(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ジンゲロンを調製する方法、ジンゲロンを含む組成物、およびこれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07C 45/85 20060101AFI20240822BHJP
A61K 31/121 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20240822BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240822BHJP
A61K 36/906 20060101ALI20240822BHJP
C07C 49/255 20060101ALI20240822BHJP
A01N 35/02 20060101ALI20240822BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07C45/85
A61K31/121
A61K31/7036
A61K31/7052
A61P31/04
A61K36/906
C07C49/255 Z
A01N35/02
A01P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508762
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 NZ2022050102
(87)【国際公開番号】W WO2023018338
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524055159
【氏名又は名称】エビス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Evithe Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】ヒューンフェルド-ガイケマ,シンシア
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
4C206
4H006
4H011
【Fターム(参考)】
4C086EA09
4C086EA11
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZB35
4C088AB81
4C088AC11
4C088BA11
4C088BA23
4C088BA32
4C088CA21
4C088MA02
4C088MA17
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA43
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA04
4C206CB14
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA83
4C206ZB35
4H006AA02
4H006AD30
4H006BC53
4H011AA02
4H011AA03
4H011BB05
(57)【要約】
ショウガからジンゲロンを製造する方法、これらの方法を使用して得られる組成物、およびこれらの組成物を使用する方法が開示されている。特に、医薬組成物、およびこれらを利用する処置方法が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンゲロンを製造する方法であって、
(i)ショウガ根をアルカリ溶液中でアルカリ処理にかける工程;または
(ii)ショウガ根から得られた液汁をアルカリ溶液中でアルカリ処理にかける工程;
を含み、それによってジンゲロンを製造する、方法。
【請求項2】
ショウガ根が新鮮なものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)(i)のショウガ根を刻むか;
(b)(i)のショウガ根を刻んで乾燥させるか;または
(c)(ii)の液汁を浸漬および/または圧搾によって得る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(a)前記アルカリ溶液に水酸化カリウム(KOH)が使用されるか;または
(b)前記アルカリ溶液に液体形態の水酸化カリウム(KOH)が使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ溶液が、
(a)約0.1%~約1.0% KOH(v/v);
(b)約0.5%~約0.7% KOH(v/v);
(c)約1%~約3% KOH(v/v);
(d)約1.5%~約2.5% KOH(v/v);または
(e)約2% KOH(v/v)、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ溶液に水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)が使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ溶液が、
(a)約0.5%~約4% Ca(OH)
2(v/v);
(b)約1.5%~約3.5% Ca(OH)
2(v/v);または
(b)約2.0%~約3.0% Ca(OH)
2(v/v)、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(a)前記アルカリ処理が、約摂氏40度~約摂氏70度で行われるか;
(b)前記アルカリ処理が、約摂氏50度~約摂氏60度で行われるか;
(c)前記アルカリ処理が、約摂氏55度~約摂氏65度で行われるか;または
(d)前記アルカリ処理が、約摂氏60度で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(a)前記アルカリ処理が、約1~30時間、約1~20時間、約1~10時間、または約1~5時間行われるか;
(b)前記アルカリ処理が、約0.5時間~約3時間、または約0.75時間~約2.5時間、または約1時間~約2時間行われるか;または
(c)前記アルカリ処理が、約1時間または約2時間行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記アルカリ溶液を中和する工程;および/または
(b)前記アルカリ処理後、ジンゲロンを抽出する工程、
をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ジンゲロンが、
(a)1つまたはそれ以上のエタノール抽出工程;
(b)超臨界流体抽出工程;または
(c)超臨界流体抽出工程、次いでエタノール抽出工程、
によって抽出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法により、本質的にジンゲロンからなる生成物を生成する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法により、アルデヒドを含有しないか、または実質的にアルデヒドを含有しない生成物を生成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ジンゲロンを含む組成物であって、該ジンゲロンは、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法により得られる、組成物。
【請求項15】
前記組成物が、医薬組成物として製剤化されている、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、液体または粉末として製剤化されている、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
局所投与用または経口投与用に製剤化されている、請求項14~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
液体、粉末、錠剤またはカプセルとして製剤化されている、請求項14~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記液体、粉末、錠剤またはカプセルが、
(a)約1mg~約5000mgの用量のジンゲロン;
(b)約1mg~約1500mgの用量のジンゲロン;
(c)約5mg~約500mgの用量のジンゲロン;
(d)約1mg~約15mgの用量のジンゲロン;または
(e)約1mg~約10mgの用量のジンゲロン、
を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
(a)さらなる抗微生物薬との共投与用に製剤化されているか;
(b)1つまたはそれ以上のアミノグリコシド抗生物質あるいは1つまたはそれ以上のグリコペプチド抗生物質との共投与用に製剤化されているか;
(c)ゲンタマイシンまたはバンコマイシンとの共投与用に製剤化されているか;
(d)ゲンタマイシンまたはバンコマイシンを含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
微生物感染症を処置または予防するために使用するための、請求項14~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記微生物が、細菌および真菌からなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記細菌が、グラム陽性菌またはグラム陰性菌である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記細菌が、バチルス(Bacillus)細菌、クロストリジウム(Clostridium)細菌、エシェリキア(Escherichia)細菌、マイコプラズマ(Mycoplasma)細菌、ナイセリア(Neissaria)細菌、シュードモナス(Pseudomonas)細菌、サルモネラ(Salmonella)細菌、シゲラ(Shigella)細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)細菌およびビブリオ(Vibrio)細菌からなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記細菌が、大腸菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、緑膿菌、および肺炎桿菌からなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
前記真菌が、アスペルギルス(Aspergillus)真菌、カンジダ(Candida)真菌、コクシジオイデス(Coccidioides)真菌、クリプトコッカス(Cryptococcus)真菌、ヒストプラズマ(Histoplasma)真菌、ニューモシスチス(Pneumocystis)真菌およびスタキボトリス(Stachybotrys)真菌からなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
前記真菌が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)真菌、アスペルギルス(Aspergillus)種真菌、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)真菌、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)真菌およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)真菌、およびチネア(tinea)真菌からなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項28】
前記微生物感染症が、皮膚、眼、耳、鼻、口、咽喉、食道、肺、循環系、消化器系または泌尿生殖器系の1つまたはそれ以上に影響を及ぼす感染症である、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法組成物。
【請求項29】
微生物物質の感染症を処置または予防するための医薬を調製するための、請求項14に記載の組成物の使用。
【請求項30】
前記医薬により、感染症の進行を軽減または遅延させる、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
(a)前記医薬が、液体または粉末として製剤化されている;および/または
(b)前記医薬が、局所投与用または経口投与用に製剤化されている、
請求項29または30に記載の使用。
【請求項32】
前記医薬が、液体、錠剤またはカプセルとして製剤化されている、請求項29~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記液体、錠またはカプセルが、
(a)約1mg~約5000mgの用量のジンゲロン;
(b)約1mg~約1500mgの用量のジンゲロン;
(c)約5mg~約500mgの用量のジンゲロン;
(d)約1mg~約15mgの用量のジンゲロン;または
(e)約1mg~約10mgの用量のジンゲロン、
を含む、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
(a)前記組成物が、1つまたはそれ以上の抗微生物薬との共投与用に化されているか;
(b)前記組成物が、1つまたはそれ以上のアミノグリコシド抗生物質あるいは1つまたはそれ以上のグリコペプチド抗生物質との共投与用に製剤化されているか;
(c)前記組成物が、ゲンタマイシンまたはバンコマイシンとの共投与用に製剤化されているか;
(d)前記医薬が、ゲンタマイシンまたはバンコマイシンを含む、
請求項29~33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記微生物が、細菌および真菌からなる群から選択される、請求項29~34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記細菌が、グラム陽性菌またはグラム陰性菌である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記細菌が、バチルス(Bacillus)細菌、クロストリジウム(Clostridium)細菌、エシェリキア(Escherichia)細菌、マイコプラズマ(Mycoplasma)細菌、ナイセリア(Neissaria)細菌、シュードモナス(Pseudomonas)細菌、サルモネラ(Salmonella)細菌、シゲラ(Shigella)細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)細菌およびビブリオ(Vibrio)細菌からなる群から選択される、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
前記細菌が、大腸菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、緑膿菌および肺炎桿菌からなる群から選択される、請求項35に記載の使用。
【請求項39】
前記真菌が、アスペルギルス(Aspergillus)真菌、カンジダ(Candida)真菌、コクシジオイデス(Coccidioides)真菌、クリプトコッカス(Cryptococcus)真菌、ヒストプラズマ(Histoplasma)真菌、ニューモシスチス(Pneumocystis)真菌およびスタキボトリス(Stachybotrys)真菌からなる群から選択される、請求項35に記載の使用。
【請求項40】
前記真菌が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)真菌、アスペルギルス(Aspergillus)種真菌、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)真菌、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)真菌、およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)真菌、およびチネア(tinea)真菌からなる群から選択される、請求項35に記載の使用。
【請求項41】
前記微生物感染症が、皮膚、眼、耳、鼻、口、咽喉、食道、肺、循環系、消化器系または泌尿生殖器系の1つまたはそれ以上に影響を及ぼす、請求項29~40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
微生物物質の感染症を処置または予防する方法であって、対象に請求項15に記載の組成物を投与することを含み、それによって微生物物質の感染症を処置または予防する、方法。
【請求項43】
前記投与により、感染症の進行を軽減または遅らせる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
(a)前記組成物が、液体または粉末として投与されるか;および/または
(b)前記組成物が、局所投与または経口投与によって投与される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が、液体、錠剤またはカプセルとして投与される、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が、
(a)約1mg~約5000mgの用量のジンゲロン;
(b)約1mg~約1500mgの用量のジンゲロン;
(c)約5mg~約500mgの用量のジンゲロン;
(d)約1mg~約15mgの用量のジンゲロン;または
(e)約1mg~約10mgの用量のジンゲロン、
で投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
(a)前記組成物が、1つまたはそれ以上の抗微生物薬とともに共投与されるか;
(b)前記組成物が、1つまたはそれ以上のアミノグリコシド抗生物質あるいは1つまたはそれ以上のグリコペプチド抗生物質とともに共投与されるか;
(c)前記組成物が、ゲンタマイシンまたはバンコマイシンとともに共投与されるか;
