(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】自動車両の暖房、通気、および/または空調システムのハウジング
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509469
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022073226
(87)【国際公開番号】W WO2023021197
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー、バルビエ
(72)【発明者】
【氏名】シリル、ゴンティエ
(72)【発明者】
【氏名】イブ、ルソー
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA05
3L211BA06
3L211DA07
3L211DA12
(57)【要約】
本発明は、自動車両の暖房、通気、および/または空調システム(1)のハウジング(2)であって、少なくとも第1空気吹出ダクト(10)および第2空気吹出ダクト(12)を含む複数のダクトを備え、第2空気吹出ダクト(12)は車両における車室の上方部分内へ開くように構成され、第1空気吹出ダクト(10)は車両における車室の下方部分内へ開くように構成されており、当該ハウジング(2)は、第1空気吹出ダクト(10)へ向かう気流を遮断する位置と、第1空気吹出ダクト(10)へ向かって気流を誘導する位置との間で可動な調節フラップ(36)を備え、当該調節フラップ(36)は、案内路(38)に従って一方の位置から他方の位置へ移動し、当該ハウジング(2)は、調節フラップ(36)が遮断する位置にあるときにその調節フラップ(36)が対向して伸びているところの少なくとも1つの止め壁(50)を備えているものに関する。当該ハウジング(2)は、調節フラップ(36)の案内路の一部分に沿って伸びるように止め壁(50)から突き出るデフレクター(54)を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両の暖房、通気、および/または空調システム(1)のハウジング(2)であって、少なくとも第1空気吹出ダクト(10)および第2空気吹出ダクト(12)を含む複数のダクトを備え、前記第2空気吹出ダクト(12)は前記車両における車室の上方部分内へ開くように構成され、前記第1空気吹出ダクト(10)は前記車両における車室の下方部分内へ開くように構成されており、当該ハウジング(2)は、前記第1空気吹出ダクト(10)へ向かう気流を遮断する位置と、前記第1空気吹出ダクト(10)へ向かって気流を誘導する位置との間で可動な調節フラップ(36)を備え、当該調節フラップ(36)は、案内路(38)に従って一方の位置から他方の位置へ移動し、当該ハウジング(2)は、前記調節フラップ(36)が前記遮断する位置にあるときにその調節フラップ(36)が対向して伸びているところの少なくとも1つの止め壁(50)を備えている、ハウジング(2)において、前記調節フラップ(36)の前記案内路の一部分に沿って伸びるように前記止め壁(50)から突き出るデフレクター(54)を備えた、ことを特徴とするハウジング(2)。
【請求項2】
前記デフレクター(54)は、前記調節フラップ(36)が遮断する位置にあるときに当該調節フラップ(36)と対向する内面(56)を備え、この内面(56)は、前記調節フラップ(36)の前記案内路の前記一部分に実質的に対応した形状の湾曲を有している、請求項1に記載のハウジング(2)。
【請求項3】
前記デフレクターは、前記第1空気吹出ダクト(10)を部分的に画定すると共に丸められた縁部を有した先端部(60)を備えている、前記請求項のいずれかに記載のハウジング(2)。
【請求項4】
前記止め壁(50)と前記デフレクター(54)の前記先端部(60)との間で測った前記デフレクター(54)の寸法が15から25ミリメートルの間である、前記請求項に記載のハウジング(2)。
【請求項5】
前記デフレクター(54)は、前記止め壁(50)からの距離が増えるにつれて薄くなって行く先細り形状を有している、前記請求項のいずれかに記載のハウジング(2)。
【請求項6】
