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特表2024-531311新規セロトニン誘導体及び鉄関連障害を処置するためのそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】新規セロトニン誘導体及び鉄関連障害を処置するためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/14 20060101AFI20240822BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20240822BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07D209/14 CSP
A61P7/00
A61P1/16
A61P29/00
A61P37/02
A61P25/00
A61P7/06
A61K31/4045
C07D405/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509119
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022073004
(87)【国際公開番号】W WO2023021112
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】21306124.5
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】510185217
【氏名又は名称】アンスティテュ ギュスタフ ルッシー
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT GUSTAVE ROUSSY
【住所又は居所原語表記】39, Rue Camille Desmoulins, F-94805 Villejuif Cedex, FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンスティチュート、ナシオナル、ドゥ、ラ、サンテ、エ、ドゥ、ラ、ルシェルシュ、メディカル
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE
(71)【出願人】
【識別番号】506413937
【氏名又は名称】アンスティテュート キュリー
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】コート,フランシーヌ
(72)【発明者】
【氏名】コマン,テレザ
(72)【発明者】
【氏名】ドュビユー,シルヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】カネーケ コボ,タチアナ
(72)【発明者】
【氏名】エルミーヌ,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ファラブレゲ,マリオン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA51
4C086ZA55
4C086ZA75
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZC37
(57)【要約】
本発明は、式(I)の新規なセロトニン誘導体又はその薬学的に許容され得る塩及び/若しくは溶媒和物に関する。本発明の別の目的は、特に鉄過剰負荷関連障害の予防及び/又は処置における、薬物としての式(I)の化合物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
又はその薬学的に許容され得る塩及び/若しくは溶媒和物であって、
式中、
、R及びRは、独立して、H、任意に置換されたC-C24アルキル、任意に置換されたC-C24アルケニル、任意に置換されたC-C24アルキニル、任意に置換されたC-Cシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリールからなる群において選択され、
は、H、任意に置換されたC-C24アルキル、任意に置換されたC-C24アルケニル、任意に置換されたC-C24アルキニル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルケニル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキニル、-C(O)O-任意に置換されたアリール、任意に置換された-C(O)O-ヘテロアリール、任意に置換された-S(O)2-C-C24アルキル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルケニル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルキニル、-S(O)-任意に置換されたアリール及び任意に置換された-S(O)-ヘテロアリールからなる群から選択され、但し、R、R及びRのうちの少なくとも1つはHではなく、
Xは、C-C12アルキル、O-C-C12アルキル、C(O)、C(O)-C-C12アルキル及びNH-C(O)-C-C12アルキルからなる群において選択される、化合物又はその薬学的に許容され得る塩及び/若しくは溶媒和物。
【請求項2】
XがC-Cアルキルであり、好ましくはXがエチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がHである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
及びRが、独立して、H、C-C12アルキル、C-C12アルケニル及びC-C12アルキニルからなる群において選択され、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルが、1つ又は複数のハロゲン、C-Cアルキル、アリール、オキソ、NH、COH又はOHで任意に置換されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
が、H、任意に置換されたC-C24アルキル、任意に置換されたC-C24アルケニル、任意に置換されたC-C24アルキニル、任意に置換されたC-Cシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリールからなる群から選択され、好ましくは、H、C-C12アルキル、C-C12アルケニル及びC-C12アルキニルからなる群において選
択され、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルが、1つ又は複数のハロゲン、C-Cアルキル、アリール、オキソ、NH、COH又はOHで任意に置換されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
、R及びRが、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル及びC-Cアルキニルからなる群において選択され、有利には、R、R及びRの少なくとも1つが、任意に置換されたC-C12アルキニルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物であって、以下の化合物から選択され、
【化2】
【化3】
【化4】
好ましくは
【化5】
である、化合物。
【請求項8】
薬物として使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
鉄関連障害、特に鉄過剰負荷関連障害の予防又は処置に使用するための、請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記鉄関連障害が、HFE関連ヘマトクロマトーシス、非HFE関連ヘマトクロマトーシス、先天性無トランスフェリン血症、鉄負荷関連貧血、慢性肝疾患、癌に関連する慢性炎症、自己免疫疾患又は炎症性疾患、脳鉄蓄積関連疾患を伴う神経変性及び多遺伝子性神経変性関連疾患の中から選択される鉄過剰負荷関連障害である、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記鉄過剰負荷関連障害が、サラセミア、骨髄異形成及び造血幹細胞移植関連障害などの鉄負荷関連貧血である、請求項9又は10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項13】
鉄関連障害、特に鉄過剰負荷関連障害、例えばHFE関連ヘマトクロマトーシス、非HFE関連ヘマトクロマトーシス、先天性無トランスフェリン血症、鉄負荷関連貧血、慢性肝疾患、癌に関連する慢性炎症、自己免疫疾患又は炎症性疾患、脳鉄蓄積関連疾患を伴う神経変性及び多遺伝子性神経変性関連疾患の予防又は処置に使用するための、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規セロトニン誘導体、並びに薬物としての、特に鉄関連障害を予防及び/又は処置するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄は、生物学的プロセス、特に赤血球生成の実施、赤血球の産生プロセスに必須である。
【0003】
多くの疾患は、無効な赤血球生成に関連する鉄関連障害を有する。特に、障害は、体内の鉄の過剰負荷に関連し得る。最も一般的な鉄過剰負荷関連障害の中には、β-サラセミア、骨髄異形成又は造血幹細胞移植関連障害などの鉄負荷関連貧血がある。
【0004】
β-サラセミアは、遺伝的溶血性貧血の一種であり、B-ヘモグロビンの異常合成に関連し、赤血球前駆細胞のアポトーシスを誘導する。この疾患は世界の人口の1.5%が罹患しており、最も貧しい国、アフリカ及びインドで有病率が高い。それは、年間50000~100 000人の死亡の原因である。現在の処置は、正常なヘモグロビンレベルを維持するための定期的な輸血からなる。しかし、繰り返される輸血及びヘモグロビンアポトーシスは、生物における鉄の過剰負荷をもたらし、高い毒性を引き起こす。したがって、この過剰な鉄を排除することが不可欠である。鉄キレート剤(例えば、デフェロキサミン)が、この目的のために使用されてもよく、死亡率を減少させるのに有効であることが証明されている。しかしながら、デフェロキサミンは、毎日の注射及び注入などの重度の処置条件を必要とする。より簡便な使用のために、デフェリプロン又はデフェラシノックスなどの経口鉄キレート剤も存在するが、それらはあまり効果的ではない。新薬であるルスパテルセプトは、輸血依存性サラセミアに対して2019年にFDAによって承認された。ルスパテルセプトは、貧血を軽減し、輸血の必要性を減少させ、フェリチンレベルを低下させるのに有効であることが示されている組換えタンパク質である。しかしながら、ルスパテルセプトの価格は特に高く、不利な集団に到達することを困難にしている。
【0005】
骨髄異形成又は骨髄異形成症候群(MDS)は、非効率的な造血及び急性骨髄性白血病への進行に関連する貧血を特徴とするクローン性造血疾患である。この症候群は主に60歳以上の人々に影響を及ぼす。β-サラセミアに関しては、輸血は正常なヘモグロビンレベルを維持するのを助けるが、生物における鉄の過剰負荷をもたらす。この鉄過剰負荷は、この症候群に起因する、体内の鉄代謝を調節するホルモンであるヘプシジンの産生の抑制によっても引き起こされる。鉄キレート剤は、それらの毒性及び患者の脆弱性の観点から推奨されない。ルスパテルセプトもまた、この疾患の処置のために最近承認された。
【0006】
世界中で毎年およそ40,000件の同種移植が実施されており、これにはフランスでの約2,500件が含まれ、推定成長率は年間7%である。同種移植は、ドナー及びレシピエントが2人の別個の個体である移植を指す。造血幹細胞同種移植は、血液悪性腫瘍(白血病、リンパ腫、骨髄腫)及び他の血液障害(例えば、原発性免疫不全、骨髄形成不全、骨髄異形成)の治癒の見込みを提供する進化しつつある技術である。輸血後の鉄過剰負荷は、造血幹細胞移植の状況において比較的一般的である。鉄キレート剤の使用は、それらの毒性のために、同種移植処置後に非常に制限される。現在のところ、移植後の鉄過剰負荷を減少させ、造血を助けて移植後の生存を増加させるための代替処置はない。
【0007】
したがって、鉄関連障害の代替処置、特に、例えばβ-サラセミア、MSD又は移植後患者において観察される鉄の過剰負荷を予防及び/又は処置するための代替処置であって
、β-サラセミア及びMSDにおいて使用されるルスパテルセプトの処置と少なくとも同様に、妥当なコストで、かつ満足な安全性及び有効性プロファイルで得ることができる代替処置が必要とされている。
【0008】
5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)とも呼ばれるセロトニンは、以下の式に応答する神経伝達物質である。
【0009】
【化1】
【0010】
この分子は代謝に必須であり、気分、認知、報酬、学習、記憶、並びに嘔吐及び血管収縮などの多数の生理学的プロセスを調節することを可能にする。セロトニンは、血液循環を介して脳に運ばれる必須アミノ酸であるトリプトファンから出発してニューロンにおいて合成される。セロトニン合成に関与する律速酵素トリプトファンヒドロキシラーゼは、赤血球前駆体において高度に発現され、セロトニンは、赤血球前駆細胞の増殖中に重要な移行チェックポイントで合成されることが示されている(Coman et al.,Cell Reports,2019,26,3246-3256)。最近、骨髄中のセロトニンレベルが赤血球生成に直接影響を及ぼすことが実証された。高レベルのセロトニンは、赤血球前駆細胞の再生を増強することが可能であり、したがって、赤血球の産生を促進することが可能である(Coman et la.,Cell Reports,2019)。対照的に、セロトニンレベルの低下は、骨髄異形成症候群に罹患している患者において観察されている。
【0011】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、セロトニンが、赤血球の産生に必要な鉄利用能に影響を及ぼすことによって赤血球生成を調節することができると仮定する。したがって、セロトニンは、貧血の処置のための興味深い治療標的である。しかし、セロトニンは、セロトニン受容体を介した血管収縮/血管拡張特性を有し、したがって注射することができない。
【0012】
既存の処置の欠点を改善するために、上記の仮説に基づいて、本発明者らは、調製が容易であり、鉄貯蔵を正常化するための鉄キレート剤として作用することが可能であり、現在の鉄キレート剤で観察される毒性を示さない、生体の生物学的プロセスに鉄を利用可能にする小さなセロトニン誘導体を開発した。
【発明の概要】
【0013】
第1の態様では、本発明は、式(I)の化合物:
【0014】
【化2】
又はその薬学的に許容され得る塩及び/若しくは溶媒和物に関し、
式中、
、R、及びRは、独立して、H、任意に置換されたC-C24アルキル、任意に置換されたC-C24アルケニル、任意に置換されたC-C24アルキニル、任意に置換されたC-Cシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリールからなる群において選択され、
R3は、H、任意に置換されたC-C24アルキル、任意に置換されたC-C24アルケニル、任意に置換されたC-C24アルキニル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルケニル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキニル、-C(O)O-任意に置換されたアリール、任意に置換された-C(O)O-ヘテロアリール、任意に置換された-S(O)-C-C24アルキル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルケニル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルキニル、-S(O)-任意に置換されたアリール及び任意に置換された-S(O)-ヘテロアリールからなる群から選択され、但し、R、R及びRのうちの少なくとも1つはHではなく、
