(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】排ガス処理用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20240822BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 228
B01D53/94 245
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507844
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 GB2022052315
(87)【国際公開番号】W WO2023041902
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】エイヴィス、ダニエル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】グリーン、アレクサンダー ニコラス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、マシュー エーベン
(72)【発明者】
【氏名】ヘミング、オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー、アランナ スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ルッゲリ、マリア ピア
(72)【発明者】
【氏名】ヒッチコック-マンタロージー、ロレダナ
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
触媒組成物及びその調製方法が提供され、その方法は、希土類元素をモレキュラーシーブ中に交換することと、モレキュラーシーブに助触媒金属を組み込むことと、を含み、希土類元素交換ステップと助触媒金属導入ステップとを、別々のステップとして行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒組成物を調製する方法であって、
a.希土類元素をモレキュラーシーブ中に交換することと、
b.助触媒金属をモレキュラーシーブに組み込むことと、
を含み、
前記希土類元素交換ステップと前記助触媒金属導入ステップとを、別々のステップとして行う、方法。
【請求項2】
前記希土類元素が、前記助触媒金属を組み込む前に、前記モレキュラーシーブ中に交換される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記助触媒金属が、前記希土類元素を交換する前に、前記モレキュラーシーブに組み込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記希土類元素が、イオン交換によって、前記モレキュラーシーブ中に交換される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記助触媒金属が、イオン交換によって、前記モレキュラーシーブに組み込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒組成物が、最小表面CeO
2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記希土類元素が、セリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記助触媒金属が、銅を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒組成物が、前記触媒組成物の約0.5~約5重量%の量で、前記希土類元素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒組成物が、前記触媒組成物の約0.5~約6重量%の量で前記助触媒金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記助触媒金属が、銅を含み、前記触媒組成物が、0.2~0.45のCu:Alの原子比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって調製された触媒組成物。
【請求項13】
触媒組成物を調製する方法であって、
a.まず、イオン交換によってCHA骨格を有するモレキュラーシーブにセリウムを組み込んで、セリウム交換CHAモレキュラーシーブを調製することと、
b.次に、セリウム交換されたCHAに銅を組み込んで、セリウム交換され、銅で促進されたCHAモレキュラーシーブを調製することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記モレキュラーシーブが、約10~約25のSARを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
希土類元素交換金属促進モレキュラーシーブを含む触媒組成物。
【請求項16】
最小限の表面希土類元素-助触媒金属種を含む、請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項17】
前記モレキュラーシーブが、小細孔モレキュラーシーブを含む、請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項18】
前記モレキュラーシーブが、CHAを含む、請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項19】
前記希土類元素を、前記触媒組成物の約0.5~約5重量%の量で含む、請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項20】
