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特表2024-531158沈降嵩密度が増加したポリオレフィン粒状樹脂を製造するためのプロセス
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  • 特表-沈降嵩密度が増加したポリオレフィン粒状樹脂を製造するためのプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】沈降嵩密度が増加したポリオレフィン粒状樹脂を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/34 20060101AFI20240822BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C08F2/34
C08F10/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508043
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 US2022039748
(87)【国際公開番号】W WO2023018671
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/231,007
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ピン
(72)【発明者】
【氏名】アーデルト,デビッド・エム
(72)【発明者】
【氏名】スタンレー,ジョン・ディーロン
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011MA01
4J011MA02
4J011MA04
4J011MA17
4J011MA19
4J011MB01
4J100AA03P
4J100CA01
4J100DA16
4J100DA42
4J100EA05
4J100FA09
4J100FA10
4J100FA22
4J100FA28
4J100FA29
(57)【要約】
粒状ポリオレフィンポリマーの沈降嵩密度を増加させるためのプロセスは、触媒流を気相重合反応器に供給することであって、触媒流が、キャリア流体中に含有される鉱物油及び/又は他の炭化水素液体中に懸濁させることによって任意選択的にスラリー形態で触媒粒子を含む、供給することと、反応器に入る触媒流と共に気相重合反応器に支持気体を供給することであって、支持気体が、ある速度で気相反応器に供給される、供給することと、気相重合反応器中で、触媒粒子及びモノマー、及び任意選択的に1つ以上のコモノマーとの接触によってポリオレフィン粒子を形成することと、粒状ポリオレフィン粒子の沈降嵩密度を決定することと、沈降嵩密度に基づいて、沈降嵩密度を予め設定された限界を超えて維持するために、支持気体の速度を選択的に増加又は減少させることと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状ポリオレフィンポリマーの沈降嵩密度を増加させるためのプロセスであって、前記プロセスが、
触媒流を気相重合反応器に供給することであって、前記触媒流が、キャリア流体中に含有される鉱物油及び/又は他の炭化水素液体中に懸濁させることによって任意選択的にスラリー形態で触媒粒子を含む、供給することと、
前記反応器に入る前記触媒流と共に前記気相重合反応器に支持気体を供給することであって、前記支持気体が、ある速度で前記気相反応器に供給される、供給することと、
前記気相重合反応器中で、前記触媒粒子及びモノマー、及び任意選択的に1つ以上のコモノマーとの接触によってポリオレフィン粒子を形成することと、
前記粒状ポリオレフィン粒子の沈降嵩密度を決定することと、前記沈降嵩密度に基づいて、前記沈降嵩密度を予め設定された限界を超えて維持するために、前記支持気体の速度を選択的に増加又は減少させることと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記触媒流が、ある断面積を有する触媒入口を通って前記気相重合反応器に入り、前記支持気体が、前記触媒入口の0.25~4.0倍以内の断面積を有する気体供給入口を通って前記気相重合反応器に流れる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記支持気体が、前記触媒流と同心円状の様式で前記気相重合反応器に流れる、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記支持気体が、モノマー気体、不活性気体、又はこれらの混合物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記支持気体が、プロピレンガスを含む、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記支持気体が、不活性気体からなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記キャリア流体が、液体プロピレンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記キャリア流体が、窒素気体などの不活性気体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記支持気体の速度が、約5.4m/s~約81m/sに調整されるように構成される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒粒子が、チーグラー・ナッタ触媒を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記沈降嵩密度の予め設定された限界が、約250kg/mより大きい、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記沈降嵩密度の予め設定された限界が、約350kg/mより大きい、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記沈降嵩密度の予め設定された限界が、約400kg/mより大きい、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記支持気体が、約100℃~約150℃の温度で前記気相重合反応器に入る、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記チーグラー・ナッタ触媒が、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体を含む固体触媒成分を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項16】
前記チーグラー・ナッタ触媒が、少なくとも1つの共触媒と、少なくとも1つの選択性制御剤を含む少なくとも1つの外部電子供与体と、任意選択的に少なくとも1つの活性制限剤とを更に含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記内部電子供与体が、置換フェニレンジエステルを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記固体触媒成分が、有機ケイ素化合物及びエポキシ化合物を更に含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
前記触媒粒子が、メタロセン触媒を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記メタロセン触媒が、一般式
(CR’(C)MQn-y-1の1つ以上の化合物を含み、
式中、
Mが、元素の周期表の第III族~第VIII族の金属であり、
(C)及び(C)が、Mに結合された同じ又は異なるシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニル基であり、
Rが、同じであるか、又は異なり、水素、又は1~20個の炭素原子を含有するアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、若しくはアリールアルキル基などのヒドロカルビル基であるか、又は2個の炭素原子が一緒に接続してC~C環を形成し、
R’が、C~C置換若しくは非置換のアルキレン基、ジアルキル若しくはジアリールゲルマニウム若しくはケイ素、又は2つの(C)及び(C)環を架橋するアルキル若しくはアリールホスフィン若しくはアミン基であり、
Qは、1~20個の炭素原子を有するアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、若しくはアリールアルキル基などのヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルボキシ基、又はハロゲンであり、互いに同じであっても異なっていてもよく、
zが、0又は1であり、yが、0、1又は2であり、yが0である場合、zが0であり、nが、Mの原子価状態に応じて0、1、2、3、又は4であり、
n-y≧1である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記メタロセン触媒が、一般式
b-cの共触媒を更に含み、
式中、
が、周期表の第IA族、第IIA族及び第IIIA族の金属であり、
が、周期表の第IA族の金属であり、
vが、0~1の数であり、各Xが、任意のハロゲンであり、
cが、0~3の数であり、
各Rが、一価の炭化水素基又は水素であり、
bが、1~4の数であり、
b-cが、少なくとも1である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記触媒粒子が、前記キャリア流体と組み合わされる前にスラリー状態にあり、前記スラリーが、前記触媒粒子と、鉱物油などの油と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
決定された前記沈降嵩密度が、制御部に伝えられ、前記制御部が、前記決定された沈降嵩密度に基づいて、前記沈降嵩密度を増加させるために前記支持気体の速度を増加又は減少させるように構成される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記制御部が、1つ以上のマイクロプロセッサを含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項25】
前記制御部が、開フィードループで作動する、請求項22又は23に記載のプロセス。
【請求項26】
前記制御部が、閉フィードループで作動する、請求項22又は23に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年8月9日出願の米国特許仮出願第63/231,007号に対する優先権の利益を主張し、ありとあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンポリマーは、多数の多様な用途及び分野で使用される。ポリオレフィンポリマーは、例えば、容易に加工することができる熱可塑性ポリマーである。ポリオレフィンポリマーはまた、リサイクル及び再利用することができる。ポリオレフィンポリマーは、石油化学物質及び他の供給源から得られ、豊富に利用可能である炭化水素、例えばエチレン、プロピレン及び他のアルファ-オレフィンから形成される。
【0003】
ポリオレフィンポリマーの一種であるポリプロピレンは、一般に、プロピレンモノマーに基づく線状構造を有する。ポリプロピレンは、様々な異なる立体特異的配置を有し得る。ポリプロピレンは、例えば、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチックであり得る。アイソタクチックポリプロピレンは、おそらく最も一般的な形態であり、高度に結晶性であり得る。生成され得るポリプロピレン生成物としては、ホモポリマー、変性ポリプロピレンポリマー、及びポリプロピレンターポリマーを含むポリプロピレンコポリマーが挙げられる。ポリプロピレンを変性するか、又はプロピレンを他のモノマーと共重合することによって、特定の用途に所望の特性を有する様々な異なるポリマー生成物を製造することができる。
【0004】
ポリオレフィンポリマーを製造する方法の1つの種類は、典型的には気相重合と呼ばれる。典型的な気相重合中、1つ以上のモノマーが触媒と接触して、流動化媒体によって流動化状態に維持されたポリマー粒子の床を形成する。典型的な気相重合反応器は、流動化床を含む容器と、分配プレートと、生成物排出システムと、を含む。触媒を重合反応器に供給し、流動化媒体の一部を形成するオレフィンモノマーと接触させることができる。
【0005】
気相重合プロセスでポリオレフィンポリマーを製造する場合、当業者は、比較的高い沈降嵩密度(settled bulk density、SBD)を有する粒状ポリマー粒子から構成されるポリマー樹脂を製造しようと試みてきた。沈降嵩密度が増加することで、ポリマー樹脂のより容易な取り扱いを促し、粒子排出システムの効率を大幅に増加させることができる。これらの利点は、ポリマー樹脂を押出機の供給ホッパに供給するとき、反応器から下流でも見られる。沈降嵩密度が増加することで、粒子排出システム、押出機ホッパ、ロータリーフィーダなどを通る固体流量のボトルネックを解消することができ、したがって、ポリマープロセスの全体的な製造速度を増加させることができる。
