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特表2024-531171散乱素子を有する湾曲物体測定用の可撓性超音波配列
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】散乱素子を有する湾曲物体測定用の可撓性超音波配列
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/26 20060101AFI20240822BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20240822BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01N29/26
A61B8/00
G01N29/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508320
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 NL2022050468
(87)【国際公開番号】W WO2023018332
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】21191229.0
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522394225
【氏名又は名称】ネザーランズ オーガニサイト フォー トゥーホパスト ナチュルヴェンテンスハッペリク オーダーズック ティエヌオー
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPAST-NATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO
【住所又は居所原語表記】Anna van Buerenplein 1, 2595 DA ’s-Gravenhage, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ステーン、ジャン-ローレンス ピーター ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】ペーテルス、ローレンス クリスチャン ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン ネアー、ポール ルイ マリア ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー、アルノ ウィレム フレデリック
【テーマコード(参考)】
2G047
4C601
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AA12
2G047AC13
2G047BA03
2G047BC02
2G047DB02
2G047GA06
2G047GB02
2G047GF18
2G047GG30
4C601EE09
4C601GB03
(57)【要約】
【課題】湾曲物体を音響的に測定するシステム及び方法の提供。
【解決手段】可撓性シート(20)には音響トランスデューサ(10)の配列が設けられ、音響トランスデューサ(10)が湾曲物体(Obj)に音響的に接触するように湾曲物体(Obj)の周りに巻き付けられる。音響トランスデューサ(10)は湾曲物体(Obj)の形状に応じて可変位置で音響波(W)を生成及び/又は測定するのに使用される。可撓性シート(20)が湾曲物体(Obj)の周りに巻き付けられている間、音響トランスデューサ(10)の空間座標(X,Y,Z)を決定する。特に、空間座標は共通の起点、例えば湾曲物体(Obj)内部の散乱素子(S)からそれぞれのサブ配列(10a、10b、10c)に到達する音響波(Wa、Wb、Wc)のそれぞれの波の方向を計算するのに使用される移動時間のそれぞれのサブセット(Ta、Tb、Tc)に基づいて決定される。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲物体(Obj)を測定する音響システム(100)であって、前記音響システムは、
前記湾曲物体(Obj)に音響的に接触する可撓性シート(20)のシート表面(20s)上に分配した、トランスデューサ(10)の配列を備える前記可撓性シート(20)であって、ここで、前記トランスデューサ(10)は、互いに相対する可変位置で音響波(W)を測定するように構成され、ここで、3次元空間における可変位置の空間座標(X、Y、Z)は、前記湾曲物体(Obj)に接触する前記シート表面(20s)の変形に依存する、可撓性シート(20)と、
コントローラ(30)であって、
配列内の異なるトランスデューサに対して、共通の起点から発生する音響波(W)の到達時間のセット(T)を決定し、
前記到達時間のセット(T)を異なるサブセットにまとめ、到達時間の各サブセット(Ta、Tb、Tc)は、前記シート表面(20s)に沿ったそれぞれの表面座標(Sx、Sy)において、前記可撓性シート(20)のそれぞれのサブエリア(20a、20b、20c)にまたがる前記トランスデューサ(10)のそれぞれのサブ配列(10a、10b、10c)に対応し、
前記トランスデューサ(10)の各サブ配列(10a,10b,10c)についての到達時間(Ta,Tb,Tc)の前記それぞれのサブセットに基づいて、前記共通の起点から発生する前記音響波(Wa,Wb,Wc)のそれぞれの部分が、前記それぞれのサブエリア(20a,20b,20c)に到達する、それぞれの波の方向(θa,θb,θc)を決定し、
それぞれのサブエリア(20a,20b,20c)の前記表面座標(Sx,Sy)の関数としての前記それぞれの波の方向(θa,θb,θc)に少なくとも部分的に基づいて、前記シート表面(20s)のモデル化された形状(20m)を決定し、
前記シート表面(20s)の前記モデル化された形状(20m)に基づいて、前記トランスデューサ(10)の前記空間座標(X,Y,Z)を決定する、ように構成されているコントローラ(30)と、
を備える音響システム(100)。
【請求項2】
前記共通の起点が、前記湾曲物体(Obj)の内部で選択された共通の散乱素子(S)によって形成され、ここで、前記音響波(W)の前記到達時間のセット(T)は、1つ以上のソーストランスデューサが音響波(W)を生成してから、前記共通の散乱素子(S)が前記ソーストランスデューサと受信トランスデューサとの間のそれぞれの経路に沿って散乱した後、結果として生じた音響波を、前記それぞれのサブ配列(10a、10b、10c)内の受信トランスデューサにより測定するまでの間のそれぞれの時間間隔に基づいている、請求項1に記載の音響システム。
【請求項3】
前記モデル化された形状(20m)を決定するステップが、
線分のセットを決定するステップであって、ここで、各線分はそれぞれのサブエリア(20a,20b,20c)に固定的に接続したままであり、ここで、固定的に接続した各線分は、前記音響波(Wa,Wb,Wc)が前記それぞれのサブエリア(20a,20b,20c)に到達する前記それぞれの波の方向(θa,θb,θc)に対応する固定の角度でそれぞれのサブエリアを横切る、ステップと、
前記サブエリア(20a,20b,20c)を配向して、前記共通の起点のモデルに対応する共通の起点(M)でこれら固定的に接続した線分を横切るステップと、
を備える、
請求項1又は2に記載の音響システム。
【請求項4】
前記線分のうちの1つ以上が、前記それぞれのサブエリア(20a,20b,20c)と前記共通の起点との間の距離(Das,Dbs,Dcs)に対応する固定長を有してモデル化され、ここで、前記サブエリア(20a,20b,20c)が、前記共通の起点(M)において、前記固定的に接続した固定長の線分のそれぞれの端部に重なるように配向される及び/又は並進される、請求項1から3のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項5】
前記コントローラ(30)が、
前記到達時間(Ta,Tb,Tc)に基づいて、前記それぞれのサブエリア(20a,20b,20c)と前記共通の起点との間のそれぞれの距離(Das,Dbs,Dcs)を決定し、
さらに前記それぞれの距離(Das,Dbs,Dcs)のうちの1つ以上に基づいて、前記シート表面(20s)の前記モデル化された形状(20m)を決定するように構成される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項6】
各サブ配列(10a,10b,10c)の少なくとも1つのトランスデューサが、それぞれの音響波を生成し、前記物体(Obj)内部の共通の散乱素子(S)から反射して戻った結果の音響波(Wa,Wb,Wc)を測定するように構成され、ここで、前記それぞれのサブエリア(20a,20b,20c)と前記共通の散乱素子(S)との間のそれぞれの距離(Das,Dbs,Dcs)が、前記それぞれの音響波の前記生成と測定との間の時間間隔に基づいて決定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項7】
前記モデル化された形状(20m)における前記サブエリア(20a,20b,20c)が、それらのそれぞれの波の方向(θa,θb,θc)に従って配向される一方、隣接するサブエリア(20a,20b,20c)が、前記サブエリアのそれぞれのサイズ(Sn)及び相対的な表面位置に従って、その間のそれぞれの端部において相互に接続したままである、請求項1から6のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項8】
