(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】リンパ系を標的化する治療剤
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61M37/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509371
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 US2022040490
(87)【国際公開番号】W WO2023023074
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロス, ラッセル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】クーリー, ブライアン アール.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA71
4C267BB02
4C267BB23
4C267CC01
4C267EE07
4C267GG16
(57)【要約】
本明細書で開示されるのは、とりわけ、治療剤を、対象のリンパ系の1つまたは複数の領域を含むまたはその近位にある1つまたは複数の位置に投与するための医療デバイスおよび方法である。とりわけ、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態の症状を有するまたは有すると疑われる対象を、治療有効量の治療剤を対象のリンパ系に送達することによって処置するための方法も、本明細書で開示される。本開示の分野は、概して、初期リンパ毛細管、集合リンパ管、求心性リンパ管および/またはリンパ節等のリンパ系の1つまたは複数の成分の標的化を可能にする流体送達装置の使用による、対象のリンパ系への治療剤の投与に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象を、治療有効量の治療剤を前記対象のリンパ系に投与することによって処置する方法であって、
複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、前記対象の前記皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、前記対象の皮膚上に配置するステップであって、前記第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと、
前記第1の医療デバイスの前記複数のマイクロニードルを、前記対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、前記マイクロニードルの少なくとも1本の末端が前記第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと、
前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルを介して、第1の用量の抗炎症剤を前記第1の位置に投与するステップと、
それによって、前記治療有効量の前記治療剤を、前記対象の前記リンパ系に送達するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象のリンパ系における治療剤のリンパ中量またはリンパ中濃度を増大させる方法であって、
複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、前記対象の前記皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、前記対象の皮膚上に配置するステップであって、前記第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと、
前記第1の医療デバイスの前記複数のマイクロニードルを、前記対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、前記マイクロニードルの少なくとも1本の末端が前記第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと、
前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルを介して、第1の用量の抗炎症剤を前記第1の位置に投与するステップと、
それによって、前記対象の前記リンパ系における前記治療剤の前記リンパ中濃度を増大させるステップと
を含む、方法。
【請求項3】
関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象における、炎症性物質の上昇したリンパ中量またはリンパ中濃度を減少させる方法であって、前記上昇したリンパ中量またはリンパ中濃度が、前記疾患または関連状態の存在によって生じ、前記方法が、
複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、前記対象の前記皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、前記対象の皮膚上に配置するステップであって、前記第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと、
前記第1の医療デバイスの前記複数のマイクロニードルを、前記対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、前記マイクロニードルの少なくとも1本の末端が前記第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと、
前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルを介して、治療有効量の治療剤を前記第1の位置に投与するステップと
を含み、
前記治療有効量が、前記対象のリンパ系における前記炎症性物質の前記リンパ中量またはリンパ中濃度の低減をもたらす量を含む、方法。
【請求項4】
関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象において少なくとも1つのリンパ節のリンパポンプ流量を増大させる方法であって、
複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、前記対象の前記皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、前記対象の皮膚上に配置するステップであって、前記第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと、
前記第1の医療デバイスの前記複数のマイクロニードルを、前記対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、前記マイクロニードルの少なくとも1本の末端が前記第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと、
前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルを介して、治療有効量の治療剤を前記第1の位置に投与するステップと
を含み、
前記治療有効量が、前記対象のリンパ系における前記少なくとも1つのリンパ節のリンパポンプ流量の増大をもたらす量を含む、方法。
【請求項5】
関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象において少なくとも1つのリンパ節の正常なポンプ流量を達成するまたは回復する方法であって、前記ポンプ流量が、前記関節炎疾患または関連状態の結果として低減し、前記方法が、
複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、前記対象の前記皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、前記対象の皮膚上に配置するステップであって、前記第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと、
前記第1の医療デバイスの前記複数のマイクロニードルを、前記対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、前記マイクロニードルの少なくとも1本の末端が前記第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと、
前記第1の医療デバイスの前記マイクロニードルを介して、治療有効量の治療剤を前記第1の位置に投与するステップと
を含み、
前記治療有効量が、前記疾患も関連状態も有さない対象におけるポンプ流量と同等であるまたはそれよりも大きい比率まで、前記正常なポンプ流量の回復をもたらす量を含む、方法。
【請求項6】
前記治療有効量が、前記疾患もしくは関連状態を処置するために有効な量もしくは濃度、または前記疾患もしくは関連状態の少なくとも1つの症状もしくは臨床的兆候を低減させるもしくは消失させるために有効な量もしくは濃度を含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記関節炎疾患または関連状態が、関節リウマチ(RA)、若年性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、痛風、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記関連状態が、別の自己免疫状態を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記関連状態が、強皮症、狼瘡、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病、尋常性乾癬、自己免疫性ブドウ膜炎、ベーチェット病およびサルコイドーシスからなる群から選択される自己免疫状態を含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記治療剤が、抗炎症剤を含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記治療剤が、抗関節炎剤を含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記治療剤が、TNFα活性を低減させる作用物質を含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記治療剤が、アダリムマブ(Humira(登録商標))、アダリムマブ-atto(Amjevita(登録商標))、セルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、エタネルセプト-szzs(Ereizi(登録商標))、ゴリムマブ(Simponi(登録商標)、Simponi Aria(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、インフリキシマブ-dyyb(Inflectra(登録商標))、それらのアナログ、それらのバリアント、それらのバイオシミラー、それらの生物学的同等品、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記治療有効量の前記治療剤が、用量を控えた量の前記治療剤を含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記治療有効量の前記治療剤が、DAS28(ESR)および/またはDAS28(CRT)スコアを、前記治療剤を投与する前に前記対象において決定されたDAS28(ESR)および/またはDAS28(CRT)と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく低減させるために有効である、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記治療有効量の前記治療剤が、66/68関節計数および/または28関節計数スコアを、前記治療剤を投与する前に前記対象において決定された66/68関節計数および/または28関節計数と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく低減させるために有効である、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記治療有効量の前記治療剤が、全体的な疾患活動性の患者評点を、前記治療剤を投与する前に前記対象において決定された全体的な疾患活動性の患者評点と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく低減させるために有効である、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記治療有効量の前記治療剤が、ACR応答を、前記治療剤を投与する前に前記対象において決定されたACR応答と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく改善するために有効である、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、哺乳動物である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、ヒトである、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記医療デバイスが、Sofusa(商標)リンパ送達システム(SOFUSA)である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記医療デバイスが、流体送達装置を含み、
前記流体送達装置が、
キャップアセンブリがカートリッジアセンブリと連結されており、前記カートリッジアセンブリがプレナムアセンブリと摺動自在に連結されており、機械式コントローラーアセンブリが前記カートリッジアセンブリと摺動自在に連結されている流体分配アセンブリと、
前記流体送達装置の筺体を構成し、前記流体分配アセンブリと摺動自在に連結されているコレットアセンブリと、
ナノトポグラフィーを含む表面を有する前記流体分配アセンブリと流体的に接続されている複数のマイクロニードルであって、対象の皮膚の角質層に浸透し、前記治療剤を前記皮膚表面下のある深さに制御可能に送達することができる、複数のマイクロニードルと
を備える、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記医療デバイスが、前記治療剤を、前記皮膚表面下、約50μmから約4000μmまで、約250μmから約2000μmまで、または約350μmから約1000μmまでの深さに送達する、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記医療デバイスにおける前記マイクロニードルのそれぞれが、約200から約800μmの間、約250から約750μmの間、または約300から約600μmの間の長さを有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記治療剤が、Enbrelを含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
用量を控えた量または濃度を関節炎疾患または関連状態を有するまたは有すると疑われる対象のリンパ系に投与する医療デバイスを介した投与時に、前記関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を処置するために治療上有効である、用量を控えた量または濃度の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年3月3日に出願された米国仮特許出願第63/316,123号、および2021年8月18日に出願された米国仮特許出願第63/234,683号の優先権を主張し、それらの内容および開示は、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示の分野は、概して、初期リンパ毛細管、集合リンパ管、求心性リンパ管および/またはリンパ節等のリンパ系の1つまたは複数の成分の標的化を可能にする流体送達装置の使用による、対象のリンパ系への治療剤の投与に関する。ある特定の実施形態では、本開示は、関節炎疾患もしくは関連状態、またはその1つもしくは複数の症状もしくは臨床的兆候を有するまたは有すると疑われる対象を処置するためのデバイスおよび方法であって、治療有効量の治療剤の、対象のリンパ系への投与を含む、デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
リンパ系は、体液および粒子状物質を体全体に輸送する際に、重要な役割を果たす。リンパ系は、リンパ節、リンパ管およびリンパ毛細管に加えて、いくつかのリンパ臓器(例えば、脾臓および胸腺)を含む。脈管は、表在管または深部管のいずれか(すなわち、リンパ脈管系)において体の周囲にリンパ液を単一方向に輸送する。排液は毛細血管(blind capillaries)において始まり、これが次第に脈管へ展開する。次いで、これらの脈管は、いくつかのリンパ節を経由して巡回する。リンパ節は、免疫系に関連する他の細胞に加えて、TおよびBリンパ球の両方を含有する。抗原および他の異物粒子は、リンパ節において濾過除去される。リンパ管は最終的に、右内頸静脈に排液する右リンパ本幹または鎖骨下静脈に排液する胸管のいずれかで終端する。これは、リンパ液(リンパとも称される)が最終的に患者の循環系に戻る、一方通行システムである。
【0004】
巨大タンパク質およびある特定の細胞(リンパ球)は、血漿から組織液へ通過し、これらの必須成分を血液循環に戻すことは、リンパ(すなわち、リンパ系における流体)の重要な機能である。リンパは、胃腸管における脂肪消化の生成物であるカイロミクロンを、血液循環へ輸送する際にも重要な役割を果たす。
【0005】
マイクロニードルアセンブリまたはアレイを使用する経皮薬物送達のための多数のデバイスが開発されてきた。マイクロニードルアセンブリは、より大きい従来のニードルと比較して、患者が感じる疼痛の量を低減させる。その上、ニードルを使用する薬の従来の皮下(および多くの場合筋肉内)送達は、大量の薬を一度に送達するように操作し、それによって、治療剤のバイオアベイラビリティにおいてスパイクを作成する。これは一部の医薬にとって有意な問題ではないが、多くの医学的状態は、定常状態濃度の活性治療剤を長期間にわたって有することにより利益を得る。経皮送達装置は、医薬を実質的に一定の速度で長期間かけて投与することができる。一部のデバイスは、医薬を患者のリンパ系に直接送達することができる。例示的なそのようなデバイスは、Sorrento Therapeutics,Inc.から入手可能なものを含み、例えば、WO2011/135530、WO2011/135533、WO/2012/020332、WO2014/132239、WO2014/188343、WO2015/168210、WO2015/168215、WO2015/168217、WO2015/168219、WO2017/0189258、WO2017/0189259、WO2017/019535、WO2018/111611、WO2018/111616およびWO2018/111621において開示されており、これらの開示は、これにより参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0006】
関節リウマチ(RA)は、米国において130万人よりも多くの成人に影響を及ぼしている最も一般的な自己免疫性炎症性関節炎である1。世界全体の有病率は、0.3%から1%の間で変動し、女性においておよび先進国に在住している人々においてより一般的である(WHO 2019)。RAは、関節、結合組織、筋肉、腱および線維組織に主として影響を及ぼす慢性疾患である。RAがある患者は、典型的には、手および足の関節において疼痛および腫脹を提示し、疾患が進行するにつれてその身体機能および生活の質に有意な障害性をもたらす。加えて、RAのある患者が他の自己免疫状態を発病することは珍しいことではない。1つのそのような状態がある患者の約25パーセントは、他を発病する傾向がある(例えば、Cojocaru, M., Cojocaru, I. M. & Silosi, I. Multiple autoimmune syndrome. Maedica (Buchar). 5, 132-134 (2010)を参照)。
【0007】
