(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】磁性四酸化三鉄ナノ粒子、その製造方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
C01G 49/08 20060101AFI20240822BHJP
H01F 1/00 20060101ALI20240822BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240822BHJP
A61K 49/06 20060101ALI20240822BHJP
A61K 49/12 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C01G49/08 A
H01F1/00 154
A61B5/055 383
A61K49/06
A61K49/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507014
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 CN2022119469
(87)【国際公開番号】W WO2023138080
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202210072699.7
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523295165
【氏名又は名称】蘇州哲磁医薬科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522438596
【氏名又は名称】南方医科大学
【氏名又は名称原語表記】SOUTHERN MEDICAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1023, Shatai South Road, Baiyun District Guangzhou, Guangdong 510515 China
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀋 折玉
(72)【発明者】
【氏名】盧 旋▲イ▼
【テーマコード(参考)】
4C085
4C096
4G002
5E040
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085JJ20
4C085KB08
4C085KB75
4C085KB76
4C085KB79
4C096AA03
4C096AA11
4C096FC14
4G002AA04
4G002AB02
4G002AB05
4G002AD04
4G002AE02
5E040AB02
5E040BB03
5E040BC05
5E040CA20
5E040HB17
5E040NN06
5E040NN15
(57)【要約】
本発明は、磁性四酸化三鉄ナノ粒子、その製造方法、及び使用を開示する。前記磁性四酸化三鉄ナノ粒子は、四酸化三鉄と親水性高分子を含有し、前記四酸化三鉄と親水性高分子は互いに、(1)前記親水性高分子は四酸化三鉄の表面に吸着されていること、及び(2)前記四酸化三鉄及び親水性高分子は互いに包埋又は吸蔵されていること、のうちの少なくとも1つの関係で存在する。本発明は、親水性高分子を安定化剤として、二価鉄イオン及び三価鉄イオンを共沈させて磁性四酸化三鉄ナノ粒子を形成するものであり、この磁性四酸化三鉄ナノ粒子は、縦磁気緩和率r1が高く、横縦磁気緩和率の比(r2/r1)が低く、水溶性が良好で、安定性が高く、良好な生体適合性を有し、T1-強調磁気共鳴画像法(MRI)造影剤としてMRIのコントラスト及び感度を向上させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四酸化三鉄と親水性高分子を含有し、前記四酸化三鉄と親水性高分子は互いに、(1)前記親水性高分子は四酸化三鉄の表面に吸着されていること、及び(2)前記四酸化三鉄及び親水性高分子は互いに包埋又は吸蔵されていること、のうちの少なくとも1つの関係で存在し、
1)平均粒子径が2nmよりも大きく5nm未満であること、
2)ゼータ電位が-10mV以下であること、
3)流体力学直径が20nm以下であること、
4)3.0T磁界強度での縦磁気緩和率r
1の値が5mM
-1 s
-1よりも大きく、1.0T磁界強度での縦磁気緩和率r
1の値が10mM
-1 s
-1よりも大きいこと、
のうちの複数の特性を同時に有することを特徴とする、磁性四酸化三鉄ナノ粒子。
【請求項2】
前記親水性高分子は、カルボン酸含有系高分子、アミノ含有系高分子、ヒドロキシ含有系高分子、アミド含有系高分子、及び多糖のうちのいずれか1種又は複数種のコポリマー又は混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の磁性四酸化三鉄ナノ粒子。
【請求項3】
前記カルボン酸含有系高分子は、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリマレイン酸、ポリ(2-エチルアクリル酸)、及びポリエポキシコハク酸のうちのいずれか1種又は複数種を含むことを特徴とする、請求項2に記載の磁性四酸化三鉄ナノ粒子。
【請求項4】
前記アミノ含有系高分子は、ポリリジン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、及びポリジメチルジアリルアンモニウムクロリドのうちのいずれか1種又は複数種を含むことを特徴とする、請求項2に記載の磁性四酸化三鉄ナノ粒子。
【請求項5】
前記ヒドロキシ含有系高分子は、ポリセリン、ポリスレオニン、ポリチロシン、及びタンニン酸のうちのいずれか1種又は複数種を含むことを特徴とする、請求項2に記載の磁性四酸化三鉄ナノ粒子。
【請求項6】
前記アミド含有系高分子は、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアクリルアミド、及びポリメタクリルアミドのうちのいずれか1種又は複数種を含むことを特徴とする、請求項2に記載の磁性四酸化三鉄ナノ粒子。
【請求項7】
前記多糖は、ヒアルロン酸及びアルギン酸ナトリウムのうちの1種又は2種を含むことを特徴とする、請求項2に記載の磁性四酸化三鉄ナノ粒子。
【請求項8】
親水性高分子を安定化剤として、二価鉄イオン及び三価鉄イオンを共沈させて前記磁性四酸化三鉄ナノ粒子を形成するステップを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁性四酸化三鉄ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
親水性高分子溶液を加熱し、その後、前記親水性高分子溶液と二価鉄イオン及び三価鉄イオンを含有する鉄イオン混合溶液とを混合し、配位反応を行った後、アルカリ液を加えて共沈反応を行い、前記磁性四酸化三鉄ナノ粒子を得るステップを含むことを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
磁気共鳴画像形成用造影剤の製造における請求項1~7のいずれか1項に記載の磁性四酸化三鉄ナノ粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬材料の技術分野に関し、特に、磁性四酸化三鉄ナノ粒子、その製造方法、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像形成(MRI)は、軟部組織に対して比較的に良い画像形成効果があり、病巣と健康組織を有効に区別することができ、臨床診断において広く利用されている。MRI造影剤は、MRIのコントラスト及び感度を向上させることができ、現在40%超のMRI臨床診断に造影剤が使用され、MRI造影剤は、磁気共鳴画像形成の重要な部分になっている。MRI造影剤は、水素プロトンと反応し、プロトンの縦緩和時間(T1)又は横緩和時間(T2)を短縮することができる。MRI造影剤は、その造影効果からT1-強調MRI造影剤(陽性造影剤)とT2-強調MRI造影剤(陰性造影剤)の2種類に分けることができる。T1-強調MRI造影剤(陽性造影剤)は、明るい信号を発生させることができ、T2-強調MRI造影剤(陰性造影剤)は、暗信号を発生させることができる。T2造影剤と比較して、T1造影剤は、明るい信号を発生できるので、臨床医師による病巣診断により有利であるため、臨床で使用されるのはほとんどT1造影剤である。
