(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】車両の作動可能な対象物の位置を制御する方法
(51)【国際特許分類】
H02P 31/00 20060101AFI20240822BHJP
H02P 7/00 20160101ALI20240822BHJP
【FI】
H02P31/00
H02P7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507050
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 NL2022050469
(87)【国際公開番号】W WO2023018333
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510126416
【氏名又は名称】エムシーアイ(ミラー コントロールズ インターナショナル)ネザーランド ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】フー, ジンクウ
(72)【発明者】
【氏名】メイダム, ヘンドリック ヤン
【テーマコード(参考)】
5H501
5H571
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501BB08
5H501CC04
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(57)【要約】
第1の態様として、電子制御回路において、車両の作動可能な対象物の位置を制御するためのアクチュエーターの電気モーターを制御する方法を提供する。この方法は、作動可能な対象物の位置を保持する命令を受信する工程と、電気モーターの初期保持電圧パターンを取得する工程と、初期保持電圧パターンを電気モーターに印加する工程とを含む。この方法はさらに、作動可能な対象物の運動に関する運動データを決定する工程と、運動データに基づいて調整保持電圧パターンを決定する工程と、調整保持電圧パターンを電気モーターに印加する工程とを含む。電気モーターのステーター、ローター、あるいはその両方(タイプによって異なる)に特定の電圧を印加することで、ローターとステーターの間に外力を打ち消す磁力を発生させることができる。ステーターを保持するために印加される電圧は、ローターの運動を検出して決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御回路において、車両の作動可能な対象物の位置を制御するためのアクチュエーターの電気モーターを制御する方法であって、
前記作動可能な対象物の位置を保持する命令を受信する工程と、
前記電気モーターの初期保持電圧パターンを取得する工程と、
前記初期保持電圧パターンを前記電気モーターに印加する工程と、
前記作動可能な対象物の運動に関する運動データを決定する工程と、
前記運動データに基づいて調整保持電圧パターンを決定する工程と、
前記調整保持電圧パターンを前記電気モーターに印加する工程と
を備える方法。
【請求項2】
前記運動データを決定する工程が、
前記電気モーターを流れるモーター電流と前記電気モーターにかかるモーター電圧との少なくとも一方を決定する工程と、
モーターデータを取得する工程と、
前記モーターデータと、前記モーター電流および前記モーター電圧の少なくとも一方とに基づいて、前記電気モーターの逆起電力を決定する工程と、
前記逆起電力に基づいて、前記運動データを決定する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記逆起電力に基づいて前記調整保持電圧パターンを決定する工程をさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記逆起電力の大きさを第1の所定値と比較する工程と、
前記逆起電力の大きさが前記第1の所定値より小さい場合、前記調整電圧パターンがゼロであると決定する工程と
をさらに備える、請求項2および請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記逆起電力の大きさを第2の所定値と比較する工程と、
前記逆起電力の大きさが前記第2の所定値を超える場合、
前記調整電圧パターンをゼロに設定することと、
前記逆起電力に基づいて安全電圧パターンを決定し、当該安全電圧パターンを前記電気モーターに印加することと
のいずれか一方を実行する工程と
