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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ミノカサゴ革及びその調製
(51)【国際特許分類】
   C14B 1/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C14B1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507120
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022039715
(87)【国際公開番号】W WO2023018658
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】17/397,629
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524046788
【氏名又は名称】クインテッセンス マリン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャヴダ,アーラフ
(72)【発明者】
【氏名】サラティーノ,ローランド
【テーマコード(参考)】
4F056
【Fターム(参考)】
4F056AA04
4F056CC02
4F056DD02
4F056DD17
4F056DD24
4F056DD37
(57)【要約】
ミノカサゴ革を含み得る魚革を調製するためのシステム及び方法。ミノカサゴ革を作製する方法は、1本以上の案内線を使用してミノカサゴ身体の少なくとも一部を切断することであって、当該案内線が、当該ミノカサゴ身体から皮を除去するのが容易になるように構成される、ことと、当該1本以上の案内線を使用して当該ミノカサゴ身体から当該皮を除去することであって、除去された皮が、少なくとも当該案内線に基づいた皮切断パターンを画定する、ことと、当該除去された皮を少なくともなめしプロセスに供して、ミノカサゴ革を提供することと、を含み得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミノカサゴ革を作製する方法であって、
ミノカサゴ身体から鱗の少なくとも一部を除去して、少なくとも部分的に除鱗されたミノカサゴ身体を形成することと、
1本以上の案内線を使用して、前記少なくとも部分的に除鱗されたミノカサゴ身体の少なくとも一部を切断することであって、前記案内線が、前記少なくとも部分的に除鱗されたミノカサゴ身体から皮を除去するのが容易になるように構成される、ことと、
前記1本以上の案内線を使用して、前記少なくとも部分的に除鱗されたミノカサゴ身体から前記皮を剥離することであって、前記剥離された皮が、少なくとも前記案内線に基づいた皮切断パターンを画定する、ことと、
前記剥離された皮を第1のブラインに浸漬することと、
前記第1のブラインの後に、前記剥離された皮から魚肉の少なくとも一部を除去することと、
前記剥皮された皮を塩処理することと、
前記剥離された皮を少なくともなめしプロセスに供してミノカサゴ革を提供することであって、前記なめしプロセスが、前記剥離された皮を第1のなめし剤に曝露することと、前記剥離された皮を前記第1のなめし剤とは異なる第2のなめし剤に曝露することとを含む、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記切断が、ハーフスキンカットパターンをもたらすように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切断が、パンツカットパターンをもたらすように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記切断が、三角形カットパターンをもたらすように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記切断が、前記剥離された皮の表面積を最大化するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のなめし剤が、植物なめし剤、クロムなめし剤、合成なめし剤、脳漿なめし剤、若しくは油なめし剤、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のなめし剤が、植物なめし剤、クロムなめし剤、合成なめし剤、脳漿なめし剤、若しくは油なめし剤、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プテロワ・ラディアタ(Pterois radiata、キミオコゼ)、プテロワ・ボリタンス(Pterois volitans、ハナミノカサゴ)、及びプテロワ・マイル(Pterois miles、デビルファイアフィッシュ)は、一般にミノカサゴとして知られているミノカサゴ属(Pterois)のいくつかの種のうちの3種である。P.マイル及びP.ボリタンスは、メキシコ湾、カリブ海、及び西北大西洋における海洋生態系を破壊するとともに、在来するインド太平洋地域から地中海に侵入している最も侵略的な種のうちの2種である。これらの種は、その毒、捕食者としての効率、及びそれらの数を抑制するための捕食者又は寄生生物の不足から、非常に短期間で礁に生息する他の魚種の数を著しく減少させ得るので、これらの種を導入することはサンゴ礁にとって特に有害であった。
【0002】
改善が必要である。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、ミノカサゴ革等の魚革に関する。本開示は、独特のカットパターンを有する魚革基材及び切断された魚革を作製する方法に関する。本開示は、ミノカサゴ革基材及びミノカサゴ革を作製する方法に関する。
【0004】