Xは、C-C12アルキル、O-C-C12アルキル、C(O)、C(O)-C-C12アルキル及びNH-C(O)-C-C12 アルキルからなる群において選択される。
【0015】
第2の態様では、本発明は、薬物として使用するための式(I)の化合物に関する。
【0016】
第3の態様によれば、本発明は、式(I)の化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0017】
本発明の第4の態様は、薬物として使用するための、式(I)の化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物にある。
【0018】
詳細な説明
本発明の目的のために、「薬学的に許容され得る」という用語は、医薬組成物の調製に有用なもの、及び医薬用途のために一般的に安全かつ非毒性であるものを意味することが意図される。
【0019】
「薬学的に許容され得る塩及び/又は溶媒和物」という用語は、本発明の枠組みにおいて、上で定義されるように薬学的に許容され得、対応する化合物の薬理活性を有する化合物の塩及び/又は溶媒和物を意味することを意図している。
【0020】
薬学的に許容され得る塩は以下を含む:
(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸などの無機酸と形成されるか、又は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2-ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、ジベンゾイル-L25-酒石酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、及びトリフルオロ酢酸などの有機酸と形成される酸付加塩、並びに
(2)塩基付加塩であって、化合物中に存在する酸プロトンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオンなどの金属イオンによって置換されるか、又は有機若しくは無機塩基で配位される場合に形成される塩。許容される有機塩基と
しては、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどが挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0021】
本発明の化合物の許容され得る溶媒和物には、溶媒の存在に起因して本発明の化合物の調製の最終工程中に形成されるものなどの従来の溶媒和物が含まれる。一例として、水の存在に起因する溶媒和物(これらの溶媒和物は水和物とも呼ばれる)又はエタノールの存在に起因する溶媒和物を挙げてもよい。
【0022】
本発明で使用される「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素又はヨウ素原子を指す。
【0023】
本発明で使用される「C-Cアルキル」という用語は、x~y個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖の一価飽和炭化水素鎖を指す。C-C24アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明で使用される「C-Cアルケニル」という用語は、x~y個の炭素原子を含有し少なくとも1つの二重結合を含む直鎖又は分岐鎖の一価不飽和炭化水素鎖を指す。C-C24アルケニルの例としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明で使用される「C-Cアルキニル」という用語は、x~y個の炭素原子を含有し少なくとも1つの三重結合を含む直鎖又は分岐鎖の一価不飽和炭化水素鎖を指す。C-C24アルキニルの例としては、エチニル、プロピニル(又はプロパルギル)、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「C-Cハロアルキル」という用語は、1つ又は複数の水素原子がフッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲン原子、好ましくはフッ素原子によって置き換えられている、上で定義されたC-Cアルキル鎖を指す。例えば、それはCF基である。
【0027】
「シクロアルキル」という用語は、典型的には3~10個、好ましくは3~7個の炭素を含み、1つ又は複数の縮合環又は架橋環を含む、飽和非芳香族炭化水素環を指す。C-C10シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、好ましくは5~10個、とりわけ5又は6個の原子を環(複数可)内に含み、環(複数可)の原子が、炭素原子、及び1つ又は複数の、有利には1~4個の、より有利には1又は2個のヘテロ原子、例えば窒素、酸素又は硫黄原子からなり、残りが炭素原子である、非芳香族、飽和又は不飽和の単環又は多環(縮合環、架橋環又はスピロ環を含む)を指す。特に、それは、不飽和の5又は6員単環などの不飽和環であることができる。好ましくは、それは1又は2個、特に1個の窒素を含む。複素環は、とりわけ、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニ
ル(piperizinyl)、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、アゼパニル、
チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、オキサゾカニル、チアゼパニル、ベンズイミダゾロニル、1,3-ベンゾジオキソールであることができる。
【0029】
用語「アリール」は、好ましくは6~12個の炭素原子を含み、1つ又は複数の縮合環を含む芳香族炭化水素基、例えば、フェニル、ナフチル又はアントラセニル基などを指す。有利には、それはフェニル基である。
【0030】
本発明で使用される「ヘテロアリール」という用語は、1個又は数個、とりわけ1個又は2個の縮合炭化水素環を含む芳香族基であって、1個又は数個、とりわけ1~4個、有利には1個又は2個の炭素原子が各々、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子から選択される、好ましくは酸素原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子で置換されている芳香族基を指す。好ましくは、ヘテロアリールは5~12個の炭素原子、とりわけ5~10個の炭素原子を含有する。これは、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、ベンゾフラニル、ベンゾピロリル、ベンゾチオヘニル、イソベンゾフラニル、イソベンゾピロリル、イソベンゾチオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリル又はインジルであることができる。
【0031】
本発明の文脈において、「不飽和」とは、炭化水素鎖が1つ又は複数の不飽和、すなわち二重結合C=C、有利には1つを含有してもよいことを意味する。
【0032】
本発明の文脈において、「任意に置換された基」は、特に以下から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換された基である。
・ ハロゲン
・ C-Cアルキル、
・ C-Cハロアルキル、
・ 好ましくは1~3個、好ましくは1個又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換されたアリール、
・ オキソ、
・ NR、COR、CO、CONR、OR(式中、R~Rは、互いに独立して、H、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル又はアリール、好ましくはH又はC-Cアルキルであり、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル又はアリールは、アリール又はヘテロアリールで任意に置換されており、アリール又はヘテロアリールは、-OHで任意に置換されている)、
・ -CN、
・ -NO
【0033】
置換基はまた、1~3個、好ましくは1又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-OHで任意に置換されたヘテロアリールであってもよい。
【0034】
はまた、アリール又はヘテロアリールで任意に置換されたC-Cアルキルであってもよく、ヘテロアリールは-OHで任意に置換されている。好ましくは、この場合、RはHである。
【0035】
好ましくは、「任意に置換された基」は、特に以下から選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換された基である。
・ ハロゲン
・ C-Cアルキル、
・ C-Cハロアルキル、
・ アリール
・ オキソ、
・ NR、COR、CO、CONR、OR(式中、R~Rは、互いに独立して、H、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル又はアリール、好ましくはH又はC-Cアルキルであり、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル又はアリールは、アリール又はヘテロアリールで任意に置換されており、アリール又はヘテロアリールは、-OHで任意に置換されている)、
・ -CN、
・ -NO
【0036】
「オキソ」という用語は、式「C(=O)」の置換基を指す。
【0037】
「医薬組成物」という用語は、本発明の枠組みにおいて、癌に対する予防及び治癒特性を有する組成物を意味する。
【0038】
式(I)の化合物
本発明の化合物は、以下の式(I):
【0039】
【化3】
又はその薬学的に許容され得る塩及び/若しくは溶媒和物に応答し、
式中、
、R、及びRは、独立して、H、任意に置換されたC-C24アルキル、任意に置換されたC-C24アルケニル、任意に置換されたC-C24アルキニル、任意に置換されたC-Cシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリールからなる群において選択され、
は、H、任意に置換されたC-C24アルキル、任意に置換されたC-C24アルケニル、任意に置換されたC-C24アルキニル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルケニル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキニル、-C(O)O-任意に置換されたアリール、任意に置換された-C(O)O-ヘテロアリール、任意に置換された-S(O)-C-C24アルキル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルケニル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルキニル、-S(O)-任意に置換されたアリール及び任意に置換された-S(O)-ヘテロアリールからなる群から選択され、但し、R、R及びRのうちの少なくとも1つはHではなく、
Xは、C-C12アルキル、O-C-C12アルキル、C(O)、C(O)-C-C12アルキル及びNH-C(O)-C-C12アルキルからなる群において選択される。
【0040】
特定の実施形態によれば、式(I)の化合物は、少なくとも1つの親油性基を含む。「親油性基」(又は「疎水性基」)という用語は、式(I)の化合物に親油性特性を付与する化学基を指す。そのような親油性特性は、細胞膜、原形質膜又はリソソームなどの生物
学的境界を通る通過を有利にすることによって、化合物の生物学的利用能を高める。特に、親油性基は、少なくとも3個の炭素原子、シクロアルキル又は芳香環を含む、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和の脂肪族鎖などの炭化水素基によって表される。好ましくは、本発明による親油性基は、C-C12アルキン、特にC-Cアルキン、とりわけプロピニル基に対応する。
【0041】
好ましい実施形態によれば、Xは、C-Cアルキル、O-C-Cアルキル、C(O)、C(O)-C-Cアルキル及びNH-C(O)-C-Cアルキルからなる群において選択される。特に、XはC-Cアルキルである。好ましくは、Xは、メチル、エチル又はn-プロピルであり、より好ましくはエチルである。
【0042】
好ましい実施形態によれば、Rは、H、C-C24アルキル、C-C24アルケニル、C-C24アルキニル、C-Cシクロアルキル及びアリールからなる群において選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はシクロアルキルは、1つ又は複数のハロゲン、C-Cアルキル、アリール、オキソ、NH、COH又はOHで任意に置換されている。特に、Rは、H、C-C12アルキル及びアリールからなる群において選択される。好ましくは、RはHである。
【0043】
特定の実施形態では、Rは、H、任意に置換されたC-C24アルキル、任意に置換されたC-C24アルケニル、任意に置換されたC-C24アルキニル、任意に置換されたC-Cシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリールからなる群において選択される。
【0044】
好ましい実施形態では、R、R及び任意にRは、独立して、H、C-C24アルキル、C-C24アルケニル、C-C24アルキニル、C-Cシクロアルキル及びアリールからなる群において選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はシクロアルキルは、1つ又は複数のハロゲン、C-Cアルキル、アリール、オキソ、NH、COH又はOHで任意に置換されており、但し、R、R及びRのうちの少なくとも1つはHではない。特に、R、R及び任意にRは、独立して、H、C-C12アルキル、C-C12アルケニル及びC-C12アルキニルからなる群において選択され、アルキル、アルケニル又はアルキニルは、1つ又は複数のハロゲン、C-Cアルキル、アリール、オキソ、NH、COH又はOHで任意に置換されており、但し、R、R及びRのうちの少なくとも1つはHではない。好ましくは、R、R及びRは、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル及びC-Cアルキニルからなる群において選択される。特に、R、R及びRは、独立して、H及びC-Cアルキニルからなる群において選択される。
【0045】
特定の実施形態によれば、R、R及び任意にRは、上で定義した通りであり、但し、R、R及びRのうちの少なくとも1つは、任意に置換されたC-C12アルキニル、好ましくは1つ又は複数のハロゲン、C-Cアルキル、アリール、オキソ、NH2、COH又はOHで任意に置換されたC-C12アルキニルである。より好ましくは、R、R及びRの少なくとも1つはC-Cアルキニルである。
【0046】
好ましくは、R、R及び/又はRがアルキニルである場合、それは好ましくはエチニル、プロピニル又はブチニル、とりわけプロピニル基である。
【0047】
特定の実施形態では、XはCHCH-であり、RはHであり、R及びRは、独立して、H、C-C24アルキル、C-C24アルケニル、C-C24アルキニル、C-Cシクロアルキル及びアリールからなる群において選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はシクロアルキルは、1つ又は複数のハロゲン、C
-Cアルキル、アリール、オキソ、NH、COH又はOHで任意に置換されており、
好ましくは、R及びRは、独立して、H、任意に置換されたC-C12アルキル、C-Cシクロアルキル及びプロピニルなどのC-Cアルキニルからなる群において選択される。
【0048】
別の特定の実施形態では、Xは-CHCH-であり、R及びRはHであり、RはH又はプロピニルなどのC-Cアルキニル、有利にはHである。
【0049】
