(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】アミン含有天然物質系崩壊性デリバリー粒子
(51)【国際特許分類】
B01J 13/16 20060101AFI20240822BHJP
A01N 25/28 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B01J13/16 ZNM
B01J13/16 ZAB
A01N25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508362
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 US2022074860
(87)【国際公開番号】W WO2023019219
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516195258
【氏名又は名称】エンカプシス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】フェン、リンシェン
【テーマコード(参考)】
4G005
4H011
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005BA02
4G005DB06Y
4G005DB06Z
4G005DB12Y
4G005DB12Z
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4G005DD38Z
4G005EA02
4H011BC19
4H011DA06
4H011DF03
4H011DH02
4H011DH05
4H011DH06
4H011DH08
(57)【要約】
有益剤コア材と、このコア材をカプセル化するシェルとを含む改良されたデリバリー粒子をそのようなデリバリー粒子の形成方法および製造品と共に説明する。シェルは、イソシアネートまたは酸塩化物またはアクリレートと、遊離アミノ部分を有するアミン含有天然物質と、α,β-不飽和化合物との反応生成物であり、α,β-不飽和化合物は、天然物質のアミン部分とC-N共有結合を形成する。本発明のデリバリー粒子は、試験法OECD 301Bでの崩壊特性が向上した良好な放出特性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア材と、コア材をカプセル化するシェルとを含み、コア材は有益剤を含み、
シェルはポリマーを含み、ポリマーは、
イソシアネートまたは酸塩化物または油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートと、
遊離アミノ部分を有するアミン含有天然物質と、
その天然物質のアミン部分とC-N共有結合を形成するα,β-不飽和化合物との反応生成物を含み、
イソシアネート、アミン含有天然物質、α,β-不飽和化合物の重量%比は、ポリマーの重量基準で0.1:90:9.9~20:10:70の範囲内にあるデリバリー粒子。
【請求項2】
α,β-不飽和化合物は、C-N共有結合を形成し、
天然物質は、キトサン、キチン、ゼラチン、アミン含有デンプン、アミノ糖、ポリリシンまたはヒアルロン酸から選択され、
α,β-不飽和化合物は、水溶性または水分散性アクリレート、アルキルアクリレート、α,β-不飽和エステル、アクリル酸、アクリルアミド、ビニルケトン、ビニルスルホン、ビニルホスホネート、アクリロニトリル誘導体またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項3】
α,β-不飽和化合物は、単官能性、二官能性または多官能性ポリマー化合物またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項2記載のデリバリー粒子。
【請求項4】
α,β-不飽和化合物は、アクリルアミド、メタクリルアミド、n-イソプロピルアクリルアミド、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドまたは2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸から選択されることを特徴とする請求項2記載のデリバリー粒子。
【請求項5】
α,β-不飽和化合物は、陰イオンチャージされていることを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項6】
α,β-不飽和化合物は、陽イオンチャージされていることを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項7】
デリバリー粒子のゼータ電位は、pH3で-100mV~+200mV、pH10で-200mV~+100mVであり、加えて天然物質の遊離アミノ部分の一部は、アザ-マイケル付加反応を介してα,β-不飽和化合物と反応することを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項8】
さらに天然物質の遊離アミノ部分の一部は、イソシアネート、酸塩化物または(メタ)アクリレートと反応させて、それぞれ尿素、アミドまたはアミノエステル結合を形成することを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項9】
イソシアネートは、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、メチレンジフェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、テトラメチルキシリデンジイソシアネート、ナフタレレン-1,5-ジイソシアネートおよびフェニレンジイソシアネートからなる群から選択されることを特徴とする請求項8記載のデリバリー粒子。
【請求項10】
酸塩化物は、塩化テレフタロイル、塩化フタロイル、1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド、アジピン酸クロリド、グルタル酸クロリドまたはセバシン酸クロリドから選択されることを特徴とする請求項8記載のデリバリー粒子。
【請求項11】
油溶性(メタ)アクリレートは、二官能性(メタ)アクリレート、三官能性(メタ)アクリレート、四官能性(メタ)アクリレート、五官能性(メタ)アクリレート、六官能性(メタ)アクリレート、七官能性(メタ)アクリレート、八官能性(メタ)アクリレートおよびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項12】
水溶性または水分散性(メタ)アクリレートは、単独で、2-カルボキシエチルアクリレート、2-カルボキシエチルアクリレートオリゴマー、アクリル酸2-カルボキシプロピル、4-アクリロイルオキシフェニル酢酸、アクリル酸カルボキシオクチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジ-、トリ-、テトラ-またはペンタエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、アミノアルキルアクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらを組み合わせた物から選択されることを特徴とする請求項2記載のデリバリー粒子。
【請求項13】
有益剤は、芳香剤であり、好ましくは約2.5~約4.5のlogPという特徴を有する香料原料を含む芳香剤であることを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項14】
さらにコアは、ミリスチン酸イソプロピル、植物油、変性植物油、C4~C24脂肪酸のモノ、ジ、およびトリエステル、ドデカノフェノン、ラウリン酸ラウリル、ベヘン酸メチル、ラウリン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチルおよびこれらの混合物からなる群から選択されるパーティショニング変性剤、好ましくはミリスチン酸イソプロピルを含むことを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項15】
壁は、OECD 301B試験に従って60日で30%超CO
2、好ましくは40%超CO
2、より好ましくは50%超CO
2、さらに好ましくは60%超CO
2(最大95%)の生分解性を有することを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項16】
デリバリー粒子の壁は、コーティング材をさらに含み、好ましくはコーティング材は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)、ポリアミン、ワックス、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンコポリマー、ポリビニルピロリドン-エチルアクリレート、ポリビニルピロリドン-ビニルアクリレート、ポリビニルピロリドンメタクリレート、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテート、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリシロキサン、ポリ(プロピレン-無水マレイン酸)、無水マレイン酸誘導体、無水マレイン酸誘導体のコポリマー、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエンラテックス、ゼラチン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、他の変性セルロース、アルギン酸ナトリウム、キトサン、キチン、カゼイン、ペクチン、加工デンプン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸、ポリビニルピロリドンおよびそのコポリマー、ポリ(ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテート、ポリビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルアミン、ポリビニルホルムアミド、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンのコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項17】
デリバリー粒子は、「試験方法」の項で説明する漏出試験によって測定される漏出が約50%未満または最大で約50%であることを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項18】
デリバリー粒子の体積加重粒径中央値は、5ミクロン~150ミクロンまたは10~50ミクロン、または15~50ミクロンであることを特徴とする請求項1記載のデリバリー粒子。
【請求項19】
コア材と、コア材をカプセル化するシェルとを含むデリバリー粒子の群を形成する方法であって、コア材は有益剤を含み、シェルはポリマーを含み、このポリマーは、
i)イソシアネートまたは酸塩化物または二官能性または多官能性(メタ)アクリレートと、
ii)遊離アミノ部分を有するアミン含有天然物質と、
iii)α,β-不飽和化合物との反応生成物を含むデリバリー粒子の群の形成方法であって、
該方法は、
i)アミン含有天然物質を水中に溶解または分散させることを含む水相を形成することと、
ii)有益剤、好ましくは香料と任意にパーティショニング変性剤および任意に溶媒を、イソシアネート、酸塩化物および油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートからなる群から選択されるシェル形成材とを混合して油相を形成することと、
