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特表2024-531151甲状腺眼疾患の処置のための組成物、用量および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】甲状腺眼疾患の処置のための組成物、用量および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240822BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P27/02
A61P43/00 111
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508012
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022074764
(87)【国際公開番号】W WO2023019171
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/260,133
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/261,744
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523133605
【氏名又は名称】ビリジアン セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】オショネシー, デニス
(72)【発明者】
【氏名】カッツ, バレット
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
IGF-1Rに対する抗体および組成物ならびにそれらの使用が本明細書で提供される。このIGF-1R抗体および抗原結合性断片は、IGF-1R機能を阻害するか、またはIGF-I媒介IGF-1Rシグナル伝達の生物学的機能を遮断する。本発明は、甲状腺眼疾患(TED)、グレーブス眼症または眼窩疾患(GO)、甲状腺毒性眼球突出症、甲状腺異常性眼症、およびIGF-1Rシグナル伝達に関連する他の甲状腺眼障害としても知られている甲状腺眼症(TAO)を処置するためのIGF-1R抗体および抗原結合性断片の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、
抗体の第1の用量を前記対象に静脈内または皮下投与するステップであって、前記第1の用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ;および
前記抗体の1または複数の後続用量を前記対象に静脈内または皮下投与するステップであって、各後続用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ
を含み、
前記抗体が、重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含み、前記軽鎖が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む、方法。
【請求項2】
前記軽鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含み、前記重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の用量が、約10mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1または複数の後続用量が、約10mg/kgである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1または複数の後続用量の量が、前記第1の用量の量と同じである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1または複数の後続用量の量が、前記第1の用量の量と異なる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、前記第1の用量の1、2、3、4、5、6または8週間後に投与される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1または複数の後続用量のうちの1または複数の後続用量が、前記第1の用量の3週間後に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記後続用量が、前記第1の用量の後、3週間ごとに4、5、6、7または8サイクルにわたって投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記後続用量が、前記第1の用量の後、3週間ごとに5または8サイクルにわたって投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記対象に合計5、6、7または8用量を投与するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体の第1の用量の後、前記対象の臨床的活動性スコアが低減される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体の2用量の後、前記対象の臨床的活動性スコアが低減される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記1または複数の後続用量の後、前記対象の臨床的活動性スコアが、前記第1の用量から6週間以内に低減される、請求項1から15に記載の方法。
【請求項17】
前記1または複数の後続用量の後、前記対象の臨床的活動性スコアが、最初の1または複数の後続用量から3週間以内に低減される、請求項1から15に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、45分~約90分かけて、または60分~約90分かけて、静脈内注入により投与される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の用量が、約10mg/kgであり、前記1または複数の後続用量が、約10mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、前記抗体と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物の一部として投与され、医薬組成物組成物が、前記抗体を20mg/mL~約30mg/mLの濃度で含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬組成物が、前記抗体を約25mg/mLの濃度で含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
処置された前記対象の眼球突出が、少なくとも、または約、1~4mm低減される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記眼球突出が、少なくとも、または約、2~3mm低減される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記眼球突出が、前記第1の用量から3週間以内に低減される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記眼球突出が、前記第1の用量から6週間以内に低減される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
処置された前記対象が、複視の軽減を有する、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記複視が、前記第1の用量から3週間または6週間以内に軽減される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、3週間または6週間以内に臨床的活動性スコア(CAS)の改善を有する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記CASスコアが、少なくとも-2、-3、または-4の改善を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、前記第1の用量から3週間以内または6週間以内に眼球突出の低減およびCASスコアの改善を有する、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、
抗IGF-1R抗体の10mg/kgの用量を、前記対象に、甲状腺眼症に関連する1つまたは複数の症状を軽減するのに十分な期間にわたって一定の間隔で静脈内投与するステップ
を含み、
前記抗IGF-1R抗体が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含む重鎖と、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む軽鎖とを含む、方法。
【請求項32】
前記抗IGF-1R抗体が、軽鎖および重鎖を含み、前記軽鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含み、前記重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記抗IGF-1R抗体が、静脈内経路により投与される、請求項31から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗IGF-1R抗体が、3週間ごとに投与される、請求項31から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗IGF-1R抗体が、5用量に十分な期間にわたって投与される、請求項31から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記抗IGF-1R抗体が、8用量に十分な期間にわたって投与される、請求項31から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記抗IGF-1R抗体が、3週間、6週間、9週間、12週間、15週間、18週間、21週間、24週間またはそれより長い期間から選択される期間にわたって投与される、請求項31から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象の眼球突出が、少なくとも、または約、1~4mm低減される、請求項31から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記眼球突出が、少なくとも、または約、2~3mm低減される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記眼球突出が、前記第1の用量から3週間以内に低減される、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記眼球突出が、前記第1の用量から6週間以内に低減される、請求項41または42に記載の方法。
【請求項45】
処置された前記対象が、複視の軽減を有する、請求項31から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記複視が、前記第1の用量から3週間または6週間以内に軽減される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、3週間または6週間以内に臨床的活動性スコア(CAS)の改善を有する、請求項31から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記CASスコアが、少なくとも-2、-3、または-4の改善を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が、前記第1の用量から3週間以内または6週間以内に眼球突出の低減およびCASスコアの改善を有する、請求項31から48のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2021年8月10日に出願した米国仮出願第63/260,133号および2021年9月28日に出願した米国仮出願第63/261,744号に基づく優先権を主張するものであり、これら仮出願の各々は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出した配列表への言及
本願は、XMLファイル形式で電子的に提出した配列表を含み、この配列表は、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年8月10日に作成した前記XMLコピーは、「257635_000402_ST26.xml」という名であり、サイズが12,855バイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
甲状腺眼症(TAO)は、甲状腺眼疾患(TED)、グレーブス眼症または眼窩疾患(GO)、甲状腺毒性眼球突出症、甲状腺異常性眼症、およびいくつかの他の用語としても知られており、甲状腺機能不全に関連する眼窩疾患である。TAOは、2つのタイプに分けられる。典型的に1~3年続く活動性TAOは、眼窩の軟部組織における継続的な自己免疫/炎症反応を特徴とする。活動性TAOは、眼の軟部組織の拡大および再構築の原因となる。活動性TAOの自己免疫/炎症反応は自然に解消し、状態は非活動性TAOへと推移する。非活動性TAOは、活動性TAOの長期/永続的後遺症を記載するために使用される用語である。TAOの原因は不明である。TAOは、典型的にはグレーブス甲状腺機能亢進症に随伴するが、甲状腺を冒し、眼窩および眼窩周囲組織の病態ならびに稀に前脛骨皮膚の病態(前脛骨粘液水腫)または指の病態(甲状腺ばち指)を生じさせる他の自己免疫状態の一部として発生することもある。TAOは、眼窩および眼窩周囲の軟部組織を主に冒し、眼および視力に対する二次的な影響を伴う自己免疫性眼窩疾患である。TAOでは、眼窩軟部組織、主として眼の筋肉および脂肪の炎症および拡大の結果として、眼がそれらの眼窩から前方に押し出される(膨張)。これは眼球突出または眼球突出症と呼ばれる現象である。TAOの大部分の症例は、視力喪失をもたらさないが、この状態は、視力を脅かす兎眼性角膜症、厄介な複視(二重視)、および圧迫性甲状腺性視神経症の原因となり得る。TAOは、甲状腺機能低下症の全身性合併症より先に起こることもあり、それと同時に起こることもあり、またはその後に起こることもある。TAOの眼症状発現は、上眼瞼後退症、眼瞼遅滞、腫脹、発赤(紅斑症)、結膜炎、および眼球膨張(眼球突出症または眼球突出)、結膜浮腫、眼窩周囲浮腫、ならびに有意な機能的、社会的および美容的帰結を伴う眼球運動性の変化を含む。眼球突出および眼充血をはじめとする、TAOの徴候および症状の多くは、眼窩脂肪組織および眼窩周囲筋肉の拡大に起因する。一つには眼窩脂肪内での新たな脂肪細胞発生(脂肪生成)のせいで、脂肪組織体積が増加する。眼窩脂肪組織内および外眼筋線維間の筋周膜結合組織内への親水性グリコサミノグリカン、主にヒアルロン酸の蓄積は、脂肪区画をさらに拡大し、外眼筋体を増大させる。ヒアルロン酸は、眼脂肪および外眼筋内に存在する線維芽細胞により産生され、そのin vitroでの合成は、IL-1ベータ、インターフェロン-ガンマ、血小板由来増殖因子、甲状腺刺激ホルモン(TSH)およびインスリン様増殖因子I(IGF-I)をはじめとする、いくつかのサイトカインおよび増殖因子により刺激される。
【0004】
インスリン様増殖因子I受容体(IGF-IR)を活性化する抗体も検出されており、活動性TAOに関与する。いずれかの理論に拘束されるものではないが、TSHRおよびIGF-IRは眼窩線維芽細胞において物理的および機能的複合体を形成すると考えられ、ならびにIGF-IRの遮断はIGF-1依存性シグナル伝達とTSH依存性シグナル伝達の両方を弱めるようであると考えられる。抗体アンタゴニストを使用するIGF-IRの遮断がTSHR依存性シグナル伝達とIGF-I依存性シグナル伝達の両方を低減させる可能性があり、したがって、どちらかの受容体に対してアゴニストとして作用する自己抗体の病的活性を妨げる可能性があることが提案されている。
【0005】
IGF-IRは、多くの細胞型の増殖および代謝機能の調節に関与する、広範に発現されるヘテロ四量体タンパク質である。それは、2つのサブユニットを含むチロシンキナーゼ受容体である。IGF-IRアルファは、リガンド結合ドメインを含有し、その一方でIGF-IRベータは、シグナル伝達に関与し、チロシンリン酸化部位を含有する。
【0006】
グレーブス病に起因する甲状腺機能亢進症のための現行の治療は不完全であり、なぜなら、疾患の特定の基本的な病原性自己免疫機序を標的とする治療がないからである。中等度から重度の活動性TAOの処置は、よりいっそう複雑である。近年、その発病機序のよりよい理解が見られているが、TAOには、依然として治療上の課題およびジレンマが存在する。活動性TAOを処置するための承認薬はない。グルココルチコイド静注(ivGC)および経口グルココルチコイドが、中等度から重度の活動性TAOを有する患者を処置するために使用されているが、結果が満足のいくものであることは滅多にない。部分奏効がよく見られ、退薬後の再発(リバウンド)は珍しくない。有害事象が起こり、多くの患者は、最終的には機能回復手術を必要とし、これは、彼らの状態が非活動性TAOに推移したときに行われる。したがって、TAOおよびその関連症状のための代替療法を提供することが今もなお必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本開示は、一般に、IGF-1R抗体、ならびにその抗原結合断片およびその使用に関する。ある特定のIGF-1R抗体および抗原結合性断片は、IGF-1R機能を阻害するか、またはIGF-I媒介IGF-1Rシグナル伝達の生物学的機能を遮断する。加えて、一般に、本発明は、甲状腺眼疾患(TED)、グレーブス眼症または眼窩疾患(GO)、甲状腺毒性眼球突出症、甲状腺異常性眼症、およびIGF-1Rシグナル伝達に関連する他の甲状腺眼障害としても知られている甲状腺眼症(TAO)を処置するための方法に関する。
【0008】
一部の実施形態では、本開示は、甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置することを含む処置方法であって、抗体の第1の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、この第1の用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ、および抗体の1または複数の後続用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、各後続用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップを含み、抗体が本明細書で規定されるとおりである、処置方法を提供する。
【0009】
一部の実施形態では、本開示は、甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、抗体の第1の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、この第1の用量は約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ、および抗体の1または複数の後続用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、各後続用量は約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップを含み、抗体が本明細書で規定されるとおりであり、1または複数の後続の用量が、臨床的活動性スコアおよび/または眼球突出の測定値により判定して、対象が1または複数の前の用量に対して適切な奏効を示さなかったときに投与される、方法を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、約2mg/kg、約3mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kg、約7.5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、または約20mg/kgの第1の用量を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量は、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約7.5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、または約20mg/kgである。
【0012】
一部の実施形態では、第1の用量は、約10mg/kgである。一部の実施形態では、1または複数の後続用量は、約10mg/kgである。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、第1の用量を投与する前に対象に抗体の1または複数の負荷用量を投与するステップをさらに含む方法を提供する。
【0014】
一部の実施形態では、本開示は、第1の用量を投与する前に、対象に抗体の第1の負荷用量を投与するステップをさらに含む方法であって、第1の負荷用量が、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約12.5mg/kg、または約12.5mg/kg~約15mg/kgからなる群から選択される、方法を提供する。
【0015】
一部の実施形態では、第1の負荷用量は、約5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、12.5mg/kg、15mg/kg、または20mg/kgである。
【0016】
一部の実施形態では、第2の負荷用量は、約5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、12.5mg/kg、15mg/kg、または20mg/kgである。
【0017】
一部の実施形態では、本開示は、以前に1つまたは複数の処置の投与を受けた対象における甲状腺眼症の処置を改善する方法であって、抗体の、約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる、少なくとも1用量を対象に静脈内または皮下投与するステップを含み、抗体が、本明細書で規定の抗体であり、例えば、抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含み、軽鎖が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含み;または抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含む軽鎖を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域配列を含み;または抗体が、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含み;少なくとも1用量が、少なくとも1用量の前の1つまたは複数の測定値と比べて1つまたは複数の測定値の改善をもたらす、方法を、提供する。
【0018】
一部の実施形態では、1つまたは複数の測定値は、眼球突出、CAS、他方の眼の悪化レベル、GO-QoLでのスコア、およびこれらの組合せから選択される。
【0019】
一部の実施形態では、対象が、少なくとも1用量の後に満足のいく奏効を示さなかった場合、抗体の、約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から各々選択される、1または複数の後続用量が、対象に投与される。
【0020】
一部の実施形態では、1または複数の後続用量は、1または複数の後続用量の前と比較して、眼球突出、CAS、他方の眼の悪化レベル、GO-QoLでのスコア、およびこれらの組合せのうちの1つまたは複数を改善する。
【0021】
本開示は、甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、抗体の第1の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、この第1の用量が約250mg、約300mg、約350mg、または約400mgからなる群から選択される、ステップ、および抗体の1または複数の後続用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、各後続用量が約250mg、約300mg、約350mg、または約400mgからなる群から選択される、ステップを含み、抗体が、本明細書で規定されるとおりである、方法を提供する。
【0022】
本明細書で使用される場合、抗体は、本明細書で規定され、重鎖および軽鎖を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、重鎖は、Fc変異、例えば、M252Y、S254T、およびT256E変異をFcドメインに含み得る。一部の実施形態では、重鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVHを含む。一部の実施形態では、軽鎖は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLを含む。したがって、一部の実施形態では、抗体は、配列番号2のVL、および配列番号3のVHを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0023】
一部の実施形態では、第1の用量は、約250mg、300mg、350mg、または400mgである。
【0024】
一部の実施形態では、1または複数の後続用量は、約250mg、300mg、350mg、または400mgである。
【0025】
一部の実施形態では、本開示は、第1の用量を投与する前に対象に抗体の1または複数の負荷用量を投与するステップをさらに含む方法を提供する。
【0026】
一部の実施形態では、本開示は、第1の用量を投与する前に、対象に抗体の第1の負荷用量を投与するステップをさらに含む方法であって、第1の負荷用量が、約250mg、300mg、350mg、または400mgからなる群から選択される、方法を提供する。
【0027】
