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特表2024-531138筋ジストロフィーを処置するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】筋ジストロフィーを処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240822BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 14/015 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240822BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N7/01
C12N15/34 ZNA
C12N5/10
C12N15/864 100Z
C12N15/35
C07K14/015
C07K14/47
C12N15/12
A61K35/76
A61P21/02
A61K48/00
A61K38/48
A61P43/00 121
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507880
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 US2022074760
(87)【国際公開番号】W WO2023019168
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/231,752
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513252910
【氏名又は名称】ウルトラジェニックス ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フラー, マシュー スコット
(72)【発明者】
【氏名】ストイカ, ローレライ イオアナ
(72)【発明者】
【氏名】ティアナン, オーブリー ローズ
(72)【発明者】
【氏名】クラーク, ケリー リード
(72)【発明者】
【氏名】ウォズワース, サミュエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084CA53
4C084DC02
4C084MA02
4C084MA56
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC751
4C084ZC752
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA56
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA94
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA54
4H045CA01
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、新規な合成核酸、およびそれを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)、ならびにジストロフィン変異に関連する筋ジストロフィーの処置におけるそれらの使用方法を提供する。本発明の新規な合成核酸またはrAAVと、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む、医薬組成物もまた、提供される。本発明のrAAVを含む医薬組成物は、ジストロフィン関連型筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、およびX連鎖性心筋症)の処置のための遺伝子治療において有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、
AAVカプシドと、
該AAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムと
を含み、該ベクターゲノムは、配列番号1と少なくとも99%同一な核酸配列を含む、
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項2】
前記核酸配列が、配列番号1に示されている配列を含む、請求項1に記載のrAAV。
【請求項3】
前記AAVカプシドが血清型hu37、8、1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、rh10、またはrh74のAAVに由来する、請求項1に記載のrAAV。
【請求項4】
前記AAVカプシドがhu37カプシドである、請求項3に記載のrAAV。
【請求項5】
前記AAVカプシドがAAV8カプシドである、請求項3に記載のrAAV。
【請求項6】
前記AAVカプシドがAAV9カプシドである、請求項3に記載のrAAV。
【請求項7】
前記パッケージングされたベクターゲノムが筋特異的制御エレメントをさらに含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項8】
前記筋特異的制御エレメントがCK8プロモーター、CK7プロモーター、CK9プロモーター、筋特異的クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、切断型MCK(tMCK)、ミオシン重鎖(MHC)、ハイブリッドα-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCK(MHCK7)エンハンサー-プロモーター、ヒト骨格筋アクチン遺伝子エレメント、心筋アクチン遺伝子エレメント、筋細胞特異的エンハンサー結合因子mef、C5-12、マウスクレアチンキナーゼエンハンサーエレメント、骨格筋速筋型トロポニンc遺伝子エレメント、遅筋型・心筋型トロポニンc遺伝子エレメント、遅筋型トロポニンi遺伝子エレメント、低酸素誘導性核因子、ステロイド誘導性エレメント、およびグルココルチコイド応答エレメントから選択される、請求項7に記載のrAAV。
【請求項9】
前記筋特異的制御エレメントがCK8プロモーターである、請求項8に記載のrAAV。
【請求項10】
前記CK8プロモーターが、配列番号6に示されている配列を含む、請求項9に記載のrAAV。
【請求項11】
前記筋特異的制御エレメントがハイブリッドα-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCK(MHCK7)エンハンサー-プロモーターである、請求項8に記載のrAAV。
【請求項12】
前記MHCK7エンハンサー-プロモーターが、配列番号7に示されている配列を含む、請求項11に記載のrAAV。
【請求項13】
前記パッケージングされたベクターゲノムが5’-ITR配列をさらに含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項14】
前記パッケージングされたベクターゲノムが3’-ITR配列をさらに含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項15】
前記5’-ITR配列および/または3’-ITR配列がAAV2に由来する、請求項13または14に記載のrAAV。
【請求項16】
前記5’-ITR配列および/または3’-ITR配列が非AAV2供給源に由来する、請求項13または14に記載のrAAV。
【請求項17】
前記パッケージングされたベクターゲノムが1つまたは複数のイントロン配列をさらに含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項18】
前記イントロンがSV40スモールTイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβ-グロビン/IgGキメライントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、およびhFIXイントロンから選択される、請求項17に記載のrAAV。
【請求項19】
前記パッケージングされたベクターゲノムがポリアデニル化シグナル配列をさらに含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項20】
前記ポリアデニル化シグナル配列が合成ポリアデニル化シグナル配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択される、請求項19に記載のrAAV。
【請求項21】
前記ポリアデニル化シグナル配列が合成ポリアデニル化シグナル配列である、請求項20に記載のrAAV。
【請求項22】
前記合成ポリアデニル化シグナル配列が、配列番号9に示されている配列を含む、請求項21に記載のrAAV。
【請求項23】
前記パッケージングされたベクターゲノムが、配列番号3に示されている配列を含む、請求項1に記載のrAAV。
【請求項24】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、
AAVhu37カプシドと、
該AAVhu37カプシド中にパッケージングされたベクターゲノムと
を含み、該ベクターゲノムは、配列番号10に示されているMD5マイクロジストロフィンポリペプチドをコードする核酸配列を含む、
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項25】
前記MD5マイクロジストロフィンポリペプチドをコードする核酸配列が、配列番号1と少なくとも99%同一な配列を含む、請求項24に記載のrAAV。
【請求項26】
前記MD5マイクロジストロフィンポリペプチドをコードする核酸配列が、配列番号1に示されている配列を含む、請求項24に記載のrAAV。
【請求項27】
前記パッケージングされたベクターゲノムが筋特異的制御エレメントをさらに含む、請求項24~26のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項28】
前記筋特異的制御エレメントがCK8プロモーター、CK7プロモーター、CK9プロモーター、筋特異的クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、切断型MCK(tMCK)、ミオシン重鎖(MHC)、ハイブリッドα-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCK(MHCK7)エンハンサー-プロモーター、ヒト骨格筋アクチン遺伝子エレメント、心筋アクチン遺伝子エレメント、筋細胞特異的エンハンサー結合因子mef、C5-12、マウスクレアチンキナーゼエンハンサーエレメント、骨格筋速筋型トロポニンc遺伝子エレメント、遅筋型・心筋型トロポニンc遺伝子エレメント、遅筋型トロポニンi遺伝子エレメント、低酸素誘導性核因子、ステロイド誘導性エレメント、およびグルココルチコイド応答エレメントから選択される、請求項27に記載のrAAV。
【請求項29】
前記筋特異的制御エレメントがCK8プロモーターである、請求項28に記載のrAAV。
【請求項30】
前記CK8プロモーターが、配列番号6に示されている配列を含む、請求項29に記載のrAAV。
【請求項31】
前記筋特異的制御エレメントがハイブリッドα-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCK(MHCK7)エンハンサー-プロモーターである、請求項28に記載のrAAV。
【請求項32】
前記MHCK7エンハンサー-プロモーターが、配列番号7に示されている配列を含む、請求項31に記載のrAAV。
【請求項33】
前記パッケージングされたベクターゲノムが5’-ITR配列をさらに含む、請求項24~32のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項34】
前記パッケージングされたベクターゲノムが3’-ITR配列をさらに含む、請求項24~32のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項35】
前記5’-ITR配列および/または3’-ITR配列がAAV2に由来する、請求項33または34に記載のrAAV。
【請求項36】
前記5’-ITR配列および/または3’-ITR配列が非AAV2供給源に由来する、請求項33または34に記載のrAAV。
【請求項37】
前記パッケージングされたベクターゲノムが1つまたは複数のイントロン配列をさらに含む、請求項24~36のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項38】
前記イントロンがSV40スモールTイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβ-グロビン/IgGキメライントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、およびhFIXイントロンから選択される、請求項37に記載のrAAV。
【請求項39】
前記パッケージングされたベクターゲノムがポリアデニル化シグナル配列をさらに含む、請求項24~38のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項40】
前記ポリアデニル化シグナル配列が合成ポリアデニル化シグナル配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択される、請求項39に記載のrAAV。
【請求項41】
前記ポリアデニル化シグナル配列が合成ポリアデニル化シグナル配列である、請求項40に記載のrAAV。
【請求項42】
前記合成ポリアデニル化シグナル配列が、配列番号9に示されている配列を含む、請求項41に記載のrAAV。
【請求項43】
前記パッケージングされたベクターゲノムが、配列番号3に示されている配列を含む、請求項24に記載のrAAV。
【請求項44】
前述の請求項のいずれか一項に記載のrAAVと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、組成物。
【請求項45】
ヒト対象における筋ジストロフィーを処置する方法であって、
該ヒト対象に治療有効量の請求項1~43のいずれか一項に記載のrAAVまたは請求項44に記載の組成物を投与する工程
を含む、方法。
【請求項46】
ヒト対象における筋ジストロフィーを処置する方法であって、
該ヒト対象にIgG分解性プロテアーゼを先に投与し、その後、治療有効量の請求項1~43のいずれか一項に記載のrAAVまたは請求項44に記載の組成物を投与する工程
を含む、方法。
【請求項47】
ヒト対象における筋ジストロフィーを処置する方法であって、該ヒト対象にはIgG分解性プロテアーゼが投与済みであり、該方法は、
治療有効量の請求項1~43のいずれか一項に記載のrAAVまたは請求項44に記載の組成物を投与する工程
を含む、方法。
【請求項48】
前記IgG分解性プロテアーゼがStreptococcus pyogenesのIdeSまたはその操作されたバリアントである、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記IgG分解性プロテアーゼがStreptococcus equiのIdeZまたはその操作されたバリアントである、請求項46または47に記載の方法。
