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特表2024-531250マイクロ波エネルギーを用いて酸化窒素を生成するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】マイクロ波エネルギーを用いて酸化窒素を生成するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/24 20060101AFI20240822BHJP
   H05H 1/30 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C01B21/24 Z
H05H1/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508750
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 US2022040260
(87)【国際公開番号】W WO2023018992
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,993
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/819,582
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519309175
【氏名又は名称】サード ポール,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Third Pole, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】シャジ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ドナルド・ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】アポロニオ,ベンジャミン・ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホール,グレゴリー・ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA26
2G084BB23
2G084CC14
2G084FF31
2G084FF38
(57)【要約】
酸化窒素(NO)を生成するためのシステムおよび方法が提供される。いくつかの実施形態において、システムは、パルス持続時間、パルス周波数、および電力レベルが変動するマイクロ波エネルギーを生成するように構成されているマイクロ波生成器と、マイクロ波キャビティであって、マイクロ波エネルギーを利用して、マイクロ波キャビティを流れる窒素および酸素を含む反応ガス流内にプラズマボールを生成することにより、NOを含む生成ガスを生成するように構成されている、マイクロ波キャビティと、を備える。少なくとも1つのスタブがマイクロ波キャビティ中に配置され得、プラズマボールが形成される位置にマイクロ波エネルギーを集中させるように構成される。マイクロ波生成器と電気的に通信する制御装置がマイクロ波生成器を制御することによって、プラズマボールが反応ガス流中に浮き、少なくとも1つのスタブおよびマイクロ波キャビティの表面に接触しないように、プラズマボールを起こして維持するように構成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化窒素(NO)の生成のためのシステムであって、
パルス持続時間、パルス周波数、および電力レベルが変動するマイクロ波エネルギーを生成するように構成されているマイクロ波生成器と、
マイクロ波キャビティであって、前記マイクロ波エネルギーを利用して、前記マイクロ波キャビティを流れる窒素および酸素を含む反応ガス流内にプラズマボールを生成することにより、NOを含む生成ガスを生成するように構成されている、マイクロ波キャビティと、
前記マイクロ波キャビティ中に配置され、前記プラズマボールが形成される位置に前記マイクロ波エネルギーを集中させるように構成されている少なくとも1つのスタブと、
前記マイクロ波生成器と電気的に通信する制御装置であって、前記マイクロ波生成器を制御することによって、前記プラズマボールが前記反応ガス流中に浮き、前記少なくとも1つのスタブおよび前記マイクロ波キャビティの表面に接触しないように、前記プラズマボールを起こして維持するように構成されている、制御装置と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記制御装置が、1つまたは複数の制御パラメータを使用して前記生成ガス中のNO濃度を制御することにより、前記マイクロ波エネルギーの前記パルス持続時間、前記パルス周波数、および前記電力レベル、ならびに反応ガス流量のうちの少なくとも1つを調整するように構成され、前記制御パラメータが、前記反応ガス、前記生成ガス、前記生成ガスの少なくとも一部が流れ込む吸気ガス、規定量のNO、および前記生成ガスの前記少なくとも一部を受け入れる患者のうちの少なくとも1つと関連する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プラズマボールが内部に配置されるように前記マイクロ波キャビティ内に配置されている反応チャンバをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記反応チャンバが、独立したガス容積を内部に有するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記反応チャンバが、前記マイクロ波キャビティ内のガス容積よりも小さな独立したガス容積を内部に有するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記反応チャンバ中の前記ガス容積は、前記反応チャンバ中の前記ガス容積が前記マイクロ波キャビティ中の前記ガス容積よりも小さいことにより、移動時間およびNO形成の減少を可能にする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記反応チャンバと関連付けられ、大気圧未満で前記プラズマボールを起こす真空チャンバをさらに備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記マイクロ波キャビティの上流のバルブと、前記マイクロ波キャビティの下流のポンプと、をさらに備え、前記バルブおよび前記ポンプが協働することによって前記マイクロ波キャビティ中の圧力を低下させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御装置が、前記バルブおよび前記ポンプのうちの1つまたは複数を制御することによって、前記マイクロ波キャビティ中の圧力を制御するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記反応ガスが、NOを含むことにより、プラズマ形成を促進する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記反応ガスを冷却してNO生成を増やすように構成されている冷却構成要素をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記反応ガスの温度が、最大50℃低下する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記マイクロ波生成器が、プラズマを起こすように構成されている第1のアンテナと、前記プラズマを持続させるように構成されている第2のアンテナと、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
酸化窒素(NO)を生成するためのシステムであって、
パルス持続時間、パルス周波数、および電力レベルが変動するマイクロ波エネルギーを生成するように構成されているマイクロ波生成器と、
マイクロ波キャビティであって、前記マイクロ波エネルギーを利用して、前記マイクロ波キャビティを流れる窒素および酸素を含む反応ガス流内にプラズマボールを生成することにより、NOを含む生成ガスを生成するように構成されている、マイクロ波キャビティと、
前記マイクロ波キャビティ内に配置され、前記マイクロ波キャビティのガス容積よりも小さなガス容積を有する反応チャンバと、
前記マイクロ波キャビティ中に配置され、プラズマボールが前記反応チャンバ内に形成されるように、前記反応チャンバの内側の位置に前記マイクロ波エネルギーを集中させるように構成されている少なくとも1つのスタブと、
前記マイクロ波生成器と電気的に通信する制御装置であって、前記マイクロ波生成器を制御することによって、前記反応チャンバにおいて前記プラズマボールを起こして維持するように構成されている、制御装置と、
を備える、システム。
【請求項15】
前記プラズマボールが、前記反応ガス流中に浮き、前記少なくとも1つのスタブおよび前記マイクロ波キャビティの表面に接触しない、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御装置が、1つまたは複数の制御パラメータを使用して前記生成ガス中のNO濃度を制御することにより、前記マイクロ波エネルギーの前記パルス持続時間、前記パルス周波数、および前記電力レベル、反応ガス流量、ならびにマイクロ波キャビティ圧力のうちの少なくとも1つを調整するように構成され、前記制御パラメータが、前記反応ガス、前記生成ガス、前記生成ガスの少なくとも一部が流れ込む吸気ガス、および前記生成ガスの前記少なくとも一部を受け入れる患者のうちの少なくとも1つと関連する、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
酸化窒素(NO)を生成する方法であって、
マイクロ波キャビティに案内されているマイクロ波エネルギーを使用して、前記マイクロ波キャビティを通る反応ガス流からプラズマボールを生成することにより、前記マイクロ波キャビティを通る前記反応ガス流から酸化窒素を含む生成ガスを生成することと、
前記マイクロ波キャビティ中に配置されている少なくとも1つのスタブを使用して、前記マイクロ波キャビティ中の焦点に前記マイクロ波エネルギーを集中させることにより、焦点が前記プラズマボールの位置となるようにすることと、
制御装置を使用して、前記プラズマボールの生成を制御するために前記制御装置が使用する制御アルゴリズムへの入力として1つまたは複数のパラメータを使用することにより、前記生成ガス中の酸化窒素の量を制御することと、
を含み、
前記プラズマボールが、前記反応ガス流中に浮き、前記少なくとも1つのスタブおよび前記マイクロ波キャビティの表面に接触しない、方法。
【請求項18】
前記マイクロ波エネルギーを集中させることが、前記プラズマボールが反応チャンバの内部に配置されるように、前記マイクロ波キャビティ内に配置されている前記反応チャンバ内において前記マイクロ波エネルギーを集中させることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記制御装置が、1つまたは複数の制御パラメータを使用して前記生成ガス中のNO濃度を制御することにより、前記マイクロ波エネルギーのパルス持続時間、前記マイクロ波エネルギーの電力レベル、反応ガス流量、および反応チャンバ圧力のうちの少なくとも1つを調整するように構成され、前記制御パラメータが、前記反応ガス、前記生成ガス、前記生成ガスの少なくとも一部が流れ込む吸気ガス、および前記生成ガスの前記少なくとも一部を受け入れる患者のうちの少なくとも1つと関連する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
冷却構成要素を使用して前記反応ガスを冷却することによりNO生成を増やすことをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記反応ガスの温度が、最大50℃低下する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年8月13日に出願された米国仮特許出願第63/232,993号および2022年8月12日に出願された米国実用特許出願第17/819,582号の利益および優先権を主張するものであり、これらのすべての内容を本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、酸化窒素の生成に関し、より詳細には、マイクロ波エネルギーを用いて酸化窒素を生成するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
酸化窒素(NO)は、病気、特に、心臓病および呼吸器疾患の治療の多くの方法において有用であることが分かっている。NOを生成してNOガスを患者に送達する従来のシステムには、多くの不都合がある。たとえば、タンクに基づくシステムでは、高濃度のNOガスの大型タンクが必要であり、治療の再開時にNOでパージする必要がある。NOまたはNからNOを合成するには、有害化学物質の取り扱いが必要となる。従来の電気生成システムには、患者に送達される(すなわち、送達管を通じて圧送される)空気の主流中のプラズマ生成を伴う。
【0004】
NO生成にはマイクロ波エネルギーも使用可能であるが、放電によってNOを生成するための電極を備えた高電圧変圧器回路の使用が必要となる。高電圧/電極システムの主な欠点として、酸化および腐食により電極が経時的に摩耗するため、最終的に交換が必要となる。このため、医療器具用途においては、器具を一定期間供用した後に電極を交換する必要がある。別の欠点として、交換可能な電極の少なくとも一部がイリジウムまたは白金等の貴金属により構成されている場合があり、高コストとなる場合がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、酸化窒素(NO)の生成のためのシステム、方法、および装置に関する。いくつかの実施形態において、このシステムは、パルス持続時間、パルス周波数、および電力レベルが変動するマイクロ波エネルギーを生成するように構成されているマイクロ波生成器と、マイクロ波キャビティであって、マイクロ波エネルギーを利用して、マイクロ波キャビティを流れる窒素および酸素を含む反応ガス流内にプラズマボールを生成することにより、NOを含む生成ガスを生成するように構成されている、マイクロ波キャビティと、を備える。少なくとも1つのスタブがマイクロ波キャビティ中に配置され、プラズマボールが形成される位置にマイクロ波エネルギーを集中させるように構成され得る。マイクロ波生成器と電気的に通信する制御装置は、マイクロ波生成器を制御することによって、プラズマボールが反応ガス流中に浮き(suspended)、少なくとも1つのスタブおよびマイクロ波キャビティの表面に接触しないように、プラズマボールを起こして(initiate)維持するように構成され得る。
【0006】
いくつかの実施形態において、制御装置は、1つまたは複数の制御パラメータを使用して生成ガス中のNO濃度を制御することにより、マイクロ波エネルギーのパルス持続時間、パルス周波数、および電力レベル、ならびに反応ガス流量のうちの少なくとも1つを調整するように構成され、制御パラメータは、反応ガス、生成ガス、生成ガスの少なくとも一部が流れ込む吸気ガス、規定量のNO、および生成ガスの少なくとも一部を受け入れる患者のうちの少なくとも1つと関連する。
【0007】
また、いくつかの実施形態において、このシステムは、プラズマボールが内部に配置されるようにマイクロ波キャビティ内に配置されている反応チャンバまたはプラズマチャンバを含み得る。いくつかの実施形態において、反応チャンバは、独立したガス容積を内部に有するように構成されている。いくつかの実施形態において、反応チャンバは、マイクロ波キャビティ内のガス容積よりも小さな独立したガス容積を内部に有するように構成されている。いくつかの実施形態において、反応チャンバ中のガス容積は、マイクロ波キャビティ中のガス容積よりも小さいことにより、移動時間およびNO形成の減少を可能にする。
【0008】
