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特表2024-531212改変NK細胞、その作製方法及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】改変NK細胞、その作製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240822BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240822BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240822BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240822BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20240822BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/24
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508506
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 US2022039588
(87)【国際公開番号】W WO2023018621
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/231,372
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501127637
【氏名又は名称】ガミダ セル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲフィン ヨーナ
(72)【発明者】
【氏名】パト アヴィアド
(72)【発明者】
【氏名】リフマン ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ハイル アスター
(72)【発明者】
【氏名】ヘンデル アヤル
(72)【発明者】
【氏名】ベン ハイ ニムロッド
(72)【発明者】
【氏名】ブリックマン ヌリット
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA03
4B065BB12
4B065BB20
4B065BB25
4B065BB37
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
(57)【要約】
遺伝子改変されたナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法及び組成物が開示される。この方法は、(a)NK細胞集団中の目的とする遺伝子の発現を下方制御して、目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を入手することと、(b)目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手することと、(c)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御することとを含む。少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法も開示される。医薬組成物及び治療方法も開示される。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナチュラルキラー(NK)細胞を含む有核細胞集団であって、少なくとも1.0×10個の有核細胞を含み、前記集団中の前記NK細胞の少なくとも約70%が生細胞であり、且つ受容体リンカーIL-15を発現し、
前記集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
前記集団中の前記細胞の約0.5%以下がCD3+であり、
前記集団中の前記細胞の約10%以下がCD19+であり、
前記集団中の前記細胞の約10%以下がCD14+であり、
前記集団中の前記細胞の約40%以下がLAG3+であり、
前記集団中の前記細胞の少なくとも約50%がCD122+であり、
前記集団中の前記細胞の約60%以下がNKG2A+であり、
前記集団中の前記細胞の約20%以下がTIGIT+であり、及び
前記集団中の前記細胞の少なくとも50%がNKp30+である、有核細胞集団。
【請求項2】
前記受容体リンカーIL-15が、配列番号25又は配列番号28である、請求項1に記載の有核細胞集団。
【請求項3】
受容体リンカーIL-15を発現する前記NK細胞の少なくとも約75%がさらにCISHを発現しない、請求項1又は2に記載の有核細胞集団。
【請求項4】
複数のNK細胞を含む有核細胞集団であって、少なくとも1.0×10個の有核細胞を含み、前記集団中の前記NK細胞の少なくとも約70%が生細胞であり、且つ抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)を発現し、
前記集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
前記集団中の前記細胞の約0.5%以下がCD3+であり、
前記集団中の前記細胞の約10%以下がCD19+であり、
前記集団中の前記細胞の約10%以下がCD14+であり、及び
前記集団中の前記細胞の約15%以下がCD38+である、有核細胞集団。
【請求項5】
前記集団中の前記細胞の約5%以下がCD38+である、請求項4に記載の有核細胞集団。
【請求項6】
前記集団中の前記細胞の約1%以下がCD38+である、請求項4又は5に記載の有核細胞集団。
【請求項7】
前記CARが抗CD38 scFvを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項8】
前記CARが、CD28及びCD8から選択されるヒンジドメインを含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項9】
前記CARが、CD28、CD8及びNKG2Dから選択される膜貫通ドメインを含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項10】
前記CARが、CD28、4-1BB、2B4、CD3ゼータR、OX40、Lsk、ICOS、DAP10及びIgE受容体IgのFc断片から選択される共刺激ドメインを含む、請求項4~9のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項11】
前記CARが、CD3ζ、FcR-γ及びFc-イプシロン-Rから選択される活性化型ドメインを含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項12】
前記CARがシグナルペプチドを含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項13】
前記CARが配列番号31及び配列番号32から選択される、請求項4~12のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項14】
受容体リンカーIL-15又は抗CD38 CARを発現する前記細胞が変異体ケモカイン受容体を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項15】
変異体ケモカイン受容体が配列番号69である、請求項1~4のいずれか一項に記載の有核細胞集団。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の遺伝子改変されたナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団中の目的とする遺伝子の発現を下方制御して、目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を入手することと、
(b)目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変された前記NK細胞集団を増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手することと、
(c)前記ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御し、それにより前記遺伝子改変されたNK細胞を作製することと
を含む、方法。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団を、
(i)細胞増殖を可能にする条件下で前記NK細胞集団を培養するステップであって、前記条件が、有効量の栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを提供することを含むステップと、
(ii)ステップ(i)の5~10日後に、前記NK細胞集団に有効量の新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給して、増殖させたNK細胞を作製するステップと
を含む方法によって増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び
(b)前記ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御し、それにより前記少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現する前記NK細胞を作製すること
を含む方法。
【請求項18】
前記NK細胞集団が臍帯血、末梢血、骨髄、CD34+細胞又はiPSCに由来する、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記NK細胞集団がCD3細胞を除いたものである、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記NK細胞集団がCD3CD56細胞を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記下方制御が遺伝子編集システムによって生じる、請求項16又は18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記NK細胞が培養物中にある、請求項16又は18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記下方制御が前記培養の開始から24~72時間で生じる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記目的とする遺伝子が、前記NK細胞の増殖及び/又は生存に影響する遺伝子産物を生じる遺伝子を含む、請求項16又は18~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記目的とする遺伝子が、CISH、TGFβ受容体及びCD38からなる群から選択される、請求項16又は18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記NK細胞集団の前記増殖が、細胞増殖を可能にする条件下でもたらされ、前記条件が有効量の栄養素、血清、成長因子及びニコチンアミドを含む、請求項16又は18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記成長因子が、IL-15、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、SCF及びFLT3からなる群から選択される少なくとも1つの成長因子を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ニコチンアミドの前記有効量が1.0mM~10mMの量を含む、請求項17~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記NK細胞集団の増殖がフィーダー細胞又はフィーダー層の存在下で生じる、請求項16~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記フィーダー細胞が照射細胞を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記フィーダー細胞がT細胞又はPBMCを含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
CD3アゴニストを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記NK細胞集団の増殖が14~16日間にわたって生じる、請求項16~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現の上方制御が、培養開始から12~14日目に生じる、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現の上方制御が、mRNAエレクトロポレーションによって実施する、請求項22~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの膜結合タンパク質が一過性に発現する、請求項22~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
請求項16~36のいずれか一項に記載の方法によって入手可能である、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離されたNK細胞集団。
【請求項38】
請求項37に記載の単離されたNK細胞集団と、薬学的に活性な担体とを含む医薬組成物。
【請求項39】
疾患の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項38に記載の単離されたNK細胞集団を投与し、それにより前記対象を治療することを含む方法。
【請求項40】
疾患の治療を、それを必要としている対象において行うために使用する、治療有効量の、請求項38に記載の単離されたNK細胞集団。
【請求項41】
前記疾患が、悪性疾患、ウイルス性疾患、細菌性疾患、真菌性疾患、原虫性疾患及び寄生虫性疾患からなる群から選択される、請求項39に記載の方法又は請求項40に記載の使用のための単離されたNK細胞集団。
【請求項42】
悪性疾患が固形腫瘍又は腫瘍転移である、請求項40に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【請求項43】
前記悪性疾患が、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、胃癌、肺癌、黒色腫、肉腫、神経芽細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、滑膜細胞癌、子宮癌、神経膠腫及び子宮頸癌からなる群から選択される、請求項42に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【請求項44】
前記悪性疾患が血液学的悪性腫瘍である、請求項42に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【請求項45】
前記血液学的悪性腫瘍が白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫を含む、請求項44に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【請求項46】
前記対象がヒト対象である、請求項39若しくは41~45のいずれか一項に記載の方法又は請求項36~43のいずれか一項に記載の使用のための単離されたNK細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月10日に出願された米国仮特許出願第63/231,372号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、その内容は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、その一部の実施形態では、改変ナチュラルキラー(NK)細胞に関し、より詳細には、限定されないが、目的とする遺伝子の発現を欠くように修飾され、且つ同時に目的とする膜結合タンパク質を発現する、NK細胞に関する。
【背景技術】
【0003】
NK細胞は、自然免疫系の重要な構成要素を構成する細胞傷害性リンパ球である。この細胞には種々の機能があり、特に腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、発癌性形質転換を起こしている細胞など、生体における異常な細胞を殺傷する。T細胞と異なり、NK細胞による標的細胞の殺傷は、詳細な抗原という点で非特異的であり、むしろ、その標的細胞認識は、活性化シグナルと抑制シグナルとの間の均衡を通して制御される。標的となった細胞の殺傷は、典型的には、パーフォリン、グランザイムB及び/又はグラニュライシンを含む細胞溶解性タンパク質によって媒介される。
【0004】
NK細胞は、近年、様々な難治性の血液学的悪性腫瘍及び固形腫瘍を有する患者における有望な免疫療法ツールとしてかなりの注目を集めているが、NK細胞ベースの免疫療法の最大限の治療可能性は、依然として実現していない。これまで、実験プロトコルからの結果は、ほとんどが部分奏効に限られており、この有効性が僅かに過ぎないことは、注入されるNK細胞の数が比較的少ないこと、in vivoでのその持続性が短いこと及び/又はin vivoでそれが良好に機能しないことが主な原因であるとされている。従って、NK集団を有効に増殖させると共に、養子的に注入されたNK細胞のin vivoでの機能性を高めるようなex vivoNK培養方法の開発がNK細胞免疫療法の臨床適用性の向上に必須である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、遺伝子改変されたナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、(a)NK細胞集団中の目的とする遺伝子の発現を下方制御して、目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を入手することと、(b)目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手することと、(c)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御し、それにより遺伝子改変されたNK細胞を作製することとを含む方法が提供される。
【0006】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、(a)NK細胞集団を、(i)細胞増殖を可能にする条件下でNK細胞集団を培養するステップであって、その条件が、有効量の栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを提供することを含むステップと、(ii)ステップ(i)の5~10日後に、NK細胞集団に有効量の新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給して、増殖させたNK細胞を作製するステップとを含む方法によって増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び(b)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御し、それにより少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するNK細胞を作製することを含む方法が提供される。
【0007】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、本発明の一部の実施形態の方法によって入手可能である、単離されたNK細胞集団が提供される。
【0008】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団と、薬学的に活性な担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0009】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、疾患の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団を投与し、それにより対象を治療することを含む方法が提供される。
【0010】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、疾患の治療を、それを必要としている対象において行うのに使用するための、治療有効量の、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団が提供される。
【0011】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団は、臍帯血、末梢血、骨髄、CD34+細胞又はiPSCに由来する。
【0012】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団は、CD3細胞を除かれている。
【0013】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団は、CD3-CD56細胞を含む。
【0014】
本発明の一部の実施形態によれば、下方制御は、遺伝子編集システムによって生じる。
【0015】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞は、培養物中にある。本発明の一部の実施形態によれば、下方制御は、培養の開始から24~72時間で生じる。
【0016】
本発明の一部の実施形態によれば、目的とする遺伝子は、NK細胞の増殖及び/又は生存に影響する遺伝子産物を生じる遺伝子を含む。
【0017】
本発明の一部の実施形態によれば、目的とする遺伝子は、CISH、TGFβ受容体及びCD38からなる群から選択される。
【0018】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団の増殖は、細胞増殖を可能にする条件下でもたらされ、この条件は、有効量の栄養素、血清、成長因子及びニコチンアミドを含む。
【0019】
本発明の一部の実施形態によれば、成長因子は、IL-15、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、SCF及びFLT3からなる群から選択される少なくとも1つの成長因子を含む。
【0020】
本発明の一部の実施形態によれば、ニコチンアミドの有効量は、1.0mM~10mMの量を含む。
【0021】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団の増殖は、フィーダー細胞又はフィーダー層の存在下で生じる。
【0022】
本発明の一部の実施形態によれば、フィーダー細胞は、照射細胞を含む。
【0023】
本発明の一部の実施形態によれば、フィーダー細胞は、T細胞又はPBMCを含む。
【0024】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞増殖を可能にする条件は、CD3アゴニストを更に含む。
【0025】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞集団の増殖は、14~16日間にわたって生じる。
【0026】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現の上方制御は、培養の開始から12~14日目に生じる。
【0027】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現の上方制御を、mRNAエレクトロポレーションによって実施する。
【0028】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの膜結合タンパク質は、一過性に発現する。
【0029】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの膜結合タンパク質は、in vivoでのNK細胞の抗疾患機能又は生存に影響するタンパク質を含む。
【0030】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの膜結合タンパク質は、IL-15、IL-15R、受容体リンカーIL-15(RLI)及びTLRからなる群から選択される。
【0031】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの膜結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(tg-TCR)を含む。
【0032】
本発明の一部の実施形態によれば、CARは、少なくとも1つの共刺激ドメインを含む。
【0033】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの共刺激ドメインは、CD28、2B4、CD137/4-1BB、CD134/OX40、Lsk、ICOS及びDAP10からなる群から選択される。
【0034】
本発明の一部の実施形態によれば、CARは、少なくとも1つの活性化型ドメインを含む。
【0035】
本発明の一部の実施形態によれば、活性化型ドメインは、CD3ζ、FC-エプシロン-R又はFcR-γを含む。
【0036】
本発明の一部の実施形態によれば、CARは、膜貫通ドメイン及びヒンジドメインの少なくとも1つを含む。
【0037】
本発明の一部の実施形態によれば、膜貫通ドメインは、CD8、CD28及びNKG2Dから選択される。
【0038】
本発明の一部の実施形態によれば、ヒンジドメインは、CD8及びCD28から選択される。
【0039】
本発明の一部の実施形態によれば、CARは、抗体又は抗原結合断片である抗原結合ドメインを含む。
【0040】
本発明の一部の実施形態によれば、抗原結合断片は、Fab又はscFvである。
【0041】
本発明の一部の実施形態によれば、CAR又はtg-TCRは、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原虫抗原及び寄生虫抗原からなる群から選択される抗原に対して抗原特異性を有する。
【0042】
本発明の一部の実施形態によれば、腫瘍抗原は、固形腫瘍に関連する。
【0043】
本発明の一部の実施形態によれば、腫瘍抗原は、血液学的悪性腫瘍に関連する。
【0044】
本発明の一部の実施形態によれば、CAR又はtg-TCRは、HER2/Neu、CD38、CD19、CD319/CS1、ROR1、CD20、CD5、CD7、CD22、CD70、CD30、BCMA、CD25、NKG2Dリガンド、MICA/MICB、癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、上皮性腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、変異型p53、変異型ras、ERBB2、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、κ鎖、λ鎖、CSPG4、ERBB2、WT-1、EGFRvIII、TRAIL/DR4及び/又はVEGFR2からなる群から選択される抗原に対して抗原特異性を有する。
【0045】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの膜結合タンパク質は、
(i)CAR又はtg-TCR、及び
(ii)in vivoでNK細胞の生存に影響するサイトカイン又は受容体
の共発現を含む。
【0046】
本発明の一部の実施形態によれば、目的とする遺伝子がCISHであるとき、少なくとも1つの膜結合タンパク質は、IL-15を含む。
【0047】
本発明の一部の実施形態によれば、目的とする遺伝子がCD38であるとき、少なくとも1つの膜結合タンパク質は、抗CD38 CARを含む。
【0048】
本発明の一部の実施形態によれば、疾患は、悪性疾患、ウイルス性疾患、細菌性疾患、真菌性疾患、原虫性疾患及び寄生虫性疾患からなる群から選択される。
【0049】
本発明の一部の実施形態によれば、悪性疾患は、固形腫瘍又は腫瘍転移である。
【0050】
本発明の一部の実施形態によれば、悪性疾患は、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、胃癌、肺癌、黒色腫、肉腫、神経芽細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、滑膜細胞癌、子宮癌、神経膠腫及び子宮頸癌からなる群から選択される。
【0051】
本発明の一部の実施形態によれば、悪性疾患は、血液学的悪性腫瘍である。
【0052】
本発明の一部の実施形態によれば、血液学的悪性腫瘍は、白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫を含む。
【0053】
本発明の一部の実施形態によれば、対象は、ヒト対象である。
【0054】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実践又は試験では、本明細書に記載されるものと同様の又は均等な方法及び材料を用い得るが、以下では、例示的な方法及び/又は材料を記載する。矛盾が生じる場合、本特許明細書が、定義を含めて優先するものとする。加えて、材料、方法及び例は、あくまでも例示に過ぎず、必ずしも限定を意図するわけではない。
【0055】
上記の及び更なる特徴は、添付の図面と併せて考慮するとき、以下の詳細な説明から一層明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1A】NK細胞におけるIL-15刺激後のCISの制御的役割を示す模式図である。Bottino et al., Transl Cancer Res (2016) 5(Suppl 4):S875-S877から援用。
図1B】NK細胞制御チェックポイントを示す模式図である。IL-15シグナル伝達によりCIS制御因子を産生する、CISHによる負のフィードバックループが駆動される。Riggan et al., Clinical & Translational Immunology (2021) e1238から援用。
図2】CISHノックアウト(KO)のシーケンシング結果を示す。(図2のA~C)ヒト初代NK細胞に、CISHを標的とする4μMのRNP複合体をエレクトロポレートした。培養下で7日後、細胞からのDNAを抽出した。サンガーシーケンシングを実施し、挿入-欠失(インデル)頻度に関してTIDEツールで分析した。(図2のA)「旧ガイド」(CISH 1)は、公開されているドメインから取ったgRNA配列を指す(Palmer et al, bioRxiv September 25, 2020を参照されたい)。(図2のB)ガイド4(CISH2)、及び(図2のC)ガイド10(CISH3)は、本発明者らが開発したユニークなgRNAである。注目すべきことに、3つのgRNA中の1つ、ガイド4及びガイド10では高い編集率が得られる(それぞれ85%及び82%インデル頻度)。一方、「旧ガイド」では、得られたインデル頻度は、30%であった。
図3】NK細胞におけるCISH遺伝子のCRISPR KOにより、NK細胞活性化に関連するサイトカイン産生が上方制御されることによって効力が亢進することを示す。(図3のA~B)細胞内染色を用いた効力アッセイにより炎症誘発性サイトカイン(INFγ及びGM-CSF)を測定した。対照NK細胞、モック(エレクトロ)対照又はCish欠失NK細胞の共培養(3つの異なるRNAガイドを使用、図2のA~Cに記載されるとおり)についてのサイトカイン発現を示す。各種のNK細胞をK562(ヒト赤白血病細胞株)及びRaji(B細胞リンパ腫細胞株)と共に、NK細胞のCD16媒介性ADCC細胞傷害活性を亢進させる抗CD20(リツキシマブ、RTX)あり又はなしで共培養した。全て単独で培養したNK細胞と比較した。フローサイトメトリーを用いることにより、CD56+ NK細胞にゲートをかけたサイトカイン発現を定量化した。(図3のA)IFNγの発現、及び(図3のB)GM-CSFの発現、両方とも細胞内染色(ICS)により検出した。
図4】NK細胞におけるCISH遺伝子のCRISPR KOにより、その細胞傷害性及びADCC機能が亢進することを示す。(図4のA~C)NK活性に関するリアルタイムデータの収集が可能なライブセルイメージングシステムIncuCyte S3を用いて細胞傷害殺傷アッセイを実施した。腫瘍標的細胞をCFSE色素で標識し、培地中PI(ヨウ化プロピジウム)の存在下でNK細胞と20時間共培養した。生細胞は、染色されないままであった一方、死細胞は、CFSE蛍光染色とPIが重なることによって検出された。(図4のA)K562細胞株、(図4のB)Raji細胞株、及び(図4のC)ADCC殺傷活性を亢進させるリツキシマブと共にあるRaji細胞株とそれぞれ共培養した対照NK細胞、モック(エレクトロ)対照細胞及びCISH欠失NK細胞(3つの異なるRNAガイドを使用、図2のA~Cに記載されるとおり)の曲線で標的死細胞の割合を示す。注目すべきことに、RNAガイド4(CISH2)は、試験した他のCISH KOと比較したとき、より良好な殺傷及びADCCを示した。
図5-1】IL-15安定性及び免疫療法活性の持続性を改良するためのIL-15ベースの融合タンパク質構造の開発を示す模式図である(図5のA~B)。IL-15Rβγ複合体を発現する細胞にトランス提示される膜結合型複合体IL-15-IL-15Rα(図5のB)の結合及び集合後におけるシグナル伝達(図5のA)の代表的な図(Carroll et al., Rheumatology (2008) 47(9): 1269-1277及びWikiwand, Interleukin-15から援用)。(図5のC)免疫学的活性を改良する設計された形態のIL-15-IL-15-IL15Rα複合体(Hu et al. Scientific Reports (2018) 8: 7675から援用)。(図5のD)代わりとなる、臨床癌治療で実証されているとおりのIL15Rαとの組み合わせである、設計されたIL-15剤(Waldmann et al., Front. Immunol. (2020) 11:868から援用)。
図5-2】同上
図6-1】遺伝子コンストラクト301.A(図6A)及び301.B(図6のC)並びに膜結合型RLI-301.A(図6のB)及び301.B(図6のD)のポリペプチド産物の概略図を示す。膜結合型N72D-RLI GDA-301A(図6のE)及びN72D-RLI GDA-301B(図6のF)の完全長配列を提示する。図6のE~Fについて、青色は、sushiドメインの配列を表し、濃紺色はエクソン3の始まりの配列を表し、緑色はリーダーペプチドの配列を表し、深緑色はリンカー配列の配列を表し、赤色は細胞外ドメインの配列を表し、オレンジ色は膜貫通ドメインの配列を表し、黄色は細胞質ドメインの配列を表す。
図6-2】同上
図6-3】同上
図7】膜結合型IL-15 mRNAが発現すると、CD107a NK細胞脱顆粒マーカーを使用して試験したときの効力が増加することを示す。CD107aの発現の増加は、対照NK細胞、モック(エレクトロ)対照又はmRNA IL-15 301.A(IL-15.1A)又は301.B(IL-15.1B)をエレクトロポレートしたものを6時間培養した後のフローサイトメトリー分析により決定した。各種のNK細胞を単独で培養するか又はK562細胞株若しくはRaji(リツキシマブあり又はなし)と共に共培養した。
図8】膜結合型IL-15により、炎症誘発性サイトカインの上昇によって示されるとおり、NK細胞の効力が亢進することを示す。対照、IL 15.1A又はIL-15.1B mRNAをエレクトロポレートした細胞を6時間共インキュベートした後、サイトカインの細胞内染色を実施した。いずれもフローサイトメトリー分析により検出した、IFNγ(図8のA)、GM-CSF(図8のB)及びTNFα(図8のC)の発現を示す。注目すべきことに、IL15.1A及びIL15.1Bは、両方とも炎症誘発性サイトカインINFg、TNFa及びGM-CSFの発現の増加を示し、mbIL-15.1bの方が有利であった。
