(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】小児MSを治療するためのオファツムマブ
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240822BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509123
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022071132
(87)【国際公開番号】W WO2023020802
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】バガー,モルテン
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ヘリング,ディーター エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】メルシュヘムケ,マルチン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ウェンディ
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、小児多発性硬化症(MS)の治療または予防に使用するためのオファツムマブに関する。本発明によれば、オファツムマブは、投薬計画の0、1、2週目における負荷用量計画中に投与され、また、オファツムマブは、投薬計画の8週目に開始し、その後6週間毎に継続する維持用量計画の間に投与される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)最大40kgの体重を有し、及び/または
ii)年齢が5~17歳である、患者における多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブ。
【請求項2】
最大40kgの体重を有する患者における多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブ。
【請求項3】
i)最大40kgの体重を有し、かつ
ii)年齢が5~17歳である、患者における多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブ。
【請求項4】
前記患者が小児患者である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項5】
前記患者の年齢が10~17歳である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項6】
c)オファツムマブが、投薬計画の0、1、2週目において負荷用量として投与され、
d)オファツムマブが、前記投薬計画の8週目に開始し、その後6週間毎に継続する維持用量として投与される、前記投薬計画に従ってオファツムマブが投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項7】
前記負荷用量及び前記維持用量が、20mgのオファツムマブのs.c.注射を含む、請求項6に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項8】
オファツムマブが、年間再発率を維持する点において、好ましくは年間再発率を低下させる点において、フィンゴリモド、シポニモド、またはインターフェロンβに対して非劣性である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項9】
平均患者の前記年間再発率が0.67未満、好ましくは最大0.12である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項10】
前記ARRがインターフェロンと比較して少なくとも26%低下し、より好ましくは前記ARRの低下が少なくとも63%、より好ましくは少なくとも78%、具体的には少なくとも82%である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項11】
オファツムマブが、オファツムマブ以外の疾患修飾療法で治療されたことのある患者において使用され、前記以前の疾患修飾療法の薬物が、オクレリズマブ、リツキシマブ、フィンゴリモド、テリフルノミド、インターフェロンβ、及びグラチラマー酢酸塩から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項12】
前記治療が長期治療である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項13】
COVID-19に急性感染した、または以前に感染した患者が治療される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項14】
前記治療が、COVID-19の感染中に継続される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【請求項15】
オファツムマブがフィンゴリモドに対して、年間T1病変率の点において、T2病変率の点において、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)血清濃度の点において、免疫原性及び内因性の抗薬物抗体(ADA)の点において、及び/または安全性及び耐容性の点において、以下の基準:
- 治療中に発生した有害事象(TEAE)の頻度及び重症度、
- コロンビア自殺重症度評価スケール(C-SSRS)、
- 12誘導ECG、
- 実験室及び眼科的データ、
- 肺機能試験、
- バイタルサイン、のうち少なくとも1つによって決定して非劣性である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのオファツムマブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小児多発性硬化症(MS)の治療に使用するためのオファツムマブに関する。本発明によれば、オファツムマブは、投薬計画の0、1、2週目における負荷用量計画中に投与され、また、オファツムマブは、投薬計画の8週目に開始し、その後6週間毎に継続する維持用量計画の間に投与される。
【背景技術】
【0002】
小児MSの患者及びその家族に対する負担は大きい。小児MS患者は、急性炎症活動及び神経学的異常の再発するエピソードを経験し、これは、患者の生活の質に深刻な影響を及ぼす。小児期のMSの発症は、小児期/青年期早期における年齢相応の(age-expected)脳成長の不全、及び青年期中期から成人期に至る脳萎縮に関連する。最終的に、小児期にMSを発症した患者は、予後が不良であり、身体に障害を有し、成人期にMSを発症した患者と比較してより早い年齢で認知後遺症を経験する。残念なことに、現在の治療手段は非常に限定されている。
【0003】
したがって、小児MSにおける満たされていない医学的ニーズは高い。現在のところ、フィンゴリモド(Gilenya(登録商標))が唯一の療法であり(PARADIGMSに基づいて)、これは疾患活性に対してインターフェロンβ-1aよりも優れた有効性を示した。PARADIGMSの後に、TERIKIDSを実施して、166人の小児患者におけるテリフルノミドの有効性及び安全性を調査した。しかしながら、この研究は、主要評価項目である最初の臨床的再発までの時間の統計的有意性に達しなかった。したがって、フィンゴリモドが、米国で小児MSに対して認可された唯一の療法である。欧州連合(EU)では、インターフェロンβ剤が、薬剤の承認されたラベルに従い、小児患者(様々な年齢範囲の)に使用され得る。しかしながら、これらのEUに限定された認可は、PARADIGMSまたはTERIKIDSなどの前向き無作為化比較臨床研究に基づいていなかった。その結果、治療の選択肢は、限定されるだけでなく、臨床研究からの十分な裏付け及びデータも欠いている。
【0004】
治療の選択肢が限定されることに加えて、こうしたデータの欠如は、治療が中断または変更される場合に問題となる。このような状況では、小児MS患者は特に脆弱であり、そのため、この脆弱性を低減または最小化する必要性が存在する。重要なことに、治療の中断または変更は、小児患者の治療において稀な出来事ではない。治療の中断または変更の理由としては、有害作用、治療の失敗、疾患の進行、疾患の退行、併存疾患、生理学的及び代謝的変化(例えば、月経)、ならびに患者の意向の進展が挙げられる。
【0005】
したがって、小児MSを有する患者に対して効果的であり、のみならず安全かつ許容可能な薬剤に対する必要性が存在する。
