(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】色素体ゲノムを改変するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240822BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240822BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240822BHJP
A01H 6/46 20180101ALI20240822BHJP
A01H 6/54 20180101ALI20240822BHJP
A01H 6/82 20180101ALI20240822BHJP
A01H 6/60 20180101ALI20240822BHJP
C12N 5/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/63 Z ZNA
C12N5/10
A01H6/46
A01H6/54
A01H6/82
A01H6/60
C12N5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509034
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022075022
(87)【国際公開番号】W WO2023023516
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】イェ,シュドン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA47
(57)【要約】
色素体ゲノム編集、ならびに編集された色素体ゲノムを含む植物、植物細胞、植物部分、及び種子の開発ための方法が提供される。色素体ゲノムの形質転換のための組成物がさらに提供される。具体的には、色素体ゲノムは、標的化された内在性色素体ゲノム配列の、標的色素体配列の改変形態への置き換えを含むように改変され、ここで、改変色素体ゲノム配列は、標的化された内在性色素体ゲノム配列との相同性を計画的に低下し、場合によっては、1つまたは複数の変異を含有するタンパク質をコードするように設計されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素体ゲノムを改変する方法であって、
a.組換え核酸分子を植物細胞に導入することであって、前記組換え核酸分子が、5’から3’に向かって、
i.第1の内在性色素体ゲノム配列と相同な第1の相同配列、
ii.標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む改変配列、及び
iii.第2の内在性色素体ゲノム配列と相同な第2の相同配列
を含み、前記標的色素体配列が、前記植物細胞の色素体ゲノムにおいて、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と前記第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、前記導入することと、
b.前記植物細胞の前記色素体ゲノムにおける前記標的色素体配列を前記改変配列に置き換えるような相同組換えを生じさせることと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記改変配列が、前記標的色素体配列に対する少なくとも第2のサイレント変異を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記改変配列が、前記標的色素体配列に対する少なくとも1つの機能変異を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記改変配列が、前記標的色素体配列に対する少なくとも第2の機能変異を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記改変配列が、前記標的色素体配列と少なくとも30%同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の相同配列が、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の相同配列が、前記第2の内在性色素体ゲノム配列と同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記標的色素体配列が、色素体遺伝子の少なくとも一部分、または前記色素体遺伝子の少なくとも一部分と相補的な配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組換え核酸分子が、前記第1の相同配列と前記第2の相同配列との間に選択マーカー遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記選択マーカー遺伝子が、nptII、aph IV、aadA、aac3、aacC4、bar、pat、DMO、EPSPS、及びaroAからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組換え核酸分子が、前記第1の相同配列と前記第2の相同配列との間にターミネーター配列をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組換え核酸分子が、前記第1の相同配列と前記第2の相同配列との間にプロモーター配列をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記植物細胞が単子葉植物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記単子葉植物細胞が、トウモロコシ細胞、イネ細胞、コムギ細胞、オオムギ細胞、またはサトウキビ細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記植物細胞が双子葉植物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記双子葉植物細胞が、ダイズ細胞、アルファルファ細胞、ワタ細胞、トマト細胞、Arabidopsis細胞、またはキャノーラ細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
c.前記改変配列を含む形質転換植物細胞を選択するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記選択するステップが、前記形質転換植物細胞を分子技法に基づいて選択することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記選択するステップが、前記形質転換植物細胞を、前記形質転換植物細胞の前記色素体ゲノムにおける前記改変配列によって引き起こされた表現型変化に基づいて選択することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
c.形質転換植物細胞から形質転換植物を再生すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
植物細胞における標的色素体配列を置き換えるためのベクターであって、前記プラスミドベクターが、5’から3’の順に、
i.第1の相同配列であって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同である、前記第1の相同配列、
ii.改変配列であって、前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、前記改変配列、及び
iii.第2の相同配列であって、第2の内在性色素体ゲノム配列と相同である、前記第2の相同配列
を含む組換え核酸分子を含み、前記標的色素体配列が、前記植物細胞の色素体ゲノムにおいて、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と前記第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、前記ベクター。
【請求項22】
色素体ゲノム中に改変配列を含む、請求項1に記載の方法によって作製されるトランスジェニック植物細胞。
【請求項23】
色素体ゲノムを改変する方法であって、
a.組換え核酸分子を植物細胞に導入することであって、前記組換え核酸分子が、5’から3’に向かって、
i.第1の内在性色素体ゲノム配列と相同な第1の相同配列、
ii.1,000ヌクレオチドごとに標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む改変配列、及び
iii.第2の内在性色素体ゲノム配列と相同な第2の相同配列
を含み、前記標的色素体配列が、前記植物細胞の色素体ゲノムにおいて、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と前記第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、前記導入することと、
b.前記植物細胞の前記色素体ゲノムにおける前記標的色素体配列を前記改変配列に置き換えるような相同組換えを生じさせることと
を含む、前記方法。
【請求項24】
前記改変配列が、500ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記改変配列が、250ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
植物細胞における標的色素体配列を置き換えるためのベクターであって、前記プラスミドベクターが、5’から3’の順に、
i.第1の相同配列であって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同である、前記第1の相同配列、
ii.改変配列であって、1,000ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、前記改変配列、及び
iii.第2の相同配列であって、第2の内在性色素体ゲノム配列と相同である、前記第2の相同配列
を含む組換え核酸分子を含み、前記標的色素体配列が、前記植物細胞の色素体ゲノムにおいて、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と前記第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、前記ベクター。
【請求項27】
前記改変配列が、500ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、請求項26に記載のベクター。
【請求項28】
前記改変配列が、250ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、請求項26に記載のベクター。
【請求項29】
色素体ゲノム中に改変配列を含む、請求項23に記載の方法によって作製されるトランスジェニック植物細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2021年8月17日に出願された米国仮出願第63/233,921号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、農業バイオテクノロジーの分野、より具体的には、色素体におけるゲノム編集のための方法及び組成物に関する。
【0003】
配列表の組み込み
2022年8月15日に作成された、35,989バイト(MS-Windows(登録商標)において測定)の「MONS498WO.xml」という名前のファイルに含有される配列表は、本明細書と共に電子的に出願され、その全体が参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
遺伝子編集は作物開発における重要なツールとなっており、部位特異的ヌクレアーゼを使用して植物核ゲノムを編集するための方法が開発されている。しかしながら、植物色素体ゲノム上に位置する遺伝子を編集する取り組みは、著しい成功を収めていない。色素体ゲノム編集は、典型的には、2つの所定の色素体ゲノム配列の間への目的の導入遺伝子の挿入を導く相同組換えに依存する。高色素体コピー数及び相同性が高い配列間で生じる広範な組換えと組み合わされた、非常に活性な色素体DNA修復系のために、色素体ゲノム配列に点変異を効率的に導入することは、これまで可能ではなかった。このため、色素体ゲノム配列への点変異の効率的な導入を可能にする方法を開発する必要性が当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、色素体ゲノムを改変する方法であって、a.組換え核酸分子を植物細胞に導入することであって、組換え核酸分子が、5’から3’に向かって、i.第1の内在性色素体ゲノム配列と相同な第1の相同配列、ii.標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む改変配列、及びiii.第2の内在性色素体ゲノム配列と相同な第2の相同配列を含み、標的色素体配列が、植物細胞の色素体ゲノムにおいて、第1の内在性色素体ゲノム配列と第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、導入することと、b.植物細胞の色素体ゲノムにおける標的色素体配列を改変配列に置き換えるような相同組換えを生じさせることとを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、改変配列は、標的色素体配列に対する少なくとも第2、第3、第4、第5、第6、7つ、8つ、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、または第20のサイレント変異を含む。他の実施形態では、改変配列は、標的色素体配列に対する少なくとも1つの機能変異を含む。ある特定の実施形態では、改変配列は、標的色素体配列に対する少なくとも第2、第3、第4、第5、第6、7つ、8つ、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、または第20の機能変異を含む。特定の実施形態では、改変配列は、標的色素体配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。他の実施形態では、改変配列は、標的色素体配列と30%未満、35%未満、40%未満、45%未満、50%未満、55%未満、60%未満、65%未満、70%未満、75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、または95%未満同一である。
【0006】
一部の実施形態では、第1の相同配列は、第1の内在性色素体ゲノム配列と本質的に同一である。他の実施形態では、第2の相同配列は、第2の内在性色素体ゲノム配列と本質的に同一である。追加の実施形態では、標的色素体配列は、色素体遺伝子の少なくとも一部分、または色素体遺伝子の少なくとも一部分と相補的な配列を含む。一部の実施形態では、組換え核酸分子は、第1の相同配列と第2の相同配列との間に選択マーカー遺伝子をさらに含む。ある特定の実施形態では、選択マーカー遺伝子は、nptII、aph IV、aadA、aac3、aacC4、bar、pat、DMO、EPSPS、及びaroAからなる群から選択される。他の実施形態では、組換え核酸分子は、第1の相同配列と第2の相同配列との間にターミネーター配列をさらに含む。さらに他の実施形態では、組換え核酸分子は、第1の相同配列と第2の相同配列との間にプロモーター配列をさらに含む。
【0007】
一部の実施形態では、方法の植物細胞は単子葉植物細胞である。ある特定の実施形態では、単子葉植物細胞は、トウモロコシ(corn)細胞、イネ細胞、コムギ細胞、オオムギ細胞、またはサトウキビ細胞である。他の実施形態では、方法の植物細胞は双子葉植物細胞である。特定の実施形態では、双子葉植物細胞は、ダイズ細胞、アルファルファ細胞、ワタ細胞、トマト細胞、Arabidopsis細胞、またはキャノーラ細胞である。
【0008】
追加の実施形態では、方法は、c.改変配列を含む形質転換植物細胞を選択するステップをさらに含む。さらなる実施形態では、選択するステップは、形質転換植物細胞を分子技法に基づいて選択することを含む。さらなる実施形態では、選択するステップは、形質転換植物細胞を、形質転換植物細胞の色素体ゲノムにおける改変配列によって引き起こされた表現型変化に基づいて選択することを含む。さらなる実施形態では、選択するステップは、形質転換植物細胞を、形質転換植物細胞の色素体ゲノムにおける改変配列の存在に基づいて選択することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、c.形質転換植物細胞から形質転換植物を再生することをさらに含む。
【0009】
本開示はまた、植物細胞における標的色素体配列を置き換えるためのベクターであって、当該プラスミドベクターが、5’から3’の順に、i.第1の相同配列であって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同である、第1の相同配列、ii.改変配列であって、標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、改変配列、及びiii.第2の相同配列であって、第2の内在性色素体ゲノム配列と相同である、第2の相同配列を含む組換え核酸分子を含み、標的色素体配列が、植物細胞の色素体ゲノムにおいて、第1の内在性色素体ゲノム配列と第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、ベクターを提供する。
【0010】
本開示は、色素体ゲノムを改変する方法であって、a.組換え核酸分子を植物細胞に導入することであって、組換え核酸分子が、5’から3’に向かって、i.第1の内在性色素体ゲノム配列と相同な第1の相同配列、ii.1,000ヌクレオチドごとに標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む改変配列、及びiii.第2の内在性色素体ゲノム配列と相同な第2の相同配列を含み、標的色素体配列が、植物細胞の色素体ゲノムにおいて、第1の内在性色素体ゲノム配列と第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、導入することと、b.植物細胞の色素体ゲノムにおける標的色素体配列を改変配列に置き換えるような相同組換えを生じさせることとを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、改変配列は、500ヌクレオチドごとに標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む。他の実施形態では、改変配列は、250ヌクレオチドごとに標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む。
【0011】
本開示はまた、植物細胞における標的色素体配列を置き換えるためのベクターであって、当該プラスミドベクターが、5’から3’の順に、i.第1の相同配列であって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同である、第1の相同配列、ii.改変配列であって、1,000ヌクレオチドごとに標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、改変配列、及びiii.第2の相同配列であって、第2の内在性色素体ゲノム配列と相同である、第2の相同配列を含む組換え核酸分子を含み、標的色素体配列が、植物細胞の色素体ゲノムにおいて、第1の内在性色素体ゲノム配列と第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、ベクターを提供する。ある特定の実施形態では、改変配列は、500ヌクレオチドごとに標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む。他の実施形態では、改変配列は、250ヌクレオチドごとに標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む。他の実施形態では、改変配列は、3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81、84、87、90、93、96、99、102、105、108、111、114、117、120、123、126、129、132、135、138、141、144、147、150、153、156、159、162、165、168、171、174、177、180、183、186、189、192、195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、または249ヌクレオチドごとに標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む。本明細書に記載される方法によって作製され、色素体ゲノム中に改変配列を含むトランスジェニック植物細胞もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】様々なRNAトリプレットがどのアミノ酸をコードするかを明示するRNAコドン表を示す。コドンの隣の上付き数字は、各コドンが未改変(native)ダイズrbcLコード配列(配列番号1)に生じる頻度を示す。
【
図2】野生型ダイズrbcL遺伝子(上)及びコドン改変ダイズrbcL遺伝子配列(下)の配列アラインメントを示す。改変rbcL配列と隣接する相同アームは高い相同性を示すが、改変rbcL配列は、コドン改変のために低い相同性を示す。
【
図3】相同組換えを介して未改変ダイズrbcL遺伝子を置き換えるために使用した組換えDNA構築物の設計を示す。色素体ゲノムとDNA構築物との間の相同組換えに関する潜在的な領域は、構築物と野生型(WT)色素体配列との間の実線の「X」線によって表される。「aptB」は、未改変rbcL配列の上流に位置するaptB遺伝子の連続配列を表す。「P」は、未改変rbcLプロモーター配列を表し、「T」は、未改変rbcLターミネーター配列を表す。「Trnk-matK」は、未改変rbcL配列の下流の領域の連続配列を表し、Trnk-matKをコードする。
