(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】高温での廃棄物の熱変換から得られた合成ガスの変換によって、CO2排出のないバイオエタノールを生成するためのプロセス及び装置。
(51)【国際特許分類】
C12P 7/06 20060101AFI20240822BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20240822BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20240822BHJP
B09B 101/85 20220101ALN20240822BHJP
B09B 101/75 20220101ALN20240822BHJP
【FI】
C12P7/06
C10B53/00 A
B09B3/40 ZAB
B09B101:85
B09B101:75
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506514
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 IB2022057126
(87)【国際公開番号】W WO2023012644
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021000020819
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522055555
【氏名又は名称】ネクストケム テック エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォルジエロ,ピエロベルト
(72)【発明者】
【氏名】イカニエッロ,ガエターノ
(72)【発明者】
【氏名】リスポリ,ジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】サッラディーニ,アンナリタ
(72)【発明者】
【氏名】ボルゴーニャ,アレッシア
【テーマコード(参考)】
4B064
4D004
4H012
【Fターム(参考)】
4B064AC03
4B064CD01
4B064DA16
4D004AA07
4D004AA12
4D004AA46
4D004BA03
4D004CA27
4D004CB31
4D004DA03
4D004DA06
4H012HA00
(57)【要約】
本発明は、都市固形廃棄物(MSW)、廃棄物由来燃料(RFD)などの農業廃棄物若しくはその派生物、又はさらにはリサイクル不可能なプラスチック廃棄物などの産業廃棄物、又はそれらの組み合わせからなる供給原料の高温での熱変換によって生成され、H
2/CO比をバランスするように電気分解によって余分な水素が添加され、したがって発酵ステップにおける有機成分の変換を最大化して、大気中へのCO
2の排出を防止する、合成ガスの嫌気発酵によってCO
2排出のないバイオエタノールを生成するためのプロセス及び装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ガスの嫌気発酵によってエタノールを生成するプロセスであって、
・ 前記合成ガスは、都市固形廃棄物(MSW)、農業廃棄物又はこれらの派生物、例えば廃棄物由来燃料(RDF)、又はさらには産業廃棄物、例えばリサイクル不可能なプラスチック廃棄物又はこれらの組み合わせを含む供給原料の1000°Cを超える高温での熱変換によって生成され、
・ H
2/CO比が体積で少なくとも2,0÷2,2に等しい値にバランスするように電気分解によって生成された前記合成ガスにさらに水素が添加され、したがって、CO
2の大気中への排出を回避するように発酵ステップにおける有機成分の変換が最大化され、
ここで、
前記プロセスは、以下のステップ:
・ 未加工合成ガスの生成による廃棄物の高温変換(100);
・ 電気分解によるH
2及びO
2の生成(102);
・ 2つの圧力レベルで作用する精製ユニットによる未加工合成ガスの精製(101)であって、微粒子、金属、塩化物、アンモニア、COS、及びH
2Sの除去を目的とする、未加工合成ガスの精製(101);
・ 発酵反応に必要な最適なH
2/CO比を達成するための電気分解によって生成された水素の全部又は一部の添加後の、未加工バイオエタノールを生成するための前記精製された合成ガスの発酵(103);
・ 前記発酵から出てくるパージガス中に存在する残留二酸化炭素のメタンへの部分的又は全体的な変換(105);
・ 未変換二酸化炭素によって生成されたメタンの分離(106)、並びに回収されたメタンの全部又は一部及び分離されたCO
2の全部の熱変換ステップ(100)へのリサイクル、を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
