(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】抗HER2 CAR NK細胞、その作製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240822BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240822BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20240822BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240822BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/0783 ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/87 Z
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508505
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 US2022039587
(87)【国際公開番号】W WO2023018620
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501127637
【氏名又は名称】ガミダ セル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲフィン ヨーナ
(72)【発明者】
【氏名】パト アヴィアド
(72)【発明者】
【氏名】リフマン ジュリア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA03
4B065BB13
4B065BB20
4B065CA44
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
組成物及びHER2への結合能を有するキメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(tg-TCR)を発現するナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する、組成物及び方法が開示される。この方法は、(a)NK細胞集団を、(i)細胞増殖を可能にする条件下でNK細胞集団を培養するステップであって、条件が、有効量の栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを提供することを含む、培養するステップと;(ii)ステップ(i)の5~10日後に、NK細胞集団に有効量の新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給して、増殖したNK細胞を作製するステップとを含む方法によって増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び(b)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中における、HER2への結合能を有するCAR又はtg-TCRの発現を上方制御することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のNK細胞を含む有核細胞集団であって、少なくとも1.0×10
6個の有核細胞を含み、前記集団中の前記細胞の少なくとも約70%が生細胞であり、且つ抗Her2キメラ抗原受容体(CAR)を発現し、
前記集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり;
前記集団中の前記細胞の約0.5%以下がCD3+であり;
前記集団中の前記細胞の約10%以下がCD19+であり;
前記集団中の前記細胞の約10%以下がCD14+であり;
前記集団中の前記細胞の少なくとも約60%がCD62L+であり;
前記集団中の前記細胞の約70%以下がLAG3+であり;
前記集団中の前記細胞の少なくとも約60%がTRAIL+であり;及び
前記集団中の前記細胞の少なくとも約60%がDNAM1+である、有核細胞集団。
【請求項2】
前記CARが抗Her2 scFvを含む、請求項1に記載の有核細胞集団。
【請求項3】
前記CARが、CD28及びCD8から選択されるヒンジドメインを含む、請求項1又は2に記載の有核細胞集団。
【請求項4】
前記CARが、CD28、CD8及びNKG2Dから選択される膜貫通ドメインを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項5】
前記CARが、CD28、4-1BB、2B4、CD3ゼータR、OX40、Lsk、ICOS、DAP10及びIgE受容体IgのFc断片から選択される共刺激ドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項6】
前記CARが、CD3ζ、FcR-γ及びFc-イプシロン-Rから選択される活性化型ドメインを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項7】
前記CARがシグナルペプチドを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項8】
前記CARが配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36及び配列番号38から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項9】
前記CD56+細胞の少なくとも約75%が配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36又は配列番号38のいずれか1つを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団を、
(i)細胞増殖を可能にする条件下で前記NK細胞集団を培養するステップであって、前記条件が、有効量の栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを提供することを含むステップと;
(ii)ステップ(i)の5~10日後に、前記NK細胞集団に有効量の新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給して、増殖したNK細胞を作製するステップと
を含む方法によって増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び
(b)前記ex vivoで増殖させたNK細胞集団中において、HER2への結合能を有するCARの発現を上方制御し、それにより前記HER2への結合能を有する前記CARを発現するNK細胞を作製すること
を含む方法。
【請求項11】
前記NK細胞集団が臍帯血、末梢血、骨髄、CD34+細胞又はiPSCに由来する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記NK細胞集団がCD3
+細胞を除いたものである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記NK細胞集団がCD3
-CD56
+細胞を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ニコチンアミドの有効量が1.0mM~10mMの量を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記NK細胞集団の増殖が、フィーダー細胞又はフィーダー層の存在下で生じる、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記フィーダー細胞が照射細胞を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フィーダー細胞がT細胞又はPBMCを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
CD3アゴニストを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記NK細胞集団の前記増殖を14~16日間にわたって生じる、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記CAR又は前記tg-TCRの発現の上方制御が培養の開始から12~14日目に生じる、請求項10~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記CAR又は前記tg-TCRの発現の上方制御をmRNAエレクトロポレーションによって実施する、請求項10~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記CARが一過性に発現する、請求項10~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項10~22のいずれか一項に記載の方法によって入手可能である、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離されたNK細胞集団。
【請求項24】
請求項1~9のいずれか一項に記載の単離されたNK細胞集団と、薬学的に活性な担体とを含む医薬組成物。
【請求項25】
HER2の発現を伴う疾患の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項24に記載の単離されたNK細胞集団を投与し、それにより前記対象を治療することを含む方法。
【請求項26】
HER2の発現を伴う疾患の治療を、それを必要としている対象において行うために使用する、治療有効量の、請求項23に記載の単離されたNK細胞集団。
【請求項27】
前記疾患が悪性疾患である、請求項25に記載の方法又は請求項26に記載の使用のための単離されたNK細胞集団。
【請求項28】
前記悪性疾患が固形腫瘍又は腫瘍転移である、請求項27に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【請求項29】
前記悪性疾患が、乳癌、胃癌、胃食道癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、肺癌、尿路上皮癌及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項28に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【請求項30】
前記対象がヒト対象である、請求項25若しくは27~29のいずれか一項に記載の方法又は請求項26~29のいずれか一項に記載の使用のための単離されたNK細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月10日に出願された米国仮特許出願第63/231,359号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、その内容は、全体として参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、別名ErbB2は、上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーのメンバーである。HER2がEGFRファミリーの他の3つのメンバーとヘテロ二量体を形成することにより、EGFRシグナル伝達経路の活性化につながる。EGFRシグナル伝達経路の活性化は、通常、細胞の異常増殖及び腫瘍発生に関連し、従って、HER2は、様々な癌(乳癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌など)の治療標的の1つとなっている。
【0003】
NK細胞は、自然免疫系の重要な構成要素を構成する細胞傷害性リンパ球である。この細胞には種々の機能があり、特に腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、発癌性形質転換を起こしている細胞など、生体における異常な細胞を殺傷する。
【0004】
NK細胞は、近年、様々な難治性の血液学的悪性腫瘍及び固形腫瘍を患う患者における有望な免疫療法ツールとして大きい注目を集めているが、NK細胞ベースの免疫療法の最大限の治療可能性は、依然として実現していない。従って、当技術分野では、結果として得られる細胞画分がその殺傷活性を維持しつつ、in vivo注入時にホーミング、保持率及び増殖活性の増加を呈するようなNK細胞及びトランスジェニックNK CAR細胞の培養及び増殖方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、トランスジェニックナチュラルキラーCAR(NK)細胞を作成及び培養する方法、増殖させたトランスジェニックNK CAR細胞集団の、それを必要としている対象への投与のための選択並びにex vivoで増殖させた好適なトランスジェニックNK CAR細胞画分の血液学的悪性腫瘍及び他の(例えば、悪性)病態の治療のための臨床セッティングにおける移植への治療使用に関する。本発明は、増殖させたNK CAR細胞画分を含む組成物及びキットも想定する。
【0006】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、HER2への結合能を有するキメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(tg-TCR)を発現するナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団を、
(i)細胞増殖を可能にする条件下でNK細胞集団を培養するステップであって、条件が、有効量の栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを提供することを含むステップと、
(ii)ステップ(i)の5~10日後に、NK細胞集団に有効量の新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給して、増殖したNK細胞を作製するステップと
を含む方法によって増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び
(b)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中における、HER2への結合能を有するCAR又はtg-TCRの発現を上方制御し、それによりHER2への結合能を有するCAR又はtg-TCRを発現するNK細胞を作製すること
を含む方法が提供される。
【0007】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、本発明の一部の実施形態の方法によって入手可能である、単離されたNK細胞集団が提供される。
【0008】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団と、薬学的に活性な担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0009】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、HER2の発現を伴う疾患の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団を投与し、それにより対象を治療することを含む方法が提供される。
【0010】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、HER2の発現を伴う疾患の治療を、それを必要としている対象において行うのに使用するための、治療有効量の、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団が提供される。
【0011】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団は、臍帯血、末梢血、骨髄、CD34+細胞又はiPSCに由来する。
【0012】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団は、CD3+細胞を除かれている。
【0013】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団は、CD3-CD56+細胞を含む。
【0014】
本発明の一部の実施形態によれば、ニコチンアミドの有効量は、1.0mM~10mMの量を含む。
【0015】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団の増殖は、フィーダー細胞又はフィーダー層の存在下で生じる。
【0016】
本発明の一部の実施形態によれば、フィーダー細胞は、照射細胞を含む。
【0017】
本発明の一部の実施形態によれば、フィーダー細胞は、T細胞又はPBMCを含む。
【0018】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞増殖を可能にする条件は、CD3アゴニストを更に含む。
【0019】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団の増殖は、14~16日間にわたって生じる。
【0020】
本発明の一部の実施形態によれば、CAR又はtg-TCRの発現の上方制御は、培養開始から12~14日目に生じる。
【0021】
本発明の一部の実施形態によれば、CAR又はtg-TCRの発現の上方制御は、mRNAエレクトロポレーションによって生じる。
【0022】
本発明の一部の実施形態によれば、CAR又はtg-TCRは、一過性に発現する。
【0023】
本発明の一部の実施形態によれば、CARは、少なくとも1つの共刺激ドメインを含む。
【0024】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの共刺激ドメインは、CD28、2B4、CD137/4-1BB、CD134/OX40、Lsk、ICOS及びDAP10からなる群から選択される。
【0025】
本発明の一部の実施形態によれば、CARは、少なくとも1つの活性化型ドメインを含む。
【0026】
本発明の一部の実施形態によれば、活性化型ドメインは、CD3ζ、FC-イプシロン-R又はFcR-γを含む。
【0027】
本発明の一部の実施形態によれば、CARは、膜貫通ドメイン及びヒンジドメインの少なくとも1つを含む。
【0028】
本発明の一部の実施形態によれば、膜貫通ドメインは、CD8、CD28及びNKG2Dから選択される。
【0029】
本発明の一部の実施形態によれば、ヒンジドメインは、CD8及びCD28から選択される。
【0030】
本発明の一部の実施形態によれば、CARは、抗体又は抗原結合断片である抗原結合ドメインを含む。
【0031】
本発明の一部の実施形態によれば、抗原結合断片は、Fab又はscFvである。典型的な実施形態では、scFvは、抗Her2 scFvである。一部の実施形態では、scFvは、配列番号42である。一部の実施形態では、scFvは、配列番号42と約100%類似しているか、又はそれと約95%類似しているか、又はそれと約90%類似しているか、又はそれと約85%類似しているか、又はそれと約80%類似している。
【0032】
本発明の一部の実施形態によれば、疾患は、悪性疾患である。
【0033】
本発明の一部の実施形態によれば、悪性疾患は、HER2+細胞を含む。
【0034】
本発明の一部の実施形態によれば、悪性疾患は、固形腫瘍又は腫瘍転移である。
【0035】
本発明の一部の実施形態によれば、悪性疾患は、乳癌、胃癌、胃食道癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、肺癌、尿路上皮癌及び膀胱癌からなる群から選択される。
【0036】
本発明の一部の実施形態によれば、対象は、ヒト対象である。
【0037】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実践又は試験では、本明細書に記載されるものと同様の又は均等な方法及び材料を用い得るが、以下では、例示的な方法及び/又は材料を記載する。矛盾が生じる場合、本特許明細書が、定義を含めて優先するものとする。加えて、材料、方法及び例は、あくまでも例示に過ぎず、必ずしも限定を意図するわけではない。本明細書に記載されるいずれの態様及び/又は実施形態も、本明細書に記載されるいずれかの他の態様及び/又は実施形態と組み合わせることができる。
【0038】
上記の及び更なる特徴は、添付の図面と併せて考慮するとき、以下の詳細な説明から一層明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】抗HER2 CAR遺伝子コンストラクトの模式図である。
【
図2-1】抗HER2 CARを発現するように改変された種々のコンストラクトを示す模式図である。
図2のAは、501.A(501.1)を示す。
図2のBは、501.B(501.2)を示す。
図2のCは、501.C(501.3)を示す。
図2のDは、501.D(501.4)を示す。
【
図3】細胞上での外観を示すコンストラクトの模式的なまとめである。
【
図4】NK細胞上のCAR発現を決定するためのサンドイッチフローサイトメトリー方法を示す。(
図4のA)特異的抗Her2抗体によって検出された、抗HER2 CARを発現してHer2タンパク質に結合するNKの模式図である。(
図4のB~G)エレクトロポレートした細胞にのみ発現する抗HER2 CARの特異的決定を表すフローサイトメトリープロット。染色のゲート戦略は、生細胞に対するサイズゲーティングを用いて実施し(
図4B)、続いて対照NK細胞(
図4のC)、エレクトロ(モック)対照(
図4のD)並びに
図3のとおりにCAR-B(
図4のE)、CAR-C(
図4のF)及びCAR-D(
図4のG)をエレクトロポレートしたNKに対して抗Her2抗体で染色した。
【
図5-1】抗HER2 CAR遺伝子コンストラクトを示す(
図5A)。
【
図6】エレクトロポレーション後24時間におけるNK細胞上のHER2-CAR(501.1g~501.4g)発現を示す。
【
図7】HER2-CAR NKと標的細胞との共培養によって媒介されたCD107a、TNFアルファ、IFNガンマ及びGM-CSFの発現のフローサイトメトリー分析である。
【
図8】HER2 CAR NK細胞をSKOV3細胞と6時間共培養(5:1のE:T)した後の特異的溶解率を示す。
【
図9】HER2-CAR NK(501.1g~501.4g)と標的細胞との共培養によって媒介されたCD107a、TNFアルファ、IFNガンマ及びGM-CSFの発現のフローサイトメトリー分析である。
【
図10】HER2-CAR NK(501.1g~501.4g)と標的細胞との共培養によって媒介されたMIP-1bの発現のフローサイトメトリー分析である。
【
図11】エレクトロポレーション後24時間又は48時間におけるHER2 CAR NK(501.1g~501.4g)をSKOV3細胞と6時間共培養した後の特異的溶解率を示す。
【
図12】エレクトロポレーション後24時間、48時間又は72時間におけるSKOV3(左欄)又はA549細胞株(右欄)と6時間共培養したHER2-CAR NK(501.3g又は501.4g)のCD107a、TNFアルファ、IFNガンマ発現を示す。