現在のところRAの治癒法はないが、RA炎症カスケードの成分を直接標的化する新たな生物学的処置の利用可能性が、疾患の管理を一変させた。炎症および関節損傷につながる免疫応答を改変するためのモノクローナル抗体および融合タンパク質が開発されてきた。RAの処置のための現在のおよび新たに出現したバイオ医薬品の主な焦点は、適応免疫応答が備わった免疫系である。これらの治療薬は静脈内に(IV)または皮下に(SC)投与されることから、免疫モジュレーションおよび活性化が起こるリンパ節における標的への薬物曝露は限定されうる。これは、高用量での有効性の低減またはさらには非応答性に寄与しうる。
【0008】
米国リウマチ学会(ACR)によれば、RA処置の究極の目標は、関節損傷の予防または制御、機能喪失の予防、および疼痛の軽減である(ACR 2002)。RA処置の臨床目標は、疾患活動性を3か月以内に少なくとも50%低減させることおよび寛解または低疾患活動性(LDA)を6か月以内に達成することを狙いとして、目標達成に向けた治療の戦略を最適化することによって、疾患制御を達成することである(例えば、Aletaha, D., Alasti, F. & Smolen, J. S. Optimisation of a treat-to-target approach in rheumatoid arthritis: strategies for the 3-month time point. Ann. Rheum. Dis. 75, 1479-1485 (2016)を参照)。臨床的寛解は、身体機能が最大限に改善され、関節損傷の進行が、停止していなければ減速されている状態である。
【0009】
ACRおよび欧州リウマチ学会(EULAR)処置ガイドラインは、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)によるRA患者の処置を推奨している(例えば、Singh, J. A. et al. 2015 American College of Rheumatology Guideline for the Treatment of Rheumatoid Arthritis. Arthritis Care Res. (Hoboken). 68, 1-25 (2016)およびSmolen, J. S. et al. EULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis with synthetic and biological disease-modifying antirheumatic drugs: 2019 update. Ann. Rheum. Dis. 79, 685-699 (2020)を参照)。メトトレキサート(MTX)は、処置に使用される第一選択DMARDであり、概して、糖質コルチコイドを伴ってまたは伴わずに最大25mgの最適用量で処方される。この処置が失敗すると、MTXと組み合わせた生物剤(例えば、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤またはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤)等の標的化療法の順次適用が推奨される。
【0010】
特に、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)は、関節リウマチ(RA)、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病を含む多種多様な医学的状態に関係する有意な治療標的となってきた。アダリムマブ(Humira(登録商標))、アダリムマブ-atto(Amjevita(登録商標)、Humira(登録商標)のバイオシミラー)、セルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、エタネルセプト-szzs(Ereizi(登録商標)、Enbrel(登録商標)のバイオシミラー)、ゴリムマブ(Simponi(登録商標)、Simponi Aria(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))およびインフリキシマブ-dyyb(Inflectra(登録商標)、Remicade(登録商標)のバイオシミラー)を含む、TNF-αを具体的に標的化する複数の薬物が、FDA承認を受けているのに対し、新たな治療剤または現在承認されているものについての使用拡大のいずれかで、文字通り何十もの臨床試験が継続中である。
【0011】
これらの中でも、RAの処置のために1998年に米国で最初にFDA承認されたEnbrel(登録商標)(エタネルセプト皮下注射)は、徴候および症状を低減させること、主な臨床応答を誘導すること、構造的損傷の進行を阻害すること、ならびに中等度から重度に活動性のRAがある患者において身体機能を改善することに適応されている、TNF阻害剤である。Enbrelは、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の断片結晶性(Fc)部分と結び付いているTNF受容体の一部分からなる融合タンパク質である。TNFと特異的に結合することにより、Enbrelは、TNFと細胞表面TNF受容体との相互作用を遮断し、それによって、TNFが免疫細胞上の受容体と結合した場合にトリガーされた細胞性免疫応答をモジュレートする。TNF受容体が免疫細胞上に主として(であるが独占的にではない)存在することを考慮すると、リンパ節に集中している白血球は、白血球が発現しているTNF受容体の一次リザーバーを代表する。Enbrelは、若年性特発性関節炎(JIA)、乾癬性関節炎(PsA)、強直性脊椎炎(AS)および尋常性乾癬(PsA)の処置にも適応される。
【0012】
Enbrel等の全身に送達されるTNF阻害剤療法は、疾患活動性における迅速かつ持続的な低減を示しており、RAの処置において成功しているとみなされているが、臨床応答においていくつかの制限が存在する。MTXと組み合わせたEnbrelの有効性奏効率は、70%改善基準の米国リウマチ学会(ACR)スコアの総合的指標(ACR70)に基づいて制限(<50%)される。ACR70奏効率は、全体的な低疾患活動性状態(寛解を含む)と合理的によく一致する。ACR70は、圧痛関節計数(TJC)、腫脹関節計数(SJC)における少なくとも70%の改善、ならびに、以下の5つの尺度:疼痛の患者評価、疾患活動性の患者全般評価、疾患活動性の医師全般評価、健康評価質問票による機能障害指数(HAQ-DI)を使用する身体機能の患者評価、および急性期反応物:C反応性タンパク質(CRP)または赤血球沈降速度(ESR)のいずれかのうちの3つにおける少なくとも70%の改善を要求する。
【0013】
加えて、すべてのRA薬は、先行療法とは異なる生物学的経路を標的化するとしても、疾患持続期間または薬物曝露が増大するにつれて有効性の減少を呈する。高疾患活動性があるMTXナイーブ患者において、生物学的DMARD(例えば、Enbrel)プラスMTXによる処置についてのACR70奏効率は、およそ35%から40%である。MTX不十分応答者において、この率は約20%であり、TNF阻害剤不十分応答者において、率は10%から15%である。加えて、Enbrel処方情報で報告されているように、EnbrelプラスMTXによる処置は、3および6か月で患者のわずか15%においてACR70を達成した(例えば、Enbrel USPI(2020)を参照)。故に、奏効率および処置の転帰を改善するための新たな療法および処置方法の有意な必要性が依然としてある。
【0014】
さらに、TNF-α阻害剤の公知の副作用は、頭痛、胸焼け、悪心、嘔吐、アレルギー反応および筋肉衰弱を含む。TNF-αは免疫系において重要な役割を果たすことから、TNF-α活性を変化させることは、患者を二次感染または一部のがんに、より感受性にする。
【0015】
したがって、関節炎疾患または関連状態の1つまたは複数を有するまたは有すると疑われる対象において関節炎疾患または関連状態を処置するための、治療有効量の治療剤の効果的な送達を提供する、投与デバイス、方法、投薬レジメン等を開発する必要性がある。例えば、治療剤への全体的な患者曝露ならびに関連するおよび不都合なオフターゲット効果および/または副作用が低減されるように、用量を控えた量または濃度のそのような治療剤を送達するための、投与デバイスおよび方法を提供する必要性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2011/135530号
【特許文献2】国際公開第2011/135533号
【特許文献3】国際公開第2012/020332号
【特許文献4】国際公開第2014/132239号
【特許文献5】国際公開第2014/188343号
【特許文献6】国際公開第2015/168210号
【特許文献7】国際公開第2015/168215号
【特許文献8】国際公開第2015/168217号
【特許文献9】国際公開第2015/168219号
【特許文献10】国際公開第2017/189258号
【特許文献11】国際公開第2017/189259号
【特許文献12】国際公開第2017/019535号
【特許文献13】国際公開第2018/111611号
【特許文献14】国際公開第2018/111616号
【特許文献15】国際公開第2018/111621号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Cojocaru, M., Cojocaru, I. M. & Silosi, I. Multiple autoimmune syndrome. Maedica (Buchar). 5, 132-134 (2010)
【非特許文献2】Aletaha, D., Alasti, F. & Smolen, J. S. Optimisation of a treat-to-target approach in rheumatoid arthritis: strategies for the 3-month time point. Ann. Rheum. Dis. 75, 1479-1485 (2016)
【非特許文献3】Singh, J. A. et al. 2015 American College of Rheumatology Guideline for the Treatment of Rheumatoid Arthritis. Arthritis Care Res. (Hoboken). 68, 1-25 (2016)
【非特許文献4】Smolen, J. S. et al. EULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis with synthetic and biological disease-modifying antirheumatic drugs: 2019 update. Ann. Rheum. Dis. 79, 685-699 (2020)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
ある特定の実施形態では、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象を、治療有効量の治療剤を対象のリンパ系に投与することによって処置する方法であって、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、第1の用量の抗炎症剤を第1の位置に投与するステップと;それによって、治療有効量の治療剤を、対象のリンパ系に送達するステップとを含む、方法が提供される。
【0019】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象のリンパ系における、治療剤のリンパ中量またはリンパ中濃度を増大させる方法であって、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有するステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、第1の用量の抗炎症剤を第1の位置に投与するステップと;それによって、対象のリンパ系における治療剤のリンパ中濃度を増大させるステップとを含む、方法が提供される。
【0020】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象における、炎症性物質の上昇したリンパ中量またはリンパ中濃度を減少させる方法であって、上昇したリンパ中量またはリンパ中濃度が、疾患または関連状態の存在によって生じ、方法が、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、治療有効量の治療剤を第1の位置に投与するステップとを含み;治療有効量が、対象のリンパ系における炎症性物質のリンパ中の量またはリンパ中濃度の低減をもたらす量を含む、方法が提供される。
【0021】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象において少なくとも1つのリンパ節のリンパポンプ流量を増大させる方法であって、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、治療有効量の治療剤を第1の位置に投与するステップとを含み;治療有効量が、対象のリンパ系における少なくとも1つのリンパ節のリンパポンプ流量の増大をもたらす量を含む、方法が提供される。
【0022】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象において、少なくとも1つのリンパ節の正常なポンプ流量を達成するまたは回復する方法であって、ポンプ流量が、関節炎疾患または関連状態の結果として減少し、方法が、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、治療有効量の治療剤を第1の位置に投与するステップとを含み;治療有効量が、疾患も関連状態も有さない対象におけるポンプ流量と同等であるまたはそれよりも大きい比率まで、正常なポンプ流量の回復をもたらす量を含む、方法が提供される。
【0023】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、開示される方法に従う治療有効量は、疾患もしくは関連状態を処置するために有効な量もしくは濃度、または疾患もしくは関連状態の少なくとも1つの症状もしくは臨床的兆候を低減させるもしくは消失させるために有効な量もしくは濃度を含む。
【0024】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、全体を通して開示される1つまたは複数の方法によって処置されてよい関節炎疾患または関連状態は、関節リウマチ(RA)、若年性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、痛風、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0025】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、全体を通して開示される1つまたは複数の方法によって処置されてよい関連状態は、別の自己免疫状態である。全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、関連状態は、強皮症、狼瘡、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病、尋常性乾癬、自己免疫性ブドウ膜炎、ベーチェット病およびサルコイドーシスからなる群から選択される自己免疫状態を含む。
【0026】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、治療剤は、抗炎症剤を含む。全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、治療剤は、抗関節炎剤を含む。全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、治療剤は、TNFα(TNFa)活性を低減させる作用物質を含む。全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、治療剤は、アダリムマブ(Humira(登録商標))、アダリムマブ-atto(Amjevita(登録商標))、セルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、エタネルセプト-szzs(Ereizi(登録商標))、ゴリムマブ(Simponi(登録商標)、Simponi Aria(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、インフリキシマブ-dyyb(Inflectra(登録商標))、それらのアナログ、それらのバリアント、それらのバイオシミラー、それらの生物学的同等品、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0027】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、開示される方法のいずれかに従って投与される治療有効量の治療剤は、用量を控えた量の治療剤を含む。
【0028】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、開示される方法のいずれかに従って投与される治療有効量の治療剤は、DAS28(ESR)および/またはDAS28(CRT)スコアを、治療剤を投与する前に対象において決定されたDAS28(ESR)および/またはDAS28(CRT)と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく低減させるために有効である。
【0029】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、開示される方法のいずれかに従って投与される治療有効量の治療剤は、66/68関節計数および/または28関節計数スコアを、治療剤を投与する前に対象において決定された66/68関節計数および/または28関節計数と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく低減させるために有効である。
【0030】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、開示される方法のいずれかに従って投与される治療有効量の治療剤は、全体的な疾患活動性の患者評点を、治療剤を投与する前の対象において決定された全体的な疾患活動性の患者評点と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく低減させるために有効である。
【0031】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、開示される方法のいずれかに従って投与される治療有効量の治療剤は、ACR応答を、治療剤を投与する前に対象において決定されたACR応答と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく改善するために有効である。
【0032】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、開示される方法のいずれかに従って処置される対象は、哺乳動物である。全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0033】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、治療有効量の治療剤を対象のリンパ系に投与するための医療デバイスは、Sofusa(商標)リンパ送達システム(SOFUSA)を含む。
【0034】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、治療有効量の治療剤を対象のリンパ系に投与するための医療デバイスは、流体送達装置を含み、流体送達装置は、キャップアセンブリがカートリッジアセンブリと連結されており、カートリッジアセンブリがプレナムアセンブリと摺動自在に連結されており、機械式コントローラーアセンブリがカートリッジアセンブリと摺動自在に連結されている流体分配アセンブリと;流体送達装置の筺体を構成し、流体分配アセンブリと摺動自在に連結されているコレットアセンブリと;ナノトポグラフィーを含む表面を有する流体分配アセンブリと流体的に接続されている複数のマイクロニードルであって、対象の皮膚の角質層に浸透し、治療剤を対象の皮膚表面下のある深さに制御可能に送達することができる、複数のマイクロニードルとを備える。全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、医療デバイスは、治療剤を、皮膚表面下、約50μmから約4000μmまで、約250μmから約2000μmまで、または約350μmから約1000μmまでの深さに送達する。全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、医療デバイスにおけるマイクロニードルのそれぞれは、約200から約800μmの間、約250から約750μmの間、または約300から約600μmの間の長さを有する。
