(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】抗IL4R抗体の医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240822BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240822BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240822BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240822BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K9/10
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/18
A61P37/08
A61P37/06
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509458
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2022114652
(87)【国際公開番号】W WO2023025217
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110988008.3
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】程 艶 菊
(72)【発明者】
【氏名】李 盈 淳
(72)【発明者】
【氏名】孔 令 ▲ジエ▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 暁 ▲ルー▼
(72)【発明者】
【氏名】趙 偉
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB11
4C076CC03
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD26Z
4C076DD38Q
4C076DD41Z
4C076DD51Q
4C076DD60Z
4C076DD67Q
4C076EE23F
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF63
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗IL4R抗体の医薬組成物及びその使用を提供する。前記医薬組成物は、抗IL4R抗体又はその抗原結合断片及び緩衝剤を含み、前記医薬組成物は、界面活性剤及び安定化剤をさらに含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)緩衝剤と、(c)界面活性剤と、(d)安定化剤とを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2及び軽鎖可変領域CDR3を含み、前記重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2及び軽鎖可変領域CDR3はそれぞれ、配列番号1、2、3、4、5及び6で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7、8又は9で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、ここで、配列番号8のアミノ酸配列は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYGMSWVRQAPGKGLVX
1VX
2TINSNGGSTSYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARFFRFRNAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号8におけるX
1=W且つX
2=S、又はX
1=L且つX
2=A、又はX
1=W且つX
2=A)であり、及び/又は、
前記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、配列番号10、11又は12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、配列番号11のアミノ酸配列は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRTSENIYSYLAWYQQKPGKAPKX
1LX
2YNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYYGPPTWTFGQGTKVEIK(配列番号11におけるX
1=L且つX
2=I、又はX
1=F且つX
2=V、又はX
1=F且つX
2=I)である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、
(1)それぞれ配列番号7及び10で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列、
(2)それぞれ配列番号8及び11で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX
1=W且つX
2=S)、
(3)それぞれ配列番号8及び12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX
1=W且つX
2=S)、
(4)それぞれ配列番号9及び11で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列、
(5)それぞれ配列番号9及び12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列、
(6)それぞれ配列番号8及び11で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX
1=L且つX
2=A)、
(7)それぞれ配列番号8及び12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX
1=L且つX
2=A)、
(8)それぞれ配列番号8及び11で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX
1=W且つX
2=A)、又は、
(9)それぞれ配列番号8及び12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX
1=W且つX
2=A)、を含み、
ここで、配列番号8のアミノ酸配列は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYGMSWVRQAPGKGLVX
1VX
2TINSNGGSTSYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARFFRFRNAMDYWGQGTLVTVSSであり、
配列番号11のアミノ酸配列は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRTSENIYSYLAWYQQKPGKAPKX
1LX
2YNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYYGPPTWTFGQGTKVEIK(配列番号11におけるX
1=L且つX
2=I、X
1=F且つX
2=V、又はX
1=F且つX
2=I)である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片はさらに、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域と、配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片の濃度は30mg/mL~300mg/mL、50mg/mL~250mg/mL、70mg/mL~200mg/mL、100mg/mL~180mg/mL、120mg/mL~180mg/mL、120mg/mL~150mg/mL、又は150mg/mL~180mg/mLである、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記緩衝剤は、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤を含み、好ましくは、前記リン酸塩緩衝剤はリン酸ナトリウム緩衝剤であり、前記酢酸塩緩衝剤は酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤であり、及び/又は、前記ヒスチジン塩緩衝剤はヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤であり、所望により、前記緩衝剤の濃度は1mM~100mM、2mM~80mM、4mM~60mM、8mM~40mM、10mM~30mM、10mM~20mM、又は20mM~30mMである、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤は、ポリソルベート80又はポリソルベート20を含み、所望により、前記界面活性剤の濃度は0.01mg/mL~2mg/mL、0.05mg/mL~1mg/mL、0.1mg/mL~0.8mg/mL、0.2mg/mL~0.6mg/mL、又は0.2mg/mL~0.4mg/mLである、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記安定化剤は、トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン又は塩化ナトリウムから選択され、所望により、前記スクロースの濃度は10mg/mL~100mg/mL、20mg/mL~80mg/mL、30mg/mL~60mg/mL、40mg/mL~50mg/mL、又は50mg/mL~60mg/mLであり、前記アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩の濃度は10mM~100mM、20mM~80mM、30mM~60mM、40mM~50mM、又は50mM~60mMであり、前記プロリンの濃度は60mM~600mM、80mM~500mM、100mM~450mM、120mM~400mM、150mM~350mM、200mM~350mM、又は250mM~350mMであり、及び/又は、前記塩化ナトリウムの濃度は1mM~80mM、2mM~60mM、4mM~50mM、8mM~40mM、10mM~30mM、又は10mM~20mMである、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物は、(a)30mg/mL~300mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)1mM~100mMの緩衝剤と、(c)0.01mg/mL~2mg/mLの界面活性剤と、(d)トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン及び/又は塩化ナトリウムを含む安定化剤とを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3であり、
所望により、前記医薬組成物は、(a)30mg/mL~300mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)1mM~100mMのリン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.01mg/mL~2mg/mLのポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)10mg/mL~100mg/mLのスクロース、10mM~100mMのアルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、60mM~600mMのプロリン、及び/又は1mM~80mMの塩化ナトリウムとを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物を凍結乾燥させることによって得られたもの、又は、溶解して請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物を形成できるものである、前記凍結乾燥製剤。
【請求項13】
被験者における過剰なIL4及び/又はIL13シグナル伝達に関連するアレルギー性疾患の治療方法であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物又は請求項12に記載の凍結乾燥製剤を被験者に投与することを含み、好ましくは、前記アレルギー性疾患はアトピー性皮膚炎、アレルギー反応、アレルギー性鼻炎又はアレルギー性喘息である、前記治療方法。
【請求項14】
被験者におけるSTAT6活性化の増加に関連する腫瘍の治療方法であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物又は請求項12に記載の凍結乾燥製剤を被験者に投与することを含み、好ましくは、前記腫瘍は固形腫瘍であり、より好ましくは、前記腫瘍は黒色腫、肺癌、腎臓癌、前立腺癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌及び/又は尿路上皮癌である、前記治療方法。
【請求項15】
被験者におけるIL4及び/又はIL13シグナル伝達又は被験者における2型免疫応答を低減する方法であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物又は請求項12に記載の凍結乾燥製剤を被験者に投与することを含み、好ましくは、前記IL4及び/又はIL13シグナル伝達は、B細胞、好酸球、マクロファージの活性化及び/又は増殖、線維芽細胞の増殖及び平滑肌の増殖として現れるものであり、好ましくは、前記平滑筋細胞の増殖は気道平滑筋細胞の増殖である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は製剤の分野に属し、具体的には、本開示は、抗IL4R抗体又はその抗原結合断片を含む安定な医薬組成物、及び、過剰なIL4及び/又はIL13シグナル伝達に関連する疾患の治療及び/又は予防のための当該医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息などの2型炎症関連アレルギー性疾患は、世界中で30億人以上を苦しめており、その発生率は増加し続けている。衛生仮説によれば、発生率が高い理由の一つは、生活水準の向上につれて感染性物質にさらされる機会が減少し、免疫系が本来は無害なアレルゲンに対してより敏感になることである(Stephen J.Galli et al.,(2008)Nature 454(7203):445-454)。インターロイキン4(IL4又はIL-4)及びIL-13は、2型免疫における2つの重要な因子であり、免疫グロブリンEの産生や炎症部位での自然免疫細胞の動員など、2型炎症に関連する主要マーカーのほとんどを駆動するために必要なものである(Gruning G et al.,(1998)Science 282:2261-2263;Rankin JA et al.,(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93:7821-7825;Wills-Karp M et al.,(1998)Science 282:2258-2261)。