r1値及びr2/r1比の値は、MRI造影剤の造影効果を表すための2つの重要なパラメータであり、T1造影剤は、r1値が高く、r2/r1比の値が低いほどよく、同様に、T2造影剤は、r2値が高く、r2/r1比が高いほどよい。通常、T1造影剤は、ガドリニウム系造影剤であり、T2造影剤は、鉄系造影剤であり、臨床で使用されるT1造影剤は、主に小分子薬物であるガドリニウム系キレートであり、マグネビスト(Magnevist(登録商標))、ガダビスト(Gadavist(登録商標))、ドータレム(登録商標)(Dotarem(登録商標))、オムニスカン(登録商標)(Omniscan(登録商標))、バソビスト(登録商標)(Vasovist(登録商標))などを含む。米国FDAはガドリニウム系臨床医療用造影剤に対して警告を出しており、それは脳沈着と腎毒性があり、臨床応用に一定のリスクが存在する。
【0003】
鉄元素は、人体の必須元素の1つであり、四酸化三鉄は、極めて良好な生体適合性を有しており、ガドリニウム系キレートよりもMRI造影剤として臨床診断に使用する方が安全で信頼性が高い。しかし、四酸化三鉄は主にT2造影剤として存在し、暗信号を発生させる特徴は臨床応用に深刻な影響を与える。四酸化三鉄のr2値は粒子径と正の相関を示し、粒子径が大きくなるにつれて四酸化三鉄の飽和磁化(Mz)も大きくなり、r2値も大きくなった。一方、粒子径が5nm以下の四酸化三鉄(磁性四酸化三鉄ナノ粒子(ES-MION))は飽和磁化が明らかに低下し、r2値が低く、T1造影剤として用いることができる。そのため、高いr1値と低いr2値を持つ粒子径5nm未満の磁性四酸化三鉄ナノ粒子は、安全で信頼性があり、また良好な画像形成効果を持つT1造影剤として臨床診断に応用されることが期待される。PVA(ポリビニルアルコール)などのポリマーを利用して粒子径が5nm以下の四酸化三鉄を製造する関連技術があり、この四酸化三鉄は、T1造影剤の特徴を示すが、分散性が悪く、画像形成効果が限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術に存在する技術的課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。このため、本発明は、高いr1値と低いr2/r1比の値を持ち、水溶性が良好で、安定性が高く、良好な生体適合性を有する、磁性四酸化三鉄ナノ粒子を提案する。
【0005】
本発明はまた、前記磁性四酸化三鉄ナノ粒子の製造方法、及び使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には、本発明が採用する技術案は、以下の通りである。
【0007】
本発明の第1態様は、
四酸化三鉄と親水性高分子を含有し、前記四酸化三鉄と親水性高分子は互いに、(1)前記親水性高分子は四酸化三鉄の表面に吸着されていること、及び(2)前記四酸化三鉄及び親水性高分子は互いに包埋又は吸蔵されていること、のうちの少なくとも1つの関係で存在し、
1)平均粒子径が2nmよりも大きく5nm未満であること、
2)ゼータ電位が-10mV以下であること、
3)流体力学直径が20nm以下であること、
4)3.0T磁界強度での縦磁気緩和率r1の値が5mM-1 s-1よりも大きく、1.0T磁界強度での縦磁気緩和率r1の値が10mM-1 s-1よりも大きいこと、
のうちの複数の特性を同時に有する、磁性四酸化三鉄ナノ粒子を提供する。
【0008】
本発明の第1態様に係る磁性四酸化三鉄ナノ粒子によれば、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0009】
本発明は、親水性高分子を安定化剤として、表面吸着、相互包埋又は吸蔵の方式によって四酸化三鉄と磁性四酸化三鉄ナノ粒子(共沈法により合成可能)を形成するものであり、この磁性四酸化三鉄ナノ粒子は、水溶性ナノ薬物で、関連技術において既存の四酸化三鉄を高分子で表面修飾したものや油相法により合成された四酸化三鉄と比べ、水溶性がより良好で、安定性がより高くなり、r1値を大きくし、r2/r1比の値を小さくすることができ、安全で確実なT1造影剤として有用である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、前記磁性四酸化三鉄ナノ粒子のZeta電位は-30mV以下、好ましくは、-35mV以下、より好ましくは、-60~-35mVである。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、前記磁性四酸化三鉄ナノ粒子の流体力学直径は20nm以下、好ましくは、15nm以下である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、前記親水性高分子は、カルボン酸含有系高分子、アミノ含有系高分子、ヒドロキシ含有系高分子、アミド含有系高分子、及び多糖のうちのいずれか1種又は複数種のコポリマー又は混合物を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、前記親水性高分子は、分子量が1000~10000であり、具体的な状況に応じて適宜選択してもよい。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、前記カルボン酸含有系高分子は、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリマレイン酸、ポリ(2-エチルアクリル酸)、及びポリエポキシコハク酸のうちのいずれか1種又は複数種を含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、前記アミノ含有系高分子は、ポリリジン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、及びポリジメチルジアリルアンモニウムクロリドのうちのいずれか1種又は複数種を含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ヒドロキシ含有系高分子は、ポリセリン、ポリスレオニン、ポリチロシン、及びタンニン酸のうちのいずれか1種又は複数種を含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、前記アミド含有系高分子は、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアクリルアミド、及びポリメタクリルアミドのうちのいずれか1種又は複数種を含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、前記多糖は、ヒアルロン酸及びアルギン酸ナトリウムのうちの1種又は2種を含む。
【0019】
本発明の第2態様は、
親水性高分子を安定化剤として、二価鉄イオン及び三価鉄イオンを共沈させて磁性四酸化三鉄ナノ粒子を形成するステップを含む、上記の磁性四酸化三鉄ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0020】
共沈後、二価鉄イオン及び三価鉄イオンは反応を起こして四酸化三鉄を形成し、四酸化三鉄及び親水性高分子は、表面吸着、相互包埋又は吸蔵の方式によって磁性四酸化三鉄ナノ粒子を形成する。
【0021】
より具体的には、親水性高分子を安定化剤として、二価鉄イオン及び三価鉄イオンを親水性高分子と配位反応させてから、アルカリ液を加えて共沈反応を行い、前記磁性四酸化三鉄ナノ粒子を得る。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、前記磁性四酸化三鉄ナノ粒子の製造方法は、
