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特表2024-531235燃料電池スタックおよび燃料電池スタックを備えた燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】燃料電池スタックおよび燃料電池スタックを備えた燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240822BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20240822BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20240822BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240822BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/2483
H01M8/2465
H01M8/04 J
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508659
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2022072979
(87)【国際公開番号】W WO2023021096
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】102021209034.6
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ハオスマン
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・フォイエルバッハ
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA23
5H126BB06
5H127AA06
5H127AC05
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB34
5H127BB37
5H127BB39
5H127DA16
5H127EE19
(57)【要約】
本発明は、多数の単セル(24)を備えた燃料電池スタック(3)であって、前記各単セル(24)が共通のカソード領域(5)と、前記共通のカソード領域(5)から切り離された共通のアノード領域(4)とを有する、燃料電池スタック(3)に関する。本発明に従った燃料電池スタックは、前記カソード領域(5)に入る、および/または前記カソード領域(5)から出る流路を塞ぐための少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が一体式に組み込まれていることを特徴とする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単セル(24)を備えた燃料電池スタック(3)であって、前記単セル(24)が、共通のカソード領域(5)と、前記共通のカソード領域(5)から隔てられた共通のアノード領域(4)とを有する、前記燃料電池スタック(3)において、
少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、前記カソード領域(5)に入る流路、および/または前記カソード領域(5)から出る流路を塞ぐために組み込まれていること、
を特徴とする、前記燃料電池スタック(3)。
【請求項2】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、少なくとも一つのエンド・プレート(22、23)に組み込まれるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項3】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、常閉バルブ・デバイス(20、21)として構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項4】
前記カソード領域(5)を通り抜ける体積流量が十分である場合、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)のバルブ・ボディ(101)が、バネの圧力に対抗して、および/または磁石の力、特に永久磁石の力に対抗して、開弁の状態に保持されることを特徴とする、請求項3に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項5】
前記バルブ・ボディ(101)が、特に回転部品として軟磁性材料から構成され、または、軟磁性材料、特に磁化可能な材料および/または永久磁石を含むものであり、これと直接または間接的に磁気的に協働するように接続される少なくとも一つの永久磁石(104)が、バルブ・シートの領域に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項6】
前記バルブ・ボディ(101)が、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)の入口に面する端部を有し、前記端部は、特に環状の凹所(110)を有し、前記バルブ・ボディ(101)の前記端部は、規定通りに使用される場合に上向きになることを特徴とする、請求項4または5に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項7】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、前記バルブ・ボディ(101)の一定の開閉運動をガイドするように設けられている一つまたは複数のガイド面を備えたガイド・デバイス(112)を有し、前記ガイド・デバイス(112)が円筒状の部分を有し、前記バルブ・ボディ(101)が、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)の出口の方向に延びる少なくとも一つの突起を有し、前記少なくとも一つの突起の内の特に中央の突起が、前記ガイド・デバイス(112)の前記円筒状の部分により形成された空隙の内部へ延び、および/または、前記少なくとも一つの突起の内の一つの突起が、前記ガイド・デバイス(112)の前記円筒状の部分の、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)の入口と対向している端部を取り囲むことを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項8】
前記ガイド・デバイス(112)の前記円筒状の部分の、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)の入口とは反対側の端部が、閉止されている、または通路(105)を有することを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項9】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、特に前記ガイド・デバイス(112)に取り付けられた固定式の磁石(108)と、前記バルブ・ボディ(101)に取り付けられて前記バルブ・ボディ(101)と一緒に運動可能な磁石(107)とを有し、前記固定式の磁石(108)と前記バルブ・ボディ(101)と一緒に運動可能な磁石(107)との間で磁力が作用し、前記固定式の磁石(108)と前記バルブ・ボディ(101)と一緒に運動可能な磁石(107)とが相互に引き付け合うことを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項10】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、疎水性表面を備えた領域(103、111)を有し、
特にバルブ・シート(120)および/または前記バルブ・シート(120)の領域内に配置されるシール要素(102)の表面、および/または前記バルブ・ボディ(101)の表面が、疎水性に構成されており、前記バルブ・シート(120)および/または前記シール要素(102)の表面は、前記バルブ・ボディ(101)の表面と対向しており、および/または、
