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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】熱管理が改善された二次電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/653 20140101AFI20240822BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240822BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20240822BHJP
   C08G 18/61 20060101ALI20240822BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240822BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20240822BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240822BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240822BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20240822BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240822BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240822BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240822BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
H01M10/653
C08G18/00 F
C08G18/40 045
C08G18/61
C08G18/00 030
H01M50/204 101
H01M50/213
H01M50/293
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/643
H01M10/658
H01M50/291
H01M10/625
C08G101:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508797
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 US2022040119
(87)【国際公開番号】W WO2023018907
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/233,057
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/314,224
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/335,043
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519289224
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・ユーエスエイ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES USA CORP.
【住所又は居所原語表記】Two Tower Center Boulevard,Suite 1601,East Brunswick,NJ 08816 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン・エリザベス・メスナー
(72)【発明者】
【氏名】イェン・モン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・アルボー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・キハラ
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】バージニア・オニール
【テーマコード(参考)】
4J034
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA14
4J034CA15
4J034CA16
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC09
4J034CD04
4J034CD06
4J034DA01
4J034DA08
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC02
4J034DC42
4J034DC50
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DK01
4J034DK02
4J034DK08
4J034DM01
4J034DM09
4J034DP18
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA08
4J034NA09
4J034QA03
4J034QB06
4J034QB13
4J034QB14
4J034QC01
4J034QD03
4J034RA14
5H031AA09
5H031BB03
5H031CC02
5H031EE04
5H031KK02
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT01
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC05
5H040JJ03
5H040LL06
(57)【要約】
本発明は、全電気車両(EV)、プラグインハイブリッド車両(PHEV)、ハイブリッド車両(HEV)その他の車両の電池に使用される電池パックに有用な、熱管理が改善された新規二次電池パックに関し、より詳細には、二次電池パックを断熱し、電池パック内の熱暴走の伝播をさらに最小限に抑えるための特定の材料の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池パック100であって、
・筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102から構成される電池パック筐体101であって、互いに密閉されると実質的に気密な電池パック筐体101となる電池パック筐体101、
・前記筐体底部パネル102内にある電池セル103の少なくとも1つの配列であって、前記電池セル103が互いに電気的に接続され、前記セルの軸が互いに平行となるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列、
・前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に若しくは完全に充填し、及び/又は電池セル103の前記配列内の開放空間を部分的に若しくは完全に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に若しくは完全に被覆するイソシアネート系材料Aであって、以下を含む組成物Xを混合及び硬化してなるイソシアネート系材料A:
(a)少なくとも1種のイソシアネート化合物、
(b)少なくとも2個のエポキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はポリオール、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミン及びポリオールアミンよりなる群から選択される少なくとも1種の活性水素含有化合物若しくは前記活性水素含有化合物の混合物、
(c)少なくとも1種の触媒、
(d)任意に少なくとも1種の発泡剤
(e)任意に少なくとも1種の接着促進剤、及び
(f)任意に少なくとも1種の添加剤
を含み、前記組成物Xは、前記組成物X100重量部に対して、0.1重量部~30重量部、好ましくは0.1重量部~20重量部、さらに好ましくは4.5重量部~30重量部の、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基で末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Yをさらに含む、二次電池パック。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサン重合体Yは、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基によって末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含み、前記ポリオキシアルキレン部分は、300~4000g/mol、好ましくは300~3500g/mol、さらに好ましくは300~3000g/molの平均分子量を有する、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサン重合体Yは、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基で末端封鎖されたポリオキシアルキレン部分を含み、前記オルガノポリシロキサン重合体Yは、次の一般化平均式:
MDx* y* z
(式中、
・Mは(R)3SiO1/2又はR1(R)2SiO1/2を表し、
・Dは(R)2SiO2/2を表し、
・D*は(R1)(R)SiO2/2を表し、
・T*は(R1)SiO3/2を表し;
・xは5~220であり、
・yは2~50であり、
・zは0~50であり、
・Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、及びフェニルよりなる群から選択されるアルキル基であり、最も好ましくは、Rはメチル基であり、
・R1は、一般式:-Cn2nO-(C24O)a-(C36O)bHのヒドロキシル末端ポリエーテル部分であり、式中、nは3又は4であり、a>0及びb≧0であり、a及びbは、平均分子量が300~4000g/mol、好ましくは300~3500g/mol、さらに好ましくは300~3000g/molであるように定義される。)
を有する、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項4】
前記二次電池パックは、前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に充填し、及び/又は電池セル103の前記配列内の開放空間を部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に被覆する少なくとも1種の断熱材料Bをさらに含み、好ましくは、前記断熱材料Bは、発泡体、布地、中綿又は泡沸材料の形態であり、さらに好ましくは、前記断熱材料Bは、合成発泡体、高分子発泡体又はエアロゲル及び多孔質セラミックから選択される非高分子発泡体であり、及び
前記イソシアネート系材料Aは接着剤として使用され、前記断熱材料Bによって残された残部開放空間を埋める、
請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項5】
前記イソシアネート系材料Aは、前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に充填し、及び/又は電池セル103の前記配列内の開放空間を部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に被覆し、最終的に前記電池セル103の下に存在する接着剤として使用され、
前記二次電池パックは、前記イソシアネート系材料Aにわたって頂部層として及び/又は底部層として塗布される少なくとも1種の断熱材料Bをさらに含み、好ましくは、前記断熱材料Bは、発泡体、布地、中綿又は泡沸材料の形態であり、さらに好ましくは、前記断熱材料Bは、合成発泡体、高分子発泡体又はエアロゲル及び多孔質セラミックから選択される非高分子発泡体である、
請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項6】
前記イソシアネート系材料Aが発泡体である、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項7】
前記イソシアネート系材料Aは、組成物Xの硬化工程の前又は硬化工程中に機械的攪拌によって気体を組成物X中に添加する機械的発泡処理工程によって製造される発泡体である、請求項6に記載の二次電池パック。
【請求項8】
前記イソシアネート系材料Aは、次の物理的発泡プロセスの1つによって製造される発泡体である、請求項6に記載の二次電池パック:
・低沸点液体を物理的発泡剤として使用し、これを組成物X中に添加し、組成物Xの発熱重合反応によって誘導される温度上昇がその沸点を超えるときに組成物Xを蒸発させて発泡材料を得るか、又は
・二酸化炭素(CO2)を物理的発泡剤として使用し、大気圧を超える高圧下で組成物Xの少なくとも1種の成分又は組成物Xに導入し、次いで高圧から大気圧まで圧力抑制を行ってCO2の相分離を誘導し、それによって空洞を形成して発泡材料を得る。
【請求項9】
前記イソシアネート系材料Aは、第1のA部と第2のB部とを混合することによって製造される組成物Xを発泡させることによって得られる発泡体であり、ここで、
・前記第1のA部は:
