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特表2024-531333マイトマイシンの安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】マイトマイシンの安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/407 20060101AFI20240822BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240822BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240822BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K31/407
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/02
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509340
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 IB2022058697
(87)【国際公開番号】W WO2023042107
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202121042020
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519263578
【氏名又は名称】インタス ファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シャー,ニサーグ プラヴィンクマール
(72)【発明者】
【氏名】ソニ,マヘシュクマール パラスマルジ
(72)【発明者】
【氏名】ダダニヤ,ダワルクマール ヴァッラバダス
(72)【発明者】
【氏名】シン,アジート クマール
(72)【発明者】
【氏名】セーガル,アシシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076BB21
4C076DD23
4C076DD37S
4C076DD43
4C076DD51S
4C076DD52
4C076DD56S
4C076EE23
4C076FF11
4C076FF51
4C076GG41
4C086AA01
4C086CB03
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA56
4C086MA65
4C086NA03
4C086ZC80
(57)【要約】
本発明は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩の、安定なすぐに希釈できる(RTD)注射用医薬製剤に関する。前記製剤は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)と、ポリエチレングリコール(PEG)と、任意選択により他の薬学的に許容される賦形剤とをさらに含む。さらに、本発明は、前記製剤の調製のための方法を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤であって、
a.マイトマイシンと、
b.N,N-ジメチルアセトアミドと、
c.ポリエチレングリコールと、
d.任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤と
を含み、
e.前記製剤のpHが約5~7であり、
2~8℃で少なくとも3カ月間にわたって貯蔵された場合、前記製剤中の不純物Dおよび総不純物が、個々に、多くとも1.0%w/wである、
安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤。
【請求項2】
マイトマイシンが約1mg/ml~50mg/mlの濃度である、請求項1に記載の安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤。
【請求項3】
マイトマイシンが約20mg/mlの濃度であり、N,N-ジメチルアセトアミドが約0.1~0.5mlの量である、請求項1に記載の安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤。
【請求項4】
マイトマイシンが約40mg/mlの濃度であり、N,N-ジメチルアセトアミドが約0.1~0.5mlの量である、請求項1に記載の安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤。
【請求項5】
N,N-ジメチルアセトアミドおよびポリエチレングリコールが、約1:9~約9:1の範囲の重量比である、請求項1に記載の安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤。
【請求項6】
他の薬学的に許容される賦形剤が、メチオニン、モノチオグリセロール、L-システイン、チオグリコール酸、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびそれらの混合物から選択される抗酸化剤を含んでいてもよい、請求項1に記載の安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤。
【請求項7】
所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈される、請求項1に記載の安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤。
【請求項8】
静脈内および/または膀胱内投与ルートによって投与される、請求項1に記載の安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤。
【請求項9】
マイトマイシンと、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含む、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤の調製のための方法であって、前記製剤が、下記の工程:
