(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】中枢神経系(CNS)の遠隔顕微鏡下手術を実行するためのテザーフリーロボットシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20240822BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20240822BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20240822BHJP
【FI】
A61B17/00
A61B17/34
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509106
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 US2022040303
(87)【国際公開番号】W WO2023022966
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロス、フローレント
(72)【発明者】
【氏名】シュピゲルマッハー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コンダバトニ、キショア・クマール
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ、アレックス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF41
4C160MM32
(57)【要約】
本開示は、外部磁場によって駆動されるミリメートルサイズのテザーレス物体、及び、(顕微鏡下手術の)ミッションまたはタスクを完了させるべく、特定の解剖学的ターゲットまで小型デバイスを推進、ナビゲートさせるために画定された三次元操作ボリューム内で磁場を生成、変調及び制御する磁場を小型デバイスとは別の双方向ハードウェア-ソフトウェアプラットフォームを含むシステム、ならびに、中枢神経系(CNS)において顕微鏡下手術を行うためのそのようなシステムの使用に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内の中枢神経系(CNS)内のターゲット部位への経路に沿って外部磁場によって誘導され、外部磁場による操作により前記ターゲット部位において1以上の機械的動作を行うように構成された小型デバイスであって、
前記小型デバイスは、長手方向に延びる長手方向軸を画定する頭部及び尾部を有する本体を含み、
前記頭部は、1以上のブレードを有するブレードアセンブリを含む、デバイス。
【請求項2】
前記ブレードアセンブリは、前記長手方向軸に対して垂直な十字形となるように配置された複数のブレードを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ブレードアセンブリは、前記長手方向軸に沿って延在するピラミッド状部材を含み、その側縁が前記ブレードアセンブリの前記ブレードを構成する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ブレードアセンブリは、前記本体よりも幅広となるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ブレードが鋸歯状に構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記尾部が前記本体の形状とは異なる形状を画定する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記本体の直径が前記長手方向に変化する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記本体は、周方向に頭側を向く肩部を含み、
前記頭部及び前記肩部の間の前記本体の直径は、前記肩部及び前記尾部の間の前記本体の直径よりも小さい、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記本体の直径が、前記尾部及び前記頭部の間で徐々に減少する、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記本体から横方向に突出する1以上の拘束部材をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記拘束部材が前記尾部からまたは前記尾部に隣接して前記本体から突出する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記拘束部材が可撓性材料から作製されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記本体が前記長手方向軸に沿って細長い形状を画定する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記本体が磁性材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記磁性材料が前記長手方向軸に沿って磁化される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記磁性材料がネオジム磁石であるように構成される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記ネオジム磁石は、N40~N55以下のグレードを有する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記本体の直径が1mm~5mmであるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ブレードが200MPa以上の最小降伏強さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記ブレードが500MPa以上の最小降伏強さを有する、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記本体は、放射線不透過性材料で作製されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記長手方向軸に沿った長さが1mm~20mmであるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記長手方向軸に沿った長さが1mm~20mmになるように構成された請求項1に記載のデバイスであって、