【0035】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、開示される方法のいずれかに従って投与される治療剤は、Enbrelを含む。
【0036】
全体を通して開示される他の実施形態と組み合わせられてよい、ある特定の実施形態では、用量を控えた量または濃度を関節炎疾患または関連状態を有するまたは有すると疑われる対象のリンパ系に投与する医療デバイスを介した投与時に、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を処置するために治療上有効である、用量を控えた量または濃度の治療剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、ヒトリンパ組織構造の例証を提供する。例証は、表皮-真皮接合部の真皮乳頭における角質層および表皮下に見られる初期リンパ毛細管を示す。これらの毛細管は、大分子およびモダリティが細胞外空間から除外されることを可能にする、高度に有窓の開口部からなる。Sofusaリンパ送達システム(SOFUSA)は、初期リンパ毛細管への侵入を可能にし、ここでリンパは、一方向流動を辿って、集合リンパ管、次いで排液リンパ節に入る求心性リンパ管、続いて、リンパ節から出る輸出性リンパ管に入る。
【
図2】
図2は、治療剤のリンパ投与のために対象の腕にストラップで固定された、例示的な装着型のSofusa(登録商標)リンパ送達システム(SOFUSA)デバイスの例示的な取り付けおよび位置決めスキームを描写する。この例示的な描写において、装着型のデバイスは、対象の皮膚へのニードル浸透を容易にするためのアプリケーターを用いて活性化され、それにより、治療剤は、シリンジポンプから対象の腕へ、所望の用量に基づき一定の期間をかけて、ゆっくりと注入される。
【
図3】
図3は、ナノトポグラフィー用のフィルム付きの例示的なマイクロニードルアレイを例証する。
図3Aは、実施例において使用される経皮マイクロニードルデバイスの概略図を提供する。不浸透性の裏当て(黄褐色)、薬物リザーバー(緑色)、速度制御膜(黄色)、およびケイ素マイクロニードルアレイ(MNA)(灰色)が示されている。マイクロニードルは、正確な寸法で設計されている。マイクロニードルの溝の下にあるリザーバーからの薬物流動は、緑色の破線矢印によって指し示される。穿孔は白色の矢じりで表示される。
図3Bは、マイクロニードルアレイの走査電子顕微鏡法(SEM)画像を提供する。
図3Cは、単一のマイクロニードルのSEM画像を提供する。
図3Dは、各マイクロニードルにコーティングされたナノ構造を描写する単一のマイクロニードルのSEM画像を提供する。
【
図4-1】
図4は、実施例において提供される研究全体を通して2週間ごとに決定されたDAS28疾患活動性スコアのグラフィック描写を提供する。
図4Aおよび
図4Bは、患者ID01-002について、それぞれESRおよびCRPに基づくDAS28スコアを提供する。
図4Cおよび
図4Dは、患者ID01-002(
図4Aおよび
図4Bと同様)、患者ID01-004および患者ID01-006について、それぞれESRおよびCRPに基づくDAS28スコアを提供する。
【
図4-2】
図4は、実施例において提供される研究全体を通して2週間ごとに決定されたDAS28疾患活動性スコアのグラフィック描写を提供する。
図4Aおよび
図4Bは、患者ID01-002について、それぞれESRおよびCRPに基づくDAS28スコアを提供する。
図4Cおよび
図4Dは、患者ID01-002(
図4Aおよび
図4Bと同様)、患者ID01-004および患者ID01-006について、それぞれESRおよびCRPに基づくDAS28スコアを提供する。
【
図5-1】
図5は、実施例において提供される研究全体を通して2週間ごとに実施された圧痛および腫脹関節計数のグラフィック描写を提供する。
図5Aおよび
図5Bは、患者ID01-002について、それぞれ28計数測定および68/66計数測定を提供する。
図5Cおよび
図5Bは、患者ID01-002(
図5Aおよび
図5Bと同様)、患者ID01-004および患者ID01-006について、それぞれ68/66計数測定および28計数測定を提供する。
【
図5-2】
図5は、実施例において提供される研究全体を通して2週間ごとに実施された圧痛および腫脹関節計数のグラフィック描写を提供する。
図5Aおよび
図5Bは、患者ID01-002について、それぞれ28計数測定および68/66計数測定を提供する。
図5Cおよび
図5Bは、患者ID01-002(
図5Aおよび
図5Bと同様)、患者ID01-004および患者ID01-006について、それぞれ68/66計数測定および28計数測定を提供する。
【
図5-3】
図5は、実施例において提供される研究全体を通して2週間ごとに実施された圧痛および腫脹関節計数のグラフィック描写を提供する。
図5Aおよび
図5Bは、患者ID01-002について、それぞれ28計数測定および68/66計数測定を提供する。
図5Cおよび
図5Bは、患者ID01-002(
図5Aおよび
図5Bと同様)、患者ID01-004および患者ID01-006について、それぞれ68/66計数測定および28計数測定を提供する。
【
図5-4】
図5は、実施例において提供される研究全体を通して2週間ごとに実施された圧痛および腫脹関節計数のグラフィック描写を提供する。
図5Aおよび
図5Bは、患者ID01-002について、それぞれ28計数測定および68/66計数測定を提供する。
図5Cおよび
図5Bは、患者ID01-002(
図5Aおよび
図5Bと同様)、患者ID01-004および患者ID01-006について、それぞれ68/66計数測定および28計数測定を提供する。
【
図5-5】
図5は、実施例において提供される研究全体を通して2週間ごとに実施された圧痛および腫脹関節計数のグラフィック描写を提供する。
図5Aおよび
図5Bは、患者ID01-002について、それぞれ28計数測定および68/66計数測定を提供する。
図5Cおよび
図5Bは、患者ID01-002(
図5Aおよび
図5Bと同様)、患者ID01-004および患者ID01-006について、それぞれ68/66計数測定および28計数測定を提供する。
【
図6】
図6は、SOFUSA媒介性Enbrel投与の前と6週間後とのリンパ機能の比較を提供する。
【
図7】
図7は、使用前の機器構成における例示的な流体送達装置の断面図を提供する。
【
図8】
図8は、アクティブ化される前の機器構成における流体送達装置の断面図を提供する。
【
図9】
図9は、流体送達装置の分解組立断面図を提供する。
【
図10】
図10は、流体送達装置のコレットアセンブリの断面図を提供する。
【
図12】
図12は、静脈内、皮下、皮内またはリンパ送達を介して(例えば、Sofusa送達を介して)送達された場合の、リンパ節におけるエタネルセプトの平均濃度を提供する。エタネルセプト濃度は、指し示される通り、投与後12および36時間後に測定した。
【発明を実施するための形態】
【0038】
別段の指示がない限り、本明細書で提供される図面は、本開示の実施形態の特色または本明細書で開示される主題の一部の態様を例証する代表的な実験の結果を例証するようになっている。これらの特色および/または結果は、本開示の1つまたは複数の実施形態を含む多種多様なシステムにおいて適用可能であると考えられる。そのため、図面は、実施形態の実践に要求されることが当業者によって公知のすべての追加の特色を含むようになっておらず、本明細書で開示される方法の可能な使用について限定的であるように意図されてもいない。
【0039】
詳細な説明
本明細書でおよび全体を通して記述されている通り、とりわけ、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象のリンパ系への治療剤のリンパ投与が今や発見されており、それによって、関節炎疾患または関連状態を処置する。ある特定の実施形態では、そのような利益は、そのような治療剤のそのような対象へのSOFUSA媒介性投与または送達を介して達成される。ある特定の実施形態では、Enbrel等の抗炎症剤を含んでよい治療剤のSOFUSA媒介性リンパ投与は、非リンパルート(皮下、静脈内、経口、口腔内、経直腸または舌ルート等)によって投与された場合のそのような治療剤の典型的な用量または量と比べて実質的に低減した量または用量を可能にして、それでもなお治療有効量の治療剤を構成し、それによって、そのような実質的に低減した量または用量を使用して、疾患もしくは関連状態を処置するおよび/またはその1つもしくは複数の症状もしくは臨床的兆候を低減させる。
【0040】
ある特定の実施形態では、本明細書でおよび全体を通して記述されている通り、開示される方法は、従来の療法および投与ルート(例えば、皮下注射)に対して明らかに応答が乏しい、非応答的または難治性である対象における、少なくとも1つの症状、臨床的尺度または効果的な療法の指数において、大幅な改善をもたらす。そのようなSOFUSA媒介性リンパ投与は、リンパの流動およびポンプ流量の改善を付随してもたらした。ある特定の実施形態では、そのような方法、およびそれらの実践から生じる利点は、Enbrelを含む抗炎症剤等の治療剤の、Sofusaリンパ送達システム(SOFUSA)媒介性リンパ送達または投与を介して達成される。ある特定の実施形態では、そのような方法は、関節炎疾患もしくは関連状態、またはその1つもしくは複数の症状もしくは臨床的兆候を有するまたは有すると疑われる対象において、増強された治療利益を提供するだけでなく、非リンパ投与または送達ルートと比べて有意に低い用量を投与することによる、そのような利益も提供する。したがって、用量を控えた、治療有効量または濃度の、Enbrelを含む炎症剤等の治療剤のSOFUSA媒介性投与を含む方法は、望ましくないまたは不都合なオフターゲットまたは他の副作用の傾向を最小化しながら、そのような関節炎疾患もしくは関連状態の処置および/またはその1つもしくは複数の症状もしくは臨床的兆候を低減させることを有利に提供する。いかなる理論によっても拘束されることは望まないが、そのような利益は、リンパで投与された治療剤の量および/もしくは濃度の増大ならびに/またはリンパの流動ポンプ流量への刺激/増大によって生じると考えられる。これは、次に、治療利益を提供するために、治療標的、組織、免疫細胞、または疾患もしくは傷害の領域への、用量を控えた量または濃度のそのような治療剤であってよい、治療有効量の抗炎症剤の流動を容易にすると考えられる。
【0041】
本発明の追加の実施形態、添付の図面において例証されているそれらの例、実施例は、本明細書でおよび全体を通して提供される。本発明はそのような実施形態と併せて記述されることになるが、それらは本発明をそれらの実施形態に限定するように意図されていないことが理解されるであろう。それどころか、本発明は、すべての代替物、修正形態および均等物を網羅するように意図されており、これらは添付の請求項によって定義される通り本発明内に含まれてよい。本明細書で使用される項の見出しは、組織化のみを目的とし、所望の主題を何ら限定するものとして解釈されるべきではない。参照によって組み込まれるいずれかの文献が本明細書において定義されるいずれかの用語と矛盾する場合には、本明細書が優先するものとする。
【0042】
以下の明細書および請求項において、若干数の用語を参照することになり、これらは以下の意味を有すると定義されるものとする。単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に別のことを指示するのでない限り、複数の参照物を含む。用語「を含む(comprising)」、「を含む(including)」および「を有する」は、包括的であるように意図されており、収載されている要素以外の追加の要素があってよいことを意味する。「必要に応じた」または「必要に応じて」は、その後に記述されている事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、ならびに該記述は該事象が起こる事例および起こらない事例を含むことを意味する。
【0043】
近似する言語は、本明細書および請求項の全体を通して本明細書で使用される場合、それが関連する基本機能における変化をもたらすことなく許容範囲で変動しうるあらゆる定量的表現を修飾するために適用されてよい。したがって、「約」、「およそ」および「実質的に」等の用語(単数または複数)によって修飾された値は、指定された正確な値に限定されない。少なくとも一部の事例では、近似する言語は、値を測定するための機器の正確さに対応していてよい。ここでならびに本明細書および請求項の全体を通して、範囲限定は組み合わされておよび/または交換されてよく、そのような範囲は同定され、文脈または言語が別のことを指示するのでない限り、その中に含有されるすべてのサブ範囲を含む。数値範囲は、範囲を定義している数字も含めたものである。
【0044】
本明細書で使用される場合、上向き、下向き、上、下、頂部、底部等の位置用語は、相対的な位置関係を指し示す便宜のためだけに使用される。
【0045】
用語「医薬」、「薬剤」、「薬」、「治療剤」および「薬物」は、本明細書で交換可能に使用され、疾患もしくは関連状態および/またはそのような疾患もしくは関連状態の少なくとも1つの症状もしくは臨床的兆候の処置が意図されている医薬組成物または製品を記述している。医薬組成物または製品は、患者の体内に導入されると、患者に対して生理学的効果を有することになる。医薬組成物は、具体的な製剤種類が要求されているまたは開示されているのでない限り、任意の好適な製剤でありうる。一部の事例では、医薬は米国FDAによって承認されることになるのに対し、他の事例では、米国以外の国における使用について実験的である(例えば、臨床試験)かまたは承認されてよい(例えば、中国または欧州における使用について承認される)。これらの用語が使用される事例では、それらが単数および複数の事例の両方を指すことが理解される。本明細書における一部の実施形態では、2種またはそれよりも多くの医薬が、併用療法の形態で使用されてよい。いずれの場合も、適正な医薬(単数または複数)の選択は、患者の医学的状態、ならびに患者の処置を施す、監督するおよび/または方向付ける、医療の専門家の評価に基づくことになる。併用療法は、時折、単剤よりも有効であり、多くの異なる医学的状態に使用される。併用療法は、本明細書に包括され、開示される主題とともに想定されることが理解される。
【0046】
医薬に関する「有効量」または「治療有効用量」は、医学的状態に関連する少なくとも1つの症状を処置する、緩解させる、またはその強度を低減させるために十分な量である。本開示の一部の態様では、医薬の有効量は、医学的状態の1つまたは複数の症状の緩和または低減を含む有益なまたは所望の臨床結果に影響を及ぼすために十分な量である。一部の実施形態では、医薬の有効量は、医学的状態のすべての症状を緩和するために十分な量である。一部の態様では、それ自体が治療上有効ではない治療剤の用量が投与されることになる。これらの態様では、個々の用量の組合せが治療上有効であるような複数回用量が、順次に(同じデバイスまたは異なるデバイスを使用して)または同時にのいずれかで患者に投与されてよい。同時投与では、複数のマイクロニードルを備える追加の医療デバイスまたは全く異なる投与ルートが使用されてよい。
【0047】
用語「用量を控えた量」または「用量を控えた濃度」は、本明細書でおよび全体を通して開示される方法に従うリンパ送達または投与を介して対象に提供される場合には治療上有効であるが非リンパ投与ルート(例を挙げると、皮下、静脈内、筋肉内、経口、舌、舌下、口腔内等)を介して投与される場合には治療上有効ではない(またはあまり治療上有効ではない)、作用物質の量または濃度を意味する。
【0048】
用語「対象」または「患者」は、本明細書で交換可能に使用され、少なくとも1つの症状を引き起こす疾患または状態のための処置の対象である、哺乳動物等の温血動物を意味する。少なくともヒト、イヌ、ネコおよびウマが該用語の意味の範囲内であることが理解される。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「遠位」および「近位」は、それらの解剖学的意義で使用される。遠位は、所与の位置または構造が、別の位置または構造と比較した場合に、体の中心または肢の結合点からより遠くに位置していることを意味する。近位は、遠位の反対である。近位は、所与の位置または構造が、別の位置または構造と比較した場合に、体の中心または肢の結合点のより近くに位置していることを意味する。例えば、手首は肘に遠位であり、肩は肘に近位である。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」もしくは「処置」またはその派生語は、患者の医学的状態に関連する少なくとも1つの症状の、部分的もしくは完全な低減もしくは緩解または予防を企図する。「予防」または「予防すること」は、医学的状態(例えば、炎症または自己免疫状態)が発生するのを予防することが処置の形態であるとみなされることを意味する。医学的状態(例えば、炎症または自己免疫状態)の発生率を「低減させること」は、処置の形態であるとみなされる。
【0051】
エタネルセプトは、組換えDNAによって産生される融合タンパク質であり、Enbrel(登録商標)の商標名で販売されている。エタネルセプトは、TNF受容体をIgG1抗体の定常領域と融合させ、患者に投与されると、患者において存在するTNFの生物学的効果を低減させる。そのため、これはTNF阻害剤とみなされる。米国では、エタネルセプトは、FDAによって、中等度から重度の関節リウマチ(RA)、中等度から重度の多関節の若年性関節リウマチ(JRA)、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および中等度から重度の尋常性乾癬の処置のための臨床使用に承認されている。Enbrel(登録商標)に関連する深刻な数の二次感染により、FDAは、現在のFDAガイドライン下で可能な最も深刻なレベルの警告である、ブラックボックス警告を要求している。本明細書で使用される場合、エタネルセプトおよびEnbrel(登録商標)という用語は、交換可能に使用され、それらのあらゆるバイオシミラーまたは生物学的同等品も包括する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「バイオアベイラビリティ」は、所与の投薬量の投与された作用物質の、血液コンパートメントに到達する総量を意味する。これは概して、濃度対時間のプロットにおける曲線下面積(AUC)として測定される。
【0053】
本明細書で使用される場合、語句「副作用」は、予防または治療剤の、不要な、不都合なおよび/または有害効果を包括する。有害効果は常に不要であるが、不要な効果が必ずしも有害であるとは限らない。予防または治療剤による有害効果は、害を及ぼすまたは不快または危険であるかもしれない。治療剤による副作用は、例えば、初期および後期形成下痢ならびに鼓腸等であるがこれらに限定されない胃腸毒性、悪心、嘔吐、拒食症、白血球減少症、貧血、好中球減少症、無力症、腹部の筋けいれん、熱、疼痛、体重減少、脱水、脱毛症、呼吸困難、不眠症、目まい、粘膜炎、口腔乾燥症および腎不全、ならびに便秘、神経および筋肉への効果、腎臓および膀胱への一時的または永久的な損傷、インフルエンザ様症状、不要なまたは過剰な免疫抑制、不要なまたは過剰な免疫活性化、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストーム、流体貯留、一時的または永久的な不妊、倦怠感、口渇、食欲不振、投与部位における発疹または腫脹、熱、悪寒および倦怠感等のインフルエンザ様症状、消化管の問題、アレルギー反応、うつ病、目の問題、体重変動を含む。典型的に患者が経験する追加の望ましくない効果は多数であり、当技術分野において公知であり、例えば、Physicians' Desk Reference (69th ed., 2015)を参照されたく、これにより参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0054】
Cmaxは、医薬が投与された後に患者の血漿または組織中で医薬が達成する最大濃度を指すのに対し、Ctは、投与後の具体的な時刻(t)において医薬が達成する濃度を指す。別段の記載がない限り、本明細書におけるすべての考察は、血漿中における薬物動態パラメーターに関する。
【0055】
AUCtは、医薬の投与後の時刻ゼロから時刻tまでの血漿中濃度時間曲線下面積を指す。
【0056】
AUC∞は、時刻ゼロから無限大までの血漿中濃度時間曲線下面積を指す(無限大は、医薬の血漿中濃度が検出可能なレベル未満であることを意味する)。