一部の実施形態では、第1の負荷用量は、約250mg、300mg、350mg、または400mgである。
【0028】
一部の実施形態では、第2の負荷用量は、約250mg、300mg、350mg、または400mgである。
【0029】
一部の実施形態では、1または複数の後続用量は、第1の用量の量と同じである。
【0030】
一部の実施形態では、1または複数の後続用量の量は、第1の用量の量と異なる。
【0031】
一部の実施形態では、1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量は、第1の用量の1、2、3、4、5、6、または8週間後に投与される。
【0032】
一部の実施形態では、1、2、3、4、5、6または7後続用量のみが、対象に投与される。
【0033】
一部の実施形態では、合計2、3、4、5、6、7または8用量が、対象に投与される。
【0034】
一部の実施形態では、抗体の2または3用量の後、対象の臨床的活動性スコアが低減される。
【0035】
一部の実施形態では、各後続用量は、前の用量の1、2、3、4、5、6、7または8週間後に投与される。
【0036】
一部の実施形態では、少なくとも1用量は、45分~約90分かけて、または60分~約90分かけて、静脈内注入により投与される。
【0037】
一部の実施形態では、皮下投与による少なくとも1用量である。一部のそのような実施形態では、皮下投与は、自己投与される。
【0038】
一部の実施形態では、抗体の第2の負荷用量は、第1の負荷用量の後に対象に投与され、第1および第2の負荷用量は、第1の用量の前に投与される。
【0039】
一部の実施形態では、第1の負荷用量および第2の負荷用量は、同じ用量の量である。
【0040】
一部の実施形態では、第1の負荷用量および第2の負荷用量は、異なる用量の量である。
【0041】
一部の実施形態では、第1の負荷用量は、第1の用量が投与される1、2、3または4週間前に対象に投与される。
【0042】
一部の実施形態では、抗体は、抗体と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物の一部として投与され、抗体は、薬学的に許容される組成物中での少なくとも約150mg/mlの溶解度を有する。
【0043】
一部の実施形態では、対象は、甲状腺眼症のための過去の治療薬に対して不満足な奏効を示していた。一部のそのような実施形態では、不満足な奏効は、眼球突出を2mmまたはそれより大きく低減させることができないこと;CASを1つもしくは複数の構成要素に関して、または2点もしくはそれを超える点数、低減させることができないこと;他方の眼における2mmまたはそれより大きい悪化;複視を軽減することができないこと;複視を一定期間、改善し続けることができないこと;グレーブス眼症生活の質(GO-QoL)評価におけるスコアを、8点またはそれを超える点数、改善することができないこと;およびこれらの組合せのうちの1つまたは複数である。
【0044】
一部の実施形態では、第1の負荷用量および第2の負荷用量は、約1、約2または約3週間の間隔を空けて投与される。
【0045】
一部の実施形態では、第2の負荷用量は、第1の用量の約1、約2または約3週間前に投与される。
【0046】
一部の実施形態では、甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、抗体の10mg/kgの第1の用量を対象に静脈内投与するステップを含み、抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含み、軽鎖が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む、方法が、提供される。
【0047】
一部の実施形態では、方法は、約10mg/kgの後続用量を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、後続用量は、第1の用量の約3週間後に投与される。一部の実施形態では、方法は、第1の用量の後、約10mg/kgの後続用量を3週間ごとに投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、後続用量は、3週間ごとに合計4後続用量、投与される。一部の実施形態では、後続用量は、3週間ごとに合計7後続用量、投与される。一部の実施形態では、対象は、第1の用量から3週間以内または6週間以内に眼球突出の低減およびCASスコアの改善を有する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1-1】図1A~Dは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
図1-2】同上。
【0049】
図2-1】図2A~Bは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
図2-2】同上。
【0050】
図3-1】図3A~Fは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
【0051】
図4-1】図4A~Cは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
図4-2】同上。
図4-3】同上。
【0052】
図5-1】図5A~Bは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
図5-2】同上。
【0053】
図6図6A~Bは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
【0054】
図7図7は、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
【0055】
図8図8は、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
【0056】
図9図9は、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
【0057】
図10-1】図10A~Cは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
【0058】
図11図11は、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
【0059】
図12-1】図12A~Cは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
図12-2】同上。
図12-3】同上。
【0060】
図13-1】図13A~Bは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
図13-2】同上。
【0061】
図14-1】図14A~Bは、本明細書で規定の様々な実施形態を示す。
図14-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0062】
詳細な説明
IGF-1Rに結合し、その活性をモジュレートする抗体が、本明細書で提供される。抗体は、例えば、甲状腺眼疾患を処置するために、使用され得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「甲状腺眼症」(TAO)、「甲状腺眼疾患」(TED)、「グレーブス眼症」または「グレーブス眼窩疾患」(GO)は、同じ障害または状態を指し、同義で使用される。それらは全て、何らかの自己免疫性甲状腺障害に、最も一般的には「グレーブス病」(GD)に、しかしときには他の疾患、例えば橋本甲状腺炎に、関連する炎症性眼窩病態を指す。
【0064】
用語「眼球突出(proptosis)」および「眼球突出症(exophthalmos)」(眼球突出症(exophthalmus)、眼球突出症(exophthalmia)、または眼球突出(exorbitism)としても知られている)は、器官の前方突起、移動、膨張または突出を指す。本明細書で使用される場合、これらの用語は、眼窩から前側への眼の前方突起、移動、膨張または突出を指す。眼球突出および眼球突出症は、一部の当業者からは同じ意味を有すると見なされ、多くの場合、同義で使用されるが、他の者は、それらの意味の微妙な違いに起因すると考える。眼球突出症を、重度の眼球突出を指すために、または内分泌関連眼球突出を指すために、使用する者がいる。さらに、眼、例えばTAO(TEDまたはGO)を有する対象の眼、に関連する眼球突出を記載する際に、眼球突出症という用語を使用する者もいる。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「眼球突出」および「眼球突出症」は、同義で使用され、眼窩から前側への眼の前方突起、移動、膨張または突出を指す。拡大のために前側にしか開口していない眼窩の硬い骨の構造のため、側部からまたは背部から起こる眼窩軟部組織内容物のいずれの増加も眼球を前方移動させることになる。眼球突出または眼球突出症は、感染症、炎症、腫瘍、外傷、転移、内分泌病変、血管疾患および眼窩外病変をはじめとする、いくつかの疾患過程の結果であることもある。TAO(TEDまたはGO)は、現在は、成人における眼球突出の最も一般的な原因と見なされている。眼球突出症は、TAO(TEDまたはGO)によく見られるように両側性であることもあり、または片側性(眼窩腫瘍によく見られるように)であることもある。
【0066】
眼球突出症の程度の測定は、例えば、眼の前方移動の程度を測定するために使用される計器である眼球突出測定計を使用して、行われ得る。このデバイスは、眼窩外側縁から角膜頂点までの前方距離の測定を可能にする。コンピューター断層撮影(CT)スキャニングおよび磁気共鳴画像法(MRI)も、眼球突出症または眼球突出の程度の評価に使用され得る。CTスキャニングは、TAOの診断のための優れた画像化手法である。肥大した外眼筋の可視化を可能にすることに加えて、CTスキャンは、眼窩除圧術が必要とされるときに眼窩の骨の解剖学的構造の描写を外科医または臨床医に提供する。MRIは、その多断面および固有コントラスト性能によって、CTスキャン研究に付随する放射線曝露を伴うことなく眼窩内容物の優れた画像化をもたらす。MRIは、視神経、眼窩脂肪および外眼筋のよりよい画像化をもたらすが、CTスキャンは、眼窩の骨構造のよりよい画像をもたらす。眼窩超音波検査法もTAOの診断および評価に使用することができ、なぜなら、それを迅速にかつ高い信頼度で行うことができるからである。外眼筋の高い反射率および拡大が容易に評価され、連続超音波検査も、眼症の進行または安定性を評価するために使用され得る。現在利用可能なまたは将来利用可能になる技術に基づいて、当業者は、眼球突出または眼球突出症の程度を診断および評価する最良の手法を決定することができるであろう。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、所望の生物活性を示す抗体の任意の形態を指す。したがって、この用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化、完全ヒト抗体、キメラ抗体およびラクダ化単一ドメイン抗体を包含するが、これらに限定されない。「親抗体」は、意図された使用のための抗体の改変、例えば、ヒト治療用抗体として使用するための抗体のヒト化の前に、免疫系の抗原への曝露により得られる抗体である。
【0068】
本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、「抗体断片」または「抗原結合断片」は、抗体の抗原結合断片、すなわち、完全長抗体が結合する抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片、例えば、1つまたは複数のCDR領域を保持する断片を指す。抗体結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子、例えば、sc-Fv;抗体断片から形成されたナノボディおよび多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
「Fab断片」は、1つの軽鎖と、1つの重鎖のC1および可変領域とで構成されている。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0070】
「Fc」領域は、抗体のC1およびC2ドメインを含む2つの重鎖断片を含有する。2つの重鎖断片は、2つまたはそれより多くのジスルフィド結合により、およびC3ドメインの疎水性相互作用により、一緒に保持されている。
【0071】
一部の実施形態では、本明細書における抗体、または抗原断片は、Fc領域を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、Fc領域に連結されたときに抗体の半減期を延長する変異を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、S228P、L235E、M252Y、S254T、T256E、M428L、N434S、L234F、P331S変異、またはこれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、Fc領域は、M252Y、S254T、およびT256E変異を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、S228PおよびL235E変異を含む。一部の実施形態では、抗体は、L234F、L235E、およびP331S変異を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、M252Y、S254T、T256E、S228PおよびL235E変異を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、S228P、L235E、M428L、およびN434S変異を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、M428LおよびN434S変異を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、L234F、L235E、P331S、M252Y、S254T、およびT256E変異を含む。Fc領域の変異は、US2007041972A1、EP2235059B1、米国特許第8,394,925号、およびMueller et al, Mol Immunol 1997 Apr;34(6):441-52にも記載されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で言及される番号付けは、Fc領域についてはKabat番号付けシステムを指す。
【0072】
「Fab’断片」は、1つの軽鎖と、VドメインおよびC1ドメインおよびまたC1ドメインとC2ドメイン間の領域を含有する1つの重鎖の一部分または断片とを含有し、したがって、2つのFab’断片の2つの重鎖間で鎖間ジスルフィド結合を形成してF(ab’)分子を形成することができる。
【0073】
「F(ab’)断片」は、2つの軽鎖と、C1ドメインとC ドメイン間の定常領域の一部を含有する2つの重鎖とを含有し、したがって、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖間に形成される。したがって、F(ab’)断片は、2つの重鎖間にジスルフィド結合により保持されている2つのFab’断片で構成される。
【0074】
「Fv領域」は、重鎖と軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域を欠いている。
【0075】
用語「一本鎖Fv」または「scFv」抗体は、抗体のVおよびVドメインを含む抗体断片であって、これらのドメインが単一のポリペプチド鎖内に存在する、抗体断片を指す。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVドメインとVドメインの間にさらに含む。scFvの総説については、Pluckthun (1994) THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315を参照されたい。国際特許出願公開番号WO88/01649、ならびに米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号も参照されたい。
【0076】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域のみを含有する、免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片である。一部の事例では、2つまたはそれより多くのV領域がペプチドリンカーによって共有結合で結合されて二価ドメイン抗体が作出される。二価ドメイン抗体の2つのV領域は、同じ抗原を標的とすることもあり、または異なる抗原を標的とすることもある。
【0077】
「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。一部の事例では、2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかし、二価抗体は、二重特異性(下記参照)であることがある。
【0078】
ある特定の実施形態では、本明細書におけるモノクローナル抗体は、ラクダ化単一ドメイン抗体も含む。例えば、Muyldermans et al. (2001) Trends Biochem. Sci. 26:230;Reichmann et al. (1999) J. Immunol. Methods 231:25;WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号を参照されたい)。一実施形態では、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるような改変を伴う2つのVドメインを含む、単一ドメイン抗体を提供する。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖内に軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)(V-VまたはV-V)を含む。短すぎて同じ鎖上での2つのドメイン間の対合を可能にすることができないリンカーを使用することにより、ドメインを強いて別の鎖の相補ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作出する。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHolliger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448に、より詳細に記載されている。操作された抗体バリアントの総説については、一般に、Holliger and Hudson (2005) Nat. Biotechnol. 23:1126-1136を参照されたい。
【0080】
典型的には、バリアント抗体、または本明細書で提供される抗体の抗原結合断片は、その活性をモルベースで表した場合、そのIGF-1R結合活性の少なくとも10%(改変される親抗体と比較して)を保持する。一部の実施形態では、バリアント抗体(もしくはその抗原断片)、または本明細書で提供される抗体の抗原結合断片は、親抗体の場合のIGF-1R結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%または100%もしくはそれより高い%を保持する。本明細書に記載されるように、本発明の抗体または抗原結合断片は、その生物活性が実質的に変更されない、抗体の「保存的バリアント」または「機能保存型バリアント」と呼ばれることもある、保存的または非保存的アミノ酸置換を含み得ることを意図したものでもある。
【0081】
「単離された抗体」は、結合化合物の精製状態を指し、そのような状況下で、分子が他の生体分子、例えば、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または他の物質、例えば細胞残屑および成長培地を実質的に含まないことを意味する。一般に、用語「単離された」は、そのような物質の完全非存在、または水、緩衝液もしくは塩の非存在を指すことを、それらが、本明細書に記載の結合化合物の実験上または治療上の使用に実質的に干渉しない量で存在する限り、意図したものではない。
【0082】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団を指し、すなわち、その集団を含む抗体分子は、少量で存在することがある可能性のある天然に存在する変異を除いて、アミノ酸配列が同一である。その一方で、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、それらの可変ドメイン、特にそれらのCDRに、異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を典型的に含み、これらの抗体は、多くの場合、異なるエピトープに特異的である。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な抗体集団から得られる場合の抗体の特徴を示し、この修飾語を、いずれかの特定の方法による抗体の産生を求めるものと見なすべきではない。例えば、本発明に従って使用されることになるモノクローナル抗体は、Kohler et al. (1975) Nature 256: 495によって最初に記載されたハイブリドーマ法により作製することができ、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により作製することができる。「モノクローナル」抗体は、例えば、Clackson et al. (1991) Nature 352: 624-628およびMarks et al. (1991) J. Mol. Biol. 222: 581-597に記載されている技法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。Presta (2005) J. Allergy Clin. Immunol. 116:731も参照されたい。
【0083】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」は、第1の抗体からの可変ドメインと第2の抗体からの定常ドメインとを有する抗体であって、第1および第2の抗体が異なる種からのものである、抗体である。(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855)。典型的に、可変ドメインは、齧歯動物などの実験動物からの抗体(「親抗体」)から得られ、定常ドメイン配列は、ヒト抗体から得られ、したがって、結果として生ずるキメラ抗体は、親(例えば、齧歯動物)抗体よりも、ヒト対象において有害な免疫応答を惹起する可能性が低いであろう。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」は、ヒト抗体と非ヒト(例えば、マウス、ラット)抗体の両方からの配列を含有する抗体の形態を指す。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク(FR)領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つの、典型的には2つの、可変ドメインの実質的に全てを含むことになる。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分を必要に応じて含み得る。
【0085】
用語「完全ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウスにおいて、マウス細胞において、またはマウス細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生された場合、マウス糖鎖を含有し得る。同様に、「マウス抗体」は、マウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。あるいは、完全ヒト抗体は、ラットにおいて、ラット細胞において、またはラット細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生された場合、ラット糖鎖を含有し得る。同様に、「ラット抗体」は、ラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。
【0086】
一般に、基本抗体構造ユニットは、四量体を含む。各四量体は、各対が1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する、同一の2対のポリペプチド鎖を含む。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~110アミノ酸またはそれを超えるアミノ酸数の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を規定し得る。典型的に、ヒト軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖として分類される。さらに、ヒト重鎖は、典型的にミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとしてそれぞれ規定する。軽鎖および重鎖内の可変および定常領域は、約12アミノ酸またはそれを超えるアミノ酸数の「J」領域により結合されており、重鎖は、さらに約10アミノ酸の「D」領域も含む。一般に、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。
【0087】
各軽/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、無傷抗体は、2つの結合部位を有する。二機能性または二重特異性の場合を除いて、2つの結合部位は、一般に、同じである。
【0088】
