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特表2024-531110側部接合を有する半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】側部接合を有する半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/00 20230101AFI20240822BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240822BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H10N60/00 Z
H01L29/06 601N
H01L29/06 601W
H01L29/80 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506620
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2021045075
(87)【国際公開番号】W WO2023014376
(87)【国際公開日】2023-02-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクラー,ゲオルク ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ジョン キング,ギャンブル ザ フォース
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ホーグダレム,ケビン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カリミ,ファルハド
(72)【発明者】
【氏名】ルッチン,ロマン ミコラヨヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】マーカス,チャールズ,マサメド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイティケナス,サウリウス
(72)【発明者】
【氏名】ポシュル,アンドレアス シモン
(72)【発明者】
【氏名】ダニレンコ,アリサ
(72)【発明者】
【氏名】サボニス,デイビダス
(72)【発明者】
【氏名】オファレル,エオイン コナー
【テーマコード(参考)】
4M113
5F102
【Fターム(参考)】
4M113AC45
4M113AC50
4M113CA12
4M113CA14
5F102GB01
5F102GC01
5F102GC05
5F102GD10
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ05
5F102GJ06
5F102GL01
5F102GL04
5F102GL05
5F102GM01
5F102GM04
5F102GM05
5F102GQ04
5F102GQ08
5F102GQ09
5F102GV05
5F102GV07
5F102GV08
(57)【要約】
半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス(400)は、2DEGまたは2DHGをホストするように構成された半導体コンポーネント(420)と;半導体コンポーネントのチャネル内に超伝導性を誘起するための超伝導体コンポーネント(430)と、一組の空乏ゲート(452、545、456)とを備える。超伝導体コンポーネントは、超伝導体の接地されたストリップを含む。空乏ゲートは、チャネルの第1の外側セグメントを画定するための第1の外側ゲート(452a、452b)と、チャネルの第2の外側セグメントを画定するための第2の外側ゲート(456a、456b)と、チャネルの内側セグメントを画定するための内側ゲート(454a、454b)とを含む。デバイスは、第1の外側ゲートと内側ゲートとの間の空間を含む第1の接合部と、第1の空間をゲートするためのヘルパー・ゲート(470a)と;第2の外側ゲートと内側ゲートとの間の空間を含む第2の接合部と、第2の空間をゲートするためのヘルパー・ゲート(470b)とをさらに含む。ヘルパー・ゲートは、チャネルをリード(472a、472b)に接続するように動作可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスであって:
2次元電子ガスまたは2次元正孔ガスをホストするように構成された半導体コンポーネントと;
前記半導体コンポーネントの上に配置された超伝導体コンポーネントであって、近接効果によって前記半導体コンポーネントのチャネル領域に超伝導性を誘起することができる超伝導体コンポーネントと;
前記半導体コンポーネントの上に配置された一組の空乏ゲートであって、前記チャネル領域のエッジに沿った前記半導体コンポーネントの領域から電荷キャリアを空乏化することによって前記チャネル領域の境界を画定するように構成された一組の空乏ゲートとを有しており、
前記超伝導体コンポーネントは、2つの端部を有する超伝導体材料の細長いストリップを含み、前記端部の少なくとも1つは電気的に接地され、
前記一組の空乏ゲートは:
前記チャネル領域の第1の外側セグメントを画定するための少なくとも1つの第1の外側空乏ゲートと;
前記チャネル領域の第2の外側セグメントを画定するための少なくとも1つの第2の外側空乏ゲートと;
前記第1の外側セグメントと前記第2の内側セグメントとの間の前記チャネル領域の内側セグメントを画定するための少なくとも1つの内側空乏ゲートとを含み、
当該デバイスは:
前記少なくとも1つの第1の外側空乏ゲートと前記少なくとも1つの内側空乏ゲートとの間の第1の空間と、前記第1の空間をゲートするための第1のヘルパー・ゲートとを含む第1の接合部と;
前記少なくとも1つの第2の外側空乏ゲートと前記少なくとも1つの内側空乏ゲートとの間の第2の空間と、前記第2の空間をゲートするための第2のヘルパー・ゲートとを含む第2の接合部とをさらに有しており、
前記第1および第2のヘルパー・ゲートは、それぞれ、前記チャネル領域をそれぞれのリードに電気的に接続するように動作可能である、
半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項2】
前記外側空乏ゲートは、前記外側セグメントをトリビアル・レジームに調整するように構成され、
前記少なくとも1つの内側空乏ゲートは、前記内側セグメントをトポロジカル・レジームに調整するように構成されている、
請求項1に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項3】
前記第1の外側セグメントおよび前記第2の外側セグメントはそれぞれ、前記半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスの最大超伝導コヒーレント長以上の長さを有する、および/または
前記第1および第2の外側セグメントはそれぞれ、少なくとも2μmの長さを有する、
請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項4】
前記超伝導体コンポーネントの両端は電気的に接地される、および/または
前記超伝導体コンポーネントは、本質的には前記細長いストリップからなる、および/または
前記細長いストリップは分岐していない、
請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項5】
前記一組の空乏ゲートと前記超伝導体コンポーネントとの間に配置された誘電体をさらに有しており、
任意的に、前記空乏ゲートの少なくとも1つは、前記超伝導体コンポーネントが前記内側セグメントを前記内側空乏ゲートから遮蔽するように、前記超伝導体コンポーネントの上に延在する、
請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの内側空乏ゲートは、単一の空乏ゲートである、請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの内側空乏ゲートは、一対の対向する空乏ゲートであり、前記対の各空乏ゲートは、前記内側セグメントのそれぞれの縁部に沿って配置される、請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項8】
前記第1および第2の外側空乏ゲートは、それぞれ、対向する空乏ゲートの対である、請求項1ないし7のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項9】