をさらに備える、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記安全電圧パターンは、前記運動データによって示される前記作動可能な対象物の運動の方向に前記電気モーターを運動させるように構成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電気モーターがブラシ付きDCモーターであり、前記初期保持電圧と前記調整保持電圧との少なくとも一方の第1の符号が、前記安全電圧パターンの第2の符号と反対である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記作動可能な対象物の運動に関する運動データを決定する工程が、
前記電気モーターを流れる電流を監視する工程と、
前記監視された電流の変動量を決定する工程と、
単位時間当たりの変動量を決定する工程と、
前記単位時間当たりの変動量に基づいて、前記運動データを決定する工程と
を含む、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電気モーターの初期保持電圧パターンを取得する工程が、
前記電気モーターの逆起電力を決定する工程と、
前記電気モーターの決定された逆起電力に基づいて、前記電気モーターの初期保持電圧パターンを決定する工程と
を含む、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記車両の速度に関する車両速度データを取得する工程と、
前記車両速度データに基づいて前記調整保持電圧パターンを決定する工程と
をさらに備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電気モーターの初期保持電圧パターンを取得する工程が、電子メモリから電圧値を取得することを含む、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記作動可能な対象物が現在の位置に保持されるように、前記運動データに基づいて前記調整保持電圧パターンを決定する工程と、
所定の安全電圧パターンを取得する工程と、
前記決定された保持電圧パターンを前記安全電圧パターンと比較する工程と、
前記比較に基づいて、前記決定された保持電圧パターンを前記電気モーターに印加しても安全かどうかを判定する工程と、
前記決定された保持電圧を印加しても安全であると判定された場合、前記決定された保持電圧を印加する工程と
をさらに備える、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記調整保持電圧パターンが、最大値と最小値との間で時間的に変動する波形からなる、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記調整保持電圧パターンの電圧の平均値の大きさは、前記逆起電力の大きさに実質的に等しい、請求項2に従属する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
車両の作動可能な対象物の位置を制御するためのアクチュエーターの電気モーターを制御するように構成された電子制御回路であって、
前記作動可能な対象物の位置を保持する命令を受信し、
前記電気モーターの初期保持電圧パターンを取得し、
前記初期保持電圧パターンを前記電気モーターに印加し、
前記作動可能な対象物の運動に関する運動データを決定し、
前記運動データに基づいて調整保持電圧パターンを決定し、
前記調整保持電圧パターンを前記電気モーターに印加する
ように構成された電子制御回路。
【請求項16】
車両の作動可能な対象物の位置を制御するように構成された制御モジュールであって、
作動可能な対象物、前記作動可能な対象物に接続され、前記作動可能な対象物を駆動するように構成された、電気モーターを含むアクチュエーターと、
前記電気モーターに接続され、前記電気モーターを制御するように構成された請求項15に記載の電子制御回路と
を備える制御モジュール。
【請求項17】
前記電気モーターがブラシ付きDCモーターである、請求項16に記載の制御モジュール。
【請求項18】
作動可能な対象物である、空気流をガイドするためのフラップと、
請求項16または請求項17に記載の制御モジュールであって、前記電気モーターが前記作動可能な対象物に接続されている制御モジュールと
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な態様とその実施形態は、電気モーターによって駆動されるように配置された作動可能な対象物の位置を保持するために電気モーターを制御する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラーやミラー調整装置、グリルのシャッター、作動可能なスポイラーやその他のエアガイドフラップ、スクリーンワイパー、ドア、窓など、自動車の作動可能な部品は、一般に電気モーターによって制御される。電気モーターは、直接またはドライブトレインを介して、対象物を所望の位置まで駆動する。その位置で、対象物をロックすることができる。これは、所望の位置が常に同じであれば実現可能である。これによって、ロック機構の位置決めが便利になるからである。対象物の所望の位置が車に対して特定されていない場合、ロックはより難しくなる。