前記第1空気吹出ダクト(10)は、特に空気通路の他方の側で前記デフレクター(54)に対向して配置された暖気誘導壁(18)によって画定され、前記デフレクター(54)は、前記第1空気吹出ダクト(10)の通路断面が、当該デフレクター(54)と前記暖気誘導壁(18)との間で30から50ミリメートルの間の距離を有するように、前記第1ダクトを横切って伸びている、前記請求項のいずれかに記載のハウジング(2)。
【請求項7】
前記デフレクター(54)と前記止め壁(50)とが一体型の組立品を形成している、前記請求項のいずれかに記載のハウジング(2)。
【請求項8】
前記第1空気吹出ダクト(10)を部分的に画定する暖気誘導壁(18)を備え、前記調節フラップ(36)は、当該調節フラップが前記気流を誘導する位置にあるときに当該調節フラップ(36)と前記暖気誘導壁(18)との間に漏出通路(62)が設けられることで前記気流の一部が前記第2空気吹出ダクト(12)へ向かって通過することが可能となるよう前記ハウジング内に収容されている、前記請求項のいずれかに記載のハウジング(2)。
【請求項9】
前記第2空気吹出ダクト(20)と前記第1空気吹出ダクト(18)との間の接続域(19)の反対側で前記第2空気吹出ダクト(12)を部分的に画定する冷気誘導壁(20)を備え、前記調節フラップ(36)は、当該調節フラップが前記誘導する位置にあるときに自らの端縁部(48)が前記冷気誘導壁(20)に対向して置かれる分枝体(44)を備え、前記漏出通路(62)の寸法(D2)は、前記調節フラップ(36)が誘導する位置にあるときに前記端縁部(48)と前記冷気誘導壁(20)との間で測った寸法(D3)よりも大きい、請求項6および7に記載のハウジング(2)。
【請求項10】
暖房、通気、および/または空調システム(1)のための前記請求項のいずれかに記載のハウジング(2)と、ガラスの表面と、車室とを備えた自動車両であって、前記第1空気吹出ダクト(10)が当該車両における前記車室の下方部分内へ開いているのに対して、前記第2空気吹出ダクト(12)は前記車室の上方部分内へ開いている、自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の暖房、通気、および/または空調(空気調節)システムのハウジングに関する。より特定的には、本発明は、それを通じて気流の流通するところの、暖房、通気、および/または空調システムのハウジングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車両に備え付けられる暖房、通気、および/または空調システムは、車室内の様々な高さの所に配置される車室の様々な区域(ガラスの表面、車室の前方ないし後方部分)内へ(車室の下方部分内へ、即ち乗員乗客の足へ向かってや、車室の上方部分内へ、即ち車両の屋根や中程へ向かって)の冷気および/または暖気の供給を、車両の使用者らが制御することを可能としている。
【0003】
既知の暖房、通気、および/または空調システムは特に、冷媒流体の循環する閉回路内に配置された凝縮器および蒸発器を備え得る。この流体は、車両の前部の所で吸い込まれて凝縮器および蒸発器を順次通過するように導かれる気流を熱的に処理することができる。蒸発器からの出口の所で気流は、暖房、通気、および/または空調システムのハウジング(別名、HVACハウジング)内へと広がることができる。そのハウジングは、車室内の所与の高さの所に配置された空気吹出口へとそれぞれ開く空気流通ダクト内へ、所望の温度にある空気を分配するように設計されている。
【0004】
そのようなハウジングは、ハウジング入口から広がって全ての空気流通ダクトおよび吹出口に接続される少なくとも1つの主ダクトを備えている。この主ダクト内には、特にハウジング入口に近接して蒸発器が配置され得ると共に、車両の乗客らの要求に応じて流通ダクトのうちの一方ないし他方に向かって気流を差し向けるために、少なくとも1つの調節フラップが気流を横切って配置されている。
【0005】
ハウジングはまた、主ダクトと平行に伸びる補助ダクトをも備えている。補助ダクトは、この補助ダクトを通過する空気を加熱することを可能とする放熱器を収容している。冷気流や暖気流を作り出すために、空気を主ダクトおよび/または補助ダクトへ差し向けるよう、ハウジング内に制御フラップが配置されている。それらの冷気流や暖気流は、それから、主ダクトおよび補助ダクトの下流側に配置された調節フラップの制御によって、関連する流通ダクトへ差し向けられるべきものである。