図9】膜結合型IL-15により、NK細胞の細胞傷害機能及びADCC殺傷が増加することを示す。IL15.1A又はIL-15.1B mRNAをエレクトロポレートしたNK細胞の殺傷活性の亢進を試験した。(図9のA~B)ライブセルイメージングシステムIncuCyte S3を用いて細胞傷害殺傷アッセイを実施した。腫瘍標的細胞をCFSE色素で標識し、培地中PIの存在下でNK細胞と共に20時間共培養した。生細胞は、染色されないままであった一方、死細胞は、CFSE蛍光染色とPIが重なることによって検出された。対照NK細胞、モック(エレクトロ)対照細胞、IL15.1A又はIL15.1B NK細胞及び可溶性IL-15サイトカインで処理した対照NK細胞(本アッセイの陽性対照、IL-15投与後に細胞が活性化を起こす最大の能力を決定することが可能になる)の曲線で標的死細胞の割合を示す。(図9のA)K562細胞株と共に24時間、及び(図9のB)B細胞リンパ腫(BL-2)細胞株と共にリツキシマブも一緒に48時間共培養した各種のNK細胞。代わりに、フローサイトメトリーによる殺傷アッセイを実施して、RPMI-8226骨髄腫細胞株と共培養した異なるNK細胞の細胞傷害活性を検出した(図9のC)。
図10】NK CD38殺兄弟問題及びCRISPR解決法を示す。
図11-1】CD38 KO NK細胞がダラツムマブの存在下で殺兄弟耐性を示すことを表す。(図11のA~B)フローサイトメトリーゲート戦略。(図11のC~E)それぞれNK、モック及びKO細胞のCD38発現。(図11のF)殺兄弟NKの概要。(図11のG~H)DARA(ダラツムマブ)あり又はなしでのNK(図11のG)及びCD38 KO NK(図11のH)の殺兄弟フローサイトメトリー分析。
図11-2】同上
図12A】抗CD38 NK CARの遺伝子コンストラクト及びタンパク質構造(図12A)並びに抗CD38 CARの完全長配列(図12B)を示す。図12Bについて、赤色はヒンジドメインの配列を表し、青色は膜貫通ドメインの配列を表し、茶色は細胞質ドメインの配列を表す。
図12B】同上
図13】組み合わせの遺伝子編集技法を示す模式図である。
図14】DARA(ダラツムマブ)あり又はなしでの複数の細胞株に対する操作していないNK細胞及び操作したNK細胞のフローサイトメトリー殺傷分析を示す。
図15】抗HER2 CAR遺伝子コンストラクトの概略表現である。
図16-1】抗HER2 CARを発現するように改変された異なるコンストラクトを示す模式図である。
図16-2】同上
図17】細胞の外観を実証するコンストラクトの概略的な要約である。
図18】NK細胞上のCAR発現を決定するためのサンドイッチフローサイトメトリー方法を示す。(図18のA)特異的抗Her2抗体によって検出された、抗HER2 CARを発現してHer2タンパク質に結合するNKの模式図である。(図18のB~G)エレクトロポレートした細胞にのみ発現する抗HER2 CARの特異的決定を表すフローサイトメトリープロット。染色のゲート戦略は、生細胞に対するサイズゲーティングを用いて実施し(図18のB)、続いて対照NK細胞(図18のC)、エレクトロ(モック)対照(図18のD)並びに図17のとおりにCAR-B(図18のE)、CAR-C(図18のF)及びCAR-D(図18のG)をエレクトロポレートしたNKに対して抗Her2抗体で染色した。
図19】NK細胞制御チェックポイントの説明図を示し、TGFbシグナル伝達によって媒介される抑制フィードバックループを強調表示する。Riggan et al., Clinical & Translational Immunology (2021) e1238から援用。
図20】NKp30表面発現を示す。
図21】CISH KO NK及びCISH KO/mb-IL-15 NKにおける細胞傷害効力を示す。
図22】CISH KO NK及びCISH KO/mb-IL-15 NKにおける細胞傷害効力を示す。
図23】CISH KO NK及びCISH KO/mb-IL-15 NKにおける細胞傷害効力を示す。
図24】CISH KO NK及びCISH KO/mb-IL-15 NKにおける殺傷率及び効力を示す。
図25】CD122及びNKG2A表面発現CISH KO/mb-IL-15 NKを示す。
図26】TIGIT及びLAG3表面発現CISH KO/mb-IL-15 NKを示す。
図27】CD38 KO及びCD38 KO/CD38 CAR(GDA601)CD38表面発現のフロー分析を示す。
図28】CISHガイドKO戦略及び一般的なCISH KO/mb-IL-15エレクトロポレーション作業の流れを示す。
図29】mb-IL-15標的細胞殺傷(K562)及び非標的殺傷(PBMC)を示す。
図30】CD38 KO及びCD38 KO/CD38 CAR効力分析を示す。
図31】CD38 KO及びCD38 KO/CD38 CAR効力分析を示す。
図32】CD38 KO及びCD38 KO/CD38 CARの殺傷及び殺兄弟分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、その一部の実施形態では、改変ナチュラルキラー(NK)細胞に関し、より詳細には、限定されないが、目的とする遺伝子の発現を欠くように修飾され、且つ同時に目的とする膜結合タンパク質を発現するNK細胞に関する。
【0058】
図面及び添付の説明を参照すると、本発明の原理及び動作を更によく理解し得る。
【0059】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に解説する前に、本発明は、その適用の点において、以下の説明に示されるか又は本実施例に例示される詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態の可能性があるか、又は様々な方法で実践若しくは実行される可能性がある。本明細書で用いられる表現法及び用語法は、説明を目的とするものであり、限定と見なされてはならないことも理解されるべきである。
【0060】
本発明を実施に移す中で、本発明者らは、目的とする特異的疾患細胞を標的化すると同時に、効率的な免疫療法に向けて改良された特性を有するものとなるようにNK細胞を調整し得ることを示している。
【0061】
下記及び続く実施例の項に示すとおり、本発明者らは、栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを含む培養条件下でNK細胞集団をex vivoで増殖することにより、特性が改良されたNK細胞を作製した(以下の一般的な材料及び実験手順の節を参照されたい)。NK細胞の機能性、生存及び/又は増殖を更に改良するため、細胞の増殖前に、CRISPR-Cas9遺伝子編集システムを使用して、その産物がNK細胞の機能性、生存又は増殖を負に制御する遺伝子(例えば、CISHなどのチェックポイントの遺伝子又はCD38若しくはTGFβ受容体2の遺伝子、それぞれ実施例1、3及び5を参照されたい)の発現を下方制御するように細胞を遺伝子改変した。更に、NK細胞の抗疾患機能又は生存を改良するため、mRNAエレクトロポレーションにより、増殖させたNK細胞が受容体リンカーIL-15(RLI、実施例2を参照されたい)又はToll様受容体4(TLR4、実施例6を参照されたい)などの膜結合タンパク質又は抗CD38 CAR(実施例3を参照されたい)又は抗HER2 CAR(実施例4を参照されたい)などのキメラ抗原受容体(CAR)を一過性に発現するように修飾した。
【0062】
まとめると、本発明のex vivoで作製されるNK細胞は、多い個数を含むものである、in vivoでの長い生存期間及び高い機能性(例えば、高い細胞傷害性)の両方を有するものであり、且つどのような目的とする疾患細胞(例えば、固形腫瘍又は転移の細胞、血液腫瘍の細胞、ウイルス感染した細胞等)も標的化するように改変されるものであるという解決法をもたらす。更に、本発明のex vivoで作製されるNK細胞は、ダラツムマブ(DARA)などの抗CD38抗体など、本来であればNK細胞を殺傷するであろう選択された任意の薬物との共投与のために改変することができる。
【0063】
本開示のNK細胞画分
本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を含む組成物を提供する。
【0064】
一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約1.0×10個、又は少なくとも約5.0×10個、又は少なくとも約1.0×10個、又は少なくとも約5.0×10個、又は少なくとも約1.0×10個、又は少なくとも約5.0×10個、又は少なくとも約1.0×10個、又は少なくとも約5.0×10個、又は少なくとも約1.0×1010個、又は少なくとも約5.0×1010個、又は少なくとも約1.0×1011個、又は少なくとも約5.0×1011個、又は少なくとも約1.0×1012個、又は少なくとも約5.0×1012個の有核細胞を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約1.0×10個の細胞を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約17.5×10個の細胞を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約35×10を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約2.5×10個の細胞を含み得る。一部の態様では、有核細胞集団は、少なくとも約5×10個の細胞を含み得る。
【0065】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%が生細胞である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約70%が生細胞である。
【0066】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%がCD56+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+である。
【0067】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約80%~約99%、又は約85%~約95%、又は約90~約95%がCD56+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約90~約95%がCD56+である。
【0068】
[0001]一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%以下、又は約0.2%以下、又は約0.3%以下、又は約0.4%以下、又は約0.5%以下、又は約0.6%以下、又は約0.7%以下、又は約0.8%以下、又は約0.9%以下、又は約1.0%以下がCD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の0.5%以下がCD3+である。
【0069】
[0002]一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.1%、又は約0.01%~約0.2%、又は約0.01%~約0.3%、又は約0.01%~約0.4%、又は約0.01%~約0.5%、又は約0.01%~約0.6%、又は約0.01%~約0.7%、又は約0.01%~約0.8%、又は約0.01%~約0.9%、又は約0.01%~約1.0%がCD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.5%がCD3+である。
【0070】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.5%又は約0.2%~約0.3%がCD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.2%~約0.3%がCD3+である。
【0071】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%がCD56+/CD3-である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+/CD3-である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約99%がCD56+/CD3-である。
【0072】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約80%~約99%、又は約85%~約95%、又は約90~約95%がCD56+/CD3-である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約90~約95%がCD56+/CD3-である。
【0073】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%以下、又は約0.2%以下、又は約0.3%以下、又は約0.4%以下、又は約0.5%以下、又は約0.6%以下、又は約0.7%以下、又は約0.8%以下、又は約0.9%以下、又は約1.0%以下がCD56-/CD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の0.5%以下がCD56-/CD3+である。
【0074】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.1%、又は約0.01%~約0.2%、又は約0.01%~約0.3%、又は約0.01%~約0.4%、又は約0.01%~約0.5%、又は約0.01%~約0.6%、又は約0.01%~約0.7%、又は約0.01%~約0.8%、又は約0.01%~約0.9%、又は約0.01%~約1.0%がCD56-/CD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~0.5%がCD56-/CD3+である。
【0075】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.5%又は約0.2%~約0.3%がCD56-/CD3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.2%~約0.3%がCD56-/CD3+である。
【0076】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約25%以下がCD19+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がCD19+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.7%以下がCD19+である。
【0077】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約5%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約25%がCD19+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約10%がCD19+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.7%がCD19+である。
【0078】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約5%、又は約0.1%~約10%、又は約0.1%~約15%、又は約0.1%~約20%、又は約0.1%~約25%がCD19+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約10%がCD19+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.7%がCD19+である。
【0079】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約25%以下がCD14+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がCD14+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.05%以下がCD14+である。
【0080】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約5%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約25%がCD14+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約10%がCD14+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.05%がCD14+である。
【0081】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約5%、又は約0.1%~約10%、又は約0.1%~約15%、又は約0.1%~約20%、又は約0.1%~約25%がCD14+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約10%がCD14+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.05%がCD14+である。
【0082】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.57%以下がLAG3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約1%以下がLAG3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約2%以下がLAG3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約40%以下がLAG3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約2.5%以下、又は約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約30%以下、又は約35%以下、又は約40%以下、又は約50%以下がLAG3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がLAG3+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.5%~約40%がLAG3+である。
【0083】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約10%がCD122+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約15%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約25%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約45%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%がCD122+である。
【0084】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約15%以下がNKG2A+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がNKG2A+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約5%以下、又は約2.5%以下、又は1%以下がNKG2A+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.5%以下がNKG2A+である。
【0085】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約60%以下がNKG2A+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約50%以下がNKG2A+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約45%以下、又は約35%以下、又は25%以下がNKG2A+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がNKG2A+である。
【0086】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約80%以下がNKG2A+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約75%以下がNKG2A+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約70%以下又は約65%以下がNKG2A+である。
【0087】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約40%以下がTIGIT+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約30%以下又は約35%以下がTIGIT+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約20%以下がTIGIT+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約2.5%以下、又は約1%以下がTIGIT+である。
【0088】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約90%がNKp30+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約80%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約50%がNKp30+である。
【0089】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約45%がNKp30+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約35%、又は少なくとも約25%、又は少なくとも約15%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約5%、又は少なくとも約2.5%がNKp30+である。
【0090】
一部の実施形態では、有核細胞集団中の細胞は、膜結合型受容体又はタンパク質を含む。一部の実施形態では、膜結合型受容体又はタンパク質は、受容体リンカーIL-15(mb-IL-15)、IL-15、IL-15R又はTLRの1つ以上である。
【0091】
一部の実施形態では、有核細胞集団中の細胞は、膜結合型受容体又はタンパク質と、上方制御されるか、下方制御されるか又はノックアウトされている目的とする遺伝子とを含む。一部の実施形態では、膜結合型受容体又はタンパク質は、受容体リンカーIL-15(mb-IL-15)の1つ以上であり、目的とする遺伝子は、CISHである。一部の実施形態では、目的とする遺伝子は、CISHであり、ノックアウトされている。一部の実施形態では、有核細胞集団中の細胞は、mb-IL-15を含み、mb-IL-15を含む細胞の約50%以下がCISHを発現する。一部の実施形態では、有核細胞集団中の細胞は、mb-IL-15を含み、mb-IL-15を含む細胞の約45%以下、又は約40%以下、又は約35%以下、又は約30%以下、又は約25%以下がCISHを発現する。一部の実施形態では、有核細胞集団中の細胞は、mb-IL-15を含み、mb-IL-15を含む細胞の約20%以下、又は約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約2.5%以下がCISHを発現する。
【0092】
従って、非限定的な例では、本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×10個の有核細胞を含み、集団中の細胞の少なくとも約70%は、生細胞であり、且つ受容体リンカーIL-15を発現し、
集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
集団中の細胞の約0.5%以下がCD3+であり、
集団中の細胞の約10%以下がCD19+であり、
集団中の細胞の約10%以下がCD14+であり、
集団中の細胞の約40%以下がLAG3+であり、
集団中の細胞の少なくとも約50%がCD122+であり、
集団中の細胞の約60%以下がNKG2A+であり、
集団中の細胞の約20%以下がTIGIT+であり、及び
集団中の細胞の少なくとも50%がNKp30+である。
【0093】
一部の実施形態では、受容体リンカーIL-15は、配列番号25又は配列番号28から選択される。
【0094】
一部の実施形態では、受容体リンカーIL-15を発現する細胞の約25%以下がCISHも発現する。一部の実施形態では、受容体リンカーIL-15を発現する細胞の約20%以下、又は約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約2.5%以下、又は約1%以下、又は約0.5%以下、又は約0.01%以下がCISHも発現する。
【0095】
一部の実施形態では、受容体リンカーIL-15を発現する細胞の約50%以下がCISHも発現する。一部の実施形態では、受容体リンカーIL-15を発現する細胞の約45%以下、又は約40%以下、又は約35%以下、又は約30%以下、又は約28%以下がCISHも発現する。
【0096】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約15%以下がCD38+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がCD38+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約5%以下、又は約2.5%以下、又は1%以下がCD38+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.5%以下がCD38+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約0.1%以下がCD38+である。
【0097】
一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約30%以下がCD38+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約25%以下がCD38+である。一部の態様では、有核細胞集団中の細胞の約20%以下又は約17%以下がCD38+である。
【0098】
一部の実施形態では、有核細胞集団中の細胞は、抗CD-38キメラ抗原受容体を含む。一部の実施形態では、有核細胞集団中の細胞は、抗CD-38キメラ抗原受容体を含み、且つCD-38ノックアウトを含む。
【0099】
一部の実施形態では、抗CD-38キメラ抗原受容体を発現する細胞の約10%以下がCD38+も発現する。一部の実施形態では、抗CD-38キメラ抗原受容体を発現する細胞の約5%以下、又は2.5%以下、又は1%以下、又は0.05%以下、又は0.01%以下がCD38+も発現する。
【0100】
一部の実施形態では、CARは、抗CD38 Fab又はscFvを含む。一部の実施形態では、CARは、CD28又はCD8ヒンジドメインの1つ以上を含む。一部の実施形態では、CARは、CD28、CD8又はNKG2D膜貫通ドメインの1つ以上を含む。一部の実施形態では、CARは、CD28、4-1BB、2B4、CD3ゼータR、OX40、Lsk、ICOS、DAP10及びIgE受容体Ig共刺激ドメインのFc断片の1つ以上を含む。一部の実施形態では、CARは、CD3ζ、FcR-γ及びFc-イプシロン-R活性化型ドメインの1つ以上を含む。一部の実施形態では、CARは、シグナルペプチド又はリーダーペプチドを更に含む。
【0101】
一部の実施形態では、抗CD-38 CARは、配列番号31及び配列番号32から選択される。
【0102】
一部の実施形態では、集団中の細胞の少なくとも約70%が生細胞であり、少なくとも1つの膜結合型受容体と少なくとも1つのCAR受容体とを発現する。
【0103】
一部の実施形態では、有核細胞集団中の細胞は、ケモカイン受容体又は変異体ケモカイン受容体を更に含む。一部の実施形態では、ケモカイン受容体は、CXCR4又は変異体CXCR4である。一部の実施形態では、変異体CXCR4は、CXCR4R334X変異体である。一部の実施形態では、変異体CXCR4は、配列番号69である。
【0104】
本開示は、本明細書に記載されるNK細胞画分のいずれかとDMSOとを含む、凍結保存されたNK細胞画分も提供する。一部の態様では、DMSO濃度は、約1%v/v、又は約2%v/v、又は約3%v/v、又は約4%v/v、又は約5%v/v、又は約6%v/v、又は約7%v/v、又は約8%v/v、又は約9%v/v、又は約10%v/v、又は約11%v/v、又は約12%v/v、又は約13%v/v、又は約14%v/v、又は約15%v/vであり得る。一部の態様では、DMSO濃度は、約10%v/vであり得る。
【0105】
一部の態様では、凍結保存されたNK細胞画分は、少なくとも約1ヵ月、又は少なくとも約2ヵ月、又は少なくとも約3ヵ月、又は少なくとも約4ヵ月、又は少なくとも約5ヵ月、又は少なくとも約6ヵ月、又は少なくとも約7ヵ月、又は少なくとも約9ヵ月、又は少なくとも約10ヵ月にわたって安定していることができる。一部の態様では、凍結保存されたNK細胞画分は、約-80℃で少なくとも約1ヵ月、又は少なくとも約2ヵ月、又は少なくとも約3ヵ月、又は少なくとも約4ヵ月、又は少なくとも約5ヵ月、又は少なくとも約6ヵ月、又は少なくとも約7ヵ月、又は少なくとも約9ヵ月、又は少なくとも約10ヵ月にわたって安定していることができる。
【0106】
本開示の効力アッセイ
本開示は、第1の効力アッセイであって、
a)本開示のNK細胞画分及び複数の標的細胞をインキュベートするステップであって、複数の標的細胞が少なくとも1つの増殖染色剤で染色される、ステップと、
b)複数の標的細胞における細胞死率を決定するステップと
を含むアッセイを提供する。
【0107】
第1の効力アッセイの一部の態様では、ステップ(a)のインキュベーション条件は、少なくとも1つの抗癌療法用モノクローナル抗体を更に含み得る。
【0108】
第1の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、K562細胞であり得る。
【0109】
第1の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、Raji(CCL-86)細胞であり得る。第1の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、Raji(CCL-86)細胞であり得、ステップ(a)のインキュベーション条件は、リツキシマブを更に含み得る。一部の態様では、リツキシマブは、約1μg/mlの濃度で存在し得る。
【0110】
第1の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、RPMI細胞であり得る。第1の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、RPMI細胞であり得、及びステップ(a)のインキュベーション条件は、ダラツムマブを更に含み得る。一部の態様では、ダラツムマブは、約1μg/mlの濃度で存在し得る。
【0111】
当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイのステップ(b)における複数の標的細胞における細胞死率を決定するステップは、細胞死率を決定するための当技術分野で公知の任意の標準技法を用いて達成することができる。非限定的な例では、複数の標的細胞における細胞死率を決定するステップは、i)ステップ(a)でインキュベートしたNK細胞画分及び複数の標的細胞を少なくとも1つの生死判別染色剤で染色すること、ii)蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて複数の標的細胞をNK細胞画分と分離すること、及びiii)生死判別染色剤を使用して、ステップ(ii)で分離されて選別された複数の標的細胞における細胞死率を決定することを含み得る。
【0112】
一部の態様では、少なくとも1つの増殖染色剤は、カルボキシフルオレセイン二酢酸塩、スクシンイミジルエステル(CFSE)であり得る。当業者であれば理解するであろうとおり、本明細書に記載される第1の効力アッセイでは、当技術分野で公知の任意の増殖染色剤を使用することができる。
【0113】
一部の態様では、少なくとも1つの生死判別染色剤は、Helix NP(商標)ブルー(別名Sytox(商標)ブルー)であり得る。当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイには、当技術分野で公知の任意の増殖染色剤を使用することができる。
【0114】
一部の態様では、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるインキュベーションは、約37℃で実施することができる。
【0115】
一部の態様では、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるインキュベーションは、少なくとも約3時間にわたって実施することができる。
【0116】
一部の態様では、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるNK細胞画分の細胞数と複数の標的細胞の細胞数との比は、約2.5:1、又は約3:1、又は約5:1、又は約10:1であり得る。
【0117】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、標的細胞における細胞死率が少なくとも30%であることを特徴とし得る。
【0118】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、標的細胞における細胞死率が少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%であることを特徴とし得る。
【0119】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、1:1のE:T比で標的細胞における細胞死率が少なくとも10%であることを特徴とし得る。一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、5:1のE:T比で標的細胞における細胞死率が少なくとも25%であることを特徴とし得る。
【0120】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、5:1のE:T比で標的細胞における細胞死率が少なくとも40%であることを特徴とし得る。一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、2.5:1のE:T比で標的細胞における細胞死率が少なくとも40%であることを特徴とし得る。一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、1.25:1のE:T比で標的細胞における細胞死率が少なくとも30%であることを特徴とし得る。
【0121】
本開示は、第2の効力アッセイであって、
a)本開示のNK細胞画分及び複数の標的細胞をインキュベートするステップであって、NK細胞画分が、検出可能標識を含む少なくとも1つの抗CD107α抗体で染色される、ステップと、
b)ステップ(a)でインキュベートしたNK細胞画分及び複数の標的細胞を1つ以上のタンパク質輸送阻害薬で処理し、且つNK細胞画分及び複数の標的細胞を更にインキュベートするステップと、
c)NK細胞画分及び複数の標的細胞を、
少なくとも1つの生死判別染色剤、及び
検出可能標識を含む少なくとも1つの抗CD56抗体
で染色するステップと、
d)NK細胞画分及び複数の標的細胞を固定するステップと、
e)NK細胞画分及び複数の標的細胞を透過処理するステップと
f)NK細胞画分及び複数の標的細胞を、