【
図4】改変rbcL置き換え(mrbcL)を同定するために使用した様々なPCRプライマーの配置を示す。使用したプライマーとしては、プライマー3615(配列番号12)、プライマー3620(配列番号13)、プライマー2980(配列番号14)、及びプライマー3622(配列番号15)が挙げられる。
【
図5A】遺伝子置き換え事象の検出に関するPCR結果を示す。E6G-N95Q及びE6G-P89G rbcLに関する遺伝子置き換え事象の同定を示す。
【
図5B】遺伝子置き換え事象の検出に関するPCR結果を示す。コドン最適化(CM)rbcLに関する遺伝子置き換え事象の同定を示す。
【0013】
配列の簡単な説明
配列番号1は、RuBisCO大サブユニットをコードする野生型ダイズrbcL遺伝子のDNA配列である。
【0014】
配列番号2は、配列番号1によってコードされるダイズRuBisCO大サブユニットのアミノ酸配列である。
【0015】
配列番号3は、コドン改変rbcL遺伝子のDNA配列である。
【0016】
配列番号4は、ダイズ色素体ゲノムにおけるrbcL遺伝子の上流の領域に対応する5’相同配列のDNA配列である。
【0017】
配列番号5は、ダイズ色素体ゲノムにおけるrbcL遺伝子の下流の領域に対応する3’相同配列のDNA配列である。
【0018】
配列番号6は、未改変ダイズrbcL遺伝子プロモーター配列のDNA配列である。
【0019】
配列番号7は、未改変ダイズrbcL遺伝子ターミネーター配列のDNA配列である。
【0020】
配列番号8は、変異E6G-P89G RuBisCO大サブユニットをコードするDNA配列である。
【0021】
配列番号9は、配列番号8によってコードされる変異E6G-P89G RuBisCO大サブユニットのアミノ酸配列である。
【0022】
配列番号10は、変異E6G-N95Q RuBisCO大サブユニットをコードするDNA配列である。
【0023】
配列番号11は、配列番号10によってコードされる変異E6G-N95Q RuBisCO大サブユニットのアミノ酸配列である。
【0024】
配列番号12~配列番号15は、形質転換事象の検出のためのPCRプライマー配列である。
【0025】
配列番号16は、5’及び3’相同配列と隣接する野生型ダイズrbcL遺伝子のDNA配列である。
【0026】
配列番号17は、5’及び3’相同配列と隣接するコドン改変ダイズrbcL遺伝子配列のDNA配列である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
近年、遺伝子編集は作物開発における重要なツールとなっている。遺伝子編集は、植物ゲノムに対する正確な標的化された変化を可能にし、その範囲は、一塩基変更から特定のゲノム位置における全外来遺伝子の挿入に及ぶ。非相同末端結合(NHEJ)DNA修復またはDNAオリゴ/鋳型媒介交換は、核ゲノム編集に効果的に使用されている。
【0028】
しかしながら、植物における呼吸、光合成、及び発育に関与するいくつかの遺伝子は、核ゲノムではなく色素体ゲノム上に見出される。研究者らは、長年かけて、特定の点変異を植物色素体ゲノム上に位置する遺伝子に導入する試みを行っているが、著しい成功を収めていない。これは、改変配列を導入するために使用されるプラスミドベクター内の未改変色素体配列を伴う相同組換えに起因すると考えられる。葉緑体ゲノムは、天然に高いレベルの組換え活性を有し、相同組換え修復を利用する色素体DNA修復系は、そのゲノム中に見出される変異の修正に関して厳格であると考えられている。これは、単一植物細胞内における色素体の多くのコピーの存在、及び相同性が高い配列間で生じる広範な組換えに起因する。実際、標的化された点変異を色素体ゲノムに維持するために選択マーカーが利用される場合であっても、組換えによって点変異と導入された選択マーカー遺伝子とが分離し、それによって、成功した形質転換体の選択が困難になる可能性がある。これらの理由の全てのために、色素体ゲノム上に位置する遺伝子への点変異の導入は困難で時間がかかることが証明されている。
【0029】
これらの制限に対処するために、本開示は、色素体ゲノムを編集する改良された方法を提供する。ある特定の実施形態では、色素体ゲノムにおける所望の遺伝子に1つまたは複数の標的化された点変異を確実に生成するための手法が提供される。例えば、本開示は、色素体ゲノムにおける内在性標的色素体配列を、内在性標的色素体配列との相同性を低下するように設計された改変配列に置き換えるための方法を提供する。改変配列は、1つまたは複数のサイレント変異を含むことができ、その結果、改変核酸配列は、同じかまたは類似したアミノ酸配列を依然としてコードする一方で、標的色素体配列に対して低い配列同一性を有する。対応する内在性配列に対する改変配列の低下した相同性は、改変配列が色素体DNA修復系によって修復される可能性を低下させ、したがって編集効率を高める。
【0030】
一部の実施形態では、改変配列は、1つまたは複数の同義コドン置換(サイレント変異)を含むことに加えて、1つまたは複数の非同義コドン置換(機能変異)を含んでもよく、したがって、内在性標的配列によってコードされるアミノ酸配列と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換を有するタンパク質をコードし得る。一部の実施形態では、葉緑体形質転換を介した改変配列の送達を容易にするために、改変配列は組換えDNA分子に含まれる。組換えDNA分子は、標的細胞の色素体またはプラストミック(plastomic)DNA分子またはゲノム中の特定の標的部位または座位における相同組換えを可能にするために、改変配列と隣接する少なくとも第1の相同配列及び第2の相同配列を含み得る。改変配列は、内在性標的色素体配列と比較的低い相同性を有し得るが、相同アームのそれぞれは、対応する色素体ゲノム配列と高い相同性を有することができる。一部の実施形態では、相同アームは、対応する色素体ゲノム配列と完全に相同または100%同一であり得る。一部の実施形態では、相同アームは、対応する色素体ゲノム配列と実質的に相同または95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは99.9%以上同一であり得る。この構成は、色素体形質転換効率を向上させ、内在性標的配列が改変配列で置き換えられる可能性を高めると同時にさらなる変異の導入を回避する。ある特定の実施形態では、組換えDNA分子はまた、形質転換体の選択を容易にするために選択マーカー遺伝子を含む。マーカー遺伝子もまた、左側の相同配列と右側の相同配列との間に位置し得る。2つの隣接領域を介した組換えDNA分子と色素体ゲノムとの間の相同組換えは、内在性標的配列を改変配列に完全に置き換えると同時に、マーカー遺伝子を色素体ゲノムに導入することができる。開示される方法は、任意の内在性色素体配列の効率的な置き換えを可能にするため、当技術に対する著しい利点を表す。一部の実施形態では、内在性標的配列はコード配列である。一部の実施形態では、内在性標的配列は非コード配列である。一部の実施形態では、内在性標的配列は、エンハンサー配列、イントロン配列、エクソン配列、ターミネーター配列、プロモーター配列、及び/またはエンハンサー配列である。
【0031】
I.植物におけるゲノム編集
ゲノム編集技法は、改良された作物種の開発における重要なツールとなっている。ゲノム編集は、ゲノムにおける特定の標的に対する正確な改変を可能にし、典型的には、細胞自身のDNA修復機構を利用して、所望の改変を行う。植物細胞では、内在性DNA修復系は、相同組換え及び非相同末端結合(NHEJ)を介して機能して、DNAを修復する。相同組換えは、2つの核酸分子によって共有されている保存領域におけるヌクレオチドの交換を伴い、NHEJは、単に2つの核酸を互いに結合する。NHEJを介して導入される標的化された改変は、典型的には未成熟終止コドン及び/またはフレームシフト変異である。
【0032】
相同組換えは、ドナー配列の使用を介して遺伝子の挿入または置き換えを含有させるようにゲノムを改変するために使用することができる。ドナーポリヌクレオチドを植物ゲノムに導入するかまたは植物のゲノムDNAを改変するための方法の例としては、配列特異的ヌクレアーゼ、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ、操作もしくは未改変メガヌクレアーゼ、TALEエンドヌクレアーゼ、またはRNA誘導エンドヌクレアーゼ(例えば、I型の、クラスター化され規則的に間隔の空いた短い回文繰り返し配列(CRISPR)-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム(例えば、Cas9システム)、III型CRISPR-Casシステム、IV型CRISPR-Casシステム、V型CRISPR-Casシステム(例えば、Cas12a(Cpf1)システム、Cas12bシステム、Cas12c(C2c3)システム、Cas12d(CasY)システム、Cas12e(CasX)システム、Cas12gシステム、Cas12hシステム、Cas12iシステム、C2c1システム、C2c4システム、C2c5システム、C2c8システム、C2c9システム、C2c10システム、Cas14aシステム、Cas14bシステム、Cas14cシステムなど)、VI型CRISPR-Casシステム)の使用が挙げられる。一部の実施形態は、Sauer et al.(Plant Physiol.2016 Apr;170(4):1917-1928)に記載されているような、一本鎖オリゴヌクレオチドを使用して正確な塩基対改変を植物ゲノムに導入するゲノム編集の方法に関するが、ゲノム編集を使用してゲノムDNAを改変するか、欠失させるか、または核酸配列をゲノムDNAに挿入する方法は、当技術分野で周知である。ゲノム編集は、植物育種プログラムにおいて貴重なツールとなる可能性を有するが、作物開発におけるその使用は、所望のゲノム改変を含む植物を作製及び同定するために必要とされる時間及び費用によって制限されている。さらに、植物の発育及び光合成プロセスに重要な多数の遺伝子(したがって改変に望ましい標的)は、色素体ゲノムによってコードされている。したがって、色素体ゲノム改変の方法に対する必要性が存在する。具体的には、色素体ゲノムにおける標的化された部位に特定の点変異を導入するための、または内在性色素体配列(例えば遺伝子)を同じ配列の改変形態に置き換えるための効率的な方法は存在しない。このことに対処するために、本開示は、コード配列または標的化された配列によってコードされるアミノ酸に1つまたは複数の点変異を作出するために使用することができる、単一ステップでの、色素体ゲノムにおける効率的な標的化された配列置き換えのための新規方法を提供する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「内在性」または「未改変」遺伝子とは、所与の生物、細胞、組織、ゲノム、または染色体内を起源とし、ヒトによる行為によって以前に改変されなかった遺伝子を指す。同様に、「内在性タンパク質」とは、内在性遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、内在性色素体配列を「置き換えること」は、色素体ゲノムにおいて、特定の内在性色素体配列をその配列の改変形態に交換することを含む。
【0035】
本明細書で使用する場合、植物、種子、植物成分、植物細胞、及び植物ゲノムの文脈における「改変(modified)」とは、天然または未改変状態からの変化または変動を含有する状態を指す。例えば、遺伝子の「未改変転写物」とは、改変されていない遺伝子から生成されるRNA転写物を指す。典型的には、未改変転写物はセンス転写物である。改変植物または種子は、遺伝的または後成的改変のいずれかを含む、それらの遺伝物質における分子変化を含有する。典型的には、改変植物もしくは種子、またはその親もしくは祖先株は、変異誘発、ゲノム編集(例えば、限定されないが、相同組換えを使用する方法を介した)、遺伝子形質転換(例えば、限定されないが、葉緑体形質転換または微粒子銃の方法を介した)、またはそれらの組み合わせに供されている。
【0036】
本明細書で使用する場合、「改変配列(modified sequence)」は、色素体ゲノムにおける標的色素体配列を置き換えるポリヌクレオチド配列を含む。ある態様では、改変配列は、内在性標的配列に対する1つまたは複数の同義コドン置換を含む。別の態様では、同義コドンは、コドンが内在性配列に現れる頻度に基づいて選択される。「改変配列」は、内在性配列と比較して1つまたは複数のサイレント変異、機能変異、置換、欠失、または挿入を有する配列を指す場合がある。ある特定の例では、「改変配列」は、内在性色素体ゲノム配列と比較して1つまたは複数のサイレント変異を有する配列を指す。「改変配列」は、内在性色素体ゲノム配列と比較して1つまたは複数の機能変異を有してもよい。「改変配列」はまた、内在性色素体ゲノム配列と比較して1つまたは複数のサイレント変異と1つまたは複数の機能変異とを有してもよい。
【0037】
一態様では、タンパク質をコードする核酸分子に対する改変は、内在性タンパク質と比較して少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、または少なくとも100の変異を有する改変配列をもたらす。別の態様では、核酸分子に対する改変は、改変されていない核酸分子と比較して少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、または少なくとも10,000ヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、核酸分子に対する改変は、改変されていない核酸分子と比較して少なくとも3ヌクレオチドごと、少なくとも6ヌクレオチドごと、少なくとも9ヌクレオチドごと、少なくとも12ヌクレオチドごと、少なくとも15ヌクレオチドごと、少なくとも18ヌクレオチドごと、少なくとも21ヌクレオチドごと、少なくとも24ヌクレオチドごと、少なくとも27ヌクレオチドごと、少なくとも30ヌクレオチドごと、少なくとも33ヌクレオチドごと、少なくとも36ヌクレオチドごと、少なくとも39ヌクレオチドごと、少なくとも42ヌクレオチドごと、少なくとも45ヌクレオチドごと、少なくとも48ヌクレオチドごと、少なくとも51ヌクレオチドごと、少なくとも54ヌクレオチドごと、少なくとも57ヌクレオチドごと、少なくとも60ヌクレオチドごと、少なくとも63ヌクレオチドごと、少なくとも66ヌクレオチドごと、少なくとも69ヌクレオチドごと、少なくとも72ヌクレオチドごと、少なくとも75ヌクレオチドごと、少なくとも78ヌクレオチドごと、少なくとも81ヌクレオチドごと、少なくとも84ヌクレオチドごと、少なくとも87ヌクレオチドごと、少なくとも90ヌクレオチドごと、少なくとも93ヌクレオチドごと、少なくとも96ヌクレオチドごと、少なくとも99ヌクレオチドごと、少なくとも102ヌクレオチドごと、少なくとも105ヌクレオチドごと、少なくとも108ヌクレオチドごと、少なくとも111ヌクレオチドごと、少なくとも114ヌクレオチドごと、少なくとも117ヌクレオチドごと、少なくとも120ヌクレオチドごと、少なくとも123ヌクレオチドごと、少なくとも126ヌクレオチドごと、少なくとも129ヌクレオチドごと、少なくとも132ヌクレオチドごと、少なくとも135ヌクレオチドごと、少なくとも138ヌクレオチドごと、少なくとも141ヌクレオチドごと、少なくとも144ヌクレオチドごと、少なくとも147ヌクレオチドごと、少なくとも150ヌクレオチドごと、少なくとも153ヌクレオチドごと、少なくとも156ヌクレオチドごと、少なくとも159ヌクレオチドごと、少なくとも162ヌクレオチドごと、少なくとも165ヌクレオチドごと、少なくとも168ヌクレオチドごと、少なくとも171ヌクレオチドごと、少なくとも174ヌクレオチドごと、少なくとも177ヌクレオチドごと、少なくとも180ヌクレオチドごと、少なくとも183ヌクレオチドごと、少なくとも186ヌクレオチドごと、少なくとも189ヌクレオチドごと、少なくとも192ヌクレオチドごと、少なくとも195ヌクレオチドごと、少なくとも198ヌクレオチドごと、少なくとも201ヌクレオチドごと、少なくとも204ヌクレオチドごと、少なくとも207ヌクレオチドごと、少なくとも210ヌクレオチドごと、少なくとも213ヌクレオチドごと、少なくとも216ヌクレオチドごと、少なくとも219ヌクレオチドごと、少なくとも222ヌクレオチドごと、少なくとも225ヌクレオチドごと、少なくとも228ヌクレオチドごと、少なくとも231ヌクレオチドごと、少なくとも234ヌクレオチドごと、少なくとも237ヌクレオチドごと、少なくとも240ヌクレオチドごと、少なくとも243ヌクレオチドごと、少なくとも246ヌクレオチドごと、または少なくとも249ヌクレオチドごとにヌクレオチドの置換を含む。一部の実施形態では、「改変(modification)」は、核酸配列における「C」、「G」または「T」の「A」への置換を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列における「A」、「G」または「T」の「C」への置換を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列における「A」、「C」または「T」の「G」への置換を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列における「A」、「C」または「G」の「T」への置換を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列における「U」の「C」への置換を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列における「A」の「G」への置換を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列における「G」の「A」への置換を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列における「C」の「T」への置換を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列における1つまたは複数のヌクレオチドの欠失を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列への1つまたは複数のヌクレオチドの挿入を含む。一部の実施形態では、「改変」は、核酸配列における1つまたは複数のヌクレオチドの重複を含む。
【0038】
本明細書で使用する場合、「同義」改変とは、同じアミノ酸をコードするコドンをもたらす一塩基変化を指す。本明細書で使用する場合、「非同義」改変とは、異なるアミノ酸をコードするコドンをもたらす一塩基変化を指す。例えば、コドン「CGU」は、アルギニンアミノ酸をコードする。同義改変によってUがAに変化し、「CGA」コドンを生成する場合、このコドンは依然としてアルギニンアミノ酸をコードする。非同義改変によってGがUに変化し、「CUU」コドンを生成する場合、このコドンは、今度はロイシンアミノ酸をコードする。ある態様では、本明細書に記載される改変配列は、色素体ゲノムにおける内在性標的配列と比較して1つまたは複数の同義改変を含む。
【0039】
いくつかの実施形態は、本明細書に開示される方法によって作製される植物細胞、植物組織、植物種子、及び植物に関する。植物は、単子葉であっても双子葉であってもよく、例えば、イネ、コムギ、オオムギ、エンバク、ライムギ、ソルガム、メーズ(maize)、グレープ、トマト、トウガラシ、ジャガイモ、レタス、ブロッコリー、キュウリ、ピーナッツ、メロン、リーキ、タマネギ、ダイズ、アルファルファ、ヒマワリ、ワタ、キャノーラ、及びテンサイ植物を挙げることができる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「植物」とは、全植物を指す。植物に由来する細胞または組織培養物は、任意の植物部分もしくは植物器官(例えば、葉、茎、根など)、植物組織、種子、植物細胞、及び/またはそれらの子孫を含むことができる。子孫植物は、任意の雑種世代、例えば、F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7などであり得る。植物細胞は、植物から取得されたかまたは植物から取得された細胞の培養によって得られた、植物の生体細胞である。
【0041】
一態様では、本明細書において提供される植物部分としては、これらに限定されないが、葉、茎、根、種子、花、花粉、葯、胚珠、小花柄、果実、分裂組織、子葉、胚軸、莢、胚、胚乳、外植片、カルス、組織培養物、シュート、細胞、及びプロトプラストが挙げられる。さらなる態様では、本開示は、生殖物質ではなく、植物の自然生殖を媒介しない植物細胞、組織、及び器官を提供する。別の態様では、本開示はまた、生殖物質であり、植物の自然生殖を媒介する植物細胞、組織、及び器官を提供する。別の態様では、本開示は、光合成を介して自らを維持することができない植物細胞、組織、及び器官を提供する。別の態様では、本開示は、植物体細胞を提供する。体細胞は、生殖細胞と異なり、植物の生殖を媒介しない。
【0042】
提供される細胞、組織及び器官は、種子、果実、葉、子葉、胚軸、分裂組織、胚、胚乳、根、シュート、茎、莢、花、花房、花柄、小花柄、花柱、柱頭、花托、花弁、萼片、花粉、葯、花糸、子房、胚珠、果皮、師部、及び維管束組織由来のものであり得る。別の態様では、本開示は、植物葉緑体を提供する。別の態様では、本開示は、植物有色体を提供する。別の態様では、本開示は、植物原色素体を提供する。別の態様では、本開示は、植物エチオプラストを提供する。別の態様では、本開示は、植物白色体を提供する。別の態様では、本開示は、植物アミロプラストを提供する。別の態様では、本開示は、植物エライオプラストを提供する。別の態様では、本開示は、植物プロテイノプラストを提供する。さらなる態様では、本開示は、表皮細胞、小孔細胞、トリコーム細胞、根毛、または貯蔵根を提供する。別の態様では、本開示は、プロトプラストを提供する。
【0043】
ある態様では、本明細書において提供される植物細胞は、トウモロコシ細胞である。別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、イネ細胞である。さらなる態様では、本明細書において提供される植物細胞は、コムギ細胞である。別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、オオムギ細胞である。さらに別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、サトウキビ細胞である。ある態様では、本明細書において提供される植物細胞は、トウモロコシ細胞、イネ細胞、コムギ細胞、オオムギ細胞、及びサトウキビ細胞からなる群から選択される。