【0006】
調節フラップは、空気吹出口へと開いた流通ダクトの方へ暖気流や冷気流を当該調節フラップが差し向ける誘導位置(誘導する位置)と、当該の同じ流通ダクトの方へ気流が流通するのを当該調節フラップが防止する遮断位置(遮断する位置)との間で可動となっている。
【0007】
従って、制御フラップや調節フラップの統制によって、車室の目標域の方へ暖気や冷気を差し向けることが可能となる。自動車両の製造業者や組付業者らは、この状況において、車室内に存在する空気(即ち、空気が車室の上方部分と下方部分のいずれに存在するかに依って均一な温度を有していない空気)の階層化の現象を、車両の乗員乗客らが体験してしまうのを防止する暖房、通気、および空調システムを開発することを目標としている。また、(1つないし複数の)調節フラップを、(一方ないし他方の位置を可能とするために)調節フラップが遮断位置にあるときに気流の漏出を許容するようハウジング内に配置することが知られている。この漏出は特に、調節フラップの端部と、遮断位置でこの端部に対向するハウジングの壁体との間における、1から2ミリメートル程度の製造・取付け用の間隙によって実施され得る。
【0008】
この気流の漏出によって、乗客の方を向いた(特に、車室の下方部分の)空気吹出口の方へ気流を差し向ける位置に調節フラップがあるときであっても、あらゆる状況で曇りが取られるのを保証するよう、ガラスの表面の方へ絶えず(少なくとも少量の)空気が差し向けられることが確保されるのである。
【0009】
この、気流を主として車室の下方部分の方へ差し向けつつ、気流の一部が車室の上方部分の方へ漏出するのを許容する構成は、特に暖気が車室の上方部分の空気吹出口に向かって逸らされているときに、車室内に存在する空気の温度の階層化を感じてしまうのを軽減することを助ける。しかしながら、この漏出を許容する1から2ミリメートル程度の製造・取付け用の間隙では、空気温度を効果的に均一化して製造業者らによって望まれる仕様を満たすには不十分なのである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、暖房、通気、および/または空調システムの様々な空気吹出口同士の間での温度階層化を大幅に低減することによって、車両の乗員乗客の知覚を改善するために、この問題に対しての代案や改善策を提案することである。
【0011】
本発明の主たる対象は、自動車両の暖房、通気、および/または空調システムのハウジングであって、少なくとも第1空気吹出ダクトおよび第2空気吹出ダクトを含む複数のダクトを備え、第2空気吹出ダクトは車両における車室の上方部分内へ開くように構成され、第1空気吹出ダクトは車両における車室の下方部分内へ開くように構成されており、当該ハウジングは、第1空気吹出ダクトへ向かう気流を遮断する位置と、第1空気吹出ダクトへ向かって気流を誘導する位置との間で可動な調節フラップを備え、当該調節フラップは、案内路に従って一方の位置から他方の位置へ移動し、当該ハウジングは、調節フラップが遮断する位置にあるときにその調節フラップが対向して伸びているところの少なくとも1つの止め壁を備えている、ハウジングにおいて、調節フラップの案内路の一部分に沿って伸びるように止め壁から突き出るデフレクターを備えた、ことを特徴とするハウジングである。
【0012】
本発明の特徴によれば、ハウジングは、主気流流通ダクトと、主ダクトと平行に伸びる補助ダクトとを備え、混合域へ暖気を供給することができるように、補助ダクト内に気流の通路を横切る放熱器を収容している。ハウジングへ進入する気流を主ダクト内および/または補助ダクト内へと選択的に差し向けるように制御フラップが統制される。ハウジングはまた、2つのダクト同士の接続部の所に混合域を備え、そこから各空気吹出口ダクトが通じている。混合域内に存在する気流を一方および/または他方の空気吹出口ダクトの方へ向けるために、当該混合域内に可動式の調節フラップが配置されている。
【0013】