前記ガイド・デバイス(112)のガイド面、および/または前記バルブ・デバイス(20、21)の入口と対向している前記ガイド・デバイス(112)の端面、および/または前記ガイド・デバイス(112)と対向している前記バルブ・ボディ(101)の表面部分が、疎水性に構成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項11】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、親水性表面、特に凹所(110)の表面を備えた領域(103)を有し、および/または、前記燃料電池スタック(3)の前記バルブ・ボディ(101)の側方の前記バルブ・デバイス(20、21)が組み込まれる部分に設けられているアンダーカット(113)の、前記バルブ・デバイス(20、21)の出口の方向を指し示す表面が、親水性に構成されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項12】
流れの後流に位置するシール要素(102)が、バルブ・シートの領域に配置されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項13】
少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、前記カソード領域(5)の流入側および流出側に構成されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項14】
2つの前記バルブ・デバイス(20、21)が同一部品として実施されていることを特徴とする、請求項13に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(3)を有する燃料電池システム(1)であって、
前記燃料電池スタック(1)がバルブ・デバイス(21)を有し、前記バルブ・デバイス(21)が、前記カソード領域(5)の出口の下流側に配置され、前記燃料電池スタック(3)に組み込まれ、特にパッシブ型の磁気的にディグレッシブなバルブ・デバイスとして構成されており、および、
前記燃料電池システム(1)がさらに、
前記カソード領域(5)の入口の上流側に配置される多方弁(204)、および、少なくとも一つの吸込み用入口ポートと駆動用入口ポートとを備えたガス・ジェット・ポンプ(203)を有し、
前記多方弁(204)の入口が前記カソード領域(5)の給気ライン(13)に、前記多方弁(204)の第1の出口が前記カソード領域(5)の入口に、さらに前記多方弁(204)の第2の出口が前記ガス・ジェット・ポンプ(203)の前記駆動用入口ポートに接続されており、
前記ガス・ジェット・ポンプ(203)の前記少なくとも一つの吸込み用入口ポートの一つの吸込み用入口ポートが、前記カソード領域(5)の出口に、特に前記バルブ・デバイス(21)の上流側に、特にカソードパージ弁(201)を用いて、切換え可能に接続されていること、および/または、前記ガス・ジェット・ポンプ(203)の前記少なくとも一つの吸込み用入口ポートの別の吸込み用入口ポートが、前記アノード領域(4)の出口に、特に前記アノード領域(4)の前記出口に接続された再循環ライン(9)を介して、特にパージ/ドレン弁(202)を用いて、切換え可能に接続されていることを特徴とする、燃料電池システム(1)。
【請求項16】
前記多方弁(204)の前記第2の出口が、前記ガス・ジェット・ポンプ(203)が配置されているカソードバイパス・ライン(208)を介して前記カソード領域(5)の排気ライン(14)に接続されている、請求項15に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項17】
前記多方弁(204)が、前記燃料電池システム(1)の構成要素に組み込まれている、請求項15に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項18】
前記構成要素としての、前記カソード領域(5)の入口の上流側に配置されているガス/ガス加湿器(16)、および、
前記ガス/ガス加湿器(16)の上流側で前記給気ライン(13)に接続されており、かつ前記ガス/ガス加湿器(16)の上流側で前記カソード領域(5)の排気ライン(14)に接続されている、ガス/ガス加湿器バイパス・ラインをさらに有し、
前記多方弁(204)が、前記ガス/ガス加湿器(16)に、特に前記ガス/ガス加湿器(16)の加湿器バイパス・フラップとともに組み込まれている、および/または、前記多方弁(204)の前記第2の出口が前記ガス・ジェット・ポンプ(203)の前記駆動用入口ポートに接続されるように、前記ガス・ジェット・ポンプ(203)が前記ガス/ガス加湿器バイパス・ラインに配置されている、請求項17に記載の燃料電池システム(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通のカソード領域および共通のアノード領域を有する多数の単セルを備えた燃料電池スタック、ならびに燃料電池スタックを備えた燃料電池システムに関する。本発明は特に、多数の単セルを備えており、これらの単セルが共通のカソード領域と、この共通のカソード領域から隔てられた共通のアノード領域とを有する、燃料電池スタック、および燃料電池スタックを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の単セルからなる燃料電池スタックは、先行技術の範疇において知られている。これらの単セルは類型的に二つのエンド・プレートの間に緊締挟持されるようになっており、さらに、同じ燃料電池スタックの全ての単セルのための共通のカソード領域と共通のアノード領域とが構成されている。そのために流出入領域が、類型的にはスタックの積層方向に沿った全長にわたり延在しているが、この流出入領域はそれぞれの単セルに設けられた複数の貫通孔により形成されており、これらの貫通孔により、様々なガス状反応物が燃料電池スタックの全てのセルを通り互いに対して平行に流れる回路を形成している。
【0003】
今では燃料電池システムに、そのような燃料電池スタックが実際に導入されるようになっている。そこでは、PEM技術の単セルを、すなわちプロトン伝導膜または高分子電解質膜を有する単セルを複数備えて構成された燃料電池スタックである場合は、燃料電池システムを起動する際に起動用の新鮮なガスが計量投与されると、燃料電池システム内に存在する様々なガスが、燃料電池スタックを通り掃気されるようになっている。これは、特にアノード領域にとってはクリティカルな問題である。燃料電池スタックの稼働終了後に、アノード領域内に存在する水素が、揮発してしまっていたり、後から流れ込む空気中の酸素により燃料電池の内部で消尽されてしまっていたりすると、大抵の場合アノード領域内には空気が存在することになる。この状態で水素が追加投与されると、空気/水素界面が燃料電池スタックの全ての単セルに沿って平行に流れることになる。その結果、カソード領域内の空気も相まって、この界面のところには燃料電池の触媒を損傷させる危険な電位差が生じてしまう。燃料電池スタックのそのような空気/空気起動とも呼ばれる起動は、その寿命に不利な影響を及ぼすことになる。
【0004】
したがってこの問題に対処するためには、例えばアノード領域内に、理想的には燃料電池スタックの停止時間の全体にわたり消尽されることがないように、水素が溜めおかれてもよい。そのための仕組みの一つが、カソード領域内への空気の事後流入の防止である。これについて、先行技術から知られるような様々な燃料電池システムでは往々にして、燃料電池システムが停止状態にあるときには燃料電池スタックのカソード領域を遮断する目的で、様々なバルブ・デバイスが導入されるようになっている。カソードブロック・バルブとも呼ばれるこれらの構成部品は、多くは燃料電池スタックまわりに導入される大型のバルブやフラップである。これらは高重量で故障しやすい上に、封止性に関しても脆弱であり、少なくとも十分な封止性を示す構造とした場合はかなりのコスト高となってしまう。それ以外にも、その制御エレクトロニクスやバルブの開閉制御用のアクチュエータを合わせると、かなり大きな取付けスペースを要することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上を踏まえて本発明が解決しようとする課題は、請求項1の前段部分に記載の種類の燃料電池スタックをさらに改良して、高寿命化を可能にするとともに、そのような燃料電池スタックが備えられる改良型の燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によればこの課題は、請求項1に記載の、ここでは特に請求項1の特徴部分に記載の各特徴を具備した燃料電池スタックにより、ならびに、請求項15の各特徴を具備した燃料電池システムにより、解決される。これらの請求項の従属クレームからは、有益な構成形態および展開構成例が明らかにされる。
