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特表2024-531140遠隔プラズマ生成のための電力送達システムにおけるインピーダンス整合の方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】遠隔プラズマ生成のための電力送達システムにおけるインピーダンス整合の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H05H1/46 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507899
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022039149
(87)【国際公開番号】W WO2023022878
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】17/406,378
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505477121
【氏名又は名称】エムケイエス インストゥルメンツ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ポキドフ、イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】カマレヒ、モハンマド
(72)【発明者】
【氏名】トレンホルム、ケネス ビー.
(72)【発明者】
【氏名】テプリュク、フェディル ヴィクトロヴィチ
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB06
2G084CC14
2G084DD04
2G084DD42
2G084DD51
2G084DD53
2G084DD56
2G084HH23
2G084HH25
2G084HH32
2G084HH43
(57)【要約】
プラズマ生成システムが提供される。このシステムは、マイクロ波電力を生成するように構成された可変周波数マイクロ波生成器と、マイクロ波生成器からのマイクロ波電力を使用して(i)プラズマ点火プロセスでプラズマを発生させるために内部のプロセスガスを点火させ、(ii)定常状態プロセスでプラズマを維持するように構成された、プラズマアプリケータと、を含む。また、システムは、マイクロ波生成器とプラズマアプリケータとの間に接続された粗チューナを含む。粗チューナの少なくとも1つの物理パラメータは、マイクロ波生成器と、プラズマ点火プロセス中及び定常状態プロセス中の両方で生成されるプラズマとの間で粗インピーダンス整合を達成すべく設定されるように適応される。プラズマ点火プロセス及び定常状態プロセスの間に生成されるプラズマの負荷インピーダンスは、変動するように適応される。マイクロ波生成器は、粗チューナの設定された物理パラメータに合わせて動作周波数を調整するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ生成システムであって、
マイクロ波電力を生成するように構成された可変周波数マイクロ波生成器と、
マイクロ波生成器からのマイクロ波電力を使用して、(i)プラズマ点火プロセスでプラズマを発生させるために内部のプロセスガスを点火させ、(ii)定常状態プロセスでプラズマを維持するように構成された、プラズマアプリケータと、
マイクロ波生成器とプラズマアプリケータとの間に接続された粗チューナと
を備え、
粗チューナの少なくとも1つの物理パラメータは、マイクロ波生成器と、プラズマ点火プロセス中及び定常状態プロセス中の両方で生成されるプラズマとの間で粗インピーダンス整合を達成するように設定されるように適応され、
プラズマ点火プロセス及び定常状態プロセスの間に生成されるプラズマの負荷インピーダンスは、あるインピーダンス範囲にわたって変動するように適応され、
マイクロ波生成器は、(i)プラズマ点火プロセス中でのプロセスガスの点火、又は(ii)定常状態プロセスでのプラズマに送達されるマイクロ波電力の最大化のうち、少なくとも1つを達成するために、粗チューナの設定された物理パラメータに合わせて、動作周波数を調整するように構成される、プラズマ生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ生成システムにおいて、
粗チューナは、それらの間に同軸ケーブル接続なしに、プラズマアプリケータに直接隣接している、プラズマ生成システム。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマ生成システムにおいて、
粗チューナは、マイクロ波電力をマイクロ波生成器からプラズマアプリケータのマイクロ波キャビティに結合するための一体型結合要素を含む、プラズマ生成システム。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ生成システムにおいて、
マイクロ波生成器とプラズマアプリケータとの間に自動インピーダンス整合回路網は存在しない、プラズマ生成システム。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマ生成システムにおいて、
粗チューナは、少なくともスタブ及び結合アンテナを含む固定スタブチューナであり、
固定スタブチューナは、誘電体プラズマ管に近接して配置され、
固定スタブチューナの少なくとも1つの物理パラメータは、(i)スタブと誘電体プラズマ管の長手方向軸との間の距離、及び(ii)スタブの長さのうち1つを含む、プラズマ生成システム。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ生成システムにおいて、
スタブ長さは約1.21インチ(3.07cm)、距離は約2.96インチ(7.52cm)である、プラズマ生成システム。
【請求項7】
請求項5に記載のプラズマ生成システムにおいて、
スタブ長さ、又は距離のうち少なくとも1つは、粗インピーダンス整合を達成するように調整可能である、プラズマ生成システム。
【請求項8】
請求項5に記載のプラズマ生成システムにおいて、
固定スタブチューナは、4分の1波長固定スタブチューナである、プラズマ生成システム。
【請求項9】
請求項5に記載のプラズマ生成システムにおいて、
固定スタブは、環境へのマイクロ波放射を防止するために電気的に短絡される、プラズマ生成システム。
【請求項10】
請求項1に記載のプラズマ生成システムにおいて、
粗インピーダンス整合は、プラズマによって吸収される電力の最大値が可変周波数マイクロ波生成器の動作帯域内にあるように、プラズマの負荷インピーダンスをインピーダンス範囲にわたって修正することを含む、プラズマ生成システム。
【請求項11】
請求項1に記載のプラズマ生成システムは、更に、
マイクロ波生成器と粗チューナとの間に配置されたアイソレータを備える、プラズマ生成システム。
【請求項12】
プラズマアプリケータに接続された可変周波数マイクロ波生成器を含むシステム内でプラズマを生成する方法であって、
粗チューナがプラズマアプリケータに隣接して位置決めされるように、マイクロ波生成器とプラズマアプリケータとの間に粗チューナを配置することと、
粗チューナの1つ以上の物理的パラメータを、マイクロ波生成器と、プラズマ点火プロセス中及び定常状態プロセス中の両方でプラズマアプリケータによって生成されるプラズマとの間で粗インピーダンス整合を達成するように構成することであって、プラズマ点火及び定常状態プラズマ生成の間に生成されるプラズマの負荷インピーダンスは、あるインピーダンス範囲にわたって変動するように適応されることと、