i.必要とされる分量のN,N-ジメチルアセトアミドを製造容器にとり、撹拌しながら窒素ガスをスパージする工程と、
ii.任意選択により、必要とされる分量の他の薬学的に許容される賦形剤を工程iに添加し、窒素スパージしながら撹拌してそれを溶解する工程と、
iii.必要とされる分量のマイトマイシンを工程iiに添加し、窒素スパージしながら撹拌する工程と、
iv.ポリエチレングリコールを工程iiiの溶液に添加して、最大でバッチサイズまで体積を補い、適切な混合のために窒素スパージしながら撹拌する工程と、
v.上記のバルク溶液を濾過する工程と、
vi.濾過された溶液を琥珀色ガラスバイアルに充填し、前記バイアルをゴム栓で塞ぎ、前記バイアルを密封する工程と、
を含む方法によって調製される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年9月17日に出願されたインド仮出願第IN202121042020号に関連し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩の、安定なすぐに希釈できる(RTD)注射用医薬製剤に関する。前記製剤は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)と、ポリエチレングリコール(PEG)と、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とをさらに含む。さらに、本発明は、前記製剤の調製のための方法を開示する。
【背景技術】
【0003】
マイトマイシンは、青紫色の結晶性粉末である。マイトマイシンは、C1518の実験式、334.33の分子量および下記の構造式:
【0004】
【化1】

を有する。
【0005】
マイトマイシンは、局所および注射用剤形として市販されている。注射用剤形は、注射のための凍結乾燥粉末として入手可能である。
【0006】
歴史的に、マイトマイシンの安定性課題により、現在市販されている注射用剤形は、Bristol Myers Squibbによる商標名MUTAMYCIN、SupergenによるMITOZYTREX、およびMedacによるMITOMYCINで、凍結乾燥粉末の形態で入手可能である。MUTAMYCINの市販製剤は、医薬品有効成分としてマイトマイシンおよび薬学的に許容される賦形剤としてマンニトールを含有する。MUTAMYCINは、3つの投薬量強度、すなわち、バイアル当たり5mg、バイアル当たり20mgおよびバイアル当たり40mgとして入手可能である。さらに、MITOZYTREXの市販製剤は、医薬品有効成分としてマイトマイシンおよび薬学的に許容される賦形剤としてヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HPβCD)を含有する。MITOZYTREXは、1つの投薬量強度、すなわち、バイアル当たり5mgとして入手可能である。さらに、MedacによるMITOMYCINの市販製剤は、医薬品有効成分としてマイトマイシンおよび薬学的に許容される賦形剤として尿素を含有する。MedacによるMITOMYCINは、4つの投薬量強度、すなわち、バイアル当たり2mg、バイアル当たり10mg、バイアル当たり20mgおよびバイアル当たり40mgとして入手可能である。すべての凍結乾燥製品は、それを必要とする患者への投与前に、粉末の再構成を必要とする。
【0007】
US10688049は、マイトマイシンを含む非経口投与のための凍結乾燥粉末組成物を開示しており、これは、高い安定性を特徴とし、急速に再構成されて溶液を形成することができる。さらに、添加物としてtert-ブタノールおよび水の混合物ならびに尿素を含む、溶液を開示している。
【0008】
US6048845は、抗潰瘍化有効量の置換シクロデキストリン化合物、細胞毒性薬、すなわちマイトマイシン、および増量剤としてマンニトールを含む、組成物を開示している。
【0009】
先行技術文献から、マイトマイシンは、凍結乾燥粉末製剤の形態で製造される場合、安定性、溶解度、再構成および投与前のそれらの最終濃度に関連する課題を有すると結論付けることができる。以前入手可能であった凍結乾燥製品は、より長い再構成時間および投与前に制限内で最終濃度にすることの困難に関係する問題に直面していた。
【0010】
背景で開示されたようなこれまでの取り組みを考慮すると、マイトマイシンの製剤の溶解度、安定性および再構成時間改善の課題に対処し、マイトマイシンの安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤としての代替物を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩を含む、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールとを含む、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含む、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈される、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈され、静脈内および/または膀胱内投与ルートによってさらに投与される、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含む、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤の調製のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩の、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤を提供する。前記製剤は、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とをさらに含む。さらに、本発明は、前記製剤の調製のための方法を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願において本明細書で使用される場合のすべての用語は、別段の記載がない限り、当該技術分野において公知の通りのそれらの普通の意味で理解されるものとする。本出願において使用される場合のある特定の用語についての他のより具体的な定義は、以下で説明する通りであり、別段の明示的に提示された定義がより広い定義を提供しているのでない限り、本明細書および請求項全体を通して均一に当てはまることが意図されている。