【0044】
ある態様では、本明細書において提供される植物細胞は、ダイズ細胞である。別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、アルファルファ細胞である。さらに別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、ワタ細胞である。ある態様では、本明細書において提供される植物細胞は、トマト細胞である。別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、Arabidopsis細胞である。別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、キャノーラ細胞である。ある態様では、本明細書において提供される植物細胞は、ダイズ細胞、アルファルファ細胞、ワタ細胞、トマト細胞、Arabidopsis細胞、及びキャノーラ細胞からなる群から選択される。
【0045】
ある態様では、本明細書において提供される植物細胞は、被子植物細胞である。別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、裸子植物細胞である。別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、双子葉植物細胞である。さらに別の態様では、本明細書において提供される植物細胞は、単子葉植物細胞である。
【0046】
一態様では、本開示は、改変トウモロコシ細胞を提供する。別の態様では、本開示は、改変イネ細胞を提供する。さらなる態様では、本開示は、改変コムギ細胞を提供する。別の態様では、本開示は、改変オオムギ細胞を提供する。さらに別の態様では、本開示は、改変サトウキビ細胞を提供する。ある態様では、本開示は、改変ダイズ細胞を提供する。別の態様では、本開示は、改変アルファルファ細胞を提供する。さらに別の態様では、本開示は、改変ワタ細胞を提供する。ある態様では、本開示は、改変トマト細胞を提供する。別の態様では、本開示は、改変Arabidopsis細胞を提供する。別の態様では、本開示は、改変キャノーラ細胞を提供する。ある態様では、本開示は、改変被子植物細胞を提供する。別の態様では、本開示は、改変裸子植物細胞を提供する。別の態様では、本開示は、改変双子葉植物細胞を提供する。さらに別の態様では、本開示は、改変単子葉植物細胞を提供する。
【0047】
一態様では、本開示は、改変トウモロコシ植物を提供する。別の態様では、本開示は、改変イネ植物を提供する。さらなる態様では、本開示は、改変コムギ植物を提供する。別の態様では、本開示は、改変オオムギ植物を提供する。さらに別の態様では、本開示は、改変サトウキビ植物を提供する。ある態様では、本開示は、改変ダイズ植物を提供する。別の態様では、本開示は、改変アルファルファ植物を提供する。さらに別の態様では、本開示は、改変ワタ植物を提供する。ある態様では、本開示は、改変トマト植物を提供する。別の態様では、本開示は、改変Arabidopsis植物を提供する。別の態様では、本開示は、改変キャノーラ植物を提供する。ある態様では、本開示は、改変被子植物を提供する。別の態様では、本開示は、改変裸子植物を提供する。別の態様では、本開示は、改変双子葉植物を提供する。さらに別の態様では、本開示は、改変単子葉植物を提供する。
【0048】
一態様では、本開示は、形質転換トウモロコシ細胞を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換イネ細胞を提供する。さらなる態様では、本開示は、形質転換コムギ細胞を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換オオムギ細胞を提供する。さらに別の態様では、本開示は、形質転換サトウキビ細胞を提供する。ある態様では、本開示は、形質転換ダイズ細胞を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換アルファルファ細胞を提供する。さらに別の態様では、本開示は、形質転換ワタ細胞を提供する。ある態様では、本開示は、形質転換トマト細胞を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換Arabidopsis細胞を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換キャノーラ細胞を提供する。ある態様では、本開示は、形質転換被子植物細胞を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換裸子植物細胞を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換双子葉植物細胞を提供する。さらに別の態様では、本開示は、形質転換単子葉植物細胞を提供する。
【0049】
一態様では、本開示は、形質転換トウモロコシ植物を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換イネ植物を提供する。さらなる態様では、本開示は、形質転換コムギ植物を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換オオムギ植物を提供する。さらに別の態様では、本開示は、形質転換サトウキビ植物を提供する。ある態様では、本開示は、形質転換ダイズ植物を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換アルファルファ植物を提供する。さらに別の態様では、本開示は、形質転換ワタ植物を提供する。ある態様では、本開示は、形質転換トマト植物を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換Arabidopsis植物を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換キャノーラ植物を提供する。ある態様では、本開示は、形質転換被子植物を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換裸子植物を提供する。別の態様では、本開示は、形質転換双子葉植物を提供する。さらに別の態様では、本開示は、形質転換単子葉植物を提供する。
【0050】
II.色素体ゲノム編集のための構築物
色素体ゲノムのゲノム編集は、色素体形質転換法及びこれらの方法に特異的なベクターを利用する。提供される方法による色素体形質転換のためのベクター及び構築物は、選択マーカー遺伝子及び/または農学目的の遺伝子を含み得る、植物細胞または組織に導入される1つまたは複数の改変配列、遺伝子エレメント及び/または導入遺伝子を含み得る。これらの改変配列、遺伝子エレメント(複数可)及び/または導入遺伝子(複数可)は、概して少なくとも以下の成分:(a)少なくとも1つの改変配列と、(b)改変配列と隣接する2つの相同アーム(形質転換される植物種の内在性標的配列と隣接する色素体ゲノム配列に由来し、それに対応する)とを含み得る組換え二本鎖プラスミドまたはベクターDNA分子に組み込まれ得る。ベクターは、(i)植物細胞、より詳細には植物色素体において機能して、プロモーターに作動可能に連結している転写可能核酸配列(例えば、改変配列、選択マーカーなど)の発現を引き起こすかまたは駆動する少なくとも1つのプロモーターまたは調節エレメント、及び(ii)選択マーカーをコードする転写可能DNA配列(すなわち選択マーカー遺伝子)をさらに含み得る。各発現カセットは、植物細胞色素体形質転換事象からの遺伝子発現のための、5’及び3’非翻訳領域配列、イントロン配列、追加の調節または発現エレメントなどをさらに含み得る。
【0051】
本明細書で使用する場合、DNA分子、構築物、ベクターなどとの関連における「組換え」という用語は、天然には見出されない、及び/または天然には見出されない状況において存在するDNA分子または配列を指し、ヒトの介入なしに天然において互いに連続しても非常に近接しても存在し得ないDNA配列の組み合わせを含むDNA分子、構築物など、及び/または互いに対して異種である少なくとも2つのDNA配列を含むDNA分子、構築物などを含む。組換えDNA分子、構築物などは、DNA配列(複数可)であって、そのようなDNA配列(複数可)に天然では近接して存在する他のポリヌクレオチド配列(複数可)から分離されている、DNA配列(複数可)、及び/または天然では互いに近接していない他のポリヌクレオチド配列(複数可)に隣接している(かまたはそれと連続している)DNA配列を含み得る。組換えDNA分子、構築物などはまた、細胞外で遺伝子操作され構築されたDNA分子または配列を指す場合がある。例えば、組換えDNA分子は、任意の好適なプラスミド、ベクターなどを含み得、直鎖状または環状DNA分子を含み得る。そのようなプラスミド、ベクターなどは、原核生物の複製起点及び選択マーカーを含む様々な維持エレメント、ならびに場合により植物選択マーカー遺伝子などに加えて導入遺伝子または発現カセットを含有し得る。
【0052】
一態様では、植物細胞の標的色素体配列を置き換えるための方法であって、組換え核酸分子を植物細胞に導入することであって、組換え核酸分子が、5’から3’の順に、第1の相同配列であって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同である、第1の相同配列、改変配列であって、標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、改変配列、及び第2の相同配列であって、第2の内在性色素体ゲノム配列と相同である、第2の相同配列を含み、標的色素体配列が、植物細胞の色素体ゲノムにおいて、第1の内在性色素体ゲノム配列と第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、導入することと、相同組換えを介して植物細胞の色素体ゲノムにおける標的色素体配列を改変配列に置き換えるように植物細胞を培養することとを含む、方法が提供される。ある態様では、5’から3’の順に、第1の相同配列であって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同である、第1の相同配列、改変配列であって、標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、改変配列、及び第2の相同配列であって、第2の内在性色素体ゲノム配列と相同である、第2の相同配列を含み、標的色素体配列が、植物細胞の色素体ゲノムにおいて、第1の内在性色素体ゲノム配列と第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、組換え核酸分子が提供される。
【0053】
本明細書で使用する場合、「内在性標的配列」または「標的色素体配列」とは、色素体ゲノムにおける配列と同一の核酸配列を指す。ある態様では、本明細書において提供される方法は、標的色素体配列を改変配列に置き換える。標的色素体配列は、野生型色素体ゲノム配列または以前に改変されたトランスジェニック色素体ゲノム配列であり得る。ある態様では、標的色素体配列は、タンパク質コード配列を含む。別の態様では、標的色素体配列は、RNAコード配列を含む。さらなる態様では、標的色素体配列は、非タンパク質コード配列をコードする。ある態様では、標的色素体配列は、転写配列を含む。さらなる態様では、標的色素体配列は、非転写配列を含む。ある態様では、標的色素体配列は、色素体遺伝子イントロン配列の少なくとも一部分、またはその相補配列を含む。ある態様では、標的色素体配列は、色素体遺伝子のスプライシングまたは発現を変化させる少なくとも1つの機能変異をイントロン配列に含む。さらなる態様では、標的色素体配列は、色素体遺伝子のプロモーターもしくは調節配列の少なくとも一部分、またはその相補配列を含む。さらなる態様では、標的色素体配列は、プロモーターの少なくとも一部分、またはその相補配列を含む。別の態様では、標的色素体配列は、色素体遺伝子の発現を変化させる少なくとも1つの機能変異を含む。ある態様では、標的色素体配列は、色素体遺伝子エクソン配列の少なくとも一部分、またはその相補配列を含む。ある態様では、標的色素体配列は、色素体遺伝子のスプライシングまたは発現を変化させる少なくとも1つの機能変異をエクソン配列に含む。ある態様では、標的色素体配列は、色素体ゲノムに単一コピーとして存在する。
【0054】
一態様では、標的色素体配列は、少なくとも25ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも30ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも35ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも40ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも45ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも50ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも60ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも70ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも80ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも90ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも100ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも125ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも150ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも200ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも250ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも300ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも350ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも400ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも450ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも500ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも750ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも1000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも1500ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも2000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも3000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも4000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、標的色素体配列は、少なくとも5000ヌクレオチド長を含む。ある態様では、本明細書において提供される標的色素体配列は、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、または少なくとも5000ヌクレオチド長を含む。
【0055】
ある態様では、改変配列と内在性標的色素体配列との間の同一性パーセントは、少なくとも30%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも40%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも50%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも60%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも70%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも75%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも80%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも85%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも90%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも95%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも96%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも97%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも98%である。ある態様では、改変配列と内在性標的配列との間の同一性パーセントは、少なくとも99%である。
【0056】
別の態様では、改変配列は、少なくとも10ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも15ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも20ヌクレオチド長を含む。一態様では、改変配列は、少なくとも25ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも30ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも35ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも40ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも45ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも50ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも60ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも70ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも80ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも90ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも100ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも125ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも150ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも200ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも250ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも300ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも350ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも400ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも450ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも500ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも750ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも1000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも1500ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも2000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも3000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも4000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、改変配列は、少なくとも5000ヌクレオチド長を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、または少なくとも5000ヌクレオチド長を含む。
【0057】