典型的に、重鎖と軽鎖の両方の可変ドメインは、3つの超可変領域を含み、これらは、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれ、比較的保存されるフレームワーク領域(FR)内に位置する。CDRは、フレームワーク領域によって通常は整列させられており、それによって特定のエピトープへの結合が可能になる。一般に、N末端からC末端へ、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方が、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Kabat, et al.;National Institutes of Health, Bethesda, Md. ;5th ed.;NIH Publ. No. 91-3242 (1991);Kabat (1978) Adv. Prot. Chem. 32:1-75;Kabat, et al., (1977) J. Biol. Chem. 252:6609-6616;Chothia, et al., (1987) J Mol. Biol. 196:901-917またはChothia, et al., (1989) Nature 342:878-883の定義に従っている。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「超可変領域」は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基24~34(CDRL1)、50~56(CDRL2)、および89~97(CDRL3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける残基31~35(CDRH1)、50~65(CDRH2)、および95~102(CDRH3);Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.)および/または「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基26~32(CDRL1)、50~52(CDRL2)、および91~96(CDRL3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける26~32(CDRH1)、53~55(CDRH2)、および96~101(CDRH3);Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196: 901-917)を含む。本明細書で使用される場合、用語「フレームワーク」または「FR」残基は、CDR残基として本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。CDRは、抗原またはエピトープへの抗体の結合のための接触残基の大多数を提供する。目的のCDRは、ドナー抗体可変重鎖および軽鎖配列に由来し、天然に存在するCDRのアナログを含み、これらのアナログはまた、それらが由来したドナー抗体と同じ抗原結合特異性および/または中和能力を共有または保持する。
【0090】
加えて、一部の実施形態では、抗体は、完全長抗体、単一ドメイン抗体、組換え重鎖のみ抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメ重鎖のみ抗体(VNAR)、マイクロタンパク質(システインノットタンパク質、ノッチン)、DARPin;テトラネクチン;アフィボディ;トランスボディ;アンチカリン;AdNectin;アフィリン;ミクロボディ;ペプチドアプタマー;アルテラーゼ;プラスチック抗体;フィロマー;ストラドボディ;マキシボディ;エビボディ;フィノマー、アルマジロリピートタンパク質、クニッツドメイン、アビマー、アトリマー、プロボディ、イムノボディ、トリオマブ、トロイボディ;ペプボディ;ワクチボディ、UniBody;アフィマー;DuoBody、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、ペプチドミメティック分子、または米国特許第7,417,130号、米国特許出願公開第2004/132094号、米国特許第5,831,012号、米国特許出願公開第2004/023334号、米国特許第7,250,297号、米国特許第6,818,418号、米国特許出願公開第2004/209243号、米国特許第7,838,629号、米国特許第7,186,524号、米国特許第6,004,746号、米国特許第5,475,096号、米国特許出願公開第2004/146938号、米国特許出願公開第2004/157209号、米国特許第6,994,982号、米国特許第6,794,144号、米国特許出願公開第2010/239633号、米国特許第7,803,907号、米国特許出願公開第2010/119446号、および/もしくは米国特許第7,166,697号に記載されているような合成分子の形態をとり得、前記参考特許文献の各々は、これによりそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。Storz MAbs. 2011 May-Jun;3(3): 310-317も参照されたく、これは、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
用語「抗原」は、本明細書で使用される場合、直接もしくは間接的にどちらかで抗体を生じさせる能力がある、または抗体に結合する、任意の分子を意味する。「抗原」の定義には、タンパク質コード核酸が含まれる。「抗原」は、抗体の結合パートナーも指し得る。一部の実施形態では、抗原は、細胞の表面に発現されるIGF-1Rタンパク質である。一部の実施形態では、細胞は、無傷細胞である。無傷細胞は、界面活性物質または他の試薬の使用によって溶解されても破裂されてもいない細胞である。細胞膜を破壊するまたは細胞膜に穴を開ける界面活性物質または他の試薬によって処置された細胞は、無傷細胞ではない。例えば、IGF-1Rタンパク質に結合する抗体を生成するための方法であって、IGF-1R抗体をコードする核酸分子を含む細胞を培養するステップを含む方法が、本明細書で提供される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」または「免疫特異的結合」または「免疫特異的に結合する」は、所定の抗原(例えば、IGF-1R)に結合するまたは抗原上に存在するエピトープに結合する抗体を指す。一部の実施形態では、抗体は、10-7Mまたはそれ未満の解離定数(K)で結合し、所定の抗原に、所定の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン、または別の非特異的ポリペプチド)への結合についてのそのKの2分の1以下であるKで、結合する。句「IGF-1Rを認識する抗体」および「IGF-1Rに特異的な抗体」は、本明細書では、用語「IGF-1Rに免疫特異的に結合する抗体」と同義で使用される。本開示ではIGF-1Rに言及し得る。抗IGF-1R抗体に必要な特異性の程度は、抗体の意図された使用に依存し得、いずれにせよ、意図された目的のための使用に対するその好適性により定義される。一部の実施形態では、企図される方法の、抗体、または抗体の抗原結合部位に由来する結合化合物は、その抗原(IGF-1R)に、任意の他の抗原との親和性より少なくとも2倍大きい、少なくとも10倍大きい、少なくとも20倍大きい、または少なくとも100倍大きい親和性で結合する。
【0093】
競合阻害によりmAb特異性および親和性を決定するための方法は、Harlow, et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988)、Colligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)、およびMuller, Meth. Enzymol. 92:589 601 (1983)において見つけることができ、これらの参考文献は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
用語「ホモログ」は、参照配列に対して40%~100%の間の配列相同性または同一性を有するタンパク質配列を意味する。2つのペプチド鎖間の同一性パーセントは、Vector NTI v.9.0.0(Invitrogen Corp.、Carslbad、Calif)のAlignXモジュールのデフォルト設定を使用してペアワイズアラインメントにより決定することができる。一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合断片は、本明細書に記載の配列に対して少なくとも50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の相同性または同一性を有する。一部の実施形態では、抗体は、本明細書に記載の配列と比較して保存的置換を有する。例示的な保存的置換は、表1に示されており、開示される主題の範囲内に包含される。保存的置換は、それらが抗体の性質に悪影響を与えない限り、フレームワーク領域にまたは抗原結合部位に存在してもよい。置換を行って、抗体の性質、例えば安定性または親和性、を改善することができる。保存的置換は、そのような改変を加えていない分子と同様の機能的および化学的特性を有する分子を生じさせることになる。例示的なアミノ酸置換は、下の表に示される。
【表1】
【0095】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるタンパク質およびペプチドのバリアントが、提供される。一部の実施形態では、バリアントは、置換、欠失または挿入を含む。一部の実施形態では、バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10(例えば、1~10)の置換を含む。本明細書に記載されるように、置換は、保存的置換であることがある。一部の実施形態では、置換は、非保存的置換である。一部の実施形態では、バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10(例えば、1~10)の欠失を含む。一部の実施形態では、バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10(例えば、1~10)の挿入を含む。一部の実施形態では、置換、欠失または挿入は、本明細書で規定されるCDRに存在する。一部の実施形態では、置換、欠失または挿入は、本明細書で規定されるCDRに存在しない。
【0096】
用語「と組み合わせて」は、本明細書で使用される場合、記載される薬剤が、動物または対象に、混合物で一緒に、単一薬剤として同時に、または単一薬剤として任意の順序で逐次的に投与され得ることを意味する。
【0097】
小さいペプチド配列に対する抗体を生じさせるための技法であって、遊離もしくはコンジュゲート形態での、または大きいタンパク質に関連してネイティブ配列として提示されたときに、それらの配列を認識し、結合する、抗体を生じさせるための技法は、当技術分野において周知である。そのような抗体には、当技術分野において公知のハイブリドーマまたは組換え技法により産生されるマウス、マウス-ヒトおよびヒト-ヒト抗体が含まれる。抗体は、ヒト、マウス、ヒツジ、ラット、ウサギ、サメ、ラマまたはニワトリにおいても産生され得る。一部の実施形態では、抗体は、ニワトリにおいて産生される。抗体は、他の小動物においても産生され得る。
【0098】
用語「エピトープ」は、抗体がAbの抗原結合領域の1つまたは複数において認識または結合し得る任意の分子の部分を指すことを意図したものである。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面の基からなり、特異的三次元構造特性はもちろん特異的電荷特性も有する。エピトープの例は、IGF-1Rエピトープを形成する本明細書に記載の残基を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、エピトープは、非変性タンパク質にのみ存在する。一部の実施形態では、エピトープは、変性タンパク質にのみ存在する。
【0099】
一部の実施形態では、非ヒト抗体をコードするDNAの供給源は、抗体を産生する細胞系、例えば、ハイブリドーマとして一般に公知のハイブリッド細胞系を含む。
【0100】
ハイブリッド細胞は、非ヒト抗体産生細胞、典型的には、天然抗原もしくは組換え抗原のどちらか、または抗原タンパク質配列のペプチド断片、に対する免疫がある動物の脾細胞、の融合により形成される。あるいは、非ヒト抗体産生細胞は、抗原で免疫された動物の血液、脾臓、リンパ節または他の組織から得られるBリンパ球であり得る。
【0101】
不死化機能をもたらす第2の融合パートナーは、リンパ芽球様細胞または形質細胞腫もしくは骨髄腫細胞であり得、これらは、それ自体は抗体産生細胞ではなく、悪性である。融合パートナー細胞は、SP2/0と略記されるハイブリドーマSP2/0-Ag14(ATCC CRL1581)、および骨髄腫P3X63Ag8(ATCC TIB9)、またはその誘導体を含むが、これらに限定されない。例えば、下記のAusubel、下記のHarlowおよび下記のColliganを参照されたく、これらの参考文献の内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
抗体は本明細書で提供される例に従って生成することができる。配列が分かれば、公知の方法に従って抗体を生成することもできる。抗体は、ヒトIgGなどに変換することなど、異なるタイプに変換することもできる。抗体をヒト抗体に変換することにより、ヒト対象は、抗体を異物と見なさないはずである。ヒトIgG抗体への非ヒトIgG抗体の変換は周知で有り、ネイティブ配列が分かれば常套的に行うことができる。本明細書で論じられるように、抗体は公知の方法に従って改変することができる。そのような方法は、例えば、Riechmann L, Clark M, Waldmann H, Winter G (1988). Reshaping human antibodies for therapy". Nature 332 (6162): 332-323;Tsurushita N, Park M, Pakabunto K, Ong K, Avdalovic A, Fu H, Jia A, Vasquez M, Kumar S. (2004)に記載されている。キメラ抗体の抗原結合領域をコードするヌクレオチド配列に寄与する抗体産生細胞を、非ヒト、例えば霊長類、またはヒト細胞の形質転換により産生することもできる。例えば、抗体を産生するBリンパ球は、エプスタイン・バーウイルスなどのウイルスに感染させ、形質転換して、不死抗体産生細胞を生じさせることができる(Kozbor et al., Immunol. Today 4:72 79 (1983))。あるいは、当技術分野において周知であるように、形質変換遺伝子または形質変換遺伝子産物を提供することによりBリンパ球を形質変換することができる。例えば、下記のAusubel、下記のHarlowおよび下記のColliganを参照されたく、これらの参考文献の内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。細胞融合は、免疫学分野の当業者に周知の標準手順により遂行される。融合パートナー細胞系、ならびにハイブリドーマを融合および選択するための方法およびmAbについてスクリーニングするための方法は、当技術分野において周知である。例えば、下記のAusubel、下記のHarlowおよび下記のColliganを参照されたく、これらの参考文献の内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
一部の実施形態では、抗体は、IGF-1Rに結合するMAbである。一部の実施形態では、抗体は、IGF-1Rのエピトープのアミノ酸に結合する。
【0104】
一部の実施形態では、抗体は、本明細書で規定の配列を含む。
【0105】
抗体の配列は、ヒトIgG抗体を産生するように改変することができる。本明細書で提供される配列の変換は、他のタイプの抗体を生じさせるように改変することができる。CDRを他の抗体、タンパク質または分子に連結させて、IGF-1Rに結合する抗体断片を作出することもできる。これは、抗体薬物コンジュゲート(「ADC」)、多重特異性分子、またはキメラ抗原受容体の形態のものであり得る。本明細書で提供されるCDRおよび抗体配列は、公知の方法に従って、ヒト化することまたは完全ヒトにすることもできる。配列は、本明細書に記載のキメラ抗体にすることもできる。
【0106】
一部の実施形態では、抗体は、本明細書で規定される配列またはその断片を含む、アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は、本明細書で提供されるとおりの1つもしくは複数のアミノ酸配列、その抗原結合断片、またはそのヒトIgGバリアントを含む。「そのヒトIgGバリアント」は、出発抗体がヒトIgG抗体でない場合にヒトIgGになるように改変された抗体を指す。
【0107】
本明細書に記載されるように、公知の配列を有する抗体の産生は常套的であり、任意の方法により行うことができる。したがって、一部の実施形態では、抗体またはその断片をコードする核酸が提供される。一部の実施形態では、核酸は、本明細書で規定される配列をコードする。抗体は、キメラ抗体またはヒト抗体になるように改変することもできる。抗体は注射可能な医薬組成物において使用することもできる。また本明細書に記載されるように、抗体は、単離された抗体または操作された抗体であることがある。
【0108】
一部の実施形態では、抗体の「誘導体」、その断片、領域または誘導体が提供され、この用語は、免疫グロブリン断片に機能が似ている分子種を生じさせるために短縮化または改変された遺伝子によりコードされるタンパク質を含む。改変は、植物および細菌毒素などの毒性タンパク質をコードする遺伝子配列の付加を含むが、これに限定されない。改変は、レポータータンパク質、例えば、蛍光または化学発光タグも含み得る。断片および誘導体を任意の方法で産生することができる。
【0109】
本明細書に記載されるAbにより認識されるこれらの抗原結合領域および/またはエピトープの同定によって、本願の実施形態と同等である同様の結合特性および治療的または診断的有用性を有する追加のモノクローナル抗体を生成するために必要な情報が得られる。
【0110】
本明細書に記載される抗体をコードする核酸配列は、本明細書に記載される可変領域の少なくとも1つをコードするゲノムDNAもしくはcDNAまたはRNA(例えば、mRNA)であり得る。V領域抗原結合セグメントをコードするDNAの供給源としての染色体遺伝子断片の使用に対する適便な代替案は、例えば、Liuら(Proc. Natl. Acad. Sci., USA 84:3439 (1987)およびJ. Immunology 139:3521 (1987)、これらの参考文献は、これにより全体が参照により本明細書に組み込まれる)により報告されたような、キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのcDNAの使用である。cDNAの使用は、所望のタンパク質の合成を達成するために、遺伝子と組み合せられる宿主細胞に適した遺伝子発現エレメントを必要とする。cDNA配列の使用は、適切なRNAスプライシング系を欠いている細菌または他の宿主においてcDNA配列を発現させることができる点で、ゲノム配列(イントロンを含有する)より有利である。
【0111】
例えば、IGF-1R抗原を検出すること、それに結合すること、またはそれを中和することができるV領域抗原結合セグメントをコードするcDNAを、本明細書で提供されるアミノ酸配列の使用に基づいて公知の方法を使用して得ることができる。遺伝コードは縮重しているので、1つより多くのコドンが特定のアミノ酸をコードするために使用され得る(Watson, et al.、下記)。遺伝コードを使用して、各々がアミノ酸をコードすることができるであろう1つまたは複数の異なるオリゴヌクレオチドを同定することができる。特定のオリゴヌクレオチドが、実際に、実際のXXXコード配列を構成する確率を、異常な塩基対合関係、および抗体または断片を発現する真核または原核細胞において特定のコドンが実際に使用される(特定のアミノ酸をコードするために)頻度を考慮することにより、推定することができる。そのような「コドン使用規則」は、Lathe, et al., J. Molec. Biol. 183:1 12 (1985)により開示されている。Latheの「コドン使用規則」を使用して、抗体可変または定常領域配列をコードすることができる理論的に「最も可能性の高い」ヌクレオチド配列を含有する単一オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドセットが同定される。
【0112】
本明細書に記載の可変領域は、ヒト定常領域またはマウス定常領域をはじめとする任意のタイプの定常領域と組み合わせることができる。抗体、断片および領域の、定常(C)領域をコードするヒト遺伝子は、任意の方法により、ヒト胎児肝ライブラリーから導出することができる。ヒトC領域の遺伝子は、ヒト免疫グロブリンを発現および産生するものを含む任意のヒト細胞に由来し得る。ヒトC領域は、ガンマ、μ、α、δまたはεを含むヒトH鎖の公知のクラスまたはアイソタイプ、ならびにそのサブタイプ、例えば、G1、G2、G3およびG4のいずれかに由来し得る。H鎖アイソタイプは、抗体の様々なエフェクター機能に関与するので、C領域の選択は、所望のエフェクター機能、例えば、補体結合、または抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の活性により導かれることになる。好ましくは、C領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ3(IgG3)、ガンマ4(IgG4)、またはμ(IgM)に由来する。ヒトC領域は、ヒトL鎖アイソタイプ、カッパまたはラムダ、のどちらかに由来し得る。一部の実施形態では、抗体は、Fcドメインを含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、抗体の半減期を延長する変異を含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,670,600号に記載されているものなどの、変異を含む。一部の実施形態では、定常領域は、KabatのEU番号付け指標に従って番号付けして、野生型ヒトIgG定常ドメインと比べてアミノ酸残基428の位置に変異を含む。いずれかの特定の理論に拘束されるものではないが、残基428に対応する変異を含む抗体は、野生型ヒトIgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して増加した半減期を有し得る。一部の実施形態では、変異は、トレオニン、ロイシン、フェニルアラニンまたはセリンでのネイティブ残基の置換である。一部の実施形態では、抗体は、対応する野生型ヒトIgG定常ドメインと比べて、Kabat EU番号付け指標に従ってアミノ酸残基251~256、285~290、308~314、385~389、および429~436のうちの1つまたは複数に1つまたは複数のアミノ酸置換をさらに含む。これらの位置における特定の変異または置換は、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,670,600号に記載されている。
【0113】
ヒト免疫グロブリンC領域をコードする遺伝子は、標準的なクローニング技法(Sambrook, et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)およびAusubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology (1987 1993))によりヒト細胞から得ることができる。ヒトC領域遺伝子は、L鎖の2つのクラス、H鎖の5つのクラスおよびこれらのサブクラスを代表する遺伝子を含有する公知のクローンから容易に入手可能である。キメラ抗体断片、例えば、F(ab’)およびFabは、適切に短縮化されているキメラH鎖遺伝子を設計することにより調製することができる。例えば、F(ab’)断片のH鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCHドメインおよびヒンジ領域、続いて、短縮化分子を生じさせるための翻訳停止コドンをコードする、DNA配列を含むことになる。
【0114】
一部の実施形態では、抗体、マウス、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、本明細書に記載される抗体の断片および領域は、IGF-1R抗原特異的抗体のHおよびL鎖抗原結合領域をコードするDNAセグメントをクローニングし、これらのDNAセグメントを、CおよびC領域をコードするDNAセグメントにそれぞれ結合させて、マウス、ヒトまたはキメラ免疫グロブリンコード遺伝子を生成することにより、生成される。
【0115】
それ故、一部の実施形態では、ヒトC領域の少なくとも一部をコードする第2のDNAセグメントに連結された、結合(J)セグメントを有する機能的に再配列されたV領域などの、非ヒト起源の抗原結合領域を少なくともコードする第1のDNAセグメントを含む、融合キメラ遺伝子が、作出される。
【0116】
したがって、抗体VおよびC領域をコードするcDNA、本明細書に記載される実施形態の一部に従って抗体を産生する方法は、下で例示されるようないくつかのステップを含む:1.抗IGF-1R抗原抗体を産生する細胞系からの、ならびに重鎖および軽鎖定常領域を供給する必要に応じた追加の抗体からの、メッセンジャーRNA(mRNA)の単離;それらからのクローニングおよびcDNAの産生;2.LおよびH鎖遺伝子の適切なVおよび/またはC領域遺伝子セグメントを(i)適切なプローブで同定すること、(ii)シークエンシングすること、および(iii)キメラ抗体については別の抗体からのCまたはV遺伝子セグメントと適合するものにすることができる、精製されたmRNAからの完全長cDNAライブラリーの調製;3.上記のクローニングされたC領域遺伝子へのクローニングされた特定のV領域遺伝子セグメントの連結による、完全HまたはL鎖コード配列の構築;4.マウス-マウス、ヒト-マウス、ヒト-ヒトまたはヒトマウス抗体を提供するための、原核および真核細胞を含む選択された宿主におけるLおよびH鎖の発現および産生。
【0117】
2つのコードDNA配列は、連結が、継続的に翻訳可能な配列を、トリプレットリーディングフレームを変更することも妨げることもなく、生じさせる結果となる場合、「作動可能に連結されている」と言われる。DNAコード配列は、連結が、コード配列の発現につながる遺伝子発現エレメントの適切な機能を生じさせる結果となる場合、その遺伝子発現エレメントに作動可能に連結されている。
【0118】
