(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】完全内視鏡下冠動脈バイパス術用の枢動可能なスタビライザツール
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509104
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 US2022040394
(87)【国際公開番号】W WO2023023007
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500204326
【氏名又は名称】テルモ カーディオバスキュラー システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪内 猛
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF42
4C160FF60
(57)【要約】
低侵襲心臓手術用のスタビライザは、患者中に個々に挿入され、内部でロボットアームに組み立てられる一対のスタビライザ部材を有する。各スタビライザ部材は、遠位端に吸引ポッドを、及び近位端に据え付けセクションを有する。据え付けセクションは、固定タブと、回転可能なレバーアームの第1の端部上に可動タブを有する回転可能なレバーアームとを含む。タブは、ロボットアームのそれぞれの顎部中の開口部を通って延在するように構成される。レバー操作部が、レバーアームに結合され、タブの拡張状態とタブの収縮状態との間でレバーアームを枢動させるように構成され、収縮状態は、タブがそれぞれの顎部中の開口部を貫通することを可能にし、タブの収縮状態は、それぞれの顎部にスタビライザ部材をロックする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低侵襲心臓手術用のスタビライザであって、
遠位端において吸引ポッドを有し、近位端において据え付けセクションを有するスタビライザ部材と、ここで、前記据え付けセクションは、固定タブと、回転可能なレバーアームの第1の端部上の可動タブとを備え、前記固定タブ及び前記可動タブは、ロボットアームのそれぞれの顎部中の開口部を通って延在するように構成されており、
前記固定タブ及び前記可動タブの拡張状態と、前記固定タブ及び前記可動タブの収縮状態との間で前記回転可能なレバーアームを枢動させるように構成された前記回転可能なレバーアームに結合されたレバー操作部と、ここで、前記収縮状態は、前記固定タブ及び前記可動タブが前記それぞれの顎部中の前記開口部を貫通することを可能にし、前記固定タブ及び前記可動タブの収縮状態は、前記それぞれの顎部に前記スタビライザ部材をロックする、
を備える、スタビライザ。
【請求項2】
前記レバー操作部は、前記レバーアームの第2の端部に固着された引き紐から成り、近位方向に前記引き紐を変位させることは、前記レバーアームの前記可動タブを前記固定タブから離れさせて前記拡張状態まで動かし、前記引き紐は、前記それぞれの顎部を捕捉する、請求項1に記載のスタビライザ。
【請求項3】
前記引き紐は、前記スタビライザ部材の固定部分を貫通する結紮糸から成る、請求項2に記載のスタビライザ。
【請求項4】
前記引き紐は、
前記レバーアームによって捕捉された結紮糸と、
前記結紮糸に接続され、前記スタビライザ部材の固定部分中のねじ山付き通路を貫通するねじ山付きバーと、
トルクワイヤの回転が前記結紮糸を引っ張って前記レバーアームを動かすように、前記ねじ山付きバーの端部を保持するように構成された前記トルクワイヤと
から成る、請求項2に記載のスタビライザ。
【請求項5】
前記レバーアームが前記収縮状態から前記拡張状態まで引っ張られると、前記引き紐を更に引っ張ることなく前記拡張状態が維持されるように、テンションロックを通る前記引き紐の一方向の動きを可能にするように構成された、前記引き紐を受け入れる前記テンションロック
を更に備える、請求項2に記載のスタビライザ。
【請求項6】
前記引き紐は、前記収縮状態に戻るために前記レバーアームを解放すべく切断されるように構成されている、請求項2に記載のスタビライザ。
【請求項7】