【0007】
本発明に従った燃料電池スタックでは、流路を塞ぐための、特に好適には、カソード領域内のおよび/またはカソード領域からの空気、特にカソード領域内に入るおよび/またはカソード領域から出る空気を含有したカソードガスの流路を塞ぐための、少なくとも一つのバルブ・デバイスを、燃料電池スタックに一体式に備えることが企図されている。何らかのバルブ・デバイスをこのように燃料電池スタックの内部に組み込むことによって、燃料電池システムの領域内に、特に燃料電池スタックの外部に配置されるそのようなバルブ・デバイスを節減することが可能となるが、これは特に燃料電池システムにとっては取付けスペースの節減に決定的に寄与することになる。そこではバルブ・デバイスだけにより既にカソード領域を通る流路を相応にブロックすることができるために、カソード領域を通り抜ける貫流は最早不可能となる。このことだけからして既に非常にポジティブな効果がもたらされることになる、というのもそれによりカソード領域内では、なおも空気の入替えを行うことができるのが、バルブ、特にバルブ・デバイスの片側およびその反対側からの対流プロセスによるものだけに限られるからである。
【0008】
そこでは、上述の本発明に従った燃料電池スタックの殊の外有利な展開構成例によれば、この少なくとも一つのバルブ・デバイスが、少なくとも一つのエンド・プレートに組み込まれて実施される。上記で既に述べたように、燃料電池スタックのそれぞれの単セルは、多くは二つのエンド・プレートの間に互いに緊締挟持されている。この場合は類型的に、燃料電池スタックのそれぞれの単セルよりも肉厚であるこれらのエンド・プレートの領域内に、何らかのバルブ・デバイスを上述のように組み込めるようにするための十分な取付けスペースが存在することになる。バルブ・デバイスは、例えば、特に燃料電池スタックに取り廻される給気ラインおよび/または排気ラインの接続ポート側からエンド・プレートにこれをねじ込むことによって、給気ポートおよび/または排気ポートに組み込まれてもよい。
【0009】
その際にこの少なくとも一つのバルブ・デバイスは、常閉バルブ・デバイスとして構成されていてもよい。そのような常閉バルブ・デバイスであれば、アクティブな操作を不要として、かつエネルギーを永続的に消費する必要がなく、燃料電池スタックのカソード領域を通る流路の一定の封止状態が保証される。開弁させるためのアクティブな操作は、例えば様々な電磁力により行われてもよく、すなわちそれによって、バルブ・デバイスの切換えは意図的に操作が必要とされなければならない。
【0010】
あるいはその代わりに、永久磁石を磁化可能なバルブ・ボディおよび/またはバルブ・シートと組み合わせて導入することで、バネの圧力に対抗する、および/または、磁力、特に永久磁力に対抗する、磁力がもたらされるようにすることによって、開閉制御の必要がない構造を構成することも考えられるかもしれない。
【0011】
その場合特にこれらの磁力は、非常に重要な利点を有することになる、というのも、それによりパッシブ型の磁気的にディグレッシブなバルブ・デバイスを形成することができるからである。磁気的にディグレッシブとは、バルブ・デバイスが通常時にはそれぞれの磁石によって閉弁状態に保持されるようになっており、その際にこれを閉弁状態に保持するために使われる力は大きな力となっているが、開弁後にこれを再び閉弁しようとする閉弁力とも呼ばれる力が、バネにより付勢された開度の増大に伴い閉弁力が増大するバルブとは対照的に、開度の増大に伴い減少することを意味するものである。
【0012】
特に通常時には、バルブ・シートに相応の圧力および/または相応の流速を有する流れが当たることなく、バルブ・ボディはバルブ・シート内に保持されるようになっている。そこではこの構造が、この非稼働状態においては封止された状態にある上に、一つまたは複数のシールまたは一つまたは複数のシール要素を利用できるようになっているが、これらのシールまたはシール要素は、好適にもバルブ・ボディの後流に配置されて良好な封止性をもたらすとともに、貫流時には不要な圧力損失を来さないようになっている。
【0013】
そこでは特筆できる点として、パッシブ型の磁気的にディグレッシブなバルブ・デバイスが使用される場合には、このバルブ・デバイスにより結果としてもたらされる流路を塞ぐ遮断機能を挙げられる、というのも、一つまたは複数の(永久)磁石を、一つまたは複数の別の(永久)磁石、および/または、バルブ・ボディの複数の磁化可能な領域、および/またはバルブ・シートの複数の磁化可能な領域と組み合わせることによって、バルブ・デバイスのバルブ・ボディは、バルブ・シート内にきわめて確実に、優れた封止性を示すように保持されるからである。それにより燃料電池スタックの劣化を助長する有害な空気/空気起動の回数を減らして、水素保護時間(英語:hydrogen protection time)を延長できるようになる。
【0014】
このときにカソード領域に、アクティブ方式で、給気ラインと空気供給デバイス、例えば一つまたは複数の流れ圧縮機、コンプレッサ、またはその類などを介して供給される空気またはカソードガスの流れを当ててやると、供給される空気の圧力と流速によって、バルブ・ボディは、バネ力に抗って、および/または、非常に好ましくは磁力に抗って、バルブ・シートから持ち上げられることになるが、それにより、空気供給のスイッチが入っているときには、当該バルブ・デバイスよりカソード領域を通る貫流が自動的に許容されることになる。この場合は特に、磁化可能なバルブ・ボディと組み合わされる、バルブ・シート内に、またはバルブ・シートから離間して、配置されている、または配置されたものであるとよい永久磁石の様々な磁力によって、体積流量の多寡を問わず、バルブ・デバイスを通る高信頼度の貫流が実現されるという結果をもたらすことができる。その全体的な構造は、軽量かつ頑丈である上に、磁石の導入と、これらの磁石においては類型的な力-行程特性のディグレッシブな挙動とによって、体積流量がバルブ・デバイスを開弁させるためにギリギリ足りるような最小の流量であれ、最大の流量であれ、支障のない円滑な貫流を許容するものとなっている。それぞれの磁石の累進的な力-行程特性曲線は、貫流の上述のどちらのケースに対しても理想的なものであるために、いずれのケースにおいても、バルブまたはバルブ・デバイスの開閉状態がひっきりなしに切り替わることなく、一定の貫流がもたらされることになり、したがってその結果、カソード領域内の圧力脈動を高信頼度で防止できるようになり、そのバルブまたはそれぞれのバルブ、または、そのバルブ・デバイスまたはそれぞれのバルブ・デバイスを、効率的に低騒音で作動させることが可能になる。これは、「ガタ無し」稼働とも呼ばれる。
【0015】
さらにその上に少なくとも一つのパッシブ型の磁気的にディグレッシブなバルブ・デバイスを使用することによって、必要な取付けスペースをさらに低減することができる、というのも、このバルブ・デバイスには、配線取り廻しおよび/または制御のための取付けスペースを追加する必要が一切ないからである。
【0016】
バルブ・ボディ自体は、好適には軟磁性部品として、特に軟磁性の回転部品として構成された、または、いずれかの軟磁性の特に磁化可能な材料および/または永久磁石を内蔵した、好適には流れに関して最適化された形状を持たせてもよい。
【0017】
本発明に従った燃料電池スタックの殊の外有利な展開構成例によれば、バルブ・ボディが、少なくとも一つのバルブ・デバイスの入口と対向している端部を有し、この端部は、実施例の一例においては、環状の凹所またはトラフを有するが、別の実施例においては、バルブ・ボディのこの端部が、規定通りに使用される場合には上方を指し示す。
【0018】
それによりさらに別の実施例においては、場合によりカソード領域から溢れ出る例えば水などの液体は、この凹所またはトラフを利用して捕集されてもよい。
【0019】
