(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】末梢挿入型中心カテーテル(PICC)およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61M25/00 542
A61M25/00 610
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508744
(86)(22)【出願日】2022-08-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 IL2022050912
(87)【国際公開番号】W WO2023026279
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524054956
【氏名又は名称】シリ、 アロン
【氏名又は名称原語表記】SHIRI, Alon
【住所又は居所原語表記】16 Bar Kochva Street, 5126107 Bnei-Brak ISRAEL
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】バーニア、 ヤコフ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB12
4C267CC08
4C267GG24
4C267HH07
(57)【要約】
血管内に挿入されるように構成された末梢挿入可能な中心カテーテル(PICC)が提供され、前記カテーテルは、管内に挿入されるように構成され、遠位端面開口部を含む遠位部分、近位開口部を含む近位部分、これらの間に延在する少なくとも1つのフラッシング管腔、および前記少なくとも1つのフラッシング管腔内に配置され、前記遠位端面開口部を通る流体の流れを可能にする開放配置と、前記遠位端面開口部を通る流体の流れを遮断する閉鎖配置の2つの配置を備えた弁を含み、前記弁の閉鎖配置では、前記近位開口部からカテーテルに入れられたフラッシング液は循環して戻り、前記近位部分を通って対象の血管から外へと流出することにより、前記フラッシング液が前記遠位端面開口部を通って出ることが防止される。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内に挿入されるように構成され、遠位端面開口部を含む遠位部分、
近位開口部を含む近位部分、
これらの間に延在する少なくとも1つのフラッシング管腔、および
前記少なくとも1つのフラッシング管腔内に配置され、前記遠位端面開口部を通る流体の流れを可能にする開放配置と、前記遠位端面開口部を通る流体の流れを遮断する閉鎖配置の2つの配置を備えた弁
を含む末梢挿入可能な中心カテーテル(PICC)であって、
前記弁の閉鎖配置では、前記近位開口部からカテーテルに入れられたフラッシング液は循環して戻り、前記近位部分を通って対象の血管から外へと流出することにより、前記フラッシング液が前記遠位端面開口部を通って出ることが防止される、末梢挿入可能な中心カテーテル。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフラッシング管腔が、さらに、前記弁の開放配置で前記対象に医療物質を送達するように構成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフラッシング管腔が2つの個別の管腔である第1の管腔および第2の管腔に分割され、前記第1の管腔はフラッシング液を送達するように構成され、前記第2の管腔は前記フラッシング液を収集し、それを近位部分に導き、そして前記対象の血管から排出するように構成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記弁が、前記遠位端面開口部を封鎖するのに十分な寸法に膨張するように構成された膨張可能要素を備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
さらに、前記膨張可能要素と流体流れ連通する膨張コンジットを備える、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記弁が、前記遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成された封鎖フラップおよび/またはシャターを含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記弁が、前記遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成されたガイドワイヤ弁を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記弁が、前記遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成されたピストンを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記弁が、前記遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成されたダックビル弁を備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記弁が、前記遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成されたスカート弁を備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
さらに、前記弁の開放配置で、前記対象に医療物質を送達するための追加の個別の管腔を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記近位部分を通って循環して戻った前記フラッシング液が、前記近位開口部を通ってカテーテルから出る、請求項1~11のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記近位部分を通って循環して戻った前記フラッシング液が、前記近位排出ポートを通ってカテーテルから出る、請求項1~12のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項14】
さらに、前記少なくとも1つのフラッシング管腔を通過し、前記近位部分を通って戻り前記カテーテルの外に出る前記フラッシング液の循環を容易にするために、前記フラッシング液の流量を調節するように構成された圧力調整機構を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項15】
フラッシング管腔、前記弁を作動させるための管腔、医療物質を送達するための管腔、および前記医療物質の分離を容易にするためのダックビル弁を備える管腔を含む、請求項1に記載のカテーテル、
【請求項16】
さらに、圧力調節を容易にするために前記フラッシング液の圧力を監視および/または調節するための1または複数のセンサを備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項17】
さらに、前記カテーテルに入るおよび/または前記カテーテルから出る前記フラッシング液の流量容量を監視および/または調節するための1または複数のセンサを備える、請求項1~16のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項18】
さらに、前記血管に入る前記医療物質の流量容量を監視および/または調節するための1または複数のセンサを備える、請求項1~17のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項19】
末梢挿入可能な中心カテーテル(PICC)をフラッシングする方法であって、
遠位端面開口部を含む遠位部分、
近位開口部を含む近位部分、
これらの間に延在する少なくとも1つのフラッシング管腔、および
前記少なくとも1つのフラッシング管腔の中に配置された弁、
を備えるPICCを準備するステップと、
前記PICCの前記遠位部分を対象の血管に挿入するステップと、
前記遠位端面開口部を通る流体の流れを遮断するために、弁を閉鎖形態にシフトするステップと、
前記カテーテルに、前記近位開口部からフラッシング液を注入するステップと、を含み、
前記フラッシング液は、前記近位部分を通って戻り、循環してカテーテルの外へ出て、前記フラッシング液が、前記遠位端面開口部を通って対象の血管内へ入ることを防止する、フラッシング方法。
【請求項20】
合併症および/または感染症を示す化学物質および/または生物学的物質について前記フラッシング液を分析するステップをさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
フラッシング液を分析する前記ステップが、血液凝固物および/または細菌の同定を含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
さらに、前記カテーテルおよび/または前記フラッシング液の性能を評価するために、前記カテーテルから出るおよび/または前記カテーテルに入る前記フラッシング液の圧力に関連する1または複数のパラメータを分析するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
1または複数のセンサを用いてフラッシング液の圧力を監視および/または調節することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
さらに、1または複数のセンサを用いて、前記カテーテルに入るおよび/または前記カテーテルを出る前記フラッシング液の流量容量を監視および/または調節するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
さらに、1または複数のセンサを用いて、前記血管に入る前記医療物質の流量容量を監視および/または調節するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