【0003】
IL-4及びIL-13は、細胞表面の受容体に結合することで細胞機能を調節し、転写機構を活性化する。具体的には、IL-4はまず、ピコモルの親和性でIL-4Rα鎖に結合し、次にIL-2Rγ(γc)を動員してI型受容体複合体を形成するか、又は、IL-13Rα1を動員してII型受容体複合体を形成する。研究により、非造血細胞はγcを発現しないか、低レベルで発現し、IL-13Rα1を高発現するのに対して、リンパ球はその逆であり、骨髄細胞はこれらの中間に位置することが判明した。II型受容体複合体は、IL-13のIL-13Rα1鎖への結合(ナノモルの親和性による結合)と、IL-4Rα鎖のさらなる動員によっても形成される。さらに、IL-13はピコモルの親和性でIL-13Rα2に結合し、デコイ受容体の形成を開始させることもできる(Irina G.Luzina et al.,(2012)J Leukoc Biol 92(4):753-764)。IL-4受容体複合体が形成されると、細胞内シグナル伝達分子が活性化され、STAT6及びIRSシグナル伝達はI型IL-4受容体に応答して活性化されるが、II型IL-4受容体は、IRSを有意に活性化することができない(Heller NM et al.,(2008)Sci Signal 1(51):ra17-ra17)。STAT6シグナル伝達は、TH2細胞分化及びIL-4の産生にとって非常に重要であり、IRSはPI3K及びmTORシグナル伝達経路を活性化することができる(Gadani SP et al.,(2012)J Immunol 189:4213-4219)。研究によれば、過剰なIL-4及び/又はIL-13シグナル伝達はアレルギー性疾患を引き起こす可能性がある。また、他の研究では、STAT6阻害剤が前立腺がん細胞の増殖を阻害できることが分かっている(Nappo G et al.,(2017)Oncogenesis 6(5):e342)。したがって、IL-4及び/又はIL-13媒介シグナル伝達を調節する治療用抗体が相次いで開発され、その一例として、IL4Rに対する抗体Dupilumabが挙げられる。
【0004】
ヒトを対象とする抗体薬は、保存及びその後の使用中に生物活性及び安定性を維持する必要があるが、抗体薬は分子量が大きく、構造が複雑で、分解、重合又は望ましくない化学修飾が発生することで不安定になりやすい。そのため、当分野では、上記の問題を解決すべく、製造及び患者への投与に適するとともに長い保存期間を有する抗体薬を提供できるように、安定な抗体医薬組成物(例えば、抗IL4R抗体医薬組成物)を開発する必要がある。しかしながら、抗体が高濃度で存在する場合、高レベルの凝集、生理学的水準より高い浸透圧、特に粘度の増加による注入性の低下などの問題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、高レベルの凝集を引き起こすことなく、高濃度の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片を含み、許容可能な粘度レベルを有する医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による医薬組成物は、(a)抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)緩衝剤と、(c)界面活性剤と、(d)安定化剤とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片の濃度は、30mg/mL~300mg/mL、50mg/mL~250mg/mL、70mg/mL~200mg/mL、100mg/mL~180mg/mL、120mg/mL~180mg/mL、120mg/mL~150mg/mL、又は150mg/mL~180mg/mLである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片の濃度は約150mg/mLである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片の濃度は約175mg/mLである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片の濃度の一例としては、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約125mg/mL、約130mg/mL、約135mg/mL、約140mg/mL、約145mg/mL、約150mg/mL、約155mg/mL、約160mg/mL、約165mg/mL、約170mg/mL、約175mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、又は約200mg/mLが挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記緩衝剤の一例としては、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤が挙げられる。上記医薬組成物における上記緩衝剤の好ましい例としては、ヒスチジン塩緩衝剤が挙げられる。いくつかの特定の実施形態において、前記リン酸塩緩衝剤の一例としては、リン酸ナトリウム緩衝剤又はリン酸カリウム緩衝剤が挙げられ、前記酢酸塩緩衝剤の一例としては、酢酸ナトリウム緩衝剤、酢酸カリウム緩衝剤又は酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤が挙げられ、前記ヒスチジン塩緩衝剤の一例としては、ヒスチジン-塩酸緩衝剤、ヒスチジン-酢酸緩衝剤、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤又は塩酸ヒスチジン緩衝剤が挙げられる。
【0009】
いくつかの特定の実施形態において、前記リン酸ナトリウム緩衝剤は、リン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムを含む。いくつかの特定の実施形態において、前記酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤は酢酸ナトリウム及び酢酸を含む。いくつかの特定の実施形態において、前記ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤はヒスチジン及び塩酸ヒスチジンを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記緩衝剤の濃度は1mM~100mM、2mM~80mM、4mM~60mM、8mM~40mM、10mM~30mM、10mM~20mM、又は20mM~30mMである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記緩衝剤の濃度は約20mMである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記緩衝剤の濃度の一例としては、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約30mM、約32mM、約34mM、約36mM、約38mM、又は約40mMが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記緩衝剤のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記緩衝剤のpHは約5.8である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記緩衝剤のpHは約6である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記緩衝剤のpHは約5である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記緩衝剤のpHの一例としては、約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、又は約7が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81又はポリソルベート85)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー181、ポロキサマー188又はポロキサマー407)、ポリエチレングリコール又はポリヒドロキシ体などから選択される。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記界面活性剤はポリソルベート80である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記界面活性剤はポリソルベート20である。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記界面活性剤の濃度は0.01mg/mL~2mg/mL、0.05mg/mL~1mg/mL、0.1mg/mL~0.8mg/mL、0.2mg/mL~0.6mg/mL、又は0.2mg/mL~0.4mg/mLである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記界面活性剤の濃度は約0.4mg/mLである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記界面活性剤の濃度の一例としては、約0.05mg/mL、約0.06mg/mL、約0.07mg/mL、約0.08mg/mL、約0.09mg/mL、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、約0.7mg/mL、約0.8mg/mL、約0.9mg/mL、又は約1mg/mLが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記安定化剤は、トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン又は塩化ナトリウムから選択される1つ以上である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記安定化剤はスクロースを含む。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記安定化剤は、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記安定化剤はプロリンを含む。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記安定化剤は塩化ナトリウムを含む。前記アルギニンの薬学的に許容される塩の一例としては、塩酸アルギニン又は酢酸アルギニンが挙げられる。いくつかの特定の実施形態において、上記医薬組成物における上記安定化剤は、スクロース及び塩酸アルギニンを含む。いくつかの特定の実施形態において、上記医薬組成物における上記安定化剤は、プロリン及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの特定の実施形態において、上記医薬組成物における上記安定化剤は、スクロース、プロリン及び塩化ナトリウムを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記スクロースの濃度は10mg/mL~100mg/mL、20mg/mL~80mg/mL、30mg/mL~60mg/mL、40mg/mL~50mg/mL、又は50mg/mL~60mg/mLである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記スクロースの濃度は約50mg/mLである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記スクロースの濃度の一例としては、約20mg/mL、約22mg/mL、約24mg/mL、約26mg/mL、約28mg/mL、約30mg/mL、約32mg/mL、約34mg/mL、約36mg/mL、約38mg/mL、約40mg/mL、約42mg/mL、約44mg/mL、約46mg/mL、約48mg/mL、約50mg/mL、約52mg/mL、約54mg/mL、約56mg/mL、約58mg/mL、約60mg/mL、約62mg/mL、約64mg/mL、約66mg/mL、約68mg/mL、約70mg/mL、約72mg/mL、約74mg/mL、約76mg/mL、約78mg/mL、又は約80mg/mLが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩(例えば、塩酸アルギニン)の濃度は10mM~100mM、20mM~80mM、30mM~60mM、40mM~50mM、又は50mM~60mMである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩(例えば、塩酸アルギニン)の濃度は約50mMである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩(例えば、塩酸アルギニン)の濃度の一例としては、約20mM、約22mM、約24mM、約26mM、約28mM、約30mM、約32mM、約34mM、約36mM、約38mM、約40mM、約42mM、約44mM、約46mM、約48mM、約50mM、約52mM、約54mM、約56mM、約58mM、約60mM、約62mM、約64mM、約66mM、約68mM、約70mM、約72mM、約74mM、約76mM、約78mM、又は約80mMが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記プロリンの濃度は60mM~600mM、80mM~500mM、100mM~450mM、120mM~400mM、150mM~350mM、200mM~350mM、又は250mM~350mMである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記プロリンの濃度は約250mMである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記プロリンの濃度は約350mMである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記プロリンの濃度の一例としては、約120mM、約130mM、約140mM、約150mM、約160mM、約170mM、約180mM、約190mM、約200mM、約210mM、約220mM、約230mM、約240mM、約250mM、約260mM、約270mM、約280mM、約290mM、約300mM、約310mM、約320mM、約330mM、約340mM、約350mM、約360mM、約370mM、約380mM、約390mM、又は約400mMが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記塩化ナトリウムの濃度は1mM~80mM、2mM~60mM、4mM~50mM、8mM~40mM、10mM~30mM、又は10mM~20mMである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記塩化ナトリウムの濃度は約20mMである。