本発明に従った燃料電池スタックのさらに別の殊の外有利な展開構成例によれば、この少なくとも一つのバルブ・デバイスが、このバルブ・ボディの一定の開閉運動をガイドするように設けられている一つまたは複数のガイド面を備えたガイド・デバイスを有し、このガイド・デバイスが円筒状の部分を有し、このバルブ・ボディが、この少なくとも一つのバルブ・デバイスの出口の方向に延びる少なくとも一つの突起を有し、実施例の一例においては、この少なくとも一つの突起の内の特に中央突起が、このガイド・デバイスのこの円筒状の部分により形成された空隙の内部へ延び、および/または、この少なくとも一つの突起の内の一つの突起が、このガイド・デバイスのこの円筒状の部分の、この少なくとも一つのバルブ・デバイスのこの入口と対向している端部を取り囲む。
【0020】
それにより実施例の一例においては、バルブ・ボディの動きが、例えば傾くことによって、制限および/またはブロックされることを、高信頼度で防止できるようにしている。
【0021】
本発明に従った燃料電池スタックのさらに別の殊の外有利な展開構成例によれば、ガイド・デバイスの円筒状の部分の、この少なくとも一つのバルブ・デバイスの入口とは反対側の端部が、閉止されている、または通路を有する。
【0022】
それにより、ガイド・デバイスの円筒状の部分が通路を有する実施例の一例においては、場合により存在する例えば水などの液体が、この通路を通り抜け、引き続いてバルブの出口を通り抜けて、バルブ・デバイスから外に流れ出ることができる。
【0023】
本発明に従った燃料電池スタックのさらに別の殊の外有利な展開構成例によれば、この少なくとも一つのバルブ・デバイスが、固定式の、実施例の一例においては、このガイド・デバイスに取り付けられた磁石と、このバルブ・ボディに取り付けられてこのバルブ・ボディと一緒に運動可能な磁石とを有し、この固定式の磁石とこのバルブ・ボディと一緒に運動可能な磁石との間で磁力が作用し、この固定式の磁石とこのバルブ・ボディと一緒に運動可能な磁石とが相互に引き付け合う。
【0024】
それにより実施例の一例においては、有益にも、閉弁力がカソードブロック・バルブの開度の増大に伴いさらに低減することが達成され得る。
【0025】
のちの稼働中にバルブ・ボディがバルブ・シートに当接する領域や、バルブ・ボディとこれを取り囲んでいる材料との間にほんのごく僅かな流れ断面しか残らないような領域には、幾つかの疎水性表面が設けられていてもよい。これらの疎水性表面は、例えばいずれかの適切な表面処理方案または被覆方案により実現され得る。好適にはこれに補足して、バルブ・デバイスの作動にとり重要な様々な領域内に水が集積することを防止するために、またそれと同時に、水の集積を危険なく行うことができる様々な領域をもたらすために、バルブ・デバイスの内部に幾つかの親水性表面が設けられていてもよい。それにより、燃料電池スタックのカソード領域内、およびここでは特に流出する媒体の領域内の、防ぎようのない水の集積を、場合により水が凍結したとしても危険を生じないような様々な位置へと、狙いを定めて導くことができるようになる。
【0026】
その際にはこの少なくとも一つのバルブ・デバイスが、特に疎水性表面を備えた領域を有してもよく、実施例の一例においては、このバルブ・シートおよび/またはこのバルブ・シートの領域内に配置されるシール要素の表面、および/またはこのバルブ・ボディの表面が、疎水性に構成されており、このバルブ・シートおよび/またはこのシール要素の表面は、このバルブ・ボディの表面と対向しており、および/または、このガイド・デバイスのガイド面、および/またはこのガイド・デバイスの、このバルブ・デバイスのこの入口と対向している前面、および/またはこのバルブ・ボディの、このガイド・デバイスと対向しているそれぞれの表面部分が、疎水性に構成されている。
【0027】
それにより実施例の一例においては、疎水性表面が備えられたこれらの領域のところに液体、特に水が集積することが、少なくとも十分に防止され得る。
【0028】
この際にはさらに、この少なくとも一つのバルブ・デバイスが、特に親水性表面を備えた領域を有してもよく、実施例の一例においては、特にこの凹所の表面、および/または、この燃料電池スタックのこのバルブ・ボディの側方のこのバルブ・デバイスが組み込まれている部分に設けられているアンダーカットの、このバルブ・デバイスのこの出口の方向を指し示す表面が、親水性に構成されている。
【0029】
それにより実施例の一例においては、場合によりカソードガスに含有される例えば水などの何らかの液体が、親水性表面を備えたこれらの領域のところに集積して、それにより燃料電池スタックまたは燃料電池システムの残部から少なくとも一時的に取り除かれることが達成され得る。仮にこれらの領域のところに水がこのように集積することによって、低温を理由として氷が生成されたとしても、それがバルブ・デバイスの稼働にもたらす影響は皆無であるか、影響が出るとしてもほんのごく僅かなものにしか過ぎない、というのも、それによっては、特にバルブ・ボディの可動性に、例えばバルブ・シートまたはシール要素にバルブ・ボディが凍結固着することによって起こり得るような制約を生じることはないからである。
【0030】
本発明に従った燃料電池スタックのさらに別の殊の外有利な展開構成例に従って、カソード領域の流入側および流出側にバルブ・デバイスが一つずつ構成されていることが企図されていてもよい。すなわち本発明に従った燃料電池スタックのこの非常に有利な展開構成例においては、燃料電池スタックが、非稼働時には燃料電池スタックを流入側および流出側で遮断することができる二つの別体のバルブ・デバイスを有し、それにより、対流効果によるものであれ、風の効果またはその類のものによるものであれ、空気が後から流れ込むことを確実かつ高信頼度で防止できるようにしている。
【0031】
本発明に従った燃料電池スタックのさらに非常に有利な展開構成例に従って、これら両方のバルブ・デバイスが同一部品として実施されていることがさらに企図されていてもよい。したがって両方のバルブ・デバイスが同一部品として実施されていてもよく、それにより全体的な構造に関して低コスト化がはかられる。というのも、バルブ・デバイスは全て高ロット数で製造されるようになり、それによりスケーリング効果がもたらされるからである。その後でそれぞれのバルブ・デバイスは、組付け姿勢を反転させて、流れが燃料電池スタックを通り入口側・出口側とも同じ方向に流れるように、燃料電池スタックの内部に組み付けられる。
【0032】
本発明に従った燃料電池システムは、上記で説明した燃料電池スタックを有し、この燃料電池スタックが、このカソード領域の出口の下流側に配置され、この燃料電池スタックに組み込まれ、実施例の一例においては、パッシブ型の磁気的にディグレッシブなバルブ・デバイスとして構成されている、バルブ・デバイスを有し、また該燃料電池システムがさらに、このカソード領域の入口の上流側に配置される(アクティブ型の)多方弁、および、少なくとも一つの吸込み用入口ポートと駆動用入口ポートを備えたガス・ジェット・ポンプを有し、この多方弁の入口がカソード領域の給気ラインに、多方弁の第1の出口がカソード領域の入口に、さらに多方弁の第2の出口がガス・ジェット・ポンプの駆動用入口ポートに接続されており、ガス・ジェット・ポンプの少なくとも一つの吸込み用入口ポートの吸込み用入口ポートが、カソード領域の出口に、実施例の一例においては、バルブ・デバイスの上流側で切換え可能に、実施例の一例においては、カソードパージ弁を利用して、接続されていること、および/または、ガス・ジェット・ポンプの少なくとも一つの吸込み用入口ポートの別の吸込み用入口ポートが、アノード領域の出口に、実施例の一例においては、アノード領域の出口に接続された再循環ラインを介して、切換え可能に、実施例の一例においては、パージ/ドレン弁を利用して、接続されている。
【0033】
それにより、場合により存在する例えば水などの様々な液体については、低圧下で気化させることにより、または気化させた後に、また例えば空気などの様々なガスについては、低温下で自発的に、カソード領域が占める体積からの吸出しと同様の方法で、アノード領域が占める体積からも吸い出すことができる。その際にはこの吸出しを、理想的なケースにおいては比較的均一に行うことによって、カソード領域とアノード領域との間の高い差圧が回避されるようにして、それにより膜が丁寧に扱われるようにする。
【0034】
その場合は、このアクティブ型の多方弁の動作制御を行うために、配線取り廻しが不可欠である、という短所を甘受することになるが、それと引き換えに、二つのパッシブ型のバルブ・デバイスをカソード領域の入口側と出口側とに配置した場合には、押付け力が常に一方のバルブ・デバイスに加えられることになるために、燃料電池スタックを負圧下におくことができるという、不可能であると思われる長所が得られることになる。