【0006】
B細胞によって発現されるタンパク質に対するモノクローナル抗体(mAb)、例えば、オファツムマブ、オクレリズマブ、及びリツキシマブなどの抗CD20抗体は、概ね良好な安全性プロファイルを有する、有効性の高い疾患修飾療法(DMT)である(D’Amico et al 2019)。
【0007】
オファツムマブ(OMB157)は、B細胞及びT細胞のサブセット上で発現されるCD20を標的とするヒトIgG1κ mAbであり、他の抗CD20 mAbとは異なり、オファツムマブは、CD20分子上の異なるエピトープ、すなわちプレBリンパ球及び成熟Bリンパ球上に存在する細胞表面抗原に結合し、強力なB細胞溶解及び枯渇を誘導する。Bリンパ球に対する細胞表面結合の後で、オファツムマブは、抗体依存性の細胞溶解及び補体媒介性の溶解をもたらす。
【0008】
オファツムマブ(Kesimpta(登録商標))は、米国及び欧州で、成人の再発性MSの治療に関して、臨床的に分離された症候群(clinically isolated syndrome)、再発寛解型疾患、及び活性の二次進行型疾患を含むことが認可されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、予想外にも、オファツムマブ療法が小児MS患者のみならず最大40kgの低体重を有するMS患者において有利であることが見出された。
【0010】
したがって、本発明は、最大40kgの体重を有し、及び/または年齢が5~17歳の患者における多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブを提供する。
【0011】
本発明は更に、最大40kgの体重を有する患者における多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブを提供する。
【0012】
本発明は更に、最大40kgの体重を有し、かつ年齢が5~17歳の患者における多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブを提供する。
【0013】
実施形態
本発明は、最大40kgの体重を有し、及び/または年齢が5~17歳の患者における多発性硬化症の治療または予防、好ましくは治療に使用するためのオファツムマブを提供する。
【0014】
好ましい実施形態では、患者は最大40kgの体重を有する。別の好ましい実施形態では、患者は少なくとも25kgの体重を有し、好ましくは患者は少なくとも25kgかつ最大40kgの体重を有する。
【0015】
好ましい実施形態では、患者は小児患者である。好ましい実施形態では、患者は子供である。別の好ましい実施形態では、患者は青年である。
【0016】
好ましくは、小児患者は、年齢が5~17歳、より好ましくは10~17歳、すなわち年齢が10~18歳未満である。別の実施形態では、小児患者は年齢が10~12歳である。別の実施形態では、小児患者は、年齢が5~14歳、好ましくは年齢が10~14歳である。別の実施形態では、小児患者は、年齢が15~17歳、すなわち年齢が14歳超~18歳未満である。
【0017】
好ましい実施形態では、小児患者は最大40kgの体重を有する。小児患者が少なくとも25kgの体重を有することが更に好ましく、より好ましくは、小児患者は少なくとも25kgかつ最大40kgの体重を有する。
【0018】
更に好ましい実施形態では、小児患者は、年齢が5歳~17歳、好ましくは年齢が10歳~18歳未満であり、最大40kg、好ましくは25~40kgの体重を有する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、オファツムマブは、6週間毎に20mgの用量で投与され、この用量は維持用量とも称される。
【0020】
好ましくは、オファツムマブは、非経口で、例えば、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内(intratendinous)、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸郭内、硬膜外または胸骨内(intrasternal)の注射または注入により投与される。好ましい投与経路は、皮下注射(sc)である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、オファツムマブは、負荷用量で投与される。用語「負荷用量」を、以下で定義する。好ましい実施形態では、3回の負荷用量が、好ましくは、オファツムマブ療法の開始後0週目及び1週目及び2週目に投与される。これは、0週目における最初の負荷用量が治療の開始を成すことを意味する。代替的な好ましい実施形態では、オファツムマブ療法の開始後、1日目、5日目~9日目、好ましくは7日目、及び12日目~16日目、好ましくは14日目に、3回の負荷用量が投与される。これは、1日目における最初の負荷用量が治療の開始を成すことを意味する。
【0022】
本発明によれば、オファツムマブは、投薬計画の0、1、2週目における、好ましくは20mgのオファツムマブを含む負荷用量計画中に投与され、また、オファツムマブは、投薬計画の8週目に開始し、その後6週間毎に継続する、好ましくは20mgのオファツムマブを含む維持用量計画の間に投与される。
【0023】
したがって、好ましい実施形態では、オファツムマブは、
a) オファツムマブが、投薬計画の0、1、2週目において、好ましくは20mgのオファツムマブのs.c.注射を含む負荷用量として投与され、
b) オファツムマブが、投薬計画の8週目に開始し、その後6週間毎に継続する、好ましくは20mgのオファツムマブのs.c.注射を含む維持用量として投与される、投薬計画に従って投与される。
【0024】
この投薬計画が、特許請求の範囲で定義される患者、特に小児患者において安全かつ効果的な治療を提供することは、全く驚くべきことであった。これは、モノクローナル抗体(mAb)の分布及び/または吸収、代謝回転及び/または排除に関連する加齢性の変化があるためである。
【0025】
第1に、加齢性の変化を受ける、かつmAb分布に関連するいくつかのプロセスを指摘した最近の報告に基づくと、mAbの生体内分布が発育変化の影響を受けるものと考えられる。したがって、成人の組織水分含有量に対する小児患者の組織水分含有量の周知の差が存在する。したがって、モノクローナル抗体(mAb)などの親水性巨大分子に関して、分布に利用可能な全身容積の割合は小児患者でより高くなることが予想される。更に、小児患者における組織の灌流速度は、通常、成人における対応する組織の灌流速度よりも高い。更に、小児患者は、単位組織容積あたりの毛細血管表面積がより大きく、また、その身体寸法に対してより高い毛細血管透過性を有する「漏出性」器官及び組織(例えば肝臓、腎臓、及び脾臓)の割合がより高い。まとめると、小児患者では、成人と比較して、血管外遊出がより速くなり、血管腔と血管外腔との間の濃度差がより低くなることが予想される。小児患者における成人と比較して増加した細胞外液量、ならびに血漿及びリンパ液に対して等しく影響を受けることが想定されるより高い灌流速度(血漿流速の約0.2%)に基づいて、小児患者においてより高いmAbの吸収速度が予想される。
【0026】
第2に、リサイクリングプロセス(IgG受容体FcRnを伴うリサイクリングプロセスなど)の効率、及びリソソームタンパク質代謝回転における一般的な年齢に関連する差異は、小児患者と成人との間における寸法差を補正した後のmAb排除の差異の原因であり得る。これに関連して、タンパク質代謝回転、すなわち一般に異化作用は、小児患者では成人と比較して実質的により高いと思われることに留意されたい。これらのプロセスに対する小児年齢の効果が、mAb排除における臨床的に検出可能な差をもたらすことが予想されたであろう。
【0027】
これらの理由から、年齢に関連した用量調整が、特許請求の範囲に記載される患者、特に小児患者で必要となることが予想されたであろう。したがって、特許請求の範囲に記載される投薬計画が成人の投薬計画に類似しているという事実は、全く予想外である。
【0028】
更に、特許請求の範囲に記載される投薬計画が安全かつ効果的に皮下(s.c.)投与され得ることは、驚くべきことであった。これは、小児患者に対しては、静脈内(IV)投与、及びより低い程度で筋肉内(IM)投与が通常好ましいためである。
【0029】
更に、小児患者において免疫原性及び内因性の抗薬物抗体(ADA)に関する重大な問題が存在しないのは意外であった。
【0030】
