(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/42 20060101AFI20240822BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240822BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/36
A61K8/365
A61Q5/00
A61Q11/00
A61Q19/00
A61Q15/00
A61Q17/00
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509398
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022039801
(87)【国際公開番号】W WO2023022899
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511299355
【氏名又は名称】イノレックス インベストメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェボラ マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ヅォンユー
(72)【発明者】
【氏名】フェラーラ ロバート ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC231
4C083AC271
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC471
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC662
4C083AD202
4C083AD352
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC05
4C083CC24
4C083CC28
4C083CC31
4C083CC38
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム化合物及び組成物、並びにそれを含む配合物、本発明のアルキルヒドロキサム酸水素カリウム化合物を調製する方法、並びに製品又は製品の構成要素の配合における本発明の化合物及び組成物の使用を含むその用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
MH(AH)
2 (I)
(式中、Mは、本質的にカリウムからなるアルカリ金属カチオンであり、
Hは水素であり、
AHはC
6~C
10アルキルヒドロキサム酸アニオンである)の化合物と、
約8以下の配合物のpH値をもたらすのに十分な量の有機酸と、
を含む、水性配合物。
【請求項2】
中鎖末端ジオールと、
式(I):
MH(AH)
2 (I)
(式中、Mは、本質的にカリウムからなるアルカリ金属カチオンであり、
Hは水素であり、
AHはC
6~C
10アルキルヒドロキサム酸アニオンである)の化合物と、
C
6~C
10アルキルヒドロキサム酸と、
任意に有機酸又はその塩と、
を含む抗微生物組成物。
【請求項3】
AHがカプリルヒドロキサメートであり、MH(AH)
2がカプリルヒドロキサム酸水素カリウムである、請求項1に記載の配合物又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機酸が安息香酸、ソルビン酸、p-アニス酸、レブリン酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸、アニス酸、グリコール酸、それらの塩及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の配合物又は請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(I)の化合物が約0.0002%~約2.0%、若しくは約0.0002%~約1.5%、若しくは約0.0002%~約1.0%、若しくは約0.0002%~約0.5%の溶液濃度で前記水性配合物中に存在するか、又は前記配合物のpH値が約3.5~約7.9、若しくは約4.0~約7.5、若しくは約4.5~約7.5であるか、又は前記配合物が100ppm未満、若しくは50ppm未満、若しくは20ppm未満、若しくは10ppm未満の遊離ヒドロキシルアミン濃度を有するか、又は前記配合物が約20NTU未満、若しくは約10NTU未満、若しくは約5NTU未満、若しくは約2.5NTU未満の濁度を有する、請求項1に記載の配合物。
【請求項6】
約0.01wt%~約10wt%の前記式(I)の化合物と、
約10wt%~約80wt%の前記中鎖末端ジオールと、
約1wt%~約20wt%の前記C
6~C
10アルキルヒドロキサム酸と、
を含み、前記組成物が約11ppm~約11000ppmのカリウムを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記中鎖末端ジオールが、
グリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノペラルゴネート、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノヘプタノエート及びグリセリルモノウンデシレネートからなる群から選択されるグリセリルモノエステル、
エチルヘキシルグリセリン、メチルヘプチルグリセリン、カプリリルグリセリルエーテル、ヘプチルグリセリン又はシクロヘキシルグリセリンからなる群から選択されるグリセリルモノエーテル、
1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、カプリリルグリコール及び1,2-デカンジオールからなる群から選択される1,2-アルカンジオール、
並びにそれらの組合せ、
の少なくとも1つである、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
グリセリン、プロパンジオール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタジオール、ソルビトール、ソルビタン、イソソルビド及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリオールを更に含むか、又は界面活性剤、皮膚軟化剤、保水剤、コンディショニング剤、活性剤、漂白剤若しくは美白剤、香料、着色料、角質除去剤、抗酸化剤、植物成分、マイカ、スメクタイト、増粘剤、カンナビノイド、油、染料、ワックス、アミノ酸、核酸、ビタミン、加水分解タンパク質及びその誘導体、グリセリン誘導体、グリセリドエステル、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、抗真菌剤、消毒剤、抗酸化剤、UV吸収剤、染料及び顔料、抗微生物剤、日焼け止め活性剤、制汗活性剤、酸化剤、pHバランス剤、保湿剤、ペプチド及びその誘導体、老化防止活性剤、育毛剤、抗セルライト活性剤、並びにそれらの組合せから選択される少なくとも1つの付加的な成分を更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の2%水溶液が約5NTU未満の濁度、及び約3.5~約7.9、又は約4.0~約7.5、又は約4.5~約7.5のpH値を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が配合物中に約0.25wt%~約5.0wt%、又は約0.50wt%~約2.5wt%の範囲で存在する、請求項2に記載の組成物を含む配合物。
【請求項11】
約0.2ppm~約2200ppmのカリウムを含む、請求項1又は10に記載の配合物。
【請求項12】
パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品であるか、又はその構成要素である、請求項1又は10に記載の配合物。
【請求項13】
化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブローペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤からなる群から選択されるパーソナルケア製品であるか、又はその構成要素である、請求項1又は10に記載の配合物。
【請求項14】
式(I):
MH(AH)
2 (I)
(式中、Mは、本質的にカリウムからなるアルカリ金属カチオンであり、
Hは水素であり、
AHはC
6~C
10アルキルヒドロキサム酸アニオンである)の化合物を含む水溶液を調製することと、
前記水溶液を少なくとも1つの他の成分と組み合わせることと、
約8以下の配合物のpH値をもたらすのに十分な量のpH調整剤を添加することと、
なお、前記pH調整剤を前記少なくとも1つの他の成分の前、後又はそれと組み合わせて添加する;
を含む、配合物を調製する方法。
【請求項15】
前記式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである、請求項1に記載の配合物又は請求項2に記載の組成物又は請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年8月20日付で出願された米国仮特許出願第63/235,495号に対する優先権を主張するものであり、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩化合物及び組成物、該化合物及び組成物を含有する配合物、該化合物、組成物及び配合物を製造及び使用する方法、並びに特に化粧品用途を含むその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
有機酸は食品、化粧品、パーソナルケア製品及び医薬品の防腐についてよく知られている。例としては、安息香酸及びソルビン酸が挙げられる1,2。これらの化合物は、微生物の汚染及び成長に対して配合物を効果的に保存するために酸形態で存在しなければならない。配合物のpHが上昇するにつれ、活性酸形態で存在する有機酸の割合が減少し、不活性なイオン化形態又は塩形態の割合が増加する。この現象は、有機酸のpKaに依存し、pKaが低いほど、酸が効果的な防腐をもたらすためには、配合物のpHを低くしなければならない。様々な酸の幾つかのpKa値は、サリチル酸、pKa=3.0;安息香酸、pKa=4.2;p-アニス酸、pKa=4.5;レブリン酸、pKa=4.6;及びソルビン酸、pKa=4.8である。
【0004】
しかしながら、酸形態では、これらの化合物は限られた水溶性を有し、水に溶解しにくく、配合物の配合が困難となる。以前の解決策は、水混和性キャリア溶媒、例えばグリコール、ポリオール、芳香族アルコール等を用いて有機酸の予め可溶化したブレンドを作製することを含むものであった。代替的でより経済的な解決策は、溶解を容易にするために塩形態の有機酸、例えば安息香酸ナトリウム又はソルビン酸カリウムを添加した後、酸を用いて溶液pHを低下させ、有機酸の均一な溶液を得ることである。それにもかかわらず、かかる化合物は一般に、その低いpKa値から、pH5.5超では微生物汚染の制御及び微生物成長の阻害には効率的又は効果的でないとみなされる。
【0005】
カプリルヒドロキサム酸(「CHA」)が特に有用であり、これは微生物の汚染及び成長に対して配合物を保護するのにも役立つキレート剤である。CHA及び関連するC
6~C
10アルキルヒドロキサム酸の重要な利点は、ヒドロキサム酸官能基が従来の有機酸と比較してはるかに高いpK
a値を有し、したがって、より高い値の溶液pHでも酸形態のままであることである。例えば、CHA(pKa≒9.4)が主に、安息香酸及びソルビン酸と比較してはるかに広い範囲のpH値にわたって、より有益な酸形態で存在することが
図1に示される。このより高いpH柔軟性は、配合者に成分の選択及び処方指定の設定の際により大きな裁量の幅を持たせる。
【0006】