一般的な一態様は、ミノカサゴ革を作製する方法を含む。ミノカサゴ革を作製する方法は、ミノカサゴ身体から鱗の少なくとも一部を除去して、少なくとも部分的に除鱗されたミノカサゴ身体を形成することと、1本以上の案内線を使用して、当該少なくとも部分的に除鱗されたミノカサゴ身体の少なくとも一部を切断することであって、当該案内線が、当該少なくとも部分的に除鱗されたミノカサゴ身体の皮から1本以上の棘を分離するように及び/又は当該身体から当該皮を除去するのが容易になるように構成される、ことと、当該1本以上の案内線を使用して当該ミノカサゴ身体から当該皮を剥離することであって、剥離された皮が、少なくとも当該案内線に基づいた皮切断パターンを画定する、ことと、当該剥離された皮を第1のブラインに浸漬することと、当該第1のブラインの後に、当該剥離された皮から魚肉の少なくとも一部を除去することと、当該剥離された皮を塩で処理する(salting)ことと、当該剥離された皮を少なくともなめしプロセスに供してミノカサゴ革を提供することであって、当該なめしプロセスが、当該剥離された皮から当該塩の少なくとも一部を除去することと、当該剥離された皮を第1のなめし剤に曝露することと、当該剥離された皮を当該第1のなめし剤とは異なる第2のなめし剤に曝露することとを含み得る、ことと、を含む。
【0005】
一般的な一態様は、ミノカサゴ革を作製する方法を含む。ミノカサゴ革を作製する方法は、1本以上の案内線を使用してミノカサゴ身体の少なくとも一部を切断することであって、当該案内線が、当該ミノカサゴ身体から皮を除去するのが容易になるように構成されている、ことと、当該1本以上の案内線を使用して当該ミノカサゴ身体から当該皮を除去することであって、除去された皮が、少なくとも当該案内線に基づいた皮切断パターンを画定する、ことと、当該除去された皮を少なくともなめしプロセスに供してミノカサゴ革を提供することであって、当該なめしプロセスが、当該除去された皮を第1のなめし剤に曝露することと、当該除去された皮を当該第1のなめし剤とは異なる第2のなめし剤に曝露することとを含み得る、ことと、を含む。
【0006】
一般的な一態様は、ミノカサゴ革を作製する方法を含む。ミノカサゴ革を作製する方法は、1本以上の案内線を使用してミノカサゴ身体の少なくとも一部を切断することであって、当該案内線が、当該ミノカサゴ身体から皮を除去するのが容易になるように及び/又は当該ミノカサゴ身体の皮から1本以上の棘を分離するように構成されている、ことと、当該1本以上の案内線を使用して当該ミノカサゴ身体から当該皮を除去することであって、除去された皮が、少なくとも当該案内線に基づいた皮切断パターンを画定する、ことと、当該除去された皮を少なくともなめしプロセスに供して、ミノカサゴ革を提供することと、を含む。
【0007】
一般的な一態様は、ミノカサゴ革を作製する方法を含む。ミノカサゴ革を作製する方法は、ミノカサゴ身体から鱗の少なくとも一部を除去して、除鱗されたミノカサゴ身体を形成することと、当該除鱗されたミノカサゴ身体において1本以上の案内線カットを切断することと、当該1本以上の案内線カットを使用して、当該ミノカサゴ身体から皮を剥離することと、当該皮をなめしてミノカサゴ革を提供することと、を含む。
【0008】
一般的な一態様は、ミノカサゴを漁獲する方法を含む。ミノカサゴを漁獲する方法は、ミノカサゴの漁猟についての漁猟インセンティブを提供することであって、当該漁猟インセンティブが、重量要素及びショット位置要素を含み得る、ことと、1人以上の漁猟者からミノカサゴを受領することと、少なくとも身体サイズ及びショット位置に基づいて受領したミノカサゴを分別することと、当該漁猟インセンティブ及び当該受領したミノカサゴに基づいて当該1人以上の漁猟者に支払いをすることと、を含む。
【0009】
一般的な一態様は、サンゴ礁をミノカサゴによる過剰捕食から保護する方法を含む。方法は、特定の密度閾値を満たすミノカサゴの位置を決定することと、当該位置又はその付近でのミノカサゴの漁猟についての漁猟インセンティブを提供することであって、当該漁猟インセンティブが、重量要素及びショット位置要素を含み得る、ことと、1人以上の漁猟者からミノカサゴを受領することと、少なくとも身体サイズ及びショット位置に基づいて受領したミノカサゴを分別することと、当該漁猟インセンティブ及び当該受領したミノカサゴに基づいて当該1人以上の漁猟者に支払いをすることと、を含む。
【0010】
一般的な一態様は、ミノカサゴ皮革を作製する方法を含む。方法は、スピアフィッシングによってミノカサゴを漁獲することと、当該ミノカサゴの身体から鱗を除去することと、皮の表面積を最大化するように当該ミノカサゴの身体の皮を切断することと、当該皮をなめしプロセスに供することと、を含む。
【0011】
一般的な一態様は、ミノカサゴの皮から革を作製する方法を含む。方法は、皮の表面積を最大化するパターンでミノカサゴの皮を切断することと、当該魚の身体から当該皮を剥離することと、当該皮を処理して革基材を形成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下の図面は、一般に、本開示において考察される様々な実施例を例として示すが、限定するものではない。図面は以下の通りである。
図1】本開示によるミノカサゴの例を示す図である。
図2】本開示によるミノカサゴについての切断案内線を示す図である。
図3A】本開示による切断案内線を使用したミノカサゴ皮の三角形カットの例を示す図である。
図3B】本開示による切断案内線を使用したミノカサゴ皮のパンツカットの例を示す図である。
図3C】本開示による切断案内線を使用したミノカサゴ皮のハーフスキンカットの例を示す図である。
図4A】本開示によるミノカサゴの例の除肉を示す図である。
図4B】本開示によるミノカサゴの例の除肉を示す図である。
図4C】本開示によるミノカサゴの例の除肉を示す図である。
図5】従来技術による牛革の例の断面を示す図である。
図6】本開示に従って調製されたミノカサゴ革の例の断面を示す図である。
図7】本開示に従って調製された魚革の例を示す図である。
図8】本開示による方法の例を示す図である。