また、いくつかの実施形態において、このシステムは、反応チャンバと関連付けられ、大気圧未満でプラズマボールを起こす真空チャンバを含み得る。また、いくつかの実施形態において、このシステムは、マイクロ波キャビティの上流のバルブと、マイクロ波キャビティの下流のポンプと、を含み、バルブおよびポンプは、協働することによってマイクロ波キャビティ中の圧力を低下させ得る。いくつかの実施形態において、制御装置は、バルブおよびポンプのうちの1つまたは複数を制御することによって、マイクロ波キャビティ中の圧力を制御するように構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態において、反応ガスは、NOを含むことにより、プラズマ形成を促進する。また、いくつかの実施形態において、このシステムは、反応ガスを冷却してNO生成を増やすように構成されている冷却構成要素を含み得る。いくつかの実施形態において、反応ガスの温度は、最大50℃低下する。いくつかの実施形態において、マイクロ波生成器は、プラズマを起こすように構成されている第1のアンテナと、プラズマを持続させるように構成されている第2のアンテナと、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、酸化窒素の生成のためのシステムであって、パルス持続時間、パルス周波数、および電力レベルが変動するマイクロ波エネルギーを生成するように構成されているマイクロ波生成器と、マイクロ波キャビティであって、マイクロ波エネルギーを利用して、マイクロ波キャビティを流れる窒素および酸素を含む反応ガス流内にプラズマボールを生成することにより、NOを含む生成ガスを生成するように構成されている、マイクロ波キャビティと、を備える、システムが提供される。反応チャンバが、マイクロ波キャビティ内に配置され、マイクロ波キャビティのガス容積よりも小さなガス容積を有し得る。少なくとも1つのスタブが、マイクロ波キャビティ中に配置され、プラズマボールが反応チャンバ内に形成されるように、反応チャンバの内側の位置にマイクロ波エネルギーを集中させるように構成され得る。マイクロ波生成器と電気的に通信する制御装置が、マイクロ波生成器を制御することによって、反応チャンバにおいてプラズマボールを起こして維持するように構成され得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、プラズマボールは、反応ガス流中に浮き、少なくとも1つのスタブおよびマイクロ波キャビティの表面に接触しない。
【0012】
いくつかの実施形態において、制御装置は、1つまたは複数の制御パラメータを使用して生成ガス中のNO濃度を制御することにより、マイクロ波エネルギーのパルス持続時間、パルス周波数、および電力レベル、反応ガス流量、ならびにマイクロ波キャビティ圧力のうちの少なくとも1つを調整するように構成され、制御パラメータは、反応ガス、生成ガス、生成ガスの少なくとも一部が流れ込む吸気ガス、および生成ガスの少なくとも一部を受け入れる患者のうちの少なくとも1つと関連する。
【0013】
酸化窒素(NO)を生成する方法であって、マイクロ波キャビティに案内されているマイクロ波エネルギーを使用して、マイクロ波キャビティを通る反応ガス流からプラズマボールを生成することにより、マイクロ波キャビティを通る反応ガス流から酸化窒素を含む生成ガスを生成することと、マイクロ波キャビティ中に配置されている少なくとも1つのスタブを使用して、マイクロ波キャビティ中の焦点にマイクロ波エネルギーを集中させることにより、焦点がプラズマボールの位置となるようにすることと、制御装置を使用して、プラズマボールの生成を制御するために制御装置が使用する制御アルゴリズムへの入力として1つまたは複数のパラメータを使用することにより、生成ガス中の酸化窒素の量を制御することと、を含む、方法が提供される。プラズマボールは、反応ガス流中に浮き、少なくとも1つのスタブおよびマイクロ波キャビティの表面に接触しない。
【0014】
いくつかの実施形態において、マイクロ波エネルギーを集中させることは、プラズマボールが反応チャンバの内部に配置されるように、マイクロ波キャビティ内に配置されている反応チャンバ内においてマイクロ波エネルギーを集中させることをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、制御装置は、1つまたは複数の制御パラメータを使用して生成ガス中のNO濃度を制御することにより、マイクロ波エネルギーのパルス持続時間、マイクロ波エネルギーの電力レベル、反応ガス流量、および反応チャンバ圧力のうちの少なくとも1つを調整するように構成され、制御パラメータは、反応ガス、生成ガス、生成ガスの少なくとも一部が流れ込む吸気ガス、および生成ガスの少なくとも一部を受け入れる患者のうちの少なくとも1つと関連する。
【0016】
また、いくつかの実施形態において、この方法は、冷却構成要素を使用して反応ガスを冷却することによりNO生成を増やすことを含む。いくつかの実施形態において、反応ガスの温度は、最大50℃低下する。
【0017】
本開示は、例示的な実施形態の非限定的な例として複数の図面を参照することにより、以下の詳細な説明においてさらに説明される。図面の複数図全体を通して、同様の参照番号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】NO生成システムの例示的な一実施形態を示す図である。
図2】再循環アーキテクチャを有するNO生成・送達システムの一実施形態を示す図である。
図3】反応器の例示的な一実施形態を示す図である。
図4】特定のアンテナ設計の場合のキャビティにおける電界強度の計算シミュレーションを示す図である。
図5】フローガイドのない円筒状マイクロ波キャビティの一実施形態を示す図である。
図6】マイクロ波キャビティの一実施形態を示す図である。
図7】アルミニウムハウジングを有するマイクロ波キャビティ160の例示的な一実施形態を示す図である。
図8A】マイクロ波キャビティの内側の電磁モデルの出力を示す例示的なグラフである。
図8B】マイクロ波キャビティの内側の電磁モデルの出力を示す例示的なグラフである。
図9】反応チャンバをマイクロ波キャビティ内に備えたマイクロ波NO生成器の例示的な一実施形態を示す図である。
図10】プラズマボールを生成するためのRF信号を生成するためのプロセスにおいて使用可能なRF駆動回路の例示的な構成要素を示す図である。
図11】マイクロ波プラズマボールNO生成装置のブロック図の例示的な一実施形態を示す図である。
図12A】マイクロ波NO生成システムの例示的な一実施形態を示す図である。
図12B】マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの例示的な一実施形態を示す図である。
図13】マイクロ波NO生成器の動作中のプラズマボールの例示的な写真である。
図14】プラズマチャンバの計算流体力学(CFD)モデルの出力の一例を示す図である。
図15】最大300ppm.slpmのNOを送達するように設計されたシステムからのNO生成値を示す例示的なグラフである。
図16図15と同じ300ppm.slpmシステムからのNO生成値を示す例示的なグラフである。
図17】電力制御変数を示す例示的なグラフである。
図18】例示的なマイクロ波NO生成器のNO/NO比を示す例示的なグラフである。
図19A】ノズルの位置が変化するマイクロ波キャビティの一実施形態を示す図である。
図19B】ノズルの形状が変化するマイクロ波キャビティの一実施形態を示す図である。
図19C】入口流を変調するマイクロ波キャビティの一実施形態を示す図である。
図19D】反応ガスの質量流量を変調するマイクロ波キャビティの一実施形態を示す図である。
図20】マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの組合せから生成ガスが出るシステムの一実施形態を示す図である。
図21】第1および第2の生成ガス通路を含むNO生成および/または送達システムの一実施形態を示す図である。
図22】マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの組合せを有するシステムの例示的な一実施形態を示す図である。
図23】マイクロ波NO生成装置の一実施形態の性能を示す例示的なグラフである。
図24】マイクロ波プラズマボール生成器から所要範囲のNO生成を提供する2つの手法を示す例示的なグラフである。
図25】励起周波数のスペクトルに関するNO生成システムの性能を示す例示的なグラフである。
図26】NO生成装置の浄化部の例示的な一実施形態を示す図である。
図27】150ml/分の反応ガス流および800Hzで動作する例示的なマイクロ波プラズマNO生成器の性能のグラフである。
図28】キャビティの壁に窓を有するマイクロ波キャビティの例示的な一実施形態を示す図である。
図29】内部の光センサを有するマイクロ波キャビティの例示的な一実施形態を示す図である。
図30】マイクロ波キャビティにおいてガスフローガイドおよび入口スタブにより規定された経路を通過する際の反応ガスの例示的な流れプロファイルを示す図である。
図31】数時間のNO生成後の4mm直径アルミニウム入口スタブの端部の例示的な写真である。
図32A】2部品フローガイドを利用する例示的なマイクロ波キャビティを示す図である。
図32B】反応ガスが入口スタブを通じてシステムに導入される例示的なマイクロ波キャビティを示す図である。
図33】3つの例示的なNO生成レベルの結果を示すグラフである。
図34】プラズマチャンバ内の圧力を低下させてプラズマの発生を促進する例示的なシステムを示す図である。
図35】マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの組合せを有する例示的なアーキテクチャを示す図である。
図36】マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの組合せの前に流量制限を有するNO生成器の一実施形態を示す図である。
図37】加圧浄化器アーキテクチャを有するマイクロ波プラズマボール生成器の一実施形態を示す図である。
図38】プロセス制御装置およびマイクロ波生成器がマイクロ波キャビティに直接接続されているシステムの一実施形態を示す図である。
図39】マイクロ波キャビティおよび反応チャンバが別々に12Wの入力電力で動作する代表的なNO生成器の性能を示す例示的なグラフである。
図40】多様なパルス周波数およびデューティサイクルに関してシステムの一実施形態の例示的なNO/NO性能を示すグラフである。
図41】印加電力をX軸、NO生成を左縦軸、NO/NO比を右縦軸として例示的なシステムの性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記特定の図面は、本開示の実施形態を示すものの、考察に記載されるように、他の実施形態も考えられる。本開示は、代表として例示的な実施形態を提示するが、何ら限定するものではない。当業者であれば、本開示の実施形態の原理の範囲および主旨に含まれる他の多くの変更例および実施形態を考案可能である。
【0020】
以下の説明は、例示的な実施形態を提供するに過ぎず、本開示の範囲、適用可能性、または構成の制限を意図したものではない。むしろ、例示的な実施形態に関する以下の説明は、当業者に対して、1つまたは複数の例示的な実施形態を実現する実施可能説明を提供することになる。本開示の実施形態の主旨および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置の種々変更が可能であることが理解される。
【0021】
以下の説明においては、具体的詳細を与えることにより、実施形態の十分な理解が得られるようにする。ただし、当業者であれば、これらの具体的詳細なく実施形態を実行可能であることが理解されよう。たとえば、本開示の実施形態のシステム、プロセス、および他の要素は、不要な詳細で実施形態が不明瞭となることがないように、ブロック図の形態の構成要素として示される場合がある。他の例では、実施形態が不明瞭となることがないように、周知のプロセス、構造、および技術を不要な詳細なく示す場合がある。
【0022】
また、個々の実施形態は、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、またはブロック図として示されるプロセスとして説明される場合もある。フローチャートは、逐次プロセスとして動作を説明し得るが、これら動作の多くは、並列または同時に実行可能である。また、動作の順序は、並び替えが可能である。プロセスは、その動作が完了した場合に終了となり得るが、考察されないまたは図中に含まれない追加のステップを有することも可能である。さらに、詳細に説明する任意のプロセスのすべての動作は、すべての実施形態において行われなくてもよい。プロセスは、方法、関数、手順、サブルーチン、サブプログラム等に対応し得る。プロセスが関数に対応する場合、その終了は、呼び出し元関数またはmain関数に関数を返すことに対応する。
【0023】
以下、本明細書の一部を構成するとともに例示として本開示の具体的かつ例示的な態様および実施形態を示す添付の図面を参照して、主題をさらに詳しく説明する。ただし、主題は、多様な異なる形態で具現化されてもよく、網羅または請求される主題は、本明細書に記載のいかなる例示的な実施形態にも限定されないとの解釈が意図されるものである。例示的な実施形態は、例示を目的として提供するに過ぎない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的に捉えられることを意図したものではない。
【0024】
一般的に、専門用語は、文脈中の使用から少なくとも部分的に理解され得る。たとえば、本明細書において使用する「および(and)」、「または(or)」、または「および/または(and/or)」等の用語は、これらの用語が使用される文脈によって少なくとも部分的に決まり得る多様な意味を含み得る。通常、「A、B、またはC」等のリストの関連付けに用いられる場合の「または(or)」は、包括的な意味で使用されるA、B、およびCのほか、排他的な意味で使用されるA、B、またはCの意味が意図される。また、本明細書において使用する用語「1つまたは複数(one or more)」は、文脈によって少なくとも部分的に決まるが、単数の意味で任意の特徴、構造、または特性を説明するために用いられる場合もあるし、複数の意味で特徴、構造、または特性の組合せを説明するために用いられる場合もある。同様に、「a」、「an」、または「the」等の用語についても、少なくとも部分的に文脈に応じて、単数使用の伝達または複数使用の伝達として理解され得る。また、用語「~に基づく(based on)」は、因子の排他的集合の伝達を必ずしも意図しないものと理解され、代わりに、同じく少なくとも部分的に文脈に応じて、必ずしも明示的に記載されない付加的な因子の存在を許容し得る。
【0025】
本開示は、さまざまな用途において、たとえば、病室内、救急治療室、医務室、診療所、ならびに病院外において携帯もしくは携行装置として用いられる酸化窒素(NO)生成および/または送達のシステムおよび方法に関する。NO生成および/または送達システムは、多くの形態が可能であり、生成ガスを利用する既存の医療装置と協働するように構成されている装置、独立型(携行型)装置、既存の医療装置と一体化可能なモジュール、NOシステムのさまざまな機能を実行し得る1つもしくは複数の種類のカートリッジ、ならびに電子NOタンクが挙げられるが、これらに限定されない。NO生成システムは、窒素および酸素を含む反応ガス(周囲空気が挙げられるが、これに限定されない)を使用して、NOが豊富な生成ガスを生成する。
【0026】
マイクロ波を使用して酸化窒素(NO)を生成するためのシステムおよび方法が提供される。いくつかの実施形態においては、マイクロ波エネルギーによる窒素化合物の生成の利用によって、反応ガス流内にプラズマボールを生成可能である。いくつかの実施形態において、NO生成・送達システムは、マイクロ波生成器、マイクロ波キャビティ、プラズマチャンバ(反応チャンバ)、および浄化器を備え得る。また、いくつかの実施形態において、このシステムは、反応ガスプレフィルタ/浄化器を含み得る。いくつかの実施形態においては、アンテナによって直接または導波路を通じて間接的に、マイクロ波エネルギーを共振マイクロ波キャビティに送達可能である。いくつかの実施形態においては、マイクロ波エネルギーによってNOを生成可能であり、NO生成システムには、経時的に摩耗するために交換を要する部品が存在せず、低コストの材料により作製可能である。
【0027】
また、本明細書に記載のシステムでは、所与のレベルのNO生成物を生成するために、エネルギー源から使用する電力が少ない。バッテリ給電器具の用途では、電力が少ないことにより、器具のサイズ、重量、およびコストとも直接関連する低容量のエネルギー源の使用が可能になる。たとえば、移動式または携行型器具の用途に使用可能であり、患者は、NO治療中に装置を持ち運びまたは運搬することができる。また、電力消費が少ないことは、消耗または充電式バッテリ源でのより長い動作時間に直接関連する。いくつかの実施形態において、NO/NO出力比は、望ましい入力電力範囲に対して最適の値となるように調節され得る。プラズマからNOを除去するための使い捨て浄化カートリッジを含む器具の用途では、この値の最適化が可能であることによって、使い捨てカートリッジの寿命を延長可能である。
【0028】