i)検出可能標識を含む少なくとも1つの抗IFNγ抗体、
ii)検出可能標識を含む少なくとも1つの抗TNFα抗体
で染色するステップと、
g)以下:
)少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CD107α抗体でも染色される割合(即ちCD107a+/CD56+細胞数÷CD56+細胞数×100%)、
)少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗IFNγ抗体でも染色される割合(即ちIFNγ+/CD56+細胞数÷CD56+細胞数×100%)、及び
)少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗TNFα抗体でも染色される割合(即ちTNFα+/CD56+細胞数÷CD56+細胞数×100%)
の少なくとも1つを決定するステップと
を含むアッセイを提供する。
【0122】
第2の効力アッセイの一部の態様では、標的細胞は、K562細胞、RPMI、Raji又はK562細胞であり得る。
【0123】
一部の態様では、少なくとも1つの生死判別染色剤は、Zombie Violet(商標)生死判別色素であり得る。当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイには、当技術分野で公知の任意の増殖染色剤を使用することができる。
【0124】
一部の態様では、1つ以上のタンパク質輸送阻害薬は、ブレフェルジン、GolgiStop(商標)タンパク質輸送阻害剤(BD社)、ブレフェルジンとGolgiStop(商標)タンパク質輸送阻害剤との組み合わせ又は当技術分野で公知の任意の他のタンパク質輸送阻害薬を含み得る。
【0125】
第2の効力アッセイの一部の態様では、ステップ(b)の更なるインキュベーションは、約37℃で実施される。
【0126】
第2の効力アッセイの一部の態様では、ステップ(b)の更なるインキュベーションは、少なくとも約37℃について実施される。
【0127】
当業者であれば理解するであろうとおり、ステップ(g)における(g)~(g)のの少なくとも1つの決定は、限定されないが、蛍光活性化細胞選別(FACS)を含む、検出可能標識を含む抗体で標識された細胞の割合を決定するための当技術分野で公知の任意の標準技法を用いて達成することができる。
【0128】
第2の効力アッセイの一部の態様では、ステップ(g)は、(g)~(g)の各々を決定することを含み得る。
【0129】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合、上記に記載される第2の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CD107α抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも25%であることを特徴とし得る。
【0130】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRaji細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CD107α抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも2.5%であることを特徴とし得る。
【0131】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CD107α抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも10%であることを特徴とし得る。
【0132】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗TNFα抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも10%であることを特徴とし得る。
【0133】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗TNFα抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも25%であることを特徴とし得る。
【0134】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRaji細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗TNFα抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも5%であることを特徴とし得る。
【0135】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗IFNガンマ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも25%であることを特徴とし得る。
【0136】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRaji細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗IFNガンマ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも20%であることを特徴とし得る。
【0137】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗IFNガンマ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも10%であることを特徴とし得る。
【0138】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗GM-CSF抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも4%であることを特徴とし得る。
【0139】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗MIP1アルファ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも50%であることを特徴とし得る。
【0140】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗MIP1アルファ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも30%であることを特徴とし得る。
【0141】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRaji細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗MIP1アルファ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも20%であることを特徴とし得る。
【0142】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗MIP1ベータ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも50%であることを特徴とし得る。
【0143】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗MIP1ベータ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも25%であることを特徴とし得る。
【0144】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRaji細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗MIP1ベータ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも20%であることを特徴とし得る。
【0145】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CD107アルファ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも40%であることを特徴とし得る。
【0146】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗TNFアルファ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも50%であることを特徴とし得る。
【0147】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗IFNガンマ抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも5%であることを特徴とし得る。
【0148】
一部の態様では、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRPMI細胞である場合、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CM-CSF抗体でも染色される割合が3:1のE:Tで少なくとも15%であることを特徴とし得る。
【0149】
このように、本発明の一態様によれば、遺伝子改変されたナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団中の目的とする遺伝子の発現を下方制御して、目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を入手すること、
(b)目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び
(c)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御し、それにより遺伝子改変されたNK細胞を作製すること
を含む方法が提供される。
【0150】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団を、
(i)細胞増殖を可能にする条件下でNK細胞集団を培養するステップであって、その条件が、有効量の栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを提供することを含む、ステップと、
(ii)ステップ(i)の5~10日後に、NK細胞集団に有効量の新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給して、増殖させたNK細胞を作製するステップと
を含む方法によって増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び
(b)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御し、それにより少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するNK細胞を作製すること
を含む方法が提供される。
【0151】
本明細書で使用されるとき、用語「ナチュラルキラー細胞」又は「NK細胞」は、自然免疫応答に関与する大型顆粒リンパ球を指す。機能的には、NK細胞は、パーフォリン及びグランザイムプロテアーゼを含む、種々のタンパク質を含有する細胞質顆粒のエキソサイトーシスを介した種々の標的に対する細胞溶解活性を呈する。殺傷は、接触に依存した非貪食過程で惹起され、この過程に抗原への事前感作は必要ない。
【0152】
ヒトNK細胞は、細胞表面マーカーCD16及びCD56の存在並びにT細胞受容体(CD3)の欠如を特徴とする。ヒト骨髄由来のNK細胞は、CD2CD16CD56CD3表現型であり、更に典型的にはT細胞受容体ゼータ鎖[ゼータ-TCR]を有することを更に特徴とし、多くの場合にNKp46、NKp30又はNKp44の存在を特徴とする。NKT細胞又はCD8NKTなど、非NK細胞は、T細胞及びNK細胞の両方の特徴及び細胞表面マーカーを備えている(例えば、CD3の発現)。
【0153】
一実施形態では、NK細胞集団は、成熟NK細胞を含む。本明細書で使用されるとき、用語「成熟NK細胞」は、特徴的な表面マーカー及びNK細胞機能を有し、且つ更なる分化の可能性がない、コミットしたNK細胞として定義される。本明細書で使用されるとき、成熟NK細胞としては、限定されないが、増殖し、且つ多量のサイトカインを産生することのできるCD56bright細胞、ロバストな細胞傷害性を呈するCD56dim細胞、CD56brightCD94high及びCD56dimCD94high細胞が挙げられる。CD56、CD3、CD94及び他のマーカーの細胞表面発現は、例えば、FACS分析又は免疫組織染色技法により決定することができる。
【0154】
別の実施形態では、NK細胞集団は、NK前駆細胞又はNK前駆細胞と成熟NK細胞との混合集団を含む。本明細書で使用されるとき、用語「前駆体」は、分裂する能力及び/又は1つ又は複数の成熟エフェクター細胞への分化を起こす能力のある未熟細胞を指す。リンパ球前駆体には、例えば、B細胞、T細胞及びNK系統の成熟細胞を生じさせる能力のある多能性造血幹細胞が含まれる。B細胞系統では(即ち成熟B細胞を生じさせる発生経路にある)、前駆細胞には、免疫グロブリン遺伝子再配列及び発現を特徴とするプロB細胞及びプレB細胞も含まれる。T及びNK細胞系統では、前駆細胞には、骨髄由来の二分化能T/NK細胞前駆体[例えば、CD34(+)CD45RA(hi)CD7(+)及びCD34(+)CD45RA(hi)Lin(-)CD10(+)細胞]並びに胸腺内前駆細胞であって、ダブルネガティブ(CD4及びCD8に関して)及びダブルポジティブ胸腺細胞(T細胞系統)を含むもの並びにコミットしたNK細胞前駆体も含まれる。
【0155】
本発明の一部の実施形態のNK細胞は、単離された細胞である。
【0156】
用語「単離された」は、天然の環境、例えば組織、例えば人体から少なくとも部分的に分離されていることを指す。
【0157】
用語「NK細胞集団」は、異なる成熟度段階にあるか、異なるシグネチャを有するか又は異なる機能を有するなど、不均一なNK細胞混合物を指す。
【0158】
本発明の一部の実施形態のNK細胞は、かかる細胞を含む任意の供給源に由来し得る。NK細胞は、多くの組織に見られ、例えばリンパ節、脾臓、肝臓、肺、腸、脱落膜から入手することができ、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)からも入手することができる。典型的には、異種リンパ球細胞集団を含有する臍帯血、末梢血、動員末梢血及び骨髄(例えば、CD34+細胞)が、研究及び臨床使用向けのNK細胞を多数提供するために使用されている。
【0159】
一実施形態によれば、NK細胞は、末梢血から入手される。
【0160】
本教示によれば、任意の採血方法を用いることができる。例えば、血液分画の収集によく用いられる方法は、アフェレーシスであり、ドナーの全血が血液成分(例えば、血漿、白血球及び赤血球)に典型的には遠心によって分離され、選択された成分が操作(例えば、白血球画分の培養)のために抜き取られ、残りは、ドナーに戻される。多くの好適なアフェレーシス装置が市販されている。典型的には、アフェレーシスは、ドナーの末梢血からの血液成分の分離に適用される。
【0161】
「バフィーコート」又はアフェレーシスユニットなど、リンパ球画分を処理して、特異的な限定された細胞集団を濃縮又は精製又は単離することができる。用語「精製する」及び「単離する」は、絶対的な純粋さを要求するものではなく、むしろ、これらは、相対的に見たものとして意図される。従って、例えば、精製されたリンパ球集団とは、指定された細胞が、かかる細胞がその供給源組織中にあるよりも一層濃縮されているものである。実質的に純粋なリンパ球の調製物は、その調製物中に存在する総細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%又はそれを超えるものを所望の細胞(例えば、NK細胞)が占めるように濃縮され得る。リンパ球の濃縮、精製及び単離方法は、当技術分野で周知であり、適切な方法は、所望の集団に基づき選択することができる。例えば、リンパ球の濃縮は、FICOLL-HYPAQUE(商標)及び全リンパ球、T細胞又はNK細胞の濃縮のために配合された他の密度勾配液など、望ましくない細胞のネガティブ選択のための市販の調製品を使用して実施することができる。
【0162】
血液、骨髄、リンパ球調製物(例えば、アフェレーシスユニット)又は組織試料からNK細胞を選択する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Litwin et al.の米国特許第5,770,387号明細書(これは、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照されたい)。最も多く用いられているのは、通常、単核球分画及びCD3+、CD19+、CD14+、CD34+及び/又はCD133+細胞などの非NK細胞の枯渇後のCD56+細胞の単離及び精製に基づくプロトコルである。2つ以上のプロトコルの組み合わせを用いて、非NK夾雑物から高い純度を有するNK細胞集団を提供し得る。T細胞及びNKT細胞などの非NK細胞は、移植片対宿主病(GVHD)など、NK細胞移植の潜在的利益を損なう抗原特異的反応の一因となるため、NK細胞調製物の純度は、臨床適用に非常に重要である。NK細胞を単離するための市販のキットには、一段階手順(例えば、カリフォルニア州オーバーン、Miltenyi Biotec社のCD56マイクロビーズ及びCD56+、CD56+CD16+単離キット)並びにCD3+の枯渇若しくは部分的枯渇又はT細胞(例えば、OKT-3)、B細胞、幹細胞、樹状細胞、単球、顆粒球及び赤血球系細胞を認識して除去する非NK細胞抗体による枯渇を含む多段階手順が含まれる。
【0163】
表現型によるNK細胞の選択方法としては、限定されないが、免疫検出及びFACS分析が挙げられる。具体的な実施形態では、NK細胞集団は、例えば、CliniMACS(LSカラム、Miltenyi Biotec社)を使用した免疫磁気選択法により、CD3+細胞、CD14+細胞、CD19+細胞等が枯渇されるか又はCD56+細胞が選択される。
【0164】
このように、特定の実施形態では、NK細胞集団は、NK細胞に関して選択又は濃縮され、CD3枯渇NK細胞画分となり得る。
【0165】
別の実施形態によれば、NK細胞集団は、NK細胞に関して選択又は濃縮され、CD56+ NK細胞画分となり得る。
【0166】
一実施形態によれば、NK細胞集団は、CD56+CD16+CD3-細胞及び/又はCD56+CD16-CD3-細胞を含む。
【0167】
具体的な実施形態では、培養開始時に(即ちex vivo増殖前に)NK細胞を含む細胞集団は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又はそれを超えるCD3-/CD56+細胞を含む。
【0168】
具体的な実施形態では、培養開始時にNK細胞を含む細胞集団は、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又はそれを超えるCD3-/CD56+細胞を含む。
【0169】
一部の実施形態では、培養開始時にNK細胞を含む細胞集団は、10%~30%のCD3-/CD56+細胞、10%~50%のCD3-/CD56+細胞、20%~40%のCD3-/CD56+細胞、20%~60%のCD3-/CD56+細胞、30%~50%のCD3-/CD56+細胞、30%~70%のCD3-/CD56+細胞、40%~60%のCD3-/CD56+細胞、40%~80%のCD3-/CD56+細胞、50%~70%のCD3-/CD56+細胞、50%~90%のCD3-/CD56+細胞、60%~80%のCD3-/CD56+細胞、60%~100%のCD3-/CD56+細胞、70%~90%のCD3-/CD56+細胞又は80%~100%のCD3~/CD56+細胞を含む。
【0170】
培養開始時、NK細胞を含む細胞集団は、残留する単球、B細胞、T細胞、樹状細胞などを含み得るが、これらは、ex vivo培養の経過を通じて取り除かれることが理解されるであろう。
【0171】
一部の実施形態では、NK細胞集団は、赤血球を欠いている。このように、一部の実施形態では、CD3+/CD14+/CD19+細胞枯渇又はCD56+細胞選択前又はその後、NK細胞画分は、培養前の赤血球(RBC)溶解を受ける。具体的な実施形態では、赤血球溶解は、塩化アンモニウムカリウム(ACK)緩衝液(Gibco社、Thermo Fischer Scientific社)を使用して達成される。
【0172】
一部の実施形態によれば、NK細胞は、新鮮な細胞集団から培養することができる一方、他の実施形態は、貯蔵されていた細胞集団(凍結保存されていて解凍された細胞など)又は以前に培養されたことのある細胞集団からNK細胞を培養する。
【0173】
本発明の一部の実施形態のNK細胞は、遺伝子改変されている。
【0174】
用語「遺伝子改変されている」とは、求められる適用に応じて(例えば、治療しようとする疾患に応じて)、特異的遺伝子、マーカー若しくはペプチドを発現するか若しくは発現しないように操作されているか、又は特異的ペプチド(例えば、サイトカイン)を分泌するか若しくは分泌しないように操作されている細胞を指す。
【0175】
遺伝子改変の結果、細胞に永続的又は一過的遺伝子変化が起こり得る。
【0176】
一実施形態によれば、遺伝子改変は、細胞ゲノムにある。かかる修飾は、典型的には、安定している。
【0177】
一実施形態によれば、NK細胞は、NK細胞集団中の目的とする遺伝子の発現を下方制御して、目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を入手することによって遺伝子改変される。
【0178】
本明細書で使用されるとき、用語「目的とする遺伝子」は、所望のmRNA又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を指す。文脈に応じて、目的とする遺伝子とは、デオキシリボ核酸、例えばRNA転写物に転写されることのできるDNA鋳型中の目的とする遺伝子又はリボ核酸、例えばコードされる目的とするポリペプチドをin vitro、in vivo又はex vivoで産生するように翻訳されることのできるRNA転写物中の目的とする遺伝子を指す。
【0179】
一実施形態によれば、目的とする遺伝子は、転写因子、転写リプレッサー、動員タンパク質、非コードRNA(例えば、tRNA、rRNA、snoRNA、siRNA、miRNA、長鎖ncRNA等)、分泌タンパク質(例えば、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ホルモン)、膜タンパク質、細胞表面タンパク質(例えば、受容体、マーカー)、酵素(例えば、キナーゼ)、リソソーム関連タンパク質、細胞溶解性タンパク質及びメタロプロテイナーゼをコードする。
【0180】
一実施形態によれば、目的とする遺伝子には、限定されないが、その産物がNK細胞の増殖、生存、機能性、例えばサイトカイン産生(例えば、IFNγ)及び/又は細胞傷害活性をもたらす遺伝子が含まれる。
【0181】
一実施形態によれば、目的とする遺伝子は、CISH、TGFβ受容体又はCD38を含む。
【0182】
具体的な実施形態によれば、目的とする遺伝子により、NK細胞は、IL-15に対する感受性が高くなる。
【0183】
具体的な実施形態によれば、目的とする遺伝子は、CISHを含む。
【0184】
本明細書で使用されるとき、用語「CISH」は、遺伝子記号「CISH」を有するサイトカイン誘導性SH2含有タンパク質(CIS)をコードする遺伝子又は例えばGeneBankアクセッション番号NP_037456.5及びNP_659508.1(タンパク質)並びにNM_013324.7及びNM_145071.4(mRNA)又はこれらのホモログを指す。
【0185】
具体的な実施形態によれば、目的とする遺伝子は、TGFβ受容体を含む。
【0186】
本明細書で使用されるとき、用語「TGFβ受容体」は、遺伝子記号「TGFBR1」を有する形質転換成長因子ベータ受容体1をコードする遺伝子又は例えばGeneBankアクセッション番号NP_001124388.1、NP_001293139.1若しくはNP_004603.1(タンパク質)及びNM_001130916.3、NM_001306210.2若しくはNM_004612.4(mRNA)又はこれらのホモログ;遺伝子記号「TGFBR2」を有する形質転換成長因子ベータ受容体2をコードする遺伝子又は例えばGeneBankアクセッション番号NP_001020018.1若しくはNP_003233.4(タンパク質)及びNM_001024847.2若しくはNM_003242.6(mRNA)又はこれらのホモログ;又は遺伝子記号「TGFBR3」を有する形質転換成長因子ベータ受容体3をコードする遺伝子又は例えばGeneBankアクセッション番号NP_001182612.1、NP_001182613.1若しくはNP_003234.2(タンパク質)及びNM_001195683.2、NM_001195684.1若しくはNM_003243.5(mRNA)又はこれらのホモログを指す。
【0187】
具体的な実施形態によれば、目的とする遺伝子は、CD38を含む。
【0188】
本明細書で使用されるとき、用語「CD38」は、遺伝子記号「CD38」を有するCD38分子をコードする遺伝子又は例えばGeneBankアクセッション番号NP_001766.2(タンパク質)及びNM_001775.4(mRNA)又はこれらのホモログを指す。
【0189】
本明細書で使用されるとき、語句「発現を下方制御する」とは、転写(例えば、DNA編集剤)及び/又は翻訳(例えば、RNAサイレンシング剤)に干渉する種々の分子を使用して、目的とする遺伝子(例えば、CISH、CD38又はTGFβ受容体)のタンパク質産物の発現をゲノムレベル及び/又は転写物レベルで下方制御することを指す。
【0190】
発現の下方制御は、一過的又は永続的のいずれかであり得る。
【0191】
同じ培養条件について、発現は、概して同じ種でありながら、下方制御剤と接触していないか又は「対照」とも称される媒体対照と接触した細胞の発現と比較して表される。
【0192】
具体的な実施形態によれば、発現を下方制御するとは、それぞれRT-PCR又はウエスタンブロットにより検出したとき、mRNA及び/又はタンパク質が存在しないことを指す。
【0193】
他の具体的な実施形態によれば、発現を下方制御するとは、それぞれRT-PCR又はウエスタンブロットにより検出したときのmRNA及び/又はタンパク質のレベルの低下を指す。減少は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%の減少であり得る。
【0194】
目的とする遺伝子(例えば、CISH、CD38又はTGFβ受容体)の発現を下方制御する能力を有する薬剤の非限定的な例は、本明細書で以下に詳細に記載される。
【0195】
以下は、目的とする遺伝子の発現をゲノム(DNA)レベルで下方制御するために使用される方法及びDNA編集剤並びに本発明の具体的な実施形態に従って使用することのできる、それを実現するための薬剤の様々な非限定的例の説明である。
【0196】
改変されたエンドヌクレアーゼを使用したゲノム編集-この手法は、人工的に改変されたヌクレアーゼを使用してゲノム中の所望の1つ又は複数の位置を切り出し、そこに特異的な二本鎖切断を作り出して、次にそれが相同組換え修復(HDR)及び非相同末端結合(NHEJ)などの細胞の内因性過程によって修復されるリバースジェネティクス方法を指す。NHEJは、二本鎖切断のDNA末端を直接つなぎ合わせる一方、HDRは、相同配列を鋳型として利用して、その切断点に欠けているDNA配列を再生させる。ゲノムDNAに特異的ヌクレオチド修飾を導入するために、HDR間において、所望の配列を含むDNA修復鋳型が存在しなければならない。
【0197】
ゲノム編集は、従来の制限エンドヌクレアーゼを用いて実施することができない。なぜなら、ほとんどの制限酵素がDNA上の数塩基対をその標的として認識するが、そうした認識された塩基対の組み合わせがゲノム全体にわたって多くの位置に見られる結果、所望の位置に限らず複数の切断が生じることになる可能性が極めて高いためである。この課題を克服し、部位特異的一本鎖又は二本鎖切断を作り出すため、現在までに幾つかの特徴的に異なるクラスのヌクレアーゼが発見され、バイオエンジニアリングが行われている。それらには、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、T-GEEシステム及びCRISPR/Casシステムが含まれる。
【0198】
メガヌクレアーゼ ± メガヌクレアーゼは、一般に、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cysボックスファミリー及びHNHファミリーに分類される。これらのファミリーは、触媒活性及び認識配列に影響を及ぼす構造モチーフを特徴とする。例えば、LAGLIDADGファミリーのメンバーは、1コピー又は2コピーのいずれかの保存されたLAGLIDADGモチーフを有することを特徴とする。これらの4つのメガヌクレアーゼファミリーは、保存された構造エレメントの点及び結果的にDNA認識配列特異性及び触媒活性の点で互いに大きい隔たりがある。メガヌクレアーゼは、微生物種によく見られ、極めて長い認識配列(14bp超)を有するというユニークな特性を有し、従って、メガヌクレアーゼは、所望の位置での切断に関して天然で極めて高い特異性を示すものとなっている。
【0199】
ゲノム編集では、これを生かして部位特異的二本鎖切断を作ることができる。当業者は、こうした天然に存在するメガヌクレアーゼを使用することができるが、かかる天然に存在するメガヌクレアーゼの数は、限られている。この課題を克服するため、変異誘発及びハイスループットスクリーニング方法を用いることにより、ユニーク配列を認識するメガヌクレアーゼ変異体が作り出されている。例えば、様々なメガヌクレアーゼを融合することにより、新規配列を認識するハイブリッド酵素が作り出されている。
【0200】
代わりに、メガヌクレアーゼにおけるDNAと相互作用するアミノ酸を変化させることにより、配列特異的メガヌクレアーゼを設計することができる(例えば、米国特許第8,021,867号明細書を参照されたい)。メガヌクレアーゼは、例えば、Certo, MT et al. Nature Methods (2012) 9:073-975、米国特許第8,304,222号明細書、同第8,021,867号明細書、同第8,119,381号明細書、同第8,124,369号明細書、同第8,129,134号明細書、同第8,133,697号明細書、同第8,143,015号明細書、同第8,143,016号明細書、同第8,148,098号明細書、同第又は8,163,514号明細書(各々の内容は、全体として参照により本明細書に援用される)に記載される方法を用いて設計することができる。代わりに、部位特異的切断特性を有するメガヌクレアーゼは、市販の技術、例えばPrecision Biosciences社のDirected Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術を用いて入手することができる。
【0201】
ZFN及びTALEN ± 2つの特徴的に異なるクラスの改変ヌクレアーゼであるジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、両方とも標的化した二本鎖切断を生じさせるのに有効であることが分かっている(Christian et al., 2010;Kim et al., 1996、Li et al., 2011、Mahfouz et al., 2011、Miller et al., 2010)。
【0202】
基本的に、ZFN及びTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術は、非特異的DNA切断酵素が特異的DNA結合ドメイン(それぞれ一連のジンクフィンガードメイン又はTALEリピートのいずれか)に連結されたものを利用する。典型的には、そのDNA認識部位と切断部位とが互いに離れている制限酵素が選択される。切断点が離され、次にDNA結合ドメインに連結されるため、それにより所望の配列に対する特異性が極めて高いエンドヌクレアーゼが生じる。かかる特性を有する例示的制限酵素は、Foklである。加えて、Foklには、ヌクレアーゼ活性を呈するのに二量化する必要があるという利点があり、これは、即ち、各ヌクレアーゼパートナーがユニークなDNA配列を認識するため、特異性が劇的に増加することを意味する。この効果を亢進させるため、ヘテロ二量体としてのみ機能することのできる、触媒活性が増加したFoklヌクレアーゼが改変されている。ヘテロ二量体で機能するヌクレアーゼでは、望ましくないホモ二量体活性の可能性が回避されるため、従って二本鎖切断の特異性が増加する。
【0203】
このように、例えば特異的部位を標的化するため、ZFN及びTALENをヌクレアーゼ対として構築し、その対の各メンバーが標的部位で隣接配列に結合するように設計する。細胞で一過性発現させると、ヌクレアーゼがその標的部位に結合し、FokIドメインがヘテロ二量化して二本鎖切断(DSB)を作り出す。これらの二本鎖切断が非相同末端結合(NHEJ)経路を通して修復されると、ほとんどの場合に小さい欠失又は小さい配列挿入(インデル)が生じることになる。NHEJによって行われる修復は、毎回ユニークであるため、単一のヌクレアーゼ対を使用して、標的部位に様々な異なる欠失を有する一連のアレルを作製することができる。
【0204】
欠失は、典型的には、数塩基対から数百塩基対程度まで様々な長さであるが、細胞培養下で2対のヌクレアーゼを同時に使用することにより、更に大型の欠失を作成することにも成功している(Carlson et al., 2012、Lee et al., 2010)。加えて、標的領域と相同性のあるDNAの断片をヌクレアーゼ対と併せて導入すると、二本鎖切断を相同組換え修復によって修復して特異的修飾を作成することができる(Li et al., 2011、Miller et al., 2010、Urnov et al., 2005)。
【0205】
ZFN及びTALENの両方ともそのヌクレアーゼ部分が同様の特性を有するが、これらの改変ヌクレアーゼ間の違いは、そのDNA認識ペプチドにある。ZFNは、Cys2-His2ジンクフィンガーに依存し、TALENは、TALEに依存する。これらのDNA認識ペプチドドメインの両方は、それらが天然でそのタンパク質において組み合わせで見出されるという特徴を有する。Cys2-His2ジンクフィンガーは、典型的には、3bp離れたリピートで見出され、種々の核酸相互作用タンパク質において多様な組み合わせで見出される。他方で、TALEは、アミノ酸と認識されるヌクレオチド対との間の認識比が1対1であるリピートで見出される。ジンクフィンガー及びTALEの両方ともリピートのあるパターンで起こるため、多岐にわたる配列特異性を作り出そうと異なる組み合わせを試みることができる。部位特異的ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを作る手法としては、例えば、とりわけモジュラーアセンブリ(要求される配列をカバーするため、トリプレット配列と相関するジンクフィンガーが連続して一列に取り付けられる場合)、OPEN(トリプレットヌクレオチドに対するペプチドドメインの低いストリンジェンシーでの選択、続く細菌システムにおける最終的な標的に対するペプチドの組み合わせの高いストリンジェンシーでの選択)及びジンクフィンガーライブラリの細菌1ハイブリッドスクリーニングが挙げられる。ZFNは、例えば、Sangamo Biosciences(商標)社(カリフォルニア州リッチモンド)から、設計して商業的に入手することもできる。
【0206】
