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特表2024-531107流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイス
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240822BHJP
   B25B 11/00 20060101ALI20240822BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240822BHJP
   B65G 49/07 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
B25J15/06 D
B25B11/00 A
H01L21/68 C
B65G49/07 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506569
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 IN2022050685
(87)【国際公開番号】W WO2023012816
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202141035015
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520102462
【氏名又は名称】ダブリュシービー ロボティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WCB ROBOTICS INC.
【住所又は居所原語表記】1675 South State St. Suite B, Dover, County Kent, DE, USA
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アガワル ウジャワル
【テーマコード(参考)】
3C020
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C020VV05
3C707AS24
3C707FS04
3C707FT04
5F131CA31
5F131DB25
5F131DB27
5F131DB42
(57)【要約】
本発明は、流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイス(100)を開示及び説明する。デバイスは、吸引カップチャンバ(51)内部に設けられた1つ以上の通路(複数可)(12)を通る流体の再循環する流れに基づいている。デバイスは、任意選択で、流体の流れを迂回させるように構成された分流器(4)と、外周部(52)から流体(11)を吸引または引き込むように構成された、デバイス(100)の吸引カップと直接的にまたは間接的にのどちらかで取り付けられた吸引手段(5)とをさらに含む。該通路(12)によって、流体の一部はデバイスチャンバ内で再循環することが可能になるため、吸引を生じさせるために使用される流体に対する再循環効果が引き起こされ、これによりより低い音響ノイズ及びより高いエネルギー効率が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイス(100)であって、
外側シェル(2)を有する吸引カップと、
任意選択で、1つ以上の分流器(4)と、
1つ以上の吸引手段(5)と、
表面(1)への前記吸引カップデバイス(100)の接着を可能にする流体流れの作用によって吸引される、前記表面(1)に面する前記吸引カップの一方の側に形成されたチャンバ(51)であって、前記吸引カップの他方の側が前記デバイスの前記外側シェル(2)を形成する前記チャンバ(51)と
を備え、
-前記吸引カップの前記チャンバ(51)が、吸引流体の部分が前記チャンバ(51)内で再循環することを可能にする1つ以上の通路(12)を備え、したがって吸引を生じさせるために使用される流体に再循環効果を引き起こし、
-前記通路(12)が、前記通路(12)の流体入口として機能する前記吸引カップチャンバ(51)内部に1つ以上の分割点(6)と、前記通路(12)の流体出口として機能する前記吸引カップチャンバ(51)の外周部(52)にある1つ以上の合流点(8)とを備え、
-前記デバイス(100)の動作中、前記外周部(52)の端部からの主要な流体流れ(11)が前記吸引カップチャンバ(51)の内部に進入し、前記分割点(6)で、前記主要な流体流れ(11)が、
(i)前記1つ以上の通路(12)を通る前記吸引流体の部分を再循環させる二次流体流路(11B)と、
(ii)吐き出し口(23)を通して前記デバイスの外部に吸引流体の他の部分を流出させる一次流体流路(11A)とを形成する部分
に分かれる、
前記非接触式吸引カップデバイス(100)。
【請求項2】
前記チャンバ(51)内の再循環通路(12)の前記1つ以上の分割点(6)が、前記吸引手段(5)と前記合流点(8)の間の場所/及び位置に設けられる、請求項1に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項3】
前記吸引カップの前記1つ以上の通路(12)が、
-単一の通路、または
-カスケード式システム内の複数の通路、または
-複数の別々の管/ダクト
を備える、請求項1に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項4】
前記吸引カップの前記1つ以上の通路(12)が、前記外側シェル(2)と内側シェル(3)との間に形成された1つ以上の流路隙間を備え、前記シェル(2、3)が間に隙間を有して挟まれる、請求項3に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項5】
前記吸引カップの前記1つ以上のカスケード式通路(12)が、通路(12.1及び12.2)を備え、内側シェル(3)が第1の内側シェル部分(3.1)と、第2の内側シェル部分(3.2)とを備え、
-第1の通路(12.1)が、第1の内側シェル部分(3.1)と第2の内側シェル部分(3.2)との間に形成され、第1の分割点(6.1)に第1の流体再循環入口と、第1の合流点(8.1)に第1の流体出口とを備え、
-第2の通路(12.2)が、前記外側シェル(2)と前記第2の内側シェル部分(3.2)との間に形成され、第2の分割点(6.2)に第2の流体再循環入口と、第2の合流点(8.2)に第2の流体出口とを備える、
請求項3に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項6】
前記吸引カップの前記1つ以上の通路(12)が、再循環通路(12)を生成するために使用される別々の管/ダクト(22)を備える、請求項3に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項7】
