(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】マクロカプセル化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20240822BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20240822BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61M37/00 560
A61K35/39
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509053
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022040393
(87)【国際公開番号】W WO2023023006
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598032106
【氏名又は名称】バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サノス, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ミルズ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ラジェンドラン, ラフル アール.
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ノア
【テーマコード(参考)】
4C087
4C267
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA10
4C087BB51
4C087CA04
4C087MA11
4C087MA67
4C087NA12
4C087ZC35
4C267AA75
4C267CC04
4C267EE08
4C267GG16
4C267GG46
(57)【要約】
マクロカプセル化装置及び関連する製造方法について記載され、それにおいて、装置の結合膜は、フレームと結合膜のシール周囲との間に応力緩和が設けられる配置で、付随するフレームに取り付けられ得る。膜が対応する周縁フレームに取り付けられる際に、シール周囲がフレームから半径方向内側に間隔を置いて配置され、1つ以上の膜の非結合部分がフレームとシール周囲との間に設けられるように、シール周囲が膜の外周から半径方向内側に配置され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞集団を収容するためのマクロカプセル化装置であって、以下:
第1の膜、
前記第1の膜の上に配置される第2の膜であって、前記第1の膜及び前記第2の膜は互いに結合して、前記第1の膜と前記第2の膜との間に設けられた内部体積の周囲に延在するシールを形成し、前記シールは、前記第1の膜及び前記第2の膜の外周から半径方向内側に設けられ、前記第1の膜及び/または前記第2の膜は半透性である、前記第2の膜、
フレームであって、前記第1の膜及び前記第2の膜は前記フレーム上に配置され、前記フレームは前記第1の膜及び前記第2の膜の前記外周の少なくとも一部に沿って延在し、前記シールは前記フレームから半径方向内側に設けられる、前記フレームを含む、前記マクロカプセル化装置。
【請求項2】
前記シールと前記フレームとの間に設けられる緩衝領域をさらに含む、請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項3】
前記緩衝領域により、前記シールと前記フレームとの間に、約400ミクロン以上約2mm以下の間隙が創出される、請求項2に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項4】
前記間隙は約750ミクロン以下である、請求項3に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項5】
前記間隙は750ミクロン以上である、請求項3に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項6】
前記フレームのヤング率が、前記第1の膜及び前記第2の膜のヤング率よりも大きい、請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項7】
前記第1の膜及び前記第2の膜を前記フレームに結合する接着剤であって、前記接着剤のヤング率が、前記第1の膜及び前記第2の膜のヤング率よりも大きく、かつ、前記フレームのヤング率よりも小さい前記接着剤、をさらに含む請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項8】
前記フレームの内周を回って配置される複数のリザーバをさらに含む、請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項9】
前記フレームは、前記第1の膜及び前記第2の膜の前記周囲を回って延在する、請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項10】
前記フレームは、前記第1の膜及び前記第2の膜の前記周囲を完全に回って延在する、請求項9に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項11】
前記フレームは、前記フレームを貫通して延在し、前記内部体積と流体連通する前記フレームの内周に配置された開口部を含むチャネル、を含む充填ポートを含む、請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項12】
前記開口部は、前記フレームの前記内周と面一である、請求項11に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項13】
前記第1の膜と前記第2の膜との間に設けられる複数の相互接続チャネルを形成する、前記フレームから半径方向内側に配置された、前記第1の膜及び前記第2の膜の複数の結合部分をさらに含む、請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項14】
前記結合部分のうちの少なくともいくつかが、その部分を貫通する貫通孔を含む、請求項13に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項15】
前記貫通孔を含む結合部分は、前記内部体積の周囲に延在する前記シールから半径方向内側に配置される、請求項14に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項16】
前記第1の膜または前記第2の膜の少なくとも一方がePTFEで構成される、請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項17】
前記第1の膜または前記第2の膜の少なくとも一方が半透膜である、請求項1に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項18】
前記接着剤は、エポキシ-アクリレート共重合体である、請求項7に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項19】
前記マクロカプセル化装置は、少なくとも70,000サイクルの疲労寿命を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項20】
細胞集団を収容するためのマクロカプセル化装置であって、以下:
第1の膜、
前記第1の膜の上に配置される第2の膜であって、前記第1の膜及び前記第2の膜は互いに結合して、前記第1の膜と前記第2の膜との間に設けられた内部体積の周囲に延在するシールを形成し、前記第1の膜及び/または前記第2の膜は半透性である、前記第2の膜、
前記第1の膜及び前記第2の膜の前記周囲の少なくとも一部に沿って延在する、前記第1の膜または前記第2の膜上に配置されるフレームであって、前記フレームは、前記フレームの外側部分から前記フレームの内側部分まで延在する充填ポートを含み、前記フレームの前記内側部分に位置する前記充填ポートの開口部は、前記内部体積と流体連通し、前記フレームの前記内側部分の隣接部分と面一である、前記フレームを含む、前記マクロカプセル化装置。
【請求項21】
前記充填ポートは、前記フレームの前記内側部分に配置される第1の端部に開口部を含み、前記第1の膜の一部及び前記第2の膜の一部は、前記充填ポートの前記開口部が前記第1の膜と前記第2の膜との間に配置されるように、前記充填ポートの前記開口部に隣接する前記フレームの反対側表面に対してシールされる、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項22】
前記充填ポートは、前記フレームの外側部分から延在する突起を含み、前記充填ポートは、前記突起を通って前記開口部まで延在するチャネルを含む、請求項21に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項23】
前記フレームは、前記第1の膜及び前記第2の膜の前記周囲を回って延在する、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項24】
前記フレームは、前記第1の膜及び前記第2の膜の前記周囲を完全に回って延在する、請求項23に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項25】
前記第1の膜及び前記第2の膜は、前記細胞集団が前記装置の外に移行するのを遮断するように構成される、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項26】
前記第1の膜及び/または前記第2の膜における孔の平均細孔径が、1nm以上2500nm以下である、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項27】
前記第1の膜及び/または前記第2の膜における前記孔の平均細孔径は、50nm~1200nmである、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項28】
内部体積中に配置される前記細胞集団をさらに含む、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項29】
前記細胞集団にはインスリン分泌細胞が含まれる、請求項28に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項30】
前記内部体積は、前記第1の膜と前記第2の膜との間に設けられた複数のチャネルを含む、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項31】
前記複数のチャネルを形成する、前記フレームから半径方向内側に配置された、前記第1の膜及び前記第2の膜の複数の結合部分をさらに含む、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項32】
前記シールは、前記第1の膜及び前記第2の膜の外周から半径方向内側に設けられる、請求項20に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項33】
前記マクロカプセル化装置は、少なくとも70,000サイクルの疲労寿命を有する、請求項20~32のいずれか1項に記載のマクロカプセル化装置。
【請求項34】
マクロカプセル化装置を形成する方法であって、以下:
フレーム上に第1の膜及び第2の膜を付着させることであって、前記第1の膜及び前記第2の膜は互いに結合して、前記第1の膜と前記第2の膜との間に設けられた内部体積の周囲に延在するシールを形成し、前記シールは、前記第1の膜及び前記第2の膜の外周から半径方向内側に設けられる、前記付着させること、及び
前記シールから半径方向外側に位置する1つ以上の位置において、前記第1の膜及び前記第2の膜の前記外周に沿って、前記フレームを前記第2の膜及び/または前記第1の膜に接続すること、を含む前記方法。
【請求項35】