無水エタノールの流れ並びにアルコール及び他の有機生成物を含有する水性流が出る、発酵によって生成された前記未加工エタノールを精製するステップ(104)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
回収された水を電気分解ユニットにリサイクルするために、前記未加工エタノール精製ステップで得られた水を精製するステップ(107)をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
未加工合成ガスを生成するための前記高温廃棄物変換ステップ(100)が、その少なくとも2つのトレイン、好ましくは3つの変換トレインを提供する複数の変換器からなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
生成された前記合成ガスを精製するステップ(101)が、前記プラントの容量に応じて複数のトレインからなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
水の電気分解ステップにおいて、前記プラントの容量に応じていくつかのセルが使用されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記電気分解ステップ(102)で生成された水素が前記発酵ステップの上流で部分的に添加され、したがって前記H
2/CO比を2.0~2.2体積%の値にシフトさせ、残りの部分が前記発酵ステップの下流で添加され、それにより、メタン化反応(105)の発生を可能にし、したがって前記発酵及びメタン化ステップの体積及び動作条件に関してプロセスが最適化されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記電気分解ステップ(102)で生成された水素が前記発酵ステップの上流で完全に添加され、したがって前記H
2/CO比を5~5.2体積%の値にシフトさせ、CO及びCO
2のバイオエタノールへの変換プロセスを最大化することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
電気分解によって生成された酸素が、廃棄物を合成ガスに変換するための前記変換ステップにおいて燃焼剤として使用されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記発酵ステップ(103)が、前記プラントの容量に応じて、液体栄養培地中に分散された細菌培養物を含有する1つ又は複数のバイオリアクタ内で行われることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
メタン化(105)中に生成されて前記分離ステップ(106)から出るメタン流の量が、前記供給原料の変換温度を制御するために、前記熱廃棄物変換ステップ(100)にリサイクルされることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記発酵ステップ(103)から出る過剰な細菌並びに前記水精製ユニット(107)から出るブタンジオール、酢酸エチル、及び高級アルコールからなる副生成物が、生成される前記合成ガスの組成に関して廃棄物の変換を制御するために、前記変換器に送られることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記分離プロセス(106)から出るCO
2が、廃棄物供給システムを不活性化し、したがって任意の合成ガス損失及び任意の空気侵入を防止し、変換収率の均等化を可能にするために、個別に、又は不活性物質からなり同じ分離ステップ(106)の副生成物を形成する他の流れと混合して使用されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
合成ガスの嫌気発酵によってエタノールを生成するための装置であって、都市固形廃棄物(MSW)、農業廃棄物若しくはその派生物、例えば廃棄物由来燃料(RFD)又はさらには産業廃棄物、例えばリサイクル不可能なプラスチック廃棄物の熱変換によって生成された合成ガスの前記エタノールへの変換を含み、前記プロセスは、H
2/CO比をバランスするために前記合成ガスに添加されるさらなる水素の生成のために電気分解を使用するので、大気へのCO
2排出を伴わず、したがって発酵ステップにおける有機成分の変換を最大化することを特徴とし、
ここで、
前記装置は、以下のステップ:
・複数の変換リアクタからなる未加工合成ガスの生成を伴う少なくとも1つの熱高温廃棄物変換ユニット(100);
・複数の電気分解セルからなる電気分解によってH
2及びO
2を生成するための少なくとも1つのユニット(102);
・二段圧力、低圧及び高圧で作用する複数の精製トレイン(101)からなる少なくとも1つの未加工合成ガス精製ユニットであって、前記精製トレイン(101)の目的は、微粒子、金属、塩化物、アンモニア、COS、及びH