-少なくとも2個のエポキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はポリオール、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミン及びポリオールアミンよりなる群から選択される少なくとも1種の活性水素含有化合物若しくは該活性水素含有化合物の混合物、
-末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基によって末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Y、
-少なくとも1種の乾燥剤、
-少なくとも1種の触媒、
-任意に少なくとも1種の発泡剤、
-任意に少なくとも1種の接着促進剤、及び
-任意に少なくとも1種の添加剤
を含み、
・前記第2のB部は:
-少なくとも1種のイソシアネート化合物
を含み、ここで、組成物X100重量部に対して、0.1重量部~20重量部、好ましくは1重量部~15重量部、最も好ましくは2.5重量部~10重量部の、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基で末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Yをさらに含む、
請求項6に記載の二次電池パック。
【請求項10】
前記イソシアネート系材料Aは、少なくとも1種の発泡剤が組成物X内に存在し、組成物Xの硬化工程前又は硬化工程中に発泡する化学的発泡処理工程によって製造された発泡体である、請求項6に記載の二次電池パック。
【請求項11】
前記イソシアネート系材料Aは、物理的発泡プロセス及び化学的発泡プロセスによって製造された発砲体である、請求項6に記載の二次電池パック。
【請求項12】
前記断熱材料Bがシリコーンシンタクチックフォームである、請求項4又は5に記載の二次電池パック。
【請求項13】
前記電池セル103は円筒形のセルであり、電池セル103の配列を生じさせるように複数のセル列に配列されている、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項14】
前記二次電池パックは、前記電池セル103が挿入され、かつ、電池セル103の配列を形成するように保持されるハニカム状構造をさらに含む、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項15】
前記電池セル103がリチウムイオン型のものである、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項16】
車両内に配置される、請求項1~15のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項17】
自動車に配置される、請求項1~15のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項18】
全電気車両(EV)、プラグインハイブリッド車両(PHEV)、ハイブリッド車両(HEV)に配置される、請求項1~15のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項19】
航空機、ボート、船舶、列車又はウォールユニットに配置される、請求項1~15のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項20】
請求項1~15のいずれかに記載の二次電池パックの製造方法であって、次の工程:
(a)筐体頂部パネル104と筐体底部パネル102とから構成される電池パック筐体101であって、これらを密閉すると、前記電池パック筐体101内が実質的に気密な密閉封鎖環境となる電池パック筐体101を準備し、
(b)前記筐体底部パネル102内に、互いに電気的に接続され、かつ、セルの軸が互いに平行になるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列を配置し、
(c)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は前記電池セル103の配列の開放空間に、請求項1~3のいずれかに記載された組成物Xを導入し、
(d)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は電池セル103の前記配列の開放空間を完全に又は部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に又は完全に組成物Xで被覆し、
(e)硬化を生じさせて前記材料Aを形成し、及び
(f)前記筐体頂部パネル104及び前記筐体底部パネル102を密閉して前記電池パック筐体101を得ること
を含む方法。
【請求項21】
請求項1~19のいずれかに記載の二次電池パックの製造方法であって、次の工程:
(a)筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102から構成される電池パック筐体101であって、これらを密閉すると前記電池パック筐体101内が実質的に気密な密閉封鎖環境となる電池パック筐体101を準備し、
(b)前記筐体底部パネル102内に、互いに電気的に接続され、かつ、セルの軸が互いに平行となるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列を配置し、
(c)前記筐体底部パネル102内及び/又は電池セル103の前記配列の開放空間内に、請求項1~3のいずれかに記載された組成物Xを導入し、
(d)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は電池セル103の前記配列の開放空間を完全に又は部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に又は完全に前記組成物Xで被覆し、
(e)前記充填工程(d)の前、間、又は後のいずれかに、請求項6~9のいずれかに記載された組成物Xの硬化及び発泡を開始させて発泡体であるイソシアネート系材料Aを形成し、及び
(f)前記筐体頂部パネル104及び前記筐体底部パネル102を互いに密閉して実質的に気密な電池パック筐体101を得ること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願との相互参照
本願は、2022年4月26日に出願された米国仮特許出願第63/335,043号、2021年8月13日に出願された米国仮特許出願第63/233,057号、及び2022年2月25日に出願された米国仮特許出願第63/314,224号の優先権を主張するものであり、これらの各特許出願の開示はその全体が本明細書で援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規な二次電池パック、特にリチウムイオン電池セルを備える二次電池パックであって、広範囲な温度条件下での長時間使用を可能にする熱管理が改善された二次電池パックに関する。特に、本発明は、二次電池パックを断熱し、電池パック内の熱膨張の伝播をさらに最小化するための、特定のイソシアネート系材料(ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイソシアヌレート及びそれらの混合物)の使用に関する。当該二次電池パックは、全電気車両(EV)、プラグインハイブリッド車両(PHEV)、ハイブリッド車両(HEV)その他の車両の電池に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
電池は一次電池と二次電池に大別される。一次電池は使い捨て電池とも呼ばれ、消耗するまで使用されものであり、消耗後は新たな電池に交換される。二次電池は一般的に充電式電池と呼ばれ、繰り返し再充電して再利用することができるため、使い捨て電池に比べて経済的であり、環境的であり、しかも使いやすいという利点がある。二次電池の例としては、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-金属ハイブリッド電池、ニッケル-水素電池、リチウム二次電池などが挙げられる。
【0004】
二次電池、特にリチウムイオン電池は重要なエネルギー貯蔵技術として台頭し、現在では民生用電子機器、産業用途、輸送用途、電力貯蔵用途の主要技術となっている。
【0005】
特に自動車産業では、二次電池は、容量が高く、エネルギー密度及び出力密度が高く、寿命が長いため、ハイブリッド電気自動車(HEV)、バッテリー電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの電動車両に、より長い航続距離と適切な加速を提供することが可能になっている。現在の自動車産業では、様々なサイズ及び形状のリチウムイオン電池セルが製造され、その後、様々な構成のパックに組み立てられている。自動車用二次電池パックは、典型的には、所望の出力及び容量のニーズを満たすために、時には数百、さらには数千という多数の電池セルから構成される。
【0006】
ただし、このドライブトレイン技術の切り替えには技術的なハードルがないわけではない。というのは、電気モーターの使用は、エネルギー密度が高く、動作寿命が長く、幅広い条件下で動作可能な安価な電池が必要となるためである。充電式電池セルには使い捨て電池に比べて多くの利点があるが、このタイプのバッテリーには欠点がないわけではない。
【0007】
一般的に、二次電池に関連する欠点のほとんどは、採用されている電池の化学的性質によるものである。これらの化学的性質は、一次電池に使用されている化学的性質よりも安定性が低い傾向があるからである。通常の電力/電流負荷及び周囲動作条件下では、ほとんどのリチウムイオンセル内の温度は、熱管理システムによって20℃~55℃の範囲に保たれるように制御されている。しかし、セル温度が高い状態での高電力消費、個々のセル内の化学的誤作動などの悪条件では、局所的な発熱が増加する可能性がある。特に、臨界温度を超えると、セル内の発熱性化学反応が活性化し、熱管理システムによる熱の取り出しよりも発熱がはるかに大きくなる。「熱暴走」として知られるこの現象は、現在では一般的に、様々な動作要因によってセルの温度と圧力が突然急激に上昇し、電池モジュール全体に過剰の温度が伝播することをいう。熱暴走はセルのベントや200℃を超える内部温度につながる可能性がある。リチウムイオン電池の熱酷使試験中に、完全に充電された円筒形の18650型リチウムイオン電池の最大セル表面温度は310℃~870℃の範囲にあることが報告されている。また、単セルでは1060℃、一組のセルを含む電池モジュールでは1500℃と高い測定火炎温度も報告されている。その結果、電池パックからの電力は遮断され、電池パックを使用するシステムは、損傷の規模とそれに伴う熱エネルギーの放出により、広範な付随的損害を被る可能性が高くなる。
【0008】
この温度上昇を受けたセルの温度上昇により、電池パック内の隣接セルの温度も上昇する。これらの隣接セルの温度上昇が妨げられずに許容されると、セル内の温度が過剰に高い許容できない状態になる可能性もあり、1個のセル内の温度上昇が電池パック全体に伝播するカスケード効果につながる可能性がある。
【0009】
さらに、二次電池パックは、リチウムイオン電池の特性のため、-20℃~60℃の範囲の周囲温度内で動作する。しかし、この温度範囲内で動作している場合であっても、周囲温度が0℃を下回ると、二次電池パックの容量又は充放電能力が失われ始める可能性がある。周囲温度によっては、温度が0℃未満にとどまる場合には、電池のライフサイクル容量又は充放電能力が大幅に低下する可能性がある。ただし、周囲温度が20℃~25℃である最適周囲温度範囲外である場合にリチウムイオン電池を使用することが避けられないことがある。これらの要因は車両の航続距離を大幅に短縮するだけでなく、電池に大きなダメージを与える。低温で利用可能なエネルギー及び電力の低下は、容量の減少及び内部抵抗の増加に起因する。
【0010】
上記を踏まえると、電池パックや複数のセルを備えた電池モジュールでは、1個のセルから次のセルまで大きな温度差が生じ、これが電池パックの性能に悪影響を及ぼす。電池パック全体の長寿命化を促進するためには、セルは所望の閾値温度以下でなければならない。パックの性能を促進するためには、二次電池パックのセル間の温度差を最小にする必要がある。しかし、周囲への熱経路に応じて、様々なセルが様々な温度に到達することになる。さらに同じ理由で、充電プロセス中にも様々なセルが様々な温度に到達する。したがって、一方のセルが他方のセルに対して上昇した温度である場合には、その充放電効率が異なることになるため、他方のセルよりも速く充放電する可能性がある。これは、二次電池パック全体の性能低下につながる。
【0011】
熱問題のリスクを低減する又は熱伝播のリスクを低減するために、いくつかの手法が採用されてきた。これらは、米国特許第8,367,233号に記載されており、この特許には、電池パックの筐体の少なくとも1つの壁に一体化された少なくとも1個の筐体欠陥ポートを備え、ここで、筐体欠陥ポートは、電池パックの通常動作中は閉じたままであり、電池パックの熱事象中に開き、それによって、熱事象中に発生した高温ガスが制御された態様で電池パックの筐体外に排気されるための流路を提供する、電池パック熱管理システムが記載されている。
【0012】
別の手法は、新たなセル化学物質を開発すること、及び/又は既存のセル化学物質を変更することである。さらに別の手法は、セルレベルで追加の遮蔽を設けることであり、それによって、熱管理の問題を受けたセルからの熱エネルギーの流れが隣接するセルに伝播するのを抑制することである。さらに別の手法は、スペーサーアセンブリを使用して、熱的事象を受けた電池の位置を電池パック内の所定の位置に維持することで、隣接するセルに及ぼす熱的影響を最小限に抑えることを補助することである。
【0013】
