(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】二成分エポキシ樹脂アミン官能化ラテックス組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240822BHJP
C08L 101/06 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L101/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508951
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 US2022040830
(87)【国際公開番号】W WO2023038775
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヤンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ドラムライト、レイ イー.
(72)【発明者】
【氏名】フー、ジェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイル、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】リンデンムス、デニス
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA02W
4J002AA07X
4J002CD01W
4J002CD05W
4J002CD06W
4J002CD19W
4J002GH00
(57)【要約】
本発明は、熱硬化性化合物と、アミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子との水性分散液を含む、組成物に関する。この組成物は、二成分水性硬化系として有用であり、工業用コーティング用途において腐食耐性及びブリスタ耐性を提供するのに有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱硬化性化合物と、b)以下の種類のアミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子との水性分散液を含む、組成物であって、
【化1】
式中、Rが、H又はC
1-C
6アルキルである、組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性化合物が、エポキシノボラック樹脂、又はジ-、トリ-若しくはテトラグリシジルエーテル、又はジ-、トリ-若しくはテトラグリシジルエステル、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱硬化性化合物が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、若しくは1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、又はそれらの組み合わせであるジグリシジルエーテルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性化合物が、抗凝集性基で官能化されたラテックスポリマー粒子に組み込まれているビスフェノールAのジグリシジルエーテルであり、前記ラテックスポリマー粒子中の組み込まれたビスフェノールAのジグリシジルエーテルの濃度が、前記熱硬化性化合物及び前記ラテックスポリマー粒子の重量に基づいて15~60重量パーセントの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Rが、CH
3である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記アミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子が、カルボン酸基又はその塩でも官能化されており、アミノアルキルエステル基対カルボン酸基又はその塩のモル:モル比が、95:5~5:95の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子が、カルボン酸基又はその塩でも官能化されており、アミノアルキルエステル基対カルボン酸基又はその塩のモル:モル比が、80:20~45:55の範囲である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子が、強プロトン酸基又はその塩を含有するモノマーでも官能化されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記アミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子が、ホスホエチルメタクリレート又はその塩でも官能化されている、請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂とアミン基で官能化されたラテックスとを含む二成分組成物に関する。この組成物は、工業用コーティング用途において基材、特に金属表面をコーティングするのに有用である。