前記可撓性シート(20)の前記モデル化された形状(20m)が、前記波の方向(θa,θb,θc)を入力として使用する制約嵌合によって決定され、ここで、前記嵌合が、前記サブ配列のそれぞれの表面座標(Sx,Sy)のうちの1つ以上、前記サブ配列のそれぞれのサイズ(Ss)、一対のサブ配列又は一対のトランスデューサ間のそれぞれの表面距離(Sab,Sac,Sbc,Sp)、それぞれのサブ配列と前記共通の起点との間のそれぞれの距離(Sas,Sbs,Scs)、前記物体を通る一対のトランスデューサ間のユークリッド距離、及び/又は前記モデル化された形状(20m)を記述するパラメータに関連する関数によってさらに制約される、請求項1から7のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項9】
前記コントローラ(30)が、前記それぞれのサブ配列内の前記トランスデューサの1つ以上の表面座標(Sx,Sy)の関数としての前記到達時間(Ta,Tb,Tc)のそれぞれのサブセットの線形ランドン変換を使用して、それぞれの波の方向(θa,θb,θc)を計算するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項10】
前記コントローラ(30)が、
前記配列内のすべてのトランスデューサの前記到達時間に基づいて超音波画像を生成し、
前記超音波画像に基づいて単一の散乱素子を選択し、
他の散乱素子に対応する前記超音波画像中の撮像データをフィルタリング除去して、フィルタリング画像を生成し、
前記フィルタリング画像を逆像化して、前記選択した単一の散乱素子に対する到達時間(T)のフィルタリングされたセットを生成し、
前記音響波(Wa,Wb,Wc)のそれぞれの部分が、前記選択された単一の散乱素子に対応する前記到達時間(T)のフィルタリングされたセットに基づいて、前記サブ配列上に到達する前記波の方向(θa,θb,θc)を決定するように構成される、
請求項1から9のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項11】
前記コントローラ(30)が、
前記湾曲物体(Obj)内部の第1の散乱素子(S1)と相互に作用した音響波(W)の到達時間の第1のセットを決定し、
前記湾曲物体(Obj)内部の別個の第2の散乱素子(S2)と相互に作用した音響波(W)の到達時間の第2のセットを決定し、
到達時間の各セットを、前記サブ配列(10a,10b,10c)に対応するサブセットのそれぞれの集合に分割し、
各散乱素子(S1,S2)及び各サブ配列(10a,10b,10c)のサブセットの前記2つの集合に基づいて、前記第1の又は前記第2の散乱素子(S1,S2)から、それぞれ発生する2方向から前記それぞれのサブ配列に到達する前記音響波のそれぞれの少なくとも2つの波の方向(θa1,θb1,θc1;θa2,θb2,θc2)を決定し、
前記サブエリアの前記表面座標(Sx,Sy)の関数として、サブ配列ごとの少なくとも2つの波の方向に少なくとも部分的に基づいて、前記シート表面(20s)のモデル化された形状(20m)を決定し、
前記シート表面(20s)の前記モデル化された形状(20m)に基づいて、前記トランスデューサ(10)の前記空間座標(X,Y,Z)を決定するように構成される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項12】
前記コントローラ(30)が、前記湾曲物体(Obj)の異なる側において少なくとも部分的に互いに対向する異なるサブ配列のトランスデューサ間で、直接送信される音響波の移動時間のセットに少なくとも部分的に基づいて、前記音響トランスデューサ(10)の前記空間座標(X,Y,Z)をさらに決定するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項13】
前記コントローラ(30)が、音響トランスデューサ(10)の前記配列を使用して前記湾曲物体(Obj)の画像を生成するように構成され、ここで、前記画像が、前記音響トランスデューサ(10)によって生成された及び/又は測定された音響波と、前記波の方向(θa,θb,θc)に少なくとも部分的に基づいて決定されたそれらの空間座標(X,Y,Z)とに基づいて生成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の音響システム。
【請求項14】
湾曲物体(Obj)を音響的に測定する方法であって、
可撓性シート(20)のシート表面(20s)上に分配した音響トランスデューサ(10)の配列を有する前記可撓性シート(20)を提供するステップと、
前記音響トランスデューサ(10)が前記湾曲物体(Obj)に音響的に接触するように、前記湾曲物体(Obj)の周りに少なくとも部分的に前記可撓性シート(20)を巻き付けるステップと、
前記湾曲物体(Obj)の周りの可変位置で音響波(W)を測定する前記音響トランスデューサ(10)を使用するステップであって、ここで、3次元空間における前記可変位置の空間座標(X、Y、Z)は、前記湾曲物体(Obj)の周りを巻き付ける前記シート表面(20s)の変形に依存するステップと、
前記可撓性シート(20)が前記湾曲物体(Obj)の周りに巻き付けられている間に、共通の起点から発生する前記湾曲物体(Obj)を通って送られた前記音響波(W)の移動時間(Ta、Tb、Tc)のセットに基づいて、前記音響トランスデューサ(10)の前記空間座標(X、Y、Z)を決定するステップと、を備え、
ここで、
前記到達時間のセット(T)は異なるサブセットにまとめられ、到達時間の各サブセット(Ta、Tb、Tc)は、前記シート表面(20s)に沿ったそれぞれの表面座標(Sx、Sy)における前記可撓性シート(20)のそれぞれのサブエリア(20a、20b、20c)にまたがる前記トランスデューサ(10)のそれぞれのサブ配列(10a、10b、10c)に対応し、
前記トランスデューサ(10)の各サブ配列(10a、10b、10c)の前記到達時間(Ta、Tb、Tc)のそれぞれのサブセットに基づいて、前記音響波(Wa、Wb、Wc)のそれぞれの部分が前記共通の起点から発生して前記それぞれのサブエリア(20a、20b、20c)に到達するそれぞれの波の方向(θa,θb,θc)を決定し、
前記シート表面(20s)のモデル化された形状(20m)は、それぞれのサブエリア(20a、20b、20c)の前記表面座標(Sx、Sy)の関数として前記それぞれの波方向(θa,θb,θc)に少なくとも部分的に基づいて決定され、
前記トランスデューサ(10)の前記空間座標(X、Y、Z)は、前記シート表面(20s)の前記モデル化された形状(20m)に基づいて決定される、
方法。
【請求項15】
命令を格納する非一時的コンピュータ可読媒体であって、音響システム(100)が実行する場合、前記音響システムが、
湾曲物体(Obj)の周辺の可変位置で音響波(W)を測定する音響トランスデューサ(10)のセットを制御し、ここで、3次元空間における前記可変位置の空間座標(X、Y、Z)は前記湾曲物体(Obj)の前記周辺に依存し、
共通の起点から発生する前記湾曲物体(Obj)を通って送られた前記音響波(W)の移動時間(Ta、Tb、Tc)のセットに基づいて、前記音響トランスデューサ(10)の前記空間座標(X、Y、Z)を決定し、
前記音響トランスデューサ(10)の少なくともサブセットから測定された音響信号を処理することによって前記物体の画像を生成し、ここで、前記音響信号は前記決定された空間座標(X、Y、Z)に基づいて処理され、
ここで、
前記到達時間(T)のセットは異なるサブセットにまとめられ、到達時間の各サブセット(Ta、Tb、Tc)は、前記シート表面(20s)に沿ったそれぞれの表面座標(Sx、Sy)における前記可撓性シート(20)のそれぞれのサブエリア(20a、20b、20c)にまたがる前記トランスデューサ(10)のそれぞれのサブ配列(10a、10b、10c)に対応し、
前記トランスデューサ(10)の各サブ配列(10a、10b、10c)の前記それぞれの到達時間のサブセット(Ta、Tb、Tc)に基づいて、前記音響波(Wa、Wb、Wc)のそれぞれの部分が前記共通の起点から発生する前記それぞれのサブエリア(20a、20b、20c)に到達するそれぞれの波の方向(θa,θb,θc)を決定し、
前記シート表面(20s)のモデル化された形状(20m)を、それぞれのサブエリア(20a、20b、20c)の前記表面座標(Sx、Sy)の関数としての前記それぞれの波の方向(θa,θb,θc)に少なくとも部分的に基づいて決定し、
前記トランスデューサ(10)の前記空間座標(X、Y、Z)を、前記シート表面(20s)の前記モデル化された形状(20m)に基づいて決定する、
非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、湾曲物体を測定する音響システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音響システムは、細胞組織などの物体や材料を測定する様々な用途を有する。例えば、マンモグラフィや他の音響画像は、音響トランスデューサによって実行されたパルス・エコーの測定値を使用して生成することができる。物体又は細胞組織内部の材料及び構造に関する情報は、送信したパルスと受信したエコーとの間の振幅、周波数、位相、及び/又は時間など、材料基礎構造を横断する及び/又は反射する音響波の測定特性から抽出することができる。パルス・エコー及び/又は断層撮影測定が異なるトランスデューサ間で実行される場合、撮像した超音波の再構成は、トランスデューサの(相対的な)位置に関する演繹的知識に依存している可能性がある。しかしながら、適合性、可撓性、及び/又は伸縮性のある超音波配列では、異なるトランスデューサの素子間の位置が未知であり、画像の再構成を妨げる可能性がある。
【0003】