プラズマアプリケータのプラズマ管内にプロセスガスを流すことと、マイクロ波生成器の周波数を初期周波数値に設定して、マイクロ波電力を発生させることと、
マイクロ波電力をプラズマアプリケータに結合して、その中のプロセスガスをイオン化することと、
粗チューナの1つ以上の物理パラメータを変更することなく、マイクロ波生成器の周波数を初期周波数に対して反復微調整することと、
を備え、各反復は、
プラズマ管内のプロセスガスが、調整された周波数に対応するマイクロ波電力でプラズマを発生させるために点火されたかを判定することと、
点火が検出された場合、マイクロ波生成器の周波数の微調整を中止することと
を含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法は、更に、
プロセスガス流が安定した後に、プラズマアプリケータのプロセス圧力を設定することを備える、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、
マイクロ波生成器の周波数の反復微調整は、周波数を、初期周波数から上限に達するまで、所定の幅で反復的に増大させることを含む、方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法において、
マイクロ波生成器の周波数の反復微調整は、周波数を、初期周波数から下限に達するまで、所定の幅で反復的に減少させることを含む、方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法は、更に、
プラズマに送達されるマイクロ波電力を、点火が検出された後に最大化することを備え、
マイクロ波電力を最大化することは、
マイクロ波生成器の周波数を第2の初期周波数値に設定して、マイクロ波電力を生成することと、
プラズマアプリケータにマイクロ波電力を結合して、その中のプラズマを維持することと、
粗チューナの1つ以上の物理的パラメータを変更することなく、マイクロ波生成器の周波数を、閾値周波数に達するまで、第2の初期周波数に対して反復的に調整することであって、各反復は、
プラズマに送達されるマイクロ波電力の値を計算すること、
マイクロ波電力の計算値及び対応する調整された周波数を記録すること、を含むことと、
記録されたマイクロ波電力の計算値の最大値を判定することと、
プラズマアプリケータ内のプラズマを定常状態に維持するために、マイクロ波生成器を、マイクロ波電力の最大計算値に対応する調整された周波数に設定することと
を備える、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
プラズマに送達されるマイクロ波電力の値を計算することは、
順方向電力値及び反射電力値を判定することと、
順方向電力値と反射電力値との間の差を判定して、プラズマに送達されるマイクロ波電力の値を計算することと
を備える、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法において、
マイクロ波生成器の周波数の反復微調整は、周波数を、第2の初期周波数から閾値周波数に達するまで、所定の幅で反復的に増大させることを含む、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法において、
マイクロ波生成器の周波数の反復微調整は、周波数を、第2の初期周波数から閾値周波数に達するまで、所定の幅で反復的に減少させることを含む、方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法において、
プラズマ管内でプラズマを発生させることと、点火後にプラズマに送達されるマイクロ波電力を最大化することは、粗チューナを調整することなく達成される、方法。
【請求項21】
請求項12に記載の方法において、
粗チューナは、それらの間に同軸ケーブル接続なしに、プラズマアプリケータに直接隣接している、方法。
【請求項22】
請求項12に記載の方法において、
粗チューナは、少なくともスタブ及び結合アンテナを含む固定スタブチューナであり、
固定スタブチューナは、誘電体プラズマ管に近接して配置され、
固定スタブチューナの少なくとも1つの物理パラメータは、(i)スタブと誘電体プラズマ管の長手方向軸との間の距離、及び(ii)スタブの長さのうち1つを含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
スタブ長さ、又は距離のうち少なくとも1つは、粗インピーダンス整合を達成するように調整可能される、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法は、更に、
環境へのマイクロ波放射を防止するために固定スタブを電気的に短絡することを備える、方法。
【請求項25】
請求項12に記載の方法は、更に、
マイクロ波生成器と粗チューナとの間にアイソレータを配置することによって、プラズマアプリケータからマイクロ波生成器への反射電力を最小限に抑えることを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、マイクロ波遠隔プラズマ源及びマイクロ波電力送達システムの分野に関する。より具体的には、本発明は、プラズマ源への電力結合を改善し、プラズマ源からの反射電力を低減するための、電力送達システムにおけるインピーダンス整合機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、マイクロ波プラズマアプリケータ102における遠隔プラズマ生成のために構成された、例示的な従来技術のマイクロ波電力送達システム100を示す。図示するとおり、システム100は、マイクロ波電力をプラズマアプリケータ102に結合してアプリケータ102のプラズマ管116内にプラズマを生成するためにプラズマアプリケータ102に接続された、可変周波数ソリッドステートマイクロ波電力生成器104を含む。電力生成器104とプラズマアプリケータ102の間の接続部にアイソレータ106を結合することができ、アイソレータ106は、プラズマアプリケータ102からの反射電力が生成器104にフィードバックし、潜在的に損傷を与えることを防止するように構成されている。加えて、アイソレータ106は、プラズマアプリケータ102におけるプラズマ負荷から電力生成器104に反射する電力量を測定するために方向性結合器(図示せず)を含むことができる。従来技術のシステム100では、導波管114上に実装された自動インピーダンス整合回路網108と電力検出器110との組み合わせもまた、電力生成器104とプラズマアプリケータ102との間に接続されており、(i)電力生成器104とプラズマアプリケータ102で生成されたプラズマ負荷との間の自動的なインピーダンス調整及び整合を可能にし、(ii)電力検出器110によって測定される、インピーダンス整合回路網108の上流の任意のマイクロ波反射を最小限に抑える。この負荷はプラズマアプリケータ102で生成されたプラズマを含み、これは、電力生成器104のそれとは数桁のオーダーで変動することができる。自動インピーダンス整合回路網108は、マサチューセッツ州アンドーバーに所在のMKS Instruments,Inc.によって製造されたSmartMatch(商標)回路網であることもできる。
【0003】
加えて、従来技術のシステム100は、様々な構成要素を相互接続するために複数の伝送ライン要素を含むことができる。これらの構成要素を相互接続するために、例えば約1キロワット(kW)以下などの低電力システムでは、通常、導波管の代わりに、図1に示す同軸ケーブル部分112a、112bなどの1本以上の同軸ケーブルが使用される。具体的には、同軸ケーブル部分112aは電力生成器104とインピーダンス整合回路網108との間の上流接続部として機能し、同軸ケーブル部分112bはインピーダンス整合回路網108とプラズマアプリケータ102との間の下流接続部として機能する。通常、各同軸ケーブル部分112は、約2.45GHzで約1kWの定格電力を有することができる7/8同軸ケーブルである。
