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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240822BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240822BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240822BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/06
C08K3/013
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508089
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2022114896
(87)【国際公開番号】W WO2023030167
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/115214
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジーハイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ、イー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP042
4J002CP053
4J002CP121
4J002CP131
4J002CP141
4J002CP143
4J002DE146
4J002DF016
4J002DK006
4J002EC038
4J002EF069
4J002EQ029
4J002EU029
4J002EU169
4J002EV049
4J002FD016
4J002FD142
4J002FD157
4J002FD203
4J002FD208
4J002FD209
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
高レベル(例えば、80重量%超)の熱伝導性充填剤を含有するヒドロシリル化(付加)硬化性熱伝導性シリコーンゴム組成物、その調製方法、並びに引張強度及び弾性等の適切な物理的特性を保持しながら少なくとも1.5W/mKの熱伝導率を有する組成物から作製された硬化シリコーン系生成物が提供される。そのような材料の使用も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性シリコーンゴム組成物であって、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた数平均分子量から計算された少なくとも2,500の重合度及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンであって、前記不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、ポリジオルガノシロキサンと、
b)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
c)前記組成物の80~95重量%の量の、レーザー回折粒径分析によって測定された0.1~100マイクロメートル(μm)の体積中央粒径を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、
d)ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた数平均分子量から計算された約4~500の重合度を有するオルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
(i)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基、及び
(ii)1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基又は少なくとも1つのアルコキシ基又はヒドロキシ基とアルコキシ基との混合物を、
前記組成物の0.1~10重量%の量で含む、オルガノポリシロキサン充填剤処理剤と、
e)白金族金属又はその化合物を含むか又は白金族金属又はその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、
を含み、
前記組成物の総重量%が100重量%である、熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
成分(a)が、ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた少なくとも4,000の重合度を有する、請求項1に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
硬化したとき、前記組成物が、ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸びを有しながら、例えばASTM D7896-ホットディスク法に従って測定された少なくとも1.5W/mKの高い熱伝導率を有する硬化シリコーン系生成物を提供する、請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
成分(c)が、レーザー回折粒径分析によって測定された0.1~100マイクロメートル(μm)の体積中央粒径サイズを有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤を、前記組成物の85~95重量%の量で含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
硬化したとき、前記組成物が、ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸びを有しながら、少なくとも1.5W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定された)の熱伝導率を有する硬化シリコーン系生成物を提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
成分(b)及び(a)を離して維持して早期硬化を回避するために、使用前に2つの部分、A部及びB部で保管される、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
A部組成物が、成分(a)、(c)(d)、及び(e)を含み、B部が、成分(a)、(b)(c)、及び(d)を含む、請求項6に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
硬化阻害剤も含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、ジフェニルスルフィド、サリチロイルアミノトリアゾール、1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシp-フェニル)プロピオニル]ヒドラジン、銅(II)フタロシアニン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの圧縮永久歪添加剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物から硬化したシリコーン系生成物。
【請求項11】
ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸びを有しながら、少なくとも1.5W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定された)の熱伝導率を有する、請求項10に記載の硬化シリコーン系生成物。
【請求項12】
ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸びを有しながら、ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定された少なくとも2.0W/mKの熱伝導率を有する、請求項10又は11に記載の硬化シリコーン系生成物。
【請求項13】
ASTM D395に従って測定したときに30%未満の圧縮永久歪を有する、請求項10、11、又は12に記載の硬化シリコーン系生成物。
【請求項14】
自動車及びエレクトロニクス用途の製造における、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物の使用。
【請求項15】
前記自動車及びエレクトロニクス用途が、電気自動車充電器用伝熱パッド、電気自動車の伝熱ガスケット、電気自動車のボンネット内冷却部品、キーパッド、プリント回路基板、中央処理装置、及びハードドライブの伝熱パッド、モーター駆動モジュール及び制御モジュールの放熱部品、発光ダイオードプロジェクターの画像表示部の放熱部品、安全監視カメラの画像処理モジュール、広帯域セルラーネットワークの放熱部品、並びに通信電子機器から選択され得る、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高レベル(例えば、80重量%超)の熱伝導性充填剤を含有するヒドロシリル化(付加)硬化性熱伝導性シリコーンゴム組成物、その調製方法、並びに引張強度及び弾性等の適切な物理的特性を保持しながら少なくとも1.5W/mKの熱伝導率を有する組成物から作製される硬化シリコーン系生成物に関する。本開示は、そのような材料の使用にも及ぶ。
【0002】
オルガノシロキサンエラストマーを含む硬化シリコーン系生成物は、その特性により、エレクトロニクス分野における用途を含む多様な最終用途にとって望ましいものとなる。硬化シリコーン系生成物を生成する組成物は、例えば、タイムトランジスタ及び集積回路等の固体電子デバイス、並びにこれらのデバイスが動作する環境中に存在する水分、腐食性物質、及び他の不純物との接触から保護するためにこれらのデバイスが取り付けられることが多い回路基板をコーティングし、硬化時に封入するために使用することができる。しかしながら、オルガノシロキサン組成物及び得られる硬化シリコーン系生成物は、固体デバイスをその動作に悪影響を及ぼす可能性のある材料から効果的に保護するが、典型的には、その動作中に発生する大量の熱を放散させるのに必要な熱伝導率を有していない。
【0003】
熱放散を増加させる1つの方法は、例えば銀、ニッケル、及び銅等の金属粉末並びにカーボンブラック、グラファイト粉末、及び/又は炭素繊維等の炭素質粉末等の熱伝導性充填剤(熱伝導充填剤と呼ばれることもある)をコーティング又は封入材料に添加することによって、固体デバイスをコーティング又は封入するために使用される材料の熱伝導率を増大させることである。しかしながら、そのような組成物は、特に、例えば少なくとも1.5W/mKの高い熱伝導率を生じさせるために必要な高いレベルのそのような充填剤に起因する様々な問題に悩まさる場合がある。そのような高い熱伝導率は、それぞれの組成物中の熱伝導性充填剤の量を増加させることによって達成されるが、組成物の約75又は80重量%(wt.%)を超える量のそのような充填剤が存在すると、概して、取扱特性を損なわせる著しく増加した粘度を有する予備硬化組成物が得られ、加えて、硬化時に、熱伝導性充填剤の大部分が補強しないので物理的特性が乏しい硬化シリコーン系生成物が生じる。このような硬化シリコーン系生成物は一部の用途では許容される場合もあるが、産業界では、硬化材料を作製するための組成物であって、