さらに、コントローラを用いて、前記フラッシング液および/または前記医療物質の圧力および/または流量容量を調節するステップを含む、請求項19~25のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、末梢挿入型中心カテーテル(PICC)およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、長きにわたり確立された医療装置であり、中空の管腔を基にして、一般的に体内の臓器または血管に導入され、流体の排出、医療物質の送達、栄養付与、監視および他の医療関連処置を行う。末梢挿入型中心カテーテル(PICC)は、癌治療のような長期医療の静脈(IV)療法のために典型的に実施されるカテーテルの一種である。一般的に、PICCの挿入は、ニチノールガイドワイヤーおよびX線画像を用いて、末梢腕静脈を介して行われる。挿入されたPICC装置は、患者の体内に長期間(ある場合には6カ月を超える)留置されることがある。このような長い使用期間は、感染症を引き起こすPICCのリスクを増す。これらのリスクには、例えば、装置の装着中、および/またはPICCと体との間の隙間が存在することによって、体内へ生息するようになる外部細菌、内部細菌、または汚染物の存在が含まれる。カテーテルが関連する、血流感染、細菌増殖、ならびに血液凝固、閉塞、沈殿物沈着、空気塞栓、処分(disposition)、漏出、キンクの存在およびカテーテルの他の不具合は、患者の状態の悪化と高度に関連し、死亡につながることさえある。
【0003】
生理食塩水などの洗浄溶液によるPICC装置のフラッシング(flushing)は、カテーテル管腔から望ましくない物質や細菌を除去し、カテーテルの開通性(patency)を維持するために、医学的治療後においても日常的に実施される一般的に適用される方法である。適切なフラッシング手順は、カテーテル管腔の不要な物質の蓄積を防ぐために非常に重要である。
【0004】
それにもかかわらず、カテーテル管腔から望ましくない物質を消毒し、除去することを容易にするために、改良されたPICC設計及びフラッシング方法の必要性が当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の態様は、そのいくつかの実施形態によると、カテーテルに関するものであり、特に、対象への医療物質(medical substances)や栄養(nutrition)などの流体を投与するための末梢挿入可能な中心カテーテル(PICC)に関するが、それに限定されるわけではない。血管および/または体内器官への医療物質の送達に続いて、PICCは、生理食塩水のようなフラッシング液(flushing fluid)をカテーテルに導入することによって、定期的にフラッシングされる。フラッシング液は、カテーテル内部の細菌、凝固因子などの蓄積を最小限にするものの、典型的には、フラッシング液が対象の体内に排出され、対象に望ましくない物質を投与することになる。しかしながら、本開示の特別な設計では、少なくとも1つのフラッシング管腔、および少なくとも1つのフラッシング管腔内に配置された弁を含むPICCを包含する。弁は、遠位端面開口部(distal end face opening)を通る流体の流れを可能にする開放配置(open configuration)と、遠位端面開口部を通る流体の流れを遮断する閉鎖配置(closed configuration)の2つの配置で構成される。弁の閉鎖配置では、近位開口部からカテーテルに入れられたフラッシング液は循環して近位部分を経て戻り、対象の血管から出ることにより、遠位端面開口部を経由してフラッシング液が排出されるのを防ぐ。本開示された装置は、血管および/または体内器官の外側で、循環したフラッシング液を排出することを可能にする。したがって、本開示は、汚染物、細菌、および他の望ましくない物質を同定するための、前記フラッシング液のさらなる分析を可能にする。さらに、この弁は、開放配置と閉鎖配置との間の制御可能かつ迅速な移行(transitions)を可能にし、フラッシング液が双方向で循環して流れるための閉鎖循環システムを提供し、したがって、感染症のリスクおよびカテーテル内部への沈殿物の蓄積を著しく減少させる。PICCを閉鎖させることにより、作動していない場合、背圧や、体内でのPICCの移動によって引き起こされる細菌の生息を予防する上でも役立つ可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の特定の実施形態は、上記の利点のいくつか、全て、またはいずれも含み得る。1または複数の他の技術的利点は本明細書に含まれる図面、説明、および特許請求の範囲から、当業者には容易に明らかになるであろう。さらに、特定の利点が上に列挙されたが、様々な実施形態は列挙された利点のすべてまたはいくつかを含んでもよいし、全く含まなくてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔(flushing lumen)は、複数の個別の管腔(a plurality of individual lumens)に分割されてもよい。いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔は、2つの個別の管腔、すなわち、フラッシング液を送達するように構成された第1の管腔、およびフラッシング液を収集して近位部分に導き、対象の血管から排出するように構成された第2の管腔に分割されてもよい。それにより、汚染物、沈殿物、凝固因子、細菌などを含むフラッシング管腔が対象の身体へ送達されるのを防止する。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのフラッシング管腔は、3つの個別の管腔に分割されてもよく、第3の管腔は、対象に医療物質を送達するように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態によると、弁は、遠位端面開口部を封鎖するのに十分な寸法に膨張するように構成された膨張可能要素(inflatable element)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、膨張可能要素はバルーンであってもよい。いくつかの実施形態によると、カテーテルは、膨張可能要素と流体流れ連通(fluid flow communication)をする、膨張コンジット(inflation conduit)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、膨張可能要素の膨張および収縮は、膨張コンジットを介して実施されてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態によると、弁は、遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成された封鎖フラップおよび/またはシャターを含んでいてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態によると、カテーテルは、カテーテルに入るおよび/またはカテーテルから出る流体(例えば、フラッシング液、医療物質)の圧力および/または容量を監視および/または調節するための1または複数のセンサを含んでいてもよい。
【0011】
また、本明細書には、PICCのフラッシング方法が開示されている。この方法は、上述したようなPICCを用意するステップと、PICCの遠位位置を対象の血管および/または体内器官に挿入するステップとを含む。また、この方法は、遠位端面開口部を通る流体の流れを遮断するために弁を閉鎖配置にシフトさせるステップ、およびフラッシング液をその近位開口部からカテーテルに注入するステップを含み、それによって、フラッシング液が循環して近位部分を通って戻り、そしてカテーテルから排出されるため、フラッシング液が遠位端面開口部を経由して対象の血管内に排出されるのを防ぐ。
【0012】
いくつかの実施形態によると、本方法はさらに、合併症および/または感染症を示す化学物質および/または生物学的物質について、前記フラッシング液を分析するステップを含む。いくつかの実施形態によると、フラッシング液の分析は、血餅および/または細菌の同定を含んでいてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態によると、本方法は、カテーテルおよび/またはフラッシング液の性能品質を評価するために、フラッシング液が流出する圧力および/またはカテーテルに入る圧力に関連する1または複数のパラメータを分析するステップを含んでいてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態によると、本方法は、1または複数のセンサを用いて、フラッシング液の圧力を監視および/または調節するステップを含んでいてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態によると、本方法は、1または複数のセンサを用いて、血管に流入する医療物質および/またはフラッシング液の流量容量(flow capacity)を監視および/または調節するステップを含んでいてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態によると、本方法は、コントローラを用いて、フラッシング液および/または医療物質の圧力および/または流量容量を調節するステップを含んでいてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、末梢挿入可能な中心カテーテル(PICC)が提供され、前記カテーテルは、血管に挿入されるように構成され、遠位端面開口部を含む遠位部分と、近位端面開口部を含む近位部分と、それらの間に延在する少なくとも1つのフラッシング管腔と、前記少なくとも1つのフラッシング管腔内に配置された弁とを含み、前記弁は、2つの配置として、遠位端面開口部を通る流体の流れを可能にする開放配置、および遠位端面開口部を通る流体の流れを遮断する閉鎖配置を備え、前記弁は、その閉鎖配置において、その近位開口部からカテーテルに入れられたフラッシング液が循環して近位部分を経て対象の血管から出ることにより、遠位端面開口部を経由してフラッシング液が排出されるのを防止する。
【0018】