本明細書で使用される場合、および別段の指示がない限り、用語「約」は、それが修飾する値の±5%を意味することを意図したものである。したがって、約100は、95~105を意味する。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、抗原の存在を検出するために使用される。抗原の存在を検出するための任意のデバイスまたは方法において本抗体を使用することができる。
【0120】
抗体に関して用語「精製された」は、その天然環境で分子に付随する他の物質を実質的に含まない抗体を指す。例えば、精製されたタンパク質は、それが由来する細胞または組織からの細胞物質も他のタンパク質も実質的に含まない。この用語は、単離されたタンパク質が、分析するのに十分に純粋である、または少なくとも70%~80%(w/w)純粋、少なくとも80%~90%(w/w)純粋、90~95%純粋;および少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%(w/w)純粋である、調製物を指す。一部の実施形態では、抗体は、精製されている。
【0121】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための代替案として、本明細書に記載されるポリペプチドで組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングして、それによって、ポリペプチドに結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することにより、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を同定および単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを生成およびスクリーニングするための技法および市販のキットは、当業者に周知である。加えて、抗体または抗原結合タンパク質ディスプレイライブラリーの生成およびスクリーニングにおける使用に特に適している方法および試薬の例は、文献で見つけることができる。したがって、本明細書に記載されるエピトープを使用して、治療に、診断に、または研究ツールとして使用することができる他の抗体についてスクリーニングすることができる。
【0122】
抗体コンジュゲート
【0123】
本明細書で規定される抗体は、化学的部分にコンジュゲートすることもできる。化学的部分は、とりわけ、ポリマー、放射性核種または細胞傷害性因子であり得る。一部の実施形態では、これは、抗体薬物コンジュゲートと呼ばれることがある。一部の実施形態では、化学的部分は、対象の体内での抗体分子の半減期を増加させるポリマーである。好適なポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDaまたは40kDaの分子量を有するPEG)、デキストランおよびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が挙げられるが、これらに限定されない。Lee, et al., (1999) (Bioconj. Chem. 10:973-981)には、PEGコンジュゲート一本鎖抗体が開示されている。Wen, et al., (2001) (Bioconj. Chem. 12:545-553)には、放射性金属キレーター(ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))に結合しているPEGとの抗体のコンジュゲーションが開示されている。化学的部分の例としては、抗有糸分裂薬、例えば、カリケアマイシン(例えば、オゾガマイシン)、モノメチルアウリスタチンE、メルタンシンなどが挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、生物活性微小管阻害剤、アルキル化剤およびDNA副溝結合剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の例は、本明細書中で下に提供される。化学的部分を、抗体に、連結基(マレイミド)、切断可能なリンカー、例えばカテプシン切断可能なリンカー(バリン-シトルリン)、および一部の実施形態では、1つまたは複数のスペーサー(例えば、パラ-アミノベンジルカルバメート)によって連結させることができる。いずれかの特定の理論に拘束されるものではないが、抗体コンジュゲートがIGF-1Rに結合すると、それは内在化することができ、化学的部分は、細胞を死滅させるまたはその成長を別様に阻害することができる。一部の実施形態では、細胞は、甲状腺細胞である。
【0124】
本発明の抗体および抗体断片は、標識、例えば、99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67CU、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、および40K、157Gd、55Mn、52Trおよび56Feと、コンジュゲートすることもできる。
【0125】
抗体および抗体断片を、フルオロフォア、例えば、希土類キレート、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド(phthaladehyde)、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナル標識、イソルミナル標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム(acridimium)塩標識、シュウ酸エステル標識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識および安定なフリーラジカルをはじめとする、蛍光または化学発光標識と、コンジュゲートすることもできる。
【0126】
抗体分子は、細胞傷害性因子、例えば、ジフテリア毒素、Pseudomonas aeruginosaエキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質および化合物(例えば、脂肪酸)、ジアンチンタンパク質、Phytoiacca americanaタンパク質PAPI、PAPII、およびPAP-S、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、saponaria officinalis阻害剤、マイトジェリン、レストリクトシン、フェノマイシン、およびエノマイシンにコンジュゲートすることもできる。
【0127】
本発明の抗体分子を様々な部分にコンジュゲートするために、Hunter, et al., (1962) Nature 144:945;David, et al., (1974) Biochemistry 13:1014;Pain, et al., (1981) J. Immunol. Meth. 40:219;およびNygren, J., (1982) Histochem. and Cytochem. 30:407に記載されている方法を含む当技術分野において公知の任意の方法を、利用することができる。抗体をコンジュゲートするための方法は、従来的であり、当技術分野において非常によく知られている。
【0128】
キメラ抗原受容体
【0129】
本明細書で提供される抗体は、キメラ抗原受容体(「CAR」)に組み込むこともでき、それを、例えばCAR-T細胞において、使用することができる。一部の実施形態では、CARの細胞外ドメインは、本明細書で提供される抗体であり得る。一部の実施形態では、抗体は、scFv形式のものである。CAR-T細胞は、IGF-1Rを発現する細胞をそれらが攻撃することになるように患者のT細胞が改変される、ある種の処置である。T細胞は、患者の血液から採取される。次いで、患者の細胞上のある特定のタンパク質に結合する特別な受容体の遺伝子が研究室で加えられる。一部の実施形態では、受容体は、本明細書で規定される抗体の結合領域を使用してIGF-1Rに結合する。次いで、IGF-1R抗体を含むCAR-T細胞を使用して、本明細書で規定されるものなどの状態を処置することができる。
【0130】
一部の実施形態では、抗体(例えば、抗IGF-1R抗体)が本明細書で提供される。一部の実施形態では、抗体は、IGF-1Rタンパク質に結合する組換え抗体である。一部の実施形態では、IGF-1Rタンパク質は、ヒトIGF-1Rタンパク質である。一部の実施形態では、抗体により認識されるIGF-1Rタンパク質は、そのネイティブ高次構造(非変性)高次構造のものである。一部の実施形態では、抗体は、変性IGF-1Rタンパク質に特異的に結合しない。本明細書で使用される場合、用語「組換え抗体」は、天然に存在しない抗体を指す。一部の実施形態では、用語「組換え抗体」は、ヒト対象から単離されない抗体を指す。
【0131】
一部の実施形態では、抗体は、以下の配列を有する1つまたは複数のペプチド、またはそのバリアントを含む:
【表3】
【0132】
VHおよびVL配列は、VHおよびVL領域がペプチドリンカーで連結されているscFv形式を含むがこれに限定されない、任意の形式のものであり得る。本明細書で規定される様々なペプチドを連結するために使用され得るペプチドリンカーの例としては、(GGGGS)(配列番号12);(GGGGA)(配列番号13)、またはこれらの任意の組合せが挙げられるが、それらに限定されず、ここでの各nは、独立して1~5である。一部の実施形態では、可変領域は、ペプチドリンカーで連結されていない。一部の実施形態では、抗体は、配列番号10および11で示されるポリペプチドを含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、抗体は、配列番号3、4、5、6、7、8および9を含む、ポリペプチドを含む。
【0133】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合断片が提供され、抗体または抗体断片は、以下の表から選択されるペプチドを含む。
【0134】
【表4】
【0135】
一部の実施形態では、抗体は、1つまたは複数の可変ドメイン(イタリック体)CDR(イタリック体および太字)およびヒトIgG1/カッパ定常ドメイン(下線付き)を含む、以下の配列を有する1つもしくは複数のペプチド、またはそのバリアントを含む:
【表5】
【0136】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗体結合断片は、配列番号10および11の配列を有する、重鎖または軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体、またはその抗体結合断片は、配列番号10の配列を有する重鎖を含む。一部の実施形態では、抗体、またはその抗体結合断片は、配列番号10のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一である配列を有する重鎖を含む。一部の実施形態では、配列番号10のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一である配列は、上に示されている配列番号7、8および/または9のCDRを含む。
【0137】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗体結合断片は、配列番号11の配列を有する軽鎖を含む。一部の実施形態では、抗体、またはその抗体結合断片は、配列番号11のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一である配列を有する軽鎖を含む。一部の実施形態では、配列番号11のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一である配列は、上に示されている配列番号7、8および/または9のCDRを含む。
【0138】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗体結合断片は、配列番号4、5または6の配列を有する軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、抗体、またはその抗体結合断片は、配列番号7、8または9の配列を有する重鎖CDRを含む。
【0139】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗体結合断片は、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を有する軽鎖を含み、LCDR1は、配列番号4の配列を有し、LCDR2は、配列番号5の配列を有し、LCDR3は、配列番号6の配列を有する。
【0140】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗体結合断片は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を有する重鎖を含み、HCDR1は、配列番号7の配列を有し、HCDR2は、配列番号8の配列を有し、HCDR3は、配列番号9の配列を有する。
【0141】
異なるCDRモチーフを、上の表に描示されていないものを含む任意の組合せで、組み合わせることができる。例えば、以下の実施形態が、そのような組合せの非限定的な例として提供される。
【0142】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合断片は、(i)軽鎖CDR1配列が配列番号4のアミノ酸配列を有し、軽鎖CDR2配列が配列番号5のアミノ酸配列を有し、軽鎖CDR3配列が配列番号6のアミノ酸配列を有する、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域;および(ii)重鎖CDR1配列が配列番号7のアミノ酸配列を有し、重鎖CDR2配列が配列番号8のアミノ酸配列を有し、重鎖CDR3配列が配列番号9のアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域;または前述のものの任意のバリアントを含む。
【0143】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合断片は、(i)軽鎖CDR1配列が配列番号4のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一であるアミノ酸配列を有し、軽鎖CDR2が配列番号5のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一であるアミノ酸配列を有し、軽鎖CDR3配列が配列番号6のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一であるアミノ酸配列を有する、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域;および(ii)重鎖CDR1配列が配列番号7のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一であるアミノ酸配列を有し、重鎖CDR2配列が配列番号8のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一であるアミノ酸配列を有し、重鎖CDR3配列が配列番号9のものと95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または実質的に100%同一であるアミノ酸配列を有する、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域;または前述のものの任意のバリアントを含む。
【0144】
一部の実施形態では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11のいずれかで示される配列を有するペプチドを含む、抗体、またはその抗原結合断片、またはタンパク質が、提供される。
【0145】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合断片は、上述のもののいずれかの配列、または上述のもののいずれかのバリアントを含む。
【0146】
医薬組成物
【0147】
一部の実施形態では、抗IGF-1R抗体または本明細書で提供される他のタンパク質の、医薬組成物または滅菌組成物を調製するために、抗体もしくはその抗原結合断片または本明細書で提供される他のタンパク質は、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia: National Formulary, Mack Publishing Company, Easton, PA (1984)を参照されたい。
【0148】
治療および診断剤の製剤は、許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することにより、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または水性懸濁液の形態で、調製され得る(例えば、Hardman, et al. (2001) Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw-Hill, New York, NY;Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams, and Wilkins, New York, NY;Avis, et al. (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, Marcel Dekker, NY;Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Marcel Dekker, NY;Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Marcel Dekker, NY;Weiner and Kotkoskie (2000) Excipient Toxicity and Safety, Marcel Dekker, Inc., New York, NYを参照されたい)。一部の実施形態では、抗体は、酢酸ナトリウム溶液pH5~6で適切な濃度に希釈され、NaClまたはスクロースが等張性のために添加される。追加の薬剤、例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80が、安定性を増強するために添加され得る。
【0149】
単独でまたは別の薬剤と組み合わせて投与される、抗体組成物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順により、決定することができる。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数(LD50/ED50)である。特定の態様では、高い治療指数を示す抗体が望ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータを、ヒトにおける使用のための投薬量範囲の公式化に使用することができる。そのような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性が殆どまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内に存する。投薬量は、利用される剤形、および投与経路に依存して、この範囲内で変動し得る。
【0150】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、Physicians' Desk Reference 2003 (Thomson Healthcare; 57th edition (November 1, 2002))に従って対象に投与される。
【0151】
投与方法は、様々であり得る。好適な投与経路としては、経口、直腸、経粘膜、腸、非経口;筋肉内、皮下、皮内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、吸入、通気、局所的、皮膚、経皮または動脈内経路が挙げられる。
【0152】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、侵襲的経路により、例えば注射により、投与することができる。一部の実施形態では、抗体もしくはその抗原結合断片、またはその医薬組成物は、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、動脈内投与、関節内(例えば、関節炎罹患関節内に)投与され、または吸入、エアロゾル送達により投与される。非侵襲的経路による(例えば、経口での;例えば、丸剤、カプセルまたは錠剤での)投与も、本実施形態の範囲内である。
【0153】
一部の実施形態では、抗IGF-1R抗体、またはその抗原結合断片は、少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、これらに限定されないが、甲状腺眼疾患を処置するために使用される任意の治療薬、と組み合わせて投与される。例えば、一部の実施形態では、抗IGF-1R抗体、またはその抗原結合断片は、少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、これらに限定されないが、甲状腺眼疾患またはそれに関係する状態を処置するために使用される治療薬、と組み合わせて投与される。そのような処置および治療薬の例としては、抗甲状腺薬、糖尿病薬、ベータ遮断薬、プロピルチオウラシル、メチマゾール、プロプラノロール、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、コルチコステロイド、メトホルミン、スルホニル尿素、メグリチニド、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、GLP-1受容体アゴニスト、SGLT2阻害剤、レギュラーインスリン、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、インスリンリスプロ、インスリンイソフェン、インスリンデグルデク、インスリンデテミル、インスリングラルギン、アカルボース(acerbose)、ミグリトール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール(cartelol)、カルベジロール、エスモロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、ネビボロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、チモロール(tomolol)点眼液、シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン、デュラグルチド、エキセナチド、セマグルチド、リラグルチド、リキシセナチド、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、またはこれらの任意の組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0154】
組成物は、当技術分野において公知の医療デバイスで投与することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、例えば、充填済み注射器または自己注射器を含む、皮下針での注射により投与することができる。
【0155】
医薬組成物は、無針皮下注射デバイス、例えば、米国特許第6,620,135号、同第6,096,002号、同第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号または同第4,596,556号において開示されているデバイスで、投与することもできる。
【0156】
医薬組成物は、注入により投与することもできる。医薬組成物を投与する周知の埋め込み装置およびモジュールの形態の例としては、制御された速度で治療薬を分注するための埋め込み型微量注入ポンプを開示している米国特許第4,487,603号;正確な注入速度で薬物を送達するための治療薬注入ポンプを開示している米国特許第4,447,233号;連続薬物送達のための可変流量埋め込み型注入装置を開示している米国特許第4,447,224号;多室区画を有する浸透圧薬物送達システムを開示している米国特許第4,439,196号が挙げられる。多くの他のそのような埋め込み装置、送達システム、およびモジュールが、当業者に公知である。
【0157】
あるいは、抗体を全身的にではなく局所的に、例えば、免疫学的病態を特徴とする関節炎罹患関節または病原体誘発病変への直接的な、多くの場合、デポまたは徐放性製剤での、抗体の注射によって、投与することができる。さらに、抗体を、標的化された薬物送達システムで、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームであって、組織特異的抗体が、例えば、免疫学的病態を特徴とする関節炎罹患関節または病原体誘発病変を標的とするものである、リポソームで、投与することができる。リポソームは、罹患組織に標的化され、罹患組織により選択的に取り込まれることになる。
【0158】
投与レジメンは、治療用抗体の血清または組織代謝回転率、症状のレベル、治療用抗体の免疫原性、および生体マトリックス内の標的細胞の接近可能性をはじめとする、いくつかの因子に依存する。好ましくは、投与レジメンは、望ましくない副作用を最小限に抑えつつ同時に標的病状の改善をもたらすために十分な治療用抗体を送達する。したがって、送達される生物製剤の量は、特定の治療用抗体、および処置される状態の重症度に、一部は依存する。治療用抗体の適切な用量の選択に関するガイダンスが利用可能である(例えば、Wawrzynczak (1996) Antibody Therapy, Bios Scientific Pub. Ltd, Oxfordshire, UK;Kresina (ed.) (1991) Monoclonal Antibodies, Cytokines and Arthritis, Marcel Dekker, New York, NY;Bach (ed.) (1993) Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases, Marcel Dekker, New York, NY;Baert, et al. (2003) New Engl. J. Med. 348:601-608;Milgrom et al. (1999) New Engl. J. Med. 341:1966-1973;Slamon et al. (2001) New Engl. J. Med. 344:783-792;Beniaminovitz et al. (2000) New Engl. J. Med. 342:613-619;Ghosh et al. (2003) New Engl. J. Med. 348:24-32;Lipsky et al. (2000) New Engl. J. Med. 343:1594-1602を参照されたい)。