前記助触媒金属を、前記触媒組成物の約0.5~約6重量%の量で含む、請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項21】
前記助触媒金属が銅を含み、前記触媒組成物が、0.2~0.45のCu:Alの原子比を有する、請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項22】
最小の表面CeO
2を含む、請求項15に記載の触媒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排ガスを処理するための、リーンバーン燃焼排ガス中のNOxの選択的触媒還元(selective catalytic reduction、SCR)のための触媒、物品及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの燃焼排ガスの最大部分は、比較的無害な窒素(N2)、水蒸気(H2O)、及び二酸化炭素(CO2)を含有する。しかし、排気ガスはまた、不完全燃焼からの一酸化炭素(CO)、未燃燃料からの炭化水素(HC)、過剰な燃焼温度からの窒素酸化物(NOx)、及び粒子状物質(主に煤)などの有害物質及び/又は有毒物質を比較的少量含有する。大気中に放出される排気ガスの環境への影響を軽減するために、これらの望ましくない成分の量を、好ましくは他の有害物質又は有毒物質を生成しないプロセスによって、排除又は低減することが望ましい。
【0003】
車両排気ガスから除去すべき最も厄介な成分の1つはNOxであり、これには、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、及び亜酸化窒素(N2O)が含まれる。ディーゼルエンジンによって生成されるようなリーンバーン排気ガス中でのNOxのN2への還元は、排気ガスが還元の代わりに酸化反応に有利に働くのに十分な酸素を含有するので、特に問題である。しかしながら、ディーゼル排気ガス中のNOxは、選択的触媒還元(SCR)として一般に知られているプロセスによって還元することができる。SCRプロセスは、触媒の存在下で、還元剤の助けを借りて、NOxを窒素単体(N2)及び水に転換することを含む。SCRプロセスでは、例えばアンモニアのようなガス状還元体を、排気ガス流に添加してから、排気ガスをSCR触媒に接触させる。還元体は触媒上に吸収され、NOxは、触媒化された基材の中又はその上をガスが通過する際に還元される。アンモニアを使用する化学量論的SCR反応の化学式は、以下のとおりである:
4NO+4NH3+3O2→4N2+6H2O
2NO2+4NH3+3O2→3N2+6H2O
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O
【0004】
公知のSCR触媒としては、ゼオライト及び他のモレキュラーシーブが挙げられる。モレキュラーシーブは、明確な構造を有する微孔性結晶性固体であり、一般にその骨格中にケイ素、アルミニウム及び酸素を含有し、その細孔内にカチオンを含有することもできる。モレキュラーシーブの明確な特徴は、規則的及び/又は反復的に相互連結されて骨格を形成する分子四面体セルによって形成される、その結晶性又は擬結晶性構造である。独特のゼオライト骨格は、一般に、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association、IZA)の構造委員会によって割り当てられた3文字コードによって認識される。既知のSCR触媒であるモレキュラーシーブ骨格の例としては、骨格型コードCHA(チャバザイト)、BEA(ベータ)、及びMOR(モルデナイト)が挙げられる。
【0005】
いくつかのモレキュラーシーブは、一連の相互接続されたセルから生じる三次元分子骨格を有する。これらのモレキュラーシーブのセルは、典型的には、数立方ナノメートル程度の体積と、直径数オングストローム程度のセル開口部(「細孔」又は「開口」とも呼ばれる)とを有する。セルは、それらの細孔の環サイズによって定義することができ、例えば、「8環」という用語は、8個の四面体配位ケイ素(又はアルミニウム)原子及び8個の酸素原子から構築される閉ループを指す。ある種のゼオライトでは、セル細孔は骨格内で整列することで、骨格を通って延びる1つ以上のチャネルを作り出し、したがって、チャネル及び分子種又はイオン種の相対サイズに基づいて、モレキュラーシーブを通る異なる分子種又はイオン種の進入又は通過を制限する機構を作り出す。モレキュラーシーブのサイズ及び形状は、それらが反応物及び生成物の接近を制御する反応物に立体的影響を及ぼすので、それらの触媒活性に部分的に影響を及ぼす。例えば、NOxなどの小分子は、典型的には、セルに出入りすることができ、かつ/又は小細孔モレキュラーシーブ(すなわち、8個の四面体原子の最大環サイズを有する骨格を有するもの)のチャネルを通って拡散することができるが、長鎖炭化水素などのより大きな分子はできない。更に、モレキュラーシーブの部分的又は完全な脱水は、分子寸法のチャネルと絡み合った結晶構造をもたらすことができる。
【0006】
ディーゼルエンジンなどの移動式リーンバーンエンジンを出る排気ガスの温度は、多くの場合、500~650℃以上である。排気ガスは、典型的には水蒸気も含有する。したがって、水熱安定性は、SCR触媒を設計する際の重要な考慮事項である。
【0007】
ゼオライトそれ自体はしばしば触媒特性を有するが、それらの触媒性能は、表面上又は骨格内に存在するイオン種の一部がCu2+などの遷移金属カチオンによって置換されるカチオン交換によって、特定の環境において改善され得る。すなわち、ゼオライトのSCR性能は、銅又は鉄などの1つ以上の遷移金属イオンをモレキュラーシーブの骨格に緩く保持することによって促進することができる。