前記レバー操作部は、前記レバーアームを前記拡張状態へと付勢するように構成された付勢ばねから成る、請求項1に記載のスタビライザ。
【請求項8】
前記付勢ばねは、中央ハブにおけるコイルと一対のばねアームとから成り、一方のばねアームは、前記レバーアームの第2の端部に取り付けられ、他方のばねアームは、前記スタビライザ部材の固定部分に取り付けられている、請求項7に記載のスタビライザ。
【請求項9】
前記レバーアームの前記第2の端部は、可動延長部を形成し、前記スタビライザ部材は、前記可動延長部に並置された固定延長部を画定し、前記可動延長部及び前記固定延長部は、共に押し付けられて前記付勢ばねを圧縮し、前記レバーアームを前記収縮状態へと動かすように構成される、請求項8に記載のスタビライザ。
【請求項10】
第2のスタビライザ部材と、前記ロボットアームの第2の顎部を捕捉するように構成された第2の引き紐とを更に備え、前記スタビライザ部材及び前記第2のスタビライザ部材が並んで配置され、それらの間に調整可能な距離を有するようになっている、請求項1に記載のスタビライザ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2021年8月17日に出願された米国仮特許出願第63/233,942号の利益を主張し、それは、参照によって本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、心臓/胸部手術用のツールに関し、より具体的には、鼓動している心臓の中又は周りでの吻合を可能にするために冠動脈エリアを拘束/安定化するための安定化ツールに関する。ツールの部品がその場で組み立てられることを可能にすることによって、ツールの部品は、ロボット制御された手術において典型的に使用されるような小さい切開/トンネルを通過するように適合される。
【背景技術】
【0003】
本発明は、OPCABG(オフポンプ冠動脈バイパス移植)として知られる冠動脈バイパス術に特に有用である。OPCABGは、典型的には、開胸腔などの胸骨処置を使用して実行されてきたが、より最近では、ロボットアームを用いて小さい切開孔を通して行うことができるロボット手術がより一般的になっている。
【0004】
低侵襲心臓手術(MICS)の使用は、長い切開及び胸骨の切断を必要とする開胸処置の必要性を回避するために、心臓修復を実行するための一般的な方法になっている。MICSのための作業空間は、1)胸部空間を拡張するためのCO2ガスなどの送気ガスの注入、2)リフトウインチタイプの開創器(例えば、外側から胸部を引き上げるためにワイヤ及びウインチ機構を使用するMedtronic Thoratrakデバイス)の使用、及び/又は3)僧帽弁修復の場合、胸壁を通してシャフトによって引き上げられる開創器ブレード(例えば、AtriCure心房リフト)を用いて、1つ以上の小さい切開を使用して胸部空間内に作成され得る。
【0005】
完全内視鏡冠動脈バイパス術(TECAB)として知られるMICSの1つの特定のタイプは、いくつかのロボット制御された器具及び他の支持デバイスによる冠動脈領域への進入のために、4~5つの小さいスリット(即ち、ポート)を通して実行され得る。
図1は、内部作業空間にアクセスするために、異なるそれぞれの切開孔(即ち、トンネル)7を介して挿入された複数の器具6を有する患者5を示す。ダビンチ外科手術システムは、このタイプの閉胸手術に使用されるロボットシステムの一例である。
【0006】
ロボットシステムは、外科医によって操作されるロボットアームを含み、ロボットアームは、例えば、カメラ、切断ツール、把持ツール、及び縫合ツールを含み得る。好ましくは、手術は、心臓が鼓動し続けながら実行され得、そのため、心肺バイパス機械は必要とされない。心臓が鼓動している状態では、心臓の周りのエリアを拘束又は安定化することが望ましくなる。非常に効果的な安定化を得るために、安定化されるべき表面(例えば、心臓組織表面)に付着するための吸引力を有するスタビライザ部材が、好ましくあり得る。吸引力が作動されると、支持部材(例えば、ロボットアーム)又は他の固定具が、スタビライザ部材を所望の場所に保持する。吻合のためのエリアを安定化させるための心臓スタビライザツールは、身体の内側に展開されるために、小さい孔(例えば、約12mm)を通過する必要がある。