【0035】
本発明に従った燃料電池システムのさらに非常に有利な展開構成例によれば、この多方弁の第2の出口は、ガス・ジェット・ポンプが配置されているカソードバイパス・ラインを介してカソード領域の排気ラインに接続されている。
【0036】
本発明に従った燃料電池システムのさらに非常に有利な展開構成例によれば、この多方弁は燃料電池システムの構成要素に組み込まれている。
【0037】
それにより実施例の一例においては、燃料電池システムに必要な取付けスペースを低減できるようにしている。
【0038】
本発明に従った燃料電池システムのさらに非常に有利な展開構成例によれば、燃料電池システムは、構成要素としての、カソード領域の入口の上流側に配置されているガス/ガス加湿器、および、このガス/ガス加湿器の上流側で給気ラインに接続されており、かつこのガス/ガス加湿器の上流側でこのカソード領域の排気ラインに接続されている、ガス/ガス加湿器バイパス・ラインをさらに有し、多方弁が、このガス/ガス加湿器に、実施例の一例においては、このガス/ガス加湿器の加湿器バイパス・フラップとともに、組み込まれている、および/または、多方弁の第2の出口がガス・ジェット・ポンプの駆動用入口ポートに接続されるように、ガス・ジェット・ポンプがこのガス/ガス加湿器バイパス・ラインに配置されている。
【0039】
本発明に従った燃料電池スタックのさらに別の有益な構成形態は、以下で図を参照しながら詳細に説明する実施例から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】先行技術に従った燃料電池システムの実施例を示す図である。
図2】本発明に従った燃料電池スタックの可能性のある実施形態を示す図である。
図3】本発明に従った燃料電池スタックの可能性のある実施形態において用いられるバルブ・デバイスを示す図である。
図4図3に示されるバルブ・デバイスの一部を、流れの向きの方向に上から見たときの上面図である。
図5】バルブ・デバイスの閉弁力とバルブ・デバイスの開度との関係を示すグラフである。
図6】本発明に従った燃料電池システムの可能性のある実施形態の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1の図中においては、大幅に図式化して示唆される、例えば電気駆動出力を提供するために車両2に搭載されたものであるとよい燃料電池システム1を、確認することができる。そこでは、しばしば燃料電池または燃料電池積層体とも呼ばれる燃料電池スタック3が、この燃料電池システム1の中核を成している。これは、類型的には多数の単セル24を積み重ねたものからなっている(図2を参照)。ここにはあくまでも例示的に、共通のアノード室4またはアノード領域4、および共通のカソード室5またはカソード領域5が示唆されているが、これらはプロトン伝導膜6を間に挟んで互いに隔てられている。すなわちこの燃料電池スタック3は、PEM燃料電池積層体である。
【0042】
アノード室4には、水素源7、例えば圧縮ガス・アキュムレータまたは超低温アキュムレータから水素が供給される。この水素は、圧力制御兼計量投与ユニット8を介して、それぞれの単セルのアノード室4に入り込む。消費されなかった水素については、再循環用デリバリ・デバイス10が備えられた、ここではあくまでも例示的に再循環用ブロワが備えられた再循環ライン9を経由して、戻すことができるようになっている。水および水素は、水トラップ11から時々排出され、パージ兼ドレン弁12を介して排出されてもよい。
【0043】
燃料電池システム1のカソード領域5には、給気ライン13を経由して空気が酸素供給源として供給される。排気は、排気ライン14を経由して燃料電池システム1から外部に出る。ここでは必要な空気を送り出すために、流れ圧縮機15が配置されている。この流れ圧縮機15の下流側の高温の乾燥した空気は、ガス/ガス加湿器16を経由して、さらに場合によってはここには図示されないインタークーラーを経由して、カソード領域5に入り込む。カソード領域5から出る湿った排気は、排気ライン14を経由して、再びガス/ガス加湿器16を通り、その領域内で乾燥した高温の給気に水分を放出してから、ここに図示される実施例においては排気タービン19を介して周囲に流れる。この排気タービン19と流れ圧縮機15は、共通軸17ならびに電気機械18を介して互いに接続されており、それにより排気タービン19の領域内に溜まったエネルギーを、空気デリバリ・デバイス15の駆動を支援するために、またこれが駆動出力を一切必要としない場合には、電気機械18を発電機として駆動させるために、利用できる。
【0044】
さて、先行技術に従ったこの燃料電池システム1は、二つのカソードブロック・バルブ20、21を、ここではあくまでも例示的に、ガス/ガス加湿器と燃料電池スタック3との間に位置する給気ライン13にも、また排気ライン14にも有する。これらのカソードブロック・バルブ20、21は、類型的にはアクティブ方式で開閉制御されるフラップとして構成されており、これらは燃料電池システム1の内部で比較的大きな取付けスペースを必要とするとともに、相応に高価である上に、組付けおよび開閉制御に関しても複雑で工数を要する。
【0045】
それにもかかわらずそのようなカソードブロック・バルブ20、21は、燃料電池スタック3の寿命にプラスの効果を与えるものである、というのも新鮮な空気がカソード領域5内に後から流れ込むことをこれらによって防止できるからであり、最終的にはその結果として、理想的なケースでは燃料電池システム1が長期間停止状態にあった後になおも存在するのが窒素だけとなる上に、停止状態にあるときには燃料電池スタック3を通りアノード領域4から出る水素が消費されることは最早ないからである。それにより、燃料電池システム1または燃料電池スタック3を再起動する際の、燃料電池スタック3の寿命にとりクリティカルな空気/空気起動を防止することができる。
【0046】
さて、図2の図中においては、本発明に従った燃料電池スタック3の可能性のある実施変形例の一種の図式図を確認することができる。そこでは二つのエンド・プレート22、23の間に多数の単セル24が緊締挟持されており、符号はその内の幾つかだけにしか付されていないが、いずれの単セルも、カソード領域5またはカソード室5、およびアノード領域4またはアノード室4、ならびに膜6を有する。それぞれの単セル24に作り込まれた貫通孔を介して、個々のアノード領域4とカソード領域5は、さながら燃料電池スタック3の内部に一種の冷却熱交換器のような冷媒流領域が構成されるように、互いに接続されている。第1のエンド・プレート22の領域内では、水素供給ライン25を経由して水素がアノード領域4に供給されて、他方のエンド・プレート23の領域内で再循環ライン9に流れ出る。図2の図中においては、ほかにもさらに第1のエンド・プレート22の領域内に冷媒供給部26を、また他方のエンド・プレート23の領域内に冷媒排出部27を確認することができる。
【0047】
給気ライン13は第1のエンド・プレート22に、また排気ライン14は第2のエンド・プレート23に連結されている。カソードブロック・バルブ20、21は、燃料電池システム1の領域内に配置される代わりに、ここでは燃料電池スタック3に、好適にはここに図式的に示唆されているようにそれぞれのエンド・プレート22、23に、一体式に組み込まれている。すなわちエンド・プレート22は、本出願の趣意におけるバルブ・デバイスであるところの給気側のカソードブロック・バルブ20を、他方のエンド・プレート23は、同じく本出願の趣意におけるバルブ・デバイスであるところの排気側のカソードブロック・バルブ21を、それぞれの内部に一体式に担持している。燃料電池スタック3のそれぞれのエンド・プレート22、23に組み込まれているこれらのカソードブロック・バルブ22、21は、理想的にもパッシブ型に構成されている、すなわち通常時には閉弁状態にあるが、流れてくる給気または流れてくる排気がこれらに当たると、相応に押し付けられることによって、燃料電池システム1の内部における所要取付けスペースを最小限としながらも、簡単かつ効率的に閉弁状態から変わることができる。
【0048】
さて、図3の図中においては、本発明に従った、可能性のある実施変形例における、図2に示される燃料電池スタック3のある部分に組み込まれているカソードブロック・バルブ20、21を確認することができる。