【0006】
しかしながら、沈降嵩密度に影響を及ぼすプロセスパラメータを決定することには問題があった。したがって、沈降嵩密度が増加した粒状ポリオレフィンポリマーを製造するプロセスが現在必要とされている。特に、異なる触媒を使用し、異なる生成物を製造する全ての異なる種類のポリオレフィン製造プロセスに組み込むことができる、製造中の粒状ポリオレフィンポリマーの沈降嵩密度を増加させるためのプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
一般に、本開示は、ポリオレフィンポリマー樹脂を製造するためのプロセス及びシステムを対象とする。本開示のプロセスは、一般に、気相反応器中で実施される。本開示によれば、形成される粒状ポリオレフィン粒子の沈降嵩密度を最適化及び/又は最大化するために、様々なプロセスパラメータが制御される。
【0008】
一実施形態では、例えば、本開示は、ポリオレフィンポリマー樹脂の沈降嵩密度を増加させるためのプロセスを対象とする。本プロセスは、触媒流を気相反応器に供給することを含む。触媒流は、キャリア流体中に含まれる触媒粒子を含む。触媒粒子は、チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒を含み得る。支持気体は、反応器に入る触媒流と同軸の支持管を通して気相反応器に供給される。支持気体は、ある速度で気相反応器に供給される。
【0009】
ポリオレフィン粒子は、気相反応器中で、触媒粒子を、モノマー及び任意選択的に1つ以上のコモノマーと接触させることによって形成される。粒状ポリオレフィン粒子の沈降嵩密度は、ASTM D1895によって決定される。本開示によれば、製造される粒状ポリマーの決定された沈降嵩密度に基づいて、沈降嵩密度を予め設定されたレベルより上に維持するために、支持気体の速度が選択的に増加又は減少される。
【0010】
一実施形態では、触媒流は、ある断面積を有する触媒入口を通って気相反応器に入り、支持気体は、触媒入口の0.25~4.0倍の範囲の断面積を有する気体供給入口を通って気相反応器に流れる。例えば、一実施形態では、支持気体入口は、触媒入口及び/又は触媒流と同心円状であり得る。例えば、触媒流は、支持気体入口によって取り囲まれたノズルを通して気相反応器中に分配することができる。
【0011】
気相反応器に流れる支持気体は、モノマー気体、不活性気体、又はこれらの混合物を含み得る。一態様では、支持気体は、不活性気体のみを含む。あるいは、支持気体は、プロピレンガスを含み得る。
【0012】
触媒流は、キャリア流体と組み合わされた触媒粒子を含有する懸濁液を含み得る。懸濁液は、鉱物油などの油と組み合わされた触媒粒子から作製することができる。キャリア流体は、一実施形態では、窒素気体などの不活性気体であってもよい。代替の実施形態では、キャリア流体は、液体プロピレンであり得る。
【0013】
気相反応器に入る支持気体の速度は、触媒流及び支持気体流に含まれる成分などの様々な因子に、また、様々な他の因子に依存して、広く変化し得る。一実施形態では、支持気体の速度は、約30m/s~約200m/s、例えば、約50m/s~約150m/sの範囲であり得る。様々な実施形態では、本開示のプロセスを使用して、約250kg/mよりも大きな、例えば、約350kg/mよりも大きな、例えば、約380kg/mよりも大きな予め設定されたレベルに沈降嵩密度を維持することができる。得られ得る最大沈降嵩密度は、約600kg/m未満である。
【0014】
本開示のプロセスを使用して、チーグラー・ナッタ触媒若しくはメタロセン触媒のいずれか、又は更にはチーグラー・ナッタ触媒とメタロセン触媒との混合物を使用する場合に、ポリオレフィン樹脂の沈降嵩密度を増加させることができる。例えば、一実施形態では、触媒系は、チーグラー・ナッタ固体触媒、選択性制御剤(selectivity control agent、SCA)を含む外部電子供与体、及び任意選択的に活性制限剤(activity limiting agent、ALA)を含む。固体触媒は、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体を含み得る。一態様では、内部電子供与体は、置換フェニレンジエステル又はフタレート化合物である。一態様では、固体触媒成分は、有機ケイ素化合物及びエポキシ化合物を更に含み得る。
【0015】
あるいは、触媒系は、メタロセン触媒を含み得る。メタロセン触媒は、
(CR’(C)MQn-y-1を含み得る。
【0016】
上の式では、Mは、元素の周期表の第III族~第VIII族の金属であり、(C)及び(C)は、Mに結合された同じ又は異なるシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニル基であり、Rは、同じであるか、又は異なり、水素、又は1~20個の炭素原子を含有するアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、若しくはアリールアルキル基などのヒドロカルビル基であるか、又は2個の炭素原子が一緒に接続してC~C環を形成し、R’は、C~C置換若しくは非置換のアルキレン基、ジアルキル若しくはジアリールゲルマニウム若しくはケイ素、又は2つの(C)及び(C)環を架橋するアルキル若しくはアリールホスフィン若しくはアミン基であり、Qは、1~20個の炭素原子を有するアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、若しくはアリールアルキル基などのヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルボキシ基、又はハロゲンであり、互いに同じであっても異なっていてもよく、zは、0又は1であり、yは、0、1又は2であり、yが0である場合、zは0であり、nは、Mの原子価状態に応じて0、1、2、3、又は4であり、n-y≧1である。
【0017】
本開示のプロセス及びシステムは、プロセスを実施するための制御部を含み得る。制御部は、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサなどの任意の好適なプログラム可能デバイスであり得る。一実施形態では、ポリオレフィン樹脂の決定された沈降嵩密度が、制御部に伝えられてもよく、制御部は、決定された沈降嵩密度に基づいて、沈降嵩密度を予め設定された限界を超えて維持するために、気相反応器に供給される支持気体の速度を制御するように構成されてもよい。一実施形態では、制御部は、開フィードループで作動し得る。あるいは、制御部は、閉フィードループで作動し得る。
【0018】
本開示の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
完全かつ有効な開示は、添付の図面を参照することを含む、本明細書の残りの部分において、より具体的に記載される。
図1】本開示による気相重合プロセスの一実施形態の概略図である。
図2】本開示に従って使用され得る触媒注入デバイスの断面図である。
【0020】
本明細書及び図面における参照文字の繰り返しの使用は、本発明の同じ又は類似の特色又は要素を表すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
当業者は、本考察が例示的な実施形態の説明のみであり、本開示のより広い態様を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【0022】
一般に、本開示は、樹脂の製造中にポリオレフィン樹脂の沈降嵩密度を最適化及び/又は最大化するためのプロセス及びシステムを対象とする。ポリオレフィン樹脂は、触媒を、モノマー及び任意選択的に1つ以上のコモノマーと接触させてポリオレフィン粒子を形成することによって、形成される。形成された粒状ポリオレフィンは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマーなどであり得る。本開示に従って形成されたポリマー粒子の沈降嵩密度を増加させることで、ポリマー樹脂の取り扱いを促し、より大きなスループット及びプロセス効率をもたらす。
【0023】
本開示は、一般に、ポリオレフィンポリマーを製造するために使用される気相重合プロセスにおける様々な変数を操作することを対象とする。本開示のプロセスを通して、沈降嵩密度を増加させ、最大化することができ、これにより、反応器のポリマー排出システム、並びに生成物パージビン及び回転弁などの反応器の下流の他のユニットの効率を増加させる。より高い沈降嵩密度はまた、生成物を押出機に搬送することを促し、ポリマーペレット又は物品を製造するためにポリマー樹脂を押出機に供給することを促す。
【0024】
気相重合プロセスの間、キャリア流体に含まれる触媒粒子は、流動化床反応器に注入される。典型的には、触媒粒子は、鉱物油などの油と混合されてスラリーを形成し、次いでキャリア流体と組み合わされる。キャリア流体は、例えば、液体プロピレン、又は窒素気体などの不活性気体であり得る。反応器内の触媒入口は、支持気体を触媒流と共に気相反応器に供給する同軸支持管で取り囲まれていてもよい。支持気体は、触媒粒子の分散を助け、触媒粒子が反応器内により良好に浸透して、反応器内に局所的な高温領域又はスポットを引き起こす可能性がある新鮮な触媒の局所的濃縮を防止するように設計されている。
【0025】
本開示によれば、支持気体が触媒流と接触する支持気体の速度は、沈降嵩密度を最大化又は増加させるために制御される。支持気体の速度が沈降嵩密度に有意に影響し得ることが発見されたが、任意の特定の重合プロセスについての速度又は速度範囲の選択は、異なる因子に依存し得る。例えば、支持気体の速度を調整することによって沈降嵩密度を増加させる能力は、触媒に依存する。換言すれば、支持気体の速度は、重合中に使用される特定の触媒に基づいて調整することができる。しかしながら、支持気体速度と触媒との間の関係を理解することも、触媒がチーグラー・ナッタ触媒であろうとメタロセン触媒であろうと、任意の特定の種類の触媒を使用して、任意の種類のポリオレフィンポリマーを製造するときに、沈降嵩密度を増加させるために本開示のプロセスを使用することができるという点で、プロセスを強固なものにする。
【0026】
支持気体の速度は、触媒粒子の摩滅に関係しており、これが次にポリオレフィン粒子形成に影響を及ぼし、したがって沈降嵩密度を含む粒子形態に影響を及ぼすと考えられる。モノマーの重合は、触媒粒子上の活性部位で起こる。単一の触媒粒子は、多数の量の活性部位を含み得る。ポリオレフィンポリマーは、触媒粒子上の活性部位で形成されて微粒子を形成する。次いで、これらの微粒子は、凝集して粒状ポリオレフィン粒子を形成する。これは、いわゆる「ポリマー成長のマルチグレインモデル」である(Hutchinson et al.,Journal of Applied Polymer Science,Vol.44,pp 1389-1414(1992)を参照)。理想的には、触媒支持体上に形成される微粒子は、隣接する微粒子間に粒子内空隙が残らなくなるまで成長し続け、空隙のない粒状粒子をもたらすが、完全な空隙のない粒状粒子は、いかなる商業的気相重合プロセスによっても達成されていない。粒子内空隙を減少させると、嵩密度が増加し、得られる樹脂の取扱い特性が改善されることが見出された。
【0027】
本開示の一実施形態では、気相プロセスにおける支持気体の速度は、触媒粒径を減少させるために触媒の摩滅を制御するために使用される。例えば、触媒粒径を小さくすると、空隙が少なく、したがって沈降嵩密度がより高いポリマー粒子を形成することができる。例えば、触媒粒径を小さくすると、粒子のより多くの熱伝達表面が生成され、触媒上の各活性部位の周囲の局所温度を低下させるのに役立つ。加えて、各触媒粒子によって発生する熱も減少する。活性部位上で成長するポリマー微粒子が十分に冷却されるか、又は比較的低い温度のままである場合、微粒子は、隣接する微粒子に達するまで成長し続け、これにより、粒子内空隙を劇的に減少させることができると考えられる。一方、活性部位が十分に高温である場合、活性部位上で成長した微粒子が成長を停止するように、活性部位の触媒活性が動力学的に低下し、停止する場合があり、したがって、隣接する微粒子間に空隙が残る場合がある。したがって、触媒粒径が比較的大きい場合、熱伝達に利用可能な表面積がより小さくなり、各粒子において発生する熱がより多くなり、これにより、活性部位の周囲の温度が比較的高くなり、ポリマー成長を停止させる場合がある。各活性部位におけるポリマー微粒子が膨張を中断する場合、得られるポリマー粒子は、より大きな空隙空間を有する可能性がある。結果として、いくつかの触媒粒子について、支持気体の速度を増加させることで、摩滅を介して触媒粒径を減少させ、したがって、沈降嵩密度を増加させることができる。
【0028】
しかしながら、他の触媒粒子は、より摩滅して、不規則な形状を有する粒子を形成する傾向が大きい。不規則な形状の触媒粒子は、不均一な位置に活性部位を含む。したがって、活性部位で形成されるポリマー微粒子は、触媒粒子がより球状である場合に起こるようには、一緒に均一に成長しない。これは、粒子から床への熱伝達を悪化させ、いくつかの活性部位において比較的高い温度を促進する可能性がある。その結果、不規則な形状の触媒粒子は、より大きな空隙を生じさせ、ひいては沈降嵩密度を低下させる可能性がある。加えて、最終粒状ポリマー生成物は、不規則な粒子形状を有する場合、不規則な形状の粒子の「充填」が粒子間により多くの粒子間空隙を残すため、沈降嵩密度も低下させる。
