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特表2024-531339アクリレート化合物を調製するためのパラジウムを含まない方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】アクリレート化合物を調製するためのパラジウムを含まない方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/20 20060101AFI20240822BHJP
   C07C 321/28 20060101ALI20240822BHJP
   C07C 69/65 20060101ALI20240822BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20240822BHJP
   C12P 13/00 20060101ALI20240822BHJP
   B01J 23/22 20060101ALI20240822BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20240822BHJP
   B01J 31/06 20060101ALI20240822BHJP
   B01J 27/053 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07C319/20
C07C321/28
C07C69/65
C07C67/343
C12P13/00
B01J23/22 Z
B01J31/02
B01J31/06 Z
B01J31/02 102Z
B01J27/053 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509386
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 US2022040665
(87)【国際公開番号】W WO2023023201
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,927
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルティス,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】デルフラー,ヤイカ
(72)【発明者】
【氏名】バイダ,カリーナ・アール
【テーマコード(参考)】
4B064
4G169
4H006
【Fターム(参考)】
4B064AD61
4B064AE01
4B064AE61
4B064CA21
4B064CB17
4B064CD05
4B064CD11
4B064DA16
4G169AA06
4G169BA22B
4G169BA27B
4G169BA29B
4G169BB04B
4G169BB10B
4G169BC54B
4G169BD01B
4G169BD02B
4G169BD06B
4G169BE03B
4G169BE06B
4G169BE13B
4G169BE37B
4G169BE38B
4G169BE39B
4G169CB07
4G169DA02
4G169ED02
4G169FB06
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC30
4H006BE02
4H006BM30
4H006BM71
4H006BU26
4H006KA31
4H006KC14
4H006TA04
4H006TB58
(57)【要約】
本発明は、貴金属(Pd/Pt/Rh/Ru)を含まない、好ましくはPdを含まない、式(1):
(式中、R、R及びXは、本明細書で定義される通りである)の化合物又はその塩を調製するプロセスに関する。好ましくは、化合物はヨードアクリレート化合物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式中、
Xはハロ、CN、CF、又はOHであり;
は、(C~C)アルキル;5、6、7、8、9又は10員のアリール又はヘテロアリール;又は3、4、5、6、7、8、9若しくは10員のシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル基であり;
ここで、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキル基は、O、N又はSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有することができ;
又は、シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基中の炭素原子は、C=O基の一部であってもよく;
は、(C~C)アルキル又はベンジルから選択される)
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の調製プロセスであって、
(a)式(2)の化合物:
【化2】
(式中、前記R及びRは、化合物(1)において上に定義される通りである)を、溶媒-1中、亜硝酸塩の存在下で、酸HAと接触させることと、
(b)ハロゲン化剤、シアネート化剤、トリフルオロメチル化剤又はヒドロキシル化剤を、場合により溶媒-2の存在下で導入して、前記化合物(1)を形成することと
を含み;前記溶媒-1及び溶媒-2は、同一であっても異なっていてもよく、
前記化合物(2)が、パラジウム触媒を含まない方法で調製される、プロセス。
【請求項2】
前記化合物(2)を調製することをさらに含み、前記化合物(2)が、
(c1)極性溶媒中、酸性塩HAの存在下で金属を活性化することと、式(3)の化合物:
【化3】
(式中、前記R及びRは、化合物(1)において上に定義される通りである)
を、前記活性化された金属と極性溶媒中で高温で接触させ、前記化合物(2)又はその塩を形成することと
を含み、
又は、代替的に、前記化合物(2)を調製することをさらに含み、
(c2)前記式(3)の化合物を、場合により共溶媒の存在下で、水性緩衝溶液中で酵素還元剤と、少なくとも1つの触媒及び補助因子の存在下で反応させ、前記式(2)の化合物又はその塩を形成すること
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
(c1)極性溶媒中、酸性塩HAの存在下で金属を活性化することと、前記式(3)の化合物を前記活性化金属と高温で極性溶媒中で接触させ、前記化合物(2)又はその塩を形成することと
を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
(c2)共溶媒の存在下で、水性緩衝剤中で酵素還元剤と、金属触媒、共触媒及び補助因子の存在下で、前記式(3)の化合物を接触させ、前記式(2)の化合物又はその塩を形成すること
を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記化合物(3)又はその塩を調製することをさらに含み、
(d)式(4)の化合物:
【化4】
(式中、Xはハロであり;前記Rは、化合物(3)において上に定義される通りである)
を、塩基の存在下、有機溶媒中、高温でチオール剤と接触させ、化合物(3)又はその塩を形成すること
を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記化合物(4)を調製することをさらに含み、
(e)式(5)の化合物:
【化5】
(式中、Xは化合物(4)で定義されるハロである)を、アルケン化剤と接触させ、塩基の存在下、有機溶媒中で、前記化合物(4)又はその塩を形成すること
を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
(a)において、前記酸HAがHCl、HBr、HI、p-TsOH又はHSOである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
(a)において、前記溶媒-1が、水、THF、メチルTHF、CHCN、若しくは(C~C)酢酸アルキル溶媒、又はそれらの混合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
(b)において、前記ハロゲン化剤がハロゲン化金属塩であり、前記シアン化剤がCuCNであり、前記トリフルオロメチル化剤がCuCFであり、前記ヒドロキシル化剤がCuO/Cu(II)である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
(b)において、前記溶媒-2が、水、THF、メチルTHF、CHCN、若しくは(C~C)酢酸アルキル溶媒、又はそれらの混合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
(c1)において、前記金属が、Fe、Zn、Pd、Pt、Ru又はRhから選択される、請求項2又は3、又は5~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
(c1)において、前記酸性塩HAが、塩化アンモニウム、酢酸又はHClである、請求項2又は3、又は5~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
(c1)において、前記極性溶媒が水、(C~C)アルキルアルコール、又はそれらの混合物である、請求項2又は3、又は5~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
(c2)において、前記共溶媒がDMSO又は水/DMSO混合物から選択される、請求項2又は4~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
(c2)において、前記緩衝剤が、リン酸塩、PIPES、TRICINE、BICINE、HEPES、TRIS、TES、CAPS、Kpi又はCHESから選択される、請求項2、4~10又は14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
(c2)において、前記酵素還元剤がニトロレダクターゼ酵素である、請求項2、4~10、又は14又は15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
(c2)において、前記触媒が金属触媒及び共触媒であり;前記金属触媒が、V、NHVO、V(IV)オキシドフタロシアニン、V(IV)オキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、バナジル硫酸水和物、V(V)オキシトリエトキシド、3%V/C、又はV(III)2,4-ペンタンジオナートから選択されるバナジウム触媒である、請求項2、4~10又は14~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
(c2)において、前記反応がpH7又はpH8で行われる、請求項2、4~10又は14~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
(c2)の生成物が、HCl塩若しくはHBr塩から選択されるハロゲン化物塩、又はメシレート塩、トシレート塩若しくはアリールスルホン酸塩から選択されるスルホン酸塩から選択される塩である、請求項2、4~10又は14~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
(d)において、化合物(4)及び(5)のそれぞれにおける前記Xがフルオロ又はクロロである、請求項5~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
(d)において、前記塩基が炭酸塩又はリン酸塩である、請求項5~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
(d)において、前記有機溶媒が、DMF、DMAc又はNMPから選択される、請求項5~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
(d)において、前記反応が低含水量条件下で行われ、過剰なチオール剤が使用されない、請求項5~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