【0002】
工業用途のための二成分水性硬化性組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤、典型的にはポリアミン又はカルボン酸官能化ラテックスを含むが、これは基材に塗布された後のコーティングに硬度を与えるための架橋剤として作用する。カルボン酸官能化アクリルラテックスは、黄変に対する耐性が付随するUV安定コーティングを提供するが、長い硬化時間を必要とし、比較的腐食耐性の劣るコーティングしか形成されない。他方、ポリアミン硬化剤は、急速に硬化し、比較的許容可能な腐食耐性を提供するが、UV耐性が不十分である。
【0003】
したがって、速い硬化時間、耐UV性、及び腐食耐性を提供する配合物を見出すことは、二成分水性エポキシ樹脂組成物の技術分野において有利であろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、a)熱硬化性化合物と、b)以下の種類のアミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子との水性分散液を含む、組成物であって、
【0005】
【化1】
式中、Rが、H又はC
1-C
6アルキルである、組成物を提供することによって、当該技術分野における必要性に対処する。
【0006】
本発明の組成物は、工業用コーティング用途において特に有効な二成分水性硬化系として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、a)熱硬化性化合物と、b)構造Iのアミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子との水性分散液を含む、組成物であって、
【0008】
【化2】
式中、Rが、H又はC
1-C
6アルキルである、組成物である。
【0009】
本明細書で使用するとき、用語「熱硬化性化合物とは、少なくとも2つのオキシラン基で官能化された1つ以上の化合物を指す。好適な熱硬化性化合物のクラスの例としては、エポキシノボラック樹脂、ジ-、トリ-又はテトラグリシジルエーテル、及びジ-、トリ-又はテトラグリシジルエステルが挙げられる。少なくとも2つのオキシラン基を有する化合物の例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、及びエポキシノボラック樹脂、並びにこれらの組み合わせ及びこれらの水性分散液が挙げられる。市販の熱硬化性化合物は、D.E.R.(商標)331 Liquid Epoxy Resin(The Dow Chemical Company又はその関連会社の商標)である。
【0010】
一態様では、熱硬化性化合物は、水中に分散したポリマー粒子(ラテックス粒子)に組み込まれて(吸収されて)、アクリル-エポキシハイブリッド(AEH)を形成する。好ましいAEHでは、熱硬化性化合物は、ラテックス粒子中に完全に又はほぼ完全に組み込まれ、水相中には1重量パーセント未満の遊離熱硬化性化合物しか残らない。好適なラテックスの例としては、アクリル、スチレン-アクリル、スチレン-ブタジエン、ウレタン、エステル、オレフィン、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、及びポリ酢酸ビニルベースのラテックスが挙げられ、アクリル及びスチレン-アクリルラテックスが好ましい。ポリマー粒子は、好ましくは、動的光散乱によって測定したときに、80nmから、好ましくは150nmから、500nmまで、好ましくは350nmまでの範囲の平均粒径を有する。
【0011】
アクリルラテックスの調製に好適なモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、t-ブチルアクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0012】
熱硬化性化合物を組み込むポリマー粒子は、ラテックス粒子が60℃で10日間の熱老化安定性であるように、オキシラン基(及び存在する場合、エステル基)と十分に非反応性である親水性基を指す抗凝集性官能基を含有することを更に特徴とする。用語「60℃で10日間の熱老化安定性」とは、本明細書では、60℃で10日間の熱老化に供されたラテックスの粒径が、そのような熱老化試験前の粒径よりも30%を超えて増加しないことを意味するために使用される。ポリマー粒子に組み込まれる熱硬化性化合物の濃度は、典型的には、熱硬化性化合物及びポリマー粒子の重量に基づいて、15重量パーセントから、又は20重量パーセントから、又は25重量パーセントから、又は30重量パーセントから、60重量パーセントまで、又は55重量パーセントまでの範囲である。
【0013】
抗凝集性官能基は、抗凝集性官能基を含有するモノマー(抗凝集性モノマー)を使用してポリマー粒子に組み込むことができるが、グラフト化によってこのような基を組み込むことも可能である。抗凝集性基は、親水性でありかつ熱老化条件下でオキシラン基と非反応性であるので、有効であると考えられる。このような基の一般的なクラスとしては、アミド基、アセトアセトキシ基、及び4未満のpKaを有する強プロトン酸が挙げられ、これらはpH調整されてそれらの共役塩基を形成する。