図9】本開示による方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ミノカサゴ(ミノカサゴ属)等の特定の魚は、侵略的であり、環境に有害であり得る。一例として、ミノカサゴは、サンゴ礁の発達又は他の海洋生物に悪影響を及ぼす場合がある。
【0014】
本開示は、ミノカサゴ等の侵略魚によって提起される1つ以上の問題に対処し得るシステム、方法、及び有用な物品に関する。例示的な例として、一匹のミノカサゴが、生態系における幼若な野生生物を排除し、成体に達する生物の数を減少させることによって、接触した任意のサンゴ礁上の生物の最大約80%を殺傷し得る。各雌は、1年間に最大600万個の卵を産む。ミノカサゴは、18本の毒棘を有し、大西洋に天然の捕食者は存在しない。特定の例において、ミノカサゴは、天然の藻類を維持する、サンゴ礁に在来する幼魚を殺傷する。これらのサンゴ礁に在来する魚がいないと、藻類が過剰に成長し、サンゴが窒息する。サンゴが死滅すると、サンゴによってサポートされている周囲の生物も死滅する恐れがある。
【0015】
本開示は、ミノカサゴ等の魚の漁獲及び加工に関する。一例として、ミノカサゴの個別漁獲は、侵略的ミノカサゴによって影響を受けていた環境に対して直接的で積極的な環境面での利益を有し得る。更に、漁獲されたミノカサゴは、使用可能な製品に加工することができる。ミノカサゴは、魚肉又は切り身用に加工することができる。追加的に又は代替的に、他の製品において使用され得る魚皮革材料を提供するために、ミノカサゴを加工することもできる。魚の加工は、魚製品の所望の生産量に依存し得る。本明細書に記載するとき、例えば、除鱗及び切断等の特定のプロセス工程は、各魚からの魚肉の生産量及び/又は品質を最大化するように最適化され得る。あるいは、例えば、除鱗及び切断等の特定のプロセス工程は、各魚から除去された魚皮の表面積及び/又は品質を最大化するように最適化され得る。一例として、加工された各ミノカサゴから回収された魚皮のより良好な品質又はより大きな表面積を提供するために、魚肉の生産量又は品質が犠牲にされる場合がある。そのようなトレードオフは、魚肉主導型の市場にとっては直観に反し得る。実際に、本開示は、ミノカサゴ皮を含む魚皮革の新規市場に関する。
【0016】
従来、ダイバーは、少なくとも継続的な機関購買者がいないことから、商業的又は専門的にミノカサゴを漁猟してこなかった。したがって、ミノカサゴの漁猟は、たとえ行われたとしても、断片的で不定期なものであった。その結果、ミノカサゴは、多くの礁構造物、細心の注意が必要な養魚場、及び保護海域にわたって野放しで広がってしまっている。
【0017】
米国の水域で捕獲されるほとんどの魚は、漁猟上限、大きさ制限、高いライセンス価格閾値、及び1年ごとに発行されるライセンス数の制限のうちのいくつかの組み合わせによって厳密に規制されている。侵略的ミノカサゴによる破壊の可能性から、ミノカサゴ漁猟には一定の例外が設けられることがある。しかしながら、特定の領域におけるミノカサゴ個体群に対処するために追加のインセンティブが必要になる場合もある。本開示は、ミノカサゴ向けにカスタマイズされたインセンティブプログラムに関する。ミノカサゴは比較的小さく、少なくともそのサイズ、生息地の深さ、防御棘、及び周囲環境から、より複雑な漁猟プロセスを必要とすることが多い。したがって、ミノカサゴ肉の市場は、ミノカサゴの個別漁猟の動機を与えるのに十分なインセンティブにはならない可能性がある。
【0018】
本開示は、他の属又は種の魚よりもミノカサゴの漁猟を促進し得るミノカサゴ漁猟インセンティブに関する。例示的な例として、(例えば、1回以上の胴部ショットを介した)胴部への発射と比較して、ミノカサゴの頭部への発射(頭部ショット)(例えば、銛で突く)に高価格を設定することによって、ダイバーに、胴部ショットよりも頭部ショットを選ぶインセンティブを与えることができる。頭部ショットの方がより人道的であり得る(より迅速で、魚にとってより痛みが少ない)。頭部ショットは、どちらも本開示において価値を有する皮も切り身も傷付けないので、より有用であり得る。同様の経済的理由から、より大きな魚からはより多くの革及びより多くの魚肉が生産されるので、より大きな魚が好まれる。在来の魚の代わりにミノカサゴを漁獲するようにダイバーに奨励するために価格設定構造を活用してもよく、価格設定構造によってダイバーがより大きなミノカサゴを撃つことを奨励することもできる。したがって、ダイバーには、より大きなミノカサゴをより傷付けず、より大量に、かつより頻繁に撃つインセンティブが与えられる。
【0019】
他のインセンティブを使用してもよい。例えば、一度に販売される魚の量が多い場合又は連続して何週にもわたって一貫して設定した量が配送される場合に魚の価格を上げることは、ダイバーに定期的な供給者となるインセンティブを与えるのに役立つ。一例として、ダイバーが毎週等定期的に販売する場合、より高い価格を提示してよい。これらのインセンティブは、ダイバーに、より大きなミノカサゴを好み、頭部ショットを使用することを選ぶ正当な理由を与えるとともに、より多くの魚を漁猟し、より頻繁に漁猟する正当な理由を与える。
【0020】
商業ダイバーが主にミノカサゴをターゲットにすることを奨励し、趣味のダイバーが擬似商業ダイバーになることを奨励するように、インセンティブを構成してもよい。趣味のダイバーは現在、利益を上げるために、又は少なくとも自身の娯楽のコストをカバーするために、外出したときは常にミノカサゴを撃つことができる。
【0021】
インセンティブは、電気ザッパー、陥穽、水中ロボット、及び/又はスピアフィッシング等の様々な漁獲プロセスに適用され得る。しかし、スピアフィッシングは非常に高価であるので、通常、業界では大型魚(>15ポンド)のために確保されている。この方法で小さな魚を商業的に漁猟することはあまりに直観に反しているので、他の漁業者は、(ハタ科の魚等の)最も大きな魚を除く全ての魚に対する実施を完全に放棄し、ミノカサゴのために潜水することを完全に拒絶している。加えて、従来のなめしプロセスは、小型魚(例えば、長さ約400~450mm、約2.5ポンド/魚以下、長さ450mm未満、長さ200~450mm、0.75~2.5ポンド/魚、0.2~1ポンド/魚、0.2~0.75ポンド/魚)のなめしを企図していなかった。本開示は、ミノカサゴ革及びその作製に関する。本開示は、より小さな魚の漁猟及び漁獲のための市場を作り出す方法に関する。本開示はまた、小型魚から皮革を作製するための新規プロセスに関する。