いくつかの実施形態によると、末梢挿入可能な中心カテーテル(PICC)をフラッシングする方法が提供され、前記方法は、遠位端面開口部を含む遠位部分、近位開口部を含む近位部分、それらの間に延在する少なくとも1つのフラッシング管腔、および前記少なくとも1つのフラッシング管腔内に配置された弁を含むPICCを準備するステップと、このPICCの遠位部分を対象の血管内に挿入するステップと、遠位端面開口部を通る流体の流れを遮断するために弁を閉鎖配置にシフトするステップと、その近位開口部からカテーテルにフラッシング液を注入するステップとを備えており、それによって、前記フラッシング液が循環して近位部分を経て戻り、カテーテルの外に出ることにより、遠位端面開口部を通って対象の血管内にフラッシング液が排出されるのを防ぐ。
【0019】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔は、さらに弁の開放配置で対象に医療物質を送達するように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔は、2つの個別の管腔に分割され、一方は、フラッシング液を送達するように構成された第1の管腔であり、他方は、フラッシング液を収集し、それを近位部分に導き、かつ対象の血管から外に排出するように構成された第2の管腔である。
【0021】
いくつかの実施形態によると、弁は、遠位端面開口部を封鎖するのに十分な寸法に膨張するように構成された膨張可能要素を含む。
【0022】
いくつかの実施形態によると、カテーテルは、さらに、膨張可能要素と流体流れ連通する膨張コンジットを含む。
【0023】
いくつかの実施形態によると、弁は、遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成された封鎖フラップおよび/またはシャターを含む。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、弁は、遠位端面開口を制御可能に封鎖するように構成されたダックビル弁(duckbill valve)を含む。
【0025】
いくつかの実施形態によると、弁は、遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成されたスカート弁(skirt valve)を含んでいてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態によると、弁は、遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成されたガイドワイヤ弁を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ弁は、ガイドワイヤによって作動される弁であり、ガイドワイヤを遠位に押したときに、ガイドワイヤ弁が閉鎖配置にシフトし、それによってPICCの遠位端面が封鎖され、ガイドワイヤを近位に引くと、ガイドワイヤ弁が開放配置にシフトし、それによって、PICCの遠位端面の遠位開口部を通る流体の流れが可能になる。
【0027】
いくつかの実施形態によると、弁は、遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成されたピストンを含んでいてもよい。いくつかの実施形態によれば、ピストンはワイヤによって作動されてもよく、ワイヤを遠位側に押すとピストンが閉鎖配置にシフトされ、それによりPICCの遠位端面が封鎖され、またピストンを近位側に引くと、ピストンは開放配置にシフトされ、それによりPICCの遠位端面の遠位開口部を通る流体の流れが可能になる。
【0028】
いくつかの実施形態によると、カテーテルは、さらに、弁の開放配置で対象に医療物質を送達するための追加の個別管腔を含む。
【0029】
いくつかの実施形態によると、近位部分を通って戻されたフラッシング液は、近位開口部を通ってカテーテルから出る。
【0030】
いくつかの実施形態によると、近位部分を通って戻されたフラッシング液は、近位ドレーンポートを通ってカテーテルから出る。
【0031】
いくつかの実施形態によると、カテーテルはさらに圧力調整機構を含み、前記圧力調整機構は、フラッシング液の流量を調節するように構成され、少なくとも1つのフラッシング管腔を通過し、近位部分を経て戻り、カテーテルの外に排出するフラッシング液の循環を容易にする。
【0032】
いくつかの実施形態によると、カテーテルは、フラッシング管腔、弁を操作するための管腔、医療物質を送達するための管腔、および医療物質の分離を容易にするためのダックビル弁を含む管腔を含む。
【0033】
いくつかの実施形態によると、カテーテルは、さらに、圧力調節を容易にするために、フラッシング液の圧力を監視および/または調節するための1または複数のセンサを含む。
【0034】
いくつかの実施形態によると、カテーテルは、さらに、カテーテルに入るフラッシング液、および/またはカテーテルから出るフラッシング液の流量容量を監視および/または調節するための1または複数のセンサを含む。
【0035】
いくつかの実施形態によると、カテーテルは、血管に入る医療物質の流量容量を監視および/または調節するための1または複数のセンサをさらに含む。
【0036】
いくつかの実施形態によると、本方法は、さらに、合併症および/または感染症を示す化学物質および/または生物学的物質について、フラッシング液を分析するステップを含む。
【0037】
いくつかの実施形態によると、フラッシング液を分析するステップは、血餅および/または細菌の同定を含む。
【0038】
いくつかの実施形態によると、本方法はさらに、カテーテルおよび/またはフラッシング液の性能品質を評価するために、カテーテルを出る、および/またはカテーテルに入るフラッシング液の圧力に関連する1または複数のパラメータを分析するステップを含む。
【0039】
いくつかの実施形態によると、本方法は、さらに、1または複数のセンサを用いて、フラッシング液の圧力を監視および/または調節するステップを含む。
【0040】
いくつかの実施形態によると、本方法は、さらに、1または複数のセンサを用いてカテーテルに入るおよび/またはカテーテルを出るフラッシング液の流量容量を監視および/または調節するステップを含む。
【0041】
いくつかの実施形態によると、本方法は、さらに、1または複数のセンサを用いて、血管に入る医療物質の流量容量を監視および/または調節することを含む。
【0042】
いくつかの実施形態によると、本方法は、さらに、コントローラを用いて、フラッシング液および/または医療物質の圧力および/または流量容量を調節するステップを含む。
【0043】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先する。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は文脈が別段の明確な指示をしない限り、「少なくとも1つの」または「1または複数の」を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本開示のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して本明細書に記載される。説明は図面と共に、いくつかの実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。図面は説明のためのものであり、本開示の基本的な理解のために必要である以上に、実施形態の構造的詳細をより詳細に示す意図はない。わかりやすくするために、図に描かれているものの中には目盛りまで描かれていないものもある。さらに、同じ図形の中の2つの異なる対象物が異なる尺度に描かれることがある。特に、いくつかの物体のスケールは、同じ図中の他の物体と比較して、大きく誇張されることがある。
【0045】
ブロック図およびフローチャートでは、破線のボックス内に、任意選択要素/構成要素および任意の段階が含まれてもよい。
【0046】
【
図1】
図1は、対象の血管に導入された先行技術PICCの概略図である。
【
図2】
図2は、先行技術のPICCを模式的に示す。
【
図3】
図3は、いくつかの実施形態による、弁を有するPICCの遠位部分の側面図を模式的に示す。
【
図4A】
図4Aは、いくつかの実施形態による、PICCの遠位部分の斜視図を模式的に示す。
【
図4B】
図4Bは、いくつかの実施形態による、
図4AのPICCの遠位部分および遠位端面の断面図を模式的に示す。
【
図5A】
図5Aは、いくつかの実施形態によるにおけるPICCの遠位部分の斜視図を模式的に示す。
【
図5B】
図5Bは、いくつかの実施形態に従った、閉鎖弁配置における、
図5AのPICCの遠位部分の斜視図を模式的に示す。
【
図6A】
図6Aは、いくつかの実施形態による、開放弁配置におけるPICCの遠位部分の断面の側面図を模式的に示す。
【
図6B】
図6Bは、いくつかの実施形態による、閉鎖弁配置におけるPICCの遠位部分の断面の側面図を模式的に示す。
【
図7A】
図7Aは、いくつかの実施形態による、開放弁配置におけるPICCの遠位部分の断面の側面図を模式的に示す。
【
図7B】
図7Bは、いくつかの実施形態による、閉鎖弁配置におけるPICCの遠位部分の断面の側面図を模式的に示す。
【
図8A】
図8Aは、いくつかの実施形態による、開放弁配置におけるPICCの遠位部分の断面の側面図を模式的に示す。
【
図8B】
図8Bは、いくつかの実施形態による、閉鎖弁配置におけるPICCの遠位部分の断面の側面図を模式的に示す。
【
図9A】
図9Aは、いくつかの実施形態による、開放弁配置におけるPICCの遠位部分の断面の側面図を模式的に示す。
【
図9B】
図9Bは、いくつかの実施形態による閉鎖弁配置におけるPICCの遠位部分の断面の側面図を模式的に示す。
【
図10】
図10は、いくつかの実施形態によるPICCのフラッシング方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本明細書の教示の原理、使用及び実装は、添付の説明及び図を参照してより良く理解され得る。本明細書の説明および図面を精査すると、当業者は、過度の努力または実験なしに本明細書の教示を実施することができるであろう。図面において、同じ参照番号は、全体を通して同じ部分を指す。
【0048】