【0029】
その結果、上述したように、支持気体の速度は、プロセス内に含まれる触媒粒子の種類に基づいて、調整し、制御することができる。特定の実施形態では、比較的高い気体速度が望ましい場合がある。しかしながら、他の実施形態では、比較的低い気体速度が好ましい場合がある。
【0030】
上述したように、本開示のシステム及びプロセスは、特に気相重合プロセスに適用可能である。本明細書で使用される場合、典型的には、「気相重合」は、流動化媒体によって流動化状態に維持されたポリマー粒子の流動化床を介した触媒の存在下での上昇する流動化媒体(1つ以上のモノマーを含有する流動化媒体)の通過である。「流動化」、「流動化された」、又は「流動化する」とは、微細ポリマー粒子の床が流体の上昇流によって持ち上げられ、かき混ぜられる気体-固体接触プロセスである。流動化は、粒子の床の細隙を通る流体の上向きの流れが、粒子状物質の重量を上回る圧力差及び摩擦抵抗の増大を獲得した場合に粒子状物質の床で生じ、すなわち、粒子は、動かないのではなく、流体によって懸濁される。したがって、「流動化床」とは、流動化媒体の流れによって流動化状態で懸濁された複数のポリマー粒子である。「流動化媒体」は、典型的には、気相反応器を通って上昇する、1つ以上のオレフィンモノマー、水素(重合反応の連鎖停止剤として)、不活性気体(例えば、N2及び飽和炭化水素)、任意選択的に液体(例えば、別個の液滴の形態での凝縮炭化水素)を含有する。
【0031】
反応器自体は、当該技術分野で公知の任意の気相反応器であってもよい。好ましい実施形態では、反応器は、図1に示すような流動化床反応器である。反応器は、当該技術分野で一般的に知られているように、水平若しくは垂直に、又は他の配置で配置することもできる。
【0032】
本明細書に記載した現在好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかであることを理解されたい。そのような変更及び修正は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつその意図される利点を損なうことなく行うことができる。したがって、そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0033】
典型的な気相重合反応器は、容器(すなわち、反応器)、流動化床、分配プレート、入口及び出口配管、コンプレッサ、循環気体冷却器又は熱交換器、並びに生成物排出システムを含む。容器は、反応ゾーン及び減速ゾーンを含み、これらは各々分配プレート上に位置する。流動化床は、反応ゾーン中に位置する。一実施形態では、流動化媒体は、プロピレンガス及び水素又は窒素などの他のガス、並びに2又は4~10個の炭素数を有する任意選択的な他のオレフィンを含む。
【0034】
触媒は、典型的には、反応器の下部に供給される。触媒と流動化媒体との接触時に反応が起こり、ポリマー粒子が成長する。流動化媒体は、流動化床を上向きに通過し、熱伝達及び流動化のための媒体を提供する。反応器は、反応部の上方に位置する拡張部を含む。拡張部では、流動化媒体の速度が低下する。流動化媒体の速度よりも高い終端速度を有する粒子は、流動化媒体流から分離し、重力によって高密度流動化床に戻る。いくつかの微粒子は、それらの終端速度が気体速度よりも小さいので、流動化媒体によって反応器の外に運び出され得る。したがって、拡張部分は、流動化媒体速度を低下させる機能を有し、ポリマー粒子の高密度流動化床への戻りを促進し、反応器から出る微粒子の量を最小限に抑えることができる。反応器を出た後、流動化媒体は、分配プレートを介して反応器の反応部に再導入される前に、コンプレッサ及び1つ以上の熱交換器を通過して重合熱を除去する。流動化媒体は、冷却及び凝縮後に一定量の液体を含有しても含有しなくてもよい。
【0035】
1つ以上のオレフィンモノマーを気相反応器に導入して、触媒と反応させ、ポリマーを粒状ポリマー粒子の形態で形成することができる。好適なオレフィンモノマーの非限定的な例としては、エチレン、プロピレン、C4~20α-オレフィン、例えば、C4~12α-オレフィン、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなど;C4~20ジオレフィン、例えば、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(5-ethylidene-2-norbornene、ENB)、及びジシクロペンタジエン;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンを含むC8~20ビニル芳香族化合物;並びにハロゲン置換C8~40ビニル芳香族化合物、例えば、クロロスチレン及びフルオロスチレンが挙げられる。
【0036】
図1及び2を参照すると、例示目的のみのために、気相重合プロセスの一実施形態が示されている。図1に示されるように、本システムは、反応ゾーン12及び減速ゾーン14を含む気相反応器10を含む。例示的な一実施形態では、反応ゾーンの高さ対直径比は、約2:1~約7:1の範囲で変化し得る。
【0037】
反応ゾーン12は、反応ゾーンを通って流れる流動化媒体の形態での、成長しつつある及び成長したポリマー粒子、重合性モノマー、並びに他の気体状成分(水素及び不活性気体を含む)の床を含む。流動化媒体(典型的には、反応器の大部分において気体状態である)の空塔気体速度(superficial gas velocity、SGV)は、流動化床を製造するのに十分なものである。例えば、反応ゾーン12内の空塔気体速度は、約0.1ft/s~約6ft/sであってもよい。空塔気体速度は、例えば、約0.2ft/sより大きくてもよく、例えば、約0.4ft/sより大きくてもよく、例えば、約0.7ft/sより大きくてもよく、一般に約3.0ft/s未満である。空塔気体速度は、粒子床の最小流動化速度よりも大きい。例えば、空塔気体速度は、最小流動化速度の1.5倍より大きくてもよく、例えば、2.5倍より大きくてもよく、例えば、4倍より大きくてもよい。
【0038】
補充流動化媒体(例えば、重合中に消費されたものを補充するための新鮮なポリオレフィンモノマー)は、一般に、点18、又はコンプレッサ30の上流などのサイクルループ中の他の位置でプロセスに供給され、リサイクルライン22と組み合わされる。リサイクル流の組成は、典型的には、気体分析器21によって測定される。反応器10中の空塔気体速度は、コンプレッサ30を通過する流動化媒体の流量を調整することによって調整することができる。気体分析器21は、図1に示すように、コンプレッサ30と熱交換器24との間の点で、リサイクルされた気体を試験するように配置することができる。
【0039】
リサイクル流22に含まれる流動化媒体は、床より下の点26で底部に向かって反応器10に供給される。反応器10は、スタートアップ前又はシステムがシャットダウンされるときに、床を均一に流動化するのを補助し、流動化床に含まれる固体粒子を支持するための気体分配プレート28を含んでいてもよい。床を上向きに通過して、床から出る流動化媒体は、発熱重合反応によって発生する反応熱を除去する。
【0040】
図1に示すように、流動化媒体は、反応器10を通って減速ゾーン14に流れる。減速ゾーン14内で、大部分の粒子は、反応ゾーン12中の高密度流動化床に落下して戻るが、少量の微粒子は、流動化媒体によって反応器から出てサイクルループに運ばれる。
【0041】
リサイクルされた流動化媒体は、コンプレッサ30中で圧縮され、熱交換器24を通過する。熱交換器24は、流動化媒体が反応器を通過する際に吸収した重合反応熱を、流動化媒体が反応器10に戻される前に除去するためのものである。一態様では、反応器10は、反応器への入口に設置された流体流デフレクタ32を含んでいてもよく、それにより、分配プレート28の下の空間に流動化媒体をより良好に分配するのを助け、含有されるポリマー粒子が沈降して固体塊に凝集するのを防止し、沈降するか又は分離される可能性がある任意の粒子又は液体を維持して同伴させるか、又は再び同伴させる。次いで、分配プレート28は、流動化媒体が、反応器の全断面積において、均一な速度及び均一な量の担持された微粉粒子及び任意選択的に均一な量の凝縮された液体を伴って反応ゾーン12中の流動化床に入ることを可能にする。
【0042】
反応によって生成された粒状ポリオレフィンポリマー樹脂は、ライン44を通って反応器10から排出される。上述したように、ポリマー粒子の沈降嵩密度を予め設定された限界を超えて維持することによって、ポリマー粒子の取り扱い及び搬送が促される。例えば、比較的高い沈降嵩密度は、比較的高い「排出効率」を可能にし、このことは、より少ない量の流体がポリマー粒子と一緒に排出されることを意味する。排出されるこれらの流体は、経済上及び安全上の理由から更に処理される(例えば、反応器に戻される)必要がある。また、排出される流体の量が少なくなると、反応器の運転の中断を減らすことができる。したがって、排出される流体の量は、比較的少ないことが望ましい。
【0043】
重合触媒は、ノズル42からライン48を通って反応器10に入る。ノズル42は、図2により詳細に示されている。
【0044】
触媒流48は、触媒粒子、任意選択的に鉱物油又は液体アルカンなどの懸濁液、及びキャリア流体を含む。触媒粒子(例えば、鉱物油中に懸濁させることによってスラリーの形態で)及びキャリア流体は、ノズル42を通して反応器10に注入される。体積基準で、触媒流48は、主にキャリア流体を含有する。例えば、キャリア流体は、触媒流48の体積の50%より多く、例えば60%より多く、例えば70%より多くを占める。
【0045】
触媒流48中のキャリア流体は、モノマー、コモノマー、不活性炭化水素、不活性気体、又はそれらの混合物を含み得る。一実施形態では、例えば、キャリア流体は、液体プロピレンなどの液体モノマーである。液体プロピレンがキャリア流体として使用される場合、触媒流48の流量は、一般に約15kg/hより大きく、例えば約25kg/hより大きく、例えば約35kg/hより大きい。液体プロピレンがキャリア流体として使用される場合、触媒流48の流量は、一般に約250kg/h未満、例えば約210kg/h未満である。
【0046】
あるいは、キャリア流体は、窒素気体などの不活性気体であってもよい。窒素気体がキャリア流体である場合、触媒流48の流量は、一般に約3kg/hより大きく、例えば約5kg/hより大きく、例えば約7kg/hより大きく、一般に約55kg/h未満であり、例えば約45kg/h未満であり、例えば約35kg/h未満であってもよい。
【0047】
触媒流48に加えて、図1に示されるように、システムは、更に支持気体流47を含む。支持気体流47は、反応器10に放出されるまで、触媒流48から分離される。一態様では、例えば、支持気体流47は、支持気体が触媒注入管の先端に非常に近い管の先端で放出されるように、ノズル42を通して気相反応器10に供給される。典型的には、支持気体は、触媒注入管と同軸に配置された支持管内を流れる。
【0048】
支持気体流は、一般に、モノマー、コモノマー、不活性炭化水素、不活性気体、又はこれらの混合物を含み得る。一実施形態では、例えば、支持気体は、オレフィン気体などのモノマー気体を含み得る。1つの特定の実施形態では、例えば、支持気体は、気化したプロピレンであり得る。一般に、支持気体の流量は、約40kg/hより大きく、例えば約50kg/hより大きく、例えば約60kg/hより大きい。支持気体の流量は、一般に約600kg/h未満、例えば約550kg/h未満、例えば約500kg/h未満である。一態様では、流量は、約410kg/hより大きく、例えば、約430kg/hより大きく、約700kg/h未満である。上記の流量は、気化したプロピレンを支持気体として使用する場合に特に関連する。
【0049】
図2を参照すると、触媒流48及び支持気体流47を重合反応器10内に注入するためのノズル42がより詳細に示されている。図示されるように、触媒流48は、一実施形態では、中央流路70に入る。流路70は、断面積を画定する。支持気体流47は、ノズル42に入り、環状路72に入る。一実施形態では、流路72は、(内径に基づいて)中央流路70の断面積の約0.25~4.0倍の断面積を有する。一実施形態では、例えば、流路72は、中央流路70と同心円状である。
【0050】
上述したように、触媒流48及び支持気体流47が反応器10に注入されるとき、支持気体流47は、触媒に依存する触媒摩滅に対する影響を有することが分かった。より具体的には、本開示によれば、ノズル42の出口における流動気体流47の速度は、形成された粒子の沈降嵩密度に最終的に影響を及ぼし得るポリマー樹脂形成を制御し、調整するために、制御し、調整することができる。
【0051】
ノズル42の出口における支持気体の速度は、特定の用途及び所望の結果に応じて、広く変化させることができる。例えば、支持気体流47の速度は、供給システム及び反応器内に存在する触媒粒子、並びに得られるべき所望の沈降嵩密度に基づいて調整し、制御することができる。
【0052】
