(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】分離膜用共重合体およびこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
C08F 220/44 20060101AFI20240822BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20240822BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240822BHJP
C08F 2/24 20060101ALI20240822BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240822BHJP
【FI】
C08F220/44
C08L51/06
C08K3/013
C08F2/24
H01M50/42
H01M50/443 B
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/403 D
H01M50/446
H01M50/451
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508748
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 KR2021014605
(87)【国際公開番号】W WO2023063461
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0137117
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ, ゴ-ウン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ボ-オク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, スン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】オ, セ-ウク
(72)【発明者】
【氏名】クォン, セ-マン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J100
5H021
【Fターム(参考)】
4J002BG001
4J002BG101
4J002BN121
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE156
4J002DE186
4J002DH046
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GQ00
4J002GQ01
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4J011KA20
4J011KB13
4J011KB19
4J011KB29
4J100AB16T
4J100AJ02S
4J100AL03Q
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4J100AL05Q
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4J100CA23
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4J100HA31
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4J100HE06
4J100HE12
4J100JA15
4J100JA43
4J100JA44
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE06
5H021EE15
5H021EE21
5H021HH01
5H021HH07
(57)【要約】
本発明は、共重合体の全体重量100重量%を基準として、5重量%超過、70重量%以下のアクリロニトリル基材の単量体単位、15重量%以上、90重量%未満のアクリレート基材の単量体単位、1重量%以上、20重量%以下のアクリルアミド基材の単量体単位、および1重量%以上、10重量%以下のアクリル酸基材の単量体単位を含む共重合体およびこれを含むコア-シェル粒子、スラリー組成物、分離膜および二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体の全体重量100重量%を基準として、5重量%超過、70重量%以下のアクリロニトリル基材の単量体単位、15重量%以上、90重量%未満のアクリレート基材の単量体単位、1重量%以上、20重量%以下のアクリルアミド基材の単量体単位、および1重量%以上、10重量%以下のアクリル酸基材の単量体単位を含む、
共重合体。
【請求項2】
前記共重合体は、下記化学式1で表される、
請求項1に記載の共重合体。
【化1】
前記化学式1中、
R
1は、水素、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素であり、
R
2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20の線状または分枝状炭化水素であり、
Mは、アルカリ金属であり、
m、n、xおよびyは、m+n+x+y=1である。
【請求項3】
前記化学式1のR
1は、水素、メチル、エチルからなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含み、