【0049】
このカソードブロック・バルブ20、21、またはバルブ・デバイス20、21は、バルブ・ボディ101を有し、これは、燃料電池スタック3のある部分の空隙の内部に配置されている。このバルブ・ボディ101は、少なくとも部分ごとに、燃料電池スタック3のこの部分のこの空隙の内部において、図3に矢印P1により具体的に示される、規定通りに使用される場合に存在する、カソード領域5に流れ込む、またはそこから流れ出る(カソード)ガスまたは(カソード)流体の一定の流れの向きに沿っても、またカソードガスのこの流れの向きとは逆向きにも、運動可能であるように、特に直線運動可能であるように、配置されている。そこでは燃料電池スタック3のこの部分のこの空隙の任意の断面、または燃料電池スタック3のこの空隙を取り囲んでいる領域の任意の断面が、カソードガスのこの流れの向きとは逆向きにテーパしているために、カソードガスのこの流れの向きとは逆向きのバルブ・ボディ101の運動は、このテーパした断面により制限される。断面がテーパしている燃料電池スタック3のこの部分は、カソードブロック・バルブ20、21のバルブ・シート120を形成する。
【0050】
バルブ・ボディ101がバルブ・シート120に当接しているときには、実施形態の一例においては図3に具体的に示されるようにバルブ・ボディ101がバルブ・シート120の領域内に配置される例えばОリングとして構成されたシール要素102に当接しているときには、カソードブロック・バルブ20、21が一定の閉弁位置にあるのに対して、バルブ・ボディ101がバルブ・シート120に当接していないとき、またはバルブ・ボディ101がシール要素102に当接していないときには、カソードブロック・バルブ20、21は一定の開弁位置にある。
【0051】
燃料電池スタック3の内部におけるバルブ・ボディ101の運動、特に開閉運動をガイドするために、カソードブロック・バルブ20、21はさらに、一つまたは複数のガイド面が備えられたガイド・デバイス112を有するが、この一つまたは複数のガイド面は、特にバルブ・ボディ101をその運動時にはこの一つまたは複数のガイド面に沿ってスライドさせるという具合にバルブ・ボディ101の運動をガイドするように設けられている。
【0052】
ガイド・デバイス112は、一つまたは複数の、好適には三つの固定要素106、特にフィン状の固定要素106を利用して、燃料電池スタック1のこの空隙を取り囲んでいる部分の内面に取り付けられており、それによりガイド・デバイス112は燃料電池スタック1の内部におけるその位置を固定されている。図4には、ガイド・デバイス112を固定要素106とともにカソードガスの流れの向きの方向に上から見たときの当該上面図が図示されている。
【0053】
ガイド・デバイス112は、好適にはカソードガスの流れの向きに対して平行に延びる円筒状の部分を有するが、その際にこの円筒状の部分のカソードブロック・バルブ20、21の入口とは反対側の端部は、実施形態の一例においては閉止されているとよく、また図3に示されるような別の実施形態においては、これに通路105を備えて、場合により存在する例えば水などのような液体がそれを通り流れ出ることができるようにしてもよい。
【0054】
バルブ・ボディ101は、カソードブロック・バルブ20、21の出口に向かって延びる一つまたは複数の突起を有するが、その際にこれらの突起の内のいずれか一つ、特に中央突起は、ガイド・デバイス112の円筒状の部分により形成された空隙の内部へと延びており、また、これらの突起の内のそれとは別の一つは、ガイド・デバイス112の円筒状の部分のカソードブロック・バルブ20、21の入口と対向している端部を取り囲んでいる。
【0055】
カソードブロック・バルブ20、21は、磁気的にディグレッシブなバルブとして構成されて、通常時には、特にカソードブロック・バルブ20、21の入口側に加わる圧力とカソードブロック・バルブ20、21の出口側に加わる圧力との圧力差がある所定の閾値を下回る場合には、様々な磁力によって閉弁位置に保持されるようになっている。カソードブロック・バルブ20、21を閉弁位置に保持するために使われるこの力は、比較的大きな力であるが、そこではカソードブロック・バルブ20、21の開弁後に再びカソードブロック・バルブ20、21を閉弁位置に移動させるための閉弁力Fが、図5のグラフに具体的に示されるように、閉弁力が開度の増大に伴い低減するバネにより付勢されたバルブとは異なり、開度、すなわちバルブ・シート120またはシール要素102からバルブ・ボディ101までの距離Dの増大に伴い低減する。
【0056】
そのためにカソードブロック・バルブ20、21は、バルブ・シート120の領域内に、またはバルブ・シート120から離間して配置される、N極ならびにS極104-1、104-2を有する、好適には永久磁石として構成された、一つまたは複数の磁石104を有し、その際にバルブ・ボディ101は、少なくとも部分ごとに、特にこの一つまたは複数の磁石104と対向している一つまたは複数の領域内に、および/または、この一つまたは複数の磁石104の近傍に位置する、特に至近に位置する一つまたは複数の領域116内に、いずれかの磁化可能な材料、および/または、これらの磁石104と同じ極性を持つ(永久)磁石を有する。それによりバルブ・ボディ101は、それぞれの磁石104とバルブ・ボディ101のこの磁化可能な材料および/またはこの(永久)磁石との間に生じるそれぞれの磁力によって、カソードブロック・バルブ20、21の入口の方向に動かされる。
【0057】
実施例の別の選択肢においては、さらにそれに追加して、好適にはガイド・デバイス112に取り付けられたN極およびS極108-1、108-2を有する固定式の(永久)磁石108が、ガイド・デバイス112の円筒状の部分の内部に備えられるとともに、バルブ・ボディ101に取り付けられてこれと一緒に運動可能な、N極およびS極107-1、107-2を有する(永久)磁石107が備えられているが、これらの磁石に磁石104の極性と同じ極性を持たせることによって、両方の磁石107、108間の引力、ひいては閉弁力が、カソードブロック・バルブ20、21の開度の増大に伴いさらに低減する。
【0058】
バルブ・ボディ101は、カソードブロック・バルブ20、21の入口と対向しているその端部の表面に、特に環状の凹所またはトラフ110を有するが、特にカソードブロック・バルブ20、21がカソード領域5の出口側に一体式に組み込まれているケースにおいては、このトラフを用いて、ともすればカソード領域5から溢れ出る例えば水などの液体が捕集され得る。そのためにカソードブロック・バルブ20、21またはバルブ・ボディ101は、好ましくは燃料電池スタック3の内部に、トラフ110の露出表面が、規定通りに使用されるときには上方を指し示すように取り付けられており、それによりこのトラフ110を利用して、上から落下してくる、バルブ・ボディ101の表面に当たる何らかの液体はこのトラフ110の中に集められてもよい。
【0059】
実施例の一例においては、図3に符号103を付した破線により具体的に示されるように、このトラフ110の表面は親水性を示すように構成されている。別の実施例においては、燃料電池スタック3のバルブ・ボディ101の側方のバルブ・デバイス20、21が一体式に組み込まれている部分に設けられている複数のアンダーカット113の、カソードブロック・バルブ20、21の出口の方を指し示している表面もまた、破線114により具体的に示されるように親水性を示すように構成されている。
【0060】
トラフ110の表面および/またはそれぞれのアンダーカット113の表面を、親水性を示すように構成することによって、場合によってはカソードガスに含有される例えば水などの何らかの液体が、これらの地点のところに集積して、それにより燃料電池スタック3または燃料電池システム1の残部から少なくとも一時的に取り除かれる。仮にこれらの地点のところに、水がこのように集積することによって、低温を理由として氷が生成されたとしても、これがカソードブロック・バルブ20、21の稼働にもたらす影響は皆無であるか、または影響が出るとしてもほんのごく僅かなものにしか過ぎない、というのも、それによっては、特にバルブ・ボディ101の可動性に、例えばバルブ・シート120またはシール要素102にバルブ・ボディ101が凍結固着することによって起こり得るような制約を生じることはないからである。
【0061】
