(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】同種異系細胞療法のための遺伝子改変された初代細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240822BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240822BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240822BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240822BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240822BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240822BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240822BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/55 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/36 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/44 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/22 20150101ALI20240822BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20240822BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240822BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240822BHJP
A61K 38/47 20060101ALN20240822BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20240822BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20240822BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20240822BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61P43/00 105
A61P3/10
A61P35/00
A61P9/00
A61P27/02
A61P5/14
A61P17/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P35/02
A61K35/39
A61K35/407
A61K35/17
A61K35/55
A61K35/36
A61K35/44
A61K35/30
A61K35/22
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K45/00
A61K38/13
A61K38/17 100
A61K31/5377
A61K31/573
A61K31/675
A61K31/436
A61K31/706
A61K47/34
A61K39/395 U
C12N15/867 Z
C12N15/12
C12N15/09 110
A61K38/47
C12N5/0775
C12N5/0789
C12N5/0735
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508656
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 US2022074878
(87)【国際公開番号】W WO2023019229
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522043688
【氏名又は名称】サナ バイオテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】フー シャオモン
(72)【発明者】
【氏名】シュレプファー ソニア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
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4C087ZB27
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4C087ZC75
(57)【要約】
同種異系細胞療法に使用するための、遺伝子改変などの1つ以上の改変を含む、操作された初代細胞などの操作された細胞が提供される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、低免疫原性細胞である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞集団の改変を促進するための動きの使用であって、前記細胞集団は、前記動きに供する前に、前記集団の細胞における遺伝子発現を改変するために1つ以上の試薬と接触されている、前記使用。
【請求項2】
細胞集団の改変を強化する方法であって、
i)前記集団の細胞における遺伝子発現を改変するために、細胞集団を1つ以上の試薬と接触させることと、
ii)前記1つ以上の試薬との接触後に前記細胞集団を動きに供することと
を含む、前記方法。
【請求項3】
細胞集団の改変方法であって、
i)前記集団の細胞における遺伝子発現を改変するために、細胞集団を1つ以上の試薬と接触させることと、
ii)前記1つ以上の試薬との接触後に前記細胞集団を動きに供することと
を含む、前記方法。
【請求項4】
前記細胞集団は、初代細胞である、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項5】
前記細胞集団は、幹細胞に由来する細胞である、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項6】
前記幹細胞は、多能性幹細胞(PSC)、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞、生殖細胞系幹細胞、肺幹細胞、臍帯血幹細胞、及び複能性幹細胞からなる群から選択される、請求項5に記載の使用または方法。
【請求項7】
前記幹細胞は、多能性幹細胞である、請求項5または請求項6に記載の使用または方法。
【請求項8】
前記幹細胞は、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞(HSC)、または胚性幹細胞(ESC)である、請求項5~7のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項9】
前記細胞集団は、膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ、内皮細胞、筋肉細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、肝細胞、グリア前駆細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、及び血液細胞からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項10】
前記細胞集団は、3Dネットワーク内に自然に存在する、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項11】
前記細胞集団は、懸濁状態にある、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項12】
前記細胞集団は、低付着表面を有する容器内にある、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項13】
前記細胞集団は、前記細胞を覆うのに十分な最小体積の培地中で容器内で維持される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項14】
懸濁状態の前記細胞集団は、前記接触前に付着培養物または細胞クラスターから細胞を解離させることによって作製される、請求項10~13のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項15】
前記細胞集団は、膵島細胞である、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項16】
前記細胞集団は、β膵島細胞を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項17】
β膵島細胞を含む細胞集団は、初代膵島クラスターを、初代β膵島細胞を含む細胞の懸濁液へと解離させることによって作製される、請求項16に記載の使用または方法。
【請求項18】
前記接触は、前記細胞を動きに供する前に2日よりも短い期間実施される、請求項1~17のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項19】
前記接触は、前記細胞を動きに供する前に30秒~24時間実施される、請求項1~18のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項20】
前記接触は、前記細胞を動きに供する前に1分~60分、2分~30分、5分~15分実施される、請求項1~19のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項21】
前記細胞集団を動きに供することにより、細胞凝集体の形成が促進される、請求項1~20のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項22】
前記細胞集団を動きに供することにより、細胞クラスターが形成される、請求項1~21のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項23】
前記細胞を動きに供した後、静的条件下で前記細胞をインキュベートすることを更に含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項24】
前記接触後かつ前記細胞を動きに供する前に、静的条件下で前記細胞をインキュベートすることを更に含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項25】
前記1つ以上の試薬は少なくとも2つの異なる試薬を含み、任意選択で、前記少なくとも2つの異なる試薬のそれぞれは異なる遺伝子の発現を調節するためのものである、請求項1~23のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項26】
前記方法の工程は、繰り返される、請求項1~25のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項27】
前記方法の第1の反復における前記1つ以上の試薬は、前記方法の前記繰り返される反復における前記1つ以上の試薬とは異なり、任意選択で、前記方法の第1の反復における前記1つ以上の試薬は、前記方法の前記繰り返される反復における前記1つ以上の試薬と異なる、請求項26に記載の使用または方法。
【請求項28】
前記1つ以上の試薬との前記接触後に前記細胞を動きに供する前に、任意選択で前記接触前の前記細胞と比較して、遺伝子発現が改変された細胞を選択することを更に含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項29】
初代膵島細胞を改変するための方法であって、
i)初代膵島クラスターを初代膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、
ii)遺伝子発現を改変するために、前記初代膵島細胞の懸濁液を1つ以上の試薬と接触させることと、
iii)前記接触後、前記改変された膵島細胞を、前記細胞を膵島に再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される、前記インキュベートすることと
を含む、前記方法。
【請求項30】
前記初代膵島クラスターは、ヒト初代死体膵島クラスターである、請求項17または請求項29に記載の使用または方法。
【請求項31】
前記インキュベートすることは、静的条件下でインキュベートすることの少なくとも一部を更に含む、請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記インキュベートすることは、静的条件下での第1のインキュベートと、それに続く動きを伴うインキュベートすることとを含む、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記インキュベートすることは、動きを伴うインキュベートすることと、それに続く静的条件下での第2のインキュベートとを含む、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
工程i)~iii)は、繰り返される、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記方法の前記第1の反復における前記1つ以上の試薬は、前記方法の前記繰り返される反復における前記1つ以上の試薬とは異なる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記1つ以上の試薬は1つ以上の第1の試薬であり、かつ前記再クラスター化膵島細胞は第1の改変された初代膵島クラスターであり、かつ前記方法は更に、
iv)前記第1の改変された初代膵島クラスターを改変された初代膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、
v)遺伝子発現を改変するために、前記懸濁液の前記改変された初代膵島細胞を1つ以上の更なる試薬と更に接触させることと、
vi)前記更なる接触後に、前記更に改変された初代膵島細胞を、第2の改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される、前記インキュベートすることと
を含む、請求項29~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
iii)における前記インキュベートすることの前に、任意選択で前記接触前の前記初代膵島細胞と比較して、改変された遺伝子発現を有する膵島細胞を選択することを含む、請求項29~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
v)の前に、iv)で前記解離させた膵島細胞から、遺伝子発現が改変された膵島細胞を、任意選択で前記接触前の初代膵島細胞と比べて改変された膵島細胞を選択することと、任意選択で、前記選択された膵島細胞に対して工程iii)及びiv)を繰り返すこととを含む、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
vi)のインキュベートすることの後に、改変された初代膵島細胞を含む懸濁液へと前記第2の改変された初代膵島クラスターを解離させることと、改変された遺伝子発現、任意選択で前記接触前または前記更なる接触前の初代膵島と比べて改変された遺伝子発現を有する膵島細胞を選択することとを含む、請求項36~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記選択された改変膵島細胞を、改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される、前記インキュベートすることを含む、請求項28、38及び39のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項41】
初代膵島細胞の懸濁液は、低付着表面を有する容器中に存在する、請求項29~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記容器は、前記細胞を覆うのに十分な最小体積の培地を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記動きは、それぞれ両端を含んで、約20rpm~約180rpm、約40rpm~約125rpm、または約60rpm~約100rpmの速度である、請求項1~42のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項44】
前記動きは、両端を含んで、約85rpm~約95rpmの速度である、請求項1~43のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項45】
前記動きは、振盪である、請求項1~44のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項46】
前記振盪は、軌道運動を含む、請求項45に記載の使用または方法。
【請求項47】
前記動きは、波状の動きである、請求項1~46のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項48】
前記波状の動きは、軌道運動と揺動運動を組み合わせたシェーカー装置によるものである、請求項47に記載の使用または方法。
【請求項49】
前記動きは、双方向の直線運動を含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項50】
前記動きは、オービタルシェーカーによるものである、請求項1~49のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項51】
前記動きは、傾斜角を伴うものであり、任意選択で、前記傾斜角は1°~8°である、請求項1~50のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項52】
前記選択することは、蛍光標識細胞分取(FACS)を含む、請求項28及び38~51のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項53】
前記1つ以上の試薬は、前記細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるか、または前記細胞における1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させる、請求項1~52のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項54】
前記第1の1つ以上の試薬の少なくとも1つは、前記細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるためのものであり、かつ前記更なる1つ以上の試薬の少なくとも1つは、前記細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させるためのものである、請求項36~53のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項55】
前記第1の1つ以上の試薬の少なくとも1つは、前記細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させるためのものであり、かつ前記更なる1つ以上の試薬の少なくとも1つは、前記細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるためのものである、請求項36~53のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項56】
前記第1の1つ以上の試薬は、前記細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるためのものであり、かつ前記更なる1つ以上の試薬は、前記細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させるためのものである、請求項36~53のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項57】
前記1つ以上の試薬は、内因性タンパク質をコードする標的遺伝子を遺伝子編集するためのゲノム改変タンパク質、及び/または外因性タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む薬剤を含む、請求項1~56のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項58】
前記細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるための前記1つ以上の試薬は、ゲノム改変タンパク質を含む、請求項53~57のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項59】
前記ゲノム改変タンパク質は、配列特異的ヌクレアーゼ、CRISPR関連トランスポザーゼ(CAST)、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントを介したプログラム可能な付加(PASTE)による遺伝子編集に関連している、請求項57または請求項58に記載の使用または方法。
【請求項60】
前記ゲノム改変タンパク質は、配列特異的ヌクレアーゼである、請求項57~59のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項61】
前記配列特異的ヌクレアーゼは、RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)からなる群から選択される、請求項59または請求項60に記載の使用または方法。
【請求項62】
前記配列特異的ヌクレアーゼは、RNA誘導性ヌクレアーゼである、請求項59~61のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項63】
前記RNA誘導性ヌクレアーゼは、Casヌクレアーゼ及びガイドRNA(CRISPR-Casの組み合わせ)を含む、請求項61または請求項62に記載の使用または方法。
【請求項64】
前記CRISPR-Casの組み合わせは、gRNA及びCasヌクレアーゼを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項63に記載の使用または方法。
【請求項65】
前記Casヌクレアーゼは、II型またはV型Casタンパク質である、請求項63または請求項64に記載の使用または方法。
【請求項66】
前記ゲノム改変タンパク質は、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、及びCRISPR関連トランスポザーゼ、または前述のいずれかのホモログからなる群から選択される、請求項63~65のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項67】
前記Casは、Cas9またはCas12である、請求項63~65のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項68】
前記1つ以上の試薬は、1つ以上の主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子の発現を低減させるため、及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるためのものである、請求項1~67のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項69】
前記1つ以上の第1の試薬は、1つ以上の主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子の発現を低減させるため、及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるためのものである、請求項36~67のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項70】
前記1つ以上のMHCクラスI分子は、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質、またはHLA-Cタンパク質である、請求項68及び請求項69に記載の使用または方法。
【請求項71】
前記1つ以上のMHCクラスII分子は、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質、またはHLA-DQタンパク質である、請求項68または請求項69に記載の使用または方法。
【請求項72】
1つ以上のMHCクラスI分子またはMHCクラスII分子の発現を低減させるための前記1つ以上の試薬、または前記更なる1つ以上の試薬のうちの前記少なくとも1つは、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、及び/またはNFY-Cのうちの1つ以上の発現を低減させる、請求項69~71のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項73】
a.1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させるための前記1つ以上の試薬、または前記更なる1つ以上の試薬のうちの前記少なくとも1つは、B-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低減させ、及び/または、
b.1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるための前記1つ以上の試薬、または前記更なる1つ以上の試薬のうちの前記少なくとも1つは、CIITAの発現を低減させることによるものである、
請求項69~71のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項74】
前記細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させるための前記1つ以上の試薬は、外因性ポリヌクレオチドを含む薬剤を含む、請求項53~73のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項75】
前記外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項74に記載の使用または方法。
【請求項76】
前記プロモーターは、構成的プロモーターである、請求項75に記載の使用または方法。
【請求項77】
前記プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、請求項75または請求項76に記載の使用または方法。
【請求項78】
前記1つ以上の外因性タンパク質は、1つ以上の免疫寛容原性因子である、請求項74~77のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項79】
前記1つ以上の試薬は、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるための薬剤を含む、請求項53~78のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項80】
前記1つ以上の更なる試薬は、前記細胞における1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるための薬剤を含む、請求項54~78のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項81】
前記薬剤は脂質粒子またはウイルスベクターであり、任意選択で、前記ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである、請求項74~80のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項82】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、A20/TNFAIP3、C1-阻害剤、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1、またはSerpinb9、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項78~81のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項83】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、
a)CD47;b)HLA-E;c)CD24;d)PD-L1;e)CD46;f)CD55;f)CD59;h)CR1;i)MANF;j)A20/TNFAIP3;k)HLA-E及びCD47;l)CD24、CD47、PD-L1及びこれらの任意の組み合わせ;m)HLA-E、CD24、CD47及びPD-L1ならびにこれらの任意の組み合わせ;n)CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;o)HLA-E、CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;p)HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;q)HLA-E及びPDL1;r)HLA-E、PDL1及びA20/TNFAIPならびにこれらの任意の組み合わせ;s)HLA-E、PDL1及びMANFならびにこれらの任意の組み合わせ;t)HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP及びMANFならびにこれらの任意の組み合わせ;ならびにu)CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8及びこれらの任意の組み合わせ
からなる群から選択される、請求項78~82のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項84】
前記1つ以上の試薬は、
(i)(a)MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減させ、(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低減させ、(c)CD47ならびに任意選択でCD24及びPD-L1の発現を増加させ、かつ(d)CD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させる、
(ii)(a)MHCクラスI分子の発現を低減させ、(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低減させ、(c)TXNIPの発現を低減させ、(d)PD-L1及びHLA-Eの発現を増加させ、かつ(e)任意選択で、A20/TNFAIP3及びMANFの発現を増加させる、
(iii)(a)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させ、かつ(b)MICA及び/またはMICBの発現を低減させる、
(iv)(a)MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減させ、かつ(b)CD47の発現を増加させる
ためのものであり、または、
(v)上記の(i)~(iv)のいずれかは、1つ以上の追加の遺伝子の発現を増加または減少させるための、任意選択で、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、CTLA-4、PD-1、IRF1、MIC-A、MIC-B、酸化ストレスもしくはERストレスに関与するタンパク質、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、PCDH11Y、NLGN4Y及び/またはRHDの発現を低減させるためのものであることを更に含み、更に任意選択で、酸化ストレスまたはERストレスに関与する前記タンパク質は、チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)、PKR様ERキナーゼ(PERK)、イノシトール要求性酵素1α(IRE1α)及びDJ-1(PARK7)を含む、
請求項1~83のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項85】
前記外因性ポリヌクレオチドは、前記細胞のゲノム内に組み込まれる、請求項74~84のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項86】
前記外因性ポリヌクレオチドは、マルチシストロン性ベクターである、請求項85に記載の使用または方法。
【請求項87】
前記組込みは、前記細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである、請求項85または請求項86に記載の使用または方法。
【請求項88】
前記組込みは、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座への標的挿入によるものである、請求項85または請求項86に記載の使用または方法。
【請求項89】
前記膵島細胞は、β膵島細胞である、請求項9~88のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項90】
前記方法によって作製される前記細胞の生存率は、約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%またはそれ以上を超える、請求項1~89のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項91】
前記方法によって改変された前記集団の細胞の割合は、約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%またはそれ以上を超える、請求項1~89のいずれか1項に記載の使用または方法。
【請求項92】
(i)1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させる、ならびに(ii)1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる、改変を含む、操作された初代細胞であって、(i)の発現の増加及び(ii)の発現の低減は、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較したものである、前記操作された初代細胞。
【請求項93】
(ii)における1つ以上の前記改変は、
a.1つ以上のMHCクラスI分子、
b.1つ以上のMHCクラスII分子、または、
c.1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子
の発現を低減させる、請求項92に記載の操作された初代細胞。
【請求項94】
前記1つ以上の改変は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B及び/またはNFY-C、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の分子の発現を低減させる、請求項92または請求項93に記載の操作された初代細胞。
【請求項95】
前記操作された細胞は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の分子を発現しない、請求項92~94のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項96】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、A20/TNFAIP3、C1-阻害剤、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1またはSerpinb9、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項92~95のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項97】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、
a)CD47;b)HLA-E;c)CD24;d)PD-L1;e)CD46;f)CD55;f)CD59;h)CR1;i)MANF;j)A20/TNFAIP3;k)HLA-E及びCD47;l)CD24、CD47、PD-L1及びこれらの任意の組み合わせ;m)HLA-E、CD24、CD47及びPD-L1ならびにこれらの任意の組み合わせ;n)CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;o)HLA-E、CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;p)HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;q)HLA-E及びPDL1;r)HLA-E、PDL1及びA20/TNFAIPならびにこれらの任意の組み合わせ;s)HLA-E、PDL1及びMANFならびにこれらの任意の組み合わせ;t)HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP及びMANFならびにこれらの任意の組み合わせ;ならびにu)CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8及びこれらの任意の組み合わせ
からなる群から選択される、請求項92~96のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項98】
前記操作された細胞は、以下:
(i)(a)MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減させ、(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低減させ、(c)CD47ならびに任意選択でCD24及びPD-L1の発現を増加させ、かつ(d)CD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させる、
(ii)(a)MHCクラスI分子の発現を低減させ、(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低減させ、(c)TXNIPの発現を低減させ、(d)PD-L1及びHLA-Eの発現を増加させ、かつ(e)任意選択で、A20/TNFAIP3及びMANFの発現を増加させる、
(iii)(a)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させ、かつ(b)MICA及び/またはMICBの発現を低減させる、
(iv)(a)MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減させ、かつ(b)CD47の発現を増加させる、
改変を含み、または、
(v)上記の(i)~(iv)のいずれかは、1つ以上の追加の遺伝子の発現を増加または減少させるための、任意選択で、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、CTLA-4、PD-1、IRF1、MIC-A、MIC-B、酸化ストレスもしくはERストレスに関与するタンパク質、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、PCDH11Y、NLGN4Y及び/またはRHDの発現を低減させるための改変を更に含み、更に任意選択で、酸化ストレスまたはERストレスに関与する前記タンパク質は、チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)、PKR様ERキナーゼ(PERK)、イノシトール要求性酵素1α(IRE1α)及びDJ-1(PARK7)を含む、
請求項92~97のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項99】
(i)CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させる、ならびに(ii)1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる、改変を含む、操作された初代細胞であって、(i)の発現の増加及び(ii)の発現の低減は、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較したものである、前記操作された初代細胞。
【請求項100】
発現を増加させる前記改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる前記改変は、表面発現の低減を含み、任意選択で、検出可能な表面発現はない、請求項92~99のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項101】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させる前記改変は、前記1つ以上の免疫寛容原性因子をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項92~100のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項102】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47を含む、請求項92~101のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項103】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子はCD47であり、かつCD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ前記操作された初代細胞の自然免疫による殺傷を低減させる、請求項101または請求項102に記載の操作された初代細胞。
【請求項104】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の配列をコードする、請求項103に記載の操作された初代細胞。
【請求項105】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項101~104のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項106】
前記プロモーターは、構成的プロモーターである、請求項105に記載の操作された初代細胞。
【請求項107】
前記プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター及びUBCプロモーターからなる群から選択される、請求項105または請求項106に記載の操作された初代細胞。
【請求項108】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、前記操作された初代細胞のゲノム内に組み込まれる、請求項101~107のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項109】
前記外因性ポリヌクレオチドは、前記1つ以上の免疫寛容原性因子をコードするマルチシストロン性ベクター、及び第2の導入遺伝子をコードする追加の導入遺伝子である、請求項108に記載の操作された初代細胞。
【請求項110】
前記組込みは、前記操作された初代細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである、請求項108または請求項109に記載の操作された初代細胞。
【請求項111】
前記組込みは、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座への標的挿入によるものである、請求項108または請求項109に記載の操作された初代細胞。
【請求項112】
前記標的ゲノム遺伝子座は、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、MICA座、MICB座、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座である、請求項111に記載の操作された初代細胞。
【請求項113】
前記標的ゲノム遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231座、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、ABO遺伝子座、F3遺伝子座、FUT1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、KDM5D遺伝子座、LRP1遺伝子座、RHD遺伝子座、ROSA26遺伝子座、及びSHS231遺伝子座からなる群から選択される、請求項111に記載の操作された初代細胞。
【請求項114】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる、請求項92~113のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項115】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、B-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低減させる改変である、請求項92~114のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項116】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、B2MのmRNA発現の低減を含む、請求項115に記載の操作された初代細胞。
【請求項117】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、B2Mのタンパク質発現の低減を含む、請求項115に記載の操作された初代細胞。
【請求項118】
前記改変は、B2M遺伝子活性を排除する、請求項115~117のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項119】
前記改変は、前記B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む、請求項115~118のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項120】
前記改変は、前記細胞におけるすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項115~119のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項121】
前記不活性化または前記破壊は、前記B2M遺伝子中のインデルを含む、請求項119または請求項120に記載の操作された初代細胞。
【請求項122】
前記改変は、前記B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である、請求項115~121のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項123】
前記B2M遺伝子はノックアウトされている、請求項115~122のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項124】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質またはHLA-Cタンパク質の発現を低減させる改変であり、任意選択で、前記HLA-Aタンパク質、前記HLA-Bタンパク質または前記HLA-Cタンパク質をコードする遺伝子は、ノックアウトされている、請求項114~123のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項125】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる、請求項92~124のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項126】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、CIITAの発現を低減させる改変である、請求項92~125のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項127】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、CIITAのmRNA発現の低減を含む、請求項126に記載の操作された初代細胞。
【請求項128】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、CIITAのタンパク質発現の低減を含む、請求項126に記載の操作された初代細胞。
【請求項129】
前記改変は、CIITA遺伝子活性を排除する、請求項126~128のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項130】
前記改変は、前記CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む、請求項126~129のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項131】
前記改変は、前記細胞におけるすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項126~130のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項132】
前記不活性化または前記破壊は、前記CIITA遺伝子中のインデルを含む、請求項130または請求項131に記載の操作された初代細胞。
【請求項133】
前記インデルは、前記CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である、請求項126~132のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項134】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質の発現を低減させる改変であり、任意選択で、前記HLA-DPタンパク質、前記HLA-DRタンパク質または前記HLA-DQタンパク質をコードする遺伝子は、ノックアウトされている、請求項125~133のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項135】
前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、ゲノム改変タンパク質によるものである、請求項92~134のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項136】
前記ゲノム改変タンパク質は、配列特異的ヌクレアーゼ、CRISPR関連トランスポザーゼ(CAST)、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントを介したプログラム可能な付加(PASTE)による遺伝子編集に関連している、請求項135に記載の操作された初代細胞。
【請求項137】
前記ゲノム改変タンパク質による前記改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集である、請求項135または請求項136に記載の操作された初代細胞。
【請求項138】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、前記B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記CasはCas9である、請求項137に記載の操作された初代細胞。
【請求項139】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集はCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、かつ前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるための内因性遺伝子の少なくとも1つの標的部位に相補的なターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、請求項137または請求項138に記載の操作された初代細胞。
【請求項140】
前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項139に記載の操作された初代細胞。
【請求項141】
ヒト細胞または動物細胞である、請求項92~140のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項142】
ヒト細胞である、請求項141に記載の操作された初代細胞。
【請求項143】
前記初代細胞は、血液に曝露される細胞種である、請求項92~142のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項144】
ドナー対象から単離された初代細胞である、請求項92~143のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項145】
前記ドナー試料が前記ドナー対象から得られる時点で、前記ドナー対象は健康であるか、または疾患または状態を有する疑いがない、請求項144に記載の操作された初代細胞。
【請求項146】
膵島細胞、β膵島細胞、膵臓膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、内皮細胞、筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、及び血液細胞から選択される、請求項92~145のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項147】
内皮細胞である、請求項92~146のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項148】
上皮細胞である、請求項92~146のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項149】
網膜色素上皮細胞である、請求項92~146のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項150】
T細胞である、請求項92~146のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項151】
NK細胞である、請求項92~146のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項152】
キメラ抗原受容体(CAR)を含む、請求項150または請求項151に記載の操作された初代細胞。
【請求項153】
膵島細胞、任意選択で、β膵島細胞である、請求項92~146のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項154】
肝細胞である、請求項92~146のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項155】
ABO式血液型O型である、請求項92~154のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項156】
Rh因子陰性(Rh-)である、請求項92~155のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項157】
請求項1~91のいずれか1項に記載の方法によって作製される、請求項92~156のいずれか1項に記載の操作された初代細胞。
【請求項158】
操作された初代細胞を生成する方法であって、
a)初代細胞における1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させることと、
b)前記初代細胞における1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させることと
を含む、前記方法。
【請求項159】
a)の発現の増加、及びb)の発現の低減は、前記方法を受けていない同じ細胞種の細胞と比較したものである、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
前記1つ以上のMHC分子の発現を低減させることは、
a.1つ以上のMHCクラスI分子、
b.1つ以上のMHCクラスII分子、または、
c.1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子
から選択される、請求項158または請求項159に記載の方法。
【請求項161】
1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させることは、前記細胞に1つ以上の改変を導入することによるものであり、任意選択で、前記1つ以上の改変は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B及び/またはNFY-C、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の分子の発現を低減させる、請求項158~160のいずれか1項に記載の方法。
【請求項162】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、A20/TNFAIP3、C1-阻害剤、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1またはSerpinb9、及び任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項158~162のいずれか1項に記載の方法。
【請求項163】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、
a)CD47;b)HLA-E;c)CD24;d)PD-L1;e)CD46;f)CD55;f)CD59;h)CR1;i)MANF;j)A20/TNFAIP3;k)HLA-E及びCD47;l)CD24、CD47、PD-L1及びこれらの任意の組み合わせ;m)HLA-E、CD24、CD47及びPD-L1ならびにこれらの任意の組み合わせ;n)CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;o)HLA-E、CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;p)HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;q)HLA-E及びPDL1;r)HLA-E、PDL1及びA20/TNFAIPならびにこれらの任意の組み合わせ;s)HLA-E、PDL1及びMANFならびにこれらの任意の組み合わせ;t)HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP及びMANFならびにこれらの任意の組み合わせ;ならびにu)CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8及びこれらの任意の組み合わせ
からなる群から選択される、請求項158~162のいずれか1項に記載の方法。
【請求項164】
1つ以上の改変は前記細胞に導入され、かつ前記1つ以上の改変は、以下:
(i)(a)MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減させ、(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低減させ、(c)CD47ならびに任意選択でCD24及びPD-L1の発現を増加させ、かつ(d)CD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させること、
(ii)(a)MHCクラスI分子の発現を低減させ、(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低減させ、(c)TXNIPの発現を低減させ、(d)PD-L1及びHLA-Eの発現を増加させ、かつ(e)任意選択で、A20/TNFAIP3及びMANFの発現を増加させること、
(iii)(a)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させ、かつ(b)MICA及び/またはMICBの発現を低減させること、
(iv)(a)MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減させ、かつ(b)CD47の発現を増加させること
に従い、または、
(v)上記の(i)~(iv)のいずれかは、1つ以上の追加の遺伝子の発現を増加または減少させるための、任意選択で、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、CTLA-4、PD-1、IRF1、MIC-A、MIC-B、酸化ストレスもしくはERストレスに関与するタンパク質、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、PCDH11Y、NLGN4Y及び/またはRHDの発現を低減させるためのものであることを更に含み、、更に任意選択で、酸化ストレスまたはERストレスに関与する前記タンパク質は、チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)、PKR様ERキナーゼ(PERK)、イノシトール要求性酵素1α(IRE1α)及びDJ-1(PARK7)を含む、
請求項158~163のいずれか1項に記載の方法。
【請求項165】
操作された初代細胞を生成する方法であって、
a.前記細胞における1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することと、
b.前記細胞におけるCD47の発現を増加させることと
を含む、前記方法。
【請求項166】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させることを含む、請求項157~165のいずれか1項に記載の方法。
【請求項167】
1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させることを含む、請求項157~165のいずれか1項に記載の方法。
【請求項168】
発現を増加させることは、前記1つ以上の免疫寛容原性因子の表面発現を増加させることを含み、及び/または発現を低減させることは、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低減を含む、請求項157~167のいずれか1項に記載の方法。
【請求項169】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させることは、前記1つ以上の免疫寛容原性因子をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することを含む、請求項157~168のいずれか1項に記載の方法。
【請求項170】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である、請求項157~169のいずれか1項に記載の方法。
【請求項171】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列をコードし、かつ前記操作された初代細胞の自然免疫による殺傷を低減させる、請求項169または請求項170に記載の方法。
【請求項172】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の配列をコードする、請求項171に記載の方法。
【請求項173】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項169~172のいずれか1項に記載の方法。
【請求項174】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、前記操作された初代細胞のゲノムに組み込まれる、請求項169~173のいずれか1項に記載の方法。
【請求項175】
前記組込みは、前記操作された初代細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記操作された初代細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである、請求項174に記載の方法。
【請求項176】
前記組込みは、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によるものであり、任意選択で、前記標的挿入は、相同指向性修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、請求項175に記載の方法。
【請求項177】
前記標的ゲノム遺伝子座は、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、MICA座、MICB座、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座である、請求項176に記載の方法。
【請求項178】
前記標的ゲノム遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231座、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、ABO遺伝子座、F3遺伝子座、FUT1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、KDM5D遺伝子座、LRP1遺伝子座、RHD遺伝子座、ROSA26遺伝子座、及びSHS231遺伝子座からなる群から選択される、請求項176に記載の方法。
【請求項179】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させることは、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる改変を導入することを含む、請求項157~178のいずれか1項に記載の方法。
【請求項180】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、B2Mの発現の低減を含む、請求項157~179のいずれか1項に記載の方法。
【請求項181】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、B2Mのタンパク質発現の低減を含む、請求項157~180のいずれか1項に記載の方法。
【請求項182】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、B2M遺伝子活性を排除する、請求項180または請求項181に記載の方法。
【請求項183】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、前記B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む、請求項160~182のいずれか1項に記載の方法。
【請求項184】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、前記細胞におけるすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項160~183のいずれか1項に記載の方法。
【請求項185】
前記不活性化または前記破壊は、前記内因性B2M遺伝子中のインデル、または前記内因性B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む、請求項183または請求項184に記載の方法。
【請求項186】
前記インデルは、前記B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
前記内因性B2M遺伝子は、ノックアウトされている、請求項180~186のいずれか1項に記載の方法。
【請求項188】
1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、HLA-Aタンパク質発現、HLA-Bタンパク質発現、またはHLA-Cタンパク質発現を低減させ、任意選択で、前記タンパク質発現は、前記HLA-Aタンパク質、前記HLA-Bタンパク質または前記HLA-Cタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトすることによって低減される、請求項160~187のいずれか1項に記載の方法。
【請求項189】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させることは、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる改変を導入することを含む、請求項160~188のいずれか1項に記載の方法。
【請求項190】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、CIITAの発現の低減を含む、請求項189に記載の方法。
【請求項191】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、CIITAのタンパク質発現の低減を含む、請求項160~190のいずれか1項に記載の方法。
【請求項192】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、CIITAを排除する、請求項160~191のいずれか1項に記載の方法。
【請求項193】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、前記CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む、請求項160~192のいずれか1項に記載の方法。
【請求項194】
前記改変は、前記細胞におけるすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項160~193のいずれか1項に記載の方法。
【請求項195】
前記不活性化または前記破壊は、前記CIITA遺伝子中のインデル、または前記CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む、請求項193または請求項194に記載の方法。
【請求項196】
前記インデルは、前記CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である、請求項195に記載の方法。
【請求項197】
前記CIITA遺伝子は、ノックアウトされている、請求項157~196のいずれか1項に記載の方法。
【請求項198】
1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質の発現を低減させ、任意選択で、前記HLA-DPタンパク質発現、前記HLA-DRタンパク質発現または前記HLA-DQタンパク質発現は、前記HLA-DPタンパク質、前記HLA-DRタンパク質または前記HLA-DQタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトすることによって低減される、請求項160~197のいずれか1項に記載の方法。
【請求項199】
前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、前記細胞へのゲノム改変タンパク質によるものであり、任意選択で、前記ゲノム改変タンパク質または前記ゲノム改変タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、前記細胞に導入される、請求項160~198のいずれか1項に記載の方法。
【請求項200】
前記ゲノム改変タンパク質は、配列特異的ヌクレアーゼ、CRISPR関連トランスポザーゼ(CAST)、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントを介したプログラム可能な付加(PASTE)による遺伝子編集に関連している、請求項199に記載の方法。
【請求項201】
前記ゲノム改変タンパク質による前記改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集である、請求項199または請求項200に記載の方法。
【請求項202】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、前記B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記CasはCas9である、請求項201に記載の方法。
【請求項203】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集はCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、かつ前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるための内因性遺伝子の少なくとも1つの標的部位に相補的なターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、請求項201または請求項202に記載の方法。
【請求項204】
前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項203に記載の方法。
【請求項205】
前記Casヌクレアーゼは、II型またはV型Casタンパク質である、請求項202~204のいずれか1項に記載の方法。
【請求項206】
前記ゲノム改変タンパク質は、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、及びCRISPR関連トランスポザーゼ、または前述のいずれかのホモログからなる群から選択される、請求項202~205のいずれか1項に記載の方法。
【請求項207】
前記Casは、Cas9またはCas12である、請求項202~206のいずれか1項に記載の方法。
【請求項208】
前記操作された初代細胞はヒト細胞または動物細胞であり、任意選択で、前記動物細胞はブタ細胞、ウシ細胞、またはヒツジ細胞である、請求項157~207のいずれか1項に記載の方法。
【請求項209】
前記操作された初代細胞は、ヒト細胞である、請求項157~208のいずれか1項に記載の方法。
【請求項210】
前記操作された初代細胞は、血液に曝露される細胞種である、請求項157~209のいずれか1項に記載の方法。
【請求項211】
前記操作された初代細胞は、ドナー対象から単離されている、請求項157~210のいずれか1項に記載の方法。
【請求項212】
前記操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、膵臓膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、内皮細胞、筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、及び血液細胞から選択される、請求項157~211のいずれか1項に記載の方法。
【請求項213】
前記操作された初代細胞は、膵島細胞である、請求項157~212のいずれか1項に記載の方法。
【請求項214】
前記操作された初代細胞は、β膵島細胞である、請求項157~213のいずれか1項に記載の方法。
【請求項215】
前記操作された初代細胞は、肝細胞である、請求項157~212のいずれか1項に記載の方法。
【請求項216】
前記操作された初代細胞は、T細胞である、請求項157~212のいずれか1項に記載の方法。
【請求項217】
前記操作された初代細胞は、内皮細胞である、請求項157~212のいずれか1項に記載の方法。
【請求項218】
前記操作された初代細胞は、甲状腺細胞である、請求項157~212のいずれか1項に記載の方法。
【請求項219】
前記操作された初代細胞は、皮膚細胞である、請求項157~212のいずれか1項に記載の方法。
【請求項220】
前記操作された初代細胞は、網膜色素上皮細胞である、請求項157~212のいずれか1項に記載の方法。
【請求項221】
請求項1~91のいずれか1項に記載の方法に従って作製される、操作された細胞。
【請求項222】
前記細胞は、初代細胞である、請求項221に記載の操作された細胞。
【請求項223】
請求項158~220のいずれか1項に記載の方法に従って作製される、操作された細胞。
【請求項224】
前記細胞は、初代膵島細胞である、請求項222または請求項223に記載の操作された細胞。
【請求項225】
前記膵島細胞は、β膵島細胞である、請求項224に記載の操作された細胞。
【請求項226】
前記操作された細胞は、レシピエント患者への投与時にNK細胞媒介性細胞傷害性を回避することができ、及び/または、
前記操作された細胞は、レシピエント患者への投与時に成熟NK細胞による細胞溶解から保護される、
請求項92~156及び221~223のいずれか1項に記載の操作された細胞。
【請求項227】
レシピエント患者への投与時に前記細胞に対する免疫応答を誘導しない、請求項92~156及び221~225のいずれか1項に記載の操作された細胞。
【請求項228】
前記操作された細胞は、レシピエント患者への投与時に前記細胞に対する全身性炎症反応を誘導せず、及び/または前記操作された細胞は、レシピエント患者への投与時に前記細胞に対する局所炎症反応を誘導しない、請求項92~156及び221~226のいずれか1項に記載の操作された細胞。
【請求項229】
請求項1~91のいずれか1項に記載の方法によって作製される、操作された細胞の集団。
【請求項230】
請求項92~157及び221~228のいずれか1項に記載の操作された細胞を複数含む、操作された細胞の集団。
【請求項231】
前記複数の操作された細胞は、複数のドナー対象からプールされた細胞に由来する初代細胞であり、任意選択で、前記複数のドナー対象のそれぞれは、前記ドナー試料が前記ドナー対象から得られる時点で、健康な対象であるか、または疾患もしくは状態を有する疑いがない、請求項229または請求項230に記載の操作された細胞の集団。
【請求項232】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変を含む、請求項229~231のいずれか1項に記載の集団。
【請求項233】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項229~232のいずれか1項に記載の集団。
【請求項234】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低減を含む、請求項229~233のいずれか1項に記載の集団。
【請求項235】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、B2M及び/またはCIITAの発現の低減を含む、請求項229~234のいずれか1項に記載の集団。
【請求項236】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、B2Mの発現の低減を含む、請求項229~235のいずれか1項に記載の集団。
【請求項237】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、B2M及びCIITAの発現の低減を含む、請求項229~236のいずれか1項に記載の集団。
【請求項238】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、内因性B2M遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む、請求項229~237のいずれか1項に記載の集団。
【請求項239】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、内因性CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む、請求項229~238のいずれか1項に記載の集団。
【請求項240】
請求項229~239のいずれか1項に記載の集団を含む、組成物。
【請求項241】
請求項15~91のいずれか1項に記載の方法によって作製される、操作された初代膵島クラスターを含む、組成物。
【請求項242】
操作された初代膵島細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代膵島細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊とを含む、前記組成物。
【請求項243】
前記操作された初代膵島細胞の集団は、初代膵島細胞のクラスターである、請求項242に記載の組成物。
【請求項244】
前記操作された初代膵島細胞の集団は、操作された初代β膵島細胞の集団である、請求項242に記載の組成物。
【請求項245】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、及び前記B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活化または破壊を含む、請求項242~244のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項246】
操作された初代T細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代T細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊とを含む、前記組成物。
【請求項247】
操作された初代甲状腺細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代甲状腺細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊とを含む、前記組成物。
【請求項248】
操作された初代皮膚細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代皮膚細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊とを含む、前記組成物。
【請求項249】
操作された初代内皮細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代内皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊とを含む、前記組成物。
【請求項250】
操作された初代網膜色素上皮細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代網膜色素上皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊とを含む、前記組成物。
【請求項251】
前記操作された初代細胞の集団の操作された初代細胞は、前記B2M遺伝子の両方の対立遺伝子にインデルを含む、請求項240~250のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項252】
前記操作された初代細胞の集団の前記操作された初代細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を更に含み、任意選択で、前記操作された初代細胞の集団の操作された初代細胞は、前記CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子にインデルを含む、請求項240~251のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項253】
前記操作された初代細胞の集団の前記操作された初代細胞は、表現型B2M
インデル/インデル;CIITA
インデル/インデル;CD47tgを有する、請求項240~252のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項254】
医薬組成物である、請求項240~253のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項255】
医薬的に許容される賦形剤を含む、請求項240~254のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項256】
凍結保護物質を含む、無血清凍結保存培地中で調製される、請求項240~255のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項257】
前記凍結保護物質はDMSOであり、かつ前記凍結保存培地は5%~10%DMSO(v/v)である、請求項256に記載の組成物。
【請求項258】
前記凍結保護物質は、10%のDMSO(v/v)であるか、または約10%のDMSO(v/v)である、請求項256及び請求項257に記載の組成物。
【請求項259】
滅菌である、請求項240~258のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項260】
請求項240~259のいずれか1項に記載の組成物を含む、容器。
【請求項261】
滅菌バッグである、請求項260に記載の容器。
【請求項262】
前記バッグは、凍結保存適合バッグである、請求項261に記載の滅菌バッグ。
【請求項263】
有効量の請求項229~239のいずれか1項に記載の集団、請求項240~253のいずれか1項に記載の組成物、または請求項254に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、その必要がある前記患者において疾患、状態、または細胞欠損症を治療する方法。
【請求項264】
前記集団は、医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として調製される、請求項263に記載の方法。
【請求項265】
前記細胞集団は、β膵島細胞を含む、膵島細胞を含む、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項266】
前記膵島細胞の集団は、膵島細胞のクラスターとして投与される、請求項263~265のいずれか1項に記載の方法。
【請求項267】
前記膵島細胞の集団は、β膵島細胞のクラスターとして投与される、請求項263~266のいずれか1項に記載の方法。
【請求項268】
前記細胞集団は、肝細胞である、請求項263~266のいずれか1項に記載の方法。
【請求項269】
前記細胞集団は、T細胞を含む、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項270】
前記細胞集団は、甲状腺細胞を含む、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項271】
前記細胞集団は、皮膚細胞を含む、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項272】
前記細胞集団は、内皮細胞を含む、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項273】
前記細胞集団は、網膜色素上皮細胞を含む、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項274】
前記状態または前記疾患は、糖尿病、がん、血管新生障害、眼疾患、甲状腺疾患、皮膚疾患、及び肝臓疾患からなる群から選択される、請求項263~273のいずれか1項に記載の方法。
【請求項275】
前記細胞欠損症は糖尿病に関連するか、または前記細胞療法は糖尿病の治療のためのものであり、任意選択で、前記糖尿病はI型糖尿病である、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項276】
前記細胞集団は、β膵島細胞を含む、膵島細胞の集団である、請求項275に記載の方法。
【請求項277】
前記細胞集団は、膵島細胞のクラスターとして投与される、請求項276に記載の方法。
【請求項278】
その必要がある患者において糖尿病を治療する方法であって、前記方法は、有効量の請求項229~239のいずれか1項に記載の膵島細胞の集団、請求項240~253のいずれか1項に記載の組成物、または請求項254に記載の医薬組成物を前記患者に投与することを含み、任意選択で、前記細胞集団は、膵島細胞のクラスターとして投与される、前記方法。
【請求項279】
前記膵島細胞のクラスターは、β膵島細胞のクラスターである、請求項276~278のいずれか1項に記載の方法。
【請求項280】
前記細胞欠損症は、血管状態もしくは疾患に関連するか、または前記細胞療法は、血管状態もしくは疾患の治療のためのものである、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項281】
前記細胞集団は、内皮細胞の集団である、請求項280に記載の方法。
【請求項282】
前記細胞欠損症は、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または前記細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の治療のためのものである、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項283】
前記細胞欠損症は、肝臓疾患に関連するか、または前記細胞療法は、肝臓疾患の治療のためのものである、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項284】
前記肝臓疾患は、肝硬変を含む、請求項283に記載の方法。
【請求項285】
前記細胞集団は、肝細胞の集団である、請求項283または請求項284に記載の方法。
【請求項286】
前記細胞欠損症は、角膜疾患に関連するか、または前記細胞療法は、角膜疾患の治療のためのものである、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項287】
前記角膜疾患は、フックスジストロフィー、または先天性遺伝性内皮ジストロフィーである、請求項286に記載の方法。
【請求項288】
前記細胞集団は、角膜内皮細胞の集団である、請求項286または請求項287に記載の方法。
【請求項289】
前記細胞欠損症は、腎臓疾患に関連するか、または前記細胞療法は、腎臓疾患の治療のためのものである、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項290】
前記細胞集団は、腎細胞の集団である、請求項289に記載の方法。
【請求項291】
前記細胞療法は、がんの治療のためのものである、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項292】
前記がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項291に記載の方法。
【請求項293】
前記細胞集団は、T細胞またはNK細胞の集団である、請求項263または請求項264に記載の方法。
【請求項294】
前記細胞は、投与前に増殖されかつ凍結保存される、請求項263~293のいずれか1項に記載の方法。
【請求項295】
前記集団を投与することは、前記集団の静脈内注射、筋肉内注射、血管内注射、及び移植を含む、請求項263~294のいずれか1項に記載の方法。
【請求項296】
前記集団は、腎被膜移植または筋肉内注射を介して移植される、請求項295に記載の方法。
【請求項297】
前記集団はドナー対象に由来し、前記ドナーのHLA型は前記患者のHLA型と一致しない、請求項263~296のいずれか1項に記載の方法。
【請求項298】
前記集団はヒト細胞集団であり、かつ前記患者はヒト患者である、請求項263~297のいずれか1項に記載の方法。
【請求項299】
前記β膵島細胞は、前記対象における耐糖能を改善する、請求項276~279のいずれか1項に記載の方法。
【請求項300】
前記対象は、糖尿病患者である、請求項299に記載の方法。
【請求項301】
前記糖尿病患者は、I型糖尿病またはII型糖尿病を有する、請求項300に記載の方法。
【請求項302】
耐糖能は、前記膵島細胞の投与前の前記対象の耐糖能と比較して、改善される、請求項276~278及び299~301のいずれか1項に記載の方法。
【請求項303】
前記β膵島細胞は、前記対象における外因性インスリン使用量を低減させる、請求項276~278及び299~302のいずれか1項に記載の方法。
【請求項304】
HbA1cレベルによって測定される耐糖能が改善される、請求項301~303のいずれか1項に記載の方法。
【請求項305】
前記対象は絶食している、請求項301~304のいずれか1項に記載の方法。
【請求項306】
前記膵島細胞は、前記対象におけるインスリン分泌を改善する、請求項276~278及び297~305のいずれか1項に記載の方法。
【請求項307】
インスリン分泌は、前記膵島細胞の投与前の前記対象のインスリン分泌と比較して、改善される、請求項306に記載の方法。
【請求項308】
1つ以上の免疫抑制剤を前記患者に投与することを更に含む、請求項263~307のいずれか1項に記載の方法。
【請求項309】
前記患者は、1つ以上の免疫抑制剤を投与されている、請求項263~307のいずれか1項に記載の方法。
【請求項310】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、小分子または抗体である、請求項308または309に記載の方法。
【請求項311】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、コルチコステロイド、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナール、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン(チモシン-α)、及び免疫抑制抗体からなる群から選択される、請求項308~310のいずれか1項に記載の方法。
【請求項312】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、シクロスポリンを含む、請求項308~311のいずれか1項に記載の方法。
【請求項313】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチルを含む、請求項308~311のいずれか1項に記載の方法。
【請求項314】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、コルチコステロイドを含む、請求項308~311のいずれか1項に記載の方法。
【請求項315】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、シクロホスファミドを含む、請求項308~311のいずれか1項に記載の方法。
【請求項316】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、ラパマイシンを含む、請求項308~311のいずれか1項に記載の方法。
【請求項317】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、タクロリムス(FK-506)を含む、請求項308~311のいずれか1項に記載の方法。
【請求項318】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、抗胸腺細胞グロブリンを含む、請求項308~311のいずれか1項に記載の方法。
【請求項319】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、1つ以上の免疫調節剤である、請求項308~310のいずれか1項に記載の方法。
【請求項320】
前記1つ以上の免疫調節剤は、小分子または抗体である、請求項319に記載の方法。
【請求項321】
前記抗体は、IL-2受容体のp75、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD58、及びこれらのリガンドのいずれかに結合する抗体からなる群から選択される、受容体またはリガンドのうちの1つ以上に結合する、請求項310または請求項320に記載の方法。
【請求項322】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~321のいずれか1項に記載の方法。
【請求項323】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項324】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項325】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項326】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与の少なくとも1週間後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項327】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与の少なくとも2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項328】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与と同じ日に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項329】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項330】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項331】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項332】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項333】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項334】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項335】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項308~322のいずれか1項に記載の方法。
【請求項336】
前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の前記改変を含まない免疫原性細胞の免疫拒絶を低減させるために投与される1つ以上の免疫抑制剤の用量と比較して、より低い用量で投与される、請求項308~335のいずれか1項に記載の方法。
【請求項337】
前記操作された細胞は、前記操作された細胞の制御された殺傷を可能にする、請求項308~336のいずれか1項に記載の方法。
【請求項338】
前記操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチを含む、請求項308~337のいずれか1項に記載の方法。
【請求項339】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、薬物またはプロドラッグの存在下、または選択的な外因性化合物による活性化の際に、制御された細胞死を誘導する、請求項338に記載の方法。
【請求項340】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、前記操作された細胞のアポトーシスを誘導できる誘導性タンパク質である、請求項338または請求項339に記載の方法。
【請求項341】
前記操作された細胞のアポトーシスを誘導できる前記誘導性タンパク質は、カスパーゼタンパク質である、請求項340に記載の方法。
【請求項342】
前記カスパーゼタンパク質は、カスパーゼ9である、請求項341に記載の方法。
【請求項343】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項338~342のいずれか1項に記載の方法。
【請求項344】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、前記患者への前記1つ以上の免疫抑制剤の投与後に活性化され、制御された細胞死を誘導する、請求項338~343のいずれか1項に記載の方法。
【請求項345】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、前記患者への前記1つ以上の免疫抑制剤の投与前に活性化され、制御された細胞死を誘導する、請求項338~343のいずれか1項に記載の方法。
【請求項346】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、前記患者への前記操作された細胞の投与後に活性化され、制御された細胞死を誘導する、請求項338~345のいずれか1項に記載の方法。
【請求項347】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、活性化され、前記患者に対する細胞傷害性または他の悪影響が生じた場合に制御された細胞死を誘導する、請求項338~346のいずれか1項に記載の方法。
【請求項348】
前記操作された細胞の集団の操作された細胞の枯渇を可能にする、薬剤を投与することを含む、請求項308~347のいずれか1項に記載の方法。
【請求項349】
前記操作された細胞の枯渇を可能にする前記薬剤は、前記操作された細胞の表面に発現したタンパク質を認識する抗体である、請求項348に記載の方法。
【請求項350】
前記抗体は、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA、及びRQR8を認識する抗体からなる群から選択される、請求項349に記載の方法。
【請求項351】
前記抗体は、モガムリズマブ、AFM13、MOR208、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-Rllb、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジニツキシマブ、c.60C3-Rllc、及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択される、請求項349または請求項350に記載の方法。
【請求項352】
前記操作された細胞の表面上の前記1つ以上の免疫寛容原性因子を認識する薬剤を投与することを含む、請求項263~307及び348~351のいずれか1項に記載の方法。
【請求項353】
前記操作された細胞は、前記1つ以上の免疫寛容原性因子を発現するように操作されている、請求項352に記載の方法。
【請求項354】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である、請求項352または請求項353に記載の方法。
【請求項355】
1つ以上の追加の治療薬を前記患者に投与することを更に含む、請求項263~354のいずれか1項に記載の方法。
【請求項356】
前記患者は、1つ以上の追加の治療薬を投与されている、請求項263~355のいずれか1項に記載の方法。
【請求項357】
前記方法の治療効果を監視することを更に含む、請求項263~356のいずれか1項に記載の方法。
【請求項358】
前記方法の予防効果を監視することを更に含む、請求項263~357のいずれか1項に記載の方法。
【請求項359】
1つ以上の疾患症状の所望の抑制が起こるまで繰り返される、請求項263~358のいずれか1項に記載の方法。
【請求項360】
自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項92~156及び221~228のいずれか1項に記載の操作された細胞。
【請求項361】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項360に記載の操作された細胞。
【請求項362】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子または安全スイッチに関連する遺伝子は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項360または請求項361に記載の操作された細胞。
【請求項363】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項360または請求項361に記載の操作された細胞。
【請求項364】
前記バイシストロン性カセットは、前記操作された細胞のゲノム内への非標的挿入によって、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入によって組み込まれる、請求項362または請求項363に記載の操作された細胞。
【請求項365】
前記バイシストロン性カセットは、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によって組み込まれ、任意選択で、前記標的挿入は、相同指向性修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、請求項364に記載の操作された細胞。
【請求項366】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である、請求項359~365のいずれか1項に記載の操作された細胞。
【請求項367】
前記操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項157~220のいずれか1項に記載の方法。
【請求項368】
前記自殺遺伝子は、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項367に記載の方法。
【請求項369】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項367または請求項368に記載の方法。
【請求項370】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項367または請求項368のいずれか1項に記載の方法。
【請求項371】
前記バイシストロン性カセットは、前記操作された細胞のゲノム内への非標的挿入によって組み込まれる、請求項369または請求項370に記載の方法。
【請求項372】
前記バイシストロン性カセットは、前記操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によって組み込まれる、請求項371に記載の方法。
【請求項373】
前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である、請求項367~372のいずれか1項に記載の方法。
【請求項374】
前記操作された細胞の集団の操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項240~259のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項375】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項374に記載の組成物。
【請求項376】
前記自殺遺伝子、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子は、前記操作された細胞の集団の操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項374または請求項375に記載の組成物。
【請求項377】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記外因性CD47は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項374または請求項375に記載の組成物。
【請求項378】
前記バイシストロン性カセットは、前記ゲノム内への非標的挿入によって、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記操作された細胞の集団の操作された細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入によって組み込まれる、請求項376または請求項377に記載の組成物。
【請求項379】
前記バイシストロン性カセットは、前記操作された細胞の集団の操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によって組み込まれ、任意選択で、前記標的挿入は、相同指向性修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、請求項376または請求項377に記載の組成物。
【請求項380】
前記細胞は、自家細胞である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法または細胞。
【請求項381】
前記細胞は、同種異系細胞である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法または細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月11日出願の米国仮特許出願第63/232,161号、2022年1月7日出願の米国仮特許出願第63/297,694号、2022年5月20日出願の米国仮特許出願第63/344,502号、2022年6月3日出願の米国仮特許出願第63/348,990号、及び2022年6月17日出願の米国仮特許出願第63/353,531号に対する優先権を主張し、これらの特許のそれぞれの内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子形式の配列表の参照
電子形式の配列表(186152005440SEQLIST.xml、サイズ:32,413バイト、作成日:2022年8月11日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
特定の態様では、本開示は、同種異系細胞療法に使用するための、遺伝子改変などの1つ以上の改変を含む、操作された初代細胞などの操作された細胞に関する。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、低免疫原性細胞である。
【発明の概要】
【0004】
概要
いくつかの態様では、本明細書では、(i)1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させる、ならびに(ii)1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる、改変を含む、操作された初代細胞などの操作された細胞が提供され、(i)の発現の増加及び(ii)の発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較したものである。
【0005】
いくつかの実施形態では、(ii)の改変は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる。いくつかの実施形態では、(ii)の改変は、1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる。提供される実施形態のいずれかのいくつかでは、1つ以上の免疫寛容原性因子は、A20/TNFAIP3、C1阻害剤、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1及び/またはSerpinb9である。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、CD47である。
【0006】
任意の実施形態のいくつかでは、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47;HLA-E;CD24;PD-L1;CD46;CD55;CD59;CR1;MANF;A20/TNFAIP3;HLA-E及びCD47;CD24、CD47、PD-L1及びこれらの任意の組み合わせ;HLA-E、CD24、CD47及びPD-L1ならびにこれらの任意の組み合わせ;CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;HLA-E、CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59及びCR1ならびにこれらの任意の組み合わせ;HLA-E及びPDL1;HLA-E、PDL1及びA20/TNFAIPならびにこれらの任意の組み合わせ;HLA-E、PDL1及びMANFならびにこれらの任意の組み合わせ;HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP及びMANFならびにこれらの任意の組み合わせ;ならびにCD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8及びこれらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される。
【0007】
任意の実施形態のいくつかでは、改変は、MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減させる;MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低減させる;CD47ならびに任意選択でCD24及びPD-L1の発現を増加させる;ならびにCD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させる、改変から選択される。
【0008】
任意の実施形態のいくつかでは、改変は、MHCクラスI分子の発現を低減させる;MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低減させる;TXNIPの発現を低減させる;PD-L1及びHLA-Eの発現を増加させる;ならびに任意選択でA20/TNFAIP3及びMANFの発現を増加させる、改変から選択される。
【0009】
任意の実施形態のいくつかでは、改変は、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させる;ならびにMICA及び/またはMICBの発現を低減させる、改変から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、改変は、MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減させる;ならびにCD47の発現を増加させる、改変から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記の改変のいずれかは、細胞における遺伝子の発現を増加または低下させる1つ以上の追加の編集と共に、提供される操作された細胞において存在する。いくつかの実施形態では、更なる改変のいずれか1つ以上は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、CTLA-4、PD-1、IRF1、MIC-A、MIC-B-の発現の妨害、不活性化またはノックアウトなど、発現を低減させる改変であり得る。いくつかの実施形態では、更なる改変のいずれか1つ以上は、酸化ストレスまたはERストレスに関与するタンパク質、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、PCDH11Y、NLGN4Y及び/またはRHDの発現を低減させる、改変であり得る。いくつかの実施形態では、酸化ストレスまたはERストレスに関与するタンパク質には、チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)、PKR様ERキナーゼ(PERK)、イノシトール要求性酵素1α(IRE1α)、及びDJ-1(PARK7)が含まれる。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記の標的遺伝子(例えば、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、CTLA-4、PD-1、IRF1、MIC-A、MIC-B)の発現が低減している提供された実施形態のいずれかについて、標的遺伝子は、操作された細胞によって発現されない。いくつかの実施形態では、標的遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞の表面上には発現されない。いくつかの実施形態では、MHCクラスI複合体及び/またはMHCクラスII複合体は、細胞の表面上には発現されない。
【0013】
いくつかの態様では、本明細書では、(i)CD47の発現を増加させる、ならびに(ii)1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる、改変を含む、操作された初代細胞が提供され、(i)の発現の増加及び(ii)の発現の低減は、改変を含まない、同じ細胞種の細胞と比較したものである。
【0014】
いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、CD47の発現を増加させる改変は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列をコードし、操作された初代細胞の自然免疫による殺傷を低減させる。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の配列をコードする。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された初代細胞のゲノム内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、CD47をコードするマルチシストロン性ベクター、及び第2の導入遺伝子をコードする追加の導入遺伝子である。いくつかの実施形態では、組込みは、操作された初代細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである。いくつかの実施形態では、組込みは、細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によるものである。いくつかの実施形態では、標的ゲノム遺伝子座は、セーフハーバー遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座である。いくつかの実施形態では、標的ゲノム遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、B-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低減させる改変である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、B2MのmRNA発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、B2Mのタンパク質発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子活性を排除する。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞におけるすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、B2M遺伝子中のインデルを含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子は、ノックアウトされる。いくつかの実施形態では、改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、CasはCas9である。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、CRISPR-Casの組み合わせは、B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的なターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casの組み合わせは、gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質またはHLA-Cタンパク質の発現を低減させる改変であり、任意選択で、当該HLA-Aタンパク質、当該HLA-Bタンパク質または当該HLA-Cタンパク質をコードする遺伝子は、ノックアウトされる。
【0016】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる改変は、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる改変は、CIITAの発現を低減させる改変である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる改変は、CIITAのmRNA発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる改変は、CIITAのタンパク質発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、改変は、CIITA遺伝子活性を排除する。いくつかの実施形態では、改変は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞におけるすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、CIITA遺伝子中のインデルを含む。いくつかの実施形態では、インデルは、CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子は、ノックアウトされる。いくつかの実施形態では、改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CIITA遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、CasはCas9である。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、CRISPR-Casの組み合わせは、CIITA遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的なターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casの組み合わせは、gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる改変は、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質の発現を低減させる改変であり、任意選択で、当該HLA-DPタンパク質、当該HLA-DRタンパク質または当該HLA-DQタンパク質をコードする遺伝子は、ノックアウトされる。
【0017】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ヒト細胞または動物細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は、ブタ(pig)(ブタ(porcine))、ウシ(cow)(ウシ(bovine))またはヒツジ(sheep)(ヒツジ(ovine))細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、初代細胞は、血液に曝露される細胞型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ドナー対象から単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、ドナー試料がドナー対象から得られる時点で、ドナー対象は健康であるか、または疾患または状態を有する疑いがない。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、内皮細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、上皮細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、NK細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞である。いくつかの実施形態では、膵島細胞は、β膵島細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、肝細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ABO血液型O型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0018】