前記チャネル領域の第1の側の2つの隣接する空乏ゲートの間の空間は、前記第1の側とは反対の前記チャネル領域の第2の側の2つの隣接する空乏ゲートの間の空間から横方向にオフセットされている、請求項7または8に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項10】
前記リードは、前記半導体コンポーネントの領域であり、前記ヘルパー・ゲートは、前記リードを常伝導状態に調整するように構成される、または
前記リードは、金属リードである、
請求項1ないし9のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項11】
前記リードは、前記細長いストリップに対して垂直に延在する、請求項1ないし10のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項12】
前記半導体コンポーネントは、下部障壁と上部障壁との間に配置された量子井戸を含むヘテロ構造である、請求項1ないし11のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項13】
前記ヘルパー・ゲートは、前記チャネル領域と前記リードとの間に量子点接触を提供するように構成されたそれぞれの先端を有する、請求項1ないし12のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項14】
請求項1ないし13のうちいずれか一項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスを動作させる方法であって、当該方法は:
前記超伝導体コンポーネントが超伝導状態になる温度まで前記デバイスを冷却する段階と;
前記チャネル領域のエッジに沿った前記半導体コンポーネントの領域から電荷キャリアを空乏化することによって前記チャネル領域を画定するために、前記一組の空乏ゲートにゲート電圧を印加する段階と;
前記半導体コンポーネントの少なくとも前記チャネル領域に磁場を印加する段階と;
前記チャネル領域を前記リードに電気的に接続するよう、前記ヘルパー・ゲートにゲート電圧を印加する段階とを含み、
任意的に、当該方法は、前記リードを通る電流を測定する段階をさらに含む、
方法。
【請求項15】
前記一組の空乏ゲートにゲート電圧を印加することは、前記外側セグメントをトリビアル・レジームに調整し、前記内側セグメントをトポロジカル・レジームに調整することを含む、および/または
前記リードは、前記ヘルパー・ゲートに前記ゲート電圧を印加することによって伝導性にされる前記半導体コンポーネントの領域である、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
超伝導体が近接する半導体ナノワイヤは、正しい条件が与えられると、物質のトポロジカル位相をホストすることが期待される。このため、それらはフォールトトレラントな量子コンピュータの構成要素としての有望な候補となる。具体的な実現は、従来の超伝導体への近接結合を有する二次元電子ガス(two-dimensional electron gas、2DEG)に基づく半導体ナノワイヤによって提供され、これは、典型的にはエピタキシャル2Dウエハ・スタックの一部として成長されるが、製造中に材料成長後に堆積させることもできる。この材料プラットフォームは、かなり大きなスピン軌道カップリングおよび大きな電子g因子という、トポロジカル状態の形成のための重要な成分を有する。2Dプラットフォームは、エッチングおよび堆積に関わるトップダウン・リソグラフィー・パターニングを介して複雑なデバイス幾何形状を可能にする。
【0002】
トポロジカル位相は、ナノワイヤの端部において、一対のマヨラナ・ゼロ・モード(Majorana zero modes、MZM)の形で現れる。ナノワイヤのバルクに沿って、端部から離れて、単一電子スペクトルにおけるギャップが存在する。実験は、典型的には、ナノワイヤの端部でトンネル分光法を使用して、トンネル・コンダクタンスにおけるゼロ・バイアス・ピーク(zero-bias peak、ZBP)を検出する。
【0003】
そのようなナノワイヤのネットワークを形成し、ネットワークの一部にトポロジカル・レジームを誘導することによって、量子計算の目的のために操作できる量子ビットを作り出すことが可能である。量子ビットは、キュービットとも呼ばれ、2つの可能な結果を有する測定をそれに対して実行することができるが、任意の所与の時点において(測定されていないとき)、実際には、異なる結果に対応する2つの状態の量子重ね合わせにあることができる要素である。
【0004】
トポロジカル位相を誘起するために、デバイスは、超伝導体(たとえば、アルミニウム)が超伝導挙動を示す温度まで冷却される。超伝導体は、隣接する半導体に近接効果を生じさせ、半導体の超伝導体との界面近傍の領域も超伝導特性を示すようになり、すなわち、隣接する半導体に超伝導ペアリング・ギャップが誘起される。デバイスに磁場が印加されるときにMZMが形成されるのは、半導体のこの領域である。
【0005】
磁場の役割は、半導体内のスピン縮退を解除することである。量子系の文脈における縮退は、異なる量子状態が同じエネルギーレベルを有する場合を指す。縮退を解除することは、そのような状態に異なるエネルギーレベルを取らせることを意味する。スピン縮退とは、異なるスピン状態が同じエネルギーレベルを有する場合を指す。スピン縮退は、異なるスピン偏極電子間でエネルギーレベルの分裂を引き起こす磁場によって解除できる。これはゼーマン効果として知られている。ゼーマンエネルギー、すなわちエネルギーレベル分裂の大きさは、系内のわずかな超伝導ギャップを閉じ、トポロジカル・ギャップを再び開くために、少なくとも超伝導ギャップと同じ大きさであるべきである。
【0006】
MZMを誘起することは、典型的には、ナノワイヤを静電電位でゲート制御することによって、ナノワイヤ内の電荷キャリアの静電電位を調整することも必要とする。静電電位は、ゲート電極を用いて印加される。静電電位を印加することにより、半導体コンポーネントの伝導帯または価電子帯における電荷キャリアの数が操作される。
【0007】
半導体‐超伝導体ハイブリッド・システムの電子特性を特徴付ける必要がある。非局所的コンダクタンス測定は、特に興味深い。非局所的コンダクタンスは、コンダクタンスが超伝導体コンポーネントと半導体コンポーネントの1つの末端との間で測定される局所的コンダクタンス測定とは対照的に、ナノワイヤの2つの末端を通るコンダクタンスである。
【0008】
非局所的コンダクタンスを測定するために使用される比較システム100の概略平面図が図1に示されている。システム100は、2DEGをホストするように構成された半導体ヘテロ構造110を含む。超伝導体コンポーネント120は、半導体ヘテロ構造110の上に配置される。超伝導体コンポーネント120は、T字形であり、長さ方向xに延びる細長いストリップ部分と、幅方向yに延びるブランチ122とを含む。ブランチ122は電気的接地に接続される。
【0009】
ゲート・スタックがデバイス上に配置される。ゲート・スタックは、超伝導体コンポーネントの下にない半導体ヘテロ構造の領域から選択的に、電荷キャリアを空乏化する。これは、超伝導体コンポーネントの下にチャネル領域を画定する。チャネル領域は、半導体コンポーネントの活性部分であり、それを通じて電流が流れることができる。
【0010】
