(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ショベル系建設機械における油圧制御システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/042 20060101AFI20240822BHJP
F15B 11/16 20060101ALI20240822BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F15B11/042
F15B11/16 B
E02F9/22 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508757
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022025384
(87)【国際公開番号】W WO2023025413
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2021137856
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】喜安 浩一
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AB02
2D003AB03
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003FA02
3H089AA22
3H089AA73
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA06
3H089DB12
3H089DB43
3H089EE06
3H089EE36
3H089FF07
3H089FF08
3H089FF12
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】スティック用方向切換弁の上流側に設けた流量制御弁を、旋回モータとスティックシリンダとの連動時にスティックシリンダへの供給流量を制限するバルブとして用いるにあたり、流量制御弁の開口面積制御を検討する。
【解決手段】第一スティック用流量制御弁30の開口面積を、スティックシリンダ9への目標供給流量と、第一油圧ポンプAとスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧と、スティック用方向切換弁供給用弁路25eの開口面積とに基づいて制御する構成にするとともに、旋回モータ11とスティックシリンダ9との連動時に、旋回用操作具の操作量が大きくなるほど目標差圧が大きくなるように設定する一方、目標差圧が大きくなるほど第一スティック用流量制御弁30の開口面積が小さくなるように制御する構成にした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体に旋回自在に支持される上部旋回体と、該上部旋回体に装着される作業機とを備えてなるショベル系建設機械の油圧制御システムに、上部旋回体を旋回せしめる旋回モータと、該旋回モータの油圧供給源となる油圧ポンプと、該油圧ポンプを旋回モータと共用する作業機用油圧アクチュエータと、旋回モータに対する供給用弁路および排出用弁路を有すると共に給排方向を切換える旋回用方向切換弁と、作業機用油圧アクチュエータに対する供給用弁路および排出用弁路を有すると共に給排方向を切換える作業機用方向切換弁と、作業機用方向切換弁の上流側に配され、油圧ポンプから作業機用方向切換弁への供給流量を制御する流量制御弁と、前記旋回用方向切換弁、作業機用方向切換弁および流量制御弁の作動を制御する制御手段とを設ける一方、
前記制御手段は、油圧ポンプから旋回モータ、作業機用油圧アクチュエータへの目標供給流量を設定する目標供給流量設定手段と、旋回用、作業機用方向切換弁の供給用弁路、排出用弁路の開口面積を制御する方向切換弁制御手段と、油圧ポンプの吐出圧と作業機用油圧アクチュエータへの供給圧力との目標差圧を設定する目標差圧設定手段と、作業機用油圧アクチュエータへの目標供給流量と前記目標差圧と作業機用方向切換弁の供給用弁路の開口面積とに基づいて流量制御弁の開口面積を制御する流量制御弁制御手段とを備えるとともに、
前記目標差圧設定手段は、旋回モータと作業機用油圧アクチュエータとの連動時に、油圧ポンプの吐出圧と作業機用油圧アクチュエータへの供給圧力との目標差圧を、旋回モータと作業機用油圧アクチュエータとの非連動時における目標差圧よりも旋回用操作具の操作量が大きくなるほど連動時の目標差圧が大きくなるように設定する一方、流量制御弁制御手段は、前記目標差圧が大きくなるほど流量制御弁の開口面積を小さくするように制御することを特徴とするショベル系建設機械における油圧制御システム。
【請求項2】
請求項1において、流量制御弁制御手段は、流量制御弁の開口面積を制御するにあたり、作業機用油圧アクチュエータへの目標供給流量と作業機用方向切換弁の供給用弁路の開口面積とに基づいて該供給用弁路の前後差圧を演算し、該演算された供給用弁路の前後差圧と目標差圧とに基づいて流量制御弁の前後差圧を演算し、さらに該演算された流量制御弁の前後差圧と目標供給流量とに基づいて流量制御弁の目標開口面積を演算して、該目標開口面積となるように流量制御弁を制御することを特徴とするショベル系建設機械における油圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等のショベル系建設機械における油圧制御システムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等のショベル系建設機械には種々の油圧アクチュエータが設けられるが、このような油圧アクチュエータに対する油給排制御を行うための油圧制御システムとして、従来から、一本のスプール弁で、油圧アクチュエータに対する方向切換制御と供給流量制御と排出流量制御とを同時に行うように構成したものが広く知られている。しかるに、このように供給流量制御と排出流量制御とを一本のスプール弁で行う場合、スプールの移動位置に対する供給側の開口面積と排出側の開口面積との関係が一意的に決まってしまうため、例えば、一つの油圧アクチュエータを単独で駆動させる単独操作や複数の油圧アクチュエータを同時に駆動させる連動操作等の操作状態、あるいは種々の作業内容等に応じて供給流量と排出流量との関係を変更させることができず、作業効率や操作性に劣るという問題がある。
そこで従来、油圧アクチュエータに対する供給流量と排出流量とを独立して制御する技術として、油圧アクチュエータに対する供給用弁路および排出用弁路を有すると共に給排方向を切換える方向切換弁と、該方向切換弁の上流側に配され、油圧ポンプから方向切換弁への供給流量を制御する流量制御弁と、これら流量制御弁および方向切換弁を制御する制御手段とを設けた技術がある(例えば、特許文献1、2参照。)。このものでは、油圧アクチュエータに対する供給流量制御は流量制御弁で行う(特許文献2のものでは、油圧アクチュエータ用操作具の操作量が設定値以上のときのみ)一方、排出流量制御は方向切換弁で行う構成になっており、これにより操作状態や作業内容等に応じて供給流量と排出流量との関係を変更させることができる。
ところで、油圧ショベル等のショベル系建設機械には、油圧アクチュエータとして、上部旋回体を旋回せしめるための旋回モータや、上部旋回体に装着される作業機用の油圧アクチュエータが設けられるが、旋回モータによる上部旋回体の旋回は負荷の高い作業であるため、旋回モータと、該旋回モータと油圧ポンプを共用する作業機用油圧アクチュエータとを連動操作(同時操作)したとき、ポンプ吐出流量の多くが負荷圧の低い作業機用油圧アクチュエータ側に流れ、これにより旋回モータが流量不足となって旋回力が低下してしまうという問題がある。この問題は、前述した特許文献1、2のように供給流量と排出流量とを独立制御するように構成したものにおいても検討する必要があり、そこで、前記特許文献2のものでは、旋回用操作具と作業機用操作具との操作時に、作業機用方向切換弁の上流側に設けた流量制御弁を旋回優先用流量制御弁として用い、該旋回優先用流量制御弁によって作業機用油圧アクチュエータへの供給流量を減少させることで、旋回モータに優先的に圧油供給することを提唱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-20604号公報