いくつかの態様では、本明細書では、操作された初代細胞を生成する方法が提供され、方法は、a)初代細胞における1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することと、b)初代細胞における1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させることと、を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl-阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、CD47である。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減または排除することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することを含む。
【0019】
いくつかの態様では、本明細書では、操作された初代細胞を生成する方法が提供され、方法は、a.細胞における1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することと、b.細胞におけるCD47の発現を増加させることと、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減または排除することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、CD47の発現を増加させる改変は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列をコードし、操作された初代細胞の自然免疫による殺傷を低減させる。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の配列をコードする。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された初代細胞のゲノム内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、組込みは、操作された初代細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した操作された初代細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである。いくつかの実施形態では、組込みは、細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によるものであり、任意選択で、標的挿入は、相同指向性修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、標的ゲノム遺伝子座は、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座である。いくつかの実施形態では、標的ゲノム遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、CasはCas9である。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、CRISPR-Casの組み合わせは、標的ゲノム遺伝子座の標的配列に相補的なターゲティングドメインと、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む相同指向修復鋳型と、を有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casの組み合わせは、gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、低免疫原性初代細胞である。
【0021】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減または排除することは、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる改変は、B2Mの発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる改変は、B2Mのタンパク質発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる改変は、B2M遺伝子活性を排除する。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる改変は、細胞におけるすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、内因性B2M遺伝子中のインデル、または内因性B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む。いくつかの実施形態では、インデルは、B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である。いくつかの実施形態では、内因性B2M遺伝子は、ノックアウトされる。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、CasはCas9である。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、CRISPR-Casの組み合わせは、B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的なターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casの組み合わせは、gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、HLA-Aタンパク質発現、HLA-Bタンパク質発現、またはHLA-Cタンパク質発現を低減させ、任意選択で、タンパク質発現は、当該HLA-Aタンパク質、当該HLA-Bタンパク質または当該HLA-Cタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトすることによって低減される。
【0022】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することは、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる遺伝子改変は、CIITAの発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる遺伝子改変は、CIITAのタンパク質発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる改変は、CIITAを排除する。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる改変は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞におけるすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、CIITA遺伝子中のインデル、またはCIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む。いくつかの実施形態では、インデルは、CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子は、ノックアウトされる。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスIIの発現を低減させる遺伝子改変は、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質の発現を低減させ、任意選択で、当該HLA-DPタンパク質発現、当該HLA-DRタンパク質発現または当該HLA-DQタンパク質発現は、当該HLA-DPタンパク質、当該HLA-DRタンパク質または当該HLA-DQタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトすることによって低減される。
【0023】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ヒト細胞または動物細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は、ブタ(pig)(ブタ(porcine))細胞、ウシ(cow)(ウシ(bovine))細胞またはヒツジ(sheep)(ヒツジ(ovine))細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、血液に曝露される細胞型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ドナー対象から単離されている。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞である。
【0024】
いくつかの実施形態では、初代膵島細胞は、初代膵島クラスターから解離されている。いくつかの実施形態では、初代膵島クラスターは、ヒト初代死体膵島クラスターである。いくつかの実施形態では、工程a)の後及び/または工程b)の後、初代膵島細胞は、改変された初代膵島クラスターへの再クラスター化のための条件下でインキュベートされ、インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、静的条件下でインキュベートすることの少なくとも一部を更に含む。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、静的条件下での第1のインキュベートと、それに続く動きを伴うインキュベートすることと、を含む。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、動きを伴うインキュベートすることと、それに続く静的条件下での第2のインキュベートと、を含む。いくつかの実施形態では、再クラスター化のための条件下でインキュベートする前に、方法は、改変された膵島細胞を選択することを含む。いくつかの実施形態では、選択することは、蛍光標識細胞分取(FACS)によるものである。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、i)初代膵島クラスターを初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、ii)懸濁液の初代β膵島細胞を改変し、初代β膵島細胞における1つ以上のMHCクラスI及び/または1つ以上のMHCクラスII HLAの発現を低減または排除することと、iii)改変された初代β膵島細胞を、第1の改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は動きを伴って実行される、インキュベートすることと、iv)改変された初代膵島クラスターを改変された初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、v)懸濁液の改変された初代膵島細胞を更に改変し、初代細胞における1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させることと、vi)更に改変された初代β膵島細胞を、第2の改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は動きを伴って実行される、インキュベートすることと、を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI HLAは、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質またはHLA-Cタンパク質である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII HLAは、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質である。いくつかの実施形態では、改変することは、遺伝子操作によるものである。いくつかの実施形態では、動きは、振盪である。いくつかの実施形態では、振盪は、軌道運動を含む。いくつかの実施形態では、振盪は、双方向の直線運動を含む。いくつかの実施形態では、振盪は、オービタルシェーカーによるものである。いくつかの実施形態では、(iii)のインキュベートすること及び/またはvi)のインキュベートすることは、静的条件下でインキュベートすることの少なくとも一部を更に含む。いくつかの実施形態では、iii)のインキュベートすること及び/またはvi)のインキュベートすることは、静的条件下での第1のインキュベートと、それに続く動きを伴うインキュベートすることと、を含む。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、動きを伴うインキュベートすることと、それに続く静的条件下での第2のインキュベートと、を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、v)の前に、方法は、iv)で解離させた膵島細胞から、改変されたβ膵島細胞を選択することと、任意選択で、選択された膵島細胞に対して工程iii)及び工程iv)を繰り返すことと、を含む。いくつかの実施形態では、vi)のインキュベートすることの後に、方法は、第2の改変された初代膵島クラスターを改変された初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、改変された膵島細胞を選択することと、を含む。いくつかの実施形態では、選択された改変初代β膵島細胞を、改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される。
【0028】
いくつかの実施形態では、本明細書では、細胞集団の改変を促進するための動きの使用が提供され、細胞集団は、動きに供する前に、集団の細胞における遺伝子発現を改変するために1つ以上の試薬と接触されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書では、細胞集団の改変を促進する方法が提供され、そこで、方法は、i)その集団の細胞における遺伝子発現を改変するために、細胞集団を1つ以上の試薬と接触させることと、ii)1つ以上の試薬と接触させた後、細胞集団を動きに供することと、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書では、細胞集団の生存率を促進する方法が提供され、そこで、方法は、i)その集団の細胞における遺伝子発現を改変するために、細胞集団を1つ以上の試薬と接触させることと、ii)1つ以上の試薬と接触させた後、細胞集団を動きに供することと、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書では、細胞集団の改変の方法が提供され、そこで、方法は、i)その集団の細胞における遺伝子発現を改変するために、細胞集団を1つ以上の試薬と接触させることと、ii)1つ以上の試薬と接触させた後、細胞集団を動きに供することと、を含む。
【0032】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、細胞集団は、初代細胞である。提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、細胞集団は、幹細胞に由来する細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞(PSC)、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞、生殖細胞系幹細胞、肺幹細胞、臍帯血幹細胞、及び複能性幹細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞(HSC)、または胚性幹細胞(ESC)である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ、内皮細胞、筋肉細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、肝細胞、グリア前駆細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、及び血液細胞からなる群から選択される。
【0033】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、細胞集団は、3Dネットワーク中に自然に存在する。
【0034】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、細胞集団は、懸濁状態にある。いくつかの実施形態では、細胞集団は、低付着表面を有する容器中にある。いくつかの実施形態では、細胞集団は、細胞を覆うのに十分な最小体積の培地中で容器内に維持される。いくつかの実施形態では、懸濁状態の細胞集団は、接触前に付着培養物または細胞クラスターから細胞を解離させることによって作製される。
【0035】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、細胞集団は、膵島細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、β膵島細胞を含む。いくつかの実施形態では、β膵島細胞を含む細胞集団は、初代膵島クラスターを、初代β膵島細胞を含む細胞の懸濁液へと解離させることによって作製される。
【0036】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、接触は、細胞を動きに供する前に2日よりも短い期間実施される。いくつかの実施形態では、接触は、細胞を動きに供する前に30秒~24時間実施される。いくつかの実施形態では、接触は、細胞を動きに供する前に1分~60分、2分~30分、5分~15分間実施される。
【0037】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、細胞集団を動きに供することにより、細胞凝集体の形成が促進される。いくつかの実施形態では、細胞集団を動きに供することにより、細胞クラスターが形成される。
【0038】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、方法または使用は、細胞を動きに供した後、静的条件下で細胞をインキュベートすることを更に含む。提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、方法または使用は、接触後かつ細胞を動きに供する前、静的条件下で細胞をインキュベートすることを更に含む。
【0039】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、1つ以上の試薬は、少なくとも2つの異なる試薬を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの異なる試薬のそれぞれは、異なる遺伝子の発現を調節するためのものである。
【0040】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、方法の工程は、繰り返される。いくつかの実施形態では、方法の第1の反復における1つ以上の試薬は、方法の繰り返される反復における1つ以上の試薬とは異なる。いくつかの実施形態では、方法の第1の反復における1つ以上の試薬は、方法の第2の反復における1つ以上の試薬とは異なる。
【0041】
提供される使用または方法の任意の実施形態のいくつかでは、これは、1つ以上の試薬との接触後に細胞を動きに供する前に、遺伝子発現が改変された細胞を選択することを更に含み得る。任意の実施形態のいくつかでは、改変された遺伝子発現を有する細胞を選択することは、接触前の細胞と比較したうえで行うことであり得る。いくつかの実施形態では、改変された遺伝子発現は、例えば、接触前の細胞中の遺伝子の発現と比較して、増加する。いくつかの実施形態では、改変された遺伝子発現は、例えば、接触前の細胞における遺伝子の発現と比較して、減少する。
【0042】
本明細書では、初代膵島細胞を改変するための方法が提供され、この方法は、i)初代膵島クラスターを初代膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、ii)遺伝子発現を改変するために、初代膵島細胞の懸濁液を1つ以上の試薬と接触させることと、iii)接触後、細胞を膵島に再クラスター化するための条件下で、改変された膵島細胞をインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は動きを伴って実行される、インキュベートすることと、を含む。
【0043】
いくつかの態様では、本明細書では、初代膵島細胞を遺伝子編集するための方法が提供され、この方法は、i)初代膵島クラスターを初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、ii)懸濁液の初代β膵島細胞を改変することと、iii)改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化するための条件下で、改変された初代β膵島細胞をインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は振盪しながら実行される、インキュベートすることと、を含む。いくつかの実施形態では、初代膵島クラスターは、ヒト初代死体膵島クラスターである。いくつかの実施形態では、改変することは、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるため、または細胞における1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させるために、細胞内に1つ以上の改変を導入することを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、(iii)のインキュベートすること及び/またはvi)のインキュベートすることは、静的条件下でインキュベートすることの少なくとも一部を更に含む。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、静的条件下での第1のインキュベートと、それに続く動きを伴うインキュベートすることと、を含む。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、動きを伴うインキュベートすることと、それに続く静的条件下での第2のインキュベートと、を含む。いくつかの実施形態では、工程i)~iii)が繰り返される。いくつかの実施形態では、方法の第1の反復における改変は、方法の繰り返される反復における改変とは異なる。いくつかの実施形態では、方法の第1の反復における1つ以上の試薬は、方法の繰り返される反復における1つ以上の試薬とは異なる。
【0045】
いくつかの実施形態では、再クラスター化膵島細胞は、第1の改変された初代膵島クラスターであり、方法は、iv)第1の改変された初代膵島クラスターを改変された初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、v)懸濁液の改変された初代膵島細胞を更に改変することと、vi)第2の改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下で、更に改変された初代β膵島細胞をインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は動きを伴って実施される、インキュベートすることと、を更に含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬は1つ以上の第1の試薬であり、再クラスター化膵島細胞は第1の改変された初代膵島クラスターであり、方法は、iv)第1の改変された初代膵島クラスターを改変された初代膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、v)遺伝子発現を改変するために、懸濁液の改変された初代膵島細胞を1つ以上の更なる試薬と更に接触させることと、vi)更なる接触後に、更に改変された初代膵島細胞を、第2の改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は動きを伴って実施される、インキュベートすることと、を更に含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、iii)のインキュベートすることの前に、方法は、改変された膵島細胞を選択することを含む。いくつかの実施形態では、v)の前に、方法は、iv)で解離させた膵島細胞から、改変されたβ膵島細胞を選択することと、任意選択で、選択された膵島細胞に対して工程iii)及び工程iv)を繰り返すことと、を含む。いくつかの実施形態では、vi)のインキュベートすることの後に、方法は、第2の改変された初代膵島クラスターを改変された初代膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、改変された膵島細胞を選択することと、を含む。いくつかの実施形態では、改変された細胞は、改変された遺伝子発現を有し、例えば、接触前の初代膵島細胞と比較して改変されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、選択された改変初代β膵島細胞を、改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される。いくつかの実施形態では、選択することは、蛍光標識細胞分取(FACS)を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、懸濁液は、単一細胞懸濁液である。
【0050】
いくつかの実施形態では、初代膵島細胞の懸濁液は、低付着表面を有する容器中に存在する。いくつかの実施形態では、容器は、細胞を覆うのに十分な最小体積の培地を有する。
【0051】
任意の実施形態のいくつかでは、動きは、それぞれ両端を含んで、約20rpm~約180rpm、約40rpm~約125rpm、または約60rpm~約100rpmの速度である。いくつかの実施形態では、動きは、両端を含んで、約85rpm~約95rpmの速度である。
【0052】
いくつかの実施形態では、動きは、振盪である。いくつかの実施形態では、振盪は、軌道運動を含む。いくつかの実施形態では、動きは、波状の動きである。いくつかの実施形態では、波状の動きは、軌道運動と揺動運動を組み合わせたシェーカー装置によるものである。いくつかの実施形態では、振盪は、双方向の直線運動を含む。いくつかの実施形態では、振盪は、オービタルシェーカーによるものである。いくつかの実施形態では、動きは、傾斜角を伴うものである。いくつかの実施形態では、傾斜角は、1°~8°である。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の改変することまたは更なる改変することの一方は、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させることを含み、第1の改変することまたは更なる改変することのうちの他方は、細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、第1の改変することは、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させることを含み、更なる改変することは、細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させることを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬は、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるか、または細胞における1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、第1の1つ以上の試薬の少なくとも1つは、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるためのものであり、更なる1つ以上の試薬の少なくとも1つは、細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させるためのものである。いくつかの実施形態では、第1の1つ以上の試薬の少なくとも1つは、細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させるためのものであり、更なる1つ以上の試薬の少なくとも1つは、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるためのものである。いくつかの実施形態では、第1の1つ以上の試薬は、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるためのものであり、更なる1つ以上の試薬は、細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させるためのものである。いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬は、内因性タンパク質をコードする標的遺伝子を遺伝子編集するためのゲノム改変タンパク質、及び/または外因性タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む薬剤を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させることは、遺伝子編集システムを細胞内に導入することによるものである。いくつかの実施形態では、遺伝子編集システムは、配列特異的ヌクレアーゼを含む。任意の実施形態のいくつかでは、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるための1つ以上の試薬は、ゲノム改変タンパク質を含む。ゲノム改変タンパク質は、配列特異的ヌクレアーゼ、CRISPR関連トランスポザーゼ(CAST)、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントを介したプログラム可能な付加(PASTE)による遺伝子編集に関連している。いくつかの実施形態では、ゲノム改変タンパク質は、配列特異的ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、配列特異的ヌクレアーゼは、RNA誘導性ヌクレアーゼである。
【0056】
いくつかの実施形態では、配列特異的ヌクレアーゼは、RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子編集システムは、RNA誘導性ヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では、RNA誘導性ヌクレアーゼは、Casヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、RNA誘導性ヌクレアーゼは、II型またはV型Casタンパク質である。いくつかの実施形態では、RNA誘導性ヌクレアーゼは、Cas9ホモログまたはCpf1ホモログである。いくつかの実施形態では、ゲノム改変タンパク質は、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、及びMad7からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Casは、Cas9である。いくつかの実施形態では、Casは、Cas12である。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬は、1つ以上の主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子の発現を低減させるため、及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるためのものである。いくつかの実施形態では、第1の改変することは、1つ以上の主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、改変することは、遺伝子操作することである。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI HLAは、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質またはHLA-Cタンパク質である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII HLAは、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質である。
【0058】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子またはMHCクラスII分子の発現を低減させるための1つ以上の試薬は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B及び/またはNFY-Cのうちの1つ以上の発現を低減させる。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスIの発現を低減させることは、B-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低減させることによるものである。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスIIの発現を低減させることは、CIITAの発現を低減させることによるものである。
【0059】
いくつかの実施形態では、更なる改変することは、細胞における1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の外因性タンパク質は、1つ以上の免疫寛容原性因子である。いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬は、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるための薬剤を含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、脂質粒子またはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0060】
いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、A20/TNFAIP3、C1-阻害剤、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1またはSerpinb9である。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl-阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、CD47である。
【0061】
いくつかの実施形態では、細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させることは、外因性ポリヌクレオチドを導入することによるものである。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター及びUBCプロモーターからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、細胞のゲノム内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、マルチシストロン性ベクターである。いくつかの実施形態では、組込みは、細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである。いくつかの実施形態では、組込みは、細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によるものである。いくつかの実施形態では、膵島細胞は、β膵島細胞である。
【0062】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、肝細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、内皮細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、甲状腺細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、皮膚細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、網膜色素上皮細胞である。
【0063】
いくつかの態様では、本明細書では、本明細書に記載の方法に従って産生された操作された細胞が提供される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、本明細書に記載のいずれかの細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、初代細胞である。任意の実施形態のいくつかでは、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞から選択される。いくつかの実施形態では、初代細胞は、膵島細胞である。いくつかの実施形態では、膵島細胞は、β膵島細胞である。
【0064】
いくつかの実施形態では、方法によって作製される細胞の生存率は、約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%またはそれ以上を超える。いくつかの実施形態では、方法によって改変された集団の細胞の割合は、約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%またはそれ以上を超える。
【0065】
任意の実施形態のいくつかでは、提供される改変細胞のいずれかにおいて記載される改変は、操作された細胞の自然免疫殺傷を低減させる。
【0066】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時にNK細胞媒介性細胞傷害性を回避することができる。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時に成熟NK細胞による細胞溶解から保護される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時に細胞に対する免疫応答を誘導しない。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時に細胞に対する全身性炎症反応を誘導しない。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時に細胞に対する局所的炎症反応を誘導しない。
【0067】
いくつかの態様では、本明細書では、本明細書に記載の操作された初代細胞のいずれかを複数含む、操作された初代細胞の集団が提供される。いくつかの実施形態では、複数の操作された初代細胞は、複数のドナー対象からプールされた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、複数のドナー対象のそれぞれは、健康な対象であるか、またはドナー試料がドナー対象から得られる時点で疾患もしくは状態を有する疑いがない。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、改変を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、B2M及び/またはCIITAの発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、B2Mの発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、B2M及びCIITAの発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、内因性B2M遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、内因性CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む。
【0068】
いくつかの態様では、本明細書では、本明細書に記載の集団のいずれか1つを含む、組成物が提供される。
【0069】
いくつかの態様では、本明細書では、本明細書に記載の方法のいずれか1つによって作製される操作された初代膵島クラスターを含む、組成物が提供される。
【0070】
いくつかの態様では、本明細書では、操作された初代膵島細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代膵島細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代膵島細胞の集団は、初代膵島細胞のクラスターである。いくつかの実施形態では、操作された初代膵島細胞の集団は、操作された初代β膵島細胞の集団である。
【0071】
いくつかの態様では、本明細書では、操作された初代T細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代T細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。
【0072】
いくつかの態様では、本明細書では、操作された初代甲状腺細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代甲状腺細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。
【0073】
いくつかの態様では、本明細書では、操作された初代皮膚細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代皮膚細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。
【0074】
いくつかの態様では、本明細書では、操作された初代内皮細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代内皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。
【0075】
いくつかの態様では、本明細書では、操作された初代網膜色素上皮細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代網膜色素上皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団の操作された初代細胞は、B2M遺伝子の両方の対立遺伝子にインデルを含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団の操作された初代細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を更に含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団の操作された初代細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子にインデルを含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団の操作された初代細胞は、表現型B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgを有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、生理食塩水などの緩衝液である。いくつかの実施形態では、組成物は、凍結保護物質を含む、無血清凍結保存培地中で調製される。いくつかの実施形態では、凍結保護物質はDMSOであり、凍結保存培地は5%~10%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保護物質は、10%のDMSO(v/v)であるか、または約10%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、組成物は、滅菌である。いくつかの実施形態では、本明細書では、本明細書に記載の組成物のいずれかを含む、容器が提供される。いくつかの実施形態では、容器は、滅菌バッグである。いくつかの実施形態では、バッグは、冷凍保存に適合するバッグである。
【0078】
いくつかの態様では、本明細書では、有効量の本明細書に記載の集団、組成物、または医薬組成物のいずれかを患者に投与することを含む、その必要がある患者において疾患、状態、または細胞欠損症を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、集団は、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として調製される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、β膵島細胞を含む膵島細胞を含む。いくつかの実施形態では、膵島細胞の集団は、膵島細胞のクラスターとして投与される。いくつかの実施形態では、膵島細胞の集団は、β膵島細胞のクラスターとして投与される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、肝細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、T細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、甲状腺細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、皮膚細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、内皮細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、網膜色素上皮細胞を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、状態または疾患は、糖尿病、がん、血管新生障害、眼疾患、甲状腺疾患、皮膚疾患、及び肝臓疾患からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞欠損症は糖尿病に関連するか、または細胞療法は糖尿病の治療のためのものであり、任意選択で、糖尿病はI型糖尿病である。
【0080】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、β膵島細胞を含む膵島細胞の集団である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、膵島細胞のクラスターとして投与される。
【0081】
いくつかの態様では、本明細書では、有効量の本明細書に記載の膵島細胞の集団、組成物もしくは医薬組成物のいずれかを患者に投与することを含む、その必要がある患者の糖尿病を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、膵島細胞のクラスターは、β膵島細胞のクラスターである。いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、血管状態もしくは疾患に関連するか、または細胞療法は、血管状態もしくは疾患の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、細胞集団は、内皮細胞の集団である。いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、肝臓疾患に関連するか、または細胞療法は、肝臓疾患の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、肝臓疾患は、肝硬変を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、肝細胞の集団である。いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、角膜疾患に関連するか、または細胞療法は、角膜疾患の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、角膜疾患は、フックスジストロフィー、または先天性遺伝性内皮ジストロフィーである。いくつかの実施形態では、細胞集団は、角膜内皮細胞の集団である。いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、腎疾患に関連するか、または細胞療法は、腎疾患の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、細胞集団は、腎細胞の集団である。いくつかの実施形態では、細胞療法は、がんの治療のためのものである。いくつかの実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、T細胞またはNK細胞の集団である。いくつかの実施形態では、細胞は、投与前に増殖され、凍結保存される。
【0082】
いくつかの実施形態では、集団を投与することは、集団の静脈内注射、筋肉内注射、血管内注射、及び移植を含む。いくつかの実施形態では、集団は、腎被膜移植または筋肉内注射を介して移植される。いくつかの実施形態では、集団はドナー対象に由来し、ドナーのHLA型は患者のHLA型と一致しない。いくつかの実施形態では、集団はヒト細胞集団であり、患者はヒト患者である。いくつかの実施形態では、β膵島細胞は、対象における耐糖能を改善する。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病患者である。いくつかの実施形態では、糖尿病患者は、I型糖尿病またはII型糖尿病である。いくつかの実施形態では、耐糖能は、膵島細胞の投与前の対象の耐糖能と比較して改善される。いくつかの実施形態では、β膵島細胞は、対象における外因性インスリン使用量を低減させる。いくつかの実施形態では、HbA1cレベルによって測定される耐糖能が改善される。いくつかの実施形態では、対象は絶食している。いくつかの実施形態では、膵島細胞は、対象におけるインスリン分泌を改善する。いくつかの実施形態では、インスリン分泌は、膵島細胞の投与前の対象のインスリン分泌と比較して改善される。
【0083】
疾患を治療する方法のいくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の免疫抑制剤を患者に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、患者は、1つ以上の免疫抑制剤を投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、小分子または抗体である。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、コルチコステロイド、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナール、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン(チモシン-α)、及び免疫抑制抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、シクロスポリンを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチルを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、コルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、シクロホスファミドを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、ラパマイシンを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、タクロリムス(FK-506)を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、抗胸腺細胞グロブリンを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、1つ以上の免疫調節剤である。
【0084】
疾患を治療する方法のいくつかの実施形態では、1つ以上の免疫調節剤は、小分子または抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IL-2受容体のp75、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD58、及びこれらのリガンドのいずれかに結合する抗体からなる群から選択される、受容体またはリガンドのうちの1つ以上に結合する。
【0085】
疾患を治療する方法のいくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の第1の投与と同じ日に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の第1及び/または第2の投与の投与後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の第1及び/または第2の投与の投与前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫抑制剤は、操作された細胞の改変を含まない免疫原性細胞の免疫拒絶を低減させるために投与される1つ以上の免疫抑制剤の用量と比較して、より低い用量で投与される。
【0086】
疾患を治療する方法のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、操作された細胞の制御された殺傷を可能にする。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチを含む。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、薬物またはプロドラッグの存在下、または選択的な外因性化合物による活性化の際に、制御された細胞死を誘導する。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、操作された細胞のアポトーシスを誘導できる、誘導性タンパク質である。いくつかの実施形態では、操作された細胞のアポトーシスを誘導できる誘導性タンパク質は、カスパーゼタンパク質である。いくつかの実施形態では、カスパーゼタンパク質はカスパーゼ9である。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、患者への1つ以上の免疫抑制剤の投与後に活性化され、制御された細胞死を誘導する。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、患者への1つ以上の免疫抑制剤の投与前に活性化され、制御された細胞死を誘導する。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、患者への操作された細胞の投与後に活性化され、制御された細胞死を誘導する。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、活性化され、患者に対する細胞傷害性または他の悪影響が生じた場合に制御された細胞死を誘導する。
【0087】
疾患を治療する方法のいくつかの実施形態では、方法は、操作された細胞の集団の操作された細胞の枯渇を可能にする、薬剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞の枯渇を可能にする薬剤は、操作された細胞の表面上に発現されるタンパク質を認識する抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA、及びRQR8を認識する抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、モガムリズマブ、AFM13、MOR208、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-Rllb、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジニツキシマブ、c.60C3-Rllc、及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択される。
【0088】
疾患を治療する方法のいくつかの実施形態では、方法は、操作された細胞の表面上の1つ以上の免疫寛容原性因子を認識する薬剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上の免疫寛容原性因子を発現するように操作されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である。
【0089】
疾患を治療する方法のいくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の追加の治療薬を患者に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、患者は、1つ以上の追加の治療薬が投与されている。
【0090】
疾患を治療する方法のいくつかの実施形態では、方法は、方法の治療効果を監視することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、方法の予防効果を監視することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の疾患症状の所望の抑制が起こるまで繰り返される。
【0091】
操作された細胞のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び自殺遺伝子または安全スイッチに関連する遺伝子は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び1つ以上の免疫寛容原性因子は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞のゲノム内への非標的挿入によって、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入によって組み込まれる。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によって組み込まれ、任意選択で、標的挿入は、相同指向性修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である。
【0092】
操作された細胞を作製する方法のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子は、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び自殺遺伝子または安全スイッチに関連する遺伝子は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び1つ以上の免疫寛容原性因子は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞のゲノム内への非標的挿入によって組み込まれる。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によって組み込まれる。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である。
【0093】
操作された細胞の組成物のいくつかの実施形態では、操作された細胞の集団の操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子、及び自殺遺伝子または安全スイッチに関連する遺伝子は、操作された細胞の集団の操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び外因性CD47は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、ゲノム内への非標的挿入によって、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した操作された細胞の集団の操作された細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入によって組み込まれる。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞の集団の操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によって組み込まれ、任意選択で、標的挿入は、相同指向性修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。
【0094】
提供される方法または細胞のいずれかのいくつかでは、細胞は、自家細胞である。
【0095】
提供される方法または細胞のいずれかのいくつかでは、細胞は、同種異系細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】C57BL/6(B6)マウスから単離されたB2M
-/-初代β膵島細胞が、主要組織適合性複合体クラスI(MHC-I)またはクラスII(MHC-II)分子を発現しないことを示す。移植前、及び移植後に単離された細胞における発現を分析した。
【
図2】
図2A~2Bは、マウスB2M
-/-初代β膵島細胞(A)、またはCD47の過剰発現のためにレンチウイルスベクターが形質導入されたB2M
-/-初代β膵島細胞(B)におけるCD47発現を示す。
【
図3-1】
図3A~3Fは、操作された及び野生型(WT)の初代β膵島細胞の筋肉内(i.m.)注射移植試験の結果を提供する。ルシフェラーゼ発現の生物発光イメージング(BLI)の定量化は、移植されたマウスWT初代β膵島細胞(A定量化、B対応するBLI画像)について、及び移植されたマウスB2M
-/-;CD47
tg初代β膵島細胞(C定量化、D対応するBLI画像)について、提供される。血糖測定値は、マウスWT初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウス(E)及びマウスB2M
-/-;CD47
tg初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウス(F)について提供される。
【
図4-1】
図4A~4Fは、腎被膜内に注入された、操作されたマウス初代β膵島細胞及びマウスWT初代β膵島細胞の試験の結果を提供する。ルシフェラーゼ発現のBLIの定量化は、移植されたマウスWT初代β膵島細胞(A定量化、B対応するBLI画像)について、及び移植されたマウスB2M
-/-;CD47
tg初代β膵島細胞(C定量化、D対応するBLI画像)について、提供される。血糖測定値は、マウスWT初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウス(E)について、及びマウスB2M
-/-;CD47
tg初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウス(F)について、提供される。
【
図5】
図5A~5Cは、免疫応答を評価する筋肉内注射同種異系移植試験の結果を提供する。血糖測定値は、同種異系マウスWT初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウス、及び同種異系マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウスについて提供される(A)。インターフェロンγ(IFNg)レベルは、同種異系マウスWT初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウス、及び同種異系マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウスについて提供される(B)。ドナー特異的抗体(DSA)IgGレベルは、同種異系マウスWT初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウス、及び同種異系マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞を移植された糖尿病マウスについて提供される(C)。
【
図6】
図6A~6Fは、操作された及びマウスWT初代β膵島細胞のin vitroでのナチュラルキラー(NK)細胞媒介性細胞殺傷の結果を提供する。NK細胞媒介性細胞殺傷は、マウスWT初代β膵島細胞(A)、マウスB2M
-/-初代β膵島細胞(B)、及びマウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞(C)について提供される。抗CD47抗体の存在下でのNK細胞媒介性細胞殺傷はまた、マウスWT初代β膵島細胞(D)、マウスB2M
-/-初代β膵島細胞(E)、及びマウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞(F)について提供される。
【
図7】
図7A~7Fは、操作されたマウス及びマウスWT初代β膵島細胞のin vitroでのマクロファージ細胞媒介性細胞殺傷の結果を提供する。マクロファージ細胞媒介性細胞殺傷は、マウスWT初代β膵島細胞(A)、マウスB2M
-/-初代β膵島細胞(B)、及びマウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞(C)について提供される。抗CD47抗体の存在下でのマクロファージ細胞媒介性細胞殺傷はまた、マウスWT初代β膵島細胞(D)、マウスB2M
-/-初代β膵島細胞(E)、及びマウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞(F)について提供される。
【
図8-1】
図8A~8Nは、CD47の過剰発現のためにレンチウイルスベクターが形質導入されたマウスB2M
-/-(B2M
-/-;CD47tg)初代β膵島細胞におけるCD47発現を示し(A、C、E、G、I、K、M))、様々な感染多重度(MOI)について、操作されたマウス初代β膵島細胞のin vitroでのNK細胞媒介性細胞殺傷の対応する結果(B、D、F、H、J、L、N)を提供する。
【
図9-1】
図9Aは、WT初代ヒトβ膵島細胞及びB2M
-/-;CD47tg初代ヒトβ膵島細胞を移植した代表的なマウスの細胞組成を示す。
【
図9-2】
図9B~9Gは、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI(B~C)、HLAクラスII(D~E)、及びCD47発現(F~G)の表面発現について、代表的なドナーからのWT初代ヒトβ膵島細胞から生成されたWT初代ヒトβ膵島細胞、ならびにB2M
-/-;CD47tg操作されたヒトβ膵島細胞のフローサイトメトリー染色を示す。
【
図9-3】
図9Hは、WT初代ヒトβ膵島細胞、及びB2M
-/-;CD47tg操作されたヒトβ膵島細胞からのインスリン分泌を示す。
【
図9-4】
図9I~9Kは、代表的なドナーからの、WT初代ヒトβ膵島細胞(I)、B2M
-/-初代ヒトβ膵島細胞(J)、及びB2M
-/-;CD47tg初代ヒトβ膵島細胞(K)についてのin vitroでのNK細胞媒介性細胞殺傷を示す。
図9L~9Nは、代表的なドナーからの、WT初代ヒトβ膵島細胞(L)、B2M
-/-初代ヒトβ膵島細胞(M)、及びB2M
-/-;CD47tg初代ヒトβ膵島細胞(N)についてのin vitroでのマクロファージ媒介性細胞殺傷を示す。
【
図10A】同種異系ヒト初代膵島細胞に対するレシピエントの免疫応答を評価する同種異系移植試験の結果を提供する。代表的なドナーからの移植されたB2M
-/-;CD47
tgヒト初代膵島細胞(A定量;B対応するBLI画像)についてのルシフェラーゼ発現のBLIの定量化が提供される。
【
図10B】同種異系ヒト初代膵島細胞に対するレシピエントの免疫応答を評価する同種異系移植試験の結果を提供する。代表的なドナーからの移植されたB2M
-/-;CD47
tgヒト初代膵島細胞(A定量;B対応するBLI画像)についてのルシフェラーゼ発現のBLIの定量化が提供される。
【
図10C】同種異系ヒト初代膵島細胞に対するレシピエントの免疫応答を評価する同種異系移植試験の結果を提供する。代表的なドナーからの移植されたWTヒト初代膵島細胞(C定量;D対応するBLI画像)についてのルシフェラーゼ発現のBLIの定量化が提供される。
【
図10D】同種異系ヒト初代膵島細胞に対するレシピエントの免疫応答を評価する同種異系移植試験の結果を提供する。代表的なドナーからの移植されたWTヒト初代膵島細胞(C定量;D対応するBLI画像)についてのルシフェラーゼ発現のBLIの定量化が提供される。
【
図10E】代表的なドナーから採取した同種異系B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病マウスの血糖測定値を示す。
【
図10F】代表的なドナーから採取した同種異系WTヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病マウスの血糖測定値を示す。
【
図10G】代表的なドナーからの同種異系B2M
-/-;ヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病マウスのルシフェラーゼ発現のBLIを提供する。
【
図10H】代表的なドナーから採取した同種異系B2M
-/-ヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病マウスの血糖測定値を示す。
【
図10I】免疫応答を評価する筋肉内注射同種異系移植試験の結果を提供する。インターフェロンγ(IFNg)レベルは、WTヒト初代膵島細胞、B2M
-/-ヒト初代膵島細胞、及びB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病マウスについて提供される。
【
図10J】免疫応答を評価する筋肉内注射同種異系移植試験の結果を提供する。ドナー特異的抗体(DSA)IgGレベルは、WTヒト初代膵島細胞、B2M
-/-ヒト初代膵島細胞、及びB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病マウスについて提供される。
【
図11】
図11A~11Cは、代表的なドナーから採取された、同種異系B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(A)、WTヒト初代膵島細胞(B)、及びB2M
-/-ヒト初代膵島細胞(C)を移植された糖尿病マウスのcタンパク質測定値を示す。
【
図12A】移植されたWT初代ヒト膵島細胞、移植されたB2M
-/-ヒト初代膵島細胞、及び移植されたB2M
-/-;CD47tg初代ヒト膵島細胞のin vitroでの脾細胞媒介性細胞殺傷の結果を提供する。
【
図12B】移植されたWT初代ヒト膵島細胞、移植されたB2M
-/-ヒト初代膵島細胞、及び移植されたB2M
-/-;CD47tg初代ヒト膵島細胞のin vitroでの補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイの結果を提供する。
【
図13-1】
図13A~13Dは、糖尿病患者の末梢血単核細胞(PBMC)を使用したPBMC殺傷アッセイの結果を提供する。糖尿病性PBMCを用いた殺傷アッセイの結果を、WTヒト初代膵島細胞(A)及びB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(C)について示す。対照として、殺傷はまた、PBMCの非存在下で、WTヒト初代膵島細胞標的細胞(B)及びB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞標的細胞(D)についてのみ、示される。
【
図13-2】
図13E~13Hは、健常ドナーのPBMCを使用したPBMC殺傷アッセイの結果を提供する。健康なPBMCを用いた殺傷アッセイの結果を、代表的なもの由来のWTヒト初代膵島細胞(E)及びB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(G)について示す。対照として、殺傷はまた、PBMCの非存在下で、WTヒト初代膵島細胞標的細胞(F)及びB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞標的細胞(H)についてのみ、示される。
【
図13-3】
図13I~13Jは、死細胞のフローサイトメトリー分析による細胞殺傷の評価を示す。代表的なドナーからのWTヒト初代膵島細胞と糖尿病患者PBMCまたは健常ドナーPBMCとのin vitroでのインキュベーション後の死細胞の割合を、
図13Iに示す。代表的なドナーからのB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞と糖尿病患者PBMCまたは健常ドナーPBMCとのin vitroでのインキュベーション後の死細胞の割合を、
図13Jに示す。
【
図14】
図14A~14Fは、操作された初代ヒトβ膵島細胞及び操作された初代ヒトβ膵島細胞のin vitroでのナチュラルキラー(NK)細胞ならびにマクロファージ細胞媒介性細胞殺傷の結果を提供する。NK細胞媒介性細胞殺傷は、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(A)、抗CD47 IgG1Fcの存在下におけるB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(B)、及び抗CD47 IgG4Fcの存在下におけるB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(C)について、提供される。マクロファージ細胞媒介性細胞殺傷はまた、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(D)、抗CD47 IgG1Fcの存在下におけるB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(E)、及び抗CD47 IgG4Fcの存在下におけるB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(F)について、提供される。
【
図15】
図15A~15Cは、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞、抗CD47 IgG1Fcを発現するB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞、及び抗CD47 IgG4Fcの存在下でのB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞について、グランザイムB(A)、パーフォリン(B)ならびに活性酸素種(ROS)(C)のin vitroでの測定値を示す。
【
図16】WTヒト初代膵島細胞、B2M
-/-ヒト初代膵島細胞、及びB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞におけるCD47発現を示す。
【
図17】WTヒト初代膵島細胞(全、アポトーシス及び壊死)、B2M
-/-ヒト初代膵島細胞(全、アポトーシス及び壊死)、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(全、アポトーシス及び壊死)、及び抗CD47 B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(全、アポトーシス及び壊死)について、in vitroでのマクロファージの貪食の結果を提供する。
【
図18】B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞、抗CD47 IgG1Fcの存在下でのB2M
-/-;CD47tg初代ヒトβ膵島細胞、及び抗CD47 IgG4Fcの存在下でのB2M
-/-;CD47tg初代ヒトβ膵島細胞について、in vitroでのマクロファージの貪食の結果を示す。
【
図19-1】
図19A~19Fは、同種異系ヒト初代膵島細胞に対する糖尿病NSGマウスの免疫応答を評価する、同種異系移植試験の結果を提供する。ルシフェラーゼ発現画像のBLIは、代表的なドナーからの移植されたB2M
-/-CD47
tgヒト初代膵島細胞(A)及び代表的なドナーからの移植されたWT初代ヒト膵島細胞(D)について提供される。血糖測定値は、代表的なドナーから採取した同種異系B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病NSGマウス(B)及び代表的なドナーから採取した同種異系WTヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病マウス(E)について示す。Cタンパク質測定値も、代表的なドナーから採取した同種異系B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病NSGマウス(C)及び代表的なドナーから採取した同種異系WTヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病マウス(F)について提供される。
【
図20-1】
図20A~20Dは、局所投与された抗CD47及びアイソタイプ対照の存在下での同種異系ヒト初代膵島細胞に対する、糖尿病ヒト化マウス免疫応答またはその欠如を評価する、同種異系移植試験の結果を提供する。ルシフェラーゼ発現画像のBLIは、移植後8日目に、アイソタイプ対照抗体を局所的に(A)または抗CD47を局所的に(C)更に投与した、代表的なドナー由来のB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47
tgヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病ヒト化マウスについて提供される。血糖測定値は、移植後8日目に、アイソタイプ対照抗体を局所的に(B)または抗CD47を局所的に(D)更に投与した、代表的なドナー由来のB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47
tgヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病ヒト化マウスについて示す。
【
図21-1】
図21A~21Dは、全身投与された抗CD47及びアイソタイプ対照の存在下での同種異系ヒト初代膵島細胞に対する、糖尿病ヒト化マウス免疫応答またはその欠如を評価する、同種異系移植試験の結果を提供する。ルシフェラーゼ発現画像のBLIは、移植後8日目に、アイソタイプ対照抗体を全身に(A)または抗CD47を全身に(C)更に投与した、代表的なドナー由来のB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47
tgヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病ヒト化マウスについて提供される。血糖測定値は、移植後8日目に、アイソタイプ対照抗体を全身に(B)または抗CD47を全身に(D)更に投与した、代表的なドナー由来のB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47
tgヒト初代膵島細胞を移植された糖尿病ヒト化マウスについて示す。
【
図22】
図22A~22Bは、同種異系非ヒト霊長類(NHP)初代膵島細胞に対するNPHレシピエントの免疫応答を評価する同種異系移植試験の結果を提供する。ルシフェラーゼ発現のBLIの定量化は、移植されたB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47
tg NHP初代膵島細胞(A定量化;B対応するBLI画像)について提供される。
【
図23】
図23A~23Dは、免疫応答を評価するNHPにおける筋肉内注射同種異系移植試験の結果を提供する。インターフェロンγ(IFNg)レベルは、B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47
tg NHP初代膵島細胞を移植されたNHPについて、提供される(A)。ドナー特異的抗体(DSA)のIgMレベル(B)及びIgGレベル(C)は、B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg NHP初代膵島細胞を移植されたNHPについて、提供される。DSA IgGレベルはまた、移植前にIgGレベルが上昇した、B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg NHP初代膵島細胞(D)を移植された感作NHPについて、提供される。
【
図24】B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg NHP初代膵島細胞のin vitroでのナチュラルキラー(NK)細胞媒介性細胞殺傷の結果を提供する。
【
図25】WTヒト初代RPE細胞(上パネル)、ダブルノックアウト(B2M
-/-CIITA
-/-)初代RPE細胞(中パネル)及びB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代RPE細胞(下パネル)における、MHC-IまたはMHC-II分子及びCD47の発現を示す。
【
図26】
図26A~26Iは、WTヒト初代RPE細胞(上パネル)、ヒトダブルノックアウト(B2M
-/-CIITA
-/-)初代RPE細胞(中パネル)及びヒトB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代RPE細胞(下パネル)のin vitroでのナチュラルキラー(NK)細胞媒介性細胞殺傷(A~C)及びマクロファージ細胞媒介性細胞殺傷(D~F)の結果を提供する。標的細胞のみを媒介した細胞殺傷を、対照として各細胞株について提供する(G~I)。
【発明を実施するための形態】
【0097】
詳細な説明
本明細書では、いくつかの態様では、同種異系細胞療法などの同種異系移植に応答する免疫系反応の影響を軽減及び/または回避するための方法、ならびに組成物が提供される。細胞療法の免疫拒絶の問題を克服するために、本明細書では、免疫系を回避する能力を有する操作された細胞(本明細書では、操作された免疫回避細胞または操作された低免疫原性細胞とも呼ばれる)もしくはその集団、または任意の移植可能な細胞型の生存可能な供給源を表すその医薬組成物が開示される。本明細書で提供される操作された細胞の態様では、レシピエント対象の免疫系による細胞の拒絶反応は減少し、操作された細胞は、遺伝子操作された細胞は、対象の遺伝子構成、または1つ以上の以前の同種異系移植、以前の自家キメラ抗原受容体(CAR)T拒絶、及び/または導入遺伝子が発現される他の自己もしくは同種異系治療に対する対象内の既存の反応に関係なく、投与後に宿主に生着して機能することができる。したがって、いくつかの態様では、操作された細胞は、操作された免疫回避細胞を指す。本明細書に記載される操作された細胞は、これらに限定されないが、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)を含む、任意の細胞に由来する。いくつかの実施形態では、提供される操作された初代細胞は、操作された細胞(例えば、生検などの生体組織から直接採取された細胞)である。
【0098】
いくつかの実施形態では、初代細胞などの細胞は、未変化または未改変の野生型細胞と比較して、1つ以上の標的の低減または発現の増加を有するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞は、未変化または未改変の野生型細胞と比較して、1つ以上の標的の構成的な、発現の低減または増加を有するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞は、未変化または未改変の野生型細胞と比較して、1つ以上の標的の制御可能な、発現の低減または増加を有するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞は、同じ細胞種の野生型細胞または対照細胞と比較して、CD47の増加した発現を含む。細胞の文脈における「野生型」または「wt」または「対照」は、天然に見られる任意の細胞を意味する。野生型または対照細胞の例には、天然に見られる初代膵臓膵島細胞などの初代細胞が含まれる。しかしながら、例として、操作された細胞の文脈で、本明細書で使用する場合、「野生型」または「対照」はまた、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低減をもたらす核酸変化を含有し得るが、CD47タンパク質の過剰発現をもたらすための遺伝子編集手順を受けなかった操作された細胞を意味し得る。いくつかの実施形態では、野生型細胞または対照細胞は、出発材料である。いくつかの実施形態では、初代細胞株出発材料は、本明細書で想到されるように野生型細胞または対照細胞とみなされる出発材料である。いくつかの実施形態では、出発材料は、他に、操作された細胞を生成するために1つ以上の遺伝子の変化した発現を有するように改変または操作される。いくつかの実施形態では、野生型細胞または対照細胞は、ドナーからの細胞の形態の出発材料である。特定の実施形態では、野生型細胞または対照細胞は、生きている対象もしくは死亡した対象からの臓器または細胞の提供によって得られる細胞、例えば、死体膵臓細胞または腎臓細胞であり得る出発材料である。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は膵島細胞に適用される。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術は、初代膵島から単離されたものであっても、初代膵島内の初代膵臓β膵島細胞に由来するものであっても、または初代膵島の成分としても、初代膵臓β膵島細胞に適用される。例えば、初代膵臓β膵島細胞は、単一のβ膵島細胞、β膵島細胞の集団として、または初代膵島の成分(例えば、他の細胞種と共に初代膵島内に存在する初代膵臓β膵島細胞)として、編集され得る。別の例として、初代膵臓β膵島細胞は、単一のβ膵島細胞、β膵島細胞の集団として、または初代膵島の成分(例えば、他の細胞種と共に初代膵島内に存在する初代膵臓β膵島細胞)として、患者に対して投与され得る。膵臓β膵島細胞が他の細胞種と共に膵島内に存在する実施形態では、他の細胞種も本明細書に記載の方法によって編集され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術はまた、遺伝子工学などの操作前または操作後に初代膵島から解離された初代膵島細胞にも適用される。このような解離した膵島細胞は、患者に投与する前にクラスター化することができ、クラスターには、β膵島細胞を含む膵島細胞、ならびに限定されないが初代膵島由来のものを含む他の細胞種が含まれ得る。クラスターの膵島細胞の数は、約50、約100、約250、約500、約750、約1000、約1250、約1500、約1750、約2000、約2250、約2500、約2750、約3000、約3500、約4000、約4500、または約5000の細胞など、様々であり得る。患者は、約10、約20、約30、約40、約50、約75、約100、約125、約150、約200、約250、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、約500、約600、約700、約800、約900、または約1000のクラスターを投与され得る。
【0102】
本明細書で提供される操作された初代細胞は、1つ以上の免疫寛容原性因子(例えば、CD47)の発現の変化(例えば、過剰発現または発現の増加)、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の変化(例えば、発現の低減または排除)をもたらす改変(例えば、遺伝子改変)を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞に存在する改変は、1つ以上の免疫寛容原性因子の細胞表面発現の変化(例えば、増加または過剰発現)、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上数のMHCクラスII分子の細胞表面発現の変化(例えば、低減または排除)、例えば、細胞表面上の1つ以上の免疫寛容原性因子の増加または過剰発現、ならびに細胞表面上の1つ以上数のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低減または場合によっては排除を提供する。提供される態様では、変化した発現は、同じ細胞種の野生型または未改変などの改変を含まない類似の細胞、またはそれ以外は同じであるが、1つ以上の免疫寛容原性因子と1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を変化させる本明細書の改変を欠く細胞と比較したものである。細胞に改変を導入して発現を変化させる例示的な方法を、本明細書に記載する。例えば、遺伝子またはタンパク質の発現を過剰発現または増加させるための様々な方法のいずれかは、例えば、タンパク質(すなわち、導入遺伝子)をコードする外因性ポリヌクレオチドの導入もしくは送達によって、またはDNAターゲティングドメインと遺伝子を標的とする転写活性化因子の融合タンパク質の送達の導入によって、使用することができる。また、阻害性核酸(例えば、RNAi)の導入もしくは送達による非遺伝子編集方法、または標的ヌクレアーゼ系(CRISPR/Casなど)の導入もしくは送達を伴う遺伝子編集方法を含む、遺伝子またはタンパク質の発現を低減または排除するための様々な方法のいずれかを、使用することもできる。いくつかの実施形態では、発現を低減または排除する方法は、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集技術によるものである。
【0103】
いくつかの実施形態では、レアカット(rare-cutting)エンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びホーミングエンドヌクレアーゼシステム)を利用したゲノム編集技術を使用し、ヒト細胞において免疫遺伝子の発現を(例えば、必要不可欠な免疫遺伝子のゲノムDNAを欠失させることによって)低減または排除する。いくつかの実施形態では、ゲノム編集技術は、ニッカーゼ、塩基編集、プライム編集、及び遺伝子書き込みの使用を含む。特定の実施形態では、ゲノム編集技術または他の遺伝子調節技術を使用し、ヒト細胞において耐性誘導(免疫寛容原性)因子が挿入されて(例えば、CD47)、そうして、レシピエント対象への移植時に免疫認識を回避することができる操作された細胞を生成する。したがって、本明細書で提供される操作された初代細胞などの操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子、ならびにCD47などの免疫寛容原性因子の発現の調節(例えば、発現の増加または過剰発現)に影響を及ぼす、1つ以上の遺伝子ならびに因子の調節された発現(例えば、発現の低減または排除)を示す。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、レシピエント対象の免疫系を回避する。
【0104】
いくつかの態様では、本明細書で提供される操作された細胞は、自然免疫細胞拒絶反応または適応免疫細胞拒絶反応(例えば、低免疫原性細胞)を受けない。例えば、いくつかの実施形態では、操作された細胞は、NK細胞媒介性溶解及びマクロファージ貪食の影響を受けない。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、免疫抑制剤をほとんどもしくはまったく必要とすることなくレシピエント対象に移植される、普遍的に適合性の細胞または組織(例えば、普遍的ドナー細胞または組織)の供給源として有用である。このような低免疫原性細胞は、移植時に細胞特異的性質及び特徴を保持する。
【0105】
本開示は、少なくとも部分的に、操作された細胞上の1つ以上の細胞表面抗原に対して、既存の抗体(及び/または操作された細胞を投与された個体における操作された細胞の循環寿命中に発生する抗体)を有する個体への投与に有用な細胞の遺伝子操作に関する、発明者らの発見及び独自の観点に基づいている。このような操作は、操作された細胞に対する個体の免疫応答の誘発を回避するのに役立つ。更に、これらの発見は、患者及び/または治療の選択など、本明細書で提供される追加の開示を裏付ける。
【0106】
本明細書で提供される操作された細胞は更に、免疫寛容原性因子の過剰発現を利用し、1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子(MHCクラスI分子)もしくはその成分、及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(MHCクラスII分子)の発現(例えば、表面発現)を調節(例えば、低減または排除)し得る。いくつかの実施形態では、レアカット(rare-cutting)エンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びホーミングエンドヌクレアーゼシステム)を利用したゲノム編集技術を使用し、ヒト細胞において免疫遺伝子の発現を(例えば、必要不可欠な免疫遺伝子のゲノムDNAを欠失させることによって)低減または排除する。特定の実施形態では、ゲノム編集技術または他の遺伝子調節技術を使用し、ヒト細胞において耐性誘導(免疫寛容原性)因子が挿入されて(例えば、CD47)、そうして、レシピエント対象への移植時に免疫認識を回避することができる操作された細胞を生成する。したがって、本明細書で提供される操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子に影響を及ぼして、レシピエント対象の免疫系を回避する、1つ以上の遺伝子及び因子の調節された発現を示す。場合によっては、細胞はT細胞であり、細胞はまた、内因性TCR発現を調節(例えば、低減または排除)するように操作される。
【0107】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、免疫認識を回避することを可能にする特徴を示す。いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、低免疫原性である。いくつかの態様では、本明細書で提供される操作された細胞は、自然免疫細胞拒絶反応を受けない。例えば、いくつかの実施形態では、操作された細胞は、NK細胞媒介性溶解及びマクロファージ貪食の影響を受けない。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、免疫抑制剤をほとんどもしくはまったく必要とすることなくレシピエント対象に移植される、普遍的に適合性の細胞または組織(例えば、普遍的ドナー細胞または組織)の供給源として有用である。このような低免疫原性細胞は、移植時に細胞特異的性質及び特徴を保持する。
【0108】
いくつかの態様では、本明細書では、(i)1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させる、ならびに(ii)1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる、改変を含む、操作された初代細胞が提供され、(i)の発現の増加及び(ii)の発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、CD47である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、b-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低減させる改変である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスIIの発現を低減させる改変は、CIITAの発現を低減させる改変である。いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。
【0109】
いくつかの態様では、本明細書では、操作された初代細胞などの操作された細胞を生成する方法が提供され、方法は、a.細胞における1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することと、b.細胞における1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させることと、を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、CD47である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、b-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低減させる改変である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる改変は、CIITAの発現を低減させる改変である。いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。
【0110】
いくつかの態様では、本明細書では、本明細書に記載の操作された初代細胞などの操作された細胞のいずれかを複数含む、操作された初代細胞などの操作された細胞の集団が提供される。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、未変化もしくは未改変の野生型細胞と比較して、B2M及び/またはCIITAの発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、本明細書では、組成物(例えば、本明細書に記載の操作された細胞の集団のいずれかの医薬組成物)が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、組成物(例えば、本明細書に記載の操作された初代細胞の集団のいずれかの医薬組成物)が提供される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団は、操作された初代膵島細胞、操作された初代β膵島細胞、操作された初代T細胞、操作された初代甲状腺細胞、操作された初代皮膚細胞、操作された初代内皮細胞、及び操作された初代網膜色素上皮細胞からなる群から選択される、操作された初代細胞の集団を含む。
【0111】
本明細書ではまた、MHC不適合の同種異系レシピエントにおける免疫拒絶反応を回避する操作された細胞(例えば、操作された初代細胞)を投与することを含む、障害を治療するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれか1つから生成される操作された細胞は、MHC不適合の同種異系レシピエントに反復投与された(例えば、移植された(transplanted)または移植された(grafted))ときに免疫拒絶反応を回避する。
【0112】
いくつかの態様では、本明細書では、有効量の本明細書に記載の操作された初代細胞などの操作された細胞の集団のいずれかの集団を患者に投与することを含む、その必要がある患者において疾患、状態、または細胞欠損症を治療する方法が提供される。いくつかの態様では、本明細書では、有効量の本明細書に記載の操作された初代細胞などの操作された細胞の組成物のいずれかを患者に投与することを含む、その必要がある患者において疾患、状態、または細胞欠損症を治療する方法が提供される。いくつかの態様では、本明細書では、有効量の本明細書に記載の操作された初代細胞などの操作された細胞の医薬組成物のいずれかを患者に投与することを含む、その必要がある患者において疾患、状態、または細胞欠損症を治療する方法が提供される。
【0113】
特定の実施形態の実施は、特にそれとは反対の指示がない限り、当業者の技能の範囲内である化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技法、遺伝学、免疫学、及び細胞生物学の従来の方法を用いることになり、これらのうちの多くが例示説明の目的で下記に記載される。このような技法は、文献において完全に説明される。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July 2008);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(IRL Press,Oxford,1985);and,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991);Annual Review of Immunology;及びAdvances in Immunologyなどの刊行物におけるモノグラフを参照されたい。
【0114】
本出願で言及される特許文献、科学記事及びデータベースを含むすべての刊行物は、それぞれの個々の刊行物が参照により個々に開示されているのと同じ程度に、すべての目的のためにそれらの全体が参照により組み込まれる。本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、公開出願及び他の刊行物に記載の定義に反する、または矛盾する場合、本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に組み込まれる定義より優先する。
【0115】
本明細書で使用される節の見出しは、単に構成目的のものであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、いくつかの実施形態が本開示の範囲及び趣旨内で可能であることを認識するだろう。以下の説明は本開示を例示するものであり、当然のことながら、本明細書に記載される本発明の範囲をいかなる形でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0116】
I.定義
別段定義されない限り、本明細書で使用される当技術分野のすべての用語、表記ならびに他の技術的及び科学的用語または専門用語は、請求される主題が関連する当技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有することが意図されている。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語を、明確にするため及び/または容易に参照できるように本明細書で定義されており、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも当技術分野で一般に理解されている意味との実質的な違いを表すと解釈されるべきではない。
【0117】
量または濃度などの測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%または0.1%の変動を包含することを意味する。
【0118】
添付の特許請求の範囲を含む、本明細書で使用する場合、単数形「a」、「or」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。本明細書に記載の態様及び変形は、このような態様及び変形「からなる」及び/または「から本質的になる」実施形態を含むことが理解される。
【0119】
本明細書で使用する場合、「及び/または」という用語には、関連する列挙された項目の1つ以上の任意かつすべての組み合わせが含まれる。
【0120】
本明細書で使用する場合、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関連する「外因性」という用語は、指示対象の分子が目的の細胞に導入されることを意味することが意図される。外因性ポリヌクレオチドなどの外因性分子は、例えば、外因性コーディング核酸を、染色体内への組込みによって、またはプラスミドもしくは発現ベクターなどの非染色体遺伝物質としてなどで、細胞の遺伝物質内に導入することによって導入され得る。したがって、この用語は、コーディング核酸の発現に関して使用する場合、発現可能な形態でのコーディング核酸の細胞への導入を指す。場合によっては、「外因性」分子とは、細胞内に通常は存在しないが、1つ以上の遺伝学的方法、生化学的方法、または他の方法によって細胞内に導入され得る分子、コンストラクト、因子などである。
【0121】
「内因性」という用語は、天然型または未改変の細胞に存在する、ポリヌクレオチド(例えば、遺伝子)もしくはポリペプチドなどの指示対象の分子を指す。例えば、内因性遺伝子の発現に関して使用する場合のこの用語は、細胞内に含まれ、外因的に導入されたのではない内因性核酸によってコードされる遺伝子の発現を指す。
【0122】
「遺伝子」とは、遺伝子産物をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を制御するすべてのDNA領域(このような制御配列がコード配列及び/または転写された配列に隣接するか否かにかかわらず)を含む。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳制御配列、例えば、リボソーム結合部位及び内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位、ならびに遺伝子座制御領域が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。遺伝子の配列は通常、細胞中の染色体上の固定された染色体位置または遺伝子座に存在する。
【0123】
「遺伝子座」という用語は、特定の遺伝子または遺伝マーカーが位置する染色体上の固定位置を指す。「標的遺伝子座」への言及は、遺伝子編集または外因性ポリヌクレオチドの組込みなどの遺伝子改変を標的とすることが望ましい、所望の遺伝子の特定の遺伝子座を指す。
【0124】
遺伝子に関連する「発現」または「遺伝子発現」という用語は、遺伝子に含まれる情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、または任意の他の種類のRNA)であり得るか、またはmRNAの翻訳によって作製されるタンパク質であり得る。遺伝子産物にはまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、及び編集などのプロセスによって改変されるRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリストイル化、及びグリコシル化によって改変されるタンパク質も含まれる。したがって、発現または遺伝子発現への言及には、タンパク質(またはポリペプチド)の発現、またはmRNAなどの遺伝子の転写可能な産物の発現が含まれる。タンパク質発現には、タンパク質の細胞内発現または表面発現が含まれ得る。通常、mRNAまたはタンパク質などの遺伝子産物の発現は、細胞において検出可能なレベルである。
【0125】
本明細書で使用する場合、「検出可能な」発現レベルは、当業者に公知の標準的な技術によって検出可能なレベルを意味し、例えば、ディファレンシャルディスプレイ、RT(逆転写酵素)共役ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ノーザンブロット、及び/またはRNase保護分析、ならびにフローサイトメトリー、ELISAまたはウェスタンブロットなどのタンパク質検出のための免疫親和性に基づく方法を含む。発現レベルの程度は、標準的な特性評価技術によって視覚化または測定できる程度の大きさであれば十分である。
【0126】
本明細書で使用する場合、「発現の増加」、「発現の促進」または「過剰発現」という用語は、特定の遺伝子発現を調節するための改変を含まない、例えば、野生型の発現レベル(発現がないこと、または測定不能な発現であり得る)の元の細胞またはソース細胞における発現に追加される、任意の発現形態を意味する。本明細書における「発現の増加」、「発現の促進」または「過剰発現」への言及は、遺伝子発現の増加、及び/またはポリペプチドに言及する限り、改変を含まない細胞、例えば、改変を導入するための遺伝子操作を行う前の元のソース細胞、例えば、未改変細胞または野生型細胞におけるレベルと比較して、ポリペプチドレベルの増加及び/またはポリペプチド活性の増加を意味すると解釈される。発現、ポリペプチドレベルまたはポリペプチド活性の増加は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%もしくは50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは100%、またはそれ以上であり得る。場合によっては、発現、ポリペプチドレベルまたはポリペプチド活性の増加は、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍またはそれ以上であり得る。
【0127】
「低免疫原性」という用語は、このような細胞を移植される対象による免疫拒絶反応を受けにくい細胞を指す。例えば、同じ細胞型であるが未変化または未改変の野生型細胞などの改変を含まない同様の細胞と比べて、このような低免疫原性細胞は、このような細胞を移植される対象による免疫拒絶反応を約2.5%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97.5%、99%またはそれ以上受けにくい可能性がある。通常は、低免疫原性細胞は、対象に対して同種異系であり、低免疫原性細胞は、MHC不適合同種異系レシピエントにおける免疫拒絶を回避する。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、T細胞媒介性適応免疫による拒絶反応及び/または自然免疫細胞による拒絶反応から保護される。
【0128】
細胞の低免疫原性は、細胞が適応免疫応答及び自然免疫応答を誘発する能力などの細胞の免疫原性を評価することによって決定することができる。このような免疫応答は、当業者に認識されているアッセイを使用して測定することができる。
【0129】
本明細書で使用する場合、「免疫寛容原性因子」とは、投与、移植(transplantation)または移植(engraftment)時に、宿主もしくはレシピエント対象の免疫系によって認識される細胞の能力を調節するかもしくはそれに影響を及ぼす、免疫抑制因子または免疫調節因子を含む。通常、免疫寛容原性因子は、操作された初代細胞などの操作された細胞がレシピエントの宿主免疫系によって標的にされないように、例えば、拒絶されないように、操作された初代細胞などの操作された細胞に対する免疫寛容を誘導する因子である。したがって、免疫寛容原性因子は、低免疫因子であり得る。免疫寛容原性因子の例には、免疫細胞抑制受容体(例えば、CD47)、免疫細胞抑制受容体に関与するタンパク質、チェックポイント阻害剤、及び自然免疫または適応免疫の認識を低減させる他の分子が含まれる。
【0130】
「減少する」、「低減される」、「低減」及び「減少」という用語はすべて、統計学的に有意な量の減少を一般に意味するように本明細書で使用される。しかしながら、疑義を回避するために、「減少する」、「低減される」、「低減」、「減少」とは、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の減少、または最大100%かつこれを含む減少(すなわち、参照試料と比較して不在のレベル)、または10~100%の任意の減少を意味する。
【0131】
「増加した」、「増加」、または「促進する」もしくは「活性化する」という用語はすべて、本明細書で統計学的に有意な量の増加を一般に意味するように使用される。疑義を避けるために、「増加した」、「増加」、または「促進する」もしくは「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、または最大100%かつこれを含む増加、または10~100%の任意の増加、または参照レベルと比較して少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍超の任意の増加を意味する。
【0132】
本明細書で使用する場合、「改変」という用語は、細胞における遺伝子発現に影響を及ぼす、細胞における任意の変更または変化を指す。いくつかの実施形態では、改変は、遺伝子編集、突然変異誘発または外因性ポリヌクレオチドもしくは導入遺伝子の遺伝子操作などによって、細胞のタンパク質産物をコードする遺伝子またはその調節エレメントを直接変更する、遺伝子改変である。
【0133】
本明細書で使用する場合、「インデル」とは、ゲノム中のヌクレオチド塩基の挿入、欠失、またはこれらの組み合わせからもたらされる変異を指す。したがって、インデルは通常、配列からヌクレオチドを挿入または削除する。当業者であれば理解するように、ゲノム配列のコード領域におけるインデルは、インデルの長さが3の倍数でない限り、フレームシフト変異をもたらすことになる。本開示のCRISPR/Casシステムを使用し、標的ポリヌクレオチド配列における任意の長さのインデルを誘導することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、変化は、点変異である。本明細書で使用する場合、「点変異」とは、ヌクレオチドのうちの1つを置き換える置換を指す。本開示のCRISPR/Casシステムを使用し、標的ポリヌクレオチド配列における任意の長さのインデルまたは点変異を誘導できる。
【0135】
本明細書で使用する場合、「ノックアウト」とは、標的ポリヌクレオチド配列の機能を妨げるように、標的ポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部分を欠失させることを含む。例えば、ノックアウトは、標的ポリヌクレオチド配列の機能的ドメイン(例えば、DNA結合ドメイン)において標的ポリヌクレオチド配列におけるインデルを誘導することにより標的ポリヌクレオチド配列を変化させることによって、達成され得る。当業者であれば、本明細書に記載の詳細に基づいて、本開示のCRISPR/Casシステムをどのように使用して、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分をノックアウトするかについて容易に理解するであろう。
【0136】
いくつかの実施形態では、変化は、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分のノックアウトをもたらす。本開示のCRISPR/Casシステムを使用した標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分のノックアウトは、様々な用途に有用であり得る。例えば、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトを研究目的のためにin vitroで実施することができる。ex vivo目的では、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトは、(例えば、細胞における変異対立遺伝子をex vivoでノックアウトし、ノックアウトされた変異対立遺伝子を含むそれらの細胞を対象に導入することによって)標的ポリヌクレオチド配列の発現に関連する障害を治療または予防するのに有用であり得る。
【0137】
本明細書における「ノックイン」とは、遺伝子機能を宿主細胞に付加するプロセスを意味する。これは、ノックインされた遺伝子産物、例えば、RNAまたはコードされたタンパク質のレベルの増加を引き起こす。当業者であれば理解するように、これは、遺伝子の1つ以上の追加のコピーを宿主細胞に付加すること、または内因性遺伝子の制御要素を変化させることにより、作製されるタンパク質の発現を増加させることを含めた、いくつかの方式で遂行することができる。これは、プロモーターを改変すること、異なるプロモーターを付加すること、エンハンサーを付加すること、または他の遺伝子発現配列を改変することによって遂行されてもよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択したポリヌクレオチド配列の発現の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択したポリペプチド配列の発現の低減をもたらす。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択したポリヌクレオチド配列の発現の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択したポリペプチド配列の発現の増加をもたらす。
【0140】
遺伝子発現の「調節」とは、遺伝子の発現レベルの変化を指す。発現の調節には、遺伝子活性化及び遺伝子抑制が含まれ得るが、これらに限定されない。調節はまた、完全であってもよく(すなわち、遺伝子発現が完全に不活性化されるか、または野生型のレベル以上まで活性化される)、またはそれは部分的であってもよい(遺伝子発現が部分的に低減されるか、または野生型のレベルのある割合まで部分的に活性化される)。
【0141】
「作動的に連結された」または「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上の構成要素(配列エレメントなど)の並置に関して互換的に使用され、これらの構成要素は、両方の構成要素が正常に機能し、構成要素のうちの少なくとも1つが、その他の構成要素のうちの少なくとも1つに及ぼす機能を媒介し得るという可能性を許容するように配置される。例示説明として、プロモーターなどの転写制御配列は、その転写制御配列が1つ以上の転写制御因子の存否に応答してコード配列の転写レベルを制御する場合、コード配列に作動的に連結されている。転写制御配列は通常、コード配列とシスで作動的に連結されるが、それに直接的に隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、コード配列に、それらが連続していない場合であっても、作動的に連結されている転写制御配列である。
【0142】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって結合された一連のアミノ酸残基(すなわち、アミノ酸残基のポリマー)を指すために互換的に使用され得、最小の長さに限定されない。このようなポリマーは、天然もしくは非天然のアミノ酸残基、またはこれらの組み合わせを含むことができ、アミノ酸残基のペプチド、ポリペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体を含むがこれらに限定されない。したがって、タンパク質またはポリペプチドには、修飾アミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化など)及びアミノ酸類似体を有するものが含まれる。完全長ポリペプチドまたはタンパク質、及びそれらの断片は、この定義に包含される。この用語にはまた、その改変種、例えば、1つ以上の残基の翻訳後修飾、例えば、メチル化、リン酸化、グリコシル化、シアリル化またはアセチル化も含まれる。
【0143】
本開示を通じて、特許請求される主題の様々な態様が、範囲形式で提示される。範囲形式での説明は単に便宜的及び簡潔にするためのものであり、請求される主題の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能なサブ範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値から下限値の間の各介在値、ならびにその表示範囲の任意の他の表示値または介在値が、記載範囲内の任意の具体的に除外される限界値を条件として、本開示内に包含されることが理解される。表示範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の片方または両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。いくつかの実施形態では、特徴に対して2つの対向するオープンエンド範囲が提供され、そのような説明では、それらの2つの範囲の組み合わせが本明細書で提供されることが想定される。例えば、いくつかの実施形態では、特徴は約10単位より大きいと説明され、(別の文などで)その特徴は約20単位未満であると説明され、したがって、約10単位から約20単位の範囲が本明細書に記載される。
【0144】
本明細書で使用する場合、互換的に使用される用語である「対象」または「個体」は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、「哺乳動物」には、ヒト、非ヒト霊長類、飼育動物及び家畜動物、ならびに動物園動物、スポーツ動物またはペット動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、スナネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコ、サルなどが含まれる。いくつかの実施形態では、対象または個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害または状態を有することが知られているか、またはその疑いがある患者である。
【0145】
本明細書で使用する場合、「治療すること」及び「治療」という用語は、対象が疾患の少なくとも1つの症状の低減または疾患の改善、例えば、有益なまたは所望の臨床結果を有するように、有効量の本明細書に記載の細胞を対象に投与することを含む。本技術の目的において、有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化していない)疾患状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または一時的緩和、及び寛解(部分的か完全かにかかわらず)が含まれるが、これらに限定されない。治療することは、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを指し得る。したがって、当業者であれば、治療が病態を改善し得るが、疾患に対する完全な治癒ではない場合があることを認識している。いくつかの実施形態では、疾患または障害の1つ以上の症状は、疾患の治療により少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%緩和される。
【0146】
本技術の目的において、疾患の治療の有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化していない)疾患状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または一時的緩和、及び寛解(部分的か完全かにかかわらず)が含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
「ベクター」または「コンストラクト」は、遺伝子配列を標的細胞に移入することができる。典型的には、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」及び「遺伝子導入ベクター」とは、目的の遺伝子の発現を導くことができ、遺伝子配列を標的細胞に導入し得る、任意の核酸コンストラクトを意味する。したがって、この用語は、クローニング、及び発現ビヒクル、ならびに組込みベクターを含む。ベクターまたはコンストラクトを細胞に導入するための方法は、当業者に公知であり、これには、脂質媒介性導入(すなわち、中性及びカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、粒子ボンバードメント、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性導入、及びウイルスベクター媒介性導入が含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
II.操作された細胞及び細胞を遺伝子操作する方法
本明細書では、1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列の発現を調節する改変、例えば、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を調節する改変を含む、操作された初代細胞などの操作された細胞が提供される。
【0149】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞(例えば、操作された初代細胞)は、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を調節する(例えば、増加させる)ための改変も含む。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子の発現の調節(例えば、発現の増加)、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の調節(例えば、発現の低減または排除)は、改変(複数可)を含まない細胞における当該分子(複数可)の発現量に対する相対的なものである。いくつかの実施形態では、発現の調節は、野生型細胞における当該分子(複数可)の発現量に対する相対的なものである。いくつかの実施形態では、未改変細胞または野生型細胞は、提供される操作された初代細胞と同じ細胞種の細胞である。いくつかの実施形態では、未改変細胞または野生型細胞は、免疫寛容原性因子、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子を発現する。いくつかの実施形態では、未改変細胞または野生型細胞は、1つ以上の免疫寛容原性因子、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子を発現しない。未改変細胞または免疫寛容原性因子を発現しない野生型細胞が操作された初代細胞を生成するために使用される、いくつかの実施形態では、提供される操作された初代細胞は、1つ以上の免疫寛容原性因子を過剰発現するか、または1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を0%から増加させるための改変を含む。操作前の細胞が検出可能な量の免疫寛容原性因子を発現しない場合、したがって、任意の検出可能な量の免疫寛容原性因子の発現をもたらす改変は、改変を含まない同様の細胞と比較して、発現の増加であることが理解される。
【0150】
いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子の発現の調節(例えば、発現の増加)、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の調節(例えば、発現の低減または排除)は、改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞における当該分子(複数可)の発現量に対する相対的なものである。1つ以上の免疫寛容原性因子を発現しない同じ細胞種の細胞を使用し、操作された初代細胞を生成する、いくつかの実施形態では、提供される操作された初代細胞は、1つ以上の免疫寛容原性因子を過剰発現するか、または1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を0%から増加させるための改変を含む。操作前の細胞が検出可能な量の免疫寛容原性因子を発現しない場合、したがって、任意の検出可能な量の免疫寛容原性因子の発現をもたらす改変は、改変を含まない同様の細胞と比較して、発現の増加であることが理解される。