【請求項50】
前記筋ジストロフィーがジストロフィン遺伝子中の変異によって引き起こされている、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記筋ジストロフィーがデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、およびX連鎖性拡張型心筋症から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記rAAVまたは前記組成物が、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、または髄腔内投与される、請求項45~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記rAAVまたは前記組成物が静脈内投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記rAAVまたは前記組成物が筋肉内投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記rAAVが1回の投与量約1×1012ゲノムコピー(GC)/kg~約1×1016ゲノムコピー(GC)/kgで投与される、請求項45~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記rAAVが1回の投与量約1×1013ゲノムコピー(GC)/kg~約1×1015ゲノムコピー(GC)/kgで投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記rAAVが1回の投与量約1×1014ゲノムコピー(GC)/kgで投与される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
配列番号1の配列と少なくとも99%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項59】
配列番号1に示されている核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項60】
配列番号1に示されている核酸配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項61】
配列番号3の配列と少なくとも99%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項62】
配列番号3に示されている核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項63】
配列番号3に示されている核酸配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項64】
請求項58~63のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項65】
HeLa細胞、Cos-7細胞、HEK293細胞、A549細胞、BHK細胞、Vero細胞、RD細胞、HT-1080細胞、ARPE-19細胞、およびMRC-5細胞から選択される、請求項64に記載の宿主細胞。
【請求項66】
HeLa細胞である、請求項65に記載の宿主細胞。
【請求項67】
前記HeLa細胞が、1つまたは複数の内在性遺伝子を不活化するように操作済みである、請求項66に記載の宿主細胞。
【請求項68】
前記内在性遺伝子がKCNN2、RGMA、ATP5EP2、LINC00319、CYP3A7、ABCA10、NOG、SPANXN3、PGA5、MYRIP、およびNALCN-AS1から選択される、請求項67に記載の宿主細胞。
【請求項69】
前記内在性遺伝子がRGMAである、請求項68に記載の宿主細胞。
【請求項70】
前記内在性遺伝子がKCNN2である、請求項68に記載の宿主細胞、
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年8月11日出願された米国仮出願第63/231,752号に基づく利益および優先権を主張し、この米国仮出願の内容全体が、すべての目的のためにその全体が本明細書中の参照により本明細書により援用される。
【0002】
(配列表XMLの参照)
本願は、XML形式で電子的に提出した配列表を含む。この配列表XMLは、参照により本明細書中に援用される。2022年8月3日付けで作成したこのXMLファイルは、ULP-011WO.xmlという名前であり、35,812バイトのサイズである。
【0003】
(発明の技術分野)
本開示は、概して、マイクロジストロフィンをコードする新規な核酸、組換えアデノ随伴ウイルスベクター、組換えアデノ随伴ウイルス、および1種または複数種の筋ジストロフィーを処置するための遺伝子治療におけるそれらの使用方法に関連する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
筋ジストロフィーは、進行性の筋消耗および筋力低下によって特徴付けられる、一群の一遺伝子性遺伝性筋障害である。筋ジストロフィーに関係付けられた最初の遺伝子であるジストロフィンは、Kunkelらによって1987年にクローン化された。Koenigら、1987、Cell50(3):509~17およびKunkel、2005、Am.J.Hum.Genet.76:205~14を参照のこと。ジストロフィン中の変異が、種々の形態の筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、およびX連鎖性拡張型心筋症が挙げられる)の原因である。DMDは、およそ3,500人の男性のうちの1人が罹患する遺伝性筋消耗障害である。DMD患者は、ジストロフィンタンパク質の異常発現または発現喪失を引き起こす、ジストロフィン遺伝子中の少なくとも1つの変異を一般的には保有する。DMDを有する患者は、骨格筋の進行性消耗および心機能不全を経験し、これは、歩行能喪失と、主に心不全または呼吸不全から生じる早死とをもたらす。残念ながら、現在利用可能な処置は、一般的には、DMDの進行を遅くすることしかできない。したがって、ジストロフィン変異に関連するDMDおよび他の障害を処置するための改善された組成物および方法が、緊急に必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Koenigら、1987、Cell50(3):509~17
【非特許文献2】Kunkel、2005、Am.J.Hum.Genet.76:205~14
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、組成物および遺伝子治療におけるそれらの使用方法を提供する。より詳細には、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする合成核酸が、本明細書において提供される。アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドと、このアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシド中にパッケージングされたベクターゲノム(すなわち、「パッケージングされたベクターゲノム」)とを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)もまた提供され、このベクターゲノムは、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする合成核酸を含む。本明細書において記載される合成核酸およびrAAVは、筋ジストロフィー(例えば、DMD)の処置のための方法において使用され得る。
一局面において、本開示は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする新規な合成核酸配列を提供する。一実施形態において、本開示は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸を提供し、この核酸は、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含む。例示的な実施形態において、本開示は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸を提供し、この核酸は、配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。さらなる例示的な実施形態において、本開示は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸を提供し、この核酸は、配列番号1に示されている配列を含むか、または配列番号1に示されている配列からなる。機能的マイクロジストロフィン活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1に示されている核酸配列のフラグメントが、さらに提供される。一部の実施形態において、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸配列(例えば、配列番号1)は、終止コドン(TGA、TAA、またはTAG)を3’末端にさらに含み得る(例えば、配列番号1の3’末端にTAG終止コドンを含む配列番号2に例示されている配列など)。
【0007】
別の局面において、本開示は、筋ジストロフィー(例えば、DMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはX連鎖性拡張型心筋症)の処置において有用な、新規なベクターゲノム構築物を提供する。一実施形態において、本開示は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードするベクターゲノム構築物(すなわち、ポリヌクレオチド)を提供し、このベクターゲノム構築物(すなわち、ポリヌクレオチド)は、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一である。例示的な実施形態において、本開示は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供し、このポリヌクレオチドは配列番号3と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一である。さらなる例示的な実施形態において、本開示は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供し、このポリヌクレオチドは、配列番号3に示されている配列を含むか、または配列番号3に示されている配列からなる。
【0008】
なお別の局面において、本開示は、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供し、このベクターゲノムは、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸を含み、この核酸は、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一である。例示的な実施形態において、その核酸は、配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列番号1を含む。さらなる例示的な実施形態において、その核酸は、配列番号1に示されている配列を含むか、または配列番号1に示されている配列からなる。
【0009】
一部の実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントをさらに含み得る。一部の実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一である。例示的な実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一である。さらなる例示的な実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3に示されている配列を含むか、または配列番号3に示されている配列からなる。
【0010】
そのパッケージングされたベクターゲノムが5’-ITRを含む実施形態において、その5’-ITRはAAV2に由来し得る。一部の実施形態において、その5’-ITRは、(プラス/プラス+鎖方向にある)配列番号4を含むか、または(プラス/プラス鎖方向にある)配列番号4からなる。他の実施形態において、その5’-ITRは非AAV2供給源に由来する。
【0011】
そのパッケージングされたベクターゲノムが3’-ITRを含む実施形態において、その3’-ITRはAAV2に由来し得る。一部の実施形態において、その3’-ITRは、(プラス/マイナス鎖方向にある)配列番号4を含むか、または(プラス/マイナス鎖方向にある)配列番号4からなり、この(プラス/マイナス鎖方向にある)配列番号4は、プラス/プラス鎖方向にある配列番号5に対応する。他の実施形態において、その3’-ITRは非AAV2供給源に由来する。
【0012】
そのパッケージングされたベクターゲノムが筋特異的制御エレメント(例えば、エンハンサーおよび/またはプロモーター)を含む実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、CK8プロモーター、CK7プロモーター、CK9プロモーター、筋特異的クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、切断型MCK(tMCK)、ミオシン重鎖(MHC),ハイブリッドα-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCK(MHCK7)エンハンサー-プロモーター、ヒト骨格筋アクチン(skeletal actin)遺伝子エレメント、心筋アクチン(cardiac actin)遺伝子エレメント、筋細胞特異的エンハンサー結合因子mef、C5-12、マウスクレアチンキナーゼエンハンサーエレメント、骨格筋速筋型(skeletal fast-twitch)トロポニンc遺伝子エレメント、遅筋型・心筋型(slow-twitch cardiac)トロポニンc遺伝子エレメント、遅筋型(slow-twitch)トロポニンi遺伝子エレメント、低酸素誘導性核因子、ステロイド誘導性エレメント、およびグルココルチコイド応答エレメント(gre)から選択され得る。例示的な実施形態において、その筋特異的制御エレメントはCK8プロモーターおよびハイブリッドα-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCK(MHCK7)エンハンサー-プロモーターから選択される。さらなる例示的な実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、配列番号6に示されている配列を含むかまたは配列番号6に示されている配列からなる、CK8プロモーターである。一部の実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、配列番号6と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含む。代替的実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、配列番号7に示されている配列を含むかまたは配列番号7に示されている配列からなる、MHCK7エンハンサー-プロモーターである。一部の実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一 な配列を含む。