【
図13】エレクトロポレーション後24時間、48時間又は72時間におけるSKOV3(左欄)又はA549細胞株(右欄)と6時間共培養したHER2-CAR NK(501.3g又は501.4g)のGM-CSF、MIP1アルファ又はMIP1ベータ発現を示す。
【
図14】エレクトロポレーション後24時間、48時間又は72時間におけるHER2 CAR NK(501.3g又は501.4g)をSKOV3細胞と6時間共培養(5:1又は1:1のE:T)した後の特異的溶解率を示す。
【
図15】エレクトロポレーション後24時間、48時間又は72時間におけるSKOV3細胞と共培養(5:1又は1:1のE:T)した対照(CARなし)NK細胞にハーセプチンを加えた後の特異的溶解率を示す
【
図16】エレクトロポレーション後24時間、48時間又は72時間におけるHER2 CAR NK(501.3g又は501.4g)をA549細胞と6時間共培養(5:1又は1:1のE:T)した後の特異的溶解率を示す。
【
図17】エレクトロポレーション後24時間、48時間におけるHER2 CAR NK(501.3g又は501.4g)をRPMI-8226細胞と6時間共培養(5:1又は1:1のE:T)した後の特異的溶解率を示す。
【
図18】エレクトロポレーション後24時間におけるHER2 CAR NK(501.1g~501.4g)をRPMI-8226細胞と6時間共培養(5:1又は1:1のE:T)した後の特異的溶解率を示す。
【
図19】エレクトロポレーション後24時間におけるHER2 CAR NK(501.3g又は501.4)をRaji細胞と3時間共培養(2:1のE:T)した後の特異的溶解率を示す。
【
図20】エレクトロポレーション後24時間におけるHER2 CAR NK(501.1g~501.4g)を同種異系NK細胞と5時間共培養(5:1のE:T)した後の特異的溶解率を示す。
【
図21】エレクトロポレーション後24時間におけるHER2 CAR NK(501.3g又は501.4g)を同種異系PBMCと5時間共培養(5:1のE:T)した後の特異的溶解率を示す。
【
図22】TIGIT NK表面発現のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図23】表面CD62L、TRAIL、DNAM1及びLAG3のフローサイトメトリー分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、その一部の実施形態では、改変ナチュラルキラー(NK)細胞に関し、より詳細には、限定されないが、HER2への結合能を有するキメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(tg-TCR)を発現するように修飾されたNK細胞に関する。
【0041】
図面及び添付の説明を参照すると、本発明の原理及び動作を更によく理解し得る。
【0042】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に解説する前に、本発明は、その適用の点において、以下の説明に示されるか又は本実施例に例示される詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態の可能性があるか、又は様々な方法で実践若しくは実行される可能性がある。本明細書で用いられる表現法及び用語法は、説明を目的とするものであり、限定と見なされてはならないことも理解されるべきである。
【0043】
本発明を実施に移す中で、本発明者らは、目的とする特異的疾患細胞を標的化すると同時に、効率的な免疫療法に向けて改良された特性を有するものとなるようにNK細胞を調整し得ることを示している。
【0044】
下記及び続く実施例の項に示すとおり、本発明者らは、栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを含む培養条件下でNK細胞集団をex vivoで増殖することにより、特性が改良されたNK細胞を作製した(以下の一般的な材料及び実験手順の節を参照されたい)。NK細胞をHER2発現細胞に向けて標的化し、NK細胞の抗疾患機能及び生存を向上させるため、増殖させたNK細胞を、mRNAエレクトロポレーションにより、抗HER2 CARを一過性に発現するように修飾した(実施例1を参照されたい)。
【0045】
まとめると、本発明のex vivoで作製されるNK細胞は、細胞数が多く、in vitroで長い生存期間及び高い機能性(例えば、高い細胞傷害性)の両方を有するものであり、且つ目的とするHER2発現細胞(例えば、固形腫瘍又は転移の細胞)を標的化するように改変されているという解決策をもたらす。典型的な実施形態では、本発明のex vivoで作製されるNK細胞は、細胞数が多く、in vitro及びin vivoで長い生存期間及び高い機能性(例えば、高い細胞傷害性)の両方を有するものであり、且つ目的とするHER2発現細胞(例えば、固形腫瘍又は転移の細胞)を標的化するように改変されているという解決策をもたらす。
【0046】
本開示のNK細胞
本開示は、NK細胞組成物を提供し、このNK細胞には、1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(tg-TCR)が含まれる。典型的な実施形態では、CAR又はtg-TCRは、HER2への結合能を有する。一部の実施形態では、NK細胞は、HER2への結合能を有するキメラ抗原受容体(CAR)を2つ含む。一部の実施形態では、NK細胞は、HER2への結合能を有するキメラ抗原受容体(CAR)を2つ含み、これらのCARは、同じでない。特定の実施形態では、NK細胞は、HER2への結合能を有するキメラ抗原受容体(CAR)を2つ含み、これらの2つのCARは、異なる活性化、共刺激、膜貫通、ヒンジ又は結合ドメイン(例えば、scFvドメイン)の使用に起因して同じでない。
【0047】
一部の実施形態では、CARは、抗体、抗体ドメイン又は抗体断片を含む。典型的な実施形態では、CARは、HER2への結合能を有する少なくとも1つのscFv又はFabを含む。
【0048】
典型的な実施形態では、CARは、少なくとも1つのヒンジドメインを含む。一部の実施形態では、ヒンジドメインは、CD28又はCD8から選択される。
【0049】
典型的な実施形態では、CARは、少なくとも1つの膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28、CD8又はNK2Dから選択される。典型的な実施形態では、CARは、少なくとも1つのヒンジドメインと少なくとも1つの膜貫通ドメインとを含む。
【0050】
一部の実施形態では、CARは、共刺激ドメインを含む。特定の実施形態では、共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、2B4、CD3ゼータR、OX40、Lsk、ICOS、DAP10及びIgE受容体IgのFc断片の共刺激ドメインから選択される。特定の実施形態では、CARは、少なくとも1つのヒンジドメインと、少なくとも1つの膜貫通ドメインと、少なくとも1つの共刺激ドメインとを含む。
【0051】
一部の実施形態では、CARは、活性化ドメインを含む。特定の実施形態では、活性化ドメインは、CD3ζ、FcR-γ及びFc-イプシロン-Rから選択される。特定の実施形態では、CARは、少なくとも1つのヒンジドメインと、少なくとも1つの膜貫通ドメインと、少なくとも1つの共刺激ドメインと、少なくとも1つの活性化ドメインとを含む。
【0052】
一部の実施形態では、有核細胞集団中の細胞は、ケモカイン受容体又は変異体ケモカイン受容体を更に含む。一部の実施形態では、ケモカイン受容体は、CXCR4又は変異体CXCR4である。一部の実施形態では、変異体CXCR4は、CXCR4R334X変異体である。一部の実施形態では、変異体CXCR4は、配列番号40である。
【0053】
特定の実施形態では、CARは、シグナルペプチド又はリーダーペプチドを更に含む。
【0054】
本開示のNK細胞画分
本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を含む組成物を提供する。
【0055】
一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約1.0×106個、又は少なくとも約5.0×106個、又は少なくとも約1.0×107個、又は少なくとも約5.0×107個、又は少なくとも約1.0×108個、又は少なくとも約5.0×108個、又は少なくとも約1.0×109個、又は少なくとも約5.0×109個、又は少なくとも約1.0×1010個、又は少なくとも約5.0×1010個、又は少なくとも約1.0×1011個、又は少なくとも約5.0×1011個、又は少なくとも約1.0×1012個、又は少なくとも約5.0×1012個の有核細胞を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約1.0×106個の細胞を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約17.5×108個の細胞を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約35×108を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約2.5×109個の細胞を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約5×109個の細胞を含み得る。
【0056】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%が生細胞である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約70%が生細胞である。
【0057】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%がCD56+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+である。
【0058】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約80%~約99%、又は約85%~約95%、又は約90~約95%がCD56+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約90~約95%がCD56+である。
【0059】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%以下、又は約0.2%以下、又は約0.3%以下、又は約0.4%以下、又は約0.5%以下、又は約0.6%以下、又は約0.7%以下、又は約0.8%以下、又は約0.9%以下、又は約1.0%以下がCD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の0.5%以下がCD3+である。
【0060】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.5%又は約0.2%~約0.3%がCD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.2%~約0.3%がCD3+である。
【0061】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%がCD56+/CD3-である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+/CD3-である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約99%がCD56+/CD3-である。
【0062】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約80%~約99%、又は約85%~約95%、又は約90~約95%がCD56+/CD3-である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約90~約95%がCD56+/CD3-である。
【0063】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%以下、又は約0.2%以下、又は約0.3%以下、又は約0.4%以下、又は約0.5%以下、又は約0.6%以下、又は約0.7%以下、又は約0.8%以下、又は約0.9%以下、又は約1.0%以下がCD56-/CD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の0.5%以下がCD56-/CD3+である。
【0064】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.5%又は約0.2%~約0.3%がCD56-/CD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.2%~約0.3%がCD56-/CD3+である。
【0065】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約25%以下がCD19+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がCD19+である。
【0066】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約25%以下がCD14+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がCD14+である。
【0067】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約15%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約25%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約45%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%がCD62L+であるか、又は有核細胞集団中の細胞の少なくとも80%がCD62L+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%がCD62L+である。
【0068】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約10%以下、又は約20%以下、又は約30%以下、又は約40%以下、又は約50%以下、又は約60%以下、又は約65%以下、又は約70%以下、又は約75%以下がLAG3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約70%以下がLAG3+である。
【0069】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%がTRAIL+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%がTRAIL+である。
【0070】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%がDNAM1+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%がDNAM1+である。
【0071】
前述の表現型パラメータのいずれも、他の前述の表現型パラメータのいずれかと組み合わせることができる。
【0072】
従って、非限定的な例では、本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×106個の有核細胞を含み、集団中の細胞の少なくとも約70%は、生細胞であり、
集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり;
集団中の細胞の約0.5%以下がCD3+であり;
集団中の細胞の約10%以下がCD19+であり;
集団中の細胞の約10%以下がCD14+であり;
集団中の細胞の少なくとも約60%がCD62L+であり;
集団中の細胞の約70%以下がLAG3+であり;
集団中の細胞の少なくとも約60%がTRAIL+であり;
集団中の細胞の少なくとも約60%がDNAM1+である。
【0073】
本開示は、本明細書に記載されるNK細胞画分のいずれかとDMSOとを含む、凍結保存されたNK細胞画分も提供する。一部の態様では、DMSO濃度は、約1%v/v、又は約2%v/v、又は約3%v/v、又は約4%v/v、又は約5%v/v、又は約6%v/v、又は約7%v/v、又は約8%v/v、又は約9%v/v、又は約10%v/v、又は約11%v/v、又は約12%v/v、又は約13%v/v、又は約14%v/v、又は約15%v/vであり得る。一部の態様では、DMSO濃度は、約10%v/vであり得る。
【0074】
一部の態様では、凍結保存されたNK細胞画分は、少なくとも約1ヵ月、又は少なくとも約2ヵ月、又は少なくとも約3ヵ月、又は少なくとも約4ヵ月、又は少なくとも約5ヵ月、又は少なくとも約6ヵ月、又は少なくとも約7ヵ月、又は少なくとも約9ヵ月、又は少なくとも約10ヵ月、又は少なくとも12ヵ月にわたって安定していることができる。一部の態様では、凍結保存されたNK細胞画分は、約-80℃で少なくとも約1ヵ月、又は少なくとも約2ヵ月、又は少なくとも約3ヵ月、又は少なくとも約4ヵ月、又は少なくとも約5ヵ月、又は少なくとも約6ヵ月、又は少なくとも約7ヵ月、又は少なくとも約9ヵ月、又は少なくとも約10ヵ月、又は少なくとも12ヵ月にわたって安定可能である。
【0075】
本開示の効力アッセイ
本開示は、第1の効力アッセイであって、
a)本開示のNK CAR細胞画分及び複数の標的細胞をインキュベートするステップであって、複数の標的細胞が少なくとも1つの増殖染色剤で染色される、ステップと、
b)複数の標的細胞における細胞死率を決定するステップと
を含むアッセイを提供する。
【0076】
第1の効力アッセイの一部の態様では、ステップ(a)のインキュベーション条件は、少なくとも1つの抗癌療法用モノクローナル抗体を更に含み得る。
【0077】
第1の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、SKOV3細胞であり得る。
【0078】
第1の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、A549細胞であり得る。第1の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、RPMI-8226、CAG及びU266、Raji又はK562であり得る。
【0079】
第1の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、SKOV3細胞又はA549細胞であり得、ステップ(a)のインキュベーション条件は、ハーセプチンを更に含み得る。一部の態様では、ハーセプチンは、約1μg/ml又は10μg/mlの濃度で存在し得る。
【0080】
当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイのステップ(b)における複数の標的細胞における細胞死率を決定するステップは、細胞死率を決定するための当技術分野で公知の任意の標準技法を用いて達成することができる。非限定的な例では、複数の標的細胞における細胞死率を決定するステップは、i)ステップ(a)でインキュベートしたNK細胞画分及び複数の標的細胞を少なくとも1つの生死判別染色剤で染色することと、ii)蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて複数の標的細胞をNK細胞画分と分離することと、iii)生死判別染色剤を使用して、ステップ(ii)で分離されて選別された複数の標的細胞における細胞死率を決定することとを含み得る。
【0081】
一部の態様では、少なくとも1つの増殖染色剤は、カルボキシフルオレセイン二酢酸塩、スクシンイミジルエステル(CFSE)であり得る。当業者であれば理解するであろうとおり、本明細書に記載される第1の効力アッセイでは、当技術分野で公知の任意の増殖染色剤を使用することができる。
【0082】
一部の態様では、少なくとも1つの生死判別染色剤は、Helix NP(商標)ブルー(別名Sytox(商標)ブルー)であり得る。当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイには、当技術分野で公知の任意の増殖染色剤を使用することができる。
【0083】
一部の態様では、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるインキュベーションは、約37℃で実施することができる。
【0084】
一部の態様では、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるインキュベーションは、少なくとも約3時間にわたって実施することができる。
【0085】
一部の態様では、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるNK細胞画分の細胞数と複数の標的細胞の細胞数との比は、約2.5:1、又は約3:1、又は約5:1、又は約10:1であり得る。
【0086】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がSVO3細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、5:1のE:T比で標的細胞における細胞死率が少なくとも40%であることを特徴とし得る。一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がSVO3細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、5:1のE:T比で標的細胞における細胞死率が少なくとも50%であることを特徴とし得る。一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がSVO3細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、1:1のE:T比で標的細胞における細胞死率が少なくとも35%であることを特徴とし得る。
【0087】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がSKOV3又はA549細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、1:1又は5:1のE:T比で標的細胞における細胞死率が少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%であることを特徴とし得る。
【0088】
本開示は、第2の効力アッセイを提供し、このアッセイは、
a)本開示のNK細胞画分及び複数の標的細胞をインキュベートするステップであって、NK細胞画分が、検出可能標識を含む少なくとも1つの抗CD107α抗体で染色される、ステップと、
b)ステップ(a)でインキュベートしたNK細胞画分及び複数の標的細胞を1つ以上のタンパク質輸送阻害薬で処理し、且つNK細胞画分及び複数の標的細胞を更にインキュベートするステップと、
c)NK細胞画分及び複数の標的細胞を、