【特許文献2】特開2021-28499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記特許文献2のものでは、旋回用操作具と作業機用操作具との連動操作時に、作業機用油圧アクチュエータへの供給流量を減少させるべく旋回優先用流量制御弁の開口面積を制御することになるが、この場合に、旋回優先用流量制御弁の開口面積を具体的にどのようにして制御するかについては検討されておらず、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、下部走行体に旋回自在に支持される上部旋回体と、該上部旋回体に装着される作業機とを備えてなるショベル系建設機械の油圧制御システムに、上部旋回体を旋回せしめる旋回モータと、該旋回モータの油圧供給源となる油圧ポンプと、該油圧ポンプを旋回モータと共用する作業機用油圧アクチュエータと、旋回モータに対する供給用弁路および排出用弁路を有すると共に給排方向を切換える旋回用方向切換弁と、作業機用油圧アクチュエータに対する供給用弁路および排出用弁路を有すると共に給排方向を切換える作業機用方向切換弁と、作業機用方向切換弁の上流側に配され、油圧ポンプから作業機用方向切換弁への供給流量を制御する流量制御弁と、前記旋回用方向切換弁、作業機用方向切換弁および流量制御弁の作動を制御する制御手段とを設ける一方、前記制御手段は、油圧ポンプから旋回モータ、作業機用油圧アクチュエータへの目標供給流量を設定する目標供給流量設定手段と、旋回用、作業機用方向切換弁の供給用弁路、排出用弁路の開口面積を制御する方向切換弁制御手段と、油圧ポンプの吐出圧と作業機用油圧アクチュエータへの供給圧力との目標差圧を設定する目標差圧設定手段と、作業機用油圧アクチュエータへの目標供給流量と前記目標差圧と作業機用方向切換弁の供給用弁路の開口面積とに基づいて流量制御弁の開口面積を制御する流量制御弁制御手段とを備えるとともに、前記目標差圧設定手段は、旋回モータと作業機用油圧アクチュエータとの連動時に、油圧ポンプの吐出圧と作業機用油圧アクチュエータへの供給圧力との目標差圧を、旋回モータと作業機用油圧アクチュエータとの非連動時における目標差圧よりも旋回用操作具の操作量が大きくなるほど連動時の目標差圧が大きくなるように設定する一方、流量制御弁制御手段は、前記目標差圧が大きくなるほど流量制御弁の開口面積を小さくするように制御することを特徴とするショベル系建設機械における油圧制御システムである。
請求項2の発明は、請求項1において、流量制御弁制御手段は、流量制御弁の開口面積を制御するにあたり、作業機用油圧アクチュエータへの目標供給流量と作業機用方向切換弁の供給用弁路の開口面積とに基づいて該供給用弁路の前後差圧を演算し、該演算された供給用弁路の前後差圧と目標差圧とに基づいて流量制御弁の前後差圧を演算し、さらに該演算された流量制御弁の前後差圧と目標供給流量とに基づいて流量制御弁の目標開口面積を演算して、該目標開口面積となるように流量制御弁を制御することを特徴とするショベル系建設機械における油圧制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、旋回モータと作業機用油圧アクチュエータとの連動時の流量制御弁の開口面積制御を、非連動時の流量制御弁の開口面積制御を元にして目標差圧の設定変更だけで容易に行えることになって、制御の簡素化に貢献でき、連動時専用のチューニングにかかる時間も短縮できる。
請求項2の発明とすることにより、流量制御弁の開口面積を精度良く制御できて、供給流量制御の精度向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】コントローラの構成を示すブロック図である。
【
図4】旋回用操作具とスティック用操作具とが連動操作された場合の制御ロジックを示す図である。
【
図5】第一油圧ポンプの吐出圧とスティックシリンダへの供給圧力との目標差圧と、旋回モータの要求供給流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のショベル系建設機械の一例である油圧ショベル1を示す図であって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着される作業機4等の各部から構成されており、さらに該作業機4は、基端部が上部旋回体3に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に前後揺動自在に支持されるスティック6、該スティック6の先端部に揺動自在に取付けられるバケット7等から構成されていると共に、油圧ショベル1には、前記ブーム5、スティック6、バケット7をそれぞれ揺動せしめるためのブームシリンダ8、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10や、下部走行体2を走行せしめるための左右の走行モータ(図示せず)、上部旋回体3を旋回せしめるための旋回モータ11(
図2に図示)等の各種油圧アクチュエータが備えられている。
【0009】
次いで、油圧ショベル1に設けられる油圧制御システムについて、
図2に示す油圧回路図に基づいて説明する。尚、
図2では、走行モータに関する部分の油圧回路については省略してある。
図2において、A、Bは可変容量型の第一、第二油圧ポンプ、Aa、Baは後述するコントローラ39からの制御信号に基づいて第一、第二油圧ポンプA、Bの容量を可変する容量可変手段、12は油タンクである。また、8、9、10、11は前記ブームシリンダ、スティックシリンダ、バケットシリンダ、旋回モータであって、本実施の形態では、これら油圧アクチュエータのうち、ブームシリンダ8およびスティックシリンダ9は第一、第二油圧ポンプA、Bの両方の油圧ポンプを油圧供給源とし、バケットシリンダ10は第二油圧ポンプBを油圧供給源とし、旋回モータ11は第一油圧ポンプAを油圧供給源とするように構成されている。尚、本実施の形態では、第一油圧ポンプAが本発明の旋回モータの油圧供給源となる油圧ポンプに相当し、第二油圧ポンプは本発明の油圧ポンプには相当しない。また、本実施の形態では、後述するように、スティックシリンダ9が本発明の油圧ポンプを旋回モータと共用する作業機用油圧アクチュエータに相当する。
【0010】
さらに、
図2において、Cは第一油圧ポンプAの吐出側に接続される第一ポンプラインであって、該第一ポンプラインCからは、ブーム用サブ側供給油路14、旋回用供給油路15、スティック用メイン側供給油路16が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されている。また、Dは第二油圧ポンプBの吐出側に接続される第二ポンプラインであって、該第二ポンプラインDからは、ブーム用メイン側供給油路17、スティック用サブ側供給油路18、バケット用供給油路19が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されている。前記ブーム用サブ側供給油路14およびブーム用メイン側供給油路17は、後述するブーム用方向切換弁23のポンプポート23pに第一、第二油圧ポンプA、Bをそれぞれ接続する油路であり、旋回用供給油路15は、旋回用方向切換弁24のポンプポート24pに第一油圧ポンプAを接続する油路であり、スティック用メイン側供給油路16およびスティック用サブ側供給油路18は、スティック用方向切換弁25のポンプポート25pに第一、第二油圧ポンプA、Bをそれぞれ接続する油路であり、バケット用供給油路19は、バケット用方向切換弁26のポンプポート26pに第二油圧ポンプBを接続する油路である。
【0011】
前記ブーム用サブ側供給油路14には、第一油圧ポンプAからブームシリンダ8への供給流量を制御してブーム用方向切換弁23に流すブーム用流量制御弁29が配されており、また、スティック用メイン側、サブ側供給油路16、18には、第一、第二油圧ポンプA、Bからスティックシリンダ9への供給流量をそれぞれ制御してスティック用方向切換弁25に流す第一、第二スティック用流量制御弁30、31が配されている。これらブーム用流量制御弁29、第一、第二スティック用流量制御弁30、31は、コントローラ39から出力される制御信号に基づいて作動するブーム流量制御用電磁比例弁40、第一、第二スティック流量制御用電磁比例弁41、42(
図3に図示)によりそれぞれパイロット操作されて流量制御を行うポペット弁であって、逆流防止機能を有しており、第一油圧ポンプAからブーム用方向切換弁23、第一、第二油圧ポンプA、Bからスティック用方向切換弁25への油の流れは許容されるが、逆流は阻止されるようになっている。尚、前記第一スティック用流量制御弁30は、後述するように、スティック用操作具と旋回用操作具との連動操作(同時操作)時に、旋回モータ11への供給圧力を保持するためにスティックシリンダ9への供給流量を制限するための旋回優先用流量制御弁として機能する。また、本実施の形態では、第一スティック用流量制御弁30が本発明の流量制御弁に相当し、第二スティック用流量制御弁31およびブーム用流量制御弁29は本発明の流量制御弁には相当しない。
【0012】
一方、前記旋回用供給油路15、ブーム用メイン側供給油路17、バケット用供給油路19には、前述したブーム用流量制御弁29、第一、第二スティック用流量制御弁30、31のような流量制御弁は配設されておらず、これら旋回用供給油路15、ブーム用メイン側供給油路17、バケット用供給油路19を経由する第一油圧ポンプAあるいは第二油圧ポンプBからの供給流量は、流量制御されることなくそのまま旋回用方向切換弁24、ブーム用方向切換弁23、バケット用方向切換弁26に供給されるようになっている。また、これら旋回用供給油路15、ブーム用メイン側供給油路17、バケット用供給油路19にはそれぞれチェック弁32が配設されていて、第一、第二油圧ポンプA、Bから旋回用方向切換弁24、ブーム用方向切換弁23、バケット用方向切換弁26への油の流れは許容されるが、逆流は阻止されるようになっている。
【0013】