特定の実施形態では、R及びRは、独立して、H、C-C24アルキル、C-C24アルケニル、C-C24アルキニル、C-Cシクロアルキル及びアリールからなる群において選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はシクロアルキルは、1つ又は複数のハロゲン、C-Cアルキル、アリール、オキソ、NH、COH又はOHで任意に置換されており、但し、R、R及びRのうちの少なくとも1つはHではない。特に、R及びRは、独立して、H、C-C12アルキル、C-C12アルケニル及びC-C12アルキニルからなる群において選択され、アルキル、アルケニル又はアルキニルは、1つ又は複数のハロゲン、C-Cアルキル、アリール、オキソ、NH、COH又はOHで任意に置換されている。好ましくは、R及びRは、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル及びC-Cアルキニルからなる群において選択される。特に、R及びRは、独立して、H及びC-Cアルキニルからなる群において選択される。R及びRは、とりわけHである。
【0050】
有利には、Rは、任意に置換されたC-C24アルキル、任意に置換されたC-C24アルケニル、任意に置換されたC-C24アルキニル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルケニル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキニル、-C(O)O-任意に置換されたアリール及び任意に置換された-C(O)O-ヘテロアリール、任意に置換された-S(O)-C-C24アルキル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルケニル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルキニル、-S(O)-任意に置換されたアリール及び任意に置換された-S(O)-ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0051】
特定の実施形態では、Rは、任意に置換されたC-C12アルキル、任意に置換されたC-C12アルケニル、任意に置換されたC-Cアルキニル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール及び任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換された-C(O)O-C-C12アルキル、任意に置換された-C(O)O-C-C12アルケニル、任意に置換された-C(O)O-C-Cアルキニル、-C(O)O-任意に置換されたアリール及び任意に置換された-C(O)O-ヘテロアリール、任意に置換された-S(O)-C-C12アルキル、任意に置換された-S(O)-任意に置換されたアリール及び任意に置換された-S(O)-ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0052】
は、特に、以下からなる群から選択されてもよい。
・アリール、シクロアルケニル、ヘテロアリール又はNHRで任意に置換されたC-C12アルキルであって、アリールが1~3個、好ましくは1又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換されており、ヘテロアリールが1~3個、好ましくは1又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-OHで任意に置換されており、
式中、RHは、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル又はアリール、好まし
くはH又はC-Cアルキルであり、C-Cアルキル基は、アリール又はヘテロアリールで任意に置換されており、ヘテロアリールは、-OHで任意に置換されている、
・C-C12アルケニル、
・C-Cアルキニル、好ましくはC-Cアルキニル、とりわけプロピニル基
・C-C10シクロアルキル、
・ヘテロシクロアルキル、特に1,3-ベンゾジオキソール
・1~3個、好ましくは1個又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換されたアリール
・1~3個、好ましくは1個又は2個のC-Cアルキル、ハロゲンで任意に置換されたヘテロアリール
・アリール、シクロアルケニル又はヘテロアリールで任意に置換された-C(O)O-C-C12アルキル、又はアリール、シクロアルケニル又はヘテロアリールであって、ヘテロアリール又はアリールは、1~3個、好ましくは1又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換されている
・-C(O)O-C-C12アルケニル、
・-C(O)O-C-Cアルキニル、
・1~3個、好ましくは1個又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換された、-C(O)O-任意に置換されたアリール
・1~3個、好ましくは1個又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換された-C(O)O-ヘテロアリール
・アリール、シクロアルケニル又はヘテロアリールで任意に置換されたS(O)-C-C12アルキル、又はアリール、シクロアルケニル又はヘテロアリールであって、ヘテロアリール又はアリールは、1~3個、好ましくは1又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換されている
・1~3個、好ましくは1個又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換された、-S(O)-任意に置換されたアリール、及び
・1~3個、好ましくは1個又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換された-S(O)-ヘテロアリール。
【0053】
より具体的には、Rは、以下からなる群から選択されてもよい。
・アリール、シクロアルケニル又はヘテロアリール又はNHRで任意に置換されたC-C12アルキルであって、アリールが1~3個、好ましくは1又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換されており、ヘテロアリールが1~3個、好ましくは1又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-OHで任意に置換されており、
式中、RHは、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル又はアリール、好ましくはH又はC-Cアルキルであり、C-Cアルキル基は、アリール又はヘテロアリール基で任意に置換されており、ヘテロアリール基は、-OHで任意に置換されている、
・C-C12アルケニル、
・C-Cアルキニル、好ましくはC-Cアルキニル、とりわけプロピニル基
・C-C10シクロアルキル、
・ヘテロシクロアルキル、特に1,3-ベンゾジオキソール
・アリール又はヘテロアリールで任意に置換された-C(O)O-C-C12アルキル、アリール又はヘテロアリールであって、ヘテロアリール又はアリールは、1~3個、好ましくは1又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換されている
・-C(O)O-C-C12アルケニル、
・-C(O)O-C-Cアルキニル、
・アリール、シクロアルケニル又はヘテロアリールで任意に置換されたS(O)-C
-C12アルキル、又はアリール、シクロアルケニル又はヘテロアリールであって、ヘテロアリール又はアリールは、1~3個、好ましくは1又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換されている
・1~3個、好ましくは1個又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換された、-S(O)-任意に置換されたアリール、及び
・1~3個、好ましくは1個又は2個のC-Cアルキル、ハロゲン又は-NOで任意に置換された-S(O)-ヘテロアリール。
【0054】
特定の実施形態によれば、R及びRは、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル及びC-Cアルキニルからなる群において選択され、Rは、C-Cアルキル、C-Cアルケニル及びC-Cアルキニルからなる群において選択され、有利には、R、R及びRのうちの少なくとも1つは、任意に置換されたC-C12アルキニルである。
【0055】
好ましい実施形態によれば、本発明は、式(I)の以下の化合物に関する:
【0056】
【化4】
【0057】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物は、以下である:
【0058】
【化5】
【0059】
【化6】
【0060】
医薬組成物
本発明はまた、少なくとも1つの式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩及び/又は溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0061】
セロトニンとは対照的に、本発明の化合物は、血管収縮及び血管拡張特性に関与するセロトニン受容体を連結しないので、式(I)の化合物は注射可能である。
【0062】
したがって、本発明の医薬組成物は、経口又は非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内
)投与、好ましくは静脈内投与を意図することができる。活性成分は、従来の薬学的担体と混合して、動物、好ましくはヒトを含む哺乳動物に投与するための単位形態で投与することができる。
【0063】
経口投与のために、医薬組成物は、固体又は液体(溶液又は懸濁液)形態であることができる。
【0064】
固体組成物は、錠剤、ゼラチンカプセル、粉末、顆粒などの形態であることができる。錠剤では、活性成分は、圧縮される前に、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴムなどの薬学的ビヒクル(複数可)と混合することができる。錠剤は、とりわけスクロース又は他の適切な材料で更にコーティングされてもよく、又はそれらが延長された又は遅延された活性を有するように処理されてもよい。粉末又は顆粒では、活性成分は、分散剤、湿潤剤又は懸濁化剤及び矯味剤又は甘味剤と混合又は造粒することができる。ゼラチンカプセルでは、活性成分は、先に言及したような粉末又は顆粒の形態で、又は以下に言及するような液体組成物の形態で、軟ゼラチンカプセル又は硬ゼラチンカプセルに導入することができる。
【0065】
液体組成物は、水などの溶媒中に、甘味料、味覚増強剤又は適切な着色剤と共に活性成分を含有することができる。液体組成物はまた、上記のような粉末又は顆粒を、水、ジュース、ミルクなどの液体中に懸濁又は溶解することによって得ることができ、それは、例えば、シロップ又はエリキシルであることができる。
【0066】
非経口投与のために、組成物は、懸濁化剤及び/又は湿潤剤を含有してもよい水性懸濁液又は溶液の形態であることができる。組成物は、有利には無菌である。それは、(特に血液と比較して)等張溶液の形態であることができる。
【0067】
本発明の化合物は、医薬組成物中で、1日に0.01mg~1,000mgの範囲の用量で使用することができ、1日に1回のみの用量で、又は1日に沿って数回の用量で、例えば1日に2回の等量で投与することができる。1日投与量は、有利には5mg~500mg、より有利には10mg~200mgである。しかしながら、これらの範囲外の用量を使用することが必要な場合があり、これは当業者によって認識され得る。
【0068】
本発明の医薬組成物は、貧血などの鉄関連障害の処置にとりわけ有用な追加の治療剤を更に含んでもよい。好ましくは、この治療剤は、エリスロポエチン受容体を活性化させ、骨髄を刺激してより多くの赤血球を作るための赤血球生成刺激剤(ESA)、例えばルスパテルセプトなどの組換えエリスロポエチン薬からなる群において選択される。
【0069】
処置
本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩及び/若しくは溶媒和物、又は医薬組成物は、薬物として、とりわけ鉄関連障害の予防及び/又は処置において有用である。
【0070】
したがって、本発明は、薬物として使用するための、特に鉄関連障害の予防及び/又は処置に使用するための式(I)の化合物に関する。本発明はまた、薬物として使用するための、特に鉄関連障害の予防及び/又は処置に使用するための本発明による医薬組成物に関する。
【0071】
本発明はまた、鉄関連障害を予防及び/又は処置するための、本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩及び/又は溶媒和物、又は本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0072】
本発明はまた、鉄関連障害の予防及び/又は処置を必要とする患者に、有効量の本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容され得る塩及び/又は溶媒和物、又は本発明による医薬組成物を投与することを含む、鉄関連障害を予防及び/又は処置する方法に関する。
【0073】
好ましい実施形態によれば、鉄過剰負荷関連障害は、とりわけHFE関連ヘマトクロマトーシス、非HFE関連ヘマトクロマトーシス、先天性無トランスフェリン血症、鉄負荷関連貧血、慢性肝疾患、癌に関連する慢性炎症、自己免疫疾患又は炎症性疾患、脳鉄蓄積関連疾患を伴う神経変性及び多遺伝子性神経変性関連疾患の中から選択される鉄過剰負荷関連障害である。
【0074】
HFE関連ヘマトクロマトーシスは、とりわけ、C282Yホモ接合性又はC282/H63Dヘテロ接合性に起因するものであってもよい。非HFE関連ヘマトクロマトーシスとしては、例えば、若年性ヘモクロマトーシス2A型若しくは2B型が挙げられ、又は変異型トランスフェリン受容体2若しくは変異型フェロポーチン1遺伝子に起因するものであってもよい。
【0075】
脳鉄蓄積関連疾患を伴う神経変性には、無セルロプラスミン血症、神経フェリチノパチー、パントテン酸キナーゼ関連神経変性、ウィルソン病及びベータプロペラタンパク質関連神経変性(BPAN)が含まれる。
【0076】
多遺伝子性神経変性障害には、パーキンソン病及びアルツハイマー病が含まれる。特に、鉄過剰負荷関連障害は、サラセミア、骨髄異形成、再生不良性貧血、ブラックファン・ダイヤモンド貧血、先天性造血不全貧血、慢性造血性貧血、特に鎌状赤血球症、造血幹細胞移植関連障害、及びウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪性肝炎(NASH)、代謝異常鉄過剰負荷症候群を含む慢性肝疾患などの鉄負荷関連貧血である。
【0077】
特定の実施形態によれば、鉄負荷関連貧血はサラセミア、骨髄異形成又は造血幹細胞移植関連障害である。
【0078】
式(I)の化合物の調製方法
本発明の化合物は、当業者に公知の任意の方法に従って調製してもよい。特に、それらは以下の方法によって調製してもよい。
【0079】
本発明による式(I)の化合物を調製するための方法は、
(i)セロトニンクロリドを塩基と反応させる工程、次いで
(ii)それぞれR、R及び/又はRがHとは異なる場合、得られたセロトニンをR基前駆体、R基前駆体及び/又はR基前駆体と反応させる工程を含む。
【0080】
基前駆体(nは1、2又は3である)は、本発明の文脈において、脱プロトン化セロトニンと反応してセロトニン上にR基を挿入して式(I)の化合物を得ることができる化合物として理解される。
【0081】
第1の実施形態では、特に、R、及び/又はR、及び/又はRが、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、又は任意に置換されたシクロアルキルである場合、式(I)の化合物を調製する方法は、「求核置換」と記載してもよい。
【0082】
典型的には、この前駆体は、ハロゲン化物、特に臭化物又は塩化物、メシレート、トシ
レート又はトリフレートなどのスルホン酸エステルなどの脱離基に結合したR基を含む。
【0083】
