IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セルジーン コーポレーションの特許一覧

特表2024-531115ヒストン脱メチル化阻害剤を調製するためのプロセス
<>
  • 特表-ヒストン脱メチル化阻害剤を調製するためのプロセス 図1
  • 特表-ヒストン脱メチル化阻害剤を調製するためのプロセス 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ヒストン脱メチル化阻害剤を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C07D405/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506883
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 US2022040540
(87)【国際公開番号】W WO2023023112
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,344
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508027464
【氏名又は名称】セルジーン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイド,ジェイアール.,リチャード エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゲールティ,マリル イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジエンシン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジエン
(57)【要約】
ヒストン脱メチル化阻害剤の調製に使用するための3-({[(4R)-7-{メチル[4-(プロパン-2-イル)フェニル]アミノ}-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸および新規な中間化合物を調製するための方法が、本明細書に提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物8
【化1】
またはその塩を調製する方法であって、
(a)化合物14
【化2】
またはその塩を加水分解して、
化合物15
【化3】
またはその溶媒和物を形成する工程と、
(b)前記化合物15またはその溶媒和物を酸と反応させて、前記化合物8を形成する工程と、
(c)任意選択で前記化合物8をその薬学的に許容可能な塩に変換する工程と
を含み、
式中、Mは、アルカリカチオンおよびプロトン化アミン塩基から選ばれる、
方法。
【請求項2】
前記Mは、Na、K、およびプロトン化ジシクロヘキシルアミンから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Mは、Naである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(a)は、前記化合物14の塩の上で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記塩は、HCl塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(a)は、アルカリ性水酸化物およびジシクロヘキシルアミンから選ばれる少なくとも1つの塩基を使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ性水酸化物は、NaOHおよびKOHから選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ性水酸化物は、NaOHである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(a)は、アルコールを溶媒として使用して実行される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコールは、エタノールおよびメタノールから選ばれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルコールは、エタノールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物15は、エタノール溶媒和物として形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(b)の前記酸は、HClである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(b)は、水性アルコールを溶媒として使用して実行される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水性アルコールは、エタノールおよびメタノールから選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水性アルコールは、メタノールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物8は、リジン塩8a
【化4】
を形成するために、前記工程(c)でリジンと反応させられる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(a)の前記化合物14またはその塩は、
(i)化合物13
【化5】
またはその塩および/もしくは溶媒和物を、
化合物16
【化6】
と反応させて、前記化合物14を形成する工程、および
(ii)任意選択で前記化合物14をその塩に変換する工程
によって調製される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(i)は、少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒を使用して実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程(i)は、塩基を使用して実行される、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記塩基は、t-アミルアミンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記工程(i)は、約60℃~100℃の温度で実行される、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記工程(i)は、約70℃~80℃の温度で実行される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物14は、塩酸塩を形成するために、前記工程(ii)でHClと反応させられる、請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物13またはその塩および/もしくは溶媒和物は、化合物12
【化7】
を酸性条件下で脱保護して、前記化合物13またはその塩および/もしくは溶媒和物を形成することによって調製される、請求項18から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記酸性条件は、HSOを水性アルコール中に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記水性アルコールは、メタノールまたはエタノールである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記水性アルコールは、メタノールである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物12を脱保護して、前記化合物13またはその塩および/もしくは溶媒和物を形成することは、約35℃~55℃の温度で実行される、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物12を脱保護して、前記化合物13またはその塩および/もしくは溶媒和物を形成することは、約35℃~45℃の温度で実行される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物12は、化合物11
【化8】
を、パラジウム触媒およびフェノールを使用して化合物10a
【化9】
と反応させて、前記化合物12を形成することによって調製される、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記パラジウム触媒は、
【化10】
から選ばれる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記パラジウム触媒は、
【化11】
である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記パラジウム触媒は、約2モル%の量で使用される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物11を前記化合物10aと反応させることは、2-メチルテトラヒドロフランを溶媒として使用して実行される、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物11を前記化合物10aと反応させることは、約80℃の温度で実行される、請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物11を前記化合物10aと反応させることは、塩基の存在下で実行される、請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記塩基は、CsCOである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記化合物11は、化合物4
【化12】
を、BocOと反応させて、前記化合物11を形成することによって調製される、請求項32から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記化合物4は、化合物3
【化13】
を、BH・DMSと反応させて、前記化合物4を形成することによって調製される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記化合物3を前記BH・DMSと反応させることは、2-メチルテトラヒドロフランを溶媒として使用して実行される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記化合物3を前記BH・DMSと反応させることは、約70℃の温度で実行される、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物14またはその塩は、化合物17
【化14】
を、パラジウム触媒およびフェノールを使用して前記化合物10a
【化15】
と反応させて、前記化合物14またはその塩を形成することによって調製される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記パラジウム触媒は、
【化16】
から選ばれる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記パラジウム触媒は、
【化17】
である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記パラジウム触媒は、少なくとも約2モル%の量で使用される、請求項44から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記パラジウム触媒は、約3モル%の量で使用される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記化合物17を前記化合物10aと反応させることは、2-メチルテトラヒドロフランを溶媒として使用して実行される、請求項44から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記化合物17を前記化合物10aと反応させることは、約80℃の温度で実行される、請求項44から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記化合物17を前記化合物10aと反応させることは、塩基の存在下で実行される、請求項44から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記塩基は、CsCOである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記化合物17は、化合物4a
