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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】光電変換装置、及び、光電変換方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 40/06 20060101AFI20240822BHJP
   H01J 40/12 20060101ALI20240822BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01J40/06
H01J40/12
G01J1/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508571
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022072103
(87)【国際公開番号】W WO2023016941
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】21190597.1
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【弁理士】
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】河合 直弥
(72)【発明者】
【氏名】吉新 英朗
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ サイモン レインコーフ
(72)【発明者】
【氏名】イェプセン ピーター ウドゥ
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065AB03
2G065BA17
(57)【要約】
光電変換装置は、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有する電子放出部材を備えている。メタサーフェスは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有する複数の光電変換部を含んでいる。複数の光電変換部は、互いに異なる構成を有するパターンを含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有する電子放出部材を備え、
前記メタサーフェスは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有する複数の光電変換部を含んでおり、
前記複数の光電変換部は、互いに異なる構成を有するパターンを含んでいる、光電変換装置。
【請求項2】
各前記光電変換部の前記パターンは、互いに離間している第一及び第二部分を含んでおり、
前記第二部分は、前記第一部分に面している先端を含んでおり、前記第一部分よりも低い電位が付与された状態において前記電磁波の入射に応じて前記電子を放出する、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
各前記光電変換部の前記第二部分は、前記第一部分に向かって延在する線形状部を含んでおり、
前記複数の光電変換部のうち少なくとも2つの光電変換部の前記線形状部は、互いに異なる長さを有している、請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記複数の光電変換部のうち2つの前記光電変換部において、一方の前記光電変換部の前記第一又は第二部分と他方の前記光電変換部の前記第一又は第二部分とは、電気的に接続されている、請求項2又は3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
各前記光電変換部の前記第一及び第二部分に付与する電位を制御する電位制御部をさらに備える、請求項2から4のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記複数の光電変換部は、第一光電変換部と第二光電変換部とを含んでおり、
前記電位制御部は、前記第一光電変換部の前記第一及び第二部分と、前記第二光電変換部の前記第一及び第二部分とに付与する電位を制御し、
前記第一光電変換部の前記第一部分に付与する電位と前記第一光電変換部の前記第二部分に付与する電位との電位差と、前記第二光電変換部の前記第一部分に付与する電位と前記第二光電変換部の前記第二部分に付与する電位との電位差とは、互いに異なる、請求項5に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記電位制御部は、前記第二光電変換部の前記第一部分に付与する電位よりも低い電位を前記第二光電変換部の前記第二部分に付与する場合に、前記第一光電変換部の前記第一部分に付与する電位よりも高い電位を前記第一光電変換部の前記第二部分に付与する、請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記電位制御部は、前記複数の光電変換部のうち少なくとも2つの光電変換部に対して、前記第一部分に付与する電位よりも低い電位を前記第二部分に付与する、請求項5から7のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
各前記光電変換部の前記パターンは、同一電位である、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項10】
各前記光電変換部の前記パターンは、互いに電気的に接続されている、請求項1又は9に記載の光電変換装置。
【請求項11】
各前記光電変換部の前記パターンは、線形状部を含んでおり、
前記複数の光電変換部のうち少なくとも2つの光電変換部の前記線形状部は、互いに異なる長さを有している、請求項1、9、及び、10のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
気密に封止されていると共に電磁波を透過する窓を有しているハウジングをさらに備え、
前記電子放出部材は、前記ハウジング内に配置されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
互いに異なる構成を有するパターンを含む複数の光電変換部を含んでいるメタサーフェスに、測定対象の電磁波を入射することと、
前記複数の光電変換部のうち前記測定対象の電磁波の波長域に対応する少なくとも1つの光電変換部から電子を放出させることと、を備えている、光電変換方法。
【請求項14】
前記複数の光電変換部に付与する電位を制御することをさらに備えており、
各前記光電変換部の前記パターンは、第一部分と前記第一部分に離間していると共に第一部分に面している先端を有している第二部分とを含んでおり、
各前記光電変換部は、前記第一部分に付与する電位よりも低い電位が前記第二部分に付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出し、
各前記光電変換部の前記第一及び第二部分に付与する電位が制御される、請求項13に記載の光電変換方法。
【請求項15】
前記複数の光電変換部に含まれる第一光電変換部及び第二光電変換部に付与される電位は、前記第一光電変換部の前記第一部分に付与される電位と前記第一光電変換部の前記第二部分に付与される電位との電位差と、前記第二光電変換部の前記第一部分に付与される電位と前記第二光電変換部の前記第二部分に付与される電位との電位差と、が異なるように制御される、請求項14に記載の光電変換方法。
【請求項16】
前記第二光電変換部の前記第一部分に付与する電位よりも低い電位が前記第二光電変換部の前記第二部分に付与される場合に、前記第一光電変換部の前記第一部分に付与する電位よりも高い電位が前記第一光電変換部の前記第二部分に付与され、
前記第一光電変換部の前記第一部分に付与する電位よりも低い電位が前記第一光電変換部の前記第二部分に付与される場合に、前記第二光電変換部の前記第一部分に付与する電位よりも高い電位が前記第二光電変換部の前記第二部分に付与される、請求項14又は15に記載の光電変換方法。
【請求項17】
前記複数の光電変換部のうち少なくとも2つの光電変換部において、前記第一部分に付与する電位よりも低い電位が前記第二部分に付与される、請求項14から16のいずれか一項に記載の光電変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、光電変換装置、及び、光電変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出には、たとえば、熱電子放出、光電子放出、二次放出、及び、電子放出の4つのタイプがある。熱電子放出は、電極を熱することによって生じる。光電子放出は、光子の照射によって生じる。二次放出は、光速電子の衝突によって生じる。電界放出は、静電界の存在下で生じる。米国2016/0216201号公報は、電磁波を検出する電磁波検出システムを示している。このシステムは、電磁波を電子に変換する光電変換装置を含んでいる。光電変換装置は、メタマテリアル構造を有している電子放出部材を備えている。このシステムは、電子放出部材に入射した電磁波を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国2016/0216201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光電変換装置の電子放出部材は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。上記システムは、電子放出部材から放出された電子に基づいて、入射した電磁波を検出する。このような構成を有するシステムによれば、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長域の電磁波が検出され得る。
【0005】
ミリ波から赤外光の波長域の電磁波の検出は、様々な用途に利用されると考えられる。例えば、電磁波がガスに透過され、このガスに吸収された波長成分が特定されれば、特定された波長成分に基づいてガス成分が特定され得る。様々なガス成分に対応する波長成分が、ミリ波から赤外光の波長域に含まれている。このため、この波長域は、分子の指紋領域とも呼ばれている。上記波長域の全体が検出可能であれば、複数種のガスが容易に検出され得る。
【0006】
このように、様々な用途に対応するために、1つの電磁波検出装置において検出可能な電磁波の波長の範囲を拡大することが考えられる。上記例であれば、複数種のガス成分の各々に対応する波長成分をカバーする波長の範囲に、電磁波検出装置において検出可能な電磁波の波長の範囲を拡大することが考えられる。電磁波検出装置において検出可能な電磁波の波長の範囲を広げるためには、光電変換装置において電子に変換可能な電磁波の波長の範囲を広げることが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面は、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る光電変換装置を提供することを目的とする。本開示の別の側面は、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲を拡大できる光電変換方法を提供することを目的とする。
【0008】
本開示の一側面における光電変換装置は、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有する電子放出部材を備えている。メタサーフェスは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有する複数の光電変換部を含んでいる。複数の光電変換部は、互いに異なる構成を有するパターンを含んでいる。
【0009】
この光電変換装置において、電子放出部材は、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有している。メタサーフェスは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有する複数の光電変換部を含んでいる。複数の光電変換部は、互いに異なる構成を有するパターンを含んでいる。この結果、光電変換装置は、複数の光電変換部において、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有する。したがって、光電変換装置において、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大されている。
【0010】
上記一側面において、各光電変換部のパターンは、互いに離間している第一及び第二部分を含んでいてもよい。第二部分は、第一部分に面している先端を含んでいてもよい。第二部分は、第一部分よりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出してもよい。この場合、第一部分及び第二部分への電位の付与を制御することによって、光電変換装置において電子が放出される電磁波の波長の範囲を制御することができる。
【0011】
上記一側面において、各光電変換部の第二部分は、第一部分に向かって延在する線形状部を含んでいてもよい。複数の光電変換部のうち少なくとも2つの光電変換部の線形状部は、互いに異なる長さを有していてもよい。上記線形状部の長さに応じて、各光電変換部において電子が放出される電磁波の波長域が変化する。したがって、簡易な構成によって、光電変換装置において電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0012】
上記一側面において、複数の光電変換部のうち2つの光電変換部において、一方の光電変換部の第一又は第二部分と他方の光電変換部の第一又は第二部分とは、電気的に接続されていてもよい。この場合、より簡易な構成によって、光電変換装置において電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0013】
上記一側面において、光電変換装置は、各光電変換部の第一及び第二部分に付与する電位を制御する電位制御部をさらに備えてもよい。この場合、電位制御部によって、動作させる光電変換部が選択され得る。
【0014】
上記一側面において、複数の光電変換部は、第一光電変換部と第二光電変換部とを含んでいてもよい。電位制御部は、第一光電変換部の第一及び第二部分と、第二光電変換部の第一及び第二部分とに付与する電位を制御してもよい。第一光電変換部の第一部分に付与する電位と第一光電変換部の第二部分に付与する電位との電位差と、第二光電変換部の第一部分に付与する電位と第二光電変換部の第二部分に付与する電位とは、互いに異なってもよい。この場合、第一光電変換部と第二光電変換部とが、別々に動作され得る。したがって、この光電変換装置は、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲を変更することができる。
【0015】