(d)前記組成物が、ゲンタマイシンまたはバンコマイシンを含むように製剤化されている、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記微生物が、細菌および真菌からなる群から選択される、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記細菌が、グラム陽性菌またはグラム陰性菌である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記細菌が、バチルス(Bacillus)細菌、クロストリジウム(Clostridium)細菌、エシェリキア(Escherichia)細菌、マイコプラズマ(Mycoplasma)細菌、ナイセリア(Neissaria)細菌、シュードモナス(Pseudomonas)細菌、サルモネラ(Salmonella)細菌、シゲラ(Shigella)細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)細菌およびビブリオ(Vibrio)細菌からなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記細菌が、大腸菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、緑膿菌、および肺炎桿菌からなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記真菌が、アスペルギルス(Aspergillus)真菌、カンジダ(Candida)真菌、コクシジオイデス(Coccidioides)真菌、クリプトコッカス(Cryptococcus)真菌、ヒストプラズマ(Histoplasma)真菌、ニューモシスチス(Pneumocystis)真菌およびスタキボトリス(Stachybotrys)真菌からなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記真菌が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)真菌、アスペルギルス(Aspergillus)種真菌、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)真菌、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)真菌およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)真菌、およびチネア(tinea)真菌からなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記微生物感染症が、皮膚、眼、耳、鼻、口、咽喉、食道、肺、循環系、消化器系または泌尿生殖器系の1つまたはそれ以上に影響を及ぼす感染である、請求項42~53のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年8月11日出願のニュージーランド仮出願番号779010の利益を主張するものであり、その全内容は引用により本明細書に包含される。
【0002】
本開示は、ジンゲロンを調製する方法およびジンゲロンを含む組成物に関する。特に、医薬組成物、およびこれらの組成物の使用が記載されている。
【背景技術】
【0003】
ショウガ(Zingiber officinale)は花を咲かせる植物であり、その根茎は香辛料として、また伝統医学に広く用いられている。適度な量を摂取すれば、ショウガに悪い副作用はほとんどない。FDAにおいて「一般に安全と認められる」リストに掲載されている。
【0004】
ショウガの特徴的な香りや風味は、ジンゲロン、ショウガオール類、およびジンゲロール([6]-ジンゲロール(1-[4'-ヒドロキシ-3'-メトキシフェニル]-5-ヒドロキシ-3-デカノン))を主な辛味化合物として含むジンゲロール類から実質的になる新鮮なショウガを、1重量%~3重量%で含む揮発性油によるものである。
【化1】
【0005】
ジンゲロン(Zingerone)(ジンゲロン(gingerone)としても知られている)は、Li et. al., 2016, “Chemical Characterisation and antioxidant activities comparison in fresh, dried, stir frying and carbonized ginger” Journal of Chromatography B Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. 1011: 223-232によって報告されたように、乾燥または約摂氏40度の温度での熱処理中にジンゲロールから生成されると報告されている。ジンゲロンは辛味が少なく、ピリッとした甘さの香りがする。ジンゲロンはバニリルアセトンとも称され、水にやや溶けにくく、エーテルに溶けると報告されている結晶性固体である。ジンゲロンの水溶解度値は0.57g/Lであり、LogPは2.02 1.92であり、logSは-2.5であると、FoodBの化合物データベースに記載されている。https://foodb.ca/compounds/FDB010527を参照のこと。
【化2】
【0006】
新鮮なショウガに含まれるジンゲロンはごくわずかであり、ショウガ根の調理または乾燥によって生成されることが知られ、その生成の原因は、水分子が喪失してジンゲロールが脱水され、ジンゲロンおよびヘキサナールが生成することである。例えば、Gopi et al. 2016, “Study on temperature dependent conversion of active components of ginger” Int. J. of Pharma Sciences 6(1): 1344-1347を参照のこと。
【0007】
ショウガオールはより辛味が強く、抗酸化活性が高く、生のショウガには含まれていないが、加熱、貯蔵、または酸性化によってジンゲロールから形成される。
【化3】
【0008】
ジンゲロンは1917年、Hiroshi Nomuraによってショウガ根から初めて単離された。Nomuraは、バニリンとアセトンとを塩基性条件下で反応させてデヒドロジンゲロンを形成させる、ジンゲロンの合成法を特定し、後に特許を取得した(US 1,263,796、1918年4月23日発行)。この化合物は約95%の量で得られた。この反応の後、中間体化合物を触媒的に水素化してジンゲロンを生成し、約100%の量が得られた。
【0009】
ショウガ化合物は、腸内毒素原性大腸菌(エシェリキア・コリ)易熱性エンテロトキシン誘導性下痢に対して活性があることが示されている。この種類の下痢は、発展途上国における乳幼児の死亡の主な原因である。ジンゲロンがショウガの下痢止め効果を担う活性成分である可能性があると報告されている。この研究では、ショウガの生物活性化合物が、腸内毒素原性大腸菌(エシェリキア・コリ)易熱性エンテロトキシンと細胞表面受容体G M1との結合を有意にブロックし、その結果、マウスの閉鎖回腸ループにおける体液貯留が阻害されると結論づけられている。例えば、Chen et al., 2007, “Ginger and its bioactive component inhibit enterotoxigenic Escherichia coli heat-labile enterotoxin-induced diarrhoea in mice” Journal of Agricultural and Food Chemistry 55 (21): 8390-7を参照のこと。
【0010】
ジンゲロンは、Kumarらによって報告されたように、腹膜炎マウスモデルにおいて肝臓の炎症に対して抗炎症効果を有することが示されている。Kumar et al., “Zingerone suppresses liver inflammation induced by antibiotic mediated endotoxemia through down regulating hepatic mRNA expression of inflammatory markers in Pseudomonas aeruginosa peritonitis mouse model” PLOS ONE 9(9): e106536を参照のこと。
【0011】
Kumarらはまた、ジンゲロンが抗生物質に対するシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)細胞の感受性を向上させるとも報告している。Kumar et al., 2014, Life Sciences 117: 24-32を参照。Kumarらは、ジンゲロンがシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)の細胞表面性質の変化を引き起こし、それによって抗生物質に対する緑膿菌(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))細胞の感受性を向上させることが見出されたと結論付けている。
【0012】
天然源からのジンゲロンの生成の最適化に関する限られた研究が行われてきた。天然源由来の組成物に現在重点が置かれていることを考えると、植物を基礎とする組成物、特に抗菌活性を有する組成物を含む新しい組成物が必要である。本出願はこれらおよび他のニーズを満たすことを目的とする。
【発明の概要】
【0013】
一態様において、本開示は、ジンゲロンを製造する方法であって、(i)ショウガ根をアルカリ溶液中でアルカリ処理にかけること;または(ii)ショウガ根から得られた液汁をアルカリ溶液中でアルカリ処理にかけること、による方法を包含する。
【0014】
特定の態様において
【0015】
前記ショウガ根は新鮮なものである。
【0016】
前記ショウガ根は乾燥されたものである。
【0017】
前記ショウガ根は、約摂氏40度(約40℃)~約摂氏70度で、または約摂氏55度~約摂氏65度で、または約摂氏60度で乾燥される。
【0018】
前記液汁は、ショウガ根を浸漬および/または圧搾することによって得られる。
【0019】
前記ショウガ根は、切られ、アルカリ処理にかけられる。
【0020】
前記ショウガ根は、切られ、乾燥され、アルカリ処理にかけられる。
【0021】
前記アルカリ処理は、約摂氏40度~約摂氏70度で行われる。
【0022】
前記アルカリ処理は、約摂氏50度~約摂氏60度で行われる。
【0023】
前記アルカリ処理は、約摂氏55度~約摂氏65度で行われる。
【0024】
前記アルカリ処理は、約摂氏60度で行われる。
【0025】
前記アルカリ処理は、約1~72時間行われる。
【0026】
前記アルカリ処理は、約1~48時間行われる。
【0027】
前記アルカリ処理は、約1~24時間行われる。
【0028】
前記アルカリ処理は、約1~30時間、または約1~20時間、または約1~10時間、または約1~5時間行われる。
【0029】
前記アルカリ処理は、約0.5時間~約3時間、または約0.5時間~約2時間、または約1時間~約2時間行われる。
【0030】
前記アルカリ処理は、約2時間行われる。
【0031】
前記アルカリ処理は、約1時間行われる。
【0032】
水酸化カリウムが使用される。
【0033】
液体形態の水酸化カリウム(KOH)が使用される。
【0034】
約0.1%~約1.0% KOH(v/v)が使用される。約0.5%~約0.7% KOH(v/v)が使用される。
【0035】
約1%~約3% KOH(v/v)が使用される。約1.5%~約2.5% KOH(v/v)が使用される。約2% KOH(v/v)が使用される。
【0036】
水酸化カルシウムCa(OH)2が使用される。
【0037】
約0.5%~約4% Ca(OH)2(v/v)が使用される。約1.5%~約3.5% Ca(OH)2(v/v)が使用される。約2%~約3% Ca(OH)2(v/v)が使用される。
【0038】
アルカリ処理後、アルカリ溶液は中和される。
【0039】
前記アルカリ溶液は中和されて、約6.5~約7.5のpHが得られる。
【0040】
前記中和されたアルカリ溶液は、凍結乾燥される。
【0041】
前記中和されたアルカリ溶液は、ジンゲロンの抽出にかけられる。
【0042】
前記中和されたアルカリ溶液は、乾燥され、次に、ジンゲロンの抽出にかけられる。
【0043】
前記乾燥は、約摂氏60度で最大24時間行われる。
【0044】
前記ジンゲロンは場合により、1つまたはそれ以上のアルコール抽出工程により抽出されてよい。前記ジンゲロンは、1つまたはそれ以上のエタノール抽出工程により抽出される。
【0045】
前記エタノール抽出は、少なくとも7日行われる。
【0046】
前記エタノール抽出は、24時間またはそれ以下行われる。
【0047】
前記ジンゲロンは、超臨界流体抽出を用いて抽出される。
【0048】
前記ジンゲロンは、超臨界流体抽出工程、次いで、アルコール抽出工程により抽出される。
【0049】
前記方法により、本質的にジンゲロンからなる生成物を生成する。
【0050】
前記方法により、アルデヒドを含有しない、または実質的にアルデヒドを含有しない生成物を生成する。
【0051】
一態様において、本開示は、ショウガ根抽出物をアルカリ処理にかけることによりジンゲロンを製造する方法を包含する。
【0052】
前記ショウガ根抽出物は、ショウガ根の超臨界流体抽出により得られる。
【0053】
前記ショウガ根抽出物は、ショウガ根のアルコール抽出により得られる。
【0054】
前記ショウガ根抽出物は、ショウガ根の搾汁により得られる。
【0055】
前記搾汁は、ショウガ根の浸漬および/または圧搾を含む。
【0056】
前記アルカリ処理は、約摂氏30度~約摂氏70度で行われる。
【0057】
前記アルカリ処理は、約摂氏50度~約摂氏60度で行われる。
【0058】
前記アルカリ処理は、約摂氏55度~約摂氏65度で行われる。
【0059】
前記アルカリ処理は、約摂氏60度で行われる。
【0060】
前記アルカリ処理は、約1~72時間行われる。
【0061】
前記アルカリ処理は、約1~48時間行われる。
【0062】
前記アルカリ処理は、約1~24時間行われる。
【0063】
前記アルカリ処理は、約1~30時間、または約1~20時間、または約1~10時間、または約1~5時間行われる。
【0064】
前記アルカリ処理は、約0.5時間~約3時間、または約0.5時間~約2時間、または約1時間~約2時間行われる。
【0065】
前記アルカリ処理は、約2時間行われる。
【0066】
前記アルカリ処理は、約1時間行われる。
【0067】
水酸化カリウム(KOH)が使用される。
【0068】
液体形態の水酸化カリウム(KOH)が使用される。
【0069】
約0.1%~約5.0% KOH(v/v)が使用される。約0.5%~約0.7% KOH(v/v)が使用される。
【0070】
約1%~約3% KOH(v/v)が使用される。約1.5%~約2.5% KOH(v/v)が使用される。約2% KOH(v/v)が使用される。
【0071】
水酸化カルシウムCa(OH)2が使用される。
【0072】
約0.5%~約4% Ca(OH)2(v/v)が使用される。約1.5%~約3.5% Ca(OH)2(v/v)が使用される。約2%~約3% Ca(OH)2(v/v)が使用される。
【0073】
アルカリ処理後、アルカリ溶液は中和される。
【0074】
前記アルカリ溶液は中和されて、約6.5~約7.5のpHが得られる。
【0075】
前記アルカリ溶液の中和後、ジンゲロンはさらに抽出される。
【0076】
前記ジンゲロンは、場合により、1つまたはそれ以上のアルコール抽出工程によりさらに抽出されてよい。
【0077】
前記ジンゲロンは、場合により、1つまたはそれ以上のエタノール抽出工程によりさらに抽出されてよい。
【0078】
前記エタノール抽出は、少なくとも7日行われる。
【0079】
前記エタノール抽出は、24時間またはそれ以下行われる。
【0080】
ジンゲロンは、場合により、超臨界流体抽出を用いてさらに抽出されてよい。
【0081】
ジンゲロンは、場合により、超臨界流体抽出工程、次いで、アルコール抽出工程によりさらに抽出されてよい。
【0082】
前記方法により、本質的にジンゲロンからなる生成物を生成する。
【0083】
前記方法により、アルデヒドを含有しない、または実質的にアルデヒドを含有しない生成物を生成する。
【0084】
前記方法は、(i)ショウガ根を、アルカリ溶液中でアルカリ処理にかけること;または(ii)ショウガ根から得られた液汁を、アルカリ溶液中でアルカリ処理にかけること、を含み、ここで、前記アルカリ溶液は、約1.5%~約2.5% KOH(v/v)を含み、前記アルカリ処理は約1時間~約2時間行い、そして、アルカリ処理後、前記アルカリ溶液を約6.5~約7.5のpHに中和させる。
【0085】
本開示はまた、ジンゲロンを含む組成物を包含し、該ジンゲロンは、前記態様のいずれか1つに記載の方法により調製される。
【0086】
本開示はさらに、本質的にジンゲロンからなる組成物を包含し、該ジンゲロンは、前記態様のいずれか1つに記載の方法により調製される。
【0087】
一態様において、本開示には、微生物感染症を処置または予防する方法であって、前記態様のいずれか1つに記載の組成物を対象に投与し、それによって前記感染症を処置または予防することを含む方法が包含される。
【0088】
他の一態様において、本開示には、微生物感染症を処置または予防するための医薬を調製するための、前記の態様のいずれか1つに記載の組成物の使用が包含される。
【0089】
本開示にはまた、微生物感染症を処置または予防するための、ジンゲロンを含む組成物が包含される。
【0090】
様々な態様において:
【0091】
前記ジンゲロンを含む組成物は、前記態様のいずれか1つに記載の方法により得られる。
【0092】
前記ジンゲロンを含む組成物は、ショウガ根から得られる。
【0093】
前記ジンゲロンを含む組成物は、新鮮なショウガ根から得られる。
【0094】
前記ジンゲロンを含む組成物は、乾燥ショウガ根から得られる。
【0095】
前記ジンゲロンを含む組成物は、ショウガ根から調製された液汁から得られる。
【0096】
前記液汁は、ショウガ根の浸漬および/または圧搾により調製される。
【0097】
前記ジンゲロンを含む組成物は、ショウガ根中の、またはショウガ根からの液汁中のジンゲロールをジンゲロンに変換させるアルカリ変換工程を用いて得られる。
【0098】
前記ジンゲロンを含む組成物は、アルデヒドを含有しないか、または実質的にそれを含有しない。
【0099】
前記ジンゲロンを含む組成物は、粉末として製剤化されている。
【0100】
前記ジンゲロンを含む組成物は、チンキとして製剤化されている。
【0101】
前記組成物は、1つまたはそれ以上の抗微生物薬をさらに含む。
【0102】
前記組成物は、1つまたはそれ以上のアミノグリコシド抗生物質および/または1つまたはそれ以上のグリコペプチド抗生物質をさらに含む。