iii)エマルジョンを形成するために油相を水相に乳化し、エマルジョンを加熱して天然ポリマー上の遊離アミノ部分と前記イソシアネート、酸塩化物または多官能性(メタ)アクリレートの間にポリ尿素、ポリアミドまたはポリアミノエステルシェルを形成することと、
iv)シェルが形成されている間に混合、粉砕または加熱しながら水溶性または水分散性アクリレート、アルキルアクリレート、α,β-不飽和エステル、アクリル酸、アクリルアミド、ビニルケトン、ビニルスルホン、ビニルホスホネートまたはアクリルニトリル誘導体を含むα,β-不飽和化合物をエマルジョンに加えることとを含み、
これによりα,β-不飽和化合物は、天然物質の遊離アミン基の一部とC-N共有結合を形成する方法。
【請求項20】
請求項1記載のデリバリー粒子を組み込んだ製造品。
【請求項21】
農薬製剤、農薬をカプセル化したスラリー、農薬をカプセル化したドライマイクロカプセルの群、殺虫剤をカプセル化した農薬製剤および発芽前除草剤を送出するための農薬製剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項20記載の製造品。
【請求項22】
農薬は、農業用除草剤、農業用フェロモン、農業用殺虫剤、農業用栄養素、害虫防除剤および植物成長調整剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項20記載の製造品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルの製造方法およびその方法によって作製されるコア材とコアをカプセル化するシェルとを含む生分解性デリバリー粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル化は、液滴、固体の粒子または気体を固体シェルの内部に囲まれ、一般にミクロサイズの範囲内にする工程である。コア材は、シェルによって周囲環境から隔てられる。マイクロカプセル化技術は、種々の産業において広い範囲の用途を有する。一般的にカプセルは、(i)混合できない成分の機械的分離による製剤または材料の安定化、(ii)周囲環境からのコア材の保護、(iii)活性成分の望ましくない特徴を覆うまたは隠すことおよび(iv)活性成分の特定の時間または場所で放出を制御または引き起こすことの内の1つ以上が可能である。これらの特性の全てはいくつかの商品の保存可能期間の延長および液体処方中の活性成分の安定化を導くことができる。
【0003】
マイクロカプセル化の種々の工程およびその典型的な方法および材料がSchwantes(米国特許第6,592,990号)、Nagai等(米国特許第4,708,924号)、Baker等(米国特許第4,166,152号)、Wojciak(米国特許第4,093,556号)、Matsukawa等(米国特許第 3,965,033号)、Ozono(米国特許第4,588,639号)、Irgarashi等(米国特許第 4,610,927号)、Brown等(米国特許第4,552,811号)、Scher(米国特許第4,285,720号)、Jahns等(米国特許第5,596,051号および同第5,292,835号)、Matson(米国特許第3,516,941号)、Foris等(米国特許第4,001,140号、同第4,087,376号、同第4,089,802号および同第4,100,103号)、Greene等(米国特許第2,800,458号、同第2,800,457号および同第2,730,456号)、Clark(米国特許第 6,531,156号)、Hoshi等(米国特許第4,221,710号)、Hayford(米国特許第4,444,699号)、Hasler等(米国特許第5,105,823号)、Stevens(米国特許第4,197,346号)、Riecke(米国特許第4,622,267号)、Greiner等(米国特許第4,547,429号)およびTice等(米国特許第5,407,609号)に記載されており、とりわけKirk-Othmer Encyclopedia of Chemical TechnologyのV.16、438~463頁に「Microencapsulation」と題された章にHerbigによって教示されている。
【0004】
コア-シェルカプセル化は、厳しい環境での有益剤などの活性成分の保存およびカプセル化物を組み込んだ商品の使用中または使用後である望ましい時に活性成分を放出する上で有用である。カプセル化物からの有益剤の放出に使用できる種々の機構の中で一般的に依拠される機構は、摩擦または圧力によるカプセルシェルの機械的な破裂である。放出機構としての機械的破裂の選択は、カプセルが所望の放出の時より前に機械的応力に晒されたとしても破裂が特定の所望の時期に起きなければならないので製造者にとって別の課題を構成する。
【0005】
カプセル化技術に対する産業的関心が生分解性、低いシェルの通気性、高い蒸着、目標とする機械性能および破裂特性の要件を満たそうとするいくつかの高分子カプセル化学の発展を導いてきた。高まる環境上の懸念により高分子カプセルが精査されることになり、従って製造者は、有益剤のカプセル化のための持続可能な解決策を調査し始めた。
【0006】
生分解性材が存在し、コアセルべーション、噴霧乾燥 または転相沈殿によってデリバリー粒子を形成することができる。しかしながら、これらの材料および技術を使用して形成されたデリバリー粒子は、高多孔質であり、界面活性剤または他のキャリアー材を含む水性組成物には有益剤が組成物に早期に放出されるので適していない。
【0007】
水性界面活性剤系組成物に漏れずに機能するデリバリー粒子は、存在するが、その化学的性質および架橋によりそれらは生分解性ではない。
【0008】
カプセル化は、薬剤、パーソナルケア、布地、食品、コーティングおよび農業などの多様な分野で見ることができる。さらにカプセル化が直面している主な課題は、カプセル内のカプセル化された活性物質をコア材が制御されてまたは始動させて放出されるまで完全に保持することが全サプライチェーンを通して要求されているということである。特に小さい分子のカプセル化に関し、商業的ニーズのための長期に亘る保持の活性物質保持能力の厳しい基準を満たすことができるマイクロカプセル化技術は極めて限られている。
【0009】
漏れを少なくし、厳しい環境からの損傷に抵抗するために高い構造的完全性を有しつつ生分解性であるデリバリー粒子が必要とされている。
【0010】
定義
本明細書中で「(メタ)アクリレート」または「(メタ)アクリル」なる用語は、特定のモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーのアクリレートおよびメタクリレートバージョンの両方を意味すると理解されたい(例えば、「イソボルニル(メタ)アクリレート」は、イソボルニルメタクリレートおよびイソボルニルアクリレートの両方であり得ることを表し、同様に(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと言った場合、アクリル酸のアルキルエステルおよびメタアクリル酸のアルキルエステルの両方であり得ることを表し、同様にポリ(メタ)アクリレートは、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートの両方であり得ることを表す)。同様に「プレポリマー」という語句を使用した場合、その参照した材料がプレポリマーまたはオリゴマーとプレポリマーの組み合わせとして存在してもよいことを意味する。同様に当然のことながら、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリレート類、例えば「水溶性(メタ)アクリレート類」、「水相(メタ)アクリレート」などと本明細書での一般参照は、(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーを網羅または包含するものである。さらに特定の(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーまたは開始剤を参照した際に「水溶性または水分散性」、「水溶性」および「水分散性」なる説明は、特定の成分がそれ自体の所定のマトリックス溶液中または好適な安定化剤または乳化剤の存在時または特定の温度および/またはpHの達成時に可溶であるまたは分散可能であることを意味する。
【0011】
各アルキル部分は、特に明記しない限りC1~C8またはC1~C24である。ポリ(メタ)アクリレート材料は、幅広い範囲の高分子材料を包含することを意図したものであり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸ポリエステル、ウレタンおよびポリウレタンポリ(メタ)アクリレート(特にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネートまたはウレタンポリイソシアネートとの反応によって調製されるもの)、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート官能性シリコーン、ジ-、トリ-およびテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(ペンタメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジグリセロールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジクロロアクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび種々の多官能性(メタ)アクリレートおよび多官能性アミン(メタ)アクリレートを含む。単官能性アクリレート、即ちアクリレート基を1つだけ含むものも使用すると有利である。通常のモノアクリレートは、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、p-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、種々のアルキル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートを含む。当然のことながら(メタ)アクリレートまたはその誘導体の混合物だけでなく1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーまたはその誘導体とアクリロニトリル類およびメタアクリロニトリル類などの他の共重合性モノマーとを混合したものも同様に使用してもよい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、典型的には少なくとも2つ、少なくとも3つそして好ましくは少なくとも4つ、少なくとも5つさらには少なくとも6つの重合性官能基を有する。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲における参照を容易にするために、デリバリー粒子の壁ポリマーを形成する構造材料に関して本明細書で使用される用語「モノマー」は、モノマーの他に、オリゴマーおよび/または特定のモノマーから形成されるプレポリマーをも包含すると理解されたい。
【0013】
本明細書中では「水溶性材」なる用語は、60℃の水中で少なくとも0.5重量%の溶解度を有する材料を意味する。
【0014】
本明細書中では「油溶性」なる用語は、50℃の対象となるコア中で少なくとも0.1重量%の溶解度を有する材料を意味する。
【0015】
本明細書中では「油分散性」なる用語は、目に見える凝集物が無く対象となるコア中で少なくとも0.1重量%分散させることができる材料を意味する。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、コア材と、コア材をカプセル化するシェルとを含むデリバリー粒子について説明する。コア材は、有益剤を含むことができる。シェルは、ポリマーを含む。例えば ポリマーは、