上記一側面において、電位制御部は、第二光電変換部の第一部分に付与する電位よりも低い電位を第二光電変換部の第二部分に付与する場合に、第一光電変換部の第一部分に付与する電位よりも高い電位を第一光電変換部の第二部分に付与してもよい。この場合、第二光電変換部が電磁波の入射に応じて電子を放出する状態とされながら、第一光電変換部からの電磁波の入射に応じた電子の放出が確実に停止され得る。
【0016】
上記一側面において、電位制御部は、複数の光電変換部のうち少なくとも2つの光電変換部において、第一部分に付与する電位よりも低い電位を第二部分に付与してもよい。この場合、上記少なくとも2つの光電変換部が、同時に動作される。したがって、複数の光電変換部のそれぞれに対応する波長域の電磁波の電子への変換が同時に実行され得る。
【0017】
上記一側面において、各光電変換部のパターンは、同一電位であってもよい。この場合、より簡易な構成によって、光電変換装置において電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0018】
上記一側面において、各光電変換部のパターンは、互いに電気的に接続されてもよい。この場合、より簡易な構成によって、光電変換装置において電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0019】
上記一側面において、各光電変換部のパターンは、線形状部を含んでいてもよい。複数の光電変換部のうち少なくとも2つの光電変換部の線形状部は、互いに異なる長さを有していてもよい。上記線形状部の長さに応じて、各光電変換部において電子が放出される電磁波の波長域が変化する。このため、より簡易な構成によって、光電変換装置において電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0020】
上記一側面において、気密に封止されていると共に電磁波を透過する窓を有しているハウジングをさらに備えていてもよい。電子放出部材は、ハウジング内に配置されていてもよい。この場合、ハウジング内を真空にする又はハウジング内にガスを充填することによって、電磁波の入射に応じた電子の放出量が向上し得る。
【0021】
本開示の別の側面における光電変換方法は、複数の光電変換部を含んでいるメタサーフェスに、測定対象の電磁波を入射することと、複数の光電変換部のうち測定対象の電磁波の波長域に対応する少なくとも1つの光電変換部から電子を放出させることと、を備えている。複数の光電変換部は、互いに異なる構成を有するパターンを含んでいる。
【0022】
この光電変換方法において、複数の光電変換部を含むメタサーフェスに、測定対象の電磁波が入射される。複数の光電変換部は、互いに異なる構成を有するパターンを含んでいる。測定対象の電磁波の波長域に対応する少なくとも1つの光電変換部から電子が放出される。この場合、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0023】
上記別の側面において、光電変換方法は、複数の光電変換部に付与する電位を制御することをさらに備えていてもよい。各光電変換部のパターンは、第一部分と第一部分に離間していると共に第一部分に面している先端を有している第二部分とを含んでいてもよい。各光電変換部は、第一部分に付与する電位よりも低い電位が第二部分に付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出してもよい。各光電変換部の第一及び第二部分に付与する電位が制御されてもよい。この場合、各光電変換部の第一及び第二部分に付与する電位の制御によって、動作させる光電変換部が選択される。
【0024】
上記別の側面において、複数の光電変換部に含まれる第一光電変換部と第二光電変換部と付与される電位が制御されてもよい。第一光電変換部の第一部分に付与される電位と第一光電変換部の第二部分に付与される電位との電位差と、第二光電変換部の第一部分に付与される電位と第二光電変換部の第二部分に付与される電位との電位差と、が異なるように、上記電位が付与されてもよい。この場合、第一光電変換部と第二光電変換部とに対してそれぞれ付与される電位が制御されるため、第一光電変換部と第二光電変換部とが別々に動作され得る。
【0025】
上記別の側面において、第二光電変換部の第一部分に付与する電位よりも低い電位が第二光電変換部の第二部分に付与される場合に、第一光電変換部の第一部分に付与する電位よりも高い電位が第一光電変換部の第二部分に付与されてもよい。第一光電変換部の第一部分に付与する電位よりも低い電位が第一光電変換部の第二部分に付与される場合に、第二光電変換部の第一部分に付与する電位よりも高い電位が第二光電変換部の第二部分に付与されてもよい。この場合、第一及び第二光電変換部の一方が電磁波の入射に応じて電子を放出する状態とされながら、他方からの電磁波の入射に応じた電子の放出が確実に停止され得る。
【0026】
上記別の側面において、複数の光電変換部のうち少なくとも2つの光電変換部において、第一部分に付与する電位よりも低い電位が第二部分に付与されてもよい。この場合、複数の光電変換部が、同時に動作される。したがって、複数の光電変換部のそれぞれに対応する波長の電磁波の電子への変換が同時に実行され得る。
【0027】
本開示の一側面によれば、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大された光電変換装置を提供することが可能となる。本開示の別の側面によれば、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大された光電変換方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、第一実施形態における電磁波検出装置の概略図である。
図2図2は、第一及び第二実施形態における光電変換装置の模式図である。
図3図3は、第一実施形態における電子放出部材の平面図である。
図4図4は、第一実施形態における光電変換装置の模式図である。
図5図5は、第一実施形態における電磁波検出方法のフローチャートである。
図6図6は、第一実施形態の変形例における電磁波検出方法のフローチャートである。
図7図7は、第二実施形態における電子放出部材の平面図である。
図8図8は、第二実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。
図9図9は、第二実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。
図10図10は、第三実施形態における電磁波検出装置の概略図である。
図11】(a)は、第三実施形態における電子放出部材の平面図である。(b)は、第三実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の第一及び第二実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[第一実施形態]
【0030】
まず、図1を参照して、第一実施形態における電磁波検出装置の構成を説明する。図1は、第一実施形態における電磁波検出装置の概略図である。
【0031】
電磁波検出装置1は、入射した電磁波を検出する。電磁波検出装置1は、光電変換装置2を含んでいる。光電変換装置2は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。本明細書において、「光」は、可視光以外の電磁波を含んでいる。本実施形態では、電磁波検出装置1は、電磁波の入射に応じて光電変換装置2から放出された電子に基づいて、入射した電磁波を検出する。光電変換装置2は、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲の電磁波が入射されることによって、電子を放出する。ミリ波から赤外光の波長の範囲は、例えば、0.01~150THz程度の周波数域に相当する。本明細書において、「波長の範囲」は、互いに分離した複数の波長域の範囲を含んでいてもよいし、一つの連続した波長域の範囲であってもよい。光電変換装置2は、例えば、電界放出(フィールドエミッション)によって電子を放出する。
【0032】
電磁波検出装置1は、例えば、電磁波の入射に応じて電気信号を出力する電子管である。例えば、電磁波検出装置1は、電子管の内部において、電磁波の入射に応じて電子を放出し、放出された電子を検出し、検出結果に基づく電気信号を出力する。電子管は、例えば、光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)である。電磁波検出装置1は、電磁波が入射した場合に内部で電子を放出し、放出された電子を増倍する。本実施形態の変形例として、電磁波検出装置1は、電子管内に電子を検出する構成を備えていなくてもよい。換言すれば、電磁波検出装置1は、電磁波の入射に応じて電子を外部に放出する電子管を光電変換装置2として備え、この電子管の外部に電子管から放出された検出するセンサを備えていてもよい。
【0033】
電磁波検出装置1は、ハウジング10と、電子放出部材20と、保持部材30と、電子増倍部40と、電子収集部50と、電源部60と、を備えている。電子放出部材20、保持部材30、電子増倍部40及び電子収集部50は、ハウジング10内に配置されている。光電変換装置2は、ハウジング10と、電子放出部材20と、電源部60とを備え、電磁波検出装置1の一部を構成している。
【0034】
ハウジング10は、バルブ11及びステム12を有している。ハウジング10の内部は、バルブ11とステム12とによって気密に封止されている。本実施形態において、ハウジング10の内部は真空に保持されている。ハウジング10内の真空は、絶対真空でなくてもよく、大気圧よりも低い圧力の気体で満たされた状態であってもよい。例えば、ハウジング10の内部は、1×10-4~1×10-7Paに保持される。
【0035】
バルブ11は、電磁波透過性を有する窓部11aを含んでいる。本明細書において、「電磁波透過性」とは、入射した電磁波の波長の範囲の少なくとも一部の波長の範囲が透過する性質をいう。本実施形態において、ハウジング10は円筒形状を有している。ハウジング10は、図1に示されているようにX軸方向に延在する。ステム12は、ハウジング10の底面を構成している。ステム12は、例えば、ハウジング10のX軸方向における一方の端面を構成している。バルブ11は、ハウジング10の側面及びステム12に面している底面を構成している。
【0036】
窓部11aは、ステム12に面している底面を構成している。窓部11aは、例えば、X軸方向から見て、YZ軸方向を径方向とする円形状を呈している。電磁波の透過率の周波数特性は、材料に応じて異なる。このため、窓部11aは、ハウジング10に入射する電磁波の周波数域に応じた最適な材料によって構成される。窓部11aの材料は、例えば、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ダイアモンド、及びカルコゲナイドガラスから選択される少なくとも1種を含む。これにより、ミリ波から赤外光のうち任意の周波数域の電磁波をハウジング10の内部に導くことができる。例えば、石英は0.1~5THz、シリコンは0.04~11THz及び46THz以上、フッ化マグネシウムは40THz以上、ゲルマニウムは13THz以上、セレン化亜鉛は14THz以上の周波数域を有する電磁波を透過する部材の材料に適している。
【0037】
ハウジング10は、ハウジング10の外部と内部との電気的な接続を可能とする複数の配線13をさらに有している。複数の配線13は、例えば、リード線又はピンである。本実施形態において、複数の配線13は、ステム12を貫通するピンであり、ハウジング10の内部から外部に延在している。複数の配線13の少なくとも1つが、ハウジング10の内部に設けられた種々の部材と接続されている。
【0038】
電子放出部材20は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。電子放出部材20は、支持体21を備えている。支持体21は、例えば、板形状である。支持体21は、例えば、平面視で矩形を呈している。支持体21は、互いに対向する主面21a及び主面21bを有している。主面21aと主面21bとは、互いに反対側に位置する支持体21の表面である。主面21a及び主面21bは、例えば、平坦面であり、平面視で矩形を呈している。主面21a及び主面21bは、窓部11aに対して平行に配置されている。主面21aは、窓部11aに面している。主面21aには、窓部11aを通過した電磁波が入射する。
【0039】
支持体21は、窓部11aを透過する電磁波に対して電磁波透過性を有している。このため、支持体21は、窓部11aを透過した電磁波の少なくとも一部の周波数域を透過する。支持体21は、上述した窓部11aの材料と同様の材料から構成され得る。支持体21の材料は、たとえば、シリコンを含む。1つの光電変換装置2において、支持体21と窓部11aとは同一の材料でなくてもよい。支持体21は、窓部11a及び電子増倍部40から離間している。
【0040】
電子放出部材20は、メタサーフェス22を有している。メタサーフェス22は、支持体21に設けられている。メタサーフェス22は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。メタサーフェス22は、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲の電磁波に対して感度を有している。メタサーフェス22は、テラヘルツ波に対しても感度を有している。テラヘルツ波の波長の範囲は、100GHzから30THzの周波数域に相当する。「電磁波に対して感度を有する」とは、この電磁波の入射に応じて電子が放出されることを意味している。
【0041】
メタサーフェス22は、例えば、支持体21の主面21b上に形成された酸化物層と、酸化物層上に形成された金属層とを含んでいる。酸化物層の材料は、たとえば二酸化シリコン及び酸化チタンを含んでいる。例えば、酸化物層は、二酸化シリコンを含む層と、酸化チタンを含む層とを含んでいる。金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。本実施形態において、石英からなる支持体21の主面21b上に、酸化物層が形成され、酸化物層の上に金属層が形成されている。例えば、支持体21の厚さは525μmであり、メタサーフェス22の二酸化シリコンを含む層の厚さは1μmであり、メタサーフェス22の二酸化チタンを含む層の厚さは10nmであり、メタサーフェス22の金属層の厚さは200nmである。メタサーフェス22は、平面視で矩形状である。本実施形態の変形例において、メタサーフェス22は、主面21aに設けられていてもよい。
【0042】
保持部材30は、ハウジング10の内部において電子放出部材20を保持している。保持部材30は、ハウジング10の内側面10aに対して位置決めされる。保持部材30は、ハウジング10に対して電子放出部材20を位置決めする。保持部材30は、ハウジング10の内側面10aに沿う枠状であり、保持部材30には貫通口が形成されている。電子放出部材20の主面21a,21bに直交する方向から見た場合に、貫通口を画成する縁の内側に、電子放出部材20のメタサーフェス22が配置される。
【0043】