しかして、前記ブーム用方向切換弁23のポンプポート23pには、ブーム用サブ側供給油路14を経由する第一油圧ポンプAからの圧油と、ブーム用メイン側供給油路17を経由する第二油圧ポンプBからの圧油とを供給できるようになっていると共に、第一油圧ポンプAからの圧油は、ブーム用サブ側供給油路14に配設のブーム用流量制御弁29によって流量制御された状態(遮断状態を含む)でブーム用方向切換弁23に供給されるようになっている。また、スティック用方向切換弁25のポンプポート25pには、スティック用メイン側供給油路16を経由する第一油圧ポンプAからの圧油と、スティック用サブ側供給油路18を経由する第二油圧ポンプBからの圧油とを供給できるようになっていると共に、これら第一、第二油圧ポンプA、Bからの圧油は、スティック用メイン側、サブ側供給油路16、18にそれぞれ配設の第一、第二スティック用流量制御弁30、31によって流量制御された状態(遮断状態を含む)でスティック用方向切換弁25に供給されるようになっている。
【0014】
次に、前記ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用の方向切換弁23~26について説明する。
まず、第一、第二油圧ポンプA、Bの何れか一方の油圧ポンプから圧油供給されるとともに、上流側に流量制御弁が設けられていない旋回用、バケット用の方向切換弁24、26について説明する。
旋回用方向切換弁24は、旋回モータ11に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるクローズドセンタ型のスプール弁であって、コントローラ39から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力する旋回用左旋回側、右旋回側電磁比例弁44a、44b(
図3に図示)にそれぞれ接続される左旋回側、右旋回側のパイロットポート24a、24bと、旋回用供給油路15に接続されるポンプポート24pと、油タンク12に至るタンクラインTに接続されるタンクポート24tと、旋回モータ11の左旋回側ポート11aに接続される一方のアクチュエータポート24cと、旋回モータ11の右旋回側ポート11bに接続される他方のアクチュエータポート24dとを備えている。そして、旋回用方向切換弁24は、左旋回側、右旋回側の両パイロットポート24a、24bにパイロット圧が入力されていない状態では、旋回モータ11に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、左旋回側パイロットポート24aにパイロット圧が入力されることにより左旋回側作動位置Xに切換わって、ポンプポート24pから一方のアクチュエータポート24cに至る供給用弁路24eと、他方のアクチュエータポート24dからタンクポート24tに至る排出用弁路24fとを開き、また、右旋回側パイロットポート24bにパイロット圧が入力されることにより右旋回側作動位置Yに切換わって、ポンプポート24pから他方のアクチュエータポート24dに至る供給用弁路24eと、一方のアクチュエータポート24cからタンクポート24tに至る排出用弁路24fとを開くように構成されている。そして、左旋回側作動位置Xまたは右旋回側作動位置Yに位置しているときの旋回モータ11に対する供給流量および排出流量は、供給用弁路24e、排出用弁路24fの開口面積によって制御されるようになっていると共に、該開口面積は、旋回用左旋回側、右旋回側電磁比例弁44a、44bから左旋回側、右旋回側パイロットポート24a、24bに出力されるパイロット圧の増減に伴うスプール移動位置に応じて増減制御されるようになっている。
【0015】
また、バケット用方向切換弁26は、バケットシリンダ10に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるクローズドセンタ型のスプール弁であって、コントローラ39から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力するバケット用伸長側、縮小側電磁比例弁46a、46b(
図3に図示)にそれぞれ接続される伸長側、縮小側のパイロットポート26a、26bと、バケット用供給油路19に接続されるポンプポート26pと、タンクラインTに接続されるタンクポート26tと、バケットシリンダ10のヘッド側ポート10aに接続される一方のアクチュエータポート26cと、バケットシリンダ10のロッド側ポート10bに接続される他方のアクチュエータポート26dとを備えている。該バケット用方向切換弁26は、前述した旋回用方向切換弁24と同様の構造のものであって、中立位置Nから伸長側作動位置X、縮小側作動位置Yに切換わることで、ポンプポート26pからアクチュエータポート26cまたは26dに至る供給用弁路26eと、アクチュエータポート26dまたは26cからタンクポート26tに至る排出用弁路26fとを開くように構成されており、そして、これら供給用弁路26e、排出用弁路26fの開口面積によってバケットシリンダ9に対する供給流量および排出流量が制御されるようになっていると共に、該開口面積は、バケット側伸長側、縮小側電磁比例弁46a、46bから出力されるパイロット圧の増減に伴うスプール移動位置に応じて増減制御されるようになっている。
【0016】
次いで、第一、第二油圧ポンプA、Bの両方の油圧ポンプから圧油供給されるとともに、上流側に流量制御弁29、30、31が設けられているブーム用方向切換弁23、スティック用方向切換弁25について説明する。
ブーム用方向切換弁23は、ブーシリンダ8に対する給排流量制御および再生流量制御を行うと共に給排方向を切換えるクローズドセンタ型のスプール弁であって、コントローラ39から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力するブーム用伸長側、縮小側電磁比例弁43a、43b(
図3に図示)にそれぞれ接続される伸長側、縮小側のパイロットポート23a、23bと、ブーム用サブ側供給油路14およびブーム用メイン側供給油路17に接続されるポンプポート23pと、タンクラインTに接続されるタンクポート23tと、ブームシリンダ8のヘッド側ポート8aに接続される一方のアクチュエータポート23cと、ブームシリンダ8のロッド側ポート8bに接続される他方のアクチュエータポート23dとを備えている。そして、ブーム用方向切換弁23は、伸長側、縮小側の両パイロットポート23a、23bにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、伸長側パイロットポート23aにパイロット圧が入力されることにより伸長側作動位置Xに切換わって、ポンプポート23pから一方のアクチュエータポート23cに至る供給用弁路23eと、他方のアクチュエータポート23dからタンクポート23tに至る排出用弁路23fとを開き、また、縮小側パイロットポート23bにパイロット圧が入力されることにより縮小側作動位置Yに切換わって、ポンプポート23pから他方のアクチュエータポート23dに至る供給用弁路23eと、一方のアクチュエータポート23cからタンクポート23tに至る排出用弁路23fとを開くと共に、一方のアクチュエータポート23cからの排出油の一部を再生油として他方のアクチュエータポート23dに供給する再生用弁路23gを開くように構成されている。そして、前記供給用弁路23e、排出用弁路23f、再生用弁路23gの開口面積は、ブーム用伸長側、縮小側電磁比例弁43a、43bから出力されるパイロット圧によって移動するスプールの移動位置に応じて増減制御されるようになっていると共に、ブームシリンダ8からの排出流量、再生流量は、排出用弁路23f、再生用弁路23gの開口面積によってそれぞれ制御されるようになっている。また、ブームシリンダ8への供給流量は、流量制御弁が設けられていないブーム用メイン側供給油路17を経由する第二油圧ポンプBからブームシリンダ8の供給流量については、ブーム用方向切換弁23の供給用弁路23eの開口面積によって制御される一方、ブーム用流量制御弁29が設けられているブーム用サブ側供給油路14を経由する第一油圧ポンプAからブームシリンダ8への供給流量については、ブーム用流量制御弁29の開口面積およびブーム用方向切換弁23の供給用弁路23eの開口面積によって制御されるようになっている。
【0017】
また、スティック用方向切換弁25は、スティックシリンダ9に対する給排流量制御および再生流量制御を行うと共に給排方向を切換えるクローズドセンタ型のスプール弁であって、コントローラ39から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力するスティック用伸長側、縮小側電磁比例弁45a、45b(