前記フレームの内周を回って配置されるリザーバ内に液状接着剤を注入すること、及び前記液状接着剤を前記第1の膜及び前記第2の膜の隣接部分にウイッキングすることをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記液状接着剤は、エポキシ-アクリレート共重合体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記フレームの前記内周を回って配置される前記リザーバは、前記フレームの第1の側から前記第1の側とは反対側の前記フレームの第2の側まで延在する貫通孔である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記貫通孔の横断寸法が、0.25mm以上2.0mm以下である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記リザーバは、前記フレームの前記第1の側から前記フレームの前記第2の側に向かってテーパが付けられている、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の膜及び前記第2の膜の前記外周を回って、前記第1の膜及び/または前記第2の膜の上に液状接着剤を塗布することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記方法は、前記液状接着剤を硬化させて、前記第1の膜及び前記第2の膜を、前記フレームの前記内周に結合することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記フレームの前記内周を回って配置される前記リザーバの間に、順次、前記液状接着剤を個々に塗布し、硬化させる、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記フレームの前記内周を回って配置される前記リザーバの間に、同時に、前記液状接着剤を個々に塗布し、硬化させる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記装置の前記内部体積に細胞集団を充填することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞集団にはインスリン分泌細胞が含まれる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
マクロカプセル化装置を形成する方法であって、以下:
第1の膜及び第2の膜をフレームの第1の表面上に配置することであって、前記フレームは、前記フレームの外側部分から前記フレームの内側部分まで延在する充填ポートを含み、前記フレームは、前記第1の表面とは反対側に位置する第2の表面を含む、前記配置すること、
前記第1の膜の第1のフラップを、前記充填ポートに隣接する前記第1の表面の一部に配置すること、
前記充填ポートに隣接する前記第2の表面の一部に、前記第2の膜の第2のフラップを配置して、前記充填ポートの一部が、前記第1のフラップと前記第2のフラップとの間に配置されるようにすること、及び
前記充填ポートが、前記第1の膜と前記第2の膜との間に設けられる内部体積と流体連通するように、前記第1のフラップ及び前記第2のフラップを前記フレームと共にシールすること、を含む前記方法。
【請求項47】
第1の膜及び前記第1の膜上に配置された第2の膜の一部を、前記第1の膜及び前記第2の膜の水平面から外れる方向に変形させることをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の膜及び前記第2の膜の前記一部を、水平面から外して変形させながら、フレームを前記第2の膜及び/または前記第1の膜に接続することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の膜の周囲の一部に沿って第1のフラップを切断すること、及び前記フレームを通過して延在する充填ポートにまたがる、前記第2の膜の周囲の一部に沿って第2のフラップを切断することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記第1のフラップ及び前記第2のフラップを前記フレームと結合させることをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記装置の内部体積に細胞集団を充填することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の膜及び/または前記第2の膜を、親水性材料でコーティングすることをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記フレームを前記第2の膜に接続する前に、前記第1の膜及び前記第2の膜の1つ以上の部分を結合して、その結合部分間に複数のチャネルを形成することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記フレームを前記第2の膜に接続する前に、前記1つ以上の結合部分に1つ以上の貫通孔を形成することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記第1の膜及び前記第2の膜は互いに結合して、前記第1の膜と前記第2の膜との間に設けられた前記内部体積の周囲に延在するシールを形成し、前記シールは、前記第1の膜及び前記第2の膜の外周から半径方向内側に設けられる、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
前記マクロカプセル化装置を形成する前記方法は、少なくとも部分的に自動化される、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2021年8月16日に出願された米国仮出願第63/233,667号に対する利益を主張するものであり、当該文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示される実施形態は、マクロカプセル化装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病等の代謝異常を処置するために、生物学的生成物を送達する治療装置を使用することができる。治療装置は、インスリン等の生物学的生成物を長期間供給するように植え込み可能なものであり得る。こうした装置のいくつかにはマクロカプセル化装置が含まれ、当該マクロカプセル化装置は、その中に所望の生物学的生成物を産生する細胞、当該細胞を含むマトリックス、または他の所望の治療薬を収容するために使用される。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、マクロカプセル化装置の様々な実施形態が記載される。開示されるマクロカプセル化装置の様々な実施形態により、さらに詳しく後述するように、製造容易性、耐疲労性、自動化適合性、及び/または他の利点に関連した改善がもたらされ得る。
【0005】
一実施形態において、細胞集団を収容するためのマクロカプセル化装置は、第1の膜及び第1の膜上に配置された第2の膜を含む。第1の膜及び第2の膜は互いに結合して、第1の膜と第2の膜との間に設けられた内部体積の周囲に延在するシールを形成する。シールは、第1の膜及び第2の膜の外周から半径方向内側に設けられる。第1の膜及び/または第2の膜は、半透性である。マクロカプセル化装置は、フレームをさらに含み、第1の膜及び第2の膜はフレーム上に配置され、フレームは第1の膜及び第2の膜の外周の少なくとも一部に沿って延在し、シールはフレームから半径方向内側に設けられる。
【0006】
別の実施形態において、細胞集団を収容するためのマクロカプセル化装置は、第1の膜及び第1の膜上に配置された第2の膜を含む。第1の膜及び第2の膜は互いに結合して、第1の膜と第2の膜との間に設けられた内部体積の周囲に延在するシールを形成する。第1の膜及び/または第2の膜は、半透性である。マクロカプセル化装置は、第1の膜及び第2の膜の周囲の少なくとも一部に沿って延在する、第1の膜または第2の膜上に配置されたフレームをさらに含み、フレームは、フレームの外側部分からフレームの内側部分まで延在する充填ポートを含み、フレームの内側部分に位置する充填ポートの開口部は、内部体積と流体連通し、フレームの内側部分の隣接部分と面一である。
【0007】
別の実施形態において、マクロカプセル化装置を形成する方法は、フレーム上に第1の膜及び第2の膜を付着させることを含み、ここで、第1の膜及び第2の膜は互いに結合して、第1の膜と第2の膜との間に設けられた内部体積の周囲に延在するシールを形成し、シールは、第1の膜及び第2の膜の外周から半径方向内側に設けられる。本方法はさらに、シールから半径方向外側に位置する1つ以上の位置において、第1の膜及び第2の膜の外周に沿って、フレームを第2の膜及び/または第1の膜に接続することを含む。
【0008】
さらに別の実施形態において、マクロカプセル化装置を形成する方法は、第1の膜及び第2の膜をフレームの第1の表面上に配置することを含み、ここで、フレームは、フレームの外側部分からフレームの内側部分まで延在する充填ポートを含み、フレームは、第1の表面とは反対側に位置する第2の表面を含む。本方法はさらに、充填ポートの一部が第1のフラップと第2のフラップとの間に配置されるように、充填ポートに隣接する第1の表面の一部上に、第1の膜の第1のフラップを配置し、充填ポートに隣接する第2の表面の一部上に、第2の膜の第2のフラップを配置すること、及び充填ポートが第1の膜と第2の膜との間に設けられる内部体積と流体連通するように、第1のフラップ及び第2のフラップをフレームと共にシールすることを含む。
【0009】
本開示はこの点において限定されるものではなく、前述の概念、及び後述する追加の概念は、任意の適切な組み合わせで企図され得ることが認識されるべきである。さらに、添付の図と併せて考慮される場合、本開示の他の利点及び新規特徴が、様々な非限定的実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0010】
本明細書及び参照により組み込まれる文献が、相反する開示及び/または矛盾する開示を含む場合、本明細書が優先するものとする。参照により組み込まれる2つ以上の文献が、互いに対して相反する開示及び/または矛盾する開示を含む場合、有効日がより遅い文献が優先するものとする。
【0011】
添付図面は、縮尺通りに描写されることが意図されるものではない。図面において、種々の図に例示されている同一またはほぼ同一の構成要素のそれぞれは、同様の数字で表され得る。明確性のため、全図面において、すべての構成要素に名称を付けない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】一実施形態による、フレームに取り付ける前のマクロカプセル化装置結合膜の正面図である。
【0013】
【0014】
【
図2A】一実施形態による、マクロカプセル化装置のフレームの正面透視図である。
【0015】
【
図2B】
図2Aの実施形態のセクション2Bを拡大した図である。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【
図3A】一実施形態によるマクロカプセル化装置の正面図である。
【0021】
【0022】
【
図3C】
図3Aの実施形態のマクロカプセル化装置側面図である。
【0023】
【
図3D】所望の物質が充填された後の、
図3Aの実施形態のマクロカプセル化装置側面図である。
【0024】
【
図4】一実施形態による、結合膜をフレームに接続するためのプロセスを示している。
【0025】
【
図5A】結合膜周囲での応力集中に起因する疲労破壊を示す、マクロカプセル化装置の正面図である。
【0026】
【
図5B】細長い充填ポートでの応力集中に起因する疲労破壊を示す、マクロカプセル化装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
糖尿病等の代謝異常を処置するために生物学的生成物を送達する必要性の高まりに後押しされて、種々のタイプの植え込み可能な治療装置が設計されてきた。しかしながら、本発明者らは、このような装置を作製する典型的な方法が、多くの場合に煩わしく、かつ、制御しにくいものであると認識している。例えば、装置に関連する具体的な構造的特徴を形成する際(例えば、取り付け時の接着剤塗布)に、精度及び制御が欠如していることが多い。加えて、本発明者らは、こうした装置を許容差内で正確に形成して、一旦植え込まれたこうした装置の機械的破損を防止することがしばしば困難であることを認識している。