【0022】
追加的に又は代替的に、他の漁獲技法(例えば、生け捕り、水中遠隔操作ビークル(例えば、水中ロボット)による刺突、ROV対応の電撃及び吸引(スタン及びトラップ)、ROV対応の吸引(電撃スタンを伴わない)、能動的陥穽(例えば、ミノカサゴの交尾期の鳴き声又は特定の種類のプレイのように聞こえる特定の音響音を水中で流す等、領域内のミノカサゴを集めるための能動的インセンティブを生成する陥穽)、受動的陥穽等を、皮の品質を保つために使用してもよい。特に、あるミノカサゴの棘が他の漁獲されたミノカサゴの皮に刺さるのを最小限に抑える方法が企図される。従来の魚の漁獲は、革に使用される魚の皮の完全性を保護するためのそのような手段を考慮していない。
【0023】
魚の漁獲物の集荷のロジスティックスは、効率化を提供し得る。例えば、供給ラインは、ある領域のための定期的な集荷スケジュールを提供するように確立され得る。漁猟者の数及び漁猟の頻度に関するインプットを使用して、最新の供給の集荷を確立することもできる。したがって、様々な地域からのミノカサゴ漁獲の増加を集約して、なめし又は革加工等の下流の加工のためにより大量の魚を得ることができる。
【0024】
プロセス及び方法のうちの1つ以上は、コンピュータ可読媒体を実行するように構成された1つ以上のプロセッサ等のコンピュータプログラムを介して実行され得る。ユーザインターフェースを使用してインプットを収集する及び/又はアウトプットをユーザに提供することができる。例示的な例として、ルールベースのアルゴリズム又は機械学習等のプログラムを使用して、本明細書に記載する本発明のプロセスのうちの1つ以上を実行することができる。プログラム又はアルゴリズムは、ローカルに又はネットワークを介して実行することができ、携帯端末用のソフトウェアアプリを含み得る。
【0025】
追加的又は代替的に、資源としてミノカサゴを利用しながら、海からミノカサゴを除去するためのエンドツーエンドプロセスが本明細書に記載される。例示的な例として、ミノカサゴの皮を、様々な物品で使用するための革材料に加工することができる。革加工は、なめしプロセスを含み得る。加えて、表1は、実施され得る例示的ななめし前工程を示す。表1における工程の順序は、非限定的な例として提示されている。例えば、除鱗を脱灰工程後に行ってもよい。工程を削除してもよく、追加してもよく、又は順序付けし直してもよい。
【0026】
【表1】
【0027】
例示的な例としては、ミノカサゴを漁猟し、漁獲した後、秤量してよい。ミノカサゴは、分別、例えば、1つ以上の基準に基づいてグループ分けしてよい。そのようなグループ分けは、少なくとも3つのミノカサゴサブグループ、すなわち、胴部ショットなしの大型(>0.5ポンド)、胴部ショットありの大型+中型(0.2~0.5ポンド)、及び小型(0.2ポンド未満)を含んでいてよい。魚は、大きさ(例えば、大型、中型、及び小型)及び撃たれた場所(頭部対胴部)に応じて、いくつかのグループに分けられ得る。他の閾値及びグループ分けを使用してもよい。例えば、魚は、長さ、色、鱗の大きさ、銛で撃たれた位置、視覚的な皮の損傷等のうちの1つ以上に基づいてグループ化してよい。
【0028】
魚は除鱗してもよい。除鱗は、高摩擦布、金属スクレーパ、除鱗器、ウォータージェット、及び/又は湾曲した金属ナイフの背等の1つ以上の除鱗技術を使用して魚の身体から鱗を除去することを含み得る。他の技術を使用してもよい。ウォータージェットを使用して魚の鱗を吹き飛ばしてもよい。本開示に従ってウォータージェットを使用する除鱗については、ジェットは、鱗の木目(grain)に沿っていてもよく、又は木目に対して垂直であり、木目に向いていなくてもよい。木目に沿って鱗を吹き飛ばすことは、木目に向かって行うよりも時間がかかるのでより費用がかかるが、鱗のパターンが保存される。
【0029】
図1は、ミノカサゴの身体100の例を示す。身体100は、頭部102と、頭部の反対側に配置された尾部104とを備える。腹部105は、頭部102と尾部104との間で身体100の底部に沿って画定される。図示されるように、ミノカサゴ100は複数の棘106を有し得る。棘106は、毒棘を含み得る。棘106は、背側棘106a、肛門棘106b、骨盤棘106cである場合もあり、これらを含んでいる場合もあり、又は身体100の他の位置に形成されている場合もある。身体100の少なくとも一部が魚皮108で覆われている場合もある。魚皮108は、鱗110で覆われている場合もある。
【0030】
本開示による魚の加工方法の一部として、棘106のうちの1本以上を身体100から除去してもよい。一例として、背側棘106a及び肛門棘106bを除去してもよい。更なる例として、全ての棘を除去してもよい。
【0031】
図2は、本開示による切断プロセスの例を示す。図示されるように、身体100の特定の特徴に基づいて1本以上の切断案内線200が配置され得る。一例として、切断案内線200は、身体の少なくとも一部を横切る切断の経路を画定する。皮を除去するための準備において、ナイフを使用して切断案内線200に沿って切断してよい。他の切断器具を使用してもよい。棘106の少なくとも一部に沿って切断するように切断案内線200を配置してもよい。したがって、切断案内線200に沿って切断することにより、身体から棘106を除去すること又は皮108から棘106を分離することが可能になり得る。一例として、背側棘106a及び/又は肛門棘106bを切断し、皮108から分離してもよい。尾部104の周囲及び/又は頭部102の周囲で切断を行ってもよい。皮の所望の全体形状に応じて他の切断を行ってもよく、これについては以下でより詳細に説明する。特定の例では、切断のための切断案内線200は、使用される皮の表面積を最大化するように構成され得る。したがって、切断及び剥離の結果、皮の切れ目又は穴を少なくするのに有利なように魚肉が犠牲になる場合がある。