【0014】
抗凝集性モノマーの具体例としては、アクリルアミド、ホスホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸ナトリウム、アセトアセトキシエチルメタクリレート、及びアクリルアミド-メチル-プロパンスルホネートが挙げられる。これらのモノマーから形成される対応する抗凝集性官能基(構造単位とも呼ばれる)を以下に例示する。
【0015】
【0016】
点線は、抗凝集性官能性モノマーのポリマーへの結合点を指す。ホスホエチルメタクリレート及びアクリルアミド-メチル-プロパンスルホン酸基は、好ましくは、主にそれらの共役塩基形態(すなわち、塩形態)で存在することに留意すべきである。好ましい抗凝集性基は、ホスホエチルメタクリレート塩基である。
【0017】
ラテックス粒子中の抗凝集性官能基の濃度は、典型的には、ポリマー粒子の重量に基づいて、0.5又は1重量パーセントから、10又は5重量パーセントまでの範囲である。これらの粒子は、濃度がこれらの粒子の熱老化安定性を破壊しないように十分に低いことを条件として、抗凝集性ではないカルボン酸含有官能基を若干含有していてもよい。好ましくは、抗凝集性官能基を有するポリマー粒子中のカルボン酸官能化の濃度は、抗凝集性官能基を有するポリマー粒子の重量に基づいて、5重量パーセント未満、又は3重量パーセント未満、又は1重量パーセント未満である。
【0018】
理論に束縛されるものではないが、抗凝集性基は、基が親水性でありかつ熱老化条件下でエポキシ基に対して非反応性であるので、ポリマーの安定化に有効であると考えられる。抗凝集性基が強プロトン酸基(ホスホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸ナトリウム、及びアクリルアミド-メチル-プロパンスルホネート)を含有するモノマーから生じる場合、ラテックスのpHを多塩基酸(ホスホエチルメタクリレートなど)の最初のpKaよりも高いレベル又は一塩基酸(スチレンスルホン酸及びアクリルアミド-メチル-プロパンスルホン酸など)のpKaよりも高いレベルに調整することによってコロイド安定性及び熱老化安定性が達成されることが見出された。pHが低すぎる場合、酸触媒オキシラン開環がより高いpHで起こる可能性があるので、そのような機構は利用できず、共役塩基は熱老化条件下で非求核性となる。
【0019】
ポリマー粒子の分散体は、有利には、米国特許第8,658,742(B2)号、第8欄、48~67行に記載されているような熱硬化性化合物と組み合わされる。
【0020】
構造Iのアミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子の分散液は、有利には、2つの工程で調製される。第1の工程では、カルボン酸基で官能化されたポリマー粒子(カルボン酸官能化ラテックス)の水性分散液を調製する。カルボン酸官能化ラテックスは、好ましくは、1つ以上のアクリレート及びメタクリレート(上に列挙されたものを含む)の構造単位、及び/又はスチレンに加えて、アクリル酸、メタクリル酸、又はイタコン酸などのカルボン酸モノマーの構造単位を含むアクリルラテックス又はスチレン-アクリルラテックスである。本明細書で使用するとき、指定のモノマーの用語「構造単位」は、重合後のモノマーの残存物を指す。例えば、メタクリル酸の構造単位は、以下のとおりであり、
【0021】
【化3】
式中、点線が、構造単位のポリマー骨格への結合点を表す。
【0022】
第2の工程では、カルボン酸官能化ラテックスを環状イミンと接触させて、構造Iのアミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子の水性分散液を形成し、
【0023】
【化4】
式中、Rが、H又はC
1-C
6アルキル、好ましくは、H又はメチルである。
【0024】
アミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子の分散液(アミノアルキルエステル官能化ラテックス)は、好ましくは、アミノアルキルエステル基及びカルボン酸基又はそれらの塩の両方で官能化され、任意選択で、上記のような強プロトン酸基を含有するモノマーで官能化される。アミノアルキルエステル基対カルボン酸基又はその塩のモル:モル比は、典型的には、95:5から、又は80:20から、5:95まで、又は30:70まで、又は55:45までの範囲である。
【0025】
アミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子の分散液を含む組成物(成分A)を、水性媒体中に分散した熱硬化性化合物又はAEHを含む組成物(成分B)と接触させて、二成分熱硬化性組成物を形成する。成分Aは、不透明化顔料、消泡剤、合体剤、界面活性剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、溶媒、及び着色剤などの他の材料を更に含んでもよい。成分Bは、AEHの形態で使用される場合、成分Aと同じリストから選択される追加の材料を含んでいてもよい。
【0026】
二成分混合物から調製されたコーティングは、アミノアルキルエステル基で官能化されたポリマー粒子を含まない二成分組成物と比較して、優れた腐食耐性及びブリスタ耐性を示すことが見出された。