接合部は、超伝導体コンポーネント120の細長いストリップ部分の端部に配置される。各接合部は、電極130、132、134のセットを含む。電極134は、電極134の下の半導体コンポーネントの領域においてリード(lead)と呼ばれる常伝導性の領域を誘導するように動作する。次いで、電極130、132にゲート電圧を印加することによって、活性領域と電極134の下のリードとの間の電子のトンネリングが可能になる。非局所的コンダクタンスは、トンネル電流の測定に基づいて決定されうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスが提供される。このデバイスは、2次元電子ガスまたは2次元正孔ガスをホストするように構成された半導体コンポーネントと;半導体コンポーネントの上に配置された超伝導体コンポーネントであって、近接効果によって半導体コンポーネントのチャネル領域に超伝導性を誘起することができる超伝導体コンポーネントと;半導体コンポーネントの上に配置された一組の空乏ゲートであって、チャネル領域の周のまわりの半導体コンポーネントの領域から電荷キャリアを空乏化することによってチャネル領域の境界を画定するように構成された一組の空乏ゲートとを備える。超伝導体コンポーネントは、2つの端部を有する超伝導体材料の細長いストリップを備え、端部の少なくとも1つは電気的に接地される。一組の空乏ゲートは、チャネル領域の第1の外側セグメントを画定するための少なくとも1つの第1の外側空乏ゲートと;チャネル領域の第2の外側セグメントを画定するための少なくとも1つの第2の外側空乏ゲートと;第1の外側セグメントと第2の内側セグメントとの間のチャネル領域の内側セグメントを画定するための少なくとも1つの内側空乏ゲートとを備える。このデバイスは、少なくとも1つの第1の外側空乏ゲートと少なくとも1つの内側空乏ゲートとの間の第1の空間と、第1の空間をゲートするための第1のヘルパー・ゲートとを含む第1の接合部と、前記少なくとも1つの第2の外側空乏ゲートと前記少なくとも1つの内側空乏ゲートとの間の第2の空間と、第2の空間をゲートするための第2のヘルパー・ゲートとを含む第2の接合部とを含む。第1および第2のヘルパー・ゲートは、それぞれ、チャネル領域をそれぞれのリードに電気的に接続するように動作可能である。
【0012】
また、半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスを動作させる方法も提供される。この方法は、超伝導体が超伝導状態になる温度までデバイスを冷却する段階と;前記チャネル領域の周のまわりの前記半導体コンポーネントの領域から電荷キャリアを空乏化することによって前記チャネル領域を画定するために、一組の空乏ゲートにゲート電圧を印加する段階と;前記半導体コンポーネントの少なくとも前記チャネル領域に磁場を印加する段階と;前記チャネル領域を前記リードに電気的に接続するために、前記ヘルパー・ゲートにゲート電圧を印加する段階とを含む。
【0013】
この概要は、以下の詳細な説明においてさらに説明される概念の選択を簡略化された形で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図していない。また、特許請求される主題は、本明細書に記載される欠点のいずれかまたはすべてを解決する実装形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の実施形態の理解を助け、そのような実施形態がどのように実施されうるかを示すために、単なる例として、添付の図面を参照する。
図1】比較例による半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスの概略平面図である。
図2】半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスの第1の例の概略平面図である。
図3図2の線B-Bに沿った概略断面図である。
図4】半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスの第2の例の概略平面図である。
図5】例示的な側部接合部の概略平面図である。
図6図1に示されたタイプのデバイスにおける線A-Aに沿った位置の関数としての電位のシミュレーションを示すプロットである。
図7図4に示されたタイプのデバイスにおける線C-Cに沿った位置の関数としての電位のシミュレーションを示すプロットである。
図8図1に示されるタイプのデバイスにおけるエネルギーおよび位置の関数としての局所的な状態密度のシミュレーションの結果を示すヒートマップである。
図9図2に示されるタイプのデバイスにおけるエネルギーおよび位置の関数としての局所的な状態密度のシミュレーションの結果を示すヒートマップである。
図10】本明細書に記載されたタイプの半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスを動作させる方法を概説するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用されるところでは、動詞「有する」は、「…を含む、または…からなる」の省略表現として使用される。言い換えれば、動詞「有する」は、オープンな用語であることを意図しているが、この用語をクローズドな用語「からなる」で置き換えることは、特に化学組成との関連で使用される場合、はっきりと考えられている。
【0016】
「上部」、「下部」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「水平」、および「垂直」などの方向を示す用語は、本明細書では記述の便宜のために使用され、関連する図面に示される向きに関する。いかなる疑義も避けるために、この用語の使用は、外部の参照系におけるデバイスの向きを限定することは意図していない。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「超伝導体」は、材料の臨界温度Tcより低い温度まで冷却されたときに超伝導性になる材料を指す。この用語の使用は、デバイスの温度を限定することを意図していない。
【0018】
「ナノワイヤ」は、ナノスケールの幅を有する細長い部材であり、長さ対幅の比は少なくとも10、任意的には少なくとも100、または少なくとも500、または少なくとも1000である。ナノワイヤの典型的な例は、10~500nm、任意的には50~100nmまたは75~125nmの範囲の幅を有する。長さは、典型的には、マイクロメートルのオーダー、たとえば、少なくとも1μm、または少なくとも10μmである。本明細書に記載されるデバイスのチャネル領域は、典型的にはナノワイヤの形であり、ナノワイヤのエッジは、ゲート電極の使用を通じて静電的に画定される。
【0019】
略語「2DEG」は、「2次元電子ガス」を表す。「2DHG」は、「2次元正孔ガス」を表す。
【0020】
「半導体‐超伝導体ハイブリッド構造」は、半導体コンポーネントと、近接効果によって半導体コンポーネント内に超伝導性を誘起するように構成された超伝導体コンポーネントとを有する。特に、この用語は、マヨラナ・ゼロ・モード、または量子計算に有用な他の励起などのトポロジカル挙動を示すことができる構造を指す。動作条件は、一般に、構造を超伝導体コンポーネントのTcより低い温度まで冷却し、構造に磁場を印加し、構造に静電ゲーティングを適用することを含む。
【0021】
図1に示されるタイプのデバイスを使用してトポロジカル挙動を検出することは難しいことがわかっている。本明細書では、トポロジカル位相の測定をより容易に実行することを許容しうるデバイスが提供される。
【0022】
ここで、半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスの第1の例を図2および図3を参照して説明する。図2は、デバイスの概略平面図である。図3は、図2の線A-Aに沿った概略断面図である。
【0023】
デバイス200は、半導体コンポーネント220と、超伝導体コンポーネント230と、一組の空乏ゲート252、254、256であって、空乏ゲートのうちの隣接するものの間に接合部を有する空乏ゲートと、接合部をゲートするためのヘルパー・ゲート270a、270bとを有する。
【0024】
半導体コンポーネント220は、半導体ヘテロ構造の形である。半導体ヘテロ構造は、下部障壁222と上部障壁226との間に配置された量子井戸224を含む。この構造は、量子井戸が下部障壁および上部障壁の材料とは異なる材料を有するため、ヘテロ構造と呼ばれる。下部障壁および上部障壁の材料は、それぞれ独立して選択されてもよい。
【0025】
下部障壁222および上部障壁226の構成は、これらの層が電荷キャリア、すなわち電子または正孔を量子井戸224内に捕捉することができる限り、特に限定されない。下部障壁222は、一つまたは複数の異なる材料の一つまたは複数の層を含んでいてもよい。上部障壁226は、一つまたは複数の異なる材料の一つまたは複数の層を含んでいてもよい。複数の層から障壁を構築することは、欠陥フィルタリングを提供しうる、すなわち、使用される材料の結晶構造における転位の影響を低減しうる。
【0026】
量子井戸層224は、下部障壁222および上部障壁226の材料と比較して相対的に小さいバンドギャップを有する半導体材料の層を有していてもよい。ハイブリッド・デバイスにおけるトポロジカル位相の品質は、半導体コンポーネントと超伝導体コンポーネントとの間の結合の程度に強く依存する。特許文献1で説明されているように、超伝導体と量子井戸内の2DEGとの間の結合を調整するために上部障壁226が使用されてもよい。