TALENを設計して入手する方法については、例えば、Reyon et al. Nature Biotechnology 2012 May;30(5):460-5、Miller et al. Nat Biotechnol. (2011) 29: 143- 148、Cermak et al. Nucleic Acids Research (2011) 39 (12): e82及びZhang et al. Nature Biotechnology (2011) 29 (2): 149-53に記載されている。ゲノム編集適用向けのTAL及びTALENコンストラクトの設計のために、Mojo Handと名付けられた、最近開発されたウェブベースのプログラムがメイヨー・クリニックによって紹介された(http://www(dot)talendesign(dot)orgからアクセスすることができる)。TALENは、例えば、Sangamo Biosciences(商標)社(カリフォルニア州リッチモンド)から、設計して商業的に入手することもできる。
【0207】
T-GEEシステム(TargetGene社のゲノム編集エンジン)-ポリペプチド部分と特異性付与核酸(SCNA)とを含むプログラム可能な核タンパク質分子複合体が提供され、これは、標的細胞においてin vivoでアセンブルするものであり、所与の標的核酸配列と相互作用する能力を有する。このプログラム可能な核タンパク質分子複合体は、標的核酸配列内の標的部位を特異的に修飾及び/若しくは編集する能力並びに/又は標的核酸配列の機能を修飾する能力を有する。核タンパク質組成は、(a)キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子であって、(i)標的部位を修飾する能力を有する機能ドメインと、(ii)特異性付与核酸と相互作用する能力を有する連結ドメインとを含むポリヌクレオチド分子、及び(b)特異性付与核酸(SCNA)であって、(i)標的核酸中の標的部位が隣接する領域に相補的なヌクレオチド配列と、(ii)ポリペプチドの連結ドメインに特異的に取り付けられる能力を有する認識領域とを含む特異性付与核酸(SCNA)を含む。この組成物は、特異性付与核酸と標的核酸との塩基対合を通した標的核酸に対する分子複合体の高い特異性及び結合能によることで、所与の核酸配列標的の正確で信頼できる、費用対効果の高い修飾を実現する。この組成物は、遺伝毒性が低く、そのアセンブリがモジュール式であり、カスタマイズすることなく単一のプラットフォームを利用し、専門的な中核施設の外部での独立した使用に実用性があり、且つ開発の時間フレームの短縮及び費用の削減を呈する。
【0208】
CRISPR-Casシステム-多くの細菌及び古細菌は、侵入するファージ及びプラスミドの核酸を分解することのできる内因性のRNAベースの適応免疫系を備えている。こうしたシステムは、RNA成分を生じさせる、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)遺伝子と、タンパク質成分をコードするCRISPR関連(Cas)遺伝子とからなる。CRISPR RNA(crRNA)は、特異的ウイルス及びプラスミドに対する短い一続きの相同性部分を含み、Casヌクレアーゼが対応する病原体の相補核酸を分解するように仕向けるガイドとしての役割を果たす。Streptococcus pyogenesのII型CRISPR/Casシステムの研究によれば、3つの成分:Cas9ヌクレアーゼ、標的配列に対する20塩基対の相同性部分を含むcrRNA(gRNA)及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)が、RNA/タンパク質複合体を形成し、一緒になって配列特異的ヌクレアーゼ活性を示すのに十分であることが示されている(Jinek et al. Science (2012) 337: 816-821.)。
【0209】
更に、crRNAとtracrRNAとの間の融合体で構成される合成キメラシングルガイドRNA(sgRNA)は、in vitroでcrRNAに相補的なDNA標的を切断するようCas9を仕向けることが可能であることが実証された。合成sgRNAと併せたCas9の一過性発現を用いることにより、種々の異なる種において標的化した二本鎖切断(DSB)を作製できることも実証された(Cho et al., 2013、Cong et al., 2013、DiCarlo et al., 2013、Hwang et al., 2013a,b、Jinek et al., 2013、Mali et al., 2013)。sgRNA(本明細書ではシングルガイドRNA(sgRNA)とも称される)は、典型的には、標的相同配列(crRNA)と、crRNAをCas9ヌクレアーゼ(tracrRNA)に連結して単一のキメラ転写物にする内因性の細菌RNAとの組み合わせをコードする80~100ヌクレオチドの配列である。
【0210】
ゲノム編集のためのCRIPSR/Casシステムは、2つの個別的な成分:sgRNA及びエンドヌクレアーゼ、例えばCas9又は3つの個別的な成分、gRNA、tracrRNA及びエンドヌクレアーゼ、例えばCas9を含む。
【0211】
sgRNA/Cas9複合体又はgRNA/tracrRNA/Cas9は、gRNA配列と相補体ゲノムDNAとの間の塩基対合によって標的配列に動員される。Cas9への結合が成功するには、ゲノム標的配列も標的配列の直後に正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を含まなければならない。sgRNA/Cas9複合体又はgRNA/tracrRNA/Cas9が結合すると、Cas9がゲノム標的配列に局在化され、Cas9がDNAの両方の鎖を切断して二本鎖切断(DSB)を生じさせることができるようになる。ZFN及びTALENと同じく、CRISPR/Casによって生じる二本鎖切断(DSB)は、相同組換え又はNHEJを起こすことができ、DNA修復中に特異的配列修飾を受け易い。
【0212】
Cas9ヌクレアーゼは、それぞれ異なるDNA鎖を切断する2つの機能ドメイン:RuvC及びHNHを有する。これらのドメインが両方とも活性であるとき、Cas9は、ゲノムDNAに二本鎖切断を生じさせる。
【0213】
CRISPR/Casの大きい利点は、このシステムの効率の高さを、合成sgRNA又はgRNAを容易に作り出す能力と併せ持つことである。これにより、種々のゲノム部位にある修飾を標的化するような修飾及び/又は同じ部位にある(例えば、CISH、CD38又はTGFβ受容体遺伝子座における)種々の修飾を標的化するような修飾が容易に可能となるシステムが作り出される。加えて、複数の遺伝子を同時に標的化することを可能にするプロトコルが確立されている。変異を保有する細胞の大多数は、標的化される遺伝子に両アレル性の変異が見られる。
【0214】
しかしながら、sgRNA又はgRNA配列とゲノムDNA標的配列との間の塩基対合相互作用には見かけ上柔軟性があるため、標的配列との一致が不完全であってもCas9による切断を許容する。
【0215】
RuvC-又はHNH-のいずれかの、単一の不活性な触媒ドメインを含む修飾されたバージョンのCas9酵素は、「ニッカーゼ」と呼ばれる。Cas9ニッカーゼは、活性ヌクレアーゼドメインが1つのみあり、標的DNAの一方の鎖のみを切断するため、一本鎖切断、即ち「ニック」を作り出す。一本鎖切断、即ちニックは、概して、それのみではないが、PARP(センサー)及びXRCC1/LIG III複合体(ライゲーション)などのタンパク質が関わる一本鎖切断修復機構によって修復される。しかしながら、Cas9ニッカーゼによって導入される2つの近接した逆鎖上のニックは、多くの場合、「ダブルニック」CRISPRシステムと称されるものであり、二本鎖切断として扱われる。ダブルニックは、基本的に非平行なDSBであり、他のDSBのように遺伝子標的に対する所望の効果に応じてHR又はNHEJによる修復を受けることができる。このように、特異性及び低減されたオフターゲット効果が決定的に重要である場合、標的配列がごく接近してゲノムDNAの逆鎖上にあるように2つのgRNAを設計することにより、Cas9ニッカーゼを使用してダブルニックを作り出せば、いずれのgRNAによっても単独でゲノムDNAを変化させる可能性が低いニックが生じることになるため、オフターゲット効果が低下することになるであろう。
【0216】
2つの不活性な触媒ドメインを含む修飾されたバージョンのCas9酵素(デッドCas9又はdCas9)は、ヌクレアーゼ活性を有しないが、sgRNA又はgRNA特異性に基づいてDNAに結合することが依然として可能である。dCas9は、既知の制御ドメインへのこの不活性酵素の融合によってDNA転写制御因子が遺伝子発現を活性化させるか又は抑制するためのプラットフォームとして利用することができる。例えば、dCas9単独がゲノムDNAの標的配列に結合すると、遺伝子転写を妨げることができる。
【0217】
代わりに、CRISPRシステムをDNA切断ドメインなどの様々なエフェクタードメインと融合させ得る。DNA切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼから入手することができる。DNA切断ドメインの由来となることのできるエンドヌクレアーゼの非限定的な例としては、限定されないが、制限エンドヌクレアーゼ及びホーミングエンドヌクレアーゼ(例えば、New England Biolabs社のカタログ又はBelfort et al. (1997) Nucleic Acids Res.を参照されたい)、例えばFoklエンドヌクレアーゼ及びI-CreIが挙げられる。
【0218】
DNA編集をもたらすためにgRNAと共に使用することのできる更なるCasエンドヌクレアーゼとしては、限定されないが、Cas9、Cpf1(Zetsche et al., 2015, Cell. 163(3):759-71)、C2c1、C2c2、C2c3(Shmakov et al., Mol Cell. 2015 Nov. 5; 60(3):385-97)、CasX及びCpf1/Cas12aが挙げられる。
【0219】
標的配列の選択及び/又は設計を促進するのに利用可能な幾つもの公的に利用可能なツール並びに種々の種における種々の遺伝子についてのバイオインフォマティクスにより決定されるユニークなsgRNA又はgRNAのリスト、限定されないが、フェン・チャン研究室のTarget Finder、アレックス・シアー研究室のTarget Finder(ChopChop)、マイケル・ブトロス研究室のTarget Finder(E-CRISP)、RGEN Tools:Cas-OFFinder、CasFinder:ゲノム中の特異的Cas9標的を同定するためのフレキシブルアルゴリズム及びCRISPR Optimal Target Finderがある。
【0220】
CRISPRシステムを使用するために、crRNA(gRNA)、tracrRNA及びCasエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)を標的細胞において(例えば、リボ核タンパク質複合体(RNP)として)発現させるか又は提示しなければならない。代わりに、sgRNA及びCasエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)又はgRNA、tracrRNA及びCasエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)を両方とも標的細胞において(例えば、リボ核タンパク質複合体として)発現させるか又は提示しなければならない。挿入ベクターは、単一のプラスミド上に全てのカセットを含有し得るか、又はそれらのカセットは、別個のプラスミドから発現する。CRISPRプラスミドは、Addgene社(マサチューセッツ州、ケンブリッジ)のpx330プラスミドなど、市販されている。
【0221】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、DNAターゲティングモジュール(例えば、sgRNA)を含む。
【0222】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)とDNAターゲティングモジュール(例えば、sgRNA)とを含む。
【0223】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、CRISPR/エンドヌクレアーゼである。
【0224】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、CRISPR/Cas、例えばsgRNA及びCas9又はgRNA、tracrRNA及びCas9である。
【0225】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、sgRNAとCas9とのRNP複合体である。
【0226】
本発明で使用することのできるsgRNAの非限定的な例は、本明細書で以下の表2に示されるとおりの核酸配列を含む。
【0227】
具体的な実施形態によれば、RNP複合体は、RNPエレクトロポレーションにより、例えば、Nucleofector又はBTX-Gemini Twin Waveエレクトロポレーターを使用してNK細胞に導入される。
【0228】
目的とする遺伝子の発現をゲノム(DNA)レベルで下方制御するために使用し得る更なるDNA編集剤及びシステムとしては、限定されないが、トランスポゾン及びTFOが挙げられる。これらについて以下に簡単に考察する。
【0229】
トランスポゾン-単一細胞のゲノム内で異なる位置を動き回ることのできるヌクレオチド配列を含む移動性のある遺伝要素を指す。この過程では、トランスポゾンが細胞のゲノム中に変異及び/又はDNA量の変化を引き起こし得る。細胞、例えば脊椎動物、において転位も可能な幾つものトランスポゾンシステムとして、Sleeping Beauty[Izsvak and Ivics Molecular Therapy (2004) 9, 147-156]、piggyBac[Wilson et al. Molecular Therapy (2007) 15, 139-145]、Tol2[Kawakami et al. PNAS (2000) 97 (21): 11403-11408]又はFrog Prince[Miskey et al. Nucleic Acids Res. Dec 1, (2003) 31(23): 6873-6881]などが単離又は設計されている。概して、DNAトランスポゾンは、あるDNA部位から別のDNA部位に単純なカットアンドペースト方式で転位する。
【0230】
三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)-二重らせんDNAのポリプリン/ポリピリミジン領域を配列特異的に認識して結合することのできるTFOを設計することができる。このような認識規則については、Maher III, L. J., et al., Science, 1989;245:725-730、Moser, H. E., et al., Science, 1987;238:645-630、Beal, P. A., et al, Science, 1992;251:1360-1363、Cooney, M., et al., Science, 1988;241:456-459、及びHogan, M. E., et al., 欧州特許第375408号明細書によって概要が示されている。インターカレーターの導入及び骨格置換など、このオリゴヌクレオチドの修飾並びに結合条件(pH及びカチオン濃度)の最適化が、電荷斥力及び不安定性など、TFO活性に固有の障害を克服するのに役立っており、合成オリゴヌクレオチドを特異的な配列に標的化し得ることが示された(Seidman and Glazer, J Clin Invest (2003) 112:487-94を参照されたい)。
【0231】
一般に、三重鎖形成オリゴヌクレオチドは、以下の配列対応を有する。
オリゴ 3’-A G T
二重鎖 5’-A G C T
二重鎖 3’-T C G A
【0232】
細胞へのTFOのトランスフェクション(例えば、カチオン性リポソームによる)及び標的DNAとの三重らせん構造の形成により、立体的及び機能的変化が引き起こされて、転写開始及び伸長が遮断され、内因性DNAに所望の配列変化を導入することが可能になり、結果として遺伝子発現の特異的な下方制御が生じることになる。
【0233】
加えて、上述の原理に従って設計したTFOは、DNA修復を達成する能力のある定方向変異誘発を引き起こし得るため、従って内因性遺伝子の発現の下方制御及び上方制御の両方が生じる(Seidman and Glazer, J Clin Invest (2003) 112:487-94)。有効なTFOの設計、合成及び投与についての詳細な説明は、Froehler et alに対する米国特許出願公開第2003/017068号明細書及び同第2003/0096980号明細書、並びにEmanuele et alの同第2002/0128218号明細書及び同第2002/0123476号明細書、並びにLawnの米国特許第5,721,138号明細書を参照することができる。
【0234】
DNA編集剤は、ランダム変異を引き起こす変異原であり得、目的とする遺伝子の発現レベル及び/又は活性の下方制御を呈する細胞を選択し得ることが理解されるであろう。
【0235】
変異原は、限定されないが、遺伝的、化学的又は放射線薬剤であり得る。例えば、変異原は、限定されないが、紫外線、ガンマ線又はアルファ粒子など、電離放射線であり得る。他の変異原としては、限定されないが、コピーエラーを引き起こし得る塩基類似体、亜硝酸などの脱アミノ化剤、臭化エチジウムなどの挿入剤、ブロモウラシルなどのアルキル化剤、トランスポゾン、天然及び合成アルカロイド類、臭素及びその誘導体、ナトリウムアジド、ソラレン(例えば、紫外線照射と組み合わせる)が挙げられる。変異原は、限定されないが、ICR191、1,2,7,8-ジエポキシ-オクタン(DEO)、5-アザC、N-メチル-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルホン酸(EMS)又はN-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)などの化学的変異原であり得る。
【0236】
既述のとおり、NK細胞の目的とする遺伝子の発現を下方制御するために使用することのできる追加の薬剤としては、RNAサイレンシング剤が挙げられる。例示的RNAサイレンシング剤としては、siRNA、miRNA及びshRNAなどのdsRNA、アンチセンスRNA(即ち一本鎖RNA)、DNAザイム、RNAザイム及びMNAザイムが挙げられる。
【0237】
目的とする遺伝子の発現を下方制御するために用いられる方法にかかわらず、下方制御は、典型的には、細胞培養物中のNK細胞集団においてex vivoで生じる(以下で更に考察するとおりである)。
【0238】
一実施形態によれば、下方制御は、細胞培養の開始から1~7日、1~6日、1~5日、1~4日、1~3日、1~2日で生じる。
【0239】
一実施形態によれば、下方制御は、細胞培養の開始から12~24時間、12~36時間、12~48時間、24~36時間、24~48時間、24~60時間、24~72時間、36~48時間、36~60時間、36~72時間、48~60時間、48~72時間、48~84時間、60~72時間、60~84時間、60~96時間、72~84時間、72~96時間又は72~120時間で生じる。
【0240】
具体的な実施形態によれば、下方制御は、細胞培養の開始から24~48時間で生じる。
【0241】
具体的な実施形態によれば、下方制御は、細胞培養の開始から24~72時間で生じる。
【0242】
一実施形態によれば、本方法は、目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手することを含む。
【0243】
用語「増殖された」は、NK細胞集団に関するとき、細胞の生存能力又は機能性に負の影響を及ぼすことのない、ex vivo又はin vitroで増殖(増殖)を通したNK細胞数の増加を指す。
【0244】
一実施形態によれば、本発明の一部の実施形態のNK細胞の増殖倍数は、2~12、例えば3~11、例えば4~10(即ち0日目から14~16日目までの培養)である。
【0245】
NK細胞の増殖は、典型的には、ex vivo細胞培養物中で生じる。
【0246】
先行研究によれば、NK細胞を成長因子及びニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分と共に培養すると、サイトカインと共に、但しニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分を0.1mM未満として培養した細胞と比較したとき、早ければ7日間ほど又は長ければ3週間ほどで優先的な増殖及び/又は機能亢進がなされたことが実証されている(国際公開第2011/080740号パンフレットを参照されたい)。免疫療法に臨床的に好適なNK細胞の調製では、長い培養時間をかける必要なしに、増殖させたNK細胞の治療的に有利な機能性は保持しつつ、大幅なex vivoNK細胞増殖を提供することが望ましい。
【0247】
一実施形態によれば、NK細胞の増殖は、7~30日、7~25日、7~21日、7~14日、10~24日、10~21日、10~18日、10~15日、10~12日、12~21日、12~18日、12~15日、14~21日、14~18日、14~16日、14~15日、16~21日、16~18日又は18~21日の期間にわたって生じる。
【0248】
具体的な実施形態によれば、NK細胞の増殖は、12~18日の期間にわたって生じる。
【0249】
具体的な実施形態によれば、NK細胞の増殖は、14~16日の期間にわたって生じる。
【0250】
NK細胞のex vivo培養は、本発明のこの態様によれば、NK細胞にex vivoで細胞増殖条件を提供し、且つNK細胞をニコチンアミド部分と共にex vivo培養することにより、それによりNK細胞集団をex vivo増殖させてもたらすことができる。
【0251】
本明細書で使用されるとき、「培養すること」には、NK細胞の維持に要求される化学的及び物理的条件(例えば、温度、ガス)並びに栄養素及び成長因子を提供することが含まれる。一実施形態では、NK細胞を培養することには、NK細胞にNK細胞増殖条件を提供することが含まれる。NK細胞増殖を支持し得る化学的条件の例としては、限定されないが、緩衝液、栄養素、血清、ビタミン及び抗生物質並びにサイトカイン及び他の成長因子が挙げられ、これらは、典型的には、成長(即ち培養)培地中に提供される。詳細な実施形態では、細胞増殖条件は、栄養素、血清及び1つ又は複数のサイトカインを含む。具体的な実施形態によれば、成長因子は、例えば、IL-15、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、SCF及びFLT3を含む。
【0252】
一実施形態によれば、細胞増殖を可能にする条件は、NK細胞を1日毎、1.25日毎、1.5日毎、1.75日毎又は2.0日毎に倍加させることが可能である。
【0253】
一実施形態では、NK培養培地には、最小必須培地(MEM)、例えばMEMα(イスラエル国、ベイト・ハエメク、BI社)及び血清が含まれる。一部の実施形態では、血清は、培養培地の2~20%、5~15%又は5~10%で提供される。具体的な実施形態では、血清は、ヒト血清であり、培養培地の10%で提供される。詳細な実施形態では、培養培地は、10%ヒトAB血清(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)を含むMEMαである。本発明での使用に好適な他の培地としては、限定されないが、Glascow培地(カリフォルニア州、カールスバッド、Gibco社)、RPMI培地(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)又はDMEM(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)が挙げられる。培養培地の多くは、例えば、MEMα(8.19mMのニコチンアミド)、RPMI(8.19pMのニコチンアミド)、DMEM(32.78pMのニコチンアミド)及びGlascow培地(16.39pMのニコチンアミド)など、ビタミンサプリメントとしてニコチンアミドを含有しているが、本発明の方法は、培地の配合に含まれる任意のニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分を補給するものであるか、又は培地成分濃度の全体的な調整から生じるものである外因的に加えるニコチンアミドに関することが注記されるであろう。
【0254】
一実施形態によれば、細胞増殖を可能にする条件下でのNK細胞の培養は、細胞に栄養素、血清及びサイトカインを提供することを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの成長因子としては、サイトカイン及び/又はケモカイン(例えば、IL-15、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、SCF及びFLT3)が挙げられる。サイトカイン及び他の成長因子は、典型的には、0.5~100ng/ml又は1.0~80ng/ml、より典型的には5~750ng/ml、更により典型的には5.0~50ng/mlの範囲の濃度で提供され(最高でかかる濃度の10倍が企図され得る)、例えば米国ニュージャージー州ロッキー・ヒルのPerpo Tech,Inc.から市販されている。一実施形態では、細胞増殖を可能にする条件には、サイトカインインターロイキン15(IL-15)を提供することが含まれる。具体的な実施形態では、NK細胞集団は20ng/mlのIL-15と共に培養される。
【0255】
更に、この点で新規のサイトカインが絶えず発見され続け、その一部は、本発明のNK細胞増殖方法における使用が見出され得ることが理解されるであろう。
【0256】
培養培地は、典型的には、限定されないが、ゲンタマイシン、ペニシリン又はストレプトマイシンなどの抗生物質も含む。
【0257】
細胞がヒト対象に導入される(又は再導入される)ような適用向けには、多くの場合、リンパ球培養のためのAIM v(登録商標)無血清培地又はMARROWMAX(登録商標)骨髄培地など、無血清製剤を使用することが好ましい。かかる培地製剤及びサプリメントは、Invitrogen(GIBCO)社(米国、カリフォルニア州、カールスバッド)など、商業的供給元から入手可能である。培養物にアミノ酸、抗生物質を補給し、且つ/又はサイトカインを補給すると、最適な生存能力、増殖、機能性及び/又は生存が促進される。
【0258】
一実施形態によれば、NK細胞集団は、栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-15)及びニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分と共に培養される。本明細書で使用されるとき、用語「ニコチンアミド部分」は、ニコチンアミドを指すと共に、ニコチンアミドに由来する産物、その誘導体、類似体及び代謝産物、例えばNAD、NADH及びNADPHなど、NK細胞増殖及び/又は活性化を有効且つ優先的に亢進させる能力のあるものも指す。ニコチンアミド誘導体、類似体及び代謝産物は、培養下でのex vivoNK増殖に対するその効果に関して、後述するとおり維持されているNK培養物に加えることによるか、殺傷及び運動性アッセイなどの機能アッセイに加えるか、又は当技術分野で周知の且つ以下で更に考察するハイスループットアッセイのために設計される自動化されたスクリーニングプロトコルにおいてスクリーニングし、評価することができる。
【0259】
本明細書で使用されるとき、語句「ニコチンアミド類似体」は、上述の又は同様のアッセイでニコチンアミドと同様に作用することが公知の任意の分子を指す。ニコチンアミド類似体の代表的な例としては、限定なしに、ベンズアミド、ニコチンチオアミド(ニコチンアミドのチオール類似体)、ニコチン酸及びα-アミノ-3-インドールプロピオン酸を挙げることができる。
【0260】
語句「ニコチンアミド誘導体」は、ニコチンアミド自体の又はニコチンアミドの類似体の任意の構造的誘導体を更に指す。かかる誘導体の例としては、限定なしに、置換ベンズアミド類、置換ニコチンアミド類及びニコチンチオアミド類並びにN-置換ニコチンアミド類及びニコチンチオアミド類、3-アセチルピリジン及びニコチン酸ナトリウムが挙げられる。本発明の詳細な一実施形態では、ニコチンアミド部分は、ニコチンアミドである。
【0261】
本発明の一部の実施形態における使用に好適なニコチンアミド又はニコチンアミド部分の濃度は、典型的には、約0.5mM~約50mM、約1.0mM~約25mM、約1.0mM~約15mM、約1.0mM~約10mM、約2.5mM~約20mM、約2.5mM~約10mM、約5.0mM~約10mMの範囲である。ニコチンアミドの例示的な有効濃度は、それらの濃度のニコチンアミドが増殖及びNK細胞機能に及ぼす効果に基づいて約0.5mM~約15mM、1.0mM~約10.0mM、典型的には2.5、5.0又は7.0mMであり得る。
【0262】
本発明の具体的な実施形態によれば、ニコチンアミドは、約0.5、約0.75、約1.0、約1.25、約1.5、約1.75、約2.0、約2.25、約2.5、約2.75、約3.0、約3.25、約3.5、約3.75、約4.0、約4.25、約4.5、約4.75、約5.0、約5.25、約5.5、約5.75、約6.0、約6.25、約6.5、約6.75、約7.0、約7.25、約7.5、約7.75、約8.0、約8.25、約8.5、約8.75、約9.0、約9.25、約9.5、約9.75、約10.0、約11.0、約12.0、約13.0、約14.0、約15.0、約16.0、約17.0、約18.0又は約20.0mMの濃度(mM)で提供される。あらゆる有効な中間濃度が企図される。具体的な実施形態では、増殖を可能にする条件は、1.0~10.0mMのニコチンアミドを含む。具体的な実施形態では、増殖を可能にする条件は、5.0mMのニコチンアミドを含む。他の具体的な実施形態では、増殖を可能にする条件は、7.0mMのニコチンアミドを含む。
【0263】
ニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分の好適な濃度は、NK増殖及び/又は活性、例えば細胞培養又は機能についての任意のアッセイにより決定することができる。ニコチンアミドの好適な濃度は、培養にそれを用いると、ニコチンアミドが0.1mM未満の、同じNK細胞供給源(例えば、臍帯血、骨髄又は末梢血調製物)から試験した「対照」培養物と比較して、同じアッセイ及び同様の培養条件下において(ニコチンアミドへの曝露継続期間、ニコチンアミドへの曝露タイミング)、培養下にあるNK細胞の増殖及び/又は機能が「亢進」するか又はその正味の増加が起こるような濃度である。
【0264】
一部の研究では、栄養素、血清、サイトカイン及びニコチンアミドと共に培養することによって精製NK細胞をex vivoで増殖すると、培養期間中の培地の補充又は操作が不要になるとされる一方、他の研究は、NK細胞培養中における種々の間隔を置いた培養培地の補充(「再供給」)を提唱している。本発明の特定の実施形態では、NK細胞集団は、培養期間中に「再供給」される。このように、具体的な実施形態では、NK細胞を増殖することは、ex vivo培養の開始から8~10日後にNK細胞集団に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することを含む。一部の実施形態では、補給は、ex vivo培養の開始から4~12日後、ex vivo培養の開始から5~10日後又はNK細胞の培養の開始から6~9日後に提供される。
【0265】
一部の実施形態では、培養物中にあるNK細胞に補給すること(又は「再供給すること」)は、NK細胞培養物から培地を除去することを含まない。一部の実施形態では、補給すること(又は「再供給すること」)は、NK細胞培養物の培地の約30~80%、約40~70%又は約45~55%を除去すること及びそれを、除去した培地と同じ組成及びレベルの栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-15)及びニコチンアミドを有する同様の(例えば、均等な)容積の新鮮培地に交換することを含む。他の実施形態では、再供給後の培養容積は、NK細胞培養の開始(「播種」)時における元の培養容積のほぼ2倍に達する。
【0266】
NK細胞集団は、種々の方法及び装置を使用して培養することができる。培養機器の選択は、通常、培養の規模及び目的に基づく。細胞培養のスケールアップには、好ましくは専用の装置の使用が関わる。大規模な臨床グレードのNK細胞作製のための機器については、例えば、Spanholtz et al.(PLoS ONE (2010) 5:e9221)及びSutlu et al.(Cytotherapy (2010), Early Online 1-12)に詳説されている。一部の実施形態では、NK細胞の培養は、フラスコ内において、1フラスコ当たり100~4000×10細胞の細胞密度で生じる。具体的な実施形態では、NK細胞を培養すること(例えば、ex vivo培養の開始及び/又は「再供給すること」)は、フラスコ内において、1フラスコ当たり200~300×10細胞の細胞密度で生じる。特定の実施形態では、フラスコは、G-Rex培養装置(G-Rex 100M又は閉鎖系システムG-Rex MCS、ミネソタ州セントポール、WolfWilson社)など、ガス透過性膜を備えたフラスコである。
【0267】
G-Rex培養装置など、培養フラスコへのNK細胞集団の播種は、培養装置のサイズ及び容積に応じて様々な密度でもたらされ得る。当業者は、かかる決定を下す能力を有する。一実施形態によれば、NK細胞集団は、0.01×l0細胞/ml~10×l0細胞/ml、0.01×l0細胞/ml~7.5×l0細胞/ml、0.01×l0細胞/ml~5×l0細胞/ml、0.1×l0細胞/ml~10×l0細胞/ml、0.1×l0細胞/ml~7.5×l0細胞/ml、0.1×l0細胞/ml~5×l0細胞/ml、0.1×l0細胞/ml~2.5×l0細胞/ml、0.1×l0細胞/ml~1×l0細胞/ml、0.25×l0細胞/ml~10×l0細胞/ml、0.25×l0細胞/ml~7.5×l0細胞/ml、0.25×l0細胞/ml~5×l0細胞/ml、0.25×l0細胞/ml~2.5×l0細胞/ml又は0.25×l0細胞/ml~1×l0細胞/mlの密度で播種される。具体的な実施形態によれば、NK細胞集団は、0.25×l0細胞/ml~0.5×l0細胞/ml、例えば0.35×l0細胞/ml~0.4×l0細胞/mlの密度で播種される。
【0268】
培養フラスコ内の細胞の密度は、培養期間にわたる細胞の増殖に伴って増加することが理解されるであろう。このように、一部の実施形態では、培養下での増殖の経過にわたり、NK細胞集団のNK細胞は、1フラスコ当たり10~4000×10細胞、1フラスコ当たり25~4000×10細胞、1フラスコ当たり50~4000×10細胞、1フラスコ当たり100~4000×10細胞、1フラスコ当たり20~3000×10細胞、1フラスコ当たり100~3000×10細胞、1フラスコ当たり200~3000×10細胞、1フラスコ当たり30~2000×10細胞、1フラスコ当たり100~2000×10細胞、1フラスコ当たり300~2000×10細胞、1フラスコ当たり40~1000×10細胞、1フラスコ当たり100~1000×10細胞、1フラスコ当たり400~1000×10細胞、1フラスコ当たり100~800×10細胞、1フラスコ当たり250~800×10細胞、1フラスコ当たり100~600×10細胞又は1フラスコ当たり150~500×10細胞の細胞密度で培養される。具体的な実施形態では、フラスコ内での培養期間にわたり、NK細胞集団のNK細胞は、1フラスコ当たり100~3000×10細胞の細胞密度で培養される。
【0269】
NK細胞の培養は、フィーダー細胞又はフィーダー細胞層あり又はなしでもたらすことができる。一実施形態によれば、フィーダー細胞は、T細胞又は末梢血単核球(PBMC)を含む。具体的な実施形態によれば、フィーダー細胞は、照射細胞(即ち非増殖性細胞)、例えば照射T細胞又は照射末梢血単核球を含む。照射は、例えば、20~50Gy(例えば、20Gy、30Gy、40Gy、50Gy)、130KV、5mAでもたらされ得る。一実施形態によれば、フィーダー細胞が使用されるとき、培養物中のNK細胞とフィーダー細胞との比は、1:1、1:2、1:3、2:1又は3:1であり得る。具体的な実施形態によれば、培養物中のNK細胞とフィーダー細胞との比は、1:1である。
【0270】
具体的な実施形態によれば、T細胞又はPBMC(例えば、照射T細胞又は照射PBMC)がフィーダー細胞として使用されるとき、フィーダー細胞層にあるT細胞からのNK細胞増殖に有益な成長因子の分泌を刺激するため、培養物にCD3アゴニストが更に補給される。本発明の一部の実施形態の方法における使用に好適なCD3アゴニストとしては、限定されないが、OKT-3、mAb 145-2C11、MGA031及びChAglyCD3など、抗CD3モノクローナル-CD3アゴニスト抗体が挙げられる。