少なくとも1つの生死判別染色剤、
検出可能標識を含む少なくとも1つの抗CD56抗体
で染色するステップと、
d)NK細胞画分及び複数の標的細胞を固定するステップと、
e)NK細胞画分及び複数の標的細胞を透過処理するステップと、
f)NK細胞画分及び複数の標的細胞を、
i)検出可能標識を含む抗IFNγ抗体、
ii)検出可能標識を含む抗TNFα抗体、
iii)検出可能標識を含む抗GM-CSF抗体、
iv)検出可能標識を含む抗MIP1アルファ抗体、
v)検出可能標識を含む抗MIP1ベータ抗体、
vi)検出可能標識を含む抗CD62L抗体、
vii)検出可能標識を含む抗TRAIL抗体、
viii)vii)検出可能標識を含む抗DNAM1抗体、
IX)vii)検出可能標識を含む抗DNAM1抗体
のいずれか1つで染色するステップと、
g)下記
g1)少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CD107α抗体でも染色される割合(即ちCD107a+/CD56+細胞数÷CD56+細胞数×100%);
g2)少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗IFNγ抗体でも染色される割合(即ちIFNγ+/CD56+細胞数÷CD56+細胞数×100%);及び
g3)少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗TNFα抗体でも染色される割合(即ちTNFα+/CD56+細胞数÷CD56+細胞数×100%)
の少なくとも1つを決定するステップとを含む。
【0089】
第2の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、SKOV3細胞であり得る。
【0090】
第2の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、A549細胞であり得る。
【0091】
一部の態様では、少なくとも1つの生死判別染色剤は、Zombie Violet(商標)生死判別色素であり得る。当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイには、当技術分野で公知の任意の増殖染色剤を使用することができる。
【0092】
一部の態様では、1つ以上のタンパク質輸送阻害薬は、ブレフェルジン、GolgiStop(商標)タンパク質輸送阻害剤(BD社)、ブレフェルジンとGolgiStop(商標)タンパク質輸送阻害剤との組み合わせ又は当技術分野で公知の任意の他のタンパク質輸送阻害薬を含み得る。
【0093】
第2の効力アッセイの一部の態様では、ステップ(b)の更なるインキュベーションは、約37℃で実施される。
【0094】
第2の効力アッセイの一部の態様では、ステップ(b)の更なるインキュベーションは、少なくとも約37℃について実施される。
【0095】
当業者であれば理解するであろうとおり、ステップ(g)の少なくとも1つ(g1)~(g3)の決定は、限定されないが、蛍光活性化細胞選別(FACS)を含む、検出可能標識を含む抗体で標識された細胞の割合を決定するための当技術分野で公知の任意の標準技法を用いて達成することができる。
【0096】
第2の効力アッセイの一部の態様では、ステップ(g)は、(g1)~(g3)の各々を決定することを含み得る。
【0097】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がSKOV3細胞である場合、上記に記載される第2の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CD107α抗体でも染色される割合が少なくとも60%(1:3のE:T比)であることを特徴とし得る。
【0098】
本発明の一態様によれば、HER2への結合能を有するキメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(tg-TCR)を発現するナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団を、
(i)細胞増殖を可能にする条件下でNK細胞集団を培養するステップであって、条件が、有効量の栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを提供することを含むステップと、
(ii)ステップ(i)の5~10日後に、NK細胞集団に有効量の新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給して、増殖したNK細胞を作製するステップと
を含む方法によって増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び
(b)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中における、HER2への結合能を有するCAR又はtg-TCRの発現を上方制御し、それによりHER2への結合能を有するCAR又はtg-TCRを発現するNK細胞を作製すること
を含む方法が提供される。
【0099】
本明細書で使用されるとき、用語「ナチュラルキラー細胞」又は「NK細胞」は、自然免疫応答に関与する大型顆粒リンパ球を指す。機能的には、NK細胞は、パーフォリン及びグランザイムプロテアーゼを含む、種々のタンパク質を含有する細胞質顆粒のエキソサイトーシスを介した種々の標的に対する細胞溶解活性を呈する。殺傷は、接触に依存した非貪食過程で惹起され、この過程に抗原への事前感作は必要ない。
【0100】
ヒトNK細胞は、細胞表面マーカーCD16及びCD56の存在並びにT細胞受容体(CD3)の欠如を特徴とする。ヒト骨髄由来のNK細胞は、CD2+CD16+CD56+CD3-表現型であり、更に典型的にはT細胞受容体ゼータ鎖[ゼータ-TCR]を有することを更に特徴とし、多くの場合にNKp46、NKp30又はNKp44の存在を特徴とする。NKT細胞又はCD8NKTなど、非NK細胞は、T細胞及びNK細胞の両方の特徴及び細胞表面マーカーを備えている(例えば、CD3の発現)。
【0101】
一実施形態では、NK細胞集団は、成熟NK細胞を含む。本明細書で使用されるとき、用語「成熟NK細胞」は、特徴的な表面マーカー及びNK細胞機能を有し、且つ更なる分化の可能性がない、コミットしたNK細胞として定義される。本明細書で使用されるとき、成熟NK細胞としては、限定されないが、増殖し、且つ多量のサイトカインを産生することのできるCD56bright細胞、ロバストな細胞傷害性を呈するCD56dim細胞、CD56brightCD94high及びCD56dimCD94high細胞が挙げられる。CD56、CD3、CD94及び他のマーカーの細胞表面発現は、例えば、FACS分析又は免疫組織染色技法により決定することができる。
【0102】
別の実施形態では、NK細胞集団は、NK前駆細胞又はNK前駆細胞と成熟NK細胞との混合集団を含む。本明細書で使用されるとき、用語「前駆体」は、分裂する能力及び/又は1つ又は複数の成熟エフェクター細胞への分化を起こす能力のある未熟細胞を指す。リンパ球前駆体には、例えば、B細胞、T細胞及びNK系統の成熟細胞を生じさせる能力のある多能性造血幹細胞が含まれる。B細胞系統では(即ち成熟B細胞を生じさせる発生経路にある)、前駆細胞には、免疫グロブリン遺伝子再配列及び発現を特徴とするプロB細胞及びプレB細胞も含まれる。T及びNK細胞系統では、前駆細胞には、骨髄由来の二分化能T/NK細胞前駆体[例えば、CD34(+)CD45RA(hi)CD7(+)及びCD34(+)CD45RA(hi)Lin(-)CD10(+)細胞]並びに胸腺内前駆細胞であって、ダブルネガティブ(CD4及びCD8に関して)及びダブルポジティブ胸腺細胞(T細胞系統)を含むもの並びにコミットしたNK細胞前駆体も含まれる。
【0103】
本発明の一部の実施形態のNK細胞は、単離された細胞である。
【0104】
用語「単離された」は、天然の環境、例えば組織、例えば人体から少なくとも部分的に分離されていることを指す。
【0105】
用語「NK細胞集団」は、異なる成熟度段階にあるか、異なるシグネチャを有するか又は異なる機能を有するなど、不均一なNK細胞混合物を指す。
【0106】
本発明の一部の実施形態のNK細胞は、かかる細胞を含む任意の供給源に由来し得る。NK細胞は、多くの組織に見られ、例えばリンパ節、脾臓、肝臓、肺、腸、脱落膜から入手することができ、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)からも入手することができる。典型的には、異種リンパ球細胞集団を含有する臍帯血、末梢血、動員末梢血及び骨髄(例えば、CD34+細胞)が、研究及び臨床使用向けのNK細胞を多数提供するために使用されている。
【0107】
一実施形態によれば、NK細胞は、末梢血から入手される。
【0108】
本教示によれば、任意の採血方法を用いることができる。例えば、血液分画の収集によく用いられる方法は、アフェレーシスであり、ドナーの全血が血液成分(例えば、血漿、白血球及び赤血球)に典型的には遠心によって分離され、選択された成分が操作(例えば、白血球画分の培養)のために抜き取られ、残りは、ドナーに戻される。多くの好適なアフェレーシス装置が市販されている。典型的には、アフェレーシスは、ドナーの末梢血からの血液成分の分離に適用される。
【0109】
「バフィーコート」又はアフェレーシスユニットなど、リンパ球画分を処理して、特異的な限定された細胞集団を濃縮又は精製又は単離することができる。用語「精製する」及び「単離する」は、絶対的な純粋さを要求するものではなく、むしろ、これらは、相対的に見たものとして意図される。従って、例えば、精製されたリンパ球集団とは、指定された細胞が、かかる細胞がその供給源組織中にあるよりも一層濃縮されているものである。実質的に純粋なリンパ球の調製物は、その調製物中に存在する総細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%又はそれを超えるものを所望の細胞(例えば、NK細胞)が占めるように濃縮され得る。リンパ球の濃縮、精製及び単離方法は、当技術分野で周知であり、適切な方法は、所望の集団に基づき選択することができる。例えば、リンパ球の濃縮は、FICOLL-HYPAQUE(商標)及び全リンパ球、T細胞又はNK細胞の濃縮のために配合された他の密度勾配液など、望ましくない細胞のネガティブ選択のための市販の調製品を使用して実施することができる。
【0110】
血液、骨髄、リンパ球調製物(例えば、アフェレーシスユニット)又は組織試料からNK細胞を選択する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Litwin et al.による米国特許第5,770,387号明細書(これは、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照されたい)。最も多く用いられているのは、通常、単核球分画及びCD3+、CD19+、CD14+、CD34+及び/又はCD133+細胞などの非NK細胞の枯渇後のCD56+細胞の単離及び精製に基づくプロトコルである。2つ以上のプロトコルの組み合わせを用いて、非NK夾雑物から高い純度を有するNK細胞集団を提供し得る。T細胞及びNKT細胞などの非NK細胞は、移植片対宿主病(GVHD)など、NK細胞移植の潜在的利益を損なう抗原特異的反応の一因となるため、NK細胞調製物の純度は、臨床適用に非常に重要である。NK細胞を単離するための市販のキットには、一段階手順(例えば、カリフォルニア州オーバーン、Miltenyi Biotec社のCD56マイクロビーズ及びCD56+、CD56+CD16+単離キット)並びにCD3+の枯渇若しくは部分的枯渇又はT細胞(例えば、OKT-3)、B細胞、幹細胞、樹状細胞、単球、顆粒球及び赤血球系細胞を認識して除去する非NK細胞抗体による枯渇を含む多段階手順が含まれる。
【0111】
表現型によるNK細胞の選択方法としては、限定されないが、免疫検出及びFACS分析が挙げられる。具体的な実施形態では、NK細胞集団は、例えば、CliniMACS(LSカラム、Miltenyi Biotec社)を使用した免疫磁気選択法により、CD3+細胞、CD14+細胞、CD19+細胞等が枯渇されるか又はCD56+細胞が選択される。
【0112】
このように、特定の実施形態では、NK細胞集団は、NK細胞に関して選択又は濃縮され、CD3枯渇NK細胞画分となり得る。
【0113】
別の実施形態によれば、NK細胞集団は、NK細胞に関して選択又は濃縮され、CD56+ NK細胞画分となり得る。
【0114】
一実施形態によれば、NK細胞集団は、CD56+CD16+CD3-細胞及び/又はCD56+CD16-CD3-細胞を含む。
【0115】
具体的な実施形態では、培養開始時に(即ちex vivo増殖前に)NK細胞を含む細胞集団は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又はそれを超えるCD3-/CD56+細胞を含む。
【0116】
具体的な実施形態では、培養開始時にNK細胞を含む細胞集団は、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又はそれを超えるCD3-/CD56+細胞を含む。
【0117】
一部の実施形態では、培養開始時にNK細胞を含む細胞集団は、10%~30%のCD3-/CD56+細胞、10%~50%のCD3-/CD56+細胞、20%~40%のCD3-/CD56+細胞、20%~60%のCD3-/CD56+細胞、30%~50%のCD3-/CD56+細胞、30%~70%のCD3-/CD56+細胞、40%~60%のCD3-/CD56+細胞、40%~80%のCD3-/CD56+細胞、50%~70%のCD3-/CD56+細胞、50%~90%のCD3-/CD56+細胞、60%~80%のCD3-/CD56+細胞、60%~100%のCD3-/CD56+細胞、70%~90%のCD3-/CD56+細胞又は80%~100%のCD3~/CD56+細胞を含む。
【0118】
培養開始時、NK細胞を含む細胞集団は、残留する単球、B細胞、T細胞、樹状細胞などを含み得るが、これらは、ex vivo培養の経過を通して取り除かれることが理解されるであろう。
【0119】
一部の実施形態では、NK細胞集団は、赤血球を欠いている。このように、一部の実施形態では、CD3+/CD14+/CD19+細胞枯渇又はCD56+細胞選択前又はその後、NK細胞画分は、培養前の赤血球(RBC)溶解を受ける。具体的な実施形態では、赤血球溶解は、塩化アンモニウムカリウム(ACK)緩衝液(Gibco社、Thermo Fischer Scientific社)を使用して達成される。
【0120】
一部の実施形態によれば、NK細胞は、新鮮な細胞集団から培養することができる一方、他の実施形態は、貯蔵されていた細胞集団(凍結保存されていて解凍された細胞など)又は以前に培養されたことのある細胞集団からNK細胞を培養する。
【0121】
一実施形態によれば、本方法は、NK細胞集団を増殖することを含む。
【0122】
用語「増殖させた」は、NK細胞集団に関するとき、細胞の生存能力又は機能性に負の影響を及ぼすことのない、ex vivo又はin vitro増殖(増殖)を通したNK細胞数の増加を指す。
【0123】
一実施形態によれば、本発明の一部の実施形態のNK細胞の増殖倍数は、2~12、例えば3~11、例えば4~10(即ち0日目から14~16日目までの培養)である。
【0124】
NK細胞の増殖は、典型的には、ex vivo細胞培養物中で生じる。
【0125】
先行研究によれば、NK細胞を成長因子及びニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分と共に培養すると、サイトカインと共に、但しニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分を0.1mM未満として培養した細胞と比較したとき、早ければ7日間ほど又は長ければ3週間ほどで優先的な増殖及び/又は機能が亢進したことが実証されている(国際公開第2011/080740号パンフレットを参照されたい)。免疫療法に臨床的に好適なNK細胞の調製では、長い培養時間をかける必要なしに、増殖させたNK細胞の治療的に有利な機能性は保持しつつ、大幅なex vivoのNK細胞増殖を提供することが望ましい。
【0126】
一実施形態によれば、NK細胞の増殖は、7~30日、7~25日、7~21日、7~14日、10~24日、10~21日、10~18日、10~15日、10~12日、12~21日、12~18日、12~15日、14~21日、14~18日、14~16日、14~15日、16~21日、16~18日又は18~21日の期間にわたって生じる。詳細な実施形態では、NK細胞の増殖は、12~16日の期間にわたって生じる。詳細な実施形態では、NK細胞の増殖は、12~14日の期間にわたって生じる。
【0127】
具体的な実施形態によれば、NK細胞の増殖は、12~18日の期間にわたって生じる。
【0128】
具体的な実施形態によれば、NK細胞の増殖は、14~16日の期間にわたって生じる。
【0129】
NK細胞のex vivo培養は、本発明のこの態様によれば、NK細胞にex vivoで細胞増殖条件を提供し、且つNK細胞をニコチンアミド部分と共にex vivo培養することにより、NK細胞集団のex vivoにおける増殖を達成することができる。
【0130】
本明細書で使用されるとき、「培養すること」には、NK細胞の維持に要求される化学的及び物理的条件(例えば、温度、ガス)並びに栄養素及び成長因子を提供することが含まれる。一実施形態では、NK細胞を培養することには、NK細胞にNK細胞増殖条件を提供することが含まれる。NK細胞増殖を支持し得る化学的条件の例としては、限定されないが、緩衝液、栄養素、血清、ビタミン及び抗生物質並びにサイトカイン及び他の成長因子が挙げられ、これらは、典型的には、成長(即ち培養)培地中に提供される。詳細な実施形態では、細胞増殖条件は、栄養素、血清及び1つ又は複数のサイトカインを含む。具体的な実施形態によれば、成長因子は、例えば、IL-15、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、SCF及びFLT3を含む。
【0131】
一実施形態によれば、細胞増殖を可能にする条件は、NK細胞を1日毎、1.25日毎、1.5日毎、1.75日毎又は2.0日毎に倍加させることが可能である。
【0132】
一実施形態では、NK培養培地には、最小必須培地(MEM)、例えばMEMα(イスラエル国、ベイト・ハエメク、BI社)及び血清が含まれる。一部の実施形態では、血清は、培養培地の2~20%、5~15%又は5~10%で提供される。具体的な実施形態では、血清は、ヒト血清であり、培養培地の10%で提供される。詳細な実施形態では、培養培地は、10%ヒトAB血清(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)を含むMEMαである。本発明での使用に好適な他の培地としては、限定されないが、Glascow培地(カリフォルニア州、カールスバッド、Gibco社)、RPMI培地(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)又はDMEM(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)が挙げられる。培養培地の多くは、例えば、MEMα(8.19mMのニコチンアミド)、RPMI(8.19pMのニコチンアミド)、DMEM(32.78pMのニコチンアミド)及びGlascow培地(16.39pMのニコチンアミド)など、ビタミンサプリメントとしてニコチンアミドを含有しているが、本発明の方法は、培地の配合に含まれる任意のニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分を補給するものであるか、又は培地成分濃度の全体的な調整から生じるものである外因的に加えるニコチンアミドに関することが注記されるであろう。
【0133】
一実施形態によれば、細胞増殖を可能にする条件下でのNK細胞の培養は、細胞に栄養素、血清及びサイトカインを提供することを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの成長因子としては、サイトカイン及び/又はケモカイン(例えば、IL-15、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、SCF及びFLT3)が挙げられる。サイトカイン及び他の成長因子は、典型的には、0.5~100ng/ml又は1.0~80ng/ml、より典型的には5~750ng/ml、更により典型的には5.0~50ng/mlの範囲の濃度で提供され(最高でかかる濃度の10倍が企図され得る)、例えば米国ニュージャージー州ロッキー・ヒルのPerpo Tech,Inc.から市販されている。一実施形態では、細胞増殖を可能にする条件には、サイトカインインターロイキン15(IL-15)を提供することが含まれる。具体的な実施形態では、NK細胞集団は20ng/mlのIL-15と共に培養される。
【0134】
更に、この点で新規のサイトカインが絶えず発見され続け、その一部は、本発明のNK細胞増殖方法における使用が見出され得ることが理解されるであろう。
【0135】
培養培地は、典型的には、限定されないが、ゲンタマイシン、ペニシリン又はストレプトマイシンなどの抗生物質も含む。
【0136】
細胞がヒト対象に導入される(又は再導入される)ような適用向けには、多くの場合、リンパ球培養のためのAIM v(登録商標)無血清培地又はMARROWMAX(登録商標)骨髄培地など、無血清製剤を使用することが好ましい。かかる培地製剤及びサプリメントは、Invitrogen(GIBCO)社(米国、カリフォルニア州、カールスバッド)など、商業的供給元から入手可能である。培養物にアミノ酸、抗生物質を補給し、且つ/又はサイトカインを補給すると、最適な生存能力、増殖、機能性及び/又は生存が促進される。
【0137】
一実施形態によれば、NK細胞集団は、栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-15)及びニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分と共に培養される。本明細書で使用されるとき、用語「ニコチンアミド部分」は、ニコチンアミドを指すと共に、ニコチンアミドに由来する産物、その誘導体、類似体及び代謝産物、例えばNAD、NADH及びNADPHなど、NK細胞増殖及び/又は活性化を有効且つ優先的に亢進させる能力のあるものも指す。ニコチンアミド誘導体、類似体及び代謝産物は、培養下でのex vivoのNK増殖に対するその効果に関して、後述するとおり維持されているNK培養物に加えることによるか、殺傷及び運動性アッセイなどの機能アッセイに加えるか、又は当技術分野で周知の且つ以下で更に考察するハイスループットアッセイのために設計される自動化されたスクリーニングプロトコルにおいてスクリーニングし、評価することができる。
【0138】
本明細書で使用されるとき、語句「ニコチンアミド類似体」は、上述の又は同様のアッセイでニコチンアミドと同様に作用することが公知の任意の分子を指す。ニコチンアミド類似体の代表的な例としては、限定なしに、ベンズアミド、ニコチンチオアミド(ニコチンアミドのチオール類似体)、ニコチン酸及びα-アミノ-3-インドールプロピオン酸を挙げることができる。
【0139】
