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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電池電極集合体の処理
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508503
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 US2022074869
(87)【国際公開番号】W WO2023019224
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,129
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521501978
【氏名又は名称】フリコ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】スループ, スティーブン イー.
(72)【発明者】
【氏名】クランドン, ローレン イー.
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA00
5H031BB00
5H031BB01
5H031BB02
5H031EE01
5H031EE04
5H031RR02
(57)【要約】
リチウムイオン電池の正極の電極材をリサイクルするための方法および反応器に関する例を開示する。一実施形態として、リチウムイオン二次電池の電極材のリサイクル方法が示されている。正極の電極材は、n+の酸化状態(mn+)を有する金属mからなる。正極の電極材、酸化剤、リチウムイオンからなる反応混合物が形成される。正極の電極材は、酸化剤を介して正極材料中の金属mのn+酸化状態を維持しつつ、リチウムイオンの電気化学的還元を介して電気化学的にリチウムを補充される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、電極材、およびバインダーを含む電池電極集合体を処理する方法であって、
金属アルコキシドを含む溶液に前記電池電極集合体を投入する工程、
前記集電体から前記電極材を分離する工程、および
前記電極材を回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記金属アルコキシドが非水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルコールと金属を反応させて前記金属アルコキシドを形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールが、エタノール、メタノール、プロパノール、プロパンジオール、エチレングリコール、グリセロール、およびポリビニルアルコールのうちの1または複数を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電池電極集合体を前記溶液に投入することが、前記集合体をアルコールに入れ、次いで金属源を前記アルコールに添加して前記金属アルコキシドを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属源を添加することが、前記金属アルコキシドを形成するために前記アルコールに金属を添加することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記金属源を添加することが、前記金属アルコキシドを形成するために、金属酸化物、金属炭酸塩、または金属水酸化物のうちの1つ以上を前記アルコールに添加することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記電極材を回収する前に前記溶液を加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電極材を回収する前に前記溶液を撹拌することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液がCOをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記電池電極集合体を前記溶液に投入した後、前記COを用いて前記バインダーを除去することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液が、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸t-ブチル、または炭酸ポリ(エチレングリコール)(n=1~10)のうちの1つ以上をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液が、プロピレングリコールまたはエチレングリコールの1種または複数をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
集電体、電極材、およびポリビニルジフルオリド(PVDF)を含むバインダー、を含む電池電極集合体を処理する方法であって、
リチウム源とアルコールからリチウムアルコキシドの溶液を形成する工程、