前記化学式1のR
2は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、ラウリル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、セチル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、ステアリル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、n-イコシル、n-ヘンイコシル、n-ドコシル、iso-ペンチル、iso-ヘプチル、iso-オクチル、iso-ノニル、iso-デシル、iso-ウンデシル、iso-ドデシル、iso-トリデシル、iso-テトラデシル、iso-ペンタデシル、iso-セチル、iso-ヘキサデシル、iso-ヘプタデシル、iso-ステアリル、iso-オクタデシル、iso-ノナデシル、iso-イコシル、iso-ヘンイコシルおよびiso-ドコシルからなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含む、
請求項2に記載の共重合体。
【請求項4】
共重合体の全体重量100重量部を基準として、前記共重合体は、架橋単量体単位を追加的に0.005~3重量部含む、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項5】
前記架橋単量体単位は、脂肪族2官能性メタクリレート(aliphatic difunctional methacrylate)および芳香族2官能性メタクリレート(aromatic difunctional methacrylate)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上である、
請求項4に記載の共重合体。
【請求項6】
前記共重合体は、ランダムまたはブロック共重合体である、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項7】
前記共重合体の数平均分子量が5,000以上、1,000,000以下である、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項8】
前記アクリレート基材の単量体単位と前記アクリロニトリル基材の単量体単位との重量比(アクリレート基材の単量体単位の重量%/アクリロニトリル基材の単量体単位の重量%)が0.2以上、18未満である、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項9】
コアと、
前記コアを取り囲むシェルと、を含み、
前記シェルは、請求項1に記載の共重合体を含む、
コア-シェル粒子。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の共重合体と、
無機粒子と、を含む、
スラリー組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のスラリー組成物を含む、
分離膜。
【請求項12】
請求項11に記載の分離膜を含む、
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体およびこれを含むコア-シェル粒子、スラリー組成物、分離膜および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、エネルギー密度が高くて電気、電子、通信およびコンピュータ産業分野に広範囲に用いられており、携帯電子機器用小型リチウム二次電池に次いで、ハイブリッド自動車、電気自動車などの高容量二次電池などにもその応用分野が広がっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は分離膜によって絶縁化されているが、内部あるいは外部の電池異常現象や衝撃によって正極と負極の短絡が発生して発熱および爆発の可能性があるので、分離膜の熱的/化学的安定性の確保は非常に重要である。
【0004】
現在、分離膜としてポリオレフィン系のフィルムが広く使用されているが、ポリオレフィンは高温で熱収縮が激しく、機械的特性に脆弱というデメリットがある。
【0005】
このようなポリオレフィン系分離膜の安定性向上のために、ポリオレフィン多孔性基材フィルムに無機物粒子とバインダーとからなる混合物をコーティングした多孔性分離膜が開発されている。
【0006】
すなわち、ポリオレフィン系分離膜の高温による熱収縮およびデンドライトによる電池の不安定性を抑制するために、多孔性分離膜基材の単面あるいは両面に無機物粒子をバインダーとともにコーティングすることにより、無機物粒子が基材の収縮率を抑制する機能を付与すると同時に、コーティング層によってより安全な分離膜を製造することができる。
【0007】
優れた電池特性の確保のために、コーティング層は、均一にコーティングされなければならないと同時に、基材との強力な接着力が要求される。
【0008】
また、最近の高容量および高出力化に対応するためには、従来の分離膜の耐熱性をさらに改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-1430975号
【特許文献2】大韓民国公開特許公報第10-2006-0072065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、共重合体を用いて接着力に優れたスラリー組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記スラリー組成物が適用されて耐熱性に優れた分離膜および前記分離膜が用いられた優れた性能の電池を提供する。