語句「ニコチンアミド誘導体」は、ニコチンアミド自体の又はニコチンアミドの類似体の任意の構造的誘導体を更に指す。かかる誘導体の例としては、限定なしに、置換ベンズアミド類、置換ニコチンアミド類及びニコチンチオアミド類並びにN-置換ニコチンアミド類及びニコチンチオアミド類、3-アセチルピリジン及びニコチン酸ナトリウムが挙げられる。本発明の詳細な一実施形態では、ニコチンアミド部分は、ニコチンアミドである。
【0140】
本発明の一部の実施形態における使用に好適なニコチンアミド又はニコチンアミド部分の濃度は、典型的には、約0.5mM~約50mM、約1.0mM~約25mM、約1.0mM~約15mM、約1.0mM~約10mM、約2.5mM~約20mM、約2.5mM~約10mM、約5.0mM~約10mMの範囲である。ニコチンアミドの例示的な有効濃度は、それらの濃度のニコチンアミドが増殖及びNK細胞機能に及ぼす効果に基づいて約0.5mM~約15mM、1.0mM~約10.0mM、典型的には2.5、5.0又は7.0mMであり得る。
【0141】
本発明の具体的な実施形態によれば、ニコチンアミドは、約0.5、約0.75、約1.0、約1.25、約1.5、約1.75、約2.0、約2.25、約2.5、約2.75、約3.0、約3.25、約3.5、約3.75、約4.0、約4.25、約4.5、約4.75、約5.0、約5.25、約5.5、約5.75、約6.0、約6.25、約6.5、約6.75、約7.0、約7.25、約7.5、約7.75、約8.0、約8.25、約8.5、約8.75、約9.0、約9.25、約9.5、約9.75、約10.0、約11.0、約12.0、約13.0、約14.0、約15.0、約16.0、約17.0、約18.0又は約20.0mMの濃度(mM)で提供される。あらゆる有効な中間濃度が企図される。具体的な実施形態では、増殖を可能にする条件は、1.0~10.0mMのニコチンアミドを含む。具体的な実施形態では、増殖を可能にする条件は、5.0mMのニコチンアミドを含む。他の具体的な実施形態では、増殖を可能にする条件は、7.0mMのニコチンアミドを含む。
【0142】
ニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分の好適な濃度は、NK増殖及び/又は活性、例えば細胞培養又は機能についての任意のアッセイにより決定することができる。ニコチンアミドの好適な濃度は、培養にそれを用いると、ニコチンアミドが0.1mM未満の、同じNK細胞供給源(例えば、臍帯血、骨髄又は末梢血調製物)から試験した「対照」培養物と比較して、同じアッセイ及び同様の培養条件下において(ニコチンアミドへの曝露継続期間、ニコチンアミドへの曝露タイミング)、培養下にあるNK細胞の増殖及び/又は機能が「亢進」するか又はその正味の増加が起こるような濃度である。
【0143】
一部の研究では、栄養素、血清、サイトカイン及びニコチンアミドと共に培養することによって精製NK細胞をex vivoで増殖させると、培養期間中の培地の補充又は操作が不要になるとされる一方、他の研究は、NK細胞培養中における種々の間隔を置いた培養培地の補充(「再供給」)を提唱している。本発明の特定の実施形態では、NK細胞集団は、培養期間中に「再供給」される。このように、具体的な実施形態では、NK細胞を増殖することは、ex vivo培養の開始から8~10日後にNK細胞集団に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することを含む。一部の実施形態では、補給は、ex vivo培養の開始から4~12日後、ex vivo培養の開始から5~10日後又はNK細胞の培養の開始から6~9日後に提供される。
【0144】
一部の実施形態では、培養物中にあるNK細胞に補給すること(又は「再供給すること」)は、NK細胞培養物から培地を除去することを含まない。一部の実施形態では、補給すること(又は「再供給すること」)は、NK細胞培養物の培地の約30~80%、約40~70%又は約45~55%を除去すること及びそれを、除去した培地と同じ組成及びレベルの栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-15)及びニコチンアミドを有する同様の(例えば、均等な)容積の新鮮培地に交換することを含む。他の実施形態では、再供給後の培養容積は、NK細胞培養の開始(「播種」)時における元の培養容積のほぼ2倍に達する。
【0145】
NK細胞集団は、種々の方法及び装置を使用して培養することができる。培養機器の選択は、通常、培養の規模及び目的に基づく。細胞培養のスケールアップには、好ましくは専用の装置の使用が関わる。大規模な臨床グレードのNK細胞作製のための機器については、例えば、Spanholtz et al.(PLoS ONE (2010) 5:e9221)及びSutlu et al. (Cytotherapy (2010), Early Online 1-12)に詳説されている。一部の実施形態では、NK細胞の培養は、フラスコ内において、1フラスコ当たり100~4000×106細胞の細胞密度で生じる。具体的な実施形態では、NK細胞を培養すること(例えば、ex vivo培養の開始及び/又は「再供給すること」)は、フラスコ内において、1フラスコ当たり200~300×106細胞の細胞密度で生じる。特定の実施形態では、フラスコは、G-Rex培養装置(G-Rex 100M又は閉鎖系システムG-Rex MCS、ミネソタ州セントポール、WolfWilson社)など、ガス透過性膜を備えたフラスコである。
【0146】
G-Rex培養装置など、培養フラスコへのNK細胞集団の播種は、培養装置のサイズ及び容積に応じて様々な密度でもたらされ得る。当業者は、かかる決定を下す能力を有する。一実施形態によれば、NK細胞集団は、0.01×l06細胞/ml~10×l06細胞/ml、0.01×l06細胞/ml~7.5×l06細胞/ml、0.01×l06細胞/ml~5×l06細胞/ml、0.1×l06細胞/ml~10×l06細胞/ml、0.1×l06細胞/ml~7.5×l06細胞/ml、0.1×l06細胞/ml~5×l06細胞/ml、0.1×l06細胞/ml~2.5×l06細胞/ml、0.1×l06細胞/ml~1×l06細胞/ml、0.25×l06細胞/ml~10×l06細胞/ml、0.25×l06細胞/ml~7.5×l06細胞/ml、0.25×l06細胞/ml~5×l06細胞/ml、0.25×l06細胞/ml~2.5×l06細胞/ml又は0.25×l06細胞/ml~1×l06細胞/mlの密度で播種される。具体的な実施形態によれば、NK細胞集団は、0.25×l06細胞/ml~0.5×l06細胞/ml、例えば0.35×l06細胞/ml~0.4×l06細胞/mlの密度で播種される。
【0147】
培養フラスコ内の細胞の密度は、培養期間にわたる細胞の増殖に伴って増加することが理解されるであろう。このように、一部の実施形態では、培養下での増殖の経過にわたり、NK細胞集団のNK細胞は、1フラスコ当たり10~4000×106細胞、1フラスコ当たり25~4000×106細胞、1フラスコ当たり50~4000×106細胞、1フラスコ当たり100~4000×106細胞、1フラスコ当たり20~3000×106細胞、1フラスコ当たり100~3000×106細胞、1フラスコ当たり200~3000×106細胞、1フラスコ当たり30~2000×106細胞、1フラスコ当たり100~2000×106細胞、1フラスコ当たり300~2000×106細胞、1フラスコ当たり40~1000×106細胞、1フラスコ当たり100~1000×106細胞、1フラスコ当たり400~1000×106細胞、1フラスコ当たり100~800×106細胞、1フラスコ当たり250~800×106細胞、1フラスコ当たり100~600×106細胞又は1フラスコ当たり150~500×106細胞の細胞密度で培養される。具体的な実施形態では、フラスコ内での培養期間にわたり、NK細胞集団のNK細胞は、1フラスコ当たり100~3000×106細胞の細胞密度で培養される。
【0148】
NK細胞の培養は、フィーダー細胞又はフィーダー細胞層あり又はなしでもたらすことができる。一実施形態によれば、フィーダー細胞は、T細胞又は末梢血単核球(PBMC)を含む。具体的な実施形態によれば、フィーダー細胞は、照射細胞(即ち非増殖性細胞)、例えば照射T細胞又は照射末梢血単核球を含む。照射は、例えば、20~50Gy(例えば、20Gy、30Gy、40Gy、50Gy)、130KV、5mAでもたらされ得る。一実施形態によれば、フィーダー細胞が使用されるとき、培養物中のNK細胞とフィーダー細胞との比は、1:1、1:2、1:3、2:1又は3:1であり得る。具体的な実施形態によれば、培養物中のNK細胞とフィーダー細胞との比は、1:1である。
【0149】
具体的な実施形態によれば、T細胞又はPBMC(例えば、照射T細胞又は照射PBMC)がフィーダー細胞として使用されるとき、フィーダー細胞層にあるT細胞からのNK細胞増殖に有益な成長因子の分泌を刺激するため、培養物にCD3アゴニストが更に補給される。本発明の一部の実施形態の方法における使用に好適なCD3アゴニストとしては、限定されないが、OKT-3、mAb 145-2C11、MGA031及びChAglyCD3など、抗CD3モノクローナル-CD3アゴニスト抗体が挙げられる。
【0150】
一実施形態によれば、本方法は、ex vivoで増殖させたNK細胞集団中における、HER2への結合能を有するCAR又はtg-TCRの発現を上方制御することを含む。
【0151】
本明細書で同義的に使用されるとおりの用語「HER2」、「ERBB2」又は「HER-2/neu」は、遺伝子記号「ERBB2」を有するerb-b2受容体型チロシンキナーゼ2(ERBB2)遺伝子の遺伝子産物又は例えばGeneBankアクセッション番号NP_001005862.1、NP_001276865.1及びNP_001276866.1(タンパク質)並びにNM_001005862.3、NM_001289936.2及びNM_001289937.2(mRNA)又はこれらのホモログを指す。
【0152】
HER2ポリペプチドは、受容体型チロシンキナーゼの上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーのメンバーである。HER2ポリペプチドは、典型的には、他のEGFRファミリーメンバーに結合してヘテロ二量体を形成することにより、リガンド結合を安定化させ、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ及びホスファチジルイノシトール-3キナーゼが関わるものなど、下流シグナル伝達経路のキナーゼ媒介性活性化を亢進させる。
【0153】
本明細書で使用されるとき、語句「発現を上方制御すること」とは、NK細胞上のCAR又はtg-TCRの発現を増加させることを指す。本発明の一部の実施形態のCAR又はtg-TCRは、NK細胞が天然に発現するものではない(即ち、外因性タンパク質である)。
【0154】
同じ培養条件について、発現は、概して、同じ種でありながら、CAR又はtg-TCRのmRNA及び/若しくはタンパク質レベルが増加するように修飾されていない細胞又は「対照」とも称される媒体対照と接触した細胞における発現と比較して表される。
【0155】
一実施形態によれば、CAR又はtg-TCRの発現を上方制御するとは、それぞれRT-PCR又はウエスタンブロットによって検出したときのmRNA及び/又はタンパク質のレベルを増加させることを指す。増加は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%又はそれを超え得る。
【0156】
CAR又はtg-TCRの発現の上方制御は、典型的には、転写物レベル又はタンパク質レベルで生じる。具体的な実施形態によれば、NK細胞上のCAR又はtg-TCRの発現の上方制御は、CAR又はtg-TCRをコードする外因性核酸(例えば、mRNA)をNK細胞に導入することによって生じる。このように、本発明の一部の実施形態のNK細胞は、CAR又はtg-TCRを発現するように修飾される。
【0157】
発現の上方制御は、一過性又は永続的のいずれでもあり得る。具体的な実施形態によれば、CAR又はtg-TCRの発現は、一過性である(即ち、細胞は、CAR又はtg-TCRの発現のためにそのゲノムが遺伝子修飾されない)。
【0158】
本明細書で使用されるとき、用語「トランスジェニックT細胞受容体」又は「tg-TCR」は、T細胞受容体(TCR)の特異性、即ち主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質によって提示される抗原ペプチド(即ち抗原)の認識を含む組換え分子を指す。典型的には、TCRは、細胞によってプロセシングされ、MHC複合体に負荷され、且つペプチド-MHC複合体として細胞膜に輸送された外来性(例えば、ウイルス)又は細胞(例えば、腫瘍)起源の抗原、即ちペプチドを認識する。
【0159】
本発明のtg-TCRは、典型的には、T細胞受容体(TCR)のアルファ鎖、TCRのベータ鎖、TCRのガンマ鎖、TCRのデルタ鎖又はこれらの組み合わせ(例えば、αβ鎖又はγδ鎖)など、2本の鎖(即ちポリペプチド鎖)を含む。tg-TCRのポリペプチドは、任意のアミノ酸配列を含み得るが、但し、そのtg-TCRは、以上に記載されるとおりの抗原特異性及びT細胞エフェクター機能を有するものとする。抗原特異性は、TCRヘテロ二量体によって(即ちαβ又はγδ鎖によって)決まることが理解されるであろう。
【0160】
これらの2本の鎖の各々は、典型的には、2つの細胞外ドメイン、即ち可変(V)領域と定常(C)領域とで構成されることが理解されるであろう。
【0161】
一実施形態によれば、tg-TCRは、TCRの可変領域を含む。具体的な実施形態によれば、tg-TCRは、TCRのα鎖及びβ鎖の可変領域を含む。別の具体的な実施形態によれば、tg-TCRは、TCRのγ鎖及びδ鎖の可変領域を含む。
【0162】
本発明の一部の実施形態によれば、tg-TCRの可変領域は、抗原への特異的結合能を有する相補性決定領域(CDR)を含む。CDRは、CDR1、CDR2、CDR3及び/又はCDR4のいずれから選択され得る。具体的な実施形態によれば、CDRは、tg-TCRの単一の鎖上に存在し、好ましくは、CDRは、両鎖上に存在する。
【0163】
一実施形態によれば、tg-TCRは、TCRの定常領域を含む。具体的な実施形態によれば、tg-TCRは、TCRのα鎖及びβ鎖の定常領域を含む。別の具体的な実施形態によれば、tg-TCRは、TCRのγ鎖及びδ鎖の定常領域を含む。
【0164】
tg-TCRの選択は、標的細胞のMHC-ペプチド複合体を定義する抗原の種類及び数に依存する。例えば、tg-TCRは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上のMHC-ペプチド複合体を認識するように選択され得る。このように、例えば、tg-TCRによる認識に関して抗原としての役割を果たし得るマーカーには、ウイルス、細菌及び寄生虫感染症並びに癌細胞に関連するものが含まれ得る。以下に例を提供する。
【0165】
tg-TCRの作成を成功させるには、初めに適切な標的配列を同定する必要がある。従って、抗原反応性T細胞(例えば、腫瘍反応性T細胞)からTCRが単離され得るか、又はそれが可能でない場合には代替的な技術を用い得る。例示的実施形態によれば、トランスジェニック動物(例えば、ウサギ又はマウス、好ましくはヒト-HLAトランスジェニックマウス)をヒト抗原ペプチド(例えば、腫瘍又はウイルス抗原)で免疫して、ヒト抗原に対するTCRを発現するT細胞を作成する[例えば、Stanislawski et al., Nat Immunol. (2001) 2(10):962-70に記載されるとおり]。別の例示的実施形態によれば、疾患(例えば、腫瘍)寛解を経験している患者から抗原特異的T細胞(例えば、腫瘍特異的T細胞)が単離され、それから反応性TCR配列が単離される[例えば、Witte et al., Blood (2006) 108(3):870に記載されるとおり]。
【0166】
別の例示的実施形態によれば、in vitro技術を用いて、標的抗原との反応性が弱い抗原特異的TCRのアビディティが亢進するように既存のTCRの配列が改変される(かかる方法については、以下に記載する)。
【0167】
一実施形態によれば、tg-TCRのシグナル伝達モジュールは、単一のサブユニット又は複数のシグナル伝達ユニットを含み得る。従って、本発明のtg-TCRは、抗原受容体会合に伴ってシグナル伝達を惹起するようにTCRと協力して機能する共受容体並びに同じ機能的能力を有するその任意の誘導体又は変異体を使用し得る。
【0168】
一実施形態によれば、TCRシグナル伝達モジュールは、CD3複合体(例えば、CD3鎖、例えばCD3δ/ε、CD3γ/ε及び/又はゼータ鎖、例えばζ/ζ又はζ/η)を含む。
【0169】
加えて又は代わりに、TCRシグナル伝達モジュールは、T細胞に追加のシグナルを提供するために共刺激ドメインを含み得る。これらは、本明細書で以下にCAR分子について詳細に考察する。
【0170】
一実施形態によれば、tg-TCRは、本明細書で以下にCAR分子について詳細に記載するとおりの膜貫通ドメインを含み得る。
【0171】
本明細書で使用されるとき、語句「キメラ抗原受容体(CAR)」は、特異的抗原に対して細胞免疫活性を呈するキメラタンパク質が作成されるように所望の抗原(即ちHER2)に対する特異性をT細胞受容体活性化細胞内ドメイン(即ちT細胞受容体シグナル伝達モジュール)と組み合わせる組換え分子を指す。典型的には、CARは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)とは独立に細胞表面に発現する抗原(例えば、タンパク質又は非タンパク質)を(内部抗原よりむしろ)認識する。
【0172】
このように、本発明のCARは、概して、抗原結合部分を含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、T細胞が抗原に対して効率的に反応するのに必要な細胞内ドメイン(即ちエンドドメインとも称される細胞質ドメイン)とを含む。
【0173】
抗原結合部分
一実施形態では、本発明のCARは、他の場合には抗原結合部分と称される標的特異的結合エレメントを含む。部分の選択は、標的細胞の表面を定義するリガンド(即ち、抗原)の種類及び数に依存する。例えば、抗原結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとしての役割を果たすリガンド(即ち抗原)を認識するように選択され得る。このように、本発明のCARにおいて抗原部分ドメインのリガンドとしての役割を果たし得る細胞表面マーカーの例としては、ウイルス、細菌及び寄生虫感染症並びに癌細胞に関連するものが挙げられる。
【0174】
本発明の一部の実施形態によれば、抗原結合部分は、抗原への特異的結合能を有する相補性決定領域(CDR)を含む。かかるCDRは、抗体から入手することができる。
【0175】
用語「抗体」には、本発明で使用されるとき、インタクトな分子並びに抗原への結合能を有する抗体断片から形成されるその機能性断片、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、線状抗体、scFv抗体及び多重特異性抗体が含まれる。これらの機能的抗体断片は、以下のとおり定義される:(1)Fab、抗体分子の一価抗原結合断片を有する断片、全抗体を酵素パパインで消化してインタクトな軽鎖及び一方の重鎖の一部分を生じさせることにより作製することができる、(2)Fab’、全抗体をペプシンで処理した後、続いて還元して、インタクトな軽鎖及び重鎖の一部分を生じさせることによって入手され得る抗体分子の断片であり、各抗体分子につき2つのFab’断片が得られる、(3)(Fab’)2、全抗体を酵素ペプシンで処理した後、続く還元がないことによって入手され得る抗体の断片であり、F(ab’)2は、2つのジスルフィド結合によって一体に保持された2つのFab’断片の二量体である、(4)Fv、2本の鎖として発現した軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを有する遺伝子操作された断片として定義されるもの、(5)単鎖抗体(「SCA」)、遺伝的に融合した単鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを有する遺伝子操作された分子、(6)CDRペプチドは、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである、及び(7)シングルドメイン抗体(ナノボディとも呼ばれる)、特異的抗原に選択的に結合する遺伝子操作された単一の単量体可変抗体ドメイン。ナノボディは、僅か12~15kDaの分子量のみを有し、これは、よく見られる抗体(150~160kDa)よりもはるかに小さい。
【0176】
「抗体重鎖」は、本明細書で使用されるとき、あらゆる抗体分子がその天然に存在するコンホメーションにあるときに存在する2種類のポリペプチド鎖の大きい方を指す。
【0177】
「抗体軽鎖」は、本明細書で使用されるとき、あらゆる抗体分子がその自然発生のコンホメーションにあるときに存在する2種類のポリペプチド鎖の小さい方を指す。カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0178】
用語「合成抗体」とは、本明細書で使用されるとき、例えば本明細書に記載されるとおりのバクテリオファージが発現する抗体など、組換えDNA技術を用いて作成される抗体を意味する。この用語は、抗体をコードするDNA分子であって、抗体タンパク質を発現するDNA分子又はその抗体を指定するアミノ酸配列の合成により作成されている抗体(ここで、DNA又はアミノ酸配列は、当技術分野で利用可能な周知の合成DNA又はアミノ酸配列技術を用いて入手されている)も意味すると解釈されなければならない。
【0179】
ポリクローナル及びモノクローナル抗体並びにその断片の作製方法は、当技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988(参照により本明細書に援用される)を参照されたい)。
【0180】
本発明に係る抗体断片は、抗体のタンパク質分解性加水分解によるか、又はその断片をコードするDNAをE. coli又は哺乳類細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物又は他のタンパク質発現システム)で発現させることにより調製され得る。抗体断片は、従来方法により全抗体のペプシン又はパパイン消化によって入手することができる。例えば、抗体断片は、抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)2と表される5S断片を提供することにより作製され得る。この断片は、チオール還元剤、任意選択でジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基のブロック化を使用して更に切断することができ、それにより3.5S Fab’一価断片が作製される。代わりに、ペプシンを用いた酵素的切断によって2つの一価Fab’断片及びFc断片が直接作製される。これらの方法については、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号明細書及び同第4,331,647号明細書及びそこに含まれる参考文献(これらの特許は、本明細書によって全体として参照により援用される)に記載されている。Porter, R. R.[Biochem. J. 73: 119-126 (1959)]も参照されたい。重鎖の分離による一価軽鎖-重鎖断片の形成、断片の更なる切断又は他の酵素的、化学的若しくは遺伝学的技法など、抗体を切断する他の方法も、インタクトな抗体が認識する抗原にそうした断片が結合する限り用いることができる。