【化18】
を、前記化合物16
【化19】
と反応させて、前記化合物17を形成することによって調製される、請求項44から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記化合物4aを前記化合物16と反応させることは、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)を触媒として使用して実行される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記化合物4aを前記化合物16と反応させることは、2-メチルテトラヒドロフランを溶媒として使用して実行される、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記化合物4aを前記化合物16と反応させることは、約30℃~70℃の温度で実行される、請求項53から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記化合物4aを前記化合物16と反応させることは、約50℃の温度で実行される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記化合物4aは、前記化合物3
【化20】
を、BH・DMSおよびHClと反応させて、前記化合物4aを形成することによって調製される、請求項53から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記化合物3を前記BH・DMSおよび前記HClと反応させることは、2-メチルテトラヒドロフランを溶媒として使用して実行される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記化合物3を前記BH・DMSおよび前記HClと反応させることは、約40℃~90℃の温度で実行される、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
前記化合物3を前記BH・DMSおよび前記HClと反応させることは、約70℃の温度で実行される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記化合物3は、化合物2
【化21】
を、ルテニウム触媒を使用して水素化して、前記化合物3を形成することによって調製される、請求項41から43および58から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記ルテニウム触媒は、Ru(OAc)[(s)-BINAP]である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記水素化は、メタノール、テトラヒドロフラン、またはこれらの組合せを溶媒として使用して実行される、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記水素化は、約30℃~50℃の温度で実行される、請求項62から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記水素化は、約35℃の温度で実行される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記水素化は、高圧下で実行される、請求項62から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記水素化は、約150psiの圧力を使用して実行される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記化合物2は、化合物1
【化22】
を(i)トリメチルシリルシアニドおよび(ii)酸と反応させて、前記化合物2を形成することによって調製される、請求項62から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記化合物1を前記(i)の前記トリメチルシリルシアニドと反応させることは、ZnIを使用して実行される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記化合物1を前記(i)の前記トリメチルシリルシアニドと反応させることは、ジクロロメタンを溶媒として使用して実行される、請求項69または70に記載の方法。
【請求項72】
前記(ii)の前記酸は、硫酸、酢酸、またはこれらの組合せである、請求項69から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記(ii)における前記酸との反応は、約70℃~80℃の温度で実行される、請求項69から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
【化23】
から選択される、化合物またはその塩および/もしくは溶媒和物。
【請求項75】
【化24】
である、請求項74に記載の化合物またはその塩および/もしくは溶媒和物。
【請求項76】
【化25】
である、請求項74に記載の化合物またはその塩および/もしくは溶媒和物。
【請求項77】
【化26】
である、請求項74に記載の化合物またはその塩および/もしくは溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月18日出願の米国仮出願第63/234,344号の優先権の利益を主張し、この出願は、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本開示は概して、3-({[(4R)-7-{メチル[4-(プロパン-2-イル)フェニル]アミノ}-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸の調製方法および新規な中間化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
3-({[(4R)-7-{メチル[4-(プロパン-2-イル)フェニル]アミノ}-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である化合物(本明細書では化合物8と称する)は、ヒストン脱メチル化のKDM4ファミリーの選択的阻害剤である(例えば、米国特許第9,242,968号を参照)。化合物8の化学構造を以下に示す。
【0004】
【化1】
この画期的なエピジェネティック修飾化合物(epigenetic-modifying compound)は、様々な種類の癌の処置において有望である。
【0005】
化合物8の臨床効果をさらに確立するために、大量の高純度化合物が必要とされる。したがって、一態様では、3-({[(4R)-7-{メチル[4-(プロパン-2-イル)フェニル]アミノ}-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸およびその塩を調製するための方法が本明細書に提供される。この化合物の調製に使用するための中間化合物も本明細書に提供される。
【発明の概要】
【0006】
特定の実施形態では、3-({[(4R)-7-{メチル[4-(プロパン-2-イル)フェニル]アミノ}-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸およびその塩をヒストン脱メチル化阻害剤として調製する方法が本明細書に記載される。このヒストン脱メチル化阻害剤の調製に使用するための中間化合物も本明細書に記載される。
【0007】
本実施形態は、非限定的な実施形態を例示することを意図する詳細な説明および実施例を参照することでより完全に理解することができる。
【0008】
一態様では、化合物8
【0009】
【化2】
またはその塩を調製する方法が本明細書に提供される。
【0010】
特定の態様では、化合物8
【0011】
【化3】
またはその塩を調製する方法であって、
(a)化合物14
【0012】
【化4】
またはその塩を加水分解して、化合物15
【0013】
【化5】
またはその溶媒和物を形成する工程と、
(b)化合物15またはその溶媒和物を酸と反応させて化合物8を形成する工程と、
(c)化合物8を任意選択でその薬学的に許容可能な塩に変換する工程と
を含み、
式中、Mは、アルカリカチオンおよびプロトン化アミン塩基から選ばれる、
方法が本明細書に提供される。
【0014】
一態様では、化合物8またはその塩の合成において中間物として有用である新規な化合物が本明細書に提供される。特定の態様では、
【0015】
【化6】
から選択される化合物、またはその塩および/もしくは溶媒和物が本明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、代替合成1における化合物2の化合物3への変換における圧力の効果を評価した圧力スクリーニング検査の結果を示す。
【0017】
図2図2は、異なる溶媒系における代替合成1からの化合物12の溶解度試験の結果を示す。
【0018】
発明の詳細な説明
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。以下の説明では、本開示の様々な実施形態の完全な理解をもたらすために、特定の具体的な詳細が記載される。前述の概要および以下の詳細な説明は、例示的かつ説明を目的としたものにすぎず、特許請求されるいかなる主題も限定するものではないことを理解されたい。参照によって本明細書に援用される任意の資料が本開示の明示された内容と矛盾する場合、明示された内容を優先する。本出願において、単数形の使用は、特に別段の記載がない限り、複数形を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の記載がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本出願において、「または」の使用は、別段の記載がない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」、ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。
【0019】
文脈上別段の要求がない限り、本明細書および特許請求の範囲を通して、用語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などのその変形は、包括的な意味で、すなわち「を含む(including)が、これに限定されない」と解釈されるべきである。
【0020】
本明細書において、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、または整数範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。また、ポリマーサブユニット、大きさ、または厚さなどの任意の物理的特徴に関して本明細書に列挙される任意の数の範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数を含むと理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「約」および「およそ」は、別段の指示がない限り、示された範囲、値、または構造の±20%、±10%、±5%、または±1%を意味する。
【0021】
本明細書を通して、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体における様々な箇所での語句「一実施形態では」または「一実施形態では」の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「塩」は、本明細書中で開示される化合物の酸または塩基塩を指す。「薬学的に許容可能な塩」は非毒性であることが理解される。薬学的に許容可能な塩の非限定的な例として、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。
【0023】