【0012】
これにより、電池製造時の不良率を減少させ、電池抵抗および寿命特性に優れた電池を実現することができる。
【0013】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の一態様は、共重合体の全体重量100重量%を基準として、5重量%超過、70重量%以下のアクリロニトリル基材の単量体単位、15重量%以上、90重量%未満のアクリレート基材の単量体単位、1重量%以上、20重量%以下のアクリルアミド基材の単量体単位、および1重量%以上、10重量%以下のアクリル酸基材の単量体単位を含む、
共重合体を提供する。
【0015】
本願の他の態様は、コアと、
前記コアを取り囲むシェルと、を含み、
前記シェルは、前記共重合体を含む、
コア-シェル粒子を提供する。
【0016】
本願のさらに他の態様は、前記共重合体と、
無機粒子と、を含む、
スラリー組成物を提供する。
【0017】
本願のさらに他の態様は、前記スラリー組成物を含む、
分離膜を提供する。
【0018】
本願のさらに他の態様は、前記分離膜を含む、
二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の共重合体は、スラリー組成物の分散安定性を向上させ、分離膜基材であるポリオレフィンフィルムおよび/または電極との接着力を高め、分離膜の耐熱性を改善させることができる。
【0020】
また、電池製造時の不良率を減少させ、電池抵抗および寿命特性に優れた電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として示されたに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0022】
これに先立ち、本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則り、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0023】
したがって、本明細書に記載の実施例の構成は本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替可能な多様な均等物と変形例が存在できることを理解しなければならない。
【0024】
本明細書において、単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0025】
本明細書において、数値範囲を示す「a乃至b」および「a~b」における「乃至」および「~」は、≧aかつ≦bで定義する。
【0026】
本願の一態様による共重合体は、共重合体の全体重量100重量%を基準として、5重量%超過、70重量%以下のアクリロニトリル(acrylonitrile)基材の単量体単位、15重量%以上、90重量%未満のアクリレート(acrylate)基材の単量体単位、1重量%以上、20重量%以下のアクリルアミド(acrylamide)基材の単量体単位、および1重量%以上、10重量%以下のアクリル酸(acrylic acid)基材の単量体単位を含むことができる。
【0027】
前記アクリロニトリル基材の単量体単位の含有量が増加するほど、前記共重合体を用いた分離膜の電解液膨張率が大きくなり、イオン伝導度および電気抵抗特性が改善できる。これはアクリロニトリルの電解液親和度が高いからである。
【0028】
また、アクリロニトリルは、結晶性が高く、耐熱性が良いため、アクリロニトリル基材の単量体単位の含有量が増加するほど、前記共重合体を用いた分離膜の耐熱性も向上できる。
【0029】
しかし、アクリロニトリル基材の単量体単位の含有量の70重量%超過であれば、過度の電解液膨張率によって分離膜の気孔を塞ぎ、電気抵抗特性が低下しうる。また、接着力が低下して分離膜の耐熱特性に大きな問題を引き起こすことがある。
【0030】
前記アクリレート(acrylate)基材の単量体単位は、電解液を含めば柔軟になりねばねばする特性があり、電解液浸漬後に接着力を向上させることができる。
【0031】
しかし、アクリレート基材の単量体単位の含有量の90重量%以上であれば、分離膜の気孔を塞いで通気度と電気抵抗特性が低下しうる。
【0032】
一方、前記アクリルアミド基材の単量体単位は、電解液膨張を抑制する役割をして、分離膜の耐熱特性の維持に役立つことができる。
【0033】
また、前記アクリル酸基材の単量体単位は、共重合体の安定性と無機粒子の分散性への影響を改善させて均衡の取れたコーティングを形成可能にし、分離膜の耐熱性を改善させることができる。
【0034】
すなわち、前記単量体単位の範囲が含有量範囲を外れると、前記共重合体を適用したスラリー組成物の分散安定性、コーティング膜の接着力、分離膜の耐熱性のいずれか1つ以上が低下しうる。
【0035】
一実施形態において、前記共重合体は、下記化学式1で表されてもよい。
【0036】
【0037】
前記化学式1中、
R1は、水素、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素であり、
R2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20の線状または分枝状炭化水素であり、
Mは、アルカリ金属であり、
m、n、xおよびyは、m+n+x+y=1であってもよい。
【0038】
前記化学式1のm、n、xおよびyは、各単量体単位の重量分率に相当し、各単量体単位の重量分率の合計は1になる。