【発明の概要】
【0003】
作動可能な対象物を所定の位置に保持することは、十分な摩擦を与えることによって行うことができる。このような摩擦の問題点は、対象物の動作中に摩擦力に勝る力が必要になることで、その結果カップリングが摩耗する可能性があり、またかなりの電力を必要とする。車両の作動可能な部分、特にエアガイドフラップの保持制御を改善することが好ましい。
【0004】
第1の態様として、電子制御回路において、車両の作動可能な対象物の位置を制御するためのアクチュエーターの電気モーターを制御する方法を提供する。この方法は、作動可能な対象物の位置を保持する命令を受信する工程と、電気モーターの初期保持電圧パターンを取得する工程と、初期保持電圧パターンを電気モーターに印加する工程とを含む。この方法はさらに、作動可能な対象物の運動に関する運動データを決定する工程と、運動データに基づいて調整保持電圧パターンを決定する工程と、調整保持電圧パターンを電気モーターに印加する工程とを含む。
【0005】
電気モーターのローターの位置保持は、機械的な方法で達成され得るが、複雑な機械的構造を必要とする場合がある。特に、作動可能な対象物が末端部の間の位置に設置される場合、および/または作動可能な対象物が風などの外力を受ける場合がそうである。電気モーターのステーター、ローター、あるいはその両方(タイプによって異なる)に特定の電圧を印加することで、ローターとステーターの間に外力を打ち消す磁力を発生させることができる。ステーターを保持するために印加される電圧は、ローターの運動を検出して決定される。
【0006】
この運動は、電源電圧が印加されているか遮断されている状態で、モーターにかかる電圧、好ましくは両端子の電圧を監視することによって検出することができる。ステーターに対してローターが運動すると、ステーター、ローター、またはその両方において、モーターの電磁石内の磁界が変化し、その結果、電磁石に電圧がかかるか、またはその電圧の値が変化する。そのような電圧の変化を検出することで、運動を検出することができる。しかし、それに加えて、あるいはそれに代えて、ローターの運動は、スイッチ、(回転)電位差計、その他、またはそれらの組み合わせなどの機械的または電気機械的手段によっても検出することができる。
【0007】
運動の検出に応答して、好ましくは検出された運動の量に応答して、印加電圧を調整することにより、ローターの位置、特に保持位置と、それに伴う作動可能な対象物の位置とを正確に制御することができる。
【0008】
一実施形態において、運動データを決定する工程は、電気モーターを流れるモーター電流および電気モーターにかかるモーター電圧の少なくとも一方を決定する工程、およびモーターデータを取得する工程を含む。前記実施形態は、前記モーターデータと、前記モーター電流および前記モーター電圧の少なくとも一方とに基づいて、前記電気モーターの逆起電力を決定する工程と、逆起電力に基づいて、運動データを決定する工程とをさらに含む。
【0009】
電流と電圧は、電気モーターの通常運転中に決定することができる。電気モーターのコイル配線の抵抗(または静止状態での抵抗)を使って、巻線にかかる「抵抗性の」電圧を、得られた電流値を使って決定することができる。電気モーターの両端子にかかる電圧とモーター専用の定数があれば、逆電磁力を求めることができる。逆起電力は、ステーターとローターが相対的に運動した結果であり、逆起電力がゼロであれば運動はない。したがって、この実施形態では、印加する電圧は逆起電力に基づいて決定することができる。しかし、得られた電流および/または電圧の値は、ローターの運動を決定するために別の方法で使用することもできる。
【0010】
別の実施態様は、逆起電力の大きさを第1の所定値と比較する工程と、逆起電力の大きさが第1の所定値より小さい場合、調整電圧パターンがゼロであると決定する工程とをさらに含む。この実施形態のバリエーションは、後述するように、電源電圧を一定または平均の電流レベルに維持することである。逆起電力の大きさが第1の所定値より大きい場合には、逆起電力の符号と印加電圧の符号とに基づいて、印加電圧を増減させることができる。これについては後述する。
【0011】