一般に、支持気体流量47の速度は、約5.4m/s~約81m/sのいずれかであってよく、その間の1m/sの全ての増分を含む。例えば、支持気体速度は、約5.4m/sより大きくてもよく、例えば、約6.8m/sより大きくてもよく、例えば、約8.1m/sより大きくてもよい。多くの実施形態では、支持気体流47の速度は、約81m/s未満、例えば約75m/s未満、例えば約68m/s未満である。支持気体流47の温度も、速度を決定する際の要因となり得る。支持気体流47は、例えば、約23℃~約150℃のいずれかの温度であってよい。例えば、支持気体流47が、気化したプロピレンを含有する場合、例えば、支持気体流47の温度は、約100℃~約150℃、例えば約120℃~約130℃であってよい。
【0053】
再び図1を参照すると、本開示のシステムは、制御部80も含み得る。制御部80は、任意の適切なプログラム可能デバイス又は論理デバイスであり得る。制御部80は、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサなどであってもよい。図1に示すように、制御部80は、ポリマー排出ライン44及び供給気体流47と連通している。例えば、制御部80は、反応器10内で形成されたポリマー樹脂の沈降嵩密度測定値を受信し、沈降嵩密度に基づいて、ポリマー樹脂の沈降嵩密度を予め設定された限界を超えて維持するために、支持気体流47の速度を調整することができる。例えば、特定の実施形態では、製造されるポリマー及び使用される触媒に応じて、沈降嵩密度の予め設定された限界は、約250kg/mより大きく、例えば約300kg/mより大きく、例えば約350kg/mより大きく、例えば約400kg/mより大きくてもよい。沈降嵩密度は、一般に、ポリオレフィン粉末の大部分について最大で約600kg/m未満である。
【0054】
制御部80は、図1に示されるように、開ループ方式又は閉ループ方式で作動し得る。開ループ方式では、ユーザは、支持気体流47の速度を調整するための入力を提供してもよい。閉ループシステムでは、制御部80は、安定した嵩密度測定値に基づいて、支持気体流47の速度を自動的に調整することができる。粒状ポリマー粉末の沈降嵩密度は、通常、ASTM D1895に従って測定される。
【0055】
上述したように、ノズル42を出る支持気体流の速度は、沈降嵩密度を最適化又は最大化する際に触媒に依存する。特に有利なことに、本開示のプロセス及びシステムは、チーグラー・ナッタ触媒若しくはメタロセン触媒、又はそれらの混合物のいずれを使用しても、製造されるポリマー樹脂の沈降嵩密度を最適化するために使用することができる。
【0056】
一実施形態では、触媒組成物は、チーグラー・ナッタ触媒組成物である。本明細書で使用される場合、「チーグラー・ナッタ触媒組成物」は、(1)周期表第IV族~第VIII族の元素の遷移金属化合物(プロ触媒)と、(2)周期表第I族~第III族の金属の有機金属化合物(共触媒)との組み合わせである。触媒のこれらの成分は、一緒に又は別々に反応器に添加することができる。気相重合反応器の非限定的な例は、プロ触媒及び共触媒が反応器に別々に供給され、すなわち、プロ触媒のみが図2のノズル42を通過する。好適なチーグラー・ナッタプロ触媒の非限定的な例としては、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、及びジルコニウムのオキシハロゲン化物が挙げられる。チーグラー・ナッタ共触媒の非限定的な例としては、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、及びマグネシウムの水素化物、アルキル、又はアリールが挙げられる。
【0057】
一般に、チーグラー・ナッタ触媒は、メタロセン触媒とは異なる摩滅特性を有する。一態様では、チーグラー・ナッタ触媒は、より摩滅しやすい場合がある。したがって、いくつかのチーグラー・ナッタ触媒については、典型的には、比較的低い支持気体流速度を使用して、特定の用途において、沈降嵩密度を増加させ得る。
【0058】
全ての異なる種類のチーグラー・ナッタ触媒が、本開示の方法において使用され得る。チーグラー・ナッタ触媒は、固体触媒成分を含む。固体触媒成分は、(i)マグネシウム、(ii)周期表第IV~VIII族の元素の遷移金属化合物、(iii)ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、並びに/又は(i)及び/若しくは(ii)のアルコキシド、並びに(iv)(i)、(ii)、及び(iii)の組み合わせを含み得る。好適な触媒成分の非限定的な例としては、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、及びマグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、及びこれらの組み合わせのアルコキシドが挙げられる。
【0059】
一実施形態では、触媒成分の調製は、混合マグネシウム及びチタンアルコキシドのハロゲン化を含む。
【0060】
様々な実施形態では、触媒成分は、マグネシウム部分化合物(MagMo)、混合マグネシウムチタン化合物(MagTi)、又は安息香酸含有塩化マグネシウム化合物(BenMag)である。一実施形態では、触媒前駆体は、マグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。MagMo前駆体は、マグネシウム部分を含む。好適なマグネシウム部分の非限定的な例としては、無水塩化マグネシウム及び/又はそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシド若しくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、及び/又はカルボキシル化マグネシウムジアルコキシド又はアリールオキシドが挙げられる。一実施形態では、MagMo前駆体は、マグネシウムジ(C1~4)アルコキシドである。更なる実施形態では、MagMo前駆体は、ジエトキシマグネシウムである。
【0061】
別の実施形態では、触媒成分は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」は、式MgTi(OR)fXを有し、式中、Rは、1~14個の炭素原子又はCOR’を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基であるか、又はR’が、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、各OR基は、同じであるか、又は異なり、Xは、独立して、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり、dは、0.5~56、又は2~4であり、fは、2~116、又は5~15であり、gは、0.5~116、又は1~3である。前駆体は、その調製に使用される反応混合物からアルコールを除去する制御された沈殿によって調製される。一実施形態では、反応媒体は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、最も特にクロロベンゼンと、アルカノール、特にエタノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤としては、四臭化チタン、四塩化チタン又は三塩化チタン、特に四塩化チタンが挙げられる。ハロゲン化に使用される溶液からアルカノールを除去すると固体の前駆体が沈殿するが、これは特に望ましい形状及び表面積を有する。更に、得られた前駆体は、一般に、粒径が特に均一である。
【0062】
別の実施形態では、触媒前駆体は、安息香酸含有塩化マグネシウム材料(「BenMag」)である。本明細書で使用される場合、「安息香酸含有塩化マグネシウム」(「BenMag」)は、安息香酸内部電子供与体を含有する触媒(すなわち、ハロゲン化触媒成分)であり得る。BenMag材料は、ハロゲン化チタンなどのチタン部分も含み得る。安息香酸内部供与体は不安定であり、触媒及び/又は触媒合成中に他の電子供与体によって置き換えられ得る。好適な安息香酸基の非限定的な例としては、安息香酸エチル、安息香酸メチル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシ安息香酸メチル、p-エトキシ安息香酸エチル、p-クロロ安息香酸エチルが挙げられる。一実施形態では、安息香酸基は、安息香酸エチルである。一実施形態では、BenMag触媒成分は、安息香酸化合物の存在下で、任意の触媒成分(すなわち、MagMo前駆体又はMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物であり得る。
【0063】
別の実施形態では、固体触媒成分は、マグネシウム部分、チタン部分、エポキシ化合物、有機ケイ素化合物、及び内部電子供与体から形成することができる。一実施形態では、有機リン化合物を固体触媒成分に組み込むこともできる。例えば、一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は、エポキシ化合物、有機リン化合物、及び炭化水素溶媒を含む混合物中に溶解することができる。得られた溶液を、有機ケイ素化合物の存在下、チタン化合物で処理し、任意選択的に内部電子供与体で処理して、固体沈殿物を形成することができる。次いで、固体沈殿物を更なる量のチタン化合物で処理することができる。触媒を形成するために使用されるチタン化合物は、以下の化学式を有することができる:
Ti(OR)4-g
式中、各Rは、独立して、C~Cアルキルであり、Xは、Br、Cl、又はIであり、gは、0、1、2、3、又は4である。
【0064】
いくつかの実施形態では、有機ケイ素は、モノマー化合物又はポリマー化合物である。有機ケイ素化合物は、-Si-O-Si-基を1分子中又は他の分子間に含んでいてもよい。有機ケイ素化合物の他の例示的な例としては、ポリジアルキルシロキサン及び/又はテトラアルコキシシランが挙げられる。そのような化合物は、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。有機ケイ素化合物は、アルミニウムアルコキシド及び内部電子供与体と組み合わせて使用することができる。
【0065】
上記で言及したアルミニウムアルコキシドは、式Al(OR’)を有するものであってもよく、式中、各R’は、個々に、20個までの炭素原子を有する炭化水素である。これは、各R’が個々にメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオ-ペンチルなどである場合を含み得る。
【0066】
ハロゲン化物含有マグネシウム化合物の例としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及びフッ化マグネシウムが挙げられる。一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は塩化マグネシウムである。
【0067】
エポキシ化合物の例としては、以下の式のグリシジル含有化合物が挙げられるが、これらに限定されない:
【0068】
【化1】
式中、「a」は1、2、3、4、又は5であり、XはF、Cl、Br、I、又はメチルであり、Rは、H、アルキル、アリール、又はシクリルである。一実施形態では、アルキルエポキシドはエピクロロヒドリンである。いくつかの実施形態では、エポキシ化合物は、ハロアルキルエポキシド又は非ハロアルキルエポキシドである。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、エポキシ化合物は、エチレンオキシド;プロピレンオキシド;1,2-エポキシブタン;2,3-エポキシブタン;1,2-エポキシヘキサン;1,2-エポキシオクタン;1,2-エポキシデカン;1,2-エポキシドデカン;1,2-エポキシテトラデカン;1,2-エポキシヘキサデカン;1,2-エポキシオクタデカン;7,8-エポキシ-2-メチルオクタデカン;2-ビニルオキシラン;2-メチル-2-ビニルオキシラン;1,2-エポキシ-5-ヘキセン;1,2-エポキシ-7-オクテン;1-フェニル-2,3-エポキシプロパン;1-(1-ナフチル)-2,3-エポキシプロパン;1-シクロヘキシル-3,4-エポキシブタン;1,3-ブタジエンジオキシド;1,2,7,8-ジエポキシオクタン;シクロペンテンオキシド;シクロオクテンオキシド;α-ピネンオキシド;2,3-エポキシノルボルナン;リモネンオキシド;シクロデカンエポキシド;2,3,5,6-ジエポキシノルボルナン;スチレンオキシド;3-メチルスチレンオキシド;1,2-エポキシブチルベンゼン;1,2-エポキシオクチルベンゼン;スチルベンオキシド;3-ビニルスチレンオキシド;1-(1-メチル-1,2-エポキシエチル)-3-(1-メチルビニルベンゼン);1,4-ビス(1,2-エポキシプロピル)ベンゼン;1,3-ビス(1,2-エポキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;1,4-ビス(1,2-エポキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;エピフルオロヒドリン;エピクロロヒドリン;エピブロモヒドリン;ヘキサフルオロプロピレンオキシド;1,2-エポキシ-4-フルオロブタン;1-(2,3-エポキシプロピル)-4-フルオロベンゼン;1-(3,4-エポキシブチル)-2-フルオロベンゼン;1-(2,3-エポキシプロピル)-4-クロロベンゼン;1-(3,4-エポキシブチル)-3-クロロベンゼン;4-フルオロ-1,2-シクロヘキセンオキシド;6-クロロ-2,3-エポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン;4-フルオロスチレンオキシド;1-(1,2-エポキシプロピル)-3-トリフルオロベンゼン;3-アセチル-1,2-エポキシプロパン;4-ベンゾイル-1,2-エポキシブタン;4-(4-ベンゾイル)フェニル-1,2-エポキシブタン;4,4’-ビス(3,4-エポキシブチル)ベンゾフェノン;3,4-エポキシ-1-シクロヘキサノン;2,3-エポキシ-5-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン;3-アセチルスチレンオキシド;4-(1,2-エポキシプロピル)ベンゾフェノン;グリシジルメチルエーテル;ブチルグリシジルエーテル;2-エチルヘキシルグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル;エチル3,4-エポキシブチルエーテル;グリシジルフェニルエーテル;グリシジル4-tert-ブチルフェニルエーテル;グリシジル4-クロロフェニルエーテル;グリシジル4-メトキシフェニルエーテル;グリシジル2-フェニルフェニルエーテル;グリシジル1-ナフチルエーテル;グリシジル2-フェニルフェニルエーテル;グリシジル1-ナフチルエーテル;グリシジル4-インドリルエーテル;グリシジルN-メチル-α-キノロン-4-イルエーテル;エチレングリコールジグリシジルエーテル;1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル;1,2-ジグリシジルオキシベンゼン;2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン;トリス(4-グリシジルオキシフェニル)メタン;ポリ(オキシプロピレン)トリオールトリグリシジルエーテル;フェノールノボラックのグリシジルエーテル;1,2-エポキシ-4-メトキシシクロヘキサン;2,3-エポキシ-5,6-ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン;4-メトキシスチレンオキシド;1-(1,2-エポキシブチル)-2-フェノキシベンゼン;グリシジルホルメート;グリシジルアセテート;2,3-エポキシブチルアセテート;グリシジルブチレート;グリシジルベンゾエート;ジグリシジルテレフタレート;ポリ(グリシジルアクリレート);ポリ(グリシジルメタクリレート);グリシジルアクリレートと別のモノマーとのコポリマー;グリシジルメタクリレートと別のモノマーとのコポリマー;1,2-エポキシ-4-メトキシカルボニルシクロヘキサン;2,3-エポキシ-5-ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン;エチル4-(1,2-エポキシエチル)ベンゾエート;メチル3-(1,2-エポキシブチル)ベンゾエート;メチル3-(1,2-エポキシブチル)-5-フェニルベンゾエート;N,N-グリシジル-メチルアセトアミド;N,N-エチルグリシジルプロピオンアミド;N,N-グリシジルメチルベンズアミド;N-(4,5-エポキシペンチル)-N-メチル-ベンズアミド;N,N-ジグリシルアニリン;ビス(4-ジグリシジルアミノフェニル)メタン;ポリ(N,N-グリシジルメチルアクリルアミド);1,2-エポキシ-3-(ジフェニルカルバモイル)シクロヘキサン;2,3-エポキシ-6-(ジメチルカルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン;2-(ジメチルカルバモイル)スチレンオキシド;4-(1,2-エポキシブチル)-4’-(ジメチルカルバモイル)ビフェニル;4-シアノ-1,2-エポキシブタン;1-(3-シアノフェニル)-2,3-エポキシブタン;2-シアノスチレンオキシド;及び6-シアノ-1-(1,2-エポキシ-2-フェニルエチル)ナフタレンからなる群から選択される。
【0070】
有機リン化合物の一例としては、例えば、トリアルキルリン酸エステルなどのリン酸エステルを用いることができる。そのような化合物は、次式で表すことができる:
【0071】
【化2】
式中、R、R、及びRは、各々独立して、メチル、エチル及び直鎖又は分岐鎖(C~C10)アルキル基からなる群から選択される。一実施形態では、トリアルキルリン酸エステルは、トリブチルリン酸エステルである。
【0072】
更に別の実施形態では、実質的に球状のMgCl-nEtOH付加物は、噴霧結晶化プロセスによって形成されてもよい。このプロセスでは、MgCl-nROH溶融物(nが1~6である)は、20~80℃の温度で容器の上部に不活性ガスを導入しながら容器内に噴霧される。溶融液滴を、-50~20℃の温度で不活性気体が導入される結晶化領域に移し、溶融液滴を、球形の非凝集固体粒子に結晶化させる。球状のMgCl粒子は、次いで、所望のサイズに分類される。望ましくないサイズの粒子は、リサイクルすることができる。触媒合成のための好ましい実施形態では、球状のMgCl前駆体は、約8~150ミクロン、好ましくは10~100ミクロン、最も好ましくは10~30ミクロンの間の平均粒径(Malvern d50)を有する。
【0073】
触媒成分は、ハロゲン化によって固体触媒に変換することができる。ハロゲン化は、内部電子供与体の存在下で触媒成分をハロゲン化剤と接触させることを含む。ハロゲン化は、触媒成分中に存在するマグネシウム部分を、チタン部分(チタンハロゲン化物など)が堆積されているハロゲン化マグネシウム担体へと変換する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ハロゲン化中、内部電子供与体は、(1)マグネシウム系担体上のチタンの位置を調節し、(2)マグネシウム及びチタン部分の、各々のハロゲン化物への変換を促し、(3)変換中にハロゲン化マグネシウム担体の結晶サイズを調節すると考えられる。したがって、内部電子供与体の提供は、立体選択性が向上した触媒組成物をもたらす。
【0074】
一実施形態では、ハロゲン化剤は、式Ti(ORを有するハロゲン化チタンであり、式中、R及びXが、上記のように定義され、fは、0~3の整数であり、hは、1~4の整数であり、f+hは、4である。一実施形態では、ハロゲン化剤は、TiClである。更なる実施形態では、ハロゲン化は、塩素化又は非塩素化芳香族液体、例えばジクロロベンゼン、o-クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンの存在下で行われる。更に別の実施形態では、ハロゲン化は、ハロゲン化剤と塩素化芳香族液体との混合物であって、40~60体積パーセントのハロゲン化剤、例えばTiClを含む混合物の使用によって行われる。
【0075】
反応混合物は、ハロゲン化中に加熱することができる。触媒成分及びハロゲン化剤は、約10℃未満、例えば約0℃未満、例えば約-10℃未満、例えば約-20℃未満、例えば約-30℃未満の温度で最初に接触される。初期温度は、一般に、約-50℃より高く、例えば約-40℃より高い。次いで、混合物は、0.1~10.0℃/分の速度で、又は1.0~5.0℃/分の速度で加熱される。内部電子供与体は、ハロゲン化剤と触媒成分との間の最初の接触期間の後に、後で添加され得る。ハロゲン化の温度は、20℃~150℃。(又はそれらの間の任意の値若しくは部分範囲)、又は0℃~120℃である。ハロゲン化は、内部電子供与体が実質的に存在しない状態で5~60分、又は10~50分の期間にわたって継続され得る。
【0076】
触媒成分、ハロゲン化剤、及び内部電子供与体の接触の仕方は変化し得る。一実施形態では、触媒成分は、最初に、ハロゲン化剤及び塩素化芳香族化合物を含有する混合物と接触される。得られた混合物を撹拌し、必要に応じて加熱することができる。次に、前駆体を単離又は回収することなく、内部電子供与体を同じ反応混合物に添加する。前述のプロセスは、自動プロセス制御によって制御される様々な成分を添加して、単一の反応器内で行われ得る。
【0077】
一実施形態では、触媒成分は、ハロゲン化剤と反応する前に内部電子供与体と接触される。
【0078】
触媒成分と内部電子供与体との接触時間は、少なくとも-30℃、又は少なくとも-20℃、又は少なくとも10℃から最大150℃、最大120℃、又は最大115℃、又は最大110℃の温度で、少なくとも10分、又は少なくとも15分、又は少なくとも20分、又は少なくとも1時間である。
【0079】
一実施形態では、触媒成分、内部電子供与体、及びハロゲン化剤は、同時に又は実質的に同時に添加される。
【0080】
ハロゲン化手順は、必要に応じて1回、2回、3回、又はそれ以上繰り返すことができる。一実施形態では、得られた固体材料は、反応混合物から回収され、少なくとも約10分間、又は少なくとも約15分間、又は少なくとも約20分間、及び最大約10時間、又は最大約45分、又は最大約30分で、少なくとも約-20℃又は少なくとも約0℃、又は少なくとも約10℃から最大約150℃、又は最大約120℃、又は最大約115℃の温度で塩素化芳香族化合物中のハロゲン化剤の混合物と同じ(又は異なる)内部電子供与体成分が存在しない状態(又は存在下)で1回以上接触される。
【0081】
前述のハロゲン化手順の後、得られた固体触媒組成物は、例えば、湿性フィルタケーキを生成するため、濾過により最終プロセスで用いられる反応媒体から分離される。次いで、湿性フィルタケーキを液体希釈剤ですすぐか、又は洗浄して未反応のTiClを除去することができ、必要に応じて、残留液体を除去するために乾燥させてもよい。典型的には、得られた固体触媒組成物は、イソペンタン、イソオクタン、イソヘキサン、ヘキサン、ペンタン、又はオクタンなどの脂肪族炭化水素などの液体炭化水素である「洗浄液体」で1回以上洗浄される。次いで、固体触媒組成物は、分離及び乾燥され、又は炭化水素、特に更なる貯蔵若しくは使用のために鉱物油などの比較的重質の炭化水素中でスラリー化され得る。
【0082】
一実施形態では、得られる固体触媒組成物は、総固形分重量に基づいて約1.0重量パーセント~約6.0重量パーセント、又は約1.5重量パーセント~約4.5重量パーセント、又は約2.0重量パーセント~約3.5重量パーセントのチタン含有量を有する。固体触媒組成物中のチタン対マグネシウムの重量比は、好適には約1:3~約1:160、又は約1:4~約1:50、又は約1:6~1:30である。一実施形態では、内部電子供与体は、約0.005:1~約1:1、又は約0.01:1~約0.4:1の内部電子供与体対マグネシウムのモル比で触媒組成物中に存在し得る。重量パーセントは、触媒組成物の総重量に基づく。
【0083】
触媒組成物は、固体触媒組成物の単離の前又は後に、以下の手順の1つ以上によって更に処理されてもよい。所望であれば、固体触媒組成物を更なる量のハロゲン化チタン化合物と接触(ハロゲン化)させてもよい。これは、メタセシス条件下で、フタロイルジクロリド又はベンゾイルクロリドなどの酸塩化物と交換されてもよいし、すすぐか、又は洗浄、熱処理してもよいし、又はエージングしてもよい。前述の更なる手順は、任意の順序で組み合わせられてもよく、別々に使用されてもよく、又は全く使用されなくてもよい。
【0084】
上述したように、触媒組成物は、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体の組み合わせを含み得る。触媒組成物は、触媒成分及び内部電子供与体を内部電子供与体が組み込まれたマグネシウム部分とチタン部分との組み合わせに変換する前述のハロゲン化手順によって、生成される。触媒組成物が形成される触媒成分は、マグネシウム部分前駆体、混合マグネシウム/チタン前駆体、安息香酸含有塩化マグネシウム前駆体、マグネシウム、チタン、エポキシ、及びリン前駆体、又は球状前駆体を含む、上述の触媒前駆体のいずれかであり得る。
【0085】
様々な異なる種類の内部電子供与体が固体触媒成分に組み込まれてもよい。一実施形態では、内部電子供与体は、フェニレン置換ジエステルなどのアリールジエステルである。一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造を有していてもよく、
【0086】
【化3】
式中、R、R、R及びRは、各々1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、このヒドロカルビル基は、分岐鎖若しくは直鎖構造を有するか又は7~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み、E及びEは、同じであっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、1~20個の炭素原子を有するアリール、1~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有し、任意選択的にヘテロ原子を含んでいてもよい不活性官能基からなる群から選択され、X及びXは、各々O、S、アルキル基、又はNRであり、Rは、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0087】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」という用語は、分岐鎖若しくは非分岐鎖の飽和若しくは不飽和の、環式、多環式、縮合、又は非環式種、並びにこれらの組み合わせを含む、水素及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1つ以上の非ヒドロカルビル置換基により置換されたヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期表の第IV、V、VI、及びVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基はまた、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基を含む。本明細書で使用される場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1つ以上のハロゲン原子により置換されたヒドロカルビル基を指す。本明細書で使用される場合、「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1つ以上のケイ素原子により置換されたヒドロカルビル基である。ケイ素原子は、炭素鎖中にあってもよく、又はなくてもよい。