【0103】
前記組成物は、バンコマイシンをさらに含む。
【0104】
前記組成物は、ゲンタマイシンをさらに含む。
【0105】
前記微生物は、細菌および真菌からなる群から選択される。
【0106】
前記細菌は、グラム陽性菌またはグラム陰性菌である。
【0107】
前記細菌は、バチルス(Bacillus)細菌、クロストリジウム(Clostridium)細菌、エシェリキア(Escherichia)細菌、マイコプラズマ(Mycoplasma)細菌、ナイセリア(Neissaria)細菌、シュードモナス(Pseudomonas)細菌、サルモネラ(Salmonella)細菌、シゲラ(Shigella)細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)細菌およびビブリオ(Vibrio)細菌からなる群から選択される。
【0108】
前期細菌は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli、大腸菌)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae、肺炎球菌)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa、緑膿菌)およびクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae、肺炎桿菌)からなる群から選択される。
【0109】
前記真菌は、アスペルギルス(Aspergillus)真菌、カンジダ(Candida)真菌、コクシジオイデス(Coccidioides)真菌、クリプトコッカス(Cryptococcus)真菌、ヒストプラズマ(Histoplasma)真菌、ニューモシスチス(Pneumocystis)真菌およびスタキボトリス(Stachybotrys)真菌からなる群から選択される。
【0110】
前記真菌は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)真菌、アスペルギルス(Aspergillus)種真菌、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)真菌、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)真菌およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)真菌およびチネア(tinea)真菌からなる群から選択される。
【0111】
前記組成物のさまざまな態様において:
【0112】
前記組成物は、局所投与用または経口投与用に製剤化されている。
【0113】
前記組成物は、液体、粉末、錠剤またはカプセルとして製剤化されている。
【0114】
前記組成物は、約1mg~約5000mgの用量のジンゲロンを含む。
【0115】
前記組成物は、約1mg~約1500mgの用量のジンゲロンを含む。
【0116】
前記組成物は、約5mg~約500mgの用量のジンゲロンを含む。
【0117】
前記組成物は、約1mg~約150mgの用量のジンゲロンを含む。
【0118】
前記組成物は、約5mg~約50mgの用量のジンゲロンを含む。
【0119】
前記組成物は、約1mg~約15mgの用量のジンゲロンを含む。
【0120】
前記組成物は、約1mg~約10mgの用量のジンゲロンを含む。
【0121】
前記組成物は、小袋(サシエ、sachet)で提供される。
【0122】
前記組成物は、1つまたはそれ以上の抗微生物薬との共投与用に製剤化されている。
【0123】
前記組成物は、1つまたはそれ以上のアミノグリコシド抗生物質および/または1つまたはそれ以上のグリコペプチド抗生物質との共投与用に製剤化されている。
【0124】
前記組成物は、ゲンタマイシンまたはバンコマイシンとの共投与用に製剤化されている。
【0125】
前記微生物感染症は、皮膚、眼、耳、鼻、口、咽喉、食道、肺、循環系、消化器系または泌尿生殖器系の1つまたはそれ以上に影響を及ぼす感染症である。
【0126】
前述の簡単な要約は、本開示の特定の実施太陽の特徴および技術的利点を大まかに説明するものである。さらなる技術的利点は、以下の詳細な説明および実施例において説明される。
【0127】
特性であると考えられる新規な特徴は、添付の図および実施例と関連して考慮されるとき、詳細な説明からより良く理解されるであろう。しかしながら、本明細書において提供される図および実施例は、開示されるものを説明するのに役立つこと、または開示されるものの理解を深めるのに役立つことを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【0129】
【
図2】アルカリ処理したショウガのHPLC UVクロマトグラムトレース(280nm)。
【0130】
【0131】
【
図4A】搾汁装置および搾汁する前の生のショウガを示す写真。
【0132】
【0133】
【
図5A】ショウガ液汁をKOH(0.5%)で処理し、HPLCにより分析したもの。ジンゲロン(Z)およびジンゲロール(G)のピーク面積を示す。
【0134】
【
図5B】ショウガ液汁をKOH(1%)で処理し、HPLCにより分析したもの。ジンゲロン(Z)およびジンゲロール(G)のピーク面積を示す。
【0135】
【
図5C】ショウガ液汁をKOH(2%)で処理し、HPLCにより分析したもの。ジンゲロン(Z)およびジンゲロール(G)のピーク面積を示す。
【0136】
【0137】
【0138】
【
図7】エタノール抽出プロセスおよび蒸発を示す概略図。
【0139】
【0140】
【
図8B】エタノール抽出物とヘキサナール標準物質との比較。クロマトグラムの2~7分領域を示す。
【0141】
【
図9A】ジンゲロンおよびゲンタマイシンの組み合わせのチェッカーボードアッセイ。
【0142】
【
図9B】ジンゲロンおよびバンコマイシンの組み合わせのチェッカーボードアッセイ。
【0143】
【
図9C】ジンゲロンおよびセフォタキシムの組み合わせのチェッカーボードアッセイ。
【0144】
詳細な説明
以下の説明では、多数の例示的な構成、パラメーターなどを規定する。しかしながら、このような説明は、本開示の範囲の限定を意図するものではなく、代わりに、例示的な実施形態の説明として提供されるものであることを認識すべきである。
【0145】
本明細書で引用される特許および特許出願を含むすべての文献は、参照により本明細書に包含される。いかなる文献も先行技術であることを認めるものではない。また、いかなる参考文献の議論も、かかる参考文献がニュージーランドまたはその他の国における当該技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではない。
【0146】
定義
本明細書の各例において、本開示の説明、実施態様および実施例において、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」などは、限定することなく、拡大的に読まれるものである。したがって、文脈上明らかにそうでないことが要求されない限り、本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などの語は、排他的な意味とは対照的な包括的な意味、すなわち、「含むが、それに限定されない」の意味で解釈される。
【0147】
本明細書において、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の一つまたはそれ以上(すなわち、少なくとも一つ)を意味するために使用される。例として、「ある要素」は、一つまたはそれ以上の要素を意味するものとすることができる。
【0148】
本明細書を通じて、「約」という用語は、本明細書で詳細に説明するように、値が、例えば化合物のレベルまたは投与量のレベルを決定するために採用される方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。特に、用語「約」は、記載された値または範囲における10%までの偏差(正および負)を包含する。
【0149】
本明細書で使用される用語「含む」は、組成物中のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物の存在を意味し得る。例示として、ジンゲロンまたはジンゲロン抽出物は、組成物の少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも0.9重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%(%w/w)であり得る。液体の場合、ジンゲロンまたはジンゲロン抽出物は、組成物の少なくとも0.1体積%、少なくとも0.2体積%、少なくとも0.3体積%、少なくとも0.4体積%、少なくとも0.5体積%、少なくとも0.6体積%、少なくとも0.7体積%、少なくとも0.8体積%、少なくとも0.9体積%、少なくとも1体積%、少なくとも2体積%、少なくとも5体積%、少なくとも10体積%、少なくとも20体積%、少なくとも30体積%、少なくとも40体積%、少なくとも50体積%、少なくとも60体積%、少なくとも70体積%、少なくとも80体積%、または少なくとも90体積%(%v/v)であり得る。
【0150】
本明細書で使用される用語「本質的に…からなる」とは、生成物中のジンゲロンの存在を意味しうる。前記生成物は、例えば、本明細書に記載の組成物であってもよく、または例えば、本明細書に記載の方法によって生成される生成物であってもよい。例示として、ジンゲロンは、生成物の少なくとも90重量%、または生成物の少なくとも91重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%(%w/w)であり得る。液体の場合、ジンゲロンは、生成物の少なくとも90体積%、または生成物の91体積%、少なくとも92体積%、少なくとも93体積%、少なくとも94体積%、少なくとも95体積%、少なくとも96体積%、少なくとも97体積%、少なくとも98体積%、少なくとも99体積%、少なくとも99.5体積%、少なくとも99.8体積%、または少なくとも99.9体積%(%v/v)であり得る。
【0151】
アルデヒドに関連して「実質的に含有しない」という用語は、無視できるレベルのアルデヒドを有する生成物を意味する。製品は、例えば、本明細書に記載の組成物であってもよく、または例えば、本明細書に記載の方法によって生成された生成物であってもよい。例示として、アルデヒドのレベルは、20ppm未満、15ppm未満、10ppm未満、7.5ppm未満、5ppm未満、2ppm未満、1.5ppm未満、1ppm未満、0.75ppm未満、0.5ppm未満、0.2ppm未満、0.1ppm未満、0.05ppm未満、0.005ppm未満、または0.0005ppm未満であり得る。
【0152】
本明細書で使用される用語「アルカリ処理」とは、pHが7超のアルカリを含む水溶液にショウガまたはショウガ抽出物の試料を暴露することを意味する。限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよびそれらの任意の組み合わせを含む溶液が含まれる。アルカリ性処理は、本明細書に記載されるように、様々な温度で起こり得ること、およびアルカリ性溶液は、ショウガまたはショウガの抽出物を含む試料に曝露する前または曝露中に加熱され得ることが理解される。アルカリ溶液は、試料中に存在する少なくとも一部のジンゲロールをジンゲロンに変換させる化学的に有効量のアルカリが存在する。特定の方法論については、本明細書で詳述する。
【0153】
ショウガ根から調製される「抽出物」とは、根の一つまたはそれ以上の液体、固体、または化学成分が単離または濃縮された組成物を意味する。例えば、ショウガ根から液体、固体、または半固体の抽出物を得ることができる。抽出物は、搾汁、圧搾、浸漬、摩砕(mashing)、粉砕、その他の既知のプロセスの一つまたはそれ以上によって得ることができる。溶媒による抽出も含まれる。固体抽出物としては、例えば、乾燥または蒸発により得られる粉末が挙げられる。具体的な例示として、抽出物は、乾燥形態として調製され得るか、または溶液の形態で調製され得る。「ジンゲロン抽出物」とは、ショウガ根から調製/生成される、ジンゲロンを含むか、または本質的にジンゲロンからなる抽出物を意味する。特定の抽出物およびその製造方法については、本明細書で詳述する。
【0154】
「医薬組成物」とは、例えば感染症を処置または予防するために対象に投与される組成物を意味する。
【0155】
本明細書で使用される「微生物(Microbes)」または「微生物(microbial organisms)」には、細菌、真菌、原虫およびウイルスなどの病原性生物が含まれる。これには、ヒトおよび非ヒト疾患などの様々な感染および他の健康状態に関連する生物を含む、すべての有害な微生物が含まれる。
【0156】
本明細書で使用される「細菌」には、バチルス(Bacillus)細菌、バルトネラ(Bartonella)細菌、ボルデテラ(Bordetella)細菌、ボレリア(Borrelia)細菌、ブルセラ(Brucella)細菌、カンピロバクター(Campylobacter)細菌、クラミジア(Chlamydia)細菌、クラミドフィラ(Chlamydophila)細菌、クロストリジウム(Clostridium)細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)細菌、エンテロコックス(Enterococcus)細菌、エシェリキア(Escherichia)細菌、フランシセラ(Francisella)細菌、ヘモフィルス(Haemophilus)細菌、ヘリコバクター(Helicobacter)細菌、レジオネラ(Legionella)細菌、レプトスピラ(Leptospira)細菌、リステリア(Listeria)細菌、マイコバクテリウム(Mycobacterium)細菌、マイコプラズマ(Mycoplasma)細菌、ナイセリア(Neisseria)細菌、シュードモナス(Pseudomonas)細菌、リケッチア(Rickettsia)細菌、サルモネラ(Salmonella)細菌、シゲラ(Shigella)細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)細菌、トレポネーマ(Treponema)細菌、ウレアプラズマ(Ureaplasma)細菌、ビブリオ(Vibrio)細菌、およびエルシニア(Yersinia)細菌が含まれるが、これらに限定されない。グラム陽性菌およびグラム陰性菌が含まれる。特定の細菌生物については、本明細書で詳述する。
【0157】
本明細書で使用される「真菌」には、アスペルギルス(Aspergillus)真菌、カンジダ(Candida)真菌、クリプトコッカス(Cryptococcus)真菌、ヒストプラズマ(Histoplasma)真菌、ニューモシスチス(Pneumocystis)真菌およびスタキボトリス(Stachybotrys)真菌が含まれるが、これらに限定されない。特に、チネア(tinea)真菌が含まれる。特定の真菌生物については、本明細書で詳述する。
【0158】
本明細書で使用される「原虫」には、アカントアメーバ(Acanthamoeba)原虫、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)原虫、エントアメーバ(Entamoeba)原虫、ジアルジア(Giardia)原虫、リーシュマニア(Leishmania)原虫、プラスモジウム(Plasmodium)原虫、トリパノソマ(Trypanosoma)原虫、およびトキソプラズマ(Toxoplasma)原虫が含まれるが、これらに限定されない。特定の原虫生物については、本明細書で詳述する。
【0159】
「抗微生物薬」とは、微生物の増殖または感染を抑止する成分を指し、例えば、医薬、草本組成物、精油、および菌の抑制または除去を補助する他の様々な成分が挙げられる。このようなものは、本開示の化合物および抽出物と組み合わせて利用され得る。
【0160】
本明細書で使用される「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物、特に、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、および他の家畜を含む哺乳動物(同様に、イヌ、ネコ、および他の家畜化されたペットも含む)であり得る。特定の態様において、対象はヒトである。
【0161】
本明細書で使用される「処置」とは、感染症を軽減もしくは解決すること、または感染症によって引き起こされる疾患もしくはその他の状態を改善することを意味する。処置により、感染症が減少または/または除去されることが期待される。処置は、感染症を停止させる得るか、軽減させ得るか、または感染症の進行を遅延させ得る。
【0162】
本明細書で使用される「予防」とは、感染症の発症、または感染に起因する疾患もしくはその他の状態の発症を妨げることを意味する。予防的措置は、感染症の発生を停止させるか遅延させるか、または感染症が発生した場合にその重症度を軽減することが予想される。用語「処置または予防」とは、任意の所定の対象における障害の処置と予防の両方(例えば、同時または異なる時期)を得る可能性を排除するものではないことを理解すべきである。
【0163】
本明細書で使用される成長を「阻害する」または「停止させる」とは、1つまたはそれ以上の微生物の成長を遅延させるか止めらせることを意味する。これは、1つまたはそれ以上の微生物を死滅させること、例えば、存在する微生物を根絶または減少させること、または微生物の生殖単位、例えば、芽胞を根絶または減少させることによって達成することができる。あるいは、これに加えて、成長の阻害または停止は、微生物の分裂または複製を部分的にまたは完全に阻止することによって達成することができる。
【0164】
組成物を調製する方法
本発明者らは、開示された方法に従ってショウガ根から調製されたジンゲロン組成物が有意な抗微生物活性を有することを見出した。したがって、本開示は、一般に、ショウガ根から調製されるジンゲロン組成物、およびそのような組成物の調製方法に関する。
【0165】
一態様において、本開示は、ショウガ根をアルカリ処理にかけることによってショウガ根からジンゲロンを生成する方法を提供する。アルカリ処理は、本明細書に記載のアルカリ溶液中でのインキュベーションを含み得る。出発物質として、ショウガ根は新鮮なショウガ根であってもよい。例えば、調製を支援するために、収穫前にショウガ根が土壌に保持される期間を最適化することが有用なことがある。このようにして、利用されるショウガ根は新鮮であり、新鮮なショウガ根の有利な特性を保持する。