図3に図示)にそれぞれ接続される伸長側、縮小側のパイロットポート25a、25bと、スティック用メイン側供給油路16およびスティック用サブ側供給油路18に接続されるポンプポート25pと、タンクラインTに接続されるタンクポート25tと、スティックシリンダ9のヘッド側ポート9aに接続される一方のアクチュエータポート25cと、スティックシリンダ9のロッド側ポート9bに接続される他方のアクチュエータポート25dとを備えている。そして、スティック用方向切換弁25は、伸長側、縮小側の両パイロットポート25a、25bにパイロット圧が入力されていない状態では、スティックシリンダ9に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、伸長側パイロットポート25aにパイロット圧が入力されることにより伸長側作動位置Xに切換わって、ポンプポート25pから一方のアクチュエータポート25cに至る供給用弁路25eと、他方のアクチュエータポート25dからタンクポート25tに至る排出用弁路25fとを開くと共に、他方のアクチュエータポート25dからの排出油の一部を再生油として一方のアクチュエータポート25cに供給する再生用弁路25gを開き、また、縮小側パイロットポート25bにパイロット圧が入力されることにより縮小側作動位置Yに切換わって、ポンプポート25pから他方のアクチュエータポート25dに至る供給用弁路25eと、一方のアクチュエータポート25cからタンクポート25tに至る排出用弁路25fとを開くように構成されている。そして、前記供給用弁路25e、排出用弁路25f、再生用弁路25gの開口面積は、スティック用伸長側、縮小側電磁比例弁45a、45bから出力されるパイロット圧によって移動するスプールの移動位置に応じて増減制御されるようになっていると共に、スティックシリンダ9からの排出流量、再生流量は、前記排出用弁路25f、再生用弁路25gの開口面積によってそれぞれ制御されるようになっている。また、スティックシリンダ9への供給流量は、第一スティック用流量制御弁30が設けられているスティック用メイン側供給油路16を経由する第一油圧ポンプAからスティックシリンダ9への供給流量については、第一スティック用流量制御弁30の開口面積およびスティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積によって制御される一方、第二スティック用流量制御弁31が設けられているスティック用サブ側供給油路18を経由する第二油圧ポンプBからスティックシリンダ9への供給流量については、第二スティック用流量制御弁31の開口面積およびスティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積によって制御されるようになっている。尚、スティック用方向切換弁25は、本発明の作業機用方向切換弁に相当する。
【0018】
さらに、
図2において、E、Fは第一、第二ポンプラインC、Dに接続される全ての方向切換弁23~26の上流側位置から分岐形成されてタンクラインTに至る第一、第二ブリードラインであって、これら第一、第二ブリードラインE、Fには、第一、第二ブリード弁33、34がそれぞれ配設されている。これら第一、第二ブリード弁33、34は、第一、第二ブリード用電磁比例弁47a、47b(
図3に図示)から出力されるパイロット圧によりそれぞれ作動して、第一、第二油圧ポンプA、Bから第一、第二ブリードラインE、Fを経由して油タンク12に流れるブリード流量を増減制御するようになっているが、上記第一、第二ブリード用電磁比例弁47a、47bは、コントローラ39から出力される制御信号に基づいて第一、第二ブリード弁33、34への出力パイロット圧を増減制御するようになっている。
【0019】
一方、前記コントローラ39(本発明の制御手段に相当する)は、
図3のブロック図に示す如く、入力側に、ブーム用操作具の操作方向および操作量を検出するブーム用操作検出手段50、旋回用操作具の操作方向および操作量を検出する旋回用操作検出手段51、スティック用操作具(本発明の作業機用操作具に相当する)の操作方向および操作量を検出するスティック用操作検出手段52、バケット用操作具の操作方向および操作量を検出するバケット用操作検出手段53、第一油圧ポンプAの吐出圧を検出する第一ポンプ圧力センサ54、第二油圧ポンプBの吐出圧を検出する第二ポンプ圧力センサ55、ブームシリンダ8のヘッド側、ロッド側の負荷圧をそれぞれ検出するブーム用圧力センサ56a、56b、旋回モータ11の左旋回側、右旋回側の負荷圧をそれぞれ検出する旋回用圧力センサ57a、57b、スティックシリンダ9のヘッド側、ロッド側の負荷圧をそれぞれ検出するスティック用圧力センサ58a、58b、バケットシリンダ10のヘッド側、ロッド側の負荷圧をそれぞれ検出するバケット用圧力センサ59a、59b等が接続され、出力側に、前記ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用方向切換弁23~26のパイロットポート23a、23b~26a、26bにパイロット圧をそれぞれ出力するブーム用伸長側、縮小側電磁比例弁43a、43b、旋回用左旋回側、右旋回側電磁比例弁44a、44b、スティック用伸長側、縮小側電磁比例弁45a、45b、バケット用伸長側、縮小側電磁比例弁46a、46b、前記ブーム用サブ側供給油路14に配設のブーム用流量制御弁29にパイロット圧を出力するブーム流量制御用電磁比例弁40、スティック用メイン側、サブ側供給油路16、18に配設の第一、第二スティック用流量制御弁30、31にそれぞれパイロット圧を出力する第一、第二スティック流量制御用電磁比例弁41、42、前記第一、第二ブリード弁33、34にそれぞれパイロット圧を出力する第一、第二ブリード用電磁比例弁47a、47b、第一、第二油圧ポンプA、Bの容量可変手段Aa、Ba等が接続されるとともに、後述するポンプ用制御部60、ブリード用制御部61、要求供給流量設定部62、目標供給流量設定部63、ブーム用制御部64、旋回用制御部65、スティック用制御部66、バケット用制御部67等を具備して構成されている。
【0020】
次いで、前記コントローラ39に設けられたポンプ用制御部60、ブリード用制御部61、要求供給流量設定部62、目標供給流量設定部63、ブーム用制御部64、旋回用制御部65、スティック用制御部66、バケット用制御部67の各部で行われる制御について説明する。
ポンプ用制御部60は、ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用の各操作検出手段50~53から入力される操作検出信号、および第一、第二ポンプ圧力センサ54、55から入力される第一、第二油圧ポンプA、Bの吐出圧等に基づいて第一、第二油圧ポンプA、Bの目標吐出流量を求め、該目標吐出流量が得られるように第一、第二油圧ポンプA、Bの容量可変手段Aa、Baに制御信号を出力する。この場合、操作される油圧アクチュエータの油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプA、Bに応じて、第一、第二油圧ポンプA、Bの吐出流量は個別制御される。
【0021】
ブリード用制御部61は、ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用の各操作検出手段50~53から入力される操作検出信号に基づいて、操作具操作量の増加に応じて第一、第二油圧ポンプA、Bから油タンク12に流れるブリード流量を減少(ブリード流量ゼロを含む)させるべく、第一、第二ブリード用電磁比例弁47a、47bに制御信号を出力して第一、第二ブリード弁33、34を制御する。この場合、操作された油圧アクチュエータ(ブームシリンダ8、旋回モータ11、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10)の油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプA、Bに応じて、第一、第二ブリードラインE、Fのブリード流量は個別制御される。
【0022】
また、要求供給流量設定部62は、ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用の各操作検出手段50~53から検出信号が入力されると、各操作具の操作量に応じて、ブームシリンダ8、旋回モータ11、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10がそれぞれ要求する要求供給流量を求める。該要求供給流量を求めるにあたり、第一、第二油圧ポンプA、Bの両方の油圧ポンプを油圧供給源とするブームシリンダ8、スティックシリンダ9については、第一、第二油圧ポンプA、Bに対する要求供給流量が各油圧ポンプ別にそれぞれ設定される。この場合、操作具操作量が予め設定される設定値L(該設定値Lは、ブーム用操作具、スティック用操作具で個別に設定される)未満の場合には、ブームシリンダ8、スティックシリンダ9の要求供給流量の全量を、ブーム用メイン側供給油路17に接続される第二油圧ポンプB、スティック用メイン側供給油路16に接続される第一油圧ポンプAに対する要求供給流量とし、ブーム用サブ側供給油路14に接続される第一油圧ポンプA、スティック用サブ側供給油路18に接続される第二油圧ポンプBに対する要求供給流量はゼロに設定する。一方、操作具操作量が設定値L以上の場合には、ブーム用メイン側供給油路17に接続される第二油圧ポンプB、スティック用メイン側供給油路16に接続される第一油圧ポンプAからのみの供給流量だけでは不足する不足分を、ブーム用サブ側供給油路14に接続される第一油圧ポンプA、スティック用サブ側供給油路18に接続される第二油圧ポンプBから供給するべく、第一、第二油圧ポンプA、Bの両方の油圧ポンプに対する要求供給流量がそれぞれ設定される。しかして、ブーム用メイン側供給油路17に接続される第二油圧ポンプB、スティック用メイン側供給油路16に接続される第一油圧ポンプAに対する要求供給流量は、ブーム用操作具、スティック用操作具の全操作範囲において設定される一方、ブーム用サブ側供給油路14に接続される第一油圧ポンプA、スティック用サブ側供給油路18に接続される第二油圧ポンプBに対する要求供給流量は、操作具操作量が設定値L以上の場合のみ設定される。