【0181】
Fv断片は、VH鎖とVL鎖との会合を含む。この会合は、Inbar et al.[Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 69:2659-62 (19720]に記載されるとおり、非共有結合性であり得る。代わりに、これらの可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結され得るか、又はグルタルアルデヒドなどの化学物質によって架橋され得る。好ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーによって結び付けられたVH鎖とVL鎖とを含む。こうした単鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって結び付けられたVH及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することにより調製される。構造遺伝子は、発現ベクターに挿入され、続いてその発現ベクターがE. coliなどの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞は、リンカーペプチドが2つのVドメインを架橋している単一のポリペプチド鎖を合成する。sFvの作製方法については、例えば、[Whitlow and Filpula, Methods 2: 97-105 (1991)、Bird et al., Science 242:423-426 (1988)、Pack et al., Bio/Technology 11:1271-77 (1993)及び米国特許第4,946,778号明細書(本明細書によって全体として参照により援用される)に記載されている。
【0182】
CDRペプチド(「最小認識単位」)は、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって入手され得る。かかる遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することにより調製される。例えば、Larrick and Fry[Methods, 2: 106-10 (1991)]を参照されたい。
【0183】
抗体のCDRが同定されたところで、様々な関連する産物を作製するため、従来の遺伝子工学技術を用いて、本明細書に記載される抗体の形態又は断片のいずれかをコードする発現可能なポリヌクレオチドを多くある方法の1つで合成及び修飾することができる。
【0184】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、抗原に特異的に結合するαβ T細胞受容体(TCR)に由来する。
【0185】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、抗原に特異的に結合するγδ T細胞受容体(TCR)に由来する。
【0186】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、抗原に特異的に結合する改変された親和性が亢進したαβ T細胞受容体又はγδ T細胞受容体(TCR)に由来する(本明細書で上記に詳細に考察するとおり)。
【0187】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、安定性又は任意の他の生物物理学的特性が向上した改変されたαβ T細胞受容体又はγδ T細胞受容体(TCR)に由来する。
【0188】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、抗原に特異的に結合するT細胞受容体様(TCRL)抗体に由来する。TCRL及びそれらを作成する方法の例は、国際公開第03/068201号パンフレット、国際公開第2008/120203号パンフレット、国際公開第2012/007950号パンフレット、国際公開第2009125395号パンフレット、国際公開第2009/125394号パンフレット(これらの各々は、全体として本明細書に十分に援用される)に記載されている。
【0189】
本発明の一部の実施形態によれば、抗原結合ドメインは、1つ以上の単鎖Fv(scFv)分子を含む。
【0190】
細胞質ドメイン
本発明のCAR分子の細胞質ドメイン(「細胞内シグナル伝達ドメイン」又は「T細胞受容体シグナル伝達モジュール」とも称される)は、CARが中に置かれた細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。
【0191】
通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を利用し得るが、多くの場合に鎖全体を使用しなくてもよい。細胞内シグナル伝達ドメインのうち、トランケートされた一部分が使用される範囲内において、かかるトランケートされた一部分を、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりに使用し得る。従って細胞内シグナル伝達ドメインという用語には、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意のトランケートされた一部分が含まれることが意図される。
【0192】
本発明のCAR分子における使用に好ましい細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、抗原受容体会合に伴ってシグナル伝達を惹起するように協力して機能するT細胞受容体(TCR)及び共受容体の細胞質配列並びにそうした配列の任意の誘導体又は変異体及び同じ機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
【0193】
このように、NK細胞活性化は、2つの特徴的に異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列:抗原依存性一次活性化を惹起するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)及び抗原非依存的に機能して二次又は共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)が媒介し得る。
【0194】
刺激する様式で機能する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)として公知のシグナル伝達モチーフを含み得る。本発明で特に有用であるITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列の例としては、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66dに由来するものが挙げられる。本発明のCARにおける細胞質シグナル伝達分子は、CD3ゼータに由来する細胞質シグナル伝達配列を含むことが特に好ましい。
【0195】
共刺激シグナル伝達領域は、典型的には、CAR分子のうち、共刺激分子の細胞内ドメインを含む一部分を指す。共刺激分子は、リンパ球が抗原に効率的に反応するのに必要である、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子としては、限定されないが、MHCクラスI分子、BTLA及びTollリガンド受容体が挙げられる。共刺激リガンドとしては、限定されないが、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体及びB7-H3と特異的に結合するリガンドを挙げることができる。共刺激リガンドには、とりわけ、T細胞に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体、限定されないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83と特異的に結合するリガンドも包含される。
【0196】
一実施形態によれば、CARの細胞質ドメインは、CD3-ゼータシグナル伝達ドメイン自体を含むように設計することができるか、又は本発明のCARに関連して有用な任意の他の所望の1つ又は複数の細胞質ドメインと組み合わせることもできる。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ゼータ鎖部分と共刺激シグナル伝達領域とを含み得る。共刺激シグナル伝達領域とは、CARのうち、共刺激分子の細胞内ドメインを含む一部分を指す。共刺激分子は、リンパ球が抗原に効率的に反応するのに必要である、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。かかる分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、PD-1、DAP10、2B4、Lsk、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83と特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。
【0197】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3ζ-鎖[CD247分子、別名「CD3-ZETA」及び「CD3z」、GenBankアクセッション番号NP_000725.1及びNP_932170.1]を含み、これは、内因性TCRからのシグナルの一次伝達因子である。
【0198】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、T細胞に追加のシグナルを提供するためのCARの細胞質テールに至る様々な共刺激タンパク質受容体を含む(「第2世代」CAR)。例としては、限定されないが、CD28[例えば、GenBankアクセッション番号NP_001230006.1、NP_001230007.1、NP_006130.1]、4-1BB[腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー9(TNFRSF9)、別名「CD137」、例えばGenBankアクセッション番号NP_001552.2]、ICOS[誘導性T細胞共刺激因子、例えばGenBankアクセッション番号NP_036224.1]、DAP10[造血細胞シグナル伝達因子、例えばGenBankアクセッション番号NP_001007470、NP_055081.1]、2B4[CD244分子、例えばGenBankアクセッション番号NP_001160135.1、NP_001160136.1、NP_057466.1]及びLsk[LCK癌原遺伝子、Srcファミリーチロシンキナーゼ、例えばGenBankアクセッション番号NP_001036236.1、NP_005347.3]が挙げられる。前臨床試験によれば、「第2世代のCAR設計により、T細胞の抗腫瘍活性が向上することが指摘されている。
【0199】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3ζ(CD247、CD3z)、CD27、CD28、4-1BB/CD137、2B4、ICOS、OX40/CD134、DAP10、腫瘍壊死因子受容体(TNFr)及びLskからなる群から選択されるポリペプチドの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ又はそれを超えるものを含む。
【0200】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、効力を更に増大させるため、CD3z-CD28-4-1BB又はCD3z-CD28-OX40など、複数のシグナル伝達ドメインを含む。用語「OX40」は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー4(TNFRSF4)、例えばGenBankアクセッション番号NP_003318.1を指す(「第3世代」CAR)。
【0201】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD28-CD3z、CD3z、CD28-CD137-CD3zを含む。用語「CD137」は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー9(TNFRSF9)、例えばGenBankアクセッション番号NP_001552.2を指す。
【0202】
具体的な実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3z及びCD28を含む。
【0203】
具体的な実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3z及び4-1BBを含む。
【0204】
具体的な実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3z及び2B4を含む。
【0205】
膜貫通ドメイン
CARの膜貫通ドメインは、天然又は合成のいずれの供給源にも由来し得る。供給源が天然である場合、このドメインは、任意の膜結合型又は膜貫通型タンパク質に由来し得る。本発明で特に有用な膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154又はNKG2Dに由来し得る(即ちその1つ又は複数の膜貫通領域を少なくとも含み得る)。代わりに、膜貫通ドメインは、合成であり得、その場合、それは、ロイシン及びバリンなど、主に疎水性の残基を含む。好ましくは、合成膜貫通ドメインの両端にフェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが見られることになる。
【0206】
具体的な実施形態によれば、膜貫通ドメインは、CD8を含む。
【0207】
具体的な実施形態によれば、膜貫通ドメインは、CD28を含む。具体的な実施形態によれば、膜貫通ドメインは、NKG2Dを含む。
【0208】
本発明の一部の実施形態によれば、本発明の一部の実施形態のCAR分子に含まれる膜貫通ドメインは、CARにおけるドメインの1つと天然で関連性のある膜貫通ドメインである。本発明の一部の実施形態によれば、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるため、かかるドメインが同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合することが回避されるように選択するか、又はアミノ酸置換によって修飾することができる。
【0209】
一部の実施形態によれば、細胞外ドメインとCAR分子の膜貫通ドメインとの間又は細胞質ドメインとCAR分子の膜貫通ドメインとの間にスペーサードメインが取り込まれ得る。本明細書で使用されるとき、用語「スペーサードメイン」は、概して、膜貫通ドメインをそのポリペプチド鎖の細胞外ドメイン又は細胞質ドメインのいずれかに連結するように機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを意味する。スペーサードメインは、最大300アミノ酸、好ましくは10~100アミノ酸及び最も好ましくは25~50アミノ酸を含み得る。
【0210】
任意選択で、好ましくは、2~10アミノ酸長の短鎖オリゴペプチドリンカー又はポリペプチドリンカーは、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連結を形成し得る(「ヒンジ」とも称される)。グリシン-セリンダブレットが特に好適なリンカーを提供する。
【0211】
具体的な実施形態によれば、CAR分子の構築には、CD8のヒンジ領域が使用される。
【0212】
具体的な実施形態によれば、CAR分子の構築には、CD28のヒンジ領域が使用される。
【0213】
具体的な実施形態によれば、本発明の一部の実施形態のCARは、配列番号23~24(それぞれ核酸及びアミノ酸配列)に示されるとおりのGDA-501.Aである。
【0214】
具体的な実施形態によれば、本発明の一部の実施形態のCARは、配列番号25~26(それぞれ核酸及びアミノ酸配列)に示されるとおりのGDA-501.Bである。
【0215】
具体的な実施形態によれば、本発明の一部の実施形態のCARは、配列番号27~28(それぞれ核酸及びアミノ酸配列)に示されるとおりのGDA-501.Cである。
【0216】
具体的な実施形態によれば、本発明の一部の実施形態のCARは、配列番号29~30(それぞれ核酸及びアミノ酸配列)に示されるとおりのGDA-501.Dである。
【0217】
既述のとおり、CAR又はtg-TCRは、腫瘍抗原HER2に対して抗原特異性を有する。
【0218】
本明細書で使用されるとき、語句「腫瘍抗原」は、癌など、特定の過剰増殖性障害に共通して見られる抗原を指す。腫瘍抗原は、免疫応答、特にT細胞媒介性免疫応答を引き出す腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。本発明の抗原結合部分の選択は、治療しようとする癌の詳細な種類に依存することになる。
【0219】
本発明で言及される腫瘍抗原の種類には、腫瘍特異抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)が含まれる。「TSA」は、腫瘍細胞にユニークなタンパク質又はポリペプチド抗原であって、身体の他の細胞には発生しない抗原を指す。「TAA」は、腫瘍細胞が発現するタンパク質又はポリペプチド抗原を指す。例えば、TAAは、腫瘍細胞の1つ以上の表面タンパク質若しくはポリペプチド、核タンパク質若しくは糖タンパク質又はその断片であり得る。
【0220】
一実施形態によれば、HER2は、固形腫瘍に関連する。
【0221】
様々な方法を用いてNK細胞に本発明の一部の実施形態の核酸を導入し得る(例えば、CAR又はtg-TCRをコードする核酸)。かかる方法は、概して、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York (1989, 1992)、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Md. (1989)、Chang et al., Somatic Gene Therapy, CRC Press, Ann Arbor, Mich. (1995)、Vega et al., Gene Targeting, CRC Press, Ann Arbor Mich. (1995)、Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses, Butterworths, Boston Mass. (1988)及びGilboa et at. [Biotechniques 4 (6): 504-512, 1986]に記載されており、例えば安定又は一過性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション及び組換えウイルスベクターによる感染が挙げられる。加えて、ポジティブ-ネガティブ選択方法について、米国特許第5,464,764号明細書及び同第5,487,992号明細書を参照されたい。
【0222】
一例によれば、本発明の一部の実施形態の核酸は、ネイキッドDNAとして又は好適なベクターでNK細胞に導入される。ネイキッドDNAを使用したエレクトロポレーションによって細胞を安定にトランスフェクトする方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号明細書を参照されたい。ネイキッドDNAとは、概して、プラスミド発現ベクターに発現に適切な向きで入れられたCAR又はtg-TCRをコードするDNAを指す。
【0223】
代わりに、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はレンチウイルスベクター)を使用してNK細胞に本発明の一部の実施形態の核酸を導入することができる(例えば、CAR又はtg-TCRをコードする核酸)。本開示の方法における使用に好適なベクターは、NK細胞において非複製性である。例えば、HIV、SV40、EBV、HSV又はBPVをベースとするベクターなど、ウイルスをベースとする多数のベクターが公知であり、細胞において維持されるウイルスのコピー数は、細胞の生存能力を維持するのに十分に低い。
【0224】
一例によれば、本発明の一部の実施形態の核酸は、非ウイルス遺伝子導入によってNK細胞に導入される。
【0225】
一例によれば、本発明の一部の実施形態の核酸は、mRNAとしてNK細胞に導入される。
【0226】
具体的な実施形態によれば、CAR又はtg-TCRの発現の上方制御は、NK細胞への核酸(例えば、mRNA)のエレクトロポレーションによって生じる。エレクトロポレーションは、限定されないが、Nucleofector又はBTX-Gemini Twin Waveエレクトロポレーターなど、任意のエレクトロポレーション装置を使用してもたらされ得る。
【0227】
一実施形態によれば、CAR又はtg-TCRの発現の上方制御は、細胞培養の開始から8~20日、8~18日、10~18日、12~18日、12~16日、12~14日で生じる。
【0228】
具体的な実施形態によれば、CAR又はtg-TCRの発現の上方制御は、細胞培養の開始から12~16日で生じる。
【0229】
具体的な実施形態によれば、CAR又はtg-TCRの発現の上方制御は、細胞培養の開始から12~14日で生じる。
【0230】
特定の実施形態では、NK細胞がCAR又はtg-TCRを発現するように修飾された後、細胞は、培養物から回収され得る。
【0231】
具体的な実施形態によれば、細胞は、細胞を回収する1~4日、1~3日、1~2日又は0.5~1日前にCAR又はtg-TCRを発現するように修飾される。
【0232】
細胞の回収は、手動によるか、付着した細胞を離れさせる(例えば、培養ベッセル表面から「こすり落とす」)ことによるか、又は細胞をその培養ベッセルから効率的に洗い出し、それらの細胞を自動で収集するように設計されている細胞回収装置によって実施することができる。具体的な実施形態では、増殖させたNK細胞は、培養ベッセルから、細胞回収装置(例えば、ミネソタ州セントポール、Wolf Wilson社のG-Rex MCSの回収装置)によって回収される。具体的な実施形態では、増殖させたCD3枯渇NK細胞画分は、培養ベッセルから、細胞回収装置(例えば、Fresenius Kabi社(独国、ハンブルグ)のLOVO細胞処理装置)によって回収される。
【0233】
一部の実施形態では、培養物からの増殖させたNK細胞の回収では、ほとんど又はほぼ全ての細胞が培養ベッセルから取り出される。他の実施形態では、回収は、2段階以上で実施され得、未回収の細胞を後の時点で回収するまで培養下に残すことが可能になる。特定の実施形態では、増殖させたNK細胞は、増殖させたNK細胞の第1の部分量を回収することと、次に増殖させたNK細胞の第2の部分量を回収することとを含む2段階で回収される。これらの2つの部分量の回収は、第1及び第2の部分量の回収間に数時間、数日又はそれを超える間隔を置いて実施することができる。回収された2つの部分量は、ほぼ等しい部分量の培養物(例えば、等しい量の培養されたNK細胞)を含み得るか、又はそれらの部分量の一方が他方よりも大きい割合の培養されたNK細胞を含み得る)。一実施形態によれば、回収は、培養開始後の約12~18日、例えば14~16日で増殖させた修飾NK細胞を回収することを含む。一実施形態によれば、回収は、細胞がCAR又はtg-TCR(例えば、抗HER2 CAR、抗HER2 tg-TCR)を発現するように修飾した後の約1~4日、例えば1~2日で増殖させた修飾NK細胞を回収することを含む。