【0039】
一実施形態において、前記化学式1のR1は、水素、メチルおよびエチルからなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含むことができる。
【0040】
また、前記化学式1のR2は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、ラウリル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、セチル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、ステアリル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、n-イコシル、n-ヘンイコシル、n-ドコシル、iso-ペンチル、iso-ヘプチル、iso-オクチル、iso-ノニル、iso-デシル、iso-ウンデシル、iso-ドデシル、iso-トリデシル、iso-テトラデシル、iso-ペンタデシル、iso-セチル、iso-ヘキサデシル、iso-ヘプタデシル、iso-ステアリル、iso-オクタデシル、iso-ノナデシル、iso-イコシル、iso-ヘンイコシルおよびiso-ドコシルからなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含むことができる。
【0041】
一方、前記化学式1のMは、Li、NaまたはKであってもよいが、これに限定されない。
【0042】
一実施形態において、前記共重合体は、共重合体の全体重量100重量部を基準として、前記共重合体は、架橋単量体単位を0.005~3重量部追加的に含むことができる。
【0043】
前記架橋単量体単位は、脂肪族2官能性メタクリレート(aliphatic difunctional methacrylate)および芳香族2官能性メタクリレート(aromatic difunctional methacrylate)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよい。
【0044】
好ましくは、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)およびエチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate)のいずれか1つ以上であってもよい。
【0045】
前記架橋単量体単位による架橋をしない場合、共重合体の接着力は改善されるが、共重合体が適用された分離膜の通気度と電気抵抗が低下しうる。
【0046】
これは、架橋単量体の架橋による耐久性が付与されず、フィルム化が進行しながら分離膜の気孔を塞ぐことがあるからで、電極接着層のコーティングにも問題を引き起こすことがある。
【0047】
一実施形態において、前記共重合体は、合成工程によってランダムまたはブロック共重合体であってもよい。
【0048】
一実施形態において、前記共重合体の数平均分子量が5,000以上、1,000,000以下であってもよい。
【0049】
前記共重合体の数平均分子量が5,000未満の場合、共重合体の流動性が大きくなって分散性が低下し、分離膜の耐熱特性が低下しうる。数平均分子量が1,000,000以上の場合には、使用するのに粘度が過度に高く、分離膜の気孔を塞いで通気度と抵抗が低下しうる。
【0050】
一実施形態において、前記アクリレート基材の単量体単位と前記アクリロニトリル基材の単量体単位との重量比(アクリレート基材の単量体単位の重量%/アクリロニトリル基材の単量体単位の重量%)が0.2以上、18未満であってもよい。
【0051】
前記重量比の範囲内で比率が小さくなるほど電解液親和度が良くなるため、電解液膨潤度とイオン伝導度が向上できる。また、前記重量比の範囲内で比率が大きくなるほど接着力が良くなり、電解液内での効果がさらに明確になる。
【0052】
本願の他の態様によるコア-シェル粒子は、コアと、前記コアを取り囲むシェルとを含み、前記シェルは、前記共重合体を含むことができる。
【0053】
好ましくは、コアの平均粒径は、50~250nmであってもよく、最終的なコア-シェル粒子の平均粒径は、300~1000nmであってもよい。
【0054】
コアを用いない場合、硬い耐久性構造の不在によって粒子形態が崩れて、フィルム化が進行しながら分離膜の気孔を塞ぐため、通気度と抵抗が低下しうる。
【0055】
これは、コアによる耐久性が付与されなければ、フィルム化が進行しながら分離膜の気孔を塞ぐことがあるからで、電極接着層のコーティングにも問題を引き起こすことがある。
【0056】
一方、前記コアは、アクリル基材の単量体単位およびアクリル酸基材の単量体単位を含むことができるが、これに限定されない。また、前記コア粒子は架橋できる。
【0057】
本願のさらに他の態様によるスラリー組成物は、前記共重合体と、無機粒子とを含むことができる。
【0058】
すなわち、前記スラリー組成物は、前記共重合体がシェルに含まれているコア-シェル粒子を含むことができる。
【0059】
前記無機粒子は、絶縁体粒子であれば制限なく使用可能であり、好ましくは、高誘電率絶縁体粒子であってもよい。
【0060】
前記無機粒子の具体例としては、Al2O3、AlO(OH)(ベーマイト)、SiO2、TiO2、ZrO2、ZnO、NiO、CaO、SnO2、Y2O3、MgO、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、SiC、Li3PO4、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、(Pb、La)(Zr、Ti)O3(PLZT)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0061】