十分な寸法があり、吸引能力を有する安定化ツールをTECAB及び他の処置で使用される小さい孔中に挿入することは非常に困難であった。先行技術の手順及びツールの例は、米国特許第6,936,001号及び米国特許第8,870,900号に示されており、それらは、参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、挿入のためのツールの要素を分離し、ロボット手術及びポート手術(例えば、手動で挿入される長いシャフトツールを用いた小孔手術)に適合された保持機構を提供して、部品を組み立て、次いで拘束することによって、所望の機能を容易に実現する。このことから、安定化ツールは、それぞれの1つ以上の側孔を通して(例えば、患者の身体の外側のポートから)少数の部品(例えば、2つの部品)中に挿入可能である。
【0008】
より具体的には、一対のスタビライザ部材は、スタビライザ(例えば、ロボット)アームの端部に並んで組み立てられ得る吸引パドル又は足部の形態を有し得る。吸引パドルは、一度に1つずつ孔を通り抜けることができるように、(それぞれの吸引チューブの端部に接続された状態で)小孔を通して連続的に挿入され得る。患者の体内の作業空間の内側に入ると、部材をロボットで操作し、安定化機能を実行する構成にそれらを把持するのに十分な余地が胸腔中に存在する。
【0009】
本発明の一態様では、低侵襲心臓手術用のスタビライザが提供される。スタビライザ部材が、遠位端において吸引ポッドを、及び近位端において据え付けセクションを有し、据え付けセクションは、固定タブと、回転可能なレバーアームの第1の端部上に可動タブを有する回転可能なレバーアームとを含む。タブは、ロボットアームのそれぞれの顎部中の開口部を通って延在するように構成される。レバー操作部が、回転可能なレバーアームに結合され、タブの拡張状態とタブの収縮状態との間で回転可能なレバーアームを枢動させるように構成され、収縮状態は、タブがそれぞれの顎部中の開口部を貫通することを可能にし、タブの収縮状態は、それぞれの顎部にスタビライザ部材をロックする。いくつかの実施形態では、レバー操作部は、レバーアームの第2の端部に固着された引き紐であり得、近位方向に引き紐を変位させることは、レバーアームの可動タブを固定タブから離れさせて拡張状態まで動かし、引き紐は、それぞれの顎部を捕捉する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】マルチポート心臓手術における器具の展開を示す概略図である。
【
図2】内部作業空間中に挿入された後に組み立てられたスタビライザツールの上面図である。
【
図4】スタビライザ部材がロボットアームの顎部から分離された
図3のスタビライザツールを示す。
【
図6】顎部上に捕捉されたスタビライザ部材の水平断面図である。
【
図9】拡張状態にあるスタビライザ部材の断面図である。
【
図10】スタビライザ部材の一部分と、スタビライザ部材が拡張状態から収縮状態まで動くことを可能にするために引き紐を切断するための場所とを示す側面図である。
【
図11】顎部中の孔を貫通するために収縮状態にあるスタビライザ部材を示す。
【
図12】顎部を把持するために顎部中に挿入された後の拡張状態にあるスタビライザ部材を示す。
【
図13】スタビライザアセンブリの別の実施形態を示す斜視図である。
【
図14】
図13に示す位置にあるスタビライザ部材の断面図である。
【
図16】
図13及び14のねじ調整をより詳細に示す断面図である。
【
図17】
図13及び14のねじ調整をより詳細に示す断面図である。
【
図18】ばね荷重式であるスタビライザツールの第3の実施形態の斜視図である。
【
図19】スタビライザ部材を拡張状態へと付勢するためのばねを示すスタビライザ部材の下面斜視図である。
【
図20】把持タブをより詳細に示すスタビライザ部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
典型的なロボットアーム(例えば、ロボットツール又は他のMICS把持器具)は、遠隔で開閉(即ち、枢動)することができる一対のはさみ状の顎部を装着され得る。顎部は、交換可能であり得、実行されるべき機能に応じて、様々な形状(平坦、パドル形状など)を有することができる。顎部は、組織表面を把持し、その上に保持するのを補助するループを各々が形成するように、位置合わせされた中央開口部を有し得る。
