(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】siRNAでトランスフェクトされた血小板とその治療的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/19 20150101AFI20240822BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240822BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240822BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240822BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240822BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K35/19
C12N15/113 110Z
C12N5/10 ZNA
C12N5/078
A61P35/00
A61P1/18
A61P1/00
A61K31/713
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508804
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022072484
(87)【国際公開番号】W WO2023017096
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021000021779
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524055735
【氏名又は名称】プラスフェル ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】PLASFER S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】グレセレ、 パオロ
(72)【発明者】
【氏名】マルベスティティ、 マルコ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BD32
4B065BD33
4B065CA23
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA65
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB26
4C087AA01
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4C087MA65
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZB26
(57)【要約】
開示されているのは、KRASオンコプロテインの変異型を標的とするsiRNAでトランスフェクトされた血小板を含む治療用組成物、および一般的な腫瘍、特に膵臓腺癌の治療のためのその使用である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
G12D変異を有するKRASタンパク質(KRASG12D)をコードするmRNAの発現を阻害することができるsiRNAでトランスフェクトされた血小板を含む、KRASG12D発現腫瘍の治療に使用するための治療組成物。
【請求項2】
前記KRASG12Dを発現する腫瘍が膵臓腺癌、好ましくは膵臓十二指腸腺癌である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記siRNAが、変異コドンを含むKRASG12D mRNA配列を標的とする、請求項1~2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記siRNAが15~30塩基対からなる、請求項1~3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記siRNAがセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、請求項1~4に記載の使用のための組成物であって
(i)センス鎖は、配列5′-GUUGGAGCUGAUGGCGUAGTT-3′(SEQ ID NO:1)からなるか、またはそれを含んでなり、および
(ii)アンチセンス鎖は、配列5′-CUACGCCAUCAGCUCCAACTT-3′(SEQ ID NO:2)からなるか、またはそれを含んでなる、
組成物。
【請求項6】
前記血小板が、エチルアルコールと、ポリエチレンイミンおよびポリリジンから選択されるポリアミンとを含むトランスフェクション培地中で、末梢血から単離された血小板をsiRNAと接触させることからなるトランスフェクション法によって得られる、請求項1~5に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記血小板が活性化されて微粒子を産生する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
腫瘍治療が、(i)腫瘍患者またはドナーから血小板を採取すること、(ii)血小板をsiRNAでトランスフェクトすること、および(iii)血小板を患者に(再)導入することを含む、請求項1~7に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発癌に関与する遺伝子であるKRASのmRNAを阻害するようにデザインされたsiRNAでトランスフェクトされた血小板に関する。
【0002】