【0271】
一実施形態によれば、本方法は、ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御することを含む。
【0272】
本明細書で使用されるとき、語句「発現が上方制御する」は、NK細胞上の膜結合タンパク質の発現が増加することを指す。膜結合タンパク質は、NK細胞が天然に発現するタンパク質又はNK細胞が天然に発現しないタンパク質(即ち外因性タンパク質)であり得る。
【0273】
同じ培養条件について、発現は、概して、同じ種でありながら、膜結合タンパク質のmRNA及び/又はタンパク質レベルが増加するように修飾されていない細胞又は「対照」とも称される媒体対照と接触した細胞における発現と比較して表される。
【0274】
一実施形態によれば、膜結合タンパク質の発現が上方制御するとは、それぞれRT-PCR又はウエスタンブロットによって検出したとき、mRNA及び/又はタンパク質レベルが増加することを指す。増加は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%又はそれを超える増加であり得る。
【0275】
膜結合タンパク質の発現の上方制御は、ゲノムレベル(即ちプロモーター、エンハンサー、制御エレメントによる転写の活性化)、転写物レベル(即ち正しいスプライシング、ポリアデニル化、翻訳活性化)又はタンパク質レベル(即ち翻訳後修飾、基質との相互作用など)でもたらすことができる。具体的な実施形態によれば、NK細胞上の膜結合タンパク質の発現の上方制御は、膜結合タンパク質をコードする外因性核酸(例えば、mRNA)をNK細胞に導入することによって生じる。このように、本発明の一部の実施形態のNK細胞は、膜結合タンパク質を発現するように修飾される。
【0276】
発現の上方制御は、一過性又は永続性のいずれであり得る。具体的な実施形態によれば、膜結合タンパク質の発現は、一過性である(即ち、細胞は、そのゲノムが膜結合タンパク質を発現するようには遺伝子改変されていない)(Pato et al, Clin. Exp. Immunol. 2015 Nov; 182(2)220-9(その内容は、全体として参照により本明細書に援用される))。
【0277】
用語「膜結合タンパク質」は、本明細書で使用されるとき、NK細胞膜上に提示される組換え分子を指す。膜結合タンパク質は、リガンド(例えば、抗原)に結合する受容体であり得、NK細胞の活性化(例えば、抗疾患細胞傷害活性又は炎症性サイトカインの産生)を媒介する。代わりに、膜結合タンパク質は、NK細胞の生存、増殖及び/又は分化に関連するタンパク質であり得る。
【0278】
用語「抗原」又は「Ag」は、本明細書で使用されるとき、免疫応答を誘発する可溶性又は非可溶性(膜結合性など)の分子として定義される。当業者は、事実上あらゆるタンパク質又はペプチドが含まれる任意の巨大分子並びに炭水化物、脂質及びDNAが抗原としての役割を果たし得ることを理解するであろう。本発明の一部の実施形態によれば、抗原は、悪性疾患に関連し、即ち以下で更に詳細に記載するとおり、腫瘍抗原(例えば、腫瘍特異抗原又は腫瘍関連抗原)、ウイルスタンパク質抗原、細菌タンパク質抗原又は真菌タンパク質抗原である。
【0279】
一実施形態によれば、膜結合タンパク質は、IL-15、IL-15R、受容体リンカーIL-15(RLI)又はTLRを含む。
【0280】
用語「IL-15」は、本明細書で使用されるとき、遺伝子記号「IL15」を有するインターロイキン15遺伝子の遺伝子産物又は例えばGeneBankアクセッション番号NP_000576.1及びNP_751915.1(タンパク質)並びにNM_000585.5及びNM_172175.3(mRNA)又はこれらのホモログを指す。
【0281】
具体的な実施形態によれば、IL-15は、ヘリックスCの末端に位置する72位のアスパラギン残基からアスパラギン酸へのアミノ酸置換(即ちN72D置換)を含む。
【0282】
用語「IL-15受容体」は、本明細書で使用されるとき、遺伝子記号「IL15RA」を有するインターロイキン15受容体サブユニットアルファ遺伝子の遺伝子産物又は例えばGeneBankアクセッション番号NP_001230468.1、NP_001243694.1、NP_002180.1及びNP_751950.2(タンパク質)並びにNM_001243539.2、NM_001256765.1、NM_002189.4及びNM_172200.3(mRNA)又はこれらのホモログを指す。
【0283】
用語「受容体リンカーIL-15(RLI)」は、IL-15Rαの結合ドメイン(即ちいわゆるsushiドメイン)が可動性リンカーIL-15によってIL-15に結合したものを含む組換えタンパク質を指す。本発明の一部の実施形態に従って使用することのできる例示的RLIは、配列番号25(301.Aと呼ばれる)及び配列番号28(301.Bと呼ばれる)に提供される。
【0284】
用語「TLR」は、本明細書で使用されるとき、遺伝子記号「TLR4」を有するトール様受容体4遺伝子の遺伝子産物又は例えばGeneBankアクセッション番号NP_003257.1、NP_612564.1及びNP_612567.1(タンパク質)並びにNM_003266.4、NM_138554.5及びNM_138557.3(mRNA)又はこれらのホモログを指す。用語「TLR」は、遺伝子記号「TLR1」を有するトール様受容体1遺伝子、遺伝子記号「TLR2」を有するトール様受容体2遺伝子、遺伝子記号「TLR3」を有するトール様受容体3遺伝子、遺伝子記号「TLR5」を有するトール様受容体5遺伝子、遺伝子記号「TLR6」を有するトール様受容体6遺伝子、遺伝子記号「TLR7」を有するトール様受容体7遺伝子、遺伝子記号「TLR8」を有するトール様受容体8遺伝子、遺伝子記号「TLR9」を有するトール様受容体9遺伝子又は遺伝子記号「TLR10」を有するトール様受容体10遺伝子の遺伝子産物も指す。
【0285】
一実施形態によれば、膜結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(tg-TCR)を含む。
【0286】
本明細書で使用されるとき、用語「トランスジェニックT細胞受容体」又は「tg-TCR」は、T細胞受容体(TCR)の特異性、即ち主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質によって提示される抗原ペプチド(即ち抗原)の認識を含む組換え分子を指す。典型的には、TCRは、細胞によってプロセシングされ、MHC複合体に負荷され、且つペプチド-MHC複合体として細胞膜に輸送された外来性(例えば、ウイルス)又は細胞(例えば、腫瘍)起源の抗原、即ちペプチドを認識する。
【0287】
本発明のtg-TCRは、典型的には、T細胞受容体(TCR)のアルファ鎖、TCRのベータ鎖、TCRのガンマ鎖、TCRのデルタ鎖又はこれらの組み合わせ(例えば、αβ鎖又はγδ鎖)など、2本の鎖(即ちポリペプチド鎖)を含む。tg-TCRのポリペプチドは、任意のアミノ酸配列を含み得るが、但し、そのtg-TCRは、以上に記載されるとおりの抗原特異性及びT細胞エフェクター機能を有するものとする。抗原特異性は、TCRヘテロ二量体によって(即ちαβ又はγδ鎖によって)決まることが理解されるであろう。
【0288】
これらの2本の鎖の各々は、典型的には、2つの細胞外ドメイン、即ち可変(V)領域と定常(C)領域とで構成されることが理解されるであろう。
【0289】
一実施形態によれば、tg-TCRは、TCRの可変領域を含む。具体的な実施形態によれば、tg-TCRは、TCRのα鎖及びβ鎖の可変領域を含む。別の具体的な実施形態によれば、tg-TCRは、TCRのγ鎖及びδ鎖の可変領域を含む。
【0290】
本発明の一部の実施形態によれば、tg-TCRの可変領域は、抗原への特異的結合能を有する相補性決定領域(CDR)を含む。CDRは、CDR1、CDR2、CDR3及び/又はCDR4のいずれから選択され得る。具体的な実施形態によれば、CDRは、tg-TCRの単一の鎖上に存在し、好ましくは、CDRは、両鎖上に存在する。
【0291】
一実施形態によれば、tg-TCRは、TCRの定常領域を含む。具体的な実施形態によれば、tg-TCRは、TCRのα鎖及びβ鎖の定常領域を含む。別の具体的な実施形態によれば、tg-TCRは、TCRのC鎖及びγ鎖及びδ鎖の定常領域を含む。
【0292】
tg-TCRの選択は、標的細胞のMHC-ペプチド複合体を定義する抗原の種類及び数に依存する。例えば、tg-TCRは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上のMHC-ペプチド複合体を認識するように選択され得る。このように、例えば、tg-TCRによる認識に関して抗原としての役割を果たし得るマーカーには、ウイルス、細菌及び寄生虫感染症並びに癌細胞に関連するものが含まれ得る。以下に例を提供する。
【0293】
tg-TCRの作成を成功させるには、初めに適切な標的配列を同定する必要がある。従って、抗原反応性T細胞(例えば、腫瘍反応性T細胞)からTCRが単離され得るか、又はそれが可能でない場合には代替的な技術を用い得る。例示的実施形態によれば、トランスジェニック動物(例えば、ウサギ又はマウス、好ましくはヒト-HLAトランスジェニックマウス)をヒト抗原ペプチド(例えば、腫瘍又はウイルス抗原)で免疫して、ヒト抗原に対するTCRを発現するT細胞を作成する[例えば、Stanislawski et al., Nat Immunol. (2001) 2(10):962-70に記載されるとおり]。別の例示的実施形態によれば、疾患(例えば、腫瘍)寛解を経験している患者から抗原特異的T細胞(例えば、腫瘍特異的T細胞)が単離され、それから反応性TCR配列が単離される[例えば、Witte et al., Blood (2006) 108(3):870に記載されるとおり]。
【0294】
別の例示的実施形態によれば、in vitro技術を用いて、標的抗原との反応性が弱い抗原特異的TCRのアビディティが亢進するように既存のTCRの配列が改変される(かかる方法については、以下に記載する)。
【0295】
一実施形態によれば、tg-TCRのシグナル伝達モジュールは、単一のサブユニット又は複数のシグナル伝達ユニットを含み得る。従って、本発明のtg-TCRは、抗原受容体会合に伴ってシグナル伝達を惹起するようにTCRと協力して機能する共受容体並びに同じ機能的能力を有するその任意の誘導体又は変異体を使用し得る。
【0296】
一実施形態によれば、TCRシグナル伝達モジュールは、CD3複合体(例えば、CD3鎖、例えばCD3δ/ε、CD3γ/ε及び/又はゼータ鎖、例えばζ/ζ又はζ/η)を含む。
【0297】
加えて又は代わりに、TCRシグナル伝達モジュールは、T細胞に追加のシグナルを提供するために共刺激ドメインを含み得る。これらは、本明細書で以下にCAR分子について詳細に考察する。
【0298】
一実施形態によれば、tg-TCRは、本明細書で以下にCAR分子について詳細に記載するとおりの膜貫通ドメインを含み得る。
【0299】
本明細書で使用されるとき、語句「キメラ抗原受容体(CAR)」は、特異的抗原に対して細胞免疫活性を呈するキメラタンパク質が作成されるように所望の抗原に対する特異性をT細胞受容体活性化細胞内ドメイン(即ちT細胞受容体シグナル伝達モジュール)と組み合わせる組換え分子を指す。典型的には、CARは、主要組織適合遺伝子複合体(MFIC)とは独立に細胞表面に発現する抗原(例えば、タンパク質又は非タンパク質)を(内部抗原よりむしろ)認識する。
【0300】
このように、本発明のCARは、概して、抗原結合部分を含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、T細胞が抗原に対して効率的に反応するのに必要な細胞内ドメイン(即ちエンドドメインとも称される細胞質ドメイン)とを含む。
【0301】
抗原結合部分
一実施形態では、本発明のCARは、他の場合には抗原結合部分と称される標的特異的結合エレメントを含む。部分の選択は、標的細胞の表面を定義するリガンド(即ち抗原)の種類及び数に依存する。例えば、抗原結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとしての役割を果たすリガンド(即ち抗原)を認識するように選択され得る。このように、本発明のCARにおいて抗原部分ドメインのリガンドとしての役割を果たし得る細胞表面マーカーの例としては、ウイルス、細菌及び寄生虫感染症並びに癌細胞に関連するものが挙げられる。
【0302】
本発明の一部の実施形態によれば、抗原結合部分は、抗原への特異的結合能を有する相補性決定領域(CDR)を含む。かかるCDRは、抗体から入手することができる。
【0303】
用語「抗体」には、本発明で使用されるとき、インタクトな分子並びに抗原への結合能を有する抗体断片から形成されるその機能性断片、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、線状抗体、scFv抗体及び多重特異性抗体が含まれる。これらの機能的抗体断片は、以下のとおり定義される。(1)Fab、抗体分子の一価抗原結合断片を有する断片、全抗体を酵素パパインで消化してインタクトな軽鎖及び一方の重鎖の一部分を生じさせることにより作製することができる、(2)Fab’、全抗体をペプシンで処理した後、続いて還元して、インタクトな軽鎖及び重鎖の一部分を生じさせることによって入手され得る抗体分子の断片;各抗体分子につき2つのFab’断片が得られる、(3)(Fab’)2、全抗体を酵素ペプシンで処理した後、続く還元がないことによって入手され得る抗体の断片;F(ab’)2は、2つのジスルフィド結合によって一体に保持された2つのFab’断片の二量体である、(4)Fv、2本の鎖として発現した軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを有する遺伝子操作された断片として定義される、(5)単鎖抗体(「SCA」)、遺伝的に融合した単鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを有する遺伝子操作された分子、(6)CDRペプチドは、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである、及び(7)シングルドメイン抗体(ナノボディとも呼ばれる)、特異的抗原に選択的に結合する遺伝子操作された単一の単量体可変抗体ドメイン。ナノボディは、僅か12~15kDaの分子量のみを有し、これは、よく見られる抗体(150~160kDa)よりもはるかに小さい。
【0304】
「抗体重鎖」は、本明細書で使用されるとき、あらゆる抗体分子がその天然に存在するコンホメーションにあるときに存在する2種類のポリペプチド鎖の大きい方を指す。
【0305】
「抗体軽鎖」は、本明細書で使用されるとき、あらゆる抗体分子がその自然発生のコンホメーションにあるときに存在する2種類のポリペプチド鎖の小さい方を指す。カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0306】
用語「合成抗体」とは、本明細書で使用されるとき、例えば本明細書に記載されるとおりのバクテリオファージが発現する抗体など、組換えDNA技術を用いて作成される抗体を意味する。この用語は、抗体をコードするDNA分子であって、抗体タンパク質を発現するDNA分子又はその抗体を指定するアミノ酸配列の合成により作成されている抗体(ここで、DNA又はアミノ酸配列は、当技術分野で利用可能な周知の合成DNA又はアミノ酸配列技術を用いて入手されている)も意味すると解釈されなければならない。
【0307】
ポリクローナル及びモノクローナル抗体並びにその断片の作製方法は、当技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988(参照により本明細書に援用される)を参照されたい)。
【0308】
本発明に係る抗体断片は、抗体のタンパク質分解性加水分解によるか、又はその断片をコードするDNAをE. coli又は哺乳類細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物又は他のタンパク質発現システム)で発現させることにより調製され得る。抗体断片は、従来方法により全抗体のペプシン又はパパイン消化によって入手することができる。例えば、抗体断片は、抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)2と表される5S断片を提供することにより作製され得る。この断片は、チオール還元剤、任意選択でジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基のブロック化を使用して更に切断することができ、それにより3.5S Fab’一価断片が作製される。代わりに、ペプシンを用いた酵素的切断によって2つの一価Fab’断片及びFc断片が直接作製される。これらの方法については、例えば、Goldenberg、米国特許第4,036,945号明細書及び同第4,331,647号明細書及びそれに含まれる参考文献、(これらの特許は、本明細書によって全体として参照により援用される)によって記載されている。Porter, R. R.[Biochem. J. 73: 119-126 (1959)]も参照されたい。重鎖の分離による一価軽鎖-重鎖断片の形成、断片の更なる切断又は他の酵素的、化学的若しくは遺伝学的技法など、抗体を切断する他の方法も、インタクトな抗体が認識する抗原にそうした断片が結合する限り用いることができる。
【0309】
Fv断片は、VH鎖とVL鎖との会合を含む。この会合は、Inbar et al.[Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 69:2659-62 (19720]に記載されるとおり、非共有結合性であり得る。代わりに、これらの可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結され得るか、又はグルタルアルデヒドなどの化学物質によって架橋され得る。好ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーによって結び付けられたVH鎖とVL鎖とを含む。こうした単鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって結び付けられたVH及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することにより調製される。構造遺伝子は、発現ベクターに挿入され、続いてその発現ベクターがE. coliなどの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞は、リンカーペプチドが2つのVドメインを架橋している単一のポリペプチド鎖を合成する。sFvの作製方法については、例えば、[Whitlow and Filpula, Methods 2: 97-105 (1991)、Bird et al., Science 242:423-426 (1988);Pack et al., Bio/Technology 11:1271-77 (1993)、及び米国特許第4,946,778号明細書(本明細書によって全体として参照により援用される)により記載されている。
【0310】
CDRペプチド(「最小認識単位」)は、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって入手され得る。かかる遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することにより調製される。例えば、Larrick and Fry[Methods, 2: 106-10 (1991)]を参照されたい。
【0311】
抗体のCDRが同定されたところで、様々な関連する産物を作製するため、従来の遺伝子工学技術を用いて、本明細書に記載される抗体の形態又は断片のいずれかをコードする発現可能なポリヌクレオチドを多くある方法の1つで合成及び修飾することができる。
【0312】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、抗原に特異的に結合するap T細胞受容体(TCR)に由来する。
【0313】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、抗原に特異的に結合するγδ T細胞受容体(TCR)に由来する。
【0314】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、抗原に特異的に結合する改変された親和性が亢進したap T細胞受容体又はγδ T細胞受容体(TCR)に由来する(本明細書で上記に詳細に考察するとおり)。
【0315】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、安定性又は任意の他の生物物理学的特性が向上した改変されたαβ T細胞受容体又はγδ T細胞受容体(TCR)に由来する。
【0316】
本発明の一部の実施形態によれば、CDRは、抗原に特異的に結合するT細胞受容体様(TCRL)抗体に由来する。TCRL及びそれらを作成する方法の例は、国際公開第03/068201号パンフレット、国際公開第2008/120203号パンフレット、国際公開第2012/007950号パンフレット、国際公開第2009125395号パンフレット、国際公開第2009/125394号パンフレット(これらの各々は、全体として本明細書に十分に援用される)に記載されている。
【0317】
本発明の一部の実施形態によれば、抗原結合ドメインは、単鎖Fv(scFv)分子を含む。
【0318】
細胞質ドメイン
本発明のCAR分子の細胞質ドメイン(「細胞内シグナル伝達ドメイン」又は「T細胞受容体シグナル伝達モジュール」とも称される)は、CARが中に置かれた細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。
【0319】
通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を利用し得るが、多くの場合に鎖全体を使用しなくてもよい。細胞内シグナル伝達ドメインのうち、トランケートされた一部分が使用される範囲内において、かかるトランケートされた一部分を、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりに使用し得る。従って細胞内シグナル伝達ドメインという用語には、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意のトランケートされた一部分が含まれることが意図される。
【0320】
本発明のCAR分子における使用に好ましい細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、抗原受容体会合に伴ってシグナル伝達を惹起するように協力して機能するT細胞受容体(TCR)及び共受容体の細胞質配列並びにそうした配列の任意の誘導体又は変異体及び同じ機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
【0321】
このように、NK細胞活性化は、2つの特徴的に異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列:抗原依存性一次活性化を惹起するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)及び抗原非依存的に機能して二次又は共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)が媒介し得る。
【0322】
刺激する様式で機能する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)として公知のシグナル伝達モチーフを含み得る。本発明で特に有用であるITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列の例としては、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66dに由来するものが挙げられる。本発明のCARにおける細胞質シグナル伝達分子は、CD3ゼータに由来する細胞質シグナル伝達配列を含むことが特に好ましい。
【0323】
共刺激シグナル伝達領域は、典型的には、CAR分子のうち、共刺激分子の細胞内ドメインを含む一部分を指す。共刺激分子は、リンパ球が抗原に効率的に反応するのに必要である、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子としては、限定されないが、MHCクラスI分子、BTLA及びTollリガンド受容体が挙げられる。共刺激リガンドとしては、限定されないが、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体及びB7-H3と特異的に結合するリガンドを挙げることができる。共刺激リガンドには、とりわけ、T細胞に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体、限定されないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83と特異的に結合するリガンドも包含される。
【0324】
一実施形態によれば、CARの細胞質ドメインは、CD3-ゼータシグナル伝達ドメイン自体を含むように設計することができるか、又は本発明のCARに関連して有用な任意の他の所望の1つ又は複数の細胞質ドメインと組み合わせることもできる。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ゼータ鎖部分と共刺激シグナル伝達領域とを含み得る。共刺激シグナル伝達領域とは、CARのうち、共刺激分子の細胞内ドメインを含む一部分を指す。共刺激分子は、リンパ球が抗原に効率的に反応するのに必要である、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。かかる分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、PD-1、DAP10、2B4、Lsk、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83と特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。
【0325】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3ζ-鎖[CD247分子、別名「CD3-ZETA」及び「CD3z」、GenBankアクセッション番号NP_000725.1及びNP_932170.1]を含み、これは、内因性TCRからのシグナルの一次伝達因子である。
【0326】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、T細胞に追加のシグナルを提供するためのCARの細胞質テールに至る様々な共刺激タンパク質受容体を含む(「第2世代」CAR)。例としては、限定されないが、CD28[例えば、GenBankアクセッション番号NP_001230006.1、NP_001230007.1、NP_006130.1]、4-1BB[腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー9(TNFRSF9)、別名「CD137」、例えばGenBankアクセッション番号NP_001552.2]、ICOS[誘導性T細胞共刺激因子、例えばGenBankアクセッション番号NP_036224.1]、DAP10[造血細胞シグナル伝達因子、例えばGenBankアクセッション番号NP_001007470、NP_055081.1]、2B4[CD244分子、例えばGenBankアクセッション番号NP_001160135.1、NP_001160136.1、NP_057466.1]及びLsk[LCK癌原遺伝子、Srcファミリーチロシンキナーゼ、例えばGenBankアクセッション番号NP_001036236.1、NP_005347.3]が挙げられる。前臨床試験によれば、「第2世代のCAR設計により、T細胞の抗腫瘍活性が向上することが指摘されている。
【0327】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3ζ(CD247、CD3z)、CD27、CD28、4-1BB/CD137、2B4、ICOS、OX40/CD134、DAP10、腫瘍壊死因子受容体(TNFr)及びLskからなる群から選択されるポリペプチドの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ又はそれを超えるものを含む。
【0328】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、効力を更に増大させるため、CD3z-CD28-4-1BB又はCD3z-CD28-OX40など、複数のシグナル伝達ドメインを含む。用語「OX40」は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー4(TNFRSF4)、例えばGenBankアクセッション番号NP_003318.1を指す(「第3世代」CAR)。
【0329】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD28-CD3z、CD3z、CD28-CD137-CD3zを含む。用語「CD137」は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー9(TNFRSF9)、例えばGenBankアクセッション番号NP_001552.2を指す。
【0330】
具体的な実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3z及びCD28を含む。
【0331】
具体的な実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3z及び4-1BBを含む。
【0332】
具体的な実施形態によれば、細胞内ドメインは、CD3z及び2B4を含む。
【0333】
膜貫通ドメイン
CARの膜貫通ドメインは、天然又は合成のいずれの供給源にも由来し得る。供給源が天然である場合、このドメインは、任意の膜結合型又は膜貫通型タンパク質に由来し得る。本発明で特に有用な膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154又はNKG2Dに由来し得る(即ちその1つ又は複数の膜貫通領域を少なくとも含み得る)。代わりに、膜貫通ドメインは、合成であり得、その場合、それは、ロイシン及びバリンなど、主に疎水性の残基を含む。好ましくは、合成膜貫通ドメインの両端にフェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが見られることになる。
【0334】
具体的な実施形態によれば、膜貫通ドメインは、CD8を含む。
【0335】
具体的な実施形態によれば、膜貫通ドメインは、CD28を含む。具体的な実施形態によれば、膜貫通ドメインは、NKG2Dを含む。
【0336】
本発明の一部の実施形態によれば、本発明の一部の実施形態のCAR分子に含まれる膜貫通ドメインは、CARにおけるドメインの1つと天然で関連性のある膜貫通ドメインである。本発明の一部の実施形態によれば、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるため、かかるドメインが同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合することが回避されるように選択するか、又はアミノ酸置換によって修飾することができる。
【0337】
一部の実施形態によれば、細胞外ドメインとCAR分子の膜貫通ドメインとの間又は細胞質ドメインとCAR分子の膜貫通ドメインとの間にスペーサードメインが取り込まれ得る。本明細書で使用されるとき、用語「スペーサードメイン」は、概して、膜貫通ドメインをそのポリペプチド鎖の細胞外ドメイン又は細胞質ドメインのいずれかに連結するように機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを意味する。スペーサードメインは、最大300アミノ酸、好ましくは10~100アミノ酸及び最も好ましくは25~50アミノ酸を含み得る。
【0338】
任意選択で、好ましくは、2~10アミノ酸長の短鎖オリゴペプチドリンカー又はポリペプチドリンカーは、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連結を形成し得る(「ヒンジ」とも称される)。グリシン-セリンダブレットが特に好適なリンカーを提供する。
【0339】
具体的な実施形態によれば、CAR分子の構築には、CD8のヒンジ領域が使用される。
【0340】
具体的な実施形態によれば、CAR分子の構築には、CD28のヒンジ領域が使用される。
【0341】
既述のとおり、CAR又はtg-TCRは、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原虫抗原及び/又は寄生虫抗原からなる群から選択される抗原に対して抗原特異性を有する。
【0342】
本明細書で考察される抗原は、単に例として挙げられているに過ぎない。その列挙を唯一のものとする意図はなく、更なる例が当業者に容易に明らかであろう。
【0343】
本明細書で使用されるとき、語句「腫瘍抗原」は、癌など、特定の過剰増殖性障害に共通して見られる抗原を指す。腫瘍抗原は、免疫応答、特にT細胞媒介性免疫応答を引き出す腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。本発明の抗原結合部分の選択は、治療しようとする癌の詳細な種類に依存することになる。
【0344】
一実施形態によれば、腫瘍抗原は、固形腫瘍に関連する。
【0345】
一実施形態によれば、腫瘍抗原は、血液学的悪性腫瘍に関連する。
【0346】
本発明で言及される腫瘍抗原の種類には、腫瘍特異抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)が含まれる。「TSA」は、腫瘍細胞にユニークなタンパク質又はポリペプチド抗原であって、身体の他の細胞には発生しない抗原を指す。「TAA」は、腫瘍細胞が発現するタンパク質又はポリペプチド抗原を指す。例えば、TAAは、腫瘍細胞の1つ以上の表面タンパク質若しくはポリペプチド、核タンパク質若しくは糖タンパク質又はその断片であり得る。
【0347】
TSA又はTAA抗原の非限定的な例としては、以下が挙げられる:分化抗原、例えばMART-1/MelanA(MART-1)、gp 100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2及び腫瘍特異的多系列抗原、例えばMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15;過剰発現する胚抗原、例えばCEA;過剰発現する癌遺伝子及び変異している腫瘍抑制遺伝子、例えばp53、Ras、HER2/neu;染色体転座によって生じるユニークな腫瘍抗原、例えば、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR;及びウイルス抗原、例えばエプスタイン・バーウイルス抗原EBVA及びヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7。他の大型のタンパク質ベースの抗原としては、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p 15、p 16、43-9F、5T4、791Tgp72、αフェトプロテイン、β-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.291\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、MUCI、NB/70K、NY-CO-1、NKG2DL、NR、ROBO1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP及びTPSが挙げられる。
【0348】