2Sを除去することである、少なくとも1つの未加工合成ガス精製ユニット;
・発酵反応に必要な最適なH
2/CO比を達成するために電気分解によって生成された水素の全部又は一部を添加したときに未加工バイオエタノールを生成するための、複数のバイオリアクタからなる精製合成ガスの発酵のための少なくとも1つのユニット(103);
・前記発酵からのパージガス中に存在する残留二酸化炭素のメタンへの部分的又は全体的な変換のための少なくとも1つのユニット(105);
・生成されたメタンを未変換二酸化炭素から分離するための少なくとも1つの分離ユニット(106)と、両方の流れを前記変換器にリサイクルするためのライン;
・前記分離ステップから出るメタンの全部又は一部を前記熱変換ステップにおける温度制御ベクトルとしてリサイクルするための、前記分離ステップ(106)から出て前記熱変換ステップ(100)に送られる少なくとも1つのリサイクルライン;
・前記分離ステップで回収された前記CO
2の全部を前記熱変換ステップにおける不活性化剤としてリサイクルするための、前記分離ステップ(106)から出て前記熱変換ステップ(100)に送られる少なくとも1つのリサイクルライン、を含む、装置。
【請求項15】
無水エタノールの流れ並びにアルコール及び他の有機生成物を含有する水性流が出る、発酵によって生成された前記未加工エタノールを精製するための少なくとも1つの精製ユニット(104)をさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記回収された水を前記電気分解ユニットにリサイクルするために、前記未加工エタノール精製ステップで生成された水性流のための少なくとも1つの水精製ユニット(107)をさらに備えることを特徴とする、請求項14及び15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RDF(廃棄物由来燃料)、MSW(都市固形廃棄物)及びプラスチック残渣などの同様の材料を、温室効果ガスの排出がないという点で環境適合性を保証することによってより高い付加価値を有する製品に変換するのに適したプロセス及び装置の分野に関し、具体的には、高温での廃棄物の熱変換(thermal conversion)から得られた合成ガス(synthesis gas)を変換することによってCO2排出のないバイオエタノールを生成するためのプロセス及び装置からなる。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化は、天然ガス又は他の炭化水素の使用に代わるものを探すことによって、2050年までに欧州において温室効果ガス(GHG)の排出を削減するための戦略を実行することを欧州連合に強いている。
【0003】
都市廃棄物、農業廃棄物及び産業廃棄物を焼却によって処分する従来の方法もまた、温室効果ガス排出、主にCO2、CH4及び窒素酸化物の主な発生源の1つである。対照的に、廃棄物は、CO、CO2及びH2の混合物である合成ガスに変換することによって、炭素及び水素の供給源として使用することができる。そのような変換のためのプロセスは当技術分野で公知である。
【0004】
例えば、特許文献1は、リアクタの垂直軸に沿って温度を制御する合成ガスへの廃棄物の変換のための純酸素の使用によるガス化プロセスを記載している。
【0005】
特許文献2には、合成ガスを生成するための高温での廃棄物変換プロセスと、それに続く合成ガスの精製及びメタノールを生成する目的のためのH2/CO比の調節が記載されている。
【0006】
引用された実施例の両方において、最終生成物に対して、供給原料のマトリックス中に過剰の炭素が存在し、これは主にCO2の形態でプロセスを残す。
【0007】
合成ガスの所望の生成物、特にエタノールへのさらなる変換は、異なる方法によって行うことができる。
【0008】
特許文献3は、合成ガスを嫌気性生物変換によって酸素化炭化水素生成物に変換するプロセスを記載しており;該炭化水素生成物は、特にエタノール、酢酸、n-プロパノール及びn-ブタノールである。
【0009】
特許文献4は、酸素化化合物の微生物生成を供給するために利用可能なガス流のCO/H2組成を改善するための異なる方法を記載している。
【0010】
最後に、特許文献5では、エタノールの生成はCOに富む合成ガスからの嫌気発酵によって得られるが、これは、利用可能なH2の量が増加するにつれてCO2の生成は減少又は回避され得るだけであるのに対して、炭素の一部がCO2として失われることを意味する。
【0011】
したがって、都市固形廃棄物(MSW)、農業廃棄物、又は廃棄物由来燃料(refused derived fuel、RDF)などのその派生物及びリサイクル不可能なプラスチック残渣などの産業廃棄物に含まれる炭素から、エタノールなどの化学物質又はバイオ燃料を生成するためのゼロ排出のプロセス及び装置が依然として必要とされている。