工程(i)において、セロトニンクロリドは、典型的には、溶媒、とりわけ、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(EtO)、ジメチルエーテル(DME)、ジクロロメタン、ヘキサン、1-4-ジオキサン、トルエン及びクロロホルムを含むがこれらに限定されない非極性非プロトン性溶媒、又はアセトニトリル、ピリジン、アセトン、DMSO若しくは無水酢酸などの極性非プロトン性溶媒に溶解される。
【0084】
特定の実施形態によれば、塩基は、NaCO、KCO、NaOH、KOH、Ca(OH)、Ba(OH)、NaH、KH又はLiOH、特にNaHである。
【0085】
工程(ii)において、R、R又はRがHである場合、セロトニンはR基、R基又はR基の対応する前駆体と反応しない。
【0086】
反応は、典型的には、窒素(N)又はアルゴン(Ar)雰囲気などの不活性雰囲気下で行われる。
【0087】
任意に、当業者に周知の保護/脱保護及び/又は官能化の追加の工程を工程(i)の前に行って、反応すべきでない位置を保護してもよい。例えば、セロトニンの第一級アミンが、OH基のOR基への選択的変換を可能にするために保護されてもよい。
【0088】
得られた化合物は、当業者に周知の方法によって、例えば、抽出、溶媒の蒸発によって、又は沈殿若しくは結晶化(続いて濾過)によって、反応媒体から分離することができる。
【0089】
化合物はまた、必要に応じて、再結晶、蒸留、シリカゲルのカラムでのクロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの当業者に周知の方法によって精製することもできる。
【0090】
第2の実施形態では、特に、R、及び/又はR、及び/又はRが、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、又は任意に置換されたシクロアルキルである場合、式(I)の化合物を調製する方法は、還元的アミノ化配列と記載してもよい。
【0091】
この場合、Rn基はアルデヒド又はケトンである。
【0092】
工程(i)において、セロトニンクロリドは、典型的には溶媒、とりわけC-Cアルコールなどのアルコール性溶媒に溶解される。「C-Cアルコール」は、x~y個の炭素原子を含有し、少なくとも1つのOH基で置換された直鎖又は分岐鎖の一価飽和炭化水素鎖を指す。C-Cアルコールの例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、メタノールである。
【0093】
特定の実施形態によれば、塩基は、式N(C-Cアルキル)又はN(C-Cアルキル)(O-C-Cアルキル)のアミン、特にトリエチルアミンである。
【0094】
この実施形態では、本方法は、イミン又はイミンアルデヒドを還元するのに適したヒドリド還元剤をNaBH又はNaBHCNなどのアミンに添加する工程(ii)を更に含む。
【0095】
任意に、当業者に周知の保護/脱保護及び/又は官能化の追加の工程を工程(i)の前に行って、反応すべきでない位置を保護してもよい。例えば、セロトニンの第一級アミンが、OH基のOR基への選択的変換を可能にするために保護されてもよい。
【0096】
第3の実施形態では、特にR及び/又はR及び/又はRが、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルケニル、任意に置換された-C(O)O-C-C24アルキニル、-C(O)O-任意に置換されたアリール、任意に置換された-C(O)O-ヘテロアリールである場合、Rn基はそれぞれ、任意に置換されたC-C24アルキルクロロホルメート、任意に置換されたC-C24アルケニルクロロホルメート、任意に置換されたC-C24アルキニルクロロホルメート、任意に置換されたアリールクロロホルメート、任意に置換されたヘテロアリールクロロホルメートなどのクロロホルメートである。
【0097】
他の特徴は、本方法の第1の実施形態で説明した通りである。
【0098】
第3の実施形態では、特にR及び/又はR及び/又はRが、任意に置換された任意に置換された-S(O)-C-C24アルキル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルケニル、任意に置換された-S(O)-C-C24アルキニル、-S(O)-任意に置換されたアリール及び任意に置換された-S(O)-ヘテロアリールである場合、Rn基は、典型的には、それぞれ、任意に置換されたC-C24アルキルスルホニルクロリド、任意に置換されたC-C24アルケニルスルホニルクロリド、任意に置換されたC-C24アルキニルスルホニルクロリド、任意に置換されたアリールスルホニルクロリド、任意に置換されたヘテロアリールスルホニルクロリドである。
【0099】
他の特徴は、本方法の第1の実施形態で説明した通りである。好ましい塩基はトリ(C-C)アルキルアミン、例えばトリエチルアミンであり、好ましい非極性非プロトン性溶媒はジクロロメタンである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1-1】モデル1(HbbTh1/th1マウス)における赤血球産生及び鉄過剰負荷。投与無し又は誘導体A1若しくは誘導体A3のいずれかを投与されたHbbTh1/th1マウスにおける赤血球数(A)、ヘモグロビン率(B)、ヘマトクリット含有量(C)、脾臓内鉄含有量(D、左)及び骨髄内鉄含有量(D、右)の1日から5日までの進化。
図1-2】モデル1(HbbTh1/th1マウス)における赤血球産生及び鉄過剰負荷。投与無し又は誘導体A1若しくは誘導体A3のいずれかを投与されたHbbTh1/th1マウスにおける赤血球数(A)、ヘモグロビン率(B)、ヘマトクリット含有量(C)、脾臓内鉄含有量(D、左)及び骨髄内鉄含有量(D、右)の1日から5日までの進化。
図2-1】モデル2(Tph1 KOマウス)における赤血球産生及び鉄過剰負荷。投与無し又はセロトニン(5-HT)、誘導体A3若しくは誘導体A4のいずれかを投与されたTph1 KOマウスにおける赤血球数(A)、ヘモグロビン率(B)、ヘマトクリット含有量(C)、赤血球中のヘム含有量(D)、平均細胞容積(MCV)(E)、脾臓内鉄含有量(F)及び骨髄内鉄含有量(G)の1から5日までの進化。
図2-2】モデル2(Tph1 KOマウス)における赤血球産生及び鉄過剰負荷。投与無し又はセロトニン(5-HT)、誘導体A3若しくは誘導体A4のいずれかを投与されたTph1 KOマウスにおける赤血球数(A)、ヘモグロビン率(B)、ヘマトクリット含有量(C)、赤血球中のヘム含有量(D)、平均細胞容積(MCV)(E)、脾臓内鉄含有量(F)及び骨髄内鉄含有量(G)の1から5日までの進化。
図2-3】モデル2(Tph1 KOマウス)における赤血球産生及び鉄過剰負荷。投与無し又はセロトニン(5-HT)、誘導体A3若しくは誘導体A4のいずれかを投与されたTph1 KOマウスにおける赤血球数(A)、ヘモグロビン率(B)、ヘマトクリット含有量(C)、赤血球中のヘム含有量(D)、平均細胞容積(MCV)(E)、脾臓内鉄含有量(F)及び骨髄内鉄含有量(G)の1から5日までの進化。
図3】モデル3(Hamp KO)における鉄過剰負荷。投与無し又はセロトニンを投与されたHamp KOマウスにおける5日後の血中鉄含有量(A)及びトランスフェリン飽和度(%)(C)の測定。投与無し又はA3誘導体を投与されたHamp KOマウスにおける5日後の肝臓(B)における鉄含有量の測定。
図4-1】モデル1(HbbTh1/th1マウス)に対するFACS(蛍光活性化単一細胞選別)。A3で処置したHbbTh1/th1マウス及びPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおいて13日目に得られた結果。A:HbbTh1/Th1マウス+/-A3における骨髄赤芽球サブセット分布の代表的なフローサイトメトリー分析、B:13日間の処置後のHbbTh1/Th1マウス+/-A3における骨髄赤血球分化の累積表示、C:13日間の処置後のHbbTh1/Th1マウス+/-A3における骨髄赤血球分化の亜集団。
図4-2】モデル1(HbbTh1/th1マウス)に対するFACS(蛍光活性化単一細胞選別)。A3で処置したHbbTh1/th1マウス及びPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおいて13日目に得られた結果。A:HbbTh1/Th1マウス+/-A3における骨髄赤芽球サブセット分布の代表的なフローサイトメトリー分析、B:13日間の処置後のHbbTh1/Th1マウス+/-A3における骨髄赤血球分化の累積表示、C:13日間の処置後のHbbTh1/Th1マウス+/-A3における骨髄赤血球分化の亜集団。
図5-1】モデル1(HbbTh1/th1マウス)における赤血球(RBC)産生及び鉄過剰負荷。A:A3で処置したHbbTh1/th1マウス及び異なる細胞分化段階でPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおける13日目のRBC。B:A3で処置したHbbTh1/th1マウス及びPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおける13日目の体内の総鉄含有量。C:A3で処置したHbbTh1/th1マウス及びPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおけるRBC及び総鉄体含有量。D:A3で処置したHbbTh1/th1マウス及びPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおける13日目のフェリチンレベル。
図5-2】モデル1(HbbTh1/th1マウス)における赤血球(RBC)産生及び鉄過剰負荷。A:A3で処置したHbbTh1/th1マウス及び異なる細胞分化段階でPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおける13日目のRBC。B:A3で処置したHbbTh1/th1マウス及びPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおける13日目の体内の総鉄含有量。C:A3で処置したHbbTh1/th1マウス及びPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおけるRBC及び総鉄体含有量。D:A3で処置したHbbTh1/th1マウス及びPBSで処置したHbbTh1/th1マウスにおける13日目のフェリチンレベル。
図6】Tph1 KOマウス及び野生型マウスにおける体内、血漿、十二指腸、肝臓、脾臓、骨髄(BM)、腎臓及び膵臓の鉄含有量。
図7-1】A:5日目における、Tph1 KOマウス、野生型マウス、及びA3で処置したTph1 KOマウスにおける体内の鉄含有量分布。B:21日目における、PBSで処置したTph1 KOマウス及びA3で処置したTph1 KOマウスの体内の鉄含有量分布。C:骨髄(BM)における、A3で処置したTph1 KOマウス及びPBSで処置したTph1 KOマウスにおいて21日目に得られたFACS結果及びフェリチンレベル。
図7-2】A:5日目における、Tph1 KOマウス、野生型マウス、及びA3で処置したTph1 KOマウスにおける体内の鉄含有量分布。B:21日目における、PBSで処置したTph1 KOマウス及びA3で処置したTph1 KOマウスの体内の鉄含有量分布。C:骨髄(BM)における、A3で処置したTph1 KOマウス及びPBSで処置したTph1 KOマウスにおいて21日目に得られたFACS結果及びフェリチンレベル。
図8】A:β-サラセミア患者における5-HTレベル、B:β-サラセミア患者における鉄レベル。C:15人のMDS患者対対照個体(n=14)からの血液中の5-HTレベル。D:A3で処置したβ-サラセミア患者由来の細胞におけるFACS分析。
図9】A:100uMクエン酸鉄アンモニウム(FAC)又はプラセボ+/-A3で処置したFA/BPAN患者由来の皮膚線維芽細胞のウェスタンブロット分析。B:100uMクエン酸鉄アンモニウム(FAC)又はプラセボ+/-A3で処置したFA/BPAN患者由来の皮膚線維芽細胞のウェスタンブロット分析。
図10】100uMクエン酸鉄アンモニウム(FAC)+/-5A1、A3又はA4で処置したBPAN患者由来の皮膚線維芽細胞のウェスタンブロット分析。
図11】100uMクエン酸鉄アンモニウム(FAC)又はプラセボ+/-A3、B1(=LYS12)、B2(=LYS29)、B3(=LYS9)、若しくはB4(=LYS9a)で処置したFA/BPAN患者由来の皮膚線維芽細胞のウェスタンブロット分析。
【実施例
【0101】
1.合成
材料及び方法
全ての溶媒及び化学物質は、市販の供給元から購入し、更に精製することなく使用したか、又はPurification of Laboratory Chemicals(Armarego,W.L.F.;Chai,C.L.L.5th Ed.)に従って精製した。溶媒を標準条件下で乾燥させた。反応は、Merck製のアルミニウムプレート上のプレコートシリカ(60F254)を用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターした。TLCプレートを、UV光で、及び/又はモリブデン酸セリウムアンモニウム溶液(CAM)によって処理し、加熱することによって可視化した。生成物を、Macherey Nagel製シリカゲル60を有するカラムクロマトグラフィー(0.036~0.071mm;215~400メッシュ)、予め充填されたシリカゲルカラム(Interchim)を取り付けたCombiFlash Rf+Teledyne Iscoシステム、又は/及び逆相カラム(XBridge Prep C18 5μm OBD、30×150mm)を取り付けたフォトダイオードアレイ検出器(Waters)を備えた分取HPLC Quaternary Gradient 2545で精製した。
【0102】
NMR分光法はBruker分光計で行った。スペクトルは、DMSO-d又はDO又はCDOD中、298 Kで行った。H NMRを400又は500MHzで記録し、化学シフトδを、残留非重水素化溶媒シグナルを内部標準として使用してppmで表し、カップリング定数JをHzで指定する。以下の略語が使用される:s、一重項;brs、ブロードな一重項;d、二重項;dd、二重項の二重項;dt、三重項の二重項;dq、四重項の二重項;ddd、二重項の二重項の二重項;dqd、二重項の四重項の二重項;t、三重項;td、二重項の三重項;tdd、二重項の二重項の三重項;q、四重項;m、多重項。本発明者らは、スペクトルにおいて明確に同定され得る不安定なプロトンのみを報告した。13C NMRを101又は126MHzで記録し、化学シフトδを、重水素化溶媒シグナルを内部標準として用いてppmで表す。
【0103】
UPLC MSによって>95%であると決定された最終化合物の純度を、フォトダイオードアレイ検出器及び逆相カラム(Aquity UPLC(登録商標)BEH C18 1.7pm、2.1×50mm)を有するSQ検出器2を備えたWaters Acquity Hクラスで記録した。
【0104】
「古典的システム」:ACN(+0.1%FA)及びMilliQ水(+0.1%FA):5%のACNで定組成(0.2分)、次いで2.3分で5%から100%のACNの直線勾配、次いで100%のACNで定組成(0.5分)。
【0105】
UPLCシステム:
カラム:Aquity UPLC(登録商標)BEH C18 1.7pm、2.1×50mm。
【0106】
システム:ACN(+0.1%FA)及びMilliQ水(+0.1%FA):5%のACNで定組成(0.2分)、次いで2.3分で5%から100%のACNの直線勾配、次いで100%のACNで定組成(0.5分)。
【0107】
略語
ACN、アセトニトリル;AcOH、氷酢酸;aq.、水性;Boc20、ジ-tert-ブチルジカーボネート;DCM、ジクロロメタン;equiv.、当量;ESI、エレクトロスプレーイオン化;EtOAc、酢酸エチル;EtOH、エタノール;Et20、ジエチルエーテル;Et3N、トリメチルアミン;FA、ギ酸;HPLC、高圧液体クロマトグラフィー;HRMS、高分解能質量分析;K2CO3、炭酸カリウム;MeOH、メタノール;MgSO4、硫酸マグネシウム;MS、質量分析;NaH、水素化ナトリウム;NMR、核磁気共鳴;RT、室温;THF、TLC、薄層クロマトグラフィー;UPLC、超高速液体クロマトグラフィー;UV、紫外線。