腫瘍抗原の更なる例としては、限定されないが、A33、BAGE、Bcl-2、β-カテニン、BCMA、CAl25、CA19-9、CD5、CD7、CD19、CD20、CD21、CD22、CD33/IL3Ra、CD34、CD37、CD38、CD45、CD123、CD135(FLT3)、CD138、癌胎児性抗原(CEA)、CLL1、c-Met、CS-1、サイクリンB1、DAGE、EBNA、EGFR、EGFRvIII、エフリンB2、エストロゲン受容体、FAP、フェリチン、葉酸結合タンパク質、GAGE、G250、GD-2、GM2、gp75、gp100(Pmel 17)、糖脂質F77、HER2/neu、HPV E6、HPV E7、Ki-67、LRP、メソテリン、MY-ESO-1、MART-1、MAGE A3、p53、PRAME、PR1、PSMA、ROR1、SLAMF7、WT1(ウィルムス腫瘍)などが挙げられる。更なる腫瘍抗原は、van der Bruggen P, Stroobant V, Vigneron N, Van den Eynde B. Peptide database: T cell-defined tumor antigens. Cancer Immun (2013), www(dot)cancerimmunity(dot)org/peptide/(参照により本明細書に援用される)に提供される。
【0349】
固形腫瘍についての追加のCAR/tg-TCR標的は、Ma et al., Int. J. Biol. Sci. (2019) 15(12): 2548-2560(参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0350】
具体的な実施形態によれば、標的抗原は、HER2である。
【0351】
具体的な実施形態によれば、標的抗原は、CD38である。
【0352】
本発明の一部の実施形態によれば、ウイルス抗原は、限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザ、サイトメガロウイルス(CMV)、T細胞白血病ウイルス1型(TAX)、C型肝炎ウイルス(HCV)、(HBV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、アデノウイルス(Adv)、感冒ウイルス、風邪ウイルス、A型、B型及びC型肝炎ウイルス、単純ヘルペス、日本脳炎、麻疹、ポリオ、狂犬病、呼吸器合胞体、風疹、天然痘、水痘帯状疱疹、ロタウイルス、ウエストナイルウイルス、ポリオーマウイルス(例えば、BKウイルス)、重症急性呼吸器症候群(SARS)例えば重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)及び/又はジカウイルスなど、任意のウイルスに由来し得る。
【0353】
本発明の一部の実施形態によれば、ウイルス抗原としては、限定されないが、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV-1)転写因子(TAX)、インフルエンザマトリックスタンパク質エピトープ、エプスタイン・バーウイルス(EBV)由来のエピトープ、HIV-1 RT、HIV Gag、HIV Pol、インフルエンザ膜タンパク質M1、インフルエンザヘマグルチニン、インフルエンザノイラミニダーゼ、インフルエンザ核タンパク質、インフルエンザ核タンパク質、インフルエンザマトリックスタンパク質(M1)、インフルエンザイオンチャネル(M2)、インフルエンザ非構造タンパク質NS-1、インフルエンザ非構造タンパク質NS-2、インフルエンザPA、インフルエンザPB1、インフルエンザPB2、インフルエンザBM2タンパク質、インフルエンザNBタンパク質、インフルエンザヌクレオカプシドタンパク質、サイトメガロウイルス(CMV)リン酸化マトリックスタンパク質(pp65)、TAX、C型肝炎ウイルス(HCV)、HBVプレSタンパク質85-66、HTLV-1 tax 11-19、HBV表面抗原185-194、重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV)タンパク質S1、SARS-CoVタンパク質RBD、SARS-CoVヌクレオカプシドタンパク質、SARS-CoVタンパク質Plpro、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)タンパク質S1、SARS-CoV-2タンパク質S2、SARS-CoV-2タンパク質S1+S2 ECD、SARS-CoV-2タンパク質RBD、SARS-CoV-2タンパク質N抗原、SARS-CoV-2タンパク質S抗原又はSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質からなる群から選択されるポリペプチド由来のウイルスエピトープが挙げられる。
【0354】
本発明の一部の実施形態によれば、細菌抗原は、限定されないが、炭疽;グラム陰性桿菌、クラミジア、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザ、ピロリ菌、マラリア、マイコバクテリア結核、百日咳毒素、肺炎球菌、リケッチア、ブドウ球菌、レンサ球菌及び破傷風など、任意の細菌に由来し得る。
【0355】
本発明の一部の実施形態によれば、細菌抗原としては、限定されないが、炭疽防御抗原を含むが、これに限定されない炭疽抗原;リポ多糖類を含むが、これに限定されないグラム陰性桿菌抗原;莢膜多糖類を含むが、これに限定されないヘモフィルスインフルエンザ抗原;ジフテリア毒素を含むが、これに限定されないジフテリア抗原;ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDa主要分泌タンパク質及び抗原85Aを含むが、これらに限定されないマイコバクテリア結核抗原;赤血球凝集素、パータクチン、FIM2、FIM3及びアデニル酸シクラーゼを含むが、これらに限定されない百日咳毒素抗原;ニューモリシン及び肺炎球菌莢膜多糖類を含むが、これらに限定されない肺炎球菌抗原;rompAを含むが、これに限定されないリケッチア抗原;Mタンパク質を含むが、これに限定されないレンサ球菌抗原;及び破傷風毒素を含むが、これに限定されない破傷風抗原が挙げられる。
【0356】
本発明の一部の実施形態によれば、抗原は、スーパーバグ抗原(例えば、多剤耐性菌)である。スーパーバグの例としては、限定されないが、Enterococcus faecium、Clostridium difficile、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosa及びEnterobacteriaceae(Escherichia coli、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter spp.を含む)が挙げられる。
【0357】
本発明の一部の実施形態によれば、真菌抗原は、限定されないが、カンジダ、コクシジオイデス、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、リーシュマニア、変形体、原虫、寄生虫、住血吸虫、白癬、トキソプラズマ及びクルーズトリパノソーマなど、任意の真菌に由来し得る。
【0358】
本発明の一部の実施形態によれば、真菌抗原としては、限定されないが、小球抗原を含むが、これに限定されないコクシジオイデス抗原;莢膜多糖類を含むが、これに限定されないクリプトコッカス抗原;熱ショックタンパク質60(HSP60)を含むが、これに限定されないヒストプラズマ抗原;gp63及びリポホスホグリカンを含むが、これらに限定されないリーシュマニア抗原;メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、ガメトサイト/配偶子表面抗原を含むが、これらに限定されない熱帯熱マラリア原虫抗原、血中期抗原pf 155/RESAを含む原生動物及び他の寄生虫抗原;グルタチオン-S-トランスフェラーゼ及びパラミオシンを含むが、これらに限定されない住血吸虫抗原;トリコフィチンを含むが、これに限定されない白癬真菌抗原;SAG-1及びp30を含むが、これに限定されないトキソプラズマ抗原;及び75-77kDa抗原及び56kDa抗原を含むが、これらに限定されないクルーズトリパノソーマ抗原が挙げられる。
【0359】
様々な方法を用いてNK細胞に本発明の一部の実施形態の核酸を導入し得る(例えば、膜結合タンパク質をコードする核酸)。かかる方法は、概して、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York (1989, 1992)、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Md. (1989)、Chang et al., Somatic Gene Therapy, CRC Press, Ann Arbor, Mich. (1995)、Vega et al., Gene Targeting, CRC Press, Ann Arbor Mich. (1995)、Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses, Butterworths, Boston Mass. (1988)及びGilboa et at. [Biotechniques 4 (6): 504-512, 1986]に記載されており、例えば安定又は一過性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション及び組換えウイルスベクターによる感染が挙げられる。加えて、ポジティブ-ネガティブ選択方法について、米国特許第5,464,764号明細書及び同第5,487,992号明細書を参照されたい。
【0360】
一例によれば、本発明の一部の実施形態の核酸は、ネイキッドDNAとして又は好適なベクターでNK細胞に導入される。ネイキッドDNAを使用したエレクトロポレーションによって細胞を安定にトランスフェクトする方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号明細書を参照されたい。ネイキッドDNAとは、概して、プラスミド発現ベクターに発現に適切な向きで入れられた膜結合タンパク質をコードするDNAを指す。
【0361】
代わりに、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はレンチウイルスベクター)を使用してNK細胞に本発明の一部の実施形態の核酸を導入することができる(例えば、膜結合タンパク質をコードする核酸)。本開示の方法における使用に好適なベクターは、NK細胞において非複製性である。例えば、HIV、SV40、EBV、HSV又はBPVをベースとするベクターなど、ウイルスをベースとする多数のベクターが公知であり、細胞において維持されるウイルスのコピー数は、細胞の生存能力を維持するのに十分に低い。
【0362】
一例によれば、本発明の一部の実施形態の核酸は、非ウイルス遺伝子導入によってNK細胞に導入される。
【0363】
一例によれば、本発明の一部の実施形態の核酸は、mRNAとしてNK細胞に導入される。
【0364】
具体的な実施形態によれば、膜結合タンパク質の発現の上方制御は、NK細胞への核酸(例えば、mRNA)のエレクトロポレーションによって生じる。エレクトロポレーションは、限定されないが、Nucleofector又はBTX-Gemini Twin Waveエレクトロポレーターなど、任意のエレクトロポレーション装置を使用してもたらされ得る。
【0365】
一実施形態によれば、単一のNK細胞上に2つ、3つ又はそれを超える膜結合タンパク質を共発現させ得る。
【0366】
一実施形態によれば、NK細胞は、
(i)CAR又はtg-TCR、及び
(ii)in vivoでNK細胞の生存に影響するサイトカイン又は受容体(例えば、IL-15、IL-15R、受容体リンカーIL-15(RLI)、TLR等)
を共発現するように修飾され得る。
【0367】
具体的な実施形態によれば、目的とする遺伝子がCISHであるとき、少なくとも1つの膜結合タンパク質は、IL-15を含む。
【0368】
具体的な実施形態によれば、目的とする遺伝子がCD38であるとき、少なくとも1つの膜結合タンパク質は、抗CD38 CARを含む。
【0369】
一実施形態によれば、膜結合タンパク質の発現の上方制御は、細胞培養の開始から8~20日、8~18日、10~18日、12~18日、12~16日、12~14日に生じる。
【0370】
具体的な実施形態によれば、膜結合タンパク質の発現の上方制御は、細胞培養の開始から12~16日に生じる。
【0371】
具体的な実施形態によれば、膜結合タンパク質の発現の上方制御は、細胞培養の開始から12~14日で生じる。
【0372】
特定の実施形態では、NK細胞が少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するように修飾された後、細胞は、培養物から回収され得る。
【0373】
具体的な実施形態によれば、細胞は、細胞を回収する1~4日、1~3日、1~2日又は0.5~1日前に少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するように修飾される。
【0374】
細胞の回収は、手動によるか、付着した細胞を離れさせる(例えば、培養ベッセル表面から「こすり落とす」)ことによるか、又は細胞をその培養ベッセルから効率的に洗い出し、それらの細胞を自動で収集するように設計されている細胞回収装置によって実施することができる。具体的な実施形態では、増殖させたNK細胞は、培養ベッセルから、細胞回収装置(例えば、ミネソタ州セントポール、WolfWilson社のG-Rex MCSの回収装置)によって回収される。具体的な実施形態では、増殖されたCD3枯渇NK細胞画分は、培養ベッセルから、細胞回収装置(例えば、Fresenius Kabi社(独国、ハンブルグ)のLOVO細胞処理装置)によって回収される。
【0375】
一部の実施形態では、培養物からの増殖させたNK細胞の回収では、ほとんど又はほぼ全ての細胞が培養ベッセルから取り出される。他の実施形態では、回収は、2段階以上で実施され得、未回収の細胞を後の時点で回収するまで培養下に残すことが可能になる。特定の実施形態では、増殖させたNK細胞は、増殖させたNK細胞の第1の部分量を回収することと、次に増殖させたNK細胞の第2の部分量を回収することとを含む2段階で回収される。これらの2つの部分量の回収は、第1及び第2の部分量の回収間に数時間、数日又はそれを超える間隔を置いて実施することができる。回収された2つの部分量は、ほぼ等しい部分量の培養物(例えば、等しい量の培養されたNK細胞)を含み得るか、又はそれらの部分量の一方が他方よりも大きい割合の培養されたNK細胞を含み得る)。一実施形態によれば、回収は、培養開始後の約12~18日、例えば14~16日で増殖された修飾NK細胞を回収することを含む。一実施形態によれば、回収は、細胞が少なくとも1つの膜結合タンパク質(例えば、CAR)を発現するように修飾した後の約1~4日、例えば1~2日で増殖された修飾NK細胞を回収することを含む。
【0376】
増殖させたNK細胞集団を使用に向けて調製するため、回収された細胞は、培養培地から洗い出し、決定的に重要なパラメータを評価し、且つ臨床的に妥当な期間をかけた注入に好適な濃度となるように容積を調整する必要がある。
【0377】
回収後、増殖された修飾NK細胞は、培養培地がなくなるように手動で又は好ましくは臨床適用向けに閉鎖系のシステムを利用する自動化された装置を使用して洗浄することができる。洗浄された細胞は、注入溶液で再構成することができる(例えば、1つの例示的注入溶液は、8%w/vのHSA及び6.8%w/vのデキストラン-40を含む)。一部の実施形態では、再構成は、閉鎖系のシステムにおいて実施される。一部の実施形態では、注入溶液は、本発明の方法及び組成物での使用への適合性に関してスクリーニングされる。好適な注入溶液の選択に際した例示的判定基準には、細菌、酵母又はカビの成長がないこと、エンドトキシン含有量が0.5Eu/ml未満であること及び異物粒子のない澄明な外観であることを指示する安全性試験が含まれる。
【0378】
増殖された修飾NK細胞が入手できたところで、細胞数(即ち増殖)、細胞シグネチャ(例えば、CD3-CD56+細胞)、膜結合タンパク質(例えば、CAR、tg-TCR、IL-15、RLI等)の発現及びNK細胞機能性について細胞を調べる。
【0379】
細胞増殖アッセイは、当技術分野で周知であり、限定されないが、細胞を低密度で播種して成長させ、コロニーをカウントするクローン原性アッセイ、細胞数を機械的に測定する機械的アッセイ[フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))、ヨウ化プロピジウム]、生細胞数を測定する代謝アッセイ(テトラゾリウム塩、例えばXTT、MTT等の取込みなど)、成長中の集団のDNA合成を測定する直接の増殖アッセイ(ブロモデオキシウリジン、チミジン取込みなど)が挙げられる。
【0380】
細胞シグネチャ関するアッセイ及び細胞膜上のタンパク質の発現に関するアッセイは、当技術分野で周知であり、限定されないが、FACS分析及び免疫組織染色技法が挙げられる。
【0381】
本明細書で使用されるとき、用語「NK細胞機能性」は、NK細胞に帰せられる任意の生物学的機能を指す。NK細胞機能の非限定的な列挙としては、例えば、細胞傷害性、アポトーシス誘導、細胞運動性、指向性遊走、サイトカイン及び他の細胞シグナル応答、サイトカイン/ケモカイン産生及び分泌、活性化型及び抑制型細胞表面分子のin vitro発現、移植を受けた宿主における細胞ホーミング及び生着(生体内保持率)及び疾患又は疾患過程のin vivoでの変化が挙げられる。一部の実施形態では、ニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分の存在下で増殖することにより亢進するNK細胞機能としては、CD62L表面マーカーの発現上昇、遊走反応の上昇及びNK細胞の細胞傷害活性の高まり並びに注入されたNK細胞のホーミング及び生体内保持率の上昇の少なくとも1つが挙げられる。
【0382】
CD62L、CXCR-4、CD49eなど、移植において細胞のホーミング/生着及び保持に重要な接着及び遊走分子に関するアッセイは、当技術分野で周知である。細胞のCD62L発現は、例えば、フローサイトメトリー、免疫検出、定量的cDNA増幅、ハイブリダイゼーションなどによりアッセイすることができる。
【0383】
細胞遊走に関するアッセイは、当技術分野で周知である。細胞の遊走は、例えば、血管外遊走アッセイ又はギャップ閉鎖アッセイによりアッセイすることができる。一実施形態では、「Transwell」(商標)血管外遊走アッセイにより、異なるNK細胞集団の潜在的遊走能力が決定される。
【0384】
細胞傷害性(「細胞殺傷」)に関するアッセイは、当技術分野で周知である。リダイレクト殺傷アッセイにおける使用に好適な標的細胞の例は、癌細胞株、原発性癌細胞、固形腫瘍細胞、白血病細胞又はウイルス感染細胞である。特に、K562、BL-2、colo250及び初代白血病細胞を使用することができるが、幾つもの他の細胞型のいずれかを使用することもでき、当技術分野で周知である(例えば、Sivori et al. (1997) J. Exp. Med. 186: 1129-1136;Vitale et al. (1998) J. Exp. Med. 187: 2065-2072;Pessino et al. (1998) J. Exp. Med. 188: 953-960;Neri et al. (2001) Clin. Diag. Lab. Immun. 8: 1131-1135を参照されたい)。例えば、細胞殺傷は、細胞生存能力アッセイ(例えば、色素排除、クロム遊離、CFSE)、代謝アッセイ(例えば、テトラゾリウム塩)及び直接の観察により判定され得る。
【0385】
本発明の一部の実施形態により作成された、洗浄して濃縮した増殖された修飾NK細胞画分は、約60%~約99%のCD56+/CD3-細胞、約70%~約99%のCD56+/CD3-細胞、約80%~約99%のCD56+/CD3-細胞又は約90~99%のCD56+/CD3-細胞を含むことを特徴とする。一実施形態では、本発明の一部の実施形態により作成された、洗浄して濃縮した増殖させたNK細胞画分は、少なくとも約60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%のCD56+/CD3-細胞を含むことを特徴とする。
【0386】
本発明の一部の実施形態により作成された、洗浄して濃縮した増殖された修飾NK細胞画分は、約60%~約99%の膜結合タンパク質陽性細胞、約70%~約99%の膜結合タンパク質陽性細胞、約80%~約99%の膜結合タンパク質陽性細胞又は約90~99%の膜結合タンパク質陽性細胞(例えば、CAR、tg-TCR、IL-15、RLI等)を含むことを特徴とする。一実施形態では、本発明の一部の実施形態により作成された、洗浄して濃縮した増殖させたNK細胞画分は、少なくとも約60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%の膜結合タンパク質陽性細胞(例えば、CAR、tg-TCR、IL-15、RLI等)を含むことを特徴とする。
【0387】
本発明の一部の実施形態の修飾NK細胞は、新鮮細胞として使用され得る。代わりに、細胞は、将来的な使用又は「既製品」使用のために凍結保存され得る。
【0388】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、本発明の一部の実施形態の方法によって入手可能である、単離されたNK細胞集団が提供される。
【0389】
一実施形態によれば、単離されたNK細胞集団(即ちex vivo増殖後、例えば培養終了時)は、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%又はそれを超えるNK細胞を含む。
【0390】
一実施形態によれば、単離されたNK細胞集団(即ち、ex vivo増殖後、例えば培養終了時)の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%又はそれを超えるものが遺伝子改変されている。
【0391】
一実施形態によれば、単離されたNK細胞集団(即ち、ex vivo増殖後、例えば培養終了時)の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%又はそれを超えるものが少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現の上方制御を含む。
【0392】
一実施形態によれば、単離されたNK細胞集団(即ち、ex vivo増殖後、例えば培養終了時)の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%又はそれを超えるものが遺伝子改変されていると共に、少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現の上方制御も含む。
【0393】
本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、それ自体で又はそれが好適な担体若しくは賦形剤と混合されている医薬組成物で生物に投与することができる。
【0394】
本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」は、本明細書に記載される活性成分の1つ以上を生理学的に好適な担体及び賦形剤などの他の化学的成分と合わせた調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0395】
本明細書では、用語「活性成分」は、生物学的効果に関して説明のつく単離されたNK細胞集団を指す。
【0396】
以下では、交換可能に使用し得る語句「生理学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能な担体」は、生物にとって重大な刺激作用を引き起こさず、且つ投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。アジュバントは、これらの語句の下に含まれる。
【0397】
本明細書では、用語「賦形剤」は、活性成分の投与を更に容易にするため医薬組成物に加えられる不活性な物質を指す。賦形剤の例としては、限定なしに、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類及び各種のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコール類が挙げられる。
【0398】
薬物の製剤化及び投与技法については、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”, Mack Publishing Co., Easton, PA、最新版(これは、参照により本明細書に援用される)を参照し得る。
【0399】
好適な投与経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸内又は非経口送達であって、筋肉内、皮下及び髄内注射を含むもの並びに髄腔内、脳室内に直接、心臓内、例えば右室又は左室内腔内、共通冠動脈内、静脈内、腹腔内、鼻腔内又は眼内注射を挙げることができる。
【0400】
中枢神経系(CNS)への薬物送達の従来手法としては、神経外科的戦略(例えば、脳内注射又は脳室内注入);BBBの内因性輸送経路の1つを利用しようと試みる薬剤の分子操作(例えば、それ自体ではBBBを通過する能力のない薬剤と組み合わせた、内皮細胞表面分子に対して親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラ融合タンパク質の作製);薬剤の脂質溶解度を増加させるように設計される薬理学的戦略(例えば、脂質又はコレステロール担体との水溶性薬剤のコンジュゲーション);及び高浸透圧破壊によるBBB完全性の一過性の破壊(頸動脈へのマンニトール溶液の注入又はアンジオテンシンペプチドなど、生物学的に活性な薬剤の使用によって生じる)が挙げられる。しかしながら、これらの戦略の各々には、侵襲的外科手技に関連する固有のリスク、内因性輸送系に固有の制限によって課されるサイズ制限、CNSの外部で活性を示す可能性のある担体モチーフで構成されたキメラ分子の全身投与に関連する潜在的に望ましくない生物学的副作用及びBBBが破壊される脳の領域内で起こる可能性のある脳損傷のリスクなど、制限があるため、従って、そうした戦略は、準最適な送達方法となる。代わりに、医薬組成物の投与は、全身的な様式よりむしろ、例えば医薬組成物を患者の組織領域に直接注射することにより局所的に行われ得る。
【0401】
一実施形態によれば、投与経路としては、例えば、注射、摂取、輸注、植込み又は移植が挙げられる。本明細書に記載される組成物は、患者に対して、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射により又は腹腔内に投与され得る。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、患者に皮内又は皮下注射によって投与される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、好ましくはi.v.注射によって投与される。医薬組成物は、腫瘍、リンパ節又は感染部位に直接注射され得る。
【0402】
本発明の一部の実施形態の医薬組成物は、当技術分野で周知のプロセスにより、例えば従来の混合、溶解、造粒、糖衣形成、浮揚、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスを用いて製造され得る。
【0403】
このように、本発明の一部の実施形態における使用のための医薬組成物は、従来方式において、医薬品として使用できる調製物にするための活性成分の加工処理を容易にする賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を用いて製剤化され得る。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0404】
注射のために、医薬組成物の活性成分は、水溶液中、好ましくはハンクス液、リンゲル液又は生理緩衝食塩水など、生理的に適合性のある緩衝液中に製剤化され得る。経粘膜投与については、浸透させようとする関門に適切な浸透剤が製剤中に使用される。かかる浸透剤については、概して当技術分野で公知である。
【0405】
経口投与には、医薬組成物は、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることにより容易に製剤化され得る。かかる担体により、医薬組成物を錠剤、丸薬、糖衣剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして、患者による経口摂取のために製剤化することが可能となる。経口使用向けの薬理学的調製物は、固体賦形剤を使用して作ることができ、任意選択で得られた混合物を粉砕し、その顆粒の混合物を、必要に応じて好適な助剤を加えた後に加工処理すると、錠剤又は糖衣剤コアが得られる。好適な賦形剤は、詳細には、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖類などの充填剤;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど;及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容可能なポリマーである。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤が加えられ得る。
【0406】
糖衣剤コアには、好適なコーティングが提供される。このために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を任意選択で含有し得る糖濃縮液を使用し得る。錠剤又は糖衣剤コーティングには、識別のため又は活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために染料又は色素が加えられ得る。
【0407】
経口的に使用することのできる医薬組成物としては、ゼラチンで作られるプッシュフィットカプセル並びにゼラチンとグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤とで作られるソフトシールカプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤及び任意選択で安定剤と混合された活性成分を含有し得る。ソフトカプセルでは、活性成分は、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁され得る。加えて、安定剤が加えられ得る。経口投与のための製剤の全ては、選択された投与経路に好適な投薬量でなければならない。
【0408】
頬側投与には、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤又はロゼンジの形態を取り得る。
【0409】
経鼻吸入による投与では、本発明の一部の実施形態に係る使用のための活性成分は、好都合には、好適な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用した加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレー体裁の形態で送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬量単位は、定量を送達するように弁を提供することにより決定され得る。化合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との混合粉体が入った、例えばディスペンサーに用いるためのゼラチンのカプセル及びカートリッジが製剤化され得る。
【0410】
本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射又は持続注入による非経口投与のために製剤化され得る。
【0411】
注射のための製剤は、単位剤形において、例えばアンプルに提供されるか又は複数回用量用容器に任意選択で添加保存剤と共に提供され得る。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又はエマルションであり得、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合用薬剤を含有し得る。
【0412】
非経口投与のための医薬組成物としては、水溶性形態の活性調製物の水溶液が挙げられる。加えて、活性成分の懸濁液は、適切な油性又は水性の注射懸濁液として調製され得る。好適な脂溶性溶媒又は媒体としては、ゴマ油などの脂肪油又はオレイン酸エチル、トリグリセリド又はリポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。
【0413】
水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなど、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意選択で、懸濁液は、高濃縮溶液の調製を可能にするための好適な安定剤又は活性成分の溶解度を増加させる薬剤も含有し得る。
【0414】
代わりに、活性成分は、使用前に好適な媒体、例えば無菌のパイロジェンフリー水ベースの溶液と共に構成するための粉末形態であり得る。
【0415】
本発明の一部の実施形態の医薬組成物は、例えば、ココアバター又は他のグリセリド類など、従来の坐剤基剤を使用しても坐薬又は停留浣腸などの直腸組成物に製剤化され得る。
【0416】
本発明の一部の実施形態に関連した使用に好適な医薬組成物としては、意図される目的を実現するのに有効な量の活性成分が含まれる組成物が挙げられる。より具体的には、治療有効量とは、障害(例えば、悪性又は非悪性疾患)の症状を予防、軽減若しくは改善するのに有効であるか、又は治療下の対象の生存期間を延長するのに有効な活性成分(単離されたNK細胞集団)の量を意味する。
【0417】
治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0418】
「治療量」が指示されるとき、本発明の組成物の投与すべき正確な量は、医師が年齢、体重、疾患状態、例えば腫瘍サイズ、感染又は転移の程度及び患者(対象)の状態についての個人差を考慮して決定することができる。概して、本明細書に記載される細胞を含む医薬組成物は、体重1kg当たり25~500×10細胞、例えば体重1kg当たり25~400×10細胞、体重1kg当たり50~300×10細胞、例えば体重1kg当たり50~250×10細胞(これらの範囲内にある全ての整数値を含む)の投薬量で投与され得ると言うことができる。一実施形態によれば、本明細書に記載される細胞は、体重1kg当たり約25×10細胞、体重1kg当たり約50×10細胞、体重1kg当たり約75×10細胞、体重1kg当たり約100×10細胞、体重1kg当たり約150×10細胞、体重1kg当たり約200×10細胞、体重1kg当たり約250×10細胞又は体重1kg当たり約300×10細胞の投薬量で投与され得る。
【0419】
本発明の一部の実施形態のNK細胞組成物は、これらの投薬量で複数回投与することもできる。NK細胞は、免疫療法において一般に公知の注入技法を用いることにより投与し得る(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照されたい)。特定の患者についての最適な投薬量及び治療レジームは、医薬分野の当業者が患者を疾患の徴候に関してモニタし、それに応じて治療を調整することにより容易に決定することができる。
【0420】
例えば、活性成分(例えば、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団)が病変に及ぼす効果は、治療した対象の生体試料中の細胞マーカー、ホルモン、グルコース、ペプチド、炭水化物、サイトカイン等のレベルを周知の方法(例えば、ELISA、FACS等)を用いてモニタすることによるか、又は腫瘍サイズを周知の方法(例えば、超音波、CT、MRI等)を用いてモニタすることにより評価し得る。
【0421】