(i)所望の高レベルの熱伝導率、及び
(ii)必要なレベルの物理的特性
の両方を有するが、
予め一方又は他方のいずれかを予測することができる組成物に対する要求がますます高まっている。(i)についての解決策は特定されているが、適切な物理的特性を犠牲にしている。例えば、存在する熱伝導性充填剤のレベルに起因する予備硬化組成物の高粘度は、組成物を非反応性シリコーン又は有機溶媒で希釈することによって回避することができるが、これは、後で硬化シリコーン系生成物から希釈剤が経時的に滲み出すことによる適合性の問題を引き起こすことが判明しており、更に、このような生成物は、歴史的に、顧客の物理的特性に関する要求を満たしていない。同様に、そのような高レベルの熱伝導性非補強充填剤を有する硬化材料の物理的特性、例えば引張強度及び弾性は、最適化された量の補強充填剤等を含有するシリコーンエラストマーと比較した場合、相対的に劣っている及び/又は一貫性がなく、その結果、そのような物理的特性がないという理由でその利用可能性が制限され、かつ、硬化シリコーン材料がそのような材料の多くの好ましい用途において、例えばガスケット、封入剤として、又は衝撃絶縁パッドにおいて長期間にわたって機能を発揮する能力が制限されるので、このような成績不良がそれらの破損を引き起こし得るためである。
【0004】
圧縮永久歪等の他の物理的特性も損なわれる恐れがある。高レベルの熱伝導性充填剤を含む硬化シリコーン材料の圧縮永久歪(材料を特定の温度で特定の時間にわたって特定の変形まで圧縮した場合に力を除去した後に残る永久変形)は、一般に不十分であり、経時的に更に劣化する。その結果、硬化シリコーン材料は、その元の厚さに近い厚さまで戻る能力を次第に失い、それによって硬化シリコーン材料が長期間にわたって機能を発揮する能力が低下する。
【0005】
熱伝導性シリコーンゴム組成物であって、以下の成分:
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた数平均分子量から計算された少なくとも2,500の重合度及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンであって、当該不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、ポリジオルガノシロキサンと、
b)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
c)当該組成物の80~95重量%の量の、レーザー回折粒径分析によって測定された0.1~100マイクロメートル(μm)の体積中央粒径サイズを有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、
d)ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた数平均分子量から計算された4~500の重合度を有するオルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
(i)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基、及び
(ii)1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基又は少なくとも1つのアルコキシ基又はヒドロキシ基とアルコキシ基との混合物を、
当該組成物の0.1~10重量%の量で含む、オルガノポリシロキサン充填剤処理剤と、
e)白金族金属又はその化合物を含むか又はからなるヒドロシリル化触媒と、
を含み、
当該組成物の総重量%が100重量%である、熱伝導性シリコーンゴム組成物が、本明細書に提供される。
【0006】
組成物は、ヒドロシリル化(付加)硬化性熱伝導性シリコーンゴム組成物である。
【0007】
驚くべきことに、少なくとも2,500の重合度を有し、その結果高い粘度及び分子量を有する成分(a)を、特定のオルガノポリシロキサン(成分(d)で処理された熱伝導性充填剤(成分(c))と併用することにより、組成物が非常に多量(組成物の80~95重量%)の熱伝導性充填剤(c)を含有する場合であっても、高い機械的強度のヒドロシリル化硬化シリコーンゴムを一貫して得ることができることが確認された。
【0008】
十分な物理的特性(すなわち、ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸び)を保持しながら、例えば、少なくとも1.5W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定)の高い熱伝導率を有する硬化シリコーン系生成物を提供するように設計されたオルガノポリシロキサン組成物が本明細書に提供される。
【0009】
組成物の成分:
成分(a)
成分(a)は、少なくとも2,500の重合度及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンであり、当該不飽和基は、アルケニル基又はアルキニル基から選択される。
【0010】
したがって、成分(a)の各ポリジオルガノシロキサンは、少なくとも2,500、あるいは少なくとも3,500、あるいは少なくとも4000の重合度を有し、すなわち、したがって、少なくとも2,500、あるいは少なくとも3,500、あるいは少なくとも4000の式(I)のシロキシ単位を有する。
R’SiO(4-a)/2(I)
下付き文字「a」は0、1、2、又は3である。
【0011】
シロキシ基は、R’が、例えば、独立して選択される、1~18個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基、あるいはアルキル基、典型的にはメチル基である場合、省略(略記)命名法、すなわち-「M」、「D」、「T」、及び「Q」によって記載され得る(シリコーン命名法に関する更なる教示は、Walter Noll,Chemistry and Technology of Silicones,dated 1962,Chapter I,pages 1-9に見出すことができる)。M単位は、式中、a=3であるシロキシ単位、すなわち、R’SiO1/2に相当し、D単位は、式中、a=2であるシロキシ単位、すなわち、R’SiO2/2に相当し、T単位は、式中、a=1であるシロキシ単位、すなわち、R’SiO3/2に相当し、Q単位は、式中、a=0であるシロキシ単位、すなわち、SiO4/2に相当する。成分(a)のポリオルガノシロキサン等のポリジオルガノシロキサンは、実質的に直鎖であるが、分子内に(上記のような)T単位の存在に起因してある割合の分岐を含有し得、したがって構造(I)のaの平均値は、約2である。
【0012】
成分(a)の不飽和基は、ポリジオルガノシロキサンの末端若しくはペンダントのいずれかに、又は両方の位置に位置し得る。成分(a)の不飽和基は、上記のようにアルケニル基又はアルキニル基であり得る。各アルケニル基は、存在する場合、例えば、2~30個、あるいは2~24個、あるいは2~20個、あるいは2~12個、あるいは2~10個、あるいは2~6個の炭素原子を含み得る。存在する場合、アルケニル基は、ビニル基、アリル基、メタリル基、プロペニル基、及びヘキセニル基、及びシクロヘキセニル基によって例示され得るが、これらに限定されない。各アルキニル基は、存在する場合、2~30個、あるいは2~24個、あるいは2~20個、あるいは2~12個、あるいは2~10個、あるいは2~6個の炭素原子を有し得る。アルキニル基の例は、エチニル基、プロピニル基、及びブチニル基によって例示され得るが、これらに限定されない。成分(a)の不飽和基の好ましい例としては、ビニル、イソプロペニル、アリル、及び5-ヘキセニルが挙げられる。
【0013】
式(I)中、上記の不飽和基以外の各R’は、独立して選択される、1~18個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基である。これらは、脂肪族ヒドロカルビル基、置換脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族基、又は置換芳香族基から個々に選択することができる。各脂肪族ヒドロカルビル基は、基1個当たり1~20個の炭素、あるいは基1個当たり1~15個の炭素、あるいは基1個当たり1~12個の炭素、あるいは基1個当たり1~10個の炭素、あるいは基1個当たり1~6個の炭素を有するアルキル基、又はシクロヘキシル等のシクロアルキル基によって例示され得るが、これらに限定されない。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、オクチル基、ウンデシル基、及びオクタデシル基、あるいはメチル基及びエチル基を挙げることができる。置換脂肪族ヒドロカルビル基は、好ましくは、非ハロゲン化置換アルキル基である。
【0014】
脂肪族非ハロゲン化オルガニル基は、アミド基、イミド基等の好適な窒素含有基等の置換基を有する上記のアルキル基;ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基によって例示されるが、これらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、ホウ素含有基が挙げられ得る。芳香族基又は置換芳香族基の例は、フェニル基及び上記の置換基を有する置換フェニル基である。
【0015】
成分(a)は、例えば、ポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はそれらのコポリマー(アルキルに言及する場合、任意の好適なアルキル基、あるいは2個以上の炭素を有するアルキル基を意味する)から選択され得るが、ただし、各ポリマーは、少なくとも2つの不飽和基、典型的には上記のアルケニル基を含有し、少なくとも2,500の重合度を有する。それらは、例えば、トリアルキルで終端していても、アルケニルジアルキルで終端していても、アルキニルジアルキルで終端していてもよく、又は各ポリマーが1分子当たり必要とされる少なくとも2つの不飽和基及び少なくとも2,500の重合度を含有する限り、任意の他の好適な末端基の組み合わせで終端していてもよい。
【0016】
したがって、成分(a)は、例えば、以下のものであってもよい:
ジアルキルアルケニル末端ポリジメチルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン、ジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマー、ジアルキルビニル末端メチルフェニルポリシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、又はトリメチル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン。
【0017】