上記で特定された投薬計画が、1マイクロリットルあたり8個の細胞の閾値を下回るB細胞の枯渇を達成することが、予想外に見出された。成人患者と小児患者との間には有意な差が存在するため、これは全く驚くべきことであった。これらの差異は、とりわけ生理機能、代謝、及び体重に関連する。これに関連して、子供には成人と比較してより高いベースラインB細胞数が存在するため、特許請求の範囲に記載される投薬計画が、特許請求の範囲で定義される患者のB細胞を一貫して枯渇させ得ることは予想されなかったであろうということにも留意されたい。
【0031】
B細胞亜集団における変化の大半は、小児期に生じる。ナイーブB細胞のパーセンテージ及び絶対数は、18か月齢から徐々に減少する。一方で、メモリーB細胞の増加が存在する。CD27を発現するスイッチメモリーB細胞は、胚中心における体細胞超変異及びクラススイッチ組換えを受けた。CD27+IgD-B細胞のパーセンテージは、18歳まで増加して、成人期に入る。CD19+CD27+IgD+細胞の集団は、多くの場合で非スイッチメモリーB細胞と呼ばれ、循環辺縁帯B細胞に対応する。これらの細胞はT非依存性の応答に関与し、被包性細菌による感染の制御において重要な役割を果たす。非スイッチメモリーB細胞のパーセンテージ及び絶対数は、小児期初期から青年期までの間で徐々に増加する。理論に束縛されるものではないが、オファツムマブは、辺縁帯B細胞を含む調節性T細胞またはB細胞(のサブセット)の使用量を低減させるものと考えられる。したがって、特許請求の範囲に記載されるオファツムマブの投薬計画は、特許請求の範囲で定義された患者において安全かつ効果的な治療をもたらすと考えるのが妥当である。
【0032】
一方で、特許請求の範囲で定義される主題は、従来技術に基づけば予期されないものであった。これは、上記で記載されるもの、または調節性T細胞及びその他のTリンパ球集団の成熟に関するものなどの加齢に関連する変化が、小児患者と成人との間に、免疫系の機能性の成熟における、及び、したがって、免疫反応性などの免疫細胞が関与するプロセスにおける有意な差が存在するという予想をもたらすためである。小児患者と成人との間で異なり得る1つの例示的なプロセスは、「標的媒介性薬物動態(target-mediated drug disposition、TMDD)」であり、これは、mAbがその標的に結合することに基づく消失経路を表す。これら及び他の年齢に関連する差異の検出及びそれらの大きさの評価は複雑かつ予測不可能であるため、特許請求の範囲に記載された投薬計画を使用する場合の成功は予期されなかった。
【0033】
一般に、本発明は、多発性硬化症の治療に関する。本発明の一実施形態では、多発性硬化症は、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)である。本発明の別の実施形態では、多発性硬化症は、一次進行型多発性硬化症(PPMS)である。本発明の更なる実施形態では、多発性硬化症は、二次進行型多発性硬化症(SPMS)である。更なる実施形態では、多発性硬化症は、臨床的に分離された症候群(CIS)である。RRMSが最も好ましい。
【0034】
別の実施形態では、PPMS及びSPMSなどのMSの進行形態は含まれない。
【0035】
完了したPARADIGMS研究において、フィンゴリモドをインターフェロン(IFN)β-1a(Avonex)と比較した。IFNβ-1aで治療された患者は、163参加者曝露年数中に120回のMS再発を経験し、一方、フィンゴリモドで治療された患者は、180参加者曝露年数中に25のMS再発を経験した。年間再発率(ARR)(すなわち、1年間あたりのMS再発の数)は、フィンゴリモド群で0.122であり、IFNβ-1a群で0.675であった。これは、IFNβ-1aに対するARRの81.9%の減少に相当する(p<0.001)(Chitnis et al 2018)。
【0036】
本発明の一実施形態では、オファツムマブは、年間再発率の点において、特には年間再発率を維持する点において、好ましくは年間再発率を低下させる点において、インターフェロンに対して非劣性である。言い換えれば、オファツムマブ治療下での年間再発率は、最大でもインターフェロン下での年間再発率であり、すなわち、オファツムマブ治療下では、平均的患者の年間再発率は、最大でもインターフェロン下の平均的患者の年間再発率である。
【0037】
好ましい実施形態では、オファツムマブはインターフェロンβ、具体的にはインターフェロンβ1a、インターフェロンβ1b、及びそのPEG化形態からなる群から選択されるインターフェロンβに対して年間再発率の点で非劣性である。
【0038】
具体的には、年間再発率(ARR)(すなわち、1年間あたりのMS再発の数)は、0.67未満、好ましくは0.50未満、より好ましくは0.25未満、更により好ましくは0.15未満である。
【0039】
好ましくは、オファツムマブは、IFNβ-1aに対して少なくとも26%のARRの低減をもたらし(p<0.001)、より好ましくは、ARRの低減は、少なくとも63%、より好ましくは少なくとも78%、具体的には少なくとも82%である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、オファツムマブはフィンゴリモドに対して、年間再発率の点において、特には年間再発率を維持する点において、好ましくは年間再発率を低下させる点において非劣性である。言い換えれば、オファツムマブ治療下での年間再発率は、最大でもフィンゴリモド下での年間再発率であり、すなわち、オファツムマブ治療下では、平均的患者の年間再発率は、最大でもフィンゴリモド下の平均的患者の年間再発率である。
【0041】
好ましくは、ARRは最大でも0.12である。好ましくは、ARRは0.10未満、より好ましくは0.08未満である。
【0042】
本発明の別の実施形態では、オファツムマブは、年間再発率の点において、具体的には年間再発率を維持する点において、好ましくは年間再発率を低下させる点において、シポニモドに対して非劣性である。言い換えれば、オファツムマブ治療下での年間再発率は、最大でもシポニモド下での年間再発率であり、すなわち、オファツムマブ治療下では、平均的患者の年間再発率は、最大でもシポニモド下の平均的患者の年間再発率である。
【0043】
本発明の一実施形態では、2の非劣性マージンを使用して、オファツムマブはARRの点においてフィンゴリモドより少しも悪くない(すなわち、非劣性である)。非劣性は、推定ARR比(オファツムマブ/フィンゴリモド)に基づいて評価される。言い換えれば、オファツムマブ/フィンゴリモドのARR比は、2未満、好ましくは1未満である。
【0044】
PARADIGMS研究において、ARR比(フィンゴリモド/インターフェロン)は0.18であった(95%CI:0.11;0.30)(Chitnis et al 2018)。信頼区間の上限を控えめな推定値(conservative estimate)として取ると、ARRはインターフェロンでフィンゴリモドに対して3.3倍高い結果となる。
【0045】
フィンゴリモドに対する2のマージンは、インターフェロンに対するオファツムマブの優位性の証拠を提供する。
【0046】
任意選択的に、追加の基準として、オファツムマブに関するARRの事後中央値(posterior median)が0.3より小さい場合にのみ、主目的が満たされることになる。この追加の基準は、ARRがインターフェロンのARRよりも大幅に低くならない状況において非劣性を宣言することを防ぐが、これは、他の場合で、コンパレータ(フィンゴリモド)のARRが予想より高いと起こり得る。
【0047】
本発明のなお更なる実施形態は、多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブであり、ここでオファツムマブはフィンゴリモドに対して、年間T2病変率の点において非劣性であり、言い換えると、オファツムマブ下での年間T2病変率は、最大でもフィンゴリモド下の年間T2病変率であり、好ましくは、オファツムマブ下での年間T2病変率はフィンゴリモドと比較して低減する。
【0048】
本発明のなお更なる実施形態は、多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブであり、ここでオファツムマブはフィンゴリモドに対して、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)血清濃度の点において非劣性である。言い換えれば、NfL血清濃度によって測定されるオファツムマブ治療下での神経軸索損傷は、最大でフィンゴリモド治療下と同じ程度重度であり、好ましくは、NfL血清濃度によって測定されるオファツムマブ治療下での神経軸索損傷は、フィンゴリモド治療と比較して低減する。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明は、多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブに関し、ここでNfL血清濃度によって測定される神経軸索損傷は、フィンゴリモドと比較して低減する。