前記無機粒子は大きさに特別な制限はないが、例えば、平均粒径が0.01μm~30μmであってもよく、より好ましくは、0.1μm~10μmであってもよい。無機粒子の平均粒径が前記好ましい範囲未満の場合には、分散性が低くなり、前記好ましい範囲を超える場合には、コーティングされた後、コーティング層の厚さが厚くなって機械的物性が低下しうる。
【0062】
また、前記無機粒子は形状に特別な制限がなく、例えば、球状または楕円形であるか、不定形であってもよい。
【0063】
本願のさらに他の態様による分離膜は、前記スラリー組成物を含むことができる。
【0064】
前記共重合体を含む分離膜コーティング層は、単層または多層コーティングの使用にすべて適合する。一例として、無機粒子とともに単層コーティング時には、含有量によって無機物粒子の結着力および電極接着力を向上させることができる。
【0065】
無機粒子コーティング層上にバインダーの単独コーティングによる多層コーティング時には、電極接着力を向上させることができる。
【0066】
前記分離膜の熱収縮率は、MD(Machine Direction、長手方向)およびTD(Transverse Direction、幅方向)方向ともに5%以下であってもよい。
【0067】
前記スラリー組成物を多孔性基材フィルムの少なくとも一面にコーティングするか、前記スラリー組成物をフィルム状に製造して多孔性基材フィルムに貼り合わせて分離膜を製造することができる。
【0068】
一方、前記分離膜は、二次電池用分離膜として使用可能であり、例えば、リチウム二次電池用分離膜として使用可能である。
【0069】
分離膜製造の一例として、(a)前記共重合体を溶媒に溶解または分散させて高分子溶液を製造するステップと、(b)無機物粒子を前記ステップa)の高分子溶液に添加および混合するステップと、(c)ポリオレフィン系分離膜基材の表面および基材中の気孔部の一部からなる群より選択された1種以上の領域を前記ステップb)の混合物でコーティングおよび乾燥するステップとを含むことができる。
【0070】
まず、1)前記共重合体を適切な有機溶媒に溶解または分散させた高分子溶液形態で製造および準備する。
【0071】
溶媒としては、バインダーとして使用された前記共重合体と溶解度指数が類似しており、沸点(boiling point)が低いことが好ましい。これは均一な混合と後の溶媒除去を容易にするためである。使用可能な溶媒の非制限的な例としては、アセトン(acetone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、メチレンクロライド(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、シクロヘキサン(cyclohexane)、水、またはこれらの混合体などがある。さらに好ましくは、水に水分散した状態で使用することができる。
【0072】
2)製造された高分子溶液に無機物粒子を添加および分散させて無機物粒子および高分子混合物を製造する。
【0073】
高分子溶液および無機物粒子の分散工程を実施することが好ましい。この時、分散時間は1~50時間が適切である。分散方法としては、通常の方法を使用することができ、特にボールミル(ball mill)法が好ましい。
【0074】
無機物粒子および高分子で構成される混合物の組成は大きく制約がないが、これによって最終製造される本発明の有機・無機複合多孔性分離膜の厚さ、気孔サイズおよび気孔度を調節することができる。
【0075】
すなわち、高分子(P)に対する無機物粒子(I)の比(ratio=I/P)が増加するほど分離膜の気孔度が増加し、これは同一の固形分含有量(無機物粒子の重量+高分子の重量)で分離膜の厚さが増加する結果をもたらす。また、無機物粒子間の気孔形成の可能性が増加して気孔サイズが増加するが、この時、無機物粒子の大きさ(粒径)が大きくなるほど無機物間の間隔(interstitial distance)が大きくなるので、気孔サイズが増加する。
【0076】
3)製造された無機物粒子および高分子の混合物を準備されたポリオレフィン系分離膜基材上にコーティングし、その後に乾燥することにより、本発明の分離膜を得ることができる。
【0077】
この時、無機物粒子および高分子の混合物をポリオレフィン系分離膜基材上にコーティングする方法は、当業界で知られた通常のコーティング方法を使用することができ、例えば、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティング、またはこれらの混合方式など多様な方式を利用することができる。また、無機物粒子および高分子の混合物をポリオレフィン系分離膜基材上にコーティングする時、前記分離膜基材の両面ともに実施することができ、または片面にのみ選択的に実施することができる。
【0078】
前記分離膜が二次電池に用いられる場合、分離膜基材のみならず、多孔性形態の活性層を介してリチウムイオンが伝達できるだけでなく、外部衝撃によって内部短絡が発生する場合には、前述した安全性向上効果を示すことができる。
【0079】
また、前記二次電池は、正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在した前記分離膜および電解液とを含むことができる。
【0080】