前記デバイスが、前記吸引カップデバイスの入口に近い場所に吸引手段(5)からの排気を向け直す追加の排気ダクト(15)をさらに備え、前記吸引手段が、遠心式のブロワまたはインペラである、請求項1に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項8】
前記デバイスが、前記吸引カップの周辺部の周りに追加の可撓性スカート(16)を備え、前記スカート(16)が大きい障害物の周りで潰れ、前記吸引カップデバイスが、前記吸引カップと前記吸引された表面との間の隙間よりも大きい障害物を乗り越えることを可能にする、請求項1に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項9】
前記1つ以上の吸引手段(5)が、前記吸引カップとの接合時に、吸引を生じさせることができる1つ以上の装置を備え、前記デバイス(100)の前記外周部(52)から前記吸引カップのチャンバ(51)内に前記流体(11)を吸引または引き込むように構成され、
-前記分流器(4)が、前記チャンバ(51)内部に設けられ、前記外周部(52)の領域から開始して内側シェル(3)と分流器(4)との間の領域に、前記内側シェル(3)の下方を流れる前記流体(11)の流れを迂回するように構成される、
請求項1に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項10】
カップデバイス(100)を使用する非接触式吸引のための方法であって、
-吸引流体の部分がチャンバ(51)内で再循環することを可能にし、したがって吸引を生じさせるために使用される流体に再循環効果を引き起こす1つ以上の通路(12)を前記チャンバ(51)内に提供すること
を含み、
-前記カップデバイスと接合された1つ以上の吸引手段(5)が操作され、吸引を生じさせるように機能するとき、外周部(52)の端部からの主要な流体流れ(11)が、分流器(4)によって分割点(6)で迂回されて前記吸引カップチャンバ(51)の内部に進入し、主要な流体流れ(11)が、
(i)二次流体流路(11B)であって、流体の部分が分割点(6)にある入口を介して前記通路(12)内に進入し、そこを通って流れ、前記流体の部分が合流する合流点(8)にある出口を介して前記通路(12)から出て、流れ続ける前記主要な流体流れ(11)と混合され、したがって主要な吸引流体流れ(11)の部分が、前記1つ以上の通路(12)を通って再循環する、前記二次流体流路と、
(ii)吸引手段取り付け具(13)に設けられた吐き出し口(23)を通して前記カップデバイスの外部に吸引流体の他の部分を流出させる一次流体流路(11A)と
を形成する部分に分かれる、
前記方法。
【請求項11】
前記吸引カップデバイスの前記1つ以上の通路(12)が、
-単一の通路、または
-カスケード式システム内の複数の通路、または
-複数の別々の管/ダクト
を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記デバイスが最初に加速ゾーン(9)内の圧力を減少させ、次に最後に拡散ゾーン(10)内の圧力を増加させる、請求項1~9のいずれか1項に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項13】
前記流体(11)が、圧力及び吸引を生じさせることができる空気または液体またはスラリーまたはそれらの任意の混合物を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項14】
吸引カップの形状が、円形、楕円形、または多角形などから選択された形状である場合がある、請求項1~9のいずれか1項に記載の該非接触式吸引カップデバイス。
【請求項15】
前記1つ以上の吸引手段(5)が、ファン、噴流などから選択された、吸引を生じさせることができる装置であり、
(a)前記吸引手段(5)を前記吸引カップの吸引手段取り付け具(13)に取り付けることによる直接取り付け、
または
(b)間接取り付けであって、前記吸引手段(5)が吸引パイプまたは管状手段(14)内に設けられ、次にパイプまたは前記管状手段(14)の吸引端部を前記吸引手段取り付け具(13)と接合する、前記間接取り付け
のどちらかによって前記吸引カップと接合され、
前記吸引手段(5)が、前記デバイス(100)に対して任意の向きで配置できる、
請求項1~9のいずれか1項に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項16】
-前記再循環流体通路(12)が、内側シェル(3)に支持を提供する1つ以上のフィンのような構造(20)を再循環通路内に含み得、
-前記分流器(4)が、吸引手段取り付け具(13)または吸引カップデバイス(100)の前記外側シェル(2)に接続するために1つ以上の支持フィン(21)を含み得る、
請求項1~9のいずれか1項に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【請求項17】
前記1つ以上の再循環通路(12)が、再循環の流れに推進力を加えるためにファン及び/または噴流を具備し得、前記ファン/噴流が、外部ソースを使用するか、または再循環通路を環境に連結し、したがって再循環流路内でより低い圧力を使用して前記ファン/噴流を駆動する穴を備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の非接触式吸引カップデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年8月03日に出願されたインド特許出願第202141035015号の優先権及び利益を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、吸引カップデバイスに関する。特に、本発明は、流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイスに関する。より具体的には、本発明は、流体の流れの再循環によって、該デバイスがより高い効率を達成し、音響ノイズを低減し、より良好に機能することを可能にする、吸引表面と接触する必要がないエネルギー効率の良い吸引カップデバイスの設計及び構築を開示する。本発明の上記該吸引カップデバイスの応用例は、傾斜面、垂直面、または逆さまの面用のクライマーロボット、他の移動ロボット、または玩具の分野にあり、半導体産業及び他における様々な目的のために物体をピックアップするマニピュレータとして、及び吸引された表面と吸引カップとの間に物理的なシールなしに、ファンを使用して吸引を生じさせる必要がある他のデバイスにある。航空機プッシュバック式トラクタは、航空機を押しながら牽引力を強化するためにそのようなデバイスを必要とする場合がある。
【背景技術】
【0003】
流体をベースにした吸引技術は、様々な目的のために様々な場所で使用される。吸引の使用は当技術分野で既知であるが、既知の技術のデバイスはいくつかの不利な点も有し、エネルギー効率の良いデバイスを提供することができない。