【0057】
Tmaxは、投与後の患者において医薬の濃度がその最大血液血漿中濃度に到達するのに要する時間である。医薬の一部の投与形態は、それらのTmaxにゆっくりと到達することになる(例えば、経口的に摂取される錠剤およびカプセル剤)のに対し、他の投与形態は、それらのTmaxにほぼ直ちに到達することになる(例えば、皮下および静脈内投与)。
【0058】
「定常状態」は、薬物の全体的な摂取量が、その消失とほぼ動的平衡状態にある状況を指す。
【0059】
種々の薬物動態パラメーターならびにそれらを測定および計算する方法についての考察は、Clinical Pharmacokinetics and Pharmacodynamics: Concepts and Applications, M. Rowland and T. N. Tozer, (Lippincott, Williams & Wilkins, 2010)において見ることができ、その教示の参照により組み込まれる。
【0060】
「または」は、包括的意義で使用される、すなわち、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「および/または」と同等である。
【0061】
ある特定の実施形態では、治療有効量の治療剤を、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象に、対象のリンパ系に送達するための、例示的なデバイスおよび方法が提供される。ある特定の実施形態では、Sofusaリンパ送達システム(SOFUSA)デバイスが、本明細書でおよび全体を通して開示される方法に従って用いられる。例示的なそのような医療デバイスは、例えば、WO2011/135530、WO2011/135533、WO/2012/020332、WO2014/132239、WO2014/188343、WO2015/168210、WO2015/168215、WO2015/168217、WO2015/168219、WO2017/0189258、WO2017/0189259、WO2017/019535、WO2018/111611、WO2018/111616および/またはWO2018/111621において開示されている。
【0062】
ある特定の実施形態では、治療剤の治療標的が同定され、治療剤が対象のリンパ系に投与されて、それによって治療有効量の治療剤がリンパ管によってその標的に運搬されるように、SOFUSAデバイス等の医療デバイスが配置される。他の実施形態では、治療標的または治療標的の正確な場所は未知であるかまたはあまり明確に定義されていなくてよく、治療剤は、上記でおよび全体を通して記述されている通りのSOFUSAデバイス等の医療デバイスを介して、そのような対象のリンパ系に投与され、治療剤は、リンパ系を右リンパ本幹または胸管のいずれかに向かって横断するように意図されている。次いで、治療剤は、患者の循環系に入って、該剤への全身曝露につながる。治療剤の送達の具体的な治療標的が未知の、ある特定の関節炎疾患または関連状態では、上記でおよび全体を通して記述されている通りのSOFUSAデバイス等の医療デバイスを介して投与された治療剤は、ある特定のリンパ節を横断した後、排液管のいずれかに到達してよく、そのような投与は、全身曝露をもたらすと考えられる。そのため、当業者ならば、本開示を考慮して、治療剤の標的化された限局性投与、またはより広範囲にわたる全身投与を提供するために、本明細書で開示される方法およびデバイスを適用することができる。当業者ならば、個々の対象にいずれの投与モードが適切であるかを決定し、医療デバイス(単数または複数)を適宜配置してもよい。
【0063】
ある特定の実施形態では、SOFUSAは、皮膚の表皮/真皮境界部を経由して直接リンパ系にアクセスするために用いられ(
図1を参照)、それによって、求心性リンパ毛細管への治療剤のアクセスを提供する。ある特定の実施形態では、SOFUSAのマイクロニードル設計は、大分子およびバイオ医薬品が皮膚を経由して送達されることを可能にする。ある特定の実施形態では、SOFUSAの中空マイクロニードルが角質層および表皮の皮膚層に浸透し、そのため、治療有効量の治療剤、例を挙げるとEnbrel等の抗炎症剤が表皮-真皮界面に注入されうる。ある特定の実施形態では、この界面において、マイクロニードルは、皮下、静脈内投与、経口、口腔内、舌または他の非リンパルート等の非リンパ投与ルートで達成されるよりも大きい量または濃度のそのような治療剤を、初期リンパ管に送達し、それによって、奏効率、規模および/または持続時間における実質的および有利な改善を提供する。いかなる理論によっても拘束されることは望まないが、本明細書でおよび全体を通して開示される治療剤のリンパ投与の方法は、治療標的、組織、または免疫細胞等の細胞への、リンパ管による十分な量の治療剤の送達を容易にすると考えられる。
【0064】
ある特定の実施形態では、そのような治療標的は、例えば、他の起源の1つまたは複数の炎症関節、あるいはそのような関節炎疾患または関連状態を有するまたは有すると疑われる対象における、関節炎疾患または関連状態の臨床的兆候を含んでよい。ある特定の実施形態では、何らかの全身曝露が発生する間に、投与ははるかに限局化される。
【0065】
一部の態様では、治療標的は、リンパ節、リンパ管、リンパ系の一部である臓器、またはそれらの組合せであるか、またはそれらを含む。一部の態様では、治療標的はリンパ節である。一部の態様では、治療標的は、本明細書でおよび全体を通して記述されている通りの具体的なリンパ節である。
【0066】
一部の実施形態では、リンパ系への治療剤の送達は、リンパ脈管系の脈管、本明細書でおよび全体を通して記述されている通りのリンパ節への送達である。一部の態様では、送達は表在性リンパ管へのものである。さらに別の態様では、送達は1つまたは複数のリンパ節へのものである。送達の具体的な標的は、患者の医療ニーズに基づくものとなる。
【0067】
患者の体表における複数の場所に治療剤を送達するために1つよりも多い医療デバイスが使用される患者において、各場所における治療剤の全体的な用量は、患者が全体として安全でない組合せ用量の該剤を受けないように慎重に調整されなくてはならない。患者の体内または体表における具体的な場所をより正確により選択的に標的化できることは、多くの場合、各具体的な場所においてより低用量が要求されることを意味する。一部の実施形態では、患者の体表における1つまたは複数の場所を標的化するように投与される用量は、静脈内および皮下投与を含む他のルートによって投与される用量よりも低い。
【0068】
リンパ液は、循環系における血液と同様の方式で患者の体全体に循環することから、リンパ脈管系におけるあらゆる単一の位置は、別の位置に対して上流であることも下流であることもできる。リンパ脈管系に関して本明細書で使用される場合、用語「下流」は、基準位置(例えば、腫瘍または内臓または関節)に対して右リンパ本幹または胸管のいずれかのより近くのリンパ系(流体は健康な患者において脈管を経由して巡回するため)における位置を指す。本明細書で使用される場合、用語「上流」は、基準位置に対して右リンパ本幹または胸管からより遠くにあるリンパ系における位置を指す。リンパ系における流体流動の方向は患者の医学的状態により損なわれるまたは逆転される場合があるため、用語「上流」および「下流」は、医療処置を受けている患者における流体流動の方向を具体的に指すものではない。それらは、記述されている通りの排液管に対するそれらの物理的な位置に基づく位置用語である。
【0069】
リンパ節は、単一の孤立した節として存在するのとは対照的に、多くの場合、群を成して発生するため、用語「リンパ節」は、本明細書で使用される場合、単数であることも複数であることもでき、単一の孤立したリンパ節または小さい物理的な場所におけるリンパ節の群のいずれかを指す。例えば、鼠径リンパ節(単数または複数)への言及は、患者の腰/脚の付け根エリアまたは大腿三角に位置付けられているリンパ節の群としての、当業者(すなわち、医師または看護師等の医療の専門家)によって認識されているリンパ節の群を指す。これは、具体的に別段の記載がない限り、表在性および深リンパ節の両方も指す。
【0070】
一部の実施形態では、リンパ節は、手、足、太もも(大腿部リンパ節)、腕、脚、脇の下(腋窩リンパ節)、脚の付け根(鼠径リンパ節)、首(頸部リンパ節)、胸(胸筋リンパ節)、腹(腸骨リンパ節)において見られるリンパ節、膝窩リンパ節、胸骨傍リンパ節、大動脈外側リンパ節、大動脈周囲リンパ節、オトガイ下リンパ節、耳下腺リンパ節、顎下リンパ節、鎖骨上リンパ節、肋間リンパ節、横隔膜リンパ節、膵リンパ節、乳び槽、腰リンパ節、仙骨リンパ節、閉鎖リンパ節、腸間膜リンパ節、結腸間膜リンパ節、縦隔リンパ節、胃リンパ節、肝リンパ節および脾リンパ節、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0071】
一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの異なるリンパ節が選択される。一部の実施形態では、3つまたはそれよりも多くの異なるリンパ節が選択される。リンパ節は、患者の体のいずれの側にあってもよい。さらに別の実施形態では、リンパ節は鼠径リンパ節である。鼠径リンパ節は、右鼠径リンパ節、左鼠径リンパ節または両方であってよい。さらに別の実施形態では、リンパ節は腋窩リンパ節である。腋窩リンパ節は、右腋窩リンパ節、左腋窩リンパ節または両方であってよい。
【0072】
一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの異なるリンパ節が選択される。一部の実施形態では、3つまたはそれよりも多くの異なるリンパ節が選択される。リンパ節は、患者の体のいずれの側にあってもよい。さらに別の実施形態では、リンパ節は鼠径リンパ節である。鼠径リンパ節は、右鼠径リンパ節、左鼠径リンパ節または両方であってよい。さらに別の実施形態では、リンパ節は腋窩リンパ節である。腋窩リンパ節は、右腋窩リンパ節、左腋窩リンパ節または両方であってよい。
【0073】
一部の実施形態では、医薬は、患者の間質に、例えば、皮膚と臓器、筋肉もしくは脈管(動脈、静脈もしくはリンパ管)等の1つもしくは複数の内部構造との間の空間、または臓器の組織または部分内または間の任意の他の空間に送達される。またさらに別の実施形態では、医薬は、間質およびリンパ系の両方に送達される。治療剤が患者の間質に送達される実施形態では、治療剤を投与する前に患者のリンパ節またはリンパ脈管系を位置付けることが必要ではない場合がある。
【0074】
本明細書で開示される一実施形態は、治療剤を患者のリンパ系に投与するための方法である。方法は、概して、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、患者の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、患者の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、右リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;複数のマイクロニードルを備える第2の医療デバイスを、患者の皮膚下の第2の位置に近接した第2の場所で、患者の皮膚上に配置するステップであって、第2の位置が、胸管に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第2の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第2の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第2の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、第1の用量の治療剤を第1の位置に投与するステップと;第2の医療デバイスのマイクロニードルを介して、第2の用量の治療剤を第2の位置に投与するステップとを含み;用量を投与するステップは、治療有効量の治療剤を累積的に提供する。
【0075】
別の態様では、本明細書で開示されるのは、治療剤を患者のリンパ系に投与するための方法である。方法は、概して、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、患者の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、患者の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、右リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;複数のマイクロニードルを備える第2の医療デバイスを、患者の皮膚下の第2の位置に近接した第2の場所で、患者の皮膚上に配置するステップであって、第2の位置が、胸管に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第2の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第2の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第2の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、第1の治療有効用量の治療剤を第1の位置に投与するステップと;第2の医療デバイスのマイクロニードルを介して、第2の治療有効用量の治療剤を第2の位置に投与するステップとを含み;第1の用量および第2の用量を投与するための始まりの時刻は異なり、一定の期間で区切られている。
【0076】
本明細書で開示される一部の態様では、第1の位置および第2の位置は逆転され、第1の位置は、胸管に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第2の位置は、右リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接している。注記した通り、一方の医療デバイスは、リンパ系における2つの排液管のうちの一方に排液するのに対し、他方の医療デバイスは、他方の排液管に排液する。この方法は、少なくとも治療剤を患者のリンパ系に投与するように想定されており、それによってリンパ系の異なる部分が治療剤に曝露される。一部の態様では、2つまたはそれよりも多くの医療デバイスが、同じ排液管に排液するが患者のリンパ系の異なる領域を標的化するように配置される。例えば、1つのデバイスは患者の左腕に配置されてよく、1つのデバイスは患者の左脚に配置されてよい。治療剤は最終的に投与部位用の同じ導管を経由して排液するであろうが、治療剤は、患者のリンパ系の有意に異なる領域を横断するであろう。
【0077】
一部の態様では、第1の用量の治療剤および第2の用量の治療剤は、個々には治療上有効ではないが、用量を組み合わせた量は治療上有効である。第1の用量および第2の用量は、順次にまたは同時に投与されうる。一部の態様では、第1の用量および第2の用量は、順次に投与される。一部の態様では、第1の用量および第2の用量は、同時に投与される。一部の態様では、2つの用量の投与は、少なくとも部分的に時間が重複する。これは、2つの用量の投与は異なる時間に始めるが、第1の用量の投与が終了する前に第2の用量の投与が始まることを意味する。
【0078】
患者の体表における場所は、患者の医学的状態、ならびに処置を監督する、方向付けるおよび/または施す医療の専門家の知識に基づいて選択される。本明細書で開示される方法で使用される各医療デバイスについて、患者の体表における医療デバイスの場所は、この方法の目的がリンパ系の異なる部分を治療剤に曝露することであるという警告付きで、他の医療デバイスとは独立して選択される。一部の態様では、各医療デバイスは、患者の肢(すなわち、腕または脚)に配置される。治療剤へのリンパ系の最大曝露を達成するために、一方のデバイスは患者の右腕に配置されるのに対し、他方のデバイスは患者の左脚に配置される。代替として、一方のデバイスは患者の左腕に配置されうるのに対し、他方のデバイスは患者の右脚に配置される。さらに別の態様では、一方の医療デバイスは患者の右腕に配置されるのに対し、他方の医療デバイスは患者の左腕または左脚のいずれかに配置される。さらに別の態様では、一方の医療デバイスは患者の左腕に配置され、他方の医療デバイスは患者の右腕または右脚に配置される。患者の腕におけるデバイスは、患者の手首または手に近接して位置付けられてよいのに対し、患者におけるデバイスは、患者の足首または足に近接して位置付けられてよい。
【0079】
またさらに別の態様では、本明細書で開示される方法は、複数のマイクロニードルを備える第3の医療デバイスを、患者の皮膚下の第3の位置に近接した第3の場所で、患者の皮膚上に配置するステップであって、第3の位置が、リンパ管および/またはリンパ毛細管に近接している、ステップと;第3の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第3の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第3の医療デバイスを介して、第3の用量の前記治療剤を投与するステップとをさらに含み;第3の場所は、第1の場所および第2の場所とは異なり、第3の位置は、第1の位置および第2の位置とは異なる。
【0080】
またさらに別の態様では、本明細書で開示される方法は、複数のマイクロニードルを備える第4の医療デバイスを、患者の皮膚下の第4の位置に近接した第4の場所で、患者の皮膚上に配置するステップであって、第4の位置が、リンパ管および/またはリンパ毛細管に近接している、ステップと;第4の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第4の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第4の医療デバイスを介して、第4の用量の前記治療剤を投与するステップとをさらに含み;第1の場所、第2の場所、第3の場所および第4の場所は、患者の異なる肢にある。
【0081】
2つの医療デバイス、3つの医療デバイスまたは4つの医療デバイスを使用するものを含む、開示される方法のいずれかについて、一部の態様では、各医療デバイスは、最初は異なるリンパ節に排液するように配置され、排液リンパ節は、手、足、太もも(大腿部リンパ節)、腕、脚、脇の下(腋窩リンパ節)、脚の付け根(鼠径リンパ節)、首(頸部リンパ節)、胸(胸筋リンパ節)、腹(腸骨リンパ節)において見られるリンパ節、膝窩リンパ節、胸骨傍リンパ節、大動脈外側リンパ節、大動脈周囲リンパ節、オトガイ下リンパ節、耳下腺リンパ節、顎下リンパ節、鎖骨上リンパ節、肋間リンパ節、横隔膜リンパ節、膵リンパ節、乳び槽、腰リンパ節、仙骨リンパ節、閉鎖リンパ節、腸間膜リンパ節、結腸間膜リンパ節、縦隔リンパ節、胃リンパ節、肝リンパ節および脾リンパ節の群から選択される。
【0082】
3つの医療デバイスが患者において使用される1つの非限定的な例では、第1のデバイスは、その後右腋窩リンパ節に排液するであろう患者の右前腕に配置され;第2のデバイスは、その後左腋窩リンパ節に排液するであろう患者の左前腕に配置され;第3のデバイスは、その後左鼠径リンパ節に排液するであろう患者の左太ももに配置される。この事例では、第2および第3のデバイスはいずれも胸管に排液するであろうが、初期の排液リンパ節は異なっている。
【0083】
一部の態様では、第1の用量の治療剤、第2の用量の治療剤、ならびに存在するならば、第3の用量の治療剤および第4の用量の治療剤が、患者に順次にまたは同時にそれぞれ投与されてよい。用量は、第1および第2の用量が同時に投与されるのに対し、第3および第4の用量が一緒にであるが第1および第2の用量に対して順次に投与されるように組み合わされてよい。別の態様では、第1および第3の用量が同時に投与されるのに対し、第2および第4の用量が、互いに同時にかつ第1および第3の用量と順次に投与される。さらに別の態様では、各用量が順次に投与される。
【0084】
任意の個々の用量または順次に投与される用量の組合せについて、各投与の始まりの間には所定の期間がある。その所定の期間は、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間であってよい。所定の期間は、約15分から約72時間まで、またはその間の時間増分であってよい。各期間は、いかなる他の期間とも独立して選択され、患者の医療ニーズ、ならびに患者の処置を施す、監督するまたは方向付ける医療の専門家の評価に基づく。医療デバイスを用いてある用量の治療剤を投与するのにかかる時間はゼロではないため、その後の用量の治療剤を投与するステップの開始を、前の用量の投与の完了の前とすることが可能である。例えば、第2の用量の治療剤の投与は、第1の用量の治療剤の投与が完了する前に始まってよい。さらに別の態様では、所定の期間は、1つの用量の終了および次の用量の開始に基づく。