主ダクトは、特に蒸発器の後方に配置され、その内部を流通する空気は車両の車室における通気用の冷気となっていてよい。暖房命令が与えられたときには、ハウジングへ進入する空気が放熱器によって加熱されるように、その空気を制御フラップが補助ダクトの方へ差し向ける。かくして、制御フラップの位置に応じて、暖気、冷気、または微温気(空気が主ダクトと補助ダクトの両方を通過する場合)が混合域に到達するのである。そして調節フラップは、加熱および/または冷却された気流を、自動車両の乗員乗客によって選択されたように車室の上方および/または下方の空気吹出口の方へ差し向ける。調節フラップは、混合域内に存在する気流を第1空気吐出ダクトの方へは差し向けるが第2空気吐出ダクトへの到達は遮断する上記誘導する位置(誘導位置)、または混合域内に存在する気流を第2空気吐出ダクトの方へは差し向けるが第1空気吐出ダクトへの到達は遮断する上記遮断する位置(遮断位置)をとり得る。調節フラップはまた、それぞれの空気吐出ダクト内へと同時に気流を差し向けることを可能とするように、上述した誘導位置と遮断位置との間の中間位置をもとり得る。
【0014】
言明してきたように、調節フラップは、一方の位置から他方へ移動する際に案内路に従う。より特定的には、調節フラップは各空気吐出ダクトへ通じているハウジングの区域内に配置され、その区域内に調節フラップが縦方向の軸線周りで回動自在となるように取り付けられている。この場合、案内路は、調節フラップの自由端部(即ち、遮断位置において止め壁と対向して位置する自由端部)のたどる円弧に対応している。本発明によるデフレクターは、空気吐出ダクト(特に、第1空気吐出ダクト)の口の所でハウジング内に配置され、気流遮断位置に配置された調節フラップと対向する止め壁から、この案内路の一部分に沿って伸びている。用語「デフレクター」は、ハウジング内部を流通する気流の全部ないし一部を差し向けるようハウジング内に配置された要素を意味する。このデフレクターの目的は、特にハウジング内部に形成されたダクトのうちの1つ(この場合、より特定的には第1空気吐出ダクト)の通路断面を縮小することである。それは、調節フラップが誘導位置にあるとき、当該第1ダクトの方へ差し向けられた空気の一部を、他方の空気吐出ダクト(即ち、ここでは第2空気吐出ダクト)の方へ逸らすことを可能とするようにである。
【0015】
デフレクターの位置と形状とによって、デフレクターを包含しているハウジングの区域内へと通る気流の通過を許容する位置(即ち、ここでは空気誘導位置)に調節フラップがあるとき、この気流への影響が生じるのである。デフレクターは、最も近くにある空気吐出ダクトの通路断面を縮小するように止め壁からの突起を形成して、この空気吐出ダクトへ進入する前に気流の進むべき経路を延長する。換言すれば、デフレクターは、第1空気吐出ダクトへ向かう気流の経路を通って伸びているのである。かくして、気流(特に、暖気)の僅かな部分が、第2の空気吹出口とは異なる方向へ(より特定的には、第1の空気吹出口の方へ)差し向けられる。
【0016】
本発明の随意の特徴によれば、デフレクターは、調節フラップが遮断する位置にあるときに当該調節フラップと対向する内面を備え、この内面は、調節フラップの案内路の一部分に実質的に対応した形状の湾曲を有している。
【0017】
換言すれば、内面は、凹形であって、このために調節フラップの回動の半径に略等しい曲率半径を有している。調節フラップが一方の位置から他方へ移動するとき、調節フラップの一部(特に、回動の軸線とは反対の側に配置されたフラップの自由端部)がデフレクターの内面に沿って進行するものと理解されたい。
【0018】
本発明の別な随意の特徴によれば、デフレクターは、第1空気吹出ダクトを部分的に画定すると共に丸められた縁部を有した先端部を備えている。ある縁部が尖端や突条を成してはいないとすれば、当該縁部は曲率半径にかかわらず丸められているものとみなされ得る、ということを理解されたい。本発明の種々の随意な特徴によれば、先端部は、概して平坦な形状を有して、デフレクターの内面への接続縁部が丸められていてもよく、或いは先端部自体が丸められた縁部を備えていてもよい(この場合はデフレクターが、先端部の丸められた略三角形の形状を有している)。
【0019】
本発明の別な随意の特徴によれば、デフレクターは、止め壁からの距離が増えるにつれて薄くなって行く先細り形状を有している。換言すれば、デフレクターは、止め壁の直接的な延長部分に配置された基部と、関連付けられた空気吐出ダクト(ここでは、第1空気吐出ダクト)の通路断面を部分的に画定する先端部とを備えている。デフレクターは、先端部の所での横方向寸法よりも大きい、基部の所での対応した横方向寸法を有しているのである。