【0013】
そのパッケージングされたベクターゲノムが1つまたは複数のイントロン配列を含む実施形態において、そのイントロンはSV40スモールTイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβ-グロビン/IgGキメライントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、およびhFIXイントロンから選択され得る。
【0014】
そのパッケージングされたベクターゲノムがポリアデニル化シグナル配列を含む実施形態において、そのポリアデニル化シグナル配列は合成ポリアデニル化シグナル配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択され得る。例示的な実施形態において、そのポリアデニル化シグナル配列は、配列番号9に示されている配列を含むかまたは配列番号9に示されている配列からなる、合成ポリアデニル化シグナルである。一部の実施形態において、そのポリアデニル化シグナル配列は、配列番号9と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一である。
【0015】
一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、rh74、hu37のAAV(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVrh74、AAVhu37)、またはそれらの操作されたバリアントに由来する。例示的な実施形態において、そのAAVカプシドは、AAV血清型hu37(AAVhu37)カプシド、AAV血清型9(AAV9)カプシド、AAV9バリアントカプシド、AAV血清型8(AAV8)カプシド、またはAAV8バリアントカプシドから選択される。さらなる例示的な実施形態において、そのAAVカプシドはAAVhu37カプシドである。
【0016】
なお別の局面において、本開示は、筋ジストロフィー(例えば、DMD)の処置における遺伝子治療のための薬剤として有用な、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供し、このrAAVは、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む。一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、rh74、hu37のAAV(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVrh74、AAVhu37)、またはそれらの操作されたバリアントに由来する。例示的な実施形態において、そのAAVカプシドは、AAV血清型hu37(AAVhu37)カプシド、AAVhu37バリアントカプシド、AAV血清型9(AAV9)カプシド、AAV9バリアントカプシド、AAV血清型8(AAV8)カプシド、またはAAV8バリアントカプシドから選択される。さらなる例示的な実施形態において、そのAAVカプシドはAAVhu37カプシドまたはその操作されたバリアントである。一部の実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸を含み、この核酸は、配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。別の実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一なポリヌクレオチド配列を含む。
【0017】
なお別の局面において、本開示は、筋ジストロフィー(例えば、DMD)の処置のための本明細書において開示されているrAAVの使用を提供し、このrAAVは、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む。一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、rh74、hu37のAAV(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVrh74、AAVhu37)、またはそれらの操作されたバリアントに由来する。例示的な実施形態において、そのAAVカプシドはAAV血清型hu37(AAVhu37)カプシド、AAVhu37バリアントカプシド、AAV血清型9(AAV9)カプシド、AAV9バリアントカプシド、AAV血清型8(AAV8)カプシド、またはAAV8バリアントカプシドから選択される。さらなる例示的な実施形態において、そのAAVカプシドはAAVhu37カプシドまたはその操作されたバリアントである。一部の実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸を含み、この核酸は、配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。別の実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一なポリヌクレオチド配列を含む。
【0018】
本開示は、本明細書において開示されている合成核酸配列またはrAAVを含む、医薬組成物にさらに関連する。一部の実施形態において、その医薬組成物は、合成核酸と、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む。一部の実施形態において、その医薬組成物は、rAAVと、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む。一部の実施形態において、そのrAAVを含む医薬組成物は、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、または髄腔内投与のために製剤化されている。例示的な実施形態において、そのrAAVを含む医薬組成物は、静脈内投与または筋肉内投与のために製剤化されている。
【0019】
なお別の局面において、本開示は、ヒト対象における筋ジストロフィーを処置する方法を提供し、この方法は、そのヒト対象に治療有効量の少なくとも1種の本明細書において開示されているrAAVを投与する工程を含む。一実施形態において、その筋ジストロフィーは、ジストロフィン中の変異によって引き起こされている。一実施形態において、その筋ジストロフィーはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、およびX連鎖性拡張型心筋症から選択される。
【0020】
一実施形態において、本開示は筋ジストロフィー(例えば、DMD)を提供し、これは、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む、rAAVを投与する工程を含み、この核酸は、配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。一部の実施形態において、その方法は、そのrAAVの投与の前に、IgG分解性プロテアーゼ(例えば、Streptococcus pyogenes IdeSまたはStreptococcus equi IdeZ)の投与をさらに含み得る。一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象における筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法を提供し、この方法は、治療有効量の少なくとも1種の本明細書において開示されているrAAVを投与する工程を含み、このヒト対象はIgG分解性プロテアーゼを投与済みである。
【0021】
特定の実施形態において、本開示は、ヒト対象における筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法を提供し、この方法は、ジストロフィン中に少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト対象に、治療有効量の少なくとも1種の本明細書において開示されているrAAVを投与する工程を含む。一実施形態において、本開示は、ヒト対象における筋ジストロフィー(例えば、DMD)を提供し、これは、ジストロフィン中に少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト対象に、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む、rAAVを投与する工程を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸を含み、この核酸は、配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。一部の実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一なポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、そのカプシドはAAVhu37カプシドである。
【0022】
一部の実施形態において、そのrAAVは、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、または髄腔内投与される。例示的な実施形態において、そのrAAVは、静脈内投与または筋肉内投与される。一部の実施形態において、そのrAAVは、1回の投与量約1×1012ゲノムコピー(GC)/kg~約1×1016ゲノムコピー(GC)/kgで投与される。さらなる実施形態において、そのrAAVは、1回の投与量約1×1013ゲノムコピー(GC)/kg~約1×1015ゲノムコピー(GC)/kgで投与される。さらなる実施形態において、そのrAAVは、1回の投与量が1×1013GC/kgまたは約1×1013GC/kg、1×1014GC/kgまたは約1×1014GC/kg、2×1014GC/kgまたは約2×1014GC/kg、3×1014GC/kgまたは約3×1014GC/kg、4×1014GC/kgまたは約4×1014GC/kg、5×1014GC/kgまたは約5×1014GC/kg、6×1014GC/kgまたは約6×1014GC/kg、7×1014GC/kgまたは約7×1014GC/kg、8×1014GC/kgまたは約8×1014GC/kg、9×1014GC/kgまたは約9×1014GC/kg、あるいは1×1015GC/kgまたは約1×1015GC/kgで投与される。一部の実施形態において、rAAVの単回投与が投与される。他の実施形態において、rAAVの複数回投与が投与される。
【0023】
一部の局面において、本明細書において開示されている合成核酸分子、AAVベクター、またはrAAVを含む、宿主細胞が、本明細書において提供される。特定の実施形態において、その宿主細胞は、AAVの増殖のために適切であり得る。特定の実施形態において、その宿主細胞は、HeLa細胞、Cos-7細胞、HEK293細胞、A549細胞、BHK細胞、Vero細胞、RD細胞、HT-1080細胞、ARPE-19細胞、およびMRC-5細胞から選択される。一部の実施形態において、その宿主細胞は、1つまたは複数の内在性遺伝子を不活化するように操作済みであるHeLa細胞である。
【0024】
本発明のこれらの局面および特徴ならびに他の局面および特徴が、本開示の以下の節において記載される。
【0025】
(図面の簡単な説明)
本発明は、以下の図面を参照して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、マイクロジストロフィンタンパク質コード配列をCK8プロモーターの制御下に含む、例示的なパッケージングされたベクターゲノム構築物を示す図解である。そのパッケージングされたベクターゲノムは、5’から3’に向かって、5’-逆位末端反復配列(5’-ITR)、CK8プロモーター、イントロン、ヒトマイクロジストロフィンコード配列、合成ポリアデニル化シグナル配列、および3’-逆位末端反復配列(3’-ITR)を含む。この図は、配列番号3(4,784bp)の構成を示し、この配列番号3は、ヒトマイクロジストロフィンタンパク質をコードする配列番号1(3,810bp)に示されている合成核酸を含む。
【0027】
図2図2は、インビトロ系における天然MD5コード配列(配列番号8)からのMD5マイクロジストロフィンタンパク質発現と合成コドン最適化コード配列(配列番号1)からのMD5マイクロジストロフィンタンパク質発現との比較を示す、棒グラフである。その合成コドン最適化コード配列は、天然コード配列と比較して統計的に有意な(p<0.0001)、タンパク質発現のおよそ7倍への増加を示した(n=2)。マイクロジストロフィンタンパク質発現レベルは、市販のヒトジストロフィン特異的抗体を使用して、Meso Scale Discovery(MSD)ELISAによって決定した。生のMSD ELISA読取り値を天然マイクロジストロフィン群の平均値に対して正規化し、倍数変化として表した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、治療適用のために使用される、一定範囲の新規な薬剤および組成物を提供する。本発明の核酸配列、ベクター、組換えウイルス、および関連する組成物は、本明細書において記載される種々の筋ジストロフィーを軽減、予防、または処置するために使用され得る。
【0029】
別に示されない限り、技術用語は、従来の使用法にしたがって使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes V、Oxford University Press刊行、1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.刊行、1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A.Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers、Inc.刊行、1995(ISBN 1-56081-569-8)において見出され得る。
【0030】
本開示の種々の実施形態の概説を容易にするために、以下の特定の用語の説明が、提供される。
【0031】
アデノ随伴ウイルス(AAV):ヒトおよび他のいくつかの霊長類の種に感染する、小さい複製欠損性ノンエンベロープウイルス。AAVは、疾患を引き起こすとは知られておらず、非常に軽度の免疫応答を惹起する。AAVを利用する遺伝子治療ベクターは、分裂細胞および静止細胞の両方に感染し得、その宿主細胞のゲノム中に組み込むことなく染色体外状態で存続し得る。これらの特徴は、AAVを遺伝子治療のための魅力的なウイルスベクターにする。12種の認識されたAAV血清型(AAV1~AAV12)ならびにいくつかのAAV血清型バリアント(例えば、AAVhu37、AAVrh10、およびAAVrh74)が、現在存在する。
【0032】