いずれの場合も、成分(a)は、少なくとも2,500、あるいは少なくとも3,500、あるいは少なくとも4,000の重合度(degree of polymerisation、DP)を有する。この大きさのポリジオルガノシロキサンポリマーは、粘度が非常に高く(25℃で少なくとも1,000,000mPa.s、多くの場合、25℃で数百万mPa.s)かつ高分子量であり、その結果、重合度(DP)がポリマーの数平均分子量から計算されることに鑑みて、例えば少なくとも2,500の高DPを有するので、業界では一般にポリジオルガノシロキサンガム、シロキサンガム、又はシリコーンガム(以下、シリコーンガムと称する)と称される。シリコーンガム等の高粘度流体の粘度の測定は困難であるため、ガムは、粘度に対立するものとして、ウィリアムス可塑度値を用いて定義される傾向がある。成分(a)がシリコーンガムである場合、当該ガムは、ASTM D-926-08に従って測定された少なくとも30mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定された少なくとも50mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定された少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度を有する。典型的には、シリコーンガムは、ASTM D-926-08に従って測定された約100mm/100~300mm/100のウィリアムス可塑度を有する。
【0018】
そのようなポリマーの数平均分子量及び重量平均分子量は、典型的には、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる。本開示において、本明細書における成分(a)として使用されるシリコーンガムの数平均分子量及び重量平均分子量の値は、真空脱気装置を備えたWaters 2695 Separations Module及びWaters 2414屈折率検出器(Waters Corporation,MA,USA)を使用して求めた。溶離液として1.0mL/分で流れる認定グレードのトルエンを使用して分析を行った。Waters Empower GPCソフトウェアを使用して、データの収集及び分析を行った。
【0019】
ポリマーの重合度は、およそ、ポリマーの数平均分子量を74(上記の1つの成分(I)の分子量)で除したものであった。
【0020】
典型的には、ポリマーのアルケニル及び/又はアルキニル含有量、例えばビニル含有量は、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を含有する各ポリジオルガノシロキサンについて成分(a)の0.01~3重量%である、あるいは成分(a)の0.01~2.5重量%、あるいは成分(a)の0.001~2.0重量%、あるいは0.01~1.5重量%の1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を含有するポリジオルガノシロキサン又は各ポリジオルガノシロキサンであり、当該不飽和基は、成分(a)の1分子当たりアルケニル又はアルキニル基から選択される。成分(a)のアルケニル/アルキニル含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求められる。
【0021】
成分(a)は、組成物の4重量%から約19~20重量%、あるいは組成物の5から約19~20重量%、あるいは組成物の5~17.5重量%、あるいは組成物の7.5~17.5重量%の量で当該組成物中に存在し得る。典型的には、成分(a)は、100重量%と組成物の他の成分/構成成分の累積重量%との差である量で存在する。
【0022】
成分(b)
成分(b)は、架橋剤として機能し、1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物の形態で提供される。成分(b)は、通常、水素原子がポリマー(a)の不飽和アルケニル及び/又はアルキニル基と反応してそれらと網目構造を形成し得、それによって組成物を硬化させることができるように、3つ以上のケイ素結合水素原子を含有する。あるいは、ポリマー(a)が1分子当たり2つを超える不飽和基を有する場合、成分(b)の一部又は全てが、1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有し得る。
【0023】
1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つの末端-Si-H基を有する有機ケイ素化合物(b)の分子構成は、特に制限されず、直鎖状、分岐状(T基の存在を通していくつかの分岐を有する直鎖)、環状、又はシリコーン樹脂ベースであり得る。
【0024】
成分(b)の分子量は特に制限されないが、粘度は、ポリマー(a)との良好な混和性を得るために、50000mPa.s以上の粘度についてはBrookfield DV-III Ultra Programmable Rheometer、そして、50000mPa.s未満の粘度についてはBrookfield DV 3T Rheometerのいずれかに依存して、典型的には25℃で5~50000mPa.sである。
【0025】
成分(b)において使用されるケイ素結合有機基は、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル等のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基等のアリール基;3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基によって例示され得、好ましくは1~6個の炭素を有するアルキル基、特にメチル、エチル、若しくはプロピル基、又はフェニル基である。好ましくは、成分(b)において使用されるケイ素結合有機基は、アルキル基、あるいはメチル基、エチル基、又はプロピル基である。
【0026】
1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物(b)の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(a)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(b)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン、
(c)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンのコポリマー、
(d)ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンの環状コポリマー、
(e)(CHHSiO1/2単位、(CHSiO1/2単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(f)(CHHSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(g)1分子当たり3~10個のケイ素原子を有するメチルハイドロジェンシロキサン環状ホモポリマー、
あるいは、架橋剤である成分Bは、充填剤、例えば、上記のうちの1つを用いて処理されたシリカ、及びこれらの混合物であり得る。
【0027】
一実施形態では、成分(b)は、両分子末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサン;分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマーから選択される。
【0028】
架橋剤(b)は、一般に、成分(b)中のケイ素結合水素原子の総数と、ポリマー(a)及び成分(d)中のアルケニル基及び/又はアルキニル基の総数とのモル比が0.5:1~20:1となるように、熱伝導性シリコーンゴム組成物中に存在する。この比が0.5:1未満である場合、十分に硬化した組成物が得られない。この比が20:1を超える場合、加熱された場合に、硬化した組成物の硬度が増加する傾向がある。好ましくは、成分(b)のケイ素結合水素原子と、成分(a)及び成分(d)のアルケニル/アルキニル基、あるいはアルケニル基とのモル比が、0.7:1.0~5.0:1.0、好ましくは0.9:1.0~2.5:1.0、最も好ましくは0.9:1.0~2.0:1.0の範囲となるような量である。
【0029】
成分(b)のケイ素結合水素(Si-H)含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求められる。本発明において、ケイ素結合水素とアルケニル(ビニル)及び/又はアルキニルとの比は、ヒドロシリル化硬化プロセスに依存する場合に重要である。一般に、これは、組成物中のアルケニル基の総重量%、例えば、ビニル[V]と、組成物中のケイ素結合水素[H]の総重量%とを計算することによって決定され、ここで、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27として、ビニルに対するケイ素結合水素のモル比は27[H]/[V]である。
【0030】
典型的には、成分(a)及び成分(d)中の不飽和基の数並びに成分(b)中のSi-H基の数に応じて、成分(b)は、熱伝導性シリコーンゴム組成物の0.1~10重量%、あるいは熱伝導性シリコーンゴム組成物の0.1~7.5重量%、あるいは熱伝導性シリコーンゴム組成物の0.5~7.5重量%、更にあるいは0.5重量%~5重量%の量で存在する。
【0031】
成分(c)
成分(c)は、組成物の80~95重量%の量の、0.1~100マイクロメートル(μm)の体積中央粒径D(v,0.5)を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤である。
【0032】
体積中央粒径D(v,0.5)は、分布の50%が当該値を上回り、50%が当該値を下回る、D50粒径分布(又は中央粒径分布)の粒径値である。熱伝導性充填剤(c)は、単一の熱伝導性充填剤であってもよく、又は粒子形状、体積中央粒径、粒径分布、及び充填剤の種類等の少なくとも1つの特性が異なる2種以上の熱伝導性充填剤の組み合わせであってもよい。本明細書における体積中央粒径D(v,0.5)値は、供給業者のデータシートから得た、及び/又はHydro 2000 MU分散ユニットを備えたMalvern Mastersizer 2000を使用してレーザー回折粒径分析によって測定した。依拠したパラメータは、粒子の屈折率(R.I.):1.78/0.1;分散剤:水(1.33);オブスキュレーション:約10%;内部撹拌速度:3000rpmであった。
【0033】
0.5gの充填剤+25mLの水を混合することによって、分析前に試料を調製し、振盪し、Hydro2000MU分散ユニットに入れ、2分間内部超音波処理した。
【0034】
任意の好適な熱伝導性充填剤を成分(c)として用いてよい。例としては、-金属、例えば、ビスマス、鉛、スズ、アンチモン、インジウム、カドミウム、亜鉛、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、及びケイ素金属;
合金、例えば、ビスマス、鉛、スズ、アンチモン、インジウム、カドミウム、亜鉛、銀、アルミニウム、鉄、及び/又はケイ素のうちの1つ以上の合金;例えば、Fe-Si合金、Fe-Al合金、Fe-Si-Al合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Ni合金、Fe-Ni-Co合金、Fe-Ni-Mo合金、Fe-Co合金、Fe-Si-Al-Cr合金、Fe-Si-B合金、及びFe-Si-Co-B合金;