【0004】
従来技術のシステム100では、電力生成器104からのマイクロ波電力が、プラズマアプリケータ102の内部で生成されたプラズマに効率的に結合されていない場合、その電力の一部が反射して電力生成器104に向かって戻る可能性が高い。図2図1の従来技術のマイクロ波電力送達システム100の、プラズマに結合されたマイクロ波電力の、約1キロワットの入力電力での周波数の関数としての一組のシミュレーション結果を示す。プラズマアプリケータ102内の負荷のプラズマインピーダンス又はプラズマ導電率は、プロセスガスのタイプ及び動作条件に応じて大きく変動し得るので、図2のシミュレーションでは、プラズマ導電率は3桁のオーダーで変動する。図示するとおり、約2.45GHzの中心周波数では、プラズマ導電率に応じて、プラズマ内で吸収される電力は約361Wから約726Wまで変動し、一方で生成器104によって送達される電力は約1kWである。このことは、約1kWの電力入力について、反射電力が約274Wから約639Wまで変動することを意味する。
【0005】
したがって、マイクロ波エネルギーのプラズマへの結合が最適でない場合には、上述したように、いくらかの電力がアプリケータ102から反射して生成器104に向かって戻ることがある。自動インピーダンス整合回路網108は、上流(すなわち、電力生成器104とインピーダンス整合回路網108の間)の電力反射を最小限に抑えることのみのために構成される。よって、自動インピーダンス整合回路網108は回路網108の下流側の全てを負荷とみなし、これには、アプリケータ102及びその内部のプラズマ、下流同軸ケーブル112b、並びに導波管114から同軸ケーブルへの移行部が含まれる。したがって、反射電力が上流に通過することを自動インピーダンス整合回路網108が防止するので、プラズマアプリケータ102から反射した電力のかなりの部分は、インピーダンス整合回路網108とプラズマアプリケータ102との間の下流同軸ケーブル112bにおいて吸収されるなど、下流で消散することを強いられる。反射したマイクロ波電力は、伝導損失及び誘電損失を介して、下流同軸ケーブル112b内で吸収することができる。伝導損失は、同軸ケーブル112bの内側導体及び外側導体における抵抗損失である。誘電損失は、内側導体と外側導体との間の適切な間隔を維持するように同軸ケーブル112bを構築するために使用される誘電材料における損失である。一般に、下流同軸ケーブル112b内などの、同軸ケーブル内の過剰な反射電力に起因して高電界が構築される可能性があり、ひいては過剰な熱消散及びその後のケーブル過熱を引き起こす可能性がある。上述したように、プラズマへのマイクロ波結合が不十分な場合、反射電力はかなり高く、数百ワットのオーダーになり得る。下流の7/8同軸ケーブル112bは、通常、そのような高い反射電力を消散するように構成されておらず、容易に過熱する可能性がある。
【0006】
従来技術のシステム100の別の欠点は、ソリッドステートマイクロ波生成器104が約2.4~約2.5GHzなどの周波数帯で動作可能であっても、インピーダンス整合回路網108の周波数制限に起因して、低電力遠隔プラズマ生成器システム100(例えば、1kWシステム)の動作周波数が、例えば2.45GHzに効果的に固定されることである。
【発明の概要】
【0007】
したがって、可変周波数ソリッドステートマイクロ波生成器とプラズマアプリケータとの間の電力結合を改善し、反射電力を低減することのできる、遠隔マイクロ波電力送達システムにおけるインピーダンス整合機構が必要とされている。具体的には、図1を参照して上述した電力送達システム100の同軸ケーブル112bなど、電力送達システム内の下流同軸ケーブルの過熱を防止するようにインピーダンス整合機構を設計することが望ましい。いくつかの実施形態では、そのような電力結合の改善及び反射電力の低減は、本発明において、(i)粗チューナ(例えば、4分の1波長固定スタブチューナ)と、(ii)ある周波数範囲内で動作周波数を変動させるように構成された可変周波数ソリッドステートマイクロ波生成器との組み合わせによって達成される。この組み合わせによって、広範囲の負荷インピーダンスにわたってインピーダンス整合を達成できるようになる。
【0008】
一態様では、プラズマ生成システムが提供される。このシステムは、マイクロ波電力を生成するように構成された可変周波数マイクロ波生成器と、マイクロ波生成器からのマイクロ波電力を使用して(i)プラズマ点火プロセスでプラズマを発生させるために内部のプロセスガスを点火させ、(ii)定常状態プロセスでプラズマを維持するように構成された、プラズマアプリケータと、を含む。システムはまた、マイクロ波生成器とプラズマアプリケータとの間に接続された粗チューナも含む。粗チューナの少なくとも1つの物理パラメータは、マイクロ波生成器と、プラズマ点火プロセス中及び定常状態プロセス中の両方で生成されるプラズマとの間で粗インピーダンス整合を達成するように設定されるように適応される。プラズマ点火プロセス及び定常状態プロセスの間に生成されるプラズマの負荷インピーダンスは、あるインピーダンス範囲にわたって変動するように適応される。マイクロ波生成器は、(i)プラズマ点火プロセス中の、プロセスガスの点火、又は(ii)定常状態プロセスでのプラズマに送達されるマイクロ波電力の最大化のうち、少なくとも1つを達成するために、粗チューナの設定された物理パラメータに合わせて動作周波数を調整するように構成される。
【0009】
別の態様では、プラズマアプリケータに接続された可変周波数マイクロ波生成器を含むシステム内でプラズマを生成する方法が提供される。この方法は、粗チューナがプラズマアプリケータに隣接して位置決めされるように、マイクロ波生成器とプラズマアプリケータとの間に粗チューナを配置することと、粗チューナの1つ以上の物理的パラメータを、マイクロ波生成器とプラズマ点火プロセス中及び定常状態プロセス中の両方で生成されるプラズマとの間で粗インピーダンス整合を達成するように構成することと、を含む。プラズマ点火及び定常状態プラズマ生成の間に生成されるプラズマの負荷インピーダンスは、あるインピーダンス範囲にわたって変動するように適応される。本方法は、プラズマアプリケータのプラズマ管内にプロセスガスを流すことと、マイクロ波生成器の周波数を初期周波数値に設定して、マイクロ波電力を発生させることと、マイクロ波電力をプラズマアプリケータに結合して、その中のプロセスガスをイオン化することと、粗チューナの1つ以上の物理パラメータを変更することなく、マイクロ波生成器の周波数を初期周波数に対して反復微調整することと、を更に含む。各反復は、プラズマ管内のプロセスガスが、調整された周波数に対応するマイクロ波電力でプラズマを発生させるために点火されたかを判定することと、点火が検出された場合、マイクロ波生成器の周波数の微調整を中止することとを含む。
【0010】
上記の態様のいずれも、以下の特徴のうち1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、粗チューナは、それらの間に同軸ケーブル接続なしに、プラズマアプリケータに直接隣接している。いくつかの実施形態では、粗チューナは、マイクロ波電力をマイクロ波生成器からプラズマアプリケータのマイクロ波キャビティに結合するための一体型結合要素を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、粗チューナは、少なくともスタブ及び結合アンテナを含む、固定スタブチューナである。固定スタブチューナは、誘電体プラズマ管に近接して配置される。固定スタブチューナの少なくとも1つの物理パラメータは、(i)スタブと誘電体プラズマ管の長手方向軸との間の距離、及び(ii)スタブの長さのうち1つを含む。いくつかの実施形態では、スタブ長さは約1.21インチ(3.07cm)、距離は約2.96インチ(7.52cm)である。いくつかの実施形態では、スタブ長さ、又は距離のうち少なくとも1つは、粗インピーダンス整合を達成するように調整可能である。いくつかの実施形態では、固定スタブチューナは、4分の1波長固定スタブチューナである。いくつかの実施形態では、固定スタブは、環境へのマイクロ波放射を防止するために電気的に短絡される。