従来の有機酸と同様、CHA及び関連するC6~C10アルキルヒドロキサム酸は、限られた水溶性を示し、水に溶解しにくい。しかしながら、CHA及び関連するC6~C10アルキルヒドロキサム酸の対応するアルカリ金属塩は、顕著に高い水溶性を示し、酸形態よりも高濃度で水性媒体に容易に溶解する。このため、CHA又は関連するC6~C10アルキルヒドロキサム酸の塩形態を利用して、化合物を水に急速に溶解させ、続いて得られた溶液のpHを低下させることにより、溶液中の酸形態を得ることができると予想される。
【0007】
Hughesに対する特許文献1は、アルキルヒドロキサム酸のカリウム塩が、1当量のアルキルヒドロキサム酸水素カリウムが1当量のアルキルヒドロキサム酸と結合した「凝集体」である結晶性固体、すなわちKH(AH)2として単離され得ることを開示している3。この発見は、2010年にHope及び共同研究者によって確認された4。しかしながら、Hughesは、pH値が11を超えるアルカリ性組成物に関するものであり、酸の添加及び/又はpHの低下については教示していない。Hughesは、鉱石の浮選に関するものでもあり、微生物成長又は微生物汚染の制御のためのアルキルヒドロキサメートの用途については言及していない。
【0008】
Inolexに対する特許文献2及びUnileverに対する特許文献3は、アルキルヒドロキサム酸及び塩を開示しているが、ナトリウム塩又はカリウム塩を区別しておらず、KH(AH)2形態についても言及していない。また、特許文献3は、一価塩(すなわちMAH、ここで、Mはアルカリ金属であり、AHはアルキルヒドロキサメートである)及びpH7~8に緩衝化し、塩基、例えば水酸化ナトリウム、トリエタノールアミンを配合した組成物しか開示していない。
【0009】
元素周期表におけるナトリウムに対するカリウムの位置から、カリウム塩がナトリウム塩よりも塩基性であることが一般に認められている。水酸化カリウムのアルカリ性が水酸化ナトリウムと比較して高いのは、カリウムの原子半径がより大きいことから、水酸化物対イオンに対する引力がより弱くなり、水酸化カリウムが水溶液に溶解した場合により容易にイオン化し得るためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,007,805号
【特許文献2】国際公開第2009/070736号
【特許文献3】国際公開第2010/069957号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
化粧品用の配合物において大幅なpH調整に依存することは望ましくない。大幅なpH調整を必要としないアルキルヒドロキサム酸及び塩が依然として必要とされており、アルキルヒドロキサム酸及び塩は、化粧品配合物の消費者によって「天然」又は「持続可能」とみなされることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
出願人らは、驚くべきことに、CHA及び関連するC6~C10アルキルヒドロキサム酸の水素カリウム塩が、実際にそのナトリウム対応物よりもアルカリ性が低いことを発見した。このことは、アルキルヒドロキサム酸形態のin situ生成に必要とされる配合物のpH調整が劇的に少ないことから、所望のpHが約8以下である組成物の配合物に有益である。
【0013】
幾つかの実施の形態においては、本発明は、
式(I):
MH(AH)2 (I)
(式中、Mは、本質的にカリウムからなるアルカリ金属カチオンであり、
Hは水素であり、
AHはC6~C10アルキルヒドロキサム酸アニオンである)の化合物と、
約8以下の配合物のpH値をもたらすのに十分な量のpH調整剤と、
を含む配合物に関する。
【0014】
pH調整剤が有機酸である、先の段落に記載の配合物。
【0015】
有機酸が安息香酸、ソルビン酸、p-アニス酸、レブリン酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸、アニス酸、グリコール酸、それらの塩及びそれらの組合せからなる群から選択される、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0016】
AHがカプリルヒドロキサメートである、単独又は組合せの先の段落に記載の配合物。
【0017】
MH(AH)2がカプリルヒドロキサム酸水素カリウムである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0018】
約0.2ppm~約2200ppmのカリウムを含む、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0019】
式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0020】
式(I)の化合物が約0.0002%~約2.0%、又は約0.0002%~約1.5%、又は約0.0002%~約1.0%、又は約0.0002%~約0.5%の溶液濃度で水性配合物中に存在する、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0021】
配合物のpH値が約3.5~約7.9、又は約4.0~約7.5、又は約4.5~約7.5である、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0022】
1000ppm未満、又は500ppm未満、又は200ppm未満、又は100ppm未満の遊離ヒドロキシルアミン濃度を有する、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0023】
遊離ヒドロキシルアミンを実質的に含まない、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0024】
約20NTU未満、又は約10NTU未満、又は約5NTU未満、又は約2.5NTU未満の濁度を有する、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0025】
パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品であるか、又はその構成要素である、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0026】
化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブローペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤からなる群から選択されるパーソナルケア製品であるか、又はその構成要素である、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0027】
他の実施の形態においては、本発明は、
中鎖末端ジオールと、
式(I):
MH(AH)2 (I)
(式中、Mは、本質的にカリウムからなるアルカリ金属カチオンであり、
Hは水素であり、
AHはC6~C10アルキルヒドロキサム酸アニオンである)の化合物と、
C6~C10アルキルヒドロキサム酸と、
任意に有機酸又はその塩と、
を含む抗微生物組成物に関する。
【0028】
約11ppm~約11000ppmのカリウムを含む、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0029】
約0.01wt%~約10wt%の式(I)の化合物と、約10wt%~約80wt%の中鎖末端ジオールと、約1wt%~約20wt%のC6~C10アルキルヒドロキサム酸とを含む、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0030】
中鎖末端ジオールがグリセリルモノエステル、グリセリルモノエーテル、1,2-アルカンジオール及びそれらの組合せの少なくとも1つである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0031】
中鎖末端ジオールがグリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノペラルゴネート、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノヘプタノエート及びグリセリルモノウンデシレネートからなる群から選択されるグリセリルモノエステルである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0032】
中鎖末端ジオールがエチルヘキシルグリセリン、メチルヘプチルグリセリン、カプリリルグリセリルエーテル、ヘプチルグリセリン又はシクロヘキシルグリセリンからなる群から選択されるグリセリルモノエーテルである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0033】
中鎖末端ジオールが1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、カプリリルグリコール及び1,2-デカンジオールからなる群から選択される1,2-アルカンジオールである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0034】
任意の有機酸が安息香酸、ソルビン酸、p-アニス酸、レブリン酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、アニス酸、グリコール酸、それらの塩及びそれらの組合せからなる群から選択される、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0035】
ポリオールを更に含む、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0036】
ポリオールがグリセリン、プロパンジオール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタジオール、ソルビトール、ソルビタン、イソソルビド及びそれらの組合せからなる群から選択される、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0037】
界面活性剤、皮膚軟化剤、保水剤、コンディショニング剤、活性剤、漂白剤若しくは美白剤、香料、着色料、角質除去剤、抗酸化剤、植物成分、マイカ、スメクタイト、増粘剤、カンナビノイド、油、染料、ワックス、アミノ酸、核酸、ビタミン、加水分解タンパク質及びその誘導体、グリセリン誘導体、グリセリドエステル、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、抗真菌剤、消毒剤、抗酸化剤、UV吸収剤、染料及び顔料、防腐剤、日焼け止め活性剤、制汗活性剤、酸化剤、pHバランス剤、保湿剤、ペプチド及びその誘導体、老化防止活性剤、育毛剤、抗セルライト活性剤、並びにそれらの組合せから選択される少なくとも1つの付加的な成分を更に含む、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0038】
組成物の2%水溶液が約5NTU未満の濁度を有する、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0039】
組成物の2%水溶液が約9以下のpH値を有する、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0040】
組成物のpH値が約3.5~約7.9、又は約4.0~約7.5、又は約4.5~約7.5である、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の組成物。
【0041】
抗微生物組成物が配合物中に約0.25wt%~約5.0wt%の範囲で存在する、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の抗微生物組成物を含む配合物。
【0042】
抗微生物組成物が配合物中に約0.50wt%~約2.5wt%の範囲で存在する、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0043】