背景技術として、米国特許出願公開第2020/0278327号明細書では、幾何学的形状及び収差補正向けの位相配列較正を記載している。複数のトランスデューサ素子を有する超音波トランスデューサの幾何学的形状を較正する様々な手法には、すべての(又は少なくともいくつかの)トランスデューサ素子から焦点領域に送信される超音波の複数のビーム経路が横断するエリアにまたがる音響反射器を提供するステップと、前記トランスデューサ素子に前記超音波を前記焦点領域に送信させるステップと、前記音響反射器からの前記超音波の反射を測定するステップと、測定された反射に少なくとも部分的に基づいて、トランスデューサ素子に関連する最適な幾何学的パラメータを決定するステップと、を含む。残念ながら、撮像中に(その場で)較正を行うことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0278327号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、可変形状を有する湾曲物体を容易に測定することが可能な、改良された音響システム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明開示の態様は、湾曲物体を測定する音響システム及び方法に関する。可撓性シートは、湾曲物体に音響的に接触する可撓性シートのシート表面上に分配したトランスデューサの配列を備える。トランスデューサは、音響波を生成する及び/又は測定するように構成される。これらの波は、トランスデューサの互いに対して可変な位置に応じて生成及び測定することができる。(3次元空間における)可変位置の空間座標は、湾曲物体に接触するシート表面の変形に依存する。理解されるように、事前には未知の(相対的な)空間座標は、本明細書に記載の様々な方法を使用して音響システムそれ自体によって決定することができる。
【0007】
到達時間のセットは、共通の起点から発生して配列内の異なるトランスデューサに到着する音響波から決定される。好ましくは、共通の起点は、湾曲物体内部の1つ以上の共通の散乱素子によって形成される。これに代えて、又はこれに加えて、配列内の1つ以上のトランスデューサを共通の起点として使用することができる。到達時間のセットは、異なるサブセットにまとめられる(分割される)。到達時間の各サブセットは、シート表面に沿ったそれぞれの表面座標での可撓性シートそれぞれのサブエリアにまたがるトランスデューサそれぞれのサブ配列に対応するように選択される。トランスデューサの各サブ配列の到達時間それぞれのサブセットに基づいて、音響波の部分それぞれが共通の起点から発生するサブエリアのそれぞれに到達するそれぞれの波の方向を決定する。シート表面のモデル化された形状は、それぞれのサブエリアの表面座標の関数としてのそれぞれの波の方向に少なくとも部分的に基づいて、決定することができる。トランスデューサの空間座標は、シート表面のモデル化された形状に基づいて決定することができる。これに代えて、又は波の方向に加えて、他の態様も、それぞれのトランスデューサと共通の散乱素子との間の距離及び/又は他のトランスデューサまでの(直接的及び間接的な)距離などの到達時間から導出することができる。また、他の特徴又はさらなる特徴を、シート表面の形状をモデル化する際に使用してもよい。例えば、トランスデューサの所定の表面座標及び距離が、嵌合する形状に制約させるのに役立たせられ得る。例えば、その形状は、所定の(機能的な)パラメータ化を制約させることができ、又は相互に接続したサブ配列の自由な造形のメッシュとして残すことができる。
【0008】
本発明開示の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】トランスデューサの配列を有する可撓性シートを備える音響システムの斜視図である。
図1B】トランスデューサが湾曲物体に接触し、共通の散乱素子から発生する音響波を測定する可撓性シートの断面図である。
図1C】音響波が可撓性シートの異なるサブエリアに到達する波の方向、及び共通の散乱素子までの距離を示す図である。
図2A】それぞれのサブエリアの表面座標の関数としてのそれぞれの波の方向に基づいて、シート表面のモデル化された形状を決定するステップを示す図である。
図2B】それぞれのサブエリアの表面座標の関数としてのそれぞれの波の方向に基づいて、シート表面のモデル化された形状を決定するステップを示す図である。
図2C】それぞれのサブエリアの表面座標の関数としてのそれぞれの波の方向に基づいて、シート表面のモデル化された形状を決定するステップを示す図である。
図3A】複数の散乱素子を使用してモデル化された形状を決定するステップを示す図である。
図3B】複数の散乱素子を使用してモデル化された形状を決定するステップを示す図である。
図4A】到達時間のサブセットに基づいてそれぞれの波の方向を決定するステップを示す図である。
図4B】可撓性シートのサブエリアをカバーするトランスデューサの2次元サブ配列を使用して波方向の角度を決定するステップを示す図である。
図5A】トランスデューサのそれぞれのサブ配列について線形ラドン変換を計算するステップを示す図である。
図5B】トランスデューサのそれぞれのサブ配列について線形ラドン変換を計算するステップを示す図である。
図5C】トランスデューサのそれぞれのサブ配列について線形ラドン変換を計算するステップを示す図である。
図6A】ラドン変換を使用して、それぞれの波の方向を導出し、モデル化された形状を決定するステップを示し、これらの方向は共通の起点を介して嵌合することができる。
図6B】ラドン変換を使用して、それぞれの波の方向を導出し、モデル化された形状を決定するステップを示し、これらの方向は共通の起点を介して嵌合することができる。
図6C】ラドン変換を使用して、それぞれの波の方向を導出し、モデル化された形状を決定するステップを示し、これらの方向は共通の起点を介して嵌合することができる。
図6D】ラドン変換を使用して、それぞれの波の方向を導出し、モデル化された形状を決定するステップを示し、これらの方向は共通の起点を介して嵌合することができる。
図7A】ラドン変換を使用して異なる散乱素子からの測定値を分離するステップを示す。
図7B】ラドン変換を使用して異なる散乱素子からの測定値を分離するステップを示す。
図7C】ラドン変換を使用して異なる散乱素子からの測定値を分離するステップを示す。
図8A】逆像化を使用して異なる散乱素子から測定値を分離するステップを示す。
図8B】逆像化を使用して異なる散乱素子から測定値を分離するステップを示す。
図8C】逆像化を使用して異なる散乱素子から測定値を分離するステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特定の実施形態を説明するのに使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形の「1つ(a、an)」及び「前記(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。「及び/又は(and/or)」という用語は、関連して列挙される項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組合せを含む。「備える(comprises)」及び/又は「を備える(comprising)」という用語は、記載された特徴の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴の存在又は追加を排除するものではないことが理解されよう。方法の特定のステップが別のステップの後に言及される場合、特に明記しない限り、それは前記他のステップに直接続くことができ、又は特定のステップを実行する前に1つ以上の中間ステップを実行することができることがさらに理解されよう。同様に、構造又は構成要素間の接続が記載されている場合、この接続は、特に指定されない限り、直接又は中間の構造又は構成要素を介して確立することができることを理解されよう。
【0011】
本発明を、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下により十分に説明する。図面において、システム、構成要素、層、及び領域の絶対的及び相対的なサイズは、明確にするために誇張されている場合がある。実施形態は、本発明の可能性として理想化された実施形態及び中間構造の概略図及び/又は断面図を参照して、説明することができる。明細書及び図面において、同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。関連する用語及びその派生語は、そのとき記載されているような、又は議論中の図面に示されているような方向性を指すと解釈すべきである。これらの関連用語は、説明の便宜上のものであり、特に明記しない限り、システムが特定の方向性をもって構築され又は動作することを必要とはしない。
【0012】
図1Aは、トランスデューサ10の配列を有する可撓性シート20を備える音響システム100の斜視図を示す。図1Bは、トランスデューサ10が湾曲物体「Obj」に接触し、共通の散乱素子「S」から発生する音響波「Wa」、「Wb」、「Wc」を測定する可撓性シート20の断面図を示す。図1Cは、音響波が可撓性シート20の異なるサブエリア20a、20b、20cに到達する波の方向θa、θb、θc、及び共通の散乱素子「S」までの距離「Das」、「Dbs」、「Dcs」を示す。
【0013】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ10の配列は、湾曲物体「Obj」に音響的に接触する可撓性シート20のシート表面20s上に分配される。一実施形態では、トランスデューサ10は、互いに対して可変位置で音響波「W」を生成する及び/又は測定するように構成される。例えば、1つ以上の音響トランスデューサが音響波を生成し、1つ以上の音響トランスデューサが音響波を測定する。好ましくは、各音響トランスデューサは、音響波の生成及び測定の両方を行うことができる。一実施形態では、いくつかの音響トランスデューサが、音響波を生成するのに使用され、他の音響トランスデューサが、生成された音響波を測定するのに使用される。音響波を生成する又は測定する音響トランスデューサの役割は、固定されていても若しくは可変であってもよく、又は音響トランスデューサは、両方の役割を同時に若しくは連続して実行してもよい。可撓性シート20上に分配された音響トランスデューサ10が測定にのみ使用されることも想定できる。例えば、共通の散乱素子「S」から散乱する音響波は、別の音響波源、例えば可撓性シートとは別の音響波源から発生することでもよい。