【0159】
適切な用量の決定は、臨床医により、例えば、当技術分野において処置に影響を与えることが公知のまたはそう思われているパラメーターまたは因子を使用して、行われる。一般に、用量は、最適な用量より幾分少ない量で開始し、その後、任意のマイナスの副作用と比べて所望のまたは最適な効果が達成されるまで少しずつ増加させる。重要な診断尺度は、症状についてのもの、例えば、炎症の症状についてのもの、または産生される炎症性サイトカインのレベルを含む。一般に、使用されることになる生物製剤は、処置の標的となる動物と同じ種に由来することが望ましく、それによって試薬への一切の免疫応答が最小限に抑えられる。ヒト対象の場合、例えば、キメラ、ヒト化および完全ヒト抗体が望ましい。
【0160】
抗体またはその抗原結合断片は、持続注入により、または例えば、1日1回、週1~7回、週1回、2週間に1回、月1回、2ヵ月に1回、年4回、年2回、年1回など、投与される用量により、提供することができる。用量は、例えば、静脈内に、皮下に、局所的に、経口で、経鼻的に、直腸に、筋肉内、脳内に、脊髄内に、または吸入により提供することができる。合計の週1回用量は、一般に、少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には、少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgであるかまたはそれより多い(例えば、Yang, et al. (2003) New Engl. J. Med. 349:427-434;Herold, et al. (2002) New Engl. J. Med. 346:1692-1698;Liu, et al. (1999) J. Neurol. Neurosurg. Psych. 67:451-456;Portielji, et al. (20003) Cancer Immunol. Immunother. 52:133-144を参照されたい)。対象の血清中の抗体の所定の標的濃度、例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mlまたはそれより高い濃度、を達成するように、用量を提供することもできる。他の実施形態では、完全ヒト抗体は、週1回、2週間に1回、「4週間ごとに」、月1回、2ヵ月に1回もしくは年4回の頻度で10、20、50、80、100、200、500、1000もしくは2500mg/対象で、または本明細書で別様に規定されるように、皮下または静脈内投与される。
【0161】
本明細書で使用される場合、「抑制する」または「処置する」または「処置」は、障害に関連する症状の発症を遅らせること、および/またはそのような障害の症状の重症度の低下を含む。これらの用語は、既存の無制御のまたは望ましくない症状を軽快させること、追加の症状を予防すること、およびそのような症状の基礎疾患を軽快させることまたは予防することをさらに含む。したがって、これらの用語は、有益な結果が、障害、疾患もしくは症状を有する脊椎動物対象またはそのような障害、疾患もしくは症状を発症する可能性がある脊椎動物対象にもたらされたことを意味する。
【0162】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」、「治療有効用量」および「有効量」は、単独でまたは追加の治療剤と組み合わせて細胞、組織または対象に投与されたとき、疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状のまたはそのような疾患もしくは状態の進行の測定可能な改善を引き起こすのに有効である、抗体またはその抗原結合断片の量を指す。治療有効用量は、症状の少なくとも部分的軽快、例えば、関連する医学的状態の処置、治癒、予防もしくは軽快、またはそのような状態の処置率、治癒率、予防率もしくは軽快率の上昇、をもたらすのに十分な結合化合物の量を、さらに指す。単独で投与される個々の活性成分に適用されるとき、治療有効用量は、単独でのその成分を指す。組合せに適用されるとき、治療有効用量は、組み合わせて逐次的に投与されるのか同時に投与されるのかを問わず、治療効果をもたらす、活性成分の組み合わせられた量を指す。治療薬の有効量は、診断尺度またはパラメーターを少なくとも10%、通常は少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%、改善する結果となる。有効量はまた、主観的尺度が疾患重症度を評価するために使用される場合、主観的尺度を改善する結果となり得る。一部の実施形態では、量は、使用して本明細書で規定の状態を処置することまたは軽快させることができる量である場合、治療有効量である。
【0163】
至る所で使用されるような用語「対象」は、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)および例えばヒトをはじめとする、動物などの、任意の生物を含む。対象は、患者と呼ばれることもある。一部の実施形態では、対象は、処置を必要とする対象である。「処置を必要とする」対象は、処置されることになる状態について処置を必要とすると特定された対象であって、そのような状態を処置するという特定の意図をもって処置される対象を指す。状態は、例えば、本明細書に記載される状態のいずれかであり得る。
【0164】
単離された抗体は、IGF-1Rタンパク質または本明細書に記載される他のタンパク質上のエピトープに結合し、in vitroおよび/またはin vivo IGF-1R阻害または治療活性を提示するが、IGF-1R機能を阻害することができる抗体またはその抗原結合断片は、ヒトにおけるIGF-1R関連状態を処置するための治療剤としても、動物におけるIGF-1R関連状態を処置するための治療剤としても、好適である。これらの状態には、甲状腺眼疾患が含まれる。したがって、そのような状態を処置する方法であって、そのような状態を有する対象に抗体またはその抗原結合断片を投与するステップを含む方法も、提供される。
【0165】
一部の実施形態では、方法は、本明細書に記載される1つもしくは複数のモノクローナル抗体または抗体の抗原結合断片の治療または予防有効量を、感受性対象に、またはIGF-1Rが観察される病態を引き起こしたことが既知であるもしくは疑われる状態を示す者に、投与するステップを含む。scFv、FabおよびF(ab’)2断片ならびに本明細書で規定される抗体の他の形態を含むがこれらに限定されない、抗体の任意の活性形態を投与することができる。
【0166】
本明細書で使用される場合、IGF-1R関連病態は、IGF-1Rのモジュレーションにより引き起こされる状態を指す。これらの状態には、甲状腺眼疾患および本明細書で規定される他の状態が含まれるが、これらに限定されない。
【0167】
一部の実施形態では、使用される抗体は、レシピエント種に適合し、したがって、MAbへの免疫応答は、受け入れ難いほど短い循環半減期をもたらすことも、対象におけるMAbへの免疫応答を誘導することもない。
【0168】
個体の処置は、本明細書に記載される抗体の治療有効量の投与を含み得る。抗体は、本明細書で提供されるものなどの、キットで提供することができる。抗体は、単独で、または別の治療薬、鎮痛剤もしくは診断剤、例えば本明細書で規定されるもの、との混合物で、使用または投与することができる。IGF-1Rに結合することができる抗体もしくはその断片、またはレシピエント患者におけるIGF-1R病態から保護をもたらすことができる抗体を、患者に提供する場合、投与される薬剤の投薬量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身病状、以前の病歴などのような因子によって変わることになる。
【0169】
IGF-1R活性に関連する状態を処置することができる抗体、またはIGF-1R関連病態を処置するための使用は、IGF-1R関連症状または病態の軽減、解消または軽快に影響を与えるのに十分な量で対象に提供されることを意図したものである。そのような病態には、甲状腺眼疾患などが含まれる。
【0170】
したがって、一部の実施形態では、IGF-1R関連障害を有する対象を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、本明細書で提供されるように、抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を投与するステップを含む。一部の実施形態では、障害は、甲状腺眼疾患である。本明細書で規定されるように、抗体またはその抗原結合断片は、他の治療薬とともに投与することができる。これらは同時にまたは逐次的に投与することができる。
【0171】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片を使用して、甲状腺眼疾患を処置することができる。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片を使用して、甲状腺眼症(TAO)もしくはその症状を処置することができ、またはその重症度を低下させることができる。
【0172】
一部の実施形態では、方法または使用は、甲状腺眼症(TAO)を有する対象の眼における眼球突出を低減させるために提供される。
【0173】
一部の実施形態では、対象は、本明細書で提供されるものとは異なる抗体で以前に処置された対象である。
【0174】
一部の実施形態では、方法または使用は、甲状腺眼症(TAO)を有するかまたは有する疑いがある対象における臨床的活動性スコア(CAS)に提供される。
【0175】
一部の実施形態では、方法または使用は、眼球突出を少なくとも2mm低減させるために提供される。一部の実施形態では、方法または使用は、眼球突出を少なくとも3mm低減させるために提供される。一部の実施形態では、方法または使用は、眼球突出を少なくとも2~3mmまたは2~4mm低減させるために提供される。一部の実施形態では、眼球突出は、少なくとも2、3または4mm低減される。一部の実施形態では、眼球突出の低減は、第1の用量の投与から3週間以内に見られる。一部の実施形態では、眼球突出の低減は、第1の用量の投与から6週間以内に見られる。
【0176】
一部の実施形態では、対象は、甲状腺眼症(TAO)を有する対象における臨床的活動性スコア(CAS)の低減を有する。
【0177】
本明細書で使用される場合、臨床的活動性スコア(CAS)という用語は、表2に従って記載され、スコアが付けられるプロトコールを指す。このプロトコールに従って、下の表で評価されるパラメーターの各々の存在について1点が与えられる。全ての点数の合計によって臨床的活動性が定義され、CASが得られ、ここで、0または1は、非活動性疾患に相当し、7は、重度の活動性眼症に相当する。
【表2】
【0178】
表2で提供されたように、CASは、7つの構成要素:自発性球後痛、眼球運動(上方、左右、および下方注視)を企図したときの疼痛、結膜発赤、眼瞼の発赤、結膜浮腫、涙丘/ひだの腫脹、および眼瞼の腫脹からなる。各構成要素に、存在(1点)または非存在(0点)としてスコアが付けられる。各有効性評価におけるスコアは、存在する全ての項目の合計であり、0~7の範囲となり、ここで、0または1は、非活動性疾患に相当し、7は、重度の活動性眼症に相当する。>2点の変化は、臨床的に有意義と見なされる。一部の実施形態では、対象のスコアは、少なくとも2、3または4点、改善する。一部の実施形態では、対象のスコアは、第1の用量から3週間以内に改善する。一部の実施形態では、対象のスコアは、第1の用量から6週間以内に改善する。
【0179】
項目1、自発性眼窩痛は、眼球上または内の有痛または圧迫感であり得る。この疼痛は、眼窩組織体積が、細胞外基質の過剰合成、流体蓄積ならびに細胞浸潤および拡大によって増加したときに、眼窩内圧の上昇により引き起こされ得る。項目2、注視誘発眼窩痛は、見上げた、見下ろしたもしくは横目で見たときのまたはそれを企図したときの眼の疼痛、すなわち、上方、下方もしくは側方眼球運動に伴う疼痛、または眼球運動を企図したときの疼痛であり得る。この種の疼痛は、炎症を起こした筋肉の伸張により、特に、上方視を企図したときに、生じ得る。「伸張痛」は、眼窩内圧上昇の症状発現であった場合に予想されるように眼球の指圧によって誘発されることはない。両方の種類の疼痛が抗炎症処置後に軽減され得る。したがって、これらの種類の疼痛は、眼窩内の自己免疫性炎症に直接関係し、それ故、TAO活動性の評価に有用であると考えられる。
【0180】
TAOにおける腫脹は、結膜浮腫(結膜の浮腫)、表1の項目番号6、ならびに涙丘および/または半月ひだの腫脹として見られる。両方とも、TAO活動性の徴候である。眼瞼腫脹は、浮腫、眼窩隔膜からの脂肪脱出、または線維性変性に起因し得る。腫脹に加えて、活動性TAOを示唆する他の症状は、結膜、眼瞼、涙丘および/または半月ひだの発赤および/または疼痛を含む。
【0181】
一部の実施形態では、処置される対象は、眼球突出を有し、それが少なくとも2mm低減される。一部の実施形態では、処置される対象は、眼球突出を有し、それが少なくとも3mm低減される。一部の実施形態では、処置される対象は、眼球突出を有し、それが少なくとも4mm低減される。
【0182】
一部の実施形態では、処置される対象において、対象の臨床的活動性スコア(CAS)が、少なくとも2点、低減される。一部の実施形態では、対象の臨床的活動性スコア(CAS)は、一(1)に低減される。一部の実施形態では、対象の臨床的活動性スコア(CAS)は、ゼロ(0)に低減される。
【0183】
一部の実施形態では、対象における甲状腺眼症(TAO)を処置するまたはその重症度を低下させる方法であって、前記抗体での処置が(i)眼における眼球突出を少なくとも2mm低減させる;(ii)他方(または他眼)における2mmのまたはそれより大きい悪化を伴わない;および(iii)前記対象におけるCASを一(1)またはゼロ(0)に低減させる、方法が提供される。
【0184】
一部の実施形態では、甲状腺眼症(TAO、これはグレーブス眼症/グレーブス眼窩疾患とも呼ばれる)を有する対象の生活の質を改善する方法が、提供される。一部の実施形態では、生活の質は、グレーブス眼症生活の質(GO-QoL)評価により、またはその視覚的機能もしくは外見サブスケールのどちらかにより、測定される。一部の実施形態では、処置は、GO-QoLで8点より大きいまたはそれに等しい改善を生じさせる結果となる。一部の実施形態では、処置は、GO-QoLの機能サブスケールで改善を生じさせる結果となる。一部の実施形態では、処置は、GO-QoLの外見サブスケールで改善を生じさせる結果となる。
【0185】
一部の実施形態では、甲状腺眼症(TAO)を有する対象における複視を処置するまたはその重症度を低下させる方法が、提供される。一部の実施形態では、複視は、恒常的な複視である。一部の実施形態では、複視は、非恒常的な複視である。一部の実施形態では、複視は、断続的な複視である。一部の実施形態では、複視の改善またはその重症度の低下は、抗体投与の中止の少なくとも20週間後に持続している。一部の実施形態では、複視の改善またはその重症度の低下は、抗体投与の中止の少なくとも50週間後に持続している。一部の実施形態では、複視は、第1の用量から3週間以内または6週間以内に対象において改善される。
【0186】
疾患の重症度は、以下の非限定的な実施形態で測定され得る。例えば、眼瞼開口部については、眼瞼縁間の距離が、くつろいだ状態で座って、および遠方に固定した状態で、正面視で見ている患者に関して、測定される(mm単位で)。眼瞼の腫脹について、尺度/評価は、「非存在/不定」、「中等度」、または「重度」のいずれかである。眼瞼の発赤は、非存在または存在のどちらかである。結膜の発赤は、非存在または存在のどちらかである。一部の実施形態では、結膜浮腫は、非存在または存在のどちらかである。一部の実施形態では、涙丘またはひだの炎症は、非存在または存在のどちらかである。眼球突出症は、個々の患者に対して同じHertel眼球突出測定計および同じ内眼角間距離を使用してミリメートル単位で測定される。主観的複視は0~3のスコアが付けられる(0=複視なし;1=断続的、すなわち、疲労時または最初に目覚めたときの正面注視位での複視;2=非恒常的、すなわち、極度の注視時の複視;3=恒常的、すなわち、正面視または読書眼位で継続的な複視)。眼筋病変については、ひき運動が、度単位で測定される。角膜病変は、非存在/点状または角膜症/潰瘍のどちらかである。視神経病変、すなわち、最高矯正視力、色覚、視神経乳頭、相対的求心性瞳孔障害について、状態は、非存在または存在のどちらかである。加えて、視野は、視神経圧迫が疑われる場合にチェックされる。一部の実施形態では、患者は、次の重症度分類に従って分類され得る。例えば、視力を脅かす甲状腺眼疾患:甲状腺性視神経症(DON)および/または角膜破壊を有する患者。このカテゴリーは、即時介入を是認する。中等度から重度の甲状腺眼疾患:視力を脅かす疾患のない患者であって、その眼疾患が、日常生活に対して、免疫抑制(活動性の場合)または外科的介入(非活動性の場合)のリスクを正当化するのに十分な影響を及ぼすものである、患者。中等度から重度の甲状腺眼疾患を有する患者は、通常、次のうちのいずれか1つまたは複数を有する:2mmより大きいまたはそれに等しい眼瞼後退;中等度または重度の軟部組織病変;人種および性別の正常値を3mm超えて上回るまたは3mm上回る眼球突出症;非恒常的なまたは恒常的な複視。軽度の甲状腺眼疾患:甲状腺眼疾患の特徴が、日常生活に対して、免疫抑制または外科的処置を正当化するには不十分なごくわずかな影響しか及ぼさない、患者。彼らは、通常、次のうちの1つだけまたは複数を有する:わずかな眼瞼後退(<2mm)、軽度の軟部組織病変、人種および性別の正常値を<3mm上回る眼球突出症、一過性複視または複視なし、ならびに潤滑剤に反応する角膜露出。
【0187】
一部の実施形態では、患者はグレーブス眼症生活の質(GO-QoL)スコアにより特徴付けることができる。眼球突出(または眼球突出症)およびCASに加えて、生活の質も、GO生活の質(GO-QoL)質問票の使用によって評価される。この質問票は、本明細書で開示される方法での処置後の生活の質の改善を判定するようにデザインされる。一部の実施形態では、質問票は、グルココルチコイドでの処置と比較して、本明細書で開示される方法に従って抗体またはその抗原結合断片で処置された後の副作用の減少または欠如を判定することができる。GO-QoLは、2つのサブセットに分けられた16項目の自己記入質問票であり、(i)視覚機能に関係するような彼らの日常身体活動、および(ii)社会心理的機能に対する患者により認識されるTEDの影響を評価するために使用され、生活の質はGO QoL質問票の使用により評価される。GO-QoL質問票[C. B. Terwee et al, 1998]は、処置期間中の1日目ならびに6、12および24週目(またはPW)に、ならびに追跡調査期間中の7および12ヵ月目(またはPW)に、記入される。GO-QoLは、一方が日常活動に対する視覚機能の影響を対象とし、他方が自己認識する外見の影響を評価する、2つの評価サブスケールに分けられた、16項目の自己記入質問票である。視覚機能サブスケールは、運転、散歩、読書、テレビを見ることなどの、活動を対象とする。外見サブスケールは、眼症が、対象の外見を変容させたか、他の人々が対象に対して嫌な反応を示す原因となっているか、社会的孤立の原因となっているか、および対象が自分の外見を隠すように試みる原因となっているか、などの質問を対象にする。各サブスケールには、ハイ--非常にそうです;ハイ--若干;またはイイエ--全くない、で回答される8問の質問がある。各質問にそれぞれ0~2のスコアが付けられ、次いで、合計生スコアが0~100スケールに数学的に変換され、0は、生活の質に対する最も悪い影響を表し、100は、影響がないことを表す。0~100スケールで、>8点の、または8点を超える、8点に等しい変化は、臨床的に有意義であることが示されている。複合スコアは、両方のサブスケールから生スコアを取り、それらを単一の0~100スケールに再び変換する。質問票は、2つの自己評価サブスケールを有する。各サブスケールには、(i)ハイ--非常にそうです;(ii)ハイ--若干;または(iii)イイエ--全くない、で回答される8問の質問がある。各質問にそれぞれ0~2のスコアが付けられ、次いで、合計生スコアが0~100スケールに数学的に変換され、0は、生活の質に対する最も悪い影響を表し、100は、影響がないことを表す。0~100スケールで、>8点の変化は、臨床的に有意義であると見なされる。複合スコアは、両方のサブスケールから生スコアを取り、それらを単一の0~100スケールに再び変換する。
【0188】
患者を、複視のゴーマングレード分類の存在または非存在により評価することもできる。主観的複視のゴーマン評価は、4つのカテゴリー:複視なし(非存在)、患者が疲れたまたは目覚めるときの複視(断続的)、極度の注視時の複視(非恒常的)、および正面視または読書眼位での継続的な複視(恒常的)を含む。患者は、彼らが経験している複視がどのグレードであるのかによってスコアが付けられる。グレード1より大きいまたはそれに等しい改善は、臨床的に有意義と見なされる。
【0189】
一部の実施形態では、方法は、本明細書で提供されるものなどの抗体を投与するステップを含む。一部の実施形態では、抗体は、第1の用量として約1mg/kg~約5mg/kgの抗体の投薬量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、第1の用量として約5mg/kg~約10mg/kgの抗体の投薬量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、後続用量では約5mg/kg~約20mg/kgの抗体の投薬量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、次の量で投与される:第1の用量として約10mg/kgの抗体;および後続用量では約20mg/kgの抗体。一部の実施形態では、後続用量は、3週間ごとに少なくとも21週間にわたって投与される。
【0190】
一部の実施形態では、抗体は、本明細書で提供されるものなどの医薬組成物で投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、TAOの処置のための1つもしくは複数の薬学的に活性な化合物をさらに含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、コルチコステロイド;リツキシマブもしくは他の抗CD20抗体;トリシズマブもしくは他の抗IL-6抗体;またはセリン、インフリキシマブもしくは他のTNFアルファ抗体または甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)阻害剤をさらに含む。
【0191】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、IGF-IRに特異的に結合し、それを阻害する、抗体またはその抗原結合断片を、対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、抗体は、本明細書で提供されるとおりである。
【0192】
本明細書に記載される実施形態を行うために有用であるキットも提供される。本キットは、上記の抗体を収容しているまたはそれを伴って包装された第1の容器を含む。キットは、実施形態を行うために必要なまたは適便な溶液を収容しているまたはそれを伴って包装された別の容器も含む。容器は、ガラス製、プラスチック製またはホイル製であり得、バイアル、瓶、ポーチ、管、バッグなどであり得る。キットは、書面情報、例えば、実施形態を行うための手順、または分析情報、例えば、第1の容器手段に収容されている試薬の量も含み得る。容器は、書面情報とともに、別の容器装置、例えば、箱またはバッグの中にあることもある。
【0193】
本明細書で規定されるさらに別の態様は、生体試料中のIGF-1Rタンパク質を検出するためのキットである。キットは、IGF-1Rタンパク質のエピトープに結合する1つまたは複数の抗体を保持する容器と、IGF-1Rタンパク質に結合して免疫学的複合体を形成すること、および免疫学的複合体の存在または非存在が試料中のIGF-1Rタンパク質の存在または非存在と相関するような免疫学的複合体の形成を検出することを目的とした抗体の使用についての説明書とを含む。容器の例としては、複数の試料中のIGF-1Rタンパク質の同時検出を可能にするマルチウェルプレートが挙げられる。
【0194】
一部の実施形態では、IGF-1Rタンパク質に結合する抗体が提供される。一部の実施形態では、抗体は、単離されている。一部の実施形態では、抗体は、特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体は、正確に折り畳まれているIGF-1Rタンパク質に結合する。一部の実施形態では、抗体は、特定のIGF-1R高次構造状態(開いているまたは閉じている)に特異的である。一部の実施形態では、抗体は、細胞膜の中のIGF-1Rタンパク質に結合する。一部の実施形態では、抗体は、無傷細胞の細胞膜の中にあるIGF-1Rタンパク質に結合する。一部の実施形態では、抗体は、IGF-1Rタンパク質の機能を阻害または中和する。本明細書で使用される場合、用語「中和する」は、タンパク質の活性または機能が阻害されることを意味する。阻害は、完全であることもあり、または部分的であることもある。一部の実施形態では、タンパク質の活性または機能は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、または99%阻害される。阻害パーセントは、抗体の非存在下でのタンパク質の機能または活性に基づき得る。一部の実施形態では、抗体は、IGF-1Rにより助長されるグルコース輸送を阻害する。一部の実施形態では、抗体は、IGF-1Rタンパク質の内在化を阻害する。
【0195】
一部の実施形態では、抗体は、本明細書で規定の配列、またはその抗原結合断片を含む。一部の実施形態では、抗体は、本明細書に記載される重鎖CDRまたはその抗原結合断片を含む。重鎖は、本明細書に記載される重鎖のうちの1つまたは複数であり得る。一部の実施形態では、抗体は、本明細書に記載の軽鎖またはその抗原結合断片を含む。