【0012】
廃棄物由来燃料(RDF)は、有機画分、金属、紙及びプラスチックの分離後に生成される燃料の一種である。
さらに、特にCO2排出に関して、ゼロ排出量を有するプロセス及び装置が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2018/066013号
【特許文献2】国際公開第2018/134853号
【特許文献3】米国特許第9518237号
【特許文献4】米国特許第2019/0078121号
【特許文献5】米国特許出願公開第2019/0323042号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、環境中の温室効果ガス排出をゼロに削減することを目的とした規制のガイドラインに適合し、都市廃棄物、並びにリサイクル不可能なプラスチックなどの他の産業廃棄物をバイオエタノールに変換するのに適したプロセス及び装置を提供することによって、従来技術の限界を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
提供される解決手段は、発酵ステップとメタン化ステップとの相乗効果のためにCO2排出が回避されるプロセス及び関連装置であり、このような供給原料のガス化はCO及びCO2のより大きな生成を伴うことが周知であることも考慮することにより、電気分解プロセスから余分な水素で富化された合成ガスを生成し、したがってエタノールを生成するための生物学的発酵プロセスを最大化する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のより良い理解は、非限定的な例として好ましい実施形態を示す以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって得られる。
【0017】
【
図2】発酵槽の上流及び下流に水素を導入し、未加工エタノールを精練し、回収水を精製するためのユニットを備えた本発明の好ましい実施形態のブロック図を示す。
【
図3】発酵槽の完全上流に水素を導入した本発明の代替実施形態のブロック図を示す。
【
図4】発酵槽の上流及び下流に水素を導入した好ましい実施形態の詳細図を示す。
【
図5】水素が発酵槽の上流にのみ導入される
図4に関する代替実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、1つ又は複数の種類の廃棄物で構成される供給原料の熱変換によって生成された合成ガスの発酵によって未加工バイオエタノールを生成するプロセスに関する。
【0019】
本発明は、前述のプロセスを実行するための装置をさらに説明する。
【0020】
記載されたプロセス及び装置は、例えばエタノールなどのバイオ燃料への廃棄物の変換を可能にし;該廃棄物は、都市固形廃棄物(MSW)、農業廃棄物若しくはその派生物、例えば廃棄物由来燃料(RFD)、又はさらには産業廃棄物、例えばリサイクル不可能なプラスチック廃棄物を含む。
【0021】
本発明の第1の特徴によれば、本プロセスは、電気分解によって生成される水素の利用可能性を利用して、ガス化廃棄物に含まれる炭素質元素のエタノールへの変換を可能にする。
【0022】
電気分解によって生成される水素の利用可能性は、発酵ステップ中に変換されなかった炭素質元素が、単にさらなる水素を添加することによってメタン化反応によってメタンに変換されるので、大気中へのCO2の排出を回避することをさらに可能にする。このようにして生成されたメタンは、廃棄物変換温度を制御するために、分配のために送られ得るか、又はガス化装置にリサイクルされ得る。
【0023】
開発されたプロセスは、処理されたか否かにかかわらず都市固形廃棄物の高温変換(High temperature conversion)によって、又は農業廃棄物又は産業廃棄物の熱変換によって生成された合成ガスが、約1に等しい体積によるH2/CO比を有するという考察に由来する。
【0024】
発酵によってエタノールを生成するのに必要な最適なH2/CO比は、体積で約2.0÷2.2であり、したがって、最適なものよりも低い比の値を有する合成ガスを生成する上記のような廃棄物の熱変換は、主に二酸化炭素の形態でプロセスから出てくる過剰な炭素質成分をもたらすことは明らかである。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、本プロセスは、合成ガスを生成することができる複数の高温廃棄物変換器と、水素及び酸素を生成するための複数の電気分解セルとを含むことが提供されている。
【0026】
変換器(converter)によって生成された合成ガスを電気分解によって生成された水素(H2)と統合することによって、エタノールを生成するために合成ガスのCO/CO2の形態の炭素質成分のほぼ全体を使用することが可能である。さらに、CO2変換を最大化し、したがって大気中への放出を回避するために、発酵槽の下流の流れに依然として存在する残留成分が、いわゆるメタン化反応によって合成メタンに変換されることが提供される。