【0004】
米国特許出願公開第20060144624 A1号(Clark,JR.et.al)は、ベンチュリ管のような形状の下側ボディを使用して、次に吸引を生じさせるデバイスの下で高速流を生じさせるウォールレーサー玩具の車両を開示する。しかしながら、この方法は、多くの場合非常に非効率な吸引を生じさせる。
【0005】
米国特許出願公開第20110192665 A1号は、加圧空気を使用する非接触式つり上げ移動デバイスを開示しており、デバイスは、ベルヌーイの原則に基づいて機能し、平らな面としての下面の大きな部分が使用され、この先行技術のデバイスも、エネルギー効率の良いデバイスを提供することができない。
【0006】
非接触式吸引カップの領域におけるすべての既知の技術及び/または上述の先行技術は、限られたエネルギー効率を有する。非接触式システムは堅牢であり、粗面だけではなく滑面でも移動し、より単純な運動力学を使用することができる(車のように駆動することができる)。しかしながら、これらのシステムには1つの否定的側面があり、これらのシステムは非常にエネルギー不足である。したがって、エネルギー効率の改善はつねに望ましい。システムがエネルギー効率の改善は必要としないが、堅牢性の改善を必要とする場合、堅牢性を改善し、エネルギー効率の良い改善を使用して同じエネルギー消費を維持するためには、吸引された表面からの吸引カップの間隙を増加させ得る。
【0007】
米国特許出願公開第10670046 B2号(本発明の出願人に付与)は、周辺近くの特定の乱流ゾーンを使用する高流量低圧吸引デバイスを開示する。デバイスの内部では、幾何学形状が流速のわずかな変化を保証し、したがって流量エネルギー損失を低減するのに対して、デバイスは乱流の概念を使用して、吸引デバイスに対して行われる構成の周辺での圧力低下を生じさせる。出願人の上記特許は効率的な吸引デバイスを提供するが、依然として、エネルギー損失を低減し、非常にエネルギー効率の良い改善された非接触式吸引デバイスを提供する必要性が存在する。また、先の発明は、どれほど大きく作ることができるのかに関して機械的限界を有していた。これは、以前の発明が非常に不安定であり、したがってこれを打ち消すための機械的剛性を必要としたためである。多くの吸引を伴う非常に大きい設計の場合、十分に堅い構造を提供することが非常に困難になる可能性がある。
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、他の利点を保ちながらエネルギー効率を改善することを意図して設計されたデバイスを提供及び開示する。本発明のエネルギー効率の良いデバイスは、先行技術のデバイスにおいて浮き彫りにされた上記の問題を回避し、解決策として、エネルギー効率の良い非接触式吸引デバイスを提供し、このデバイスは、アンダーボディ全体の非常に小さい部分である加速ゾーン内の平坦な下面のみを有する。アンダーボディの残り、特に拡散ゾーンは、平らな下面を有さず、したがって、吸引された表面と接合された下面はベンチュリダクトを形成しない。実際に、それはベンチュリダクトがどのように作用するのかと全く反対であり、空気を加速する代わりに減速する。
【0009】
さらに、既知の先行技術の中のいくつかの設計しか安定したシステム(取り出された物体と接触せずに採集計器として使用できる)ではないのに対し、本発明のデバイスは、エネルギー効率の良い吸引デバイスであるのと同時に安定したシステムとしても機能するように調整することができる。
【0010】
発明の目的
本発明の主な目的は、流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイスを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、非接触式吸引カップデバイス/システムの改善された設計及び構造、ならびにより高いエネルギー効率を有するそのための方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、登坂力、半導体産業、及び非接触式吸引をベースにした接着または採集に基づいた、または非接触式吸引をベースにした接着または採集に関与する他の適切な応用例の分野においてロボットで使用するために優れた信頼性を有する非接触式吸引デバイス/システムの設計を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、粗面テクスチャだけではなく滑面テクスチャでも機能できる堅牢な非接触式吸引デバイスを提供することである。
【発明の概要】
【0014】
したがって、一態様では、本発明は、流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイスを提供する。一実施形態では、本発明は、流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイス(100)を提供し、デバイスは、
-外側シェル(2)を有する吸引カップと、
-任意選択で、1つ以上の分流器(複数可)(4)と、
-1つ以上の吸引手段(5)と、
-表面(1)上への吸引カップデバイス(100)の接着を可能にする流体流れの作用によって吸引される、表面(1)に面する吸引カップの一方の側に形成されたチャンバ(51)であって、吸引カップの他方の側がデバイスの外側シェル(2)を形成するチャンバ(51)と
を含み、
-吸引カップのチャンバ(51)が、吸引流体の部分がチャンバ(51)内で再循環することを可能にし、したがって吸引を生じさせるために使用される流体に再循環効果を引き起こす1つ以上の通路(複数可)(12)を含み、
-通路(12)が、通路(12)の流体入口として機能する吸引カップチャンバ(51)内部に1つ以上の分割点(複数可)(6)と、通路(12)の流体出口として機能する吸引カップチャンバ(51)の外周部(52)にある1つ以上の合流点(複数可)(8)とを含み、
-デバイス(100)の動作中、外周部(52)の端部からの主要な流体流れ(11)が吸引カップチャンバ(51)の内部に進入し、該分割点(6)で、主要な流体流(11)が、
(i)該1つ以上の通路(複数可)(12)を通る吸引流体の該部分を再循環させる二次流体流路(11B)と、
(ii)吐き出し口(23)を通してデバイスの外部に吸引流体の他の部分を流出させる一次流体流路(11A)と
を形成する部分に分かれる。
【0015】
チャンバ(51)内の再循環通路(12)の該1つ以上の分割点(複数可)(6)が、吸引手段(5)と合流点(8)の間の場所(複数可)/及び位置(複数可)に設けられる上記の該非接触式吸引カップデバイス。
【0016】
吸引カップの該1つ以上の通路(複数可)(12)が、単一の通路、またはカスケード式システム内の複数の通路、または複数の別々の管/ダクトを含む、上記の該非接触式吸引カップデバイス。
【0017】