【0028】
例えば、いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置の製造プロセス中に、装置の少なくとも1つ、場合によっては2つ以上の可撓性膜が互いに結合して、膜間に設けられた内部体積の周囲に延在するシールが形成され得る。結合した可撓性膜は、対応する半剛性フレームに取り付けられ得、その2つは互いに結合され得る。本発明者らは、半剛性フレームから可撓性膜への遷移により、膜フレーム界面での応力集中が高くなる可能性があることを認識している。加えて、この界面における接着剤の塗布が不完全であることにより、植え込み時に装置が繰返し屈曲する間、膜上の局所的応力が増大し得る。こうした応力集中の結果、疲労破壊による剥離及び/または膜破裂がもたらされることがある。フレームの他の構造的特徴(膜間に設けられた内部体積内に延在する充填ポート等)も、膜にかかる局所的応力を増大させる可能性があり、それによって再び、疲労破壊及び膜破裂が使用中に促進され得る。
【0029】
以上のことを考慮して、本発明者らは、装置の膜及びフレームの相対的配置、ならびにそれらを互いに結合するための接着剤塗布技術を制御することによって、結果として得られるマクロカプセル化装置の1つ以上のパラメータが変更され得るという、マクロカプセル化装置に付随する利点を認識している。例えば、膜及び関連するフレームを相対的にサイジング及び配置することによって、フレーム界面における膜への応力及び膜破損のリスクが低いマクロカプセル化装置を製造するための、単純かつ容易に制御可能な方法がもたらされ得る。これには、フレームとフレーム内に保持された結合膜のシール周囲との間における応力を緩和させて、結合されていない可撓性膜を、より剛性であるフレームとシール周囲との間の相対的変形に対応できるようにすることが含まれ得る。例えば、膜が対応する周縁フレームに取り付けられる際に、シール周囲がフレームから半径方向内側に間隔を置いて配置され、1つ以上の膜の非結合部分がフレームとシール周囲との間に設けられるように、シール周囲が膜の外周から半径方向内側に配置され得る。フレームとシール周囲との間の空間により、フレームと膜シール周囲との間に、膜の疲労破壊を低減し得る応力緩衝部(本明細書では緩衝領域とも呼ばれ得る)が創出され得る。
【0030】
本発明者らはさらに、装置の1つ以上の膜を関連するフレームに結合するために使用される接着剤が、膜の望ましくない隣接位置に広がるのを防止することが望ましい場合があることを認識している。これには、装置の内部体積の周囲に少なくとも部分的に延在するシール周囲とフレームとの間の緩衝領域に接着剤が広がるのを制限することが含まれ得る。本技術には、フレーム周囲を回って配置される結合発端位置が含まれ得る。結合部位には、フレーム周囲におけるリザーバが含まれることがあり、当該リザーバ内には液状接着剤が堆積し、そこから液状接着剤が膜の周囲部分へと這い上がる。粘度、接着剤の量、リザーバのサイズ、及び膜の特性は、接着剤が硬化して膜がフレームに結合でき、所望の位置への接着剤の広がりが制限されるように選択され得る。各結合部位で膜をフレームに結合した後、第2の接着剤塗布を用いて、同一の接着剤または異なる接着剤のいずれかを、結合部位間及び/または結合部位周囲のセクションにおけるフレーム周囲上に堆積させて、膜とフレームとの間に強固な結合を創出させてもよい。いくつかの実施形態では、両方の接着剤塗布により、膜の非結合部分をフレームと膜シール周囲との間に設けたままにして、上述の応力緩衝部を得ることができる。
【0031】
特定の実施形態に応じて、製造中に接着剤を受容するためにフレーム中に形成されるリザーバは、任意の適切なサイズ及び/または形状を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、フレーム中に含まれるリザーバのサイズは、約50μL~約500μLであり得る。いくつかの実施形態において、フレーム中に含まれるリザーバのサイズは、平均容積が約250μLである。いくつかの実施形態において、フレーム中に含まれるリザーバのサイズは、設計に応じて容積が調整される。例えば、いくつかの実施形態では、フレーム中に含まれるリザーバのサイズは、約1.6μL/cmである。加えて、具体的な実施形態に応じて、リザーバは、膜が配置される取り付け面の表面積を任意の所望の量(例えば、膜が取り付けられるフレーム部分の表面積の10%以上、25%以上、及び/または50%以上を含む)で占めてもよい。これに対応して、リザーバは、膜が取り付けられるフレーム部分の表面積の80%以下、75%以下、50%以下、及び/または25%以下を占めてもよい。前述の範囲の組み合わせには、例えば、膜が取り付けられるフレーム部分の表面積の10%以上80%以下をリザーバが占め得ることが含まれると考えられる。本開示はそのように限定するものではなく、個々のリザーバの容積及び面積占有率が上記より大きい場合及び小さい場合の両方も考えられる。
【0032】
上記に加えて、本発明者らは、1つ以上の膜の対向する部分間に設けられた装置内部体積中に延在する構造介在物に起因して、装置の膜に応力が印加されることを回避するのが望ましい場合があることを認識している。したがって、いくつかの実施形態では、内部体積と流体連通する充填ポートの開口部は、隣接するフレーム内側部分と面一であり得る(すなわち、充填ポートは、1つ以上の膜によって形成される内部体積中に延在しない)。これにより、膜内に延在する充填ポートの使用に起因して膜に印加される応力集中及び潜在的応力が、低減または排除され得る。本発明者らは、面一の開口部周囲で結合膜をシーリングするための技術を認識及び評価しており、この技術については、以下でさらに詳述する。膜内に延在する充填ポートを有する場合と同様に、面一で取り付けられた開口部に関して、シーリングされた結合膜の内部体積に、細胞集団が流入することが明らかにされている。例えば、面一充填ポート及び延在充填ポートを有する装置の試験において、面一充填ポートを有する装置で測定された充填効率は、93.33%の充填率であり、他方で、延在充填ポートを有する装置で測定された充填効率は、90%の充填率であった。面一充填ポートを含む実施形態では、測定された充填効率は、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、及び/または95%以上であり得る。充填効率はまた、約99.99%、99%、98%、97%、96%、及び/または95%以下であってもよい。延在充填ポートを含む実施形態では、測定された充填効率は、約80%以上99.99%以下、またはより好ましくは、90%以上99.99%以下であり得る。しかしながら、上記の範囲の他の組み合わせもまた使用され得る。
【0033】
上述のように、マクロカプセル化装置には多層の膜が含まれ得る。これらの多層の膜のうちの少なくとも1つの外膜は、半透性であり得る。しかしながら、各膜が半透性であるかまたは装置内の膜の少なくとも1つが実質的に不透過性である実施形態も考えられる。さらに、装置には、2つの積層膜、3つの積層膜、及び/または任意の他の適切な数の膜も含まれることがあるが、本開示はこの様式に限定されるものではない。例えば、2つの膜が含まれる一実施形態では、いずれか一方の膜が半透性で他方が不透過性であり得るか、または両方とも半透性であり得る。したがって、本開示が積層構造内のいかなる特定の膜の組み合わせにも限定されないことが理解されるべきである。
【0034】
いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置には、装置の内部体積中に配置された少なくとも1つの細胞集団が含まれ得る。例えば、細胞集団は、装置の2つ以上の対向する外膜間に形成された内部体積中に配置され得る。ここで、内部体積の外縁は、少なくとも膜の一部分、場合によっては、膜全体、膜周囲または膜の他の適切な部分の周辺に延在する1つ以上の結合によって規定され得る。このような実施形態では、少なくとも装置の外膜を、1つ以上の細胞集団が装置外へ通過することを遮断するように構成し得る。したがって、1つ以上の細胞集団は、装置の内部体積中に保持され得る。単一の内部体積を形成する2つの外膜の使用について述べているが、装置の外膜間及び/または装置内の複数の非接続内部体積間に位置する、複数の中間膜の使用も考えられる。加えて、単一の膜を折り重ね、それ自体を結合して2つの対向する膜を得ることにより、内部体積を形成する場合も考えられる。
【0035】
装置内部に細胞集団を保持することに加えて、いくつかの実施形態では、装置の内部に配置された1つ以上の細胞集団を免疫攻撃から保護し、一方で、細胞が生成した所望の生物学的生成物(インスリン等)ならびに細胞が使用及び生成した老廃物及び栄養素が通過できるように、装置の膜を構成し得る。いくつかの実施形態では、免疫抑制療法をしていない場合において、膜は、免疫攻撃から細胞を保護するように構成される。特定の実施形態に応じて、膜の所望の交換特性及び免疫応答保護特性は、以下に基づくものであり得る:膜の細孔径分布がサイズに基づいて免疫細胞を排除するように選択されるサイズ排除;所望の生物学的生成物、細胞老廃物、及び栄養素の拡散速度よりも有意に小さくなるように、細孔径、屈曲度、膜厚、及び他の適切なパラメータの使用を通じて、より大きな免疫細胞が膜を通過する拡散速度のバランスをとること;前述のものの組み合わせ;及び/または他の適切な排除技法。
【0036】
マクロカプセル化装置の膜は、任意の適切な生体適合性材料から形成され得る。生体適合性材料は、マクロカプセル化装置内に収容される細胞及び周辺組織に対して実質的に不活性であり得る。生体適合性材料には、合成ポリマーまたは天然に存在するポリマーが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ポリマーはまた、線状ポリマー、架橋ポリマー、ネットワークポリマー、付加ポリマー、縮合ポリマー、エラストマー、繊維状ポリマー、熱可塑性ポリマー、非分解性ポリマー、前述のものの組み合わせ、及び/または任意の他の適切なタイプのポリマーであり得るが、本開示はこの様式に限定されるものではない。一実施形態において、ポリマーには、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が含まれ得る。適切なタイプのポリマーには、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、静電紡糸PAN/PVC、前述のものの任意の組み合わせ、及び/または任意の他の適切なポリマー材料もまた含まれ得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかで使用される膜は、PVDFを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかで使用される膜は、静電紡糸PAN PVCを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかで使用される膜は、PESを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかで使用される膜は、PSを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかで使用される膜は、PANを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかで使用される膜は、ポリカーボネートを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかで使用される膜は、ポリプロピレンを含み得る。上記のポリマー材料から1つ以上の多孔質膜を形成するために使用される合成方法としては、限定されないが、膨張法、溶液キャスティング法、浸漬沈殿及び相分離法、静電紡糸法、等網目状ネットワークが得られる方法、小柱状ネットワークが得られる方法、または多孔質ポリマー膜を形成する任意の他の適切な方法を挙げることができる。
【0037】