本明細書で使用する場合、「サイレント変異」とは、それが生じる細胞または生物の表現型を変化させないポリヌクレオチドに対する変異を指す。サイレント変異は、ゲノムの非コード領域またはゲノムのコード領域において生じ得る。サイレント変異がゲノムのコード領域において生じる場合、それはイントロンまたはエクソンにおいて生じ得る。遺伝暗号の縮重のために大半のアミノ酸が複数のコドンによってコードされ得ることは当技術分野で公知である。本明細書で使用する場合、「コドン」とは、特定のアミノ酸をコードする3つのDNAまたはRNAヌクレオチド(「トリプレット」)を指す。メッセンジャーRNA(mRNA)をコードするDNAにおけるサイレント変異は、mRNA配列を変化させ得るが、変更されたコドンによってコードされるアミノ酸は変化しない。エクソンにおいて生じ、コードされるアミノ酸を変化させないサイレント変異は、「同義変異」と考えられる。あるいは、mRNAにおけるサイレント変異は、新たなアミノ酸がコードされるタンパク質の機能性を変化させない場合、または内在性アミノ酸の特性が保存される場合、コードされるアミノ酸を変化させてもよい。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的内在性配列に対する1つまたは複数のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子のコードされるタンパク質配列を変化させない、標的内在性配列に対する1つまたは複数のサイレント変異を含む。
【0058】
一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する1つまたは複数のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する1つまたは複数のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する2つ以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する2つ以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する3つ以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する3つ以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する4つ以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する4つ以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する5つ以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する5つ以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する6つ以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する6つ以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する7つ以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する7つ以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する8つ以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する8つ以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する9つ以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する9つ以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する10以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する10以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する15以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する15以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する20以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する20以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する25以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する25以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する30以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する30以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する35以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する35以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する40以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する40以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する50以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する50以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する60以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する60以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する70以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する70以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する80以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する80以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する90以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する90以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する100以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する100以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する150以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する150以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する200以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する200以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する250以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する250以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する300以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する300以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する350以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する350以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する400以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する400以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する450以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する450以上のサイレント変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する500以上のサイレント変異を含む。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する500以上のサイレント変異を含む。
【0059】
一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子の発現もコードされるタンパク質配列も変化させない、標的化された内在性配列に対する少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、または少なくとも500のサイレント変異を含む。
【0060】
ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、1000ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、900ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、800ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、700ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、600ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、500ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、400ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、300ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、250ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、200ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、175ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、150ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、125ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、100ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、99ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、96ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、93ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、90ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、87ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、84ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、81ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、80ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、78ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、75ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、72ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、70ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、69ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、66ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、63ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、60ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、57ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、54ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、51ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、50ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、48ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、45ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、42ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、40ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、39ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、39ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、33ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、30ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、27ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、24ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、21ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、20ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、18ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、15ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、12ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、10ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、9ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、6ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、5ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、3ヌクレオチドごとに平均して少なくとも1つのサイレント変異を含む。
【0061】
本明細書で使用する場合、「機能変異」とは、標的ペプチドのアミノ酸配列または発現を変化させる変異を指す。機能変異は、「非同義変異」としても公知である。別の態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも1つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも2つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも3つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも4つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも5つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも6つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも7つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも8つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも9つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも10の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも11の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも12の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも13の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも14の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも15の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも16の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも17の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも18の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも19の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも20の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも25の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも30の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも40の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された内在性配列に対する少なくとも50の機能変異を含む。
【0062】