一実施形態では、本発明は、非接触式吸引カップデバイスを提供し、吸引カップの該1つ以上の通路(複数可)(12)は、外側シェル(2)と内側シェル(3)との間に形成された1つ以上の流路隙間(複数可)を含み、シェル(2、3)は間に隙間を有して挟まれる。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、非接触式吸引カップデバイスを提供し、吸引カップの該1つ以上の通路(複数可)(12)は、該再循環通路(12)を生成するために使用される別々の管/ダクト(22)を含む。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、吸引デバイスの入口に近い場所に吸引手段(5)からの排気を向け直す追加の特殊排出ダクト(15)を具備する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、その周辺部に追加の可撓性スカート(16)をさらに提供し、このスカートは、大きい障害物の周りで潰れ、したがって、吸引システムが、流れ再循環によって提供される利点を使用し続けながら、吸引カップと吸引された表面との間の隙間よりも大きい障害物を乗り越えることを可能にする。
【0021】
別の態様では、本発明は、カップデバイス(100)を使用する非接触式吸引のための方法を提供し、方法は、
-吸引流体の部分がチャンバ(51)内で再循環することを可能にし、したがって吸引を生じさせるために使用される流体に再循環効果を引き起こす1つ以上の通路(複数可)(12)をチャンバ(51)内に提供することを含み、
-吸引カップと接合された1つ以上の吸引手段(5)が操作され、吸引を生じさせるように機能するとき、外周部(52)の端部からの主要な流体流れ(11)が、分流器(4)によって分割点(6)で迂回されて吸引カップチャンバ(51)の内部に進入し、主要な流体流れ(11)が、
(i)二次流体流路(11B)であって、流体の部分が分割点(6)にある入口を介して通路(12)内に進入し、そこを通って流れ、該流体の部分が合流する合流点(8)にある出口を介して通路(12)から出て、流れ続ける主要な流体流れ(11)と混合され、したがって主要な吸引流体流れ(11)の部分は、該1つ以上の通路(複数可)(12)を通って再循環する、二次流体流路と、
(ii)吸入手段取り付け具(13)に設けられた吐き出し口(23)を通してデバイスの外部に吸引流体の他の部分を流出させる一次流体流路(11A)と
を形成する部分に分かれる。
【0022】
吸引カップの該1つ以上の通路(複数可)(12)が、単一の通路、またはカスケード式システム内の複数の通路、または複数の別々の管/ダクトを含む、上記の該方法。
【0023】
-該1つ以上の吸引手段(5)が、吸引カップとの接合時に、吸引を生じさせることができる1つ以上の装置を含み、デバイス(100)の外周部(52)から吸引カップのチャンバ(51)内に流体(11)を吸引または引き込むように構成され、
-該分流器(4)が、チャンバ(51)内部に設けられ、外周部(52)の領域から開始して内側シェル(3)と分流器(4)との間の領域に、内側シェル(3)の下方を流れる流体(11)の流れを迂回させる、
上記の該非接触式吸引カップデバイス、及びそのための方法。
【0024】
デバイスが最初に加速ゾーン(9)内の圧力を減少させ、次に最後に拡散ゾーン(10)内の圧力を増加させる、上記の該非接触式吸引カップデバイス、及びそのための方法。
【0025】
デバイスが、最初に加速ゾーン(9)内の圧力を減少させ、次に最後に拡散ゾーン(10)内の圧力を増加させるが、分流器の前に短いベンチュリゾーンを任意選択で追加し得る、上記の該非接触式吸引カップデバイス、及びそのための方法。
【0026】
前記流体(11)が、圧力及び吸引を生じさせることができる空気または液体またはスラリーまたはそれらの任意の混合物を含む、上記の該非接触式吸引カップデバイス、及びそのための方法。
【0027】
吸引カップの形状が、円形、楕円形、または多角形などから選択された形状である場合がある、上記の該非接触式吸引カップデバイス、及びそのための方法。
【0028】
該1つ以上の吸引手段(5)が、ファン(複数可)、噴流(複数可)などから選択された、吸引を生じさせることができる装置であり、
(a)吸引手段(5)を吸引カップの吸引手段取り付け具(13)に取り付けることによる直接取り付け、
または
(b)間接取り付けであって、吸引手段(5)が吸引パイプまたは管状手段(14)内に設けられ、次にパイプまたは管状手段(14)の吸引端部を吸引手段取り付け具(13)と接合する、間接取り付けのどちらかによって吸引カップと接合され、
吸引手段(5)が、デバイス(100)に対して任意の向きで配置できる、上記の該非接触式吸引カップデバイス、及びそのための方法。
【0029】
一実施形態では、ファン(複数可)または噴流(複数可)などの吸引手段(5)の軸(7)及びデバイス(100)の軸(7)は、同軸である。
【0030】
別の実施形態では、ファン(複数可)または噴流(複数可)などの吸引手段(5)の軸(7)及びデバイス(100)の軸(7)は、軸外である。
【0031】
-再循環流体通路(12)が、内側シェル(3)に支持を提供する1つ以上のフィンのような構造(20)を再循環通路内に含み得、
-分流器(4)が、吸引手段取り付け具(13)または吸引カップデバイス(100)の外側シェル(2)に接続するために1つ以上の支持フィン(複数可)(21)を含み得る、
上記の該非接触式吸引カップデバイス、及びそのための方法。
【0032】
該1つ以上の再循環通路(12)が、再循環の流れに推進力を加えるためにファン(複数可)及び/または噴流(複数可)を具備し得、ファン/噴流は、外部ソースを使用するか、または再循環通路を環境に連結し、したがって再循環流路内でより低い圧力を使用してファン/噴流を駆動する穴を含む、上記の該非接触式吸引カップデバイス、及びそのための方法。
【0033】
本発明の非接触式吸引デバイス/システム/装置は、優れた性能、より高いエネルギー効率、及びより低い音響ノイズを有し、気体(例えば、空気)、液体(例えば、水)、スラリー、またはそれらの任意の組み合わせを含むあらゆる流体と機能することができ、物体を吸引する、保持する、移動させる、及び持ち上げる、ならびに表面に接着するために使用することができ、デバイスは様々な粗度及び滑面テクスチャの状況で堅牢に機能する。
【0034】
以下の説明に記載され、図1~11に示され、添付の特許請求の範囲に請求される流れ再循環を備えた改善されたエネルギー効率の良い非接触式吸引カップデバイス(100/100a/100b/100c/100d/100e/100f)、及びそのための方法。
【0035】
本明細書に説明される図面は、本発明のさらなる理解を提供することを目的とし、本発明の一部であることが意図される。しかしながら、示される図面は、例示を表し、本発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】流れる矢印で表される流体の流れのパターンを有する簡略化された好ましい実施形態(実施形態-I)を表す非接触式吸引カップデバイス(100)の断面図を示す。