約0.2ppm~約2200ppmのカリウムを含む、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0044】
パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品であるか、又はその構成要素である、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0045】
化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブローペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤からなる群から選択されるパーソナルケア製品であるか、又はその構成要素である、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の配合物。
【0046】
更に他の実施の形態においては、本発明は、
式(I):
MH(AH)2 (I)
(式中、Mは、本質的にカリウムからなるアルカリ金属カチオンであり、
Hは水素であり、
AHはC6~C10アルキルヒドロキサム酸アニオンである)の化合物を含む水溶液を調製することと、
水溶液を少なくとも1つの他の成分と組み合わせることと、
約8以下の配合物のpH値をもたらすのに十分な量のpH調整剤を添加することと、
なお、pH調整剤を少なくとも1つの他の成分の前、後又はそれと組み合わせて添加する;
を含む、配合物を調製する方法に関する。
【0047】
式(I)の化合物が約0.0002%~約2.0%、又は0.0002%~約1.5%、又は約0.0002%~約1.0%、又は約0.0002%~約0.5%の濃度で水溶液中に存在する、先の段落に記載の方法。
【0048】
組み合わせる前に添加を行う、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0049】
組み合わせた後に添加を行う、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0050】
pH調整剤が有機酸である、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0051】
有機酸が安息香酸、ソルビン酸、p-アニス酸、レブリン酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、アニス酸、グリコール酸、それらの塩及びそれらの組合せからなる群から選択される、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0052】
AHがカプリルヒドロキサメートである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0053】
MH(AH)2がカプリルヒドロキサム酸水素カリウムである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0054】
式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0055】
少なくとも1つの他の成分が中鎖末端ジオールを含む、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0056】
中鎖末端ジオールがグリセリルモノエステル、グリセリルモノエーテル又は1,2-アルカンジオールである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0057】
中鎖末端ジオールがグリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノカプリレート及びグリセリルウンデシレネートからなる群から選択されるグリセリルモノエステルである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0058】
中鎖末端ジオールがエチルヘキシルグリセリン、メチルヘプチルグリセリン、カプリリルグリセリルエーテル、ヘプチルグリセリン又はシクロヘキシルグリセリンからなる群から選択されるグリセリルモノエーテルである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0059】
中鎖末端ジオールが1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、カプリリルグリコール及び1,2-デカンジオールからなる群から選択される1,2-アルカンジオールである、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0060】
少なくとも1つの他の成分がC6~C10アルキルヒドロキサム酸を含む、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0061】
少なくとも1つの他の成分がポリオールを含む、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0062】
ポリオールがグリセリン、プロパンジオール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタジオール、ソルビトール、ソルビタン、イソソルビド及びそれらの組合せからなる群から選択される、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0063】
少なくとも1つの他の成分が界面活性剤、皮膚軟化剤、保水剤、コンディショニング剤、活性剤、漂白剤若しくは美白剤、香料、着色料、角質除去剤、抗酸化剤、植物成分、マイカ、スメクタイト、増粘剤、カンナビノイド、油、染料、ワックス、アミノ酸、核酸、ビタミン、加水分解タンパク質及びその誘導体、グリセリン誘導体、グリセリドエステル、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、抗真菌剤、消毒剤、抗酸化剤、UV吸収剤、染料及び顔料、防腐剤、日焼け止め活性剤、制汗活性剤、酸化剤、pHバランス剤、保湿剤、ペプチド及びその誘導体、老化防止活性剤、育毛剤、抗セルライト活性剤、並びにそれらの組合せから選択される、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0064】
組成物のpH値が約3.5~約7.9、又は約4.0~約7.5、又は約4.5~約7.5である、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0065】
配合物が約10NTU未満の濁度を有する、単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法。
【0066】
単独又は組合せの先の段落のいずれかに記載の方法は、上記のような抗微生物組成物を含む配合物を調製することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】安息香酸、ソルビン酸及びカプリルヒドロキサム酸の溶液pHの関数としてのイオン化の程度を示す図である。
【
図2】NaCH及びKH(CH)
2についての濃度の関数としての溶液pHを示す図である。
【
図3】NaCH及びKH(CH)
2の滴定曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
特に本発明の化合物、組成物及び方法を説明する前に、記載の特定のプロセス、組成物又は方法が変更され得るため、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい。また、説明に使用される用語が特定のバージョン又は実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。他に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法、デバイス及び材料をここで記載する。本明細書で言及される全ての刊行物は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書のいかなる記載も、本発明が先行発明のためにかかる開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈すべきではない。
【0069】
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上他に明らかに指示されない限り、数量を特定していない単数形(the singular forms "a," "an," and "the")が複数の指示対象を含むことに留意されたい。このため、例えば、「細胞」への言及は、当業者に既知の1つ以上の細胞及びその等価物への言及である等である。
【0070】
指定のない限り、「%」は、重量パーセント又は体積パーセントのいずれかを指すことができる。
【0071】
「化粧品に許容可能な」とは、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応等を伴わずに皮膚と接触させて使用するのに適していることを意味する。
【0072】
幾つかの実施形態においては、本発明は、抗微生物特性を有する組成物及び/又は配合物に関する。本明細書で使用される場合、「抗微生物」とは、製品の保存性を高めるために、望ましくない微生物の成長を阻害し、及び/又は望ましくない微生物を死滅させることを意味する。
【0073】
該当する場合に、化学物質は、化粧品成分の国際命名法のガイドラインに従って、それらのINCI名によって指定される。供給業者及び商品名を含む追加情報は、米国パーソナルケア製品評議会(ワシントンDC)によって発行された国際化粧品成分辞書・ハンドブック第16版における適切なINCIモノグラフで、又は米国パーソナルケア製品評議会のINCIpediaデータベース(http://incipedia.personalcarecouncil.org)にオンラインで見出すことができる。
【0074】
多くの実施形態の中でも、本発明は、バイオベースの組成物を含む。バイオベースの組成物の製造には、バイオベース又は「自然」の供給原料を使用する必要がある。バイオベースの組成物の例は、生物由来の供給原料から調製されるものであり(例えば、発酵、藻類、植物又は野菜由来のような現在の持続可能な農業活動による;例えば、好ましくは非遺伝子組換え生物又はバイオマスを用いて植物源から得られる)、非石油化学由来である(例えば、石油、天然ガス又は石炭等の化石源に対し、21世紀に活動する持続可能な樹木及び植物の農場から得られる)。かかる供給原料は、本明細書において「自然」及び「再生可能」(すなわち、「持続可能」)と称され、非石油由来供給原料として当該技術分野で知られている。さらに、かかる材料は、石油又は他の化石燃料源(「古い」炭素)ではなく、「新たな」炭素によって形成される。かかる製品は、本明細書において「ナチュラル」製品と称され、非石油化学由来又は「バイオ」製品として当該技術分野で知られている。本明細書で使用される場合、「持続可能な」という用語は、再生可能な供給源に由来する出発物質、反応生成物、組成物及び/又は配合物を指す。したがって、「持続可能」という用語は、化石燃料(例えば石油又は石炭)、天然ガス等の限られた天然資源からの炭素を含有する「持続不可能」な出発物質、反応生成物、組成物及び/又は配合物とは対照的である。このため、ナチュラル製品又はバイオ製品は非石油化学由来であり、及び/又は石油化学に由来せず、むしろ持続可能で再生可能な供給源から製造される。真のナチュラル製品(バイオ製品)は、バイオマス(例えば、生きている植物、根等における炭素循環プロセスから貯蔵されるか、又は動物の呼吸若しくは排泄物から、若しくは分解によって放出された物質)を用いて形成される。炭素が分解され、圧力下で数百万年かけて分解されると、化石燃料(石油化学由来の炭素の供給源)が生成する。本明細書におけるバイオ化合物は、最近存在する(存在していた)植物源/バイオマスの炭素に由来する材料を含み、及び/又は持続可能であることが意図され、化石燃料に由来する材料は明示的に除外される。