【0014】
留意されるように、3次元空間内の可変に配置されたトランスデューサの空間座標(X,Y,Z)は、シート表面20sの変形に依存し、これは同様に接触する湾曲物体「Obj」に結び付くことができる。例えば、可撓性シート20は、湾曲物体「Obj」の周りに少なくとも部分的に巻き付けられ、及び/又は湾曲を含む物体の表面を覆う。これにより、可撓性シート20及びトランスデューサ10の配列を非平面形状にすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、可撓性シート20の形状及び/又はトランスデューサ10の(相対的な)空間座標は、例えば、トランスデューサ10と動作可能に結合して音響信号に変換される電気信号を送受信する、またその逆も同様に送受信するコントローラ30を使用して、その場で決定される。例えば、コントローラ30は、本明細書に記載の方法及びシステムに従って動作ステップを実行するように構成され及び/又はプログラムされる。通常、コントローラはハードウェア及び/又はソフトウェアの制御下にあることができる。本発明開示の態様は、例えば、1つ以上のプロセッサが実行する場合、コントローラが本明細書に記載の方法を実行する命令を格納する(非一時的(non-transitory))コンピュータ可読媒体として具現化することができる。
【0016】
いくつかの実施形態は、配列内の異なるトランスデューサについて、共通の起点から発生する音響波「W」の到達時間「T」のセットを決定するステップを含む。好ましい実施形態では、例えば図示するように、共通の起点は、湾曲物体「Obj」の内側の共通の散乱素子「S」によって形成される。例えば、音響波「W」の到達時間のセット「T」は、(配列内及び/又は配列とは別の)1つ以上のソーストランスデューサが音響波「W」を生成してから、共通の散乱素子「S」がソーストランスデューサと受信トランスデューサとの間のそれぞれの経路に沿って散乱した後、結果として生じた音響波を、それぞれのサブ配列10a、10b、10c内の受信トランスデューサにより測定するまでの間の、それぞれの時間間隔に基づいている。これに代えて、又はこれに加えて、共通の起点は、音響波の直接源、例えば、配列内のトランスデューサの1つ、又は別のトランスデューサ、例えば、物体内部の特定の位置にある、若しくはその周辺(例えば、配列に対向する物体の側)に適用された別のトランスデューサ、及び/又は共通の散乱素子「S」に音響波を送る別のソーストランスデューサによって形成することができる。
【0017】
いくつかの実施形態は、到達時間Tのセットを様々なサブセット内にまとめるステップを備える。一実施形態では、到達時間「Ta」、Tb、Tcの各サブセットは、シート表面20sに沿ったそれぞれの表面座標(Sx,Sy)で可撓性シート20のそれぞれのサブエリア20a、20b、20cにまたがるトランスデューサ10のそれぞれのサブ配列10a、10b、10cに対応する。一実施形態は、トランスデューサ10の各サブ配列10a、10b、10bでの到達時間「Ta」、Tb、Tcのそれぞれのサブセットに基づいて、音響波「Wa」、「Wb」、「Wc」のそれぞれの部分が、共通の起点、例えば、散乱素子「S」から発生する、それぞれのサブエリア20a、20b、20cに到達するそれぞれの波の方向θa、θb、θcを決定するステップを備える。他の実施形態又はさらなる実施形態は、それぞれのサブエリア20a、20b、20cの表面座標(Sx,Sy)の関数としてのそれぞれの波の方向θa、θb、θcに少なくとも部分的に基づいて、シート表面20sのモデル化された形状20mを決定するステップを備える。トランスデューサ10の空間座標(X,Y,Z)は、したがって、シート表面20sのモデル化された形状20mに基づいて決定することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、シート表面20sの形状は、主に又は排他的にそれぞれの波の方向θa、θb、θcに基づいてモデル化される。一実施形態では、シート表面のサブエリアは、少なくとも最初に、それぞれの波の方向に基づいて互いに相対的な角度に面してモデル化される。例えば、共通の散乱素子「S」がサブエリアのセットから比較的大きな距離にある場合、サブエリア間の角度は、相対的な波の方向と同様又は同じである可能性がある。これに代えて、又はこれに加えて、1つ以上のサブエリアに対する共通の散乱素子「S」の相対位置又は距離を、モデル化し、仮定し、又は測定してもよい。一実施形態では、モデル化された散乱素子「M」の位置は可変であり、例えば、嵌合及び/又は反復手順によって決定される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、モデル化された散乱素子「M」の位置は、予め決定するか、そうでなければ仮定する。
【0019】
いくつかの実施形態は、それぞれのサブエリア20a、20b、20cと、共通の散乱素子「S」又は他の起点との間のそれぞれの距離「Das」、「Dbs」、「Dcs」を決定するステップを備える。したがって、シート表面20sのモデル化された形状20mを、それぞれの距離「Das」、「Dbs」、「Dcs」のうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づいて決定又は制約することができる。一実施形態では、それぞれの距離は、それぞれのサブエリアの中心に対して決定される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、平均距離は、サブ配列内の1つ以上、好ましくはすべてのトランスデューサに基づいて決定される。原則として、サブエリアに対して他のいかなる位置も選択することができる。原則として、共通の散乱素子「S」とサブエリアの1つとの間の距離が測定される場合、他の距離も導出することができる。好ましくは、距離「Das」、「Dbs」、「Dcs」の各々をそれぞれ測定して、モデル化された形状に対する制約を改善する。原則として、共通の散乱素子「S」とトランスデューサ10の各々との間の距離を正確に測定することができれば、これを使用して、それぞれの波の方向θa、θb、θcとは独立してさえもモデル化された形状20mを決定することができる。しかしながら、実際には、これは、例えば精度及び/又は干渉における制限のために、正確にモデル化することが困難である可能性がある。したがって、波の方向に少なくとも部分的に基づくモデル化された形状20mに対するさらなる制約として、1つ以上の測定距離を使用することが好ましい。
【0020】
理解されるように、それぞれのサブエリア20a、20b、20cと共通の散乱素子「S」との間のそれぞれの距離「Das」、「Dbs」、「Dcs」は、到達時間「Ta」、Tb、Tcに基づいて決定することができる。例えば、それぞれのサブエリア20a、20b、20cと共通の散乱素子「S」との間のそれぞれの距離「Das」、「Dbs」、「Dcs」は、それぞれの音響波の生成と測定との間の時間間隔に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、各サブ配列10a、10b、10c内の少なくとも1つのトランスデューサは、それぞれの音響波を生成し、共通の散乱素子「S」から反射して戻ってくる結果として生じる音響波「Wa」、「Wb」、「Wc」を測定するように構成され、それぞれのサブエリア20a、20b、20cと共通の散乱素子「S」との間のそれぞれの距離「Das」、「Dbs」、「Dcs」は、それぞれの音響波の生成と測定との間の時間間隔に基づいて決定される。
【0021】
一実施形態では、それぞれのサブ配列10aにおける音響波の送信と受信との間の時間間隔は、往復時間2Tasに相当する。例えば、音響波「Wa」が共通の散乱素子「S」からサブ配列10aまで移動するのにかかる(一方向の)移動時間「Ta」は、往復時間の半分として計算される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、対応するサブエリア20aと共通の散乱素子「S」との間の距離「Das」は、一方向の移動時間に(波の)速度「C」を乗算することによって計算される。同様に、往復時間には、パルス・エコーの場合、媒体内の実際の波の速度の半分と見なすことができる「有効」速度を、乗算することができる。
【0022】