さらなる態様では、改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも1つのアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも1つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも2つのアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも2つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも3つのアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも3つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも4つのアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも4つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも5つのアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも5つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも6つのアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも6つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも7つのアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも7つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも8つのアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも8つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも9つのアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも9つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも10のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも10の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも11のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも11の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも12のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも12の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも13のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも13の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも14のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも14の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも15のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも15の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも16のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも16の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも17のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも17の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも18のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも18の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも19のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも19の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも20のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも20の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも25のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも25の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも30のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも30の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも40のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも40の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも50のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも50の機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された色素体遺伝子のスプライシングに影響を及ぼす、標的化された内在性配列に対する少なくとも1つの機能変異を含む。一態様では、本明細書において提供される改変配列は、標的化された色素体遺伝子によってコードされるタンパク質の短縮をもたらす、標的化された内在性配列に対する少なくとも1つの機能変異を含む。
【0063】
ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、色素体遺伝子によってコードされるタンパク質における少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも50のアミノ酸変化をコードする、標的化された内在性配列に対する少なくとも2つの機能変異を含む。
【0064】
ある態様では、改変配列は、色素体遺伝子イントロン配列の少なくとも一部分、またはその相補配列を含む。ある態様では、改変配列は、色素体遺伝子のスプライシングまたは発現を変化させる少なくとも1つの機能変異をイントロン配列に含む。改変配列はまた、内在性配列に対する改変配列の配列同一性を低下させるが、イントロン配列の機能は変化させない少なくとも1つの変異をイントロン配列に含む。さらなる態様では、改変配列は、色素体遺伝子のプロモーターもしくは調節配列の少なくとも一部分、またはその相補配列を含む。調節配列の非限定的な例としては、エンハンサー、5’-UTR、イントロン領域、3’-UTR、転写領域、及び他の機能配列領域が挙げられる。さらなる態様では、改変配列は、プロモーターの少なくとも一部分、またはその相補配列を含む。別の態様では、改変配列は、色素体遺伝子の発現を変化させる少なくとも1つの機能変異、または色素体遺伝子の発現を変化させない少なくとも1つの変異を含む。改変配列はまた、内在性配列に対する改変配列の配列同一性を低下させるが、プロモーターまたは調節配列の機能は変化させない少なくとも1つの変異をプロモーターまたは調節配列に含む。ある態様では、改変配列は、色素体遺伝子エクソン配列の少なくとも一部分、またはその相補配列を含む。ある態様では、改変配列は、色素体遺伝子のスプライシングまたは発現を変化させる少なくとも1つの機能変異をエクソン配列に含む。改変配列はまた、内在性配列に対する改変配列の配列同一性を低下させるが、エクソン配列の機能は変化させない少なくとも1つの変異をエクソン配列に含む。
【0065】
ある態様では、本明細書において提供される改変配列は、配列番号1、3、8、または10に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。別の態様では、改変配列は、配列番号2、9、または11に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0066】
色素体ゲノムは、典型的には、およそ30~50のRNA遺伝子及び最大200のタンパク質コード遺伝子を含み、その多くは光合成に必要とされる。本明細書で使用する場合、「色素体遺伝子」とは、色素体ゲノムにおける任意のタンパク質コード配列を指す。一態様では、標的化された内在性配列は、色素体遺伝子の少なくとも一部分、または色素体遺伝子の少なくとも一部分と相補的な配列を含む。別の態様では、標的色素体配列は、色素体遺伝子のコード配列の少なくとも一部分、または色素体遺伝子のコード配列の少なくとも一部分と相補的な配列を含む。さらに別の態様では、本明細書において提供される標的色素体配列は、色素体遺伝子の発現または活性を変化させる少なくとも1つの機能変異を含む。
【0067】
本明細書で使用する場合、「遺伝子」とは、機能単位(例えば、限定されないが、例えばタンパク質)を産生することができるポリヌクレオチドを指す。遺伝子は、プロモーター、エンハンサー配列、リーダー配列、転写開始部位、転写終結部位、ポリアデニル化部位、1つもしくは複数のエクソン、1つもしくは複数のイントロン、5’-UTR、3’-UTR、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。「遺伝子配列」は、プロモーター、エンハンサー配列、リーダー配列、転写開始部位、転写終結部位、ポリアデニル化部位、1つもしくは複数のエクソン、1つもしくは複数のイントロン、5’-UTR、3’-UTR、またはそれらの任意の組み合わせをコードするポリヌクレオチド配列を含むことができる。一態様では、遺伝子は、RNA分子またはその前駆体をコードする。別の態様では、遺伝子は、タンパク質をコードする。「コード配列」とは、タンパク質(例えば、エクソン配列)またはRNA分子をコードする配列である。
【0068】
ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はatpEである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhCである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhJである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps4である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps14である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbZである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbDである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpetNである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps2である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はatpIである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はatpHである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbIである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbKである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsaIである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はcemAである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpetAである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbJである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbLである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbFである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbEである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpetLである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpetGである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsaJである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpl33である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps18である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbTである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbNである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbHである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpetBである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpetDである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpoAである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps11である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpl36である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps8である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpl14である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps3である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps19である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps15である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhHである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhIである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhGである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhEである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsaCである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はccsAである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpl32である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はycf1である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpl23である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbAである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はmatKである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrbcLである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はatpBである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhKである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はycf3である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsaAである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsaBである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbCである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbMである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpoBである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpoC1である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpoC2である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はatpFである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はatpAである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps16である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はaccDである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpl20である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はclpPである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はpsbBである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpl16である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrpl2である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhBである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はrps7である。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhAである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhDである。ある態様では、本明細書において提供される色素体遺伝子はndhFである。さらなる態様では、色素体遺伝子は、atpE、ndhC、ndhJ、rps4、rps14、psbZ、psbD、petN、rps2、atpI、atpH、psbI、psbK、psaI、cemA、petA、psbJ、psbL、psbF、psbE、petL、petG、psaJ、rpl33、rps18、psbT、psbN、psbH、petB、petD、rpoA、rps11、rpl36、rps8、rpl14、rps3、rps19、rpl23、rps15、ndhH、ndhI、ndhG、ndhE、psaC、ccsA、rpl32、ycf1、rpl23、psbA、matK、rbcL、atpB、ndhK、ycf3、psaA、psaB、psbC、psbM、rpoB、rpoC1、rpoC2、atpF、atpA、rps16、accD、rpl20、clpP、psbB、rpl16、rpl2、ndhB、rps7、ndhA、ndhD、ndhF、及びrpl2からなる群から選択される。
【0069】
ある態様では、標的色素体配列は、atpE、ndhC、ndhJ、rps4、rps14、psbZ、psbD、petN、rps2、atpI、atpH、psbI、psbK、psaI、cemA、petA、psbJ、psbL、psbF、psbE、petL、petG、psaJ、rpl33、rps18、psbT、psbN、psbH、petB、petD、rpoA、rps11、rpl36、rps8、rpl14、rps3、rps19、rpl23、rps15、ndhH、ndhI、ndhG、ndhE、psaC、ccsA、rpl32、ycf1、rpl23、psbA、matK、rbcL、atpB、ndhK、ycf3、psaA、psaB、psbC、psbM、rpoB、rpoC1、rpoC2、atpF、atpA、rps16、accD、rpl20、clpP、psbB、rpl16、rpl2、ndhB、rps7、ndhA、ndhD、ndhF、及びrpl2からなる群から選択される色素体遺伝子の配列または配列の一部分を含む。
【0070】
ある態様では、第1の相同セグメントは、atpE、ndhC、ndhJ、rps4、rps14、psbZ、psbD、petN、rps2、atpI、atpH、psbI、psbK、psaI、cemA、petA、psbJ、psbL、psbF、psbE、petL、petG、psaJ、rpl33、rps18、psbT、psbN、psbH、petB、petD、rpoA、rps11、rpl36、rps8、rpl14、rps3、rps19、rpl23、rps15、ndhH、ndhI、ndhG、ndhE、psaC、ccsA、rpl32、ycf1、rpl23、psbA、matK、rbcL、atpB、ndhK、ycf3、psaA、psaB、psbC、psbM、rpoB、rpoC1、rpoC2、atpF、atpA、rps16、accD、rpl20、clpP、psbB、rpl16、rpl2、ndhB、rps7、ndhA、ndhD、ndhF、及びrpl2からなる群から選択される色素体遺伝子の配列または配列の一部分を含む。
【0071】
ある態様では、第2の相同セグメントは、atpE、ndhC、ndhJ、rps4、rps14、psbZ、psbD、petN、rps2、atpI、atpH、psbI、psbK、psaI、cemA、petA、psbJ、psbL、psbF、psbE、petL、petG、psaJ、rpl33、rps18、psbT、psbN、psbH、petB、petD、rpoA、rps11、rpl36、rps8、rpl14、rps3、rps19、rpl23、rps15、ndhH、ndhI、ndhG、ndhE、psaC、ccsA、rpl32、ycf1、rpl23、psbA、matK、rbcL、atpB、ndhK、ycf3、psaA、psaB、psbC、psbM、rpoB、rpoC1、rpoC2、atpF、atpA、rps16、accD、rpl20、clpP、psbB、rpl16、rpl2、ndhB、rps7、ndhA、ndhD、ndhF、及びrpl2からなる群から選択される色素体遺伝子の配列または配列の一部分を含む。
【0072】