バルブ・シート120またはシール要素102へのバルブ・ボディ101の凍結固着を十分に防止するために、さらにその上に、バルブ・シート120および/またはシール要素102の表面、および/またはバルブ・ボディ101の表面、その際にバルブ・シート120および/またはシール要素102のこの表面は、符号111を付した破線が具体的に示しているように、バルブ・ボディ101のこの表面と対向しており、および/または上述の一つまたは複数のガイド面、および/またはガイド・デバイス112のカソードブロック・バルブ20、21の入口と対向している端面、および/またはバルブ・ボディ101のガイド・デバイス112と対向している複数の部分が、符号109を付した破線により具体的に示されるように、疎水性を示すように構成されており、それにより液体、特に水がこれらの地点のところに集積することが少なくとも十分に防止され得る。
【0062】
上述のそれぞれの領域または表面の疎水化処理/親水化処理は、例えばa)いずれかの適切な疎水性/親水性材料を選択し、b)疎水化処理のためにそれぞれの表面に研磨加工を施し、または親水化処理のためにそれぞれの表面に粗面化加工を施し、c)それぞれの表面にプラズマ処理を施し、d)賦形により、例えばそれぞれの表面の上にラメラ構造を構成することにより、毛管力を生じさせることによって、行われてもよい。
【0063】
さて、図6の図中においては、本発明に従った燃料電池システムの可能性のある実施形態の一例における、燃料電池システムの一部の図式図を確認することができる。
【0064】
燃料電池システム1は、この実施形態においては、燃料電池スタック3に組み込まれたカソードブロック・バルブ20、21を一つだけ、特に、例えば図3に具体的に示されるパッシブ型の磁気的にディグレッシブなカソードブロック・バルブ21を有するが、これはカソード領域5の出口付近に配置されている。
【0065】
これに対して、カソード領域5の入口側には、アクティブ型の、または動作制御をアクティブ方式で行うことができる、カソードブロック・バルブとして機能する、多方弁204、特に3/2方弁が、好適には給気ライン13に配置されている、または燃料電池システム1のいずれかの別の構成要素に一体式に組み込まれている。
【0066】
別の不図示の実施例においては、この多方弁204が、空気清浄ユニット(APU)または例えばガス-ガス加湿器16などの加湿器ユニットに一体式に組み込まれており、またそこではさらに、通常備えられる加湿器バイパス・フラップまたは加湿器バイパス制御機能と一体化されている、またはその内部に一体式に組み込まれている。
【0067】
多方弁204の入口は給気ライン13に接続されている。多方弁204の第1の出口はカソード領域5の入口に接続されており、そこでは多方弁204の第1の出口を閉鎖することによってカソード領域に入る流路が塞がれる。多方弁204の第2の出口は、任意選択により、図6に具体的に示されるように触媒206が備えられているとよいカソードバイパス・ライン208を介して、カソードブロック・バルブ21の下流側でカソード領域5の排気ライン14に接続されている。
【0068】
燃料電池スタック3の内部に組み込まれたカソードブロック・バルブ21と多方弁204は、特にガス・ジェット・ポンプまたはエジェクター・ポンプまたはジェット・ポンプ203を介して互いに接続されているが、このポンプは、例えばベンチュリー・ノズルを内蔵していてもよく、またはベンチュリー・ノズルからなっており、カソードバイパス・ライン208を通り流れる、ガス・ジェット・ポンプ203の駆動用入口ポートに流れ込むようになっているカソードガスを推進用ジェット流として利用して、駆動される。ここでは、再循環ライン9に接続された、特に再循環ライン9に配置された水トラップ205の出口に接続された排気ライン209が、ブローオフ・バルブまたはパージ弁202またはパージ/ドレン弁202を介してガス・ジェット・ポンプ203の吸込み用入口ポートに接続されている。さらにそれに加えて、カソードブロック・バルブ21の上流側でカソード領域5の出口に接続されているカソード分岐ライン207が、カソードパージ弁201を介してガス・ジェット・ポンプ203の別の吸込み用入口ポートに接続されている。
【0069】
そうすることによって、一方では、ガス・ジェット・ポンプ203を介して給気ライン13を排気ライン14に接続するために多方弁204を第2の出口に切り換えるとともに、カソードパージ弁201を任意の開弁位置に切り換えることによって、カソード領域5を、他方では、ガス・ジェット・ポンプ203を介して給気ライン13を排気ライン14に接続するために多方弁204を第2の出口に切り換えるとともに、パージ/ドレン弁202を任意の開弁位置に切り換えることによって、アノード領域4を、負圧下におくことができる。
【0070】
したがって、場合により存在する例えば水などの様々な液体については、低圧下で気化させることにより、または気化させた後に、また例えば空気などの様々なガスについては低温下で自発的に、カソード領域5が占める体積からの吸出しと同様の方法で、アノード領域4が占める体積またはアノード回路からも吸い出すことができるようになる。その際にはこの吸出しを、理想的なケースにおいては比較的均一に行うことによって、カソード領域5とアノード領域4との間の高い差圧が回避されるようにして、それにより膜が丁寧に扱われるようにしている。二つのパッシブ型のカソードブロック・バルブ20、21がカソード領域5の入口側ならびに出口側に備えられる燃料電池システム1においては、この(吸出しおよび気化)機能を利用できるようにするのは無理であると思われる。なぜならばカソードブロック・バルブ20、21の内のいずれか一つ、特に入口側のカソードブロック・バルブ20は、吸込み工程によって何度でも繰り返して開弁されかねないからである。
【0071】
別の不図示の実施例において、ガス・ジェット・ポンプ203は、多方弁204の代わりに、好適にはそれと一緒に、空気清浄ユニット(LAE)または例えばガス-ガス加湿器16などの加湿器ユニットのバイパスの内部に組み込まれて、そこでさらに、通常備えられる加湿器バイパス・フラップまたは加湿器バイパス制御機能と一体化されている、またはその内部に組み込まれていてもよい。この場合はガス・ジェット・ポンプ203を、バイパスを通り流れるガスを推進用ジェット流として利用して駆動することができるし、さらにガス・ジェット・ポンプ203は、吸込み側でカソードパージ弁201またはパージ/ドレン弁202およびそれぞれの当該ラインを介して、カソード領域5またはアノード領域4に切換え可能であるように接続されていてもよいが、それにより吸出しを行ってこれらの領域を空にすることができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単セル(24)を備えた燃料電池スタック(3)であって、前記単セル(24)が、共通のカソード領域(5)と、前記共通のカソード領域(5)から隔てられた共通のアノード領域(4)とを有する、前記燃料電池スタック(3)において、
少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、前記カソード領域(5)に入る流路、および/または前記カソード領域(5)から出る流路を塞ぐために組み込まれていること、
を特徴とする、前記燃料電池スタック(3)。
【請求項2】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、少なくとも一つのエンド・プレート(22、23)に組み込まれるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項3】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、常閉バルブ・デバイス(20、21)として構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項4】
前記カソード領域(5)を通り抜ける体積流量が十分である場合、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)のバルブ・ボディ(101)が、バネの圧力に対抗して、および/または磁石の力、特に永久磁石の力に対抗して、開弁の状態に保持されることを特徴とする、請求項3に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項5】