尚、前記要求供給流量設定部62は、例えば操作具操作量と要求供給流量との関係を示すマップ等のデータを各油圧アクチュエータ毎に備えていて、該データを用いて操作具操作量が大きくなるほど要求供給流量が増加するように各油圧アクチュエータの要求供給流量を設定するが、このようなデータは制御パラメータとして要求供給流量設定部62に組込まれるようになっていて、例えば、油圧ショベル1の行う作業内容等に応じて、操作具操作量に対応する要求供給流量の値を変更することができるようになっている。
【0023】
また、目標供給流量設定部63は、前記ポンプ用制御部60で求められた第一、第二油圧ポンプA、Bの目標吐出流量、および要求供給流量設定部62で求められたブームシリンダ8、旋回モータ11、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10の要求供給流量を入力し、これら入力信号に基づいて、第一、第二油圧ポンプA、Bからブームシリンダ8、旋回モータ11、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10への供給流量の目標値である目標供給流量Qを求める。この場合、操作された油圧アクチュエータの要求供給流量の総和が第一、第二油圧ポンプA、Bの目標吐出流量を超える場合には、第一、第二油圧ポンプA、Bの目標吐出流量を各油圧アクチュエータの要求供給流量の比率に応じて分配した分配流量を演算し、該分配流量を各油圧アクチュエータの目標供給流量Qとする。尚、ブームシリンダ8、スティックシリンダ9の目標供給流量Qは、前述したように第一油圧ポンプAに対する要求供給流量と第二油圧ポンプBに対する要求供給流量とが各油圧ポンプ別に設定されることから、第一油圧ポンプAに対する目標供給流量Qaと第二油圧ポンプBに対する目標供給流量Qb(Qa+Qb=Q)とが各油圧ポンプ別に設定されることになるが、ブーム用メイン側供給油路17に接続される第二油圧ポンプBに対する目標供給流量Qb、スティック用メイン側供給油路16に接続される第一油圧ポンプAに対する目標供給流量Qaは、ブーム用操作具、スティック用操作具の全操作範囲において設定される一方、ブーム用サブ側供給油路14に接続される第一油圧ポンプAに対する目標供給流量Qa、スティック用サブ側供給油路18に接続される第二油圧ポンプBに対する目標供給流量Qbは、操作具操作量が設定値L以上の場合にのみ設定される。尚、前記要求供給流量設定部62および目標供給流量設定部63は、本発明の目標供給流量設定手段に相当する。
【0024】
次いで、ブーム用制御部64、旋回用制御部65、スティック用制御部66、バケット用制御部67の各部で行う制御について説明するが、まず、旋回モータ11、バケットシリンダ10に対する制御を行う旋回用制御部65、バケット用制御部67について説明する。
旋回用制御部65には、旋回用方向切換弁24の制御を行う方向切換弁制御部65aが設けられている。該方向切換弁制御部65aは、前記目標供給流量設定部63で求められた旋回モータ11の目標供給流量Qに対応する旋回用方向切換弁24の供給用弁路24eの開口面積を求め、さらに該開口面積となる旋回用方向切換弁24のスプール移動位置を求めて、該スプール移動位置にするべく旋回用左旋回側、右旋回側電磁比例弁44a、44bに制御信号を出力する。そして、該スプール移動位置での供給用弁路24e、排出用弁路24fの開口面積によって、旋回モータ11に対する供給流量制御、排出流量制御も行われるようになっている。尚、前記旋回用制御部65に設けられる方向切換弁制御部65aは、本発明の方向切換弁制御手段に相当する。
ここで、前記方向切換弁制御部65aは、目標供給流量Qと旋回用方向切換弁24の供給用弁路24eの開口面積との関係を示すマップ等のデータを備えており、該データを用いて目標供給流量Qに対応する供給用弁路24eの開口面積を求めるようになっているが、このようなデータは制御パラメータとして方向切換弁制御部65aに組込まれるようになっていて、例えば、油圧ショベル1の行う作業内容等に応じて、目標供給流量Qに対応する旋回用方向切換弁供給用弁路24eの開口面積の値を変更することができるようになっている。また、後述するブーム用制御部64、スティック用制御部66、バケット用制御部67に設けられる方向切換弁制御部64a、66a、67aにおいても、同様に目標供給流量Qとブーム用方向切換弁23、スティック用方向切換弁25,バケット用方向切換弁26の供給用弁路23e、25e、26eの開口面積との関係を示すマップ等のデータが備えられているとともに、目標供給流量Qに対応する供給用弁路23e、25e、26eの開口面積の値を変更することができるようになっている。
【0025】
また、バケット用制御部67には、バケット用方向切換弁26の制御を行う方向切換弁制御部67aが設けられており、該方向切換弁制御部67aにおいて、目標供給流量設定部63で求められたバケットシリンダ10の目標供給流量Qに対応するバケット用方向切換弁26の供給用弁路26eの開口面積を求め、さらに該開口面積となるバケット用方向切換弁26のスプール移動位置を求めて、該スプール移動位置にするべくバケット用伸長側、縮小側電磁比例弁46a、46bに制御信号を出力する。そして、該スプール移動位置での供給用弁路26e、排出用弁路26fの開口面積によって、バケットシリンダ10に対する供給流量制御、排出流量制御も行われるようになっている。
【0026】
次に、スティックシリンダ9に対する制御を行うスティック用制御部66について説明すると、該スティック用制御部66には、スティック用方向切換弁25の制御を行う方向切換弁制御部66aと、第一油圧ポンプAの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtを設定する第一目標差圧設定部66bと、第一スティック用流量制御弁30の制御を行う第一流量制御弁制御部66cと、第二油圧ポンプBの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtを設定する第二目標差圧設定部66dと、第二スティック用流量制御弁31の制御を行う第二流量制御弁制御部66eとが設けられている。尚、スティックシリンダ9は、前述したように、第一、第二油圧ポンプA、Bの両方の油圧ポンプを油圧供給源とするが、旋回モータ11の油圧供給源である第一油圧ポンプAからは、スティック用操作具の全操作範囲において圧油供給されるようになっており、本発明の油圧ポンプを旋回モータと共用する作業機用油圧アクチュエータに相当する。また、スティック用制御部66に設けられる方向切換弁制御部66a、第一目標差圧設定部66b、第一流量制御弁制御部66cは、本発明の方向切換弁制御手段、目標差圧設定手段、流量制御弁制御手段にそれぞれ相当する。
【0027】
前記スティック用制御部66の方向切換弁制御部66aは、前記目標供給流量設定部63からスティックシリンダ9の目標供給流量Qが入力されると、該目標供給流量Qに対応するスティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積を求め、さらに該開口面積となるスティック用方向切換弁25のスプール移動位置を求めて、該スプール移動位置にするべくスティック用伸長側、縮小側電磁比例弁45a、45bに制御信号を出力する。尚、前述したように、スティックシリンダ9の目標供給流量Qは、スティック用メイン側供給油路16に接続される第一油圧ポンプAに対する目標供給流量Qaについては、スティック用操作具の全操作範囲において設定される一方、スティック用サブ側供給油路18に接続される第二油圧ポンプBに対する目標供給流量Qbは、操作具操作量が設定値L以上の場合にのみ設定される。
【0028】
また、スティック用制御部66の第一目標差圧設定部66bは、第一スティック用流量制御弁30に圧油供給する第一油圧ポンプAの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との差圧の目標値としての目標差圧ΔPtを設定する。この場合、第一目標差圧設定部66bは、前記要求供給流量設定部62で設定された旋回モータ11の要求供給流量を入力し、該旋回モータ11の要求供給流量がゼロの場合(旋回用操作具が操作されていない場合)には、上記目標差圧ΔPtを非旋回連動時目標差圧ΔPtsに設定する一方、旋回モータ11の要求供給流量がゼロでない場合(旋回用操作具が操作されている場合)には、目標差圧ΔPtを旋回連動時目標差圧ΔPtwに設定する。該旋回連動時目標差圧ΔPtwの値は、前記非旋回連動時目標差圧ΔPtsの値を始点として、旋回モータ11の要求供給流量が増加するほど(旋回用操作具の操作量が増加するほど)漸次増加するように設定される(
図5参照)。
ここで、前記非旋回連動時目標差圧ΔPtsは、固定値、あるいはスティック用操作具の操作量に対するマップで与えられる値であっても良いが、スティック用操作具が旋回用操作具と連動操作(同時操作)されていない場合には、前記非旋回連動時目標差圧ΔPtsが保持されるように、スティック用操作具操作量に対するポンプ流量とスティック用方向切換弁供給用弁路25eの開口面積との関係は予め設計、調整されている。
【0029】
また、スティック用制御部66の第一流量制御弁制御部66cは、