特に、本発明は、KRASオンコプロテインの変異型を標的とするsiRNAでトランスフェクトされた血小板を含む治療組成物を提供する。本発明のさらなる態様は、腫瘍一般、特に膵臓腺癌の治療のための治療組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
KRASオンコプロテインは、腫瘍細胞の増殖と生存に関与する細胞内シグナル伝達経路の必須メディエーターとしての機能を持つGTPアーゼである。正常細胞では、KRASは分子スイッチとして働き、不活性なGDP結合状態と活性なGTP結合状態を交互に繰り返す。これらの状態間の移行は、GTPを負荷してKRASを活性化するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)と、KRASを不活性化するGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)によって触媒されるGTP加水分解によって促進される。GTPとKRASの結合は、RAF-MEK-ERK(MAPK)などの細胞内シグナル伝達経路を活性化するエフェクターとの結合を促進する。KRAS遺伝子の変異は、膵臓癌、肺腺癌、大腸癌、胆嚢癌、甲状腺癌、胆道癌によく見られる。KRAS変異は膵臓腫瘍の約94.1%で観察され、KRASG12D変異が最も頻度が高く、発生率は41%である。GTPアーゼであるKRASの変異は、膵管腺癌(PDAC)に罹患している患者において一般的に認められることが明らかにされており、この変異は発癌の初期段階、腫瘍の進行、転移の拡大に関与していると考えられている。G12、G13、Q61残基のKRAS変異は固形がんで最もよく見られる変異である。KRASを活性化する体細胞変異は、ある種の癌の特徴であり、GAPとの結合を阻害し、それによってエフェクターとの結合を安定化させ、結果としてKRASシグナル伝達経路を増加させる。KRAS変異を有する腫瘍に罹患している患者は、予後が著しく悪く、予後不良である。他のタイプの腫瘍に対しては、MAPK細胞内シグナル伝達経路の様々なタンパク質(MEK、BRAF、EGFRなど)の阻害剤の臨床使用が承認されているが、変異KRAS腫瘍に選択的な分子は今のところ臨床使用されていない。MAPK経路を標的とするいくつかの治療法は、KRAS変異を有する腫瘍の治療において臨床的に無効であることが証明されている。さらに、特定の腫瘍タンパク質の変異型を選択的に標的としない治療法は、正常細胞でMAPKによって誘導されるシグナルを阻害するため、全身毒性を引き起こす可能性がある。
【0004】
そのため、腫瘍を選択的に標的とし、健常細胞への薬剤の分布を最小限にするか、あるいは排除する治療法を開発する必要がある。
【0005】
KRASG12D変異は、高い死亡率で特徴づけられる腫瘍である膵管腺癌(PDAC)に広くみられる。KRASG12D腫瘍を有するPDAC患者は、他のKRAS変異を有する患者と比較して予後が特に不良である。したがって、PDAC患者の生存率を改善するためには、より効率的で安全なKRASG12Dを標的とする新規治療戦略を開発することが重要である。
【0006】
マイクロRNAと、その合成品であるsiRNAは、小siRNA二本鎖のノンコーディングRNAであり、特定のmRNAの翻訳を抑制したり、分解を誘導したりすることによって、遺伝子発現の転写後制御に重要な役割を果たす。
【0007】
siRNAの治療的使用には、血流への効率的な送達方法が必要である。そうでなければ、siRNAは形質ヌクレアーゼによって急速に分解され不活性化されてしまうからである。
【0008】
この目的のために、バクテリア、ウイルス、人工合成小胞(ミセル、ミクロソームなど)、ヒト細胞(赤血球、マクロファージ、リンパ球、幹細胞)をキャリアとして使用する方法が開発されてきた。
【0009】
非肝実質臓器、特に膵臓への効果的なRNAi輸送は依然として課題である。リポソームやナノ粒子は、ウイルスシステムと比較してRNAiの放出に有利であるが、効率が低く、循環系から急速に排除される。
【0010】
野生型KRASを標的とするRNA干渉(RNAi)や、ナノ粒子をベクターとして使用する酵素下流のエフェクターに基づくアプローチは、肺がんや幾つかの大腸がんモデルの治療において明確な効果を示している。
【0011】
しかし、膵臓腺癌の治療におけるKRASの標的化は、これまでのところ、膵臓癌異種移植モデルにおける直接エレクトロポレーションやバイオポリマー移植による阻害剤の投与に限られている。
【0012】
最先端技術
siRNAを放出するためのヒト血小板の使用は、本出願人名義の国際出願WO2014/118817に記載されている。KRAS癌遺伝子の変異を標的とする幾つかのsiRNA配列が報告されているが、G12D変異に対しては報告されていない。特に、KRASG12Dに対するsiRNAを負荷した血小板を膵臓腺癌の治療に用いることは、記載も示唆もされていない。
【0013】
特許公開WO2017/127473号およびUS2015/0307885号には、RNA干渉によるKRAS変異体の発現阻害、および当該目的に有用なdsRNA配列が記載されている。
【0014】
WO2010/001325には、siRNAを含む治療薬の送達に適したポリマーシステムが記載されている。
【発明の概要】
【0015】
今回、KRAS G12D変異体に特異的なsiRNAを導入した血小板、あるいはそれに由来する微小粒子が、マウスモデルにおいてin vivoで膵臓がん腫瘍の増殖を効果的に阻害することが判明した。
【0016】
本発明に従って調製されたKRASG12Dを標的とするsiRNAでトランスフェクトされた血小板は、KRASG12Dを発現する腫瘍の動物モデルにおいて腫瘍量を減少させることができ、膵管腺癌(PDAC)の動物モデルで実施された試験において特に有効であることが証明された。
【0017】