投与/投与する:対象に薬剤(例えば、治療剤(例えば、組換えAAV))を任意の有効な経路によって提供するかまたは与えること。例示的な投与経路としては、注射(例えば、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、または髄腔内投与)、経口経路、管内(intraductal)経路、舌下経路、直腸内経路、経皮経路、鼻腔内経路、腟内経路および吸入経路が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0033】
コード配列:「コード配列」とは、適切な調節配列に作動可能に連結された場合にインビトロまたはインビボでポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を意味する。コード配列は、そのコード領域の前および後に領域(例えば、5’非翻訳(5’UTR)配列および3’非翻訳(3’UTR)配列)を含んでも含まなくてもよく、個々のコードセグメント(エクソン)間に介在配列(イントロン)を含んでも含まなくてもよい。
【0034】
コドン最適化:「コドン最適化」核酸とは、特定の系(例えば、特定の種または種の群)における発現のためにコドンが最適であるように変更された、核酸配列を指す。例えば、核酸配列は、哺乳動物細胞または特定の哺乳動物種(例えば、ヒト細胞)における発現のために最適化され得る。コドン最適化は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を変更しない。
【0035】
エンハンサー:プロモーターの活性を増加させることによって転写速度を増加させる核酸配列。
【0036】
イントロン:タンパク質のコード情報を含まない、遺伝子内の一連のDNA。イントロンは、メッセンジャーRNAの翻訳前に除去される。
【0037】
逆位末端反復配列(ITR):効率的な複製のために必要なアデノ随伴ウイルスゲノム中の対称的核酸配列。ITR配列は、AAV DNAゲノムの各末端に位置する。ITRはウイルスDNA合成のための複製起点として機能し、ITRはAAV組込みベクターを作製するために必須のシス成分である。
【0038】
単離された:「単離された」生物学的成分(例えば、核酸分子、タンパク質、ウイルスまたは細胞)は、その成分が天然で存在する生物の細胞もしくは組織またはその生物自体にある他の生物学的成分(例えば、他の染色体DNAおよび染色体RNAならびに染色体外DNAおよび染色体外RNA、タンパク質および細胞)から、実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子および「単離された」タンパク質としては、標準的な精製方法によって精製された、核酸分子およびタンパク質が挙げられる。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された、核酸分子およびタンパク質、ならびに化学合成された、核酸分子およびタンパク質を含む。
【0039】
作動可能に連結された:第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係で配置された場合に、その第1の核酸配列はその第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与える場合に、そのプロモーターはそのコード配列と作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結されたDNA配列は、近接しており、2つのタンパク質コード領域を接続するために必要な場合には、同じリーディングフレーム中にある。
【0040】
薬学的に受容可能なキャリア:本開示において有用な薬学的に受容可能なキャリア(賦形剤)は、従来どおりである。Remington’s Pharmaceutical Sciences、E.W.Martin、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、第15版(1975)は、1つまたは複数の治療化合物、分子、または薬剤の薬学的送達のために適切な組成物および製剤を記載している。
【0041】
一般に、キャリアの性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常は、薬学的および生理学的に受容可能な流体(例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなど)を賦形剤として含む、注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、散剤形態、丸剤形態、錠剤形態、またはカプセル剤形態)のために、従来の非毒性固体キャリアは、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性のキャリアに加えて、投与される医薬組成物は、少量の非毒性補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など(例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート))を含み得る。
【0042】
疾患を予防、処置または軽減する:疾患(例えば、DMD)を「予防する」とは、疾患の完全な発症を阻害することを指す。「処置する」とは、疾患または病理学的状態(例えば、DMD)の徴候もしくは症状を、それが発症し始めた後に軽減する、治療介入を指す。「軽減する」とは、疾患(例えば、DMD)の徴候もしくは症状の数または重症度の減少を指す。
【0043】
プロモーター:核酸(例えば、遺伝子)の転写を指示/開始するDNA領域。プロモーターは、転写開始部位付近に必要な核酸配列を含む。多くのプロモーター配列が当業者には公知であり、人工的核酸分子における別々のプロモーター配列の組合せさえも、可能である。
【0044】
精製された:用語「精製された」は、絶対的な純粋性を必要とはしない。むしろ、用語「精製された」は、相対的用語として意図される。したがって、例えば、精製されたペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物は、天然で結合しているタンパク質および他の混入物から全体的または部分的に分離された、ペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物である。特定の実施形態において、用語「実質的に精製された」とは、細胞、細胞培養培地、または他の粗調製物から単離され、分画に供されて初期調製物の種々の成分(例えば、タンパク質、細胞片、および他の成分)を除去された、ペプチド、タンパク質、ウイルスまたは他の活性化合物を指す。
【0045】
組換え:組換え核酸分子は、天然には存在しない配列を有するか、または他の状況では別々である2つの配列セグメントを人工的に組み合わせることによって作製された配列を有する、核酸分子である。この人工的組合せは、化学合成によって、または単離された核酸分子セグメントの(例えば、遺伝子操作技術による)人工的操作によって、達成され得る。
【0046】
同様に、組換えウイルスは、天然には存在しない配列(例えば、ゲノム配列)を含むか、または異なる起源の少なくとも2つの配列の人工的組合せにより作製された配列(例えば、ゲノム配列)を含む、ウイルスである。用語「組換え」はまた、天然の核酸分子、タンパク質もしくはウイルスの一部の付加、置換、または欠失によってのみ変更された、核酸、タンパク質およびウイルスを含む。本明細書において使用される場合、「組換えAAV」とは、組換え核酸分子(例えば、マイクロジストロフィンをコードする組換え核酸分子)がパッケージングされた、AAV粒子を指す。
【0047】
配列同一性:2つ以上の核酸配列間または2つ以上のアミノ酸配列間の同一性もしくは類似性は、それらの配列間の同一性もしくは類似性に関して表される。配列同一性は、同一性パーセントに関して測定され得る。そのパーセンテージが高いほど、それらの配列は同一性が高い。配列類似性は、(保存的アミノ酸置換を考慮する)類似性パーセンテージに関して測定され得る。そのパーセンテージが高いほど、それらの配列は類似性が高い。核酸配列またはアミノ酸配列のホモログもしくはオルソログは、標準的方法を使用して整列された場合に、比較的高い程度の配列同一性/配列類似性を有する。この相同性は、オルソロガスなタンパク質またはcDNAが、より遠縁の種(例えば、ヒト配列とC.elegans配列)と比較して近縁の種(例えば、ヒト配列とマウス配列)に由来する場合に、より顕著である。
【0048】
比較のための配列の整列方法は、当該分野において周知である。一般的に使用されるツールは、NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403~10、1990)であり、これは、配列分析プログラムであるblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと組み合わせて使用するために、いくつかの供給源(National Center for Biological Information(NCBI)が挙げられる)から、およびインターネット上で、利用可能である。さらなる情報が、NCBIウェブサイト上で見出され得る。
【0049】
血清型:特徴的な抗原の組によって区別される、一群の近縁微生物(例えば、ウイルス)。
【0050】
対象:ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む分類である、生きている多細胞脊椎動物生物。一部の実施形態において、その対象はヒトである。例示的な実施形態において、そのヒト対象は、小児科対象、すなわち、0歳~18歳(両端を含む)のヒト対象である。あるいは、そのヒト対象は、成人対象、すなわち、18歳を超えるヒト対象である。一部の実施形態において、その対象(例えば、ヒト対象)は、本発明のrAAVでの処置の前に、コルチコステロイドを投与済みである。一部の実施形態において、その対象(例えば、ヒト対象)は、本発明のrAAVでの処置の前に、IgG分解性プロテアーゼを投与済みである。一部の実施形態において、その対象(例えば、ヒト対象)は、本発明のrAAVでの処置の前に、コルチコステロイドを投与済みであり、IgG分解性プロテアーゼもまた投与済みである。
【0051】
合成:合成核酸は、実験室において化学合成され得る天然に存在しない核酸配列、および/または組換え微生物または組換えウイルス(例えば、組換えAAV)により発現され得る天然に存在しない核酸配列である。
【0052】
治療有効量:特定の薬剤または治療剤(例えば、組換えAAV)で処置される対象もしくは細胞において望まれる効果を達成するために十分な、その特定の薬剤または治療剤の量。薬剤の有効量は、いくつかの要因(処置される対象または細胞、およびその治療組成物の投与様式が挙げられるが、これらに限定はされない)に依存する。
【0053】
ベクター:ベクターは、そのベクターが宿主細胞において複製する能力および/または組み込む能力を破壊することなく外来核酸の挿入を可能にする、核酸分子である。ベクターは、そのベクターが宿主細胞において複製することを可能にする核酸配列(例えば、複製起点)を含み得る。ベクターはまた、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子および他の遺伝要素を含み得る。発現ベクターは、挿入される遺伝子または挿入される遺伝子群の転写および翻訳を可能にするために必要な調節配列を含む、ベクターである。本明細書における一部の実施形態において、そのベクターはAAVベクターである。
【0054】
別に説明されない限りは、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。単数の用語「ある(a)」、「ある(an)」および「その(この)(the)」は、そうではないことを文脈が明示しない限りは、複数の指示物を含む。「AまたはBを含む」とは、A、またはB、またはAとBとの組合せを含む。核酸またはポリペプチドについて与えられる、すべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量の値は、概数であり、説明のために提示されることが、さらに理解されるべきである。本明細書において記載されている方法および材料と類似するかまたは均等である方法および材料が本開示の実施もしくは試験のために使用され得るが、適切な方法および材料が以下に記載される。本明細書において記載されているすべての公開物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照によって援用される。矛盾する場合は、用語の説明を含む本明細書が優先する。さらに、本材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、限定することは意図されない。
【0055】
(マイクロジストロフィンをコードする新規な合成核酸)
本発明は、組成物および遺伝子治療におけるそれらの使用方法を提供する。本明細書において記載される組成物には、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする合成核酸がある。したがって、第1の局面において、本開示は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする新規な合成核酸配列を提供する。
【0056】
一部の実施形態において、本明細書において記載される新規な核酸によりコードされるマイクロジストロフィンタンパク質は、「MD5」という名前のマイクロジストロフィンタンパク質(配列番号10;1,270アミノ酸、これは米国特許第10,479,821号において配列番号4として列挙されている)またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントである。米国特許第10,479,821号(その全体が参照により本明細書中に援用される)において記載されるとおり、MD5(これは「μDys5」または「マイクロDys5」とも呼ばれる)は、アミノ末端アクチン結合ドメイン;β-ジストログリカン結合ドメイン;ならびにスペクトリン様反復ドメイン(5個のスペクトリン様反復(スペクトリン様反復1(SR1)、スペクトリン様反復16(SR16)、スペクトリン様反復17(SR17)、スペクトリン様反復23(SR23)、およびスペクトリン様反復24(SR24)を含む)からなる)を含む。
【0057】
一部の実施形態において、本開示は、MD5マイクロジストロフィンタンパク質またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントをコードする、合成核酸を提供する。一実施形態において、そのMD5マイクロジストロフィンタンパク質またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントをコードする合成核酸は、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含む。例示的な実施形態において、そのMD5マイクロジストロフィンタンパク質またはその機能的フラグメントもしくは機能的バリアントをコードする合成核酸は、配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。さらなる例示的な実施形態において、その合成核酸は、MD5マイクロジストロフィンタンパク質をコードし、配列番号1に示されている配列を含むかまたは配列番号1に示されている配列からなる。一部の実施形態において、そのMD5マイクロジストロフィンタンパク質をコードする合成核酸(例えば、配列番号1)は、終止コドン(TGA、TAA、またはTAG)を3’末端にさらに含み得る(例えば、配列番号1の3’末端にTAG終止コドンを含む配列番号2に例示されている配列など)。