【0019】
本発明の目的のために、与えられた任意の範囲は、該範囲の下端点および上端点の両方を含む。与えられた範囲は、具体的な記載がない限り、近似とみなされるべきである。
【0020】
用語「すぐに希釈できる(RTD)」は、使用前にヘルスケア提供者によって固体から再構成されない滅菌および安定な注射用製剤であり、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかでさらに希釈される、製剤を指す。さらに、RTD製剤は、医薬製造業者によって、液体形態で好適なコンテナ(例えば、バイアル、シリンジ、バッグおよびコンテナ)に入れて供給される。
【0021】
用語「約」は、定められている値のプラスまたはマイナス10%以内を指す。
【0022】
用語「安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤」は、マイトマイシンと、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、2~8℃の温度で少なくとも3カ月間にわたっておよび25℃の温度/60%RHで少なくとも1カ月間にわたって貯蔵された場合、製剤中の不純物Dおよび総不純物が、個々に、多くとも(NMT)1.0%w/wであり、製剤のpHが、約5~7である、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤を指す。
【0023】
用語「総不純物」は、すべての定義された(すなわち、アルボマイトマイシンC(不純物D)、1,2 cis 1-ヒドロキシ2,7-ジアミノマイトセンおよび1,2 trans 1-ヒドロキシ2,7-ジアミノマイトセン)および他の特徴付けられていない不純物を指す。
【0024】
本発明は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩を含む安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤、および前記製剤の調製のための方法を提供する。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールとを含む、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤を提供する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含む、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤を提供する。
【0027】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、N,N-ジメチルアセトアミドは、約0.1ml~0.5mlの量で存在する。
【0028】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在する。
【0029】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩は、約1mg/ml~50mg/mlの濃度で存在する。
【0030】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩は、約1mg/ml~50mg/mlの濃度で存在し、N,N-ジメチルアセトアミドは、約0.1ml~0.5mlの量で存在し、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、前記製剤は、約5.0~7.0のpHを有する。
【0031】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩は、約1mg/ml~50mg/mlの濃度で存在し、N,N-ジメチルアセトアミドは、約0.1ml~0.5mlの量で存在し、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、前記製剤は、約5.0~7.0のpHを有し、これは、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈される。
【0032】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩は、約1mg/ml~50mg/mlの濃度で存在し、N,N-ジメチルアセトアミドは、約0.1ml~0.5mlの量で存在し、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、前記製剤は、約5.0~7.0のpHを有し、これは、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈され、静脈内および/または膀胱内投与ルートによってさらに投与される。
【0033】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩は、約1mg/ml~50mg/mlの濃度で存在し、より具体的には、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩は、約2mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、20mg/mlまたは40mg/mlの濃度で存在する。
【0034】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、N,N-ジメチルアセトアミドは、約0.1ml~0.5mlの量で存在し、より具体的には、N,N-ジメチルアセトアミドは、約0.1ml、0.15ml、0.2ml、0.25ml、0.3ml、0.35ml、0.4ml、0.45mlまたは0.5mlの量で存在する。