いくつかの実施形態においては、マイクロ波キャビティおよび反応チャンバは同心であるが、独立したガス容積を有する。これにより、NO生成ガスの移動時間が短くなって酸化が最小限に抑えられるとともに、急冷ステップへの移動時間が早められる。いくつかの実施形態において、ガス容積は、流体連通している。いくつかの実施形態においては、2つの容積内のガス組成および/または流量が異なる。いくつかの実施形態においては、パルス状または連続マイクロ波エネルギーによって、連続プラズマボールが維持される。いくつかの実施形態においては、断続的プラズマボール形成(パルス状ボール)が用いられる。いくつかの実施形態において、プラズマの発生には、低圧(真空)および/または周囲圧力の使用を含み得る。いくつかの実施形態においては、紫外光の利用によって、反応ガスのイオン化によるプラズマ形成を促進する。
【0029】
NO生成装置は、NOを利用し得る任意の装置との併用または任意の装置への組み込みが可能であり、任意の装置としては、人工呼吸器、麻酔装置、除細動器、心室補助装置(VAD)、持続的気道陽圧(CPAP)マシン、二相性気道陽圧(BiPAP)マシン、非侵襲陽圧呼吸器(NIPPV)、鼻カニューレ用途、噴霧器、体外式模型人工肺(ECMO)、バイパスシステム、自動化CPRシステム、酸素送達システム、酸素濃縮器、酸素生成システム、自動化体外式除細動器(AED)、MRI、および患者モニタが挙げられるが、これらに限定されない。また、生成された酸化窒素の送り先としては、任意の医療装置と関連付けられている任意の種類の送達装置が可能であり、鼻カニューレ、手動換気装置、フェイスマスク、吸入器、または任意の他の送達回路が挙げられるが、これらに限定されない。また、NO生成能力をこれらの装置のいずれかに組み込むことも可能であるし、これらの装置を本明細書に記載されるようなNO生成装置とともに使用することも可能である。
【0030】
図1は、反応ガスの取込み12およびプラズマチャンバ22への送達用の構成要素を含むNO生成システム10の例示的な一実施形態を示している。反応ガスは、化学物質(たとえば、VOC、NO、アンモニア)浄化器、特定のフィルタ、ならびに1つもしくは複数の湿度調整機構のうちの1つまたは複数を含むガス調節カートリッジを通じてシステムに入る。圧力、温度、および/または湿度(PRT)センサによって、反応ガスの物理的特性を特徴付けることができる。この情報は、治療制御装置に転送され、NO生成器による、マイクロ波活動、プラズマチャンバ圧力、および反応ガス流量の計算に入力されることにより、目標レベルのNO生成が実現される。このシステムは、マイクロ波生成回路28、マイクロ波キャビティ23、ならびに1つもしくは複数のマイクロ波源アンテナ24の使用によって、反応ガスから所望量のNOを含む生成ガス32を生成するように構成されている。また、このシステムは、マイクロ波生成器28と電気的に通信して、システム内の条件、および/または生成ガスを患者に送達する別個の装置に関する条件、および/または生成ガスを受け入れる患者に関する条件と関連する1つまたは複数の制御パラメータを用いることにより、生成ガス32中のNOの濃度を制御するように構成されている治療制御装置30を含む。
【0031】
また、制御装置30は、ユーザによるシステムとの相互作用、目標NO投与レベルの入力、システムおよびNO生成に関する情報の確認、ならびに/またはNO生成と関連するパラメータの制御を可能にするユーザインターフェース26と通信する。
【0032】
いくつかの実施形態において、NOシステムの空気圧経路は、空気をマニホールド36に押し通すポンプを含む。他の実施形態においては、外部源(たとえば、壁空気、加圧ガスシリンダ等)からNO生成器の入口に加圧反応ガスが提供される。マニホールドは、1つまたは複数のバルブ(三方弁、バイナリ弁、逆止弁、および/または比例オリフィス)で構成されている。治療制御装置30は、ポンプ動力、ガス流量、プラズマの電力、および/または放電後のガス流の方向を制御する。バルブを構成することにより、治療制御装置は、手動呼吸通路、人工呼吸器通路、またはガスセンサチャンバへとガスを案内して、生成ガス中のNO、NO、およびOレベルを直接測定することができる。いくつかの実施形態においては、呼吸ガス(すなわち、治療流)の質量流量を測定し、呼吸ガスをNO生成ガスと合流可能な人工呼吸器カートリッジを通じて、呼吸ガスを案内することができる。
【0033】
プラズマチャンバ22において生成されたNOが豊富な生成ガス32の形態のNO生成システムからの出力は、呼吸装置または他の装置に案内して患者にNOを送達することも可能であるし、NO生成システムのセルフテストまたは校正のために提供される複数の構成要素に案内することも可能である。いくつかの実施形態において、このシステムは、2つの方法、すなわち、1)患者の近くの患者吸気回路からガスを収集して、サンプルライン48、フィルタ50、および水トラップ52に通過させる方法、または、2)プラズマチャンバ22から出たガスを空気圧回路から直接分流する方法にて、サンプリングするガスを収集する。いくつかの実施形態においては、浄化後であるが、患者気流への希釈前に生成ガスが分流弁44で分流されてガスセンサに送られる。いくつかの実施形態においては、装置の近くおよび/または希釈後の装置内の吸気空気流から生成ガスが収集される。装置のガス分析部内では、生成ガスが1つまたは複数のセンサを通過することにより、その中のさまざまなガスの温度、湿度、濃度、圧力、および流量のうちの1つまたは複数が測定される。
【0034】
図2は、再循環アーキテクチャを有するNO生成・送達システム60の一実施形態を示している。反応ガス62は、化学物質浄化器、特定のフィルタ、および加湿器/除湿器のうちの1つまたは複数を含むガス調節器64を通じてシステムに入る。反応ガスは、再循環ガスが通路に入るとともにプラズマチャンバに入る合流点を通過する。プラズマチャンバは、反応ガス流路内にプラズマボールを形成するマイクロ波キャビティ内に配置されている。プラズマチャンバからガスを引き出すには、ポンプ66が用いられる。いくつかの実施形態において、ポンプは、一定の流量(たとえば、3slpm)で動作する。ガスは、再循環ループに入って、患者吸気通路に注入されるガスを補う。ポンプから出たガスがNO浄化器を通過することによって、NO生成プロセスにより形成されたNOおよび再循環ループを回る際にNOの酸化により形成されたNOが取り除かれる。NO浄化器は、その前および/または後に1つまたは複数のフィルタを含み、浄化材の移動を防止するとともに、浄化器および可能性としてシステムの他の部分から放出された粒子(たとえば、スタブからのスパッタ粒子)を捕捉する。浄化器/フィルタ段から出た後、ガスは、圧力センサ81によって測定されるように、一定の圧力に維持されているノードに入る。一定圧力のノードから出ている流路は2つ以上存在する。1つの流路は、患者吸気流への生成ガス注入を制御する流量制御装置に通じる。ノードが一定圧力に維持されることにより、注入流量制御装置の精度が容易に保たれ、改善される。第2の流路および流量制御装置の利用によって、ノードの目標圧力を維持するとともに、生成ガスを再循環ループの最初(予備プラズマチャンバ)に戻すことができる。第3の任意選択の流路には、生成ガス内のNOおよび/またはNOレベルの監視に用いられる1つまたは複数のガスセンサを通る生成ガス流を調節する流量制御装置を含む。共振マイクロ波キャビティ72内のマイクロ波アンテナ74は、治療制御装置80から受信した所望の治療条件に基づいてさまざまなパルス持続時間および電力レベルのマイクロ波を生成するマイクロ波生成器78によりエネルギー供給される。ユーザインターフェース76は、ユーザから所望の治療条件(投与量、治療モード等)を受信し、それらを主制御盤105に伝達する。また、ユーザインターフェースは、装置状態(たとえば、警報条件、使い捨て構成要素の状態、バッテリ充電状態、警報停止、および他の種類の情報)をユーザに伝達するのにも使用される。主制御盤105は、目標投与量を治療制御装置80に中継するとともに、ガス分析センサパック104からのNO測定濃度を監視する。主制御盤105は、エラー条件についてシステムを監視し、必要に応じて警報を生成することができる。反応ガス62は、プラズマチャンバ72を通過する際に生成ガス82へと変換され、少なくとも一部が酸化窒素および二酸化窒素に変換される。図の左縁の圧力センサ、温度センサ、および/または湿度センサにより行われた周囲ガス測定結果が治療制御装置への入力として使用され、プラズマ補償によって投与精度が向上する。いくつかの実施形態においては、制御装置によって、反応ガスの調節(たとえば、除湿の程度)が能動制御される。いくつかの実施形態において、治療制御装置は、湿度が10%から50%へと増加するにつれてマイクロ波パルスのデューティサイクルおよび/または周波数を増大することによって、たとえばNOの一定生成レベルを維持する。いくつかの実施形態において、治療制御装置は、プラズマチャンバの圧力が増加するにつれてマイクロ波パルスのデューティサイクルおよび/または周波数を低減することによって、NOの一定生成レベルを維持する。生成ガスは、プラズマチャンバ72から出て、ポンプ66、NO浄化器88、および粒子フィルタ88を通過する。いくつかの実施形態においては、ポンプを通る生成ガスの流量を一定にして、より優れたNO生成制御を容易にする。プラズマチャンバを通る流量は、用途および生成されるNOの量に応じて、100ml/分から5lpmまで変動し得る。いくつかの実施形態において、チャンバ形状は、特定の反応ガス流量において最適なNO生成となるように設計されており、このシステムは、NO生成を変調する手段として、反応ガス流量を変化させる。
【0035】
粒子フィルタから出た生成ガスは、ノード89に入って、3つの異なる方向に進み得る。生成ガスは、治療ガス流への導入に先立って、注入流量制御装置94を流れる。治療ガスの投与に必要な量を超える過剰な生成ガスは、ノード89における一定の生成ガス圧力を維持するように制御される再循環流量制御装置91を経由する。いくつかの実施形態においては、第3のガス流路が生成ガスをガス検知流量制御装置93に経由させて、NOセンサ89に特定のガス流量を提供する。NOセンサ95からの測定結果を治療制御装置が利用することにより、生成ガス内のNOの目標濃度を維持することと、システム(すなわち、管壁、浄化器等)で失われたNOの量を測定することと、のうちの1つまたは複数を行う。
【0036】
注入流量制御装置94から出た後、生成ガスは、通気カートリッジ90に入る。いくつかの実施形態において、通気カートリッジ90は、治療ガス流93を測定する1つまたは複数の質量流量センサ92を含む。流量センサ92からの治療ガス流測定結果は、治療制御装置80を介して、生成ガス流制御装置94の入力として機能する。生成ガス82は、治療流に導入された後、任意選択のフィルタ97および吸気管類を通過する。患者の近くでは、器具(fitting)96の使用により、吸気流からサンプルライン98、フィルタ100、水トラップ102、およびNafion(登録商標)管類(図示せず)を通じて吸気ガスの一部を引き出し、ガスサンプルを調製してガスセンサ104に運ぶ。ガスセンサは、窒素、酸素、酸化窒素、二酸化窒素、ヘリウム、および二酸化炭素のうちの1つまたは複数を測定可能である。サンプルガスは、ガス分析センサパック104から出て周囲空気となる。いくつかの実施形態において、サンプルガスは、環境(図示せず)への放出に先立って浄化される。いくつかの実施形態において、システム60は任意選択として、分流弁94および分流ガス経路95を通じて直接、ガスセンサパックおよびシステム外へとガスを案内することができる。分流弁94を伴ういくつかの実施形態において、マニホールド86は、分流弁94が開いている場合のフィルタ-捕集器-フィルタへの流れを遮断するバルブ(図示せず)を含む。
【0037】
マイクロ波エネルギー
マイクロ波エネルギーは、波長が1mm~1mすなわち周波数が300GHz~300MHzの電磁エネルギーである。マイクロ波エネルギーは、高周波電源により生成され、アンテナにより伝送される。このエネルギーは、マイクロ波キャビティに直接導入することも可能であるし、遠隔の生成場所から導波路を通じてマイクロ波キャビティまで案内することも可能である。いくつかの実施形態において、マイクロ波は、封止チャンバ内で動作するが、他の実施形態においては、マイクロ波エネルギーを集中させるように成形されつつキャビティに出入りするガスの交換を可能にするキャビティ内で動作する。
【0038】
いくつかの実施形態において、マイクロ波NO生成器は、複数の動作周波数を掃引して、キャビティの共振周波数を識別する。いくつかの実施形態において、マイクロ波NO生成器は、共振周波数またはその近くの周波数で動作する。共振は、特に高いQ値で電圧利得をもたらし、小さな入力電圧から、プラズマボール領域において高い電界強度を得るのに使用可能である。共振回路においては、RF信号の振幅が大きいほど、より低いQで必要な電界強度の生成が可能となる。同じ電圧を実現するのに、共振利得が小さくて済むためである。低Qの共振回路は、ピークが広いため、動作温度の変化に起因して発生する可能性があるような励起周波数または成分値の小さな変動の影響を受けにくい。
【0039】
マイクロ波の周波数は、キャビティの設計に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態において、キャビティの設計は、円筒状または球状であり、その寸法は、マイクロ波エネルギーが集中する予測可能領域を生成するためのマイクロ波エネルギー波長(たとえば、1/4波長)の関数である。十分な電力が印加されると、集中したマイクロ波エネルギーは、分子をそれらの単原子型およびイオン型に分離可能なプラズマを生成することができる。一例として、マイクロ波キャビティ内に空気が存在しプラズマが形成されると、二原子の窒素および酸素が個々の窒素原子および酸素原子と、新たな分子として再結合し得るイオンと、に分離される。
【0040】
マイクロ波エネルギーは通常、300MHz~300GHzの周波数であるが、この範囲外の他の周波数も使用可能である。
【0041】
プラズマボールNO生成
集中した共振マイクロ波エネルギーによって、反応ガス内に十分なエネルギーが生成され、プラズマが固体表面に直接接触することなく、プラズマが形成され得る。これによって、低い構成要素温度でシステムが動作可能となり、摩耗を低減し、摩擦をゼロにできる可能性があり、チャンバ内部構成要素の長期的/熱的劣化の可能性が最小限に抑えられ、従来の放電プラズマ生成器よりも耐用年数が大幅に長くなる。また、構成要素の温度が低いと、プラズマ内および周囲におけるNO生成器内部構成要素の熱誘起応力および表面酸化が低減され得る。また、この手法によって、電極間の放電で起こり得るような、スパッタ金属粒子が生成ガスに導入される可能性が事実上排除される。
【0042】
いくつかの実施形態において、反応チャンバは、入口スタブの先端と出口スタブとの間でもっと強い電界が発生するように設計されている。いくつかの実施形態において、出口スタブはさらに、ガス出口ノズルとしても機能する。これは、共振マイクロ波エネルギーが最も高密度であり、かつプラズマ形成が発生している場合である。プラズマボールは、拡散ならびにある程度の放射および対流による損失を補うために電界からの入力電力が十分大きな領域において存在することから、入口スタブには接触しない。スタブ等の隣接表面への拡散損失は、局所的な電界が補助できないほど大きく、プラズマの範囲を制限する。
【0043】
言い換えると、プラズマは、電力バランスおよび粒子バランスが定常解を有する領域において持続する。このため、エネルギーの損失(たとえば、熱伝導)ならびに入口スタブに対するイオンおよびラジカルの損失(たとえば、スタブの表面におけるイオンまたはラジカルの再結合)は、マイクロ波場からの入力電力と、その結果としてのプラズマコアにおけるイオン化率および解離率と、によりバランスが保たれる。入口スタブ(すなわち、材料境界)の近くでは損失が非常に大きく、マイクロ波場が強い場合であっても、損失が支配的であり、スタブ表面の近くの領域におけるプラズマの持続が妨げられる。マイクロ波場が十分であれば、プラズマコアにおけるマイクロ波エネルギーの吸収によってイオンおよびラジカルが生成され、拡散プロセス、熱、ラジカル、および電子の拡散によって外部への損失のバランスが保たれる。
【0044】
マイクロ波プラズマボールNO生成は、NO生成のための高温プラズマ法である。プラズマボールと入口スタブとの間には、空気の間隙が維持される。いくつかの実施形態において、反応ガスは、入口スタブの軸と平行に流れる。ガスは、入口スタブの端部に達すると、プラズマボール周辺のそばを通りプラズマの熱に曝される。いくつかの実施形態において、プラズマボールは、パルス状または連続マイクロ波エネルギーによって継続的に維持される。いくつかの実施形態において、プラズマボールは、目標量のNOを送達する周波数および持続時間において形成および消滅する。高いガス温度、コロナの欠如(持続時間は長くてもナノ秒)、およびこのプロセス中の連続プラズマボールの存在によって、オゾンの生成は非常に少なくなる。図示しないいくつかの実施形態においては、プラズマボールにおよび/またはプラズマボールの接線方向に反応ガスが案内されることを伴う。各設計では、プラズマボールに作用する力間のバランスが取れることによって、プラズマを維持し、予測可能かつ反復可能なNO生成を提供する。