【0008】
遷移金属交換SCR触媒については、低い動作温度で高い触媒活性を有することが望ましい。400℃未満の動作温度では、より高い金属担持量がより高い触媒活性をもたらす。達成可能な金属担持量は、モレキュラーシーブ中の交換部位の量に依存することが多い。一般に、低いSARを有するモレキュラーシーブは、最も高い金属担持量を可能にし、したがって、高い触媒活性の必要性と、比較的より高いSAR値によって達成される高い水熱安定性との間の対立をもたらす。更に、高銅担持触媒はまた、高温(例えば、450℃超)では機能しない。例えば、CHA骨格を有するアルミノケイ酸塩に、大量の銅(銅対アルミニウム原子比が、0.25超)を担持させると、450℃を超える温度で著しいNH3酸化をもたらす可能性があり、N2への低い選択性をもたらす可能性がある。この欠点は、触媒を650℃を超える温度に曝露することを伴うフィルタ再生条件下で特に深刻である。
【0009】
モバイル用途のためのSCR触媒を設計する際の別の重要な考慮事項は、触媒の性能一貫性である。例えば、新しい触媒が、劣化した後の同じ触媒と同様のレベルのNOx転換を生じることが望ましい。
【0010】
したがって、既存のSCR材料よりも改善された性能を提供するSCR触媒が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の実施形態によれば、触媒組成物を調製する方法は、希土類元素をモレキュラーシーブ中に交換することと、助触媒金属をモレキュラーシーブに組み込むこととを含み得るが、希土類元素交換ステップと助触媒金属導入ステップとを別々のステップとして行う。
【0012】
いくつかの実施形態では、希土類元素は、助触媒金属を組み込む前にモレキュラーシーブ中に交換される。いくつかの実施形態では、助触媒金属は、希土類元素を交換する前にモレキュラーシーブに組み込まれる。
【0013】
希土類元素は、例えばセリウムを含み得る。助触媒金属は、例えば銅を含み得る。助触媒金属が銅を含む実施形態では、触媒組成物は、0.2~0.45のCu原子:Al原子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本発明の触媒組成物は、最小限の表面CeO2を含む。いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブは、約10~約25のSARを有する。いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブは、CHA骨格を有し得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、触媒組成物は、触媒組成物の約0.5~約5重量%の量で希土類元素を含む。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、触媒組成物の約0.5~約6重量%の量で助触媒金属を含む。
【0015】
特定の実施形態によれば、触媒組成物を調製する方法は、まず、イオン交換によってCHA骨格を有するモレキュラーシーブにセリウムを組み込んで、セリウム交換CHAモレキュラーシーブを調製することと;次に、セリウム交換CHAに銅を組み込んで、セリウム交換されて、銅で促進されたCHAモレキュラーシーブを調製することと、を含む。
【0016】
本発明のいくつかの態様によれば、触媒組成物は、希土類元素交換金属促進モレキュラーシーブを含む。そのような触媒組成物は、最小限の表面希土類元素-助触媒金属種を含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブは、CHA骨格などの、小細孔モレキュラーシーブを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】様々な技術によって調製された触媒の性能を示す。
【
図3】骨格安定性に対する交換されたCeの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の組成物及び方法は、広い動作温度範囲にわたってリーンバーン排気ガス中のNOx及び/又はNH3スリップ濃度を低減することによって、ディーゼルエンジン及び他のリーンバーンエンジンによって生成される排気ガス排出を少なくとも部分的に改善するための触媒に関する。有用な触媒組成物は、酸化環境において(すなわち、SCR触媒及び/又はAMOX触媒で)NOxを選択的に還元し、かつ/又はアンモニアを酸化するものである。好ましい触媒組成物は、稀土類元素を有する金属促進化モレキュラーシーブを含む。驚くべきことに、モレキュラーシーブ中の希土類元素を交換し、助触媒金属を別途組み込むことにより、同じ成分を有するが異なる方法で調製された触媒組成物と比較して、水熱劣化後に、優れた低温活性及び選択性を有する触媒組成物が生成されることが判明している。したがって、触媒組成物を調製する方法は、希土類元素をモレキュラーシーブの交換部位に組み込むこと、及び希土類元素の組み込みの前又は後のいずれかに、別個のプロセスを通して、助触媒金属を組み込むことを含む。
【0020】
理論に束縛されるものではないが、本発明の触媒組成物によって実証される利点は、表面の希土類元素-助触媒金属種の形成が最小限であることに関連し得ると考えられる。これらの望ましくない種の形成を最小限に抑えることは、調製中に、助触媒金属と希土類元素との相互作用を制限することによって達成することができる。本発明のいくつかの態様によれば、調製方法は、最初に希土類元素をモレキュラーシーブの交換部位に組み込み、焼成前に表面に吸着した種を洗浄し、次いで助触媒金属を組み込むことで、希土類元素イオンと助触媒金属イオンとが一緒に存在することを最小限に抑えることによって、表面の希土類元素-助触媒金属種の量をより少なくすることができる。本発明の別の一態様によれば、調製方法は、最初に助触媒金属を組み込み、焼成前に表面に吸着した種を洗浄し、次いで希土類元素を組み込むことで、希土類元素イオンと助触媒金属イオンとが一緒に存在することを最小限に抑えることによって、表面の希土類元素-助触媒金属種の量をより少なくすることができる。