【0089】
一態様では、置換フェニレンジエステルは以下の構造(I)を有する:
【0090】
【化4】
【0091】
一実施形態では、構造(I)は、イソプロピル基であるR及びRを含む。R、R、及びR~R14の各々は、水素である。
【0092】
一実施形態では、構造(I)は、R、R、及びR10の各々をメチル基として含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、R~R、及びR11~R14の各々は、水素である。
【0093】
一実施形態では、構造(I)は、R、R、及びR12の各々をメチル基として含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0094】
一実施形態では、構造(I)は、Rをメチル基として含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12の各々は、エチル基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0095】
一実施形態では、構造(I)は、R、R、R、R、R10、R12、及びR14の各々をメチル基として含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、R、R、R11、及びR13の各々は、水素である。
【0096】
一実施形態では、構造(I)は、Rをメチル基として含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、R、R10、R12、及びR14の各々は、i-プロピル基である。R、R、R、R、R11、及びR13の各々は、水素である。
【0097】
一実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,536,372号に詳細に記載されているR~R14の各々の代替物を含む、構造(II)~(V)からなる群から選択される構造を有する。
【0098】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R及びR12の各々は、エトキシ基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0099】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R及びR12の各々は、フッ素原子である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0100】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R及びR12の各々は、塩素原子である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0101】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R及びR12の各々は、臭素原子である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0102】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R及びR12の各々は、ヨウ素原子である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0103】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R、R、R11、及びR12の各々は、塩素原子である。R、R、R、R、R、R10、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0104】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R、R、R11、及びR13の各々は、塩素原子である。R、R、R、R、R、R10、R12、及びR14の各々は、水素である。
【0105】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R、R、及びR~R14の各々は、フッ素原子である。
【0106】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R及びR12の各々は、トリフルオロメチル基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0107】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R及びR12の各々は、エトキシカルボニル基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0108】
一実施形態では、Rはメチル基であり、Rはt-ブチル基である。R及びR12の各々は、エトキシ基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0109】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rはt-ブチル基である。R及びR12の各々は、ジエチルアミノ基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0110】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基である。R、R、及びR~R14の各々は、水素である。
【0111】
一実施形態では、構造(I)は、R及びRを含み、これらの各々は、sec-ブチル基である。R、R、及びR~R14の各々は、水素である。
【0112】
一実施形態では、構造(I)は、各々メチル基であるR及びRを含む。R、R、R~R、及びR10~R14の各々は、水素である。
【0113】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含む。Rは、i-プロピル基である。R、R、R~R、及びR10~R14の各々は、水素である。
【0114】
一実施形態では、構造(I)は、R、R、及びRを含み、これらの各々は、i-プロピル基である。R、R~R、及びR10~R14の各々は、水素である。
【0115】
別の態様では、内部電子供与体はフタレート化合物であり得る。例えば、フタレート化合物は、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジアミル、フタル酸ジイソアミル、フタル酸メチルブチル、フタル酸エチルブチル、又はフタル酸エチルプロピルであり得る。
【0116】
上記の固体触媒成分に加えて、本開示のチーグラー・ナッタ触媒系はまた、共触媒を含むことができる。共触媒は、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウムの水素化物、アルキル、又はアリール、及びこれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、共触媒は、式RAlで表されるヒドロカルビルアルミニウム共触媒であり、式中、各Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヒドリド基であり、少なくとも1つのRは、ヒドロカルビル基であり、2つ又は3つのR基は、環式基に接続され、ヘテロ環式構造を形成することができ、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロカルビル基である各Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、各アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、そのようなヒドロカルビル基は、混合基であってもよく、すなわち、基は、アルキル、アリール、及び/又はシクロアルキル基を含有し得る。好適な基の非限定的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、5,5-ジメチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、及びn-ドデシルである。
【0117】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例は、以下の通りである:トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジ-n-ヘキシルアルミニウム、二水素化イソブチルアルミニウム、二水素化n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム、又はトリ-n-ドデシルアルミニウム。一実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、又は水素化ジ-n-ヘキシルアルミニウムから選択される。
【0118】
一実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウムである。アルミニウム対チタンのモル比は、約5:1~約500:1、又は約10:1~約200:1、又は約15:1~約150:1、又は約20:1~約100:1である。別の実施形態では、アルミニウム対チタンのモル比は、約45:1である。
【0119】
好適な触媒組成物は、固体触媒成分と、共触媒と、2つ以上の異なる成分の混合外部電子供与体(mixed external electron donor、M-EED)であり得る外部電子供与体と、を含み得る。好適な外部電子供与体又は「外部供与体」としては、1つ以上の選択性制御剤(SCA)及び/又は1つ以上の活性制限剤(ALA)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「外部供与体」は、触媒性能を改変するプロ触媒形成とは関係なく添加される成分、又は成分の混合物を含む組成物である。本明細書で使用される場合、「活性制限剤」は、触媒の存在下で重合温度が閾値温度(例えば、約95℃を超える温度)を上回って上昇するにつれて触媒活性を低下させる組成物である。「選択性制御剤」は、ポリマーのタクチシティを改善する組成物であり、改善されたタクチシティは、一般に、増加したタクチシティ若しくは減少したキシレン可溶分、又はこれらの両方を意味すると理解される。上記定義は相互に排他的ではなく、単一の化合物が、例えば、活性制限剤及び選択性制御剤の両方として分類され得ることが理解されるべきである。
【0120】
本開示に従った選択性制御剤は、一般に有機ケイ素化合物である。例えば、一態様では、選択性制御剤はアルコキシシランであり得る。
【0121】
一実施形態では、アルコキシシランは、一般式:SiR(OR’)4-m(I)を有してもよく、式中、Rは、独立して、出現ごとに、水素、あるいは任意選択的に1つ以上の第14、15、16、若しくは17族のヘテロ原子を含有する1つ以上の置換基により置換されたヒドロカルビル又はアミノ基であり、当該Rは、水素及びハロゲンを除く最大20個の原子を含有し、R’は、C1~4アルキル基であり、mは、0、1、2、又は3である。一実施形態では、RはC6~12アリール、アルキル又はアラルキル、C3~12シクロアルキル、C3~12分岐アルキル、又はC3~12環式又は非環式アミノ基であり、R’はC1~4アルキルであり、mは、1又は2である。一実施形態では、例えば、第2の選択性制御剤は、n-プロピルトリエトキシシランを含み得る。使用可能な他の選択性制御剤としては、プロピルトリエトキシシラン及び/又はジイソブチルジメトキシシランが挙げられる。
【0122】
一実施形態では、触媒系は、活性制限剤(ALA)を含み得る。ALAは、重合反応器の不具合を抑制するか、又はそうでなければ防止し、重合プロセスの継続を確実にする。典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、非常に高いレベルに達するまでは、反応器温度が上昇するにつれて増加する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの融点温度近くで高い活性を維持する。発熱重合反応によって発生した熱は、ポリマー粒子から凝集物を形成させる可能性があり、最終的にポリマー製造プロセスの継続を中断することにつながる場合がある。ALAは、高温で触媒活性を低下させ、それによって、反応器の不具合を防止し、粒子の凝集を低減(又は防止)し、重合プロセスの継続を確実にする。