【0075】
本発明の組成物及び/又は配合物は、そのバイオベース炭素含有量によって特定し、従来技術の組成物及び/又は配合物と区別することができる。幾つかの実施形態においては、バイオベース炭素含有量は、有機(すなわち、炭素含有)物質から構成される材料の相対年代を決定する放射性炭素年代測定によって測定することができる。放射性炭素は、炭素-14(すなわち、「14C」)として知られる炭素の不安定な同位体である。14Cは、非常に一貫した速度にてベータ粒子の形態で放射エネルギーを放出し(すなわち、放射性炭素の半減期は5730年である)、最終的により安定した窒素-14(14N)へと崩壊する不安定な同位体である。石油系の(すなわち、石油化学由来の)供給原料は、数百万年前に埋もれた植物及び動物に由来するため、かかる供給原料の放射性炭素(すなわち、14C)は、放射性崩壊にまで失われている。ASTM国際標準は、放射性炭素を用いて「バイオベース化合物」の確実性を決定するための試験規格を定めており、これはASTM D6866-16に見ることができる。この規格により、より新しい炭素と、化石燃料又は石油由来及び石油化学由来の供給源に由来する炭素、すなわち、「古い炭素」とが区別される。最近又は現在のバイオマス中の14Cの量は既知であるため、再生可能な供給源に由来する炭素のパーセンテージは、全有機炭素分析から推定することができ、これにより、化合物が真に「自然な」及び/又は「持続可能な」(「再生可能な」)供給原料源に由来するか、又は逆に「古い」隔離(sequestration)の化合物(すなわち、石油化学由来又は石油系の供給源)に由来するかを決定するために必要なデータが提供される。石油系(「化石系」とも称される)の供給原料の使用は、概して持続不可能であると認められ、すなわち、古い炭素は持続不可能であり、再生可能な供給原料ではなく、さらに当該技術分野において「自然」及び/又は「持続可能」とはみなされない。
【0076】
幾つかの実施形態においては、本発明の配合物及び/又は組成物は、化合物の混合物中に存在する炭素の実質的に全てとしてバイオベース炭素を含み、これは少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%のバイオベース炭素含有量を指すことができる。
【0077】
幾つかの実施形態においては、本発明の組成物は、ASTM D6866に従って決定すると、現在の大気中の14C含有量と実質的に同等の14C含有量を含む。幾つかの実施形態においては、本発明の組成物は、ASTM D6866に従って決定すると、現在の大気中の14C含有量の少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の14C含有量を含む。幾つかの実施形態においては、本発明の組成物は、ASTM D6866に従って決定すると、組成物中に存在する1012個の炭素原子当たり少なくとも約0.8個の14C原子、組成物中に存在する1012個の炭素原子当たり少なくとも約1.0個の14C原子、又は組成物中に存在する1012個の炭素原子当たり少なくとも約1.2個の14C原子を含む。
【0078】
本出願人らは、本明細書の「持続可能な」により、再生可能な供給源に由来する材料を指す。対照的に、「持続不可能な」とは、化石燃料(例えば、石油、天然ガス、石炭等)のような限られた天然資源に由来する材料を指す。
【0079】
アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む配合物
幾つかの実施形態においては、本発明は、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む配合物に関する。配合物は、様々な用途に使用することができる。配合物は、パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品であるか、又はその構成要素であり得る。幾つかの実施形態においては、配合物は、パーソナルケア製品であっても、又はその構成要素であってもよい。パーソナルケア製品としては、化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤が挙げられる。
【0080】
本発明の配合物、組成物、製品及び方法とともに使用されるアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩としては、C6~C10アルキルヒドロキサム酸、又はC6~C10アルキルヒドロキサム酸アニオン、又はそれらの塩が挙げられる。アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む配合物には、水性配合物が含まれ得る。
【0081】
アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む配合物は、式(I):
MH(AH)2 (I)
(式中、Mは、本質的にカリウムからなるアルカリ金属カチオンであり、
Hは水素であり、
AHはC6~C10アルキルヒドロキサム酸アニオンである)による化合物を含み得る。アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩KH(AH)2におけるMとアルキルヒドロキサム酸窒素(N)とのモル比は、好ましくは約0.3~約0.7、より好ましくは約0.4~約0.6、さらに好ましくは約0.45~約0.55である。
【0082】
式(I)によるMは、本質的にカリウムからなるアルカリ金属カチオンである。言い換えると、Mは他のアルカリ金属カチオンを除外したものであり得る。幾つかの実施形態においては、Mはカリウム以外のアルカリ金属カチオンを含まないか、又は実質的に含まない。好ましくは、Mはナトリウムを含まないか、又は実質的に含まない。ナトリウムを実質的に含まないとは、ナトリウムが5000ppm未満、好ましくは4000ppm未満、より好ましくは2000ppm未満の量で存在することを意味し得る。幾つかの実施形態においては、ナトリウムは1000ppm未満、例えば500ppm未満、200ppm未満又は100ppm未満の量で存在する。本発明者らは、下記実施例において支持されるように、本明細書に開示される配合物のアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩が必要とするpH調整剤は顕著により少ないことを驚くべきことに見出した。このことは、より少ないpH調整剤を用いた処理の容易さから望ましく、同時に最小限の添加剤を含有するパーソナルケア製品を消費者に提供する。
【0083】
式(I)によるAHは、C6~C10アルキルヒドロキサム酸アニオン、例えばヘキサノヒドロキサメート(カプロヒドロキサメート)、ヘプタノヒドロキサメート、オクタノヒドロキサメート(カプリロヒドロキサメート又はカプリルヒドロキサメート)、ノナノヒドロキサメート(ペラルゴヒドロキサメート)、デカノヒドロキサメート(カプリノヒドロキサメート)又はそれらの組合せである。幾つかの実施形態においては、式(I)によるAHは、カプリルヒドロキサメートであり、ここで、C6~C10アルキルヒドロキサム酸アニオンは、C8アルキルヒドロキサメートである。幾つかの実施形態においては、AHがカプリルヒドロキサメートである場合、MH(AH)2は、カプリルヒドロキサム酸水素カリウムKH(C8H16O2N)2である。
【0084】
上記のようなアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む水性配合物は水、例えば脱イオン水を含む。アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩化合物とpH調整剤とを含む本発明による水性配合物の水は、例えば約50wt%~約99wt%、例えば60wt%~99wt%、70wt%~99wt%、80wt%~99wt%、85wt%~99wt%、90wt%~99wt%、95wt%~99wt%又は98wt%~99wt%の範囲の量で存在し得る。下限に関しては、水は50wt%超、例えば60wt%超、70wt%超、80wt%超、85wt%超、90wt%超、95wt%超又は98wt%超の量で存在し得る。
【0085】
C6~C10アルキルヒドロキサム酸アニオンのように、式(I)の化合物中に存在する炭素は、上記のようにバイオベースであってもよい。態様においては、式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである。このことは、式(I)による化合物が上記のようにパーソナルケア製品として有用であり、非石油化学由来の成分が安全性及び効力について消費者から高く評価されることから重要である。
【0086】
アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む配合物は、約8以下の水性配合物のpH値をもたらすのに十分な量のpH調整剤を更に含み得る。幾つかの実施形態においては、pH調整剤は有機酸である。
【0087】
本明細書に記載される有機酸は、式R-Aのものであり、ここで、Rは有機(炭素含有)部分であり、Aは酸性基である。酸基は、ブレンステッド酸等のプロトン供与体酸を含み得る。酸基はカルボン酸(COOH)、スルホン酸(SO3H)等を含み得る。例えば、本明細書における有機酸は、カルボン酸、R-COOHを含んでいてもよく、ここで、Rは有機部分(炭素含有)である。本明細書において使用されるカルボン酸としては、安息香酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ウンデシレン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、並びにそれらの誘導体及び組合せを挙げることができる。
【0088】
有機酸は、安息香酸、ソルビン酸、p-アニス酸、レブリン酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、アニス酸、グリコール酸、エタンスルホン酸、酢酸、それらの塩及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0089】
場合によっては、pH調整剤は、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む水性配合物を、pH調整剤を化合物に用いない場合よりも低いpH値にする。pH調整剤の量は、水溶液中のアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩の濃度によって決まる。例えば、1%水溶液中のカプリルヒドロキサム酸水素カリウム塩のpH値は、9.0~10.0である。比較すると、1%水溶液中のカプリルヒドロキサム酸ナトリウム塩のpH値は、11.0~11.5である。本明細書に開示される配合物、例えばパーソナルケア製品等の標的pHレベルは、pH8未満である。本明細書に記載されるアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩化合物を使用する場合、所望のpH8未満を達成するために必要とされるpH調整剤の添加は最小限である。
【0090】
比較すると、アルキルヒドロキサム酸ナトリウム塩を使用する場合に必要とされるpH調整剤の量は、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を用いる場合よりも顕著に高い。驚くべきことに、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を使用する場合に必要とされるpH調整剤の量が、アルキルヒドロキサム酸ナトリウム塩を使用する場合に必要とされるpH調整剤の量よりも少ないことが見出された。幾つかの実施形態においては、重量基準で、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を用いる配合物が必要とするpH調整剤は、アルキルヒドロキサム酸ナトリウム塩を用いる配合物よりも25wt%~70wt%少ない。必要とされるpH調整剤の量は、要件が配合マトリックス中の他の成分によっても影響を受けるため、配合物によって異なる。他の実施形態においては、モル基準で、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を用いる配合物は、酸形態への完全な中和を達成するために、アルキルヒドロキサム酸ナトリウム塩を用いる配合物よりも必要とするpH調整剤が50mol%少ない。
