒介物質、核酸、タンパク質、糖タンパク質、リポ多糖、タンパク質付加物、腫瘍及び心臓マーカー、及び/または低分子量化合物を含み、これらは、ハプテン、ウイルスまたは微生物、例えば、細菌、真菌(例えば、酵母またはカビ)または寄生生物(例えば、アメーバまたは線虫)、免疫媒介物質、例えば、抗体、成長因子、補体、サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、インターフェロン及びインターフェロン誘導体、C反応性タンパク質、カルシトニン、アミロイド、接着分子、抗体、及び化学誘引成分、薬物分子、例えば、ヘロインまたはメタンフェタミン、及びアレルゲンを含むが、これらに限定されない。
【0145】
いくつかの実施形態では、分析物を含む液体は、生体試料である。いくつかの実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、粘膜液(口腔、鼻、膣、肛門、内耳、及び眼腔の)、脳脊髄液(CSF)、涙液、陰茎液、腺からの分泌または滲出液、または病変またはブリスターからの分泌または滲出液、例えば皮膚上の病変またはブリスターである。
【0146】
いくつかの実施形態では、分析物は、水性液滴の形態で膜上に固定化される。いくつかの実施形態では、酵素-抗原-抗体相互作用に基づくELISA試験などの用途のために、水性液滴を周囲温度及び高温(30~70C)で膜上で乾燥させる。
【0147】
いくつかの実施形態では、分析物はグルコースであり、膜は、生物学的試料中のグルコースの存在/レベルを検出するために使用される。
【0148】
いくつかの実施形態では、膜は、ラテラルフローデバイス/アッセイにおいて基質として使用される。いくつかの実施形態では、膜は、診断装置内の基質として使用される。
【0149】
いくつかの実施形態では、膜は、汎用の水平吸い上げ基材(例えば、複数のタイプの試験に適合する基材)で使用される。いくつかの実施形態では、膜は、汎用の水平吸い上げ基材に使用される。
【0150】
いくつかの実施形態では、膜は、自動サンプリング装置(例えば、環境試験片)で使用される。自動サンプリング装置は、真空、電気、または熱などの外部電源を必要としない任意のタイプのサンプリング装置であってもよい。いくつかの実施形態では、膜は、生物学的または環境試料を濃縮するための装置において使用される。
【0151】
いくつかの実施形態では、提供される膜は、溶液(例えば、水溶液)から1種以上の汚染物質を濾過/分離するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、膜は、膜1グラム当たりの汚染物質がミリグラム単位で測定される汚染物質の除去能力を有する。いくつかの実施形態では、汚染物質は、物理的、化学的、生物学的、または放射線的汚染物質であるか、または含む。
【0152】
物理的汚染物質の例としては、例えば、土壌浸食の結果としての沈殿物または有機材料が挙げられる。化学汚染物質の例としては、例えば、窒素、漂白剤、塩、殺虫剤、金属、細菌によって生成される毒素、及びヒトまたは動物薬が挙げられる。生物学的汚染物質の例としては、例えば、細菌、ウイルス、原生動物、及び寄生虫が挙げられる。放射線汚染物質の例としては、例えば、セシウム、プルトニウム及びウランが挙げられる。
【0153】
いくつかの実施形態では、膜は、水質試験、例えば、pH、アルカリ度、塩素含有量、及び重金属イオン含有量などの水サンプルの1つ以上の特性を試験する試験で使用される。
【0154】
本開示は、1つ以上の機械的特性を含む、様々な改善された特性を示すセルロース材料を含む膜を提供する。いくつかの実施形態では、機械的特性は、撓み強度を含む。いくつかの実施形態では、機械的特性は、圧縮弾性率を含む。いくつかの実施形態では、機械的特性は、引張強度を含む。
【実施例
【0155】
以下の実施例は、木材パルプ、セルロースマイクロファイバー及び/またはナノファイバー、ならびに種々の添加剤から作製される例示的なセルロース膜、ならびに該セルロース膜を作製及び試験する方法を開示する。以下の実施例は、本明細書に記載の膜をどのように作製及び使用するかを当業者に説明するために提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0156】
実施例1