薬学的に許容可能な酸付加塩は、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および限定されないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、カンファー酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロりん酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-l,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、l-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などの有機酸を用いて形成される。
【0024】
薬学的に許容可能な塩基付加塩は、無機塩基または有機塩基の遊離酸への付加から調製される。無機塩基に由来する塩として、限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などが挙げられる。無機塩の非限定的な例として、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩などが挙げられる。有機塩基に由来する塩として、限定されないが、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンの塩、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂などが挙げられ、その非限定的な例として、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、/V-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが挙げられる。
【0025】
「任意選択の」または「任意選択で」は、状況の後に記載される事象が起こる場合も起こらない場合もあること、およびその説明が、この事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「任意選択で化合物Xをその塩に変換する」とは、化合物Xが塩に変換されてもされなくてもよいことを意味する。いくつかの実施形態では、化合物Xは塩に変換されるが、他の実施形態では、化合物Xは塩に変換されない。
【0026】
本発明の様々な特徴は、単一の実施形態の文脈で説明され得るが、特徴はまた、別個に、または任意の好適な組合せで提供されてもよい。逆に、本発明は、明確性のために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載され得るが、本発明は、単一の実施形態でも実装され得る。
【0027】
発見合成(Discovery Synthesis)
化合物8を調製するための米国特許第9,242,968号に記載される発見合成は、化合物8を、有害な反応工程およびポリマー不純物を生成するC-Nカップリング反応を含む大規模な合成に適さないものにするいくつかの工程を含む。したがって、化合物8を生成するための代替合成を開発する必要性がある。さらに、化合物8は、水および最も一般的な有機溶媒への溶解性が低く、非晶質樹脂(amorphous paste)として沈殿する傾向があり、大規模な濾過を困難にする。したがって、化合物8を塩などの代替形態で提供する必要性もある。
【0028】
化合物8を調製するための米国特許第9,242,968号に記載の発見合成をスキーム1に概説する。
【0029】
【化7】
【0030】
発見経路は、7-ブロモクロマノン(化合物1)とトリメチルシリルシアニドとの反応から開始して、対応するシアノヒドリンを得て、次いで、これを酸で加熱して、2,3,3-不飽和アミド2を得る。必要とされるキラリティーは、二重結合の高度に選択的な(~95%ee)ルテニウム触媒不斉水素化を介して導入され、これにより化合物3を得る。アミドをTHFにおいてBHで還元して、対応するアミン4を得る。化合物9および10を用いた2回の連続するパラジウム触媒C-Nカップリングのそれぞれにより、化合物6を得る。化合物6の加水分解により、遊離形態の化合物8を得る。
【0031】
スキーム1に概説される発見合成は、約16%の全体収率で6つの線形工程で化合物8を産生する。しかし、上記のように、発見合成は、いくつかの有害な反応工程およびポリマー不純物を生成するC-Nカップリング反応のため、大規模な生成に適していない。例えば、工程2は高圧水素化を含み、工程3はBH・THF反応の爆発の危険を含み、工程4は選択性の問題を有する。さらに、化合物8は、ほとんどの一般的な溶媒への溶解性が低く、非晶質樹脂として沈殿する傾向があるため、濾過による大規模な単離は不可能である。したがって、化合物8のさらなる開発は、(i)有害反応の排除およびより選択的なC-Nカップリング戦略を含む代替合成経路、および(ii)より好ましい形態を有する化合物8の代替形態、例えば、その塩(例えば、薬学的に許容可能な塩)を必要とする。
【0032】
したがって、一態様では、3-({[(4R)-7-{メチル[4-(プロパン-2-イル)フェニル]アミノ}-3,4-ジヒドロ-2H-l-ベンゾピラン-4-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボキシ酸(化合物8)を塩として提供する代替合成経路が本明細書に提供される。
【0033】
代替合成1
一態様では、スキーム2に概説される合成経路(「代替合成1」)に従って化合物8またはその塩を調製する方法が本明細書に提供される。
【0034】
【化8】
【0035】
スキーム2に示される化合物8のリジン塩を調製するための代替合成1の合成戦略は、保護アミン11と化合物10aとの間のバックワルドカップリング反応(Buchwald coupling reaction)を中心とする。他の塩もまた、代替合成1を使用して作製することができる。この反応は高度に選択的であり、所望のカップリング生成物12を唯一の生成物として良好な収率で得る。代替合成1は、2回の連続するC-Nカップリング工程(スキーム1、工程4および5)ではなく、単一のC-Nカップリング工程のみを必要とし、したがって、より費用効率の高い合成(貴金属触媒および重金属除去に関連する余分な処理に関連するコストの低減)を提供するため、発見経路に勝る利点を提供する。発見経路の第1のC-Nカップリング工程(スキーム1、工程4)の有意な制限は、反応の所望の生成物である臭化アリール5とアミン4の別の分子などとの反応から生じるポリマー不純物の形成である(以下のスキーム3を参照)。
【0036】
【化9】
ポリマー不純物は、所望のモノマーよりも可溶性が低い傾向があるため、除去することが困難であることが知られている。加えて、ポリマーが大きくなるにつれて、検出が極めて困難になる。これらの課題は、生成物純度への高いリスクを表す。この観察された問題に対する解決策は、代替合成1において提供される。
【0037】
大規模な製造のための発見経路の別の重大な欠点は、高圧水素化工程(スキーム1の工程2、約725psiまたは5MPa)である。多くの製造施設は、そのような極端な圧力で大規模に化学反応を行う性能を有していない。圧力スクリーニングは、水素化の選択性に対する圧力または温度の影響がほとんどないかまたは全くないことを示した。すべての場合において、良好な選択性が得られた。加えて、スクリーニングは、より低い水素圧力が生成物への変換に充分であることを示した。このように、代替合成1は、発見経路の高圧水素化工程を排除する。
【0038】
さらに、工程2の水素化反応からの残留金属が低減された高純度生成物(化合物3)の単離は、下流工程に有用であることが判明した。活性炭(例えば、Ecosorb C941)は、残留Ruを効果的に除去することが見出された。
【0039】
発見経路の別の欠点は、スキーム1の工程3のアミド還元におけるBH・THFの使用に関連する爆発の危険である。BH・THFは、40℃の自己加速分解温度(SADT)を有する。この試薬が40℃を超える断熱条件に曝露される場合、自己持続発熱反応は温度の上昇を引き起こす可能性があり、60℃を超える温度へのBH・THFの曝露は爆発につながる可能性がある。発見経路は、過剰なBH・THFを50~60℃で使用する。この危険を回避するために、熱的に安定したBH・DMS複合体を、代替合成1(スキーム2)のアミド還元反応(工程3)で使用した。この複合体は、暴走反応の危険性が有意に少なく、より高い温度で加熱することができる。BH・DMS反応は、化合物4を清潔に生成し、これを次の工程に直接入れることができる。したがって、代替合成1は、発見経路に関連する爆発の危険を排除する。
【0040】
全体として、代替合成1は、発見経路と比較して優れた純度およびキラル純度を有する化合物8およびその塩へのより効率的な経路を提供する。
【0041】
したがって、特定の実施形態では、化合物8
【0042】
【化10】
またはその塩を調製する方法であって、
(a)化合物14
【0043】
【化11】
またはその塩を加水分解して、
化合物15
【0044】
【化12】
またはその溶媒和物を形成する工程と、
(b)化合物15またはその溶媒和物を酸と反応させて、化合物8を形成する工程と、
(c)任意選択で化合物8をその薬学的に許容可能な塩に変換する工程と
を含み、
式中、Mは、アルカリカチオンおよびプロトン化アミン塩基から選ばれる、
方法が本明細書で開示される。
【0045】
特定の実施形態では、化合物15のMは、Na、K、およびプロトン化ジシクロヘキシルアミンから選ばれる。いくつかの実施形態では、Mは、Naである。
【0046】
特定の実施形態では、工程(a)は、化合物14の塩の上で実行される。いくつかの実施形態では、塩は、HCl塩、HBr塩、HI塩、HSO塩、HPO塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、シュウ酸塩およびベンゼンスルホン酸塩から選ばれる。特定の実施形態では、塩は、HCl塩である。いくつかの実施形態では、化合物14の塩は、化合物14a
【0047】
【化13】
である。
【0048】
特定の実施形態では、工程(a)は、少なくとも1つの塩基を使用して実行される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの塩基は、アルカリ性水酸化物およびジシクロヘキシルアミンから選ばれる。他の実施形態では、アルカリ性水酸化物は、NaOHおよびKOHから選ばれる。いくつかの実施形態では、アルカリ性水酸化物は、NaOHである。
【0049】
特定の実施形態では、工程(a)は、アルコールを溶媒として使用して実行される。いくつかの実施形態では、アルコールは、エタノールおよびメタノールから選ばれる。特定の実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0050】
特定の実施形態では、化合物15は、溶媒和物として形成される。いくつかの実施形態では、化合物15は、エタノール溶媒和物またはメタノール溶媒和物として形成される。特定の実施形態では、化合物15は、エタノール溶媒和物として形成される。いくつかの実施形態では、エタノール溶媒和物は、化合物15a
【0051】
【化14】
である。
【0052】
特定の実施形態では、工程(b)の酸は、HCl、HBr、HI、HSO、HPO、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、シュウ酸、およびベンゼンスルホン酸から選ばれる。いくつかの実施形態では、工程(b)の酸は、HClである。
【0053】
特定の実施形態では、工程(b)は、水性アルコールを溶媒として使用して実行される。いくつかの実施形態では、水性アルコールは、エタノールおよびメタノールから選ばれる。特定の実施形態では、水性アルコールは、メタノールである。
【0054】
特定の実施形態では、化合物8は、リジン塩(化合物8a)
【0055】
【化15】
を形成するために、工程(c)でリジンと反応させられる。
【0056】
特定の実施形態では、工程(a)の化合物14またはその塩は、
(i)化合物13
【0057】
【化16】
またはその塩および/もしくは溶媒和物を、
化合物16
【0058】
【化17】
と反応させて、化合物14を形成する工程、および
(ii)任意選択で化合物14をその塩に変換する工程
によって調製される。
【0059】