熱膨張又はその伝播のリスクを低減するために、電池パックを断熱することも記載されている。例えば、米国特許出願公開第2007/0259258号には、リチウム発電機の電池であって、発電機が互いに積み重ねられ、この積み重ねが発泡ポリウレタンで取り囲まれて定位置に保持されている電池が記載されている。また、2つの発電機間に冷却フィンを挿入した実施形態も記載されている。
【0014】
独国特許出願公開第202005010708号には、ハウジングが閉鎖孔を有するポリプロピレン又はポリ塩化ビニルなどのプラスチック発泡体を含むスタータ型鉛-酸電気化学発電機及び産業用電気化学発電機が記載されている。
【0015】
米国特許出願公開第2012/0003508号には、ケーシングと、該ケーシング内に収容された複数のリチウム電気化学発電機であって、各発電機が容器を含むものと、該ケーシングの内壁と各電気化学発電機の容器の側壁の自由表面との間の空間を満たす、電気絶縁材料から構成された閉鎖気孔率を有する硬質難燃性発泡体であって、容器の高さの少なくとも25%に相当する長さにわたって各電気化学発電機の容器の側壁の自由表面を覆う硬質難燃性発泡体とを備える、リチウム電気化学発電機の電池が記載されている。一実施形態によれば、硬質難燃性発泡体は、ポリウレタン、エポキシ、ポリエチレン、メラミン、ポリエステル、ポリスチレン、シリコーン又はポリウレタンよりなる群から選択される材料からなり、ポリウレタンとエポキシとの混合物が好ましい。発泡体形成のためのポリウレタン樹脂の膨張は、発泡体を得るために以下の化学的経路を使用して説明されている:
(a)化学的経路、すなわち、ポリウレタンを発泡させるCO2を生成するイソシアネート上の水の反応、
(b)物理的経路、すなわち、イソシアネートと水素供与体化合物との発熱反応によって生じる熱の作用下での低沸点の液体の気化、又は
(c)空気の注入。
【0016】
熱侵入のみならず、電池パック全体に熱エネルギーが伝播するリスクも下げようとするために多くの手法が採用されてきたが、パックレベルの熱事象が発生した場合、個人と財産のリスクを最小限に抑えることが重要である。電池内のセルの数とサイズが増加するにつれて、適切な熱管理を提供する必要性及び利点も待ち望まれている。
【0017】
さらに、モジュールを使用せず、その代わりに電池パック全体を車両の構造プラットフォームとして構築し、電池セルがひとつの大きなユニットとしてプラットフォームを固めるのを補助することからなる電池パック設計の新たなトレンドがある。この新たな設計は、既存の電池パックの複雑さを減らし、電池パックの総質量を減らすため、電気自動車の効率、ひいては航続距離の向上が可能になる。このような手法では、適切な構造接着性も併せ持つ侵入型充填材でセルを熱的に絶縁(断熱)するための要望が多い。侵入型充填材としても機能する構造接着剤の耐久性は、車両走行時に路面から生じる振動によって誘発される応力を均等に分散させる能力、又は車両衝突時の衝撃に耐える能力によって決定される。構造接着剤の性能は、構造接着剤の引張強さ特性だけでなく、基材の弾性率にも依存する。実際、負荷力が構造接着剤に加えられた場合、圧力下で破断に抵抗する優れた能力を示さなければならない。重ね剪断強度は、接着面の平面内の力に抵抗する接着剤の能力である。接着された構造接着剤は、典型的には、接着剤が面内の力にのみにさらされるように設計されているため、接着剤には剪断応力が生じる。したがって、良好な重ね剪断強度及び引張強さ特性などの適切な構造接着性を提供し、さらに電池パック内のセルを断熱するために、当該侵入型充填材を提供する強い要望がある。実際、電池パックのフレームは、電池セル、さらに重要なこととして車両乗員を保護するために、強度及び耐衝突性を維持することが不可欠である。
【0018】
また、輸送に使用される自動車の電池パックには、構造接着性を有する充填材が使用される傾向にあるため、良好な断熱性と低い密度も求められている。したがって、このような構造接着性を有し、低密度で良好な断熱性を有する侵入型充填材の軽量化も電池パックメーカーから待ち望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第8,367,233号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0259258号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第202005010708号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0003508号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このような背景から、本発明の本質的な目的の一つは、適切な熱管理を提供し、依然として待ち望まれている制御不能な熱現象による個人的及び財産的リスクを最小限に抑える新規電池パックを提供することである。また、電池のライフサイクルの期間にわたって、適切な熱管理が可能であることも必要とされる。
【0021】
本発明の別の本質的な目的は、セル及び/又は電池パックの断熱に有用な材料を含み、良好な重ね剪断強度及び引張強さ特性などの良好な構造接着性を有し、電池セル、さらに重要なことに車両乗員を保護するための構造の耐圧壊性を向上させる新規電池パックを提供することである。
【0022】
本発明の別の本質的な目的は、二次電池セルを収容する電池パックを使用する車両において、より軽量な材料を使用して、電池の再充電が必要となる前に走行距離の自律性を最大化するという要望に応えるためにこのような材料の軽量バージョンを提供することである。
【0023】
本発明により、本願発明の二次電池パックは、上記の問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
これらの目的の全ては、特に、二次電池パック100であって、
・筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102から構成される電池パック筐体101であって、互いに密閉されると実質的に気密な電池パック筐体101となる電池パック筐体101、
・前記筐体底部パネル102内にある電池セル103の少なくとも1つの配列であって、前記電池セル103が互いに電気的に接続され、前記セルの軸が互いに平行となるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列、
・前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に若しくは完全に充填し、及び/又は前記電池セル103の前記配列内の開放空間を部分的に若しくは完全に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に若しくは完全に被覆するイソシアネート系材料Aであって、以下を含む組成物Xを混合及び硬化してなるイソシアネート系材料A:
(a)少なくとも1種のイソシアネート化合物、
(b)少なくとも2個のエポキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はポリオール、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミン及びポリオールアミンよりなる群から選択される少なくとも1種の活性水素含有化合物若しくは前記活性水素含有化合物の混合物、
(c)少なくとも1種の触媒、
(d)任意に少なくとも1種の発泡剤
(e)任意に少なくとも1種の接着促進剤、及び
(f)任意に少なくとも1種の添加剤
を含み、前記組成物Xは、前記組成物X100重量部に対して、0.1重量部~30重量部、好ましくは0.1重量部~20重量部、さらに好ましくは4.5重量部~30重量部の、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基で末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Yをさらに含む、二次電池パック100に関する本発明によって達成される。
【0025】
これらの目的を達成するために、本出願人は、その功績により、全く意外かつ予期せぬことに、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイソシアヌレート(又はそれらの混合物)のような材料の前駆体である配合物内で、ヒドロキシル基で末端封鎖された特定のポリオキシアルキレン部分を含むオルガノポリシロキサン重合体Yを添加することにより、電池パック内のセルを断熱するための侵入型充填材としても使用できる前記材料の構造接着性が改善されることを実証した。本発明による材料の選択により、純粋な有機ポリウレタン材料を使用した類似の電池では解決できなかった問題を克服することが可能になる。
【0026】
別の好ましい実施形態では、組成物Xは、組成物X100重量部に対して、0.1重量部~25重量部、好ましくは4.5重量部~25重量部、好ましくは1重量部~15重量部、好ましくは2.5重量部~10重量部の、ヒドロキシル基で末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を末端基又はペンダント基として含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Yをさらに含む。
【0027】
本発明に係る材料は、改善された引張強さ特性を有する良好な構造接着性と、接着面の平面内の力に抵抗する材料の能力である良好な重ね剪断強度とを有し、電池セル、さらに重要なことに車両の乗員を保護するために構造の耐圧壊性を向上させるという利点を有する。本発明に係る構造接着剤を使用した部品の接着は、接着剤が接着領域の一点又は特定の領域に荷重及び応力を集中させるのではなく、全接着領域に作用する荷重及び応力を分散させるため、静的及び動的荷重の均一な分散が可能になり、それによって二次電池パック内のアセンブリの振動レベルが低減するという利点を提供する。
【0028】
さらに、電気自動車の充電間航続距離は周囲温度で算出されることもよく知られている。電気自動車のドライバーは、気温が低いと走行可能距離が短くなることに気付いている。この損失は、電気的に車内を暖めるだけでなく、冷たい間に容量が低下する、電池の電気化学反応の固有の鈍化によって引き起こされる。そこで、本発明に係る材料を具体的に選択することにより、当該材料が改善された断熱特性を示すことが可能になる。
【0029】
温度差は、広範な化学的性質にわたって、電池セルの抵抗、自己放電率、クーロン効率、ならびに不可逆容量及び電力フェード率に影響を及ぼすため、本発明に係る二次電池パックは、電池パック又はモジュール内の全てのセルに対して均一な温度条件を可能にする。したがって、セルの充電状態の不均衡や、欠陥のないセルの早期故障の可能性がさらに最小化される。
【0030】
好ましい実施形態によれば、オルガノポリシロキサン重合体Yは、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基によって末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含み、当該ポリオキシアルキレン部分は、300~4000g/mol、好ましくは300~3500g/mol、さらに好ましくは300~3000g/molの平均分子量を有する。
【0031】
別の好ましい実施形態によれば、オルガノポリシロキサン重合体Yは、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基で末端封鎖されたポリオキシアルキレン部分を含み、当該オルガノポリシロキサン重合体Yは、次の一般化平均式を有する:
MDx* y* z
式中、
・Mは(R)3SiO1/2又はR1(R)2SiO1/2を表し、
・Dは(R)2SiO2/2を表し、
・D*は(R1)(R)SiO2/2を表し、
・T*は(R1)SiO3/2を表し;
・xは5~220であり、
・yは2~50であり、
・zは0~50であり、
・Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、及びフェニルよりなる群から選択されるアルキル基であり、最も好ましくはRはメチル基であり、
・R1は、一般式-Cn2nO-(C24O)a-(C36O)bHのヒドロキシル末端ポリエーテル部分であり、式中、nは3又は4であり、a>0及びb≧0であり、a及びbは、平均分子量が300~4000g/mol、好ましくは300~3500g/mol、さらに好ましくは300~3000g/molであるように定義される。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、オルガノポリシロキサン重合体Yは、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基によって末端封鎖されたポリオキシアルキレン部分を含み、次の一般化平均式を有する:
MDx* y
式中、
・Mは(R)3SiO1/2又はR1(R)2SiO1/2を表し、
・Dは(R)2SiO2/2を表し、
・D*は(R1)(R)SiO2/2を表し、
・xは5~220であり、
・yは2~50であり、
・Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、及びフェニルよりなる群から選択されるアルキル基であり、最も好ましくは、Rはメチル基であり、