【0091】
幾つかの実施形態においては、pH調整剤の添加は、pH値が約3.5~約7.9の範囲となるように水性配合物のpH値を変化させる。アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩化合物とpH調整剤とを含む本発明による水性配合物のpH値は、例えば約3.5~約7.9、例えば4.0~約7.5、約4.5~約7.5、約5.0~約7.0又は約5.5~約6.5の範囲とすることができる。上限に関しては、pH調整剤の添加は、pH値が8未満、例えば7.9未満、7.5未満、7.0未満又は6.5未満となり得るように水性配合物のpH値を変化させる。下限に関しては、pH調整剤の添加は、pH値が3.5超、例えば4.0超、4.5超、5.0超又は5.5超となり得るように水性配合物のpH値を変化させる。
【0092】
式(I)による化合物の濃度は、最終配合物及び/又は配合物の最終用途に応じて変動し得る。式(I)の化合物は、約0.0002%~約2.0%の溶液濃度で水性配合物中に存在することができる。式(I)の化合物の濃度は、例えば約0.0002%~約2.0%、例えば約0.0002%~約1.5%、約0.0002%~約1.0%、約0.0002%~約0.5%又は約0.0002%~約0.1%の範囲の溶液濃度で水性配合物中に存在するものであり得る。上限に関しては、溶液濃度は2.0%未満、例えば1.5%未満、1.0%未満、0.5%未満又は0.2%未満であり得る。下限に関しては、溶液濃度は0.0002%超、例えば0.001%超、0.01%超、0.05%超又は0.1%超であり得る。
【0093】
本明細書に記載されるアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む水性配合物は、カリウムを含み、例えば、カリウムは約0.2ppm超の濃度で存在する。カリウム含有量は、原子吸光分光法又は誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって測定することができる。カリウム(K)の濃度は例えば、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む水性配合物中に約0.2ppm K~約2200ppm K、例えば0.2ppm~2000ppm、1.0ppm~1800ppm、又は10ppm~1600ppm、又は100ppm~1400ppmの範囲の濃度で存在するものであり得る。上限に関しては、濃度は2200ppm未満、例えば2000ppm未満、1800ppm未満、1600ppm未満、1400ppm未満、1200ppm未満又は1000ppm未満であり得る。下限に関しては、濃度は0.2ppm超、例えば1.0ppm超、10ppm超、100ppm超又は200ppm超であり得る。
【0094】
本明細書に記載されるアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む配合物において、100ppm未満の遊離ヒドロキシルアミン濃度を維持することが好ましい場合がある。遊離ヒドロキシルアミンNH2OHは、健康及び安全性の懸念から本明細書に開示される配合物において望ましくない無機化合物である。遊離ヒドロキシルアミン含有量は、分光学的検出を伴う高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定することができる5。遊離ヒドロキシルアミンの濃度は、例えば約0ppm~約100ppm、例えば0ppm~100ppm、0ppm~50ppm、又は0ppm~20ppm、又は0ppm~10ppmの範囲の濃度で配合物中に存在するものであり得る。上限に関しては、濃度は100ppm未満、例えば80ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、20ppm未満、10ppm未満又は5ppm未満であり得る。幾つかの実施形態においては、配合物は、遊離ヒドロキシルアミンを含まないか、又は実質的に含まず、例えば1ppm未満である。幾つかの実施形態においては、遊離ヒドロキシルアミン濃度は検出限界未満、例えば0.1ppm未満であり得る。
【0095】
式(I)の化合物を含む配合物は、約10比濁法濁度単位(NTU)未満の濁度を有し得る。濁度は、クリア又は透明であることが意図される最終使用製品に配合物を容易に配合し得るように重要である。このため、本明細書において意図されるクリア及び/又は透明な配合物の濁度は、所与の配合物について可能な限り低い必要がある。濁度は、HF ScientificのMicro 100卓上濁度計等の機器を用いた比濁法濁度測定によって測定される。アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む配合物の濁度は、例えば約0NTU~約20NTU、例えば0.05NTU~15NTU、0.05NTU~10NTU又は0.05NTU~5NTUの範囲とすることができる。上限に関しては、濁度は20NTU未満、例えば15NTU未満、10NTU未満、5NTU未満又は2.5NTU未満であり得る。幾つかの実施形態においては、配合物は、脱イオン水中の2%水溶液に対して約1NTU未満の濁度を有する。幾つかの実施形態においては、濁度は0又は本質的に0であり、例えば信頼性のある検出限界未満である。
【0096】
アルキルヒドロキサム酸水素カリウムと中鎖末端ジオールとを含む抗微生物組成物
多構成要素(すなわち、多成分)ブレンドも本明細書に開示され、抗微生物組成物として配合物に使用するのに適している。実施形態において、本発明の抗微生物組成物は、上記のようなアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩と、付加的に中鎖末端ジオール(MCTD)とを含み得る。これらの実施形態のアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩は、上記のような式(I)の化合物であってもよい。また、これらの組成物は、上記のようなパーソナルケア製品又は他の用途の配合物に使用されても、又はその構成要素であってもよい。アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩は他の成分、例えばMCTDと相乗的に作用することができる。
【0097】
幾つかの実施形態においては、本発明は、様々な用途のための配合物に使用され得るアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む抗微生物組成物に関する。本発明の抗微生物組成物又は配合物は、パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品であるか、又はその構成要素であり得る。幾つかの実施形態においては、組成物は、パーソナルケア製品の配合物に使用してもよく、又はその構成要素であってもよい。パーソナルケア製品としては、化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブローペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤が挙げられる。
【0098】
これらの実施形態においては、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む本発明の抗微生物組成物は、上記のような式(I)による化合物と、中鎖末端ジオールと、C6~C10アルキルヒドロキサム酸と、任意に有機酸若しくはその塩、又は他の任意の成分とを含み得る。アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む本発明の抗微生物組成物は、非水性であってもよい。
【0099】
化粧品、トイレタリー及び医薬品用途に使用する場合、本明細書に記載される組成物への使用に最も好ましいジオールは、比較的低い使用レベルで抗微生物活性を示す中鎖長の直鎖ビシナルジオールである。幾つかの実施形態においては、中鎖長は、ジオールについてはC4~C10である。かかるジオールとしては、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、カプリリルグリコール及び1,2-デカンジオールが挙げられる。本明細書に記載される組成物に有用な他のビシナルジオールには、グリセリンに由来する分子が含まれる。グリセリンは、1位又は3位で他の分子と反応させることができ、2つの隣接ヒドロキシル基が残る。例えば、INOLEX, Inc.からLexgard(商標) Eとして市販されているエチルヘキシルグリセリン又はINOLEX, Inc.からLexgard(商標) MHG Natural MBとして市販されているメチルヘプチルグリセリン等のグリセリルモノエーテルは、抗微生物特性を有する有用な液体ビシナルジオールである。グリセリルモノエステル、例えばグリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノペラルゴネート、グリセリルモノヘプタノエート、又はINOLEX, Inc.(Philadelphia, Pa.)から市販されているLEXGARD(商標) GMCYであるグリセリルモノカプリレートも有用な抗微生物ビシナルジオールである。化粧品、トイレタリー及び医薬品の防腐について、ビシナルジオールが細菌及び酵母に対して効果的であるが、真菌に対しては弱いことが知られている。書籍D. Steinberg, Preservatives for Cosmetics. 2nd ed, (2006), pg. 102において、著者は、ビシナルジオールに関して、「これら全てに対して最も弱い活性が真菌である」と述べている。論文D. Smith et al., "The Self-Preserving Challenge," Cosmetic & Toiletries, No. 1, 115, No. 5 (May 2000)において、ビシナルジオールは、細菌に対する活性を有するが、「アスペルギルス属に対しては限定的である」と記載されている。アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)としても知られるアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)は、CTFAチャレンジ試験に使用される微生物の1つであるため、本明細書に記載されるビシナルジオールを唯一の防腐剤成分とする製品は、CTFAチャレンジ試験を十分に通過しない可能性がある。
【0100】
幾つかの実施形態においては、中鎖末端ジオールはグリセリルモノエステル、グリセリルモノエーテル、1,2-アルカンジオール及びそれらの組合せの少なくとも1つである。中鎖末端ジオールは、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノペラルゴネート、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノヘプタノエート及びグリセリルモノウンデシレネートからなる群から選択されるグリセリルモノエステルであってもよい。中鎖末端ジオールは、エチルヘキシルグリセリン、メチルヘプチルグリセリン、カプリリルグリセリルエーテル、ヘプチルグリセリン、ヘキシルグリセリン又はシクロヘキシルグリセリンからなる群から選択されるグリセリルモノエーテルであってもよい。中鎖末端ジオールは、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、カプリリルグリコール及び1,2-デカンジオールからなる群から選択される1,2-アルカンジオールであってもよい。