【0012】
本発明の左右のスタビライザ部材は、それぞれの顎部によって別々に保持されるように適合され、そのため、それらの吸引パドルは、顎部を通常の様式で枢動させることによって、ある範囲の分離距離を取ることができる。各スタビライザ部材は、鼓動する心臓組織をスタビライザ部材の吸引パドルによって比較的動かない状態で保持することができるように、ロボットアームのそれぞれの顎部に強固な様式で据え付けるための調整可能な機構を含む。
【0013】
スタビライザアセンブリ及びロボットアームの第1の実施形態は、
図2~12に示している。ロボットアーム10は、遠隔制御される枢動機構Pによって保持される一対の遠位顎部11及び12を有し、枢動機構Pは、顎部11及び12が共に及び離れて回転されることを可能にする。顎部11及び12を支持するアーム10の遠位端はまた、小口径(例えば、12mm)の孔を介して人体内の作業空間中に挿入された後に、様々な組織及び他のデバイスと相互作用するように、他の自由度で関節接合することができる。スタビライザアセンブリ9は、吸引チューブ14の遠位端に接続された第1のスタビライザ部材13と、吸引チューブ16の遠位端に接続された第2のスタビライザアーム15とを有する。吸引チューブ14及び16は、切開孔を通って外に延在する(即ち、各チューブについて遠位端セクションのみを示す)。各スタビライザ部材は、安定化されるべき組織と係合するために、下側に吸引開口部を有する遠位足部又はポッドを有する。内部チャネルは、吸引開口部を、身体の外側の吸引源に結合されるチューブ14及び16に相互接続する。ロボットアーム10の近位端は、据え付け構造(例えば、アーム10のシャフトを把持し、それが最適な位置に移動及び固定されることを可能にする関節式及び/又は伸縮式スタビライザアーム)によって、患者テーブル又は他の固定構造に取り付けられ得る。
【0014】
図2は、作業空間の内側で有するであろう関係でそれぞれの顎部上に据え付けられた2つのスタビライザ部材13及び15を示す。
図11は、スタビライザ部材15が1つ以上のポートを通して作業空間中に挿入されるときにロボットアーム10から分離したスタビライザ部材15を示す。アーム10は、典型的には、スタビライザ部材とは異なるポートを通して挿入され得る。ロボットアーム10へのスタビライザ部材13及び15の取り付けは、典型的には、同じ又は異なるポートを通して挿入される追加のロボットアームを使用して達成され得る。
【0015】
図3~10は、スタビライザ部材13及び15並びに顎部11及び12の第1の実施形態をより詳細に示す。スタビライザ部材13及び15は、それらの遠位端に吸引ポッド又は足部20及び21を、及びそれらの近位端に調整可能な据え付けセクション22及び23を有する。
図7は、スタビライザ部材15の分解図を示す(部材13は、同じ構成要素を有し、対称的、例えば、鏡像である)。主本体25は、遠位端において吸引足部21を、及び近位端において据え付けセクション23を有する単一体(例えば、成形プラスチック体又は鋳造金属体)として形成され得る。据え付けセクション23は、その近位側に端部スロット27を有する固定タブ26を有する。アパーチャ28は、固定タブ26の遠位側において本体25を通って延在する。レバーアーム30は、本体25中の孔32、レバーアーム30中の孔33、及び本体25中の孔34を貫通する枢動ピン31を中心として回転するように、アパーチャ28中に据え付けられる。ピン31は、孔32及び34中に締まり嵌めによって保持され、その一方で、孔33は、ピン31の軸線を中心としたレバーアーム30の枢動を可能にするクリアランスを有する。
【0016】