・R1は、一般式-Cn2nO-(C24O)a-(C36O)bHのヒドロキシル末端ポリエーテル部分であり、式中、nは3又は4であり、a>0及びb≧0であり、a及びbは、平均分子量が300~4000g/mol、好ましくは300~3500g/mol、さらに好ましくは300~3000g/molであるように定義される。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、組成物Xは、4000g/molを超える平均分子量のポリオキシアルキレン分岐を含むオルガノポリシロキサン重合体Yを含まず、好ましくは3500g/molを超える平均分子量のポリオキシアルキレン分岐を含むオルガノポリシロキサン重合体Yを含まず、さらに好ましくは3000g/molを超える平均分子量のポリオキシアルキレン分岐を含むオルガノポリシロキサン重合体Yを含まない。
【0034】
別の好ましい実施形態によれば、組成物Xは、アルコキシ末端基を有するポリオキシアルキレン部分を含むオルガノポリシロキサン重合体Yを含まない。
【0035】
別の好ましい実施形態によれば、R1は、一般式-Cn2nO-(C24O)a-(C36O)bHのヒドロキシル末端ポリエーテル分岐であり、式中、nは3又は4であり、aは1~85、好ましくは5~60であり、bは0~65、好ましくは4~60であり、a及びbは、平均分子量が300~4000g/mol、好ましくは300~3500g/mol、さらに好ましくは300~3000g/molであるように定義される。
【0036】
別の好ましい実施形態によれば、モル比a/bは0.1~20、好ましくは0.5~10、さらに好ましくは0.5~5である。
【0037】
本発明に係るポリジオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体の製造製方法は、当該技術分野において周知である。例えば、ポリジオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体は、好適なアルコールとエチレンオキシド及びプロピレンオキシド(1,2-プロピレンオキシド)とを反応させて、所望の分子量のポリオキシアルキレンポリエーテルを生成することによって製造できる。好適なアルコールはヒドロキシアルケニル化合物、例えばビニルアルコール又はアリルアルコールである。上記の反応により、他の末端封鎖基がアリル基、メタリル基又はビニルオキシ基のいずれかからなる不飽和オレフィン基であるモノヒドロキシ末端封鎖ポリオキシアルキレンポリエーテルが生成され、これを白金族触媒の存在下でヒドロシリル化反応によりケイ素結合水素原子を含むポリジオルガノシロキサンとさらに反応させることができる。
【0038】
例えば、三元共重合体の製造において便利な出発物質であるヒドロキシ末端ポリオキシアルキレンポリエーテルは、好適なアルコールとエチレンオキシド及びプロピレンオキシド(1,2-プロピレンオキシド)とを反応させて、所望の分子量のポリオキシアルキレンポリエーテルを生成することによって製造できる。好適なアルコールはヒドロキシアルケニル化合物、例えばビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコールなどである。
【0039】
組成物Xの成分は、組成物Xの粘度が、該組成物を二次電池パック内に液体として塗布し、電池パックの筐体内への流入を可能にするために、硬化前に十分な流動性を有するように選択される。好ましい実施形態では、組成物Xの25℃における粘度は、100~10,000mPa・s、好ましくは100~6,000mPa・sから選択される。
【0040】
本明細書で検討する粘度は全て、ブルックフィールド型粘度計を用いて、25℃でそれ自体既知の方法で測定される動的粘度の大きさに相当する。流体製品に関して、本明細書で検討する粘度は、「ニュートン」粘度として知られる25℃での動的粘度、すなわち、測定される粘度が速度勾配から独立するように、それ自体既知の方法で、十分に低い剪断速度勾配で測定される動的粘度である。
【0041】
好ましい実施形態では、イソシアネート系材料Aは発泡体である。イソシアネート系材料Aを発泡体として使用する利点は、二次電池セルを収容する電池パックを使用する車両において、電池セルが再充電を必要とする前に走行距離の自律性を最大化するように、より軽量な材料を使用するという要望に応えるために、そのような材料の軽量バージョンを提供することである。
【0042】
本発明に係るイソシアネート系材料Aの発泡体を使用する別の利点は、非発泡材料と比較して高い断熱性を有することである。
【0043】
発泡プロセスにより、得られる発泡体は、独立気泡発泡体又は連続気泡発泡体という異なるタイプのものとなることがある。独立気泡発泡体は水蒸気バリアとなり、湿気を発泡体に通さないという利点を有する。連続気泡発泡体は湿気を通す。好ましい実施形態では、イソシアネート系材料Aは独立気泡発泡体である。
【0044】
別の好ましい実施形態によれば、イソシアネート系材料Aは、組成物Xの硬化工程の前又は硬化工程中に、激しい機械的攪拌によって気体を組成物X中に添加する機械的発泡処理工程によって製造される発泡体である。
【0045】
機械的発泡(機械的泡立てとしても知られている)では、重合/硬化反応の直前又は当該反応中に、空気、CO2、窒素又は先行する気体の混合物などの不活性ガスが激しい攪拌によって出発成分中に分散され、それによって、重合体マトリックス内に巻き込まれた気泡が残る。機械的発泡としては、ホイップ、混合、攪拌などを挙げることができる。容易に入手可能な混合装置を使用することができ、一般に特別な装置は必要ない。液相に打ち込まれる不活性ガスの量をガス流量計量装置によって制御して、所望の密度の泡を生成する。機械的発泡は、オークスミキサーやホバートミキサーで行うことができる。
【0046】
別の好ましい実施形態によれば、イソシアネート系材料Aは、次の物理的発泡プロセスの1つによって製造される発泡体である:
・低沸点液体を物理的発泡剤として使用し、これを組成物X中に添加し、組成物Xの発熱重合反応によって誘導される温度上昇がその沸点を超えるときに組成物Xを蒸発させて発泡材料を得、任意に、混合物を加熱して該混合物の温度を上昇させるか、又は
・二酸化炭素(CO2)を物理的発泡剤として使用し、大気圧を超える高圧下で組成物Xの少なくとも1種の成分又は組成物Xに導入し、次いで高圧から大気圧まで圧力抑制を行ってCO2の相分離を誘導し、それによって空洞を形成して発泡材料を得る。
【0047】
二酸化炭素を物理的発泡剤として使用する場合、これを液体、超臨界流体又は気体として取り入れることができる。好ましくは、100バール(好ましくは10バール~100バール)までの高圧下で取り込まれる。発泡プロセスはいくつかの工程を含む:組成物X又はその成分の1種に二酸化炭素を好ましくは高圧下で溶解させること、ガスバブルの集団の核形成を、好ましくは周囲圧力への圧力解放時に行うこと、及び最終的に重合体マトリックス中に巻き込まれる核形成気泡を成長させること。例えば、成分(b)がポリオールなどの活性水素含有化合物である場合、CO2ガスは、好ましくは、例えば100体積%~200体積%のレベルで、ポリオール又はポリオールを組成物Xに供給する流路に10~20バールの圧力で添加される一方、イソシアネートは、圧力降下により発泡が開始される混合チャンバーに高圧(最大100バール、好ましくは10~100バール)で添加される。一実施形態では、窒素も高圧下(最大100バール)でイソシアネート成分に添加され、共泡剤として作用する。
【0048】
物理的発泡剤として炭化水素(例えばシクロペンタン)又はヒドロフルオロカーボンなどの低沸点液体を使用する場合には、プロパン、ブタンなどの低分子量炭化水素、n-ペンタン又はシクロペンタンなどのペンタン類、ジメチルエーテル、又は1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、1-フルオロブタン、ノナフルオロシクロペンタン、ペルフルオロ-2-メチルブタン、1-フルオロヘキサン、ペルフルオロ-2,3-ジメチルブタン、ペルフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロイソヘキサン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロエチルシクロヘキサン、ペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン、ペルフルオロオクタン及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)などのフッ素化炭化水素が優先される。これらは、発熱重合反応及び吹き込み反応から生じる熱によって蒸発する。
【0049】
他の好適な物理的発泡剤としては、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、例えば、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロプ-1-エン(HFO-1234ze、Honeywell社からSolstice(登録商標)zeの商品名で入手可能)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd、Arkema社からForane(商標)の商品名で入手可能)、2,3,3,3-テトラフルオロプロプ-1-エン(HFO-1234yf、Honeywell社からSolstice(商標)yfの商品名で、Chemours社からOpteon(商標)YFの商品名で入手可能)、シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz-Z、Chemours社からOpteon(商標)MZの商品名で入手可能)、及びOpteon(商標)1150(Chemours社から入手可能)が挙げられる。
【0050】
具体的な実施形態において、イソシアネート系材料Aは、第1のA部と第2のB部とを混合することによって製造される組成物Xを発泡させることによって得られる発泡体であり、ここで、
・第1のA部は:
-少なくとも2個のエポキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はポリオール、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミン及びポリオールアミンよりなる群から選択される少なくとも1種の活性水素含有化合物若しくは該活性水素含有化合物の混合物、
-末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基によって末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含む、少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Y、
-少なくとも1種の乾燥剤、
-少なくとも1種の触媒、
-任意に少なくとも1種の発泡剤、
-任意に少なくとも1種の接着促進剤、及び
-任意に少なくとも1種の添加剤
次の成分を含み;
・第2のB部は:
-少なくとも1種のイソシアネート化合物
を含み、ここで、組成物X100重量部に対して、0.1重量部~20重量部、好ましくは1重量部~15重量部、最も好ましくは2.5重量部~10重量部の、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基で末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Yをさらに含む。
【0051】
上記A部に乾燥剤を使用することにより、発泡剤として水が存在する場合、又は当該A部中に水分として水が存在する可能性がある場合に、水の存在による化学的発泡を最小限に抑えることで、材料Aとして発泡体を所望する際に、物理的発泡剤(PBA)として二酸化炭素を使用する物理的発泡プロセスをより良好に制御できることが分かった。
【0052】
別の好ましい実施形態によれば、イソシアネート系材料Aは、少なくとも1種の発泡剤が組成物X内に存在し、組成物Xの硬化工程前又は硬化工程中に発泡する化学的発泡処理工程によって製造される発泡体である。
【0053】
好適な化学発泡剤の例としては、水、及び任意に炭化水素、フッ化炭素、フッ化炭化水素よりなる群から選択される1種以上の化合物、又はギ酸及び酢酸から選択される少なくとも1種のカルボン酸が挙げられる。典型的には、配合物に水を添加することによって、水とイソシアネートとの反応が可能になり、副生成物としてアミンとCO2に分解する不安定なカルバミン酸が得られ、これが重合体をブローする。(反応前の)組成物の全質量中に存在する水の量は、典型的には0.02~2.00重量%、又は0.05~1.0重量%、又は0.1~0.7重量%(組成物Xの総重量に基づく)である。
【0054】
他の好適な化学的発泡剤としては、単量体、オリゴマー又は重合体であってもよいSi-OH化合物、特に少なくとも1個のシラノール(Si-OH)基を有する有機シラン及び有機シロキサンが挙げられる。好適なOH官能性化合物の例としては、OH末端ジメチルシロキサンなどのジアルキルシロキサンが挙げられる。このようなシロキサンは、25℃で10~5,000、10~2,500、10~1,000、10~500、又は10~100、mPa・sの範囲の粘度を有することができる。
【0055】
別の実施形態では、化学的発泡剤はギ酸と水との混合物からなることができる。発泡剤は、少なくとも60重量%のギ酸と多くとも40重量%の水との混合物からなることもできる。発泡剤の使用量は、所望の特性に応じて変更できる。例えば、発泡剤の量は、発泡品の最終的な発泡密度及び発泡立ち上がりプロファイル、ならびにセルサイズを調節するように変更できる。
【0056】
別の好ましい実施形態によれば、物理的発泡プロセスと化学的発泡(例えば、水又はシラノールの添加による)の両方を、化学的発泡プロセス及び物理的発泡プロセスと組み合わせて使用する。
【0057】
好ましい実施形態によれば、イソシアネート系材料Aは、シリコーンポリウレタン発泡体、シリコーンポリ尿素発泡体、シリコーンポリイソシアヌレート発泡体、あるいはシリコーンと、上記プロセスによって製造されたポリ尿素、ポリウレタン及び/又はポリイソシアヌレートとの混合物から構成される発泡体である。