【0058】
一部の実施形態において、本開示はまた、機能的マイクロジストロフィン活性を有するMD5ポリペプチドフラグメントをコードする、配列番号1に示されている核酸配列のフラグメントを提供する。一部の実施形態において、本開示は、配列番号10のうちの少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個、少なくとも1000個、少なくとも1100個、少なくとも1200個、少なくとも1250個、少なくとも1260、または少なくとも1265個連続するアミノ酸残基をコードする、配列番号1に示されている核酸配列のフラグメントを提供し、このMD5ポリペプチドフラグメントは、配列番号10の全長MD5マイクロジストロフィンポリペプチドに関連する1つまたは複数の活性(例えば、nNOS結合活性)を保持する。そのようなフラグメントは、当該分野において慣用的で周知である組換え技術によって取得され得る。一部の実施形態において、本開示は、配列番号1のうちの少なくとも900個、少なくとも1000個、少なくとも1100個、少なくとも1200個、少なくとも1300個、少なくとも1400個、少なくとも1500個、少なくとも1600個、少なくとも1700個、少なくとも1800個、少なくとも1900個、少なくとも2000個、少なくとも2100個、少なくとも2200個、少なくとも2300個、少なくとも2400個、少なくとも2500個、少なくとも2600個、少なくとも2700個、少なくとも2800個、少なくとも2900個、少なくとも3000個、少なくとも3100個、少なくとも3200個、少なくとも3300個、少なくとも3400個、少なくとも3500個、少なくとも3600個、少なくとも3700個、または少なくとも3800個連続するヌクレオチドである、配列番号1に示されている核酸配列のフラグメントを提供する。
【0059】
一部の実施形態において、本開示はまた、配列番号10のMD5マイクロジストロフィンポリペプチドのバリアントをコードする、合成核酸配列を提供する。一部の実施形態において、そのバリアントポリペプチドは、配列番号10と少なくとも80%(例えば、80%~100%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%)同一であり得る。一部の実施形態において、そのバリアントポリペプチドは、本質的に治療的である。一部の実施形態において、その治療的バリアントポリペプチドは、配列番号10と比較して少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも 32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39、または少なくとも40個異なる残基を有し得る。そのようなフラグメントは、当該分野において慣用的で周知である組換え技術によって取得され得る。一部の実施形態において、本開示は、配列番号10のMD5マイクロジストロフィンポリペプチドのバリアントをコードする、配列番号1の合成核酸バリアントを提供する。そのような配列番号1のバリアントは、配列番号1と比較して1個または複数個のヌクレオチド変化を含み得、配列番号10のMD5マイクロジストロフィンポリペプチドのバリアントをコードし得る。
【0060】
本明細書において記載される種々の局面において、本発明は、MD5マイクロジストロフィンポリペプチドのフラグメント、バリアント、または融合物を送達するための、rAAVの使用を企図する。例示的な実施形態において、そのフラグメント、バリアント、または融合タンパク質のMD5部分は、配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列の、対応するフラグメント、バリアント、またはMD5コード部分によってコードされる。
【0061】
(マイクロジストロフィンをコードする新規なベクターゲノム構築物)
別の局面において、本開示は、筋ジストロフィー(例えば、DMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはX連鎖性心筋症)の処置において有用な新規なベクターゲノム構築物を提供する。
【0062】
一部の実施形態において、そのベクターゲノム構築物は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸配列を含む。一部の実施形態において、そのベクターゲノム構築物は、(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントをさらに含む。例示的な実施形態において、そのベクターゲノム構築物は、(i)MD5マイクロジストロフィンタンパク質(配列番号10)、またはそのフラグメント、バリアント、もしくは融合タンパク質をコードする、核酸配列;ならびに(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを含む。
【0063】
一部の実施形態において、そのベクターゲノム構築物は、(i)配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一なマイクロジストロフィンコード配列;ならびに(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを含む。例示的な実施形態において、そのベクターゲノム構築物は、(i)配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一なマイクロジストロフィンコード配列;ならびに(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを含む。さらなる例示的な実施形態において、そのベクターゲノム構築物は、(i)配列番号1に示されているマイクロジストロフィンコード配列;ならびに(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを含む。
【0064】
一部の実施形態において、そのベクターゲノム構築物は、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含む。例示的な実施形態において、そのベクターゲノム構築物は、配列番号3と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。さらなる例示的な実施形態において、そのベクターゲノム構築物は、配列番号3に示されている配列を含むか、または配列番号3に示されている配列からなる。
【0065】
(組換えAAV(rAAV))
なお別の局面において、本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドと、このアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む、新規な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供し、このパッケージングされたベクターゲノムは、マイクロジストロフィンタンパク質をコードする核酸を含む。
【0066】
一部の実施形態において、そのrAAVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(i)配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一なマイクロジストロフィンコード配列を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを必要に応じて含む。例示的な実施形態において、そのrAAVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(i)配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一なマイクロジストロフィンコード配列を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを必要に応じて含む。さらなる例示的な実施形態において、そのrAAVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(i)配列番号1に示されているマイクロジストロフィンコード配列を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを必要に応じて含む。
【0067】
一部の実施形態において、そのrAAVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含む。例示的な実施形態において、そのrAAVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。さらなる例示的な実施形態において、そのrAAVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3に示されている配列を含むか、または配列番号3に示されている配列からなる。
【0068】
(逆位末端反復配列(ITR))
一部の実施形態において、そのrAAVは、AAV ITR配列を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含み、このAAV ITR配列は、AAVおよびアデノウイルスのヘルパー機能がトランスで提供された場合に、ベクターDNA複製起点およびこのベクターゲノムのパッケージングシグナルの両方として機能する。さらに、そのITRは、ラージRepタンパク質による一本鎖ヌクレオチド内(endonucleatic)ニック形成の標的として機能し、個々のゲノムを複製中間体から分離する。
【0069】
一部の実施形態において、その5’-ITRはAAV2に由来する。一部の実施形態において、その5’-ITRは、(プラス/プラス鎖方向にある)配列番号4を含むか、または(プラス/プラス鎖方向にある)配列番号4からなる。他の実施形態において、その5’-ITRは非AAV2供給源に由来する。
【0070】
一部の実施形態において、その3’-ITRはAAV2に由来する。一部の実施形態において、その3’-ITRは、(プラス/マイナス鎖方向にある)配列番号4を含むか、または(プラス/マイナス鎖方向にある)配列番号4からなり、この(プラス/マイナス鎖方向にある)配列番号4は、プラス/プラス鎖方向にある配列番号5に対応する。他の実施形態において、その3’-ITRは非AAV2供給源に由来する。
【0071】
一部の実施形態において、その5’-ITRおよび3’-ITRの両方はAAV2に由来する。他の実施形態において、その5’-ITRおよび3’-ITRは両方とも非AAV2供給源に由来する。
【0072】
(筋特異的制御エレメント)
一部の実施形態において、そのrAAVは、マイクロジストロフィン発現を駆動および/または調節するのを補助する筋特異的制御エレメントを含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。例示的な実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、5’-ITR配列と、マイクロジストロフィンタンパク質コード配列との間に位置する。一部の実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、イントロン配列の上流に位置する。一部の実施形態において、その筋特異的制御エレメントはプロモーターである。一部の実施形態において、その筋特異的制御エレメントはエンハンサーである。一部の実施形態において、その筋特異的制御エレメントはプロモーター/エンハンサーである。
【0073】
一部の実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、CK8プロモーター、CK7プロモーター、CK9プロモーター、筋特異的クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、切断型MCK(tMCK)、ミオシン重鎖(MHC)、ハイブリッドα-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCK(MHCK7)エンハンサー-プロモーター、ヒト骨格筋アクチン(skeletal actin)遺伝子エレメント、心筋アクチン(cardiac actin)遺伝子エレメント、筋細胞特異的エンハンサー結合因子mef、C5-12、マウスクレアチンキナーゼエンハンサーエレメント、骨格筋速筋型(skeletal fast-twitch)トロポニンc遺伝子エレメント、遅筋型・心筋型(slow-twitch cardiac)トロポニンc遺伝子エレメント、遅筋型(slow-twitch)トロポニンi遺伝子エレメント、低酸素誘導性核因子(例えば、HIF-1α、HIF-1β、HIF-2α、HIF-2β、HIF-3α、およびHIF-3β)、ステロイド誘導性エレメント、ならびにグルココルチコイド応答エレメント(gre)から選択される。
【0074】
例示的な実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、配列番号6に示されている配列を含むかまたは配列番号6に示されている配列からなる、CK8プロモーターである。一部の実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、配列番号6と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含む。
【0075】
別の実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、配列番号7に示されている配列を含むかまたは配列番号7に示されている配列からなる、ハイブリッドα-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCK(MHCK7)エンハンサー-プロモーターである。一部の実施形態において、その筋特異的制御エレメントは、配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含む。
【0076】
(イントロン)
一部の実施形態において、そのrAAVは、1つまたは複数のイントロン配列を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。種々のイントロンが当該分野において公知である。イントロンは、哺乳動物宿主細胞におけるRNA転写物のプロセシングを促進し得、目的のタンパク質(例えば、マイクロジストロフィン)の発現を増加し得、かつ/またはAAV粒子中へのベクターのパッケージングを最適化し得る。一部の実施形態において、そのrAAVは、合成イントロン配列を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。一部の実施形態において、そのrAAVは、天然に存在するイントロン配列を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。