【0166】
例として、鮮度を最適化するために、ショウガ根は、プロセス前48時間未満、プロセス前24時間未満、またはプロセス前12時間未満、またはプロセス前6時間未満、またはプロセス前3時間未満で収穫することができる。例えば、新鮮なショウガは、湿量基準に対して約80%~約95%、約81%~約95%、約82%~約95%、約83%~約95%、または約85%~約95%の含水率を有し得る。
【0167】
あるいは、ショウガ根は処理前に乾燥されてもよい。例えば、ショウガ根は、約40℃~約70℃、または約55℃~約65℃、または約60℃で乾燥されてもよい。乾燥は、約1~72時間、または約1~48時間、または約1~24時間、または約1~20時間、または約1~18時間、または約1~10時間、または約1~5時間行われ得る。
【0168】
特定の態様において、開示される方法において使用するために選択されるショウガ根は、最小レベルのジンゲロール、例えば、6-ジンゲロールを有し得る。例えば、ショウガ根(例えば、新鮮なショウガ根)は、約0.3mg/g~約10mg/g、または約0.3mg/g~約9mg/g、または約0.3mg/g~約8mg/g、または約0.3mg/g~約7mg/g、または約0.3mg/g~約6mg/g、または約0.4mg/g~約5mg/gの6-ジンゲロールを有し得る。さらなる例示として、ショウガ根は、少なくとも1mg/g、少なくとも2mg/g、少なくとも3mg/g、少なくとも4mg/g、または少なくとも5mg/gの6-ジンゲロールを有し得る。したがって、特定の状況においては、本明細書に開示される方法を開始する前に、出発材料中のジンゲロール、例えば6-ジンゲロールのレベルを試験することが有利であり得る。
【0169】
一態様として、この方法は、ショウガ根からの液汁をアルカリ処理にかけることを含む。ショウガ液汁は、浸漬および/または圧搾によって得ることができる。浸漬は、ブレンダー、フードプロセッサー、または類似の装置を用いて均質化することを含む。圧搾には、装置またはハンドプレスを利用することがある。特にスクリュープレスが広く知られている。搾汁後に残った固形物(ショウガの絞りかす)は、再度搾汁してショウガ液汁を得ることができる。これは必要に応じて繰り返してもよい。アルカリ処理の前に、様々な液汁試料を組み合わせてもよい。
【0170】
任意で、ショウガの絞りかすを熱水処理にかけることによって希釈した液汁を得ることができる。例えば、水は絞りかすに、約6対約1(約6:1)、または約5対約1(約5:1)、または約4対約1(薬4:1)、または約3対約1(約3:1)の重量比で添加されてもよい。水は、例えば、約40℃~約80℃、または約50℃~約70℃、または約55℃~約65℃、または約60℃であり得る。水中でのインキュベーション時間は、約5分~約60分、または約10分~約30分、または約15分~約20分、または約15分であり得る。次に、希釈した液汁試料をアルカリ処理にかけてもよい。希釈した液汁試料は、アルカリ処理前に他の液汁試料と組み合わせてもよい。
【0171】
一態様において、アルカリ処理には水酸化カリウム(KOH)が使用され得る。例えば、アルカリ溶液に液体形態のKOHが使用され得る。処理混合物中で使用されるKOHの濃度は、例えば、約0.1%~約1.0%、または約0.5%~約0.7%、または約1%~約3%、または約1.5%~約2.5%、または約2%(v/v)であってもよい。これに代わるものとして、水酸化カルシウムCa(OH)2がアルカリ処理に使用されてもよい。例えば、液体形態のCa(OH)2がアルカリ溶液に使用されてもよい。処理混合物中で使用されるCa(OH)2の濃度は、例えば、約0.5%~約4%、約1.5%~約3.5%、約1%~約2%、または約3.0%(v/v)であってもよい。液体形態としては、例えば、約25%~約65%、または約30%~約60%、または約35%~約55%、または約45%~約55%、または約50%の原液を挙げることができる。
【0172】
特定の態様において、アルカリ処理は、約pH9~約pH14、または約pH9.5~約pH13.5、または約pH10~約pH13、または約pH10.5~約pH12.5、または約pH11~約pH12の処理溶液のpHレベルを達成し得る。アルカリ処理は、十分な時間および十分に上昇した温度で行われることで、所望のレベルのジンゲロンを得ることができる。例えば、アルカリ処理は、約1~72時間、または約1~48時間、または約1~24時間行われ得る。さらなる例としては、約1~約30時間、または約1~約20時間、または約1~約10時間、または約1~約15時間、または約1~約7時間、または約1~約6時間、または約1~約5時間、または約1~約4時間、または約0.5~約3時間、または約0.5~約2時間、または約1~約2時間、または約2時間、または約1時間の処理が挙げられる。特定の例として、アルカリ処理は、約40℃~約70℃、または約50℃~約60℃、または約55℃~約65℃、または約60℃で行われ得る。より低い温度は、より長い処理期間を可能にし得ることが理解される。例えば、室温で行われるアルカリ処理は、約3日間~約9日間、または約5日間~約9日間、または約5日間~約7日間行われ得る。
【0173】
アルカリ処理後、処理混合物は、例えば、中和、抽出および乾燥の1つまたはそれ以上によってさらに処理されてもよい。中和には、クエン酸または他の酸組成物が利用され得る。例示として、中和は、約6.4~約7.4、または約6.5~約7.5、または約6.6~約7.6、または約6.9~約7.4、または約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、または約7.5のpHが達成され得る。例えば、約10~約700g/Lのクエン酸が利用されてもよく、または約10~約600g/L、または約10~約500g/L、または約10~約400g/L、または約10~約300g/L、または約10~約200g/L、または約10~約100g/L、または約10~約50g/L、または約10~約40g/L、または約10~約30g/L、または約10~約20g/L、または約15~約16g/Lのクエン酸が利用されてもよい。
【0174】
抽出について、ジンゲロン抽出は、1つまたはそれ以上のアルコール抽出、例えば、1つまたはそれ以上のエタノール抽出によって達成されてもよい。例示として、アルコール抽出、例えばエタノール抽出は、約1~72時間、または約1~48時間、または約1~24時間、または約6~24時間、または約8~24時間、または約12~24時間、または約18~24時間行われ得る。特定の一態様において、室温でのエタノール抽出は、24時間またはそれ以下で利用され得る。抽出前および/または抽出後に1つまたはそれ以上の乾燥工程が使用されてもよい。例えば、凍結乾燥が利用されてもよい。
【0175】
組成物は、消毒用組成物または医薬組成物として調製され得る。組成物はまた、機能性食品または飲料、天然成分(例えば、天然添加物)、または天然サプリメント(例えば、栄養補助食品)として調製することができる。種々の態様において、組成物は、液体または固体形態、または半固体形態で調製されてもよい。本開示には様々な製剤が包含される。特定の態様において、組成物を粉末に製剤化することが望ましいことがある。粉末は、自由流動形態または固体ケーキで提供され得る。組成物は、懸濁液を形成するための粉末、溶液を形成するための粉末、バルク顆粒、またはバルク粉末として提供され得る。粉末は、本明細書に詳細に記載されるように、錠剤またはカプセル、または他の医薬製剤として調製され得る。
【0176】
初期プロセスの一部分として、ショウガ根は洗浄または殺菌されてもよい。植物の構成要素(例えば、果実または種子)は、付着した異物を除去するための1つ以上のローラーブラシを有するアセンブリを通過させてもよい。次に、従来の洗浄技術が利用され得る。例えば、一連のスプレーノズルを使用して構成要素を洗浄することが可能である。洗浄を助けるか、植物の構成要素の細菌数を減らす洗浄添加物は、地域の規制や要件に従って利用されてもよい。例えば、植物の構成要素は、塩素洗浄および/またはオゾン含浸水洗浄によって洗浄され、次いで新鮮な水で洗い流され得る。
【0177】
前述のように、ショウガ根から液体または半固体のジンゲロン組成物を調製することが望ましいことがある。本明細書に記載されるように、ジンゲロン成分は、化学的手段(例えば、溶媒を基礎とする抽出)によって抽出され得る。溶媒を基礎とする抽出は、水抽出、メタノール抽出、エタノール抽出、または2-プロパノール抽出の1つまたはそれ以上が利用され得る。超臨界流体抽出、例えばCO2抽出もジンゲロンの抽出に使用され得る。また、エマルジョン、ペースト、懸濁液、シロップも適切である。例えば、特定の態様において、ショウガ根から、またはショウガ根の成分(例えば、ジンゲロンまたはジンゲロン抽出物)からのペーストを使用することが望ましいことがある。一例示として、ショウガ根を数時間加熱し、濾し、濃厚な濃縮形態を生成し得る。濃厚になったペーストは、平らなシートの上に広げられるか、または包装、例えば、バッグ、チューブ、瓶、ボトル、または他の容器に移され得る。ペーストは無菌的に移され得る。成熟した植物の構成要素からペーストを調製することが望まれることもある。ペーストは滑らかな調製物であってもよい。
【0178】
特定態様において、本開示は、ショウガ根からジンゲロンを抽出するための機械的手段(例えば、浸漬および/または圧搾などの搾汁手段)を包含する。一実施態様において、圧搾アセンブリは、パルプ化またはコミニューションプロセスの実行に適合され得る。このようなプロセスは、従来の果実パルプ化技術と比べて、比較的に温和で穏やかである(ソフトパルプ化)。ソフトパルプ化では、細胞の有意な崩壊または溶解は利用されない。プレスベルトは、一連のプーリーを中心に回転する複数のループであってもよい。プレスベルトを隔てる距離は、植物の構成要素の進行方向に向かって短くなることがある。このようにして、植物の構成要素が圧搾アセンブリの長さに沿って移動するにつれて、植物の構成要素に対してより大きな力が及ぼされ得る。特定の態様において、本明細書に記載されるように、ショウガ根から液汁を得るのに圧搾アセンブリまたは機械プレスが使用され得る。あるいは、これに加えて、ジュースを得るのに機械的浸漬が使用され得る。例えば、市販の搾汁装置が利用され得る。
【0179】
ショウガ根の成分(例えば、ジンゲロンまたはジンゲロン抽出物)は、凍結工程によって処理され得る。この工程は、乾燥または蒸発工程に続いてもよく、乾燥または蒸発工程と併用されてもよい。代替の実施態様において、成分は乾燥または蒸発され、次に、凍結工程を介さずに粉末に処理される。空気乾燥または熱補助乾燥(例えば、オーブン乾燥)を含む方法が使用され得る。乾燥は、例えば、天日乾燥(sun or solar drying)、太陽熱乾燥、熱風乾燥、バッチ乾燥、回転乾燥、トンネル乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、衝突乾燥、パフ乾燥、円筒乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、または浸透圧乾燥の1つまたはそれ以上によって得ることができる。乾燥の例示的な温度には、約50℃~70℃、約55℃~65℃、または少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも60℃、または少なくとも65℃が含まれる。蒸発は、例えば、パン蒸発、バッチ蒸発、チューブ蒸発、上昇薄膜蒸発、下降薄膜蒸発、上昇-下降薄膜蒸発、または攪拌薄膜蒸発の1つ以上によって得ることができる。様々な乾燥法と蒸発法と組み合わせが使用され得る。例えば、濾過後に凍結乾燥が使用され得る。
【0180】
凍結が使用される場合、ショウガ根の成分(例えば、ジンゲロンまたはジンゲロン抽出物)は、鮮度を維持するために、製造後できるだけ早く凍結することが望ましいことがある。しかし、必要に応じて、24時間または48時間以内に凍結が行われ得る。凍結方法論は当業者に周知である。ブラスト凍結は、本開示と共に使用するのに特に望ましい。成分は、プロセス後に凍結製品を回収するのに使用される標準的な大きさのペール缶で凍結され得る。成分は、例えば、必要となるまで凍結保存(例えば、-18℃)することができる。任意で、次に成分を凍結乾燥(freeze dried)され得て、すなわち凍結乾燥(lyophilised)されてもよい。凍結乾燥技術は広く知られており、一般的に使用されている。凍結乾燥サイクルは最大48時間である。特定の態様において、このプロセスは、水塊形成が回避され、プロセス中の含水率が最小化されるように行われ得る。凍結乾燥(freeze drying)/凍結乾燥(lyophilising)は、より高い温度(すなわち、凍結温度より高い温度)の使用を排除するものではないことが理解される。例えば、凍結乾燥(lyophilisation)/凍結乾燥(freeze drying)手順の二次乾燥段階で残留水分を除去するために、より高い温度を使用され得る。
【0181】
ショウガ根から得られた乾燥または蒸発成分(例えば、ジンゲロンまたはジンゲロン抽出物)は、次に粉末に粉砕され得て、次に、適宜利用され得る。粉砕法はよく知られており、当業者に広く使用されている。粉末を製造するために標準メッシュサイズが使用され得て、例えば、US 20、US 23、US 30、US 35、US 40、US 45、またはUS 50メッシュサイズが使用され得る。粉末のふるいサイズは、1.0~0.3mm;または0.84~0.4mm;または0.71~0.5mmの範囲であってもよく;または、約1.0mm、約0.84mm、約0.71mm、約0.59mm、約0.5mm、約0.47mm、約0.465mm、約0.437mm、約0.4mm、約0.355mm、または約0.3mmであってもよい。
【0182】
ショウガ根から得られるいかなる液体または半固体製品についても、液体/半固体は、本明細書中に記載されているように、消毒用組成物または医薬組成物として使用するための粉末形態を得るために、この形態で使用されてもよく、乾燥または蒸発されてもよいことが理解される。同様にして、ショウガ根から得られるいかなる固体製品についても、固体は、そのように(例えば、粉砕プロセス、ふるい分けプロセス、またはその他のプロセス)使用され得るか、または、本明細書に記載されるように、消毒用組成物または医薬組成物として使用するための液体または半固体形態を得るために再懸濁されてもよいことが理解されるであろう。
【0183】
組成物
本発明者は、本明細書に開示される方法に従ってショウガ根から調製されたジンゲロン組成物が、微生物の成長の阻害または停止、およびこれらの生物による感染症の処置または予防に有用な有意な抗菌特性を有することを見出した。
【0184】
本開示の組成物は、1つまたはそれ以上の消毒用組成物または医薬組成物として調製され得る。非限定的な例として、組成物中のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物の百分率は、約0.01%~約0.5%、または約0.02%~約0.2%、または約0.03%~約0.1%、または約0.04%~約0.09%、または約0.05%~約0.08%、または約0.06%~約0.07%、または少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約10%、少なくとも約12%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約23%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%の百分率、または約6.25%、約12.5%、または約25%の百分率であってもよく、これらの百分率は、液体組成物のv/v値または固体もしくは半-固体組成物のw/w値で示される。
【0185】
例えば、固体または半-固体組成物は、約1mg/g~約100mg/gのジンゲロン、または約5mg/g~約50mg/gのジンゲロン、または約5mg/g~約25mg/gのジンゲロン、または約5mg/g~約20mg/gのジンゲロン、または約5mg/g~約15mg/gのジンゲロン、または約10mg/g~約15mg/gのジンゲロン、または約10mg/g~約13mg/gのジンゲロン、または約12mg/gのジンゲロン(w/w)を含み得る。同様に、液体組成物は、約1mg/ml~約100mg/mlのジンゲロン、または約5mg/ml~約50mg/mlのジンゲロン、または約5mg/ml~約25mg/mlのジンゲロン、または約5mg/ml~約20mg/mlのジンゲロン、または約5mg/ml~約15mg/mlのジンゲロン、または約10mg/ml~約15mg/mlのジンゲロン、または約10mg/ml~約13mg/mlのジンゲロン、または約12mg/mlのジンゲロン(w/v)を含み得る。
【0186】
様々な態様において、例えば、手(例えば、手指消毒剤)、手術前の組織(例えば、皮膚の外科用調剤)、粘膜(例えば、膀胱、尿道または腟感染症の処置、または医療処置前のこれらの空洞の洗浄)、創傷または熱傷(例えば、消毒用軟膏、包帯、またはドレッシング材)、または口または咽喉(例えば、うがい薬または消毒用トローチ)への使用のための消毒用組成物が調製され得る。消毒用製剤およびその調剤は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、Antiseptic Prophylaxis and Therapy in Ocular Infections: Principles, Clinical Practice and Infection Control, 2002, Karger, Baselを参照のこと。
【0187】
非限定的例として、消毒用組成物は、1つまたはそれ以上の希釈剤(例えば、エタノールまたは他のアルコール)、軟化剤(例えば、PEG-45、パーム核グリセリド、またはイソプロピルミリステート)、湿潤剤(例えば、グリセリンまたはメチルプロパンジオール)、担体(例えば、1つまたはそれ以上の油)、閉塞剤(例えば、鉱油またはジメチコン)、他のコンデイショニング剤(例えば、ベヘントリモニウムメトサルフェートまたはポリクオタニウム-7)、および界面活性剤(例えば、温和な界面活性剤(例えば、アンホアセテート(amphoacetate)、イセチオネート、スルホサクシネート、特に、ナトリウムラウロアンホアセテート、ナトリウムココイルイセチオネート、ジナトリウムオレオアミドスルホサクシネート、ナトリウムラウリルスルフェート、ナトリウムC14-16オレフィンスルホネート)を含み得る。例示的な油は、オリーブ油、ココナッツ油(例えば、ココナッツ由来MCT油)、パーム油(例えば、パーム核由来MCT油)、いずれかの他のMCT油(中鎖トリグリセリド油)、およびこれらの組み合わせを含む。他の可能な担体は、レシチン(例えば、液体形態)およびプロピレングリコールを含む。また、本明細書に記載の担体のいずれかの組み合わせも認められる。