膜の焼結を用いて、膜の多孔性及び流束特性を変更し得る。例えば、焼結によって、膜の細孔構造を維持しながら、膜の多孔性が増加し得る。また、焼結によって膜の機械的安定性及び拡散流束も改善し得る。したがって、焼結を用いて膜の多孔性及び/または機械的特性を変更し得、ひいては、マクロカプセル化装置の多孔性及び流束特性を調整するために焼結を用いることができる。故に、いくつかの実施形態では、焼結膜及び/または非焼結膜の任意の所望の組み合わせが使用され得る。例えば、装置の2つの外膜が互いに結合し得る場合、焼結膜及び非焼結膜が互いに結合するか、2つの焼結膜が互いに結合するか、または2つの非焼結膜が互いに結合する。さらに、これらの外膜間に位置する任意の数の中間膜が使用され得る場合、こうした中間膜は、焼結されていてもよく、または焼結されていなくてもよい。
【0038】
本明細書に記載されるマクロカプセル化装置の膜は、分子量が約3000kDa未満、2000kDa未満、1000kDa未満、500kDa未満、400kDa未満、300kDa未満、200kDa未満、100kDa未満、50kDa未満、40kDa未満、30kDa未満、20kDa未満、10kDa未満、6kDa未満、5kDa未満、4kDa未満、3kDa未満、2kDa未満、1kDa未満、及び/または所望の用途に応じた任意の他の適切な範囲における分子量の物質(生物学的生成物等)を、膜を通して移送できるように構成された多孔質膜材料から作製され得る。例えば、マクロカプセル化装置の1つ以上の膜は、分子量が約5.8kDaのインスリンが膜を通って流動できるように構成され得る。
【0039】
所望の選択性を得るために、本明細書に開示されるマクロカプセル化装置で使用される多孔質膜は、平均細孔径が、約1nm以上、5nm以上、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、及び/または任意の他の適切な範囲のサイズである開孔構造を有し得る。これに対応して、本明細書に記載される様々な膜の平均細孔径は、2500nm以下、2000nm以下、1700nm以下、1500nm以下、1400nm以下、1300nm以下、1200nm以下、1100nm以下、1000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、及び/または任意の他の適切な範囲のサイズであり得る。前述のものの組み合わせが考えられ、これには、例えば平均細孔径が1nm以上20nm以下、1nm以上2500nm以下、及び/または任意の他の適切な組み合わせが含まれる。特定の平均細孔径については上で記載したが、本明細書に記載される様々な膜に対して任意の適切な平均細孔径が用いられてもよく、例えば、上記のものより大きい平均細孔径及び小さい平均細孔径の両方が挙げられることが理解されるべきである。
【0040】
いくつかの実施形態において、電荷排除特性が膜に含まれ得る。例えば、膜の表面電荷は、中性、陽性、陰性、または双性イオン特性を実現するために、所望の補助剤の等電点に基づき、外部コーティング、プラズマ処理、または他の表面処理で調節され得る。補助剤は、タンパク質、複合小分子、及び/または所望の用途に応じた任意の他の適切な補助剤であり得る。
【0041】
マクロカプセル化装置が十分な強度及び/または剛性を得るために、様々な膜及びフレームが、十分な堅さの材料から作製され得る。所望の剛性は、装置の所望の透過性とバランスがとれ得る、材料のヤング率(弾性率とも呼ばれる)、厚さ、及び全体構造の適切な組み合わせによって得ることができる。本明細書に記載される様々な膜及びフレームに対する適切なヤング率は、少なくとも105Pa、106Pa、107Pa、108Pa、109Pa、及び/または1010Paであり得る。本明細書に記載される様々な膜及びフレームに対して他の適切なヤング率が用いられ得、例えば、これらの範囲よりも大きいヤング率及び小さいヤング率の両方が挙げられる。前述のヤング率の範囲には、例えば、約106Pa以上1010Pa以下のヤング率が含まれると考えられる。いくつかの実施形態において、フレームに適切な材料としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を挙げることができる。フレームに適切な材料としては、限定されないが、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(オキシメチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、熱可塑性ポリマーベースの複合材料、ポリプロピレン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコール酸)、ポリラクチド-コ-グリコリド、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリ(ブチレン)テレフタレート、及び前述のものの組み合わせも挙げることができる。いくつかの実施形態において、フレームに適切な材料としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。いくつかの実施形態において、フレームに適切な材料としては、ポリプロピレンが挙げられる。いくつかの実施形態において、フレームに適切な材料としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)が挙げられる。いくつかの実施形態において、フレームに適切な材料としては、超高密度ポリエチレン(UHDPE)が挙げられる。他の実施形態において、フレームまたはフレームの一部に適切な材料としては、チタン、グラフェン、ステンレス鋼、またはマクロカプセル化装置のフレームとして機能するのに十分な剛性を示す他の適切な生体適合性材料を挙げることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置内へ細胞を充填することを促進するために、及び/または1つ以上の流体、生物学的化合物、治療薬、細胞栄養素、細胞老廃物、及び/または他の物質が装置の膜を通って流動することを促進するために、マクロカプセル化装置内に含められた膜のうちの1つ以上が親水性であることが望ましい場合がある。加えて、装置が生体内に位置する場合、外膜が親水性であると線維形成が生じることも低減され得る。したがって、マクロカプセル化装置の膜を、親水性材料から作製してもよく、及び/または親水性コーティング剤で処理してもよい。適切な親水性コーティング剤としては、限定されないが、ポリヒドロキシアクリレート、PEG、pHPA、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、アガロース、及び/または溶質を含浸させた熱可塑性コーティング剤が挙げられる。適切な親水性材料としては、限定されないが、適切な親水性ポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリドーパミン、それらの任意の組み合わせ、及び/または膜上にコーティングを形成することができる任意の他の適切な親水性材料または膜を作製する原料となり得る任意の他の適切な親水性材料も挙げることができる。
【0043】
本明細書に記載されるマクロカプセル化装置の様々な実施形態で記載される膜は、任意の適切な結合方法を用いて互いに結合され得るが、本開示はこの様式に限定されるものではない。例えば、隣接する膜は、接着、エポキシ樹脂接着、溶接または他の融合ベースの技術(例えば、超音波接合、レーザ接合、物理的接合、熱による接合など)、フレームまたは固定具を用いた機械的クランピング、及び/または任意の他の適切な結合方法を用いて互いに結合され得る。具体的な一実施形態では、設定した融着時間で、規定の圧力及び/または力により、2つ以上の膜を互いに押圧するかまたは打ち付けあうために使用される加熱ツールを使用して、隣接する膜が結合され得る。以上のことを考慮して、本開示は、膜同士を互いに結合する任意の特定の方法の使用に限定されないことが理解されるべきである。
【0044】
いくつかの実施形態では、膜を互いに結合した後に、場合によっては膜にフレームを取り付けた後に、結合した膜の積層体に1回以上の熱処理を適用し得る。例えば、膜を熱処理する前に、膜の周囲に沿って結合部を延在させることにより膜同士を互いに結合してもよく、及び/または膜の内部領域中(例えば、結合周囲の内側)に1つ以上の結合部を形成してもよい。この結合後の熱処理によって、結合領域における膜の結合が強化され得る。膜間の結合を改善するための具体的な熱処理温度及び継続時間は、用いる具体的な材料に応じて変わり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、熱処理温度は、ポリマー膜のガラス転移温度と融解温度との間であり得る。
【0045】
ある特定の実施形態では、装置の横断寸法が最大である平面に対して垂直な方向における、マクロカプセル化装置の最大厚さを制限することが望ましい場合があり得る。したがって、フレーム内に配置される第1の膜及び第2の膜の1つ以上の内部部分を互いに結合して、膜の位置が互いに離れ得る程度を制限してもよい。膜のこれらの結合部分は、フレーム内に位置する膜の内部部分中で均一に分散し得る。これらの結合部分は任意の適切な形状を有し得、例えば、点、線、曲線、または任意の他の適切な形状が挙げられる。結合した内部部分は、所望の用途に適切な任意のサイズであり得るが、点の結合部を用いる一実施形態では、点の結合部の直径は、約0.5mm以上、0.75mm以上、1mm以上、1.25mm以上、1.5mm以上、及び/または任意の他の適切な直径であり得る。これに対応して、点の直径は、約3mm以下、2.75mm以下、2.5mm以下、2.25mm以下、2.0mm以下、及び/または任意の他の適切な直径であり得る。前述の範囲の組み合わせも考えられ、例えば、0.5mm以上3mm以下の直径が挙げられる。具体的な形状及びサイズ範囲を上で示したとはいえ、上記のものよりも小さい他の形状及びサイズと上記のものよりも大きい他の形状及びサイズとの両方が考えられるが、本開示はこの様式に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0046】
いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置の血管新生を改善することが望ましい場合がある。したがって、ある特定の実施形態では、装置のフレームから半径方向内側に配置される膜の内部部分中に位置する、1つ以上の結合部分内に、1つ以上の貫通孔が形成され得る。これらの貫通孔によって、血管系が装置の上部表面及び下部表面の周囲で成長することに加えて、血管系が貫通孔を通って成長することが可能になり得る。1つ以上の貫通孔は、膜の1つ以上の結合部分内に貫通孔を形成させるレーザアブレーション、機械的穿刺、切断、または任意の他の適切な方法を用いて、膜の結合部分内に形成することができる。本明細書でさらに詳しく記載するように、いくつかの実施形態では、1つ以上の貫通孔はまた、装置の非結合応力緩衝領域と、装置のシールされた内部体積の周囲を回って延在するシール周囲との両方に対して、半径方向内側に配置され得る。このことは、フレームに隣接する膜内部での応力集中の発生を回避するのに役立ち得る。
【0047】
膜の結合部分の特定のサイズに応じて、異なるサイズの貫通孔が使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、膜の結合部分に形成される貫通孔の最大横断寸法は、直径0.25mm以上、0.5mm以上、0.75mm以上、1.0mm以上、1.25mm以上、1.5mm以上等、及び/または任意の他の適切な最大横断寸法であり得る。これに対応して、貫通孔の最大横断寸法は、2.0mm以下、1.5mm以下、1.25mm以下、1.0mm以下、0.75mm以下、0.5mm以下、及び/または任意の他の適切な最大横断寸法であり得る。上述の範囲の組み合わせが考えられ、例えば、膜の対応する結合部分に形成される貫通孔の最大横断寸法は、0.25mm以上2.0mm以下であり得、この場合、当該貫通孔の最大横断寸法はまた、それらが形成される膜の対応する結合部分の最大横断寸法よりも小さいことが挙げられる。特定の寸法を上に記したが、本開示はそのように限定するものではなく、上に記した寸法より大きい他の範囲及び上に記した寸法より小さい他の範囲の両方もまた考えられると理解されるべきである。
【0048】