(e)において、化合物(4)及び(5)のそれぞれにおける前記XがF又はClである、請求項6~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
(e)において、前記有機溶媒が、DIPEA、CHCN、TEA、N-メチルモルホリン、又はそれらの混合物から選択される、請求項6~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
化合物(1)中のXがヨードである、請求項1~25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
化合物(1)及び(2)のそれぞれにおけるXがフルオロ又はクロロである、請求項1~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
化合物(1)、(2)、(3)及び(4)のそれぞれにおけるRがメトキシ又はエトキシである、請求項1~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
化合物(1)、(2)及び(3)のそれぞれにおけるRがベンジルである、請求項1~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記式(1)の化合物を形成するために、以下の順序:
A)工程(e);工程(d);工程(c1)又は(c2);その後に工程(a)+(b);
B)工程(d);工程(e);工程(c1)又は(c2);その後に工程(a)+(b);又は
C)工程(d);工程(c1)又は(c2);工程(e);その後に工程(a)+(b)で行われる、請求項2、4~10又は14~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
【化6】
(式中、Rはエチルであり、Rはベンジルである)である化合物、又はその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い立体異性体比を有する、ヨードアクリレート化合物を含むアクリレート化合物のパラジウムを含まない調製のための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、式(1):
【化1】
(式中、R、R及びXは、以下に定義される通りである)を有する化合物、又はその塩を調製するための、貴金属、例えばPd、Pt、Rh又はRuを含まない、好ましくはPdを含まないプロセスに関する。好ましくは、化合物は、エチル(E)-3-(5-(ベンジルチオ)-2-ヨードフェニル)アクリレート(化合物1a)を含むヨードアクリレート化合物である。
【0003】
既知の経路において、化合物(1)を出発物質化合物(2)から調製した。具体的には、Rがエチルである化合物(1)であり;Rがベンジルであり;XがIである化合物(1)である化合物(1a)は;Rがエチルであり、Rがベンジルである化合物(2)である出発物質アニリンアクリレート化合物(2a)から調製された:
【化2】
【0004】
化合物(2a)の現在の調製は、以下のような背中合わせのパラジウム(Pd)媒介交差カップリング反応を用いる:
【化3】
商品製造コスト(COGM)の50%超はPdの使用に由来する。結果として、迅速な合成にもかかわらず、化合物(2a)のこの調製方法は、約US$8,000/Kgと非常に高価である。
【0005】
さらに、背中合わせのPd変換の使用は、高いPd充填量(6mol%及び5mol%)の必要性、及び下流でのPd除去の困難さなどの堅牢性の課題をもたらす。
【0006】
コストを下げ、全体的なプロセスの堅牢性を改善するために、化合物(1a)又はその類似体を調製するための重要な中間体化合物として役立つ化合物(2a)を調製するための改善された新規な合成技術を開発する必要がある。
【0007】
本発明者らは、これらのコスト及び堅牢性の課題に対処するために、Pdを含む高価な貴金属の全ての使用を排除する新規な合成経路を開発した。本発明の化合物(2)及び(2a)の改善された調製方法では、アミノ基は、安価な卑金属である鉄でニトロ基を還元することによって調製される。本発明者らは、化合物(2a)の収率を改善した、ニトロレダクターゼ酵素を用いた代替の新規な生物触媒ニトロ還元をさらに開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ハロアクリレート化合物を含むアクリレート化合物の合成のためのプラント規模において、貴金属触媒を含まず、好ましくはパラジウム金属触媒を含まず、改善され、より安全で、費用対効果が高く、操作が容易であるプロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態1において、本発明は、式(1):
【化4】
を有する化合物又はその塩を形成するためのプロセスであって:
式中、
Xはハロ、CN、CF、又はOHであり;
は、(C~C)アルキル;5、6、7、8、9又は10員のアリール又はヘテロアリール;又は3、4、5、6、7、8、9若しくは10員のシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル基であり;
ここで、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキル基は、O、N又はSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有することができ;
又は、シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基中の炭素原子は、C=O基の一部であってもよく;
は、(C~C)アルキル又はベンジルから選択され;
(a)式(2)の化合物:
【化5】
(式中、前記R及びRは、化合物(1)において上に定義される通りである)を、溶媒-1中、亜硝酸塩の存在下で、酸HAと接触させることと、
(b)ハロゲン化剤(フッ素化剤、塩素化剤、臭素化剤又はヨウ素化剤を含む)、シアネート化剤、トリフルオロメチル化剤又はヒドロキシル化剤を、場合により溶媒-2の存在下で導入して、前記化合物(1)を形成することと
を含み;前記溶媒-1及び溶媒-2は、同一であっても異なっていてもよく;
前記化合物(2)は、パラジウム触媒を含まない方法で調製される、
プロセスを提供する。
【0010】
実施形態1の下位実施形態では、(a)において、前記酸HAは、HCl、HBr、HI、p-TsOH又はHSOである。好ましくは、酸HAはHClである。
【0011】
実施形態1のさらなる下位実施形態では、(a)において、前記溶媒-1は、水、THF、メチルTHF、CHCN、又は(C~C)酢酸アルキル溶媒、又はそれらの混合物である。好ましくは、前記溶媒-1は酢酸エチル又は酢酸イソプロピルである。
【0012】
実施形態1のさらなる下位実施形態では、(a)において、前記亜硝酸塩はNaNOである。
【0013】
実施形態1のさらなる下位実施形態では、(a)において、前記低温は、-10℃~10℃;又は0℃~5℃である。好ましくは、0℃~5℃である。
【0014】
実施形態1のさらなる下位実施形態では、(b)において、前記ハロゲン化剤は、ハロゲン化金属塩であり;前記シアン化剤はCuCNであり;前記トリフルオロメチル化剤はCuCFであり;前記ヒドロキシル化剤はCuO/Cu(II)である。好ましくは、(b)において、ハロゲン化剤が使用され、より好ましくは、前記ハロゲン化剤はKI又はCuIである。
【0015】
実施形態1のさらなる下位実施形態では、(b)において、前記溶媒-2は、水、THF、メチルTHF、CHCN、又は(C~C)酢酸アルキル溶媒、又はそれらの混合物である。好ましくは、(b)において、前記溶媒-2は、(C~C)アルキルであり;より好ましくは酢酸イソプロピルである。
【0016】
実施形態2において、本発明は、実施形態1に記載のプロセスであって、前記化合物(2)を調製することをさらに含み、
(c1)極性溶媒中、酸性塩HAの存在下で金属を活性化すること;及び式(3)の化合物:
【化6】
(式中、前記R及びRは、化合物(1)において上に定義される通りである)を、前記活性化された金属と極性溶媒中で高温で接触させて、前記化合物(2)又はその塩を形成することを含むプロセス;
又は代替的に、前記化合物(2)を調製することをさらに含み、
(c2)前記式(3)の化合物を、場合により共溶媒の存在下で、水性緩衝溶液中で酵素還元剤と、少なくとも1つの触媒及び補助因子の存在下で反応させて、前記式(2)の化合物又はその塩を形成することを含む、プロセス
を提供する。
【0017】
実施形態3において、本発明は、前記化合物(2)を調製することをさらに含む、実施形態2に記載のプロセスであって、
(c1)極性溶媒中、酸性塩HAの存在下で金属を活性化すること;前記式(3)の化合物を前記活性化金属と高温で極性溶媒中で接触させて、前記化合物(2)又はその塩を形成すること
を含む、プロセスを提供する。
【0018】
実施形態4において、本発明は、化合物(2)を調製することをさらに含む、実施形態2に記載のプロセスであって、
(c2)共溶媒の存在下で、水性緩衝剤中で酵素還元剤と、金属触媒、共触媒及び補助因子の存在下で、前記式(3)の化合物を接触させて、前記式(2)の化合物又はその塩を形成すること
を含む、プロセスを提供する。
【0019】
実施形態2又は3のいずれかの下位実施形態では、(c1)において、前記金属は、Fe、Zn、Pd、Pt、Ru、又はRhから選択される。好ましくは、前記金属はFeである。
【0020】
実施形態2又は3のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c1)において、前記酸性塩HAは、塩化アンモニウム、酢酸、又はHClである。好ましくは、前記酸性塩HAは塩化アンモニウムである。
【0021】
実施形態2又は3のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c1)において、前記極性溶媒は、水、(C~C)アルキルアルコール、又はそれらの混合物である。好ましくは、前記極性溶媒は水とエタノールの混合物である。
【0022】
実施形態2又は3のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c1)において、前記高温は50℃~90℃、又は75℃~80℃である。好ましくは、前記温度は75℃~80℃である。
【0023】
実施形態2又は4のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c2)において、前記共溶媒は、DMSO又は水/DMSO混合物から選択される。好ましくは、共溶媒は、20vol%~30vol%のDMSOである。より好ましくは、共溶媒は30vol%のDMSOである。
【0024】
実施形態2又は4のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c2)において、前記緩衝剤は、リン酸塩、PIPES、TRICINE、BICINE、HEPES、TRIS、TES、CAPS、Kpi又はCHESから選択される。好ましくは、緩衝剤はTRICINEである。
【0025】
実施形態2又は4のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c2)において、前記酵素還元剤はニトロレダクターゼ(NR)酵素である。好ましくは、酵素はNR-55である。
【0026】
実施形態2又は4のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c2)において、前記触媒は金属触媒及び共触媒であり;前記金属触媒は、V、NHVO、V(IV)オキシドフタロシアニン、V(IV)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)、バナジル硫酸塩水和物、V(V)オキシトリエトキシド、3%V/C、又はV(III)2,4-ペンタンジオナートから選択されるバナジウム触媒である。
【0027】
実施形態2又は4のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c2)において、前記触媒は金属触媒及び共触媒であり;前記金属触媒はV又はNHVOであり、前記共触媒はGDH-101及び糖であり、前記補因子はNADP+である。好ましくは、糖はデキストロース又はグルコースである。
【0028】