フェライト、Mn-Znフェライト、Mn-Mg-Znフェライト、Mg-Cu-Znフェライト、Ni-Znフェライト、並びにNi-Cu-Znフェライト及びCu-Znフェライト;
金属酸化物、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、及び酸化チタン;
金属水酸化物、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、及び水酸化カルシウム;
金属窒化物、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素;
炭化ホウ素及び炭化チタンを含む、炭化ケイ素等の金属炭化物;及び
ケイ化マグネシウム、ケイ化チタン、ケイ化物、ジルコニウム、ケイ化タンタル、ケイ化ニオブ、ケイ化クロム、及びケイ化タングステン、及びケイ化モリブデン等の金属ケイ化物が挙げられる。
【0035】
熱伝導性充填剤は、上記のうちの2つ以上の混合物であり得る。いくつかの実施形態では、例えばアルミニウム充填剤と酸化アルミニウム充填剤との組み合わせ、アルミニウムと酸化亜鉛充填剤の組み合わせ、又はアルミニウム充填剤と酸化アルミニウム充填剤と酸化亜鉛充填剤との組み合わせ等の、金属充填剤と無機充填剤との組み合わせを使用してよい。
【0036】
上記のうち、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及びそれらの混合物が好ましい。
【0037】
熱伝導性充填剤粒子の形状は特に限定されず、例えば、粉末及び/又は繊維であってよいが、円形又は球形粒子であると、組成物中の熱伝導性充填剤の高負荷によって望ましくないレベルまで粘度が増加するのを防ぐことができるので、好ましい。熱伝導性充填剤の体積中央粒径及びD50粒径分布は、選択される熱伝導性充填剤の種類、及び硬化性組成物に添加される正確な量、並びに組成物の硬化シリコーン系生成物が用いられるデバイスのボンドラインの厚さを含む、各種要因に依存する。いくつかの特定の例において、熱伝導性充填剤は、レーザー回折粒径分析によって測定される0.1~100マイクロメートル(μm)、あるいは0.1マイクロメートル~80マイクロメートル、あるいは0.1マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲の体積中央粒子を有し得る。本明細書に記載される熱伝導性シリコーンゴム組成物は、80重量%~95重量%、あるいは例えば85重量%~95重量%の熱伝導性充填剤(c)を含む。
【0038】
本明細書に記載の少なくとも80重量%の熱伝導性充填剤(c)を含む熱伝導性シリコーンゴム組成物から得られる硬化シリコーン系生成物は、ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定される、少なくとも1.5W/mKの高い熱伝導率を有する。
【0039】
硬化シリコーン系生成物の熱伝導率は、利用される熱伝導性充填剤に依存する。酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウム等の伝導性の低い熱伝導性充填剤(c)の場合、組成物の80重量%の量で存在するとき、製品の熱伝導率は、典型的には1.5W/mK~2.0W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法)になり、したがって、硬化シリコーン系生成物が少なくとも2.0W/mKの熱伝導率(ASTM D7896-ホットディスク法)を有するためには、組成物は、最高約85重量%のこれらの熱伝導性充填剤を必要とし得る。
【0040】
しかしながら、少なくとも80重量%の熱伝導性充填剤(c)を含む本明細書の熱伝導性シリコーンゴム組成物からの硬化シリコーン系生成物であって、当該充填剤が金属窒化物、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素である硬化シリコーン系生成物は、著しく高い熱伝導率、例えば、少なくとも2.0W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法)を有するであろう。
【0041】
このような充填剤を本明細書の組成物と組み合わせて使用する場合の本明細書における1つの利点によって、引張強度及び破断点伸び等の物理的特性を保持する当該硬化シリコーン系生成物が得られる。
【0042】
成分(d)
本明細書の組成物の成分(d)は、4~500の重合度を有し、
(i)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基、及び
(ii)1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基又は少なくとも1つのアルコキシ基又はヒドロキシ基とアルコキシ基との混合物
を含むオルガノポリシロキサンを含む充填剤処理剤として利用される。
【0043】
したがって、成分(d)の各オルガノポリシロキサンは、4~500の重合度を有し、すなわち、成分(a)に関して記載した通り式(I)のシロキシ単位を4~500個有する。
R’SiO(4-a)/2(I)
下付き文字「a」は0、1、2、又は3である。
【0044】
成分(d)の不飽和基は、ポリジオルガノシロキサンの末端若しくはペンダントのいずれかに、又は1つを超える(>1))場合は両方の位置に存在し得る。成分(d)の不飽和基は、成分(a)に関して上記したようにアルケニル基又はアルキニル基であり得る。
【0045】
成分(d)においては、1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基又は少なくとも1つのアルコキシ基又はヒドロキシ基とアルコキシ基との混合物も存在する。存在する場合、アルコキシ基は、基1個当たり1~20個の炭素、あるいは基1個当たり1~15個の炭素、あるいは基1個当たり1~12個の炭素、あるいは基1個当たり1~10個の炭素、あるいは基1個当たり1~6個の炭素を有し得、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、及び/又はヘキソキシ基が好ましい。成分(d)のオルガノポリシロキサンは、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0046】
再び式(I)を参照する成分(d)においては、上記の不飽和基以外の各R’及び1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基又は少なくとも1つのアルコキシ基又はヒドロキシ基とアルコキシ基との混合物は、成分(a)に関して上記と同じ脂肪族ヒドロカルビル基、置換脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族基、又は置換芳香族基から独立して選択される。
【0047】
成分(d)は、ポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はそれらのコポリマー(アルキルに言及する場合、任意の好適なアルキル基、あるいは2個以上の炭素を有するアルキル基を意味する)から選択され得るが、ただし、それらは4~500の重合度を有し、
(i)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基、及び
(ii)1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基又は少なくとも1つのアルコキシ基又はヒドロキシ基とアルコキシ基との混合物
を含む。
【0048】
当該アルケニル基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基は、ペンダント基であっても、末端基であってよい。1つの好ましい選択肢では、不飽和基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基は、末端基である。
【0049】
例として、本明細書における成分(d)は、1分子当たり1個のジメチルアルケニル末端及び1分子当たり1個のトリアルコキシ末端又は1分子当たり1個のヒドロキシルジアルキル末端を有する直鎖又は分岐ポリジメチルシロキサン、例えば、MViSi(OMe)であってよく、これは、あるいは、以下のように記述することもできる:
(CH=CH)(CHSiO[(CHSiO]Si(OCH
(式中、fは、重合度が4~500になるような整数であり、あるいはfは、重合度が4~250になるような整数であり、fは、重合度が4~150になるような整数であり、あるいはfは、重合度が4~100になるような整数である)。その例は、fが25である、すなわちMVi25Si(OMe)である場合であり、そうでなければ以下のように記述される。
【0050】
(CH=CH)(CHSiO[(CHSiO]25SiO(CH
成分(d)の別の例は、以下のようなジアルキルヒドロキシ末端又はジアルキルメトキシ末端を有する4~500の重合度を有するポリジメチルメチルビニルシロキサンポリマー又はポリメチルビニルシロキサンポリマーであってもよい:
(CHSiO[(CHSiO][(CH=CH)(CH)SiO]SiO(CH
(式中、Rは、ヒドロキシ又はアルコキシルであり、mは、0又は整数であり、nは、重合度が4~500になるような、あるいは重合度が4~250になるような、あるいは重合度が4~150になるような、あるいは重合度が4~100になるような、あるいは重合度が4~50になるような整数であり、例えば、m+n=4~17である)。
【0051】
いずれの場合も、成分(d)は、4~500の重合度を有し、
(i)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基、及び
(ii)1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基又は少なくとも1つのアルコキシ基又はヒドロキシ基とアルコキシ基との混合物
を含む。
【0052】
4~500の重合度は、粘度が25℃で最低約20MPa.sとなり、組成物の数平均分子重量(Mw)がおよそ少なくとも約300であることを意味する。分子量値は、同様にゲル透過クロマトグラフィーによって求めることができるが、例えば、約4~20のDPを有する範囲の下端のポリマーは、ガスクロマトグラフィー質量分析(gas chromatography-mass spectroscopy、GC-MS)によって分析され得る。
【0053】
成分(d)は、組成物の0.1~10重量%の量、あるいは0.1~5重量%の量、あるいは組成物の0.25~5重量%の量、あるいは組成物の0.25~2.5重量%の量で本明細書における組成物中に存在する。
【0054】
成分(e)
熱伝導性シリコーンゴム組成物の成分(e)は、白金族金属又はその化合物を含むか又はからなるヒドロシリル化触媒である。それらは、通常、白金族の金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウム)、又はこのような金属のうちの1つ以上の化合物の触媒から選択される。代替的に、白金及びロジウム化合物は、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の高い活性レベルに起因して好ましく、白金化合物が、最も好ましい。ヒドロシリル化(又は付加)反応において、本明細書における成分(e)等のヒドロシリル化触媒は、不飽和基、通常はアルケニル基、例えばビニルとSi-H基との間の反応を触媒する。