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物における上記塩化ナトリウムの濃度の一例としては、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約32mM、約34mM、約36mM、約38mM、又は約40mMが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは約5.8である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは約6である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは約5である。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物のpHの一例としては、約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、又は約7が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤及び/又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)ポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン及び/又は塩化ナトリウムとを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)リン酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)ポリソルベート80と、(d)スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン及び/又は塩化ナトリウムとを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)ヒスチジン塩緩衝剤と、(c)ポリソルベート80と、(d)スクロース及びアルギニン若しくはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)ヒスチジン塩緩衝剤と、(c)ポリソルベート80と、(d)スクロース、プロリン及び塩化ナトリウムとを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)ヒスチジン塩緩衝剤と、(c)ポリソルベート80と、(d)プロリン及び塩化ナトリウムとを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)ヒスチジン塩緩衝剤と、(c)ポリソルベート80と、(d)プロリンとを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)30mg/mL~300mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)1mM~100mMの緩衝剤と、(c)0.01mg/mL~2mg/mLの界面活性剤と、(d)トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン及び/又は塩化ナトリウムを含む安定化剤とを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)50mg/mL~250mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)2mM~80mMの緩衝剤と、(c)0.05mg/mL~1mg/mLの界面活性剤と、(d)トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン及び/又は塩化ナトリウムを含む安定化剤とを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)70mg/mL~200mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)4mM~60mMの緩衝剤と、(c)0.1mg/mL~0.8mg/mLの界面活性剤と、(d)トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン及び/又は塩化ナトリウムを含む安定化剤とを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100mg/mL~180mg/mL又は120mg/mL~180mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)8mM~40mM又は10mM~30mMの緩衝剤と、(c)0.2mg/mL~0.6mg/mLの界面活性剤と、(d)トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン及び/又は塩化ナトリウムを含む安定化剤とを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120mg/mL~150mg/mL又は150mg/mL~180mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)10mM~20mM又は20mM~30mMの緩衝剤と、(c)0.2mg/mL~0.4mg/mLの界面活性剤と、(d)トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン及び/又は塩化ナトリウムを含む安定化剤とを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)30mg/mL~300mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)1mM~100mMのリン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.01mg/mL~2mg/mLのポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)10mg/mL~100mg/mLのスクロース、10mM~100mMのアルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、60mM~600mMのプロリン、及び/又は1mM~80mMの塩化ナトリウムとを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)50mg/mL~250mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)2mM~80mMのリン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.05mg/mL~1mg/mLのポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)20mg/mL~80mg/mLのスクロース、20mM~80mMのアルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、80mM~500mMのプロリン、及び/又は2mM~60mMの塩化ナトリウムとを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)70mg/mL~200mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)4mM~60mMのリン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.1mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)30mg/mL~60mg/mLのスクロース、30mM~60mMのアルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、100mM~450mM又は120mM~400mMのプロリン、及び/又は4mM~50mMの塩化ナトリウムとを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100mg/mL~180mg/mL又は120mg/mL~180mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)8mM~40mM又は10mM~30mMのリン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.2mg/mL~0.6mg/mLのポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)40mg/mL~50mg/mLのスクロース、40mM~50mMのアルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、150mM~350mMのプロリン、及び/又は8mM~40mMの塩化ナトリウムとを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120mg/mL~150mg/mL又は150mg/mL~180mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)10mM~20mM又は20mM~30mMのリン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.2mg/mL~0.4mg/mLのポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)50mg/mL~60mg/mLのスクロース、50mM~60mMのアルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、200mM~350mM又は250mM~350mMのプロリン、及び/又は10mM~30mM又は10mM~20mMの塩化ナトリウムとを含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)30mg/mL~300mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)1mM~100mMのリン酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.01mg/mL~2mg/mLのポリソルベート80と、(d)60mM~600mMのプロリン及び1mM~80mMの塩化ナトリウムとを含み、所望により、10mg/mL~100mg/mLのスクロースをさらに含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)50mg/mL~250mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)2mM~80mMのリン酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.05mg/mL~1mg/mLのポリソルベート80と、(d)80mM~500mMのプロリン及び2mM~60mMの塩化ナトリウムとを含み、所望により、20mg/mL~80mg/mLのスクロースをさらに含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)70mg/mL~200mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)4mM~60mMのリン酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.1mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、(d)100mM~450mM又は120mM~400mMのプロリン及び4mM~50mMの塩化ナトリウムとを含み、所望により、30mg/mL~60mg/mLのスクロースをさらに含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100mg/mL~180mg/mL又は120mg/mL~180mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)8mM~40mM又は10mM~30mMのリン酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.2mg/mL~0.6mg/mLのポリソルベート80と、(d)150mM~350mMのプロリン及び8mM~40mMの塩化ナトリウムとを含み、所望により、40mg/mL~50mg/mLのスクロースをさらに含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120mg/mL~150mg/mL又は150mg/mL~180mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)10mM~20mM又は20mM~30mMのリン酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤と、(c)0.2mg/mL~0.4mg/mLのポリソルベート80と、(d)200mM~350mM又は250mM~350mMのプロリン及び10mM~30mM又は10mM~20mMの塩化ナトリウムとを含み、所望により、50mg/mL~60mg/mLのスクロースをさらに含み、前記医薬組成物のpHは4~7、5~7、5~6.5、5.3~6.5、5.3~6.3、5.3~5.8、又は5.8~6.3である。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、(c)0.4mg/mLのポリソルベート80と、(d)50mg/mLスクロース及び50mMの塩酸アルギニンとを含み、前記医薬組成物のpHは5.8である。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、(c)0.4mg/mLのポリソルベート80と、(d)250mMのプロリン及び20mMの塩化ナトリウムとを含み、前記医薬組成物のpHは5.8である。
【0043】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、(c)0.4mg/mLのポリソルベート80と、(d)350mMのプロリンとを含み、前記医薬組成物のpHは5.8である。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150mg/mLの抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片と、(b)20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、(c)0.4mg/mLのポリソルベート80と、(d)50mg/mLのスクロース、250mMのプロリン及び20mMの塩化ナトリウムとを含み、前記医薬組成物のpHは5.8である。
【0045】
任意の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号1、2及び3で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2及び重鎖可変領域CDR3を含む。
【0046】