【0196】
一部の実施形態では、IGF-1R関連病態(IGF-1R, associated pathology)を処置する、抑制するまたは軽快させる方法が、提供される。一部の実施形態では、方法は、本明細書に記載される抗体または本明細書に記載される医薬組成物を対象に投与して、IGF-1R関連病態を処置する、抑制するまたは軽快させるステップを含む。一部の実施形態では、病態は、本明細書に記載されるとおりである。
【0197】
一部の実施形態では、試料中のIGF-1Rの存在または非存在を検出する方法であって、本明細書に記載される1つまたは複数の抗体と試料を接触させ、それによって抗体によるIGF-1R抗原への結合を検出するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、結合の検出は、IGF-1R抗原の存在を示し、またはIGF-1R抗原への結合の検出の非存在は、IGF-1R抗原の非存在を示す。検出は、任意の公知の方法で、例えば、バイオセンサー、ELISA、サンドイッチアッセイなどを使用して、行うことができる。しかし、一部の実施形態では、方法は、非変性条件でタンパク質の存在を検出するステップを含む。非変性条件は、そのネイティブ形態または正確に折り畳まれた形態の目的のタンパク質を検出するために使用され得る。
【0198】
一部の実施形態では、IGF-1Rタンパク質上のエピトープに結合する被検抗体を同定する方法であって、被検抗体をIGF-1Rタンパク質上のエピトープと接触させるステップ、および被検抗体がエピトープに結合するかどうかを判定するステップを含む方法が、提供される。一部の実施形態では、判定するステップは、被検抗体が、タンパク質に結合するかどうか、および本明細書で提供されるとおりの配列を含む抗体によって競合的に阻害されるかどうかを判定することを含む。一部の実施形態では、判定するステップは、エピトープまたはタンパク質の1つまたは複数の残基を変異させること、および変異したエピトープへの被検抗体の結合を判定することを含み、変異が、変異していないエピトープと比較して被検抗体の結合を低減した場合、被検抗体は、そのエピトープに結合すると見なされる。
【0199】
一部の実施形態では、細胞の表面からのIGF-1Rの内在化をモニターする方法が、提供される。一部の実施形態では、細胞を本明細書で提供されるとおりの抗IGF-1R抗体と接触させるステップ、および細胞内のまたは細胞の表面のIGF-1Rの存在を検出するステップを含む方法。細胞表面発現の差を測定することができ、内在化をモニターすることおよび測定することができる。これを使用して、例えば、IGF-1Rタンパク質の内在化をモジュレートする被検作用因子などの別の分子の効果を測定することができる。したがって、本明細書で規定される抗体を使用して、IGF-1Rタンパク質の内在化をモジュレートする(増加または減少させる)被検作用因子を同定することができる。細胞表面のIGF-1Rタンパク質への抗IGF-1R抗体の結合の減少として測定されることになる、内在化を増加させる被検分子を、本明細書で提供される方法に従って同定することができる。細胞表面のIGF-1Rタンパク質への抗IGF-1R抗体の結合の増加として測定されることになる、内在化を減少させる被検分子を、本明細書で提供される方法に従って同定することができる。蛍光により表面発現を測定することができ、これは、IGF-1R抗体を認識する二次抗体によって行うことができ、または本明細書で規定される抗IGF-1R抗体を標識することにより表面発現を測定することができる。
【0200】
一部の実施形態では、甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法が、提供される。一部の実施形態では、方法は、抗IGF-1R抗体の10mg/kgの用量を、対象に、甲状腺眼症に関連する1つまたは複数の症状を軽減するのに十分な期間にわたって一定の間隔で静脈内投与するステップを含み、抗IGF-1R抗体は、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含む重鎖と、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む軽鎖とを含む。一部の実施形態では、抗IGF-1R抗体は、軽鎖および重鎖を含み、軽鎖は、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含み、重鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域を含む。一部の実施形態では、軽鎖は、配列番号11のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、重鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、重鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号11のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗IGF-1R抗体は、静脈内注入により投与される。一部の実施形態では、抗IGF-1R抗体は、3週間ごとに投与される。一部の実施形態では、抗IGF-1R抗体は、5用量に十分な期間にわたって投与される。一部の実施形態では、抗IGF-1R抗体は、8用量に十分な期間にわたって投与される。一部の実施形態では、抗IGF-1R抗体は、3週間、6週間、9週間、12週間、15週間、18週間、21週間、24週間またはそれより長い期間から選択される期間にわたって投与される。
【0201】
一部の実施形態では、甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法における使用のための抗体が、提供される。一部の実施形態では、甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法における使用のための抗IGF-1R抗体が、提供される。
【0202】
一部の実施形態では、本明細書で提供される実施形態は、これらに限定されないが以下のものも含む:
1. 甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、
抗体の第1の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、この第1の用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ;および
抗体の1または複数の後続の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、各後続用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ
を含み、
抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含み、軽鎖が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む;または
抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含む軽鎖を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域配列を含む;または
抗体が、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、方法。
2. 第1の用量が、約2mg/kgである、請求項1に記載の方法。
3. 第1の用量が、約3mg/kgである、請求項1に記載の方法。
4. 第1の用量が、約2.5mg/kgである、請求項1に記載の方法。
5. 第1の用量が、約5mg/kgである、請求項1に記載の方法。
6. 第1の用量が、約7.5mg/kgである、請求項1に記載の方法。
7. 第1の用量が、約10mg/kgである、請求項1に記載の方法。
8. 第1の用量が、約15mg/kgである、請求項1に記載の方法。
9. 第1の用量が、約20mg/kgである、請求項1に記載の方法。
10. 1または複数の後続用量の量が、第1の用量の量と同じである、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
11. 1または複数の後続用量の量が、第1の用量の量と異なる、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
12. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約2mg/kgである、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
13. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約3mg/kgである、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
14. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約5mg/kgである、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
15. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約7.5mg/kgである、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
16. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約10mg/kgである、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
17. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約15mg/kgである、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
18. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約20mg/kgである、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
19. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、第1の用量の1、2、3、4、5、6または8週間後に投与される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
20. 1、2、3、4、5、6または7後続用量のみが対象に投与される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
21. 対象に合計2、3、4、5、6、7または8用量を投与するステップを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
22. 抗体の2または3用量の後、対象の臨床的活動性スコアが低減される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
23. 各後続用量が、前の用量の1、2、3、4、5、6、7または8週間後に投与される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
24. 少なくとも1用量を45分~約90分かけてまたは60分~約90分かけて静脈内注入により投与するステップを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
25. 少なくとも1用量を皮下投与により投与するステップを含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
26. 皮下投与が、自己投与である、請求項25に記載の方法。
27. 第1の用量を投与する前に対象に抗体の1または複数の負荷用量を投与するステップをさらに含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
28. 第1の用量を投与する前に、対象に抗体の第1の負荷用量を投与するステップをさらに含み、第1の負荷用量が、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約12.5mg/kg、または約12.5mg/kg~約15mg/kgからなる群から選択される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
29. 抗体の第2の負荷用量が、第1の負荷用量の後に対象に投与され、第1および第2の負荷用量が、第1の用量の前に投与される、請求項27または28に記載の方法。
30. 第1の負荷用量および第2の負荷用量が、同じ用量の量である、請求項29に記載の方法。
31. 第1の負荷用量および第2の負荷用量が、異なる用量の量である、請求項29に記載の方法。
32. 第1の負荷用量が、約5mg/kgである、請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
33. 第1の負荷用量が、約7.5mg/kgである、請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
34. 第1の負荷用量が、約10mg/kgである、請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
35. 第1の負荷用量が、約12.5mg/kgである、請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
36. 第1の負荷用量が、約15mg/kgである、請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
37. 第2の負荷用量が、約5mg/kgである、請求項27から36のいずれか一項に記載の方法。
38. 第2の負荷用量が、約7.5mg/kgである、請求項27から36のいずれか一項に記載の方法。
39. 第2の負荷用量が、約10mg/kgである、請求項27から36のいずれか一項に記載の方法。
40. 第2の負荷用量が、約12.5mg/kgである、請求項27から36のいずれか一項に記載の方法。
41. 第2の負荷用量が、約15mg/kgである、請求項27から36のいずれか一項に記載の方法。
42. 第1の負荷用量が、第1の用量が投与される1、2、3または4週間前に対象に投与される、請求項27から41のいずれか一項に記載の方法。
43. 抗体が、抗体と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物の一部として投与され、抗体が、薬学的に許容される組成物中での少なくとも約150mg/mlの溶解度を有する、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法。
44. 対象が、甲状腺眼症のための過去の治療薬に対して不満足な奏効を示していた、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
45. 不満足な奏効が、眼球突出を2mmまたはそれより大きく低減させることができないこと;CASを1つもしくは複数の構成要素に関して、または2点もしくはそれを超える点数、低減させることができないこと;他方の眼における2mmまたはそれより大きい悪化;複視を軽減することができないこと;複視を一定期間、改善し続けることができないこと;グレーブス眼症生活の質(GO-QoL)評価におけるスコアを、8点またはそれを超える点数、改善することができないこと;およびこれらの組合せのうちの1つまたは複数である、請求項44に記載の方法。
46. 甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、
抗体の第1の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、この第1の用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ;および
抗体の1もしくは複数の後続の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、各後続用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ
を含み、抗体が、本明細書で提供されるとおりであり、これには、これらに限定されないが、
抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含み、軽鎖が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む;または
抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含む軽鎖を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域配列を含む;または
抗体が、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む
ことが含まれ、
1または複数の後続の用量が、臨床的活動性スコアおよび/または眼球突出の測定値により判定して、対象が1または複数の前の用量に対して適切な奏効を示さなかったときに投与される、方法。
47. 以前に1つまたは複数の処置の投与を受けた対象における甲状腺眼症の処置を改善する方法であって、
抗体の、約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる、少なくとも1用量を対象に静脈内または皮下投与するステップを含み、抗体が、本明細書で提供されるような抗体によって代表され、例えば、
抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含み、軽鎖が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含み;または
抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含む軽鎖を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域配列を含み;または
抗体が、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、
少なくとも1用量が、少なくとも1用量の前の1つまたは複数の測定値と比べて、1つまたは複数の測定値の改善をもたらす、方法。
48. 1つまたは複数の測定値が、眼球突出、CAS、他方の眼の悪化レベル、GO-QoLでのスコア、およびこれらの組合せから選択される、請求項47に記載の方法。
49. 対象が、少なくとも1用量の後に満足のいく奏効を示さなかった場合、抗体の、約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から各々選択される、1または複数の後続用量が対象に投与される、請求項47または48に記載の方法。
50. 1または複数の後続用量が、1または複数の後続用量の前と比較して、眼球突出、CAS、他方の眼の悪化レベル、GO-QoLでのスコア、およびこれらの組合せのうちの1つまたは複数を改善する、請求項49に記載の方法。
51. 甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、
抗体の第1の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、この第1の用量が約250mg、約300mg、約350mg、または約400mgからなる群から選択される、ステップ、および
抗体の、1または複数の後続用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、各後続用量が約250mg、約300mg、約350mg、または約400mgからなる群から選択される、ステップ
を含み、抗体が配列番号1により表される、方法。
52. 第1の用量が、約250mgである、請求項51に記載の方法。
53. 第1の用量が、約300mgである、請求項52に記載の方法。
54. 第1の用量が、約350mgである、請求項52に記載の方法。
55. 第1の用量が、約400mgである、請求項52に記載の方法。
56. 第1の用量の量および1または複数の後続用量の量が、同じ用量の量である、請求項51から55のいずれか一項に記載の方法。
57. 第1の用量の量および1または複数の後続用量の量が、異なる用量の量である、請求項51から55のいずれか一項に記載の方法。
58. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約250mgである、請求項51から57のいずれか一項に記載の方法。
59. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約300mgである、請求項51から57のいずれか一項に記載の方法。
60. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約350mgである、請求項51から57のいずれか一項に記載の方法。
61. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、約400mgである、請求項51から57のいずれか一項に記載の方法。
62. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、第1の用量の1、2、3、4、5、6または8週間後に投与される、請求項51から61のいずれか一項に記載の方法。
63. 1、2、3、4、5、6または7後続用量のみが対象に投与される、請求項51から62のいずれか一項に記載の方法。
64. 対象に合計2、3、4、5、6、7または8用量を投与するステップを含む、請求項51から63のいずれか一項に記載の方法。
65. 抗体の2または3用量の後、対象の臨床的活動性スコアが低減される、請求項51から64のいずれか一項に記載の方法。
66. 各後続用量が、前の用量の1、2、3、4、5、6、7または8週間後に投与される、請求項51から65のいずれか一項に記載の方法。
67. 少なくとも1用量を45分~約90分かけてまたは60分~約90分かけて静脈内注入により投与するステップを含む、請求項51から66のいずれか一項に記載の方法。
68. 少なくとも1用量を皮下投与により投与するステップを含む、請求項51から67のいずれか一項に記載の方法。
69. 皮下投与が、自己投与である、請求項68に記載の方法。
70. 第1の用量を投与する前に対象に抗体の1または複数の負荷用量を投与するステップをさらに含む、請求項51から69のいずれか一項に記載の方法。
71. 第1の用量を投与する前に、対象に抗体の第1の負荷用量を投与するステップをさらに含み、第1の負荷用量が、約250mg、約300mg、約350mg、または約400mgからなる群から選択される、請求項51から69のいずれか一項に記載の方法。
72. 抗体の第2の負荷用量が、第1の負荷用量の後に対象に投与され、第1および第2の負荷用量が、第1の用量の前に投与される、請求項70または71に記載の方法。
73. 第1の負荷用量および第2の負荷用量が、同じ用量の量である、請求項72に記載の方法。
74. 第1の負荷用量および第2の負荷用量が、異なる用量の量である、請求項73に記載の方法。
75. 第1の負荷用量が、約250mgである、請求項70から73のいずれか一項に記載の方法。
76. 第1の負荷用量が、約300mgである、請求項70から73のいずれか一項に記載の方法。
77. 第1の負荷用量が、約350mgである、請求項70から73のいずれか一項に記載の方法。
78. 第1の負荷用量が、約400mgである、請求項70から73のいずれか一項に記載の方法。
79. 第2の負荷用量が、約250mgである、請求項70から78のいずれか一項に記載の方法。
80. 第2の負荷用量が、約300mgである、請求項70から78のいずれか一項に記載の方法。
81. 第2の負荷用量が、約350mgである、請求項70から78のいずれか一項に記載の方法。
82. 第2の負荷用量が、約400mgである、請求項70から78のいずれか一項に記載の方法。
83. 第1の負荷用量が、第1の用量が投与される1、2、3または4週間前に対象に投与される、請求項70から78のいずれか一項に記載の方法。
84. 抗体が、抗体と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物の一部として投与され、抗体が、薬学的に許容される組成物中での少なくとも約150mg/mlの溶解度を有する、請求項51から83のいずれか一項に記載の方法。
85. 対象が、甲状腺眼症のための過去の治療薬に対して不満足な奏効を示していた、請求項51から84のいずれか一項に記載の方法。
86. 不満足な奏効が、眼球突出を2mmまたはそれより大きく低減させることができないこと;CASを1つもしくは複数の構成要素に関して、または2点もしくはそれを超える点数、低減させることができないこと;他方の眼における2mmまたはそれより大きい悪化;複視を軽減することができないこと;複視を一定期間、改善し続けることができないこと;グレーブス眼症生活の質(GO-QoL)評価におけるスコアを、8点またはそれを超える点数、改善することができないこと;およびこれらの組合せから選択される、請求項85に記載の方法。
87. 第1の負荷用量および第2の負荷用量が、約1、約2または約3週間の間隔を空けて投与される、請求項27から45または70から86のいずれか一項に記載の方法。
88. 第2の負荷用量が、第1の用量の約1、約2または約3週間前に投与される、請求項87に記載の方法。
89. 甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、
抗体の第1の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、この第1の用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ;および