【0021】
特定の実施形態では、触媒組成物は、約10~約25、約17~約23、又は約10~約15のSARを有するCHA骨格を有する、セリウム交換され、銅で促進されたアルミノケイ酸塩を含み、銅は、約0.2~約0.45の銅対アルミニウム比で存在し、Ceは、触媒組成物の約0.5重量%~約5重量%の量で存在する。いくつかの態様では、そのような触媒組成物は、最初にイオン交換によってセリウムをCHAに添加し、次いで銅を添加することによって調製され得る。
【0022】
モレキュラーシーブ
本発明の実施形態の触媒組成物は、モレキュラーシーブを含む。いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩骨格(例えば、ゼオライト)又はシリコアルミノリン酸塩骨格(例えば、SAPO)を有するモレキュラーシーブを含むか、又はそれから本質的になる。いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩骨格(例えば、ゼオライト)を有するモレキュラーシーブを含む、又はそれから本質的になる。いくつかの実施形態では、好ましいゼオライトは、合成ゼオライトである。
【0023】
モレキュラーシーブがアルミノケイ酸塩骨格を有する(例えば、モレキュラーシーブがゼオライトであるもの)場合、典型的には、モレキュラーシーブは、そのアルミナに対するシリカのモル比(SAR)が、5~200(例えば10~200)、10~100(例えば、10~30又は20~80)、10~50、10~30、12~40、15~30、5~20、5~15、8~15、8~13、10~15、10~20、10~40、10~60、10~80、10~100、10~150、30未満、20未満、15未満、又は13未満である。いくつかの実施形態では、好適なモレキュラーシーブは、そのSARが、200超、600超、又は1200超である。いくつかの実施形態では、モレキュラーシーブは、約1500~約2100のSARを有する。
【0024】
モレキュラーシーブは、小細孔モレキュラーシーブ(例えば、8個の四面体原子による最大環サイズを有するモレキュラーシーブ)、中細孔モレキュラーシーブ(例えば、10個の四面体原子による最大環サイズを有するモレキュラーシーブ)又は大細孔モレキュラーシーブ(例えば、12個の四面体原子による最大環サイズを有するモレキュラーシーブ)、又はこれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0025】
モレキュラーシーブが小細孔モレキュラーシーブである場合、小細孔モレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、LTA、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZON、又はこれらの2つ以上の混合、組み合わせ、及び/又はインターグロースからなる群から選択される骨格型コード(Framework Type Code、FTC)によって表される骨格構造を有することができる。いくつかの実施形態では、小細孔モレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、LTA、SFW、KFI、DDR、及びITEからなる群から選択される骨格構造を有する。いくつかの実施形態では、小細孔モレキュラーシーブは、CHA及びAEIからなる群から選択される骨格構造を有する。小細孔モレキュラーシーブは、CHA骨格構造を有し得る。
【0026】
モレキュラーシーブが中細孔モレキュラーシーブである場合、中細孔モレキュラーシーブは、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、及びWEN、又はこれらの2つ以上の混合及び/又はインターグロースからなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有することができる。いくつかの実施形態では、中細孔モレキュラーシーブは、FER、MEL、MFI、及びSTTからなる群から選択される骨格構造を有する。いくつかの実施形態では、中細孔モレキュラーシーブは、FER及びMFIからなる群から選択される、特にMFIである骨格構造を有する。中細孔モレキュラーシーブがゼオライトであり、FER又はMFI骨格を有する場合、ゼオライトはフェリエライト、シリカライト、又はZSM-5であり得る。
【0027】
シーブが大細孔モレキュラーシーブである場合、大細孔モレキュラーシーブは、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、及びVET、又はこれらの2つ以上の混合物及び/又はインターグロースからなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有することができる。いくつかの実施形態では、大細孔モレキュラーシーブは、AFI、BEA、MAZ、MOR、及びOFFからなる群から選択される骨格構造を有する。いくつかの実施形態では、大細孔モレキュラーシーブは、BEA、MOR、及びFAUからなる群から選択される骨格構造を有する。大細孔モレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC、BEA、FAU、又はMORの骨格を有する場合、ゼオライトは、βゼオライト、フォージャサイト、ゼオライトY、ゼオライトX、又はモルデナイトであってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、好適なモレキュラーシーブは、小細孔骨格と大細孔骨格との組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、好適なモレキュラーシーブは、ZSM-34(ERI+OFF)を含む。