任意の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、配列番号7、8又は9で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ここで、配列番号8のアミノ酸配列は、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYGMSWVRQAPGKGLVX1VX2TINSNGGSTSYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARFFRFRNAMDYWGQGTLVTVSS(X1=W且つX2=S、又はX1=L且つX2=A、又はX1=W且つX2=A)である。
【0047】
任意の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号4、5及び6で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2及び軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0048】
任意の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号10、11又は12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ここで、配列番号11のアミノ酸配列は、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRTSENIYSYLAWYQQKPGKAPKX1LX2YNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYYGPPTWTFGQGTKVEIKである(X1=L且つX2=I、又はX1=F且つX2=V、又はX1=F且つX2=I)。
【0049】
任意の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のそれぞれはCDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2及び軽鎖可変領域CDR3は、それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0050】
任意の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、
(1)それぞれ配列番号7及び10で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列、
(2)それぞれ配列番号8及び11で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX1=W且つX2=S)、
(3)それぞれ配列番号8及び12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX1=W且つX2=S)、
(4)それぞれ配列番号9及び11で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列、
(5)それぞれ配列番号9及び12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列、
(6)それぞれ配列番号8及び11で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX1=L且つX2=A)、
(7)それぞれ配列番号8及び12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX1=L且つX2=A)、
(8)それぞれ配列番号8及び11で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX1=W且つX2=A)、又は、
(9)それぞれ配列番号8及び12で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列(配列番号8におけるX1=W且つX2=A)、を含む。
ここで、配列番号8のアミノ酸配列は、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYGMSWVRQAPGKGLVX1VX2TINSNGGSTSYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARFFRFRNAMDYWGQGTLVTVSSであり、
配列番号11のアミノ酸配列は、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRTSENIYSYLAWYQQKPGKAPKX1LX2YNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYYGPPTWTFGQGTKVEIKである(X1=L且つX2=I、X1=F且つX2=V、又はX1=F且つX2=I)。
【0051】
任意の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含む重鎖と、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含む軽鎖とを含み、重鎖可変領域のC末端は重鎖定常領域のN末端に連結し、軽鎖可変領域のC末端は軽鎖定常領域のN末端に連結する。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、上記のアミノ酸配列を含み、重鎖定常領域は、配列番号13で表されるアミノ酸配列のヒトIgG4定常領域を有し、軽鎖定常領域は、配列番号14で表されるアミノ酸配列のヒトκ定常領域を有する。
【0052】
任意の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、全長抗体であってもよく、例えば、IgG1、IgG2又はIgG4アイソタイプの全長抗体であってもよく、好ましくはIgG4アイソタイプの全長抗体である。他の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、単一鎖可変領域(scFv)抗体、又は、FabやF(ab’)2断片などの抗体断片であってもよい。
【0053】
任意の実施形態において、上記医薬組成物における上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、出願番号PCT/CN2021077784の特許文献に記載されているC2C1A1A1抗体である。
【0054】
本開示はさらに、上記抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片を緩衝剤に接触させる工程を含む上記医薬組成物の製造方法を提供する。前記工程としては、例えば、抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片を緩衝剤に置換することが挙げられる。前記緩衝剤は、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤等を含む。さらに、前記製造方法は、界面活性剤及び安定化剤を任意の順序で添加することも含む。前記安定化剤は、トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン若しくはその薬学的に許容される塩、プロリン及び/又は塩化ナトリウムを含み、前記界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、ポリエチレングリコール又はポリヒドロキシ体を含む。
【0055】
本開示はさらに、上記医薬組成物を凍結乾燥させる工程を含む、抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤の製造方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記凍結乾燥は、当分野で知られている方法に従って実施され、予備凍結、一次乾燥及び二次乾燥の工程が含まれるが、これらに限定されない。本開示の医薬組成物から水を除去する方法であれば、本開示に適用できることは当業者には理解される。
【0056】
本開示はさらに、上記凍結乾燥製剤の製造方法により製造された、抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤を提供する。
【0057】
本開示はさらに、溶解して上記医薬組成物を形成できる、抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤を提供する。
【0058】
本開示はさらに、上記医薬組成物又は上記凍結乾燥製剤が充填された容器を含む製品を提供する。
【0059】
本開示の医薬組成物又は凍結乾燥製剤は、公知の方法で投与することができる。例えば、適切な手法で一定期間にわたって注射又は注入を行うことができ、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内又は関節内の経路で、局所投与、吸入、又は持続放出や遅延放出により投与することができる。本開示の医薬組成物又は凍結乾燥製剤は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するために、投与前に適切な希釈液で適切な濃度に希釈することができる。
【0060】
本開示は、治療有効量の本開示の医薬組成物、凍結乾燥製剤又は製品を被験者に投与することを含む、被験者におけるIL4及び/又はIL13シグナル伝達の低減方法を提供する。IL4は、IL-4Rα及びγcを含む受容体を介してシグナルを伝達し、IL13は、IL-4Rα及びIL13Rα1を含む受容体を介してシグナルを伝達する。IL4及び/又はIL13シグナル伝達は、B細胞、好酸球、マクロファージの活性化及び/又は増殖、線維芽細胞の増殖及び平滑筋細胞の増殖(例えば、気道平滑筋細胞の増殖など)として現れる。
【0061】
本開示は、治療有効量の本開示の医薬組成物、凍結乾燥製剤又は製品を被験者に投与することを含む、被験者における2型免疫応答の低減方法を提供する。
【0062】
本開示は、治療有効量の本開示の医薬組成物、凍結乾燥製剤又は製品を被験者に投与することを含む、被験者における過剰なIL4及び/又はIL13シグナル伝達に関連する疾患の治療方法を提供する。前記過剰なIL4及び/又はIL13シグナル伝達に関連する疾患は、アレルギー性疾患であり、非制限的な一例としては、アトピー性皮膚炎、アレルギー反応、アレルギー性鼻炎又はアレルギー性喘息が挙げられる。
【0063】
本開示は、治療有効量の本開示の医薬組成物、凍結乾燥製剤又は製品を被験者に投与することを含む、被験者におけるSTAT6活性化の増加に関連する腫瘍の治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記腫瘍は固形腫瘍又は非固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態において、前記腫瘍の一例としては、黒色腫、肺癌、腎臓癌、前立腺癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌及び尿路上皮癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
以下の詳細な説明及び実施例により、本開示の他の特徴及び利点がより明確になる。詳細な説明及び実施例は限定的なものではない。本願で引用されるすべての文献、Genbank記録、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本開示の理解の便宜上、まずは用語の一部を定義する。他の定義は詳細な説明において記載する。本明細書において他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての他の技術用語及び科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0066】
「緩衝剤」とは、医薬組成物のpHを所望のpH範囲に維持することができる薬学的に許容される物質又は物質の混合物を指す。本開示の医薬組成物に適用される緩衝剤の例としては、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン塩緩衝剤が挙げられる。
【0067】
「リン酸塩緩衝剤」は、リン酸イオンを含む緩衝剤である。例えば、リン酸及び/又はリン酸塩を含む緩衝剤が挙げられ、ここで、リン酸には、リン酸及び/又はその水和物が含まれ、リン酸塩には、リン酸塩及び/又はその水和物が含まれる。リン酸塩緩衝剤の例としては、リン酸ナトリウム緩衝剤又はリン酸カリウム緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されず、好ましいリン酸塩緩衝剤はリン酸ナトリウム緩衝剤である。特定の一例において、リン酸ナトリウム緩衝剤は、リン酸二水素ナトリウム一水和物(NaH2PO4・H2O)及びリン酸水素二ナトリウム十二水和物(Na2HPO4・12H2O)を含む。
【0068】
「酢酸塩緩衝剤」は、酢酸イオンを含む緩衝剤である。例えば、酢酸及び/又は酢酸塩を含む緩衝剤が挙げられ、ここで、酢酸には酢酸及び/又はその水和物が含まれ、酢酸塩には酢酸塩及び/又はその水和物が含まれる。酢酸塩緩衝剤の例としては、酢酸カリウム緩衝剤、酢酸アンモニウム緩衝剤又は酢酸ナトリウム緩衝剤、酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されず、好ましい酢酸塩緩衝剤は、酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤である。酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤は、酢酸及び酢酸ナトリウムを含み、ここで、酢酸には酢酸及び/又はその水和物が含まれ、酢酸ナトリウムには酢酸ナトリウム及び/又はその水和物が含まれる。特定の一例において、酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤は、酢酸と酢酸ナトリウム三水和物(CH3COONa・3H2O)を含む。
【0069】
「ヒスチジン塩緩衝剤」は、ヒスチジンイオンを含む緩衝剤である。例えば、ヒスチジン及び/又はヒスチジン塩を含む緩衝剤が挙げられ、ここで、ヒスチジンにはヒスチジン及び/又はその水和物が含まれ、ヒスチジン塩にはヒスチジン塩及び/又はその水和物が含まれる。ヒスチジン塩緩衝剤の例としては、ヒスチジン-塩酸緩衝剤、ヒスチジン-酢酸緩衝剤、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン又は塩酸ヒスチジン緩衝剤が挙げられ、好ましいヒスチジン塩緩衝剤はヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤である。ヒスチジン-塩酸ヒスチジンはヒスチジン及び塩酸ヒスチジンを含み、ここで、ヒスチジンにはヒスチジン及び/又はその水和物が含まれ、塩酸ヒスチジンには塩酸ヒスチジン及び/又はその水和物が含まれる。特定の一例において、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジンと塩酸ヒスチジン一水和物(C6H9N3O2・HCl・H2O)を含む。
【0070】
「安定化剤」とは、医薬組成物における活性成分の安定性を維持するための、薬学的に許容される物質又は物質の混合物を指す。本開示において、安定化剤は、粘度低下剤及び/又は等張剤等としても機能する。
【0071】