一態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも25ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも30ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも35ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも40ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも45ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも50ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも60ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも70ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも80ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも90ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも100ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも125ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも150ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも200ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも250ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも300ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも350ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも400ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも450ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも500ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも750ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも1000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも1500ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも2000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも3000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも4000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、色素体ゲノムセグメントは、少なくとも5000ヌクレオチド長を含む。ある態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムセグメントは、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、または少なくとも5000ヌクレオチド長を含む。
【0073】
本明細書で使用する場合、「相同配列」または「相同アーム」とは、未改変または内在性色素体ゲノム配列との相同組換えを受けることができる任意の配列を指す。組換えDNA分子は、色素体内の特定の標的部位または座位における相同組換えのために少なくとも2つの相同配列を含み得る。相同配列は、色素体またはプラストミックDNA分子またはゲノムへの組み入れのために、配列(複数可)の両側に位置する。組換えDNA分子は、改変配列と隣接する第1の相同配列及び第2の相同配列を含み得る。これらの相同配列のそれぞれは、典型的には、最大約5キロベース(kb)、例えば約0.1kb~約5kb長(すなわち、約100~約5000ヌクレオチド長)の範囲、または約0.5kb~約2kb長の範囲、または約1kb~約1.5kb長の範囲の塩基対(bp)長を有し得る。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される相同配列は、対応する内在性色素体ゲノム配列と100%相同性またはそれと完全に相同であり得る。
【0074】
一態様では、第1の相同配列は、少なくとも5ヌクレオチド長を含む。別の態様では、第1の相同配列は、少なくとも10ヌクレオチド長を含む。別の態様では、第1の相同配列は、少なくとも15ヌクレオチド長を含む。別の態様では、第1の相同配列は、少なくとも20ヌクレオチド長を含む。別の態様では、第1の相同配列は、少なくとも25ヌクレオチド長を含む。別の態様では、第1の相同配列は、少なくとも30ヌクレオチド長を含む。別の態様では、第1の相同配列は、少なくとも35ヌクレオチド長を含む。別の態様では、第1の相同配列は、少なくとも40ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも45ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも50ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも60ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも70ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも80ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも90ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも100ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも125ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも150ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも200ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも250ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも300ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも350ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも400ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも450ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも500ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも750ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも1000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも1500ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも2000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも3000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも4000ヌクレオチド長を含む。別の態様では、相同配列は、少なくとも5000ヌクレオチド長を含む。
【0075】
別の態様では、本開示は、5’から3’の順に、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同な第1の相同配列、内在性標的配列に対して少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する改変配列、及び第2の内在性色素体ゲノム配列と相同な第2の相同配列を含む組換え核酸分子であって、標的色素体配列が、植物細胞の色素体ゲノムにおいて、第1の色素体ゲノムセグメントと第2の色素体ゲノムセグメントとの間に位置する、組換え核酸分子を提供する。
【0076】
別の態様では、本開示は、5’から3’の順に、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同な第1の相同配列、内在性標的配列に対して30%未満、35%未満、40%未満、45%未満、50%未満、55%未満、60%未満、65%未満、70%未満、75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、または95%未満の同一性を有する改変配列、及び第2の内在性色素体ゲノム配列と相同な第2の相同配列を含む組換え核酸分子であって、標的色素体配列が、植物細胞の色素体ゲノムにおいて、第1の色素体ゲノムセグメントと第2の色素体ゲノムセグメントとの間に位置する、組換え核酸分子を提供する。
【0077】
2つ以上のヌクレオチドまたはタンパク質配列との関連において本明細書で使用される「同一性パーセント」または「パーセント同一」という用語は、(i)2つの最適にアラインメントされた配列(ヌクレオチドまたはタンパク質)を比較ウィンドウにわたって比較し、(ii)両方の配列において同一の核酸塩基(ヌクレオチド配列の場合)またはアミノ酸残基(タンパク質の場合)が生じている位置の数を決定して、一致した位置の数を取得し、(iii)一致した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で割り、次いで(iv)この商に100%を掛けて同一性パーセントを取得することによって算出される。「同一性パーセント」が、特定の比較ウィンドウを指定せずに参照配列に対して算出される場合、同一性パーセントは、アラインメントの領域にわたる一致した位置の数を参照配列の全長で割ることによって決定される。したがって、本出願の目的において、2つの配列(クエリ及びサブジェクト)が最適にアラインメントされる(それらのアラインメントにおけるギャップを許容する)場合、クエリ配列に対する「同一性パーセント」は、2つの配列間で同一の位置の数を、クエリ配列における、その長さ(または比較ウィンドウ)にわたる位置の総数で割り、次いでそれに100%を掛けたものに等しい。配列同一性の百分率がタンパク質に関して使用される場合、同一ではない残基位置は、アミノ酸残基が類似した化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基と置換され、したがって分子の機能特性を変化させない保存的アミノ酸置換によって異なっている場合が多いと認識される。配列が保存的置換において異なっている場合、配列同一性パーセントは、上方調整して、置換の保存的性質を補正してもよい。そのような保存的置換によって異なっている配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると言われる。
【0078】
配列の同一性パーセントを算出する配列の最適なアラインメントに関して、2つ以上のヌクレオチドまたはタンパク質配列間の配列同一性または類似性を比較するために使用することができる、様々なペアワイズまたはマルチプル配列アラインメントアルゴリズム及びプログラム、例えばClustalWまたはBasic Local Alignment Search Tool(登録商標)(BLAST)などが当技術分野で公知である。他のアラインメント及び比較方法が当技術分野で公知であるが、2つの配列間のアラインメント及び同一性パーセント(上に記載した同一性パーセント範囲を含む)は、ClustalWアルゴリズムによって決定されるように決定され得る。例えば、その内容及び開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Chenna R.et al.,”Multiple sequence alignment with the Clustal series of programs,”Nucleic Acids Research 31:3497-3500(2003)、Thompson JD et al.,”Clustal W:Improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting,position-specific gap penalties and weight matrix choice,”Nucleic Acids Research 22:4673-4680(1994)、Larkin MA et al.,”Clustal W and Clustal X version 2.0,”Bioinformatics 23:2947-48(2007)、及びAltschul, S.F.,Gish,W.,Miller,W.,Myers,E.W.&Lipman,D.J.(1990)”Basic local alignment search tool.”J.Mol.Biol.215:403-410(1990)を参照されたい。
【0079】
本明細書で使用する場合、「本質的に同一」な配列とは、第2の配列と少なくとも95%同一の配列を指す。一部の実施形態では、本質的に同一な配列は、第2の配列と少なくとも96%、97%、98%、99%または100%同一である。
【0080】
ある態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、選択マーカー遺伝子を含む。選択マーカー遺伝子は、組換え核酸分子において、例えば第1の相同配列または第2の相同配列の間に位置し得る。植物選択マーカー遺伝子または導入遺伝子としては、植物選択マーカー導入遺伝子により形質転換された植物細胞が、選択剤によって課される選択圧に耐性となり、耐えられるようになるような、対応する選択剤に対する耐性を付与する任意の遺伝子を挙げることができる。結果として、改変プラストミック細胞は、選択下での成長、増殖、発育などに好ましい。当技術分野で公知の有用な植物選択マーカー遺伝子としては、ストレプトマイシンまたはスペクチノマイシン(例えば、aadA、spec/strep)、カナマイシン(例えば、nptII)、ハイグロマイシンB(例えば、aph IV)、ゲンタマイシン(例えば、aac3及びaacC4)、及びクロラムフェニコール(例えば、CAT)に対する抵抗性または耐性を付与するタンパク質をコードするものを挙げることができる。除草剤または他の選択剤に対する抵抗性または耐性を付与するタンパク質をコードする公知の植物選択マーカー遺伝子のさらなる例。例えば、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼをコードする転写可能DNA分子(EPSPS、グリホサート耐性用;例えば、これらの全てが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,627,061号、同第5,633,435号、同第6,040,497号、及び同第5,094,945号に記載);グリホサートオキシドレダクターゼ及びグリホサート-N-アセチルトランスフェラーゼをコードする転写可能DNA分子(GOX;例えば、米国特許第5,463,175号に記載;GAT、米国特許公開第20030083480号に記載);フィトエンデサチュラーゼをコードする転写可能DNA分子(crtI;例えば、参照によって本明細書に組み込まれるMisawa,et al.,Plant Journal,4:833-840(1993)及びMisawa,et al.,Plant Journal,6:481-489(1994)に記載、ノルフルラゾン耐性用);ならびにbar遺伝子(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるDeBlock,et al.,EMBO Journal,6:2513-2519(1987)に記載、グルホシネート及びビアラホス耐性用)。例えば、その内容及び開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Bock,R.,”Engineering Plastid Genomes:Methods,Tools,and Applications in Basic Research and Biotechnology,”Annu.Rev.Plant Biol.,66:3.1-3.31(2015)、及びZiemienowicz,A.,”Plant selectable markers and reporter genes,”Acta Physiologiae Plantarum 23(3):363-374(2001)もまた参照されたい。
【0081】
本明細書で使用する場合、「ターミネーター配列」とは、転写中の遺伝子の終端を示す任意の核酸配列を指す。ある態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、ターミネーター配列を含む。別の態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、ターミネーター配列を含み、ターミネーター配列は、組換え核酸分子において、改変配列と第1の相同配列または第2の相同配列のいずれかとの間に位置する。さらなる態様では、組換え核酸分子は、選択マーカー遺伝子とターミネーター配列の両方を含む。さらなる態様では、組換え核酸分子は、ターミネーター配列を含み、ターミネーター配列は、組換え核酸分子において、改変配列と選択マーカー遺伝子との間に位置する。ある態様では、本明細書において提供されるターミネーター配列は、色素体ゲノムと異種である。別の態様では、本明細書において提供されるターミネーター配列は、植物細胞と異種である。「異種」という用語は、2つ以上のDNA分子または配列の組み合わせが人工的であり、天然には通常見出されない場合における、そのような組み合わせ、例えば、プロモーターと、関連する転写可能なDNAの配列、コード配列または遺伝子との組み合わせを指すことがある。
【0082】
ある態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、プロモーター配列を含み、プロモーター配列は、組換え核酸分子において、改変配列と第1の相同配列または第2の相同配列のいずれかとの間に位置する。「プロモーター」とは、本明細書で使用する場合、RNAポリメラーゼ結合部位及び/または転写開始部位を含有し、関連する転写可能ポリヌクレオチド配列及び/または遺伝子(もしくは導入遺伝子)の転写及び発現を支援または促進するDNA配列を指す。プロモーターは、公知の、もしくは天然に存在するプロモーター配列または他のプロモーター配列から合成により作製しても、そこから変更しても、それに由来してもよい。プロモーターとしては、2つ以上の異種配列の組み合わせを含むキメラプロモーターも挙げることができる。したがって、本出願のプロモーターとしては、公知であるかまたは本明細書において提供される他のプロモーター配列(複数可)と組成の点では類似しているが、同一ではない、プロモーター配列のバリアントを挙げることができる。プロモーターは、プロモーターに作動可能に連結している関連するコードまたは転写可能配列または遺伝子(導入遺伝子を含む)の発現パターンに関する様々な基準に従って、例えば、構成的、発生、組織特異的、誘導性などに分類することができる。植物の全てのまたは大半の組織において発現を駆動するプロモーターは「構成的」プロモーターと称される。発生のある特定の期間または段階中に発現を駆動するプロモーターは、「発生」プロモーターと称される。生物のある特定の組織において、その生物の他の組織と比べて増強した発現を駆動するプロモーターは、「組織優先(tissue-preferred)」プロモーターと称される。したがって、「組織優先」プロモーターは、植物の特定の組織(複数可)においては比較的高いかまたは優先的な発現を引き起こすが、その植物の他の組織(複数可)における発現のレベルはより低くなる。生物の特定の組織(複数可)内で発現し、他の組織ではほとんどまたは全く発現しないプロモーターは、「組織特異的」プロモーターと称される。「誘導性」プロモーターとは、環境刺激、例えば、熱、冷気、渇水、光、または他の刺激、例えば創傷もしくは化学物質の適用に応答して転写を開始するプロモーターである。プロモーターは、例えば、異種、同種、キメラ、合成など、その起源の点で分類することもできる。
【0083】
一態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、1つまたは複数のプロモーター配列を含む。別の態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、少なくとも2つのプロモーター配列を含む。別の態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、少なくとも3つのプロモーター配列を含む。ある態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、プロモーター配列及びターミネーター配列を含む。ある態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、プロモーター配列及び選択マーカー遺伝子を含む。ある態様では、本明細書において提供される組換え核酸分子は、プロモーター配列、選択マーカー遺伝子、及びターミネーター配列を含む。一態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、色素体ゲノムと異種である。別の態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、植物細胞と異種である。ある態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、構成的プロモーターである。別の態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、組織優先プロモーターである。ある態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、組織特異的プロモーターである。さらなる態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、誘導性プロモーターである。別の態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、キメラプロモーターである。さらに別の態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、色素体遺伝子の未改変プロモーター配列である。さらに別の態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、植物細胞における色素体遺伝子の未改変プロモーター配列である。ある態様では、本明細書において提供されるプロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、及び誘導性プロモーターからなる群から選択される。