【0108】
合成及び特性評価
A1、A3及びA4の合成手順:
不活性雰囲気下で、セロトニンクロリド(100mg、0.470mmol、1当量)をTHF(5mL)に溶解した。NaH(36mg、0.893mmol、1.9当量)を混合物に添加した。混合物を30分間撹拌し、次いでプロパルギルブロミド(57μL、0.517mmol、1.1当量)を添加した。混合物を3.5時間撹拌し、次いで水でクエンチした。得られた溶液をDCMで抽出し、MgSO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてDCM/MeOH(99/1~80/20)を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。4つの画分を得て、分取HPLCによって精製して、凍結乾燥後に化合物A1、A3及びA4を得た。
【0109】
特性評価:
誘導体A1(N-(プロパ-2-イン-1-イル)-N-(2-(5-(プロパ-2-イン-1-イルオキシ)-1H-インドール-3-イル)エチル)プロパ-2-イン-1-アミン):
【0110】
【化7】
【0111】
UPLC:R:1.88
HNMR(DMSO-d6,500MHz):10.65(1H,s);7.24(1H,d,J9.1Hz);7.11(2H,d,J18.3Hz);6.76(1H,dd,J8.75&1.75Hz);4.75(2H,d,J1.7Hz);3.50(1H,bt);3.46(4H,bd);3.17(2H,bs);2.76(4H,bd,J10.45Hz)。
【0112】
13C NMR(DMSO-d6,125MHz):151.3;132.3;127.8;123.9;112.4(2C);112.0;102.7;80.5;79.7(2C);78.1;76.0(2C);56.6;53.5;42.0(2C);23.4。
【0113】
誘導体A3(ギ酸塩)(N-(2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル)プロパ-2-イン-1-アミニウムホルメート):
【0114】
【化8】
【0115】
UPLC:R:0.80-1.00
HNMR(DMSO-d6,500MHz):10.51(1H,s);8.31(1H,s(FA));7.13(1H,d,J8.55Hz);7.05(1H,s);6.82(1H,s);6.60(1H,dd,J1.75&8.5Hz);3.50(1H,d,J1.65Hz);3.19(1H,s);2.91(2H,t,J7.15Hz);2.78(2H,t,J7.45Hz)。
【0116】
13C NMR(DMSO-d6,125MHz):164.6;150.6;131.3;128.3;123.6;112.1;111.7;111.2;102.7;81.7;75.3;48.5;37.3;24.9。
【0117】
誘導体A4(3-(2-(ジ(プロパ-2-イン-1-イル)アミノ)エチル)-1H-インドール-5-オール):
【0118】
【化9】
【0119】
UPLC:R:1.42
HNMR(DMSO-d6,500MHz):10.46(1H,s);8.58(1H,bs(OH));7.11(1H,d,J8.5Hz);7.04(1H,s);
6.82(1H,s);6.60(1H,dd,J1.1&8.4Hz);3.45(4H,bs);3.17(2H,bs);2.73(4H,bs)。(+FAトレース)
【0120】
13C NMR(DMSO-d6,125MHz):150.6;131.2;128.3;123.4;112.1;111.7;111.6;102.7;79.7(2C);76.1(2C);53.5;42.0(2C);23.6.(+FAトレース163.9)
【0121】
A2の合成手順:
セロトニンクロリド(500mg、2.35mmol、1当量)を水(9mL)に溶解した。KCO(665mg、4.81mmol、2.1当量)及びBOCO(538mg、2.46mmol、1.05当量)を溶液に添加した。溶液を一晩撹拌し、次にDCMで抽出した。有機相をHCl5%及びブラインで洗浄し、次いでMgSO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてDCM/MeOH(100/0~90/10)を使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物(485mg)を得て、これを次の工程に用いた。
【0122】
不活性雰囲気下で、前工程の生成物(485mg、1.75mmol、1当量)を乾燥アセトニトリル(5mL)に溶解した。KCO(435mg、3.15mmol、1.8当量)及びプロパルギルブロミド(235μL、2.1mmol、1.2当量)を溶液に添加した。混合物を撹拌し、還流で一晩加熱し、室温まで冷却し、次いで、アセトニトリルで濾過し、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてシクロヘキサン/EtOAC(90/10~0/100)を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0123】
次いで、生成物をEtOAc(10mL)中の1M HClに溶解し、生成物がUPLC分析において優勢になるまで2時間撹拌した。次いで、混合物を濃縮し、粗生成物を分取HPLCによって直接精製して、凍結乾燥後に所望の生成物を得た。
【0124】
化合物A2(ギ酸塩)(2-(5-(プロパ-2-イン-1-イルオキシ)-1H-インドール-3-イル)エタンアミニウムホルメート):
【0125】
【化10】
【0126】
UPLC:R:1.57
HNMR(DMSO-d6,500MHz):10.82(1H,s);8.45(1H,s)7.26(1H,d,J8Hz);7.18(1H,d,J2.1Hz);7.13(1H,d,J2.1Hz);6.78(1H,dd,J8.5&2.3Hz);4.77(2H,d,J1.8Hz);3.51(1H,t,J2.3Hz);2.94(4H,m)
【0127】
1- 求核置換による合成
1-1- NH-モノアルキル化化合物のための手順
暗所及び不活性雰囲気下で、セロトニンクロリド(200mg、0.940mmol、1equiv.)をTHF(10mL)に溶解した。NaH(45mg、1.128mmol、1.2equiv.)を混合物に添加した。混合物を30分間撹拌し、次いでアルキルブロミド(0.6equiv.)を添加した。混合物を3.5時間撹拌し、次いで水でクエンチした。得られた溶液をDCMで抽出し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてDCM/MeOH(100/0~80/20)を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって、及び分取HPLCによって精製して、凍結乾燥後に所望の生成物を得た。得られた化合物はギ酸塩である。
A3(LYS3)
【0128】
【化11】
【0129】
収率:44mg、21%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH,90/10中、0.44。CAMで緑色に染色する株;
UPLC:RT:0.8~1.0(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1315に対する計算値215.11;実測値215.22。
【0130】
LYS6
【0131】
【化12】
【0132】
収率:43mg、19%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,95/5/2中、0.5。CAMで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.16(1H,d,J=8.4Hz);7.00(1H,s,);6.92(1H,d,J=2.1Hz);6.67(
1H,dd,J=2.3Hz,J=8.4Hz);5.21(1H,m);3.23(2H,d,J=7.2Hz);2.89(4H,s);1.71(3H,brs);1.62(3H,brs)。
【0133】
13C NMR(CDOD,101MHz):□ppm=151.2;136.8;133.2;129.3;124.3;122.3;112.7;112.5;112.4;103.5;50.0;47.4;26.0;25.9;17.9。
UPLC:RT:1.45(古典的システム)
MS(ESI)m/z[M+H]のC1521に対する計算値245.16;実測値245.17。
【0134】
LYS7
【0135】
【化13】
【0136】
収率:124mg、37%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの橙色粉末として単離された;R:DCM/MeOH,90/10中、0.48。CAMで緑色に染色する株;
HNMR(DMSO-d6,400MHz): □□ppm=10.43(1H,brs);8.68(1H,t,J=2.2Hz);8.60(2H,d,J=2.1Hz);8.51(1H,s);7.08(1H,d,J=8.5Hz);7.01(1H,d,J=2.5Hz);6.74(1H,d,J=2.2Hz);6.55(1H,dd,J=2.3Hz,J=8.6Hz);3.98(2H,s);2.77(4H,m)。
【0137】
13C NMR(DMSO-d6,101MHz):□ppm=150.5;148.4(2C);146.9;131.3;128.5(2C);128.3;123.5;117.2;112.0;111.8;111.6;102.6;51.7;49.6;26.2.
【0138】
UPLC:R:1.48(古典的システム)
【0139】
MS(ESI)m/z[M+H]のC1717 に対する計算値357.11;実測値357.13。
【0140】
1-2- ポリアルキル化化合物のための手順
暗所及び不活性雰囲気下で、セロトニンクロリド(500mg、2.35mmol、1equiv.)をTHF(25mL)に溶解した。NaH(188mg、2equiv.)を混合物に加えた。混合物を30分間撹拌し、次いでプロパルギルブロミド(524μL、2当量)を添加した。混合物を4時間撹拌し、次いで水でクエンチした。得られた溶
液をDCMで抽出し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてDCM/MeOH(99/1~80/20)を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。3つの画分を得て、分取HPLCによって精製して、凍結乾燥後に3つの生成物を得た。
【0141】
A1(LYS1):
【0142】
【化14】
【0143】
収率:5.5mg、0.8%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH,95/5中、0.71。CAMで緑色に染色する株;
【0144】
A3(LYS3):(ギ酸塩):
【0145】
【化15】
【0146】
収率:29mg、6%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH,95/5中、0.14。CAMで緑色に染色する株;
【0147】
A4(LYS4)
【0148】
【化16】
【0149】
収率:57mg、10%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;Rf:DCM/MeOH,95/5中、0.43。CAMで緑色に染色する株;
【0150】
1-3- O-アルキル化化合物のための手順:
暗所で、セロトニンクロリド(500mg、2.35mmol、1equiv.)を水(9mL)に溶解した。KCO(665mg、4.81mmol、2.1equiv.)及びB0CO(538mg、2.46mmol、1.05equiv.)を溶液に添加した。溶液を一晩撹拌し、次にDCMで抽出した。有機相を、aq.HCl 5%及びブラインで洗浄し、次いでMgSO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてDCM/MeOH(100/0~90/10)を使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物(485mg)を得て、これを次の工程に用いた。暗所及び不活性雰囲気下で、前工程の生成物(138mg、0.5mmol、1equiv.)を脱水アセトニトリル(4mL)に溶解した。KCO(138mg、2当量)及びプロパルギルブロミド(59μL、1.06当量)を溶液に添加した。混合物を撹拌し、還流で一晩加熱し、室温まで冷却し、次いで、アセトニトリルで濾過し、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてシクロヘキサン/EtOAC(90/10~0/100)を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0151】
次いで、生成物をCHCI/TFA、4/1(4mL)に溶解し、生成物がUPLC分析において優勢になるまで2時間撹拌した。次いで、混合物を濃縮し、粗生成物を分取HPLCによって直接精製して、凍結乾燥後に所望の生成物を得た。
【0152】
A2(LYS2)(ギ酸塩):
【0153】
【化17】
【0154】
収率:53mg、49%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中、0
.38。CAMを用いた緑色株
【0155】
1-4- カルバメートエステルのための手順:
暗所で、セロトニンクロリド(213mg、1mmol)をDCM/HO、1/2(3.33/6.66mL)に溶解した。NaCO(223mg、2.1mmol、2.1equiv.)を混合物に添加した。混合物を30分間撹拌し、次いでアルキルクロロホルメート(1equiv.)を添加した。混合物を6時間撹拌し、次いで水でクエンチした。得られた溶液をDCMで抽出し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてDCM/MeOH(100/0~80/20)を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0156】
LYS8
【0157】
【化18】
【0158】
収率:217mg、84%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの淡黄色油状物として単離された;R:DCM/MeOH,98/2中、0.53。CAMで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.15(1H,d,J=8.6Hz);6.99(1H,s,);6.93(1H,d,J=2.1Hz);6.66(1H,dd,J=2.3Hz,J=8.6Hz);4.64(2H,d,J=2.4Hz);3.36(2H,t,J=7.4Hz);2.85(3H,m)。
【0159】
MS(ESI)m/z[M+H]のC1415に対する計算値259.10;実測値259.18。
【0160】
化合物LYS9及びLYS9aを、同じプロトコルを用いて得た。
【0161】
LYS9
【0162】
【化19】
【0163】
収率:217mg、84%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの
淡黄色油状物として単離された;R:DCM/MeOH,98/2中、0.53。CAMで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):dppm=7.15(1H,d,J=8.6Hz);6.99(1H,s,);6.93(1H,d,J=2.1Hz);6.66(1H,dd,J=2.3Hz,J=8.6Hz);4.64(2H,d,J=2.4Hz);3.36(2H,t,J=7.4Hz);2.85(3H,m)。
【0164】
13C NMR(CDOD,101MHz):d ppm=158.0;151.1;133.1;129.4;124.2;112.6;112.3(2C);103.5;79.6;75.6;53.0;42.7;26.8.