親水性高分子溶液を加熱し、その後、前記親水性高分子溶液と二価鉄イオン及び三価鉄イオンを含有する鉄イオン混合溶液とを混合し、配位反応を行った後、アルカリ液を加えて共沈反応を行い、前記磁性四酸化三鉄ナノ粒子を得るステップを含む。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、前記鉄イオン混合溶液において、二価鉄イオンの濃度は、30~500mM、好ましくは、50~250mM、より好ましくは、150~250mM、さらに好ましくは、200~250mMであり、前記三価鉄イオンの濃度は、60~1000mM、好ましくは、100~500mM、より好ましくは、300~500mM、さらに好ましくは、350~500mMである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、前記親水性高分子溶液の濃度は、0.1~20mg/mL、好ましくは、0.5~5mg/mLである。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、前記親水性高分子溶液と鉄イオン混合溶液との体積の比は、1~500:1、好ましくは、10~50:1である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、前記親水性高分子溶液及び鉄イオン混合溶液は、いずれも水溶液である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、前記二価鉄イオンは、水溶性二価鉄塩を加水分解することにより得られ、前記水溶性二価鉄塩は、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、臭化第一鉄、及び硫酸第一鉄のうちのいずれか1種又は2種以上を含み、好ましくは、硫酸第一鉄である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、前記三価鉄イオンは、水溶性三価鉄塩を加水分解することにより得られ、前記水溶性三価鉄塩は、塩化鉄、硝酸鉄、臭化鉄、及び硫酸鉄のうちのいずれか1種又は2種以上を含み、好ましくは、塩化鉄である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、前記アルカリのpHは、10~12、好ましくは、11.5である。鉄イオン混合溶液と親水性高分子溶液との混合溶液にアルカリを加えた後、反応系のpHは、8~10、好ましくは、9.5である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、前記アルカリ液は、水酸化ナトリウム及びその水溶液、水酸化カリウム及びその水溶液、アンモニア水のうちの少なくとも1種を含み、好ましくは、アンモニア水である。好ましくは、前記アンモニア水の質量濃度は、0.5%~5%、好ましくは、1%~4%である。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、前記アルカリは、溶液の形態であり、前記アルカリと親水性高分子溶液との体積の比は、1:2~10、好ましくは、1:4~6である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、前記親水性高分子溶液を加熱する温度及び共沈反応の温度は、それぞれ独立に、25~100℃、好ましくは、100℃である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、前記共沈反応の時間は、5minよりも長く、好ましくは、40~100minである。
【0034】
本発明の第3態様は、MRI造影剤の製造における上記の磁性四酸化三鉄ナノ粒子の使用を提供する。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、前記MRI造影剤は、縦緩和造影剤(T1造影剤)である。
【発明の効果】
【0036】
従来技術と比べて、本発明は、下記有益な効果を有する。
【0037】
本発明の磁性四酸化三鉄ナノ粒子は、r1値が高く(>5mM-1 s-1、3.0T;>10mM-1 s-1、1.0T)、r2/r1比の値(<13.0、3.0T)が低く、臨床医療用ガドリニウム系キレート造影剤に匹敵する。鉄系MRI造影剤である本発明は、親水性高分子を安定化剤として共沈法により合成されるもので、画像形成効果がよく、信号対雑音比が低く、水溶性が良好で、安定性に優れ、流体力学直径が小さく、血液循環に有利であり、しかも、本発明で使用される親水性高分子は生分解性であるので、臨床医療用ガドリニウム系キレート造影剤よりも、生体適合性や安全性により優れる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6の透過型電子顕微鏡像及び粒子径分布図である。
【
図2】実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6の流体力学直径及びZeta電位を示す図である。
【
図3】実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6のMRI緩和率図である。
【
図4】実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6の飽和磁化図である。
【
図5】実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6のX線エネルギースペクトル及びX線回折パターンである。
【
図6】実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6の赤外線吸収スペクトルである。
【
図7】実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6及び純水のT
1-強調MRI画像形成画像、並びにそれに対応するMRI信号強度である。
【
図8】実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6が担癌マウスの体内に注射された場合のMRI画像形成画像である。
【
図9】実施例2におけるPASP-ES-MION9の透過型電子顕微鏡像である。
【
図10】実施例2におけるPASP-ES-MION9の流体力学直径及びZeta電位を示す図である。
【
図11】実施例2におけるPASP-ES-MION9のMRI緩和率図である。
【
図12】実施例2におけるPASP-ES-MION9のX線回折パターン、及びX線エネルギースペクトルである。
【
図13】実施例2におけるPASP-ES-MION9のT
1-強調MRI画像形成画像、及びそれに対するMRI信号強度である。
【
図14】実施例2におけるPASP-ES-MION9の赤外線吸収スペクトルである。
【
図15】実施例2におけるPASP-ES-MION9が担癌マウスの体内に注射された場合のMRI画像形成画像である。
【
図16】実施例3におけるHPMA-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図17】実施例4におけるPEAA-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図18】実施例5におけるPESA-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図19】実施例6におけるε-PL-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図20】実施例7におけるPLH-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図21】実施例8におけるPLR-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図22】実施例9におけるPDDA-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図23】実施例10におけるPSer-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図24】実施例11におけるPThr-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図25】実施例12におけるPTyr-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図26】実施例13におけるTA-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図27】実施例14におけるPolyQ-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図28】実施例15におけるPHEA-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図29】実施例16におけるPAM-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図30】実施例17におけるPMAM-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図31】実施例18におけるHA-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図32】実施例19におけるSA-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図33】実施例20におけるγ-PGA/PASP-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【