i)イソシアネートまたは酸塩化物または油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートと、
ii)遊離アミノ部分を有するアミン含有天然物質と、
iii)その天然物質のアミン部分とC-N共有結合を形成するα,β-不飽和化合物との反応生成物を含む。イソシアネート、アミン含有天然物質、α,β-不飽和化合物の重量%比は、ポリマーの重量基準で0.1:90:9.9~20:10:70の範囲内にある。
【0017】
α,β-不飽和化合物は、天然ポリマーの遊離アミノ基とC-N共有結合を形成する。天然物質は、キトサン、キチン、ゼラチン、アミン含デンプン、アミノ糖、ポリリシンまたはヒアルロン酸から選択することができる。いかなる理論にも束縛されずにC-N共有結合は、天然ポリマー上の遊離アミノ部分などのN-求核剤およびα,β不飽和エステルなどの電子不足アルケン分子を含む求核共役付加反応を介して形成される。
【0018】
α,β-不飽和化合物は、水溶性または水分散性アクリレート、メタクリレート、アルキルアクリレート、α,β不飽和エステル、アクリル酸、アクリルアミド、ビニルケトン、ビニルスルホン、ビニルホスホネート、アクリロニトリル誘導体またはこれらの混合物から選択することができる。明確にするために水溶性または水分散性アクリレートは、一般に油溶性二官能性または多官能性アクリレートとは異なる。特定の例では類似の材料を各段階で適用してもよい。
【0019】
水溶性または水分散性は、水に溶解するまたは分散される能力である。水溶性材料は、一般に水100ml当たり少なくとも0.01g、または25℃の水100ml当たり0.03g超、しかしながら通常は1g/100ccの水による溶解度を有するものである。水分散性は、目に見える凝集物が無く、少なくとも0.1重量%分散される材料を意味する。
【0020】
一般に油溶性モノマーは、油相で可溶または分散可能であり、典型的には100mlの油に少なくとも0.1グラム程度可溶であるまたは50℃の油に分散可能または乳化可能である。
【0021】
いくつかの実施態様ではα,β-不飽和化合物は、単官能性、二官能性または多官能性ポリマー化合物またはこれらの混合物である。α,β-不飽和化合物は、陰イオンチャージされるように選択される。これとは別にα,β-不飽和化合物は、陽イオンチャージ可能である。
【0022】
デリバリー粒子のデリバリー粒子ゼータ電位は、pH3で-100mV~+200mV、pH10で-200mV~+100mVである。
【0023】
天然物質の遊離アミノ部分の一部は、アザ-マイケル付加反応を介してα,β-不飽和化合物と反応させる。加えて天然物質の遊離アミノ部分の一部は、イソシアネート、酸塩化物または(メタ)アクリレートと反応させて、それぞれ尿素、アミドまたはアミノエステル結合を形成する。
【0024】
天然物質の遊離アミノ部分の一部がイソシアネートと反応させる実施態様では、そのイソシアネートは、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、メチレンジフェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、テトラメチルキシリデンジイソシアネート、ナフタレレン-1,5-ジイソシアネートおよびフェニレンジイソシアネートからなる群から選択することができる。
【0025】
天然物質の遊離アミノ部分の一部が酸塩化物と反応させるいくつかの実施態様では、その酸塩化物は、塩化テレフタロイル、塩化フタロイル、1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド、アジピン酸クロリド、グルタル酸クロリドまたはセバシン酸クロリドから選択することができる。
【0026】
天然物質の遊離アミノ部分の一部が油溶性(メタ)アクリレートと反応させるいくつかの実施態様では、油溶性(メタ)アクリレートは、二官能性(メタ)アクリレート、三官能性(メタ)アクリレート、四官能性(メタ)アクリレート、五官能性(メタ)アクリレート、六官能性(メタ)アクリレート、七官能性(メタ)アクリレートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。油溶性多官能性(メタ)アクリレートは、多官能性アクリレートまたはメタアクリレートモノマーまたはオリゴマーまたはプレポリマーであってもよく、二官能性、三官能性、四官能性、五官能性、六官能性、七官能性または八官能性アクリレートエステル、メタアクリレートエステルおよび多官能性ポリウレタンアクリレートエステルが挙げられる。
【0027】
α,β不飽和水溶性または水分散性アクリレートは、エステル系アクリレート、エチレングリコール系アクリレート、プロピレングリコール系アクリレート、アミノエステル系アクリレートから選択できる。
m=1~6、n=1~200、q=0~24
Rは構造Vに示すようなものである
【0028】
例示としてα,β-不飽和水溶性または水分散性アクリレートは、単独で、2-カルボキシエチルアクリレート、2-カルボキシエチルアクリレートオリゴマー、アクリル酸2-カルボキシプロピル、4-アクリロイルオキシフェニル酢酸、アクリル酸カルボキシオクチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジ-、トリ-、テトラ-またはペンタエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、アミノアルキルアクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、またはこれらを組み合わせたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
油溶性または油分散性多官能性(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーは、2つ以上の二重結合、好ましくは2つ以上のアクリレートまたはメタクリレート官能基を含む。好適なモノマーおよびオリゴマーとしては、例示としてそして限定としてではなく、単独で、アリルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、六官能性芳香族ウレタンアクリレートなどの脂肪族または芳香族ウレタンアクリレート、エトキシ化脂肪族二官能性ウレタンメタクリレート、四官能性芳香族メタクリレートなどの脂肪族または芳香族ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメチルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、六官能性芳香族ウレタンアクリレート、六官能性芳香族ウレタンメタクリレート、またはこれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0030】
いくつかの実施態様ではコアを含む有益剤は、芳香剤、好ましくは約2.5~約4.5のlogPという特徴を有する香料原料を含む芳香剤である。さらにコアは、ミリスチン酸イソプロピル、植物油、変性植物油、C4~C24脂肪酸のモノ、ジ、およびトリエステル、ドデカノフェノン、ラウリン酸ラウリル、ベヘン酸メチル、ラウリン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチルおよびこれらの混合物からなる群から選択されるパーティショニング変性剤、好ましくはミリスチン酸イソプロピルを含んでもよい。
【0031】
特定の実施態様では壁は、OECD 301B試験に従って60日で30%超CO2、好ましくは40%超CO2、より好ましくは50%超CO2、さらに好ましくは60%超CO2の生分解性を有する。
【0032】
任意にまたはこれとは別にデリバリー粒子の壁は、コーティング材をさらに含み、好ましくはコーティング材は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)、ポリアミン、ワックス、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンコポリマー、ポリビニルピロリドン-エチルアクリレート、ポリビニルピロリドン-ビニルアクリレート、ポリビニルピロリドンメタクリレート、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテート、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリシロキサン、ポリ(プロピレン-無水マレイン酸)、無水マレイン酸誘導体、無水マレイン酸誘導体のコポリマー、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエンラテックス、ゼラチン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、他の変性セルロース、アルギン酸ナトリウム、キトサン、キチン、カゼイン、ペクチン、加工デンプン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸、ポリビニルピロリドンおよびそのコポリマー、ポリ(ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテート、ポリビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルアミン、ポリビニルホルムアミド、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンのコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
また本発明は、デリバリー粒子の群の形成方法について説明し、デリバリー粒子は、コア材と、コア材をカプセル化するシェルとを含み、コア材は有益剤を含み、シェルはポリマーを含み、該ポリマーは、
i)イソシアネートまたは酸塩化物または二官能性または多官能性(メタ)アクリレートと、ii)遊離アミノ部分を有するアミン含有天然物質と、iii)α,β-不飽和化合物との反応生成物を含み、
本発明の方法は、
i)アミン含有天然物質を水中に溶解または分散させることを含む水相を形成することと、
ii)有益剤、好ましくは香料と任意にパーティショニング変性剤および任意に溶媒を、イソシアネート、酸塩化物および油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートからなる群から選択されるシェル形成材とを混合して油相を形成することと、
iii)エマルジョンを形成するために油相を水相に乳化することおよびエマルジョンを加熱することと、
iv)水溶性または水分散性アクリレート、アルキルアクリレート、α,β-不飽和エステル、アクリル酸、アクリルアミド、ビニルケトン、ビニルスルホン、ビニルホスホネートまたはアクリルニトリル誘導体を含むα,β-不飽和化合物をエマルジョンに加えることとを含み、
v)α,β-不飽和化合物は、天然物質のアミン基の一部とC-N共有結合を形成する。
【0034】
α,β-不飽和化合物は、求核剤、即ちアミン含有天然物質の遊離アミン基と共役付加する。α,β-不飽和化合物は、不飽和結合で電子欠損である。この電子欠損の不飽和の場への求核剤の共役付加により天然物質の遊離アミン基の一部とのC-N供給結合が結果として形成される。
【0035】
混合、マイクロ波により促進または加熱によってアミン含有天然物質の遊離アミンは、α,β-不飽和化合物の不飽和場で共有結合する求核剤として反応する。
【0036】