電子増倍部40は、ハウジング10の内部に配置されており、電子放出部材20から放出された電子が入射する入射面40aを有している。電子増倍部40は、入射面40aに入射した電子を増倍する。本実施形態において、電子放出部材20の主面21bは、電子増倍部40の入射面40aに面している。メタサーフェス22は、電子増倍部40の入射面40aに面しており、メタサーフェス22から放出された電子が入射面40aに入射する。電子放出部材20の主面21aは、ハウジング10の窓部11aに面している。電子増倍部40は、例えば、複数段のダイノードを有している。
【0044】
電子収集部50は、ハウジング10の内部に配置されており、電子増倍部40で増倍された電子を収集する。電子収集部50は、電子を検出するセンサである。電磁波検出装置1は、電子収集部50において電子を検出することによって、電磁波を検出する。本実施形態において、電子収集部50は、例えば、複数の配線13のうち1つが接続されているアノードを有している。アノードには、所定の電位が配線13を通して付与される。アノードは、電子増倍部40のダイノードで増倍された電子を捕捉する。電子収集部50は、アノードの代わりにダイオードを有していてもよい。
【0045】
本実施形態において、メタサーフェス22は、アクティブタイプであり、バイアス電圧の付与によって動作する。メタサーフェス22は、電源部60によって電位を付与されることによって動作する。電源部60は、メタサーフェス22に電気的に接続されている。電源部60は、電位付与部61と電位制御部62とを含んでいる。電位付与部61は、メタサーフェス22に電位を付与する。電位制御部62は、電位付与部61を制御する。電位制御部62によって、メタサーフェス22に付与する電位が制御される。メタサーフェス22は、電位制御部62によって制御される電位に応じて動作する。換言すれば、メタサーフェス22は、電位制御部62による電位の制御に応じて、電子を放出する。
【0046】
電位制御部62は、例えば、ハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1又は複数のコンピュータである。電位制御部62は、ハードウェアとして、例えば、プロセッサと、主記憶装置と、補助記憶装置と、通信装置と、入力装置とを備えている。プロセッサは、オペレーティングシステム及びアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶装置は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶装置は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶装置は、一般的に主記憶装置よりも大量のデータを記憶する。通信装置は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。入力装置は、キーボード、マウス、及び、タッチパネルなどにより構成される。
[光電変換装置の構成]
【0047】
次に、図2から図4を参照して、光電変換装置2について更に詳細に説明する。図2は、光電変換装置の模式図である。メタサーフェス22は、複数の光電変換部23,24,25を含んでいる。複数の光電変換部23,24,25は、それぞれ対応する波長の入射に応じて電子を放出する。複数の光電変換部23,24,25は、互いに異なる波長域の電磁波の入射に応じて電子を放出する。換言すれば、複数の光電変換部23,24,25は、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有している。「互いに異なる波長域」とは、複数の波長域が互いに重なっている場合も、複数の波長域が互いに分離している場合も含んでいる。
【0048】
メタサーフェス22は、例えば、3つの光電変換部23,24,25を含んでいる。メタサーフェス22は、互いに異なる波長域の電磁波に対応する2つ又は4つ以上の光電変換部を含んでいてもよい。メタサーフェス22は、同一の波長域の電磁波に対応する複数の光電変換部を含んでいてもよい。換言すれば、メタサーフェス22は、同一の波長域の電磁波に対して感度を有していてもよい。たとえば、光電変換部23と光電変換部24とが同一の波長域の電磁波に対応し、光電変換部25が光電変換部23,24と異なる波長域の電磁波に対応していてもよい。
【0049】
例えば、光電変換部23は0.5THzを中心周波数とする周波数域に感度を有し、光電変換部24は1.0THzを中心周波数とする周波数域に感度を有し、光電変換部25は1.5THzを中心周波数とする周波数域に感度を有している。各光電変換部23,24,25が感度を有する周波数域は、これらに限定されない。例えば、光電変換部23は0.5THzを中心周波数とする周波数域に感度を有し、光電変換部24は、10THzを中心周波数とする周波数域に感度を有し、光電変換部25は100THzを中心周波数とする周波数域に感度を有していてもよい。
【0050】
図2に示されている例では、ハウジング10に入射した電磁波Wが、光電変換部23,24,25に入射している。この場合、光電変換部23,24,25のうち電磁波Wの波長に対応する光電変換部は、電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出する。光電変換部23,24,25の少なくとも1つから放出された電子Eは、電子増倍部40に入射する。電子増倍部40において増倍された電子は、電子収集部50において収集される。
【0051】
図3は、電子放出部材の平面図である。図3に示されているように、メタサーフェス22における複数の光電変換部23,24,25は、互いに異なる構成を有するパターンを含んでいる。「構成」は、形状及び材質などの種々の属性を含んでいる。各パターンは、支持体21の主面21b上に配されている。本実施形態において、各パターンは、互いに異なる形状を有している。「互いに異なる形状を有している」は、互いに異なるサイズを有していることも含んでいる。
【0052】
本実施形態では、光電変換部23,24,25のそれぞれが、互いに異なる形状を有するパターン33,34,35を含んでいる。光電変換部23はパターン33を含んでおり、光電変換部24はパターン34を含んでおり、光電変換部25はパターン35を含んでいる。各パターン33,34,35は、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン33,34,35は、少なくともメタサーフェス22の酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。
【0053】
各パターン33,34,35は、第一部分37と第二部分38とを含んでいる。第一部分37と第二部分38とは、互いに離間している。第二部分38は、第一部分37に向かって延在している。第二部分38は、第一部分37に面している先端39を含んでいる。各パターン33,34,35において、第一部分37と第二部分38とは、酸化物層を介して接続されている。各パターン33,34,35において、第一部分37と第二部分38とは、酸化物層によって分離されており、少なくとも光電変換装置2の非動作時において互いに絶縁されている。第二部分38は、第一部分37よりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。
【0054】
図3に示されている例において、各パターン33,34,35の第一部分37は、Y軸方向に延在している一対の線形状部41を含んでいる。各線形状部41は、例えば、直線状を呈している。一対の線形状部41は、互いに平行である。各パターン33,34,35の第二部分38は、Z軸方向に延在している複数の線形状部42と、Y軸方向に延在していると共に複数の線形状部42を連結している線形状部43とを含んでいる。
【0055】
複数の線形状部42は、各パターン33,34,35において、一対の線形状部41の間に配置されている。複数の線形状部42は、線形状部43から、対応する第一部分37に向かって延在している。各線形状部42は、例えば、直線状を呈している。複数の線形状部42は、例えば、互いに平行である。線形状部43は、例えば、直線状を呈している。一対の線形状部41は、例えば、線形状部43に平行である。各線形状部42は、その中央において線形状部43に連結されている。換言すれば、各線形状部42は、線形状部43から+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。
【0056】
図3に示されている例において、各線形状部42は、一対の先端39を含んでいる。各先端39は、同一パターンの他の線形状部42及び線形状部43、並びに、他のパターンから離間している。各パターン33,34,35において、各先端39は、Z軸方向において互いに異なる線形状部41に面している。各先端39と第一部分37との最短距離は、第二部分38における複数の先端39以外の箇所と第一部分37との最短距離よりも小さい。換言すれば、先端39は、この先端39を含んでいる線形状部42において、対応する第一部分37の線形状部41に最も近い部分である。先端39は、この先端39を含んでいるパターンの他の部分よりも、線形状部41の近くに配置されている。
【0057】
各光電変換部23,24,25において、線形状部41はバイアス部を構成し、線形状部42はアンテナ部を構成する。アンテナ部は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。バイアス部は、バイアス電位が印加された場合に、対応するアンテナ部との間に電界を発生させる。アンテナ部よりも高い電位がバイアス部に付与された場合に、アンテナ部のうちバイアス部側の先端部分におけるポテンシャル障壁が薄くなる。アンテナ部よりも低い電位がバイアス部に付与された場合に、アンテナ部のうちバイアス部側の先端部分におけるポテンシャル障壁が厚くなる。アンテナ部よりも高い電位がバイアス部に付与される状態を、「順バイアス」という。アンテナ部よりも低い電位がバイアス部に付与される状態を、「逆バイアス」という。
【0058】
アンテナ部に電磁波が入射すると、アンテナ部の周囲に電界が誘起される。アンテナ部の周囲に誘起された電界によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。順バイアスの状態におけるアンテナ部への電磁波の入射によってポテンシャル障壁がさらに薄くなれば、アンテナ部に存在した電子がトンネル効果によってポテンシャル障壁を抜け得る。ポテンシャル障壁を抜けた電子は、アンテナ部の周囲の電界によって加速される。このように、順バイアスの状態におけるアンテナ部に対する電磁波の入射によって、電界電子放出が生じ得る。各光電変換部23,24,25において、第二部分38の線形状部42は、第一部分37の線形状部41よりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出し得る。
【0059】
アンテナ部のサイズが小さいほど、波長が短い電磁波、すなわち、周波数が大きい電磁波に対して電界電子放出が生じやすい。メタサーフェス22の光電変換部23,24,25は、それぞれ、第二部分38の線形状部42の構造の変更に応じて、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲に対応するように構成される。
【0060】
複数の光電変換部23,24,25のうち少なくとも2つの光電変換部の線形状部42は、互いに異なる長さを有している。例えば、複数のパターン33,34,35の線形状部42は、互いに異なる長さT1,T2,T3を有している。換言すれば、光電変換部23の線形状部42と光電変換部24の線形状部42と光電変換部25の線形状部42とは、互いに異なる長さT1,T2,T3を有している。各パターン33,34,35における線形状部42の長さT1,T2,T3は、線形状部42の一方の先端39から他方の先端39までのZ軸方向における長さである。
【0061】
パターン33において、複数の線形状部42の長さT1は同一である。パターン34において、複数の線形状部42の長さT2は同一である。パターン35において、複数の線形状部42の長さT3は同一である。「同一」には、製造公差の範囲の長さの違いが含まれている。各パターン33,34,35における線形状部42の長さT1,T2,T3は、各光電変換部23,24,25において電子が放出される電磁波の波長域に対応している。各パターン33,34,35における線形状部42の長さT1,T2,T3は、各光電変換部23,24,25から電子を放出させる所望の波長域に応じて設計される。例えば、長さT1,T2,T3のそれぞれは、所望の波長域における中心波長の半分の長さである。本実施形態のように、支持体21等を透過した電磁波が線形状部42に入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率も考慮される。例えば、電子管に入射した電磁波の波長が600μmであり、かつ、支持体21の屈折率がこの電磁波に対して3.4である場合において、線形状部42に入射する電磁波の波長は600μm/3.4=176μmである。したがって、この場合、長さT1,T2,T3は、176μm/2=88μmが適している。
【0062】
電子放出部材20は、図3に示されているように、互いに離間している複数の電極51,52,53,54をさらに備えている。複数の電極51,52,53,54は、支持体21の主面21b上に設けられている。複数の電極51,52,53,54は、複数の光電変換部23,24,25の少なくとも一つに電気的に接続されている。本実施形態において、各電極51,52,53,54は、矩形状を呈している。本実施形態の変形例として、各電極51,52,53,54は、第一部分37又は第二部分38と同様に線形状を呈していてもよい。各電極51,52,53,54は、第一部分37又は第二部分38と一体に形成されていてもよい。
【0063】
例えば、電極51は、光電変換部23,24,25の各々の第二部分38に電気的に接続されている。電極52は、光電変換部23の一対の第一部分37に電気的に接続されている。電極53は、光電変換部24の一対の第一部分37に電気的に接続されている。電極54は、光電変換部25の一対の第一部分37に電気的に接続されている。
【0064】
複数の光電変換部23,24,25のうち2つの光電変換部において、一方の光電変換部の第一部分37又は第二部分38と他方の第一部分37又は第二部分38とは、電気的に接続されていてもよい。例えば、図3に示されている例では、電極51を介して、光電変換部23の第二部分38と、光電変換部24の第二部分38と、光電変換部25の第二部分38とが電気的に接続されている。
【0065】
光電変換部23,24,25の各々は、複数の電極51,52,53,54を介して電源部60から電位を付与されることによって動作する。電源部60の電位付与部61は、複数の電極51,52,53,54を介して、各光電変換部23,24,25に電位を付与する。電源部60の電位制御部62は、光電変換部23,24,25のそれぞれに付与する電位を制御する。
【0066】