【0077】
一部の実施形態において、そのイントロンは、プロモーターおよび/またはエンハンサー配列と、マイクロジストロフィンタンパク質コード配列との間に位置する。一部の実施形態において、そのイントロンは、マイクロジストロフィンタンパク質コード配列の上流に位置する。
【0078】
一部の実施形態において、そのイントロンは、SV40スモールTイントロン、ウサギヘモグロビンサブユニットβ(rHBB)イントロン、ヒトβ-グロビン/IgGキメライントロン、ヒトβグロビンIVS2イントロン、およびhFIXイントロンから選択される。他の実施形態において、真核生物翻訳開始因子2サブユニット1(EIF2S1)、I型コラーゲンα2鎖(COL1A2)、酸性でシステインに富む分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine)(SPARC)、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)、エノラーゼ1(ENO1)、ピルビン酸キナーゼ(PKM)、フルクトース二リン酸アルドラーゼ(aldolase fructose-bisphosphate)A(ALDOA)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)βポリペプチド2様1(GNB2L1)、リボソームタンパク質S3(RPS3)、GNAS複合遺伝子座(GNAS)、フィラミンA(FLNA)、トランスフェリンレセプター(TFRC)、ポリA結合タンパク質細胞質1(PABPC1)、ユビキチン様修飾因子活性化酵素1(UBA1)、カルネキシン(CANX)、および乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)から選択されるタンパク質をコードする遺伝子に由来するイントロン配列が、使用され得る。
【0079】
(ポリアデニル化シグナル)
一部の実施形態において、そのrAAVは、ポリアデニル化シグナル配列を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。種々のポリアデニル化シグナル配列が当該分野において公知である。ポリアデニル化シグナル配列は、転写の有効な終結を提供することおよび転写されたmRNAを安定化することを補助する。一部の実施形態において、そのrAAVは、合成ポリアデニル化シグナル配列を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。一部の実施形態において、そのrAAVは、天然に存在するポリアデニル化シグナル配列を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。
【0080】
一部の実施形態において、そのポリアデニル化シグナル配列は、マイクロジストロフィンタンパク質コード配列と、3’-ITRとの間に位置する。一部の実施形態において、そのポリアデニル化シグナル配列は、マイクロジストロフィンタンパク質コード配列のすぐ下流に位置する。
【0081】
一部の実施形態において、そのポリアデニル化シグナル配列は、合成ポリアデニル化シグナル配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列、およびウサギβグロビンポリアデニル化シグナル配列から選択され得る。
【0082】
例示的な実施形態において、そのrAAVは、合成ポリアデニル化シグナル配列を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。一実施形態において、その合成ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号9に示されている配列を含むか、または配列番号9に示されている配列からなる。一部の実施形態において、そのrAAVは、配列番号9と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含むポリアデニル化シグナル配列を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。
【0083】
(rAAVカプシド)
本明細書において記載される種々の実施形態において、そのrAAVはAAVカプシドを含む。そのAAVカプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、rh74、hu37のAAV(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVrh74、AAVhu37)、ならびにヒトおよび非ヒト霊長類の組織から単離された天然に存在する100種を超えるバリアントのうちのいずれか1種に由来し得る。例えば、Choiら、2005、Curr Gene Ther.、5:299~310、2005およびGaoら、2005、Curr Gene Ther.、5:285~297を参照のこと。
【0084】
特定の例示的な実施形態において、本発明にしたがって投与されるrAAVはAAVhu37カプシドを含む。そのAAVhu37カプシドは、複数のAAVhu37 vpタンパク質から構成された、自己会合したAAVカプシドである。そのAAVhu37 vpタンパク質(vp1、vp2、およびvp3)は、選択的mRNAスプライスバリアントとして典型的には発現される。そのAAVhu37 vp1アミノ酸配列は、配列番号12(GenBank Accession:AAS99285.1)に示されている。一部の実施形態において、配列番号12のAAVhu37 vp1アミノ酸配列は、配列番号11、またはその配列番号11と少なくとも95%(例えば、95%~100%、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一な配列によって、コードされる。
【0085】
一部の実施形態において、本発明にしたがって投与されるrAAVは、配列番号12と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一なvp1アミノ酸配列を含む、AAVカプシドを含み得る。一部の実施形態において、本発明にしたがって投与されるrAAVは、配列番号12のvp1アミノ酸配列を含む、カプシドを含む。
【0086】
一部の実施形態において、本発明にしたがって投与されるrAAVは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、またはrh74のvp1アミノ酸配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一なvp1アミノ酸配列を含む、AAVカプシドを含み得る。
【0087】
1つまたは複数の有益な治療特性(例えば、改善した選択組織標的化、向上した免疫応答回避能力、減少した中和抗体刺激など)を保有するように操作されたバリアントAAVカプシドもまた、本発明の範囲内に含まれる。そのような操作されたバリアントカプシドの非限定的な例が米国特許第9,506,083号、同第9,585,971号、同第9,587,282号、同第9,611,302号、同第9,725,485号、同第9,856,539号、同第9,909,142号、同第9,920,097号、同第10,011,640号、同第10,081,659号、同第10,179,176号、同第10,202,657号、同第10,214,566号、同第10,214,785号、同第10,266,845号、同第10,294,281号、同第10,301,648号、同第10,385,320号、および同第10,392,632号、ならびにPCT公開番号WO/2017/165859、同WO/2018/022905、同WO/2018/156654、同WO/2018/222503、および同WO/2018/226602に記載されており、それらの開示は、参照により本明細書中に援用される。
【0088】
一部の実施形態において、AAVバリアントカプシドは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、rh10、rh74、またはhu37の天然に存在するAAVカプシドと比較して少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39、もしくは少なくとも40個異なる残基を有し得る。
【0089】
上記のカプシドのほかに、未だに発見されていないAAV、またはそれに基づく組換えAAVが、AAVカプシドの供給源として使用され得る。
【0090】
さらに、一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、上記のAAVカプシドタンパク質のうちの2種、または3種、または4種、またはそれよりも多くに由来するドメインを含む、キメラであり得る。一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、2種もしくは3種の異なるAAVまたは組換えAAVに由来する、VplモノマーとVp2モノマーとVp3モノマーとのモザイクである。一部の実施形態において、rAAV組成物は、上記のカプシドのうちの1種よりも多くを含む。
【0091】
(組換え核酸分子を含む宿主細胞)
なお別の局面において、本明細書において開示されている組換え核酸分子、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)、またはrAAVを含む、宿主細胞が、本明細書において提供される。特定の実施形態において、その宿主細胞は、AAVの増殖のために適切であり得る。
【0092】
一実施形態において、配列番号1に示されている組換え核酸分子を含む宿主細胞が、本明細書において提供される。別の実施形態において、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な組換え核酸分子を含む宿主細胞が、本明細書において提供される。
【0093】
一実施形態において、配列番号3に示されている組換え核酸分子を含む宿主細胞が、本明細書において提供される。別の実施形態において、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な組換え核酸分子を含む宿主細胞が、本明細書において提供される。
【0094】
広範な範囲の宿主細胞(例えば、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞など)が、使用され得る。一部の実施形態において、その宿主細胞は、組換えAAV(rAAV)の産生のために適切な細胞(または細胞株)(例えば、HeLa細胞、Cos-7細胞、HEK293細胞、A549細胞、BHK細胞、Vero細胞、RD細胞、HT-1080細胞、ARPE-19細胞、またはMRC-5細胞)であり得る。例示的な実施形態において、その宿主細胞はHeLa細胞である。一部の実施形態において、その宿主細胞は、1つまたは複数の内在性遺伝子を不活化するように操作されたHeLa細胞である。一部の実施形態において、その宿主細胞は、PCT公開番号WO/2020/210507において記載されている1つまたは複数の内在性遺伝子(例えば、ATP5EP2、LINC00319、CYP3A7、ABCA10、NOG、RGMA、SPANXN3、PGA5、MYRIP、KCNN2、およびNALCN-AS1)を不活化するように操作されたHeLa細胞である。例示的な実施形態において、その内在性遺伝子は、KCNN2(カルシウム活性化カリウムチャネルサブファミリーNメンバー2)およびRGMA(反発性ガイダンス分子(Repulsive Guidance Molecule)BMPコレセプターA)から選択される。
【0095】
その組換え核酸分子またはベクターは、当該分野において公知である任意の適切な方法を使用して、宿主細胞培養物に送達され得る。一部の実施形態において、その組換え核酸分子またはベクターがそれ自体のゲノム中に挿入された安定な宿主細胞株が、作製される。一部の実施形態において、安定な宿主細胞株が作製され、それは、本明細書において記載されているrAAVベクターを含む。宿主培養物へのそのrAAVベクターのトランスフェクション後に、宿主ゲノム中へのそのrAAVの組込みが、種々の方法(例えば、抗生物質選択、蛍光活性化セルソーティング、サザンブロット、PCRベースの検出、および蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)によって、アッセイされ得る。
【0096】
(遺伝子治療のための組換えAAV)
なお別の局面において、本開示は、筋ジストロフィーの処置における遺伝子治療のための薬剤として有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供し、このrAAVは、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む。一実施形態において、その筋ジストロフィーは、ジストロフィン中の変異によって引き起こされている。一部の実施形態において、その筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、およびX連鎖性拡張型心筋症から選択される。
【0097】
一部の実施形態において、そのrAAVは、5’から3’に向かう順序で作動可能に連結された成分として(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)MD5マイクロジストロフィンタンパク質の部分的コード配列または完全コード配列;(e)ポリアデニル化シグナル配列;および(f)3’-逆位末端反復配列(ITR)を含む、パッケージングされたベクターゲノムを含む。
【0098】
一部の実施形態において、そのMD5マイクロジストロフィンタンパク質コード配列は、配列番号1、またはその配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、もしくは少なくとも99.9%同一な配列を含む。
【0099】
一部の実施形態において、そのパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3、またはその配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、もしくは少なくとも99.9%同一な配列を含む。
【0100】
一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、血清型8、血清型9、rh74、およびhu37のAAVから選択される。例示的な実施形態において、そのAAVカプシドはhu37(AAVhu37)カプシドである。
【0101】
一部の例示的な実施形態において、そのrAAVは、AAVhu37カプシドと、このAAVhu37カプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、5’から3’に向かう順序で作動可能に連結された成分として、(a)AAV2 5’-ITR;(b)CK8プロモーター;(c)イントロン;(d)配列番号1に示されている配列を含むヒトマイクロジストロフィンコード配列;(e)配列番号9に示されている配列を含む合成ポリアデニル化シグナル配列;および(f)AAV2 3’-ITRを含む。
【0102】