抗体の1または複数の後続の用量を対象に静脈内または皮下投与するステップであって、各後続用量が約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、ステップ
を含み、
抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含み、軽鎖が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む、方法。
90. 軽鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域配列を含む、実施形態89の方法。
91. 軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態89または90の方法。
92. 重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態89~91のいずれか1つの方法。
93. 第1の用量が、約10mg/kgである、実施形態89の方法。
94. 1または複数の後続用量が、約10mg/kgである、実施形態93の方法。
95. 1または複数の後続用量の量が、第1の用量の量と同じである、実施形態89~93のいずれか1つの方法。
96. 1または複数の後続用量の量が、第1の用量の量と異なる、実施形態89~94のいずれか1つの方法。
97. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、第1の用量の1、2、3、4、5、6または8週間後に投与される、実施形態89~96のいずれか1つの方法。
98. 1または複数の後続用量のうちの1または複数の後続用量が、第1の用量の3週間後に投与される、実施形態94の方法。
99. 後続用量が、第1の用量の後、3週間ごとに4、5、6、7または8サイクルにわたって投与される、実施形態94の方法。
100. 後続用量が、第1の用量の後、3週間ごとに5または8サイクルにわたって投与される、実施形態94の方法。
101. 対象に合計5、6、7または8用量を投与するステップを含む、実施形態94の方法。
102. 抗体の第1の用量の後、対象の臨床的活動性スコアが低減される、実施形態89~101のいずれか1つの方法。
103. 抗体の2用量の後、対象の臨床的活動性スコアが低減される、実施形態89~102のいずれか1つの方法。
104. 1または複数の後続用量の後、対象の臨床的活動性スコアが、第1の用量から6週間以内に低減される、実施形態89~103の方法。
105. 1または複数の後続用量の後、対象の臨床的活動性スコアが、最初の1または複数の後続用量から3週間以内に低減される、実施形態89~103の方法。
106. 抗体が、45分~約90分かけて、または60分~約90分かけて、静脈内注入により投与される、実施形態89~105のいずれか1つの方法。
107. 第1の用量が、約10mg/kgであり、1または複数の後続用量が、約10mg/kgである、実施形態89の方法。
108. 抗体が、抗体と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物の一部として投与され、医薬組成物が、抗体を20mg/mL~約30mg/mLの濃度で含む、実施形態89~106のいずれか1つの方法。
109. 医薬組成物が、抗体を約25mg/mLの濃度で含む、実施形態108の方法。
110. 処置される対象の眼球突出が、少なくとも、または約、1~4mm低減される、実施形態89~109のいずれか1つの方法。
111. 眼球突出が、少なくとも、または約、2~3mm低減される、実施形態110の方法。
112. 眼球突出が、第1の用量から3週間以内に低減される、実施形態110または111の方法。
113. 眼球突出が、第1の用量から6週間以内に低減される、実施形態110または111の方法。
114. 処置された対象が、複視の軽減を有する、実施形態89~113のいずれか1つの方法。
115. 複視が、第1の用量から3週間または6週間以内に軽減される、実施形態114の方法。
116. 対象が、3週間または6週間以内に臨床的活動性スコア(CAS)の改善を有する、実施形態89~115のいずれか1つの方法。
117. CASスコアが、少なくとも-2、-3、または-4の改善を有する、実施形態37の方法。
118. 対象が、第1の用量から3週間以内または6週間以内に眼球突出の低減およびCASスコアの改善を有する、実施形態89~117のいずれか1つの方法。
119. 甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、
抗体の10mg/kgの第1の用量を対象に静脈内投与するステップ
を含み、
抗体が、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含み、軽鎖が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む、方法。
120. 軽鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域配列を含む、実施形態119の方法。
121. 軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態119の方法。
122. 重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態119の方法。
123. 重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態119の方法。
124. 約10mg/kgの後続用量を投与するステップをさらに含む、実施形態119~123のいずれか1つの方法。
125. 後続用量が、第1の用量の約3週間後に投与される、実施形態124の方法。
126. 第1の用量の後、約10mg/kgの後続用量を3週間ごとに投与するステップをさらに含む、実施形態119~125のいずれか1つの方法。
127. 後続用量が、3週間ごとに合計4後続用量、投与される、実施形態126の方法。
128. 後続用量が、3週間ごとに合計7後続用量、投与される、実施形態126の方法。
129. 対象の眼球突出が、少なくとも、または約、1~4mm低減される、実施形態119~128のいずれか1つの方法。
130. 眼球突出が、少なくとも、または約、2~3mm低減される、実施形態129の方法。
131. 眼球突出が、第1の用量から3週間以内に低減される、実施形態129または130の方法。
132. 眼球突出が、第1の用量から6週間以内に低減される、実施形態129または130の方法。
133. 処置された対象が、複視の軽減を有する、実施形態119~132のいずれか1つの方法。
134. 複視が、第1の用量から3週間または6週間以内に軽減される、実施形態133の方法。
135. 対象が、3週間または6週間以内に臨床的活動性スコア(CAS)の改善を有する、実施形態119~134のいずれか1つの方法。
136. CASスコアが、少なくとも-2、-3、または-4の改善を有する、実施形態135の方法。
137. 対象が、第1の用量から3週間以内または6週間以内に眼球突出の低減およびCASスコアの改善を有する、実施形態119~136のいずれか1つの方法。
138. 甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症を処置する方法であって、
抗IGF-1R抗体の10mg/kgの用量を、対象に、甲状腺眼症に関連する1つまたは複数の症状を軽減するのに十分な期間にわたって一定の間隔で静脈内投与するステップ
を含み、
抗IGF-1R抗体が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含む重鎖と、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む軽鎖とを含む、方法。
139. 抗IGF-1R抗体が、軽鎖および重鎖を含み、軽鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域を含む、実施形態138の方法。
140. 軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態138の方法。
141. 重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態138の方法。
142. 重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態138の方法。
143. 抗IGF-1R抗体が、静脈内注入により投与される、実施形態138~142のいずれか1つの方法。
144. 抗IGF-1R抗体が、3週間ごとに投与される、実施形態138~143のいずれか1つの方法。
145. 抗IGF-1R抗体が、5用量に十分な期間にわたって投与される、実施形態138~144のいずれか1つの方法。
146. 抗IGF-1R抗体が、8用量に十分な期間にわたって投与される、実施形態138~144のいずれか1つの方法。
147. 抗IGF-1R抗体が、3週間、6週間、9週間、12週間、15週間、18週間、21週間、24週間またはそれより長い期間から選択される期間にわたって投与される、実施形態138~144のいずれか1つの方法。
148. 対象の眼球突出が、少なくとも、または約、1~4mm低減される、実施形態138~147のいずれか1つの方法。
149. 眼球突出が、少なくとも、または約、2~3mm低減される、実施形態148の方法。
150. 眼球突出が、第1の用量から3週間以内に低減される、実施形態148または149の方法。
151. 眼球突出が、第1の用量から6週間以内に低減される、実施形態148または149の方法。
152. 処置された対象が、複視の軽減を有する、実施形態148~151のいずれか1つの方法。
153. 複視が、第1の用量から3週間または6週間以内に軽減される、実施形態152の方法。
154. 対象が、3週間または6週間以内に臨床的活動性スコア(CAS)の改善を有する、実施形態138~153のいずれか1つの方法。
155. CASスコアが、少なくとも-2、-3、または-4の改善を有する、実施形態154の方法。
156. 対象が、第1の用量から3週間以内または6週間以内に眼球突出の低減およびCASスコアの改善を有する、実施形態138~155のいずれか1つの方法。
157. 甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症の処置における使用のための抗体であって、重鎖および軽鎖を含み、重鎖が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含み、軽鎖が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含み、
抗体が、抗体の第1の用量として対象に静脈内または皮下投与され、この第1の用量は約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択され、;
抗体が、抗体の1もしくは複数の後続の用量として対象に静脈内または皮下投与され、各後続用量は約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kgからなる群から選択される、抗体。
158. 軽鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域配列を含む、実施形態157の抗体。
159. 軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態157または158の抗体。
160. 重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態157~159のいずれか1つの抗体。
161. 第1の用量が、約10mg/kgである、実施形態157の抗体。
162. 1または複数の後続用量が、約10mg/kgである、実施形態161の抗体。
163. 1または複数の後続用量の量が、第1の用量の量と同じである、実施形態157~161のいずれか1つの抗体。
164. 1または複数の後続用量の量が、第1の用量の量と異なる、実施形態157~161のいずれか1つの抗体。
165. 1または複数の後続用量のうちの少なくとも1後続用量が、第1の用量の1、2、3、4、5、6または8週間後に投与される、実施形態157~164のいずれか1つの抗体。
166. 1または複数の後続用量のうちの1または複数の後続用量が、第1の用量の3週間後に投与される、実施形態165の抗体。
167. 後続用量が、第1の用量の後、3週間ごとに4、5、6、7または8サイクルにわたって投与される、実施形態165の抗体。
168. 後続用量が、第1の用量の後、3週間ごとに5または8サイクルにわたって投与される、実施形態165の抗体。
169. 処置が、対象に合計5、6、7または8用量を投与することを含む、実施形態165の抗体。
170. 抗体の第1の用量の後、対象の臨床的活動性スコアが低減される、実施形態157~169のいずれか1つの抗体。
171. 抗体の2用量の後、対象の臨床的活動性スコアが低減される、実施形態157~170のいずれか1つの抗体。
172. 1または複数の後続用量の後、対象の臨床的活動性スコアが、第1の用量から6週間以内に低減される、実施形態157~171の抗体。
173. 1または複数の後続用量の後、対象の臨床的活動性スコアが、最初の1または複数の後続用量から3週間以内に低減される、実施形態1~171の抗体。
174. 抗体が、45分~約90分かけて、または60分~約90分かけて、静脈内注入により投与される、実施形態1~173のいずれか1つの抗体。
175. 第1の用量が、約10mg/kgであり、1または複数の後続用量が、約10mg/kgである、実施形態157の抗体。
176. 抗体と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物の一部として投与され、医薬組成物組成物が、抗体を20mg/mL~約30mg/mLの濃度で含む、実施形態157~19のいずれか1つの抗体。
177. 医薬組成物が、抗体を約25mg/mLの濃度で含む、実施形態176の抗体。
178. 処置される対象の眼球突出が、少なくとも、または約、1~4mm低減される、実施形態157~177のいずれか1つの抗体。
179. 眼球突出が、少なくとも、または約、2~3mm低減される、実施形態178の抗体。
180. 眼球突出が、第1の用量から3週間以内に低減される、実施形態178または179の抗体。
181. 眼球突出が、第1の用量から6週間以内に低減される、実施形態178または179の抗体。
182. 処置された対象が、複視の軽減を有する、実施形態157~181のいずれか1つの抗体。
183. 複視が、第1の用量から3週間または6週間以内に軽減される、実施形態182の抗体。
184. 対象が、3週間または6週間以内に臨床的活動性スコア(CAS)の改善を有する、実施形態157~183のいずれか1つの抗体。
185. CASスコアが、少なくとも-2、-3、または-4の改善を有する、実施形態184の抗体。
186. 対象が、第1の用量から3週間以内または6週間以内に眼球突出の低減およびCASスコアの改善を有する、実施形態157~185のいずれか1つの抗体。
187. 甲状腺眼症の処置の必要な対象における甲状腺眼症の処置における使用のための抗IGF-1R抗体であって、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、および配列番号9のHCDR3を含む重鎖と、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、および配列番号6のLCDR3を含む軽鎖とを含み、
抗IGF-1R抗体が、抗IGF-1R抗体の10mg/kgの用量として、対象に、甲状腺眼症に関連する1つまたは複数の症状を軽減するのに十分な期間にわたって一定の間隔で静脈内投与される、抗IGF-1R抗体。
188. 抗IGF-1R抗体が、軽鎖および重鎖を含み、軽鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を有する可変領域を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を有する可変領域を含む、実施形態187の抗体。
189. 軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態187の抗体。
190. 重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態187の抗体。
191. 重鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、実施形態187の抗体。
192. 抗IGF-1R抗体が、静脈内注入により投与される、実施形態187~191のいずれか1つの抗体。
193. 抗IGF-1R抗体が、3週間ごとに投与される、実施形態187~192のいずれか1つの抗体。
194. 抗IGF-1R抗体が、5用量に十分な期間にわたって投与される、実施形態187~193のいずれか1つの抗体。
195. 抗IGF-1R抗体が、8用量に十分な期間にわたって投与される、実施形態187~193のいずれか1つの抗体。
196. 抗IGF-1R抗体が、3週間、6週間、9週間、12週間、15週間、18週間、21週間、24週間またはそれより長い期間から選択される期間にわたって投与される、実施形態187~195のいずれか1つの抗体。
197. 対象の眼球突出が、少なくとも、または約、1~4mm低減される、実施形態187~196のいずれか1つの抗体。
198. 眼球突出が、少なくとも、または約、2~3mm低減される、実施形態197の抗体。
199. 眼球突出が、第1の用量から3週間以内に低減される、実施形態197または198の抗体。
200. 眼球突出が、第1の用量から6週間以内に低減される、実施形態197または198の抗体。
201. 処置された対象が、複視の軽減を有する、実施形態187~200のいずれか1つの抗体。
202. 複視が、第1の用量から3週間または6週間以内に軽減される、実施形態201の抗体。
203. 対象が、3週間または6週間以内に臨床的活動性スコア(CAS)の改善を有する、実施形態187~202のいずれか1つの抗体。
204. CASスコアが、少なくとも-2、-3、または-4の改善を有する、実施形態203の抗体。
205. 対象が、第1の用量から3週間以内または6週間以内に眼球突出の低減およびCASスコアの改善を有する、実施形態187~204のいずれか1つの抗体。
【0203】
次に、主題が以下の実施例に関連して記載される。これらの実施例は、例証を目的としたものに過ぎず、特許請求の範囲は、これらの実施例に限定されると決して見なすべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明白になる任意のおよび全ての変形形態を包含すると見なすべきである。当業者には、本質的に同様の結果を生じさせるように変化または変更することができる様々な重要でないパラメーターが分かるであろう。
【実施例
【0204】
(実施例1)
VRDN-5000は、テプロツムマブと比較して、よりよく結合し、拮抗作用の増大を示す
in vitroで細胞ベースのアッセイを2つの異なるIFG1R発現細胞系:A549細胞(図1Aおよび1B)およびヒト眼球脈絡膜線維芽細胞(HOCF)細胞(図1Cおよび1D)において行った。
【0205】
細胞ベースの抗体結合アッセイにおいて、VRDN-001と呼ばれることもあるVRDN-5000は、テプロツムマブまたはIgG対照と比較して、抗体濃度が上昇するにつれて(平均蛍光強度により測定して)結合レベルの上昇を、A549細胞(図1A;塗りつぶした丸印:VRDN-001;三角形:テプロツムマブ;中空の丸印:IgG)においても、HOCF細胞(図1C;塗りつぶした丸印=VRDN;三角形:テプロツムマブ;中空の丸印:IgG)においても、一貫して示した。
【0206】
同様に、VRDN-5000は、テプロツムマブと比較して、抗体の濃度上昇時の拮抗作用の増大を(平均蛍光強度により測定して)、A549細胞(図1B;塗りつぶした丸印:VRDN-001;三角形:テプロツムマブ)においても、HOCF細胞(図1D;塗りつぶした丸印=VRDN;三角形:テプロツムマブ)においても、一貫して示した。
【0207】
VRDN-5000は、抗体のピコモルおよびナノモル濃度である抗体濃度で、テプロツムマブよりもIGFR1に強く結合し、強い拮抗効果を発揮する。
(実施例2)
甲状腺眼疾患を有する患者の処置および甲状腺目疾患に対するIGF-1R抗体の臨床的評価
【0208】
本明細書で開示するとおりのVRDN-5000の注入を対象に施す。注入数は、各々の対象個人に合わせたものであり、治験責任医師の臨床的判断に基づく。1日目の来院を、前の試験の最後の来院後14日以内に行う。来院ウインドウは、1および4週目については±1日、ならびに3、6、9、12、15、18、21および24週目については±3日である。追跡調査期間は、前の試験において眼球突出非奏効者であった対象のみに向けたものであり、前の試験で再発した対象は、追跡調査期間に参加しなかった。追跡調査期間中の来院ウインドウは、±7日である。
【0209】
処置期間は、24週間(6ヵ月)であり、この期間中にテプロツムマブの8回の注入を投与する。
【0210】
眼球突出非奏効者である対象はこの延長研究における6ヵ月の追跡調査期間に参加するようにスケジュールを立て、lead-in研究中に再発し、この延長研究中に再処置した対象は、追跡調査期間に参加しないものとする。
【0211】
有効性評価を各評価時点で両眼について行う。「研究対象眼」(すなわち、より重度に罹患している眼)は、前の研究のベースライン(1日目)来院時に同定されたものと同じままとする。両眼を有効性について評価するが、研究対象眼を使用して主要転帰尺度を評価する。
【0212】
有効性は、眼球突出(測定の一貫性のためにHertel計器を使用して重症度の臨床的尺度の眼球突出症評価として測定する)、CAS(7項目スケール)、複視(重症度の臨床的尺度の一部として測定する)および重症度の臨床的尺度(運動制限評価を含む)により評価する。
【0213】
生活の質は、GO-QoL質問票を使用して評価する。
【0214】
安全性は、AEおよび併用薬使用のモニタリング、免疫原性試験、身体および眼科検査、バイタルサイン、臨床的安全性研究室評価(全血球計算、化学(甲状腺パネルおよびHbA1Cを含む)、および尿検査)、妊娠テスト(該当する場合)、ならびに心電図(ECG)によって評価する。研究は、データ安全性モニタリング委員会(DSMB)によってもモニターされる。
【0215】
眼球突出評価は、測定の一貫性のためにHertel眼球突出測定計を使用して行い、(厳密に不可避の場合を除き)同じHertel計器および同じ観察者を全研究期間にわたって各評価時に使用する。加えて、同じ内眼角間距離(ICD)を各場合に使用する。
【0216】
眼球突出を、各眼について、処置期間中の1日目ならびに6、12、18および24週目(または早期離脱(PW))に、ならびに追跡調査期間中の7、9および12ヵ月目(またはPW)に測定する。測定値を眼球突出症の重症度の臨床的尺度eCRFに記録する。
【0217】
抗体は、甲状腺眼疾患を処置する上でおよび本明細書で規定の生活の質を改善する上で有効であることが判明する。
(実施例3)
正常な健常ボランティアおよび甲状腺眼疾患を有する対象における抗IGF-1Rの反復投与用量漸増安全性および有効性研究(Ph1/2研究)
【0218】
正常な健常ボランティア(NHV)および甲状腺眼疾患を有する対象(TED対象)をVRDN-5000で処置して、安全性、忍容性、予備的有効性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)プロファイルを研究する。
【0219】
NHV、およびTEDを有する対象を、NHVおよびTED対象についての組み入れおよび除外基準を使用して処置開始前に参加資格についてスクリーニングする。VRDN-5000(配列番号71)の静脈内注入をNHVおよびTED対象に施す。各対象は、3mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kg用量での2回の注入を、各注入を3週間離して受ける。各注入を90分間かけて投与する。所与の対象について、第1の用量と第2の用量の量は同じである(例えば、対象は、3mg/kgの第1の用量および3mg/kgの第2の用量を3週間離して受けるなど)。NHV対象は第1の用量の後に6週間モニターし、TED対象は第1の用量の後に6ヵ月間モニターする。
【0220】
VRDN-5000を、ゴムのセプタムとアルミニウムシールとプラスチックキャップとを有する6mL透明単回投与用ガラスバイアル内の5.1mL充填体積中の25mg/mLの抗体の溶液として、提供する。保管は、2~8℃であるか、または-20℃で凍結される。
【0221】
VRDN-5000を3mg/kg~20mg/kgの範囲で投薬する。全ての対象(NHV、およびTEDを有する対象)を安全性、有効性および他の評価項目についてモニターする。
【0222】
安全性評価項目は、有害事象(AE)、重篤な有害事象(SAE)および検査室での評価を含み、これらを、研究継続期間を通してモニターし、記録する。
【0223】
主要有効性評価項目は、6および12週の時点で眼球突出奏効者率(すなわち、「研究対象」[より大きく眼球突出している]眼の中でベースラインからの眼球突出の低減≧2mm[Hertel])を含む。
【0224】
他の評価項目は、注入前および後の様々な時点でのVRDN-001、IGF-1およびADAの血中レベル、ならびに磁気共鳴画像法(MRI)により決定した、眼窩脂肪の体積のベースラインからの変化;MRIにより決定した外眼筋の変化;臨床的活動性スコア(CAS);主観的複視スコアの変化;プリズム偏位により5方向主要注視眼位で測定したときの眼球運動性の客観的評価の変化;およびグレーブス眼窩疾患-生活の質(GO-QoL)スコアの変化を含む。
【0225】
投薬は、21日間隔で行う。48名以下の対象が、反復投与用量漸増試験(12~16名のNHV、およびTEDを有する16~32名の対象が、反復投与用量漸増研究に)参加する。
【0226】
単回投与PK測定を2回の注入の初回の後に決定し、反復投与PKを第2の用量の後に決定する。TED対象の必要な研究のための来院の数を最小限に抑えるために、NHV対象においてPKおよびPDの決定を行う。2回の注入の初回の6、12および24週間後に、予備的な有効性データをTED対象から収集する。VRDN-001での処置後にNHVとTED対象の両方から安全性および忍容性データを収集する。NHVおよびTED対象についての全ての測定を本明細書に記載のとおりに行う。