「医薬組成物」とは、所望により特定の活性成分(例えば、抗体)を特定の量で含むもの、及び、所望により特定の活性成分を特定の量で組み合わせることにより直接的又は間接的に得られた任意のものを意味する。医薬組成物の目的は、活性成分を製造及び患者への投与に適させ、保存及びその後の使用中においても生物活性及び/又は安定性を維持することである。いくつかの形態において、前記医薬組成物は水溶性注射剤である。前記水溶性注射剤としては、凍結乾燥されていない水溶性製剤、又は、凍結乾燥粉末から再構成された水溶性製剤が挙げられる。別の形態において、前記医薬組成物は凍結乾燥製剤である。本開示において、「医薬組成物」と「製剤」は相互に排他的ではない。
【0072】
「安定な」又は「安定化された」医薬組成物とは、活性成分(例えば、抗体)がその中に保存されたときにその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物活性が実質的に保持されている医薬組成物を指す。当分野では、活性成分の安定性を測定するための様々な分析技術が知られており、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991) Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に記載されている。安定性は、選択した温度、選択した期間及びその他の保管条件で測定することができる。例えば、色及び/又は透明度の目視検査、又はUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、示差走査熱量測定法(DSC)又は示差走査蛍光法(DSF)による検査を行った結果、活性成分が顕著な凝集の増加、沈殿及び/又は変性を示さなかった場合、上記活性成分は医薬組成物中で「その物理的安定性が保持されている」と考えられる。好ましくは、本開示の医薬組成物を使用する場合、SEC、又は凝集形成の測定に用いられる他の適切な方法で測定したとき、凝集体(高分子不純物とも呼ばれる。)を形成した活性成分が10%以下、5%以下、4%以下である。活性成分(例えば、抗体)が顕著な化学的変化を示さなかった場合、上記活性成分は医薬組成物中で「その化学的安定性が保持されている」と考えられる。化学的安定性は、化学的に変化した抗体の検出及び定量化によって評価できる。一般にタンパク質の化学構造を変化させるプロセスとしては、加水分解や切断(サイズ排除クロマトグラフィーやSDS-PAGEなどの方法により評価)、酸化(質量分析法やMALDI/TOF/MSと組み合わせたペプチドマッピングなどの方法により評価)、脱アミド化(イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸測定などの方法により評価)、及び、異性化(イソアスパラギン酸含有量の測定、ペプチドマッピングなどにより評価)が挙げられる。所定の期間における活性成分(例えば、抗体)の生物活性が、医薬組成物の製造時に示された生物活性の所定の範囲内にある場合、活性成分は医薬組成物中で所定の期間において「その生物活性が保持されている」と考えられる。例えば、抗原結合アッセイによって確認することができる。
【0073】
「高分子不純物」又は「凝集体」は、目的活性成分(例えば、抗体)より大きい分子量を有する不純物の総称である。
【0074】
「電荷変異体」とは、抗体のグリコシル化、脱アミド化、酸化及び/又は異性化により、抗体分子の電荷の変化が直接的又は間接的に引き起こされた変異体を指す。これらの電荷変異体は、キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)や陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX-HPLC)などにより検出できる。
【0075】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、冠詞の1つ又は複数(つまり、少なくとも1つ)の文法的対象を指すために使用される。例えば、「医薬組成物」とは、1つの医薬組成物又は複数の医薬組成物を指す。
【0076】
「約」又は「およそ」とは、その値が、当業者によって決定される特定の値に対して許容される誤差範囲内であることを意味し、その値がどのように測定又は決定されるか(つまり、測定システムの限界)に部分的に依存する。例えば、当分野において、「約」又は「およそ」は、1以内又は1より大きい標準偏差を意味することができる。或いは、「約」又は「およそ」とは、かかる値に対してプラス又はマイナス15%、10%、5%又は1%の範囲を意味する。さらに、特に生物学的なシステム又はプロセスについて、この用語は、値の1桁程度以内の大きさ又は値の5倍以内を意味することができる。特に断りのない限り、「約○○」又は「およそ○○」又は「実質的に○○を含む」とは、特定の値「○○」に対して許容される誤差範囲内の値を意味する(値「○○」自体と、当業者によって決定されるこの値に対して許容される誤差範囲内の値とを含む)。
【0077】
本明細書において、任意のパーセンテージ範囲、比率範囲又は整数範囲は、他に特記しない限り、列挙される範囲内の任意の整数の値を含み、そして、必要に応じて、その分数(整数の1/10及び1/100など)を含むものと理解される。
【0078】
本明細書において、文脈上特に記載がない限り、用語「含む」、「包含する」及び「含有する」は、記載された工程若しくは要素又は工程若しくは要素の群を含むが、任意のその他の工程若しくは要素又は工程若しくは要素の群も排除しないことを意味する。「~からなる」とは、「~からなる」が続く要素を包含し、かつ、これらに限定されることを意味する。したがって、「~からなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素は存在しないことを示す。「実質的に~からなる」とは、この語句の前に列挙された任意の要素を含み、これらの列挙された要素に関して本発明に記載の活性又は作用に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「実質的に~からなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性又は作用に影響を及ぼすか否かに応じて、存在してもよく、存在しなくてもよいことを意味する。
【0079】
用語「IL4Rα」とは、インターロイキン4受容体αサブユニットを指す。用語「IL4Rα」には、変異体、アイソフォーム、ホモログ、オルソログ及びパラログが含まれる。例えば、場合によっては、ヒトIL4Rαタンパク質に特異的な抗体は、ヒト以外の種(例えば、サル)のIL4Rαタンパク質と交差反応し得る。他の実施形態において、ヒトIL4Rαタンパク質に特異的な抗体は、他の種又は他の種類のタンパク質との交差反応性がなく、ヒトIL4Rαタンパク質に完全に特異的であるか、又は、他のすべての種ではなく特定の種のみのIL4Rαとの交差反応性がある。
【0080】
用語「ヒトIL4Rα」とは、Genbank登録番号NP_001244335.1のヒトIL4Rαのアミノ酸配列などのヒトアミノ酸配列を有するIL4Rαタンパク質を指す。用語「カニクイザルIL4Rα」及び「マーモセットIL4Rα」とは、それぞれ、例えばGenbank登録番号EHH60265.1及びNP_001244161.1のアミノ酸配列を有するIL4Rα配列を指す。
【0081】
本明細書における用語「抗体」には、全長抗体及びその任意の抗原結合断片又はその単一鎖が含まれる。全長抗体は、2つの重(H)鎖と、2つの軽(L)鎖とを含む糖タンパク質であり、重鎖と軽鎖がジスルフィド結合を介して連結される。重鎖のそれぞれは、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域とから構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインから構成される。軽鎖のそれぞれは、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域とから構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインCLから構成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変領域に分けることができ、CDRの間に、より保存的なフレームワーク領域(FR)が散在する。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシル末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置された3つのCDRと4つのFRとから構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、様々な免疫系細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主の組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0082】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」(又は「抗体断片」と略称)とは、抗原(例えば、IL4Rαタンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体中の1以上の断片を意味する。抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片により発揮できることは明らかにされている。抗体の「抗原結合断片」に含まれる抗体断片の例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域のジスルフィド結合により連結された2つのFab断片を含んでなる二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)VHとCH1から構成されるFd断片、(iv)抗体の単腕のVLとVHから構成されるFv断片、(v)VHから構成されるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature341:544-546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、及び、(vii)1つの可変ドメインと、2つの定常ドメインとを含む重鎖可変領域であるナノボディが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされるが、これらを組換え法を用いて、VLとVHが対になって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.,(1988)Science242:423-426及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879-5883を参照)として作製されることを可能にする合成リンカーによって連結することができる。このような単一鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」という用語に包含される。これらの抗体断片は、当業者に知られている従来技術により得られ、全長抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングすることができる。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えば、IL4Rαタンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、IL4Rαタンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まないものである)。ただし、ヒトIL4Rαタンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、例えば、他の種に由来するIL4Rαタンパク質などの他の抗原に対する交差反応性を有するものであってもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないものである。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「マウス抗体」とは、可変領域のフレームワーク領域及びCDR領域がともにマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来する抗体を意味する。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来するものである。本明細書のマウス抗体は、マウス生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムな若しくは部位特異的な変異生成によって、又はインビボで体細胞変異によって導入された変異)を含んでもよい。ただし、本明細書で使用される用語「マウス抗体」は、別の哺乳動物種に由来するCDR配列がマウスのフレームワーク配列に移植された抗体を含まない。
【0085】
用語「キメラ抗体」とは、非ヒト由来の遺伝物質と、ヒト由来の遺伝物質とを組み合わせた抗体を意味する。或いは、より大まかに言えば、キメラ抗体とは、ある種由来の遺伝物質と、別の種由来の遺伝物質とを有する抗体を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」とは、非ヒト種に由来するが、天然のヒト抗体との類似性を高めるためにタンパク質配列が改変された抗体を意味する。いくつかの特定の例において、「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体からの相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体からのフレームワーク領域(FR)及び定常領域とを含む。
【0087】
用語「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を意味する。
【0088】
語句「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体/抗原に対する特異性を有する抗体」は、本明細書において、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に使用される。
【0089】
本明細書で使用される場合、「ヒトIL4Rαに特異的に結合する」抗体とは、ヒトIL4Rαタンパク質(及び場合によっては一以上の非ヒト動物種のIL4Rαタンパク質)に結合するが、非IL4Rαタンパク質に実質的に結合しない抗体を意味する。好ましくは、抗体はヒトIL4Rαタンパク質に「高親和性」で結合し、すなわち、5.0×-8M以下、好ましくは1.0×10-8M以下、より好ましくは7.0×10-9M以下のKDでヒトIL4Rαタンパク質に結合する。
【0090】
本明細書で使用される場合、タンパク質又は細胞に「実質的に結合しない」とは、タンパク質又は細胞に結合しないか、又は、高親和性で結合しないこと、すなわち、1.0×10-6M以上、好ましくは1.0×10-5M以上、より好ましくは1.0×10-4M以上、より好ましくは1.0×10-3M以上、より好ましくは1.0×10-2M以上のKDでタンパク質又は細胞に結合することを意味する。
【0091】