レバーアーム30は、固定タブ26のそばにあるアパーチャ28から外に延在する第1の端部35と、反対側のアパーチャ28から外に延在する第2の端部37とを有する。第2の端部37は、引き紐40の遠位端を受け入れるための据え付け孔38又は他の取り付け点を有する。引き紐40は、例えば、糸、紐、繊維索、プラスチックライン、又は金属ワイヤから成り得る結紮糸(例えば、長い曲げることが可能なテザー)であり得る。引き紐40は、本体25の近位端中の通路41を貫通し、レバーアーム30を回転させるために把持して引っ張るための近位端42(例えば、切開孔を通って本体の外側に延在する)を有する。第1の端部35は、横方向に延在するフランジ36を有する。第1の端部35が固定タブ26に最も近い位置まで回転されると、それらは、顎部12中の中央開口部50を共に通り抜ける(
図4を参照)。同様に、顎部11は、開口部60を有する。
【0017】
図6は、固定タブ26及びフランジ36が顎部12中の開口部50を通して挿入された後の状態の上面断面図である。引き紐40は、第1の端部35が固定タブ26から離れる(即ち、離れるように広がる)ように引っ張られている。顎部12は、部材15が顎部12上にしっかりと保持されるように、端部スロット27中に、及びフランジ36の真下にロックされる。同様に、スタビライザ部材13は、レバーアーム45を有する。レバーアーム45用の引き紐(
図6には示していないが、
図10には引き紐49として示している)が、部材13の主本体47中の通路46を貫通している。引き紐でレバーアーム45の一方の側を引っ張ると、レバーアーム45は、矢印によって示す方向に回転し、そのため、フランジ48が、顎部11を捕捉する。
【0018】
スタビライザ部材を顎部上に捕捉するために引き紐が引っ張られると、それは、テンションロック又はタイダウンによって固定することができ、そのため、張力が、継続して引っ張られることなく引き紐上に残る。例えば、テンションロック51は、部材15の近位端上に配設され(
図8)、テンションロック52は、部材13の近位端上に配設され(
図6)、各々は、近位方向に傾斜し、引き紐の直径よりも僅かに小さい直径を有する中央開口部を画定する1つ以上の可撓性壁(例えば、漏斗形状又は2つ以上の対向するフラップ)を有する。このことから、引き紐は、近位方向に容易に引っ張ることができるが、ロック51及び52を通して遠位方向への動きに抵抗する。スタビライザ部材を顎部上に捕捉するために引き紐を引っ張った後、引き紐の近位端を解放することができ、スタビライザ顎部は、顎部にロックされたままである。言い換えれば、テンションロック51又は52は、レバーアーム45が収縮状態から拡張状態まで引っ張られると、引き紐40を更に引っ張ることなく拡張状態が維持されるように、テンションロックを通る引き紐40の一方向の動きを可能にするように構成される。
【0019】
図10に示すように、外科的処置の関連部分を完了した後にスタビライザ部材を顎部から解放するために、切断デバイス55を使用して、レバーアーム45とロック52との間の場所56で引き紐49を切断することができる。張力が解放されると、ロボットツールが、レバーアーム45を逆回転させることができ(又は、レバーアーム45を自動的に逆回転させるために、付勢ばねをレバーアーム45に組み込むことができ)、スタビライザ部材を、対応するポートを通して本体から取り外すことができる。
【0020】
図11は、外科用ポートを通した挿入及び取り外しを容易にする接続されていない状態にあるスタビライザ部材15を示す。挿入後、各スタビライザ部材は、一度に1つずつそれぞれの顎部に結合される。
図12は、顎部11上に最初に結合されたスタビライザ部材13を示す。
【0021】
図13~17は、レバーアームを枢動させるための引き紐がねじ山付き機構を利用する代替の実施形態を示す。スタビライザ部材13、15の他の態様は、以前の実施形態と同一であり得、それらの説明は、繰り返されない。複合引き紐65は、結紮糸67(例えば、索)及びトルクワイヤ68に取り付けられたねじ山付きバー66を含む(
図14及び16を参照)。結紮糸67は、スタビライザ部材13中のレバーアーム45によって捕捉される。スタビライザ部材13の主本体中の通路46は、ねじ山付きバー66の回転が通路46内でのねじ山付きバー66の前進を引き起こし、レバーアーム45をロック解除位置(即ち、収縮状態)からロック位置(即ち、拡張状態)へと引っ張る結紮糸67に張力を印加するように、ねじ山付きである。結紮糸67は、引き紐について上述した材料(例えば、ヤーン、プラスチック、金属)のうちの任意のものから成り得る。バー66及びワイヤ68は、生体適合性金属又は成形プラスチック材料であり得る。