図4は、光電変換装置における電位の付与を説明するための模式図である。図4に示されているように、電位付与部61は、例えば、第一電位付与部61aと、第二電位付与部61bと、第三電位付与部61cとを含んでいる。第一電位付与部61aは、電極51と電極52との間に電位差を与える。第二電位付与部61bは、電極51と電極53との間に電位差を与える。第三電位付与部61cは、電極51と電極54との間に電位差を与える。電位制御部62は、第一電位付与部61aと、第二電位付与部61bと、第三電位付与部61cとをそれぞれ制御する。
[光電変換方法]
【0067】
次に、図5を参照して、本実施形態における電磁波検出方法について説明する。この電磁波検出方法は、入射した電磁波に応じて電子を放出する光電変換方法を含んでいる。図5は、本実施形態における電磁波検出方法のフローチャートである。図5に示されている電磁波検出方法では、検出対象の波長の範囲が決定される。検出対象の波長の範囲が複数の波長域に分けられ、波長域ごとの検出が行われる。この結果、決定された波長の範囲に関して分光による検出と同様の結果が得られる。図5に示されている例では、複数の光電変換部をそれぞれ順番に動作することによって、各光電変換部に対応する波長域が順番に検出される。
【0068】
まず、電子放出部材20を準備する(処理S1)。例えば、電子放出部材20を備えた電磁波検出装置1が配置される。
【0069】
次に、波長の範囲を決定する(処理S2)。例えば、電位制御部62が、外部から種々の情報を取得し、これらの情報に基づいて、検出する電磁波の波長の範囲を決定する。種々の情報は、ユーザによって入力されてもよいし、自動で通信によって取得されてもよい。電位制御部62は、予め記憶された種々の情報に基づいて、検出する電磁波の波長の範囲を決定してもよい。
【0070】
次に、動作させる光電変換部を決定する(処理S3)。電位制御部62は、例えば、処理S2において決定された波長の範囲に基づいて、動作させる光電変換部を決定する。電位制御部62は、例えば、処理S2において決定された波長の範囲に感度を有している光電変換部のうち少なくとも1つを、動作させる光電変換部として決定する。例えば、電位制御部62は、複数の光電変換部23,24,25のうち、光電変換部23を動作させ電子変更部として決定し、光電変換部24,25を動作させない光電変換部として決定する。
【0071】
次に、光電変換部に電位を付与する(処理S4)。電位制御部62は、例えば、動作させる光電変換部に基づいて、各電極51,52,53,54に付与する電位を決定する。例えば、電位制御部62は、予め保存されているテーブルを参照して、動作させる光電変換部に紐づけられた情報を取得する。電位制御部62は、取得された情報に基づいて、電極51,52,53,54のそれぞれに付与する電位を決定する。
【0072】
例えば、電位制御部62は、複数の光電変換部のうち、動作させる光電変換部と動作させない光電変換部とに、付与するバイアス電圧を制御する。例えば、動作させる光電変換部において第一部分37に付与される電位と第二部分38に付与される電位との電位差と、動作させない光電変換部において第一部分37に付与される電位と第二部分38に付与される電位との電位差とは、互いに異なる。
【0073】
電位制御部62は、例えば、動作させる光電変換部に順バイアスの電圧が付与され、動作させない光電変換部に逆バイアスの電圧が付与されるように、各光電変換部に付与する電位を決定する。電位制御部62は、電位付与部61を制御し、決定された電位を各光電変換部に付与する。換言すれば、電位制御部62は、動作させる光電変換部において、第一部分37に付与する電位よりも高い電位を第二部分38に付与する。電位制御部62は、動作させない光電変換部において、第一部分37に付与する電位よりも低い電位を第二部分38に付与する。
【0074】
例えば、電位制御部62は、光電変換部24の第一部分37に付与する電位よりも低い電位を光電変換部24の第二部分38に付与する場合に、光電変換部23,25の第一部分37に付与する電位よりも高い電位を光電変換部23,25の第二部分38に付与する。この場合、光電変換部24は動作し、光電変換部23,25は動作しない。したがって、光電変換部24に対応する波長域の電磁波が光電変換装置2に入射された場合のみ、メタサーフェス22から電子が放出される。
【0075】
次に、メタサーフェス22に電磁波を入射する(処理S5)。例えば、ハウジング10の窓部11aを通過した電磁波が、メタサーフェス22に入射される。例えば、測定対象の電磁波が、メタサーフェス22に入射される。これによって、複数の光電変換部23,24,25のうち測定対象の電磁波の波長域に対応する少なくとも1つの光電変換部から電子が放出する。窓部11aは、測定対象の電磁波を透過するように構成されている。
【0076】
次に、メタサーフェス22から放出された電子に応じて電磁波を検出する(処理S6)。電磁波検出装置1は、処理S4において決定された電位を各光電変換部に付与した状態において、電磁波を検出する。電磁波検出装置1は、例えば、電子放出部材20から放出された電子を増倍し、増倍された電子を検出する。これによって、電磁波検出装置1は、ハウジング10の窓部11aから入射した電磁波を検出する。
【0077】
次に、現在の動作状態における電磁波の検出処理を終了するか判断する(処理S7)。換言すれば、処理S3において決定された光電変換部の動作状態における電磁波の検出処理を終了するかが判断される。検出処理を終了しないと判断された場合には、処理は処理S5に進む。検出処理を終了すると判断された場合には、処理は処理S8に進む。処理S7における判断は、例えば、電位制御部62が行ってもよいし、電磁波検出装置1における他の制御部が行ってもよい。
【0078】
次に、処理S2において決定された波長の範囲の全ての検出が完了したか判断する(処理S8)。例えば、電位制御部62が、処理S2において決定された波長の範囲に感度を有している光電変換部の全てを動作させたかを判断する。処理S2において決定された波長の範囲に感度を有している全ての光電変換部を動作させたと判断された場合には、処理S2において決定された波長の範囲の検出が完了したと判断される。処理S8における判断は、電磁波検出装置1における他の制御部が行ってもよい。
【0079】
波長の範囲の全ての検出が完了していないと処理S8において判断された場合には、処理は処理S9に進む。この場合、動作させる光電変換部が変更される(処理S9)。例えば、電位制御部62が、処理S3において決定された波長の範囲に基づいて、動作させる光電変換部を変更する。電位制御部62は、例えば、処理S2において決定された波長の範囲に感度を有している光電変換部のうち、動作させていない光電変換部を、動作させる光電変換部として決定する。処理S9において、動作させる光電変換部が変更されると、処理は処理S4に進む。
【0080】
例えば、電位制御部62は、光電変換部24が動作し、かつ、光電変換部23,25が動作しない状態から、光電変換部25が動作し、かつ、光電変換部23,24が動作しない状態に切り替える。この場合、光電変換部25の第一部分37に付与する電位よりも低い電位を光電変換部25の第二部分38に付与し、光電変換部23,24の第一部分37に付与する電位よりも高い電位を光電変換部23,24の第二部分38に付与する。したがって、光電変換部24に対応する波長域の電磁波が光電変換装置2に入射された場合のみメタサーフェス22から電子が放出される状態から、光電変換部25に対応する波長域の電磁波が光電変換装置2に入射された場合のみメタサーフェス22から電子が放出される状態に切り替えられる。
【0081】
処理S8において、波長の範囲の全ての検出が完了したと判断された場合には、電磁波検出方法における一連の処理が終了する。このように、図5に示されている電磁波検出方法においては、動作させる光電変換部を切り替えて処理S4から処理S7を繰り返すことによって、検出対象の波長の範囲における波長域ごとの検出が行われる。動作させる光電変換部の順番が、処理S3において決定されてもよい。
【0082】
本実施形態において、例えば、処理S3において、複数の光電変換部23,24,25のうち、光電変換部23が動作させる光電変換部として決定され、光電変換部24,25が動作させない光電変換部として決定された場合、光電変換部23に順バイアスの電位が付与され、光電変換部24,25に逆バイアスの電位が付与される。その後、処理S9において、複数の光電変換部23,24,25のうち、光電変換部24が動作させ光電変換部として決定されると共に光電変換部23,25が動作させない光電変換部として決定された場合、光電変換部24に順バイアスの電位が付与され、光電変換部23,25に逆バイアスの電位が付与される。
【0083】
次に、図6を参照して、本実施形態の変形例における光電変換方法について説明する。図5に示した例と異なる部分を主として説明し、重複する部分については一部省略する。図6は、本実施形態における電磁波検出方法のフローチャートである。図6に示されている電磁波検出方法では、検出対象の波長の範囲が決定され、決定された波長の範囲に波長成分を有する電磁波の有無が検出される。検出対象の波長の範囲は、互いに分離した複数の波長域であってもよい。図6に示されている例では、決定された波長の範囲に対応する複数の光電変換部を同時に動作させた状態によって、電磁波の検出が行われる。図6に示されている電磁波検出方法では、複数の波長域内の波長成分を有する電磁波が同時に検出される。
【0084】
まず、電子放出部材20を準備する(処理S11)。例えば、電子放出部材20を備えた電磁波検出装置1が配置される。
【0085】
次に、波長の範囲を決定する(処理S12)。例えば、電位制御部62が、外部から種々の情報を取得し、これらの情報に基づいて、検出する電磁波の波長の範囲を決定する。種々の情報は、ユーザによって入力されてもよいし、自動で通信によって取得されてもよい。電位制御部62は、予め記憶された種々の情報に基づいて、検出する電磁波の波長の範囲を決定してもよい。
【0086】
次に、動作させる光電変換部を決定する(処理S13)。電位制御部62は、例えば、処理S12において決定された波長の範囲に基づいて、動作させる光電変換部を決定する。電位制御部62は、例えば、処理S12において決定された波長の範囲に感度を有している複数の光電変換部を、動作させる光電変換部として決定する。例えば、電位制御部62は、処理S12において決定された波長の範囲に感度を有している光電変換部の全てを動作させる。電位制御部62は、例えば、処理S12において決定された波長の範囲に対応する光電変換部の全てを、動作させる光電変換部として決定する。
【0087】
次に、複数の光電変換部に電位を付与する(処理S14)。電位制御部62は、例えば、動作させる光電変換部に基づいて、各電極51,52,53,54に付与する電位を決定する。例えば、電位制御部62は、予め保存されているテーブルを参照して、動作させる光電変換部に紐づけられた情報を取得する。電位制御部62は、取得された情報に基づいて、電極51,52,53,54のそれぞれに付与する電位を決定する。
【0088】
電位制御部62は、複数の光電変換部のうち少なくとも2つの光電変換部において、第一部分37に付与する電位よりも低い電位を第二部分38に付与する。例えば、電位制御部62は、処理S13において決定された複数の光電変換部の各々おいて、第一部分37に付与する電位よりも低い電位を第二部分38に付与する。換言すれば、電位制御部62は、例えば、処理S12において決定された波長の範囲に対応する光電変換部の全てに順バイアスの電圧を付与する。電位制御部62は、例えば、処理S12において決定された波長の範囲に対応しない光電変換部の全てに逆バイアスの電圧を付与する。
【0089】
例えば、電位制御部62は、各光電変換部23,24,25において第一部分37に付与する電位よりも低い電位を第二部分38に付与する。この場合、光電変換部23,24,25の全てが動作する。したがって、光電変換部23,24,25のいずれかに対応する波長域の電磁波が光電変換装置2に入射された場合に、メタサーフェス22から電子が放出される。
【0090】
次に、メタサーフェス22に電磁波を入射する(処理S15)。例えば、ハウジング10の窓部11aを通過した電磁波が、メタサーフェス22に入射される。
【0091】
次に、メタサーフェス22から放出された電子に応じて電磁波を検出する(処理S16)。電磁波検出装置1は、処理S14において決定された電位を各光電変換部に付与した状態において、電磁波を検出する。電磁波検出装置1は、例えば、電子放出部材20から放出された電子を増倍し、増倍された電子を検出する。これによって、電磁波検出装置1は、ハウジング10の窓部11aから入射した電磁波を検出する。
【0092】
次に、検出処理を終了するか判断する(処理S17)。検出処理を終了しないと判断した場合には、処理は処理S15に進む。検出処理を終了すると判断した場合には、電磁波検出方法における一連の処理が終了する。このように、図6に示されている電磁波検出方法においては、検出対象の波長の範囲に対応する光電変換部が同時に動作され、検出対象の波長の範囲における電磁波の有無が一度に検出される。
[第二実施形態]
【0093】
次に、図7を参照して、第二実施形態における電磁波検出装置の構成を説明する。本実施形態は、概ね、上述した実施形態及び変形例と類似又は同じである。第二実施形態は、光電変換部の構造及び電子変換部への電位の付与方法において、上述した第一実施形態及び変形例と相違する。以下、上述した第一実施形態との相違点を主として説明する。第二実施形態のメタサーフェスも、第一実施形態のメタサーフェス22と同様にアクティブタイプである。
【0094】
図7は、第二実施形態における電子放出部材の平面図である。本実施形態における電子放出部材20は、メタサーフェス22Aを有している。メタサーフェス22Aは、アクティブタイプであり、バイアス電圧の付与によって動作する。メタサーフェス22Aは、電源部60によって電位を付与されることによって動作する。図7に示されている例では、メタサーフェス22Aは、2つの光電変換部23A,24Aを含んでいる。光電変換部23Aと光電変換部24Aとは、互いに異なる波長域の電磁波に対応している。換言すれば、複数の光電変換部23A,24Aは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有している。
【0095】
メタサーフェス22Aにおける複数の光電変換部23A,24Aは、互いに異なる構成を有するパターンを含んでいる。各パターンは、支持体21の主面21b上に配されている。各パターンは、互いに異なる形状を有している。光電変換部23A,24Aのそれぞれが、互いに異なる形状を有するパターン33A,34Aを含んでいる。光電変換部23Aはパターン33Aを含んでおり、光電変換部24Aはパターン34Aを含んでいる。各パターン33A,34Aは、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン33A,34Aは、少なくともメタサーフェス22の酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。
【0096】