【0012】
いくつかの実施形態では、粗インピーダンス整合は、プラズマによって吸収される電力の最大値が可変周波数マイクロ波生成器の動作帯域内にあるように、プラズマの負荷インピーダンスをインピーダンス範囲にわたって修正することを含む。いくつかの実施形態では、マイクロ波生成器とプラズマアプリケータとの間に自動インピーダンス整合回路網は存在しない。いくつかの実施形態では、プラズマアプリケータからマイクロ波生成器への反射電力を最小限に抑えるために、マイクロ波生成器と粗チューナとの間にアイソレータが位置している。
【0013】
いくつかの実施形態では、プロセスガス流が安定した後に、プラズマアプリケータのプロセス圧力が設定される。
いくつかの実施形態では、マイクロ波生成器の周波数の反復微調整は、周波数を、初期周波数から上限に達するまで所定の幅で反復的に増大させることを含む。いくつかの実施形態では、マイクロ波生成器の周波数の反復微調整は、周波数を、初期周波数から下限に達するまで所定の幅で反復的に減少させることを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、プラズマに送達されるマイクロ波電力は、点火が検出された後に最大化される。マイクロ波電力を最大化することは、マイクロ波生成器の周波数を第2の初期周波数値に設定して、マイクロ波電力を生成することと、プラズマアプリケータにマイクロ波電力を結合して、その中のプラズマを維持することと、粗チューナの1つ以上の物理的パラメータを変更することなく、マイクロ波生成器の周波数を、閾値周波数に達するまで、第2の初期周波数に対して反復的に調整することとを含む。各反復は、プラズマに送達されるマイクロ波電力の値を計算することと、マイクロ波電力の計算値及び対応する調整された周波数を記録することとを含む。マイクロ波電力を最大化することはまた、記録されたマイクロ波電力の計算値の最大値を判定することと、プラズマアプリケータ内のプラズマを定常状態に維持するために、マイクロ波生成器を、マイクロ波電力の最大計算値に対応する調整された周波数に設定することとを含む。いくつかの実施形態では、プラズマに送達されるマイクロ波電力の値を計算することは、順方向電力値及び反射電力値を判定することと、順方向電力値と反射電力値との間の差を判定して、プラズマに送達されるマイクロ波電力の値を計算することとを含む。いくつかの実施形態では、マイクロ波生成器の周波数の反復微調整は、周波数を、第2の初期周波数から閾値周波数に達するまで所定の幅で反復的に増大させることを含む。いくつかの実施形態では、マイクロ波生成器の周波数の反復微調整は、周波数を、第2の初期周波数から閾値周波数に達するまで所定の幅で反復的に減少させることを含む。いくつかの実施形態では、プラズマ管内でプラズマを発生させることと、点火後にプラズマに送達されるマイクロ波電力を最大化することは、マイクロ波生成器とプラズマの負荷との間のインピーダンス整合を調整することなく達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
上述した本発明の利点は、更なる利点と共に、以下の説明を添付の図面と併せて参照することによってより良く理解することができる。図面は必ずしも縮尺通りではなく、むしろ、概して本技術の原理を例証することに重点が置かれる。
図1】マイクロ波アプリケータによる遠隔プラズマ生成のために構成された例示的な従来技術のマイクロ波電力送達システムを示す図である。
図2図1の従来技術のマイクロ波電力送達システム100の、プラズマに結合されたマイクロ波電力の、約1キロワットの入力電力での周波数の関数としての一組のシミュレーション結果を示す図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態による、遠隔プラズマ生成のために構成された例示的な電力送達システムを示す図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態による、図3の電力送達システムの粗チューナの例示的な構成を示す図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態による、図3の電力送達システム内の図4の粗チューナの例示的な接続を示す図である。
図6】本発明のいくつかの実施形態による、図3の電力送達システムの粗チューナの別の例示的な構成を示す図である。
図7】本発明のいくつかの実施形態による、図4のスタブチューナを組み込んだ図3の電力送達システムのプラズマアプリケータについての、プラズマに吸収される電力の、約1kWの入力電力での例示的なシミュレーション結果を示す図である。
図8】本発明のいくつかの実施形態による、遠隔プラズマ生成のために構成された別の例示的な電力送達システムを示す。
図9】本発明のいくつかの実施形態による、図3又は図8の電力送達システムによるプラズマ点火プロセスにおいてプラズマを発生させるための例示的なプロセスを示す図である。
図10】本発明のいくつかの実施形態による、図3又は図8の電力送達システムによって定常状態プロセスにおいてプラズマを維持するための例示的な処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による、遠隔プラズマ生成のために構成された例示的な電力送達システム300を示す。図示するとおり、システム300は、可変周波数ソリッドステートマイクロ波生成器304からの遠隔マイクロ波電力を結合することによってプラズマ320が生成されるプラズマアプリケータ302を含む。プラズマアプリケータ302とマイクロ波生成器304との間の電気接続を形成するために、同軸ケーブル306(例えば、7/8同軸ケーブル)などの少なくとも1本の伝送ライン要素が使用される。いくつかの実施形態では、電力送達システム300は、約1キロワット(kW)以下で動作するものなどの、低電力システムである。
【0017】
いくつかの実施形態では、プラズマアプリケータ302は、プラズマ放電管308を含み、そこに結合されたマイクロ波エネルギーによって、その中で1種類以上のプロセスガスが励起されて、放電管308内にプラズマ320を生成する。プラズマアプリケータ306はまた、マイクロ波生成器304からのマイクロ波エネルギーをプラズマアプリケータ302のマイクロ波キャビティ312内へ結合するために、プラズマアプリケータ302の外側ハウジングに取り付けられた結合要素310を含む。いくつかの実施形態では、プラズマアプリケータ302は、プラズマ320が点火したときを検出するためのプラズマ検出器(図示せず)を含む。いくつかの実施形態では、プラズマアプリケータ302は、本出願の譲受人によって所有され、参照により全体が本明細書に組み込まれている米国特許第9,831,066号に記載のマイクロ波プラズマアプリケータと実質的に同様である。動作中、プラズマアプリケータ302は、マイクロ波生成器304からのマイクロ波電力を結合して、(i)プラズマ点火プロセスでプラズマ320を発生させるために、プラズマ放電管308内の1種類以上のプロセスガスに点火し、(ii)初期点火プロセスの後の定常状態プロセスで、プラズマ320を維持するように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、可変周波数ソリッドステートマイクロ波生成器304は1つ又はいくつかの産業科学医療用(Industrial, Scientific and Medical, ISM)周波数帯の中で動作するように構成され、それらの周波数帯には、限定はしないが、約2.4GHz~約2.5GHz、約902MHz~約928MHz、又は約5.725GHz~約5.875GHzが含まれる。マイクロ波生成器304は、マイクロ波生成器304の出力において順方向電力及び反射電力を測定するための方向性結合器(図示せず)を含むことができる。マイクロ波生成器304はまた、高い反射電力から電力増幅器を保護するために、生成器304の電力増幅器段の各々の出力に設置されるものなどの、1つ以上の内蔵アイソレータ(図示せず)を含むことができる。いくつかの実施形態では、マイクロ波生成器304は、本出願の譲受人によって所有され、参照により全体が本明細書に組み込まれている米国特許第9,595,930号に記載のマイクロ波生成器と実質的に同様である。