【0058】
本明細書で使用するときに、発泡体(フォーム)とは、空気、酸素、二酸化炭素、窒素、又は任意の適切な気体などの気体が充填され得る多数の空洞を有する材料であると定義される。空洞はバルク材料全体にわたってセル構造を形成する。発泡体は、独立気泡、連続気泡、又はその両方の混合物であることができる。独立気泡とは、固体材料によって完全に取り囲まれた個別の空洞を形成する空洞を有する発泡体をいう。連続気泡とは、互いに連通する空洞を有する発泡体をいう。
【0059】
好ましい実施形態によれば、イソシアネート系材料Aは、電池パック筐体101の開放空間及び/又は電池セル103の配列の開放空間を完全に又は部分的に充填し、及び/又は電池セル103を部分的に又は完全に被覆する、侵入型充填材及び構造接着剤として使用される。単位セルから隣接する単位セルへの熱拡散は、イソシアネート系材料Aによって効果的に絶縁され、熱膨張が電池パック全体に伝播することはなく、その結果、使用者の安全を脅かすことが防止される。さらに、電池パック内に配置された制御回路基板を有する一部の電池パックについては、本開示のイソシアネート系材料Aを、電池セルの配列と回路基板との間、及び電池セルの配列と接続回路との間に配置して、回路基板及び接続回路に起因する電池加熱の問題を低減することができる。
【0060】
組成物Xの成分(a)の例は、モノイソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート及びそれらの混合物よりなる群から選択できる。本発明に係る用途の、少なくとも1個のイソシアネート官能基を有する成分(a)の例としては、芳香族、環式、飽和又は脂肪族であり、かつ、当業者によく知られているモノ-、ジ-又はポリイソシアネート、及びこれらの化合物の混合物が挙げられる。好適な例は、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、特に4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネート(TDI)、特に2,4-トルエンジイソシアネート及び2,6-トルエンジイソシアネートである。他の好適な例は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、イソホロンジイソシアネート及び4,4’-ジシクロヘキサメチルメタンジイソシアネート(H12MDI)である。脂環式ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を挙げることができる。
【0061】
ポリウレタン基材A又はポリイソシアヌレート基材Aを製造するための組成物Xの成分(b)として、好適なポリオール化合物は、例えば、多官能性ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、PTMG又はポリカプロラクトンジオール)、ポリエステルポリオール(PEPO)、アクリルポリオール(ACPO)、ポリカーボネートポリオール、ヒマシ油又はこれらの混合物であるが、これらに限定されない。具体例は、グリセロール、ポリグリセロール、グリコール、プロピレングリコール、2~10個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を含むグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,5-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、メソエリスリトールである。
【0062】
これらのジオールのエステル又はポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールも使用できる。知られているように、ポリエステルポリオールは一般に脂肪族及び芳香族ポリエステルポリオール及びこれらの化合物の混合物から選択される。一例として、脂肪族、環式又は芳香族ポリオール、例えば1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,6-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ブテンジオール、スクロース、グルコース、ソルビトール、ペンタエリスリトール及びマンニトールの縮合によって得られるポリエステルポリオールを挙げることができる。ポリエステルポリオールは、一般に、ジカルボン酸又はカルボン酸無水物とのポリエステル化において、過剰量の二官能性又は多官能性アルコールを使用することによって得られる。ポリエーテルポリオールは、一般に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフランなどの環状単量体の陰イオン性又は陽イオン性重付加によって得られる。ポリウレタンの合成に使用されるポリエーテルポリオールのモル質量は、一般に250~8000である。官能性は、開始剤として使用される分子の性質に応じて2~7の範囲にある。ポリエーテルジオールの末端基は第一級又は第二級である。
【0063】
ポリ尿素基材Aを製造するための組成物Xの成分(b)として、使用することができる活性水素含有化合物は、水素が窒素に結合している化合物を含む。好ましくは、このような化合物は、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミン及びポリオールアミンよりなる群から選択され、より好ましくはポリアミンである。例示的なポリアミンとしては、エチレンジアミン;ネオペンチルジアミン;1,6-ジアミノヘキサン;ビスアミノメチルトリシクロデカン;ビスアミノシクロヘキサン;ジエチレントリアミン;ビス-3-アミノプロピルメチルアミン;トリエチレンテトラミン;トルエンジアミン、ジフェニルメタンジアミンの様々な異性体;N-メチル-1,2-エタンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン;N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン;N,N-ジメチルエタノールアミン;3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン;N,N-ジメチルジプロピレントリアミン;アミノプロピルイミダゾール;及びこれらの組み合わせが挙げられる。このような化合物の他の具体例としては、第一級及び第二級アミン末端ポリエーテルが挙げられる。好ましくは、このようなポリエーテルは、約230を超える分子量、1~3の官能価を有する。このようなアミン末端ポリエーテルはよく知られており、低級アルキレンオキシドを添加した適切な開始剤から調製され、得られたヒドロキシル末端ポリオールはその後アミノ化される。
【0064】
少なくとも2個のエポキシ基を有する有機化合物である組成物Xの成分(b)としては、少なくとも2個のエポキシ基を有する任意の脂肪族、脂環式、芳香族及び/又は複素環式化合物を挙げることができる。特に、少なくとも2個のエポキシ基を有する任意の芳香族化合物が好適な場合がある。他の好適なポリエポキシドとしては、例えば、多価フェノール、例えば、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン(ビスフェノールA)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、及びトリス(4-ヒドロキシフェニル)メタンのポリグリシジルエーテルが挙げられる。さらに、次のものが挙げられる:芳香族アミン及びエピクロロヒドリンをベースとするポリエポキシ化合物、例えば、N-ジ(2,3-エポキシプロピル)アニリン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジエポキシプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン又はN,N-ジエポキシプロピル-4-アミノフェニルグリシジルエーテル。さらに、次のものを使用することができる:多価芳香族、脂肪族及び脂環式カルボン酸のグリシジルエステル、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、及び芳香族又は脂環式ジカルボン酸無水物1モルとジオール1/2モル、又はn個のヒドロキシ基を有するポリオール1/nモルとの反応生成物のグリシジルエステル、又はメチル基で置換されていてよいヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル。他の好適な例としては、多価アルコール、例えば1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコールのグリシジルエーテルなどが挙げられる。植物油及びその転化生成物などの多価不飽和化合物のエポキシ化生成物も使用できる。
【0065】
組成物Xの成分(c)として好適な触媒は、有機スズ化合物の中から選択される。成分(c)として好適な触媒は、重合反応を触媒することができる化合物である。このような触媒は公知であり、その選択及び濃度は当業者の知識の範囲内である。例えば、米国特許第4,296,213号明細書及び同第4,518,778号明細書を参照されたい。好適な触媒の例としては、第三級アミン及び/又は有機金属化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
さらに、当該技術分野で知られているように、目的がイソシアヌレート材料を製造することである場合、ルイス酸が、単独で又は他の触媒と組み合わせて、触媒として好ましい。例えば、ジブチルスズジラウレート(例えば、Air Products and Chemicals社からDABCO(TM)の商標で市販されている)、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート及びジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)などの有機カルボン酸のスズ(II)塩が挙げられる。また、スズを含まない触媒、例えば有機チタン酸塩、有機鉄化合物などの鉄触媒、有機及び無機重金属化合物又は第三級アミンを使用することも可能である。有機鉄化合物の例とは、アセチルアセントン酸鉄(III)である。第三級アミンの例は、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ジメチルピペラジン、1,2-ジメチルイミダゾール、N-エチルモルホリン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]オクタン、N,N-ビス(N,N-ジメチル-2-アミノエチル)メチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(「DMCHA」)、N,N-ジメチルフェニルアミン、ビス(N,N-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチル-2-アミノエタノール、N,N-ジメチルアミノピリジン、N,N,N,N-テトラメチル(ビス(2-アミノエチル))メチルアミン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(「DBU」)及びN-エチルモルホリンである。他の好適なものは、特に、ジメチルベンジルアミン、メチルジベンジルアミン、三塩化ホウ素-アミン付加物、及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ホルムアミドである。触媒は、そのまま、又は溶媒と呼ばれる場合があるキャリアビヒクル中に配置されて利用できる。キャリアビヒクルは、イソシアネート反応性、例えばジプロピレングリコールなどのアルコール官能性キャリアビヒクル、シリコーン、直鎖及び環状の両方の有機オイル、有機溶媒、及びこれらの混合物とすることができる。
【0067】
イソシアネート反応性基に対するイソシアネート基の相対的な割合は、所望により変動してもよく、好ましくは、[NCO]/[イソシアネート反応性基]のモル比が0.9:1~2:1の範囲内である。好ましくは、当該モル比は1:1~1.8:1、又は1.1:1~1.6:1、又は1.1:1~1.4:1である。
【0068】
ポリウレタン材料は、通常、スズ触媒又は三級アミン触媒の存在下で有機イソシアネート化合物とポリオールとをNCO/OH当量比が約0.9~1.2になるように反応させることにより得られるのに対し、ポリイソシアヌレート材料は、好ましくは、三量化触媒の存在下でこれらをNCO/OH当量比が約3.0以上になるように反応させることにより得られる。好適な三量化触媒の例は、2-エチルヘキサン酸カリウムなどのカルボン酸塩である。
【0069】
発泡剤成分(d)は、存在する場合には、水、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロプ-1-エン、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブルテン又はそれらの混合物などのヒドロハロオレフィンから選択される。発泡剤は、活性水素含有化合物の重量の50%までの量で使用されることが多い。
【0070】