【0101】
これらの実施形態の組成物は、キレート剤も含む。本発明の組成物、配合物、製品及び方法とともに使用するのに適したキレート剤としては、C6~C10アルキルヒドロキサム酸又はそのアルキルヒドロキサム酸塩、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、フィチン酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、ガラクツロン酸又はその塩、ガラクタル酸又はその塩、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、キレート剤はカプリルヒドロキサム酸、カプリルヒドロキサム酸のヒドロキサム酸塩、又はそれらの組合せである。幾つかの実施形態においては、キレート剤はカプリルヒドロキサム酸、カプリルヒドロキサム酸のヒドロキサム酸塩、又はそれらの組合せから本質的になる。
【0102】
配合物に使用される本発明の抗微生物組成物及び/又はブレンドは、少なくとも以下の成分を含む:アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩、中鎖末端ジオール及びC6~C10アルキルヒドロキサム酸。幾つかの実施形態においては、本発明の抗微生物組成物は、約0.01%~約10%の式(I)の化合物と、約10%~約80%の中鎖末端ジオールと、約1%~約20%のC6~C10アルキルヒドロキサム酸とを含み、パーセント組成は、重量基準で算出される。他の任意の成分が下記のように抗微生物組成物に含まれていてもよい。
【0103】
本発明の抗微生物組成物は、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含み、例えば式(I)の化合物を約0.01wt%~約10wt%、例えば0.02wt%~9.0wt%、0.03wt%~8.0wt%、0.04wt%~7.0wt%、0.05wt%~6.0wt%又は0.10wt%~5.0wt%の範囲で含む。上限に関しては、式(I)の化合物の量は10wt%未満、例えば9.0wt%未満、8.0wt%未満、7.0wt%未満、6.0wt%未満又は5.0wt%未満であり得る。下限に関しては、式(I)の化合物の量は0.01wt%超、例えば0.02wt%超、0.03wt%超、0.04wt%超、0.05wt%超又は0.10wt%超であり得る。
【0104】
本発明の抗微生物組成物は、中鎖末端ジオールを約10wt%~約80wt%、例えば15wt%~75wt%、20wt%~70wt%、25wt%~65wt%、30wt%~60wt%又は35wt%~55wt%の範囲で含む。上限に関しては、中鎖末端ジオールの量は80wt%未満、例えば、75wt%未満、70wt%未満、65wt%未満、60wt%未満又は55wt%未満であり得る。下限に関しては、中鎖末端ジオールの量は10wt%超、例えば15wt%超、20wt%超、25wt%超、30wt%超又は35wt%超であり得る。
【0105】
本発明の抗微生物組成物は、C6~C10アルキルヒドロキサム酸を約1wt%~約20wt%、例えば1.5wt%~20wt%、2.0wt%~20wt%、1.0wt%~15wt%、1.5wt%~15wt%、2.0wt%~15wt%又は2.5wt%~15wt%の範囲で含む。上限に関しては、C6~C10アルキルヒドロキサム酸の量は20wt%未満、例えば19wt%未満、18wt%未満、17wt%未満、16wt%未満又は15wt%未満であり得る。下限に関しては、C6~C10アルキルヒドロキサム酸の量は1wt%超、例えば1.0wt%超、1.5wt%超、2.0wt%超又は2.5wt%超であり得る。
【0106】
任意に、本発明の抗微生物組成物は、有機酸及び/又はポリオール等の付加的な構成要素又は成分を含む。本発明の抗微生物組成物は、安息香酸、ソルビン酸、p-アニス酸、レブリン酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マロン酸、リンゴ酸、フマル酸、アニス酸、グリコール酸、それらの塩及びそれらの組合せからなる群から選択される有機酸を含み得る。本発明の抗微生物組成物は、グリセリン、プロパンジオール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタジオール、ソルビトール、ソルビタン、イソソルビド及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリオールを含み得る。本発明の抗微生物組成物は、アミノ酸グリシンの中鎖(C6~C10)脂肪酸アミド、例えばカプリロイルグリシン又はその塩を含み得る。
【0107】
任意に、本明細書における本発明の抗微生物組成物は、界面活性剤、皮膚軟化剤、保水剤、コンディショニング剤、活性剤、漂白剤又は美白剤、香料、着色料、角質除去剤、抗酸化剤、植物成分、マイカ、スメクタイト、増粘剤、カンナビノイド、油、染料、ワックス、アミノ酸、核酸、ビタミン、加水分解タンパク質及びその誘導体、グリセリン誘導体(例えばグリセリドエステル)、酵素、抗炎症剤及び他の薬剤、殺菌剤、抗真菌剤、消毒剤、抗酸化剤、UV吸収剤、染料及び顔料、防腐剤、日焼け止め活性剤、制汗活性剤、酸化剤、pHバランス剤、保湿剤、ペプチド及びその誘導体、老化防止活性剤、育毛剤、抗セルライト活性剤、並びにそれらの組合せ等の付加的な構成要素又は成分を含み得る。
【0108】
これらの構成要素は、任意とみなされ得る。場合によっては、本節において、例えば請求項の文言により、開示の組成物から上述の成分の1つ以上が明示的に除外されることがある。例えば、請求項の文言は、開示の組成物、配合物、方法等が上述の任意の成分の1つ以上を利用しないか、又は含まないことを記載するように変更されることがある。
【0109】
続いて、本発明の抗微生物組成物をパーソナルケア製品の配合等のその後の配合に使用することができる。本発明の抗微生物組成物の量は、例えば約0.25wt%~約5.0wt%、例えば0.30wt%~4.5wt%、0.35wt%~4.0wt%、0.40wt%~3.5wt%、0.45wt%~3.0wt%又は0.50wt%~2.5wt%の範囲で配合物中に存在するものであり得る。上限に関しては、配合物中の本発明の抗微生物組成物の量は、5.0wt%未満、例えば、4.5wt%未満、4.0wt%未満、3.5wt%未満、3.0wt%未満又は2.5wt%未満であり得る。下限に関しては、配合物中の本発明の抗微生物組成物の量は、0.25wt%超、例えば0.30wt%超、0.35wt%超、0.40wt%超、0.45wt%超又は0.50wt%超であり得る。
【0110】
幾つかの実施形態においては、本発明の抗微生物組成物の2%水溶液は、約9以下のpH値を有する。pH値は、例えば約3.5~約8.9、例えば3.5~約7.9、4.0~約7.5、約4.5~約7.5、約5.0~約7.0又は約5.5~約6.5の範囲とすることができる。上限に関しては、pH値は9未満、例えば8.9未満、8.0未満、7.5未満、7.0未満又は6.5未満であり得る。下限に関しては、pH値は3.5超、例えば4.0超、4.5超、5.0超又は5.5超であり得る。これらの範囲及び限界は、これらの組成物を含む配合物にも適用することができる。
【0111】
アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩と中鎖末端ジオールとを含む組成物は、上記よりも低い濁度、例えば約5NTU未満を有することがある。上で論考した配合物のように、本明細書における本発明の抗微生物組成物の濁度は、可能な限り低い必要がある。本発明の抗微生物組成物の濁度は、例えば約0NTU~約10NTU、例えば0NTU~5NTU、0NTU~2.5NTU、0NTU~2NTU又は0NTU~1NTUの範囲とすることができる。上限に関しては、濁度は10NTU未満、例えば、5NTU未満、2.5NTU未満、2NTU未満、1.5NTU未満、1NTU未満又は0.5NTU未満であり得る。幾つかの実施形態においては、本発明の抗微生物組成物は、脱イオン水中の2%水溶液に対して約1NTU未満の濁度を有する。幾つかの実施形態においては、濁度は0又は本質的に0であり、例えば検出限界未満である。
【0112】
本明細書に記載されるアルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む抗微生物組成物は、カリウムを(カリウムイオンの形態で)含み、例えば、カリウムは、約11ppm超の濃度で存在する。カリウム(K)の濃度は例えば、アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む本発明の抗微生物組成物中に約11ppm K~約11000ppm K、例えば11ppm~10000ppm、50ppm~9000ppm、又は100ppm~8000ppm、又は200ppm~7000ppmの範囲の濃度で存在するものであり得る。上限に関しては、濃度は11000ppm未満、例えば10000ppm未満、9000ppm未満、8000ppm未満又は7000ppm未満であり得る。下限に関しては、濃度は11ppm超、例えば50ppm超、100ppm超又は200ppm超であり得る。
【0113】
上記のような抗微生物組成物は、配合物中で使用することができる。抗微生物組成物を含む配合物は、カリウムを含み、例えば、カリウムは、約0.2ppm超の濃度で存在する。カリウム(K)の濃度は例えば、配合物(アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む抗微生物組成物を含む)中に約0.2ppm K~約2200ppm K、例えば0.2ppm~2000ppm、1.0ppm~1800ppm、又は10ppm~1600ppm、又は100ppm~1400ppmの範囲の濃度で存在するものであり得る。上限に関しては、濃度は2200ppm未満、例えば2000ppm未満、1800ppm未満、1600ppm未満、1400ppm未満、1200ppm未満又は1000ppm未満であり得る。下限に関しては、濃度は0.2ppm超、例えば1.0ppm超、10ppm超、100ppm超又は200ppm超であり得る。
【0114】
アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む配合物及び抗微生物組成物を調製する方法
アルキルヒドロキサム酸水素カリウム塩を含む、本明細書に記載される配合物及び抗微生物組成物は、配合物を調製する方法によって調製される。幾つかの実施形態においては、配合物を調製する方法は、式(I):
MH(AH)2 (I)
(式中、Mは、本質的にカリウムからなるアルカリ金属カチオンであり、
Hは水素であり、
AHはC6~C10アルキルヒドロキサム酸アニオンである)の化合物を含む水溶液を調製することを含む。
【0115】
本方法は、水溶液を少なくとも1つの他の成分と組み合わせることと、約8以下の配合物のpH値をもたらすのに十分な量のpH調整剤を添加することとを更に含む。pH調整剤は、少なくとも1つの他の成分の前、後又はそれと組み合わせて添加することができる。
【0116】
本方法は、式(I)による化合物の濃度が最終組成物及び/又は配合物の最終用途に応じて変動し得る場合を含み得る。本方法は、式(I)の化合物が約0.0002%~約2.0%の濃度で水溶液中に存在することを含み得る。例えば、式(I)の化合物は、約0.0002%~約2.0%、例えば約0.0002%~約1.5%、約0.0002%~約1.0%、約0.0002%~約0.5%又は約0.0002%~約0.1%の範囲の濃度で水溶液中に存在することができる。上限に関しては、濃度は2.0%未満、例えば、1.5%未満、1.0%未満、0.5%未満又は0.2%未満であり得る。下限に関しては、濃度は0.0002%超、例えば0.001%超、0.01%超、0.05%超又は0.1%超であり得る。幾つかの実施形態においては、上で論考されるように、式(I)の化合物中に存在する炭素の実質的に全てがバイオベースである。
【0117】