実施形態2又は4のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c2)において、前記反応はpH7又は8で行われる。
【0029】
実施形態2又は4のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c2)において、前記共溶媒に溶解された前記式(3)の化合物を、前記水性緩衝溶液中で、金属触媒、共触媒及び補助因子の存在下で酵素還元剤にゆっくり添加する。好ましくは、前記金属触媒はバナジウム金属、より好ましくはV又はNHVOである。好ましくは、前記共触媒はGDH-101及び糖である。好ましくは、糖はデキストロース又はグルコースである。好ましくは、前記補因子はNADP+である。
【0030】
実施形態2又は4のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c2)の生成物は、HCl塩若しくはHBr塩から選択されるハロゲン化物塩、又はメシル酸塩、トシル酸塩若しくはアリールスルホン酸塩から選択されるスルホン酸塩から選択される塩である。好ましくは、塩はハロゲン化物塩、より好ましくはHCl塩である。(c2)のより好ましい生成物は、
【化7】
である。
【0031】
実施形態2又は4のいずれかのさらなる下位実施形態では、(c2)において、より好ましくは、反応は高温で行われる。好ましくは、温度は40℃~50℃の範囲である。より好ましくは、43℃~47℃である。最も好ましくは45℃である。
【0032】
実施形態5において、本発明は、前記化合物(3)を調製することをさらに含む実施形態2に記載のプロセスであって、
(d)式(4)の化合物:
【化8】
(式中、Xは、ハロであり;前記Rは、化合物(3)において上に定義される通りである)
を、塩基の存在下、有機溶媒中、高温でチオール剤と接触させ、化合物(3)又はその塩を形成することを含む、プロセスを提供する。
【0033】
実施形態5の下位実施形態において、(d)において、化合物(4)及び(5)のそれぞれにおける前記Xは、フルオロ又はクロロである。好ましくは、Xはフルオロである。
【0034】
実施形態5のさらなる下位実施形態では、(d)において、前記塩基は炭酸塩又はリン酸塩である。好ましくは、前記塩基はCsCO又はKPOである。
【0035】
実施形態5のさらなる下位実施形態では、(d)において、前記有機溶媒は、DMF、DMAc又はNMPから選択される。
【0036】
実施形態5のさらなる下位実施形態では、(d)において、前記高温は50℃~85℃;又は65℃~80℃である。好ましくは、前記温度は70℃である。
【0037】
実施形態5のさらなる下位実施形態では、(d)において、前記チオール剤は、CCHSH又は(C~C)アルキル-SH、例えばCH3SHである。好ましくは、前記チオール剤はCCHSHである。
【0038】
実施形態5のさらなる下位実施形態では、(d)において、前記反応は低含水量条件下で行われ、後処理における硫黄の発生を回避するために過剰のチオール剤の使用は回避される。好ましくは、含水量濃度は1000ppm未満に維持される。好ましくは、チオール剤は0.90当量~1.1当量である。好ましい下位実施形態では、後処理において硫黄は生成されなかった。
【0039】
実施形態6では、本発明は、前記化合物(4)又はその塩の調製をさらに含む、実施形態5に記載のプロセスであって、
(e)式(5)の化合物:
【化9】
(式中、Xは化合物(4)で定義されるハロである)を、アルケン化剤と接触させ、塩基の存在下、有機溶媒中で、前記化合物(4)又はその塩を形成すること
を含む、プロセスを提供する。
【0040】
実施形態6の下位実施形態では、(e)において、化合物(4)及び(5)のそれぞれにおける前記Xは、F又はClである。
【0041】
実施形態6のさらなる下位実施形態では、(e)において、前記アルケニル化剤は、Wittig試薬(トリフェニルホスホニウムイリド又はエチル2-(ジエトキシホスホリル)アセテートを含む)又はHorner-Wadsworth-Emmons(HWE)試薬である。好ましくは、アルケニル化剤はWittig試薬である。より好ましくは、エチル2-(ジエトキシホスホリル)アセテートである。
【0042】
実施形態6のさらなる下位実施形態では、(e)において、前記有機溶媒は、DIPEA、CHCN、TEA、N-メチルモルホリン、又はその混合物から選択される。好ましくは、溶媒はCHCNである。
【0043】
実施形態6のさらなる下位実施形態では、(e)において、前記ハロゲン化物塩は、LiCl又はLiBrから選択される。好ましくは、ハロゲン化物塩はLiClである。
【0044】
実施形態7では、本発明は、化合物(1)中のXがヨードである、上記実施形態1、2、3、4、5、若しくは6、又はその任意の下位実施形態のいずれかに記載のプロセスを提供する。
【0045】
実施形態8では、本発明は、化合物(1)及び(2)のそれぞれにおけるXがフルオロ又はクロロである、上記の実施形態1、2、3、4、5、6、若しくは7、又はそれらの任意の下位実施形態のいずれかに記載のプロセスを提供する。
【0046】
実施形態9では、本発明は、化合物(1)、(2)、(3)、及び(4)のそれぞれにおけるRがメトキシ又はエトキシである、上記の実施形態1、2、3、4、5、6、7、若しくは8、又はその任意の下位実施形態のいずれかに記載のプロセスを提供する。
【0047】
実施形態10では、本発明は、化合物(1)、(2)及び(3)のそれぞれにおけるRがベンジルである、上記の実施形態1、2、3、4、5、6、7、8若しくは9、又はそれらの任意の下位実施形態のいずれかに記載のプロセスを提供する。
【0048】
実施形態11では、本発明は、上記の実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9、又はその任意の下位実施形態のいずれかに記載のプロセスであって、前記化合物(1)が以下の反応順序:(e)、(d)、(c1)、次いで(a)及び(b);又は(e)、(d)、(c2)、次いで(a)及び(b)によって得られるプロセスを提供する。
【0049】
代替的に、下位実施形態では、前記化合物(1)は、以下の順序の反応:(e)、(d)、(c1)、次いで(a)及び(b);又は(e)、(d)、(c2)、次いで(a)及び(b)によって得られる。
【0050】
代替的に、下位実施形態では、前記化合物(1)は、以下の順序の反応:(d)、(c1)、(e)、次いで(a)及び(b);又は(d)、(c2)、(e)、次いで(a)及び(b)によって得られる。
【0051】
実施形態11において、本発明は、
【化10】
(式中、Rはエチルであり;Rはベンジルである)である化合物;又はその塩を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される以下の用語は、本出願の目的のために定義され、以下の意味を有する。
【0053】
「アルケン化剤」とは、カルボニル基をアルケン基に変換する剤を意味する。そのようなアルケン化剤の2つの例は、「Horner-Wadsworth-Emmons(HWE)剤」及び「Wittig剤」である。例えば、Wittig反応は、以下のようにホスホランを使用してα、β-不飽和ケトンを共役アルケンに変換する。
【化11】
Wittig反応はZアルケンを産生する。Horner-Wadsworth-Emmons(HWE)反応は、Eアルケンを与えるWittig反応の変形である。Z及びEアルケンは、当技術分野の当業者によって広く理解されているように、アルケン基中の2つのより高い優先基の相対位置を指す。より高い優先基がアルケン基の同じ側にある場合、アルケンはZ-アルケン(ドイツ語;zusammen=同じ(together))と呼ばれる。より高い優先基がアルケン基の反対側にある場合、アルケンはE-アルケン(ドイツ語;entgegen=反対(opposite))と呼ばれる。
【0054】
「(Cα-Cβ)アルキル」は、1~6個の炭素原子の直鎖飽和一価炭化水素ラジカル又は3~6個の炭素原子の分岐飽和一価炭化水素ラジカル、例えば、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、ブチル(全ての異性体形態を含む)、ペンチル(すべての異性体形態を含む)などを意味する。
【0055】
「アミノ」は-NHを意味する。
【0056】
「(Cα~Cβ)アルコキシ」は、Rが上で定義されるアルキル、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又は2-プロポキシ、n-、イソ-又はtert-ブトキシなどである-ORラジカルを意味する。
【0057】
「(Cα~Cβ)シクロアルキル」は、1個又は2個の炭素原子がオキソ基で置き換えられていてもよい、3~10個の炭素原子の環状飽和一価炭化水素ラジカル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルなどを意味する。
【0058】
「カルボキシ」は-COOHを意味する。
【0059】
「GDH-101」は、NAD+及びNADP+補因子の両方を受け入れ、最大50℃の温度で活性であるグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)酵素触媒を意味する。GDHは、D-グルコースのD-グルコラクトンへの酸化を触媒し、次いで、NAD又はNADPをそれぞれNADH及びNADPHに還元する。この反応の生成物であるD-グルコラトンは、水中でグルコン酸に自発的且つ不可逆的に加水分解し、したがって還元されたNADH及びNADPHの形成を促進する。GDH-101は、Matthey.comで市販されている。
【0060】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
【0061】
本発明はまた、式(1)の化合物の保護された誘導体を含む。例えば、式(1)の化合物がヒドロキシ、カルボキシ、チオール又は窒素原子を含む任意の基などの基を含む場合、これらの基は適切な保護基で保護することができる。適切な保護基の包括的なリストは、T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons,Inc.(1999)(その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見ることができる。式(1)の化合物の保護誘導体は、当技術分野で周知の方法によって調製することができる。
【0062】
化合物の「塩」は、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。このような塩としては:
塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;又はギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等の有機酸と共に形成された酸付加塩;又は親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン若しくはアルミニウムイオンで置換されている場合;又は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位する場合に形成される塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は非毒性であると理解される。適切な薬学的に許容される塩に関するさらなる情報は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1985に見出すことができる。
【0063】
「オキソ」又は「カルボニル」は=(O)基を意味する。
【0064】
「任意選択」又は「場合により」は、続いて記載された事象又は状況が起こってもよいが、起こらなくてもよいこと、及びその説明が、その事象又は状況が起こる場合と、起こらない場合とを含むことを意味する。例えば、「アルキル基で置換されていてもよいヘテロシクリル基」とは、アルキルが存在していてもよいが、存在していなくてもよいことを意味し、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換されている場合、ヘテロシクリル基がアルキルで置換されていない場合を含む。
【0065】