いくつかの実施形態では、装置の内部領域中の上記結合部分及び対応する貫通孔は、膜が平らな平面構成で位置決めされた上で、装置にフレームを取り付ける前に形成され得る。これによって、フレームに取り付けられた後に他の特徴部を形成することを複雑にし得る所望の量のたるみを伴ってフレームに装着される可撓性膜を扱う場合、製造プロセスが単純になり得る。
【0049】
以下で詳しく述べるように、いくつかの実施形態では、装置内の内部体積が複数の相互接続チャネルに再分割されるように、隣接する膜の1つ以上の部分が互いに結合され得る。当該チャネルは、いくつかの実施形態では管腔状に成形され得るが、任意の適切な形状または構成のチャネルもまた用いることができる。チャネルの内部の最大横断寸法(例えば、内径)は、40μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、及び/または400μm以上であり得る。これに対応して、チャネルの内部の最大横断寸法は、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、及び/または400m以下であり得る。前述のものの組み合わせが考えられ、例えば、複数のチャネルの内部の最大横断寸法は40μm以上800μm以下であることが挙げられる。さらに、装置に様々な区画を与える相互接続チャネルの密度は、装置横断面の範囲における単一面積あたり、約10チャネル/cm2、15チャネル/cm2、20チャネル/cm2、25チャネル/cm2、30チャネル/cm2、35チャネル/cm2、40チャネル/cm2、45チャネル/cm2、50チャネル/cm2、60チャネル/cm2、70チャネル/cm2、80チャネル/cm2、90チャネル/cm2、100チャネル/cm2、110チャネル/cm2、120チャネル/cm2、130チャネル/cm2、140チャネル/cm2、150チャネル/cm2、175チャネル/cm2、または200チャネル/cm2以上の密度であり得る。上記チャネル密度の任意の密度間に及ぶ範囲も考えられ、例えば、約10チャネル/cm2以上200チャネル/cm2以下のチャネル密度が挙げられる。しかし、上記範囲よりも大きい密度及び上記範囲よりも小さい密度の両方もまた考えられる。
【0050】
本明細書に記載されるマクロカプセル化装置は、内部体積、外形寸法、及び/または他の適切な物理的パラメータの任意の適切な組み合わせを有し得る。例えば、マクロカプセル化装置の外膜によって包含される内部体積は、40μL以上250μL以下であり得る。また、マクロカプセル化装置の幅、または最大横断寸法は、約20mm~80mmであり得る。加えて、所望によりマクロカプセル化装置の内部に酸素を拡散させて、内部に含まれる細胞を支持するためには、装置の外部から細胞集団を含む装置の内部部分までの最大酸素拡散距離が、50μm未満、100μm未満、150μm未満、200μm未満、250μm未満、300μm未満、350μm未満、400μm未満、450μm未満、または500μm未満であり得る。いくつかの実施形態において、装置の外部から細胞集団を含む装置の内部部分までの最大酸素拡散距離は、150μm以下である。いくつかの実施形態において、装置の外部から細胞集団を含む装置の内部部分までの最大酸素拡散距離は、200μm以下である。いくつかの実施形態において、装置の外部から細胞集団を含む装置の内部部分までの最大酸素拡散距離は、250μm以下である。これに対応して、装置全体及び/または装置内に位置する内部体積の最大厚さ(または最大横断寸法に対して垂直な寸法)は、50μm未満、100μm未満、150μm未満、200μm未満、250μm未満、300μm未満、350μm未満、400μm未満、450μm未満、または500μm未満であり得る。いくつかの実施形態では、装置全体及び/または装置内に位置する内部体積の最大厚さ(または最大横断寸法に対して垂直な寸法)は、500um以下である。さらに、いくつかの実施形態では、装置の体積に対する外側表面積の比は、約20cm-1以上、40cm-1以上、60cm-1以上、80cm-1以上、100cm-1以上、120cm-1以上、または150cm-1であり得る。種々の寸法及びパラメータに対する前述の値の任意の値間に及ぶ範囲、ならびに上記のものよりも大きい範囲及び上記のものよりも小さい範囲の両方も考えられる。
【0051】
マクロカプセル化装置に関連する特定の寸法、パラメータ、及び関係性ならびにマクロカプセル化装置の原料となる材料について前述したが、上記のものよりも大きい及び上記のものよりも小さい寸法、パラメータ、及び関係性も考えられる。しかし、本開示はこの様式に限定されるものではないことが理解されるべきである。したがって、所望の用途に応じて、サイズ、構成、材料特性、及び/または相対性能パラメータの任意の適切な組み合わせが装置に用いられ得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置の内部体積中に含められる細胞集団は、インスリン分泌細胞集団である。いくつかの実施形態では、細胞集団には、幹細胞由来細胞から得られた少なくとも1つの細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細胞は、遺伝子操作された細胞である。場合によっては、少なくとも1つの細胞は、遺伝子操作されていない同等の細胞と比較して、装置植え込み時の対象における免疫応答が低減するように遺伝子操作されている。いくつかの実施形態では、細胞集団は、グルコース応答性インスリン分泌(GSIS)が可能な幹細胞由来細胞である。例えば、適切な細胞集団には、膵臓前駆細胞、内分泌細胞、ベータ細胞、前述のものの1つ以上を含むマトリックス、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。さらに、マトリックスには、単離された膵島細胞、膵臓から単離された細胞、組織から単離された細胞、幹細胞、幹細胞由来細胞、人工多能性細胞、分化細胞、形質転換細胞、または1種以上の生物学的生成物を合成することができる発現系が含まれ得る。任意選択で、いくつかの実施形態では、マトリックスには、1種以上の生物学的生成物を合成する第1のタイプの細胞を支持する第2のタイプの細胞が含まれ得る。いくつかの実施形態では、細胞は、カプセル化されてからマトリックス内に配置され得る。このような実施形態では、細胞は、マイクロカプセル内にカプセル化されてもよいし、または共形的にコーティングされてもよい。しかしながら、むき出し(すなわち、非コーティング)の細胞も使用され得る。
【0053】
特定の実施形態に応じて、治療上有効な密度の細胞が、マクロカプセル化装置の内部体積内に充填され得る。内部体積内に配置される細胞の適切な密度は、約1000細胞/μL以上、10,000細胞/μL以上、50,000細胞/μL以上、100,000細胞/μL以上、及び/または500,000細胞/μL以上であり得る。また、区画内に配置される細胞の適切な密度は、約1,000,000細胞/μL以下、500,000細胞/μL以下、100,000細胞/μL以下、50,000細胞/μL以下、及び/または10,000細胞/μL以下であり得る。前述のものの組み合わせが考えられ、例えば、約1000細胞/μL~1,000,000細胞/μLの細胞密度が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞密度は、約100,000細胞/μL~1,000,000細胞/μLである。細胞密度はまた、所望の用途及び使用される細胞型に応じて、上記のものよりも大きい細胞密度及び上記のものよりも小さい細胞密度の両方が用いられ得る。
【0054】
具体的な用途及び所望の使用期間に応じて、マクロカプセル化装置は、対象生体内に植え込まれる場合に、任意の適切な疲労寿命を有するように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、マクロカプセル化装置は、対象の腹部組織内に植え込まれるように構成され得る。当該腹部組織内では、マクロカプセル化装置が、使用中に腹部収縮の影響を受けることがある。したがって、いくつかの実施形態において、マクロカプセル化装置の疲労寿命は、50,000サイクル以上、60,000サイクル以上、70,000サイクル以上、80,000サイクル以上、90,000サイクル以上、100,000サイクル以上、150,000サイクル以上、200,000サイクル以上、300,000サイクル以上、400,000サイクル以上、及び/または500,000サイクル以上であり得る。疲労寿命はまた、200,000サイクル以下、100,000サイクル以下、及び/または80,000サイクル以下であり得る。前述の範囲の組み合わせが考えられ、例えば、50,000サイクル以上200,000サイクル以下の疲労寿命が挙げられる。いくつかの実施形態では、疲労寿命は、1,000サイクル~50,000サイクルである。いくつかの実施形態では、疲労寿命は、50,000サイクル~100,000サイクルである。いくつかの実施形態では、疲労寿命は、100,000サイクル~500,000サイクルである。また、上記のものよりも長い疲労寿命を有する装置及び上記のものよりも短い疲労寿命を有する装置の両方が考えられるが、本開示はこの様式に限定されるものではない。本出願の目的のために、マクロカプセル化装置の疲労寿命は、実施例のセクションで論じるサイクル疲労試験手順を使用して、対象生体内の腹部組織内に植え込まれた場合に装置が経験し得る力に類似した、12N~45Nの繰返し荷重を用いて決定され得る。
【0055】
本明細書に記載されるマクロカプセル化装置は、対象生体内の様々な部位に植え込まれ得る。一例では、装置は、腹膜前または腹直筋後面への植え込みにより、対象に植え込まれ得る。他の例では、装置は、大網内への植え込みによって配置することができる。別の例では、装置は、皮下への植え込みによって配置することができる。別の例では、装置は、肝臓の上へ植え込むことによって配置することができる。場合によっては、本明細書に記載されるマクロカプセル化装置は、例えば、組織接着剤の塗布を含む任意の適切な固定方法を使用して、生体内の植え込み部位で固定され得る。適切な組織接着剤としては、限定されないが、フィブリン、シアノアクリレート、ポリエチレングリコール、アルブミンベースの接着剤、ポリマーベースの接着剤、及び/または任意の他の適切な接着剤を挙げることができる。別の例において、多血小板血漿及び/または任意の他の適切な固定方法を使用して装置を固定してもよいが、本開示はこの様式に限定されるものではない。
【0056】
マクロカプセル化装置は、使用中、上述のように対象の体内における任意の所望の位置に植え込まれ得る。マクロカプセル化装置は、植え込まれると、対象の体内における周囲部分内の環境に曝され得る。マクロカプセル化装置内に配置された細胞集団は、1つ以上の所望の生物学的化合物を産生する可能性があり、この生物学的化合物は、装置の1つ以上の半透膜を通って、マクロカプセル化装置の外に拡散し得る。いくつかの実施形態において、細胞によって産生された1つ以上の生物学的化合物によって、対象の1つ以上の病状が処置され得る。細胞集団によって排出された老廃物も、1つ以上の半透膜を通って装置の内部体積から周囲環境に拡散し得る。これに対応して、周囲環境に由来する酸素及び栄養素は、1つ以上の半透膜を通って装置の内部体積に拡散し、それにより内部体積内の適切な環境が維持されて、細胞集団が支持され得る。いくつかの実施形態では、装置の1つ以上の半透膜は、本明細書でさらに詳述するように、対象の免疫細胞を装置の内部体積から排除することもできる。
【0057】
図を参照すると、特定の非限定的な実施形態がさらに詳しく記載されている。本開示は、本明細書に記載される特定の実施形態のみに限定されるものではないため、これらの実施形態に関連して記載される種々の系、構成要素、特徴部、及び方法が、個別に及び/または任意の所望の組み合わせで使用され得ることが理解されるべきである。明確性のために、図は、互いに結合した第1の外膜及び第2の外膜のみを含む方法及び装置に関して記載している。しかしながら、本開示はこの様式に限定されるものではないため、図に関連して記載される方法及び装置には、これらの外膜間に配置される任意の数の中間膜が含まれていてもよいことが理解されるべきである。
【0058】