【0045】
いくつかの実施形態においては、NO生成器によって、(たとえば、初期の開始から完全に形成されるまで)連続マイクロ波エネルギーによりプラズマボールが形成された後、NO生成器がパルス状エネルギーモードに切り替わってプラズマボールを維持する一方、NO生成器への入力電力は節約される。いくつかの実施形態において、NO生成器は、第1の周波数(たとえば、共振等)を使用してプラズマボールを形成した後、第2の周波数を使用してプラズマボールを維持するようにしてもよい。いくつかの実施形態において、使用される第1の周波数は、基本共振周波数または基本共振周波数に近い周波数であってもよく、第2の周波数は、第1の周波数の高調波であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の周波数および第2の周波数は、異なる変調周波数を使用するようにしてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、プラズマボールの物理的なサイズは、所与の流量で生成されるNOの濃度に直接相関する。言い換えると、形成されるプラズマボールの直径は、プラズマボールの持続に必要なマイクロ波エネルギーのみならず、一定の流量(たとえば、PPM.SLPM)で生成器により生成されるNOの濃度にも対応する。
【0047】
反応器の設計
例示的な反応器の設計を図3に示す。図3に示す反応器110は、2つの同心チャンバを含む。外側のチャンバであるマイクロ波キャビティ112は、マイクロ波エネルギーを含むため、導電性材料で構成されるか、またはメッキされ、マイクロ波キャビティハウジング114を含む。内側のチャンバの壁は、プラズマチャンバ116を形成する。マイクロ波透過性でガス不透過性の材料(たとえば、石英、テフロン(登録商標)、セラミック)で構成されている内側のチャンバの壁は、反応ガスをプラズマ領域においてガイドする。この手法は、生成ガスが進む体積を最小限に抑えつつ、反応ガス内のプラズマ形成のための特定の位置にマイクロ波エネルギーを集中させるのに必要な形状を提供する。これにより、生成ガスの移動時間が最小限に抑えられることでNOへの酸化の時間も最小限に抑えられるとともに、装置出口、最終的には患者への移動時間が早められる。
【0048】
マイクロ波エネルギーは、マイクロ波入口118からマイクロ波キャビティ112に入る。マイクロ波エネルギーは、遠隔で生成し、導波路を介してマイクロ波キャビティに管で導くことも可能であるし、アンテナによってキャビティの近くで生成することも可能である。いくつかの実施形態においては、マイクロ波源アンテナがキャビティ内に延びる。いくつかの実施形態においては、導波路がマイクロ波エネルギーをキャビティ内に案内する。
【0049】
反応ガスは、2つの同等な入口120を通じて反応器に入る。いくつかの実施形態において、入口は、環状空間の形態である。反応ガスは、中央の入口スタブ122の周りを流れて、ガスフローガイド124の制約を受ける。マイクロ波エネルギーは、マイクロ波キャビティ112の側面を通じて導入される。キャビティの長さは、電界密度が入口スタブの先端で最高となるように、マイクロ波波長の1/4のほぼ奇数倍となるように選択される。キャビティのガス出口は、スタブ間の地点にマイクロ波エネルギーを集中させるガス出口スタブを形成する。焦点における温度は、ガス分子をイオン化し、プラズマを形成し、NおよびO分子を単原子型へ解離するのに十分に高い温度を超える。
【0050】
反応ガスは、入口スタブの先端のそばを通ると、プラズマボール126を通過して流れる。反応ガスの一部が酸化窒素および二酸化窒素に変換される。ガスフローガイド124は、プラズマチャンバ116の容積を最小限に抑え、これは、マイクロ波キャビティの容積よりも小さい。いくつかの実施形態においては、ガスフローガイドが一切使用されず、この場合、生成ガスがキャビティから出るまでの移動時間が長くなるため、NOレベルが高くなる可能性がある。これらの影響は、反応ガスの流量およびキャビティ容積に応じて無視可能であり得る。いくつかの実施形態において、反応ガス流量は、必要な生成レベルおよびシステムアーキテクチャに応じて、100ml/分~5lpmの範囲内である。
【0051】
生成ガスは、キャビティから出ると、出口スタブを通って進み、生成ガスを急冷することにより高温の生成ガスから下流の構成要素を保護する任意選択の熱交換器128を通過する。生成ガスは、図の右端から出ると、システムの残りの部分を通過して患者まで到達し得る。
【0052】
マイクロ波NO生成器のキャビティ形状(すなわち、本体、上蓋、下蓋、石英管、およびスタブ)によって、キャビティの共振器特性が決まる。キャビティの内部寸法(半径および長さ)、上下蓋のスタブ形状、石英管の材料特性(誘電率)、材料寸法(壁厚)、およびアンテナ設計は、共振器性能の主因子である。いくつかの実施形態において、キャビティは、2.5GHzで共振するとともに、上下スタブ間に適切な電界強度を与えることにより、空気中で絶縁破壊を開始してプラズマを点火するのに十分な電圧を確保するように設計されている。励起周波数としては、無線インフラストラクチャにおいて広く使用され、マイクロ波信号生成および増幅の構成要素を入手しやすいことから、2.5GHzが好都合である。また、キャビティの寸法も妥当なものとなる。図4Aおよび図4Bは、特定のアンテナ設計の場合(この場合は、未改良のAmphenol RF172270コネクタ)のキャビティにおける電界強度の計算シミュレーションを示す図である。電界強度は、入口スタブ130の上面に沿って最高となる。主因子は、キャビティの直径および長さのほか、下側スタブである。これらの機構の寸法により、この種のキャビティが示すことになるさまざまな共振モードについて、キャビティの自然共振周波数が決まる。これらの周波数は、流路の形成に用いられる石英管等、キャビティ壁内の誘電体材料の追加による影響を受ける場合がある。
【0053】
図5は、フローガイドのない円筒状マイクロ波キャビティ140の一実施形態を示している。マイクロ波放射は、入口142でチャンバに入る。反応ガスは、入口144でチャンバに入る。いくつかの実施形態において、反応ガスは、中央スタブと平行にチャンバへ入ることにより、中央スタブの長さに沿って層流を確立する。いくつかの実施形態においては、ガスがチャンバの長さを進む際に入口スタブの周りで渦巻くように、円筒状チャンバの接線方向に反応ガス流が導入される。フローガイドをなくすことにより、簡素化および質量低減が可能となり得る。
【0054】
図6は、マイクロ波キャビティ150の別の実施形態を示している。チャンバの長さおよびキャビティの直径はそれぞれ、マイクロ波放射の波長の約1/3および1/4である。たとえば、キャビティの内径としては37.0mmが可能であり、内部の長さとしては26.2mmが可能である。図示のように、所望であれば、生成ガスがマイクロ波キャビティから出る際に、冷却された生成ガス出口の使用により、生成ガスを急冷可能である。
【0055】
図7は、アルミニウムハウジング162を有するマイクロ波キャビティ160の例示的な一実施形態に寸法詳細を追加して示している。キャビティ内の共振モードは、改良TEM(横電磁)同軸線モードである。これは、対称的かつ横磁界となるが、EzおよびEr(半径方向および長手方向の電界)を有する。いくつかの例示的な実施形態において、目標共振周波数は、2.45GHzである。所望のマイクロ波場を生成するために多くの考えられ得るキャビティモードを選定可能であることが理解される。
【0056】
図8Aおよび図8Bは、マイクロ波キャビティの内側の電磁モデルの出力を示す例示的なグラフである。ピーク電磁界は、入口スタブの端部の縁部またはその近傍で生じる。入口スタブの縁部での半径が小さいほど、電界が強くなる。
【0057】
図9は、反応チャンバをマイクロ波キャビティ170内に備えたマイクロ波NO生成器の例示的な一実施形態を示している。反応チャンバは、ピンおよび出口に対してOリング174で封止された非導電性フローガイドまたは管172で構成されている。反応チャンバをマイクロ波キャビティ内に利用することの利点として、容積が小さくなることにより、移動時間が短くなるとともに、NOの酸化の可能性が低くなる。反応ガスは、図の左側のピンの中心を通って中央の入口スタブに入る。反応ガスは、スタブの中心を通過し、半径方向の孔を通じて、スタブとフローガイド管との間に規定されている環状空間に出る。半径方向の孔の数は、たとえば1~8つ以上に変化する。反応ガスが中央スタブの内部および上方を通過する際に、スタブは対流冷却される。チャンバ出口は、出口スタブとして機能し、生成ガスの温度を急冷するための冷却フィンを備えた導電性かつ熱伝導性の材料(たとえば、アルミニウム)で構成されている。いくつかの実施形態において、アルミニウムは、NOの存在下での腐食の可能性を低減するため、陽極酸化またはその他の処理がなされている。
【0058】
RF信号の生成
図10は、最終的にプラズマボールを生成するRF信号を生成するためのプロセスにおいて使用可能なRF駆動回路の例示的な構成要素を示している。合成器180の利用によりRF駆動信号が生成され(RFスイッチ182)、これが前置増幅器184に提供される。合成器は、RF搬送波周波数を生成する。固定周波数発振チップ等の他の構成要素に対して合成器を使用すると、キャビティ共振、NO生成レベル、反応ガス混合物、反応ガス湿度、およびNO生成を変化させ得る他の因子の変化のうちの1つまたは複数に応答したRF駆動信号の変調が可能となる。いくつかの実施形態においては、整数N合成器が利用される。制御装置は、RFスイッチを使用して、合成器からのRF出力を設計周波数およびデューティサイクルでパルス変調する。いくつかの実施形態においては、変調周波数は1kHz~30kHzの範囲、デューティサイクルは0.1%~20%の範囲である。変調されたRF信号が前置増幅器を通過すると、振幅の大きなRF信号が生成される。いくつかの実施形態において、この振幅は、約27Vピーク・トゥ・ピークである。その後、前置増幅器の出力によって電力増幅器186が駆動され、これによりアンテナ188が駆動される。制御装置は、合成器と通信して(たとえば、SPIインターフェース)、出力周波数およびデューティサイクルを制御する。いくつかの実施形態においては、2400MHz~2725MHzの周波数範囲内で出力が制御される。いくつかの実施形態においては、0.5MHzステップで周波数が調整される。
【0059】
システムの設計
図11は、マイクロ波プラズマボールNO生成装置のブロック図の例示的な一実施形態を示している。NO生成制御盤190は、入力192からDC電力を受電する。マイクロコントローラ194は、シリアルインターフェース194を利用して装置全体の制御装置と通信することにより、装置の動作を管理する。通信インターフェースは情報の受信に利用され、この情報としては、治療設定、警報条件、装置データ(たとえば、電極の使用年数、浄化器の種類)、環境条件、患者の呼吸数、および患者の吸気流量が挙げられるが、これらに限定されない。また、通信インターフェースは装置全体の制御装置への情報の送信にも利用され、この情報としては、警報条件、NO生成レベル、周囲条件測定結果、総稼働時間(たとえば、耐用年数の決定に使用可能)、および他の情報が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
マイクロコントローラは、プラズマキャビティ198を通じてガスを引き込むポンプ196を制御する。いくつかの実施形態においては、点火弁200の制御によって、生成ガスの流入を少なくとも部分的に遮ることにより、プラズマチャンバ内の圧力を低くしてプラズマボールの発生を促進する。いくつかの実施形態(図示せず)において、このシステムは、2つ以上の反応ガス入口弁を含み、このシステムは、1つまたは複数のバルブの開閉によって、プラズマチャンバ内の圧力を変化させる。いくつかの実施形態において、点火弁は、キャビティ中の圧力および/または流れを調節可能な比例弁である。また、反応ガス流量センサの利用によって、反応ガス流の確認、反応ガス流路の遮断の検出、欠陥ポンプの検出、流量測定結果の提供によるポンプの閉ループ制御の生成、および点火弁の適正な動作の確認のうちの1つまたは複数を行う。たとえば、反応ガス流量センサの使用によって、入口弁の適正な動作を確認可能である。キャビティを真空にするために入口弁を閉じることができ、これによって、キャビティを通る流量がゼロになる。圧力センサの読取値と組み合わせたデータを使用することにより、入口弁が適正に動作するとともに、キャビティ圧力が正常に低下していることを確認して、高速かつ確実な点火を容易にすることができる。
【0061】
フォトダイオード202は、プラズマボールの領域内のガスを不安定化させてプラズマ状態への初期のガス励起を促進する光子を提供する。また、マイクロコントローラ194は、RFエネルギーを生成するRF駆動部204を制御する。RFエネルギーは、結合アンテナを通じてキャビティに導入される。マイクロコントローラによるRFエネルギーのさまざまな測定によって、生成プロセスを管理する。圧力センサは、プラズマチャンバと流体連通している。圧力測定結果は、点火弁および/もしくはポンプの閉ループ制御ならびに実際のプラズマチャンバ圧力に基づくプラズマ活動の補償のうちの1つまたは複数に利用される。また、いくつかの実施形態においては、圧力センサの利用により、反応ガス流路の遮断、ポンプの故障、点火弁の欠陥のうちの1つまたは複数を検出する。また、いくつかの実施形態において、マイクロコントローラは、正確なNO生成のためのプラズマパラメータの決定において、プラズマチャンバの温度および湿度センサにより測定されるような反応ガスの含水量を利用する。いくつかの実施形態においては、プラズマチャンバの赤外線出力を測定することにより、プラズマチャンバの温度が測定される。
【0062】
図12Aは、マイクロ波NO生成システムの例示的な一実施形態を示している。右端には、制御装置210の回路基板が存在する。制御装置210は、RF結合214を介してサーキュレータ構成要素212とインターフェースする。信号の生成および増幅を制御する制御装置210からサーキュレータ212に入ったマイクロ波エネルギーは、マイクロ波キャビティ216に送達される。RF増幅器を保護するため、キャビティ216からサーキュレータへと反射したマイクロ波エネルギーは、サーキュレータにより除去される。サーキュレータ構成要素は、コネクタを介して、RFアンテナ/結合ループ218に接続している。RFコネクタは、マイクロ波キャビティ内に挿入されている。光源220(たとえば、UV源)が石英窓を通して、光子をキャビティ216内に送り込む。キャビティの反対側において、UVセンサ等の光学センサ222は、UVおよび/または可視スペクトルの放射を検出するとともに、制御装置による分析用のプラズマからの出力光を測定するために利用される。光出力のタイミングおよび量は、装置およびNO生成の適正な機能を示す。生成ガスは、空気圧接続を通じて下から上に流れる。
【0063】
図12Bは、キャビティ本体231中に形成されたマイクロ波キャビティ230およびプラズマチャンバ壁232中に形成されたプラズマチャンバの例示的な一実施形態を示している。上下蓋234、236、封止用Oリング238、石英管の寸法、およびガス流量によって、キャビティ内の気流動力学が決まる。各蓋234、236は、軸方向を中心とし、蓋のスタブ機構を空気が流れ得るようにする空気通路を含む。下蓋は、スタブ(すなわち、アンテナ)の周りで半径方向に分布して空気を一様に分散させるクロスドリル穴(本例においては、6つ)を含む。石英管の内壁と下蓋上のスタブの外面との間の間隙は、下側スタブに沿う十分な流速を確保するように、厳密に制御される。上蓋とスタブ間の空間との組合せにより、下側スタブの形状によって、プラズマの周りに再循環ゾーンが形成されるが、これは、プラズマの安定化およびプラズマからの出口ガスの冷却に役立つ。また、上蓋の出口通路も出口ガスを冷却する。
【0064】
封止用Oリング238は流路を封止し、これは、ガスがプラズマチャンバを正しく流れ、プラズマチャンバの真空引きを可能にするために必要なことである。また、これらは、両蓋と石英管との間の同心性が良好となるように石英管を配置する。これにより、石英管と下蓋との間の間隙が均一になり、出口スタブひいてはプラズマの周りでの流れ特性が均一になる。
【0065】
図13は、マイクロ波NO生成器の動作中のプラズマボールの例示的な写真である。反応ガスは、図の下から上に進む。明るいプラズマボールが入口スタブの上部にあることが分かる。
【0066】
図14は、プラズマチャンバの計算流体力学(CFD)モデルの出力の一例を示している。この図は、ガス流量のスライスであって、入口スタブ240およびプラズマチャンバ壁242の内壁(たとえば、石英管)を示す。石英管と入口スタブとの間の環状空間は、入口スタブの先端近くで最も小さいため、反応ガスの流量が最も大きくなり、チャンバの長手方向にガスを案内する。また、入口スタブの先端には、低圧ゾーン(すなわち、渦)が配置されている。プラズマは、この低圧ゾーンに存在する。