用語「高親和性」とは、IgG抗体に関しては、抗体が抗原に対して、1.0×10-6M以下、好ましくは5.0×10-8M以下、より好ましくは1.0×10-8M以下、より好ましくは7.0×10-9M以下、より好ましくは1.0×10-9M以下のKDを有することを意味する。一方、他の抗体アイソタイプに関しては、「高親和性」結合の意味が異なる場合がある。例えば、IgMアイソタイプの場合、「高親和性」とは、抗体が1.0×10-6M以下、好ましくは1.0×10-7M以下、より好ましくは1.0×10-8M以下のKDを有することを意味する。
【0092】
本明細書で使用される用語「Kassoc」又は「Ka」とは、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度を意味し、本明細書で使用される用語「Kdis」又は「Kd」とは、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を意味する。本明細書で使用される用語「KD」とは、Kaに対するKdの比(即Kd/Ka)であり、モル濃度(M)で表される解離定数を指す。抗体のKD値は、当分野で周知の方法により測定することができる。抗体のKD値の好ましい測定方法は、表面プラズモン共鳴を用いる方法であり、好ましくは、例えば、BiacoreTMシステムなどのバイオセンサーシステムを用いる方法である。
【0093】
用語「EC50」は、半有効濃度とも呼ばれ、特定の曝露時間後にベースラインと最大値の中間の反応を誘導する抗体濃度を指す。用語「IC50」は、最大半値阻害濃度とも呼ばれ、抗体が存在しない場合と比較して、特異的な生物学的又は生化学的機能を50%阻害する抗体濃度を指す。
【0094】
用語「被験者」は、あらゆるヒト又は非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、哺乳動物及び非哺乳動物などのすべての脊椎動物を包含し、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、爬虫類が挙げられるが、哺乳動物であることが好ましく、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ及びウマが挙げられる。
【0095】
用語「治療有効量」とは、疾患又は障害(例えば、癌)に関連する症状の予防若しくは改善、及び/又は、疾患又は障害の重篤度の軽減をもたらすのに十分な本発明の抗体の量を指す。治療有効量は、治療される疾患に関連しており、当業者は実際の有効量を容易に判断することができる。
【0096】
用語「同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド間の配列類似性を指す。2つの配列間の配列比較及び同一性百分率は、アメリカ国立生物工学情報センターのウェブサイトにおけるアルゴリズムBLASTN/BLASTPのデフォルト設定により決定することができる。
【0097】
用語「Xn」と「Xaa」は同じもので、不特定のアミノ酸(Unspecified Amino Acid)を指すが、その範囲は、関連する記載における定義により規定される。
【0098】
以下に本発明の各側面をより詳細に説明する。
【0099】
抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片
本開示の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、ヒトIL4Rαに特異的に結合するものであり、報告された抗IL4Rα抗体(例えば、Dupilumab)と比較して、同等(より優れるものでなければ)の結合親和性/能力を有する。
【0100】
本開示の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、IL4又はIL13-IL13Rα1に対するIL4Rαの結合を遮断することができ、これによって、細胞内シグナル伝達を遮断することができる。報告された抗IL4Rα抗体(例えば、Dupilumab)と比較して、同等以上の遮断活性を有する。
【0101】
好ましくは、本発明の抗IL4Rα抗体はヒト化モノクローナル抗体である。さらに、或いは、本発明の抗IL4Rα抗体は、例えば、マウス、キメラ又はヒトモノクローナル抗体であり得る。
【0102】
本開示の抗IL4Rα抗体は、後述及び実施例の記載のように構造的及び化学的に特徴付けられるモノクローナル抗体である。抗体の重/軽鎖可変領域のアミノ酸配列番号を以下の表1にまとめる。いくつかの抗体は、同じVH又はVLを有する。抗体の重鎖定常領域は、配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するヒトIgG4重鎖定常領域であり得、抗体の軽鎖定常領域は、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するヒトκ定常領域であり得る。
【0103】
【0104】
表1における重鎖可変領域CDRs及び軽鎖可変領域CDRsは、Kabatナンバリングシステムにより定義されている。一方、当分野で知られているように、CDR領域は、重/軽鎖可変領域配列に基づき、他のナンバリングシステム、例えば、Chothia、IMGT、AbM又はContactナンバリングシステム/方法を用いて決定することもできる。抗体又はその抗原結合断片が具体的なCDR配列により特徴付けられる場合、前記抗体の範囲には、当分野の任意のナンバリングシステム(例えば、Chothia、IMGT、AbM又はContactナンバリングシステム)により定義されたCDR配列によって特徴付けられる抗体又はその抗原結合断片が含まれる。
【0105】
ヒトIL4Rαに結合する他の抗IL4Rα抗体のVH及びVL配列(又はCDR配列)と、本開示の抗IL4Rα抗体のVH及びVL配列(又はCDR配列)は、「混合及び対合」させることができる。好ましくは、VH及びVL鎖(又はこれらの鎖におけるCDR)を混合及び対合させる場合、特定のVH/VL対のVH配列は、構造的に類似したVH配列により置換される。同様に、好ましくは特定のVH/VL対のVL配列も、構造的に類似したVL配列により置換される。
【0106】
したがって、一実施形態において、本開示の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、
(a)表1に示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
(b)表1に示されたアミノ酸配列、又は別の抗IL4Rα抗体(当該抗体又はその抗原結合断片はヒトIL4Rαに特異的に結合する。)のVLを含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0107】
別の実施形態において、本開示の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、
(a)表1に示された重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3と、
(b)表1に示された軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3、又は別の抗IL4Rα抗体(当該抗体又はその抗原結合断片はヒトIL4Rαに特異的に結合する。)のCDRsと、を含む。
【0108】
別の実施形態において、本開示の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、本開示の抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域のCDR2と、ヒトIL4Rαに結合する他の抗体のCDRs、例えば、他の抗IL4Rα抗体からの重鎖可変領域のCDR1及び/又はCDR3、及び/又は軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及び/又はCDR3とを含む。
【0109】
さらに、CDR1及び/又はCDR2ドメインとは独立してCDR3ドメイン単独で相同抗原についての抗体の結合特異性を決定できること、及び、同じ結合特異性を有する複数の抗体を、共通のCDR3配列に基づいて予想通りに作製できることが当分野においてよく知られている。
【0110】
したがって、別の実施形態において、本開示の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、本開示の抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域のCDR2と、少なくとも本開示の抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のCDR3、又は、ヒトIL4Rαに特異的に結合する別の抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のCDR3とを含む。好ましくは、これらの抗体と本開示の抗IL4Rα抗体は、(a)競合してIL4Rαに結合し、(b)機能的特徴を保持し、(c)同じエピトープに結合し、及び/又は、(d)類似する結合親和性を有する。別の実施形態において、本開示の抗IL4Rα抗体は、本開示の抗IL4Rα抗体の軽鎖可変領域のCDR2、又は、ヒトIL4Rαに特異的に結合する別の抗IL4Rα抗体の軽鎖可変領域のCDR2をさらに含んでもよい。別の実施形態において、本開示の抗IL4Rα抗体は、本開示の抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のCDR1、又は、ヒトIL4Rαに特異的に結合する別の抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のCDR1をさらに含んでもよい。
【0111】
別の実施形態において、本開示の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、1つ以上の保存的修飾により本開示の抗IL4Rα抗体のCDR1、CDR2及びCDR3の配列とは異なるCDR1、CDR2及びCDR3をそれぞれ含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む。抗原結合性を除去しない特定の保存的配列修飾が行われ得ることは当分野において理解される。例えば、Brummell et al.,(1993)Biochem 32:1180-8;de Wildt et al.,(1997)Prot.Eng.10:835-41;Komissarov et al.,(1997)J.Biol.Chem. 272:26864-26870;Hall et al.,(1992)J. Immunol.149:1605-12;Kelley and O’Connell (1993) Biochem.32:6862-35;Adib-Conquy et al., (1998) Int.Immunol.10:341-6及びBeers et al., (2000)Clin.Can.Res.6:2835-43を参照されたい。
【0112】
したがって、一実施形態において、本開示の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、CDR1、CDR2及びCDR3をそれぞれ含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、ここで、
(a)重鎖可変領域のCDR1は、表1に示された配列、及び/又はその保存的修飾を含み、及び/又は、
(b)重鎖可変領域のCDR2は、表1に示された配列、及び/又はその保存的修飾を含み、及び/又は、
(c)重鎖可変領域のCDR3は、表1に示された配列、及び/又はその保存的修飾を含み、及び/又は、
(d)軽鎖可変領域のCDR1、及び/又はCDR2、及び/又はCDR3は、表1に示された配列、及び/又はその保存的修飾を含み、かつ、
(e)当該抗体又はその抗原結合断片はヒトIL4Rαに特異的に結合する。
【0113】
本明細書で使用される場合、用語「保存的配列修飾」とは、抗体の結合特性に特に影響及び変化を与えないアミノ酸修飾を指す。このような保存的修飾としては、アミノ酸の置換、挿入、欠失が挙げられる。修飾は、例えば、部位特異的変異導入やPCR媒介変異導入などの当分野で知られている標準的な技術により本開示の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置換されることを指す。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で知られている。これらのアミノ酸残基のファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。このようにして、本開示の抗IL4Rα抗体のCDR領域における1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、得られた抗体は、保持された機能(つまり、上記機能)について本明細書に記載の機能試験方法により試験することができる。
【0114】
本開示の医薬組成物、凍結乾燥製剤又は製品は、例えば、過剰なIL4及び/又はIL13シグナル伝達に関連する疾患の治療を含む多数のインビトロ及びインビボでの有用性を有する。
【0115】
一側面において、抗IL4Rα抗体又はその抗原結合断片は、IL4又はIL13-IL13Rα1に対するIL4Rαの結合を遮断することにより、2型免疫を低減させることができる。本開示は、本開示の医薬組成物、凍結乾燥製剤又は製品を被験者に投与することを含む、被験者における2型免疫関連アレルギー性疾患を治療する方法を提供する。前記アレルギー性疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー反応、アレルギー性鼻炎又はアレルギー性喘息であり得る。
【0116】
別の側面において、IL4又はIL13シグナル伝達は、STAT6を活性化することができ、STAT6阻害剤はがん細胞の増殖を阻害することが分かっている。本開示は、本開示の医薬組成物、凍結乾燥製剤又は製品を被験者に投与することを含む、被験者における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。前記腫瘍の非制限的な一例としては、黒色腫、肺癌、腎臓癌、前立腺癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌及び尿路上皮癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
別の側面において、本開示は、被験者におけるIL-4又はIL-13に応答する細胞の活性化を低減又は阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態において、活性化の阻害は、サイトカインの産生又は分泌の阻害を含む。いくつかの実施形態において、活性化の阻害は増殖の阻害を含む。ハイブリッドIL-4Rα/γc受容体を活性化することによってIL-4に応答する細胞としては、B細胞、好酸球及びマクロファージが挙げられるが、これらに限定されない。ハイブリッドIL-4Rα/IL-13Rα1受容体を活性化することによってIL-13に応答する細胞としては、線維芽細胞及び平滑筋細胞が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、一実施形態において、本開示は、平滑筋細胞の増殖を阻害する方法を提供する。別の実施形態において、本開示は、線維芽細胞の増殖を阻害する方法を提供する。
【0118】
本発明について、以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、実施例は制限を意図するものではない。本願のすべての図面及び本願において参照されたすべての参考文献、Genebank配列、特許及び公開特許出願は、参照により入本明細書に明確に組み込まれる。