各パターン33A,34Aは、複数の第一部分37Aと複数の第二部分38Aとを含んでいる。本変形例において、各パターン33A,34Aは、2つの第一部分37Aと2つの第二部分38Aとを含んでいる。各パターン33A,34Aにおいて、第一部分37Aと第二部分38AとがZ軸方向に交互に配置されている。各パターン33A,34Aの各第一部分37Aは、先端39Aを含んでいる。各パターン33A,34Aの各第二部分38Aは、先端40Aを含んでいる。互いに隣り合う第一部分37Aと第二部分38Aとにおいて、先端39Aと先端40AとがZ軸方向において互いに面している。各パターン33A,34Aにおいて、第一部分37Aと第二部分38Aとは、酸化物層を介して接続されている。各パターン33A,34Aにおいて、第一部分37Aと第二部分38Aとは、酸化物層によって分離されており、少なくとも光電変換装置2の非動作時において互いに絶縁されている。
【0097】
第一部分37Aは、第二部分38Aよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。同様に、第二部分38Aは、第一部分37Aよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。したがって、各光電変換部23A,24Aは、電位の状態に応じて、第一部分37Aと第二部分38Aとのいずれからも電子を放出することができる。
【0098】
図7に示されている例において、各パターン33A,34Aの各第二部分38Aは、Z軸方向に延在する複数の線形状部44Aと、Y軸方向に延在すると共に複数の線形状部44Aを連結する線形状部41Aとを含んでいる。複数の線形状部44Aは、線形状部41Aから、対応する第一部分37Aに向かって延在している。各線形状部44Aは、線形状部41Aから+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。各線形状部44Aは、例えば、直線状を呈している。複数の線形状部44Aは、例えば、互いに平行である。線形状部41Aは、例えば、直線状を呈している。各線形状部44Aは、その中央において線形状部41Aに連結されている。
【0099】
各パターン33A,34Aの各第一部分37Aは、Z軸方向に延在する複数の線形状部42Aと、Y軸方向に延在すると共に複数の線形状部42Aを連結する線形状部43Aとを含んでいる。複数の線形状部42Aは、線形状部43Aから、対応する第二部分38Aに向かって延在している。各線形状部42Aは、線形状部43Aから+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。各線形状部42Aは、例えば、直線状を呈している。複数の線形状部42Aは、例えば、互いに平行である。線形状部43Aは、例えば、直線状を呈している。各線形状部42Aは、その中央において線形状部43Aに連結されている。各パターン33A,34Aの線形状部41Aと線形状部43Aとは、例えば、互いに平行である。
【0100】
図7に示されている例において、各線形状部42Aは、一対の先端39Aを含んでいる。各先端39Aは、同一パターンの他の線形状部42A及び線形状部43A、並びに、他のパターンから離間している。各線形状部44Aは、一対の先端40Aを含んでいる。各先端40Aは、同一パターンの他の線形状部44A及び線形状部41A、並びに、他のパターンから離間している。互いに対向する先端39Aと先端40Aとは、互いに面している。互いに面している先端40Aと先端39Aとの最短距離は、第一部分37Aのうち先端39A以外の箇所と各先端40Aとの最短距離より小さい。互いに面している先端39Aと先端40Aとの最短距離は、第二部分38Aのうち先端40A以外の箇所と各先端39Aとの最短距離よりも小さい。換言すれば、先端39Aは、この先端39Aを含んでいる線形状部42Aにおいて、対応する線形状部44Aに最も近い部分である。先端40Aは、この先端40Aを含んでいる線形状部44Aにおいて、対応する線形状部42Aに最も近い部分である。先端39Aは、この先端39Aが含まれているパターンの他の部分よりも、線形状部42Aの近くに配置されている。先端40Aは、この先端40Aが含まれているパターンの他の部分よりも、線形状部42Aの近くに配置されている。
【0101】
各光電変換部23A,24Aにおいて、第二部分38Aの線形状部44Aは、第一部分37Aの線形状部42Aよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。この場合、線形状部42Aはバイアス部を構成し、線形状部44Aはアンテナ部を構成する。各光電変換部23A,24Aにおいて、第一部分37Aの線形状部42Aは、第二部分38Aの線形状部44Aよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。この場合、線形状部44Aはバイアス部を構成し、線形状部42Aはアンテナ部を構成する。換言すれば、各光電変換部23A,24Aにおいて、第一部分37Aと第二部分38Aとの少なくとも一方は、アンテナ部とバイアス部を兼ねている。
【0102】
複数のパターン33A,34Aの線形状部42Aは、互いに異なる長さT4,T5を有している。換言すれば、光電変換部23Aの線形状部42Aと光電変換部24Aの線形状部42Aとは、互いに異なる長さT4,T5を有している。各パターン33A,34Aにおける線形状部42Aの長さT4,T5は、各線形状部42Aの一方の先端39Aから他方の先端39AまでのZ軸方向における長さである。
【0103】
複数のパターン33A,34Aの線形状部44Aは、互いに異なる長さT6,T7を有している。換言すれば、光電変換部23Aの線形状部44Aと光電変換部24Aの線形状部44Aとは、互いに異なる長さT6,T7を有している。各パターン33A,34Aにおける線形状部44Aの長さT6,T7は、各線形状部44Aの一方の先端40Aから他方の先端40AまでのZ軸方向における長さである。
【0104】
パターン33Aにおいて、複数の線形状部42Aの長さT4は同一である。パターン34Aにおいて、複数の線形状部42Aの長さT5は同一である。パターン33Aにおいて、複数の線形状部44Aの長さT6は同一である。パターン34Aにおいて、複数の線形状部44Aの長さT7は同一である。各パターン33A,34Aにおける線形状部42Aの長さT4,T5は、線形状部44Aよりも低い電位が線形状部42Aに付与された状態において、各光電変換部23A,24Aにおいて電子が放出される電磁波の波長域に対応している。各パターン33A,34Aにおける線形状部44Aの長さT6,T7は、線形状部42Aよりも低い電位が線形状部44Aに付与された状態において、各光電変換部23A,24Aにおいて電子が放出される電磁波の波長域に対応している。例えば、長さT4,T5、又は、長さT6,T7は、所望の波長域の中心波長の半分の長さを有する。上述したように、支持体21等を透過した電磁波が線形状部42に入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率も考慮される。
【0105】
図7に示されている例において、電子放出部材20は、互いに離間している複数の電極71,72,73,74をさらに備えている。複数の電極71,72,73,74は、複数の光電変換部23A,24Aの少なくとも一つに電気的に接続されている。図7に示されている例において、電子放出部材20は、2つの電極71と、2つの電極72と、2つの電極73と、2つの電極74とを備えている。図7に示されている例において、各電極71,72,73,74は、矩形状を呈している。変形例として、各電極71,72,73,74は、第一部分37A又は第二部分38Aと同様に線形状を呈していてもよい。各電極71,72,73,74は、第一部分37A又は第二部分38Aと一体に形成されていてもよい。
【0106】
例えば、各電極71は、光電変換部23Aの1つの第一部分37Aに電気的に接続されている。各電極72は、光電変換部23Aの1つの第二部分38Aに電気的に接続されている。各電極73は、光電変換部24Aの1つの第一部分37Aに電気的に接続されている。各電極74は、光電変換部24Aの1つの第二部分38Aに電気的に接続されている。
【0107】
図7に示されている例において、光電変換部23A,24Aの各々は、複数の電極71,72,73,74を介して電源部60から電位を付与されることによって動作する。電源部60の電位付与部61は、複数の電極71,72,73,74を介して、各光電変換部23A,24Aに電位を付与する。電源部60の電位制御部62は、光電変換部23A,24Aのそれぞれに付与する電位を制御する。
【0108】
第二実施形態における電子放出部材を用いた電磁波検出方法では、例えば、図6に示した電磁波検出方法のうち処理S12及び処理S13が除かれた処理が行われる。この場合、光電変換部23A及び光電変換部24の双方を動作させる光電変換部として、処理S14が実行される。
【0109】
各パターン33Aにおいて、各線形状部44Aの長さと各線形状部42Aの長さとが互いに異なるように構成されている場合には、処理S12を実行し、決定された波長の範囲に応じて電極71と電極72とに付与する電位を変更してもよい。同様に、各パターン34Aにおいて、各線形状部44Aの長さと各線形状部42Aの長さとが互いに異なるように構成されている場合には、処理S12を実行し、決定された波長の範囲に応じて電極73と電極74とに付与する電位を変更してもよい。
【0110】
次に、図8を参照して、第二実施形態の変形例の構成について説明する。図8は、第二実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。この変形例において、電子放出部材20は、メタサーフェス22Bを有している。メタサーフェス22Bは、アクティブタイプであり、バイアス電圧の付与によって動作する。メタサーフェス22Bは、電源部60によって電位を付与されることによって動作する。図8に示されている例では、メタサーフェス22Bは、複数の光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bを含んでいる。複数の光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bの各々は、互いに異なる波長域の電磁波に対応している。換言すれば、複数の光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有している。光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bは、Y軸方向に配列されている。光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bは、+Y軸方向において、光電変換部27B,26B,25B,24B,23Bの順に配置されている。
【0111】
メタサーフェス22Bにおける複数の光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bは、互いに異なる構成を有するパターンを含んでいる。各パターンは、支持体21の主面21b上に配されている。各パターンは、互いに異なる形状を有している。光電変換部23Bはパターン31Bを含んでおり、光電変換部24Bはパターン32Bを含んでおり、光電変換部25Bはパターン33Bを含んでおり、光電変換部26Bはパターン34Bを含んでおり、光電変換部27Bはパターン35Bを含んでいる。各パターン31B,32B,33B,34B,35Bは、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン31B,32B,33B,34B,35Bは、少なくともメタサーフェス22の酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。
【0112】
各パターン31B,32B,33B,34B,35Bは、第一部分37Bと第二部分38Bとを含んでいる。本変形例において、各パターン31B,32B,33B,34B,35Bは、1つの第一部分37Bと1つの第二部分38Bとを含んでいる。各パターン31B,32B,33B,34B,35Bの各第一部分37Bは、先端39Bを含んでいる。各パターン31B,32B,33B,34B,35Bの各第二部分38Bは、先端40Bを含んでいる。互いに隣り合う第一部分37Bと第二部分38Bとにおいて、先端39Bと先端40BとがZ軸方向において互いに面している。各パターン31B,32B,33B,34B,35Bにおいて、第一部分37Bと第二部分38Bとは、酸化物層を介して接続されている。各パターン31B,32B,33B,34B,35Bにおいて、第一部分37Bと第二部分38Bとは、酸化物層によって分離されており、少なくとも光電変換装置2の非動作時において互いに絶縁されている。
【0113】
第一部分37Bは、第二部分38Bよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。同様に、第二部分38Bは、第一部分37Bよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。したがって、各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bは、電位の状態に応じて、第一部分37Bと第二部分38Bとのいずれからも電子を放出することができる。
【0114】
図8に示されている例において、各パターン31B,32B,33B,34B,35Bの各第一部分37Bは、それぞれ、Z軸方向に延在する線形状部83B,84B,85B,86B,87Bと、Y軸方向に延在すると共に複数の線形状部83B,84B,85B,86B,87Bを連結する線形状部82Bとを含んでいる。換言すれば、各パターン31B,32B,33B,34B,35Bの各第一部分37Bは、1つの線形状部82Bによって互いに連結されている。パターン31Bの第一部分37Bは、線形状部83Bと線形状部82Bとを含んでいる。パターン32Bの第一部分37Bは、線形状部84Bと線形状部82Bとを含んでいる。パターン33Bの第一部分37Bは、線形状部85Bと線形状部82Bとを含んでいる。パターン34Bの第一部分37Bは、線形状部86Bと線形状部82Bとを含んでいる。パターン35Bの第一部分37Bは、線形状部87Bと線形状部82Bとを含んでいる。
【0115】
複数の線形状部83B,84B,85B,86B,87Bは、線形状部82Bから、対応する第二部分38Bに向かって延在している。各線形状部83B,84B,85B,86B,87Bは、線形状部82Bから+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。各線形状部83B,84B,85B,86B,87Bは、例えば、直線状を呈している。複数の線形状部83B,84B,85B,86B,87Bは、例えば、互いに平行である。線形状部82Bは、例えば、直線状を呈している。各線形状部83B,84B,85B,86B,87Bは、その中央において線形状部82Bに連結されている。
【0116】