【0067】
NO生成の制御
通常のNO電気生成器は、さまざまなレベルでNOを生成可能である。NOの生成範囲内での生成の変調を可能にする因子には、電力、デューティサイクル、周波数、ガス流量、およびガス/プラズマ相互作用が含まれる。これらの因子は、治療制御装置により制御される。いくつかの実施形態においては、治療制御装置は装置内に配置されている。いくつかの実施形態においては、治療制御装置は装置の外部または隣に配置されている。
【0068】
プラズマ電力制御
電力:反応チャンバに送達される電力を変化させて、プラズマのサイズおよび温度に影響を及ぼすことにより、生成されるNOの量に影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態において、制御装置は、プラズマからの光出力を測定する光学センサを使用して、RF電力を測定する。いくつかの実施形態において、制御装置は、RF電力増幅器への入力電力を測定する。いくつかの実施形態において、制御装置は、結合アンテナからの反射信号強度を測定して、インピーダンス整合および電力伝送を決定する。
【0069】
RF信号振幅:RF駆動信号の振幅を変化させることによって、プラズマ電力を変調可能である。RF振幅の変調には、さまざまな方法が存在する。たとえば、合成器のRF駆動出力強度について、信号経路中の(ファームウェアを介してソフトウェア調整可能な)ハードウェア減衰器を変更することも可能であるし(離散抵抗器の交換により、dB値の異なる減衰器を形成する)、RF振幅の調整または変調パラメータ(たとえば、デューティサイクル)の調整によってプラズマ電力を変調することも可能である。
【0070】
マイクロ波周波数:マイクロ波エネルギーの動作周波数を変化させることによって、プラズマ電力を変調可能である。共振周波数での動作では、非共振周波数での動作よりも多くの熱が生じる。いくつかの実施形態においては、共振周波数と非共振周波数に費やされる時間の割合の利用によって、プラズマ電力を変調可能である。いくつかの実施形態において、プラズマがない場合の共振周波数は、約2.5GHzである。特定のチャンバの実際の共振周波数は、材料および構成要素の差異を考慮してチャンバごとに測定される。マイクロ波キャビティにプラズマが存在すると、回路のインピーダンス整合がシフトするため、電力伝送が最大となる周波数が変化し得る。いくつかの実施形態において、このシステムは、プラズマ発生の前の周波数と後の周波数の、2つの周波数で動作する。
【0071】
プラズマパルスデューティサイクル:一実施形態の場合、プラズマパルスの変調周波数は通常、2~18kHzである。所与のシステムの場合、それを下回ると安定性の問題および/またはプラズマ点火の問題が生じるレベルとして、下限が選定される。また、それを上回るとNO生成の変化が小さくなるか、無視できるようになるレベルで、上限が選択される。
【0072】
プラズマデューティサイクル:いくつかの実施形態においては、プラズマデューティサイクルの変化によって、反応器内の電力を変調する。反応器には電力を断続的に適用可能であり、プラズマパルス持続時間は、0~100%の範囲のデューティサイクルとして表される。これらの離散的なプラズマ事象によって離散的なNOボーラス(bolus)が生じ、これらがシステムを通って進む際に混ざり合うことで、装置から出る連続的なNO流を形成する。デューティサイクルの連続的な変化によって、さまざまな量のNOを生成可能である。分解能の限界によりデューティサイクルの調整が粗い場合は、パルスごとにパルス持続時間が2つ以上の持続時間の間で変化することで、目標平均NO生成量を実現することができる。
【0073】
図15は、最大300ppm.slpmのNOを送達するように設計されたシステムからのNO生成値を示す例示的なグラフである。x軸は、パルス変調周波数(kHz)を表す。y軸は、NO生成(ppm.slpm)を表す。グラフ内の陰影は、プラズマに送達されるDC電力を表す。変調周波数の低下およびパルス電力の増大がNO生成の増加と関連することが分かる。
【0074】
図16は、図15と同じ300ppm.slpmシステムからのNO生成値を示す例示的なグラフである。x軸は、パルス変調周波数(kHz)を表す。y軸は、デューティサイクル(%)を表す。グラフの色は、NO生成率(ppm.slpm)を表す。このプロットは、特定の生成値を生じ得る複数組の変調パラメータ(周波数およびデューティサイクルの組合せ)が存在することを示している。
【0075】
図17は、すべての電力制御変数を単一のグラフ上に示す例示的なグラフである。x軸は、パルス変調周波数(kHz)である。y軸は、パルスデューティサイクルであり、z軸は、NO生成(ppm.slpm)である。プロット内の色は、プラズマに送達される電力を示す。表面上の一連の黒色ドットは、さまざまなNO生成レベルの送達に使用され得る設定の代表的な組合せを示す。離散的な生成レベル間のレベルでのNO生成は、隣接するデューティサイクルレベルおよび周波数レベルのうちの1つまたは複数間の内挿により決定可能である。
【0076】
図15図16、および図17のプロットは、NO生成に関するRF変調の特性、すなわち、デューティサイクル、電力、およびNO生成間の線形相関と、変調周波数とNO生成との間の非線形逆相関と、を示している。
【0077】
図18は、パルス状モード(曲線250)、たとえば、800Hz変調、および0.15slpmの反応ガス流の連続モード(曲線252)で動作する例示的な2.552GHzマイクロ波NO生成器のNO/NO比を示している。図18は、すべての入力電力レベルにおいて、連続電力よりもパルス状送達でNO対NO比が高くなることを示している。また、図18は、パルス化によって、連続マイクロ波電力により持続可能なレベルよりも低い送達電力レベルでシステムが動作し得ることを示している。これは、所与の入力電力レベルに対して、パルス内マイクロ波エネルギーが連続動作よりもパルス状動作中に大きくなるためである。マイクロ波電力はパルス状動作中に、マイクロ波キャビティにパルス化されて入るが、プラズマボールは連続的であるため消滅せず、パルスごとに再点火する必要がない。類似実施形態の場合の変調周波数としては、約100Hz~数MHzの範囲が可能である。変調周波数の下限は、プラズマボールを維持する能力に左右される。周波数の上限は、プラズマ励起の物理的制限よりも切替えハードウェアの性能制限によってより左右される。いかなる周波数も使用可能ではあるが、キャビティおよびプラズマのサイズは一般的に、1/fに応じて拡大縮小することが理解される。たとえば、周波数が低いと、プラズマが大きくなり、より大きな電力が必要となる傾向がある。周波数が高いと、プラズマは小さくなるが、電力はより集中する。たとえば、915MHz、2450MHz、および5800MHzのISM帯を使用可能である。
【0078】
プラズマを起こすには反応ガスの圧力を低くする必要があり、これをマイクロ波パルスごとに実現するには複雑で時間がかかる。低い反応ガス圧力で動作するシステムは、各パルスでプラズマボールを起こすことにより、100Hz未満の変調周波数で動作可能である。大気圧以上でプラズマを動作させる利点として、反応ガスとプラズマとの間の相互作用の増加等によりNOの生成が増大するとともに、生成効率が向上し得る。したがって、変調周波数は通常、プラズマボールを維持するように選択されるため、より高い圧力での生成が可能となり、プラズマチャンバを部分的に排気してパルスごとにプラズマを再点火する必要がなくなる。
【0079】
ディザリング
いくつかの実施形態においては、目標NO生成プロファイルに従って、NOが必要に応じて生成される。いくつかの実施形態において、生成されたNOが目標NO生成プロファイルに一致する場合、システムは、動作デューティサイクルを変更しない。生成されたNOが目標NO生成プロファイルを超える場合、システムは、デューティサイクルをゼロにする。生成されたNOが目標NO生成プロファイルを下回る場合、システムは、デューティサイクルを大きくして、より多くのNOを生成する。いくつかの実施形態において、NO生成システムは、有限ボーラスにてNOを生成する。このシステムは、NOの需要を追跡し、累積NO生成と累積NO需要との差が1ボーラス中のNO量より大きい場合は、必要に応じてボーラスを生成する。これにより、NO需要曲線が同じサイズのNOボーラスへと効果的に離散化される。いくつかの実施形態において、NOボーラスは、異なるサイズを有する。
【0080】
反応ガス流
反応ガス流量:いくつかの実施形態においては、反応ガス流量の変調によって、プラズマと相互作用するガスの量を変化させる。流量を小さくするとNO形成が少なくなる一方、流量を大きくするとNO形成が多くなる。いくつかの実施形態においては、反応チャンバを通る反応ガス流量の変調によって、NO生成を変化させる。
【0081】
反応ガス圧力:プラズマにおける反応ガス圧力は、形成されるNOの量に影響を及ぼす。いくつかの実施形態においては、反応チャンバ内の圧力の変調によって、NO生成を変化させる。いくつかの実施形態において、プラズマの位置における圧力は、図19Aに示すように、プラズマに対するマイクロ波キャビティ260中のノズル262の位置を変化させること、図19Bに示すように、マイクロ波キャビティ270中のノズル272の形状を変化させること、図19Cに示すように、ポンプがプラズマチャンバ内の圧力をより引き下げるように、たとえば可変オリフィスを有するポンプ282を使用して、入口流量制御装置の制限を変調すること、図19Dに示すようにポンプ292のポンプ速度を変化させることおよび/または加圧源から反応ガスを受容する質量流量制御装置の設定を変化させることのうちの1つまたは複数によって、反応ガスの質量流量を変調すること、といった技術のうちの1つまたは複数を使用することにより変化する。ノズル形状を変化させる一例は、絞りの設計であって、ノズルの内径を変化させることができる。ノズルの内径が小さくなると、反応ガス流をチャンバの中心側へとより多く曲げる必要があり、これによってガス/プラズマ相互作用が大きくなる。いくつかの実施形態においては、プラズマチャンバおよびマイクロ波キャビティが流体連通していないことに留意されたい。この場合、プラズマチャンバおよびマイクロ波キャビティ内の圧力は、異なる可能性がある。これらの異なる手法を個別に使用することも可能であるし、組み合わせて使用することも可能であることに留意されたい。それぞれが反応ガスとプラズマとの間の相互作用を変化させる。圧力を加えると、プラズマの近傍により多くの反応ガス分子がもたらされる。反応ガス流量の増大によって、プラズマ近傍の反応ガス分子の反転が大きくなる。反応ガス流量が小さいと、より高い温度がより長い時間にわたって反応ガスに与えられるが、移動時間が長くなってNO酸化が増大し得る。
【0082】
ガス/プラズマ相互作用:反応チャンバの設計に寄与する別のものとして、ガス/プラズマ相互作用のレベルがある。これは本質的に、プラズマボールの近傍における反応ガスの流れプロファイルである。これは、プラズマの安定性、生成範囲、およびNO/NO比等、多様な性能因子に影響を及ぼし得る。通常は、計算によって理想的な流れプロファイルが策定され、最終的にベンチで調節される。プラズマと過度に相互作用する流れは、プラズマを消滅させたり、予測不可能に移動させたりする可能性がある一方、プラズマと十分に相互作用しないガスは、NOの生成が制限されることを理解されたい。反応ガスとプラズマボールとの理想的な相互作用には、反応ガスを過熱させることなくNおよびO分子を解離させるのに十分なエネルギーを供給するため、プラズマボールの周囲を通る均一かつ対称的な薄い反応ガス層を有することが伴う。反応ガスが過熱されると、他の化合物が形成され、生成が非効率になり、電力の無駄および余熱が生じるため、システムの残りの部分で対処することが必要になる。
【0083】
流れプロファイルは、プラズマへの流れの形状、速度、厚さ、および近さから成る。いくつかの実施形態において、流れプロファイルは、チャンバの内壁および入口スタブの形状により規定される。いくつかの実施形態においては、付加的なノズル構成要素の利用により、プラズマボールの近傍で反応ガス流を成形する。いくつかの実施形態においては、ノズル形状、プラズマに対するノズルの位置、反応ガスの速度、反応ガスの質量流量、およびプラズマボールの近傍における反応ガス流の厚さのうちの1つまたは複数を実時間で変化させることにより、NO生成を変調可能である。これらの制御はそれぞれ、プラズマが反応ガスに与える温度変化に影響を及ぼす。いくつかの実施形態においては、プラズマに近いガスの流れプロファイルを動作中に変化させ、反応ガスの曝露時間(流量)および厚さ(温度勾配)を変化させることにより、NO生成を変調する。プラズマチャンバを通る反応ガスの流れは、最小抵抗の経路をたどる。いくつかの実施形態において、反応ガス流は、質量流量の関数として、層流から乱流に変化する。これは、反応ガスとプラズマとの混合および相互作用のレベルに影響を及ぼす。一実施形態においては、プラズマの下流のノズルがプラズマの遠位位置からプラズマに向かって移動する(図19A)。ノズルがプラズマに向かって移動すると、反応ガス流路がプラズマに近くなるため、プラズマ/ガス相互作用が多くなり、ガスに伝わる熱の量が増える。
【0084】
低NO生成方法
プラズマ内のエネルギーおよびガス/プラズマ相互作用量の一方または両方の変調によって、マイクロ波NO生成器により低生成レベルのNOを生成可能である。プラズマエネルギーを変化させる方法は、マイクロ波振幅、パルス周波数、パルスデューティサイクル、パルスディザリング、マイクロ波周波数(たとえば、共振への近さ)、およびパルス電力レベルのうちの1つまたは複数を変化させることを含む。また、反応ガス質量流量の低減、反応ガス密度の低減、およびガス/プラズマ相互作用の低減(たとえば、反応ガスをプラズマから遠ざけること)のうちの1つまたは複数によりガス/プラズマ相互作用量を減らすことによっても低生成が実現され得る。これら低NO生成レベルへの手法の一部は、電力効率の低下と関連付けられるが、NO生成が低い場合の非効率的な動作であっても、必要となる電力レベルは低い。
【0085】
いくつかの実施形態においては、NO生成および患者へのNO送達が独立して制御される。目標NO量が患者の吸気リムに送達される。生成された過剰なNOは、システムから大気またはハウスバキューム(house vacuum)に排出される。いくつかの実施形態において、システムからの放出に先立ち、生成ガスからNOおよびNOのうちの1つまたは複数が取り除かれる。図20は、マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの組合せ300から出た生成ガスがポンプ302およびNO浄化器304を通過するシステムの一実施形態を示している。生成ガスの圧力は、生成ガスと連通する圧力センサ306によって測定される。患者に送られる生成ガスの量は、第1の流量制御装置308が制御する。いくつかの実施形態において、NOの量は、吸気流の量に比例する。第2の流量制御装置310は、生成ガスの残りが別の浄化器312(たとえば、NO浄化器)を流れてシステムから出ることを可能にする。これにより、プラズマチャンバの連続動作が可能になる。いくつかの実施形態においては、プラズマチャンバ動作(電力、周波数、デューティサイクル)および反応ガス流量が一定で、より高い再現性を有する。
【0086】
また、NO生成後の生成ガス中のNOの量を調整することも可能である。いくつかの実施形態においては、NO生成ガスをある期間エージングさせることにより、NOに酸化させることも可能である。その後、生成ガスのNOの浄化により、プラズマチャンバ内で作られ得るよりもNOの濃度が低い生成ガスが得られる。図21は、第1および第2の生成ガス通路(短い通路320および長い通路322)を含むNO生成および/または送達システムの一実施形態を示している。いくつかの実施形態において、このシステムは、治療に要するNO生成の範囲に応じて、一方または他方の経路を選択する。システムに3つ以上の通路が存在することにより、各通路においてNO濃度の選択肢を提供できることが理解される。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数のバルブ(三方弁324等)によって、通路を流れる生成ガスの割合を変化させることにより、システムから出るNOの濃度の連続範囲を提供することも可能である。いくつかの実施形態においては、生成ガスNOの損失のために意図的に長くした生成ガス経路が1つ存在する。これにより、NOの需要が低い用途の場合は長い生成ガス経路、需要が高い用途の場合は短いNO経路を利用することによって、システムのNO送達能力が拡張される。生成ガス流の制御は、この装置の制御装置により制御される。各経路を流れるガスの流量は、制御装置により複数の方法で決定される。いくつかの実施形態において、NOセンサ(図示せず)は、生成ガス濃度を測定し、制御アルゴリズムへの入力として提供する。いくつかの実施形態においては、NOシステムが1つまたは複数のバルブを特定の位置に設定して、特定のNO出力レベルを得るように構成されている。いくつかの実施形態において、制御装置は、生成ガス濃度、生成ガス圧力、経路を通る生成ガス流量、および経路の容積のうちの1つまたは複数に基づいて、生成ガス中に残ると予想されるNOの量を計算する。