【0085】
一部の態様では、治療剤は、関節炎疾患または関連状態を有するまたは有すると疑われる対象において、そのような関節炎疾患または関連状態の1つまたは複数の症状または臨床的兆候を処置するまたは軽減させる際に有効である。一部の態様では、治療剤は、TNF-αを阻害する抗体である。一部の実施形態では、治療剤は、アダリムマブ、アダリムマブ-atto、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、エタネルセプト-szzs、ゴリムマブ、インフリキシマブ、インフリキシマブ-dyyb、または、前述の作用物質のいずれか1つのバリアント、アナログ、バイオシミラーもしくは生物学的同等品である。一部の実施形態では、治療剤は、エタネルセプト、またはそのバリアント、アナログ、バイオシミラー、もしくはその生物学的同等品である。一部の実施形態では、治療剤は、アダリムマブまたはそのバリアント、アナログ、バイオシミラー、もしくはその生物学的同等品である。一部の実施形態では、治療剤は、免疫抑制剤である。ある特定の実施形態では、免疫抑制剤は、アダリムマブ(Humira(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、ウステキヌマブ(Stelara(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、セクキヌマブ(Cosentyx(登録商標))、オマリズマブ(Xolair(登録商標))、ナタリズマブ(Tysabri(登録商標))、イキセキズマブ(Taltz(登録商標))、オビヌツズマブ(Gazyva(登録商標))もしくはリツキシマブ/ヒアルロニダーゼヒト(Rituxan Hycela(商標))、または、前述のいずれかのバリアント、アナログ、バイオシミラーもしくは生物学的同等品である。
【0086】
またさらに別の実施形態では、本明細書で開示されるのは、患者において治療剤のバイオアベイラビリティを増大させるための方法であって、複数のマイクロニードルを備える少なくとも1つの医療デバイスを、患者の皮膚表面上に配置するステップと;少なくとも1つの医療デバイスを用いて、治療剤を患者に投与するステップとを含む、方法である。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書で記述されている通りの患者に治療剤を送達するための方法は、本明細書で記述されている通りの比較的高いリンパ送達速度を保持しながら、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達ルートと比較して、本明細書で記述されている1種または複数の治療剤と同等の血清吸収速度をもたらす。いかなる理論によっても拘束されないが、送達速度およびバイオアベイラビリティの増大は、胸管または右リンパ本幹を経由し血液循環への、1種または複数の作用物質のリンパ循環によるものであってよい。所望の時点で血清濃度を測定することおよび治療モニタリングのための、当技術分野に周知である標準的な高度に精密で正確な方法論、例を挙げると、ラジオイムノアッセイ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、酵素イムノアッセイ(EMIT)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が使用されてよい。上述した方法を使用して吸収速度を計算するために、いくつかの時点における薬物濃度を、投与の直後に着手してその後徐々に、Cmax値が確立され、関連する吸収速度が計算されるまで、測定しなくてはならない。
【0088】
本明細書で開示される一実施形態は、患者において炎症性の医学的状態を処置するための方法である。方法は、概して、患者において少なくとも1つの炎症部位を位置付けるステップであって、少なくとも1つの炎症部位が、リンパ管、リンパ毛細管、リンパ節、リンパ臓器、またはそれらの任意の組合せを含む、ステップと;患者のリンパ系において、炎症部位の上流にある第1の位置を位置付けるステップと;複数のマイクロニードルを備える医療デバイスを、第1の位置に近接した患者の皮膚上に配置するステップであって、マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透する深さまで挿入するステップと;複数のマイクロニードルを介して、第1の位置に、TNF-αを阻害する治療有効量の抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を投与するステップとを含む。
【0089】
別の態様では、本明細書で開示されるのは、患者においてTNF-αレベルを低下させるための方法である。方法は、概して、患者のリンパ系において第1の位置を位置付けるステップと;複数のマイクロニードルを備える医療デバイスを、第1の位置に近接した患者の皮膚上に配置するステップであって、マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透する深さまで挿入するステップと;複数のマイクロニードルを介して、第1の位置に、TNF-αを阻害する治療有効量の抗体またはエタネルセプトまたはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を投与するステップとを含む。
【0090】
別の態様では、本明細書で開示されるのは、患者において炎症性の医学的状態を処置するための方法である。方法は、概して、患者において、リンパ節、リンパ毛細管、リンパ管、リンパ臓器、またはそれらの任意の組合せを含む少なくとも1つの炎症部位を位置付けるステップと;複数のマイクロニードルを備える医療デバイスを、患者の皮膚下の第1の位置に近接した患者の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、炎症部位におけるリンパ系にリンパを直接送達する選択されたリンパ毛細管および/またはリンパ管を含むように位置しており、マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透する深さまで挿入するステップと;複数のマイクロニードルを介して、患者の選択されたリンパ毛細管および/またはリンパ管に、TNF-αを阻害する治療有効量の抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を投与するステップとを含む。
【0091】
一部の実施形態では、患者において炎症性の医学的状態を処置するための方法が提供される。方法は、複数のマイクロニードルを備える医療デバイスを、患者の皮膚下の第1の位置に近接した患者の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ系にリンパを直接送達するリンパ毛細管および/またはリンパ管を含むように位置しており、マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;複数のマイクロニードルを、患者に、それにより少なくとも表皮に浸透する深さまで挿入するステップと;複数のマイクロニードルを介して、患者のリンパ毛細管および/またはリンパ管に、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を投与し、それによって、炎症性の医学的状態を処置するステップとを含む。
【0092】
一部の実施形態では、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を投与するステップを含む、本明細書で開示される方法は、例えば、右リンパ本幹および胸管にそれぞれ排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接している少なくとも第1の位置への投与を含む、治療剤を患者のリンパ系に投与する方法に関して上記で説明した特色のいずれかを有する。
【0093】
一部の実施形態では、関連状態は、自己免疫状態である。ある特定の実施形態では、関連状態は、ベーチェット病、サルコイドーシス、関節リウマチ(RA)、若年性関節炎、乾癬性関節炎、尋常性乾癬、化膿性汗腺炎、自己免疫性ブドウ膜炎、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病、およびそれらの組合せからなる群から選択される自己免疫状態である。一部の実施形態では、炎症性の医学的状態は、関節リウマチである。一部の実施形態では、炎症性の医学的状態は、乾癬性関節炎である。一部の実施形態では、炎症性の医学的状態は、尋常性乾癬である。一部の実施形態では、炎症性の医学的状態は、潰瘍性大腸炎である。一部の実施形態では、炎症性の医学的状態は、クローン病である。炎症性の医学的状態は、急性または慢性であってよい。
【0094】
患者における炎症部位は、炎症の徴候を呈する、患者における任意の場所でありえ、そのような徴候は、発赤、腫脹、流体貯留、関節痛、関節の硬さ、その場所の異常な温かさ、および関節機能の喪失を含むがこれらに限定されない。
【0095】
一部の実施形態では、投与は、炎症部位の上流にあるリンパ管に為される。他の実施形態では、投与は、炎症部位の上流にあるリンパ節およびリンパ管の両方に為される。一部の態様では、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を患者に投与する前に、炎症部位の上流にあるリンパ節を位置付けることが必要ではない場合がある。
【0096】
一部の医学的状態は、患者のリンパ系を損傷させうることから、リンパ系における流体の流動は、損なわれるまたはさらには逆転される場合がある(逆流と呼ばれる)。これは、患者の周囲組織および臓器における腫脹につながりうる。一部の態様では、医療デバイスは、リンパ系における逆流が、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を、標的化された場所に輸送するように配置される。例えば、適正に機能しているリンパ系において、炎症部位に対して下流の位置は、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を、炎症部位に直接輸送することはないであろう。しかしながら、損なわれたリンパ系において、炎症部位に対して下流の位置からの逆流は、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を、炎症部位に直接輸送するであろう。当技術分野の熟達した医療の専門家は、リンパ系が機能する方式を理解しており、その知識に基づいて患者のための処置の決断を行うことになる。
【0097】
一部の態様では、炎症部位は、関節、リンパ節、リンパ管、リンパ系の一部である臓器、またはそれらの組合せである。一部の態様では、治療標的は関節である。一部の態様では、治療標的はリンパ節である。一部の態様では、治療標的は、本明細書の他の箇所で記述されている通りの具体的なリンパ節である。
【0098】
一部の態様では、炎症部位は、足首関節、膝関節、腰関節、肩関節、肘関節、手の中手指節関節、足の中足指節関節、手首関節、首の関節、およびそれらの組合せからなる群から選択される関節である。一部の態様では、炎症部位は乾癬性病変である。
【0099】
一部の態様では、炎症部位は膝であり、選択されたリンパ毛細管および/または管は、膝窩リンパ節に流入する。一部の態様では、炎症部位は膝であり、膝と比べて、選択されたリンパ毛細管および/または管は、心臓の遠位に位置付けられる。
【0100】
一部の態様では、炎症部位は首であり、選択されたリンパ毛細管および/または管は、頸部リンパ節に流入する。一部の態様では、炎症部位は首であり、首と比べて、選択されたリンパ毛細管および/または管は、心臓の遠位に位置付けられる。
【0101】
一部の態様では、炎症部位は肩であり、選択されたリンパ毛細管および/または管は、胸筋リンパ節、鎖骨上(superclavical)リンパ節、腋窩リンパ節、またはそれらの任意の組合せに流入する。一部の態様では、炎症部位は肩であり、肩と比べて、選択されたリンパ毛細管および/または管は、心臓の遠位に位置付けられる。
【0102】
一部の態様では、炎症部位は肘であり、選択されたリンパ毛細管および/または管は、内側上顆リンパ節および/または上腕リンパ節に流入する。一部の態様では、炎症部位は肘であり、肘と比べて、選択されたリンパ毛細管および/または管は、心臓の遠位に位置付けられる。
【0103】
一部の態様では、炎症部位は腰であり、選択されたリンパ毛細管および/または管は、鼠径リンパ節および/または骨盤リンパ節に流入する。一部の態様では、炎症部位は腰であり、腰と比べて、選択されたリンパ毛細管および/または管は、心臓の遠位に位置付けられる。一部の態様では、炎症部位は腰であり、腰と比べて、選択されたリンパ毛細管および/または管は、心臓に近接して位置付けられる。
【0104】
一部の態様では、炎症部位は乾癬性病変であり、選択されたリンパ毛細管は、乾癬性病変に直接隣接しているおよび/またはその中の共通のリンパ管および/またはリンパ毛細管を共有する。一部の態様では、医療デバイスは、乾癬性病変の中のおよび/またはそれに最も近いリンパ節に直接流入するリンパ毛細管および/または管を有する、患者の皮膚上の場所に配置される。
【0105】
一部の態様では、複数のマイクロニードルを備える2つの医療デバイスが使用される場合、第1の医療デバイスは、TNF-αを阻害する第1の抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を、炎症部位と比べて心臓の遠位にある、選択されたリンパ毛細管および/または管に投与し、第2の医療デバイスは、TNF-αを阻害する第2の抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品を、炎症部位と比べて心臓の近位にある、選択されたリンパ毛細管および/または管に投与する。一部の態様では、第1の治療剤および第2の治療剤は同じである。一部の態様では、第1の治療剤および第2の治療剤は異なる。この場合、各医療デバイスによって投与される各個々の用量は治療有効用量よりも小さくてよいが、2つの医療デバイスによって投与される組合せ用量は治療上有効である。
【0106】
一部の実施形態では、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品のリンパ系への送達は、リンパ脈管系の脈管、本明細書の他の箇所で記述されている通りのリンパ節、または両方への送達である。一部の態様では、送達は、表在性リンパ管へのものである。さらに別の態様では、送達は、1つまたは複数のリンパ節へのものである。送達の具体的な標的は、患者の医療ニーズに基づくことになる。1つの非限定的な例では、患者の関節が、慢性関節炎状態に関連する急性関節炎再燃の徴候を示す場合、複数のマイクロニードルを備える医療デバイスを、患者に、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品をその具体的な関節に直接送達するように配置することができる。代替として、医療デバイスを、関節の上流に、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品が、標的化された関節に供給するリンパ管に送達されるように配置することができる。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの医療デバイスを使用して、患者のリンパ系における2つまたはそれよりも多くの異なる場所を標的化する。
【0107】
医療デバイスの配置は、患者の医学的状態および/または医療の専門家による評価に基づく。1つの非限定的な例では、1つの具体的な関節(例えば、膝または肩)における関節リウマチの急性再燃に罹患している患者において、医療デバイスは、急性再燃の具体的な場所をより有効に標的化するために、上流に配置されて、炎症関節の中におよび/またはそれに向かって流入するリンパ管に作用物質を送達する。同様に、別の非限定的な例では、乾癬性病変の有意なパッチを当てた患者は、その体表の、病変の上流にある異なる場所に配置された、2つまたはそれよりも多くの医療デバイスを有することができ、それによって、具体的な病変をより正確に標的化する。
【0108】
一部の態様では、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品は、炎症性の医学的状態の症状を処置するまたは軽減させる際に有効である。一部の実施形態では、TNF-αを阻害する抗体またはエタネルセプト、またはそのバイオシミラーもしくは生物学的同等品は、アダリムマブ、アダリムマブ-atto、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、エタネルセプト-szzs、ゴリムマブ、インフリキシマブ、インフリキシマブ-dyyb、または前述の作用物質のいずれかの、バイオシミラーもしくは生物学的同等品である。一部の実施形態では、治療剤は、エタネルセプト、そのバイオシミラー、またはその生物学的同等品である。一部の実施形態では、治療剤は、アダリムマブ、そのバイオシミラー、またはその生物学的同等品である。
【0109】
複数回用量の治療剤が患者に投与される場合、各個々の用量は治療上有効でなくてもよいが、組合せ用量は治療上有効であることが理解される。治療上有効である組合せ用量は、同じ治療剤が異なるルート(例えば、皮下、静脈内等)によって投与される場合、治療有効用量よりも小さくなる場合がある。
【0110】
本明細書における使用に好適なマイクロニードルのアレイを備える医療デバイスは、当技術分野において公知である。1種または複数の作用物質を患者に制御可能に送達するための手段を備える、特定の例示的な構造およびデバイスは、国際特許出願公開第WO2014/188343号、同第WO2014/132239号、同第WO2014/132240号、同第WO2013/061208号、同第WO2012/046149号、同第WO2011/135531号、同第WO2011/135530号、同第WO2011/135533号、同第WO2014/132240号、同第WO2015/16821号、ならびに国際特許出願第PCT/US2015/028154号(WO2015/168214A1として公開された)、第PCT/US2015/028150号(WO2015/168210A1として公開された)、第PCT/US2015/028158号(WO2015/168215A1として公開された)、第PCT/US2015/028162号(WO2015/168217A1として公開された)、第PCT/US2015/028164号(WO2015/168219A1として公開された)、第PCT/US2015/038231号(WO2016/003856A1として公開された)、第PCT/US2015/038232号(WO2016/003857A1として公開された)、第PCT/US2016/043623号(WO2017/019526A1として公開された)、第PCT/US2016/043656号(WO2017/019535A1として公開された)、第PCT/US2017/027879号(WO2017/189258A1として公開された)、第PCT/US2017/027891号(WO2017/189259A1として公開された)、第PCT/US2017/064604号(WO2018/111607A1として公開された)、第PCT/US2017/064609号(WO2018/111609A1として公開された)、第PCT/US2017/064614号(WO2018/111611A1として公開された)、第PCT/US2017/064642号(WO2018/111616A1として公開された)、第PCT/US2017/064657号(WO2018/111620A1として公開された)、および第PCT/US2017/064668号(WO2018/111621A1として公開された)において記述されており、これらはいずれも、これにより参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0111】
本明細書で記述される実施形態の一部の態様では、1種または複数の治療剤は、1つまたは複数の医療デバイスを、患者の皮膚の1つまたは複数の部位に適用することによって投与される。本明細書で開示される方法のすべてで使用するのに好適な、複数のマイクロニードルを備える医療デバイスの1つの非限定的な例は、Sorrento Therapeutics,Inc.から入手可能なSofusa(商標)薬物送達プラットフォームである。
【0112】