【0020】
本発明の別な随意の特徴によれば、止め壁とデフレクターの先端部との間で測ったデフレクターの寸法が15から25ミリメートルの間である。
【0021】
本発明の別な随意の特徴によれば、止め壁とデフレクターの丸められた縁部との間で測ったデフレクターの寸法が18から22ミリメートルの間であって、20ミリメートル程度であることが有利である。
【0022】
これらの(本件発明者らの計算によって得られた)値は、第1に、特に車両の乗員乗客のニーズを満たすために、第1空気吐出ダクトの通路断面を過剰に縮小しないことで第1空気吐出ダクトへ向かっての十分な気流の通過を許容するように、第2に、第2空気吐出ダクトに向かっての気流の相当な部分の偏向を引き起こすに足るほど拡張された誘導表面を作り出して、これが車両の乗員乗客の温度階層化に対する知覚に影響を持つように、最適化された値を示しているのである。
【0023】
この文脈において、本発明の別な随意の特徴によれば、第1空気吹出ダクトは、特に空気通路の他方の側でデフレクターに対向して配置された暖気誘導壁によって画定され、デフレクターは、第1空気吹出ダクトの通路断面が、当該デフレクターと暖気誘導壁との間で30から50ミリメートルの間の距離を有するように、第1ダクトを通って伸びている。
【0024】
本発明の別な随意の特徴によれば、デフレクターと止め壁とが一体型の組立品を形成している。
【0025】
デフレクターと止め壁とは、一方ないし他方の破壊を伴うことなく分離できるようにはなっていないのである、ということを理解されたい。換言すれば、ハウジングの射出成型作業中に、ハウジング内部の各空気流通ダクトを画定する壁体と同時にデフレクターが形成される。デフレクターは、種々の空気誘導壁と一体の延長部分を形成し、既に言明したように止め壁を越えて伸びているのである。
【0026】
本発明の別な随意の特徴によれば、調節フラップは、当該調節フラップがその周りを回る回動の軸線を定める本体と、本体から半径方向へ伸びる少なくとも1つの分枝体とを備えている。その分枝体の自由端部は、一方の位置から他方への移動中にデフレクターに対向して移動する。
【0027】
調節フラップは、略直角を成す2つの分枝体を備えていてもよい。その第1の分枝体は上記の案内路に沿って移動することができ、第2の分枝体は、主ダクトの入口と第2空気吐出ダクトとの間に配置される第2の案内路に沿って移動することができる。
【0028】
調節フラップの本体は、調節フラップが遮断位置から誘導位置へ、またその逆へと移動するようにその周りを回る回動の軸線の中心を定めている。調節フラップが回るとき、分枝体ないしは各分枝体が回動し、対応する端部の移動が、第2空気吐出ダクトや第1空気吐出ダクトの開口と同じ角度の大きさの円弧を形成する。既に言明したように、分枝体(或いは、調節フラップの構成によっては第1の分枝体)の移動によって形成される弧は、内面の凹形状と同様の曲率半径を有している。
【0029】
本発明のある特徴によれば、当該ハウジングは、第1空気吹出ダクトを部分的に画定する暖気誘導壁を備え、調節フラップは、当該調節フラップが気流を誘導する位置にあるときに当該調節フラップと暖気誘導壁との間に漏出通路が設けられることで気流の一部が第2空気吹出ダクトへ向かって通過することが可能となるようハウジング内に収容されている。第1空気吹出ダクトは特に、デフレクターと対向し配置された暖気誘導壁によって画定されている。この暖気誘導壁は、調節フラップが遮断位置にあるときに、調節フラップの自由端部が、漏出通路を画成する間隙を伴って、この暖気誘導壁の一部分と対向して置かれるように、第2空気吐出ダクトに向かって伸びている。
【0030】
このようにして、調節フラップが誘導位置にあるとき、気流は主として第1空気吐出ダクトの方へ差し向けられるよう企図されているが、デフレクターによって逸らされる一部の気流は、第2空気吐出ダクトへ合流するように漏出通路を通じて流通することができる。特に、ハウジング内を暖気が流通する場合には、そのような構成によって暖気流の一部を、車室の上方部分に位置した空気吹出口の方へ差し向けることが可能となる。それは、暖気の大部分を車室の下方部分に位置した空気吹出口の方へ差し向けながら、車室内の空気の温度を均一化するようにである。かくして、自動車両の運転者および/または乗客によって知覚される上肢と下肢との間での温度差が実質的に低減され、車両の乗員乗客の快適性が向上するのである。