接着促進剤(e)は、存在する場合、アミノアルキルトリアルコキシシラン、アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、ビス(アルキルトリアルコキシシリル)アミン、トリス(アルキルトリアルコキシシリル)アミン、又はそれらの2種以上の組み合わせから選択されるアミノ含有接着促進剤の中から選択できる。例としては、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(γ-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ω-ビス(アミノアルキルジエトキシシリル)ポリジメチルシロキサン(Pn=1~7)、α,ω-ビス(アミノアルキルジエトキシシリル)オクタメチルテトラシロキサン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、及びN-エチル-3-トリメトキシシリル-2-メチルプロパンアミン、3-(ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、これらの2種以上の組み合わせ等が挙げられる。特に好適なアミノ含有接着促進剤としては、ビス(3-プロピルトリメトキシシリル)アミン及びトリス(3-プロピルトリメトキシシリル)アミンなどのビス(アルキルトリアルコキシシリル)アミン及びトリス(アルキルトリアルコキシシリル)アミンが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な接着促進剤としては、ビニルトリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
添加剤成分(f)は、存在する場合、難燃添加剤、発煙抑制剤、抗菌化合物、安定剤、可塑剤、界面活性剤、増量剤、染料、顔料、架橋添加剤、香料、洗浄剤、充填剤及び帯電防止剤の中から選択できる。これらの任意成分は当該技術分野でよく知られており、これらの任意成分の量は従来通りであり、本発明にとって重要ではない。
【0072】
界面活性剤の例としては、フルオロカーボン系界面活性剤、有機フッ素化界面活性剤、ケイ素含有フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0073】
顔料の例としては、カーボンブラック、例えばアセチレンブラックが挙げられる。
【0074】
好適な充填剤の例としては、補強充填剤、非補強充填剤、増量充填剤、又はそれらの混合物が挙げられる。補強充填剤の例としては、高表面積のヒュームドシリカ及び沈降シリカ、及び炭酸カルシウムが挙げられる。非補強充填剤の例としては、粉砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、タルク、中空ガラスビーズ、及びウォラストナイトが挙げられる。
【0075】
中空ガラスビーズ、特に中空ガラス微小球の例としては、3M社が販売している3M(商標)ガラスバブルズフローテッドシリーズ(A16/500、G18、A20/1000、H20/1000、D32/4500及びH50/10000EPXガラスバブル製品)及び3M(商標)ガラスバブルズシリーズ(K1、K15、S15、S22、K20、K25、S32、S35、K37、XLD3000、S38、S38HS、S38XHS、K46、K42HS、S42XHS、S60、S60HS、iM16K、iM30Kガラスバブル製品などがあるが、これらに限定されない)から選択される。
【0076】
添加剤成分(f)が存在する場合の好ましい実施形態では、組成物X100重量部に対するその含有量は、0.1重量部~30重量部、好ましくは0.5重量部~15重量部、最も好ましくは0.5重量部~10重量部の範囲内である。
【0077】
好ましい実施形態によれば、二次電池パックは、以下のものをさらに含む:
-前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に充填し、及び/又は電池セル103の前記配列内の開放空間を部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に被覆する少なくとも1種の断熱材料Bであり、好ましくは、断熱材料Bは、発泡体、布地、中綿又は泡沸材料の形態であり、さらに好ましくは、断熱材料Bは、合成発泡体、高分子発泡体又はエアロゲル及び多孔質セラミックから選択される非高分子発泡体であり、及び
-イソシアネート系材料Aは接着剤として使用され、断熱材料Bによって残された残部開放空間を埋める。
【0078】
このような実施形態では、イソシアネート系材料Aは、断熱材料Bが完全又は部分的に充填された電池セル配列103を取り囲む。
【0079】
好ましい実施形態として、断熱材料Bはシリコーンフォーム又はシリコーンシンタクチックフォームである。
【0080】
別の実施形態によれば、
-イソシアネート系材料Aは、前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103の配列内の開放空間を部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に被覆し、最終的に電池セル103の下に存在する接着剤として使用され、
-前記二次電池パックは、前記イソシアネート系材料Aにわたって頂部層として及び/又は底部層として塗布される少なくとも1種の断熱材料Bをさらに含み、好ましくは、断熱材料Bは、発泡体、布地、中綿又は泡沸材料の形態であり、さらに好ましくは、断熱材料Bは、合成発泡体、高分子発泡体又はエアロゲル及び多孔質セラミックから選択される非高分子発泡体である。
【0081】
本実施形態は、二次電池パックの電池セル配列をイソシアネート系材料Aで固定する一方で、断熱材料Bで電気接続を保護し、アーク放電を防止し、セル構築物の最も弱い部分からセルが上方に通気する際の熱暴走のリスクを低減できるという利点がある。本実施形態では、断熱材料Bは、好ましくはシリコーンフォーム又はシリコーンシンタクチックフォームから選択される。
【0082】
好ましい実施形態として、断熱材料Bはシリコーンフォーム又はシリコーンシンタクチックフォームである。
【0083】
好ましい実施形態では、断熱材料Bは、高分子発泡体、又はシリコーン、エポキシ、ウレタン、ポリイミド、芳香族ポリエーテル及びスルホンよりなる群から選択される重合体から製造される合成発泡体である。シリコーンシンタクチックフォームが断熱材料Bとして最も好ましい。
【0084】
接着性をさらに高めるために、組成物Xは、好ましくは、上で定義した少なくとも1種の接着促進剤(e)を含有する。
【0085】
断熱材料Bに好適な高分子発泡体の例としては、上記のように発泡され、上記のように主成分として以下のものを含む組成物が挙げられる:
(a)少なくとも1種のイソシアネート化合物、
(b)少なくとも2個のエポキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はポリオール、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミン及びポリオールアミンよりなる群から選択される少なくとも1種の活性水素含有化合物若しくは当該活性水素含有化合物の混合物、
(c)少なくとも1種の触媒、
(d)任意に少なくとも1種の発泡剤
(e)任意に少なくとも1種の接着促進剤、及び任意に少なくとも1種の添加剤。
【0086】
イソシアネート系材料Aを断熱材料Bと併用する場合には、様々な実施形態が可能である。
【0087】
好ましい実施形態によれば、前記電池セル103はリチウムイオン型のものである。
【0088】
別の好ましい実施形態によれば、本発明に係る二次電池パックは、電池セル間の2つ以上の界面に配置される又は電池セル103の配列の下に配置される複数の放熱部材と、前記放熱部材を一体的に相互接続する少なくとも1個の熱交換部材とをさらに備え、それによって、電池セルの充放電時に電池セルから発生する熱が熱交換部材によって除去される。これにより、電池セル間に空間がないか、又は電池セル間の空間が非常に小さくても、従来の冷却システムよりも高い効率で電池セルを冷却することができ、それによって二次電池パックの放熱効率を最大限に高めることができる。
【0089】
別の好ましい実施形態によれば、本発明に係る放熱部材は、高い熱伝導率を示す熱伝導性材料から構成されており、熱交換部材は、液体又は気体などの冷却剤を流すための1個以上の冷却剤流路を備える。
【0090】
本発明に係る放熱部材は、該放熱部材のそれぞれが高い熱伝導性を示す金属板などの熱伝導性材料から構成される限り特に限定されない。
【0091】
好ましくは、熱交換部材は、冷却剤を流すための1個以上の冷却剤流路を備える。例えば、水などの液体冷却材を流すための冷却材流路を熱交換部材に形成することにより、従来の空冷構造と比較して、信頼性の高い優れた冷却効果を得ることができる。
【0092】
別の好ましい実施形態によれば、本発明に係る二次電池パックは、冷却剤入口マニホールドと、冷却剤出口マニホールドと、前記入口マニホールドと前記出口マニホールドとの間に延在する、放熱部材としての複数の熱交換チューブとをさらに備え、前記熱交換チューブは、前記電池セル間の1以上の界面に配置され及び/又は前記電池セル103の配列の下に配置され、前記電池セルの充放電中に電池セルから発生する熱を交換するために通過する冷却剤を有する。
【0093】
別の好ましい実施形態によれば、電池セル103は円筒形のセルであり、電池セル103の配列を生じさせるように複数のセル列に配列され、好ましくは、前記配列は電池セルのハニカム状の配列を生じさせるように設計される。
【0094】
好ましい実施形態では、二次電池パックは、電池セル103が挿入され、かつ、電池セル103の配列を形成するように保持されるハニカム状構造をさらに含む。
【0095】
電池パック筐体101は、筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102から構成され、これらが互いに密閉されると実質的に気密な電池パック筐体101となる。これは、複数の電池セルを保持するように構成される。二次電池パックは、電気自動車の下に取り付けられ、電池パック筐体と走行面との間に介在する衝撃シールドをさらに備えることができる。衝撃シールドは、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼、ガラス繊維、炭素繊維/エポキシ複合材、及び/又はプラスチックから作製できる。
【0096】
電池パック筐体101は、実質的に気密であってよく、アルミニウム、アルミニウム合金又は鋼から作製できる。
【0097】
好ましい実施形態によれば、本発明に係る二次電池パックは車両に配置される。
【0098】
本明細書で使用するときに、「車両」という用語には、スポーツ用多目的車(SUV)を含めた乗用車、バス、トラック、様々な商用車、様々なボートや船を含めた船舶、航空機などの自動車両全般が含まれ、ハイブリッド車両、電気車両、プラグインハイブリッド電気車両、水素車両、その他の代替燃料車両(例えば、石油以外の資源に由来する燃料)が含まれるものとする。本明細書でいうハイブリッド車両とは、2つ以上の動力源を持つ車両であり、例えばガソリン車両と電気車両の両方がある。
【0099】
別の好ましい実施形態では、本発明に係る二次電池パックは自動車に搭載される。
【0100】
別の実施形態では、本発明に係る二次電池パックは、全電気車両(EV)、プラグインハイブリッド車両(PHEV)、ハイブリッド車両(HEV)に搭載される。
【0101】
別の実施形態では、本発明に係る二次電池パックは、航空機、ボート、船舶、列車又はウォールユニットに配置される。
【0102】
本発明の別の目的は、本発明に係る、上で定義された二次電池パックの製造方法であって、次の工程:
(a)筐体頂部パネル104と筐体底部パネル102とから構成される電池パック筐体101であって、これらを密閉すると、前記電池パック筐体101内が実質的に気密な密閉封鎖環境となる電池パック筐体101を準備し、
(b)前記筐体底部パネル102内に、互いに電気的に接続され、かつ、セルの軸が互いに平行になるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列を配置し、
(c)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は前記電池セル103の配列の開放空間に、本発明に係る、上で定義した組成物Xを導入し、
(d)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は前記電池セル103の配列の開放空間を完全に又は部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に又は完全に組成物Xで被覆し、
(e)硬化を生じさせて前記材料Aを形成し、及び
(f)筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102を密封して電池パック筐体101を得ること
を含む方法に関する。
【0103】
好ましい実施形態において、本発明に係る方法は、次の工程を含む:
(a)筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102から構成される電池パック筐体101であって、これらを密閉すると前記電池パック筐体101内が実質的に気密な密閉封鎖環境となる電池パック筐体101を準備し、
(b)前記筐体底部パネル102内に、互いに電気的に接続され、かつ、セルの軸が互いに平行となるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列を配置し、
(c)前記筐体底部パネル102内及び/又は前記電池セル103の配列の開放空間内に、本発明に係る、上で定義した組成物Xを導入し、
(d)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は前記電池セル103の配列の開放空間を完全に又は部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に又は完全に前記組成物Xで被覆し、
(e)充填工程(d)の前、間、又は後のいずれかに、本発明に係る、本明細書で定義される前記組成物Xの硬化及び発泡を開始させて発泡体であるイソシアネート系材料Aを形成し、及び