特定の実施形態では、工程(i)は、少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒を使用して実行される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、DMF、DMSO、THF、DMAc、N-メチルイミダゾール、アセトニトリル、ジメトキシエタン、および1,4-ジオキサンから選ばれる。特定の実施形態では、少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)から選ばれる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。
【0060】
特定の実施形態では、工程(i)は、塩基を使用して実行される。いくつかの実施形態では、塩基は、t-アミルアミン、CsCO、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、N-メチルイミダゾール(NMI)、EtN、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(Dabco)、ホウ酸緩衝液、DBU、TMG、NaOTMS、およびKHMDSから選ばれる。いくつかの実施形態では、塩基は、t-アミルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、tert-ブチルアミン、DBUおよびTMGから選ばれる。特定の実施形態では、塩基は、t-アミルアミンである。
【0061】
特定の実施形態では、工程(i)は、約60℃~100℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は、約70℃~90℃である。特定の実施形態では、温度は、約70℃~80℃である。
【0062】
特定の実施形態では、化合物14は、塩を形成するために、工程(ii)で酸と反応させられる。いくつかの実施形態では、工程(ii)の酸は、HCl、HBr、HI、HSO、HPO、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、シュウ酸、およびベンゼンスルホン酸から選ばれる。特定の実施形態では、工程(ii)の酸は、HClである。
【0063】
特定の実施形態では、化合物13またはその塩および/もしくは溶媒和物は、化合物12
【0064】
【化18】
を酸性条件下で脱保護して、化合物13またはその塩および/もしくは溶媒和物を形成することによって調製される。
【0065】
特定の実施形態では、酸性条件は、HSO、HCl、HBr、および/またはベンゼンスルホン酸を含む。特定の実施形態では、酸性条件は、HSOを含む。特定の実施形態では、酸性条件は、HSOを水性アルコール中に含む。いくつかの実施形態では、水性アルコールは、メタノールまたはエタノールである。特定の実施形態では、水性アルコールは、メタノールである。
【0066】
特定の実施形態では、化合物12を脱保護して、化合物13またはその塩および/もしくは溶媒和物を形成することは、約35℃~55℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、脱保護は、約35℃~45℃の温度で実行される。
【0067】
特定の実施形態では、化合物12は、化合物11
【0068】
【化19】
を、パラジウム触媒およびフェノールを使用して化合物10a
【0069】
【化20】
と反応させて、化合物12を形成することによって調製される。
【0070】
特定の実施形態では、パラジウム触媒は、Xphos Pd(クロチル)Cl、RuPhos Pd G2、XPhos Pd G2、BrettPhos Pd G3、CPhos Pd G3、DavePhos Pd G3、P(tBu)3 Pd G2、JosiPhos Pd G3、MorDalPhos Pd G3、BINAP Pd G3、SPhos Pd G2、SPhos Pd G2、tBuXPhos Pd G3、XantPhos Pd G3、およびXPhos Pd G3から選ばれる。いくつかの実施形態では、パラジウム触媒は、
【0071】
【化21】
から選ばれる。
【0072】
特定の実施形態では、パラジウム触媒は、
【0073】
【化22】
である。
【0074】
特定の実施形態では、パラジウム触媒は、約1モル%~3モル%の量で使用される。いくつかの実施形態では、パラジウム触媒は、約2モル%の量で使用される。
【0075】
特定の実施形態では、化合物11と化合物10aとの反応は、THFおよび2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる溶媒を使用して実行される。いくつかの実施形態では、溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0076】
特定の実施形態では、化合物11と化合物10aとの反応は、約70℃~90℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は、約80℃である。特定の実施形態では、温度は、約75℃である。
【0077】
特定の実施形態では、化合物11と化合物10aとの反応は、塩基の存在下で実行される。いくつかの実施形態では、塩基は、NaOPhおよびCsCOから選ばれる。特定の実施形態では、塩基は、CsCOである。いくつかの実施形態では、CsCOは、ミリングされる。
【0078】
特定の実施形態では、化合物11は、化合物4
【0079】
【化23】
を、BocOと反応させて、化合物11を形成することによって調製される。
【0080】
特定の実施形態では、化合物4は、化合物3
【0081】
【化24】
を、BH3・DMSと反応させて、化合物4を形成することによって調製される。
【0082】
特定の実施形態では、化合物3とBH・DMSとの反応は、トルエン、テトラヒドロフラン、および2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる溶媒を使用して実行される。いくつかの実施形態では、溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0083】
特定の実施形態では、化合物3とBH・DMSとの反応は、約55℃~65℃の温度で実行される。特定の実施形態では、温度は、約70℃である。
【0084】
特定の実施形態では、化合物3は、化合物2
【0085】
【化25】
を、ルテニウム触媒を使用して水素化して、化合物3を形成することによって調製される。いくつかの実施形態では、ルテニウム触媒は、(s)-RuCl[(p-シメン)(DM-SEGPHOS(登録商標))]Cl、(s)-RuCl[(p-シメン)(DTBM-SEGPHOS(登録商標))]Cl、(S)-RuCl[(p-シメン)(BINAP)]Cl、(s)-RuCl[(p-シメン)(T-BINAP)]Cl、(s)-RuCl[p-シメン)(H8-BINAP)]Cl、(s)-RuCl[(p-シメン)(SEGPHOS(登録商標))]Cl、およびRu(OAc)[(s)-BINAP]から選ばれる。いくつかの実施形態では、ルテニウム触媒は、Ru(OAc)[(s)-BINAP]である。
【0086】
特定の実施形態では、水素化は、メタノール、テトラヒドロフラン、またはこれらの組合せを溶媒として使用して実行される。いくつかの実施形態では、水素化は、メタノールおよびテトラヒドロフランの組合せを溶媒として使用して実行される。
【0087】
特定の実施形態では、水素化は、約30℃~50℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は、約30℃~45℃である。特定の実施形態では、温度は、約35℃である。
【0088】
特定の実施形態では、水素化は、高圧下で実行される。いくつかの実施形態では、水素化は、約60psi~200psiの圧力を使用して実行される。特定の実施形態では、圧力は、約75psi~200psiである。いくつかの実施形態では、圧力は、約100psi~150psiである。特定の実施形態では、圧力は、約150psiである。
【0089】
特定の実施形態では、化合物2は、化合物1
【0090】
【化26】
を(i)トリメチルシリルシアニドおよび(ii)酸と反応させて、化合物2を形成することで調製される。特定の実施形態では、化合物1と(i)のトリメチルシリルシアニドとの反応は、ZnIまたはZnClを使用して実行される。いくつかの実施形態では、化合物1と(i)のトリメチルシリルシアニドとの反応は、ZnClを使用して実行される。特定の実施形態では、化合物1と(i)のトリメチルシリルシアニドとの反応は、ZnIを使用して実行される。
【0091】
特定の実施形態では、化合物1と(i)のトリメチルシリルシアニドとの反応は、トルエン、ジクロロメタン、およびジクロロメタンから選ばれる溶媒を使用して実行される。いくつかの実施形態では、溶媒は、ジクロロメタンである。
【0092】
特定の実施形態では、化合物2の調製において、(ii)の酸は、硫酸、酢酸、またはこれらの組合せである。いくつかの実施形態では、(ii)の酸は硫酸である。特定の実施形態では、(ii)の酸は酢酸である。いくつかの実施形態では、(ii)の酸は硫酸および酢酸の組合せである。
【0093】
特定の実施形態では、化合物2の調製において、(ii)の酸との反応は、約50℃~100℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は約50℃~90℃である。いくつかの実施形態では、温度は約50℃~80℃である。特定の実施形態では、温度は約70℃~80℃である。
【0094】
代替合成2
別の態様では、スキーム4(「代替合成2」)に概説される合成経路に従って化合物8またはその塩を調製する方法が本明細書に提供される。
【0095】
【化27】
【0096】
スキーム4に示される化合物8のリジン塩を調製するための合成戦略は、同じ結合形成配列を使用する発見経路(スキーム1)の変形形態である。他の塩もまた、代替合成2を使用して作製することができる。代替合成2は、非選択的バックワルドカップリング(スキーム1、工程4)を、化合物4aと4-シアノ-3-フルオロピリジン(化合物16)との選択的SAr反応で置き換えて、化合物17を得る。化合物17と化合物10aとのカップリングは、化合物14を提供し、これはまた、代替合成1における中間物である。
【0097】
代替合成2は、発見経路で必要とされる2回の連続するC-Nカップリング工程(スキーム1、工程4および5)とは対照的に、単一のC-Nカップリング工程のみを必要とする。したがって、代替合成2は、貴金属触媒および重金属除去に関連する余分な処理に関連するコストの低減による、より費用効率の高い合成である。加えて、代替合成1について上述したように、発見経路の第1のC-Nカップリング工程(工程4、スキーム1)の有意な制限は、反応の所望の生成物(化合物5)とアミン4の別の分子などとの反応から生じるポリマー不純物の形成である(スキーム3)。ポリマー不純物の同定および除去に関連する困難は、発見経路によって提供される生成物純度に影響を及ぼす。この問題は、代替合成2を使用することによって解決することができる。
【0098】
代替合成2はまた、発見経路(スキーム1の工程2、約725psiまたは5MPa)の高圧水素化工程を排除する。150psiの水素圧力が水素化に充分であることが見出された。
【0099】
代替合成2は、発見経路で使用される爆発性である可能性があるBH・THF試薬(スキーム1、工程3)とは対照的に、アミド還元反応において熱的に安定したBH・DMS複合体を利用する(スキーム4、工程3)。上述のように、BH・DMSは、暴走反応の危険性が著しく少なく、より高い温度で加熱することができる。したがって、代替合成2は、発見経路に関連する爆発の危険を排除する。
【0100】
全体として、代替合成2は、発見経路と比較して優れた純度およびキラル純度を有する化合物8およびその塩へのより効率的な経路を提供する。
【0101】
したがって、特定の実施形態では、化合物8
【0102】
【化28】
またはその塩を調製する方法であって、
(a)化合物14
【0103】
【化29】
またはその塩を加水分解して、
化合物15
【0104】
【化30】
またはその溶媒和物を形成する工程と、
(b)化合物15またはその溶媒和物を酸と反応させて、化合物8を形成する工程と、
(c)化合物8を任意選択でその薬学的に許容可能な塩に変換する工程と
を含み、