前記二次電池は、当業界で知られた通常の方法によって製造することができ、その一実施例を挙げると、前記電極と分離膜を介在して組み立て、その後、組立体に電解液を注入して製造する。
【0081】
前記分離膜とともに適用される電極としては大きく制限がないが、正極活物質は、二次電池の正極に用いられる通常の正極活物質が使用可能であり、その非制限的な例としては、リチウムマンガン酸化物(lithiated magnesium oxide)、リチウムコバルト酸化物(lithiated cobalt oxide)、リチウムニッケル酸化物(lithiated nickel oxide)、またはこれらの組み合わせによって形成される複合酸化物などのようなリチウム吸着物質(lithium intercalation material)などがある。また、負極活物質は、従来の電気化学素子の負極に用いられる通常の負極活物質が使用可能であり、これらの非制限的な例としては、リチウム金属、またはリチウム合金とカーボン(carbon)、石油コークス(petroleum coke)、活性化カーボン(activated carbon)、グラファイト(graphite)またはその他のカーボン類などのようなリチウム吸着物質などがある。前述した両電極活物質をそれぞれ正極電流集電体、すなわちアルミニウム、ニッケル、またはこれらの組み合わせによって製造される箔(foil)、および負極電流集電体、すなわち銅、金、ニッケルあるいは銅合金、あるいはこれらの組み合わせによって製造される箔に結着させた形態で両電極を構成する。
【0082】
前記電解液は、A+B-のような構造の塩であって、A+は、Li+、Na+、K+のようなアルカリ金属陽イオンやこれらの組み合わせからなるイオンを含み、B-は、PF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-のような陰イオンやこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、アセトニトリル(acetonitrile)、ジメトキシエタン(dimethoxyethane)、ジエトキシエタン(diethoxyethane)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、エチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate、EMC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、またはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解および解離したものが好ましい。
【0083】
前記分離膜を電池に適用する工程としては、一般的な工程である巻取(winding)以外にも、分離膜と電極との積層(lamination)および折り畳み(folding)工程が可能である。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願がこれに制限されるものではない。
【0085】
[製造例1]共重合体の製造
コア粒子の製造
反応容器に、蒸留水380重量部と、単量体混合物(A)100重量部に対して乳化剤0.1~3重量部とを入れて撹拌し、高純度窒素気体を注入させながら80℃に昇温させた。
【0086】
80℃で準備された反応容器に、分解型開始剤の過硫酸アンモニウムを単量体混合物(A)100重量部に対して0.1~3重量部添加して、連続的な乳化重合反応を進行させてコア粒子を製造した。
【0087】
単量体混合物(A)は、90重量部の(メタ)アクリレート系単量体と、10重量部の(メタ)アクリル酸単量体とを含み、単量体混合物(A)100重量部に対して0.1~1重量部のジビニルベンゼンを追加的に混合して準備した。
【0088】
コア-シェル粒子の製造
反応容器に、蒸留水140重量部と、シェルの製造に使用される単量体混合物(B)100重量部に対して乳化剤0.1~3重量部と、製造された前記コア粒子0.1~15重量部とを入れて撹拌し、高純度窒素気体を注入させながら70℃に昇温させた。
【0089】
70℃で準備された反応容器に、分解型開始剤の過硫酸アンモニウムを単量体混合物(B)100重量部に対して0.05~3重量部添加して、連続的な乳化重合反応を進行させてコア-シェル粒子を製造した。
【0090】
製造されたコア-シェル粒子は、金属水酸化物(NaOH、LiOHまたはKOH)水溶液を添加して、シェルに存在するカルボン酸部分をイオン化させた。
【0091】
前記単量体混合物(B)は、アクリルアミド単量体(AAm)、アクリロニトリル単量体(AN)、アクリル酸単量体(AA)およびブチルアクリレート(BA)を適切な含有量で調節し、単量体混合物(B)100重量部に対して0.05~3重量部のジビニルベンゼンを追加的に混合して準備した。
【0092】
製造されたコア-シェル粒子は、バインダーとして使用された。
【0093】
[製造例2]多孔膜コーティング用スラリーの製造
無機粒子(アルミナ、平均粒径0.5μm)と、製造例1によって製造されたコア-シェル粒子(バインダー)とを固形分重量比で90:10となるように混合した後、蒸留水を固形分濃度が35%となるように追加して混合した。この混合物をボールミル法またはメカニカル撹拌機により十分に分散してスラリーを製造した。
【0094】
[製造例3]分離膜の製造