図2図1に示される本発明の好ましい実施形態Iの等角図を示す。
図3】より複雑な流れのパターンを有する代替の好ましい実施形態(実施形態-II)を表す非接触式吸引カップデバイス(100)の断面図を示す。
図4図3に示される本発明の代替の好ましい実施形態IIの等角図を示す。
図5図1図2に関して上述された吸引カップデバイス(100)の代替実施形態(実施形態-III)を表す吸引カップデバイス(100b)の異なる図(a~g)を示す。(a)は、吸引カップデバイス(100b)の部分背面図を示す。(b)は、吸引カップデバイス(100b)の側面図を示す。(c)は、吸引カップデバイス(100b)の上面図を示す。(d)は、平面A-Aに沿った図5(c)の断面図を示す。(e)は、平面B-Bにわたる断面図を示す。(f)は、図5(c)に示されるのと同じデバイスの吸引カップデバイス(100b)の隠れた端縁が示された別の上面図を示す。(g)は、吸引カップデバイス(100b)の等角図を示す。
図6】カスケード式再循環通路を有する本発明の吸引デバイス(100)の別の実施形態(実施形態-IV)であるデバイス(100c)を示す。(a)は側面図を示し、(b)は上面図を示し、(c)は図6(b)のA-Aに沿った断面図を示す。
図7】再循環通路(12)を形成するために使用される別々の管/ダクト(22)を有する本発明の吸引デバイス(100)の代替の実施形態(実施形態-V)であるデバイス(100d)を示す。
図8】吸引カップの入口に近い場所に流体を排出する追加の特殊排気ダクトを有する本発明の吸引デバイス(100)の代替の実施形態(実施形態-VI)であるデバイス(100e)を示す。
図9a】吸引カップがより大きな障害物を縮尺することを可能にする追加の可撓性スカート(16)を有する本発明の吸引デバイス(100)の代替の実施形態(実施形態-VII)であるデバイス(100f)を示す。
図9b図9aに示される本発明の好ましい実施形態VIIの等角図を示す。
図10】直径に沿ったスライス上の吸引カップ下の圧力分布を示す。
図11】分流器の前に短いベンチュリゾーンを有する吸引カップ下の圧力分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイスを開示及び説明する。本発明は、エネルギー効率が良い新規の改善された非接触式低圧吸引デバイスを開示する。1つ以上の通路(複数可)を介した流体の流れの再循環によって、該デバイスがより高い効率を達成し、音響ノイズを低減し、より良い性能を達成することが可能になる、吸引表面と接触する必要がない新規の改善されたエネルギー効率の良い吸引カップデバイスの設計及び構築が説明される。
【0038】
通常、非接触式吸引カップデバイスは、多くの場合、吸引デバイスの本体と吸引された表面との間に挟まれた、吸引デバイスの本体上を移動する流体を使用することに依存している。流体は、多くの場合、領域の狭窄によって、ベルヌーイの原則による減圧を引き起こすことによって加速される。大気圧と結合されたアンダーボディに対するこの低圧によって、吸引カップ上に吸引力が生じる。本発明は吸引力を生じさせるために同じ原理を使用するが、吸引カップデバイスの内部で流れの再循環を可能にする再循環通路(複数可)を設けることによる特殊な実装によって、効率はより高くなり、安定性は増し、音響性能は改善される。
【0039】
上述のように、デバイスは、吸引カップの片側(吸引される表面に面する内側)に形成されたチャンバの内部の吸引された流体の一部(part)/部分(portion)/ほんの一部(fraction)を再循環させる1つ以上の再循環通路(複数可)を使用する、吸引された流体の流れ再循環の新規の方法を使用する。再循環通路(複数可)は、吸引デバイスがより高い吸引を形成し、デバイスをエネルギー効率良くするために役立つ通路の基本原理及び目的を維持できる任意の形状で形成することができる。チャンバ内の通路(複数可)は単一通路である場合もあれば、任意選択でカスケード式システム内で複数の通路を有する場合もあれば、別々のダクト/管を使用する複数の別々の通路を有する場合もある。吸引カップのこの新規の(novel)及び/または新しい(new)構成はよりエネルギー効率が良い。
【0040】
一般的な実施形態では、本発明は、表面、すなわち吸引された表面(1)に対して使用できる流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイス(100)を提供する。表面(1)は、滑面もしくは粗面または質感のある表面または上述の表面の組み合わせの存在である場合があり、デバイスの吸引カップは、吸引流体の一部/ほんの一部がチャンバ内で再循環することを可能にし、したがって吸引を生じさせるために使用される流体に再循環効果を引き起こす1つ以上の通路(複数可)を含む。
【0041】
デバイスは基本的に吸引カップを含み、カップの一方の側は吸引カップチャンバを形成し、流体はカップの外周領域から流れ、流体の一部はチャンバ内の通路(複数可)を通って再循環し、流体の他の部分が再循環せずに流出し、外部に出る。吸引カップの他方の側は、(吸引手段が設けられる)デバイスの吸引カップの裏側表面を形成する。吸引カップの形状は、円形、楕円形、または多角形などのような任意の形状、より好ましくは円形である場合がある。一実施形態では、吸引カップは円形である。一実施形態では、吸引カップは楕円形である。一実施形態では、吸引カップは、矩形などの多角形である。
【0042】
一般的な実施形態は、軸に沿って断面を回転させることによって形成され、説明される。本発明の一般的な実施形態では、吸引カップは、吸引チャンバを含み、その中で流体通路(複数可)は、外側シェルと内側シェルとの間に作られる。チャンバの中心に、デバイスは任意選択で分流器を含み得る。デバイスは、吸引を生じさせる(つまり、吸引カップから低圧流体を引き出す)のに適し、吸引を生じさせる(つまり、吸引カップから低圧流体を引き出す)ことが可能な任意の吸引手段であってよい吸引手段をさらに含み得、吸引手段は、直接的にまたは間接的にのどちらかで吸引カップに取り付けられ得る/接合され得る。吸引手段はまた、別々のパイプ/管(可撓性であってよい)内部に配置し、次にカップチャンバ内部で吸引を生じさせることができるように、デバイスの他方の側に設けられた吐き出し口に取り付けることができる。別の実施形態では、吸引手段は、デバイスの軸と同軸に並んで配置される場合もあれば、デバイスの軸に対してある角度で、軸外に配置される場合もある1つ以上のファン及び/または噴流である場合がある。さらに、吸引手段は、遠心ブロワまたはインペラまたは同様である場合がある。再循環通路は入口と出口とを含み、(分岐点にある)入口は吸引手段または吐き出し口と合流点との間の流路内の吸引カップチャンバ内部のどこかに設けることができる。好ましい一実施形態(図1)では、分割点の通路入口は、最大の利点を提供するシステム流出物(吸引カップの排気)近くに配置される。