「貴金属触媒」とは、化学プロセスをスピードアップする能力のために化学産業で広く使用されている貴金属を意味する。貴金属としては、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、及び銀(Au)などが挙げられる。
【0066】
一般的な実験手順:
本発明の方法は、以下の方法A又は方法Bのいずれかに従って実施することができ:式中、R;R;X;及びXはそれぞれ上に定義される通りである:
【0067】
【表1】
【0068】
上記の方法A及びBは:工程(e):Horner-Wadsworth-Emmons(HWE);工程(d):アリール置換(SAr);工程(c1):金属媒介又は(c2):酵素媒介ニトロ還元;及び工程(a)+(b):ハロゲン化を含む。
【0069】
当技術分野の当業者であれば、本発明の上記方法A及び方法Bは様々な順序で実行することができ、上記の一般的な手順に記載されたステップの順序に限定されないことを理解するであろう。本発明者らは、本発明の反応工程の順序は様々であり得ることを企図している。例えば、上記の方法A及びBを以下:工程(d)SAr工程;工程(e):HWE工程;工程(c1)又は(c2):金属媒介又は酵素媒介ニトロ還元;その後に工程(a)+(b):ハロゲン化による化合物(1)の形成のように行うことができることを当技術分野の当業者は理解するであろう。
【0070】
代替的に、上記の方法A及びBを以下:工程(d):SAr;工程(c1)又は(c2):金属媒介又は酵素媒介ニトロ還元;工程(e):HWE;その後に工程(a)+(b):ハロゲン化による化合物(1)の形成のように行うことができることを当技術分野の当業者は理解するであろう。
【0071】
工程(e):HWE:HWEステップ(e)は高速工程であり、1時間未満で完了することができる。これはまた、典型的には高収率の化合物(4)生成物を生成する清浄工程である。
【0072】
工程(d):SAr:含水量、CsCOの電荷、及びBn-SHの電荷は、SAr工程において非常に重要なパラメータである。観察された中間体化合物及び観察されたビス付加不純物化合物を駆動して化合物(3)生成物を形成するためには、高温及び長い反応時間(10時間~12時間)が必要である。中間体化合物及びビス付加不純物化合物は、いずれも結晶化により容易にパージすることができる。
【0073】
【表2】
【0074】
工程(c1):Feは、化合物(2)を調製するための金属媒介ニトロ還元工程で使用される好ましい金属である。これは、有害物質であり、活性化は非常に発熱性である。したがって、鉄活性化工程は、化合物(3)を反応混合物に添加する前に行うことが好ましい。
【0075】
工程(a)+(b):ハロゲン化工程において、チオ硫酸塩クエンチは、以下のように単離された化合物(1)を汚染する元素状硫黄(S8)の生成をもたらした:
2-+H→HSO +S(s)
【0076】
硫黄の存在は、ハロゲン化工程の様々なバッチで変化することが観察された。本発明者は、Na-チオ硫酸塩(Na)をNa-重亜硫酸塩(NaHSO)又はアスコルビン酸で置き換えることにより、硫黄生成が排除され、C-N結合形成における再現性及び迅速な速度論が再確立されることを見出した。
【0077】
本発明者らは、反応温度(5℃以下)を制御し、反応不活性を制御し、上で定義された溶媒/AQ混合物(THF、CHCN、EtOAc、iPAc)を利用することによって、重要なプロセス不純物を抑制する戦略を見出した。これらのパラメータを使用することにより、以下の重要なプロセス不純物が最小化され、単離時に容易にパージされた。重要な不純物及び副生成物を表1に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
工程(c2):生体触媒ニトロ還元工程:
本生体触媒ニトロ還元工程の反応機構は、一般に以下のように示される:
【化12】
【0080】
バナジウム金属触媒及び反応時間
本発明者は、バナジウム金属触媒が存在しない場合、以下の構造を有するより多くのヒドロキシルアミン(HA)副生成物(m/z=329):
【化13】
が、反応混合物のLCMS及びNMRスペクトルによって証明されるように、形成されることを見出した。表2は、2mg/mLの酵素負荷速度で金属バナジウム触媒添加剤あり及びなしで化合物(2a)を形成するために様々な酵素触媒を用いて行われた19の反応条件を列挙した。
【0081】
エントリ#1~10の反応プロトコル:NR-55(5mg)を含むJohnson Matteyニトロレダクターゼキットから得た様々なニトロレダクターゼ(NR)酵素を2mlエッペンドルフチューブに秤量した。緩衝剤のストック溶液を調製した:KPi(250mM、pH7、グルコース(100mM)、NADP+(lmM)、GDH(1mg・mL-1)を、50μLの基質ストック溶液(反応あたり25mM)及び50μLのストックV(反応あたり2mM)と共に各酵素(400μL)に添加した。反応物を35℃、350rpmで一晩撹拌した。
【0082】
エントリ#11~14の反応プロトコル:NR-55(10mg)、グルコース(90mg)、GDH-101(5mg)、NADP+(3.7mg)を、スターラーバー(Fisher PTFE円筒形、10×6mM)を備えたRadleysカルーセル管に秤量した。4.0mlのリン酸緩衝剤(pH7,250mM)及び46mgの化合物(3a)及び500μlのストックV(2mMの最終濃度)を含有する1mlのDMSO(20vol%)をチューブに添加した。反応物をRadleysカルーセル中1000rpmで撹拌し、45℃に加熱し、5時間後(エントリ#11~12)及び24時間後(エントリ#13~14)にサンプリングした。
【0083】
エントリ#15~18の反応プロトコル:NR-55(10mg)、グルコース(180mg)、GDH-101(5mg)、NADP+(3.7mg)を、スターラーバー(Fisher PTFE円筒形、10×6mM)を備えたRadleysカルーセル管に秤量した。4.0mlのリン酸緩衝剤(pH7,250mM)及び92mgの化合物(3a)及び500μlのストックV(2mMの最終濃度)を含有する1mlのDMSO(20vol%又は30vol%)をチューブに添加した。反応物をRadleysカルーセル中1000rpmで撹拌し、45℃に加熱し、5時間後(エントリ#15-18)及び24時間後(エントリ#15A-18A)にサンプリングした。
【0084】
【表4】
【0085】
改良されたHPLC法を開発し、この方法を使用して後続の反応を分析した。NR-5をV の有無で試験し、異なる時点で分析して、この方法が短寿命反応中間体を検出するのに適しているかどうかを確認した。反応物を1時間、5時間及び72時間でサンプリングした。
【0086】
1時間後、バナジウムとの反応はさらなるピークを示さなかったが、バナジウムなしでは、3.98分の新しいピーク(ヒドロキシルアミン)が現れた。5時間後、バナジウムが存在する場合と存在しない場合の両方で新しいピークが観察された。少数の反応中間体化合物が観察された。興味深いことに、72時間後、両反応はアニリン化合物(2a)への変換の増加を示し、3.99分でのピーク(ヒドロキシルアミン)が減少した。3.99分のピークはヒドロキシルアミンであり、5.06分のピークはニトロソ化合物である。LCMSにより、ニトロソ及びヒドロキシルアミンに対応する328及び330のm/zが得られると考えられる。その後の8.18分の溶出ピークにより、m/z=661=[M+Na]+が得られ、これはアゾキシ副産物の質量に相当する。
【0087】
本発明者らはさらに、バナジウム触媒を含む及び含まないNR-55酵素を、2mg/mLの負荷速度で5mlスケールで試験し(エントリ#11~14を参照)、以前に観察されたように、バナジウムが初期生成物分布に影響を及ぼすことを見出した。最も注目すべきことに、5時間後、Vの非存在下では、ヒドロキシルアミン(82%)及びわずか7%のアニリンの実質的な蓄積があったが、バナジウムでは、37%のヒドロキシルアミン及び39%のアニリンが形成された(エントリ#11~12参照)。
【0088】
24時間後、残留したヒドロキシルアミンの量は、バナジウムの有無にかかわらず無視できる程度であり、これにより、ヒドロキシルアミンのアニリン中間体及びニトロ中間体への自発的な変換(別名不均化又はDP)が起こっていることが支持される。
【0089】
しかし、バナジウムを含まない反応では、アゾキシ化合物と判断される他の副生成物の生成量は42%と、はるかに多いことが見出された。より低い触媒負荷量では、バナジウムの役割がはるかに顕著であった。これは、不均化及びニトロソ還元の両方の速度が低下し、これらの中間体の蓄積が互いに結合してアゾキシ化合物を形成することによって引き起こされると考えられる。
【0090】
本発明者らは、2mg/mL負荷速度を維持しながら基質濃度を50mM(18g/L)スケールに倍増することによって、バナジウム触媒の存在下及び非存在下でNR-55酵素をさらに試験した(エントリ#15~18参照)。20vol%及び30vol%のDMSOの両方を、このより高い基質濃度での比較のために試験した。
【0091】
5時間後、バナジウム非存在下(エントリ15及び16を参照)では、それぞれ77%及び81%ヒドロキシルアミンが形成されることが分かった。バナジウムを含有する反応により、より少量のヒドロキシルアミンを生じたが、依然としてかなり顕著な量の48%~51%が生じた。これは、25mMのより低い基質濃度で実行された以前の反応と比較して約10%高かった。バナジウムの存在下では、5時間後に約20%以上のアニリン化合物(2a)が形成された(エントリ17及び18参照)。バナジウムの量は、不均化が有効であるには低すぎることが明らかになった。
【0092】
反応エントリNo.17及び18を24時間後に再びサンプリングし(エントリ番号17A及び18Aを参照)、2mMバナジウムを反応エントリNo.15及び16に添加して、不均化がどれだけ迅速に起こるかを学習した(エントリ番号15A及び16Aを参照)。
【0093】
本発明者らは、予想外にも、24時間後、バナジウムを5時間でエントリ番号15A及び16Aに添加した後、エントリ番号15A、16A、17A及び18Aが全く同等であり、すなわち、41%~53%のアニリン(2a)が得られたことを見出した。HPLCは、アゾキシ化合物が26%~35%の濃度で存在したことを示す。
【0094】
より高い基質濃度は、24時間後に約10%より高いアゾキシ化合物への変換をもたらし、24時間後に依然としてニトロ出発物質化合物(3a)が残っていることが見出された。ヒドロキシルアミン化合物のより高い蓄積は、反応の終わりまでにより多くのアゾキシ化合物を与えるようであった。HPLCは、バナジウム添加の劇的な効果を示した。ヒドロキシルアミン化合物のバルクをアニリン(2a)及びニトロソに変換し、次いで、ヒドロキシルアミンと反応させてアゾキシ化合物を形成した。バナジウムの添加の30分後に、第2のHPLCトレースを回収した。
【0095】
5ml中184mgに等しい100mM基質濃度(37g/L)を試験することによって反応を強化した。出発物質をシリンジポンプを介して1.5ml/hの速度で添加した(エントリ#19を参照)。小さなものはこの濃度ではあまりよく撹拌しないため、より大きなスターラーバーを使用した。しかし、これにより、反応の終了までに撹拌子上に粘着性ガムが蓄積した。4時間後、63%のアニリン(3a)が生成し、予想外に、ヒドロキシルアミンは形成されなかった。24時間後、66%のアニリン(3a)及び7%のアゾキシが形成されたが、17%のニトロ出発物質(2a)が残存した。反応はこのより高い基質濃度で行われたが、反応容器、撹拌の種類及び物質移動は、撹拌子上の粘着性ガムの蓄積を回避するために考慮する必要がある。
【0096】
反応条件に対するpH効果:
本発明者らは、pH7及び8で本還元反応を試験した。pH6をさらに試験して、pHがアゾキシ形成に及ぼす影響を学習した。
【0097】
反応プロトコル:NR-55(10mg)、グルコース(90mg)、GDH-101(5mg)、NADP(3.7mg)及びV(0.1当量)を、スターラーバー(Fisher PTFE円筒形、10×6mM)を備えたRadleysカルーセル管に計量した。4.0mlのリン酸緩衝剤(pH6,250mM)及び46mgの化合物(3a)を含有する1ml(20%)DMSOをチューブに添加した。反応物をRadleysカルーセル内で1000rpmで撹拌し、45℃に加熱し、24時間後にサンプリングした。様々なpHでの様々な反応条件を表3に列挙する。
【0098】
【表5】
【0099】