【0019】
いくつかの実施形態では、電力送達システム300内のマイクロ波生成器304とプラズマアプリケータ302との間に粗チューナ316が配置されている。マイクロ波アプリケータ302のすぐ上流に接続され、かつ、マイクロ波アプリケータ302の外側ハウジングに取り付けられた結合要素310と一体化しているなど、粗チューナ316は同軸ケーブル306に沿ってプラズマアプリケータ302の上流に隣接して配置され得る。代替の実施形態では、粗チューナ316は、プラズマアプリケータ302の上流に隣接した(例えば、直接隣接した/取り付けられた)独立型構成要素である。粗チューナ316は、それらの間に同軸ケーブル(又は任意の他の接続要素)なしに、プラズマアプリケータ302に接続することができる。粗チューナ316のタイプ及び位置は、プラズマアプリケータ302のマイクロ波キャビティ312からの電力反射を低減することによってシステム300内の1つ以上の接続要素の過熱を防止するように選択できる。いくつかの実施形態では、粗チューナ316は、図1の自動インピーダンス整合回路網108に置き換わるように構成され、それにより、プラズマ点火プロセス及び/又は定常状態プロセスの間にインピーダンス整合を達成するための調整が可能ないかなる自動インピーダンス整合回路網も、図3のシステム300に存在しなくなる。
【0020】
いくつかの実施形態では、システム300の粗チューナ316は、マイクロ波電力伝送及び通信システムにおいてインピーダンス整合を達成するための4分の1波長固定スタブ粗チューナである。固定スタブチューナを使用する利点には、プラズマへのマイクロ波電力の結合が改善することが含まれる。ところが、固定スタブチューナ(例えば、負荷インピーダンスが固定される)が使用される典型的な電力送達システムにおける負荷インピーダンスとは異なり、図3の遠隔マイクロ波プラズマシステム300におけるプラズマ負荷の負荷インピーダンスは、ガスの種類、圧力、及び送達電力に応じて数桁のオーダーで変動する。例えば、プラズマ320の負荷は、プラズマアプリケータ302がプラズマ点火プロセスを実行しているのか、あるいは定常状態プラズマ維持プロセスを実行しているのかに応じて大きく変動し得る。システム300では、変動した負荷とのインピーダンス整合を保証するために、固定スタブチューナ316の使用を介して粗インピーダンス整合を達成した後に、ソリッドステートマイクロ波生成器304の本来的な能力を更に利用して、ある周波数範囲(例えば約2.4GHz~約2.5GHz)内で動作周波数を調整して細かいインピーダンス整合を行うことができる。固定インピーダンス整合の後にインピーダンス微調整が続くこの方法は、初期プラズマ点火プロセス及び定常状態プラズマ維持プロセスの両方の間にシステム300によって使用できる。
【0021】
いくつかの実施形態では、4分の1波長固定スタブ粗チューナ316は、プラズマアプリケータ302の上流の伝送ライン要素内の反射電力及び定常波を最小限に抑えるように、マイクロ波キャビティ312のすぐ上流に位置決めされる。例えば、上述したように、固定スタブチューナ316は、図3に示すように、プラズマアプリケーション302の外側ハウジングに取り付けられた結合要素310と一体化することができる。
【0022】
図4は、本発明のいくつかの実施形態による、図3の電力送達システム300の粗チューナ316の例示的な構成400を示す。図示した粗チューナ400は、電力カップリングが一体化された4分の1波長固定スタブチューナである。いくつかの実施形態では、図4の4分の1波長固定スタブチューナ400は、1kW遠隔マイクロ波送達システムなどの、低電力送達システムに適合する。図4に示すように、固定スタブチューナ400は一般に、中心/内側導体402及び外側導体404を含む。中心導体402は、銅などの導電性材料で作製されている。中心導体402は、直径約0.276インチ(0.701cm)であることができる。中心導体402を収容するように構成されている導電性ハウジング(例えば、アルミニウムハウジング)に外側導体404を機械加工することができる。外側導体404は、約0.632インチ(1.61cm)の内径を有することができる。いくつかの実施形態では、これらの直径値は、スタブの同軸要素のインピーダンスが、固定スタブチューナ400に接続された伝送ライン(例えば同軸ケーブル)306の特性インピーダンスに整合する所定の値(例えば約50オーム)に維持されるように選択される。一般に、固定スタブチューナ400の内側導体及び外側導体の直径は、伝送ライン306の特性インピーダンスに整合するように適宜調整できる。
【0023】
図4に示すように、固定スタブチューナ400は、中心導体402によって形成された結合アンテナ416を含む第1の端部406と、伝送ライン306と接続するように構成された第2の端部408と、中心導体402の端部と接続している短い部分417を含む第3の端部410とを有するT字形であることができる。いくつかの実施形態では、第2の端部408は、7/8同軸ケーブル伝送ライン306と接続するように構成された7/16EIAコネクタを含む。一般に、固定スタブチューナ400は、空気を誘電体材料として7/8同軸伝送ライン306のおおよその寸法に適合するように設計できる。いくつかの実施形態では、固定スタブチューナ400の第1の端部406と第2の端部408との間の部分414は、固定スタブチューナ400が図3の電力送達システム300に接続されたときに伝送ライン306の一部を形成することができる。加えて、固定スタブチューナ400の第3の端部410から伝送ライン部分414までの部分を、以下では、固定スタブチューナ400のスタブ部分418と称することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、固定スタブチューナ400の第3の端部410は、環境へのマイクロ波漏れを防止するために電気的に短絡される。あるいは、固定スタブチューナ400の第3の端部410は電気的に開放している。いくつかの実施形態では、中心導体402は固定スタブチューナ400のスタブ部分418によって機械的に支持され、同じ内側導体直径及び外側導体直径を有し、中心導体402は、例えば平頭ねじによって、短い部分417を介してスタブ部分418に取り付けられる。より具体的には、短い部分417は、外側導体ハウジング404及び中心導体402にねじで取り付けることができる。いくつかの実施形態では、スタブ部分418の長さ412は、電力送達システム300を動作させる前に、動作周波数(例えば、2.45GHz)における約4分の1波長などに固定される。
【0025】