この実施例では、1種以上のセルロース材料(木材パルプ及びCNF)及び湿潤剤を含む膜を作製し、種々の物理的及び機械的特性を試験した。この実施例に記載の膜は、(i)セルロース成分及び湿潤剤を液体成分と組み合わせることによりセルローススラリーを生成し;(ii)セルローススラリーの成分を混合し、そして(iii)セルローススラリーを乾燥条件に曝すことにより形成された。試験した特性の中で、垂直及び水平吸い上げ試験を、得られた膜に対して行った。本実施例の膜は、優れた吸い上げ及び機械的特性を有することが示された。
【0157】
材料
【0158】
この実施例で使用されるセルロース材料は、ナノフィブリル化セルロース(CNF)(軟質及び硬質木材)及び化学的に漂白された木材パルプ(軟質及び硬質木材)を含む。
【0159】
湿潤剤としてCaCO(粉砕CaCO(G.C.C.)及び析出CaCO3(P.C.C.)を用いた。
【0160】
セルローススラリーの調製
【0161】
乾燥パルプをDI水に24時間浸漬し、その後30分間機械的混合することにより、化学的に漂白された木材パルプ(軟質及び硬質木材)の0.1~5重量%の懸濁液を調製した。
【0162】
分離システムでは、0.01~3重量%の水性CNFの懸濁液を、湿潤ミネラルとの機械的混合を使用して、CNF/湿潤ミネラルの質量の比が1:1となるように混合した。パルプ及びCNF/湿潤ミネラル懸濁液を、上記の混合技術を使用して、それぞれ、パルプ:CNFの比が1:0.05、CNF/ミネラルの比が1:1、及びパルプ:湿潤ミネラルの比が1:0.01~0.3となるように、混合した。懸濁物の総固形分は、脱水工程の前に、0.5~1重量%の範囲内であった。
【0163】
脱水及び乾燥
【0164】
次いで、パルプ、CNF及び湿潤ミネラルの水性懸濁液を、重力及び真空濾過を使用して脱水して、約5~40%の固形分のヒドロゲルを生成した。次いで、これらのヒドロゲルを、105℃の電気オーブンを用いて完全な脱水のために乾燥ユニットに移した。
【0165】
膜は、多孔度、吸い上げ能力/分析物固定化を含む様々な特性について試験され、濡れ性ミネラル保持及び引張強度を含む他の物理的特性について試験される。パルプ膜、CNF膜、パルプ+CNF膜、CNF+CaCO膜を対照として同様に調製した。
【0166】
CNFのみの膜を調製するために、周囲またはオーブン乾燥は、濾過の目的で使用できなかった高密度CNF膜の形成につながるので、凍結乾燥法を使用してCNF懸濁液を脱水した。
【0167】
多孔度及び孔形態
【0168】
膜の多孔度は、膜の嵩及び絶対密度から計算した。走査型電子顕微鏡(SEМ)を用いて孔形態を調べた。多孔度及び孔径分布は、水銀ポロシメトリー、BET及びBJH分析を介して試験される。
【0169】
脱水され完全に乾燥された膜は、60~95%の範囲の多孔度を示した。膜の多孔質構造は、CNF含有量に大きく依存する。CNF含有量が低い膜(約0.1~2%)は、ラメラ型多孔質構造を示し(図1a参照)、CNF含有量が比較的高い膜(約10~20%)は、ウェブ状孔形態を示す(図1b参照)。比較のために、凍結乾燥CNFのみの膜を調製した。これらの膜は、ウェブ様の相互接続された孔形態を示した(図1c)。
【0170】
吸い上げ試験
【0171】
膜の吸い上げ能力を、CNFのみの膜、パルプのみの膜、パルプ+CNF膜、及びCaCO膜を含む他の材料と比較した。
【0172】
垂直及び横方向の吸い上げ試験を、4~10の範囲のpHを有する水溶液を用いて膜に対して行った。試料の他端を試料ホルダに固定した状態で、50mmの長さになるように切断した膜の一端をDI水浴(25C)に浸漬し、垂直吸い上げ試験を行った。膜を5mm毎に目盛り付けし、溶媒前部の可視化を可能にし、溶媒の進行の速度を定量した。
【0173】
膜の一方向の水平吸い上げ特性を試験するために、水を膜の上部に導入し、経時的な溶媒前部の進行を記録し、吸い上げ速度を計算するために使用した。
【0174】
二方向の吸い上げの測定のために、水を膜の上部に導入し、溶媒前部の進行を記録した。溶媒前部が一方向に特定の距離まで移動すると、追加の溶媒(水)が膜の他端から導入された。真空/吸収パッドも、膜の初期開始点に適用して、水の逆流を促進した。溶媒前部の進行を記録して、逆流吸い上げ速度を計算した。水溶性染料を使用して、逆流の進行を追跡した。
【0175】
図2に示すように、凍結乾燥CNF膜の垂直吸い上げ速度は非常に低かった(約0.05mm/s)。50%(w/w)湿潤ミネラル(CNF+CaCO膜)の添加は、吸い上げ性能をわずかに改善した(0.08mm/s)。
【0176】