【0151】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞(例えば、操作された初代細胞)は、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるための改変を含む。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF、及びH2-M3(これらの任意の組み合わせを含む)のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200、及びMfge8(これらの任意の組み合わせを含む)のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、CD47の発現の増加であるか、またはCD47の発現の増加を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、PD-L1の発現の増加であるか、またはPD-L1の発現の増加を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、HLA-Eの発現の増加であるか、またはHLA-Eの発現の増加を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、HLA-Gの発現の増加であるか、またはHLA-Gの発現の増加を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、CCL21、PD-L1、FasL、Serpinb9、H2-M3(HLA-G)、CD47、CD200、及びMfge8の発現の増加であるか、またはそれらの発現の増加を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減する、ゲノム改変などの1つ以上の改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。換言すれば、操作された初代細胞などの操作された細胞は、外因性CD47タンパク質を含み、1つ以上のMHCクラスI分子の表面発現の低減またはサイレンシングを示す。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上MHCクラスII分子の発現を低減する1つ以上のゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。いくつかの事例では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、外因性CD47核酸及びタンパク質を含み、1つ以上のMHCクラスI分子の表面発現の低減またはサイレンシングを示す。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除する1つ以上のゲノム改変、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除する1つ以上のゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、外因性CD47タンパク質を含み、1つ以上のMHCクラスI分子の表面発現の低減またはサイレンシングを示し、及び1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低減または欠如を示す。多くの実施形態では、細胞は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg細胞である。
【0153】
いくつかの実施形態では、記載される操作された初代細胞などの操作された細胞の集団は、レシピエント対象への投与時にレベルが低減した免疫活性化を誘発するか、または免疫活性化を誘発しない。いくつかの実施形態では、細胞は、レシピエント対象においてレベルが低減した全身性のTH1活性化を誘発するか、または全身性のTH1活性化を誘発しない。いくつかの実施形態では、細胞は、レシピエント対象においてレベルが低減した末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発するか、またはPBMCの免疫活性化を誘発しない。いくつかの実施形態では、細胞は、レシピエント対象への投与時に細胞に対するレベルが低減したドナー特異的IgG抗体を誘発するか、またはドナー特異的IgG抗体を誘発しない。いくつかの実施形態では、細胞は、レシピエント対象において細胞に対するレベルが低減したIgM及びIgG抗体産生を誘発するか、またはIgM及びIgG抗体産生を誘発しない。いくつかの実施形態では、細胞は、レシピエント対象への投与時に、細胞の、レベルが低減した細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発する。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された初代細胞などの操作された細胞は、「自殺遺伝子」または「自殺スイッチ」を含む。自殺遺伝子または自殺スイッチは、操作された初代細胞などの操作された細胞が細胞に投与された後ならびに細胞が望ましくない方法で成長及び分裂する場合など、操作された細胞(例えば、操作された初代細胞)の死を引き起こすことができる「安全スイッチ」として機能するように組み込まれ得る。「自殺遺伝子」による消失アプローチは、特定の化合物によって活性化されたときにのみ細胞殺傷をもたらすタンパク質をコードする、遺伝子導入ベクター内の自殺遺伝子を含む。自殺遺伝子は、無毒の化合物を毒性の高い代謝産物へと選択的に変換する、酵素をコードし得る。その結果、その酵素を発現している細胞が特異的に排除される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子は、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子であり、トリガーは、ガンシクロビルである。他の実施形態では、自殺遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)シトシンデアミナーゼ(EC-CD)遺伝子であり、トリガーは、5-フルオロシトシン(5-FC)である(Barese et al,Mol.Therap.20(10):1932-1943(2012)、Xu et al,Cell Res.8:73-8(1998)(いずれも参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。
【0155】
他の実施形態では、自殺遺伝子は、誘導性カスパーゼタンパク質である。誘導性カスパーゼタンパク質は、アポトーシスを誘導できるカスパーゼタンパク質の少なくとも一部分を含む。好ましい実施形態では、誘導性カスパーゼタンパク質は、iCasp9である。それは、一続きのアミノ酸を介してヒトカスパーゼ9をコードする遺伝子につなげられた、ヒトFK506結合タンパク質の配列FKBP12とF36V変異を含む。FKBP12-F36Vは、低分子二量体化剤であるAPI 903に高い親和性で結合する。したがって、本発明のiCasp9の自殺機能は、二量体誘導化合物(CID)の投与によって発動される。いくつかの実施形態では、CIDは、低分子薬API 903である。二量体化は、アポトーシスの迅速な誘導を引き起こす(例えば、WO2011146862、Stasi et al,N.Engl.J.Med 365;18(2011)、Tey et al,Biol.Blood Marrow Transplant.13:913-924(2007)を参照されたく、文献のそれぞれは参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0156】
安全スイッチまたは自殺遺伝子を組み込むことにより、レシピエントに対する細胞傷害性または他の悪影響が発生した場合に制御された細胞の殺傷が可能となり、免疫寛容原性因子を使用するものを含む、細胞ベースの治療の安全性が向上する。
【0157】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、本明細書に提供される操作された初代細胞などの操作された細胞に導入するなど組み込まれ、例えば、細胞が望ましくない方法で増殖及び分裂するか、または宿主に過剰な毒性を引き起こした場合に、安全スイッチを含む操作された初代細胞などの操作された細胞の死またはアポトーシスを誘導する能力を提供する。したがって、安全スイッチの使用により、in vivoで異常細胞を条件によって排除することが可能となり、クリニックにおける細胞療法の適用にとって重要な工程となり得る。安全スイッチ及びその使用は、例えば、Duzgune§,Origins of Suicide Gene Therapy(2019);Duzgune§(eds),Suicide Gene Therapy. Methods in Molecular Biology,vol.1895(Humana Press, New York, NY)(HSV-tk、シトシンデアミナーゼ、ニトロレダクターゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及び西洋ワサビペルオキシダーゼについて)、Zhou and Brenner, Exp Hematol 44(11):1013-1019 (2016) (iCaspase9について)、Wang et al.,Blood18(5):1255-1263(2001)(huEGFRについて)、米国特許出願公開第20180002397号(HER1について)、及びPhilip et al.,Blood124(8):1277-1287(2014)(RQR8について)に記載される。
【0158】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、例えば、薬物もしくはプロドラッグの存在下で、または選択的な外因性化合物による活性化により、制御された方法で細胞死を引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ニトロレダクターゼ(NTR)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ、誘導性カスパーゼ9(iCasp9)、ラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA、及びRQR8からなる群から選択される。
【0159】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、薬物またはプロドラッグによって活性化されると、例えば、細胞内で非毒性のプロドラッグを有毒な代謝産物に変えることによって、細胞を殺傷する能力を有する生成物をコードする導入遺伝子であり得る。これらの実施形態では、細胞殺傷は、操作された初代細胞などの操作された細胞を薬物またはプロドラッグと接触させることによって活性化される。場合によっては、安全スイッチはHSV-tkであり、これは、ガンシクロビル(GCV)をGCV三リン酸に変換し、それによってDNA合成を妨害し、分裂細胞を殺傷する。場合によっては、安全スイッチはCyDまたはその変異体であり、これは、シトシンのウラシルへの加水分解脱アミノ化を触媒することにより、抗真菌薬5-フルオロシトシン(5-FC)を細胞毒性5-フルオロウラシル(5-FU)に変換する。5-FUは更に、細胞酵素によって強力な代謝拮抗物質(5-FdUMP、5-FdUTP、5-FUTP)に変換される。これらの化合物は、チミジル酸合成酵素ならびにRNA及びDNAの産生を阻害し、細胞死をもたらす。場合によっては、安全スイッチはNTRまたはその変異体であり、これは、ニトロ基を増殖細胞及び非増殖細胞中で毒性である反応性N-ヒドロキシルアミン中間体に還元することを介して、プロドラッグCB1954に作用できる。場合によっては、安全スイッチはPNPまたはその変異体であり、これは、プロドラッグ6-メチルプリンデオキシリボシドまたはフルダラビンを増殖細胞及び非増殖細胞の両方に対する毒性代謝産物に変えることができる。場合によっては、安全スイッチは西洋ワサビペルオキシダーゼまたはその変異体であり、これは、インドール-3-酢酸(IAA)を触媒して強力な細胞毒に変えることで、細胞を殺傷することができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、安全スイッチはiCasp9であってもよい。カスパーゼ9は、生理的条件下で損傷ミトコンドリアからのシトクロムCの放出によって活性化される、内因性ミトコンドリアアポトーシス経路の構成要素である。次いで、活性化されたカスパーゼ9はカスパーゼ3を活性化し、これは、ターミナルエフェクター分子を誘発してアポトーシスを引き起こす。iCasp9は、切断型カスパーゼ9(その生理学的二量体化ドメインまたはカスパーゼ活性化ドメインを持たない)を、ペプチドリンカーを介してFK506結合タンパク質(FKBP)であるFKBP12-F36Vに融合することによって生成することができる。iCasp9は、低い二量体非依存性基礎活性を有し、宿主細胞(例えば、ヒトT細胞)においてその表現型、機能または抗原特異性を損なうことなく安定して発現できる。しかしながら、リミデュシド(AP1903)、AP20187及びラパマイシンなどの二量体誘導化合物(CID)の存在下では、iCasp9は二量体誘導化を起こし、下流のカスパーゼ分子を活性化して、iCasp9を発現する細胞のアポトーシスを引き起こし得る。例えば、PCT出願公開第WO2011/146862号、Stasi et al.,N.Engl.J.Med.365;18(2011)、Tey et al.,Biol.Blood Marrow Transplant 13:913-924(2007)を参照のこと。特に、ラパマイシン誘導型カスパーゼ9変異体は、rapaCasp9と称される。Stavrou et al.,Mal.Ther.26(5):1266-1276(2018)を参照のこと。したがって、iCasp9は、宿主細胞の制御された殺傷を達成するための安全スイッチとして使用できる。
【0161】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは膜発現タンパク質であってもよく、これは、そのタンパク質に対する特異的抗体の投与後の細胞枯渇を可能にする。このカテゴリーの安全スイッチには、例えば、その表面発現のためにCCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMAまたはRQR8をコードする1つ以上の導入遺伝子が含まれ得る。これらのタンパク質は、特異的抗体によって標的化され得る、表面エピトープを有し得る。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗CCR4抗体によって認識され得る、CCR4を含む。適切な抗CCR4抗体の非限定的な例としては、モガムリズマブ及びそのバイオシミラーが挙げられる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗CD16抗体または抗CD30抗体によって認識され得る、CD16またはCD30を含む。このような抗CD16抗体または抗CD30抗体の非限定的な例としては、AFM13及びそのバイオシミラーが挙げられる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗CD19抗体によって認識され得る、CD19を含む。このような抗CD19抗体の非限定的な例としては、MOR208及びそのバイオシミラーが挙げられる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗CD20抗体によって認識され得る、CD20を含む。このような抗CD20抗体の非限定的な例としては、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-RIIb、及びこれらのバイオシミラーが挙げられる。したがって、安全スイッチを発現する細胞はCD20陽性であり、記載されているように抗CD20抗体の投与によって殺傷の標的となり得る。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗EGFR抗体によって認識され得る、EGFRを含む。このような抗EGFR抗体の非限定的な例としては、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、及びこれらのバイオシミラーが挙げられる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗GD2抗体によって認識され得る、GD2を含む。このような抗GD2抗体の非限定的な例としては、Hu14.18K322A、Hu14.18-IL2、Hu3F8、ジヌツキシマブ、c.60C3-RIIc、及びこれらのバイオシミラーが挙げられる。
【0162】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、操作された初代細胞などの操作された細胞の表面上の1つ以上の免疫寛容原性因子を認識する、外因的に投与される薬剤であり得る。いくつかの実施形態では、外因的に投与される薬剤は、免疫寛容原性剤に対する抗体または免疫寛容原性剤に特異的な抗体、例えば、抗CD47抗体である。操作された初代細胞などの操作された細胞上の免疫寛容原性因子を認識してブロックすることによって、外因的に投与される抗体は、免疫寛容原性因子の免疫阻害機能をブロックし、それによって、操作された初代細胞などの操作された細胞に対する免疫系を再感作することができる。例えば、CD47を過剰発現する操作された初代細胞などの操作された細胞の場合、外因的に投与される抗CD47抗体は対象に投与され、その結果、操作された初代細胞などの操作された細胞上のCD47がマスキングされ、操作された初代細胞に対する免疫応答が誘発され得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、方法は、誘導性自殺スイッチを含む発現ベクターを細胞に導入することを更に含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子はCD47であり、細胞は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現する。
【0165】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、その必要がある対象にCD47-SIRPα遮断剤を投与することを含み、対象は、外因性CD47ポリペプチドを発現するように操作された細胞集団が予め投与されていた。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、CD47結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD47結合ドメインは、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、免疫グロブリンG(IgG)Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、IgG Fcドメインは、IgG1 Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、IgG1 Fcドメインは、ヒト抗体の断片を含む。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、TTI-621、TTI-622、及びALX148からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、TTI-621、TTI-622、及びALX148である。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、TTI-622である。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、ALX148である。いくつかの実施形態では、IgG Fcドメインは、IgG4 Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、MIAP410、B6H12、及びマグロリマブからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、MIAP410である。いくつかの実施形態では、抗体は、B6H12である。いくつかの実施形態では、抗体は、マグロリマブである。いくつかの実施形態では、抗体は、AO-176、IBI188(レタプリマブ)、STI-6643、及びZL-1201からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、AO-176(Arch)である。いくつかの実施形態では、抗体は、IBI188(レタプリマブ)(Innovent)である。いくつかの実施形態では、抗体は、STI-6643(Sorrento)である。いくつかの実施形態では、抗体は、ZL-1201(Zai)である。
【0166】
いくつかの実施形態では、CD47に結合する有用な抗体またはその断片は、マグロリマブ((Hu5F9-G4))(Forty Seven,Inc.;Gilead Sciences,Inc.)、ウラブレリマブ、CC-90002(Celgene;Bristol-Myers Squibb)、IBI-188(Innovent Biologics)、IBI-322(Innovent Biologics)、TG-1801(TG Therapeutics;NI-1701としても公知、Novimmune SA)、ALX148(ALX Oncology)、TJ011133(TJC4としても公知、I-Mab Biopharma)、FA3M3、ZL-1201(Zai Lab Co.,Ltd.)、AK117(Akesbio Australia Pty, Ltd.)、AO-176(Arch Oncology)、SRF231(Surface Oncology)、GenSci-059 (GeneScience)、C47B157 (Janssen Research and Development)、C47B161(Janssen Research and Development)、C47B167(Janssen Research and Development)、C47B222(Janssen Research and Development)、C47B227(Janssen Research and Development)、Vx-1004(Corvus Pharmaceuticals)、HMBD004(Hummingbird Bioscience Pte Ltd)、SHR-1603(Hengrui)、AMMS4-G4(Beijing Institute of Biotechnology)、RTX-CD47(University of Groningen)、及びIMC-002 (Samsung Biologics;ImmuneOncia Therapeutics)を含む群から選択することができる。いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、CD47結合に関して、マグロリマブ、ウラブレリマブ、CC-90002、IBI-188、IBI-322、TG-1801(NI-1701)、ALX148、TJ011133、FA3M3、ZL1201、AK117、AO-176、SRF231、GenSci-059、C47B157、C47B161、C47B167、C47B222、C47B227、Vx-1004、HMBD004、SHR-1603、AMMS4-G4、RTX-CD47、及びIMC-002を含む群から選択される抗体と競合しない。いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、CD47結合に関して、マグロリマブ、ウラブレリマブ、CC-90002、IBI-188、IBI-322、TG-1801(NI-1701)、ALX148、TJ011133、FA3M3、ZL1201、AK117、AO-176、SRF231、GenSci-059、C47B157、C47B161、C47B167、C47B222、C47B227、Vx-1004、HMBD004、SHR-1603、AMMS4-G4、RTX-CD47、及びIMC-002から選択される抗体と競合する。いくつかの実施形態では、CD47に結合する抗体またはその断片は、CD47に対する単鎖Fv断片(scFv)、CD47に対するFab、CD47に対するVHHナノボディ、CD47に対するDARPin、及びこれらの変異体を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、CD47に対するscFv、CD47に対するFab、及びこれらの変異体は、マグロリマブ、ウラブレリマブ、CC-90002、IBI-188、IBI-322、TG-1801(NI-1701)、ALX148、TJ011133、FA3M3、ZL1201、AK117、AO-176、SRF231、GenSci-059、C47B157、C47B161、C47B167、C47B222、C47B227、Vx-1004、HMBD004、SHR-1603、AMMS4-G4、RTX-CD47、及びIMC-002を含む群から選択される抗体のいずれかの抗原結合ドメインに基づく。
【0167】
いくつかの実施形態では、CD47アンタゴニストは、CD47遮断を提供する。CD47遮断のための方法及び薬剤は、PCT/US2021/054326に記載されており、これは、その全体が参照により組み込まれる。
【0168】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、1つ以上の所望の改変をすでに含む、ソース細胞に由来する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される教示を考慮すると、当業者であれば、操作された初代細胞などの操作された細胞の所望の最終形態に到達するためにどのような改変が必要かをいかに評価するか、及び標的要素のレベルの低減または増加がすべてアクティブな遺伝子操作によって達成されるわけではないことを容易に認識するであろう。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の改変は任意の順序であってもよく、必ずしも本明細書に提供される説明文に列挙された順序である必要はない。
【0169】
ひとたび変化されると、本明細書に記載の分子のうちのいずれかの発現の存在について、ウェスタンブロット、ELISAアッセイ、FACSアッセイ、フローサイトメトリーなどの既知の技法を使用してアッセイすることができる。
【0170】
A.遺伝子発現が低減している標的
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、MIC-A、MIC-B、TXIP、CTLA-4及び/またはPD-1のうちの1つ以上の発現を調節する(例えば、低減または排除する)、1つ以上の標的ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列(互換的に標的遺伝子とも称される)の改変(例えば、遺伝子改変)を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子を調節する(例えば、低減または排除する)1つ以上の遺伝子の改変を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ及び/またはHLA-DRのうちのいずれか1つ以上である。いくつかの実施形態では、標的遺伝子に対する改変は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、またはNFY-Cのうちのいずれか1つ以上を低減または排除する改変である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、MIC-A、MIC-B、TXIP、CTLA-4及び/またはPD-1のうちの1つ以上の発現を低減または排除する改変を有する。様々な公知の遺伝子編集技術のいずれかを含む、当業者に公知の様々な方法のいずれかを使用し、任意のそのような標的遺伝子の発現を低減または排除することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの提供される操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子のいずれかの発現を調節する(例えば、低減または排除する)、1つ以上の標的ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列(互換的に標的遺伝子とも称される)の改変(例えば、遺伝子改変)を含む。いくつかの実施形態では、改変または操作された初代細胞は、1つ以上の改変が以前に導入されていない未改変細胞、または未操作の初代細胞などの未操作の細胞である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集システムを使用し、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子のいずれかの発現を調節する(例えば、低減または排除する)、1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列を改変する。特定の実施形態では、細胞のゲノムは、細胞の表面上の1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現などのHLA発現を容易にする際に必要とされるもしくはそれに関与する、構成要素を低減または欠失するように変化されている。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の構成要素であるβ-2-ミクログロブリン(B2M)の発現が細胞内で低減または排除され、それによって、操作された細胞による1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現(例えば、細胞表面発現)が低減または排除される。したがって、いくつかの実施形態では、発現は、遺伝子及び/またはその機能、RNAの発現及び機能、タンパク質の発現及び機能、局在(細胞表面発現など)、ならびに寿命を介して低減させることができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、ヒトにおけるMHCは、ヒト白血球抗原(HLA)とも称される。例えば、ヒトMHCクラスIはHLAクラスIとしても公知であり、ヒトMHCクラスIIはHLAクラスIIとしても公知である。したがって、特に明記しない限り、MHCへの言及には、対応するヒトHLA分子を含むことが意図される。
【0173】
いくつかの実施形態では、標的の発現の低減は、操作された細胞での発現が、標的の発現を低減させるように操作する前のソース細胞の標的の対応する発現(例えば、タンパク質の発現と比較したタンパク質の発現)のレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下のいずれかなど)のレベルまで低減されるようなものである。いくつかの実施形態では、標的の発現の低減は、操作された細胞での発現が、参照細胞または参照細胞集団(同じ細胞種の細胞もしくは集団、または免疫原性応答が低減もしくは排除されている細胞など)での標的の対応する発現(例えば、タンパク質の発現と比較したタンパク質の発現)のレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下のいずれかなど)のレベルまで低減されるようなものである。いくつかの実施形態では、標的の発現の低減は、操作された細胞での発現が、測定した発現レベル(標的の存在により、免疫原性応答が低減または排除されているとわかっているレベルなど)以下のレベルまで低減するような低減である。いくつかの実施形態では、標的のレベルは、刺激状態または未刺激状態の操作された細胞、参照細胞、または参照細胞集団において評価される。いくつかの実施形態では、標的のレベルは、標的が発現されるように(または、それが刺激に応答する細胞の能力の場合、発現していくように)、刺激状態の操作された細胞、参照細胞または参照細胞集団で評価する。いくつかの実施形態では、刺激は、in vivoでの刺激を表す。
【0174】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子のいずれかの発現を調節する(例えば、低減または排除する)、1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列(互換的に標的遺伝子とも称される)の遺伝子改変などの改変を含む。いくつかの実施形態では、ヒトにおけるMHCは、ヒト白血球抗原とも称される。例えば、ヒトMHCクラスI分子はHLAクラスI分子としても公知であり、ヒトMHCクラスII分子はHLAクラスII分子としても公知である。いくつかの実施形態では、改変または操作された細胞は、1つ以上の改変が以前に導入されていない未改変細胞または未操作の細胞である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集システムを使用し、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子のいずれかの発現を調節する、1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列を改変する。特定の実施形態では、細胞のゲノムは、細胞の表面上の1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現などのHLA発現を容易にする際に必要とされるもしくはそれに関与する、構成要素を低減または欠失するように変化されている。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の構成要素であるβ-2-ミクログロブリン(B2M)の発現が細胞内で低減または排除され、それによって、操作された細胞による1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現(例えば、細胞表面発現)が低減または排除される。
【0175】
いくつかの実施形態では、操作された細胞における1つ以上の標的ポリヌクレオチドまたはタンパク質の発現を調節する(例えば、低減または排除する)、操作された細胞における記載された改変のいずれかは、第I.B節に記載されるポリヌクレオチド(例えば、CD47などの免疫寛容原性因子)を過剰発現する1つ以上の改変と組み合わせることができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低減は、例えば、以下:(1)多型のHLA対立遺伝子(HLA-A、HLA-B、HLA-C)及び1つ以上のMHCクラスII分子遺伝子を直接標的化すること、(2)B2Mの除去(これにより、すべてのMHCクラスI分子の表面輸送を低減する)、及び/または(3)MHCエンハンセオソームの構成要素、例えば、HLA発現に不可欠であるLRC5、RFX-5、RFXANK、RFXAP、IRFl、NF-Y(NFY-A、NFY-B、NFY-Cを含む)及びCIITAのうちの1つ以上の欠失のうちの1つ以上によって実現できる。
【0177】
特定の実施形態では、HLA発現は妨害されている。いくつかの実施形態では、HLA発現は、個々のHLAを標的化すること(例えば、HLA-A、HLA-B及び/またはHLA-Cの発現をノックアウトすること)、HLA発現の転写レギュレーターを標的化すること(例えば、NLRC5、CIITA、RFX5、RFXAP、RFXANK、NFY-A、NFY-B、NFY-C及び/またはIRF-1の発現をノックアウトすること)、1つ以上のMHCクラスI分子の表面輸送を遮断すること(例えば、B2M及び/またはTAP1の発現をノックアウトすること)、及び/またはHLA-Razorで標的化すること(例えば、WO2016183041を参照されたい)によって妨害される。
【0178】
ヒト白血球抗原(HLA)複合体は、ヒトMHCと同義である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作された細胞は、ヒト細胞である。特定の態様では、本明細書に開示される操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子に対応する1つ以上のヒト白血球抗原(例えば、HLA-A、HLA-B及び/またはHLA-C)を発現せず、したがって、低免疫原性であることを特徴とする。例えば、特定の態様では、本明細書に開示される操作された細胞は、細胞が以下のMHCクラスI分子:HLA-A、HLA-B及びHLA-Cのうちの1つ以上を発現しないか、またはその発現の低減を示すように改変されている。いくつかの実施形態では、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cのうちの1つ以上は、細胞から「ノックアウト」され得る。HLA-A遺伝子、HLA-B遺伝子及び/またはHLA-C遺伝子がノックアウトされた細胞は、ノックアウトされた各遺伝子の発現の低減または排除を示し得る。
【0179】
特定の実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現は、連続した一続きのゲノムDNAを標的化して欠失させ、それによって、B2M、CIITA及びNLRC5からなる群から選択される標的遺伝子の発現が低減または排除されることによって調節される。
【0180】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIを調節する1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列の遺伝子改変などの改変を含む。1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減するための例示的な方法は、以下の節に記載されている。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、B2M及びNLRC5のうちの一方または両方である。いくつかの実施形態では、細胞は、B2M遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、NLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子を調節する1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列の遺伝子改変などの改変を含む。1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減するための例示的な方法は、以下の節に記載されている。いくつかの実施形態では、細胞は、CIITA遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子を調節する1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列の遺伝子改変などの改変を含む。1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減するための例示的な方法は、以下の節に記載されている。いくつかの実施形態では、細胞は、B2M遺伝子及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、CIITA遺伝子及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。特定の実施形態では、細胞は、B2M遺伝子、CIITA遺伝子及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5の発現を低減させる改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現を低減させる。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現は、排除される(例えば、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNAの発現は0%)。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現を低減させる改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子活性を排除する。
【0184】
いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5の発現を低減させる改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のタンパク質発現を低減させる。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のタンパク質発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のタンパク質発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のタンパク質発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のタンパク質発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のタンパク質発現は、排除される(例えば、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のタンパク質の発現は0%)。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のタンパク質発現を低減させる改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子活性を排除する。
【0185】
いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5発現を低減させる改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5発現を低減させる改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子の一方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5発現を低減させる改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、改変は、細胞における1つ以上のB2M、CIITA及び/またはNLRC5コード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞におけるすべてのB2M、CIITA及び/またはNLRC5コード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子中のインデルを含む不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5遺伝子は、ノックアウトされる。
【0187】
いくつかの実施形態では、操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子またはその成分の発現の低減を含み、低減は、本明細書に記載されているように、1つ以上のMHCクラスI分子またはその成分の発現を低減させるように操作する前、参照細胞もしくは参照細胞集団(免疫原性応答が所望どおりに欠失している細胞など)、または測定値に対するようなものである。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチド、またはその成分(B2Mなど)の細胞表面発現を低減させるように操作される。いくつかの実施形態では、操作された細胞上での1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)の細胞表面発現は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)の細胞表面提示を低減させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)の細胞表面発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞上での1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)の細胞表面発現は、参照細胞または参照細胞集団上での1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)の細胞表面発現レベル(1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)の細胞表面発現の平均量など)の約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞上での1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)の細胞表面提示は見られない(公知の技法、例えば、フローサイトメトリーを用いて測定した場合を含む、検出可能な細胞表面発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)のタンパク質発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された細胞の1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)のタンパク質発現は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)のタンパク質発現を低減させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)のタンパク質発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞の1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)のタンパク質発現は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)のタンパク質発現を低減させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)のレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)のタンパク質発現を示さない(公知の技法、例えば、ウェスタンブロットまたは質量分析法を用いて測定した場合を含む、検出可能なタンパク質発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)を含まない(公知の技法、例えば、ウェスタンブロットまたは質量分析法を用いて測定した場合を含む、検出可能なタンパク質が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)をコードするmRNA発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された細胞の1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)をコードするmRNA発現は、1つ以上のMHCポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)のmRNA発現を低減させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)をコードするmRNA発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞の1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分(B2Mなど)をコードするmRNA発現は、参照細胞または参照細胞集団のmRNA発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分をコードするmRNAを発現しない(公知の技法、例えば、配列決定法またはPCRを用いて測定した場合を含む、検出可能なmRNA発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIポリペプチドまたはその成分をコードするmRNAを含まない(公知の技法、例えば、配列決定法またはPCRを用いて測定した場合を含む、検出可能なmRNAが見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子遺伝子の遺伝子不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、両方の対立遺伝子の1つ以上のMHCクラスI分子遺伝子の遺伝子不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、すべての対立遺伝子の1つ以上のMHCクラスI分子遺伝子の遺伝子不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子ノックアウト、または1つ以上のMHCクラスI分子成分(例えば、B2M)ノックアウトである。
【0188】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低減を含み、低減は、本明細書に記載されているように、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるように操作する前、参照細胞もしくは参照細胞集団(免疫原性応答が所望どおりに欠失している細胞など)、または測定値に対するようなものである。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドの細胞表面発現を低減させるように操作される。いくつかの実施形態では、操作された細胞上での1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドの細胞表面発現は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドの細胞表面提示を低減させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドの細胞表面発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞上での1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドの細胞表面発現は、参照細胞または参照細胞集団上での1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドの細胞表面発現レベル(1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドの細胞表面発現の平均量など)の約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞上での1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドの細胞表面提示は見られない(公知の技法、例えば、フローサイトメトリーを用いて測定した場合を含む、検出可能な細胞表面発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドのタンパク質発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された細胞の1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドのタンパク質発現は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドのタンパク質発現を低減させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドのタンパク質発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞上でのMHCクラスIIポリペプチドのタンパク質発現は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドのタンパク質発現を低減させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドのレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドのタンパク質発現を示さない(公知の技法、例えば、ウェスタンブロットまたは質量分析法を用いて測定した場合を含む、検出可能なタンパク質発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドを含まない(公知の技法、例えば、ウェスタンブロットまたは質量分析法を用いて測定した場合を含む、検出可能なタンパク質が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドをコードするmRNA発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された細胞の1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドをコードするmRNA発現は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドのmRNA発現を低減させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドをコードするmRNA発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞の1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドをコードするmRNA発現は、参照細胞または参照細胞集団のmRNA発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低減される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドをコードするmRNAを発現しない(公知の技法、例えば、配列決定法またはPCRを用いて測定した場合を含む、検出可能なmRNA発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスIIポリペプチドをコードするmRNAを含まない(公知の技法、例えば、配列決定法またはPCRを用いて測定した場合を含む、検出可能なmRNAが見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子遺伝子の遺伝子不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、両方の対立遺伝子の1つ以上のMHCクラスII分子遺伝子の遺伝子不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、すべての対立遺伝子の1つ以上のMHCクラスII分子の遺伝子不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子ノックアウトである。
【0189】
1.発現を低減させる方法
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、記載されるような1つ以上の標的ポリヌクレオチドの発現を低減させるように、遺伝子改変など改変されている。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはタンパク質の発現を低減させる(例えば、排除する)ために1つ以上の改変により操作される細胞は、本明細書に記載される任意のソース細胞である。いくつかの実施形態では、ソース細胞は、本明細書に記載される任意の細胞である。特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞(例えば、初代細胞)は、1つ以上の標的ポリヌクレオチドの発現を低減させるような、遺伝子改変などの1つ以上の改変を含む。1つ以上の標的ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、上記のいずれか、例えば、1つ以上のMHCクラスI分子またはその成分、1つ以上のMHCクラスII分子、CIITA、B2M、NLRC5、HLA-A、HLA-B、HLA-C、LRC5、RFX-ANK、RFX5、RFX-AP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、IRF1及びTAP1が挙げられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の標的ポリヌクレオチドの発現を低減させるための遺伝子改変などの1つ以上の改変は、本明細書に記載されるいずれかなどの所望の導入遺伝子の発現を増加させるための1つ以上の改変と組み合わされる。いくつかの実施形態では、遺伝子修飾などの1つ以上の改変は、免疫特権細胞または低免疫原性細胞である操作された細胞を作製する。1つ以上の標的ポリヌクレオチドの発現を調節すること(例えば、低減するまたは欠失させること)によって、このような細胞は、レシピエント対象に移植されたときに減少した免疫活性化を示す。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば、投与時にレシピエント対象または患者において低免疫原性とみなされる。
【0190】
標的ポリヌクレオチドの発現を低減させるための任意の方法を、使用できる。いくつかの実施形態では、改変(例えば、遺伝子改変)は、標的ポリヌクレオチドの発現の永久的な排除または低減をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドまたは遺伝子は、標的化エンドヌクレアーゼを使用することなどにより、標的ポリヌクレオチドにDNA切断を導入することによって破壊される。他の実施形態では、改変(例えば、遺伝子改変)は、標的ポリヌクレオチドの発現の一過性の低減をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、遺伝子抑制は、例えば、アンチセンス技法を使用して、例えば、RNA干渉(RNAi)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン(shRNA)及び/またはリボザイムによって、標的ポリヌクレオチドに相補的である阻害性核酸を使用して遺伝子の発現を選択的に抑制(suppress)または抑制(repress)することで達成される。
【0191】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、ゲノム配列である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、ヒトゲノム配列である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、哺乳動物ゲノム配列である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、脊椎動物ゲノム配列である。
【0192】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術のうちのいずれかを使用し、記載したような1つ以上の標的ポリヌクレオチドまたは標的タンパク質の発現を低減することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術には、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、リコンビナーゼを含む系が含まれ得る。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、遺伝子のノックアウトまたはノックダウンに使用することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、ゲノム領域へのDNAのノックインまたは組込みに使用することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、一本鎖切断(SSB)を媒介する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、非相同末端結合(NHEJ)または相同配向型修復(HDR)と関連するものを含む、二本鎖切断(DSB)を媒介する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、DNAベースの編集またはプライム編集を含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、部位特異的ターゲティングエレメントを介したプログラム可能な付加(PASTE)を含むことができる。
【0193】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊は、通常は標的化された様態での、遺伝子における1つ以上の二本鎖切断及び/または1つ以上の一本鎖切断の誘導によって実施される。いくつかの実施形態では、二本鎖または一本鎖切断は、遺伝子標的化ヌクレアーゼなどのヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼによって作製される。いくつかの実施形態では、標的化ヌクレアーゼは、遺伝子の配列またはその一部分に標的化されるように特異的に設計された、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)などのRNA誘導型ヌクレアーゼから選択される。いくつかの実施形態では、標的化ヌクレアーゼは、二本鎖または一本鎖切断を生じさせ、その後、エラープローンな非相同末端結合(NHEJ)または場合によっては、鋳型が使用される正確な相同性指向修復(HDR)を介して修復を受ける。いくつかの実施形態では、標的化ヌクレアーゼは、DNA二本鎖切断(DSB)を生成する。いくつかの実施形態では、切断を生成及び修復するプロセスは典型的には、エラープローンであり、NHEJによる修復から、DNA塩基の挿入及び欠失(インデル)をもたらす。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、標的遺伝子のヌクレオチド配列の欠失、挿入または変異を誘導し得る。場合によっては、遺伝子改変により、フレームシフト変異が発生し得、その結果、未成熟終止コドンが生じ得る。ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集の例では、標的化編集は、遺伝子の両方の対立遺伝子で生じ、その結果、遺伝子の両対立遺伝子の破壊または編集が行われる。いくつかの実施形態では、遺伝子のすべての対立遺伝子は、遺伝子編集の標的となる。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムを使用するなどした、標的化ヌクレアーゼによる遺伝子改変は、遺伝子の完全なノックアウトをもたらす。
【0194】
いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ、例えば、レアカットエンドヌクレアーゼは、標的ポリヌクレオチド配列を含有する細胞に導入される。ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼをコードする核酸の形態で細胞に導入され得る。核酸を細胞に導入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成され得る。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞に導入される核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、タンパク質の形態で細胞に導入される。例えば、CRISPR/Casシステムの場合、リボ核タンパク質(RNP)が細胞に導入され得る。
【0195】
いくつかの実施形態では、改変(例えば、遺伝子改変)は、CRISPR/Casシステムを使用して起こる。細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることができる任意のCRISPR/Casシステムが使用され得る。このようなCRISPR-Casシステムは、様々なCasタンパク質を用いることができる(Haft et al.PLoS Comput Biol.2005;1(6)e60)。CRISPR/Casシステムが細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることを可能にする、このようなCasタンパク質の分子機構には、RNA結合タンパク質、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ならびにポリメラーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、CRISPR I型システムである。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、CRISPR II型システムである。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、CRISPR V型システムである。
【0196】
CRISPR/Casシステムには、細胞における任意の標的ポリヌクレオチド配列を変化させるために使用され得る標的化システムが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCRISPR/Casシステムは、Casタンパク質と、Casタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くと共にそれにハイブリダイズすることができる、1つ以上の、例えば、少なくとも1~2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つ以上のアミノ酸置換または改変を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの事例では、置換及び/または改変は、タンパク質分解を防止または低減し、及び/または細胞内のポリペプチドの半減期を延長し得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、ペプチド結合の置き換え(例えば、尿素、チオ尿素、カルバメート、スルホニル尿素など)を含み得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、代替のアミノ酸(例えば、D-アミノ酸、β-アミノ酸、ホモシステイン、ホスホセリンなど)を含み得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、部位(例えば、PEG化、グリコシル化、脂質化、アセチル化、エンドキャッピングなど)を含めるような改変を含み得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、コアCasタンパク質を含む。例となるCasコアタンパク質には、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas12a、及びCas13が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、大腸菌サブタイプのCasタンパク質(別名、CASS2)を含む。大腸菌サブタイプの例となるCasタンパク質には、Cse1、Cse2、Cse3、Cse4、及びCas5eが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、YpestサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS3)を含む。Ypestサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csy1、Csy2、Csy3、及びCsy4が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、NmeniサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS4)を含む。Nmeniサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csn1及びCsn2が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、DvulgサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS1)を含む。Dvulgサブタイプの例となるCasタンパク質は、Csd1、Csd2、及びCas5dが含まれる。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、TneapサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS7)を含む。Tneapサブタイプの例となるCasタンパク質には、Cst1、Cst2、Cas5tが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、HmariサブタイプのCasタンパク質を含む。Hmariサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csh1、Csh2、及びCas5hが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、ApernサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS5)を含む。Apernサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csa1、Csa2、Csa3、Csa4、Csa5、及びCas5aが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、MtubeサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS6)を含む。Mtubeサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csm1、Csm2、Csm3、Csm4、及びCsm5が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、RAMPモジュールCasタンパク質を含む。例となるRAMPモジュールCasタンパク質には、Cmr1、Cmr2、Cmr3、Cmr4、Cmr5、及びCmr6が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Klompe et al.,Nature571,219-225(2019)、Strecker et al.,Science 365,48-53(2019)を参照されたい。
【0199】
いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子をノックアウト、ノックダウン、または別様に改変するように細胞を遺伝子改変するための方法は、当技術分野で既知の、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)/Casシステムを含めた部位特異的ヌクレアーゼを使用することを含む。
【0200】
ZFNは、細菌FokI制限酵素のエンドヌクレアーゼドメインに結合したジンクフィンガー含有転写因子から適応された数々の部位特異的DNA結合ドメインを含む、融合タンパク質である。ZFNは、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多く)のDNA結合ドメインまたはジンクフィンガードメインを有してもよい。例えば、Carroll et al.,Genetics Society of America(2011)188:773-782、Kim et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:1156-1160を参照されたい。各ジンクフィンガードメインは、1つ以上の亜鉛イオンによって安定化された小さなタンパク質の構造モチーフであり、通常、3~4bpのDNA配列を認識する。したがって、タンデムドメインは、細胞のゲノム内で固有である長いヌクレオチド配列に結合する可能性があり得る。
【0201】
特異性が知られている種々のジンクフィンガーを組み合わせて、約6、9、12、15、または18bpの配列を認識するマルチフィンガーポリペプチドを生み出すことができる。ファジーディスプレイ、酵母ワンハイブリッドシステム、細菌ワンハイブリッド及びツーハイブリッドシステム、ならびに哺乳動物細胞を含む、特定の配列を認識するジンクフィンガー(及びこれらの組み合わせ)を生成するための種々の選択及びモジュール式組立て技法が利用可能である。ジンクフィンガーは、既定の核酸配列に結合するように操作され得る。既定の核酸配列に結合するようにジンクフィンガーを操作するための基準は、当技術分野で既知である。例えば、Sera et al.,Biochemistry(2002)41:7074-7081、Liu et al.,Bioinformatics(2008)24:1850-1857を参照されたい。
【0202】
FokIヌクレアーゼドメインまたは他の二量体ヌクレアーゼドメインを含有するZFNは、二量体として機能する。したがって、非回文型DNA部位を標的とするためにZFNの対が必要とされる。2つの個々のZFNは、それらのヌクレアーゼが適切に離間した状態でDNAのそれぞれ反対の鎖に結合しなければならない。Bitinaite et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998)95:10570-10575を参照されたい。ゲノム内の特定の部位を切断するために、ZFNの対は、一方が順方向鎖上、他方が逆方向鎖上で、当該部位の両側に位置する2つの配列を認識するように設計される。ZFNが当該部位のそれぞれの側で結合すると、ヌクレアーゼドメインは二量体化し、当該部位にてDNAを切断して、5’オーバーハングを伴うDSBを生じさせる。次いでHDRを使用して、相同性アームが両側に位置する所望の変異を含有する修復鋳型の一助により、特定の変異を誘導できる。修復鋳型は通常、細胞に導入される外因性二本鎖DNAベクターである。Miller et al.,Nat.Biotechnol.(2011)29:143-148、Hockemeyer et al.,Nat.Biotechnol.(2011)29:731-734を参照されたい。
【0203】
TALENは、標的遺伝子を編集するために使用され得る人工ヌクレアーゼの別の例である。TALENは、長いDNA配列に結合し、それを認識する10~30のリピートを有するタンデムアレイを通常含む、TALEリピートと呼ばれるDNA結合ドメインに由来する。各リピートは、33~35アミノ酸長であり、このうち2つの隣接するアミノ酸(反復可変性二残基(repeat-variable di-residue)またはRVDと呼ばれる)が4つのDNA塩基対のうちの1つに対する特異性を付与する。故に、標的DNA配列においてリピートと塩基対との間に1対1の対応関係が存在する。
【0204】
TALENは、1つ以上のTALE DNA結合ドメイン(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多く)をヌクレアーゼドメイン、例えば、FokIエンドヌクレアーゼドメインに融合することによって人工的に生産される。Zhang,Nature Biotech.(2011)29:149-153を参照されたい。TALENにおける使用に向けてFokIに対するいくつかの変異が作製されており、これらは、例えば、切断特異性または活性を改善する。Cermak et al.,Nucl.Acids Res.(2011)39:e82;Miller et al.,Nature Biotech.(2011)29:143-148;Hockemeyer et al.,Nature Biotech.(2011)29:731-734、Wood et al.,Science(2011)333:307;Doyon et al.,Nature Methods(2010)8:74-79、Szczepek et al.,Nature Biotech(2007)25:786-793、Guo et al.,J.Mol.Biol.(2010)200:96を参照されたい。FokIドメインは二量体として機能するため、適切な向き及び間隔での、標的ゲノム内の部位に対する固有のDNA結合ドメインを有する2つのコンストラクトを必要とする。TALE DNA結合ドメインとFokIヌクレアーゼドメインとの間のアミノ酸残基の数、及び2つの個々のTALEN結合部位の間の塩基の数の両方が、高レベルの活性を達成するために重要なパラメータであるようである。Miller et al.,Nature Biotech.(2011)29:143-148。
【0205】
操作されたTALEリピートをヌクレアーゼドメインと組み合わせることによって、任意の所望のDNA配列に特異的な部位特異的ヌクレアーゼを生産することができる。ZFNに類似して、TALENを細胞に導入して、ゲノム内の所望の標的部位にてDSBを生じさせることができるため、これを使用して、類似のHDR媒介性経路で遺伝子をノックアウトまたは変異をノックインすることができる。Boch,Nature Biotech.(2011)29:135-136、Boch et al.,Science(2009)326:1509-1512、Moscou et al.,Science(2009)326:3501を参照されたい。
【0206】
メガヌクレアーゼは、大きなDNA配列(14~40塩基対)を認識し切断する能力が特徴的な、エンドヌクレアーゼファミリーにおける酵素である。メガヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性及び/またはDNA認識に影響を及ぼすそれらの構造的モチーフに基づいてファミリーにグループ化される。最も広くかつ最もよく知られているメガヌクレアーゼは、LAGLIDADGファミリーにおけるタンパク質であり、それらの名称は保存されたアミノ酸配列に由来する。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。一方、GIY-YIGファミリーメンバーは、70~100残基長であるGIY-YIGモジュールを有し、4つの不変残基を有する4または5つの保存配列モチーフを含み、そのうち2つは、活性に必要とされる。Van Roey et al.,Nature Struct. Biol.(2002)9:806-811を参照されたい。His-Cysファミリーメガヌクレアーゼは、数百のアミノ酸残基を包含する領域にわたる高度に保存された一連のヒスチジン及びシステインによって特性化される。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。NHNファミリーのメンバーは、アスパラギン残基によって囲まれた2対の保存されたヒスチジンを含有するモチーフによって定義される。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。
【0207】
特定の標的DNA配列のための天然メガヌクレアーゼを同定するための可能性は、高い特異性が必要であるため低いので、変異誘発及びハイスループットスクリーニング法を含む様々な方法が、独自の配列を認識するメガヌクレアーゼ変異体を生成するために使用されてきた。例えば、既定の核酸配列に結合するように変化したDNA結合特異性を有するメガヌクレアーゼを操作するためのストラテジーが当技術分野で知られている。例えば、Chevalier et al.,Mol.Cell.(2002)10:895-905、Epinat et al.,Nucleic Acids Res(2003)31:2952-2962、Silva et al.,J Mol.Biol.(2006)361:744-754、Seligman et al.,Nucleic Acids Res(2002)30:3870-3879、Sussman et al.,J Mol Biol(2004)342:31-41、Doyon et al.,J Am Chem Soc(2006)128:2477-2484、Chen et al.,Protein Eng Des Sel(2009)22:249-256、Arnould et al.,J Mol Biol.(2006)355:443-458、Smith et al.,Nucleic Acids Res.(2006)363(2):283-294を参照されたい。
【0208】
ZFN及びTALENのように、メガヌクレアーゼは、ゲノムDNAにおけるDSBを生成し得、これは、例えば、NHEJを介して、不適切に修復された場合にフレームシフト変異を生成し、細胞における標的遺伝子の発現の減少をもたらし得る。代替的には、外来DNAは、メガヌクレアーゼと共に細胞に導入され得る。外来DNAの配列及び染色体配列に応じて、このプロセスは、標的遺伝子を改変するために使用され得る。Silva et al.,Current Gene Therapy(2011)11:11-27を参照されたい。
【0209】
トランスポザーゼは、トランスポゾンの末端に結合し、切り貼りメカニズムまたは複製的転座メカニズムによってゲノムの別の部分へのその移動を触媒する酵素である。トランスポサーゼを他のシステム、例えば、CRISPER/Casシステムと連結させることによって、ゲノムDNAの部位特異的挿入または操作を可能とするために新たな遺伝子編集ツールが開発され得る。非活性Casエフェクタータンパク質及びTn7様トランスポゾンを触媒的に使用するトランスポゾンを使用する2つの既知のDNA組込み方法が存在する。トランスポザーゼ依存性DNA組込みは、ゲノムにおいてDSBを誘発せず、これはより安全かつより特異的なDNA組込みを保証し得る。
【0210】
CRISPRシステムは、獲得免疫の形態を提供する、侵入ファージ及びプラスミドに対する防御に関与するシステムとして原核生物(例えば、細菌及び古細菌)において元々発見された。現在では、研究及び臨床的用途において人気のある遺伝子編集ツールとして適応され、使用されている。
【0211】
CRISPR/Casシステムは通常、少なくとも2つの構成要素:1つ以上のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質を含む。Casタンパク質は、標的部位にDSBを導入するヌクレアーゼである。CRISPR-Casシステムは、2つの主要なクラスに分類される:クラス1システムは、核酸を分解するために複数のCasタンパク質の複合体を使用する;クラス2システムは、同じ目的のために単一の大きなCasタンパク質を使用する。クラス1はタイプI、III、及びIVに分けられ、クラス2はタイプII、V、及びVIに分けられる。遺伝子編集用途のために適応された様々なCasタンパク質には、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、及びMad7が含まれるが、これらに限定されない。最も広く使用されるCas9は、II型Casタンパク質であり、例示説明として本明細書に記載される。これらのCasタンパク質は、異なる源種を起源とし得る。例えば、Cas9は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)またはS.アウレウス(S.aureus)に由来し得る。
【0212】
元の微生物ゲノムにおいて、II型CRISPRシステムは、宿主ゲノム内のアレイとしてコードされるCRISPRリピート配列間に侵入DNAからの配列を組み込んでいる。CRISPRリピートアレイからの転写産物は、「プロトスペーサー」配列として知られている、侵入DNAから転写された可変要素配列、及びCRISPRリピートの一部をそれぞれ保有するCRISPR RNA(crRNA)へとプロセシングされる。各crRNAは、第2のトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)とハイブリダイズし、これらの2つのRNAは、Cas9ヌクレアーゼと複合体を形成する。crRNAのプロトスペーサーコード部分は、相補的標的DNA配列を切断するようにCas9複合体を誘導するが、ただし、それらは、「プロトスペーサー隣接モチーフ」(PAM)として知られている短い配列に隣接する。
【0213】
その発見から、CRISPRシステムは、細菌からヒト細胞を含む真核細胞にわたる広範囲の細胞及び生物において配列特異的DSB及び標的化ゲノム編集を誘導するために適応されてきた。遺伝子編集用途におけるその使用では、人工的に設計された合成gRNAが、元来のcrRNA:tracrRNA複合体に置き換わっている。例えば、gRNAは、crRNA、テトラループ、及びtracrRNAから構成される単一のガイドRNA(sgRNA)であり得る。crRNAは通常、目的の標的DNAを認識するようにユーザーが設計した相補的領域(スペーサーとも呼ばれ、通常は長さが約20ヌクレオチド)を含む。tracrRNA配列は、Casヌクレアーゼ結合のための骨格領域を含む。crRNA配列及びtracrRNA配列は、テトラループによって連結され、それぞれは、互いのハイブリダイゼーションのための短いリピート配列を有し、よって、キメラsgRNAを生成する。gRNAに存在するスペーサーまたは相補的領域配列を単純に変更することによってCasヌクレアーゼのゲノム標的を変更し得る。相補的領域は、標準的なRNA-DNA相補的塩基対合規則を介して標的DNA部位にCasヌクレアーゼを導く。
【0214】
Casヌクレアーゼが機能するために、ゲノムDNAにおいて標的配列のすぐ下流にPAMが存在しなければならない。Casタンパク質によるPAMの認識は、隣接するゲノム配列を不安定化し、gRNAによる配列の調査を可能にし、一致する配列が存在する場合にgRNA-DNA対合をもたらすと考えられている。PAMの具体的な配列は、Cas遺伝子の種に応じて様々である。例えば、S.ピオゲネスに由来する最も一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼは、5’-NGG-3’のPAM配列または、あまり効率的ではない速度では、5’-NAG-3’(「N」は任意のヌクレオチドであり得る)を認識する。代替的PAMを有する他のCasヌクレアーゼ変異体もまた特性化されており、ゲノム編集のために成功裏に使用されており、それは以下の表1aにまとめられている。
【0215】
【0216】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、それらの活性、特異性、認識、及び/または他の特徴を変化させるための1つ以上の変異を含み得る。例えば、Casヌクレアーゼは、オフターゲット効果を軽減するためにその忠実度を変化させる1つ以上の変異を有してもよい(例えば、eSpCas9、SpCas9-HF1、HypaSpCas9、HeFSpCas9、及びevoSpCas9は、SpCas9の高忠実度変異体である)。別の例として、Casヌクレアーゼは、そのPAM特異性を変化させる1つ以上の変異を有してもよい。
【0217】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載のCasタンパク質のうちのいずれか1つまたはその機能的部分を含む。本明細書で使用する場合、「機能的部分」とは、少なくとも1つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))と複合体を形成し、標的ポリヌクレオチド配列を切断するその能力を保持するペプチドの部分を指す。いくつかの実施形態では、機能的部分は、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択される、作動可能に連結されたCas9タンパク質の機能的ドメインの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、機能的部分は、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択される、作動可能に連結されたCas12a(別名、Cpf1)タンパク質の機能的ドメインの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、機能的ドメインは、複合体を形成する。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質の機能的部分は、HNHヌクレアーゼドメインの機能的部分を含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、適切なCasタンパク質としては、Cas0、Cas12a(すなわち、Cpf1)、Cas12b、Cas12i、CasX、及びMad7が挙げられるが、これらに限定されない。
【0219】
いくつかの実施形態では、外因性Casタンパク質は、ポリペプチド形態で細胞に導入され得る。特定の実施形態では、Casタンパク質は、細胞透過ポリペプチドまたは細胞透過ペプチドにコンジュゲートまたは融合され得る。本明細書で使用する場合、「細胞透過ポリペプチド」及び「細胞透過ペプチド」は、細胞への分子の取り込みを容易にするポリペプチドまたはペプチドをそれぞれ指す。細胞透過ポリペプチドは、検出可能な標識を含有し得る。
【0220】
特定の実施形態では、Casタンパク質は、荷電タンパク質(例えば、正電荷、負電荷、または全体的に中性の電荷を保有する)にコンジュゲートまたは融合され得る。このような連結は、共有結合性であり得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質が細胞を透過する能力を顕著に増加させるために、超陽性荷電したGFPに融合され得る(Cronican et al.ACS Chem Biol.2010;5(8):747-52)。特定の実施形態では、Casタンパク質は、細胞内へのその進入を容易にするためにタンパク質形質導入ドメイン(PTD)に融合され得る。例となるPTDには、Tat、オリゴアルギニン、及びペネトラチンが含まれる。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、細胞透過ペプチドに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、PTDに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、tatドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、オリゴアルギニンドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、ペネトラチンドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、超陽性荷電したGFPに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、細胞透過ペプチドに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、PTDに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、tatドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、オリゴアルギニンドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、ペネトラチンドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、超陽性荷電したGFPに融合されたCas12aポリペプチドを含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質をコードする核酸の形態で、標的ポリヌクレオチド配列を含有する細胞に導入され得る。核酸を細胞に導入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成され得る。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるような改変DNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、mRNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるような改変mRNA(例えば、合成の改変mRNA)を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1~2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載されるような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0223】
提供される実施形態では、CRISPR/Casシステムは一般に、1つ以上のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質という2つの構成要素を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つ以上、例えば、1~2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載されるような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0224】
いくつかの実施形態では、gRNAは、Cas結合のための足場配列、及びcrRNAと呼称されるユーザー設計されるスペーサーまたは相補的部分から構成される、短鎖合成RNAである。cRNAは、改変されるゲノム標的を定めるcrRNAターゲティング配列(以下、gRNAターゲティング配列とも呼ばれる;通常、約20ヌクレオチド長)、及びcrRNAリピート領域(例えば、GUUUUAGAGCUA;配列番号23)から構成される。gRNAに存在する相補的部分の配列(例えば、gRNAターゲティング配列)を単に変更することによって、Casタンパク質のゲノム標的を変更することができる。いくつかの実施形態では、Cas結合のための足場配列は、そのアンチリピート配列を介してcrRNAにハイブリダイズするtracrRNA配列(例えば、UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUU;配列番号24)から構成される。crRNA:tracrRNA間の複合体はCasヌクレアーゼ(Cas9など)を動員し、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の上流を切断する。Casタンパク質が機能するためには、PAMがゲノムDNA内の標的配列のすぐ下流に存在しなければならない。Casタンパク質によるPAMの認識は、隣接するゲノム配列を不安定化し、gRNAによる配列の調査を可能にし、一致する配列が存在する場合にgRNA-DNA対合をもたらすと考えられている。PAMの具体的な配列は、Cas遺伝子の種に応じて様々である。例えば、S.ピオゲネスに由来する最も一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼは、NGGのPAM配列を認識する。代替のPAMを用いる他のCas9変異体及び他のヌクレアーゼもまた特性評価され、ゲノム編集に成功裏に使用されている。したがって、CRISPR/Casシステムを使用し、標的遺伝子座に対して設計されたgRNAに相補的である指定のゲノム遺伝子座にて標的化DSBを作製することができる。crRNAとtracrRNAは、キメラシングルガイドRNAであるgRNA(sgRNA;Hsu et al.2013)を生成するために、ループ配列(例えば、テトラループ;GAAA、配列番号25)で連結され得る。sgRNAは、DNAベースの発現用に、または化学合成によって生成できる。
【0225】
いくつかの実施形態では、gRNAの相補的部分の配列(例えば、gRNAターゲティング配列)は、目的の標的部位に応じて変化するであろう。いくつかの実施形態では、gRNAは、表1bに示される遺伝子の配列に特異的な相補的部分を含む。いくつかの実施形態では、gRNAによって標的化されるゲノム遺伝子座は、記載した遺伝子座のいずれかの4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内に位置する。
【0226】
本明細書に開示される方法は、Casタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くと共にそれにハイブリダイズすることができる、任意のリボ核酸の使用を企図する。いくつかの実施形態では、リボ核酸のうちの少なくとも1つは、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、リボ核酸のうちの少なくとも1つは、CRISPR RNA(crRNA)を含む。いくつかの実施形態では、単一のリボ核酸は、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くと共にそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、リボ核酸の少なくとも1つは、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くと共にそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸の両方は、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くと共にそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。当業者には理解されようが、本明細書で提供されるリボ核酸は、用いられる特定のCRISPR/Casシステムに応じて様々な異なる標的モチーフにハイブリダイズし、標的ポリヌクレオチドの配列にハイブリダイズするように選択され得る。1~2つのリボ核酸はまた、標的ポリヌクレオチド配列以外の核酸配列とのハイブリダイゼーションを最小限に抑えるようにも選択され得る。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸は、細胞におけるすべての他のゲノムヌクレオチド配列と比較したときに少なくとも2つのミスマッチを含有する標的モチーフにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸は、細胞におけるすべての他のゲノムヌクレオチド配列と比較したときに少なくとも1つのミスマッチを含有する標的モチーフにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸は、Casタンパク質によって認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接する標的モチーフにハイブリダイズするように設計される。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸のそれぞれは、標的モチーフ間に位置する変異対立遺伝子を挟む、Casタンパク質によって認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接する標的モチーフにハイブリダイズするように設計される。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸のそれぞれは、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くと共にそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の同じ鎖上の配列に相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の反対の鎖上の配列に相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の反対の鎖上の配列には相補的でなく、及び/またはそれにはハイブリダイズしない。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の重複する標的モチーフに相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列のオフセット標的モチーフに相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。
【0228】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸及び少なくとも1~2つのリボ核酸をコードする核酸は、ウイルス形質導入(例えば、レンチウイルス形質導入)を介して細胞に導入される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1~2つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載されるような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0229】
本明細書に記載の遺伝子のCRISPR/Casベースの標的化に有用な例となるgRNAターゲティング配列は、表1bで提供される。これらの配列は、2016年5月9日に出願されたWO2016183041に見出すことができ、表、付録、及び配列表を含めたこの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0230】
【0231】
いくつかの実施形態では、記載されている遺伝子の発現を低減または排除するための遺伝子破壊の方法に使用するための新たな遺伝子座及び/またはgRNAターゲティング配列を同定することは、当業者の技能水準内にある。例えば、CRISPR/Casシステムに関して、特定の遺伝子座(例えば、表1bに示す、例えば、標的遺伝子内の)に対する既存のgRNAターゲティング配列が公知の場合、「インチワーミング」アプローチを使用し、通常はゲノムにわたって約100塩基対(bp)毎に存在するPAM配列について遺伝子座のそれぞれの側の隣接領域をスキャンすることによって、導入遺伝子の標的挿入のための追加の遺伝子座を同定することができる。異なるヌクレアーゼは通常、異なる対応するPAM配列を有することから、PAM配列は、使用される特定のCasヌクレアーゼに依存することになる。遺伝子座の両側の隣接領域は、約500~4000bp長、例えば、約500bp、約1000bp、約1500bp、約2000bp、約2500bp、約3000bp、約3500bp、または約4000bp長であり得る。PAM配列が検索範囲内で同定される場合、その遺伝子座の配列に従って、遺伝子破壊方法において使用するための新たなガイドが設計され得る。CRISPR/Casシステムを例示的なものとして記載しているが、この新たな座位を特定する方法では、ZFN、TALEN、メガヌクレアーゼ及びトランスポザーゼを使用するものを含む、記載されるいずれの遺伝子編集アプローチも使用することができる。
【0232】
本明細書に記載の遺伝子のCRISPR/Casベースのターゲティングに有用な追加の例示的Cas9ガイドRNA配列が、表2で提供される。
【0233】
【0234】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)手法を使用して作製される。「TALE-ヌクレアーゼ」(TALEN)とは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)に典型的に由来する核酸結合ドメイン及び核酸標的配列を切断するための1つのヌクレアーゼ触媒ドメインからなる融合タンパク質を意図する。触媒ドメインは、好ましくはヌクレアーゼドメイン、より好ましくは、例えば、I-TevI、ColE7、NucA、及びFok-Iのような、エンドヌクレアーゼ活性を有するドメインである。特定の実施形態では、TALEドメインは、例えば、I-CreI及びI-Onulまたはそれらの機能的変異体のような、メガヌクレアーゼに融合され得る。より好ましい実施形態では、当該ヌクレアーゼは、モノマーTALE-ヌクレアーゼである。モノマーTALE-ヌクレアーゼは、WO2012138927に記載される操作されたTALリピートとI-TevIの触媒ドメインとの融合体などの、特異的認識及び切断のために二量体化を必要としないTALE-ヌクレアーゼである。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、細菌種Xanthomonas由来のタンパク質であり、複数のリピート配列を含み、各リピートが、12位及び13位において核酸標的配列の各ヌクレオチド塩基に特異的である二残基(RVD)を含む。同様のモジュール式塩基対塩基核酸結合特性を有する結合ドメイン(MBBBD)もまた、異なる細菌種において出願人によって最近発見された新たなモジュール式タンパク質に由来し得る。この新たなモジュール式タンパク質は、TALリピートよりも大きな配列可変性を示すという利点を有する。好ましくは、異なるヌクレオチドの認識に関連するRVDは、Cを認識するためのHD、Tを認識するためのNG、Aを認識するためのNI、GまたはAを認識するためのNN、A、C、G、またはTを認識するためのNS、Tを認識するためのHG、Tを認識するためのIG、Gを認識するためのNK、Cを認識するためのHA、Cを認識するためのND、Cを認識するためのHI、Gを認識するためのHN、Gを認識するためのNA、GまたはAを認識するためのSN及びTを認識するためのYG、Aを認識するためのTL、AまたはGを認識するためのVT、ならびにAを認識するためのSWである。別の実施形態では、必要不可欠なアミノ酸12及び13は、ヌクレオチドA、T、C、及びGに対するそれらの特異性を調節するため、ならびに特にこの特異性を強化するために、他のアミノ酸残基に向けて変異させることができる。TALENキットは、市販されている。
【0235】
いくつかの実施形態では、該細胞は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を使用して操作される。「ジンクフィンガー結合タンパク質」は、亜鉛イオンの配位によるタンパク質構造の安定化の結果として、好ましくは配列特異的様態で、DNA、RNA、及び/またはタンパク質に結合するタンパク質またはポリペプチドである。ジンクフィンガー結合タンパク質という用語は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略称される場合が多い。個々のDNA結合ドメインは、典型的には、「フィンガー」と称される。ZFPは、少なくとも1つのフィンガー、典型的には2つのフィンガー、3つのフィンガー、または6つのフィンガーを有する。各フィンガーは、2~4塩基対のDNA、典型的には3または4塩基対のDNAに結合する。ZFPは、標的部位または標的セグメントと呼ばれる核酸配列に結合する。各フィンガーは、典型的には、およそ30アミノ酸の亜鉛キレート化DNA結合サブドメインを含む。このクラスの単一のジンクフィンガーは、単一のベータターンの2つのシステイン残基と共に亜鉛と配位結合した2つの不変のヒスチジン残基を含むアルファヘリックスからなることが、研究により実証されている(例えば、Berg&Shi,Science 271:1081-1085(1996)を参照されたい)。
【0236】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、ホーミングエンドヌクレアーゼを使用して作製される。このようなホーミングエンドヌクレアーゼは、当技術分野で周知である(Stoddard 2005)。ホーミングエンドヌクレアーゼは、DNA標的配列を認識し、一本鎖または二本鎖切断を生じさせる。ホーミングエンドヌクレアーゼは、高度に特異的であり、長さ12~45塩基対(bp)の範囲、通常は長さ14~40bpの範囲のDNA標的部位を認識する。ホーミングエンドヌクレアーゼは、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、HNHエンドヌクレアーゼ、またはGIY-YIGエンドヌクレアーゼに対応し得る。いくつかの実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼは、I-CreI変異体であり得る。
【0237】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、メガヌクレアーゼを使用して作製される。メガヌクレアーゼは、定義上、大きな配列を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼである(Chevalier,B.S.and B.L.Stoddard,Nucleic Acids Res.,2001,29,3757-3774)。それらは、生細胞において固有の部位を切断し、それによって切断部位の近傍で遺伝子の標的化を1000倍以上強化することができる(Puchta et al.,Nucleic Acids Res.,1993,21,5034-5040、Rouet et al.,Mol.Cell.Biol.,1994,14,8096-8106;Choulika et al.,Mol.Cell. Biol.,1995,15,1968-1973;Puchta et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93,5055-5060;Sargent et al.,Mol.Cell.Biol.,1997,17,267-77;Donoho et al.,Mol.Cell.Biol,1998,18,4070-4078;Elliott et al.,Mol.Cell.Biol.,1998,18,93-101;Cohen-Tannoudji et al.,Mol.Cell.Biol.,1998,18,1444-1448).
【0238】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は塩基編集に関連する。塩基エディター(BE)は通常、Cas(「CRISPR関連」)ドメイン及び核酸塩基改変ドメイン(例えば、APOBEC1(「アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド1」)、CDA(「シチジンデアミナーゼ」)、及びAID(「活性化誘導シチジンデアミナーゼ」)を含むシチジンデアミナーゼなどの天然のまたは進化したデアミナーゼ)ドメインの融合体である。場合によっては、塩基エディターには、細胞のDNA修復プロセスを変更して、結果として生じる単一ヌクレオチドの変化の効率及び/または安定性を高めるタンパク質またはドメインも含まれる場合がある。
【0239】
いくつかの態様では、現在利用可能な塩基エディターには、標的C・GをT・Aに変換するシチジン塩基エディター(例えば、BE4)、及び標的A・TをG・Cに変換するアデニン塩基エディター(例えば、ABE7.10)が含まれる。いくつかの態様では、Cas9を標的とした脱アミノ化は、二本鎖DNA切断を導入することなく塩基変化を誘導するように設計された塩基エディター(BE)系と関連して最初に示された。更に、不活性型Cas9(dCas9)に融合されたラットデアミナーゼAPOBEC1(rAPOBEC1)を使用し、sgRNAのPAMの上流でシチジンをチミジンに変換することに成功した。いくつかの態様では、この最初のBEシステムは、dCas9を、脱アミノ化されたシチジンの反対側の鎖に切れ目を入れる「ニッカーゼ」Cas9 D10Aに変更することによって最適化された。理論に束縛されるものではないが、これにより、ロングパッチ塩基除去修復(BER)が開始されると予想される。この場合、脱アミノ化された鎖が修復の鋳型として優先的に使用されてU:A塩基対が生成され、その後、この塩基対がDNA複製中にT:Aに変換される。
【0240】
いくつかの実施形態では、塩基エディターは、触媒的に不活性である第1のDNA結合タンパク質ドメイン、塩基編集活性を有するドメイン、及びニッカーゼ活性を有する第2のDNA結合タンパク質ドメインを含む核酸塩基編集体であり、DNA結合タンパク質ドメインは、単一の融合タンパク質上に、または別々に(例えば、別々の発現ベクター上で)発現させる。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、塩基編集活性を有するドメイン(例えば、シチジンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ)と、2つの核酸プログラム可能なDNA結合タンパク質ドメイン(napDNAbp)とを含む融合タンパク質であり、第1のドメインはニッカーゼ活性を含み、第2のnapDNAbpは触媒的に不活性であり、少なくとも2つのnapDNAbpがリンカーによって結合されている。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、ニッカーゼ活性(nCas;nCas9)を有するCRISPR-Cas(例えば、Cas9)のDNAドメイン、核酸プログラム可能DNA結合活性を有するCRISPR-Casタンパク質(例えば、Cas9)の触媒的に不活性なドメイン(dCas;例えば、dCas9)、及びデアミナーゼドメインを含み、dCasはリンカーによってnCasに接合されており、dCasはデアミナーゼドメインに直接隣接する、融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、アデニンからチミンへの、すなわち「ATBE」(または、チミンからアデニンへの、すなわち「TABE」)塩基転換塩基エディターである。例示的な塩基エディター及び塩基エディターシステムには、特許公報第US20220127622号、同第US20210079366号、同第US20200248169号、同第US20210093667号、同第US20210071163号、WO2020181202、WO2021158921、WO2019126709号、WO2020181178、WO2020181195、WO2020214842、WO2020181193に記載されるいずれかが含まれ、これらは、これらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0241】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、標的プライム逆転写(TPRT)、すなわち「プライム編集」である。いくつかの実施形態では、プライム編集は、DSBまたはドナーDNA鋳型を必要とせずに、ヒト細胞において標的挿入、欠失、12の考え得るすべての塩基間変換、及びこれらの組み合わせを媒介する。
【0242】
プライム編集は、ポリメラーゼ(すなわち、融合タンパク質の形態のポリメラーゼ、またはnapDNAbpとトランスで提供されたポリメラーゼ)と連携して機能する、核酸プログラム可能DNA結合タンパク質(「napDNAbp」)を用いて、新たな遺伝子情報を所定のDNA部位に直接書き込むゲノム編集法であり、プライム編集システムは、標的部位を指定すると共に、ガイドRNA(例えば、ガイドRNAの5’末端もしくは3’末端、または内部部分)上に操作された伸長部(DNAまたはRNAのいずれか)により、置換DNA鎖の形態で、所望の編集合成の鋳型となるプライム編集(PE)ガイドRNA(「PEgRNA」)でプログラムする。所望の編集(例えば、単一核酸塩基置換)を含有する置換鎖は、編集される標的部位の内因性鎖と同じ配列を共有する(所望の編集を含むことを除く)。DNA修復及び/または複製機構を介して、標的部位の内因性鎖は、所望の編集を含有する新たに合成された置換鎖により置き換えられる。場合によっては、プライム編集は、「検索及び置換」ゲノム編集技術と考えられ得る。プライム編集は、編集対象である所望の標的部位を検索して、それを特定すると共に、対応する標的部位の内因性DNA鎖の代わりに同時に導入される所望の編集を含む置換鎖をコードするからである。例えば、プライム編集は、二本鎖切断をバイパスするために、精密なCRISPR/Cas系ゲノム編集を実行するために適合させることができる。いくつかの実施形態では、相同タンパク質は、ガイドRNAで特定のDNA配列を標的とし、標的部位に一本鎖切れ目を生成し、切れ目の入ったDNAを、ガイドRNAと一体化された操作された逆転写酵素鋳型を逆転写するためのプライマーとして使用するための、Casタンパク質-逆転写酵素融合体または関連するシステムであるか、またはそれをコードする。いくつかの実施形態では、プライム編集タンパク質は、ゲノムDNAの対向する鎖上の相補的DNAフラップの合成の鋳型となる2つのプライム編集ガイドRNA(pegRNA)と対合され、PEにより誘導される切れ目の部位間の内因性DNA配列とpegRNAにコードされる配列との置換をもたらす。
【0243】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、逆転写酵素、または当技術分野で公知の任意のDNAポリメラーゼであるプライム編集に関連する。したがって、一態様では、プライム編集は、標的DNA中の相補的プロトスペーサーにアニーリングするスペーサー配列を含有する特殊なガイドRNA(すなわち、PEgRNA)と関連付けることによってDNA配列を標的とするようにプログラムされる、Cas9(または同等のnapDNAbp)を含んでもよい。このような方法には、Anzaloneら(doi.org/10.1038/s41586-019-1711-4)、またはPCT公開第WO2020191248号、同第WO2021226558号もしくは同第WO2022067130号に開示されているものが含まれ、これらはその全体が本明細書に組み込まれる。
【0244】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、部位特異的ターゲティングエレメントを介したプログラム可能な付加(PASTE)である。いくつかの態様では、PASTEは、逆転写酵素とセリンインテグラーゼの両方に融合されたCRISPR-Cas9ニッカーゼを介してゲノム挿入を指示するプラットフォームである。Ioannidiら(doi.org/10.1101/2021.11.01.466786)に記載されるように、PASTEは二本鎖切断を生成しないが、最大約36kbの配列の組込みを可能にする。いくつかの実施形態では、セリンインテグラーゼは、当技術分野で公知の任意のものであり得る。いくつかの実施形態では、セリンインテグラーゼは、PASTEを多重遺伝子組込みに使用して、少なくとも2つのゲノム遺伝子座で少なくとも2つの異なる遺伝子を同時に組み込むことができるように、十分な直交性を有する。いくつかの実施形態では、PASTEは、相同組換え修復または非相同末端結合ベースの組込みと同等またはそれより優れた編集効率を有し、非分裂細胞において活性を有し、検出可能なオフターゲット事象が少ない。
【0245】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される細胞は、ポリペプチドの発現をノックダウンする(例えば、減少させる、排除する、または阻害する)ためのRNAサイレンシングまたはRNA干渉(RNAi)を使用して作製される。有用なRNAi法は、合成RNAi分子、低分子干渉RNA(siRNA)、PIWI相互作用NRA(piRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及び当業者に認識される他の一過性ノックダウン法を利用するものを含む。配列特異的shRNA、siRNA、miRNAなどを含めたRNAiのための試薬は、市販されている。例えば、上記のいずれか、例えば、CIITA、B2MまたはNLRC5のような標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドの標的モチーフと相補的な阻害性核酸、例えば、siRNAを細胞内に導入することによって、その細胞内でRNA干渉によってノックダウンされ得る。いくつかの実施形態では、上記のいずれか、例えば、CIITA、B2MまたはNLRC5のような標的ポリヌクレオチドは、shRNAを発現するウイルスを細胞内に形質導入することによって、その細胞内でノックダウンされ得る。いくつかの実施形態では、RNA干渉を用いて、CIITA、B2M、及びNLRC5からなる群から選択される少なくとも1つの発現が低減または阻害される。
【0246】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変などの改変は、アクセサリー鎖B2Mを標的とすることによって、1つ以上のMHCクラスI分子遺伝子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子遺伝子の発現を低減させるか、または排除、例えば、ノックアウトする。B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B及び/またはNFY-C、ならびにこれらの任意の組み合わせ。いくつかの実施形態では、MHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子の発現の減少または排除は、以下のB2Mのうちの1つ以上の発現を低減させる、例えば、ノックアウトする改変である。B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B及び/またはNFY-C。
【0247】
2.例示的な標的ポリヌクレオチド、及び発現を低減させる方法
a.MHCクラスI分子
特定の実施形態では、遺伝子改変などの改変は、アクセサリー鎖B2Mを標的とすることによって、1つ以上のMHCクラスI分子遺伝子の発現を低減させるか、または排除、例えば、ノックアウトする。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、CRISPR/Casシステムを使用して起こる。B2Mの発現を低減または排除、例えば、ノックアウトすることによって、1つ以上のMHCクラスI分子の表面輸送が遮断され、このような細胞は、レシピエント対象に移植されたときに免疫寛容を示す。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば、投与時にレシピエント対象または患者において低免疫原性とみなされる。
【0248】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mの変異体である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのホモログである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのオルソログである。
【0249】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現の減少または排除は、以下のMHCクラスI分子-HLA-A、HLA-B及びHLA-Cのうちの1つ以上の発現を低減させる、改変である。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の減少または排除は、以下のMHCクラスI分子-HLA-A、HLA-B及びHLA-Cのうちの1つ以上の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の減少または排除は、HLA-Aタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の減少または排除は、HLA-Bタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の減少または排除は、HLA-Cタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の減少または排除は、以下のMHCクラスI分子-HLA-A、HLA-B及びHLA-Cのうちの1つ以上の発現を当該分子をコードする遺伝子をノックアウトすることによって、低減または排除する。いくつかの実施形態では、HLA-Aタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトし、当該HLA-Aタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、HLA-Bタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトし、当該HLA-Bタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、HLA-Cタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトし、当該HLA-Cタンパク質の発現を低減または排除する。
【0250】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、B2M遺伝子を標的とする改変(例えば、遺伝子改変)を含む。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を標的とする改変(例えば、遺伝子改変)は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びB2M遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的ヌクレアーゼシステムを使用することによるものである。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えば、gRNAターゲティング配列)は、WO2016/183041の付録2または表15の配列番号81240~85644からなる群から選択され、この開示は参照によりその全体が組み込まれる。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を特異的に標的とするためのgRNAターゲティング配列は、CGUGAGUAAACCUGAAUCUU(配列番号33)である。