pH6では、非常に高いレベルのアゾキシが、24時間の反応時間後にわずか25mM(33%)で形成されることが分かった。したがって、pH7及び8が好ましい。
【0100】
シリンジポンプ添加:
反応中間体の蓄積を回避することが、アゾキシ形成の量を減少させるために重要であると思われた。蓄積を回避する1つの方法は、フェドバッチ法で出発材料を添加することである。
【0101】
化合物(3a)基質をDMSOに溶解し、シリンジポンプを介して1ml/hの流量で1時間にわたって添加した。このバナジウム塩はより良好な溶解度及びわずかにより良好な変換率を示したので、50mMの基質濃度、2mg/mLの触媒担持量、20vol%のDMSO及びNHVO(0.1当量)を使用した。本発明者らは、1時間の終わりに、基質添加が完了した後にサンプルを採取し、反応中間体の蓄積がないことを見出した。さらに1時間後、アニリン化合物(2a)への80%の変換が達成され、わずか8%のアゾキシがHPLCで観察された。フェドバッチアプローチ及びより可溶性のバナジウム源は、反応結果に対してプラスの効果を示した。
【0102】
シリンジポンプを介した0.25ml/hの基質添加のより遅い流速を試験し、2時間の反応時間後、基質の半分を添加し、主に化合物(3a)(58%)及びアニリン化合物(2)(39%)並びに非常に少量の反応中間体で、反応は非常にクリーンに見えた。しかし、残りの基質を添加した後、24時間後、反応は完全には変換しなかった。NR試薬又はGDH試薬には安定性の問題がある可能性があり、おそらく酵素の一方は、この後、20%DMSO中45℃で不活性である。より高い添加速度が好ましい。
【0103】
金属触媒:量及び他の金属試験:
触媒としてのバナジウム金属の代わりに鉄及び銅を試験した。しかしながら、バナジウムが好ましい触媒であることが見出された。バナジウム及び金を以下の反応プロトコルの下でさらに試験した:NR-55(10mg)、グルコース(90mg)、GDH-101(5mg)、NADP(3.7mg)及びV/Au(0.5当量)を、スターラーバー(Fisher PTFE円筒形、10×6mM)を備えたRadleysカルーセル管に計量した。4.0mlのリン酸緩衝剤(pH6,250mM)及び46mgの化合物(3a)を含有する1ml(20%)DMSOをチューブに添加した。反応物をRadleysカルーセル内で1000rpmで撹拌し、45℃に加熱し、30分後にサンプリングした。
【0104】
【表6】
【0105】
30分後、V(III)2,4-ペンタンジオネートは、アニリン(2a)(61%)及びわずか6%のヒドロキシルアミン化合物(表4、エントリ7参照)への良好な変換を示した。塩化金(III)は、上記のプロトコルの下で反応を完全に阻害することが見出され、反応中間体のいずれも痕跡さえ示さなかった(エントリ6)。
【0106】
反応を継続し、5時間後及び24時間後に試料を再度採取した。結果を以下の表5及び表6に示す:
【0107】
【表7】
【0108】
5時間後、V(III)2,4-ペンタンジオネートは、アニリン化合物(2a)への66%の変換をもたらした(エントリ7)。5時間後、バナジウムオキシトリエトキシドを用いた結果は、バナジウム(III)アセチルアセトネートと同程度に見えた。バナジウム(IV)アセチルアセトネート(エントリ2)及びバナジウム担持炭素(エントリ5)によるニトロソ中間体の有意な(19%)蓄積があった。
【0109】
【表8】
【0110】
24時間後、バナジウム(III)ペンタンジオネート及びバナジウム(V)オキシトリエトキシドは、アニリン化合物(2a)への最も高い変換を示した。
【0111】
本発明者らは、バナジウム金属触媒の量を0.1当量から増から1.0当量に増加させ、金属触媒の量が不均化速度に影響を及ぼすかどうかを調べた。さらに、バナジウムの代替源であるNHVOを試験した。NHVOは、Vと比較してより高い溶解度を有することが分かった。
【0112】
反応プロトコル:NR-55(10mg)、グルコース(90mg)、GDH-101(5mg)、NADP+(3.7mg)及びV(0.1~1.0当量)又はNHVO(0.1~1.0当量)を、スターラーバー(FisherPTFE円筒形、10×6mM)を備えたRadleysカルーセル管に秤量した。4.0mlのリン酸緩衝剤(pH7、250mM)及び46mgの化合物(3a)を含有する1mlのDMSO(20vol%)をチューブに添加した。反応物をRadleysカルーセル内で1000rpmで撹拌し、45℃に加熱し、24時間後にサンプリングした。
【0113】
【表9】
【0114】
酵素触媒:ニトロレダクターゼ(NR)及び共溶媒
本発明者は、先の実験において、10vol%のDMSOを共溶媒として使用したが、ストック溶液を水性反応条件に添加すると、溶液が濁り、出発物質がDMSOにあまり溶解しないことを示唆することを見出した。これらの実験では、10%DMSOを用いたHPLCにより40%超の変換を与えた酵素を、共溶媒としての10%トルエン中で試験した。反応の初期段階では、透明な二相系が存在し、水層は透明であった。1時間後、水層は白濁し、一晩振盪した後、溶液は完全に白濁した。
【0115】
反応プロトコル:NR(5mg)を2mlエッペンドルフチューブに秤量した。緩衝剤のストック溶液を調製した:KPi(250mM、pH7、グルコース(100mM)、NADP+(1mM)、GDH(1mg/ml-1)を、トルエン中の基質原液50μl(反応あたり25mM)及びストックV 50μl(反応あたり2mM)と共に各酵素(400μl)に添加した。反応物を35℃で24時間撹拌した。反応物を1mlのMeCNで希釈し、ボルテックスし、遠心分離し、1mlのアリコートを取り出し、HPLCによって分析した。変換は、254nmでの補正されていないLCAPに基づく。種々のニトロレダクターゼ酵素触媒を用いて17の反応条件を実施して、化合物(2a)を形成した。出発物質の溶解度及び物質移動は、反応を制限すると考えられる。
【0116】
上記の反応条件下で、本発明者らは、他のニロレダクターゼ酵素がアニリン化合物(2a)に少なくとも30%以上の変換を与えることを見出した。
【0117】
45℃のより高い反応温度での共溶媒スクリーニング:
溶解度を高める1つの方法は、反応をより高い温度で実行することである。NR-55は、好熱性生物に由来するキット酵素である。典型的には、これらの酵素は、より高い温度に耐えることができ、より大量の共溶媒に対してより弾力的である。NR-55を、DMSO及びトルエン(10~30vol%)、pH7において、45℃のより高い温度で試験した。混合を助けるために、1000rpmの高い撹拌速度を使用して、Radleyのカルーセルを使用して5mlスケールで反応を行った。
【0118】
反応プロトコル:NR-55(50mg)、グルコース(90mg)、GDH-101(5mg)、NADP+(3.7mg)を、スターラーバー(Fisher PTFE円筒形、10×6mM)を備えた6個のRadleysカルーセル管に計量した。10vol%共溶媒の場合、4.5mlのリン酸緩衝剤(pH7,250mM)をチューブに添加し、46mgの化合物(3a)及び500μlのV(2mM最終濃度)を含有する0.5mlのDMSOを添加した。反応混合物をRadleysカルーセル内で1000rpmで撹拌し、24時間45℃に加熱した。次いで、混合物をアセトニトリル5mlで希釈し、撹拌し、遠心分離し、HPLCによって分析した。20及び30vol%については、それに応じて体積を調整した。
【0119】
表8は、トルエン及び共溶媒としてのDMSOを45℃で試験して化合物(2a)を形成するために行った6つの反応条件を列挙している。
【0120】
【表10】
【0121】
NR-55は、共溶媒としてトルエンを用いた場合、所望のアニリン(2a)に対して非常に低い変換率を与えることが見出された(表8、エントリ1~3)。しかし、20~30vol%のDMSOでは、ニトロ化合物(3a)は完全に消費され、高レベルのアニリン(2a)形成が観察された(254 nmでのLCAPによる82~84%、表8、エントリ5及び6)。10vol%のDMSOのみを使用した場合、出発物質の17%が依然として残っており、基質溶解度が反応において重要な役割を果たすことを示唆している。これらの変換はまた、これまでに見られたものよりもはるかに高く、より高い体積の共溶媒、より効率的な撹拌及びより高い温度の組合せが反応に有益であり得ることを示唆している。反応エントリ番号5をさらにEtOAc(10ml×2)で抽出し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、HPLC及びNMRによって再分析して、反応サンプリングが反応混合物の代表であることを確認した。
【0122】
20%~30%体積のDMSOを使用することが成功したことを考慮して、本発明者らは、NR-55及びNR-5を、触媒負荷量を減少させ(1000rpm)、pH7及び8で並行して試験し、反応温度を45℃に維持した。反応物を5時間後にサンプリングし、次いで24時間後に再度サンプリングした。
【0123】
反応プロトコル:NR-5又はNR-55(10~50mg)、グルコース(90mg)、GDH-101(5mg)、及びNADP+(3.7mg)を、スターラーバー(Fisher PTFE円筒形、10×6mM)を備えた12個のRadleysカルーセル管に計量した。4mlのリン酸緩衝剤(pH7又は8,250mM)をチューブに添加し、46mgの化合物(3a)及び500μlのV(2mMの最終濃度)を含有する1mlのDMSOを添加した。反応物をRadleysカルーセル中1000rpmで撹拌し、5時間及び24時間45℃に加熱した。反応試料A100μlアリコート反応試料を採取し、500μlのMeCNを添加し、ボルテックスし、遠心分離し、HPLCによって分析した。一部のニトロ化合物(3a)が残存していることが確認されたが、ショルダーピークであった。
【0124】
5時間後、NR-55は、NR-5と比較して、好ましくは2mg/mLの基質負荷速度で出発化合物(3a)を消費すると考えられた。
【0125】
以下の反応プロトコルの下で、35℃のより低い温度をさらに試験した:NR-55(10mg)、グルコース(90mg)、GDH-101(5mg)、NADP(3.7mg)及びNHVO(1当量)を、スターラーバー(Fisher PTFE円筒形、10×6mM)を備えたRadleysカルーセル管に計量した。3.5mlのリン酸緩衝剤(pH7、250mM)及び46mgの化合物(3a)を含有する1.5ml(20%)DMSOを、シリンジポンプ添加によって1.5ml/時の速度でチューブに添加した。反応物をRadleysカルーセル内で1000rpmで撹拌し、45℃に加熱し、1、2、4及び24時間後にサンプリングした。
【0126】
反応は35℃の反応温度で起こることがわかった。6%の化合物(3a)が残留していることが見出され、24時間の反応の終了時に15%のアゾキシが見出された。
【0127】
緩衝剤試験:
反応は、これまで、最も一般的な緩衝剤の1つであり、スケールアップするのに経済的である、リン酸緩剤中でのみ実施していた。緩衝剤スクリーニングを実施して、いずれかの代替物がより良好な反応ププロファイルを与えるかどうかを調べた。10の緩衝剤を、25mMの基質濃度及び様々なpH条件を使用して、100mM濃度で並行してスクリーニングした。
【0128】
反応プロトコル:NR-55(10mg)、グルコース(96mg)、GDH-101(5mg)、NADP(3.7mg)及びNHVO(15mg、1当量)を、スターラーバーを備えたRadleysカルーセル管に秤量した。3.5mlの緩衝剤(pH5~10、100mM)及び46mgの化合物(3a)を含有する1.5ml(30%)のDMSO。反応物を45℃に加熱し、2時間後及び24時間後にサンプリングした。
【0129】
2時間後及び24時間後に反応試料を採取した。結果を以下の表9及び表10に示す。
【0130】
【表11】
【0131】
【表12】
【0132】
本発明者らは、24時間後、TRICINE緩衝剤が89%の化合物(2a)生成物、8%のアゾキシ及びわずか4%の出発物質(3a)を生成することを見出した(表10、エントリ6)。酢酸塩及びPIPES緩衝剤剤、化合物(2a)への最も低い変換をもたらした(エントリ1及び2)。BICINE、HEPES、TRIS及びCHESも、24時間後に化合物(2a)への70%を超える変換で良好に機能した。
【0133】
以下は、本発明の反応に使用された緩衝剤の化学構造である。
【0134】