ポリオレフィン多孔性基材(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)に、製造例2によって製造された多孔膜コーティング用スラリーを塗布して無機物コーティング層を形成する。コーティング方法としては、ディップ(dip)コーティング、ダイ(die)コーティング、グラビア(gravure)コーティング、コンマ(comma)コーティングなど多様な方式を利用することができる。
【0095】
また、コーティング後、温風、熱風、真空乾燥、赤外線乾燥などの方法で乾燥させ、乾燥温度範囲は60~85℃であった。
【0096】
前記無機物コーティング層の厚さは単面あるいは両面に0.5~6μmであり、厚さが0.5μm未満の場合には、分離膜の耐熱性が著しく減少する問題があり、厚さが6μm超過の場合には、分離膜の厚さが過度に厚くて電池のエネルギー密度を減少させ、抵抗が増加させることができた。
【0097】
[実施例1~4および比較例1~6]
実施例1~4および比較例1~6は、下記表1に示しているように、製造例1のコア-シェル粒子の製造において、シェルの製造のために使用された単量体混合物(B)での単量体の組成比、架橋モノマーの使用とコア粒子の使用を調節して製造例1によって製造された。
【0098】
実施例1~4および比較例1~6によって製造されたバインダー共重合体を用いて、製造例2および製造例3によってそれぞれ多孔膜コーティング用スラリーおよび分離膜を製造した。
【0099】
【0100】
前記表1中、「O」は、架橋、コア粒子が適用されたことを表し、「X」は、架橋、コア粒子が適用されないことを表す。
【0101】
前記表1に示しているように、比較例5は、シェルの製造ステップで架橋モノマーを使用せず、比較例6は、コア粒子を使用しなかった。
【0102】
[評価例1]バインダーフィルムの電解液膨張率
前記実施例1~4および比較例1~6のコア-シェル粒子(バインダー)を60℃で6時間乾燥してバインダーフィルムを製造した。乾燥したバインダーフィルムを0.2g計量し、電解液30gに入れた後、60℃で72時間浸漬させた。膨潤したバインダーフィルムを取り出して、表面の電解液を除去した後、重量を測定して電解液に対する膨張率の程度を計算した。
【0103】
[評価例2]多孔膜コーティング用スラリーの接着力
前記実施例1~4および比較例1~6のコア-シェル粒子(バインダー)を用いて、製造例3によって製造された分離膜と電極を幅25mm、長さ100mmの大きさに裁断した。
【0104】
幅40mm、長さ100mmの面積のアクリルプレート(acryl plate)に幅20mm、長さ40mmの面積の両面テープを貼り付けた。準備された分離膜を両面テープ上に貼り付けた後、ハンドローラ(hand roller)で軽く5回押した。
【0105】
準備された試験片をUTM(20kgf Load cell)に装着して分離膜の一方の部分を引張強度試験機の上側クリップに、分離膜の一面に貼り付いたテープを下側クリップに固定させ、100mm/minの速度で180゜剥離強度を測定した。サンプルあたり試験片を5個以上作製して測定し、その平均値を計算した。
【0106】
[評価例3]分離膜の熱収縮率
前記実施例1~4および比較例1~6のコア-シェル粒子(バインダー)を用いて、製造例3によって製造された分離膜を横、縦の大きさが5×5cmの試料として準備し、前記試料を150℃のオーブンに1時間放置した後、収縮率を測定した。
【0107】
[評価例4]分離膜の乾式(dry)電極の接着力
前記実施例1~4および比較例1~6のコア-シェル粒子(バインダー)を用いて、製造例3によって製造された分離膜と電極を幅25mm、長さ100mmの大きさに裁断した。
裁断された分離膜と電極とは介在した状態で、ホットプレス(Hot-press)装置を用いて、70℃で500kgの圧力で30秒間圧着した。
【0108】
準備された試験片をUTM(20kgf Load cell)に装着して分離膜の一方の部分を引張強度試験機の上側クリップに、分離膜の一面に貼り付いたテープを下側クリップに固定させ、100mm/minの速度で180゜剥離強度を測定した。サンプルあたり試験片を5個以上作製して測定し、その平均値を計算した。
【0109】
[評価例5]分離膜の湿式(wet)電極の接着力
前記実施例1~4および比較例1~6のコア-シェル粒子(バインダー)を用いて、製造例3によって製造された分離膜と電極を幅25mm、長さ100mmの大きさに裁断した。
【0110】
裁断された分離膜と電極とは介在した状態で、ホットプレス(Hot-press)装置を用いて、70℃で500kgの圧力で30秒間圧着した。
【0111】
圧着して製造された試験片はアルミニウムパウチに入れて、電解液に1時間浸漬後、ホットプレス装置を用いて、70℃で500kgの圧力で10秒間再圧着した。
【0112】
準備された試験片をUTM(20kgf Load cell)に装着して分離膜の一方の部分を引張強度試験機の上側クリップに、分離膜の一面に貼り付いたテープを下側クリップに固定させ、100mm/minの速度で180゜剥離強度を測定した。
【0113】
サンプルあたり試験片を5個以上作製して測定し、その平均値を計算した。
【0114】
[評価例6]分離膜の通気度
前記実施例1~4および比較例1~6のコア-シェル粒子(バインダー)を用いて、製造例3によって製造された分離膜を用いて、通気度測定装置を用いて、100ccの空気が透過するのにかかる時間(秒)を測定した。
【0115】
[評価例7]分離膜の電気抵抗
前記実施例1~4および比較例1~6のコア-シェル粒子(バインダー)を用いて、製造例3によって製造された分離膜とリチウムメタル(Li metal)、SUS板をそれぞれ介在してコインセルタイプで電極組立体を準備した。
【0116】