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/126181号明細書
【0027】
量子井戸を形成するのに有用な例示的な材料は、たとえば、非特許文献1、2に記載されている。
【非特許文献1】Odoh and Njapba、「A Review of Semiconductor Quantum Well Devices」、Advances in Physics Theories and Applications、第46巻、2015年、26~32頁
【非特許文献2】S. Kasap、P. Capper(編)、「Springer Handbook of Electronic and Photonic Materials」、DOI 10.1007/978-3-319-48933-9_40に記載されている。
【0028】
特に、半導体ヘテロ構造は、III-V族半導体材料を含みうる。III-V族半導体材料は、インジウム、アルミニウム、およびガリウムから選択される少なくとも1つのIII族元素と、ヒ素、リン、およびアンチモンから選択される少なくとも1つのV族元素とをそれぞれ含む化合物または合金であってもよい。ヘテロ構造の材料は、たとえば、それぞれ独立して、組成式1:
AlxInyGazAs
の材料を含むことができる。ここで、x、yおよびzの値は独立して選択され、0~1の範囲である。x、yおよびzは合計すると1でありうる。特に有用な材料の例は、ヒ化インジウム、ヒ化アルミニウムインジウム、ヒ化インジウムガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、およびヒ化アルミニウムインジウムガリウムを含む。理解されるように、ヘテロ構造の材料の電子特性は、それらの組成および化学量論を変化させることによって制御されうる。
【0029】
他のクラスの半導体材料の使用も考えられる。たとえば、ヘテロ構造は、II-VI族半導体材料を含んでいてもよい。II-VI族半導体材料の例は、テルル化カドミウム、テルル化水銀、テルル化鉛、およびテルル化スズを含みうる。ヘテロ構造は、IV族半導体材料を含むことができる。たとえば、ヘテロ構造は、シリコン、ゲルマニウム、および/またはシリコン-ゲルマニウム合金を含んでいてもよい。IV族半導体材料を含むヘテロ構造は、2DHGをホストしうる。
【0030】
動作において、電荷が量子井戸224内に局在化される。より具体的には、量子井戸224は、2DEGまたは2DHGをホストしてもよい。2DEGまたは2DHGは、その後、空乏ゲートの使用を通じてチャネル領域224aにさらに制約されてもよく、これについては以下でより詳細に説明する。チャネル領域224aは、超伝導体コンポーネント230の下に配置されたナノワイヤの形であってもよい。マヨラナ・ゼロ・モードなどの関心のある励起が、そのようなナノワイヤにおいて生成されうる。
【0031】
図3は、デバイス200が基板210上に配置されることをさらに示す。基板は、その上にデバイスが構築される任意の構造であってもよい。基板は、典型的には、ウェハ、すなわち、単結晶材料のピースを含む。ウェハ材料の例は、リン化インジウム、ヒ化ガリウム、アンチモン化インジウム、ヒ化インジウム、およびシリコンを含む。基板は、ウェハ上または上方に配置された追加的な構造をさらに含む、より精巧なワークピースであってもよい。基板は、2つ以上の材料の層を含んでいてもよい。
【0032】
超伝導体コンポーネント230が、半導体コンポーネント220の上に配置される。半導体コンポーネント220と超伝導体コンポーネント230との間には、任意的な誘電体が存在してもよい。超伝導体コンポーネント230は、長さ方向xに延びる細長いストリップの形である。
【0033】
超伝導体コンポーネント230は、250nm以下、任意的には40~60nm、さらに任意的には45~55nmの幅を有してもよい。
【0034】
超伝導体コンポーネントは、以下に説明するように、デバイスの内側セグメントおよび外側セグメントの長さに沿って延びる。
【0035】
超伝導体コンポーネント230は、直線状であり、分岐していない。超伝導体コンポーネントの一端は、接地に接続され、たとえば、接地面に接続されるか、または接触パッドを介して外部接地に接続される。他端は、任意的に、接地に接続されてもよい。
【0036】
超伝導体コンポーネントを形成するために使用される材料は、適宜選択されてもよい。超伝導体は、典型的には、s波超伝導体である。当技術分野で知られているさまざまなs波超伝導体の任意のものが使用されうる。例としては、アルミニウム、インジウム、スズ、および鉛を含み、いくつかの状況ではアルミニウムが好ましい。アルミニウムが使用される実装では、超伝導体コンポーネント230は、たとえば、2~10nmの範囲の厚さを有してもよい。
【0037】
誘電体240が、超伝導体コンポーネント230を覆う。誘電体として有用な材料の例は、酸化ケイ素(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)、酸化アルミニウム(AlOx)、および酸化ハフニウム(HfOx)を含む。
【0038】
デバイス200は、さらに、一組の空乏ゲート252、254、256を含む。空乏ゲートは、第1および第2の外側空乏ゲート252、256を備え、それらの間に内側空乏ゲート254が配置される。空乏ゲートは、任意の適切な伝導性材料、典型的には、金またはチタン等の常伝導性の金属から製造されてもよい。
【0039】
空乏ゲート252、254、256は、超伝導体コンポーネント230に重なり、誘電体240によって超伝導体コンポーネント230から分離される。
【0040】
使用時には、空乏ゲートに電圧が印加され、この電圧は、半導体コンポーネント220の対応する領域から電荷キャリアを空乏化するように選択される。超伝導体230は、半導体コンポーネント220の一部を静電場から遮蔽する。よって、空乏ゲートおよび超伝導体コンポーネントは、一緒になって、半導体コンポーネント220のチャネル領域224aの境界を画定する。空乏ゲートの個々のものに印加される電圧は、独立して選択されうる。これにより、活性領域の異なる部分を異なる電位に調整することができる。
【0041】
活性領域の2つのエッジを画定する単一の空乏ゲートは、「結合ゲート」(joined gate)と呼ばれることがある。デバイス200の空乏ゲート252、254、256は、それぞれ結合ゲートである。
【0042】
内側空乏ゲート254と2つの外側空乏ゲート252、256のそれぞれとの間にそれぞれの空間が設けられ、それにより接合部(junction)が形成される。接合部は、チャネル領域224aを、デバイスの内側部分264における内側セグメントと、外側部分262、266における外側セグメントとに分割する。使用時には、内側セグメントは、トポロジカル・レジームに調整されてもよく、外側セグメントは、トリビアル・レジームに調整されてもよい。内側セグメントは「ワイヤ」と呼ばれることがあり、内側セグメントの長さは「ワイヤ長」と呼ばれることがある。
【0043】
内側セグメントの長さは、1~50μm、任意的には2~3μm、さらに任意的には2.4~2.6μmの範囲であってもよい。
【0044】
外側セグメントは、システムの最大超伝導コヒーレンス長(本明細書では「最大コヒーレンス長」とも呼ばれる)よりも長い長さを有するように選択されてもよい。最大コヒーレンス長ξは、式1:
【数1】
を使用して計算されうる。ここで、hバーは換算プランク定数、vfはフェルミ速度、Δは誘起された超伝導エネルギーギャップである。
【0045】
たとえば、外側セグメントは、系の最大コヒーレンス長よりも少なくとも5倍長い長さを有してもよい。例として、各外側セグメントは、少なくとも2μmの長さを有しうる。しばしば、各外側セグメントは、内側セグメントの長さに等しい長さを有する。
【0046】
系の最大コヒーレンス長よりも長い長さを有する外側セグメントを設け、これらの領域をトリビアル・レジームに調整することによって、フィルタリング効果を得ることができる。外側セグメントは、内側セグメント264と接地への接続との間の準粒子フィルタとして作用することができる。言い換えれば、トリビアル領域は、ワイヤ264のトポロジカル・セグメントを接地への接続から分離する。それがなければ、接地への接続は、トポロジカル位相を破壊しうる準粒子をトポロジカル・セグメント264に導入しうる。
【0047】