前記本体が前記長手方向軸に沿って細長い形状を画定し、かつ、1mm~5mmの間の直径を有し、
前記本体が前記長手方向軸に沿って磁化され、かつ、N40~N55以下のグレードを有するネオジム磁石を含み、
前記ブレードアセンブリが、500MPa以上の最小降伏強さを有する単一の金属ブレードを含む、デバイス。
【請求項24】
患者の中枢神経系(CNS)のターゲット部位における顕微鏡下手術による治療を容易にするように構成されたシステムであって、
請求項1~23のいずれか一項に記載の少なくとも1つの前記小型デバイスと、
患者内の前記小型デバイスを指揮及び/または操作するための1以上の磁場を生成するように構成された外部システムと、を含むシステム。
【請求項25】
前記外部システムは、前記頭部が前記本体の後に続くような経路に沿って移動するように前記小型デバイスを指揮するように構成されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記外部システムが、前記磁場を生成するための1以上の電磁石、1以上の永久磁石、またはそれらの組み合わせを備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記外部システムがソフトウェアモジュール及びハードウェアシステムを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記ソフトウェアモジュールは、侵入位置、ターゲット部位、及び回収位置の間の経路を推奨するように構成されたプランニングソフトウェアサブモジュールを含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記ソフトウェアモジュールは、前記外部システムを操作することにより、前記小型デバイスを前記ターゲット部位までの経路及び前記ターゲット部位からの経路に沿ってナビゲートするように構成されたコントローラソフトウェアモジュールを含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記外部システムが視覚化システムを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項31】
視覚化システムが、X線立体視、光学式立体視、またはそれらの組み合わせを用いる、請求項24に記載のシステム。
【請求項32】
前記小型デバイスを前記CNSに導入するためのツールをさらに備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項33】
前記CNSから前記小型デバイスを回収するためのツールをさらに備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項34】
患者の中枢神経系のターゲット部位に局所治療を提供する方法であって、
請求項27に記載のシステムを提供するステップと、
前記小型デバイスを患者のCNSの侵入位置に導入するステップと、
前記小型デバイスを前記ターゲット部位まで遠隔で推進及びナビゲートさせるために前記外部システムを操作するステップと、
前記治療を行うために、前記小型デバイスによって1以上の前記機械的動作を実行するステップとを含む方法。
【請求項35】
指定された回収位置で前記小型デバイスを回収するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記機械的動作が、前記ターゲット部位の単一の座位または複数の座位で実行される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記治療がダンディ・ウォーカー奇形(DWM)のためのものである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
1以上の前記機械的動作が、前記ブレードアセンブリを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞に開窓するために前記小型デバイスを動作させるステップを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
必要とする患者の中枢神経系におけるダンディ・ウォーカー奇形(DWM)を治療するための方法であって、
請求項27に記載のシステムを提供するステップと、
前記小型デバイスを患者のCNSの侵入位置に導入するステップと、
前記小型デバイスをダンディ・ウォーカー嚢胞まで遠隔から推進及びナビゲートさせるために前記外部システムを操作するステップと、
前記ブレードアセンブリを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞に開窓して治療を行うために、前記小型デバイスを操作するステップとを含む、方法。
【請求項40】
指定された回収部位で前記小型デバイスを回収するステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記侵入位置が大槽であるように構成される、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する主題は、外部磁場によって駆動されるミリメートルサイズのテザーレスオブジェクトと、画定された三次元操作ボリューム内で磁場を生成、変調、及び制御することにより、小型デバイスを特定の解剖学的ターゲットまで推進及びナビゲートさせて(顕微鏡下手術(microsurgical)の)ミッションやタスクを完了させる、小型デバイスとは別途設けられた双方向ハードウェアソフトウェアプラットフォームとを含むシステム、ならびにターゲットの顕微鏡下手術を実施するためのそのようなシステムの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