原則として、音響波の速度を、予め決定し、測定し、仮定し、及び/又は(例えば、パラメータとして)モデル化することができる。一実施形態では、音響波の速度は、例えば、物体又はモデル物体を通る測定値を使用して、それらの間の既知の距離にある一対のトランスデューサの間で予め決定される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、配列内の1つ以上のトランスデューサの対を使用して、例えば、最も近い隣接するトランスデューサ間の表面距離が物体を通る距離と同様又は同じであると仮定することによって、音響波の速度を測定する。別の実施形態又はさらなる実施形態では、例えば物体の既知の波伝達特性に基づいて、音響波の速度を仮定する。別の実施形態又はさらなる実施形態では、音響波の速度は、シートのレイアウト/形状のモデリングにおけるパラメータとして使用される。いくつかの実施形態では、速度「C」は、物体全体にわたって一定であると仮定する。他の実施形態又はさらなる実施形態では、速度「C」は、例えば物体内部の部分構造に応じて可変とすることができる。例えば、部分構造は、音響システムそれ自体によって、例えば反復的に決定することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つのソーストランスデューサが生成した音響波は、異なるサブ配列内の複数の受信トランスデューサによっても測定される。これにより、反射波を測定して同じサブ配列に戻すだけよりも速くデータを提供することができる。一実施形態では、第1のサブ配列10a内の1つ以上のトランスデューサは、それぞれの音響波を生成するように構成され、(別の)第2のサブ配列10b及び第3のサブ配列10c内のトランスデューサは、共通の散乱素子「S」で屈折(又は反射)されたそれぞれの音響波を測定するように構成される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、第1のサブ配列10a内のトランスデューサも、共通の散乱素子「S」から反射して戻ってくるそれぞれの音響波を測定するように構成される。例えば、この往復波を使用して、第1のサブ配列10aと共通の散乱素子「S」との間のそれぞれの往復時間及び/又は距離「Das」を決定することができる。この情報を使用して、共通の散乱素子「S」と他のサブ配列10b、10cとの間の距離「Dbs」、「Dcs」も決定することができる。例えば、異なるトランスデューサ10a→S→10B間の移動時間から往復時間10a→S→10aの半分を減算することにより、散乱素子と第2のサブ配列S→10B間の一方向移動時間(又は距離)を得ることができる。共通の散乱素子「S」までの1つ以上の距離「Das」、「Dbs」、「Dcs」を決定することに代えて、又はそれに加えて、他の又はさらなる制約を波の方向θa、θb、θcと組み合わせて使用し、モデル化された形状20mを決定することもできる。
【0024】
いくつかの実施形態では、各トランスデューサ又はトランスデューサのサブ配列は、シート表面20sに沿って所定の表面座標(Sx,Sy)のセットを有する。通常、音響トランスデューサ10の空間座標(X,Y,Z)は、(可撓性シート20が湾曲物体「Obj」の周りに巻き付けられている間)所定の表面座標(Sx,Sy)に少なくとも部分的に基づいて決定される。一実施形態では、表面座標(Sx,Sy)は、各トランスデューサ及び/又はサブ配列のそれぞれの位置の2次元座標、例えば、シート上の起点から測定した絶対的な(X、Y)の位置のセット、及び/又はトランスデューサ間で測定した相対位置を備える。別の実施形態又はさらなる実施形態では、表面座標(Sx,Sy)は、例えば、トランスデューサ間の既知の距離と組み合わせて、実際の位置を計算することができる各トランスデューサの順番又は相対的な位置を備える。
【0025】
他の実施形態又はさらなる実施形態では、配列内のトランスデューサは、シート表面20s(例えば、「Sp」、「Ss」、「Sab」、「Sac」、「Sbc」で示される)に沿ってそれらの間に所定の表面距離を有する。一実施形態は、所定の表面距離に少なくとも部分的に基づいて、(可撓性シート20が湾曲物体「Obj」の周りに巻き付けられている間)音響トランスデューサ10の空間座標(X,Y,Z)を決定するステップを備える。一実施形態では、所定の表面距離は、(最も近い)隣接するトランスデューサとの間の距離「Sp」、例えば、固定又は可変の周期的な距離を備える。例えば、任意のトランスデューサのセット間又はサブ配列10a、10b、10c間のそれぞれの表面距離「Sab」、「Sac」、「Sbc」は、周期的な距離「Sp」及び相対表面座標(例えば、行又は列に沿ってトランスデューサの数をカウントする)のセットに基づいて計算される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、トランスデューサ又はサブ配列10a、10bのセット間のそれぞれの表面距離「Sab」は、各トランスデューサ又はサブ配列のそれぞれの(絶対)表面位置(Xa,Ya、Xb,Yb)(例えば、起点からミリメートル単位で測定される)を格納するテーブルに基づいて計算される。例えば、テーブルから絶対表面位置を減算して、トランスデューサ間の相対位置(ΔXab=Xa-Xb、ΔYab=Ya-Yb)を決定することができ、距離はピタゴラスの定理(Dab=ΔXab+ΔYab)を使用して計算することができる。別の実施形態又はさらなる実施形態では、1つ以上の(好ましくはそれぞれの)トランスデューサについて、配列内の1つ以上の、好ましくはすべての他のトランスデューサまでのそれぞれの表面距離Dabを直接格納するテーブルが使用される。このようにして、表面距離は、トランスデューサ及び/又はサブ配列の任意の対について迅速に読み出すことができる。理解されるように、所定の表面座標(Sx,Sy)及び/又は距離は、好ましくは、シートが平坦である場合、例えば水平な平坦な表面上に配置されている場合、可撓性シート20の表面に沿って測定される。通常、可撓性シートに沿った距離は、シートが物体の周りに湾曲している場合、短縮することができる最大の距離を表すことができる。物体を通る距離は、例えば、湾曲したシート表面に沿った表面距離よりも短い、直接的なユークリッド距離(最短線分)と言うことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、可撓性シート20は伸縮可能であり、シート表面20sに沿って音響トランスデューサ10間の可変の表面距離を可能にする。一実施形態では、音響トランスデューサ10は、可変の表面距離Dabを決定するのに、シート表面20sの内側及び/又はそれに沿って進行するガイド波を生成する及び/又は測定するようにさらに構成される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、シート表面に沿ったトランスデューサ間の距離は、好ましくは可撓性シート20に沿って及び/又はその内部を進むガイド波、又はトランスデューサ間の別のインターフェース/接続を使用して測定される。一実施形態では、トランスデューサ間の距離を測定する波は、ラム波、例えば伸長A0及び/又は屈曲S0のガイド波を備える。別の実施形態又はさらなる実施形態では、トランスデューサ間の距離を測定する波は、界面波、例えば、シート/細胞組織の界面に沿って進むショルテ波を備える。シートが固体である界面と組み合わせて使用される場合、波はストンレイ波と呼ぶことができる。細胞組織に対する規則的な圧縮波、又は試料が固体である場合の圧縮/せん断波を使用して、トランスデューサシートの3D形状を決定することもできる。例えば、測定されたトランスデューサ間の距離は、所定の距離の代替として使用することができ、又は伸張/圧縮の場合に所定の距離を補正するのにさらに使用することができる。特に、伸縮性トランスデューサシートの場合、前者についてはトランスデューサシートに沿って進むガイド波を使用し、後者についてはバルク波の圧縮波/せん断波を使用することによって、トランスデューサシートの3D形状とは別にトランスデューサシート上のトランスデューサ間の距離を決定することが有利となり得る。1つの利点として、3D形状の反転に対しては、最小の自由度を使用することができ、トランスデューサシートのより複雑な3D形状の再構成又はより屈強な再構成のプロセスを可能にする。
【0027】
いくつかの実施形態(図示せず)は、例えば、異なるサブ配列の異なるトランスデューサ間で直接(例えば、共通の散乱素子「S」を介さずに物体を通る直線に沿って)送信された音響波の移動時間のセットに少なくとも部分的に基づいて、音響トランスデューサ10の空間座標(X,Y,Z)を決定するステップを備える。例えば、トランスデューサ及び/又はサブ配列は、湾曲物体「Obj」の異なる側で少なくとも部分的に互いに対向する。一実施形態は、受信トランスデューサのサブ配列を使用して、特定の1つ以上のソーストランスデューサから送信された音響波のそれぞれの波の方向を決定するステップを備える。このようにして、散乱素子の場合と同様に、1つ以上のソーストランスデューサに対する受信サブ配列の角度を決定することができる。別の実施形態又はさらなる実施形態は、例えば波の速度「C」を乗算することによって、移動時間のセットに基づいて異なるトランスデューサ間の、物体を通るユークリッド(直接)距離のセットを決定するステップを備える。
【0028】
通常、移動時間は、第1のトランスデューサで音響波を送信する第1のタイムスタンプと、同じ又は他のトランスデューサで音響波を受信する第2のタイムスタンプとの間で測定された時間差に基づいて決定することができる。例えば、移動時間は、トランスデューサと散乱素子との間を前後に移動する、及び/又は一対のトランスデューサ間を移動する、及び/又は1つのトランスデューサ、散乱素子、及び別のトランスデューサ間を移動する音響波に対して決定することができる。移動時間は飛行時間と呼ばれることもある。第1の音響トランスデューサから送信された同じ音響波(又は別の音響波)は、第3の音響トランスデューサによって受信することもでき、その結果、第1の音響トランスデューサと第3の音響トランスデューサとの間の移動時間を決定するのに使用される別のタイムスタンプが得られる。これは、移動時間のサブセットを取得するのに配列内の各トランスデューサに対して行うことができる。同様に、第2のトランスデューサと第3のトランスデューサとの間の移動時間を決定することができる。これらの測定は、配列内のトランスデューサの任意の対の間で、及び/又は少なくとも1つの共通の散乱素子を介して、順次及び/又は並列に実行して、所望の移動時間のセットを得ることができる。例えば、音響波は、音響波のそれぞれの起点を区別するために固有のシグネチャ(例えば、周波数)と共に送信することができる。任意の対について反対方向に移動時間を決定することもできる。また、同じ方向又は反対方向に測定を繰り返すことによって、任意の対の間の平均移動時間又は中央移動時間を決定することができる。例えば、これは、任意のノイズを緩和するのに行うこともできる。
【0029】
