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特表2024-531103電池パックのトップカバー用鋼板及びその製造方法
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  • 特表-電池パックのトップカバー用鋼板及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電池パックのトップカバー用鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20240822BHJP
   H01M 50/276 20210101ALI20240822BHJP
   H01M 50/282 20210101ALI20240822BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/276
H01M50/282
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506502
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2022055751
(87)【国際公開番号】W WO2023012537
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/057035
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンゼ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】マシャド・アモラン,ティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】クリム,タレク
(72)【発明者】
【氏名】ドダ,ロランス
(72)【発明者】
【氏名】ベソン,オレリー
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA37
5H040AS07
5H040AY04
5H040CC01
5H040LL04
5H040NN01
(57)【要約】
本発明は、金属コーティング鋼板を備える電池パックのトップカバーであって、前記金属コーティングが、亜鉛をベースとし、アルミニウム、マグネシウム及び不可避不純物を含む、電池パックのトップカバーを扱う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工された金属コーティングで被覆された鋼板を備える電池パックのトップカバーであって、前記金属コーティングが、亜鉛をベースとし、アルミニウム、マグネシウム及び不可避不純物を含む、電池パックのトップカバー。
【請求項2】
前記金属コーティングが、不動態化金属コーティングによって覆われ、不動態化要素の表面重量が、5~50mg/mである、請求項1に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項3】
前記金属コーティングが、1.5~10重量%のアルミニウム、1.5~10重量%のマグネシウムを含み、残部が亜鉛及び不可避不純物である、請求項1及び2に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項4】
前記電池パックの内側で10~40μmの金属コーティングの厚さを有する、請求項1又は2に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項5】
両側で合計50~450g/mの金属コーティングの重量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のトップカバーを備える、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車産業における電池のハウジング要素を扱う。より具体的には、本発明は、良好な耐火性を有する電気又はハイブリッド車両の電池パックのトップカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気車両又はハイブリッド車両は、少なくとも1つの重くてかさばる電池パックを埋め込まなければならない。この電池パックは、複数の電池モジュールで作製され、それぞれが電池セルを含有している。前記電池パックは、組み立て中であろうと車両のさらなる寿命中であろうと、事故、火災又はいかなる高温への曝露の場合にも発生し得る熱負荷から非常に良好に保護されなければならない。
【0003】
現在の傾向は、より大きなモジュールを有し、中間の封じ込めをモジュールに残しながら、すべての電池セルを電池パックハウジングに貯蔵することでさえある。電池パックの内部アーキテクチャは、モジュールにグループ化されたセルで構成され得るか、又は電池セルを直接含み、蓋によって閉鎖された容器で作製され得る。電池パックの内部アーキテクチャがどのようなものであっても、その上面は、アッパーカバーによって閉鎖されている。
【0004】
図1に示すように、電池パックは、下から上に向かって、
・シールド要素1と、
・電池セル及び補強部品、任意選択的に電池モジュールを含む電池パックの内部アーキテクチャ2と、
・トップカバーとも呼ばれるアッパーカバー3と、を備える。
【0005】
トップカバーは、電池パックの他の部品と一緒に接着結合及び/又はねじ止めされてもよい。それはまた、溶接などの任意の組み立て方法によって内部アーキテクチャに接続されてもよい。
【0006】
トップカバーは、例えば6000シリーズアルミニウム合金から、場合によっては特定のAL 6016合金からのアルミニウムシートで作製することができる。
【0007】
電池に関連する火災危険は、電気車両又はハイブリッド車両における安全性に関する主要な側面である。特に、熱暴走は、1つの電池セルで開始されると、隣接するセルも熱暴走するのに十分な熱を生じる。これは、各電池セルが加熱され、破損し、爆発し、その内容物を放出する場合があるので、繰り返し発火する火災を生じる。電池内部の化学物質が発熱し、これにより、セル、モジュール又は電池パック全体のエンクロージャであるかにかかわらず、あらゆるエンクロージャのさらなる劣化を引き起こす。可燃性電解質は、空気中の酸素に曝露されると発火するか、又は爆発さえする可能性がある。