(f)前記筐体頂部パネル102及び筐体底部パネル104を互いに密封して実質的に気密な電池パック筐体101を得ること。
【0104】
別の好ましい実施形態において、本発明に係る方法は、次の工程を含む:
(a)筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102から構成される電池パック筐体101であって、これらを密閉すると前記電池パック筐体101内が実質的に気密な密閉封鎖環境となる電池パック筐体101を準備し、
(b)前記筐体底部パネル102内に、互いに電気的に接続され、かつ、セルの軸が互いに平行となるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列を配置し、
(c)前記電池パック筐体101の開放空間に、硬化後に前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に充填し及び/又は前記電池セル103の配列内の開放空間を部分的に充填し及び/又は前記電池セル103を部分的に被覆する少なくとも1種の断熱材料B又はその硬化可能な前駆体を導入し、
(d)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は前記電池セル103の配列の開放空間に、上で定義した組成物Xを導入し、
(e)前記断熱材料Bによって残された前記電池パック筐体101の残部開放空間、及び/又は前記電池セル103の配列の残部開放空間及び/又は前記電池セル103を被覆するための残部開放空間を前記組成物Xで充填し、
(f)硬化を生じさせて前記断熱材料Aを形成し、及び
(g)前記筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102を密封して電池パック筐体101を得ること。
【0105】
別の実施形態では、断熱材料Bは、発泡体、布地、中綿、又は泡沸材料の形態であり、さらに好ましくは、断熱材料Bは、合成発泡体、高分子発泡体、又はエアロゲル及び多孔質セラミックから選択される非高分子発泡体である。
【0106】
「合成発泡体」とは、予め形成された中空球体(一般にガラス、セラミック、重合体又は金属製)を高分子バインダー中に分散させてなる複合材料を意味する。高分子バインダーの具体例としては、触媒の作用により高分子硬化物が得られる反応性基を有する化学前駆体から得られるものが挙げられ、シリコーン、エポキシ、ウレタン、ポリイミド、芳香族ポリエーテル及びスルホンからなる前駆体の種類の中から選択することができる。
【0107】
好ましい実施形態では、断熱材料Bは、シリコーンシンタクチックフォームである。好適なシリコーンシンタクチックフォームの例は、Elkem Silicones USA Corp.によって出願された米国特許出願公開第2018/223070号に記載されている。
【0108】
好ましい実施形態では、中空ガラスビーズがシンタクチックフォーム中で使用され、発泡体の密度を下げるように機能する。中空ガラスビーズ、特に中空ガラス微小球は、優れた等方性圧縮強度を有することに加えて、圧縮強度の高い合成発泡体の製造に有用であると考えられる任意の充填剤のうち最も低い密度を有するため、この用途に適している。高い圧縮強度と低い密度との組み合わせにより、中空ガラス微小球は本発明による多くの利点を有する充填剤となる。
【0109】
一実施形態によれば、中空ガラスビーズは、ガラスバブル又はガラスマイクロバブルとしても知られる中空のホウケイ酸ガラス微小球である。
【0110】
別の実施形態によれば、中空ホウケイ酸ガラス微小球は、0.10グラム/立方センチメートル(g/cc)~0.65グラム/立方センチメートル(g/cc)の範囲の真密度を有する。
【0111】
用語「真密度」とは、ガラスバブルのサンプルの質量を、ガスピクノメーターで測定したときのガラスバブルの質量の真体積で割ることによって得られる商のことである。「真体積」とは、かさ体積ではなく、ガラスバブル集団の総体積のことである。
【0112】
好ましい実施形態によれば、中空ガラスビーズは、3M社から販売されている3M(商標)ガラスバブルズフローテッドシリーズ(A16/500、G18、A20/1000、H20/1000、D32/4500及びH50/10,000EPXガラスバブル製品)及び3M(商標)ガラスバブルズシリーズ(K1、K15、S15、S22、K20、K25、S32、S35、K37、XLD3000、S38、S38HS、S38XHS、K46、K42HS、S42XHS、S60、S60HS、iM16K、iM30Kガラスバブル製品などであるが、これらに限定されない)から選択される。当該ガラスバブルは、第1の複数のガラスバブルの10体積パーセントが崩壊する1.72メガパスカル(250psi)~186.15メガパスカル(27,000psi)の範囲の様々な圧壊強度を示す。3M(商標)ガラスバブルズ-フローテッドシリーズ、3M(商標)ガラスバブルズ-HGSシリーズ及び表面処理された3M(商標)ガラスバブルなどの、3M社が販売する他のガラスバブルも本発明に従って使用できる。
【0113】
好ましい実施形態によれば、当該ガラスバブルは、第1の複数のガラスバブルの10体積パーセントが崩壊する1.72メガパスカル(250psi)~186.15メガパスカル(27,000psi)の範囲の圧壊強度を示すものの中から選択される。
【0114】
最も好ましい実施形態によれば、中空ガラスビーズは、3M(商標)ガラスバブルズシリーズのS15、K1、K25、iM16K、S32及びXLD3000から選択される。
【0115】
別の好ましい実施形態では、断熱材料Bはシンタクチックフォーム又は高分子発泡体であり、液体前駆体として電池パック筐体に導入でき、その場で硬化して断熱材料Bが生じる。
【0116】
断熱材料Bは、発泡体、布地、中綿、泡沸材料の形態であってもよい。具体例としては、シリコーン、エポキシ、ウレタン、ポリイミド、芳香族ポリエーテル、スルホンなどの高分子発泡体、及びフェノール発泡体が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1図1は、電池セル103の配列が筐体底部パネル102内に配置された状態の、筐体頂部パネル104がない二次電池パックの上面図である(バッテリーセルの電気的接続は図示せず)。
図2図2は、電池セル103の配列が筐体底部パネル102内に配置された二次電池パックの透視図である(電池セルの電気的接続は図示されていない)。
図3図3は、本発明に係るイソシアネート系材料A(図中、成分Aとして示される)が、電池セル103の配列と筐体底部パネル102内の残部空間との間の空間を充填している二次電池パック内の電池の上面図である(電池セルの電気的接続は図示されない)。
図4図4は、本発明に係るイソシアネート系材料A(図中、成分Bとして示す)で被覆され、イソシアネート系材料Aが電池間の空間及びパック内の残りの空間を充填している二次電池パック内の電池セル103の配列の上面図である(電池セルの電気的接続は図示されていない)。
図5図5は、電池セル103のハニカム状配列が得られるように設計された電池セル103の配列の上面図である(電池セルの電気的接続は図示されていない)。
【発明を実施するための形態】
【0118】
図1及び図2は、電池セル103が筐体底部パネル102内で非常に近接し得ることを示している。本発明の一実施形態では、本発明に係る組成物X及び材料Aの前駆体は、電池セルの配列が配置及び設置された後に底部パネル筐体102に注がれ(図3、104)、硬化させると本発明に係るイソシアネート系材料Aになる(図4、105)。発泡プロセス(上記のように機械的、物理的又は化学的)が使用される場合、硬化後に発泡体である材料Aが得られる。図5は、円筒形のセルであり、かつ、複数のセル列に配列されて電池セル103の配列が得られる電池セル103の配列の上面図を提供し、当該配列は、電池セル103のハニカム状配列を生じさせるように設計されている。
【0119】
本発明によって得られる他の利点は、以下の例示的な実施例から明らかになるであろう。
【実施例
【0120】
(I)試験手順
重ね剪断手順
ステンレス鋼重ね剪断物をQlabsから入手し(SS-13:76.2インチ×25.4インチ×0.889mm)、使用前にイソプロピルアルコールで拭き取って被接着面を清浄にした。重ね剪断基材を、1枚の重ね剪断物の接着部分に接着剤を塗布し、その上に2枚目の重ね剪断物を重ね合わせて重ね剪断物の12.7mm重複部分(接着領域)を与え、その後1インチのバネクランプを使用して接着/重複領域の両側で重ね剪断物を狭持することによって準備した。その後、完成した基材を室温で最低4日間にわたって硬化させ、ASTM D1005に準拠したインストロン型式4301(エルケムTL-0288)で、毎分2インチの速度で引張強さを試験した。各条件について5個のサンプルで実験を行った。最大値と最小値は廃棄した。
【0121】
引張強さ及び伸び
スラブを152×152×2mmの型で鋳造した。完成したスラブを、室温で最低4日間にわたって硬化させた。その後、ASTM D638-14「Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics」に従って、タイプIの寸法に作成されたダイを使用して試験片を切断した。3つのサンプルについて、試験速度5.08mm/分で、伸び計付きインストロン型式4301を使用して、最大応力(表2に「T&E最大応力」と示す)と伸び(表2に「T&E歪(%)」と示す)を試験した。
【0122】
曲げ弾性率
試験片を147×25×3mmの型で鋳造した。完成したスラブを、室温で最低4日間にわたって硬化させた。50kgのロードセルを備えたテクスチャーアナライザーに50mmの3点曲げスペーサーを使用して、各条件について3つのサンプルを試験した。曲げ弾性率はASTM D790-17「Standard Test Methods for Flexural Properties of Unreinforced and Reinforced Plastics and Electrical Insulating Materials」を用いて算出した。
【0123】
ショアDデュロメーター
サンプルを147×25×3mmの型で鋳造した。完成したスラブを、室温で最低4日間にわたって硬化させた。試験片をASTM D2240-15「Standard Test Method for Rubber Property - Durometer Hardness」に従って試験した。各配合物について3つの試験片を試験した。
【0124】
(II)成分の定義
・Stobicast M598は2液型ポリウレタンポッティングである。
・Unipoly66A(ユニポリ・パフォーマンス・マテリアルズ社提供)、A部=重合体マトリックスとして作用し、ポリエーテルポリオール、ジオール鎖延長剤、アルミナ三水和物、ジブチルスズジラウレートを含み、粘度<2000mPa.s(25℃で測定)。
・Unipoly66B(ユニポリ・パフォーマンス・マテリアルズ社提供)、B部=ポリウレタンフォームsの前駆体(ジイソシアネート、触媒、フレームパッケージ、及び添加剤のブレンド)。
・添加剤1:Garamite-1958、BYK社の粉末状有機フィロシリケート(レオロジー添加剤)。
・添加剤2:Stan-tone 40ET01青色顔料。
・添加剤3:Molsiv3A:ゼオライトモレキュラーシーブ乾燥剤及び吸着剤。
・スズマスターバッチは次の配合(重量%)を有する:
-98.5%のUnipoly66A
-0.5%のジブチルスズジラウレート
-1.0%の添加剤1。
・Glymo:グリシジル3-(トリメトキシシリル)プロピルエーテル。
・シリコーンポリエーテル1(対照、ポリエーテルはアセテート基で末端封鎖されている):Siltech社製Silsurf J1015-O-AC:INCI名はPEG/PPG18/18ジメチコンであり、アセテート封鎖され、Mw=27000g/molを有する(ポリエーテル骨格は次の構造を有する:R=-C36O-(C24O)18-(C36O)18(COCH3))。
・シリコーンポリエーテル2(本発明に係るもの、ポリエーテルは-OH基で末端封鎖されている):総OH含有量(~0.595重量%OH)、次式を有する:MD60* 6M(式中、
-M=(CH33SiO1/2
-D=(CH32SiO2/2
-D*=(CH3)(R)SiO2/2(式中、R=-C36O-(C24O)22-(C36O)22H))。
【0125】
(III)試験した配合物及び材料
サンプルを、A部、B部、及び触媒(0.5%のスズマスターバッチ)から配合した。各A部の組成を表1に示す。A部をFlackTek300Maxカップでスピードミキサーで混合した。まず、Unipoly66A及びGaramite-1958(添加剤1)を2000rpmで3分間混合した。次に顔料、GLYMOシラン、ポリエーテルを添加し、2000rpmで3分間混合した。A部を窒素でブランケットし、保管した。サンプルを、A部、スズ触媒及びB部を約1分間手作業で混合することによって調製した。サンプルを、引張試験及び伸長試験のために、離型スプレーでコーティングされた2mmの型に流延した。第2の配合物を混合し、それから3mmの型にサンプルを流延し、重ね剪断サンプルを作製した。
【0126】
各試験を3回繰り返し、得られた材料の特性を表2に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
サンプルを、試験9~試験16に記載された配合で、上記のようにA部、B部から配合した(表3及び4参照)。機械的発泡により泡立てた(発泡)サンプルを得るために、泡立て器付属物を有するHamilton Beachの2スピードハンドブレンダーを使用して、機械的発泡を行った。容器にA部を添加した後、材料を、ブレンダーを使用して低速で30~60秒間泡立てた。次にB部を添加した。約30秒間手作業で混合した。その後、ブレンダーを使用して低速で30~60秒間泡立てた。その後、周囲温度で放置して硬化させた。