【0251】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の免疫寛容原性因子)をコードする外因性核酸または導入遺伝子は、B2M遺伝子にて挿入される。B2M遺伝子座での標的挿入のための例示的な導入遺伝子には、本明細書に記載される任意のものが含まれる。
【0252】
B2M遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは公知であると共に、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるB2M遺伝子の遺伝子改変は、PCRによって評価される。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI、例えば、HLA-Iの発現の低減は、FACS分析などのフローサイトメトリーによるアッセイであり得る。別の実施形態では、B2Mタンパク質発現は、B2Mタンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用し、遺伝子改変などの不活性化遺伝子改変の存在が確認される。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子発現の低減は、免疫組織化学または免疫細胞化学などの免疫親和性法を使用して評価される。
【0253】
いくつかの実施形態では、操作された細胞における1つ以上のMHクラスI分子の発現または機能(細胞がヒト細胞に由来する場合はHLA I)の低減は、当技術分野で公知の技術、例えば、HLA複合体に結合する標識抗体を使用する、例えば、ヒト主要組織適合性HLAクラスI抗原のα鎖に結合する市販のHLA-A、B、C抗体を使用するFACS技法を使用して、測定することができる。また、細胞は、HLA I複合体が細胞表面上に発現していないことを確認するために試験され得る。これは、上で論述される1つ以上のHLA細胞表面構成要素に対する抗体を使用して、FACS分析によってアッセイされ得る。HLA I(または、MHCクラスI)の低減に加えて、本明細書で提供される操作された細胞は、マクロファージの貪食及びNK細胞による殺傷に対して感受性が低減する。操作された細胞の低免疫原性表現型をアッセイする方法は、以下に更に記載される。
【0254】
いくつかの実施形態では、B2M発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、B2MのmRNA発現を低減させる。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、排除される(例えば、B2MのmRNAの発現は0%)。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現を低減させる改変は、B2M遺伝子活性を排除する。
【0255】
いくつかの実施形態では、B2M発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、B2Mのタンパク質発現を低減させる。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、排除される(例えば、B2Mのタンパク質の発現は0%)。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現を低減させる改変は、B2M遺伝子活性を排除する。
【0256】
いくつかの実施形態では、B2M発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、B2M遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2M発現を低減させる改変は、B2M遺伝子の一方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2M発現を低減させる改変は、B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0257】
いくつかの実施形態では、改変(例えば、遺伝子改変)は、細胞における1つ以上のB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞におけるすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子中のインデルを含む不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子は、ノックアウトされる。
【0258】
b.MHCクラスII分子
特定の態様では、遺伝子改変などの改変は、クラスII分子トランス活性化因子(CIITA)発現を標的とすることによって、1つ以上のMHCクラスII分子遺伝子の発現を低減させるか、または排除、例えば、ノックアウトする。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、CRISPR/Casシステムを使用して起こる。CIITAは、LR、またはヌクレオチド結合ドメイン(NBD)ロイシンリッチ反復配列(LRR)ファミリーのタンパク質のメンバーであり、MHCエンハンセオソームと会合することによって1つ以上のMHCクラスII分子の転写を制御する。CIITAの発現を低減させるか、または排除、例えば、ノックアウトすることによって、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させ、それによって、表面発現も低減する。場合によっては、そのような細胞は、レシピエント対象に移植されたときに免疫寛容を示す。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば、投与時にレシピエント対象または患者において低免疫原性とみなされる。
【0259】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAの変異体である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのホモログである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのオルソログである。
【0260】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現の減少または排除は、以下のMHCクラスII分子-HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ及びHLA-DRのうちの1つ以上の発現を低減させる、改変である。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低減または排除は、以下のMHCクラスII分子-HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ及びHLA-DRのうちの1つ以上の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の減少または排除は、HLA-DPタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の減少または排除は、HLA-DMタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の減少または排除は、HLA-DOAタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の減少または排除は、HLA-DOBタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の減少または排除は、HLA-DQタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の減少または排除は、HLA-DRタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の減少または排除は、以下のMHCクラスII分子-HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ及びHLA-DRのうちの1つ以上の発現を当該分子をコードする遺伝子をノックアウトすることによって、低減または排除する。いくつかの実施形態では、HLA-DPタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトし、当該HLA-DPタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、HLA-DMタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトし、当該HLA-DMタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、HLA-DOAタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトし、当該HLA-DOAタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、HLA-DOBタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトし、当該HLA-DOBタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、HLA-DQタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトし、当該HLA-DQタンパク質の発現を低減または排除する。いくつかの実施形態では、HLA-DRタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトし、当該HLA-DRタンパク質の発現を低減または排除する。
【0261】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、CIITA遺伝子を標的とする改変(例えば、遺伝子改変)を含む。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を標的とする改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びCIITAを特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えば、gRNAターゲティング配列)は、WO2016183041の付録1または表12の配列番号5184~36352からなる群から選択され、この開示は参照によりその全体が組み込まれる。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を特異的に標的とするためのgRNAターゲティング配列は、GAUAUUGGCAUAAGCCUCCC(配列番号34)である。
【0262】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の免疫寛容原性因子)をコードする外因性核酸または導入遺伝子は、CIITA遺伝子にて挿入される。B2M遺伝子座での標的挿入のための例示的な導入遺伝子には、本明細書に記載される任意のものが含まれる。
【0263】
CIITA遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、公知であると共に、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるCIITA遺伝子の遺伝子改変は、PCRによって評価される。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子、例えば、HLA-IIの発現の低減は、FACS分析などのフローサイトメトリーによるアッセイであり得る。別の実施形態では、CIITAタンパク質の発現は、CIITAタンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用し、遺伝子改変などの不活性化遺伝子改変の存在が確認される。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子発現の低減は、免疫組織化学または免疫細胞化学などの免疫親和性法を使用して評価される。
【0264】
いくつかの実施形態では、操作された細胞における1つ以上のMHCクラスII分子の発現または機能(細胞がヒト細胞に由来する場合はHLA II)の低減は、タンパク質に対する抗体を使用したウェスタンブロッティング、FACS技法、RT-PCR技法などといった当技術分野で公知の技法を使用して測定することができる。いくつかの実施形態では、HLA II複合体が細胞表面上に発現していないことを確認するために、操作された細胞を試験することができる。表面発現を評定するための方法には、当技術分野で公知の方法が含まれ(例えば、WO2018132783の
図21を参照されたい)、一般には、ヒトHLAクラスII HLA-DR、DP及びほとんどのDQ抗原に結合する市販の抗体に基づくウェスタンブロットまたはFACS分析のいずれかを使用して行われる。HLAクラスII分子(または、1つ以上のMHCクラスII分子)の低減に加えて、本明細書で提供される操作された細胞は、マクロファージの貪食及びNK細胞による殺傷に対して感受性が低減する。操作された細胞の低免疫原性表現型をアッセイする方法は、以下に更に記載される。
【0265】
いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、CIITAのmRNA発現を低減させる。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、排除される(例えば、CIITAのmRNAの発現は0%)。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現を低減させる改変は、CIITA遺伝子活性を排除する。
【0266】
いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、CIITAのタンパク質発現を低減させる。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、排除される(例えば、CIITAのタンパク質の発現は0%)。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現を低減させる改変は、CIITA遺伝子活性を排除する。
【0267】
いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、CIITA遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減させる改変は、CIITA遺伝子の一方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減させる改変は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0268】
いくつかの実施形態では、改変(例えば、遺伝子改変)は、細胞における1つ以上のCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞におけるすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、CIITA遺伝子中のインデルを含む不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、CIITA遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、改変は、CIITA遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、改変は、CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子は、ノックアウトされる。
【0269】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、T細胞受容体α定常(TRAC)遺伝子を標的とする改変(例えば、遺伝子改変)を含む。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を標的とする改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びTRACを特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、US20160348073の配列番号532~609及び9102~9797からなる群から選択され、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を特異的に標的とするためのgRNAターゲティング配列は、AGAGUCUCUCAGCUGGUACA(配列番号35)である。
【0270】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の免疫寛容原性因子)をコードする外因性核酸または導入遺伝子は、TRAC遺伝子にて挿入される。TRAC遺伝子座での標的挿入のための例示的な導入遺伝子には、第II.B節に記載される任意のものが含まれる。
【0271】
TRAC遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは公知であると共に、本明細書に記載される。一実施形態では、PCRによる結果として生じるTRAC遺伝子の遺伝子改変、及びHLA-II発現の低減は、フローサイトメトリーによって、例えば、FACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、TRACタンパク質の発現は、TRACタンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化改変の存在が確認される。
【0272】
いくつかの実施形態では、TRAC発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、TRACのmRNA発現を低減させる。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現は、排除される(例えば、TRACのmRNAの発現は0%)。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現を低減させる改変は、TRAC遺伝子活性を排除する。
【0273】
いくつかの実施形態では、TRAC発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、TRACのタンパク質発現を低減させる。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現は、排除される(例えば、TRACのタンパク質の発現は0%)。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現を低減させる改変は、TRAC遺伝子活性を排除する。
【0274】
いくつかの実施形態では、TRAC発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、TRAC遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、TRAC発現を低減させる改変は、TRAC遺伝子の一方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、TRAC発現を低減させる改変は、TRAC遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0275】
いくつかの実施形態では、改変(例えば、遺伝子改変)は、細胞における1つ以上のTRACコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞におけるすべてのTRACコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、TRAC遺伝子中のインデルを含む不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、TRAC遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、改変は、TRAC遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、改変は、TRAC遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子は、ノックアウトされる。
【0276】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、T細胞受容体β定常(TRBC)遺伝子を標的とする改変(例えば、遺伝子改変)を含む。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を標的とする改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びTRBC遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的ヌクレアーゼシステムによるものである。
【0277】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の免疫寛容原性因子)をコードする外因性核酸または導入遺伝子は、TRBC遺伝子にて挿入される。TRBC遺伝子座での標的挿入のために例示的な導入遺伝子には、第II.B節に記載される任意のものが含まれる。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、US20160348073の配列番号610~765及び9798~10532からなる群から選択され、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0278】
TRBC遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは公知であると共に、本明細書に記載される。一実施形態では、PCRによる結果として生じるTRBC遺伝子の遺伝子改変、及びHLA-II発現の低減は、フローサイトメトリーによって、例えば、FACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、TRBCタンパク質の発現は、TRBCタンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化改変の存在が確認される。
【0279】
いくつかの実施形態では、TRBC発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、TRBCのmRNA発現を低減させる。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現は、排除される(例えば、TRBCのmRNAの発現は0%)。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現を低減させる改変は、TRBC遺伝子活性を排除する。
【0280】
いくつかの実施形態では、TRBC発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、TRBCのタンパク質発現を低減させる。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現は、約5%を超えて低減し、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上のいずれかを超えて低減する。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現は、最大約100%低減し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%またはそれ未満のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれかだけ低減する。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現は、排除される(例えば、TRBCのタンパク質の発現は0%)。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現を低減させる改変は、TRBC遺伝子活性を排除する。
【0281】
いくつかの実施形態では、TRBC発現を低減させる改変(例えば、遺伝子改変)は、TRBC遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、TRBC発現を低減させる改変は、TRBC遺伝子の一方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、TRBC発現を低減させる改変は、TRBC遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0282】
いくつかの実施形態では、改変(例えば、遺伝子改変)は、細胞における1つ以上のTRBCコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞におけるすべてのTRBCコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、TRBC遺伝子中のインデルを含む不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、TRBC遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、改変は、TRBC遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、改変は、TRBC遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子は、ノックアウトされる。
【0283】
B.ポリヌクレオチドの過剰発現
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された初代細胞などの操作された細胞は、例えば、細胞において所望のポリヌクレオチドを過剰発現させるような1つ以上の改変の細胞内への導入によって、遺伝子改変または操作される。いくつかの実施形態では、改変または操作された初代細胞などの細胞は、1つ以上の改変が以前に導入されていない未改変細胞または未操作細胞(例えば、未改変の初代細胞または未操作の初代細胞)である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された初代細胞などの操作された細胞は、外因性タンパク質をコードする1つ以上の外因性ポリヌクレオチド(「導入遺伝子」という用語と互換的に使用される)を含むように遺伝子改変される。記載したように、いくつかの実施形態では、初代細胞などの細胞は、レシピエントにおける免疫認識及び寛容に影響を及ぼす免疫寛容原性(例えば、免疫)因子である特定の遺伝子の発現を増加させるように改変される。いくつかの実施形態では、T細胞またはNK細胞などの提供される操作された初代細胞はまた、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する。1つ以上のポリヌクレオチド、例えば、外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞において、上記の第I.A節に記載される標的ポリヌクレオチド、例えば、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減するような1つ以上の遺伝子改変と一緒に発現(例えば、過剰発現)してもよい。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの提供される操作された細胞は、レシピエント対象への投与時に免疫応答を誘発または活性化しない。
【0284】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なる過剰発現したポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なる過剰発現したポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、過剰発現したポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なる外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なる外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、過剰発現したポリヌクレオチドは、初代細胞においてエピソームとして発現する外因性ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、過剰発現したポリヌクレオチドは、操作された初代細胞の1つ以上のゲノム遺伝子座に挿入されているか、または組み込まれている外因性ポリヌクレオチドである。
【0285】
いくつかの実施形態では、DNAターゲティングドメイン及び転写活性化因子を含有する融合タンパク質を使用して、ポリヌクレオチドの発現は増加する、すなわち、ポリヌクレオチドは過剰発現される。トランス活性化因子ドメインを使用して発現を増加させる標的化方法は、当業者に公知である。
【0286】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含有し、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、非標的挿入方法によって、例えば、レンチウイルスベクターによる形質導入によって細胞のゲノム遺伝子座内に挿入または組み込まれる。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、piggyBacランスポゾンを含む。転位中、piggyBackトランスポゾンはレンチウイルスベクター内のトランスポゾン特異的な逆方向末端反復(ITR)を認識し、ベクター内容物のTTAA染色体部位への効率的な移動と組込みを可能にする。いくつかの実施形態では、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、標的挿入法によって、例えば、相同性指向修復(HDR)を使用することによって、初代細胞などの細胞のゲノム内に挿入されているか、または組み込まれる。任意の適切な方法を使用し、本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含むHDRによって、外因性ポリヌクレオチドを初代細胞などの操作された細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の任意のゲノム遺伝子座位などの1つ以上のゲノム遺伝子座位に挿入される(例えば、表4)。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、同じゲノム遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、異なるゲノム遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドのうちの2つ以上は、本明細書に記載の任意のゲノム遺伝子座位などの同じゲノム遺伝子座位に挿入される(例えば、表4)。いくつかの実施形態では、2つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の2つ以上のゲノム遺伝子座位などの異なるゲノム遺伝子座位に挿入される(例えば、表4)。
【0287】
例示的なポリヌクレオチドまたは過剰発現、及びそれを過剰発現させる方法は、以下の項に記載される。
【0288】
1.免疫寛容原性因子
いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子の発現は、細胞、例えば、初代細胞において過剰発現または増加する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、少なくとも1つの免疫寛容原性因子の発現の増加、すなわち、過剰発現を含む。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、免疫系(例えば、自然免疫系または適応免疫系)による操作された細胞に対する寛容を促進するか、またはその促進もしくは誘導に寄与する、任意の因子である。
【0289】
いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、A20/TNFAIP3、C1-阻害剤、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1またはSerpinb9からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF、及びH2-M3である。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200もしくはMfge8、またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、初代細胞などの細胞は、免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドを含む、少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチドを含む。例えば、いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドの少なくとも1つは、CD47をコードするポリヌクレオチドである。本明細書では、レシピエント対象への投与時に免疫応答を発動または活性化しない細胞が提供される。上述したように、いくつかの実施形態では、初代細胞などの細胞は、レシピエントにおける免疫認識及び寛容に影響を及ぼす遺伝子及び免疫寛容原性(例えば、免疫)因子の発現を増加させるように改変される。
【0290】
いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子の発現(例えば、表面発現)は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約10%以上増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%またはそれ以上のいずれかだけ増加する。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子の発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約99%以下増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%またはそれ以下のいずれかだけ増加する。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子の発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約10%~約100%増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約10%~約40%、約20%~約60%、約50%~約80%、及び約70%~約100%のいずれかだけ増加する。
【0291】
いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子の発現(例えば、表面発現)は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約2倍以上増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約4倍以上、約6倍以上、約8倍以上、約10倍以上、約15倍以上、約20倍以上、約30倍以上、約40倍以上、約50倍以上、約60倍以上、約70倍以上、約80倍以上、約90倍以上、約100倍以上、約150倍以上、及び約200倍以上のいずれかだけ増加する。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子の発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約200倍以下増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約150倍以下、約100倍以下、約90倍以下、約80倍以下、約70倍以下、約60倍以下、約50倍以下、約40倍以下、約30倍以下、約15倍以下、約10倍以下、約8倍以下、約6倍以下、約4倍以下、及び約2倍以下のいずれかだけ増加する。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子の発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約2倍~約200倍増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約2倍~約20倍、約10倍~約50倍、約30倍~約70倍、約50倍~約100倍、約80倍~約150倍、及び約120倍~約200倍のいずれかだけ増加する。
【0292】
いくつかの実施形態では、本開示は、CD47などの免疫寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)を発現するように改変された、初代細胞などの細胞またはその集団を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、CD47などの免疫寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)を発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、外因性CD47などの外因性免疫寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)を発現する。いくつかの事例では、外因性ポリヌクレオチドの過剰発現または発現の増加は、ヒトCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを初代細胞内に導入する(例えば、細胞に形質導入する)ことによって達成される。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターであり得るか、または非ウイルスベクターであり得る。いくつかの実施形態では、初代細胞などの細胞は1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むように操作され、外因性ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つは免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF、及びH2-M3(これらの任意の組み合わせを含む)。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200、及びMfge8(これらの任意の組み合わせを含む)のうちの1つ以上である。例えば、いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドの少なくとも1つは、CD47をコードするポリヌクレオチドである。
【0293】
いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、CD47である。いくつかの実施形態では、初代細胞などの操作された細胞は、ヒトCD47などのCD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD47は、細胞、例えば、初代細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、改変によって操作されていない同じ細胞種の類似の細胞、例えば、参照細胞または未改変細胞、例えば、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドで操作されていない初代細胞と比較して、操作された初代細胞などの操作された細胞において過剰発現するか、または増加する。CD47は、白血球表面抗原であり、インテグリンの細胞接着及び調節において役割を有する。それは通常、細胞の表面上に発現し、循環マクロファージが細胞を食べないようにシグナル伝達する。ヒトCD47についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、NP_001768.1、NP_942088.1、NM_001777.3、及びNM_198793.2で提供される。
【0294】
いくつかの実施形態では、CD47の発現(例えば、表面発現)は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約10%以上増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%またはそれ以上のいずれかだけ増加する。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約99%以下増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%またはそれ以下のいずれかだけ増加する。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約10%~約100%増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約10%~約40%、約20%~約60%、約50%~約80%、及び約70%~約100%のいずれかだけ増加する。
【0295】
いくつかの実施形態では、CD47の発現(例えば、表面発現)は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約2倍以上増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約4倍以上、約6倍以上、約8倍以上、約10倍以上、約15倍以上、約20倍以上、約30倍以上、約40倍以上、約50倍以上、約60倍以上、約70倍以上、約80倍以上、約90倍以上、約100倍以上、約150倍以上、及び約200倍以上のいずれかだけ増加する。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約200倍以下増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約150倍以下、約100倍以下、約90倍以下、約80倍以下、約70倍以下、約60倍以下、約50倍以下、約40倍以下、約30倍以下、約15倍以下、約10倍以下、約8倍以下、約6倍以下、約4倍以下、及び約2倍以下のいずれかだけ増加する。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約2倍~約200倍増加し、例えば、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、約2倍~約20倍、約10倍~約50倍、約30倍~約70倍、約50倍~約100倍、約80倍~約150倍、及び約120倍~約200倍のいずれかだけ増加する。
【0296】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に定められるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に定められるアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、NCBI参照番号NM_001777.3及びNM_198793.2に定められる配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47のためのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、NCBI参照配列番号NM_001777.3及びNM_198793.2に定められるCD47のためのヌクレオチド配列を含む。
【0297】
いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に定められるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に定められるアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドを含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、細胞は、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有するCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)を有するCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドを含む。
【0299】
特定の実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0300】
いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、以下で更に説明するように、標的または非標的挿入方法によって細胞のゲノム内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、標的挿入は、ゲノム(遺伝子)座のいずれか1つへの挿入によるなど、標的遺伝子座への相同性依存型の挿入によるものである。いくつかの実施形態では、1つ以上のゲノム遺伝子座のそれぞれは、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座、CD142遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231座、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上のゲノム遺伝子座のそれぞれは、B2M遺伝子座、TAP1遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座、MIC-A遺伝子座、MIC-B遺伝子座、及びセーフハーバー遺伝子座からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、AAVS1、ABO、CCR5、CLYBL、CXCR4、F3、FUT1、HMGB1、KDM5D、LRP1、MICA、MICB、RHD、ROSA26、及びSHS231座からなる群から選択される。
【0301】
いくつかの実施形態では、標的挿入は、表1b、表2または表4に示される遺伝子座のいずれか1つ、例えば、B2M遺伝子、CIITA遺伝子、TRAC遺伝子、TRBC遺伝子への挿入によるなど、標的遺伝子座への相同性依存型の挿入によるものである。いくつかの実施形態では、標的挿入は、セーフハーバー遺伝子座への挿入によるなど、相同性非依存型の挿入によるものである。場合によっては、CD47をコードするポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、CD47をコードするポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座に挿入される。
【0302】
特定の実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞はT細胞であり、CD47をコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、細胞のゲノム遺伝子座内への、CD47をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。いくつかの実施形態では、操作された細胞はT細胞であり、CD47をコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、CD47をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0303】
いくつかの実施形態では、CD47タンパク質発現は、CD47タンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用し、外因性CD47 mRNAの存在が確認される。
【0304】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、ヒトCD200などのCD200をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD200は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CD200の発現は、参照または未改変の細胞がCD200をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変、例えば、遺伝子改変を有するものを含む)と比較して、操作された初代細胞などの操作された細胞において増加する。ヒトCD200についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC03P112332、HGNC番号7203、NCBI遺伝子ID4345、Uniprot番号P41217、ならびにNCBI RefSeq番号NP_001004196.2、NM_001004196.3、NP_001305757.1、NM_001318828.1、NP_005935.4、NM_005944.6、XP_005247539.1、及びXM_005247482.2で提供される。特定の実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0305】
いくつかの実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、表1B、表2または表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、CD200をコードするポリヌクレオチドは、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞はT細胞であり、CD200をコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、CD200をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0306】
いくつかの実施形態では、CD200タンパク質発現は、CD200タンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用し、外因性CD200 mRNAの存在が確認される。
【0307】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、ヒトHLA-EなどのHLA-Eをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、HLA-Eは、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、HLA-Eの発現は、参照または未改変の細胞がHLA-Eをコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された初代細胞などの操作された細胞において増加する。ヒトHLA-Eについての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06P047281、HGNC番号4962、NCBI遺伝子ID3133、Uniprot番号P13747、ならびにNCBI RefSeq番号NP_005507.3及びNM_005516.5で提供される。特定の実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0308】
いくつかの実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、表1B、表2または表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択される遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞はT細胞であり、HLA-EをコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0309】
いくつかの実施形態では、HLA-Eタンパク質発現は、HLA-Eタンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用し、外因性HLA-E mRNAの存在が確認される。
【0310】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、ヒトHLA-GなどのHLA-Gをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、HLA-Gは、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、HLA-Gの発現は、参照または未改変の細胞がHLA-Gをコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変、例えば、遺伝子改変を有するものを含む)と比較して、操作された初代細胞などの操作された細胞において増加する。ヒトHLA-Gについての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06P047256、HGNC番号4964、NCBI遺伝子ID3135、Uniprot番号P17693、ならびにNCBI RefSeq番号NP_002118.1及びNM_002127.5で提供される。特定の実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0311】
いくつかの実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、表1b、表2または表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞はT細胞であり、HLA-GをコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0312】
いくつかの実施形態では、HLA-Gタンパク質発現は、HLA-Gタンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用し、外因性HLA-G mRNAの存在が確認される。
【0313】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、ヒトPD-L1などのPD-L1をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、PD-L1は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、PD-L1の発現は、参照または未改変の細胞がPD-L1をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された初代細胞などの操作された細胞において増加する。ヒトPD-L1またはCD274についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC09P005450、HGNC番号17635、NCBI遺伝子ID29126、Uniprot番号Q9NZQ7、ならびにNCBI RefSeq番号NP_001254635.1、NM_001267706.1、NP_054862.1、及びNM_014143.3で提供される。特定の実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0314】
いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、表1B、表2または表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞はT細胞であり、PD-L1をコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、PD-L1をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0315】
いくつかの実施形態では、PD-L1タンパク質発現は、PD-L1タンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用し、外因性PD-L1 mRNAの存在が確認される。
【0316】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、ヒトFasLなどのFasLをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、FasLは、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、FasLの発現は、参照または未改変の細胞がFasLをコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変、例えば、遺伝子改変を有するものを含む)と比較して、操作された初代細胞において増加する。ヒトFasリガンド(FasL、FASLG、CD178、TNFSF6などとして知られる)についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC01P172628、HGNC番号11936、NCBI遺伝子ID356、Uniprot番号P48023、ならびにNCBI RefSeq番号NP_000630.1、NM_000639.2、NP_001289675.1、及びNM_001302746.1で提供される。特定の実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0317】
いくつかの実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、表1B、表2または表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞はT細胞であり、Fas-LをコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0318】
いくつかの実施形態では、Fas-Lタンパク質発現は、Fas-Lタンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用し、外因性Fas-L mRNAの存在が確認される。
【0319】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、ヒトCCL21などのCCL21をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CCL21は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CCL21の発現は、参照または未改変の細胞がCCL21をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変、例えば、遺伝子改変を有するものを含む)と比較して、操作された初代細胞などの操作された細胞において増加する。ヒトCCL21についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC09M034709、HGNC番号10620、NCBI遺伝子ID6366、Uniprot番号O00585、ならびにNCBI RefSeq番号NP_002980.1及びNM_002989.3で提供される。特定の実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0320】
いくつかの実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、表1B、表2または表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞はT細胞であり、CCL21をコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、CCL21をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0321】
いくつかの実施形態では、CCL21タンパク質発現は、CCL21タンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用し、外因性CCL21 mRNAの存在が確認される。
【0322】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、ヒトCCL22などのCCL22をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CCL22は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CCL22の発現は、参照または未改変の細胞がCCL22をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変、例えば、遺伝子改変を有するものを含む)と比較して、操作された初代細胞などの操作された細胞において増加する。ヒトCCL22についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC16P057359、HGNC番号10621、NCBI遺伝子ID6367、Uniprot番号O00626、ならびにNCBI RefSeq番号NP_002981.2、NM_002990.4、XP_016879020.1、及びXM_017023531.1で提供される。特定の実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0323】
いくつかの実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、表1B、表2または表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞はT細胞であり、CCL22をコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、CCL22をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0324】
いくつかの実施形態では、CCL22タンパク質発現は、CCL22タンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CCL22 mRNAの存在が確認される。
【0325】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、ヒトMfge8などのMfge8をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、Mfge8は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、Mfge8の発現は、参照または未改変の細胞がMfge8をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変、例えば、遺伝子改変を有するものを含む)と比較して、操作された初代細胞などの操作された細胞において増加する。ヒトMfge8についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC15M088898、HGNC番号7036、NCBI遺伝子ID4240、Uniprot番号Q08431、ならびにNCBI RefSeq番号NP_001108086.1、NM_001114614.2、NP_001297248.1、NM_001310319.1、NP_001297249.1、NM_001310320.1、NP_001297250.1、NM_001310321.1、NP_005919.2、及びNM_005928.3で提供される。特定の実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0326】
いくつかの実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、表1B、表2または表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞はT細胞であり、Mfge8をコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、Mfge8をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0327】
いくつかの実施形態では、Mfge8タンパク質発現は、Mfge8タンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性Mfge8 mRNAの存在が確認される。
【0328】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの操作された細胞は、ヒトSerpinB9などのSerpinB9をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、SerpinB9は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、SerpinB9の発現は、参照または未改変の細胞がSerpinB9をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変、例えば、遺伝子改変を有するものを含む)と比較して、操作された初代細胞などの操作された細胞において増加する。ヒトSerpinB9についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06M002887、HGNC番号8955、NCBI遺伝子ID5272、Uniprot番号P50453、ならびにNCBI RefSeq番号NP_004146.1、NM_004155.5、XP_005249241.1、及びXM_005249184.4で提供される。特定の実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0329】
いくつかの実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、表1B、表2または表4に示す遺伝子座のいずれか1つに挿入される。場合によっては、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞はT細胞であり、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドはTRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用し、細胞のゲノム遺伝子座内への、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。
【0330】
いくつかの実施形態では、SerpinB9タンパク質発現は、SerpinB9タンパク質に対する抗体によりプローブされた細胞溶解液のウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性SerpinB9 mRNAの存在が確認される。
【0331】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの提供される操作された細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように更に改変される。いくつかの実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドは、細胞に導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、初代T細胞などのT細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、初代ナチュラルキラー(NK)細胞などのNK細胞である。
【0332】
いくつかの実施形態では、CARは、第1世代CAR、第2世代CAR、第3世代CAR、及び第4世代CARからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン(例えば1、2または3つのシグナル伝達ドメイン)を含む、第1世代CARであるか、または第1世代CARを含む。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む、第2世代CARを含む。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む、第3世代CARを含む。いくつかの実施形態では、第4世代のCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、抗体断片、scFvもしくはFabであるか、または抗体、抗体断片、scFvもしくはFabを含む。
【0333】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第1世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第1世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中に下流シグナル伝達を媒介する。
【0334】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のいずれか1つは、CARまたは第2世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第2世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び2つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中に下流シグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR T細胞増殖、及び/またはCAR T細胞存続を増強する。
【0335】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第3世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第3世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中に下流シグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR T細胞増殖、及びまたはCAR T細胞存続を増強する。いくつかの実施形態では、第3世代CARは、少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの共刺激ドメインは、同じではない。
【0336】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のいずれか1つは、CARまたは第4世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第4世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2、3または4つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中に下流シグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR T細胞増殖、及びまたはCAR T細胞存続を増強する。
【0337】
いくつかの実施形態では、第1、第2、第3または第4世代CARは、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含むCARを含む標的細胞にとって内因性または外因性である。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL-18、TNFもしくはIFN-γ、またはこれらの機能的断片をコードする。いくつかの実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子、もしくはその機能的ドメインもしくは断片であるか、または転写因子、もしくはその機能的ドメインもしくは断片を含む。いくつかの実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子、もしくはその機能的ドメインもしくは断片であるか、または転写因子、もしくはその機能的ドメインもしくは断片を含む。いくつかの実施形態では、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片は、活性化T細胞の核内因子(NFAT)、NF-kB、もしくはその機能的ドメインもしくは断片であるか、または活性化T細胞の核内因子(NFAT)、NF-kB、もしくはその機能的ドメインもしくは断片を含む。例えばZhang.C.et al.,Engineering CAR-T cells.Biomarker Research.5:22(2017)、WO2016126608、Sha,H.et al.Chimaeric antigen receptor T-cell therapy for tumour immunotherapy. Bioscience Reports Jan 27,2017,37(1)を参照されたい。
【0338】
当業者であれば、CAR及び様々な構成要素、ならびにCARの構成に精通している。任意の既知のCARを、提供される実施形態に関連して使用することができる。本明細書に記載のCARに加えて、種々のCAR及びそれらをコードするヌクレオチド配列は当技術分野で公知であり、本明細書に記載される操作された細胞に好適であろう。例えば、WO2013040557、WO2012079000、WO2016030414、Smith T,et al.,Nature Nanotechnology.2017.DOI:10.1038/NNANO.2017.57を参照されたい(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。CARの例示的な機能と構成要素については、以下の項に記載される。
【0339】
2.キメラ抗原受容体
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞などの提供される操作された細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように更に改変される。いくつかの実施形態では、初代細胞などの提供される細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を調節する1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列の遺伝子改変を含有し、本明細書に記載される免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CARを発現する。いくつかの実施形態では、初代細胞などの細胞は、B2Mが低減または排除(例えばノックアウト)されており、CIITAが低減または排除(例えばノックアウト)されており、CD47が過剰発現し、CARが発現する細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、B2M-/-、CIITA-/-、CD47tg、CAR+である。いくつかの実施形態では、初代細胞(例えば、T細胞)は更に、TRACが低減または排除(例えば、ノックアウト)されている細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、B2-/-、CIITA-/-、CD47tg、TRAC-/-、CAR+である。
【0340】
いくつかの実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドは、初代細胞に導入される。いくつかの実施形態では、細胞は、初代T細胞などのT細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、初代ナチュラルキラー(NK)細胞などのNK細胞である。
【0341】
いくつかの実施形態では、CARは、第1世代CAR、第2世代CAR、第3世代CAR、及び第4世代CARからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン(例えば1、2または3つのシグナル伝達ドメイン)を含む、第1世代CARであるか、または第1世代CARを含む。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む、第2世代CARを含む。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む、第3世代CARを含む。いくつかの実施形態では、第4世代のCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、抗体断片、scFvもしくはFabであるか、または抗体、抗体断片、scFvもしくはFabを含む。
【0342】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の初代細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第1世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第1世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中に下流シグナル伝達を媒介する。
【0343】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の初代細胞のいずれか1つは、CARまたは第2世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第2世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び2つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中に下流シグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR T細胞増殖、及び/またはCAR T細胞存続を増強する。
【0344】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の初代細胞のいずれか1つは、CARまたは第3世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第3世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中に下流シグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR T細胞増殖、及びまたはCAR T細胞存続を増強する。いくつかの実施形態では、第3世代CARは、少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの共刺激ドメインは、同じではない。
【0345】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の初代細胞のいずれか1つは、CARまたは第4世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第4世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2、3または4つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中に下流シグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR T細胞増殖、及びまたはCAR T細胞存続を増強する。
【0346】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される操作された初代細胞(例えば、初代T細胞または初代NK細胞)は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、またはKDM5D遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1、またはCTLA4遺伝子に挿入される。本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含む、任意の好適な方法を使用し、CARを低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。
【0347】
いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、または第4世代CARは、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含むCARを含む標的細胞にとって内因性または外因性である。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL-18、TNFもしくはIFN-γ、またはこれらの機能的断片をコードする。いくつかの実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子、もしくはその機能的ドメインもしくは断片であるか、または転写因子、もしくはその機能的ドメインもしくは断片を含む。いくつかの実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子、もしくはその機能的ドメインもしくは断片であるか、または転写因子、もしくはその機能的ドメインもしくは断片を含む。いくつかの実施形態では、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片は、活性化T細胞の核内因子(NFAT)、NF-kB、もしくはその機能的ドメインもしくは断片であるか、または活性化T細胞の核内因子(NFAT)、NF-kB、もしくはその機能的ドメインもしくは断片を含む。例えばZhang.C.et al.,Engineering CAR-T cells.Biomarker Research.5:22(2017)、WO2016126608、Sha,H.et al.Chimaeric antigen receptor T-cell therapy for tumour immunotherapy.Bioscience Reports Jan 27,2017,37(1)を参照されたい。
【0348】
当業者であれば、CAR及び様々な構成要素、ならびにCARの構成に精通している。任意の既知のCARを、提供される実施形態に関連して使用することができる。本明細書に記載のCARに加えて、種々のCAR及びそれらをコードするヌクレオチド配列は当技術分野で公知であり、本明細書に記載される操作された細胞に好適であろう。例えば、WO2013040557、WO2012079000、WO2016030414、Smith T,et al.,Nature Nanotechnology.2017.DOI:10.1038/NNANO.2017.57を参照されたい(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。CARの例示的な機能と構成要素については、以下の項に記載される。
【0349】
a.抗原結合ドメイン
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメイン(ABD)は、抗体もしくはその抗原結合部分であるか、または抗体もしくはその抗原結合部分を含む。いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、scFvもしくはFabであるか、またはscFvもしくはFabを含む。
【0350】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、細胞の細胞表面抗原に結合する。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、特定または特異的な細胞型に特徴的である(例えば、当細胞型によって発現される)。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、複数の細胞型に特徴的である。
【0351】
いくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍細胞で排他的にまたは優先的に発現される抗原、または自己免疫疾患もしくは炎症性疾患に特徴的な抗原であり得る。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメイン(ABD)は、新生細胞に特徴的な抗原を標的とする。例えば、抗原結合ドメインは、新生細胞またはがん細胞によって発現される抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、ABDは、腫瘍関連抗原に結合する。いくつかの実施形態において、新生細胞に特徴的な抗原(例えば、新生細胞またはがん細胞に関連する抗原)または腫瘍関連抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ関連受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体セリン/スレオニンキナーゼ、受容体グアニリルシクラーゼ、ヒスチジンキナーゼ関連受容体から選択される。
【0352】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、これらに限定されないが、上皮成長因子受容体(EGFR)(ErbB1/EGFR、ErbB2/HER2、ErbB3/HER3、及びErbB4/HER4を含む)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)(FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF18、及びFGF21を含む)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)(VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、及びPIGFを含む)、RET受容体及びEph受容体ファミリー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA9、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB4、及びEphB6を含む)、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR6、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR8、CFTR、CIC-1、CIC-2、CIC-4、CIC-5、CIC-7、CIC-Ka、CIC-Kb、ベストロフィン、TMEM16A、GABA受容体、グリシン受容体、ABC輸送体、NAV1.1、NAV1.2、NAV1.3、NAV1.4、NAV1.5、NAV1.6、NAV1.7、NAV1.8、NAV1.9、スフィンゴシン-1-リン酸受容体(S1P1R)、NMDAチャネル、膜貫通型タンパク質、マルチスパン膜貫通型タンパク質、T細胞受容体モチーフ;T細胞アルファ鎖;T細胞β鎖;T細胞γ鎖;T細胞δ鎖、CCR7、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11b、CD11c、CD16、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD28、CD34、CD35、CD40、CD45RA、CD45RO、CD52、CD56、CD62L、CD68、CD80、CD95、CD117、CD127、CD133、CD137(4-1BB)、CD163、F4/80、IL-4Ra、Sca-1、CTLA-4、GITR、GARP、LAP、グランザイムB、LFA-1、トランスフェリン受容体、NKp46、パーフォリン、CD4+、Th1、Th2、Th17、Th40、Th22、Th9、Tfh、古典的Treg、FoxP3+、Tr1、Th3、Treg17、TREG、CDCP、NT5E、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド(例えば、CD2、CD3、GM2)、ルイス-γ2、VEGF、VEGFR1/2/3、αVβ3、α5β1、ErbB1/EGFR、ErbB1/HER2、ErB3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、PDL-1、BAFF、HDAC、ABL、FLT3、KIT、MET、RET、IL-1β、ALK、RANKL、mTOR、CTLA-4、IL-6、IL-6R、JAK3、BRAF、PTCH、スムーズンド、PIGF、ANPEP、TIMP1、PLAUR、PTPRJ、LTBR、もしくはANTXR1、葉酸受容体アルファ(FRa)、ERBB2(Her2/neu)、EphA2、IL-13Ra2、上皮成長因子受容体(EGFR)、メソテリン、TSHR、CD19、CD123、CD22、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、MUC16(CA125)、L1CAM、LeY、MSLN、IL13Rα1、L1-CAM、Tn Ag、前立腺特異膜抗原(PSMA)、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、インターロイキン-11受容体a(IL-11Ra)、PSCA、PRSS21、VEGFR2、ルイスY、CD24、血小板由来成長因子受容体-ベータ(PDGFR-ベータ)、SSEA-4、CD20、MUC1、NCAM、前立腺、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-1受容体、CAIX、LMP2、gp100、bcr-abl、チロシナーゼ、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLACl、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-1a、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、主要組織適合性複合体クラスI関連遺伝子タンパク質(MR1)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、プロステイン、サバイビン、テロメラーゼ、PCTA-1/ガレクチン8、MelanA/MART1、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、MYCN、RhoC、TRP-2、CYPIB I、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、新生抗原、CD133、CD15、CD184、CD24、CD56、CD26、CD29、CD44、HLA-A、HLA-B、HLA-C(HLA-A,B,C)、H2-M3、CD49f、CD151、CD340、CD200、tkrA、trkB、もしくはtrkC、またはこれらの抗原断片もしくは抗原部分を含む、抗原である。
【0353】
いくつかの実施形態では、例示的な標的抗原としては、CDS、CD19、CD20、CD22、CD23、CD30、CD70、κ、λ、及びB細胞成熟因子(BCMA)(白血病と関連);CS1/SLAMF7、CD38、CD138、GPRC5D、TACI、及びBCMA(骨髄腫と関連);GD2、HER2、EGFR、EGFRvIII、B7H3、PSMA、PSCA、CAIX、CD171、CEA、CSPG4、EPHA2、FAP、FRα、IL-13Rα、メソテリン、MUC1、MUC16、及びROR1(固形腫瘍と関連)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0354】
いくつかの実施形態では、CARは、CD19 CARである。いくつかの実施形態では、CD19 CARの細胞外結合ドメインは、CD19(例えば、ヒトCD19)に特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARの細胞外結合ドメインは、リンカーペプチドによって接続されたFMC63の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、FMC63モノクローナル抗体(FMC63)に由来するscFv抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、リンカーペプチドは、「Whitlow」リンカーペプチドである。FMC63及び派生したscFvは、Nicholson et al.,Mol.Immun.34(16-17):1157-1165(1997)及びPCT出願公開第WO2018/213337A1号(それらのそれぞれの全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる)中で記載される。
【0355】
いくつかの実施形態では、CD19 CARの細胞外結合ドメインは、CD19に特異的な抗体のうちの1つに由来する抗体を含み、CD19に特異的な抗体は、例えば、SJ25C1(Bejcek et al.,Cancer Res.55:2346-2351(1995))、HD37(Pezutto et al.,J.Immunol.138(9):2793-2799(1987))、4G7(Meeker et al.,Hybridoma 3:305-320(1984))、B43(Bejcek(1995))、BLY3(Bejcek(1995))、B4(Freedman et al.,70:418-427(1987))、B4 HB12b(Kansas&Tedder,J.Immunol.147:4094-4102(1991);Yazawa et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:15178-15183(2005);Herbst et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.335:213-222(2010))、BU12(Gallard et al.,J.Immunology,148(10):2983-2987(1992))、及びCLB CD19(De Rie Cell.Immunol.118:368-381(1989))を含む。
【0356】
いくつかの実施形態では、CARは、CD22 CARである。CD22は、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達の阻害性受容体として機能する、主に成熟B細胞の表面上に見出される膜貫通タンパク質である。CD22は、B細胞リンパ腫及び白血病(例えば、慢性Bリンパ球性白血病、有毛細胞性白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、及びバーキットリンパ腫)の60~70%で発現され、B細胞発生の早期ステージの細胞表面でまたは幹細胞で存在しない。いくつかの実施形態では、CD22 CARは、CD22に特異的に結合する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/または細胞内共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD22 CARの細胞外結合ドメインは、リンカーによって接続されたm971の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、m971モノクローナル抗体(m971)に由来するscFv抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、CD22 CARの細胞外結合ドメインは、親抗体m971と比較して、有意に改善した(約2nMから50pM未満に改善した)CD22結合親和性を有するm971の親和性成熟変異体である、m971-L7に由来するscFv抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、m971-L7に由来するscFv抗原断片は、3xG4Sリンカーによって接続されたm971-L7のVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、CD22 CARの細胞外結合ドメインは、免疫毒素HA22またはBL22を含む。免疫毒素BL22及びHA22は、細菌毒素へ融合されるCD22について特異的なscFvを含み、したがって、CD22を発現するがん細胞の表面に結合し、がん細胞を殺傷し得る治療剤である。BL22は、緑膿菌外毒素Aの38kDaの切断形態へ融合された、抗CD22抗体(RFB4)のdsFvを含む(Bang et al.,Clin.Cancer Res.,11:1545-50(2005))。HA22(CAT8015、moxetumomab pasudotox)は、BL22を突然変異させた、より高親和性のバージョンである(Ho et al.,J.Biol.Chem.,280(1):607-17(2005))。CD22に特異的なHA22及びBL22の抗原結合ドメインの好適な配列は、例えば、米国特許第7,541,034号、同第7,355,012号及び同第7,982,011号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)中で開示される。
【0357】
いくつかの実施形態では、CARは、BCMA CARである。BCMAは、B細胞系譜の細胞で発現される腫瘍壊死ファミリー受容体(TNFR)メンバーであり、終末分化させたB細胞または成熟Bリンパ球で最も高く発現する。BCMAは、長期的な液性免疫の維持のための形質細胞の生存の媒介に関与する。BCMAの発現は、最近、多数のがん(多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、様々な白血病、ならびに神経膠芽腫など)に結びつけられた。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、BCMAに特異的に結合する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/または細胞内共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARの細胞外結合ドメインは、BCMA(例えば、ヒトBCMA)に特異的に結合する抗体を含む。BCMAに向けられたCARは、PCT出願公開第WO2016/014789号、同第WO2016/014565号、同第WO2013/154760号、及び同第WO2015/128653号に記載されている。BCMA結合抗体はまた、PCT出願公開第WO2015/166073号及び同第WO2014/068079号にも開示されている。いくつかの実施形態では、BCMA CARの細胞外結合ドメインは、Carpenter et al.,Clin.Cancer Res.19(8):2048-2060(2013)中で記載される、マウスモノクローナル抗体に由来するscFv抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、scFv抗体断片は、マウスモノクローナル抗体のヒト化バージョンである(Sommermeyer et al.,Leukemia 31:2191-2199(2017))。いくつかの実施形態では、BCMA CARの細胞外結合ドメインは、Zhao et al.,J.Hematol.Oneal.11(1):141(2018)に記載されるような、BCMAの2つのエピトープに結合することができる2本の重鎖(VHH)の単一可変断片を含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARの細胞外結合ドメインは、Lam et al.,Nat.Commun.11(1):283(2020)中で記載されるような、完全にヒトの重鎖可変ドメイン(FHVH)を含む。
【0358】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、自己免疫障害または炎症性障害を特徴とする抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、ABDは、自己免疫障害または炎症性障害と関連する抗原に結合する。いくつかの事例では、抗原は、自己免疫障害または炎症性障害と関連する細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、自己免疫障害または炎症性障害は、慢性移植片対宿主病(GVHD)、ループス、関節炎、免疫複合体糸球体腎炎、グッドパスチャー、ブドウ膜炎、肝炎、全身性硬化症または強皮症、I型糖尿病、多発性硬化症、寒冷凝集素症、尋常性天疱瘡、グレーブス病、自己免疫溶血性貧血、血友病A、原発性シェーグレン症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、視神経脊髄炎、エバンス症候群、IgM媒介性ニューロパチー、クリオグロブリン血症、皮膚筋炎、特発性血小板減少症、強直性脊椎炎、水疱性類天疱瘡、後天性血管性浮腫、慢性蕁麻疹、抗リン脂質脱髄性多発ニューロパチー、及び自己免疫血小板減少症または好中球減少症または赤芽球癆から選択され、一方で、例示的な同種異系免疫疾患の非限定的な例としては、造血または実質臓器移植、輸血による同種異系感作(allosensitization)(例えば、Blazar et al.,2015,Am.J.Transplant,15(4):931-41を参照されたい)または異種感作、胎児同種異系感作を伴う妊娠、新生児の同種異系免疫性血小板減少症、新生児溶血性疾患、酵素またはタンパク質補充療法、血液製剤、及び遺伝子療法で処置される遺伝性または後天性欠損障害の補充に伴い起こり得るものなどの外来抗原への感作が挙げられる。同種異系感作とは、いくつかの事例では、レシピエント対象または妊娠している対象の免疫系が非自己抗原とみなす、MHC分子(例えば、ヒト白血球抗原)に対する免疫応答(循環抗体など)の発達を指す。いくつかの実施形態では、自己免疫障害または炎症性障害に特徴的な抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結受容体、酵素連結受容体、Gタンパク質共役型受容体、受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ関連受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体セリン/スレオニンキナーゼ、受容体グアニリルシクラーゼ、またはヒスチジンキナーゼ関連受容体から選択される。
【0359】
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、B細胞、形質細胞、または形質芽細胞上に発現したリガンドに結合する。いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD27、CD38、CD45R、CD138、CD319、BCMA、CD28、TNF、インターフェロン受容体、GM-CSF、ZAP-70、LFA-1、CD3γ、CD5、またはCD2に結合する。米国特許第2003/0077249号、WO2017/058753、WO2017/058850を参照されたい(これらの文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、CARは、抗CD19 CARである。いくつかの実施形態では、CARは、抗BCMA CARである。
【0360】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、老化細胞に特徴的な抗原、例えば、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)を標的とする。いくつかの実施形態では、ABDは、老化細胞と関連する抗原に結合する。いくつかの事例では、抗原は、老化細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、CARを、老化細胞の異常な蓄積を特徴とする障害、例えば、肝線維症及び肺線維症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、ならびに骨関節炎の治療または予防に使用してもよい。
【0361】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、感染性疾患に特徴的な抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、ABDは、感染性疾患と関連する抗原に結合する。いくつかの事例では、抗原は、感染性疾患によって影響を受けた細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、感染性疾患は、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV))、ヒトT-リンパ球向性ウイルス-1(HTLV-1)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、シミアンウイルス40(SV40)、エプスタイン-バーウイルス、CMV、ヒトパピローマウイルスから選択される。いくつかの実施形態では、感染性疾患に特有の抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ会合型受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/スレオニンキナーゼ、受容体型グアニリルシクラーゼ、ヒスチジンキナーゼ会合型受容体、HIV Env、gpl20、またはHIV-1 Env上のCD4誘導性エピトープから選択される。
【0362】
これらの実施形態のうちのいずれかでは、CARの細胞外結合ドメインは、宿主細胞における発現のためにコドン最適化され得るか、または細胞外結合ドメインの機能を増加させるために変異体配列を有し得る。
【0363】
いくつかの実施形態では、CARは、2つの標的抗原に二重特異的である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、異なる標的抗原である。任意のそのような実施形態のいくつかでは、2つの異なる標的抗原は、上記の任意の2つの異なる抗原である。いくつかの実施形態では、細胞外結合ドメインは異なり、(i)CD19及びCD20、(ii)CD20及びL1-CAM、(iii)L1-CAM及びGD2、(iv)EGFR及びL1-CAM、(v)CD19及びCD22、(vi)EGFR及びC-MET、(vii)EGFR及びHER2、(viii)C-MET及びHER2、または(ix)EGFR及びROR1からの2つの異なる抗原と結合する。いくつかの実施形態では、2つの異なる抗原結合ドメインのそれぞれは、scFvである。いくつかの実施形態では、第1のscFvの1つの可変ドメイン(VHまたはVL)のC末端は、ポリペプチドリンカーを介して第2のscFv(それぞれ、VLまたはVH)のN末端に繋留される。いくつかの実施形態では、リンカーは、VHのN末端とVLのC末端とを接続するか、またはVHのC末端とVLのN末端とを接続する。これらのscFvは、天然抗体の重鎖及び軽鎖に存在する定常領域(Fc)を欠いている。少なくとも2つの異なる抗原に特異的なこれらのscFvは、タンデムで配置され、膜貫通ドメインを介して共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。一実施形態では、細胞外スペーサードメインは、抗原特異的結合領域と膜貫通ドメインとの間に連結されてもよい。
【0364】
更なる実施形態では、CARの各抗原特異的ターゲティング領域は、二価(divalent)(または、二価(bivalent))一本鎖可変断片(di-scFv、bi-scFv)を含む。di-scFvを含むCARでは、各抗原に特異的な2つのscFvは、2つのVH領域と2つのVL領域を有する単一のペプチド鎖を生成することによって互いに連結され、タンデムscFvを得る(Xiong,Cheng-Yi;Natarajan,A;Shi,X B;Denardo,G L;Denardo,S J(2006).“Development of tumor targeting anti-MUC-1 multimer:effects of di-scFv unpaired cysteine location on PEGylation and tumor binding”.Protein Engineering Design and Selection 19(8):359-367;Kufer,Peter;Lutterbuse,Ralf;Baeuerle,Patrick A.(2004).“A revival of bispecific antibodies”.Trends in Biotechnology 22(5):238-244)。少なくとも2つの抗原特異的ターゲティング領域を含むCARは、2つの抗原のそれぞれに特異的な2つのscFvを発現するであろう。結果として生じる、少なくとも2つの異なる抗原に特異的な抗原特異的ターゲティング領域は、膜貫通ドメインを介して共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインに接合される。一実施形態では、細胞外スペーサードメインは、抗原特異的結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に連結されてもよい。
【0365】
更なる実施形態では、CARの各抗原特異的ターゲティング領域は、ダイアボディを含む。ダイアボディでは、scFvは、2つの可変領域を一緒に折り畳むには短すぎるリンカーペプチドを使用して作製され、scFvを二量体化させる。更に短いリンカー(1つまたは2つのアミノ酸)は三量体、いわゆる、トリアボディまたはトリボディを形成する。四重体も使用することができる。
【0366】
いくつかの実施形態では、細胞は、2つ以上のCAR、例えば、2つの異なるCARを発現するように操作され、各CARは、異なる標的抗原に向けられた抗原結合ドメインを有する。任意のそのような実施形態のいくつかでは、2つの異なる標的抗原は、上記の任意の2つの異なる抗原である。いくつかの実施形態では、細胞外結合ドメインは異なり、(i)CD19及びCD20、(ii)CD20及びL1-CAM、(iii)L1-CAM及びGD2、(iv)EGFR及びL1-CAM、(v)CD19及びCD22、(vi)EGFR及びC-MET、(vii)EGFR及びHER2、(viii)C-MET及びHER2、または(ix)EGFR及びROR1からの2つの異なる抗原と結合する。
【0367】
いくつかの実施形態では、提供される改変を含む、2つの異なる操作細胞が調製され、それぞれは異なるCARで操作される。いくつかの実施形態では、2つの異なるCARのそれぞれは、異なる標的抗原に向けられた抗原結合ドメインを有する。任意のそのような実施形態のいくつかでは、2つの異なる標的抗原は、上記の任意の2つの異なる抗原である。いくつかの実施形態では、細胞外結合ドメインは異なり、(i)CD19及びCD20、(ii)CD20及びL1-CAM、(iii)L1-CAM及びGD2、(iv)EGFR及びL1-CAM、(v)CD19及びCD22、(vi)EGFR及びC-MET、(vii)EGFR及びHER2、(viii)C-MET及びHER2、または(ix)EGFR及びROR1からの2つの異なる抗原と結合する。いくつかの実施形態では、第1の標的抗原に対して向けられた第1のCARを発現する操作された細胞(例えば、低免疫原性)の集団と、第2の標的抗原に対して向けられた第2のCARを発現する操作された細胞(例えば、低免疫原性)の集団とは、別々に対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の細胞集団は、任意の順序で連続して投与される。例えば、第2のCARを発現する細胞集団は、第1のCARを発現する細胞集団の投与後に投与される。
【0368】
b.スペーサー
いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上のスペーサーを更に含み、例えば、スペーサーは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間の第1のスペーサーである。いくつかの実施形態では、第1のスペーサーは、免疫グロブリン定常領域、またはその変異体もしくは改変バージョンの少なくとも一部分を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインとの間の第2のスペーサーである。いくつかの実施形態では、第2のスペーサーはオリゴペプチドであり、例えば、オリゴペプチドは、グリシン及びセリン残基(これらに限定されないが、グリシン-セリンダブレットなど)を含む。いくつかの実施形態では、CARは、2つ以上のスペーサー、例えば、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間のスペーサー及び膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインとの間のスペーサーを含む。
【0369】
c.膜貫通ドメイン
いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、T細胞受容体のα、βもしくはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD28、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはその機能的変異体の少なくとも膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD37、CD80、CD86、CD40、CD40L/CD154、VEGFR2、FAS、及びFGFR2B、またはその機能的変異体の少なくとも膜貫通領域(複数可)を含む。
【0370】
d.シグナル伝達ドメイン(複数可)
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、B7-1/CD80;B7-2/CD86;B7-H1/PD-L1;B7-H2;B7-H3;B7-H4;B7-H6;B7-H7;BTLA/CD272;CD28;CTLA-4;Gi24/VISTA/B7-H5;ICOS/CD278;PD-1;PD-L2/B7-DC;PDCD6);4-1BB/TNFSF9/CD137;4-1BBリガンド/TNFSF9;BAFF/BLyS/TNFSF13B;BAFF R/TNFRSF13C;CD27/TNFRSF7;CD27リガンド/TNFSF7;CD30/TNFRSF8;CD30リガンド/TNFSF8;CD40/TNFRSF5;CD40/TNFSF5;CD40リガンド/TNFSF5;DR3/TNFRSF25;GITR/TNFRSF18;GITRリガンド/TNFSF18;HVEM/TNFRSF14;LIGHT/TNFSF14;リンホトキシン-アルファ/TNF-ベータ;OX40/TNFRSF4;OX40リガンド/TNFSF4;RELT/TNFRSF19L;TACI/TNFRSF13B;TL1A/TNFSF15;TNF-アルファ;TNF RII/TNFRSF1B);2B4/CD244/SLAMF4;BLAME/SLAMF8;CD2;CD2F-10/SLAMF9;CD48/SLAMF2;CD58/LFA-3;CD84/SLAMF5;CD229/SLAMF3;CRACC/SLAMF7;NTB-A/SLAMF6;SLAM/CD150);CD2;CD7;CD53;CD82/Kai-1;CD90/Thy1;CD96;CD160;CD200;CD300a/LMIR1;HLAクラスI;HLA-DR;Ikaros;インテグリンアルファ4/CD49d;インテグリンアルファ4ベータ1;インテグリンアルファ4ベータ7/LPAM-1;LAG-3;TCL1A;TCL1B;CRTAM;DAP12;デクチン-1/CLEC7A;DPPIV/CD26;EphB6;TIM-1/KIM-1/HAVCR;TIM-4;TSLP;TSLP R;リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1);NKG2C、CD3ζドメイン、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、CD27、CD28、4-1BB、CD134/OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、もしくはこれらの機能的断片のうちの1つ以上から選択される1つ、または少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む。
【0371】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはこれらの機能的変異体を含む。
【0372】
いくつかの実施形態では、CARは、共刺激ドメインであるシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、第2の共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、少なくとも3つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、CD27、CD28、4-1BB、CD134/OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドのうちの1つ以上から選択される共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARが2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、2つの共刺激ドメインは、異なる。いくつかの実施形態では、CARが2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、2つの共刺激ドメインは、同じである。
【0373】
他の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的変異体を含む。更に他の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメイン、もしくは免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)、またはそれらの機能的変異体、(ii)CD28ドメインまたはその機能的変異体、及び(iii)4-1BBドメイン、もしくはCD134ドメイン、またはそれらの機能的変異体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメイン、もしくは免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)、またはそれらの機能的変異体、(ii)CD28ドメインまたはその機能的変異体、(iii)4-1BBドメイン、もしくはCD134ドメイン、またはそれらの機能的変異体、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0374】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはそれらの機能的変異体を含む。他の実施形態では、少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的変異体を含む。更に他の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメイン、もしくは免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)、またはそれらの機能的変異体、(ii)CD28ドメインまたはその機能的変異体、及び(iii)4-1BBドメイン、もしくはCD134ドメイン、またはこれらの機能的変異体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体、(ii)CD28ドメインまたはその機能的変異体、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的変異体、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0375】
いくつかの実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはこれらの機能的変異体を含む。他の実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的変異体を含む。更に他の実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメイン、もしくは免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)、またはそれらの機能的変異体、(ii)CD28ドメインまたはその機能的変異体、及び(iii)4-1BBドメイン、もしくはCD134ドメイン、またはこれらの機能的変異体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体、(ii)CD28ドメインまたはその機能的変異体、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的変異体、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0376】
いくつかの実施形態では、CARは、CD3ζドメインまたは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体を含む。いくつかの実施形態では、CARは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的変異体を含む。
【0377】
いくつかの実施形態では、CARは、(i)CD3ζドメイン、または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体、(ii)CD28ドメインまたはその機能的変異体、及び(iii)4-1BBドメイン、またはCD134ドメイン、またはその機能的変異体を含む。
【0378】
いくつかの実施形態では、CARは、(i)CD3ζドメイン、または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体、(ii)CD28ドメイン、または4-1BBドメイン、またはその機能的変異体、及び/または(iii)4-1BBドメイン、またはCD134ドメイン、またはその機能的変異体を含む。
【0379】
いくつかの実施形態では、CARは、(i)CD3ζドメイン、または免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的変異体、(ii)CD28ドメインまたはその機能的変異体、(iii)4-1BBドメイン、またはCD134ドメイン、またはその機能的変異体、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0380】
e.例示的なCAR
いくつかの実施形態では、CARは、抗原(例えば、腫瘍抗原)に結合する細胞外抗原結合ドメイン(例えば、抗体または抗体断片、例えば、scFv)、スペーサー(例えば、本明細書に記載のいずれかなどのヒンジドメインを含む)、膜貫通ドメイン(例えば、本明細書に記載のいずれか)、及び細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、任意の細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、本明細書に記載の一次シグナル伝達ドメインまたは共刺激シグナル伝達ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞質シグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは更に、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン)を含む。このような構成要素はいずれも、上で説明したとおりのいずれかのものであり得る。
【0381】
CARの例示的な要素の例は、表3に記載されている。提供される態様では、CARにおける各要素の配列には、表3に列挙される任意の組み合わせが含まれ得る。
【0382】
【0383】
3.ポリヌクレオチドの発現(例えば、過剰発現)を増加させる方法
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの発現の増加は、様々な技術のいずれかによって実行され得る。例えば、遺伝子及び因子(タンパク質)の発現を調節するための方法には、ゲノム編集技術、及びRNAまたはタンパク質発現技術などが含まれる。これらの技術のすべてについて、周知の組換え技法を使用し、本明細書に概説されるような組換え核酸が生成される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの過剰発現または発現の増加のために1つ以上の改変により操作される細胞は、本明細書に記載される任意のソース細胞である。いくつかの実施形態では、ソース細胞は、第II.C節に記載される任意の細胞である。
【0384】