【0123】
活性制限剤はカルボン酸エステルであってもよい。脂肪族カルボン酸エステルは、C~C30脂肪族酸エステルであってもよく、モノ又はポリ(2つ以上)のエステルであってもよく、直鎖又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよく、及びこれらの任意の組み合わせであってもよい。C~C30脂肪族酸エステルはまた、1つ以上の第14、15、又は16族のヘテロ原子を含有する置換基により置換され得る。好適なC4~30脂肪族酸エステルの非限定的な例としては、脂肪族C4~30モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C4~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アリルモノ及びジエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アルキルエステル、並びにC2~100(ポリ)グリコール又はC2~100(ポリ)グリコールエーテルのC4~20モノ又はポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。更なる実施形態では、C~C30脂肪族酸エステルは、ラウレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、オレエート、セバケート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジアセテート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジミリステート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジラウレート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジオレエート、グリセリルトリ(アセテート)、C40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリ-エステル、及びこれらの混合物であり得る。更なる実施形態では、C~C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリステート、ジ-n-ブチルセバケート及び/又はペンチルバレレートである。
【0124】
一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、別々に反応器内に添加され得る。別の実施形態では、選択性制御剤及び活性制限剤は、事前に一緒に混合され、次いで混合物として反応器内に添加され得る。加えて、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、異なる方法で反応器に添加され得る。例えば、一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、流動化床反応器などの反応器に直接添加され得る。あるいは、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、例えばサイクルループ(例えば、図1のライン22)を通して供給することによって、反応器容積に間接的に添加され得る。選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、反応器に供給される前にサイクルループ内で反応器サイクル気体と組み合わせられてもよい。
【0125】
チーグラー・ナッタ触媒に加えて、本開示のプロセス及びシステムは、メタロセン触媒も使用することができる。メタロセン触媒は、少なくとも1つの第3族~第12族金属原子に結合した1つ以上のCp配位子(シクロペンタジエニル及びシクロペンタジエニルにイソローバルな配位子)と、少なくとも1つの金属原子に結合した1つ以上の脱離基とを有する「ハーフサンドイッチ」及び「フルサンドイッチ」化合物を含むことができる。
【0126】
Cp配位子は、1つ以上の環又は環系であり、その少なくとも一部は、シクロアルカジエニル配位子及び複素環式類似体などのπ結合系を含む。環又は環系は、典型的には、第13~16族原子から選択される原子を含み、いくつかの実施形態では、Cp配位子を構成する原子は、炭素、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、リン、ゲルマニウム、ホウ素、アルミニウム、及びこれらの組み合わせから選択され、炭素が環員の少なくとも50%を構成する。例えば、Cp配位子は、置換及び非置換シクロペンタジエニル配位子及びシクロペンタジエニルに対してイソローバルの配位子から選択されてもよい。このような配位子の非限定的な例としては、シクロペンタジエニル、シクロペンタフェナントレニル、インデニル、ベンゾインデニル、フルオレニル、オクタヒドロフルオレニル、シクロオクタテトラエニル、シクロペンタシクロドデセン、フェナントリンデニル(phenanthrindenyl)、3,4-ベンゾフルオレニル、9-フェニルフルオレニル、8-H-シクロペント[a]アセナフチレニル、7-H-ジベンゾフルオレニル、インデノ[1,2-9]アントレン、チオフェノインデニル、チオフェノフルオレニル、それらの水素化態様(例えば、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル、又は「HInd」)、それらの置換態様(以下でより詳細に考察及び記載される)、及びそれらの複素環式態様が挙げられる。
【0127】
メタロセン化合物の金属原子「M」は、第3~12族原子及びランタニド族原子から選択されてもよく、又は第3~10族原子から選択されてもよく、又はSc、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、及びNiから選択されてもよく、又は第4族、5族、及び6族原子から選択されてもよく、又はTi、Zr、若しくはHf原子であってもよく、又はHfであってもよく、又はZrであってもよい。金属原子「M」の酸化状態は、0~+7の範囲であってもよく、+1、+2、+3、+4、若しくは+5であってもよく、又は+2、+3若しくは+4であってもよい。金属原子「M」に結合した基は、別段の指示がない限り、以下の構造及び構造に記載の化合物が電気的に中性であるようなものである。Cp配位子は、金属原子Mと少なくとも1つの化学結合を形成して、「メタロセン触媒成分」を形成する。Cp配位子は、置換/引き抜き反応をあまり受けないという点で、金属原子Mに結合した脱離基とは異なる。
【0128】
一実施形態では、メタロセン触媒は、以下の式
(CR’(C)MQn-y-1によって表されてもよい。
【0129】
上の式では、Mは、元素の周期表の第IIIB族~第VIII族の金属であり、(C)及び(C)は、Mに結合された同じ又は異なるシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニル基であり、Rは、同じであるか、又は異なり、水素、又は1~20個の炭素原子を含有するアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、若しくはアリールアルキル基などのヒドロカルビル基であるか、又は2個の炭素原子が一緒に接続してC~C環を形成し、R’は、C~C置換若しくは非置換のアルキレン基、ジアルキル若しくはジアリールゲルマニウム若しくはケイ素、又は2つの(C)及び(C)環を架橋するアルキル若しくはアリールホスフィン若しくはアミン基であり、Qは、1~20個の炭素原子を有するアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、若しくはアリールアルキル基などのヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルボキシ基、又はハロゲンであり、互いに同じであっても異なっていてもよく、zは、0又は1であり、yは、0、1又は2であり、yが0である場合、zは0であり、nは、Mの原子価状態に応じて0、1、2、3、又は4であり、n-y>1である。
【0130】
上の式によって表されるメタロセンの例示的であるが非限定的な例としては、ジアルキルメタロセン、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル及びジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジ-ネオペンチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジ-ネオペンチル、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジメチル;モノアルキルメタロセン、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムメチルクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムエチルクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフェニルクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメチルクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエチルクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムフェニルクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムメチルブロミド;トリアルキルメタロセン、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリメチル、シクロペンタジエニルジルコニウムトリフェニル、及びシクロペンタジエニルジルコニウムトリネオペンチル、シクロペンタジエニルジルコニウムトリメチル、シクロペンタジエニルハフニウムトリフェニル、シクロペンタジエニルハフニウムトリネオペンチル、及びシクロペンタジエニルハフニウムトリメチル;モノシクロペンタジエニルチタノセン、例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド、ペンタエチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド;ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、式ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム=CHによって表されるカルベン、及びこの試薬の誘導体;置換ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム(IV)化合物、例えば、ビス(インデニル)チタニウムジフェニル又はジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル又はジハロゲン化物;ジアルキル、トリアルキル、テトラ-アルキル及びペンタ-アルキルシクロペンタジエニルチタニウム化合物、例えば、ビス(1,2-ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル又はジクロリド、ビス(1,2-ジエチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル又はジクロリド;ケイ素、ホスフィン、アミン又は炭素架橋したシクロペンタジエン錯体、例えば、ジメチルシリルジシクロペンタジエニルチタニウムジフェニル又はジクロリド、メチルホスフィンジシクロペンタジエニルチタニウムジフェニル又はジクロリド、メチレンジシクロペンタジエニルチタニウムジフェニル又はジクロリド及び他のジハロゲン化物錯体など;並びに架橋したメタロセン化合物、例えば、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリドジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソプロピルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジtertブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジイソプロピルメチレン(2,5-ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジイソプロピルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジtertブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジイソプロピルメチレン(2,5-ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロリド、ジイソプロピルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロリド、ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロリド、ジtertブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロリド、ジイソプロピルメチレン(2,5ジメチルシクロペンタジエニルフルオレニル)チタニウムジクロリド、ラセミ体-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-ジメチルシリルビス(1-インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-ジメチルシリルビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-1,1,2,2-テトラメチルシラニレンビス(1-インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-1,1,2,2-テトラメチルシラニレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウム(IV)、ジクロリド、エチリデン(1-インデニルテトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-t-ブチル-1-シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-エチレンビス(1-インデニル)ハフニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ハフニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-ジメチルシリルビス(1-インデニル)ハフニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-ジメチルシリルビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ハフニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-1,1,2,2-テトラメチルシラニレンビス(1-インデニル)ハフニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-1,1,2,2-テトラメチルシラニレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ハフニウム(IV)、ジクロリド、エチリデン(1-インデニル-2,3,4,5-テトラメチル-1-シクロペンタジエニル)ハフニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-エチレンビス(1-インデニル)チタニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)チタニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-ジメチルシリルビス(1-インデニル)チタニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-ジメチルシリルビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)チタニウム(IV)ジクロリド、ラセミ体-1,1,2,2-テトラメチルシラニレンビス(1-インデニル)チタニウム(IV)ジクロリドラセミ体-1,1,2,2-テトラメチルシラニレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)チタニウム(IV)ジクロリド、又はエチリデン(1-インデニル-2,3,4,5-テトラメチル-1-シクロペンタジエニル)チタニウムIV)ジクロリドが挙げられる。
【0131】
メタロセン触媒と共に共触媒を使用することもできる。共触媒は、例えば、アルミノキサンであってもよい。使用され得る共触媒としては、以下の一般式を有するものが挙げられる。
b-c
【0132】
上の式では、Mは、周期表の第IA族、第IIA族及び第IIIA族の金属であり、Mは、周期表の第IA族の金属であり、vは、0~1の数であり、各Xは、任意のハロゲンであり、cは、0~3の数であり、各Rは、一価の炭化水素基又は水素であり、bは、1~4の数であり、b-cは、少なくとも1である。
【0133】
本発明の実施に適した第IA族、第IIA族又は第IIIA族金属を1つだけ有する化合物には、次式を有する化合物が含まれる。
【0134】
上の式では、Mは、リチウム、ナトリウム、ベリリウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、カドミウム及びガリウムなどの第IA族、第IIA族又は第IIIA族の金属である。kは、Mの原子価に依存して1、2又は3に等しく、この原子価は、通常、Mが属する特定の族(すなわち、IA、IIA又はIIIA)に依存し、各Rは、任意の一価炭化水素基であり得る。好適なR基の例としては、式(V)に関連して上述したR基のいずれかが挙げられる。
【0135】
したがって、一般に記載される本発明は、以下の実施例を参照して、より容易に理解され、これは例示として提供され、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0136】
以下の実施例は、本開示の利点及び利益のいくつかを示すために完成された。
【0137】
図1及び2に示したものと同様の気相重合反応器を、触媒流中に異なる触媒粒子を用いて作動させた。これらの実施例では、チーグラー・ナッタ触媒を使用した。
【0138】
約3~45g/10分の目標メルトフローレート及び約2.5%のキシレン可溶分含有量を有するポリプロピレンホモポリマーを製造するために、気相重合反応器を作動させた。
【0139】
実施例1.米国特許第9,593,182号の実施例9~10に示されているチーグラー・ナッタ触媒、及び米国特許出願公開第2011/0152067(A1)号の実施例B1に示されている外部供与体を使用して、商業規模の気相流動化床重合反応器において、1時間当たり37,500kgの製造速度、70℃の反応器温度、3.1MPaの反応器全圧で、45g/10分のメルトフローレート及び2.5%のキシレン可溶分を有するポリプロピレンホモポリマーを作製した。メルトフローレートは、ASTM D1238-01に準拠して、2.16kg荷重、230℃の条件下で測定した。キシレン可溶分は、ASTM D5492に従って測定した。125℃の気化したプロピレン気体を、触媒注入のための支持気体として使用した。触媒注入システムは、0.375インチ(9.53mm)のO.D.及び0.305インチ(7.7mm)のIDを有する中心触媒注入管と、15/32インチ(11.9mm)のI.D.を有する同軸支持管と、を含む。それは、触媒入口管に対する支持気体路の断面積比を約0.85(管のIDに基づく)にした。この触媒を用いて、2つの異なる試運転を行った。各試運転の間、支持気体流の速度を除いて全ての条件は同じままであった。その条件を16時間より長く安定的に維持して、非常に安定な作動を確実にした。速度を61m/sに調整した場合、得られた平均沈降嵩密度は、413kg/mであった。次いで、速度を16m/sに低下させると、沈降嵩密度は、372kg/mに低下した。
【0140】
実施例2.米国特許第5,093,415号の実施例4~6に示されているチーグラー・ナッタ触媒、及び米国特許出願公開第2011/0152067(A1)号の実施例I1に示されている外部供与体を使用して、商業規模の気相流動化床重合反応器において、1時間当たり37,500kgの製造速度、70℃の反応器温度、3.1MPaの反応器全圧で、3.3g/10分のメルトフローレート及び2.5%のキシレン可溶分を有するポリプロピレンホモポリマーを作製した。125℃の気化したプロピレン気体を、触媒注入のための支持気体として使用した。触媒注入システムは、実施例1と同じである。この触媒を用いて、2つの異なる試運転を行った。各試運転の間、支持気体流の速度を除いて全ての条件は同じままであった。その条件を24時間より長く安定的に維持して、非常に安定な作動を確実にした。速度を57m/sに調整した場合、得られた平均沈降嵩密度は、260kg/mであった。次いで、速度を38m/sに低下させると、平均沈降嵩密度は、297kg/mに増加した。
【0141】
上に示したように、あるチーグラー・ナッタ触媒について、支持気体流の速度を増加させることで、沈降嵩密度が劇的に改善した。しかしながら、異なるチーグラー・ナッタ触媒では、支持気体流の速度を低下させると、より高い沈降嵩密度が得られた。
【0142】
特定の実施形態を例示及び記載してきたが、以下の特許請求の範囲において定義されるようなそのより広い態様における技術から逸脱することなく、当業者によって、その中で変更及び改変が行われ得ることが理解されるべきである。
【0143】
本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素(element)又は要素(elements)、限定(limitation)又は限定(limitations)の不存在下で好適に実践され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、広範囲に、かつ限定せずに読み取られるべきである。加えて、本明細書で用いられる用語及び表現は、限定的なものではなく説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、示され、記載される特徴又はそれらの一部分のいずれの等価物も除外することを意図していないが、様々な修正が特許請求される技術の範囲内で可能であることが認識される。加えて、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、具体的に列挙されたこれらの要素、並びに特許請求される技術の基本的な特徴及び新規の特徴に物質的に影響しないこれらの追加の要素を含むことが理解されよう。「からなる(consisting of)」という語句は、指定されていないあらゆる要素を除外する。
【0144】
本開示は、この出願に記載される特定の実施形態に関して限定されるものではない。当業者には明らかなように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形が行われ得る。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法及び組成物は、前述の記載から当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。本開示は、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ限定されるものである。この開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的系に限定されず、これらは当然変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものに過ぎず、限定するものとしては意図されていないことも理解されたい。
【0145】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、当業者は、本開示が、それによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0146】
当業者によって理解されるように、あらゆる及び全ての目的で、特に書面による説明を提供するという観点で、本明細書に開示される全ての範囲は、あらゆる及び全ての可能性のある部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。いずれの列挙された範囲も、同じ範囲が、少なくとも二等分、三等分、四等分、五等分、十等分などに細分されることを十分に記載し、それを可能にすることが簡単に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下部3分の1、中部3分の1、及び上部3分の1などに容易に細分され得る。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「~超の(~を超える)」、「未満」などの全ての文言は、列挙される数を含み、かつその後、上で論じた部分範囲に細分され得る範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。
【0147】
本明細書において参照される全ての刊行物、特許出願、発行済み特許、及び他の文献は、各個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、又は他の文献が、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれる。参照によって組み込まれる記載内容に含まれる定義は、それらが本開示における定義に矛盾する限りにおいて除外される。
【0148】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載される。
図1
図2
【国際調査報告】