【0008】
電池セルと車室との最初の分離である電池パックのトップカバーは、電池パックの耐火性にとって非常に重要である。トップカバーは、高温においても、電池パックと車室との安全な分離を確保しなければならない。トップカバーはまた、高温にさらされたときにガスをほとんど又は全く放出してはならない。特に、CO2又は他の蒸気燃焼生成物のようなガスは、パック内部に放出されて火によって加熱されると、電池パック内部の圧力を著しく上昇させる場合がある。これは、パックの開放、ハウジングを通じた亀裂及び爆発を引き起こす場合がある。
【0009】
米国特許出願公開第2019131602号は、トップカバーを有する電池パック用のハウジングを開示している。このカバープレートは、少なくとも金属部分とプラスチック部分とを含むサンドイッチとして構成され、金属部分は、鋼及びアルミニウムの少なくとも一方から製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/131602号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、爆発のリスクを含む火災曝露に対する顕著な耐性を有するトップカバーを提供することである。
【0012】
この目的は、請求項1に記載のトップカバーを提供することによって達成される。トップカバーはまた、請求項2~5の特徴のいずれか又はすべてを含むことができる。本発明の別の目的は、本発明によるトップカバーを含む電池パックである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0014】
本発明を説明するために、特に以下の図を参照して、非限定的な例の様々な実施形態及び試行を説明する:
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電気電池車両における電池パック及びそのトップカバーを示す図である。
図2】1300℃の温度で130秒間の火炎曝露後の本発明によるトップカバーを示す図である。
図3】1000℃で130秒間の火災曝露後の本発明によらないトップカバーを示す図である。
図4】1000℃の温度で130秒間の火炎曝露後の本発明によるトップカバーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、金属コーティングで被覆された鋼板を備える電池パック用のトップカバーであって、前記金属コーティングが、亜鉛をベースとし、アルミニウム、マグネシウム及び不可避不純物を含む、電池パック用のトップカバーに関する。
【0017】
この目的のために、本発明のフレームには任意の鋼を使用することができる。好ましくは、良好な成形性を有する鋼がよく適している。例えば、トップカバーは、以下の、C≦0.01%;Si≦0.3%;Mn≦1.0%;P≦0.1%;S≦0.025;Al≧0.01%;Ti≦0.12%;Nb≦0.08%;Cu≦0.2%の重量組成を有するIF鋼などの深絞り用の軟鋼で作製することができる。
【0018】
例えば、トップカバーは、以下の、C≦0.1%;Si≦0.5%;Mn≦1.4%;P≦0.04%;S≦0.025%;Al≧0.01%;Ti≦0.15%;Nb≦0.09%;Cu≦0.2%の重量組成を有する高強度低合金(HSLA)鋼で作製することができる。
【0019】
鋼板は、鋼スラブの熱間圧延、及び例えば0.6~1.0mmとすることができる所望の厚さに応じて、その後の得られた鋼コイルの冷間圧延によって得ることができる。
【0020】
次いで、鋼板は、任意の被覆工程によって金属コーティングで被覆される。例えば、鋼板は、亜鉛をベースとし、アルミニウム、マグネシウム及び不可避不純物を含む溶融浴中で溶融めっきされる。
【0021】
次いで、鋼板をブランクに切断することができる。それをスタンピングによって成形して、トップカバーの特定の形状を形成することができる。
【0022】
本発明で使用される金属コーティングは、アルミニウムをベースとし、任意選択的にケイ素及び製作工程から生じる不可避不純物を含む。
【0023】
そのようなコーティングは防火性であり、火炎温度にさらされたときにいかなるガスも放出しない。火災又は高温の場合、それは電池パック内部の圧力を増加させない。
【0024】
好ましい実施形態では、金属コーティングは、1.5~10重量%のアルミニウム、1.5~10重量%のマグネシウムを含み、残りは亜鉛及び不可避不純物である。そのような金属コーティングは、良好な耐食性を提供する。
【0025】
例えば、金属コーティングは、以下の重量組成:3.7%のアルミニウム及び3%のマグネシウムを有するZagnelis(登録商標)Protectであり、残部はアルミニウムである。
【0026】
金属コーティング重量は、両側で合計50~450g/m以下であり得る。例えば、金属コーティング重量は、120、310又は430g/mとすることができる。.
【0027】
例えば、電池パックの内側の金属コーティング厚さは、10~40μmである。
【0028】
好ましい実施形態では、金属コーティングの表面は、不動態化コーティングで覆われている。
【0029】
不動態化コーティングは、ロールコートによる溶融浸漬被覆工程の後にオンラインで塗布することができる。また、浸漬によって鋼部品に塗布することもできる。両方の用途のために、特定の金属不動態化要素を含有する水溶液が、湿潤フィルムの形態で表面上に堆積される。乾燥後、不動態化コーティングは、表面上に化成層を作り出し、腐食保護を強化する。
【0030】
例えば、不動態化コーティングは、クロムを含有し、クロムの表面重量は、15~45mg/mである。又は、ジルコニウムを同じ量で含有することができる。
【0031】
次いで、鋼板をブランクに切断することができる。ブランクは、トップカバーの特定の形状へのプレス加工によって形成することができる。この特定の形状は、設計関連である。トップカバーは、大きな水平部分であり、振動を受ける場合がある。これらの振動及びその後の騒音を低減するために、スティフナは一般に、スタンピング作業中にトップカバーに打ち抜かれる。最後に、トップカバーは、任意の取り外し可能又は取り外し不可能な手段、例えばねじ止め、溶接又は接着によってパックに取り付けられる。