【0050】
本発明の別の実施形態は、多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブであり、ここでオファツムマブはフィンゴリモドに対して、安全性及び耐容性の点において、以下の基準:
- 治療中に発生した有害事象(TEAE)の頻度及び重症度、
- コロンビア自殺重症度評価スケール(C-SSRS)、
- 12誘導ECG、
- 実験室及び眼科的データ、
- 肺機能試験、
- バイタルサインのうち少なくとも1つによって決定して非劣性である。
【0051】
本発明の別の実施形態は、多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブに関し、ここでオファツムマブはフィンゴリモドに対して、免疫原性及び内因性の抗薬物抗体(ADA)の点において非劣性である。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、MSの治療に使用するためのオファツムマブは、長期治療に使用される。長期治療という用語は、オファツムマブが長期間にわたって使用されることを示す。例えば、オファツムマブは、2年間、3年間、4年間、5年間、10年間を超えて使用され得る。オファツムマブは、最大で5年間、10年間、15年間、20年間、または生涯にわたって使用され得る。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、オファツムマブは、最大40kgの体重を有する患者において、または最大40kgの体重を有し、年齢が5~17歳の患者において、6週間毎に20mgの用量で投与される。患者が40kgを超える体重に到達したとき、または患者が18歳の年齢に達し、かつ40kgを超える体重に到達したときは、単に投薬計画を4週間毎に20mgの用量へと切り替えればよい。
【0054】
これにより、年齢または体重の増加などの状況の変化があっても、疾患修飾薬を切り替える必要なしに、ただ治療プロトコルをわずかに修正することによって、MS治療を継続することが可能となる。これは、疾患修飾薬の切り替えがウォッシュアウト期間を必要とする場合があり、及び/または有害事象の発生に関連する場合があるため、特に有利である。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、オファツムマブの第1の用量が投与される前に、前投薬が患者に施される。好ましくは、前投薬は、アセトアミノフェン、抗ヒスタミン剤及びステロイドから選択される化合物を含む。メチルプレドニゾロンが好ましいステロイドであり得る。100mgのivが好ましい用量であり得る。好ましくは、前投薬は、オファツムマブ注射の30~60分前に施される。
【0056】
特に好ましい実施形態では、前投薬は、オファツムマブの第1の用量の前に施されない。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、オファツムマブは、MSを治療するための唯一の活性成分として投与される。言い換えれば、オファツムマブは、好ましくは、投与される唯一の疾患修飾薬である。
【0058】
一般には、オクレリズマブ療法などのB細胞枯渇療法に伴う副作用及び有害事象は、免疫グロブリン(例えば、IgG)の減少に伴うことが報告されている。本発明では、驚くべきことに、オファツムマブ療法は、長期的には免疫グロブリン(例えば、IgG)の減少を引き起こさず、したがって長期治療下にある患者に新たな手段を開くため、他のB細胞枯渇療法と比較して有利であることが見出された。
【0059】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、オファツムマブがMSの治療に用いられ、ここでオファツムマブは悪性腫瘍の既知の危険因子を有する患者に投与される。本発明の別の好ましい実施形態では、オファツムマブがMSの治療に用いられ、ここでオファツムマブは、悪性腫瘍の再発に関して積極的にモニタリングされている患者に投与される。本発明の代替的な実施形態では、オファツムマブがMSの治療に用いられ、ここでオファツムマブは、既知の活性悪性腫瘍を有する患者に投与される。
【0060】
MSIS-29(下記の定義を参照)は、臨床研究及び疫学的研究に適した、患者の観点からのMSの影響の臨床的に有用かつ科学的に正しい尺度である。これは、MSの影響の理解を改善するために使用される疾患重症度の他の指標を補完する、信頼性の高い、有効な、かつ応答性のあるPRO(患者報告型アウトカム)尺度であると考えられる。
【0061】
本発明では、オファツムマブの投与が、以下に定義されるMS影響スケールMSIS-29の有利な低減をもたらすことが予想外に見出された。
【0062】
この点に関して、本発明の更なる主題は、再発性多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブであり、ここでオファツムマブは、MSIS-29スコアを低下させる。好ましくは、オファツムマブは、MSIS-29スコアを、24か月以内に少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2.0、更により好ましくは少なくとも2.5低下させる。この低下は、最大で3.0または3.5または4.0であり得る。
【0063】
本発明の一実施形態では、オファツムマブ組成物が、ヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物として日常的な手順に従い配合される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。適する場合は、組成物は、可溶化剤、及び注射部位における疼痛を軽減するためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。一般的に、成分は、活性剤の量を示すアンプルまたは小袋などの密封容器内で、例えば凍結乾燥粉体または無水濃縮物として、別々か、または単位剤形中にまとめて混合されてのいずれかで供給される。
【0064】
本組成物を、点滴によって、具体的には皮下注射(s.c.)によって投与する場合、例えば、無菌の医薬品グレードの水または生理食塩水を含む点滴ボトルで分注できる。
【0065】
本組成物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供してよい。
【0066】
一実施形態では、オファツムマブの配合物は、WО2009/009407に開示される配合に従って配合することができる。
【0067】
一実施形態では、オファツムマブは抗体配合物中で配合され、ここでオファツムマブは、約20~300mg/mL、50~300mg/mL、100~300mg/mL、150~300mg/mL、200~300mg/mL、または250~300mg/mL、好ましくは50mg/mlの量で存在する。
【0068】
一実施形態では、オファツムマブは抗体配合物中で配合され、ここで配合物は、10~100mMの酢酸ナトリウム、25~100mMの塩化ナトリウム、0.5~5%のアルギニン遊離塩基、0.02~0.2mMのEDTA、0.01~0.2%のポリソルベート80を含み、pH5.0~7.0に調整される。好ましくは、オファツムマブ配合物は、50mMの酢酸ナトリウム、51mMの塩化ナトリウム、1%のアルギニン遊離塩基、0.05mMのEDTA、0.02%のポリソルベート80を含み、pH5.5に調整される。
【0069】
オファツムマブの好ましい投薬計画は以下のとおりである。
・ 0、1、及び2週目の皮下注射による20mgの初回投薬または負荷用量、続いて、
・ 投薬計画の8週目に開始し、その後6週間毎に継続する、皮下注射による20mgの後続投薬または維持用量。
【0070】
オファツムマブの注射をやり逃した場合、好ましくは、次の予定された用量まで待つことなく、可能な限り早く投与するべきである。後続用量は、推奨された間隔で投与するべきである。
【0071】
一実施形態では、オファツムマブ配合物は、プレフィルドシリンジまたは自動注射器、好ましくは単回用量プレフィルドシリンジまたは単回用量プレフィルド自動注射器中で提供される。好ましくは、s.c.投与用に設計されたプレフィルド自動注射器を用いる。
【0072】