【0029】
好ましいモレキュラーシーブは、約30未満、より好ましくは約5~約30、例えば約10~約25、約10~15、約15~約25、約17~約23、約14~約20、及び約15~約17のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。ゼオライトのシリカ対アルミナ比を、従来の分析によって決定することができる。この比により、ゼオライト結晶の剛性原子骨格における比率について可能な限り近く表すこと、及びチャネル内での、結合剤中の又はカチオン形態若しくは他の形態の、ケイ素又はアルミニウムを除外していること、を意味する。結合剤材料、特にアルミナ結合剤と組み合わされた後のゼオライトの、シリカ対アルミナ比を直接測定することは困難であり得るので、これらのシリカ対アルミナ比は、ゼオライト自体の、すなわち、ゼオライトを他の触媒成分と組み合わせる前のSARで表されたものである。
【0030】
特定の実施形態では、モレキュラーシーブは、ABC-6、AEI/CHA、AEI/SAV、AEN/UEI、AFS/BPH、BEC/ISV、ベータ、フォージャサイト、ITE/RTH、KFI/SAV、ロブダライト、モンテソンマアイト、MTT/TON、ペンタシル、SBS/SBT、SSF/STF、SSZ-33、及びZSM-48からなる群から選択される不規則骨格を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。好ましい実施形態では、1つ以上の小細孔モレキュラーシーブは、SAPO-34、AlPO-34、SAPO-47、ZYT-6、CAL-1、SAPO-40、SSZ-62、若しくはSSZ-13から選択されるCHA骨格タイプコード、及び/又はAlPO-18、SAPO-18、SIZ-8、若しくはSSZ-39から選択されるAEI骨格タイプコードを含み得る。一実施形態では、混合相組成物は、AEI/CHA混合相組成物である。モレキュラーシーブ中の各骨格タイプの比は特に限定されない。例えば、AEI/CHAの比は、約5/95~約95/5、好ましくは約60/40~40/60の範囲であってもよい。例示的な実施形態では、AEI/CHAの比は、約5/95~約40/60の範囲であってもよい。
【0031】
希土類
本発明の触媒組成物は、骨格構造のイオン交換部位に対イオンとして存在するようにモレキュラーシーブに組み込まれた1種以上の希土類元素を含有する。希土類元素は、骨格外元素として存在してもよく、これは、モレキュラーシーブ内及び/又はモレキュラーシーブ表面の少なくとも一部に存在し、アルミニウムを含まず、かつモレキュラーシーブの骨格を構成する原子を含まないものである。希土類元素は、イオン交換、含浸、同形置換などの任意の公知の技術によってモレキュラーシーブに添加することができる。好ましくは、希土類元素はイオン交換によって組み込まれる。好ましくは、1種以上の希土類元素は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、及びSc、並びにそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。特定の一実施形態では、好ましい希土類元素はCeを含む。
【0032】
触媒組成物を調製する方法は、希土類元素をイオン交換によってモレキュラーシーブに組み込むことを含み得る。イオン交換は、モレキュラーシーブを、希土類元素(複数可)の可溶性前駆体を含有する溶液中に、ブレンドすることによって行うことができる。溶液のpHは、モレキュラーシーブ構造上又はモレキュラーシーブ構造内への触媒的に活性な希土類元素カチオンの沈殿を誘導するように調整されてもよい。例えば、好ましい一実施形態では、チャバザイトは、酢酸セリウムを含有する溶液中に、触媒的に活性なセリウムカチオンのモレキュラーシーブ構造へのイオン交換による組み込みを可能にするのに十分な時間浸漬される。交換されていないセリウムイオンは沈殿する。用途に応じて、交換されなかったイオンの一部は、遊離セリウムとして、モレキュラーシーブ材料中に残り得る。次いで、セリウム置換モレキュラーシーブを洗浄し、乾燥させ、焼成し得る。
【0033】
一般に、モレキュラーシーブ中又はモレキュラーシーブ上でのセリウムカチオンのイオン交換は、室温で又は約80℃までの温度で、約1~24時間にわたり、約7のpHで行うことができる。得られた触媒モレキュラーシーブ材料は、好ましくは約100~120℃で一晩乾燥され、少なくとも約550℃の温度で焼成される。
【0034】
触媒組成物の希土類元素の、触媒組成物の重量に基く含有量は、好ましくは約0.5~約15重量%;約0.5~約10重量%;又は約0.5~約5重量%を含む。これらの範囲は、SARが約10~約25、約17~約23、又は約10~約15であるCHA骨格を有する、セリウム交換され、銅で促進されたアルミノケイ酸塩にとって特に好ましく、銅が約0.2~約0.45の銅対アルミニウム比で存在するそのような実施形態にとってより好ましい。
【0035】
助触媒金属
本発明の触媒組成物は、1種以上の希土類元素に加えて、材料の触媒性能及び/又は熱安定性を改善するための少なくとも1種の助触媒金属を含む。驚くべきことに、希土類元素の添加とは別のプロセスで助触媒金属を添加すると、同じ成分を有するが異なる方法で調製された触媒と比較して、水熱劣化後に優れた低温活性及び選択性を有する触媒が生成されることが判明したので、そのような助触媒金属は、希土類金属の組み込みとは別にモレキュラーシーブに添加されてもよい。したがって、触媒組成物を調製する方法は、例えばイオン交換によって希土類元素を組み込むこと、及び希土類元素の組み込みの前又は後のいずれかに、別個のプロセスにおいて助触媒金属を組み込むことを含み得る。