前記溶液に電池電極集合体を投入する工程、
前記集電体から前記電極材を分離する工程、および
前記電極材を回収する工程
を含む、方法。
【請求項15】
前記アルコールが、エタノール、メタノール、プロパノール、プロパンジオール、エチレングリコール、グリセロール、およびポリビニルアルコールのうちの1または複数を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記リチウム源がリチウム金属を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記リチウム源が、酸化リチウム、炭酸リチウム、または水酸化リチウムのうちの1または複数を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記電極材を回収する前に前記溶液を加熱することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記リチウムアルコキシドの溶液から除去した後、LiOH、KOHおよびNaOHのうちの1または複数を含む水溶液中でのスラッシングによって前記電極材を回収する前に、前記溶液を撹拌することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記水溶液が界面活性剤をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、「電池電極集合体の処理」という名称で2021年8月11日に出願された、米国仮特許出願番号第63/232,129に対する優先権を主張するものであり、当該仮特許出願の全容をその目的を問わず参照により本願に繰り入れるものとする。
【0002】
本願は、リチウムイオン電池の分野に関し、より詳しくは電池電極集合体からバインダー材を除去することに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、自動車からスマートフォンに至る幅広い製品に電力を供給する。これらの電池は何度でも再充電が可能で、さまざまな環境要因に耐性があり、また比較的耐用年数が長い。にもかかわらず、最終的には故障するか故障する前に廃棄されることから、廃棄物の流れにかなり寄与している。そのため、リチウムイオン電池のリサイクルを促進するための環境規制や業界基準、回収サービスなどが生まれてきた。
【発明の概要】
【0004】
電池電極集合体の加工に関する実施形態が開示される。ある実施形態では、集電体、電極材、およびバインダーを含む電池電極集合体を処理する方法が与えられ、この方法には、リチウムアルコキシドを含む溶液への電池電極集合体の投入、集電体から電極材の分離、および電極材の回収が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、リチウムイオン二次電池の電極材のリサイクル方法を示すフロー図である。
図2図2は、電池がアルコキシド処理後に集電体から剥離したもの一例を表す。
図3図3は、加工された電極と、エチレングリコールおよび水酸化リチウムを用いた収集による電極およびバインダー材の除去の経過の一例を表す写真である。
図4図4は、収集された電極材の粉末X線回折パターンを表す。
図5図5は、対照実験としてアルコキシドなしで剥離を行った後の、バインダーと電極材が残留した集電体を表す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[詳細な説明]
電池電極集合体は、電解液にイオン伝導する電気化学活性材に対し電子的に接続する集電体から構成される。多層の活性電極材料は、電子伝導に対して転位や長い経路の理由で、比較的高い抵抗を有する場合がある。抵抗を低減するために、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの導電性炭素添加剤が使用されることがある。しかし、電極や添加剤の粉末は比較的移動しやすく、移動すると性能が低下したり製造が困難になったりするため、粒子を所定の位置に結合させ、混合物を集電体に付着させるためのさまざまな高分子材料が開発されてきた。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、電池製造業界全体で使用されているバインダーの一例である。その他のバインダーとしては、ポリメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレンイミン(PEI)、単イオン伝導体、アイオノマー、共重合体の組み合わせなどが挙げられる。
【0007】
リチウムイオン電池電極集合体のリサイクルには、集電体から電極材を分離する工程が含まれ得る。結合粒子を解放するには一般的に、(1)化学的分解、(2)ポリマーバインダーの物理的溶解、(3)スラッシング、混合、超音波作用などによるポリマーマトリックスからの粒子の物理的転位、といった3つの方法がある。上記のうち最初の2つは、被覆された電極を200~500℃に加熱することによってPVDFの熱分解が達成され、ポリマー骨格に沿って共有結合しているHとFからHFガスの形成を活性化し、その結果炭素-炭素結合が切断されPVDFの高分子サイズと機能が低下することが米国特許第6,150,050号(マシューら)に教示されている。空気中の酸素は、ポリマーを二酸化炭素と水に分解するのに十分である。