本発明の方法で用いられる任意の調製物について、治療有効量又は用量は、初めにin vitro及び細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、ある用量を動物モデルにおいて所望の濃度又は力価が実現するように処方することができる。かかる情報を用いることにより、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。
【0422】
本明細書に記載される活性成分の毒性及び治療有効性は、in vitro、細胞培養又は実験動物での標準的な薬学的手順により決定することができる。これらのin vitro及び細胞培養アッセイ及び動物試験から入手されるデータを、ヒトにおける使用のための様々な投薬量の製剤化に使用することができる。
【0423】
投薬量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて異なり得る。正確な製剤、投与経路及び投薬量は、個々の医師が患者の状態に鑑みて選択することができる(例えば、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch. 1 p.1内のFingl, et al., 1975を参照されたい)。
【0424】
投薬量及び間隔は、生物学的効果を誘導又は抑制するのに十分なレベル(最小有効濃度、MEC)の活性成分が提供されるように個別に調整され得る。MECは、調製物毎に異なることになるが、in vitroデータから推定することができる。MECを実現するのに必要な投薬量は、個々の特性及び投与経路に依存することになる。検出アッセイを用いて血漿濃度を決定することができる。
【0425】
治療しようとする病態の重症度及び反応性に応じて、用量投与は、単回又は複数回の投与であり得、治療コースは、数日~数週間続くか、又は治癒が生じるまで若しくは疾患状態の減退が実現するまで続く。一実施形態によれば、用量投与は、1日に1、2、3回又はそれを超える投与であり得る。用量投与は、連日行われ得るか、又は数日若しくは数週間間隔のうちに行われ得る。かかる決定は、医薬分野の当業者が容易に決定することができる。
【0426】
組成物の投与すべき量は、当然のことながら、治療下の対象、病気の重症度、投与様式、処方医師の判断等に依存することになる。
【0427】
本発明の一部の実施形態によれば、本発明の治療用薬剤は、その病変の治療のために設計された1つ又は複数の他の薬物と併せて[即ち組み合わせ療法、例えば単離されたNK細胞集団の投与前、その投与と同時又はその投与後に]対象に提供され得る。
【0428】
本発明の一実施形態によれば、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、化学療法、放射線療法、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸塩及びFK506)、抗体又は当技術分野で公知の他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0429】
特定の実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、限定されないが、抗ウイルス剤(例えば、ガンシクロビル、バラシクロビル、アシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドホビル、マリバビル、レフルノミド)、化学療法剤(例えば、抗新生物剤、限定されないが、アルキル化剤であって、シクロホスファミド、ブスルファン、メクロレタミン又はムスチン(HN2)、ウラムスチン又はウラシルマスタード、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、ベンダムスチン、ニトロソウレア系カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、チオテパ、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、四硝酸トリプラチン、プロカルバジン、アルトレタミン、トリアゼン系(ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミド)、ダカルバジン、テモゾロミド、ミレラン(Myleran)、ブスルフェクス(Busulfex)、フルダラビン、ジメチルミレラン又はシタラビンを含むものなど)又は治療用モノクローナル抗体(例えば、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、ネシツムマブ(Portrazza(登録商標))、ジヌツキシマブ(Unituxin(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))、オララツマブ(Lartruvo(登録商標))、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、Ado-トラスツズマブエムタンシン(Kadcycla(登録商標))融合体、デノスマブ(Xgeva(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ブリナツモマブ(Blincyto(登録商標))、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris(登録商標))、カプロマブペンデチド(ProstaScint(登録商標))、ダラツムマブ(Darzalex(登録商標))、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、エロツズマブ(Empliciti(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))、オビヌツズマブ(Gazyva(登録商標))、オファツムマブ(Arzerra(登録商標))、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、リツキシマブ-ヒアルロニダーゼ(Rituxan Hycela(登録商標))、イノツズマブオゾガマイシン(Bexxar(登録商標))、ベバシズマブ-awwb(Mvasi(登録商標))、トラスツズマブdkst(Ogivri(登録商標))又はトシツモマブ(Bexxar(登録商標)))などの薬剤による治療を含む、あらゆる関連性のある治療モダリティと併せて患者に投与される。
【0430】
具体的な実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、ダラツムマブ(DARA)と併せて患者に投与される。
【0431】
具体的な実施形態では、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、リツキシマブと併せて患者に投与される。
【0432】
本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団は、化学療法剤、放射線療法、抗体療法、手術、光線療法等と併せて患者に投与され得ることが理解されるであろう。
【0433】
組み合わせ療法によれば、治療される対象における本発明の薬剤の治療効果が増加し得る。
【0434】
本発明の一部の実施形態の組成物は、必要に応じて、FDA承認済みのキットなど、パック又はディスペンサーの体裁であり得、これは、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を収容しているものであり得る。パックは、例えば、金属箔又はブリスターパックなどのプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサーには、投与に関する説明書が付属し得る。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する行政機関が定める形式の容器に関連付けられた通知も付属し得、この通知は、組成物の形態又はヒト若しくは動物への投与が機関によって承認されている旨を反映するものである。かかる通知は、例えば、米国食品医薬品局によって承認された処方薬についての表示又は承認済みの製品添付文書であり得る。適合性のある医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物は、上記に更に詳述しているとおり、適応される病態の治療に合わせて調製し、適切な容器に入れ、且つ表示が付すこともできる。
【0435】
キットは、例えば、金属箔又はブリスターパックなどのプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサーには、投与に関する説明書が付属し得る。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する行政機関が定める形式の容器に関連付けられた通知も付属し得、この通知は、組成物の形態又はヒト若しくは動物への投与が機関によって承認されている旨を反映するものである。かかる通知は、例えば、米国食品医薬品局によって承認された処方薬についての表示又は承認済みの製品添付文書の通知であり得る。適合性のある医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物は、上記に更に詳述されているとおり、調製し、適切な容器に入れ、且つ適応される病態の治療に関する表示が付すこともできる。
【0436】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、疾患の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団を投与し、それにより対象を治療することを含む方法が提供される。
【0437】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、疾患の治療を、それを必要としている対象において行うのに使用するための、治療有効量の本発明の一部の実施形態の単離されたNK細胞集団が提供される。
【0438】
用語「治療すること」は、病変(疾患、障害又は病態)の発症を阻害、予防若しくは止めること及び/又は病変の低減、寛解若しくは退縮を生じさせることを指す。当業者は、様々な方法論及びアッセイを用いて病変の発症を判定し得ること及び同様に様々な方法論及びアッセイを用いて病変の低減、寛解又は退縮を判定し得ることを理解するであろう。
【0439】
本明細書で使用されるとき、用語「対象」又は「それを必要としている対象」は、NK細胞で治療し得る疾患に罹患している任意の年齢又は性別の哺乳類、好ましくはヒトの男性又は女性を指す。
【0440】
このように、本発明の方法は、限定されないが、悪性疾患(例えば、癌)及び感染症(例えば、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、原虫感染症又は寄生虫感染症)など、任意の疾患の治療に適用し得る。
【0441】
一実施形態によれば、対象は、悪性疾患を有する。
【0442】
癌性疾患
本発明の一部の実施形態の方法によって治療することのできる悪性疾患(癌とも称される)は、任意の固形又は非固形腫瘍及び/又は腫瘍転移であり得る。
【0443】
癌の例としては、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が挙げられる。かかる癌のより詳細な例としては、扁平上皮癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、黒色腫、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)又は胃癌(stomach cancer)(消化管癌を含む)、膵癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、例えば子宮内癌腫、カルチノイド癌腫、唾液腺癌、腎臓癌又は腎癌、肝癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、中皮腫、骨髄腫、例えば多発性骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、神経芽細胞腫、食道癌、滑膜細胞癌、神経膠腫及び各種頭頸部癌(例えば、脳腫瘍)が挙げられる。本発明の治療に適している癌性病態としては、転移性癌が挙げられる。
【0444】
一実施形態によれば、悪性疾患は、血液学的悪性腫瘍である。例示的な血液学的悪性腫瘍としては、限定されないが、白血病[例えば、急性リンパ性、急性リンパ芽球性、急性リンパ芽球性プレB細胞、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性巨核芽球性、単球性、急性骨髄性、急性骨髄、好酸球増加症を伴う急性骨髄、B細胞、好塩基性、慢性骨髄、慢性、B細胞、好酸球性、フレンド、顆粒球性又は骨髄球性、ヘアリー細胞、リンパ球性、巨核芽球、単球性、単球性マクロファージ、骨髄芽球性、骨髄、骨髄単球性、形質細胞、プレB細胞、前骨髄球性、亜急性、T細胞、リンパ系新生物、骨髄性悪性腫瘍に対する素因、急性非リンパ球性白血病、T細胞急性リンパ球性白血病(T-ALL)及びB細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)]及びリンパ腫[例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキット、皮膚T細胞、組織球性、リンパ芽球性、T細胞、胸腺性、B細胞であって、低悪性度/濾胞性を含むもの;小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症]が挙げられる。
【0445】
本発明の一部の実施形態によれば、病変は、固形腫瘍である。本発明の一部の実施形態によれば、病変は、腫瘍転移である。
【0446】
本発明の一部の実施形態によれば、病変は、血液学的悪性腫瘍である。
【0447】
具体的な実施形態によれば、悪性疾患は、白血病又はリンパ腫である。
【0448】
具体的な実施形態によれば、悪性疾患は、多発性骨髄腫である。
【0449】
感染症
感染症の例としては、限定されないが、慢性感染症、亜急性感染症、急性感染症、ウイルス性疾患、細菌性疾患、原虫性疾患、寄生虫性疾患、真菌性疾患、マイコプラズマ病及びプリオン病が挙げられる。
【0450】
本発明の教示により治療可能な感染症を引き起こす特定のタイプのウイルス性病原体としては、限定されないが、レトロウイルス、サーコウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、イリドウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、ピコルナウイルス、カリシウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス及びフィロウイルスが挙げられる。
【0451】
本発明の教示により治療し得るウイルス感染症の具体的な例としては、限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)誘発性後天性免疫不全症候群(AIDS)、インフルエンザ、ライノウイルス感染症、ウイルス性髄膜炎、エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染症、A型、B型又はC型肝炎ウイルス感染症、麻疹、パピローマウイルス感染症/疣贅、サイトメガロウイルス(CMV)感染症、COVID-19感染症、単純ヘルペスウイルス感染症、黄熱、エボラウイルス感染症、狂犬病、アデノウイルス(Adv)、感冒ウイルス、風邪ウイルス、日本脳炎、ポリオ、呼吸器合胞体、風疹、天然痘、水痘帯状疱疹、ロタウイルス、ウエストナイルウイルス及びジカウイルスによって引き起こされるものが挙げられる。
【0452】
具体的な実施形態によれば、ウイルス性疾患は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、BKウイルス、アデノウイルス(Adv)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザ、サイトメガロウイルス(CMV)、T細胞白血病ウイルス1型(TAX)、C型肝炎ウイルス(HCV)又はB型肝炎ウイルス(HBV)からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0453】
本発明の教示により治療し得る細菌感染症の具体的な例としては、限定されないが、炭疽;グラム陰性桿菌、クラミジア、ジフテリア、ヘモフィルスインフルエンザ、ピロリ菌、マラリア、マイコバクテリア結核、百日咳毒素、肺炎球菌、リケッチア、ブドウ球菌、レンサ球菌及び破傷風によって引き起こされるものが挙げられる。
【0454】
本発明の教示により治療し得るスーパーバグ感染症(例えば、多剤耐性菌)の具体的な例としては、限定されないが、Enterococcus faecium、Clostridium difficile、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosa及びEnterobacteriaceae(Escherichia coli、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter spp.を含む)によって引き起こされるものが挙げられる。
【0455】
本発明の教示により治療し得る真菌感染症の具体的な例としては、限定されないが、カンジダ、コクシジオイデス、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、リーシュマニア、変形体、原虫、寄生虫、住血吸虫、白癬、トキソプラズマ及びクルーズトリパノソーマによって引き起こされるものが挙げられる。
【0456】
NK細胞療法による臨床経験から、移植片対宿主病(GVHD)の発生率を低く抑えつつ、宿主に同種異系NK細胞を生着させることに成功し得ることが示されている。移植候補(例えば、「対象」)のアイデンティティが既知のとき、HLA一致度(適合性)などのパラメータを決定することができ、それが選択基準としての役割を果たし得る。一実施形態によれば、NK細胞は、HLAハプロタイプ一致ドナー又はHLA不一致ドナーから選択される。NK細胞ドナーは血縁者ドナー又は非血縁者ドナーであり得る。一実施形態によれば、NK細胞は、同系ドナーから入手される。
【0457】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、±10%を指す。
【0458】
用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有している」及びこれらの活用形は、「含むが、限定されない」を意味する。
【0459】
用語「からなる」は、「含み、且つ限定される」を意味する。
【0460】
用語「から本質的になる」は、組成物、方法又は構造が追加の成分、ステップ及び/又はパートを含み得るが、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的な新規の特徴がその追加の成分、ステップ及び/又はパートによって実質的に変化しない場合に限られることを意味する。
【0461】
本明細書で使用されるとき、単数形「ある(a)」、「ある(an)」及び「その」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形への言及を含む。例えば、用語「ある化合物」又は「少なくとも1つの化合物」には、それらの混合物を含めて複数の化合物が含まれ得る。
【0462】
本願全体を通して、本発明の様々な実施形態が範囲の形式で提供されることもある。範囲の形式での記載は、単に便宜上のものであり、簡潔にするために過ぎず、本発明の範囲に関する柔軟性のない限定と解釈されてはならないことが理解されなければならない。従って、範囲の記載は、あらゆる可能な部分的範囲及びその範囲内にある個別の数値を具体的に開示したものと見なされなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等などの部分的範囲並びにその範囲内にある個別の数字、例えば1、2、3、4、5及び6を具体的に開示したものと見なされなければならない。これは、範囲の大きさにかかわらず適用される。
【0463】
本明細書で数値の範囲が指示される場合には常に、その指示される範囲内にある引用されるあらゆる数(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の指示される数と第2の指示される数との「間の範囲に及んでいる/範囲に及ぶ」及び第1の指示される数「から」第2の指示される数「までの範囲に及んでいる/範囲に及ぶ」という語句は、本明細書では同義的に使用され、第1及び第2の指示される数並びにそれらの間にある全ての分数及び整数を含むことが意味される。
【0464】
本明細書で使用されるとき、用語「方法」は、限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学分野の当業者に公知であるか、又はそうした当業者によって公知の様式、手段、技法及び手順から容易に開発されるかのいずれかである様式、手段、技法及び手順を含むが、これらに限定されない、所与の課題を完遂するための様式、手段、技法及び手順を指す。
【0465】
本明細書で使用されるとき、用語「治療すること」には、病態の進行を無効にすること、実質的に阻害すること、減速若しくは逆転させること、病態の臨床的若しくは審美的症状を実質的に改善すること又は病態の臨床的若しくは審美的症状の出現を実質的に予防することが含まれる。
【0466】
明確にするため、別々の実施形態に関連して記載される本発明のある種の特徴が単一の実施形態に組み合わせても提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするため、単一の実施形態に関連して記載される本発明の様々な特徴は、別々に、又は任意の好適な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載される実施形態でも好適なものとして提供され得る。様々な実施形態に関連して記載されるある種の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が実施不能となるのでない限り、それらの実施形態の必須の特徴と見なされるべきではない。
【0467】
以上に輪郭を示し、且つ以下の特許請求の範囲の節に主張するとおりの本発明の様々な実施形態及び態様については、以下の例に実験的なサポートが見出される。
【実施例
【0468】
ここで、以下の例を参照することになるが、これらの例は、上記の説明と併せて、本発明を非限定的な形式で例示するものである。
【0469】
概して、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用される実験室手順には、分子的、生化学的、微生物学的及び組換えDNA技法が含まれる。かかる技法については、文献内で十分に説明されている。例えば、“Molecular Cloning: A laboratory Manual”Sambrook et al., (1989);“Current Protocols in Molecular Biology”Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994);Ausubel et al.,“Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989);Perbal,“A Practical Guide to Molecular Cloning”, John Wiley & Sons, New York (1988);Watson et al.,“Recombinant DNA”, Scientific American Books, New York;Birren et al. (eds)“Genome Analysis: A Laboratory Manual Series”, Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998);米国特許第4,666,828号明細書;同第4,683,202号明細書;同第4,801,531号明細書;同第5,192,659号明細書及び同第5,272,057号明細書に示される方法論;“Cell Biology: A Laboratory Handbook”, Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994);“Current Protocols in Immunology”Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994);Stites et al. (eds),“Basic and Clinical Immunology”(8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994);Mishell and Shiigi (eds),“Selected Methods in Cellular Immunology”, W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照されたく;利用可能なイムノアッセイについては、特許及び科学文献に広範に記載されており、例えば米国特許第3,791,932号明細書;同第3,839,153号明細書;同第3,850,752号明細書;同第3,850,578号明細書;同第3,853,987号明細書;同第3,867,517号明細書;同第3,879,262号明細書;同第3,901,654号明細書;同第3,935,074号明細書;同第3,984,533号明細書;同第3,996,345号明細書;同第4,034,074号明細書;同第4,098,876号明細書;同第4,879,219号明細書;同第5,011,771号明細書及び同第5,281,521号明細書;“Oligonucleotide Synthesis”Gait, M. J., ed. (1984);“Nucleic Acid Hybridization”Hames, B. D., and Higgins S. J., I eds. (1985);“Transcription and Translation”Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984);“Animal Cell Culture”Freshney, R. I., ed. (1986);“Immobilized Cells and Enzymes”IRL Press, (1986);“A Practical Guide to Molecular Cloning”Perbal, B., (1984)及び“Methods in Enzymology”Vol. 1-317, Academic Press;“PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications”, Academic Press, San Diego, CA (1990);Marshak et al.,“Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual”CSHL Press (1996)を参照されたく、これらは、全て本明細書に完全に示されたものとして参照により援用される。他にも一般的な参考文献が本明細書全体を通して提供される。それらの中にある手順は、当技術分野で周知であると考えられ、読者の利便性を考えて提供される。それらの中に含まれる情報は、全て参照により本明細書に援用される。
【0470】
一般的材料及び実験手順
T細胞をフィーダー細胞とするex vivo培養
0日目、健常ドナーからアフェレーシスによって血液細胞を収集した。ACK緩衝液(アイルランド国、ダブリン、Gibco社)で洗浄することにより、赤血球(RBC)を溶解させた。CliniMACS及びCD3試薬(独国、Miltenyi Biotec社)を製造者の指示に従って使用してCD3+細胞を枯渇させた。
【0471】
CD3枯渇細胞を20%HSA含有CliniMACS緩衝液により洗浄し、完全MEMα培地に再懸濁した。
【0472】
0.05mg/mlのゲンタマイシン(Braun社)、2mMのL-グルタミン(HyClone社)を含有する、10%のヒトAB血清(Gemini社)、7mMのニコチンアミド(Vertillus社)及び20ng/mlのIL-15(Miltenyi社)を更に補足したMEMα培地に細胞を播種した。
【0473】
400mlのMEMα培地が入った、1:1の比のフィーダー細胞としての照射CD3+細胞(即ち40Gy、130KV、5mAで照射した)及び10ng/mlのOKT-3(Miltenyi社)を更に含むGREX100MCS細胞培養フラスコ(Wilson Wolf社)に0.35×l0細胞/mlのCD3枯渇細胞を播種した。5% CO、37℃の加湿インキュベーターで細胞をインキュベートした。
【0474】
6~9日目、各G-REX100MCS培養フラスコに、2倍の容積になるように400mLのMEM~培地を加えた。
【0475】
12~14日目、細胞をカウントし、以下に記載するとおりの、キメラ抗原受容体(CAR)、IL-15等、目的とする膜結合タンパク質の一過性発現のためのmRNAエレクトロポレーションのために調製した。エレクトロポレーション後、上記に記載したとおりのヒト血清濃縮MEMα培地が入った24ウェルプレートに細胞を移し替えた。24~48時間にわたって細胞を回収し、次に分析した。
(任意選択で、培養の開始から24~72時間で、以下に記載するとおりの遺伝子発現のノックアウトのためのエレクトロポレーションのためにCD3枯渇細胞を更に調製する。エレクトロポレーション後、上記で考察したとおり、GREX100MCS細胞培養フラスコにCD3枯渇細胞を12~14日間の培養期間にわたって播種する)。
【0476】
PBMCをフィーダー細胞とするex vivo培養
0日目、健常ドナーからアフェレーシスによって血液細胞を収集した。ACK緩衝液(アイルランド国、ダブリン、Gibco社)で洗浄することにより、赤血球(RBC)を溶解させた。CD56マイクロビーズ及びLSカラムを使用して、製造者の指示のとおりに(Miltenyi Biotec社;それぞれカタログ番号130-050-401及びカタログ番号130-042-401)、CD56+細胞をポジティブ選択した。代わりに、CD56+細胞は、マイクロビーズ(Miltenyi社(の混合物を使用してネガティブ選択により選択する。
【0477】
CD56+細胞を20%のHSA含有CliniMACS緩衝液により洗浄し、10%のヒト血清及び50ng/mlのIL-2を補足した培地に再懸濁し、フラスコに2×10細胞/mlの濃度で播種した。
【0478】
24~72時間後、細胞を回収し、カウントし、CEDEX計数機及びフローサイトメトリー生死判別色素を使用して生存能力に関して試験し、以下に記載するとおりの遺伝子発現のノックアウトのためのエレクトロポレーションのために調製した。
【0479】
エレクトロポレーション後、0.05mg/mlのゲンタマイシン(Braun社)、2mMのL-グルタミン(HyClone社)を含有する、10%のヒトAB血清(Gemini社)、7mMのニコチンアミド(Vertillus社)及び20ng/mlのIL-15(Miltenyi社)を更に補足したMEMI培地に細胞を播種した。
【0480】
16mlのMEMα培地が入った、フィーダー細胞としての1:1の比の照射末梢血単核球(PBMC)(新鮮又は解凍)(即ち40Gy、130KV、5mAで照射した)及び10ng/mlのOKT-3(Miltenyi社)を更に含む6ウェルGrex培養フラスコ(Wilson Wolf社)に4×l0細胞/mlのCD56+細胞を播種した。5% CO、37℃の加湿インキュベーターで細胞をインキュベートした。
【0481】
6~9日目、各6ウェルGrex培養フラスコに、2倍の容積になるように16mLのMEMα培地を加えた。
【0482】
14~16日目に細胞をカウントし、分析した。
【0483】
任意選択で、12~14日目に以下に記載するとおりの目的とする膜結合タンパク質(例えば、CAR、IL-15等)の一過性発現のためのmRNAエレクトロポレーションのために細胞を更に調製した。エレクトロポレーション後、上記に記載したとおりのヒト血清濃縮MEMα培地が入った24ウェルプレートに細胞を移し替える。24~48時間にわたって細胞を回収し、次に分析する)。
【0484】
一過性タンパク質発現のためのmRNAエレクトロポレーション
培養12~14日目に細胞をカウントし、PBS×1で洗浄し、次に冷Opti-MEM(商標)(Gibco(商標)社)で再び洗浄した。
【0485】
mRNAエレクトロポレーションには、2×10~4×10細胞及び10~30μgのmRNAを100μlの最終容積で使用した。エレクトロポレーションは、2mm冷キュベットにおいて400μlの最大容積で(上記の量ずつスケールアップする)、BTX-Gemini Twin Waveエレクトロポレーターをキャリブレーション済みのプログラム(電圧300、持続時間1msc、1方形波パルス)で使用して実施した。
【0486】
【表1】
【0487】
エレクトロポレーション後、上記に記載したとおりのヒト血清濃縮MEME培地が入った12ウェルプレートに細胞を移し替えた。24時間にわたって細胞を回収し、次に分析した。
【0488】
遺伝子ノックアウト
gRNAに関するスクリーニング
各ガイドRNAのDNA配列をCRISPR発現プラスミドにクローニングし、Hek293細胞株でゲノム編集実験を実施した。最も高活性のgRNA(以下の表2、IIIを参照されたい)を以降の実験のために選択した。編集効率を評価するため、操作した遺伝子座を好適なプライマー(以下の表3を参照されたい)でPCR増幅し、サンガーシーケンシングによってシーケンシングした。インデル編集率EをTIDEによって分析した。
【0489】
【表2】
【0490】
【表3】
【0491】
RNP複合体調製
化学的に修飾されたsgRNAオリゴマーをIntegrated DNA Technologies(IDT社;米国、アイオワ州、コーラルビル)により合成した。エレクトロポレーション反応の度に毎回、416pmolのAlt-R Cas9タンパク質(米国、アイオワ州、コーラルビル、IDT社)をAlt-R sgRNA(反応1回につき1040pmol)と1:2.5のモル比でPBS溶液(20μl総容積)中に複合体化した。室温で10~20分間複合体を形成させておいてから、エレクトロポレーションを行った。
【0492】
NK細胞におけるRNPエレクトロポレーションによるゲノム編集
24~72時間培養した時点でCD56+ NK細胞をカウントし、PBS×1で洗浄し、次にOpti-MEM(商標)(Gibco(商標)社)に再懸濁した。各反応につき80μlのOpti-MEM(商標)に2×10~4×10細胞を使用し、RNP複合体と4μMの終濃度で混合した。次に、細胞に4μl(100μM)Alt-Rエンハンサー(米国、アイオワ州、コーラルビル、IDT社)を補給した。補給した細胞溶液をBTX-Gemini Twin Waveエレクトロポレーターに移し替え、キャリブレーション済みのプログラム(電圧300、持続時間2msc)を使用してエレクトロポレートした。
【0493】
エレクトロポレーション後、細胞をGREX培養装置に移し替え、12~14日間培養した(上記で考察したとおり)。培養終了時、細胞を回収し、分析した。加えて、同じ時点でゲノムDNAをQuickExtract(米国、ウィスコンシン州、ミドルトン、Lucigen社)により抽出した。編集効率を評価するため、操作した遺伝子座を好適なプライマー(表2)でPCR増幅し、サンガーシーケンシングによってシーケンシングした。インデル編集率をTIDEによって分析した。
【0494】
FACS分析
FACS分析のため、細胞を以下の蛍光抗体で染色した。
【0495】
【表4】
【0496】
サンドイッチフローサイトメトリー技法
NK細胞上のCAR発現の決定には、この方法を用いた。用語「サンドイッチ」は、以下の順番に従う方法で使用した:一番下-CARを発現するNK細胞、中央-CARが結合するタンパク質、及び一番上-タンパク質上のエピトープとのABコンジュゲート。
【0497】
例えば、NK細胞表面上の抗Her2 CAR発現を検出するために、NK細胞を1μgのHer2可溶性タンパク質と30分間培養し、洗浄し、次に抗Her2 APC抗体を加え、細胞と共に15分間培養した。
【0498】
効力アッセイ(炎症誘発性サイトカイン及びCD107a脱顆粒マーカーの細胞内染色)
効力アッセイは、細胞内及び表面の両方で発現する様々な活性化マーカーの発現を分析する。選択したマーカーは、直接的な細胞傷害性と、NK細胞の抗腫瘍活性を促進する能力を有する炎症誘発性サイトカインの分泌との両方の指標であった。