先天性水頭症は、脳脊髄液(CSF)の産生や吸収のバランスが乱れることによる、脳室系における頭蓋内圧の上昇に起因する症状である。小児における典型的な臨床症状には、泉門の隆起、視線の持続的な下転(「落陽現象」)、頭囲が急速に増加する大頭症、過敏症、嘔吐、摂食不良、発作、無気力、失明、及び死亡などを含む。水頭症が神経外科的な介入によって対処されない場合、未治療のまま頭蓋内圧が上昇すると致死率が高くなることから、これらの症状における死亡率は高くなる。ダンディ・ウォーカー奇形(DWM)、ダンディ・ウォーカー複合体、またはダンディ・ウォーカー症候群(DWS)は、水頭症、後頭蓋窩嚢胞、及び小脳虫部の形成不全の先天性合併症として現れる臨床症候群である。DWMを特徴づける古典的な解剖学的特徴は、小脳底の低形成、後頭蓋窩の前後方向の拡大、トーキュラ(torcula)及び横静脈洞の上方変位、ならびに第4脳室の嚢胞性拡張である。残念ながら、シャント術や内視鏡的第三脳室吻合術(ETV)を含む現在のDWMの治療法は、最適な臨床結果をもたらすものではない。これらの処置は不十分であることが多く、複数回の介入が必要となるものであり、創傷治癒の問題、外科的感染、及び神経障害の悪化などの重篤な合併症のリスクを伴う恐れがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、ダンディ・ウォーカー嚢胞の安全かつ効率的な単一または複数の開窓術を実行することにより、患者の頭蓋内圧のバランスを均衡させるプラットフォームについて説明する。このシステムは、カテーテル、トロカール、注射針、及び内視鏡などのテザーソリューションに依存する医療行為の代替物を提供する。
【0004】
ダンディ・ウォーカー奇形の典型的な症状を伴う水頭症は、小型デバイスを用いた嚢胞の顕微鏡下開窓術を用いて、本明細書で述べるように治療される。具体的には、脳後頭蓋窩にあるダンディ・ウォーカー嚢胞を安全かつ正確に、効果的に開窓して頭蓋内圧を正常化するために、外部及び遠隔から制御される顕微鏡下手術用小型粒子が設計されている。治療対象となる患者には、生後0~6ヵ月の小児DWM患者や、感染、出血、またはその他の臨床的要因によりシャントや内視鏡的介入が好ましくないため、ETV及び/またはシャントによる水頭症管理が禁忌とされている思春期及び成人の患者が含まれる。
【0005】
ある態様において、患者内の中枢神経系(CNS)内のターゲット部位への経路に沿って外部磁場によって誘導され、外部磁場による操作によってターゲット部位において1以上の機械的動作を実行するように構成された小型デバイスが本明細書で提供される。小型デバイスは、長手方向に延びる長手方向軸を画定する頭部及び尾部を有する本体を含み、頭部は、1以上のブレードを含むブレードアセンブリを含む。
【0006】
他の態様において、患者の中枢神経系(CNS)のターゲット部位における顕微鏡下手術による治療を容易にするように構成されたシステムが本明細書で提供され、該システムは、
本明細書において提供される少なくとも1つの小型デバイスと、
患者の体内の小型デバイスを指揮及び/または操作するための1以上の磁場を生成するように構成された外部システムとを含む。
【0007】
他の態様において、患者の中枢神経系(CNS)のターゲット部位に局所治療を提供するための方法が本明細書で提供され、該方法は、
本明細書に記載のシステムを提供するステップと、
小型デバイスをCNSの侵入位置から患者に導入するステップと、
小型デバイスをターゲット部位まで遠隔から推進及びナビゲートさせるために、外部システムを操作するステップと、
治療を行うために、小型デバイスにより1以上の機械的動作を実行するステップとを含む。
【0008】
他の態様では、必要とする患者のCNSにおけるダンディ・ウォーカー奇形(DWM)を治療する方法が本明細書で提供され、該方法は、
本明細書に記載のシステムを提供するステップと、
小型デバイスを患者のCNSの侵入位置から導入するステップと、
小型デバイスをダンディ・ウォーカー嚢胞まで遠隔から推進及びナビゲートさせるために外部システムを操作するステップと、
ブレードアセンブリを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を開窓して治療を行うために、小型デバイスを操作するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、実際にどのように実行され得るかを例示するために、添付の図面を参照しながら、非限定的な例としてのみ実施形態を説明する。
【0010】
【
図1】ダンディ・ウォーカー奇形の症状を示す図である。
【
図2】本明細書で開示する主題によるシステムの一例を概略的に示す図である。
【
図3】本明細書で開示する主題による外部システムの一例を概略的に示す図である。
【
図4】本明細書で開示する実施形態による小型デバイスの一例を示す図である。
【
図5A】
図4に示す小型デバイスの頭部の実施形態の斜視図である。
【
図5B】
図4に示す小型デバイスの頭部の実施形態の斜視図である。
【
図6A】
図4に示す小型デバイスの頭部の実施形態の俯瞰図である。
【
図6B】
図4に示す小型デバイスの頭部の実施形態の俯瞰図である。
【
図7A】
図4に示す小型デバイスの頭部の実施形態の側面図である。
【
図7B】
図4に示す小型デバイスの頭部の実施形態の側面図である。
【
図8】
図4に示す小型デバイスのブレードの一実施形態の俯瞰図である。
【
図9A】壁を穿刺する
図4に示す小型デバイスの図である。
【
図9B】壁を穿刺する
図4に示す小型デバイスの図である。
【
図10】壁を穿刺する
図4に示す小型デバイスの他の図である。
【
図11】流体を壁の一方から他方へ排出するための孔(bore)を備える小型デバイスの例を示す図である。
【
図12】
図4に示す小型デバイスの一実施形態の斜視図を示す図である。
【
図13】本明細書で開示する他の実施形態における、壁を穿刺する小型デバイスを示す図である。
【
図14】CNSの嚢胞とその周囲の領域を示す図である。
【
図15】本明細書に開示される実施形態によるイントロデューサを示す図である。
【
図16】本明細書に開示される実施形態による回収器を示す図である。
【
図17A】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17B】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17C】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17D】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17E】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17F】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17G】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17H】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17I】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17J】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17K】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17L】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17M】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【