【0032】
非限定的な例として、切断案内線200は、魚体の縁部に沿った切り込みを含んでいてもよい。そのような切断案内線200は、魚から最大面積の皮を除去することが可能になるように、魚体の周縁部に配置されてよい。切り込みは、皮を貫通して魚肉の少なくとも一部に切り込み、切り込みの縁部で魚肉から皮を機械的に分離することができる。次いで、始点(すなわち、切り込み)から剥離することによって、皮を身体から除去することができる。
【0033】
更なる例として、始点及び終点(例えば、線)のうちの1つ以上を画定することによって、魚皮を除去するのが容易になるように切断案内線200を構成してもよい。切断案内線200は、一端から他端に向かって剥離された皮が魚の縁部から引きちぎられる事態を最小限に抑えることができる。切断案内線200は、ギザギザの若しくは不完全な裂け目、直線、又は尖った角部を最小限に抑えることができる。尖った角部は、後でなめしプロセスにおいて弱点となることが判明し得る応力の集中部となる可能性があり、なめし(又は再なめし)ドラムにおいて裂け目が生じる場所となることが多いので、切断案内線200は、湾曲した切断部を含んでいてもよい。
【0034】
切断したら、皮108を除去することができる。一例として、皮108は、例えば手で又は機械的に剥がすことができる。例示的な例として、プロセッサは、切り込みの入った頭部102において皮108の剥離を開始し、脊椎から腹部105に向かって、そして、魚体100の前部から背部へと下向きの動きで剥離することができる。例示的な例として、切断する代わりに魚から皮108を剥がすと、収穫可能な切り身の一部が引きちぎられる場合があり、加工時間が増加する場合がある。しかしながら、本開示による剥離プロセスでは、皮108のより大きな一体化した片を得ることができ、皮108に穴があく可能性が低下する。したがって、剥離プロセスによって、除去された皮108の表面積を最大化することができ、加工中に皮108が損傷する確率を最小化することができる。
【0035】
例えば、一組の案内線200に基づいて、皮108の様々な切断部を使用して、除去された皮パターンをもたらすことができる。例示的な例として、案内線200aを使用して、(図3Aに図示するような)三角形カットパターンを作製することができる。図示されるように、1本以上の案内線200(又は切断部)は、頭部102に対して魚の鰓の後方に切断部を含んでいてよい。別の例として、案内線200a、200bを使用して、(図3Bに図示されるような)パンツカットパターンを作製することができる。更なる例として、案内線200a、200b、200cを使用して、(図3Cに示されるような)ハーフスキンカットパターンを作製することができる。他の切断部及び案内線を使用してもよい。3つのこのような切断部及び除去された皮パターンの例を、図3A、3B、及び3Cに示す。他の切断部及び案内線200を使用してもよい。
【0036】
図3Aは、本開示による三角形カットパターン300を示す。三角形カットパターン300は、概ね三角形の形状を有し得る。一例として、三角形カットパターン300は正三角形の形状を有していてよい。三角形カットパターン300内に開口部又は穴302が配置されている場合もある。穴302は、身体100から肛門棘106b(図1)を切断及び除去した結果であり得る。穴302は、切断又は剥離作業中に偶発的に生成されることもある他の穴と区別することができる。肛門穴304等の他の天然に存在する穴が存在していてもよい。
【0037】
図3Bは、いわゆるパンツカットパターン306の皮切断部を示す。パンツカットパターン306は、魚皮(例えば、魚皮108(図1))を左パンツ脚部308aと右パンツ脚部308bとに分割し得、それらの間に切り欠き310が配置される。
【0038】
図3Cは、ハーフスキンカットパターン312を示す。一例として、ハーフスキンカットパターン312は、パンツカットパターン306から各パンツ脚部を分離するように切断を完了することによって作製され得る。ハーフスキンカットパターン312は、魚体のほぼ片側又は半分であり得る。
【0039】
三角形スキンカットパターン300は、(各魚ごとの)各個々の魚皮の表面積を最大化することができる。しかしながら、小さなサイズのこれらの皮は、その後の加工中に問題を引き起こす可能性がある。なめしプロセスの一部で使用される大型ドラムでは、皮が損傷したり、互いに絡み合ったりするので、適切ななめしができなくなったり、手作業で絡みを解いた後に再加工する必要があったりする。他の魚なめし工場では、なめす魚がミノカサゴの皮よりもはるかに大きいので、三角形スキンカットパターン300を使用する必要はない。三角形スキンカットパターン300又は「完全」切断で皮を切断するには、著しくより多くの加工時間が必要になり、人件費が増加するが、魚1匹当たりより大量の皮を除去することが可能になる。更に、三角形カットは、魚皮の品質及び/又は表面積に有利になるように正味の魚肉を犠牲にする場合がある。
【0040】
魚から皮を除去した(例えば、剥離した)後、多少の魚肉が依然として皮に付着している場合がある。皮及び付着した魚肉を化学浴(例えば、水1リットル当たり少なくとも500gの好塩性生物を含まない塩)に少なくとも30分間浸漬して、魚肉をほぐすことができる。魚肉の付いた皮の化学浴(例えば、塩水漬け)は、魚のディップ、キャットフード等の小売製品のための腹部の魚肉の一部が失われることを意味する。また、皮に魚肉が残っている状態で第1の化学浴(例えば、塩水漬け)を行うと、皮に穴があく確率が著しく低下し、したがって、ミノカサゴ由来のより価値のある製品(革)が最大化される。
【0041】