【0499】
NK細胞がその標的を殺傷する機構の1つは、溶解性顆粒からの細胞傷害性分子の放出を通したものである。この過程には、顆粒膜とNK細胞の細胞膜の融合が関わり、結果として、CD107aなど、典型的には溶解性顆粒を取り囲む脂質二重層上に存在するリソソーム関連タンパク質が表面に露出することになる。従って、CD107aの膜発現は、免疫細胞活性化及び細胞傷害性脱顆粒のマーカーを構成する。NK細胞プロセスの別の殺傷機構は、死受容体誘発性標的細胞アポトーシスを通したものである。活性化NK細胞は、IFN-γ及びTNFα、GM-CSF及びその他の多数の多様なサイトカインを分泌する。IFN-γは、NK細胞が分泌するエフェクターサイトカインの中でも極めて強力な1つであり、抗腫瘍活性において決定的な役割を果たす。IFN-γは、カスパーゼ、FasL及びTRAIL発現を調節し、抗腫瘍免疫を活性化することが示されている。そのため、NK細胞の効力は、CD107a、TNFα及びIFN-γの発現に基づき評価した。
【0500】
1×10個のNK細胞を0.5×10個の標的細胞(K562、RAJI)+/-RTX(0.5μg/ml)と共培養し、FACS管内にある総容積1mlのNK培地(MEMα+10%AB型血清)中に2μlのCD107a抗体を加えた。対照は、以下のとおり調製した;陽性対照:NK細胞+5μlのPMA(50ng/ml)+1μlのイオノマイシン(1μg/ml)、陰性対照:NK細胞(標的なし)及びサイズ対照:NK、K562、RAJI、NK+K562、NK+RAJI。細胞を300rpmで30秒間遠心し、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、各管にBFA及びモネンシン/GolgiStop(5μg/ml終濃度のBFA、4μlのGS)を加えた。細胞を300rpmで30秒間遠心し、37℃で3.5時間インキュベートした後、Zombie生死判別色素を加えて洗浄した。
【0501】
細胞は、初めに細胞表面マーカーに関して以下のとおり染色した:1.5μlの外膜抗体(CD56、CD16)を加え、暗所下2~8℃で10分間インキュベートし、洗浄した。この時点で細胞内染色のために内部染色キット(Miltenyi社、カタログ番号130-090-4777)を使用して加えた。細胞を固定して透過処理し、遠心後に細胞内mAbを加え(IFN-γ及びTNF-E)、細胞を室温で暗所下に15分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、分析した。
【0502】
【表5】
【0503】
細胞傷害性アッセイ/殺傷アッセイ(IncuCyte)
NK活性に関するリアルタイムデータの収集が可能なライブセルイメージングシステムIncuCyte S3を用いて細胞傷害殺傷アッセイを実施した。腫瘍標的細胞をCFSE色素(Life Technologies)で標識し、培地中、NK細胞と共にPI(ヨウ化プロピジウム、Sigma社)の存在下で20時間共培養した。生細胞は、染色されないままであった一方、死細胞は、CFSE蛍光染色とPIが重なることによって検出された。
【0504】
例示的実施形態
実施形態1.遺伝子改変されたナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団中の目的とする遺伝子の発現を下方制御して、目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を入手することと、
(b)目的とする遺伝子を下方制御するように遺伝子改変されたNK細胞集団を増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手することと、
(c)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御し、それにより遺伝子改変されたNK細胞を作製することと
を含む方法。
【0505】
実施形態2.少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するナチュラルキラー(NK)細胞をex vivoで作製する方法であって、
(a)NK細胞集団を、
(i)細胞増殖を可能にする条件下でNK細胞集団を培養するステップであって、条件が、有効量の栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを提供することを含むステップと、
(ii)ステップ(i)の5~10日後に、NK細胞集団に有効量の新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給して、増殖させたNK細胞を作製するステップと
を含む方法によって増殖させて、ex vivoで増殖させたNK細胞集団を入手すること、及び
(b)ex vivoで増殖させたNK細胞集団中の少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現を上方制御し、それにより少なくとも1つの膜結合タンパク質を発現するNK細胞を作製すること
を含む方法。
【0506】
実施形態3.NK細胞集団が臍帯血、末梢血、骨髄、CD34+細胞又はiPSCに由来する、実施形態1又は2に記載の方法。
【0507】
実施形態4.NK細胞集団がCD3細胞を除かれている、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0508】
実施形態5.NK細胞集団がCD3CD56細胞を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0509】
実施形態6.下方制御が遺伝子編集システムによって生じる、実施形態1又は3~5のいずれか1つに記載の方法。
【0510】
実施形態7.NK細胞が培養物中にある、実施形態1又は3~6のいずれか1つに記載の方法。
【0511】
実施形態8.下方制御が培養の開始から24~72時間で生じる、実施形態7に記載の方法。
【0512】
実施形態9.目的とする遺伝子が、NK細胞の増殖及び/又は生存に影響する遺伝子産物を生じる遺伝子を含む、実施形態1又は3~8のいずれか1つに記載の方法。
【0513】
実施形態10.目的とする遺伝子が、CISH、TGFβ受容体及びCD38からなる群から選択される、実施形態1又は3~9のいずれか1つに記載の方法。
【0514】
実施形態11.NK細胞集団の増殖が、細胞増殖を可能にする条件下でもたらされ、条件が有効量の栄養素、血清、成長因子及びニコチンアミドを含む、実施形態1又は3~10のいずれか1つに記載の方法。
【0515】
実施形態12.成長因子が、IL-15、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、SCF及びFLT3からなる群から選択される少なくとも1つの成長因子を含む、実施形態11に記載の方法。
【0516】
実施形態13.ニコチンアミドの有効量が1.0mM~10mMの量を含む、実施形態2~12のいずれか1つに記載の方法。
【0517】
実施形態14.NK細胞集団の増殖がフィーダー細胞又はフィーダー層の存在下で生じる、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0518】
実施形態15.フィーダー細胞が照射細胞を含む、実施形態14に記載の方法。
【0519】
実施形態16.フィーダー細胞がT細胞又はPBMCを含む、実施形態14又は15に記載の方法。
【0520】
実施形態17.CD3アゴニストを更に含む、実施形態16に記載の方法。
【0521】
実施形態18.NK細胞集団の増殖が14~16日間にわたって生じる、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0522】
実施形態19.少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現の上方制御が培養の開始から12~14日目に生じる、実施形態7~18のいずれか1つに記載の方法。
【0523】
実施形態20.少なくとも1つの膜結合タンパク質の発現の上方制御をmRNAエレクトロポレーションによって実施する、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0524】
実施形態21.少なくとも1つの膜結合タンパク質が一過性に発現する、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0525】
実施形態22.少なくとも1つの膜結合タンパク質が、in vivoでNK細胞の抗疾患機能又は生存に影響するタンパク質を含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0526】
実施形態23.少なくとも1つの膜結合タンパク質が、IL-15、IL-15R、受容体リンカーIL-15(RLI)及びTLRからなる群から選択される、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0527】
実施形態24.少なくとも1つの膜結合タンパク質がキメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(tg-TCR)を含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0528】
実施形態25.CARが少なくとも1つの共刺激ドメインを含む、実施形態24に記載の方法。
【0529】
実施形態26.少なくとも1つの共刺激ドメインが、CD28、2B4、CD137/4-1BB、CD134/OX40、Lsk、ICOS及びDAP10からなる群から選択される、実施形態25に記載の方法。
【0530】
実施形態27.CARが少なくとも1つの活性化型ドメインを含む、実施形態24~26のいずれか1つに記載の方法。
【0531】
実施形態28.活性化型ドメインがCD3ζ又はFcR-γを含む、実施形態27に記載の方法。
【0532】
実施形態29.CARが膜貫通ドメイン及びヒンジドメインの少なくとも1つを含む、実施形態24~28のいずれか1つに記載の方法。
【0533】
実施形態30.膜貫通ドメインがCD8、CD28及びNKG2Dから選択される、実施形態29に記載の方法。
【0534】
実施形態31.ヒンジドメインがCD8及びCD28から選択される、実施形態29又は30に記載の方法。
【0535】
実施形態32.CARが、抗体又は抗原結合断片である抗原結合ドメインを含む、実施形態24~31のいずれか1つに記載の方法。
【0536】
実施形態33.抗原結合断片がFab又はscFvである、実施形態32に記載の方法。
【0537】
実施形態34.CAR又はtg-TCRが、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原虫抗原及び寄生虫抗原からなる群から選択される抗原に対して抗原特異性を有する、実施形態24~33のいずれか1つに記載の方法。
【0538】
実施形態35.腫瘍抗原が固形腫瘍に関連する、実施形態34に記載の方法。
【0539】
実施形態36.腫瘍抗原が血液学的悪性腫瘍に関連する、実施形態34に記載の方法。
【0540】
実施形態37.CAR又はtg-TCRが、HER2/Neu、CD38、CD19、CD319/CS1、ROR1、CD20、CD5、CD7、CD22、CD70、CD30、BCMA、CD25、NKG2Dリガンド、MICA/MICB、癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、上皮性腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、変異型p53、変異型ras、ERBB2、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、κ鎖、λ鎖、CSPG4、ERBB2、WT-1、EGFRvIII、TRAIL/DR4及び/又はVEGFR2からなる群から選択される抗原に対して抗原特異性を有する、実施形態34~36のいずれか1つに記載の方法。
【0541】
実施形態38.少なくとも1つの膜結合タンパク質が、
(i)CAR又はtg-TCR、及び
(ii)in vivoでNK細胞の生存に影響するサイトカイン又は受容体
の共発現を含む、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
【0542】
実施形態39.目的とする遺伝子がCISHであるとき、少なくとも1つの膜結合タンパク質がIL-15を含む、実施形態1又は3~37のいずれか1つに記載の方法。
【0543】
実施形態40.目的とする遺伝子がCD38であるとき、少なくとも1つの膜結合タンパク質が抗CD38 CARを含む、実施形態1又は3~37のいずれか1つに記載の方法。
【0544】
実施形態41.実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法によって入手可能である、単離されたNK細胞集団。
【0545】
実施形態42.実施形態41に記載の単離されたNK細胞集団と、薬学的に活性な担体とを含む医薬組成物。
【0546】
実施形態43.疾患の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、対象に、治療有効量の、実施形態41に記載の単離されたNK細胞集団を投与し、それにより対象を治療することを含む方法。
【0547】
実施形態44.疾患の治療を、それを必要としている対象において行うのに使用するための、治療有効量の実施形態41に記載の単離されたNK細胞集団。
【0548】
実施形態45.疾患が、悪性疾患、ウイルス性疾患、細菌性疾患、真菌性疾患、原虫性疾患及び寄生虫性疾患からなる群から選択される、実施形態43に記載の方法又は実施形態44に記載の使用のための単離されたNK細胞集団。
【0549】
実施形態46.悪性疾患が固形腫瘍又は腫瘍転移である、実施形態45に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【0550】
実施形態47.悪性疾患が、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、胃癌、肺癌、黒色腫、肉腫、神経芽細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、滑膜細胞癌、子宮癌、神経膠腫及び子宮頸癌からなる群から選択される、実施形態46に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【0551】
実施形態48.悪性疾患が血液学的悪性腫瘍である、実施形態45に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【0552】
実施形態49.血液学的悪性腫瘍が白血病、リンパ腫又は多発性骨髄腫を含む、実施形態48に記載の方法又は使用のための単離されたNK細胞集団。
【0553】
実施形態50.対象がヒト対象である、実施形態43若しくは45~49のいずれか1つに記載の方法又は実施形態44~49のいずれか1つに記載の使用のための単離されたNK細胞集団。
【0554】
実施例1:NAM ex vivo増殖NK細胞におけるCISH遺伝子ノックアウト(KO)
広範囲にわたるウイルス感染細胞、ストレス下の細胞及び形質転換細胞を殺傷するNK細胞固有の能力にもかかわらず、多くの進行した固形ヒト癌では、多くの場合、少数の機能不全のNK細胞が観察される。従って、本発明者らは、腫瘍微小環境におけるNK細胞の機能性を制御するチェックポイントを標的とすることによるなど、NK細胞療法を増強するための次世代戦略をもたらした。
【0555】
IL-15は、多面発現性のサイトカインであり、NK細胞の発生、恒常性及び活性化の重要な制御因子である。IL-15シグナル伝達は、腫瘍微小環境におけるNK細胞の増殖、生存及び抗腫瘍性機能に必要である(以下の実施例2で更に考察するとおりである)。
【0556】
図1A図1Bに示されるとおり、サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質(CIS、CISHによってコードされる)は、サイトカインシグナル伝達抑制因子(SOCS)のメンバーであり、負のフィードバックループによるIL-15シグナル伝達の鍵となる抑制因子としての役割を果たす。SOCS遺伝子は、サイトカイン受容体会合及びJAK/STATシグナル伝達カスケードの活性化後に続いて誘導される。こうした遺伝子は、主にE3ユビキチンリガーゼ複合体のアダプターとして機能し、受容体複合体及び/又は関連するJAKタンパク質チロシンキナーゼに結合して、それをプロテアソーム分解の標的にすることによってサイトカインシグナル伝達を阻害する。
【0557】
従って、本発明者らは、CISH遺伝子がノックアウトされているNK細胞を作成し、それによりNK活性化閾値の低下によりIL-15感受性が増加した細胞を作成することを目標にした。
【0558】
CISHノックアウトについて、3番目のエクソンを標的とする4つのgRNA及び4番目のエクソンを標的とする別の4つのgRNAを調べた(データは示さず)。上記で考察したとおり、各ガイドのDNA配列をCRISPR発現プラスミドにクローニングし、HEK293細胞株でゲノム編集実験を実施した。最も高活性のgRNA(上記の表1を参照されたい)を以降の実験のために選択した。
【0559】
図2のA~Cから明らかなとおり、試験した3つのgRNAのうち、ガイド4(CISH-G4又はCISH2とも称される)及びガイド10(CISH-G10又はCISH3とも称される)で高い編集率が生じる(それぞれ85%及び82%のインデル頻度)一方、「旧ガイド」(CISH1、その配列を公開されている文献から取ったもの、Palmer et al, bioRxiv September 25, 2020を参照されたい)で生じたインデル頻度は、30%であった。最も高いインデル指数は、gRNA-4(CISH2)について決定された。
【0560】
図3のA~Bから明らかなとおり、CISHノックアウトによって炎症誘発性サイトカイン応答が亢進した。具体的には、ガイド4(CISH2)が最も高活性であることが分かり、ガイド10(CISH3)及び「旧ガイド」(CISH1)と比較したときに効力の増加が得られた。
【0561】
更に、図4のA~Cから明らかなとおり、CISHノックアウトによって腫瘍細胞株に対する細胞傷害性が増加した。具体的には、ガイド4(CISH2)は、共培養した標的細胞に対して最も効率的な殺傷活性を示すことが分かった。
【0562】
実施例2:NAMex vivo増殖NK細胞上での膜結合型IL-15の発現
IL-15は、IL-2/IL-15Rβ及び共通γ鎖受容体を発現するNK細胞及びT細胞に対してそれがトランス提示されるようにしてIL-15R~と会合した膜結合型ヘテロ二量体として主に活性化骨髄系細胞によって産生される(図5のA~Bを参照されたい)。重要なことに、IL-15はNK細胞の個体発生に決定的に必要であり、実際にin vivoでNK細胞発生を直接支持することが示されている唯一のサイトカインである。このように、IL-15は、増殖、細胞傷害作用及びNK細胞からのIFN-γなどの他のサイトカインの放出を誘導するものであり、免疫応答の増強におけるその役割が強調される。
【0563】
前臨床所見は、NK細胞及びTリンパ球によって媒介されるIL-15の潜在的抗腫瘍活性を強力に裏付けている。癌療法としてIL-15の全身送達が試みられているが、それを使用しようとする熱意は、毒性によって妨げられている。このように、IL-15を標的細胞により高精度に送達するか、又はIL-15に対する標的細胞の応答性を特異的に高める新規手法は、魅力的な研究手段である。
【0564】
受容体リンカーIL-15(RLI)
In vitro及びin vivo前臨床試験は、IL-15がIL-15R~受容体サブユニットに吸着してトランス提示されるとき、生物活性が高まることを指示している。組換えIL-15は、その小さい分子サイズに起因して血中から速やかに消失する(これは、2.5時間の生体内半減期を有する)。従って、幾つかの手法では、より長い半減期及びより良好な体内分布パラメータを呈するIL-15及びIL-15REを包含する安定性の高いタンパク質コンストラクトを設計することに重点が置かれてきた。
【0565】
組換えタンパク質受容体リンカーIL-15(RLI)は、IL-15に可動性リンカーによって結合したIL-15R~の結合ドメイン(いわゆるsushiドメイン)を包含する(図5のC~Dを参照されたい)。この融合タンパク質は、より長い半減期、IL-15R-β/γ複合体に向かってスーパーアゴニスト活性を呈し、in vivoモデルで抗腫瘍特性を発揮する。
【0566】
IL-15 N72D置換
ヘリックスCの末端に位置する72位のアスパラギン残基のアミノ酸置換は、パーシャルアゴニスト活性及びスーパーアゴニスト活性の両方を提供し、様々な非保存的置換が活性の亢進を提供することが分かった。特に、N72D置換は、ヒトIL-15Rβ及び共通γ鎖を担持している細胞による増殖アッセイに基づいて、天然分子と比較してIL-15ムテインの生物学的活性の4~5倍の増加を提供した(Zhu et al., J Immunol (2009) 183 (6) 3598-3607)。IL-15N72Dムテインは、ヒトIL-15Rβ鎖への結合能力の向上を通してスーパーアゴニスト活性を呈した。IL-15N72Dの生物学的活性の亢進は、野生型IL-15と比較してより強度の高いJak1及びStat5リン酸化並びにより良好な抗アポトーシス活性に関連した。IL-15N72Dスーパーアゴニスト活性は、腫瘍特異的融合タンパク質を作成するため、単鎖T細胞受容体ドメインに連結したときにも維持された(Zhu et al., J Immunol (2009) 183 (6) 3598-3607)。このように、ヒトIL-15スーパーアゴニストムテイン及び融合体は、臨床的有用性のある、より効果の高い免疫療法剤を構築する機会を作り出し得る。
【0567】
膜結合RLI N72D
RLIは、高親和性でIL-15β/γ受容体に結合し、IL-15サイトカインの72位のアスパラギンをアスパラギン酸にアミノ酸置換すると、受容体リガンド接触の活性が増幅された(Guo et al. Cytokine Growth Factor Rev. (2017) 3 8: 10-21)。
【0568】
これらの特徴全てを考え合わせて、本発明者らは、N72D変異を担持し、且つHLA細胞外鎖、膜貫通部分及び細胞質アンカーを備えて細胞膜に連結した、301.A及び301.Bと称する新規RLIコンストラクトを設計した(図6のA~Cを参照されたい)。
【0569】
遺伝子コンストラクト301.Aの構築(図6のA~B及びE)
RLI-Wongのグループにより記載され(Zhu et al., J Immunol (2009) 183 (6) 3598-3607)、且つ配列番号11に示されるとおりの、72位のアスパラギンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換。
【0570】
IL-15とIL-15Raとの間のリンカーは、25aa-(Gly4 Ser)5の従来のリンカー(配列番号17~18)に置き換えた。
【0571】
IL-15RaとHLA鎖との間のリンカーは、従来の短鎖(13aa)GSリンカー(配列番号19~20)に置き換えた。
【0572】
細胞外、膜貫通及び細胞質セグメントは、ヒトHLA-A遺伝子(配列番号21~22)に置き換えた。
【0573】
301.Aの完全長コンストラクトは、配列番号23~24(それぞれ完全長配列及びコドン最適化配列)に提供する。
【0574】
遺伝子コンストラクト301.Bの構築(図6のC~D及びF)
RLI-Wongのグループにより記載され(Zhu et al., J Immunol (2009) 183 (6) 3598-3607)、且つ配列番号11に示されるとおりの、アスパラギンからアスパラギン酸への72位のアミノ酸置換。
【0575】
IL-15とIL-15Raとの間のリンカーは、25aa-(Gly4 Ser)5の従来のリンカー(配列番号17~18)に置き換えた。
【0576】
IL-15とHLA鎖との間のリンカーは、従来の短鎖(13aa)GSリンカー(配列番号19~20)に置き換えた。
【0577】
細胞外、膜貫通及び細胞質セグメントは、ヒトHLA-A遺伝子(配列番号21~22)に置き換えた。
【0578】
301.Bの完全長コンストラクトは、配列番号26~27(それぞれ完全長配列及びコドン最適化配列)に提供する。
【0579】
結果
図7に示すとおり、膜結合型IL-15を発現するNK細胞は、CD107a関連脱顆粒マーカーの発現の増加が認められたことから、操作後の細胞の高い活性化が示唆される。
【0580】
膜結合型IL-15の発現により、図8のA~Cから明らかなとおり、標的腫瘍細胞株との共培養後の炎症誘発性サイトカイン応答も亢進した。
【0581】
更に、図9のA~Cから明らかなとおり、膜結合型IL-15の発現によって腫瘍細胞株K562、BL2及びRPMI-8226に対する細胞傷害性が増加した。
【0582】
まとめると、評価した2つのコンストラクト間では、RLIコンストラクト301.Bの方がより良好な結果を例証した。
【0583】
実施例3-CD38遺伝子ノックアウト(KO)を含む、且つ抗p38 CARを発現するNAMex vivo増殖NK細胞
多発性骨髄腫(MM)ターゲティングを亢進させるためのキメラ抗原受容体(CAR)による同種異系ナチュラルキラー(NK)細胞療法の増強について、生物学的に見て強力な理論的根拠がある。CD38は、MMにおける確立された免疫療法の標的であるが、NK細胞上でのその発現及びex vivoNK細胞増殖時のその更なる誘導は、抗CD38 CAR-NK細胞療法の開発を妨げる障壁に相当する(図10を参照されたい)。初代増殖NK細胞を使用したときのNK細胞CD38発現に起因する予想される殺兄弟を克服するため、本発明者らは、CRISPR-Cas9ゲノム編集を適用してNK細胞上のCD38タンパク質発現を破壊した。
【0584】
p38ノックアウトのため、2番目のエクソンを標的とする4つのgRNAを調べた(データは示さず)。上記で考察したとおり、各ガイドのDNA配列をCRISPR発現プラスミドにクローニングし、HEK293細胞株でゲノム編集実験を実施した。最も高活性のgRNA配列(上記の表1を参照されたい)を以降の実験のために選択した。
【0585】
図11のA~Eから明らかなとおり、CRISPR-Cas9を使用したCD38 KOは、効率的であり、NK細胞生存能力に影響を及ぼさなかった。更に、CD38 KO NK細胞は、ダラツムマブの存在下で殺兄弟耐性を示した(図11のF)。しかしながら、殺兄弟のレスキューがより良好な癌細胞殺傷に反映されることはなかった(図11のF)。
【0586】
癌療法を改良して、ダラツムマブ(DARA)など、抗CD38抗体を同時に使用する必要性をなくすため、本発明者らは、抗CD38 CARを更に構築し、p38-KO NK細胞上で発現させた(図13を参照されたい)。
【0587】
抗CD38 CARの構築(図12A図12B
以前にZelig et al.(PCT/IL2018/051325号明細書の配列番号29~30)で考察された単鎖可変断片(scFv)をベースとして抗CD38 CARを構築した。具体的には、CARコンストラクトは、以下のとおりであった:~CD38scFv-CD28ヒンジ+TM+Cy-FCγ(配列番号31~32)。
【0588】
図14から明らかなとおり、CD38 KOと抗CD38 CAR発現との組み合わせにより、多発性骨髄腫細胞に対する細胞傷害性が増加した。
【0589】
実施例4:抗Her2 CARを発現するNAMex vivo増殖細胞
ERBB2過剰発現腫瘍を有する固形腫瘍癌患者を治療しようと試みて、以前にRosenberg et al.(Mol Ther. (2010) 18(4): 843±851)によって考察されているとおり、広く使用されているヒト化モノクローナル抗体(mAb)トラスツズマブ(Herceptin)の単鎖可変断片(scFv)をベースとしてNKキメラ抗原受容体(CAR)細胞を開発した。
【0590】
Her2 scFvを取り付けたシグナル伝達部分の種々の断片を使用した。これらを、mRNAエレクトロポレーションを用いてNK細胞膜上で発現させた。
【0591】
抗HER2 CAR構築
抗HER2 CARについてモジュール方式で種々のコンストラクトを設計し、図15図16のA~D及び図17に描かれるとおり且つ以下のとおり、ヒンジ、膜貫通、細胞質ドメインを修飾したが、抗Her2 scFvには手をつけないままとした。
【0592】
ヒンジ
ヒンジ領域の長さは、免疫シナプスの形成に重要である。エフェクターと標的細胞との間が最適な距離となることを可能にするため、細胞表面からの抗原距離に応じてヒンジ長さを調整する必要がある。抗HER2 CARの構築には、CD28又はCD8からのアミノ酸配列を使用した(配列番号38~41に指定されるとおり)。
【0593】
膜貫通
膜貫通(TM)ドメインは、細胞膜にまたがり、CARコンストラクトをアンカリングする疎水性αヘリックスからなる。TMドメインの選択は、細胞活性化の程度によって媒介されるCARコンストラクトの機能性に影響を及ぼすことが示されている。CD28又はCD8からのアミノ酸配列が現在まで最も多く用いられており、抗HER2 CARの構築にNKG2Dのアミノ酸配列と共に使用した(配列番号42~47に指定されるとおり)。
【0594】
エンドドメイン
CARコンストラクトの進化は、主に細胞内シグナル伝達ドメインの最適化に焦点が置かれており、最初の3世代のCARコンストラクトは、エンドドメインを作り上げる活性化分子及び共刺激分子の数を基準としている。共刺激ドメインの選択により、所望のNK細胞応答を微調整することが可能であり、それによりCD28ベースのCARは、4-1BBベースのCARと比較して細胞溶解能力の増加及び持続性の短縮を呈することになる。
【0595】
抗HER2 CARの構築には、共刺激ドメインCD28、4-1BB及び2B4をCD3ζ又はFC-受容体活性化型ドメインと共に含めた(配列番号48~55に指定されるとおり)。A~Dと指定される抗HER2 CARの完全長コンストラクトをそれぞれ配列番号60、62、64及び66に提供する。
【0596】
C、B及びDと指定されるこれらの3つのCARコンストラクトは、HER2タンパク質の認識によって明らかなとおり、全てが抗HER CARを発現した(図18のB~G)。サンドイッチフローサイトメトリー技法を用いて、NKをErbb2タンパク質とプレインキュベートした後、抗Her2染色することにより、NK細胞上のCARコンストラクト発現を同定した。
【0597】
実施例5:NAMex vivo増殖NK細胞におけるTGFβ受容体遺伝子ノックアウト(KO)
TGFβは、TGFβ受容体を介して免疫応答を抑制するサイトカインである。腫瘍の多くは、免疫防御機構としてTGFPを過剰発現する。
【0598】
TGFβ受容体2ノックアウトにより、NK細胞は、TGFβ媒介性免疫抑制への感受性がなくなる。従って、本発明者らは、TGFβ受容体2遺伝子がノックアウトされているNK細胞を作成しているところである(図19に示される)。
【0599】
本発明は、その具体的な実施形態と併せて記載されているが、多くの代替形態、改良形態及び変形形態が明らかであろうことは、当業者に明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲に入る全てのかかる代替形態、改良形態及び変形形態を包含することが意図される。
【0600】
実施例6:受容体リンカーIL-15 CISHノックアウトNK細胞における細胞表面表現型
CISHノックアウト(KO)と受容体リンカーIL-15(mbIL-15)の発現との組み合わせ戦略の結果、抗腫瘍細胞傷害性が上昇した。mbIL-15の共発現を伴うCISH KO時のNKp30表面発現のフロー分析を図20に示す(ガイド4=CISH3及びガイド3=CISH4)。mbIL-15の共発現を伴うCISH KO(GDA-301)のCD122及びNKG2A表面発現のフロー分析を図25に示す。その上、mbIL-15の共発現を伴うCISH KO(GDA-301)NK細胞は、エレクトロポレーション後24時間のNKG2Aの低下を実証し、これは、4日の期間にわたって維持される。mbIL-15の共発現を伴うCISH KO(GDA-301)のTIGIT及びLAG3表面発現のフロー分析を図26に示す。
【0601】
実施例7:受容体リンカーIL-15 NKは、腫瘍細胞に対する細胞傷害性を実証する
腫瘍細胞株に対する受容体リンカーIL-15 NK(mbIL-15)と同種異系末梢血単核球との比較を試験した。図29に示すとおり、mbIL-15をエレクトロポレートしたNKをK562細胞と共培養(比1:1)した後、対照と比較したときに有意な殺傷活性が認められた。
【0602】
実施例8:CISH KOと受容体リンカーIL-15 NKとの組み合わせは細胞傷害効力を実証する
図28に示すとおり、CRISPRの媒介によるCISHのKOが確認された。加えて、ガイド4/CISH3及びガイド10/CISH4の両方を同時に使用して、二重ガイドKO(DK)を実現した(図28ゲル)。CISH KO及びmbIL-15のNKを作成する作業の流れを図28に示す。EGFP mRNAの発現を、14日目に実施したエレクトロポレーションプロセスの陽性対照として供した。図21及び図22に示すとおり、それぞれK562、Raji及びRPMI細胞との6時間の共培養(3:1のE:T)後、CISH KO及びmbIL-15 NKは、細胞傷害効力を実証する。加えて、図23に示されるとおり、CISH KOでmbIL-15を発現するNK細胞では、MIP1アルファ及びMIP1ベータの発現の増加もあった。
【0603】
実施例9:CISH KOと受容体リンカーIL-15 NKとの組み合わせは、殺傷率の上昇を実証する
図24に示すとおり、CISH KO+mbIL-15 NKと共培養したとき(1:1又は5:1比のE:T)、K562、Raji及びRPMI細胞株の殺傷率の上昇が観察された。K562及びRaji細胞は、修飾NKと4~5時間共培養する一方、RPMI細胞は、修飾NKと6時間共培養した。
【0604】
実施例10:CD38 KOを有するNK細胞及びCD38 KO/CD38 CAR(GDA-601)発現の組み合わせを有するNK細胞は、CD38低発現を実証する
図27は、CD38ノックアウト(KO)を有するNK及びCD38 KOとCD38 CAR発現の組み合わせを有するNKに関するとおりのCD38発現のフロー分析を実証する。
【0605】
実施例11:CD38 KO/CD38 CAR(GDA-601)発現の組み合わせを有するNK細胞は、効力及び殺傷率の亢進を実証する
CD38 KOとCD38 CAR発現との組み合わせを有するNK細胞をダラツムマブあり及びなしでRPMI 8226細胞と1:3のE:T比で6時間共培養した。図30に示すとおり、CD107アルファ、TNFアルファ、IFNガンマ及びCM-CSFの上昇が観察された。図31は、プレートフォーマットにおいて予めコートしたBSAと混合したヒト組換えCD38と6時間インキュベートしたときの、CD38 KOとCD38 CAR発現との組み合わせを有するNK細胞の効力の上昇を実証する。
【0606】
GDA-601細胞殺傷を検証するため、GDA-601細胞をCFSE標識RPMI 8226細胞と共に5:1~0:1の様々なE:T比においてダラツムマブの存在下又は非存在下のいずれかで6時間培養した(図32)。標的細胞にCFSEゲートをかけて死細胞の割合を決定した。代わりに、CFSE陰性細胞にゲートをかけてNK死細胞(殺兄弟)の割合を決定した。
【0607】
本明細書で参照される刊行物、特許及び特許出願の全ては、各個別の刊行物、特許又は特許出願が、参照時にそれが参照により本明細書に援用されるべきであると具体的且つ個別的に指摘されたものとして全体として参照により本明細書に援用されるべきであることが本出願人の意図である。加えて、本願における任意の参考文献の引用又は特定は、かかる参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認であると解釈されてはならない。節の見出しが使用される範囲内において、そうした見出しが必然的に限定するものと解釈されてはならない。加えて、本願の任意の1つ又は複数の優先権書類は、本明細書によって全体として参照により本明細書に援用される。
【0608】
【表6】
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【配列表】
2024531212000001.xml
【国際調査報告】