【0022】
図16及び17に示すように、ねじ山付きバー66の近位側には、回転を駆動するための雄型六角形突起を有するキー付き端部70がある。トルクワイヤ68は、キー付き端部70を捕捉する雌型六角形ソケット71を有する。トルクワイヤ68を把持して回転させることによって(例えば、グリッパ又は鉗子を有するロボットアームを使用して)、バー66が、反時計回りに回転されて、レバーアーム45をロック位置まで引っ張り得る。任意選択で、キー付き端部70に対するソケット71の保持力は、ロックが実行された後にトルクワイヤ68をバー66から引き離すことによってトルクワイヤ68が取り外されることを可能にするように構成され得る(
図15)。これは、手術の残りの間に、スタビライザ装置によって占められる空間が低減されることを可能にすることができる。
【0023】
結紮糸67は、例えば、接着結合によってバー66に取り付けられ得る。心臓修復後にスタビライザ部材を取り外すために、スタビライザ部材をロボットアームの顎部から取り外すことができるように、結紮糸67を切断することができる。上記で説明したような機械的切断に加えて、結紮糸67は、電気焼灼を使用して切断することができる(それは、電気焼灼ツールが、典型的には、心臓手術の一部として使用されるため、特に好都合であり得る)。結紮糸67は、例えば、銅、又は炭素及び/又は金属とプラスチックヤーンとの混合物などの導電性材料であり得る。結紮糸67は、電気焼灼ツールからの電流が結紮糸67を溶融/切断する加熱を引き起こすように、十分に抵抗性にされる。
【0024】
図18~21は、据え付けられたセクションを拡張状態へと付勢するためにばねを利用する第3の実施形態を示す。具体的には、スタビライザ部材13の近位端における据え付けセクション80は、(顎部のそれぞれの側面を受け入れるための)端部スロット82を画定する固定タブ81を有する。レバーアーム83が枢動ピン84を中心として回転可能であるように、レバーアーム83が、据え付けセクション80中のスロット中に受け入れられる。ピン84は、レバーアーム83の動きを可能にする直径を有するレバーアーム83中の枢動孔85を貫通する。ピン84の下端は、据え付け孔86中に取り付けられ、ピン84の上端は、レバーアームスロットの上側を閉じる締結ブロック88の据え付け孔87中に取り付けられる。このことから、レバーアーム83は、収縮状態と拡張状態との間を移行可能であり、そのため、フランジ48は、以前に説明したように、顎部に制御可能にロックすることができる。
【0025】
レバーアーム83を拡張状態まで付勢するために、付勢ばね90が設けられる。付勢ばね90は、中央ハブ91と、ばねアーム92及び93とを有する。中央ハブ91は、据え付けセクション80の下面を越えて延在する枢動ピン84の端部を受け入れるコイルとして成形される。ばねアーム92は、固定延長部99の下面における固定孔95中に取り付けられた端部94を有する。ばねアーム93は、レバーアーム83の一部である可動延長部98の可動孔97中に取り付けられた端部96を有する。ばね90は、ハブ91がばねアーム92及び93の取り付けに起因して圧縮されるように構成される。この圧縮は、延長部98と99との間に拡張力100を生じさせ、拡張力100は、レバーアーム83を拡張状態に付勢し、フランジ48は、方向101にロック位置まで動かされる。
【0026】
図18に示すように、拡張力100に打ち勝つために、外部圧縮力を延長部に印加することができる。例えば、延長部は、作業空間中に挿入された鉗子又は他のツールによって共につまむことができる。外部圧縮力は、レバーアーム83を収縮状態へと動かす。同じ鉗子を使用して、(挿入又は取り外しのうちのいずれかのために)タブをそれぞれの顎部中の中央孔に貫通させるために、スタビライザ部材を操作することができる。タブを顎部上に挿入するとき、タブが適所にあると、鉗子を開くことができ、ばね作用がタブを拡張し、顎部上にスタビライザ部材をロックする。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低侵襲心臓手術用のスタビライザであって、