いくつかの実施形態では、遺伝子の発現は、内因性遺伝子活性を増加させる(例えば、外因性遺伝子の転写を増加させる)ことによって増加する。場合によっては、内因性遺伝子の活性は、内因性遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターまたはエンハンサーの活性を増加させることによって増加する。いくつかの実施形態では、プロモーターまたはエンハンサーの活性を増加させることは、内因性プロモーターまたはエンハンサーの活性を増加させる1つ以上の改変を、内因性プロモーターまたはエンハンサーに行うことを含む。場合によっては、内因性遺伝子の遺伝子活性を増加させることは、遺伝子の内因性プロモーターを改変することを含む。いくつかの実施形態では、内因性遺伝子の遺伝子活性を増加させることは、異種プロモーターを導入することを含む。いくつかの実施形態では、異種プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される。
【0385】
a.DNA結合融合タンパク質
いくつかの実施形態では、標的遺伝子(例えば、CD47、または別の免疫寛容原性因子)の発現は、(1)内因性CD47または他の遺伝子に特異的な部位特異的結合ドメイン、及び(2)転写活性化因子を含有する、融合タンパク質またはタンパク質複合体の発現によって増加される。
【0386】
いくつかの実施形態では、制御因子は、ガイドRNA(gRNA)などの部位特異的DNA結合核酸分子から構成される。いくつかの実施形態では、方法は、部位特異的DNA結合標的化タンパク質、例えば、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはZFPを含有する融合タンパク質(別名ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN))によって達成される。
【0387】
いくつかの実施形態では、制御因子は、標的領域にて遺伝子に特異的に結合またはハイブリダイズする、例えば、DNA結合タンパク質またはDNA結合核酸を使用した、部位特異的結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、提供されるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、改変ヌクレアーゼなどの部位特異的ヌクレアーゼに連結されるか、またはそれと複合体化される。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、改変ヌクレアーゼ、例えば、メガヌクレアーゼまたはRNA誘導型ヌクレアーゼ、例えば、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖回文配列核酸(CRISPR)-Casシステム、例えば、CRISPR-Cas9システムのDNA標的化タンパク質を含む融合体を使用して成し遂げられる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性を欠くように改変される。いくつかの実施形態では、改変ヌクレアーゼは、触媒的に死んだdCas9である。
【0388】
いくつかの実施形態では、部位特異的結合ドメインは、ヌクレアーゼに由来し得る。例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII、及びI-TevIIIなどのホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼの認識配列。米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号、Belfort et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388、Dujon et al.,(1989)Gene 82:115-118、Perler et al,(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-1127、Jasin(1996)Trends Genet.12:224-228、Gimble et al.,(1996)J.Mol.Biol.263:163-180、Argast et al,(1998)J.Mol.Biol.280:345-353及びthe New England Biolabs catalogueも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位に結合するように操作され得る。例えば、Chevalier et al,(2002)Molec.Cell 10:895-905、Epinat et al,(2003)Nucleic Acids Res.31:2952-2962、Ashworth et al,(2006)Nature 441:656-659、Paques et al,(2007)Current Gene Therapy 7:49-66、米国特許公開第2007/0117128号を参照されたい。
【0389】
ジンクフィンガー、TALE及びCRISPRシステムの結合ドメインは、例えば、天然型ジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域を操作すること(1つ以上のアミノ酸を変化させること)によって、既定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」され得る。操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。設計のための合理的基準は、置換規則の適用、ならびに既存のZFP及び/またはTALE設計及び結合データの情報を格納するデータベース内の情報を処理するためのコンピュータ化アルゴリズムを含む。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号及び同第6,534,261号を参照されたい。また、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536及びWO03/016496及び米国特許公開第20110301073号を参照されたい。
【0390】
いくつかの実施形態では、部位特異的結合ドメインは、配列特異的様態でDNAに結合する1つ以上のジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはそのドメインを含む。ZFPまたはそのドメインは、亜鉛イオンの配位により構造が安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である、1つ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的様態でDNAに結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。
【0391】
ZFPの中には、個々のフィンガーの集合によって生成される、典型的には9~18ヌクレオチド長の特異的DNA配列を標的とする人工ZFPドメインがある。ZFPには、単一のフィンガードメインの長さがおよそ30アミノ酸であり、単一のベータターンの2つのシステインと共に亜鉛へと配位結合した2つの不変のヒスチジン残基を含有するアルファヘリックスを含有し、2、3、4、5、または6つのフィンガーを有するものが含まれる。一般に、ZFPの配列特異性は、ジンクフィンガーの認識ヘリックス上の4つのヘリックス位置(-1、2、3、及び6)にてアミノ酸置換を行うことによって変化させてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、ZFPまたはZFP含有分子は、非天然型であり、例えば、選択する標的部位に結合するように操作される。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135-141、Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340、Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656-660、Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637;Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416、米国特許第6,453,242号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,030,215号、同第6,794,136号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,070,934号、同第7,361,635号、同第7,253,273号、及び米国特許公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2005/0267061号を参照されたく、すべては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0392】
多くの遺伝子特異的な操作されたジンクフィンガーは、市販されている。例えば、Sangamo Biosciences(Richmond,CA,USA)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)と提携して、研究者がジンクフィンガーの構築及び検証を完全に省略することを可能にするジンクフィンガー構築のためのプラットフォーム(CompoZr)を開発し、何千ものタンパク質に対して特異的に標的化されたジンクフィンガーを提供する(Gaj et al.,Trends in Biotechnology,2013,31(7),397-405)。いくつかの実施形態では、市販のジンクフィンガーが使用されるか、またはカスタム設計される。
【0393】
いくつかの実施形態では、部位特異的結合ドメインは、天然に存在するまたは操作された(天然に存在しない)転写活性化因子様タンパク質(TAL)DNA結合ドメイン、例えば、転写活性化因子様エフェクター(TALE)タンパク質におけるものを含む。例えば、米国特許公開第20110301073号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0394】
いくつかの実施形態では、部位特異的結合ドメインは、CRISPR/Casシステムに由来する。一般に、「CRISPRシステム」は、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性な部分的tracrRNA)、tracrメイト配列(内因性CRISPRシステムの関連において「ダイレクトリピート」及びtracrRNAによりプロセシングされた部分的ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内因性CRISPRシステムの関連において「スペーサー」、または「標的化配列」とも称される)、及び/またはCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写物を含めた、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するかまたはその活性を導く転写物及び他のエレメントを総称的に指す。
【0395】
一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズして、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的結合を導くのに十分な標的ポリヌクレオチド配列との相補性を有するポリヌクレオチド配列を含む、ターゲティングドメイン(例えば、ターゲティング配列)を含む。いくつかの実施形態では、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、好適なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントされたときに、約50%以上、約60%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約97.5%以上、約99%以上、またはそれを超える。いくつかの例では、gRNAの標的化ドメインは、標的核酸上の標的配列に相補的、例えば、少なくとも80、85、90、95、98、または99%相補的、例えば、完全に相補的である。
【0396】
いくつかの実施形態では、gRNAは、本明細書に記載されるような任意のものであり得る。特定の実施形態では、gRNAは、CD47の標的部位に相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号200784~231885(WO2016183041の表29、付録22)のうちのいずれか1つに記載されるもの;HLA-Eの標的部位に相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号189859~193183(WO2016183041の表19、付録12)のうちのいずれか1つに記載されるもの;HLA-Fの標的部位に相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号688808~699754(WO2016183041の表45、付録38)のうちのいずれか1つに記載されるもの;HLA-Gの標的部位に相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号188372~189858(WO2016183041の表18、付録11)のうちのいずれか1つに記載されるもの;またはPD-L1の標的部位に相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号193184~200783(WO2016183041の表21、付録14)のうちのいずれか1つに記載されるものを有する。
【0397】
いくつかの実施形態では、標的部位は、標的遺伝子の転写開始部位の上流にある。いくつかの実施形態では、標的部位は、遺伝子の転写開始部位に隣接している。いくつかの実施形態では、標的部位は、遺伝子の転写開始部位の下流のRNAポリメラーゼ休止部位に隣接している。
【0398】
いくつかの実施形態では、ターゲティングドメインは、転写開始、1つ以上の転写エンハンサーもしくは活性化因子、及び/またはRNAポリメラーゼの結合を促進するための標的遺伝子のプロモーター領域を標的とするように構成される。1つ以上のgRNAを使用し、遺伝子のプロモーター領域を標的とすることができる。いくつかの実施形態では、遺伝子の1つ以上の領域が標的とされ得る。特定の態様では、標的部位は、遺伝子の転写開始部位(TSS)のいずれかの側の600塩基対以内にある。
【0399】
エクソン配列ならびにプロモーター及び活性化因子を含む制御領域の配列を含めた、遺伝子を標的とする配列であるかまたはその配列を含む、gRNA配列(すなわち、gRNAターゲティング配列)を設計または同定することは、当業者の技能水準の範囲内である。CRISPRゲノム編集のためのゲノムワイドのgRNAデータベースは公共に利用可能であり、ヒトゲノムまたはマウスゲノムにおける遺伝子の構成的エクソンにおける例となる単一のガイドRNA(sgRNA)標的配列を含有する(例えば、genescript.com/gRNA-database.htmlを参照されたい。Sanjana et al.(2014)Nat.Methods,11:783-4;www.e-crisp.org/E-CRISP/;crispr.mit.edu/も参照されたい)。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、非標的遺伝子へのオフターゲット結合が最小であるターゲティング配列であるか、またはそれを含む。
【0400】
いくつかの実施形態では、制御因子は、機能的ドメイン、例えば、転写活性化因子を更に含む。
【0401】
いくつかの実施形態では、転写活性化因子は、標的遺伝子の1つ以上の転写制御要素などの1つ以上の制御要素であるか、またはそれを含有し、それによって、上記で提供されるような部位特異的ドメインが認識されて、かかる遺伝子の発現を駆動する。いくつかの実施形態では、転写活性化因子は、標的遺伝子の発現を駆動する。場合によっては、転写活性化因子は、異種トランス活性化ドメインの全部または一部分であり得るか、またはそれを含有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、転写活性化因子は、単純ヘルペス由来トランス活性化ドメイン、Dnmt3aメチルトランスフェラーゼドメイン、p65、VP16、及びVP64から選択される。
【0402】
いくつかの実施形態では、制御因子は、ジンクフィンガー転写因子(ZF-TF)である。いくつかの実施形態では、制御因子は、VP64-p65-Rta(VPR)である。
【0403】
特定の実施形態では、制御因子は、転写制御ドメインを更に含む。一般的なドメインには、例えば、転写因子ドメイン(活性化因子、抑制因子、共活性化因子、共抑制因子)、サイレンサー、発がん遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバーなど);DNA修復酵素ならびにそれらの関連因子及び修飾因子;DNA再構成酵素ならびにそれらの関連因子及び修飾因子;クロマチン関連タンパク質及びそれらの修飾因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼ、及びデアセチラーゼ);ならびにDNA修飾酵素(例えば、DNMTファミリーのメンバーなどのメチルトランスフェラーゼ(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DNMT3Lなど、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)ならびにそれらの関連因子及び修飾因子が含まれる。例えば、米国特許公開第2013/0253040号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0404】
活性化を達成するための好適なドメインには、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmann et al,J.Virol.71,5952-5962(1 97)を参照されたい)核ホルモン受容体(例えば、Torchia et al.,Curr.Opin.Cell.Biol.10:373-383(1998)を参照されたい)、核因子カッパBのp65サブユニット(Bitko&Bank,J.Virol.72:5610-5618(1998)及びDoyle&Hunt,Neuroreport 8:2937-2942(1997));Liu et al.,Cancer Gene Ther.5:3-28(1998))、または人工キメラ機能的ドメイン、例えば、VP64(Beerli et al.,(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14623-33)、及びデグロン(Molinari et al.,(1999)EMBO J.18,6439-6447)が含まれる。追加の例示的な活性化ドメインには、Oct1、Oct-2A、Spl、AP-2、及びCTF1(Seipel et al,EMBOJ.11,4961-4968(1992)、ならびにp300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2A、及びERF-2が含まれる。例えば、Robyr et al,(2000)Mol.Endocrinol.14:329-347;Collingwood et al,(1999)J.Mol.Endocrinol 23:255-275;Leo et al,(2000)Gene 245:1-11;Manteuffel-Cymborowska(1999)Acta Biochim.Pol.46:77-89;McKenna et al,(1999)J.Steroid Biochem.Mol.Biol.69:3-12;Malik et al,(2000)Trends Biochem.Sci.25:277-283;及びLemon et al,(1999)Curr.Opin.Genet.Dev.9:499-504を参照されたい。追加の例となる活性化ドメインには、OsGAI、HALF-1、Cl、AP1、ARF-5、-6、-1、及び-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GP、及びTRAB1が含まれるが、これらに限定されず、例えば、Ogawa et al,(2000)Gene 245:21-29;Okanami et al,(1996)Genes Cells 1:87-99;Goff et al,(1991)Genes Dev.5:298-309;Cho et al,(1999)Plant Mol Biol 40:419-429;Ulmason et al,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:5844-5849;Sprenger-Haussels et al,(2000)Plant J.22:1-8;Gong et al,(1999)Plant Mol.Biol.41:33-44;及びHobo et al.,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:15,348-15,353を参照されたい。
【0405】
遺伝子抑制因子を作製するために使用され得る、例となる抑制ドメインには、KRAB A/B、KOX、TGF-ベータ誘導性初期遺伝子(TIEG)、v-erbA、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DNMT3Lなど)、Rb、及びMeCP2が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Bird et al,(1999)Cell 99:451-454;Tyler et al,(1999)Cell 99:443-446;Knoepfler et al,(1999)Cell 99:447-450;及びRobertson et al,(2000)Nature Genet.25:338-342を参照されたい。追加の例となる抑制ドメインには、ROM2及びAtHD2Aが含まれるが、これらに限定されない。例えば、Chem et al,(1996)Plant Cell 8:305-321;及びWu et al,(2000)Plant J.22:19-27を参照されたい。
【0406】
いくつかの事例では、ドメインは、染色体の後成的制御に関与する。いくつかの実施形態では、ドメインは、核局在性のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)(例えば、A型)、例えば、MYSTファミリーメンバーMOZ、Ybf2/Sas3、MOF、及びTip60、GNATファミリーメンバーGcn5またはpCAF、p300ファミリーメンバーCBP、p300、またはRttl09(Bemdsen and Denu(2008)Curr Opin Struct Biol 18(6):682-689)である。他の事例では、ドメインは、ヒストンデアセチラーゼ(HD AC)、例えば、クラスI(HDAC-l、2、3、及び8)、クラスII分子(HDAC IIA(HDAC-4、5、7及び9)、HD AC IIB(HDAC 6及び10))、クラスIV(HDAC-11)、クラスIII(サーチュイン(SIRT);別名SIRT1-7)である(Mottamal et al.,(2015)Molecules 20(3):3898-394lを参照されたい)。いくつかの実施形態で使用される別のドメインは、ヒストンホスホリラーゼまたはキナーゼであり、例としては、MSK1、MSK2、ATR、ATM、DNA-PK、Bubl、VprBP、IKK-a、PKCpi、Dik/Zip、JAK2、PKC5、WSTF、及びCK2が挙げられる。いくつかの実施形態では、メチル化ドメインが使用され、Ezh2、PRMT1/6、PRMT5/7、PRMT 2/6、CARM1、set7/9、MLL、ALL-1、Suv39h、G9a、SETDB1、Ezh2、Set2、Dotl、PRMT 1/6、PRMT 5/7、PR-Set7及びSuv4-20hなどの群から選択され得る。スモ化及びビオチン化に関与するドメイン(Lys9、13、4、18及び12)もいくつかの実施形態で使用され得る(概説はKousarides(2007)Cell 128:693-705を参照されたい)。
【0407】
融合分子は、当業者に周知であるクローニング方法及び生化学的コンジュゲーション方法によって構築される。融合分子は、DNA結合ドメイン及び機能的ドメイン(例えば、転写活性化または抑制ドメイン)を含む。融合分子はまた、任意選択で、核局在化シグナル(例えば、SV40中型T抗原からのシグナルなど)及びエピトープタグ(例えば、FLAG及びヘマグルチニンなど)を含む。融合タンパク質(及びそれらをコードする核酸)は、融合体の構成要素の間で翻訳リーディングフレームが保存されるように設計される。
【0408】
一方で機能的ドメイン(またはその機能的断片)のポリペプチド構成要素と、他方で非タンパク質DNA結合ドメイン(例えば、抗生物質、インターカレーター、副溝結合剤、核酸)との間の融合体は、当業者に既知の生化学的コンジュゲーション方法によって構築される。例えば、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)Catalogueを参照されたい。副溝結合剤とポリペプチドとの間の融合体を作製するための方法及び組成物が記載されている。Mapp et al,(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:3930-3935。同様に、ポリペプチド構成要素である機能ドメインと関連付けてsgRNA核酸である構成要素を含むCRISPR/Cas TF及びヌクレアーゼもまた、当業者に既知であると共に、本明細書に詳述される。
【0409】
b.外因性ポリペプチド
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの発現の増加(すなわち、過剰発現)は、過剰発現されるポリヌクレオチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを初代細胞に導入することによって媒介される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、組換え核酸である。周知の組換え技法を使用し、本明細書に概説されるような組換え核酸が生成される。
【0410】
特定の実施形態では、外因性ポリヌクレオチド、例えば、免疫寛容原性因子またはキメラ抗原受容体をコードする組換え核酸は、発現コンストラクトにおける1つ以上の制御ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。制御ヌクレオチド配列は通常、治療される宿主細胞及びレシピエント対象にとって適切である。多数のタイプの適切な発現ベクター及び好適な制御配列は、多様な宿主細胞についての当技術分野で知られている。典型的には、1つ以上の制御ヌクレオチド配列には、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、及びエンハンサーまたは活性化因子配列が含まれ得るが、これらに限定されない。当技術分野で既知であるような構成的または誘導性プロモーターもまた企図される。プロモーターは、天然型プロモーター、または2つ以上のプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれでもよい。発現コンストラクトは、細胞においてプラスミドなどのエピソーム上に存在してもよいし、または発現コンストラクトは、染色体に挿入されてもよい。具体的な実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするための選択可能マーカー遺伝子を含む。特定の実施形態は、少なくとも1つの制御配列に作動可能に連結された変異体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、発現ベクターを含む。本明細書で使用するための制御配列には、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメントが含まれる。特定の実施形態では、発現ベクターは、形質転換される宿主細胞、発現させることが望まれる特定の変異体ポリペプチド、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、及び/またはベクターによってコードされる任意の他のタンパク質、例えば、抗生物質マーカーの発現の選定に対して設計される。
【0411】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞における外因性ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている。好適な哺乳動物プロモーターの例としては、例えば、以下の遺伝子からのプロモーター、すなわち、伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター、ハムスターのユビキチン/S27aプロモーター(WO97/15664)、サル空胞ウイルス40(SV40)初期プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、マウスメタロチオネイン-Iプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の長鎖末端反復配列領域、マウス乳癌ウイルスプロモーター(MMTV)、モロニーマウス白血病ウイルス長鎖末端反復配列領域、及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターが挙げられる。他の異種哺乳動物プロモーターの例は、アクチン、免疫グロブリンまたはヒートショックプロモーター(複数可)である。追加の実施形態では、哺乳動物宿主細胞において使用するためのプロモーターは、ウイルス、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日に公開されたUK2,211,504)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びサルウイルス40(SV40)のゲノムから得られ得る。更なる実施形態では、異種哺乳動物プロモーターが使用される。例としては、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、及び熱ショックプロモーターが挙げられる。SV40の初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる(Fiers et al,Nature 273:113-120(1978))。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII制限酵素断片として好都合に得られる(Greenaway et al.,Gene 18:355-360(1982))。前述の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0412】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、バイシストロン性またはマルチシストロン性発現ベクターである。バイシストロン性またはマルチシストロン性発現ベクターには、(1)オープンリーディングフレームの各々に融合された複数のプロモーター、(2)遺伝子間のスプライシングシグナルの挿入、(3)発現が単一プロモーターによって駆動される遺伝子の融合、及び(4)遺伝子間のタンパク質分解切断部位(自己切断ペプチド)の挿入または遺伝子間の内部リボソーム進入部位(IRES)の挿入が含まれ得る。
【0413】
いくつかの実施形態では、本明細書の発現ベクターまたはコンストラクトは、マルチシストロン性コンストラクトである。「マルチシストロン性コンストラクト」及び「マルチシストロン性ベクター」という用語は、本明細書では互換的に使用され、1つのmRNA分子に転写される組換えDNAコンストラクトであって、1つのmRNA分子が2つ以上の遺伝子(例えば、2つ以上の導入遺伝子)をコードする、組換えDNAコンストラクトを指す。マルチシストロン性コンストラクトは、2つの遺伝子をコードする場合はバイシストロン性コンストラクト、3つの遺伝子をコードする場合はトリシストロン性コンストラクト、4つの遺伝子をコードする場合はクアドロシストン性コンストラクトなどと称され、以下同様である。
【0414】
いくつかの実施形態では、ベクターまたはコンストラクト(例えば、導入遺伝子)に含まれる2つ以上の外因性ポリヌクレオチドはそれぞれ、マルチシストロン性分離エレメントによって隔てられる。いくつかの実施形態では、マルチシストロン性分離エレメントは、IRES、または切断可能なペプチドもしくはリボソームスキップエレメントをコードする配列である。いくつかの実施形態では、マルチシストロン性分離エレメントは、脳心筋炎(EMCV)ウイルスIRESなどのIRESである。いくつかの実施形態では、マルチシストロン性分離エレメントは、2Aペプチドなどの切断可能なペプチドである。例示的な2Aペプチドとしては、P2Aペプチド、T2Aペプチド、E2Aペプチド、及びF2Aペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、切断可能なペプチドは、T2Aである。いくつかの実施形態では、2つ以上の外因性ポリヌクレオチド(例えば、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチド)は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドは、それぞれプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、同じプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、EF1プロモーターである。
【0415】
場合によっては、外因性ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載の免疫寛容原性因子または補体抑制因子をコードする外因性ポリヌクレオチド)は、マルチシストロン性ベクターによってコードされる外因性ポリペプチドのN末端またはC末端で、切断可能なペプチドまたはリボソームスキップエレメント、例えば、T2Aをコードする。いくつかの実施形態では、切断可能なペプチドまたはリボソームスキップエレメントを含めることにより、単一の翻訳開始部位からの2つ以上のポリペプチドの発現が可能になる。いくつかの実施形態では、切断可能ペプチドは、T2Aである。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号15で示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号16で示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号21で示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号22で示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0416】
いくつかの実施形態では、ベクターまたはコンストラクトは、外因性ポリヌクレオチドの1つ以上の転写ユニットの発現を駆動する単一のプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、そのようなベクターまたはコンストラクトは、マルチシストロン性(バイシストロン性またはトリシストロン性、例えば、米国特許第6,060,273号を参照)であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、転写ユニットは、IRES(内部リボソーム進入部位)を含むバイシストロン性ユニットとして操作され得、これにより、単一のプロモーターから転写されたRNAから、遺伝子産物(例えば、CD47などの1つ以上の免疫寛容原性因子)の共発現が可能になる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するベクターまたはコンストラクトはバイシストロン性であり、ベクターまたはコンストラクトが2つの別個のポリペプチドを発現することを可能にする。場合によっては、ベクターまたはコンストラクトによってコードされる2つの別個のポリペプチドは、免疫寛容原性因子(例えば、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3から選択される2つの因子(これらの任意の組み合わせを含む))である。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200、及びMfge8(これらの任意の組み合わせを含む)のうちの2つ以上である。いくつかの実施形態では、ベクターまたはコンストラクトによってコードされる2つの別個のポリペプチドは、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するベクターまたはコンストラクトはトリシストロン性であり、ベクターまたはコンストラクトが3つの別個のポリペプチドを発現することを可能にする。場合によっては、トリシストロン性ベクターまたはコンストラクトの3つの核酸配列は、CD47などの免疫寛容原性因子である。場合によっては、トリシストロン性ベクターまたはコンストラクトの3つの核酸配列は、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3(これらの任意の組み合わせを含む)から選択される、3つの免疫寛容原性因子である。いくつかの実施形態では、3つの免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200、及びMfge8(これらの任意の組み合わせを含む)から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するベクターまたはコンストラクトはクアドシストロン性であり、ベクターまたはコンストラクトが4つの別個のポリペプチドを発現することを可能にする。場合によっては、クアドシストロン性ベクターまたはコンストラクトの4つの別個のポリペプチドは、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3(これらの任意の組み合わせを含む)から選択される、4つの免疫寛容原性因子である。いくつかの実施形態では、4つの免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200、及びMfge8(これらの任意の組み合わせを含む)から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のベクターまたはコンストラクトを含み、各ベクターまたはコンストラクトは、上述のモノシストロン性またはマルチシストロン性コンストラクトであり、モノシストロン性またはマルチシストロン性コンストラクトは、任意の組み合わせまたは順序で1つ以上の免疫寛容原性因子をコードする。
【0417】
いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のベクターまたはコンストラクトを含み、各ベクターまたはコンストラクトは、上述のモノシストロン性またはマルチシストロン性コンストラクトであり、モノシストロン性またはマルチシストロン性コンストラクトは、任意の組み合わせまたは順序で1つ以上の免疫寛容原性因子をコードする。
【0418】
いくつかの実施形態では、単一のプロモーターは、自己切断ペプチド(例えば、2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えば、フューリン)をコードする配列によって互いに隔てられた2つ、3つまたは4つの遺伝子を単一のオープンリーディングフレーム(ORF)に含む(例えば、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)をコードする)RNAの発現を誘導する。したがって、ORFは、単一のポリペプチドをコードし、翻訳中(2Aの場合)または翻訳後のいずれかに、個別のタンパク質にプロセシングされる。場合によっては、T2Aなどのペプチドは、リボソームに2AエレメントのC末端におけるペプチド結合の合成をスキップさせて(リボソームスキッピング)、2A配列の末端と下流にある次のペプチドとの間の分離をもたらすことができる(例えば、de Felipe.Genetic Vaccines and Ther.2:13(2004)及びdeFelipe et al.Traffic 5:616-626(2004)を参照のこと)。数多くの2Aエレメントが当技術分野で公知である。本明細書に開示されている方法及び核酸で使用できる2A配列の例としては、米国特許出願公開第20070116690号に記載されている、口蹄疫ウイルス由来の2A配列(F2A、例えば、配列番号20)、ウマ鼻炎Aウイルス由来の2A配列(E2A、例えば、配列番号19)、thosea asignaウイルス由来の2A配列(T2A、例えば、配列番号15、16、21または22)、及びブタテシオウイルス-1由来の2A配列(P2A、例えば、配列番号17または18)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0419】
ベクターまたはコンストラクト(例えば導入遺伝子)が、タンパク質をコードする2つ以上の核酸配列、例えば、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチド、及び第2の導入遺伝子をコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含む場合には、ベクターまたはコンストラクト(例えば導入遺伝子)は、ペプチドをコードする核酸配列を、第1の外因性ポリヌクレオチド配列と第2の外因性ポリヌクレオチド配列の間に更に含んでもよい。場合によっては、第1の外因性ポリヌクレオチドと第2の外因性ポリヌクレオチドとの間に配置される核酸配列は、翻訳中または翻訳後に第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドの翻訳産物を隔てるペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ペプチドは、自己切断ペプチド、またはT2Aペプチドなどのリボソームスキッピングを引き起こすペプチド(リボソームスキップエレメント)を含む。いくつかの実施形態では、切断可能なペプチドまたはリボソームスキップエレメントを含めることにより、1つの翻訳開始部位から、2つ以上のポリペプチドが発現可能になる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、T2Aペプチドである自己切断ペプチドである。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号15で示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号16で示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号21で示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号22で示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0420】
本明細書に記載のポリヌクレオチドを初代細胞に導入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成され得る。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスポザーゼ媒介性送達、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入を介して細胞に導入されるか(例えば、レンチウイルス形質導入)、またはウイルスベクター上で別様に送達される(例えば、フソゲン媒介性送達)。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドをパッケージングするベクターを使用し、パッケージングされたポリヌクレオチドを細胞または細胞集団に送達することができる。これらのベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、ウイルスベクター及び粒子を含む、任意の種類のものであってもよい。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子を使用し、外因性ポリヌクレオチドを細胞に送達することができる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターを使用し、外因性ポリヌクレオチドを細胞に送達することができる。ウイルスベクター技術は周知であり、Sambrookら(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)に記載されている。ベクターとして有用なウイルスの例としては、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、腫瘍溶解性ウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞への外因性ポリヌクレオチドの導入は、特異的(標的化)または非特異的(例えば、非標的化)であり得る。いくつかの実施形態では、細胞への外因性ポリヌクレオチドの導入は、細胞へのゲノムへの組込みまたは挿入をもたらし得る。他の実施形態では、導入された外因性ポリヌクレオチドは、細胞への非組込みまたはエピソームであり得る。当業者であれば、本明細書に記載される例示的な方法のいずれかを含む、細胞への核酸導入遺伝子を導入する方法に精通しており、適切な方法を選択することができる。
【0421】
1)非標的送達
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、様々な非標的方法のいずれかによって初代細胞(例えば、ソース細胞)に導入される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、宿主細胞のランダムなゲノム遺伝子座に挿入される。当業者には公知のように、例えば、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターを含むウイルスベクターは、遺伝物質を宿主細胞に送達し、遺伝子の安定した発現及び複製を促進するために外来遺伝子または外因性遺伝子を宿主細胞ゲノムにランダムに挿入するために、一般に使用される。いくつかの実施形態では、細胞への外因性ポリヌクレオチドの非標的導入は、細胞での外因性ポリヌクレオチドの安定した発現のための条件下にある。いくつかの実施形態では、細胞での安定な発現のための核酸を導入する方法は、核酸が組み込まれた細胞が分裂した場合に核酸が増殖し得るように、細胞のゲノムへの核酸の安定した組込みをもたらす任意の方法を含む。
【0422】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターは、送達された核酸転写物に含まれる遺伝子の安定した発現を可能にするため、ウイルス形質導入を成功させるために特に有用な手段である。レンチウイルスベクターは、送達された核酸転写物に含まれる遺伝子の安定した発現に必要な2つの酵素である、逆転写酵素及びインテグラーゼを発現する。逆転写酵素がRNA転写物をDNAに転換する一方で、インテグラーゼは、DNAを標的細胞のゲノムに挿入して組み込む。DNAがゲノムに安定して組み込まれると、それは宿主と共に分裂する。組み込まれたDNA内に含まれる目的の遺伝子は、構成的に発現してもよいし、誘導性であってもよい。宿主細胞ゲノムの一部として、それは、標的細胞内の多数の因子に応じて、活性化または抑制を含む細胞調節を受ける可能性がある。
【0423】
レンチウイルスはレトロウイルス科のウイルスの亜群であり、宿主ゲノムに組み込まれる前にウイルスRNAゲノムのDNAへの逆転写が必要であることから命名された。したがって、レンチウイルス媒体/粒子の最も重要な特徴は、その遺伝物質が標的/宿主細胞のゲノムに組み込まれることである。レンチウイルスのいくつかの例としては、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1及びHIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジェンブラナ病ウイルス(JDV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウマ伝染性貧血、ウイルス、ビスナ・マエディウイルス、ならびにヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)が挙げられる。
【0424】
通常、遺伝子送達媒体を構成するレンチウイルス粒子は、それ自体では複製欠陥性である(「自己不活性化」とも称される)。レンチウイルスは、無傷の宿主核膜を介した侵入機構により、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染することができる(Naldini L et al.,Curr.Opin.Bioiecknol,1998,9:457-463)。組換えレンチウイルス媒体/粒子は、HIV病原性遺伝子を多重に弱毒化することによって生成されており、例えば、遺伝子Env、Vif、Vpr、Vpu、Nef及びTatを欠失させて、ベクターを生物学的に安全なものにする。同様に、例えば、HIV-1/HIV-2由来のレンチウイルス媒体は、非分裂細胞への導入遺伝子の効率的な送達、組込み、及び長期発現を媒介することができる。
【0425】
レンチウイルス粒子は、ヒトHEK293T細胞などのプロデューサー細胞内でウイルスパッケージングエレメント及びベクターゲノム自体を共発現させることによって生成され得る。これらのエレメントは通常、3つ(第2世代のレンチウイルスシステムの場合)または4つの別個のプラスミド(第3世代のレンチウイルスシステムの場合)で提供される。プロデューサー細胞は、ウイルスのコア(すなわち、構造タンパク質)及び酵素成分、ならびにエンベロープタンパク質(複数可)(パッケージング系と称される)を含むレンチウイルス成分をコードするプラスミドと、標的細胞、媒体自体に導入される外来導入遺伝子を含むゲノム(導入ベクターとも称される)をコードするプラスミドと、共導入される。一般に、プラスミドまたはベクターは、プロデューサー細胞株に含まれる。プラスミド/ベクターは、トランスフェクション、形質導入、または感染を介してプロデューサー細胞株に導入される。トランスフェクション、形質導入、または感染の方法は、当業者には周知である。非限定的な例として、パッケージング及び導入コンストラクトは、一般的にはネオミオシン(neo)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、グルタミン合成酵素またはアデノシンデアミナーゼ(ADA)のような優性選択可能マーカーと共に、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションによってプロデューサー細胞株に導入することができ、続いて適切な薬剤の存在下で選択し、クローンを単離する。
【0426】
プロデューサー細胞は、外来遺伝子、例えば、外因性ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドを含む、組換えウイルス粒子を産生する。組換えウイルス粒子は培養培地から回収され、当業者が使用する標準的な方法によって滴定される。組換えレンチウイルス媒体を使用し、第II.C節に記載されるいずれかを含むソース細胞などの標的細胞を感染させる。
【0427】
高力価レンチウイルス粒子を生成するために使用できる細胞には、HEK293T細胞、293G細胞、STAR細胞(Relander et al.,Mol Ther.2005,11:452-459)、FreeStyle(商標)293発現システム(ThermoFisher,Waltham,MA)、及び他のHEK293T系プロデューサー細胞株(例えば、Stewart et al.,Hum Gene Ther._2011,2,2.(3):357~369、Lee et al,Biotechnol Bioeng,2012,10996):1551-1560、Throm et al..Blood.2009,113(21):5104-5110)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0428】
レンチウイルス粒子に提供される追加のエレメントは、5’末端または3’末端のいずれかのレトロウイルスLTR(長末端反復)、レトロウイルス輸送エレメント、任意選択で、レンチウイルス逆応答エレメント(RRE)、プロモーターまたはその活性部分、及び遺伝子座制御領域(LCR)またはその活性部分を含み得る。他のエレメントには、非分裂細胞における形質導入効率を改善させる中央ポリプリントラクト(cPPT)配列、導入遺伝子の発現を強化し、力価を増加させるウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)が含まれる。
【0429】
組換えレンチウイルス粒子を生成する方法は、当業者に公知である。例えば、米国特許第8,846,385号、同第7,745,179号、同第7,629,153号、同第7,575,924号、同第7,179,903号及び同第6,808,905号。使用されるレンチウイルスベクターは、pLVX、pLenti、pLenti6、pLJMl、FUGW、pWPXL、pWPI、pLenti CMV puro DEST、pLJMl-EGFP、pULTRA、pInducer2Q、pHIV-EGFP、pCW57.1、pTRPE、pELPS、pRRL、及びpLionIIから選択され得るが、これらに限定されない。任意の既知のレンチウイルス媒体もまた使用され得る(米国特許第9,260,725号、同第9,068,199号、同第9,023,646号、同第8,900,858号、同第8,748,169号、同第8,709,799号、同第8,420,104号、同第8,329,462号、同第8,076,106号、同第6,013,516号、及び同第5,994,136号、国際特許公開第WO2012079000号を参照されたい)。
【0430】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、細胞の一過性発現のための条件下で、例えば、外因性ポリヌクレオチドのエピソーム送達をもたらす方法によって、細胞に導入される。
【0431】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターにパッケージングされ得る。このようなベクターまたはウイルス粒子は、既知の血清型キャプシドまたは血清型キャプシドの組み合わせのいずれかを利用するように設計され得る。血清型キャプシドには、任意の同定されたAAV血清型及びその変異体、例えば、AAV1、AAV2、AAV2G9、AAV3、AAV4、AAV4-4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12及びAAVrh10からのキャプシドが含まれ得る。いくつかの実施形態では、AAV血清型は、米国特許公開第US20030138772号、Pulicherla et al.Molecular Therapy,2011,19(6):1070-1078、米国特許第6,156,303号、同第7,198,951号、米国特許公開第US2015/0159173号及び同第US2014/0359799号、ならびに国際特許公開第WO1998/011244号、同第WO2005/033321号及び同第WO2014/14422号に記載される配列であり得るか、またはその配列を有し得る。
【0432】
AAVベクターには、一本鎖ベクターだけでなく、自己相補的AAVベクター(scAAV)も含まれる。scAAVベクターには、一緒にアニーリングして二本鎖ベクターゲノムを形成する、DNAが含まれる。第2の鎖の合成をスキップすることにより、scAAVは、細胞での迅速な発現を可能にする。rAAVベクターは、sf9昆虫細胞またはHEK293細胞などのヒト細胞の懸濁細胞培養において、トリプル遺伝子導入などの当技術分野の標準的な方法によって製造され得る。
【0433】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベースの方法が使用され得る。例えば、いくつかの態様では、ポリヌクレオチドを含むベクターは、ニードル、エレクトロポレーション、ソノポレーション、ハイドロポレーションなどの物理的方法;無機粒子(例えば、リン酸カルシウム、シリカ、金)などの化学担体及び/または化学的方法による、非ウイルス的方法によって細胞に導入され得る。他の態様では、カチオン性脂質、脂質ナノエマルション、ナノ粒子、ペプチドベースのベクターもしくはポリマーベースのベクターなどの合成または天然の生分解性薬剤を送達に使用することができる。
【0434】
2)標的送達
外因性ポリヌクレオチドは、初代細胞の任意の好適な標的ゲノム遺伝子座に挿入され得る。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、標的遺伝子座への標的組込みによって細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、標的組込みは、相同性依存的組換えまたは相同性非依存的組換えを含むプロセスで、1つ以上のヌクレアーゼ及び/またはニッカーゼならびにドナー鋳型を使用する遺伝子編集によって達成することができる。
【0435】
例えば、相同性指向修復(HOR)、相同性媒介性末端結合(HMEJ)、相同性非依存的標的組込み(HITI)、偏性ライゲーション依存的組換え(ObliGaRe)、または標的染色体への高精度組み込み(PITCh)を含む、多くの遺伝子編集方法を使用し、外因性ポリヌクレオチドを所定の特異的ゲノム遺伝子座に挿入できる。
【0436】
いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、ゲノム内の所望の位置(例えば、標的部位)に特異的な二本鎖切断(DSB)を作製して、細胞の内因性機構を利用し、誘導された切断を修復する。ニッカーゼは、ゲノム内の所望の位置に、特異的な一本鎖切断を作製する。1つの非限定的な例では、2つのニッカーゼを使用し、標的DNAの対抗する鎖上に2つの一本鎖切断を作製し、それによって、平滑末端または粘着末端を生成することができる。任意の適切なヌクレアーゼを細胞に導入し、標的DNA配列のゲノム編集を誘導でき、そのヌクレアーゼとしては、CRISPR関連タンパク質(Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、他のエンドヌクレアーゼもしくはエキソヌクレアーゼ、これらの変異体、これらの断片、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、内因性ゲノム標的遺伝子座、例えば、セーフハーバー遺伝子座の配列またはその近くの配列に相同である相同性配列(例えば、相同性アーム)に挟まれた外因性ポリヌクレオチド配列(導入遺伝子とも称される)を含有するドナー鋳型と共に、ヌクレアーゼまたはニッカーゼが導入される場合、DNA損傷の修復経路により、導入遺伝子配列を細胞内の標的部位に組み込むことができる。これは、相同性依存的プロセスによって起こり得る。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、環状二本鎖プラスミドDNA、一本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(ssODN)、線状二本鎖ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)断片、またはインタクトな姉妹染色分体の相同配列である。ドナー鋳型の形態に応じて、相同性媒介性遺伝子挿入及び置換は、特異的DNA修復経路、例えば、相同性指向修復(HDR)、合成依存的鎖アニーリング(SDSA)、マイクロホモロジー媒介性末端結合(MMEJ)及び相同性媒介性末端結合(HMEJ)の経路を介して、行うことができる。
【0437】
例えば、DNA修復機構は、(i)2つのSSB(SSBは、それぞれの鎖上に存在する)によって一本鎖オーバーハングを誘導するか、または(ii)両方の鎖で、同じ切断部位で生じたDSBによって平滑末端切断を誘導するかした後に、ヌクレアーゼによって誘導され得る。これらの作用剤の1つによって切断されると、SSBまたはDSBを有する標的遺伝子座は、DNA損傷修復のための2つの主要な経路、すなわち、(1)エラープローンな非相同性末端結合(NHEJ)経路、または(2)忠実度の高い相同性指向修復(HDR)経路のうちの1つを経る。いくつかの実施形態では、SSBまたはDSBが存在する細胞に導入されたドナー鋳型(例えば、環状プラスミドDNAまたは直鎖状DNA断片、例えばssODN)により、HDR及び標的遺伝子座内へのドナー鋳型の組込みをもたらし得る。一般に、ドナー鋳型の不存在下で、NHEJプロセスは切断されたDNA鎖の末端を再ライゲートし、その結果、切断部位でのヌクレオチドの欠失及び挿入が頻繁に生じる。
【0438】
いくつかの実施形態では、細胞への外因性ポリヌクレオチドの部位特異的挿入は、HDRベースのアプローチを介して達成され得る。HDRは、細胞がDNAの二本鎖切断(DSB)を修復するための機構であり、これを利用し、多くの生物において、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)/Casシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、及びトランスポザーゼを含めた種々の遺伝子編集システムを使用して、ゲノムを改変することができる。
【0439】
いくつかの実施形態では、標的組込みは、標的遺伝子の少なくとも1つの標的部位(複数可)の配列に標的化されるように特異的に設計された、DNA結合標的化ヌクレアーゼ、ならびにジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などの遺伝子編集ヌクレアーゼ、ならびにCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)システムなどのRNA誘導型ヌクレアーゼを含む、1つ以上の配列特異的または標的ヌクレアーゼを導入することによって実施される。例示的なZFN、TALE及びTALENは、例えば、Lloyd et al.,Frontiers in Immunology,4(221):1-7(2013)に記載されている。特定の実施形態では、標的部位でまたはその近くでの標的遺伝子破壊は、クラスター化した規則的に離間された短い回文配列リピート(CRISPR)及びCRISPR関連(Cas)タンパク質を使用して実行される。Sander and Joung,(2014)Nature Biotechnology,32(4):347-355を参照。
【0440】
第II.A.1節に記載される遺伝子破壊のためのシステムのいずれかを使用することができ、外因性ポリヌクレオチド、例えば、導入遺伝子配列を有する適切なドナー鋳型も導入した場合、システムのいずれかにより、遺伝子破壊の標的部位またはその近傍で外因性ポリヌクレオチドの標的組込みをもたらすことができる。特定の実施形態では、遺伝子破壊は、1つ以上のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質を含むCRISPR/Casシステムを使用して媒介される。例示的なCasタンパク質及びgRNAは上記の第II.A節に記載されており、そのいずれかを使用し、HDRの媒介により、Crispr/Casシステムが特異的である標的遺伝子座へ外因性ポリヌクレオチドを組み込むことができる。HDRによる外因性ポリヌクレオチドの切断及び組込みのための特定の標的遺伝子座ならびに標的部位に応じるなど、適切なCasヌクレアーゼ及びgRNAを選択することは、当業者のレベルの範囲内である。更に、標的遺伝子座に応じて、当業者であれば、以下に更に記載するように、適切なドナー鋳型を容易に調製することができる。
【0441】
いくつかの実施形態では、DNA編集システムは、RNA誘導型CRISPR/Casシステム(RNAベースのCRISPR/Casシステムなど)であり、CRISPR/Casシステムは、標的遺伝子座(例えば、セーフハーバー遺伝子座)に二本鎖切断を生じさせ、標的遺伝子座への導入遺伝子の挿入を誘導できる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼシステムは、CRISPR/Cas9システムである。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、プラスミドベースのCas9を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、RNAベースのCas9を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、Cas9 mRNA及びgRNAを含む。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、タンパク質/RNA複合体、またはプラスミド/RNA複合体、またはタンパク質/プラスミド複合体を含む。いくつかの実施形態では、導入遺伝子または外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型、ならびにDNAヌクレアーゼシステム(例えば、Cas9)及び遺伝子座特異的gRNAを含むDNAヌクレアーゼシステムを、ソース細胞(例えば、初代細胞)に導入することを含む、操作された細胞を生成するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、Cas9は、mRNAとして導入される。いくつかの実施形態では、Cas9は、gRNAとのリボ核タンパク質複合体として導入される。
【0442】
一般に、挿入されるドナー鋳型は、目的の外因性ポリヌクレオチド(例えば、免疫寛容原性因子またはCAR)を含有する導入遺伝子カセットを少なくとも含み、任意選択で、プロモーターも含む。これらの実施形態の特定のものでは、挿入される外因性ポリヌクレオチド及び/またはプロモーターを含有する導入遺伝子カセットは、ドナー鋳型において、標的切断部位のすぐ上流及び下流の配列に相同な配列を有する相同性アーム、すなわち、左側相同性アーム(LHA)及び右側相同性アーム(RHA)が両側に隣接するであろう。通常、ドナー鋳型の相同性アームは、HDRの鋳型として機能する標的ゲノム遺伝子座用に特異的に設計されている。各相同性アームの長さは一般に、導入されるインサートのサイズに依存し、インサートが大きなほど長い相同性アームが必要になる。
【0443】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型(例えば、組換えドナー修復鋳型)は、(i)外因性ポリヌクレオチド配列(例えば、プロモーター、例えば、異種プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセットと、(ii)導入遺伝子カセットを挟み込み、DNAヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはCas12などのCasヌクレアーゼ)切断部位の両側で、標的遺伝子座(例えば、セーフハーバー遺伝子座)の一部分と相同である2つのホモロジーアームと、を含む。ドナー鋳型は、選択可能なマーカー、検出可能なマーカー及び/または精製マーカーを更に含むことができる。
【0444】
いくつかの実施形態では、相同性アームは同じ長さである。他の実施形態では、相同性アームは異なる長さである。相同性アームは、少なくとも約10塩基対(bp)、例えば、少なくとも約10bp、15bp、20bp、25bp、30bp、35bp、45bp、55bp、65bp、75bp、85bp、95bp、100bp、150bp、200bp、250bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、750bp、800bp、850bp、900bp、950bp、1000bp、1.1キロベース(kb)、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb、1.6kb、1.7kb、1.8kb、1.9kb、2.0kb、2.1kb、2.2kb、2.3kb、2.4kb、2.5kb、2.6kb、2.7kb、2.8kb、2.9kb、3.0kb、3.1kb、3.2kb、3.3kb、3.4kb、3.5kb、3.6kb、3.7kb、3.8kb、3.9kb、4.0kb、またはそれ以上であり得る。相同性アームは、約10bp~約4kb、例えば、約10bp~約20bp、約10bp~約50bp、約10bp~約100bp、約10bp~約200bp、約10bp~約500bp、約10bp~約1kb、約10bp~約2kb、約10bp~約4kb、約100bp~約200bp、約100bp~約500bp、約100bp~約1kb、約100bp~約2kb、約100bp~約4kb、約500bp~約1kb、約500bp~約2kb、約500bp~約4kb、約1kb~約2kb、約1kb~約2kb、約1kb~約4kb、または約2kb~約4kbであり得る。
【0445】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型を、発現ベクターにクローン化することができる。当業者に公知の従来のウイルス及び非ウイルスベースの発現ベクターを、使用することができる。
【0446】
いくつかの実施形態では、組込みの標的となる標的遺伝子座は、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子の組込みを標的とすることが許容されるか、またはそれが望ましいであろう、任意の遺伝子座であり得る。標的遺伝子座の非限定的な例としては、CXCR4遺伝子、アルブミン遺伝子、SHS231座、F3遺伝子(別名、CD142)、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子(別名、CD91)、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D遺伝子(別名、HY)、B2M遺伝子、CIITA遺伝子、TRAC遺伝子、TRBC遺伝子、CCR5遺伝子、F3(すなわち、CD142)遺伝子、LRP1遺伝子、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D(すなわち、HY)遺伝子、PDGFRa遺伝子、OLIG2遺伝子、及び/またはGFAP遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、例えば、イントロン、エクソン、及び/または遺伝子コード領域(別名、コード配列または「CDS」)を含む、標的遺伝子座(例えば、セーフハーバー遺伝子座)の好適な領域に挿入され得る。いくつかの実施形態では、挿入は、標的ゲノム遺伝子座の一方の対立遺伝子で起こる。いくつかの実施形態では、挿入は、標的ゲノム遺伝子座の両方の対立遺伝子で起こる。これらの実施形態のいずれでも、標的ゲノム遺伝子座に挿入される導入遺伝子の方向は、その遺伝子座の遺伝子の方向と同じであっても、逆であってもよい。
【0447】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座のイントロン、エクソン、またはコード配列領域に挿入される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、内因性遺伝子に挿入され、挿入は、内因性遺伝子のサイレンシングまたは発現の低減を引き起こす。外因性ポリヌクレオチドの挿入のための例示的ゲノム遺伝子座は、表4に示されている。
【0448】
【0449】
いくつかの実施形態では、標的遺伝子座は、セーフハーバー遺伝子座である。いくつかの実施形態では、セーフハーバー遺伝子座とは、近傍または隣接する内因性遺伝子、調節エレメントなどへの影響を最小限に抑えながら、組み込まれたDNAの安定した発現を可能にするゲノム位置である。場合によっては、セーフハーバー遺伝子は持続的な遺伝子発現を可能にし、初代細胞(その誘導体を含む)及びその分化細胞を含む様々な細胞種における遺伝子改変のために操作されたヌクレアーゼによって標的とされ得る。セーフハーバー遺伝子座の非限定的な例としては、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及び/またはRosa遺伝子座(例えば、ROSA26遺伝子座)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、AAVS1遺伝子座、CCR5遺伝子座、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される。場合によっては、SHS231は、多くの細胞種のセーフハーバー遺伝子座として標的とされ得る。場合によっては、特定の遺伝子座は、特定の細胞種のセーフハーバー遺伝子座として機能することができる。例えば、PDGFRaはグリア前駆細胞(GPC)のセーフハーバーであり、OLIG2は乏突起膠細胞のセーフハーバー遺伝子座であり、GFAPは星状細胞のセーフハーバー遺伝子座である。特定の操作された細胞型に応じて適切なセーフハーバー遺伝子座を選択することは、当業者のレベルの範囲内である。場合によっては、複数のセーフハーバー遺伝子を標的とすることができ、それにより、遺伝子改変細胞に複数の導入遺伝子が導入される。
【0450】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子または外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型と、DNAヌクレアーゼシステム(例えば、Cas9)ならびにCCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、CLYBL遺伝子座及び/またはRosa遺伝子座(例えばROSA26遺伝子座)に特異的な相補的部分(例えばgRNAターゲティング配列)を含む遺伝子座特異的gRNAを含むDNAヌクレアーゼシステムと、をソース細胞(例えば、初代細胞)に導入することを含む、操作された細胞を生成するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、gRNAによって標的化されるゲノム遺伝子座は、記載した遺伝子座のいずれかの4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内に位置する。
【0451】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子のHDR媒介性挿入のために本明細書で使用されるgRNAは、AAVS1内の標的配列を認識する相補的部分(例えば、gRNA標的配列)を含む。これらの実施形態のうちの特定のものでは、標的配列はAAVS1のイントロン1に位置する。AAVS1は、19番染色体:55,090,918~55,117,637リバース鎖に位置し、AAVS1イントロン1(転写産物ENSG00000125503に基づく)は、19番染色体:55,117,222~55,112,796リバース鎖に位置する。特定の実施形態では、gRNAは、19番染色体:55,117,222~55,112,796の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。特定の実施形態では、gRNAは、19番染色体:55,115,674の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。特定の実施形態では、gRNAは、19番染色体:55,115,674で、または19番染色体:55,115,674の5、10、15、20、30、40もしくは50ヌクレオチド以内の位置で切断部位を生成するように構成される。特定の実施形態では、gRNAは、Li et al.,Nat.Methods 16:866-869(2019)に記載されているGET000046(「sgAAVS1-1」としても知られる)である。このgRNAは、配列番号26(例えば、表5)に記載の核酸配列を有する相補的部分(例えば、gRNAターゲティング配列)を含み、AAVS1(別名、PPP1R12C)のイントロン1を標的とする。
【0452】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子のHDR媒介性挿入のために本明細書で使用されるgRNAは、CLYBL内の標的配列を認識する相補的部分(例えば、gRNAターゲティング配列)を含む。これらの実施形態のうちの特定のものでは、標的配列は、CL YBLのイントロン2に位置する。CLYBLは、13番染色体:99,606,669~99,897,134フォワード鎖に位置し、CLYBLイントロン2(転写物ENST00000376355.7に基づく)は、13番染色体:99,773,011~99,858,860フォワード鎖に位置する。特定の実施形態では、gRNAは、13番染色体:99,773,011~99,858,860の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。特定の実施形態では、gRNAは、13番染色体:99,822,980の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。特定の実施形態では、gRNAは、13番染色体:99,822,980で、または13番染色体:99,822,980の5、0、15、20、30、40もしくは50ヌクレオチド以内の位置で切断部位を生成するように構成される。特定の実施形態では、gRNAはGET000047であり、これは、配列番号27(例えば、表5)に記載の核酸配列を有する相補的部分(例えば、gRNAターゲティング配列)を含み、CLYBLのイントロン2を標的とする。標的部位は、Cerbini et al.,PLoS One,10(1):e0116032(2015)に記載されているTALENの標的部位と類似している。
【0453】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子のHDR媒介性挿入のために本明細書で使用されるgRNAは、CCR5内の標的配列を認識する相補的部分(例えば、gRNAターゲティング配列)を含む。これらの実施形態のうちの特定のものでは、標的配列は、CCR5のエクソン3に位置する。CCR5は、染色体3:46,370,854~46,376,206フォワード鎖に位置し、CCR5エクソン3(転写物ENST00000292303.4に基づく)は、染色体3:46,372,892~46,376,206フォワード鎖に位置する。特定の実施形態では、gRNAは、3番染色体:46,372,892~46,376,206の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。特定の実施形態では、gRNAは、3番染色体:46,373,180の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。特定の実施形態では、gRNAは、3番染色体:46,373,180で、または3番染色体:46,373,180の5、10、15、20、30、40もしくは50ヌクレオチド以内の位置で切断部位を生成するように構成される。特定の実施形態では、gRNAは、Mandal et al.,Cell Stem Cell 15:643-652(2014)に記載されているGET000048(「crCCR5_D」としても知られる)である。このgRNAは、配列番号28(例えば、表5)に記載の核酸配列を有する相補的部分を含み、CCR5のエクソン3(代替的にEnsemblゲノムデータベースにおいてエクソン2と注釈付けされる)を標的とする。Gomez-Ospina et al.,Nat.Comm.10(1):4045(2019)を参照のこと。
【0454】
表5は、例示的なgRNAターゲティング配列を示す。いくつかの実施形態では、gRNAターゲティング配列は、表5に示す相補的部分配列の1つ以上のチミンがウラシルで置換されたものを含んでもよい。ウラシルの「u」及びチミンの「t」の代わりに、ウラシル及びチミンは両方とも「t」によって表され得ることが当業者によって理解され、リボ核酸の関連においては、別途指示されない限り、ウラシルを表すために「t」が使用されることが理解されよう。
【0455】
【0456】
いくつかの実施形態では、標的遺伝子座は、細胞内でノックアウトされることが望ましい遺伝子座である。このような実施形態では、このような標的遺伝子座は、細胞の表現型または機能を調節するためなど、細胞内でその破壊または排除が望ましい任意の標的遺伝子座である。例えば、標的遺伝子の発現を低減するための第II.A節に記載される遺伝子改変のうちのいずれも、外因性ポリヌクレオチドの標的組込みのために所望される標的遺伝子座であり得、ここで、標的遺伝子の遺伝子破壊またはノックアウト及び外因性ポリヌクレオチドの標的挿入による過剰発現は、細胞における同じ標的部位または遺伝子座にて達成され得る。例えば、HDRプロセスを使用し、表1bに示される任意の標的遺伝子の発現を排除または低減する(例えば、ノックアウトする)ための遺伝子破壊をもたらすと同時に、また遺伝子破壊の標的部位におけるまたはその近くの核酸配列に相同である相同性アームを両側に有するドナー鋳型を使用することによって標的遺伝子内に外因性ポリヌクレオチドを組み込んで(例えば、ノックインして)もよい。
【0457】
いくつかの実施形態では、操作された細胞を生成するための方法が提供され、これは、ソース細胞(例えば、初代細胞)内に、導入遺伝子または外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型、ならびにDNAヌクレアーゼシステム(例えば、Cas9)及びB2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座に特異的な相補的部分を含む遺伝子座特異的gRNAを含むDNAヌクレアーゼシステムを導入することを含む。いくつかの実施形態では、gRNAによって標的化されるゲノム遺伝子座は、記載した遺伝子座のいずれかの4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内に位置する。
【0458】
特定の実施形態では、標的遺伝子座はB2Mである。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、B2M遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びB2M遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的ヌクレアーゼシステムを使用することによるものである。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸(gRNA)配列は、WO2016/183041の付録2または表15の配列番号81240~85644からなる群から選択され、この開示は参照によりその全体が組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、gRNAによって標的化される標的部位に隣接する配列に相同な相同性アームを両側に有する、外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型を導入することによって、HDRにより、破壊されたB2M遺伝子座内に組み込まれる。
【0459】
特定の実施形態では、標的遺伝子座はCIITAである。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、CIITA遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びCIITA遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、WO2016183041の付録1または表12の配列番号5184~36352からなる群から選択され、この開示は参照によりその全体が組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、gRNAによって標的化される標的部位に隣接する配列に相同な相同性アームを両側に有する、外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型を導入することによって、HDRにより、破壊されたCIITA遺伝子座内に組み込まれる。
【0460】
いくつかの実施形態では、初代細胞はT細胞であり、内因性TRACまたはTRBC遺伝子座の発現は、遺伝子編集法によって細胞において低減または排除される。例えば、HDRプロセスを使用し、TRACもしくはTRBC遺伝子の発現を排除または低減する(例えば、ノックアウトする)ための遺伝子破壊をもたらすと同時に、また遺伝子破壊の標的部位におけるまたはその近くの核酸配列に相同である相同性アームを両側に有するドナー鋳型を使用することによって同じ遺伝子座内に外因性ポリヌクレオチドを組み込んで(例えば、ノックインして)もよい。本明細書に記載の遺伝子のCRISPR/Casベースの標的化に有用な例となるgRNA配列は、表6で提供される。これらの配列は、US20160348073に見出すことができ、配列表を含めたこの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0461】
【0462】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、TRAC遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びTRAC遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えば、gRNAターゲティング配列)は、US20160348073の配列番号532~609及び9102~9797からなる群から選択され、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、gRNAによって標的化される標的部位に隣接する配列に相同な相同性アームを両側に有する、外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型を導入することによって、HDRにより、破壊されたTRAC遺伝子座内に組み込まれる。
【0463】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、TRBC遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びTRBC遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えば、gRNAターゲティング配列)は、US20160348073の配列番号610~765及び9798~10532からなる群から選択され、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、gRNAによって標的化される標的部位に隣接する配列に相同な相同性アームを両側に有する、外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型を導入することによって、HDRにより、破壊されたTRBC遺伝子座内に組み込まれる。
【0464】
いくつかの実施形態では、記載されるHDR媒介性組込みアプローチで使用するための新たな遺伝子座及び/またはgRNA配列を同定することは、当業者のレベルの範囲内である。例えば、CRISPR/Casシステムに関して、特定の遺伝子座(例えば、表1bに示す、例えば、標的遺伝子内の)に対する既存のgRNAが公知の場合、「インチワーミング」アプローチを使用し、通常はゲノムにわたって約100塩基対(bp)毎に存在するPAM配列について遺伝子座のそれぞれの側の隣接領域をスキャンすることによって、導入遺伝子の標的挿入のための追加の遺伝子座を同定することができる。異なるヌクレアーゼは通常、異なる対応するPAM配列を有することから、PAM配列は、使用される特定のCasヌクレアーゼに依存することになる。遺伝子座の両側の隣接領域は、約500~4000bp長、例えば、約500bp、約1000bp、約1500bp、約2000bp、約2500bp、約3000bp、約3500bp、または約4000bp長であり得る。PAM配列が検索範囲内で同定される場合、その遺伝子座の配列に従って、遺伝子破壊方法において使用するための新たなガイドが設計され得る。CRISPR/Casシステムを例示的なものとして記載しているが、この新たな座位を特定する方法では、ZFN、TALEN、メガヌクレアーゼ及びトランスポザーゼを使用するものを含む、記載されるいずれかのHDR媒介性アプローチも使用することができる。
【0465】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、外因性CD47ポリペプチド(例えば、ヒトCD47ポリペプチド)をコードし、外因性ポリペプチドは、本明細書に開示されるセーフハーバー遺伝子座またはセーフハーバー部位または内因性遺伝子のサイレンシングまたは発現の低減を引き起こすゲノム遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、CLYBL遺伝子座及び/またはRosa遺伝子座(例えばROSA26遺伝子座)に挿入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRBC、PD1またはCTLA4遺伝子座に挿入される。
【0466】
c.細胞
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞のゲノムが、本明細書に記載されるような1つ以上の遺伝子の発現が低減または欠失する(例えば、1つ以上のMHCクラスI分子または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を調節する1つ以上の遺伝子)ように改変されている、もしくは遺伝子もしくはポリヌクレオチドが過剰発現または発現を増加させられる(例えば、CD47などの免疫寛容原性因子をコードするポリヌクレオチド)、操作(または、改変)された細胞(例えば、初代細胞)、またはその集団を提供する。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊、及び(iii)CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0467】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変された細胞は、初代細胞である。
【0468】
細胞は、脊椎動物細胞、例えば、ヒト細胞またはマウス細胞などの哺乳動物細胞であり得る。好ましくは、細胞は改変しやすい。好ましくは、細胞は、疾患、障害、欠損もしくは傷害の治療を必要とする対象において疾患、障害、欠損もしくは傷害を治療するために使用できるように、治療的価値を有するか、または有すると考えられる。
【0469】
いくつかの実施形態では、細胞は、胚組織または新生児組織から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、線維芽細胞、単球前駆体、B細胞、外分泌細胞、膵臓前駆細胞、内分泌前駆細胞、肝芽細胞、筋芽細胞、前脂肪細胞、前駆細胞、肝細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞、K562ヒト赤血球白血病細胞株、骨細胞、滑膜細胞、腱細胞、靱帯細胞、半月板細胞、脂肪細胞、樹状細胞、またはナチュラルキラー細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、筋細胞、赤血球-巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、膵島クラスター、膵島細胞、膵島β細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、α細胞、β膵島細胞、δ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、または褐色脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞または心筋細胞)、赤血球-巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、膵島クラスター、膵島細胞、β細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞(例えば、赤血球細胞、白血球細胞または血小板)、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、α細胞、膵島β細胞、δ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、または白色脂肪細胞もしくは褐色脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ホルモン分泌細胞(例えば、インスリン、オキシトシン、エンドルフィン、バソプレッシン、セロトニン、ソマトスタチン、ガストリン、セクレチン、グルカゴン、甲状腺ホルモン、ボンベシン、コレシストキニン、テストステロン、エストロゲンもしくはプロゲステロン、レニン、グレリン、アミリン、または膵臓ポリペプチドを分泌する細胞)、表皮角化細胞、上皮細胞(例えば、外分泌上皮細胞、甲状腺上皮細胞、角化上皮細胞、胆嚢上皮細胞、または角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道もしくは膣の表面上皮細胞)、腎臓細胞、胚細胞、骨格関節滑膜細胞、骨膜細胞、骨細胞(例えば、破骨細胞または骨芽細胞)、軟骨膜細胞(例えば、軟骨芽細胞または軟骨細胞(chondrocyte))、軟骨(cartilage)細胞(例えば軟骨細胞(chondrocyte))、線維芽細胞、内皮細胞、心膜細胞、髄膜細胞、ケラチノサイト前駆体、ケラチノサイト幹細胞、周皮細胞、グリア細胞、上衣細胞、羊膜もしくは胎盤膜から単離した細胞、または漿膜細胞(例えば、体腔の内側を覆う漿膜細胞)である。
【0470】
いくつかの実施形態では、細胞は、体細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、皮膚または他の器官、例えば、心臓、脳もしくは脊髄、肝臓、肺、腎臓、膵臓、膀胱、骨髄、脾臓、腸または胃に由来する。細胞は、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、げっ歯類、非ヒト霊長類、ウシ、またはブタ細胞)からのものであり得る。
【0471】
いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞、NK細胞、膵島細胞、膵島β細胞、内皮細胞、上皮細胞(例えば、RPE、甲状腺、皮膚細胞)、または肝細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、初代細胞から改変された操作された初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、操作された初代細胞(例えば、操作された初代T細胞、NK細胞、膵島細胞、膵島β細胞、内皮細胞、上皮細胞(例えば、RPE、甲状腺、皮膚細胞)または肝細胞)である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊、及び(iii)CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含み、操作された初代T細胞、NK細胞、膵島細胞、膵島β細胞、内皮細胞、上皮細胞(例えば、RPE、甲状腺、皮膚細胞)または肝細胞。
【0472】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含むように操作された初代T細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代T細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊、及び(iii)CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、T細胞は、本明細書に記載されるようないずれかを含むキメラ抗原受容体(CAR)を用いて操作され得る。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)T細胞を使用し、本明細書、例えば、第V節に記載されるようないずれかを含む、同種異系細胞療法により様々な適応症を治療することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)T細胞を使用し、がんを治療できる。
【0473】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含むように操作された初代NK細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代NK細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊、及び(iii)CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、NK細胞は、本明細書に記載されるようないずれかを含むキメラ抗原受容体(CAR)を用いて操作され得る。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)NK細胞を使用し、本明細書、例えば、第V節に記載されるようないずれかを含む、同種異系細胞療法により様々な適応症を治療することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)NK細胞を使用し、がんを治療できる。
【0474】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含むように操作された初代膵島細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代膵島細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊、及び(iii)CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)膵島細胞を使用し、本明細書、例えば、第IV節に記載されるようないずれかを含む、同種異系細胞療法により様々な適応症を治療することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)膵島細胞を使用し、I型糖尿病などの糖尿病を治療できる。いくつかの実施形態では、細胞は、初代β膵島細胞を含む、初代膵島細胞のクラスターである。
【0475】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含むように操作された初代膵島β細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代膵島β細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊、及び(iii)CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)膵島β細胞を使用し、本明細書、例えば、第V節に記載されるようないずれかを含む、同種異系細胞療法により様々な適応症を治療することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)膵島β細胞を使用し、I型糖尿病などの糖尿病を治療できる。
【0476】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含むように操作された初代内皮細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代内皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊、及び(iii)CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)内皮細胞を使用し、本明細書、例えば、第V節に記載されるようないずれかを含む、同種異系細胞療法により様々な適応症を治療することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)内皮細胞を使用し、血管新生疾患または眼疾患を治療できる。
【0477】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含むように操作された初代上皮細胞である。いくつかの実施形態では、上皮細胞は、RPEである。いくつかの実施形態では、上皮細胞は、甲状腺細胞である。いくつかの実施形態では、上皮細胞は、皮膚細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代上皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊、及び(iii)CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)上皮細胞を使用し、本明細書、例えば、第V節に記載されるようないずれかを含む、同種異系細胞療法により様々な適応症を治療することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)上皮細胞を使用し、甲状腺疾患または皮膚疾患を治療できる。
【0478】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含むように操作された初代肝細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊、及び(iii)CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)上皮細胞を使用し、本明細書、例えば、第IV節に記載されるようないずれかを含む、同種異系細胞療法により様々な適応症を治療することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)肝細胞を使用し、肝疾患を治療できる。
【0479】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるように操作または改変された細胞は、治療すべき特定の疾患または状態を有することが知られていないか、またはその疑いがない対象などの、健康な対象に由来する細胞である。例えば、初代膵島β細胞が糖尿病の治療などのためにドナー対象から単離または入手される場合、ドナー対象が糖尿病または別の疾患または状態に罹患していることが知られていないか、またはその疑いがない場合、対象は健康な対象である。
【0480】
治療用途では、開示される方法に従って調製された細胞は、典型的には、等張性賦形剤を含む医薬組成物の形態で供給され得、ヒト投与のために十分に無菌である条件下で調製される。細胞は、分布または臨床的使用のために好適なデバイスまたは容器に包装され得る。
【0481】
1.初代細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるように操作された細胞は、1以上の個々の対象またはドナーから入手または単離された初代細胞に由来する細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、1以上の(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上の)異なるドナー対象から得られた単離された初代細胞のプールに由来する。いくつかの実施形態では、複数の異なるドナー対象(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上)から単離または入手された初代細胞は、バッチで一緒にプールされ、提供される方法に従って操作される。
【0482】
いくつかの実施形態では、初代細胞は、レシピエント対象(例えば、細胞を投与される患者)とは異なる1以上のドナー対象からの初代細胞のプールからのものである。初代細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、またはそれよりも多くのドナー対象から入手され得、一緒にプールすることができる。初代細胞は、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、50以上、または100以上のドナー対象から入手され得、一緒にプールすることができる。いくつかの実施形態では、初代細胞は、1以上の個体から採取され、いくつかの事例では、初代細胞または初代T細胞のプールは、in vitroで培養される。いくつかの実施形態では、初代細胞または初代T細胞のプールは、本明細書に提供される方法に従って操作または改変される。
【0483】
いくつかの実施形態では、方法は、個々のドナー対象から所望の種類の初代細胞(例えば、T細胞、NK細胞、内皮細胞、膵島細胞、膵島β細胞、肝細胞、または本明細書に記載されるような他の初代細胞)を入手または単離することと、細胞をプールして初代細胞種のバッチを得ることと、本明細書で提供される方法によって細胞を操作することと、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、所望の種類の初代細胞(例えば、T細胞、NK細胞、内皮細胞、膵島細胞、膵島β細胞、肝細胞、または本明細書に記載されているような他の初代細胞)を入手または単離することと、個々のドナーのそれぞれの細胞を本発明で提供する方法によって操作することと、少なくとも2つの個別試料の操作された(改変された)細胞をプールして、初代細胞種の操作された初代細胞のバッチを得ることと、を含む。
【0484】
いくつかの実施形態では、初代細胞は、個体から単離もしくは取得されるか、または2以上の個々のドナーから単離もしくは取得された初代細胞のプールから単離もしくは取得される。初代細胞は、第II.C.3節に記載されるいずれかを含む、本明細書に記載の任意の種類の初代細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、初代細胞は、T細胞、NK細胞、膵島細胞、膵島β細胞、内皮細胞、上皮細胞(例えば、RPE、甲状腺、皮膚細胞)または肝細胞から選択される。いくつかの実施形態では、個々のドナーまたは個々のドナーのプールからの初代細胞は、本明細書に記載される改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作される。
【0485】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞または心筋細胞)、赤血球-巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、膵島クラスター、膵島細胞、β細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞(例えば、赤血球細胞、白血球細胞または血小板)、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、α細胞、膵島β細胞、δ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、または白色脂肪細胞もしくは褐色脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ホルモン分泌細胞(例えば、インスリン、オキシトシン、エンドルフィン、バソプレッシン、セロトニン、ソマトスタチン、ガストリン、セクレチン、グルカゴン、甲状腺ホルモン、ボンベシン、コレシストキニン、テストステロン、エストロゲンもしくはプロゲステロン、レニン、グレリン、アミリン、または膵臓ポリペプチドを分泌する細胞)、表皮角化細胞、上皮細胞(例えば、外分泌上皮細胞、甲状腺上皮細胞、角化上皮細胞、胆嚢上皮細胞、または角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道もしくは膣の表面上皮細胞)、腎臓細胞、胚細胞、骨格関節滑膜細胞、骨膜細胞、骨細胞(例えば、破骨細胞または骨芽細胞)、軟骨膜細胞(例えば、軟骨芽細胞または軟骨細胞(chondrocyte))、軟骨(cartilage)細胞(例えば軟骨細胞(chondrocyte))、線維芽細胞、内皮細胞、心膜細胞、髄膜細胞、ケラチノサイト前駆体、ケラチノサイト幹細胞、周皮細胞、グリア細胞、上衣細胞、羊膜もしくは胎盤膜から単離した細胞、または漿膜細胞(例えば、体腔の内側を覆う漿膜細胞)である。
【0486】
例示的な細胞は、以下の項に記載される。
【0487】
a.T細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変された細胞は、初代細胞Tリンパ球(T細胞とも称される)である。いくつかの実施形態では、初代Tリンパ球は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常ドナー(例えば、疾患または感染が知られていないか、またはその疑いがない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。いくつかの事例では、T細胞は、1以上の個体からの初代T細胞の集団またはサブ集団である。当業者であれば理解するように、個体からTリンパ球を単離または入手する方法は、既知の技術を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植または生着のために、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含む操作された初代Tリンパ球が提供される。例えば、操作されたT細胞は、操作されたT細胞の注入によって対象(例えば、患者などのレシピエント)に投与される。
【0488】
いくつかの実施形態では、初代T細胞は、対象または個体から得られ(例えば、採取され、抽出され、離され、または取得され)る。いくつかの実施形態では、初代T細胞は、T細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健康なヒトを含む1以上のヒト)に由来するようにT細胞のプールから生成される。いくつかの実施形態では、初代T細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療細胞が投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、T細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、T細胞のプールが得られるドナー対象のうちの1つ以上は、患者とは異なる。
【0489】
初代T細胞の非限定的な例には、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナイーブT細胞、制御性T(Treg)細胞、非制御性T細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、T濾胞性ヘルパー(Tfh)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、エフェクターT(Teff)細胞、セントラルメモリーT(Tcm)細胞、エフェクターメモリーT(Tem)細胞、CD45RAを発現するエフェクターメモリーT細胞(TEMRA細胞)、組織常在性メモリー(Trm)細胞、バーチャルメモリーT細胞、自然メモリーT細胞、γδT細胞、及び任意の他のサブタイプのT細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、初代T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、腫瘍浸潤リンパ球、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0490】
本開示の例示的なT細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、エフェクターメモリーRA T細胞、制御性T細胞、組織浸潤リンパ球、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。多くの実施形態では、T細胞は、CCR7、CD27、CD28、及びCD45RAを発現する。いくつかの実施形態では、セントラルT細胞は、CCR7、CD27、CD28、及びCD45ROを発現する。他の実施形態では、エフェクターメモリーT細胞は、PD-1、CD27、CD28、及びCD45ROを発現する。他の実施形態では、エフェクターメモリーRA T細胞は、PD-1、CD57、及びCD45RAを発現する。
【0491】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような操作の前に、単離された初代T細胞または分化したT細胞などのT細胞を、1つ以上の増殖または活性化工程に供され得る。いくつかの実施形態では、操作されるT細胞の集団は、抗CD3抗体試薬及び抗CD28抗体試薬とのインキュベーションによって刺激または活性化される。抗CD3及び抗CD28は、これらの試薬の混合物でコーティングされたビーズの形態で適切に提供され得る。抗CD3及び抗CD28ビーズは、操作されるT細胞の集団に対して1:1の比率で適切に提供され得る。いくつかの実施形態では、インキュベーション中の培地は、1つ以上の組換えサイトカイン、例えば、組換えIL-2または組換えIL-15も含んでよい。
【0492】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたT細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離した初代T細胞は、キメラ抗原受容体(本明細書に記載のキメラ抗原受容体が挙げられるが、これに限定されない)を発現するように操作(例えば、改変)されたT細胞を含む。本明細書に記載のCARを含む、任意の好適なCARは、T細胞に含まれ得る。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、損傷細胞、異形成細胞、感染細胞、免疫原性細胞、炎症細胞、悪性細胞、化生細胞、変異細胞、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの表面上に発現する目的の抗原またはエピトープに特異的に結合する、少なくとも1つのキメラ抗原受容体に発現する。他の場合では、操作されたT細胞は、細胞が隣接する細胞、組織、または器官と近接する場合に隣接する細胞、組織、または器官において目的の生物学的効果を調節する少なくとも1つのタンパク質を細胞に発現させる改変を含む。初代T細胞を含むT細胞に対する有用な改変は、US2016/0348073及びWO2020/018620に詳細に記載されており、その開示は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0493】
いくつかの実施形態では、T細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。本明細書に記載のレンチウイルスベースの形質導入法または遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含む、任意の好適な方法を使用し、CARをT細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、またはKDM5D遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRBC、PD1、またはCTLA4遺伝子に挿入される。
【0494】
いくつかの実施形態では、操作または改変されたT細胞などの本明細書に記載のT細胞は、内因性T細胞受容体の発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、TRACまたはTRBC遺伝子座は、本明細書に記載の遺伝子編集方法(例えば、CRISPR/Casシステム)などによって細胞内で破壊または排除される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子、例えば、記載されるようなCARをコードするポリヌクレオチドまたは他のポリヌクレオチドは、破壊されたTRACまたはTRBC遺伝子座に挿入される。
【0495】
いくつかの実施形態では、操作または改変されたT細胞などの本明細書に記載のT細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)の発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、CTLA-4遺伝子座は、本明細書に記載の遺伝子編集方法(例えば、CRISPR/Casシステム)などによって細胞内で破壊または排除される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子、例えば、記載されるようなCARをコードするポリヌクレオチドまたは他の外因性ポリヌクレオチドは、破壊されたCTLA-4遺伝子座に挿入される。
【0496】
他の実施形態では、操作または改変されたT細胞などの本明細書に記載のT細胞は、プログラム細胞死(PD1)の発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、PD1遺伝子座は、本明細書に記載の遺伝子編集方法(例えば、CRISPR/Casシステム)などによって細胞内で破壊または排除される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子、例えば、記載されるようなCARをコードするポリヌクレオチドまたは他の外因性ポリヌクレオチドは、破壊されたPD1遺伝子座に挿入される。特定の実施形態では、操作または改変されたT細胞などの本明細書に記載のT細胞は、CTLA4及びPD1の発現の低減を含む。
【0497】
特定の実施形態では、操作または改変されたT細胞などの本明細書に記載のT細胞は、PD-L1の発現の増強を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1遺伝子座は、本明細書に記載の遺伝子編集方法(例えば、CRISPR/Casシステム)などによって細胞内で破壊または排除される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子、例えば、記載されるようなCARをコードするポリヌクレオチドまたは他の外因性ポリヌクレオチドは、破壊されたPD-L1遺伝子座に挿入される。
【0498】
いくつかの実施形態では、本技術は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現が低減するか、またはその発現を欠いている、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代T細胞などの操作されたT細胞に関する。特定の実施形態では、操作されたT細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞はまた、CARを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、例えば、TRAC遺伝子もしくはTRBC遺伝子におけるゲノム改変(例えば、遺伝子破壊)によって、TCR複合体分子の発現が低減するか、またはその発現を欠いている。いくつかの実施形態では、T細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)及びCARを過剰発現し、以下の遺伝子:B2M、CIITA、TRAC及びTRBC遺伝子のうちの1つ以上を破壊する遺伝子改変を保有する。
【0499】
いくつかの実施形態では、提供される操作されたT細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代T細胞は、患者(例えば、投与時のレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作されたT細胞の集団を投与することによって疾患を治療する方法が、提供される。
【0500】
本明細書で提供されるT細胞は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌を含むが、これらに限定されない、適切ながんの治療に有用である。
【0501】
b.ナチュラルキラー細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変された細胞は、初代ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの実施形態では、初代NK細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常ドナー(例えば、疾患または感染が知られていないか、またはその疑いがない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。いくつかの事例では、NK細胞は、1以上の個体からの初代NK細胞の集団またはサブ集団である。当業者であれば理解するように、個体からNK細胞を単離または入手する方法は、既知の技術を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植または生着のために、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含む操作された初代NK細胞が提供される。例えば、操作されたT細胞は、操作されたNK細胞の対象への注入によって対象(例えば、患者などのレシピエント)に投与される。
【0502】
いくつかの実施形態では、初代NK細胞は、対象または個体から得られ(例えば、採取され、抽出され、離され、または取得され)る。いくつかの実施形態では、初代NK細胞は、NK細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健康なヒトを含む1以上のヒト)に由来するようにNK細胞のプールから生成される。いくつかの実施形態では、初代NK細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、操作されたNK細胞が投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、NK細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、NK細胞のプールが得られるドナー対象のうちの1つ以上は、患者とは異なる。
【0503】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代NK細胞を含むNK細胞は、CD56を発現し(例えば、CD56dimまたはCD56bright)、CD3を欠く(例えば、CD3neg)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているようなNK細胞はまた、ADCCを媒介する低親和性Fcγ受容体CD16も発現し得る。いくつかの実施形態では、NK細胞はまた、1つ以上のナチュラルキラー細胞受容体NKG2A及びNKG2D、または1つ以上の天然細胞傷害性受容体NKp46、NKp44、NKp30も発現する。例えば、初代NK細胞の場合、特定の場合では、初代細胞は、CD3、CD14及び/またはCD19に対して陽性である細胞の枯渇によって、末梢血単核細胞(PBMC)を含有する試料などのNK細胞の出発供給源から単離され得る。例えば、細胞は、それぞれCD3、CD14及び/またはCD19に対する抗体を結合させた免疫磁気ビーズを使用して枯渇に供され、それによって、NK細胞の濃縮された集団が作製され得る。他の場合には、初代NK細胞は、CD56、CD16、NKp46及び/またはNKG2DなどのNK細胞上の1つ以上数のマーカーの存在に関して細胞を選択することによって、混合集団(例えば、PBMC)である出発供給源から単離され得る。
【0504】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような操作の前に、単離された初代NK細胞などのNK細胞を、1つ以上の増殖または活性化工程に供され得る。いくつかの実施形態では、増殖は、放射線照射される場合もされない場合もある抗原提示細胞などのフィーダー細胞とのNK細胞の培養によって達成され得る。増殖工程におけるNK細胞と抗原提示細胞(APC)の比は、例えば1:1、1:1.5、1:2または1:3などの特定の数であってもよい。特定の態様では、APCは、膜結合型IL-21(mbIL-21)を発現するように操作される。特定の態様では、APCは、IL-21、IL-15及び/またはIL-2を発現するように代替的または追加的に操作される。特定の実施形態では、増殖工程(複数可)が行われる培地は、増殖を促進するための1つ以上の薬剤、例えば、1つ以上の組換えサイトカインを含む。特定の実施形態では、培地は、IL-2、IL-15、IL-18及び/またはIL-21からの1つ以上の組換えサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような改変を導入することによってNK細胞を操作するための工程は、増殖の開始から2~12日後、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12日目、または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12日目に実施される。
【0505】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたNK細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離した初代NK細胞は、キメラ抗原受容体(本明細書に記載のキメラ抗原受容体が挙げられるが、これに限定されない)を発現するように操作(例えば、改変)されたNK細胞を含む。本明細書に記載のCARを含む任意の好適なCARが、NK細胞に含まれ得る。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、損傷細胞、異形成細胞、感染細胞、免疫原性細胞、炎症細胞、悪性細胞、化生細胞、変異細胞、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの表面上に発現する目的の抗原またはエピトープに特異的に結合する、少なくとも1つのキメラ抗原受容体を発現する。他の場合では、操作されたNK細胞は、細胞が隣接する細胞、組織、または器官と近接する場合に隣接する細胞、組織、または器官において目的の生物学的効果を調節する少なくとも1つのタンパク質を細胞に発現させる改変を含む。