各パターン31B,32B,33B,34B,35Bの各第二部分38Bは、それぞれ、Z軸方向に延在する線形状部93B,94B,95B,96B,97Bと、Y軸方向に延在すると共に複数の線形状部93B,94B,95B,96B,97Bを連結する線形状部92Bとを含んでいる。換言すれば、各線形状部93B,94B,95B,96B,97Bの各第二部分38Bは、1つの線形状部92Bによって互いに連結されている。パターン31Bの第二部分38Bは、線形状部93Bと線形状部92Bとを含んでいる。パターン32Bの第二部分38Bは、線形状部94Bと線形状部92Bとを含んでいる。パターン33Bの第二部分38Bは、線形状部95Bと線形状部92Bとを含んでいる。パターン34Bの第二部分38Bは、線形状部96Bと線形状部92Bとを含んでいる。パターン35Bの第二部分38Bは、線形状部97Bと線形状部92Bとを含んでいる。
【0117】
複数の線形状部93B,94B,95B,96B,97Bは、線形状部92Bから、対応する第一部分37Bに向かって延在している。各線形状部93B,94B,95B,96B,97Bは、線形状部92Bから+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。各線形状部93B,94B,95B,96B,97Bは、例えば、直線状を呈している。複数の線形状部93B,94B,95B,96B,97Bは、例えば、互いに平行である。線形状部92Bは、例えば、直線状を呈している。各線形状部93B,94B,95B,96B,97Bは、その中央において線形状部92Bに連結されている。各パターン31B,32B,33B,34B,35Bの線形状部82Bと線形状部92Bとは、例えば、互いに平行である。
【0118】
図8に示されている例において、各線形状部83B,84B,85B,86B,87Bは、一対の先端39Bを含んでいる。各先端39Bは、同一パターンの他の線形状部、及び、他のパターンから離間している。各線形状部93B,94B,95B,96B,97Bは、一対の先端40Bを含んでいる。各先端40Bは、同一パターンの他の線形状部、及び、他のパターンから離間している。互いに対向する先端39Bと先端40Bとは、互いに面している。互いに面している先端39Bと先端40Bとの最短距離は、第一部分37Bのうち先端39B以外の箇所と各先端40Bとの最短距離より小さい。互いに面している先端39Bと先端40Bとの最短距離は、第二部分38Bのうち先端40B以外の箇所と各先端39Bとの最短距離よりも小さい。換言すれば、先端40Bは、この先端40Bを含んでいる線形状部93B,94B,95B,96B,97Bにおいて、対応する線形状部83B,84B,85B,86B,87Bに最も近い部分である。先端39Bは、この先端39Bを含んでいる線形状部83B,84B,85B,86B,87Bにおいて、対応する線形状部93B,94B,95B,96B,97Bに最も近い部分である。先端39Bは、この先端39Bが含まれているパターンの他の部分よりも、線形状部93B,94B,95B,96B,97Bの近くに配置されている。先端40Bは、この先端40Bが含まれているパターンの他の部分よりも、線形状部83B,84B,85B,86B,87Bの近くに配置されている。
【0119】
Z軸方向において互いに面している線形状部83B,84B,85B,86B,87Bと、線形状部93B,94B,95B,96B,97Bとの最短距離は、一定である。例えば、光電変換部23Bに含まれている線形状部83Bと線形状部93Bとの最短距離は、光電変換部24Bに含まれている線形状部84Bと線形状部94Bとの最短距離と同一である。
【0120】
各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bにおいて、第一部分37Bの各線形状部83B,84B,85B,86B,87Bは、第二部分38Bの線形状部93B,94B,95B,96B,97Bよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。この場合、線形状部93B,94B,95B,96B,97Bはバイアス部を構成し、線形状部83B,84B,85B,86B,87Bはアンテナ部を構成する。各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bにおいて、第二部分38Bの各線形状部93B,94B,95B,96B,97Bは、第一部分37Bの線形状部83B,84B,85B,86B,87Bよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。この場合、線形状部83B,84B,85B,86B,87Bはバイアス部を構成し、線形状部93B,94B,95B,96B,97Bはアンテナ部を構成する。換言すれば、各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bにおいて、第一部分37Bと第二部分38Bとの少なくとも一方は、アンテナ部とバイアス部を兼ねている。
【0121】
複数のパターン31B,32B,33B,34B,35Bの線形状部83B,84B,85B,86B,87Bは、互いに異なる長さを有している。例えば、パターン31Bの線形状部83Bの長さT8とパターン35Bの線形状部87Bの長さT9とは、互いに異なる。各パターン31B,32B,33B,34B,35Bにおける線形状部83B,84B,85B,86B,87Bの長さは、各線形状部83B,84B,85B,86B,87Bの一方の先端39Bから他方の先端39BまでのZ軸方向における長さである。例えば、長さT8は、長さT9よりも小さい。
【0122】
本実施形態において、線形状部86Bの長さは、線形状部87Bの長さよりも小さい。線形状部85Bの長さは、線形状部86Bの長さよりも小さい。線形状部84Bの長さは、線形状部85Bの長さよりも小さい。線形状部83Bの長さは、線形状部84Bの長さよりも小さい。換言すれば、線形状部87B,86B,85B,84B,83Bは、+Y軸方向に向かうにつれて短くなるように構成されている。
【0123】
複数のパターン31B,32B,33B,34B,35Bの線形状部93B,94B,95B,96B,97Bは、互いに異なる長さを有している。例えば、パターン31Bの線形状部93Bの長さT10とパターン35Bの線形状部97Bの長さT11とは、互いに異なる。各パターン31B,32B,33B,34B,35Bにおける線形状部93B,94B,95B,96B,97Bの長さは、各線形状部93B,94B,95B,96B,97Bの一方の先端40Bから他方の先端40BまでのZ軸方向における長さである。例えば、長さT10は、長さT11よりも大きい。
【0124】
本実施形態において、線形状部96Bの長さは、線形状部97Bの長さよりも大きい。線形状部95Bの長さは、線形状部96Bの長さよりも大きい。線形状部94Bの長さは、線形状部95Bの長さよりも大きい。線形状部93Bの長さは、線形状部94Bの長さよりも大きい。換言すれば、線形状部97B,96B,95B,94B,93Bは、+Y軸方向に向かうにつれて長くなるように構成されている。
【0125】
線形状部83B,84B,85B,86B,87Bの長さは、線形状部93B,94B,95B,96B,97Bよりも低い電位が線形状部83B,84B,85B,86B,87Bに付与された状態において、各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bにおいて電子が放出される電磁波の波長域に対応している。線形状部93B,94B,95B,96B,97Bの長さは、線形状部83B,84B,85B,86B,87Bよりも低い電位が線形状部93B,94B,95B,96B,97Bに付与された状態において、各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bにおいて電子が放出される電磁波の波長域に対応している。例えば、線形状部83B,84B,85B,86B,87Bの長さ、又は、線形状部93B,94B,95B,96B,97Bの長さは、所望の波長域の中心波長の半分の長さを有する。上述したように、支持体21等を透過した電磁波が線形状部42に入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率も考慮される。
【0126】
図8に示されている例において、電子放出部材20は、互いに離間している複数の電極71B,72Bをさらに備えている。図8に示されている例において、電子放出部材20は、1つの電極71Bと、1つの電極72Bとを備えている。図8に示されている例において、各電極71B,72Bは、矩形状を呈している。変形例として、各電極71B,72Bは、第一部分37B又は第二部分38Bと同様に線形状を呈していてもよい。各電極71B,72Bは、第一部分37B又は第二部分38Bと一体に形成されていてもよい。
【0127】
例えば、電極71Bは、各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bの第一部分37Bに電気的に接続されている。電極72Bは、各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bの第二部分38Bに電気的に接続されている。図8に示されている例において、光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bの各々は、複数の電極71B,72Bを介して電源部60から電位を付与されることによって動作する。電源部60の電位付与部61は、複数の電極71B,72Bを介して、各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bに電位を付与する。電源部60の電位制御部62は、第一部分37B及び第二部分38Bのそれぞれに付与する電位を制御する。
【0128】
図8に示されている例において、互いに異なる長さを有する線形状部83B,84B,85B,86B,87Bが、線形状部82Bによって互いに接続されている。このため、電極72Bよりも低い電位が電極71Bに付与された状態において、線形状部83B,84B,85B,86B,87Bのそれぞれに対応する波長域の電磁波の入射に応じて、線形状部83B,84B,85B,86B,87Bから電子が放出される。図8に示されている例において、互いに異なる長さを有する線形状部93B,94B,95B,96B,97Bが、線形状部92Bによって互いに接続されている。このため、電極71Bよりも低い電位が電極72Bに付与された状態において、線形状部93B,94B,95B,96B,97Bのそれぞれに対応する波長域の電磁波の入射に応じて、線形状部93B,94B,95B,96B,97Bから電子が放出される。
【0129】
このように、図8に示されている例において、互いに異なる長さを有している線形状部83B,84B,85B,86B,87Bは、同一の線形状部82Bによって接続されている。互いに異なる長さを有している線形状部93B,94B,95B,96B,97Bは、同一の線形状部92Bによって接続されている。このような構成によれば、よりコンパクトな構成によって、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が確保される。換言すれば、よりコンパクトな構成でありながら、互いに異なる波長成分を有する電磁波が同時に検出され得る。また、Z軸方向において互いに面している線形状部83B,84B,85B,86B,87Bと線形状部93B,94B,95B,96B,97Bとの最短距離は、一定である。このため、各光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bにおける電磁波の感度が確保されている。
【0130】
次に、図9を参照して、第二実施形態のさらに別の変形例の構成について説明する。図9は、第二実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。この変形例において、電子放出部材20は、メタサーフェス22Cを有している。メタサーフェス22Cも、アクティブタイプであり、バイアス電圧の付与によって動作する。本変形例は、概ね、図8に示した例と類似又は同じである。メタサーフェス22Bのアンテナ部はダイポールアンテナを含んでいるのに対して、メタサーフェス22Cのアンテナ部はダイヤモンドアンテナを含んでいる。以下、図8に示した変形例と図9に示した変形例との相違点を主として説明する。
【0131】
図9に示されている例では、メタサーフェス22Cは、複数の光電変換部23C,24C,25C,26Cを含んでいる。複数の光電変換部23C,24C,25C,26Cの各々は、互いに異なる波長域の電磁波に対応している。換言すれば、複数の光電変換部23C,24C,25C,26Cは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有している。光電変換部23C,24C,25C,26Cは、+Y軸方向において、光電変換部26C,25C,24C,23Cの順に配置されている。
【0132】
光電変換部23Cはパターン31Cを含んでおり、光電変換部24Cはパターン32Cを含んでおり、光電変換部25Cはパターン33Cを含んでおり、光電変換部26Cはパターン34Cを含んでいる。各パターン31C,32C,33C,34Cは、各パターン31B,32B,33B,34Bに対応し、各パターン31B,32B,33B,34Bと同様の材料によって構成されている。
【0133】
各パターン31C,32C,33C,34Cは、第一部分37Cと第二部分38Cとを含んでいる。各パターン31C,32C,33C,34Cの各第一部分37Cは、先端39Cを含んでいる。各パターン31C,32C,33C,34Cの各第二部分38Cは、先端40Cを含んでいる。各第一部分37Cは各第一部分37Bに対応し、及び各第二部分38Cは各第二部分38Bに対応する。先端39Cは先端39Bに対応し、先端40Cは先端40Bに対応する。
【0134】
図9に示されている例において、各パターン31C,32C,33C,34Cの各第一部分37Cは、それぞれ、Z軸方向に延在する菱形状部83C,84C,85C,86Cと、Y軸方向に延在すると共に複数の菱形状部83C,84C,85C,86Cを連結する線形状部82Cとを含んでいる。線形状部部82Cは、線形状部82Bに対応する。菱形状部83C,84C,85C,86Cは、線形状部83B,84B,85B,86Bに対応する。
【0135】
複数の菱形状部83C,84C,85C,86Cは、線形状部82Cから、対応する第二部分38Cに向かって延在している。各菱形状部83C,84C,85C,86Cは、線形状部82Cから+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。各菱形状部83C,84C,85C,86Cは、その中央において線形状部82Cに連結されている。例えば、線形状部82Cは、各菱形状部83C,84C,85C,86Cの2つの頂点に接続されている。
【0136】
図9に示されている例において、各パターン31C,32C,33C,34Cの各第二部分38Cは、それぞれ、Z軸方向に延在する菱形状部93C,94C,95C,96Cと、Y軸方向に延在すると共に複数の菱形状部93C,94C,95C,96Cを連結する線形状部92Cとを含んでいる。線形状部92Cは、線形状部92Bに対応する。菱形状部93C,94C,95C,96Cは、線形状部93B,94B,95B,96Bに対応する。菱形状部93C,94C,95C,96Cは、菱形状を呈している点において、線形状部93B,94B,95B,96Bと異なる。