本方法は、水溶液中の式(I)の化合物に少なくとも1つの他の成分を組み合わせることを含む。この少なくとも1つの他の成分は、(i)水溶液の水及び(ii)pH調整剤に加えて添加される。少なくとも1つの他の成分としては、中鎖末端ジオール、キレート剤、ポリオール又はそれらの組合せを挙げることができる。組み合わせるための少なくとも1つの他の成分は、付加的又は代替的に下記の付加的な構成要素又は成分を含んでいてもよい。
【0118】
本方法の少なくとも1つの他の成分は、中鎖末端ジオールを含んでいてもよく、そのいずれかが上記のものである。幾つかの実施形態においては、中鎖末端ジオールを本方法において式(I)の化合物を含む水溶液と組み合わせる。幾つかの実施形態においては、中鎖末端ジオールはグリセリルモノエステル、グリセリルモノエーテル又は1,2-アルカンジオールである。中鎖末端ジオールは、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノペラルゴネート、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノヘプタノエート及びグリセリルモノウンデシレネートからなる群から選択されるグリセリルモノエステルであってもよい。中鎖末端ジオールは、エチルヘキシルグリセリン、メチルヘプチルグリセリン、カプリリルグリセリルエーテル、ヘプチルグリセリン又はシクロヘキシルグリセリンからなる群から選択されるグリセリルモノエーテルであってもよい。中鎖末端ジオールは、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、カプリリルグリコール及び1,2-デカンジオールからなる群から選択される1,2-アルカンジオールであってもよい。
【0119】
本発明の方法において式(I)の化合物を含む水溶液と組み合わせるのに適したキレート剤としては、C6~C10アルキルヒドロキサム酸又はそのアルキルヒドロキサム酸塩、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、フィチン酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、ガラクツロン酸又はその塩、ガラクタル酸又はその塩、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、キレート剤はカプリルヒドロキサム酸、カプリルヒドロキサム酸のヒドロキサム酸塩、又はそれらの組合せである。幾つかの実施形態においては、キレート剤はカプリルヒドロキサム酸、カプリルヒドロキサム酸のヒドロキサム酸塩、又はそれらの組合せから本質的になる。
【0120】
本発明の方法とともに使用するのに適したポリオールとしては、グリセリン、プロパンジオール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、ソルビトール、ソルビタン、イソソルビド及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
任意に、本明細書の方法において組み合わせるための少なくとも1つの他の成分は、付加的又は代替的に、界面活性剤、皮膚軟化剤、保水剤、コンディショニング剤、活性剤、漂白剤又は美白剤、香料、着色料、角質除去剤、抗酸化剤、植物成分、マイカ、スメクタイト、増粘剤、カンナビノイド、油、染料、ワックス、アミノ酸、核酸、ビタミン、加水分解タンパク質及びその誘導体、グリセリン誘導体(例えばグリセリドエステル)、酵素、抗炎症剤及び他の薬剤、殺菌剤、抗真菌剤、消毒剤、抗酸化剤、UV吸収剤、染料及び顔料、防腐剤、日焼け止め活性剤、制汗活性剤、酸化剤、pHバランス剤、保湿剤、ペプチド及びその誘導体、老化防止活性剤、育毛剤、抗セルライト活性剤、並びにそれらの組合せ等の付加的な構成要素又は成分を含んでいてもよい。これらの構成要素は、本明細書の方法において任意とみなされ得る。
【0122】
本方法は、約8以下の配合物のpH値をもたらすのに十分な量のpH調整剤を添加することを含む。pH調整剤は、少なくとも1つの他の成分の前、後又はそれと組み合わせて添加される。
【0123】
幾つかの実施形態においては、pH調整剤は、少なくとも1つの他の成分と組み合わせる前に添加される。他の実施形態においては、pH調整剤は、少なくとも1つの他の成分と組み合わせた後に添加される。更に他の実施形態においては、pH調整剤は、少なくとも1つの他の成分と組み合わせるのと同時に添加される。
【0124】
本方法によるpH調整剤は、有機酸であってもよい。有機酸は安息香酸、ソルビン酸、p-アニス酸、レブリン酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、マロン酸、アニス酸、グリコール酸、それらの塩及びそれらの組合せからなる群から選択される。好ましい有機酸としては、クエン酸、乳酸及びリンゴ酸が挙げられる。
【0125】
幾つかの実施形態においては、本方法は、配合物のpH値が約3.5~約7.9の範囲となるように影響を及ぼすのに十分な量のpH調整剤を添加することを含む。pH値は例えば、約3.5~約7.9、例えば4.0~約7.5、約4.5~約7.5、約5.0~約7.0又は約5.5~約6.5の範囲とすることができる。上限に関しては、pH値は8未満、例えば7.9未満、7.5未満、7.0未満又は6.5未満であり得る。下限に関しては、pH値は3.5超、例えば4.0超、4.5超、5.0超又は5.5超であり得る。これらの範囲及び限界は、本発明の抗微生物組成物を含む配合物にも適用することができる。
【0126】
本方法は、抗微生物組成物を含む配合物を調製することを含み得る。最終使用配合物に応じて、上記のような更に付加的な成分を付加的に組み合わせることができる。配合物又は組成物は、パーソナルケア製品、ホームケア製品、織物ケア製品、施設ケア製品、医薬品、動物用製品、食品又は工業製品の構成要素とすることができる。本明細書の方法によって製造することができるパーソナルケア製品としては、化粧品、毛髪、爪、皮膚又は織物のコンディショナー、シャンプー、ヘアスタイリング製品、顔の毛を手入れするためのオイル又はワックス、パーマネントウェーブ液、ヘアカラーリング剤、洗顔料又はボディーソープ、メイク落とし製品、クレンジングローション、エモリエントローション又はクリーム、固形石鹸、液体石鹸、シェービングクリーム、フォーム又はジェル、日焼け止め剤、日焼け処置用のジェル、ローション又はクリーム、デオドラント又は制汗剤、保湿ジェル、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、リンクルクリーム又はアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブローペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、口腔ケア製品、皮膚クレンジング製品、織物洗浄製品、食器洗浄製品、毛髪又は毛皮用洗浄製品、及び化粧水又は保湿剤が挙げられる。
【0127】
これらの詳細な説明は、本発明の一部をなす上記の一般的な説明及び実施形態を例示するのに役立つ。これらの詳細な説明は、例示のみを目的として提示され、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0128】
実施例1:カプリルヒドロキサム酸のアルカリ金属塩
実施例1のカプリルヒドロキサム酸水素カリウムは、Hughes(特許文献1)に記載されている手順に従い、カプリル酸メチルとヒドロキシルアミンとの反応によって調製した。得られた塩を濾過によって単離し、メタノールで洗浄して精製し、一定重量まで乾燥させた。比較例1のカプリルヒドロキサム酸ナトリウム(オクタノヒドロキサム酸ナトリウム一水和物、無水物として98%超)は、TCI Americaから購入し、そのまま使用した。
【0129】
表1は、実施例1及び比較例1の元素組成の理論値、並びに元素分析(Galbraith Laboratories, Inc.)によって決定された実際の値を示す。元素分析から、実施例1におけるカリウムと窒素とのモル比(0.52)が、カプリルヒドロキサム酸水素カリウムについて予想される値(0.50)と一致することが判明し、実施例1の化合物が式KH(CH)2(式中、CH=カプリルヒドロキサメートである)に従うことが確認される。対照的に、比較例1のナトリウムと窒素とのモル比は、カプリルヒドロキサム酸の完全に中和されたナトリウム塩NaCHを示す、0.97であることが観察される。
【0130】
【0131】
実施例2:カプリルヒドロキサム酸のアルカリ金属塩の溶液
表2及び
図2は、カプリルヒドロキサム酸水素カリウム(実施例1)の水溶液が、同等の濃度でカプリルヒドロキサム酸ナトリウム(比較例1)よりも約0.9~1.5 pH単位低いpH値を示すことを示している。
【0132】
【0133】
実施例3:カプリルヒドロキサム酸のアルカリ金属塩の水溶液の滴定
KH(CH)
2及びNaCHの水溶液(0.24wt%)を、実施例1及び比較例1のそれぞれの化合物を脱イオン水に溶解することによって調製した。Metrohmの自動滴定装置を用いて、溶液を0.1N HCl溶液で滴定した。
図3は、両溶液の滴定曲線を示す。滴定曲線と、KH(CH)
2については10.7mL、NaCHについては18.4mLと決定された滴定終点との両方から、同一濃度のNaCH溶液と比較した場合に、KH(CH)
2溶液を中和するのに必要とされる酸が顕著に少なく、およそ42%少ないことが判明する。
【0134】
実施例4:カプリルヒドロキサム酸水素カリウムを含むミセラーウォーター配合物
表3の処方に従い、以下の手順を用いてミセラーウォーターを調製した。オーバーヘッドメカニカルスターラー及びアンカー型ブレードを備える既知の風袋重量の適切な大きさのビーカーに、水(バッチに必要とされる全水の95%)を投入した。低速~中速で混合を開始し、カプリルヒドロキサム酸水素カリウム(実施例1)を水に添加し、完全に溶解するまで混合した。ポリソルベート20、ブチレングリコール及びメチルヘプチルグリセリンをバッチに添加し、透明で均質な溶液が形成されるまで混合した。配合物のpHを記録した後、クエン酸(10%水溶液)を添加してpHを6.5±0.2に調整し、pH調整に必要とされるクエン酸溶液の量を記録した。残りの水を100%になるまで適量添加し、バッチを均一になるまで混合した後、適切な容器に取り出して保管した。比較例2は、カプリルヒドロキサム酸ナトリウム(比較例1)をカプリルヒドロキサム酸水素カリウムに置き換えた以外は同じ手順に従って調製した。
【0135】
pH調整前に、NaCHで調製したミセラーウォーター配合物は、KH(CH)2で調製した配合物と比較して顕著に高いpH値を示し(pH=10.34対pH=9.55)、したがって、KH(CH)2で調製した配合物は、pH=6.5±0.2の標的値へのpH調整に必要とされるクエン酸が65%少なかった。実施例4及び比較例2の濁度値は、それぞれ0.71NTU及び0.77NTUであった。
【0136】
【0137】
実施例5:カプリルヒドロキサム酸水素カリウムを含むナチュラルローション配合物
表4の処方に従い、以下の手順を用いて、100%バイオベースの成分を含むローションを調製した。オーバーヘッドメカニカルスターラー及びアンカー型ブレード及び加熱用ホットプレートを備える既知の風袋重量の適切な大きさのビーカーに、水(バッチに必要とされる全水の95%)、グリセリン、メチルヘプチルグリセリン及びカプリルヒドロキサム酸水素カリウム(実施例1)を投入した。低速~中速で混合を開始し、キサンタンガムをゆっくりと水相に分け、均一に分散する(塊が残らなくなる)まで混合した。次いで、混合物を80℃に加熱した。別のビーカーにおいて油相成分を合わせ、低速で混合しながら80℃に加熱し、均一になるまで混合した。油相混合物を中速~高速で混合しながら80℃の水相混合物に添加した。均一な外観に達した後、混合物を約75℃に冷却し、続いて3500rpmで3分間均質化した。均質化後に、混合物を中速で撹拌しながら約45℃~50℃に冷却した。30℃に冷却した後、配合物のpHを記録し、続いてクエン酸(10%水溶液)を添加してpHを6.5±0.2に調整し、pH調整に必要とされるクエン酸溶液の量を記録した。残りの水を100%になるまで適量添加し、バッチを均一になるまで混合した後、適切な容器に取り出して保管した。比較例2は、カプリルヒドロキサム酸ナトリウム(比較例1)をカプリルヒドロキサム酸水素カリウムに置き換えた以外は同じ手順に従って調製した。