遠位端において吸引ポッドを有し、近位端において据え付けセクションを有するスタビライザ部材と、ここで、前記据え付けセクションは、固定タブと、回転可能なレバーアームの第1の端部上の可動タブとを備え、前記固定タブ及び前記可動タブは、ロボットアームのそれぞれの顎部中の開口部を通って延在するように構成されており、
前記固定タブ及び前記可動タブの拡張状態と、前記固定タブ及び前記可動タブの収縮状態との間で前記回転可能なレバーアームを枢動させるように構成された前記回転可能なレバーアームに結合されたレバー操作部と、ここで、前記収縮状態は、前記固定タブ及び前記可動タブが前記それぞれの顎部中の前記開口部を貫通することを可能にし、前記固定タブ及び前記可動タブの
前記拡張状態は、前記それぞれの顎部に前記スタビライザ部材をロックする、
を備える、スタビライザ。
【請求項2】
前記レバー操作部は、前記レバーアームの第2の端部に固着された引き紐から成り、近位方向に前記引き紐を変位させることは、前記レバーアームの前記可動タブを前記固定タブから離れさせて前記拡張状態まで動かし、前記引き紐は、前記それぞれの顎部を捕捉する、請求項1に記載のスタビライザ。
【請求項3】
前記引き紐は、前記スタビライザ部材の固定部分を貫通する結紮糸から成る、請求項2に記載のスタビライザ。
【請求項4】
前記引き紐は、
前記レバーアームによって捕捉された結紮糸と、
前記結紮糸に接続され、前記スタビライザ部材の固定部分中のねじ山付き通路を貫通するねじ山付きバーと、
トルクワイヤの回転が前記結紮糸を引っ張って前記レバーアームを動かすように、前記ねじ山付きバーの端部を保持するように構成された前記トルクワイヤと
から成る、請求項2に記載のスタビライザ。
【請求項5】
前記レバーアームが前記収縮状態から前記拡張状態まで引っ張られると、前記引き紐を更に引っ張ることなく前記拡張状態が維持されるように、テンションロックを通る前記引き紐の一方向の動きを可能にするように構成された、前記引き紐を受け入れる前記テンションロック
を更に備える、請求項2に記載のスタビライザ。
【請求項6】
前記引き紐は、前記収縮状態に戻るために前記レバーアームを解放すべく切断されるように構成されている、請求項2に記載のスタビライザ。
【請求項7】
前記レバー操作部は、前記レバーアームを前記拡張状態へと付勢するように構成された付勢ばねから成る、請求項1に記載のスタビライザ。
【請求項8】
前記付勢ばねは、中央ハブにおけるコイルと一対のばねアームとから成り、一方のばねアームは、前記レバーアームの第2の端部に取り付けられ、他方のばねアームは、前記スタビライザ部材の固定部分に取り付けられている、請求項7に記載のスタビライザ。
【請求項9】
前記レバーアームの前記第2の端部は、可動延長部を形成し、前記スタビライザ部材は、前記可動延長部に並置された固定延長部を画定し、前記可動延長部及び前記固定延長部は、共に押し付けられて前記付勢ばねを圧縮し、前記レバーアームを前記収縮状態へと動かすように構成される、請求項8に記載のスタビライザ。
【請求項10】
第2のスタビライザ部材と、前記ロボットアームの第2の顎部を捕捉するように構成された第2の引き紐とを更に備え、前記スタビライザ部材及び前記第2のスタビライザ部材が並んで配置され、それらの間に調整可能な距離を有するようになっている、請求項1に記載のスタビライザ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一態様では、低侵襲心臓手術用のスタビライザが提供される。スタビライザ部材が、遠位端において吸引ポッドを、及び近位端において据え付けセクションを有し、据え付けセクションは、固定タブと、回転可能なレバーアームの第1の端部上に可動タブを有する回転可能なレバーアームとを含む。タブは、ロボットアームのそれぞれの顎部中の開口部を通って延在するように構成される。レバー操作部が、回転可能なレバーアームに結合され、タブの拡張状態とタブの収縮状態との間で回転可能なレバーアームを枢動させるように構成され、収縮状態は、タブがそれぞれの顎部中の開口部を貫通することを可能にし、タブの拡張は、それぞれの顎部にスタビライザ部材をロックする。いくつかの実施形態では、レバー操作部は、レバーアームの第2の端部に固着された引き紐であり得、近位方向に引き紐を変位させることは、レバーアームの可動タブを固定タブから離れさせて拡張状態まで動かし、引き紐は、それぞれの顎部を捕捉する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