図5は、本発明のいくつかの実施形態による、図3の電力送達システム300内の図4の粗チューナ400の例示的な接続を示す。図示するとおり、図4の固定スタブチューナ400は、プラズマアプリケータ302に直接隣接して位置している。例えば、固定スタブチューナ316は、図4に示すように、プラズマアプリケータ302の外側ハウジング506にねじを使用して取り付けることができる。いくつかの実施形態では、固定スタブチューナ400の内側導体402は、結合要素310の延長として機能する。いくつかの実施形態では、固定スタブチューナ400の第1の端部406にある結合アンテナ416は、プラズマアプリケータ302のマイクロ波キャビティ312に挿入され、プラズマ放電管308に近接して位置決めされ、プラズマ放電管の内部でプラズマ320が生成される。アンテナ416は、誘導結合又は容量結合のうち1つ以上によって電力をプラズマ320に結合する。上述したように、固定スタブチューナ400が電力送達システム300に組み込まれた後、第1の端部406と第2の端部408との間の固定スタブチューナ400の部分414は、同軸ケーブル伝送ライン306の一部になるように構成される。
【0026】
いくつかの実施形態では、電力送達システム300は、プラズマ点火の発生を検出するためにプラズマアプリケータ302に結合された、図5に示すプラズマ検出器504を更に含む。プラズマ検出器504は、光学的に透明な窓を透過した、プラズマ放電管308内のプラズマ320からの光を検出するように構成されているフォトダイオード又はフォトトランジスタであることができる。プラズマ検出器504は、プラズマの存在を示す電気信号(電圧又は電流)を出力することができる。この信号は、マイクロ波生成器302又はシステムコントローラ(図示せず)に送信され、プラズマ点火の成功を示すことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、固定スタブチューナ400の1つ以上のパラメータは、マイクロ波生成器304とプラズマアプリケータ302内のプラズマ負荷との間の粗インピーダンス整合を達成するために、電力送達システム300を動作させる前に、調整及び設定される。この粗整合により、プラズマ点火プロセス及び定常状態プラズマ維持プロセスの両方の間にプラズマ320によって生成される、ある範囲の負荷インピーダンスに対して、適度に良好なインピーダンス整合を達成できる。例えば、図4の粗チューナ構成400の場合、電力送達システム300を動作させる前に、(i)固定スタブチューナ400のスタブ部分418の長さ412又は(ii)固定スタブチューナ400のスタブ部分418とプラズマ放電管308の長手方向軸との間の距離502のうち少なくとも1つを調整して、ある範囲のプラズマ負荷インピーダンスにわたって所望の粗インピーダンス整合を達成できる。
【0028】
図6は、本発明のいくつかの実施形態による、図3の電力送達システム300の粗チューナ316の別の例示的な構成600を示す。一般に、粗チューナ600は、図4の固定粗チューナ400と実質的に同様であるが、粗チューナ600が、垂直方向に沿って並進できる移動可能な短い部分602を有するという点が異なり、よって、プラズマ320によって生成される、ある範囲の負荷インピーダンスに対して、適度に良好なインピーダンス整合を決定するための実験の間に有効スタブ長さ620をより簡単に変動させることができる。この最適化されたスタブ長さ620が決定された後は、プラズマ点火プロセス及び定常状態プラズマ維持プロセスの両方の間、更なる調整なしに、この長さを設定できる。対照的に、図4の固定粗チューナ構成400では、短い部分417の位置が外側導体ハウジング404及び中心導体402にねじで取り付けられて、その移動を不動化する。したがって、粗チューナ400のスタブ長さ412は、粗チューナ400の構築時に固定される。
【0029】
図6の粗チューナ600では、短い部分602が中心導体608とチューナ600の外側導体ハウジング616との間に挟まれた状態で、短い部分602は後退可能なプランジャ604に取り付けられている(例えば、一体的に形成されている)。短い部分602は、2つの同心円筒面を含む。短い部分602の内側円筒面は、例えば、内側円筒面に機械加工された内ねじ又は雌ねじ606を有する。雌ねじ606は、中心導体608の外ねじ又は雄ねじ610と嵌合するように構成される。その結果、ねじ接続によって、短い部分602と中心導体608との間の良好な電気的接触を維持できるようになり、環境へのマイクロ波放射を防止できるようになる。短い部分602の外側円筒面は、1つ以上のスプリングフィンガ614を備えた薄いリングを有することができる。リングは、例えば、はんだ付けによって短い部分602に取り付けることができる。スプリングフィンガ614の外径は、外側導体ハウジング616の内径よりもわずかに大きくてもよく、それにより、プランジャアセンブリ604が外側導体ハウジング616内に挿入されると、フィンガ614がわずかに変形して、短い部分602と外側導体ハウジング616の間の良好な電気接触を確保し、環境へのマイクロ波放射を防止する。これらのタイプの接続により、短い部分602が中心導体608及び外側導体616の両方に対して、円周方向及び軸方向の両方に移動し、同時に電気的接触を維持できるようになる。動作中、プランジャアセンブリ604の回転ノブ604aを一方向(例えば時計回り)に回すと、ねじ山が右ねじであれば、短い部分602をチューナ600の接合部618に向けて下方に移動することができる。ノブ604aを反対方向(例えば反時計回り)に回すと、短い部分602を接合部618から離れるように上方に移動することができる。したがって、プランジャノブ604aを回して短い部分602を並進させることによって、有効スタブ長さ620を調整できる。
【0030】
そのような調整可能なスタブでは、マイクロ波電力結合を最適化し、反射電力を最小限に抑えるスタブ長さ620の調整が実際の実験装置において可能になるので、実験室内実験中に有益である。いくつかの実施形態では、最大有効スタブ長さ620(例えば、スタブを接合部618から後退させることができる最大長)は、動作周波数帯の中心周波数で、およそ、4分の1波長と全波長の間(例えば、約2.45GHzで約1.2インチ(3.0cm)~約4.82インチ(12.2cm))に設定できる。最適な電力結合に対応する位置を実験的に見つけると、他の実験及び/又は電力送達システム300内での実際のプラズマ生成に使用するために、スタブ位置をロックすることができる。同軸ライン上に実装される粗チューナのための調整可能な短い部分の他の構成もまた可能であり、それらは本発明の範囲内である。
【0031】
いくつかの実施形態では、粗チューナ600は、図5を参照して上述したように、電力送達システムに粗チューナ400と同様に接続される。例えば、粗チューナ600の一端は、7/8同軸ケーブル伝送ライン306と接続するように構成された7/16EIAコネクタ622を含むことができる。粗チューナ600の他端は、中心導体608によって形成される結合アンテナ624を含むことができ、結合アンテナ624はプラズマアプリケータ302のマイクロ波キャビティ312内に挿入される。いくつかの実施形態では、スタブチューナ600の1つ以上のパラメータは、マイクロ波生成器304とプラズマアプリケータ302内のプラズマ負荷との間の粗インピーダンス整合を達成するために、電力送達システム300を動作させる前に、調整及び設定される。例えば、電力送達システム300を動作させる前に、(i)スタブ長さ620又は(ii)スタブチューナ600のプランジャ604とプラズマ放電管308の長手方向軸との間の距離502(図5に示す)のうち少なくとも1つを調整して、ある範囲のプラズマ負荷インピーダンスにわたって所望の粗インピーダンス整合を達成できる。
【0032】