【0043】
一実施形態では、デバイスは、最初に(i)流体の減少領域、次に(ii)内側シェルと吸引された表面と分流器との間の流体の拡大領域を有する特殊流路(図1に示される矢印マーク)を使用する。再循環通路は大きい領域を作り、この結果、再循環通路は吸引カップ内部の圧力を上昇させ、これによって正圧勾配が生じる。吸引カップ下の結果として生じる圧力プロファイルは、図10及び図11に示される通りである。カップの外周部側から流れる主要な流体流路は、カップチャンバ内部で流れ、カップチャンバ内部の点で、主要な流体の流れは複数の流路(少なくとも2つ)に分かれ、少なくとも1つの流路(出口経路、つまり一次流路)はデバイスカップから出て、吸引手段によってデバイスから吸引される排気に従い、少なくとも1つの流路(再循環通路、つまり二次流路)はチャンバ内部に設けられた流路(複数可)に従う。一実施形態では、少なくとも1つの流路(再循環経路)は、カスケード式システムによるまたは別々の管/ダクトによるのどちらかの複数の流路を含む。吸引流体の結果は、一次流路と再循環流路との流体の合計であり、一次経路内の流体の流れは、吸引手段によってのみ作用される。エネルギー消費は、吸引圧力及び流体の容積流量に比例するので、吸引手段を通る流量の減少は、エネルギー消費を減少させるのに役立つ。したがって、再循環される流量が多いほど、吸引システムの効率は高くなる(効率は、所与の吸引カップの吸引/出力として定義される)。
【0044】
したがって、一態様では、本発明は、流体再循環用の1つ以上の通路(複数可)(12)を含む流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイスを提供する。吸引カップの上記の該1つ以上の通路(複数可)(12)は、単一の通路、またはカスケード式システム内の複数の通路、または複数の別々の管/ダクトを含み得る。上述のように、本発明は、デバイスのすべての基本原理を示し、説明する図1図2(実施形態-I)に示される流れ再循環システムを備えた非接触式吸引カップデバイス(100)を提供する。図1図2のデバイス(100)で提供されるのと同じ基本原理に従って、1つ以上の代替実施形態は、形状、サイズ、厚さ、外観の変動などの吸引カップの構造上の修正によって、及び通路の位置、サイズ、厚さ、数、したがって再循環流路及び支持のためのフィンの数など、カップチャンバ内部の流路の特徴を変えることによって作ることができる。デバイス(100)のすべてのそのような考えられる変形は、本発明の範囲のよって企図される。
【0045】
本願に提供される説明及び図では、すべて図1図2の一般的な基本デバイス実施形態(100)の中で始まり、企図されるいくつかの代替実施形態(100a、100b、100c、100d、100e、及び100f)が示されている。
【0046】
図1及び図2はともに、非接触式吸引カップデバイス(100)を示す。図1は、本発明の実施形態の1つの断面図を示し、断面図は、吸引された表面(1)と、外側シェル(2)と、内側シェル(3)と、分流器(4)と、吸引手段(5)とを備える、簡略化された好ましい実施形態を有する基本デバイス(100)を示しており、その設計構造及び機能原理は以下にさらに説明される。
【0047】
図1は、デバイス(100)の正面側である表面(1)に面する一方の側面と、吸引手段(5)が設けられるデバイス(100)の裏側を形成するカップの他方の側面とを有する吸引カップを有する吸引デバイスを示す。カップは外周部(52)を含み、外周部(52)を有するカップによって形成された内側の封入された領域/空洞は、吸引された表面(1)に面する吸引カップチャンバ(51)を形成する。
【0048】
吸引カップは、表面(1)に面する一方の側にある内側シェル(3)と、デバイス(100)の外側の他方の側の本体表面を形成する外側シェル(2)とを含む。吸引カップチャンバ(51)の内部に形成された形成通路(12)の間に隙間を有して、外側シェル(2)及び内側シェル(3)が挟まれ得る。図1は、単一の流体通路(12)を備えたデバイスを示しているが、(図5図8に示されるように)複数の通路を設けることもできる。
【0049】
デバイス(100)はさらに、チャンバ(51)内部の流体の流れを迂回させるように構成された1つ以上の分流器(4)と、デバイスの外周部(52)から吸引カップのチャンバ(51)内に流体を吸引または引き込むように構成され得る、ファン(複数可)/インペラ(複数可)/噴流(複数可)であってよい吸引手段(5)とを任意選択で含み、主要流体(11)は分割点(6)で部分に分かれるため、出口流路(11A)及び再循環流路(11B)が形成される。
【0050】
本発明において提供される再循環流体流路は新規であり、本発明のデバイスをより効率的にする。したがって、別の態様では、本発明は、図1を参照して上述された非接触式吸引カップデバイス(100)のための方法を提供し、方法は、デバイス(100)を含み、方法は、
-吸引流体の部分がチャンバ(51)内で再循環することを可能にし、したがって吸引を生じさせるために使用される流体に再循環効果を引き起こす1つ以上の通路(12)をチャンバ(51)内に提供することを含み、
-吸引カップと接合された1つ以上の吸引手段(5)が操作され、吸引を生じさせるように機能するとき、外周部(52)の端部からの主要な流体流れ(11)は、任意選択で分割点(6)で分流器(4)によって迂回されて吸引カップチャンバ(51)の内部に進入し、主要な流体流れ(11)が、吸引カップの他方の側に向かう方向にあり、吸引された流体の一部が吐き出し口(23)を介してデバイスの中から排出される一次流体流路(11A)と、1つ以上の通路(複数可)(12)を通る再循環流路である二次流体流路(11B)を形成する部分に分かれる。
【0051】
合流点(8)で出口から出る再循環された流体は、流れ続ける主要な流体流れ(11)の流れと混合されるため、主要な吸引流体流れ(11)の部分は該1つ以上の通路(12)を通って再循環し、吸引流体の他の部分は、吸引手段取り付け具(13)に設けられた吐き出し口(23)を通ってデバイスの外部に出る。
【0052】
本発明は、最初に流体の減少収流域、次に内側シェル(3)と吸引された表面(1)と分流器(4)の間の流体の拡大領域を有する特殊流路を使用する。流体の正味断面は、再循環流進入点、すなわち合流点(8)と、分割された再循環流れ、すなわち分割点(6)との間で増加する。しかしながら、特に流体を再循環するためにエネルギーが追加され得る状態では、これは必要な条件ではない。面積の正味増加は、圧力の正味上昇につながる。これによって、正圧圧力勾配は、再循環流体トンネルに存在し、したがって再循環流体を周囲に押す。これはまた、図10及び図11で確かめることができる。最終的な利点は、吸引を生じさせるために使用される流体が、再循環された体積と一時体積との和であり、一方、吸引手段(5)によって作用される流体は一次流体に過ぎないことである。効率的な吸引カップを考案するための最終的な目標は、ファン/吸引媒体全体での圧力及び体積流量を最小限に抑えながら、吸引力を最大化することである。