【0234】
増殖させたNK細胞集団を使用に向けて調製するため、回収された細胞は、培養培地から洗い出し、決定的に重要なパラメータを評価し、且つ臨床的に妥当な期間をかけた注入に好適な濃度となるように容積を調整する必要がある。
【0235】
回収後、増殖させた修飾NK細胞は、培養培地がなくなるように手動で又は好ましくは臨床適用向けに閉鎖系のシステムを利用する自動化された装置を使用して洗浄することができる。洗浄された細胞は、注入溶液で再構成することができる(例えば、1つの例示的注入溶液は、8%w/vのHSA及び6.8%w/vのデキストラン-40を含む)。一部の実施形態では、再構成は、閉鎖系のシステムにおいて実施される。一部の実施形態では、注入溶液は、本発明の方法及び組成物での使用への適合性に関してスクリーニングされる。好適な注入溶液の選択に際した例示的判定基準には、細菌、酵母又はカビの成長がないこと、エンドトキシン含有量が0.5Eu/ml未満であること及び異物粒子のない澄明な外観であることを指示する安全性試験が含まれる。
【0236】
増殖させた修飾NK細胞が入手されたところで、細胞数(即ち増殖)、細胞シグネチャ(例えば、CD3-CD56+細胞)、CAR又はtg-TCR(例えば、抗HER2 CAR、抗HER2 tg-TCR)の発現及びNK細胞機能性に関して細胞を調べる。
【0237】
細胞増殖アッセイは、当技術分野で周知であり、限定されないが、細胞を低密度で播種して成長させ、コロニーを計数するクローン原性アッセイ、細胞数を機械的に測定する機械的アッセイ[フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))、ヨウ化プロピジウム]、生細胞数を測定する代謝アッセイ(テトラゾリウム塩、例えばXTT、MTT等の取込みなど)、成長中の集団のDNA合成を測定する直接の増殖アッセイ(ブロモデオキシウリジン、チミジン取込みなど)が挙げられる。
【0238】
細胞シグネチャ関するアッセイ及び細胞膜上のタンパク質の発現に関するアッセイは、当技術分野で周知であり、限定されないが、FACS分析及び免疫組織染色技法が挙げられる。
【0239】
本明細書で使用されるとき、用語「NK細胞機能性」は、NK細胞に帰せられる任意の生物学的機能を指す。NK細胞機能の非限定的な列挙としては、例えば、細胞傷害性、アポトーシス誘導、細胞運動性、指向性遊走、サイトカイン及び他の細胞シグナル応答、サイトカイン/ケモカイン産生及び分泌、活性化型及び抑制型細胞表面分子のin vitro発現、移植を受けた宿主における細胞ホーミング及び生着(生体内保持率)及び疾患又は疾患過程のin vivoでの変化が挙げられる。一部の実施形態では、ニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分の存在下で増殖することにより亢進するNK細胞機能としては、CD62L表面マーカーの発現上昇、遊走反応の上昇及びNK細胞の細胞傷害活性の高まり並びに注入されたNK細胞のホーミング及び生体内保持率の上昇の少なくとも1つが挙げられる。
【0240】
CD62L、CXCR-4、CD49eなど、移植において細胞のホーミング/生着及び保持に重要な接着及び遊走分子に関するアッセイは、当技術分野で周知である。細胞のCD62L発現は、例えば、フローサイトメトリー、免疫検出、定量的cDNA増幅、ハイブリダイゼーションなどによりアッセイすることができる。
【0241】
細胞遊走に関するアッセイは、当技術分野で周知である。細胞の遊走は、例えば、血管外遊走アッセイ又はギャップ閉鎖アッセイによりアッセイすることができる。一実施形態では、「Transwell」(商標)血管外遊走アッセイにより、異なるNK細胞集団の潜在的遊走能力が決定される。
【0242】
細胞傷害性(「細胞殺傷」)に関するアッセイは、当技術分野で周知である。リダイレクト殺傷アッセイにおける使用に好適な標的細胞の例は、癌細胞株、原発性癌細胞、固形腫瘍細胞、白血病細胞又はウイルス感染細胞である。特に、K562、BL-2、colo250及び初代白血病細胞を使用することができるが、幾つもの他の細胞型のいずれかを使用することもでき、当技術分野で周知である(例えば、Sivori et al. (1997) J. Exp. Med. 186: 1129-1136;Vitale et al. (1998) J. Exp. Med. 187: 2065-2072;Pessino et al. (1998) J. Exp. Med. 188: 953-960;Neri et al. (2001) Clin. Diag. Lab. Immun. 8: 1131-1135を参照されたい)。例えば、細胞殺傷は、細胞生存能力アッセイ(例えば、色素排除、クロム遊離、CFSE)、代謝アッセイ(例えば、テトラゾリウム塩)及び直接の観察により判定され得る。
【0243】
本発明の一部の実施形態により作成された、洗浄して濃縮した増殖させた修飾NK細胞画分は、約60%~約99%のCD56+/CD3-細胞、約70%~約99%のCD56+/CD3-細胞、約80%~約99%のCD56+/CD3-細胞又は約90~99%のCD56+/CD3-細胞を含むことを特徴とする。一実施形態では、本発明の一部の実施形態により作成された、洗浄して濃縮した増殖させたNK細胞画分は、少なくとも約60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%のCD56+/CD3-細胞を含むことを特徴とする。
【0244】
本発明の一部の実施形態により作成された、洗浄して濃縮した増殖させた修飾NK細胞画分は、約60%~約99%のCAR又はtg-TCR陽性細胞、約70%~約99%のCAR又はtg-TCR陽性細胞、約80%~約99%のCAR又はtg-TCR陽性細胞又は約90~99%のCAR又はtg-TCR陽性細胞(例えば、抗HER2 CAR、抗HER2 tg-TCR)を含むことを特徴とする。一実施形態では、本発明の一部の実施形態により作成された、洗浄して濃縮した増殖させたNK細胞画分は、少なくとも約60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%のCAR又はtg-TCR陽性細胞(例えば、抗HER2 CAR、抗HER2 tg-TCR)を含むことを特徴とする。
【0245】
本発明の一部の実施形態の修飾NK細胞は、新鮮細胞として使用され得る。代わりに、細胞は、将来的な使用又は「既製品」使用のために凍結保存され得る。
【0246】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、本発明の一部の実施形態の方法によって入手可能である、単離されたNK細胞集団が提供される。
【0247】
一実施形態によれば、単離されたNK細胞集団(即ち、ex vivo増殖後、例えば培養終了時)は、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%又はそれを超えるNK細胞を含む。
【0248】
一実施形態によれば、単離されたNK細胞集団(即ち、ex vivo増殖後、例えば培養終了時)の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%又はそれを超えるものがCAR又はtg-TCRを発現する。
【0249】
一実施形態によれば、単離されたNK細胞集団(即ち、ex vivo増殖後、例えば培養終了時)は、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%又はそれを超える抗HER2 NK CAR細胞を含む。
【0250】
一実施形態によれば、単離されたNK細胞集団(即ち、ex vivo増殖後、例えば培養終了時)は、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%又はそれを超える抗HER2 NK tg-TCR細胞を含む。
【0251】
本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、それ自体で又はそれが好適な担体若しくは賦形剤と混合されている医薬組成物で生物に投与することができる。
【0252】
本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」は、本明細書に記載される活性成分の1つ以上を生理学的に好適な担体及び賦形剤などの他の化学的成分と合わせた調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0253】
本明細書では、用語「活性成分」は、生物学的効果に関して説明のつく単離されたNK細胞集団を指す。
【0254】
以下では、交換可能に使用し得る語句「生理学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能な担体」は、生物にとって重大な刺激作用を引き起こさず、且つ投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。アジュバントは、これらの語句の下に含まれる。
【0255】
本明細書では、用語「賦形剤」は、活性成分の投与を更に容易にするため医薬組成物に加えられる不活性な物質を指す。賦形剤の例としては、限定なしに、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類及び各種のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコール類が挙げられる。
【0256】
薬物の製剤化及び投与技法については、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”, Mack Publishing Co., Easton, PA, 最新版(これは、参照により本明細書に援用される)を参照し得る。
【0257】
好適な投与経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸内又は非経口送達であって、筋肉内、皮下及び髄内注射を含むもの並びに髄腔内、脳室内に直接、心臓内、例えば右室又は左室内腔内、共通冠動脈内、静脈内、腹腔内、鼻腔内又は眼内注射を挙げることができる。
【0258】
中枢神経系(CNS)への薬物送達の従来手法としては、神経外科的戦略(例えば、脳内注射又は脳室内注入)、BBBの内因性輸送経路の1つを利用しようと試みる薬剤の分子操作(例えば、それ自体ではBBBを通過する能力のない薬剤と組み合わせた、内皮細胞表面分子に対して親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラ融合タンパク質の作製)、薬剤の脂質溶解度を増加させるように設計される薬理学的戦略(例えば、脂質又はコレステロール担体との水溶性薬剤のコンジュゲーション)、及び高浸透圧破壊によるBBB完全性の一過性の破壊(頸動脈へのマンニトール溶液の注入又はアンジオテンシンペプチドなど、生物学的に活性な薬剤の使用によって生じる)が挙げられる。しかしながら、これらの戦略の各々には、侵襲的外科手技に関連する固有のリスク、内因性輸送系に固有の制限によって課されるサイズ制限、CNSの外部で活性を示す可能性のある担体モチーフで構成されたキメラ分子の全身投与に関連する潜在的に望ましくない生物学的副作用及びBBBが破壊される脳の領域内で起こる可能性のある脳損傷のリスクなど、制限があるため、従って、そうした戦略は、準最適な送達方法となる。代わりに、医薬組成物の投与は、全身的な様式よりむしろ、例えば医薬組成物を患者の組織領域に直接注射することにより局所的に行われ得る。
【0259】
一実施形態によれば、投与経路としては、例えば、注射、摂取、輸注、植込み又は移植が挙げられる。本明細書に記載される組成物は、患者に対して、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射により又は腹腔内に投与され得る。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、患者に皮内又は皮下注射によって投与される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、好ましくはi.v.注射によって投与される。医薬組成物は、腫瘍、リンパ節又は感染部位に直接注射され得る。
【0260】
本発明の一部の実施形態の医薬組成物は、当技術分野で周知のプロセスにより、例えば従来の混合、溶解、造粒、糖衣形成、浮揚、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスを用いて製造され得る。
【0261】
このように、本発明の一部の実施形態における使用のための医薬組成物は、従来方式において、医薬品として使用できる調製物にするための活性成分の加工処理を容易にする賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を用いて製剤化され得る。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0262】
注射のために、医薬組成物の活性成分は、水溶液中、好ましくはハンクス液、リンゲル液又は生理緩衝食塩水など、生理的に適合性のある緩衝液中に製剤化され得る。経粘膜投与については、浸透させようとする関門に適切な浸透剤が製剤中に使用される。かかる浸透剤については、概して当技術分野で公知である。
【0263】
経口投与には、医薬組成物は、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることにより容易に製剤化され得る。かかる担体により、医薬組成物を錠剤、丸薬、糖衣剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして、患者による経口摂取のために製剤化することが可能となる。経口使用向けの薬理学的調製物は、固体賦形剤を使用して作ることができ、任意選択で得られた混合物を粉砕し、その顆粒の混合物を、必要に応じて好適な助剤を加えた後に加工処理すると、錠剤又は糖衣剤コアが得られる。好適な賦形剤は、詳細には、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖類などの充填剤;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど;及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容可能なポリマーである。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤が加えられ得る。
【0264】
糖衣剤コアには、好適なコーティングが提供される。このために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を任意選択で含有し得る糖濃縮液を使用し得る。錠剤又は糖衣剤コーティングには、識別のため又は活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために染料又は色素が加えられ得る。
【0265】
経口的に使用することのできる医薬組成物としては、ゼラチンで作られるプッシュフィットカプセル並びにゼラチンとグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤とで作られるソフトシールカプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤及び任意選択で安定剤と混合された活性成分を含有し得る。ソフトカプセルでは、活性成分は、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁され得る。加えて、安定剤が加えられ得る。経口投与のための製剤の全ては、選択された投与経路に好適な投薬量でなければならない。
【0266】
頬側投与には、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤又はロゼンジの形態を取り得る。
【0267】
経鼻吸入による投与では、本発明の一部の実施形態に係る使用のための活性成分は、好都合には、好適な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用した加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレー体裁の形態で送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬量単位は、定量を送達するように弁を提供することにより決定され得る。化合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との混合粉体が入った、例えばディスペンサーに用いるためのゼラチンのカプセル及びカートリッジが製剤化され得る。
【0268】
本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射又は持続注入による非経口投与のために製剤化され得る。
【0269】
注射のための製剤は、単位剤形において、例えばアンプルに提供されるか又は複数回用量用容器に任意選択で添加保存剤と共に提供され得る。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又はエマルションであり得、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合用薬剤を含有し得る。
【0270】
非経口投与のための医薬組成物としては、水溶性形態の活性調製物の水溶液が挙げられる。加えて、活性成分の懸濁液は、適切な油性又は水性の注射懸濁液として調製され得る。好適な脂溶性溶媒又は媒体としては、ゴマ油などの脂肪油又はオレイン酸エチル、トリグリセリド又はリポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。
【0271】
水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなど、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意選択で、懸濁液は、高濃縮溶液の調製を可能にするための好適な安定剤又は活性成分の溶解度を増加させる薬剤も含有し得る。
【0272】
代わりに、活性成分は、使用前に好適な媒体、例えば無菌のパイロジェンフリー水ベースの溶液と共に構成するための粉末形態であり得る。
【0273】
本発明の一部の実施形態の医薬組成物は、例えば、ココアバター又は他のグリセリド類など、従来の坐剤基剤を使用しても坐薬又は停留浣腸などの直腸組成物に製剤化され得る。
【0274】
本発明の一部の実施形態に関連した使用に好適な医薬組成物としては、意図される目的を実現するのに有効な量の活性成分が含まれる組成物が挙げられる。より具体的には、治療有効量とは、障害(例えば、悪性又は非悪性疾患)の症状を予防、軽減若しくは改善するのに有効であるか、又は治療下の対象の生存期間を延長するのに有効な活性成分(単離されたNK細胞集団)の量を意味する。
【0275】
治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0276】
「治療量」が指示されるとき、本発明の組成物の投与すべき正確な量は、医師が年齢、体重、疾患状態、例えば腫瘍サイズ、感染又は転移の程度及び患者(対象)の状態についての個人差を考慮して決定することができる。概して、本明細書に記載される細胞を含む医薬組成物は、体重1kg当たり25~500×106細胞、例えば体重1kg当たり25~400×106細胞、体重1kg当たり50~300×106細胞、例えば体重1kg当たり50~250×106細胞(これらの範囲内にある全ての整数値を含む)の投薬量で投与され得ると言うことができる。一実施形態によれば、本明細書に記載される細胞は、体重1kg当たり約25×106細胞、体重1kg当たり約50×106細胞、体重1kg当たり約75×106細胞、体重1kg当たり約100×106細胞、体重1kg当たり約150×106細胞、体重1kg当たり約200×106細胞、体重1kg当たり約250×106細胞又は体重1kg当たり約300×106細胞の投薬量で投与され得る。
【0277】
本発明の一部の実施形態のNK細胞組成物は、これらの投薬量で複数回投与することもできる。NK細胞は、免疫療法において一般に公知の注入技法を用いることにより投与し得る(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照されたい)。特定の患者についての最適な投薬量及び治療レジームは、医薬分野の当業者が患者を疾患の徴候に関してモニタし、それに応じて治療を調整することにより容易に決定することができる。
【0278】
例えば、活性成分(例えば、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団)が病変に及ぼす効果は、治療した対象の生体試料中の細胞マーカー、ホルモン、グルコース、ペプチド、炭水化物、サイトカイン等のレベルを周知の方法(例えば、ELISA、FACS等)を用いてモニタすることによるか、又は腫瘍サイズを周知の方法(例えば、超音波、CT、MRI等)を用いてモニタすることにより評価し得る。
【0279】
本発明の方法で用いられる任意の調製物について、治療有効量又は用量は、初めにin vitro及び細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、ある用量を動物モデルにおいて所望の濃度又は力価が実現するように処方することができる。かかる情報を用いることにより、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。
【0280】
本明細書に記載される活性成分の毒性及び治療有効性は、in vitro、細胞培養又は実験動物での標準的な薬学的手順により決定することができる。これらのin vitro及び細胞培養アッセイ及び動物試験から入手されるデータを、ヒトにおける使用のための様々な投薬量の製剤化に使用することができる。
【0281】
投薬量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて異なり得る。正確な製剤、投与経路及び投薬量は、個々の医師が患者の状態に鑑みて選択することができる(例えば、Fingl, et al., 1975, in“The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch. 1 p.1を参照されたい)。
【0282】
投薬量及び間隔は、生物学的効果を誘導又は抑制するのに十分なレベル(最小有効濃度、MEC)の活性成分が提供されるように個別に調整され得る。MECは、調製物毎に異なることになるが、in vitroデータから推定することができる。MECを実現するのに必要な投薬量は、個々の特性及び投与経路に依存することになる。検出アッセイを用いて血漿濃度を決定することができる。
【0283】