好ましい実施形態では、オファツムマブ注射は、皮下使用のための無菌の防腐剤不含溶液である。好ましくは、各20mg/0.4mLのプレフィルドペンまたはプレフィルドシリンジは、0.4mLの溶液を送達する。好ましくは、各0.4mLは、20mgのオファツムマブ及びアルギニン(4mg)、エデト酸二ナトリウム(0.007mg)、ポリソルベート80(0.08mg)、酢酸ナトリウム三水和物(2.722mg)、塩化ナトリウム(1.192mg)、及び注射用蒸留水(pH5.5のUSP)を含有する。塩酸を添加してpHを調整してもよい。
【0073】
好ましい実施形態では、オファツムマブ配合物は、好ましくは皮下注射による患者の自己投与用である。
【0074】
好ましい実施形態では、上記の配合物は、腹部、大腿部、または外側上腕部に皮下投与される。好ましい実施形態では、上記の配合物は、色素性母斑、瘢痕、または皮膚が柔らかい、あざがある、赤化した、硬い、もしくは無傷でない部位には投与されない。
【0075】
一実施形態では、上記のオファツムマブ配合物の第1の注射は、医療専門家の指導の下で行うことができる。注射関連の反応が起きた場合、対症的治療が推奨される。投与の前に、ペンまたはプレフィルドシリンジを冷蔵庫から取り出し、例えば約15~30分間かけて室温に到達させることが好ましい。好ましい実施形態では、本発明のオファツムマブ配合物は、以下のとおりに入手可能な、透明からわずかに乳白色かつ無色からわずかに茶色がかった黄色の溶液である。
・ 注射:単回用量のプレフィルドペン、例えばSensoready(登録商標)ペン中20mg/0.4mL
・ 注射:単回用量のプレフィルドシリンジ中20mg/0.4mL。
【0076】
本発明の好ましい実施形態では、オファツムマブの投与は、活動性感染症、例えばCOVID-19を有する患者においては感染が解消されるまで遅延させる。あるいは、オファツムマブは、感染中、例えば、COVID-19の感染中に投与することもできる。したがって、オファツムマブの投与は、感染中、例えば、COVID-19の感染中に継続され得る。
【0077】
本発明の別の好ましい実施形態では、オファツムマブでの治療開始時、治療中、及び治療中止後の免疫グロブリンのレベルは、B-細胞充満(repletion)まで臨床的に指示されるとおりにモニタリングされる。オファツムマブ治療の中止は、免疫グロブリンレベルが免疫低下を示す場合、患者が重篤な日和見感染症または再発性感染症を発症する場合に検討される。
【0078】
本発明の一実施形態では、オファツムマブが、オファツムマブ以外の疾患修飾療法で治療されたことのある患者において使用され、ここで、以前の疾患修飾療法の薬物は、オクレリズマブ、リツキシマブ、フィンゴリモド、テリフルノミド、インターフェロンβ、及びグラチラマー酢酸塩から選択される。
【0079】
本発明の更なる主題は、小児多発性硬化症の治療に使用するためのオファツムマブであり、ここで治療は長期治療であり、血清IgG濃度は一定範囲内に維持され、上記の範囲は、未治療の患者において本質的に同じである。
【0080】
本発明との関係において、「未治療の患者」とは、MSまたは臨床的に分離された症候群(CIS)と診断され、B細胞及び/またはT細胞阻害剤を投与されていない小児患者を指す。好ましい実施形態では、未治療の患者は、600~2500mg/dlの範囲のIgG濃度を示す。
【0081】
本発明の別の主題は、小児多発性硬化症の治療に使用するためのオファツムマブであり、ここでは血清IgG濃度が低下した小児患者が治療される。
【0082】
本発明の更に別の主題は、多発性硬化症の治療に使用するためのオファツムマブであり、ここでは血清Ig濃度、具体的には血清IgG濃度に関連した危険因子を有する小児患者が治療される。
【0083】
本発明の一実施形態では、オファツムマブは、活動性のHBV感染を有する小児患者、特にB型肝炎表面抗原[HBsAg]及び抗HBV試験の陽性結果によって確認された活動性のHBV感染を有する小児患者には投与されない。オファツムマブは、HBsAgが陰性であり、B型肝炎コア抗体[HBcAb+]が陽性であるか、またはHBV[HBsAg+]のキャリアである小児患者には投与されてもよく、投与されなくてもよい。
【0084】
本発明の別の実施形態では、オファツムマブは、急性または慢性のA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、及び/またはE型肝炎感染症を有する小児患者には投与されない。
【0085】
本発明の別の実施形態では、オファツムマブは、オファツムマブの意図された第1の投与の4週間前以内に生ワクチンまたは生弱毒化ワクチン(水痘帯状ヘルペスウイルスまたは麻疹用を含む)を投与されたことのある小児患者には投与されない。
【0086】
本発明の更なる主題は、多発性硬化症を治療するための方法であり、上記の治療はオファツムマブを必要とする患者にこれを投与することを含み、ここで患者は、
i)最大40kgの体重を有し、及び/または
ii)年齢が5~17歳である。
【0087】
本発明の更なる主題は、上述の治療で使用するための薬剤の製造方法である。
【0088】
定義
「治療」または「治療する」という用語は、例えばオファツムマブの患者への適用または投与として定義することができ、その目的は、多発性硬化症(MS)などの疾患の症状を消失、軽減または緩和することである。特に、「治療」という用語は、患者に対して臨床的に有意な効果を達成すること、例えば、RMSを治療するときに年間再発率の臨床的に有意な低下を達成することを含む。この用語は、MSの進行形態への移行を防止することを更に含む。
【0089】
「患者」という用語は、好ましくは、ヒト患者、例えば、本明細書に記載の障害を有する患者または該障害を有する危険性がある患者を指す。好ましくは、患者は小児患者である。本発明によれば、本明細書に記載の治療は、個々の患者のみならず患者集団に適している。
【0090】
「小児患者」という用語は、年齢が18歳までの患者を包含し、したがって、子供のみならず青年を含む。好ましくは、小児患者は年齢が5~17歳、より好ましくは10~18歳未満である(すなわち、これらの患者はまだ18歳の誕生日を迎えていない)。より好ましくは、小児患者は、最大40kgの体重を有する。小児患者が少なくとも25kgの体重を有することが更に好ましく、より好ましくは、小児患者は少なくとも25kgかつ最大40kgの体重を有する。
【0091】
より好ましくは、小児患者は年齢が5~17歳であり、最大40kg、好ましくは25~40kgの体重を有する。
【0092】
本明細書で使用するとき、用語「子供」は、年齢が5~12歳の個体を指し、用語「青年」は、年齢が13~18歳未満の年齢の個体を指す。
【0093】
用語「有害事象」(AE)は、患者または臨床研究における任意の望ましくない医療上の出来事に関し得、ここで対象は、本治療と必ずしも因果関係を有さない医薬品を投与される。したがって、有害事象(AE)は、医薬品(治験薬)に関係しているか否かにはかかわらず、医薬品(治験薬)の使用と時間的に関連した、任意の好ましくなくかつ意図されたものでない徴候(異常な検査所見を含む)、症状、または疾患であり得る。
【0094】
RRMS
再発寛解型多発性硬化症(RRMS)は、好ましくは熱または感染症の非存在下における、新たな神経学的欠損または24時間よりも長く持続する神経学的悪化のエピソードと定義される再発を特徴とし得る。
【0095】
寛解期間中は疾患の明らかな進行が存在しない場合がある。異なる時点において、RRMSは、活動性(再発及び/または新規なMRI活動性の証拠を伴う)もしくは非活動性のいずれか、及び悪化(再発後の特定の期間にわたる障害の確認された増加)または非悪化のいずれかとして、更に特徴付けられ得る。Lublin,Neurology.2014 Jul 15;83(3):278-286が参照される。
【0096】
RMS
RMS(再発型多発性硬化症)という用語は、RRMS、SPMS、及び臨床的に分離された症候群(CIS)を包含する。
【0097】
一次進行型MS(PPMS)
PPMSは、早期再発または寛解を伴わない、症状発生からの神経学的機能の悪化(障害の蓄積)を特徴とし得る。PPMSは、様々な時点で、活動性(不定期の再発及び/または新規なMRI活動性の証拠を伴う)または非活動性のいずれか、及び進行あり(再発または新規なMRI活動性の有無にかかわらず、経時的な変化の客観的評価尺度に基づく疾患悪化の証拠)または進行なしのいずれかとして更に特徴付けられ得る。Lublin 2014が参照される。
【0098】
PPMSを有する各個人の経験は固有であるだろう。PPMSは、再発または新規のMRI活動性の有無にかかわらず、疾患が安定している短い期間と、MRI上の新規な再発または病変の有無にかかわらず、障害の増加が生じる期間とを有し得る。
【0099】
二次進行型MS(SPMS)