いくつかの実施形態では、音響システム100は、反射ベースの音響機器として機能するように構成される。他の実施形態又はさらなる実施形態では、音響システム100は、断層撮影ベースの音響機器として機能するように構成される。光音響機器など、他の又はさらなる種類の音響機器も想定できる。原則として、各音響トランスデューサは、例えば、音響信号と電気信号との間で変換することができる1つ以上の音響素子を備えることができる。例えば、各音響素子は、圧電構造、膜などを備えることができる。好ましくは、各サブ配列は、複数の音響トランスデューサ、例えば、局所化配列を形成する少なくとも2個、4個、10個、20個、50個、100個以上の(隣接する)トランスデューサを有するエリアによって形成される。通常、それぞれのサブ配列は、1mmから1000mmの間、好ましくは10mmから100mmの間のシートの局所サブエリア上に形成してもよい。例えば、面積10×10mmのサブ配列は、ピッチ1mmの局所的な100個のトランスデューサ配列を備える。
【0030】
好ましい実施形態では、音響システム100は、音響トランスデューサ10の配列を使用して、例えば、同じ又は他のコントローラを使用して、湾曲物体「Obj」の画像を生成するのに構成される。最も好ましくは、画像は、音響トランスデューサ10によって生成及び/又は測定された音響波と、波の方向θa、θb、θcに少なくとも部分的に基づいて決定されたそれらの空間座標(X,Y,Z)に基づいて生成される。例えば、音響システム100は、超音波撮像機器として構成される。通常、画像は、音響トランスデューサ10の配列を使用して、湾曲物体「Obj」の内部で測定された構造及び/又は特性を含む。また、湾曲物体「Obj」の表面及び/又は内部の他の測定値も想定することができる。好ましくは、音響信号の測定された特性は、音響信号の到達時間、振幅、周波数、及び/又は位相のうちの1つ以上を含む。例えば、(同じ又は他の)コントローラは、異なるトランスデューサ間で(断層撮影及び/又は反射)、又は同じトランスデューサに戻る(反射)、湾曲物体「Obj」を通って送られる(同じ又は他の)音響波「W」の振幅のセットを使用して、湾曲物体「Obj」の内部で測定された構造及び/又は特性の画像又は他の測定値を生成するように構成される。
【0031】
理解されるように、測定信号(及び例えば、画像を生成する、これら信号の特定の処理)は、トランスデューサの実際の(相対的な)位置に依存してよい。例えば、断層撮影測定では、一対のトランスデューサ間の音響信号の振幅又は他の特性を処理して、トランスデューサ間の経路内の材料の構造及び/又は特性を決定することができ、経路の起点及び行き先が、物体に対するトランスデューサの空間配置によって決定される。例えば、反射測定では、例えば、振幅と組み合わせたエコー時間、又は同じ若しくは他のトランスデューサに戻る音響の他の特性を処理して、反射経路内の材料の構造及び/又は特性を決定することができ、経路の起点及び行き先が、物体に対する1つ以上のトランスデューサの空間配置によって決定される。異なる信号についてそれぞれの経路を配置することができる場合、例えば、物体にマッピングすることができる場合、信号を組み合わせて画像又は他の測定値を生成することができる。したがって、物体内部の構造及び/又は特性についての測定値は、本明細書に記載のとおり決定されたトランスデューサの空間座標(X,Y,Z)に従って測定された音響信号(例えば、反射及び/又は断層撮影)に基づいて処理することができる。
【0032】
一実施形態では、物体の撮像又は他の測定は、音響トランスデューサ10の空間座標(X,Y,Z)を決定した後に実行される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、音響トランスデューサ10の空間座標(X,Y,Z)は、湾曲物体「Obj」の測定が行われている間、又はそのような測定の間で断続的に、決定される。例えば、断層撮影及び/又は反射ベースの測定は、トランスデューサの測定位置を絶えず更新することによって、身体の形状を(例えば、呼吸運動に起因して)変化させながら、身体に対して実行することができる。原則として、空間座標を決定するのに使用されるのと同じ又は同様の音響信号も、物体の撮像に使用することができる。例えば、物体内部の構造及び/又は特性は、同じ又は異なるトランスデューサ間の音響波の反射及び/又は吸収に基づいて決定することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、可撓性シート20のモデル化された形状20mは、波方向θa、θb、θcを入力として使用する制約された嵌合によって決定される。異なるサブ配列間の所定の表面距離など、収束する嵌合を可能にするために、モデル化された形状20mに様々な制約を適用することができる。一実施形態では、そのモデルは、シート表面の連続性及び/又はその曲率を仮定することによって制約される。例えば、シートは、サブ配列の相互接続したメッシュとしてモデル化される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、そのモデルは、シート及び/又は物体の最大曲率(例えば、最小半径)によって制約される。例えば、シートは、特定の可撓性及び/又は屈曲性を有すると仮定する。例えば、物体は、特定の最大曲率(例えば、最小半径)を有すると仮定する。別の実施形態又はさらなる実施形態では、そのモデルは、可撓性シート20の最大伸縮性によって制約される。例えば、可撓性シート20は、シート表面に沿った任意の所定の距離を固定することができるように、実質的には伸縮可能でなくてもよい。又は、可撓性シート20は、シート表面に沿った所定の距離が可変であることができるように、例えば、モデルに応じて可変倍率によって調整できるように、ある程度の伸縮性を有していてよい。いくつかの実施形態では、そのモデルは、表面上のトランスデューサの所定の位置(表面座標)によって制約される。例えば、所定の位置が、物体を通るトランスデューサ間の最大距離及び/又はシート表面に沿った固定距離に対する制約としてそのモデルに設定される。自由な造形の表面の代わりに、形状を特定の形状、例えば球形、円筒形などに制限することができる。これにより、より制約された(より容易な)嵌合を可能にするための自由パラメータの数を制限することができる。
【0034】
一実施形態では、この嵌合は、反復手順、例えば、モデル化された形状20m及び/又は散乱素子「S」に基づいて、実際の測定値と予想される測定値との間の差を最小化することで実行される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、この嵌合は、解析的に、例えば、最良嵌合を直接計算して実行される。また、計算及び/又は嵌合のルーチンの組合せも可能である。また、機械学習/人工知能などの他のアルゴリズムを使用して、例えば、可撓性シートの最も可能性の高い形状を計算することができる。いくつかの実施形態では、トランスデューサの異なるサブセットに対して複数の嵌合を実行して、シートの対応するサブ区画エリアの局所的な形状又は曲率を決定する。例えば、複数の嵌合を組み合わせて全体の形状を提供することができる。いくつかの実施形態では、この嵌合は、すべての測定値を使用して全体的に実行される。例えば、これは、局所的な嵌合又は物体の所定の一般的な形状に基づいて、一般的な形状を決定した後に、実行してもよい。
【0035】
一実施形態は、波の方向θa、θb、θcに従って所定の空間座標(X,Y,Z)を調整することによって、音響トランスデューサ10の現在の空間座標(X,Y,Z)のセットを決定するステップを備える。例えば、球、円柱など、1つ以上の所定の形状の選択を、初期の仮定形状としてコントローラに入力することができる。これにより、その形状を嵌合させやすくすることができる。別の実施形態又はさらなる実施形態では、所定の空間座標のセットは、音響トランスデューサ10の以前に測定した及び/又は嵌合した座標を備える。例えば、音響トランスデューサ10及び/又はモデル化された形状20mの空間座標は、連続的に又は断続的に測定され又は更新され、形状を変化させる可能性がある物体(例えば、呼吸時の身体)を追跡する。シート表面を(自由な造形の)メッシュとしてモデル化することに代えて、又はそれに加えて、例えば所定の形状の表面方程式に従って、シート表面を連続的なパラメータ化された表面としてモデル化することも想定することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、モデル化された形状は、所定のパラメータによって決定する形状又はパラメータに関連する関数によって、嵌合が制約される。一実施形態は、可変スケーリングパラメータ及び/又は座標のセットを有する所定のパラメータ化された形状に基づいて、モデル化された形状20mを計算するステップを備える。例えば、座標は、その形状の(x0,y0,z0)原点を含んでもよい。パラメータ化された形状を使用すると、より一般的なメッシュと比較して自由パラメータの数が制限される場合がある。例えば、スケーリングパラメータ及び/又は座標のセットは、波の方向θa、θb、θc及び/又は他の測定値若しくは制約条件に従って嵌合する。いくつかの実施形態では、モデル化された形状20mは、球又は楕円面(のサブ区画エリア)としてパラメータ化することができる。楕円面は、方向性スケーリング、又はより一般的にはアフィン変換により球を変形することによって、球から得ることができる表面である。例えば、楕円面は、6つのパラメータ(x0、y0、z0、a、b、c)によって一意的に定義することができる。これらは、少なくとも7つの独立した測定値のセットによって決定することができる。実際には、測定値の情報は直交していなくてもよく、信号対雑音比(SNR)が制限される場合があるので、より多くの測定値が必要とされる可能性がある。例えば、音響システムは、(胸部の)細胞組織を測定するのに使用される。この場合、初期メッシュ形状及び/又はパラメータ化された機能的表面は、球面の一部を使用して決定することができる。他の実施形態又はさらなる実施形態では、湾曲物体「Obj」は、管状又は円筒形状を有してよい。例えば、音響システムを使用して、未知又は可変の直径を有することができる管の内部を測定することができる。また、例えば(円錐台)円錐形状など、他のパラメータ化された形状も想定することができる。例えば、音響システムは、身体の他の部分、又は他の任意の湾曲物体を測定するのに使用される。