本発明のデリバリー粒子は、「試験方法」の項で説明する漏出試験によって測定される漏出が約50%未満である。
【0037】
別の構成において 本発明のデリバリー粒子は、種々の製造品内に組み込むことによって新しい物品にすることができる。そのような物品は、農薬製剤、農薬をカプセル化したスラリー、農薬をカプセル化したドライマイクロカプセルの群、殺虫剤をカプセル化した農薬製剤および発芽前除草剤を送出するための農薬製剤からなる群から選択することができる。農薬は、農業用除草剤、農業用フェロモン、農業用殺虫剤、農業用栄養素、害虫防除剤および植物成長調整剤からなる群から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明によるカプセル化物の測定されたゼータ電位を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、コア材と、コア材をカプセル化するシェルとを含むデリバリー粒子について説明する。コア材は、有益剤を含むことができる。シェルは、ポリマーを含む。より具体的にはポリマーは、
i)イソシアネートまたは酸塩化物またはアクリレートと、
ii)遊離アミノ部分を有するアミン含有天然物質と、
iii)α,β-不飽和化合物との反応生成物を含み、α,β-不飽和化合物は、天然物質のアミン部分とC-N共有結合を形成する。イソシアネート、アミン含有天然物質、α,β-不飽和化合物の重量%比は、ポリマーの重量基準で0.1:90:9.9~20:10:70の範囲内にある。
【0040】
α,β-不飽和化合物は、天然ポリマーの遊離アミノ基とC-N共有結合を形成する。天然物質は、キトサン、キチン、ゼラチン、アミンを含むデンプン、アミノ糖、ポリリシンまたはヒアルロン酸から選択される。
【0041】
α,β-不飽和化合物は、例示としてそして限定としてではなく、水溶性または水分散性アクリレート、メタクリレート、アルキルアクリレート、α,β-不飽和エステル、アクリル酸、アクリルアミド、ビニルケトン、ビニルスルホン、ビニルホスホネート、アクリロニトリル誘導体またはこれらの混合物から選択することができる。本発明に有用なα,β-不飽和化合物の具体例としては、α,β-不飽和カルボン酸エステルおよびアクリルまたはメタクリルエステルなどのα,β-不飽和エステルが挙げられる。アクリルアミドの例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、n-イソプロピルアクリルアミド、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸が挙げられる。ビニルケトンの例としては、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン、ビニルイソプロピルケトンが挙げられる。α,β-不飽和化合物は、ビニルスルホン、ビニルホスホネートおよびアクリロニトリル誘導体であってもよい。
【0042】
本発明のデリバリー粒子を製するために遊離アミノ部分を有するアミン含有天然物質の水溶液または分散液を含む水相が調製される。アミン含有天然物質は、バイオ系材料である。そのような材料は、例えばキトサンが挙げられる。アミン含有天然物質は、水に分散させる。キトサンの場合、その材料は加水分解され、これによりアミン基の少なくとも一部をプロトン化し、水に溶けやすくする。加水分解は、約5または5.5の酸性pHで、ある期間加熱しながら行われる。
【0043】
加水分解されたアミン含有天然物質溶液は、次にイソシアネートまたは酸塩化物または油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートとの第1の反応に使用される。これは有益剤を含むコア材と、シェルを形成するイソシアネートまたは酸塩化物または油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートを含有する油相を調製することによって実行される。油相が高せん断撹拌下で水相で混ぜられるとエマルジョンが形成される。エマルジョンは約60~95℃または60~80℃または70~80℃などの温度に加熱される。油相イソシアネートまたは酸塩化物または油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートとの反応を開始する。反応が進むと、α,β-不飽和化合物を含む第2の架橋剤がエマルジョンに加えられる。α,β-不飽和化合物は、天然物質のアミン部分とC-N共有結合を形成する。α,β-不飽和化合物を第1のエマルジョンが形成される際に加える、または乳化時であるが添加されたα,β-不飽和化合物との結合にアミンの一部が利用できる間に加えられる。
【0044】
α,β-不飽和化合物は第2のアクリレートなどの水溶性または水分散性剤から選択される。水溶性または水分散性材料は、アクリレート、アルキルアクリレートまたはα,β-不飽和エステルまたはアクリル酸、アクリルアミド、ビニルケトン、ビニルスルホン、ビニルホスホネート、アクリロニトリル誘導体またはこれらの混合物であってもよい。α,β-不飽和化合物は、即ち水相からシェルを形成する材料であり第2の架橋剤であるシェル形成材料をさらに含む。
【0045】
本発明は、天然物質としてゼラチンを例示することができる。ある実施態様では本発明のデリバリー粒子を作製するために遊離アミノ部分を有するアミン含有天然物質の水溶液または水分散液を含む水相が調製される。アミン含有天然物質は、バイオ系材料となるように選択される。そのような材料としては例えばB型ウシゼラチンなどのゼラチンを含んでもよい。 アミン含有天然物質は、50℃に加熱しながら水に分散させる。溶解後、溶液を約25℃に冷ます。油相は、香料および任意にミリスチン酸イソプロピルなどのパーティショニング変性剤とイソシアネートまたは酸塩化物または油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートと共に調製される。油相は高せん断粉砕下で水相に加えられ、エマルジョンを形成する。水溶性または水分散性アクリレート、メタクリレート、アルキルアクリレート、α,β-不飽和エステル、アクリル酸、アクリルアミド、ビニルケトン、ビニルスルホン、ビニルホスホネート、アクリロニトリル誘導体またはこれらの混合物が加えられる。例えば、水溶性または水分散性α,β-不飽和化合物は、本明細書で具体的な例で例示されているようなトリメチロールプロパントリアクリレートであってもよい。
【0046】
ゼラチンをイソシアネートまたは酸塩化物または油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートと反応させる。これは有益剤を含むコア材と、シェルを形成するイソシアネートまたは酸塩化物または油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートを含有する油相を調製することによって実行される。油相が高せん断撹拌下で水相で混ぜられるとエマルジョンが形成される。エマルジョンは約60~95℃または60~80℃または70~80℃などの温度に加熱される。油相イソシアネートまたは酸塩化物または油溶性二官能性または多官能性(メタ)アクリレートとの反応を開始する。反応が進むと、α,β-不飽和化合物を含む第2の架橋剤がエマルジョンに加えられる。α,β-不飽和化合物は、ゼラチンのアミン部分とC-N共有結合を形成する。α,β-不飽和化合物を第1のエマルジョンが形成される際に加える、または乳化時であるが添加されたα,β-不飽和化合物との結合にアミンの一部が利用できる間に加えられる。
【0047】
α,β-不飽和化合物は、アクリレート、アルキルアクリレートまたはα,β-不飽和エステルまたはアクリル酸、アクリルアミド、ビニルケトン、ビニルスルホン、ビニルホスホネート、アクリロニトリル誘導体またはこれらの混合物などの水溶性または水分散性材料から選択される。α,β-不飽和化合物は、即ち水相からシェルを形成する材料であり第2の架橋剤であるシェル形成材料をさらに含む。
【0048】
油相がキシレンジイソシアネート(XDI)のトリマーまたはメチレンジフェニルイソシアネート(MDI)のポリマーなどのイソシアネート(またはこれとは別に酸塩化物または多官能性(メタ)アクリレート)を25℃の油に溶解させることによって調製される。希釈剤、例えばミリスチン酸イソプロピルを使用して油相の親水性を調節してもよい。油相は次に水相に加えられ、目的の大きさにするために高速で粉砕される。次に得られたエマルジョンを40℃、30分加熱し、40℃、60分間保持するなどの1つ以上の加熱工程で硬化させる。時間および温度はおおよそである。温度と時間は油相と水の連続相との界面でシェルを形成し、硬化させるのに充分な温度と時間が選択される。例えば、エマルジョンを85℃、60分間加熱し、85℃で360分間保持してカプセルを硬化させる。次にスラリーを室温に冷ます。
【0049】
本発明によるデリバリー粒子の体積加重粒径中央値は、5ミクロン~150ミクロンまたは10~50ミクロン、好ましくは15~50ミクロンの範囲である。
【0050】
本発明に有用なイソシアネートは、イソシアネートモノマー、イソシアネートオリゴマー、イソシアネートプレポリマーまたは脂肪族または芳香族イソシアネートのダイマーまたはトリマーなどが本発明の目的に合うと考えられている。全てのこのようなモノマー、プレポリマー、オリゴマーまたは脂肪族または芳香族イソシアネートのダイマーまたはトリマーは、本明細書で使用する「イソシアネート」という用語に包含されるものとする。
【0051】
イソシアネートは、2以上のイソシアネート官能基の脂肪族または芳香族モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーである。例えば、イソシアネートは、カプセル化の壁形成に使用される芳香族トルエンジイソシアネートまたはその誘導体または脂肪族モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー、例えばヘキサメチレンジイソシアネートおよびそのダイマーまたはトリマーまたは3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-1-イソシアナトシクロヘキサンテトラメチレンジイソシアネートから選択することができる。イソシアネートは、1,3-ジイソシアナト-2-メチルベンゼン、水素化MDI、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートおよびそれらのオリゴマーおよびプレポリマーから選択することができる。このリストは例示であり、本発明に有用なポリイソシアネートを限定することを意図するものではない。
【0052】
本発明に有用なイソシアネートは、少なくとも2つのイソシアネート基を有するイソシアネートモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーまたはそれらのダイマーまたはトリマーを含む。最適な架橋剤は少なくとも3つの官能基を有するイソシアネートによって得られる。
【0053】