【0055】
成分(e)のヒドロシリル化触媒は、白金族金属;担体、例えば活性炭、酸化アルミニウム若しくは二酸化ケイ素等の金属酸化物、シリカゲル若しくは粉末状木炭上に堆積された白金族金属;又は白金族金属の化合物若しくは錯体であり得る。好ましくは、白金族金属は、白金である。
【0056】
好ましい成分(e)のヒドロシリル化触媒の例は、白金系触媒、例えば白金黒、酸化白金(アダムス触媒)、様々な固体担体上の白金、塩化白金酸、例えばヘキサクロロ白金酸(Pt酸化状態IV)(シュパイヤー触媒)、アルコール、例えばイソオクタノール又はアミルアルコールの溶液中の塩化白金酸(ラモロー触媒)、並びに塩化白金酸とエチレン性不飽和化合物、例えばオレフィン及びエチレン性不飽和ケイ素結合炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体、例えばテトラ-ビニル-テトラメチルシクロテトラシロキサン-白金錯体(アシュビー触媒)である。使用可能な可溶性白金化合物としては、例えば、式(PtCl.(オレフィン)及びH(PtCl.オレフィン)の白金-オレフィン錯体を挙げることができ、この文脈では、エチレン、プロピレン、ブテンの異性体及びオクテンの異性体など、2~8個の炭素原子を有するアルケン、又はシクロペンテン、シクロヘキセン、及びシクロヘプテンなど、5~7個の炭素原子を有するシクロアルカンの使用が好ましい。他の可溶性白金触媒は、例えば、式(PtClの白金-シクロプロパン錯体であり、ヘキサクロロ白金酸の、アルコール、エーテル、及びアルデヒド、若しくはこれらの混合物との反応生成物、又はヘキサクロロ白金酸及び/若しくはその変換生成物と、メチルビニルシクロテトラシロキサンなどのビニル含有シロキサンとのエタノール性溶液中の重炭酸ナトリウムの存在下での反応生成物である。リン、硫黄、及びアミン配位子を有する白金触媒、例えば、(PhP)PtCl、及びsym-ジビニルテトラメチルジシロキサンなど、ビニルシロキサンとの白金の錯体も、使用することができる。
【0057】
したがって、好適な成分(e)の白金系触媒の具体例としては、
(i)米国特許第3,419,593号に記載されている、塩化白金酸と、エチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体;
(ii)六水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸、
(iii)塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法によって得られる白金含有触媒、
(iv)(COD)Pt(SiMeCl(式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである)などの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体、及び/又は
(v)典型的にはビニルシロキサンポリマー中に、典型的には約1重量%の白金を含有する、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である、Karstedtの触媒、が挙げられる。トルエンなどの有機溶媒のような溶媒は、歴史的に代替物として使用されてきたが、ビニルシロキサンポリマーの使用がはるかに好ましい選択である。これらは、米国特許第3,715,334号及び米国特許第3,814,730号に記載されている。好ましい一実施形態では、成分(e)は、白金の配位化合物から選択され得る。一実施形態では、ヘキサクロロ白金酸及びそのビニル含有シロキサンとの変換生成物、カールシュテット触媒、並びにシュパイヤー触媒が好ましい。
【0058】
ヒドロシリル化触媒の触媒量は、概ね、組成物の重量に基づいて百万部当たりの白金族金属の重量部(ppm)で、0.01ppm~10,000ppm、あるいは0.01~5000ppm、あるいは0.01~3,000ppm、あるいは0.01~1,000ppmである。特定の実施形態では、触媒の触媒量は、組成物の重量に基づいて、0.01~1,000ppm、あるいは0.01~750ppm、あるいは0.01~500ppm、あるいは0.01~100ppmの範囲に及んでもよい。範囲は、指定されたように、触媒内の金属含有量のみ、又は触媒全体(その配位子を含む)に関連し得るが、典型的には、これらの範囲は、触媒内の金属含有量のみに関連する。触媒は、単一種として、又は2つ以上の異なる種の混合物として添加され得る。典型的には、例えば、ポリマー又は溶媒中において触媒が提供される形態/濃度に応じて、存在する成分(e)の量は、組成物の0.001~3.0重量%、あるいは組成物の0.001~1.5重量%、あるいは熱伝導性シリコーンゴム組成物の0.01~1.5重量%、あるいは0.01~0.1.0重量%の範囲内である。
【0059】
追加の任意の成分
追加の任意成分は、その意図される最終用途に応じて、前述の熱伝導性シリコーンゴム組成物中に存在し得る。そのような任意成分の例としては、硬化阻害剤、圧縮永久歪添加剤、補強充填剤、顔料及び/又は着色剤、並びに金属不活性化剤、離型剤、UV光安定剤、殺菌剤、及びそれらの混合物等の他の追加の添加剤が挙げられる。
【0060】
任意のヒドロシリル化反応阻害剤
本明細書に記載される熱伝導性シリコーンゴム組成物はまた、1つ以上の任意のヒドロシリル化反応阻害剤を含んでいてもよい。ヒドロシリル化反応阻害剤は、必要な場合、特に保管中にヒドロシリル化反応阻害剤硬化プロセスを防止又は遅延するために使用される。白金系触媒の任意のヒドロシリル化反応阻害剤は、当該技術分野において周知であり、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、マレエート、フマレート、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エン-イン、ヒドロペルオキシド、ニトリル、並びにジアジリジンが挙げられる。米国特許第3989667号に記載されているようなアルケニル置換シロキサンを使用してもよく、その中で環状メチルビニルシロキサンが好ましい。
【0061】
既知のヒドロシリル化反応抑制剤の1つの種類は、米国特許第3445420号に開示されているアセチレン化合物である。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレン系アルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する好ましい種類の抑制剤を構成する。典型的には、これらの抑制剤を含有する組成物は、実用的な速度で硬化させるために、70℃以上の温度で加熱する必要がある。
【0062】
アセチレンアルコール及びその誘導体の実施例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(1-ethynyl-1-cyclohexanol、ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、1-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びこれらの混合物が挙げられる。アセチレン系アルコールの誘導体としては、少なくとも1個のケイ素原子を有するこれらの化合物が挙げられてもよい。
【0063】
場合によっては、存在する場合、触媒(e)の金属1モル当たりヒドロシリル化反応阻害剤1モル程度であり得る低いヒドロシリル化反応阻害剤濃度でも、依然として満足な保管安定性及び硬化速度を付与する。他の場合では、触媒の金属1モル当たり最大500モルのヒドロシリル化反応阻害剤の阻害剤濃度が必要である。所与の組成物における所与のヒドロシリル化反応阻害剤に最適な濃度は、日常的な実験によって容易に決定される。選択されたヒドロシリル化反応阻害剤が商業的に提供される/利用可能である濃度及び形態に応じて、組成物中に存在する場合、阻害剤は、典型的には、組成物の0.0125~10重量%の量で存在する。
【0064】
一実施形態では、阻害剤は、存在する場合、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)及び/又は2-メチル-3-ブチン-2-オールから選択され、組成物の0超~0.1重量%の量で存在する。
【0065】
任意の圧縮永久歪添加剤
圧縮永久歪は、通常、シリコーングリース、シリコーンゲル、及び填隙剤等の典型的な熱伝導性用途にとって重要な性能であるとは考えられないが、標準的な熱伝導性シリコーンゴム組成物は、通常、熱伝導性を達成するための組成物中の高負荷の熱伝導性充填剤に起因して非常に高い圧縮永久歪を示す。他の箇所でも議論されるように、熱伝導性シリコーンゴム組成物が、例えば少なくとも1.5W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定)の高い熱伝導率を生じさせるように設計されている場合、必要とされる熱伝導性充填剤のレベルは、一般に、取扱特性を損なわせる著しく増加した粘度を有する予備硬化組成物をもたらし、加えて、硬化すると、乏しい物理的特性を有する硬化シリコーン系生成物をもたらす。このような生成物は一部の用途では許容される場合もあるが、産業界では、硬化材料を作製するための組成物であって、
(i)所望の高レベルの熱伝導率、及び
(ii)必要なレベルの物理的特性
の両方を有するが、
予め一方又は他方のいずれかを予測することができる組成物に対する要求がますます高まっている。熱伝導性シリコーンゴム組成物中に存在する多量の熱伝導性充填剤は、過去には、シリコーンゴムの弾性/復元性を著しく減少させていたが、本明細書で提供される組成物は、この問題を克服すると考えられる。しかしながら、所望であれば、組成物中に特定の圧縮永久歪添加剤を含めることは、圧縮永久歪に対して大きな改善効果を有することが確認された。圧縮永久歪は、本明細書ではASTM D395に従って測定され、印加された力を取り除いた後に残る永久変形である。この用語は、多くの場合、エラストマーを使用する場合に対象となる特性である。圧縮永久歪は、材料が特定の温度で特定の時間にわたって特定の変形まで圧縮されたときに生じる。圧縮永久歪試験では、所与の温度及びたわみでの長期にわたる圧縮応力後に元の厚さに戻るゴムの能力を測定する。ゴム材料は、長い期間をかけて圧縮されると、元の厚さに戻る能力を失う。この復元性(記憶)の喪失は、エラストマーガスケット、シール又は緩衝パッドが長期間にわたって機能を発揮する能力を低下させる恐れがある。ガスケットに時間の経過とともに生じ得る永久歪は、漏出を引き起こす場合がある、又は衝撃絶縁パッドの場合、偶発的に落下したユニットを保護する能力が損なわれる場合がある。材料の圧縮永久歪の結果は、百分率で表される。百分率が低いほど、材料は、所与のたわみ及び温度範囲下で永久変形に対してより大きな抵抗性を有する。本明細書における圧縮永久歪添加剤の使用は、例えば、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、ジフェニルスルフィド、サリチロイルアミノトリアゾール、1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシp-フェニル)プロピオニル]ヒドラジン、銅(II)フタロシアニン、及びそれらの混合物、例えば、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]及び銅(II)フタロシアニンから選択され得る。圧縮永久歪添加剤は、存在する場合、組成物の0.01~5重量%、あるいは組成物の0.01~2重量%の量で組成物に添加される。