【実施例】
【0027】
中間体実施例1-アクリル-エポキシハイブリッド分散液の調製
スチレン-アクリルラテックス(固形分46.0%、エチルヘキシルアクリレート/スチレン/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/ホスホエチルメタクリレートラテックス、示差走査熱量測定によって測定したときのTg40℃、動的光散乱によって測定したときのz-平均粒径130nm)を、パドル撹拌機、温度計、N2入口、及び還流冷却器を備えた5Lの四つ口丸底フラスコ(ケトル)に添加した。ラテックスをN2下で60℃に加熱した。DI水(314.53g)、Disponil AFX 4070界面活性剤(70%、120g)、及びD.E.R.331液体エポキシ樹脂(800g)を混合することによってエポキシエマルションを調製した。エマルションをオーバーヘッドスターラーで10分間撹拌し、次いで、Cat X520ハンドヘルドホモジナイザー(16,000rpm)を使用して60秒間ホモジナイズした。エポキシエマルションを2分間かけてケトルに添加し、DI水(234g)ですすいだ。ケトルの内容物を60分間撹拌し、次いで室温に冷却し、濾過して、任意の凝固物を除去した。得られたハイブリッド分散液は、51.9%の固形分、7.2のpH、及び147nmの粒径を有していた。
【0028】
中間体実施例2-カルボン酸官能化ラテックスの分散液の調製
DI水(1363.05g)、Disponil FES-32界面活性剤(FES-32、31%活性、8.82g)、及び4-ヒドロキシ-TEMPO(5%、0.45g)を、パドル撹拌機、温度計、N2入口、及び還流冷却器を備えた5Lの四つ口丸底フラスコ(ケトル)に添加した。ケトルをN2下で85℃に加熱した。DI水(440.64g)、FES-32(31%、44.09g)、2-エチルヘキシルアクリレート(EHA、686.19g)、メチルメタクリレート(MMA、568.80g)、スチレン(451.44g)、及びメタクリル酸(MAA、72.23g)を混合することによって、モノマーエマルション(ME)を調製した。モノマーエマルションの一部(3%、68.45g)をケトルに仕込み、DI水(20g)ですすいだ。過硫酸アンモニウム(APS、40gのDI水中6.36g)の溶液をケトルに添加し、DI水(10g)ですすいだ。発熱が観察され、ピーク温度で5分間保持した。温度を85℃に設定し、最初の20分間は50%の速度で、MEの残りを120分かけてケトルに供給した。同時に、APSの溶液(120gのDI水中2.73g)を、最初の20分間は50%の速度で、120分間にわたって供給した。供給の完了時に、添加容器をDI水(90g)ですすぎ、反応物を70℃に冷却した。冷却しながら、硫酸鉄七水和物(0.15%溶液、12.12g)及びVERSENE(商標)キレート剤(1.0%溶液、1.90g、The Dow Chemical Company又はその関連会社の商標)の溶液をケトルに添加した。70℃で、t-ブチルヒドロペルオキシドのチェイス溶液(t-BHP、70%溶液、40gのDI水中3.13g)を、イソアスコルビン酸の溶液(IAA、40gのDI水中2.19g)と同時に30分かけてケトルに添加した。チェイサー添加の完了後、水酸化アンモニウム(30%、26.50g)の添加によって反応混合物をpH7に中和した。次いで、ケトルの内容物を室温に冷却し、濾過して、任意の凝固物を除去した。得られた分散液は、44.9%の固形分、7.1のpH、及び85nmの粒径を有していた。
【0029】
中間体実施例3-カルボン酸官能化ラテックスの分散液の調製
DI水(1363.05g)、FES-32(31%、8.82g)、及び4-ヒドロキシ-TEMPO(5%、0.45g)を、パドル撹拌機、温度計、N2入口、及び還流冷却器を備えた5Lの四つ口丸底フラスコ(ケトル)に添加した。ケトルをN2下で85℃に加熱した。DI水(440.64g)、FES-32(31%、44.09g)、EHA(704.25g)、MMA(M478.51g)、スチレン(451.44g)、及びMAA(144.46g)を混合することによって、MEを調製した。MEの一部(3%、68.45g)をケトルに仕込み、DI水(20g)ですすいだ。APS(40gのDI水中6.36g)の溶液をケトルに添加し、DI水(10g)ですすいだ。発熱が観察され、ピーク温度で5分間保持した。温度を85℃に設定し、最初の20分間は50%の速度で、MEの残りを120分かけてケトルに供給した。同時に、APSの溶液(120gのDI水中2.73g)を、最初の20分間は50%の速度で、120分間にわたって供給した。供給の完了時に、添加容器をDI水(90g)ですすぎ、反応物を70℃に冷却した。冷却しながら、硫酸鉄七水和物(0.15%溶液、12.12g)及びVERSENE(商標)キレート剤(1.0%溶液、1.90g)の溶液をケトルに添加した。70℃で、t-BHPのチェイス溶液、70%溶液、40gのDI水中3.13g)を、IAAの溶液(40gのDI水中2.19g)と同時に30分かけてケトルに添加した。チェイサー添加の完了後、水酸化アンモニウム(30%、24.50g)を添加することによって反応混合物をpH7に中和した。次いで、ケトルの内容物を室温に冷却し、濾過して、任意の凝固物を除去した。得られた分散液は、44.7%の固形分、7.0のpH、及び84nmの粒径を有していた。