式中、Mは、アルカリカチオンおよびプロトン化アミン塩基から選ばれる、
方法。
【0105】
特定の実施形態では、化合物15のMは、Na、K、およびプロトン化ジシクロヘキシルアミンから選ばれる。いくつかの実施形態では、Mは、Naである。
【0106】
特定の実施形態では、工程(a)は、化合物14の塩の上で実行される。いくつかの実施形態では、塩は、HCl塩、HBr塩、HI塩、HSO塩、HPO塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、シュウ酸塩およびベンゼンスルホン酸塩から選ばれる。特定の実施形態では、塩は、HCl塩である。いくつかの実施形態では、化合物14の塩は、化合物14a
【0107】
【化31】
である。
【0108】
特定の実施形態では、工程(a)は、少なくとも1つの塩基を使用して実行される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの塩基は、アルカリ性水酸化物およびジシクロヘキシルアミンから選ばれる。他の実施形態では、アルカリ性水酸化物は、NaOHおよびKOHから選ばれる。いくつかの実施形態では、アルカリ性水酸化物は、NaOHである。
【0109】
特定の実施形態では、工程(a)は、アルコールを溶媒として使用して実行される。いくつかの実施形態では、アルコールは、エタノールおよびメタノールから選ばれる。特定の実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0110】
特定の実施形態では、化合物15は、溶媒和物として形成される。いくつかの実施形態では、化合物15は、エタノール溶媒和物またはメタノール溶媒和物として形成される。特定の実施形態では、化合物15は、エタノール溶媒和物として形成される。いくつかの実施形態では、エタノール溶媒和物は、化合物15a
【0111】
【化32】
である。
【0112】
特定の実施形態では、工程(b)の酸は、HCl、HBr、HI、HSO、HPO、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、シュウ酸、およびベンゼンスルホン酸から選ばれる。いくつかの実施形態では、工程(b)の酸は、HClである。
【0113】
特定の実施形態では、工程(b)は、水性アルコールを溶媒として使用して実行される。いくつかの実施形態では、水性アルコールは、エタノールおよびメタノールから選ばれる。特定の実施形態では、水性アルコールは、メタノールである。
【0114】
特定の実施形態では、化合物8は、リジン塩(化合物8a)
【0115】
【化33】
を形成するために、工程(c)でリジンと反応させられる。
【0116】
特定の実施形態では、化合物14またはその塩は、化合物17
【0117】
【化34】
を、パラジウム触媒およびフェノールを使用して化合物10a
【0118】
【化35】
と反応させて、化合物14またはその塩を形成することによって調製される。
【0119】
特定の実施形態では、パラジウム触媒は、Xphos Pd(クロチル)Cl、RuPhos Pd G2、XPhos Pd G2、BrettPhos Pd G3、CPhos Pd G3、DavePhos Pd G3、P(tBu)3 Pd G2、JosiPhos Pd G3、MorDalPhos Pd G3、BINAP Pd G3、SPhos Pd G2、SPhos Pd G2、tBuXPhos Pd G3、XantPhos Pd G3、およびXPhos Pd G3から選ばれる。いくつかの実施形態では、パラジウム触媒は、
【0120】
【化36】
から選ばれる。
【0121】
特定の実施形態では、パラジウム触媒は、
【0122】
【化37】
である。
【0123】
特定の実施形態では、パラジウム触媒は、少なくとも約2モル%の量で使用される。いくつかの実施形態では、パラジウム触媒は、約3モル%の量で使用される。
【0124】
特定の実施形態では、化合物17と化合物10aとの反応は、THF、トルエン、ジオキサン、および2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる溶媒を使用して、水ありおよび水なしで実行される。いくつかの実施形態では、溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0125】
特定の実施形態では、化合物17と化合物10aとの反応は、約70℃~90℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は、約75℃~80℃である。特定の実施形態では、温度は、約80℃である。
【0126】
特定の実施形態では、化合物17と化合物10aとの反応は、塩基の存在下で実行される。いくつかの実施形態では、塩基は、EtN、DIPEA、DBU、およびCsCOから選ばれる。特定の実施形態では、塩基は、CsCOである。いくつかの実施形態では、CsCOは、ミリングされる。
【0127】
特定の実施形態では、化合物17は、化合物4a
【0128】
【化38】
を、化合物16
【0129】
【化39】
と反応させて、化合物17を形成することによって調製される。
【0130】
特定の実施形態では、化合物4aと化合物16との反応は、TMG、t-ブチルアミン、tert-アミルアミン、およびDBUから選ばれる触媒を使用して実行される。
いくつかの実施形態では、触媒は、DBUである。
【0131】
特定の実施形態では、化合物4aと化合物16との反応は、DMSO、DMF、DMAc、NMP、N-メチルイミダゾール、アセトニトリル、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、および2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる溶媒を使用して実行される。いくつかの実施形態では、溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0132】
特定の実施形態では、化合物4aと化合物16との反応は、約30℃~70℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は、約40℃~60℃である。特定の実施形態では、温度は、約50℃である。
【0133】
特定の実施形態では、化合物4aは、化合物3
【0134】
【化40】
を、BH・DMSおよびHClと反応させて、化合物4aを形成することによって調製される。
【0135】
特定の実施形態では、化合物3とBH・DMSおよびHClとの反応は、トルエン、テトラヒドロフラン、および2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる溶媒を使用して実行される。いくつかの実施形態では、溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0136】
特定の実施形態では、化合物3とBH・DMSおよびHClとの反応は、約40℃~90℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は、約50℃~80℃である。いくつかの実施形態では、温度は、約60℃~70℃である。特定の実施形態では、温度は、約70℃である。
【0137】
特定の実施形態では、化合物3は、化合物2
【0138】
【化41】
を、ルテニウム触媒を使用して水素化して化合物3を形成することによって調製される。特定の実施形態では、ルテニウム触媒は、(s)-RuCl[(p-シメン)(DM-SEGPHOS(登録商標))]Cl、(s)-RuCl[(p-シメン)(DTBM-SEGPHOS(登録商標))]Cl、(S)-RuCl[(p-シメン)(BINAP)]Cl、(s)-RuCl[(p-シメン)(T-BINAP)]Cl、(s)-RuCl[p-シメン)(H8-BINAP)]Cl、(s)-RuCl[(p-シメン)(SEGPHOS(登録商標))]Cl、およびRu(OAc)[(s)-BINAP]から選ばれる。いくつかの実施形態では、ルテニウム触媒は、Ru(OAc)[(s)-BINAP]である。
【0139】
特定の実施形態では、水素化は、メタノール、テトラヒドロフラン、またはこれらの組合せを溶媒として使用して実行される。いくつかの実施形態では、水素化は、メタノールおよびテトラヒドロフランの組合せを使用して実行される。
【0140】
特定の実施形態では、水素化は、約30℃~50℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は、約30℃~40℃である。特定の実施形態では、温度は、約35℃である。
【0141】
特定の実施形態では、水素化は、高圧下で実行される。いくつかの実施形態では、水素化は、約60psi~200psiの圧力を使用して実行される。特定の実施形態では、圧力は、約75psi~200psiである。いくつかの実施形態では、圧力は、約100psi~150psiである。特定の実施形態では、圧力は、約150psiである。
【0142】
特定の実施形態では、化合物2は、化合物1
【0143】
【化42】
を(i)トリメチルシリルシアニドおよび(ii)酸と反応させて、化合物2を形成することで調製される。特定の実施形態では、化合物1と(i)のトリメチルシリルシアニドとの反応は、ZnIまたはZnClを使用して実行される。いくつかの実施形態では、化合物1と(i)のトリメチルシリルシアニドとの反応は、ZnClを使用して実行される。特定の実施形態では、化合物1と(i)のトリメチルシリルシアニドとの反応は、ZnIを使用して実行される。
【0144】
特定の実施形態では、化合物1と(i)のトリメチルシリルシアニドとの反応は、トルエン、ジクロロメタン、およびジクロロメタンから選ばれる溶媒を使用して実行される。いくつかの実施形態では、溶媒は、ジクロロメタンである。
【0145】
特定の実施形態では、化合物2の調製において、(ii)の酸は、硫酸、酢酸、またはこれらの組合せである。いくつかの実施形態では、(ii)の酸は硫酸である。特定の実施形態では、(ii)の酸は酢酸である。いくつかの実施形態では、(ii)の酸は硫酸および酢酸の組合せである。
【0146】
特定の実施形態では、化合物2の調製において、(ii)の酸との反応は、約50℃~100℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は約50℃~90℃である。いくつかの実施形態では、温度は約50℃~80℃である。特定の実施形態では、温度は約70℃~80℃である。
【0147】
中間化合物
一態様では、化合物8またはその塩の合成において中間物として有用である新規な化合物が本明細書に提供される。特定の実施形態では、化合物は、
【0148】
【化43】
から選択される化合物、またはその塩および/もしくは溶媒和物である。
【0149】
特定の実施形態では、化合物は、化合物13またはその塩および/もしくは溶媒和物である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物13の塩である。特定の実施形態では、化合物は、化合物13の溶媒和物である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物13の溶媒和物-塩である。特定の実施形態では、化合物は、
【0150】
【化44】
である。
【0151】
特定の実施形態では、化合物は、化合物14またはその塩および/もしくは溶媒和物である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物14の塩である。特定の実施形態では、化合物は、
【0152】
【化45】
である。
【0153】
特定の実施形態では、化合物は、化合物17またはその塩および/もしくは溶媒和物である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物17の塩である。特定の実施形態では、化合物は、その溶媒和物である。
【実施例
【0154】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供され、提供される特許請求の範囲の範囲を制限するものではない。
【0155】