CO2+4H2←→2H2O+CH4
【0027】
有利には、該メタンは、プロセスのより良好な制御のために廃棄物の高温変換に使用することができ、このプロセス外で使用するために電池制限で送ることができる。
【0028】
説明した実施形態のブロック図は、
図4及び
図5に見ることができる。しかしながら、本発明の基礎となる発明概念を変更することなく、本発明の代替の実施形態が可能である。
【0029】
むしろ、本明細書に記載の実施形態は、本発明の目的を当業者に完全に伝える完全かつ網羅的な開示を提供することを目的としている。
【0030】
したがって、本発明は、合成ガスの発酵ステップを通して廃棄物からエタノールを生成するための環境適合性プロセスに関し、該発酵は、水の電気分解によって得られた余分な水素を添加することによって最適化されるが、同じ電気分解の酸素は熱変換ステップ内の燃焼物として使用され、大気中へのCO2の排出を回避することを可能にする。
【0031】
好ましいが限定的ではない実施形態では、そのようなプロセスは、以下の主要ステップを含む:
・未加工合成ガス(raw syngas)の生成を伴う廃棄物の高温熱変換(100);
・電気分解(electrolysis)によるH2及びO2の生成(102);
・未加工合成ガスの精製(101);
・発酵反応に必要な最適なH2/CO比を達成するための電気分解によって生成された水素の全部又は一部の添加後の、未加工バイオエタノールを生成するための精製合成ガスの発酵(103);
・発酵からのパージガス中に存在する残留二酸化炭素のメタンへの部分的又は全体的な変換(105);
・生成されたメタンの未変換二酸化炭素からの分離(106)、並びに回収されたメタンの全部又は一部及び分離されたCO2の全部の高温熱変換ステップ(100)へのリサイクル;
・発酵によって生成された未加工バイオエタノールの精製(104);
該主要ステップはまた、以下のようないくつかのさらなる二次的ステップを含むことができる:
・未加工バイオエタノールの精製及び同じ水の電気分解ユニットへのリサイクルから得られた水の精製(107)。
【0032】
上述した二次的ステップは、ユーティリティ消費の観点からプロセスの最適化に貢献する。
【0033】
記載された好ましい実施形態では、廃棄物を合成ガスに高温変換するステップ(100)は、複数の変換トレイン又はリアクタを含む。より具体的には、供給原料を合成ガスに変換するために、少なくとも2つ、好ましくは3つの熱変換トレインを使用することが選択された。
【0034】
そのような解決手段は、メンテナンス期間を正確に管理して、使用の特定の継続性を保証することを可能にする。それによって、他の2つのトレインを維持するために1つのトレインが停止した場合でも、より大きな容量で動作することができ、したがって、熱変換の下流のステップのための最小限のターンダウン(75~80%)及び連続的でほぼ一定の動作を保証する。
【0035】
さらに、複数のトレインに対して熱変換を実行するための動作選択は、後続の精製ステップの前に各ガス化装置を出る合成ガスの様々な流れの組成を等しくすることを可能にする。これは、後続の精製ステップで処理するのに適した未加工合成ガスを得るために、各ガス化装置に供給される供給原料を調整する可能性を意味し、プラントの柔軟性を高める。
【0036】
例えば、8~10t/hの廃棄物の流量が選択された。これは合計24~30t/hの転換可能な廃棄物のために各個々の熱変換ラインに供給される。
【0037】
【0038】
各熱変換器には、電気分解プロセス(102)によって生成された純酸素がガス化剤として供給される。さらに、リアクタ内の温度プロファイルを制御する目的で、メタン化ステップ(105)及びその後の分離(106)からリサイクルされた天然ガス(CH4)の特定のアリコートの導入が提供される。
【0039】
CO2の流れはまた、有利には、廃棄物供給システムを不活性化するために使用することができ、したがって任意の合成ガス損失及び任意の空気侵入を防止することができる。記載された実施形態では、プロセスで発生する流れの中で利用可能である可能性が高い不活性化剤としてCO2を使用することが選択された。
【0040】
しかしながら、任意の合成ガス損失及び廃棄物供給システムへの任意の空気侵入を防止するという同じ目的に達するために、例えば窒素に富む流れなどのCO2に対する他の代替不活性ガスを使用することが可能である。
【0041】
その目的のために、特定量のCO2がメタン化ステップの下流に存在することを可能にするようにさらなる量の水素を添加し、それを生成されたメタンから分離し、それを不活性化剤として熱変換ステップ(100)に完全にリサイクルすることを選択した。
【0042】