【実施例
【0032】
トップカバーの耐火性を決定するために、いくつかの試験を実行した。すべての試験を同じ試験装置で実行した。
【0033】
試験装置は、規格ISO2685:1998に記載されている試験装置から適合させた。以下の両方の適合を行った:最初に、10mm厚のケイ酸カルシウムプレートによって試験装置の構造から試料を熱的に隔離した。第2に、火炎を発生させるガスバーナは、火炎に曝露される試料面上の目標温度を達成するように較正されている。
【0034】
すべての試験について、試料は、150×150mmの同じ寸法を有する。各試料は、火炎に当たるようにガスバーナの前に配置される。試料とバーナとの間のプレートは、90×90mmの寸法を有する開口面積を有する。
【0035】
3つの材料を試験した:
-材料1は、0.7mm厚の鋼板である。それは、Zagnelis(登録商標)Protectで被覆されている。この溶融めっきコーティングは、3.7重量%のアルミニウム及び3重量%のマグネシウムを含有し、残部はアルミニウムである。コーティング重量は、310g/mである。溶融めっきコーティング後、表面は、クロム(III)イオンを含有する供給業者HENKELからのBonderite(登録商標)MPA6010のロールコート塗布によって不動態化されている。次いで、熱風を吹き付けて乾燥させた。乾燥した表面上のクロムの表面重量は、25~35mg/mである。
【0036】
-材料2は、6016シリーズの1.0mm厚のアルミニウムシートである。
【0037】
-材料3は、エポキシ系eコートで被覆された0.8mm亜鉛めっき鋼板である。溶融めっきコーティングは、最大0.2重量のアルミニウムを含有し、残部は亜鉛である。金属コーティング重量は、140g/mである。リン酸塩処理工程の後、試料をeコーティング浴に浸漬した。試験したeコートは、供給業者PPGからのPowercron(登録商標)6200 HEである。焼き付け後の塗料の乾燥厚さは、各面において25μmである。
【0038】
-材料4は、材料1と同じ金属コーティング及び不動態化を有する0.8mm厚の鋼板である
【0039】
以下では、試料1は、材料1で作製され、試料2は、材料2で作製され、試料3は、材料3で作製され、試料4は、材料4で作製される。
【0040】
火災曝露の2つのシナリオを試験した。シナリオAでは、火炎温度は、1300℃であり、曝露時間は、130秒である。あまり深刻ではないシナリオBでは、火炎温度は、1000℃であり、曝露時間は、最初に20秒であり、その後60秒の消炎時間が続き、最終曝露時間は、10秒である。
【0041】
試験の分析にはいくつかの基準が考慮される。シートの完全性、つまり火炎がシートを貫通したかどうか、試験終了時の火炎に曝露されていない面(裏面)の温度、及び試験後のコーティング中の気泡の存在。気泡の存在は、ガスの放出を示す。
【0042】
表1-火炎曝露のシナリオ
【0043】
【表1】
【0044】
表2-シナリオA:1300℃で130秒
【0045】
【表2】
【0046】
1300℃で130秒の曝露後、鋼で作製された試料1の裏面は、700℃未満の温度のままであり、いかなる溶融の兆候も示さない。反対に、火炎は、より厚いアルミニウムで作製された貫通材料2を有する。
【0047】
さらに、試料1は、図2に見られるようにいかなる気泡も示さない。そのコーティングは、ガスを放出しなかった。
【0048】
表3-シナリオB:1000℃で130秒
【0049】
【表3】
【0050】
1000℃で130秒の曝露後、試料3の裏面は、図3に見られるように気泡を明確に示している。これらの開放気泡は、ガスの形態の塗料の燃焼生成物を放出した。
【0051】
試料4は、図4に見られるようにいかなる気泡も示さない。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工された金属コーティングで被覆された鋼板を備える電池パックのトップカバーであって、前記金属コーティングが、亜鉛をベースとし、アルミニウム、マグネシウム及び不可避不純物を含む、電池パックのトップカバー。
【請求項2】
前記金属コーティングが、不動態化金属コーティングによって覆われ、不動態化元素の表面重量が、5~50mg/mである、請求項1に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項3】
前記金属コーティングが、1.5~10重量%のアルミニウム、1.5~10重量%のマグネシウムを含み、残部が亜鉛及び不可避不純物である、請求項に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項4】
前記金属コーティングが、1.5~10重量%のアルミニウム、1.5~10重量%のマグネシウムを含み、残部が亜鉛及び不可避不純物である、請求項2に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項5】
前記電池パックの内側で10~40μmの金属コーティングの厚さを有する、請求項に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項6】
前記電池パックの内側で10~40μmの金属コーティングの厚さを有する、請求項2に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項7】
両側で合計50~450g/mの金属コーティングの重量を有する、請求項に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項8】
両側で合計50~450g/m の金属コーティングの重量を有する、請求項2に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項9】
両側で合計50~450g/m の金属コーティングの重量を有する、請求項3に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項10】
両側で合計50~450g/m の金属コーティングの重量を有する、請求項4に記載の電池パックのトップカバー。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のトップカバーを備える、電池パック。
【国際調査報告】