また別の実施態様では、逆起電力または決定された調整電圧の大きさを第2の所定値と比較する工程をさらに含む。逆起電力または決定された調整電圧の大きさが第2の所定値を超える場合には、調整電圧パターンをゼロに設定する動作、逆起電力に基づいて安全電圧パターンを決定する動作、および安全電圧パターンを電気モーターに印加する動作のいずれかを実行することができる。
【0012】
システムにとって高すぎる可能性のある、作動可能な要素を保持するための電圧の印加は、モーター巻線の焼損や作動可能な要素の損傷につながる可能性があるという意味で、損傷を防ぐか少なくとも軽減するための措置がとられる。このような措置は、ローターを自由に回転させたり、電圧を印加してローターおよび/または作動可能な要素を安全な位置に導いたりすることである。逆起電力が、印加される調整保持電圧の指標となる場合、逆起電力は、調整電圧を決定することなく、あるいは決定する前に、試験することができる。それに加えて、あるいはそれに代えて、調整保持電圧は、好ましくはその電圧を印加する前に、安全性をテストすることができる。
【0013】
さらに別の実施形態では、電気モーターの初期保持電圧パターンを取得する工程は、電気モーターの逆起電力を取得する工程と、電気モーターの決定された逆起電力に基づいて電気モーターの初期保持電圧パターンを取得する工程とを含む。これらの値はメモリから取得してもよいし、測定によって取得してもよい。測定によって得られる逆起電力電圧は、好ましくは、受信した保持命令に対応する位置にローターが到達した瞬間の逆起電力である。
【0014】
また、別の実施形態は、車両の速度に関連する車両速度データを取得する工程と、調整保持電圧パターンを車両速度データに基づいて決定する工程とをさらに備える。この実施形態は、作動可能な要素がグリルシャッターやスポイラーのような車両の空気ガイド要素である場合に特に適合する。車両の速度は、作動可能な要素に作用する風力の指標であり、風力に(も)対抗するための保持電圧を決定するためにそのまま考慮され得る。オプションとして、車両のクルーズ制御設定から速度を導き出すこともできる。
【0015】
さらに別の実施態様は、作動可能な対象物が現在の位置に保持されるように、運動データに基づいて調整保持電圧パターンを決定する工程と、所定の安全電圧パターンを取得する工程と、決定された保持電圧パターンを安全電圧パターンと比較する工程とをさらに含む。この実施形態は、前記比較に基づいて、決定された保持電圧パターンを電気モーターに印加しても安全かどうかを判定する工程と、決定された保持電圧を印加しても安全であると判定された場合、決定された保持電圧を印加する工程とをさらに含む。上述したように、このオプションは安全性を提供し、損傷を防ぐか、損傷のリスクを軽減する。
【0016】
さらに別の実施態様では、調整保持電圧パターンは、最大値と最小値との間で時間的に変動する波形からなる。好ましくは、調整保持電圧パターンの電圧の平均値の大きさは、逆起電力の大きさに実質的に等しい。このように、電気モーターはパルス符号変調された供給電圧を受けることができる。オプションとして、波形を平滑化するためのダンピング素子としてコンデンサを使用することもできる。
【0017】
第2の態様は、車両の作動可能な対象物の位置を制御するためのアクチュエーターの電気モーターを制御するように構成された電子制御回路を提供する。制御回路は、作動可能な対象物の位置を保持する命令を受信し、電気モーターの初期保持電圧パターンを取得し、初期保持電圧パターンを電気モーターに印加し、作動可能な対象物の運動に関する運動データを決定し、運動データに基づいて調整保持電圧パターンを決定し、調整保持電圧パターンを電気モーターに印加するように構成される。
【0018】
第3の態様は、車両の作動可能な対象物の位置を制御するように構成された制御モジュールを提供し、当該制御モジュールは、作動可能な対象物、作動可能な対象物に接続され、作動可能な対象物を駆動するように構成された、電気モーターを含むアクチュエーターと、電気モーターに接続され、電気モーターを制御するように構成された第2の態様による電子制御回路とを備える。
【0019】
第3の態様の一実施形態では、電気モーターはブラシ付きDCモーターである。
【0020】
第4の態様は、作動可能な対象物である、空気流をガイドするためのフラップと、電気モーターが作動可能な対象物に接続されている、第3の態様による制御モジュールとを備える車両を提供する。
【0021】
様々な態様およびその実施形態について、各図面に関連して更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】電気モーターとドライブトレインからなるアクチュエーターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、ドライブトレイン170を介してエアガイドフラップ160に結合された直流電気モーター100を示している。エアガイドフラップ160は、アクティブグリルシャッター(AGS)システムの一部であってもよい。電気モーター100はハウジング102を備え、そのハウジング102内にローター110が設けられている。ローター110には、第1の導体112と第2の導体114が設けられている。さらに、ローター110には1つ以上の付加的な導体が設けられている。これらの導体は、ブラシ接点116から、ローター110にコイルとして設けられた第1の電磁石122と第2の電磁石126に電流を供給するために設けられている。ハウジング102内には、第1の永久磁石124と第2の永久磁石128も設けられている。このように、直流電気モーター100は、一般に市販されている公知の電気モーターである。
【0024】
ドライブトレイン170は、ローター110とウォームホイール140との間に設けられたスリップカップリング130を備える。ドライブトレイン170は、好ましくは車軸158に設けられる歯車150をさらに備える。ウォームホイール140と歯車150の連結により、回転速度の有意な低下、好ましくは50分の1程度の低下が可能になる。
【0025】
第1スリップカップリング130は、ローター100に連結された第1スリップ部132と、ウォームホイール140に連結された第2スリップ部134とから構成されている。通常運転では、第1スリップ部132と第2スリップ部134は一体回転する。ウォームホイール140とローター110の間のトルクが予め決められたトルク閾値を超えると、第2スリップ部134はストールし、第1スリップ部132は回転を続け、この動作状態ではスリップカップリング130はスリップモードになる。スリップカップリング130がスリップ状態になると、通常はまずドライブトレイン170の全体がストールする。その後、スリップカップリング130はスリップモードに移行する。第1スリップ部132と第2スリップ部134の接触面の特性により、スリップカップリング130はスリップ動作を維持するか、スリップモードとストールモードを交互に繰り返す。
【0026】
それに加えて、あるいはそれに代えて、歯車150には第2のスリップカップリングが設けられている。歯車150は、この実施形態では、外輪152と内輪154とからなる。外輪152と内輪154の間には、第2スリップカップリング156が設けられている。第2スリップカップリング156の動作は、第1スリップカップリング130の動作と同様である。エアガイドフラップ160は内輪156に接続されている。
【0027】
この実施形態では、エアガイドフラップ160を作動させるために電気モーター100が使用されているが、他の実施形態では、自動車の他の作動可能な部品を作動させることもできる。このような作動可能な部品は、ミラーおよびミラー調整装置を含むフルリアビューモジュール、グリル用シャッター、作動可能なスポイラーまたは他のエアガイドフラップ、スクリーンワイパー、ドア、窓、その他、またはそれらの組み合わせとすることができる。
【0028】
図2は、
図1に示す調整システムを操作するための制御システムの概略図である。
図2は、調整システムの動作を制御するためのドライバ制御ユニット200と、電気モーター110に電力を供給するためのバッテリー220と、車両バス214を介してドライバ制御ユニット200に結合されている中央車両制御ユニット212と、ユーザー入力ユニットとしてのボタン216またはボタンセットと、調整システム180とを示している。
【0029】
車両バス214は、CANプロトコル、LINプロトコル、他のプロトコル、またはそれらの組み合わせに従って動作することができる。中央車両制御ユニット212は、速度、温度、エネルギー消費、その他、またはそれらの組み合わせのような、車両および1つまたは複数のエンジンに関連するデータを受信し、ユーザーとのやり取りを含む取得したデータに応答して、車両の様々な部分を制御するように構成されている。
【0030】
バッテリー220はドライバ制御ユニット200に結合されているように示されており、中央車両制御ユニット212にも結合されている。ボタン216は、ユーザーコマンドを提供するために中央車両制御ユニット212に接続されている。ドライバ制御ユニット200は、調整システム180に結合されている。
【0031】