Bruker 300MHz、400MHz、または500MHz分光器上で、Hおよび13Cの核磁気共鳴(NMR)スペクトルを得て、残留CHCl、CDSO-CDなどに対して参照した値をppm(δ)で報告する。スピン結合定数(Spin-spin coupling constant)を、Hzで結合定数(J)を用いて、シングレット(s)、ダブレット(d)、トリプレット(t)、カルテット(q)、クインテット(quint)、ブロード(br)、またはマルチプレット(m)として記載した。Agilent 6230Bタイム・オブ・フライト(time-of-flight)(ToF)質量分析計(mass spectrometer)を使用して、質量スペクトル(mass spectra)を得た。CAPSOを内部キャリブラント(internal calibrant)として使用して、ESI陽イオンモードおよびESI陰イオンモードで、正確な質量分析を行った。
【0156】
使用される略称は以下の通りである。
【0157】
【表1-1】
【0158】
【表1-2】
【0159】
【表1-3】
【0160】
【表1-4】
【0161】
【表1-5】
【0162】
実施例1。化合物8のリジン塩の代替合成1
代替合成1の合成経路は、上記スキーム2で概説され、以下でより詳細に説明される。
【0163】
【化46】
【0164】
トリメチルシリルシアニドおよびZnClを使用して化合物1から化合物2を調製した。より具体的には、500Lのガラス内張りジャケット付き反応器にN下で、7-ブロモクロマン-4-オン(1)(7.7kg)、ZnI(260g)、およびジクロロメタン(141kg)を投入した。次いで、TMSCN(5.1kg)を反応器に投入し、溶液を加熱還流し、約3時間~5時間熟成させた後、変換について評価した。次いで、反応混合物を、N流を用いて30℃未満の内部温度で1体積~2体積に濃縮した。氷酢酸(50.6kg)を反応混合物に投入し、混合物を15℃~25℃に冷却した。水(5.0kg)を混合物に15℃~25℃の間で投入し、内部温度を15℃~70℃(実際には~45℃)の間で維持しながら、次いで濃縮したHSO(38.2kg)を混合物に滴下して添加した。次いで、溶液を60℃~70℃に加熱し、熟成させた(7時間~9時間)。混合物の内部温度を50℃~60℃に調整し、水(331kg)を同じ温度範囲で反応器に滴下した。得られた懸濁液を撹拌し、熟成させ(1~2時間)、次いで10℃/時間で5℃~15℃に冷却し、次いでスラリーを濾過した。得られたウェットケークを、pH=6~7およびCN-が検出されなくなるまで水(144kg)で洗浄し、続いて乾燥させた。黄色固体の粗生成物(18.3kg)を得た。次いで、得られた粗固体および酢酸エチル(302kg)を500Lのガラス内張りジャケット付き反応器に入れ、続いて熟成させた(約1時間)。次いで、この混合物にEcosorb-941活性炭(800g)を入れ、混合物を35℃~45℃に加熱し、熟成させた(1~2時間)。得られたスラリーを20℃~30℃に冷却し、セライト(6.0kg)を通して濾過した。セライトケーキを酢酸エチル(16kg)で2回洗浄し、有機濾液を合わせ、50℃未満の真空下で約1体積~3体積に濃縮した。得られた溶液をジクロロメタン(138kg)と溶媒交換して、50℃未満の蒸留結晶化によってスラリーを生成する。得られたスラリーを濾過し、ウェトケーキをジクロロメタン(5.0kg)で洗浄し、続いて45℃で8時間乾燥させて、化合物2(6.08kg)を収率70%で得た。H NMR(500MHz、CDCl)δ(ppm)=7.46(d、J=8.2Hz、1H)、7.09(dd、J=2.0Hz、8.2Hz、1H)、7.04(d、J=2.0Hz、1H)、6.31(t、J=3.9Hz、1H)、5.72(br s、2H)、4.81(d、J=4.0Hz、2H)。13C NMR(126MHz、CDCl)δ(ppm)=167.8、154.9、131.5、126.8、124.9、124.5、123.2、119.8、118.5、77.2、76.9、76.7、64.7。C10BrNOについて計算されたHRMS(ESI)m/z(M+H):253.9811、実測値:253.9817。
【0165】
【化47】
【0166】
発見経路における化合物2の水素化(上記スキーム1)に伴う1つの問題は、高圧(約725psi)および拡張可能な単離手順の欠如であった。そこで、圧力/温度スクリーニングを行って反応を評価した。結果は、水素化の選択性に圧力または温度の影響がほとんどないか全くないことを示した。結果はさらに、60psi程度の低い水素圧力が生成物への変換を観察するのに充分であることを示した(図1を参照)。反応条件は、装置能力、反応速度、および生成物品質のバランスをとるように最終条件を選択した。
【0167】
発見経路(上記スキーム1)における水素化工程に伴う別の問題は、化合物3の単離であった。したがって、活性炭スクリーニングを行って、残留Ruを除去するのに有効な媒体を同定した。これらの結果に基づいて、化合物3のスケールアップ合成を以下のように行った。
【0168】
500Lのステンレス鋼反応器にN下で、化合物2(5.35kg)、Ru(OAc)[(S)-BINAP](0.23kg)、THF(49kg)、およびMeOH(44kg)を投入した。内容物を撹拌し、15℃~25℃の間で熟成させた(~0.5時間)。次いで、反応器をNで3回、次いでHで3回パージし、最後に150psiに調整し、加熱し(35℃~45℃)、混合物を熟成させた(10時間~20時間)。変換の完了後、温度を調整し(20℃~30℃)、活性炭Excosorb C-941(3.0kg)を反応器に投入し、熟成させた(16時間~24時間)。得られたスラリーをセライト(5.0kg)で濾過し、パッドをTHF(11.0kg)で洗浄した。得られた合わせられた有機濾液を真空下で50℃未満に濃縮した(6体積~7体積)。この物質を50℃未満の真空下でIPAc(114kg)に溶媒交換し、アッセイして2%未満のTHFに到達させた。次いで、得られたIPAc溶液を加熱し(60℃~70℃)、ヘプタン(42.0kg)を滴下した(NLT 6時間)。次いで、反応物を熟成させた(1時間~2時間)。得られたスラリーを15℃~25℃に冷却し(6℃~10℃/時)、熟成させた(5時間~10時間)。得られたスラリーを濾過し、ケーキを(1:2)IPAc/n-ヘプタン(14.0kg)で洗浄した。得られたウェットケークを乾燥させ(40℃~50℃で24~36時間)、所望の化合物3(4.8kg、収率89%、95%ee)を得た。H NMR(500MHz、CDSOCD)δ(ppm)=7.61(br s、1H)、7.12-6.96(m、4H)、4.35-4.29(m、1H)、4.13(ddd、J=3.5Hz、6.4Hz、10.5Hz、1H)、3.60(t、J=5.8Hz、1H)、2.09-1.95(m、2H)。13C NMR(126MHz、CDSOCD、300K)δ(ppm)=174.5、155.5、131.2、122.8、120.6、119.7、119.1、63.7、39.4、25.0。C1011BrNOについて計算されたHRMS(ESI)m/z(M+H):255.9968、実測値:255.9966。
【0169】
【化48】
【0170】
発見経路(上記スキーム1)における化合物3のアミド還元に伴う1つの問題は、手順が50℃~60℃で過剰なBH・THFを使用したことであった。上述のように、これらの状態は爆発の危険を表す。この危険を回避するために、熱的に安定したBH・DMS複合体を使用してアミド還元反応(以下で論じる)を開発した。複合体は、暴走反応のリスクを有意に低減しながら、より高い温度で加熱することができる。
【0171】
したがって、化合物3のアミド還元を、BH・DMS複合体を使用して行った。化合物4を単離せず、代わりに、上記スキームに示すように、ステップ4にはめ込んだ。
【0172】
化合物4を含有する粗反応混合物を保護工程4にはめ込むことは実行可能だったが、その後の化合物11の結晶化は著しい課題を示した。化合物11は、固体を形成する前に油化する傾向を有し、より低い生成物品質および反応器壁上の著しいケーキングをもたらす。この挙動は、いくつかの要因の組合せに由来する。化合物11は、ヘプタンを含むいくつかの一般的な有機溶媒中で高い溶解度を有し、結晶化をアルコール/水の混合物に限定する(DMSO/水の溶解度曲線は急峻すぎる)。化合物11は65℃~70℃の融点を有し、融点はn-PrOH/水の混合物(溶解度に基づいて選択された溶媒系)中で30℃に低下する。加えて、工程3からプロセスをはめ込んだため、アミド還元からのすべての不純物は結晶化に持ち込まれた。
【0173】
化合物11の油化の課題は、ワークアップ後の粗反応混合物をシリカプラグに通して濾過することにより解決した。この工程は、化合物11が油化する傾向に寄与する極性不純物を除去する可能性が高い。また、水の緩やかな添加および20℃未満の温度での結晶化が、化合物11の油化を回避するのに重要であることが発見された。このプロトコルに基づく結晶化は、表1に示されるように、スケールアップにおいてロバストであることが証明され、約4kgのスケールで首尾よく実装された。
【0174】
したがって、化合物11を以下のように大規模に調製した。250Lのガラス内張り容器に、化合物3(4.25kg)および2-MeTHF(57.0kg)をN下で投入し、溶液を55℃~65℃に加熱した。上記温度に達した後、未希釈のBH-DMS(5.7kg)を反応混合物に55℃~65℃で約1時間かけて投入した。添加の完了後、混合物を加熱し(70℃~80℃)、熟成させ(16時間~18時間)、続いてHPLC分析により評価した。次いで、混合物を冷却し(-10℃~0℃)、続いて、6N HCl(6.6kg、3時間~4時間かけて投入)および水(7.0kg、1時間~2時間かけて投入)を滴加して、クエンチ溶液(約1のpH)を得た。5N NaOH溶液(25.0kg)を滴下して投入し、温度を10℃未満に維持し、pHを13~14に調整した。次いで、温度を20℃~30℃に調整し、層を分離し、水層を2-MeTHF(6kg)で洗浄し、得られた有機層を合わせた。得られた有機層に、別の反応器で調製した2-MeTHF(4kg)中のBocO(4.35kg、1.05×重量)の溶液を投入した。反応器トレインを2-MeTHF(3kg)ですすぎ、これを反応混合物に添加した。得られた混合物を熟成させた(14時間~16時間)。次いで、反応物をクエンチし、5重量%NaCl溶液(26kg、5.0×重量)で2回洗浄し、シリカゲルパッド(3.0kg、0.5×重量)を通して濾過し、2-MeTHF(9kg)ですすいだ。得られた溶液を45℃未満の内部温度で真空下において1体積~3体積に濃縮した。次いで、溶液を50℃以下でn-プロピルアルコール(75.8kg、17.8重量)と溶媒交換し、次いで20℃~30℃の内部温度に冷却した。次いで、反応混合物に水(12.75kg、3.0×重量)を滴下して投入し(1.5時間かけて)、播種した(130g、0.03×重量)。温度を0℃~15℃に調整し(0.2℃/分の速度で5℃を目標として)、スラリーを熟成させた(16時間~18時間)。追加の水(17.1kg、3.7×重量)をスラリーに0℃~15℃で滴下して投入した(約1.5時間かけて)。次いで、混合物を0℃~10℃で濾過し、得られたウェットケークを冷(1:4)n-プロピルアルコール:水(15.0kg、3.5×重量)で洗浄して、化合物11(4.65kg、92%ee)を得た。H NMR(500MHz、CDSOCD)δ(ppm)=7.11-7.00(m、3H)、6.95(d、J=2.0Hz、1H)、4.17(td、J=4.1Hz、11.0Hz、1H)、4.07(dt、J=2.7、10.6Hz、1H)、3.23(td、J=5.4、13.5Hz、1H)、3.03(ddd、J=6.4Hz、9.5Hz、13.7Hz、1H)、2.81(qd、J=4.7Hz、9.4Hz、1H)、1.94-1.75(m、2H)、1.38(s、9H)。13C NMR(126MHz、CDSOCD)δ(ppm)=156.3、156.0、131.8、123.6、123.3、119.9、119.5、78.2、63.1、45.2、33.8、28.7、24.1。C1519BrNOについて計算されたHRMS(ESI)m/z(M-H):340.0554、実測値:340.0538。
【0175】
【表2】
【0176】
【化49】
【0177】
化合物12を、化合物11(上記工程3および4から調製した)および化合物10aから合成した。
【0178】