図4の制御ロジック図に示す如く、前記目標供給流量設定部63からスティックシリンダ9の第一油圧ポンプAに対する目標供給流量Qaが入力されると、第一油圧ポンプAに接続される第一スティック用流量制御弁30を開くように第一スティック流量制御用電磁比例弁41に対して制御信号を出力する。この場合に、第一流量制御弁制御部66cは、第一、第二油圧ポンプA、Bからスティックシリンダ9への目標供給流量Qa、Qbと、前記方向切換弁制御部66aで求められたスティック用方向切換弁供給用弁路25eの開口面積Asと、第一目標差圧設定部66bで設定された第一油圧ポンプAとスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPt(非旋回連動時目標差圧ΔPtsまたは旋回連動時目標差圧ΔPtw)の値を入力し、これら入力値に基づいて第一スティック用流量制御弁30の目標開口面積Afを演算して、該目標開口面積Afとなるように第一スティック用流量制御弁30の開口面積を制御するようになっており、以下、目標開口面積Afの演算手順について説明する。
第一流量制御弁制御部66cは、まず、第一、第二の両方の油圧ポンプA、Bからスティックシリンダ9への目標供給流量Qと、スティック用方向切換弁供給用弁路25eの開口面積Asとに基づいて、以下の式(1)を用いて前記目標供給流量Qが通過するときのスティック用方向切換弁供給用弁路25eの前後差圧ΔPsを演算する。さらに、該演算されたスティック用方向切換弁供給用弁路25eの前後差圧ΔPs、および第一油圧ポンプAの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtに基づいて、以下の式(2)を用いて第一スティック用流量制御弁30の前後差圧ΔPfを演算する。さらに、該演算された第一スティック用流量制御弁30の前後差圧ΔPfと、第一スティック用流量制御弁30に圧油供給する第一油圧ポンプAからの目標供給流量Qaとに基づいて、以下の式(3)を用いて第一油圧ポンプAからの目標供給流量Qaが第一スティック用流量制御弁30を通過するときの第一スティック用流量制御弁30の目標開口面積Afを演算する。
ΔPs={Q/(C・As)}
2 ・・・(1)
ΔPf=ΔPt-ΔPs ・・・(2)
Af=Qa/(C・√ΔPf) ・・・(3)
尚、式(1)、(2)、(3)において、ΔPsはスティック用方向切換弁供給用弁路25eの前後差圧、Qは第一、第二の両方の油圧ポンプA、Bからスティックシリンダ9への目標供給流量、Asはスティック用方向切換弁供給用弁路25eの開口面積、ΔPfは第一スティック用流量制御弁30の前後差圧、ΔPtは第一油圧ポンプAの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧、Afは第一スティック用流量制御弁30の目標開口面積、Qaは第一油圧ポンプAからの目標供給流量、Cは係数である。
また、前記式(1)、(3)は、以下の式(4)に示すオリフィスの流量計算式
Q=C・A・√ΔP ・・・(4)
から導いた式である。尚、式(4)において、Qはオリフィスの通過流量、Aはオリフィスの開口面積、ΔPはオリフィスの前後差圧、Cは係数である。
【0030】
そして、第一流量制御弁制御部66cは、このようにして演算された目標開口面積Afとなるように第一スティック用流量制御弁30を制御し、これにより第一スティック用流量制御弁30の通過流量は第一油圧ポンプAからスティックシリンダ9への目標供給流量Qaとなるように制御されることになるが、この場合に、第一スティック用流量制御弁30の目標開口面積Afは、前記式(1)~(3)から明らかなように、第一スティック用流量制御弁30の前後差圧ΔPfが大きくなるほど小さくなり、また、第一スティック用流量制御弁30の前後差圧ΔPfは、第一油圧ポンプAの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtが大きくなるほど大きくなる。つまり、第一油圧ポンプAの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtが大きいほど第一スティック用流量制御弁30の目標開口面積Afは小さくなるように制御されることになるが、上記目標差圧ΔPtは、前述したように第一目標差圧設定部66bにおいて、旋回用操作具が操作されていない場合には非旋回連動時目標差圧ΔPtsに設定される一方、旋回用操作具が操作されている場合には、前記非旋回連動時目標差圧ΔPtsを始点として旋回モータ11の要求供給流量が増加するほど(旋回用操作具の操作量が大きくなるほど)増加する旋回連動時目標差圧ΔPtwに設定される。しかして、スティック用操作具と旋回用操作具との連動操作時に、第一スティック用流量制御弁30の開口面積は、スティック用操作具を単独操作する場合と比して、旋回モータ11の要求供給流量が増加するほど小さくなるように制御されるようになっている。そして、このように旋回用操作具との連動操作時に第一スティック用流量制御弁30の開口面積を小さくすることで、第一油圧ポンプAからスティックシリンダ9への供給流量を制限し、これによって旋回モータ11への供給流量不足による旋回力の低下を回避できるようになっている。
【0031】
一方、スティック用制御部66の第二目標差圧設定部66dは、第二スティック用流量制御弁31に圧油供給する第二油圧ポンプBの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との差圧の目標値としての目標差圧ΔPtを設定する。該目標差圧ΔPtは、前記第一目標差圧設定部66bで設定された非旋回連動時目標差圧ΔPtsと同様に、固定値、あるいはスティック用操作具の操作量に対するマップで与えられる。
【0032】
また、スティック用制御部66の第二流量制御弁制御部66eは、前記目標供給流量設定部63からスティックシリンダ9の第二油圧ポンプBに対する目標供給流量Qbが入力される(操作具操作量が設定値L以上の場合)と、第二油圧ポンプBに接続されるスティック用サブ側供給油路18に配設の第二スティック用流量制御弁31を開くように第二スティック流量制御用電磁比例弁42に対して制御信号を出力する。また、第二油圧ポンプBに対する目標供給流量Qbがゼロの場合(操作具操作量が設定値L未満の場合)には、第二スティック用流量制御弁31は閉じるように制御される。
ここで、前記第二流量制御弁制御部66eが行う第二スティック用流量制御弁31の開口面積制御について説明すると、第二流量制御弁制御部66eは、第一、第二油圧ポンプA、Bからスティックシリンダ9への目標供給流量Qa、Qbと、前記方向切換弁制御部66aで求められたスティック用方向切換弁供給用弁路25eの開口面積Asと、第二目標差圧設定部66dで設定された第二油圧ポンプBとスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtの値を入力し、これら入力値に基づいて第二スティック用流量制御弁31の目標開口面積Afを演算して、該目標開口面積Afとなるように第二スティック用流量制御弁31の開口面積を制御するようになっており、以下、目標開口面積Afの演算手順について説明する。
第二流量制御弁制御部66eは、まず、前述した第一流量制御弁制御部66cの場合と同様に、第一、第二の両方の油圧ポンプA、Bからスティックシリンダ9への目標供給流量Q(Q=Qa+Qb)と、スティック用方向切換弁供給用弁路25eの開口面積Asとに基づいて、前記式(1)を用いて、目標供給流量Qが通過するときのスティック用方向切換弁供給用弁路25eの前後差圧ΔPsを演算する。さらに、該演算されたスティック用方向切換弁供給用弁路25eの前後差圧ΔPs、および第二油圧ポンプBの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtに基づいて、前記式(2)を用いて、第二スティック用流量制御弁31の前後差圧ΔPfを演算する。この場合、式(2)において、ΔPfは第二スティック用流量制御弁31の前後差圧、ΔPtは第二油圧ポンプBの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧、ΔPsはスティック用方向切換弁供給用弁路25eの前後差圧である。さらに、該演算された第二スティック用流量制御弁31の前後差圧ΔPfと、第二スティック用流量制御弁31に圧油供給する第二油圧ポンプBからの目標供給流量Qbとに基づいて、前記式(3)と同様の以下の式(5)を用いて第二油圧ポンプBからの目標供給流量Qbが第二スティック用流量制御弁31を通過するときの第二スティック用流量制御弁31の目標開口面積Afを演算する。
Af=Qb/(C・√ΔPf) ・・・(5)
尚、式(5)において、Afは第二スティック用流量制御弁31の目標開口面積、Qbは第二油圧ポンプBからスティックシリンダ9への目標供給流量、ΔPfは第二スティック用流量制御弁31の前後差圧、Cは係数である。
そして、このようにして演算された目標開口面積Afとなるように第二スティック用流量制御弁31の開口面積を制御することで、該第二スティック用流量制御弁31の通過流量は第二油圧ポンプBからスティックシリンダ9への目標供給流量Qbとなるように制御される。
【0033】