【0066】
任意の補強及び半補強充填剤
本明細書の組成物における高い熱伝導率についての本明細書の要件を考慮すると好ましくないが、本組成物中の更なる任意成分は、少なくとも1つのシリカ又は炭酸カルシウムの補強若しくは半補強充填剤である。
【0067】
存在する場合、シリカ補強充填剤は、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、及び/又はコロイドシリカによって例示され得る。好ましくは、シリカ補強充填剤は、微粉化されている。炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムであってもよい。沈降性シリカ、ヒュームドシリカ及び/又はコロイダルシリカが、典型的には少なくとも50m/g(ISO9277:2010に従ったBET法)であり、代替的に、50~450m/g(ISO9277:2010に従ったBET法)の表面積を有する、代替的に50~300m/g(ISO9277:2010に従ったBET法)の表面積を有する比較的高い表面積から特に好ましく、典型的に使用される。これらの種類のシリカは全て市販されている。
【0068】
シリカ補強充填剤は本来親水性であるので、それを疎水性にするために処理剤で処理されてもよい。本組成物において、処理剤は、熱伝導性充填剤に使用されるものと同じ処理剤である成分(d)であってもよく、又は加工中の熱伝導性シリコーンゴム組成物のクレーピングを防止するために適用可能な当該技術分野において開示されている成分(d)以外の任意の好適な低分子量有機ケイ素化合物で表面処理されてもよい。例えば、オルガノシラン、ポリジオルガノシロキサン、又はオルガノシラザン、例えばヘキサアルキルジシラザン及び短鎖シロキサンジオールである。具体例としては、限定されないが、シラノール末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン、シラノール末端ビニルメチル(vinyl methyl、ViMe)シロキサン、シラノール末端メチルフェニル(methyl phenyl、MePh)シロキサン、各分子中に平均2~20個のジオルガノシロキサンの繰り返し単位を含有する液体ヒドロキシルジメチル末端ポリジオルガノシロキサン、ヒドロキシルジメチル末端フェニルメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンなどのヘキサオルガノジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane、HMDZ)、ジビニルテトラメチルジシラザン、及びテトラメチルジ(トリフルオロプロピル)ジシラザンなどの、ヘキサオルガノジシラザン;ヒドロキシルジメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、並びに限定されないが、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシランを含むシランが挙げられる。
【0069】
一実施形態では、処理剤は、シラノール末端ビニルメチル(ViMe)シロキサン、各分子中に平均2~20個のジオルガノシロキサンの繰り返し単位を含有する液体ヒドロキシルジメチル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンなどのヘキサオルガノジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)などのヘキサオルガノジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン;並びにヒドロキシルジメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、並びにメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、及び/又はビニルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されないシランから選択され得る。少量の水が、加工助剤としてシリカ処理剤と一緒に添加され得る。
【0070】
未処理の補強性充填剤の表面処理は、組成物中に導入する前に又はその場で、すなわち、本明細書の組成物の他の成分の少なくとも一部の存在下で、充填剤が完全に処理されるまでこれらの成分を一緒に室温以上でブレンドすることによって行われ得る。使用する処理剤が上記成分(d)である場合には、補強充填剤及び熱伝導性充填剤(成分(c))を同時に処理してもよい。それぞれ補強充填剤及び成分(c)のために別々の充填剤処理剤を使用する場合、それらを別々に又は連続して処理する必要がある。
【0071】
典型的には、任意の未処理の補強性充填剤を、好ましくは、ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)の存在下においてその場で処理剤で処理し、それにより、後で他の成分と混合することができるシリコーンゴム基材を調製する。
【0072】
先に論じたように、本明細書に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物は、80重量%~95重量%、あるいは例えば85重量%~95重量%の熱伝導性充填剤を含む。熱伝導性充填剤及び補強充填剤の両方が組成物中に存在する場合、組成物の少なくとも80重量%が熱伝導性充填剤であり、熱伝導性充填剤及び補強充填剤の累積量は、後者が存在する場合、最大95重量%である。したがって、任意の補強充填剤は、累積合計の上限を超えない限り、組成物中に15重量%の量で存在し得る。とはいえ、組成物中に存在する唯一の充填剤は、熱伝導性充填剤(c)であることが好ましい。
【0073】
任意の顔料/着色剤
本明細書に記載される組成物は、必要に応じて添加され得る1つ以上の顔料及び/又は着色剤を更に含んでもよい。顔料及び/又は着色剤は、有色、白色、黒色、金属効果、及び発光性、例えば、蛍光性及びリン光性であり得る。
【0074】
好適な白色顔料及び/又は着色剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、硫化亜鉛、リトポン、酸化ジルコニウム、及び酸化アンチモンが挙げられる。
【0075】
好適な非白色無機顔料及び/又は着色剤としては、針鉄鉱、鱗鉄鉱、赤鉄鉱、マグヘマイト、及びマグネタイト黒酸化鉄、黄酸化鉄、褐色酸化鉄、及び赤酸化鉄などの酸化鉄顔料;青鉄顔料;酸化クロム顔料;カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウム辰砂などのカドミウム顔料;バナジン酸ビスマス及びバナジン酸モリブデン酸ビスマスなどのビスマス顔料;チタン酸コバルトグリーンなどの混合金属酸化物顔料;クロムイエロー、モリブデン酸レッド、及びモリブデン酸オレンジなどのクロム酸塩顔料及びモリブデン酸顔料;ウルトラマリン顔料;酸化コバルト顔料;チタン酸ニッケルアンチモン;鉛クロム;カーボンブラック;ランプブラック、及び金属効果顔料、例えばアルミニウム、銅、酸化銅、青銅、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛、及び黄銅が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
好適な有機非白色顔料及び/又は着色剤としては、フタロシアニン顔料、例えばフタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン;モノアリーリドイエロー、ジアリーリドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、複素環式イエロー、DANオレンジ、キナクリドン顔料、例えばキナクリドンマゼンタ及びキナクリドンバイオレット;金属化アゾレッド及び非金属化アゾレッド及びその他のアゾ顔料を含む有機レッド、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β-ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアゾ縮合顔料、イソインドリノン、及びイソインドリン顔料、多環式顔料、ペリレン及びペリノン顔料、チオインディゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンサントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、及びジケトピロロピロール顔料が挙げられる。
【0077】
顔料及び/又は着色剤は、存在する場合、組成物の2重量%から、あるいは3重量%から、あるいは5重量%から組成物の15重量%まで、あるいは組成物の10重量%までの範囲で存在する。
【0078】
他の任意の添加剤
本明細書における別の任意の添加剤は、金属不活性化剤、すなわち、主に燃料中の天然に存在する酸及び系の金属部分との酸化プロセスにより潤滑剤中で生成される酸、例えばドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]の作用により導入される金属イオンを(通常封鎖することにより)不活化することによって流体を安定化するために使用される燃料添加剤及びオイル添加剤を含み得る。
【0079】
トリアゾール等の可使時間延長剤を使用してもよいが、本発明の範囲内で必須であるとはみなされない。したがって、熱伝導性シリコーンゴム組成物は、可使時間延長剤を含んでいなくてもよい。
【0080】
難燃剤の例としては、アルミニウム三水和物、塩素化パラフィン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(臭素化トリス)、及びこれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0081】
したがって、一代替形態において、本開示は、したがって、熱伝導性シリコーンゴム組成物であって、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた数平均分子量から計算された少なくとも2,500の重合度及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンであって、当該不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択され、当該組成物の4重量%から約19又は20重量%、あるいは当該組成物の5から約19又は20重量%、あるいは当該組成物の5~17.5重量%、あるいは当該組成物の7.5~17.5重量%、あるいは100重量%と当該組成物中に存在する全ての他の成分の累積量との間の差の量で当該組成物中に存在する、ポリオルガノシロキサンと、
b)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物であって、熱伝導性シリコーンゴム組成物の0.1~10重量%、あるいは熱伝導性シリコーンゴム組成物の0.1~7.5重量%、あるいは0.5~7.5重量%、更にあるいは熱伝導性シリコーンゴム組成物の0.5重量%~5重量%の量で存在する、成分(b)と、