化合物10aは、以下のように市販の4-イソプロピルアニリンから調製することができる。反応器に、4-イソプロピルアニリン(500g、3.70mol、1.0当量)およびMeOH(2.5L、5×体積)をN下で投入する。パラホルムアルデヒド(156g、5.20mol、1.4当量)を添加する。得られたスラリーを20℃で撹拌し、NaOMe(2.54L、3.0当量)の25重量%溶液を投入し、内部温度を32℃未満に維持する。得られた溶液を室温で終夜(16時間)撹拌させる。次いで、溶液にNaBH(182g、4.81mol、1.3当量)を少しずつ投入する。次いで、得られた溶液を60℃で2時間加熱する。次いで、反応混合物を室温に冷却し、1M KOH(2L、4×体積)でクエンチする。メタノールを減圧下で除去する。水(2.5L、5×体積)およびDCM(1.5L、3×体積)を添加し、得られたエマルジョンをセライトパッドに通して濾過することによって破壊する。層を分離し、水層をDCM(1L、2×体積)でさらに抽出する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で低体積に濃縮する(約2×体積)。混合物を反応器に入れ、-40℃に冷却し、EtO中の5M HCl(2.5当量)を30分間かけて添加し、1時間撹拌する。次いで、石油エーテル(3L、6×体積)を添加し、さらに1時間撹拌する。沈殿した固体を濾過によって単離し、石油エーテル(2×1L、2×体積)で洗浄する。この物質を真空下で乾燥させて、粗化合物10aを95%~110%の収率で80%~88%の純度で得る。粗生成物(400g)を反応器に入れ、ヘプタン(6L、15体積)を添加し、90℃に加熱する。スラリーに1-ブタノール(0.6L、1.5体積)を溶解が得られるまで25分~30分かけて添加する。次いで、反応物をさらに60分間加熱する。溶液を3時間かけて室温に冷却させ、30℃になると、物質を濾過により単離し、ヘプタン(2×1L、2.5体積)で洗浄し、真空下で乾燥させて、HPLCにより約97%~98%の純度で77%~81%の回収率を得る。第2の再結晶化が行われる。化合物10a(500g)を反応器に入れる。ヘプタン(6.5L、13体積)を添加し、90℃に加熱し、スラリーに1-ブタノール(1.56体積~1.95体積)を溶解が得られるまで25分~30分かけて添加し、次いでさらに60分間加熱した。溶液を3時間かけて室温に冷却させ、濾過し、ヘプタン(2×1L、2.0体積)で洗浄して、化合物10a(432g)を得る。H NMR(500MHz、CDSOCD)δ(ppm)=7.16(d、J=7.6Hz、2H)、7.09-6.93(m、3H)、6.40(dd、J=2.4Hz、8.4Hz、1H)、6.23(d、J=2.4Hz、1H)、4.13-3.97(m、2H)、3.36-3.27(m、1H)、3.24-3.12(m、3H)、3.07-2.93(m、1H)、2.88-2.70(m、2H)、1.95-1.75(m、2H)、1.39(s、9H)、1.19-1.18(d、6H)。13C NMR(126MHz、CDSOCD)δ(ppm)=155.8、154.9、148.5、146.3、142.3、129.6、127.0、122.1、115.1、110.8、105.4、77.6、62.2、45.0、33.0、32.7、28.2、28.1、24.2、24.0。C2535について計算されたHRMS(ESI)m/z(M+H):411.2642、実測値:411.2631。
【0179】
化合物10aとのC-Nカップリング反応による化合物11の化合物12への変換は、代替合成1の開発における別の課題であった。一連の検査を行って48を超える異なる条件をスクリーニングし、最適な触媒、溶媒、および塩基を同定した(例えば、表2~4を参照)。
【0180】
【表3】
【0181】
【表4】
【0182】
【表5】
【0183】
表2は、異なる溶媒を使用した触媒スクリーニングの結果を示す。DP:IS(所望の生成物面積対内部標準面積)は、マルチウェルプレート間の相対溶液収率を測定するために使用される比率項である。結果は、溶液収率の相対ランクを与える。トルエンは、これらの条件下で良好な結果をもたらしたが、最終的には、所望の生成物の溶解度が低いため、選ばれなかった。
【0184】
表3の結果は、含水フェノール塩基が許容可能でないことを示す。結果はまた、水の添加と比較した添加されたフェノールの効果を示す。フェノールは、無水KOPhおよび/またはCsOPhを置き換えるために過去に使用されてきたが(Hartwig et.Al.,J.Am.Chem.Soc.2015,137,8460-8468を参照)、添加剤ではなくむしろ塩基として使用されてきた。したがって、フェノールを使用する従来の反応は、大きな規模で実行することができなかった。
【0185】
最後に、表4は、許容可能な触媒ローディング範囲を示す。スクリーニング検査は、1.3当量のフェノールによる有意な触媒活性化の発見につながった。フェノールを使用する反応は、ロバストであることが証明され、バッチ毎にスケールで完全な変換が観察された。これらの条件下で増加した触媒活性はまた、表4に示されるように、触媒ローディングの1モル%または2モル%への減少を可能にした。
【0186】
化合物12のワークアップおよび単離も課題を示した。ワークアップは、エマルジョンによって妨げられ、これは、有意な生成物損失を伴う不完全な分割をもたらした。ブラックラグ(消耗済みの触媒と思われる)がエマルジョンの供給源であることが観察された。水性ワークアップの前にセライトを通してのインプロセス濾過を実施することにより、エマルジョンの問題に対処し、NaOH(水溶液)洗浄、続いて水洗浄を行って、すべての無機物およびフェノールを除去した。
【0187】
化合物12の結晶化も最適化を必要とした。化合物12は、以下の表5に示すように、いくつかの一般的な溶媒中で低い溶解度を有する。iPrOH/MeTHFの最適な溶媒系を見出すために試験を行った。図2は、Technobis Crystal-16装置で測定した、1-プロパノール中0体積~4体積%の2-MeTHF中の化合物12の温度依存性溶解度曲線を示す。
【0188】
【表6】
【0189】
キラル純度を最適化するために、化合物12からの最終結晶化の濾液の分析を行った(表6を参照)。表6に見られるように、ウェットケークが洗浄されるにつれて、濾液のee%が増加し、ケーキの洗浄が高品質、高eeな物質を得るのに有用であることを実証する。2回目の洗浄後から3回目の洗浄までの間、濾液のee%は、2回目から有意に増加することが観察され得る。
【0190】
【表7】
【0191】
様々なスクリーニング検査における結果に基づいて、化合物11から化合物12を製造するプロセスを以下のようにスケールアップした。化合物11(3.00kg、1.0×重量)、フェノール(1.073kg、0.358×重量、1.3当量)、CsCO(9.416kg、3.139×重量、3.3当量)、化合物10a(1.790kg、0.597×重量、1.1当量)、およびパラジウム触媒(0.118kg、0.039×重量、0.02当量)を適切な大きさの反応器に入れた。反応器の内容物にNを散布し、次いで無水2-MeTHF(45L、15×体積)を投入した。その後の混合物を加熱し(75℃+/-5℃)、変換が完了するまで熟成させた(6時間~16時間)。混合物を冷却し(25℃)、水(0.3L、0.1×体積)を30分間かけて添加することによってクエンチした。2-MeTHF(1.35L、0.45×体積)中のセライト(0.3kg、0.1×重量)の懸濁液を混合物に投入し、熟成させ(約10分)、濾過した。反応器トレインおよびウェットケークを2-MeTHF(3L、1.0×体積)ですすいだ。有機濾液および洗浄液を合わせ、次いで30℃~35℃に加熱した。有機層を5M NaOH(12L、4×体積)で2回、水(12L、4×体積)で2回抽出し、得られた有機層をポリッシュフィルターで濾過した。抽出は、より低濃度のNaOH(例えば、1M)を使用して代替的に達成することができる。反応混合物を2-MeTHFで連続蒸留(1重量%未満のカールフィッシャー)により乾燥させ、反応体積を減少させた(約15L、5×体積)。混合物を加熱し(50℃~60℃)、1-プロパノール(6L、2×体積)を添加した。混合物を熟成させ(約1時間)、次いで冷却し(35℃~45°C)、ここで播種し(0.03×)、熟成させた(2時間)。追加の1-プロパノール(6L、2×体積)をスラリーに緩やかに投入し、混合物を(2-MeTHF含有量が1体積%未満になるまで)追加の1-プロパノールで連続的に蒸留した(50~60°Cで5×体積)。混合物を蒸留後に熟成させ(NLT 60分)、次いで冷却し(15℃~20℃)、熟成させた(NLT 6時間)。得られたスラリーを濾過し、ウェットケークを1-プロパノール(3L、1×体積)、1-プロパノール(6L、2×体積)で2回洗浄し、乾燥(40℃)させ、化合物12(2.90kg、99.5%未満)を得た。
【0192】
3つの異なるバッチからの結果を以下の表7に示す。
【0193】
【表8】
【0194】
【化50】
【0195】
化合物13aを以下のように調製した。適切な大きさの反応器に、化合物12(2.90kg、1.0×重量)、メタノール(20L、7×体積)、およびHSO(1.90kg、0.655×重量、2.75当量)を、ポンプによりN下で投入した。追加のメタノール(1L、0.345×体積)を使用して、ラインをすすぎ、トレインを洗浄した。混合物を加熱し(35℃~40℃)、反応が完了するまで熟成させた(~6時間)。反応混合物をポリッシュ濾過し、トレインをメタノール(2.9L、1×体積)で洗浄し、濾液と洗浄液を合わせた。得られた溶液を加熱し(35℃~40℃)、水(11.6L、4×体積)を反応混合物に添加し、内部温度を維持し(~30分)、混合物を熟成させた(~1時間)。6重量%硫酸水溶液(11.6L、4×体積)を、温度を維持する速度で反応器に投入した(1時間~2時間)。次いで、混合物を1時間かけて冷却し(20℃~30℃)、熟成させた(1時間)。得られたスラリーを濾過し、ウェットケークおよび反応器トレインを50%(v/v)メタノール水溶液(5.8L、2×体積)で2回すすぎ、得られたウェットケークを水(5.8L、2×体積)で洗浄した。得られたウェットケークを乾燥させ(40℃~50℃)、化合物13a(2.36kg)を得た。H NMR(500MHz、CDSOCD、300K)δ(ppm)=7.17(br d、J=8.4Hz、2H)、7.10-6.88(m、3H)、6.40(br dd、J=2.4Hz、8.5Hz、1H)、6.23(br d、J=2.3Hz、1H)、4.14-3.97(m、2H)、3.21-3.09(m、3H)、3.00(br d、J=8.7Hz、1H)、2.92-2.72(m、3H)、1.93(br d、J=4.3Hz、2H)、1.19(d、J=7.0Hz、6H)。13C NMR(126MHz、CDSOCD)δ(ppm)=147.4、141.9、135.9、120.7、118.8、118.6、115.3、114.4、103.5、102.2、96.6、54.1、35.6、31.2、25.3、23.5、16.4、15.0。C2027Oについて計算されたHRMS(ESI)m/z(M+H):311.2118、実測値:311.2112。
【0196】
【化51】
【0197】
代替合成1の開発における次の課題は、必要なピリジン部分を導入するためのカップリングであった。いくつかの出発物質および金属触媒を用いてスクリーニング検査を行った。例えば、触媒スクリーニングを、12の異なる触媒を使用して25mgのラセミ化合物A(以下の表9を参照)に対して行った。~10モル%の触媒を過剰な臭化物基質と共に添加した。70℃~75℃で約14時間後、3の触媒(Pd-173、Pd-174、およびPd-175)により、20面積%~25面積%のラセミ化合物Cを得た。
【0198】
【表9】
【0199】
さらなる検査を行い、以下の表10に要約した。予備データは、Pd-175が所望の生成物への最も高い変換をもたらしたことを示唆した(エントリー1~3)。アミン基質の遊離塩基は、アミンの塩よりも高い変換を示した(エントリー3、6、10)。溶媒としてのトルエンは、MeTHFおよびDMAよりも良好な変換を与えた(エントリー3、4、および11)。フェノールの添加は改善されなかった(エントリー5および6)。反応は1時間後に停止し、さらなる触媒の投入は、僅かにより高い変換を与えた(エントリー6)。触媒の量が少なくなると変換が低下した(エントリー6および8)。ヨウ化物基質は、臭化物基質(エントリー6および9)よりも低い変換をもたらし、CsCO塩基を使用したエステル基質は、うまく機能しなかった(エントリー7)。
【0200】
【表10】
【0201】