【0188】
さらに他の態様において、医薬組成物は、局所製剤または経口製剤を含む様々な投与経路用に調製され得る。また、経腸または非経口投与の他の経路用に調製される組成物も含まれる。経腸製剤としては、経口調剤、直腸調剤、舌下調剤、唇の下(sublabial)調剤、およびバッカル調剤(buccal preparation)などが挙げられるが、これらに限定されない。非経腸製剤としては、経鼻調剤、眼内調剤、膣内調剤、病巣内調剤、経皮調剤および経粘膜製剤が挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物を製剤化する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Remington: Essentials of Pharmaceutics, 2012, Pharmaceutical Press, Londonを参照のこと。
【0189】
特定の態様において、本開示の組成物は、粉末として、または任意の他の適当な剤形で調製され得る。局所製剤は、例えば、エアロゾル、バーム、クリーム、ドレッシング材、滴剤、エマルジョン、薄膜、フォーム、ゲル、液体、ローション、マスク、油、軟膏、ペースト、粉末、軟膏、石鹸、スプレー、懸濁液、溶液、チンキ剤、および蒸気として調製され得る。さらなる局所製剤としては、包帯、ドレッシング材、パッチ、パッド、スポンジ、ストリップ、テープ剤、および本明細書で指摘したその他のものが挙げられる。
【0190】
本明細書に記載されるように、組成物は、例えば、経口投与用の半固体または液体組成物として、あるいは経腸投与用または非経口投与用の溶液として製剤化され得る。あるいは、組成物は、カプセル化、錠剤化、または他の製品への添加もしくは組込みのための粉末として製剤化され得る。
【0191】
経口製剤は、例えば、ドラフト、滴剤、エリキシル、エマルジョン、液体、リンクタス(linctuses)、溶液、スプレー、懸濁液、シロップ、トニックとして、または薄膜、ゲル、グミ(gummies)、ゼリー、トローチ、ナゲット(nugget)、ペースト、ピューレ、圧搾粕、粉末、丸剤、またはストリップとして調製され得る。他の態様において、経口製剤は、錠剤として、またはカプセルとして、例えば、液体、半固体、または固体内容物と共に調製され得る。経口製剤は、小袋(sachet)形態、例えば、粉末小袋、またはゲルまたはゼリー小袋で提供され得る。また、薄いストリップを含む経口製剤、または食品または飲料と混合するカプセル内の固体を含む経口製剤も含まれる。経口製剤は、シューター(shooter)またはショット(shot)(口で摂取する)、例えば、液体ショット、ゲルまたはゼリーショット、ペーストショット、または粉末ショットとして提供され得る。
【0192】
特に包含されるのは、遅延放出製剤、持続放出製剤、および急速崩壊製剤である。カプセル、例えばゲルカプセルは特に包含され、また小袋およびチュアブル錠も包含される。さらに、本開示の粉末を他の有益な剤、例えば1つまたはそれ以上の抗微生物薬と混合した組み合わせ製剤も含まれる。本明細書に記載されるように、他の製剤も可能である。
【0193】
経口製剤の溶解時間は、急速効果(rapid effect)または持続放出(sustained release)のために変更することができる。経口製剤はまた、同じ用量で急速吸収と持続吸収をもたらすために、持続放出(slow release)粒子と急速放出(fast release)粒子の混合物を含有することができる。錠剤やカプセルなどの経口製剤には、特殊なコーティングを使用することで、胃酸に対する耐性を付与することができる。経口製剤は、糖、ワニス、ワックスでコーティングすることで、味を改善することもできる。
【0194】
したがって、錠剤は急速溶解錠として調製され得て、カプセルは持続放出カプセルとして調製され得る。錠剤は、分割錠、チュアブル錠、発泡錠、口腔内崩壊錠、または懸濁液を形成するための錠剤であってもよい。カプセルは、ゲルカプセルであってもよく、例えば、粉末状の内容物を含んでもよい。これには、1ピースゲルカプセル化および2ピースゲルカプセル化によって作られたゲルカプセルが含まれる。カプセルだけでなく、非ゼラチンカプセルも含まれる。
【0195】
特定の製剤は、消毒または医薬用途のいずれにも適していることが理解される。目的の特定の製剤は、眼用製剤(例えば、滴剤、軟膏)、耳用製剤(例えば、滴剤、軟膏)、経鼻または気道用製剤(例えば、滴剤、スプレー、吹送(insufflation)組成物、吸入組成物、噴霧(nebulisation)組成物)、皮膚用製剤(例えば、石鹸、スプレー、エアゾール、ゲル、ペースト、ローション、クリーム、軟膏、パッド、パッチ、テープ剤、包帯、ドレッシング材、スポンジ、蒸気)、咽喉用または口用製剤(例えば、滴剤、トローチ、うがい薬、歯磨剤(toothpaste)、スプレー、ペースト、ゲル)、粘膜用製剤(例えば、スプレー、エアゾール、ゲル、ペースト、ローション、クリーム、軟膏、パッド、ドレッシング材、スポンジ)である。
【0196】
固体および液体組成物は、ジンゲロンまたはジンゲロン抽出物を1つまたはそれ以上の化合物と組み合わせることで、安定で活性な組成物を確保することができる。例えば、錠剤またはカプセルのような経口製剤は、約5~約50%w/wのジンゲロンまたはジンゲロン抽出物;最大約80%w/wの一つまたはそれ以上の充填剤(filler)、滑沢剤、流動促進剤または結合剤;および最大約10%w/wの胃または腸での錠剤の容易な崩壊、分解および溶解を確保するための化合物を含むことができる。
【0197】
したがって、組成物は、種々の賦形剤、例えば、1つまたはそれ以上の可溶化剤、安定化剤、緩衝剤、張力調整剤、増量剤(bulking agent)、粘性増強剤/低下剤、界面活性剤、キレート剤、アジュバント、粘着防止剤、固化防止剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、フロー剤(flow agent)、吸着剤、香料、彩料(colour)、甘味剤、または防腐剤を含み得る。組成物は、1%未満の防腐剤、例えば、約0.005%~約0.5%、または約0.05%~約0.15%を含み得るか、または約0.04%、約0.06%、約0.08%、約0.1%、約0.12%、約0.14%、約0.16%、約0.18%、または約0.2%の防腐剤を含み得て、これらの百分率は、w/v値またはw/w値の代表値である。有用な防腐剤としては、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、プロピオン酸、および安息香酸、例えばそのナトリウム塩、例えば安息香酸ナトリウムの形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0198】
他の有用な賦形剤には、以下が含まれるが、これらに限定されない:ステアリン、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸;サッカライドおよびその誘導体、例えば二糖類:スクロース、ラクトース;多糖類およびその誘導体、例えば、デンプン、セルロースまたは変性セルロース、例えば微結晶セルロースおよびセルロースエーテル、例えばヒドロキシプロピルセルロース;糖アルコール、例えばイソモルト、キシリトール、ソルビトールおよびマルチトール;タンパク質、例えばゼラチン;合成ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール;脂肪酸、植物を基礎とする界面活性剤;例えば、ヒマワリのレシチン、ワックス、シェラック、プラスチック、植物繊維、例えば、トウモロコシ蛋白質ゼイン;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;架橋ポリマー、例えば、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)および架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム);デンプングリコール酸ナトリウム;二酸化ケイ素、ヒュームドシリカ、タルク、および炭酸マグネシウム。
【0199】
液体組成物は、バイアル、バッグ、アンプル、カートリッジ、またはプレフィルドシリンジ中にチンキとして保存され得る。組成物は、バイアルからより大きな容器に移され、他の材料と混合されてもよい。乾燥または蒸発組成物は、バイアル、カートリッジ、デュアルチャンバーシリンジ、またはプレフィルド混合システムに保存され得る。また、投与前に、乾燥形態の組成物は液体として再構成されてから投与されてもよい。
【0200】
組成物の例示的な単位用量としては、約0.1mg~約1000mgのジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、約1mg~約500mgのジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、約1mg~約200mgのジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、約1mg~約100mgのジンゲロンまたはジンゲロン抽出物が挙げられる。用量は、週1回、週2回、週3回、2日に1回、1日に1回、1日に2回、または1日に3回、または必要に応じてそれ以上投与するように製剤化され得る。用量は、必要に応じて、小児、老人、過体重、低体重、その他の患者用に調整され得る。用量の変更は既知の方法に従って行うことができる。欧州食品安全機関(EFSA)は、ジンゲロンを、128mg/kg/日の用量に基づいて、観察される有害影響なし(NOAEL)でヒト消費に対して安全であると分類した(EFSA 2016; 14(8):4557)。したがって、幅広い単位剤形が想定されることを理解されるべきである。
【0201】
組成物の使用方法
上述のように、開示の組成物は、微生物の有病率の低下、および/またはそのような生物によって引き起こされる様々な健康状態の処置または予防に使用することができる。
【0202】
特定の態様において、組成物は、本明細書に規定される方法によって製造されるジンゲロンまたはジンゲロン抽出物を含み得る(または本質的にそれからなり得る)。本開示の組成物はまた、殺菌、消毒用途、または治療用途の1つまたはそれ以上のために製剤化され得る。さらに、またはこれの替として、本組成物は、機能性食品または飲料、天然成分(例えば、天然添加物)、または天然サプリメント(例えば、栄養補助食品)として利用することができる。
【0203】
様々な態様において、開示の組成物は、1つまたはそれ以上の細菌、真菌、または原虫生物を標的するのに使用され得る。特定の真菌には、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ニューモシスチス・ジロベシイ(Pneumocystis jirovecii)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、およびスタキボトリス・カルタルム(Stachybotrys chartarum)が含まれるが、これらに限定されない。特に興味深いのは薬剤耐性株である。
【0204】
特定の原虫には、アカントアメーバ・クルベルトソニ(Acanthamoeba culbertsoni)、アカントアメーバ・ポリファガ(Acanthamoeba polyphaga)、アカントアメーバ・カステラニイ(Acanthamoeba castellanii)、アカントアメーバ・アストロニキシス(Acanthamoeba astronyxis)、アカントアメーバ・ハトケッチ(Acanthamoeba hatchetti)、アカントアメーバ・グリフィニ(Acanthamoeba griffini)、アカントアメーバ・ルグデネンシス(Acanthamoeba lugdenensis)、アカントアメーバ・ポリファガ(Acanthamoeba polyphaga)、アカントアメーバ・リソデス(Acanthamoeba rhysodes)、バラムチア・マンドリラリス(Balamuthia mandrillaris)、クリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum)、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani)、リーシュマニア・インファンツム(Leishmania infantum)、リーシュマニア・マジョル(Leishmania major)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fowleri)、プラスモジウム・ビバックス(Plasmodium vivax)、プラスモジウム・マラリアエ(Plasmodium malariae)、プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)、プラスモジウム・オバル(Plasmodium ovale)、プラスモジウム・クノウレシ(Plasmodium knowlesi)、トリパノソマ・クルジ(Trypanosomacruzi)、トリパノソマ・ブルセイ・ガンビエンス(Trypanosoma brucei gambiense)、トリパノソマ・ブルセイ・ロデシエンス(Trypanosoma brucei rhodesiense)、およびトキソプラズマ・ゴンジイ(Toxoplasma gondii)が含まれるが、これらに限定されない。特に興味深いのは薬剤耐性株である。
【0205】
特定の細菌には、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バルトネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)、バルトネラ・キンタナ(Bartonella quintana)、ボルデテラ・ペルツッシス(Bordetella pertussis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・ガリニイ(Borrelia garinii)、ボレリア・アフゼリイ(Borrelia afzelii)、ボレリア・レクレンチス(Borrelia recurrentis)、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、ブルセラ・カニス(Brucellacanis)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)、ブルセラ・スイス(Brucella suis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クラミドフィラ・プシッタシ(Chlamydophila psittaci)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae)、エンテロコックス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコックス・ファエシウム(Enterococcus faecium)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisellatularensis)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、レプトスピラ・インテルロガンス(Leptospira interrogans)、レプトスピラ・サンタロサイ(Leptospira santarosai)、レプトスピラ・ウェイリイ(Leptospira weilii)、レプトスピラ・ノグチイ(Leptospira noguchii)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・レプラ(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、マイコプラズマ・ニューモニア(Mycoplasma pneumoniae)、ナイセリア・ゴノルロエアエ(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・サプロフィチクス(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、トレポネーマ・パリズム(Treponema pallidum)、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasmaurealyticum)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、およびエルシニア・シュードツベルクロシス(Yersinia pseudotuberculosis)が含まれるが、これらに限定されない。特に興味深いのは、薬剤耐性株、例えば抗生物質耐性微生物である。
【0206】
特定の態様において、開示の組成物は、1つまたはそれ以上の抗微生物薬と共に使用され得る。例えば、組成物は、1つまたはそれ以上の抗微生物薬と組み合わせた製剤として調製され得る。代替的には、組成物は、1つまたはそれ以上の抗微生物薬とともに別個の製剤として利用されてもよい。別個の製剤が使用される場合(例えば、ジンゲロン組成物および抗微生物剤)、別個の製剤の同時または逐次の適用/投与によって使用を調整することが可能である。さらに、本明細書に記載の組成物は、様々な医学的または非医学的処置と組み合わされて使用され得る。組成物の使用は、処置の前、処置中、または処置後、またはそれらの任意の組み合わせで実施され得る。
【0207】