c)当該組成物の80~95重量%、あるいは85重量%~95重量%の量の、レーザー回折粒径分析によって測定された0.1~100マイクロメートル(μm)の体積中央粒径を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、
d)ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた数平均分子量から計算された4~500の重合度を有するオルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
(i)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基、及び
(ii)1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基又は少なくとも1つのアルコキシ基又はヒドロキシ基とアルコキシ基との混合物を、
当該組成物の0.1~10重量%の量、あるいは0.1~5重量%の量、あるいは当該組成物の0.25~5重量%の量、あるいは当該組成物の0.25~2.5重量%で含む、オルガノポリシロキサン充填剤処理剤と、
e)白金族金属又はその化合物を含むか又は白金族金属又はその化合物からなるヒドロシリル化触媒であって、当該触媒が提供される形態/濃度に応じて、当該組成物の0.001~3.0重量%、あるいは当該組成物の0.001~1.5重量%、あるいは熱伝導性シリコーンゴム組成物の0.01~1.5重量%、あるいは0.01~0.1.0重量%の範囲内である量の、ヒドロシリル化触媒と、
を含むが、ただし、当該組成物の総重量%が100重量%である、熱伝導性シリコーンゴム組成物を提供する。組成物はまた、当該組成物の総重量%が100重量%である限り、再度指定された量の上記の任意の添加剤のうちの1つ以上を含有していてもよい。
【0082】
上記成分(a)、(b)、及び(e)の混合物は、周囲温度で硬化を開始し得る。したがって、前述の熱伝導性シリコーンゴム組成物は、組成物が即時使用のために調製されていない場合、使用直前に一緒に混合される2つの部分で保管されてもよい。そのような場合、2つの部分は、一般に、(A)部及び(B)部と称され、早期硬化を回避するために、成分(b)架橋剤及び(e)触媒を離して維持すように設計されている。
【0083】
典型的には、そのような場合、A部組成物は、成分(a)、(c)、(d)、及び(e)を含み、B部は、成分(a)、(b)、(c)、及び(d)、並びに存在する場合は阻害剤を含む。
【0084】
組成物中に存在する場合、他の任意の添加剤は、任意の他の成分の特性に悪影響を及ぼさない限り(例えば、触媒不活性化)、A部又はB部のいずれに存在していてもよい。熱伝導性シリコーンゴム組成物のA部及びB部は、全組成物のシリコーンエラストマー材料への硬化を開始させるために、使用直前に共に混合される。組成物は、任意の好適な比率で混合されるように設計することができ、例えば、A部:B部は、100:1~1:150の重量比で一緒に混合してよいが、1:100の重量比が最も好ましい。典型的には、A部及びB部組成物は、2本ロールミル又は混練ミキサーを使用して一緒に混合される。
【0085】
A部及び/又はB部のそれぞれの成分は、個々に一緒に混合されてもよく、又は例えば最終組成物を混合しやすくするために、組み合わせて予め調製した状態で組成物に導入されてもよい。例えば、成分(a)及び(c)を一緒に混合してベース組成物を形成することができる。そのような場合、成分(d)の処理剤は、通常、熱伝導性充填剤(c)がその場で処理され得るように混合物中に導入される。あるいは、熱伝導性充填剤(c)を成分(d)で前処理してもよいが、これは好ましくない。得られた基材は、2つ以上の部、典型的にはA部及びB部に分割されてもよく、もし必要であるときは、適切な追加の成分及び添加剤を添加してもよい。
【0086】
あるいは、本明細書における組成物は、組成物が直ちに使用される場合、全ての成分を周囲温度で一緒に合わせて一部型組成物にすることによって調製されてもよい。典型的には、熱伝導性充填剤をその場で処理することことを可能にするために最初にベースを調製し、次いで、残りの成分を任意の好適な順序で混合物に導入してよい。
【0087】
この目的のために、先行技術に記載されている任意の混合技術及び装置を用いることができる。使用する具体的な装置は、成分及び最終硬化性コーティング組成物の粘度によって決定される。好適なミキサーとしては、パドルタイプのミキサー、例えば遊星ミキサー、及びニーダータイプのミキサーが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、成分(a)がガムである場合、好ましくは、既に指定したように、2本ロールミル又は混練ミキサーを使用して混合が行われる。混合中に成分を冷却して、組成物の早期硬化を避けることが望ましい場合もある。
【0088】
したがって、上述したような一部型熱伝導性シリコーンゴム組成物の製造プロセスの場合、当該プロセスは、
(i)熱伝導性充填剤がその場で成分(d)で処理され、成分(a)中に完全に混合されることを保証するために、成分(a)及び(c)を処理剤(d)と一緒に75℃~150℃、あるいは80℃~140℃、あるいは90℃~130℃の範囲の温度で30分~2時間、あるいは40分~2時間、あるいは45分~90分間混合することによって、疎水処理された熱伝導性充填剤ベースを調製し、次いで、得られたベースを約室温(23℃~25℃)に冷却する工程と、
(ii)成分(e)触媒(触媒組成物、例えば、Karstedtの触媒)、成分(c)架橋剤、並びに所望であれば任意選択の阻害剤(例えば、エチニルシクロヘキサノール(ETCH))及び任意の他の任意選択の添加剤を任意の好適な順序で又は同時に導入し、均質になるまで混合する工程と、
を含み得る。
【0089】
一旦調製されると、成分(a)、(b)、及び(e)の反応性に起因して、組成物は硬化する。典型的には、硬化は、80℃~180℃、あるいは100℃~170℃、あるいは120℃~170℃の温度で行われる。これは、任意の好適な方法で行うことができ、例えば、組成物を型に導入し、次いで好適な時間、例えば2~10分間又はそうでなければ所望の通り若しくは必要に応じてプレス硬化させる。あるいは、本熱伝導性シリコーンゴム組成物は、射出成形、封入成形、プレス成形、ディスペンサ成形、押出成形、トランスファー成形、プレス加硫、遠心鋳造、カレンダー成形、ビード適用、又はブロー成形によって更に加工されてもよい。必要に応じて、そして必要な場合には、最長4時間かけて130℃~200℃の温度に加熱することによって、試料を更に後硬化させてもよい。
【0090】
上述したような二部型熱伝導性シリコーンゴム組成物の製造プロセスの場合、当該プロセスは、
(i)上記一部型組成物を調製するための工程(i)と同じ工程と、
(ii)得られた混合物を2つの部分、A部及びB部に分割し、触媒(e)をA部に導入し、架橋剤及び阻害剤(存在する場合)をB部組成物中に導入する工程と、
(iii)任意の他の任意選択の添加剤を、A部及びB部のいずれか又は両方に導入する工程と、
(iv)A部組成物及びB部組成物を別々に保管する工程と、
を含み得る。
【0091】
典型的には、利用する場合、早期硬化を回避するために、A部及びB部組成物を使用直前に上記のような適切な重量比、例えば約1:100の重量比で十分に混合する。次いで、一部型組成物について上述した通りに硬化を行う。
【0092】
上述した熱伝導性シリコーンゴム組成物は、従来技術の熱伝導性シリコーンゴム組成物が利用される任意の好適な用途で使用することができる。
【0093】
驚くべきことに、少なくとも2,500の重合度を有し、その結果として高い粘度及び分子量を有する成分(a)を、特定のオルガノポリシロキサン(成分(d)で処理された熱伝導性充填剤(成分(c))と併用することにより、組成物が非常に多量(組成物の80~95重量%又は85~95重量%)の熱伝導性充填剤(c)を含有する場合であっても、高い機械的強度のヒドロシリル化硬化シリコーンゴムを一貫して得ることができることが確認された。
【0094】
熱伝導性シリコーンゴム組成物は、例えば、電気自動車(electric vehicles、EV)充電器用伝熱パッド、EVの伝熱ガスケット、EVのボンネット内冷却部品、キーパッド、プリント回路基板(printed circuit boards、PCB)、中央処理装置(central processing units、CPU)、及びハードドライブの伝熱パッド、モーター駆動モジュール及び制御モジュールの放熱部品、発光ダイオード(light emitting diode、LED)プロジェクターの画像表示部の放熱部品、安全監視カメラの画像処理モジュール、広帯域セルラーネットワーク、例えば5G(広帯域セルラーネットワークの第5世代技術規格)の放熱部品、並びに通信電子機器を含む自動車及びエレクトロニクス用途を含む、多種多様な用途において使用され得る。
【実施例
【0095】
全ての粘度は、別途記載のない限り25℃で測定された。以下の実施例における個々の成分の粘度は、別途記載のない限り、50,000mPa.s以上の粘度の場合はBrookfield DV-III Ultra Programmableレオメーター、50,000mPa.s未満の粘度の場合はBrookfield DV 3Tレオメーターを使用して測定した。
【0096】
実施例及び比較例のための一連の組成物を調製し、表1a及び1bに記載する。
【表1】
【0097】
シリコーンガム1は、ASTM D-926-08に従って、5840のDP及び150mm/100のウィリアムス可塑度を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンであった。
【0098】
実施例で使用したアルミナは、Denka Company Limited製のADM-40Kグレードであり、これは、40μmの体積中央粒径サイズ(製造業者による情報)を有する球状形態のアルミナである。
【0099】
実施例で使用した窒化アルミニウムは、MARUWA CO.,LTD製のANF S-80 ST204グレードであり、これは80μmの体積中央粒径サイズ(製造業者による情報)を有する球状形態の窒化アルミニウムである。
【0100】
比較処理剤1は、(CHSiO[(CHSiO]110Si(OCHである。
【0101】
処理剤1 4~17のDPを有するジメチルヒドロキシ末端ジメチル、メチルビニルシロキサン。
【0102】
処理剤2(CH=CH)(CHSiO[(CHSiO]25Si(OCH
Si-H架橋剤1は、25℃で約15mPa.sの粘度を有するトリメチル末端ジメチル、メチルハイドロジェンシロキサンであった。
【0103】
比較例C.1、C.2、及びC.3のSi-H/ビニルモル比は1.6:1であった。
【0104】
ETCHは、エチニルシクロヘキサノールである。
【表2】
【0105】
シロキサンポリマー1は、920のDP及び25℃で6,000mPa・sの粘度を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンである。
【0106】
比較例C.6並びに実施例5及び6のSi-H/ビニルモル比は2.6:1であった。
【0107】