【実施例】
【0119】
本開示の抗IL4Rα抗体の調製、精製方法は、出願番号PCT/CN2021077784の特許文献に記載されている。PCT/CN2021077784出願書類全体は本開示に組み込まれる。
【0120】
(実施例1)BIACORE表面プラズモン共鳴による抗IL4Rα抗体の親和性アッセイ
BiacoreT200システム(GE Healthcare、Pittsburgh、PA、USA)により、本開示の抗IL4Rα抗体(mAb)の結合親和性及び結合速度を測定した。
【0121】
簡単に説明すると、Biacore(GE Healthcare、Pittsburgh、PA、USA)に付属の標準アミンカップリングキットを用いて、ヤギ抗ヒトIgG(GE healthcare、カタログBR100839、Human Antibody Capture Kit)を一級アミン基を介してCM5チップ(カルボキシメチル化デキストラン被覆チップ)に共有結合させた。バイオセンサー表面の未反応部分をエタノールアミンでブロッキングした。次に、濃度66.67nMの本開示の抗IL4Rα抗体、及び、濃度10μg/mLの抗IL4Rα抗体参照物質(Dupilumab(登録商標)、BMとも呼ばれるもの)を10μL/分間の流速でチップに流した。その後、HBSEPバッファー(Biacoreより)で段階希釈した組換えヒトIL4Rα-hisタンパク質(自社調製、アミノ酸配列は配列番号15のとおり)、カニクイザルIL4Rα-hisタンパク質(Sino biological inc.、カタログ90897-C08H)、又はマーモセットIL4Rα-hisタンパク質(Sino biological inc.の特注品で、cal-IL4Rα-hisとも呼ばれる。アミノ酸配列は配列番号16のとおり)を30μL/minの流速でチップに流した。抗原-抗体結合速度を2分間追跡し、解離速度を10分間追跡した。ソフトウェアBIA evaluationにより、結合曲線及び解離曲線を1:1ラングミュア結合モデルに適合させ、KD、Ka及びKd値を求めた。
【0122】
(実施例2)IL4Rαに対する抗IL4Rα抗体の結合活性
捕捉ELISA、フローサイトメトリー(FACS)及び間接ELISAにより、IL4Rαに対する本開示の抗IL4Rα抗体の結合活性を測定した。
【0123】
2.1捕捉ELISA
簡単に説明すると、2μg/mLの濃度でPBSに溶解したアフィニティー精製ヤギ抗ヒトIgG(Fcγ断片特異性、Jackson Immunoresearch、カタログ109-005-098)を96ウェルプレートに100μL/ウェルでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄バッファー(PBS+0.05%w/vTween-20、PBST)でプレートを1回洗浄してから、ブロッキングバッファー(5%w/vのスキムミルクを含むPBST)を200μL/ウェルで加え、37℃で2時間ブロッキングした。プレートを再度洗浄し、各ウェルに、段階希釈(66.7nMの出発濃度から、2.5%w/vのスキムミルクを含むPBSTで5倍段階希釈)した本開示の抗IL4Rα抗体、参照物質又は陰性対照hIgG(静脈内注射用ヒト免疫グロブリン(pH4)、Hualan Biological Engineering Inc.)100μLを添加し、37℃で40分間、同時インキュベートした後、プレートを4回洗浄した。抗IL4Rα抗体が捕捉された96ウェルプレートにビオチン標識ヒトIL4Rα-hisタンパク質(自社調製、アミノ酸配列は配列番号15のとおり。2.5%w/vのスキムミルクを含むPBSTに0.14nMの濃度で溶解したもの)を100μL/ウェルで添加し、37℃で40分間、同時インキュベートした後、プレートを4回洗浄した。その後、HRP標識ストレプトアビジン(PBSTで1:10000に希釈したもの、Jackson Immunoresearch、カタログ016-030-084)を100μL/ウェルで添加し、37℃で40分間インキュベートした。最終回の洗浄後、ELISA基質TMB(Innoreagents、カタログTMB-S-002)を100μL/ウェルで加えてインキュベートした。10分後、25℃で1MのH2SO4を50μL/ウェルで添加して反応を停止させ、450nmでの吸光度を測定した。ソフトウェアGraphpad Prismでデータ分析を行い、EC50値を求めた。
【0124】
2.2細胞ベースのFACS結合
フローサイトメトリー(FACS)により、293F-IL4Rα細胞表面に発現するIL4Rαに対する本開示の抗IL4Rα抗体の結合活性を分析した。簡単に説明すると、EcoRIとXbaIの間にヒトIL4Rα(uniprot#P24394-1のアミノ酸残基1~825)をコードするヌクレオチドを有するpCMV-T-Pプラスミド構築物を用いて、293F細胞(Thermofisher Inc.、カタログ11625019)をトランスフェクトし、その後の細胞ベースのFACS結合及び細胞ベースのリガンド遮断FACS分析のために、安定した細胞プール(293F-IL4Rαと名付けたもの)を選択した。293F-IL4Rα細胞を細胞培養フラスコから採取し、2回洗浄して、FACSバッファー(2%v/vのウシ胎児血清を含むリン酸塩バッファー(PBS))に再懸濁した。次に、2×105細胞/ウェルを含む96ウェルプレートにFACSバッファーで段階希釈(80nMの出発濃度から4倍段階希釈)した抗IL4Rα抗体又は対照物質を100μL/ウェルで添加し、40分間氷浴した。細胞をFACSバッファーで2回洗浄した後、R-フィコエリトリン標識アフィニティー精製ヤギ抗ヒトIgG(Fcγ断片特異性、Jackson Immunoresearch、カタログ109-115-098、FACSバッファーで1:1000に希釈したもの)を100μL/ウェルで添加した。4℃、暗所で40分間インキュベートした後、細胞を3回洗浄してからFACSバッファーに再懸濁した。ベクトン・ディッキンソン社製FACS CantoII-HTSにより蛍光値を測定した。ソフトウェアGraphpad Prismでデータ分析を行い、EC50値を求めた。
【0125】
2.3間接ELISA
本開示の抗IL4Rα抗体と、カニクイザルIL4Rαタンパク質又はcal-IL4Rα-hisタンパク質との交差反応性について分析した。簡単に説明すると、炭酸塩/重炭酸塩バッファー(pH9.6)に2μg/mLの濃度で溶解したカニクイザルIL4Rα-hisタンパク質(Sino biological inc.、カタログ90897-C08H)、又は、炭酸塩/重炭酸塩バッファー(pH9.6)に0.2μg/mLの濃度で溶解したcal-IL4Rα-hisタンパク質(Sino biological inc.の特注品、カタログBAX2)をそれぞれ96ウェルプレートに100μL/ウェルでコーティングし、37℃で2時間インキュベートした。洗浄バッファー(PBS+0.05%w/vTween-20、PBST)でプレートを1回洗浄してから、ブロッキングバッファー(5%w/vのスキムミルクを含むPBST)を200μL/ウェルで加え、37℃で2時間ブロッキングした。プレートを再度洗浄し、段階希釈(0.004-66.7nM、66.7nMの出発濃度から、2.5%w/vのスキムミルクを含むPBSTで5倍段階希釈)した本開示の抗IL4Rα抗体又は対照物質100μLを各ウェルに加え、37℃で40分間インキュベートした。プレートを4回洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識アフィニティー精製F(ab’)2断片化ヤギ抗ヒトIgG(Fcγ断片特異性、Jackson Immunoresearch、カタログ109-036-098、PBSTバッファーで1:5000に希釈したもの)を100μL/ウェルで加え、37℃で40分間インキュベートした。最終回の洗浄後、TMB(Innoreagents)を100μL/ウェルで添加してインキュベートした。3~10分後、25℃で1MのH2SO4を50μL/ウェルで添加して反応を停止させ、450nmでの吸光度を測定した。ソフトウェアGraphpad Prismでデータ分析を行い、EC50値を求めた。
【0126】
(実施例3)IL4Rα-参照物質又はIL4Rα-IL4の相互作用に対する抗IL4Rα抗体の遮断活性
3.1リガンド遮断ELISA
競合ELISAにより、本開示の抗IL4Rα抗体の、IL4-IL4Rα相互作用を遮断する能力を確認した。簡単に説明すると、PBSに2μg/mLの濃度で溶解したヒトIL4Rα-hisタンパク質(自社調製、アミノ酸配列は配列番号15のとおり)を100μL/ウェルで96ウェルプレートにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌日、洗浄バッファー(PBS+0.05%w/vTween-20、PBST)でプレートを洗浄し、5%w/vのスキムミルクを含むPBSTを添加して、37℃で2時間ブロッキングした。その後、洗浄バッファーでプレートを再度洗浄した。
【0127】
2.5%w/vのスキムミルクを含むPBSTバッファーで本開示の抗IL4Rα抗体又は対照物質を段階希釈(80nMの出発濃度から4倍段階希釈)し、段階希釈した抗IL4Rα抗体又は対照物質を、IL4Rαがコーティングされたプレートに100μL/ウェルで加え、37℃でヒトIL4Rα-hisタンパク質と40分間、同時インキュベートした。洗浄バッファーでプレートを4回洗浄した後、濃度0.56nMのビオチン標識ヒトIL4タンパク質(Sino biological inc.、カタログ11846-HNAE)100μLを各ウェルに添加し、37℃で40分間インキュベートした。洗浄バッファーでプレートを再度洗浄した。その後、HRP標識ストレプトアビジン(PBSTバッファーで1:10000に希釈したもの、Jackson Immunoresearch、カタログ016-030-084)を100μL/ウェルで添加し、37℃で40分間、同時インキュベートした。洗浄バッファーでプレートを再度洗浄した。最後に、TMBを加え、1MのH2SO4で反応を停止させ、450nmでの吸光度を測定した。ソフトウェアGraphpad Prismでデータ分析を行い、IC50値を求めた。
【0128】
3.2参照物質遮断ELISA
競合ELISAにより、本開示の抗IL4Rα抗体の、参照物質-ヒトIL4Rα結合を遮断する能力を確認した。簡単に説明すると、2μg/mLの濃度でPBSに溶解した参照物質を100μL/ウェルで96ウェルプレートにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌日、洗浄バッファー(PBS+0.05%w/vTween-20、PBST)でプレートを洗浄し、5%w/vのスキムミルクを含むPBSTを添加して、37℃で2時間ブロッキングした。96ウェルプレートのブロッキング中に、ビオチン標識ヒトIL4Rα-hisタンパク質(自社調製、アミノ酸配列は配列番号15のとおり。2.5%w/vのスキムミルクを含むPBSTに0.55nMの濃度で溶解したもの)により本開示の抗IL4Rα抗体又は対照物質を希釈(100nMの出発濃度から4倍段階希釈)して、25℃で40分間インキュベートした。プレート洗浄後、抗体/IL4Rα-his混合物を、参照物質がコーティングされたプレートに100μL/ウェルで添加した。37℃で40分間インキュベートし、洗浄バッファーでプレートを再度洗浄した。次に、プレートにHRP標識ストレプトアビジンを100μL/ウェルで添加し、37℃で40分間インキュベートして、プレートに結合したビオチン標識ヒトIL4Rα-hisを検出した。洗浄バッファーでプレートを再度洗浄した。最後にTMBを加え、1MのH2SO4を用いて反応を停止させ、450nmでの吸光度を測定した。ソフトウェアGraphpad Prismでデータ分析を行い、IC50値を求めた。
【0129】
3.3細胞ベースのリガンド遮断FACS
上記調製した293F-IL4Rα細胞を用いて、細胞表面のIL4Rαに対するIL4タンパク質の結合を遮断する抗IL4Rα抗体の活性をフローサイトメトリー(FACS)により評価した。
【0130】
簡単に説明すると、293F-IL4Rα細胞を細胞培養フラスコから採取し、2回洗浄して、FACSバッファー(2%v/vのウシ胎児血清を含むPBS)に再懸濁した。次に、1×105細胞/ウェルを含む96ウェルプレートに、FACSバッファーで段階希釈(80nMの出発濃度から4倍段階希釈)した抗IL4Rα抗体又は対照物質を100μL/ウェルで添加し、40分間氷浴した。プレートをFACSバッファーで2回洗浄した後、濃度1.67nMのビオチン標識ヒトIL4タンパク質(Sino biological inc.、カタログ11846-HNAE)100μLを各ウェルに添加し、4℃、暗所で40分間インキュベートした。FACSバッファーでプレートを2回洗浄した後、R-フィコエリトリン標識ストレプトアビジン(FACSバッファーで1:500に希釈したもの。Jackson Immunoresearch、カタログ016-110-084)100μLを各ウェルに添加し、4℃、暗所で40分間インキュベートした。細胞を2回洗浄した後、FACSバッファーに再懸濁した。ベクトン・ディッキンソン社製FACS CantoII-HTSにより蛍光値を測定した。ソフトウェアGraphpad Prismでデータ分析を行い、IC50値を求めた。
【0131】
(実施例4)細胞ベースの抗IL4Rα抗体の機能アッセイ
IL4及びIL13は、IL4Rαに結合し、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞におけるSTAT6リン酸化を誘導することができる。STAT6リン酸化は、IL4/IL13シグナル伝達経路において極めて重要である。
【0132】
簡単に説明すると、pcDNA3.1-Puro(YouBio biological inc.、カタログVT9222)プラスミド構築物(BamHIとXhoIの間にヒトIL4Rαをコードするヌクレオチドを有するもの)、STAT6プラスミド(Sino biological inc.、カタログHG13190-NH)(KpnIとXbaIの間にヒトSTAT6をコードするヌクレオチドを有するもの)、及び、STAT6ルシフェラーゼレポータープラスミドSTAT6-Luc(Yeasen biological inc.、カタログ11588ES03)を用いて、IL13Rα1を自然に発現するHEK293T細胞(ATCC CRL-11268)を安定にトランスフェクトし、社内でHEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞を調製した。次に、その後のすべての機能アッセイを行うための単一細胞クローンLB2を選択した。
【0133】
IL4及びIL13によって誘導されるSTAT6リン酸化に対する本開示の抗IL4Rα抗体の阻害作用を分析した。
【0134】