【0053】
また、再循環流れ入口、すなわち分割点(6)の位置及びアンダーボディプロファイルに対する一定の調整により、本発明は安定した吸引力を生じさせることができ、そのような調整から生じたデバイスは、図1及び本発明の範囲内で企図される。安定した吸引は、吸引力が吸引された表面と吸引カップとの間の所与の隙間で最大であることを意味する。隙間でのわずかな減少または隙間での増加は、ともに吸引の減少につながる。これは、単一のファンまたはソースから受動的な流体力学的効果のみを使用し、相当なエネルギー効率を維持しながら、超電導体のように反転した表面の上をホバリングできるいくつかを含むすべての種類のクライマーを設計するために使用できる。
【0054】
図2は、図1に示され、上述された吸引デバイス(100)の等角図を示す。図2に示されるように、流れ再循環を備えた非接触式吸引カップデバイス(100)は、外側シェル(2)と、内側シェル(3)と、流体の流れを迂回するように構成された分流器(4)とを含む。示されているデバイス(100)は、円形の外周部(52)を含む円形であるが、他の形状も可能であり、範囲内で企図される。
【0055】
図3及び図4は、代替の好ましい実施形態である、本発明の実施形態IIの非接触式吸引カップデバイス(100a)を示す。
【0056】
図3は、システムの厚さを最小限に抑えるのに役立つより複雑な流れパターンを有する、本発明のデバイス(100a)の概略断面図を示す。これはまた、通路(12)の形状の変化の1つの種類を明示する。図1に示される基本設計では、吸引カップはきわめて厚くかさばっており、再循環通路(12)の経路を変更することによって、図3に示されるようなより薄い吸引カップ設計に修正することができる。デバイス(100)と同様に、代替実施形態デバイス(100a)はまた、吸引カップと、外周部(52)と、その中に形成された、吸引される表面(1)に面するカップチャンバ(51)とを含む。
【0057】
図に示されるように、デバイス(100a)の中心軸に近い吸引カップは、図1のデバイス(100)と同様に厚いが、吸引カップの厚さは、外周部(52)に向かって徐々に減少している。さらに、図3は、加速ゾーン(9)及び拡散ゾーン(10)を示す。実施形態IIはまた、図3に示されていない吸引手段(5)を含むが、任意のタイプの吸引手段を使用することができる。さらに、図3に示されるように、再循環流路(2)への入口は、チャンバ(51)内の流路のはるかに早い点に配置される。還流経路の入口の位置を変更すると、効率、安定性、表面高さに対する感度などのようなシステムの多くの特性を変更することができる。
【0058】
このデバイス(100a)の流体(11)の基本原理、働きと動作、及び流路は、図1のデバイス(100)について上述されたのと同じである。再循環流れの概念の働きにおいて基本的であるのは、再循環流路への出口での圧力に比較して、再循環流路への入口でのより高い値に空気圧を増加させることである。しかしながら、これは、流れ圧力が、再循環通路の出口と入口との間で連続的に増加しなければならないことを意味しておらず、実際には、流れ圧力が最初に減少し、次により高い値に増加すると、より高い効率が達成される。図3の実施形態IIでは、ここで、最初に加速ゾーン(9)の圧力を低下させ、次に最終的に拡散ゾーン(10)の圧力を上昇させる。代わりに、流体面積が増減するが、正味の全体的な面積が増加するいくつかの領域があるシステムを作成し得、そのようなデバイスは、効率はより低いが機能し、本特許の範囲内に含まれる。
【0059】
図4は、図3に示され、上述された吸引デバイス(100a)の等角図を示す。図4では、流れ再循環を備えた吸引カップデバイス(100a)は、外側シェル(2)と、内側シェル(3)と、流体の流れを迂回するように構成された中空の分流器(4)とを含む。
【0060】
図5は、図1図2に関して上述した吸引カップデバイス(100)の代替実施形態である、代替再循環通路の形状を有する吸引カップデバイス(100b)の異なる図(a~g)を示す。
【0061】
図5(a)は、吸引カップデバイス(100b)の部分背面図を示し、図5(b)は、吸引カップデバイス(100b)の側面図を示し、図5(c)は、吸引カップデバイス(100b)の上面図を示す。図5(d)は、平面A-Aに沿った図5(c)の断面図を示し、図5(e)は、平面B-Bにわたる断面図を示す。図5(f)は、図5(c)に示されるのと同じデバイスの吸引カップデバイス(100b)の別の上面図を示すが、ここでは、吸引カップデバイス(100b)は、フィン(20)などの点線で示されるすべての隠れた特徴とともに示されている。これは、複数のフィン(20)が再循環通路(12)内部にどのように配置されるのかを明確に示している。図5(g)は、図5(a~b)及び図5(f)に示される吸引カップデバイス(100b)の等角図を示す。
【0062】
図5(d)では、吸引デバイス(100b)[同様に、図1のデバイス100及び図3のデバイス100a]は、外側シェル(2)、内側シェル(3)、任意選択で分流器(4)、吸引手段(5)を有する吸引カップと、表面(1)の上への吸引カップデバイス(100b)の接着を可能にする流体流れの作用によって吸引される、表面(1)(表面は図示せず)に面する吸引カップの一方の側に形成されたチャンバ(51)とを含み、吸引カップの他方の側は、デバイスの外側シェル(2)を形成する。吸引カップのチャンバ(51)は、吸引流体の部分が、吸引を生じさせるために使用される流体に再循環効果を引き起こす、チャンバ(51)内で再循環することを可能にする1つの通路(12)を含む[図では、1つの通路しか示されていないが、より多くの数の通路を作成することができ、これは本実施形態内で企図される]。
【0063】
図5(d)及び図5(f)に示されるように、吸引カップデバイス(100b)は、内側シェル(3)に支持を提供する再循環通路内でフィン状の構造(20)を含む/包含する再循環流体通路(12)を含む。いくつかの実施形態では、内側シェル(3)は吸引カップチャンバ(51)内部で単に中空に浮遊することはできないので、そのようなフィン状の構造(20)は、実際にはほぼつねに必要とされる。効率のために、これらのフィン(20)は翼状の形状で作ることができる。
【0064】
そのような図に示される他の特徴、図5(d)は、分流器(4)用の取り付け具を示す。これも中空に浮遊することはできないため、例示的な表現の図5(c-d-e)に具体的に示されるように、吸引手段取り付け具(13)または吸引カップデバイス(100b)の外側シェル(2)に接続するためには、フィン(21)などの支持体を必要とする。
【0065】