治療しようとする病態の重症度及び反応性に応じて、用量投与は、単回又は複数回の投与であり得、治療コースは、数日~数週間続くか、又は治癒が生じるまで若しくは疾患状態の減退が実現するまで続く。一実施形態によれば、用量投与は、1日に1、2、3回又はそれを超える投与であり得る。用量投与は、連日行われ得るか、又は数日若しくは数週間間隔のうちに行われ得る。かかる決定は、医薬分野の当業者が容易に決定することができる。
【0284】
組成物の投与すべき量は、当然のことながら、治療下の対象、病気の重症度、投与様式、処方医師の判断等に依存することになる。
【0285】
本発明の一部の実施形態によれば、本発明の治療用薬剤は、その病変の治療のために設計された1つ又は複数の他の薬物と併せて[即ち組み合わせ療法、例えば単離されたNK細胞集団の投与前、その投与と同時又はその投与後に]対象に提供され得る。
【0286】
本発明の一実施形態によれば、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、化学療法、放射線療法、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸塩及びFK506)、抗体又は当技術分野で公知の他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0287】
特定の実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、限定されないが、抗ウイルス剤(例えば、ガンシクロビル、バラシクロビル、アシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドホビル、マリバビル、レフルノミド)、化学療法剤(例えば、抗新生物剤、限定されないが、アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、ブスルファン、メクロレタミン又はムスチン(HN2)、ウラムスチン又はウラシルマスタード、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、ベンダムスチン、ニトロソウレア系カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、チオテパ、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、四硝酸トリプラチン、プロカルバジン、アルトレタミン、トリアゼン系(ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミド)、ダカルバジン、テモゾロミド、ミレラン(Myleran)、ブスルフェクス(Busulfex)、フルダラビン、ジメチルミレラン又はシタラビンなど)又は治療用モノクローナル抗体(例示的抗体を以下の表1に提供する)などの薬剤による治療を含む、あらゆる関連性のある治療モダリティと併せて患者に投与される。
【0288】
【0289】
具体的な実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Herceptin Hylecta(登録商標))、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))、マルジェツキシマブ(Margenza(登録商標))、Ado-トラスツズマブエムタンシン(Kadcyla(登録商標)若しくはTDM-1(登録商標))、Fam-トラスツズマブデルクステカン(Enhertu(登録商標))、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、ネラチニブ(Nerlynx(登録商標))、ツカチニブ(Tukysa(登録商標))又はこれらの組み合わせと併せて患者に投与される。
【0290】
具体的な実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、トラスツズマブ(例えば、Herceptin(登録商標)、Herceptin Hylecta(登録商標))と併せて患者に投与される。
【0291】
具体的な実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))と併せて患者に投与される。
【0292】
具体的な実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、Ado-トラスツズマブエムタンシン(Kadcyla(登録商標)又はTDM-1(登録商標))と併せて患者に投与される。
【0293】
具体的な実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、ネラチニブ(Nerlynx(登録商標))と併せて患者に投与される。
【0294】
具体的な実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、トラスツズマブdkst(Ogivri(登録商標))と併せて患者に投与される。
【0295】
具体的な実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、Rituximab(登録商標)と併せて患者に投与される。
【0296】
本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、化学療法剤、放射線療法、抗体療法、手術、光線療法等と併せて患者に投与され得ることが理解されるであろう。組み合わせ療法によれば、治療される対象における本発明の薬剤の治療効果が増加し得る。
【0297】
本発明の一部の実施形態の組成物は、必要に応じて、FDA承認済みのキットなど、パック又はディスペンサーの体裁であり得、これは、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を収容しているものであり得る。パックは、例えば、金属箔又はブリスターパックなどのプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサーには、投与に関する説明書が付属し得る。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する行政機関が定める形式の容器に関連付けられた通知も付属し得、この通知は、組成物の形態又はヒト若しくは動物への投与がその機関によって承認されている旨を反映するものである。かかる通知は、例えば、米国食品医薬品局によって承認された処方薬についての表示又は承認済みの製品添付文書であり得る。適合性のある医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物は、上記に更に詳述されているとおり、調製し、適切な容器に入れ、且つ適応される病態の治療に関する表示を付すこともできる。
【0298】
キットは、例えば、金属箔又はブリスターパックなどのプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサー装置には、投与に関する説明書が付属し得る。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する行政機関が定める形式の容器に関連付けられた通知も付属し得、この通知は、組成物の形態又はヒト若しくは動物への投与がその機関によって承認されている旨を反映するものである。かかる通知は、例えば、米国食品医薬品局によって承認された処方薬についての表示又は承認済みの製品添付文書の通知であり得る。適合性のある医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物は、上記に更に詳述されているとおり、調製し、適切な容器に入れ、且つ適応される病態の治療に関する表示が付すこともできる。
【0299】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、HER2の発現を伴う疾患の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団を投与し、それにより対象を治療することを含む方法が提供される。
【0300】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、HER2の発現を伴う疾患の治療を、それを必要としている対象において行うのに使用するための、治療有効量の本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団が提供される。
【0301】
用語「治療すること」は、病変(疾患、障害又は病態)の発症を阻害、予防若しくは止めること及び/又は病変の低減、寛解若しくは退縮を生じさせることを指す。当業者は、様々な方法論及びアッセイを用いて病変の発症を判定し得ること及び同様に様々な方法論及びアッセイを用いて病変の低減、寛解又は退縮を判定し得ることを理解するであろう。
【0302】
本明細書で使用されるとき、用語「対象」又は「それを必要としている対象」は、NK細胞で治療し得る疾患に罹患している任意の年齢又は性別の哺乳類、好ましくはヒトの男性又は女性を指す。
【0303】
このように、本発明の方法は、HER2の発現を伴う任意の疾患、限定されないが、悪性疾患(例えば、癌、例えばHER2+癌細胞)などの治療に適用され得る。
【0304】
一実施形態によれば、対象は、悪性疾患を有する。
【0305】
癌性疾患
本発明の一部の実施形態の方法によって治療することのできる悪性疾患(癌とも称される)は、任意の固形又は非固形腫瘍及び/又は腫瘍転移であり得る。
【0306】
癌の例としては、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が挙げられる。かかる癌のより詳細な例としては、扁平上皮癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、黒色腫、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)又は胃癌(stomach cancer)(消化管癌を含む)、膵癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、例えば子宮内癌腫、カルチノイド癌腫、唾液腺癌、腎臓癌又は腎癌、肝癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、中皮腫、骨髄腫、例えば多発性骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、神経芽細胞腫、食道癌、滑膜細胞癌、神経膠腫及び各種頭頸部癌(例えば、脳腫瘍)が挙げられる。本発明の治療に適している癌性病態としては、転移性癌が挙げられる。
【0307】
一実施形態によれば、悪性疾患は、血液学的悪性腫瘍である。例示的な血液学的悪性腫瘍としては、限定されないが、白血病[例えば、急性リンパ性、急性リンパ芽球性、急性リンパ芽球性プレB細胞、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性巨核芽球性、単球性、急性骨髄性、急性骨髄、好酸球増加症を伴う急性骨髄、B細胞、好塩基性、慢性骨髄、慢性、B細胞、好酸球性、フレンド、顆粒球性又は骨髄球性、ヘアリー細胞、リンパ球性、巨核芽球、単球性、単球性マクロファージ、骨髄芽球性、骨髄、骨髄単球性、形質細胞、プレB細胞、前骨髄球性、亜急性、T細胞、リンパ系新生物、骨髄性悪性腫瘍に対する素因、急性非リンパ球性白血病、T細胞急性リンパ球性白血病(T-ALL)及びB細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)]及びリンパ腫[例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキット、皮膚T細胞、組織球性、リンパ芽球性、T細胞、胸腺性、B細胞であって、低悪性度/濾胞性を含むもの;小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症]が挙げられる。
【0308】
本発明の一部の実施形態によれば、病変は、固形腫瘍である。
【0309】
本発明の一部の実施形態によれば、病変は、腫瘍転移である。
【0310】
具体的な実施形態によれば、悪性疾患は、乳癌、胃癌、胃食道癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、肺癌、尿路上皮癌又は膀胱癌である。
【0311】
本発明の一部の実施形態によれば、病変は、血液学的悪性腫瘍である。
【0312】
具体的な実施形態によれば、悪性疾患は、白血病又はリンパ腫である。
【0313】
具体的な実施形態によれば、悪性疾患は、多発性骨髄腫である。
【0314】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、±10%を指す。
【0315】
用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有している」及びこれらの活用形は、「含むが、限定されない」を意味する。
【0316】
用語「からなる」は、「含み、且つ限定される」を意味する。
【0317】
用語「から本質的になる」は、組成物、方法又は構造が追加の成分、ステップ及び/又はパートを含み得るが、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的な新規の特徴がその追加の成分、ステップ及び/又はパートによって実質的に変化しない場合に限られることを意味する。
【0318】
本明細書で使用されるとき、単数形を示す「a」、「an」及び「the」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形への言及を含む。例えば、用語「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物」には、それらの混合物を含めて複数の化合物が含まれ得る。
【0319】
本願全体を通して、本発明の様々な実施形態が範囲の形式で提供されることもある。範囲の形式での記載は、単に便宜上のものであり、簡潔にするために過ぎず、本発明の範囲に関する柔軟性のない限定と解釈されてはならないことが理解されなければならない。従って、範囲の記載は、あらゆる可能な部分的範囲及びその範囲内にある個別の数値を具体的に開示したものと見なされなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等などの部分的範囲並びにその範囲内にある個別の数字、例えば1、2、3、4、5及び6を具体的に開示したものと見なされなければならない。これは、範囲の大きさにかかわらず適用される。
【0320】
本明細書で数値の範囲が指示される場合には常に、その指示される範囲内にある引用されるあらゆる数(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の指示される数と第2の指示される数との「間の範囲に及んでいる/範囲に及ぶ」及び第1の指示される数「から」第2の指示される数「までの範囲に及んでいる/範囲に及ぶ」という語句は、本明細書では同義的に使用され、第1及び第2の指示される数並びにそれらの間にある全ての分数及び整数を含むことが意味される。
【0321】
本明細書で使用されるとき、用語「方法」は、限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学分野の当業者に公知であるか、又はそうした当業者によって公知の様式、手段、技法及び手順から容易に開発されるかのいずれかである様式、手段、技法及び手順を含むが、これらに限定されない、所与の課題を完遂するための様式、手段、技法及び手順を指す。
【0322】
明確にするため、別々の実施形態に関連して記載される本発明のある種の特徴が単一の実施形態に組み合わせても提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするため、単一の実施形態に関連して記載される本発明の様々な特徴は、別々に、又は任意の好適な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載される実施形態でも好適なものとして提供され得る。様々な実施形態に関連して記載されるある種の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が実施不能となるのでない限り、それらの実施形態の必須の特徴と見なされるべきではない。
【0323】
以上に輪郭を示し、且つ以下の特許請求の範囲の節に主張するとおりの本発明の様々な実施形態及び態様については、以下の例に実験的なサポートが見出される。
【実施例】
【0324】
ここで、以下の例を参照することになるが、これらの例は、上記の説明と併せて、本発明を非限定的な形式で例示するものである。
【0325】
概して、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用される実験室手順には、分子的、生化学的、微生物学的及び組換えDNA技法が含まれる。かかる技法については、文献内で十分に説明されている。例えば、“Molecular Cloning: A laboratory Manual”Sambrook et al., (1989);“Current Protocols in Molecular Biology”Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994);Ausubel et al.,“Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989);Perbal,“A Practical Guide to Molecular Cloning”, John Wiley & Sons, New York (1988);Watson et al.,“Recombinant DNA”, Scientific American Books, New York;Birren et al. (eds)“Genome Analysis: A Laboratory Manual Series”, Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998);米国特許第4,666,828号明細書;同第4,683,202号明細書;同第4,801,531号明細書;同第5,192,659号明細書及び同第5,272,057号明細書に示される方法論;“Cell Biology: A Laboratory Handbook”, Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994);“Current Protocols in Immunology”Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994);Stites et al. (eds),“Basic and Clinical Immunology”(8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994);Mishell and Shiigi (eds),“Selected Methods in Cellular Immunology”, W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照されたく;利用可能なイムノアッセイについては、特許及び科学文献に広範に記載されており、例えば米国特許第3,791,932号明細書;同第3,839,153号明細書;同第3,850,752号明細書;同第3,850,578号明細書;同第3,853,987号明細書;同第3,867,517号明細書;同第3,879,262号明細書;同第3,901,654号明細書;同第3,935,074号明細書;同第3,984,533号明細書;同第3,996,345号明細書;同第4,034,074号明細書;同第4,098,876号明細書;同第4,879,219号明細書;同第5,011,771号明細書及び同第5,281,521号明細書;“Oligonucleotide Synthesis”Gait, M. J., ed. (1984);“Nucleic Acid Hybridization”Hames, B. D., and Higgins S. J., I eds. (1985);“Transcription and Translation”Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984);“Animal Cell Culture”Freshney, R. I., ed. (1986);“Immobilized Cells and Enzymes”IRL Press, (1986);“A Practical Guide to Molecular Cloning”Perbal, B., (1984)及び“Methods in Enzymology”Vol. 1-317, Academic Press;“PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications”, Academic Press, San Diego, CA (1990);Marshak et al.,“Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual”CSHL Press (1996)を参照されたく;これらは、全て本明細書に完全に示されたものとして参照により援用される。他にも一般的な参考文献が本明細書全体を通して提供される。それらの中にある手順は、当技術分野で周知であると考えられ、読者の利便性を考えて提供される。それらの中に含まれる情報は、全て参照により本明細書に援用される。
【0326】
一般的材料及び実験手順
T細胞をフィーダー細胞とするex vivo培養
0日目、健常ドナーからアフェレーシスによって血液細胞を収集した。ACK緩衝液(アイルランド国、ダブリン、Gibco社)で洗浄することにより、赤血球(RBC)を溶解させた。CliniMACS及びCD3試薬(独国、Miltenyi Biotec社)を製造者の指示に従って使用してCD3+細胞を枯渇させた。
【0327】
CD3枯渇細胞を20%HSA含有CliniMACS緩衝液により洗浄し、完全MEMα培地に再懸濁した。
【0328】
0.05mg/mlのゲンタマイシン(Braun社)、2mMのL-グルタミン(HyClone社)を含有する、10%ヒトAB血清(Gemini社)、7mMのニコチンアミド(Vertillus社)及び20ng/mlのIL-15(Miltenyi社)を更に補足したMEMα培地に細胞を播種した。
【0329】
400mLのMEMα培地が入った、1:1の比のフィーダー細胞としての照射CD3+細胞(即ち40Gy、130KV、5mAで照射した)及び10ng/mlのOKT-3(Miltenyi社)を更に含むGREX100MCS細胞培養フラスコ(Wilson Wolf社)に0.35×l06細胞/mlのCD3枯渇細胞を播種した。5% CO2及び37℃、加湿インキュベーターで細胞をインキュベートした。
【0330】
6~9日目、各G-REX100MCS培養フラスコに、2倍の容積になるように400mLのMEMα培地を加えた。
【0331】
12~14日目、細胞を計数し、以下に記載するとおりの、HER2を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)の一過性発現のためのmRNAエレクトロポレーションのために調製した。エレクトロポレーション後、上記に記載したとおりのヒト血清濃縮MEMα培地が入った24ウェルプレートに細胞を移し替えた。24~48時間にわたって細胞を回収し、次に分析した。