一部の実施形態では、医療デバイスは、患者の皮膚と直接接触させて配置される。一部の実施形態では、介在層または構造が、患者の皮膚と医療デバイスとの間にあることになる。例えば、サージカルテープまたはガーゼを使用して、医療デバイスと患者の皮膚との間の考えられる皮膚刺激を低減させてよい。マイクロニードルが装置から伸長する場合、それらは、医薬を患者に送達するために、患者の表皮または真皮と接触し、一部の事例では、浸透することになる。医薬の送達は、循環系、リンパ系、間質、皮下、筋肉内、皮内またはそれらの組合せへのものでありうる。一部の実施形態では、医薬は、患者のリンパ系に直接送達される。一部の態様では、医薬は、リンパ系の表在管に送達される。
【0113】
用語「近接した」は、本明細書で使用される場合、所望の治療標的上および/または付近への配置を包括するように意図されている。治療標的に近接した医療デバイスの配置は、投与された治療剤がリンパ系に入り、意図されている治療標的に向かって横断することをもたらす。加えて、医療デバイスの配置は、投与された治療剤が治療標的に直接投与されるようなものであってよい。
【0114】
本明細書で記述される一部の実施形態では、複数のマイクロニードルを備える医療デバイスを含む方法は、患者の皮膚の角質層に浸透し、皮膚における送達深さおよび体積を取得し、1種または複数の作用物質を本明細書で記述されている通りの投与速度で制御可能に送達することができる、2つまたはそれよりも多くの送達構造を備えるデバイスを経由して、1種または複数の作用物質を送達するステップを含んでよい。送達構造は、医療デバイスの裏当て基材に取り付けられ、角質層に浸透するおよび1種または複数の作用物質を送達するために1つまたは複数の異なる角度で配列されてよい。本明細書で記述される一部の態様では、送達構造を含む裏当て基材は患者の皮膚と接触していてよく、円筒形、長方形または幾何学的に不規則な形状を有してよい。裏当て基材は、一部の態様では約1mm2から約10,000mm2までであってよい、二次元表面積をさらに含む。一部の態様では、送達構造は、任意の幾何学的形状(例えば、円筒形、長方形または幾何学的に不規則な形状)を含んでよい。加えて、送達構造は、長さおよび断面表面積を含んでよい。一部の態様では、送達構造は、断面直径または幅よりも大きい全長を有してよい。一部の他の態様では、送達構造は、全長よりも大きい断面直径または幅を有してよい。一部の態様では、送達構造のそれぞれの断面幅は、約5μmから約140μmまでであってよく、断面積は、約25μm2から約65,000μm2までであってよく、それぞれ指定された範囲内の整数を含む。一部の実施形態では、送達構造のそれぞれの長さは、約10μmから約5,000μmまで、約50から約3,000μmまで、約100から約1,500μmまで、約150から約1,000μmまで、約200から約800μmまで、約250から約750μmまで、または約300から約600μmまでであってよい。一部の態様では、送達構造のそれぞれの長さは、約10μmから約1,000μmまでであってよく、それぞれ指定された範囲内の整数を含む。本明細書で記述されている通りの表面積および断面表面積は、当技術分野において公知の標準的な幾何学的計算を使用して決定されてよい。
【0115】
本明細書で記述される送達構造は、互いに同一である必要はない。複数の送達構造を有する医療デバイスは、それぞれ、種々の長さ、外径、内径、断面形状、ナノトポグラフィー表面、および/または送達構造のそれぞれの間の間隔を有してよい。例えば、送達構造は、例えば、長方形もしくは正方形格子内または同心円内等、均一な方式で相隔てられていてよい。間隔は、送達構造の高さおよび幅、ならびに送達構造を経由して送達されるように意図されている作用物質の量および種類を含む、多数の要因によって決まってよい。一部の態様では、各送達構造間の間隔は、約1μmから約1500μmまでであってよく、それぞれ指定された範囲内の整数を含む。一部の態様では、各送達構造間の間隔は、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、約1000μm、約1100μm、約1200μm、約1300μm、約1400μmまたは約1500μmであってよい。この文脈において使用される場合について、「約」は、±50μmを意味する。
【0116】
本明細書で記述される一部の実施形態では、医療デバイスは、パッチの形態のニードルアレイを含んでよい。一部の態様では、ニードルのアレイは、角質層の最表層に浸透し、本明細書で記述されている通りの1種または複数の作用物質を、最初に、対象の生育不能な表皮の少なくとも一部分もしくはすべてに、生育可能な表皮の少なくとも一部分もしくはすべてに、および/または生育可能な真皮の少なくとも一部分に、その後、患者のリンパ系に送達することができる。これらのニードルは、ニードルの表面上にナノトポグラフィーをランダムまたは組織化されたパターンでさらに含んでよい。一部の態様では、ナノトポグラフィーパターンは、フラクタル幾何学を実証しうる。
【0117】
一部の実施形態では、送達構造は、1種または複数の作用物質を含む液体担体ビヒクルと流体連通しているニードルのアレイを含んでよい。一部の態様では、ニードルはマイクロニードルである。一部の態様では、ニードルのアレイは、皮膚浸透および皮膚への流体送達を制御する(例えば、皮膚に浸透および送達する)ための構造的手段を持つ2から50,000本の間のニードルを含んでよく、例えば、国際特許出願第PCT/US2017/064668号(WO2018/111621A1として公開された)を参照されたく、これにより参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の他の態様では、ニードルのアレイは、各ニードル上に製造されたランダムまたは構造化されたナノトポグラフィーをさらに含んでよい。ニードルまたはニードルアレイは、流体送達速度制御部、皮膚に取り付けるための接着剤、流体ポンプ等を含むより大きい薬物送達装置に取り付けられてよい。所望ならば、作用物質の送達速度は、圧力発生手段によって可変的に制御されてよい。本明細書で記述されている通りの表皮への所望の送達速度は、圧力の印加、あるいはポンプ、シリンジ、ペン、エラストマー膜、ガス圧、圧電、起電力、電磁気もしくは浸透圧ポンピング、または速度制御膜の使用またはそれらの組合せを含む他の推進手段を用いて、本明細書で記述される1種または複数の作用物質を推進することによって開始されてよい。
【0118】
図7は、使用前の機器構成における、概して10によって指し示される複数のマイクロニードルを備える医療デバイス(例えば、医薬送達装置)の1つの例示的な例の断面図である。この例は、本明細書で開示される主題のすべての実施形態および態様での使用に好適であることが理解される。当技術分野において公知である通りの他のデバイスも、ここでの使用に好適である。
図8は、使用機器構成における流体送達装置10の断面図である。
図9は、流体送達装置10の分解組立断面図である。例示的な実施形態では、流体送達装置10は、一緒に連結されて、コレットアセンブリ12および流体分配アセンブリ14を含む流体送達装置10を形成する、複数のサブアセンブリコンポーネントを含む。コレットアセンブリ12および流体分配アセンブリ14は、概してそれらのそれぞれの参照番号によって指し示される。
図9に示される通り、流体分配アセンブリ14は、プレナムアセンブリ16、カートリッジアセンブリ18、キャップアセンブリ320および機械式コントローラーアセンブリ20を含む複数の追加のサブアセンブリコンポーネントを含む。コレットアセンブリ12、流体分配アセンブリ14、プレナムアセンブリ16、カートリッジアセンブリ18、キャップアセンブリ320および機械式コントローラーアセンブリ20のそれぞれは、添付の図面において、概してそれらの参照番号によって指し示される。コレットアセンブリ12は、流体送達装置10の本体または筺体を形成し、流体分配アセンブリ14と摺動自在に連結される。流体分配アセンブリ14を形成するために、キャップアセンブリ320は、カートリッジアセンブリ18と連結され、カートリッジアセンブリ18は、プレナムアセンブリ16と摺動自在に連結される。加えて、機械式コントローラーアセンブリ20は、以下でより詳細に説明される通り、カートリッジアセンブリ18と連結される。
【0119】
図10は、流体送達装置10のコレットアセンブリ12の断面図であり、
図11は、その分解斜視図である。
図9~11を参照すると、例示的な実施形態では、コレットアセンブリ12は、コレットロック50と連結されているコレット22を含む。例示的な実施形態では、コレット22は、その中に画定された中空内部空間24を有する略円錐台形状で形成される。コレット22は、中心軸「A」の周囲に略対称的に形成される。コレット22の上周縁部26は、開口部28を内部空間24に画定する。円筒形の上壁30は、コレット22の上周縁部26から中心部分32に向かって下向きに略垂直に伸長する。下壁34は、コレット22の中心部分32から基部36(または下縁部)に向かって外向きの角度で下向きに伸長する。上壁30、中心部分32および下壁34は、内部空間24を共同で画定する。ステップ38は上壁30の周囲に伸長して、取り付けバンドを係合させるように構成された外側水平表面40(またはレッジ)を画定する。ステップ38は、プレナムアセンブリ16と係合するように構成された内側水平表面42(またはステップ)も画定して、流体送達装置10の使用前にプレナムアセンブリ16を使用者の皮膚表面上に適正に位置決めすることを容易にする。
【0120】
図11で例証されている通り、コレット22は、概して44で指し示され、向かい合って、下壁34を経由して形成された、一対のノッチを含む。例示的な実施形態では、ノッチ44は、略長方形の形状であり、コレットロック50の一部分を受けるように構成されている。加えて、コレット22は、コレット22と連結される場合にコレットロック50の位置決めを容易にするように構成された、1つまたは複数の留め具46を含む。例えば、限定されないが、1つまたは複数の留め具46は、下壁34に形成された内向きに伸長する突起として形成される。留め具46は、留め具46を本明細書で記述されている通りに機能させることを可能にする形態または形状を有することができる。
【0121】
図10および
図11で例証されている通り、例示的な実施形態では、コレット22は、上壁30と一体的に形成された複数の柔軟なタブ48を含む。加えて、複数の柔軟なタブ48は、中心軸「A」の周囲に等距離に位置決めされる。特に、複数の柔軟なタブ48は、第1の末端76から反対側の自由な第2の末端78へ伸長する。例示的な実施形態では、自由な第2の末端78は、半径方向内向きに角度を付け、プレナムアセンブリ16と係合するように構成されて、流体送達装置10の使用中にプレナムアセンブリ16を使用者の皮膚表面に適正に位置決めすることを容易にする。
【0122】
図10および
図11で例証されている通り、例示的な実施形態では、コレットロック50は、コレットロック50の下外縁部54から略円筒形の内壁56へ伸長する凸部内側表面52を有する、略リング形状である。内壁56は、上部表面58へ上向きに伸長する。コレットロック50は、内壁56と同心円状であり、下外縁部54から上向きに伸長する、略円筒形の外壁60を含む。加えて、コレットロック50は、向かい合っており、上部表面58から上向きに伸長する、ラッチ部材62、64を含む。ラッチ部材62、64は、コレット22のノッチ44と連結するように構成されている。ラッチ部材62は、ラッチ部材62から外向きに伸長する第1の連結部材66を含む。特に、第1の連結部材66は、コレット22の下壁34に実質的に垂直な上向きの角度で伸長する、ネック部分63を含む。加えて、第1の連結部材66は、ネック部分63の周辺部を越えて下壁34に対して略平行に伸長する、ヘッド部分65を含む。さらに、第1の連結部材66は、ヘッド部分65を経由して伸長するウィンドウまたはアパーチャ61を含む。ウィンドウ61は、本明細書においてさらに記述されるように、流体送達装置10の使用者に、取り付けバンド430の圧迫感の表示度数を提示するように構成されている。
【0123】
同様に、ラッチ部材64は、ラッチ部材64から外向きに伸長する、第2の連結部材68の隣接する対を含む。例示的な実施形態では、連結部材68はそれぞれ、コレット22の下壁34に実質的に垂直な上向きの角度で伸長する、ネック部分67を含む。加えて、第2の連結部材68は、ネック部分67の周辺部を越えて下壁34に対して略平行に伸長する、ヘッド部分69を含む。第1の連結部材66および第2の連結部材68の対は、本明細書においてさらに記述されるように、取り付けバンド430を係合させるように構成されている。
【0124】
例示的な実施形態では、コレットロック50の外壁60は、下壁34に対して実質的に平行な角度で内向きに傾斜して、それとの対面係合を容易にする、上部外側表面70を含む。加えて、上部表面58は、上向きに伸長し、コレット22の1つまたは複数の留め具46を係合させて、コレット22と連結される場合にコレットロック50の位置決めを適正に容易にするように構成された、複数の留め具部材72を含む。凸部内側表面52から半径方向内向きに伸長しているのは、プレナムアセンブリ16と係合するように構成されて、流体送達装置10の使用中にプレナムアセンブリ16を使用者の皮膚表面に適正に位置決めすることを容易にする、複数のタブ74である。
【0125】
例示的な実施形態では、コレット22は、コレットロック50と連結されて、一体型アセンブリを形成する(
図10に示される)。特に、コレットロック50の上部表面70およびラッチ部材62、64は、恒久的連結方法を介して、例えば、限定されないが、接着ボンド、溶接継手(例えば、スピン溶接、超音波溶接、レーザー溶接または熱カシメ)等を介して、コレット22の下壁34およびノッチ44を係合させる。代替として、コレット22およびコレットロック50は、コレットアセンブリ12の形成を可能にする任意の接続技術を使用して、一緒に連結されてよい。
【0126】
図7~11に見られる、その操作を含む流体送達装置10の追加の記述は、例えば、PCT/US2017/064668(WO2018/111621A1として公開された)において見ることができ、これにより参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0127】
本明細書で記述される一部の実施形態では、本明細書で記述されている通りの複数のマイクロニードルを備える医療デバイスは、透過性エンハンサーとして機能し、表皮を経由する1種または複数の作用物質の送達を増大させうる。この送達は、経細胞輸送機構(例えば、能動または受動機構)をモジュレートすることを経由してまたは傍細胞透過を経由して発生しうる。いかなる理論によっても拘束されないが、ナノ構造化またはナノトポグラフィー表面は、傍細胞を考慮に入れて細胞/細胞タイトジャンクションを改変するか、または生育可能な表皮を経由して下層の生育可能な真皮へ投与される作用物質の拡散もしくは移動および/もしくは能動輸送を考慮に入れて細胞能動輸送経路(例えば、経細胞輸送)を改変することによって、表皮基底膜を含む生育可能な表皮の1つまたは複数の層の透過性を増大させうる。この効果は、細胞/細胞タイトジャンクションタンパク質の遺伝子発現のモジュレーションによるものであってよい。先に言及した通り、タイトジャンクションは、生育可能な皮膚および特に生育可能な表皮の中に見られる。タイトジャンクションの開口部は、皮膚を経由する送達から先に遮断されているもの等、あらゆる作用物質の送達の改善のための傍細胞ルートを提供しうる。
【0128】
いかなる理論によっても拘束されることは望まないが、個々の細胞とナノトポグラフィーの構造との間の相互作用は、上皮組織(例えば、表皮)の透過性を増大させ、バリア細胞を経由する作用物質の通過を誘導し、経細胞輸送を促すことができると考えられる。例えば、生育可能な表皮のケラチノサイトとの相互作用は、ケラチノサイトへの作用物質の分別(例えば、経細胞輸送)、続いて、再び細胞を経由するおよび脂質二重層全体にわたる拡散を促すことができる。加えて、ナノトポグラフィー構造と角質層の角質細胞との相互作用は、バリア脂質またはコルネオデスモソーム中に変化を誘導して、角質層を経由して下層の生育可能な表皮層への作用物質の拡散をもたらすことができる。作用物質は傍細胞および経細胞ルートに従ってバリアを横断しうるが、主要な輸送経路は、作用物質の性質に応じて変動しうる。
【0129】
本明細書で記述される一部の実施形態では、デバイスは、上皮組織の1つまたは複数の成分と相互作用して組織の多孔性を増大させて、傍細胞および/または経細胞輸送機構に感受性にさせることができる。上皮組織は、体の一次組織型の1つである。より多孔質にされうる上皮組織は、ケラチン性上皮および移行上皮の両方を含む、単層および重層上皮の両方を含みうる。加えて、本明細書に包括される上皮組織は、限定されないが、ケラチノサイト、内皮細胞、リンパ内皮細胞、扁平上皮細胞、円柱状細胞、立方細胞および多列細胞を含む、上皮層のあらゆる細胞型を含みうる。任意の上皮透過性アッセイを含むがこれに限定されない、多孔性を測定するための任意の方法を使用してよい。例えば、ホールマウント透過性アッセイは、上皮(例えば、皮膚)多孔性またはバリア機能をin vivoで測定するために使用されてよく、例えば、Indra and Leid., Methods Mol Biol. (763) 73-81を参照されたく、これはその教示についての参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
本明細書で記述される一部の実施形態では、バリア細胞におけるナノトポグラフィー表面の存在によって誘導される構造変化は、一時的かつ可逆的である。驚くべきことに、ナノ構造化ナノトポグラフィー表面を使用することは、接合部安定性および動力学を変化させることによって上皮組織の多孔性における一時的かつ完全に可逆的な増大をもたらし、これが、いかなる理論によっても拘束されないが、表皮を経由し生育可能な真皮へ投与される作用物質の傍細胞および経細胞輸送における一時的な増大をもたらしうることが分かった。故に、一部の態様では、ナノトポグラフィーによって導出される表皮または上皮組織の透過性における増大、例を挙げると、1種または複数の作用物質の傍細胞または経細胞拡散または移動の促進は、ナノトポグラフィーの除去後、上皮組織をナノトポグラフィーと接触させる前に存在していた正常な生理学的状態に戻る。このようにして、バリア細胞(例えば、表皮細胞)の正常なバリア機能は修復され、対象の組織内の分子の正常な生理学的拡散または移動を超える分子のさらなる拡散も移動も発生しない。
【0131】
ナノトポグラフィーによって誘導されるこれらの可逆的な構造変化は、二次皮膚感染、害を及ぼす毒素の吸収を限定し、真皮の刺激を限定するように機能しうる。また、表皮の最上層から基底層への表皮透過性の漸進的逆転は、表皮を経由し真皮への1種または複数の作用物質の下向きの移動を促進し、表皮に戻す1種または複数の作用物質の逆流または逆拡散を防止することができる。
【0132】
一部の実施形態では、本明細書で記述されるのは、複数のマイクロニードルを有するデバイスを、対象の皮膚の表面に、本明細書で記述される疾患または障害の処置のために適用するための方法である。一部の態様では、デバイスは、体表における皮膚の場所がリンパ毛細管および/または毛細血管において緊密である、対象の皮膚のエリアに適用される。複数のデバイスが、リンパ毛細管の緊密なネットワークを有する皮膚の1つまたは複数の場所に適用されてよい。一部の態様では、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれよりも多くのデバイスが適用されてよい。これらのデバイスは、互いに空間的に離れてまたはごく接近してまたは並置されて適用されてよい。リンパが緊密である例示的なおよび非限定的な場所は、手の掌面、陰嚢、足底面および下腹部を含む。デバイスの場所は、患者の医学的状態および医療の専門家の評価に基づいて選択されることになる。
【0133】
本明細書で記述される一部の実施形態では、治療剤の少なくとも一部分またはすべては、生育不能な表皮および/または生育可能な表皮を含む皮膚の初期深さに直接送達または投与されてよい。一部の態様では、治療剤の一部分が、表皮に加えて生育可能な真皮に直接送達されてもよい。送達深さの範囲は、処置されている医学的状態および所与の患者の皮膚生理学によって決まることになる。この送達の初期深さは、本明細書で記述されている通り、治療剤が最初に接触する皮膚内の場所として定義されてよい。いかなる理論によっても拘束されないが、投与された作用物質は、初期送達部位(例えば、生育不能な表皮、生育可能な表皮、生育可能な真皮、または間質)から生育可能な皮膚内のより深い位置へ移動(例えば、拡散)してよいと考えられている。例えば、投与された作用物質の一部分またはすべては、生育不能な表皮に送達され、次いで、生育可能な表皮へ移動(例えば、拡散)し続け、生育可能な表皮の基底層を通り過ぎ、生育可能な真皮に入ってよい。代替として、投与された作用物質の一部分またはすべては、生育可能な表皮(すなわち、角質層の真下)に送達され、次いで、移動(例えば、拡散)し続け、生育可能な表皮の基底層を通り過ぎ、生育可能な真皮に入ってよい。最後に、投与された作用物質の一部分またはすべては、生育可能な真皮に送達されてよい。皮膚全体を通した1種または複数の活性剤の移動は、多因子性であり、例えば、液体担体組成(例えば、その粘度)、投与速度、送達構造等によって決まる。表皮を経由し真皮へのこの移動は、輸送現象としてさらに定義され、質量移動速度および/または流体力学(例えば、質量流速)によって定量化されてよい。