【0037】
図2A図2Cは、それぞれのサブエリア20a、20b、20cの表面座標(Sx,Sy)の関数としてのそれぞれの波の方向θa、θb、θcに基づいてシート表面20sのモデル化された形状20mを決定するステップを示す。
【0038】
いくつかの実施形態では、モデル化された形状20mを決定するステップは、線分のセットを決定するステップを備える。一実施形態では、各線分は、それぞれのサブエリア20a、20b、20cに固定的に接続されたままである。別の実施形態又はさらなる実施形態では、固定的に接続された各線分は、音響波「Wa」、「Wb」、「Wc」がそれぞれのサブエリア20a、20b、20cに到達するそれぞれの波の方向θa、θb、θcに対応した固定の角度で、それぞれのサブエリアを横切る。他の実施形態又はさらなる実施形態は、例えば、共通の散乱素子「S」、又は他の起点のモデルに対応する共通の起点「M」で、それら固定的に接続した線分を横切るようにサブエリア20a、20b、20cを配向するステップを備える。
【0039】
いくつかの実施形態では、それぞれのサブエリア20a、20b、20cと共通の散乱素子「S」との間の距離「Das」、「Dbs」、「Dcs」に対応する固定長を有する線分のうちの1つ以上、好ましくはすべてがモデル化される。一実施形態では、サブエリア20a、20b、20cは、共通の起点Mにおいて固定的に接続し固定した長さの線分のそれぞれの端部に重なるように配向される及び/又は並進される。原則として、各サブエリアの位置及び配向は、例えば、サブ配列についてのさらなる所定の知識を必要とせずに、固定的に接続された線分の方向と長さを使用して、一意に決定することができる。例えば、配向だけでなく、サブエリアの位置も変更して、線分の方向と長さを共通の起点に合わせることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、モデル化された形状20mのサブエリア20a、20b、20cは、それらのそれぞれの波の方向θa、θb、θcに従って配向され、隣接するサブエリア20a、20b、20cは、それらのサイズ「Sn」及び相対位置、例えば、表面座標(Sx,Sy)に従って、(それらの間のそれぞれの端部で)相互に接続したままである。一実施形態では、サブエリアのサイズ及び/又は相対位置は、トランスデューサ及び/又はサブ配列の表面座標(Sx,Sy)に基づいて決定される。一実施形態では、隣接するサブエリアは相互に接続して、リンクしたチェーン又はメッシュを形成する。一実施形態では、チェーン又はメッシュ内のサブエリアの順番は、それらの相対位置に基づいて決定される。別の実施形態又はさらなる実施形態では、各チェーン又はメッシュ要素の長さは、サブエリアのそれぞれのサイズに基づいて決定される。概して、シートの表面は、2方向以上に変化してもよい。したがって、メッシュは同様に複数の方向に変化してよい。通常、これにより、例えば、それぞれの許容範囲又は所定のサイズを変更するパラメータとしてモデル化することができるサブエリアの局所的な伸張及び/又は圧縮を含めることができる。一実施形態では、サブエリアは、パラメータ化又は自由に造形された形状を有する相互に接続した(2次元の)メッシュを形成するようにモデル化される。
【0041】
図3A及び図3Bは、複数の散乱素子S1、S2を使用してモデル化された形状20mを決定するステップを示す。
【0042】
いくつかの実施形態は、湾曲物体「Obj」の内部の第1の散乱素子「S1」と相互作用した音響波「W」の到達時間の第1のセットを決定するステップを備える。他の実施形態又はさらなる実施形態は、湾曲物体「Obj」の内部の別個の第2の散乱素子「S2」と相互作用した音響波「W」の第2のセットの到達時間を決定するステップを備える。一実施形態は、到達時間の各セットを、サブ配列10a、10b、10cに対応するサブセットのそれぞれの集合に分割する及び/又はまとめるステップを備える。他の実施形態又はさらなる実施形態は、各散乱素子「S1」、S2について及び各サブ配列10a、10b、10cについてサブセットの2つの集合に基づいて、第1の散乱素子「S1」又は第2の散乱素子「S2」からそれぞれ発生する2つの方向からそれぞれのサブ配列に到達する音響波のそれぞれ少なくとも2つの波の方向θa1とθb1とθc1、θa2とθb2とθc2を決定するステップを備える。他の実施形態又はさらなる実施形態は、サブエリアの表面座標(Sx,Sy)の関数として、サブ配列ごとの少なくとも2つの波の方向に少なくとも部分的に基づいて、シート表面20sのモデル化された形状20mを決定するステップを備える。したがって、トランスデューサ10の空間座標(X,Y,Z)は、シート表面20sのモデル化された形状20mに基づいて決定することができる。
【0043】
理解されるように、2つ以上の散乱素子を使用することにより、測定した方向と一致する可能なモデル化された形状20mをさらに制約することができる。好ましくは、十分に隔離することができる散乱素子のセットを選択する。一実施形態では、少なくとも2つの別個の散乱素子を含むセットが選択され、散乱素子は互いに横方向に離れている。このようにして、散乱素子は、例えば入射波の異なる角度をウィンドウ処理することによって区別することができる。一実施形態では、異なる深さにある少なくとも2つの別個の散乱素子を備えるセットが選択される。このようにして、散乱素子は、例えば異なる到達時間をウィンドウ処理することによって区別することができる。
【0044】
他の実施形態又はさらなる実施形態は、それぞれのサブエリア20a、20b、20cと湾曲物体「Obj」の内部の少なくとも2つの別個の散乱素子S1、S2との間の、それぞれ少なくとも2つの距離Das1とDas2、Dbs1とDbs2、Dcs1とDcs2を決定するステップを備える。したがって、シート表面20sのモデル化された形状20mは、少なくともサブエリア当たりの2つの距離の1つ以上に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。
【0045】
図4Aは、到達時間「Ta」のサブセットに基づいてそれぞれの波の方向θaを決定するステップを示す。いくつかの実施形態では、例えば図示したように、共通の起点から、例えば、散乱素子及び/又は他のトランスデューサから到達する音響波「Wa」は、サブ配列内の異なるトランスデューサに異なる時間で到達することができる。一実施形態では、到達時間「Ta」のサブセット内の時間差「Δt」は、音響波「Wa」のそれぞれの波の方向θa、例えば、サブ配列の表面法線に対する角度に依存する。例えば、音響波「Wa」が表面法線と実質的に平行な波の方向θaで到着する場合、異なる到達時間「Ta」の間の時間差「Δt」はわずかであるか、又はない可能性がある。一方、波の方向θaが表面法線に対して大きな角度を成す場合、かなりの時間差「Δt」が存在し得る。別の実施形態又はさらなる実施形態では、到達時間「Ta」のサブセット内の時間差「Δt」は、音響波の波の速度「C」に依存する。例えば、音響波が遅いほど、時間差「Δt」は大きくなり、その逆も同様である。別の実施形態又はさらなる実施形態では、到達時間「Ta」のサブセット内の時間差「Δt」は、それぞれの時間差を測定するトランスデューサのセットの間の表面距離ΔSに依存する。例えば、トランスデューサが離れているほど、時間差「Δt」は大きくなり、その逆も同様である。好ましい実施形態では、サブセットの到達時間は、サブ配列内の各トランスデューサについて測定される。このサブセットから、例えば、トランスデューサの位置の関数として到達時間の勾配を決定することによって、時間差の全体的な傾向をより正確に決定することができる。
【0046】
一実施形態では、サブエリアの波の方向θaは、関係式θa=sin-1C・Δt/ΔS、又は任意の同等の式を使用して計算される。以下でさらに説明する(線形)ラドン変換など、より洗練された方法及び方程式も使用することができる。通常、これらの方程式は、入射する音響波が平面波に十分に近似している場合、最も容易に作用することができる。これは、例えば、波の起点までの距離がサブ配列のサイズよりも、例えば、少なくとも10倍大きい場合のケースであり得る。例えば、これは、最小到達時間を使用することによって容易に確保することができる。さらに、サブ配列内のトランスデューサは、ほぼ平面内に位置すると仮定することができる。これは、例えば、サブ配列の範囲を制限することによって、及び/又は各サブ配列をほぼ平面的な形態に保つために局所的な剛性を追加することによって、確保できる。平面波動方程式を使用する代わりに、原則として、方程式は、起点までの距離の関数であることができる湾曲波面を考慮に入れるように適合させることもできる。平面のサブ配列を仮定する代わりに、方程式はまた、局所的な湾曲を可能にすることができ、例えば、可撓性シートの全体的にモデル化された形状及び局所的な湾曲に従って個々のトランスデューサの位置をさらに嵌合させることができる。
【0047】
図4Bは、可撓性シートのサブエリア20aを覆うトランスデューサ10の2次元サブ配列10aを使用して、波の方向の角度θa、Φaを決定するステップを示す。本明細書に記載の実施形態は、トランスデューサの1次元配列の図を参照して説明することができるが、内容は概して2次元配列に適用することができることが理解されよう。2次元配列の場合、それぞれの波の方向は、例えば表面法線に対する極角度θa、及び法線の周りの方向を決定する方位角Φaを使用して、2つの角度座標によって記述することができる。例えば、方位角Φaは、音響波が同時に到達するサブ配列を通る線を補間することによって(及びそれらの線に垂直な方位角の方向をとることによって)決定することができる。同様に、極角度θaは、同時到達線に垂直な(方位角方向に沿った)時間差Δt及び表面距離ΔSを決定することによって計算することができる。これに代えて、又はこれに加えて、2D線形ラドン変換などのより洗練された方法及び方程式を使用することができる。