図4A図4B、及び図4Cは、皮の除肉を示す。図4Aでは、残留魚肉が付着した皮404全体にわたって、高摩擦布、ハードエッジのナイフ又はスクープ等のスクレーパ402で、清潔で平坦な表面を押してよい。このような各魚皮を並べ、何も残らなくなるまできれいに皮の内側から魚肉を削ぎ落とすことができる。図4Bは、皮の内側から除去された、取り外された魚肉406の一部を示す。図4Cは、全ての魚肉が除去されたきれいな皮408を示す。また、例えば魚の肛門及び肛門棘における天然の穴のいずれかを広げないように注意しなければならない。
【0042】
除肉後、第1のブライン浸漬液(例えば、水1リットル当たり少なくとも500gの好塩性生物を含まない塩)と同じ溶液強度の第2のブライン浸漬液を使用して、化学ブラインを作製する。時々撹拌しながら皮を化学ブラインに数時間浸漬する。
【0043】
この第2の塩水漬け工程の後、例えば、皮を乾燥(例えば、乾式塩蔵する、空気乾燥させる、機械的に乾燥させる等)させてもよく、又は湿式塩蔵してもよい。細粒塩を使用して、各皮の両側を覆ってもよい。皮をラック上に置いて乾燥させてもよい(例えば、4~6日間)。他の塩処理技術を使用してもよい。
【0044】
なめし工程
除去された魚皮は、1つ以上のなめしプロセスに供され得る。なめしプロセスの例の概要を以下の表2に示す。しかしながら、任意の所与のなめしプロセスにおいて、追加の又はより少ない工程を使用してもよい。
【0045】
【表2】
【0046】
例示的な例として、1枚以上の皮、又は閾値数の皮を集め、前加工したとき、なめしプロセス自体が始まり得る。なめしプロセスは、除去された皮を水に浸漬することを含み得る。このような浸漬は、例えばバレル又は容器中で行ってよい。浸漬プロセスによって、皮を清浄にすることができる、皮を水和させることができる、及び/又はなめし前の塩処理工程に使用された塩を除去することができる。なめしプロセスは、アルカリ浸漬工程を含み得る。アルカリ浸漬は、皮の清浄化及び塩の除去を完了するために脱脂剤を使用してもよい。なめしプロセスは、溶液のpHを増加させ得る石灰浸漬を含み得る。必要に応じて、脱脂を促進するために、この段階でより強い化学物質を添加してもよい。特にこの段階では、皮は化学的に非常に脆弱である。なめしプロセスは、石灰(カルシウム)を除去することができ、pHを低下させ始める脱灰工程を含み得る。なめしプロセスは、酸を添加してpHを低下させ続けることができる酸洗い工程を含み得る。なめしプロセスは、皮を第1のなめし剤に供することを含み得る。一例として、第1のなめし剤を皮と共にチャンバに導入し、皮のコラーゲンマトリックス中に完全に浸透させてよい。塩基性化と呼ばれるプロセスにおいてpHが調整(例えば、上昇)され得る。皮は、ここで化学的に革となる。
【0047】
第1のなめし剤の後に第2のなめし剤を導入してよい。第2のなめし剤は、第1のなめし剤と同じであっても異なっていてもよい。一例として、第2のなめし剤は、第1のなめし剤と異なっていてよい。第1のなめし剤又は第2のなめし剤の一方又は両方は、植物なめし剤、クロムなめし剤、合成なめし剤、脳漿なめし剤、若しくは油なめし剤、又はそれらの組合せを含み得る。
【0048】
革の色を変更又は調整するために、染色工程を用いてもよい。加脂工程は、較正された量の油脂を革に添加して、革を保湿し、その柔軟性を増大させ、寿命を延ばすことができる。次に、革を化学的に処理してその耐水性を増大させることによる任意選択の耐水処理を使用してもよい。皮をコルクボード又は他の表面に固定して、しっかりと伸ばし、革を乾燥させている間にしわを除去することができる。追加的又は代替的に、仕上げ工程を適用してもよい。仕上げを使用して、特性(例えば、耐久性、柔軟性)を強化若しくは付加すること、又は外観(色、質感)を変更することができる。仕上げは、正確な色合わせ、耐水性の向上、質感の制御等のために使用される場合もある。
【0049】
図8は、ミノカサゴ革等の魚革を作製する方法の例800を示す。802において、方法は、ミノカサゴ身体から鱗の少なくとも一部を除去して、少なくとも部分的に除鱗されたミノカサゴ身体を形成することを含む。804において、方法は、1本以上の案内線を使用して、少なくとも部分的に除鱗されたミノカサゴ身体の少なくとも一部を切断することを含む。一例として、案内線は、身体から皮を分離する及び/又は少なくとも部分的に脱鱗されたミノカサゴ身体の皮から1本以上の棘を分離するように構成され得る。806において、方法800は、1本以上の案内線を使用して、ミノカサゴの身体から皮を剥離することを含む。一例として、剥離された皮は、少なくとも案内線に基づいた皮切断パターンを画定する。808において、方法800は、剥離された皮を第1のブラインに浸漬することを含む。810において、方法800は、第1のブラインの後に、剥離された皮から魚肉の少なくとも一部を除去することを含む。812において、方法は、剥離された皮に乾式塩蔵又は湿式塩蔵等の塩処理を施すことを含む。814において、方法800は、剥離された皮を少なくともなめしプロセスに供してミノカサゴ革を提供することを含む。一例として、なめしプロセスは、剥離された皮から塩の少なくとも一部を除去することと、当該剥離された皮を第1のなめし剤に曝露することと、当該剥離された皮を当該第1のなめし剤とは異なる第2のなめし剤に曝露することとを含む。
【0050】
図9は、ミノカサゴ革を作製する方法の例900を示す。ミノカサゴ革等の魚革を作製する方法は、902において、1本以上の案内線を使用して、ミノカサゴの身体又は他の魚の少なくとも一部を切断することを含む。一例として、案内線は、ミノカサゴ身体から皮を除去するのが容易になるように構成され得る。904において、方法900は、1本以上の案内線を使用して、ミノカサゴの身体から皮を除去することを含み得る。一例として、除去された皮は、少なくとも案内線に基づいた皮切断パターンを画定する。906において、方法900は、除去された皮を少なくともなめしプロセスに供してミノカサゴ革を提供することを含む。一例として、なめしプロセスは、除去された皮を第1のなめし剤に曝露することと、当該除去された皮を当該第1のなめし剤とは異なる第2のなめし剤に曝露することとを含み得る。