再び図3を参照すると、いくつかの実施形態では、単一の粗チューナ316が、広範囲のプロセスレシピ及び、それらに対応するプラズマインピーダンスにわたってインピーダンス整合を提供するように設計されている。これは、マイクロ波モデリングと、モデリング結果を精緻化するために実験結果を使用する実験との組み合わせによって行うことができる。例えば、図4の固定スタブチューナ400の調整可能なパラメータ(例えば、スタブ長さ412及び/又はスタブ-アプリケータ間距離502)又は図6のスタブチューナ600の調整可能なパラメータ(例えば、スタブ長さ620及び/又はスタブ-アプリケータ間距離502)は、プラズマ320によって吸収される電力の最大値が可変周波数マイクロ波生成器304の動作帯域内にあるように、所望のインピーダンス範囲にわたってプラズマ320の負荷インピーダンスを修正することによって、実験的に決定できる。したがって、モデリング及び/又は実験の後には、ここで選択されたスタブチューナ316のパラメータ値によって、プラズマ320の所望の範囲のインピーダンスにわたってプラズマ320によって吸収される電力の最大値は確実にマイクロ波生成器304の動作帯域内にあるようになる。図4の固定スタブチューナ400の例示的な一実装形態では、プラズマ320によって吸収される電力の最大値が、約2.4GHz~約2.5GHzの動作周波数範囲で確実に約0.1S/m~約100S/mの導電率の範囲内にあるようにするためには、スタブ-アプリケータ間距離502を約2.96インチ(7.52cm)に設定することができ、スタブ長さ412を約1.21インチ(3.07cm)に設定できる。固定スタブチューナ316の物理パラメータは、図7に関して以下で説明するシミュレーション結果を使用して実験的に決定できる。
【0033】
いくつかの実施形態では、電力送達システム300のために、いくつかの異なる粗チューナ(例えば、スタブ-アプリケータ間距離502及び/又はスタブ長さ412若しくは620について、異なる寸法を有する異なる固定スタブチューナ400、600)設計することができ、各チューナの性能(例えば、電力結合の能力及び低減反射電力の能力)は、例えば、ある1つの半導体適用例で複数のプロセスレシピのうち一部の有用なレシピを網羅できるように、より狭い範囲のプラズマインピーダンスに対して最適化される。加えて、様々な適用例を網羅するために、様々なプラズマアプリケータを様々な粗チューナと共に使用できる。
【0034】
いくつかの実施形態では、プラズマインピーダンスは、特にプラズマ点火の前後で大幅に変動し得るので、粗チューナ316の設定された物理パラメータ(単数又は複数)においてインピーダンス整合を微調整するために、ソリッドステートマイクロ波生成器304の動作周波数を所定の周波数範囲内で調整できる。粗チューナ316による粗インピーダンス整合後のマイクロ波生成器304の微調整によって、(i)プラズマ点火プロセス中の、プロセスガスの点火、又は(ii)定常状態プロセスでの、プラズマに送達されるマイクロ波電力の最大化のうち、少なくとも1つを達成することができ、これについて、図8及び図9に関連して以下で詳細に説明する。いくつかの実施形態では、マイクロ波生成器304の周波数を調整できる周波数範囲は、約2.4GHz~約2.5GHzである。
【0035】
図7は、本発明のいくつかの実施形態による、図4の固定スタブチューナ400を組み込んだ図3の電力送達システム300のプラズマアプリケータ302についての、プラズマ320に吸収される電力の、約1kWの入力電力での例示的なシミュレーション結果を示す。図示された電力吸収シミュレーション結果は、固定スタブチューナ400を使用して、約2.4GHz~約2.5GHzの動作周波数範囲内で周波数整合の後に生成される。シミュレーションは、固定スタブチューナ400が約1.21インチ(3.07cm)のスタブ長さ412及び約2.96インチ(7.52cm)のスタブ-アプリケータ間距離502に設定されている間に、この周波数範囲内で、3桁のオーダーで異なったプラズマ導電率の範囲について行われる。図1の従来技術のシステム100を使用して生成した図2のシミュレーション結果とは対照的に、図6の結果は、図4の固定スタブチューナ400によってプラズマ320へのはるかに良好なマイクロ波結合が可能になり、それによって、入力電力のほとんど全てがプラズマ320に吸収され、したがって反射が最小限に抑えられることを示す。より具体的には、図7に示すように、プラズマ320に送達される最大電力量は、導電率に応じて約944W~約994Wである。加えて、図7は、マイクロ波生成器304とプラズマ負荷の間のはるかに良好なインピーダンス整合を示し、それによって、プラズマインピーダンスに対する電力吸収ピークは、生成器304の約2.4GHz~約2.5GHzの動作周波数範囲内に入る。より具体的には、この結果は、約0.1S/m~約100S/mの様々な導電率について、プラズマ320による最大電力吸収の位置702が全て、約2.4GHz~約2.5GHzの周波数範囲内に入ることを示す。対照的に、図1の従来技術のシステムについての図2のシミュレーション結果は、システム100のプラズマによって吸収される電力の最大値が、それと同じ動作周波数範囲の外側にあることを示している。図6のスタブチューナ600を組み込んだ電力送達システム300についても、同様のシミュレーション結果が生成され得る。
【0036】
図8は、本発明のいくつかの実施形態による、遠隔プラズマ生成のために構成された別の例示的な電力送達システム800を示す。一般に、電力送達システム800は、マイクロ波生成器304とプラズマアプリケータ302との間に位置決めされた追加の外部アイソレータ802を除いて、図3の電力送達システム300と実質的に同様である。例えば、図3のシステム800と同じマイクロ波生成器302、一体化された結合要素310を有する粗チューナ316、及びプラズマアプリケータ302を、図8のシステム300で使用できる。更に、システム800の様々な構成要素を相互接続するために複数の同軸ケーブル306を使用することができ、それらには電力生成器304と外部アイソレータ802との間の上流同軸ケーブル306a、及び外部アイソレータ802と粗チューナ316との間の下流同軸ケーブル306bが含まれる。外部アイソレータ802は、プラズマアプリケータ302からの高い反射電力からマイクロ波生成器304を保護するように構成される。遠隔プラズマ生成のためのマイクロ波送達システムの負荷インピーダンスは、特にプラズマ点火中に大幅かつ急速に変化する可能性があり、それに起因して高い反射電力スパイクが電力生成器に戻され、それにより、生成器に組み込まれたアイソレータが十分に堅牢でない場合には生成器内のソリッドステート電力増幅器に損傷を与える可能性があるため、この保護は特に有益である。いくつかの実施形態では、外部アイソレータ802は、プラズマ負荷からマイクロ波生成器304に向かって反射する電力量を測定するために方向性結合器(図示せず)を含む。
【0037】
図9は、本発明のいくつかの実施形態による、図3又は図8の電力送達システム300、800によるプラズマ点火プロセスでプラズマを発生させるための例示的なプロセス900を示す。いくつかの実施形態では、電力送達システム300への粗チューナ316の設置の前など、電力送達システム300上でプロセス900を開始する前に、電力送達システム300の粗チューナ316の少なくとも1つのパラメータが、マイクロ波生成器304とプラズマ点火中及び定常状態プラズマ維持中の両方でプラズマアプリケータ302において生成される可能性が高いプラズマ負荷の予想インピーダンス範囲との間で粗インピーダンス整合を達成するように調整されることが好適である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、図4及び図5の固定スタブチューナ400に関して上述したスタブ長さ412及び/又はスタブ-アプリケータ間の距離502である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのパラメータは、図6の固定スタブチューナ600に関して上述したスタブ長さ620及び/又はスタブ-アプリケータ間の距離502である。例えば、各パラメータ値は、モデリングを使用してオフラインで、かつ/又は、プラズマ320によって吸収される電力の最大値が可変周波数マイクロ波生成器304の動作帯域内にあるように、所望のインピーダンス範囲にわたってプラズマ320の負荷インピーダンスをシミュレートすることによって実験的に決定できる。