さらに、該吸引手段(5)は、吐き出し口(23)での吸引カップデバイスの本体との直接的な統合/取り付けによってか、または間接的に吸引手段取り付け具(13)との取り付け、またはより間接的には、吸引手段取り付け具(13)に取り付けられたパイプ(14)を介してまたはその中で、吸引を生じさせるのに適した及び/または吸引を生じさせることができる任意の場所でデバイスの他方の側(2)に配置することができる。間接的な配置では、吸引手段(5)は、可撓性パイプである場合がある吸引パイプ(14)を使用することによって、吸引カップデバイス吐き出し口(23)の本体から離れて配置され得、1つ以上の吸引手段(ファン/噴流)は、(14の)パイプライン内に配置され、パイプ(14)の一端は、デバイスの他の側の吐き出し口(23)で吸引手段取り付け具(13)に取り付けられる。これは、図1図7に示す変形を含むすべてのデバイス変形で実装され得る。
【0066】
さらに、1つ以上のファンまたは噴流またはそれらの組み合わせなどの吸引手段(5)は、図1に示されるようにデバイス(100)の中心軸線(7)に沿って同軸に取り付けることができるか、または軸外に取り付けられたファンなどの吸引手段(5)を特に示す図5(b)及び図5(d)に示されるように吸引カップデバイスの中心軸線(7)の軸外に取り付けることができ、図に示されるように、吸引カップデバイスは中心垂直軸(7)を含み、その中心垂直軸(7’)を含む吸引手段(5)は吐き出し口(23)に配置され、デバイス軸(7)及びファン/噴流軸(7’)はそれらの間に、デバイス(100b)に対する吸引手段(5)の軸外の配置を表す角度を形成する。したがって、吸引手段(5)の同軸配置と軸外配置の両方とも、(一実施形態において)図1に示される本発明の吸引デバイス(100)、及び図3図7に示されるその代替実施形態(デバイス100a、100b、100c、100d)で可能である。
【0067】
一実施形態では、設計の変形形態において、吸引デバイス(100)の別の実施形態であるデバイス(100c)を示す例示的な図6に示されるように一方が他方の中にある複数の再循環通路を有するカスケード式システムを用いることができる。図6(a)は側面図を示し、図6(b)は上面図を示し、図6(c)は図6(b)のA-A断面図を示す。図6(c)を参照すると、図6(c)は、複数の通路(12)を有するデバイスを示しており、吸引カップは、第1の通路(12.1)と、第2の通路(12.2)とを含む。内側シェル(3)は、第1の内側シェル部分(3.1)と、第2の内側シェル部分(3.2)とを含む。第1の通路(12.1)は、第1の内側シェル部分(3.1)と第2の内側シェル部分(3.2)との間に形成され、第1の分割点(6.1)に第1の流体再循環入口と、第1の合流点(8.1)に第1の流体出口とを含む。第2の通路(12.2)は、外側シェル(2)と第2の内側シェル部分(3.2)との間に形成され、第2の分割点(6.2)に第2の流体再循環入口と、第2の合流点(8.2)に第2の流体出口とを含む。
【0068】
カスケード式システムを有する流体通路(12)は、2つのタイプである場合がある。一方は、分割点(6.1)が分割点(6.2)の前に来て、合流点(8.2)が合流点(8.1)の前に来る場合である(吸引カップの中から出て吸引カップの 内部に入る流体流れ)。カスケード式システムの他方のタイプは、分割点(6.1)が分割点(6.2)の前に来て、合流点(8.1)が合流点(8.2)の前に来る(図面では図示せず)の場合である。
【0069】
図7は、再循環通路(12)を作成するために使用される別々の管/ダクト(22)を有する本発明の吸引デバイス(100)の代替の実施形態であるデバイス(100d)を示す。図7(a)は側面図を示し、図7(b)は背面図を示し、図7(c)は図7(b)のA-Aに沿った断面図を示し、図7(d)は断面を超える特徴が見える断面図を示し、これらの図はすべて、複数の別々の管/ダクト(22)の特徴が空間的に分散されていることを示し、各管/ダクト(22)は、流体の再循環のための入口及び出口を有する通路(12)を形成する。
【0070】
一実施形態では、設計の変形形態において、デバイスは、吸引デバイス(100)の別の実施形態であるデバイス(100e)を示す例示的な図8に示される吸引カップの入口に近い場所に流体を排出する追加の特殊排気ダクト(15)と用いることができる。図8は、吸引デバイス100eの断面図を示す。上述のように、吸引カップと接合した1つ以上の吸引手段(5)が操作され、吸引を生じさせるように機能するとき、外周部の端部からの(図1に示される)主要な流体流れ(11)は、吸引カップチャンバ内部に進入し、分割点(6)で、ダクト(15)を通される一次流体流路(11A)であって、吸引された流体の一部が吐き出し口(23)を介してデバイスから排出される一次流体流路(11A)と、1つ以上の通路(複数可)(12)を通る再循環流路である二次流体流路(11B)とに分かれる。合流点(8)で出口から出る再循環された流体は、流れ続ける主要な流体流れ(11)の流れと混合されるため、主要な吸引流体流れ(11)の部分は該1つ以上の通路(12)を通って再循環し、吸引流体の他の部分は、吐き出し口(23)を通ってデバイスの外部に出る。図8を参照すると、図8は、一次流路11A(図1に示される)がダクト(15)内部に形成されるデバイスを示す。つまり、一次流路は、吐き出し口(23)を通るデバイスの外部に吸引流体の部分を流出させる。二次流体流路(11B)(図1に示される)は、内側シェル部分(3)とダクト(15)の内側との間に形成される通路(12)を通して吸引流体の部分を再循環させる。さらに、ダクト(15)を配置しても、性能に大きな影響は及ばないが、吸引カップは信じられないほどコンパクトかつ自立型になる。そのような吸引カップに使用される吸引手段(5)は、好ましくは遠心式のブロワ/インペラである。
【0071】
図9aは、吸引カップの周辺部の周りに追加の可撓性スカート(16)を有する、本発明の吸引デバイス(100)の代替実施形態であるデバイス(100f)の切断断面図を示す。この可撓性スカートは、ホバークラフトのスカートと同様な様式で機能し、この吸引システムが縮尺できる障害物のサイズを拡大するのに役立つ。このスカート(16)は、大きい障害物の周りで潰れ、したがって、吸引システムが、流れ再循環によって提供される利点を使用し続けながら、吸引カップと吸引された表面との間の隙間よりも大きい障害物を乗り越えることを可能にする。本発明の主要な新規特徴である流れ再循環効果は、この構成でも十分に機能し、吸引効率を改善するのに役立つ。図9bは、図9aに示され、上述された吸引デバイス(100f)の等角図を示す。
【0072】
本発明の利点
本発明利点は、背景技術のセクションの先行技術に言及された従来の非接触式吸引方法よりも高められたエネルギー効率である。システムはまた、乱流及びノイズを生じさせる乱流ゾーンを有していないので、米国第10670046 B2号のようなシステムの比較して音響ノイズが低い。この設計はまた、吸引された表面からより高い間隙で機能するように設計されているとき、大部分の一般的なシステムよりもますます良好になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
【国際調査報告】