図18に示すように、拡張力100に打ち勝つために、外部圧縮力を延長部に印加することができる。例えば、延長部は、作業空間中に挿入された鉗子又は他のツールによって共につまむことができる。外部圧縮力は、レバーアーム83を収縮状態へと動かす。同じ鉗子を使用して、(挿入又は取り外しのうちのいずれかのために)タブをそれぞれの顎部中の中央孔に貫通させるために、スタビライザ部材を操作することができる。タブを顎部上に挿入するとき、タブが適所にあると、鉗子を開くことができ、ばね作用がタブを拡張し、顎部上にスタビライザ部材をロックする。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 低侵襲心臓手術用のスタビライザであって、
遠位端において吸引ポッドを有し、近位端において据え付けセクションを有するスタビライザ部材と、ここで、前記据え付けセクションは、固定タブと、回転可能なレバーアームの第1の端部上の可動タブとを備え、前記固定タブ及び前記可動タブは、ロボットアームのそれぞれの顎部中の開口部を通って延在するように構成されており、
前記固定タブ及び前記可動タブの拡張状態と、前記固定タブ及び前記可動タブの収縮状態との間で前記回転可能なレバーアームを枢動させるように構成された前記回転可能なレバーアームに結合されたレバー操作部と、ここで、前記収縮状態は、前記固定タブ及び前記可動タブが前記それぞれの顎部中の前記開口部を貫通することを可能にし、前記固定タブ及び前記可動タブの収縮状態は、前記それぞれの顎部に前記スタビライザ部材をロックする、
を備える、スタビライザ。
[2] 前記レバー操作部は、前記レバーアームの第2の端部に固着された引き紐から成り、近位方向に前記引き紐を変位させることは、前記レバーアームの前記可動タブを前記固定タブから離れさせて前記拡張状態まで動かし、前記引き紐は、前記それぞれの顎部を捕捉する、[1]に記載のスタビライザ。
[3] 前記引き紐は、前記スタビライザ部材の固定部分を貫通する結紮糸から成る、[2]に記載のスタビライザ。
[4] 前記引き紐は、
前記レバーアームによって捕捉された結紮糸と、
前記結紮糸に接続され、前記スタビライザ部材の固定部分中のねじ山付き通路を貫通するねじ山付きバーと、
トルクワイヤの回転が前記結紮糸を引っ張って前記レバーアームを動かすように、前記ねじ山付きバーの端部を保持するように構成された前記トルクワイヤと
から成る、[2]に記載のスタビライザ。
[5] 前記レバーアームが前記収縮状態から前記拡張状態まで引っ張られると、前記引き紐を更に引っ張ることなく前記拡張状態が維持されるように、テンションロックを通る前記引き紐の一方向の動きを可能にするように構成された、前記引き紐を受け入れる前記テンションロック
を更に備える、[2]に記載のスタビライザ。
[6] 前記引き紐は、前記収縮状態に戻るために前記レバーアームを解放すべく切断されるように構成されている、[2]に記載のスタビライザ。
[7] 前記レバー操作部は、前記レバーアームを前記拡張状態へと付勢するように構成された付勢ばねから成る、[1]に記載のスタビライザ。
[8] 前記付勢ばねは、中央ハブにおけるコイルと一対のばねアームとから成り、一方のばねアームは、前記レバーアームの第2の端部に取り付けられ、他方のばねアームは、前記スタビライザ部材の固定部分に取り付けられている、[7]に記載のスタビライザ。
[9] 前記レバーアームの前記第2の端部は、可動延長部を形成し、前記スタビライザ部材は、前記可動延長部に並置された固定延長部を画定し、前記可動延長部及び前記固定延長部は、共に押し付けられて前記付勢ばねを圧縮し、前記レバーアームを前記収縮状態へと動かすように構成される、[8]に記載のスタビライザ。
[10] 第2のスタビライザ部材と、前記ロボットアームの第2の顎部を捕捉するように構成された第2の引き紐とを更に備え、前記スタビライザ部材及び前記第2のスタビライザ部材が並んで配置され、それらの間に調整可能な距離を有するようになっている、[1]に記載のスタビライザ。
【国際調査報告】