図34】実施例21におけるHPMA/PASP-ES-MIONのMRI緩和率図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、具体的な実施例を参照して、本発明の技術案をさらに説明する。以下の実施例で使用される原料は、特に断らない限り、通常の商業的経路から入手することができる。採用されるプロセスは、特に断らない場合は、いずれも当該分野の通常の技術を採用する。
実施例1
【0040】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(γ-PGA-ES-MION)の製造
ポリグルタミン酸γ-PGA(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコにFeSO
4とFeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをγ-PGA-ES-MIONと表記した。ポリグルタミン酸水溶液、混合水溶液、及びアンモニア水の濃度、並びに対応するサンプルを表1に示す。
実施例1のサンプルについて物性の特性評価を行った。実施例1のサンプルについて算出した鉄回収率は96%であり、原材料の利用率が高く、効果的なコストダウンが図られることを示した。実施例1のサンプル、市販品のGadavist、及びMagnevistをそれぞれ6個の異なる濃度の水溶液に調製し、1.0T、臨床医療用3.0T、及び7.0T MRIシステムにおいて生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2を得て、下記式(cは、造影剤中の磁性物質の濃度、T
iは緩和時間であり、ここでi=1又は2)によって、縦磁気緩和率r
1及び横磁気緩和率r
2を算出し、その結果を表1に示す。
【表1】
具体的には、
図1は、実施例1におけるサンプルγ-PGA-ES-MION6の透過型電子顕微鏡像(TEM)及び粒子径分布図である。
図1(a)の電子顕微鏡像から明らかに、ナノ粒子は、サイズが均一で、均一に分散している。
図1(a)から100個のナノ粒子をランダムに選択して、これらの粒子径分布を統計し、
図1(b)の分布図を得るが、分布図から明らかに、サンプルの粒子径が主に3.5nm程度である。サンプルγ-PGA-ES-MION6は、平均粒子径が5nm未満であり、この粒子径からは、T
1造影剤になることが期待できる。
図2は、実施例1におけるサンプルγ-PGA-ES-MION6の流体力学直径及びZeta電位を示す図であり、流体力学直径は8.7nmであり、分散係数(PDI)は0.265であり、このことから、分散性が良好であることを明らかにした。サンプルのZeta電位は-37.3mVであり、サンプルの水相分散性は電荷の反発により向上することができ、サンプルの血液循環に有利である。
ポリグルタミン酸水溶液、混合水溶液、及びアンモニア水の濃度がサンプルのMRI性能に大きな影響を与え、様々な合成条件では、サンプルγ-PGA-ES-MION6は、総合的なMRI性能が最も良好である。
図3は、実施例1におけるサンプルγ-PGA-ES-MION6のMRI緩和率図(γ-PGA-ES-MION6-1、γ-PGA-ES-MION6-2、γ-PGA-ES-MION6-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)であり、フィッティング直線の傾きが対応する磁気緩和率である。
図3(a)又は(b)から分かるように、フィッティング直線の線形適合度はすべて0.999以上であり、このことから、サンプルは極めて優れた線形関係を有し、緩和時間がサンプル濃度の変化に応じて線形変化することが示唆された。
表1は、実施例1におけるサンプルγ-PGA-ES-MION1-8の様々な磁界強度(7.0T、3.0T又は1.0T)でのr
1値、及びr
2/r
1比の値を示し、また、市販品のGadavist及びMagnevistの3.0T磁界強度でのr
1値、及びr
2/r
1比の値を示す。実施例1では、サンプルγ-PGA-ES-MION6は、3.0T磁界強度でのr
1値が5.7mM
-1 s
-1であり、市販品のr
1値4.6mM
-1 s
-1よりも高く、このことから、優れた磁気共鳴画像形成能力が示唆された。
図4は、実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6の飽和磁化図であり、図から明らかに、実施例1のサンプルは、常磁性で、磁性四酸化三鉄ナノ粒子の性質と一致する。飽和磁化の大きさは粒子径の大きさと正の相関を有し、図から明らかに、実施例1におけるサンプルの飽和磁化は、16emu/gであり、
図1の電子顕微鏡像に示される5nm未満の粒子径に対応する。造影剤のr
2値の大きさは、飽和磁化と正の相関を有し、小さな飽和磁化は小さなr
2値に対応し、これは、表1に示される小さなr
2値に対応する。
図5は、実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6のX線エネルギースペクトル、及びX線回折パターンである。
図5(a)のXPSパターンでは、711.6eV及び725.1eVを中心とするピークは、それぞれ、Fe
2+2p及びFe
3+2pの結合エネルギーに対応し、三価鉄及び二価鉄の両方の存在が示唆され、実施例1のサンプルが四酸化三鉄であることが実証された。
図5(b)のXRDパターンでは、2つの特徴的なピーク(2θ≒35.6°及び2θ≒62.9°)は、四酸化三鉄結晶層[(311)及び(440)]に対応し、実施例1におけるサンプルが結晶構造の四酸化三鉄であることが実証された。XRDパターン及びXPSパターンの両方により、実施例1の四酸化三鉄の製造が成功したことが実証され、また、
図1の電子顕微鏡像から、実施例1の磁性四酸化三鉄ナノ粒子の製造が成功したことが実証された。
図6は、実施例1で製造されたγ-PGA-ES-MION6の赤外線吸収スペクトルであり、γ-PGA赤外線吸収曲線、及びγ-PGA-ES-MION6赤外線吸収曲線のいずれにも、-CH
2-曲げ振動ピークである吸収ピークa(1404 cm
-1)が現れ、このことから、サンプル中のγ-PGAの存在が実証された。さらに、Fe-Oの伸縮振動ピークである吸収ピークb及びcがγ-PGA-ES-MION6赤外線吸収曲線に現れたが、γ-PGA赤外線吸収曲線には現れず、これによっても、磁性四酸化三鉄ナノ粒子γ-PGA-ES-MION6の製造が成功したことがさらに実証された。
図7は、実施例1における様々な濃度のγ-PGA-ES-MION6水溶液のT
1-強調磁気共鳴画像法による画像、及びそれに対応するMRI信号強度である。磁界強度は3.0T、スキャンパラメータは、TE=8.6ms、TR=500msである。
図7(a)のMRI画像から明らかに、純水(鉄濃度0)と比較して、サンプルγ-PGA-ES-MION6を含有する水溶液のMRI信号は顕著に増強しており、また、サンプル濃度の上昇に応じて勾配的に増強する傾向がある。
図7(b)から明らかに、γ-PGA-ES-MION6溶液中の鉄の濃度が200μMである場合、MRIの信号対雑音比(△SNR)は240%であり、サンプルγ-PGA-ES-MION6がMRIのコントラスト及び感度を顕著に向上できることが示唆され、実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6の良好な磁気共鳴画像形成性能が示された。
図8は、実施例1におけるγ-PGA-ES-MION6が担癌マウスの体内に注射量5mg/kgで注射された場合のMRI画像である。マウスにサンプルを尾静脈注射する前、尾静脈注射後の0h、1h、2h、3h、4h及び8hに7.0T磁気共鳴画像形成を行った。図から明らかに、サンプル注射時間が経るに伴い、腫瘍のMRI信号は、増強してから低下する傾向を示し、注射後3hにMRI信号は最も強かった。生体内画像形成の結果からは、実施例1におけるサンプルγ-PGA-ES-MION6がマウス腫瘍に対して良好な磁気共鳴画像形成効果を有することが明らかにされた。
実施例2
【0041】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PASP-ES-MION)の製造
ポリアスパラギン酸PASP(M
w=7000-8000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコにFeSO
4とFeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPASP-ES-MIONと表記した。ポリアスパラギン酸水溶液、混合水溶液、及びアンモニア水の濃度、並びに対応するサンプルを表2に示す。