以下の説明では、本発明の様々な態様について説明する。説明のために、本発明の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者には、本発明が本明細書に具体的な詳細を提示することなく実施され得ることも明らかであろう。さらに、本発明を不明瞭にしないために、周知の特徴を省略または簡略化することができる。
【0049】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、カテーテルに関し、より詳細には、末梢に挿入された中心カテーテル(PICC)、血管および/または体内器官に流体を導入および排出するための方法および装置に関する。
【0050】
開示されたPICCは、いくつかの実施形態によれば、開放弁配置で対象に医療物質を送達するように構成される。医療物質は、癌治療のための細胞毒性薬剤、抗生物質薬剤などのような薬剤、血液、栄養を含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態によると、開示されたPICCは、医療物質送達のために実施することができ、任意選択で、複数の医療物質の同時送達のために実施することができ、血管および/または体内器官に入る前に、医療物質の望ましくない混合を防止するために実施することができる。場合によっては医療物質の送達に続いて、PICCのフラッシングが実施されることがある。本発明のいくつかの実施形態の態様は、遠位部分、近位部分、弁、および遠位部分および近位部分の間に延在する少なくとも1つのフラッシング管腔を有するPICCを含むカテーテルに関する。少なくとも1つのフラッシング管腔内に配置された弁は、少なくとも2つの構成、すなわち、遠位端面開口部を通る流体の流れを可能にする開放配置、および遠位端面開口部を通る流体の流れを遮断する閉鎖配置を有する。したがって、閉鎖弁配置では、近位端面開口部を通って入れられた流体は、循環して戻り、近位ドレーンポートを通ってカテーテルから出る。流出液、例えば前記循環した液は、細菌、凝固因子および汚染物の同定のためにさらに分析されてもよく、カテーテルの機能(catheter function)および/または対象の医学的状態を評価することができる。
【0052】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔は、その内部で、流体が遠位端面開口部と近位ドレイン口部との間の少なくとも1つの方向に流れる管腔であってもよい。いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔は、遠位端面開口部と近位ドレイン口部との間の少なくとも2方向における流体の流れを可能にするように構成することができる。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのフラッシング管腔は、複数の個別の管腔を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔は、複数の個別の管腔に分割されてもよい。いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔は、複数の個別の管腔に分割されてもよく、ここで、第1の管腔は、フラッシング液を送達するように構成されてもよく、第2の管腔は、フラッシング液を受け取り、それを近位部分に導き、対象の血管および/または体内器官の外に導くように構成されてもよい。いくつかの実施形態によれば、複数の個別の管腔は、流体連通していてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔は、弁を含む。いくつかの実施形態によると、弁は、PICCアセンブリから血管への流体の流入および/または流出を防止する、および/またはその逆を行うように構成された任意の素子を含んでいてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態によると、少なくとも1つのフラッシング管腔内に配置された弁は、PICCの内側の遠位部分の内側に位置することができる。いくつかの実施形態によると、弁はPICCの遠位端面に配置されてもよい。いくつかの実施形態によれば、かつ本明細書の他の箇所でより詳細に記載されているように、弁は、弁の閉鎖配置によって規定される空洞、PICCの内壁、および複数の個別の管腔の遠位端の間に配置されてもよく、PICCの遠位部分において、および複数の個別の管腔の外側において、空洞内部の流体の循環を可能にしてもよい。循環に続いて、流体(例えば、フラッシング液)は、近位端に向けて戻り、カテーテルから出て、対象の体外に導かれる。
【0055】
いくつかの実施形態によると、弁は、バルーンのような膨張可能要素を含むことができ、前記膨張可能要素は、遠位端面開口部を封鎖するのに十分な寸法に膨張し、それにより血管および/または体内器官への流体の流れを妨げるように構成される。いくつかの実施形態によると、PICCの封鎖は、膨張可能要素が完全にまたは部分的に膨張することを必要としてもよい(閉鎖配置の場合)。いくつかの実施形態によると、膨張可能要素は、閉鎖(膨張)配置である場合、PICCの遠位端面の内側の全体および/または内側の部分的、または外側全体に配置することができる。いくつかの実施形態によると、弁は、前記少なくとも1つのフラッシング管腔の外周および/または内周上に位置するリング(例えば、外部および/または内部リング)を含んでいてもよく、前記リングにより、開放配置および閉鎖配置のシフトが行われるように構成される。例えば、リングは、PICCアセンブリの遠位端面に流体の出入りができなくなるまで、少なくとも1つのフラッシング管腔の周囲を減少させることによって、閉鎖配置を支配してもよい。またはリングは、遠位端面を経て流体の出入りができるよう、フラッシング管腔の周囲を増加させることによって開放配置を支配してもよい。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのフラッシング管腔は、リングを保持するように構成された溝を備えてもよく、フラッシング管腔の滑らかな外面を提供する。滑らかな外部および/または内部表面領域は、管腔の外部および/または内部表面領域への望ましくない物質および沈殿物の蓄積を最小限にするために有益であるとともに、感染、細菌増殖、および様々な汚染物のリスクを減少させるために有益である。
【0056】
いくつかの実施形態によると、PICCアセンブリの遠位部分は、角状の(angular)遠位端面を含んでいてもよい。角状の遠位端面は、錐状体の形状(conus-like shape)を含んでいてもよく、ここで、少なくとも1つのフラッシング管腔の直径は、遠位端面で減少する。弁は、錐状体の形状の遠位端面に配置されてもよく、弁は、必要に応じて、開放配置および閉鎖配置(およびその逆も同様)からシフトするように構成される。弁の配置は、機械的に支配されてもよく、例えば、機械的圧力を適用し、例えば角状の遠位端面で錐状体の最も狭い領域で弁を保持して位置決めしてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態によると、弁は、遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成された封鎖フラップおよび/またはシャターを含んでいてもよい。好ましくは、封鎖は迅速に起こり、カテーテルからの及び/又はカテーテル内への漏出を最小にする。任意に、少なくとも1つのフラッシング管腔において、サービスコンジット(service conduit)を永続的に配置してもよく、例えばサービス管腔(service lumen)において、PICCの遠位部分において、サービスコンジット(service conduit)を配置してもよい。任意にまたは代替的に、サービスコンジットを少なくとも1つのフラッシング管腔の内側に一時的に配置することができ、従って、弁配置のシフトの後にサービスコンジットを除去してもよい。サービスコンジットは、PICCアセンブリの近位端面に達する程度に延在し、それによって、たとえば、弁の制御および/または機械的圧力を弁に加えるための、弁の配置の外部制御を可能にしてもよい。いくつかの実施形態によると、サービス管腔の内側に配置されたサービスコンジットは、PICCの少なくとも1つのフラッシング管腔とサービス管腔との流体連通を妨げてもよい。別の観点として、サービス管腔がサービスコンジットと関連している場合(例えば、ガス流による膨張可能要素の膨張/収縮のため)、流体がサービス管腔に入らない、および/または出ない可能性がある。
【0058】
いくつかの実施形態によると、サービスコンジットは弁と関連付けられてもよく、その場合、遠位端面に隙間が存在しなくなるまで少なくとも1つのフラッシング管腔の直径を減少させて遠位端面を封鎖し、流体の侵入を妨いでもよい。
【0059】
いくつかの実施形態によると、カテーテルは、少なくとも1つのフラッシング管腔を通るフラッシング液の循環を容易にするために、フラッシング液の流量を調節および/または監視するように構成された圧力調整機構を含んでいてもよい。さらに、投与された流体の容積はカテーテル(長く、薄い管腔)の表面積に対して相対的に高いので、最適なパワーフローを提供するために、圧力調整機構が必要とされることがある。圧力調整機構は、例えば、流体を入れるおよび/または流体を出すためのポンプおよび/またはポンピングシステムを含んでもよい。
【0060】
いくつかの実施形態によると、カテーテルは、弁(例えばバルーン弁)、フラッシング管腔、サービス管腔、およびダックビル弁を有する管腔を含んでいてもよい。フラッシング管腔は、栄養補給物の送達および/またはフラッシング目的のために利用することができ、サービス管腔は、弁の配置を操作するために利用することができ、そしてダックビル弁を有する管腔は、対象に、例えば細胞毒性薬(cytotoxic drugs)を投与するために適用することができる。ダックビル弁はまた、任意のタイプの制御弁であってもよく、流体の出入りを調節するための制御弁、医療物質の分離を容易にし、カテーテル内部の残留物形成を最小限にするための制御弁を含んでいてもよい。さらに、ダックビル弁の作動機構は技術的に単純であり、従って、対象がこのようなカテーテルを使用することは、医療施設に行く必要がしない独立した操作を可能にする点で有利でありうる。
【0061】