【0087】
いくつかの実施形態においては、システムのリザーバの容積の変更によって、生成ガスの移動時間が変調される。移動時間が短い場合は容積が小さく、移動時間が長い場合は容積が大きい。図22は、マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの組合せ330と、可変容積エージングリザーバ334を備えたポンプ332と、を有するシステムを示している。生成ガスのエージング体積336の大きさおよび圧力は、可動ピストン338により調整可能である。
【0088】
図23は、マイクロ波NO生成装置の一実施形態の性能を示す例示的なグラフである。Y軸は、NO生成(ppmslpm)を表す。X軸は、入力電力(ワット)を表す。15~300ppmslpmおよび0.25~1.5Wに延びる陰影領域は、特定の一実施形態の場合の動作ウィンドウを表す。各曲線は、デューティサイクルを掃引する特定の動作周波数におけるシステムの性能を表す。初期周波数(たとえば、15kHz)で動作させ、デューティサイクル(すなわち、パルス持続時間)が固定され周波数がピークNO生成レベルに到達するまで低下する遷移点までデューティサイクルを増加させることによって、全生成範囲が低位から高位まで実現される。いくつかの実施形態において、変調周波数対生成の関係の支配的な影響は、温度/時間プロファイルに対する影響およびキャビティで発生する反応に対するその影響である。したがって、負荷インピーダンスのわずかな変化ひいては増幅器に対するキャビティの適合度は、反対方向に作用する(すなわち、適合度が高いほどより多くの電力が送達されることでより多くのNOが生成される)はるかに小さな二次的影響に過ぎない。
【0089】
図24は、マイクロ波プラズマボール生成器から所要範囲のNO生成を提供する2つの手法を示す例示的なグラフである。最も低いNO生成レベルである30ppm.slpmは、電力レベル2.4Wおよび周波数18kHzで生じる。電力が2.4Wから6.3Wまで大きくなると、NO生成も30ppm.slpmから120ppm.slpmまで線形に増大する。120ppm.slpmから300ppm.slpmまでのNO生成は、入力電力を6.3Wで一定に保ちつつ周波数を低くすることによって生じる。NO生成が300ppm.slpmになると、周波数は最終的に、2kHzである。このように、順次、電力を調整した後に周波数を調整してNO生成範囲を網羅する段階的な手法は、所要範囲の生成を可能にする1つの方法である(すなわち、図示のような1D変調)。
【0090】
各NO生成レベルは実際のところ、プラズマ周波数および電力の2つ以上の組合せによって実現可能である。これは、1つまたは複数の付加的なパラメータの周りでシステム性能も最適化する機会を与える。いくつかの実施形態において、周波数および電力の設定は、最小の電力で所要量のNO生成が得られるように選択される。これは、たとえばバッテリ作動のシステムにおいて役立ち得る。別の手法では、NO生成レベルごとにNO/NO比を最大化する。いくつかの実施形態において、各NO生成レベルの電力および周波数は、NO/NO比を最大化するとともに電力引き込みを最小化するように選択される。図24の破線は、周波数および電力を同時に変調して(すなわち、2D変調)NO生成範囲を与える一実施形態を示している。
【0091】
例示的な用途においては、以下のようにNO生成が制御される。すなわち、特定のNO投与レベル(たとえば、mg/hrまたは吸入ppm)が患者に処方される。処方された投与量、治療の測定結果(たとえば、患者の流量、流れのタイミング、吸気圧)、測定された周囲条件(たとえば、周囲圧力、温度、湿度)、プラズマチャンバと患者との間で(たとえば、NO酸化による損失、浄化器およびシステムの他の部分との相互作用による損失)失われると予想されるNOの量、ならびに装置の状態(たとえば、浄化器の使用年数、浄化器の種類、電極の使用年数、暖機の状態)に基づいて、システ制御装置は、生成されるべきNOの量を計算する。このシステムでは、NO生成レベルを方程式またはルックアップテーブルへの入力として使用することにより、電力および周波数の設定を決定する。いくつかの実施形態において、治療制御装置は、ルックアップテーブルに提示された値の間の値を内挿により決定する。いくつかの実施形態において、このシステムでは、NO生成の設定を電力に関連付ける方程式と、NO生成の設定を周波数に関連付ける別の方程式と、を利用する。たとえば、
P=0.142Pr+2.53
および
F=0.0001Pr^2-0.94*Pr+20.95
であって、Prは所望生成レベル(ppm.slpm)、Pは電力設定(ワット)、Fはプラズマパルス周波数(kHz)である。
【0092】
いくつかの実施形態において、ガス流内のわずかな時間にわたって、パルスボール生成器が利用される。生成ガスの濃度が希釈されるように、NO生成ガスおよび非NO含有ガス(たとえば、空気、N)の混合物によってリザーバが充填される。これにより、この装置は、生成ガスだけで生成し得るよりも少ない量のNOを送達可能となる。
【0093】
いくつかの実施形態において、マイクロ波プラズマボール生成器は、2つ以上の結合アンテナを含む。第1のアンテナは、反応ガスの励起およびプラズマチャンバ内でのプラズマボールの点火に利用される。第2のアンテナは、プラズマボールの持続に利用される。2つの異なるアンテナを有することにより、特定のシステム状態(たとえば、反応ガスの特性、プラズマ状態(オン/オフ))に対してそれぞれを最適化可能となる。いくつかの実施形態において、マイクロ波NO生成器は、2つ以上のアンテナ間でのディザリングによって、NO生成を変調する。たとえば、NO生成器は、非効率的なアンテナのNOレベルと効率的なアンテナのNOレベルとの間のNOレベルの生成によって、各アンテナのNOレベルの間の生成レベルを実現する。この手法によれば、マイクロ波NO生成システムは、広範なNO生成レベルを生成しつつ、プラズマボールを持続させることができる。いくつかの実施形態において、各アンテナは、別個のマイクロ波増幅器回路により駆動される。いくつかの実施形態において、RF周波数、振幅、パルス周波数、またはパルスデューティサイクルのうちの1つまたは複数が、アンテナごとに異なる。また、必要であれば、3つ以上のアンテナを使用可能であることが理解される。
【0094】
いくつかの実施形態において、マイクロ波NO生成システムは、プラズマボールの有無による状態間のインピーダンスの変化を補償することができる。プラズマチャンバにプラズマがない状態からプラズマボールを有する状態に変化すると、所与の周波数に対するインピーダンス整合および電力伝送がシフトする。いくつかの実施形態において、NO生成制御装置は最初、プラズマボールが存在しない場合のプラズマチャンバの共振周波数またはその近くでプラズマチャンバを励起する。プラズマボールが形成されると、このシステムは、プラズマボールが存在する場合のシステムの共振周波数またはその近くの値へと動作周波数をシフトさせる。いくつかの実施形態においては、励起周波数の掃引によって、共振周波数のピークが狭いことが明らかとなる。共振ピークが狭いシステムにおいては、厳密に共振周波数ではなく、共振周波数に近い周波数での動作によって、より安定した動作が可能となる一方、電力効率はいくらか低下する。図25は、励起周波数のスペクトルに関するNO生成システムの性能を示す例示的なグラフである。共振周波数(点A)での動作では、NO出力が大幅に増大するが、励起周波数または共振周波数が少しでもシフトすると、NO生成が大きく変化し得る。共振周波数の上下の周波数に費やされる時間が等しいものと仮定すると、このシステムでは、点Aの左右で生成が低下することから、NOの生成が不十分となる。図25の点Bで動作することにより、所与のデューティサイクルに対してシステムが生成するNOは少なくなるが、励起周波数および共振周波数の変動が存在する中ではNO出力がより安定する。これは、点Bにおいては、曲線の傾斜(周波数の変化に対する生成の変化)がより緩やかとなるためである。正確なNO投与量の送達を実現するには、安定したNO出力が重要となる。
【0095】
いくつかの実施形態において、反応ガス内の酸素含有量の低減によってNO生成を少なくする。いくつかの実施形態において、これは、装置のすべての動作中に行われる。いくつかの実施形態において、反応ガス中のO/N比は、NO生成が必要な期間中にのみ変更される。いくつかの実施形態において、マイクロ波NO生成器は、酸素濃縮器と一体化されるか、または、酸素濃縮器に内蔵されている。反応ガスのO/N比は、酸素濃縮器から放出されるOおよびNガスの混合量の調整によって可変調整可能である。
【0096】
マイクロ波NO生成器によって低レベルのNOを生成する別の方法では、生成ガスのNOを部分的に浄化する。図26は、NO生成装置の浄化部の例示的な一実施形態を示している。三方弁340がNO浄化器342およびNO浄化器344に対して生成ガスを可変的に送る。NO浄化器342(たとえば、活性炭、過マンガン酸カリウム)は、NOおよびNOを除去する。いくつかの実施形態において、NO浄化器342は、NO浄化器と直列のNO浄化器を含む。NO浄化器344(たとえば、ソーダ石灰、アスコルビン酸)は、残りの流れを受け入れる。いくつかの実施形態において、いずれかの脚部を流れるガスの部分は、それぞれの流量の合計が生成ガス流量と等しい限り、完全に可変である。他の実施形態においては、各脚部を通る流れがバイナリ弁により制御される。生成ガスの所望の部分のNOが浄化されるように流路を経時的に変更することによって、低レベルの希釈が実現され得る。この分割浄化器の概念は、加圧浄化器アーキテクチャからの生成ガスの放出時に見られるように、連続する生成ガス流および不連続な生成ガス流と作用し得る。
【0097】
NO/NO比の制御
従来の放電NO生成器は、5:1~50:1(通常は10:1)のNO/NO比でNOを生成する。これらの比が低いと、所与量のNO生成のために浄化する必要があるNOの量が増える。これらの比が高ければ、所与量のNOの生成に必要なプラズマパルスが少なくて済むため、アンテナ、スタブ、キャビティ、およびチャンバの寿命が長くなり得る。これにより、装置構成要素のUV曝露および熱サイクルが減少する。また、NO/NO比が高いと、生成されたNOの除去に要する浄化器の質量/容積が小さくなり、湿度制御(たとえば、乾燥剤)も減少するため、製品全体の質量/容積が小さくなるとともに、使い捨ての浄化器構成要素の耐用年数が改善される。
【0098】
マイクロ波プラズマNO生成装置において、NO/NO比に影響を及ぼし得る生成制御パラメータは、マイクロ波電力および反応ガス流量を含む。図27は、150ml/分の反応ガス流および800Hzで動作する例示的なマイクロ波プラズマNO生成器の性能を示している。NO生成は、電力とともに増加する。NO/NO比は、評価対象のすべての電力レベルに対して70よりも高い。他のマイクロ波NOシステムでは、それぞれの生成範囲全体について、NO/NO比が30よりも高い。
【0099】
プラズマ電力測定
マイクロ波NO生成装置のいくつかの実施形態は、電力センサを含む。電力センサは、入力ピンにおける平均RF電力に比例するDC出力電圧を与えることにより、RF/マイクロ波電力信号の測定を可能にする。一実施形態においては、100pFキャパシタと直列の2.7nHインダクタによって、DCブロックおよび入力整合の両方が提供される。ピーク-平均電力比が高いことから、大きなフィルタキャパシタを使用する必要がある。このフィルタキャパシタンスは、内部の27pFキャパシタおよび信号レベルによって2000~500オームで変化する抵抗と並列である。2kHzという低いRF変調周波数に対して適切なフィルタリングを確保するため、フィルタカットオフ周波数は、最小入力周波数の約1/20(すなわち、100Hz)であるものとする。これにより、合計キャパシタンス値は、抵抗に応じて0.8~3.2μFとなる。したがって、3.3μFのフィルタキャパシタンスであれば、すべての信号レベルに対して十分であるものとする。信号応答時間を犠牲にすれば、キャパシタンスをさらに大きくすることができる。
【0100】
プラズマボールから出る際の励起状態から冷却された原子の粒子がエネルギーを放出する際に光が放出される。放出される光の量は、プラズマ中のエネルギー量と関連し、これは、NO生成量と関連する。このため、光出力をNO生成に関連付ける校正関数が導出され得る。いくつかの実施形態において、光出力とNO生成との間の関係は、反応ガス流量の関数でもある。いくつかの実施形態において、光強度センサは、反応チャンバからの光を受光し、その信号を、プラズマ電力レベルを示すアナログまたはデジタル信号へと変換する。(電力入力に対する)プラズマ内の実際の電力を測定することにより、この手法では、NO生成に対する温度、圧力、および湿度の任意の影響を含む、プラズマ内の真の電力を提供する。また、この測定結果は、ハードウェア(たとえば、チャンバ、スタブ、アンテナ、RF生成器)の任意の変化も含み、これらは、生成器の耐用年数にわたって、電力-NO生成の関係に影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施形態において、この装置の制御装置は、特定のNO生成レベルを目標とする閉ループ制御アルゴリズムへの入力として、光センサからの測定結果を使用する。たとえば、NO生成器の一実施形態では、プラズマからの光レベルをNO生成レベルと関連付けるルックアップテーブルを利用して、初期のプラズマエネルギーレベルおよび反応ガス流量を設定する。いくつかの実施形態においては、システム特性化により導出された校正方程式を制御装置が使用して、光センサにより測定されたプラズマからの光出力をNO生成に関連付ける。NO生成器は、ユーザから目標NO生成レベルを受け付けるか、または、患者および/または患者の治療を監視しているセンサにより測定されたNO需要に基づいて計算する。NO生成器は、光センサ(たとえば、フォトダイオード)により測定されるようなルックアップテーブル設定からのプラズマエネルギー、プラズマパルス特性、または反応ガス流特性のうちの1つまたは複数を変化させて、目標NO生成レベルを実現する。たとえば、NO生成レベルが50ppm.lpmであることを光センサの値が示し、所望の生成レベルが60ppm.lpmである場合、治療制御装置は、マイクロ波電力制御(たとえば、パルスデューティサイクル)のオンを調整することにより、閉ループ方式にてNO生成を増加させることができる。一実施形態において、治療制御装置は、比例・積分・微分(PID)または同等の手法を使用して、反応ガス流内に目標NO生成レベルを実現する。
【0101】
図28は、キャビティの壁に窓352を有するマイクロ波キャビティ350の例示的な一実施形態を示している。プラズマにより生成されたUV光および/または光学光は、窓を通過して、光レベルを電気信号(たとえば、電圧、電流)に変換する光学センサに達する。図29は、内部の光センサ362を有するマイクロ波キャビティ360の例示的な一実施形態を示している。いくつかの実施形態においては、図示のように、光センサがプラズマの上流にある。これにより、スタブのいかなるスパッタ材料からも光センサを保護することができる。光センサに材料が堆積すると、時間の経過とともに、光に対する感度に影響を及ぼす可能性があり、センサの交換、再校正、および/または補償が必要となる。いくつかの実施形態においては、光センサがプラズマに近づくほど、光信号の強度が増す。プラズマの発生を促進するUV源を含む実施形態においては、このUV源の使用によって、光学センサの校正を確認することができる。いくつかの実施形態においては、240nmのUVランプが窓(たとえば、石英窓)を通してプラズマチャンバに光を差し込む。いくつかの実施形態においては、石英光ファイバの利用によって、UV源からプラズマチャンバにUV光をもたらす。いくつかの実施形態において、UV源は、プラズマチャンバ内に配置されている。UVセンサを利用してプラズマを検出するとともにNO生成を監視する実施形態において、このUVセンサは、UV源が機能していることの確認にも使用可能である。その逆も真であって、UV源の利用により、UVセンサの機能性を確認することができる。たとえば、所与の条件に対して予想される特定量の光出力の閾値確認として、すべてを実現することも可能である。たとえば、UV LEDによって、フォトダイオードから既知量の信号が生成され、オンにされた場合にこれを確認することによって、LEDが適正に機能していることが分かる。プラズマの点火によって、既知量のフォトダイオード信号が生成され、点火シーケンス後にこれを確認することによって、プラズマが点火されたことを確認することができる。
【0102】