【0051】
従来のなめし革工場は、大きな皮用に設定されている。典型的ななめした皮に比べて小さな皮に取り組むことによって、皮を加工し、なめすための新規方法及び技術が開発された。場合によっては、皮のサイズに適合するように、新しい機器を生み出したり、従来の機器を大幅に改造したりした。これらの改造は、機器がより大きな又は通常サイズの皮を加工することが(一時的又は永久的に)できなくなることを意味する。したがって、この機器は、これらのより小さな皮を加工するためにしか有効に使用することができない。
【0052】
本開示に従って調製されたミノカサゴ皮革は、獣皮から形成された従来の革よりも改善された性能特性を有する。例示的な例として、本開示に従って調製されたミノカサゴ皮革の試料は、ASTM 2209を使用して測定したときに、110N/mm超、111N/mm超、112N/mm超、113N/mm超、114N/mm超、115N/mm超、116N/mm超、117N/mm超、110N/mm~117N/mm、111N/mm~117N/mm、112N/mm~117N/mm、113N/mm~117N/mm、114N/mm~117N/mm、115N/mm~117N/mm、及び/又は116N/mm~117N/mmの比引張強度を示した。留意すべきことに、本開示に従って調製されたミノカサゴ皮革の試料は、ASTM 2209を使用して測定したときに、カンガルー革(例えば、109N/mm)よりも大きい比引張強度を示した。
【0053】
図5は、牛革500におけるコラーゲンマトリックス502を示す。識別可能なパターンは見えない。このパターン化の欠如は、全ての哺乳類の革にも当てはまる。対照的に、図6は、本開示に従って調製されたミノカサゴ革600におけるコラーゲンマトリックスを示す。2つの図間の目盛の変化に留意されたい。哺乳類の革は1mmの目盛で示されているが、ミノカサゴの革は、通常哺乳類の革よりもはるかに薄いので、0.1mmのサイズの1/10の目盛で示されている。ミノカサゴ革は、密に充填された層(図6に図示されている薄いバンド602及び濃いバンド604)で一緒に織られたコラーゲンマトリックス602、604を示す。これらの層は、「クロスハッチング」で互いに垂直に延びており、その結果、(例えば、ASTM 2209を使用して測定された)厚さについて顕著に高い比引張強度が得られる。このような特徴により、ミノカサゴ革を、より薄いが強い革が有用である様々な用途に使用することが可能になる。
【0054】
図7は、本開示に従って調製されたミノカサゴ革基材のいくつかの例を示す。本明細書で使用するとき、基材は、材料の一部、平面試料、圧延材料、又は従来の革材料等の物品に成形することができる他の材料を指し得る。例示的な物品は、従来の革が使用されてきた本発明のミノカサゴ革の使用を含み得る。更なる用途は、本発明のミノカサゴ革の増加した引張強度から利益を得ることができる。
【0055】
本開示は、少なくとも以下の態様を含む。
態様1:ミノカサゴ皮から作製された革基材。
【0056】
態様2:魚皮から作製され、ASTM 2209を用いて測定したときに109N/mm超の比引張強度を示す、革基材。
【0057】
態様3:当該魚皮が、ミノカサゴ皮を含む、態様1~2のいずれか1つに記載の革基材。
【0058】
態様4:当該魚皮が、ミノカサゴ皮から本質的になる、態様1~2のいずれか1つに記載の革基材。
【0059】
態様5:当該魚皮が、ミノカサゴ皮からなる、態様1~2のいずれか1つに記載の革基材。
【0060】
態様6:ミノカサゴ革を作製する方法であって、ミノカサゴ身体から鱗の少なくとも一部を除去して、除鱗されたミノカサゴ身体を形成することと、当該除鱗されたミノカサゴ身体において1本以上の案内線カットを切断することと、当該1本以上の案内線カットを使用して、当該ミノカサゴ身体から皮を剥離することと、当該皮をなめしてミノカサゴ革を提供することと、を含む、方法。
【0061】
態様7:ミノカサゴ身体からの鱗の除去が、ウォータージェットを使用して実施される、態様6に記載の方法。
【0062】
態様8:当該ウォータージェットが、重なり合う鱗の方向に対して垂直に使用される、態様6~7のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
態様9:当該ウォータージェットが、重なり合う鱗と同じ方向で使用される、態様6~8のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
態様10:当該案内線カットが、ハーフスキンカットに基づく、態様6~9のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
態様11:当該案内線カットが、パンツカットに基づく、態様6~10のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
態様12:当該案内線カットが、三角形カットに基づく、態様6~11のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
態様13:当該案内線カットが、剥離された皮の表面積を最大化するように構成される、態様6~12のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
態様14:ミノカサゴを漁獲する方法であって、ミノカサゴの漁猟についての漁猟インセンティブを提供することであって、当該漁猟インセンティブが、重量要素及びショット位置要素を含む、ことと、1人以上の漁猟者からミノカサゴを受領することと、少なくとも身体サイズ及びショット位置に基づいて受領したミノカサゴを分別することと、当該漁猟インセンティブ及び当該受領したミノカサゴに基づいて当該1人以上の漁猟者に支払いをすることと、を含む、方法。
【0069】