任意に、いくつかの実施形態において、カテーテルは、フラッシング液の圧力調節および/または監視を可能にする1または複数のセンサを含んでいてもよく、それによってカテーテルの管腔内部の圧力調節を容易にすることができる。いくつかの実施形態において、1または複数のセンサは、カテーテルに入るおよび/またはカテーテルから出るフラッシング液および/または医療物質の流量容量を調節および/または監視することができる。
【0062】
図1を参照する。
図1は、先行技術における、対象の血管102に導入された末梢挿入可能な(peripherally insertable)中心カテーテル(PICC)100を模式的に示す。PICC 100は、ここでは、対象の上腕104において、血管102内に配置されており、血管102を介して医療物質(図示せず)を心臓108などの体内器官内に送達するように構成されている。
【0063】
次に、先行技術による標準PICC 200を模式的に示す
図2を参照する。標準PICC 200は、血管内に挿入されるように構成された遠位部分210を有する。任意に、遠位部分210は、血管の外傷リスクを最小にするための軟質の先端211を含んでいてもよい。PICC 200の近位部分220は、任意選択で、3つの個別の管腔、管腔216a、216bおよび216cを含んでいてもよい。管腔216a、216bおよび216cの各々は、管腔216a、216bおよび216cの各々とカテーテルライン225を接続するように構成されたアダプター223と関連付けられる。管腔216a、216bおよび216cの各々は、それぞれ、PICC 200を血管から除去することなく、近位端220での一時的な封鎖(例えば、数分間、数時間または数日間)を可能にするように構成されたクランプ217a、217bおよび217cを備えている。さらに、管腔216a、216bおよび216cの各々には、コネクタ219a、219bおよび219cが備えられる。コネクタ219a、219b及び219cは、医療物質及び/又は他の流体(例えば、フラッシング液)をPICC 200内に送達するように構成された、IV及び/又はシリンジ及び/又は外部チューブ又は管腔と一時的に関連することを可能にする、ニードルレスコネクタであってもよい。
図2に示すように、コネクタ219a及び219cは、感染リスクを低減するための着脱式キャップ221a及び221cと関連していてもよい。例えば、シリンジ(図示せず)は、PICC 200の近位部分でコネクタ219aを介して管腔216aと結合してもよい。次いで、クランプ217を開けると、シリンジからの医療物質をPICC 200に投与でき、アダプター223、カテーテルライン225を流れ、遠位部分210を介して血管内へと投与することができる。医療物質の投与後、特に数種類の医療物質の投与が必要な場合、汚染物、細菌等を除去するためにカテーテルのフラッシングが行われる。フラッシング手順は、通常、PICC 200の近位端220の管腔の1つ(例えば、管腔216c)に、生理食塩水溶液のようなフラッシング液を挿入することによって行われる。遠位部分210に到達すると、汚染物、凝固因子、細菌などを含むフラッシング液が、対象の血管および/または体内器官に送達される。汚染物を対象に送達すると、感染症や健康障害のリスクを増大させる。
【0064】
ここで、いくつかの実施形態による、PICC 300の遠位部分310の概略図を示す
図3を参照する。PICC 300はフラッシング液の循環を促進するように設計されており、それにより、排液が体内器官へ廃棄されるのを防止する。従って、対象中に、フラッシング液から細菌、汚染物および/または沈殿物が投与されるのを制限し、減少し、または排除し得る。本開示のいくつかの実施形態によると、遠位部分310は、遠位端面312、遠位開口部314、個別の管腔316aおよび316c、および弁318を含む。管腔316aおよび316cは、その近位部分(図示せず)から遠位部分310までPICC 300に沿って伸びている。
図3に見られるように、管腔316aおよび316cは、遠位端面312まで到達しておらず、それにより、PICC 300の内壁、管腔316aおよび316cの遠位端および弁318によって定義される空洞322が形成される。いくつかの実施形態によると、弁318は、空洞322の内側に配置される。いくつかの実施形態によると、フラッシング液は、PICC 300の近位端(図示せず)から管腔316aを通って挿入され、次いで、弁318が閉鎖配置である場合、フラッシング液は遠位部分310で循環され、管腔316cを通ってPICC 300の外側の近位端(図示せず)から排出される。いくつかの実施形態によると、フラッシング液は、管腔316cの近位端(図示せず)を通って導入され、遠位部分310で循環され、次いでPICC 300の外側の近位端(図示せず)から管腔316aを通って排出されてもよい。他の実施形態では、フラッシング液は、管腔316aおよび316cのそれぞれから、体外に排出されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態によると、管腔316aの断面のサイズ(例えば、直径)は、管腔316cの断面のサイズと異なって、および/または等しくてもよい。いくつかの実施形態によると、管腔316a/316cの断面のサイズは、その中を流れる流体の流量と相関していてもよい。いくつかの実施形態によると、管腔316a/316cの断面サイズは異なっていてもよい。いくつかの実施形態によると、管腔316a/316cの断面サイズは変化してもよい。いくつかの実施形態によると、管腔316aおよび316cが異なる断面サイズを有する構成により、管腔316aおよび316c間の圧力差を誘導してもよく、それによって、管腔のそれぞれにおいて望ましい流量を可能にしてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態によると、管腔316a/316cのそれぞれの壁厚は異なっていてもよい。いくつかの実施形態によると、管腔316a/316cの少なくとも1つの壁厚は変化してもよい。有利には、管腔316a/316cが異なる壁厚および/または変化する壁厚を有する場合、その中の流体に対して望ましい圧力差を与えることができる。いくつかの実施形態によると、管腔316a/316cが異なる壁厚および/または変化する壁厚を有する場合、PICCの耐久性を増大させることができる。
【0067】
いくつかの実施形態について、
図4Aおよび
図4Bを参照する。
図4AはPICC 400の遠位部分410の透視図の模式図を示し、
図4BはPICC 400の遠位部分410および遠位端面412の横断面図を示す。遠位部分410は、PICC 400の遠位端面412に位置する遠位開口部414を含む。PICC 400は、個別の管腔416a、個別の管腔416cを含み、任意選択で、個別の管腔416bも含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、管腔416bは、1または複数の個別の管腔を含んでいてもよい。管腔416a、416bおよび416cは、その近位部分(図示せず)から遠位部分410までPICC 400に沿って伸びている。
図3にも見られるように、管腔416a、416bおよび416cは遠位端面412に到達しておらず、PICCの内壁と、管腔416a、416bおよび416cの遠位端と、弁418(
図4Bに描かれているように)とによって規定される空洞422が形成されている。いくつかの実施形態によると、管腔416aは、医療物質投与ルートとして利用され、管腔416aおよび416cは、フラッシング管腔として利用されてもよく、一方、管腔416bは、遠位弁(
図4Bに示されるように、例えば弁418)が作動するためのサービス管腔として利用されてもよい。言い換えると、管腔416aは、医療物質の投与管腔としても、フラッシング管腔としても役立てることができる。いくつかの実施形態によると、管腔416aから416cの各々は、独立して、医療物質投与管腔として、および/またはフラッシング管腔として、および/またはサービス管腔として実施してもよい。いくつかの実施形態では、サービス管腔が存在する場合(例えば、管腔416b)、好ましくはサービス管腔を弁を動作させるためのみに利用してもよい。
【0068】
図4Aに描かれたPICC 400の遠位部分410の断面図の模式図を示す
図4Bを、いくつかの実施形態にしたがって参照する。いくつかの実施形態によると、PICC 400は、複数の個別の管腔、すなわち、個別の管腔416aおよび個別の管腔416cを含む。
図4Bは、PICC 400の近位端面から(図示せず)、例えば管腔416aに導入されたフラッシング液の流れ方向420を模式的に示す。
図4Bに示すように、弁418の閉鎖配置は、管腔416aから管腔416cへの流体の流れにより、フラッシング液の循環をもたらす。管腔416aからの流体は、PICCの近位端から弁418に向かって(および/またはPICCの遠位端に向かって)流れる。弁418は、その閉鎖配置により、PICCの遠位端から出る、管腔416aからの流体の流れを制限し、それによって、矢印420によって示されるように、管腔416cへ流体が循環するように強制する。従って、弁418の閉鎖配置は、血管/体内器官へのフラッシング液の流入を防ぎ、血管および/または体内器官の外へのフラッシング液が排出されるのを可能にする。したがって、感染症およびその他の医学的合併症のリスクを低下させる。
【0069】
いくつかの実施形態によると、複数の個別の管腔は、ダックビル弁(図示せず)などの1または複数の弁を含んでいてもよい。1または複数の弁は、循環液が1または複数の個別の管腔の遠位端に入るのを防ぎ、その近位端に向かって流れるように構成されている。非限定的な例として、PICC 400は、4つの個別の管腔などの複数の管腔を含んでいてもよく、第1の管腔416a(すなわち、フラッシング管腔)はフラッシング液を送達するように構成され、第2の管腔416c(すなわち、フラッシング管腔)は、そのフラッシング液を受け取り、それを遠位端および対象の外側に導くように構成され、および管腔416bは、2つの個別の管腔である第1の個別の管腔および第2の個別の管腔を含んでおり、第1の個別の管腔(図示せず)は、任意で弁418を操作するように構成され、第2の個別の管腔(図示せず)は、1または複数の弁を含み、任意で他の物質および/または流体と混合してはならない医療物質を送達するように構成されている。弁418が開放状態から閉鎖状態にシフトすると、第1の管腔416aに入るフラッシング液は、空洞422の内側を循環する。すなわち、フラッシング液は、PICCの遠位部分410から近位部分(図示せず)に向かって流れる方向を変化させる。したがって、第2の個別の管腔に循環液が入ることを防ぐために、第2の個別の管腔は、1または複数の弁を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、1または複数の弁は、第2の個別の管腔の内側に配置されてもよい。いくつかの実施形態によると、複数の管腔の各々は、1または複数の弁を含んでいてもよい。