【0036】
助触媒金属は、骨格外金属として存在してもよく、これは、モレキュラーシーブ内及び/又はモレキュラーシーブ表面の少なくとも一部に存在し、アルミニウムを含まず、かつモレキュラーシーブの骨格を構成する原子を含まないものである。助触媒金属は、イオン交換、含浸、同形置換などの任意の公知の技術によってモレキュラーシーブに添加することができる。助触媒金属は、骨格構造のイオン交換部位に対イオンとして存在してもよい。
【0037】
助触媒金属は、金属交換モレキュラーシーブを形成するために触媒産業において使用される、認識されている触媒活性金属のいずれかであってもよい。一実施形態では、少なくとも1種の助触媒金属をモレキュラーシーブと共に使用して、触媒の性能を向上させる。好ましい助触媒金属は、銅、ニッケル、亜鉛、鉄、スズ、タングステン、モリブデン、コバルト、ビスマス、チタン、ジルコニウム、アンチモン、マンガン、クロム、バナジウム、ニオブ、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、金、銀、インジウム、白金、イリジウム、レニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい助触媒金属は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及び銅、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。好ましくは、助触媒金属の少なくとも1つは銅である。
【0038】
特定の実施形態では、助触媒金属担持量は、触媒組成物の総重量に基づいて約0.1~約10重量%、例えば、約0.5重量%~約6重量%、及び約3~約6重量%である。特定の実施形態では、助触媒金属(M)、好ましくは銅は、約0.2~約0.45のM:Al原子比を生成する量でモレキュラーシーブ中に存在する。
【0039】
触媒物品
触媒組成物は、ウォッシュコート、好ましくは、金属若しくはセラミックフロースルーモノリス基材、又は例えばウォールフロー型フィルタ若しくは焼結金属若しくは部分フィルタを含む濾過基材などの基材をコーティングするのに適したウォッシュコートの形態であり得る。したがって、本発明の別の一態様は、本明細書に記載の触媒組成物を含むウォッシュコートである。触媒組成物に加えて、ウォッシュコート組成物は、アルミナ、シリカ、(非ゼオライト)シリカ-アルミナ、天然粘土、TiO2、ZrO2、及びSnO2からなる群から選択される1つ以上の結合剤を更に含むことができる。本発明の更なる一態様は、基材と、ウォッシュコートとして適用することができる本明細書に記載の触媒組成物とを含む触媒物品である。
【0040】
モバイル用途で使用するのに好ましい基材は、複数の隣接する平行チャネルを含む、いわゆるハニカム形状を有するモノリスであり、各チャネルは典型的には正方形の断面積を有するものである。ハニカム形状は、大きな触媒表面を提供する一方、全体サイズ及び圧力降下を最小限とする。触媒組成物は、フロースルーモノリス基材(例えば、多くの小さな、部品全体を通って軸方向に延びる平行チャネルを有するハニカムモノリス触媒担持構造)又はウォールフロー型フィルタなどのフィルタモノリス基材上に堆積させることができる。別の一実施形態では、触媒組成物は、押出型触媒に形成される。好ましくは、触媒組成物は、基材を通って流れる排気ガス流中に含まれるNOxを還元するのに十分な量で、基材上にコーティングされる。特定の実施形態では、基材の少なくとも一部はまた、排気ガス流中のアンモニアを酸化するために、又はCOのCO2への転換などの他の機能を実行するために、白金(Pt)などの白金族金属を含有してもよい。
【0041】
使用方法及びシステム
本明細書において説明される触媒組成物は、還元体好ましくはアンモニアと、窒素酸化物との反応を促進して、酸素とアンモニアとの競合する反応に対して、選択的に、単体窒素(N2)及び水(H2O)を形成することができる。一実施形態では、触媒組成物を、アンモニア(すなわち、及びSCR触媒)による窒素酸化物の還元に都合の良いように配合することができる。別の一実施形態では、触媒は、酸素によるアンモニアの酸化に有利に働くように配合することができる(すなわち、アンモニア酸化(ammonia oxidation、AMOX)触媒である)。更に別の一実施形態では、SCR触媒及びAMOX触媒が連続して使用され、両方の触媒組成物が本明細書に記載の金属含有モレキュラーシーブを含み、SCR触媒がAMOX触媒の上流にある。特定の実施形態では、AMOX触媒は、酸化性の下層の上の上層として配設され、下層は、白金族金属(platinum group metal、PGM)触媒又は非PGM触媒を含む。好ましくは、AMOX触媒は、アルミナをはじめとするがこれに限定されない、高表面積担体上に配設されている。特定の実施形態では、AMOX触媒は、基材、好ましくは、フロースルー金属ハニカム又はコージエライトハニカムなどの、最小限の背圧で大きな接触表面を提供するように設計された基材に適用される。例えば、好ましい基材は、低い背圧を確実にするために、1平方インチあたり約25~約300個のセル(CPSI)を有する。低い背圧を達成することは、低圧EGR性能に対するAMOX触媒の影響を最小限に抑えるために特に重要である。AMOX触媒は、好ましくは、1立法インチあたり約0.3~2.3gの担持量を達成するために、ウォッシュコートとして基材に適用することができる。更なるNOx転換を提供するため、基材の前部は、SCRコーティングのみでコーティングすることができ、後部は、アルミナ担体上にPt又はPt/Pdを更に含むことができるSCR及びNH3酸化触媒で被覆することができる。