各接合部には、それぞれのヘルパー・ゲート270a、270bが設けられる。使用時には、半導体コンポーネントの対応する領域を伝導性レジームに調整するために、ヘルパー・ゲートに電圧が印加される。この例では、ヘルパー・ゲートは、半導体コンポーネントの対応する部分に、常伝導性のリードとして機能させる。リードとチャネル領域224aとの間の電気的接続も形成される。したがって、チャネルを通る非局所的コンダクタンスの測定は、リードを通る電流を測定することによって実行されうる。そのようなヘルパー・ゲートを使用することにより、チャネル内の電位をほとんど乱すことなくチャネルへの接続が可能になることがわかっている。
【0048】
リードは、電流の測定を可能にするために、適切な増幅器回路に接続されてもよい。たとえば、リードは、接触パッドまで延在してもよく、接触パッドに取り付けられたワイヤボンド等を介して増幅器回路に結合されてもよい。増幅器回路は、電流‐電圧変換器であってもよい。一つの適切な増幅器の例は、Basel Precision Instrumentsから入手可能なSP938c電流‐電圧変換器である。
【0049】
リードは、比較例のようにナノワイヤの端部ではなく、ナノワイヤの側部に配置されるので、リードは、低運動量状態へのより良好な結合を可能にすることができ、言い換えれば、低運動量電子がより容易に検出されうる。これは、トポロジカル位相がマルチモード・ワイヤにおける最低運動量モードによって形成されるので、有用である。さらに、超伝導体コンポーネントは、ブランチを介するのではなく、その端部で接地に接続されるので、マヨラナ・ゼロ・モード間の、ナノワイヤのバルクにおける追加的な状態の存在を回避することができる。
【0050】
半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスがキュービット・デバイスのコンポーネントである実装では、ハイブリッド・デバイス上で測定を実行する能力は、たとえばキュービットを調整するために有用でありうる。
【0051】
ここで、図4を参照して、半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス400の第2の例を説明する。デバイス400は、異なる配置の空乏ゲートおよび異なる接合構成を有し、半導体リードではなく金属リードを含む。デバイス200は、それ自体、金属リードを含むように修正されてもよい。デバイス200は、接合を調整するためのより少数のゲートを含むので、金属リードは、デバイス200において特に有用でありうる。
【0052】
デバイス400は、半導体コンポーネント420、超伝導体コンポーネント430、および一組の空乏ゲート452、454、456を含む。誘電体が超伝導体コンポーネント430の上に存在し、一組の空乏ゲートが誘電体の上に配置される。
【0053】
半導体コンポーネントおよび超伝導体コンポーネントは、デバイス200を参照して先に説明したとおりである。
【0054】
デバイス400は、空乏ゲートがそれぞれ分割ゲートであるという点でデバイス200とは異なる。「分割ゲート(split gate)」とは、デバイスの活性領域の両側に配置された一対の離間した電極を意味する。対の各電極は、独立して動作させられてもよい。
【0055】
空乏ゲートは、第1の外側の対の空乏ゲート452a、452bと、内側の対の空乏ゲート454a、454bと、第2の外側の対の空乏ゲート456a、456bとを含む。空乏ゲートのこれらの対は、それぞれ、第1の外側セグメント462、内側セグメント464、および第2の外側セグメント466におけるチャネル領域を画定し、調整するように動作可能である。個々の空乏ゲートはそれぞれ独立して動作させられることができるので、これにより、チャネル領域の各セグメントについて単一の空乏ゲートを有するデバイス200と比較して、活性領域および接合領域における電位に対して、より細かな制御が可能になる。
【0056】
第1の例を参照して上述したように、動作において、外側セグメントはトリビアル・レジームに調整されてもよく、内側セグメントはトポロジカル・レジームに調整されてもよい。外側セグメントの長さは、系の最大コヒーレンス長よりも大きくなるように選択されてもよい。
【0057】
この例における分割空乏ゲートのエッジは、超伝導体コンポーネントと重なり、各対の分割ゲートの間に空間が設けられる。重なりを設けることは、これが活性領域のエッジが超伝導体コンポーネントによって容易に画定されることを可能にするので、有用である。超伝導体コンポーネントは、空乏ゲートによって印加される静電場から活性領域を遮蔽する。変形例では、重なりは、原則として省略されてもよいが、これは、デバイスを動作させることをより困難にしうる。
【0058】
図4に示される左側の接合部を考慮すると、接合部は、外側ゲート452aと内側ゲート454aとの間の第1の空間と、外側ゲート452bと内側ゲート454bとの間の第2の空間とを含むことがわかる。
【0059】
左側の接合部のためのヘルパー・ゲート470aは、第2の空間の領域において半導体コンポーネントをゲート制御するように構成される。ヘルパー・ゲート470aによって誘導される伝導性接続領域は、外側ゲート452bと内側ゲート454bとの間に延在する。よって、ゲート452bおよび454bにゲート電圧を印加することによって、接続の特性を修正することができる。これにより、チャネル領域とリードとの間の結合の程度を制御することが可能になる。活性領域の反対側にあるゲート452aおよび452bは、チャネル領域のバルクにおける化学ポテンシャルを、接続領域における化学ポテンシャルとは別個に制御するように動作可能である。言い換えれば、分割ゲートの使用は、チャネル領域のバルクの特性とは部分的に独立して、接合の特性の調整を可能にしうる。
【0060】
この例では、左金属リード472aは、左側の接合のためのヘルパー・ゲート470aの下に配置され、右金属リード472bは、右側の接合のためのヘルパー・ゲート470bの下に配置される。金属リードの使用は、第1の例のように常伝導性レジームに調整された半導体の使用に対する代替である。金属リードは、超伝導体コンポーネント430と同一平面上にあってもよく、超伝導体コンポーネント430と同時に超伝導体材料から製造されてもよい。リード472a、472bは、誘電体240によってそれぞれのヘルパー・ゲートから分離される。金属リードの使用は、デバイスの動作中にヘルパー・ゲート電圧がより自由に選択されることを可能にしうる。なぜなら、金属リードが存在するときには、ヘルパー・ゲートは半導体コンポーネント内に伝導性チャネルを誘起する必要がないからである。
【0061】
デバイスの動作中の磁場の向きに依存して、金属リード472aおよび472bは、超伝導体コンポーネントについての臨界磁場の異方性に起因して、デバイスの動作中に、超伝導性ではなく常伝導性であることがある。たとえば、磁場が、超伝導体コンポーネント430の長さに平行に印加されてもよく、リードは、超伝導体コンポーネント430に垂直に延在してもよい。リードがデバイスの動作中に常伝導性であることは、マヨラナ・ゼロ・モードのコンダクタンス分光測定を可能にするので、有用である。
【0062】
図4のデバイスにおける接合はオフセット接合である。左側の接合を参照すると、第1の空間と第2の空間は、距離dだけ互いに横方向にオフセットされている。距離dは、第1の空間の中点から第2の空間の中点までx方向に測定される。オフセットdは、適宜選択されてよい。たとえば、オフセットは、100~500nm、任意的には180~220nm、さらに任意的には200nmの範囲内であってもよい。
【0063】
オフセットを有する接合を設けることによって、接合における電位の不均一性を低減することができる。不均一な電位は、ノイズを加え、トポロジカル信号を測定することをより困難にする可能性がある局在化された状態を誘起する可能性がある。これは、トポロジカル状態のより容易な検出を可能にしうる。
【0064】
図示されたデバイスに対してさまざまな修正を行うことができる。
【0065】
図示されたデバイスでは、金属リード472は、半導体コンポーネント上に直接配置される。変形例において、半導体コンポーネントと金属リードとの間に誘電体が存在してもよい。そのような誘電体は、それがなければ超伝導体コンポーネントが半導体コンポーネントとショットキー接触ではなく、オーミック接触を形成してしまう場合に有用である。
【0066】
図示されたデバイスの超伝導体コンポーネントは、それぞれ一端で接地に接続される。変形例では、超伝導体コンポーネントの両端は、接地に接続されてもよい。
【0067】
デバイス200では、空乏ゲートのすべてが結合ゲートであり、デバイス400では、空乏ゲートのすべてが分割ゲートである。結合ゲートと分割ゲートの組み合わせを含むデバイスも考えられる。たとえば、外側空乏ゲートはそれぞれ結合ゲートであってもよく、内側空乏ゲートは分割ゲートであってもよい。