ノズルの設計
図30は、マイクロ波キャビティ370においてガスフローガイド372および入口スタブ374により規定された経路を通過する際の反応ガスの例示的な流れプロファイルを示している。フローガイドは、マイクロ波チャンバ内に配置され、反応チャンバ376を形成する。いくつかの実施形態において、マイクロ波キャビティ370および反応チャンバ376は、互いに流体連通している。いくつかの実施形態において、マイクロ波チャンバおよび反応チャンバは、流体連通していない。
【0103】
反応ガスは、マイクロ波キャビティ370に入り、反応チャンバ376内の入口スタブのすべての側面上で平行に進む。ガスが入口スタブ374の端部に達すると、ガス流が曲がりきれないほどピンの半径が小さくなって、局所的な低圧ゾーンが形成される。フローガイドの直径は、入口スタブの端部近傍で小さくなり、ノズル378を形成する。ノズルは、反応ガス流を成形して、プラズマの近傍で反応ガスの速度を増大させる。流体力学に精通している者であれば、ノズルの形状がプラズマ近くの反応ガスの圧力および速度に影響を及ぼすことが理解され得る。NO生成は、反応ガス圧力および質量流量に比例し(変質する分子が多い)、反応ガス速度に反比例する(プラズマ-ガス相互作用時間が短い)。流量が小さいと、移動時間が長くなって、NO酸化が増大するとともに、システムから出る正味のNOが少なくなり得る。プラズマボールの位置は、マイクロ波チャンバの設計およびマイクロ波エネルギーの周波数に基づくマイクロ波エネルギーの収束位置によって決まる。ガス-プラズマ相互作用のレベルは、プラズマにおける反応ガスの圧力、質量流量、および速度によって決まる。
【0104】
いくつかの実施形態においては、反応ガスが特定の方法でプラズマの周りに案内されることにより、NOが最大化され、NO、電力、およびプラズマとスタブとの間の相互作用が最小化されてスタブの寿命が最大となる。たとえば、図19Aに示すような下流のノズルを利用する設計では、ノズル/フローガイドをプラズマボールから遠ざけることにより、反応ガス/プラズマ相互作用を減少させることができる。いくつかの実施形態において、これらの特徴は、NO生成が最小となるNO生成に対して最適化される。NO:NO比が高いと、全体的なエネルギー必要量が小さくなるため、より小型で軽量のバッテリが可能になるとともに、NO浄化材料の所要量が抑えられる一方で浄化器の寿命は長くなる。
【0105】
いくつかの実施形態において、フローガイドは、直管である。いくつかの実施形態において、フローガイドは、プラズマボールの下流でネックダウン(neck down)するように内径が変化する管状である。他の実施形態において、フローガイドは、管状構造内に配置されている非導電性環状形状から成る。
【0106】
プラズマボールと入口スタブとの間には、間隙が維持される。この間隙によれば、反応ガス流および周囲の構成要素による入口スタブの対流および伝導冷却と併せて、NO生成システムは、入口スタブの表面温度を十分に低く保つことにより、入口スタブに対する長期的熱損傷を最小限に抑えることができる。図31は、数時間のNO生成後の4mm直径アルミニウム入口スタブの端部の例示的な写真である。入口スタブは、比較的低い融点(放電用の代表的なプラズマ電極材料であるイリジウムの2446℃に対して660℃)の金属により作られるが、スタブは、プラズマボールによる摩耗または熱損傷の兆候を示していない。これにより、スタブの作製には、より安価で軽量かつ機械加工が容易なアルミニウムを使用可能である。
【0107】
図32Aおよび図32Bは、マイクロ波キャビティを通る反応ガス流路設計の2つの実施形態を示している。図32Aは、観察および/または光学的電力測定のための半透明円筒状部を上部に備えた2部品フローガイドを利用するマイクロ波キャビティ380を示している。また、光学的測定の使用によって、プラズマボールの形成を確認するとともに、プラズマ形成時間を定量化することができる。反応ガス流は、図の下部に入り、入口スタブの端部の領域においてネックダウンする。入口スタブは、外側のマイクロ波キャビティに対して機械的および電気的に接続されている。
【0108】
図32Bは、反応ガスが入口スタブを通じてシステムに導入される例示的なマイクロ波キャビティ390を示している。フローガイドは、直筒から成る。いくつかの実施形態において、直筒は、半透明(たとえば、石英)であって、プラズマを視認可能である。いくつかの実施形態においては、プラズマボールの有無および/またはエネルギーレベルの検出に光学センサが利用される。図32Aは、マイクロ波キャビティの外側に配置され、プラズマボールからの光を受光する光学センサを示している。いくつかの実施形態において、光センサは、マイクロ波キャビティに直接取り付けられている。いくつかの実施形態においては、図示のように、光センサが遠隔に取り付けられ、光ファイバの長さを通して出力されるプラズマボールの光を受光する。
【0109】
図32Bのマイクロ波エネルギー源は、マイクロ波キャビティの遠隔にあって、導波路により接続されている。この手法は、マイクロ波NO生成器をより大きなシステム内にパッケージ化する代替手段を提供し、本明細書に提示されるすべての実施形態に適用可能である。
【0110】
反応ガス
マイクロ波NO生成装置用の反応ガスは、少なくとも窒素および酸素を含む。いくつかの実施形態においては、酸素が21%の大気が用いられる。いくつかの実施形態においては、NO生成を最大化するため、化学量論比として50%の酸素および50%の窒素が用いられる。いくつかの実施形態において、反応ガスは、NOの生成量を減少させるため、より少ない量の酸素(たとえば、1~20%)を含む。また、他の酸素対窒素比も考えられる。
【0111】
マイクロ波NO生成装置は、大気圧を下回るレベルから大気圧を十分に上回るレベルまで、さまざまな反応ガス圧力で動作し得る。いくつかの実施形態において、反応ガスの圧力は、大気圧を下回る(真空)ことにより、プラズマの発生を補助する。いくつかの実施形態において、マイクロ波NO生成器は、常に大気圧未満で動作することにより、NO生成の分解能および下端範囲を改善する。いくつかの実施形態において、最大3000mの高度でのNO生成が意図されるシステムは、10.2psiの反応ガス圧力で動作するように設計されている。プラズマチャンバ前の可変流量制限によって、すべての低高度の場合に、プラズマチャンバ圧力が同じとなる。これにより、NO生成率は、大気圧の変化の影響を受けにくくなる。いくつかの実施形態において、この装置の制御装置は、装置の圧力センサによる周囲圧力測定結果に基づいて、可変流量制限を変化させることにより、特定のプラズマチャンバ圧力を目標とする。いくつかの実施形態において、流量制限とチャンバ圧力との間の関係は、特定の実施態様、制限の種類、ポンプ、および入口空気特性(すなわち、圧力)によって決まり得る。たとえば、入口空気が海面レベルの周囲大気圧空気であり、入口に可変バルブが存在し、ポンプがキャビティを通じて空気を引き込んでいる場合、入口サイズを小さくする(制限を「大きくする」)と、キャビティ内の圧力が小さくなる。この構成においては、最大圧力が大気圧であり、ポンプがキャビティを通じて引き込むため、キャビティを加圧することができない。
【0112】
いくつかの実施形態においては、NO生成に先立って、VOC、NO、NO、水分、および粒子を除去するように反応ガスが処理される。これにより、反応チャンバに入る化合物の変動が最小となり、プラズマチャンバ内で発生し得る化学反応の量および種類が制限されるため、生成ガス中に存在する化合物の変動も制限される。いくつかの実施形態において、反応ガス浄化器は、ソーダ石灰、活性炭、過マンガン酸カリウム、および分子篩といった材料のうちの1つまたは複数で構成されている。微粒子は、粒子フィルタにより除去される。いくつかの実施形態において、粒子フィルタは、PTFE、ホウケイ酸ガラス繊維、セルロース、金網、およびポリエステルといった材料のうちの1つまたは複数により構成されている。たとえば、反応ガス粒子フィルタの細孔径としては通常、20ミクロン以下が可能である。いくつかの実施形態において、反応ガスフィルタの細孔径は、サブミクロンの範囲(たとえば、0.22ミクロン)である。
【0113】
いくつかの実施形態においては、反応チャンバに入る前の反応ガスから、水分の一部または全部が除去される。これは、任意の多様な手段により可能である。反応ガス内の水分は、反応ガスの熱質量(温度を上げるのに必要なエネルギー)の増大およびプラズマの熱で水が蒸気に変わる際の反応ガスの膨張の増大等、NO生成に多くの影響を及ぼす。これらの影響はいずれも、反応ガスの含水量が増えることから、所与量のエネルギー入力でのNO生成を減らすことになる。いくつかの実施形態において、水分は、大気レベルで反応チャンバに入る。これは許容されるが、いくつかのNO生成システム内の圧力上昇は、いくつかの環境条件(高い相対湿度)下においてシステム内の結露の原因となる。反応ガスの湿度に起因するNO生成の変動を所与として、いくつかの実施形態では、反応ガスの含水量および/または湿度を測定し、これに応じてマイクロ波エネルギーを調整することにより、湿度の影響を補償する。いくつかの実施形態においては、反応ガスの圧力および/または温度に対しても同様の補償がなされる。いくつかの実施形態においては、反応ガスの含水量の補償が不要となるように、反応ガスからの全水分またはほぼ全水分の除去が実現され得る。
【0114】
生成ガスの急冷
NOは、高い温度で形成される。いくつかの実施形態においては、生成ガスを形成するため、反応ガスが2000~3000Kに加熱される。このため、効率的なNO生成には高温プラズマが必要となる。マイクロ波およびアーク放電が高温プラズマの2つの例である。いくつかの実施形態においては、NO形成後の生成ガスの急冷によって、NOの損失の可能性を最小限に抑える。窒素および酸素は、室温では反応しない。急冷は、生成ガスの温度を急激に低下させることを伴う。これにより、窒素-酸素反応が発生する低温範囲(たとえば、2000K未満)にとどまる時間を短くすることによって、低温での反応を制限することができる。言い換えると、急冷によって特定の化学反応を停止させることにより、特定量のNOおよびNOを確定することができる。プロセスの急冷ステップは、(1)プラズマボールとチャンバ出口との間の間隙を変化させること、(2)プラズマから熱交換器までの距離を変化させること、(3)反応チャンバ出口ノズルをヒートシンクに対して熱的に結合すること、により制御可能である。いくつかの実施形態においては、これらが同じ構成要素であり、ならびに/または、(4)生成ガス流から独立し分離されたガスまたは液体流で出口ノズルおよび/もしくは熱交換器を能動的に冷却する。
【0115】
プラズマチャンバのガス出口を圧縮ガスで能動的に冷却し、赤外線カメラで測定して出口温度を50℃低下させることにより、生成ガスの急冷がNOおよびNO出力に及ぼす影響を実験的に実証した。図33は、3つの例示的なNO生成レベルの結果を示すグラフである。プラズマの設定も反応ガス流量も変えずに、NO出力は10%から25%に増加した。同様に、ガス出口を能動的に冷却した場合は、NO出力が12%から31%まで増加した。これは一般的に、ガス出口を冷却した場合に、より多くのNOが保持されたことを示している。NO対NO比が通常は10:1以上であることを所与として、急冷によるNO出力の追加モルは、急冷によるNO出力の追加モルをはるかに上回る。
【0116】
反応ガスの冷却
いくつかの実施形態においては、反応ガスおよび/または入口スタブが能動的に冷却される。反応ガスの質量流量、プラズマ電力、およびプラズマ周波数のいずれも変えずに、50℃の温度低下によって、NO生成が65%増加し得る。
【0117】
構成要素の設計および材料の選択
スタブ:スタブは、導電性である必要があり、通常は金属である。いくつかの実施形態において、スタブは、アルミニウムである。
【0118】
マイクロ波キャビティ:マイクロ波キャビティは通常、スタブのほか、電磁放射を包含するファラデーケージとして機能することから、導電性材料により構成されている。いくつかの実施形態において、マイクロ波キャビティは、アルミニウムで構成されている。いくつかの実施形態において、マイクロ波キャビティは、非導電性材料(たとえば、プラスチック、セラミック、ガラス)で構成され、導電性材料(たとえば、アルミニウム、銀、ニッケル、銅)で被覆または裏打ちされている。いくつかの実施形態において、マイクロ波キャビティは、チャンバ内の導電性表皮効果を高くするため、適度に導電性の金属(たとえば、アルミニウム)で作られ、高導電性材料(たとえば、銀)でメッキされている。
【0119】
アンテナ:キャビティへの電力の結合に用いられる構造(本明細書においては、「アンテナ」と称する)としては、関係する波長および構造のサイズに応じて、ループ、プローブ、または開放導波路が可能である。アンテナは、導電性材料で作られている。いくつかの実施形態において、アンテナは、長さ4.75mm、高さ3.4mm、幅2mmで厚さ0.254mmの銅製の矩形ループ設計である。マイクロ波キャビティは、高度に局在した電界を生成する必要があり、対称電界も実用上の理由からプラスである。いくつかの実施形態の軸対称キャビティ中の中央スタブポストは、当業者により「アンテナ」と称される場合もあるが、ほとんどの技術者はそのように呼称しない。「アンテナ」は通例、局所電界の生成のみを目的とするものではなく、伝搬波の発射に用いられる構造の記述に用いられるためである。
【0120】
反応チャンバ/ガスフローガイド:ガスフローガイドは、ガス不透過性かつマイクロ波透過性である。ガスフローガイドを構成するための材料は通常、石英、テフロン(登録商標)、ガラス、およびセラミック等の非金属材料である。いくつかの実施形態において、フローガイドは、紫外光に対して透明であり、光子源による反応ガスのイオン化を可能にしてプラズマの点火を促進する。
【0121】
サーキュレータ:アンテナおよびキャビティによる整合は、すべての条件下において完全なわけではない。したがって、大きな反射電力(VSWR>5)を有する動作条件が存在し得る。電力増幅器を損傷から保護するため、電力増幅器の出力と負荷との間にサーキュレータまたはアイソレータが配置される。いくつかの実施形態においては、3ポートサーキュレータが利用され、戻りエネルギーが第3ポートから終端抵抗器へと案内される。いくつかの実施形態において、サーキュレータは、アイソレータの終端を内蔵することにより、付加的な終端の必要性を排除する。この終端の内蔵によって、サーキュレータのサイズを小さくすることができる。20dB超の分離レベルであれば十分であることが分かっている。終端抵抗器としては、電力損失の取り扱いのほか、動作周波数で良好なVSWRを維持し得る十分な品質のものが必要である。
【0122】
方向性結合器:いくつかの実施形態においては、方向性結合器の実装により、増幅器出力電力を測定して、システムが適正に動作していることを確認する。たとえば、マイクロストリップ方向性結合器を使用可能である。いくつかの実施形態において、結合係数は、2.5GHzで約25dBである。方向性結合器の結合係数は、結合ポートに結合される入力電力の割合に関連する。たとえば、方向性結合器の結合係数が25dBであり、0dBmの信号が入力されると、結合ポートでは-25dBmの信号が出力されることになる。この信号は、必要であれば、付加的な減衰を与える付加的なPI減衰器を介して電力センサに受け渡される。挿入損失は、0.1dB未満と極めて低い。指向性は、2.5GHz超で29dB超と優れている。結合された反射電力は、50オーム抵抗器で終端される。結合器の特性は、マイクロストリップ設計であることから、PCB基板の誘電特性によって決まる。上記結合パラメータには、厚さ0.010インチ(10ミル)のRogers RO4350B材料により作製されたPCBを想定する。これらの仕様に従うには、最上層とその直下の接地面との間の誘電体を制御しさえすればよい。
【0123】
プラズマの発生(initiation)
マイクロ波プラズマの点火には、一定レベルの電力を必要とする。間隙にイオンが存在する場合は、電力量が少なくなる。このため、一度発生した後のプラズマの継続は難しくない。ただし、プラズマパルス周波数が低くなるにつれて、プラズマ点火が制限される。たとえば、一実施形態において、500ミリ秒後の急速なプラズマ生成に対しては、十分なイオンが存在しない。このため、より長い時間で発生するプラズマパルスの場合は、プラズマ点火の補助として付加的な措置が必要となり得る。プラズマの発生を促進するため、以下の方法および設計のリストを単独または組み合わせて使用可能である。
【0124】