【表13】
【0135】
本発明者らは、出発物質化合物(3a)を流加しながらTRICINE緩衝剤(100mM)中で反応を行った。この反応ではpH制御を使用せず、反応の進行に伴ってpHがどの程度低下したか、及びそれが有し得る効果を確認した。
【0136】
反応プロトコル:NR-55(10mg)、グルコース(386mg)、GDH-101(5mg)、NADP(3.7mg)及びNHVO(1当量)を、スターラーバーを備えたRadleysカルーセル管に計量した。3.5mlのTRICINE緩衝剤(pH8、100mM)及び184mgの化合物(3a)を含有する1.5ml(30%)DMSOを1.5ml/時の速度でシリンジポンプ添加によってチューブに添加した。反応物をRadleysカルーセル内で500rpmで撹拌し、45℃に加熱し、2、4及び24時間後にサンプリングした。
【0137】
【表14】
【0138】
100mMのTRICINE緩衝剤は、低レベルのアゾキシ形成(2%)をもたらすことが見出された。反応終了時にpHを測定し、pH5.7に低下させた。反応混合物は均質ではなく、溶液からスターラーバー上に沈殿する油性ゴム及びチューブの壁上にいくらかの黄色固体があるように見えた。反応後、反応混合物をバイアルに移し、遠心分離し、水性及びペレットの両方を分析して組成を理解した。さらに、スターラーバーガム及び黄色沈殿物をアセトニトリルに溶解し、HPLCによって分析した。懸濁液中の固体は90%アニリン化合物(2a)であることが明らかになった。スターラーバー及びガラスの壁の両方が、より多くのニトロ出発物質(3a)を含有し、ガムもまたニトロソ中間体の一部を捕捉していた。
【0139】
250mM強度のTRICINE緩衝剤中で反応を繰り返し、反応中にpHが低下したときにNaOH(10M)を手動で添加し、反応全体を通してpHを8に維持した。
【0140】
反応プロトコル:NR-55(10mg)、グルコース(386mg)、GDH-101(5mg)、NADP(3.7mg)及びNHVO(1当量)を、撹拌棒を備えたRadleysカルーセル管に計量した。3.5mlのTRICINE緩衝剤(pH8、250mM)及び184mgの化合物(3a)を含有する1.5ml(30%)DMSOを1.5ml/時の速度でシリンジポンプ添加によってチューブに添加した。10MのNaOH(約70μL)を使用してpHを8に維持した。反応物をRadleysカルーセル内で500rpmで撹拌し、45℃に加熱し、1、3、5及び24時間後にサンプリングした。
【0141】
24時間後、HPLC分析により、反応組成物は84%アニリン化合物2a、3%アゾキシ及び4%ニトロであった。壁上に沈殿物が見られ、油性ゴムがスターラーバーに固まっていた。
【0142】
【表15】
【0143】
上記の反応条件に基づいて、本発明者らは、ニトロ芳香族化合物(3a)をアニリン化合物(2a)に変換するために、ニトロ還元触媒反応を多くの異なる条件下で行うことができることを示した。使用され得る反応条件の変数には、(1)ニトロレダクターゼ酵素、好ましくはNR-55;(2)反応温度、好ましくは45℃;(3)溶媒及び溶媒濃度、好ましくは30vol%DMSO;(5)2mg/mL触媒担持率;(6)金属触媒、好ましくはバナジウム金属、例えばV又はNHVOが含まれるが、これらに限定されない。基質添加への供給浴アプローチは、高濃度の可溶性バナジウム金属源と相まって、ヒドロキシルアミン及びニトロソ中間体の蓄積を最小限に抑え、アゾキシ形成の減少をもたらした。これらの副生成物化合物を、(7)緩衝剤、好ましくはTRICINE緩衝剤を使用することによってさらに還元した。反応は、2g/Lの触媒担持率で40g/Lの基質濃度で1gスケールで実証された。
【0144】
本発明者らは、限定因子が出発物質の低い溶解度であると考えられ、これがスターラーバー上に粘着性ガムの形成をもたらすため、撹拌機構を含む適切な反応器タイプを使用することによってニトロ還元反応をさらに強化することができることを理解している。したがって、スターラーバー上の粘着性ガムの蓄積を回避するための様々な反応器タイプの使用は、本発明の範囲内であると考えられる。さらに、出発物質の溶解性を助けるための第2の共溶媒、界面活性剤又は深共晶溶媒/イオン液体の使用は、したがって、本発明の範囲内であると考えられる。
【0145】
本発明者らはさらに、ヒドロキシルアミン化合物の不均化速度が、酵素の非存在下でのアゾキシ副生成物の形成を最小限に抑えるための鍵であることを理解している。したがって、ヒドロキシルアミン化合物の不均化速度を最適化するための様々な方法の使用は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0146】
本発明者らは、TRICINE緩衝剤中の不均化が速く現れることをさらに理解している。したがって、バナジウム金属触媒の使用量を1当量未満に低減することは、本発明の範囲内であると考えられる。
【0147】
本発明者らは、ワンポット反応が長期的に重要であり得ることをさらに理解する。したがって、ニトロレダクターゼ酵素の固定化は本発明の範囲内であると考えられる。
【0148】
次に、本発明を以下の具体的な実施例を参照して説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではなく、例示的な方法でのみ機能するものとする。
【0149】
以下の略語は、説明及び添付の特許請求の範囲を通して使用され、それらは以下の意味を有する。
【0150】
「AP」は面積パーセントを意味し、液体又は気体のクロマトグラムによって測定されるピーク下の面積を指す。APは、サンプル中の化合物濃度の関数である。以下はGC報告の例であり、%面積は指定された化合物のそれぞれのAPを表す:
【0151】
【表16】
【0152】
「Ar」はアリールを意味する。
【0153】
「cmp」は1つ以上の化合物を意味する。
【0154】
「CHCN」又は「MeCN」はアセトニトリルを意味する。
【0155】
「CPME」はシクロプロピルメチルエーテルを意味する。
【0156】
「DMAc」又は「DMA」はジメチルアセトアミドを意味する。
【0157】
「DMF」はジメチルホルムアミドを意味する。
【0158】
「DCM」はジクロロメタンを意味する。
【0159】
「DMSO」はジメチルスルホキシドを意味する。
【0160】
「EtOAc」は酢酸エチルを意味する。
【0161】
「h」は時間を意味する。
【0162】
「HPLC」は高速液体クロマトグラフィを意味する。
【0163】
「IPA」はイソプロピルアルコールを意味する。
【0164】
「IPAc」は酢酸イソプロピルを意味する。
【0165】
「IPC」は工程内制御を意味し、工程開発中に行われる日常点検である。工程内制御の機能は、製品がその仕様に適合することを確実にするための製造工程の監視及び必要に応じた適合である。例えば、目標生成物変換率が98%である場合、IPCが失敗すると、より長い保持反応時間又は追加の試薬充填などの手段が実行される。
【0166】
「KF」はカールフィッシャー滴定値を意味し、カールフィッシャー滴定値は、カールフィッシャー滴定装置によって測定される各分析物中に存在する水の量を決定するために容量滴定又は電量滴定を使用する滴定法である。本明細書に描写される合成経路で使用される化学物質には、例えば、溶媒、試薬、及び触媒が含まれる。上記の方法はまた、最終的に化合物の合成を可能にするために、本明細書に具体的に記載される工程の前又は後に、適切な保護基を付加又は除去する工程をさらに含み得る。所望の化合物を与えるために、様々な合成段階を代替的な順番又は順序で実施し得る。適用可能な化合物を合成するのに有用な合成化学変換及び保護基方法論(保護及び脱保護)は当技術分野で公知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley and Sons(1999);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);L.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)及びその後続版に記載されているものが挙げられる。
【0167】
「LCMS」は液体クロマトグラフィ質量分析を意味する。
【0168】
「LiCl」は塩化リチウムを意味する。
【0169】
「MIBK」はメチルイソブチルケトンを意味する。
【0170】
「mins」は分を意味する。
【0171】
「MSA」はメタンスルホン酸(MeSOH)を意味する。
【0172】
「MTBE」はメチルtert-ブチルエーテルを意味する。
【0173】
「NMP」はN-メチル-2-ピロリドンを意味する。
【0174】
「Ph」はフェニルを意味する。
【0175】
「ppm」は濃度の単位である百万分率を意味する。
【0176】
「rt」又は「RT」は室温を意味する。
【0177】
「temp」は温度を意味する。
【0178】
「THF」はテトラヒドロフランを意味する。
【実施例
【0179】
実験手順
【化14】
【0180】
実施例1:
工程(e):エチル(E)-3-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物4a)の調製
【化15】
【0181】
反応手順:不活性容器Aを窒素ガス下で3回パージした。反応器ジャケット温度を25±5℃に設定した。アセトニトリル(7.0V、343kg)を容器Aに添加し、引き続いてN,N-ジイソプロピルエチルアミン/ヒューニッヒ塩基(DIEA)(1.1当量、52.1kg)を添加し、混合物を10分間撹拌した。次いで、LiCl(2.0当量、31.1kg)を添加し、混合物を再び10分間撹拌した。次いで、温度を0℃の内部温度に達するまで冷却した。次いで、内部温度を0℃~5℃に維持しながら、ホスホリル試薬(PR)エチル2-(ジエトキシホスホリル)アセテート(1.05当量、86.2kg)を混合物に添加した。温度のゆっくりした上昇が観察され、反応液は白く濁っていた。次いで、反応混合物を内温25℃に達するまで加熱し、25℃で30分間撹拌した。次いで、反応混合物を内部温度0℃に達するまで冷却した。次いで、出発材料化合物5-フルオロ-2-ニトロベンズアルデヒド(化合物5a、1.0当量、62.0kg)を、内部温度を0℃~5℃の間に維持しながらゆっくりと添加した。温度のゆっくりした上昇が観察され、反応流体は白濁から褐色の透明色に変化した。次いで、反応混合物を内温25℃に達するまで加熱し、混合物を25℃で2時間撹拌した。反応流体が褐色から白色に変化することが観察され、これは増粘した。HPLCは、出発物質(5a)が消費され、約97.0%(220nm)の生成物エチル(E)-3-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物4a、3.216分)が形成されたことを示した。次いで、水(1.0V、62.0L)を混合物に添加し、反応流体は濃い白色から褐色透明に変化した。混合物を10分間撹拌した。
【0182】
【表17】
【0183】
後処理手順:10kgのスケール及び62kgのスケールを後処理のために組み合わせた。メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)(3.0V、160kg)を混合物に添加した。2相を分離し、水層をMTBE(2.0V、120kg)で1回抽出した。次いで、有機相を合わせ、飽和NHOAc(2.0V、160kg)で洗浄した。次いで、有機層を約3.0Vに濃縮した。
【0184】
蒸留手順:酢酸イソプロピル(iPAC)(192kg)を混合物に添加し、常圧蒸留によって約3.0Vに濃縮した。これを2回行い、溶媒交換の完了及び水の除去を確実にした。
【0185】
単離手順:n-ヘプタン(10V、492kg)を添加し、混合物を内部温度が-10℃になるまで冷却した。次いで、混合物を-10℃で6時間撹拌した。固体を濾過し、濾過ケークをn-ヘプタン(2.0V、98kg)で洗浄し、-10℃まで冷却した。次いで、固体をNガス下で乾燥させた。白色固体;(87.6kg、純度99.3%、収率78.3%;QNMR:91.8%)。Mp:59℃。H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ 8.15-8.10(m,2H),7.32-7.21(m,2H),6.35(d,J=15.8Hz,1H),4.30(q,J=7.1Hz,2H),1.36(t,J=7.1Hz,3H).