MD5マイクロジストロフィンタンパク質の発現のための例示的なパッケージングされたベクターゲノム構築物を示す図解が図1に提示されており、これは、5’から3’に向かう順序で、5’-ITR、CK8プロモーター、イントロン、MD5マイクロジストロフィンタンパク質コード配列、合成ポリアデニル化シグナル配列、および3’-ITRを示す。配列番号3(4,784bp)の構成が図1に示されており、この配列番号3は、ヒトマイクロジストロフィンタンパク質(MD5)をコードする配列番号1(3,810bp)に示されている合成核酸を含む。
【0103】
(医薬組成物)
なお別の局面において、本開示は、本明細書において開示されている合成核酸配列またはrAAVを含む、医薬組成物を含む。一部の実施形態において、その医薬組成物は、合成核酸と、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む。一部の実施形態において、その医薬組成物は、rAAVと、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む。
【0104】
特定の例示的な実施形態において、本開示は、本発明のrAAV(例えば、マイクロジストロフィンの送達のためのrAVV)と、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、本発明のrAVV(例えば、マイクロジストロフィンの送達のためのrAVV)を含む医薬組成物は、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、または髄腔内投与のために製剤化されている。例示的な実施形態において、そのrAAVを含む医薬組成物は、静脈内投与または筋肉内投与のために製剤化されている。
【0105】
一部の実施形態において、本発明のrAVV(例えば、マイクロジストロフィンの送達のためのrAVV)を含む医薬組成物は、局所投与または全身投与のために製剤化され得る。例えば、全身投与は、身体全体に影響を与えるように循環器系に投与される。全身投与としては、経腸投与(例えば、胃腸管を通じての吸収)、および注射を通じてかまたは注入を通じてかまたは移植を通じての非経口投与が挙げられる。
【0106】
一部の実施形態において、そのrAVVは、ヒト対象における注入のために適切な緩衝液/キャリア中に製剤化される。その緩衝液/キャリアは、そのrAVVが注入チューブに固着するのを防ぐがインビボでそのrAVV結合活性に干渉しない、成分を含むべきである。種々の適切な溶液としては、以下のうちの1つまたは複数が挙げられ得る:緩衝化生理食塩水、界面活性剤、および約100mM塩化ナトリウム(NaCl)~約250mM塩化ナトリウムと等しいイオン強度に調整された生理的に適合性の塩もしくは塩混合物、または等しいイオン濃度に調整された生理的に適合性の塩。そのpHは、6.5~8.5、または7~8.5、または7.5~8の範囲にあり得る。適切な界面活性剤または界面活性剤の組合せは、ポロクサマー(すなわち、2つのポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))親水鎖によって両側を挟まれた中央のポリオキシプロピレン10(ポリ(プロピレンオキシド))疏水鎖から構成された非イオン性トリプロックコポリマー)、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(登録商標)(ポリオキシカプリル酸グリセリル(Polyoxy capryllic glyceride))、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(登録商標)(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノールおよびポリエチレングリコールから選択され得る。
【0107】
例示的な実施形態において、そのrAVVは、NaCl(例えば、200mM NaCl)とMgCl(例えば、1mM MgCl)とTris(例えば、20mM Tris) pH 8.0とポロクサマー188(例えば、0.005%ポロクサマー188または0.01%ポロクサマー188)とを含む溶液中に、製剤化される。
【0108】
(筋ジストロフィーを処置する方法)
なお別の局面において、本開示は、ヒト対象における筋ジストロフィーを処置する方法を提供し、この方法は、このヒト対象に、治療有効量の少なくとも1種の本明細書において開示されている合成核酸配列を投与する工程を含む。
【0109】
なお別の局面において、本開示は、ヒト対象における筋ジストロフィーを処置する方法を提供し、この方法は、このヒト対象に、治療有効量の少なくとも本明細書において開示されているrAVVを投与する工程を含む。
【0110】
一部の実施形態において、その筋ジストロフィーは、ジストロフィン中の変異によって引き起こされている。一部の実施形態において、その筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、およびX連鎖性拡張型心筋症から選択される。
【0111】
一実施形態において、本開示は、筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法を提供し、この方法は、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む、rAVVを投与する工程を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(i)配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一なマイクロジストロフィンコード配列を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを必要に応じて含む。例示的な実施形態において、そのrAVVは、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(i)配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一なマイクロジストロフィンコード配列を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを必要に応じて含む。さらなる例示的な実施形態において、そのrAVVは、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(i)配列番号1に示されているマイクロジストロフィンコード配列を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを必要に応じて含む。一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、血清型8、血清型9、rh74、およびhu37のAAVから選択される。例示的な実施形態において、そのAAVカプシドはhu37(AAVhu37)カプシドである。
【0112】
別の実施形態において、本開示は、筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法を提供し、この方法は、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む、rAVVを投与する工程を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含む。例示的な実施形態において、そのrAVVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。さらなる例示的な実施形態において、そのrAVVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3に示されている配列を含むか、または配列番号3に示されている配列からなる。一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、血清型8、血清型9、rh74、およびhu37のAAVから選択される。例示的な実施形態において、そのAAVカプシドはhu37(AAVhu37)カプシドである。
【0113】
特定の実施形態において、本開示は、ジストロフィン中に少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト対象における筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法を提供し、この方法は。この対象に治療有効量の少なくとも1種の本明細書において開示されているrAVVを投与する工程を含む。
【0114】
DMDおよびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)の両方が、X染色体上のXp21領域にあるジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子としても知られている)(MIM 300377)(これは、2.4MbのゲノムDNAに広がる)中の変異によって引き起こされる。このジストロフィン遺伝子は、79個のエクソンを含む最大のヒト遺伝子であり、これらのエクソンは14Kb mRNAをコードし、これらのエクソンは、ジストロフィン結合糖タンパク質複合体(DGC)の形成にとって重要なジストロフィンと呼ばれる427キロダルトン(kDa)膜タンパク質を生成する。ジストロフィン中の病原性変異の非限定的なリストが、Tuffery-Giruadら、2009、Hum Mutat、30(6):934~45、Takeshimaら、2010、J Hum Gen、55:379~88、Bladenら、2015、Hum Mutat、36(4):395~402、およびTREAT-NMD DMD Global Databaseに記載されている。
【0115】
特定の実施形態において、本開示は、ジストロフィン中に少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト対象における筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法を提供し、この方法は、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む、rAVVを投与する工程を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(i)配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一なマイクロジストロフィンコード配列を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを必要に応じて含む。例示的な実施形態において、そのrAVVは、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(i)配列番号1と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一なマイクロジストロフィンコード配列を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを必要に応じて含む。さらなる例示的な実施形態において、そのrAVVは、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(i)配列番号1に示されているマイクロジストロフィンコード配列を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、(ii)(a)5’-逆位末端反復配列(ITR);(b)筋特異的制御エレメント;(c)イントロン;(d)ポリアデニル化シグナル配列;および(e)3’-逆位末端反復配列(ITR)から選択される、1つまたは複数の追加的配列エレメントを必要に応じて含む。一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、血清型8、血清型9、rh74、およびhu37のAAVから選択される。例示的な実施形態において、そのAAVカプシドはhu37(AAVhu37)カプシドである。
【0116】
特定の実施形態において、本開示は、ジストロフィン中に少なくとも1つの変異を有すると診断されたヒト対象における筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法を提供し、この方法は、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む、rAVVを投与する工程を含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、またはそれよりも多く同一な配列を含む。例示的な実施形態において、そのrAVVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み。このパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3と少なくとも99%(例えば、99%~100%)同一な配列を含む。さらなる例示的な実施形態において、そのrAVVは、AAVカプシドと、パッケージングされたベクターゲノムとを含み、このパッケージングされたベクターゲノムは、配列番号3に示されている配列を含むか、または配列番号3に示されている配列からなる。一部の実施形態において、そのAAVカプシドは、血清型8、血清型9、rh74、およびhu37のAAVから選択される。例示的な実施形態において、そのAAVカプシドはhu37(AAVhu37)カプシドである。
【0117】
任意の適切な方法または経路が、本明細書において記載されている合成核酸、rAVV、合成核酸含有医薬組成物、またはrAVV含有医薬組成物を投与するために、使用され得る。
【0118】
その医薬組成物がrAVVを含む特定の実施形態において、その医薬組成物は、種々の異なる経路を経て投与され得、それらの経路としては、静脈内経路、皮下経路、筋肉内経路、皮内経路、腹腔内経路、および髄腔内経路が挙げられるが、これらに限定はされない。例示的な実施形態において、本発明のrAVVを含む医薬組成物は、静脈内投与または筋肉内投与される。本明細書において記載されている使用のいずれかにおいて、本発明のrAVVを含む医薬組成物は、局所投与または全身投与され得る。一部の実施形態において、本発明のrAVVを含む医薬組成物は、注射、注入、または移植によって投与され得る。
【0119】
投与される特定の1回の投与量は、各患者にとって均一な1回の投与量、例えば、患者1人当たり1.0×1012ゲノムコピー(GC)~1.0×1016ゲノムコピー(GC)のウイルスであり得る。あるいは、患者の1回の投与量は、その患者のおよその体重または表面積に適合され得る。適切な投与量を決定することにおける他の要因としては、処置または予防されるべき疾患もしくは状態、その疾患の重症度、投与経路、ならびにその患者の年齢、その患者の性別およびその患者の医学的状態が挙げられ得る。処置のために適切な投与量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、特に本明細書において開示されている投与量情報およびアッセイを考慮して、当業者によって慣用的に行われる。その投与量はまた、適切な用量反応データと組み合わせて使用される、投与量を決定するための公知のアッセイの使用を通じて決定され得る。個別の患者の投与量はまた、その疾患の進行がモニターされるにつれて調整され得る。