図1A~1Bは、フレームに取り付ける前のマクロカプセル化装置結合膜の実施形態を示している。図に示しているように、第1の膜102及び第2の膜104は、結合周囲122及び結合周囲内に位置する結合部分124において、互いに結合され得る。
図1Aでは、第2の膜104の上面を示しており、膜の結合周囲122(例えば、第1の膜及び第2の膜が結合している箇所)が、結合膜の周囲を回って延在する。結合周囲122は、第1の膜と第2の膜との間に設けられる内部体積を形成し得る。いくつかの実施形態において、結合周囲122は、膜の周囲を回って完全に延在してもよい。しかしながら
図1Aに示すように、結合周囲は、非結合部分135を有していてもよい。後述するように、膜がフレームに接続される場合、非結合部分135は、充填ポートが内部体積と流体連通するように、フレームの充填ポート周囲に配置され、シールされ得る。
【0059】
図示しているように、結合周囲は、膜の外周150から半径方向内側に配置され得る。結合部分124は、膜の表面領域全体に六角形配列で分散した結合点の形態をとり得る。しかしながら、こうした結合領域の任意の適切な形状、配列、及び/または構成も使用され得る。膜の結合周囲から半径方向内側に位置するこれらの結合領域の存在に起因して、膜の間に形成される内部体積は、一旦充填構成をとると、これらの結合部分間に延在する、膜の非結合領域に対応した複数の相互接続チャネル126という形をとり得る。
【0060】
場合によっては、膜102及び膜104の結合部分は、結合プロセスにより膜透過性が実質的に低くなり得、したがって、当該結合部分を膜の非拡散性部分とみなすことができる。これには、膜の結合周囲122及び結合周囲から半径方向内側に配置される内部結合部分124の両方が含まれ得る。対照的に、膜の非結合部分(例えば、図示した実施形態ではチャネル126)は、膜の拡散性部分とみなすことができる。拡散性部分では、膜の透過性が非拡散性部分よりも著しく高い可能性があり、いくつかの実施形態では、実質的に元の膜材料と変わらない場合がある。膜の結合部分が膜の非拡散性部分とみなされることに加えて、結合周囲122から半径方向外側に位置する膜部分であり、結果としてその部分から内側に形成される内部体積と直接的に流体連通しないはずである当該膜部分も、この説明の目的上、膜の非拡散性部分とみなされ得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1の膜102及び第2の膜104の一部を互いに結合した後、1つ以上の貫通孔132が結合部分122及び結合部分124の1つ以上において形成され得る。例えば、装置(レーザ、パンチ、カッター、または他の適切な装置等)を用いて、第1の膜102及び第2の膜104の結合部分の1つ以上において、貫通孔132を形成することができる。ある特定の実施形態では、貫通孔は、レーザアブレーションによって形成され得る。その場合、レーザによって第1の膜及び第2の膜の結合部分が除去される一方、膜の結合部分周囲が、膜によって形成される内部体積と装置の外部との間のシールとして機能するように残される。
【0062】
図1Aに示しているように、結合周囲122との特定の距離内に位置する結合部分124のいくつかは、貫通孔が結合周囲から半径方向内側に配置されるように、貫通孔132を含まない場合がある。膜がフレームに結合される際、結合周囲122の近傍に位置する貫通孔132によって、装置が生体内に植え込まれるときに応力集中が生じ、その結果、周囲122で膜が裂ける可能性がある。したがって、具体的寸法は特定の設計に基づいて変化し得るが、いくつかの実施形態では、結合周囲122の約2mm以下、1.75mm以下、1.5mm以下、1.45mm以下、または1.25mm以下の範囲内に位置する結合部分は、貫通孔132を含まない場合がある。しかしながら、上述した距離よりも大きい距離及び小さい距離の両方である種々の距離が使用される実施形態も考えられる。
【0063】
いくつかの実施形態では、膜を互いに結合(例えば、第1の膜及び第2の膜の周囲及び/または内部部分の結合)した後で、第1の膜及び第2の膜を、親水性材料でコーティングし得、及び/または結合プロセスとは適合し得ない他の処理に供し得る。これには種々の高温処理が含まれることがあり、その場合いくつかの実施形態においては、結合膜は、膜の結合を強化し得る種々の熱処理に供され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、事前に結合された膜積層体(上で記載した第1の膜及び第2の膜の結合体)は、フレームに取り付けられ得る(
図2A~
図2Fを参照のこと)。代替的に、いくつかの実施形態では、膜積層体の周囲を互いに結合することと、フレームへの取り付けが同時になされ得る。いずれの場合でも、取り付けられ次第、膜に所望の量のたるみが生じるように膜をフレームに取り付ける方法が使用され得る。このような実施形態の1つを、
図4に関連させて、さらに詳しく後述する。
【0065】
図2A~
図2Fは、マクロカプセル化装置のフレーム220の実施形態を例示している。フレームは、フレームの開口部内に膜を張架する周縁フレームであり得る。フレームは、結合膜の周囲の少なくとも一部(いくつかの実施形態では周囲全体)を回って延在し得る。フレームのサイズ及び形状は、取り付け前の平らな構成の状態で大きい、膜の第1の最大横断(例えば、幅)寸法と比較して、取り付け後に小さくなる第2の最大横断寸法で、膜の最大横断寸法が維持されるように選択され得る。最大横断寸法は、平面状のフレームが延在する平面において測定され得る。例えば、図示した実施形態における最大横断寸法は、結合膜上に配置される円形フレームの直径に対応し得る。しかしながら、異なる形状及びサイズを有するフレーム及び膜を用いる実施形態も考えられる。
【0066】
図に示しているように、フレーム220の形状は円形であってもよいが、フレームには、それに取り付けられる膜の形状に対応する任意の形状が含まれ得ることを留意すべきである。フレーム220は、外側部分222及び内側部分224を含み得る。
図2E~
図2Fに示しているように、外側部分222は丸みを帯びた形状であり、内側部分224に向かって内側にテーパが付き、フレーム220の周囲に延在する内周面226を形成し得る。
【0067】
内周面226、または1つ以上の膜を受け、その膜が上に配置されるように構成されるフレームの他の部分は、取り付けプロセス中に液状接着剤を受容するように構成される貫通孔、空洞、または他の構造に対応する、1つ以上のリザーバ228を含み得る。例えば、リザーバは、
図4に関してさらに詳しく後述するように、膜の周囲をフレームに取り付けるために、フレームの内周を回って配列され得る。リザーバ228は内周面226を回って等間隔に配置され得るが、本開示はそのように限定するものではなく、リザーバは内周面を回る任意の配列で配置されてもよい。膜は、取り付け手順において膜をフレーム上に位置決めするために、リザーバ228と合わさる孔または他の印を有し得る。
【0068】
図2Fに示しているように、いくつかの実施形態では、リザーバは、フレームの第1の側から第1の側とは反対側の第2の側までフレームを貫通して延在する、テーパが付いた孔であり得る。このように、リザーバ228は、第1の側のリザーバの直径D1が、第1の側とは反対側である第2の側のリザーバの直径よりも小さくなるようにテーパが付けられ得る。いくつかの実施形態では、リザーバ228は、リザーバがフレームの第1の側または第2の側にのみ開口部を有し得るように、完全にフレームを貫通して延在しなくてもよい。
【0069】
図2A~
図2Dに戻って、フレーム220は、フレームの外側部分222から内側部分224まで延在する充填ポート230を含み得る。充填ポート230は、開口部232を含み得る。開口部232は、開口部がフレームの内側部分224から突出しないように、隣接するフレーム周囲の内側部分224と面一であり得る。内周面226の厚さは、開口部から充填ポートを通って延在するチャネル236(
図3Cを参照のこと)を収めるために、開口部を取り囲んで増大し得る。充填ポート230は、フレームの外側部分から外向きに延在する突起234も含み得る。チャネル236は、膜がフレームに取り付けられると、所望の物質が充填ポートを通って膜の内部体積内に流入し得るように、開口部232から突起234を介して延在し得る。
【0070】
図3A~
図3Dは、膜が対応するフレームに取り付けられた後のマクロカプセル化装置の一実施形態を図示している。
図3Aは装置の正面図であり、
図3Bはフレーム-膜界面の一部の断面透視図である。図示しているように、第1の膜及び第2の膜(
図3A~3Bでは、第2の膜104の上面のみを示している)を含む結合膜は、フレーム220の内周面226に接続されている。フレーム200は結合膜の周囲全体を回って延在するが、本開示はそのように限定するものではなく、いくつかの実施形態においてフレームは、結合膜の一部分の周りに延在し得る。取り付け後の膜の最大横断寸法が、より小さい第2の最大横断寸法に維持されるように、フレームのサイズ及び形状が選択され得る。最大横断寸法は、平面状のフレームが延在する平面において測定され得る。例えば、図示した実施形態における最大横断寸法は、結合膜上に配置される円形フレームの直径に対応し得る。しかしながら、異なる形状及びサイズを有するフレーム及び膜を用いる実施形態も考えられる。理論に束縛されるものではないが、結合膜に関する取り付け前の第1のより大きい最大横断寸法と、第2のより小さい最大横断寸法との比によって、膜が細胞集団等の治療用組成物を収めると膜間に設けられる内部体積の容積が制御され得る。
【0071】
図1A~
図1Bに関して上述したように、マクロカプセル化装置を形成するために使用される膜は、第1の膜と第2の膜との間に設けられた内部体積の周囲に延在するシールを形成する結合周囲122を含み得、これは、折り重ねた単一の膜または2つの別々の膜にも対応し得る。図示している実施形態では、結合膜は、結合膜の外周105が内周面226の外縁またはその近傍に配置され、当該結合膜がフレームの内周面226を覆うようにフレーム220上に配置される。これにより、フレームの外側部分222のみが露出する。接着層400は、結合膜を、フレームの内周面226または他の適切な部分に付着させるものである。接着層400はフレームの内周面全体を回って延在してもよいが、他のタイプの接続(例えば、溶接)が使用される実施形態、または膜とフレームがフレーム周囲または膜周囲の一部分に沿ってのみ互いに結合される実施形態も考えられる。使用される適切な接着剤としてはまた、限定されないが、ウレタン、エポキシ、またはアクリレートを含む、UV硬化型または熱硬化型の生体適合性接着剤を挙げることができる。使用される適切な接着剤としては、Epotek及び/またはCyberlite等のエポキシ-アクリレート共重合体を挙げることができる。代替的には、適切な接着剤として、限定されないが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリエーテル(エーテルケトン)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリウレタン、及び/またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の、ヒートステーキングまたは溶接用途における溶融熱可塑性物質を挙げることができる。
【0072】
図示しているように、膜の結合周囲122は、結合膜の外周105から半径方向内側に位置する。結合膜の非結合部分または緩衝領域402は、結合周囲122と、膜をフレームの内周面226に結合させる接着層400とを分離する。いくつかの実施形態では、フレームと膜の結合部分との間の緩衝領域402の横断寸法(例えば、幅)は、350μm以上、400μm以上、500μm以上、750μm以上、及び/または1mm以上であり得る。いくつかの実施形態では、緩衝領域402の横断寸法(例えば、幅)は、2mm以下、1.5mm以下、1.25mm以下、1mm以下、750μm以下、及び/または500μm以下であり得る。前述の範囲の組み合わせが考えられ、例えば、約350μm以上750μm以下、400μm以上750μm以下、350μm以上2mm以下、または前述のものの他の適切な組み合わせであり得る、緩衝領域の横断寸法(例えば、幅)が挙げられる。しかしながら、接着層420と結合周囲122との間の横断寸法が上述したものとは異なる緩衝領域を有する実施形態も想定される。膜をフレームに結合するために使用される液状接着剤は、膜をフレームに結合する際に液状接着剤が緩衝領域402に侵入するのを防ぐために、膜の特性(例えば、多孔性、屈曲度など)とのバランスがとれた特定の粘度及びウイッキング特性を有し得る。接着剤はまた、いくつかの実施形態において、可撓性膜の弾性率よりも大きく、剛性フレームの弾性率よりも小さい弾性率を有し得る。このように、マクロカプセル化装置の弾性率は、外側フレーム、接着層、膜の順に減少し得、装置は、装置の外側部分から装置の中心に向かって進むほど可撓性が高くなり得る。