これに対し、主マトリックス成分として木材パルプを用いた場合には、乾燥方法にかかわらず高多孔質構造が得られる。これらの材料は、CNF膜と比較して、3倍の高い吸い上げ速度を示した。CNFがこれらのパルプ膜に組み込まれると、CNFがラメラ孔形態ではなくウェブ様の相互接続された多孔質網状組織を誘導するので、吸上速度は減少傾向を示し始めた。理論に拘束されることを望むものではないが、CNFの添加による吸い上げ速度の減少は、膜における総内部細孔容積の減少に起因し得る。
【0177】
驚くべきことに、パルプ膜への湿潤ミネラルの添加は、膜の吸い上げ性能を改善しなかった。この現象の可能な理由は、膜製造プロセスにおける脱水工程中に膜における湿潤ミネラルの保持の欠如であり得る。対照的に、CNFは、恐らくCNF材料の高い表面積及び濡れ性に起因して、脱水プロセス中にCaCOの高い保持を示した。吸い上げ試験中に高い保持が観察された。アッシュテストを用いたさらなる分析は、膜に保持された湿潤ミネラルの量を決定する。
【0178】
CNF及びCaCOをパルプ懸濁液に組み込んだ場合(図2に示すように、上記の「パルプ+CNF+CaCO」を得た)。湿潤性ミネラルの高い保持が観察され、これはアッシュテストによって確認される。膜(パルプ+CNF+CaCO)の吸い上げ速度は、驚くべきことに増加した(CNFのみの膜と比較して20倍大きく、パルプのみの膜よりも7倍大きい)。この現象は、CNFがパルプ懸濁液中の湿潤ミネラルに対する結合及び固定化/分散/安定化剤として作用することを示唆している。
【0179】
有意な量の湿潤ミネラルの添加は、膜マトリックス中に大量のCNFを必要とする。しかしながら、CNFが1~2重量%(乾燥基準)の範囲で膜に存在する場合、吸い上げ速度の最大値が示された。この範囲より下では、湿潤ミネラルの保持が低いため、パルプ+CNF+CaCO膜の吸い上げ速度に有意な影響はない。この範囲のCNF画分を超えると、ウェブ様の孔網状組織の増強及び全多孔度の減少に起因して、吸い上げ速度は劇的に減少する。したがって、1~2重量%(乾燥質量基準)は、優れた吸い上げ速度に対するこれらのパルプ膜マトリックス中のCNF分率の最適範囲である。1~2重量%のCNFを使用した場合、マトリックス中に保持されたCaCOの最大分率は、約10~20重量%であった(図3参照)。
【0180】
分析物固定化
【0181】
酵素(感知剤)をCNF+パルプ+CaCO膜上に(水性液滴の形態で)固定化し、続いて周囲温度及び高温で乾燥させた(30~70C)。
【0182】
抗体(分析物)及び指示薬(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB))を含む溶液を、感知剤(HRP酵素)及び抗体によって認識される抗原を含む膜上の一方向の流れによって試験した(図4の設定を参照)。特定の分析物(抗体)を感知するためのCNF+パルプ+CaCO膜を使用する感知手順は、約3分で完了した(すなわち、分析物含有溶液が膜に適用された時点からインジケータが観察された時点まで)。双方向手順では、感知工程は、完了に約7分かかった。
【0183】
引張強度試験
【0184】
向上した吸い上げ特性に加えて、木材パルプ膜へのCNFの添加は、膜の引張強度を向上させた。これは、湿潤した膜が脱水ユニット(毛管脱水)から乾燥ユニットに移され、目に見える損傷(破壊または破砕)を全く伴わない場合に実証された。CNFを含まない膜では、膜を脱水ユニットから乾燥ユニットに移す際に、亀裂及び裂けが観察された。
【0185】
動的機械分析(DМA)は、引張強度試験のために乾燥膜に対して行われる。
【0186】
湿潤ミネラル保持アッシュテスト
【0187】
アッシュテスト及び原子吸光分光法を行って、膜の残留ミネラルを計算する。
【0188】
浸出試験もまた、湿潤条件におけるミネラルの損失を試験するために行われる。
【0189】
均等物
当業者は、本開示に対する様々な変更、修正、及び改良が当業者には容易に想起されることが理解されるべきである。そのような変更、修正、及び改良は、本開示の一部であることを意図しており、本発明の精神及び範囲内であることを意図している。したがって、前述の説明及び図面は、単なる例であり、本開示に記載される任意の発明は、以下の請求項によって詳細にさらに説明される。
【0190】
当業者は、本明細書に記載のアッセイまたは他のプロセスで得られた値に起因する偏差または誤差の典型的な基準を理解するであろう。本発明の背景を記載し、その実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で参照される刊行物、ウェブサイト及び他の参考資料は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】