準備された電極組立体は、リチウム塩を含む電解液を注入し、密封してリチウム二次電池を製造した。
【0117】
製造された電池は、インピーダンス分析器(impedance analyzer)を用いて、インピーダンスを測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0118】
[評価例8]分離膜のイオン伝導度
前記実施例1~4および比較例1~6のコア-シェル粒子(バインダー)を用いて、製造例3によって製造された分離膜の評価例7の方法で測定された電気抵抗を用いて、下記数式1でイオン伝導度を計算した。
【0119】
数1
イオン伝導度=試料の厚さ/(電気抵抗×試料の面積)
【0120】
評価例1~8の評価結果を下記表2に示した。
【0121】
【0122】
前記表2の通気度の「△」は、ポリオレフィン多孔性基材(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)に、製造例2によって製造された多孔膜コーティング用スラリーをコーティングする前後の通気度の差を表す。
【0123】
例えば、実施例1の場合、多孔膜コーティング用スラリーをコーティングした後、通気度が多孔膜コーティング用スラリーのコーティング前に比べて12sec/100ccだけ高くなった。
【0124】
実施例1~4のコア-シェル粒子(バインダー)を用いた場合、シェルのアクリロニトリルの含有量が高くなるほど電解液膨張率が大きくなり、イオン伝導度が高くなり、電気抵抗が低くなることを確認することができた。
【0125】
一方、シェルのブチルアクリレートの含有量が高くなるほど接着力(無機物、乾式および湿式)が向上することを確認することができる。
【0126】
シェルのアクリロニトリルの含有量が70重量%超過であり、シェルのブチルアクリレートの含有量が15重量%未満である比較例1のコア-シェル粒子(バインダー)を用いた場合、電解液膨張率が大きく高まることを確認することができた。
【0127】
すなわち、シェルのアクリロニトリルの含有量増加によってイオン伝導度は非常に優れているが、高い電解液親和度による過度の電解液膨張で分離膜の気孔を塞ぎ、電気抵抗が高くなった。
【0128】
また、シェルのアクリロニトリルの硬い性質と過度の電解液膨張は接着力を低下させる。低下した接着力は、窮極的に、分離膜の耐熱性能の発現に大きな問題を引き起こすことがある。
【0129】
シェルのアクリロニトリルの含有量が5重量%以下であり、シェルのブチルアクリレートの含有量が90重量%以上である比較例2のコア-シェル粒子(バインダー)を用いた場合、接着力とイオン伝導度が向上することを確認することができる。
【0130】
しかし、電解液上では柔軟でねばねばする性質によって分離膜の気孔を塞いで、通気度と抵抗が大きく低下する。
【0131】
シェルにアクリルアミドを含まない比較例3のコア-シェル粒子(バインダー)を用いた場合、シェルに同じ含有量のアクリロニトリルおよびアクリレートを含みかつ、アクリルアミドを含む実施例3のコア-シェル粒子(バインダー)に比べて電解液膨張率が大きくなり、熱収縮率が大きくなって耐熱特性が低下することを確認することができた。
【0132】
シェルにアクリル酸を含まない比較例4のコア-シェル粒子(バインダー)を用いた場合、シェルに同じ含有量のアクリロニトリルを含みかつ、アクリル酸を含む実施例3のコア-シェル粒子(バインダー)に比べて熱収縮率が大きくなって耐熱特性が低下することを確認することができた。
【0133】
シェルを架橋しない比較例5のコア-シェル粒子(バインダー)を用いた場合、シェルに同じ含有量の単量体を含み、架橋されている実施例1のコア-シェル粒子(バインダー)に比べて通気度と電気抵抗特性が低下することを確認することができた。
【0134】
コア粒子を含まない比較例6の粒子(バインダー)を用いた場合、シェルに同じ含有量の単量体を含み、コア粒子を含んでいる実施例1のコア-シェル粒子(バインダー)に比べて通気度と電気抵抗特性が低下することを確認することができた。
【0135】
結果として、実施例のコア-シェル粒子(バインダー)を用いて製造した分離膜は、優れた基材接着力と150℃で5%以内の優れた耐熱特性を有していた。
【0136】
また、優れた電極接着力によって、電池製造時の不良率の減少と、電池抵抗および寿命維持に有利な分離膜特性を実現可能であることを確認することができる。
【0137】
本発明の範囲は上記の詳細な説明よりは後述の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の共重合体は、スラリー組成物の分散安定性を向上させ、分離膜基材であるポリオレフィンフィルムおよび/または電極との接着力を高め、分離膜の耐熱性を改善させることができる。
【0139】
また、電池製造時の不良率を減少させ、電池抵抗および寿命特性に優れた電池を実現することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記共重合体は、下記化学式1で表される、
請求項1に記載の共重合体。
【化1】
前記化学式1中、
R
1は、水素、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素であり、
R
2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20の線状または分枝状炭化水素 あり、
Mは、アルカリ金属であり、
m、n、xおよびyは、m+n+x+y=1である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
【国際調査報告】