図17N】本明細書で提供するシステム及びデバイスを用いてダンディ・ウォーカー嚢胞を治療する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ある態様において、外部磁場を利用して遠隔制御または遠隔操作するミリメートルサイズのテザーレス物体(本明細書では「小型デバイス」と称する)と、小型デバイスとは別で、画定された3次元操作ボリューム内で磁場を生成、変調、及び制御することにより、小型デバイスを特定の解剖学的ターゲットまで推進及びナビゲートし、(顕微鏡下手術の)ミッションまたはタスクを完了させる双方向ハードウェア-ソフトウェアプラットフォーム(本明細書では「外部システム」または「ES」と称する)とを含むデバイスならびにシステムが本明細書で提供される。
【0012】
小型デバイスは、管腔、腔、血管、組織、及び回路網に代表される特定の解剖学的環境(milieu)を通って、ESを用いて遠隔から推進及びナビゲートされる。この環境には、管腔、それぞれの管腔内壁、及び隣接する組織などの同種または異種の構成要素が含まれることがある。このような異種コンパートメントの1つが中枢神経系(CNS)である。
【0013】
小型デバイスはCNS内を移動し、特定の(微小な)外科的、診断的、あるいは治療的ミッションを果たすことが可能である。
【0014】
小型デバイスは、健康なドメインまたは病理的なドメイン、及び/またはそれらの組み合わせを通じてナビゲートされてもよい。代表的な例としては、非交通性水頭症または閉塞性水頭症が挙げられる。さらに代表的な例としては、後頭嚢胞を特徴とするダンディ・ウォーカー奇形が挙げられる。「嚢胞」という用語は、特定の組織と膜(壁)とで構成される、解剖学的及び位相幾何学的に境界が明確な閉鎖嚢を指す。
【0015】
小型デバイスは、これらには限定されないが、鼻腔内またはツーイ針を用いた後頭下部の送達に代表されるような、非侵襲的プロトコルまたは低侵襲的プロトコルに従って、導入ツールを介して後頭部に導入される。このような侵入点の代表的な例は大後頭孔である。このような侵入点の他の例は、下部腰椎である。
【0016】
顕微鏡下手術、診断・治療のミッションまたはタスクは、関連する解剖学的環境で達成される1以上のアクションで構成される。
【0017】
ミッションまたはタスクには、a)これらに限定されないが、例として脳室及び槽を含むクモ膜上腔またはクモ膜下腔等の、CNS内の開始位置への小型デバイスの挿入、b)解剖学的に決定された座位または複数の座位への推進またはナビゲート、c)治療対象の座位または複数の座位において行われる顕微鏡下手術、診断または治療オペレーションまたはアクション、及び、d)小型デバイスの回収及び指定された回収位置での回収を含む。
【0018】
このような顕微鏡下手術の一例として、CNSの頭蓋内圧のバランスを均衡させるための後頭下部領域のダンディ・ウォーカー嚢胞の開窓(穿刺)が挙げられる。この顕微鏡下手術アクションでは、1回の穿刺が、または必要に応じて、所望の治療効果を達成するために一連の穿刺が行われてもよい。小型デバイスは、嚢胞膜または壁上の単一の部位または複数の部位で開窓を実施してもよい。
【0019】
ミッション
【0020】
ミッションは以下を含む。(a)本明細書に記載の環境内のターゲット位置への小型デバイス101の移動。(b)ターゲット位置において小型デバイスによって実行される、特定の安全かつ効率的な機械的アクティビティ。このアクティビティは、所望の治療効果を達成するために1回以上実行してもよい。このアクティビティは、単一または複数の事前に決定された解剖学的部位で実行してもよい。
【0021】
デバイス101の移動には、制御と、本明細書で説明する外部システム(ES)801によって媒介される一連の特定のアクションとの両方を必要とする。実施形態によっては、移動は、これに限定されないが、脳脊髄液(CSF)によって例示される媒体または液体で充填された第1のボリューム内で実行される。実施形態によっては、第1のボリュームは脳内物質及び頭蓋骨の間に存在するネガティブスペースである。他の実施形態では、互いに隣接する2つの解剖学的ボリュームまたは管腔は、これに限定されないが、ダンディ・ウォーカー嚢胞を代表とする正常または病理的(pathological)な壁または膜によって隔てられている。嚢胞のトポロジーは、凹状、凸状、またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、壁は5μmと薄く、5,000μmと厚い。
【0022】
例えば、穿刺される嚢胞の境界壁501の厚さは10~500μm、例えば50μmである。嚢胞壁は、1~100MPa(例えば、2MPa)の弾性率及び0.5~7MPa(例えば、1MPa)の引張強さを有していてもよい。嚢胞壁を開窓するのに必要な力は、1~100mN(例えば、10mN)としてもよい。開窓を形成するための先端部の圧力は、1~200mPa(例えば、10mPa)としてもよい。
【0023】
実施形態によっては、小型デバイスが移動する経路は直線である。他の実施形態では、小型デバイスが移動する三次元経路は曲線である。実施形態によっては、小型デバイスが移動する距離は1~20mm(例えば、5mm)である。実施形態によっては、処置後において小型デバイスは被験者の体内に残留しない。他の実施形態では、小型デバイスの一部は処置後に被験者の体内に残留する。実施形態によっては、小型デバイスは嚢胞壁を一度貫通する。実施形態によっては、小型デバイスは嚢胞壁を複数回貫通する。実施形態によっては、小型デバイスは嚢胞壁を1回~10回貫通する。実施形態によっては、開窓(または複数の穿孔の場合の各開窓)の幅は、0.5~5mm、例えば1mmである。
【0024】