SPMSは、最初の再発寛解型の経過に続く。RRMSと診断された大半の人々が、最終的には経時的な神経学的機能の進行性悪化(障害の蓄積)が存在する二次進行型の経過に移行する。SPMSは、様々な時点で、活動性(再発及び/または新規なMRI活動性の証拠を伴う)または非活動性のいずれか、及び進行あり(再発の有無にかかわらず、経時的な変化の客観的評価尺度に基づく疾患悪化の証拠)または進行なしのいずれかとして更に特徴付けられ得る。Lublin 2014が参照される。
【0100】
SPMSを有する各個人の経験は固有であるだろう。SPMSは、再発寛解型MSの後に続く。障害は、疾患活動性の証拠(再発またはMRI上の変化)の有無にかかわらず、経時的に徐々に増加する。SPMSにおいては、不定期の再発及び安定期間が生じ得る。
【0101】
商標名Mayzent(登録商標)で販売されるシポニモドは、多発性硬化症(MS)に使用される経口用の選択的スフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーターである。
【0102】
再発
再発は、新たな神経学的欠損または好ましくは24時間よりも長く持続する神経学的悪化のエピソードとして定義され得る。言い換えれば、再発は、好ましくは少なくとも24時間持続する神経学的機能不全の個別のエピソード(当技術分野において、「発作」、「急激な再燃(flare-up)」、または「増悪」とも称される)とみなされ得る。通常、再発の後に、完全なまたは部分的な回復、及び症状の進行または障害の蓄積がない期間(寛解)が続く。
【0103】
「年間再発率」(ARR)という用語は、1年間あたりのMS再発の数、具体的には1年間あたりの平均的患者のMS再発の数に関する。本明細書で使用するとき、「平均的患者」という用語は、治療された患者集団の平均的挙動に関する。
【0104】
本明細書で使用するとき、B細胞とは、リンパ球亜型の白血球の型に関し得る。B細胞は、免疫グロブリン(例えば、IgG)などの抗体を分泌することにより、適応免疫系の体液性免疫成分中で機能する。更に、B細胞は、抗原を提示し、サイトカインを分泌し得る。B細胞は、T細胞及びナチュラルキラー細胞とは異なり、その細胞膜上にB細胞受容体(BCR)を発現する。BCRは、それに対して抗体応答を開始する特異的抗原にB細胞が結合することを可能にする。
【0105】
本明細書で使用するとき、T細胞とは、胸腺で発生するリンパ球の型に関し得る。T細胞は、細胞表面上のT細胞受容体の存在によって他のリンパ球と区別され得る。
【0106】
臨床的に分離された症候群(CIS):
臨床的に分離された症候群(CIS)は、多発性硬化症(MS)を示唆する中枢神経系(CNS)の炎症性脱髄症状の単回の臨床的発作を指し得る。CIS提示は、単巣性または多巣性であり得、典型的には視神経、脳幹、小脳、脊髄、または大脳半球に影響を与え得る。Miller et al,Clinically isolated syndromes,Lancet Neurol.2012;11:157-169が参照される。
【0107】
Gd+病変
ガドリニウム(「コントラスト」)は、MRIスキャン中に個人の静脈に注入される化学的化合物である。ガドリニウムは、通常、血液脳関門のために血流から脳または脊髄へと通ることができない。しかし、脳または脊髄内での活動性炎症中は、MS再発中のように、血液脳関門は破壊されて、ガドリニウムが通ることが可能になる。続いて、ガドリニウムは、脳または脊髄内に侵入し、MS病変内へ漏れ込み、これを明るくし(lighting it up)、MRI上にハイライトされたスポット生成することができる。こうしたMS病変は、ガドリニウム増強病変またはGd+病変と呼ばれる。
【0108】
T1及びT2病変
T1及びT2は、磁気共鳴画像を生成するために使用される異なるMRI法に関する。具体的には、T1及びT2は、磁気パルスと画像の記録との間にかかる時間を指す。これらの異なる方法は、中枢神経系における異なる構造または化学物質を検出するために使用される。T1及びT2病変は、T1またはT2法のいずれかを用いて病変が検出されたかどうかを指す。T1 MRI画像は、活動性炎症の部位をハイライトすることによって、現在の疾患活動性に関する情報を提供する。T2 MRI画像は、疾患負荷または病変負荷(新旧両方の病変部位の合計量)に関する情報を提供する。
【0109】
「年間T2病変率」という用語は、1年間あたりのMRI上の新規のまたは新規に拡大するT2病変の数に関する。
【0110】
EDSS
総合障害度スケール(Expanded Disability Status Scale、EDSS)は、多発性硬化症における障害を定量化し、経時的な障害のレベルの変化をモニタリングする方法である。
【0111】
EDSSスケールは、より高いレベルの障害を表す0.5単位増分で0~10の範囲にわたる。採点は、神経科医による検査に基づく。
【0112】
EDSSステップ1.0~4.5は、いかなる援助がなくとも歩行が可能なMSを有する人を指し、以下の8つの機能系(FS)の障害の尺度に基づいている。
・ 錐体(筋力低下または四肢の運動困難)
・ 小脳(運動失調、平衡感覚喪失、協調喪失、または振戦)
・ 脳幹(言語能力、嚥下、及び眼振の問題)
・ 感覚性(麻痺または感覚喪失)
・ 腸及び膀胱機能
・ 視覚機能(視力の問題)
・ 大脳機能(思考及び記憶の問題)
・ その他。
【0113】
機能系(FS)とは、特定の作業を司る脳内ニューロンのネットワークを表す。各FSは、0(障害なし)から5または6(より重篤な障害)までのスケールで採点される。Kurtzke JF.Rating Neurologic Impairment in Multiple Sclerosis:An Expanded Disability Status Sclale(EDSS).Neurology.1983,Nov;33(11):1444-52が参照される。
【0114】
多発性硬化症影響スケール(MSIS-29)。
MSIS-29バージョン2は、身体的及び心理的の2つの領域を含む、29項目の自己記入式アンケートである。回答は、1(全くない)~4(極めて)の範囲に及ぶ4ポイントの順序スケールで捕捉され、より高いスコアほど日常生活へのより大きな影響を反映する。MSIS-29は、完了に約5分間かかり、質問は、過去2週間の間の患者の日常生活に対するMSの影響について患者自身の見解を判定するように設計されている。Hobart J and Cano S(2009),“Improving the evaluation of therapeutic interventions in multiple sclerosis:the role of new psychometric methods”,Health Technol Assess;13(12):iii,ix-x,1-177.NS RO to Hobart J,Lamping D,Fitzpatrick R,et al(2001),“The Multiple Sclerosis Impact Scale (MSIS-29):a new patient-based outcome measure”,Brain;124(Pt 5):962-73が参照される。
【0115】
オファツムマブ:
オファツムマブは、CD20タンパク質に対するヒトモノクローナル抗体である。オファツムマブは、CD20分子の小細胞外ループ及び大細胞外ループの両方に特異的に結合し得る。オファツムマブのFabドメインはCD20分子に結合し得、Fcドメインは、免疫エフェクター機能を媒介して、インビトロでB細胞の溶解を生じさせる。具体的には、オファツムマブは、例えばB細胞上に発現したヒトCD20に結合する組換えヒトモノクローナル免疫グロブリンG1(IgG1)抗体である。オファツムマブは、マウスNS0細胞株中で産生され、2つのIgG1重鎖及び2つのカッパ軽鎖からなり、分子量は約146kDaである。
【0116】
オファツムマブは、EP1558648B1及びEP3284753B1で説明されている。drugbank.caの受託番号DB06650及びWHO Drug Information,Vol.20,No.1,2006の記述に対して更なる参照がなされる。一実施形態では、タンパク質の化学式は、C6480H10022N1742O2020S44であり、タンパク質の平均重量は約146100Daである。米国では、オファツムマブは、Kesimpta(登録商標)の商標名で市販される。
【0117】
オファツムマブの代謝経路は、遍在するタンパク質分解酵素による小ペプチド及びアミノ酸への分解であり得る。オファツムマブは、他のIgG分子と同様の標的非依存性経路、及びB細胞への結合に関連する標的媒介性経路の2つの方法で除去され得る。
【0118】
定常状態におけるオファツムマブの半減期は、特に20mg用量の繰り返しの皮下投与後では、約16日であり得る。