【0070】
次に、いくつかの実施形態に従う
図5Aおよび5Bを参照する。
図5Aおよび5Bは、それぞれ、開放弁配置520(
図5Aに描かれる)および閉鎖弁配置518(
図5Bに描かれる)におけるPICC 500の遠位部分510の概略斜視図を示す。遠位部分510は、PICC 500の遠位端面512に位置する遠位開口部514を含む。いくつかの実施形態によると、PICC 500は、個別の管腔516a、個別の管腔516bおよび個別の管腔516cを含むとともに、管腔516bおよび516cの遠位端とPICC 500の遠位端面512との間に形成された空洞522、および空洞522の内側に配置された弁524を含む。いくつかの実施形態によると、管腔516cはサービス管腔として作動してもよく、サービスコンジット528を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、サービスコンジット528は、(例えば、閉鎖弁配置518から開放弁配置520へ、およびその逆へ)シフトする弁522の配置を制御してもよい。いくつかの実施形態において、サービスコンジット528は、PICC 500を血管および/または体内器官に投与するのを補助することができる。例えば、カテーテルは、典型的には、X線画像では見えない軟質材料で作られているが、サービスコンジット528は、X線において、耐性(viability)および安定性を補助する材料で作られてもよく、それにより、血管および/または体内器官の内部でPICC 500の位置決めが、より容易で適切になる。
図5Aに描かれているように、開放弁配置520は、対象の血管および/または体内器官に医療物質を投与することを可能にする。
【0071】
図5Bに示すように、弁524は、バルーン526を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、閉鎖配置518において、弁524(またはバルーン526)は、少なくとも部分的に膨張してもよい。いくつかの実施形態によると、閉鎖配置518において、バルーン526がPICCの遠位端を閉塞するように弁524を膨張させてもよい。いくつかの実施形態によれば、PICCは、流体(例えば、気体)をバルーン526へ、および/またはそこから送出するように構成されたサービスコンジット528を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、サービスコンジット528は、バルーン526と流体連通していてもよい。いくつかの実施形態によると、サービスコンジット528は、管腔516c内に配置されてもよい。いくつかの実施形態によると、サービスコンジット528は、PICCの外壁上および/または接する位置に配置されてもよい。有利には、膨張したバルーン弁により、フラッシング液が遠位開口部514から出て、血管および/または体内器官に入るのを防ぐことができる。有利には、PICCが待機状態であり、弁524のバルーン526が膨張している場合、身体から1または複数の管腔に戻り内在する感染を防止し得る。
【0072】
次に、いくつかの実施形態による
図6Aおよび6Bを参照する。
図6Aおよび6Bは、それぞれ開放弁配置620(
図6Aに描かれる)および閉鎖弁配置618(
図6Bに描かれる)におけるPICC 600の遠位部分610の概略断面側面図を示す。
【0073】
いくつかの実施形態によると、
図6Aおよび6Bにおける以下の部品/特徴600、610、612、614、616a~c、622および624は、
図5において、本明細書に記載されている部品500、510、512、514、516a~c、522および524に対応し、同一または類似の構造、構成および/または特性を有していてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、および
図6Aおよび6Bに描かれているように、PICC 600の遠位部分610は、とりわけ、円形または円形様構造を含んでいてもよい。または、PICC 600の遠位部分610は、錐状体、矩形状、多項状構造(polynomic structure)などの角形の構造、またはこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によると、PICC 600は、個別の管腔616a、個別の管腔616bおよび個別の管腔616cを含む。いくつかの実施形態によると、PICC 600は、2つの個別の管腔(例えば、個別の管腔616aおよび616b)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、PICC 600は、3つ以上の個別の管腔を含んでいてもよい。各可能性は、別個の実施形態である。
【0075】
いくつかの実施形態によると、PICC 600は、個別の管腔616ba、616bおよび616cの遠位端とPICC 600の遠位端面512との間に形成された空洞622、および空洞622の内側に配置された弁624を含む。いくつかの実施形態によると、弁624は、バルーン626などの膨張可能要素を含み、遠位開口部614を封鎖するのに十分な寸法に膨張し、それにより、膨張可能要素は、血管および/または体内器官への流体の流れを妨ぐことができる。いくつかの実施形態によると、PICC 600は、膨張可能要素と流体流れ連通する膨張コンジットを(例えば、個別の管腔616cにおいて)含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、膨張可能要素の膨張および収縮は、膨張コンジットを介して実施されてもよい。いくつかの実施形態によると、バルーン626は、生理食塩水溶液などの液体で膨張させることができるが、これに限定されない。いくつかの実施形態によると、バルーン626の膨張は、PICC 600の近位部分(図示せず)で行うことができる。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、および
図6A及び6Bに描かれているように、バルーン626は、空洞622内に部分的に配置され、個別の管腔616c内に部分的に配置される。いくつかの実施形態によると、バルーン626は、個別の管腔616cの外側に配置してもよい。いくつかの実施形態によると、バルーン626は、個別の管腔616cの外側に配置してもよい。非限定的な例として、バルーン626は、個別の管腔616cの外側部分に接して配置してもよい。さらに別の非限定的な例として、バルーン626は、空洞622内に本質的に配置してもよい。
【0077】
いくつかの実施形態および
図6Bに示されるように、バルーン626の閉鎖弁配置618は、少なくともその部分的膨張を含み、空洞622を本質的に充填し、それによって流体がそこに入るのを防ぐ。付加的にまたは代替的に、いくつかの実施形態では、閉鎖弁配置618では、空洞626を充填するとともに、個別の管腔616aおよび616bのそれぞれの遠位部分を充填することを備えていてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態によると、閉鎖弁配置618は、遠位端面612の外側に伸びるバルーン626の少なくとも部分的膨張を含む。いくつかの実施形態によると、閉鎖弁配置618では、バルーン626は、PICC 600の部品間(inter components)のみを占有することによって(例えば、空洞622を満たすことによって)膨張される。
【0079】
いくつかの実施形態によると、個別の管腔616cは、弁624のシフト配置(すなわち、開放/閉鎖)を制御し作動するように構成されたサービス管腔である。いくつかの実施形態によると、個別の管腔616cは、バルーン626の膨張/収縮配置を制御するように構成されたサービス管腔である。いくつかの実施形態によると、PICC 600は、個別の管腔616cの内側に配置されたサービスコンジットを含むか、またはそれに関連してもよい。いくつかの実施形態によると、サービスコンジットは、弁624と流体連通していてもよい。いくつかの実施形態によれば、サービスコンジットは、弁624のシフト配置(例えば、閉鎖弁配置618から開放弁配置620、およびその逆)を制御してもよい。いくつかの実施形態において、サービスコンジットは、血管および/または体内器官へのPICC 600の適用を補助することができる。
【0080】
いくつかの実施形態によると、弁シフト機構は、PICC 600の近位端において弁624を、手動で(例えば、医療提供者(caregiver)および/または対象によって)、または機械的に作動させることによって、制御および/または実行することができる。代替的または付加的に、弁シフト機構は、例えば、センサ制御によって自動的に実行されてもよい。
【0081】
次に、いくつかの実施形態に従う
図7Aおよび7Bを参照する。
図7Aおよび7Bは、それぞれ開放弁配置720(
図7Aに描かれる)および閉鎖弁配置718(
図7Bに描かれる)におけるPICC 700の遠位部分710の概略断面側面図を示す。
【0082】
いくつかの実施形態によると、
図7Aおよび7Bに描かれた以下の部品/特徴700、710、712、714および716a~cは、
図6Aおよび6Bにおいて、本明細書に記載されている部品600、610、612、614および616a~cに対応し、同一または類似の構造、構成および/または特性を有していてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態によると、空洞722は、個別の管腔716aおよび716cの遠位端とPICC 600の遠位端面712との間に形成され、空洞722の内側に弁724が配置される。
【0084】