【0008】
PVDFの溶解または膨潤は、n-メチルピロリドンまたはその溶液(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)/アセトン)への曝露によって可能となる。PVDFを溶解するのに適した他の溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、炭酸プロピレン、高圧CO、および他の環境に優しい溶媒が挙げられる。PVDFの高分子の溶解により、弱く結合した電極粒子が放出され、その後、再利用または精製のために濾過により回収することができ、ポリマーも同様に再利用のために単離することができる。一例として、ソックスレー抽出は、混合物からポリマーを単離するために使用される方法と装置である。NMP(または他の溶媒)を循環させ電極混合物からPVDFを除去するには、ソックスレー抽出を使用することが可能である。
【0009】
PVDFは、溶解性が劣ることと熱安定性が高いことから、その加工性が課題となっている。PVDFの熱分解では有害なHFが発生するが、これは塩基の添加によって緩和することができる。例えば、PVDFをLiOH水溶液中で加熱すると、以下の式(1)に示すように、ポリマー分解の副産物としてLiFが生成される。他の塩基性金属酸化物や水酸化物にも同様の反応性がある。
【0010】
【化1】
【0011】
多くの電池の構成では集電体にアルミ箔が使用されている。PVDFがAl基板に結合している場合、ポリマーを除去するために塩基を使用すると、取り扱いが難しい副反応が生じる可能性がある。例えば、Alは水性塩基と反応してHを生成し、その可燃性は産業上の危険をもたらし、安全管理のために多額の設備投資が必要となる。さらに、副産物である水酸化アルミニウムは、電気活性リチウム金属酸化物(ELMO)をリサイクルする際に、精製製品に対して汚染源となる。水性塩基中のアルミニウムの反応例を式(2)に示す。
【0012】
【化2】
【0013】
PVDFの溶解では副反応は避けられるが、NMPのような効果的な溶媒は環境衛生および安全性毒性に課題がある。エチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸トリエチル(TEP)のようなグリーン溶剤は高熱の処理を必要とし、PVDFの除去に非常に時間を要したり不完全な場合がある。
【0014】
したがって、本発明の実施形態は、Al側の反応性を伴わずにリチウム電池電極集合体のバインダー(PVDFを含む)を分解するための、低コストで環境に優しいアルコキシドの使用に関するものである。簡単に説明すると、本発明の実施形態では、金属源とアルコールから形成され得る金属アルコキシドの溶液が利用される。バインダーの分解によって電極材が集電体から分離され、電極材は再利用のために回収することができる。PVDFバインダーが例として開示されているものの、本発明で開示される実施形態の使用が、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリメチルセルロース(PMC)、または他のハロゲン化物含有の電池バインダーといった、他のバインダーの除去にも一助となり得ることが理解されるであろう。
【0015】
図1は、電極集合体を処理する方法100の一例を示すフロー図である。方法100にある種々の工程は省略、あるいは記載とは異なる順序で実行されてもよく、また追加の工程が含まれてもよいことが理解されるであろう。102において、方法100には、1つまたは複数の金属Mを含む金属アルコキシドを有する溶液を形成することを含んでもよい。ここでMは、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、および/または、Baである。金属アルコキシドは、104において金属源とアルコールから形成することができる。様々な実施形態において、金属源には、自然金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属水酸化物、および/または任意の他の適切な金属化合物が含まれる。リチウムイオン電池を処理する実施形態では、一般的なイオンを使用して純度を維持するための金属アルコキシドとして、リチウムアルコキシドが特に好適に使用され得る。任意の適切なアルコールを使用することができ、エタノール、メタノール、プロパノール、プロパンジオール、エチレングリコール、グリセロール、およびポリビニルアルコールが例として挙げられる。例えば、エチレングリコールによりさらに温度制御性の利点を得られる。いくつかの実施形態では、金属アルコキシド溶液が電極集合体の処理中に形成されてもよい。例えば、電池電極集合体をアルコール(ある例としてポリオールが含まれる)からなる容器に投入し、金属源をアルコールに混合して金属アルコキシドを形成することができる。他の実施形態では、あらかじめ形成された金属アルコキシド溶液を使用してもよい。金属アルコキシドは、様々な実施形態では、バッチプロセスまたは連続フロープロセスにおいて添加することができる。金属アルコキシド、特にリチウムアルコキシドの溶液を形成する例を、以下にさらに詳細に説明する。金属アルコキシドは非水性でも水性でもよい。いくつかの実施形態では、処理される電池のバインダーに応じて、溶液に追加の材料を加えてもよい。例えば、水性環境でのバインダーのさらなる溶解のため、ポリ(エチレングリコール)メタクリレートのようなメタクリレート、他のPEG、アルコール、および/または、他の適当な可溶性薬剤を添加してもよい。金属アルコキシドは、アルコキシド前駆体(水酸化リチウムまたは上記の例のいずれかなど)と混合した電極集合体上へのアルコールの蒸発凝縮により、ソックスレーまたは他の凝縮器でその場で形成することができる。いくつかの実施形態において、炭酸プロピレンが溶液に添加される。