【0227】
研究は、無作為化、二重盲検(スポンサーを除外する)、プラセボ対照研究である。対象および施設職員に対して処置を盲検化する。輸液バッグを用意する薬剤師に対しては処置を盲検化せず、彼らは、ウェブ自動応答システム(IWRS)に従って、VRDN-5000を添加したまたはしていない食塩水の250mLバッグを支給する。250mLバッグを90分間にわたって注入する。
【0228】
3つの用量レベルを評価する:3mg/kg(「低」)、10mg/kg(「中」)、および20mg/kg(「高」)。各対象は、2用量を3週間の間隔を空けて受け、各用量を静脈内注入により投与する。各対象に与える用量の量は、投与間で異ならない(例えば、対象は、第1の3mg/kg用量および第2の3mg/kg用量を、3週間離して受ける、など)。
【0229】
低用量コホートは、3:1(VRDN-5000対プラセボ)で無作為化された4名のNHVを含み、中および高用量コホートは、各群が3:1(VRDN-5000対プラセボ)で無作為化された4名のNHVおよび8名のTED対象を含む。
【0230】
低用量コホートの2名のNHV対象を処置し、彼らの第1の注入の1週間後まで追跡した後、そのコホートの第2の残りの2名の対象を処置する。用量制限毒性(DLT)は、処置の中止を必要とするおよび/またはVRDN-001の用量漸増を妨げる重症度である薬物関連安全性事象である。対象がDLTを経験した場合には、追加の4名のNHV対象を登録し、次の用量への漸増は、さらなる対象がDLTを経験しなかった場合にのみ行う。
【0231】
低用量コホートの4番目のNHV対象は、彼らの第2の注入を受けた1週間後、データ安全性モニタリング委員会(DSMB)による安全性データの審査の後に中用量レベルへの漸増を開始する。次いで、2名のNHV対象を中用量コホートに登録し、彼らの第1の注入の1週間後まで追跡した後、さらなるNHVおよびTED対象をその用量レベルに登録する。
【0232】
高用量レベルへの漸増は、中用量コホートの第4のNHV対象を彼らの第2の注入後1週間追跡したら、かつその用量で1名より多くの対象がDLTを経験しなかったならば、行う。これは、DSMBによる安全性データの審査後に行う。中用量コホートと高用量コホートの両方が、眼球突出奏効率の点から臨床的活動性の同様の証拠を示した場合、8名のTED対象を低用量(3.0mg/kg)に登録し、12名の対象(4名のNHVおよび8名のTED対象)のさらなるコホートを中用量(5.0mg/kg)に登録して、臨床的活動性についての用量応答曲線を作成する。
【0233】
NHVについての研究手順は、次のとおりである:全てのNHV対象を処置の前28日以内にスクリーニングし、研究への参加を妨げる一切の異常を排除するために身体検査およびECGを実施する。対象は各注入の24時間前までに臨床薬理学施設に入院させ、PK試料収集のための2回の注入の各々の後7日間、滞在する。対象のバイタルサインおよびECG(テレメトリー)を注入中に継続的にモニターし、皮膚注入部位を局所耐性について定期的に検査する。対象は、さらなる血液試料採取および下で概要を述べる評価のために指定された時点に施設に再来する。ウェブベースの医師の監督下で行われる聴力検査を、各注入の前および3週間後に行う。
【0234】
PK解析およびIGF-1レベルの測定のための血液試料を、注入する腕の反対側の前腕に挿入した留置静脈カテーテルによって採取する。PK試料を、各注入を開始する前、注入終了の5分前、ならびに注入の2、4、8および12時間後に収集し、さらなる試料を、各注入の1、3、7、14および21日後に収集し、最終試料を第2の注入の28日後に収集する。IGF-1レベルのための血液試料は、各注入の前、ならびに各注入の1、2、3、7、14および21日後に収集する。追加の血液試料を、VRDN-001の各注入の前に抗薬物抗体(ADA)の測定のために収集し、各注入の21日後に再び収集する。絶食時血液および尿試料を、スクリーニング時、各注入の直前、および各注入の7日後に、血液学、化学および凝固パラメーターならびに標準尿検査のために採取する。NHVに彼らの7週目の来院時に全身の検査およびECGを実施する。
【0235】
TED対象についての研究手順は、次のとおりである:TED対象を、研究への組み入れ前28日間に、参加資格、病歴およびTEDの継続期間についてスクリーニングする。各注入の前日に、対象は、眼球突出測定、CAS評価、複視スコア評価、5方向注視眼位での眼のひき運動のプリズム測定、GO-QoL質問票の記入、眼底検査、生体顕微鏡検査、眼内圧(IOP)および聴力検査を経る。これらの評価を43および85日目(6および12週目)の追跡調査のための来院時に繰り返す。対象は全身の検査を受け、対象にECGを実施し、これをスクリーニング時に記録し、6週目の追加調査のための来院時に繰り返す。眼窩MRIを両方の注入前3日以内に行い、6および12週目の来院の両側(±)3日以内に繰り返す。顔面写真撮影をスクリーニング時ならびに12および24週目の来院時に行う。注入をTED対象に注入クリニックで施し、注入中、対象のバイタルサインおよびECGを継続的にモニターする。皮膚注入部位を局所耐性について定期的に検査する。研究施設職員は、前日の注入クリニックからの彼らの退院以降に対象の肉体的および精神的な健全性を確実にするためにならびに何らかのAEが起こっていないか尋ねるために、各注入の翌日にTED対象に電話をかける。何らかの健康上の懸念があった場合には研究施設に電話するように対象に伝え、研究のための追加の来院をPIまたは対象のどちらかの要請に応じて調整する。全ての眼の評価を両眼に対して行う。これらの評価を、1および21日目の各注入の直前に行い、第2の注入の3週後に再び行う。眼球突出の評価のための追跡調査のための来院を、第1の注入の12および24週間後に行う。ウェブベースの医師の監督下で行われる聴力検査を、各注入の前および3週間後に行う。
【0236】
PKおよびIGF-1レベルのための血液試料を、第1の注入を開始する前、注入終了の5分前、ならびに注入の2および4時間後に、注入する腕の反対側の前腕に挿入した留置静脈カテーテルによって採取し、第2の注入について同じ時点で繰り返す。さらなる試料を43および50日目各々の来院時に採取する。追加の血液試料を、各注入の前にADAの測定のために採取し、第2の注入の3週間後に再び採取する。絶食時血液および尿試料を、スクリーニング時、第1の注入の3週間後(第2の注入の前日)、および第2の注入の3週間後に、血液学、化学および凝固パラメーターならびに標準尿検査のために採取する。
【0237】
抗体は、NHVにおいて安全であること、TEDを有する対象において甲状腺眼疾患を処置する上でおよび本明細書で規定の生活の質を改善する上で安全でも有効でもあることが判明する。
(実施例4)
甲状腺眼疾患における抗IGF-1Rの、および甲状腺眼疾患を有する対象の、延長研究
【0238】
甲状腺眼疾患を有する対象(TED対象)を、安全性、忍容性、予備的有効性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)プロファイルに関する前の研究の完了後に延長研究においてVRDN-5000で処置する。
【0239】
VRDN-5000の静脈内注入をTED対象に施す。各対象は、3mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kg用量での2回の注入を、各注入を3週間離して受ける。各注入を90分間かけて投与する。所与の対象について、第1の用量と第2の用量は同じである(例えば、3mg/kgの第1および第2の用量;10mg/kgの第1および第2の用量;または20mg/kgの第1および第2の用量)。TED対象は、第1の用量の後、6ヵ月間モニターする。
【0240】
VRDN-5000を、ゴムのセプタムとアルミニウムシールとプラスチックキャップとを有する6mL透明単回投与用ガラスバイアル内の5.1mL充填体積中の25mg/mLの抗体の溶液として、提供する。保管は、2~8℃であるか、または-20℃で凍結される。
【0241】
VRDN-5000を3mg/kg~20mg/kgの範囲で投薬する。全ての対象を、安全性、有効性および他の評価項目についてモニターする。
【0242】
安全性評価項目は、有害事象(AE)、重篤な有害事象(SAE)および検査室での評価を含み、これらを、研究継続期間を通してモニターし、記録する。
【0243】
主要有効性評価項目は、24週の時点で眼球突出奏効者率(すなわち、「研究対象」[より大きく眼球突出している]眼の中でベースラインからの眼球突出の低減≧2mm[Hertel])を含む。
【0244】
他の評価項目は、注入前および後の様々な時点でのVRDN-001、IGF-1およびADAの血中レベル、ならびに磁気共鳴画像法(MRI)により決定した、眼窩脂肪の体積のベースラインからの変化;MRIにより決定した外眼筋の変化;臨床的活動性スコア(CAS);主観的複視スコアの変化;プリズム偏位により5方向主要注視眼位で測定したときの眼球運動性の客観的評価の変化;およびグレーブス眼窩疾患-生活の質(GO-QoL)スコアの変化を含む。
【0245】
投薬は、21日間隔で行う。48名以下の対象が、延長研究に参加する。対象の合計数は、実施例3における反復投与用量漸増研究からの結果に依存する。全48名の対象を組み入れる場合、延長研究は、2つの実薬処置アーム(4回対8回の注入)をプラセボアームと比較する二重盲検(スポンサーを含む)プラセボ対照デザインで無作為化された3つ(1:1:1;コホート/アーム当たり16名)を含む。
【0246】
プラセボに対して各実薬アームについて50%の眼球突出の低減の差を仮定すると、延長研究にはプラセボに対して各用量レジメンを試験するための80%検出力がある。このために、0.025の片側第I種過誤レベルを両方の比較に等分し(ボンフェローニ補正)、その結果、0.0125のペアワイズ第I種過誤レベルを得る。
【0247】
延長研究は、実施例3に記載した反復投与用量漸増研究の完了後に開始する。この研究は、実施例3の反復投与用量漸増研究において臨床的に有意義な有効性シグナルを実証する最低用量でVRDN-5000の臨床的活動性についての調査を継続し、用量応答の探究に取り組む。
【0248】
延長コホートにおける用量およびレジメンについての特定のパラメーターは、実施例3における反復投与用量漸増研究からの、そこで決定されるPKデータを含む、データにより、駆動される。実施例3における反復投与用量漸増研究で試験した用量が、同等の有効性シグナルを示した場合、追加のより低用量のコホートを探究する。示さなかった場合、1つの延長コホートは、4回の注入を、選択した用量で8回の注入を受ける別の延長コホートと比較し、全ての延長コホートにおける定義された処置継続期間は、第1の注入の時点で入手可能な毒物学データによって十分に支持される。
【0249】
3つ全てのコホートにおける対象は、盲検を維持するために同じ回数の注入を受ける。眼の評価を両眼に対して行い、対象は、行われる次の評価を経る:眼球突出測定、CAS評価、複視スコア評価、5方向注視眼位での眼のひき運動のプリズム測定、GO-QoL質問票の記入、眼底検査、生体顕微鏡検査、およびIOP。これらの評価を各注入の前日に行い、24および52週目の来院時に繰り返す。ウェブベースの医師の監督下で行われる聴力検査を、各注入の1日前に行い、24週目の来院時に再び行う。眼窩MRIを第1の注入前3日以内に行い、12、24および52週目の来院の(±)3日以内に繰り返す。顔面写真撮影をスクリーニング時ならびに24および52週目の来院時に行う。注入をTED対象に注入クリニックで施し、注入中、対象のバイタルサインおよびECGを継続的にモニターする。皮膚注入部位を局所耐性について定期的に検査する。
【0250】
PKおよびIGF-1レベルのための血液試料を、第1の注入を開始する前、注入終了の5分前、ならびに注入の2および4時間後に、注入する腕の反対側の前腕に挿入した留置静脈カテーテルによって採取し、さらなる試料を注入の1、3、7、14および21日後に採取する。これらの試料採取時を、第4の注入の直前および直後に繰り返す。単一試料を3、6、12、15、18および21週目の各注入の前に採取する。さらなる試料を24、25および52週目に採取する。治験施設への来院が他の約束のため不都合であることが判明した場合にフレボトミスト/看護師による血液試料の採取を対象の家または職場で受ける選択肢を、対象に提供する。追加の血液試料を、各注入の前にADAの測定のために採取し、24、25および52週目の来院時に再び採取する。
【0251】
絶食時血液および尿試料を、スクリーニング時に血液学、化学および凝固パラメーターならびに標準尿検査のために採取し、第4(12週目の注入の前日の来院)および第8の注入(24週目)の3週間後に再び採取する。研究施設職員は、前日の注入クリニックからの彼らの退院以降に対象の肉体的および精神的な健全性を確実にするためにおよび何らかのAEが起こっていないか尋ねるために、各注入の翌日にTED対象に電話をかける。研究のための全ての来院時に任意のAEについて対象を評価し、研究中いつでも、何であれ何らかの健康上の懸念があった場合には研究施設に電話するように対象に伝える。研究のための追加の来院をPIまたは対象のどちらかの要請に応じて調整する。DSMBは、研究中、6ヵ月間隔で、安全性および検査室データを審査する。
【0252】
抗体は、TEDを有する対象において甲状腺眼疾患を処置する上でおよび本明細書で規定の生活の質を改善する上で有効であることが判明する。
【0253】
(実施例5)
VRDN-5000は、甲状腺目疾患(TED)の処置のための開発中のインスリン様増殖因子-1受容体(IGF-1R)に対するアンタゴニスト抗体である。TEDは、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)アゴニスト自己抗体、およびTSHRとIGF-1R間のクロストークにより引き起こされる。TEDは、IGF-1RおよびTSHRを発現する線維芽細胞であって、それらがヒアルロン酸の沈着ならびに眼窩筋および脂肪の拡大を媒介する線維芽細胞の、眼窩組織への動員を特徴とする1。IGF-1R拮抗作用は、この眼窩組織拡大を逆転し、TED患者における症状を確実に和らげることが判明している2。
【0254】
VRDN-5000は、IGF-1Rを標的とするヒト化モノクローナル抗体である。VRDN-5000のIGF-1R結合およびアンタゴニスト特性を分析した。
【0255】
方法
【0256】
表面プラズモン共鳴(SPR):抗体を固定化抗Fcにより捕捉し、組換えIGF-1R細胞外ドメイン(ECD)を分析物として流した。会合および解離速度定数(それぞれ、kaおよびkd)、ならびに平衡解離定数KDを、シングルサイトモデルへのデータのグローバルフィットにより導出した。
【0257】
エピトープビニング:VRDN-5000をアミンカップリングによりチップ表面に固定化し、それを使用してIGF-1R-ECDを捕捉し、その後、テプロツムマブをチップ上に流した。
【0258】
細胞結合:A549ヒト肺腺癌細胞または初代ヒト眼球脈絡膜線維芽細胞(HOCF)を、様々な濃度のVRDN-5000またはテプロツムマブとともにインキュベートした。単一用量50nM IgG1アイソタイプ対照を、陰性対照として使用した。未結合抗体を洗浄により除去し、細胞をAlexa Fluor 488-ヤギ抗ヒト抗体および細胞不透過性色素とともにインキュベートして生細胞をゲートした。生存細胞の蛍光強度中央値(MFI)をフローサイトメトリーにより測定し、FlowJoソフトウェアを使用してデータを解析した。非線形回帰モデル;log(agonist) vs response-variable slope(four parameters)を使用して、用量曲線を当てはめた。
【0259】
内在化:細胞を様々な濃度の目的の抗体とともに4℃および37℃で60分間インキュベートした。次いで、細胞を3回洗浄し、FITC標識ヤギ抗ヒトFc二次抗体とともに30分間、4℃でインキュベートした。生存細胞のMFIをフローサイトメトリーにより測定し、FlowJoソフトウェアを使用してデータを解析した。
【0260】
細胞表面マーカー発現:HOCF細胞を、10ug/mLの直接標識した抗体またはIgGアイソタイプ対照とともにインキュベートした。蛍光強度中央値(MFI)をフローサイトメトリーにより測定し、FlowJoソフトウェアを使用してデータを解析した。
【0261】
拮抗作用:血清飢餓A549またはHOCF細胞を様々な濃度の被検抗体とともに1時間、37℃でプレインキュベートし、次いで、7分間、37℃で100ng/mL(A549)または200ng/mL(HOCF)IGF-1の添加により刺激した。生物学的二重試料のリン酸化IGF-1R(pIGF1R)を、R&D Systems pIGF-1R ELISAを製造業者のプロトコールに従って使用して測定し、pIGF-1R濃度を最低被検抗体濃度に正規化した。非線形回帰モデル;log(inhibitor) vs response-variable slope(four parameters))を使用して、用量曲線を当てはめた。
【0262】
結果
【0263】
VRDN-5000は、サブナノモルの親和性でIGF-1Rに結合する。下の図、図2Aは、抗FC捕捉VRDN-5000またはテプロツムマブに結合したIGF-1R-ECDの濃度上昇が、SPRシグナルの段階的増加を明示することを示し、それによって結合モデルへのグローバルフィットが可能になる。IGF-1Rのウォッシュアウト後、VRDN-5000は、より持続的な結合相互作用を示す。図2Bは、IGF-1R-ECDが固定化VRDN-5000に強く結合したことを示す。テプロツムマブは、IGF-1R:VRDN-5000複合体への結合を示さず、これは、テプロツムマブおよびVRDN-5000がエピトープのオーバーラップを有さないことを示唆していた。
【0264】
VRDN-5000は、高い親和性でA549細胞上のIGF-1Rに結合する。図3A~Cに示されているように、A549細胞へのVRDN-5000の結合をフローサイトメトリーにより評価し、それが3つの異なる濃度でテプロツムマブと同様の結合分布を有することが判明した。図3Dに示されているように、結合用量応答曲線は、VRDN-5000 EC50=0.1nMを実証した。図3Eに示されているように、VRDN-5000、VRDN-2700(FcドメインにM252Y、S254TおよびT256E変異を有するVRDN-5000)、およびテプロツムマブは、IGF-1R受容体内在化を遮断する温度で匹敵する結合を示す。図3Fは、VRDN-5000と、FcドメインにM252Y、S254TおよびT256E変異を有するVRDN-2700と、テプロツムマブとが、4℃に対して37℃で膜IGF-1R受容体レベルの低下により測定して匹敵するレベルの内在化(約50%)を引き起こすことを示す。
【0265】
TED病態のin vitroモデルとしてのHOCF
【0266】
CD34+、Thy-1+眼窩線維芽細胞は、TED5における細胞外基質沈着および病因となる線維症に関与する。ここで、HOFCが(A)IGF-1Rおよび(B)TSHR、ならびに(C)CD34およびThy-1を発現することを示した。これは、TEDにおけるIGF-1R機能のin vitroモデル系としてそれらを使用することができることを実証する。データを図4A~Cに示す。
【0267】
VRDN-5000は、高い親和性でHOCF細胞上のIGF-1Rに結合する。
【0268】
図5A~Bは、フローサイトメトリーにより評価し、3つの異なる濃度でテプロツムマブとほぼ同じ結合を有することが判明した、HOCF細胞へのVRDN-5000の結合を示す。パネルDは、EC50=0.4nMを有するVRDN-5000を実証した結合用量応答曲線を示す。
【0269】
VRDN-5000はサブナノモルIGF-1Rアゴニストである。VRDN-5000は、A549細胞(IC50=0.09nM)およびHOCF細胞(IC50=0.09nM)上でのIGF-1刺激受容体リン酸化を強力に阻害する。それを図6A~Bに示す。
【0270】
(実施例6)
VRDN-5000は、テプロツムマブと比較して、IGF1RへのIGF-1の結合のより強力な阻害剤である。
【0271】
細胞の表面に存在するIGF-1RへのIGF-1の結合を判定した。手短に述べると、標識IGF1をVRDN-5000もしくはテプロツムマブの存在下でまたは抗体の非存在下(陰性対照)で細胞とともにインキュベートした。細胞を洗浄し、次いで、細胞に結合したIGF-1を、IGF1標識の存在を検出することにより判定した。図7に示されているように、VRDN-5000は、より強力な阻害剤であることが判明した。最大阻害は、VRDN-5000について94%およびテプロツムマブについて48%であることが判明した。
【0272】
阻害をIGF-1誘導IGF1-Rリン酸化に関しても評価した。細胞培養物を抗体(VRDN-5000またはテプロツムマブ)およびIGF1刺激物質とともにプレインキュベートした。細胞を溶解し、pIGF1Rを測定した。VRDN-5000は、96%の自己リン酸化の最大阻害を有することが判明したが、その一方で、テプロツムマブは、76%の自己リン酸化の最大阻害を有することが判明した。これらの結果を図8に示す。
【0273】
IGF1活性に対するVRDN-5000のより強力な阻害も、Aktリン酸化の測定で判明した。手短に述べると、細胞培養物を抗体(VRDN-5000またはテプロツムマブ)とともにインキュベートし、IGF1で刺激した。細胞を溶解し、標準アッセイを使用してpAKTを測定した。VRDN-5000は、93%のAktリン酸化の最大阻害を有することが判明したが、その一方で、テプロツムマブは、66%のAktリン酸化の最大阻害を有することが判明した。
【0274】
これらの結果は、IGF-1R上のVRDN-5000エピトープとテプロツムマブエピトープがオーバーラップしていること、VRDN-5000がサブナノモルのEC50で細胞上のIGF-1Rに結合すること、VRDN-5000が、IGF-1Rの内在化を促進すること、およびVRDN-5000が、サブナノモルのIC50でIGF-1Rリン酸化を阻害することを実証する。したがって、VRDN-5000は、サブナノモル濃度でIGF-1Rに結合し、拮抗し、それを内在化する。これは、VRDN-5000を、TEDを引き起こす病態生理機能の潜在的な、強力な抑制に使用することができるはずであることを、示唆している。
【0275】
(実施例7)
VRDN-5000は、対象における甲状腺眼症を処置し、眼球突出の低減が、第1の用量から3週間以内に起こる。3週間の間隔を空けて10mg/kgの用量でのVRDN-5000の2回の注入は、6週目に眼球突出、CAS、および複視の迅速かつ有意な改善をもたらした。結果は、6週目に、VRDN-5000で処置した患者が眼球突出奏効:5/6患者(83%);眼球突出奏効までの時間の中央値:3週間;CAS奏効:6/6(100%)CASスコア0または1:4/6(67%);全奏効:5/6患者(83%);および複視解消:3/4(75%)を有することを実証する。VRDN-5000の第1の注入の6週間後ほどもすぐに観察された眼球突出の低減および複視の改善の平均値は、テプロツムマブについて発表されたもの(Smith et al., Teprotumumab for Thyroid-Associated Ophthalmopathy, N Engl J Med 2017;376:1748-61;Douglas et al., Teprotumumab for the Treatment of Active Thyroid Eye Disease, N. Engl J Med 2020;382:341-52;およびDouglas et al., Teprotumumab Efficacy, Safety, and Durability in Longer-Duration Thyroid Eye Disease and Re-treatment, Ophthalmology 2022, vol 129, no. 4)より有意に速い。比較データを図9~14Bに示す。
【0276】
データが実証するように、平均で対象は、眼球突出、複視およびCASスコアのうちの少なくとも2つの低減または改善を有し、これは、プラセボコホートでは観察されなかった。これらのデータは、予測することができなかった、VRDN-5000が治療効果をいかに早く達成することができるか度についての予想外の結果を実証する。
【0277】
本明細書に引用した全ての参考文献は、各々の個々の刊行物、データベースエントリー(例えば、Genbank配列もしくはGeneIDエントリー)、特許出願または特許が参照により組み込まれると具体的にかつ個々に示されている場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。本出願人は、参照による組込みのこの陳述を、たとえそのような引用が参照による組込みの専用の陳述にすぐ隣接した箇所になかったとしてもアメリカ合衆国特許規則連邦規則法典37巻§1.57(b)(2)に従って各々が明確に特定される、各々のおよびあらゆる個々の刊行物、データベースエントリー(例えば、Genbank配列もしくはGeneIDエントリー)、特許出願または特許に関連付けることを、アメリカ合衆国特許規則連邦規則法典37巻§1.57(b)(1)に準拠して意図している。参照による組込みの専用の陳述の組み入れは、本明細書内にたとえあったとしても、参照による組み入れのこの一般的な陳述をいかなる点においても弱めるものではない。本明細書への参考文献の引用は、参考文献が関連先行技術であることの承認として意図したものではなく、これらの刊行物または文献の内容または日付についてのいかなる承認にも相当しない。
【0278】
本実施形態は、本明細書に記載する特定の実施形態により範囲が限定されることはない。実際、本明細書に記載するものに加えて様々な修飾形態が、上述の記載および添付の図から当業者に明らかになるだろう。そのような修飾形態は、実施形態およびいずれかの添付の請求項の範囲内に入ることを意図している。
【0279】
本明細書は、当業者が実施形態を実施できるようにするのに十分なものであると考えられる。本明細書に示すおよび記載するものに加えて、様々な修飾形態が上述の説明から当業者に明らかになり、本開示およびいずれかの添付の請求項の範囲内に入る。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
【配列表】
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【国際調査報告】