【0030】
中間体実施例4-アミン官能化ラテックス(50:50)の分散液の調製
中間体実施例2(1000g、0.209molのMAA)を、撹拌機、温度計、凝縮器、及び添加漏斗を備えた反応器に仕込んだ。プロピレンイミン(19.85g、水中30重量%、0.104mol)を、25℃で撹拌しながら反応器に10分かけて添加した。混合物を30分かけて50℃に加熱し、反応温度を50℃で60分間維持した。次いで、反応器の温度を80℃に上昇させ、この温度で60分間維持した。次いで、反応器を25℃に徐々に冷却した。分散生成物は、アミン対カルボン酸官能基のモル:モル比が50:50であり、固形分は44.6%であった。
【0031】
中間体実施例5-アミン官能化ラテックス(75:25)の分散液の調製
29.77gのプロピレンイミンを使用したことを除いて、中間体4の調製プロセスを繰り返した。分散生成物は、アミン対カルボン酸官能基のモル:モル比が75:25であり、固形分は44.4%であった。
【0032】
中間体実施例6-アミン官能化ラテックス(50:50)の分散液の調製
中間体実施例3(1000g、0.209molのMAA)を、撹拌機、温度計、凝縮器、及び添加漏斗を備えた反応器に仕込んだ。プロピレンイミン(39.57g、水中30重量%、0.104mol)を、25℃で撹拌しながら反応器に10分かけて添加した。混合物を30分かけて50℃に加熱し、反応温度を50℃で60分間維持した。次いで、反応器の温度を80℃に上昇させ、この温度で60分間維持した。次いで、反応器を25℃に徐々に冷却した。分散生成物は、アミン対カルボン酸官能基のモル:モル比が50:50であり、固形分は44.2%であった。
【0033】
表1は、中間体2及びそのアミン官能化誘導体(中間体4及び5)を使用する二成分配合物を示す。中間体2(アミン官能化なし)を含有するパートA配合物は、比較例1及び2である。中間体4を含有するパートA配合物は、実施例1及び2であり、中間体実施例5を含有するパートA配合物は、実施例3である。
【0034】
【0035】
脱気剤は、Tego Airex 902w脱気剤を指し、グリコールエーテルは、DOWANOL(商標)DPnBグリコールエーテルを指し、合体剤は、Optifilm 400合体剤を指し、界面活性剤は、TRITON(商標)HW1000界面活性剤を指し、レオロジー調整剤は、ACRYSOL(商標)RM-12Wレオロジー調整剤を指し、接着促進剤は、XIAMETER(商標)OFS-6020接着促進剤を指す(DOWANOL、TRITON、ACRYSOL、及びXIAMETERは全て、Dow Chemical Company又はその関連会社の商標である)。顔料粉砕物Aは、表2に示す成分を混合することによって調製される。
【0036】
【0037】
消泡剤は、Tego Foamex 1488消泡剤を指し、分散剤は、TAMOL(商標)681分散剤を指し、TiO2は、Ti-Pure R-706 TiO2を指す。
【0038】
表3は、中間体3及びそのアミン官能化誘導体(中間体6)を使用する二成分配合物を示す。中間体3(アミン官能化なし)を含有するパートA配合物は、比較例3及び4である。中間体6を含有するパートA配合物は、実施例4及び5である。
【0039】
【0040】
塩水噴霧腐食耐性
塩水噴霧耐性を実施するために、ASTM法B117 4を使用した。この試験は、コーティングされたパネルを希釈塩溶液噴霧に曝露することによってコーティングの腐食耐性を判定するように設計されている。リン酸塩処理されたスチールパネル上に2~3ミルの乾燥コーティング厚さのコーティングを塗布し、試験前に少なくとも7日間、周囲条件下で硬化させた。最初に、硬化したコーティングされたパネルの裏側及び縁にテープを巻き、「X」字型の切り込みをコーティングを貫通して基材まで刻みつけた。次いで、パネルを塩水噴霧チャンバ内で露出した。各配合物について、500時間曝露した後に2枚のコーティングされたパネルを評価した。ASTM D714を使用して、フィールドブリスタ及びスクライブブリスタを測定した。ブリスタ評点について、数字は、0~10のブリスタのサイズスケールを示し、ここで、10はブリスタ形成がないことを表し、0はブリスタ形成が最も多いことを表す。8の評点は、肉眼で容易に視認できる最小ブリスタサイズを表す。ブリスタ評点における添え字は、以下のように発生頻度を示す:D=密、MD=中等度の密、M=中等度、F=わずか。ASTM D610を使用して腐食耐性を測定した。評点の数字は、パネルの刻みのついていない領域上のスポット錆のレベルを示し、10はスポット錆がないことを表し、0は最も錆が多いことを表す。表4は、表1の実施例及び比較例の配合物から調製されたコーティングについての塩水噴霧評点を示す。
【0041】
【0042】
表5は、表3の実施例及び比較例の配合物から調製されたコーティングについての塩水噴霧評点を示す。
【0043】
【0044】
データは、アミン官能化結合剤を含有する配合物について、フィールド腐食、特にフィールドブリスタ及びスクライブブリスタに改善が見られることを示す。
【国際調査報告】