【0016】
いくつかの実施形態では、105において、溶液には二酸化炭素(CO)が含まれる。例えば、加圧された液体COまたは超臨界COを使用して、バインダーを膨潤させ、集電体からの剥離を促進し、バインダーを除去することができる。いくつかの実施形態において、COはカーボネートを形成し、塩基とアルミニウムの反応による水素の発生を回避しつつ、バインダーの剥離を達成することができる。いくつかの実施形態において、COは単独で使用される。他の実施形態では、COは、エチレングリコール、プロピレングリコール、アルコキシド、カーボネート溶媒などの1ないし複数の他の溶媒とともに共溶媒として使用される。適当なカーボネート溶媒の例としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸t-ブチル、炭酸ポリ(エチレングリコール)(n=1~10)等が挙げられる。いくつかの実施形態において、カーボネート溶媒単独(例として炭酸プロピレン、炭酸エチレン)、またはカーボネート溶媒とグリコールおよび/またはアルコキシドとの混合物を使用することができる。COと共に使用できる他の溶媒の例としては、アセトン、クエン酸アセチルトリエチル、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、ジヒドロレボグルコセノン、ジメチルアセトアミド、N、N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、3-ヘプタノン、ヘキサメチルホスホルアミド、3-ヘキサノン、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン、3-オクタノン、3-ペンタノン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、トリアセチン、トリアルキルホスフェート(例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート)、クエン酸トリエチル、N,N′テトラブチルスコハクインジアミド、および水が含まれる。COを共溶媒として使用することで、処理温度を下げることができる。
【0017】
次に、方法100には、106で電池電極集合体を溶液に投入し、108で電極材を集電体から分離することが含まれる。分離を助けるために、方法100は、110において溶液を、例えば60~150℃、いくつかの例では250℃まで加熱することを任意に含むことができる。ある実施形態においては、溶液が炭酸プロピレンなどのカーボネートからなる場合、溶液を110で加熱することには、場合によっては溶液をカーボネートの引火点以下の温度に加熱することが含まれる。さらに、方法100は、112において、溶液を攪拌すること(例えば、かき混ぜること)を任意に含むことができる。最終的な攪拌は、電極材料の除去のためのスラッシングを容易にするため、例えば、炭素質物質の浮遊を補助するための界面活性剤の添加あり、または添加なしのpH7~14の塩基性水溶液等の、LiOH水溶液またはその他適当な溶液で行ってもよい。例として、スラッシング溶液は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、任意の低粘度流体(水では20℃で1mPas未満;エチレングリコールは20℃で16mPas)、または炭素/金属酸化物の密度分離流体(例えばブロモホルム、アルカリタングステン酸塩溶液)のような非水性溶媒を含んでもよい。このような実施形態では、アルコキシドがバインダーを緩めるのに役立ち、その後により低粘性かつ低温の溶液中でスラッシングを行ってもよい。105でCOが共溶媒として使用されるようないくつかの実施形態においては、電極材を除去するために水中で軽く攪拌してもよい。
【0018】
方法100は、114において、例えば精製および最終的な再利用のために電極材を回収することをさらに含む。回収には、電極材を乾燥させること、または下流の処理のために電極材を湿潤状態に保つことが含まれる。金属アルコキシドの溶液はそのまま再利用が可能であり、またより多くの代替金属アルコキシドを添加または形成した後に再利用することができる。
【0019】