例として、抗微生物薬には、エタノール、イソプロパノール、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、トリクロカルバン(triclocarbon)、フェノール、o-フェノール、クロロフェノール、アミルメタクレゾール、チモール、クレゾール、レゾルシノール、クロロキシレノール、トリクロサン、ヘキサクロロフェン、クロルヘキシジン、プロパミジン、次亜塩素酸、クロラミン、ヨードフォール、ヨウ素、ポビドンヨード、ジブロミン、塩化第二水銀、チオメルサール、硝酸銀、スルファジアジン銀、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化水素、オゾン、過酢酸、セトリミド、塩化ベンザルコニウム、ゲンチアナバイオレット、塩基性フクシン(basic fuchsine)、メチレンブルー、アクリフラビン、サラクリン(salacrin)、マーキュロクロム、ホウ酸、酢酸、アゼライン酸、ニトロフラン、エチレンオキシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0208】
他の抗微生物薬としては、天然物(精油または植物抽出物、例えば、ウィッチ・ヘーゼル(witch hazel)、ホップ(hop)、タイム(thyme)、オレガノ、カレンデュラ(calendula)、ティーツリー、ラベンダー、およびアニス(anise)からの精油または植物抽出物を含み、特に、レモン油、オレンジ油、グレープフルーツ油、ライム油、ネロリ油、マンダリン油、シトロネラ油、プチグレン油、マジョラン油、ロスマリン油、タイム油、チモール、オレガノ油、バジル油、チョウジ油(clove oil)、ティーツリー油、ジュニパー油、ミルラ油(myrrh oil)、パッチュリ油、胡椒油、黒胡椒油、ばら油(例えば、ローズオットー油)、カンショウ油(spikenard oil)、ベチバ油、バーベイン油(vervain oil)、フェンネル油、レモングラス油、桂皮油、ラベンダー油、ゼラニウム油、サンタル油(sandalwood oil)、ユーカリ油(eucalyptus oil)、パイン油、ファー油、バルサム油(balsam oil)、セダーリーフ油、セダーウッド油、スペアミント油、ウインターグリーン油、ペパーミント油、およびメントールを含む)が含まれる。はちみつ(例えば、マヌカハニー(manuka honey))、活性化炭、ノコギリソウ(例えば、様々な皮膚製剤のためのもの)、およびコンフリー(例えば、軟膏またはクリームのためのもの)も含まれる。
【0209】
抗微生物薬としてさらに、様々な抗生物質、例えば、バシトラシン、セフトリアクソン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、ダプソン、デキサメサゾン、フルクロキサシリン、フラマイセチン、フシジン酸、ゲンタマイシン、グラミシジン、リンコマイシン、マクロライド、ムピロシン、ナジフロキサシン、ネオマイシン、ニトロフラゾン、ポリミキシンB、レタパムリン、ソフラマイシン、およびスルファジアジンが含まれる。さらなる抗生物質として、例えば、アンピシリン、アンピシリン、例えば、アンピシリンとクラブラン酸、アモキシシリン・クラブラン酸(amoxicillin clavulanate)、アジスロマイシン、セフォタキシム、セファレキシン、シプロフロキサシン、クリオキノール、ジクロキサシリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、フルメタゾン、メトロニダゾール、ナフシリン、ニトロフラントイン、オルニダゾール、オキサシリン、ペニシリン、例えば、ベンザチン ペニシリン、フェノキシメチルペニシリン、ペニシリンGナトリウム、ペニシリンVカリウム、ロキシスロマイシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、およびバンコマイシンが含まれる。これらの中で注目されるのは、グリコペプチド抗生物質、例えばダルババンシン、オリタバンシン、ラモプラニン、テイコプラニン、テラバンシン、およびバンコマイシンである。特に注目されるのは、アミノグリコシド抗生物質、例えばゲンタマイシン(例えば、Cidomycin(登録商標)、Garamycin(登録商標)、G-Myticin(登録商標)、Pred-G(登録商標)、Gentak(登録商標)、Genoptic(登録商標))、および、アミカシン、アミカシンリポソーム、ジベカシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、プラゾマイシン(plazomicin)、シソマイシン(sisomicin)、ストレプトマイシン、およびトブラマイシンである。本開示の方法および組成物において、抗微生物薬の任意の組み合わせが利用され得ることができることが理解されるであろう。
【0210】
本明細書に記載されるように、本開示の組成物は、抗菌製剤として有用である。特定の態様において、消毒用組成物は、特定の組織上または組織中の菌の成長を阻害または停止させる方法に使用され得る。この組織としては、皮膚、爪、耳、眼、鼻、口、歯肉、咽喉、膣、および尿路組織、ならびに本明細書で指摘する他の組織が挙げられる。消毒用組成物は、例えば、感染の可能性を少なくするために熱傷に、または手術部位周辺の皮膚上の微生物と闘うために手術前に皮膚に適用され得る。消毒用組成物は、手用クレンザー(例えば、石鹸または手の除菌用ローション(hand sanitiser)として使用され得て、水と共にまたは水なしで適用される。消毒用組成物は、軽度の皮膚感染、切り傷、またはかすり傷に使用され得る。消毒用組成物は、例えば、口内または歯肉の微生物と闘うための、うがい薬または口腔洗浄薬(gargles)として使用され得る。消毒用組成物はまた、例えば咽喉痛を和らげるための、トローチまたは咽喉スプレーとして利用され得る。消毒用眼の滴剤または軟膏は、眼内または眼に付着した微生物と闘うために使用され得る。
【0211】
本開示の組成物はまた、本明細書に記載されるように、微生物感染または感染に起因する他の状態を処置または予防するための方法において使用され得る、製剤としての使用も見出す。感染症は、循環系、呼吸器系、消化器系、腎臓系、排泄系、生殖器系、外皮系、神経系、リンパ系、内分泌系、筋肉系、骨格系、および感覚系の1つまたはそれ以上の部分を含む、1つまたはそれ以上の生理学的成分に影響を及ぼし得る。
【0212】
本明細書に記載されるように、非経腸投与(例えば、局所投与)および経腸投与(例えば、経口投与)を含む、様々な投与経路が組成物に使用され得る。経腸投与は、十二指腸チュービングまたは、鼻腔胃チュービングを含む胃チュービング、または他の公知の手段によることができる。経口投与は、錠剤、カプセル、小袋(sachet)、滴剤、エリキシル、リンクタス剤(linctus)、溶液、エマルジョン、懸濁液、ドラフト、ピューレ、ペースト、圧搾粕、シロップ、ゲル、ゼリー剤、トニック、または他の公知の手段によることができる。局所投与は、滴剤、スプレー、軟膏、石鹸、パッド、スポンジ、ドレッシング材、包帯、または他の様々な手段によることができる。異なる投与様式が当技術分野で知られており、当業者によって利用され得る。本明細書に開示される組成物は、投与のための特定の形態に限定されない。
【0213】
例示的な用量として、組成物は、平均体重70kgのヒト対象に対して、約1mg~5000mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物を得るように投与されるか、平均体重70kgのヒト対象に対して、約1mg~1500mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、または約5mg~約500mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、または約1mg~約500mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、または約1mg~約150mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、または約1mg~約100mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、または約1mg~約50mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、または約1mg~約30mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、または約1mg~約20mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、または約1mg~約15mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物、または約1mg~約10mgの用量のジンゲロンまたはジンゲロン抽出物を得るように投与され得る。この範囲の用量は、乾燥され粉末に粉砕されたショウガ成分(例えば、ジンゲロンまたはジンゲロン抽出物)に対して特に有用である。上記の用量は、必要に応じて、1日に1回、1日に2回、1日に3回、またはそれ以下もしくはそれ以上投与され得る。投与は食事と一緒に行われてもよく、食前に行われてもよい。適切な用量および剤形は、当業者によって容易に決定されるであろう。
【実施例】
【0214】
本明細書に記載の実施例は、特定の実施態様を例示する目的で提供されるものであり、本開示を何ら限定することを意図するものではない。
【0215】
実施例1:ジンゲロンの調製
図1に示すような新鮮なショウガの初期試料(400gm)をニュージーランドから供給され、汚れや土壌を洗浄した。次に、洗浄したショウガをさいの目に切るか細かく刻み、アルカリ処理(蒸留水中の0.5%水酸化カリウム800g)にかけた。得られた混合物を撹拌し、60℃のオーブンに22時間放置した。得られた混合物をウォーターバスに入れ、所望の時間、約60℃に維持することも可能であることが理解される。
【0216】
次に、混合物のpHを濃クエン酸の添加によりpH7に調整し、処理した植物材料を金属トレイに広げ、60℃のオーブンで20時間乾燥させた。得られた乾燥材料の重量は35グラムで、乾燥収率は8.75%であった。この乾燥材料をフラスコに入れ、95%エタノール(210ml)で覆って抽出した。フラスコを振り、40℃のオーブンに16時間入れた。抽出物(抽出物1)を、グラスウール栓付きガラス漏斗を用いて濾過した。残った植物を95%エタノールで再度抽出し(抽出物2)、次に、さらに50%エタノールで2回抽出した(抽出物3と4)。
【0217】
抽出物は、ジンゲロン含有量について直接分析した。294mgの新鮮なショウガの刻んだ試料も2mlのエタノールで抽出し、この抽出物も分析した。結果を表1に示す。
【表1】
【0218】
結果
供給された400gの新鮮なショウガ根は、260mgの6-ジンゲロール(すなわち0.65 mg/g)を含むことが示された。これは、ジンゲロンの理論上の最大収量が、処理された材料から171mg程度になることを意味する(6-ジンゲロールと比較してジンゲロンの分子量が低いため、重量損失)。6-ジンゲロールの約50%は変換されなかった。さらなる研究により、6-ジンゲロールのジンゲロンへのアルカリ性変換を増加させることができると考えられている。
【0219】
エタノール抽出は、処理した植物材料を覆うのに必要な最小限の容量で行った。つまり、最も濃縮された抽出物1のジンゲロン含有量は0.47mg/mLであった。この濃度は、原理的には、多段階プロセスまたはエタノールの一部を蒸発させることによって高めることができると想定される。エタノールを80%減量すると、ジンゲロン/mLの溶液2.35mgが得られる。
【0220】
抽出物を完全に乾燥させると、約16mg/gの固体抽出物の濃度が得られることが想定される。より高い6-ジンゲロールの初期含有量および/またはより完全な変換で開始すれば、より高い濃度が予想される。例えば、理論上の25mg用量は、乾燥抽出物を油またはグリセロール担体に直接製剤化することで、必要な用量のジンゲロンを1つまたは2つの500mgカプセル中に与えることによって達成できる可能性がある。
【0221】
ジンゲロンの大部分は1回目の抽出で抽出した。二重抽出が有効な場合もある。3回目および4回目の抽出で、総計がわずかに増加した。全体として、エタノール抽出は非常に効果的であり、調製法として非常に効率的かつ安価であることが分かった。
【0222】
実施例2:ジンゲロンの調製
概要:これらの試験では、水性アルカリ処理後に新鮮なショウガを凍結乾燥することで、変換が大幅に改善され、こらは、乾燥ショウガ中のジンゲロン含有量が約1%に達することを示している。次に、処理したショウガを超臨界CO2およびCO2+エタノール共溶媒で抽出し、その組み合わせ抽出収率は3%であり、抽出オレオレジン中のジンゲロンの平均濃度は約12%であった。さらに、新鮮なショウガを中温度(60℃)で乾燥し、次いで、超臨界CO2を抽出すると、4.6%の抽出収率が得られた。抽出オレオレジンをアルカリ処理し、最終生成物は約15%のジンゲロンを含有した。
【0223】
乾燥:フィジーから輸入した新鮮なショウガ材料の試料を2~5mmの切片にスライスし、穴の開いたオーブントレーの単層に置いた。強制対流で乾燥を行った。乾燥は、ジンゲロールの変換なしに水分を除去することを目標に、中温度(60℃)で行った。このプロセスはショウガの含水率が7%に達した時点で終了とした。得られた乾燥ショウガを抽出試験に用いるまで冷蔵保存した。
【0224】
触媒変換: 刻んだフィジーの新鮮なショウガ約1.6gを0.5% KOH(pH14)、1% Ca(OH)2(pH11.6)および1%炭酸ナトリウム(pH10.5)の水溶液で処理することによって小規模予備試験を行った。添加試薬:ショウガの体積:重量比は約3:1とした。次に、試料を振り、室温または37℃または60℃のオーブンに一晩置いてから分析した。適切な水浴を用いて、試料を所望の温度に所望の期間保つことができることは理解されるべきである。
【0225】
アルカリ処理を選択した後、縦型カッターミキサー(RobotCoupe R 45)を用いて5.2kgの新鮮なショウガを切り刻んだ。次に、ショウガをKOH 0.5%(約0.1N)と3:1液体:固体比(体積:重量)で混合し、pH約12.5とした。混合物を手動で攪拌し、60℃のオーブンに24時間入れた。この時間の後、混合物を、濃縮クエン酸(625g/L)を添加することによりpH約7.2に中和した。次に、中和した混合物を凍結乾燥させ、このプロセスで得られたショウガを抽出試験で使用するまで冷蔵保存した。
【0226】
触媒変換の結果:前述のように、異なるアルカリを試験した:0.5%水酸化カリウムまたはKOH(pH14)、1%水酸化カルシウムまたはCa(OH)
2(pH11.6)、および1%炭酸ナトリウムまたはNa
2CO
3(pH 10.5)。これらの実験について、ジンゲロンと6-ジンゲロールの含有量を定量したところ(表2)、60℃でのKOHによる処理が最も効率的であり、ジンゲロン濃度が最も高いという結論に達した。表2は、それぞれの条件で得られた6-ジンゲロールmg/gとジンゲロンの量(mg/g)を示し、結果は湿量基準で表した。HPLCのトレースを
図2に示す。HPLCのトレースから、1% Ca(OH
)2、0.5% KOHは同様の性能を示すことがわかる。60℃での0.5% KOHの場合、ジンゲロン:6-ジンゲロールの比は6.5である。60℃での1.0% Ca(OH
)2の場合、ジンゲロン:6-ジンゲロールの比は4.0である。
【表2】
【0227】
この処理をより大きな新鮮なショウガ試料(5.2kg)に適用し、次に、得られた処理ショウガを中和し、凍結乾燥させた。凍結乾燥ショウガの収率は17%、すなわち切り刻んだ生ショウガ100gあたり17gの処理済み凍結乾燥ショウガであった。凍結乾燥ショウガのジンゲロンおよび6-ジンゲロール含有量は、それぞれ10.2mg/gおよび3.3mg/gと測定された(乾燥量基準)。表2-1を参照のこと。ジンゲロン含有量はオーブン乾燥ショウガの少なくとも10倍であった。
【表3】
【0228】
抽出:アルカリ処理したショウガを用いて超臨界抽出試験を行った。アルカリ処理した凍結乾燥ショウガを手で軽く破砕し、焼結フィルターディスクを両端に付けた2L抽出容器に入れ、容器を完全に満たした。抽出は、CO
2:供給物(feed)比が13:1に相当する抽出速度の急激な低下が観察されるまで、上記のように行った。この時点で、エタノール共溶媒ポンプを始動させ、エタノールをCO
2流に約10wt%の割合で添加した(すなわち、CO
2 100gあたりエタノール10g)。エタノールポンプは、2:1のエタノール:供給物(供給物1gあたり2gのエタノール)が導入された後に停止させた。次に、CO
2を循環させることで、ベッドに残ったエタノールを洗い流した。抽出が終了したら、プラントを減圧し、残留絞りかすを一晩ガス抜きしてから荷をおろした。抽出物中に存在するエタノールを真空下で回転蒸発により除去した。抽出パラメーターを表3に示す。
【表4】
【0229】
分析:試料は、必要に応じて中和した後、メタノールを添加することによって分析用に調製した。抽出物をメタノールに直接溶解した。分析はアセトニトリル/0.1%ギ酸勾配のHPLCで行った。検出は280nmで行い、使用したカラムはPhenomenex Kinetex C18(150 X 2.1 mm)であった。ジンゲロンは約2分で、6-ジンゲロールは5.2分で溶出した。ジンゲロンおよび6-ジンゲロールの定量は、これらの化合物の分析標準物質を用いて作成した標準曲線から得た。
【0230】
抽出結果:前述のように、アルカリ処理後に凍結乾燥したショウガをCO
2、続いてCO
2+エタノール共溶媒で抽出した。CO
2抽出物中に自由水は観察されず、CO
2+エタノール抽出物中のエタノールは真空下で回転蒸発により除去した。抽出物は甘いキャラメルのような香りがした。CO
2の収率は1.5%であった。10%エタノール共溶媒の添加によりさらに1.5%の抽出が可能であった。異なる画分の組成を表4および表5に示す。
図3も参照のこと。
【表5】
【表6】
【0231】
結果からわかるように、アルカリ処理した試料では、CO2抽出物には153mg/gのジンゲロン(15.3%)、103mg/gの6-ジンゲロール(10.3%)が含まれており、ジンゲロン/ジンゲロール比は約1.5であった。CO2+エタノール抽出物には、91mg/gのジンゲロンおよび52mg/gのジンゲロールが含まれていた(ジンゲロン/ジンゲロール比は約1.75)。抽出後のショウガの絞りかすまたは残留物も分析したところ、5.4mg/gのジンゲロンが含まれていることを見出した。供給物、抽出物および絞りかすの質量を考慮すると(表4)、ジンゲロンの質量バランスは90.6%と計算できる。これは、供給物中に最初に存在していたジンゲロンの90.6%が、抽出物および絞りかすに含まれていることを示している。この差は、抽出中またはエタノール除去工程での分解が原因である可能性がある。ジンゲロンの抽出収率(すなわち、供給物中のジンゲロン100gあたり抽出されたジンゲロンのグラム数)は、抽出物に基づいて計算するとわずか37%であった。しかし、供給物中に最初に存在していたジンゲロンの54%は絞りかす中に抽出されずに残っているため、絞りかすの結果に基づいてジンゲロン抽出収率を計算すると46%にもなる。これは「欠落した」ジンゲロンを考慮したものである。未抽出のジンゲロンの割合は大きいため、これを減らすために抽出プロセスをさらに改善することができる。ジンゲロールの抽出収率は、CO2により可溶性であるため、ジンゲロンよりも高い(無処理試料では82%、処理試料では71%)。