機械的アクティビティは外科的な理由から実行される場合がある。このアクティビティには即時的な効果が期待されるが、二次的な効果も期待できる。例えば、一次的な効果は、壁501に孔(開窓)を作製することであり、二次的な効果は、流体が壁の孔を通って一方のボリュームから他方のボリュームに流れることが可能になることである。この処置の全体としての治療効果は、頭蓋内圧のバランスを均衡させることである。この顕微鏡下手術の治療効果は、これらに限定されないが、DWM患者に対して、発達、神経学的、行動、パフォーマンス、及び生活の質のマイルストーンを含む、即時的及び長期的な治療上の利益をもたらすことがある。
【0025】
外部システム
【0026】
外部システム801(ES)は、その機能を達成するためのソフトウェアモジュール及びハードウェアシステムの両方を含む。外部システム(ES)の例を
図3に概略的に示す。ESは磁場を利用して小型デバイスに機械的な力を加え、特定の動作を実行するようにデバイスを制御する。小型デバイス101に制御可能かつ予測可能に加えられる力は、環境に様々な結果をもたらすことが予想される。実施形態によっては、ESは、ある所定の位置から他の所定の位置への小型デバイスの推進及びナビゲートを媒介する。例えば、ESは、これらに限定されないが、単体での軸方向もしくは径方向のスピン、回転、振動、タンブリング、クローリング、揺動、または、生体壁/膜などの障害物を貫通して穿孔もしくは開窓するための横方向の動きに組み合わせた動きを含む特定の小型デバイスの動きを制御する。これらの動作は1回以上実行してもよい。これらの動作は、所望の効果を達成するために単一または複数の遺伝子座で実行してもよい。例えば、ある一点を中心に特定の動きをすることで、所望の一次的効果を達成する。他の例では、力によって小型デバイスが所定の位置付近から動かないようにする。
【0027】
実施形態によっては、外部システムは永久磁石(PM)を用いて磁場を生成する。実施形態によっては、永久磁石が、磁石を保持し、かつ三次元で移動することができる機械的セットアップに取り付けられる。実施形態によっては、永久磁石は回転してもよい。実施形態によっては、永久磁石は1つのみ設けられる。他の実施形態では、独立して作動する複数の磁石が設けられる。
【0028】
実施形態によっては、外部システムは、電磁石(EM)を用いて磁場を生成する。電磁石は1個、2個、3個、または複数のコイルによって構成される。さらに、電磁石は、コイルを支持するボビンと、コイルの電磁特性を変更するヨークとを含んでいてもよい。実施形態によっては、電磁石は、小型デバイスが配置された環境に対して、固定された位置に電磁石を保持するための機械的セットアップに取り付けられる。実施形態によっては、電磁石は、小型デバイスが配置された環境に対する電磁石の位置を制御可能かつ予測可能に決定する機械的セットアップに取り付けられる。実施形態によっては、電磁石は1つのみ設けられる。実施形態によっては、小型デバイスのX線画像をリアルタイムで用いる別個のアルゴリズムを利用して抽出された小型デバイスの位置、速度、加速度、及び姿勢(pose)を考慮した所定の制御アルゴリズムに従って作動する電磁石が設けられる。実施形態によっては、小型デバイスに加えられる力によって小型デバイスがその軸の周りを回転するような方法により場が生成される。
【0029】
実施形態によっては、外部システムは、電磁石(EM)及び永久磁石(PM)の組み合わせを用いて磁場を生成する。実施形態によっては、EM及びPMの両方が連携して場を生成し、小型デバイスに力を加えるために用いられる。
【0030】
実施形態によっては、外部システムは、6~12個の電磁コイルを用いて磁場を生成する。例えば、磁場を生成するために8個の電磁コイルが用いられる。各コイルのサイズは、4インチ(10.16cm)×4インチ(10.16cm)×4インチ(10.16cm)~12インチ(30.48cm)×12インチ(30.48cm)×24インチ(60.96cm)の間であり、例えば、各電磁コイルのサイズは8インチ(20.32cm)×8インチ(20.32cm)×15インチ(38.1cm)である。各コイルは最大100アンペアを伝送することができ、例えば、30アンペアで動作する。実施形態によっては、電磁コイルは強磁性ヨークを有する。他の実施形態では、電磁コイルはヨークを有しない。実施形態によっては、電磁コイルは、使用時に被験者の頭部の周囲に配置される。実施形態によっては、電磁コイルは環境から5~25cm、例えば15cmの距離に配置される。
【0031】
外部システム(ES)は、力の適用をサポートし、小型デバイスを適切に制御するために、様々な視覚化または画像化システムを用いてもよい。実施形態によっては、ESはX線を用いて、ターゲット環境内の小型デバイスを画像化する。実施形態によっては、ESは、ステレオビジョンシステムに採用される2つのX線を用いて、ターゲット環境内の小型デバイスを画像化し、基準として用いられるランドマークまたは基準(fiducial)マーカに対するその三次元位置を決定する。実施形態によっては、ESは、光学的ステレオビジョンを用いることにより、基準として用いられる基準マーカまたはランドマークに対するEMまたはPMの位置を決定する。実施形態によっては、ESは、X線ステレオビジョン及び光学的ステレオビジョンの組み合わせを用いることにより、光学的視覚下でのみ可視化される外部EMまたはPMに対して、X線視覚下でのみ可視化される小型デバイスの位置を監視する。
【0032】
外部システム(ES)ソフトウェアモジュールは、プランニングソフトウェアサブモジュール及びハードウェア制御ソフトウェアサブモジュールを含む。実施形態によっては、ESソフトウェアモジュールは、MRIスキャン、CTスキャンなどの事前に記録されたデジタルデータを用いて、両方のサブモジュールによって実行されるアクティビティをサポートする。実施形態によっては、MRIスキャンはソフトウェアモジュールによって解析され、ホスト環境に存在するさまざまな組織塊を表すデジタル三次元オブジェクトが自動的に生成される。実施形態によっては、ハードウェア制御ソフトウェアモジュールは、光学またはX線ステレオビジョンシステムからのデジタル情報を用いて、MRI、視覚化システム及びX線システムから生成された三次元データを単一の参照で表示できるような数学的変換を自動的に計算する。
【0033】
小型デバイス
【0034】
例示的な小型デバイス101を
図4に示す。この小型デバイスは、50~5000μmの寸法を有する微小な物体であり、(a)本体、(b)頭部、(c)尾部、及び任意で1以上の補助付属物を含む。
【0035】