特定の態様では、態様14に記載の方法の1つ以上の工程は、コンピュータシステム又はコンピュータ可読媒体を介して実行され得る。コンピューティングデバイスは、実行されたときに、本明細書における方法の1つ以上の工程を当該コンピューティングデバイスに実行させるデータ通信及びコンピュータ可読媒体内にあってもよい。
【0070】
態様15:当該受領したミノカサゴのうちの1匹以上のミノカサゴ身体から鱗を除去することと、除鱗されたミノカサゴ身体において1本以上の案内線カットを切断することと、当該1本以上の案内線カットを使用して、当該ミノカサゴ身体から皮を剥離することと、当該皮をなめしてミノカサゴ革を提供することと、を更に含む、態様14に記載の方法。
【0071】
態様16:当該案内線カットが、ハーフスキンカットに基づく、態様14~15のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
態様17:当該案内線カットが、パンツカットに基づく、態様14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
態様18:当該案内線カットが、三角形カットに基づく、態様14~17のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
態様19:当該案内線カットが、剥離された皮の表面積を最大化するように構成される、態様14~18のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
態様20:ミノカサゴによる過剰捕食からサンゴ礁を保護する方法であって、特定の密度閾値を満たすミノカサゴの位置を特定することと、当該位置又はその付近でのミノカサゴの漁猟についての漁猟インセンティブを提供することであって、当該漁猟インセンティブが、重量要素及びショット位置要素を含む、ことと、1人以上の漁猟者からミノカサゴを受領することと、少なくとも身体サイズ及びショット位置に基づいて受領したミノカサゴを分別することと、当該漁猟インセンティブ及び当該受領したミノカサゴに基づいて当該1人以上の漁猟者に支払いをすることと、を含む、方法。
【0076】
特定の態様では、態様20に記載の方法の1つ以上の工程は、コンピュータシステム又はコンピュータ可読媒体を介して実行され得る。コンピューティングデバイスは、実行されたときに、本明細書における方法の1つ以上の工程を当該コンピューティングデバイスに実行させるデータ通信及びコンピュータ可読媒体内にあってもよい。
【0077】
態様21:ミノカサゴ皮革を作製する方法であって、スピアフィッシングによってミノカサゴを漁獲することと、当該ミノカサゴの身体から鱗を除去することと、皮の表面積を最大化するように当該ミノカサゴの身体の皮を切断することと、当該皮をなめしプロセスに供することと、を含む、方法。
【0078】
態様22:ミノカサゴの皮から革を作製する方法であって、皮の表面積を最大化するパターンでミノカサゴの皮を切断することと、魚の身体から当該皮を剥離することと、当該皮を処理して革基材を形成することと、を含む、方法。
【0079】
態様23:当該皮の処理が、当該皮を第1のブライン溶液に浸漬することと、当該皮を除肉することと、当該皮を第2のブライン溶液に浸漬することと、当該皮をなめすことと、を含む、態様22に記載の方法。
【0080】
態様24:当該パターンが、ハーフスキンカットに基づく、態様22~23のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
態様25:当該パターンが、パンツカットに基づく、態様22~24のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
態様26:当該パターンが、三角形カットに基づく、態様22~25のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
態様27:ミノカサゴ皮から形成された革基材。
【0084】
態様28:当該ミノカサゴ皮が、ハーフスキンカットとして構成されている、態様27に記載の革基材。
【0085】
態様29:当該ミノカサゴ皮が、パンツカットとして構成されている、態様27~28のいずれか1つに記載の革基材。
【0086】
態様30:当該ミノカサゴ皮が、三角形カットとして構成されている、態様27~29のいずれか1つに記載の革基材。
【0087】
態様31:三角形カットとして構成された魚皮から形成された革基材。
【0088】
態様32:当該魚皮が、ミノカサゴ皮を含む、態様31に記載の革基材。
【0089】
態様33:三角形カットとして構成された魚皮。
【0090】
態様34:ミノカサゴ皮を含む、態様33に記載の魚皮。
【0091】
態様35:3.5ポンド以下の全体重を有する小型魚から形成された革基材。
【0092】
態様36:3.4ポンド以下の全体重を有する小型魚から形成された革基材。
【0093】
態様37:3.3ポンド以下の全体重を有する小型魚から形成された革基材。
【0094】
態様38:3.2ポンド以下の全体重を有する小型魚から形成された革基材。
【0095】
態様39:3.1ポンド以下の全体重を有する小型魚から形成された革基材。
【0096】
態様40:3.0ポンド以下の全体重を有する小型魚から形成された革基材。
【0097】
当該小型魚が、ミノカサゴを含む、態様35~40のいずれか1つに記載の革基材。
【0098】
最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものについて図示及び説明したが、説明及び図示した特定の設計及び方法からの逸脱が当業者に示唆され、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用され得ることは明らかである。本発明は、説明及び図示された特定の構成に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれ得る全ての改変と一致するように構成されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】