【0119】
オファツムマブは、好ましくは、シトクロムP450系または他の薬物代謝酵素によって代謝される化学薬品と共通のクリアランス経路を共有しない。好ましくは、オファツムマブは、薬物代謝酵素の発現の調節に関与しない。
【0120】
負荷用量
負荷用量とは、好ましくは負荷用量よりも低いかまたは負荷用量よりも長い間隔で投与される維持用量に移行する前の、治療(例えば、DMT)の開始時点で与えられ得る、薬物の初期の用量、好ましくは初期のより高い用量である。
【0121】
疾患修飾療法(DMT)
多発性硬化症(MS)に対する根治治療はまだ存在しないが、いくつかの疾患修飾薬(DMD)がMSに関して認可されているため、「疾患修飾療法」という用語が使用される。一般に、RMSに対するDMTは、再発の頻度及び/または重症度を低減させる。したがって、DMTはRMS患者に対する治療法ではないが、ある者が有する再発の回数及びその重症さを低減することはできる。DMTとしては、インターフェロンβ、グラチラマー酢酸塩、テリフルノミド、ミトキサントロン、フマル酸ジメチル、クラドリビン、フィンゴリモド、シポニモド、ポネシモド、アレムツズマブ、ダクリズマブ、ナタリズマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、及びリツキシマブなどのDMDによる治療が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0122】
多発性硬化症を有する小児患者におけるオファツムマブ及びシポニモド対フィンゴリモドの有効性及び安全性を比較する第3相臨床研究
本研究の目的及び理論的根拠は、小児多発性硬化症(MS)患者(年齢10歳~18歳未満)における、フィンゴリモドに対するオファツムマブ及びシポニモドの有効性を実証し、その安全性/耐容性を評価することである。
【0123】
目的
主な目的は、最大2年間治療された標的の小児MS参加者における、年間再発率(ARR)によって評価される、フィンゴリモドと比較したオファツムマブ及び/またはシポニモドの非劣性を実証することである。
【0124】
二次的な目的は、年間再発率(確認された再発のARR)によって評価される、ヒストリカルなインターフェロンβ-1aのデータと比較した、オファツムマブ及び/またはシポニモドの優位性を実証することを特に含む。
【0125】
二次的な目的は、以下を更に含む。
- 1年間あたりのMRI上の新規のまたは新規に拡大するT2病変の数(年間T2病変率)によって評価して、フィンゴリモドと対比したオファツムマブ及び/またはシポニモドの、新規のまたは新規に拡大するT2病変の数に対する効果を審査すること
- ニューロフィラメント軽鎖(NfL)血清濃度によって評価して、フィンゴリモドと対比したオファツムマブ及び/またはシポニモドの、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)濃度に対する効果を審査すること
- 小児MS患者におけるオファツムマブ及びシポニモド(ならびにその代謝産物M17)の薬物動態(PK)特性を、オファツムマブ及びシポニモドならびに(代謝産物M17)の血漿濃度によって評価して審査すること
- 抗オファツムマブ抗体を有する参加者の比率によって評価して、免疫原性(オファツムマブ)を審査すること
- 有害事象、コロンビア自殺重症度評価スケール(C-SSRS)、ECG、実験室及び眼科的データ、肺機能試験、ならびにバイタルサインによって評価して、オファツムマブ及びシポニモドの安全性及び耐容性を審査すること
【0126】
研究設計
本研究は、約180人の参加者を1:1:1の無作為化割り当て比で無作為化する(60人の参加者はs.c.オファツムマブに、60人は経口シポニモドに、及び60人は経口フィンゴリモドに無作為に割り当てられる)。これは、オファツムマブ治療群及びシポニモド治療群のそれぞれで、少なくとも5人の体重(BW)が≦40kgの参加者、及び少なくとも5人の年齢が10~12歳の参加者の目標登録を含む。
【0127】
この研究は、以下の3つの部分から構成される。
- スクリーニング期間及び二重盲検治療期間を含むコア部分
- 二重盲検治療による移行期間を含む延長部分
- 続いて、非盲検治療期間
- 治療後の追跡部分
【0128】
分析
有効性評価は、以下の評価を含む:
- MS再発
- EDSS
- MRI
- ニューロフィラメント軽鎖(NfL)血清濃度
- シンボルデジットモダリティ試験(Symbol Digit Modalities Test、SDMT)
- B細胞
【0129】
本研究の主要評価項目は、1年間あたりに確認された再発の平均回数(すなわち、確認された再発の合計回数を本研究の合計日数で割り、365.25を掛けた)として定義される年間再発率(ARR)である。
【0130】
二次的な目的の評価項目としては、年間再発率(確認された再発のARR)、1年間あたりのMRI上の新規のまたは新規に拡大するT2病変の数(年間T2病変率)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)血清濃度、オファツムマブ及びシポニモドならびに(代謝産物M17)の血漿濃度、抗オファツムマブ抗体を有する参加者の比率、有害事象、コロンビア自殺重症度評価スケール(C-SSRS)、ECG、実験室及び眼科的データ、肺機能試験、ならびにバイタルサインが挙げられる。
【0131】
ARRは、確認された再発のみを含むベイズ一次分析モデル(Bayesian primary analysis model)を用いて分析する。
【0132】
二次的評価項目の分析は、有効性及び/または薬力学的評価項目、例えば、ヒストリカルなインターフェロンのデータとの比較、新規の/新規に拡大するT2病変の年率を含む。
【0133】
オファツムマブ及びシポニモドのPK/PDの関連性
絶対B細胞計数の予備的PK/PD分析は、研究の主要な結果の評価後に関連すると考えられる場合に行われる。
【0134】
疾患活動性の証拠なし
臨床及びMRI疾患活動性のない参加者の割合(疾患活動性の証拠なし;NEDA-3)は、治療、T2病変容積、及びベースライン時の年齢を調整したロジスティック回帰モデル中で、1年目及び2年目に断面的に分析される。NEDA-3は、3mCDWなし、確認されたMS再発なし、及びベースラインと比較して任意のMRIスキャン上の新規のまたは拡大するT2病変なしとして定義される。分析は、分析の評価時点まで追跡された参加者のみを考慮する(例えば、疾患自由度(disease freedom)の12か月評価において12か月以上追跡された参加者のみ、など)。中間欠損値(例えば、MRI評価の不足による)は、疾患活動性を免れていないとみなされる。
【0135】
3か月持続する障害悪化
3か月持続する障害悪化(3-month confirmed disability worsening、3mCDW)は、少なくとも3か月持続したEDSSのベースラインからの増加として定義される。これは、患者がその時点で障害悪化の基準を満たしている予定されたまたは予定されていない来院の後で、悪化(「事象」)が、憎悪開始から3か月後に行われる最初の予定された来院において、またはそれより後に確認され得るまで、全てのEDSS評価(予定されたまたは予定されていない)も悪化の基準を満たしている必要があることを意味する。研究中に3mCDW事象を経験しなかった全ての参加者には、中途打切りが行われる(中途打切りは、早期の中断または任意の別の理由により確認ができなかった「暫定的な(tentative)」障害悪化を有した参加者でも行われる)。中途打切り時間は、第1の用量から最後の利用可能なEDSS評価までの時間として定義される。
【0136】
更に評価を受けるのは、以下を含む対象報告アウトカムである。
- 小児健康効用9D(CHU9-D)
- 小児生活の質インベントリ(PedsQL)
- PedsQL多次元疲労スケール
【0137】
本発明は更に、以下の実施形態を特徴とする。
1.i)最大40kgの体重を有し、及び/または
ii)年齢が5~17歳である、患者における多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブ。
【0138】
2.最大40kgの体重を有する患者における多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブ。
【0139】
3.i)最大40kgの体重を有し、かつ
ii)年齢が5~17歳である、患者における多発性硬化症の治療または予防に使用するためのオファツムマブ。
【0140】
4.前記患者が小児患者である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0141】