【0048】
図5Aは、湾曲形状に従って配置され、共通の散乱素子「S」からの音響波を測定するように構成されたモデル化されたトランスデューサ10を示す。薄い色の部分は、特定のサブ配列を示す。
【0049】
図5Bは、それぞれの表面座標「Sx」の関数としての配列内の各トランスデューサについて得られた到達時間「T」の散布図を示す。参考までに、配列は直線として上に描かれているが、到達時間は前の図に示されている形状に対して計算される。
【0050】
図5Cは、前の図に示された特定のサブ配列における到達時間のサブセットの線形ラドン変換を示す。ラドン変換は、平面波の伝播方向及びサブ配列の中心としての到達時間を測定する。例えば、これは数学的に次のように定式化することができる。
【0051】
【数1】
【0052】
ここで、
【0053】
【数2】
c:媒体の音速
x:配列位置、ゼロはサブ配列の中心
【0054】
例えば、計算は、記録された波動場の窓、例えば光が指すサブ配列を選択し、変換におけるゼロ位置を配列の中心位置として定義するステップを含めてよく、そして変換を実行することができる。時間領域に変換して戻した後、記録された応答は、光線パラメータ及び原点走時(例えば、x=0における到達時間)の関数として示すことができる。視覚化のために、rf信号の包絡線を示すことができる。例えば、最大値を原点走時の関数としてとると、伝播方向の最良の推定値を示す単一のピークを与えることができる。
【0055】
図6Aは、トランスデューサ配列のそれぞれのサブエリア上の到達時間に関する線形ラドン変換に基づいて(支配的な)波の方向θを計算するステップを示す。例えば、左側のラドン変換の散布図の各点は、図に示される式を使用してそれぞれの角度に変換される。これには、パルス・エコー実験の場合に、(各波は前後に経路を横切ることができるため)実際の波の速度の半分と見なすことができる有効な波の速度「C」を使用する。変換された点は、右側に示されるヒストグラムにプロットされる。ヒストグラムのピークを嵌合して、それぞれのサブ配列上の波の方向θを得ることができる。図6Bは、サブ配列の各々で測定された波の方向を示すそれぞれのピークを示す。比較のために、図の上部のドットは、配列が湾曲していない場合のピークの予想位置を示している。実質的に、ピークのシフトは、曲率の量を示すのに使用することができる。図6Cは、平面のモデル化された形状から始まる波の方向に対応したそれぞれの角度での線分を示す。図示のように、サブ配列が適切に配向されていないため、この場合、線分は共通点と交差しない。図6Dは、線分が共通の起点を通って嵌合するモデル化された形状20mを示す。この場合、形状はトランスデューサの実際の入力された配置に大体対応する。
【0056】
図7Aは、異なる散乱素子の配置を示し、各散乱素子は、各サブ配列にそれぞれの波を送信し/屈折させる。図7Bは、表面座標Sxの関数としての到達時間T(例えば往復時間)を示す。図示のように、各サブ配列は、異なる散乱素子に対応する複数の到達時間を検出することができる。トランスデューサのいくつかでは、例えば一点鎖線のボックス内のサブ配列について示されているような、到達時間の間に実質的な重複があり得る。図7Cは、前の図のサブ配列データの対応するラドン変換を示す。このプロットが示すように、前に示されたプロットにおいて実質的に重なり合うデータは、散乱素子S1、S3、S5の異なる波の方向のおかげでラドン変換において良好に分離することができる。そのため、いくつかの実施形態では、ラドン変換は、複数の散乱素子の場合に、散乱素子のうちの1つに対応するデータを分離するのに使用される。
【0057】
図8Aは、測定する配列の曲率を考慮せずに撮像された複数の散乱素子を有する湾曲物体を示す。図示されているように、撮像座標(Ix、Iz)を有する画像は、実際のトランスデューサ位置を補正することなく高度に歪む可能性がある。それにもかかわらず、別個の散乱素子を認識することが可能である場合がある。図8Bは、同じ画像を示しているが、散乱素子の1つに対応するデータのみを保持するようにフィルタリングされている。これはウィンドウ処理とも呼ばれる。図8Cは、フィルタリングされた画像の逆像化を示す。示されるように、これは、単一の散乱素子の到達時間を効果的に分離するのに使用できる。これは、この単一の散乱素子に対するそれぞれの波の方向を計算する前述の方法に対して入力として使用することができる。したがって、いくつかの実施形態は、配列内のすべてのトランスデューサの到達時間に基づいて(例えば、トランスデューサのそれぞれの位置を考慮せずに)、(超音波)画像を生成するステップと、撮像データに基づいて単一の(分離された)散乱素子を選択し、他の散乱素子に対応する撮像データをフィルタリング除去してフィルタリングされた画像を生成するステップと、フィルタリングされた画像を逆像化して、選択した共通の散乱素子「S」についてフィルタリングされた到達時間Tのセットを生成するステップと、そしてフィルタリングされた到達時間Tのセットに基づいて本明細書に記載のステップを実行する、例えば、音響波「Wa」、「Wb」、「Wc」のそれぞれの部分が選択した共通の散乱素子「S」からサブ配列に到達する波の方向θa、θb、θcを計算するステップのうち、1つ以上のステップを備える。場合によっては、この手順は、1つ以上の他の選択した散乱素子についても繰り返すことができ、毎回、それぞれの散乱素子に対する波方向及び/又は距離のそれぞれのセットをもたらす。例えば、こうして図3A図3Bに示すようなモデル化された形状の嵌合を使用することができる。
【0058】
明確化及び簡潔な説明のために、特徴は、同じ実施形態又は別の実施形態の一部として本明細書に記載されているが、本発明の範囲は、記載された特徴のすべて又は一部の組合せを有する実施形態を含み得ることが理解されよう。特定のシステム及び機器を参照して説明された態様は、湾曲物体を音響的に測定する対応方法として具現化することもできる。一実施形態では、本方法は、可撓性シートのシート表面上に分配された音響トランスデューサの配列を有する可撓性シートを提供するステップを備える。別の実施形態又はさらなる実施形態では、本方法は、音響トランスデューサが湾曲物体「Obj」に様々な側から音響的に接触するように、湾曲物体の周りに少なくとも部分的に可撓性シートを巻き付けるステップを備える。別の実施形態又はさらなる実施形態では、本方法は、音響トランスデューサを使用して湾曲物体の周りの可変位置で音響波を生成する及び/又は測定するステップを備える。例えば、3次元空間における可変位置の空間座標は、湾曲物体の周りを巻き付けるシート表面の変形に依存する。別の実施形態又はさらなる実施形態では、本方法は、好ましくは可撓性シートが湾曲物体「Obj」の周りに巻き付けられている間に、音響トランスデューサの空間座標を決定するステップを備える。好ましい実施形態では、本方法は、音響トランスデューサによって生成される及び/又は測定される音響波、並びに移動時間のセットに基づき決定されたそれらの空間座標に基づいて、湾曲物体を撮像する及び/又は測定するステップをさらに備える。これら及び他の態様は、実行する場合、本明細書に記載の方法及びシステムの実行を引き起こす命令を格納するコンピュータ可読媒体として具現化することもできる。
【0059】
可撓性シート上の音響トランスデューサの様々なレイアウトについて実施形態を示したが、同様の機能及び結果を達成するための本発明開示の利益を有する当業者によって代替方法も想定することができる。例えば、トランスデューサ又はサブ配列が測定対象の湾曲物体上に直接配置される場合、可撓性シートは省略してもよい。可撓性シートの代わりに、他の又は同様の構造物、例えば可撓性ワイヤ及び/又はトランスデューサ間のネットを使用してトランスデューサを一緒に保持することもできる。説明及び図示された実施形態の様々な要素は、自己較正が適合可能な音響機器など、特定の利点を提供する。当然のことながら、上記の実施形態又はプロセスのいずれか1つを1つ以上の他の実施形態又はプロセスと組み合わせて、設計及び利点の発見及び適合をさらに改善することが提供できることを理解されたい。本発明の開示は、音響映像法に特定の利点を提供し、概して音響トランスデューサのそれぞれの位置が決定される任意の用途に適用できることが理解される。
添付の特許請求の範囲を解釈する際に、「を備え(comprising)」という語は、所与の特許請求の範囲に列挙されたもの以外の他の要素又は行為の存在を排除するものではないことを理解されたい。ある要素に先行する「1つの(a又はan)」という語は、複数のそのような要素の存在を排除しない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、それらの範囲を限定しない。いくつかの「手段(means)」は、同じ又は異なる項目又は実装された構造若しくは機能によって表してよい。開示された機器又はその一部のいずれかは、特に明記しない限り、一緒に組み合わされてもよく、又はさらなる部分に分離されてもよい。ある請求項が別の請求項に言及する場合、これは、それらのそれぞれの特徴を組み合わせることによって達成される相乗的な利点を示すことができる。しかし、特定の手段が相互に異なる請求項に記載されているというだけのことでは、これら手段の組合せを有利に使用することもできないということを、示すものではない。したがって、本発明の実施形態は、文脈によって明確に排除されない限り、各請求項が原則として任意の先行する請求項に言及することができる請求項について、すべての実用的な組合せを含むことができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
【国際調査報告】