しかして、前記スティック用制御部66の方向切換弁制御部66a、第一目標差圧設定部66b、第一流量制御弁制御部66c、第二目標差圧設定部66d、第二流量制御弁制御部66eで行う制御によって、スティック用操作具が操作された場合、該操作具操作量が設定値L未満の場合には、第一油圧ポンプAからの供給流量のみがスティックシリンダ9に供給されると共に、該スティックシリンダ9への供給流量制御は、スティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積および第一スティック用流量制御弁30の開口面積によって行われる。また、操作具操作量が設定値L以上の場合には、第一、第二油圧ポンプA、Bの両方の油圧ポンプからの合計流量がスティックシリンダ9に供給されると共に、該スティックシリンダ9への供給流量制御は、スティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積、および第一、第二スティック用流量制御弁30、31の開口面積によって行われる。一方、スティックシリンダ9からの排出流量制御、再生流量制御は、スティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積に対応するスプール移動位置での排出用弁路25f、再生用弁路25gの開口面積によってそれぞれ行われる。これにより、スティック用方向切換弁25の供給用油路25eと排出用弁路25f、再生用弁路25gの開口面積との関係が一意的であっても、第一、第二スティック用流量制御弁30、31の開口面積を増減させて第一、第二油圧ポンプA、Bからスティックシリンダ9への供給流量を増減制御することで、スティックシリンダ9に対する供給流量と排出流量、再生流量との関係を変更できることになる。
さらに、このものにおいて、第一油圧ポンプAを共用する旋回モータ11とスティックシリンダ9とが連動操作された場合には、前述したように、第一油圧ポンプAとスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtを旋回モータ11の要求供給流量が増加するほど大きくなるように設定することで、第一スティック用流量制御弁30の開口面積は旋回モータ11の要求供給流量が増加するほど小さくなるように制御され、これにより第一油圧ポンプAからスティックシリンダ9への供給流量は、旋回モータ11の要求供給流量が増加するほど(旋回用操作具の操作量が大きくなるほど)減少するように制御される。そして、このように旋回用操作具との連動操作時に、第一スティック用流量制御弁30を旋回優先用流量制御弁として機能させてスティックシリンダ9への供給流量を制限することで、上部旋回体2の旋回が負荷の高い作業であっても、第一油圧ポンプAからの供給流量がスティックシリンダ9側に多量に流れて旋回モータ11への供給流量が不足してしまうことを回避して、旋回力を確実に保持できるようになっているとともに、スティックシリンダ9への供給流量の制限は、旋回用操作具の操作量に応じて行われるから、スティックシリンダ9への供給流量が必要以上に制限されることなく、スティックシリンダ9の適切な作動速度も確保できる。
【0034】
次に、ブームシリンダ8に対する制御を行うブーム用制御部64について説明すると、該ブーム用制御部64には、ブーム用方向切換弁23の制御を行う方向切換弁制御部64aと、第一油圧ポンプAの吐出圧とブームシリンダ8への供給圧力との目標差圧を設定する目標差圧設定部64bと、ブーム用流量制御弁29の制御を行う流量制御弁制御部64cとが設けられている。尚、ブームシリンダ8は、前述したように、第一、第二油圧ポンプA、Bの両方の油圧ポンプを油圧供給源とするが、旋回モータ11の油圧供給源である第一油圧ポンプAからは、ブーム用操作具の操作量が設定値L以上の場合のみ圧油供給されるようにおり、本実施の形態では、本発明の油圧ポンプを旋回モータと共用する作業機用油圧アクチュエータには相当しない。
【0035】
前記ブーム用制御部64の方向切換弁制御部64aは、前記目標供給流量設定部63からブームシリンダ8の目標供給流量Qが入力されると、該目標供給流量Qに対応するブーム用方向切換弁23の供給用弁路23eの開口面積を求め、さらに該開口面積となるブーム用方向切換弁23のスプール移動位置を求めて、該スプール移動位置にするべくブーム用伸長側、縮小側電磁比例弁43a、43bに制御信号を出力する。尚、前述したように、ブームシリンダ8の目標供給流量Qは、ブーム用メイン側供給油路17に接続される第二油圧ポンプBに対する目標供給流量Qbについては、ブーム用操作具の全操作範囲において設定される一方、ブーム用サブ側供給油路14に接続される第一油圧ポンプAに対する目標供給流量Qaは、操作具操作量が設定値L以上の場合にのみ設定される。
【0036】
また、ブーム用制御部64の目標差圧設定部64bは、ブーム用流量制御弁29に圧油供給する第一油圧ポンプAの吐出圧とブームシリンダ8への供給圧力との差圧の目標値としての目標差圧ΔPtを設定する。該目標差圧ΔPtは、固定値、あるいは操作具操作量に対するマップで与えられる値であっても良いが、該目標差圧ΔPtが保持されるように、操作具操作量に対するポンプ流量とブーム用方向切換弁供給用弁路23eの開口面積との関係は予め設計、調整されている。
【0037】
また、ブーム用制御部64の流量制御弁制御部64cは、前記目標供給流量設定部63からブームシリンダ8の第一油圧ポンプAに対する目標供給流量Qaが入力される(操作具操作量が設定値L以上の場合)と、第一油圧ポンプAに接続されるブーム用サブ側供給油路14に配設のブーム用流量制御弁29を開くようにブーム流量制御用電磁比例弁40に対して制御信号を出力する。また、第一油圧ポンプAに対する目標供給流量Qaがゼロの場合(操作具操作量が設定値L未満の場合)には、ブーム用流量制御弁29は閉じるように制御される。
【0038】
ここで、前記流量制御弁制御部64cが行うブーム用流量制御弁29の開口面積制御について説明する。流量制御弁制御部64cは、第一、第二油圧ポンプA、Bからブームシリンダ8への目標供給流量Qa、Qbと、前記方向切換弁制御部64aで求められたブーム用方向切換弁供給用弁路23eの開口面積Asと、目標差圧設定部64bで設定された第一油圧ポンプAとブームシリンダ8への供給圧力との目標差圧ΔPtの値を入力し、これら入力値に基づいてブーム用流量制御弁29の目標開口面積Afを演算して、該目標開口面積Afとなるようにブーム用流量制御弁29の開口面積を制御するようになっており、以下、目標開口面積Afの演算手順について説明する。
流量制御弁制御部64cは、まず、第一、第二の両方の油圧ポンプA、Bからブームシリンダ8への目標供給流量Q(Q=Qa+Qb)と、ブーム用方向切換弁供給用弁路23eの開口面積Asとに基づいて、前記(1)を用いて、前記目標供給流量Qが通過するときのブーム用方向切換弁供給用弁路23eの前後差圧ΔPsを演算する。この場合、式(1)において、ΔPsはブーム用方向切換弁供給用弁路23eの前後差圧、Qは第一、第二の両方の油圧ポンプA、Bからブームシリンダ8への目標供給流量、Asはブーム用方向切換弁供給用弁路23eの開口面積、Cは係数である。さらに、該演算されたブーム用方向切換弁供給用弁路23eの前後差圧ΔPs、および第一油圧ポンプAの吐出圧とブームシリンダ8への供給圧力との目標差圧ΔPtに基づいて、前記式(2)を用いてブーム用流量制御弁29の前後差圧ΔPfを演算する。この場合、式(2)において、ΔPfはブーム用流量制御弁29の前後差圧、ΔPtは第一油圧ポンプAの吐出圧とブームシリンダ8への供給圧力との目標差圧、ΔPsはブーム用方向切換弁供給用弁路23eの前後差圧である。さらに、該演算されたブーム用流量制御弁29の前後差圧ΔPfと、ブーム用流量制御弁29に圧油供給する第一油圧ポンプAからの目標供給流量Qaとに基づいて、前記式(3)を用いて第一油圧ポンプAからの目標供給流量Qaがブーム用流量制御弁29を通過するときのブーム用流量制御弁29の目標開口面積Afを演算する。この場合、式(3)において、Afはブーム用流量制御弁29の目標開口面積、Qaは第一油圧ポンプAからブームシリンダ8への目標供給流量、ΔPfはブーム用流量制御弁29の前後差圧、Cは係数である。
そして、このようにして演算された目標開口面積Afとなるようにブーム用流量制御弁29の開口面積を制御することで、該ブーム用流量制御弁29の通過流量は第一油圧ポンプAからブームシリンダ8への目標供給流量Qaとなるように制御される。
【0039】
しかして、前記ブーム用制御部64の方向切換弁制御部64a、目標差圧設定部64b、流量制御弁制御部64cで行う制御によって、ブーム用操作具が操作された場合、該操作具操作量が設定値L未満の場合には、第二油圧ポンプBからの供給流量のみがブームシリンダ8に供給されると共に、該ブームシリンダ8への供給流量制御はブーム用方向切換弁23の供給用弁路23eの開口面積によって行われる。また、この場合の排出流量制御、再生流量制御は、ブーム用方向切換弁23の供給用弁路23eの開口面積に対応するスプール移動位置での排出用弁路23f、再生用弁路23gの開口面積によってそれぞれ行われる。
一方、操作具操作量が設定値L以上の場合には、第一、第二油圧ポンプA、Bの両方の油圧ポンプからの合計流量がブームシリンダ8に供給されると共に、ブームシリンダ8への供給流量制御は、ブーム用方向切換弁23の供給用弁路23eの開口面積およびブーム用流量制御弁29の開口面積によって行われる。この場合においても、排出流量制御、再生流量制御は、ブーム用方向切換弁23の供給用弁路23eの開口面積に対応するスプール移動位置での排出用弁路23f、再生用弁路23gの開口面積によってそれぞれ行われる。これにより、ブーム用方向切換弁23の供給用油路23eと排出用弁路23f、再生用弁路23gの開口面積との関係が一意的であっても、ブーム用流量制御弁29の開口面積を増減させてブームシリンダ8への供給流量を増減制御することで、ブームシリンダ8に対する供給流量と排出流量、再生流量との関係を変更できることになる。