【0186】
実施例2:
工程(d):エチル(E)-3-(5-(ベンジルチオ)-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物3a)の調製
【化16】
【0187】
反応手順:不活性容器Aを窒素ガス下で3回パージした。反応器ジャケット温度を25±5℃に設定し、DMF(5.0V、337.5L)を容器Aに投入し、容器を再び窒素ガスで3回パージした。次いで、出発物質化合物エチル(E)-3-(5-フルオロ-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物2a、1.0当量、67.5kg)を添加し、混合物を20分間撹拌した。CsCO(1.0当量、86.5kg)をゆっくり添加し、反応液が黄色から黒色に変化することが観察された。混合物を20分間撹拌し、容器を再び窒素ガス下で3回パージした。チオール試薬(TR)化合物フェニルメタンチオール(1.0当量、33.6kg)を混合物にゆっくり添加し、発熱反応のために温度がゆっくり上昇した。混合物を10分間撹拌し、KF(KF:0.12%)によって確認した。次いで、混合物を内温75℃に達するまで加熱し、75℃で12時間撹拌した。HPLCは、出発物質である化合物(4a)が消費され(3.216分)、約92.6%の生成物(E)-3-(5-(ベンジルチオ)-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物(3a)、4.139分)が形成されたことを示した。次いで、水(5.0V、337.5L)を添加し、反応流体が濃い白色から褐色透明に変化することが観察された。次いで、混合物を10分間撹拌した。
【0188】
【表18】
【0189】
後処理手順:20kgのスケール及び67.5kgのスケールを後処理のために組み合わせた。メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)(5.0V、675L)を混合物に添加した。2相を分離し、水層をMTBE(3.0V、405L)で1回抽出した。次いで、有機相を合わせ、水(5.0V、675L)で洗浄した。次いで、有機層を約3.0Vに濃縮した。
【0190】
蒸留手順:酢酸イソプロピル(IPAC)(192kg)を混合物に添加し、加熱によって約3.0Vに濃縮した。
【0191】
単離手順:n-ヘプタン(9.0V、1215L)を添加し、混合物を25℃で6時間撹拌した。固体を濾過し、濾過ケークをn-ヘプタン(2.0V、270L)で洗浄した。次いで、固体をNガス下で乾燥させた。黄色固体;102kg、純度97.2%、収率86.0%)。Mp:73℃。H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ 8.11(d,J=15.8Hz,1H),7.97(d,J=8.6Hz,1H),7.39-7.27(m,7H),6.20(d,J=15.8Hz,1H),4.28(q,J=7.1Hz,2H),4.25(s,2H),1.35(t,J=7.1Hz,3H).
【0192】
実施例3a:
工程(c1):鉄及びNHCl還元によるエチル(E)-3-(5-(ベンジルチオ)-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物2a)の調製
【化17】
【0193】
3つの反応を並行して行った。(34.0kg×3)
【0194】
反応手順:不活性容器温度を含む反応器ジャケットを25±5℃に設定した。EtOH(4.0V、136L)を容器に投入した。次いで、水(2.0V、68.0L)を容器に添加し、続いてNHCl(5.0当量、26.5kg)を添加した。次いで、混合物を10分間撹拌した。次いで、Fe(3.0当量、16.6kg)をゆっくり添加し、混合物を10分間撹拌した。次いで、混合物を内部温度70℃に達するまで加熱した。内部温度を約70℃~80℃に維持しながら、出発物質エチル(E)-3-(5-(ベンジルチオ)-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物3a、1.0当量、34.0kg)を3時間かけて小分けで添加した。温度上昇は遅かった。混合物を80℃で1時間撹拌した。LCMSは、出発物質である化合物(3a)が消費され、約93.6%の生成物であるエチル(E)-3-(5-(ベンジルチオ)-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物(2a)、3.762分)が形成されたことを示した。次いで、反応混合物を、内部温度が30℃に達するまで冷却した。表15は、反応により、高純度で82%及び82.5%の収率の化合物(2a)が得られたことを示す。
【0195】
【表19】
【0196】
後処理手順:上記で行われた3つの反応を後処理のために組み合わせた。次いで、EtOAc(3.0V、102L)を添加し、次いで、反応混合物を30分間撹拌した。次いで、懸濁液をCELITE(登録商標)パッドで濾過し、濾過ケークを酢酸エチル(6.0V、204L)で洗浄した。有機相を合わせ、水(2.0V×2、190L×2本)で洗浄し、KFによって確認した。(KF:6.60%).酢酸イソプロピルもまた、EtOAcに代わる溶媒として使用した。
【0197】
単離工程:結晶化手順上記の後処理工程から得られた固体をn-ヘプタン(9.0V、857L)でさらに洗浄した。次いで、混合物を内部温度が60℃に達するまで加熱し、60℃で1時間撹拌した。次いで、混合物を内部温度25℃まで冷却し、25℃で12時間撹拌した。次いで、固体を濾過し、濾過ケークをn-ヘプタン(2.0V、190L)で洗浄した。次いで、固体をNガス下で乾燥させた。黄色固体(81.0kg、純度98.7%、収率82.5%、QNMR 92.6%)。Mp:91C。H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ 7.69(d,J=15.7Hz,1H),7.30-7.11(m,7H),6.58(d,J=8.3Hz,1H),6.22(d,J=15.8Hz,1H),4.26(q,J=6.9Hz,2H),3.94(s,2H),1.34(t,J=6.9Hz,3H).
【0198】
【表20】
【0199】
実施例3b:
工程(c2):酵素還元によるエチル(E)-3-(5-(ベンジルチオ)-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物2a)の調製
【化18】
【0200】
Tricine緩衝剤の調製:330mMolのTricine緩衝剤を、54gのトリシン及び900mlの水を使用して調製した。pHを10NのNaOHでpH=8.0に調整した。
【0201】
化合物(2a)及び(2a-HCl塩)の調製:
500mlフラスコに、出発物質である化合物(3a)、25.00g、66.08mMol、95質量%)及びDMSO(7.5ml/g、2640mMol、100質量%)を添加した。混合物を30分間撹拌して、全ての固体を溶解した。
【0202】
別の1L反応器に、メタバナジン酸アンモニウム(1.00当量、66.08mMol、100質量%)、NR-55酵素(0.10g/g、100質量%)、デキストロース(4.5当量、297.4mMol、100質量%)、GDH-101(0.025g/g、100質量%)、β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸二ナトリウム塩(0.040g/g、1.245mMol、98質量%)、及び440mlの上記トリシン緩衝剤(17.5体積、pH=8.0、330mMol)を添加した。反応器を約40℃~45℃に加熱し、次いで、基質のDMSO溶液を、シリンジポンプを使用して1.5時間にわたってゆっくり添加した。添加が完了すると、反応のpHを確認し、pH=6.5であることが分かった。次いで、10NのNaOHを使用してpHを8.0に調整した。IPCのためにサンプルを採取した。一晩88%変換。
【0203】
次いで、さらなるβ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸二ナトリウム塩(0.01g/g、0.3112mMol、98質量%)及びGDH-101(0.01g/g、100質量%)を反応混合物に添加し、撹拌をさらに48時間続けた。次いで、反応混合物を濾過して粗黄色固体を得た。
【0204】
後処理及び単離手順:溶液を濾過し、水で洗浄した。粗固体を45℃で15体積のメチルTHFを用いて一晩スラリー化した。次いで、スラリーをCELITEで濾過し、油状物に濃縮した。次いで、油を20体積のメチルTHFで希釈し、CPME(1.5当量、99.12mMol、3mol/L)中のHClを室温で添加した。次いで、混合物を2時間撹拌し、次いで、濾過し、メチルTHF、次いでMTBEで洗浄した。21.1gの化合物(2aのHCl塩)を単離した。100wt%。99.28AP。収率91.5%。Mp:155℃。H NMR(500MHz,DMSO-d)δ 9.41(s,2H),7.83(d,J=15.7Hz,1H),7.70(s,1H),7.36-7.20(m,7H),6.61(d,J=15.7Hz,1H),(m,5H),4.27(s,1H),4.20(q,J=7.1Hz,2H),(s,1H),1.27(t,J=7.1Hz,3H).