簡単に説明すると、対数期のHEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞を培地(RPMI1640+10%のFBS)に再懸濁し、1ウェル当たり5×105細胞となるように、100μL/ウェルで96ウェルプレートに播種した。次に、段階希釈(100nMの出発濃度から5倍段階希釈)した本開示の抗IL4Rα抗体又は対照物質(社内で調製した抗CD22抗体を含む)50μLを各ウェルに添加し、37℃で30分間インキュベートした。その後、IL4タンパク質(600pg/mL、Sino biological inc.、カタログ11846-HNAE)又はIL13タンパク質(50ng/mL、Sino biological inc.、カタログ10369-HNAC)50μLを各ウェルに添加し、37℃で20分間インキュベートした。プレートを遠心分離し、染色バッファー(自社調製、DPBS+0.5%のw/vBSA+2mMのEDTA)でプレートを2回洗浄した後、固定バッファー(BD biosciences inc.、カタログ5545655)50μLを各ウェルに加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、透過化バッファー(BD biosciences inc.、品番558050)200μLを各ウェルに加え、30分間氷浴した。染色バッファーでプレートを3回洗浄した。その後、抗pSTAT6抗体(pSTAT6原液20倍希釈、BD biosciences inc.、カタログ562079)を加え、氷上で60分間静置した。最後にプレートを2回洗浄し、染色バッファーに再懸濁した。ベクトン・ディッキンソン社製FACS CantoII-HTSにより蛍光値を測定した。ソフトウェアGraphpad Prismでデータ分析を行い、IC50値を求めた。
【0135】
(実施例5)キメラ抗体の産生及び分析
マウス抗IL4Rαモノクローナル抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列決定を行った。配列番号を表1にまとめた。
【0136】
マウス抗IL4Rαモノクローナル抗体C2C1A1A1の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をそれぞれ、可変領域のC末端が、対応する定常領域のN末端に連結するように、ヒトIgG4重鎖定常領域(配列番号13)を含むベクター及びヒトκ軽鎖定常領域(配列番号14)を含むベクターにクローニングした。
【0137】
ヒトIgG4重鎖定常領域に連結する重鎖可変領域をコードするヌクレオチドを含むベクター、及び、ヒトκ軽鎖定常領域に連結する軽鎖可変領域をコードするヌクレオチドを含むベクターを、軽鎖構築物:重鎖構築物が60%:40%の比率となるように、1mg/mLのPEIで50mLの293F懸濁細胞に一時的トランスフェクトした。
振盪フラスコでの6日間の培養後に細胞上清を回収し、上清中の細胞を遠心分離によって沈降させ、免疫グロブリンの単離のために0.22μmのフィルターによりろ過した。キメラ抗体はプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。簡単に説明すると、プロテインAアガロースカラム(bestchrom (Shanghai) Biosciences、カタログAA0273)を5~10カラム容量のPBSバッファーで洗浄した。細胞上清をプロテインAアガロースカラムに通した後、タンパク質の吸光度がベースラインに戻るまで、カラムをPBSバッファーで洗浄した。溶出バッファー(0.1Mグリシン-HCl、pH2.7)によりカラムから溶出させた溶出液を直ちに1.5mLチューブに回収し、中和バッファー(1M Tris-HCl、pH9.0)で中和した。免疫グロブリンを含む画分をプールし、PBS中で4℃で一晩透析した。
【0138】
精製した抗体は、上記実施例のプロトコールに従い、捕捉ELISA、競合ELISA、BIAcore親和性アッセイ、細胞ベースのFACS結合アッセイ及び細胞ベースの機能アッセイにより分析した。一方、マウスC2C1A1A1については、分析方法は上記実施例において下記の調整を行った。
【0139】
捕捉ELISAについて、ヤギ抗ヒトIgGの代わりに、2μg/mLのヤギ抗マウスIgG(Fcγ断片特異性、Jackson Immunoresearch、カタログ115-005-008)を100μL/ウェルで加えた。
【0140】
BIAcoreについて、ヤギ抗ヒトIgGの代わりに、ヤギ抗マウスIgG(GE healthcare、カタログBR100838、Mouse Antibody Capture Kit)をCM5チップに共有結合させた。
【0141】
細胞ベースのFACS結合について、R-フィコエリトリン標識アフィニティー精製ヤギ抗ヒトIgGの代わりに、R-フィコエリトリン標識アフィニティー精製F(ab’)2断片化ヤギ抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch、カタログ115-116-146)を100μL/ウェルで加えた。
【0142】
結果を表2に示す。キメラ抗体が親のマウス抗体と同様の結合親和性/能力及び遮断活性を有することがデータから分かった。
【0143】
【0144】
(実施例6)抗IL4Rαモノクローナル抗体のヒト化
マウス抗IL4Rα抗体C2C1A1A1をヒト化して特性分析を行った。マウス抗体のヒト化は、確立されたCDR移植法により以下のとおり行った。
【0145】
マウス抗体C2C1A1A1をヒト化するための受容体フレームワークを選択するために、各マウス抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の配列をヒト免疫グロブリン遺伝子データベースに対してBLASTした。最も高い相同性を持つヒト生殖系列抗体をヒト化のための受容体フレームワークとして選択した。マウス抗体の重/軽鎖可変領域CDRsを、選択したフレームワークに挿入し、さらにフレームワーク中の残基を復帰変異させることによって、より多くの候補重/軽鎖可変領域を得た。huC2C1A1A1-V1~huC2C1A1A1-V16の計16個の例示的なヒト化C2C1A1A1抗体を得た。これらの重/軽鎖可変領域の配列番号は表1に示したとおりである。
【0146】
ヒトIgG4重鎖定常領域(配列番号13)に連結するヒト化重鎖可変領域をコードするヌクレオチドを含むベクター、及び、ヒトκ軽鎖定常領域(配列番号14)に連結するヒト化軽鎖可変領域をコードするヌクレオチドを含むベクターを、軽鎖構築物:重鎖構築物が60%:40%の比率となるように、1mg/mLのPEIで50mLの293F懸濁細胞に一時的トランスフェクトした。
【0147】
振盪フラスコでの6日間の培養後に細胞上清を回収し、上清中の細胞を遠心分離によって沈降させ、免疫グロブリンの単離のために0.22μmのフィルターによりろ過した。抗体はプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。簡単に説明すると、プロテインAアガロースカラム(bestchrom(Shanghai)Biosciences、カタログAA0273)を5~10カラム容量のPBSバッファーで洗浄した。細胞上清をプロテインAアガロースカラムに通した後、タンパク質の吸光度がベースラインに戻るまで、カラムをPBSバッファーで洗浄した。溶出バッファー(0.1Mグリシン-HCl、pH2.7)によりカラムから溶出させた溶出液を直ちに1.5mLチューブに回収し、中和バッファー(1M Tris-HCl、pH9.0)で中和した。免疫グロブリンを含む画分をプールし、PBS中で4℃で一晩透析した。
【0148】
(実施例7)ヒト化抗体の特性分析
上記実施例のプロトコールに従い、ヒトIL4Rαに対するヒト化抗体の結合親和性をBIAcore技術により評価し、Ka、Kd及びKD値を測定した。結果を表3にまとめる。
【0149】
【0150】
結果によれば、ヒト化抗体は、キメラ抗体に類似するヒトIL4Rα結合親和性を有する。また、参照物質と比較して、すべてのヒト化huC2C1A1A1抗体はいずれも、より高いヒトIL4Rα結合親和性を示した。
【0151】
上記実施例のプロトコールに従い、Biacore、捕捉ELISA、間接ELISA、細胞ベースのFACS結合、競合ELISA、細胞ベースのリガンド遮断FACS及び細胞ベースの機能アッセイにより、ヒト化抗体huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15をさらに分析した。
【0152】
また、ヒト化抗体huC2C1A1A1-V15の熱安定性も分析した。簡単に言うと、GloMelt(商標) Thermal Shift Protein Stability Kit(Biotium、カタログ33022-T、ロット番号181214)によりタンパク質サーマルシフトアッセイによってTm(融解温度)を測定した。簡単に説明すると、GloMelt(商標)色素を室温まで解凍し、色素が入ったバイアルをボルテックスして遠心分離した。次に、5μLの200×色素を95μLのPBSに加えて、10×色素を調製した。反応系に2μLの10×色素及び10μgのヒト化抗体を加え、総反応量が20μLになるまでPBSを添加した。色素及び抗体が入った遠心管をしばらく遠心分離し、表4のパラメーターで設定されたプログラムMeltCurveを備えたリアルタイムPCRサーマルサイクラー(Roche、LightCycler 480II)に設置した。結果を表5-1、5-2及び5-3に示す。データによれば、ヒト化C2C1A1A1抗体は参照物質と比較して、同等(より優れるものでなければ)のヒトIL4Rα結合親和性/活性及びIL4Rα-IL4/IL13に対する遮断能力を示した。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
(実施例8)医薬組成物の調製及びスクリーニング
[測定方法]
(1)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-UPLC)
試料中の抗体の純度を測定するために、Thermo Vanquish Fによる高速液体クロマトグラフィーで、Waters ACQUITY UPLC Protein BEH SECカラム(200Å、1.7μm、4.6mm×300mm)、プレカラムとしてのWaters ACQUITY UPLC Protein BEH SECガードカラム(200Å、1.7μm、4.6mm×30mm)を用いて、50mmol/Lのリン酸塩バッファー+200mmol/Lの塩化ナトリウム(pH7.0)を移動相にして溶出を行い、測定波長は280nmとした。面積正規化法により、高分子不純物及び免疫グロブリンモノマーの含有率を算出した。
【0158】
(2)示差走査蛍光法(DSF)
タンパク質安定性分析装置(Nano Temper、Prometheus NT.48)により試料のアンフォールディング温度(Tm)を測定し、キャピラリーチューブで10μlの試料を試料室に入れ、プロセスについて、走査開始温度を25℃とし、走査終了温度を95℃とし、昇温速度を0.3℃/分とした。
【0159】
(3)HVROC-S粘度計(Rheosense、μVISC)によりサンプルの粘度を分析し、自動モードを選択して、測定結果を記録した。
【0160】
(4)全カラムイメージングキャピラリー等電点電気泳動法(iCIEF)
試料の電荷変異体を同定するために、イメージングキャピラリー等電点電気泳動装置(Protein Simple iCE3)、高速かつ全自動のタンパク質特性分析システム(Protein Simple、Maurice)、保護層付き石英キャピラリーチューブ(Protein Simple)、紫外線検出器を用いて、紫外線の検出波長280nmで検出を行った。注入時間を60秒に設定し、1500ボルトで1分間プリフォーカスし、300ボルトで10分間フォーカスした。ピーク面積正規化法により、各電荷変異体のピーク面積率を求めた。
【0161】
[緩衝剤の調製]
(1)ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤はヒスチジン及び塩酸ヒスチジンを含む。特定の実施例において、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン及び塩酸ヒスチジン一水和物を含み、例えば、20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤(pH5.8)は、約1.17mg/mLのヒスチジンと、約2.62mg/mLの塩酸ヒスチジン一水和物からなる。
【0162】
(2)リン酸ナトリウム緩衝剤はリン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムを含む。特定の実施例において、リン酸ナトリウム緩衝剤は、リン酸二水素ナトリウム一水和物及びリン酸水素二ナトリウム十二水和物を含み、例えば、20mMのリン酸ナトリウム緩衝剤(pH6.0)は、約2.539mg/mLのリン酸二水素ナトリウム一水和物と、約0.573mg/mLのリン酸水素二ナトリウム十二水和物とで形成される。
【0163】
(3)酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤は酢酸ナトリウム及び酢酸を含む。特定の実施例において、酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤は、酢酸ナトリウム三水和物及び酢酸を含み、例えば、20mMの酢酸ナトリウム-酢酸緩衝剤(pH6.0)は、約2.605mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物と、約0.141mg/mLの酢酸とで形成される。
【0164】
限外ろ過により、抗IL4Rα抗体(huC2C1A1A1-V15)を表6の緩衝剤のそれぞれに置換し、置換後に濃縮を行ってから、表6のとおりに界面活性剤及び安定化剤を添加した。均一に混合した後、0.22μmのフィルターでろ過して除菌し、バイアルに分注し、栓をしてキャップをした。医薬組成物F1~F4のSEC-UPLC測定結果を表7に示す。そのうち、F4は、40℃で1ヶ月間保管後の高分子不純物の増加(1.36%から5.66%まで増加)がF1~F3より多かった。
【0165】
【0166】
【0167】
一例として、20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンを緩衝剤として選択した。限外ろ過により、抗IL4Rα抗体(huC2C1A1A1-V15)を表8の緩衝剤に置換し、置換後に濃縮を行ってから、表8のとおりに界面活性剤及び安定化剤を添加した。均一に混合した後、0.22μmのフィルターでろ過して除菌し、バイアルに分注し、栓をしてキャップをした。医薬組成物F5~F7のTm及びSEC-UPLC測定結果を表9に示す。そのうち、F6は、40℃で1ヶ月間保管後の高分子不純物の増加が最も少なかった。
【0168】
【0169】
【0170】
一例として、20mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンを緩衝剤として選択した。限外ろ過により、抗IL4Rα抗体(huC2C1A1A1-V15)を表10の緩衝剤に置換し、置換後に濃縮を行ってから、表10のとおりに界面活性剤及び安定化剤を添加した。均一に混合した後、0.22μmのフィルターでろ過して除菌し、バイアルに分注し、栓をしてキャップをした。医薬組成物F8及びF9のTm、粘度、SEC-UPLC及びiCIEF測定結果を表11に示す。そのうち、F8はF9より低粘度であった。
【0171】
【0172】
【0173】
本開示において、一以上の実施形態を挙げて説明したが、本開示はこれらの実施形態だけでなく、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲に含まれるすべての代替物、変形及び均等物も包含することを意図していると理解されるべきである。本明細書において参照した文献はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
本開示の配列情報を以下の表12にまとめる。
【0174】
【0175】
【0176】
【配列表】
【国際調査報告】