ドライバ制御ユニット200は、バッテリー220から調整システム180の電気モーター110への電力供給を切り替えるためのスイッチ206を備える。スイッチ206と調整システム180の間には、電流センサー208が設けられている。電流センサー208は、スイッチ206によって切り替えられ、電気モーター100に供給される電流を感知するように配置される。オプションとして、電気モーター100にかかる電圧を測定するための電圧センサーが追加される。スイッチ206と電流センサー208は、ローカル制御ユニット202に接続されている。ローカル制御ユニット202には、ローカルメモリー204も接続されている。
【0032】
図3は、上記の制御システムを備える自動車としての自動車300を示している。制御システムのさまざまなコンポーネントは、自動車全体に分散して配置されることもある。車両の後部には、車両電源ネットワーク310に電力を供給するためのバッテリー220が設けられている。車両の中央には、車両制御ユニット212が配置されている。ドライバ制御ユニット200は、車両の前部に、好ましくは調整システム180の近くに配置される。調整システム180は、アクティブグリルシャッターシステムのフラップ160に接続されている。別の実施形態では、調整システム180、または別の調整システムの任意の他の駆動ユニットは、自動車300の後部、前部、上部および/または下部の空気流を調整するための任意のスポイラーなどを含むがこれらに限定されない、別のエアガイドフラップの位置を調整するために配置される。
【0033】
調整システム180は、好ましくは、1本または2本の導電線によってドライバ制御ユニット200に接続される。導電線が1本しかない場合は、自動車300の車体を介して電流の戻り経路を設けることができる。後者のオプションは、駆動ユニットと電源モジュールとの間の接続で多くの信号ノイズを受信する可能性があるため、これは好ましい実施形態ではない。しかし、適切な電子機器を適用すれば、そのような実施形態を排除できないことは明らかである。上記に示したように、駆動ユニットは好ましくは電子機器を含まない。しかし、自動車300の好ましい動作のためには、制御される1つまたは複数のフラップの位置が比較的正確に制御されるように、ドライバ制御ユニット200が駆動ユニットを制御することが好ましい。
【0034】
この目的のために、電流センサー208が設けられている。電流センサー208は処理モジュール202に結合され、これにより処理モジュール202は駆動ユニットに供給される電流の特定の変動を検出できる。駆動ユニットに含まれる電気モーターは、好ましくは直流モーターであり、より詳細には、ローター110内に2つ、3つまたはそれ以上のコイルを有するブラシ付き直流モーターである。静止しているブラシと回転するローターとの接触により、ブラシと第1整流子から第2整流子との間の接点が切り替わるが、ローター110内のコイルへの通電が変化する度に、駆動ユニットに供給される供給電流に変動が生じる。電流センサー208と連動して、ローカル制御ユニット202はこれらの変動を計数するように構成されている。計数された変動数は、フラップ160の終了位置を決定するために使用されてもよい。
【0035】
ドライバ制御ユニット200と調整システム180のさらなる機能性については、
図4によって示されるフローチャート400と併せてさらに詳しく説明する。フローチャートの様々な部分は、以下のリストに簡潔にまとめられている。
402 プロセスを開始する
404 保持命令を受信する
406 初期保持電圧パターンを得る
408 保持電圧パターンを印加する
410 電流を得る
412 電圧を得る
414 逆起電力を決定する
416 逆起電力の大きさを有効区間と比較する
418 結果の比較?
420 更新された保持電圧パターンを決定する
422 速度を得る
424 速度を考慮して保持電圧パターンを調整する
426 調整した保持電圧パターンを印加する
432 調整した保持電圧をゼロに設定する
442 安全電圧パターンを得る
444 安全電圧パターンを印加する
446 終了
【0036】
手順はターミネーター402から始まり、保持命令を受信する工程404へと続く。保持命令は、ドライバ制御ユニット200または中央車両制御ユニット212によって受信され得る。以下に説明する手順は、ドライバ制御ユニット200によって、中央車両制御ユニット212によって、またはその両方によって実行することができる。命令は、イベントの検出によって受信することができる。このようなイベントは、ユーザー入力が行われたこと、車両300が特定の速度を超えたこと、エンジン温度が特定の閾値を超えたこと、または下回ったこと、車内温度が特定の閾値を超えたこと、または下回ったこと、その他、またはそれらの組み合わせであり得る。保持命令の前に、検出されたイベントに応答してフラップ160を動作させる命令があってもよい。
【0037】