開示された実施形態は、様々な利点をもたらし得る。第一に、アルコキシドを使用することで、アルミニウムを積層板からより完全に分離できる可能性がある。対照的に、リン酸アルキル、n-メチルピロリドンなどの既存の溶剤は、積層板からAlをきれいに分離できない場合があり、Al上に残留物が残る可能性がある。第二に、アルコキシからの排出物はアルコールであり、TEPやNMPよりも管理が容易な場合がある。第三に、開示された実施形態は、アルコキシをその場で活性化し、剥離後に不活性化する際に柔軟性をもたらし、これにより例えばエチレングリコールの使用において比較的単純な物流が可能となり得る。第四に、アルコキシドの使用はAl電極材の損傷の防止にも役立ち、開示されたプロセスは比較的低温で行うことができる。第五に、溶媒に炭酸プロピレンを使用することで、炭酸プロピレンの引火点以下の温度での剥離を可能とする。第六に、共溶媒としてCOを使用することにより、溶媒の引火点未満の温度まで処理温度を下げることができる。このように、炭酸プロピレン、および/または、COの使用により、溶媒の引火点を超える温度で操作する例と比較して、安全性および再利用性を高めることができる。他のカーボネート溶媒、および/または、カーボネート溶媒の混合物も同様の利点をもたらし得る。
【0020】
例示のため以下のアルコキシド反応が開示される。リチウムアルコキシドの生成では、式(3)に示すように、第一級アルコールがLiOHと反応して第一級アルコキシドと水を生成する。これらは、任意のアルカリ金属酸化物、または金属を用いて生成することができる。二級、三級アルコールのほか、ジオール、トリオール、アルコール官能基を持つオリゴマーも使用可能である。
【0021】
【化3】
【0022】
アルコキシドは、ハロゲン化物の置換基を持つハロゲン化第一級アルキルと高収率で反応する。PVDFのポリマー骨格に沿った二級ハロゲン化物については、以下の式(4)(ハロゲン化アルキルの置換)および式(5)(ハロゲン化アルキルの脱離)に示すように、置換と脱離の両方が進行する。いずれの経路でもPVDFの高分子構造と結合機能が劣化する。
【0023】
【化4】
【0024】
アルコキシドは、式(6)に示すように金属アルミニウムと反応する可能性があるものの、反応は観察されず水がない場合には緩和される。アルコールおよび/または水が高濃度で存在する例では、アルミニウムアルコキシドへの経路は非常に遅い腐食反応である。
【0025】
【化5】
【0026】
Al基材からのPVDFの除去では、
substitutionおよびkelimination>>>>kAl corrosion
であるので、腐食が起こるかなり前にこの反応からAlの分離が起こる。
【0027】
エチレングリコールのアルコキシドと接触したアルミニウム基板は、強塩基性水溶液中でのAlの酸化と一致するガス生成の兆候を示さない。
【0028】
アルミニウム箔(約1000cm)にコーティングされたPVDF/カーボンブラック/NMC(リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物)(およそ7重量%/5重量%/88重量%、総重量は20g)の除去例を以下に示す。アルコキシドは、容器に入れた100mLのエチレングリコールと2gのLiOH-HOを加熱して調合した。被覆した電極をEt(OH)/Et(OLi)溶液(150℃)に入れ、5分間かき混ぜた。電極をピンセットで取り出しミキサーで攪拌した。すぐにアルミニウム集電体から積層材が剥離し、電極材とアルミニウム集電体の両方を回収することができた。図2は、PVDFバインダーと電極材202を用いたNMC電池200が、アルコキシド処理後にAl集電体204から剥離した例を示している。対照として、LiOHを添加せずに同じ実験を行ったところ、図5に示すように、バインダーと電極材はアルミニウムに積層されたままであった。
【0029】
図3は、300mLのエチレングリコールと3gのLiOHを用いて130℃で収集を行った後の処理された電極とバインダー除去の進行を示す一例の写真である。このように、2~3分後からバインダーが解離し始め、6分後には完全に除去された。さらに、図4の粉末X線回折パターンからわかるとおり、収集の間も電池電極材の結晶構造は維持されており、これはNMC電極材料のAB面が高度に秩序化されていることを示す。
【0030】
本明細書に記載される構成、および/または、アプローチは、本質的に例示的なものであり多数の変型例が可能であるため、これらの特定の実施形態または実施例は、限定的な意味で考慮されるものではないことが理解されるであろう。また本開示には、本明細書に開示された上記の物品、システム、構成、方法、および他の特徴、機能、作用、および/または特性の新規かつ非自明な組み合わせおよび副組み合わせ、ならびにそれらの任意のおよびすべての等価物が含まれる。
【0031】
本明細書に記載される具体的な工程は、任意の数の戦略のうちの1ないし複数を表し得る。本明細書に記載および/または図示される工程のいくつかは、いくつかの実施形態において本開示の範囲から逸脱することなく省略されてもよく、および/または、追加の工程が使用されてもよい。同様に、提示された工程段階の順序は、意図された結果を達成するために必ずしも必要ではない可能性はあるものの、図示および説明を容易にするために与えられるものである。図示された動作、機能、または操作のうちの1または複数は、使用される特定の戦略に応じて繰り返し実行してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】