小型デバイスの寸法、形状等は、環境内でのミッションの遂行を容易にするように適合されている。実施形態によっては、小型デバイスは一次元で細長い。実施形態によっては、小型デバイスは、1~20mm、例えば7mmの全長を有する。実施形態によっては、小型デバイスは、1~5mm、例えば2.5mmの外径を有する。実施形態によっては、小型デバイスは、50ミクロン(μm)~10000ミクロン(μm)の全長を有する。実施形態によっては、小型デバイスは50ミクロン(μm)~5000ミクロン(μm)の外径を有する。
【0036】
実施形態によっては、小型デバイス本体301は、円柱、円錐、または台形の形状である。他の実施形態では、小型デバイスの本体は球体または回転楕円体である。実施形態によっては、本体は、小型デバイスの長軸に沿って磁化された永久磁石で作製されている。実施形態によっては、永久磁石は、小型デバイスの長軸に対して実質的に垂直な方向に沿って磁化される。実施形態によっては、本体はX線不透過性材料で作られる。実施形態によっては、本体は、電気メッキされたニッケル及び金、セラミック、プラスチックまたは他の実質的に非磁性体である生体適合性材料を用いてコーティングされた希土類磁石で作製される。
【0037】
実施形態によっては、小型デバイスの本体はネオジム磁石から作製される。実施形態によっては、ネオジム磁石のグレードはN40~N55、例えばN50である。実施形態によっては、磁石の残留誘導(Br)は12~15KG、例えば14KGである。実施形態によっては、BHmaxは38~56MGOe、例えば47MGOeである。実施形態によっては、磁石の固有保磁力(Hci)は11Koeより大きい。実施形態によっては、磁石の固有垂直保磁力(HcB)は10Koeより大きい。実施形態によっては、磁石の最大動作温度は60~80℃、好ましくは80℃である。
【0038】
実施形態によっては、小型デバイスの頭部201は単一の金属ブレード203を備える。実施形態によっては、ブレードはステンレス鋼で作られている。実施形態によっては、ブレードはポリマー材料またはセラミック材料で作られる。実施形態によっては、ブレードは、200~2000MPa、好ましくは500MPaよりも小さい最小降伏強さを有する。実施形態によっては、ブレードの厚さは10μm~500μm、例えば100μmである。実施形態によっては、ブレードは15~90度、例えば45度の角度を形成する。実施形態によっては、ブレードの長さは0.5~10mm、例えば1mmである。実施形態によっては、ブレードの質量は0.5~10mg、例えば2mgである。実施形態によっては、小型デバイスの最も遠位部であるブレード先端205は、その頂点で1~10μm、例えば5μmの曲率半径を有する。実施形態によっては、頂点から10μmのブレードの先端サイズは1μm~20μm、例えば10μmである。
【0039】
実施形態によっては、小型デバイスの頭部は、ステンレス鋼で作られ、同心円状のパターンで配置された複数の金属ブレード203を備える(
図5A及び
図6A)。実施形態によっては、頭部は角錐または四面体である(
図5B及び
図6B)。実施形態によっては、ブレードの幅は本体の直径と実質的に等しい。実施形態によっては、ブレードの幅は本体の直径よりも大きい。実施形態によっては、ブレードの幅は本体の直径よりも小さい。実施形態によっては、ブレードの長さは1~10mmである。実施形態によっては、ブレードの厚さは10μm~1mmである。
【0040】
実施形態によっては、ブレード203は、1以上の滑らかな刃先を有する(
図7A)。実施形態によっては、ブレードは刃先に沿って小さな鋸歯または歯を有する(
図7B)。実施形態によっては、鋸歯の長さは10~100μmである。実施形態によっては、小型デバイスの最も遠位部であるブレード先端205は、0.5μm~50μmの曲率半径を有する。実施形態によっては、ブレード203は、医療グレードの接着剤303を用いて本体301に取り付けられる。実施形態によっては、ブレードは本体にスポット溶接され、医療グレードの接着剤がブレードの本体に対する固定を強化するために用いられる。実施形態によっては、小型デバイスの尾部は、様々な角度からX線を用いて観察される場合に、明確かつ認識可能な信号を提供するような形状に形成される。
【0041】
実施形態によっては、可撓性突出構造403が本体301に取り付けられる(
図9A)。
【0042】
実施形態によっては、本体301は、その長さに沿って可変的な直径を有する。例えば、直径が突然変化し、円周方向に肩部が形成されることがある(
図9B)。実施形態によっては、肩部または可撓性突出構造は、小型デバイスの進行を停止させる手段を提供する。例えば、小型デバイスは壁501にドリルで孔を作製した後、肩部または可撓性突出構造により、小型デバイスが壁を完全に越えて進行することが防止される。小型デバイスの操作は、嚢胞の凸面または凹面(微小)表面で実行することにより、最良の治療効果を達成することが可能である。
【0043】
実施形態によっては、肩部または可撓性突出構造は、本体301が小型デバイスを引っ張って壁を横断しようとする力を受ける一方で、壁501に力を加えることをサポートする。この場合、壁に加えられる力と壁が受ける力とによって、壁が動くことになる。実施形態によっては、壁が動くことにより、液体が強制的に壁を通過して、小型デバイスの本体周囲の壁の孔を通って引き上げられるか、または流れが生じる。
【0044】
実施形態によっては、小型デバイスは、外部システム(ES)801によって生成される外部磁場及び小型デバイスの一部を形成する永久磁石の相互作用から生じる静的な一方向の力によって駆動される。
【0045】
図11及び
図12に示す実施形態では、小型デバイス本体の内部に形成された孔501は、壁の一方の側から他方の側に流体を排出するための手段を提供する。実施形態によっては、壁を穿刺するのに必要な力は0.1mN~100mNである。実施形態によっては、小型デバイスが受ける磁場の振幅は0.1mT~1000mTである。実施形態によっては、小型デバイスが受ける磁場の勾配(gradient)は、0.1mT~1000mTである。
【0046】
図13に示す実施形態では、小型デバイスは、膜を穿刺しながら小型デバイスが前後に駆動するように、可変的な力で同軸的に駆動される。実施形態によっては、前後運動の周波数は0.1~100ヘルツである。動作には、回転、揺動、エッジング、切断、穿孔、またはそれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、動きの1つの特定の周波数が、壁を穿刺する力の閾値を下げることに寄与する。
【0047】
環境(milieu)
【0048】
実施形態によっては、環境は人体の内部である。実施形態によっては、環境または中膜は頭蓋骨内部を指す。実施形態によっては、環境または中膜は、頭蓋骨の外側及び脊髄周囲のくも膜下腔内に延在する。実施形態によっては、小型デバイスは、第1のボリューム(