【0506】
いくつかの実施形態では、NK細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。本明細書に記載のレンチウイルスベースの形質導入法または遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含む、任意の好適な方法を使用し、CARをNK細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座、例えば、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、またはKDM5D遺伝子座に挿入される。
【0507】
いくつかの実施形態では、本技術は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現が低減するか、またはその発現を欠いている、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代NK細胞などの操作されたNK細胞に関する。特定の実施形態では、操作されたNK細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞はまた、CARを発現するように操作される。
【0508】
いくつかの実施形態では、提供される操作されたNK細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたNK細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代NK細胞は、患者(例えば、投与時のレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作されたNK細胞の集団を投与することによって疾患を治療する方法が、提供される。
【0509】
本明細書で提供されるNK細胞は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌を含むが、これらに限定されない、適切ながんの治療に有用である。
【0510】
c.β膵島細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変された細胞は、初代膵島細胞である。いくつかの実施形態では、初代膵島細胞は、初代膵島細胞のクラスターである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変された細胞は、初代β膵島細胞(膵臓膵島細胞または膵臓β膵島細胞とも称される)である。いくつかの実施形態では、初代β膵島細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常ドナー(例えば、疾患または感染が知られていないか、またはその疑いがない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者であれば理解するように、個体からβ膵島細胞を単離または入手する方法は、既知の技術を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植または生着のために、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含む操作された初代β膵島細胞が提供される。
【0511】
いくつかの実施形態では、β膵島細胞は、対象または個体から得られ(例えば、採取され、抽出され、離され、または取得され)る。いくつかの実施形態では、初代β膵島細胞は、β膵島細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健康なヒトを含む1以上のヒト)に由来するようにβ膵島細胞のプールから生成される。いくつかの実施形態では、初代β膵島細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療細胞が投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、β膵島細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、β膵島細胞のプールが得られるドナー対象のうちの1つ以上は、患者とは異なる。
【0512】
本技術における使用のためを含む膵臓膵島細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0513】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代β膵島細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された内皮細胞などの、操作されたβ膵島細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖される。特定の実施形態では、操作されたβ膵島細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0514】
例示的な膵臓膵島細胞種には、膵島前駆細胞、未成熟膵臓膵島細胞、成熟膵臓膵島細胞などが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の膵臓細胞は、糖尿病を治療するために対象に投与される。
【0515】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように操作された膵臓膵島細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代β膵島細胞は、インスリンを分泌する。いくつかの実施形態では、膵臓膵島細胞は、内因性膵臓膵島細胞の少なくとも2つの性質、例えば、限定されないが、グルコースに応答したインスリンの分泌、及びβ膵島細胞マーカーの発現を示す。
【0516】
例示的なβ膵島細胞マーカーまたはβ膵島細胞前駆細胞マーカーには、cペプチド、Pdx1、グルコース輸送体2(Glut2)、HNF6、VEGF、グルコキナーゼ(GCK)、プロホルモン変換酵素(PC1/3)、Cdcpl、NeuroD、Ngn3、Nkx2.2、Nkx6.1、Nkx6.2、Pax4、Pax6、Ptf1a、Isl1、Sox9、Sox17、及びFoxA2が含まれるが、これらに限定されない。
【0517】
いくつかの実施形態では、初代膵臓β膵島細胞は、初代膵島から単離されたものであっても、初代膵島内の初代膵臓β膵島細胞に由来するものであっても、または初代膵島の成分としてであってもよい。例えば、初代膵臓β膵島細胞は、単一のβ膵島細胞、β膵島細胞の集団として、または初代膵島の成分(例えば、他の細胞種と共に初代膵島内に存在する初代膵臓β膵島細胞)として、編集され得る。別の例として、初代膵臓β膵島細胞は、単一のβ膵島細胞、β膵島細胞の集団として、または初代膵島の成分(例えば、他の細胞種と共に初代膵島内に存在する初代膵臓β膵島細胞)として、患者に対して投与され得る。膵臓β膵島細胞が他の細胞種と共に膵島内に存在する実施形態では、他の細胞種も本明細書に記載の方法によって編集され得る。
【0518】
いくつかの実施形態では、初代膵臓膵島細胞は、遺伝子工学などの操作前または操作後に初代膵島から解離される。このような解離した膵島細胞は、患者に投与する前にクラスター化することができ、クラスターには、β膵島細胞、ならびに限定されないが初代膵島由来のものを含む他の細胞種が含まれ得る。クラスターの膵島細胞の数は、約50、約100、約250、約500、約750、約1000、約1250、約1500、約1750、約2000、約2250、約2500、約2750、約3000、約3500、約4000、約4500、または約5000の細胞など、様々であり得る。患者は、約10、約20、約30、約40、約50、約75、約100、約125、約150、約200、約250、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、約500、約600、約700、約800、約900、または約1000のクラスターを投与され得る。
【0519】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代膵臓膵島細胞は、グルコースの増加に応答してインスリンを産生する。いくつかの実施形態では、膵臓膵島細胞は、β膵島細胞である。いくつかの実施形態では、β膵島細胞は、グルコース制御能力を評価するために監視される。グルコース制御を監視するためのアッセイには、継続的な血糖値モニタリング、一定期間の絶食後の血糖値の監視、耐糖能(例えば、糖負荷)試験、ブドウ糖の利用及び酸化、U-PLEX(登録商標)Meso Scale Discovery(MSD)アッセイ及び/またはグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)アッセイによるなどのインスリン分泌、特定の転写因子及び経路(例えば、ホメオボックス転写因子SIX2、NKX6-1及びPDX1)の存在の測定、ミトコンドリア呼吸の測定、ならびにグルコース誘導性Ca2+上昇、Ca2+活性化エキソサイトーシスなどの細胞内Ca2+カルシウム流動の変化の測定などが含まれるが、これらに限定されない。グルコース制御を測定する様々な方法は、Velazco-Cruz et al.,Cell Reports,2020,31,107687、Pagliuca et al.,Cell,2014,159(2):428-439、Davis et al.,Cell Reports,2020,31(6):107623、及びAlcazar et al.,Cell Transplantation,2020,29に記載されているものなど当技術分野で公知であり、図、図の凡例、及び方法の説明を含む開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、β膵島細胞(例えば、操作されたβ膵島細胞)は、GSISを示し得る。いくつかの実施形態では、GSISは、灌流GSISアッセイで測定される。いくつかの実施形態では、GSISは、第1相及び第2相の動的インスリン分泌を含む動的GSISである。いくつかの実施形態では、GSISは、静的GSISである。例えば、静的インキュベーション指数は、1もしくは約1よりも大きく、2もしくは約2よりも大きく、5もしくは約5よりも大きく、10もしくは約10よりも大きく、または20もしくは約20よりも大きくてもよい。様々な実施形態では、膵臓膵島細胞は、グルコースの増加に応答してインスリンを分泌する。いくつかの実施形態では、細胞は、敷石状細胞形態及び/または約17pm~約25pmの直径などの特有の形態を有する。
【0520】
いくつかの実施形態では、本技術は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現が低減するか、またはその発現を欠いている、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代β膵島細胞などの操作されたβ膵島細胞に関する。特定の実施形態では、操作されたβ膵島細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作されたβ膵島細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作されたβ膵島細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子:B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つ以上を破壊する遺伝子改変を保有する。
【0521】
いくつかの実施形態では、提供される操作されたβ膵島細胞は、免疫認識を回避する。例えば、操作されたβ膵島細胞は、NK細胞媒介性細胞殺傷、マクロファージ媒介性細胞殺傷、及び/またはPBMC媒介性細胞殺傷を回避することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたβ膵島細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代β膵島細胞は、患者(例えば、投与時のレシピエント)において免疫応答を活性化しない。例えば、移植後、操作されたβ膵島細胞を投与された対象は、野生型β膵島細胞を投与された対象と比較して、低いレベルのインターフェロンγ(IFNg)を示してもよい。同様に、移植後、操作されたβ膵島細胞を投与された対象は、野生型β膵島細胞を投与された対象と比較して、低いレベルのドナー特異的抗体(DSA)結合(例えば、IgGまたはIgM)を示してもよい。その必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作されたβ膵島細胞の集団を投与することによって疾患を治療する方法が、提供される。いくつかの実施形態では、疾患は、I型糖尿病またはII型糖尿病などの糖尿病である。
【0522】
d.内皮細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変された細胞は、初代内皮細胞である。いくつかの実施形態では、初代内皮細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常ドナー(例えば、疾患または感染が知られていないか、またはその疑いがない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者であれば理解するように、個体から内皮細胞を単離または入手する方法は、既知の技術を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植または生着のために、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含む操作された初代内皮細胞種が提供される。
【0523】
いくつかの実施形態では、初代内皮細胞は、対象または個体から得られ(例えば、採取され、抽出され、離され、または取得され)る。いくつかの実施形態では、初代内皮細胞は、内皮細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健康なヒトを含む1以上のヒト)に由来するように内皮細胞のプールから生成される。いくつかの実施形態では、初代内皮細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療細胞が投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、内皮細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、内皮細胞のプールが得られるドナー対象のうちの1つ以上は、患者とは異なる。
【0524】
本明細書で提供される方法における使用に向けた内皮細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0525】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代内皮細胞などの操作された内皮細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖される。特定の実施形態では、操作された内皮細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0526】
いくつかの実施形態では、本技術は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現が低減するか、またはその発現を欠いている、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代内皮細胞などの操作された内皮細胞に関する。特定の実施形態では、操作された内皮細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された内皮細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された内皮細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子:B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つ以上を破壊する遺伝子改変を保有する。
【0527】
いくつかの実施形態では、提供される操作された内皮細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された内皮細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代内皮細胞は、患者(例えば、投与時のレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された内皮細胞の集団を投与することによって疾患を治療する方法が、提供される。
【0528】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代内皮細胞などの操作された内皮細胞は、患者、例えば、それを必要とするヒト患者に投与される。操作された内皮細胞は、限定されないが、心血管疾患、血管疾患、末梢血管疾患、虚血性疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管閉塞性疾患、脳卒中、再灌流損傷、肢虚血、ニューロパチー(例えば、末梢ニューロパチーまたは糖尿病性ニューロパチー)、臓器不全(例えば、肝臓不全、腎臓不全など)、糖尿病、関節リウマチ、骨粗鬆症、血管損傷、組織損傷、高血圧症、冠動脈疾患に起因する狭心症及び心筋梗塞、腎血管性高血圧症、腎動脈狭窄に起因する腎不全、下肢の跛行などのような疾患または状態を患う患者に投与することができる。特定の実施形態では、患者は、一過性の虚血性発作または脳卒中を患ったことがあるか、またはそれを患っており、これは場合によっては、脳血管疾患に起因し得る。いくつかの実施形態では、操作された内皮細胞は、例えば、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、及び肢虚血において起こるような組織虚血を治療するため、ならびに損傷した血管を修復するために投与される。いくつかの事例では、細胞は、移植片の生体工学で使用される。
【0529】
例えば、操作された内皮細胞は、虚血組織の修復、血管及び心臓弁の形成、人工血管の工学、損傷を受けた血管の修復、ならびに操作された組織における血管の形成の誘導(例えば、移植前)のために細胞療法で使用され得る。そのうえ、内皮細胞は、作用物質を標的に送達し、腫瘍を治療するように更に改変され得る。
【0530】
多くの実施形態では、血管細胞または血管新生を必要とする組織の修復または置換方法が本明細書で提供される。方法は、このような治療を必要とするヒト患者に、このような組織における血管新生を促進するために単離された初代内皮細胞または分化された内皮細胞などの操作された内皮細胞を含有する組成物を投与することを伴う。血管細胞または血管新生を必要とする組織は、とりわけ、心臓組織、肝臓組織、膵臓組織、腎組織、筋組織、神経組織、骨組織であり得、これは損傷を受けた、過剰な細胞死を特徴とする組織、損傷の危険性がある組織、または人工的に操作された組織であり得る。
【0531】
いくつかの実施形態では、心疾患または障害に関連し得る血管疾患は、限定されないが、本明細書に記載されるように派生させた最終的な血管内皮細胞及び心内膜内皮細胞などの内皮細胞を投与することによって治療することができる。このような血管疾患には、冠動脈疾患、脳血管疾患、大動脈狭窄、大動脈瘤、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、静脈瘤、血管障害、冠灌流を欠いた心臓の梗塞領域、非治癒性創傷、糖尿病性もしくは非糖尿病性潰瘍、または血管の形成の誘導が望ましい任意の他の疾患もしくは障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0532】
特定の実施形態では、内皮細胞は、血管再建手術で使用される補綴インプラント(例えば、Dacron及びGortexなどの合成材料で作製された血管)を改善するために使用される。例えば、重要な臓器または肢を灌流する病変動脈を置換するために、補綴動脈移植片が使用される場合が多い。他の実施形態では、操作された内皮細胞は、弁表面での血栓形成性を下げることによって塞栓形成の危険性を低下させるように補綴心臓弁の表面を覆うために使用される。
【0533】
概説される内皮細胞は、組織及び/または単離された細胞を血管に移植するための周知の外科的技法を使用して、患者に移植することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、注射(例えば、心筋内注射、冠動脈内注射、経心内膜注射、経心外膜注射、経皮注射)、注入、移植、及び埋め込みによって患者の心臓組織に導入される。
【0534】
内皮細胞の投与(送達)には、静脈内、動脈内(例えば、冠動脈内)、筋肉内、腹腔内、心筋内、経心内膜、経心外膜、鼻腔内投与ならびに髄腔内、及び注入技法を含む、皮下または非経口が含まれるが、これらに限定されない。
【0535】
当業者には理解されようが、細胞は、細胞種及びこれらの細胞の最終的用途の両方に依存する当技術分野で既知の技法を使用して移植される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、患者において静脈内にまたは特定の箇所での注射によってのいずれかで移植される。特定の部位に移植する場合、細胞は、それらが定着する間の分散を防止するためにゲルマトリックス中に懸濁させてもよい。
【0536】
例示的な内皮細胞種には、毛細血管内皮細胞、血管内皮細胞、大動脈内皮細胞、動脈内皮細胞、静脈内皮細胞、腎内皮細胞、脳内皮細胞、肝臓内皮細胞などが含まれるが、これらに限定されない。
【0537】
単離された初代内皮細胞など本明細書に概説される内皮細胞は、1つ以上の内皮細胞マーカーを発現し得る。このようなマーカーの非限定的な例としては、VE-カドヘリン(CD144)、ACE(アンジオテンシン変換酵素)(CD143)、BNH9/BNF13、CD31、CD34、CD54(ICAM-l)、CD62E(E-セレクチン)、CD105(エンドグリン)、CD146、エンドカン(ESM-l)、エンドグリクス-l、エンドムチン、エオタキシン-3、EPAS1(内皮PASドメインタンパク質1)、第VIII因子関連抗原、FLI-l、Flk-l(KDR、VEGFR-2)、FLT-l(VEGFR-l)、GATA2、GBP-l(グアニル酸結合タンパク質-l)、GRO-アルファ、HEX、ICAM-2(細胞間接着分子2)、LM02、LYVE-l、MRB(マジックラウンドアバウト(magic roundabout))、ヌクレオリン、PAL-E(病理解剖学的ライデン内皮(pathologische anatomie Leiden-endothelium))、RTK、sVCAM-l、TALI、TEM1(腫瘍内皮マーカー1)、TEM5(腫瘍内皮マーカー5)、TEM7(腫瘍内皮マーカー7)、トロンボモジュリン(TM、CD141)、VCAM-l(血管細胞接着分子-1)(CD106)、VEGF、vWF(フォン・ヴィレブランド因子)、ZO-l、内皮細胞選択的接着分子(ESAM)、CD102、CD93、CD184、CD304、及びDLL4が挙げられる。
【0538】
いくつかの実施形態では、内皮細胞は、障害/病態を治療するかまたは障害/病態の症状を改善させるのに有用である、限定されないが酵素、ホルモン、受容体、リガンド、または薬物などの目的のタンパク質をコードする外因性遺伝子を発現するように、更に遺伝子改変される。内皮細胞を遺伝子改変するための標準的方法は、例えば、US5,674,722に記載される。
【0539】
このような内皮細胞を使用し、疾患の予防または治療において有用であるポリペプチドまたはタンパク質の構成的合成及び送達を提供することができる。このようにして、ポリペプチドは、個体の血流または身体の他の領域(例えば、中枢神経系)中に直接分泌される。いくつかの実施形態では、内皮細胞は、インスリン、血液凝固因子(例えば、第VIII因子またはフォン・ヴィレブランド因子)、アルファ-1抗トリプシン、アデノシンデアミナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3)などを分泌するように改変され得る。
【0540】
特定の実施形態では、内皮細胞は、埋め込まれた移植片の関連においてそれらの性能を改善するように改変され得る。非限定的で例示的な例としては、管腔内血塊形成を予防するための血栓溶解物質の分泌または発現、平滑筋肥大に起因する管腔狭窄を予防するための平滑筋増殖の阻害物質の分泌、ならびに内皮細胞増殖を刺激し、移植片管腔の内皮細胞による裏打ちの範囲または持続期間を改善するための内皮細胞分裂促進因子または自己分泌因子の発現及び/または分泌が挙げられる。
【0541】
いくつかの実施形態では、操作された内皮細胞は、治療的レベルの分泌産物を特定の臓器または肢に送達するのに利用される。例えば、in vitroで操作された(形質導入された)内皮細胞で裏打ちされた血管インプラントが、特定の臓器または肢に移植され得る。形質導入された内皮細胞の分泌産物は、灌流組織に高濃度で送達され、それによって標的とする解剖学的位置への所望の効果を達成するであろう。
【0542】
他の実施形態では、内皮細胞は、血管新生化している腫瘍において、内皮細胞によって発現されるときに血管新生を妨害または阻害する遺伝子を含有するように、更に遺伝子改変される。場合によっては、内皮細胞はまた、腫瘍治療の完了時に移植された内皮細胞の負の選択を可能にする、本明細書に記載の選択可能自殺遺伝子のうちのいずれか1つを発現するように遺伝子改変され得る。
【0543】
いくつかの実施形態では、単離された初代内皮細胞などの本明細書に記載の内皮細胞は、血管損傷、心血管疾患、血管疾患、末梢血管疾患、虚血性疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管閉塞性疾患、高血圧症、虚血性組織損傷、再灌流損傷、肢虚血、脳卒中、ニューロパチー(例えば、末梢ニューロパチーまたは糖尿病性ニューロパチー)、臓器不全(例えば、肝不全、腎不全など)、糖尿病、関節リウマチ、骨粗鬆症、脳血管疾患、高血圧症、冠動脈疾患に起因する狭心症及び心筋梗塞、腎血管高血圧症、腎動脈狭窄に起因する腎不全、下肢の跛行、他の血管病態または疾患からなる群から選択される血管障害を治療するためにレシピエント対象に投与される。
【0544】
e.上皮細胞
1)網膜色素上皮(RPE)細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変された細胞は、網膜色素上皮(RPE)細胞である。いくつかの実施形態では、初代RPE細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常ドナー(例えば、疾患または感染が知られていないか、またはその疑いがない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者であれば理解するように、個体からRPE細胞を単離または入手する方法は、既知の技術を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植または生着のために、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含む操作された初代RPE細胞が提供される。
【0545】
いくつかの実施形態では、初代RPE細胞は、対象または個体から得られ(例えば、採取され、抽出され、離され、または取得され)る。いくつかの実施形態では、初代RPE細胞は、RPE細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健康なヒトを含む1以上のヒト)に由来するようにRPE細胞のプールから生成される。いくつかの実施形態では、初代RPE細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療細胞が投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、RPE細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、RPE細胞のプールが得られるドナー対象のうちの1つ以上は、患者とは異なる。
【0546】
本技術における使用のための方法を含むRPE細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0547】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代RPE細胞などの操作されたRPE細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖される。特定の実施形態では、操作されたRPE細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0548】
例となるRPE細胞種には、網膜色素上皮(RPE)細胞、RPE前駆細胞、未成熟RPE細胞、成熟RPE細胞、機能的RPE細胞などが含まれるが、これらに限定されない。
【0549】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代RPE細胞などのRPE細胞は、天然RPE細胞の遺伝子発現プロファイルと類似または実質的に類似の遺伝子発現プロファイルを有する。このようなRPE細胞は、平面基板上でコンフルエントの状態まで増殖させたときに、天然RPE細胞の多角形平面状シート形態を有してもよい。
【0550】
いくつかの実施形態では、本技術は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現が低減するか、またはその発現を欠いている、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代RPE細胞などの操作されたRPE細胞に関する。特定の実施形態では、操作されたRPE細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作されたRPE細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作されたRPE細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子:B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つ以上を破壊する遺伝子改変を保有する。
【0551】
いくつかの実施形態では、提供される操作されたRPE細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたRPE細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代RPE細胞は、患者(例えば、投与時のレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作されたRPE細胞の集団を投与することによって疾患を治療する方法が、提供される。
【0552】
RPE細胞は、黄斑変性を患う患者または損傷を受けたRPE細胞を有する患者に移植することができる。いくつかの実施形態では、患者は、加齢黄斑変性(AMD)、初期AMD、中期AMD、後期AMD、新生血管を伴わない加齢黄斑変性、ドライ型黄斑変性(ドライ型加齢黄斑変性)、ウェット型黄斑変性(ウェット型加齢黄斑変性)、若年性黄斑変性(JMD)(例えば、スターガルト病、ベスト病、及び若年性網膜分離症)、レーバー先天性黒内障、または網膜色素変性症を有する。他の実施形態では、患者は、網膜剥離を患う。
【0553】
2)甲状腺細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変された細胞は、初代甲状腺細胞である。いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常ドナー(例えば、疾患または感染が知られていないか、またはその疑いがない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者であれば理解するように、個体から甲状腺細胞を単離または入手する方法は、既知の技術を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植または生着のために、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含む操作された初代甲状腺細胞が提供される。
【0554】
いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞は、対象または個体から得られ(例えば、採取され、抽出され、離され、または取得され)る。いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞は、甲状腺細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健康なヒトを含む1以上のヒト)に由来するように甲状腺細胞のプールから生成される。いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療細胞が投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、甲状腺細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、甲状腺細胞のプールが得られるドナー対象のうちの1つ以上は、患者とは異なる。
【0555】
いくつかの実施形態では、本技術は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現が低減するか、またはその発現を欠いている、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代甲状腺細胞などの操作された甲状腺細胞に関する。特定の実施形態では、操作された甲状腺細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された甲状腺細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された甲状腺細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子:B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つ以上を破壊する遺伝子改変を保有する。
【0556】
いくつかの実施形態では、提供される操作された甲状腺細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された甲状腺細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代甲状腺細胞は、患者(例えば、投与時のレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された内皮細胞の集団を投与することによって疾患を治療する方法が、提供される。
【0557】
f.肝細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変された細胞は、初代肝細胞である。いくつかの実施形態では、初代肝細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常ドナー(例えば、疾患または感染が知られていないか、またはその疑いがない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者であれば理解するように、個体から肝細胞を単離または入手する方法は、既知の技術を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植または生着のために、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含む操作された初代肝細胞が提供される。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、肝細胞機能の喪失または肝硬変に対処するための細胞療法として投与され得る。
【0558】
いくつかの実施形態では、初代肝細胞は、対象または個体から得られ(例えば、採取され、抽出され、離され、または取得され)る。いくつかの実施形態では、初代肝細胞は、肝細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健康なヒトを含む1以上のヒト)に由来するように肝細胞のプールから生成される。いくつかの実施形態では、初代肝細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療細胞が投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、肝細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、肝細胞のプールが得られるドナー対象のうちの1つ以上は、患者とは異なる。
【0559】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代肝細胞などの操作された肝細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖される。特定の実施形態では、操作された肝細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0560】
いくつかの実施形態では、本技術は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現が低減するか、またはその発現を欠いている、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代肝細胞などの操作された肝細胞に関する。特定の実施形態では、操作された肝細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された肝細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された肝細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子:B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つ以上を破壊する遺伝子改変を保有する。
【0561】
いくつかの実施形態では、提供される操作された肝細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された肝細胞、例えば、1以上の個々のドナー(例えば、健常ドナー)から単離された初代肝細胞は、患者(例えば、投与時のレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された肝細胞の集団を投与することによって疾患を治療する方法が、提供される。
【0562】
g.心臓細胞
本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)のための心臓細胞種が提供される。
【0563】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の心臓細胞は、小児期心筋症、加齢性心筋症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、慢性虚血性心筋症、周産期心筋症、炎症性心筋症、特発性心筋症、他の心筋症、心筋虚血再灌流傷害、心室機能不全、心不全、うっ血性心不全、冠動脈疾患、末期心疾患、アテローム性動脈硬化症、虚血、高血圧症、再狭窄、狭心症、リウマチ性心臓、動脈炎症、心血管疾患、心筋梗塞、心筋虚血、うっ血性心不全、心筋梗塞、心虚血、心外傷、心筋虚血、血管疾患、後天性心疾患、先天性心疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、機能不全の伝導系、機能不全の冠動脈、肺高血圧症、心不整脈、筋ジストロフィー、筋肉量異常、筋肉変性、心筋炎、感染性心筋炎、薬物または毒素誘発性筋肉異常、過敏性心筋炎、及び自己免疫心内膜炎からなる群から選択される心障害を治療するために、レシピエント対象に投与される。
【0564】
したがって、本明細書では、その必要がある対象における、心外傷または心疾患もしくは障害の治療及び予防のための方法が提供される。本明細書に記載の方法を使用し、いくつかの心疾患またはそれらの症状、例えば、心臓の構造及び/または機能への病理学的損傷をもたらすものを治療するか、改善させるか、予防するか、またはその進行を緩徐化することができる。「心臓疾患」、「心臓障害」、及び「心臓外傷」という用語は、本明細書で互換的に使用され、弁、内皮、梗塞領域、または心臓の他の構成要素もしくは構造を含めた心臓に関係する状態及び/または障害を指す。このような心臓疾患または心臓関連疾患には、とりわけ、心筋梗塞、心不全、心筋症、先天性心臓欠陥、心臓弁疾患または機能不全、心内膜炎、リウマチ熱、僧帽弁逸脱症、感染性心内膜炎、肥大型心筋症、拡張型心筋症、心筋炎、心肥大、及び/または僧帽弁閉鎖不全症が含まれるが、これらに限定されない。
【0565】
いくつかの実施形態では、操作された心臓細胞の集団は、投与前に培養中に維持され、場合によっては増殖される。特定の実施形態では、操作された心臓細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0566】
いくつかの実施形態では、本技術は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現が低減するか、またはその発現を欠いている、操作された心臓細胞に関する。特定の実施形態では、操作された心臓細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された心臓細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された心臓細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子:B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つ以上を破壊する遺伝子改変を保有する。
【0567】
いくつかの実施形態では、提供される操作された心臓細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された心臓細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された心臓細胞の集団を投与することによって疾患を治療する方法が、提供される。
【0568】
いくつかの実施形態では、投与は、対象の心臓組織内への埋め込み、静脈内注射、動脈内注射、冠動脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、心筋内注射、経心内膜注射、経心外膜注射、または輸注を含む。
【0569】
いくつかの実施形態では、操作された心臓細胞を投与される患者はまた、心臓薬も投与される。併用療法において使用するのに好適である心臓薬の例示的な例としては、成長因子、成長因子をコードするポリヌクレオチド、血管新生剤、カルシウムチャネル遮断薬、血圧降下剤、有糸分裂阻害剤、変力作用剤、アテローム生成抑制剤、抗凝血薬、ベータ遮断薬、抗不整脈剤、抗炎症剤、血管拡張剤、血栓溶解剤、強心配糖体、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、原虫を阻害する薬剤、硝酸塩、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP);抗新生細胞剤、ステロイドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0570】
本明細書で提供される方法による療法の効果は、様々な方式で監視され得る。例えば、心電図(ECG)またはホルターモニター(holier monitor)を利用して、治療の有効性を決定することができる。ECGは、心臓のリズム及び電気インパルスの尺度であり、療法が対象の心臓における電気伝導を改善もしくは維持、予防、またはその性能低下を緩徐化したかどうかを決定するために非常に有効で非侵襲的な方法である。心臓異常、不整脈障害などを監視するために長時間にわたって装着され得る携帯型ECGであるホルターモニターの使用もまた、療法の有効性を評定するための信頼のおける方法である。ECGまたは核研究を使用して、心室機能の改善を決定することができる。
【0571】
h.神経細胞
本明細書では、レシピエント対象へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)に有用である、異なる神経細胞種が提供される。例となる神経細胞種には、脳内皮細胞、ニューロン(例えば、ドーパミン作動性ニューロン)、グリア細胞などが含まれるが、これらに限定されない。
【0572】
いくつかの実施形態では、操作された神経細胞の集団は、投与前に培養中に維持され、場合によっては増殖される。特定の実施形態では、操作された神経細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0573】
いくつかの実施形態では、本技術は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現が低減するか、またはその発現を欠いている、操作された神経細胞に関する。特定の実施形態では、操作された神経細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された神経細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子におけるゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された神経細胞は、免疫寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子:B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つ以上を破壊する遺伝子改変を保有する。
【0574】
いくつかの実施形態では、提供される操作された神経細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された神経細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された神経細胞の集団を投与することによって疾患を治療する方法が、提供される。
【0575】
いくつかの実施形態では、神経細胞は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、他の神経変性疾患または病態、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、他の神経精神性障害を治療するために対象に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の神経細胞は、脳卒中を治療または改善するために対象に投与される。いくつかの実施形態では、ニューロン及びグリア細胞は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を有する対象に投与される。
【0576】
1)脳内皮細胞
いくつかの実施形態では、脳内皮細胞は、脳出血の症状または影響を緩和するために投与される。いくつかの実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンは、パーキンソン病を有する患者に投与される。いくつかの実施形態では、ノルアドレナリン作動性ニューロン、GABA作動性介在ニューロンは、癲癇発作を経験した患者に投与される。いくつかの実施形態では、運動ニューロン、介在ニューロン、シュワン細胞、乏突起膠細胞、及びミクログリアは、脊髄損傷を経験した患者に投与される。
【0577】
2)ドーパミン作動性ニューロン
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のHIP細胞は、ドーパミン作動性ニューロンである。
【0578】
場合によっては、「ドーパミン作動性ニューロン」という用語は、ドーパミン合成のための律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)を発現するニューロン細胞を含む。いくつかの実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンは、神経伝達物質ドーパミンを分泌し、ドーパミンヒドロキシラーゼをほとんどまたはまったく発現しない。ドーパミン作動性(DA)ニューロンは、以下のマーカー:ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、1-芳香族アミノ酸脱炭酸酵素、小胞モノアミン輸送体2、ドーパミン輸送体、Nurr-1、及びドーパミン-2受容体(D2受容体)のうちの1つ以上を発現することができる。
【0579】
いくつかの実施形態では、DAニューロンは、神経変性疾患または状態を治療するために患者、例えば、ヒト患者に投与される。場合によっては、神経変性疾患または状態は、パーキンソン病、ハンチントン病、及び多発性硬化症からなる群から選択される。他の実施形態では、DAニューロンは、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、及びうつ病などの神経精神性障害の1つ以上の症状を治療または改善するために使用される。更なる他の実施形態では、DAニューロンは、障害のあるDAニューロンを有する患者を治療するために使用される。
【0580】
いくつかの実施形態では、分化したDAニューロンは、患者において静脈内にまたは特定の部位での注射によってのいずれかで移植される。いくつかの実施形態では、DA細胞は、パーキンソン病をもたらした変性を有するDAニューロンを置換するために、脳の黒質(特に緻密部内にまたはそれに隣接して)、腹側被蓋野(VTA)、尾状核、被殻、側坐核、視床下核、またはこれらの任意の組み合わせに移植される。DA細胞は、細胞懸濁液として標的領域に注射することができる。あるいは、DA細胞は、支持マトリックスまたは足場に(かかる送達デバイス内に収容された場合)埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、足場は、生分解性である。他の実施形態では、足場は、生分解性ではない。足場は、天然または合成(人工)材料を含み得る。
【0581】
DAニューロンの送達は、限定されないがリポソーム、微粒子、またはマイクロカプセルなどの好適なビヒクルを使用することによって達成することができる。他の実施形態では、DAニューロンは、等張性賦形剤を含む医薬組成物中で投与される。医薬組成物は、ヒト投与のために十分に滅菌された条件下で調製される。いくつかの実施形態では、DAは、医薬組成物の形態で供給される。
【0582】
3)グリア細胞
いくつかの実施形態では、記載される神経細胞には、限定されないが、ミクログリア、星状細胞、乏突起膠細胞、上衣細胞、及びシュワン細胞、グリア前駆体、ならびにグリア前駆細胞などのグリア細胞が含まれる。
【0583】
脊髄損傷に対する神経細胞移植の有効性は、例えば、McDonald et al.,Nat.Med.,1999,5:1410及びKim et al.,Nature,2002,418:50によって記載されるような、急性脊髄損傷のラットモデルにおいて評定することができる。例えば、移植の成功は、2~5週間後の病変における移植由来の細胞の存在、星状細胞、乏突起膠細胞、及び/またはニューロンへの分化、病変端部から脊髄に沿った移動、ならびに歩行、協調、及び体重負荷の改善を示し得る。具体的な動物モデルは、神経細胞種及び治療される神経学的疾患または神経学的病態に基づいて選択される。
【0584】
神経細胞は、それらが意図される組織部位に生着し、機能的に不全の領域を再構成または再生することを可能にする様態で投与することができる。例えば、神経細胞は、治療されている疾患に応じて、中枢神経系の実質部位または髄腔内部位に直接移植することができる。いくつかの実施形態では、脳内皮細胞、ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、上衣細胞、星状細胞、ミクログリア細胞、乏突起膠細胞、及びシュワン細胞を含めた、本明細書に記載の神経細胞のうちのいずれも、静脈内、脊髄内、脳室内、髄腔内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、腹部内、眼内、眼球後、及びこれらの組み合わせを介して患者に注射される。いくつかの実施形態では、細胞は、ボーラス注射または持続注入の形態で注射または移植(deposited)される。特定の実施形態では、神経細胞は、脳内に、脳に適切(apposite)に、及びこれらの組み合わせへの注射によって投与される。注射は、例えば、対象の頭蓋に作製された穿頭孔を通して行うことができる。脳への神経細胞の投与に好適な部位には、脳室、側脳室、大槽、被殻、基底核、海馬皮質、線条体、脳の尾状領域、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0585】
本技術における使用に向けたドーパミン作動性ニューロンを含めた神経細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0586】
2.幹細胞
いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞または前駆細胞(例えば、iPSC、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞もしくは前駆細胞、生殖細胞系幹細胞、肺幹細胞もしくは前駆細胞、乳腺幹細胞、嗅覚成体幹細胞、毛包幹細胞、複能性幹細胞、羊水幹細胞、臍帯血幹細胞、または神経幹細胞もしくは前駆細胞)である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、成体幹細胞(例えば、体性幹細胞または組織特異的幹細胞)である。いくつかの実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、分化させることができる(例えば、幹細胞は、全能性、多能性、または複能性である)。いくつかの実施形態では、細胞は、筋細胞、赤血球-巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、膵島β細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、α細胞、β細胞、δ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、または褐色脂肪細胞へとマニピュレートされる(例えば、変換または分化させられる)。
【0587】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作された細胞は、人工多能性幹細胞であるか、または人工多能性幹細胞に由来するか、もしくはそれから分化した操作された細胞である。マウス及びヒト多能性幹細胞(一般にiPSC;マウス細胞の場合はmiPSCまたはヒト細胞の場合はhiPSCと称される)の生成は一般的に、当技術分野で知られている。当業者によって理解されるように、iPCSの生成のための多様な異なる方法が存在する。元来の誘導は、4つの転写因子であるOct3/4、Sox2、c-Myc及びKlf4のウイルス導入を使用してマウス胚または成体線維芽細胞から行われる;Takahashi and Yamanaka Cell 126:663-676(2006)(それに概説された技術についてその全体が具体的に参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。それ以来、いくつかの方法が開発されてきた。概観についてはSeki et al,World J.Stem Cells 7(1):116-125(2015)、及びLakshmipathy and Vermuri,editors,Methods in Molecular Biology:Pluripotent Stem Cells,Methods and Protocols,Springer 2013を参照されたく、同文献はいずれも、参照によりそれらの全体が、とりわけhiPSCを生成するための方法(例えば、後者の参考文献の第3章を参照されたい)に関して本明細書に明示的に組み込まれる。
【0588】
通常、iPSCは、エピソームベクターを使用して通常導入される、宿主細胞における1つ以上の再プログラム化因子」の一過性発現によって生成される。これらの条件下で、少量の細胞がiPSCとなるように誘導される(通常、この工程の効率は、選択マーカーが使用されないので低い)。細胞が「再プログラム化」され、多能性となると、それらは、エピソームベクター(複数可)を喪失し、内因性遺伝子を使用してその因子を生成する。
【0589】
また当業者によって理解されるように、使用され得るまたは使用される再プログラム化因子の数は様々であり得る。一般的に、より少ない再プログラム化因子が使用される場合、「多能性」だけでなく、多能性状態への細胞の形質転換の効率が低下し、例えば、より少ない再プログラム化因子は、十分に多能性ではないが、より少ない細胞種にのみ分化することができる場合がある細胞をもたらし得る。
【0590】
いくつかの実施形態では、単一の再プログラミング因子OCT4が使用される。他の実施形態では、2つの再プログラミング因子OCT4及びKLF4が使用される。他の実施形態では、3つの再プログラミング因子OCT4、KLF4及びSOX2が使用される。他の実施形態では、4つの再プログラミング因子OCT4、KLF4、SOX2及びc-Mycが使用される。他の実施形態では、SOKMNLT;SOX2、OCT4(POU5F1)、KLF4、MYC、NANOG、LIN28、及びSV40L T抗原から選択される5、6または7つの再プログラミング因子が使用され得る。通常、これらの再プログラミング因子遺伝子は、当技術分野で知られており、市販されているものなどのエピソームベクター上で提供される。
【0591】
いくつかの実施形態では、1つ以上の再プログラミング因子をトランスフェクトするために使用される宿主細胞は、非多能性幹細胞である。通常、当技術分野で知られているように、iPSCは、本明細書に記載される再プログラミング因子を一時的に発現させることによって、非多能性細胞、例えば、限定されないが、血液細胞、線維芽細胞などから作製される。いくつかの実施形態では、線維芽細胞などの非多能性細胞は、細胞を再プログラミングする前に、1以上の個々の対象またはドナーから取得または単離される。いくつかの実施形態では、iPSCは、1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上)の異なるドナー対象から得られた、単離された非多能性幹細胞、例えば、線維芽細胞のプールから作製される。いくつかの実施形態では、非多能性細胞、例えば、線維芽細胞は、複数の異なるドナー対象(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上)の異なるドナー対象から単離または取得され、一緒にバッチでプールされ、iPSCとして再プログラミングされ、提供される方法に従って操作される。
【0592】
いくつかの実施形態では、iPSCは、レシピエント対象(例えば、細胞を投与される患者)とは異なる1以上のドナー対象からの非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)のプールからの細胞に、1つ以上の再プログラミング因子を一過性にトランスフェクションすることによるなどに由来する。iPSCに誘導される非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、またはそれよりも多くのドナー対象から入手され得、一緒にプールすることができる。非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)は、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、50以上、または100以上のドナー対象から入手され得、一緒にプールすることができる。いくつかの実施形態では、非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)は、1以上の個体から採取され、いくつかの事例では、非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)または非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)のプールはin vitroで培養され、1つ以上の再プログラミング因子を遺伝子導入してiPSCの生成を誘導する。いくつかの実施形態では、非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)または非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)のプールは、本明細書に提供される方法に従って操作または改変される。いくつかの実施形態では、次いで、操作されたiPSCまたは操作されたiPSCのプールは、生物及び組織の任意の細胞に分化するための分化プロセスに供される。
【0593】
操作されたiPSCが生成されると、それらは、WO2016183041及びWO2018132783に記載されているように、それらの低免疫原性及び/または多能性の保持についてアッセイされ得る。いくつかの実施形態では、低免疫原性は、WO2018132783の
図13及び
図15に例示される多数の技術を使用してアッセイされる。これらの技法は、同種異系宿主への移植、及び宿主免疫系を回避する低免疫原性多能性細胞の増殖(例えば、奇形腫)に対する監視を含む。いくつかの事例では、低免疫原性多能性細胞派生物は、ルシフェラーゼを発現するように形質導入され、次いで生物発光イメージングを使用して追跡され得る。同様に、かかる細胞に対する宿主動物のT細胞及び/またはB細胞反応は、細胞が宿主動物における免疫応答を引き起こさないことを確認するために試験される。T細胞反応は、Elispot、ELISA、FACS、PCR、またはマスサイトメトリー(CYTOF)によって評価され得る。B細胞反応または抗体反応は、FACSまたはLuminexを使用して評価される。追加的にまたは代替的に、細胞は、WO2018132783の
図14及び15に全般的に示されるように、自然免疫応答、例えば、NK細胞殺傷を回避するそれらの能力についてアッセイされ得る。
【0594】
いくつかの実施形態では、細胞の免疫原性は、例えば、当業者によって認識されているT細胞増殖アッセイ、T細胞活性化アッセイ、及びT細胞殺傷アッセイなどのT細胞イムノアッセイを使用して評価される。場合によっては、T細胞増殖アッセイには、細胞をインターフェロンγで事前治療すること及び細胞を標識T細胞と共培養すること及び事前選択された時間後にT細胞集団(または、増殖しているT細胞集団)の存在をアッセイすることが含まれる。場合によっては、T細胞活性化アッセイには、T細胞を本明細書で概説される細胞と共培養すること及びT細胞におけるT細胞活性化マーカーの発現レベルを決定することが含まれる。
【0595】
in vivoアッセイは、本明細書で概説される細胞の免疫原性を評価するために実施され得る。いくつかの実施形態では、操作されたまたは改変されたiPSCの生存及び免疫原性は、同種異系ヒト化免疫不全マウスモデルを使用して決定される。いくつかの事例では、操作されたまたは改変されたiPSCは、同種異系ヒト化NSG-SGM3マウスに移植され、細胞拒絶反応、細胞生存、及び奇形腫形成に関してアッセイされる。いくつかの事例では、移植された操作されたiPSCまたはその分化細胞は、マウスモデルにおいて長期生存を示す。
【0596】
細胞の低免疫原性を含む免疫原性を決定するための追加の技術は、例えば、Deuse et al.,Nature Biotechnology,2019,37,252-258及びHan et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2019,116(21),10441-10446に記載されており、図、図の凡例、及び方法の説明を含むその開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0597】
同様に、多能性の保持は、いくつかの方式で試験される。一実施形態では、多能性は、本明細書に一般に記載されると共に、WO2018132783の
図29に示されるように、特定の多能性特異的因子の発現によってアッセイされる。追加的にまたは代替的に、多能性細胞は、多能性の指標として1つ以上の細胞種に分化される。
【0598】
ひとたび操作された多能性幹細胞(操作されたiPSC)が生成されると、それらは、iPSCの維持に関して既知であるように、未分化状態で維持され得る。例えば、細胞は、分化を防止すると共に多能性を維持する培養基を使用してマトリゲル上で培養され得る。加えて、それらは、多能性を維持するような条件下で培養基中にあることができる。
【0599】
本明細書に記載の多能性幹細胞のうちのいずれも、生物及び組織の任意の細胞に分化させることができる。一態様では、レシピエント対象へのその後の移植用にiPSCから異なる細胞種に分化させられる操作された細胞が、本明細書で提供される。分化は、一般に細胞特異的マーカーの存在を評価することによって、当技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。当業者には理解されようが、分化した操作された(例えば、低免疫原性)多能性細胞派生物は、細胞種及びこれらの細胞の最終的用途の両方に依存する当技術分野で既知の技法を使用して移植することができる。いくつかの実施形態では、iPSCは、本明細書に記載される任意の種類の細胞に分化することができる。いくつかの実施形態では、iPSCは、T細胞、NK細胞、β膵島細胞、内皮細胞、上皮(例えば、RPE、甲状腺、皮膚)細胞、または肝細胞から選択される細胞種に分化される。いくつかの実施形態では、個々のドナーまたは個々のドナーのプールからの非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)などの宿主細胞は、単離または入手され、iPSCへと生成され、ここで、iPSCは次いで本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作され、次いで所望の細胞型に分化される。
【0600】
3.ABO式血液型及びRh抗原の発現
血液産物は、ヒトの体内のすべての赤血球細胞の表面上の抗原の有無に従って、異なる群に分類され得る(ABO式血液型)。A、B、AB、及びAl抗原は、赤血球の糖タンパク質上のオリゴ糖の配列によって決定される。血液型抗原群における遺伝子は、抗原タンパク質を作製するための指示を提供する。血液型抗原タンパク質は、赤血球細胞の細胞膜内で様々な機能を果たす。これらのタンパク質の機能には、他のタンパク質及び分子を細胞内にならびに細胞から輸送すること、細胞構造を維持すること、他の細胞及び分子に付着すること、ならびに化学反応に関与することが含まれる。
【0601】
アカゲザル因子(Rh)血液型は、ABO式血液型システムに次いで2番目に重要な血液型システムである。Rh血液型システムは、49個の定義された血液型抗原からなり、この中でもD、C、c、E及びeの5個の抗原が最も重要である。個体のRh(D)ステータスは通常、ABO型の後にプラスまたはマイナスの接尾辞を付けて記載される。「Rh因子」、「Rh陽性」及び「Rh陰性」という用語は、Rh(D)抗原のみを指す。Rh抗原に対する抗体は、溶血性輸血反応に関与し得、Rh(D)及びRh(c)抗原に対する抗体は、胎児及び新生児の溶血性疾患の重大なリスクを付与する。ABO抗体は、すべてのヒトにおいて早期齢に発達する。しかし、Rh-のヒトにおけるアカゲザル抗体は、典型的には、そのヒトが感作されるときにのみ発達する。これは、例えば、Rh+の乳児を出産することによって、またはRh+血液の輸血を受けることによって起こり得る。
【0602】
A、B、H及びRh抗原は、血液、組織、及び細胞移植に向けたドナーとレシピエントとの間の組織適合性の主要な決定因子である。ABO遺伝子によってコードされるグリコシルトランスフェラーゼ活性は、細胞の表面上に提示されるA、B、AB、O組織-血液型抗原の生成を担う。A型の個体は、a(1,3)N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性の生成に対して特異性をもつABO遺伝子産物をコードし、B型の個体は、a(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ活性の生成に対して特異性をもつABO遺伝子産物をコードする。O型の個体は、機能的なガラクトシルトランスフェラーゼをまったく生成せず、したがって、いずれの改変も生成しない。AB型の個体は、それぞれのコピーを1つずつ保有し、両方の種類の改変を生成する。ABO遺伝子の酵素産物は、基質としてのH抗原に作用するため、ABO活性を欠いているO型の個体は、未改変のH抗原を提示し、したがって、O(H)型と称される場合が多い。
【0603】
H抗原自体は、FUT1遺伝子によってコードされるa(1,2)フコシルトランフエェラーゼ酵素の産物である。非常にまれな個体では、FUT1遺伝子の破壊の結果としてH抗原の完全な喪失が存在し、ABOがAまたはB組織-血液型を生成するための基質が何ら存在しなくなる。これらの個体は、ボンベイ組織-血液型と言われる。Rh抗原は、RHD遺伝子によってコードされ、Rh陰性である個体は、RHD遺伝子の欠失または破壊を保有する。
【0604】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞または細胞集団は、ABO O型Rh因子陰性である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のABO O型Rh因子陰性細胞は、ABO O型Rh因子陰性ドナーに由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のABO O型Rh因子陰性細胞は、ABO A型、ABO B型、またはRh因子抗原の提示を欠くように操作される。いくつかの実施形態では、ABO O型及び/またはRh陰性細胞は、ABO遺伝子の部分的もしくは完全な不活性化を含み(例えば、ABO遺伝子の有害な変異によって、またはABO遺伝子のエクソン6の258delG変異の挿入によって)、及び/またはRHD遺伝子の発現は、RHD遺伝子の有害な変異によって部分的または完全に不活化される。いくつかの実施形態では、ABO O型Rh陰性細胞は、FUT1遺伝子の部分的もしくは完全な不活性化を含み、及び/またはRHD遺伝子の発現は、RHD遺伝子の有害な変異によって部分的または完全に不活性化される。いくつかの実施形態では、操作されたABO O型及び/またはRh因子陰性細胞は、例えば、A型細胞からO型細胞に、B型細胞からO型細胞に、AB型細胞からO型細胞に、A型+細胞からO型-細胞に、A型-細胞からO型-細胞に、AB型+細胞からO型-細胞に、AB型-細胞からO型-細胞に、B型+細胞からO型-細胞に、及びB型-細胞からO型-細胞に改変するための遺伝子編集を使用して生成される。例示的な操作されたABO O型Rh因子陰性細胞及びその生成方法は、WO2021/146222に記載されており、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0605】
4.性染色体
特定の態様では、性染色体を有する細胞は、特定の抗原(例えば、Y抗原)を発現でき、レシピエントは、このような抗原に対する既存の感受性を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、男性胎児を妊娠したことがある女性は、男性ドナーからの細胞を拒絶する可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、ドナーは男性であり、レシピエントは男性である。いくつかの実施形態では、ドナーは女性であり、レシピエントは女性である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、プロトカドヘリンY及び/またはニューロリギンYなどの抗原の発現を低減させる改変を含む。いくつかの実施形態では、プロトカドヘリンYをコードする遺伝子(PCDH11Y、Ensembl ID ENSG00000099715)は、操作された細胞において低減または排除、例えば、ノックアウトされる。いくつかの実施形態では、ニューロリギンYをコードする遺伝子(NLGN4Y、Ensembl ID ENSG00000165246)は、操作された細胞において低減または排除、例えばノックアウトされる。遺伝子の発現を低減または排除するための任意の方法、例えば、本明細書に記載される任意の方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、PCDH11Y及び/またはNLGN4Yは、CRISPR/Casシステムを使用するなどのヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集法によって、操作された細胞において低減または排除される。
【0606】
D.操作された初代細胞の例示的な実施形態
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、操作された初代細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ヒト細胞または動物細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ドナー対象(例えば、ドナー試料が個々のドナー対象から得られる時点で、疾患または状態を有する疑いがない健常ドナー対象)から単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞及びNK細胞から選択され、キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ABO血液型O型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0607】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスI複合体及び/または1つ以上のMHCクラスII複合体のうちの1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスI複合体の1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスII複合体の1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスI複合体及び1つ以上のMHCクラスII複合体のうちの1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、過剰発現を付与する改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞及びNK細胞から選択され、キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ABO血液型O型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0608】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47の発現の増加及びB2Mの発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、細胞及びその集団は、CD47の発現の増加及びCIITAの発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、細胞及びその集団は、CD47の発現の増加及びNLRC5の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、細胞及びその集団は、CD47の発現の増加、ならびにB2M及びCIITAのうちの1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、細胞及びその集団は、CD47の発現の増加、ならびにB2M及びNLRC5のうちの1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、細胞及びその集団は、CD47の発現の増加、ならびにCIITA及びNLRC5のうちの1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、細胞及びその集団は、CD47の発現の増加、ならびにB2M、CIITA、及びNLRC5のうちの1つ以上の分子の発現の低減を示す。本明細書に記載の操作された細胞のうちのいずれも、これらに限定されないが、CD47、A20/TNFAIP3、C1-インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1またはSerpinb9を含む群から選択される1つ以上の因子の発現の増加もまた示し得る。例えば、本明細書に記載の細胞のうちのいずれも、これらに限定されないが、CD47、CD35、CD16 Fc受容体、CD16、CD52、IL15-RF、H2-M3、DUX4、CD24、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8及びSerpinb9を含む群から選択される1つ以上の因子の発現の増加もまた示し得る。いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞及びNK細胞から選択され、キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ABO血液型O型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0609】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47、任意選択で、少なくとも1つの他の免疫寛容原性因子の発現の増加、及びMHCクラスI複合体の1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47、任意選択で、少なくとも1つの他の免疫寛容原性因子の発現の増加、及びMHCクラスII複合体の1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47、任意選択で、少なくとも1つの他の免疫寛容原性因子の発現の増加、ならびにMHCクラスIIの1つ以上の分子MHCクラスII複合体の1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47、任意選択で、少なくとも1つの他の免疫寛容原性因子の発現の増加、及びB2Mの発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47、任意選択で、少なくとも1つの他の免疫寛容原性因子の発現の増加、及びCIITAの発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47、任意選択で、少なくとも1つの他の免疫寛容原性因子の発現の増加、ならびにB2M及びCIITAの1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の免疫寛容原性因子の発現の増加、ならびにB2M及びNLRC5の1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の免疫寛容原性因子の発現の増加、ならびにCIITA及びNLRC5の1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の免疫寛容原性因子の発現の増加、ならびにB2M、CIITA及びNLRC5の1つ以上の分子の発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、免疫寛容原性因子は、これらに限定されないが、CD47、CD35、CD16 Fc受容体、CD16、CD52、IL15-RF、H2-M3、DUX4、CD24、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8及びSerpinb9を含む群からのいずれかも含む。いくつかの実施形態では、過剰発現を付与する改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞及びNK細胞から選択され、キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ABO血液型O型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0610】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞及びその集団は、CD47の過剰発現、B2Mの発現の低減、及びCIITAの発現の低減を示す。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低減は、B2Mのタンパク質発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低減は、B2Mのタンパク質発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低減は、B2Mのタンパク質発現の排除を含む。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低減は、B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低減は、細胞内のすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2Mの不活性化または破壊は、B2M遺伝子中のインデル、またはB2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子は、ノックアウトされる。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低減は、CIITAの低減されたタンパク質発現を含む。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低減は、CIITAの排除されたタンパク質発現を含む。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低減は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低減は、細胞内のすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITAの不活性化または破壊は、CIITA遺伝子中のインデル、またはCIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子は、ノックアウトされる。
【0611】
いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。
【0612】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞及びNK細胞から選択され、キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ABO血液型O型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0613】
当業者であれば、遺伝子、タンパク質、または分子の発現の増加(例えば、過剰発現)または発現の低減などの発現レベルは、同等の細胞を基準とし得るかまたはそれと比較され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、CD47の発現が増加する操作された初代細胞は、未改変の初代細胞と比較して、より高いレベルのCD47タンパク質を有する改変された初代細胞を指す。いくつかの実施形態では、B2Mの発現が低減する操作された初代細胞は、未改変の初代細胞と比較して、より低いレベルのB2Mタンパク質を有する改変された初代細胞を指す。いくつかの実施形態では、CIITAの発現が低減する操作された初代細胞は、未改変の初代細胞と比較して、より低いレベルのCIITAタンパク質を有する改変された初代細胞を指す。
【0614】
一実施形態では、本明細書では、外因性CD47ポリペプチドを発現すると共に、1つ以上のMHCクラスI複合体タンパク質、1つ以上のMHCクラスII複合体タンパク質のいずれか、またはMHCクラスI及びクラスII複合体タンパク質の任意の組み合わせの発現が低減する、操作された初代細胞(例えば、初代細胞)が提供される。別の実施形態では、操作された初代細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現すると共に、レベルが低減したB2M及びCIITAポリペプチドを発現する。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現すると共に、B2M及びCIITA遺伝子の改変(例えば、遺伝子改変)をもつ。いくつかの事例では、改変(例えば、遺伝子改変)は、B2M及びCIITA遺伝子を不活性化する。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞及びNK細胞から選択され、キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ABO血液型O型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0615】
いくつかの実施形態では、本明細書では、操作された初代細胞(例えば、初代細胞)を生成する方法が提供され、方法は、細胞における1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することと、細胞におけるCD47の発現を増加させること(例えば、過剰発現させること)と、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減または排除することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することを含む。いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、CD47の発現を増加させる改変は、プロモーターに連結されたCD47タンパク質をコードする、外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された初代細胞のゲノム内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、組込みは、細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によるものであり、任意選択で、標的挿入は、相同性指向修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現及び/または1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、CasはCas9である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、低免疫原性初代細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞及びNK細胞から選択され、キメラ抗原受容体(CAR)から更に選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ABO血液型O型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0616】
いくつかの実施形態では、本明細書では、操作された初代細胞(例えば、初代細胞)を生成する方法が提供され、方法は、B2Mの発現を低減または排除することと、細胞におけるCD47の発現を増加させること(例えば、過剰発現させること)と、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、B2Mの発現を低減または排除する改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、B2M発現を低減または排除する改変(例えば、遺伝子改変)は、B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2Mを低減または排除する改変は、細胞におけるすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、B2M遺伝子中のインデル、またはB2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む。いくつかの実施形態では、インデルは、フレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子は、ノックアウトされる。いくつかの実施形態では、B2M発現を低減または排除する改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるB2Mタンパク質発現を低減または排除することを含む。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、CasはCas9である。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、CRISPR-Casの組み合わせは、B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的なターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casの組み合わせは、gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のCIITAの発現を低減または排除することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、CIITAの発現を低減または排除する改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減または排除する改変(例えば、遺伝子改変)は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITAを低減または排除する改変は、細胞におけるすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、CIITA遺伝子中のインデル、またはCIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む。いくつかの実施形態では、インデルは、フレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子は、ノックアウトされる。いくつかの実施形態では、CD47の発現を増加させる改変は、プロモーターに連結されたCD47タンパク質をコードする、外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された初代細胞のゲノム内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、組込みは、細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によるものであり、任意選択で、標的挿入は、相同性指向修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現及び/または1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、CasはCas9である。いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる改変は、表面発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、低免疫原性初代細胞である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、T細胞及びNK細胞から選択され、キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、ABO血液型O型である。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0617】
いくつかの態様では、本明細書では、本明細書に記載の操作された初代細胞のいずれかなど、操作された初代細胞の集団を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、操作された初代膵島細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代膵島細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2Mの両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代β膵島細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代β膵島細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代T細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代T細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代甲状腺細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代甲状腺細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書では、操作された初代皮膚細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代皮膚細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代内皮細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代内皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代網膜色素上皮細胞の集団を含む組成物が提供され、操作された初代網膜色素上皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。操作された初代細胞の前述の実施形態のいずれかでは、細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を更に含み得る。
【0618】
E.低免疫原性表現型のアッセイ
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された初代細胞は、低免疫原性について評価され得る。いくつかの実施形態では、細胞の低免疫原性は、細胞が適応免疫応答及び自然免疫応答を誘発する能力などの細胞の免疫原性を評価することによって決定することができる。このような免疫応答は、当業者に認識されるアッセイを使用して測定することができる。いくつかの実施形態では、免疫応答アッセイは、T細胞増殖、T細胞活性化、T細胞殺傷、NK細胞増殖、NK細胞活性化、及びマクロファージ活性に対する低免疫原性細胞の効果を測定する。場合によっては、低免疫原性細胞及びその派生物は、対象への投与後にT細胞及び/またはNK細胞による減少した殺傷を受ける。場合によっては、低免疫原性細胞及びその派生物は、対象への投与後にマクロファージによる減少した殺傷を受ける。場合によっては、低免疫原性細胞及びその派生物は、対象への投与後に末梢血単核細胞(PBMC)による減少した殺傷を受ける。いくつかの事例では、細胞及びその派生物は、未改変細胞または野生型細胞と比較して、マクロファージの貪食の減少を示す。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、対応する未改変野生型細胞と比較して、レシピエント対象において低減または減弱した免疫応答を誘発する。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、非免疫原性であるか、またはレシピエント対象において免疫応答を誘発することができない。
【0619】
低免疫原性細胞が生成されると、それらは、WO2016183041及びWO2018132783に記載されているように、それらの低免疫原性、生着、及び機能についてアッセイされ得る。
【0620】
低免疫原性細胞は、それらが意図される組織部位に生着し、機能的に不全の領域を再構成または再生することを可能にする様態で投与される。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、生着(例えば、生着の成功)についてアッセイされる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の生着は、予め選択された一定時間の後に評価される。いくつかの実施形態では、生着した細胞は、細胞生存について監視される。例えば、細胞生存は、生物発光イメージング(BLI)を介して監視されることができ、細胞は、細胞生存を監視するためにルシフェラーゼ発現コンストラクトを形質導入される。いくつかの実施形態では、生着した細胞は、当技術分野で公知の免疫染色及びイメージング法によって可視化される。いくつかの実施形態では、生着した細胞は、生着の成功を決定するために検出され得る既知のバイオマーカーを発現する。例えば、フローサイトメトリーを使用し、特定のバイオマーカーの表面発現を決定することができる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、予想どおりに意図された組織部位に生着される(例えば、低免疫原性細胞の生着が成功する)。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、必要に応じて、細胞欠損部位などの意図された組織部位に生着される。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、非操作初代細胞(例えば、操作(複数可)を含まない初代細胞)が意図された組織部位に生着されるのと同じ方法で、意図された組織部位に生着される。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、機能についてアッセイされる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、意図される組織部位に生着する前に機能についてアッセイされる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、意図される組織部位に生着した後に機能についてアッセイされる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の機能は、予め選択された量の後に評価される。いくつかの実施形態では、生着した細胞の機能は、検出可能な表現型を生成する細胞の能力によって評価される。例えば、生着した膵島細胞及び/またはβ膵島細胞の機能は、糖尿病により失われたグルコース制御の回復に基づいて評価され得る。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の機能は予想どおりである(例えば、抗体媒介性拒絶反応を回避しながら、低免疫原性細胞は成功裏に機能する)。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の機能は必要に応じたものであり、例えば、抗体媒介性拒絶を回避しながら、細胞欠陥部位は十分に機能する。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、抗体媒介性拒絶反応を回避しながら、非操作初代細胞(例えば、操作(複数可)を含まない初代細胞)が機能するのと同様に機能する。
【0621】
いくつかの実施形態では、低免疫原性は、WO2018132783の
図13及び
図15に例示される多数の技術を使用してアッセイされる。これらの技法は、同種異系宿主への移植、及び宿主免疫系を回避する低免疫原性細胞の増殖(例えば、奇形腫)に対する監視を含む。いくつかの事例では、低免疫原性細胞派生物は、ルシフェラーゼを発現するように形質導入され、次いで生物発光イメージングを使用して追跡され得る。同様に、かかる細胞に対する宿主動物のT細胞及び/またはB細胞反応は、細胞が宿主動物における免疫応答を引き起こさないことを確認するために試験される。T細胞反応は、ELISPOT、ELISA、FACS、PCR、またはマスサイトメトリー(CYTOF)によって評価され得る。B細胞反応または抗体反応は、FACSまたはLuminexを使用して評価される。追加的にまたは代替的に、細胞は、WO2018132783の
図14及び15に全般的に示されるように、自然免疫応答、例えば、NK細胞殺傷を回避するそれらの能力についてアッセイされ得る。
【0622】
いくつかの実施形態では、細胞の免疫原性は、例えば、当業者によって認識されているT細胞増殖アッセイ、T細胞活性化アッセイ、及びT細胞殺傷アッセイなどのT細胞イムノアッセイを使用して評価される。場合によっては、T細胞増殖アッセイには、細胞をインターフェロンγで予め治療すること及び細胞を標識T細胞と共培養すること及び事前選択された時間後にT細胞集団(または、増殖しているT細胞集団)の存在をアッセイすることが含まれる。場合によっては、T細胞活性化アッセイには、T細胞を本明細書で概説される細胞と共培養すること及びT細胞におけるT細胞活性化マーカーの発現レベルを決定することが含まれる。
【0623】
in vivoアッセイは、本明細書で概説される細胞の免疫原性を評価するために実施され得る。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の生存及び免疫原性は、同種異系ヒト化免疫不全マウスモデルを使用して決定される。いくつかの事例では、低免疫原性幹細胞は、同種異系ヒト化NSG-SGM3マウスに移植され、細胞拒絶反応、細胞生存、及び奇形腫形成に関してアッセイされる。いくつかの事例では、移植された低免疫原性細胞は、マウスモデルにおいて長期生存を示す。
【0624】
細胞の低免疫原性を含む免疫原性を決定するための追加の技術は、例えば、Deuse et al.,Nature Biotechnology,2019,37,252-258及びHan et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2019,116(21),10441-10446に記載されており、図、図の凡例、及び方法の説明を含むその開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0625】
当業者には理解されようが、多能性細胞における1つ以上のMHCクラスI分子機能(細胞がヒト細胞に由来する場合はHLA I)の低減の成功は、当技術分野で既知であると共に下記に記載されるような技法、例えば、HLA複合体に結合する標識抗体を使用した、例えば、ヒト主要組織適合性HLAクラスI抗原のアルファ鎖に結合する市販のHLA-A、B、C抗体を使用したFACS技法を使用して、測定することができる。
【0626】
また、細胞は、HLA I複合体が細胞表面上に発現していないことを確認するために試験され得る。これは、上で論述される1つ以上のHLA細胞表面構成要素に対する抗体を使用してFACS分析によってアッセイされ得る。
【0627】
多能性細胞またはその派生物における1つ以上のMHCクラスII分子機能(細胞がヒト細胞に由来する場合はHLA II)の低減の成功は、当技術分野で知られている技術、例えば、タンパク質に対する抗体を使用するウェスタンブロット、FACS技術、RT-PCR技術などを使用して測定され得る。
【0628】
また、細胞は、HLA II複合体が細胞表面上に発現していないことを確認するために試験され得る。この場合もまた、このアッセイは、当技術分野で知られているように行われ(例えば、WO2018132783の
図21を参照されたい)、ヒトHLAクラスII分子HLA-DR、DP及びほとんどのDQ抗原に結合する市販の抗体に基づいてウェスタンブロットまたはFACS分析のいずれかを使用して一般的に行われる。
【0629】
HLA I及びII(または、MHCクラスI分子及びクラスII分子)の低減に加えて、本明細書で提供される低免疫原性細胞は、マクロファージの貪食及びNK細胞による殺傷に対して感受性が低減する。結果として生じる低免疫原性細胞は、1つ以上のCD24導入遺伝子の発現に起因して免疫マクロファージ及び自然経路を「回避する」。
【0630】
F.操作された初代細胞を作製する方法
本明細書では、遺伝子編集により細胞内の遺伝子の発現を改変することによって細胞を改変する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞の改変に関連して、動きを伴って細胞をインキュベートする工程を含む。いくつかの実施形態では、細胞を、細胞の遺伝子発現を改変するための1つ以上の試薬と接触させ、その後に細胞に動き(例えば、振盪または波状の動き)を与えることにより、細胞の改変の効率を増強または促進することができる。いくつかの実施形態では、方法は、細胞の改変を促進または強化するために使用することができる。いくつかの実施形態では、方法は、内因性遺伝子を不活性化または欠失させる遺伝子破壊などによって遺伝子の発現を低減させることができ、及び/または細胞内で遺伝子を過剰発現させるなど遺伝子の発現を増加させるために使用することができる。いくつかの態様では、方法は、本明細書に記載の1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるために使用することができる。いくつかの態様では、方法は、本明細書に記載されるように、CD47などの1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるために使用することができる。
【0631】
いくつかの実施形態では、本明細書では、細胞集団の改変の方法が提供され、方法は、細胞を動きに供さない、例えば、細胞を静的条件下でインキュベートする同様の方法と比較して、i)その集団の細胞における遺伝子発現を改変するために、細胞集団を1つ以上の試薬と接触させることと、ii)1つ以上の試薬と接触させた後、細胞集団を動きに供することと、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、集団の細胞の改変を強化または促進する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を動きに供さない、例えば、細胞を静的条件下でインキュベートする同様の方法と比較して、集団の細胞の生存率を増加させる。
【0632】
いくつかの実施形態では、操作される細胞は、第II.C節に記載されるような、本明細書に記載されるような細胞であり得る。
【0633】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ、内皮細胞、筋肉細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、肝細胞、グリア前駆細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、及び血液細胞からなる群から選択される初代細胞である。
【0634】
いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、初期T細胞に由来する細胞を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞(PSC)、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞、生殖細胞系幹細胞、肺幹細胞、臍帯血幹細胞、及び複能性幹細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞(HSC)、または胚性幹細胞(ESC)である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、幹細胞またはその前駆細胞から分化した細胞であり、そこで、分化した細胞は、膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ、内皮細胞、筋肉細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、肝細胞、グリア前駆細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、または血液細胞である。
【0635】
いくつかの実施形態では、多くの既存の遺伝子編集及び細胞工学的方法は完全に静置培養で行われ、これにより、いくつかの態様では、細胞に対する更なるストレスが低減されると考えられている。ただし、観察によると、そのような方法は、必ずしも理想的ではない可能性がある。いくつかの態様では、細胞がin vivoでどのように存在するかにより厳密に一致する方法で細胞をインキュベートまたは培養することにより、遺伝子編集法などによる細胞の改変の効率を改善することができる。例えば、細胞生存率及び/または改変もしくは遺伝子編集の効率の改善は、細胞を動きに供しながら、懸濁(例えば、非接着)条件で細胞を培養またはインキュベートすることによって達成できる。いくつかの実施形態では、細胞を動きに接触させることにより、細胞間の接触及び3Dクラスターの形成をもたらす細胞凝集体を生成することができ、これにより、細胞の生存率及び適合性が改善され、細胞の遺伝子改変効率が全体的に増加する。
【0636】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、in vivoで3Dネットワークに自然に存在する初代細胞である。いくつかの実施形態では、提供される方法は、細胞集団が懸濁状態になるように実行される。いくつかの実施形態では、細胞が培養物または凝集体中に自然に存在する場合、細胞の懸濁液は、接触前に接着培養物または細胞クラスターから細胞を解離することによって生成することができる。
【0637】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、低付着表面を有する容器内にある。いくつかの実施形態では、細胞集団は、非接着培養容器内にある。いくつかの実施形態では、低付着表面を有する容器(例えば、非接着培養容器)などの容器は、細胞付着が一定期間など低減または制限される、培養容器を含む。非接着培養容器は、低付着または超低付着表面を含んでもよい。例えば、ハイドロゲル(例えば、中性荷電及び/または親水性ハイドロゲル)及び/または界面活性剤(例えば、プルロン酸)などの細胞付着を防止する物質で表面を処理することによって達成され得る。非接着培養容器には、丸いもしくは凹面のウェル及び/またはマイクロウェル(例えば、Aggrewells(商標))が含まれ得る。いくつかの実施形態では、非接着培養容器は、Aggrewell(商標)プレートである。非接着培養容器の場合、培養容器から細胞を除去するために酵素を使用する必要がない場合がある。
【0638】
いくつかの実施形態では、非接着培養容器は、細胞付着を阻害または低減させるような、低付着または超低付着表面を備える培養容器である。いくつかの実施形態では、非接着培養容器内で細胞を培養することは、培養物のすべての細胞が培養容器の表面に付着することを妨げるわけでない。
【0639】
いくつかの実施形態では、非接着培養容器は、超低付着表面を備える培養容器である。いくつかの態様では、超低付着表面は、一定期間、細胞付着を阻害し得る。いくつかの実施形態では、超低付着表面は、接着表面上で同じ細胞種のコンフルエントな増殖を得るのに必要な期間、細胞接着を阻害し得る。いくつかの実施形態では、超低付着表面は、ハイドロゲル層(例えば、中性荷電及び/または親水性ハイドロゲル層)などの細胞付着を阻害する物質でコーティングまたは処理される。いくつかの実施形態では、非接着培養容器は、第1のインキュベートの前に界面活性剤でコーティングまたは処理される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、プルロン酸である。
【0640】
いくつかの実施形態では、容器は、プレート、ディッシュ、フラスコ、バイオリアクター、またはバッグである。いくつかの実施形態では、容器は、マルチウェルプレートなどのプレートである。いくつかの実施形態では、容器は、6ウェル、24ウェルプレート、48ウェルプレート、または96ウェルプレートである。いくつかの実施形態では、培養容器は、6ウェルプレートである。いくつかの実施形態では、マルチウェルプレートのウェルは更に、マイクロウェルを含む。提供される実施形態のいずれかでは、マルチウェルプレートなどの容器は、円形または凹面のウェル及び/またはマイクロウェルを有する。提供される実施形態のいずれかでは、マルチウェルプレートなどの容器には、角または継ぎ目がない。
【0641】
いくつかの実施形態では、容器は、細胞凝集体の三次元形成を可能にする。いくつかの実施形態では、細胞はマルチウェルプレートなどの容器内で培養され、動きに供され、細胞凝集体またはクラスターを生成される。いくつかの実施形態では、細胞を動きに供することにより、凝集体の形成が促進される。いくつかの実施形態では、細胞を動きに供することにより、細胞クラスターが形成される。
【0642】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、その生存能力を維持する条件下で培養される。細胞の培養及び生存率に必要な環境を提供するために、適切な温度、CO2及び酸素条件を選択することは、当業者のレベルの範囲内である。いくつかの実施形態では、細胞への酸素送達に対する拡散障壁を軽減するために、培地の体積を最小化または低減させることができる。いくつかの実施形態では、細胞集団は、細胞を覆うのに十分な最小体積の培地中で容器内に維持される。細胞培養及び生存率を支援するために適切な量の培地を決定することは、当業者のレベルの範囲内である。一例として、6ウェルプレートの標準的な作業容量は3.0mL~5.0mLであるが、細胞を十分に覆い、細胞の増殖を支援する適切な培養液を提供するには、容量を約1mL~2mLに低減することができる。場合によっては、より多くの培地を使用することにより、培地の深さ及び環境の静的性質が増し、細胞への酸素の拡散が遅くなり得る-これは、理想的ではない可能性がある。
【0643】
いくつかの実施形態では、方法は、静的条件下で実施される培養の少なくとも期間または一部を更に含むことができる。このような実施形態では、細胞は動きに供されず、動かないか固定されたままである。いくつかの実施形態では、改変または遺伝子編集のための1つ以上の試薬との接触中、及び細胞が動きに供される前に、細胞は静的条件下でインキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、細胞を動きに供した後、細胞は静的条件下でインキュベートされ得る。
【0644】
いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬は、少なくとも2つの異なる試薬を含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの異なる試薬のそれぞれは、異なる遺伝子の発現を調節するためのものである。場合によっては、少なくとも第1の1つ以上の試薬は、記載されているように1つ以上のMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子の発現を低減させるための試薬であってもよく、少なくとも第2の1つ以上の試薬は、1つ以上の免疫寛容原性因子、例えばCD47の発現を増加させるための試薬であってもよい。いくつかの実施形態では、方法の工程を繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、方法の第1の反復における1つ以上の試薬は、方法の繰り返される反復における1つ以上の試薬とは異なる。
【0645】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、遺伝子編集などの所望の改変を有する細胞を選択することも含み得る。いくつかの実施形態では、改変を有する細胞を選択する方法は、所望の細胞のポジティブ選択またはネガティブ選択などのフローサイトメトリーによるものであり得る。
【0646】
いくつかの態様では、本明細書では、初代膵島細胞を遺伝子編集する方法が提供される。初代膵島細胞を遺伝子編集する方法は、初代膵島クラスターを初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることを含み、初代膵島クラスターは初代β膵島細胞を含む。次いで、懸濁液中の初代β膵島細胞を改変する(例えば、細胞内の内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるために細胞に1つ以上の改変を導入すること、及び/または細胞内の異種タンパク質の発現を増加させるために1つ以上の改変を導入することによって)。改変された初代β膵島細胞は、改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化するための条件下でインキュベートすることができ、インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される。
【0647】
本明細書で使用する場合、「動き」という用語は、細胞(例えば、改変された初代β膵島細胞)を動かすことを指す。例えば、細胞は、円を描くように移動したり、左右に移動したり、上下に移動したり、反転したりできる。いくつかの実施形態では、動きは、振盪である。いくつかの実施形態では、振盪は、軌道振盪を含む。いくつかの実施形態では、振盪は、双方向の直線運動を含む。いくつかの実施形態では、振盪は、直線運動を含む。この動きは、限定されないが、オービタルシェーカー、往復シェーカー、旋回ロッカー、マイクロプレートシェーカー、ベンチトップシェーカー、及び/またはボルテックスなどの当技術分野で公知の様々な方法によって達成され得る。いくつかの実施形態では、動きは、オービタルシェーカーを使用して達成される。いくつかの実施形態では、オービタルシェーカーは、ベリーダンサーオービタルシェーカー(IBI Scientific)である。いくつかの実施形態では、動きは、操作された初代細胞を生成する方法で動きを利用しない方法と比較して、遺伝子編集効率を改善する。例えば、動きは、より良好な遺伝子標的化、発現の改善及び/または遺伝子発現の減少の改善、及び/またはこの方法によって標的とされる細胞数の増加をもたらし得る。いくつかの実施形態では、動きは、操作された初代細胞を生成する方法と比較して、操作された初代細胞を生成する方法における遺伝子編集効率を約0.1倍よりも大きく、例えば、約0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上のいずれかよりも大きく改善する。いくつかの実施形態では、動きは、操作された初代細胞を生成する方法における遺伝子編集効率を約0.1倍~約100倍、例えば、約0.1倍~約10倍、約0.5倍~約50倍、及び約10倍~約100倍改善する。
【0648】
いくつかの実施形態では、細胞を動きに供することにより、遺伝子編集のために細胞をもう1つの試薬と接触させるのに必要な時間量を低減することができる。いくつかの実施形態では、改変または遺伝子編集のための1つ以上の試薬との接触は、細胞を動きに供する前に2日よりも短い期間である。いくつかの実施形態では、接触は、細胞を動きに供する前に30秒~24時間実施される。いくつかの実施形態では、接触は、1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、もしくは約1分、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約12時間、約24時間、または上記のいずれかの値の間の任意の値で実施される。いくつかの実施形態では、接触は、細胞を動きに供する前に1分~60分実施される。いくつかの実施形態では、接触は、細胞を動きに供する前に2分~30分実施される。いくつかの実施形態では、接触は、細胞を動きに供する前に5分~15分実施される。
【0649】
いくつかの実施形態では、本明細書では、初代膵島細胞を遺伝子編集するための方法が提供され、方法は、i)初代膵島クラスターを初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、ii)懸濁液の初代β膵島細胞を改変することと、iii)改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化するための条件下で、改変された初代β膵島細胞をインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は動きを伴って実行される、インキュベートすることと、を含む。いくつかの実施形態では、初代膵島クラスターは、ヒト初代膵島クラスターである。いくつかの実施形態では、初代膵島クラスターは、ヒト初代死体膵島クラスターである。いくつかの実施形態では、初代細胞は、初代β膵島細胞である。いくつかの実施形態では、懸濁液は、単一細胞懸濁液である。
【0650】
本明細書で提供される初代膵島細胞を遺伝子編集するための方法は、1つ以上の解離する工程(例えば、初代膵島クラスターを初代細胞の懸濁液へと解離すること)と、1つ以上の再クラスター化する工程(例えば、初代細胞を膵島に再クラスター化する条件下で、改変された初代細胞をインキュベートすること)と、を含み得る。いくつかの実施形態では、初代膵島細胞を遺伝子編集する方法は、約1、2、3、4、5、またはそれ以上の解離する工程を含む。いくつかの実施形態では、初代膵島細胞を遺伝子編集する方法は、約1、2、3、4、5、またはそれ以上の再クラスター化する工程を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の再クラスター化する工程のそれぞれは、1つ以上の解離する工程のそれぞれの後に実行される。いくつかの実施形態では、初代膵島細胞を遺伝子編集する方法は、解離する工程と再クラスター化する工程との間に一定の期間を含む。いくつかの実施形態では、解離する工程と再クラスター化する工程との間の時間は、約1分~約10日、例えば、約1分~約10時間、約5時間~約24時間、及び約24時間~約10日である。いくつかの実施形態では、解離する工程と再クラスター化する工程との間の時間は、約1分より長く、例えば、約5分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、24時間、48時間、5日間、10日間、またはそれ以上のいずれかより長い。いくつかの実施形態では、解離する工程と再クラスター化する工程との間の時間は、約10日間より短く、例えば、約5日間、48時間、24時間、10時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分、10分、5分、またはそれ以下のいずれかより短い。
【0651】
いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化するための条件下で、改変された初代β膵島細胞をインキュベートすることは、少なくとも1回行われる。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化するための条件下で、改変された初代β膵島細胞をインキュベートすることは、断続的に行われ、各インキュベートする工程は、懸濁液の初代β膵島細胞を改変した後に実行される。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化するための条件下で、改変された初代β膵島細胞をインキュベートすることは、2回行われ、第1のインキュベートする工程は、細胞内の内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を低減させるため懸濁液の初代β膵島細胞を改変させた後に実行され、第2のインキュベートする工程は、細胞内の1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させるために懸濁液の初代β膵島細胞を改変した後に実行される。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化するための条件下で、改変された初代β膵島細胞をインキュベートすることは、2回行われ、第1のインキュベートする工程は、細胞内のヒトB2M遺伝子及びヒトCIITA遺伝子の発現を低減させるために懸濁液の初代β膵島細胞を改変した後に実行され、第2のインキュベートする工程は、細胞内のCD47の発現を増加させるために懸濁液の初代β膵島細胞を改変した後に実行される。
【0652】
いくつかの実施形態では、初代膵島クラスターを初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることは、細胞解離溶液によるものである。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、初代膵島クラスターに適用される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、約1分間~約20分間、例えば、約1分間~約5分間、約3分間~約10分間、約8分間~約15分間、及び約12分~約20分、初代膵島クラスターに適用される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、約1分より長く、例えば、約2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分、またはそれ以上のいずれかより長く、初代膵島クラスターに適用される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、約20分未満、例えば、約15分、10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分、2分、1分、またはそれ以下のいずれかより短く、初代膵島クラスターに適用される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、初代膵島クラスターに約10分間適用される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、約30℃~約40℃、例えば、約30℃~約35℃、約33℃~約38℃、及び約35℃~約40℃の温度で初代膵島クラスターに適用される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、約30℃を超える、例えば、約31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、またはそれ以上のいずれかよりも高い温度で初代膵島クラスターに適用される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、約40℃未満、例えば、約39℃、38℃、37℃、36℃、35℃、34℃、33℃、32℃、31℃、30℃、またはそれ以下のいずれかよりも低い温度で初代膵島クラスターに適用される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、約37℃の温度で初代膵島クラスターに適用される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、約37℃の温度で約10分間、初代膵島クラスターに適用される。細胞解離溶液は、タンパク質分解酵素及びコラーゲン分解酵素の溶液を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、ACCUMAX(商標)細胞解離溶液である。