【0138】
pH調整前に、NaCHで調製したローション配合物は、KH(CH)2で調製した配合物と比較して顕著に高いpH値を示し(pH=8.62対pH=8.11)、したがって、KH(CH)2で調製した配合物は、pH=6.5±0.2の標的値へのpH調整に必要とされるクエン酸が36%少なかった。
【0139】
【0140】
実施例6:カプリルヒドロキサム酸水素カリウムを含むナチュラルシャンプー配合物
表5の処方に従って実施例6を調製した。オーバーヘッドメカニカルスターラーを備える既知の風袋重量の適切な大きさのビーカーに、水(バッチに必要とされる全水の95%)、カプリルヒドロキサム酸水素カリウム(実施例1)、ラウリルグルコシド、ココイルグルタミン酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン及びメチルヘプチルグリセリンを投入した。バッチを低速~中速で内容物が均一になるまで混合した。配合物のpHを記録した後、クエン酸(10%水溶液)を添加してpHを6.5±0.2に調整し、pH調整に必要とされるクエン酸溶液の量を記録した。残りの水を100%になるまで適量添加し、バッチを均一になるまで混合した後、適切な容器に取り出して保管した。比較例2は、カプリルヒドロキサム酸ナトリウム(比較例1)をカプリルヒドロキサム酸水素カリウムに置き換えた以外は同じ手順に従って調製した。
【0141】
pH調整前に、NaCHで調製したシャンプー配合物は、KH(CH)2で調製した配合物と比較して顕著に高いpH値を示し(pH=11.46対pH=10.71)、したがって、KH(CH)2で調製した配合物は、pH=6.5±0.2の標的値へのpH調整に必要とされるクエン酸が29%少なかった。実施例6及び比較例4の濁度値は、それぞれ7.30NTU及び7.83NTUであった。
【0142】
【0143】
実施例7:カプリルヒドロキサム酸水素カリウムを用いた抗微生物組成物
カプリルヒドロキサム酸、1,2-ヘキサンジオール、プロパンジオール及びカプリルヒドロキサム酸水素カリウムから構成される抗微生物組成物を、表6の処方に従い、以下の手順に従って調製した。オーバーヘッドメカニカルスターラーを備える既知の風袋重量の適切な大きさのビーカーに、1,2-ヘキサンジオール及びプロパンジオールを投入した。バッチに空気を混入させずに十分な撹拌を確実にするために、混合物を低速で混合しながら40℃~45℃に加熱した。カプリルヒドロキサム酸及びカプリルヒドロキサム酸水素カリウムをバッチにゆっくりと振り入れ、完全に溶解するまで混合した。バッチを冷却し、適切な容器に取り出して保管した。比較例5は、カプリルヒドロキサム酸水素カリウムをバッチから除外した以外は同様にして調製した。
【0144】
抗微生物組成物を、脱イオン水中の水溶液(2wt%)を調製することによって透明性について評価した。実施例7の抗微生物組成物は、0.12NTUの濁度を示したが、比較例5の抗微生物組成物は、3.35NTUの濁度を示した。また、実施例7の2%水溶液は、48時間にわたり、比較例5の2%水溶液と比較してより高い透明性を維持することが観察された。
【0145】
【0146】
実施例8:KH(CH)2を含むミセラーウォーター配合物の微生物学的チャレンジ試験
表7の実施例8に従い、以下の手順を用いてミセラーウォーター配合物を調製した。オーバーヘッドメカニカルスターラー及びアンカー型ブレードを備える適切な大きさのビーカーに脱イオン水を投入した。低速~中速で混合を開始し、ポリソルベート20、ブチレングリコール及びKH(CH)2をバッチに添加し、透明で均質な溶液が形成されるまで混合した。クエン酸(20%水溶液)を添加してpHを6.5±0.1に調整した。バッチを均一になるまで混合した後、適切な容器に取り出して保管した。
【0147】
【0148】
比較例6は、KH(CH)2を配合物から除外した以外は、実施例8に用いた手順に従って調製した。
【0149】
実施例8及び比較例6のミセラーウォーター配合物の微生物学的チャレンジ試験(「MCT」)を行った。USP及びPCPC公定試験方法に準拠したチャレンジ試験を行い、カプリルヒドロキサム酸水素カリウムKH(CH)2の防腐効力を決定した。結果を表8A及び表8Bに示す。
【0150】
【0151】
【0152】
カプリルヒドロキサム酸水素カリウムを含有しない比較例6は、7日以内の細菌の99%の減少並びに酵母及び真菌の90%の減少というPCPC受入基準を満たすことができない。微生物の成長を阻害するためにカプリルヒドロキサム酸水素カリウムKH(CH)2を抗微生物キレート剤として含有する実施例8は、顕著な防腐効力を示す。実施例8は、あらゆる生物に対して全てのUSP、PCPC、EP-B受入基準を満たし、それを超えるとともに、2日間での細菌の99%の減少(2logの減少)、7日間での細菌の99.9%の減少(3logの減少)並びに14日間での酵母及びカビの99%の減少(2logの減少)というEP-A受入基準を満たす。実施例8及び比較例6は、多くの微生物にとって理想的な環境と考えられるpH6.5±0.1のpH値を示す。これらの条件下であっても、実施例8は顕著な防腐効力を示す。
【0153】
実施例9:KH(CH)2抗微生物ブレンドを含むミセラーウォーター配合物
実施例9は、メチルヘプチルグリセリン(MHG)を表7のような処方に従って添加した以外は、実施例8に用いた手順に従って調製した。実施例9は、上で用いた実施例4の処方と同じ処方を有する。
【0154】
USP及びPCPC公定試験方法に準拠したチャレンジ試験を行い、実施例9の防腐効力を決定した。結果を表8Cに示す。
【0155】
【0156】
KH(CH)2及びMHGを含有する実施例9は、顕著な防腐効力を示し、あらゆる生物に対してUSP、PCPC、EP-A及びEP-Bの受入基準を満たし、それを超えたが、比較例6は、非常に低い防腐効力を示し、受入基準を満たすことができなかった。
【0157】
実施例10:KH(CH)2抗微生物ブレンドを含むナチュラルローション配合物
表10の処方に従い、以下の手順を用いて、100%バイオベースの成分を含むローションを調製した。オーバーヘッドメカニカルスターラー及びアンカー型ブレード及び加熱用ホットプレートを備える適切な大きさのビーカーに、水及びグリセリンを投入した。低速~中速で混合を開始し、キサンタンガムを水相にゆっくりと振り入れ、均一に分散する(塊が残らなくなる)まで混合した。メチルヘプチルグリセリン(MHG)及びKH(CH)2を添加した。次いで、混合物を80℃に加熱した。別のビーカーにおいて油相成分を合わせ、低速で混合しながら80℃に加熱し、均一になるまで混合した。油相混合物を中速~高速で混合しながら80℃の水相混合物に添加した。均一な外観に達した後、混合物を約75℃に冷却し、続いて5000rpmで3分間均質化した。混合物を中速で撹拌しながら約25℃に冷却した。クエン酸(20%水溶液)を用いてバッチpHを6.6±0.1に調整した。組成物を均一になるまで混合した後、適切な容器に取り出して保管した。実施例10の処方は、上の実施例5の処方に対応する。
【0158】
【0159】
比較例7:メチルヘプチルグリセリン(MHG)及びKH(CH)2を含まないナチュラルローション配合物
比較例7は、メチルヘプチルグリセリン(MHG)及びKH(CH)2を処方から除外したことを除き、実施例10に用いた手順に従って調製した。比較例7の処方は、上の比較例3の処方に対応する。
【0160】
米国薬局方(USP)及びPCPC公定試験方法に準拠した微生物学的チャレンジ試験(MCT)を行い、実施例10及び比較例7のKH(CH)2及びMHGの防腐効力を決定することで、ナチュラルローション配合物における防腐効力を決定した("Personal Care Products Council Technical Guidelines. Microbiology Guidelines," (2018) Personal Care Products Council, Washington, DC7及びそれに引用された文献を参照されたい)。表10A及び表10Bに示す結果は、期間終了後に測定された生菌数の対数値を示す。「接種レベル」と題する行は、試験開始時に存在する生物の初期数を示す。
【0161】
KH(CH)2及びMHGを含有しない比較例7は、7日以内の細菌の99%の減少並びに酵母及び真菌の90%の減少というPCPC受入基準を満たすことができない。微生物の成長を阻害するためにKH(CH)2及びMHGを抗微生物剤として含有する実施例10は、あらゆる生物に対して全てのUSP 51及びPCPC受入基準を満たし、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌及び酵母についての受入基準を超えている。また、実施例10は、細菌、酵母及びカビの制御についての欧州薬局方(EP)の「B」基準(EP-B)、すなわち、14日間での細菌の99.9%の減少(3logの減少)、並びに14日間での酵母及びカビの90%の減少(1logの減少)を満たすことが観察された(European Pharmacopeia (Ph. Eur.) 10.0, 2021, Section 5.1.3, Efficacy of Antimicrobial Preservation6を参照されたい)。
【0162】
【0163】
【0164】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載のものに加えて、本発明の様々な変更形態が上記の説明及び図面から当業者には明らかである。かかる変更形態は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0165】
全ての値が近似値であり、説明のために提供されることを更に理解されたい。本明細書において引用され、論考される全ての参照文献は、各参照文献が個別に引用することにより本明細書の一部をなすのと同じ程度に、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0166】
引用文献
1. M.J. Fevola, "Ingredient Profile: Benzoic Acid/Sodium Benzoate," Cosmetics and Toiletries 126(11):776-779 (Nov 2011).
2. M.J. Fevola, "Ingredient Profile: Sorbic Acid/Potassium Sorbate," Cosmetics and Toiletries 127(11):756-762 (Nov 2012).
3. U.S. Patent No. 7,007,805 B2, issued March 7, 2006.
4. G.A. Hope et al., "Spectroscopic characterization of n-octanohydroxamic acid and potassium hydrogen n-octanohydroxamate," Inorganica Chimica Acta 363:935-943 (2010).
5. Determination of hydroxylamine in aqueous solutions of pyridinium aldoximes by high-performance liquid chromatography with UV and fluorometric detection, W. D. Korte, J. Chromatog. A, 1992, 603(1-2), 145-150.
6. "Personal Care Products Council Technical Guidelines. Microbiology Guidelines," 2018 Personal Care Products Council, Washington, DC.
【国際調査報告】