いくつかの実施形態によると、弁724は、遠位端面開口部を制御可能に封鎖するように構成された封鎖フラップおよび/またはシャターを含む。いくつかの実施形態によると、封鎖フラップおよび/またはシャターは、スカート弁726の形態であってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態によると、弁724は、遠位開口部714を制御可能に封鎖するように構成されたスカート弁726を含む。いくつかの実施形態によると、スカート弁726は、個別の管腔716cの外面の遠位端に融着(fused)されていてもよく、そうでなければ一体的に形成(integrally formed)されていてもよい。いくつかの実施形態によると、スカート弁726は、個別の管腔716cと分離可能に関連していてもよい。いくつかの実施形態によれば、スカート弁726は、リム728を含み、それにより、開放弁配置720では、リム728は、本質的に垂直に配置され、流体が通過することを可能にし、閉鎖弁配置718では、リム728は、下方に傾斜した位置にあり、それにより、流体の通過が妨げられる。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、閉鎖弁配置718は、上方への傾斜位置を含んでいてもよい。いくつかの実施形態及び
図7Bに示すように、スカート弁826によるPICC 900の封鎖は、個別の管腔716a及び716bの各々を内部で封鎖することを含む。いくつかの実施形態によると、スカート弁726の閉鎖配置718は、空洞722を封鎖することを含んでいてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態によると、任意の特定の機構に拘束されることは望まれないが、スカート弁726は、個別の管腔716c内に配置されたサービスコンジット(図示せず)を介して作動してもよい。非限定的な例として、サービスコンジットは、とりわけ、ワイヤと関連されていてもよく、その場合、ワイヤを遠位側に押すと、リム728が下方に傾斜した位置(すなわち、閉鎖配置718)にシフトし、PICC 700の遠位端面712を封鎖し、ワイヤを近位側に引くと、リム728が実質的に垂直な位置(すなわち、開放配置720)にシフトし、それによって、PICCの遠位端面の遠位開口部を通る流体の流れを可能にする。
【0087】
いくつかの実施形態によると、スカート弁726の配置は、PICC 700の近位端から機械的または手動で(例えば、対象および/または医療提供者によって)作動させてもよく、および/または例えばセンサ制御によって自動的に作動させてもよい。非限定的な例として、スカート弁726の構成は、個別の管腔716c内に配置されたサービスコンジット(図示せず)を作動させることによって制御することができる。
【0088】
次に、いくつかの実施形態に従う
図8Aおよび8Bを参照する。
図8Aおよび8Bは、それぞれ開放弁配置820(
図8Aに描かれる)および閉鎖弁配置818(
図8Bに描かれる)におけるPICC 800の遠位部分810の概略断面側面図を示す。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、および
図8Aおよび8Bに描かれているように、PICC 800の遠位部分810は、錐状体構造のような角形状構造を含むが、これに限定されない。あるいは、いくつかの実施形態では、遠位部分810は、円形または円形の構造を含み得る。いくつかの実施形態によると、PICC 800は、個別の管腔816a、個別の管腔816bおよび個別の管腔816cを含む。いくつかの実施形態によると、個別の管腔816cはサービス管腔である。いくつかの実施形態によると、PICC 800は、2つの個別の管腔を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、PICC 800は、3つ以上の個別の管腔を含んでいてもよい。各可能性は、別個の実施形態である。
【0090】
いくつかの実施形態によると、空洞822は、個別の管腔816a、816bおよび816cの遠位端とPICC 800の遠位端面812との間に形成され、弁824は、空洞822の内側に配置される。
【0091】
いくつかの実施形態によると、弁824は、遠位開口部814を制御可能に封鎖するように構成されたガイドワイヤ弁826を含む。いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ弁826は、キャップ832、弾性弁部材830を含み、ガイドワイヤ828と分離可能にまたは恒久的に結合(associated)されている。
【0092】
いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ弁826はガイドワイヤ828によって作動される弁であり、ガイドワイヤ828を遠位に押すと、ガイドワイヤ弁826が閉鎖配置820になり、それによってPICC 800の遠位端面812が封鎖され、ガイドワイヤ828を近位に引くと、ガイドワイヤ弁826が開放配置818になり、それによって遠位端面812の遠位開口814を通る液体の流れが可能になる。
【0093】
いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ弁826は、個別の管腔816cの外面の遠位端に融着されていてもよく、そうでなければ一体的に形成されていてもよい。非限定的な例として、弾性弁部材830の少なくとも一部は、個別の管腔816cの遠位端と結合していてもよい。いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ弁826は、個別の管腔816cと分離可能に結合(associated)していてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ弁826は、封鎖が必要な場合にのみPICC 800に挿入され得る。代替的に、いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ弁826は、それぞれ、開放配置および閉鎖配置818および820の双方においてPICC内に配置されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ弁826は、柔軟性、弾性および/または軟質の材料(これに限定されないがポリマーなど)を含むか、またはそれらで構成されている。いくつかの実施形態によると、キャップ832および弾性部材830は、ガイドワイヤ828とは異なる材料を含むか、またはそれできている。いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ828は、キャップ832および/または弾性部材830に対してより低い柔軟性を有する材料を含むか、またはそれらで構成されていてもよい。いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ828は、アルミニウムなどの金属を含むか、またはこれらに限定されない金属でできている。
【0096】
いくつかの実施形態によると、キャップ832は、PICC 800の遠位端面812を封鎖するように構成され、従って、一部の実施形態によると、キャップ832の構造は、遠位開口部814および/または遠位端面812の少なくとも一部と、幾何学的に相補的である。いくつかの実施形態によると、キャップ832は、とりわけ、PICC 800の遠位端面812の封鎖を容易にする角状構造(例えば、ピラミッド状、錐体状など)を含む。
【0097】
いくつかの実施形態によると、弾性弁部材830は、管腔、例えば個別の管腔816cの外側部分に接して配置される。代替的に、または追加的に、いくつかの実施形態において、弾性弁部材830の少なくとも一部を、個別の管腔816cの内側に配置してもよい。いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤー弁826は、個別の管腔816cの内側に配置されたガイドワイヤー828と関連付けられ、ガイドワイヤー弁826の配置をシフトさせることができる。
【0098】
いくつかの実施形態および
図8Aに示すように、開放弁配置において、弾性弁部材830は、少なくとも部分的に折りたたまれ、PICC 800の遠位端面812の遠位開口部814を流体が通過することを可能にしている。いくつかの実施形態によれば、開放弁配置818において、キャップ832は、空洞822の内側において、少なくとも部分的に位置する。いくつかの実施形態および
図8Bに示すように、閉鎖弁配置では、弾性弁部材830は、遠位側に押され(例えば、弾性部材830の延伸、展開等によって)、キャップ832がPICC 800の遠位端面812を封鎖する。
【0099】
いくつかの実施形態によると、ガイドワイヤ弁826の配置は、PICC 800の近位端から機械的に作動させてもよく、および/または例えばセンサ制御によって自動的に作動させてもよい。いくつかの実施形態によると、好ましくは、ガイドワイヤ弁826を実施することにより、PICC 800の技術的に単純な作動が可能となり、閉塞リスクが低減される。
【0100】
次に、いくつかの実施形態に従う、
図9Aおよび9Bを参照する。
図9Aおよび9Bはそれぞれ開放弁配置920(
図9Aに描かれる)および閉鎖弁配置918(
図9Bに描かれる)におけるPICC 900の遠位部分910の概略断面側面図を示す。
【0101】
いくつかの実施形態によると、
図9Aおよび9Bにおける以下の部品/特徴900、910、912、914および916a~cは、
図8Aおよび8Bにおいて、本明細書に記載されている部品800、810、812、814および816a~cに対応し、同一または類似の構造、構成および/または特性を有していてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態によると、空洞922は、個別の管腔916a、916bおよび916cの遠位端とPICC 900の遠位端面912との間に形成され、弁924は、空洞922の内側に配置される。
【0103】
いくつかの実施形態によると、弁924は、遠位開口部914を制御可能に封鎖するように構成されたピストン926を含む。いくつかの実施形態によれば、および
図9Aおよび9Bに描かれているように、ピストン926は、個別の管腔916c内に部分的に配置される。いくつかの実施形態によると、ピストン926は、硬質または半硬質の材料(例えば、ポリマー、金属などが挙げられるが、これらに限定されない)を含むか、またはそれらで構成されている。
【0104】