【0653】
いくつかの実施形態では、初代β膵島細胞の解離懸濁液は、改変される。いくつかの実施形態では、改変することは、遺伝子操作することを含む。いくつかの実施形態では、懸濁初代β膵島細胞は、初代膵島クラスターからの解離後に改変される。いくつかの実施形態では、改変することは、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるために、細胞内に1つ以上の改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、改変することは、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させるために、細胞内に1つ以上の改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、改変することは、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるために、細胞内に1つ以上の改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、改変することは、1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるために、細胞内に1つ以上の改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる改変は、B2Mの発現を低減させる改変である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる改変は、CIITAの発現を低減させる改変である。
【0654】
いくつかの実施形態では、細胞内の内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させることは、遺伝子編集システムを細胞内に導入することによるものである。いくつかの実施形態では、遺伝子編集システムは、配列特異的ヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子編集システムは、RNA誘導性ヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では、配列特異的ヌクレアーゼは、RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、RNA誘導性ヌクレアーゼは、Casヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、RNA誘導性ヌクレアーゼは、II型またはV型Casタンパク質である。いくつかの実施形態では、RNA誘導性ヌクレアーゼは、Cas9ホモログまたはCpf1ホモログである。
【0655】
いくつかの実施形態では、RNA誘導性ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ、及びヒトB2M遺伝子を標的とする単一のgRNAを含む。いくつかの実施形態では、ヒトB2M遺伝子を標的とする単一のgRNAは、CGUGAGUAAACCUGAAUCUU(配列番号33)の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、RNA誘導性ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ、及びヒトCIITA遺伝子を標的とする単一のgRNAを含む。いくつかの実施形態では、ヒトCIITA遺伝子を標的とする単一のgRNAは、CGAUAUUGGCAUAAGCCUCCC(配列番号34)の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトB2M遺伝子を標的とする単一のgRNAは、ヒトCIITA遺伝子を標的とする単一のgRNAの前に細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ヒトCIITA遺伝子を標的とする単一のgRNAは、ヒトB2M遺伝子を標的とする単一のgRNAの前に細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ヒトB2M遺伝子を標的とする単一のgRNAは、ヒトCIITA遺伝子を標的とする単一のgRNAと同時に細胞に導入される。いくつかの実施形態では、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるために改変することは、エレクトロポレーションによって細胞内に導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、Cas9酵素及びヒトB2M遺伝子を標的とする単一のgRNAを含むリボ核タンパク質複合体でエレクトロポレーションされる。いくつかの実施形態では、細胞は、Cas9酵素及びヒトCIITA遺伝子を標的とする単一のgRNAを含むリボ核タンパク質複合体でエレクトロポレーションされる。
【0656】
いくつかの実施形態では、改変することは、細胞における1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させるために、細胞内に1つ以上の改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、改変することは、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるために、1つ以上の改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl-阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、CD47である。
【0657】
いくつかの実施形態では、細胞における1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させることは、外因性ポリヌクレオチドによるものである。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、細胞のゲノム内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、マルチシストロン性ベクターである。いくつかの実施形態では、組込みは、細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである。いくつかの実施形態では、組込みは、細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によるものである。
【0658】
いくつかの実施形態では、細胞における1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させることは、CAGプロモーターの制御下でCD47及びルシフェラーゼをコードするレンチウイルスベクターを細胞に形質導入することによるものである。いくつかの実施形態では、細胞は、硫酸プロタミンの存在下でレンチウイルスベクターが形質導入される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターによる形質導入は、遠心分離(例えば、「スピンフェクション」)を使用して行われる。いくつかの実施形態では、細胞は、硫酸プロタミンの存在下でレンチウイルスベクターの存在下にて、約300×gで約15分間遠心分離される。
【0659】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される初代細胞を遺伝子編集する方法は、改変された膵島を選択することを更に含む。いくつかの実施形態では、選択された改変膵島は、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子(例えば、ヒトB2M遺伝子及び/またはヒトCIITA遺伝子)の発現を低減するように改変されている。いくつかの実施形態では、選択された改変膵島は、細胞における1つ以上の異種タンパク質(例えば、CD47)の発現を増加させるように改変されている。いくつかの実施形態では、選択された改変膵島は、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるか、または細胞における1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させるように改変されている。いくつかの実施形態では、選択することは、蛍光標識細胞分取(FACS)を含む。いくつかの実施形態では、FACSは、BD FACSAria(商標)IIIセルソーターの使用を含む。
【0660】
いくつかの実施形態では、改変された膵島は、本明細書に記載される細胞解離溶液のいずれかのような細胞解離溶液を使用して、FACS用の単一の初代膵島細胞に解離される。いくつかの実施形態では、細胞解離溶液は、ACCUMAX(商標)細胞解離溶液である。いくつかの実施形態では、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるように改変された初代β膵島細胞は、抗HLA-A、B、C抗体またはIgG1アイソタイプ適合対照抗体、及び抗HLA-DR、DP、DQ抗体またはIgG2aアイソタイプ適合対照抗体による細胞解離液を使用するために選択される。いくつかの実施形態では、ダブルネガティブ初代膵島細胞は、FACSを使用して選別される。いくつかの実施形態では、選別されたダブルネガティブ初代膵島細胞は、インキュベートを使用して再クラスター化するために再播種される。いくつかの実施形態では、細胞における内因性タンパク質(例えば、ヒトB2M遺伝子及びヒトCIITA遺伝子)をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させ、細胞における1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させるように改変された初代β膵島細胞は、抗CD47抗体またはIgG1アイソタイプ適合対照抗体による細胞解離溶液を使用するために選択される。いくつかの実施形態では、改変された膵島細胞は、アイソタイプ対照と比較して、細胞における1つ以上の異種タンパク質(例えば、CD47)の発現が少なくとも約20倍増加する、例えば、少なくとも約21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、またはそれ以上増加する場合に選択される。いくつかの実施形態では、CD47にポジティブである選別されたダブルネガティブ初代膵島細胞は、インキュベートを使用して再クラスター化するために再播種される。
【0661】
いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化するための条件下で、改変された初代β膵島細胞はインキュベートされる。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、初代β膵島細胞を改変することに続いて行われる。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、改変された初代β膵島細胞をヒト膵島細胞培養培地中でインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、ヒト膵島細胞培養培地は、PIM(S)培地(Prodo)である。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、静的条件下での第1のインキュベートと、それに続く動きを伴うインキュベートすることと、を含む。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、動きを伴うインキュベートすることと、それに続く静的条件下での第2のインキュベートと、を含む。いくつかの実施形態では、インキュベートすることは、動きを伴うインキュベートすることと、静的条件下での第2のインキュベートと、を含む。
【0662】
いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、約30分~約2時間、例えば、約30分~約1時間、約45分~約1.5時間、及び約1時間~約2時間、静的にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、約30分より長く、例えば、約35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.25時間、1.5時間、1.75時間、2時間またはそれ以上のいずれかより長く、静的にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、約2時間より短く、例えば、約1.75時間、1.5時間、1.25時間、1時間、55分、50分、45分、40分、35分、30分またはそれ以下のいずれかより短く、静的にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、約1時間、静的にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、約30℃~約40℃、例えば、約30℃~約35℃、約33℃~約38℃、及び約35℃~約40℃の温度で静的にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、約30℃を超える温度、例えば、約31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃またはそれ以上のいずれかを超える温度で静的にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、約40℃よりも低い、例えば、約39℃、38℃、37℃、36℃、35℃、34℃、33℃、32℃、31℃、30℃またはそれ以下のいずれかより低い温度で静的にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、約37℃の温度で約1時間、静的にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、静的インキュベートは、約2%~約8%のCO2中、例えば、約2%~約4%のCO2、約3%~約6%のCO2、及び約5%~約8%のCO2中で行われる。いくつかの実施形態では、静的インキュベートは、約2%を超えるCO2中、例えば、約3%のCO2、4%のCO2、5%のCO2、6%のCO2、7%のCO2、8%のCO2またはそれ以上のいずれかを超える中で行われる。いくつかの実施形態では、静的インキュベートは、約8%未満のCO2中、例えば、約7%のCO2、6%のCO2、5%のCO2、4%のCO2、3%のCO2、2%のCO2またはそれ以下のいずれか未満の中で行われる。いくつかの実施形態では、静的インキュベートは、約5%のCO2中で行われる。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、約37℃で約1時間、約5%のCO2中で静的にインキュベートされる。
【0663】
いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、静的インキュベート(例えば、約5%CO2中、約37℃で約1時間の静的インキュベート)後、動きながらインキュベートされる。いくつかの実施形態では、動的インキュベートにより、改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化することが可能になる。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約24時間~約96時間、例えば、約24時間~約48時間、約48時間~約72時間、及び約28時間~約96時間実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約24時間より長く、例えば、約36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、またはそれ以上のいずれかより長く実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約96時間より短い、例えば、約84時間、72時間、60時間、28時間、36時間、24時間、またはそれ以下のいずれかより短い間実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約72時間実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは約48時間行われ、その後、完全培地交換が行われ、更に24時間の動的インキュベートが続く。いくつかの実施形態では、改変された初代β膵島細胞は、ヒト初代膵島細胞の再クラスター化のために、ベリーダンサーオービタルシェーカー(IBI Scientific,Dubuque,IA)上で動きを伴いながらインキュベートされる。
【0664】
いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約1毎分回転数(RPM)~約200RPM、例えば、1RPM~約25RPM、約15RPM~約50RPM、約30RPM~約75RPM、約50RPM~約200RPM、及び約85RPM~約95RPMの速度で実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約1RPMを超える速度、例えば、約5RPM、10RPM、20RPM、30RPM、40RPM、50RPM、60RPM、70RPM、80RPM、90RPM、100RPM、125RPM、150RPM、175RPM、200RPM、またはそれ以上のいずれかを超える速度で実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約200RPM未満の速度、例えば、約175RPM、150RPM、125RPM、100RPM、90RPM、80RPM、70RPM、60RPM、50RPM、40RPM、30RPM、20RPM、10RPM、5RPM、1RPM、またはそれ以下のいずれか未満の速度で実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約85RPM~約95RPMの速度で実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約0°~約8°、例えば、約0°~約4°、約2°~約5°、及び約4°~約8°のピッチで実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約0°より大きいピッチ、例えば、約1°、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、またはそれ以上のいずれかを超えるピッチで実行される。いくつかの実施形態では、動的インキュベートは、約8°未満のピッチ、例えば、約7°、6°、5°、4°、3°、2°、1°、またはそれ以下のいずれかを超えるピッチで実行される。
【0665】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される初代膵島細胞を遺伝子編集する方法の工程i)~iii)は、繰り返される。いくつかの実施形態では、方法の第1の反復における改変することは、方法の繰り返される反復における改変することとは異なる。いくつかの実施形態では、方法の第1の反復における改変することは、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるために、細胞へ1つ以上の改変を導入すること(例えば、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるために、細胞へ1つ以上の改変、例えば、ヒトB2M遺伝子及び/またはヒトCIITA遺伝子の発現を低減させるために、細胞へ1つ以上の改変を導入すること)を含む。いくつかの実施形態では、方法の繰り返される反復における改変することは、細胞における1つ以上の異種タンパク質(例えば、1つ以上の免疫寛容原性因子、例えば、CD47)の発現を増加させるために、細胞へ1つ以上の改変を導入することを含む。
【0666】
いくつかの実施形態では、改変することは、再クラスター化された膵島細胞が、第1の改変で操作された第1の改変膵島である、第1の改変することであり、方法は、iv)第1の改変膵島を改変された初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、v)懸濁液の改変された初代膵島細胞を第2の改変で更に改変することと、vi)更に改変された初代β膵島細胞を、第2の改変を含む第2の改変膵島に再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、インキュベートすることの少なくとも一部は動きを伴って実施される、インキュベートすることと、を含む。いくつかの実施形態では、第1の改変における改変することは、細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるために、細胞へ1つ以上の改変を導入すること(例えば、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させるために、細胞へ1つ以上の改変を導入すること、例えば、ヒトB2M遺伝子及び/またはヒトCIITA遺伝子の発現を低減させるために、細胞へ1つ以上の改変を導入すること)を含む。いくつかの実施形態では、更なる改変することは、細胞における1つ以上の異種タンパク質(例えば、1つ以上の免疫寛容原性因子、例えば、CD47)の発現を増加させるために、細胞へ1つ以上の改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される初代細胞を遺伝子編集する方法は、第1の改変された膵島を選択することを更に含む。いくつかの実施形態では、選択することは、FACSを含む。
【0667】
いくつかの実施形態では、第2の改変された膵島は、移植に使用される。いくつかの実施形態では、第2の改変された膵島は、本明細書に記載の疾患または状態のいずれかなど、対象における疾患または状態を治療するために使用される。
【0668】
III.操作された細胞の集団及び医薬組成物
本明細書では、操作された初代細胞などの複数の提供される操作された細胞を含有する、操作された初代細胞などの操作された細胞の集団が提供される。場合によっては、細胞集団は、細胞の混合物を含む。場合によっては、集団中の細胞の少なくとも約30%は、本明細書に記載される一連の改変を含む。場合によっては、細胞集団は、1つ以上の異なる細胞種を含む。
【0669】
いくつかの実施形態では、集団は、膵臓膵島細胞の混合物を含む。いくつかの実施形態では、集団は、膵臓β細胞、膵臓α細胞、及び膵臓γ細胞からなる群から選択される2つ以上の異なる細胞種を含む、膵島細胞の混合物を含む。場合によっては、集団は、膵臓α、β、及びγ細胞を含む。場合によっては、集団は、初代細胞を含む。いくつかの実施形態では、集団は、幹細胞または前駆細胞から分化した細胞(例えば、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞、生殖系列幹細胞、肺幹細胞、臍帯血幹細胞、多能性幹細胞(PSC)、及び複能性幹細胞から分化した細胞)を含む。
【0670】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団は、複数のドナー対象からプールされた細胞に由来する。いくつかの実施形態では、複数のドナー対象のそれぞれは、健康な対象であるか、またはドナー試料がドナー対象から得られる時点で疾患もしくは状態を有する疑いがない。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、改変を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団は、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、血漿細胞または血小板)から選択される。
【0671】
いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変更細胞と比較して、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変更細胞と比較して、B2M及び/またはCIITAの発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化細胞と比較して、B2M及びCIITAの発現の低減を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化細胞と比較して、B2M遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化細胞と比較して、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む。
【0672】
いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、内因性B2M遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、内因性CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む。
【0673】
また、本明細書では、操作された初代細胞などの操作された細胞を含む組成物も提供される。また、本明細書では、操作された初代細胞などの操作された細胞の集団を含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤または担体を更に含む。許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、これには緩衝液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/または非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(TWEEN(商標))、ポロキサマー(PLURONICS(商標))またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物には、医薬的に許容される緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)が含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、オスモル濃度、粘度、明澄度、色、等張性、臭気、滅菌性、安定性、溶解もしくは放出速度、吸着性、もしくは浸透性を改変する、維持する、または保存するための、1つ以上の賦形剤を含有し得る。いくつかの態様では、当業者は、細胞を含む医薬組成物がタンパク質を含む医薬組成物とは異なる場合があることを理解する。
【0674】
「医薬製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、製剤が投与されるであろう対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない、調製物を指す。
【0675】
「医薬的に許容される担体」は、対象に対して非毒性である、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。医薬的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0676】
いくつかの実施形態における医薬組成物は、本明細書に記載されるような初代細胞などの操作された細胞を、疾患または状態を治療または予防するのに有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されるような操作された細胞を、疾患または状態を治療または予防するのに有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で含む。いくつかの実施形態における治療効果または予防効果は、治療対象の定期的な評価によって監視される。数日間以上にわたる反復投与の場合、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで治療は繰り返される。しかしながら、他の投与レジメンが有用な場合もあり、他の投与レジメンを定めることもできる。所望の用量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の連続注入投与によって送達され得る。
【0677】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された初代細胞は、標準的な投与技術、製剤、及び/またはデバイスを使用して投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された初代細胞は、標準的な投与技術、製剤、及び/またはデバイスを使用して投与される。組成物の保存及び投与のための製剤ならびにデバイス(例えば、シリンジ及びバイアル)が提供される。操作された初代細胞は、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を含む、局所注射を介して投与することができる。治療組成物(例えば、操作された初代細胞を含む医薬組成物)を投与する場合、それは一般に、単位投与注入形態(溶液、懸濁液、乳濁液)で製剤化される。
【0678】
製剤には、静脈内、腹腔内、または皮下投与用の製剤が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞集団は、非経口で投与される。本明細書で使用する場合、「非経口」という用語には、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、及び腹腔内投与が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞集団は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。
【0679】
いくつかの実施形態における組成物は、滅菌液体製剤、例えば、等張水溶液、等張懸濁液、等張乳濁液、または等張分散液として提供され、いくつかの態様では、選択されたpHに緩衝され得る。液体組成物は、特に注射による投与がやや便利である。液体組成物は、担体を含むことができ、担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)及びこれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。滅菌注射用溶液は、無菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの好適な担体、希釈剤、または賦形剤との混合物などの溶媒に細胞を組み込むことによって調製することができる。
【0680】
いくつかの実施形態では、医薬的に許容される担体としては、薬品投与に適合する任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤など等が挙げられる(Gennaro,2000,Remington:The Science and practice of pharmacy,Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia,PA)。このような担体または希釈剤の例としては、限定されないが、水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソーム及び不揮発性油などの非水性媒体が用いられてもよい。補足的活性成分を組成物に組み込むこともできる。医薬的担体は、生理食塩水、デキストロース溶液、またはヒト血清アルブミンを含む溶液など、操作された初代細胞に適したものでなければならない。いくつかの実施形態では、そのような組成物のための医薬的に許容される担体またはビヒクルは、生細胞の投与を可能にするのに十分な時間、操作された初代細胞が維持され得る、または生存し続けることができる、任意の非毒性水溶液である。例えば、医薬的に許容される担体またはビヒクルは、生理食塩水または緩衝生理食塩水であり得る。
【0681】
いくつかの実施形態では、医薬組成物を含む組成物は、滅菌である。いくつかの実施形態では、細胞の単離、濃縮または培養は、エラー、ユーザーの取り扱い及び/または汚染を最小限に抑えるために、閉鎖環境または滅菌環境、例えば、滅菌培養バッグで行われる。いくつかの実施形態では、滅菌状態は、例えば、滅菌濾過膜を介した濾過によって容易に達成され得る。いくつかの実施形態では、培養は、気体透過性の培養容器を使用して行われる。いくつかの実施形態では、培養は、バイオリアクターを使用して行われる。
【0682】
本明細書ではまた、提供される操作された初代細胞を凍結保存するのに適した組成物も提供される。いくつかの実施形態では、提供される操作された初代細胞は、凍結保存培地で凍結保存される。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、無血清凍結保存培地である。いくつかの実施形態では、組成物は、凍結保護剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、DMSO及び/またはグリセロールであるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、5%~10%または約5%~約10%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、5%または約5%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、6%または約6%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、7%または約7%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、7.5%または約7.5%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、8%または約8%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、9%または約9%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、10%または約10%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存媒体は、市販の凍結保存溶液(CryoStor(商標)CS10)を含有する。CryoStor(商標)CS10は、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する凍結保存培地である。いくつかの実施形態では、凍結保存用に配合された組成物は、超低温などの低温で保存することができ、例えば、-40℃~-150℃、例えば、80℃±6.0℃または約80℃±6.0℃の範囲の温度で保存できる。
【0683】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の操作された細胞と、31.25%(v/v)のPlasma-Lyte A、31.25%(v/v)の5%デキストロース/0.45%塩化ナトリウム、10%デキストラン40(LMD)/5%デキストロース、20%(v/v)の25%ヒト血清アルブミン(HSA)、及び7.5%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む医薬的に許容される担体と、を含む。
【0684】
いくつかの実施形態では、凍結保存された操作された初代細胞は、解凍することによって投与のために調製される。場合によっては、操作された初代細胞は、解凍直後に対象に投与され得る。このような実施形態では、組成物は、更なる処理を行わなくてもすぐに使用できる。他の場合では、操作された初代細胞は、解凍後に、例えば、医薬的に許容される担体との再懸濁、活性化剤もしくは刺激剤とのインキュベートによって更に処理されるか、または対象への投与前に活性化され、洗浄され、医薬的に許容される緩衝液中に再懸濁される。
【0685】
IV.キット、成分及び製品
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法、装置及びシステムのキット、成分ならびに組成物(消耗品など)が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書の開示に従って使用するための説明書を含む。
【0686】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された初代細胞の集団を含むキットまたは組成物が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、複数の操作された初代細胞を含む細胞集団を含む。キットまたは組み合わせが提供され、操作された初代細胞は、(i)CD47の発現を増加させる、及び(ii)1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原分子及び1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原分子)の発現を低減させる、改変を含む、(i)の発現の増加及び(ii)の発現の低減は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較したものである。いくつかの実施形態では、キットの成分は、同時に投与され得る。いくつかの実施形態では、キットの成分は、経時的に投与され得る。
【0687】
本発明のいくつかの実施形態では、細胞療法を含む、臨床移植療法に有用な物質を含む、製品が提供される。いくつかの実施形態では、製品は、細胞不全の治療に有用な物質を含み、その不全は、糖尿病(例えば、I型糖尿病)、血管の状態または血管疾患、自己免疫性甲状腺炎、肝疾患(例えば、肝硬変)、角膜疾患(例えば、フックスジストロフィーまたは先天性遺伝性内皮ジストロフィー)、腎疾患、ならびにがん(例えば、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌)などであるが、これらに限定されない。製品は、容器及び容器上のもしくは容器に関連する、ラベルまたは添付文書を含み得る。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器など(例えば、ガラスまたはプラスチック容器)が含まれる。一般に容器は、容器は、同種異系細胞療法に有効である組成物が収容され、滅菌アクセスポートがあってもよい(例えば、容器は、皮下用注射針で穿刺可能なストッパーを有する静脈内輸液バッグまたはバイアルであってもよい)。少なくとも医薬組成物中の成分は、本明細書で提供される任意の操作された初代細胞などの操作された初代細胞の集団である。ラベルまたは添付文書は、組成物が特定の状態を治療するために使用されることを指示する。ラベルまたは添付文書は、医薬組成物を患者に投与するための説明書を更に含む。いくつかの実施形態では、製品は、併用治療を含む。
【0688】
製品及び/またはキットは、添付文書を更に含み得る。添付文書とは、このような治療薬の適応症、使用、投薬量、投与、禁忌、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含む、治療薬の商業用パッケージに通例含まれる指示を指す。
【0689】
V.治療の方法
本明細書では、対象における疾患または状態の治療に使用するための、本明細書に記載の操作された細胞の集団を含む、提供された細胞組成物に関連する組成物及び方法が提供される。本明細書では、本明細書に記載の低免疫原性細胞の集団を投与することによって患者を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、操作された初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、医薬組成物で、例えば、本明細書に記載のいずれかで投与するように配合されている。このような方法及び使用には、例えば、疾患、状態または障害を有する対象への、操作された初代細胞などの操作された細胞の集団、またはそれを含む組成物の投与を含む、治療方法及び使用が含まれる。特定の疾患の適応症に対して、本明細書に提供される適切な操作された初代細胞を選択することは、当業者のレベルの範囲内である。いくつかの実施形態では、細胞またはその医薬組成物は、疾患または障害の治療を果たすために、有効量で投与される。使用には、そのような方法及び治療における、ならびにそのような治療方法を実施するための薬剤の調製における、操作された初代細胞またはその医薬組成物の使用が含まれる。いくつかの実施形態では、方法は、それによって対象における疾患または状態または障害を治療する。
【0690】
本明細書で提供される操作された初代細胞などの操作された細胞は、例えば、疾患または障害の治療のための細胞療法の候補を含む、任意の好適な患者に投与することができる。細胞療法の候補には、本明細書で提供される対象となる操作された初代細胞の治療効果が有益な可能性があり得る、疾患または状態を有する任意の患者が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は、投与された細胞の同種異系レシピエントである。いくつかの実施形態では、提供される改変細胞、例えば、操作された初代細胞は、同種異系細胞療法における使用に有効である。本明細書で提供される操作された初代細胞などの対象となる操作された細胞の治療効果が有益である候補は、疾患または状態の排除、低減または寛解を示す。
【0691】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法のいずれかによって作製される細胞を含む、本明細書に提供される操作された初代細胞は、細胞療法に使用することができる。本明細書に概説される治療用細胞は、限定されないが、がん、遺伝子障害、慢性感染性疾患、自己免疫障害、神経学的障害などといった障害を治療するのに有用である。
【0692】
いくつかの実施形態では、患者は、細胞欠損症を有する。本明細書で使用する場合、「細胞欠損症」とは、患者において細胞集団の機能不全または喪失を引き起こし、患者が細胞集団を自然に置換または再生することができない、任意の疾患または状態を指す。例となる細胞欠損症には、自己免疫性疾患(例えば、多発性硬化症、重症筋無力症、関節リウマチ、糖尿病、全身性ループス及びエリテマトーデス)、神経変性疾患(例えば、ハンチントン病及びパーキンソン病)、心血管病態及び疾患、血管病態及び疾患、角膜病態及び疾患、肝臓病態及び疾患、甲状腺病態及び疾患、及び腎臓病態及び疾患が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞を投与される患者は、がんを有する。本明細書で提供される操作された細胞によって治療され得る、例となるがんには、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、がん患者は、本明細書で提供される操作されたCAR-T細胞の投与によって治療される。
【0693】
いくつかの実施形態では、細胞欠損症は糖尿病に関連するか、または細胞療法は糖尿病の治療のためのものであり、任意選択で、糖尿病はI型糖尿病である。いくつかの実施形態では、操作された細胞の集団は、β膵島細胞を含む膵島細胞の集団である。いくつかの実施形態では、膵島細胞は、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞、及び成熟膵島細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、方法は、操作された初代β膵島細胞の集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作されたβ膵島細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代β膵島細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0694】
本明細書に記載の操作された初代β膵島細胞は、対象における耐糖能を改善し得る。耐糖能は、本明細書に記載される方法(例えば、インスリン分泌アッセイ)などの任意の適切な方法によって測定され得る。いくつかの実施形態では、操作された初代β膵島細胞は、グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)を示す。したがって、いくつかの実施形態では、改善された耐糖能は、GSIS灌流アッセイで測定される。耐糖能障害はインスリン抵抗性に関連しており、糖尿病(例えば、I型糖尿病及びII型糖尿病)を引き起こす可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、操作された初代β膵島細胞、または操作された初代β膵島細胞の集団を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、糖尿病を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病患者である。いくつかの実施形態では、患者は、I型糖尿病を有する。いくつかの実施形態では、患者は、II型糖尿病を有する。具体的には、いくつかの実施形態では、対象における耐糖能を改善する方法が提供され、方法は、操作された初代β膵島細胞、または操作された初代β膵島細胞の集団を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、耐糖能は、膵島細胞の投与前の対象の耐糖能と比較して改善される。いくつかの実施形態では、β膵島細胞は、対象における外因性インスリン使用量を低減させる。いくつかの実施形態では、HbA1cレベルによって測定される耐糖能が改善される。いくつかの実施形態では、対象は絶食している。いくつかの実施形態では、膵島細胞は、対象におけるインスリン分泌を改善する。いくつかの実施形態では、インスリン分泌は、膵島細胞の投与前の対象のインスリン分泌と比較して改善される。
【0695】
操作された初代β膵島細胞は、対象において適応免疫応答を誘導しない可能性がある。いくつかの実施形態では、適応免疫応答は、ELISPOTを使用して評価される。例えば、適応免疫応答は、CD8+T細胞によるIFNgサイトカイン分泌のレベルを測定することによって評価され得る。いくつかの実施形態では、操作された初代β膵島細胞は、野生型初代β膵島細胞と比較して、低いレベルのIFNgを示し、例えば、野生型初代β膵島細胞と比較して、IFNgの約400倍、300倍、200倍、100倍、50倍、25倍及び10倍低いレベルのいずれかを示す。いくつかの実施形態では、適応免疫応答は、フローサイトメトリーを使用して評価される。例えば、いくつかの実施形態では、適応免疫応答は、ドナー特異的抗体(DSA)IgGまたはIgMのレベルを測定することによって評価される。いくつかの実施形態では、操作された初代β膵島細胞は、野生型初代β膵島細胞と比較して、低いレベルのDSAレベルを示し、例えば、野生型初代β膵島細胞と比較して、DSAの約2倍、1.5倍及び1倍低いレベルのいずれかを示す。
【0696】
いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、糖尿病、がん、血管新生障害、眼疾患、甲状腺疾患、皮膚疾患、及び肝臓疾患である。
【0697】
いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、血管状態もしくは疾患に関連するか、または細胞療法は、血管状態もしくは疾患の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、細胞集団は、内皮細胞の集団である。いくつかの実施形態では、方法は、操作された初代内皮細胞の集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作された初代内皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0698】
いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、細胞集団は、甲状腺前駆細胞の集団である。いくつかの実施形態では、方法は、操作された初代甲状腺前駆細胞の集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作された初代甲状腺前駆細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0699】
いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、肝臓疾患に関連するか、または細胞療法は、肝臓疾患の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、肝臓疾患は、肝硬変を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、肝細胞の集団である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、肝前駆細胞の集団である。いくつかの実施形態では、方法は、操作された初代肝細胞の集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作された初代肝細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、方法は、操作された初代肝前駆細胞の集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作された初代肝前駆細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0700】
いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、角膜疾患に関連するか、または細胞療法は、角膜疾患の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、角膜疾患は、フックスジストロフィー、または先天性遺伝性内皮ジストロフィーである。いくつかの実施形態では、細胞集団は、初代角膜内皮前駆細胞、または初代角膜内皮細胞の集団である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、初代視細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、操作された初代角膜内皮前駆細胞または操作された初代角膜内皮細胞の集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作された初代角膜内皮前駆細胞または操作された初代角膜内皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、方法は、操作された初代視細胞の集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作された初代視細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0701】
いくつかの実施形態では、細胞欠損症は、腎疾患に関連するか、または細胞療法は、腎疾患の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、細胞集団は、初代腎前駆細胞もしくは初代腎細胞の集団である。いくつかの実施形態では、方法は、操作された初代腎前駆細胞または操作された初代腎細胞の集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作された初代腎前駆細胞または操作された初代腎細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0702】
いくつかの実施形態では、細胞療法は、がんの治療のためのものである。いくつかの実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、初代T細胞または初代NK細胞の集団である。いくつかの実施形態では、方法は、操作された初代T細胞または初代NK細胞の集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作された初代T細胞または初代NK細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0703】
いくつかの実施形態では、細胞療法は、造血疾患または造血障害の治療のためのものである。いくつかの実施形態では、細胞集団は、造血幹細胞(HSC)である。HSCは、すべての種類の血球を補充し、自己再生する幹細胞である。枯渇化させた造血系をレシピエントマウスの循環に注射した場合、16週間にわたって骨髄細胞、T細胞、及びB細胞のレベルをロバストに検出可能なレベル(通常、末梢血細胞の1%超)に維持する細胞として、造血幹細胞を具体的に定義してもよい(Schroeder(2010)Cell Stem Cell 6:203-207)。いくつかの実施形態では、造血障害は、血液疾患、特に造血細胞が関与する疾患に起因し得る。いくつかの実施形態では、造血障害は、単一遺伝子の変異などによる一遺伝子性造血疾患である。いくつかの実施形態では、造血障害は、骨髄異形成、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、鎌状赤血球症、ダイヤモンドブラックファン貧血、シュワッハマンダイヤモンド障害、コストマン症候群、慢性肉芽腫性疾患、副腎白質ジストロフィー、白血球接着不全症、血友病、サラセミア、βサラセミア、白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性(骨髄)白血病(AML)、成人リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(CML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、重症複合免疫不全症(SCID)、X連鎖重症複合免疫不全症、ウィスコット-アルドリッチ症候群(WAS)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、慢性肉芽腫症、チェディアック-東症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、またはエイズである。いくつかの実施形態では、対象は、自己免疫疾患を有する。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、急性播種性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病、バロー同心円性硬化症、ベーチェット病、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多巣性骨髄炎、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素疾患、補体成分2欠損症、脳動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴ病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、びまん性皮膚全身性硬化症、ドレスラー症候群、円板状エリテマトーデス、湿疹、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァン症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギラン-バレー症候群(GBS)、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、妊娠性ヘルペス、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性脱髄性多発神経障害、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート-イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡多発血管炎、ミラー-フィッシャー症候群、混合性結合組織病、モルフェア、ミュシャ-ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、視神経腎盂炎、神経筋緊張症、眼瘢痕性天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、甲状腺炎、回帰性リウマチ、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンバーグ症候群、パーソネージ・ターナー症候群、毛様体扁平部炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発性軟骨炎、ライター症候群、むずむず脚症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群、スウィート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、トロサ-ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、未分化脊椎関節症、血管炎、白斑、またはウェゲナー肉芽腫症である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、がんを有する対象に由来する。いくつかの実施形態において、がんは白血病である。いくつかの実施形態では、白血病は、B-CLL、CML、またはALTなどのT細胞ベースの白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、骨髄腫である。いくつかの実施形態では、方法は、操作されたHSCの集団を含む組成物を患者に投与することを含み、操作されたHSCは、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む。
【0704】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された初代細胞またはそれを含有する組成物は、例えば、細胞移植、輸血、組織移植、または臓器移植などの、以前の移植に存在する1つ以上の抗原から感作された患者の治療に有用である。特定の実施形態では、以前の移植は、同種異系移植であり、患者は、同種異系移植からの1つ以上の同種異系抗原に対して感作されている。同種異系移植には、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、または同種異系臓器移植が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、患者は、妊娠しているか、または妊娠したことがある(例えば、妊娠中の同種免疫化を有するか、または有したことがある)感作患者である。特定の実施形態では、患者は、以前の移植に含まれる1つ以上の抗原から感作されており、ここで、以前の移植は、改変されたヒト細胞、組織または臓器である。いくつかの実施形態では、改変されたヒト細胞、組織または臓器は、改変された自家ヒト細胞、組織または臓器である。いくつかの実施形態では、以前の移植は、非ヒト細胞、組織または臓器である。例となる実施形態では、以前の移植は、改変された非ヒト細胞、組織または臓器である。特定の実施形態では、以前の移植は、ヒト成分を含むキメラである。特定の実施形態では、以前の移植は、CAR-T細胞である。特定の実施形態では、以前の移植は、自家移植であり、患者は、自家移植からの1つ以上の自己抗原に対して感作されている。特定の実施形態では、以前の移植は、自家細胞、組織または臓器である。特定の実施形態では、感作患者は、アレルギーを有するか、1つ以上のアレルゲンに感作されている。例となる実施形態では、患者は、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、またはアトピー性皮膚炎を有する。
【0705】
いくつかの実施形態では、提供される操作された初代細胞、またはそれを含有する組成物を使用する治療を受けている患者は、以前に治療を受けている。いくつかの実施形態では、操作される初代細胞、またはそれを含有する組成物は、以前の治療と同じ状態を治療するために使用される。特定の実施形態では、操作される初代細胞、またはそれを含有する組成物は、以前の治療とは異なる状態を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、患者に投与される操作された初代細胞またはそれを含有する組成物は、以前の治療によって治療された同じ状態または疾患の治療に対して強化された治療効果を示す。特定の実施形態では、投与される操作された初代細胞またはそれを含有する組成物は、以前の治療と比較して、患者における状態または疾患の治療に対してより長期の治療効果を示す。例となる実施形態では、投与される細胞は、以前の治療と比較して、がん細胞に対して強化された効力、有効性、及び/または特異性を示す。特定の実施形態では、操作された初代細胞は、がんの治療のためのCAR T細胞である。
【0706】
本明細書で提供される方法は、第一選択の治療が失敗した後の、特定の状態または疾患に対する第二選択の治療として使用することができる。いくつかの実施形態では、以前の処置は、治療上有効でない治療である。本明細書で使用する場合、「治療上有効でない」治療は、患者において所望に満たない臨床成果をもたらす治療を指す。例えば、細胞欠損症に対する治療に関して、治療上有効でない治療とは、患者において欠損細胞を置換するために所望されるレベルの機能的細胞及び/または細胞活性を達成しない、及び/または治療持続性を欠いた治療を指す場合がある。がん治療に関しては、治療上有効でない治療とは、所望されるレベルの効力、有効性、及び/または特異性を達成しない治療を指す。治療有効性は、当技術分野で既知の任意の好適な技法を使用して測定することができる。いくつかの実施形態では、患者は、以前の治療に対して免疫応答を生じる。いくつかの実施形態では、以前の治療は、患者によって拒絶される細胞、組織、または臓器移植片である。いくつかの実施形態では、以前の治療は、機械補助による治療を含んでいた。いくつかの実施形態では、機械補助による治療は、血液透析または補助人工心臓を含んでいた。いくつかの実施形態では、患者は、機械補助による治療に対して免疫応答を生じた。いくつかの実施形態では、以前の治療は、治療用細胞が望まれない様態で増殖及び分裂するようなことがあれば、治療用細胞の死を引き起こすことができる、安全スイッチを含む治療用細胞の集団を含んでいた。特定の実施形態では、患者は、安全スイッチにより誘導される治療用細胞の死の結果として、免疫応答を生じる。特定の実施形態では、患者は、以前の治療から感作されている。例となる実施形態では、患者は、本明細書に提供されるように、投与される操作された初代細胞によっては感作されない。
【0707】
いくつかの実施形態では、提供される操作された初代細胞、またはそれを含む組成物は、それを必要とする患者に組織、臓器または部分的臓器移植を提供する前に投与される。特定の実施形態では、患者は、操作された初代細胞に対して免疫応答を示さない。特定の実施形態では、操作された初代細胞は、特定の組織または臓器における細胞欠損症の治療のために患者に投与され、患者はその後、同じ特定の組織または臓器に対する組織移植または臓器移植を受ける。このような実施形態では、操作された初代細胞による治療は、やがて行われる組織または臓器置換へのブリッジ療法として機能する。例えば、いくつかの実施形態では、患者は、肝臓障害を有し、肝臓移植を受ける前に、本明細書で提供される操作された肝細胞による治療を受ける。特定の実施形態では、操作された初代細胞は、特定の組織または臓器における細胞欠損症の治療のために患者に投与され、患者はその後、異なる組織または臓器に対する組織移植または臓器移植を受ける。例えば、いくつかの実施形態では、患者は、腎臓移植を受ける前に本明細書で提供されるような操作された膵臓β膵島細胞で治療される糖尿病患者である。いくつかの実施形態では、方法は、細胞欠損症の治療のためのものである。例となる実施形態では、組織移植または臓器移植は、心臓移植、肺移植、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植、または骨移植である。
【0708】
患者を治療する方法は一般に、本明細書に提供されるように、操作された初代細胞、またはそれを含有する組成物の投与によるものである。理解されようが、細胞及び/または療法のタイミングに関連する本明細書に記載のすべての複数の実施形態に関して、細胞の投与は、所望の部位での導入細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって遂行される。細胞は、対象内の所望の部位に直接埋め込まれ得るか、または代替として、所望の部位への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与され得、埋め込まれた細胞または細胞の構成要素の少なくとも一部分は、生存したままである。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞療法によって緩和され得る任意の疾患、障害、状態またはその症状などの疾患または障害を治療するために投与される。
【0709】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団またはそれを含有する組成物は、患者が感作されてから少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、または少なくとも1ヶ月以上後に投与される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団またはそれを含有する組成物は、患者が感作されてから、または感作の特性もしくは特徴を示してから少なくとも1週間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、またはそれよりも長い期間)以上後に投与される。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の集団またはそれを含有する組成物は、患者が移植(例えば、同種異系移植)を受けてから、妊娠してから(例えば、妊娠中の同種免疫化を有するか、または有したことがある)、または感作されてから、または感作の特性または特徴を示してから少なくとも1ヶ月(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、またはそれよりも長い期間)以上後に投与される。
【0710】
いくつかの実施形態では、移植を受けたことがある、妊娠したことがある(例えば、妊娠中の同種免疫化を有するか、または有したことがある)、及び/または抗原(例えば、同種異系抗原)に対して感作されている患者は、本明細書に記載の操作された初代細胞の集団の1回目の用量の投与、1回目の用量の後の回復期間、及び記載される操作された初代細胞の集団の2回目の用量の投与を含む、投与レジメンを施与される。いくつかの実施形態では、第1の細胞集団及び第2の細胞集団中に存在する細胞種の混成は異なる。特定の実施形態では、第1の操作された初代細胞の集団及び第2の操作された初代細胞の集団中に存在する細胞種の混成は、同じであるか、または実質的に同等である。多くの実施形態では、第1の操作された初代細胞の集団及び第2の操作された初代細胞の集団は、同じ細胞種を含む。いくつかの実施形態では、第1の操作された初代細胞の集団及び第2の操作された初代細胞の集団は、異なる細胞種を含む。いくつかの実施形態では、第1の操作された初代細胞の集団及び第2の操作された初代細胞の集団は、同じパーセンテージの細胞種を含む。他の実施形態では、第1の操作された初代細胞の集団及び第2の操作された初代細胞の集団は、異なるパーセンテージの細胞種を含む。
【0711】
いくつかの実施形態では、回復期間は、操作された初代細胞の集団またはそれを含有する組成物の第1の投与に次いで開始し、このような細胞が、患者においてもはや存在しないかまたは検出可能でないときに終了する。いくつかの実施形態では、回復期間の継続期間は、細胞の初回投与から少なくとも1週間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、またはそれよりも長い期間)以上後である。いくつかの実施形態では、回復期間の継続期間は、細胞の初回投与から少なくとも1ヶ月(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、またはそれよりも長い期間)以上後である。
【0712】
いくつかの実施形態では、操作された細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、対象に投与された場合、低免疫原性である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、低免疫である。いくつかの実施形態では、操作された細胞に対する免疫応答は、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された細胞の改変、例えば、遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によって生成された免疫応答のレベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%低減されるか、または少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%低い。いくつかの実施形態では、操作された細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者において操作された細胞に対する免疫応答を誘発しない。
【0713】
いくつかの実施形態では、操作された細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルの全身性のTH1活性化を誘発する。いくつかの事例では、細胞によって誘発された全身性TH1活性化のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された初代細胞の改変、例えば、遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によって生成された全身性TH1活性化のレベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者において全身性TH1活性化を誘発しない。
【0714】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発する。いくつかの事例では、細胞によって誘発されたPBMCの免疫活性化のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された初代細胞の改変、例えば、遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によって生成されたPBMCの免疫活性化のレベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者においてPBMCの免疫活性化を誘発しない。
【0715】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルのドナー特異的IgG抗体を誘発する。いくつかの事例では、細胞によって誘発されたドナー特異的IgG抗体のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された初代細胞の改変、例えば、遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によって生成されたドナー特異的IgG抗体のレベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の投与された集団は、患者においてドナー特異的IgG抗体を誘発しない。
【0716】
いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルのIgM及びIgG抗体生成を誘発する。いくつかの事例では、細胞によって誘発されたIgM及びIgG抗体生成のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された初代細胞の改変、例えば、遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によって生成されたIgM及びIgG抗体生成のレベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、操作された初代細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者においてIgM及びIgG抗体生成を誘発しない。
【0717】
いくつかの実施形態では、操作された細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルの細胞傷害性T細胞殺傷を誘発する。いくつかの事例では、細胞によって誘発された細胞傷害性T細胞殺傷のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された初代細胞の改変、例えば、遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によって生成された細胞傷害性T細胞殺傷のレベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、操作された細胞の投与された集団またはそれを含有する組成物は、患者において細胞傷害性T細胞殺傷を誘発しない。
【0718】
上記で考察したように、本明細書では、特定の実施形態では、MHC分子など(例えば、ヒト白血球抗原)の同種異系抗原に対して感作された患者に投与され得る、細胞が提供される。いくつかの実施形態では、患者は、妊娠しているか、または妊娠したことがあり、例えば、妊娠中の同種免疫化(例えば、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT))を有する。換言すれば、患者は、限定されないが、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、ならびに胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)などの、妊娠中の同種免疫化に関連する障害または状態を有するか、または有したことがある。いくつかの実施形態では、患者は、限定されないが、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、または同種異系臓器移植などの、同種異系移植を受けたことがある。いくつかの実施形態では、患者は、同種異系抗原に対するメモリーB細胞を示す。いくつかの実施形態では、患者は、同種異系抗原に対するメモリーT細胞を示す。かかる患者は、同種異系抗原に対するメモリーB細胞及びメモリーT細胞の両方を示す可能性がある。
【0719】
記載される細胞の投与時に、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、全身性の免疫応答の不在またはレベルが低減した全身性の免疫応答を示す。いくつかの実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、適応免疫応答の不在またはレベルが低減した適応免疫応答を示す。いくつかの実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、自然免疫応答の不在またはレベルが低減した自然免疫応答を示す。いくつかの実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、T細胞応答の不在またはレベルが低減したT細胞応答を示す。いくつかの実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、B細胞応答の不在またはレベルが低減したB細胞応答を示す。
【0720】
A.用量及び投与レジメン
本明細書に記載の任意の治療上有効量の細胞は、治療されている適応症に応じて医薬組成物に含まれ得る。細胞の非限定的な例には、記載されている初代細胞(例えば、初代T細胞)が含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物には、少なくとも約1×102、5×102、1×103、5×103、1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、または5×1010個の細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物には、最大で約1×102、5×102、1×103、5×103、1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、または5×1010個の細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物には、最大で約6.0×108個の細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物には、最大で約8.0×108個の細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、医薬組成物には、少なくとも約1×102~5×102、5×102~1×103、1×103~5×103、5×103~1×104、1×104~5×104、5×104~1×105、1×105~5×105、5×105~1×106、1×106~5×106、5×106~1×107、1×107~5×107、5×107~1×108、1×108~5×108、5×108~1×109、1×109~5×109、5×109~1×1010、または1×1010~5×1010個の細胞が含まれる。例となる実施形態では、医薬組成物には、約1.0×106~約2.5×108個の細胞が含まれる。
【0721】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、または500mlの体積を有する。例となる実施形態では、医薬組成物は、最大で約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、または500mlの体積を有する。例となる実施形態では、医薬組成物は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、または500mlの体積を有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1~50ml、50~100ml、100~150ml、150~200ml、200~250ml、250~300ml、300~350ml、350~400ml、400~450ml、または450~500mlの体積を有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1~50ml、50~100ml、100~150ml、150~200ml、200~250ml、250~300ml、300~350ml、350~400ml、400~450ml、または450~500mlの体積を有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1~10ml、10~20ml、20~30ml、30~40ml、40~50ml、50~60ml、60~70ml、70~80ml、70~80ml、80~90ml、または90~100mlの体積を有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5ml~約80mlの範囲の体積を有する。例となる実施形態では、医薬組成物は、約10ml~約70mlの範囲の体積を有する。多くの実施形態では、医薬組成物は、約10ml~約50mlの範囲の体積を有する。
【0722】
具体的な量/投与レジメンは、個体の体重、性別、年齢及び健康;配合、生化学的特質、生物活性、バイオアベイラビリティ及び細胞の副作用ならびに完全な治療レジームにおける細胞の数及び同一性に応じて様々である。
【0723】
いくつかの実施形態では、1用量の医薬組成物には、約10mL~50mLの体積の約1.0×105~約2.5×108個の細胞が含まれ、医薬組成物は、単一用量として投与される。
【0724】
多くの実施形態では、細胞はT細胞であり、医薬組成物には、例えば、限定されないが、初代T細胞などの約2.0×106~約2.0×108個の細胞が含まれる。場合によっては、用量には、約10ml~50mlの体積の約1.0×105~約2.5×108個の本明細書に記載の初代T細胞が含まれる。いくつかの場合では、用量には、約10ml~50mlの体積の約1.0×105~約2.5×108個の上述した初代T細胞が含まれる。他の場合では、用量は、初代T細胞を含む、約1.0×105~約2.5×108個のT細胞よりも低い範囲である。更に他の場合では、用量は、初代T細胞を含む、約1.0×105~約2.5×108個のT細胞よりも高い範囲である。
【0725】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、50kg以下の対象の場合は体重1kg当たり約1.0×105~約1.0×107個の操作された初代細胞(例えば、初代T細胞)の単一用量として投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、50kg以下の対象の場合は体重1kg当たり約0.5×105~約1.0×107、約1.0×105~約1.0×107、約1.0×105~約1.0×107、約5.0×105~約1×107、約1.0×106~約1×107、約5.0×106~約1.0×107、約1.0×105~約5.0×106、約1.0×105~約1.0×106、約1.0×105~約5.0×105、約1.0×105~約5.0×106、約2.0×105~約5.0×106、約3.0×105~約5.0×106、約4.0×105~約5.0×106、約5.0×105~約5.0×106、約6.0×105~約5.0×106、約7.0×105~約5.0×106、約8.0×105~約5.0×106、または約9.0×105~約5.0×106個の細胞の単一用量として投与される。いくつかの実施形態では、用量は、50kg以下の対象の場合は体重1kg当たり約0.2×106~約5.0×106個の細胞である。多くの実施形態では、用量は、50kg以下の対象の場合は体重1kg当たり約0.2×106~約5.0×106個よりも低い範囲である。多くの実施形態では、用量は、50kg以下の対象の場合は体重1kg当たり約0.2×106~約5.0×106個よりも高い範囲である。例となる実施形態では、単一用量は、約10ml~50mlの体積のものである。いくつかの実施形態では、用量は、静脈内に投与される。
【0726】
例となる実施形態では、細胞は、50kgを超える対象の場合は約1.0×106~約5.0×108個の細胞(例えば、初代細胞)の単一用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、50kg以下の対象の場合は体重1kg当たり約0.5×106~約1.0×109、約1.0×106~約1.0×109、約1.0×106~約1.0×109、約5.0×106~約1.0×109、約1.0×107~約1.0×109、約5.0×107~約1.0×109、約1.0×106~約5.0×107、約1.0×106~約1.0×107、約1.0×106~約5.0×107、約1.0×107~約5.0×108、約2.0×107~約5.0×108、約3.0×107~約5.0×108、約4.0×107~約5.0×108、約5.0×107~約5.0×108、約6.0×107~約5.0×108、約7.0×107~約5.0×108、約8.0×107~約5.0×108、または約9.0×107~約5.0×108個の細胞の単一用量として投与される。多くの実施形態では、細胞は、50kgを超える対象の場合は約1.0×107~約2.5×108個の細胞の単一用量で投与される。いくつかの実施形態では、細胞は、50kgを超える対象の場合は約1.0×107~約2.5×108個の細胞よりも低い範囲の単一用量で投与される。いくつかの実施形態では、細胞は、50kgを超える対象の場合は約1.0×107~約2.5×108個の細胞よりも高い範囲の単一用量で投与される。いくつかの実施形態では、用量は、静脈内に投与される。例となる実施形態では、単一用量は、約10ml~50mlの体積のものである。いくつかの実施形態では、用量は、静脈内に投与される。
【0727】
例となる実施形態では、用量は、1分当たり約1~50ml、1分当たり1~40ml、1分当たり1~30ml、1分当たり1~20ml、1分当たり10~20ml、1分当たり10~30ml、1分当たり10~40ml、1分当たり10~50ml、1分当たり20~50ml、1分当たり30~50ml、1分当たり40~50mlの速度で静脈内に投与される。多数の実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与のための1つ以上の注入バッグ内で保管される。いくつかの実施形態では、用量は、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、70分、80分、90分、120分、150分、180分、240分、または300分以下で完全に投与される。
【0728】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の単一用量は、単一の注入バッグに存在する。他の実施形態では、医薬組成物の単一用量は、2、3、4または5個の別個の注入バッグに分割される。
【0729】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、2、3、4、5、6回またはそれ以上の用量などの複数回の用量で投与される。いくつかの実施形態では、複数の用量の各用量は、1~24時間の範囲空けて対象に投与される。いくつかの事例では、後続の用量は、最初または先行の用量から約1時間~約24時間(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または約24時間)後に投与される。いくつかの実施形態では、複数の用量の各用量は、約1日~28日の範囲空けて対象に投与される。いくつかの事例では、後続の用量は、最初または先行の用量から約1日~約28日(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または約28日)後に投与される。多くの実施形態では、複数の用量の各用量は、1週~約6週の範囲空けて対象に投与される。特定の事例では後続の用量は、最初または先行の用量から約1週~約6週(例えば、約1、2、3、4、5、または6週)後に投与される。いくつかの実施形態では、複数の用量の各用量は、約1ヶ月~約12ヶ月の範囲を空けて対象に投与される。いくつかの事例では後続の用量は、最初または先行の用量から約1ヶ月~約12ヶ月(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月)後に投与される。
【0730】
いくつかの実施形態では、対象は、第1の時点で第1の投与レジメンが投与され、次いでその後、第2の時点で第2の投与レジメンが投与される。いくつかの実施形態では、第1の投与レジメンは、第2の投与レジメンと同じである。他の実施形態では、第1の投与レジメンは、第2の投与レジメンとは異なる。いくつかの事例では、第1の投与レジメン及び第2の投与レジメンにおける細胞の数は、同じである。いくつかの事例では、第1の投与レジメン及び第2の投与レジメンにおける細胞の数は、異なる。場合によっては、第1の投与レジメン及び第2の投与レジメンにおける用量の数は、同じである。場合によっては、第1の投与レジメン及び第2の投与レジメンにおける用量の数は、異なる。
【0731】
いくつかの実施形態では、細胞は操作されたT細胞(例えば、初代T細胞)であり、第1の投与レジメンには、第1のCARを発現する操作されたT細胞が含まれ、第2の投与レジメンには、第2のCARを発現する操作されたT細胞が含まれ、第1のCAR及び第2のCARは異なる。例えば、第1のCAR及び第2のCARは、異なる標的抗原に結合する。場合によっては、第1のCARには、抗原に結合するscFvが含まれ、第2のCARには、異なる抗原に結合するscFvが含まれる。いくつかの実施形態では、第1の投与レジメンには、第1のCARを発現する操作されたT細胞が含まれ、第2の投与レジメンには、第2のCARを発現する操作されたT細胞または初代T細胞が含まれ、第1のCAR及び第2のCARは同じである。第1の投与レジメンは、第2の投与レジメンから少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1~3ヶ月、1~6ヶ月、4~6ヶ月、3~9ヶ月、3~12ヶ月、またはそれを超える月数空けて対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象は、疾患(例えば、がん)の過程中に複数の投与レジメンが投与され、投与レジメンの少なくとも2つは、本明細書に記載の同じタイプの操作されたT細胞を含む。他の実施形態では、複数の投与レジメンの少なくとも2つは、本明細書に記載の異なるタイプの操作されたT細胞を含む。
【0732】
B.免疫抑制剤
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、操作された初代細胞の集団またはそれを含有する組成物の第1の投与前に患者に投与されない。
【0733】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、操作された初代細胞の投与を受けた患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、操作された初代細胞の投与の前に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、操作された初代細胞の第1及び/または第2の投与の前に投与される。
【0734】
免疫抑制剤及び/または免疫調節剤の非限定的な例としては、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾンなどのコルチコステロイド、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナール、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン、チモシン-α、及び類似の薬剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、IL-2受容体のp75に結合する抗体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、またはCD58に結合する抗体、及びそれらのリガンドのうちのいずれかに結合する抗体からなる免疫抑制抗体の群から選択される。免疫抑制剤及び/または免疫調節剤が細胞の第1の投与前または後に患者に投与されるいくつかの実施形態では、投与は、1つ以上のMHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子の発現を有し、CD47の外因性発現を有しない細胞に必要とされるであろう投与量よりも低い投与量である。
【0735】
一実施形態では、かかる免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、可溶性IL-15R、IL-10、B7分子(例えば、B7-1、B7-2、それらの変異体、及びそれらの断片)、ネガティブT細胞制御因子の阻害剤であるICOS及びOX40(CTLA-4に対する抗体など)、ならびに類似の薬剤から選択され得る。
【0736】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、操作された初代細胞の集団の第1の投与前に患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、細胞の第1の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日前、またはそれよりも前に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、細胞の第1の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に投与される。
【0737】
特定の実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、細胞の第1の投与後に患者に投与されないか、または細胞の第1の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日後、もしくはそれよりも後に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、細胞の第1の投与から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に投与される。
【0738】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、操作された細胞の集団の投与前に患者に投与されない。多くの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、操作された初代細胞の集団の第1及び/または第2の投与前に患者に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日またはそれ以上前に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、細胞の第1及び/または第2の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に投与される。特定の実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、細胞の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日後、またはそれよりも後に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、細胞の第1及び/または第2の投与から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に投与される。
【0739】
免疫抑制剤及び/または免疫調節剤が細胞の投与前または後に患者に投与されるいくつかの実施形態では、投与は、免疫原性細胞、例えば、同じもしくは類似の細胞種または表現型を含むが、例えば、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を有し、CD47の外因性発現を有さない、操作された初代細胞の改変、例えば、遺伝的改変を含有しない細胞集団に必要とされるであろう用量よりも低い用量である。
【0740】
VI.例となる実施形態
以下の例となる実施形態が本明細書で提供される。
【0741】
実施形態1.(i)1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させる、ならびに(ii)1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる、改変を含む、操作された初代細胞であって、(i)の発現の増加及び(ii)の発現の低減は、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較したものである、前記操作された初代細胞。
【0742】
実施形態2.(ii)の改変は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる、実施形態1に記載の操作された初代細胞。
【0743】
実施形態3.(ii)の改変は、1つ以上のMHCクラスI及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる、実施形態1に記載の操作された初代細胞。
【0744】
実施形態4.前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl-阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態1~3のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0745】
実施形態5.前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態4に記載の操作された初代細胞。
【0746】
実施形態6.前記1つ以上の免疫寛容原性因子の少なくとも1つは、CD47である、実施形態4に記載の操作された初代細胞。
【0747】
実施形態7.(i)CD47の発現を増加させる、ならびに(ii)1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる、改変を含む、操作された初代細胞であって、(i)の発現の増加及び(ii)の発現の低減は、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比較したものである、前記操作された初代細胞。
【0748】
実施形態8.発現を増加させる前記改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる前記改変は、表面発現の低減を含む、実施形態1~7のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0749】
実施形態9.CD47の発現を増加させる前記改変は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態6~8のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0750】
実施形態10.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列をコードし、前記操作された初代細胞の自然免疫による殺傷を低減させる、実施形態9に記載の操作された初代細胞。
【0751】
実施形態11.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の配列をコードする、実施形態10に記載の操作された初代細胞。
【0752】
実施形態12.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態7~11のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0753】
実施形態13.前記プロモーターは構成的プロモーターである、実施形態12に記載の操作された初代細胞。
【0754】
実施形態14.前記プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターからなる群から選択される、実施形態12または13に記載の操作された初代細胞。
【0755】
実施形態15.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、前記操作された初代細胞のゲノム内に組み込まれる、実施形態4~14のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0756】
実施形態16.前記外因性ポリヌクレオチドは、CD47をコードするマルチシストロン性ベクター、及び第2の導入遺伝子をコードする追加の導入遺伝子である、実施形態15に記載の方法。
【0757】
実施形態17.前記組込みは、前記操作された初代細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである、実施形態15に記載の操作された初代細胞。
【0758】
実施形態18.前記組込みは、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座への標的挿入によるものである、実施形態15に記載の操作された初代細胞。
【0759】
実施形態19.前記標的ゲノム遺伝子座は、セーフハーバー遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座である、実施形態18に記載の方法。
【0760】
実施形態20.前記標的ゲノム遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される、実施形態19に記載の方法。
【0761】
実施形態21.1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる、実施形態1~20のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0762】
実施形態22.1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、B-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低減させる改変である、実施形態1~21のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0763】
実施形態23.1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、B2MのmRNA発現の低減を含む、実施形態22に記載の操作された初代細胞。
【0764】
実施形態24.1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、B2Mのタンパク質発現の低減を含む、実施形態22に記載の操作された初代細胞。
【0765】
実施形態25.前記改変は、B2M遺伝子活性を排除する、実施形態22~24のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0766】
実施形態26.前記改変は、前記B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む、実施形態22~25のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0767】
実施形態27.前記改変は、前記細胞におけるすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態22~26のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0768】
実施形態28.前記不活性化または前記破壊は、前記B2M遺伝子中のインデルを含む、実施形態26または実施形態27に記載の操作された初代細胞。
【0769】
実施形態29.前記改変は、前記B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である、実施形態22~28のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0770】
実施形態30.前記B2M遺伝子はノックアウトされている、実施形態22~29のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0771】
実施形態31.前記改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態22~30のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0772】
実施形態32.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、前記B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記CasはCas9である、実施形態31に記載の操作された初代細胞。
【0773】
実施形態33.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的なターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態32に記載の操作された初代細胞。
【0774】
実施形態34.前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態33に記載の操作された初代細胞。
【0775】
実施形態35.1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質またはHLA-Cタンパク質の発現を低減させる改変であり、任意選択で、前記HLA-Aタンパク質、前記HLA-Bタンパク質または前記HLA-Cタンパク質をコードする遺伝子は、ノックアウトされている、実施形態21に記載の操作された初代細胞。
【0776】
実施形態36.1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる、実施形態1~35のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0777】
実施形態37.1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、CIITAの発現を低減させる改変である、実施形態1~36のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0778】
実施形態38.1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、CIITAのmRNA発現の低減を含む、実施形態37に記載の操作された初代細胞。
【0779】
実施形態39.1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、CIITAのタンパク質発現の低減を含む、実施形態37に記載の操作された初代細胞。
【0780】
実施形態40.前記改変は、CIITA遺伝子活性を排除する、実施形態37~39のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0781】
実施形態41.前記改変は、前記CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む、実施形態37~40のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0782】
実施形態42.前記改変は、前記細胞におけるすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態37~41のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0783】
実施形態43.前記不活性化または前記破壊は、前記CIITA遺伝子中のインデルを含む、実施形態41または実施形態42に記載の操作された初代細胞。
【0784】
実施形態44.前記インデルは、前記CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である、実施形態37~43のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0785】
実施形態45.CIITA遺伝子はノックアウトされている、実施形態37~44のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0786】
実施形態46.前記改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態37~45のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0787】
実施形態47.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、前記CIITA遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記CasはCas9である、実施形態46に記載の操作された初代細胞。
【0788】
実施形態48.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記CIITA遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的なターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態46または実施形態47に記載の操作された初代細胞。
【0789】
実施形態49.前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態48に記載の操作された初代細胞。
【0790】
実施形態50.1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記改変は、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質の発現を低減させる改変であり、任意選択で、前記HLA-DPタンパク質、前記HLA-DRタンパク質または前記HLA-DQタンパク質をコードする遺伝子は、ノックアウトされている、実施形態36に記載の操作された初代細胞。
【0791】
実施形態51.前記操作された初代細胞は、ヒト細胞または動物細胞である、実施形態1~50のいずれか1つに記載の操作された初代細胞。
【0792】
実施形態52.前記操作された初代細胞は、ヒト細胞である、実施形態51に記載の操作された初代細胞。
【0793】
実施形態53.前記初代細胞は、血液に曝露される細胞種である、実施形態1~52のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0794】
実施形態54.前記操作された初代細胞は、ドナー対象から単離された初代細胞である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の操作された初代細胞。
【0795】
実施形態55.前記ドナー試料が前記ドナー対象から得られる時点で、前記ドナー対象は健康であるか、または疾患または状態を有する疑いがない、実施形態54に記載の操作された初代細胞。
【0796】
実施形態56.前記操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞から選択される、実施形態1~55のいずれか1つに記載の操作された初代細胞。
【0797】
実施形態57.前記操作された初代細胞は、内皮細胞である、実施形態1~56のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0798】
実施形態58.前記操作された初代細胞は、上皮細胞である、実施形態1~56のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0799】
実施形態59.前記操作された初代細胞は、T細胞である、実施形態1~56のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0800】
実施形態60.前記操作された初代細胞は、NK細胞である、実施形態1~56のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0801】
実施形態61.前記操作された初代細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む、実施形態59または実施形態60に記載の操作された初代細胞。
【0802】
実施形態62.前記操作された初代細胞は、膵島細胞である、実施形態1~52のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0803】
実施形態63.前記膵島細胞は、β膵島細胞である、実施形態62に記載の操作された初代細胞。
【0804】
実施形態64.前記操作された初代細胞は、肝細胞である、実施形態1~52のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0805】
実施形態65.前記操作された初代細胞は、ABO式血液型O型である、実施形態1~64のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0806】
実施形態66.前記操作された初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である、実施形態1~65のいずれかに記載の操作された初代細胞。
【0807】
実施形態67.操作された初代細胞を生成する方法であって、前記方法は、
a)初代細胞における1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することと、
b)前記初代細胞における1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させることと、を含む、前記方法。
【0808】
実施形態68.前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl-阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態67のいずれかに記載の方法。
【0809】
実施形態69.前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態68に記載の方法。
【0810】
実施形態70.前記1つ以上の免疫寛容原性因子の少なくとも1つは、CD47である、実施形態69に記載の方法。
【0811】
実施形態71.前記方法は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減または排除することを含む、実施形態67~70のいずれかに記載の方法。
【0812】
実施形態72.前記方法は、1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することを含む、実施形態67~71のいずれかに記載の方法。
【0813】
実施形態73.操作された初代細胞を生成する方法であって、前記方法は、
a.前記細胞における1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することと、
b.前記細胞におけるCD47の発現を増加させることと、を含む、前記方法。
【0814】
実施形態74.前記方法は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減または排除することを含む、実施形態73に記載の方法。
【0815】
実施形態75.前記方法は、1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することを含む、実施形態73に記載の方法。
【0816】
実施形態76.発現を増加させる前記改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低減させる前記改変は、表面発現の低減を含む、実施形態67~75のいずれかに記載の方法。
【0817】
実施形態77.CD47の発現を増加させる前記改変は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態70~75のいずれかに記載の方法。
【0818】
実施形態78.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列をコードし、前記操作された初代細胞の自然免疫による殺傷を低減させる、実施形態77のいずれかに記載の方法。
【0819】
実施形態79.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の配列をコードする、実施形態78に記載の方法。
【0820】
実施形態80.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態77~79のいずれかに記載の方法。
【0821】
実施形態81.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドは、前記操作された初代細胞のゲノム内に組み込まれる、実施形態77~80のいずれかに記載の方法。
【0822】
実施形態82.前記組込みは、前記操作された初代細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記操作された初代細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである、実施形態81に記載の方法。
【0823】
実施形態83.前記組込みは、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によるものであり、任意選択で、前記標的挿入は、相同指向性修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態81に記載の方法。
【0824】
実施形態84.前記標的ゲノム遺伝子座は、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座である、実施形態83に記載の方法。
【0825】
実施形態85.前記標的ゲノム遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される、実施形態84に記載の方法。
【0826】
実施形態86.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、前記標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記CasはCas9である、実施形態83~85のいずれかに記載の方法。
【0827】
実施形態87.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記標的ゲノム遺伝子座の標的配列に相補的なターゲティングドメインと、CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む相同指向修復鋳型と、を有するガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態86に記載の方法。
【0828】
実施形態88.前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態87に記載の方法。
【0829】
実施形態89.前記操作された初代細胞は、低免疫原性初代細胞である、実施形態67~88のいずれかに記載の方法。
【0830】
実施形態90.1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減または排除することは、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる改変を導入することを含む、実施形態67~89のいずれかに記載の方法。
【0831】
実施形態91.1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる前記改変は、B2Mの発現の低減を含む、実施形態67~90のいずれかに記載の方法。
【0832】
実施形態92.1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる前記改変は、B2Mのタンパク質発現の低減を含む、実施形態67~91のいずれかに記載の方法。
【0833】
実施形態93.1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる前記改変は、B2M遺伝子活性を排除する、実施形態91または実施形態92に記載の方法。
【0834】
実施形態94.1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させる前記改変は、前記B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む、実施形態67~93のいずれかに記載の方法。
【0835】
実施形態95.1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる前記改変は、前記細胞におけるすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態67~94のいずれかに記載の方法。
【0836】
実施形態96.前記不活性化または前記破壊は、前記内因性B2M遺伝子中のインデル、または前記内因性B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む、実施形態87または実施形態88に記載の方法。
【0837】
実施形態97.前記インデルは、前記B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である、実施形態89に記載の方法。
【0838】
実施形態98.前記内因性B2M遺伝子は、ノックアウトされている、実施形態84~90のいずれかに記載の方法。
【0839】
実施形態99.1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減させる前記改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態84~91のいずれかに記載の方法。
【0840】
実施形態100.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、前記B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記CasはCas9である、実施形態92に記載の方法。
【0841】
実施形態101.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的なターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態100に記載の方法。
【0842】
実施形態102.前記CRISPR-Casの組み合わせは、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態101に記載の方法。
【0843】
実施形態103.1つ以上のMHCクラスIの発現を低減させる前記改変は、HLA-Aタンパク質発現、HLA-Bタンパク質発現、またはHLA-Cタンパク質発現を低減させ、任意選択で、前記タンパク質発現は、前記HLA-Aタンパク質、前記HLA-Bタンパク質または前記HLA-Cタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトすることによって低減される、実施形態66~102に記載の方法。
【0844】
実施形態104.1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することは、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる改変を導入することを含む、実施形態67~103のいずれかに記載の方法。
【0845】
実施形態105.1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる前記遺伝子改変は、CIITAの発現の低減を含む、実施形態67~104のいずれかに記載の方法。
【0846】
実施形態106.1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる前記遺伝子改変は、CIITAのタンパク質発現の低減を含む、実施形態67~105のいずれかに記載の方法。
【0847】
実施形態107.1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる前記改変は、CIITAを排除する、実施形態104または実施形態105に記載の方法。
【0848】
実施形態108.1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減させる前記改変は、前記CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を含む、実施形態67~107のいずれかに記載の方法。
【0849】
実施形態109.前記改変は、前記細胞におけるすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態67~108のいずれかに記載の方法。
【0850】
実施形態110.前記不活性化または前記破壊は、前記CIITA遺伝子中のインデル、または前記CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む、実施形態108または実施形態109に記載の方法。
【0851】
実施形態111.前記インデルは、前記CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAのフレームシフト変異または欠失である、実施形態110に記載の方法。
【0852】
実施形態112.前記CIITA遺伝子は、ノックアウトされている、実施形態67~111のいずれかに記載の方法。
【0853】