いくつかの実施形態においては、プラズマチャンバの真空引きによって、初期のプラズマ形成を促進する。電子は、イオン化によってガスの絶縁破壊を引き起こし、より低い圧力での衝突の間により多くのエネルギーを得るため、バックグラウンドの空気分子をより効果的にイオン化する。圧力が低いほど、空気の分子間の平均自由経路または距離が長くなり、電子を加速させる電界の継続時間が長くなるため、より高い速度または効果的な運動エネルギーが電子に与えられる。当然のことながら、電界は、マイクロ波電力源によって、マイクロ波キャビティ内に生成される。いくつかの実施形態においては、チャンバが7psi(約400Torr、大気圧の1/2)に真空引きされる。いくつかの実施形態において、真空のレベルは、100mTorr~500Torrの範囲に含まれる。いくつかの実施形態において、プラズマボールは連続的であり、内部のエネルギーは時間とともに変動する。反応チャンバ内において大気圧以上で動作するいくつかのシステムにおいては、反応チャンバを真空引きして、プラズマボールの開始/再開を補助する。
【0125】
いくつかの実施形態において、プラズマチャンバの圧力は常に、大気圧を下回る圧力に維持される。これにより、所望時のほか、NO生成のレベルが低いときにいつでも、プラズマを発生可能となる。いくつかの実施形態において、マイクロ波NO生成システムは、異なるチャンバ圧力と、対応するNO生成範囲とを有する2つ以上の動作モードを有することになる。
【0126】
いくつかの実施形態において、プラズマチャンバの圧力は、プラズマの発生を促進するのに一時的にしか低下しない。図34は、プラズマチャンバ内の圧力を一時的に低下させてプラズマの発生を促進する例示的なシステムを示している。反応ガスは、マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの組合せ400に入る。生成ガス用の第1のガス流路がチャンバ400から出て、ポンプ402を通過している。また、第2のガス流出路がチャンバ400から出て、バルブ404(真空バルブ等)を通り、ポンプ408により引き込まれる。流出バルブが閉じている場合、ポンプは、ポンプ408とバルブ404との間に配置されているリザーバ406(すなわち、真空チャンバ)内の圧力を下げることができる。流出バルブが開いている場合は、リザーバ内の真空およびポンプの流れによってプラズマチャンバからガスが引き出されることにより、チャンバ内の圧力が一時的に下がって、マイクロ波エネルギーがオンの場合、プラズマ形成が促進される。プラズマボールの発生後は、バルブが再び閉じられる。いくつかの実施形態においては、反応ガス流路にもバルブ(図示の任意選択の反応ガスバルブ)を配置することによって、プラズマチャンバ内の圧力低下の程度および持続時間が増大する。いくつかの実施形態において、反応ガスバルブは、真空経路バルブに対してずれた位相で動作する。
【0127】
マイクロ波エネルギーによってプラズマの発生を促進する別の方法では、UV光がチャンバ内に差し込む。UV光は、チャンバ内の反応ガス分子をイオン化させるため、第1の絶縁破壊事象を容易にもたらし得る。いくつかの実施形態においては、1.2mWのUV LEDにより、チャンバの側面の石英窓を通じて光がプラズマチャンバ内に差し込む。一実施形態においては、光学レンズの利用により、プラズマボールの位置にUV光を集束させる。プラズマが確立されると、プラズマ自体がイオンを生成し、パルス周波数が最小閾値を上回る場合にプラズマは自立して継続するため、UV光は任意選択となる。別の実施形態においては、加熱ワイヤの利用により、熱イオン放出によってイオンをプラズマチャンバに供給する。これらのプラズマ形成を促進する手法によれば、プラズマの点火に要する時間が短くなる。また、絶縁破壊時間、すなわちソフトウェアにおけるプラズマオンの点火と実際のプラズマ形成との間の時間の精度が向上する。プラズマ点火精度の向上によって、各プラズマパルスの実際の持続時間を把握可能となるため、より正確なNO生成が可能となる。
【0128】
いくつかの実施形態においては、プラズマ点火の実際の絶縁破壊時間が測定され、補償される。いくつかの実施形態においては、可変の時間長さにわたってプラズマパルスが持続することにより、プラズマ発生時間の変動に対応する。たとえば、プラズマの発生に通常の形成よりも5マイクロ秒長くかかる場合は、目標量のNOが生成されるように、プラズマパルスが余分に5マイクロ秒だけ持続可能である。別の実施形態においては、発生時間に基づいて、所与のプラズマパルス内の電力が変動する。たとえば、特定のパルスのプラズマ発生に通常よりも5マイクロ秒長くかかる場合は、プラズマパルス内の電力を大きくして、パルス内のNOを追加することにより、全体のNO生成目標を維持することができる。いくつかの実施形態においては、後続のプラズマパルスにおいて、プラズマパルスの周波数および/または持続時間を調整することにより、プラズマ発生時間のずれが補償される。
【0129】
いくつかの実施形態においては、大きなエネルギーパルスの適用によって、プラズマの発生を可能にする。これにより、大気圧を含むより高いチャンバ圧力でのプラズマ発生が可能となり得る。このようなエネルギーコストの増加は、壁の電源コンセントにより給電されるためエネルギー効率がそれほど重要ではない装置に対して許容され得る。プラズマが起こされると、プラズマボールを持続させるためのプラズマへの電力を低レベルに落とすことができる。
【0130】
いくつかの実施形態においては、反応性NOがプラズマ形成を促進し得るように、NOを含む生成ガス流がプラズマチャンバ上流の反応ガス流に導入される。図35は、マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの組合せ410からNOが出てポンプ412を通過する例示的なアーキテクチャを示している。生成ガスの圧力は、圧力センサ414により測定される。流量制御装置416は、プラズマチャンバの前の反応ガス流にNOの流れを戻す。いくつかの実施形態(図示せず)において、NO流は、プラズマチャンバに直接導入される。
【0131】
いくつかの実施形態においては、圧力サイクルの低い点でプラズマが発生され得るように、プラズマチャンバ内に音響波を生成してチャンバ内の圧力を変動させることにより、プラズマの発生が促進される。別の実施形態においては、プラズマボールが生成される位置に極小値を有する定在音響波がプラズマチャンバ内に生成される。いくつかの実施形態において、この音響波がオンとなるのは、プラズマの点火を補助する場合のみである。一実施形態において、音響波は、プラズマチャンバ内のガスに作用するプラズマチャンバの壁内のダイヤフラムにより生成される。
【0132】
図36は、マイクロ波キャビティおよびプラズマチャンバの組合せ422の前に流量制限420を有するNO生成器の一実施形態を示している。流量制限420としては、受動性(たとえば、オリフィスまたは臨界オリフィス)も可能であるし、能動性(バイナリ弁、比例弁等)も可能である。流量制限は、反応ガス流を部分的に遮るものであってもよいし、完全に遮るものであってもよい。プラズマチャンバの下流のポンプ424がチャンバから反応ガスを引き出す。いくつかの実施形態においては、流量制限が受動性で、公称条件下での目標反応ガス流量を可能にする。ポンプがより高速に動作する場合は、オリフィスが流れを最大値に制限するため、反応チャンバ内の圧力が低下する。いくつかの実施形態においては、ポンプが大きな流量で動作することにより、反応チャンバ内の圧力を低くしてプラズマ活動を起こさせる。
【0133】
いくつかの実施形態においては、反応チャンバの前に1つまたは複数の能動流量制御装置が配置されている。システムがプラズマを起こす際、流量制御装置は部分的にまたは完全に閉じられており、ポンプの利用によって、反応チャンバからガスを引き出すことにより、圧力を下げてプラズマボールの発生を促進する。能動流量制御装置の例としては、バイナリ弁、比例弁、ニードル弁、質量流量制御装置、および他種の流量制御装置が挙げられる。いくつかの実施形態において、ポンプは、一定の流量で動作する。いくつかの実施形態において、ポンプは、流量を変化させて、チャンバ内の反応ガス流および圧力を変調する。能動流量制御装置が流れの制限および/または完全な遮断を行う場合は、ポンプが反応チャンバ内の圧力を引き下げる。
【0134】
いくつかの実施形態においては、プレチャンバ流量制御装置および/またはポンプの利用によって、反応チャンバ内の圧力を変調することにより、標高の変化に伴って起こり得るような大気圧の変化を補償する。
【0135】
アーキテクチャ
いくつかの実施形態においては、図37に示すように、加圧浄化器アーキテクチャにおいてマイクロ波プラズマボール生成器が利用される。反応ガスは、流量制限432を通じてシステム430に引き込まれる。これにより、大気圧未満の圧力がプラズマチャンバ434内に生じて、プラズマ発生を補助する。ガスは、入口スタブの長さに沿いプラズマボール436を通り過ぎるように、プラズマチャンバを通過する。次に、出口側の出口スタブをガスが通過してポンプ438に達する。いくつかの実施形態において、出口スタブおよびマイクロ波キャビティの対応する壁は、生成ガスを冷却するための熱交換器として機能する。
【0136】
いくつかの実施形態において、ポンプは、連続動作する。いくつかの実施形態において、ポンプは、断続的に動作する。いくつかの実施形態において、断続的なポンプ動作は、圧力センサ442により測定される、浄化器440内の圧力により支配される。たとえば、ポンプは、浄化器圧力が閾値(たとえば、10psi)を下回る場合にオンとなり、閾値に達した場合にオフとなる。
【0137】
いくつかの実施形態において、プラズマの動作は、特定のパルス周波数およびデューティサイクルで連続的である。いくつかの実施形態において、プラズマの動作は、断続的である。いくつかの実施形態においては、プラズマが目標NOモル数を得るのに十分長く活動した後にオフとなる一方、ポンプは、目標圧力が実現されるまで動作し続ける。患者が次の呼吸を行う前に、反応ガスおよびNOガスが加圧浄化器内で混合される。目標NOモル数は、患者に対する目標投与速度、酸化から予想される予測NO損失量、浄化器との相互作用から予想される予測NO損失量、特定の呼吸に望ましい目標NO分子数、予測/特性化NO/NO比のうちの1つまたは複数に基づき得る。
【0138】
NOガスは、浄化器440から出た後、粒子フィルタ444と、送達装置を通じて患者に送達される生成ガスの流量を制御する流量制御装置446(たとえば、質量流量制御装置)と、を通過する。
【0139】
いくつかの実施形態(図示せず)においては、パージポンプ448、パージリザーバ450、フィルタ452、およびパージ流量制御装置454を使用し、呼吸間に非NO含有ガス(たとえば、反応ガス)で送達装置がパージされることによって、送達装置内のNO形成が緩和される。
【0140】
いくつかの実施形態においては、NO生成制御装置456が浄化器圧力センサおよびパージリザーバ圧力センサから圧力情報を受信する。また、NO生成制御装置は、ユーザインターフェース、外部装置、またはシステムメモリ内から目標NO投与量を受け取る。NO生成制御装置456は、入口流量制限、マイクロ波生成器、プラズマ流ポンプ、パージ流ポンプ、パージ流量制御装置、および出力流量制御装置のうちの1つまたは複数を制御する。
【0141】
図38は、プロセス制御装置およびマイクロ波生成器がマイクロ波キャビティに直接接続されている一実施形態を示している。マイクロ波キャビティおよび反応チャンバ460の切断図が示されている。マイクロ波生成器および制御盤462をマイクロ波キャビティ461の耳部に取り付けることができる。また、マイクロ波源アンテナ464がマイクロ波キャビティ内に延びている。プラズマチャンバ466は、マイクロ波キャビティ461と同心であり、マイクロ波キャビティから流体分離(非連通)されている。フローガイドは、入口スタブ468および出力スタブ/ポート470によって設計上軸方向に配置され、Oリングで封止された管から成る。反応ガスは、図の下から上に流れて、(この平面から出て)第1のOリングの上方の位置で半径方向に、プラズマチャンバに入る。反応ガスは、入口スタブの外面に沿って流れた後、構造の中心に向かって収束することで出口ポートから出る。反応ガスは、流れて収束すると、(星として示す)プラズマボールと接線方向に相互作用して、反応ガス中の酸素および窒素を部分的にNOおよびNOに変換する。
【0142】
NO生成器の性能
図39は、別々のマイクロ波キャビティおよび反応チャンバを有し12Wの入力電力で動作する代表的なNO生成器の性能を示す例示的なグラフである。x軸は、反応チャンバを通る反応ガス流量を表す。左軸は、NO生成(ppm.slpm)を表す。右軸は、NO/NO比を表す。一般的に、システムが後続のNO-NO変換器を有さない限り、より高いNO/NO比を使用可能である。
【0143】
図39は、この具体例におけるNO生成が、0.75lpmよりも大きな流量では反応ガス流量にほとんど依存しないが、0.75lpm未満の反応ガス流量では流量に依存することを示している。NO/NO比は、流量に比例して高くなる。これは、反応ガス/プラズマ相互作用が大きいことと、実験に使用した反応器からNO・NOセンサまでの移動時間が短いことの組合せによる可能性が高い。移動時間が長い上に流量が小さいと、NOからNOへの酸化により多くの時間がかかるため、NO/NO比が低下する。いくつかの実施形態においては、反応チャンバの直後に生成ガスが希釈されてNO濃度が低下するため、酸化率が低下するとともに患者への移動時間が短くなる。いくつかの実施形態において、希釈物は、窒素、酸素、またはこれら2つの混合物(たとえば、空気)から成る。いくつかの実施形態においては、ヘリウムが不活性であることのほか、ヘリオックス治療の臨床的利点から、NO生成ガスの希釈にヘリウムが使用される。
【0144】
図40は、多様なパルス周波数およびデューティサイクルに関してシステムの別の実施形態の例示的なNO/NO性能を示すグラフである。曲線は、特定のパルス周波数について、デューティサイクルの掃引を表す。NO/NO比は、低パルス周波数ではほぼ一定(約20)である一方、高パルス周波数では電力に正比例しているように見える。
【0145】
図41は、印加電力をX軸、NO生成を左縦軸、NO/NO比を右縦軸として例示的なシステムの性能を示すグラフである。図41のデータはすべて、150ml/分の反応ガス流量で収集したものである。印加電力とNO生成との間の関係は、直線的な比例である。電力およびNO生成が大きくなるにつれて、NO/NO比は低くなる。
【0146】
マイクロ波プラズマボールの点火時間は、約0.5マイクロ秒である一方、放電の点火時間は、15~40マイクロ秒である。マイクロ波プラズマボールの点火時間が早いことから、第一に、点火時間が短いほど、より高い周波数のより短いプラズマパルスを利用することが可能となり得る。第二に、プラズマ発生時間の変動がはるかに小さいことから、パルスごとのNO生成の変動も小さくなる。別の利点として、プラズマ発生時間が短くなると、プラズマ発生時に形成されるオゾンが少なくなる。これはNO/NO比の改善およびNO生成の減少として現れることになる。
【0147】
臨床応用
また、NOの吸入に関しては、たとえば外来環境において、以下のように多様な臨床応用が存在する。
・WHO Group1 PAH:亜類型(たとえば、特発性、家族性等)、小児PAH、および妊娠中のPAHの可能性(PAH治療薬による毒性の回避)
・WHO Group2 PAH:選ばれた、良好に制御された左心不全(肺水腫のリスク)の患者、ならびに右心疾患(RHD)および肺高血圧症(PH)を伴うLVADレシピエント(希少)
・WHO Group3 PH:PH-ILDまたは亜類型ILD(たとえば、IPF、CT関連ILD、cHP等)、PH-COPD、および合併肺線維症性肺気腫(CPFE)
・WHO Group4 慢性血栓塞栓性PH(CTEPH):右心疾患(RHD)の改善
・サルコイドーシス
・右心機能障害、多様な病因:肺高血圧症(PH)がない状態での後負荷の減少(病因には、虚血性心疾患、弁膜症等が含まれる)
・細菌、真菌、およびウィルス感染症
・嚢胞性線維症等の感染症(たとえば、シュードモナス、B.Cepacia、NTM、多剤耐性結核、非結核性抗酸菌感染症(NTM)、および気管支拡張症)
・肺および/または心臓移植への橋渡し:肺高血圧症(PH)、酸素化、RVD等への対応
・肺および/または心臓移植後:肺血管抵抗の低減および細菌感染の予防への寄与
・高地医学:高山病、高地肺水腫(HAPE)への対処、および低酸素性肺血管収縮の低減
・吸入障害、心肺蘇生/ショック、および飛行中を含む高山病等の軍事分野への応用
・心肺蘇生:肺血管収縮による心拍出量の増加(圧迫)に起因する急性PHからの回復
・保存血液またはヘモグロビン酸素運搬体による合併症の予防
・心肺バイパス中の合併症の予防
・ECMOによるヘパリンおよび腎保護薬の使用の低減
【0148】
当然のことながら、上記開示および他の特徴および機能またはその代替物の一部は、他の多くの異なるシステムまたは用途へと組合せ可能であることが望ましいことが理解されよう。当業者であれば、現時点で予見外または予想外の種々代替、修正、変形、または改善を後で行い得るであろうが、これらについても、添付の特許請求の範囲による包含が意図される。
図1
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【国際調査報告】