工程406では、保持機能を実行するために電気モーター100に印加される初期保持電圧パターンが電子メモリ204から取得される。それに代えて、あるいはそれに加えて、初期保持電圧は、電気モーター100で感知された電流および/または電圧に基づいて決定される。工程408では、こうして得られたまたは決定された初期保持電圧パターンが電気モーター100に印加される。このパターンは連続波の電圧であってもよい。それに加えて、あるいはそれに代えて、切り替えパターンを印加することもできる。
【0038】
連続波の上に、変動するパターンを設けることもできる。別の実施形態では、電圧はゼロのような最小値と、車両では通常24ボルトまたは12ボルト前後となる最大値との間で変調される。変調、特にスイッチング変調は、周期的に実施することができる。このように、平均電圧はパルス幅変調によって提供されるが、その際平均電圧は最大電圧とデューティサイクルに依存する。
【0039】
工程410では、電気モーター100を流れる電流が求められ、工程412では、電気モーター100にかかる電圧が求められる。この動作の間、好ましくは、電気モーター100への電力供給は、例えばスイッチ206によってオフにされ、電流センサー208は電流と電圧を測定するために使用される。
【0040】
別の実施例では、ローカル制御ユニット202は、電気モーター100の供給電流の変動を測定する。一実施形態では、この測定の間、供給電流は印加され続けるが、カットされるなどして減少することもある。供給電流の変動、特に時間単位当たりの変動量に基づいて、電気モーター100の回転速度を決定することができる。
【0041】
このようにして、例えば、初期保持パターンのような保持パターンが印加された場合に、電気モーター100とそれに伴ってフラップ160が検出されるか否かが判定され得る。上述したように、変動は一般にブラシ付きDC電気モーターで発生するが、この実施例はそれに特に適している。
【0042】
工程414では、電気モーターのローターが運動しているかどうかを示すものとして、逆起電力が決定される。運動していなければ逆起電力はなく、逆起電力がゼロでなければ、電気モーターのローターはステーターに対して相対的に運動していることになる。逆起電力(BEMF)は次のように求められる。
【数1】
【0043】
Vbatは電源電圧またはバッテリー電圧、Rはモーターデータに含まれるモーターパラメータの値の一例としての巻線抵抗、Iは供給電流、εはモーター固有の定数、di/dtは供給電流の時間微分係数である。
【0044】
スイッチ206がオフの状態でVbatとdi/dtがゼロになると、逆起電力は、測定された電圧または測定された電流に巻線の抵抗を乗算したものと実質的に同じになる。工程414では、巻線に加え、他のデータも使用して、測定された電圧および/または測定された電流から逆起電力を導出することができる。
【0045】
電気モーター100の運動状態が供給電流の変動を計数することによって決定された場合、電気モーター100のローターの決定された運動速度に基づいて、すなわち、単位時間当たりの供給電流の決定または計数された変動量に基づいて、調整保持電圧パターンが印加され得る。
【0046】
工程416では、逆起電力または逆起電力に関連するその微分係数、特にその大きさが有効区間と比較される。逆起電力または関連値が有効区間より低い場合、処理は判断工程418を経て工程432に分岐する。工程432で、保持電圧パターンがゼロに設定され、工程426で、ゼロ電圧保持パターンが電気モーターに印加される。
【0047】
逆起電力値または関連値が有効区間内であれば、電気モーター100に電力が供給されることなく電気モーター100が動くと判断される。そのため、逆起電力値や関係値は運動データを構成する。この運動は、フラップ160に作用する空気の流れに起因する可能性がある。空気の流れは、特定の速度で走行する車両300から発生する可能性があり、この空気の流れは、フラップ160に作用する力を生み、その結果、トルクを生じ、このトルクは、運動をもたらす。
【0048】
それに加えて、あるいはそれに代えて、別の実施形態では、電気モーターのローター110の運動は、スイッチ、電位計、その他、またはそれらの組み合わせのような機械的検出器または電気機械的検出器によって決定される。このようなセンサーや検出器は、ローター110に直接接続してもよいし、ドライブトレインを介して接続してもよい。後者の場合、センサーまたは検出器は、フラップ160の運動を検出または感知して運動データを取得するように配置してもよい。
【0049】
それに加えて、あるいはそれに代えて、さらに別の実施形態では、電気モーターのローターが電気モーターのステーターに対して運動する、すなわち回転するかどうかを、さらなる電気的パラメーターに基づいて決定することによって、電気モーターのローター110の運動が決定される。これは以下の式で決定することができる。