まず、成分(a)のシリコーンガム1を熱伝導性充填剤及び充填剤処理剤と共に5Lの実験室用混練ミキサーに段階的に投入し、次いで120℃で約1時間均質になるまで混合することによってベースを調製することにより、組成物を調製した。次いで、得られたベースを室温まで冷却した。冷却後、Si-H架橋剤、Karstedtの触媒、及びヒドロシリル化硬化阻害剤を添加し、組成物中に混合した。比較例C.4及びC.5の場合、Si-H架橋剤、Karstedtの触媒、及びヒドロシリル化硬化阻害剤の代わりに、それぞれの過酸化物触媒を導入した。
【0108】
次いで、得られた組成物をプレス硬化装置によって圧縮成形した。Ex.5、Ex.6、C.4、及びC.6の場合、硬化プロセスは、厚さ2mmの試料については120℃で10分間、6mmのスラブについては120℃で20分間であった。C.5の場合、(使用した触媒に起因して、硬化プロセスは、厚さ2mmの試料については170℃で10分間、6mmのスラブについては170℃で20分間であった。熱伝導率試験の場合、一連の実施例及び比較例を200℃で4時間後硬化させた。物理的性質の結果を表2a及び2cに提供し、熱伝導率の結果を表2c及び2dに提供する。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】
【0109】
比較例とは異なり、上記実施例で得られた硬化シリコーン系生成物は、十分な物理的特性(すなわち、ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸び)を保持しながら、例えば少なくとも1.5W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定)の高い熱伝導率を提供したことが分かる。更に、わずかにより多くの、例えば、少なくとも85重量%の熱伝導性充填剤が存在する場合、実施例は、十分な物理的特性(すなわち、ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸び)を保持しながら、例えば少なくとも2.0W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定)の熱伝導率を提供した。
【0110】
圧縮永久歪み
以下の実施例及び圧縮永久歪実施例(Cs Ex.)では、特定の添加剤を使用すると、上記のような高い熱伝導率及び物理的特性の両方を保持しながら、本明細書の組成物の圧縮永久歪が30%未満(ASTM D395)まで著しく減少することが見出された。調製した組成物を表3a、3b、及び3cに示す。組成物を作製するためのプロセスは全て、上記に従う。また、試料は同じ方法で硬化させた。
【表7】
【0111】
圧縮永久歪添加剤1は、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]であった。
【0112】
表3a中の実施例及び比較例のSi-H/ビニルモル比は1.6:1であった。
【表8】
【0113】
圧縮永久歪添加剤2は、25℃で10,000MPa.sの粘度を有する2:3重量比のジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン中の銅(II)フタロシアニンであった。
【0114】
表3b中の実施例及び比較例のSi-H/ビニルモル比は1.2:1であった。
【表9】
【0115】
表3b中の実施例及び比較例のSi-H/ビニルモル比は1.2:1であった。
【0116】
様々な実施例、比較例、及び圧縮永久歪実施例の物理的特性の結果は、上記の通り得た。
【表10】

【表11】
【0117】
Ex.7及び8は、本明細書の開示による結果を提供し、それらの圧縮永久歪の結果は30%超であることが理解される。しかしながら、圧縮永久歪添加剤1を導入すると、圧縮永久歪実施例は30%未満の圧縮永久歪を有する。
【0118】
圧縮永久歪添加剤1の投入レベルは、圧縮永久歪に影響を及ぼす。添加剤1のレベルがより高いほど、圧縮永久歪がより低くなる。したがって、本明細書の圧縮永久歪添加剤を使用すると、圧縮永久歪が30%以下になり、これは、シールリング目的で自動車において使用されるコネクタシールに必要な値の一種である。この熱伝導性シリコーン組成物は、高い熱伝導率を有するだけでなく、優れた圧縮永久歪値に鑑みて、良好なシーリング性能]も提供することができた。
【表12】

【表13】
【0119】
同様に、Ex.9は、本明細書の開示による結果を提供し、その圧縮永久歪の結果は30%超であることが理解される。しかしながら、圧縮永久歪添加剤1又は2を導入すると、圧縮永久歪実施例は30%未満の圧縮永久歪を有する。
【表14】

【表15】
【0120】
C.7及び8の場合、本明細書に記載の処理剤が存在しない場合、引張強度及び/又は伸びの結果が劣っていることは明らかである。ある割合の処理剤を導入した場合、Ex.9の物理的特性は許容可能であるが、圧縮永久歪添加剤なしでは、30%を超える圧縮永久歪値を有する。しかしながら、圧縮永久歪添加剤1又は2を導入すると、圧縮永久歪実施例は30%未満の圧縮永久歪を有する。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性シリコーンゴム組成物であって、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた数平均分子量から計算された少なくとも2,500の重合度及び1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンであって、前記不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、ポリジオルガノシロキサンと、
b)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
c)前記組成物の80~95重量%の量の、レーザー回折粒径分析によって測定された0.1~100マイクロメートル(μm)の体積中央粒径を有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤と、
d)ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた数平均分子量から計算された約4~500の重合度を有するオルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
(i)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基、及び
(ii)1分子当たり少なくとも1つのヒドロキシ基又は少なくとも1つのアルコキシ基又はヒドロキシ基とアルコキシ基との混合物を、
前記組成物の0.1~10重量%の量で含む、オルガノポリシロキサン充填剤処理剤と、
e)白金族金属又はその化合物を含むか又は白金族金属又はその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、
を含み、
前記組成物の総重量%が100重量%である、熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
成分(a)が、ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められた少なくとも4,000の重合度を有する、請求項1に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
硬化したとき、前記組成物が、ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸びを有しながら、例えばASTM D7896-ホットディスク法に従って測定された少なくとも1.5W/mKの高い熱伝導率を有する硬化シリコーン系生成物を提供する、請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
成分(c)が、レーザー回折粒径分析によって測定された0.1~100マイクロメートル(μm)の体積中央粒径サイズを有する少なくとも1つの熱伝導性充填剤を、前記組成物の85~95重量%の量で含む、請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
硬化したとき、前記組成物が、ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸びを有しながら、少なくとも1.5W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定された)の熱伝導率を有する硬化シリコーン系生成物を提供する、請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
成分(b)及び(a)を離して維持して早期硬化を回避するために、使用前に2つの部分、A部及びB部で保管される、請求項1に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
A部組成物が、成分(a)、(c)(d)、及び(e)を含み、B部が、成分(a)、(b)(c)、及び(d)を含む、請求項6に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
硬化阻害剤も含む、請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、ジフェニルスルフィド、サリチロイルアミノトリアゾール、1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシp-フェニル)プロピオニル]ヒドラジン、銅(II)フタロシアニン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの圧縮永久歪添加剤を更に含む、請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物から硬化したシリコーン系生成物。
【請求項11】
ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸びを有しながら、少なくとも1.5W/mK(ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定された)の熱伝導率を有する、請求項10に記載の硬化シリコーン系生成物。
【請求項12】
ASTM D412に従って少なくとも2MPaの引張強度及び少なくとも80%の破断点伸びを有しながら、ASTM D7896-ホットディスク法に従って測定された少なくとも2.0W/mKの熱伝導率を有する、請求項10又は11に記載の硬化シリコーン系生成物。
【請求項13】
ASTM D395に従って測定したときに30%未満の圧縮永久歪を有する、請求項10又は11に記載の硬化シリコーン系生成物。
【請求項14】
自動車及びエレクトロニクス用途の製造における、請求項1に記載の熱伝導性シリコーンゴム組成物の使用。
【請求項15】
前記自動車及びエレクトロニクス用途が、電気自動車充電器用伝熱パッド、電気自動車の伝熱ガスケット、電気自動車のボンネット内冷却部品、キーパッド、プリント回路基板、中央処理装置、及びハードドライブの伝熱パッド、モーター駆動モジュール及び制御モジュールの放熱部品、発光ダイオードプロジェクターの画像表示部の放熱部品、安全監視カメラの画像処理モジュール、広帯域セルラーネットワークの放熱部品、並びに通信電子機器から選択される、請求項14に記載の使用。
【国際調査報告】