【0068】
分割ゲートを含むデバイスでは、オフセットを含めることは任意的である。チャネル領域の両側の電極間の空間は、互いに位置合わせされてもよい。
【0069】
図示されたデバイスは、それぞれ2つの接合部を有する。3つ以上の接合部を含むデバイスも考えられている。たとえば、いくつかの変形例は、トポロジカル・セグメントにおけるさらなる接合部を有していてもよい。いくつかの変形例は、トリビアル・セグメントによって分離された複数のトポロジカル・セグメントを有していてもよい。
【0070】
さまざまな接合構成を使用することができる。一例を図5に示す。
【0071】
図5は、超伝導体コンポーネント530に対して配置された一対の外側空乏ゲート552a、552aと一対の内側空乏ゲート554a、554bとの間の接合を示す。
【0072】
接合は、外側空乏ゲート552aと内側空乏ゲート554aとの間の第1の空間s1と、外側空乏ゲート552bと内側空乏ゲート554bとの間の第2の空間s2とを含む。ヘルパー・ゲート570が、外側空乏ゲート552bと内側空乏ゲート554bとの間に配置され、第2の空間s2内まで延在する。
【0073】
2つの隣接する空乏ゲート間の空間のサイズは、x方向における空乏ゲート間の最短距離として測定されうる。
【0074】
第1の空間s1の大きさは、特に限定されず、内側および外側空乏ゲート552a、554bが互いに電気的に隔離される限り、適宜選択されうる。空間S1は、できるだけ狭いことが望ましい。
【0075】
第2の空間s2の大きさは、ヘルパー・ゲート570のための空間がある限り、特に限定されない。この例では、空間s2は、100~200nmの範囲内であり、任意的には140~160nmの範囲内である。
【0076】
この例のヘルパー・ゲート570は、デバイスのリードとデバイスのチャネルとの間に量子点接触を提供するように構成される。量子点接触は、鞍点を含む静電ポテンシャルである。望ましくは、量子点接触は、チャネルの静電特性を乱すことなく、チャネルにできるだけ近い。
【0077】
ヘルパー・ゲート570は、チャネルに近接して配置された先端を含む。ヘルパー・ゲートの先端は、量子点接触を提供し、接続領域の調整を可能にする。この例における先端は、25~15nm、任意的には30~40 nmの範囲の幅を有する。
【0078】
この例のヘルパー・ゲートは、先端から離れる方向に延びる本体も含む。本体は、典型的には、先端よりも広く、たとえば、少なくとも80nmの幅を有してもよい。この例では、リードは、使用時に、ヘルパー・ゲートを使用して伝導性レジームに調整される半導体コンポーネントの領域である。本体は、この領域を画定するために使用される。本体の下の領域は、常伝導性リードとして機能しうる電荷キャリアの貯留部としても機能しうる。
【0079】
図5は、さらに、空乏ゲートが製造中の位置合わせ不良の影響を低減するように構成されうることを示す。半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスは、典型的には、デバイスの諸層を積み上げることによって製造される。超伝導体コンポーネントおよび電極は、しばしばリソグラフィーを用いて製造される。超伝導体コンポーネントおよび電極を製造するために使用されるリソグラフィー・マスクの位置合わせ不良が時々発生する可能性がある。
【0080】
位置合わせ不良の影響を低減するために、空乏ゲートには、y方向に延びる面取りされたエッジが設けられる。隣接する電極の面取りされたエッジは、互いから離れるように角度が付けられている。面取りの角度は、約45°であってもよい。このようにして、電極間の間隔が最も狭い点は、ナノワイヤを画定するために使用されるマスクとゲートを画定するために使用されるマスクとの間に小さな位置合わせ不良が存在する場合であっても、ナノワイヤに近接する。
【0081】
チャネルの側部にリードを配置することの1つの効果は、図6および図7から理解されうる。
【0082】
図6は、図1に示されるタイプの比較デバイスにおける線A-Aに沿った位置の関数としての電位のシミュレーションの結果を示すプロットである。そのようなデバイスでは、超伝導体コンポーネント120とリード134との間に電位障壁Bが存在する。
【0083】
図7は、図4に示されるタイプのデバイスにおける線C-Cに沿った位置の関数としての電位のシミュレーションの結果を示すプロットである。ポテンシャル井戸Wが接合部に存在する。
【0084】
電位プロファイルの差は、これら2つのタイプのデバイスを使用して検出されうるものに影響を及ぼす。
【0085】
半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスのチャネルにおいて、電子は、高運動量状態または低運動量状態のいずれかを占有しうる。低運動量電子の検出は、これがマヨラナ・ゼロ・モードの存在の識別を可能にするので、特に重要である。
【0086】
マルチモード・ワイヤでは、トポロジカル・モードは、ワイヤのx方向の最低速度(最低運動量k_x)を有するサブバンドにおいて形成される。また、トポロジカル・モードは、ワイヤのy方向における最高速度(最高運動量k_y)を有する。
【0087】
より高い運動量k_xを有するモードは、トリビアル状態にあり、x方向において、より大きい速度を有する。x方向における大きな速度は、ポテンシャル障壁Bを乗り越えるのに役立つ。x方向の低い障壁、すなわちポテンシャル井戸Wは、低運動量モードを測定するのに有利である。これは、側部に配置されたリードによって達成されうる。低運動量モードのy方向における大きな速度は、側部からリードへのポテンシャル障壁を乗り越えるのに役立つ。
【0088】
結果として、高運動量電子は、ポテンシャル障壁Bを乗り越えるか、またはトンネルすることができるが、低運動量電子はできない。したがって、トリビアル状態は比較デバイスを使用して測定できるが、トポロジカル状態にある可能性がある低運動量電子の検出は困難である。
【0089】
ナノワイヤの側部に配置されたリードを有するデバイスについては、低運動量状態は、それらの比較的大きいk_yによって、より容易に検出されうる。
【0090】
端部を通じて接地された線形超伝導体コンポーネントの使用に関連する効果は、図8および図9から理解することができる。
【0091】
図8は、図1に示されるタイプの比較デバイスにおける、エネルギーおよび位置の関数としての局所的な状態密度のシミュレーションの結果を示すヒートマップである。特に関心のある状態は、
【数2】
の状態である。マヨラナ・ゼロ・モードは、
【数3】
であり、ナノワイヤの端部において対で存在する。810aおよび810bにおける状態は、マヨラナ・ゼロ・モードの存在と整合する。
【0092】
図8では、追加の状態が、可能なMZMの間の領域820に存在する。この領域は、超伝導体コンポーネントが接地に接続する「T」のブランチ122の位置に対応する。これらの追加の状態の存在は、ブランチがトポロジカル位相の挙動を乱すことを示している。理想的なトポロジカルな系は、チャネルのバルクに沿って単一電子スペクトルにギャップを有し、図8はそうなっていない。
【0093】
図9は、本開示によるデバイスにおけるエネルギーおよび位置の関数としての局所的な状態密度のシミュレーションの結果を示すヒートマップである。
【0094】
見て取れるように、マヨラナ・ゼロ・モードと整合する状態は、領域910a、910bに存在する。比較例で存在したチャネルの中央あたりの追加の状態は存在しない。これは、ブランチを通してではなく、その端部で超伝導体コンポーネントを接地することが、トポロジカル位相への乱れを回避しうることを示す。
【0095】
ここで、本明細書に記載される半導体‐超伝導体デバイスを動作させる方法を、図9を参照して説明する。図9は、方法の概要を示す流れ図である。
【0096】
ブロック1001では、超伝導体コンポーネントが超伝導性を有する温度までデバイスを冷却する。典型的には、デバイスは1K未満の温度で動作させられる。さまざまな適切な極低温システム、たとえば希釈冷凍機が記載されている。デバイスは、動作中、その動作温度に維持される。
【0097】
ブロック1002において、チャネル領域の境界から電荷キャリアを空乏化することによって活性領域を画定するように、ゲート電圧が一組の空乏ゲートに印加される。
【0098】