従って、本発明の第一の局面は、KRASG12D発現腫瘍、好ましくは膵臓腺癌、より好ましくは膵臓デュタール腺癌の治療において使用するための、G12D変異を有するKRASのmRNA(KRASG12D)を阻害することができるsiRNAでトランスフェクトされた血小板、またはそれから誘導される血小板微粒子を含む治療組成物に関する。
【0018】
好ましい実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖の配列は、変異コドンを含むKRASG12DのmRNA配列に相補的である。
【0019】
siRNA分子は15から30、好ましくは21の塩基対を含むことができる。
【0020】
特に好ましい実施形態において、siRNA分子は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここで
(i)センス鎖は、配列5′-GUUGGAGCUGAUGGCGUAGTT-3′(SEQ ID NO:1)からなるか、またはそれを含んでなり、および
(ii)アンチセンス鎖は、配列5′-CUACGCCAUCAGCUCCAACTT-3′(SEQ ID NO:2)からなるか、またはそれを含んでなる。
【0021】
血小板トランスフェクトsiRNAの配列は、変異KRAS遺伝子(KRASG12D)の配列中のヌクレオチド置換G→Aを認識し、サイレンシング効率を促進するために3'TTオーバーハングを含む。変異ヌクレオチドの中心位置はsiRNAの特異性を高めるため、野生型KRAS遺伝子や、KRAS G12C、KRAS G12N、KRAS G12Vのような他のタイプの変異を持つ遺伝子のサイレンシングを妨げる。
【0022】
siRNAによる血小板のトランスフェクションは、本出願人の名義でEP2951292(WO2014/118817)に記載されている方法に従って行われる。簡略に説明すると、末梢血から単離した血小板を、エチルアルコールとポリエチレンイミンおよびポリリジンから選択されるポリアミンとを含む培地中でsiRNAと接触させる。マイクロパーティクルを得るために、トランスフェクション後、血小板は、例えばEP2951292に記載されているように、カルシウム塩の存在下でトロンビンを加えるなど、適切な刺激剤で活性化される。
【0023】
輸血医療では、ドナーから血小板と血漿を分離することで、血小板を採取し、トランスフェクトし、血漿に再懸濁して再輸血することができる。さらに、血小板のトランスフェクションに必要な時間が短いため、トランスフェクトされた血小板を、血小板が摘出されたのと同じ個体に一回で静脈内再注入することができ、トランスフェクトされた血小板の同種免疫や拒絶反応のリスクを排除することができる。
【0024】
したがって、好ましい一実施形態では、本発明による治療的処置は、癌患者または健康なドナーから血小板を採取し、それをsiRNAでトランスフェクトし、任意選択で活性化し、トランスフェクトされた血小板および/またはそれに由来する微小粒子を患者に再導入することを含む。
【0025】
KRASG12DのsiRNAを導入した血小板の投与量、投与経路、投与回数が、PDACの動物モデルにおいて決定された。
【0026】
in vivoでの実験試験で使用した静脈内投与経路に加えて、ヒトでの臨床使用には、筋肉内、皮内または皮下経路、および/またはその場での投与を採用することができる。
【0027】
in vivo試験では、投与回数は14日間で計6回であったが、臨床応用では1~6回の投与が可能である。
【0028】
動物モデルで使用された用量は、1回の投与で約45,000,000個の血小板であった。ヒトへの投与量は5×1011個の血小板まで増やすことができる。したがって臨床応用のための投与量範囲は、好ましくは45×106から5×1011トランスフェクト個の血小板の間である。
【0029】
本発明は、以下の実施例および添付の図面にさらに示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】PANC-1細胞における、KRAS G12Dを標的とするsiRNAをトランスフェクトした血小板によるKRAS G12Dの阻害効率を示す図である。KRASG12DをsiRNAでトランスフェクトした血小板を、in vitroで膵臓腺がん細胞株PANC-1と24時間および48時間共培養すると、細胞内のKRASG12D mRNA発現が特異的に低下した。データは、未処理のPANC-1細胞と比較した、PANC-1細胞におけるKRASG12Dの減少レベルとして示した。Plts-NC:siRNA Scrambled Negative Control DsiRNA(IDT社)でトランスフェクトした血小板。Plts-KRAS: siRNA KRASG12Dでトランスフェクトした血小板。
【
図2】生体内の腫瘍塊-早期治療を示す図である。動物の安楽死後に行った解析;各群n = 6マウス。対照群:siRNA Scrambled Negative Control DsiRNA(IDT社)でトランスフェクトしたヒト血小板。K-ras群:siRNA KRASG12Dでトランスフェクトしたヒト血小板。A. 摘出した各腫瘍の画像。B. 腫瘍体積。C. 腫瘍の重量。
【
図3】薬力学を示す図である。A.治療中の全血小板集団に占めるヒト血小板の割合;各群n = 6マウス。B. 投与中のマウスの体重割合の変化(エンドポイント);各群n = 6マウス。
【実施例】
【0031】
材料と方法
KRASG12D siRNAを用いたヒト血小板の調製
末梢静脈血を採血し、抗凝固剤の入った試験管に採取する。
1)サンプルを120gで10分間遠心分離し、PRP(多血小板血漿)を得る。
2)血小板は一般的な方法(血小板洗浄またはゲルろ過)で血漿から分離する。