【0042】
SCRプロセスのための還元体(還元剤としても知られる)は、排気ガス中のNOxの還元を促進する任意の化合物を広く意味する。本発明において有用な還元体の例としては、アンモニア、ヒドラジン又は任意の適切なアンモニア前駆体、例えば尿素((NH2)2CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム又はギ酸アンモニウム、及びディーゼル燃料などの炭化水素、などが挙げられる。特に好ましい還元体は、窒素系であり、アンモニアが特に好ましい。
【0043】
別の一実施形態では、窒素系還元体、特にNH3の全て又は少なくとも一部は、二重機能触媒フィルタの上流に配設されたNOx吸着触媒(NAC)、リーンNOxトラップ(LNT)、又はNOx貯蔵/還元触媒(NSRC)によって供給することができる。本発明におけるNACの機能の1つは、下流のSCR反応のためのNH3供給源を提供することである。したがって、NACは、噴射器と同様の方法で、すなわち、二重機能触媒フィルタの上流で、好ましくはNACとフィルタとの間に介在するSCR又は他の触媒成分なしで、システム内に構成される。本発明において有用なNAC成分としては、塩基性材料(アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びこれらの組み合わせを含む、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属など)と、貴金属(白金など)と、任意選択で、ロジウムなどの還元触媒成分と、の組み合わせの触媒が挙げられる。NACに有用な特定の種類の塩基性材料としては、酸化セシウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。貴金属は、好ましくは、約10~約200g/ft3、例えば20~60g/ft3で存在する。あるいは、触媒の貴金属は、約40~約100g/ft3であってもよい平均濃度を特徴とする。
【0044】
ある条件下では、定期的にリッチな再生事象中、NH3をNOx吸着触媒上で発生させ得る。NOx吸着触媒の下流のSCR触媒により、システム全体のNOx還元効率を改善することができる。組み合わせたシステムでは、SCR触媒は、リッチな再生事象中にNAC触媒から放出されたNH3を吸蔵可能であり、吸蔵したNH3を利用して、通常のリーン運転条件中にNAC触媒を通り抜けるNOxの一部又は全てを選択的に還元する。
【0045】
本発明の別の一態様によれば、ガス中のNOx化合物の還元又はNH3の酸化方法であって、ガス中のNOx化合物の濃度を低減するのに十分な時間、NOx化合物の触媒還元のために、ガスを本明細書に記載の触媒組成物と接触させることを含む方法が提供される。一実施形態では、窒素酸化物は、少なくとも100℃の温度で還元剤によって還元される。別の一実施形態では、窒素酸化物は、約150℃~750℃の温度で還元剤によって還元される。特定の一実施形態では、温度範囲は175~550℃である。別の一実施形態では、温度範囲は175~400℃である。更に別の一実施形態では、温度範囲は、450~900℃、好ましくは500~750℃、500~650℃、450~550℃、又は650~850℃である。450℃超の温度を用いる実施形態は、大型及び小型ディーゼルエンジンからの排気ガスの処理に特に有用であり、このエンジンは、(任意選択で触媒化した)ディーゼル粒子フィルタを含む排気システムを備え、このフィルタを、例えば、フィルタの上流の排気システムに炭化水素を噴射することにより積極的に再生するものであり、本発明に使用するためのモレキュラーシーブ触媒はフィルタの下流に位置している。他の実施形態では、SCR触媒組成物は、フィルタ基材上に組み込まれる。本発明の方法は、以下の:(a)触媒フィルタの入口と接触している煤を蓄積及び/又は燃焼させるステップと、(b)好ましくはNOx及び還元体の処理を伴う介在触媒ステップなしで、窒素性還元剤を排気ガス流に導入した後、触媒フィルタに接触させるステップと、(c)NOx吸着触媒の上でNH3を発生させ、好ましくは、下流SCR反応において還元体としてそのようなNH3を使用するステップと、(d)排気ガス流をDOCと接触させ、炭化水素系可溶性有機成分(soluble organic fraction、SOF)及び/若しくは一酸化炭素をCO2に酸化し、並びに/又はNOをNO2に酸化し、次に、それを使用して、粒子状物質フィルタ内の粒子状物質を酸化し、かつ/又は排気ガス中の粒子状物質(particulate matter、PM)を減少させ得るステップと、(e)排気ガスを、還元剤の存在下、1つ以上のフロースルーSCR触媒装置と接触させて、排気ガス中のNOx濃度を低減するステップと、(f)排気ガスをAMOX触媒と、好ましくはSCR触媒の下流で、接触させ、アンモニアの、全てでない場合でもほとんどを酸化させた後、排気ガスを大気に放出し、又は排気ガスを再循環ループに通し、その後、排気ガスをエンジンに流入/再流入させるステップと、のうちの1つ以上を含み得る。
【0046】
本方法は、燃焼プロセス、例えば、内燃機関(移動式又は設置型のいずれでも)、ガスタービン、及び石炭又は石油を燃料とした動力プラントに由来するガスに対して行うことができる。また、本方法を、精錬などの産業用プロセスから、精錬所のヒータ及びボイラ、炉、化学処理産業、コークスオーブン、都市廃棄物プラント、及び焼却機などからのガスを処理するために使用することができる。特定の一実施形態では、本方法を、例えばディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジン、又は液化石油ガス若しくは天然ガスによって動力供給されるエンジンなどの、車両のリーンバーン内燃機関からの排気ガスを処理するために使用することができる。