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
試験9~16の特性を以下の表5及び表6に示す。
CF=凝集破壊モード
AF=接着破壊モード
【0133】
【表5】
【0134】
【表6】
【0135】
発泡させたもの(泡立ちさせたもの)では、本発明に係る配合物では引張強さが改善され、電池パック内で1.0未満の密度の発泡製品を使用することができる。
試験15(泡立、本発明)と試験16(泡立、対照)との比較では、+60.67%の改善が示される。
試験13(泡立、本発明)と試験14(泡立、対照)との比較では、+19.50%の改善が示される。
試験11(泡立、本発明)と試験12(泡立、対照)との比較では、+23.49%の改善が示される。
【0136】
本発明による材料は、改善された引張強さ特性を有する良好な構造接着性を有し、良好な重ね剪断強度(材料が接着面の平面内の力に抵抗する能力)を有するという利点を有し、電池セル、さらに重要なことに、車両の乗員を保護するために、構造物の耐破壊性を向上させる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池パック100であって、
・筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102から構成される電池パック筐体101であって、互いに密閉されると実質的に気密な電池パック筐体101となる電池パック筐体101、
・前記筐体底部パネル102内にある電池セル103の少なくとも1つの配列であって、前記電池セル103が互いに電気的に接続され、前記セルの軸が互いに平行となるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列、
・前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に若しくは完全に充填し、及び/又は電池セル103の前記配列内の開放空間を部分的に若しくは完全に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に若しくは完全に被覆するイソシアネート系材料Aであって、以下を含む組成物Xを混合及び硬化してなるイソシアネート系材料A:
(a)少なくとも1種のイソシアネート化合物、
(b)少なくとも2個のエポキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はポリオール、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミン及びポリオールアミンよりなる群から選択される少なくとも1種の活性水素含有化合物若しくは前記活性水素含有化合物の混合物、
(c)少なくとも1種の触媒、
(d)任意に少なくとも1種の発泡剤
(e)任意に少なくとも1種の接着促進剤、及び
(f)任意に少なくとも1種の添加剤
を含み、前記組成物Xは、前記組成物X100重量部に対して、0.1重量部~30重量部の、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基で末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Yをさらに含む、二次電池パック。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサン重合体Yは、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基によって末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含み、前記ポリオキシアルキレン部分は、300~4000g/molの平均分子量を有する、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサン重合体Yは、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基で末端封鎖されたポリオキシアルキレン部分を含み、前記オルガノポリシロキサン重合体Yは、次の一般化平均式:
MDx* y* z
(式中、
・Mは(R)3SiO1/2又はR1(R)2SiO1/2を表し、
・Dは(R)2SiO2/2を表し、
・D*は(R1)(R)SiO2/2を表し、
・T*は(R1)SiO3/2を表し;
・xは5~220であり、
・yは2~50であり、
・zは0~50であり、
・Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、及びフェニルよりなる群から選択されるアルキル基であり
・R1は、一般式:-Cn2nO-(C24O)a-(C36O)bHのヒドロキシル末端ポリエーテル部分であり、式中、nは3又は4であり、a>0及びb≧0であり、a及びbは、平均分子量が300~4000g/molであるように定義される。)
を有する、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項4】
前記二次電池パックは、前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に充填し、及び/又は電池セル103の前記配列内の開放空間を部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に被覆する少なくとも1種の断熱材料Bをさらに含み、及
前記イソシアネート系材料Aは接着剤として使用され、前記断熱材料Bによって残された残部開放空間を埋める、
請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項5】
前記イソシアネート系材料Aは、前記電池パック筐体101の開放空間を部分的に充填し、及び/又は電池セル103の前記配列内の開放空間を部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に被覆し、最終的に前記電池セル103の下に存在する接着剤として使用され、
前記二次電池パックは、前記イソシアネート系材料Aにわたって頂部層として及び/又は底部層として塗布される少なくとも1種の断熱材料Bをさらに含む、
請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項6】
前記イソシアネート系材料Aが発泡体である、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項7】
前記イソシアネート系材料Aは、組成物Xの硬化工程の前又は硬化工程中に機械的攪拌によって気体を組成物X中に添加する機械的発泡処理工程によって製造される発泡体である、請求項6に記載の二次電池パック。
【請求項8】
前記イソシアネート系材料Aは、次の物理的発泡プロセスの1つによって製造される発泡体である、請求項6に記載の二次電池パック:
・低沸点液体を物理的発泡剤として使用し、これを組成物X中に添加し、組成物Xの発熱重合反応によって誘導される温度上昇がその沸点を超えるときに組成物Xを蒸発させて発泡材料を得るか、又は
・二酸化炭素(CO2)を物理的発泡剤として使用し、大気圧を超える高圧下で組成物Xの少なくとも1種の成分又は組成物Xに導入し、次いで高圧から大気圧まで圧力抑制を行ってCO2の相分離を誘導し、それによって空洞を形成して発泡材料を得る。
【請求項9】
前記イソシアネート系材料Aは、第1のA部と第2のB部とを混合することによって製造される組成物Xを発泡させることによって得られる発泡体であり、ここで、
・前記第1のA部は:
-少なくとも2個のエポキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物、又はポリオール、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミン及びポリオールアミンよりなる群から選択される少なくとも1種の活性水素含有化合物若しくは該活性水素含有化合物の混合物、
-末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基によって末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Y、
-少なくとも1種の乾燥剤、
-少なくとも1種の触媒、
-任意に少なくとも1種の発泡剤、
-任意に少なくとも1種の接着促進剤、及び
-任意に少なくとも1種の添加剤
を含み、
・前記第2のB部は:
-少なくとも1種のイソシアネート化合物
を含み、ここで、組成物X100重量部に対して、0.1重量部~20重量部の、末端基又はペンダント基として、ヒドロキシル基で末端封鎖された少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン重合体Yをさらに含む、
請求項6に記載の二次電池パック。
【請求項10】
前記イソシアネート系材料Aは、少なくとも1種の発泡剤が組成物X内に存在し、組成物Xの硬化工程前又は硬化工程中に発泡する化学的発泡処理工程によって製造された発泡体である、請求項6に記載の二次電池パック。
【請求項11】
前記イソシアネート系材料Aは、物理的発泡プロセス及び化学的発泡プロセスによって製造された発砲体である、請求項6に記載の二次電池パック。
【請求項12】
前記断熱材料Bがシリコーンシンタクチックフォームである、請求項に記載の二次電池パック。
【請求項13】
前記断熱材料Bがシリコーンシンタクチックフォームである、請求項5に記載の二次電池パック。
【請求項14】
前記電池セル103は円筒形のセルであり、電池セル103の配列を生じさせるように複数のセル列に配列されている、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項15】
前記二次電池パックは、前記電池セル103が挿入され、かつ、電池セル103の配列を形成するように保持されるハニカム状構造をさらに含む、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項16】
前記電池セル103がリチウムイオン型のものである、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項17】
車両内に配置される、請求項1~16のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項18】
自動車に配置される、請求項1~16のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項19】
全電気車両(EV)、プラグインハイブリッド車両(PHEV)、ハイブリッド車両(HEV)に配置される、請求項1~16のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項20】
航空機、ボート、船舶、列車又はウォールユニットに配置される、請求項1~16のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項21】
請求項1~16のいずれかに記載の二次電池パックの製造方法であって、次の工程:
(a)筐体頂部パネル104と筐体底部パネル102とから構成される電池パック筐体101であって、これらを密閉すると、前記電池パック筐体101内が実質的に気密な密閉封鎖環境となる電池パック筐体101を準備し、
(b)前記筐体底部パネル102内に、互いに電気的に接続され、かつ、セルの軸が互いに平行になるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列を配置し、
(c)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は前記電池セル103の配列の開放空間に、請求項1~3のいずれかに記載された組成物Xを導入し、
(d)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は電池セル103の前記配列の開放空間を完全に又は部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に又は完全に組成物Xで被覆し、
(e)硬化を生じさせて前記材料Aを形成し、及び
(f)前記筐体頂部パネル104及び前記筐体底部パネル102を密閉して前記電池パック筐体101を得ること
を含む方法。
【請求項22】
請求項1~16のいずれかに記載の二次電池パックの製造方法であって、次の工程:
(a)筐体頂部パネル104及び筐体底部パネル102から構成される電池パック筐体101であって、これらを密閉すると前記電池パック筐体101内が実質的に気密な密閉封鎖環境となる電池パック筐体101を準備し、
(b)前記筐体底部パネル102内に、互いに電気的に接続され、かつ、セルの軸が互いに平行となるように直立状に配置された電池セル103の少なくとも1つの配列を配置し、
(c)前記筐体底部パネル102内及び/又は電池セル103の前記配列の開放空間内に、請求項1~3のいずれかに記載された組成物Xを導入し、
(d)前記電池パック筐体101の開放空間及び/又は電池セル103の前記配列の開放空間を完全に又は部分的に充填し、及び/又は前記電池セル103を部分的に又は完全に前記組成物Xで被覆し、
(e)前記充填工程(d)の前、間、又は後のいずれかに、請求項6~9のいずれかに記載された組成物Xの硬化及び発泡を開始させて発泡体であるイソシアネート系材料Aを形成し、及び
(f)前記筐体頂部パネル104及び前記筐体底部パネル102を互いに密閉して実質的に気密な電池パック筐体101を得ること
を含む方法。
【国際調査報告】