【0134】
故に、本明細書で記述される一部の実施形態では、治療剤は、表皮において、治療剤が生育可能な表皮の基底層を通り過ぎ、生育可能な真皮に移動する深さまで送達されてよい。本明細書で記述される一部の態様では、治療剤は、次いで、1つまたは複数の感受性リンパ毛細管叢によって吸収され、その後、1つまたは複数のリンパ節および/またはリンパ管に送達される。
【0135】
本明細書で記述される一部の実施形態では、1種または複数の作用物質の一部分が最初に送達される皮膚における深さの分布は、1つもしくは複数の感受性腫瘍もしくは炎症部位による、または腫瘍もしくは炎症部位に供給するリンパ管による、1種または複数の治療剤の取り込みをもたらし、約5μmから約4,500μmまでの範囲に及ぶ。皮膚の厚さは、医学的状態、食習慣、性別、年齢、ボディマス指数および体の部分を含むがこれらに限定されない多数の要因に基づき、患者ごとに変動しうることから、治療剤を送達するために要求される深さは変動することになる。一部の態様では、送達深さは、約50μmから約4000μmまで、約100から約3500μmまで、約150μmから約3000μmまで、約200μmから約3000μmまで、約250μmから約2000μmまで、約300μmから約1500μmまで、または約350μmから約1000μmまでである。一部の態様では、送達深さは、約50μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、または約1000μmである。この文脈において使用される場合、「約」は±50μmを意味する。
【0136】
本明細書で記述される一部の実施形態では、治療剤は、液体担体溶液で送達されてよい。一態様では、液体担体の張性は、毛細血管またはリンパ毛細管内の流体に対して高張であってよい。別の態様では、液体担体溶液の張性は、毛細血管またはリンパ毛細管内の流体に対して低張であってよい。別の態様では、液体担体溶液の張性は、毛細血管またはリンパ毛細管内の流体に対して等張であってよい。液体担体溶液は、少なくとも1種または複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、共溶媒、粒子またはコロイドをさらに含んでよい。液体担体溶液において使用するための薬学的に許容される賦形剤は公知であり、例えば、Pharmaceutics: Basic Principles and Application to Pharmacy Practice (Alekha Dash et al. eds., 1st ed. 2013)を参照されたく、これはその教示についての参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
本明細書で記述される一部の実施形態では、治療剤は、液体担体中に、実質的に溶解された溶液、懸濁液、またはコロイド懸濁液として存在する。少なくとも米国薬局方(USP)仕様を満たす任意の好適な液体担体溶液が利用されてよく、そのような溶液の張性は、公知のように改変されてよく、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Lloyd V. Allen Jr. ed., 22nd ed. 2012を参照されたい。例示的な非限定的な液体担体溶液は、投与されている生物活性剤に応じて、水性、半水性、または非水性であってよい。例えば、水性液体担体は、水と、水混和性ビヒクル、エチルアルコール、液体(低分子量)ポリエチレングリコール等のいずれか1つまたはそれらの組合せとを含んでよい。非水性担体は、例えば、コーン油、綿実油、ピーナッツ油またはゴマ油等の固定油を含んでよい。好適な液体担体溶液は、保存剤、酸化防止剤、錯体形成促進剤、緩衝剤、酸性化剤、生理食塩水、電解質、増粘剤、粘度低下剤、アルカリ化剤、抗微生物剤、抗真菌剤、溶解度増強剤のいずれか1つ、またはそれらの組合せをさらに含んでよい。
【0138】
本明細書で記述される一部の実施形態では、治療剤は、生育可能な皮膚に送達され、該剤の送達のための生育可能な皮膚における深さの分布は、皮下組織上を除く表皮の角質層を直ちに通り過ぎ、これは、患者のリンパ脈管系による該剤の取り込みをもたらす。一部の態様では、1種または複数の作用物質を送達するための生育可能な皮膚における深さは、角質層を越えて約1μmから約4,500μmまでの範囲に及ぶが、依然として皮下組織上の生育可能な皮膚内である。
【0139】
皮膚における初期送達深さを評価するための非限定的な試験は、侵襲的(例えば、生検)であっても非侵襲的(例えば、イメージング)であってもよい。レミッタンス分光法、蛍光分光法、光熱分光法、または光干渉断層撮影(OCT)を含む従来の非侵襲的光学的方法論を使用して、皮膚への作用物質の送達深さを評価することができる。方法を使用するイメージングは、初期送達深さを評価するためにリアルタイムで行われてよい。代替として、作用物質の投与直後に侵襲的皮膚生検が、続いて、作用物質の送達深さを決定するための標準的な組織学的および染色方法論がとられてよい。投与された作用物質の皮膚浸透深さを決定するために有用な光学イメージング方法の例については、Sennhenn et al., Skin Pharmacol. 6(2) 152-160 (1993), Gotter et al., Skin Pharmacol. Physiol. 21 156-165 (2008)、またはMogensen et al., Semin. Cutan. Med. Surg 28 196-202 (2009)を参照されたく、これらのそれぞれは、それらの教示についての参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
一部の実施形態では、本明細書で記述されるのは、本明細書で記述されている通りの治療剤の長期送達(または投与)のための方法である。複数のマイクロニードルを備える医療デバイスは、デバイスから患者への医薬の流速が調整されうるように構成される。そのため、要される時間の長さは、適宜変動することになる。一部の態様では、医療デバイスの流速は、医薬が約0.5時間から約72時間かけて投与されるように調整される。一部の態様では、投与のための期間は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、27時間、30時間、33時間、36時間、39時間、42時間、45時間、48時間、51時間、54時間、57時間、60時間、63時間、66時間、69時間または72時間である。他の態様では、投与のための期間は、患者の医学的状態および患者を処置している医療の専門家による評価に基づいて選択される。
【0141】
本明細書で記述される一部の実施形態では、液体担体溶液中の1種または複数の作用物質が、皮膚の外側表面下の初期の近似した体積の空間に投与される。最初(例えば、任意のその後の移動または拡散の前)に皮膚に送達された液体担体溶液中の1種または複数の治療剤は、近似した三次元体積の皮膚内に分布してもよく、またはそれによって包括されてもよい。1種または複数の最初に送達された作用物質は、送達深さのガウス分布を呈し、三次元体積の皮膚組織内にもガウス分布を有することになる。本明細書で記述される一部の実施形態では、本明細書で記述されている通りの単一のマイクロニードルによる皮膚への治療剤の流速は、1時間当たり約0.01μlから1時間当たり約500μlであってよい。一部の態様では、各個々のマイクロニードルについての流速は、1時間当たり約0.1μlから1時間当たり約450μl、1時間当たり約0.5μlから1時間当たり約400μl、1時間当たり約1.0μlから1時間当たり約350μl、1時間当たり約5.0μlから1時間当たり約300μl、1時間当たり約5.0μlから1時間当たり約250μl、1時間当たり約10μlから1時間当たり約200μl、1時間当たり約15μlから1時間当たり約100μl、または1時間当たり約20μlから1時間当たり約50μlまでである。一部の態様では、各個々のマイクロニードルについての流速は、1時間当たり約1μl、1時間当たり2μl、1時間当たり5μl、1時間当たり10μl、1時間当たり15μl、1時間当たり20μl、1時間当たり25μl、1時間当たり30μl、1時間当たり40μl、1時間当たり50μl、1時間当たり75μl、または1時間当たり100μlである。各個々のマイクロニードルは、全体的なデバイス流速に寄与する流速を有することになる。全体的な最大流速は、各個々のマイクロニードルの流速に、マイクロニードルの総数を乗じたものとなる。組み合わせたマイクロニードルのすべての全体的に制御された流速は、1時間当たり約0.2μlから1時間当たり約50,000μlまでであってよい。医療デバイスは、流速が適宜制御されうるように構成される。流速は、患者の医学的状態および患者を処置している医療の専門家による評価に基づくことになる。
【0142】
追加の実施形態
追加の非限定的なおよび網羅的ではない実施形態(「追加の実施形態(単数または複数)」と称する)が以下で提供される。
【0143】
追加の実施形態1. 関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象を、治療有効量の治療剤を対象のリンパ系に投与することによって処置する方法であって、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、第1の用量の抗炎症剤を第1の位置に投与するステップと;それによって、治療有効量の治療剤を、対象のリンパ系に送達するステップとを含む、方法。
【0144】
追加の実施形態2. 関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象のリンパ系における、治療剤のリンパ中量またはリンパ中濃度を増大させる方法であって、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、第1の用量の抗炎症剤を第1の位置に投与するステップと;それによって、対象のリンパ系における治療剤のリンパ中濃度を増大させるステップとを含む、方法。
【0145】
追加の実施形態3. 関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象における、炎症性物質の上昇したリンパ中量またはリンパ中濃度を減少させる方法であって、上昇したリンパ中量またはリンパ中濃度が、疾患または関連状態の存在によって生じ、方法が、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、治療有効量の治療剤を第1の位置に投与するステップとを含み;治療有効量が、対象のリンパ系における炎症性物質のリンパ中量またはリンパ中濃度の低減をもたらす量を含む、方法。
【0146】
追加の実施形態4. 関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象において少なくとも1つのリンパ節のリンパポンプ流量を増大させる方法であって、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、治療有効量の治療剤を第1の位置に投与するステップとを含み;治療有効量が、対象のリンパ系における少なくとも1つのリンパ節のリンパポンプ流量の増大をもたらす量を含む、方法。
【0147】
追加の実施形態5. 関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を有するまたは有すると疑われる対象において、少なくとも1つのリンパ節の正常なポンプ流量を達成するまたは回復する方法であって、ポンプ流量が、関節炎疾患または関連状態の結果として減少し、方法が、複数のマイクロニードルを備える第1の医療デバイスを、対象の皮膚下の第1の位置に近接した第1の場所で、対象の皮膚上に配置するステップであって、第1の位置が、リンパ本幹に排液するリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、第1の医療デバイスのマイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、ステップと;第1の医療デバイスの複数のマイクロニードルを、対象に、それにより少なくとも表皮に浸透し、マイクロニードルの少なくとも1本の末端が第1の位置に近接する深さまで挿入するステップと;第1の医療デバイスのマイクロニードルを介して、治療有効量の治療剤を第1の位置に投与するステップとを含み;治療有効量が、疾患も関連状態も有さない対象におけるポンプ流量と同等であるまたはそれよりも大きい比率まで、正常なポンプ流量の回復をもたらす量を含む、方法。
【0148】
追加の実施形態6. 治療有効量が、疾患もしくは関連状態を処置するために有効な量もしくは濃度、または疾患もしくは関連状態の少なくとも1つの症状もしくは臨床的兆候を低減させるもしくは消失させるために有効な量もしくは濃度を含む、追加の実施形態1~5のいずれかの方法。
【0149】
追加の実施形態7. 関節炎疾患または関連状態が、関節リウマチ(RA)、若年性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、痛風、およびそれらの組合せからなる群から選択される、追加の実施形態1~6のいずれかの方法。
【0150】
追加の実施形態8. 関連状態が、別の自己免疫状態を含む、追加の実施形態1~7のいずれかの方法。
【0151】
追加の実施形態9. 関連状態が、強皮症、狼瘡、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病、尋常性乾癬、自己免疫性ブドウ膜炎、ベーチェット病、およびサルコイドーシスからなる群から選択される自己免疫状態を含む、追加の実施形態1~8のいずれかの方法。
【0152】
追加の実施形態10. 治療剤が、抗炎症剤を含む、追加の実施形態1~9のいずれかに従う方法。
【0153】
追加の実施形態11. 治療剤が、抗関節炎剤を含む、追加の実施形態1~10のいずれかに従う方法。
【0154】
追加の実施形態12. 治療剤が、TNFα活性を低減させる作用物質を含む、追加の実施形態1~11のいずれかに従う方法。
【0155】
追加の実施形態13. 治療剤が、アダリムマブ(Humira(登録商標))、アダリムマブ-atto(Amjevita(登録商標))、セルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、エタネルセプト-szzs(Ereizi(登録商標))、ゴリムマブ(Simponi(登録商標)、Simponi Aria(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、インフリキシマブ-dyyb(Inflectra(登録商標))、それらのアナログ、それらのバリアント、それらのバイオシミラー、それらの生物学的同等品、およびそれらの組合せからなる群から選択される、追加の実施形態1~12のいずれかに従う方法。
【0156】
追加の実施形態14. 治療有効量の治療剤が、用量を控えた量の治療剤を含む、追加の実施形態1~13のいずれかの方法。
【0157】
追加の実施形態15. 治療有効量の治療剤が、DAS28(ESR)および/またはDAS28(CRT)スコアを、治療剤を投与する前に対象において決定されたDAS28(ESR)および/またはDAS28(CRT)と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく低減させるために有効である、追加の実施形態1~14のいずれかの方法。
【0158】
追加の実施形態16. 治療有効量の治療剤が、66/68関節計数および/または28関節計数スコアを、治療剤を投与する前に対象において決定された66/68関節計数および/または28関節計数と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく低減させるために有効である、追加の実施形態1~15のいずれかの方法。
【0159】
追加の実施形態17. 治療有効量の治療剤が、全体的な疾患活動性の患者評点を、治療剤を投与する前に対象において決定された全体的な疾患活動性の患者評点と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく低減させるために有効である、追加の実施形態1~16のいずれかの方法。
【0160】
追加の実施形態18. 治療有効量の治療剤が、ACR応答を、治療剤を投与する前に対象において決定されたACR応答と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、またはそれよりも大きく改善するために有効である、追加の実施形態1~17のいずれかの方法。
【0161】
追加の実施形態19. 対象が、哺乳動物である、追加の実施形態1~18のいずれか1つに従う方法。
【0162】
追加の実施形態20. 対象が、ヒトである、追加の実施形態1~19のいずれか1つに従う方法。
【0163】
追加の実施形態21. 医療デバイスが、Sofusa(商標)リンパ送達システム(SOFUSA)である、追加の実施形態1~20のいずれか1つに従う方法。
【0164】
追加の実施形態22. 医療デバイスが、流体送達装置を含み、流体送達装置が、キャップアセンブリがカートリッジアセンブリと連結されており、カートリッジアセンブリがプレナムアセンブリと摺動自在に連結されており、機械式コントローラーアセンブリがカートリッジアセンブリと摺動自在に連結されている流体分配アセンブリと;流体送達装置の筺体を構成し、流体分配アセンブリと摺動自在に連結されているコレットアセンブリと;ナノトポグラフィーを含む表面を有する流体分配アセンブリと流体的に接続されている複数のマイクロニードルであって、対象の皮膚の角質層に浸透し、治療剤を皮膚表面下のある深さに制御可能に送達することができる、複数のマイクロニードルとを備える、追加の実施形態1~21のいずれか1つに従う方法。
【0165】
追加の実施形態23. 医療デバイスが、治療剤を、皮膚表面下、約50μmから約4000μmまで、約250μmから約2000μmまで、または約350μmから約1000μmまでの深さに送達する、追加の実施形態1~22のいずれか1つに従う方法。
【0166】
追加の実施形態24. 医療デバイスにおけるマイクロニードルのぞれぞれが、約200から約800μmの間、約250から約750μmの間、または約300から約600μmの間の長さを有する、追加の実施形態1~23のいずれか1つに従う方法。
【0167】
追加の実施形態25. 治療剤が、Enbrelを含む、追加の実施形態1~24のいずれか1つに従う方法。
【0168】
追加の実施形態26. 用量を控えた量または濃度を関節炎疾患または関連状態を有するまたは有すると疑われる対象のリンパ系に投与する医療デバイスを介した投与時に、関節炎疾患もしくは関連状態、または関節炎疾患もしくは関連状態に関連する症状を処置するために治療上有効である、用量を控えた量または濃度の治療剤。
【実施例】
【0169】
(実施例1)
例示的なSofusaリンパ送達システム
例示的なSofusaリンパ送達システム(SOFUSA)は、表皮/真皮境界部の皮膚を経由して直接リンパ系にアクセスするように設計され(
図1を参照)、それによって、以下の実施例2および3で記述されている通りに用いられる場合、注入は求心性リンパ毛細管にアクセスするものであった。例示的なSOFUSAシステムは、マイクロニードルデバイス(例えば、
図3Aを参照)と、Enbrel等の抗関節炎治療剤をリンパ循環に皮膚を経由して投与するように構成されたシリンジポンプとから成っていた。この機器構成を、初期フェーズの臨床試験においてリンパ抗関節炎薬送達を使用して流速および薬物動態を提供するように最適化した。例示的なSOFUSAデバイスを、一貫性のあるマイクロニードル浸透のために皮膚を上向きに盛り上げる取り付けシステム、および皮膚にデバイスを下向きに快適に保持するVelcro(登録商標)付きのナイロンストラップを介して対象の体に取り付けて、投薬が完了するまでマイクロニードルを適所に保った(例えば、
図2を参照)。用量体積および注入速度を注入ポンプで設定した(例えば、
図2を参照)。
【0170】
例示的なSOFUSAマイクロニードルは、アレイにおける各マイクロニードル上に熱形成されたナノトポグラフィーがインプリントされたポリマーフィルムを含んでいた(例えば、
図3B~3Dを参照)。マイクロニードルは、薬物送達を容易にするためのスルーチャネルを含有していた(例えば、