実施形態113.1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させる前記遺伝子改変は、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質の発現を低減させ、任意選択で、前記HLA-DPタンパク質発現、前記HLA-DRタンパク質発現または前記HLA-DQタンパク質発現は、前記HLA-DPタンパク質、前記HLA-DRタンパク質または前記HLA-DQタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトすることによって低減される、実施形態67に記載の方法。
【0854】
実施形態114.前記操作された初代細胞は、ヒト細胞または動物細胞である、実施形態67~113のいずれかに記載の方法。
【0855】
実施形態115.前記操作された初代細胞は、ヒト細胞である、実施形態67~114のいずれかに記載の方法。
【0856】
実施形態116.前記操作された初代細胞は、血液に曝露される細胞種である、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0857】
実施形態117.前記操作された初代細胞は、ドナー対象から単離されている、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0858】
実施形態118.前記操作された初代細胞は、膵島細胞、β膵島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞から選択される、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0859】
実施形態119.前記操作された初代細胞は、膵島細胞である、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0860】
実施形態200.工程a)の前に、前記初代膵島細胞は、初代膵島クラスターから解離されている、実施形態119に記載の方法。
【0861】
実施形態201.前記初代膵島クラスターは、ヒト初代死体膵島クラスターである、実施形態200に記載の方法。
【0862】
実施形態202.工程a)の後及び/または工程b)の後、前記初代膵島細胞は、改変された初代膵島クラスターへの再クラスター化のための条件下でインキュベートされ、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される、実施形態200または実施形態201に記載の方法。
【0863】
実施形態203.前記インキュベートすることは、静的条件下でインキュベートすることの少なくとも一部を更に含む、実施形態202に記載の方法。
【0864】
実施形態204.前記インキュベートすることは、静的条件下での第1のインキュベートと、それに続く動きを伴うインキュベートすることと、を含む、実施形態202または実施形態203に記載の方法。
【0865】
実施形態205.前記インキュベートすることは、動きを伴うインキュベートすることと、それに続く静的条件下での第2のインキュベートと、を含む、実施形態202または実施形態203に記載の方法。
【0866】
実施形態206.再クラスター化のための条件下で前記インキュベートする前に、前記方法は、改変された膵島細胞を選択することを含む、実施形態202~205のいずれかに記載の方法。
【0867】
実施形態207.前記選択することは、蛍光標識細胞分取(FACS)によるものである、実施形態206に記載の方法。
【0868】
実施形態208.前記方法は、
i)初代膵島クラスターを初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、
ii)前記懸濁液の初代β膵島細胞を改変し、初代β膵島細胞における1つ以上のMHCクラスI及び/または1つ以上のMHCクラスII HLAの発現を低減または排除することと、
iii)前記改変された初代β膵島細胞を、第1の改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される、前記インキュベートすることと、
iv)前記改変された初代膵島クラスターを改変された初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、
v)前記懸濁液中の前記改変された初代膵島細胞を更に改変し、前記初代細胞の1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させることと、
vi)前記更に改変された初代β膵島細胞を、第2の改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される、前記インキュベートすることと、を含む、実施形態119~207のいずれかに記載の方法。
【0869】
実施形態209.前記1つ以上のMHCクラスI HLAは、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質、またはHLA-Cタンパク質である、実施形態66または208に記載の方法。
【0870】
実施形態210.前記1つ以上のMHCクラスII HLAは、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質である、実施形態66、208または209に記載の方法。
【0871】
実施形態211.前記改変することは、遺伝子工学によるものである、実施形態208~210のいずれかに記載の方法。
【0872】
実施形態212.前記動きは、振盪である、実施形態208~211のいずれかに記載の方法。
【0873】
実施形態213.前記振盪は、軌道運動を含む、実施形態212に記載の方法。
【0874】
実施形態214.前記振盪は、双方向の直線運動を含む、実施形態212に記載の方法。
【0875】
実施形態215.前記振盪は、オービタルシェーカーによるものである、実施形態212または実施形態213に記載の方法。
【0876】
実施形態216.(iii)のインキュベートすること及び/またはvi)のインキュベートすることは、静的条件下でインキュベートすることの少なくとも一部を更に含む、実施形態202~215に記載の方法。
【0877】
実施形態217.iii)のインキュベートすること及び/またはvi)のインキュベートすることは、静的条件下での第1のインキュベートと、それに続く動きを伴うインキュベートすることと、を含む、実施形態202~216のいずれかに記載の方法。
【0878】
実施形態218.前記インキュベートすることは、動きを伴うインキュベートすることと、それに続く静的条件下での第2のインキュベートと、を含む、実施形態202~216のいずれかに記載の方法。
【0879】
実施形態219.v)の前に、前記方法は、iv)で前記解離させた膵島細胞から、改変されたβ膵島細胞を選択することと、任意選択で、前記選択された膵島細胞に対して工程iii)及び工程iv)を繰り返すことと、を含む、実施形態208~218のいずれかに記載の方法。
【0880】
実施形態220.vi)のインキュベートすることの後に、前記方法は、前記第2の改変された初代膵島クラスターを改変された初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、改変された膵島細胞を選択することと、を含む、実施形態208~218のいずれかに記載の方法。
【0881】
実施形態221.前記選択された改変初代β膵島細胞を、改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される、実施形態220に記載の方法。
【0882】
実施形態222.初代膵島細胞を遺伝子編集するための方法であって、前記方法は、
i)初代膵島クラスターを初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、
ii)前記懸濁液の初代β膵島細胞を改変することと、
iii)前記改変された初代β膵島細胞を、前記改変された初代β膵島細胞を膵島に再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、振盪しながら実行される、前記インキュベートすることと、を含む、前記方法。
【0883】
実施形態223.前記初代膵島クラスターは、ヒト初代死体膵島クラスターである、実施形態222に記載の方法。
【0884】
実施形態224.前記改変することは、前記細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させるため、または前記細胞における1つ以上の異種タンパク質の発現を増加させるために、前記細胞内に1つ以上の改変を導入することを含む、実施形態222または実施形態223に記載の方法。
【0885】
実施形態225.(iii)のインキュベートすること及び/またはvi)のインキュベートすることは、静的条件下でインキュベートすることの少なくとも一部を更に含む、実施形態222~224に記載の方法。
【0886】
実施形態226.前記インキュベートすることは、静的条件下での第1のインキュベートと、それに続く動きを伴うインキュベートすることと、を含む、実施形態222~225のいずれかに記載の方法。
【0887】
実施形態227.前記インキュベートすることは、動きを伴うインキュベートすることと、それに続く静的条件下での第2のインキュベートと、を含む、実施形態222~225のいずれかに記載の方法。
【0888】
実施形態228.工程i)~iii)は、繰り返される、実施形態222~227のいずれかに記載の方法。
【0889】
実施形態229.前記方法の第1の反復における改変することは、前記方法の繰り返される反復における改変することとは異なる、実施形態228に記載の方法。
【0890】
実施形態230.前記再クラスター化膵島細胞は、第1の改変された初代膵島クラスターであり、前記方法は更に、
iv)前記第1の改変された初代膵島クラスターを改変された初代β膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、
v)前記懸濁液の前記改変された初代膵島細胞を更に改変することと、
vi)前記更に改変された初代β膵島細胞を、第2の改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される、前記インキュベートすることと、を含む、実施形態222~224のいずれかに記載の方法。
【0891】
実施形態231.iii)のインキュベートすることの前に、前記方法は、改変された膵島細胞を選択することを含む、実施形態222~230のいずれかに記載の方法。
【0892】
実施形態232.v)の前に、前記方法は、iv)で前記解離させた膵島細胞から、改変されたβ膵島細胞を選択することと、任意選択で、前記選択された膵島細胞に対して工程iii)及び工程iv)を繰り返すことと、を含む、実施形態230または実施形態231に記載の方法。
【0893】
実施形態233.vi)のインキュベートすることの後に、前記方法は、前記第2の改変された初代膵島クラスターを改変された初代膵島細胞の懸濁液へと解離させることと、改変された膵島細胞を選択することと、を含む、実施形態222、226または227に記載の方法。
【0894】
実施形態234.前記懸濁液は、単一細胞懸濁液である、実施形態208~233のいずれかに記載の方法。
【0895】
実施形態235.前記選択された改変初代β膵島細胞を、改変された初代膵島クラスターに再クラスター化するための条件下でインキュベートすることであって、前記インキュベートすることの少なくとも一部は、動きを伴って実行される、実施形態232~234のいずれかに記載の方法。
【0896】
実施形態236.前記動きは、振盪である、実施形態222~235のいずれかに記載の方法。
【0897】
実施形態237.前記振盪は、軌道運動を含む、実施形態236に記載の方法。
【0898】
実施形態238.前記振盪は、双方向の直線運動を含む、実施形態236に記載の方法。
【0899】
実施形態239.前記振盪は、オービタルシェーカーによるものである、実施形態236または実施形態237に記載の方法。
【0900】
実施形態240.前記選択することは、蛍光標識細胞分取(FACS)を含む、実施形態231~239のいずれかに記載の方法。
【0901】
実施形態241.前記第1の改変することまたは前記更なる改変することの一方は、前記細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させることを含み、前記第1の改変することまたは前記更なる改変することのうちの他方は、前記細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させることを含む、実施形態230~240のいずれかに記載の方法。
【0902】
実施形態242.前記第1の改変することは、前記細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させることを含み、前記更なる改変することは、前記細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させることを含む、実施形態230~240のいずれかに記載の方法。
【0903】
実施形態243.前記第1の改変することは、1つ以上の主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させることを含む、実施形態230~242のいずれかに記載の方法。
【0904】
実施形態244.前記改変することは、遺伝子工学である、実施形態208~243のいずれかに記載の方法。
【0905】
実施形態245.前記1つ以上のMHCクラスI HLAは、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質、またはHLA-Cタンパク質である、実施形態230~244のいずれかに記載の方法。
【0906】
実施形態246.前記1つ以上のMHCクラスII HLAは、HLA-DPタンパク質、HLA-DRタンパク質またはHLA-DQタンパク質である、実施形態230~245のいずれかに記載の方法。
【0907】
実施形態247.1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低減させることは、B-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低減させることによるものである、実施形態243~246のいずれかに記載の方法。
【0908】
実施形態248.1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低減させることは、CIITAの発現を低減させることによるものである、実施形態243~247のいずれかに記載の方法。
【0909】
実施形態249.前記更なる改変することは、前記細胞における1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させることを含む、実施形態230~248のいずれかに記載の方法。
【0910】
実施形態250.前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、Cl-阻害剤、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態249に記載の方法。
【0911】
実施形態251.前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態250に記載の方法。
【0912】
実施形態252.前記1つ以上の免疫寛容原性因子の少なくとも1つは、CD47である、実施形態251に記載の方法。
【0913】
実施形態253.前記細胞における内因性タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の発現を低減させることは、遺伝子編集システムを前記細胞内に導入することによるものである、実施形態224~252のいずれかに記載の方法。
【0914】
実施形態254.前記遺伝子編集システムは、配列特異的ヌクレアーゼを含む、実施形態253に記載の方法。
【0915】
実施形態255.前記配列特異的ヌクレアーゼは、RNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)からなる群から選択される、実施形態254に記載の方法。
【0916】
実施形態256.前記遺伝子編集システムは、RNA誘導性ヌクレアーゼを含む、実施形態255に記載の方法。
【0917】
実施形態257.前記RNA誘導性ヌクレアーゼは、Casヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む、実施形態255に記載の方法。
【0918】
実施形態258.前記RNA誘導性ヌクレアーゼは、II型またはV型Casタンパク質である、実施形態256または実施形態257に記載の方法。
【0919】
実施形態259.前記RNA誘導性ヌクレアーゼは、Cas9ホモログまたはCpf1ホモログである、実施形態256、257または258に記載の方法。
【0920】
実施形態260.前記細胞における1つ以上の外因性タンパク質の発現を増加させることは、外因性ポリヌクレオチドを導入することによるものである、実施形態224~259のいずれかに記載の方法。
【0921】
実施形態261.前記外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態260に記載の方法。
【0922】
実施形態262.前記プロモーターは、構成的プロモーターである、実施形態261に記載の方法。
【0923】
実施形態263.前記プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターからなる群から選択される、実施形態261または実施形態262に記載の方法。
【0924】
実施形態264.前記外因性ポリヌクレオチドは、前記細胞のゲノム内に組み込まれる、実施形態224~259のいずれかに記載の方法。
【0925】
実施形態265.前記外因性ポリヌクレオチドは、マルチシストロン性ベクターである、実施形態264に記載の方法。
【0926】
実施形態266.前記組込みは、前記細胞のゲノム内への非標的挿入により、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入によるものである、実施形態264に記載の方法。
【0927】
実施形態267.前記組込みは、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座への標的挿入によるものである、実施形態264に記載の方法。
【0928】
実施形態268.前記膵島細胞は、β膵島細胞である、実施形態119~267のいずれかに記載の方法。
【0929】
実施形態269.前記操作された初代細胞は、肝細胞である、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0930】
実施形態270.前記操作された初代細胞は、T細胞である、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0931】
実施形態271.前記操作された初代細胞は、内皮細胞である、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0932】
実施形態272.前記操作された初代細胞は、甲状腺細胞である、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0933】
実施形態273.前記操作された初代細胞は、皮膚細胞である、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0934】
実施形態274.前記操作された初代細胞は、網膜色素上皮細胞である、実施形態67~115のいずれかに記載の方法。
【0935】
実施形態275.実施形態67~274のいずれかに記載の方法に従って作製される、操作された初代細胞。
【0936】
実施形態276.前記初代細胞は、膵島細胞である、実施形態275に記載の操作された初代細胞。
【0937】
実施形態277.前記膵島細胞は、β膵島細胞である、実施形態276に記載の操作された初代細胞。
【0938】
実施形態278.前記操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時に、NK細胞媒介性細胞傷害性を回避することができる、実施形態1~66及び275~277のいずれか1つに記載の操作された初代細胞。
【0939】
実施形態279.前記操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時に、成熟NK細胞による細胞溶解から保護される、実施形態1~66及び275~278のいずれか1つに記載の操作された初代細胞。
【0940】
実施形態280.前記操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時に、前記細胞に対する免疫応答を誘導しない、実施形態1~66及び275~279のいずれか1つに記載の操作された初代細胞。
【0941】
実施形態281.前記操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時に、前記細胞に対する全身性炎症反応を誘導しない、実施形態1~66及び275~280のいずれか1つに記載の操作された初代細胞。
【0942】
実施形態282.前記操作された初代細胞は、レシピエント患者への投与時に、前記細胞に対する局所炎症反応を誘導しない、実施形態1~66及び275~281のいずれか1つに記載の操作された初代細胞。
【0943】
実施形態283.実施形態1~66及び275~282のいずれかに記載の複数の操作された初代細胞を含む、操作された初代細胞の集団。
【0944】
実施形態284.前記複数の操作された初代細胞は、複数のドナー対象からプールされた細胞に由来する、実施形態283に記載の操作された初代細胞の集団。
【0945】
実施形態285.前記複数のドナー対象のそれぞれは、前記ドナー試料が前記ドナー対象から得られる時点で、健康な対象であるか、または疾患もしくは状態を有する疑いがない、実施形態284に記載の操作された初代細胞の集団。
【0946】
実施形態286.前記集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変を含む、実施形態283~285のいずれかに記載の集団。
【0947】
実施形態287.前記集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態283~286のいずれかに記載の集団。
【0948】
実施形態288.前記集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低減を含む、実施形態136または実施形態137に記載の集団。
【0949】
実施形態289.前記集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、B2M及び/またはCIITAの発現の低減を含む、実施形態283~288のいずれかに記載の集団。
【0950】
実施形態290.前記集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、B2Mの発現の低減を含む、実施形態283~289のいずれかに記載の集団。
【0951】
実施形態291.前記集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、前記改変(複数可)を含まない同じ細胞種の細胞と比較して、B2M及びCIITAの発現の低減を含む、実施形態283~290のいずれかに記載の集団。
【0952】
実施形態292.前記集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、内因性B2M遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む、実施形態283~291のいずれかに記載の集団。
【0953】
実施形態293.前記集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%は、内因性CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化する、1つ以上の変化を含む、実施形態283~292のいずれかに記載の集団。
【0954】
実施形態294.実施形態283~293のいずれかに記載の集団を含む、組成物。
【0955】
実施形態295.実施形態119~268のいずれかに記載の方法によって作製される、操作された初代膵島クラスターを含む組成物。
【0956】
実施形態296.操作された初代膵島細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代膵島細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む、前記組成物。
【0957】
実施形態297.前記操作された初代膵島細胞の集団は、初代膵島細胞のクラスターである、実施形態296に記載の組成物。
【0958】
実施形態298.前記操作された初代膵島細胞の集団は、操作された初代β膵島細胞の集団である、実施形態296に記載の組成物。
【0959】
実施形態299.操作された初代T細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代T細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む、前記組成物。
【0960】
実施形態300.操作された初代甲状腺細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代甲状腺細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む、前記組成物。
【0961】
実施形態301.操作された初代皮膚細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代皮膚細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む、前記組成物。
【0962】
実施形態302.操作された初代内皮細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代内皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む、前記組成物。
【0963】
実施形態303.操作された初代網膜色素上皮細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された初代網膜色素上皮細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子と、(ii)B2M遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊と、を含む、前記組成物。
【0964】
実施形態304.前記操作された初代細胞の集団の操作された初代細胞は、前記B2M遺伝子の両方の対立遺伝子にインデルを含む、実施形態294~303のいずれかに記載の組成物。
【0965】
実施形態305.前記操作された初代細胞の集団の前記操作された初代細胞は、CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子の不活性化または破壊を更に含む、実施形態294~304のいずれかに記載の組成物。
【0966】
実施形態306.前記操作された初代細胞の集団の操作された初代細胞は、前記CIITA遺伝子の両方の対立遺伝子にインデルを含む、実施形態294~305のいずれかに記載の組成物。
【0967】
実施形態307.前記操作された初代細胞の集団の前記操作された初代細胞は、表現型B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tgを有する、実施形態294~306のいずれかに記載の組成物。
【0968】
実施形態308.前記組成物は、医薬組成物である、実施形態294~307のいずれかに記載の組成物。
【0969】
実施形態309.医薬的に許容される賦形剤を含む、実施形態294~308のいずれかに記載の組成物。
【0970】
実施形態310.前記組成物は、凍結保護物質を含む、無血清凍結保存培地中で調製される、実施形態294~309のいずれかに記載の組成物。
【0971】
実施形態311.前記凍結保護物質はDMSOであり、前記凍結保存培地は5%~10%DMSO(v/v)である、実施形態309に記載の組成物。
【0972】
実施形態312.前記凍結保護物質は、10%のDMSO(v/v)であるか、または約10%のDMSO(v/v)である、実施形態308及び実施形態309に記載の組成物。
【0973】
実施形態313.滅菌である、実施形態294~312のいずれかに記載の組成物。
【0974】
実施形態314.実施形態294~313のいずれかに記載の組成物を含む、容器。
【0975】
実施形態315.滅菌バッグである、実施形態314に記載の容器。
【0976】
実施形態316.前記バッグは、凍結保存適合バッグである、実施形態315に記載の滅菌バッグ。
【0977】
実施形態317.有効量の実施形態283~293のいずれかに記載の集団、実施形態294~307のいずれかに記載の組成物、または実施形態308に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、その必要がある患者において疾患、状態、または細胞欠損症を治療する方法。
【0978】
実施形態318.前記集団は、医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として調製される、317に記載の方法
【0979】
実施形態319.前記細胞集団は、β膵島細胞を含む、膵島細胞を含む、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0980】
実施形態320.前記膵島細胞の集団は、膵島細胞のクラスターとして投与される、実施形態317~319のいずれか1つに記載の方法。
【0981】
実施形態321.前記膵島細胞の集団は、β膵島細胞のクラスターとして投与される、実施形態317~320のいずれか1つに記載の方法。
【0982】
実施形態322.前記細胞集団は、肝細胞である、実施形態317~320のいずれかに記載の方法。
【0983】
実施形態323.前記細胞集団は、T細胞を含む、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0984】
実施形態324.前記細胞集団は、甲状腺細胞を含む、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0985】
実施形態325.前記細胞集団は、皮膚細胞を含む、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0986】
実施形態326.前記細胞集団は、内皮細胞を含む、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0987】
実施形態327.前記細胞集団は、網膜色素上皮細胞を含む、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0988】
実施形態328.前記状態または前記疾患は、糖尿病、がん、血管新生障害、眼疾患、甲状腺疾患、皮膚疾患、及び肝臓疾患からなる群から選択される、実施形態317~327に記載の方法。
【0989】
実施形態329.前記細胞欠損症は糖尿病に関連するか、または前記細胞療法は糖尿病の治療のためのものであり、任意選択で、前記糖尿病はI型糖尿病である、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0990】
実施形態330.前記細胞集団は、β膵島細胞を含む膵島細胞の集団である、実施形態329に記載の方法。
【0991】
実施形態331.前記細胞集団は、膵島細胞のクラスターとして投与される、実施形態330に記載の方法。
【0992】
実施形態332.その必要がある患者において糖尿病を治療する方法であって、前記方法は、有効量の実施形態283~293のいずれかに記載の膵島細胞の集団、実施形態294~307のいずれかに記載の組成物、または実施形態308に記載の医薬組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【0993】
実施形態333.前記膵島細胞のクラスターは、β膵島細胞のクラスターである、実施形態330~331のいずれかに記載の方法。
【0994】
実施形態334.前記細胞欠損症は、血管状態もしくは疾患に関連するか、または前記細胞療法は、血管状態もしくは疾患の治療のためのものである、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0995】
実施形態335.前記細胞集団は、内皮細胞の集団である、実施形態334に記載の方法。
【0996】
実施形態336.前記細胞欠損症は、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または前記細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の治療のためのものである、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0997】
実施形態337.前記細胞欠損症は、肝臓疾患に関連するか、または前記細胞療法は、肝臓疾患の治療のためのものである、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【0998】
実施形態338.前記肝臓疾患は、肝硬変を含む、実施形態337に記載の方法。
【0999】
実施形態339.前記細胞集団は、肝細胞の集団である、実施形態337または実施形態338に記載の方法。
【1000】
実施形態340.前記細胞欠損症は、角膜疾患に関連するか、または前記細胞療法は、角膜疾患の治療のためのものである、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【1001】
実施形態341.前記角膜疾患は、フックスジストロフィー、または先天性遺伝性内皮ジストロフィーである、実施形態340に記載の方法。
【1002】
実施形態342.前記細胞集団は、角膜内皮細胞の集団である、実施形態340または実施形態341に記載の方法。
【1003】
実施形態343.前記細胞欠損症は、腎臓疾患に関連するか、または前記細胞療法は、腎臓疾患の治療のためのものである、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【1004】
実施形態344.前記細胞集団は、腎細胞の集団である、実施形態343に記載の方法。
【1005】
実施形態345.前記細胞療法は、がんの治療のためのものである、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【1006】
実施形態346.前記がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、実施形態345に記載の方法。
【1007】
実施形態347.前記細胞集団は、T細胞またはNK細胞の集団である、実施形態317または実施形態318に記載の方法。
【1008】
実施形態348.前記細胞は、投与前に増殖され、凍結保存される、実施形態317~347のいずれかに記載の方法。
【1009】
実施形態349.前記集団を投与することは、前記集団の静脈内注射、筋肉内注射、血管内注射、及び移植を含む、実施形態317~348のいずれかに記載の方法。
【1010】
実施形態350.前記集団は、腎被膜移植または筋肉内注射を介して移植される、実施形態349に記載の方法。
【1011】
実施形態351.前記集団はドナー対象に由来し、前記ドナーのHLA型は前記患者のHLA型と一致しない、実施形態317~350のいずれかに記載の方法。
【1012】
実施形態352.前記集団はヒト細胞集団であり、前記患者はヒト患者である、実施形態317~351のいずれかに記載の方法。
【1013】
実施形態353.前記β膵島細胞は、前記対象における耐糖能を改善する、実施形態330~333のいずれかに記載の方法。
【1014】
実施形態354.前記対象は、糖尿病患者である、実施形態353に記載の方法。
【1015】
実施形態355.前記糖尿病患者は、I型糖尿病またはII型糖尿病である、実施形態354に記載の方法。
【1016】
実施形態356.耐糖能は、前記膵島細胞の投与前の前記対象の耐糖能と比較して、改善される、実施形態330~332及び353~355のいずれかに記載の方法。
【1017】
実施形態357.前記β膵島細胞は、前記対象における外因性インスリン使用量を低減させる、実施形態330~332及び353~356のいずれかに記載の方法。
【1018】
実施形態358.HbA1cレベルによって測定される耐糖能が改善される、実施形態353~357のいずれかに記載の方法。
【1019】
実施形態359.前記対象は絶食している、実施形態353~358のいずれかに記載の方法。
【1020】
実施形態360.前記膵島細胞は、前記対象におけるインスリン分泌を改善する、実施形態330~332及び351~360のいずれか1つに記載の方法。
【1021】
実施形態361.インスリン分泌は、前記膵島細胞の投与前の前記対象のインスリン分泌と比較して、改善される、実施形態360に記載の方法。
【1022】
実施形態362.1つ以上の免疫抑制剤を前記患者に投与することを更に含む、実施形態317~361のいずれかに記載の方法。
【1023】
実施形態363.前記患者は、1つ以上の免疫抑制剤を投与されている、実施形態317~361のいずれかに記載の方法。
【1024】
実施形態364.前記1つ以上の免疫抑制剤は、小分子または抗体である、実施形態362または363に記載の方法。
【1025】
実施形態365.前記1つ以上の免疫抑制剤は、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、コルチコステロイド、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナール、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン(チモシン-α)、及び免疫抑制抗体からなる群から選択される、実施形態362~364のいずれかに記載の方法。
【1026】
実施形態366.前記1つ以上の免疫抑制剤は、シクロスポリンを含む、実施形態362~364のいずれかに記載の方法。
【1027】
実施形態367.前記1つ以上の免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチルを含む、実施形態362~364のいずれかに記載の方法。
【1028】
実施形態368.前記1つ以上の免疫抑制剤は、コルチコステロイドを含む、実施形態362~364のいずれかに記載の方法。
【1029】
実施形態369.前記1つ以上の免疫抑制剤は、シクロホスファミドを含む、実施形態362~364のいずれかに記載の方法。
【1030】
実施形態370.前記1つ以上の免疫抑制剤は、ラパマイシンを含む、実施形態362~364のいずれかに記載の方法。
【1031】
実施形態371.前記1つ以上の免疫抑制剤は、タクロリムス(FK-506)を含む、実施形態362~364のいずれかに記載の方法。
【1032】
実施形態372.前記1つ以上の免疫抑制剤は、抗胸腺細胞グロブリンを含む、実施形態362~364のいずれかに記載の方法。
【1033】
実施形態373.前記1つ以上の免疫抑制剤は、1つ以上の免疫調節剤である、実施形態362~364のいずれかに記載の方法。
【1034】
実施形態374.前記1つ以上数の免疫調節剤は、小分子または抗体である、実施形態373に記載の方法。
【1035】
実施形態375.前記抗体は、IL-2受容体のp75、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD58、及びこれらのリガンドのいずれかに結合する抗体からなる群から選択される、受容体またはリガンドのうちの1つ以上に結合する、実施形態364または実施形態374に記載の方法。
【1036】
実施形態376.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~375のいずれかに記載の方法。
【1037】
実施形態377.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1038】
実施形態378.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1039】
実施形態379.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1040】
実施形態380.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1041】
実施形態381.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与と同じ日に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1042】
実施形態382.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の投与後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1043】
実施形態383.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1044】
実施形態384.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1045】
実施形態385.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1046】
実施形態386.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1047】
実施形態387.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1048】
実施形態388.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の第1の投与及び/または第2の投与の投与の少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週またはそれ以上後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態362~376のいずれかに記載の方法。
【1049】
実施形態389.前記1つ以上の免疫抑制剤は、前記操作された細胞の前記改変を含まない免疫原性細胞の免疫拒絶を低減させるために投与される1つ以上の免疫抑制剤の用量と比較して、より低い用量で投与される、実施形態362~388のいずれかに記載の方法。
【1050】
実施形態390.前記操作された細胞は、前記操作された細胞の制御された殺傷を可能にする、実施形態361~389のいずれかに記載の方法。
【1051】
実施形態391.前記操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチを含む、実施形態361~390のいずれかに記載の方法。
【1052】
実施形態392.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、薬物またはプロドラッグの存在下、または選択的な外因性化合物による活性化の際に、制御された細胞死を誘導する、実施形態391に記載の方法。
【1053】
実施形態393.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、前記操作された細胞のアポトーシスを誘導できる誘導性タンパク質である、実施形態391または実施形態392に記載の方法。
【1054】
実施形態394.前記操作された細胞のアポトーシスを誘導できる前記誘導性タンパク質は、カスパーゼタンパク質である、実施形態393に記載の方法。
【1055】
実施形態395.前記カスパーゼタンパク質は、カスパーゼ9である、実施形態394に記載の方法。
【1056】
実施形態396.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、実施形態393または実施形態394に記載の方法。
【1057】
実施形態397.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、前記患者への前記1つ以上の免疫抑制剤の投与後に活性化され、制御された細胞死を誘導する、実施形態391~396のいずれかに記載の方法。
【1058】
実施形態398.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、前記患者への前記1つ以上の免疫抑制剤の投与前に活性化され、制御された細胞死を誘導する、実施形態391~396のいずれかに記載の方法。
【1059】
実施形態399.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、前記患者への前記操作された細胞の投与後に活性化され、制御された細胞死を誘導する、実施形態391~398のいずれかに記載の方法。
【1060】
実施形態400.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、活性化され、前記患者に対する細胞傷害性または他の悪影響が生じた場合に制御された細胞死を誘導する、実施形態391~399のいずれかに記載の方法。
【1061】
実施形態401.前記操作された細胞の集団の操作された細胞の枯渇を可能にする、薬剤を投与することを含む、実施形態361~391のいずれかに記載の方法。
【1062】
実施形態402.前記操作された細胞の枯渇を可能にする薬剤は、前記操作された細胞の表面に発現したタンパク質を認識する抗体である、実施形態401に記載の方法。
【1063】
実施形態403.前記抗体は、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA、及びRQR8を認識する抗体からなる群から選択される、実施形態402に記載の方法。
【1064】
実施形態404.前記抗体は、モガムリズマブ、AFM13、MOR208、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-Rllb、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジニツキシマブ、c.60C3-Rllc、及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択される、実施形態401または実施形態402に記載の方法。
【1065】
実施形態405.前記操作された細胞の表面上の前記1つ以上の免疫寛容原性因子を認識する薬剤を投与することを含む、実施形態317~361及び401~404のいずれかに記載の方法。
【1066】
実施形態406.前記操作された細胞は、前記1つ以上の免疫寛容原性因子を発現するように操作されている、実施形態405に記載の方法。
【1067】
実施形態407.前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である、実施形態405または実施形態406に記載の方法。
【1068】
実施形態408.1つ以上の追加の治療薬を前記患者に投与することを更に含む、実施形態317~407のいずれかに記載の方法。
【1069】
実施形態409.前記患者は、1つ以上の追加の治療薬を投与されている、実施形態317~408のいずれかに記載の方法。
【1070】
実施形態410.前記方法の治療効果を監視することを更に含む、実施形態317~409のいずれかに記載の方法。
【1071】
実施形態411.前記方法の予防効果を監視することを更に含む、実施形態317~410のいずれかに記載の方法。
【1072】
実施形態412.前記方法は、1つ以上の疾患症状の所望の抑制が起こるまで繰り返される、実施形態410または実施形態411に記載の方法。
【1073】
実施形態413.前記操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態1~66及び275~282のいずれかに記載の操作された細胞。
【1074】
実施形態414.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、実施形態413に記載の操作された細胞。
【1075】
実施形態415.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態413または実施形態414に記載の操作された細胞。
【1076】
実施形態416.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態413~415のいずれかに記載の操作された細胞。
【1077】
実施形態417.前記バイシストロン性カセットは、前記操作された細胞のゲノム内への非標的挿入によって、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入にによって組み込まれる、実施形態415または実施形態416に記載の操作された細胞。
【1078】
実施形態418.前記バイシストロン性カセットは、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によって組み込まれ、任意選択で、前記標的挿入は、相同指向性修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態417に記載の操作された細胞。
【1079】
実施形態419.前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である、実施形態412~418のいずれかに記載の操作された細胞。
【1080】
実施形態420.前記操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態67~274のいずれかに記載の方法。
【1081】
実施形態421.前記自殺遺伝子は、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、実施形態420に記載の方法。
【1082】
実施形態422.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態420または実施形態421に記載の方法。
【1083】
実施形態423.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態420~422のいずれかに記載の方法。
【1084】
実施形態424.前記バイシストロン性カセットは、前記操作された細胞のゲノム内への非標的挿入によって組み込まれる、実施形態422または実施形態423に記載の方法。
【1085】
実施形態425.前記バイシストロン性カセットは、前記操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によって組み込まれる、実施形態424に記載の方法。
【1086】
実施形態426.前記1つ以上の免疫寛容原性因子は、CD47である、実施形態420~425のいずれかに記載の方法。
【1087】
実施形態427.前記操作された細胞の集団の操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態294~313のいずれかに記載の組成物。
【1088】
実施形態428.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、実施形態427に記載の組成物。
【1089】
実施形態429.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子は、前記操作された細胞の集団の操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態427または実施形態428に記載の組成物。
【1090】
実施形態430.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記外因性CD47は、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態427~429のいずれかに記載の組成物。
【1091】
実施形態431.前記バイシストロン性カセットは、ゲノム内への非標的挿入によって、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記操作された細胞の集団の操作された細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入によって組み込まれる、実施形態429または実施形態430に記載の組成物。
【1092】
実施形態432.前記バイシストロン性カセットは、前記操作された細胞の集団の操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的挿入によって組み込まれ、任意選択で、前記標的挿入は、相同指向性修復を伴うヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態429または実施形態430に記載の組成物。
【実施例】
【1093】
VII.実施例
以下の実施例は、例示の目的のためにのみ含まれ、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【1094】
実施例1:移植試験におけるB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞の生存及び機能性
同種異系レシピエントの初代β膵島細胞の移植における、MHCクラスI及びMHCクラスIIの発現を低減させること及びCD47の発現を増加させることの効果を試験するために、B2MノックアウトC57BL/6(B6)マウス(MHCハプロタイプH2
b)からの初代β膵島細胞は、CD47をコードするレンチウイルスベクターが形質導入され、マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞を生成した。C57BL/6(B6)マウスから単離されたB2M
-/-初代β膵島細胞は、自然にはMHC-II分子を発現せず(
図1)、刺激後にMHC-II分子は上方制御されない。マウスB2M
-/-;CD47tgの操作された初代β膵島細胞を、BALB/c糖尿病疾患マウスモデルレシピエント(MHCハプロタイプH2
d)に移植した。移植されたマウスのB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞の生存及び機能性を、移植されたマウスの野生型B6膵島細胞と比較して、経時的に監視した。
【1095】
A.方法
糖尿病マウスモデル。25匹のBALB/c(MHCハプロタイプH2d)マウスに、低用量のストレプトゾトシン(STZ)(60mg/kg腹腔内)を5日間毎日(-5日目~0日目)注射した。STZをクエン酸緩衝液(10mg/ml原液)に溶解させ、腹腔内(i.p.)注射用に150μLの注射量に希釈した。腎臓を健康に保つために、翌朝、リン酸緩衝食塩水(PBS)(1mL)の腹腔内注射をマウスに投与した。
【1096】
血糖の測定。血糖の測定は、標準プロトコールに従って、食物中止の4時間後に行われた。
【1097】
マウス初代β膵島細胞の生成。B2M-/-初代β膵島細胞を、B2MノックアウトC57BL/6(B6)マウス(MHCハプロタイプH2b)から単離した。単離されたマウスB2M-/-初代β膵島細胞に、マウスCD47導入遺伝子をコードするレンチウイルスベクターを形質導入した。野生型B6マウスから単離された初代β膵島細胞を、対照(野生型膵島)として使用した。生物発光イメージング(BLI)によって細胞生存を監視するために、マウス野生型細胞とマウスB2M-/-CD47tg初代β膵島細胞の両方にルシフェラーゼ発現コンストラクトを形質導入した。
【1098】
フローサイトメトリー。初代β膵島細胞上のMHCクラスI、MHCクラスII、及びCD47の表面発現を、抗体特異的試薬を使用したフローサイトメトリーによって評価した。アイソタイプ抗体を対照として使用した。
【1099】
移植試験の設計及び投与。25匹のBALB/c MHCハプロタイプH2dマウス(マウス体重18~20g)を、糖尿病を誘発するためのSTZ投与後、5つの試験群(試験群当たりn=5)にランダムに分けた。そこで、投与された細胞(マウス野生型対マウスB2M-/-CD47tgB6初代β膵島細胞)及び/または投与経路(腎被膜への直接注射対筋肉内i.m.投与)に基づいて、群は異なった。試験群は以下のとおりであった:マウス野生型B6初代β膵島(luc+)の腎被膜移植、マウス野生型B6初代β膵島(luc+)の筋肉内移植、移植なしの糖尿病対照、マウスB2M-/-CD47tgB6初代β膵島(luc+)の腎被膜移植、及びマウスB2M-/-CD47tgB6初代β膵島(luc+)の筋肉内移植。
【1100】
1クラスター当たり約1500個の細胞の膵島クラスターを、腎被膜注射または筋肉内注射によってマウスに移植した。腎被膜注射の場合、マウス1匹当たり300個のクラスター(約450,000個の細胞)を移植した。筋肉内注射の場合、マウス1匹当たり600個のクラスター(約900,000個の細胞)を注射した。0日目(d0)を移植の日として定義した。
【1101】
細胞生存率は、マウスB2M-/-CD47tgB6初代β膵島について、d0、d3、d5、d7、d9、d11、d13、d17、d21、d25及びd29に生物発光イメージング(BLI)によって測定した(野生型B6初代β膵島の場合、5日目の後にシグナルが検出されなかったため、BLIイメージングは5日目の後に中止された)。グルコースは、膵島移植前(STZ前、d-3、d-2及びd-1)の4時間の絶食後、及びd0、d3、d14、d21、d28、d30、d31、d32、d36に測定した。d29に、腎被膜を移植したコホートからの組織病理学的分析のために、腎臓を取り出した。初代β膵島細胞の単離は、Li,et al.“A protocol for islet isolation from mouse pancreas.”Nat Protoc.Vol.4,11(2009):1649-52(その内容は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように実施された。腎臓の単離は、Mathews et al.“New mouse model to study islet transplantation in insulin-dependent diabetes mellitus.”Transplantation.Vol.73,8(2006):1333-6に記載されるように実施された。
【1102】
B.結果
マウスB2M
-/-CD47tgB6初代β膵島細胞は、MHC-IまたはMHC-IIを発現せず、CD47の発現が増加している。マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞におけるMHC-I、MCH-II及びCD47の発現を評価するために、フローサイトメトリーを実施した。単離したマウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞は、移植の前後でMHC-I及びMHC-IIに対して陰性であった(
図1)。CD47を過剰発現するように操作されていないマウスB2M
-/-初代β膵島細胞は、低レベルのCD47表面発現を示した(
図2Aに示すように、アイソタイプ対照の3.3倍)。マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞は、CD47の発現の増加を示した(
図2Bに示すように、アイソタイプ対照の48倍)。
【1103】
マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞は、同種異系移植後も生存する。筋肉内注射後のマウス初代β膵島細胞のBLIイメージング結果の定量化を、
図3A(マウス野生型B6初代β膵島細胞)及び
図3C(マウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞)に示し、腎臓被膜注射後を、
図4A(マウス野生型B6初代β膵島細胞)及び
図4C(マウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞)に示す。筋肉内注射後のマウス初代β膵島細胞の対応するBLI画像を、
図3B(マウス野生型B6初代β膵島細胞)及び
図3D(マウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞)に示し、腎臓被膜注射後を、
図4B(マウス野生型B6初代β膵島細胞)及び
図4D(マウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞)に示す。生物発光は、マウス初代β膵島細胞の投与後、すべての群の筋肉内注射部位で最初に観察された。しかし、移植されたマウス野生型B6初代β膵島細胞について検出された光子の数は、移植後の最初の5日間で急速に減少し(
図3A及び
図4A)、これは、おそらく免疫反応による、マウス野生型B6初代β膵島細胞の死を示した。対照的に、移植されたマウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞から検出された光子の数は、移植後29日間にわたって増加し、マウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞の生存及び増殖を示した(
図3C及び
図4C)。
【1104】
マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞は、同種異系移植後に機能する。移植されたマウス初代β膵島細胞の機能を分析するために、移植後の指定の時点で血糖値を測定した。血糖値は、ナイーブ(未処置)マウスでは80~120mg/dLであり、糖尿病(STZ処置)マウスでは200mg/dL超であった。野生型B6膵島の筋肉内注射または腎被膜注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスの血糖値は、
図3E及び
図4Eにそれぞれに示すように、全試験期間にわたって高いままであった(400mg/dL超)。対照的に、マウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞の筋肉内注射または腎被膜注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスの血糖値は、
図3F及び
図4Fにそれぞれ示すように、移植後すぐに非糖尿病レベル(80~120mg/dL)まで低下した。腎被膜注射モデルでは、d29に腎臓を除去した後、血糖値は上昇し始めた(
図4F)。
【1105】
まとめると、これらのデータは、マウスB2M-/-;CD47tg初代β膵島細胞が、糖尿病疾患モデルにおける同種異系移植後も生存し、機能できた(例えば、糖尿病により失われたグルコース制御を回復する)ことを示している。
【1106】
実施例2:移植試験におけるB2M-/-;CD47tg初代β膵島細胞の免疫機能
マウス初代β膵島細胞における、MHCクラスI及びMHCクラスII発現の低減とCD47発現の増加による免疫回避効果を試験するために、BALB/c糖尿病疾患マウスモデルレシピエント(MHCハプロタイプH2d)に移植された、実施例1に記載のように作製されたマウスB2M-/-;CD47tg初代β膵島細胞で、免疫機能アッセイを実施した。マウスB2M-/-;CD47tg初代β膵島細胞の移植によって誘発される生存と免疫応答を、マウス野生型B6初代β膵島細胞及びマウスB2M-/-B6初代β膵島細胞と比較して、評価した。
【1107】
A.方法
移植試験の設計及び投与。15匹のBALB/c MHCハプロタイプH2dマウス(マウス体重18~20g)を、糖尿病を誘発するためのSTZ筋肉内(i.m.)投与後、5つの試験群(試験群当たりn=5)にランダムに分けた。そこで、投与された細胞(野生型対B2M-/-CD47tgB6初代β膵島細胞)に基づいて、群は異なった。試験群は以下のとおりであった:マウス野生型B6初代β膵島細胞(luc+)の筋肉内移植、マウスB2M-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞(luc+)の筋肉内移植、及び移植なしの糖尿病対照。
【1108】
1クラスター当たり約600個の細胞の膵島クラスターを、筋肉内注射によってマウスに移植した。筋肉内注射の場合、マウス1匹当たり600個のクラスター(約900,000個の細胞)を注射した。0日目(d0)を移植の日として定義した。グルコースは、膵島移植前(STZ前、d-3、d-2及びd-1)の4時間の絶食後、及びd6に測定した。6日目に、免疫アッセイ分析のためにマウスを屠殺した。
【1109】
T細胞酵素結合免疫吸収SPOT(ELISPOT)アッセイ。マウス初代β膵島細胞におけるインターフェロンγ(IFNg)分泌CD8(+)T細胞を、ELISPOTによって検出した。
【1110】
フローサイトメトリー。初代β膵島細胞におけるドナー特異的抗体(DSA)の発現を、フローサイトメトリーによって評価した。
【1111】
B.結果
マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞は、同種異系移植後に機能する。移植されたβ膵島細胞の機能を分析するために、移植の6日後に血糖値を測定した。マウス野生型B6初代β膵島細胞の筋肉内注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスの血糖値は、
図5Aに示すように、全試験期間にわたって高いままであった(400mg/dL超)。対照的に、マウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞の筋肉内注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスの血糖値は、
図5Aに示すように、移植後すぐに低下した。これらのデータは、マウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞が、同種異系移植後も機能できた(例えば、糖尿病により失われたグルコース制御を回復する)ことを示している。
【1112】
同種異系移植後のマウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞免疫応答。移植されたβ膵島細胞に対する免疫応答を分析するために、ELISPOTアッセイを使用し、CD8+T細胞によるIFNgサイトカイン分泌のレベルを評価した。
図5Bに示すように、移植されたマウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞は、移植されたマウス野生型初代β膵島細胞と比較して、より低いレベルのIFNgを示した。フローサイトメトリーで測定したDSA IgGのレベルも、移植されたマウス野生型初代β膵島細胞と比較して、移植されたマウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞では低かった(
図5C)。
【1113】
これらのデータは、マウスB2M-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞が、移植時に細胞に対する免疫応答を誘導せず、投与時にNK細胞媒介性細胞傷害性を回避でき、抗体の媒介による拒絶反応から保護されることを示している。
【1114】
実施例3:in vitroでのマウスB2M-/-;CD47tg初代β膵島細胞の免疫回避
初代β膵島細胞に対するMHCクラスI及びMHCクラスII発現の低減及びCD47発現の増加の免疫回避効果を試験するために、ナチュラルキラー(NK)及びマクロファージ殺傷アッセイを、実施例1に記載したように作製したマウスB2M-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞で実施した。in vitroでのNK及びマクロファージによるマウスB2M-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞の殺傷を、マウス野生型B6初代β膵島細胞及びマウスB2M-/-B6初代β膵島細胞と比較して、経時的に監視した。
【1115】
A.方法
NK細胞培養。ヒト初代NK細胞(StemCell Technologies)は、アッセイを行う前にRPMI-1640と10%血清ペニシリン-ストレプトマイシン(pen/strep)中で培養した。
【1116】
末梢血単核球(PBMC)からのマクロファージの分化。PBMCは、新鮮な血液からFicoll分離によって単離され、10%血清pen/strepを含むRPMI-1640中に再懸濁された。細胞を、10ng/mLのヒトマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の存在下で蒔いた。6日目以降、アッセイを行う前に、ヒトIL-2を24時間培地に添加した。
【1117】
NK細胞及びマクロファージ殺傷アッセイ。NK細胞殺傷アッセイ及びマクロファージ殺傷アッセイは、XCelligence SPプラットフォーム及びMPプラットフォーム(ACEA Biosciences)で実行され、細胞増殖及び細胞の生存率を無標識で監視した。4×105個のマウス野生型B6初代β膵島細胞、マウスB2M-/-B6初代β膵島細胞、またはマウスB2M-/-、CD47tgB6初代β膵島細胞(プールまたは単一クローン)を、96ウェルコラーゲンコーティングしたEプレートに蒔いた。XCelligenceソフトウェアを使用し、接着及び細胞殺傷の尺度として細胞指数(CI)を測定した(細胞指数の減少は、細胞殺傷の増加を示す)。CI値が0.7に達した後、ヒトNK細胞またはヒトマクロファージを、1ng/mLのヒトIL-2またはヒトIL-15有りまたはなしで、0.5:1、0.8:1または1:1のエフェクター対標的(E:T)比で添加した。場合によっては、標的細胞を添加する前に、NK細胞を、ヒトFc受容体(FcR)ブロック(濃度1:5)で前処理した。いくつかのウェルは、抗MIAP410ブロッキング抗体(10μg/mL、クローンB6.H12、マウスIgG1,κ)で前処理した。
【1118】
フローサイトメトリー。初代β膵島細胞上のCD47の表面発現を、抗体特異的試薬を使用したフローサイトメトリーによって評価した。アイソタイプ抗体を対照として使用した。
【1119】
B.結果
マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞は、NK細胞及びマクロファージの殺傷を回避する。野生型B6マウスから単離された初代β膵島細胞(マウスWT B6初代β膵島細胞)のNK及びマクロファージ媒介性細胞殺傷は、抗MIAP410抗体の存在下または非存在下では観察されなかった(
図6A及び
図6D、NK細胞;
図7A及び
図7D、マクロファージ)。対照的に、マウスB2M
-/-B6初代β膵島細胞はNK細胞(
図6B)及びマクロファージ(
図7B)によって殺傷され、これは、マウスB2M
-/-B6初代β膵島細胞がNK細胞及びマクロファージによって外来細胞として認識され、したがって細胞殺傷が生じたことを示した。マウスB2M
-/-B6初代β膵島細胞及びNK細胞またはマクロファージの共培養物への抗MIAP410抗体の添加は、細胞殺傷に更なる影響を及ぼさなかった(
図6E及び
図7E)。
【1120】
対照的に、マウスB2M
-/-CD47tgB6初代β膵島細胞は、NK媒介性細胞殺傷(
図6C)またはマクロファージ媒介性細胞殺傷(
図7C)を示さなかった。しかしながら、抗MIAP410抗体の存在下では、CD47導入遺伝子で操作されていないマウスB2M
-/- B6初代β膵島細胞で観察された結果と同様に、CD47保護効果は低減され、細胞殺傷はNK細胞(
図6F)及びマクロファージ(
図7F)の両方で観察された(
図6B及び
図6E、NK細胞;ならびに
図7B及び
図7E、マクロファージ)。これらのデータは、マウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞が、NK細胞及びマクロファージによる免疫応答を効果的に回避することを示している。
【1121】
マウスB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞のCD47発現による、NK細胞殺傷の回避。野生型B6マウスから単離された様々なB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞(マウスWT B6初代β膵島細胞)のNK媒介性細胞殺傷は、様々なCD47導入遺伝子発現に応じて観察された。CD47導入遺伝子の過剰発現が低いマウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞は、NK媒介性細胞殺傷を示した(
図8A~
図8H)。対照的に、CD47導入遺伝子の過剰発現が高いマウスB2M
-/-;CD47tgB6初代β膵島細胞は、NK媒介性細胞殺傷を示さなかった(
図8I~
図8N)。これらの結果は、初代β膵島細胞におけるCD47の過剰発現がNK細胞による免疫応答を回避するのに有効であることを裏付ける。
【1122】
実施例4:B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞のin vitro特性評価
この実施例では、(1)B2Mをノックアウトして(B2M
-/-)HLAクラスI発現を低減させ、(2)外因性CD47(CD47tg)を過剰発現するように操作された低免疫初代ヒトβ膵島細胞を特徴付ける試験について説明する。低免疫(B2M
-/-;CD47tg)初代β膵島細胞は、野生型(WT)初代ヒトβ膵島細胞またはB2M
-/-初代ヒトβ膵島細胞と比較して、インスリン分泌ならびにナチュラルキラー(NK)細胞及びマクロファージによる細胞殺傷からの保護について監視した。WTヒト初代膵島細胞はHLAクラスIIを発現せず(
図9C)、したがって、HLAクラスII分子の発現を変えるように操作されていない。低免疫細胞及びB2M
-/-細胞はWT細胞から操作されたため、同じドナーからのものである。
【1123】
A.方法
ヒト初代膵島細胞の作製と細胞工学。標準的な技術を使用して、2人の死体ドナー(ドナー1及びドナー2)から初代β膵細胞を単離した。このような技術は当技術分野で公知であり、J.Kerr-Conte et al.,Transplantation,89,2010に記載のものを含む。低免疫細胞を作製するために、標準的なCRISPR/Cas9遺伝子編集技術を使用して、単離された細胞を操作してB2Mをノックアウトし、CD47をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターを使用して、外因性CD47タンパク質をコードする導入遺伝子(tg)を形質導入した。低免疫膵島を、HLAクラスI/II及びCD47過剰発現に対して陰性の細胞についてフローサイトメトリーによって選別した。
【1124】
インスリン分泌。標準的なグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)アッセイを使用し、in vitroインスリン分泌を測定した。U-PLEX(登録商標)Meso Scale Discovery(MSD)アッセイを使用し、インスリン分泌を検出した。簡単に説明すると、2mLの培地で100,000個の細胞を使用し、24時間にわたる総インスリン分泌を測定した。
【1125】
フローサイトメトリー。ヒト初代膵島細胞上のHLAクラスI、HLAクラスII、及びCD47の表面発現を、抗体特異的試薬を使用したフローサイトメトリーによって評価した。アイソタイプ抗体を対照として使用した。
【1126】
NK細胞及びマクロファージ殺傷アッセイ。NK細胞殺傷アッセイ及びマクロファージ殺傷アッセイは、XCelligence SPプラットフォーム及びMPプラットフォーム(ACEA Biosciences)で実行され、細胞増殖及び細胞の生存率を無標識で監視した。4×105個の野生型ヒト初代膵島細胞、B2M-/-ヒト初代膵島細胞、またはB2M-/-、CD47tgヒト初代膵島細胞(プールまたは単一クローン)を、96ウェルコラーゲンコーティングしたEプレートに蒔いた。XCelligenceソフトウェアを使用し、接着及び細胞殺傷の尺度として細胞指数(CI)を測定した(細胞指数の減少は、細胞殺傷の増加を示す)。CI値が0.7に達した後、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)で末梢血単核球から分化したヒト初代NK細胞またはヒトマクロファージを、エフェクター対標的(E:T)比1:1で添加した。
【1127】
B.結果
試験結果を以下にまとめる。代表的な結果は1人のドナーについて示されているが、同様の結果が少なくとも2人の追加のドナーでも観察された。
【1128】
B2M
-/-CD47tg編集は、ヒト初代膵島細胞の細胞形態または組成に影響を及ぼさない。細胞形態を評価するために、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、インスリン、及びグルカゴンの免疫組織化学(IHC)染色を、WTヒト初代膵島細胞及びB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞に対して実施した。結果は、形態に差異がないことを示し、B2M
-/-;CD47tgのヒト初代膵島に対する編集は、ヒト初代膵島の形態に影響を及ぼさないように見えることを示している。更に、B2M
-/-;CD47tg編集は、WTヒト初代膵島細胞組成と比較して、ヒト初代膵島細胞組成に影響を及ぼさない(
図9A)。
【1129】
B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞は、HLA-IまたはHLA-IIを発現せず、CD47発現が増加している。B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞におけるHLA-I及びHLA-II、ならびにCD47の発現を評価するために、フローサイトメトリーを実施した。B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、HLA-I(
図9C)及びHLA-II(
図9E)に対して陰性であったが、WTヒト初代膵島細胞は、HLAクラスIを高レベルで発現し(
図9B)、HLAクラスIIを発現しなかった(
図9D)。B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、WTヒト初代膵島細胞(
図9F)と比較して、CD47の発現の増加を示した(
図9Gに示すように、アイソタイプ対照の48倍及び51倍)。
【1130】
B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞は、インスリン分泌能力を保持する。B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞は、代表的なドナーについて
図9Hに示すように、in vitroでWTヒト初代膵島細胞と同様のインスリン分泌能力を保持した。これらのデータは、β膵島細胞に対する低免疫改変がインスリン分泌に影響を及ぼさないことを示している。
【1131】
B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、NK細胞及びマクロファージ殺傷を回避する。WTヒト初代膵島細胞は、NK細胞(
図9I)またはマクロファージ(
図9L)によって殺傷されなかった。対照的に、HLAクラスI及びHLAクラスIIの発現が低減したB2M
-/-ヒト初代膵島細胞は、NK細胞(
図9J)及びマクロファージ(
図9M)によって殺傷され、B2M
-/-ヒト初代膵島細胞がNK細胞及びマクロファージによって外来細胞として認識され、したがって細胞殺傷が生じたことを示した。
【1132】
対照的に、B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞は、NK媒介性細胞殺傷(
図9K)またはマクロファージ媒介性細胞殺傷(
図9N)を示さなかった。これらのデータは、低免疫(B2M
-/-;CD47tg)ヒト初代膵島細胞がCD47過剰発現によって保護され、NK細胞及びマクロファージによる免疫応答を効果的に回避できることを示している。
【1133】
実施例5:糖尿病ヒト化マウス移植試験におけるB2M-/-及びB2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の生存及び機能性
低免疫(B2M-/-;CD47tg)及び二重ノックアウト(B2M-/-)ヒト初代膵島細胞を実施例4に記載のように作製し、同種異系糖尿病ヒト化NSG-SGM3レシピエントマウスに移植した。マウスにおける糖尿病の発生率、移植されたB2M-/-及びB2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の生存及び機能性を、移植された野生型ヒト初代膵島細胞と比較して、経時的に監視した。
【1134】
A.方法
移植試験の設計及び投与。25匹のヒト化NSG-SGM3マウス(マウス体重18~20g)を、糖尿病を誘発するためのSTZ投与後、試験群にランダムに分けた。そこで、投与された細胞(野生型、B2M-/-CD47tg、及びB2M-/-ヒトβ膵島細胞)に基づいて、群は異なった。試験群は以下のとおりであった:野生型ヒト膵島(luc+)の筋肉内移植、移植なしの糖尿病対照、B2M-/-ヒト膵島(luc+)筋肉内移植、及びB2M-/-CD47tgヒト膵島(luc+)筋肉内移植。
【1135】
1クラスター当たり約1,500個の細胞の300のヒト膵島クラスターを、筋肉内注射によってマウスに移植した。0日目(d0)を移植の日として定義した。マウスを、β膵島細胞の生存の指標として生物発光(BLI)について監視し、糖尿病を監視するために4時間の絶食後のグルコースレベルを監視した。試験の29日目に糖負荷を実施した。
【1136】
T細胞酵素結合免疫吸収SPOT(ELISPOT)アッセイ。ヒト初代膵島細胞におけるインターフェロンγ(IFNg)分泌CD8(+)T細胞を、ELISPOTによって検出した。
【1137】
Cペプチドアッセイ。ヒト初代膵島細胞におけるCペプチドレベルを、標準的なアッセイを使用して測定した。
【1138】
脾細胞殺傷アッセイ。脾細胞殺傷アッセイは、XCelligence SPプラットフォーム及びMPプラットフォーム(ACEA Biosciences)で実行され、細胞増殖及び細胞の生存率を無標識で監視した。4×105個の野生型ヒト初代膵島細胞、B2M-/-ヒト初代膵島細胞、またはB2M-/-、CD47tgヒト初代膵島細胞(プールまたは単一クローン)を、96ウェルのコラーゲンコーティングしたEプレートに蒔いた。XCelligenceソフトウェアを使用し、接着及び細胞殺傷の尺度として細胞指数(CI)を測定した(細胞指数の減少は、細胞殺傷の増加を示す)。CI値が0.7に達した後、ヒト脾細胞をエフェクター対標的(E:T)比1:1で添加した。
【1139】
補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ。B2M-/-、CD47tgヒト初代膵島細胞を血清とインキュベートし、XCelligence MPプラットフォーム(ACEA Biosciences)でインキュベーション中の細胞溶解を測定することでCDCを分析し、細胞増殖及び細胞の生存率を無標識で監視した。インピーダンスの変化は、細胞指数(CI)として報告した(細胞指数の減少は、細胞の溶解または殺傷の増加を示す)。
【1140】
B.結果
試験結果を以下にまとめる。代表的な結果が示されているが、同様の結果は様々なドナーでも観察された。
【1141】
B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、同種異系移植後も生存する。筋肉内注射後のヒト初代膵島細胞のBLIイメージング結果の定量化を、
図10A(B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞)及び
図10C(WTヒト初代膵島細胞)に示す。筋肉内注射後のヒト初代膵島細胞の対応するBLI画像を、
図10B(WTヒト初代膵島細胞)及び
図10D(B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞)に示し、B2M
-/-ヒト初代膵島細胞のBLI画像を
図20Aに示す。生物発光は、細胞の投与後、すべての群の筋肉内注射部位で最初に観察された。しかし、移植されたWTヒト初代膵島細胞について検出された光子の数は、移植後の最初の5日間で急速に減少し(
図10C及び
図10D)、これは、おそらく免疫応答による、WTヒト初代膵島細胞の死を示した。WTヒト初代膵島細胞と同様に、B2M
-/-ヒト初代膵島細胞の数は、移植後の最初の5日間で急速に減少した(
図10G)。対照的に、移植されたB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞から検出された光子の数は、移植後29日間にわたって増加し、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の生存及び増殖を示した(
図10A及び
図10B)。B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞は、局所免疫反応を誘導することなく、1ヶ月間生存することができる(データは示さず)。
【1142】
B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、同種異系移植後に機能する。移植されたヒト初代膵島細胞の特定の機能を分析するために、移植の6日後に血糖値を測定した。WTヒト初代膵島細胞及びB2M
-/-ヒト初代膵島細胞の筋肉内注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスの絶食後約4時間で血糖値を測定し、
図10F及び
図10Hにそれぞれ示すように、全試験期間にわたって高い値(400mg/dL超)を維持した。対照的に、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の筋肉内注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスの空腹時血糖値は、
図10Eに示すように、移植後すぐに低下した。更に、B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞の筋肉内注射を受けたマウスは、29日目に糖負荷に耐えることに成功した(
図10E)。
【1143】
移植されたヒト初代膵島細胞の機能を更に分析するために、移植後にCペプチドレベルを測定した。WTヒト初代膵島細胞及びB2M
-/-ヒト初代膵島細胞の筋肉内注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスにおけるCペプチドレベルは、
図11B及び
図11Cにそれぞれ示すように低かった。対照的に、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の筋肉内注射を受けたマウスは、高レベルのCタンパク質を有していた(
図11A)。
【1144】
これらのデータは、B2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞が、同種異系移植後も機能できた(例えば、糖尿病により失われたグルコース制御を回復する)ことを示している。
【1145】
同種異系移植後のB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞免疫応答。移植されたヒト初代膵島細胞に対する免疫応答を分析するために、ELISPOTアッセイを使用し、CD8+T細胞によるIFNgサイトカイン分泌のレベルを評価した。
図10Iに示すように、移植されたB2M
-/-ヒト初代膵島細胞及びB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、移植された野生型ヒト初代膵島細胞と比較して、より低いレベルのIFNgを示した。これらの結果は、ELISPOTによって測定されたように、野生型β膵島が移植後にTH1活性化を示すという観察と一致している。フローサイトメトリーによって測定したDSA IgMのレベルも、移植された野生型初代β膵島細胞と比較して、移植されたB2M
-/-ヒト初代膵島細胞及び移植されたB2M
-/-;CD47tgヒト初代β膵島細胞では低く、これは、野生型β膵島がドナー特異的抗体結合(IgM)を示すことを示している(
図10J)。
【1146】
このデータは、移植された野生型ヒト初代膵島細胞が適応免疫応答を示すのに対し、移植されたB2M-/-ヒト初代膵島細胞及び移植されたB2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、適応免疫応答を示さないことを示す。
【1147】
B2M
-/-;CD47tg及びB2M
-/-ヒト初代膵島細胞は、同種異系移植後の脾細胞殺傷を回避する。
図12Aの上パネルに示すように、移植されたWTヒト初代膵島細胞は、脾細胞によって殺傷された。これは、移植されたWTヒト初代膵島細胞が脾細胞によって外来細胞として認識され、したがって細胞殺傷が生じたことを示した。対照的に、移植されたB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞及び移植されたB2M
-/-ヒト初代膵島細胞は、脾細胞媒介性細胞殺傷を示さなかった(
図12A、中央及び上のパネル)。これらのデータは、移植された低免疫(B2M
-/-;CD47tg)及び移植された二重ノックアウト(B2M
-/-)ヒト初代膵島細胞が脾細胞による免疫応答を効果的に回避できることを示している。
【1148】
B2M
-/-;CD47tg及びB2M
-/-ヒト初代膵島細胞は、同種異系移植後にCDCを受けない。移植されたヒト初代膵島細胞に対する免疫応答を更に分析するために、CDCアッセイを使用した。
図12Bの上パネルに示すように、WTヒト初代膵島細胞はCDCアッセイにおいて殺傷され、これは、WTヒト初代膵島細胞が認識され、細胞殺傷が生じたことを示している。対照的に、B2M
-/-;CD47tg及びB2M
-/-ヒト初代膵島細胞は、CDC細胞殺傷を示さなかった(
図12B、中央及び上のパネル)。これらのデータは、低免疫(B2M
-/-;CD47tg)及び二重ノックアウト(B2M
-/-)ヒト初代膵島細胞がCDCを効果的に回避できることを示している。
【1149】
実施例6:in vitroでのB2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の免疫回避
ヒト初代膵島細胞に対するHLAクラスI及びHLAクラスII発現を低減すること及びCD47発現を増加することの免疫回避効果を試験するために、末梢血単核球(PBMC)殺傷アッセイを、実施例4に記載したように作製したB2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞に対して実施した。I型糖尿病患者由来のPBMCまたは健康なドナー由来のPBMCを、WTヒト初代膵島細胞またはB2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞とin vitroでインキュベートし、殺傷を経時的に監視した。
【1150】
A.方法
PBMCの単離及び培養。PBMCは、新鮮な血液からFicoll分離によって5人のI型糖尿病ヒト患者または3人の健常ドナーから単離され、10%血清pen/strepを含むRPMI-1640中に再懸濁された。
【1151】
PBMC殺傷アッセイ。PBMC細胞殺傷アッセイは、XCelligence SPプラットフォーム及びMPプラットフォーム(ACEA Biosciences)で実行され、細胞増殖及び細胞の生存率を無標識で監視した。4×105個のWTヒト初代膵島細胞またはB2M-/-、CD47tgヒト初代膵島細胞を、96ウェルのコラーゲンコーティングしたEプレートに蒔いた。XCelligenceソフトウェアを使用し、接着及び細胞殺傷の尺度として細胞指数(CI)を測定した(細胞指数の減少は、細胞殺傷の増加を示す)。CI値が0.7に達した後、ヒトPBMC細胞をエフェクター対標的(E:T)比1:1で添加した。
【1152】
フローサイトメトリー。ヒト初代膵島細胞のPBMC殺傷をフローサイトメトリーで評価し、PerCP-Cy5を使用して死細胞の割合を定量化した。
【1153】
B.結果
試験結果を以下にまとめる。代表的な結果は1人のドナーについて示されているが、同様の結果が両方のドナーでも観察された。
【1154】
B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、糖尿病PBMC殺傷を回避する。I型糖尿病患者のそれぞれから単離された糖尿病PBMCは、WTヒト初代膵島細胞の細胞殺傷を媒介した。1人のI型糖尿病患者から単離されたPBMCから代表的な結果を、
図13Aに示す。健常ドナーからのPBMCは、
図13Eで代表的な健常ドナーPBMCについて示されるように、WTヒト初代膵島細胞を殺傷しなかった。WTヒト初代膵島細胞の殺傷は、PBMCとのインキュベートがない場合には、観察されなかった(
図13B及び
図13F)。死細胞についてフローサイトメトリーによって殺傷を評価した場合にも、同様の結果が観察された(
図13I)。これらの結果は、WTヒト初代膵島細胞が糖尿病PBMCによって外来細胞として認識され、その結果、細胞殺傷が生じたことを示している。
【1155】
対照的に、B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞は、糖尿病PBMC(
図13C、1人の患者からの糖尿病PBMCを用いた代表的な結果)または健康なPBMC(
図13G、1人の健常ドナーからのPBMCを用いた代表的な結果)によって殺傷されなかった。B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞の殺傷は、PBMCとのインキュベートがない場合には、観察されなかった(
図13D及び
図13H)。死細胞についてフローサイトメトリーによって殺傷を評価した場合にも、同様の結果が観察された(
図13J)。これらのデータは、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞が、糖尿病PBMCによる免疫応答を効果的に回避することを示している。
【1156】
実施例7:in vitroで抗CD47融合タンパク質による、B2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞におけるCD47シグナル伝達の評価
この実施例では、(1)B2Mをノックアウトして(B2M-/-)HLAクラスI発現を低減させ、(2)外因性CD47(CD47tg)を過剰発現するように操作された低免疫初代ヒトβ膵島細胞によるCD47遮断を特徴付ける試験について説明する。低免疫(B2M-/-;CD47tg)ヒト初代膵島細胞を実施例4に記載するように作製した。抗CD47 Fc融合タンパク質(すなわち、抗CD47 IgG1Fc及び抗CD47 IgG4Fc)の存在下でのナチュラルキラー(NK)細胞及びマクロファージによる細胞殺傷を、B2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞と比較して、B2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞について評価した。CD47結合による細胞傷害性産物の作製及びマクロファージの貪食も評価した。
【1157】
A.方法
NK細胞及びマクロファージ殺傷アッセイ。NK細胞殺傷アッセイ及びマクロファージ殺傷アッセイは、実質的に上記の実施例に記載したように実施した。
【1158】
細胞傷害性産物の検出。グランザイム、パーフォリン及び活性酸素種(ROS)は、Invitrogen製(ヒトグランザイムB ELISAキット及びヒトパーフォリンELISAキット)及びBiosource(ヒト活性酸素種ELISAキット)の市販キットを製造業者の指示に従って使用し、ELISAによって検出した。
【1159】
貪食アッセイ。抗CD47抗体(100μg/ml)を、B2M-/-、CD47tgヒト初代膵島細胞及びマクロファージと共にインキュベートした。いくつかの条件では、抗CD47 IgG1Fcまたは抗CD47 IgG4Fcも添加した。β膵島細胞の貪食は、1時間のインキュベート後にフローサイトメトリーによるpHrodo(商標)貪食アッセイを使用して評価した。
【1160】
B.結果
試験結果を以下にまとめる。代表的な結果は1人のドナーについて示されているが、同様の結果が両方のドナーでも観察された。
【1161】
抗CD47Fc融合タンパク質を発現するB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、NK細胞及びマクロファージによって殺傷される。B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞は、NK媒介性細胞殺傷(
図14A)またはマクロファージ媒介性細胞殺傷(
図14D)を示さなかった。これは、低免疫(B2M
-/-;CD47tg)ヒト初代膵島細胞がCD47の過剰発現によって保護されており、NK細胞及びマクロファージによる免疫応答を効果的に回避できることを示している。細胞殺傷からの保護は、NK媒介性細胞殺傷(それぞれ
図14B及び
図14C)またはマクロファージ媒介性細胞殺傷(それぞれ
図14E及び
図14F)について示されるように、抗CD47 IgG1Fcまたは抗CD47 IgG4Fc融合タンパク質によって遮断された。これらのデータは、B2M
-/-CD47tgヒト初代膵島細胞におけるCD47-SIRPシグナル伝達の遮断により、NK細胞及びマクロファージによって外来細胞として認識され、細胞殺傷が生じることを示し、更にCD47の過剰発現が改変された細胞による免疫回避に寄与していることを裏付けている。
【1162】
B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、抗CD47Fc融合タンパク質が添加されると細胞傷害性産物を作製する。
図15A~
図15Cに示すように、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、グランザイムB(
図15A)、パーフォリン(
図15B)及びROS(
図15C)のより低いレベルを示したが、これらの細胞傷害性産物のレベルは、抗CD47 IgG1Fcまたは抗CD47 IgG4Fc融合タンパク質のいずれかの存在下で実質的に高かった。殺傷はこれらの細胞傷害性産物の放出によって媒介されるため、これらのデータは、融合タンパク質IgG1及びIgG4の両方によるCD47-SIRPシグナル伝達の遮断が、改変された初代β膵島細胞の殺傷を誘導することを示している。
【1163】
実施例8:1人の例示的なドナーからのin vitroでのB2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の適応免疫応答
B2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞のマクロファージ細胞殺傷機構を調査するため、及びCD47の過剰発現がどのように殺傷に影響を及ぼすのかを理解するために、貪食アッセイを実施した。具体的には、HLA-I/II KO細胞はその「自己喪失」によりマクロファージによる殺傷を誘導するため、観察された細胞殺傷のメカニズムが貪食によるものなのか、細胞傷害性産物の放出によるものなのかを明らかにする試験が行われた。更に、CD47の過剰発現がマクロファージによる瀕死/死細胞のクリアランス機構に影響を及ぼしているかを評価するために、完全細胞、アポトーシス細胞、及び壊死細胞を用いた試験も実施された。
【1164】
A.方法
フローサイトメトリー。ヒト初代膵島細胞におけるCD47の発現を、フローサイトメトリーによって評価した。
【1165】
貪食アッセイ。野生型ヒト初代膵島細胞(全、アポトーシス及び壊死)、B2M-/-ヒト初代膵島細胞(全、アポトーシス及び壊死)、B2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(全、アポトーシス及び壊死)を、マクロファージとインキュベートした。場合によっては、FcRに結合して貪食を媒介する抗CD47 IgG1抗体を添加した。β膵島細胞の貪食は、1時間のインキュベート後にフローサイトメトリーによるpHrodo(商標)貪食アッセイを使用して評価した。
【1166】
B.結果
試験結果を以下にまとめる。代表的なドナーの結果が示されている。
【1167】
以前の結果と一致して、フローサイトメトリーにより、CD47を過剰発現するように操作されていないB2M
-/-ヒト初代膵島細胞が低レベルのCD47表面発現を示し(
図16、左パネルに示すように、アイソタイプ対照の2倍)、一方でB2M
-/-;CD47tg初代β膵島細胞は、CD47の発現の増加を示した(
図16、右パネルに示すように、アイソタイプ対照の28倍)ことが確認された。
【1168】
図17に示すように、全野生型ヒト初代膵島細胞、全B2M
-/-ヒト初代膵島細胞、及び全B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、マクロファージによる貪食を回避する。対照的に、各細胞種の壊死性及びアポトーシス性ヒト初代膵島細胞は、マクロファージによって貪食された。したがって、CD47の過剰発現は、アポトーシス性または壊死性B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の貪食を妨げず、これは、膵島拒絶後に重要であり得る。更に、抗CD47 IgG1融合タンパク質は、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞(全、アポトーシス及び壊死)の貪食を誘導する。
【1169】
実施例9:B2M-/-、CD47tgヒト初代膵島細胞のIg媒介性貪食の評価
抗CD47抗体(100μg/ml)(IgG1 FcまたはIgG4 Fcのいずれか)を、B2M-/-、CD47tgヒト初代膵島細胞及び非ヒト霊長類(NHP)マクロファージと共にインキュベートした。β膵島細胞の貪食は、1時間のインキュベート後にフローサイトメトリーによるpHrodo(商標)貪食アッセイを使用して評価した。
【1170】
図18に示すように、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞及びマクロファージ(Mac)単独対照は、マクロファージによって貪食されなかった。対照的に、抗CD47 IgG1 FcとインキュベートしたB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は貪食されたが、抗CD47-IgG4 Fcは貪食されなかった。観察された貪食は、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を介したIgG1 Fc結合によるものだった。IgG4結合はIgG1ほど強いFcR結合をもたらさず、これは、IgG4 Fcによる貪食レベルが低いことと一致している。
【1171】
実施例10:免疫不全糖尿病マウス移植試験におけるB2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の生存及び機能性
低免疫(B2M-/-;CD47tg)ヒト初代膵島細胞を実施例4に記載のように作製し、免疫不全糖尿病NSGレシピエントマウスに移植した。マウスにおける糖尿病の発生率、移植されたB2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の生存及び機能性を、移植された野生型ヒト初代膵島細胞と比較して、経時的に監視した。
【1172】
A.方法
移植試験の設計及び投与。25匹のNSGマウス(マウス体重18~20g)を、糖尿病を誘発するためのSTZ投与後、試験群にランダムに分けた。そこで、投与された細胞(野生型、B2M-/-CD47tg、及びB2M-/-ヒト膵島細胞)に基づいて、群は異なった。試験群は以下のとおりであった:野生型ヒト膵島(luc+)の筋肉内移植、移植なしの糖尿病対照、及びB2M-/-CD47tgヒト膵島(luc+)筋肉内移植。
【1173】
1クラスター当たり約1,500個の細胞の300のヒト膵島クラスターを、筋肉内注射によってマウスに移植した。0日目(d0)を移植の日として定義した。マウスを、膵島細胞の生存の指標として生物発光(BLI)を、及び糖尿病の指標として4時間の絶食後のグルコースレベルを監視した。試験の29日目に糖負荷を実施した。
【1174】
Cペプチドアッセイ。ヒト初代膵島細胞のCペプチドレベルを、検出した。
【1175】
B.結果
試験結果を以下にまとめる。代表的な結果が示されているが、同様の結果は様々なドナーでも観察された。
【1176】
B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、移植後も生存する。筋肉内注射後のヒト初代膵島細胞のBLI画像を、
図19A(B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞)及び
図19D(WTヒト初代膵島細胞)に示す。生物発光は、細胞の投与後、両方の群の筋肉内注射部位で最初に観察された。移植されたWTヒト初代膵島細胞について検出された生物発光は、試験期間中持続し、これは、免疫不全糖尿病マウスにおいてWT膵島が生存し、機能することを示した(
図19D)。同様に、移植されたB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞から検出された生物発光も、移植後29日間維持され、B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の生存及び増殖が示された(
図19A)。これらの結果は、HIP編集が膵島細胞の生存と機能を損なわないことを更に示している。
【1177】
B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、同種異系移植後に機能する。移植されたヒト初代膵島細胞の特定の機能を分析するために、移植の6日後に血糖値を測定した。この試験では、両方のマウス群について、筋肉内注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスの空腹時血糖値は、
図19B(B2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞)及び
図19E(WTヒト初代膵島細胞)に示すように、移植後すぐに低下した。更に、マウスは、糖負荷に耐えることに成功した(
図19B及び
図19E)。
【1178】
移植されたヒト初代膵島細胞の機能を更に分析するために、移植後にCペプチドレベルを測定した。WTヒト初代膵島細胞またはB2M
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の筋肉内注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスにおけるCペプチドレベルは、
図19F(
図19C)にそれぞれ示すように、高いマウスであった。
【1179】
これらのデータは、B2M-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞への編集は、免疫系を持たない糖尿病NSGマウスの膵島の生存または機能に影響を及ぼさなかったことを示している。
【1180】
実施例11:移植試験における、抗CD47及びアイソタイプ対照と共に、B2M-/-;CIITA-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞におけるCD47シグナル伝達の評価
低免疫(B2M-/-;CIITA-/-;CD47tg)ヒト初代膵島細胞を実施例4に記載のとおり作製し、実施例4に記載の技術を使用してCIITAを更にノックアウトし、抗CD47及びアイソタイプ対照と共に同種異系糖尿病ヒト化NSG-SGM3レシピエントマウスに移植した。マウスにおける糖尿病の発生率、移植されたB2M-/-;CIITA-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の生存及び機能性を、移植された野生型ヒト初代膵島細胞と比較して、経時的に監視した。
【1181】
A.方法
移植試験の設計及び投与。25匹のヒト化NSG-SGM3マウス(マウス体重18~20g)を、糖尿病を誘発するためのSTZ投与後、試験群にランダムに分け、B2M-/-;CIITA-/-;CD47tgヒト膵島細胞を投与した。試験群は以下のとおりであった:B2M-/-;CIITA-/-;CD47tgヒト膵島細胞(luc+)筋肉内移植+抗CD47筋肉内移植、局所投与。B2M-/-;CIITA-/-;CD47tgヒト膵島細胞(luc+)筋肉内移植+抗CD47筋肉内移植、全身投与。B2M-/-;CIITA-/-;CD47tgヒト膵島細胞(luc+)筋肉内移植+アイソタイプ対照筋肉内移植、局所投与。B2M-/-;CIITA-/-;CD47tgヒト膵島細胞(luc+)筋肉内移植+アイソタイプ対照筋肉内移植、全身投与。
【1182】
1クラスター当たり約1,500個の細胞の300のヒト膵島クラスターを、筋肉内注射によってマウスに移植した。0日目(d0)を移植の日として定義した。抗CD47またはアイソタイプ対照を、局所投与または全身投与のいずれかによって、8日目(d8)にマウスに筋肉内注射によって移植した。
【1183】
マウスを、膵島細胞の生存の指標として生物発光(BLI)について監視し、糖尿病を監視するために4時間の絶食後のグルコースレベルを監視した。試験の29日目に糖負荷を実施した。
【1184】
B.結果
B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、抗CD47を添加すると同種異系移植後に生存しない。アイソタイプ対照による局所及び全身筋肉内注射後の筋肉内移植されたB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞のBLI画像を、それぞれ
図20A及び
図21Aに示し、抗CD47による局所及び全身筋肉内注射後の筋肉内移植されたB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞のBLI画像を、それぞれ
図20C及び
図21Cに示す。移植されたB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、抗CD47の非存在下(すなわち、アイソタイプ対照の局所または全身添加後)で生存及び増殖し続ける(
図20A及び
図21A)。対照的に、移植されたB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、移植後8日目に投与された抗CD47の局所投与または全身投与の開始後に急速に減少し(
図20C及び
図21C)、これは、CD47をブロックすることによって、自然免疫細胞によるB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の死を示す。
【1185】
これらのデータは、B2M-/-;CIITA-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞におけるCD47-SIRPシグナル伝達の遮断により、免疫系によって外来細胞として認識され、細胞殺傷が生じることを示し、更にCD47の過剰発現が改変された細胞による免疫回避に寄与していることを裏付けている。
【1186】
B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞は、抗CD47を添加した場合、同種異系移植後に機能しない。移植されたヒト初代膵島細胞の特定の機能を分析するために、移植の6日後に血糖値を測定した。B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の筋肉内注射を受けた糖尿病(STZ処置)マウスの絶食後約4時間で測定された血糖値は、
図20B、
図20D、
図21B及び
図21Dに示されるように、移植後すぐに減少し、アイソタイプ対照の局所投与及び全身投与の両方の後では低いままだった(それぞれ、
図20B及び
図21B)。しかし、B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tgヒト初代膵島細胞の筋肉内注射、それに続く抗CD47の局所投与または全身投与を受けたマウスは、血糖値の上昇を示した(それぞれ、
図20D及び
図21D)。
【1187】
実施例12:移植試験におけるB2M-/-;CIITA-/-;CD47tg非ヒト霊長類初代β膵島細胞の評価
低免疫(B2M-/-;CIITA-/-;CD47tg)非ヒト霊長類(NHP)初代β膵島細胞を作製し、同種異系レシピエントNHPに移植した。移植されたB2M-/-;CIITA-/-;CD47tg NHP初代膵島細胞の生存及び機能性を、移植された野生型ヒト初代β膵島細胞と比較して、経時的に監視した。
【1188】
A.方法
NHP初代β膵島細胞の作製及び細胞工学。標準的な技術を使用して、NHP膵臓から初代β膵島細胞を単離した。そのような技術は当技術分野で公知であり、標準的なCRISPR/Cas9遺伝子編集技術を使用して、単離された細胞を操作してB2M及びCIITAをノックアウトし、CD47をコードするポリヌクレオチドを含有するレンチウイルスベクターを使用して、外因性CD47タンパク質をコードする導入遺伝子(tg)を形質導入した。低免疫膵島を、HLAクラスI/II及びCD47過剰発現に対して陰性の細胞についてフローサイトメトリーによって選別した。
【1189】
移植試験の設計及び投与。1クラスター当たり約1,500個の細胞の300のNHP膵島クラスターを、筋肉内注射によってNHPに移植した。0日目(d0)を移植の日として定義した。
【1190】
T細胞酵素結合免疫吸収SPOT(ELISPOT)アッセイ。NHP初代β膵島細胞におけるインターフェロンγ(IFNg)分泌CD8(+)T細胞を、ELISPOTによって検出した。
【1191】
フローサイトメトリー。初代β膵島細胞におけるドナー特異的抗体(DSA)の発現を、フローサイトメトリーによって評価した。
【1192】
NK細胞殺傷アッセイ。NK細胞殺傷アッセイは、実質的に上記の実施例に記載したように実施した。
【1193】
B.結果
B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg NHP膵島細胞は、移植後も生存する。筋肉内注射後のNHP B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代膵島細胞のBLIイメージング結果の定量化を、
図22Aに示す。筋肉内注射後のNHP B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代膵島細胞の対応するBLI画像を、
図22Bに示す。生物発光は、NHP初代膵島細胞の投与後、すべての群の筋肉内注射部位で最初に観察された。移植されたNHP B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代膵島細胞から検出された光子の数は、移植後に最初はわずかに減少したが、移植後42日間にわたって一貫したままであり、NHP B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代膵島細胞の生存を示している(
図22A)。
【1194】
同種異系移植後のNHP B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代膵島細胞免疫応答。移植されたNHP初代β膵島細胞に対する免疫応答を分析するために、ELISPOTアッセイを使用し、CD8+T細胞によるIFNgサイトカイン分泌のレベルを評価した。
図23Aに示すように、移植されたNHP B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代膵島細胞は、低レベルのIFNgを示した。フローサイトメトリーで測定したDSA IgM及びIgGのレベルも、移植されたNHP B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代膵島細胞では低かった(それぞれ、
図23B及び
図23C)。更に、NHP B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代膵島細胞による移植前に、高IgG抗体濃度で感作されたNHPレシピエントでは、DSA IgGのレベルは、移植後42日間にわたって減少した(
図23D)。
【1195】
これらのデータは、NHP B2M-/-;CIITA-/-;CD47tg初代膵島細胞は、移植時に細胞に対する免疫応答を誘導せず、抗体の媒介による拒絶反応から保護されることを示している。
【1196】
B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg NHP初代膵島細胞は、NK細胞による殺傷を回避する。B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg NHP初代膵島細胞は、NK媒介性細胞殺傷を示さなかった(
図24)。これは、低免疫(B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg)NHP初代膵島細胞が、NK細胞による免疫応答を効果的に回避できることを示している。これらのデータは、移植されたB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg NHP初代膵島細胞が、外来細胞として認識されないことを示している。
【1197】
実施例13:ヒト初代膵島細胞の遺伝子編集
初代膵島細胞を標準的な技術を使用してヒト死体ドナーから単離し、ACCUMAX(商標)(StemCell Technologies)細胞解離溶液を使用して37℃で10分間、細胞を単一細胞を含有する懸濁液に解離させた。解離させた細胞懸濁液を、Cas9酵素と、ヒトB2M遺伝子及びヒトCIITA遺伝子を標的とする単一のgRNAと、を含有するリボ核タンパク質複合体でエレクトロポレーションした。
【1198】
ヒトB2M遺伝子は配列番号33のガイドRNA(gRNA)配列を用いて破壊され、ヒトCII2A遺伝子は配列番号34のgRNA配列を用いて破壊された。ヒト初代膵島細胞を、PIM(S)培地(Prodo)に50,000細胞/ウェルを含むU底96ウェルプレートに移し、37℃、5%CO2で1時間静置した後、プレートをヒト初代膵島細胞の再クラスター化のためのベリーダンサーオービタルシェーカー(IBI Scientific,Dubuque,IA)に移した。48時間後に完全培地交換を実行し、ヒト初代膵島細胞クラスターをベリーダンサーオービタルシェーカー上で更に24時間インキュベートした。
【1199】
編集された膵島を濃縮するために、再クラスター化されたヒト初代膵島クラスターを、抗HLA-A、B、C抗体(クローンG46_2.6、BD Biosciences)またはIgG1アイソタイプ適合対照抗体(クローンMOPC-21、BD Biosciences)、及び抗HLA-DR、DP、DQ抗体(クローンTu3a、BD Biosciences)またはIgG2aアイソタイプ適合対照抗体(クローンG155‐178、BD Biosciences)を用いてACCUMAX(商標)を使用して、単一細胞に細胞選別するために解離させた。ダブルネガティブヒト初代膵島細胞をBD FACSAria(商標)IIで選別し、ベリーダンサーオービタルシェーカーで再クラスター化するために上記のようにU底96ウェルのプレートに再播種した。
【1200】
24時間後、ヒト初代膵島細胞を単一細胞に解離し、CD47をコードするレンチウイルスベクターを形質導入した。形質導入されたヒト初代膵島細胞を、ベリーダンサーオービタルシェーカー上で再クラスター化するために上記のようにU底96ウェルプレートに再播種した。48時間後、ACCUMAX(商標)を使用してヒト初代膵島細胞を単一細胞に解離させ、抗CD47抗体(クローンB6H12、BD Biosciences)または IgG1アイソタイプ適合対照抗体(クローンMOPC-21、BD Biosciences)を使用してヒトCD47の細胞選別を行い、CD47を過剰発現する形質導入細胞を選択した。ヒト初代膵島細胞を、ベリーダンサーオービタルシェーカー上で再クラスター化するために上記のようにU底96ウェルプレートに再播種した。
【1201】
動きを伴って細胞をインキュベートする代わりに、膵島細胞を37℃及び5%CO2の静的条件下で(動きなし)インキュベートしたことを除いて、同様のプロセスを実行した。このプロセスでは、静的条件により再クラスター化が損なわれ、生存率がわずか約35%と低かった。理論に束縛されるものではないが、提供された結果は、遺伝子編集のプロセス中に細胞を動きに供すると、細胞の生存率及び遺伝子編集の効率が向上することを裏付ける。
【1202】
実施例14:B2M-/-;CIITA-/-;CD47tgヒト初代網膜色素上皮細胞の評価
この実施例では、(1)B2Mをノックアウトして(B2M-/-)HLAクラスI発現を低減させる、(2)CIITAをノックアウトして(CIITA-/-)HLAクラスII発現を低減させる、及び(3)外因性CD47(CD47tg)を過剰発現させるように操作された、低免疫ヒト初代網膜色素上皮(RPE)細胞を特徴付ける試験について説明する。低免疫(B2M-/-;CIITA-/-;CD47tg)ヒト初代RPE細胞を、野生型(WT)ヒト初代RPE細胞またはダブルノックアウト(B2M-/-CIITA-/-)ヒト初代RPE細胞と比較して、ナチュラルキラー(NK)細胞及びマクロファージによる細胞殺傷からの保護について監視した。
【1203】
A.方法
ヒト初代RPEの作製及び細胞工学。初代RPE細胞はヒト死体眼球から単離され、凍結保存された。単離したRPE細胞を解凍し、次にSynthemax(3535 Corning,Corning NY)でコーティングしたプレート上に播種した。低免疫細胞を作製するために、標準的なCRISPR/Cas9遺伝子編集技術を使用して、播種した細胞をB2M及びCIITAをノックアウトするように操作し、約2日後に播種した細胞の培地を交換し、次に細胞はそのまま放置するか、またはCD47をコードするポリヌクレオチドを含有するレンチウイルスベクターを使用して、外因性CD47タンパク質をコードする導入遺伝子(tg)を形質導入することによって更に操作された。2日後、培地を再度交換し、次に敷石状形態が形成された時点(例えば、6日目)で細胞を収集し、HLAクラスI/II(B2M-/-、CIITA-/-ダブルノックアウト、dKO)、場合によってはCD47過剰発現(B2M-/-、CIITA-/-CD47tg)に対して陰性の細胞をフローサイトメトリーで選別した。
【1204】
NK細胞及びマクロファージ殺傷アッセイ。NK細胞殺傷アッセイ及びマクロファージ殺傷アッセイは、XCelligence MPプラットフォーム(ACEA Biosciences)で実行され、細胞増殖及び細胞の生存率を無標識で監視した。未改変(野生型)ヒト初代RPE、B2M-/-、CIITA-/-改変ヒト初代RPE、またはB2M-/-、CIITA-/-、CD47tg改変ヒト初代RPEを、ラミニン、コラーゲン及びフィブロネクチンでコーティングした96ウェルEプレートに播種した。XCelligenceソフトウェアを使用し、接着及び細胞殺傷の尺度として細胞指数(CI)を測定した(細胞指数の減少は、細胞殺傷の増加を示す)。CI値が0.7に達した後、分化したヒト初代NK細胞またはヒトマクロファージ(両方ともStemcell Technologies)を、エフェクター対標的(E:T)比1:1で添加した。
【1205】
B.結果
ヒトB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代RPE細胞は、MHC-IまたはMHC-IIを発現せず、CD47発現が増加している。MHC-I及びMCH-II、ならびにCD47の発現をフローサイトメトリーによって評価した。単離されたヒト初代RPE細胞は、MHC-Iに対して陽性であり、MHC-IIを発現せず、CD47の発現が低かった(
図25、上のパネル)。ヒトB2M
-/-/CIITA
-/-dKO初代RPE細胞及びB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代RPE細胞は、MHC-I及びMHC-IIの両方に対して陰性であった(
図25、中央及び下のパネル)。B2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代RPE細胞のみは、CD47の発現の増加を示した(
図25、下パネルに示すように、アイソタイプ対照の20倍)。
【1206】
ヒトB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代RPE細胞は、NK細胞及びマクロファージ殺傷を回避する。未改変(野生型)初代RPE細胞は、NK細胞(
図26A)またはマクロファージ(
図26D)によって殺傷されず、これは、自然免疫殺傷に対する野生型細胞の耐性と一致する。ヒトB2M
-/-CIITA
-/-初代RPE細胞は、NK細胞(
図26B)及びマクロファージ(
図26E)によって殺傷され、これは、ヒトB2M
-/-CIITA
-/-初代RPE細胞は、細胞表面上にHLA分子を欠失し、NK細胞及びマクロファージによる自己喪失殺傷を誘発することを示している。対照的に、表面分子CD47を更に過剰発現したヒトB2M
-/-;CIITA
-/-;CD47tg初代RPE細胞は、NK媒介性細胞殺傷(
図26C)またはマクロファージ媒介性細胞殺傷(
図26F)を示さなかった。自然NK細胞またはマクロファージ(標的細胞のみ)の非存在下では、RPE細胞のいずれの殺傷も観察されなかった(
図26G~
図26I)。
【1207】
これらのデータは、ヒトB2M-/-;CIITA-/-;CD47tg初代RPE細胞は低免疫力であり、NK細胞及びマクロファージによる免疫応答を効果的に回避することを示している。
【1208】
本発明は、例えば、本発明の様々な態様を例示するために提供される特定の開示される実施形態に範囲が限定されることを意図していない。記載された組成物及び方法に対する様々な改変は、本明細書の記載及び教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく実施することができ、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【1209】
【配列表】
【国際調査報告】