実施例2のサンプルについて物性の特性評価を行った。実施例2のサンプルについて算出した鉄回収率は89.6%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例2のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、臨床医療用3.0T MRIシステムにおいて生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2を得て、縦磁気緩和率r
1及び横磁気緩和率r
2を計算し、その結果を表2に示す。
【表2】
図9は、実施例2におけるサンプルPASP-ES-MION9の透過型電子顕微鏡像及び粒子径分布図である。
図9(a)の電子顕微鏡像から明らかに、ナノ粒子は、サイズが均一で、均一に分散している。
図9(a)から100個のナノ粒子をランダムに選択して、これらの粒子径分布を統計し、
図9(b)に示す分布図を得るが、分布図から明らかに、サンプル粒子径が主に2.6~5.0nmの間に分布し、平均粒子径が3.7nmであり、T
1造影剤としての四酸化三鉄の粒子径が5nm未満である要件を満たす。
図10は、実施例2におけるサンプルPASP-ES-MION9の流体力学直径及びZeta電位を示す図であり、3つのサンプル(PASP-ES-MION9-1、PASP-ES-MION9-2、PASP-ES-MION9-3)について測定した結果、流体力学直径の平均値は14.7nm、PDIは0.224であり、このことから、その分散性が良好であることを明らかにした。サンプルのZeta電位は-50.7mVであり、サンプルの水相分散性は電荷の反発により向上することができ、サンプルの血液循環に有利である。
ポリアスパラギン酸水溶液、混合水溶液、及びアンモニア水の濃度がサンプルのMRI性能に大きな影響を与え、様々な合成条件では、サンプルPASP-ES-MION9-10は、総合的なMRI性能が良好である。PASP-ES-MION9を例として、
図11は、実施例2におけるサンプルPASP-ES-MION9のMRI緩和率図である。
図11(a)又は(b)から明らかに、フィッティング直線の線形適合度はすべて0.99以上であり、このことから、サンプルは優れた線形関係を有することが示された。表2は、実施例2におけるサンプルPASP-ES-MION9の3.0T磁界強度でのr
1値、及びr
2/r
1比の値を示す。実施例2におけるサンプルPASP-ES-MION9は、3.0T磁界強度でのr
1値が7.3mM
-1 s
-1であり、表1における市販品Gadavistのr
1値4.64mM
-1 s
-1よりも高かった。さらに、サンプルPASP-ES-MION9は、3.0T磁界強度でのr
2/r
1比の値が4.9しかなかった。その結果、実施例2のサンプルPASP-ES-MION9は、3.0T磁界強度では、r
1値が極めて高く、r
2/r
1比の値が極めて低かった。
図12は、実施例2におけるPASP-ES-MION9のX線エネルギースペクトル、及びX線回折パターンである。
図12(a)のXPSパターンでは、710.3eV及び723.8eVを中心とするピークは、それぞれ、Fe
2+2p及びFe
3+2pの結合エネルギーに対応し、三価鉄及び二価鉄の両方の存在が示唆され、実施例2のサンプルが四酸化三鉄であることが実証された。
図12(b)のXRDパターンでは、2つの特徴的なピーク(2θ≒35.3°及び2θ≒62.4°)は、四酸化三鉄結晶層[(311)及び(440)]に対応し、実施例2におけるサンプルが結晶構造の四酸化三鉄であることが実証された。XRDDパターン及びXPSDパターンの両方により、実施例2の四酸化三鉄の製造が成功したことが実証された、また、
図9の電子顕微鏡像から、実施例2の磁性四酸化三鉄ナノ粒子の製造が成功したことが実証された。
図13は、実施例2で製造されたPASP-ES-MION9の赤外線吸収スペクトルであり、PASP赤外線吸収曲線、及びPASP-ES-MION9赤外線吸収曲線のいずれにも、-COO-伸縮振動ピークである吸収ピークa(1400cm
-1)が現れ、このことから、サンプル中のPASPの存在が実証された。さらに、Fe-Oの伸縮振動ピークである吸収ピークbは、PASP-ES-MION9赤外線吸収曲線に現れたが、PASP赤外線吸収曲線には現れず、これによっても、磁性四酸化三鉄ナノ粒子PASP-ES-MION9の製造が成功したことがさらに実証された。
図14は、実施例2における様々な濃度のPASP-ES-MION9水溶液のT
1-強調MRI画像、及びそれに対応するMRI信号強度である。磁界強度は3.0T、スキャンパラメータは、TE=8.4ms、TR=200msである。(a)のMRI画像から明らかに、純水(鉄濃度0)と比較して、サンプルPASP-ES-MION9を含有する水溶液のMRI信号は顕著に増強しており、また、サンプル濃度の上昇に応じて勾配的に増強する傾向がある。(b)から明らかに、サンプルPASP-ES-MION9水溶液中の鉄の濃度が1000μMである場合、MRIの△SNRは1025%であり、PASP-ES-MION9がMRIのコントラスト及び感度を顕著に向上できることが示唆され、実施例2におけるPASP-ES-MION9の良好な磁気共鳴画像形成性能が示された。
図15は、実施例2におけるPASP-ES-MION9が担癌マウスの体内に注射量5mg/kgで注射された場合のMRI画像である。マウスにサンプルを尾静脈注射する前、尾静脈注射後の0h、1h、2h、3h、4h、及び8hに7.0T磁気共鳴画像形成を行った。図から明らかに、サンプル注射時間が経るに伴い、腫瘍のMRI信号は、増強してから低下する傾向を示し、注射後3hにMRI信号は最も強かった。体画像形成の結果からは、実施例2におけるPASP-ES-MION9がマウス腫瘍に対して良好な磁気共鳴画像形成効果を有することが明らかにされた。
実施例3
【0042】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(HPMA-ES-MION)の製造
2mg/mLポリマレイン酸HPMA(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをHPMA-ES-MIONと表記した。
実施例3のサンプルについて性能試験を行った。実施例3のサンプルについて算出した鉄の回収率は87.2%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例3のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(HPMA-ES-MION-1、HPMA-ES-MION-2、HPMA-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図16に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例3のr
1値は6.9±0.3mM
-1 s
-1、r
2値は32.3±1.9mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は4.7±0.4であった。実施例3は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例4
【0043】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PEAA-ES-MION)の製造
2mg/mLポリ(2-エチルアクリル酸)PEAA(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPEAA-ES-MIONと表記した。
実施例4のサンプルについて性能試験を行った。実施例4のサンプルについて算出した鉄の回収率は89.1%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例4のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PEAA-ES-MION-1、PEAA-ES-MION-2、PEAA-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図17に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例4のr
1値は7.8±0.2mM
-1 s
-1、r
2値は19.8±1.7mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は2.5±0.3であった。その結果、実施例4は、r
1値が極めて高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例5