本発明の目的のためのイソシアネートは、少なくとも2つのイソシアネート基を有し、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーに脂肪族または芳香族部分を含むあらゆるイソシアネートを包含するものと理解されている。芳香族の場合、芳香族部分は、フェニル、トリル、キシリル、ナフチルまたはジフェニル部分、より好ましくはトリルまたはキシリル部分を含む。本発明の目的の芳香族ポリイソシアネートは、ビウレットおよびポリイソシアヌレートなどのジイソシアネート誘導体を含む。芳香族の場合ポリイソシアネートは、メチレンジフェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、テトラメチルキシリデンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート(商品名DesmodurR RCでBayer社から入手可能である)、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン-付加物(商品名DesmodurR L75でBayer社から入手可能である)またはキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン-付加物(商品名TakenateR D-110Nで三井化学から入手可能である)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネートおよびフェニレンジイソシアネートであってもよい。
【0054】
脂肪族であるイソシアネートは、芳香族部分を全く含まないモノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはポリマーポリイソシアネートと理解される。芳香族ポリイソシアネートの方が好ましいが、脂肪族ポリイソシアネートおよびそのブレンドも使用可能である。脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー、イソフォロンジイソシアネートのトリマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチルプロパン-付加物(三井化学から入手可能である)またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(DesmodurR N 100の商品名でBayer社から入手可能である)。
【0055】
カプセルシェルは、ジエチレントリアミン(DETA)、ポリエチレンイミンおよびポリビニルアミンなどの多官能性アミンおよび/またはポリアミンなどの追加の架橋剤を使用して補強することも可能である。
【0056】
コア
本教示のマイクロカプセルは、カプセル化されることを意図した1つ以上の成分を含む有益剤を含む。有益剤は、色素および染料、風味料、香料、甘味料、芳香剤、油、脂、顔料、洗浄油、薬剤、医薬用油、香油、かび防止剤、抗菌剤、接着剤、相変化材料、匂い材、肥料、栄養物および除草剤などの複数の異なる材料から選択されるがあくまで例示であり、これらに限定されない。有益剤と油はコアを含む。コアは液体または固体であってもよい。周囲温度で固体のコアの場合、壁材は、例えば塊のコアの利用が用途において望ましい特定の用途の場合コア全体より少なく包むのが有用である。そのような用途としては芳香剤、洗浄組成物、軟化剤、化粧品放出などがある。マイクロカプセルのコアが相変化材の場合、その用途は、マットレス、枕、寝具類、ファブリック、スポーツ器具、医療機器、建築工業用品、建造物、HVAC、再生可能エネルギー、服、運動場の面、電子部品、自動車、航空機、靴、美容、洗濯およびソーラーエネルギーのカプセル化された材料などがある。
【0057】
コアはマイクロカプセルによってカプセル化される材料を構成する。通常、特にコア材が液体材料の場合、コア材はマイクロカプセルの内壁が形成される組成物の1つ以上または有益剤のための溶媒またはパーティショニング変性剤と混ぜ合わされる。コア材がカプセル中で油溶剤として機能できる、例えば壁形成材または有益剤のいずれかのための溶媒または担体として作用する場合、コア材をカプセル化される大半の材料とすることが可能であり、担体自体が有益剤の場合、それがカプセル化される全ての材料になってもよい。通常はしかしながら、有益剤はカプセルの内容物の0.01~99重量パーセント、好ましくはカプセル内容物の0.01~約65重量パーセント、より好ましくはカプセル内容物の0.1~約45重量パーセントである。特定の用途ではコア材は、ほんの僅かな量であっても有効になり得る。
【0058】
有益剤自体が特に壁形成材のための油相または溶媒として機能するのに充分でない場合、油相は好適な担体または溶媒を含んでもよい。この場合、有益剤自体が時には油であってもよいので、油は任意である。これらの担体または溶媒は、油であり、好ましくは一般に沸点が約80℃超で低揮発性であり、可燃性でない油である。これらは好ましくは最大で18個の炭素原子または最大で42個の炭素原子の鎖長を有するエステルおよび/またはC6~C12脂肪酸とグリセリンのエステルなどのトリグリセリドの1つ以上を含むがこれらに限定されない。担体または溶媒の例としてはエチルジフェニルメタン;イソプロピルジフェニルエタン;ブチルビフェニルエタン;ベンジルキシレン;プロピルビフェニルおよびブチルビフェニルなどのアルキルビフェニル;ジアルキルフタレート(例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジノニルフタレートおよびジトリデシルフタレート);2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート;ドデシルベンゼンなどのアルキルベンゼン;ベンジルベンゾエートなどのアルキルまたはアラルキルベンゾエート;ジアリルエーテル;ジ(アラルキル)エーテルおよびアリルアラルキルエーテル;ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテルおよびフェニルベンジルエーテルなどのエーテル類;液体高アルキルケトン(少なくとも9個の炭素を有する);アルキルまたはアラルキルベンゾエート(例えばベンジルベンゾエート);ジプロピルナフタレンなどのアルキル化ナフタレン;部分的に水素化されたテルフェニル;高沸点直鎖または分岐鎖炭化水素;トルエンなどのアルカリル炭化水素;菜種油、大豆油、コーン油、ひまわり油、綿実油、レモン油、オリーブ油およびパイン油などの植物および他の穀物油;植物および他の穀物油のエステル交換から得られる脂肪酸のメチルエステル;オレイン酸のメチルエステル、植物油のエステル、例えば大豆メチルエステル、直鎖パラフィン系脂肪族炭化水素およびこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0059】
有用な有益剤は、アルコール類などの香料原料、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、ニトリル、アルケン、芳香剤、芳香剤可溶化剤、精油、相変化材料、潤滑剤、着色剤、冷却剤、防腐剤保存料、抗菌または抗真菌活性剤、除草剤、抗ウイルス剤、防腐剤、酸化防止剤、生物学的活性剤、脱臭剤、軟化剤、湿潤剤、スクラブ剤、紫外線吸収剤、自己修復組成物、腐食防止剤、日焼け止め剤、シリコーン油、ワックス、炭化水素、高級脂肪酸、精油、脂質類、スキンクーラント、ビタミン、日焼け止め剤、酸化防止剤、グリセリン、触媒、漂白粒子、二酸化ケイ素粒子、消臭剤、染料、漂白剤、抗菌剤、制汗剤、カチオン性ポリマーおよびそれらの混合物を含む。有益剤として有用な相変化材はあくまで例示であり、限定されるものではないが、炭素数13~28のパラフィン系炭化水素、例えばn-オクタコサン、n-ヘプタコサン、n-ヘキサコサン、n-ペンタコサン、n-テトラコサン、n-トリコサン、n-ドコサン、n-ヘンイコサン、n-エイコサン、n-ノナデカン、オクタデカン、n-ヘプタデカン、n-ヘキサデカン、n-ペンタデカン、n-テトラデカン、n-トリデカンなどの種々の炭化水素を含む。相変化材料は、これとは別に任意に追加で2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオールなどの結晶材、エイコサン酸などの直鎖または分岐鎖炭化水素の酸、パルミチン酸メチルなどのエステル、脂肪アルコールおよびそれらの混合物を含んでもよい。
【0060】
好ましくは芳香剤の場合、香油は、本明細書の実施例で説明するように有益剤および壁形成材の溶媒として作用する。
【0061】
選択的に水相は乳化剤を含んでもよい。乳化剤の非限定的な例としては、アルキルサルフェートの水溶性塩、アルキルエーテルサルフェート、アルキルイソチオネート、アルキルカルボキシレート、アルキルスルホスクシネート、アルキルスクシナメート、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキルサルフェート塩、アルキルサルコシネート、タンパク質水解物のアルキル誘導体、アシルアスパルテート、アルキルまたはアルキルエーテルもしくはアルキルアリールエーテルリン酸エステル、ドデシル硫酸ナトリウム、リン脂質もしくははレシチン、または石鹸類、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムステアレート、オレエートまたはパルミテート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチル、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリ(スチレンスルホネート)ナトリウム塩、イソブチレン-無水マレイン酸コポリマー、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、硫酸セルロースおよびペクチン、ポリ(スチレンスルホネート)、イソブチレン-無水マレイン酸コポリマー、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン酸、トラガカントゴム、アーモンドゴムおよび寒天;カルボキシメチルセルロースなどの半合成ポリマー、硫酸化セルロース、硫酸化メチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、リン酸化デンプン、リグニンスルホン酸並びに無水マレイン酸コポリマーなどの合成ポリマー(その水解物を含む)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸ブチルアクリレートコポリマーまたはクロトン酸ホモポリマーおよびコポリマー、ビニルベンゼンスルホン酸または2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ホモポリマーおよびコポリマー、並びにこのようなポリマーおよびコポリマーの部分アミドまたは部分エステル、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、およびリン酸変性ポリビニルアルコール、リン酸化または硫酸化トリスチリルフェノールエトキシレート、パルミタミドプロピルトリモニウムクロリド(Degussa Evonik社(Essen,ドイツ)から入手可能なVarisoft PATC(登録商標))、ジステアリルジモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、第四級アンモニウム化合物、脂肪族アミン、脂肪アンモニウムハロゲン化物、アルキルジメチルベンジルアンモニウムハロゲン化物、アルキルジメチルエチルアンモニウムハロゲン化物、ポリエチレンイミン、ポリ(2-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)塩化メチル第四塩、ポリ(1-ビニルピロリドン-コ-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(アクリルアミド-コ-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アリルアミン)、四級化ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-アルト-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、およびポリ(ジメチルアミン-コ-エピクロロヒドリン-コ-エチレンジアミン)、アルキレンオキシドと脂肪族アミンとの縮合生成物、長鎖脂肪族ラジカルを有する第四級アンモニウム化合物、例えば、ジステアリルジアンモニウムクロライド、および脂肪族アミン、アルキルジメチルベンジルアンモニウムハロゲン化物、アルキルジメチルエチルアンモニウムハロゲン化物、ポリアルキレングリコールエーテル、アルキレンオキシドとアルキルフェノール、脂肪族アルコール、または脂肪酸との縮合生成物、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化アリールフェノール、エトキシ化ポリアリールフェノール、ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、またはポリビニルアルコールポリビニルアセテートのコポリマーで可溶化したカルボン酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-イソプロペニル-2-オキサゾリン-コ-メチルメタクリレート)、ポリ(メチルビニルエーテル)、およびポリビニルアルコール-コ-エチレン、並びにココアミドプロピルベタインが挙げられる。採用するのであれば乳化剤は、通常、処方の全量基準で約0.1~40重量%、好ましくは0.2~約15重量%、より好ましくは0.5~10重量%を構成する。