ブロック1003において、半導体コンポーネントの少なくともチャネル領域に磁場が印加される。磁場は、一般に、x方向、すなわちナノワイヤに平行に印加される成分を含む。磁場は、1~2T程度の磁場強度を有してもよい。磁場は、デバイス内のスピン縮退を解除し、言い換えれば、印加磁場がない場合には等しいエネルギーを有する異なるスピン状態に異なるエネルギーを持たせる。
【0099】
ブロック1004において、ゲート電圧がヘルパー・ゲートに印加される。ヘルパー・ゲートに印加されるゲート電圧は、チャネル領域とそれぞれのリードとの間に電気的接続を形成する。
【0100】
理解されるように、ブロック1002、1003、および1004の動作は、時間的に重複する。磁場が印加されるとき、空乏ゲートに印加されるゲート電圧は、チャネルの外側セグメントをトリビアル・レジームに、チャネルの内側セグメントをトポロジカル・レジームに調整するように選択されうる。
【0101】
リードは金属リードであってもよい。あるいはまた、リードは、ヘルパー・ゲートに印加されるゲート電圧によって常導体として作用するように調整される半導体コンポーネントの領域であってもよい。
【0102】
本方法は、リードを通る電流を測定する段階をさらに含むことができる。
【0103】
上記の実施形態は、単に例として説明されていることが理解されるであろう。
【0104】
より一般的には、本明細書に開示される一側面によれば、半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスが提供される。半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスは、2次元電子ガスまたは2次元正孔ガスをホストするように構成された半導体コンポーネントと;半導体コンポーネントの上に配置された超伝導体コンポーネントであって、近接効果によって半導体コンポーネントのチャネル領域に超伝導性を誘起することができる超伝導体コンポーネントと;半導体コンポーネントの上に配置された一組の空乏ゲートとを備える。一組の空乏ゲートは、チャネル領域のエッジに沿って半導体コンポーネントの領域から電荷キャリアを空乏化することによってチャネル領域の境界を画定するように構成される。超伝導体コンポーネントは、2つの端部を有する超伝導体材料の細長いストリップを備え、端部の少なくとも1つは電気的に接地される。一組の空乏ゲートは、チャネル領域の第1の外側セグメントを画定するための少なくとも1つの第1の外側空乏ゲートと;チャネル領域の第2の外側セグメントを画定するための少なくとも1つの第2の外側空乏ゲートと;第1の外側セグメントと第2の内側セグメントとの間のチャネル領域の内側セグメントを画定するための少なくとも1つの内側空乏ゲートとを備える。このデバイスは、少なくとも1つの第1の外側空乏ゲートと少なくとも1つの内側空乏ゲートとの間の第1の空間と、第1の空間をゲートするための第1のヘルパー・ゲートとを含む第1の接合部と;少なくとも1つの第2の外側空乏ゲートと少なくとも1つの内側空乏ゲートとの間の第2の空間と、第2の空間をゲートするための第2のヘルパー・ゲートとを含む第2の接合部とをさらに含む。第1および第2のヘルパー・ゲートは、それぞれ、チャネル領域をそれぞれのリードに電気的に接続するように動作可能である。
【0105】
チャネル領域は、ナノワイヤの形であってもよい。
【0106】
外側空乏ゲートは、外側セグメントをトリビアル・レジームに調整するように構成されうる。少なくとも1つの内側空乏ゲートは、内側セグメントをトポロジカル・レジームに調整するように構成されうる。チャネルの外側セグメントをトリビアル・レジームに調整することは、フィルタリング効果を提供し、それにより内側セグメントのトポロジカル位相を保護することができる。トリビアルな端部セグメントは、内側セグメント(トポロジカル・ワイヤ・セグメント)を接地への接続から分離する。そうでなければ、接地への接続がトポロジカル位相を損なう可能性がある。
【0107】
第1の外側セグメントおよび第2の外側セグメントはそれぞれ、半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスの最大超伝導コヒーレンス長以上の長さを有してもよい。たとえば、第1の外側セグメントおよび第2の外側セグメントは、それぞれ、デバイスの超伝導コヒーレンス長の少なくとも5倍の長さを有することができる。第1の外側セグメントおよび第2の外側セグメントは、それぞれ、内側セグメントの長さに等しい長さを有してもよい。最大超伝導コヒーレンス長は、上述の式1に従って計算される。
【0108】
たとえば、第1および第2の外側セグメントは、それぞれ少なくとも2μmの長さを有してもよい。
【0109】
内側セグメントの長さは、1~50μm、任意的には2~3μm、さらに任意的には2.4~2.6μmの範囲であってもよい。第1および/または第2の外側セグメントは、内側セグメントの長さに等しい長さを有してもよい。
【0110】
超伝導体コンポーネントの両端は電気的に接地されてもよい。
【0111】
超伝導体コンポーネントは、本質的に細長いストリップからなることができる。そのような実装では、超伝導体コンポーネントは、超伝導体を接地に接続するための一つまたは複数の接触パッド、および/または一つまたは複数の超伝導接地面と一体的に形成されうる。
【0112】
超伝導体コンポーネントは、250nm以下、任意的には40~60nm、さらに任意的には45~55nmの幅を有してもよい。
【0113】
細長いストリップは、非分岐であってもよい。これにより、トポロジカル挙動をより容易に誘起することができる。細長いストリップは、典型的には直線状である。
【0114】
半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスは、さらに、一組の空乏ゲートと超伝導体コンポーネントとの間に配置された誘電体を備えてもよい。誘電体は、いくつかの実装では、超伝導体コンポーネントと空乏ゲートとの間の電流の流れを防止するために有用でありうる。
【0115】
少なくとも1つの内側空乏ゲートは、単一の空乏ゲートであってもよい。そのような実装では、内側空乏ゲートは、超伝導体コンポーネントが内側セグメントを内側空乏ゲートから遮蔽するように、超伝導体コンポーネントの上に延在する。
【0116】
代替的な実装では、少なくとも1つの内側空乏ゲートは、一対の対向する空乏ゲートであり、対の各空乏ゲートは、内側セグメントのそれぞれのエッジに沿って配置される。対向する空乏ゲートの対は、本明細書では「分割ゲート」とも呼ばれる。分割ゲートを使用することにより、チャネル領域における電位に対して、より大きな度合いの制御を許容しうる。
【0117】
少なくとも1つの第1の外側空乏ゲートおよび/または少なくとも1つの第2の外側空乏ゲートは、対向する空乏ゲートの対であってもよい。特に、第1および第2の外側空乏ゲートは、それぞれ、対向する空乏ゲートの対であってもよい。
【0118】
一つまたは複数の分割ゲートを含む実装では、チャネル領域の第1の側の2つの隣接する空乏ゲート間の空間は、第1の側とは反対側のチャネル領域の第2の側の2つの隣接する空乏ゲート間の空間から横方向にオフセットされる。言い換えれば、前記接合のうちの一つまたは複数の接合はオフセット接合であってもよい。オフセット接合は、デバイス内の共振の数を低減することができる。
【0119】
リードは、半導体コンポーネントの領域であってもよく、ヘルパー・ゲートは、リードを常伝導状態に調整するように構成される。
【0120】
あるいはまた、リードは金属リードであってもよい。そのような実装では、金属の性質は特に限定されない。たとえば、金属は、超伝導体材料であってもよく、そのような実装では、リードおよび超伝導体コンポーネントは、同時に製造されてもよい。
【0121】
半導体コンポーネントは、典型的には、上部障壁と下部障壁との間に配置された量子井戸を含むヘテロ構造である。
【0122】
ヘルパー・ゲートは、リードとチャネル領域との間に量子点接触を提供するように構成されうる。特に、ヘルパー・ゲートは、量子点接触を提供するように構成された先端を有してもよい。先端は、25~15nm、任意的には30~40 nmの範囲の幅を有してもよい。量子点接触の使用は、チャネルの静電特性の変化を回避することができる。
【0123】
リードは、細長いストリップの側部に配置される。リードは、細長いストリップに対して垂直に延在してもよい。
【0124】