【0205】
実施例4:
工程(a)+(b):エチル(E)-3-(5-(ベンジルチオ)-2-ヨードフェニル)アクリレート(化合物1a)の調製
【化19】
【0206】
反応手順:不活性容器Aを窒素ガス下で3回パージした。反応器ジャケット温度を25±5℃に設定した。酢酸イソプロピル(15.0V、825L)を容器Aに仕込んだ。次いで、出発物質エチル(E)-3-(5-(ベンジルチオ)-2-ニトロフェニル)アクリレート(化合物(2a)、1.0当量、55.0kg)を加えた後、HCl(1.5M、5.0当量、585L)を加えた。次いで、混合物を20分間撹拌し、反応流体が透明な黄色から黄色の濁りに変化することが観察された。次いで、混合物を0℃~5℃の内部温度に達するまで冷却した。NaNO(2.0当量、24.2kg)を含むHO(1.0V、55.0L)を、内部温度0℃~5℃でゆっくりと添加し、一方、内部温度はゆっくりと上昇した(発熱)。混合物を0℃~5℃で2時間撹拌した。HPLCは、出発物質である化合物(2a)が消費されたことを示した。
【0207】
次いで、水(1.0V、55.0L)中のKI(2.5当量、72.6kg)を、温度を0℃~5℃の間に維持しながら混合物にゆっくり添加し(わずかな発熱)、反応流体が黄色の濁りから褐色の透明に変化することが観察された。次いで、反応混合物を0℃~5℃の内部温度で5時間撹拌した。第2のHPLCは、約89.8%の生成化合物(1a)が4.368分で形成されたことを示した。次いで、水中のKPO(50.0%、5.0V、275L)溶液を添加して、反応混合物を0℃~5℃の内部温度でクエンチして、見かけのpH=10を達成した。(緩やかな温度上昇)。
【0208】
別個の反応では、実施例3bの化合物(2a HCl塩)生成物を実施例4の出発物質として、2aと同じ反応条件下で使用した。
【0209】
【表21】
【0210】
【表22】
【0211】
後処理手順:(2a)スケール調製物55.0kg及び13.0kgを後処理のために合わせた。
【0212】
反応物を亜硫酸水素ナトリウム(2.5当量、3.0V、165L)でクエンチした。(注:Na-チオ硫酸塩ではなくNa-重亜硫酸塩の使用は、後処理における元素状硫黄の形成を防止するのに重要である)。次いで、混合物を内部温度25℃に達するまで加熱し、25℃で30分間撹拌した。層を分割し、有機相を水(5V、275L)で洗浄した。
【0213】
蒸留手順:有機相を約3V EtOAcまで蒸留した。次いで、混合物を内部温度が50℃~55℃に達するまで加熱し、メタノール(12V、816L)を添加した。次いで、混合物を30分間撹拌し、内部温度25℃まで冷却した。次いで、混合物を25℃で3時間撹拌した。次いで、混合物を内部温度0℃に達するまで冷却し、12時間撹拌した。
【0214】
単離手順:混合物を濾過し、上記の蒸留工程から得られた固体を濾過し、濾過ケークをMeOH(2.0V、136L)でさらに洗浄した。次いで、固体をNガス下で乾燥させた。褐色固体;(56.0kg;99.0%純度;収率66.2%)。Mp:79℃。H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ 7.79(d,J=15.8Hz,1H),7.73(d,J=8.2Hz,1H),7.39(d,J=2.2Hz,1H),
7.32-7.23(m,5H),6.96(dd,J=8.2,2.3Hz,1H),6.17(d,J=15.7Hz,1H),4.28(q,J=7.1Hz,2H),4.10(s,1H),1.35(t,J=7.1Hz,3H).
【0215】
精製工程:粗生成物(純度89.0%)。粗生成物を、58℃に加熱し、0℃に冷却し、固体生成物を0℃で濾過することによって、MeOH/EtOAc(4:1)10体積の混合物中で再スラリー化した。
【0216】
【表23】
【0217】
上記の発明は、明確化及び理解のために、例示及び例によってある程度詳細に説明されている。当業者は、変更及び修正が、添付の特許請求の範囲の範囲内で行われ得ることを理解している。したがって、上の記述は、例示であることが意図され、限定的なものではないことを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、上の記載を参照して決定されるべきではなく、その代わりに、以下の添付の特許請求の範囲を、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲とともに参照して決定されるべきである。
【0218】
本明細書に引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物は、それぞれの個々の特許、特許出願、又は刊行物がそのように個別に示されているのと同じ程度に、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式中、
Xはハロ、CN、CF、又はOHであり;
は、(C~C)アルキル;5、6、7、8、9又は10員のアリール又はヘテロアリール;又は3、4、5、6、7、8、9若しくは10員のシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル基であり;
ここで、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキル基は、O、N又はSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有することができ;
又は、シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基中の炭素原子は、C=O基の一部であってもよく;
は、(C~C)アルキル又はベンジルから選択される)
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の調製プロセスであって、
(a)式(2)の化合物:
【化2】
(式中、前記R及びRは、化合物(1)において上に定義される通りである)を、溶媒-1中、亜硝酸塩の存在下で、酸HAと接触させることと、
(b)ハロゲン化剤、シアネート化剤、トリフルオロメチル化剤又はヒドロキシル化剤を、場合により溶媒-2の存在下で導入して、前記化合物(1)を形成することと
を含み;前記溶媒-1及び溶媒-2は、同一であっても異なっていてもよく、
前記化合物(2)が、パラジウム触媒を含まない方法で調製される、プロセス。
【請求項2】
前記化合物(2)を調製することをさらに含み、
(c1)極性溶媒中、酸性塩HAの存在下で金属を活性化することと、式(3)の化合物:
【化3】
(式中、前記R及びRは、化合物(1)において上に定義される通りである)
を、前記活性化された金属と極性溶媒中で高温で接触させ、前記化合物(2)又はその塩を形成することと
を含むか;
又は、代替的に、前記化合物(2)を調製することをさらに含み、
(c2)前記式(3)の化合物を、場合により共溶媒の存在下で、水性緩衝溶液中で酵素還元剤と、少なくとも1つの触媒及び補助因子の存在下で反応させ、前記式(2)の化合物又はその塩を形成すること
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
(c1)極性溶媒中、酸性塩HAの存在下で金属を活性化することと、前記式(3)の化合物を前記活性化金属と高温で極性溶媒中で接触させ、前記化合物(2)又はその塩を形成することと
を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
(c2)共溶媒の存在下で、水性緩衝剤中で酵素還元剤と、金属触媒、共触媒及び補助因子の存在下で、前記式(3)の化合物を接触させ、前記式(2)の化合物又はその塩を形成すること
を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記化合物(3)又はその塩を調製することをさらに含み、
(d)式(4)の化合物:
【化4】
(式中、Xはハロであり;前記Rは、化合物(3)において上に定義される通りである)
を、塩基の存在下、有機溶媒中、高温でチオール剤と接触させ、化合物(3)又はその塩を形成すること
を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記化合物(4)を調製することをさらに含み、
(e)式(5)の化合物:
【化5】
(式中、Xは化合物(4)で定義されるハロである)を、アルケン化剤と接触させ、塩基の存在下、有機溶媒中で、前記化合物(4)又はその塩を形成すること
を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
(a)において、
(i)前記酸HAが、HCl、HBr、HI、p-TsOH又はHSOであるか;又は
(ii)前記溶媒-1は、水、THF、メチルTHF、CH CN、又は(C ~C )酢酸アルキル溶媒、又はそれらの混合物である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
(b)において、
(i)前記ハロゲン化剤が、ハロゲン化金属塩であり;前記シアン化剤がCuCNであり;前記トリフルオロメチル化剤がCuCFであり;前記ヒドロキシル化剤がCuO/Cu(II)であるか;又は
(ii)前記溶媒-2が、水、THF、メチルTHF、CH CN、又は(C ~C )アルキルアセテート溶媒、又はその混合物である、
請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
(c1)において、
(i)前記金属が、Fe、Zn、Pd、Pt、Ru、又はRhから選択されるか;
(ii)前記酸性塩HA が、塩化アンモニウム、酢酸、又はHClであるか;又は
(iii)前記極性溶媒が、水、(C ~C )アルキルアルコール、又はそれらの混合物である、
請求項2~3及び5~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
(c2)において、
(i)前記共溶媒が、DMSO又は水/DMSO混合物から選択されるか;
(ii)前記緩衝剤が、リン酸塩、PIPES、TRICINE、BICINE、HEPES、TRIS、TES、CAPS、Kpi又はCHESから選択されるか;
(iii)前記酵素還元剤がニトロレダクターゼ酵素であるか;
(iv)前記触媒が金属触媒及び共触媒であり;前記金属触媒が、V 、NH VO 、V(IV)オキシドフタロシアニン、V(IV)オキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、バナジル硫酸水和物、V(V)オキシトリエトキシド、3%V/C、又はV(III)2,4-ペンタンジオネートから選択されるバナジウム触媒であるか;
(v)前記反応が、pH7又はpH8の間で行われるか;又は
(vi)(c2)の前記生成物が、HCl塩若しくはHBr塩から選択されるハロゲン化物塩、又はメシル酸塩、トシル酸塩若しくはアリールスルホン酸塩から選択されるスルホン酸塩から選択される塩である、
請求項2及び4~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
(d)において、
(i)化合物(4)及び(5)のそれぞれにおける前記Xが、フルオロ又はクロロであるか;
(ii)前記塩基が、炭酸塩又はリン酸塩であるか;
(iii)前記有機溶媒が、DMF、DMAc又はNMPから選択されるか;又は
(iv)反応が低含水量条件下で行われ、過剰なチオール剤が使用されない、
請求項5~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
(e)において、
(i)化合物(4)及び(5)のそれぞれにおける前記Xが、F又はClであるか;又は
(ii)前記有機溶媒が、DIPEA、CH CN、TEA、N-メチルモルホリン、又はその混合物から選択される、
請求項6~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
化合物(1)中のXがヨードである、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
化合物(1)及び(2)のそれぞれにおけるXがフルオロ又はクロロである、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
化合物(1)、(2)、(3)及び(4)のそれぞれにおけるRがメトキシ又はエトキシである、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
化合物(1)、(2)及び(3)のそれぞれにおけるRがベンジルである、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記式(1)の化合物を形成するために、以下の順序:
A)工程(e);工程(d);工程(c1)又は(c2);その後に工程(a)+(b);
B)工程(d);工程(e);工程(c1)又は(c2);その後に工程(a)+(b);又は
C)工程(d);工程(c1)又は(c2);工程(e);その後に工程(a)+(b)で行われる、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
【化6】
(式中、Rはエチルであり、Rはベンジルである)である化合物、又はその塩。
【国際調査報告】