【0073】
上記構造の結果として、緩衝領域402により、結合周囲122近傍の応力集中が低減され得るか、または実質的に除去され得る。これにより、膜の疲労破壊のリスクが低減され得る。上述したように、結合周囲近傍の応力集中をさらに低減させるために、結合周囲近傍に位置する結合部分124には孔132が形成されないことがある。
【0074】
図3Cは、膜が対応するフレームに取り付けられた後、かつ、細胞集団等の所望の物質が充填される前における、
図3Aのマクロカプセル化装置の線3Cに沿った側面断面図を示している。図示しているように、装置は、第1の膜102、第2の膜104、及び第1の膜及び第2の膜の周囲の少なくとも一部分に沿って延在するフレーム220を含み得る。装置は、未充填の緩んだ状態で例示している。この状態では、膜が取り付けられるフレームの横断面領域に対して、第1の膜及び第2の膜の表面領域が余分にあるため、結果として生じる膜のたるみにより、結合膜が重力方向に関連してフレームの下方に垂れ下がっている。
【0075】
図3Cの右側に示しているように、膜102及び膜104は、内周面226上でフレーム220に結合している。しかしながら、充填ポート230を取り囲む部分については、
図3Cの左側に示しているように、第1の膜102はフレームの第1の側に結合し、第2の膜104は第1の側とは反対側のフレームの第2の側に結合する。さらに詳しく後述するように、膜に切れ目406を入れることにより(
図3Aを参照のこと)、第1の膜及び第2の膜にフラップ403及び404が創出され、フラップ403及び404は、充填ポート230の開口部323の周囲でシールされる。開口部323の周囲でフラップをシールすることにより、充填ポートの開口部は、膜間に設けられた内部体積と流体連通するようになる。
【0076】
装置の内部領域中に位置する結合部分124、貫通孔132、及び他の適切な特徴部が膜上に既に形成されているため、追加の処理及びハンドリングを最小限にして、すぐにマクロカプセル化装置に所望の物質(細胞集団等)を容易に充填することができる。内部体積は、充填ポート230、結合周囲における開口部、及び/または任意の他の適切な方法を用いて充填され得る。いずれの場合でも、マクロカプセル化装置に所望の物質が充填された後、第1の膜102と第2の膜104とに囲まれた内部体積は膨張し、膜のたるみがなくなり得る。これは、膜間の内部体積の膨張に起因して、充填構成においては膜に張力がかかるからである。この結果、フレーム220の平面にほぼ平行な方向へ膜が全般的に膨張するように、第1の膜及び第2の膜が変形し得る(
図3Dを参照のこと)。これに対応して、第1の膜及び第2の膜は、充填されている装置の内部体積がこのように増加することに起因して、フレームの対向面から外側に、ほぼ等しい距離で膨張している可能性がある。フレームから半径方向内側に位置する場において膜の一部124が互いに結合されている例では、膨張構造により、複数の相互接続チャネル126が改めて形成され得る。
【0077】
マクロカプセル化装置は、充填ポート230を通して充填され得る。例えば、細胞集団(または他の所望の物質)が、装置の外膜間に形成されたマクロカプセル化装置の内部体積内に流入され得る。このことは、充填ポート230を通して、または内部体積まで延在するシール可能ポートまたは除去可能ポートを使用して達成され得る。代替的には、マクロカプセル化装置の結合周囲及び/またはフレームに開口部があってもよく、この開口部は後にシールされ得る。内部体積への任意の適切な注出口を用いて装置の内部体積内に物質を流入し得るが、この物質の流入を多くの異なる方法で制御して、内部体積への充填を望ましく行うことができる。例えば、一実施形態では、マクロカプセル化装置の内部体積に圧力を印加することは、充填構成の装置の膜内に所望の量の張力が存在することに対応し得る。したがって、装置への充填は、所定の圧力及び/または膜張力閾値に達するまで継続し得る。しかしながら、本開示はこの様式に限定されるものではないため、内部体積内に流入する物質の量を制御するための任意の適切な方法が使用され得る。これには、例えば、内部体積内に流入する物質の絶対体積、所与の流速での継続時間、及び/または任意の他の適切な制御方法に基づいた制御が含まれ得る。
【0078】
図4は、結合膜にフレームを取り付けるプロセスの一実施形態を図示している。
図4に示しているように、フレーム220は、支持体200上に配置される。フレームが支持体に固定され次第、接合膜102及び104がフレーム200上に配置され得る。いくつかの実施形態では、膜はフレームに「たるませて取り付けられ」得る。例えば、支持体200は、第1の膜102及び第2の膜104を、取り付け前の第1の最大横断寸法(例えば、膜が相対的に平らな平面構成である場合)から、取り付け後の第2の最大横断寸法(例えば、膜がその下にある支持体200の形状に適合するように変形した場合)まで変形させるための曲面206を含み得る。フレームへの取り付け中に膜のたるみの量を制御するというこの概念は、張力を制御して緩めた状態で、少なくとも2つ以上の可撓性膜の層(例えば、第1の膜及び第2の膜)を取り付けて、充填時に規定される体積及び/または高さの内部区画を含む装置を形成することを指し得る。いくつかの実施形態では、支持体の曲面は、
図4に例示しているような球状ドーム構造である。しかしながら、異なる形状の支持体が使用される実施形態も考えられる。
【0079】
いくつかの実施形態において、膜102、104は、フレーム上で膜を位置合わせするため、フレームのリザーバ228(
図2A~
図2Dも参照のこと)の位置に対応する、膜の周囲を回って配置された孔または他の印(図示していない)を含み得る。場合によっては、フレームへ取り付ける間、支持体上の膜積層体の配向及び/または位置を維持しておくことが望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、
図4に示しているように、第1の膜及び第2の膜の1つ以上の非拡散性部分に真空をかけて、湾曲した支持体に第1の膜及び第2の膜が近接する状態を維持してもよい。例えば、支持体200には、負圧を供給する真空源(図示していない)に接続された真空室210が含まれ得る。真空室は、支持体200の表面上に配置された1つ以上の真空孔212に流体連通し得る。真空孔は、支持体表面にある任意の所望の部分に位置し得るが、いくつかの実施形態では、真空孔は、結合膜の対応する非拡散性部分が位置し得る支持体表面部分に位置し得る。その位置としては、例えば、膜の結合周囲122、結合周囲から半径方向外側に位置する膜部分、結合周囲内側に位置する膜の結合部分124、及び/または膜の任意の他の適切な部分が挙げられる。膜の位置及び/または配向を膜の下の支持体を基準として維持する他の方法が使用され得、例えば、限定されないが、機械的固定、クランピング、仮接着、及び/または任意の他の適切な一時的固定法が挙げられる。
【0080】
フレーム220ならびに第1の膜102及び第2の膜104が支持体に位置決めされた後、フレーム及び膜は、1つ以上の位置における結合を含む、多くの異なるプロセスに供され得る。
図4は、第1の膜及び第2の膜をフレームに結合するプロセスを例示している。ある特定の実施形態では、接着剤、ヒートステーキング、溶接(熱、超音波など)、機械的固定、または別の適切な方法を使用して、フレーム周囲上の複数の位置で、フレームと膜とを結合し得る。この結合は、製造プロセスに応じて、順次または同時に行われ得る。例えば、フレーム及び膜は、フレームがフレーム内周面226の周囲を回って配置されたリザーバ228を含む各位置で互いに結合され得る(
図2A~
図2Dを参照のこと)。図示した実施形態では、結合ツール500を用いて、1つ以上の所望の位置で、フレームと第1の膜及び第2の膜の一部との間の接着点を創出し得る。結合ツール500は、硬化型接着剤の分与に用いるポートと光源との組み合わせに対応するものであり得、この光源は、フレーム及び膜上に接着剤が配置され次第、当該接着剤を硬化させるために使用され得る。
【0081】
具体的な一実施形態では、結合ツール500(例えば、針、シリンジ)により、フレーム220の内周のリザーバ228に液状接着剤が送達され得る。結合ツール500は、膜102及び膜104を通って延在して(例えば、膜を貫通することにより、または膜に予め配置された孔を通って延在することにより)、液状接着剤をリザーバ228内に堆積させることができる。次いで、液状接着剤は、リザーバ228上方の第1の膜及び第2の膜の部分を通ってウイックし得る。代替的には、結合ツール500により、液状接着剤がリザーバ上方の第1の膜及び/または第2の膜の上面に塗布されてもよく、当該液状接着剤は、リザーバ228に向かって膜を通過してウイックし得る。他の実施形態では、第1の膜102及び第2の膜104が支持体200上に配置され得、次いで、フレームが第2の膜の上に配置されてもよい。結合ツール500は、リザーバ228を通って延在して、液状接着剤を第2の膜の裏面に堆積させることができる。リザーバには、結合ツールを容易に挿入できるように、挿入方向にテーパが付けられ得る。液状接着剤は、膜を通ってウイックして、膜をフレームに結合し得る。
【0082】
液状接着剤が塗布され、膜を通ってウイックする時間が経過し次第、光源で接着剤を硬化させることができる。所望の位置で結合が形成されると、結合ツール500は、装置の周囲を回って十分な数の結合が形成されるまで、隣接するリザーバ228(
図2A~
図2Dを参照のこと)に移動し得る。図に示しているように、フレームは、フレーム周囲を回って等間隔で配置されたリザーバを含み得るが、本開示はそのように限定するものではなく、等間隔ではないものもが使用され得る。上述のように、接着剤の結合継続時間及び粘度は、膜の望ましくない部分(例えば、拡散性部分及び/または緩衝領域402)への接着剤の過剰なウイッキングを回避するように選択され得る。いくつかの実施形態において、接着剤の粘度は、約100cP以上、200cP以上、及び/または300cP以上であり得る。粘度はまた、約1000cP以下、750cP以下、及び/または500cP以下であり得る。前述のものの組み合わせが考えられ、例えば、100cP以上1000cP以下、またはより好ましくは100cP以上500cP以下であり得る粘度が挙げられる。上述したものよりも大きい他の粘度及び上述したものよりも小さい他の粘度もまた想定される。接着剤の結合継続時間は、約5秒以上、10秒以上、及び/または15秒以上であり得る。結合継続時間はまた、約60秒以下、30秒以下及び/または20秒以下であり得る。前述の継続時間の組み合わせが考えられ、例えば、5秒以上60秒以下、またはより好ましくは10秒以上30秒以下である結合継続時間が挙げられる。また、上述したものよりも長い他の継続時間及び上述したものよりも短い他の継続時間も考えられる。加えて、特定の結合方法について記載してきたが、上述のように、他の適切なタイプの結合も使用され得る。
【0083】
液状接着剤の使用について上記したが、本開示はそのように限定するものではなく、ヒートステーキング、超音波溶接、レーザ溶接、または任意の他の適切な結合技法等の他の適切なタイプの結合技法もまた使用され得る。
【0084】
結合位置は予め決定することができ、そのために、装置周囲を回って結合を形成するための独立した結合手順の間、関連プロセッサ(図示していない)が、結合ツール500を制御するように構成され得る。それによって、結合ツール500は、フレームの各リザーバ228に対して適切に位置決めされる。いくつかの実施形態では、結合ツール500は、視覚的追跡、磁気感知、または他の適切なロボット装置の標的方法等による、リザーバ部位を検出するための1つ以上のセンサーを含み得る。したがって、結合ツール及び支持体は、固定具106の下側部分表面にわたって分布する1つ以上のセンサー110を含み得、それによってプロセッサに信号が伝達されて、結合プロセスのフィードバック制御が実行され得る。