別の側面では、本発明は、本明細書に記載されるような半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスを動作させる方法を提供する。この方法は、超伝導体コンポーネントが超伝導性を有する温度までデバイスを冷却する段階と;チャネル領域の周のまわりの半導体コンポーネントの領域から電荷キャリアを空乏化することによってチャネル領域を画定するために、一組の空乏ゲートにゲート電圧を印加する段階と;半導体コンポーネントの少なくともチャネル領域に磁場を印加する段階と;チャネル領域をリードに電気的に接続するよう、ヘルパー・ゲートにゲート電圧を印加する段階とを含む。
【0125】
ゲート電圧を一組の空乏ゲートに印加することは、外側セグメントをトリビアル・レジームに調整し、内側セグメントをトポロジカル・レジームに調整することを含みうる。
【0126】
本方法は、リードを通る電流を測定する段階をさらに含むことができる。チャネル領域を通る非局所的コンダクタンスが、そのような測定に基づいて導出されうる。
【0127】
半導体コンポーネントの領域がリードとして機能する実装では、ゲート電圧をヘルパー・ゲートに印加することにより、これらの領域が導体として振る舞う。
【0128】
本明細書の開示を与えられると、開示された技法の他の変形または使用事例が当業者に明らかになりうる。本開示の範囲は、記述された実施形態によって限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスであって:
2次元電子ガスまたは2次元正孔ガスをホストするように構成された半導体コンポーネントと;
前記半導体コンポーネントの上に配置された超伝導体コンポーネントであって、近接効果によって前記半導体コンポーネントのチャネル領域に超伝導性を誘起することができる超伝導体コンポーネントと;
前記半導体コンポーネントの上に配置された一組の空乏ゲートであって、前記チャネル領域のエッジに沿った前記半導体コンポーネントの領域から電荷キャリアを空乏化することによって前記チャネル領域の境界を画定するように構成された一組の空乏ゲートとを有しており、
前記超伝導体コンポーネントは、2つの端部を有する超伝導体材料の細長いストリップを含み、前記端部の少なくとも1つは電気的に接地され、
前記一組の空乏ゲートは:
前記チャネル領域の第1の外側セグメントを画定するための少なくとも1つの第1の外側空乏ゲートと;
前記チャネル領域の第2の外側セグメントを画定するための少なくとも1つの第2の外側空乏ゲートと;
前記第1の外側セグメントと前記第2の外側セグメントとの間の前記チャネル領域の内側セグメントを画定するための少なくとも1つの内側空乏ゲートとを含み、
当該デバイスは:
前記少なくとも1つの第1の外側空乏ゲートと前記少なくとも1つの内側空乏ゲートとの間の第1の空間と、前記第1の空間をゲートするための第1のヘルパー・ゲートとを含む第1の接合部と;
前記少なくとも1つの第2の外側空乏ゲートと前記少なくとも1つの内側空乏ゲートとの間の第2の空間と、前記第2の空間をゲートするための第2のヘルパー・ゲートとを含む第2の接合部とをさらに有しており、
前記第1および第2のヘルパー・ゲートは、それぞれ、前記チャネル領域をそれぞれのリードに電気的に接続するように動作可能である、
半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項2】
前記外側空乏ゲートは、前記外側セグメントをトリビアル・レジームに調整するように構成され、
前記少なくとも1つの内側空乏ゲートは、前記内側セグメントをトポロジカル・レジームに調整するように構成されている、
請求項1に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項3】
前記第1の外側セグメントおよび前記第2の外側セグメントはそれぞれ、前記半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスの最大超伝導コヒーレント長以上の長さを有する、および/または
前記第1および第2の外側セグメントはそれぞれ、少なくとも2μmの長さを有する、
請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項4】
前記超伝導体コンポーネントの両端は電気的に接地される、
請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項5】
前記超伝導体コンポーネントは、本質的には前記細長いストリップからな
前記細長いストリップは分岐していない、
請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項6】
前記一組の空乏ゲートと前記超伝導体コンポーネントとの間に配置された誘電体をさらに有している
請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項7】
記空乏ゲートの少なくとも1つは、前記超伝導体コンポーネントが前記内側セグメントを前記内側空乏ゲートから遮蔽するように、前記超伝導体コンポーネントの上に延在する、
請求項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの内側空乏ゲートは、単一の空乏ゲートである、請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの内側空乏ゲートは、一対の対向する空乏ゲートであり、前記対の各空乏ゲートは、前記内側セグメントのそれぞれの縁部に沿って配置される、請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項10】
前記第1および第2の外側空乏ゲートは、それぞれ、対向する空乏ゲートの対である、請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項11】
前記チャネル領域の第1の側の2つの隣接する空乏ゲートの間の空間は、前記第1の側とは反対の前記チャネル領域の第2の側の2つの隣接する空乏ゲートの間の空間から横方向にオフセットされている、請求項に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項12】
前記リードは、前記半導体コンポーネントの領域であり、前記ヘルパー・ゲートは、前記リードを常伝導状態に調整するように構成される、
請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項13】
前記リードは、金属リードである、
請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項14】
前記リードは、前記細長いストリップに対して垂直に延在する、請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項15】
前記半導体コンポーネントは、下部障壁と上部障壁との間に配置された量子井戸を含むヘテロ構造である、請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項16】
前記ヘルパー・ゲートは、前記チャネル領域と前記リードとの間に量子点接触を提供するように構成されたそれぞれの先端を有する、請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイス。
【請求項17】
請求項1または2に記載の半導体‐超伝導体ハイブリッド・デバイスを動作させる方法であって、当該方法は:
前記超伝導体コンポーネントが超伝導状態になる温度まで前記デバイスを冷却する段階と;
前記チャネル領域のエッジに沿った前記半導体コンポーネントの領域から電荷キャリアを空乏化することによって前記チャネル領域を画定するために、前記一組の空乏ゲートにゲート電圧を印加する段階と;
前記半導体コンポーネントの少なくとも前記チャネル領域に磁場を印加する段階と;
前記チャネル領域を前記リードに電気的に接続するよう、前記ヘルパー・ゲートにゲート電圧を印加する段階とを含
方法。
【請求項18】
該方法は、前記リードを通る電流を測定する段階をさらに含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記一組の空乏ゲートにゲート電圧を印加することは、前記外側セグメントをトリビアル・レジームに調整し、前記内側セグメントをトポロジカル・レジームに調整することを含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記リードは、前記ヘルパー・ゲートに前記ゲート電圧を印加することによって伝導性にされる前記半導体コンポーネントの領域である、
請求項17に記載の方法。

【国際調査報告】