【0165】
UPLC:R:1.74(古典的システム)
MS(ESP)m/z[M+H]のC1415に対する計算値259.10;実測値259.18。
【0166】
LYS9a
【0167】
【化20】
【0168】
収率:485mg、74%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄黄色粉末として単離された;R:DCM/MeOH,90/10中、0.44。CAMで緑色に染色する株;
HNMR(CDCl,500MHz):6ppm=7.94(1H,brs);7.24(1H,d,J=8.6Hz);7.04(2H,m);6.81(1H,dd,J=2.3Hz,J=8.6Hz);5.04(1H,brs);4.67(1H,brs);3.46(2H,m);2.90(2H,t,J=6.7Hz);1.46(9H,s)。
【0169】
UPLC:R:1.99(古典的システム)
MS(ESI)m/z[M+H]のC1521 に対する計算値277.15;実測値277.10。
【0170】
1-5- スルホンアミドのための手順:
暗所で、セロトニンクロリド(200mg、0.94mmol)をDCM(9mL)に溶解した。トリエチルアミン(210μL、1.5mmol、1.6equiv.)を混合物に添加した。混合物を30分間撹拌し、次いでメタンスルホニルクロリド(43μL、0.56mmol、0.6equiv.)をゆっくり添加した。混合物を18時間撹拌し、次いで水でクエンチした。得られた溶液をDCMで抽出し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。粗製物を、溶離液としてn-ヘキサン/EtOAc(20/80~0/100)を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。化合物LYS11が白色固体として収率7%(15mg)で得られる。
【0171】
LYS11
【0172】
【化21】
【0173】
2- 還元的アミノ化による合成。
2-1- ケトン(一置換類似体)からの手順:
【0174】
【化22】
【0175】
暗所及び不活性雰囲気下で、セロトニンクロリド(213mg、1mmol)を乾燥MeOH(10mL)に溶解した。EtN(153μL、1.1equiv.)を混合物に加えた。混合物をRTで30分間撹拌し、次いで対応するケトン(1.1当量)を添加した。混合物を一晩撹拌し、その後、NaBHCN(1.1equiv.)を添加した。反応混合物をRTで更に60分間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物をEtO/水、1/1(10/10mL)の混合物に入れ、得られた溶液をpH=10になるまでNaOH[2M]でアルカリ化し、次いで、EtO(2×20mL)で抽出し、次いで、DCM(1×20mL)で抽出した。有機相をMgSOで乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてDCM/MeOH/EtN(100/0/2~80/20/2)を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。
【0176】
LYS12
【0177】
【化23】
【0178】
収率:39mg、17%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中、0
.68。CAMで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.55(1H,s,(FA));7.19(1H,d,J=8.7Hz);7.10(1H,s,);6.92(1H,d,J=2.1Hz);6.70(1H,dd,J=2.1Hz,J=8.7Hz);3.73(1H,quint;,J=8.1Hz);3.14(2H,t,J=7.4Hz);3.04(2H,t,J=7.4Hz);2.30(2H,m);2.17(2H,m);1.89(2H,m)。
【0179】
UPLC:R:1.21(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1419に対する計算値231.14;実測値231.17。
【0180】
LYS13
【0181】
【化24】
【0182】
収率:195mg、80%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,95/5/2中、0.51。CAMで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.53(1H,s,(FA));7.19(1H,d,J=8.6Hz);7.11(1H,s,);6.93(1H,d,J=2.2Hz);6.70(1H,dd,J=2.1Hz,J=8.7Hz);3.55(1H,quint.,J=7.2Hz);3.25(2H,t,J=7.5Hz);3.07(2H,t,J=7.5Hz);2.10(2H,m);1.80(2H,m);1.64(4H,m)。
【0183】
UPLC:R:1.34(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1521に対する計算値245.16;実測値245.10。
【0184】
LYS14
【0185】
【化25】
【0186】
収率:253mg、98%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,95/5/2中、0.53。CAMで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.16(1H,d,J=8Hz);7.01(1H,s,);6.93(1H,d,J=4Hz);6.67(1H,dd,J=4Hz,J=8Hz);2.90(4H,m);2.50(1H,m);1.90(2H,m);1.73(2H,m);1.63(1H,m);1.21(5H,m)。
【0187】
UPLC:R:1.46(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1623に対する計算値259.17;実測値259.24。
【0188】
LYS15
【0189】
【化26】
【0190】
収率:120mg、44%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,95/5/2中、0.43。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.17(1H,d,J=8,6Hz);7.02(1H,s,);6.93(1H,d,J=2.5Hz);6.67(1H,dd,J=2.4Hz,J=8.6Hz);2.91(4H,m);2.71(1H,m);1.89-1.80(2H,m);1.71-1.32(10H,m)。
【0191】
UPLC:R:1.57(古典的システム);MS(ESP)m/z[M+H]のC1725に対する計算値273.19;実測値273.30。
【0192】
LYS16
【0193】
【化27】
【0194】
収率:212mg、74%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの
薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中、0.6。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.17(1H,d,J=8Hz);7.02(1H,s,);6.93(1H,d,J=4Hz);6.67(1H,dd,J=4Hz,J=8Hz);2.94(4H,m);2.78(1H,m);1.73(4H,m);1.48(10H,m)。
【0195】
UPLC:R:1.66(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1827に対する計算値287.20;実測値287.30。
【0196】
LYS17
【0197】
【化28】
【0198】
収率:300mg、97%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの薄灰色粉末として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,95/5/2中、0.53。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHZ):ppm=8.57(1H,s,(FA));7.19(1H,d,J=8.6Hz);7.12(1H,s,);6.93(1H,d,J=2.2Hz);6.70(1H,dd,J=2.2Hz,J=8.6Hz);3.36(1H,brs);3.27(2H,t,J=6.7Hz);3.12(2H,t,J=6.7Hz);2.12(2H,brs);1.96(2H,brd,J=13.6Hz);1.89(4H,m);1.78(4H,m);1.71(2H,brd,J=13.6Hz)。
【0199】
UPLC:R:1.62(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC2027に対する計算値311.21;実測値311.30。
【0200】
LYS19
【0201】
【化29】
【0202】
収率:70mg、32%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中、0.29。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.18(1H,d,J=8.6Hz);7.04(1H,s,);6.93(1H,d,J=2.3Hz);6.68(1H,dd,J=2.3Hz,J=8.6Hz);3.05-2.91(5H,m);1.14(6H,d,J=6.5Hz)。
【0203】
UPLC:RT:1.13(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1Hi9N2Oに対する計算値219.14;実測値219.21。
【0204】
LYS20
【0205】
【化30】
【0206】
収率:57mg、23%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中、0.63。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.57(1H,s,(FA));7.19(1H,d,J=8.6Hz);7.11(1H,s,);6.94(1H,d,J=2.2Hz);6.71(1H,dd,J=2.2Hz,J=8.6Hz);3.24(2H,m);3.08(2H,m);3.04(1H,quint.,J=7.0Hz);1.71(4H,m);0.95(6H,t,J=7.4Hz)。
【0207】
UPLC:R:1.40(古典的システム);MS(ESP)m/z[M+H]のC1523に対する計算値247.17;実測値247.20。
【0208】
LYS23
【0209】
【化31】
【0210】
収率:131mg、35%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH,90/10中、0.33。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.21-7.10(7H,m);7.01(4H,m);6.84(1H,d,J=2.4Hz);7.07(1H,s,);6.94(1H,d,J=2.4Hz);6.67(1H,dd,J=2.4Hz,J=8.6Hz);6.62(1H,s);3.04(1H,p,J=6.9Hz);2.92(2H,t,J=6.6Hz);2.78(1H,t,J=6.6Hz);2.72(2H,dd,J=6.9Hz,J=13.8Hz);2.61(2H,dd,J=6.6Hz,J=13.8Hz)。
【0211】
UPLC:R:1.91(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC2527に対する計算値371.20;実測値371.27。
【0212】
LYS25
【0213】
【化32】
【0214】
収率:131mg、35%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;Rf:DCM/MeOH,90/10中、0.33。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.54(2H,s,(FA));7.20(2H,d,J=8.6Hz);7.11(2H,s);6.92(2H,d,J=2.3Hz);6.71(2H,dd,J=2.3Hz,J=8.6Hz);3.29-3.16(6H,m);3.07(4H,m);1.71(2H,m);1.48(2H,m);1.41-1.22(14H,m)。
【0215】
UPLC:R:1.48(古典的システム)、MS(ESI)m/z[M+H]のC3042 に対する計算値491.33;実測値491.49。
【0216】
2-2- アルデヒド(一置換類似体)からの手順:
【0217】
【化33】
【0218】
暗所及び不活性雰囲気下で、セロトニンクロリド(213mg、1mmol)を乾燥MeOH(10mL)に溶解し、対応するアルデヒド(1.1equiv.)を加えた。混合物を3時間撹拌し、その後、NaBHCN(1.1equiv.)を添加した。反応混合物をRTで更に30分間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物をEtO/水、1/1(10/10mL)の混合物に入れ、得られた溶液をpH=10になるまでNaOH[2M]でアルカリ化し、次いで、EtO(2×20mL)で抽出し、次いで、DCM(1×20mL)で抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、溶離液としてDCM/MeOH/EtN(100/0/2~80/20/2)を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。
【0219】
LYS29
【0220】
【化34】
【0221】
収率:88mg、36%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,98/2/2中、0.31。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.58(1H,s,(FA));7.19(1H,d,J=8.7Hz);7.09(1H,s,);6.95(1H,d,J=2.2Hz);6.71(1H,dd,J=2.2Hz,J=8.7Hz);3.21(2H,t,J=7.5Hz);3.07(2H,t,J=7.5Hz);2.94(2H,t,J=7.9Hz);1.65(2H,quint,J=7.8Hz);1.33(4H,m);0.92(3H,t,J=6.7Hz)。
【0222】
UPLC:R:1.45(古典的システム);MS(ESP)m/z[M+H]のC1522に対する計算値247.17;実測値247.27。
【0223】
LYS30
【0224】
【化35】
【0225】
収率:122mg、47%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,98/2/2中、0.16。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.16(1H,d,J=8.7Hz);7.01(1H,s,);6.92(1H,d,J=2.1Hz);6.67(1H,dd,J=2.1Hz,J=8.7Hz);2.91(4H,s);2.62(2H,m);1.48(2H,m);1.26(6H,m);0.88(3H,t,J=6.5Hz)。
【0226】
UPLC:R:1.68(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1625に対する計算値261.19;実測値261.19。
【0227】
LYS26
【0228】
【化36】
【0229】
収率:10mg、4.5%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,80/20/2中、0.3。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=8.57(1H,s,(FA));7.21(1H,d,J=8.6Hz);7.13(1H,s);6.95(1H,d,J=2.3Hz);6.72(1H,dd,J=8.6Hz,J=2.3Hz);3.28(2H,t,J=7.6Hz);3.10(2H,t,J=7.6Hz);2.99(2H,d,J=8.6Hz)。1.72(2H,d,J=7.5Hz);1.02(3H,t,J=7.4Hz)。UPLC:R:0.9~1.12(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1319に対する計算値219.14;実測値219.26。
【0230】
LYS28
【0231】
【化37】
【0232】
収率:27.6mg、11.8%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中の、0.5。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.58(s,1H(FA));7.21(1H,dd,J=8.7Hz,J=2.7Hz);7.12(1H,s);6.96(1H,d,J=2.4Hz);6.72(1H,dd,J=8.6Hz,J=2.0Hz);3.27(2H,t,J=7.6Hz,);3.10(2H,t,J=7.6Hz);3.00(2H,t,J=8.2Hz);1.67(2H,p,J=7.9Hz);1.42(2H,h,J=7.4Hz);0.98(3H,t,J=7.4Hz)。
【0233】
UPLC:R:1.23(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1421に対する計算値233.16;実測値233.20。
【0234】
LYS31
【0235】
【化38】
【0236】
収率:71.8mg、26%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中、0.6。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.59(1H,s,(FA));7.21(1H,d,J=8.7Hz);7.12(1H,s);6.96(1H,d,J=2.5Hz);6.72(1H,dd,J=8.7Hz,J=2.0Hz);3.26(2H,dd,J=6.5Hz,J=5.5Hz);3.09(2H,t,J=7.6Hz),2.98(2H,dd,J=6.6Hz,J=5.3Hz);1.73-1.