5.前記患者の年齢が10~17歳である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0142】
6.a)オファツムマブが、投薬計画の0、1、2週目において負荷用量として投与され、
b)オファツムマブが、前記投薬計画の8週目に開始し、その後6週間毎に継続する維持用量として投与される、前記投薬計画に従ってオファツムマブが投与される、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0143】
7.前記負荷用量及び前記維持用量が、20mgのオファツムマブのs.c.注射を含む、実施形態6に記載の使用のためのオファツムマブ。
【0144】
8.前記治療または予防が、1マイクロリットルあたり8個の細胞の閾値を下回るB細胞の枯渇を達成する、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0145】
9.多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0146】
10.多発性硬化症が、臨床的に分離された症候群(CIS)である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0147】
11.オファツムマブはフィンゴリモドに対して年間再発率の点において非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0148】
12.オファツムマブが、前記年間再発率を維持する点において、好ましくは前記年間再発率を低下させる点において、フィンゴリモドに対して非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0149】
13.オファツムマブはインターフェロンに対して年間再発率の点において非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0150】
14.オファツムマブが、前記年間再発率を維持する点において、好ましくは前記年間再発率を低下させる点において、インターフェロンに対して非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0151】
15.インターフェロンが、インターフェロンβ、具体的にはインターフェロンβ1a、インターフェロンβ1b、及びそのPEG化形態からなる群から選択されるインターフェロンβである、実施形態13または14に記載の使用のためのオファツムマブ。
【0152】
16.オファツムマブはシポニモドに対して年間再発率の点において非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0153】
17.オファツムマブが、前記年間再発率を維持する点において、好ましくは前記年間再発率を低下させる点において、シポニモドに対して非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0154】
18.平均患者の前記年間再発率が0.67未満である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0155】
19.平均患者の前記年間再発率が最大で0.12である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0156】
20.前記ARRがインターフェロンと比較して少なくとも26%低下し、より好ましくは前記ARRの低下が少なくとも63%、より好ましくは少なくとも78%、具体的には少なくとも82%である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0157】
21.オファツムマブが、オファツムマブ以外の疾患修飾療法で治療されたことのある患者において使用され、前記以前の疾患修飾療法の薬物が、オクレリズマブ、リツキシマブ、フィンゴリモド、テリフルノミド、インターフェロンβ、及びグラチラマー酢酸塩から選択される、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0158】
22.治療が長期治療である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0159】
23.オファツムマブの第1の用量が投与される前に、前投薬が前記患者に施される、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0160】
24.前記前投薬が、アセトアミノフェン、抗ヒスタミン剤、及び/またはステロイドを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0161】
25.前記前投薬が、オファツムマブ注射の30~60分前に施される、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0162】
26.前投薬が、オファツムマブの第1の用量の前に施されない、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0163】
27.COVID-19に急性感染した、または以前に感染した患者が治療される、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0164】
28.前記治療が、COVID-19の感染中に継続される、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0165】
29.前記治療は、COVID-19感染中は中断され、前記感染が解消された後で継続される、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0166】
30.オファツムマブはフィンゴリモドに対して年間T2病変率の点において非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0167】
31.年間T2病変率がフィンゴリモドと比較して低減する、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0168】
32.オファツムマブはフィンゴリモドに対してニューロフィラメント軽鎖(NfL)血清濃度の点において非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0169】
33.NfL血清濃度によって測定される神経軸索損傷が、フィンゴリモドと比較して低減する、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0170】
34.オファツムマブはフィンゴリモドに対して、安全性及び耐容性の点において、以下の基準:
- 治療中に発生した有害事象(TEAE)の頻度及び重症度、
- コロンビア自殺重症度評価スケール(C-SSRS)、
- 12誘導ECG、
- 実験室及び眼科的データ、
- 肺機能試験、
- バイタルサイン、のうち少なくとも1つによって決定して非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0171】
35.1年間あたりのGd増強T1病変の平均数が、フィンゴリモドと比較して低減する、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0172】
36.3か月持続する障害悪化(3mCDW)の危険性が、フィンゴリモドと比較して低減する、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0173】
37.6か月持続する障害悪化(6mCDW)の危険性が、フィンゴリモドと比較して低減する、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0174】
38.オファツムマブはフィンゴリモドに対して免疫原性及び内因性の抗薬物抗体(ADA)の点において非劣性である、先行実施形態のいずれか1つに記載の使用のためのオファツムマブ。
【0175】
39.多発性硬化症を治療するための方法であって、前記治療はオファツムマブを必要とする患者にこれを投与することを含み、ここで前記患者は、
i)最大40kgの体重を有し、及び/または
ii)年齢が5~17歳である、前記方法。
【0176】
40.多発性硬化症の治療に使用するための薬剤の製造方法であって、治療対象の前記患者が、
i)最大40kgの体重を有し、及び/または
ii)年齢が5~17歳である、前記方法。
【国際調査報告】