【0031】
本発明の別な随意の特徴によれば、誘導位置にあるときの調節フラップの第1の端部と、暖気誘導壁との間で測った漏出通路の寸法は5から15ミリメートルの間である。
【0032】
本発明の別の特徴によれば、誘導位置にあるときの調節フラップの第1の端部と、暖気誘導壁との間で測った漏出通路の寸法は8から12ミリメートルの間であって、10ミリメートルであることが有利である。
【0033】
漏出通路の寸法的な特徴は、調節フラップと暖気誘導壁との間に設けられた漏出通路の方へ空気の相当な部分を逸らそうとするデフレクターの存在との組合わせを考慮した場合に特に有利なものである。
【0034】
本発明の別な随意の特徴によれば、当該ハウジングは、第2空気吹出ダクトと第1空気吹出ダクトとの間の接続域の反対側で第2空気吹出ダクトを部分的に画定する冷気誘導壁を備え、調節フラップは、当該調節フラップが誘導する位置にあるときに自らの端縁部が冷気誘導壁に対向して置かれる分枝体を備え、漏出通路の寸法は、調節フラップが誘導する位置にあるときに当該端縁部と冷気誘導壁との間で測った寸法よりも大きい。
【0035】
本発明はまた、暖房、通気、および/または空調システムのための上述したようなハウジングを備えた自動車両であって、第1空気吹出ダクトが当該車両における車室の下方部分内へ開いているのに対して、第2空気吹出ダクトは車室の上方部分内へ開いている、自動車両にも関する。
【0036】
車室の下方部分および上方部分は、かくして鉛直方向(より精確には、自動車両がその上に存在する道路に垂直な方向)に対して表されるものである、ということを理解されたい。従って、上方部分は、特に少なくとも1つのガラスの表面を備えた区域とみなされてよく、下方部分は、特に車両の乗員乗客の足の高さで床に近い区域とみなされてよい。
【0037】
本発明の更なる特徴、詳細、および利点は、添付の模式的な図面を参照して、以下の説明や非限定的な実例として与えられる多くの例示的な実施形態を読み取ることから、よりはっきりと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明による暖房、通気、および/または空調システムのハウジングにおける、制御フラップが暖房位置にあって、当該ハウジングの調節フラップが、下方部分の空気吹出口に向かって気流を誘導するための位置にある形態での断面図。
【
図2】
図1のハウジングにおける、制御フラップが暖房位置にあって、当該ハウジングの調節フラップが、下方部分の上記空気吹出口に向かう気流を遮断するための位置にある形態での断面図。
【
図3】
図1のハウジングにおける、制御フラップが通気位置にあって、当該ハウジングの調節フラップが、下方部分の空気吹出口に向かって気流を誘導するための位置にある形態での断面図。
【
図4】本発明の変形例によるハウジングの、
図3と同様の形態での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の特徴、変形例、および様々な実施形態は、それらが互いに両立しなかったり互いに排他的であったりしないならば、種々の組合せで相互に組み合わされ得る。特に、以下で説明される諸特徴から選択されたものが技術的な利点を与え、および/または先行技術から本発明を区別するに足るのであれば、説明される他の諸特徴とは無関係に、この選択された特徴のみを具備した本発明の変形例を考えることが可能である。
【0040】
また、本明細書で以降用いられる用語「上流(側)」や「下流(側)」は、気流の流通に関するものである。
【0041】
以下の説明において、用語「縦(方向)」、「横(方向)」、「鉛直(方向)」は、それぞれ図面にL、V、Tと印される縦軸線L、横軸線T、および鉛直軸線Vに関するものである。その場合、横方向Tおよび鉛直方向Vは、このハウジングに備え付けられる回動自在な種々のフラップにおける回動の軸線に平行である縦方向に対して垂直となっている。
【0042】
図1は、気流を熱的に処理して、その気流を自動車両の車室に向かって誘導するように設計された暖房、通気、および/または空調システム1のハウジング2を示している。より特定的には、ハウジング2は、車両の車室の方へ差し向けられる気流を熱的に処理するように企図された放熱器4および蒸発器6を収容するように設計されている。