【0232】
別の実験において、未処理ショウガ根から得られたCO2抽出物にアルカリ処理をかけることで、ジンゲロールのジンゲロンへの変換について試験した。60℃での0.1Nおよび1NのKOHの両方による一晩処理は良好に作用し、結果として、処理したショウガ中のジンゲロン濃度は約15%であった。得られた材料は、アルカリ処理した粗ショウガよりもはるかに清浄であるように見えたので、変換プロセスが少量の材料で行われるので、全体としてさらに費用対効果の高い抽出プロセスを提供できる興味深い代替プロセスである。実際、同じ量(100kg)の新鮮なショウガを開始し、この作業で得られた結果に基づいて、未処理ショウガを抽出、次いで、抽出物をアルカリ処理することで、代替プロセスよりも最終生成物にほぼ2倍のジンゲロンが得られる(下表の比較を参照)。しかし、この場合でも、プロセスの総ジンゲロン収率は約0.1%(100kgの新鮮なショウガ当たり0.1kgのジンゲロン)である。さらなる最適化が可能であることが予想される。
【0233】
別の実験において、未処理ショウガのCO2抽出物の試料をKOHと混合し、ジンゲロンの豊富な抽出物に変換させた。処理後の中和工程は、水性反応混合物からジンゲロンの豊富な樹脂としてのジンゲロンの分離に関与する。3gのオレオレジンを二回取り、9mlの1N KOHをプラスチックバイアル中の試料に添加した。次に、試料を振盪し、60℃のオーブンで一晩放置した。次に、処理した試料を10mlの1N HClの添加により中和した。すべてのKOHが中和されることを確保するようにするために、酸はわずかな過剰であった。添加は2段階で行い、各段階の後に混合した。試料を2000rpmで遠心分離して水をオレオレジンから分離した。遠心分離後、水の大部分をピペットで除去した。次に、得られた樹脂を除去した。樹脂試料の1つ(約3gの樹脂中にエタノール5ml)に絶対アルコールを添加することでチンキを製造した(試料1)。もう一方の試料は樹脂形態で保存した(試料2)。試料1および試料2のジンゲロン含有量を分析した。チンキ(試料1)中のジンゲロンの濃度は23mg/gのチンキで計算され、処理樹脂(試料2)中のジンゲロンの濃度は52mg/gであった。
【0234】
試料1および2とも、これらの値は、ジンゲロン含有量が150mg/gと推定された以前の処理で得られた値よりも低かった。この作業では、樹脂試料2を水から分離して分析した。その後、分離された水も分析して、各3gバッチに対してさらに50~55mg(約25%)のジンゲロンが含まれていると推定された。ジンゲロンの水溶性はかなり限定的であると報告されているので、この結果はかなり予想外であった。ジンゲロンのかなりの部分が水中に留まり、樹脂と分離していないので、この方法は粗製中和生成物にアルコールを直接添加する方法とは対照的である。
【0235】
水は樹脂からジンゲロンの一部を抽出することができるため、中和されたアルカリ処理生成物全体を乾燥させることにより、処理後にジンゲロンを高収率で生成することも可能であろう。アルカリ処理後のジンゲロンは、従来報告されているよりも水に溶解しやすいことが判明したことを考慮すると、収率を改善させるためにさらなるプロセスの最適化が行われる。
【0236】
実施例3:さらなる反応方法および比較
概要:ジンゲロンはショウガに天然には存在しないが、処理プロセルを介してジンゲロールから変換された生成物である。これらの試験において、サモアからアルカリ処理して乾燥されたショウガの試料を入手し、2つの異なる抽出条件(40℃で20時間抽出(抽出物A)および室温で7日間抽出(抽出物B))を用いてエタノールで抽出した。得られた抽出物のジンゲロン濃度は、抽出物Aで41.4mg/g、抽出物Bで43.8mg/gであった。
【0237】
抽出A:SROS(Scientific Research Organisation of Samoa)が生産した処理済みショウガは、2つの別々のプラスチックバッグに入れて供給された。両方のバッグの内容物を一緒にし、-80℃で凍結させ、その後、2mmメッシュを取り付けたナイフミル(Wiley)を用いて粉砕した。次に、粉砕した材料(782.3g)を丸底フラスコに入れ、食品グレードのエタノールを重量比約5:1で添加した。次に、フラスコを40℃、5rpmの水浴に入れ、一晩撹拌した(総抽出時間20時間)。この後、混合物を真空下で濾過し、真空下で回転蒸発させることでエタノールを除去し、ショウガ特有の香りを持つ高粘度の暗褐色の樹脂43.8gを生成した。抽出収率は5.6%であった。この樹脂(抽出物A)10gを取り出し、将来のバイオアッセイのために窒素フラッシュ下で冷蔵保存した。
【0238】
抽出B:ショウガを冷凍し、上記のように粉砕した。粉砕した材料(785.9g)を食品グレードのエタノールとともに重量比約5:1でバケツに入れた。ショウガを室温(22~29℃)で7日間エタノールに浸漬させた。試料は1日目、3日目、7日目に採取した。7日後、混合物を真空下で濾過し、真空下で回転蒸発させることでエタノールを除去して、抽出Aで得られたものと非常によく似た、ショウガ特有の香りを持つ高粘度の暗褐色の樹脂49.3gを生成した(
図1)。抽出収率は6.3%であった。
【0239】
ジンゲロンおよびアルデヒドの分析:ジンゲロンの定量は、出発物質(すなわち、処理したショウガ)および最終の2つの樹脂、ならびに抽出Bの1日目、3日目および7日目の試料(7日目の液体試料が最終の樹脂試料に相当することに注意)において、HPLCによって行った。HPLC定量法では、分析前にメタノールを添加し、試料を粉砕した。すべての画分のジンゲロン含有量を表6に示す。ジンゲロンの質量バランスと収率を表7に示す。
【表7】
【表8】
【0240】
上記の通り、抽出物Aは40℃、20時間の処理により得て、抽出物Bは室温、7日間の処理により得た。表6および7の結果では、40℃への温度上昇によっても高い収率が得られたが、室温でより長く処理することにより、より高いレベルのジンゲロンが得られたことを示している。
【0241】
出発物質中のジンゲロン含有量を測定するため、まず適当な溶媒中で抽出した。1つのプロセスにおいて、エタノールを用いて抽出を行い、ジンゲロン含有量を低くした(1.44mg/g)。第二のプロセスにおいて、メタノールを用いて抽出を行い、溶媒とともにショウガを乳鉢と乳棒で粉砕した。その結果、ジンゲロン含有量が高くなった(3.1mg/g)。参考として、サモアの研究室が報告したこの材料のジンゲロン含有量は1.86mg/gであった。
【0242】
これに基づき、ジンゲロンの収率(すなわち、供給物中のジンゲロンに対する抽出物中のジンゲロンの量)は、抽出Aでは75%、抽出Bでは89%と推定された。ジンゲロン含有量を決定する際のHPLC分析で見られた6-ジンゲロールのピークは、一貫してジンゲロンのピーク面積の約1/8で観察された。このことは、抽出がジンゲロンとジンゲロールとの比にほとんど影響しないことを示唆している。
【0243】
両方の最終の樹脂の試料を取りエタノールにいれ、GCMSで試験して、アルデヒド分析を行った。非常に低いレベルのヘキサナールが見られた(定量するには低すぎる)。ヘキサナールはジンゲロンを形成する反応の副生成物であるが、やや揮発性である。ヘキサナールのピークの同一性は、MSデータのライブラリーマッチングとヘキサナール標準の別注によって確認した。
【0244】
本明細書に記載の各試験は、ジンゲロンの製造に有効であった。実施例2および3の結果の比較を表8に示す。
【表9】
【0245】
新鮮なショウガおよび乾燥ショウガについては、Liらにより同様の値が得られた。Li et al., 2016, “Chemical characterization and antioxidant activities comparison in fresh, dried, stir-frying and carbonized ginger” J Chromatogr B Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. 1011: 223-32を参照のこと。実施例2は、上述したように、レトロアルドール反応を利用する。実施例3は、上述したように、温度およびpHの調整ならびに抽出を利用する。
【0246】
サモアのショウガについては、ショウガが要求された時期(土の中で9ヶ月)に収穫されなかったことが、ショウガ中に存在するジンゲロールのレベル、ひいては最終製品に含まれるジンゲロンの含有量に影響したことが指摘されている。したがって、さらなる利益が得られることが予想される。フィジーのショウガは、サモアのショウガに比べ、ジンゲロンの含有量が大幅に高かった(10.2:1.44=7.08倍)。これは、実施例3の実験条件を適用した場合、フィジーのショウガの総収量は310mg/gと推定できることを意味する。つまり、43.8mg/g(実施例3でサモアのショウガから得られた量)×7.08(フィジーのショウガの方が高い出発含有量)=310mg/g。
【0247】
実施例2の表5では、pH処理したショウガとCO2抽出の結果を示している。322グラムの新鮮なショウガは153mg/gのジンゲロンを提供することを見出した。これと比較して、実施例3では785.9グラム(実施例2で使用した生成物の量と比較して2.4倍)を利用し、43.8mg/gのジンゲロンを提供する。しかし、この収率の低さは、サモアの出発物質(1.44mg/gのジンゲロン)のレベルの低さで説明できる。
【0248】
実施例4:搾汁およびアルカリ処理を用いるプロセス方法
要約:ショウガ根を機械的に液汁化し、液汁と残留固体について6-ジンゲロールのレベルを測定した。6-ジンゲロールの大部分はジュース中に存在した。液汁をアルカリで処理すると、60℃で5~6時間で、6-ジンゲロールの実質的にすべてがジンゲロンに変換されることが示された。
【0249】
搾汁の概要:新鮮なショウガ(500~1000g)をブレンド/浸漬し、圧搾することによって前処理を行った。液体画分を残し、さらに絞りかすを温水(ショウガ1部に対して水4部)で55~60℃の温度で10~15分間洗浄した。これは蓋つきの容器で行った。次に、これを再度圧搾した。各画分を6-ジンゲロール含有量について分析した(合計5回の分析):1)プロセス直前の新鮮なショウガ試料;2)最初のブレンド/浸漬後の液体画分;、3)最初のブレンド/浸漬後のショウガの絞りかす;4)最初の絞りかすのさらなる洗浄後に採取した2回目の液体画分;5)上記と同様に洗浄し圧搾した後の最終的なショウガの絞りかす。最終圧搾後の各ロットのショウガの絞りかすについて、含水率の読み取りを行った(上記試料3)と5))。
【0250】
アルカリ処理の概要:液体画分にアルカリ処理を行い、ジンゲロンへの変換を確立した。様々な時点で試料を採取し、ジンゲロン含有量を分析した。試料をKOH(従来の5%)で小規模処理にかけた。処理は室温、30℃および60℃で1ml試料を用いて1時間、2時間、3時間および5時間行った。さらに、一つの試料を60℃で24時間処理した。15試料までの分析を行った。
【0251】
搾汁法:新鮮なショウガ根の2つの試料を得て、1つは地元(ピトーネのエビサからの有機)で、もう1つはオークランドのPhil Rasmussenから受け取った。どちらの試料も、通常のスーパーのショウガ根よりもふくよかで汁の多いように見えた。含水率は、各根約10gをスライスし、液体空気で凍結させ、次に、凍結乾燥させることによって測定した。根をメタノールで抽出し、6-ジンゲロール含有量を測定した。このために、各試料約5gを4~5個にカットし、小さなキッチンガーリックプレスを用いて押しつぶした。押しつぶした根と果汁をメタノール(2×15ml)で60℃で20分間抽出した。続いて、280nmで検出するHPLC分析を行った。結果を以下の表9に示す。
【表10】
【0252】
オークランドの試料を選択し、搾汁作業を行った。このために、635gのショウガ根を、家庭用搾汁機を用いてプロセスにかけた。これには、メッシュ液汁フィルターと調整可能な固体ノズルを備えた回転スクリュードライブが含まれていた(
図4A~4Bを参照)。搾汁機は、516.3g(81%)の液体(液汁1、J1)を除去し、101.5gの固体(絞りかす1、M1)を収集した。乾燥固体の一部を取り出して分析し、90.5gを360mlの蛇口の熱水で抽出した。これを15分間放置した後、この材料を搾汁機に通した。この工程から、70.2gの固体(絞りかす1、M2)とともに、350gの液汁(液汁2、J2)が取り出した。
【0253】
この2つの液体を一晩冷蔵した。両方とも固体が沈殿して濁っていた。これらの試料は、分析または処理の前に振盪した。液汁試料は、試料をエタノール(1:1)と混合し、遠心分離し、上清を直接注入することにより、6-ジンゲロール含有量を分析した。2種類の圧搾個体M1とM2の個体含量は、それぞれ37%と26.3%であった。
【0254】
結果を次の表10に示す。ジンゲロール値に重量を乗じて各材料中のジンゲロールの総量を得た。液汁は測定したジンゲロールの81.6%を含有することを見出した。供給物について計算した総ジンゲロールは回収量より低く、これは、根からのジンゲロールの部分抽出を示唆している。ジンゲロールの百分率は、(供給物の測定ではなく)絞りかすと液汁の総測定ジンゲロールに基づいた。
【表11】
【0255】
アルカリ処理:この作業は、搾汁プロセス(上記)から回収して最初の液汁(J1)に対して行った。液汁の試料(振盪してすべての固体を懸濁させた後)を、RT、30℃または60℃で1時間、2時間、3時間、5時間、また60℃で24時間、KOHと反応させた。KOHの3つの濃度(0.5%、1.0%および2.0%)も試験した。2N KOH溶液を調製した(50mlの水中5.6gのKOH)。各試料で0.5%、1%、および2% KOH濃度を生成するには、0.25ml、0.5mlまたは1mlの2N KOHを5.5mlの液汁に添加し、振盪した。次に、試料をRT(実験室)、30℃(水浴)または60℃(乾燥オーブン)に置いた。HPLC分析のためのサンプリングは、各試料から200μlを採取し、200μlの1N HClを添加し、次に500μlのエタノールを添加することによって行った。遠心分離後、試料をHPLCに直接注入した。ジンゲロンとジンゲロールのピーク面積を比較した(以下を参照)。
【0256】
これらの結果では、2% KOHでの処理が5時間以内にジンゲロンへの完全変換を達成できることが証明された。
図5Cを参照のこと。60℃でのインキュベーションが特に良好であった。
図5Cを参照のこと。結果をジンゲロン(Z)とジンゲロール(G)のピーク面積として示した。KOH処理した試料はチューブ内に沈殿させた固体を有していたことに注意すべきであった。分析のために、チューブを振盪し、詰まりを避けるために広いボアの先端で試料を採取した。
【0257】
実施例5:搾汁およびアルカリ処理を用いる追加プロセス法
概要:アルカリ触媒逆アルドール反応によりジンゲロンに変換される6-ジンゲロールを有するショウガから抽出物を製造することを目的とする。現在のプロセスは、処理時間と水使用量の削減を目指すものである。このプロセスは、200kgスケールでのさらなる生成が行われる前に、約40kgスケールで試験した。
【0258】
簡単に説明すると、新鮮なショウガを受け取り、アルカリで処理し、次いで凍結乾燥することによってプロセスすることで処理ショウガ粉末を製造した。この粉末を室温で3日間エタノールで抽出し、24時間、48時間、72時間で試料を採取して抽出の進行を評価した。エタノール抽出については実施例6に詳述する。
【0259】
方法論:輸入した新鮮なショウガのアルカリ前処理と乾燥を行った。このために、新鮮なショウガ(36.67kg)をVincent Corporation CP-4スクリュープレスで圧搾し、ショウガ液汁と絞りかすの二つの流れを作った。スクリュープレスの設定は、VSD速度50%、コーン空気圧2barとした。最初のプレスからの絞りかすは、残りの液汁を除去するためにもう一度圧搾した。
【0260】
2つの液汁を一緒にした。液汁を60℃に加熱し、KOHを最終濃度2%w/wになるように添加した。アルカリ化液汁を60℃で5時間保持し、ジンゲロールをジンゲロンに変換させた。無水クエン酸を添加することによってpHを7.2に中和した。ジンゲロンを含む液汁を凍結乾燥させ、粉砕した。
【0261】
試料を採取した:新鮮なショウガ(ZINGO);2つの絞りかす(GMARCおよびGMARC2);KOH添加前の液汁(GKOH0);2時間、3時間、5時間処理後の液汁(GKOH2、GKOH3、GKOH5);最終的な乾燥抽出物(GPE)。
【0262】
さらに、GMARC2の試料を以下のように熱水で抽出した。水をGMARC2に5:1 w:wの比で添加した。混合物を60℃に加熱し、この温度で15分間保持した。抽出物を上記と同じ設定でスクリュープレスにより固体から分離した。試料を採取した:抽出物(GMARC2 HWEX);絞りかす(HW MARC)。各試料をHPLCにより全固体(LOD、16時間100℃)およびジンゲロールまたはジンゲロン含有量について分析した。
【0263】
試料分析:分析は、280nmでUV検出するHPLCを用いて行った。試料の調製は以下の通りである:(1)液汁などの液体試料を、エタノールで1:1に希釈し、遠心分離した。アルカリ存在のプロセス内液体試料を、1N HClおよびエタノールで1:1:1に希釈した。(2)生ショウガまたはショウガの絞りかすなどの固体試料を、エタノールで二重抽出(超音波処理、60℃で20分間加熱、ボルテックス処理、遠心分離)し、上清を一緒にした。固体抽出物(約5g)を分析用に通常50mLに調製した。生の新鮮なショウガを粗く刻み、次に、ULTRA-TURRAX(登録商標)型ミキサーを用いてエタノールとブレンドした。定量は、ジンゲロンを用いて作成した標準曲線との比較によって行った。ジンゲロールについては分子量補正を行った。
【0264】