いくつかの実施形態によれば、ピストン926は、ワイヤまたは他の任意の適切な押圧手段(図示せず)によって作動されてもよく、ワイヤを遠位側に押すと、ピストン926が閉鎖配置920にシフトされ、それによって、PICC 900の遠位端面912が封鎖され、ワイヤを近位側に引くと、ピストン926が開放配置918にシフトされ、それによって、遠位端面912の遠位開口914を通る流体の流れが可能になる。
【0105】
いくつかの実施形態によると、ピストン926は、本体930とキャップ932を備える。いくつかの実施形態によると、ピストン926の本体930の少なくとも一部は、管腔(例えばサービス管腔、例えば個別のヒト916c)の内部に適合するように構成される。いくつかの実施形態によると、好ましくは、ピストン926は、個別の管腔916c内に配置され、感染、閉塞、細菌蓄積などのリスクを最小限に抑える。いくつかの実施形態によると、キャップ932は、PICC 900の遠位端面912を封鎖するように構成された、ピラミッド状、錐体状などの角状構造を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によると、キャップ932は、閉鎖配置918において、遠位端面912から少なくとも部分的に延長される。いくつかの実施形態によると、ピストン926の作動は、有利には、個別の管腔916c内のフラッシング圧力とは独立している。
【0106】
いくつかの実施形態によると、ピストン926は、開放配置920および/または閉鎖配置918のそれぞれにおいて、個別の管腔916c内に少なくとも部分的に配置される。いくつかの実施形態によると、ピストン926は、有利には、開放配置および閉鎖配置920および918のそれぞれの操作上の確実性(例えば、不注意による押し出し/引っ張り、またはそうでなければ移動を最小限にすることによる)を提供する。ここで、
図10を参照する。
図10は、いくつかの実施形態によるPICC(PICC300、400および500など)のフラッシング方法のフローチャートを示す。
【0107】
ステップ1000において、この方法は、PICCの遠位部分を血管に挿入するステップを含む。いくつかの実施形態によると、医療提供者は、対象の血管および/または器官に遠位部分(PICC 300、400、500、600、700、800または900の遠位部分310、410、510、610、710、810または910など)を挿入する。任意に、挿入は、ガイドワイヤー、例えばニチノールガイドワイヤーを用い、および/またはX線のような撮像装置を用いて、対象内部のPICCの適切な位置を確認することによって行うことができる。
【0108】
ステップ1002では、本方法は、弁を閉鎖配置にシフトするステップを含む。いくつかの実施形態によると、PICCの遠位部分に位置する弁は、閉鎖配置にシフトする。いくつかの実施形態によると、弁は、これに限定されないが、膨張可能なバルーンを含んでいてもよく、膨張すると、PICCの遠位部分を封鎖する。弁シフト機構は、例えば、医療提供者および/または対象によって手動で、または機械的に、近位端で弁を作動させて制御してもよく、および/または、自動的に、例えばセンサ制御によって制御してもよい。
【0109】
ステップ1004において、この方法は、PICCの近位開口部からフラッシング液を注入するステップを含む。いくつかの実施形態によると、生理食塩水などのフラッシング液を、近位開口部からカテーテル内に導入してもよい。
【0110】
ステップ1006において、本方法は、フラッシング液を循環し、血管の外側で排出するステップを含む。いくつかの実施形態によると、フラッシング液はPICCの遠位部分に到達するまで流れ続ける。閉鎖弁配置に達すると、フラッシング液の流れ方向が変化、すなわち循環し、フラッシング液は異なる管腔に入り、フラッシング液が遠位部分からカテーテルの近位部分へ流れ、さらに体外へ流れることを可能にする。いくつかの実施形態において、フラッシング液は循環され、同じ管腔に入ってもよい。
【0111】
ステップ1008において、本方法は、流出するフラッシング液を分析するステップを含む。いくつかの実施形態によれば、フラッシング液の流出時に、フラッシング液を収集し、任意に、例えば、汚染物、沈殿物、細菌などのような、任意の化学物質および/または生物学的物質の存在についてさらに分析してもよい。いくつかの実施形態によると、化学物質および/または生物学的物質の存在により、合併症および/または感染症の指標とすることができる。いくつかの実施形態によると、流出フラッシング液の分析は、血液凝固物および/または細菌の同定を可能にする。いくつかの実施形態によると、細菌が存在することが示されると、医療スタッフが対象に適切な治療を提供することを補助してもよく、それによって対象の健康状態および健康状態を向上させることができる。
【0112】
いくつかの実施形態によると、本方法は、カテーテルおよび/またはフラッシング液の性能の質を評価するために、カテーテルを出るおよび/またはカテーテルに入るフラッシング液の圧力に関連する1または複数のパラメータを分析するステップを含んでいてもよい。また、本方法は、投与される医療物質の量の測定を補助してもよい。いくつかの実施形態では、PICC内部で許容される最大圧力を超えると、キンクなどの様々な欠陥が形成され、PICCの完全性(integrity)が低下する可能性がある。いくつかの実施形態によると、PICC内部の圧力変化は、沈殿物の存在および/または残渣の蓄積を示してもよい。PICC内部に望ましくない物質が蓄積し、PICCが閉塞すると、やがてPICCの遮断(blockage)につながる可能性がある。いくつかの実施形態によると、本方法は、1つ以上のセンサを使用して、医療物質および/またはフラッシング液の圧力を監視するステップを含んでいてもよい。1または複数のセンサは、例えば遠位端および/または近位端において、PICCの長さを横切る様々な位置に配置されてもよい。いくつかの実施形態によると、1または複数のセンサは、1または複数の管腔と関連していてもよい。いくつかの実施形態によると、1または複数のセンサは、1または複数の管腔内で医療物質および/またはフラッシング液の圧力を監視するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、管腔および/またはPICCの平滑な内面および/または外面が維持され、それによって感染のリスクが減少するように、1または複数のセンサを配置することが好ましい。
【0113】
いくつかの実施形態によると、前記方法は、1または複数のセンサを用いて、血管に入る医療物質の流量容量を監視するステップを含んでいてもよい。いくつかの実施形態によると、流量の変化は、PICCの機能不全を示すことができ、任意に、PICCの置換を必要としてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態によると、本方法は、1または複数のセンサを用いて、カテーテルに入るおよび/またはカテーテルから出るフラッシング液の流量容量を監視するステップを含んでいてもよい。いくつかの実施形態によれば、フラッシング液の流量容量の変化は、弁の機能不全および/または交換を示していてもよい。いくつかの実施形態によると、弁の交換は、サービスコンジットによって行われてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態によると、本方法は、コントローラを用いて、フラッシング液および/または医療物質の圧力および/または流量容量を調節するステップを含んでいてもよい。その結果、圧力および/または流量容量を最適範囲に維持することが容易になり、PICCの適正性が向上する。
【0116】
本出願の説明および特許請求の範囲において、「含む(include)」および「有する(have)」という単語、およびその形態は、単語が関連付けられ得るリスト内のメンバに限定されない。
【0117】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先する。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は文脈が別段の明確な指示をしない限り、「少なくとも1つの」または「1または複数の」を意味する。
【0118】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される開示の様々な特徴は開示の任意の他の説明される実施形態において、別々に、または任意の適切な組合せで、または適切なものとして提供されてもよい。実施形態の文脈で説明される特徴はそのように明示的に指定されない限り、その実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0119】
いくつかの実施形態による方法の段階は、特定の順序で記述することができるが、本開示の方法は、異なる順序で実施される記述された段階のいくつかまたは全てを含んでいてもよい。本開示の方法は、記載された段階のいくつか、または記載された段階の全てを含み得る。開示された方法における特定の段階は、そのように明示的に明記されていない限り、その方法の必須の段階とは考えられない。
【0120】
本開示はその特定の実施形態に関連して説明されるが、当業者に明らかな多数の代替、修正、および変形が存在し得ることは明らかである。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲内にあるそのような代替形態、修正形態、および変形形態のすべてを包含する。本開示は、その適用において、本明細書に記載される部品および/または方法の構成および配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。他の実施形態が実施されてもよく、実施形態は様々な方法で実行されてもよい。
【0121】
本明細書で使用される語法および用語は説明の目的のためのものであり、限定とみなされるべきではない。この出願における引用または引用の特定は、そのような引用が開示の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈してはならない。セクションの見出しは、本明細書の理解を容易にするために本明細書で使用され、必ずしも限定するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】