【0047】
更なる一態様によれば、本発明は、車両用リーンバーン内燃機関のための排気システムを提供し、このシステムは、流動排気ガスを運ぶための導管と、窒素還元体の供給源と、本明細書に記載の触媒組成物とを含む。システムは、使用時に計量手段を制御するための手段を含んでもよく、それにより、触媒組成物によって、所望の効率以上で、例えば100℃超、150℃超、又は175℃超で、触媒によるNOx還元が可能であると判定したときのみ、流動する排気ガス中に入る窒素性還元体が計量される。制御手段による判定は、排気ガス温度、触媒床温度、促進剤位置、システムにおける排気ガスの質量流量、マニホールド真空、点火タイミング、エンジン速度、排気ガスのラムダ値、エンジンに噴射される燃料量、排気ガス再循環(EGR)弁の位置ひいてはEGRの量、及びブースト圧力からなる群から選択されるエンジンの状態を示す、1つ以上の好適なセンサ入力によって支援することができる。
【0048】
特定の一実施形態では、計量は、(好適なNOxセンサを使用して)直接的、又は間接的のいずれかで測定される排気ガス中の窒素酸化物の量に応じて制御される。間接的測定は、例えば、制御手段に記憶された、排気ガスの予測NOx含有量に、エンジンの状態を示す上述の入力のうちのいずれか1つ以上を相関させる、事前相関ルックアップテーブル又はマップを使用する。窒素性還元体の計量については、1:1のNH3/NO及び4:3のNH3/NO2で計算されて、SCR触媒に流入する排気ガス中に、理論上のアンモニアの60%~200%が存在するように調整することができる。制御手段は、電子制御ユニット(ECU)などの予めプログラムされたプロセッサを備えることができる。
【0049】
更なる一実施形態では、排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒を、排気ガス中に入る窒素性還元体を計量する箇所の上流に、位置させることができる。一実施形態では、酸化触媒は、SCR触媒組成物に流入するガス流が、例えば、酸化触媒入口における250℃~450℃の排気ガス温度で、約4:1~約1:3のNO対NO2体積比を有して生じさせるように適合される。酸化触媒は、フロースルーモノリス基材上にコーティングした、白金、パラジウム、又はロジウムなどの、少なくとも1つの白金族金属(又はこれらのいくつかの組み合わせ)を含み得る。一実施形態では、少なくとも1つの白金族金属は、白金、パラジウム、又は白金及びパラジウムの両方の組み合わせである。白金族金属を、アルミナ、アルミノシリカートゼオライトなどのゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、又はセリア及びジルコニアの両方を含有する混合若しくは複合酸化物などの高表面積ウォッシュコート成分上に担持することができる。
【0050】
更なる一実施形態では、好適なフィルタ基材は、酸化触媒と触媒組成物との間に位置する。フィルタ基材は、上述したもののいずれか、例えばウォールフローフィルタから選択されてもよい。フィルタを、例えば、上述の種類の酸化触媒で触媒化している場合には、好ましくは、窒素性還元体の計量箇所を、フィルタと触媒組成物との間に位置させる。代替的に、フィルタを触媒化していない場合、窒素性還元体を計量する手段を、酸化触媒とフィルタとの間に位置させることができる。
【0051】
更なる一実施形態では、本発明に使用するための触媒組成物は、酸化触媒の下流に位置するフィルタ上にコーティングされる。フィルタが、本発明に使用するための触媒組成物を含む場合、窒素性還元体を計量する箇所は、好ましくは酸化触媒とフィルタとの間に位置する。
【0052】
更なる一態様では、本発明による排気システムを備える、車両用リーンバーンエンジンが提供される。車両用リーンバーン内燃機関は、ディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジン、又は液化石油ガス若しくは天然ガスによって動力を得るエンジンであり得る。
【実施例】
【0053】
CuCHA SAR 13及びCuCHA SAR 19:CuCHA触媒は、ゼオライト粉末に酢酸銅(II)溶液を含浸させて、2重量%及び3重量%のCu担持量を達成することによって調製された。得られた粉末を105℃で3時間乾燥させ、次いで500℃で2時間焼成した。
【0054】
Ceを3つの異なる方法でCuCHA触媒に添加した。
・インシピエントウェットネス含浸による方法:0.5~3重量%のCe担持量を達成するために酢酸Ce(III)溶液を使用する。粉末を105℃で3時間乾燥させた後、500℃で2時間焼成した。
・湿式イオン交換による方法:CuCHA SAR 13触媒を酢酸Ce(III)一水和物水溶液と混合して、Ce担持量約0.5重量%を達成した。スラリーを80℃で4時間撹拌し、次いで濾過した。得られた粉末を洗浄し、乾燥させた後、500℃で2時間にわたり焼成した。
・堆積による方法:コロイド状CeO2をCuCHA触媒と混合して3重量%のCe担持量を達成するゾル法によるCeO2。次いで、ゾルを濾過し、乾燥させ、500℃で2時間焼成した。
【0055】
図1は、850℃で16時間のLHA後の、CHA SAR 13基準触媒のそれぞれについての、175℃及び525℃でのNO
x転換率を示す。結果は、より多くの交換されたCeを含むことが、より良好な低温転換を提供する一方で、表面上のより多くのCeO
2の存在が、高温転換に悪影響を及ぼすことを実証している。
【0056】
【0057】
図3は、交換されたCeが骨格安定性を改善することを示す。
【国際調査報告】