圧搾:36.67kgのフィジーの生のショウガを受け取り、圧搾した。圧搾は効果的で、大量の淡緑色の液汁と繊維質の絞りかすを生成した。一回目の圧搾で28.92kgの液汁を回収した。次に、6.6kgの絞りかすを2回目に圧搾し、さらに2.18kgの液汁を回収した。液汁の総収量は31.1kgで、これは入荷する生のショウガの質量の86%に相当した。最終的に回収された絞りかすの質量は4.05kgであった。一般に、実行の終了時にスクリュープレス内に1~2kgのホールドアップがあった。このため、供給物の質量と絞りかすおよび液汁の組み合わせ質量との間にわずかな差が生じた。
【0265】
熱水抽出:3.62kgのGMARC2および18.1kgの水を60℃に加熱し、次に、60℃で15分間抽出した後、スクリュープレスにより分離した。次に、21.18kgの混合物を圧搾した。抽出中に蒸発として約500gの水が失われたことに注目すべきである。これから、17.62kgの抽出物を回収し、サブサンプリングして分析した。さらに、2.69kgの絞りかすを回収した。
【0266】
アルカリ処理:このために、1.236kgの50% KOH溶液をショウガ液汁31.1kgに添加して、目標KOH濃度2%に達した。KOH添加後のpHは12.18であった。KOHを添加したら、液汁の色は淡緑色から赤褐色に変化した。液汁を60℃で5時間保持し、次に、500gの無水クエン酸を添加することによって中和した。クエン酸添加後のpHは7.23であった。
【0267】
凍結乾燥:処理した液汁を凍結乾燥機トレーに移し、一晩凍結してからCuddon FD 80凍結乾燥機に移した。合計28.51kgの液汁をトレーに載せ、乾燥させた。手作業の結果、凍結乾燥前に約3kgの液汁が失われた。乾燥後、2.86kgの乾燥抽出物(乾燥した液汁質量の合計10%)を収集した。これを粉砕し、サブサンプリングした。粉砕、サブサンプリングおよび損失ハンドリングの後、合計2.19kgをホイルバッグに詰め、さらなる処理まで保存した。このうち約1.6kgを送ってエタノール抽出を行った(実施例6を参照)。
【0268】
質量バランスのサマリーを以下に示す。
【表12】
【表13】
【表14】
【0269】
ジンゲロールおよびジンゲロンのレベルを上記のように測定した。結果を以下の表11に示す。
【表15】
【0270】
この表は、前処理および処理プロセルにおける様々な画分のジンゲロール含有量を示している。これらの測定値から、36.67kgの生のショウガ供給物中には、合計19.1gの6-ジンゲロールがあった。乾燥ショウガ抽出物(GPE)のジンゲロン含有量は5.7mg/gであった。したがって、2.86kgの乾燥粉末(損失および粉砕損失前)中の総ジンゲロンは16.30gであった。変換前の液汁(GKOH-0)中のジンゲロール濃度は、乾燥量基準で6.9mg/gであった。固体濃度6.67%(KOHと無水クエン酸の添加により総個体分含量が約10%に増加する前)を用いて湿量基準に換算すると、液汁中の総ジンゲロールは14.32gであった。6-ジンゲロールのGKOH-2、-3、-5の値を確認した。
【0271】
液汁中のジンゲロールと最終粉末抽出物中のジンゲロンとの間の質量バランスは正確には一致しない。これは測定値のばらつきによるものと考えられる。絞りかす数は、総質量バランスの計算を考慮すると、多少増加しているように見える。絞りかすを熱水で抽出すると、抽出物中の6-ジンゲロール含有量は0.22mg/gで、これはこの抽出物中の6-ジンゲロールの合計5.7gに相当し、供給物中の6-ジンゲロールの約25%に相当する。水抽出には、合計18kgの水が必要であった。これにより、KOHおよびクエン酸の質量が増加し、乾燥負荷がさらに58%増加する。したがって、特定の状況では、水抽出を省略することが望ましいことがある。
【0272】
特に、これらの実験では、最終生成物中の6-ジンゲロール(ジンゲロンの形態で)のほぼ完全な回収が達成されたことが示された。変換反応の中に採取した試料(GKOH2、GKOH3、およびGKOH5)は、6-ジンゲロールからジンゲロンへの変換が処理の最初の2時間で起こり、処理の2時間後に採取した試料ではジンゲロンのレベルの有意な増加はなかったことが示された。2時間後に変換が完了するようであれば、このインキュベーション時間(またはさらに短いインキュベーション時間)で十分であろう。
【0273】
圧搾後の液汁相でのKOH処理を含むプロセス法は有効な製造法であると結論した。さらなる実験では、出発物質として200kgを超えるショウガを利用する。このバッチの6-ジンゲロールのレベルは1.1mg/gであり、これは対応するジンゲロンレベルに反映されると予想された。
【0274】
実施例6:エタノール抽出プロセスおよび分析
概要:新鮮なショウガを受け取り、アルカリで処理し、次いで、凍結乾燥して処理ショウガ粉末を製造した(上記実施例5を参照)。この粉末を室温で3日間エタノールで抽出し、24時間、48時間、72時間で試料を採取して、抽出の進行を評価した。
【0275】
方法論:上記のように製造した処理ショウガ(実施例5)は、使用するまで冷蔵保存した。受け取ったショウガの約半分を、室温でXNS食品グレードのエタノールで抽出した。処理したショウガを、エタノール(1:5の重量比のショウガ:エタノールを用いて)とともに、オーバーヘッドステンレス製攪拌機を備えた10Lガラス容器に入れた。底に固体が堆積しない程度の攪拌速度で、混合物を72時間攪拌した。
【0276】
24時間経過後、攪拌機を止め、固体を10分間沈降させた後、上部から50mLの試料を採取した。さらに24時間経過後、同じ手順で2回目の試料を採取した。合計72時間経過後、攪拌を止め、混合物を、濾紙を用いて真空下で濾過した。ケーキから試料を採取し、72時間経過した濾液から最終的なチンキの試料を採取した。残りの濾液にはZINGOEEとラベルを付けた。約300mLのZINGOEE試料を採取し、ガラス瓶に入れて冷蔵保存した。さらなる工程で、すべてのZINGOEEを蒸発させ、88.9mg/gのジンゲロンで43.5gの総樹脂量を作った。
【0277】
残りのエタノール性チンキを、50mbar、40℃で作動するBuchi R220SE回転蒸発装置を用い、約31倍の体積減少が達成されるまで真空下で蒸発させた。次に、得られた濃縮抽出物 (ZINGOCE)を分析し、ジンゲロン含有量が確認されたら、この濃縮抽出物の少量試料を用いて、食品グレードのエタノールで希釈することにより、約12mg/gのジンゲロンを含有する標準グレードのチンキを製造した。この標準化チンキの2つの別々の試料をSCU(オーストラリア)に送って分析を行い、3番目の試料がジンゲロン分析のために現場に保存した。
【0278】
結果:プロセスと結果を
図7に示す。これらの実験では、受け取った処理ショウガ801.5gを4007.3gの食品グレードのエタノールとともにエタノール抽出に使用した。攪拌下、室温(16~20℃)で72時間後、混合物を濾過し、3556.7gの透明な褐色の芳香族エタノールチンキ[ZINGOEE]、および1033.4gのケーキ(すなわち、使用済みショウガ固体)を得た。抽出中の蒸発により約140gのエタノールが失われた。24時間と48時間で採取した試料を含め、生成したエタノール性チンキの総重量は3631.7gであった。
【0279】
ジンゲロンの定量は、出発物質(すなわち処理したショウガ、GPE)および室温で24時間、48時間、72時間エタノール抽出した後の試料についてHPLCで行った。また、使用済みショウガの固体(すなわち、濾過プロセスからのケーキ)も分析した。すべての画分のジンゲロン含有量を表12に示す。HPLCの結果では、3つの抽出時間間でほとんど差がなく、抽出には24時間で十分であることを示している。
【表16】
【0280】
濾液[ZINGOEE]のジンゲロン濃度は1.1mg/gであり、すなわち液体中に3.88gのジンゲロンが存在し、または出発ジンゲロンの85%であり、これは、妥当な回収率を示している。ケーキのジンゲロン濃度は0.61mg/gであり、すなわち、ケーキ中のジンゲロンは0.63gであった。しかし、ケーキにはまだ一定量のエタノール溶液が存在していることに注意すべきであった。今後の処理では、ケーキを清浄なエタノールで洗浄し、できるだけ多くの抽出物を洗い流すことができるだろう。
【0281】
エタノール抽出プロセスにおけるジンゲロン質量バランスは98.5%である。これは、抽出物中の3.88gとケーキ中の0.63gを供給物飼料中の4.58gで割ったものである。室温抽出がジンゲロンの回収に有利であることが判明された。抽出温度を上げればジンゲロンの回収率が高くなる可能性はあるが、室温抽出が有効であることは明らかである。
【0282】
約300mLのZINGOEE試料を採取した後、残りの抽出物(3249g)を真空下で蒸発させ、ジンゲロン含有量33mg/g(ジンゲロン3.46g)の濃縮抽出物[ZINGOCE]104.9gを得た。この濃縮抽出物の全固体含有量は37.1%(110℃での乾燥減量として測定)であったことから、すべてのエタノールを除去した場合の最終的なオレオレジン重量は38.9gであることを示している。この数値をZINGOEEの総生成量に外挿すると、このプロセスの抽出収率は約5.4%である。25.5gのZINGOCEを44.5gの食品グレードのエタノールと混合することによって、12mg/gのジンゲロンを含む標準化チンキを調製した。このチンキの試料は、送ってさらなる試験を行った。
【0283】
加えて、さらなる分析では、最終生成物にはアルデヒドが存在しないことが示された。
図8A~8Bを参照のこと。これらの評価のために、処理したショウガのエタノール抽出物の試料を、アルデヒドの存在についてGCMSを用いて分析した。存在する場合、これは6-ジンゲロールに由来する(主に)ヘキサナールと予想される。粉末調製物(例えば、上記の実施例4と5のような抽出前の粉末)にもアルデヒドは含まれないと予想される。次の工程として、エタノール性チンキを蒸発させ、濃厚なエタノール性ペーストを製造する。
【0284】
結論:提案した方法は、スクリュープレス後、液汁段階でKOH処理し、クエン酸で中和し、次に、凍結乾燥することを含み、これは、液汁段階で6-ジンゲロールをほぼすべて回収し、60℃で2%KOHで5時間処理した後、ジンゲロンにすべて変換することができ、非常に効果的であることが証明された。プロセス前の乾燥粉末には現在5.32mg/gのジンゲロンが含まれており、これは以前の製造技術より少なくとも2倍効率的である。
【0285】
室温で24時間のエタノール抽出は、ジンゲロンの少なくとも85%の回収を達成する任意の工程である。回収は、抽出後に固体を新鮮なエタノールで洗浄することによってさらに高めることができる。これらの方法では、エタノール抽出物[ZINGOEE]を蒸発させて体積を大幅に減少させ、次いで濃縮抽出物[ZINGOCE]を新鮮なエタノールで再構成させて、目標用量の12mg/gのジンゲロンを含む標準化チンキを製造した。
【0286】
抽出プロセスでは、Z全体の質量バランス(出/入(out/in))は98.5%であった。濾液中のジンゲロン含有量(ZINGOEE)は1.1mg/gであり、濃縮抽出物中のジンゲロン含有量(ZINGOCE)は33mg/gであった。この方法では、33mg/gで104.9gのZINGOCEが生成され、3.46gのジンゲロンが残った。この数値はZINGOCEの3.88gより低いが、これは蒸発前に400gのZINGOCEが除去されたためである(試験用に約300mLの保持試料を加えたもの)。この点を考慮すると、計算は非常に適合する。蒸発前の全体的なジンゲロンの質量バランスは、98.5%(=(0.63+3.88)/4.58)と計算された。
【0287】
この試験で得られた結果は、6-ジンゲロール含有量が0.5mg/gである新鮮なショウガ100kgから、ジンゲロン含有量が12mg/gである標準チンキ3.6kgが得られることを示している。
【0288】
実施例7:ジンゲロンと抗微生物薬との組み合わせ
ゲンタマイシンは、アミノグリコシド類の抗生物質であり、重度のグラム陰性細感染を治療するのに使用される。注射剤のほか、静脈内製剤および経口製剤など、さまざまな投与形態で入手できる。侵襲性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)細菌は、ゲンタマイシンによる抗生物質単独療法に対して耐性を生じることが多い。スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のいくつかの株は、ゲンタマイシンの細菌耐性を媒介する抗生物質修飾酵素の発現を介して、ゲンタマイシンおよび他のアミノグリコシドに対する耐性を生じる。
【0289】
バンコマイシンはグリコペプチド類の抗生物質であり、成人、小児、新生児のグラム陽性感染の処置に最も広く使用されている。経口(例えば、カプセルまたは溶液)および静脈内注射を含むさまざまな製剤で入手できる。しかし、バンコマイシン耐性腸球菌が出現し、処置がより困難になっている。E.ファエシウム(E. faecium)は、バンコマイシン耐性を獲得する最も一般的な菌株である。腸球菌におけるグリコペプチド耐性(例えば、バンコマイシン)の主なメカニズムには、ペプチドグリカン合成経路の変化、特にD-アラニン-D-アラニン(D-Ala-D-Ala)からD-アラニン-ラクテート(D-Ala-D-Lac)またはD-アラニン-D-セリン(D-Ala-D-Ser)への置換が含まれる。
【0290】
チェッカーボード分析(Chequerboard analysis)を用いて、化合物を組み合わせることで、個々の化合物と比較してスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のMICを低下させることができるかどうかを判定した。本実験では、ジンゲロンとゲンタマイシンとの組み合わせ、ジンゲロンとバンコマイシンとの組み合わせ、ジンゲロンとセフォタキシムとの組み合わせを試験した。この試験のために、96ウェルプレートにスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を接種し、次に、試験化合物とともに37℃で24時間インキュベートした。ジンゲロンは、0mg/ml、0.78mg/ml、1.56mg/ml、3.125mg/ml、6.26mg/ml、12.5mg/ml、25mg/mlで添加した。ゲンタマイシンは、0μg/ml、4μg/ml、8μg/ml、16μg/ml、32μg/ml、64μg/ml、128μg/ml、および256μg/mlで添加した。バンコマイシンは、0μg/ml、4μg/ml、8μg/ml、16μg/ml、32μg/ml、64μg/ml、128μg/ml、および256μg/mlで添加した。セフォタキシムは、0μg/ml、8μg/ml、16μg/ml、32μg/ml、64μg/ml、128μg/ml、256μg/ml、および512μg/mlで添加した。MRSA細胞(メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus))は、2%NaCl添加ミューラー・ヒントン培地に導入した。1ml当たり10
8個の細胞を使用した。FICI指数は、以下の式を用いて化合物の相互作用を定量化するために用いた:FICI=(MIC
A
組み合わせ/MIC
A
単独)+(MIC
B
組み合わせ/MIC
B
嘆息)。0.5以下のFICIを相乗作用と定義し、4.0を超えるFICIを拮抗作用と定義した。0.5から1.0のFICIは、相乗的ではないが有意な改善とみなした。その結果を以下の表13~16に示す。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0291】
これらの結果から、ジンゲロンと組み合わせたゲンタマイシンおよびジンゲロンと組み合わせたバンコマイシンは、ゲンタマイシン、バンコマイシン、およびジンゲロンを個別に添加した場合と比較して、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のMICを低下させることが確定された(
図9A~9Bを参照)。ジンゲロンとゲンタマイシンとの組み合わせでは、この活性は相乗的であった:FICI=0.5=(MIC
A
組み合わせ4μg/mL/MIC
A
単独16μg/mL)+(MIC
B
組み合わせ6.25mg/g/MIC
B
単独25mg/g)。ジンゲロンとバンコマイシンとの組み合わせでは、阻害活性が有意に増加し、相乗活性に近づいた:FICI=0.1=(MIC
A
組み合わせ4μg/mL/MIC
A
単独8μg/mL)+(MIC
B
組み合わせ12.5mg/g/MIC
B
単独25mg/g)。比較すると、ジンゲロンとセフォタキシム(抗生物質のセファロスポリンファミリーに属する)との組み合わせは、各化合物を個別に適用した場合と比べて、活性に目立った変化は生じなかった。
【0292】
ゲンタマイシンおよびバンコマイシンは、それぞれアミノグリコシド抗生物質およびグリコペプチド抗生物質の代表である。ジンゲロンとゲンタマイシンの組み合わせ(相乗活性)、およびジンゲロンとバンコマイシンの組み合わせ(有意な増加/相乗に近い)による阻害活性の有利な増加は、感染症との闘い、特に抗生物質耐性株(抗生物質耐性株スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を含む)との闘いに使用する貴重なツールを提供する。このような併用処置は効力を高め、耐性の可能性を低下させ、治療法として非常に有益である。
【0293】
当業者であれば、過度な実験を行うことなく、本明細書の開示および教示を利用して他の実施態様および変形例を作成することができる。そのような実施態様および変形例はすべて、本開示の一部であると考えられる。
【0294】
したがって、当業者であれば、本開示から、本明細書に記載される実施対象と実質的に同じ機能を実行する、または実質的に同じ結果を達成する、後の変更、置換、および/または変形が、そのような関連する実施態様に従って利用され得ることを容易に理解するであろう。従って、本開示は、その範囲内で、本明細書に開示されるプロセス、製造物、組成物、化合物、手段、方法、および/またはステップに対する修正、置換、および変形を包含することが意図される。
【0295】
本明細書には、特許請求される発明の範囲外の主題が含まれる場合がある。この主題は、本発明の理解を助けるために含まれる。
【0296】
本明細書において、特許明細書やその他の文書を含む外部の情報源を参照した場合、これは一般に、本開示の特徴を論じるための文脈を提供することを目的とする。 別段の記載がない限り、かかる情報源への言及は、いかなる法域においても、かかる情報源が先行技術であること、または当該技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものとして解釈されるものではない。
【国際調査報告】