【0120】
一部の実施形態において、そのrAVVは、qPCRまたはデジタルドロップレット(ddPCR)によって測定された場合に、1回の投与量が、例えば、約1.0×1012ゲノムコピー/(患者の体重1kg)(GC/kg)~約1×1016GC/kg、約1×1013ゲノムコピー/(患者の体重1kg)(GC/kg)~約1×1015GC/kg、または約5×1013~約5×1014GC/kgで投与される。一部の実施形態において、そのrAVVは、1回の投与量が1×1013GC/kgまたは約1×1013GC/kg、1.5×1013GC/kgまたは約1.5×1013GC/kg、2×1013GC/kgまたは約2×1013GC/kg、2.5×1013GC/kgまたは約2.5×1013GC/kg、3×1013GC/kgまたは約3×1013GC/kg、3.5×1013GC/kgまたは約3.5×1013GC/kg、4×1013GC/kgまたは約4×1013GC/kg、4.5×1013GC/kgまたは約4.5×1013GC/kg、5×1013GC/kgまたは約5×1013GC/kg、5.5×1013GC/kgまたは約5.5×1013GC/kg、6×1013GC/kgまたは約6×1013GC/kg、6.5×1013GC/kgまたは約6.5×1013GC/kg、7×1013GC/kgまたは約7×1013GC/kg、7.5×1013GC/kgまたは約7.5×1013GC/kg、8×1013GC/kgまたは約8×1013GC/kg、8.5×1013GC/kgまたは約8.5×1013GC/kg、9×1013GC/kgまたは約9×1013GC/kg、9.5×1013GC/kgまたは約9.5×1013GC/kg、1×1014GC/kgまたは約1×1014GC/kg、1.5×1014GC/kgまたは約1.5×1014GC/kg、2×1014GC/kgまたは約2×1014GC/kg、2.5×1014GC/kgまたは約2.5×1014GC/kg、3×1014GC/kgまたは約3×1014GC/kg、3.5×1014GC/kgまたは約3.5×1014GC/kg、4×1014GC/kgまたは約4×1014GC/kg、4.5×1014GC/kgまたは約4.5×1014GC/kg、5×1014GC/kgまたは約5×1014GC/kg、5.5×1014GC/kgまたは約5.5×1014GC/kg、6×1014GC/kgまたは約6×1014GC/kg、6.5×1014GC/kgまたは約6.5×1014GC/kg、7×1014GC/kgまたは約7×1014GC/kg、7.5×1014GC/kgまたは約7.5×1014GC/kg、8×1014GC/kgまたは約8×1014GC/kg、8.5×1014GC/kgまたは約8.5×1014GC/kg、9×1014GC/kgまたは約9×1014GC/kg、9.5×1014GC/kgまたは約9.5×1014GC/kg、あるいは1×1015GC/kgまたは約1×1015GC/kgで、投与される。そのrAVVは、望まれる治療結果のために必要な場合に、単回投与、または複数回投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回もしくはそれよりも多い投与)で投与され得る。
【0121】
一部の実施形態において、本発明にしたがう筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法は、本明細書において記載されているrAVVの投与の前に、IgG分解性プロテアーゼの投与をさらに含み得る。したがって、本開示は、筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法を提供し、この方法は、IgG分解性プロテアーゼを先に投与し、その後、AAVカプシドと、このAAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含む、rAVVを投与する工程を含み、このベクターゲノムは、ヒトマイクロジストロフィンタンパク質コード配列を含む。
【0122】
一部の実施形態において、本発明にしたがう筋ジストロフィー(例えば、DMD)を処置する方法は、IgG分解性プロテアーゼを投与済みのヒト対象に対して実施される。
【0123】
本発明において使用され得るプロテアーゼの例としては、例えば、WO/2020/016318および/またはWO/2020/159970において記載されているプロテアーゼ、(例えば、Streptococcus pyogenes、Streptococcus equi、Mycoplasma canis、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pseudoporcinus、もしくはPseudomonas putidaに由来するシステインプロテアーゼが挙げられる)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0124】
特定の実施形態において、そのIgG分解性プロテアーゼは、Streptococcus pyogenesに由来するIdeS(配列番号13)、または配列番号13と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一なプロテアーゼである。一部の実施形態において、そのプロテアーゼは、配列番号13の操作されたバリアントである。操作されたIdeSプロテアーゼの例が、WO/2020/016318ならびに米国特許出願公開第20180023070号および同第20180037962号において記載されている。一部の実施形態において、その操作されたIdeSバリアントは、配列番号13と比較して1個、2個、3個、4個、5個、またはそれよりも多くのアミノ酸改変を有し得る。
【0125】
特定の実施形態において、そのIgG分解性プロテアーゼは、Streptococcus equiに由来するIdeZ(配列番号14)、または配列番号14と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一なプロテアーゼである。一部の実施形態において、そのプロテアーゼは、配列番号14の操作されたバリアントである。操作されたIdeZプロテアーゼの例が、WO/2020/016318に記載されている。一部の実施形態において、その操作されたIdeZバリアントは、配列番号14と比較して1個、2個、3個、4個、5個、またはそれよりも多くのアミノ酸改変を有し得る。
【0126】
本発明において使用され得る他のプロテアーゼとしては、例えば、WO/2017/134274において記載されている、Streptococcus suis、Streptococcus porcinus、およびStreptococcus equiに由来するIgdE酵素が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0127】
一部の実施形態において、そのIgG分解性プロテアーゼは、リポソーム、ナノ粒子、脂質ナノ粒子(LNP)、ポリマー、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ミセル、もしくは細胞外小胞中に封入され得るか、またはリポソーム、ナノ粒子、脂質ナノ粒子(LNP)、ポリマー、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ミセル、もしくは細胞外小胞と複合体化され得る。
【0128】
本明細書全体にわたって、組成物が特定の成分を有するか、含有するか、もしくは含むと記載される場合、またはプロセスおよび方法が特定の工程を有するか、含有するか、もしくは含むと記載される場合、さらに、記載された成分から本質的になる本発明の組成物、または記載された成分からなる本発明の組成物が存在すること、ならびに記載された処理工程から本質的になる本発明にしたがうプロセスおよび方法、または記載された処理工程からなる本発明にしたがうプロセスおよび方法が存在することが、企図される。
【0129】
本開示において、構成要素もしくは成分が、記載された構成要素もしくは成分のリストに含まれ、かつ/または記載された構成要素もしくは成分のリストから選択されると言われている場合、その構成要素もしくは成分が、記載された構成要素もしくは成分のうちのいずれか1つであり得るか、またはその構成要素もしくは成分が、記載された構成要素もしくは成分のうちの2つ以上からなる群より選択され得ることが、理解されるべきである。
【0130】
さらに、本明細書において記載されている組成物または方法の構成要素および/もしくは特徴は、本明細書において明示されているか暗示されているかに関係なく、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の方法で組み合わせられ得ることが、理解されるべきである。例えば、特定の化合物に言及がされる場合、その化合物は、そうではないことが文脈から理解されない限りは、本発明の組成物および/または本発明の方法の種々の実施形態において、使用され得る。換言すると、本開示において、明確で正確な開示が記載され描写されることを可能にする様式で実施形態が記載され示されているが、実施形態は、本教示および本発明から逸脱することなく、種々に組み合わされてもよく、または別々であってもよいことが、意図され、理解される。例えば、本明細書において記載され示されているすべての特徴は、本明細書において記載され示されている発明のすべての局面に適用可能であり得ることが、理解される。
【0131】
表現「のうちの少なくとも1つ」は、そうではないことがその文脈および使用から理解されない限りは、その表現の前に記載された目的語の各々を個別に含み、それらの記載された目的語のうちの2つ以上の種々の組合せを含むことが、理解されるべきである。3つ以上の記載された目的語と組み合わされた表現「および/または(および/もしくは)(および/あるいは)(ならびに/もしくは)(ならびに/または)(ならびに/あるいは)」は、そうではないことが文脈から理解されない限りは、同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0132】
用語「含む(含有する)(include)」、「含む(含有する)(includes)」、「含む(含有する)(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(含有する)(contain)」、「含む(含有する)(contains)」または「含む(含有する)(containing)」(これらの文法上の同等物を含む)の使用は、そうではないことが具体的に記載されるかまたは文脈から理解されない限りは、制限がなく非限定的である(例えば、記載されていない追加的な構成要素も工程も排除しない)として一般的には理解されるべきである。
【0133】
用語「約」の使用が量的値の前である場合、本発明は、そうではないことが具体的に記載されない限りは、その特定の量的値自体も含む。本明細書において使用される場合、用語「約」とは、そうではないことが示されることも推認されることもない限りは、その公称値から±10%の変動を指す。
【0134】
工程の順序またはある特定の動作を実施する順序は、本発明が作動可能なままである限りは重要ではないことが、理解されるべきである。さらに、2つ以上の工程または動作が、同時に実行され得る。
【0135】
本明細書におけるあらゆるすべての例または例示的な言葉(例えば、「例えば(など)(such as)」もしくは「含む(挙げられる)(including)」)の使用は、単に本発明をより良く示すことが意図されるに過ぎず、これらの使用は、特許請求されない限りは、本発明の範囲に対して制限を課さない。本明細書中のどの語も、特許請求されていないなんらかの構成要素が本発明の実施にとって必須であると示すとは、解釈されるべきではない。
【実施例
【0136】
(実施例)
ここに一般的に記載されている開示は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解される。以下の実施例は、本開示のある特定の局面および実施形態を単に例示することを目的として含まれているに過ぎず、いかなる方法でも本開示の範囲を限定することは意図されない。
【0137】
(実施例1)
本実施例の目的は、インビトロ系において、MD5マイクロジストロフィンの天然コード配列(配列番号8)のタンパク質発現と、MD5マイクロジストロフィンの合成コドン最適化コード配列(配列番号1)のタンパク質発現とを比較することである。
【0138】
本実施例において、C2C12マウス筋芽細胞を筋管へと3日間分化させ、その後、1.8×10ベクターゲノム/細胞のrAVVに感染させた。このrAVVは、AAVhu37カプシドと、このAAVhu37カプシド中にパッケージングされたベクターゲノムとを含み、このベクターゲノムは、MD5マイクロジストロフィンの天然コード配列(配列番号8)またはMD5マイクロジストロフィンの合成コドン最適化コード配列(配列番号1)のいずれかをコードした。細胞を感染の96時間後に収集し、細胞タンパク質を単離した。マイクロジストロフィンタンパク質発現レベルを、市販のヒトジストロフィン特異的抗体を使用して、Meso Scale Discovery(MSD)ELISAによって決定した。生のMSD ELISA読取り値を天然マイクロジストロフィン群の平均値に対して正規化し、倍数変化として表した。
【0139】
図2に示すとおり、マイクロジストロフィンの合成コドン最適化コード配列(配列番号1)は、マイクロジストロフィンの天然コード配列と比較して統計的に有意な(p<0.0001)、タンパク質発現のおよそ7倍への増加を示した(n=2)。コード配列の差のほかは、そのrAVVの他のすべての成分は同一であり、このことは、配列番号1の合成コドン最適化コード配列の使用がタンパク質発現において観察された改善の原因であったことを示唆した。
【0140】
(参照による援用)
本明細書において参照された特許文書および科学論文の各々の開示全体が、すべての目的のために参照により援用される。
【0141】
(均等物)
本開示は、本開示の趣旨からも必須の特徴からも逸脱することなく、他の特定の形態で実施され得る。したがって、上記の実施形態は、あらゆる点で、本明細書において記載されている開示を限定するのではなく例示すると考えられるべきである。別々の実施形態の種々の構成要素および種々の開示された方法の工程は、種々に組合せおよび置換して利用され得、そのようなすべての変化形は、本開示の形態であると考えられるべきである。したがって、本開示の範囲は、上記の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等な意味および範囲内にあるすべての変更は、特許請求の範囲内に含まれると意図される。
【0142】
(配列表)
【化1-1】
【化1-2】
【化2-1】
【化2-2】
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
【化4】
【化5】
【化6-1】
【化6-2】
【化7】
【化8-1】
【化8-2】
【化9】
【化10】
【化11-1】
【化11-2】
【化12】
【化13】
【化14】
図1
図2
【配列表】
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【国際調査報告】