58(2H,m);1.44-1.25(8H,m);0.93(3H,t,J=7.6Hz)。
【0237】
UPLC:R:1.61(古典的システム);MS(ESP)m/z[M+H]のC1727に対する計算値275.20;実測値275.28。
【0238】
LYS32
【0239】
【化39】
【0240】
収率:69mg、24%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中、0.4。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.60(1H,d,J=2.3Hz,(FA));7.21(1H,d,J=8.6Hz);7.11(1H,s);6.97(1H,d,J=2.4Hz);6.73(1H,dd,J=8.6Hz,J=2.3Hz);3.28-3.19(2H,m);3.08(2H,t,J=7.6Hz);3.04-2.88(2H,m);1.75-1.60(2H,m);1.43-1.23(10H,m);0.92(3H,t,J=6.7Hz)。
【0241】
UPLC:R:1.85(古典的システム)
MS(ESI)m/z[M+H]のC1829に対する計算値289.22;実測値289.22。
【0242】
LYS33
【0243】
【化40】
【0244】
収率:22mg、7%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,80/20/2中、0.7。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.59(1H,s,(FA));7.21(1H,d,J=8.6Hz);7.12(1H,s);6.96(1H,d,J=2.3Hz);6.72(1H,dd,J=8.6Hz,J=2.3Hz);3.26(2H,t,J=7.6Hz);3.09(2H,t,J=7.6Hz);2.99(2H,t,J=7.1Hz);1.67(2H,p,J=7.4Hz);1.46-1.19(14H,m);0.92(3H,t,J=6.8Hz)。
【0245】
UPLC:R:2.03(古典的システム)
【0246】
MS(ESI)m/z[M+H]のC2033に対する計算値317.25;実測値317.03。
【0247】
LYS34
【0248】
【化41】
【0249】
収率:77mg、22%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中、0.4。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.60(1H,s,(FA));7.21(1H,d,J=8.7Hz);7.12(1H,s);6.96(1H,d,J=2.2Hz);6.72(1H,dd,J=8.7Hz,J=2.3Hz);3.25(2H,t,J=7.6Hz);3.09(2H,t,J=7.6Hz);2.97(2H,t,J=8.0Hz);1.67(2H,p,J=7.5Hz);1.47-1.21(18H,m);0.92(3H,t,J=6.9Hz)。
【0250】
UPLC:R:2.32(古典的システム);MS(ESP)m/z[M+H]のC2237に対する計算値345.28;実測値345.16。
【0251】
LYS35
【0252】
【化42】
【0253】
収率:93mg、35%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,98/2/2中、0.46。
【0254】
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.31-7.21(5H,m);7.16(1H,d,J=8.6Hz);6.98(1H,s);6.90(1H,d,J=2.4Hz);6.66(1H,dd,J=8.6Hz,J=2.4Hz);3.78(2H,s);2.91(4H,s)。
【0255】
UPLC:R:1.48(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1719に対する計算値267.14;実測値267.21。
【0256】
LYS36
【0257】
【化43】
【0258】
収率:154mg、49%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH,95/5中、0.10。
【0259】
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=7.16(1H,d,J=8.8Hz);6.98(1H,s);6.89(1H,d,J=2.4Hz);6.98(1H,s);6.76(1H,brs);6.71(2H,brs);6.66(1H,dd,J=8.7Hz,J=2.4Hz);5.90(2H,s);3.68(2H,s);2.89(4H,brt,J=3.9Hz)。
【0260】
UPLC:RT:1.49(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1819に対する計算値311.13;実測値311.23。
【0261】
LYS37
【0262】
【化44】
【0263】
収率:31mg、12%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中の、0.5。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,500MHz):ppm=8.53(1H,s);7.63(1H,d,J=1.8Hz);7.21(1H,d,J=8.7Hz);7.11(1H,s);6.93(1H,d,J=2.3Hz);6.72(1H,dd,J=8.7Hz,J=2.3Hz);6.61(1H,d,J=3.3Hz);6.50(1H,dd,J=3.3,1.8Hz);4.27(2H,s);3.27(2H,t,J=7.7Hz);3.09(2H,t,J=7.6Hz)。
【0264】
UPLC:R:1.22(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1517に対する計算値257.12;実測値257.14。
【0265】
LYS38
【0266】
【化45】
【0267】
収率:37.3mg、13%。NMRによる純度>95%、TLCによる単一スポットの白色非晶質固体として単離された;R:DCM/MeOH/EtN,90/10/2中、0.4。CMAで緑色に染色する株;
HNMR(CDOD,400MHz):ppm=8.41(1H,s);7.09(1H,d,J=8.6Hz);6.98(1H,s);6.81(1H,d,J=2.2Hz);6.60(1H,dd,J=8.7Hz,J=2.3Hz);6.48(1H,d,J=3.4Hz);6.22(1H,d,J=3.3Hz);4.06(2H,s),3.12(2H,t,J=7.6Hz);2.95(2H,t,J=7.5Hz)。
【0268】
UPLC:R:1.43(古典的システム);MS(ESI)m/z[M+H]のC1516に対する計算値291.08;実測値291.10。
【0269】
2.生物学的結果-インビボ研究
インビボ研究は、3つのマウスモデルを用いて実施された。
【0270】
モデル1:HbbTh1/th1
Hbbth1/th1マウスは、ヘモグロビンサブユニットベータ(HBB)遺伝子及びプロモーターを含む2kbの5’隣接領域を排除する3.7kbのホモ接合性自然欠失を有する。遺伝的及び血液学的基準に基づいて、これらのマウスは、β-サラセミアの最初の動物モデルを構成する。これらは、脾臓内の鉄過剰負荷、輸血非依存性、無効な赤血球生成、肝脾腫、貧血症、及び赤血球形態異常を示す(Dussiot et al.,Nature Medicine 2014;20(4),398-407を参照のこと)。
【0271】
モデル2:Tph1 KO
このモデルは、末梢セロトニン欠損マウスである。これは、無効な赤血球生成、軽度の貧血、鉄過剰負荷(脾臓)、異常赤血球及び前赤芽球のアポトーシスを伴う低リスク骨髄異形成症候群のマウスモデルである(Cote et al.,PNAS,2003,100(23),13525-13530参照)。
【0272】
モデル3:ヘプシジンKO
HAMP遺伝子によってコードされるヘプシジンは、鉄ホメオスタシスの主要な調節因子であり、その発現は、鉄レベル、赤血球形成活性、低酸素症、及び炎症を含むシグナルによって厳密に調節される。
【0273】
これは、ヘモクロマトーシスのマウスモデルである。ヘプシジン欠損マウスは、多臓器性鉄過剰負荷を進行的に発症する;血漿鉄はトランスフェリン結合能を克服し、非トランスフェリン結合鉄は膵臓及び心臓を含む様々な組織に蓄積する(Nicolas et al.,PNAS 2001,98(15),8780-8785を参照のこと)。
【0274】
2.1 実験的アプローチ
無効な赤血球生成及び鉄過剰負荷を有するマウスモデルHbbTh1/Th1に、0日目から始めて、A1又はA3誘導体の腹腔内(Ip)注射を行った。
【0275】
無効な赤血球生成及び鉄過剰負荷を有するマウスモデルTph1 KOに、0日目から始めて、A1、A3、A4誘導体又はセロトニンの腹腔内(Ip)注射を行った。
【0276】
無効な赤血球生成を伴わない鉄過剰負荷のマウスモデル(Hamp KO)に、0日目から始めて、A3誘導体又はセロトニンの腹腔内(Ip)注射を行った。
【0277】
対照マウス(野生型、非改変、健常)及び注射を受けなかった各タイプのモデルマウスも評価した。
【0278】
第1ラウンドの実験において、完全な赤血球数(RBC)は、1日目、2日目及び5日目に達成された。
【0279】
5日目に、動物を屠殺し、それらの臓器の組織学的検査及び臓器中の鉄測定を行った。
【0280】
第2ラウンドの実験において、完全な赤血球数(RBC)は、2日目、5日目、10日目、15日目、20日目、25日目及び30日目に達成された。4匹のマウスを、毒性試験、本質的に骨髄及び脾臓に対するフローサイトメトリー分析及びFACS(蛍光活性化
単一細胞選別)、生化学的分析、鉄の状態(臓器、血清及び尿)、並びに組織学のために、5日目及びその後5日毎に屠殺した。
【0281】
2.2 結果
・モデル1(HbbTh1/th1マウス):赤血球産生及び鉄過剰負荷
【0282】
第1ラウンドの実験
誘導体A1又は誘導体A3のいずれかを投与したHbbTh1/th1マウスにおける赤血球数(RBC)、ヘモグロビン率及びヘマトクリット含有量の数日間にわたる進化を図1に示す。
【0283】
誘導体A1及びA3がヘモグロビン(図1B)、ヘマトクリット含有量(図1C)及びRBC数(図1A)を改善し、したがってβ-サラセミアマウスの貧血を改良することが実証される。
【0284】
対照マウス及びA1又はA3を受けたHbbTh1/th1マウスにおいて、異なる臓器(脾臓、骨髄)における鉄含有量を5日目(屠殺後)に測定した。結果を図1Dに示す。
【0285】
これらの結果は、誘導体A1又はA3がHbbTh1/th1マウスの脾臓における鉄過剰負荷を減少させたことを示す。鉄は、脾臓から動員され、赤血球の合成に必要とされる骨髄の細胞に移動する。
【0286】
第2ラウンドの実験
誘導体A3を受けたHbbTh1/th1マウスについて得られたFACS分析及びRBCの結果を、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で処置した対照マウスと比較して、図4に報告する。
【0287】
20mg/gの誘導体A3の13日間及び21日間の腹腔内注射は、対照的に未熟な赤芽球の拡大を伴う貧血を特徴とする無効な赤血球生成(IE)を示してヒトで観察されるように未熟/成熟赤芽球の不均衡な比をもたらした対照と比較して、マウスの状態をそれぞれ改善した。
【0288】