【0035】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、より具体的には、ポリエチレングリコールは、約0.05ml、0.1ml、0.15ml、0.2ml、0.25ml、0.3ml、0.35ml、0.4ml、0.45ml、0.5ml、0.55ml、0.6ml、0.65ml、0.7ml、0.75ml、0.8ml、0.85ml、0.9ml、0.95mlまたは1.0mlの量で存在する。
【0036】
より具体的には、本発明によれば、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール300である。
【0037】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、約2mg/mlの濃度のマイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、約0.4mlの量で存在するN,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、前記製剤は、約5.0~7.0のpHを有し、これは、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈され、静脈内および/または膀胱内投与ルートによってさらに投与される。
【0038】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、約5mg/mlの濃度のマイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、約0.4mlの量のN,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、前記製剤は、約5.0~7.0のpHを有し、これは、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈され、静脈内および/または膀胱内投与ルートによってさらに投与される。
【0039】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、約10mg/mlの濃度のマイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、約0.4mlの量のN,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、前記製剤は、約5.0~7.0のpHを有し、これは、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈され、静脈内および/または膀胱内投与ルートによってさらに投与される。
【0040】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、約20mg/mlの濃度のマイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、約0.4mlの量のN,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、前記製剤は、約5.0~7.0のpHを有し、これは、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈され、静脈内および/または膀胱内投与ルートによってさらに投与される。
【0041】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、約20mg/mlの濃度のマイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、約0.2mlの量のN,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、前記製剤は、約5.0~7.0のpHを有し、これは、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈され、静脈内および/または膀胱内投与ルートによってさらに投与される。
【0042】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、約40mg/mlの濃度のマイトマイシンまたは薬学的に許容されるその塩と、約0.4mlの量のN,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、ポリエチレングリコールは、体積を最大1mlにする量で存在し、前記製剤は、約5.0~7.0のpHを有し、これは、所望の最終溶液を作製するために、投与前に、0.45%塩化ナトリウム注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液または乳酸ナトリウム注射液のいずれかで希釈され、静脈内および/または膀胱内投与ルートによってさらに投与される。
【0043】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、N,N-ジメチルアセトアミドおよびポリエチレングリコールを、約1:9~約9:1の範囲の重量比で含んでもよい。例えば、製剤において、N,N-ジメチルアセトアミドとポリエチレングリコールとの重量比は、約1:9~約9:1の範囲でありうる。
【0044】
他の薬学的に許容される賦形剤は、抗酸化剤を含んでいてもよい。
【0045】
抗酸化剤は、メチオニン、モノチオグリセロール、L-システイン、チオグリコール酸、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびそれらの混合物から選択されうるがこれらに限定されない。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、マイトマイシンと、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含む、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤の調製のための方法であって、製剤が、下記の工程:
a.必要とされる分量のN,N-ジメチルアセトアミドを製造容器にとり、撹拌しながら不活性ガス(例えば、窒素)をスパージする工程と、
b.任意選択により、他の薬学的に許容される賦形剤を工程aに添加する工程と、
c.必要とされる分量のマイトマイシンを工程bに撹拌しながら添加する工程と、
d.ポリエチレングリコールを工程cの溶液に添加して、適切な混合のために撹拌しながら最大でバッチサイズまで体積を補う工程と、
e.工程dで取得されたバルク溶液を濾過する工程と、
f.濾過されたバルク溶液をガラスバイアルに充填し、バイアルをゴム栓で塞ぎ、バイアルを密封する工程と
を含む方法によって調製される、方法を提供する。
【0047】
本発明によれば、安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤は、マイトマイシンと、N,N-ジメチルアセトアミドと、ポリエチレングリコールと、任意選択による他の薬学的に許容される賦形剤とを含み、ここで、2~8℃の温度で少なくとも3カ月間にわたっておよび25℃の温度/60%RHで少なくとも1カ月間にわたって貯蔵された場合、製剤中の不純物Dおよび総不純物は、個々に、多くとも(NMT)1.0%w/wであり、製剤のpHは、約5~7である。
【実施例
【0048】
本発明についてほんの一例として記述してきたが、添付の請求項の範囲および趣旨内に収まる、ならびに本明細書における開示に基づいて当業者に明らかであろうそれらの修正形態も、本発明の範囲内であるとみなされることを認識されたい。
【0049】
実施例1a~d:すぐに希釈できる注射用医薬製剤
【0050】
【表1】
【0051】
実施例2a~d:すぐに希釈できる注射用医薬製剤(2mg/ml)
【0052】
【表2】
【0053】
実施例3a~d:すぐに希釈できる注射用医薬製剤(5mg/ml)
【0054】
【表3】
【0055】
実施例4a~d:すぐに希釈できる注射用医薬製剤(10mg/ml)
【0056】
【表4】
【0057】
実施例5a~d:すぐに希釈できる注射用医薬製剤(20mg/ml)
【0058】
【表5】
【0059】
実施例6a~d:すぐに希釈できる注射用医薬製剤(40mg/ml)
【0060】
【表6】
【0061】
実施例7a~d:すぐに希釈できる注射用医薬製剤(20mg/ml)
【0062】
【表7】
【0063】
実施例1および2~7の製剤の調製のための方法:
a.必要とされる分量のN,N-ジメチルアセトアミドを製造容器にとり、撹拌しながら窒素ガスをスパージする;
b.必要とされる分量のマイトマイシンを工程aに添加し、窒素スパージしながら撹拌してそれを溶解する;
c.ポリエチレングリコールを工程bの溶液に添加して、最大でバッチサイズまで体積を補い、適切な混合のために窒素スパージしながら撹拌する;
d.上記のバルク溶液を濾過する;
e.濾過された溶液を琥珀色ガラスバイアルに充填する。バイアルをゴム栓で塞ぎ、バイアルを密封する。
【0064】
実施例1および2~7の製剤の調製のための方法:
a.必要とされる分量のN,N-ジメチルアセトアミドを製造容器にとり、撹拌しながら窒素ガスをスパージする;
b.必要とされる分量のブチル化ヒドロキシアニソールを工程aに添加し、窒素スパージしながら撹拌してそれを溶解する;
c.必要とされる分量のブチル化ヒドロキシトルエンを工程bに添加し、窒素スパージしながら撹拌してそれを溶解する;
d.必要とされる分量のマイトマイシンを工程cに添加し、窒素スパージしながら撹拌してそれを溶解する;
e.ポリエチレングリコールを、工程dで取得された溶液に添加して、最大でバッチサイズまで体積を補い、適切な混合のために窒素スパージしながら撹拌する;
f.上記のバルク溶液を濾過する;
g.濾過された溶液を琥珀色ガラスバイアルに充填する。バイアルをゴム栓で塞ぎ、バイアルを密封する。
【0065】
実施例1および2~7の製剤の調製のための方法:
a.必要とされる分量のN,N-ジメチルアセトアミドを製造容器にとり、撹拌しながら窒素ガスをスパージする;
b.必要とされる分量のブチル化ヒドロキシアニソールを工程aに添加し、窒素スパージしながら撹拌してそれを溶解する;
c.必要とされる分量のマイトマイシンを工程bに添加し、窒素スパージしながら撹拌してそれを溶解する;
d.ポリエチレングリコールを、工程cで取得された溶液に添加して、最大でバッチサイズまで体積を補い、適切な混合のために窒素スパージしながら撹拌する;
e.上記のバルク溶液を濾過する;
f.濾過された溶液を琥珀色ガラスバイアルに充填する。バイアルをゴム栓で塞ぎ、バイアルを密封する。
【0066】
実施例1および2~7の製剤の調製のための方法:
a.必要とされる分量のN,N-ジメチルアセトアミドを製造容器にとり、撹拌しながら窒素ガスをスパージする;
b.必要とされる分量のブチル化ヒドロキシトルエンを工程aに添加し、窒素スパージしながら撹拌してそれを溶解する;
c.必要とされる分量のマイトマイシンを工程bに添加し、窒素スパージしながら撹拌してそれを溶解する;
d.ポリエチレングリコールを、工程cで取得された溶液に添加して、最大でバッチサイズまで体積を補い、適切な混合のために窒素スパージしながら撹拌する;
e.上記のバルク溶液を濾過する;
f.濾過された溶液を琥珀色ガラスバイアルに充填する。バイアルをゴム栓で塞ぎ、バイアルを密封する。
【0067】
実施例の製剤の安定性研究:
安定性研究のために、実施例6a~dおよび7で取得された製剤を、2~8℃の温度で貯蔵した。安定性研究結果を以下で表にする。
【0068】
実施例6の製剤の安定性研究:
【0069】
【表8】
【0070】
実施例6の製剤の安定性研究:
【0071】
【表9】
【0072】
実施例6の製剤の安定性研究:
【0073】
【表10】
【0074】
実施例6の製剤の安定性研究:
【0075】
【表11】
【0076】
実施例7の製剤の安定性研究:
【0077】
【表12】
【0078】
上記の安定性研究結果から、N,N-ジメチルアセトアミドおよびポリエチレングリコールは、マイトマイシンを含む安定なすぐに希釈できる注射用医薬製剤の調製において使用されうると結論付けることができる。
【国際調査報告】