【0084】
組換えDNA分子は、トランスプラストミック植物(複数可)の首尾よい作製及び/または確認後、とりわけ導入遺伝子または発現カセットがもはや必要ではなくなった後に、1つまたは複数の導入遺伝子または発現カセット、例えば、植物選択マーカー導入遺伝子またはその任意の部分もしくは配列を除去するための配列をさらに含んでもよい。一部の実施形態では、これは、除去される配列を、内在性であるかまたは外因的に提供されるリコンビナーゼ酵素(例えば、Cre、Flpなど)によって認識及び除去することができる、後に発生する公知の組換え部位(例えば、LoxP部位、FRT部位など)と隣接させることによって達成することができる。リコンビナーゼ酵素は、導入遺伝子の切り出しを達成するために、例えば、トランスプラストミック植物を、リコンビナーゼ導入遺伝子を有する別の植物と交配させることによってトランスで導入及び発現させることができる。したがって、望まれない配列エレメントまたは導入遺伝子は、その使用または目的が終了したら除去することができ、したがって、生殖系列におけるそれのさらなる発現または伝達を防止することができる。
【0085】
III.色素体形質転換のための方法
複数の実施形態は、少なくとも1個の植物細胞において、色素体形質転換を介して色素体ゲノムにおける1つまたは複数の内在性標的配列を改変配列に置き換える方法を提供する。色素体とは、植物、藻類、及び一部の原生動物種に見出される、環状二本鎖ゲノムを含む細胞小器官である。色素体は、その機能に応じて種々の形態に分化することができる。本明細書で使用する場合、「原色素体」とは、未分化色素体を指す。原色素体は、エチオプラスト、葉緑体、及び白色体に分化することができる。エチオプラストは、葉緑体に分化することができる。葉緑体は、有色体に分化することができる。白色体は、アミロプラスト、エライオプラスト、及びプロテイノプラストに分化することができる。多くの場合、逆分化もまた可能である(例えば、葉緑体はエチオプラストに分化する)。
【0086】
限定されないが、色素体は、光合成を行うこと(例えば、葉緑体)、色素を合成及び貯蔵すること(例えば、有色体)、光合成装置を分解すること(例えば、ゲロントプラスト)、モノテルペン合成(例えば、白色体)、デンプン貯蔵(例えば、アミロプラスト)、脂肪貯蔵(例えば、エライオプラスト)、タンパク質の貯蔵及び改変(例えば、プロテイノプラスト)、タンニン及びポリフェノールを合成すること(例えば、タンノソーム(tannosome))、重力検出、アミノ酸合成、ヌクレオチド合成、脂肪酸合成、植物ホルモン合成、ビタミン合成、硫黄同化、ならびに窒素同化を含む多数の機能を行うことが公知である。
【0087】
ある態様では、本明細書において提供される色素体は、原色素体である。別の態様では、本明細書において提供される色素体は、エチオプラストである。一態様では、本明細書において提供される色素体は、葉緑体である。別の態様では、本明細書において提供される色素体は、有色体である。別の態様では、本明細書において提供される色素体は、ゲロントプラストである。ある態様では、本明細書において提供される色素体は、白色体である。さらなる態様では、本明細書において提供される色素体は、アミロプラストである。別の態様では、本明細書において提供される色素体は、エライオプラストである。ある態様では、本明細書において提供される色素体は、プロテイノプラストである。さらなる態様では、本明細書において提供される色素体は、タンノソームである。別の態様では、本明細書において提供される色素体は、原色素体、エチオプラスト、葉緑体、有色体、ゲロントプラスト、白色体、アミロプラスト、エライオプラスト、プロテイノプラスト、及びタンノソームからなる群から選択される。
【0088】
ある態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、原色素体ゲノムである。別の態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、エチオプラストゲノムである。ある態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、葉緑体ゲノムである。別の態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、有色体ゲノムである。別の態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、ゲロントプラストゲノムである。ある態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、白色体ゲノムである。さらなる態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、アミロプラストゲノムである。別の態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、エライオプラストゲノムである。ある態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、プロテイノプラストゲノムである。さらなる態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、タンノソームゲノムである。別の態様では、本明細書において提供される色素体ゲノムは、原色素体ゲノム、エチオプラストゲノム、葉緑体ゲノム、有色体ゲノム、ゲロントプラストゲノム、白色体ゲノム、アミロプラストゲノム、エライオプラストゲノム、プロテイノプラストゲノム、及びタンノソームゲノムからなる群から選択される。
【0089】
色素体ゲノムは、約140キロベース(kb)~約218kbの範囲のサイズである。例えば、トウモロコシ色素体ゲノムは約140kbであり、ダイズ色素体ゲノムは約152kbであり、ワタ色素体ゲノムは約160kbである。800超の色素体ゲノムが配列決定されており、National Center for Biotechnology Informationの細胞小器官ゲノムデータベースからオンラインで入手可能である。共にその全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Daniell et al.,2016,Genome Biology,17:134、及びwww.ncbi.nlm.nih.gov/genome/organelleを参照されたい。植物色素体ゲノムの編成は高度に保存されており、大半の植物色素体ゲノムは、大きな単一コピー領域と小さな単一コピー領域とを分離する2つの同一コピーの20kb~30kbの逆向き反復配列を有する。
【0090】
一態様では、提供される方法は、標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含まない対照構築物よりも高い頻度の、植物細胞の色素体ゲノムへの改変配列の形質転換を可能にする。ある態様では、本明細書において提供される方法は、色素体ゲノムに改変配列を有する形質転換植物細胞を選択することを含む。別の態様では、本明細書において提供される方法は、色素体ゲノムに改変配列を有する形質転換植物細胞から形質転換植物を発生または再生することを含む。さらに別の態様では、本明細書において提供される方法は、形質転換植物の少なくとも1個の細胞の色素体ゲノムに改変配列を有する形質転換植物を選択することを含む。さらなる態様では、本明細書において提供される選択する方法は、植物細胞の色素体ゲノムにおける改変配列の存在を、分子技法を介して検出することを含む。さらなる態様では、本明細書において提供される方法は、植物細胞の色素体ゲノムにおける改変配列の存在を、分子技法を介して検出することを含む。ある態様では、本明細書において提供される方法は、植物の色素体ゲノムにおける改変配列の存在を、分子技法を介して検出することを含む。別の態様では、本明細書において提供される選択する方法は、植物の色素体ゲノムにおける改変配列の存在を、分子技法を介して検出することを含む。
【0091】
ある態様では、本明細書において提供される方法は、選択剤を用いて形質転換植物を処理することと、形質転換植物の選択剤に対する抵抗性または耐性に基づいて選択することとを含む。別の態様では、本明細書において提供される方法は、選択剤を用いて形質転換植物細胞を処理することと、形質転換植物細胞の選択剤に対する抵抗性または耐性に基づいて選択することとを含む。ある態様では、本明細書において提供される方法は、選択剤に対する抵抗性または耐性をもたらす選択マーカー遺伝子を含む組換え核酸分子を含み、ここで、形質転換植物は、選択マーカー遺伝子を形質転換植物の色素体ゲノムに有し、選択するステップは、選択剤を用いて形質転換植物を処理することと、形質転換植物の選択剤に対する抵抗性または耐性に基づいて選択することとを含む。ある態様では、本明細書において提供される選択するステップを含む方法は、形質転換植物を、形質転換植物の色素体ゲノムにおける改変配列によって引き起こされた表現型変化に基づいて選択することを含む。表現型変化の非限定的な例としては、葉色の変化(例えば、緑色の葉ではなく白色の葉)、デンプン産生または貯蔵の変化、糖産生または貯蔵の変化、光合成速度の変化が挙げられる。
【0092】
本明細書で使用する場合、「分子技法」とは、核酸、タンパク質、または脂質の使用、操作または解析を伴う、分子生物学、生化学、遺伝子学、植物生物学、または生物物理学の分野で公知の任意の方法を指す。限定されないが、色素体ゲノムにおける改変配列の存在を検出するのに有用な分子技法としては、表現型スクリーニング;TaqMan(登録商標)またはIllumina/Infinium技術による一塩基多型(SNP)解析などの分子マーカー技術;サザンブロット;ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA);及び配列決定(例えば、サンガー、Illumina(登録商標)、454、Pac-Bio、Ion Torrent(商標))が挙げられる。一態様では、本明細書において提供される検出方法は、表現型スクリーニングを含む。別の態様では、本明細書において提供される検出方法は、SNP解析を含む。さらなる態様では、本明細書において提供される検出方法は、サザンブロットを含む。さらなる態様では、本明細書において提供される検出方法は、PCRを含む。ある態様では、本明細書において提供される検出方法は、ELISAを含む。さらなる態様では、本明細書において提供される検出方法は、核酸またはタンパク質の配列を決定することを含む。限定されないが、核酸は、ハイブリダイゼーションを使用して検出することができる。核酸間のハイブリダイゼーションは、Sambrook et al.(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)において詳細に論じられている。
【0093】
核酸は、当技術分野で慣例的な技法を使用して単離することができる。例えば、核酸は、限定されないが、組換え核酸技術及び/またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む任意の方法を使用して単離することができる。一般的なPCR技法は、例えばPCR Primer:A Laboratory Manual,Dieffenbach&Dveksler,Eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995に記載されている。組換え核酸技法は、例えば、制限酵素消化及びライゲーションを含み、これを使用して核酸を単離することができる。単離された核酸は、単一核酸分子または一連のオリゴヌクレオチドのいずれかとして、化学的に合成することもできる。ポリペプチドは、DEAEイオン交換、ゲル濾過、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの公知の方法によって、天然源(例えば、生体試料)から精製することができる。ポリペプチドは、例えば発現ベクターにおいて核酸を発現させることによって精製することもできる。さらに、精製されたポリペプチドは、化学合成によって得ることができる。ポリペプチドの純度の程度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析を使用して測定することができる。
【0094】
本明細書で使用する場合、核酸分子との関連における「相補的」という用語は、ヌクレオチド塩基の対合を指し、それゆえ、AはT(またはU)と相補的であり、GはCと相補的である。2つの相補的な核酸分子は、互いにハイブリダイズすることができる。非限定的な例として、二本鎖DNAの2本の鎖(例えば、センス及びアンチセンス)は互いに相補的である。
【0095】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸の鎖を指す。ポリペプチドは、本明細書において提供されるポリヌクレオチドによってコードされ得る。ポリペプチドの一例はタンパク質である。本明細書において提供されるタンパク質は、本明細書において提供される核酸分子によってコードされ得る。
【0096】
ポリペプチドは、抗体を使用して検出することができる。抗体を使用してポリペプチドを検出するための技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降及び免疫蛍光が挙げられる。本明細書において提供される抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。本明細書において提供されるポリペプチドに対して特異的な結合親和性を有する抗体は、当技術分野で周知の方法を使用して生成することができる。本明細書において提供される抗体は、当技術分野で公知の方法を使用してマイクロタイタープレートなどの固体支持体に結合させることができる。
【0097】
一態様では、改変色素体ゲノム配列を検出するための方法であって、本明細書に記載される改変配列にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して、改変色素体ゲノム配列を検出することを含む、方法が提供される。ある態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、PCRプライマーである。ある態様では、PCRプライマーは、in vitroポリメラーゼ連鎖反応中のDNA合成の出発点として機能する。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも1つのサイレント変異にハイブリダイズすることができる。ある態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、フルオロフォアを含む。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、ロックド核酸を含む。さらなる態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、放射性同位元素を含む。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、エピトープを含む。さらに別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、ビオチンを含む。
【0098】
ある態様では、本明細書において提供されるオリゴヌクレオチドプローブは、本明細書において提供される配列番号12~17と少なくとも70%同一もしくは相補的、少なくとも75%同一もしくは相補的、少なくとも80%同一もしくは相補的、少なくとも85%同一もしくは相補的、少なくとも90%同一もしくは相補的、少なくとも95%同一もしくは相補的、少なくとも97%同一もしくは相補的、少なくとも99%同一もしくは相補的、または100%同一もしくは相補的な配列を含む。
【0099】
別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも2つのサイレント変異にハイブリダイズすることができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも3つのサイレント変異にハイブリダイズすることができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも4つのサイレント変異にハイブリダイズすることができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも5つのサイレント変異にハイブリダイズすることができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも6つのサイレント変異にハイブリダイズすることができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも7つのサイレント変異にハイブリダイズすることができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも8つのサイレント変異にハイブリダイズすることができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも9つのサイレント変異にハイブリダイズすることができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列の少なくとも10のサイレント変異にハイブリダイズすることができる。さらなる態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列及び第1の色素体ゲノムセグメントにハイブリダイズすることができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、改変配列及び第2の色素体ゲノムセグメントにハイブリダイズすることができる。
【0100】
本明細書において提供される方法は、色素体ゲノムDNA(すなわち、「プラストーム」)における標的化された内在性配列の、組換えDNA分子由来の標的化された配列の改変形態への部位特異的置き換えを達成するために相同組換えを用いる。上に記載したように、組換えDNA分子は、概して、標的配列の改変形態と隣接する2つのアーム領域を含み得、2つのアーム領域のそれぞれは、それぞれの標的色素体ゲノム配列と相同であり、色素体ゲノムの標的部位での内在性配列の組換え及び置き換えを駆動する。相同組換えを介した植物細胞の色素体ゲノムへの部位特異的組み入れは、核ゲノム全体にわたる種々の位置に導入遺伝子挿入を有する核形質転換事象と一般的に関連する事象のばらつきを低減する。結果として、色素体における発現レベルは、(その挿入部位に応じてばらつきのある予測不能なレベルの発現を示す核形質転換事象と異なり)同じ品質のトランスプラストミック事象間で概ね一貫するはずである。そのような一貫した予測可能な発現は、トランスプラストミック事象を引き起こすための開発コストを低減する。
【0101】
植物細胞を形質転換する方法は当業者によって周知である。例えば、組換えDNAをコーティングした粒子を用いる粒子銃(例えば、遺伝子銃形質転換)によって植物細胞を形質転換するための具体的な指示は、米国特許第5,015,580号(ダイズ);同第5,550,318号(トウモロコシ);同第5,538,880号(トウモロコシ);同第5,914,451号(ダイズ);同第6,160,208号(トウモロコシ);同第6,399,861号(トウモロコシ)及び同第6,153,812号(コムギ);同第6,002,070号(イネ);同第7,122,722号(ワタ);同第6,051,756号(Brassica);同第6,297,056号(Brassica);米国特許公開第2004/0123342号(サトウキビ)に見出される。他の植物を形質転換するための方法は、例えば、Compendium of Transgenic Crop Plants(2009)Blackwell Publishingに見出すことができる。遺伝子銃形質転換及びPEG媒介形質転換技法を使用する色素体ゲノムの形質転換に特異的な方法もまた当技術分野で公知である。例えば、Vermand Daniell,2007,Plant Physiology,145:1129-1143、Daniell et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:88-92、Sanford et al.,1993,Methods Enzymol.217:483-509、O’Neill et al.,1993,Plant J.,3:729-738、及びGolds et al.,1993,Nature Biotechnology,11:95-97(これらは全て、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照されたい。当業者に公知のいかなる適切な方法も、本明細書において提供される核酸分子のいずれかを用いて植物細胞を形質転換するために使用することができる。
【0102】
一態様では、本明細書において提供される方法は、植物細胞を安定に形質転換する。別の態様では、本明細書において提供される方法は、植物細胞を一過性に形質転換する。ある態様では、植物細胞を形質転換する方法は、遺伝子銃形質転換を含む。ある態様では、植物細胞を形質転換する方法は、PEG媒介形質転換を含む。
【0103】
本明細書において提供される安定に組み入れられた核酸分子を含有するトランスプラストミック植物細胞及びトランスプラストミック植物をもたらす形質転換法は、好ましくは、培地における組織培養及び制御環境において実施される。
【0104】
一態様では、本開示は、生殖物質ではなく、植物の自然生殖を媒介しない植物細胞を提供する。別の態様では、本開示はまた、生殖物質であり、植物の自然生殖を媒介する植物細胞を提供する。別の態様では、本開示は、光合成を介して自らを維持することができない植物細胞を提供する。別の態様では、本開示は、植物体細胞を提供する。体細胞は、生殖細胞と異なり、植物の生殖を媒介しない。