これにより、CO2を完全に変換しないように発酵ステップ(103)及び後続のメタン化ステップ(105)を実行することによって、二酸化炭素の未変換量がプラント内で循環し続け、したがってすべてのプロセシングステップの最適化及び安定化が達成される。
【0043】
各変換トレインは、ほぼ大気圧(最大500mbarg)で動作し、1100~1200°Cの温度で合成ガスを分配する変換リアクタからなる。該合成ガスは、リアクタ内の高温で得られた合成ガスの組成を固定する蒸発クエンチによって90°Cに迅速に冷却され、ダイオキシン及びフランなどの汚染物質の形成に関与する付随的な反応を引き起こすことを回避する。
【0044】
本発明は、熱変換ユニット(100)の下流に、プラントの容量に応じた複数のユニットを含む二重圧力で作用する精製ステップ(101)を含み、その目的は、微粒子、金属、塩化物、アンモニア、COS及びH2Sを除去することである。
【0045】
クエンチの下流の低圧領域では、すべてのガス化装置を出る合成ガスは、最大で約100~500mbargの大気圧に近い圧力である。該合成ガスは、pH1~3で動作する酸洗浄カラムに送られる;これらの条件は、合成ガス流から任意の収集された粒子及び金属を除去することを可能にする。
【0046】
酸カラムの出口で3つの変換トレインから出てくる合成ガスは、一緒に収集され、共通のアルカリ洗浄カラムに送られ、それはpHを7より上に上昇させ、下流の機器の任意の腐食現象を減少させることによってそれを中和する。
【0047】
さらなる精製ステップは、湿式静電集塵器(WEP)によって実行され、その目的は、収集されたダストを除去することであり、合成ガス中のダスト及び微粒子をさらに低減する目的で、場合によってはその後にカラム内のサブクール水で洗浄する。
【0048】
低温洗浄セクションの出口において、ガス貯蔵タンクは、合成ガスの任意の流量及び圧力変動を取り扱うことを可能にする。本発明によれば、ガスメータにおける圧力は約40mbargに設定される。
【0049】
高圧精製セクションに入る前に、合成ガスは、専用の圧縮ユニットを介して最大12bargまで圧縮される。次いで、加圧された合成ガスは、残留ダスト、微粒子及び重金属を除去する目的で吸着床に送られる。
【0050】
この動作の後に、HClの除去を可能にする触媒/吸着剤床及びCOS及びHCNのH2S及びNH3へのそれぞれの変換を可能にする加水分解リアクタが続く。
【0051】
加水分解リアクタから出た合成ガスは、公知の技術に従ってHg除去床及びH2S除去システムに送られる。
【0052】
この意味で、H2Sの除去は、H2Sの元素状硫黄への変換を可能にして硫黄スラッジとして除去するシステムによって、又はアミン洗浄によって行うことができる。
【0053】
精製合成ガスの典型的な組成を表2に示す。
【0054】
精製された合成ガスは、エタノール発酵セクション(103)に供給することができる。
【0055】
表2に示すデータは、発酵ステップの最適比よりも低いH
2/CO比に関して既に述べたことを裏付けている。
【表2】
【0056】
本発明によれば、最適なH2/CO比を得るために必要なさらなる水素は、水素及び酸素の生成に適した、プラントの容量に応じて、いくつかのセルに基づく電気分解ステップ(102)によって供給される。
【0057】
本発明の好ましいが非限定的な実施形態では、電気分解によって生成された水素の一部は発酵ステップ(103)の上流で合成ガスに添加され、残りの部分は発酵ユニット(103)の下流で、メタン化ステップ(105)の前に添加され、関連する機器の体積及び動作条件に関して両方のステップを最適化することを目的とする。代替的な実施形態では、電気分解で生成された水素の流れは、発酵ステップ(103)の前に完全に添加され、CO及びCO2のエタノールへの変換の最大化を促進する。
【0058】
記載された解決手段の両方において、酸素は、廃棄物変換を実行するために変換トレインに送られる(100)。
【0059】
本発明によれば、CO及びCO2のエタノールへの変換は、発酵ステップ(103)で行われ、該変換は、液体栄養培地中に分散された細菌培養物を含有する1つ又は複数のバイオリアクタ内で行われる。
【0060】
既知のように、単一炭素原子(C1)からなり、したがって元素CO及びCO2の1つ又は複数を含む有機流は、H2と組み合わせて、低温30~40°C及び低圧3~5bargでエタノールに変換される。
【0061】
したがって、本発明によれば、電気分解から流入するH2を添加したCO、CO2を含む合成ガスは、液体栄養媒体の内部でバブリングされる。変換により、水相中の栄養培地中に分散したエタノールが形成され、未反応成分及び発酵中の生物学的変換プロセスによって生成されたCO2を含む残留ガス流が生成される。
【0062】
発酵ステップから出る流れ中のエタノール濃度は、3~6重量%の範囲に含まれ、したがって無水エタノールを得るために水相からエタノールを分離するための特定のステップが必要である。