【0044】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PESA-ES-MION)の製造
2mg/mLポリエポキシコハク酸PESA(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPESA-ES-MIONと表記した。
実施例5のサンプルについて性能試験を行った。実施例5のサンプルについて算出した鉄の回収率は93.2%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例5のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PESA-ES-MION-1、PESA-ES-MION-2、PESA-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図18に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例5のr
1値は7.2±0.2mM
-1 s
-1、r
2値は26.1±2.1mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は3.6±0.3であった。その結果、実施例5は、r
1値が極めて高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例6
【0045】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(ε-PL-ES-MION)の製造
2mg/mLポリリジンε-PL(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをε-PL-ES-MIONと表記した。
実施例6のサンプルについて性能試験を行った。実施例6のサンプルについて算出した鉄の回収率は82.6%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例6のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(ε-PL-ES-MION-1、ε-PL-ES-MION-2、ε-PL-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図19に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例6のr
1値は6.2±0.3mM
-1 s
-1、r
2値は32.5±3.8mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は5.3±0.9であった。その結果、実施例6は、r
1値が極めて高く、r
2/r
1比の値が高く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例7
【0046】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PLH-ES-MION)の製造
2mg/mLポリヒスチジンPLH(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPLH-ES-MIONと表記した。
実施例7のサンプルについて性能試験を行った。実施例7のサンプルについて算出した鉄の回収率は85.7%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例7のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PLH-ES-MION-1、PLH-ES-MION-2、PLH-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図20に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例7のr
1値は5.7±0.4mM
-1 s
-1、r
2値は46.6±7.0mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は8.3±1.5であった。その結果、実施例7は、r
1値が極めて高く、r
2/r
1比の値が高く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例8
【0047】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PLR-ES-MION)の製造
2mg/mLポリアルギニンPLR(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPLR-ES-MIONと表記した。
実施例8のサンプルについて性能試験を行った。実施例8のサンプルについて算出した鉄の回収率は83.9%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例8のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PLR-ES-MION-1、PLR-ES-MION-2、PLR-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図21に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例8のr
1値は5.2±0.2mM
-1 s
-1、r
2値は55.0±9.1mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は10.6±1.8であった。その結果、実施例8は、r
1値が極めて高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例9
【0048】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PDDA-ES-MION)の製造
2mg/mLポリジメチルジアリルアンモニウムクロリドPDDA(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPDDA-ES-MIONと表記した。
実施例9のサンプルについて性能試験を行った。実施例9のサンプルについて算出した鉄の回収率は90.4%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例9のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PDDA-ES-MION-1、PDDA-ES-MION-2、PDDA-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図22に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例9のr
1値は7.1±0.5mM
-1 s
-1、r
2値は70.0±9.1mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は9.9±1.8であった。その結果、実施例9は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例10
【0049】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PSer-ES-MION)の製造
2mg/mLポリセリンPSer(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPSer-ES-MIONと表記した。
実施例10のサンプルについて性能試験を行った。実施例10のサンプルについて算出した鉄の回収率は88.2%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例10のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PSer-ES-MION-1、PSer-ES-MION-2、PSer-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図23に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例10のr
1値は5.8±0.25mM
-1 s
-1、r
2値は63.4±8.7mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は11.0±1.3であった。その結果、実施例10は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例11