【0062】
本発明のマイクロカプセルは、有益剤に加えてパーティショニング変性剤(partitioning modifier)を封入してもよい。パーティショニング変性剤の非限定的な例としては、ミリスチン酸イソプロピル、C4~C24脂肪酸のモノ、ジ、およびトリエステル、ヒマシ油、鉱油、大豆油、ヘキサデカン酸、メチルエステルイソドデカン、イソパラフィン油、ポリジメチルシロキサン、臭素化植物油、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。マイクロカプセルは、異なる開放パターンを有し得る異なる群のマイクロカプセルを製するように有益剤に対するパーティショニング変性剤の様々な比率を有してもよい。このような群は、異なる開放パターンおよび異なる芳香体験を提示するマイクロカプセルの群を製するように異なる香油をさらに組み込んでもよい。米国特許出願公開第2011-0268802号は、マイクロカプセルおよびパーティショニング変性剤の他の非限定的な例を開示しており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
任意に必要であれば、デリバリー粒子はデキャンティング、ろ過、遠心分離または他の分離技術によって脱水してもよい。これとは別に水性スラリーデリバリー粒子は、噴霧乾燥させてもよい。
【0064】
本発明の方法および組成物の一部の例ではマイクロカプセルは、1つ以上の個別の群からなる。本発明の組成物は、香油の正確な組成、中央粒径および/または香油にパーティショニング変性剤の重量比(PM:PO)の点で異なる少なくとも2つの異なる群のマイクロカプセルを有してもよい。一部の例では本発明の組成物は、正確な香油の組成および破壊強度の点で異なる2つ超の個別の群を含む。一部の別の例ではマイクロカプセルのこれらの群は、香油に対するパーティショニング変性剤の重量比が異なってもよい。一部の例では本発明の組成物は、2:3~3:2の第1の香油に対するパーティショニング変性剤の重量比である第1の比を有する第1の群のマイクロカプセルおよび2:3未満であるが、0超の第2の香油に対するパーティショニング変性剤の重量比である第2の比を有する第2の群のマイクロカプセルを含む。
【0065】
一部の実施態様ではマイクロカプセルの各個別の群は、個別のスラリーであることが好ましい。例えば 第1の群のマイクロカプセルは第1のスラリーに含有され、第2の群のマイクロカプセルは、第2のスラリーに含有されてもよい。当然のことながら組み合わせの個別のスラリーの数は限定されず、3、10または15の個別のスラリーが混ぜ合わされるように製造者が選択する。マイクロカプセルの第1および第2の群は、香油の正確な組成および中央粒径および/またはPM:PO重量比が異なってもよい。
【0066】
一部の実施態様では本発明の組成物は第1および第2のスラリーを少なくとも1つの補助添加物と混ぜ合わせることによって調整され、選択的に容器に梱包してもよい。一部の例ではマイクロカプセルの第1および第2の群は、個別のスラリーで調製され、噴霧乾燥させて粒子を形成する。個別のスラリーは噴霧乾燥の前に混ぜ合わされる、または個別に噴霧乾燥させてから微粒子粉体になった際に混ぜ合わされる。粉体になると、第1および第2の群のマイクロカプセルは、補助添加物と混ぜ合わされ、消費者製品、産業製品、医療用製品または他の製品の製造の原料として有用な組成物を形成する。一部の例では少なくとも1つの群のマイクロカプセルは噴霧乾燥させ、第2の群のマイクロカプセルのスラリーと混ぜ合わされる。一部の例では少なくとも1つの群のマイクロカプセルが噴霧乾燥、流動層乾燥、トレイ乾燥または他のそのような利用可能な乾燥方法によって乾燥、調製される。
【0067】
一部の例ではスラリーまたは乾燥粒体は、担体、凝集阻害材、堆積助剤、粒子懸濁ポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される加工物質などの1つ以上の添加材料を含んでもよい。凝集阻害材の非限定的な例としては塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化マグネシウム、硫酸マグネシウムおよびこれらの混合物などの粒子の周りで電荷遮へい効果を有する塩が挙げられる。粒子懸濁ポリマーの非限定的な例としてはキサンタンガム、カラギーナンゴム、グァーガム、セラック、アルギン酸塩類、キトサンなどのポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、陽イオン性に帯電したセルロース系材料などのセルロース系材料、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、水素化ヒマシ油、ジステアリン酸エチレングリコールおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0068】
一部の実施態様ではスラリーは、水、2価の塩などの凝集阻害材、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロースなどの粒子懸濁ポリマーから選択される1つ以上の加工物質を含んでもよい。
【0069】
本発明の他の例ではスラリーは、非限定的に水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの極性溶媒、非限定的に鉱油、香料原料、シリコーンオイル、炭化水素パラフィン油などの非極性溶媒からなる群から選択される1つ以上の担体を含んでもよい。
【0070】
一部の例では前記スラリーは多糖類、1つの態様ではカチオン性変性デンプンおよび/またはカチオン性変性グアーゴム;ポリシロキサン;ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド;ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリビニルピロリドンの共重合体;ポリエチレングリコールとポリビニルピロリドンとを含む組成物;アクリルアミド;イミダゾール;イミダゾリニウムハライド;ポリビニルアミン;ポリビニルアミンとN-ビニルホルムアミドの共重合体;ポリビニルホルムアミド;ポリビニルアルコール;ホウ酸で架橋されたポリビニルアルコール;ポリアクリル酸;ポリグリセロールエーテルシリコーン架橋ポリマー;ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルアミンとアミンのポリビニルアルコールオリゴマーの共重合体、1つの態様ではジエチレントリアミン、エチレンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、N,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミン、トリス(2-アミノエチル)アミンおよびこれらの混合物;ポリエチレンイミン、誘導体化ポリエチレンイミン、1つの態様ではエトキシ化ポリエチレンイミン;ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格、ポリブタジエン/スチレン骨格、ポリブタジエン/アクリロニトリル骨格、カルボキシル基端末ポリブタジエン/アクリロニトリル骨格またはこれらの骨格の組み合わせ上の、カルボン酸部分、アミン部分、ヒドロキシ部分およびニトリル部分からなる部分から選択される少なくとも2つの部分を含む高分子化合物;カチオン性ポリマーと組み合わされたアニオン性界面活性剤の予備形成されたコアセルベート;ポリアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む堆積助剤を含んでもよい。
【0071】
本発明を例示する一部の追加の例では少なくとも1つの群のマイクロカプセルは、凝集体に含有され、次に個別の群のマイクロカプセルおよび少なくとも1つの添加材料と混ぜ合わされる。前記凝集体は、シリカ、クエン酸、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよびケイ酸ナトリウム、変性セルロース類、ポリエチレングリコール類、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸、ゼオライトなどのバインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される材料を含んでもよい。
【0072】
ここに開示した方法に使用する際に好適な装置としては、連続撹拌式タンクリアクター、ホモジナイザー、タービンアジテーター、循環ポンプ、櫂形ミキサー、プロウシェアーミキサー、リボンブレンダー、バッチ式または可能である場合には連続工程用に構成された垂直軸グラニュレータおよびドラムミキサー、スプレードライヤーおよび押し出し器などが挙げられる。これらの装置は、Lodige Gmbh社(ドイツ、パーダーボルン)、Littleford Day, Inc.社(米国、ケンタッキー州、フローレンス)、Forberg AS社(ノルウェー、ラルビク)、Glatt Ingenieurtechnik Gmbh社(ドイツ、ワイマール)、Niro社(デンマーク、ソーボルグ)、Hosokawa Bepex Corp.社(米国、ミネソタ州、ミネアポリス)、Arde Barinco社(米国、ニュージャージー州)などから入手可能である。
【0073】
試験方法
分解率の測定手順
分解率は、1992年7月17日に導入された「OECD Guideline for the Testing of Chemicals」 301B CO2 Evolution(Modified Sturm Test)に従って測定される。参照しやすくするためにこの試験方法を本明細書では試験法OECD 301Bと言う。
【0074】
遊離油の測定手順
この測定方法は、水相中の油の量を測定し、内部標準溶液として1mg/mlジブチルフタレート(DBP)/ヘキサンを使用する。
【0075】
小さめのビーカーに250mgを僅かに超えるDBPを秤量し、250ml容量フラスコにビーカーを完全に浸しながら移す。250mlまでヘキサンを満たす。
【0076】
サンプル調製:約1.5~2グラム(40滴)のカプセルスラリーを20mlのシンチレーションバイアルに秤量し、10mlのISTD溶液を加え、栓をきつく閉める。30分、数回激しく振り、溶液をオートサンプラーバイアルにピペットで移し、GCで分析する。
【0077】