図14の「チャンバ1」)内の送達デバイスまたは導入デバイス601を用いて送達される。実施形態によっては、第1のボリュームは、頭蓋骨の外側のくも膜下腔内に延在する。実施形態によっては、第1のボリュームは大後頭孔を通り、頭蓋骨の内部、通常は大槽の位置にある頭蓋骨の領域に延在している。実施形態によっては、小型デバイスのミッションは、嚢胞壁とも称される境界をドリルにより孔開け(drill)するかまたは穿孔し、嚢胞と称される、流体で充填された第2のボリューム(
図14の「チャンバ2」)を貫通させることである。
【0049】
導入及び回収ツールキット
【0050】
小型デバイスの導入及び回収ツールキットは、カニューレが取り付けられた鋭利かつ硬質な尖った外科用器具を含む。実施形態によっては、カニューレは硬質であって、チタンもしくは他の非磁性金属、またはプラスチックから作製されている。実施形態によっては、カニューレは可撓性である。実施形態によっては、カニューレの外径は1mm~10mmの範囲である。実施形態によっては、外径は1mm~5mmの範囲であり、例えば3.5mmである。実施形態によっては、カニューレは機械アームによって固定される。実施形態によっては、カニューレは手動で固定される。実施形態によっては、カニューレは自動的にまたはロボットによって固定される。実施形態によっては、カニューレはX線を用いて誘導される。実施形態によっては、カニューレはX線を用いて誘導される。実施形態によっては、カニューレは定位的に誘導される。
【0051】
実施形態によっては、導入及び回収ツールキットはまた、小型デバイスを対象に挿入し、例えば大槽内に小型デバイスを解放するために用いられる別個の交換可能な小型デバイスホルダ(「イントロデューサ」)601を備える。実施形態によっては、イントロデューサは使い捨て及び/または単回使用のものとして構成されている。実施形態によっては、イントロデューサは、その遠位端に小型デバイスが予め装填されている。小型デバイスは、イントロデューサの遠位端にある小さな(例えば、0.75mmの円筒形の)磁石によって所定の位置に保持されてもよい。
図15に示すように、(矢印で示す)小さな円筒形の磁石がイントロデューサの底部に配置されており、小型デバイスを所定の位置に保持して、発進させる前に嚢胞に向けてデバイスの方向を制御できるようにしている。
【0052】
実施形態によっては、導入及び回収ツールキットは、別個の交換可能な小型デバイス回収器(retriever)(「回収器」)701も含み、これは、カニューレ内のイントロデューサを置き換えることが可能であり、嚢胞の開窓後に対象から小型デバイスを回収するために用いられる。実施形態によっては、回収器は使い捨て及び/または単回使用のものとして構成されている。実施形態によっては、回収器は、遠位端において、小型デバイスを引きつけて捕捉し、対象者から除去するために用いられる磁石703を備えた先端部を有する。
図16に示すように、回収器の先端部には、自由に回転できる小さな(例えば2mm)球形磁石を含むケージがあり、対象者から回収する際に小型デバイスの向きを制御することが可能である。
【0053】
実施形態によっては、イントロデューサは回収器と同一のものである。実施形態によっては、回収器は、小型デバイスを捕捉するためのネットと、小型デバイスをネットに向けて引き寄せるためにワイヤの端部に設けられた磁石とを含む別個のツールである。実施形態によっては、ESシステムは単に小型デバイスをネットに戻し、ネットは小型デバイスの周囲を閉じるためにテザーを用いて機械的に作動する。
【0054】
実施形態によっては、カニューレが取り付けられた鋭利かつ硬質な尖った外科用器具が体内の首領域に入り、軟組織を通って大後頭孔の方向に押し進められる。実施形態によっては、カニューレが取り付けられた鋭利かつ硬質な尖った外科用器具の先端部が、大後頭孔近傍の頭蓋骨の外側の領域に到達するまで進められる。実施形態によっては、カニューレが取り付けられた鋭利かつ硬質な尖った外科用器具の先端部が、大後頭孔付近の頭蓋骨内部の領域に到達するまで進められる。この領域は、大槽と称される空間であることがある。
【0055】
実施形態によっては、外部システム(ES)801は、ステレオビジョンカメラを用いて、カニューレが取り付けられた鋭利かつ硬質な尖った外科用器具の位置を監視する。実施形態によっては、カニューレが取り付けられた鋭利かつ硬質な尖った外科用器具のルートは、プランニングサブモジュールを用いて医療関係者によって事前にプランニングされる。実施形態によっては、ルートは、MRIデータを用いてプランニングサブモジュール内で図表化される。実施形態によっては、カニューレが取り付けられた鋭利かつ硬質な尖った外科用器具の位置は、光学的ステレオビジョンシステムによって認識されるように、電子ディスプレイステーション上にリアルタイムで表示される。
【0056】
実施形態によっては、カニューレの近位端には、弁状のシステムを備えており、この弁を通じて鋭利かつ硬質な器具を除去することが可能であり、また、同時に体内からの体液の流出を防ぐことが可能となっている。実施形態によっては、小型デバイスがカニューレ内を上下に移動できるようにするために鋭利な器具が除去される。実施形態によっては、小型デバイスは、弁状のシステムを通じてカニューレ内に配置され、流体を流すことによってカニューレの先端部まで移動するように誘導される。実施形態によっては、カニューレの内側に適合し、その遠位端で小型デバイスを保持する小型デバイスホルダが、カニューレ内に挿入される。実施形態によっては、小型デバイスホルダの長さはカニューレよりも長い。実施形態によっては、小型デバイスがカニューレから完全に排出されるまで、小型デバイスホルダの遠位端がさらに進められる。実施形態によっては、小型装置ホルダは、近位端において利用可能な機械的レバーまたは解放ワイヤを用いて、必要に応じて小型装置の保持を解除するように誘導されてもよい。
【0057】
実施形態によっては、小型デバイスの保持を解除する動作は、ESによって監視される。実施形態によっては、小型デバイスのホールドを解除する動作はESと同期される。実施形態によっては、ESは、ステレオX線視覚システムを用いて小型デバイスの位置を測定する。実施形態によっては、小型デバイスが小型デバイスホルダから解放されるときに、ESは、適切な強度及び特性の磁場の生成を開始する。
【0058】