図3Cを参照)。いかなる理論によっても拘束されることは望まないが、ナノトポグラフィー用のフィルム-マイクロニードル組合せは、ナノトポグラフィーとのインテグリン結合を介して開始されたタイトジャンクションタンパク質のリモデリングによって、皮膚表皮層を経由する透過性を増大させると考えられる。加えて、ナノトポグラフィーで覆われたマイクロニードルは、投与された作用物質対覆われていないマイクロニードルの血清濃度における10倍増大をもたらすことが実証されている(例えば、Walsh, L. et al., Nano Lett. 15, 2434-2441 (2015)を参照)。いかなる理論によっても拘束されることは望まないが、透過性の増大は、次に、例示的なSOFUSAデバイスが、作用物質の治療有効量または濃度を投与し、角質層と初期リンパ毛細管との間の作用物質の投与に基づき、そのような投与のリンパ系への標的化を制御することができるようにすると考えられる。
【0171】
SOFUSAマイクロニードルをアレイ内に配列し、機械式衝撃アプリケーターを使用して皮膚に配置した。次いで、1ミリリットル当たりおよそ50ミリグラム(50mg/mL)の濃度のEnbrelを含む溶液を、制御された注入速度でマイクロニードルを経由してデバイスに、および外部シリンジポンプを使用して皮膚に投与した。Enbrelを含む溶液を1時間当たり0.5ミリリットル(mL/hr)の注入速度で体に送達し、これは、25mg用量を送達するために1時間および50mg用量を送達するために2時間の注入期間に対応した。
【0172】
(実施例2)
研究設計
フェーズ1bの概念実証の非盲検研究は、中等度から重度に活動性の関節リウマチ(RA)があり、50mgのEnbrelの毎週の皮下投与に対する不適切な応答が実証された患者の処置のための、SOFUSAシステムによって投与されるEnbrelの安全性およびパイロット有効性を評価するために行われている。この継続中のフェーズ1b研究では、25mgのEnbrel(50%の非SOFUSA送達された皮下用量)を、SOFUSAを介し、週に1回12週間にわたって患者にリンパで投与した。研究設計は、用量漸増基準が満たされているという条件で、研究の用量漸増フェーズ(4~8週目)中のSOFUSAで投与されるEnbrel用量の50mgへの増大を求めるものである。患者は、研究の最終維持フェーズのために、25mgまたは50mg用量のいずれかのままである。Enbrel用量を25mgから50mgまで増大させるための用量漸増基準は、DAS28(ESR)≧3.2およびベースラインと比較したDAS28(ESR)の増大>0.6である。
【0173】
研究において評定された患者は、中等度から重度のままである疾患活動性レベルから明らかなように、少なくとも3か月間のEnbrel皮下療法後の不適切な応答を実証した人々である。研究に参加した患者を、MTXの継続ありまたはなしで皮下Enbrelにより処置し、最大承認用量のEnbrelで一次の(初期処置による十分な有効性の欠如)または二次の(初期有効性であるが経時的に非効果的になった)不適切な応答のいずれかを有していた。しかしながら、これらの患者は、RA疾患尺度においてEnbrel療法による改善を示さなかった非応答者と区別され、したがって、研究から除外された。一部の患者におけるEnbrelに対する不適切な応答が、標的リンパ組織における不十分なEnbrelレベルまたは不適切な免疫応答によるものであってよい限りにおいて、SOFUSAを介してリンパ系に投与されたEnbrelは、したがって、皮下Enbrel投与に対する不適切な応答にもかかわらず、好都合な臨床応答を提供すると理論化された。
【0174】
(実施例3)
症例提示
43歳女性患者(ID01-002)は、11か月間の週に1回50mgのEnbrel皮下注射後、Enbrelに対して不適切な応答を提示した。患者は、およそ2年前にRAと診断された。患者は、20か月間にわたる週に1回の25mgのメトトレキサート皮下注射および5か月間にわたる経口で1日1回の5mgのプレドニソンも進行中であった。患者は、52.5kg/m2のBMIに対応する278ポンドの体重であった。患者は、ACR/EULAR(2010)分類基準を利用して7のスコアを有しており(例えば、Aletaha, D. et al., Arthritis Rheum., 62, 2569-2581 (2010)を参照)、ACR1991全体的機能状態でクラスIIIとして分類され(例えば、Hochberg, M. C. et al., Arthritis Rheum., 35, 498-502 (1992)を参照)、普段のセルフケア活動を実施することができていたが、職業および趣味の活動に限定された。患者は、2型糖尿病、肥満、本態性高血圧症、喘息、冠動脈疾患、レイノー症候群、静脈うっ滞、高脂血症、うつ病、胃食道逆流性疾患、過敏性腸症候群、腎細胞癌のための腎摘出術、ならびに、アルブテロールおよびフルチカゾン吸入器、クロピドグレル、ジルチアゼム、デュロキセチン、フロセミド、メトプロロール、ニトログリセリン、ロスバスタチン、およびバルサルタンを含んでいた関連薬剤を伴う腎不全を含む、複雑な病歴を有していた。
【0175】
この患者に、SOFUSAで投与される25mg投薬量のEnbrelを週に1回、12週間にわたって受けさせた。各週、SOFUSAを、前腕背側に左および右腕の場所の交互で適用し、SOFUSAで投与されるEnbrel溶液を、皮膚を経由してリンパ循環に1時間にわたって注入した。
【0176】
患者01-004
69歳男性白人患者(ID01-004)は、15か月間の週に1回50mgのEnbrel SC注射後、Enbrelに対して不適切な応答を提示した。スクリーニング時、患者は、27.5kg/m2のBMIに対応する、6フィート3インチの身長で220ポンドの体重であった。患者は、およそ6年前に関節リウマチ(RA)と診断された。患者は、6か月間にわたるヒドロキシクロロキン200mg PO bidおよび6年間にわたるアセトアミノフェン500mg×2 PO bidも進行中であった。Enbrel療法を始める前に、患者は、スルファサラジン500mg×2丸剤BID進行中であり、次いで、プレドニソン10mg×2丸剤PO BIDに移り、その後、メトトレキサート20mg/0.4mL SC QWに移った。
【0177】
患者ID01-004は、ACR/EULAR(2010)分類基準(Aletaha 2010)で6のスコアを有しており、ACR1991全体的機能状態(Hochberg, 1992)でクラスIIIとして分類され、普段のセルフケア活動を実施することができていたが、職業および趣味の活動に限定された。患者は、2型糖尿病、糖尿病性ニューロパチー、甲状腺機能低下症、GERD、背痛、頸椎/腰椎椎間板ヘルニア、脊椎椎弓切除術、頸部脊椎症、腰椎固定術、背部神経アブレーション、ヘルニア修復、シャンバーグ病を含む、複雑な病歴を有していた。追加の薬剤は、2型糖尿病のための、インスリングラルギン、インスリンアスパルト、メトホルミンおよびシタグリプチン、背痛のためのガバペンチン、良性過形成のためのテラゾシン、GERDのためのファモチジン、ならびに甲状腺機能低下症のためのレボチロキシンを含む。
【0178】
患者ID01-002と同じく、この患者ID01-004に、SOFUSAで投与される25mg投薬量のEnbrelを週に1回、12週間にわたって受けさせた。各週、SOFUSAを、前腕背側に左および右腕の場所の交互で適用し、SOFUSAで投与されるEnbrel溶液を、皮膚を経由してリンパ循環に1時間にわたって注入した。
【0179】
患者01-006
51歳女性患者(ID01-006)は、2年間の週に1回50mgのEnbrel SC注射後、Enbrelに対して不適切な応答を提示した。スクリーニング時、患者は、44.3kg/m2のBMIに対応する、5フィート5インチの身長で266ポンドの体重であった。患者は、およそ2年前にRAと診断された。患者は、Enbrel進行中に、2年半にわたるメトトレキサート20mg PO qdおよび葉酸1mg PO qdの両方も進行中であった。Enbrel療法を始める前に、患者は、メトトレキサート12.5mg PO QW進行中であり、Enbrel療法を始めた後、1か月間のプレドニソン5mg PO QDも進行中であった。プレドニソンを5mg PO QDで追加した1か月後、プレドニソン投薬量を10mg PO QDに増大させた。
【0180】
患者は、ACR/EULAR(2010)分類基準(Aletaha 2010)で9のスコアを有しており、ACR1991全体的機能状態(Hochberg, 1992)でクラスIとして分類され、日常生活の活動(セルフケア、職業、趣味)を完全に実施することができていた。患者は、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性多発性関節炎、および両脚における静脈逆流疾患を含む、病歴を有する。追加の薬剤は、変形性関節症疼痛のためのナプロキセンおよびイブプロフェンを含む。
【0181】
患者ID01-00および患者ID01-004と同じく、この患者ID01-006に、SOFUSAで投与される25mg投薬量のEnbrelを週に1回、12週間にわたって受けさせた。各週、SOFUSAを、前腕背側に左および右腕の場所の交互で適用し、SOFUSAで投与されるEnbrel溶液を、皮膚を経由してリンパ循環に1時間にわたって注入した。
【0182】
DAS28(ESR/CRP)結果
疾患活動性スコア(DAS)28(DAS28)DAS28)を、28圧痛および腫脹関節、疾患活動性の患者全般評価、ならびにC反応性タンパク質(CRP)または赤血球沈降速度(ESR)に基づいて計算した。患者ID01-002についてのDAS28(ESR)およびDAS28(CRP)スコアを、それぞれ
図4Aおよび
図4Bに示す。
図4Aに指し示す通り、スクリーニングおよびベースライン時におけるDAS28(ESR)は、それぞれ4.62および4.58であり、中等度の疾患活動性を指し示していた。
図4Bに指し示す通り、スクリーニングおよびベースライン時におけるDAS28(CRP)は、それぞれ4.94および4.99であり、高疾患活動性を指し示していた。
【0183】
図4Aおよび
図4Bに指し示す通り、患者IS0-002についてのDAS28スコアは、経時的に下落し、研究全体を通してベースラインと比較して低いままであった。結果として、患者は、用量漸増期間中に用量漸増基準を満たさず、12週間全部にわたって25mg進行中のままであった。
【0184】
12週間後、DAS28(ESR)は、ベースライン時の4.58から12週目の3.02に34.1%減少し、中等度の疾患活動性から低疾患活動性への変化を実証した(
図4Aを参照)。同様に、DAS28(CRP)は、ベースライン時の4.99から12週目の3.12に37.5%減少し、高疾患活動性から中等度の疾患活動性への変化を実証した(
図4Bを参照)。達成された最低DAS28(ESR)は、週に1回10週間の用量後、10週目に2.10であり、これは、寛解の疾患活動性レベルに対応する。非盲検長期研究は、25mgの週に1回SOFUSAで投与されるEnbrel投薬によく応答する患者において、さらなる用量低減の可能性を評定するためにIRB承認された。
【0185】
患者ID01-004および患者ID01-006についてのDAS28-ESRおよびDAS28-CRP結果は、それぞれ
図4Cおよび
図4Dにおいて患者ID01-002についての結果と並んで描写されている。
【0186】
圧痛および腫脹関節計数
関節計数は、2週間ごとに実施した。66/68および28関節計数基準の両方を使用した12週間の投薬期間全体にわたる圧痛および腫脹関節の数において、一貫性のある減少が観察された(それぞれ
図5Aおよび
図5Bを参照)。特に、圧痛関節の数は、0週目から12週目までで70.6%(68全部の関節計数)および90.9%(28関節計数)減少した。同様に、腫脹関節の数は、0週目から12週目までで44.4%(66全部の関節計数)および28.6%(28関節計数)減少した。
【0187】
患者ID01-004および患者ID01-006についての66関節計数、68関節計数および28関節計数結果は、それぞれ
図5Cおよび
図5Dにおいて患者ID01-002についての結果と並んで描写されている。
【0188】
患者/医師疾患活動性/疼痛視覚的アナログスコア
評点は、各患者および医師により、疾患活動性(患者および医師)および疾患関連疼痛(患者)について、視覚的アナログスケール(VAS)で2週間ごとに実施した。視覚的アナログスケール(100mm;水平)における全体的な疾患活動性の患者ID01-002評点(疾患活動性の患者全般評価)は、0週目の52mmから12週目の21mmまで下落し、疾患活動性における59.6%の全体的な低減に対応する。加えて、患者ID01-002についての疼痛の患者評価は、0週目の46mmから12週目の29mmまで減少した(すなわち、37.0%減少)。患者ID01-002についての疾患活動性の医師全般評価は、0週目の50mmから12週目の15mmまで実質的に減少し、疾患活動性における70.0%減少に対応する。
【0189】
患者ID01-004および患者ID01-006についての疾患活動性の患者全般評価は、
図5Eにおいて患者ID01-002についての結果と並んで描写されている。患者ID01-004および患者ID01-006についての疼痛の患者評価および疾患活動性の医師全般評価スコアは、
図5Fにおいて患者ID01-002についての結果と並んで描写されている。
【0190】
ACR応答
ACR50%応答は、10週目に達成され、ACR応答基準(例えば、Felson, D. T. et al., Arthritis Rheum. 36, 729-740 (1993)を参照)によって定義される通り、患者01-002および患者01-004についての2.10のDAS28(ESR)と一致しており、寛解を指し示すものであった(例えば、
図4Cを参照)。ACR50%応答は、TJC68、SJC66、および患者/医師VAS評価における、ベースライン(0週目)と比較して少なくとも50%の改善を実証することによって達成された。
【0191】
図5C、
図5Eおよび
図5Fで描写される通り、患者01-002について、研究の12週目までに、TJC68は58.8%減少し、SJC66は55.6%減少し、疾患活動性の患者全般評価(VAS)は63.5%減少し、疼痛の患者評価(VAS)は69.6%減少し、疾患活動性の医師全般評価(VAS)は50.0%減少した。
図5C、
図5Eおよび
図5Fで描写される通り、患者ID01-004について、TJC68は60.0%減少し、SJC66は66.7%減少し、疾患活動性の患者全般評価(VAS)は46.7%減少し、疼痛の患者評価(VAS)は100.0%減少し、疾患活動性の医師全般評価(VAS)は85.4%減少した(しかしながら、疾患活動性の患者全般評価(VAS)は、研究の10週目で73.3%減少していた)。
図5C、
図5Eおよび
図5Fで描写される通り、患者ID01-006について、TJC68は70.6%減少し、SJC66は不変であり、疾患活動性の患者全般評価(VAS)は97.1%減少し、疼痛の患者評価(VAS)は98.9%減少し、疾患活動性の医師全般評価(VAS)は75.4%減少した。
【0192】
リンパイメージング
局部的なリンパ機能は、研究の始め、6週間時点および終了時に、インドシアニングリーン(ICG)を用いる近赤外蛍光(NIRF)イメージング技術を使用して測定した。
図6で例証されている通り、これは、SOFUSA処置前の0週目および6回のEnbrel用量がSOFUSAを使用して投与された後のビデオ画像を含有する。ICGを、Enbrel投薬とは反対の腕の場所に送達した。
図6に指し示す通り、0週目において、非常に少ないリンパ管が可視であり、低いリンパ機能を示唆し、ポンプ速度は1分当たり0.5ポンプ未満で計数された。6回のSOFUSA Enbrel用量後の6週目において、有意により多くのリンパ管を撮像することができ、ポンプ速度は、1分当たり2ポンプよりも大きく増大することが観察された。
【0193】
RAに罹患している個々の患者における一次および二次処置失敗の理由は、多くの場合、多因子性であり、歴史的によく理解されていない。上記の実施例で実証されている通り、SOFUSAを介してリンパ系に投与されたEnbrelは、患者における皮下Enbrel投与に対する先の不適切な応答にもかかわらず、患者におけるEnbrelの従来の(すなわち、非リンパ)投与に対する不適切な応答が、標的リンパ組織における不十分なEnbrelレベルまたは不適切な免疫応答によるものであってよいという信念と一致する、好都合な臨床応答をもたらした。
【0194】
これに関して、リンパ機能不全は、強皮症、狼瘡および関節リウマチ等の自己免疫性リウマチ疾患の発病を促しうると推測されてきた(例えば、Aletaha, D., et al., Ann. Rheum. Dis., 75, 1479-1485 (2016)を参照)。自己免疫状態におけるリンパ系の重要性を考慮すると、リンパのイメージングは、上述した研究において、SOFUSAを介して投与されたEnbrelがリンパ管に送達されることを実証するため、ならびに、Enbrelを用いるSOFUSAを受けている患者においてリンパの流動およびポンピングが改善したか否かを決定するために行った。研究の始まり、中間および終了時における、ICGの溶液の注入後の、リンパのNIRFイメージング。NIRFイメージングを使用して、Enbrelを用いるSOFUSAによる処置前および後のRA患者におけるリンパポンピングを評価した。加えて、イメージングはリンパ管の可視化を提供し、SOFUSAがICG溶液をリンパに直接送達することを確認するように意図されていた。
【0195】
(実施例4)
エタネルセプトリンパ節濃度
静脈内(IV)、皮下(SC)、皮内(ID)またはリンパ(Sofusa)送達のいずれかを介して、エタネルセプトを対象に投与した。次いで、リンパ節組織における平均エタネルセプト濃度(リンパ組織1グラム当たりの初期用量パーセンテージとして表現される)を、投与の12および36時間後に決定した。
図12で描写される通り、リンパ媒介性送達は、すべての他の試験した送達ルートと比較して、リンパ節におけるエタネルセプトのはるかに大きいおよび優れた濃度をもたらす。特に、IVを介して投与されたエタネルセプト濃度よりも、リンパ(Sofusa)投与の12時間後におけるエタネルセプト濃度はおよそ40倍大きく、36時間ではおよそ9倍大きかった。
【0196】
上記の実施例で実証されている通り、SOFUSAを介するもの等、Enbrel等の抗炎症剤の典型的な皮下用量のわずか半分ほどの用量のリンパ投与は、従来のEnbrel療法および投与ルート(例えば、皮下注射)に対して明らかに応答が乏しい、非応答的または難治性であった対象において、効果的な関節炎療法のすべての測定された指数における大幅な改善をもたらした。そのようなSOFUSA媒介性リンパ投与は、リンパの流動およびポンプ流量の改善を付随してもたらした。故に、抗炎症剤のSOFUSA媒介性リンパ送達または投与は、関節炎疾患もしくは関連状態、またはその1つもしくは複数の症状もしくは臨床的兆候を有するまたは有すると疑われる対象において、増強された治療利益を提供するだけでなく、非リンパ投与または送達ルートと比べて有意に低い用量を投与することにより、そのような利益も提供する。したがって、そのようなSOFUSA媒介性投与は、そのような関節炎疾患もしくは関連状態を処置するためならびに/またはその1つもしくは複数の症状もしくは臨床的兆候を低減させるための、治療有効量または濃度の抗炎症剤の用量を控えた投与を驚くべきことにおよび有利に提供する。いかなる理論によっても拘束されることは望まないが、そのような利益は、リンパ系への抗炎症剤の量および/または濃度の増大ならびにリンパの流動ポンプ流量の刺激/増大によって生じると思われる。これは、次に、治療利益を提供するために、治療標的、組織、免疫細胞、または疾患もしくは傷害の領域への、治療有効量の抗炎症剤の流動を容易にすると考えられる。
【0197】
これらの実験の一部のための方法および手順は、Aldrich, et al., Arthritis Res. Ther., (2017), 19:116 (DOI 10.1186/s13075-017-1323-z; Open Access)から出典されたものであり、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0198】
この書面による明細は、最良のモードを含む本明細書における主題を開示するため、ならびに、当業者が、任意のデバイスまたはシステムを作製および使用することならびに任意の組み込まれた方法を実施することを含む本開示の主題を実践できるようにするためにも、例を使用する。特許可能な開示範囲は、請求項によって定義され、当業者に想起される他の例を含んでよい。そのような他の例は、それらが請求項の文字通りの言語と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが請求項の文字通りの言語と実質的でない差異を持つ同等の構造要素を含む場合、請求項の範囲内であるように意図されている。
【国際調査報告】