さらなる詳細 機器類:HP Chem Station Softwareに接続されたHP5890 GC、カラム:1μmDB-1液相を有する5m×0.32mm内径、温度50度で1分、次に15度/分で320度まで加熱する、インジェクタ:275℃、検出器:325℃ 2μl注入。
【0078】
計算:サンプルとキャリブレーション用にDBP用の面積を引いた総ピーク面積を加える
i)遊離コア油のmgを計算する:
ii)遊離コア油%を計算する
【0079】
有益剤漏出の決定手順
有益剤粒子組成物の1グラムサンプルを2つ得る。1グラム粒子組成物(サンプル1)をその粒子が採用される製品マトリックス99グラムに加える。粒子を含む製品マトリックス(サンプル1)を密閉されたガラス瓶内で35℃で2週間エージングする。もう一方の1グラムサンプル(サンプル2)を同様にエージングする。
【0080】
2週間後、製品マトリックス(サンプル1)および粒子組成物(サンプル2)から粒子組成物の粒子をろ過で回収する。各サンプルの粒子から全ての有益剤を抽出する溶媒で各粒子サンプルを処理する。各サンプルから有益剤含有溶媒をガスクロマトグラフ内に注入し、ピーク面積を積分して各サンプルから抽出された有益剤の総量を割り出す。
【0081】
以下の式に表されるようにサンプル2から抽出された有益剤の割合として表されるサンプル1を引いたサンプル2から抽出された有益剤の総量のために得られた値の違いを計算することによって有益剤の漏出の割合を割り出す。
【0082】
陽ゼータ電位を示すデリバリー粒子を調製することができる。このようなカプセルはファブリック上などでの塗着効率が良好である。
【0083】
生分解性測定のためのサンプルの調製
水溶性または水分散性材を純度95%超になるまで結晶化によって精製し、生分解する前に乾燥させる。
【0084】
有益剤を含む油媒体をポリマー壁だけを分析するためにデリバリー粒子スラリーから抽出する必要がある。したがって、デリバリー粒子スラリーをフリーズドライさせて粉にする。次にそれを油媒体の重量パーセントが合計デリバリー粒子ポリマー壁基準で5%未満になるまでSoxhlet抽出法によって有機溶媒で洗浄する。最後にポリマー壁を乾燥させ、分析する。
【0085】
溶媒に対するデリバリー粒子の重量比は、1:3である。残渣油性媒体を熱重量分析(100℃で60分間の等温線およびさらに25℃60分間の等温線)によって割り出す。割り出された重量損失は、5%未満である必要がある。
【0086】
OECD 301B-生分解性試験
累積CO2放出を経済協力開発機構(OECD)のガイドライン-OECD(1992)、試験番号301、易生分解性、パリ所在OECD出版局、「OECD Guidelines for the Testing of Chemicals, Section 3」https://doi.org/10.1787/9789264070349-enに従って60日間に亘って測定する。
【0087】
漏出
有益剤含有デリバリー粒子からの有益剤の漏出量は、以下の方法に従って決定される
i) 有益剤含有デリバリー粒子の原料スラリーの1gの試料を2つ用意する。
ii) 有益剤含有デリバリー粒子の原料スラリー1gを、その粒子を採用する消費者製品マトリックス99gに加え、その混合物を試料1としてラベル表示する。2番目の原料粒子スラリー1gを、消費者製品マトリックスに接触させずにそのままの形で、以下の工程dで直ちに使用し、これを試料2と表示する。
iii) デリバリー粒子含有製品マトリックス(試料1)を、密閉したガラス瓶の中で、35℃で1週間熟成する。
iv) ろ過により、両試料からデリバリー粒子を回収する。試料1(消費者製品マトリックス中)のデリバリー粒子を、熟成工程後に回収する。試料2(未処理原料スラリー)のデリバリー粒子は、試料1の熟成工程の開始と同時に回収する。
v) 回収した粒子を溶媒で処理し、粒子から有益剤を抽出する。
vi) 各試料から抽出した有益剤を含む溶媒をクロマトグラフィーで分析する。
vii) 得られた有益剤のピーク面積を曲線で積分し、その面積を合計して各試料から抽出された有益剤の総量を決定する。
viii) 試料2(S2)から抽出された有益剤の全量から試料1(S1)を引いた値の差を、試料2(S2)から抽出された有益剤全量に対する割合で計算し、次式に示すように、有益剤の漏出割合を決定する。
【0088】
体積加重平均粒径
粒径はカリフォルニア州サンタバーバラの粒子 Sizing Systems社製のアキュサイザー(Accusizer)780Aなどの静的光散乱装置を用いて測定する。その装置をデューク粒径標準を用いて0~300μで較正する。粒径評価用の試料は、エマルジョンの体積加重粒径中央値を特定するのであれば、約1gのエマルジョンを、または最終粒子体積加重粒径中央値を特定するのであれば、1gの有益剤含有デリバリー粒子スラリーを希釈することによって調製され、約5gの脱イオン水で希釈し、その溶液約1gを更に約25gの水で希釈して調製する。
【0089】
最も希釈された試料約1gをアキュサイザーに加え、自動希釈機能を用いて試験を開始した。アキュサイザーの表示を9200カウント/秒を超えるようにする。9200カウント未満の場合は試料を追加する。アキュサイザーは、試験試料を9200カウント/秒まで希釈した後、評価を開始する。2分の試験後、アキュサイザーに体積加重粒径の中央値を含む結果が表示される。
【0090】
拡がり指数は、累積粒子体積の95%を超えるデリバリー粒子サイズ(95%サイズ)、累積粒子体積の5%を超える粒子サイズ(5%サイズ)、体積加重粒子サイズの中央値(50%サイズ:このサイズ以上、以下ともに粒子体積の50%)から算出できる。
拡がり指数={(95%サイズ)-(5%サイズ)}/50%サイズ
【0091】
すべてのパーセンテージと比は、特に断りのない限り、重量で計算されている。すべてのパーセンテージおよび比は、特に断りのない限り、全組成に基づいて計算されている。
【0092】
本明細書に記載のすべての上限数値は、あたかもそれより低い数値限定が本明細書に明示的に書かれているかのように、すべてのそれより低い数値限定を含むものとする。また、本明細書に記載のすべての下限数値は、あたかもそれより高い数値制限が本明細書に明示的に記載されているかのように、すべてのそれより高い数値制限を含むものとする。また、本明細書中に記載された数値範囲は、あたかもそのような数値範囲が全て明示的に記載されているかのように、そのような広い数値範囲に含まれる全てのより狭い数値範囲を含むものとする。
【0093】
以下の実施例において略語は表1に記載の材料に対応する。
【表1】
【0094】
実施例
実施例1.イソシアネートおよびアクリレート架橋剤で架橋されたキトサンカプセル
キトサンとして121.50gのChitoclearを2578.5gの脱イオン水にジャケット付き反応器内で混ぜながら分散させてキトサン原液を調製する。次にキトサン分散液のpHを撹拌下で濃縮されたHCl48.60gを使用して5.12に調節する。次にキトサン溶液の温度を60分かけて85℃に上げ、次に85℃でしばらく保持し、ChitoClearを加水分解する。次に温度を90分間の加水分解工程の後、25℃に下げる。加水分解されたキトサンのpHは、5.28である。形成されたキトサン原液を実施例1、2、8および9でイソシアネートおよびアクリレートで架橋されたキトサンカプセルを調製するために使用した。
【0095】
上記キトサン溶液308.70gをジャケット付き反応器内内で混ぜることによって水相を調製する。102.64gの香料と25.66gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に室温で2.80gのTakenate D-110Nと混ぜて油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。エマルジョンを70℃に加熱する。次に第2のアクリレート架橋剤である7.21gのトリメチロールプロパントリアクリレートを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、43.80ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.19%で、一週間の漏出は14.20%であった。
【0096】
実施例2.イソシアネートおよびアクリレート架橋剤で架橋されたキトサンカプセル
上記キトサン溶液308.70gをジャケット付き反応器内内で混ぜることによって水相を調製する。102.64gの香料と25.66gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に室温で2.80gのTakenate D-110Nと混ぜて油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。エマルジョンを70℃に加熱する。次に第2のアクリレート架橋剤である10.82gのトリメチロールプロパントリアクリレートを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、38.80ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.28%で、一週間の漏出は14.94%であった。
【0097】
実施例3.イソシアネートおよびアクリレート架橋剤で架橋されたゼラチンカプセル
225bloomB型ウシゼラチン11.97gを187.60gの脱イオン水に50℃のジャケット付き反応器内で混ぜながら溶解させて水相を調製する。次にゼラチンを溶かした後、水相を25℃に冷ます。102.64gの香料と25.66gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に室温で2.80gのTakenate D-110Nと混ぜて油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。エマルジョンを70℃に加熱する。次に第2のアクリレート架橋剤である7.21gのトリメチロールプロパントリアクリレートを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、20.54ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.04%で、一週間の漏出は8.24%であった。
【0098】
実施例4.イソシアネートおよびアクリレート架橋剤で架橋されたゼラチンカプセル
225bloomB型ウシゼラチン11.97gを187.60gの脱イオン水に50℃のジャケット付き反応器内で混ぜながら溶解させて水相を調製する。次にゼラチンを溶かした後、水相を25℃に冷ます。102.64gの香料と25.66gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に室温で2.80gのTakenate D-110Nと混ぜて油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。エマルジョンを70℃に加熱する。次に第2のアクリレート架橋剤である3.61gのトリメチロールプロパントリアクリレートおよび5.25gのSartomer社製CD9055を上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、16.83ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.15%で、一週間の漏出は52.98%であった。
【0099】
実施例5.イソシアネートおよびアクリレート架橋剤で架橋されたゼラチンカプセル