【0050】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PThr-ES-MION)の製造
2mg/mLポリスレオニンPThr(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPThr-ES-MIONと表記した。
実施例11のサンプルについて性能試験を行った。実施例11のサンプルについて算出した鉄の回収率は85.7%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例11のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PThr-ES-MION-1、PThr-ES-MION-2、PThr-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図24に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例11のr
1値は6.6±0.4mM
-1 s
-1、r
2値は57.2±2.5mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は8.7±0.8であった。その結果、実施例11は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例12
【0051】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PTyr-ES-MION)の製造
2mg/mLポリチロシンPTyr(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPTyr-ES-MIONと表記した。
実施例12のサンプルについて性能試験を行った。実施例12のサンプルについて算出した鉄の回収率は83.2%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例12のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PTyr-ES-MION-1、PTyr-ES-MION-2、PTyr-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図25に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例12のr
1値は6.4±0.2mM
-1 s
-1、r
2値は59.7±5.8mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は9.4±1.2であった。その結果、実施例12は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例13
【0052】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(TA-ES-MION)の製造
2mg/mLタンニン酸TA(M
w=1700)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをTA-ES-MIONと表記した。
実施例13のサンプルについて性能試験を行った。実施例13のサンプルについて算出した鉄の回収率は92.7%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例13のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(TA-ES-MION-1、TA-ES-MION-2、TA-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図26に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例13のr
1値は7.3±0.4mM
-1 s
-1、r
2値は58.9±3.2mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は8.1±0.8であった。その結果、実施例13は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例14
【0053】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PolyQ-ES-MION)の製造
2mg/mLポリグルタミンPolyQ(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPolyQ-ES-MIONと表記した。
実施例14のサンプルについて性能試験を行った。実施例14のサンプルについて算出した鉄の回収率は87.5%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例14のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PolyQ-ES-MION-1、PolyQ-ES-MION-2、PolyQ-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図27に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例14のr
1値は7.0±0.2mM
-1 s
-1、r
2値は56.8±0.8mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は8.1±0.3であった。その結果、実施例14は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例15
【0054】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PHEA-ES-MION)の製造
2mg/mLポリアスパラギンPHEA(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPHEA-ES-MIONと表記した。
実施例15のサンプルについて性能試験を行った。実施例15のサンプルについて算出した鉄の回収率は85.4%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例15のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PHEA-ES-MION-1、PHEA-ES-MION-2、PHEA-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図28に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例15のr
1値は6.9±0.4mM
-1 s
-1、r
2値は49.2±7.2mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は7.2±0.8であった。その結果、実施例15は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例16
【0055】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PAM-ES-MION)の製造
2mg/mLポリアクリルアミドPAM(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPAM-ES-MIONと表記した。
実施例16のサンプルについて性能試験を行った。実施例16のサンプルについて算出した鉄の回収率は84.3%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例16のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PAM-ES-MION-1、PAM-ES-MION-2、PAM-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図29に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例16のr
1値は7.2±0.2mM
-1 s
-1、r