【0105】
形質転換のレシピエント細胞標的としては、これらに限定されないが、種子細胞、果実細胞、葉細胞、子葉細胞、胚軸細胞、分裂組織細胞、胚細胞、胚乳細胞、根細胞、シュート細胞、幹細胞、莢細胞、花細胞、花房細胞、花柄細胞、小花柄細胞、花柱細胞、柱頭細胞、花托細胞、花弁細胞、萼片細胞、花粉細胞、葯細胞、花糸細胞、子房細胞、胚珠細胞、果皮細胞、師部細胞、出芽細胞、または維管束組織細胞が挙げられる。別の態様では、本開示は、色素体を含む細胞を提供する。別の態様では、本開示は、葉緑体を含む細胞を提供する。さらなる態様では、本開示は、表皮細胞、小孔細胞、トリコーム細胞、根毛細胞、貯蔵根細胞、または塊茎細胞を提供する。別の態様では、本開示は、プロトプラストを提供する。別の態様では、本開示は、植物カルス細胞を提供する。稔性植物が再生され得るいかなる細胞も、本開示の実施に有用なレシピエント細胞として企図される。カルスは、未熟胚または胚の一部、実生頂端分裂組織、及び小胞子などを含むがこれらに限定されない様々な組織源から開始させることができる。カルスとして増殖することができる細胞は、形質転換のレシピエント細胞として機能することができる。本開示のトランスジェニック植物を作製するための実際的な形質転換法及び材料(例えば、様々な培地及びレシピエント標的細胞、未熟胚の形質転換、ならびにその後の稔性トランスジェニック植物の再生)は、例えば、米国特許第6,194,636号及び同第6,232,526号、ならびに米国特許出願公開第2004/0216189号に開示されている。
【0106】
形質転換または銃による打ち込みの後、植物組織を、選択剤を含有する1種または複数種の選択培地と接触させて、形質転換のために使用した組換えDNA分子由来の、色素体ゲノムに組み入れられた選択マーカー遺伝子の発現を有するトランスプラストミック細胞の生存、成長、増殖及び/または発生を付勢(bias)してもよい。選択マーカー遺伝子は、概して、選択のために使用される選択剤と対合し、その結果、選択マーカー遺伝子は、選択剤による選択に対する耐性を付与する。一般的に使用される選択マーカー遺伝子としては、限定されないが、抗生物質、例えばカナマイシン及びパロモマイシン(nptII)、ハイグロマイシンB(aph IV)、ストレプトマイシンもしくはスペクチノマイシン(aadA)ならびにゲンタマイシン(aac3及びaacC4)に対する耐性もしくは抵抗性を付与するもの、または除草剤、例えばグルホシネート(barまたはpat)、ジカンバ(DMO)、及びグリホサート(aroAまたはEPSPS)に対する耐性もしくは抵抗性を付与するものが挙げられる。形質転換体を視覚的にスクリーニングすることを可能にする選択マーカー遺伝子もまた使用することができる。非限定的な例としては、ルシフェラーゼもしくは緑色蛍光タンパク質(GFP)、または様々な発色基質が公知であるベータグルクロニダーゼを発現する遺伝子もしくはuidA遺伝子(GUS)が挙げられる。
【0107】
本明細書に別段の定義がない限り、用語は、関連する技術分野の当業者による従来の用法に従って理解されるべきである。本明細書で使用される分子生物学に関連する用語の多くを記載している資料の例は、Alberts et al.,Molecular Biology of The Cell,5th Edition,Garland Science Publishing,Inc.:New York,2007、Rieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,5th edition,Springer-Verlag:New York,1991、King et al.,A Dictionary of Genetics,6th ed.,Oxford University Press:New York,2002、及びLewin,Genes IX,Oxford University Press:New York,2007に見出すことができる。米国特許法施行規則第1.822条に記載のDNA塩基の命名法が使用される。
【0108】
以下は本開示の非限定的かつ例示的な実施形態である。
【0109】
第1の実施形態は、色素体ゲノムを改変する方法であって、組換え核酸分子を植物細胞に導入することであって、前記組換え核酸分子が、5’から3’に向かって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同な第1の相同配列、標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む改変配列、及び第2の内在性色素体ゲノム配列と相同な第2の相同配列を含み、前記標的色素体配列が、前記植物細胞の色素体ゲノムにおいて、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と前記第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、前記導入することと、前記植物細胞の前記色素体ゲノムにおける前記標的色素体配列を前記改変配列に置き換えるような相同組換えを生じさせることとを含む、前記方法に関する。
【0110】
第2の実施形態は、前記改変配列が、前記標的色素体配列に対する少なくとも第2、第3、第4、第5、第6、第7、8つ、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、または第20のサイレント変異を含む、実施形態1に記載の方法に関する。
【0111】
第3の実施形態は、前記改変配列が、前記標的色素体配列に対する少なくとも1つの機能変異を含む、実施形態1に記載の方法に関する。
【0112】
第4の実施形態は、前記改変配列が、前記標的色素体配列に対する少なくとも第2の機能変異を含む、実施形態3に記載の方法に関する。
【0113】
第5の実施形態は、前記改変配列が、前記標的色素体配列と少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である、実施形態1に記載の方法に関する。
【0114】
第6の実施形態は、前記第1の相同配列が、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と本質的に同一である、実施形態1に記載の方法に関する。
【0115】
第7の実施形態は、前記第2の相同配列が、前記第2の内在性色素体ゲノム配列と本質的に同一である、実施形態1に記載の方法に関する。
【0116】
第8の実施形態は、前記標的色素体配列が、色素体遺伝子の少なくとも一部分、または前記色素体遺伝子の少なくとも一部分と相補的な配列を含む、実施形態1に記載の方法に関する。
【0117】
第9の実施形態は、前記組換え核酸分子が、前記第1の相同配列と前記第2の相同配列との間に選択マーカー遺伝子をさらに含む、実施形態1に記載の方法に関する。
【0118】
第10の実施形態は、前記選択マーカー遺伝子が、nptII、aph IV、aadA、aac3、aacC4、bar、pat、DMO、EPSPS、及びaroAからなる群から選択される、実施形態9に記載の方法に関する。
【0119】
第11の実施形態は、前記組換え核酸分子が、前記第1の相同配列と前記第2の相同配列との間にターミネーター配列をさらに含む、実施形態1に記載の方法に関する。
【0120】
第12の実施形態は、前記組換え核酸分子が、前記第1の相同配列と前記第2の相同配列との間にプロモーター配列をさらに含む、実施形態1に記載の方法に関する。
【0121】
第13の実施形態は、前記植物細胞が単子葉植物細胞である、実施形態1に記載の方法に関する。
【0122】
第14の実施形態は、前記単子葉植物細胞が、トウモロコシ細胞、イネ細胞、コムギ細胞、オオムギ細胞、またはサトウキビ細胞である、実施形態13に記載の方法に関する。
【0123】
第15の実施形態は、前記植物細胞が双子葉植物細胞である、実施形態1に記載の方法に関する。
【0124】
第16の実施形態は、前記双子葉植物細胞が、ダイズ細胞、アルファルファ細胞、ワタ細胞、トマト細胞、Arabidopsis細胞、またはキャノーラ細胞である、実施形態15に記載の方法に関する。
【0125】
第17の実施形態は、前記改変配列を含む形質転換植物細胞を選択するステップをさらに含む、実施形態1に記載の方法に関する。
【0126】
第18の実施形態は、前記選択するステップが、前記形質転換植物細胞を分子技法に基づいて選択することを含む、実施形態17に記載の方法に関する。
【0127】
第19の実施形態は、前記選択するステップが、前記形質転換植物細胞を、前記形質転換植物細胞の前記色素体ゲノムにおける前記改変配列によって引き起こされた表現型変化に基づいて選択することを含む、実施形態17に記載の方法に関する。
【0128】
第20の実施形態は、前記形質転換植物細胞から形質転換植物を再生することをさらに含む、実施形態1に記載の方法に関する。
【0129】
第21の実施形態は、植物細胞における標的色素体配列を置き換えるためのベクターであって、前記プラスミドベクターが、5’から3’の順に、第1の相同配列であって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同である、前記第1の相同配列、改変配列であって、前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、前記改変配列、及び第2の相同配列であって、第2の内在性色素体ゲノム配列と相同である、前記第2の相同配列を含む組換え核酸分子を含み、前記標的色素体配列が、前記植物細胞の色素体ゲノムにおいて、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と前記第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、前記ベクターに関する。
【0130】
第22の実施形態は、色素体ゲノム中に改変配列を含む、実施形態1に記載の方法によって作製されるトランスジェニック植物細胞に関する。
【0131】
第23の実施形態は、色素体ゲノムを改変する方法であって、組換え核酸分子を植物細胞に導入することであって、前記組換え核酸分子が、5’から3’に向かって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同な第1の相同配列、1,000ヌクレオチドごとに標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む改変配列、及び第2の内在性色素体ゲノム配列と相同な第2の相同配列を含み、前記標的色素体配列が、前記植物細胞の色素体ゲノムにおいて、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と前記第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、前記導入することと、前記植物細胞の前記色素体ゲノムにおける前記標的色素体配列を前記改変配列に置き換えるような相同組換えを生じさせることとを含む、前記方法に関する。
【0132】
第24の実施形態は、前記改変配列が、500ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、実施形態23に記載の方法に関する。
【0133】
第25の実施形態は、前記改変配列が、250ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、実施形態23に記載の方法に関する。
【0134】
第26の実施形態は、植物細胞における標的色素体配列を置き換えるためのベクターであって、前記プラスミドベクターが、5’から3’の順に、第1の相同配列であって、第1の内在性色素体ゲノム配列と相同である、前記第1の相同配列、改変配列であって、1,000ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、前記改変配列、及び第2の相同配列であって、第2の内在性色素体ゲノム配列と相同である、前記第2の相同配列を含む組換え核酸分子を含み、前記標的色素体配列が、前記植物細胞の色素体ゲノムにおいて、前記第1の内在性色素体ゲノム配列と前記第2の内在性色素体ゲノム配列との間に位置する、前記ベクターに関する。
【0135】
第27の実施形態は、前記改変配列が、500ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、実施形態26に記載のベクターに関する。
【0136】
第28の実施形態は、前記改変配列が、250ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、実施形態26に記載のベクターに関する。
【0137】
第29の実施形態は、前記改変配列が、3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、60、63、66、69、72、75、78、81、84、87、90、93、96、99、102、105、108、111、114、117、120、123、126、129、132、135、138、141、144、147、150、153、156、159、162、165、168、171、174、177、180、183、186、189、192、195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、249、252、255、258、261、264、267、270、273、276、279、282、285、288、291、294、297、または300ヌクレオチドごとに前記標的色素体配列に対する少なくとも1つのサイレント変異を含む、実施形態26に記載のベクターに関する。
【0138】
第30の実施形態は、色素体ゲノム中に改変配列を含む、実施形態23に記載の方法によって作製されるトランスジェニック植物細胞に関する。
【実施例】
【0139】
実施例1.ダイズ色素体において野生型rbcL遺伝子をコドン改変rbcL遺伝子に完全に置き換える組換えDNA構築物の作出
葉緑体ゲノムは、植物における呼吸及び光合成の調節に関与するいくつかの遺伝子を含有することが公知である。これらの遺伝子は、作物種の改良において特に興味深い。そのような遺伝子の1つは、リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)の大サブユニットをコードするリブロースビスリン酸カルボキシラーゼ大鎖(rbcL)遺伝子である。Rubiscoは、植物光合成における重要な酵素であるが、いくつかの作物植物種を含むC3植物では比較的非効率的であると考えられている。あるいは、C4植物におけるRubiscoは、C3の対応物とは異なる動態特性を有していると考えられ、結果として、これはより効率的な光合成プロセスを有するC4植物をもたらす。このことを考慮すると、C3及びC4植物におけるRubiscoならびにその構造及び機能の研究は、農業バイオテクノロジーの分野において興味深いものとなる。作物植物を操作して、向上した動態特性を有するRubiscoを発現させることは、未だ成功を収めていない。野生型rbcL遺伝子を、より効率的なRubiscoを有する種由来のrbcL遺伝子に置き換えることは、光合成経路に関与する他のタンパク質との適合性の問題を生じる傾向がある。ゲノム編集を介して未改変Rubisco大サブユニットに対する特定の改変を導入することは、典型的には、所望の改変を有する非常に少数の形質転換体をもたらす。加えて、野生型遺伝子と改変遺伝子との間の高い配列相同性のために、改変は、細胞自身のDNA修復機構によって除去される場合がある。
【0140】
野生型ダイズrbcL遺伝子(配列番号1)が効率的に置き換えられ得るかどうかを決定するために、改変ダイズrbcL遺伝子配列を、改変rbcL配列と内在性rbcL配列との間での組換えの可能性を低下させるように設計した。葉緑体における組換えは、高い配列相同性の領域にわたって生じるため、改変rbcL配列は、同じタンパク質を依然としてコードする一方で、核酸レベルにおいて野生型rbcL配列と比較的低い配列相同性を有するように設計した。これは、アミノ酸をコードするコドンの縮重を利用することによって達成された。野生型ダイズrbcL遺伝子コード配列を評価して、各アミノ酸をコードするコドン及び各コドンの頻度を配列の全長にわたって決定した(
図1)。改変rbcL配列をコドン使用頻度に基づいて生成した。野生型配列における各コドンについて、既存のコドンがそれぞれのコドンファミリー内で最も頻繁に生じるコドンではない場合、改変配列では、それを、最も頻繁な使用を有する同義コドンに置き換えた。結果として得られたコドン改変ダイズrbcL配列(配列番号3)は、野生型ダイズrbcL配列と約67%の配列相同性を有するに過ぎないが、両方によってコードされたアミノ酸配列は100%の配列相同性を共有する(
図2)。
【0141】
コドン改変rbcL配列を含む組換えDNA構築物を色素体形質転換のために設計した。コドン改変rbcL配列(配列番号3)を、未改変ダイズrbcLプロモーター(配列番号6)配列と未改変ダイズrbcLターミネーター(配列番号7)配列との間に挿入した。ダイズ色素体ゲノムにおいて、rbcL遺伝子は、matK及びtRNA-Lys遺伝子とatpB遺伝子との間に位置する。したがって、構築物には、完全rbcL配列と隣接する5’相同配列(配列番号4)及び3’相同配列(配列番号5)を含有させて、ダイズ色素体ゲノムとの組換えを導き、それによって野生型rbcL配列(配列番号1)をコドン改変rbcL配列(配列番号3)に置き換えた。色素体特異的選択マーカー遺伝子であるストレプトマイシン/スペクチノマイシンアデニリルトランスフェラーゼ(aadA)遺伝子は、形質転換体の選択に使用するために、2つの隣接相同領域の間に存在した。aadA発現カセットは1対のloxP部位と隣接させた。結果として得られた組換えDNA構築物の図を
図3に示す。
【0142】
実施例2.改変RuBisCOタンパク質をコードする組換えDNA構築物の作出
上の実施例1に記載したように、コドン改変rbcL配列は、その野生型対応物と比較して複数の同義コドン変化を含有するが、両方の配列は同じアミノ酸配列をコードする。コドン改変rbcL配列を鋳型として使用して、コードされるアミノ酸配列中に特異的変異を含有する改変rbcL配列を生成した。
【0143】
コードされるアミノ酸配列が野生型/コドン改変rbcLアミノ酸配列(配列番号2)と比較して少なくとも2つのアミノ酸置換を含むように、コドン改変rbcL配列を改変した。変異E6G-P89Gコード配列(配列番号8)は、配列番号2の残基6に対応する位置における第1のアミノ酸置換であって、この位置におけるグルタミン酸をグリシンに置換する、第1のアミノ酸置換と、配列番号2の残基89に対応する位置における第2のアミノ酸置換であって、この位置におけるプロリンをグリシンに置換する、第2のアミノ酸置換とを含むバリアントアミノ酸配列(配列番号9)をコードする。変異E6G-N95Qコード配列(配列番号10)は、配列番号2の残基6に対応する位置における第1のアミノ酸置換であって、この位置におけるグルタミン酸をグリシンに置換する、第1のアミノ酸置換と、配列番号2の残基95に対応する位置における第2のアミノ酸置換であって、この位置におけるアスパラギンをグルタミンに置換する、第2のアミノ酸置換とを含むバリアントアミノ酸配列(配列番号11)をコードする。E6G-P89G及びE6G-N95Q変異コード配列をそれぞれ、未改変ダイズrbcLプロモーター及びターミネーター配列、5’相同配列、3’相同配列、ならびにaadA遺伝子と共に形質転換プラスミドにクローニングして、実施例1に記載したものと類似した組換えDNA構築物を作製した。aadA発現カセットは、1対のLoxP部位と隣接させ、これにより、トランスプラストミック植物を、Creリコンビナーゼを発現する植物と交配させた場合に、トランスプラストミック植物における選択マーカー遺伝子を除去することが可能になる。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第2005/0166288号に記載されているように、様々な方法をaadAマーカー遺伝子の切り出しのために用いることができる。
【0144】
実施例3.色素体形質転換
実施例1及び2に記載した組換えDNA構築物のそれぞれを、ダイズ色素体に形質転換した。ダイズ分裂組織外植片の色素体形質転換のための方法は、当技術分野で公知であり、ここでは、原則として、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0264983号に記載されているように実施した。
【0145】
組換えDNA構築物を金粒子にコーティングし、1日または2日齢の前培養ダイズ外植片に打ち込んだ。打ち込まれた外植片を静置培地に一晩移した後、外植片を、明期16時間及び暗期8時間の光周期の下で2~3か月間、150mg/Lのスペクチノマイシンを含む選択培地に移した。5’及び3’隣接相同領域を介した色素体ゲノムとDNA構築物との間の相同組換えは、野生型rbcL遺伝子を改変rbcL遺伝子に置き換え、また、aadA遺伝子を色素体ゲノムに導入し、それによって形質転換体の選択を可能にするはずである。緑色のシュートが出現したら、それらを発根のために継代培養したか、または温室に移して、再生ダイズ植物を確立した。
【0146】
実施例4.rbcL遺伝子置き換えを含む植物の同定
葉先端部試料を、実施例3から得た再生ダイズ植物から採取した。各試料からDNAを抽出し、PCRの鋳型として使用した。
図4は、使用したPCRプライマーの位置を示し、プライマー3615(配列番号12)及びプライマー3620(配列番号13)は5’相同アームを含有する領域を増幅し、プライマー2980(配列番号14)及びプライマー3622(配列番号15)は3’相同アームを含有する領域を増幅する。再生植物をスクリーニングして、野生型rbcL遺伝子の、コドン改変rbcL遺伝子、E6G-P89G変異rbcL遺伝子、またはE6G-N95Q変異rbcL遺伝子への置き換えを確認した。スクリーニングの結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0147】
各置き換え事象の代表的なPCR結果を
図5A及び
図5Bに示す。PCR産物の配列決定により、再生ダイズ植物におけるE6G-N95Q及びE6G-P89G変異rbcL置き換え事象の存在が確認された。
【配列表】
【国際調査報告】