225bloomB型ウシゼラチン11.97gを227.50gの脱イオン水に50℃のジャケット付き反応器内で混ぜながら溶解させて水相を調製する。次にゼラチンを溶かした後、水相を25℃に冷ます。102.64gの香料と25.66gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に室温で2.80gのTakenate D-110Nと混ぜて油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。エマルジョンを70℃に加熱する。次に第2のアクリレート架橋剤である3.61gのトリメチロールプロパントリアクリレートおよび8.75gの[2-(アクリロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド80%溶液を上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、40.02ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.09%で、一週間の漏出は4.86%であった。
【0100】
実施例6.イソシアネートおよびアクリレート架橋剤で架橋されたゼラチンカプセル
225bloomB型ウシゼラチン40.35gを[2-(アクリロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド80%溶液32.04gと70℃の600g脱イオン水中で12時間混合することによってカチオン性アクリレートで変性されたゼラチン溶液を調製した。
【0101】
上記カチオン性アクリレートで変性されたゼラチン溶液210gをジャケット付き反応器内で25℃で混合することによって水相を調製する。102.64gの香料と25.66gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に室温で2.80gのTakenate D-110Nと混ぜて油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。エマルジョンを70℃に加熱する。次に第2のアクリレート架橋剤である4.20gトリメチロールプロパントリアクリレートを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、16.06ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.14%で、一週間の漏出は30.16%であった。
【0102】
実施例7.イソシアネートおよびアクリレート架橋剤で架橋されたゼラチンカプセル
225bloomB型ウシゼラチン39.48gをSartomer社製CD9055アクリレート18.66gと70℃の600g脱イオン水中で12時間混合することによってカチオン性アクリレートで変性されたゼラチン溶液を調製した。
【0103】
上記カチオン性アクリレートで変性されたゼラチン溶液210gをジャケット付き反応器内で25℃で混合することによって水相を調製する。102.64gの香料と25.66gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に室温で2.80gのTakenate D-110Nと混ぜて油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。エマルジョンを70℃に加熱する。次に第2のアクリレート架橋剤である4.20gトリメチロールプロパントリアクリレートを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、43.43ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.09%で、一週間の漏出は44.77%であった。
【0104】
実施例8.油相アクリレートおよび水相アクリレート架橋剤で架橋されたキトサンカプセル
実施例1のキトサン原液234.60gを脱イオン水108.00gおよび70℃の5%Selvol5403.46gと混合することによって水相を調製する。香料66.59gおよびミリスチン酸イソプロピル54.48gを一緒にジャケット付き反応器内で70℃の8.82gのSartomer社製SR368と混合することによって油相を調製する。水相を混ぜずに70℃の油相に加える。水相が全て加えられ、所望の粒径を有するエマルジョンを得た後、この混合物を高速剪断する。つぎに第2のアクリレート架橋剤であるトリメチロールプロパントリアクリレート6.18gを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、32.11ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.16%で、一週間の漏出は26.31%であった。
【0105】
実施例9.油相アクリレートおよび水相アクリレート架橋剤で架橋されたキトサンカプセル
実施例1のキトサン原液234.60gを脱イオン水108.00gおよび70℃の5%Selvol5406.96gと混合することによって水相を調製する。香料66.59gおよびミリスチン酸イソプロピル54.48gを一緒に7.26gのSartomer社製SR368と70℃で混合することによって油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。つぎに第2のアクリレート架橋剤であるトリメチロールプロパントリアクリレート6.18gを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、28.84ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.27%で、一週間の漏出は18.90%であった。
【0106】
実施例10.油相アクリレートおよび水相アクリレート架橋剤で架橋されたゼラチンカプセル
225bloomB型ウシゼラチン20.58gを210.00gの脱イオン水に50℃のジャケット付き反応器内で混ぜながら溶解させてゼラチン溶液を調製する。5%Selvol540溶液4.90gを25℃の上記ゼラチン溶液に加えて水相を調製する。64.16gの香料と64.16gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に7.21gのSartomer社製SR368と70℃で混ぜることによって油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。次に第2のアクリレート架橋剤である7.21gのトリメチロールプロパントリアクリレートを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、22.82ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.99%で、一週間の漏出は77.55%であった。
【0107】
実施例11.油相アクリレートおよび水相アクリレート架橋剤で架橋されたゼラチンカプセル
225bloomB型ウシゼラチン20.58gを210.00gの脱イオン水に50℃のジャケット付き反応器内で混ぜながら溶解させてゼラチン溶液を調製する。5%Selvol540溶液4.90gを25℃の上記ゼラチン溶液に加えて水相を調製する。64.16gの香料と64.16gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に7.21gのSartomer社製SR368と70℃で混ぜることによって油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。次に第2のアクリレート架橋剤であるトリメチロールプロパンアクリレート3.64gと第3のアクリレート架橋剤であるテトラ(エチレングルコール)ジアクリレート5.14gを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、23.36ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.25%で、一週間の漏出は67.12%であった。
【0108】
実施例12. 油相アクリレートおよび水相アクリレート架橋剤で架橋されたゼラチンカプセル
225bloomB型ウシゼラチン20.58gを210.00gの脱イオン水に50℃のジャケット付き反応器内で混ぜながら溶解させて水相を調製する。次にゼラチンを溶解させた後、水相を25℃に冷ます。64.16gの香料と64.16gのミリスチン酸イソプロピルを一緒に7.21gのSartomer社製SR368と70℃で混ぜることによって油相を調製する。油相を水相に高せん断粉砕下で加えて所望の粒径を有するエマルジョンを得る。次に第2のアクリレート架橋剤であるトリメチロールプロパンアクリレート3.64gと第3のアクリレート架橋剤であるテトラ(エチレングルコール)ジアクリレート5.14gを上記エマルジョンに混ぜながらゆっくりと加えた。次に得られたエマルジョンを60分90℃に加熱し、その温度を混ぜながら8時間維持する。形成されたカプセルは、35.60ミクロンの粒径中央値を有する。形成されたカプセルの遊離オイルは0.15%で、一週間の漏出は66.67%であった。
【0109】
崩壊率はOECD Guideline for the Testing of Chemicals、試験法OECD 301Bに従って測定される。コピーはwww.oecd-ilibrary.orgで入手可能である。
【0110】
本発明によるカプセルは、重量で1%の壁に対して95%のコアなどの高いコア対壁比にすることができる。高い崩壊性が望まれる用途ではより高いコア対壁比、例えば重量で99%コア対1%壁または99.5%対0.5%またはそれ以上のものを使用してもよい。コア対壁比を適切に選択することによって本発明による組成物のシェルを試験法OECD 301Bに従って試験した場合、14日後に少なくとも40%の崩壊性、少なくとも20日後の少なくとも50%の崩壊性、そして少なくとも28日後の少なくとも60%の崩壊性を達成するために選択することができる。
【0111】
単数で記載した用語は、特に明記しない限り、そして文脈によって明らかに矛盾しない場合に単数と複数の両方を網羅するものである。ここで使用する「含む」なる用語は、比制限的な用語として解釈される。ここで引用した公報、特許出願および特許などの引用文献は、参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。「好ましい」実施態様としての特定の実施態様のあらゆる説明および他の好ましいとされる実施態様、特徴、または範囲の記載またはそれらを好ましいとする示唆は、限定するものとみなされない。本発明は現時点であまり好ましくないとされ、本明細書中でそのように説明されている実施態様を包含するとみなされる。ここで説明する全ての方法は、特に明記しない限り、そして文脈によって明らかに矛盾しない場合にあらゆる好適な順番で実施することができる。本明細書中のあらゆるおよび全ての例または例示的な言葉(例えば「などの」)の使用は、例示を目的としたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明のまたは好ましい実施態様の特質または便益に関する本明細書中のあらゆる記載は、限定することを意図したものではない。本発明は、適用される法によって認められる本明細書中に記載した内容の全ての変性物および同等物を含む。さらに任意の上述の全ての可能な上述の要素の変型例におけるこれら要素のあらゆる組み合わせは、特に明記しない限り、そして文脈によって明らかに矛盾しない場合に本発明に包含される。たとえ「先行」として特定されたとしてもあらゆる参照または特許の本明細書中の説明は、そのような参照または特許が本発明に対して先行技術にとして利用可能であることを承認するものではない。特許請求の範囲に記載されていない文言は本発明の範囲を制限するとはみなされない。特許請求の範囲に記載された発明の構成要素を構成するというあらゆる記載または示唆は、特許請求の範囲に範囲に反映されてなければ限定することを意図したものではない。
【国際調査報告】