【0063】
好ましい実施形態では、電気分解によって生成され、したがって2.0~2.2体積%のH2/CO比を有する水素の一部に加えて、合成ガスは、未加工エタノール及びパージガスに変換される。
【0064】
代替の実施形態では、合成ガスは、電気分解によって生成されたすべての水素に加えて、5~5.2体積%の間のH2/CO比を有し、したがってCO及びCO2をエタノールに変換する。この動作モードによれば、合成ガスに最初に含まれるCO2が発酵プロセス中に変換され、その結果、エタノールの収率が増加し、パージガス流が最小化される。
【0065】
発酵ステップによって生成されたパージガス(purge gas)は、ガス中に依然として存在するCO2をメタンに変換して環境への排出を防止するために、メタン化ステップ(105)でさらに処理される。
【0066】
記載された好ましい実施形態では、電気分解(102)によって生成された水素の残りの部分は、パージガス中に依然として存在するCO2の量のメタン化を実行するためにH2/C1を最適にするために、及び合成メタンを生成するために、発酵ステップ(103)の下流のパージガスの流れに添加される。電気分解によって生成された水素が発酵ステップの前に完全に添加され、したがって最少量のパージガスを生成する記載された代替実施形態では、発酵槽の出口でのパージガスの流出流中の残留H2の残量は、新鮮なH2をさらに添加することなく残留CO及びCO2のメタン化を実行するのに十分である。
【0067】
本発明によれば、ステップ105で生成されたメタンは、大気中へのCO2の排出を回避する目的で、ステップ106で未反応のCO2から分離される。
【0068】
前述のように、メタンの一部は、リアクタ内部の温度プロファイルを制御する目的で変換リアクタ(100)にリサイクルされ、残りの部分は他の用途に送られるか又は外部に販売される。
【0069】
CO2は、一部はメタン化ステップ(105)に、一部は熱変換ステップ(100)に、廃棄物供給システムの不活性化剤としてリサイクルされる。特に、電気分解(102)からの水素が発酵槽(103)の上流で完全に添加される記載の代替実施形態では、分離ステップ(106)で回収されるCO2の量は少なく、廃棄物供給システムを不活性化するのに十分ではない。
【0070】
したがって、記載された代替実施形態では、回収されたCO
2に加えて、既知のCO
2分離プロセスに由来する窒素に富む流れが使用され、これは
図5に示すように同じブロック106の副生成物に対応する。
【0071】
希釈エタノールを含有する発酵槽から出てくる液相は、生成物を回収するための発酵、精製ステップ(104)によって生成された未加工バイオエタノール(raw bioethanol)に送ることができる。一般に、このステップは、典型的には、発酵槽に再びリサイクルされる生体触媒の回収、及び一般にいくつかの蒸留カラムによって行われるエタノール回収及び精製ステップ、続いて残留水の要件を満たすためにモレキュラーシーブ濾過による脱水を含む。
【0072】
したがって、精製ユニット(104)から、無水エタノールの流れ、及び発酵プロセス中に副生成物として生成された微量のアルコールを含む水の流れが得られる。一般に、そのような副生成物は、ブタンジオール、酢酸エチル及び他の高級アルコール(superior alcohol)からなる。
【0073】
蒸留ステップ中に生成された水性流(aqueous stream)は、電気分解ステップ(102)で精製された水のリサイクルを可能にするように、廃水処理ステップ(107)に送られ得る。
【0074】
さらに、本発明によれば、ブタンジオール、酢酸エチル及び高級アルコールからなる副生成物、並びに発酵槽(103)に導入された過剰な細菌を含む流れは、有利には、熱変換ステップ(100)に送ることができる。それによって、有機成分を環境中に分散させず、生成された未加工合成ガスの組成に関して熱変換の制御にさらに寄与するという二重の利点が得られる。
【0075】
有利には、記載されたプロセスは、CO2を大気中に導入することなく、廃棄物、例えば、RDF、都市固形廃棄物、プラスチック残留物などからバイオエタノールを生成することを可能にする。実際に、発酵ステップと、それに続く、発酵中に生成されるパージガスのメタン化ステップとの相乗効果は、出口流中のCO2の量を減少させるか又は完全に分解することを可能にし、したがって大気中への導入を回避する。
【0076】
記載される実施形態において述べられたように、メタン化ステップは、CO2を完全には除去せず、しかしながらメタン化の下流で分離されるその特定量を保存し、したがって、大気中へのその導入を防止する。この回収されたCO2流は、有利には、廃棄物供給システムを不活性化するために使用され、したがって、リアクタの変換収率の低下及び発酵ステップにおけるその後の不均衡をもたらすであろう任意の合成ガス損失及び任意の空気侵入を防止する。
【国際調査報告】