3)こうして単離された血小板は、抗生物質(ペニシリン100Uとストレプトマイシン100U)を添加したRPMI1640、またはドナーの血漿に、濃度下限130,000個血小板/マイクロリットルを超えない範囲で2×105~1×106個血小板/マイクロリットルの濃度で再懸濁し、1ミリリットルのアリコートが24ウェルプレートのウェルに移し、5%CO2の制御された雰囲気下、37℃で培養下に置いた。
4)次に、絶対エチルアルコール32.4マイクロリットル、ポリリジンおよびポリエチレンイミンから選ばれるポリアミン32マイクロリットル、およびRPMI1640 168マイクロリットルを、いずれも総量が200マイクロリットルになるように試験管に入れ、トランスフェクション培地を調製する。
5)5分間の休止後、200nM濃度のsiRNA KRASG12Dを前記混合物に添加し、室温で15分間インキュベートした後、この溶液を、すでに1mlの血小板懸濁液が導入されているウェルに移す。
6)血小板の遠心分離(PGI2 0.2μM存在下、1000gで10分間、その後RPMI1640培養液3mlに再懸濁)によるトランスフェクションは、37℃で5分間インキュベートした後に中断される。
【0032】
リアルタイムPCR
RNAをTrizol(Invitrogen製)で精製した後、iScript Reverse Transcription Supermix for RT-qPCR(Bio-rad Laboratories製)を用いてRNAを逆転写した。定量的PCR(qPCR)解析は、SYBR Green Master Mix(Applied Biosystems製)を用い、AriaDX Real-time PCR System(Agilent製)を用いて行った。関連する転写産物はRNA 18S転写レベルで標準化した。各反応には3つのテクニカルレプリケートが含まれ、その平均を計算して生物学的レプリケートとした。実験は異なる日に3回繰り返され、各実験は生物学的複製を定めた。統計解析は生物学的複製のΔCtで行い、結果は相対的増加の変動として表した。プライマー配列は以下の通りであった:
ヒトKRASG12D:フォワード5' -ACTTGTGGTAGTTGGAGCAGA-3' (SEQ ID NO:3)、リバース5' -TTGGATCATTCGTCCACAA-3' (SEQ ID NO:4)。
【0033】
18S:フォワード5′-GCTTAATTTGACTCAACACGGGA-3′(SEQ ID NO:5)、リバース5′-AGCTATCAATCTGTCAATCCTGT-3′(SEQ ID NO:6)。
【0034】
膵臓腺癌の動物モデル
4~6週齢の雄性NSGマウスCg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(Charles Rivers)を、21~23℃、湿度40~60%で、12時間明期:12時間暗期のサイクルの換気ケージに収容した。マウスは餌と滅菌水に自由にアクセスできた。PANC-1(10μlのPBSに106個細胞)を全身麻酔下で、27ゲージの注射器を用いて皮下に注射した。
腫瘍の体積解析には、Living Image version 4.4(Caliper Life Sciences製)を使用した。露光条件(時間、絞り、ステージ位置、ビニング)は、各実験内のすべての測定で同一に保たれた。腫瘍質量は電子天秤(BL 224 Touch)で測定した。
【0035】
マウスの血液はヘパリンを用い、尾側から採取した。その後、血液(マウス1匹につき10μl)を100μlのPBSで希釈した。その後、サンプルをヒトCD41-FITC抗体(BD Biosciences)および対応するコントロールとインキュベートし、Cytoflexフローサイトメーター(Beckman Coulter)で分析した。対照試料はすべて実験試料と一緒に分析された。
結果
KRASG12Dを標的とするsiRNAでトランスフェクトした血小板をPANC-1細胞と24時間および48時間共培養し、ヒトPANC-1細胞におけるKRASG12D mRNAの発現レベルをqPCRで評価した(
図1)。
【0036】
続いて、KRASが変異した膵臓がんのマウスモデルを用いたin vivoでの有効性データに関する最初の一連の解析が行われた。
【0037】
KRASG12DをsiRNAでトランスフェクトした血小板はin vivoでの腫瘍増殖を抑制したが、標的を認識しないようにデザインされたsiRNA(siRNA NC)でトランスフェクトした血小板は腫瘍増殖を抑制しなかった。
【0038】
NSGマウス(NOD scidガンママウス)には、0日目に1×106個のヒトPANC-1細胞(PDAC細胞株)を皮下注射した後、7日目(早期治療開始)からヒト血小板を静脈内投与した。
【0039】
45×106個のヒト血小板を静脈注射し、7日目から21日目まで2-3日おきに各マウスに合計6回注射した。ヒト血小板は6人の健康なドナーから単離された。
【0040】
腫瘍量は試験終了時に定量化された。マウス血液中のヒト血小板数と動物の体重は、実験中常にモニターされた。
【0041】
KRASG12Dに対するsiRNAでトランスフェクトした血小板を注入したマウスでは、siRNA NCでトランスフェクトした血小板を注入したマウスと比較して腫瘍量の減少が観察され、
図2に示された腫瘍体積および腫瘍量の統計学的に有意な減少によって示された。
【0042】
さらに、マウスの血液中を循環しているヒト血小板の数(ヒト血小板の割合/マウス血液中の血小板の総数として測定)には有意な変動が観察されなかったことから、トランスフェクトされた血小板は2つの実験グループ間で差がなく、宿主中を効率的に循環していることが示唆された(
図3A)。
【0043】
最後に、治療後のマウスの体重変化に関して、2つの実験グループ間に有意差は観察されず、この治療が安全で望ましくない副作用を引き起こさないことが確認された(
図3B)。
【配列表】
【国際調査報告】