このように、ブームシリンダ8に対する制御は、第一、第二油圧ポンプA、Bの両方の油圧ポンプから圧油供給される供給流量の多い範囲(操作具操作量が設定値L以上)において、供給流量と排出流量、再生流量との関係を変更できるようになっており、これにより、操作性、作業効率の向上を図れるものでありながら、一方の油圧ポンプ(第二油圧ポンプB)からのみ圧油供給される供給流量の少ない範囲(操作具操作量が設定値L未満)においては、ブーム用方向切換弁23のみで供給流量制御を行うことによって、一方の油圧ポンプが接続されるブーム用メイン側供給油路17用の流量制御弁および該流量制御弁をパイロット操作する電磁比例弁を省くことができるようになっており、これにより、部品点数の削減、回路の簡素化が図られている。
【0040】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1の油圧制御システムには、上部旋回体2を旋回せしめる旋回モータ11と、該旋回モータ11の油圧供給源となる第一油圧ポンプAと、該第一油圧ポンプAを旋回モータ11と共用するスティックシリンダ9と、旋回モータ11に対する供給用弁路24eおよび排出用弁路24fを有すると共に給排方向を切換える旋回用方向切換弁24と、スティックシリンダ9に対する供給用弁路25eおよび排出用弁路25fを有すると共に給排方向を切換えるスティック用方向切換弁25と、該スティック用方向切換弁25の上流側に配され、第一油圧ポンプAからスティック用方向切換弁25への供給流量を制御する第一スティック用流量制御弁30と、前記旋回用方向切換弁24、スティック用方向切換弁25および第一スティック用流量制御弁30の作動を制御するコントローラ39とが設けられているが、このものにおいて、コントローラ39には、旋回用、スティック用操作具の操作量に応じて第一油圧ポンプAから旋回モータ11、スティックシリンダ9への目標供給流量を設定する要求供給流量設定部62および目標供給流量設定部63と、目標供給流量に応じて旋回用、スティック用方向切換弁24、25の供給用弁路24e、25e、排出用弁路24f、25fの開口面積を制御する方向切換弁制御部65a、66aと、第一油圧ポンプAの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtを設定する第一目標差圧設定部66bと、第一油圧ポンプAからスティックシリンダ9に目標供給流量Qaを供給するべく該目標供給流量Qaと目標差圧ΔPtとスティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積Asとに基づいて第一スティック用流量制御弁30の開口面積Afを制御する第一流量制御弁制御部66cとが設けられているとともに、前記第一目標差圧設定部66bは、旋回モータ11とスティックシリンダ9との連動時に、第一油圧ポンプAの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPt(旋回連動時目標差圧ΔPtw)を、旋回モータ11とスティックシリンダ9との非連動時における目標差圧ΔPt(非旋回連動時目標差圧ΔPts)よりも旋回用操作具の操作量が大きくなるほど目標差圧ΔPtが大きくなるように設定する一方、第一流量制御弁制御部66cは、前記目標差圧ΔPtが大きくなるほど第一スティック用流量制御弁30の開口面積を小さくするように制御することになる。
【0041】
しかして、第一油圧ポンプAを共用する旋回モータ11とスティックシリンダ9との連動時に、第一スティック用流量制御弁30の開口面積は旋回用操作具の操作量が大きくなるほど小さくなるように制御され、これによりスティックシリンダ9への供給流量は、旋回用操作具の操作量が大きくなるほど減少するように制限されることになる。この結果、上部旋回体2の旋回が負荷の高い作業であっても、第一油圧ポンプAからの供給流量がスティックシリンダ9側に多量に流れて旋回モータ11への供給流量が不足してしまうことを回避して、旋回力を確実に確保できるとともに、スティックシリンダ9への供給流量の制限は旋回用操作具の操作量に応じて行われるから、スティックシリンダ9への供給流量が必要以上に制限されることなく、スティックシリンダ9の適切な作動速度も確保できる。
【0042】
このように本実施の形態においては、旋回モータ11とスティックシリンダ9との連動時に、第一スティック用流量制御弁30を旋回優先用流量制御弁として機能させて第一油圧ポンプAからスティックシリンダ9への供給流量を制限することで旋回力を確保できるようにしたものであるが、上記第一スティック用流量制御弁30は、第一油圧ポンプAからスティックシリンダ9に目標供給流量Qaを供給するべく開口面積が制御されるものであって、その開口面積制御は、上記目標供給流量Qaと、第一油圧ポンプAの吐出圧とスティックシリンダ9への供給圧力との目標差圧ΔPtと、スティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積Asとに基づいて行われ、これにより目標供給流量Qa、目標差圧ΔPtおよびスティック用方向切換弁供給用弁路25eの開口面積Asに対応した精度の高い供給流量制御を行えることになるが、旋回モータ11とスティックシリンダ9との連動時には、前記目標差圧ΔPtを、非旋回連動時の目標差圧(非旋回連動時目標差圧ΔPts)よりも旋回用操作具の操作量が大きくほど目標差圧(旋回連動時目標差圧ΔPtw)が大きくなるように設定することで、第一スティック用流量制御弁30は開口面積が小さくなるように制御されることになる。しかして、旋回優先用流量制御弁として機能する第一スティック用流量制御弁30の旋回連動時の開口面積制御を、非旋回連動時の第一スティック用流量制御弁30の開口面積制御を元にして目標差圧ΔPtの設定変更だけで容易に行えることになって、制御の簡素化に貢献でき、旋回連動時専用のチューニングにかかる時間も短縮できる。
【0043】
さらに、前記第一スティック用流量制御弁30の開口面積を制御するにあたり、スティックシリンダ9への目標供給流量Qとスティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積Asとに基づいて該供給用弁路25eの前後差圧ΔPsを演算し、該演算された供給用弁路25eの前後差圧ΔPsと目標差圧ΔPtとに基づいて第一スティック用流量制御弁30の前後差圧ΔPfを演算し、さらに該演算された第一スティック用流量制御弁30の前後差圧ΔPfと第一油圧ポンプAからスティックシリンダ9への目標供給流量Qaとに基づいて第一スティック用流量制御弁30の目標開口面積Afを演算して、該目標開口面積Afとなるように第一スティック用流量制御弁30を制御するように構成されており、これにより、スティックシリンダ9に第一油圧ポンプAからの目標供給流量Qaを供給するための第一スティック用流量制御弁30の目標開口面積Afを精度良く制御できて、供給流量制御の精度向上に貢献できる。
【0044】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、作業機用方向切換弁の供給用弁路の開口面積を、該供給用弁路の前後で差圧が生じないほど大きな開口面積にすることもできる。この場合には、流量制御弁で制御された油圧ポンプからの供給流量が殆ど圧力損失することなく作業機用方向切換弁の供給用弁路を通過して作業機用油圧アクチュエータに供給されることになるが、このように構成したものにおいても、流量制御弁の開口面積を、油圧ポンプから作業機用油圧アクチュエータへの目標供給流量と、油圧ポンプの吐出圧と作業用油圧アクチュエータへの供給圧力との目標差圧に基づいて制御するとともに、旋回モータと作業機用油圧アクチュエータの連動時に、旋回用操作具の操作量が大きくなるほど目標差圧が大きくなるように設定することで、本発明を実施できる。
また、前記実施の形態では、ブーム用メイン側供給油路17には流量制御弁が設けられていないが、ブーム用メイン側供給油路17にもブーム用サブ側供給油路14と同様に、第二油圧ポンプBからブーム用方向切換弁23への供給流量を制御する流量制御弁を配することもできる。この場合には、ブーム用メイン側供給油路17に配した流量制御弁を、操作具の全操作範囲において開くように設定するとともに、その開口面積の制御をブーム用流量制御弁29の開口面積制御と同様に行うことで、全操作範囲においてブームシリンダ8に対する供給流量と排出流量との関係を変更することができる。
またさらに、旋回用供給油路15、バケット用供給油路19にも流量制御弁を配する構成にしても良く、この場合には部品点数は増加するが、旋回モータ11、バケットシリンダ10についても供給流量と排出流量との関係を変更できることになる。
さらに、旋回モータと油圧ポンプを共用する作業機用油圧アクチュエータとしてはスティックシリンダに限定されることなく、シャベル系建設機械に設けられる他の作業機用油圧アクチュエータであっても本発明を実施できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、旋回モータが設けられた油圧ショベル等のショベル系建設機械の油圧制御システムに利用することができる。
【国際調査報告】