【0085】
このように最初に膜をフレームに固定した後、次いで、取り付けられたフレーム及び膜にはさらなるプロセスが施され得る。さらなるプロセスとしては、例えば、取り付けられたフレームと膜との間に追加の接着剤を配して、それらの間の結合を改善することが挙げられる。膜が最初の固定ステップでフレームの上に取り付けられた場合(
図4に示しているように)、装置は、支持体200に固定されたままであり得る。フレームが(上述のように、第2の膜の裏面をフレームに取り付けるための、リザーバを通って延在する結合ツールによって)膜の上に取り付けられる場合、フレーム及び取り付けられた膜を含むマクロカプセル化装置は、湾曲した支持体から取り外され、逆さにした状態で(すなわち、膜がフレームの上にある状態で)支持体に再固定され得る。装置は別のプロセスのステップに供され得、当該ステップでは、接着層400(
図3A~
図3Bを参照のこと)が塗布されて、膜がフレーム内周面にさらに結合する。結合ツールは、接着剤を分割して各リザーバ228間に塗布し得るが、全周囲が結合されるまで、各セクションで接着剤を塗布し、硬化させてから、隣接するセクションに移る。膜のしわまたは折り目はいずれも、結合プロセス中に平らにされ得る。上述のように、結合膜のシール及び緩衝領域が、フレーム及び接着剤の両方、またはフレームに膜を結合する他の接続形式に対して半径方向内側に配置されるように、接着剤の結合継続時間及び粘度が、膜の望ましくない部分(例えば、拡散性部分及び/または緩衝領域402)への接着剤の過剰なウイッキングを回避するように選択され得る。
【0086】
フレームが膜に結合した後、装置は支持体から取り外され得る。装置の内部体積を(例えば、細胞で)充填するために、充填ポート230を取り囲む第1の膜及び第2の膜の一部が、フレームの反対側に配置され、充填ポート320の開口部323の周囲でシールされ得る。
図3Aの参照に戻り、膜がフレームの上に位置する状態で、フレームの第1の側から始め、充填ポート領域上の第1の膜及び第2の膜の一部が切り離され得る。結合周囲122の非融着部分135を有する実施形態では、膜が緩衝領域402までのみ切り離される必要があり得る。しかしながら、非融着部分135がない実施形態(すなわち、結合周囲が膜の全周囲を回って延在する)では、膜が結合周囲を越えて切り離される必要があり得る。膜が十分に切り離された後、充填ポート230の各側で、第1の膜及び第2の膜に切れ目406が創出され得る。切れ目406は、接着シール400に対して垂直であり、膜周囲105から結合周囲122まで延在する。切れ目406により、第1の膜に第1のフラップ403が創出され、第1のフラップとは反対側の第2の膜104に第2のフラップ404が創出される。次いで、第2のフラップ404は、第2の膜104の上面に折り返されて、第1のフラップ403が現れる(
図3Aの切れ目406間にある点の折れ線を参照のこと)。次いで、第1の膜の第1のフラップ403は、第1の側とは反対側のフレームの第2の側から突出するように、フレームの内側部分224を通過して内側に押し込まれる。次いで、第1のフラップ403は、フレームの第2の側の内周面226上に引っ張られ、フラップがフレームの第1の上向きの表面上に載り、面一になるように、フラップは平らにされる。第2のフラップ404は、フレームの第1の側越しに引っ張られ、フラップが第1の表面とは反対側のフレームの第2の下向きの表面上に載り、面一になるように平らにされる。次いで、接着剤がフラップに塗布され、硬化して、充填ポート開口部の周囲でフラップがシールされるが、他の結合方法及びシール方法も使用され得る。
【0087】
上の実施形態では、フレームは、第2の膜104とは反対側の第1の膜102の外面に接続されている。しかしながら、フレーム220が第1の膜102と第2の膜104との間に配置される実施形態も考えられる。このような実施形態では、膜の周囲に沿って延在する結合122から半径方向外側に延在する第1の膜及び第2の膜の部分が開かれることがあり、フレームは、膜の結合周囲から半径方向外側にある位置で、膜間に配置され得る。次いで、先に記載したように、任意の適切な結合方法を用いて、第1の膜及び第2の膜をフレームに結合し得る。図では、フレーム、膜、及びその下の支持体を特定の角度方向で示しているが、本開示はこの様式に限定されるものではなく、これらの構成要素の任意の適切な配向が使用され得ることが理解されるべきである。いずれの場合においても、フレームは、その下にある支持体から取り外されたとしても、依然として膜の所望の横断寸法を維持するように機能し得る。
【実施例】
【0088】
実施例:生体内疲労試験
【0089】
ゲッチンゲンミニブタを用いて、マクロカプセル化装置の力学を研究した。試験したマクロカプセル化装置の設計には、上述の設計ばかりでなく、先行設計も含めた。先行設計は、膜のシール周囲がフレーム上に配置される(すなわち、フレームの内周とシール周囲との間に間隙がない)ように、周縁フレームに取り付けられた結合膜を含むものであった。先行設計の試験結果は、フレーム界面での応力集中に起因するフレーム界面での疲労破壊を示しており、このことは、フレーム界面に応力緩和帯を有するマクロカプセル化装置を新たに設計することの動機となった。
【0090】
わずかな可撓性しか許容しないように調整されている周縁フレームと比較すると、主に膜で構成される装置の領域は極めて可塑性であり、接着剤で結合されたフレームと膜との間に機械的移行ゾーンがもたらされる。プロトタイプ装置のコンピュータ上での試験及び非臨床試験により、この領域が装置における最も疲労破壊の可能性が高い場所であることを同定し、本明細書に記載されるように、応力緩和帯を追加して界面を強化することにより、後続バージョンにおいてこれを修正した。フレーム-膜界面における装置の機械的耐久性を調べるため、疲労試験を開発して、提案した非臨床試験の期間を過ぎた時点まで、機能的試験期間を早めた。
【0091】
実施例:生体外疲労試験
【0092】
マクロカプセル化装置の中央メッシュ内で、筋線維芽細胞に基づく腹部収縮によってもたらされる力をシミュレートするために、クランプされた膜が変位極値を通って対称的に周期する、二相性の完全逆方向負荷ストラテジーを開発することにより、生体外疲労試験を行った。試験中、装置のフレームを2枚の平行なアルミニウム板の間に固定し、中央メッシュのクランプを軸方向に作動させながら、関連する生理学的負荷によって定義される、メッシュに対する周期性張力を印加する。あるいは、設計探索の場合には、迅速な反復フィードバックを行えるように負荷を上げる。
【0093】
図5A~
図5Bは、疲労試験後におけるマクロカプセル化装置300の先行設計の実施形態を図示している。かかる実施形態では、膜302を、シール周囲304がフレーム界面に配置されるようにフレーム306に取り付けている。装置300はまた、フレーム周囲から膜内に延在する充填ポート308も含む。
図5Aに示しているように、膜302は、界面での応力集中に起因して、シール周囲304でフレーム306から断裂した。先行設計及び新設計に対する疲労試験により、先行設計が約10000サイクル後に破損したのに対し、新設計は30000サイクル超後に破損したことが示された。
図5Bは、充填ポート界面と、高応力集中によって生じた充填ポート界面の裂け目の拡大図とを示している。内部の充填ポートの損傷は、装置のうち52%で認められた。以下に詳述するように、内部に充填ポートがない新設計では、疲労寿命が改善した。
【0094】
実施例:破損様式調査
【0095】
膜破損の潜在的原因を調査するために試験を実施した。結果では、装置の破損が、主に接着剤の不規則性及び同心度の欠如によって引き起こされることが示された。
【0096】
A.製造容易性:接着剤塗布
【0097】
フレーム界面における装置破損の原因の1つは、訓練生による接着剤の塗布不良によるものであり得る。熟練者が作製した装置では不規則性がわずかであり得るが、訓練生が作製した装置では不規則性が著しいことがある。試験の結果、不規則性がわずかである装置は、約6000サイクルで破損するのに対し、不規則性が著しい装置は、1000サイクル未満で破損に至り、早期に破損することが確認された。装置の疲労試験でも、生体内で試験した装置の破損と一致する膜の破損が示された。先行設計では、破損のリスクを減らすために、厳しい取り付け公差及び接着剤塗布の正確性が要求され、これを自動化するのは困難であり、高度熟練技能者による製造が必要とされる。応力緩和帯を有する最新設計及び上記の製造方法により、接着剤の塗布に対する公差が大きくなり、それによって、熟練度が低い訓練生による製造または自動化による製造(例えば、上記のようにフレーム周囲上のリザーバを利用)が可能になる。例えば、フレーム周囲上にリザーバを加えることにより、装置に割れが生じるまでのサイクル数に大きく影響する、粗雑な流入の数を低減する信頼性の高い方法が提供される。粗雑な流入がある装置では約1000サイクルで割れが生じたのに対し、流入がない装置では7000サイクル超で割れが生じた。中央メッシュ内で、筋線維芽細胞に基づく腹部収縮によってもたらされる力を模倣するために、クランプされた膜が変位極値を通って対称的に周期する、二相性の完全逆方向負荷ストラテジーを開発することにより、疲労試験方法論を特異的に進展させた。試験中、装置のフレームを2枚の平行なアルミニウム板の間に固定し、膜の中央部分をInstron疲労試験機等の負荷システムにクランプして、フレームと関連して膜に軸方向の変位を加え、関連する生理学的負荷によって定義される、膜に対する周期性張力を印加する。あるいは、設計探索の場合には、迅速な反復フィードバックを行えるように負荷を上げる。こうした疲労試験中に印加し、周期的に負荷する力は、試験される特定の固定具及びフレームに応じて、30N~45Nで変化させた。リザーバを設けることにより、新規装置では粗雑な流入の数が約5であったのに対し、先行装置では、粗雑な流入の数はおよそ20であった。
【0098】
B.接着剤の質
【0099】
使用する接着剤の質が、フレーム界面に影響を及ぼし得るかどうかを判断するため、試験を実施した。例えば、接着剤の劣化または特性変化が界面に影響を及ぼすかどうか、及び代替の可塑性接着剤(例えば、Cyberlite)を使用する利点があるかどうかを調査した。試験の第1段階では、ドッグボーン形状の標準接着剤(Epotek OG198-54)及びCyberliteを、0、3、6、9及び12ヶ月で引張試験して、破断時の引張強さを測定した。結果から、Epotekでは経時的脆化が認められず、安定していたことが示された。例えば、各時間間隔で試験した際、接着剤の破断時の引張強さは、約20~25MPaで一貫していた。また、Epotekでは、ヤング率が12ヶ月にわたって約1000~1250MPaで安定していたことも示された。一方、Cyberliteでは経時的な脆弱化が示され、引張強さは、0ヶ月で約10MPa、及び12ヶ月で5MPa未満であった。また、Cyberliteのヤング率も、12ヶ月にわたって約500MPaから約100MPaに低下した。
【0100】
第2段階の試験には、種々の接着剤の組み合わせ(Epotekのみ、Cyberlite/Epotekの組み合わせ、及びCyberliteのみ)を用いた、新設計マクロカプセル化装置(例えば、応力緩和帯を有する)の疲労試験を含めた。結果から、Epotekのみを用いた装置では、105サイクル超で破損に至り、Cyberlite/Epotekの組み合わせを用いた装置では、104サイクルで破損に至り、Cyberliteのみを用いた装置では、最小の104サイクル未満で破損に至ったことが示された。
【0101】
結果として、シール周囲の配置転換により、装置の製造容易性及び耐疲労性が改善することが示された。例えば、新設計では、公差を大きくすることにより作業者依存性が減り、同心度及び接着均一性が改善され、目視検査の複雑さが軽減される。提示した本装置の試験に基づくと、装置の予想疲労寿命は、連続咳嗽で約5年であり、装置へのピーク負荷11.6N、87,600サイクルに相当すると推定される。
【0102】
本教示を様々な実施形態及び実施例と共に記載してきたが、本教示がこのような実施形態または実施例に限定されることは意図していない。それどころか、本教示には、当業者であれば分かるように、様々な代替物、変更、及び均等物が包含される。したがって、前述の説明及び図面は単に一例である。
【国際調査報告】