図4は、13日目の細胞分化期に依存するFACS及び赤血球数を示す。BM=骨髄、ns=有意でない。
【0289】
ProE及びEbasoは細胞分化の相I-IIの一部であり、EBaso及びLBasoは相Ill-IVaの一部であり、Poly及びOrthoは相IVb-Vの一部である。成熟段階は「acido」とも呼ばれる。
【0290】
A3処置HbbTh1/th1マウス由来の骨髄細胞のフローサイトメトリー分析により、PBS処置マウスと比較して、Ter-119+CD71+FSC細胞(Ill-IVa)の割合の減少、並びにTer-119+CD71-FSC細胞(IVb-V)の割合及び絶対数の同時増加の両方が明らかになった。したがって、化合物A3は、このマウスモデルにおいてβ-サラセミアの病理学的特徴を修正すると結論付けられ得る。
【0291】
図5a、5b及び5cは、PBSで処置した対照マウスと比較して、誘導体A3を受けたHbbTh1/th1マウスについての、その分化段階に依存する赤血球数(5a)、並びにそれぞれ13日後(5b)及び21日後(5c)の体内鉄含有量を示す。A3で処置したHbbTh1/Th1マウスにおける尿中フェリチンレベルを図5dに報告する。
【0292】
化合物A3の13日間のインビボ注射後:β-サラセミアHbbth1/th1マウスにおける骨髄増殖の修正が観察される(図5a参照)。
【0293】
化合物A3による鉄の結合は、鉄の放出及びヘモグロビン産生におけるその後の使用を可能にし、それによって、サラセミアの前臨床マウスモデルにおいて鉄過剰負荷に対抗し、貧血を修正する。
【0294】
5-HT誘導体の添加は、未成熟/成熟赤芽球比(比IV/V)を回復させる。化合物A3の13日間のインビボ注射後、β-サラセミアHbbth1/th1マウスにおける鉄過剰負荷の減少が観察される(図5b参照)。
【0295】
化合物A3の21日間のインビボ注射後、β-サラセミアHbbth1/th1マウスの鉄過剰負荷の減少(図5c参照):赤血球前駆細胞の数の減少及び成熟赤血球細胞の数の増加が観察される。化合物A3による処置は、未成熟/成熟赤芽球比(Poly/Acido比)を回復させるが、鉄含有量の減少が観察される。
【0296】
尿中フェリチンレベルの有意な増加が、対照マウスと比較して、A3で処置したマウスについて観察される(図5d参照)。データは、遊離した鉄がフェリチン貯蔵コンパートメントに取り込まれ、身体から除去されたことを示唆している。
【0297】
サイトスピン分析を行い、β-サラセミアHbbth1/th1マウスにおける骨髄増殖の修正を確認した。
【0298】
これらの試験から、PBSで処置したHbbTh1/Th1マウス(対照マウス)において、赤血球増殖及び成熟停止が、細胞生存の低下と共に観察されると結論付けられ得る。
【0299】
対照的に、化合物A3で処置したHbbTh1/Th1マウスでは、赤血球増殖は回復し、成熟停止は停止するが、細胞生存は増加する。
【0300】
したがって、化合物A3は鉄シャトルとして作用する。
【0301】
赤血球生成と鉄代謝は密接に関連している。赤血球生成は、赤血球(RBC)が骨髄において産生される微調整されたプロセスであり、適切なヘモグロビン(Hb)合成のための酸素及び鉄利用能に依存する。β-サラセミア患者において、RBCの寿命の減少は、骨髄における赤血球前駆体(無効な赤血球生成)の増殖の増加及び分化の減少、並びに脾臓における髄外赤血球生成をもたらす。この無効な赤血球生成(IE)は更に貧血に寄与し、鉄過剰吸収を引き起こしてHb合成に対する鉄需要の増加を満たし、臓器鉄過剰負荷をもたらす。したがって、患者は、鉄過剰負荷及び慢性貧血の両方の合併症に罹患する。したがって、上記を考慮すると、本発明の化合物は、サラセミア患者において鉄貯蔵を正常化し、赤血球生成を回復させるための有望な革新的な処置を提供する。
【0302】
・モデル2(Tph1 KOマウス):赤血球産生及び鉄過剰負荷
第1ラウンドの実験
誘導体A3又は誘導体A4又はセロトニンのいずれかを投与されたTph1 KOマウスにおける赤血球数、ヘモグロビン率、ヘマトクリット含有量、平均細胞容積(MCV)の数日間にわたる進化を図2に示す。
【0303】
誘導体A3及びA4並びにセロトニンは、ヘモグロビン(図2B)、ヘマトクリット含
有量(図2C)赤血球中のヘム含有量(図2D)及びRBC数(図2A)を改善し、したがってTph 1KOマウスの貧血を改良することが実証される。加えて、A3及びA4誘導体並びにセロトニンは、平均細胞容積(MCV)を減少させる(図2E)。MCVは、血液試料中の赤血球(RBC)の平均容積(サイズ)の尺度であり、MCVの増加は、大球性貧血に関連する。結果は、A3、A4誘導体又はセロトニンの注射が貧血表現型を改良することを示唆している。
【0304】
加えて、対照マウス及びA3若しくはA4誘導体又はセロトニンを受けたTph1 KOマウスにおいて、異なる臓器(脾臓、骨髄)における鉄含有量を5日目(屠殺後)に測定した。結果を図2F及び2Gに示す。鉄は、脾臓から動員され、赤血球の合成に必要とされる骨髄の細胞に移動する。
【0305】
第2ラウンドの実験
20mg/gの誘導体A3の5日間及び21日間の腹腔内(IP)注射は、対照的に骨髄変位症候群様表現型を示した対照と比較して、マウスの状態をそれぞれ改善した。
【0306】
Tph1 KOマウス及び野生型マウス(WT)の身体、血漿、十二指腸、肝臓、脾臓、骨髄、腎臓及び膵臓の各々における鉄含有量を図6に報告する。したがって、定常状態条件下では、Tph1 KOマウスは脾臓、腸及び腎臓において鉄過剰負荷を示すことが示される。
【0307】
5日間の処置後、化合物A3は、非処置Tph1 KOマウスと比較して、Tph1 KOマウスにおける細胞鉄誤分布を修正する(図7a参照)。
【0308】
21の腹腔内注射後、化合物A3は、PBSで処置したTph1 KOマウスと比較して、Tph1 KOマウスにおける細胞鉄誤分布を修正し(図7b参照)、無効な赤血球生成の病理学的特徴を修正し、Tph1 KOマウスにおける鉄過剰負荷(フェリチンレベル)を減少させる(図7c参照)。
【0309】
PBSで処置した5-HT欠損マウス(Tph1 KO)マウスでは、赤血球増殖の低下が細胞生存の低下と共に観察される。
【0310】
対照的に、化合物A3で処置した5-HT欠損マウスでは、赤血球増殖が回復し、細胞血液生存が増加する。
【0311】
化合物A3は鉄シャトルとして作用し、したがって骨髄変位症候群(MDS)患者において鉄貯蔵を正常化し、赤血球生成を回復させるための有望な革新的な処置を提供する。
【0312】
・モデル3(Hamp KO):鉄過剰負荷
鉄含有量を、A3又はセロトニンを受けた5日目(屠殺後)のHamp KOマウス及び対照マウスの血液及び肝臓において測定した。結果を図3に示す。鉄レベルは、処置されたマウスの血液及び肝臓において減少する。更に、トランスフェリン飽和度も減少し、鉄取り込みが減少することを示唆している。
【0313】
3.生物学的結果-インビトロ研究
3.1 予備結果
多くの研究者からの証拠の増加は、鉄ホメオスタシスと赤血球生成との協調のためのセロトニン作動系の操作が、例えば骨髄異形成症候群(MDS)を有する患者において見られる無効な赤血球生成及び鉄過剰負荷の悪循環に対抗し得ることを示唆する。
【0314】
Tph1ノックアウトマウス(モデル2)の分析により、赤血球生成における5-HTの重要な機能が明らかにされた:マウスは、無効な赤血球生成及び赤血球(RBC)生存率の低下に起因する大球性貧血の表現型を示す。5-HT欠損マウスの更なる調査は、骨髄(BM)において、5-HTが赤芽球において細胞自律的な役割を果たし、CD36ヒト臍帯血細胞の正常な増殖に必要であることを明らかにした。本発明者らのデータは、MDS患者において見られる赤血球増殖能の障害が5-HTレベルの低下と関連していることを示しており、5-HTの欠如が疾患の出現に寄与するという証拠を提供している。
【0315】
更に、MDS関連貧血のインビボモデル(モデル2-Tph1 KOマウス)を使用して、本発明者らは、5-HTレベルの薬理学的調節が貧血表現型をレスキューすることを示した(上記参照)。
【0316】
インビトロ試験を、輸血前のB-サラセミア患者の血液に由来する細胞に対して行った。
【0317】
タイプB0/B0
BE/B0
まず、マウスモデル由来の細胞において見られる5-HT誘導体の作用機序を、サラセミア患者由来のヒト前駆細胞の赤血球細胞において確認した(図8a及び8bを参照、Ctrl=対照患者、B-Thal=サラセミア患者)。より具体的には、対照個体(n=14)と比較して、MDS患者(n=15)からの血液中の5-HTレベルの有意な減少が観察される。
【0318】
更に、MDS表現型である輪状鉄芽球、すなわちRARSを伴う難治性貧血を有する患者は、血清中の5-HTレベルの低下を示し、鉄ホメオスタシスにおける5-HTの役割を示すことが実証された(図8c:15人のMDS患者対対照個体(n=14)からの血中5-HTレベルの有意な減少)。
【0319】
最後に、β-サラセミア患者(n=3)由来の細胞において、化合物A3は、未成熟/成熟比の減少によって明らかにされるように、赤血球前駆細胞の分化を増加させることが実証された(図8d、β-サラセミア患者由来の細胞におけるFACS分析を参照のこと)。
【0320】
3.2 インビトロモデル
フリードライヒ運動失調症及びβプロペラタンパク質関連神経変性(BPAN)患者由来の皮膚線維芽細胞に対して更なる試験を実施して、特に、当該線維芽細胞の細胞質ゾル及びミトコンドリアの両方における鉄蓄積に対する本発明の化合物の効果を評価した。
【0321】
フリードライヒ運動失調症患者由来の培養皮膚線維芽細胞を使用した(Petit et al.,Blood.2021;137(15):2090-2102及びIngrassia set al.,Front Genet 2017 Feb 17;8:18に記載されている)。
【0322】
3.3 結果
100uMクエン酸鉄アンモニウム(FAC)又はプラセボ+/-A3で処置したFA/BPAN患者由来の皮膚線維芽細胞のウェスタンブロット分析が図9aを示す。
【0323】
鉄過剰負荷(FAC 100uM)の条件では、A3の添加は、FTH発現を減少させた(-40%)。100uMクエン酸鉄アンモニウム(FAC)又はプラセボ+/-A3で処置したFA/BPAN患者由来の皮膚線維芽細胞のウェスタンブロット分析が図9
を示す。
【0324】
実験は、BPAN/フリードライヒ運動失調症患者においてn=2で2回行った。A3に加えて、A1及びA4を使用して、患者由来の線維芽細胞を処置した(図10参照)。
【0325】
鉄過剰負荷(FAC 100uM)の条件下では、A3の添加はp62発現を増加させ(約60%)、自己貪食流動の増加を示唆した。
【0326】
100uMクエン酸鉄アンモニウム(FAC)又はプラセボ+/-本発明による誘導体で処置したFA/BPAN患者由来の皮膚線維芽細胞のウェスタンブロット分析が図11を示す。
【0327】
化合物B1は、上記の誘導体LYS12に相当する。
【0328】
化合物B2は、上記の誘導体LYS29に相当する。
【0329】
化合物B3は、上記の誘導体LYS9に相当する。
【0330】
化合物B4は、上記の誘導体LYS9aに相当する。
【0331】
4.結論
インビボ、インビトロ、ヒト細胞並びにサラセミア及びMDSの動物モデルにおいて試験された本発明の化合物、特に化合物A1、A3及びA4は、3つの重要な特性を有する。-すなわち:
・臓器における鉄過剰負荷に対抗する。
・鉄を動員して再分配する。
・貧血を軽減し、赤血球前駆体の割合を修正することによって赤血球生成を増強する。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】