2値は50.2±6.8mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は6.9±0.9であった。その結果、実施例16は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例17
【0056】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(PMAM-ES-MION)の製造
2mg/mLポリメタクリルアミドPMAM(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをPMAM-ES-MIONと表記した。
実施例17のサンプルについて性能試験を行った。実施例17のサンプルについて算出した鉄の回収率は90.7%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例17のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(PMAM-ES-MION-1、PMAM-ES-MION-2、PMAM-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図30に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例17のr
1値は6.5±0.3mM
-1 s
-1、r
2値は55.8±4.8mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は8.5±0.5であった。その結果、実施例17は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例18
【0057】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(HA-ES-MION)の製造
2mg/mLヒアルロン酸HA(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをHA-ES-MIONと表記した。
実施例18のサンプルについて性能試験を行った。実施例18のサンプルについて算出した鉄の回収率は89.5%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例18のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(HA-ES-MION-1、HA-ES-MION-2、HA-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図31に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例18のr
1値は6.5±0.2mM
-1 s
-1、r
2値は71.8±5.1mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は11.0±0.6であった。その結果、実施例18は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例19
【0058】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(SA-ES-MION)の製造
2mg/mLアルギン酸ナトリウムSA(M
w=2000)水溶液20mLを三口フラスコにおいて窒素でバブリングして1h脱酸素した後、100℃で還流まで加熱した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをSA-ES-MIONと表記した。
実施例19のサンプルについて性能試験を行った。実施例19のサンプルについて算出した鉄の回収率は89.5%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例19のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(SA-ES-MION-1、SA-ES-MION-2、SA-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図32に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例19のr
1値は7.0±0.4mM
-1 s
-1、r
2値は57.2±10.7mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は8.2±1.7であった。その結果、実施例19は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例20
【0059】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(γ-PGA/PASP-ES-MION)の製造
2mg/mLポリグルタミン酸γ-PGA/ポリアスパラギン酸PASP(ポリグルタミン酸M
w=2000、ポリアスパラギン酸M
w=7000~8000)混合物(質量比1:1)溶液20mLを三口フラスコにおいて加熱して還流し、窒素でバブリングして1h脱酸素した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをγ-PGA/PASP-ES-MIONと表記した。
実施例20のサンプルについて性能試験を行った。実施例20のサンプルについて算出した鉄の回収率は93.7%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例20のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(γ-PGA/PASP-ES-MION-1、γ-PGA/PASP-ES-MION-2、γ-PGA/PASP-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図33に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例20のr
1値は6.7±0.4mM
-1 s
-1、r
2値は63.4±8.7mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は9.5±0.7であった。その結果、実施例20は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
実施例21
【0060】
磁性四酸化三鉄ナノ粒子(HPMA/PASP-ES-MION)の製造
2mg/mLポリマレイン酸HPMA/ポリアスパラギン酸PASP(ポリマレイン酸M
w=2000、ポリアスパラギン酸M
w=7000~8000)混合物(質量比1:1)溶液20mLを三口フラスコにおいて加熱して還流し、窒素でバブリングして1h脱酸素した。フラスコに0.25M FeSO
4と0.5M FeCl
3を含む混合水溶液0.4mLを加え、続いて、1%アンモニア水6mLを加えた。100℃で磁気撹拌しながら1h反応させ、静置して冷却した。反応が完了したサンプルを透析により精製し、最終サンプルをHPMA/PASP-ES-MIONと表記した。
実施例21のサンプルについて性能試験を行った。実施例21のサンプルについて算出した鉄の回収率は90.1%であり、このことから、原材料の利用率が高く、コストダウンが図られることが示された。実施例21のサンプルを6つの異なる濃度の水溶液に調製し、3.0T臨床用MRIシステム(Philips、Ingenia)において生体外画像形成試験を行い、縦緩和時間T
1及び横緩和時間T
2(HPMA/PASP-ES-MION-1、HPMA/PASP-ES-MION-2、HPMA/PASP-ES-MION-3の3つのサンプルを用いて平行試験を3回行う。)を得た。
図34に示すように、1/T
iの鉄濃度に伴う変化の関係をプロットし、フィッティング直線の傾きをT
i磁気緩和率(i=1又は2)とした。それによって、3.0T MRIシステムでは、実施例21のr
1値は6.4±0.1mM
-1 s
-1、r
2値は26.1±2.8mM
-1 s
-1、r
2/r
1比の値は4.1±0.4であった。その結果、実施例21は、r
1値が高く、r
2/r
1比の値が低く、生体適合性が良好なT
1-強調MRI造影剤として有用であることが実証された。
【0061】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の精神的本質及び原理から逸脱することなく行われたいかなる変更、修飾、代替、組み合わせ、簡略化も等価な置換形態であり、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】