【0137】
複数の菱形状部93C,94C,95C,96Cは、線形状部92Cから、対応する第一部分37Cに向かって延在している。各菱形状部93C,94C,95C,96Cは、線形状部92Cから+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。各菱形状部93C,94C,95C,96Cは、その中央において線形状部92Cに連結されている。例えば、線形状部92Cは、各菱形状部93C,94C,95C,96Cの2つの頂点に接続されている。
【0138】
各光電変換部23C,24C,25C,26Cにおいて、第一部分37Cの菱形状部83C,84C,85C,86Cは、第二部分38Cの菱形状部93C,94C,95C,96Cよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。この場合、菱形状部93C,94C,95C,96Cはバイアス部を構成し、菱形状部83C,84C,85C,86Cはアンテナ部を構成する。この場合、菱形状部83C,84C,85C,86Cは、ボウタイアンテナを構成する。
【0139】
各光電変換部23C,24C,25C,26Cにおいて、第二部分38Cの菱形状部93C,94C,95C,96Cは、第一部分37Cの菱形状部83C,84C,85C,86Cよりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。この場合、菱形状部83C,84C,85C,86Cはバイアス部を構成し、菱形状部93C,94C,95C,96Cはアンテナ部を構成する。この場合、菱形状部93C,94C,95C,96Cは、ボウタイアンテナを構成する。換言すれば、各光電変換部23C,24C,25C,26Cにおいて、第一部分37Cと第二部分38Cとの少なくとも一方は、アンテナ部とバイアス部を兼ねている。
【0140】
複数のパターン31C,32C,33C,34Cの菱形状部83C,84C,85C,86Cは、互いに異なる長さを有している。例えば、パターン31Cの菱形状部83Cの長さT12とパターン34Cの菱形状部86Cの長さT13とは、互いに異なる。各パターン31C,32C,33C,34Cにおける菱形状部83C,84C,85C,86Cの長さは、各菱形状部83C,84C,85C,86Cの一方の先端39Cから他方の先端39CまでのZ軸方向における長さである。例えば、長さT12は、長さT13よりも大きい。
【0141】
本実施形態において、菱形状部85Cの長さは、菱形状部86Cの長さよりも大きい。菱形状部84Cの長さは、菱形状部85Cの長さよりも大きい。菱形状部83Cの長さは、菱形状部84Cの長さよりも大きい。換言すれば、菱形状部86C,85C,84C,83Cは、+Y軸方向に向かうにつれて長くなるように構成されている。
【0142】
複数のパターン31C,32C,33C,34Cの菱形状部93C,94C,95C,96Cは、互いに異なる長さを有している。例えば、パターン31Cの菱形状部93Cの長さT14とパターン34Cの菱形状部96Cの長さT15とは、互いに異なる。各パターン31C,32C,33C,34Cにおける菱形状部93C,94C,95C,96Cの長さは、各菱形状部93C,94C,95C,96Cの一方の先端40Cから他方の先端40CまでのZ軸方向における長さである。
【0143】
本実施形態において、菱形状部95Cの長さは、菱形状部96Cの長さよりも小さい。菱形状部94Cの長さは、菱形状部95Cの長さよりも小さい。菱形状部93Cの長さは、菱形状部94Cの長さよりも小さい。換言すれば、菱形状部96C,95C,94C,93Cは、+Y軸方向に向かうにつれて短くなるように構成されている。
【0144】
図9に示されている例において、電子放出部材20は、互いに離間している複数の電極71C,72Cをさらに備えている。図9に示されている例において、電極71Cは電極71Bに対応し、電極72Cは電極72Bに対応する。
【0145】
このように、図9に示されている例において、互いに異なる長さを有している菱形状部83C,84C,85C,86Cは、同一の線形状部82Cによって接続されている。互いに異なる長さを有している菱形状部93C,94C,95C,96Cは、同一の線形状部92Bによって接続されている。このような構成によれば、よりコンパクトな構成によって、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が確保される。また、Z軸方向において互いに面している菱形状部83C,84C,85C,86Cと菱形状部93C,94C,95C,96Cとの最短距離は、一定である。このため、各光電変換部23C,24C,25C,26Cにおける電磁波の感度が確保されている。
【0146】
図9に示されている例において、メタサーフェス22Cは、アンテナ部として、ダイポールアンテナでなく、ダイヤモンドアンテナを含んでいる。ダイヤモンドアンテナが感度を有する波長の範囲は、ダイポールアンテナが感度を有する波長の範囲よりも広い。このため、よりコンパクトな構成でありながら、互いに異なる波長成分を有する電磁波が同時に検出され得る。
[第三実施形態]
【0147】
次に、図10を参照して、第三実施形態における電磁波検出装置の構成を説明する。図10は、第二実施形態における電磁波検出装置の概略図である。本実施形態は、概ね、上述した実施形態及び変形例と類似又は同じである。本実施形態は、メタサーフェスがパッシブタイプである点において、上述した実施形態及び変形例と相違する。以下、上述した実施形態との相違点を主として説明する。
【0148】
電磁波検出装置1Dは、光電変換装置2Dを含んでいる。光電変換装置2Dは、電磁波の入射に応じて電子を放出する。本実施形態において、電磁波検出装置1Dは、電磁波の入射に応じて光電変換装置2Dから放出された電子に基づいて、入射した電磁波を検出する。
【0149】
電磁波検出装置1Dは、ハウジング10と、電子放出部材20Dと、保持部材30と、電子増倍部40と、電子収集部50と、を備えている。電子放出部材20D、保持部材30、電子増倍部40及び電子収集部50は、ハウジング10内に配置されている。光電変換装置2Dは、ハウジング10と、電子放出部材20Dと、を備え、電磁波検出装置1の一部を構成している。本実施形態における電磁波検出装置1Dは、電源部60を備えていない。
【0150】
電子放出部材20Dは、電磁波の入射に応じて電子を放出する。電子放出部材20Dは、メタサーフェス22Dを有する。メタサーフェス22Dは、パッシブタイプであり、バイアス電圧の付与なしに動作する。メタサーフェス22Dは、支持体21に設けられている。メタサーフェス22Dは、電磁波の入射に応じて電子を放出する。
【0151】
メタサーフェス22Dは、例えば、支持体21の主面21b上に形成された酸化物層と、酸化物層上に形成された金属層とを含んでいる。酸化物層の材料は、たとえば二酸化シリコン及び酸化チタンを含んでいる。例えば、酸化物層は、二酸化シリコンを含む層と、酸化チタンを含む層とを含んでいる。金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。本実施形態において、石英からなる支持体21の主面21b上に、酸化物層が形成され、酸化物層の上に金属層が形成されている。例えば、支持体21の厚さは525μmであり、メタサーフェス22の二酸化シリコンを含む層の厚さは1μmであり、メタサーフェス22の二酸化チタンを含む層の厚さは10nmであり、メタサーフェス22の金属層の厚さは200nmである。メタサーフェス22Dは、平面視で矩形状である。本実施形態の変形例において、メタサーフェス22Dは、主面21aに設けられていてもよい。
【0152】
次に、図11(a)及び図11(b)を参照して、光電変換装置2Dについて更に詳細に説明する。図11(a)は、第三実施形態における電子放出部材の平面図である。メタサーフェス22Dは、複数の光電変換部23D,24D,25D,26Dを含んでいる。光電変換部23D,24D,25D,26Dは、Z軸方向に配列されている。
【0153】
複数の光電変換部23D,24D,25D,26Dは、それぞれ対応する波長の入射に応じて電子を放出する。光電変換部23D,25Dと、光電変換部24D,26Dとは、互いに異なる波長域の電磁波に対応している。換言すれば、光電変換部23D,25Dと、光電変換部24D,26Dとは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有している。光電変換部23Dと光電変換部25Dとは、同一の波長域の電磁波に対応している。光電変換部24Dと光電変換部26Dとは、同一の波長域の電磁波に対応している。
【0154】
光電変換部23D,24D,25D,26Dは、同一電位である。光電変換部23D,24D,25D,26Dは、互いに電気的に接続されている。本実施形態の変形例として、光電変換部23D,24D,25D,26Dは、互いに電気的に接続されずに、同一電位、例えばグラウンドに接続されていてもよい。
【0155】
本実施形態においても、図2に示されている例と同様に、ハウジング10に入射した電磁波Wが、光電変換部23D,24D,25D,26Dに入射する。この結果、光電変換部23D,24D,25D,26Dのうち電磁波Wの波長に対応する光電変換部は、電磁波Wの入射に応じて電子を放出する。光電変換部23D,24D,25D,26Dの少なくとも1つから放出された電子は、電子増倍部40に入射する。電子増倍部40において増倍された電子は、電子収集部50において収集される。
【0156】
図11(a)に示されているように、光電変換部23D,25Dと光電変換部24D,26Dとは、互いに異なる構成を有するパターン33D,34D,35D,36Dを含んでいる。光電変換部23D,25Dのパターン33D,35Dと、光電変換部24D,26Dのパターン34D,36Dとは、互いに異なる形状を有している。光電変換部23Dと光電変換部25Dとは、同一形状のパターン33D,35Dを含んでいる。光電変換部24Dと光電変換部26Dとは、同一形状のパターン34D,36Dを含んでいる。各パターン33D,34D,35D,36Dは、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン33D,34D,35D,36Dは、少なくともメタサーフェス22の酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。パターン33D,34D,35D,36Dは、同一電位である。
【0157】
電子放出部材20Dは、枠パターン110Dをさらに備えている。枠パターン110は、パターン33D,34D,35D,36Dのそれぞれに電気的に接続されている。パターン33D,34D,35D,36Dは、枠パターン110を介して、互いに電気的に接続されている。枠パターン110は、支持体21の主面21b上に設けられている。枠パターン110は、パターン33D,34D,35D,36Dを囲むように、主面21bの縁に沿って設けられている。枠パターン110は、例えば、矩形枠状を呈している。
【0158】
各パターン33D,34D,35D,36Dは、Z軸方向に延在している複数の線形状部42Dと、Y軸方向に延在していると共に複数の線形状部42Dを連結している線形状部43Dとを含んでいる。各線形状部42D,43Dは、例えば、直線状を呈している。複数の線形状部42Dは、例えば、互いに平行である。複数の線形状部42Dは、先端39Dを有している。各パターン33D,34D,35D,36Dの先端39Dは、同一パターンの他の線形状部42D及び線形状部43D、並びに、他のパターンから離間している。図11(a)に示されていないが、各パターン33D,34D,35D,36Dは、先端39Dに面していると共に線形状部43Dに接続された線部を含んでいてもよい。図11(a)に示されていないが、各パターン33D,34D,35D,36Dは、各線形状部42Dを囲むように配置された線部を含んでいてもよい。
【0159】
各線形状部42Dは、電磁波の入射に応じて電子を放出する。換言すれば、線形状部42Dは、アンテナ部を構成する。アンテナ部のサイズが小さいほど、波長が短い電磁波、すなわち、周波数が大きい電磁波に対して電界電子放出が生じやすい。メタサーフェス22Dの光電変換部23D,25D,24D,26Dは、それぞれ、線形状部42Dの構造の変更に応じて、例えば、0.01~150THz程度の周波数域、いわゆるミリ波から赤外光の周波数域内の波長に対応するように構成される。
【0160】
複数の光電変換部23D,25D,24D,26Dのうち少なくとも2つの光電変換部の線形状部42Dは、互いに異なる長さを有している。例えば、光電変換部23D,25Dの線形状部42Dと光電変換部24D,26Dの線形状部42Dとは、互いに異なる長さT16,T17を有している。各パターン33D,34D,35D,36Dにおける線形状部42Dの長さT16,T17は、線形状部42Dの一方の先端39Dから他方の先端39DまでのZ軸方向における長さである。
【0161】
各パターン33D,35Dにおいて、複数の線形状部42Dの長さT16は同一である。各パターン34D,36Dにおいて、複数の線形状部42Dの長さT17は同一である。各パターン33D,34D,35D,36Dにおける線形状部42Dの長さT16,T17は、各光電変換部23D,24D,25D,26Dにおいて電子が放出される電磁波の波長域に対応している。
【0162】
図11(b)は、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。メタサーフェス22Eは、複数の光電変換部23E,24E,25E,26Eを含んでいる。光電変換部23E,24E,25E,26Eは、X軸方向から見て、行列状に配列されている。
【0163】
複数の光電変換部23E,24E,25E,26Eは、それぞれ対応する波長の入射に応じて電子を放出する。光電変換部23E,25Eと、光電変換部24E,26Eとは、互いに異なる波長域の電磁波に対応している。換言すれば、光電変換部23E,25Eと、光電変換部24E,26Eとは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有している。光電変換部23Eと光電変換部25Eとは、同一の波長域の電磁波に対応している。光電変換部24Eと光電変換部26Eとは、同一の波長帯の電磁波に対応している。光電変換部23E,24E,25E,26Eは、同一電位である。光電変換部23E,24E,25E,26Eは、互いに電気的に接続されている。
【0164】
本変形例においても、図2に示されている例と同様に、ハウジング10に入射した電磁波Wが、光電変換部23E,24E,25E,26Eに入射する。この結果、光電変換部23E,24E,25E,26Eのうち電磁波Wの波長に対応する光電変換部は、電磁波Wの入射に応じて電子を放出する。光電変換部23E,24E,25E,26Eの少なくとも1つから放出された電子は、電子増倍部40に入射する。電子増倍部40において増倍された電子は、電子収集部50において収集される。