システムの1以上の構成要素は、国際公開第2019/213368号、国際公開第2019/213362号、国際公開第2019/213389号、国際公開第2020/014420号、国際公開第2020/092781号、国際公開第2020/092750号、国際公開第2018/204687号、国際公開第2018/222339号、国際公開第2018/222340号、国際公開第2019/212594号、国際公開第2019/213368号、国際公開第2019/005293号、国際公開第2020/096855号、国際公開第2020/252033号、国際公開第2021/021800号、国際公開第2021/092076号、国際公開第2021/126905号、国際公開第2021/216463号、国際公開第2022/119816号、ならびに、米国仮特許出願第63/191,454号明細書、第63/191,418号明細書、第63/191,515号明細書、及び第63/191,497号明細書のいずれか1つまたは複数に記載されているように、準用的に提供されることがあり、ここで参照することにより、その全てが本明細書に組み込まれる。
【0059】
例
【0060】
ダンディ・ウォーカー奇形(DWM)を遠隔治療するためのテザーフリーロボットシステムの使用
【0061】
本例では、ダンディ・ウォーカー奇形(DWM)を治療するためのプラットフォームまたはシステム、及びそれを用いる手順を示す。このプラットフォームには、次の4つの主要な構成要素及び付属品を含む。
【0062】
ダンディ・ウォーカー嚢胞を安全かつ確実に開窓するために特別に設計された、永久磁石及びブレードを含む無線(untethered)粒子/小型デバイスである、DWMバイオノート。
【0063】
DWMバイオノートを大槽に挿入し、嚢胞開窓後に大槽から回収するように設計された、単回使用の使い捨てイントロデューサ/回収キット。
【0064】
8つの電磁コイル、ドライバ、及びソフトウェアモジュールを備え、磁場を提供してDWMバイオノートを目的の場所に推進する、磁気推進システム(MPS)。これは、DWMバイオノートの挿入、ナビゲーション、治療用開窓術、及び回収のためのリターンを計画及び制御するために、以下の様々なソフトウェアコンポーネントであって、
進入位置、貫通対象のターゲット、及び回収位置の間の経路を推奨するプランニングソフトウェアを含み、事前に記録されたMRIまたは処置に組み込まれたコーンビームCT(CBCT)を利用するプランニングソフトウェアモジュールと、
2つの直交する二次元X線画像によりDWMバイオノートを検出し、画像内のDWMバイオノートの三次元位置をリアルタイムで計算するために、市販の二面透視法(biplanar fluoroscopy)を利用するトラッキングソフトウェアモジュールと、
経路の実行、制御ループアルゴリズム、処理の記録、ユーザーインターフェース、及び安全制御を統合するMPSコントローラソフトウェアを含み、MPSをアクティブ化することにより、意図したターゲット位置への、またはターゲット位置からのDWMバイオノートのナビゲーションを実現する、MPSコントローラソフトウェアモジュールとを含む。
【0065】
処置のためにあらかじめ決められた臨床的に好ましい位置に患者の頭を保持するためのデバイスであって、神経科室の画像診断テーブルに適合する、患者頭部用ホルダまたは頭蓋骨用クランプ。
【0066】
このシステムはまた、神経血管介入透視治療法の一式(neuro-endovascular interventional fluoroscopy suite)に統合された従来のX線システムも用いる。
【0067】
処置の前に、DWMの診断を確認し、DWM顕微鏡下手術を行うためのプラットフォームの適性を確認するため、患者のMRIを取得する(
図17A)。次いで、MRIを用いて嚢胞への軌道を計画し、治療計画及び治療パラメータを決定し、嚢胞からの後退経路を計画する。患者を手術室に運び、手術用ベッドにうつぶせの姿勢で寝かせる(
図17B)。斜めに配置した患者の頭部と首がそこから動かないように、頭蓋骨用クランプを用いて患者の頭部を固定する。患者の頭部周辺がフィットしているかどうかの確認は、C型アーム及びEMシステムの両方を用いて行われる(
図17C)。患者の頭部周辺がフィットしているかどうか確認した後、次いで、第2のC型アーム及びEMシステムを停止位置に戻し、正面のC型アームを用いて、患者のCBCTスキャンを実行する(
図17D)。次いで、MRI及びCBCTスキャンを融合する。トロカールの経路及びDWMバイオノートの軌跡を決定し、MRI及びCBCTスキャンをライブ透視に併せて登録する。次いで、X線透視下において、トロカールを計画された軌跡に沿って進めていき、大槽に到達させる(
図17E)。次いで、大槽内に入ると、カニューレのハンドルを器具ホルダにロックする。トロカールを抜去し、造影剤を注入して大槽のボリューム及び嚢胞の境界を視覚化する(
図17F)。次いで、第2のC型アーム及びEMシステムを停車位置から移動させ、患者の頭部を囲むように配置する(
図17G)。カニューレを通路として用いて、先端にDWMバイオノートをセットしたイントロデューサを患者の大静脈に挿入する(
図17H)。EMシステムをオンにして、イントロデューサからDWMバイオノートの発進を開始させる(
図17I)。DWMバイオノートを嚢胞の方向に向け、次いで、プランニング/操作ソフトウェアインターフェイスを用いて磁気的に誘導し、計画された軌道に沿ってターゲットまで推し進める(
図17J)。EMシステムから発生する磁場に誘導されて、DWMバイオノートが嚢胞壁を開窓し(
図17K、左図)、これにより大槽内の液体が流れるようになり、髄液の正常な流れが回復する(
図17K、右図)。イントロデューサを回収器に置き換える。DWMバイオノートを(EMシステムによって生成された磁場を用いて)カニューレに向けて誘導し、回収器によって捕捉し、カニューレを通じて除去する(
図17L)。EMシステムをオフにして、(第2のC型アームも同様に)停止位置に戻す(
図17M)。嚢胞の開窓を確認するために、最後にCBCTスキャンを実行する。処置を終了するために、カニューレを除去し、侵入点を閉じ、頭蓋骨用クランプを患者の頭から除去する(
図17N)。
【0068】
本明細書に記載された実施例、実施形態、変更例、オプション等は、包括的かつ非限定的なものとして解釈されること、すなわち、本明細書で別々に記載された2以上の実施例等は、明示的に記載され、かつ/または他の方法で明確でない限り、互いに排他的である、または他の方法で限定的であると解釈されないことを認識されたい。本発明が属する技術分野の当業者であれば、現在開示されている主題の範囲から逸脱することなく、多数の変更、変形、及び修正を行うことができることを容易に理解するであろう。
【国際調査報告】