【数2】
【0050】
ここで、Vbatは電気モーターの端子にかかる電圧、Imは電気モーターを流れる電流、Kvはモーター固有の定数、ωはローターの回転速度である。
【0051】
この式は次のように書き換えることができる。
【数3】
【0052】
この式から、電気モーターのローターが運動するかどうか、つまり回転するかどうかを直接判断することができる。除算の結果が0でなければ、ローターは運動する。ゼロの場合、ローターは運動しない。このように、逆起電力とローターの回転速度は関連した値である。回転速度に基づいて、更新された保持電圧パターンが工程420で決定される。
【0053】
外力が加えられることなく、モーターに印加される電圧が時計回り方向となり、検出された運動が時計回り方向である場合、印加される電圧は、先に印加された電圧を徐々に、段階的に、またはその他の組み合わせで減少させることによって調整し、調整電圧パターンを提供する。
【0054】
外力が加えられることなく、モーターに印加される電圧が時計回り方向となり、検出された運動が反時計回り方向である場合、印加される電圧は、先に印加された電圧を徐々に、段階的に、またはその他の組み合わせで増加させることによって調整し、調整電圧パターンを提供する。
【0055】
外力が加えられることなく、モーターに印加される電圧が反時計回り方向となり、検出された運動が反時計回り方向である場合、印加される電圧は、先に印加された電圧を徐々に、段階的に、またはその他の組み合わせで減少させることによって調整し、調整電圧パターンを提供する。
【0056】
外力が加えられることなく、モーターに印加される電圧が反時計回り方向となり、検出された運動が時計回り方向である場合、印加される電圧は、先に印加された電圧を徐々に、段階的に、またはその他の組み合わせで増加させることによって調整し、調整電圧パターンを提供する。
【0057】
こうして調整された調整電圧パターンを適用する前に、調整電圧パターンを工程418で安全値と比較してもよい。したがって、それに代えて、あるいはそれに加えて、工程420の後に工程418の安全チェックを実施することもできる。
【0058】
次に、新たにモーターの電圧および電流特性を前述のように取得することによって、再び運動速度を決定する。その後、必要に応じてモーターに印加する電圧を再度調整する。この実施形態を使用することにより、ローターが運動するかどうかを判断するための測定、ひいては保持電圧を調整するかどうかを判断するための測定は、電気モーターへの電力供給を中断する必要なく実行することができる。
【0059】
逆起電力値または関連値が有効区間内にある場合、更新された保持電圧パターンが工程420で決定される。保持電圧パターンは、電子メモリ204から取得してもよいし、逆起電力値または関連値に基づいて決定してもよいし、その他、あるいはそれらの組み合わせでもよい。オプションとして、こうして得られた更新された保持電圧パターンは、工程424で車両300の速度を考慮して調整され、この速度の値は、一般に、中央車両制御ユニット212によって利用可能であり、中央車両制御ユニット212、ドライバ制御モジュール200、またはその両方によって、工程422で取得される。工程426では、調整保持電圧パターンが電気モーター100に印加される。
【0060】
判断工程418において、逆起電力値または関連値の大きさが有効区間を超えていると判定された場合、フラップ160に作用する力に対抗するために電気モーター100に印加される保持電圧は高すぎる可能性があり、焼損のような電気モーター100の損傷をもたらす可能性がある。それに代えて、あるいはそれに加えて、電圧が高すぎると、電気モーターのローターに接続された機械部品に非常に大きな力がかかり、その結果、それらの部品が損傷する可能性がある。逆起電力値または関連値の大きさが高すぎると判定された場合、処理は判断工程418から工程442に分岐する。
【0061】
工程442では、例えば電子メモリ204から安全電圧パターンが取得される。安全電圧パターンはゼロ電圧パターンであってもよく、この場合、フラップ160はゼロトルクで空気流に対して平衡位置まで運動することが許容される。あるいは、フラップ106をそのようなゼロトルク位置、または別の位置に運動させるために、電気モーター100に印加される能動的な供給電圧パターンが決定される。このようなシナリオでは、安全電圧パターンの能動的な供給電圧パターンは、初期保持電圧または調整保持電圧とは逆の符号を持つ。これにより、電気モーターは外力が向けられた方向に動くことができる。工程444で、安全電圧パターンが電気モーター100に印加され、ターミネーター446で、手順は終了する。
【国際調査報告】