【0165】
図11(b)に示されているように、光電変換部23E,25Eと光電変換部24E,26Eとには、互いに異なる構成を有するパターン33E,34E,35E,36Eを含んでいる。光電変換部23E,25Eのパターン33E,35Eと、光電変換部24E,26Eのパターン34E,36Eとは、互いに異なる形状を有している。光電変換部23Eと光電変換部25Eとは、同一形状のパターン33E,35Eを含んでいる。光電変換部24Eと光電変換部26Eとは、同一形状のパターン34E,36Eを含んでいる。各パターン33E,34E,35E,36Eは、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン33E,34E,35E,36Eは、少なくともメタサーフェス22の酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。パターン33E,34E,35E,36Eは、同一電位である。
【0166】
本変形例において、電子放出部材20Eは、互いに連結された4つの枠パターン110Eをさらに備えている。各枠パターン110Eは、パターン33E,34E,35E,36Eのそれぞれに電気的に接続されている。パターン33E,34E,35E,36Eは、各枠パターン110Eを介して、互いに電気的に接続されている。各枠パターン110Eは、支持体21の主面21b上に設けられている。各枠パターン110Eは、対応するパターン33E,34E,35E,36Eを囲むように設けられている。各枠パターン110Eは、例えば、矩形枠状を呈している。各枠パターン110Eによって、光電変換部23Eが設けられている領域と、光電変換部24Eが設けられている領域と、光電変換部25Eが設けられている領域と、光電変換部26Eが設けられている領域とが区画されている。
【0167】
各パターン33E,34E,35E,36Eは、Z軸方向に延在している複数の線形状部42Dと、Y軸方向に延在していると共に複数の線形状部42Dを連結している線形状部43Dとを含んでいる。複数の線形状部42Dの先端39Dは、同一パターンの他の線形状部42D及び線形状部43D、並びに、他のパターンから離間している。図9に示されていないが、各パターン33E,34E,35E,36Eは、先端39Dに面している共に線形状部43Dに接続された線部を含んでいてもよい。図11(b)に示されていないが、各パターン33E,34E,35E,36Eは、各線形状部42Dを囲むように配置された線部を含んでいてもよい。
【0168】
光電変換部23E,25Eの線形状部42Dと光電変換部24E,26Eの線形状部42Dとは、互いに異なる長さT18,T19を有している。各パターン33E,35Eにおいて、複数の線形状部42Dの長さT18は同一である。各パターン34E,36Eにおいて、複数の線形状部42Dの長さT19は同一である。各パターン33E,34E,35E,36Eにおける線形状部42Dの長さT18,T19は、各光電変換部23E,24E,25E,26Eにおいて電子が放出される電磁波の波長域に対応している。
【0169】
第三実施形態の変形例として、メタサーフェス22Dは、光電変換部23D,24D,25D,26Dの代わりに、第二実施形態の変形例における光電変換部23B,24B,25B,26B,27B、及び、光電変換部23C,24C,25C,26Cの少なくとも一つを有していてもよい。例えば、メタサーフェス22Dが、光電変換部23D,24D,25D,26Dの代わりに、光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bを有する場合、図8に示されている線形状部82B及び線形状部92Bの両端が枠パターン110Dに接続される。メタサーフェス22Dが、光電変換部23D,24D,25D,26Dの代わりに、光電変換部23C,24C,25C,26Cを有する場合、図9に示されている線形状部82C及び線形状部92Cの両端が枠パターン110Dに接続される。
【0170】
同様に、メタサーフェス22Eは、光電変換部23E,24E,25E,26Eの代わりに、第二実施形態の変形例における光電変換部23B,24B,25B,26B,27B、及び、光電変換部23C,24C,25C,26Cの少なくとも一つを有していてもよい。例えば、メタサーフェス22Eが、光電変換部23E,24E,25E,26Eの代わりに、光電変換部23B,24B,25B,26B,27Bを有する場合、図8に示されている線形状部82B及び線形状部92Bの両端が各枠パターン110Eに接続される。メタサーフェス22Eが、光電変換部23E,24E,25E,26Eの代わりに、光電変換部23C,24C,25C,26Cを有する場合、図9に示されている線形状部82C及び線形状部92Cの両端が各枠パターン110Eに接続される。
[作用及び効果]
【0171】
この光電変換装置2,2Dにおいて、電子放出部材20,20D,20Eは、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェス22,22A,22B,22C,22D,22Eを有している。メタサーフェス22,22A,22B,22C,22D,22Eは、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有する複数の光電変換部を含んでいる。例えば、メタサーフェス22の複数の光電変換部23,24,25は、互いに異なる構成を有するパターン33,34,35を含んでいる。メタサーフェス22の光電変換部23,24は、互いに異なる形状を有するパターン33,34を含んでいる。各光電変換部23,24におけるパターン33,34の形状は、各光電変換部23,24において電子が放出される電磁波の波長域に関係していると考えられる。複数の光電変換部23,24は、互いに異なる波長域の電磁波に対して感度を有している。したがって、光電変換装置2は、光電変換部23に対応する波長の電磁波と光電変換部24に対応する波長の電磁波とに対して感度を有する。このような構成によって、光電変換部23は光電変換部23に対応する波長域の電磁波の入射に応じて電子を放出し、光電変換部24は光電変換部24に対応する波長域の電磁波の入射に応じて電子を放出する。光電変換装置2Bについても、同様である。以上の様に、光電変換装置2,2Dにおいて、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大されている。
【0172】
光電変換装置2,2Dを備える電磁波検出装置1,1Dは、冷却不要であると共に分光器も光学フィルタも不要である。光電変換装置2,2Dにおいては、パターンを配する領域を拡大するだけで、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェス22,22A,22B,22C,22D,22Eが拡大される。このため、電磁波検出装置1,1Dにおいては、分光器又は光学フィルタを用いた検出装置に比べて容易かつ安価に、電磁波を入射させる領域が拡大され得る。
【0173】
光電変換装置2は、電位を付与することによって動作するアクティブタイプのメタサーフェス22,22A,22B,22Cを有している。例えば、光電変換装置2のメタサーフェス22において、各光電変換部23,24のパターン33,34は、互いに離間している第一部分37及び第二部分88を含んでいる。第二部分38は、第一部分37に面している先端39を含んでいる。第二部分38は、第一部分37よりも低い電位が付与された状態において電磁波の入射に応じて電子を放出する。この場合、各光電変換部23,24の感度が向上する。
【0174】
また、メタサーフェス22において、第一部分37及び第二部分38への電位の付与を制御することによって、動作する光電変換部を切り替えることができる。例えば、複数の光電変換部23,24は互いに異なる波長域の電磁波の入射に応じて電子を放出するため、動作する光電変換部を制御することによって、電子が放出される波長域を切り替えることができる。したがって、第一部分37及び第二部分38への電位の付与を制御することによって、光電変換装置2において電子が放出される電磁波の波長の範囲を制御することができる。光電変換装置2は、分光器及び光学フィルタなどの光学素子がなくとも、各光電変換部に対応する波長域内に波長成分を有する電磁波の入射に応じて電子を放出することができる。
【0175】
上記光電変換装置2を備える電磁波検出装置1は、例えば、分光による検出と同様に、各光電変換部23,24に対応する波長域ごとの電磁波の検出も可能となる。電磁波検出装置1は、例えば、複数の波長域内に波長成分を有する電磁波の有無を一度に検出できる。電磁波検出装置1は、状況に応じて検出する電磁波の波長の範囲を拡大又は縮小することもできる。
【0176】
例えば、光電変換装置2のメタサーフェス22において、各光電変換部23,24の第二部分38は、第一部分37に向かって延在する線形状部42を含んでいる。光電変換部23の線形状部42と光電変換部24の線形状部42とは、互いに異なる長さを有している。線形状部42の長さに応じて、各光電変換部23,24において電子が放出される電磁波の波長域が変化する。したがって、簡易な構成によって、光電変換装置2において電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0177】
例えば、複数の光電変換部23,24において、光電変換部23の第一部分37又は第二部分38と光電変換部24の第一部分37又は第二部分38とは、電気的に接続されている。メタサーフェス22において、光電変換部23の第二部分38と光電変換部24の第二部分38とは、電気的に接続されている。この場合、より簡易な構成によって、光電変換装置2において電子に変換可能な電磁波の波長域が拡大され得る。
【0178】
光電変換装置2は、例えば、各光電変換部23,24,25の第一部分37及び第二部分38に付与する電位を制御する電位制御部62を備えている。この場合、電位制御部62によって、動作させる光電変換部が選択される。
【0179】
電位制御部62は、例えば、光電変換部23の第一及び第二部分37,38と、光電変換部24の第一及び第二部分37,38とに付与する電位を制御する。光電変換部23の第一部分37に付与する電位と光電変換部23の第二部分38に付与する電位との電位差と、光電変換部24の第一部分37に付与する電位と光電変換部24の第二部分38に付与する電位との電位差とは、互いに異なってもよい。この場合、光電変換部23と光電変換部24とが、別々に動作され得る。したがって、光電変換装置2は、電子に変換可能な電磁波の波長の範囲を変更することができる。換言すれば、この光電変換装置2は、複数の光電変換部に対応する複数の波長域のうちの所望の波長域内に波長成分を有する電磁波の入射に応じて電子を放出する。このため、電磁波検出装置1は、例えば、分光による検出と同様に、各光電変換部23,24に対応する波長域ごとの電磁波の検出も可能となる。電磁波検出装置1は、状況に応じて検出する電磁波の波長の範囲を拡大又は縮小することもできる。
【0180】
電位制御部62は、例えば、光電変換部24の第一部分37に付与する電位よりも低い電位を光電変換部24の第二部分38に付与する場合に、光電変換部23の第一部分37に付与する電位よりも高い電位を光電変換部23の第二部分38に付与する。この場合、光電変換部24が電磁波の入射に応じて電子を放出する状態とされながら、光電変換部23からの電磁波の入射に応じた電子の放出が確実に停止され得る。
【0181】
電位制御部62は、例えば、複数の光電変換部23,24,25のうち少なくとも2つの光電変換部において、第一部分37に付与する電位よりも低い電位を第二部分38に付与する。この場合、上記少なくとも2つの光電変換部が、同時に動作される。したがって、例えば、光電変換部23に対応する波長域の電磁波の電子への変換及び光電変換部24に対応する波長域の電磁波の電子への変換が同時に実行され得る。このため、電磁波検出装置1は、例えば、複数の波長域内に波長成分を有する電磁波の有無を一度に検出できる。
【0182】
光電変換装置2Dは、電位の付与なしに動作するパッシブタイプのメタサーフェス22D,22Eを有している。この場合、光電変換装置2Dを備えている電磁波検出装置1Dは、例えば、複数の波長域内に波長成分を有する電磁波の有無を一度に検出できる。光電変換装置2Dにおいて、光電変換部23D,23Eのパターン33D,33Eと光電変換部24D,24Eのパターン34D,34Eとは、同一電位である。この場合、より簡易な構成によって、光電変換装置2Bにおいて電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0183】
光電変換装置2Dにおいて、光電変換部23D,23Eのパターン33D,33Eと光電変換部24D,24Eのパターン34D,34Eとは、互いに電気的に接続されている。この場合、より簡易な構成によって、光電変換装置2Dにおいて電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0184】
光電変換装置2Dにおいて、各光電変換部23D,25D,24D,26Dのパターンは、線形状部を含んでいる。複数の光電変換部23D,25D,24D,26Dのうち少なくとも2つの光電変換部の線形状部42Dは、互いに異なる長さを有している。例えば、光電変換部23D,23Eの線形状部42Dと光電変換部24D,24Eの線形状部42Dとは、互いに異なる長さを有している。線形状部42Dの長さに応じて、各光電変換部において電子が放出される電磁波の波長域が変化する。このため、より簡易な構成によって、光電変換装置2Dにおいて電子に変換可能な電磁波の波長の範囲が拡大され得る。
【0185】
電磁波検出装置1,1Dにおいて、封止されていると共に電磁波を透過する窓部11aを有しているハウジング10をさらに備えている。電子放出部材20,20Dは、ハウジング10内に配置されている。この場合、ハウジング10内を真空にする又はハウジング10内にガスを充填することによって、電磁波の入射に応じた電子の放出量が向上し得る。
【符号の説明】
【0186】
2,2B,2D…光電変換装置、10…ハウジング、20,20D,20E…電子放出部材、22,22A,22B,22C,22D,22E…メタサーフェス、23,23A,23B,23C,23D,23E,24,24A,24B,24C,24D,24E,25,25B,25C,25D,25E,26B,26C,26D,26E,27B…光電変換部、31B,31C,32B,32C,33,33A,33B,33C,33D,33E,34,34A,34B,34C,34D,34E,35,35B,35D,35E,36D,36E…パターン、37,37A,37B,37C…第一部分、37,38,38A,38B,38C,88…第二部分、39,39A,39B,39C,39D,40A,40B,40C…先端、41,41A,42,42A,42D,43,43A,43D,44A,82B,82C,83B,84B,85B,86B,87B,92B,92C,93B,94B,95B,96B,97B…線形状部、62…電位制御部、E…電子、W…電磁波。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】