【0332】
PBMCをフィーダー細胞とするex vivo培養
0日目、健常ドナーからアフェレーシスによって血液細胞を収集した。ACK緩衝液(アイルランド国、ダブリン、Gibco社)で洗浄することにより、赤血球(RBC)を溶解させた。CD56マイクロビーズ及びLSカラムを使用して、製造者の指示のとおりに(Miltenyi Biotec社;それぞれカタログ番号130-050-401及びカタログ番号130-042-401)、CD56+細胞をポジティブ選択した。代わりに、CD56+細胞は、マイクロビーズ(Miltenyi社)の混合物を使用してネガティブ選択により選択する。
【0333】
CD56+細胞を20%のHSA含有CliniMACS緩衝液により洗浄し、10%のヒト血清及び50ng/mLのIL-2を補足した培地に再懸濁し、フラスコに2×106細胞/mlの濃度で播種した。
【0334】
0.05mg/mlのゲンタマイシン(Braun社)、2mMのL-グルタミン(HyClone社)を含有する、10%のヒトAB血清(Gemini社)、7mMのニコチンアミド(Vertillus社)及び20ng/mlのIL-15(Miltenyi社)を更に補足したMEMα培地に細胞を播種した。
【0335】
16mL MEMα培地が入った、フィーダー細胞としての1:1の比の照射末梢血単核球(PBMC)(新鮮又は解凍)(即ち40Gy、130KV、5mAで照射した)及び10ng/mlのOKT-3(Miltenyi社)を更に含む6ウェルGrex培養フラスコ(Wilson Wolf社)に4×l06細胞/mlのCD56+細胞を播種した。5%CO2及び37℃、加湿インキュベーターで細胞をインキュベートした。
【0336】
6~9日目、各6ウェルGrex培養フラスコに、2倍の容積になるように16mLのMEMα培地を加えた。
【0337】
12~14日目、細胞を計数し、以下に記載するとおりの、HER2を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)の一過性発現のためのmRNAエレクトロポレーションのために調製した。エレクトロポレーション後、上記に記載したとおりのヒト血清濃縮MEMα培地が入った24ウェルプレートに細胞を移し替えた。24~48時間にわたって細胞を回収し、次に分析した。
【0338】
一過性タンパク質発現のためのmRNAエレクトロポレーション
培養12~14日目に細胞を計数し、PBS×1で洗浄し、次に冷Opti-MEM(商標)(Gibco(商標)社)で再び洗浄した。
【0339】
mRNAエレクトロポレーションには、2×106~4×106細胞及び10~30μgのmRNAを100μlの最終容積で使用した。エレクトロポレーションは、2mmの冷キュベットにおいて、最大容積を400μlとし(上記の量ずつスケールアップする)、BTX-Gemini Twin Waveエレクトロポレーターをキャリブレーション済みのプログラム(電圧300、持続時間1msc、1方形波パルス)を使用して実施した。
【0340】
【0341】
エレクトロポレーション後、上記に記載したとおりのヒト血清濃縮MEMα培地が入った12ウェルプレートに細胞を移し替えた。24時間にわたって細胞を回収し、次に分析した。
【0342】
FACS分析
FACS分析のため、細胞を以下の蛍光抗体で染色した。
【0343】
【0344】
サンドイッチフローサイトメトリー技法
NK細胞上のCAR発現の決定には、この方法を用いた。用語「サンドイッチ」は、以下の順番に従う方法で使用した:一番下-CARを発現するNK細胞;中央-CARが結合するタンパク質;及び一番上-タンパク質上のエピトープとのABコンジュゲート。
【0345】
例えば、NK細胞表面上の抗Her2 CAR発現を検出するために、NK細胞を1μgのHer2可溶性タンパク質と30分間培養し、洗浄し、次に抗Her2 APC抗体を加え、細胞と共に15分間培養した。
【0346】
効力アッセイ(炎症誘発性サイトカイン及びCD107a脱顆粒マーカーの細胞内染色)
効力アッセイは、細胞内及び表面の両方で発現する様々な活性化マーカーの発現を分析する。選択したマーカーは、直接的な細胞傷害性と、NK細胞の抗腫瘍活性を促進する能力を有する炎症誘発性サイトカインの分泌との両方の指標であった。
【0347】
NK細胞がその標的を殺傷する機構の1つは、溶解性顆粒からの細胞傷害性分子の放出を通したものである。この過程には、顆粒膜とNK細胞の細胞膜の融合が関わり、結果として、CD107aなど、典型的には溶解性顆粒を取り囲む脂質二重層上に存在するリソソーム関連タンパク質が表面に露出することになる。従って、CD107aの膜発現は、免疫細胞活性化及び細胞傷害性脱顆粒のマーカーを構成する。NK細胞プロセスの別の殺傷機構は、死受容体誘発性標的細胞アポトーシスを通したものである。活性化NK細胞は、IFN-γ及びTNFα、GM-CSF及びその他の多数の多様なサイトカインを分泌する。IFN-γは、NK細胞が分泌するエフェクターサイトカインの中でも極めて強力なものの1つであり、抗腫瘍活性において決定的な役割を果たす。IFN-γは、カスパーゼ、FasL及びTRAIL発現を調節し、抗腫瘍免疫を活性化することが示されている。そのため、NK細胞の効力は、CD107a、TNFα及びIFN-γの発現に基づき評価した。
【0348】
1×106個のNK細胞を0.5×106個の標的細胞(K562、RAJI)+/-RTX(0.5μg/ml)と共培養し、FACS管内にある総容積1mlのNK培地(MEMα+10%のAB型血清)中に2μlのCD107a抗体を加えた。対照は、以下のとおり調製した;陽性対照:NK細胞+5μlのPMA(50ng/ml)+1μlのイオノマイシン(1μg/ml)、陰性対照:NK細胞(標的なし)及びサイズ対照:NK、K562、RAJI、NK+K562、NK+RAJI。細胞を300rpmで30秒間遠心し、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、各管にBFA及びモネンシン/GolgiStop(終濃度5μg/mlのBFA、4μlのGS)を加えた。細胞を300rpmで30秒間遠心し、37℃で3.5時間インキュベートした後、Zombie生死判別色素を加えて洗浄した。
【0349】
細胞は、初めに細胞表面マーカーに関して以下のとおり染色した:1.5μlの外膜抗体(CD56、CD16)を加え、暗所下2~8℃で10分間インキュベートし、洗浄した。この時点で細胞内染色のために内部染色キット(Miltenyi社、カタログ番号130-090-4777)を使用して加えた。細胞を固定して透過処理し、遠心後に細胞内mAbを加え(IFN-γ及びTNF-α)、細胞を室温で暗所下に15分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、分析した。
【0350】
【0351】
細胞傷害性アッセイ/殺傷アッセイ(IncuCyte)
NK活性に関するリアルタイムデータの収集が可能なライブセルイメージングシステムIncuCyte S3を用いて細胞傷害殺傷アッセイを実施した。腫瘍標的細胞をCFSE色素(Life Technologies社)で標識し、培地中PI(ヨウ化プロピジウム、Sigma社)の存在下でNK細胞と20時間共培養した。生細胞は、染色されないままであった一方、死細胞は、CFSE蛍光染色とPIが重なることによって検出された。
【0352】
例示的実施形態
実施形態1.HER2への結合能を有するキメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(tg-TCR)を発現するナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団を、
(i)細胞増殖を可能にする条件下でNK細胞集団を培養するステップであって、条件が、有効量の栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを提供することを含む、培養するステップと、
(ii)ステップ(i)の5~10日後に、NK細胞集団に有効量の新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給して、増殖させたNK細胞を作製するステップと
を含む方法によって増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び
(b)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中における、HER2への結合能を有するCAR又はtg-TCRの発現を上方制御し、それによりHER2への結合能を有するCAR又はtg-TCRを発現するNK細胞を作製すること
を含む方法。
【0353】
実施形態2.NK細胞集団が臍帯血、末梢血、骨髄、CD34+細胞又はiPSCに由来する、実施形態1に記載の方法。
【0354】
実施形態3.NK細胞集団がCD3+細胞を除いたものである、実施形態1又は2に記載の方法。
【0355】
実施形態4.NK細胞集団がCD3-CD56+細胞を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0356】
実施形態5.ニコチンアミドの有効量が1.0mM~10mMの量を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0357】
実施形態6.NK細胞集団の増殖がフィーダー細胞又はフィーダー層の存在下で生じる、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0358】
実施形態7.フィーダー細胞が照射細胞を含む、実施形態6に記載の方法。
【0359】
実施形態8.フィーダー細胞がT細胞又はPBMCを含む、実施形態6又は7に記載の方法。
【0360】
実施形態9.CD3アゴニストを更に含む、実施形態8に記載の方法。
【0361】
実施形態10.NK細胞集団の増殖が14~16日間にわたって生じる、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0362】
実施形態11.CAR又はtg-TCRの発現の上方制御が培養開始から12~14日目に生じる、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0363】
実施形態12.CAR又はtg-TCRの発現の上方制御がmRNAエレクトロポレーションによって生じる、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0364】
実施形態13.CAR又はtg-TCRが一過性に発現する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0365】
実施形態14.CARが少なくとも1つの共刺激ドメインを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0366】
実施形態15.少なくとも1つの共刺激ドメインが、CD28、2B4、CD137/4-1BB、CD134/OX40、Lsk、ICOS及びDAP10からなる群から選択される、実施形態14に記載の方法。
【0367】
実施形態16.CARが少なくとも1つの活性化型ドメインを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0368】
実施形態17.活性化型ドメインがCD3ζ又はFcR-γを含む、実施形態16に記載の方法。
【0369】
実施形態18.CARが膜貫通ドメイン及びヒンジドメインの少なくとも1つを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0370】
実施形態19.膜貫通ドメインがCD8、CD28及びNKG2Dから選択される、実施形態18に記載の方法。
【0371】
実施形態20.ヒンジドメインがCD8及びCD28から選択される、実施形態18又は19に記載の方法。
【0372】
実施形態21.CARが、抗体又は抗原結合断片である抗原結合ドメインを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0373】
実施形態22.抗原結合断片がFab又はscFvである、実施形態21に記載の方法。
【0374】
実施形態23.実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法によって入手可能である、単離されたNK細胞集団。
【0375】
実施形態24.実施形態23に記載の単離されたNK細胞集団と、薬学的に活性な担体とを含む医薬組成物。
【0376】
実施形態25.HER2の発現を伴う疾患の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、実施形態23の単離されたNK細胞集団を投与し、それにより対象を治療することを含む方法。
【0377】
実施形態26.HER2の発現を伴う疾患の治療を、それを必要としている対象において行うのに使用するための、治療有効量の、実施形態23の単離されたNK細胞集団。
【0378】
実施形態27.疾患が悪性疾患である、実施形態25に記載の方法又は実施形態26に記載の使用のための単離されたNK細胞集団。
【0379】
実施形態28.悪性疾患が固形腫瘍又は腫瘍転移である、実施形態27に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【0380】
実施形態29.悪性疾患が、乳癌、胃癌、胃食道癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、肺癌、尿路上皮癌及び膀胱癌からなる群から選択される、実施形態28に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【0381】
実施形態30.対象がヒト対象である、実施形態25若しくは27~29のいずれか1つに記載の方法又は実施形態26~29のいずれか1つに記載の使用のための単離されたNK細胞集団。
【0382】
実施例1-抗Her2 CARを発現するNAMex vivo増殖細胞
ERBB2過剰発現腫瘍を有する固形腫瘍癌患者の治療を試みるために、以前にRosenberg et al. (Mol Ther. (2010) 18(4): 843-851)によって考察されているとおり、広く使用されているヒト化モノクローナル抗体(mAb)トラスツズマブ(Herceptin)の単鎖可変断片(scFv)をベースとしてNKキメラ抗原受容体(CAR)細胞を開発した。
【0383】
Her2 scFvを取り付けたシグナル伝達部分の種々の断片を使用した。これらを、mRNAエレクトロポレーションを用いてNK細胞膜上で発現させた。
【0384】
抗HER2 CAR構築
抗HER2 CARについてモジュール方式で種々のコンストラクトを設計し、
図1、
図2のA~D、
図3及び
図5に描かれるとおり且つ以下のとおり、ヒンジ、膜貫通、細胞質ドメインを修飾したが、抗Her2 scFvには手をつけないままとした。
【0385】
ヒンジ
ヒンジ領域の長さは、免疫シナプスの形成に重要である。エフェクターと標的細胞との間が最適な距離となることを可能にするため、細胞表面からの抗原距離に応じてヒンジ長さを調整する必要がある。抗HER2 CARの構築には、CD28又はCD8からのアミノ酸配列を使用した(配列番号1~4に指定されるとおり)。
【0386】
膜貫通
膜貫通(TM)ドメインは、細胞膜にまたがり、CARコンストラクトをアンカリングする疎水性αヘリックスからなる。TMドメインの選択は、細胞活性化の程度によって媒介されるCARコンストラクトの機能性に影響を及ぼすことが示されている。CD28又はCD8からのアミノ酸配列が現在まで最も多く用いられており、抗HER2 CARの構築にNKG2Dのアミノ酸配列と共に使用した(配列番号5~10に指定されるとおり)。
【0387】
エンドドメイン
CARコンストラクトの進化は、主に細胞内シグナル伝達ドメインの最適化に焦点が置かれており、最初の3世代のCARコンストラクトは、エンドドメインを作り上げる活性化分子及び共刺激分子の数を基準としている。共刺激ドメインの選択により、所望のNK細胞応答を微調整することが可能であり、それによりCD28ベースのCARは、4-1BBベースのCARと比較して細胞溶解能力の増加及び持続性の短縮を呈することになる。
【0388】
抗HER2 CARの構築には、共刺激ドメインCD28、4-1BB及び2B4が、CD3ζ又はFC-γ受容体活性化ドメインと共に含まれた(配列番号11~18に指定されるとおり)。A~Dと称される抗HER2 CARをコードする完全長コンストラクト(別名501.1~501.3について、それぞれ配列番号23、25、27及び29に提供する。501.1g~501.4gと称される抗HER2 CARをコードする完全長コンストラクトについて、それぞれ配列番号31、33、35及び37に提供する。
【0389】
C、B及びDと称される3つのCARコンストラクトの全ては、HER2タンパク質の認識によって明らかなとおり、抗HER CARを発現した(
図4のB~G)。加えて、501.1g、501.2g、501.3g及び501.4gの全ては、抗HER CARを発現した(
図6)。NKをErbb2タンパク質とプレインキュベートした後、続いて抗Her2染色することにより、サンドイッチフローサイトメトリー技法を用いてNK細胞上にCARコンストラクト発現を同定した。
【0390】
実施例2-501.1、501.2、501.3、501.4抗HER2 CARナチュラルキラー細胞の効力
ナチュラルキラー細胞に、30マイクログラムのHer-2 CARを発現するmRNA(501.1、501.2、501.3、501.4)をそれぞれエレクトロポレートした。CAR発現の確認後、細胞を2つのHer2陽性細胞株、SKOV3及びA549と6時間共培養した。
図7のA~Bに示されるとおり、効力分析によれば、各コンストラクトの発現後にCD107a、IFNγ、TNFa及びGM-CSFの発現の増加が示された。
【0391】
図8に示されるとおり、SKOV3細胞に対して6時間共培養(5:1のエフェクター:標的比)した後、全てのHer-2 CAR NKに有意な殺傷が観察された。
【0392】
実施例3-501.1g、501.2g、501.3g、501.4g抗HER2 CARナチュラルキラー細胞の効力の増加
ナチュラルキラー細胞に、20マイクログラムのHer-2 CARを発現するmRNA(501.1g、501.2g、501.3g、501.4g)をそれぞれエレクトロポレートした。CAR発現の確認後、細胞を2つのHer2陽性細胞株、SKOV3及びA549と6時間共培養した。
図9のA~B及び
図10に示されるとおり、効力分析によれば、各コンストラクトの発現後にCD107a、IFNγ、TNFa、GM-CSF及びMIP-1bの発現の増加が示された。チェックポイント分子TIGITは、対照又はエレクトロポレーション単独対照と比較したとき、全てのCAR-NKで僅かな発現の低下を実証した(
図22)。501.3g、501.4g及び501.4において、対照と比較したとき、上昇したCD62L、上昇したTRAIL、上昇したDNAM1及び上昇したLAG3の表面マーカー発現が確認された(
図23)。
【0393】
実施例4-501.1g、501.2g、501.3g、501.4gを発現するHer-2ナチュラルキラーCARによる効力及びHer2陽性標的細胞の殺傷の亢進
501.1g、501.2g、501.3g、501.4g CARの1つを発現するHer-2ナチュラルキラーCARを作成し、CAR mRNAをNK細胞にエレクトロポレーションした24時間後又は48時間後のいずれかにHer-2陽性SKOV3細胞と共培養した。
図11は、6時間共培養(5:1又は1:1のNK CAR:SKOV3比で)した後の特異的溶解率を実証する。
【0394】
図12~
図13に示されるとおり、501.3g又は501.4g CARを発現するHer-2ナチュラルキラーCARがSKVO3(
図12~
図13、左)及びA549(
図12~
図13、右)に対して及ぼす細胞傷害効力は、CAR mRNAのエレクトロポレーション後24時間、48時間及び72時間経っても保持されている。
図14に示されるとおり、501.3g又は501.4g CARを発現するHer-2ナチュラルキラーCARは、オンターゲットSKOV3細胞に対する殺傷の亢進を実証する。この殺傷の亢進は、CAR(501.3g又は501.4g)mRNAエレクトロポレーション後24時間、48時間及び72時間で共培養した細胞について見られる。
図15に示されるとおり、501.3g又は501.4g Her2-CAR NK細胞による殺傷活性は、ハーセプチンを加えて測定したとき、対照(CAR発現のない)NK細胞と同程度であった。
図16は、501.3g又は501.4g Her2-CAR NK細胞が、対照と比較して、試験した全てのエレクトロポレーション後時点でA549細胞の殺傷の亢進も実証することを示している。
【0395】
実施例5-501.1g、501.2g、501.3g、501.4gを発現するHer-2ナチュラルキラーCARの非標的活性
501.1g、501.2g、501.3g、501.4g CARの1つを発現するHer-2ナチュラルキラーCARは、非Her-2発現細胞株であるRPMI-8226細胞と共培養したとき、対照NK細胞と同程度の殺傷活性を実証した。
図20に示されるとおり、非標的Raji細胞でも有意でないNK CAR殺傷活性が観察された。
【0396】
加えて、
図20に示されるとおり、501.1g、501.2g、501.3g、501.4g CARの1つを発現するHer-2ナチュラルキラーCARは、同種異系ナチュラルキラー細胞に対して有意でない殺傷活性を実証した。
図21に示されるとおり、501.1g、501.2g、501.3g、501.4g CARの1つを発現するHer-2ナチュラルキラーCARは、非標的同種異系PBMCに対して同程度の殺傷活性を実証した。
【0397】
図18に示されるとおり、501.3g Her2-CAR NK細胞は、試験した全てのエフェクター:標的比及びmRNA CARエレクトロポレーション後共培養時間について、RPMI-8226細胞の有意でない非標的殺傷を実証した。
【0398】
本発明は、その具体的な実施形態と併せて記載されているが、多くの代替形態、改良形態及び変形形態が明らかであろうことは、当業者に明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲に入る全てのかかる代替形態、改良形態及び変形形態を包含することが意図される。
【0399】
本明細書で参照される刊行物、特許及び特許出願の全ては、各個別の刊行物、特許又は特許出願が、参照時にそれが参照により本明細書に援用されるべきであると具体的且つ個別的に指摘されたものとして全体として参照により本明細書に援用されるべきであることが本出願人の意図である。加えて、本願における任意の参考文献の引用又は特定は、かかる参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認であると解釈されてはならない。節の見出しが使用される範囲内において、そうした見出しが必然的に限定するものと解釈されてはならない。加えて、本願の任意の1つ又は複数の優先権書類は、本明細書によって全体として参照により本明細書に援用される。
【0400】
【配列表】
【国際調査報告】