【0038】
調整された粗チューナ316が定位置にある状態で、プロセス900は、プロセスガスをプラズマアプリケータ304のプラズマ放電管308に供給することによって開始する(ステップ904)。プロセスガス流が安定すると、プロセス圧力を設定し、安定させることができる。次いで、プロセス900は、アプリケータ302内でのプラズマ点火のために、マイクロ波生成器304の周波数を調整することに進むことができる。まず、マイクロ波生成器304の周波数を初期周波数値に設定して、その設定された周波数でマイクロ波電力を発生させる(ステップ906)。発生したマイクロ波電力を、一体化されたチューナ316と結合要素310とを介してプラズマアプリケータ302に結合して、プラズマアプリケータ302内のプロセスガスをイオン化する(ステップ908)。粗チューナ316の物理的パラメータを変更することなく、マイクロ波生成器304の周波数を初期周波数から反復的に調整する(ステップ910)。各反復は、調整された周波数に対応するマイクロ波電力でプラズマ放電管308内のプロセスガスを点火したかを判定すること(ステップ914)と、プラズマ点火が検出された場合、マイクロ波生成器304の周波数調整を中止すること(ステップ916)とを含むことができる。プラズマ点火の検出は、図5を参照して上述したプラズマ検出器504を使用して達成できる。例えば、各周波数の反復において、マイクロ波生成器304は、プラズマ検出器504によって送信された信号を評価して、プラズマが点火したかどうかを判定できる。いくつかの実施形態では、所定の周波数閾値に達した後にプラズマが点火していない場合(ステップ912)、プラズマ点火は失敗した(ステップ918)。いくつかの実施形態では、マイクロ波生成器304の周波数の反復微調整は、周波数を、初期周波数(例えば約2400MHz)から上限(例えば約2500MHz)に達するまで所定の幅(例えば約2MHz)で反復的に増大させることを伴う。あるいは、マイクロ波生成器304の周波数の反復微調整は、周波数を、初期周波数(例えば約2500MHz)から下限(例えば約2400MHz)に達するまで、所定の幅(例えば約2MHz)で反復的に減少させることを伴うことができる。
【0039】
図10は、本発明のいくつかの実施形態による、図3又は図8の電力送達システム300、800によるプラズマを定常状態に維持するための例示的なプロセス1000を示す。いくつかの実施形態では、定常状態プラズマ維持プロセス1000は、図9のプラズマ点火プロセス900の後に実行される。定常状態プロセス1000の目標は、プラズマ320に送達される全体的なマイクロ波電力を最大化することである。このプロセス1000の間、粗チューナ316は、図9を参照して上述したプラズマ点火プロセス900の間に使用されるものと同じ物理パラメータに設定されたままであることができる。一般に、プロセス900によってプラズマアプリケータ302内でプラズマを発生させること、及び、プロセス1000によって点火後にプラズマに送達されるマイクロ波電力を最大化することは、システム動作の前に粗チューナ316のパラメータが設定された後に粗チューナ316を調整することなく達成できる。
【0040】
プロセス1000は、マイクロ波生成器の周波数を第2の初期周波数値に設定して、マイクロ波電力を生成することによって開始する(ステップ1002)。生成されたマイクロ波電力は、アプリケータ302内のプラズマ320を維持するために、プラズマ生成器302に結合される。粗チューナ316の物理的パラメータを変更することなく、マイクロ波生成器304の周波数を第2の初期周波数から閾値周波数値に達するまで、反復的に調整することができる(ステップ1004)。各反復は、プラズマ320に送達されるマイクロ波電力の値を計算すること(ステップ1006)と、その反復における、マイクロ波電力の計算値及び対応する周波数値を記録すること(ステップ1008)とを含むことができる。閾値周波数に達した後(ステップ1010)、記録されたマイクロ波電力値の最大値を判定し(ステップ1012)、マイクロ波生成器304を、最大の記録されたマイクロ波電力が生成される周波数値に設定する(ステップ1014)。
【0041】
いくつかの実施形態では、マイクロ波生成器304の周波数の反復微調整は、周波数を、第2の初期周波数(例えば約2400MHz)から上限(例えば約2500MHz)に達するまで所定の幅(例えば約2MHz)で反復的に増大させることを伴う。あるいは、マイクロ波生成器304の周波数の反復微調整は、周波数を、第2の初期周波数(例えば約2500MHz)から下限(例えば約2400MHz)に達するまで、所定の幅(例えば約2MHz)で反復的に減少させることを伴うことができる。いくつかの実施形態では、各周波数反復において、計算されたマイクロ波電力の値は、測定された順方向電力と測定された反射電力との間の差である。図3の電力送達システム300の場合、アプリケータ302に送達される順方向電力及びアプリケータ302からの反射電力の両方を生成器304によって測定できる。図8の電力送達システム800の場合、アプリケータ302に送達される順方向電力は生成器304によって測定でき、アプリケータ302からの反射電力は外部アイソレータ802によって測定できる。各反復中にプラズマ302に送達される電力の計算(ステップ1008)は、両方のシステム300、800のシステムコントローラ(図示せず)によって達成できる。いくつかの実施形態では、システムコントローラはまた、例えば、計算された電力値及び対応する周波数値を表形式でメモリに記憶するように構成される。
【0042】
従来のシステム(例えば、図1の従来技術のシステム100)と比較して、マイクロ波遠隔プラズマ生成システム(例えば、図3又は図8の電力送達システム300、800)に粗チューナ(例えば、図4の固定スタブチューナ400又は図6のスタブチューナ600)を組み込むことに関連する、いくつかの利点がある。これらの利点には、システムから自動インピーダンス整合回路網108の必要性を排除し、それによってシステムコスト、サイズ、及び複雑さを大幅に低減することが含まれる。プラズマアプリケータを電力送達システムと一体化する場合は、サイズの縮小及びパッケージングの柔軟性の向上が特に重要である。また、システムの周波数帯域を効果的に制限する自動インピーダンス整合回路網を排除することによって、周波数整合のためにソリッドステート電力生成器の本来的な能力を最大限に活用してインピーダンス整合を達成することができる。別の利点には、マイクロ波エネルギーのプラズマへの結合を改善し、したがって、プラズマに実際に送達されるマイクロ波電力の量を増加させ、反射電力の量を減少させることが含まれる。更に別の利点には、アプリケータを電力送達システムの残りの部分に接続する同軸ケーブルの過熱を防止し、したがって、システム全体の信頼性を改善することが含まれる。
【0043】
本発明について特定の実施形態を参照して具体的に示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細における様々な変更がなされてもよいことは、当業者によって理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】