これらのスクリーニング検査に加えて、芳香族求核置換反応(SAr)を使用する可能性を調査した。適切な脱離基(ClまたはF)を有する初期塩基およびカップリングパートナー(化合物16a)を同定するために、別のスクリーニング検査を行った(以下の表11を参照)。以前のスクリーニング(図示せず)は、最良のカップリングパートナーが、X=Fかつ塩基としてのDBUである化合物16aであることを同定した。
【0202】
【表11】
【0203】
さらなるスクリーニングを利用して、化合物16を利用して溶媒および塩基の両方を最適化した(以下の表12を参照)。以下のスクリーニングの目的は、SAr反応を促進するための最適な溶媒および塩基を定義することであった。Tert-アミルアミンは、最も高いDP:IS比(所望の生成物面積対内部標準面積)を提供したが、SM Pyr:IS比(出発物質ピリジン対内部標準)は、出発フルオロピリジンがこれらの反応条件の終わりに残ったことを示した。DBUおよびTMGは、tert-アミルアミンと比較して二次的であったが、50%過剰で存在する出発物質が反応条件に耐えられないことも考慮した同様の結果を提供した。共溶媒としてのNMPの添加が反応において使用されたことも観察された。
【0204】
【表12-1】
【0205】
【表12-2】
【0206】
したがって、化合物14aの大規模な合成は以下のように行われた。適切な大きさの反応器に、化合物13a(2.30kg、1.0×重量)、化合物16(0.850kg、0.370×重量、1.14当量)、およびtert-アミルアミン(0.81kg、0.35×重量、1.5当量)をN下で投入した。反応器および内容物をNでパージし、NMP(12.4L、5×体積)を投入した。混合物を加熱し(70℃~75℃)、反応が完了するまで熟成させた(約24時間)。次いで、反応物を冷却し(20℃~25℃)、MTBE(23L、10×体積)を投入した。次いで、反応物を5重量%NaHCO水溶液(11.5、5×体積)、5重量%LiCl水溶液(11.5、5×体積)で抽出し、水(11.5、5×体積)で3回抽出した。追加のMTBEを投入して総体積(23L、10×)を調整する。イソプロパノール(11.5L、5×体積)を反応器に投入し、続いて新たに調製したIPA中の2M HCl(0.610L、0.265×体積)を添加する。次いで、温度(20℃~25℃)を維持しながら化合物14aの単離を促進するために溶液を播種した(0.03×)が、播種は必須ではない。次いで、混合物を熟成させ(約1時間)、次いで、新たに調製したIPA中の2M HCl(3.048L、1.325L×体積)を、温度(20℃~25℃)を維持しながら5時間かけて投入した。得られた橙色懸濁液を熟成させ(NLT 1時間)、次いで濾過した。得られたウェットケークを、(2:1 v:v)MTBE/IPA(2.3L、1×体積)で2回スラリー洗浄し、次いで2:1 v:v MTBE/IPA(2.3L、1×体積)で2回置換洗浄し、乾燥させ(40℃)、化合物14a(2.60kg)を得た。H NMR(500MHz、CDSOCD)δ(ppm)=8.49(s、1H)、7.97(d、J=5.3Hz、1H)、7.78(br d、J=5.0Hz、1H)、7.27-7.09(m、4H)、6.97(d、J=7.4Hz、2H)、6.40(dd、J=2.4Hz、8.4Hz、1H)、6.26(d、J=2.4Hz、1H)、4.18-4.08(m、2H)、3.65(br dd、J=5.2Hz、13.7Hz、1H)、3.41(br dd、J=10.2Hz、13.4Hz、1H)、3.25-3.03(m、4H)、2.85(spt、J=6.9Hz、1H)、1.96-1.84(m、2H)、1.32-1.09(m、6H)。13C NMR(126MHz、CDSOCD)δ(ppm)=155.0、148.6、146.2、145.8、142.4、132.1、131.5、130.0、128.0、127.0、122.1、115.4、114.5、110.7、105.4、102.9、62.2、47.2、32.7、31.2、24.2、23.9、C2629Oについて計算されたHRMS(ESI)m/z(M+H):413.2336、実測値:413.2330。
【0207】
3つの異なるバッチからの結果を以下の表13に報告する。
【0208】
【表13】
【0209】
【化52】
【0210】
代替合成1における次の反応は、シアノ基の加水分解を含んだ。課題は、遊離酸(化合物8)の単離を回避するプロセスを開発することであった。遊離酸は、非晶質樹脂として沈殿する傾向があり、スケールでの濾過を不可能にし、その溶解度は、水(低~中性のpH)および最も一般的な有機溶媒中で検出不可能である。これは、ナトリウム塩EtOH溶媒和物(化合物15a)を得るプロセスを開発することによって達成された。化合物15aは、濾過および乾燥が容易な自由流動性の固体として加水分解条件から容易に結晶化する。化合物15aはまた、リジン塩の合成のための可溶性の中間物を提供する。
【0211】
化合物15aを以下のように調製した。適切な大きさの反応器に、化合物14a(500g、1.0×重量)および200プルーフ EtOH(2.5L、5×体積)を投入した。反応混合物をNでパージし、加熱した(50℃)。別の容器中で、10M NaOH(550mL、1.1×体積、5.0当量)、水(250mL、0.5×体積)、およびEtOH(500mL、1×)からなる溶液を調製し、次いで、対かの漏斗を介して反応混合物に投入した(2.5時間かけて)。添加の完了後、温度を上昇させ(70℃)、混合物を熟成させた(約16時間)。変換の完了後、温度(70℃)を維持しながら、EtOH(4.25L、8.5×体積)を反応混合物に緩やかに投入した(2時間)。添加の完了後、得られたスラリーを周囲温度(15℃~25℃)に冷却し(3時間)、濾過した。ウェットケークをEtOH(0.75L、1.5×体積)で3回洗浄し、物質を真空オーブン(40℃)中で乾燥させて、化合物15a(514g)を得た。H NMR(500MHz、CDCl)δ(ppm)=7.99(br dd、J=5.0Hz、12.1Hz、1H)、7.69(br s、1H)、7.38(br s、1H)、7.25-7.11(m、1H)、7.08-6.93(m、2H)、6.91-6.78(m、J=7.5Hz、2H)、6.72(br s、1H)、6.25(br s、1H)、6.20(br s、1H)、3.71(ddd、J=2.6Hz、6.9Hz、14.0Hz、2H)、3.11(br s、1H)、3.01(br s、3H)、2.93-2.81(m、1H)、2.75(td、J=6.6Hz、13.4Hz、4H)、1.78-1.49(m、2H)、1.28-1.17(m、1H)、1.13(br d、J=6.7Hz、6H)。13C NMR(126MHz、CDSOCD)δ(ppm)=164.6、147.2、141.2、138.9、137.1、135.0、126.6、124.7、121.1、118.6、117.8、116.7、114.3、106.9、102.9、97.5、54.6、31.2、25.3、24.6、17.3、15.0。C2630について計算されたHRMS(ESI)m/z(M+H):432.2282、実測値:432.2273。
【0212】
【化53】
【0213】
最終生成物(化合物8a)を、酸性条件下での化合物15aと(L)-リジンとの反応によって生成した。より具体的には、適切な大きさの反応器に、化合物15a(559g、1.0重量)およびL-リジン(540g、0.966×重量)を投入した。次いで、反応器をNでパージし、水(6.99L、12.5×体積)を添加した。次いで、得られた混合物をヘディングし(50℃)、熟成した(約1時間)。メタノール(2.52L、4.5×体積)を一度に投入し、次いで反応物を熟成させた(10分間)。次いで、2.12M HCl(671mL、1.2×体積)の水溶液を追加の漏斗によって(45分かけて)投入し、混合物を冷却し(40℃)、化合物8aシーズ(16g、0.03×重量)を投入した。得られたスラリーを熟成させ(16時間)、周囲温度(15℃~25℃)に冷却した。次いで、固体を濾過によって単離し、濾液を再利用することによってウェットケークを洗浄し、次いで、ウェットケークをMeOH(1.12L、2×体積)で3回洗浄した。得られたウェットケークを真空オーブン(40℃~50℃)中で乾燥させ、化合物8a(417g)を得た。
【0214】
実施例2。化合物8のリジン塩の代替合成2。
代替合成2の合成経路は、上記スキーム4に概説され、以下により詳細に記載される。
【0215】
【化54】
【0216】
化合物3を、上記実施例1における工程1および2に従って調製した。
【0217】
【化55】
【0218】
化合物4aを以下のように調製した。適切な大きさの反応器に、化合物3(1.0g、1.0×重量)およびMeTHF(16mL)を15℃~25℃で投入し、ボラン-ジメチルスルフィド(1.8mL、5.0当量)を緩やかに投入した。次いで、混合物を60℃~65℃で少なくとも22時間加熱した。反応の完了後、混合物を冷却し、6N HCl水溶液(1.5mL、1.5×体積)、次いで10mLの水で緩やかにクエンチし、温度を20℃未満に維持した。有機相を分離し、濃縮した。CPME中の3N HClを濃縮物に導入し、続いて酢酸イソプロピル(8mL)を添加して、生成物をオフホワイトの固体として沈殿させた。濾過して固体を単離した後、酢酸イソプロピルで洗浄した。真空下で乾燥させて、オフホワイトの固体である化合物4a(0.611g、収率61.2%、99.4面積%の純度)を得た。
【0219】
【化56】
【0220】
化合物17を以下のように調製した。N2注入口およびピッチブレードインペラを備えた10mLの反応器に、化合物4a(5.62g)、化合物16(3.68g)、および2-MeTHF(33mL)を投入し、混合物をNで不活性化した。DBU(7.52mL)を混合物に入れ、混合物を加熱し(50℃)、次いで熟成させた(14.5時間)。追加の化合物16(1.41g)を混合物に投入し、さらに熟成させ(24時間)、次いで冷却した。得られたスラリーを濾過し、トレインおよびウェットケークを追加の2-MeTHF(20mL)、次いでDCM(20mL)で洗浄した。有機濾液を合わせ、ロータリーエバポレーターで濃縮して、褐色液体を得た。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(DCMを投入し、10~70%のEtOAc/ヘキサンで溶出したTeledyne ISCOの120g ISCOカラム)により精製した。得られた画分を回収し、濃縮し、乾燥させ(40℃)、淡黄色固体として化合物17を得た(4.79g、収率69%)。
【0221】
【化57】
【0222】
化合物14は、化合物17のラセミ混合物(本明細書では化合物17bと称する)に対して実施され、化合物14のラセミ混合物(本明細書では化合物14bと称する)を産生した下記の方法に従って、化合物17および化合物10aから調製することができる。
【0223】
オーバーヘッドスターラーを備えた1000mLの3つ口丸底フラスコに、化合物17b(28.1g)、化合物10a(16.74g)、CsCO(88.23g)、フェノール(10.12g)、およびパラジウム触媒(1.65g)を添加した。反応器をNで25分間フラッシュした。無水の脱気した2-MeTHF(300mL)をカニューレを介して投入し、混合物を撹拌し、加熱し(75℃~80℃)、熟成させた(約53時間)。次いで、混合物を室温に冷却し、2-MeTHF(50mL)を投入した。次いで、混合物を濾過した。反応器トレインおよびウェットケークをアセトン(150mL)で洗浄した。得られた有機層を減圧下で濃縮して黒色油状物を得た。エタノール(35mL)に化合物14b(50mg)を播種して単離を容易にし、混合物を室温で終夜撹拌した。得られたスラリーを濾過し、MTBE(20mL)で洗浄し、次いで乾燥させて、化合物14b(26.5g、収率78%)を黄色固体として得た。
【0224】
【化58】
【0225】
化合物15aを、上記実施例1の工程8に従って調製した。
【0226】
【化59】
【0227】
化合物8aを、上記実施例1の工程9に従って調製した。
【0228】
本開示は、理解を明確にする目的で、例証および実施例によってある程度詳細に説明されているが、説明および実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用されるすべての特許および科学文献の開示は、その全体が参照によって本明細書に明示的に援用される。
図1
図2
【国際調査報告】