前記バルブ・ボディ(101)が、特に回転部品として軟磁性材料から構成され、または、軟磁性材料、特に磁化可能な材料および/または永久磁石を含むものであり、これと直接または間接的に磁気的に協働するように接続される少なくとも一つの永久磁石(104)が、バルブ・シートの領域に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項6】
前記バルブ・ボディ(101)が、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)の入口に面する端部を有し、前記端部は、特に環状の凹所(110)を有し、前記バルブ・ボディ(101)の前記端部は、規定通りに使用される場合に上向きになることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項7】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、前記バルブ・ボディ(101)の一定の開閉運動をガイドするように設けられている一つまたは複数のガイド面を備えたガイド・デバイス(112)を有し、前記ガイド・デバイス(112)が円筒状の部分を有し、前記バルブ・ボディ(101)が、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)の出口の方向に延びる少なくとも一つの突起を有し、前記少なくとも一つの突起の内の特に中央の突起が、前記ガイド・デバイス(112)の前記円筒状の部分により形成された空隙の内部へ延び、および/または、前記少なくとも一つの突起の内の一つの突起が、前記ガイド・デバイス(112)の前記円筒状の部分の、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)の入口と対向している端部を取り囲むことを特徴とする、請求項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項8】
前記ガイド・デバイス(112)の前記円筒状の部分の、前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)の入口とは反対側の端部が、閉止されている、または通路(105)を有することを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項9】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、特に前記ガイド・デバイス(112)に取り付けられた固定式の磁石(108)と、前記バルブ・ボディ(101)に取り付けられて前記バルブ・ボディ(101)と一緒に運動可能な磁石(107)とを有し、前記固定式の磁石(108)と前記バルブ・ボディ(101)と一緒に運動可能な磁石(107)との間で磁力が作用し、前記固定式の磁石(108)と前記バルブ・ボディ(101)と一緒に運動可能な磁石(107)とが相互に引き付け合うことを特徴とする、請求項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項10】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、疎水性表面を備えた領域(103、111)を有し、
特にバルブ・シート(120)および/または前記バルブ・シート(120)の領域内に配置されるシール要素(102)の表面、および/または前記バルブ・ボディ(101)の表面が、疎水性に構成されており、前記バルブ・シート(120)および/または前記シール要素(102)の表面は、前記バルブ・ボディ(101)の表面と対向しており、および/または、
前記ガイド・デバイス(112)のガイド面、および/または前記バルブ・デバイス(20、21)の入口と対向している前記ガイド・デバイス(112)の端面、および/または前記ガイド・デバイス(112)と対向している前記バルブ・ボディ(101)の表面部分が、疎水性に構成されていることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項11】
前記少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、親水性表面、特に凹所(110)の表面を備えた領域(103)を有し、および/または、前記燃料電池スタック(3)の前記バルブ・ボディ(101)の側方の前記バルブ・デバイス(20、21)が組み込まれる部分に設けられているアンダーカット(113)の、前記バルブ・デバイス(20、21)の出口の方向を指し示す表面が、親水性に構成されていることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項12】
流れの後流に位置するシール要素(102)が、バルブ・シートの領域に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項13】
少なくとも一つのバルブ・デバイス(20、21)が、前記カソード領域(5)の流入側および流出側に構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項14】
2つの前記バルブ・デバイス(20、21)が同一部品として実施されていることを特徴とする、請求項13に記載の燃料電池スタック(3)。
【請求項15】
請求項1または2に記載の燃料電池スタック(3)を有する燃料電池システム(1)であって、
前記燃料電池スタック()がバルブ・デバイス(21)を有し、前記バルブ・デバイス(21)が、前記カソード領域(5)の出口の下流側に配置され、前記燃料電池スタック(3)に組み込まれ、特にパッシブ型の磁気的にディグレッシブなバルブ・デバイスとして構成されており、および、
前記燃料電池システム(1)がさらに、
前記カソード領域(5)の入口の上流側に配置される多方弁(204)、および、少なくとも一つの吸込み用入口ポートと駆動用入口ポートとを備えたガス・ジェット・ポンプ(203)を有し、
前記多方弁(204)の入口が前記カソード領域(5)の給気ライン(13)に、前記多方弁(204)の第1の出口が前記カソード領域(5)の入口に、さらに前記多方弁(204)の第2の出口が前記ガス・ジェット・ポンプ(203)の前記駆動用入口ポートに接続されており、
前記ガス・ジェット・ポンプ(203)の前記少なくとも一つの吸込み用入口ポートの一つの吸込み用入口ポートが、前記カソード領域(5)の出口に、特に前記バルブ・デバイス(21)の上流側に、特にカソードパージ弁(201)を用いて、切換え可能に接続されていること、および/または、前記ガス・ジェット・ポンプ(203)の前記少なくとも一つの吸込み用入口ポートの別の吸込み用入口ポートが、前記アノード領域(4)の出口に、特に前記アノード領域(4)の前記出口に接続された再循環ライン(9)を介して、特にパージ/ドレン弁(202)を用いて、切換え可能に接続されていることを特徴とする、燃料電池システム(1)。
【請求項16】
前記多方弁(204)の前記第2の出口が、前記ガス・ジェット・ポンプ(203)が配置されているカソードバイパス・ライン(208)を介して前記カソード領域(5)の排気ライン(14)に接続されている、請求項15に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項17】
前記多方弁(204)が、前記燃料電池システム(1)の構成要素に組み込まれている、請求項15に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項18】
前記構成要素としての、前記カソード領域(5)の入口の上流側に配置されているガス/ガス加湿器(16)、および、
前記ガス/ガス加湿器(16)の上流側で前記給気ライン(13)に接続されており、かつ前記ガス/ガス加湿器(16)の上流側で前記カソード領域(5)の排気ライン(14)に接続されている、ガス/ガス加湿器バイパス・ラインをさらに有し、
前記多方弁(204)が、前記ガス/ガス加湿器(16)に、特に前記ガス/ガス加湿器(16)の加湿器バイパス・フラップとともに組み込まれている、および/または、前記多方弁(204)の前記第2の出口が前記ガス・ジェット・ポンプ(203)の前記駆動用入口ポートに接続されるように、前記ガス・ジェット・ポンプ(203)が前記ガス/ガス加湿器バイパス・ラインに配置されている、請求項17に記載の燃料電池システム(1)。
【国際調査報告】