【0043】
ハウジング2は、複数の壁体と複数の可動式フラップとを備えている。それらの壁体は、車室内の各空気吹出口の方向への気流流通ダクトを画成するように構成されている。また、それらのフラップは、いずれかの吹出口の方へ差し向けられるべき気流の量や温度に応じて種々の位置をとるように統制される。
【0044】
各図に示すように、ハウジング2は特に、蒸発器6から互いに平行に伸びて混合域89で合流する主ダクト8と補助ダクト9とを備え、当該補助ダクト9内に放熱器4が定置されている。ハウジング2はまた、主ダクト8と補助ダクト9との接続部の所にある混合域89の下流側に配置された空気吐出ダクトを備えている。それらの空気吐出ダクトには、第1空気吐出ダクト10と第2空気吐出ダクト12とが含まれる。第1空気吐出ダクト10は、自動車両の車室の下方部分に、特に床や車両の乗員乗客の足に近接して配置された第2の空気吹出口へと開いている。第2空気吐出ダクト12は、車室の上方部分に、特に自動車両のガラスの表面の所に配置された第2の空気吹出口へと開いている。ハウジング2は、本発明の範囲を逸脱することなく、混合域の上流側に配置される3つ以上の空気吐出ダクトを備えていてもよい、ということに留意されたい。
【0045】
補助ダクト9は、放熱器4を受け入れるように寸法が決められ、その一面が、そこを通じて当該補助ダクト9へ気流の進入できる空気吸込口を形成している。放熱器4は、補助ダクト9内へと差し向けられた気流が加熱されて、補助ダクト9から暖気流の形態で混合域89内へ出て行くよう、補助ダクト9を横切って配置されている。
【0046】
また、各図で見て取れるように、ハウジングの壁体には、暖気誘導壁18、接続域19、および冷気誘導壁20が含まれる。
【0047】
暖気誘導壁18は、混合域89から車室内への空気吹出口までの第1空気吐出ダクト10を部分的に画定し、この混合域内で接続域19によって延長されている。接続域19は、第1空気吐出ダクト10の口と第2空気吐出ダクト12の口との間を伸びている。空気の通路を空気吐出ダクトの一方や他方へと分けるために、この接続域と対向して調節フラップの一端部が位置することができる。冷気誘導壁20は、主ダクト8と第2空気吐出ダクト12との両方を部分的に画定している。冷気誘導壁20はまた、第2空気吐出ダクト12へ向かう空気の通過を遮断するために可動式フラップの端縁部が対向して位置し得る吸込域を有している。
【0048】
ハウジング2は、主ダクト8内に配置された暖房制御フラップ24を備えている。その制御フラップ24は、少なくとも1つの暖房位置と、通気位置とをとるように構成されている。暖房位置において、その制御フラップ24は、気流が補助ダクト9および放熱器4の方へ差し向けられるのを許容する。また通気位置において、その制御フラップ24は、気流が補助ダクト9を通過することを防止し、主ダクト8を通じて直接的に冷気を混合域の方へ差し向ける。もちろん、暖房制御フラップ24は、気流の一部が放熱器4の方へ差し向けられるのを許容して気流の別の一部が放熱器4を迂回するように強制する中間位置をとってもよい。
【0049】
暖房制御フラップ24は、中央本体26と、自らの向きに応じて気流を遮断するために中央本体から突き出たブレードとを備えている。より特定的にはこの場合、暖房制御フラップは、第1ブレード28と第2ブレード30とを備え、中央本体26上にブレード28,30同士が互いに反対向きに形成されている。中央本体26は、暖房制御フラップ24が暖房位置から通気位置へ移動するための回動軸を形成している。第1ブレード28は、暖房制御フラップ24の位置に応じて、制御フラップが(
図1および
図2に示す)暖房位置にあるときには主ダクト8を横切って、制御フラップが(
図3に示す)通気位置にあるときには補助ダクト9を横切って伸びるように構成されている。第2ブレード30は、暖房制御フラップ24が通気位置にあるときに、補助ダクト9と混合域89との間の通路を遮断することによって、この補助ダクト9内での空気の通過を防止することに寄与する。図示の例においては、第1ブレード28が、当該ブレードを延長することのできる連結式パネル32を備えている。それは、制御フラップ24が通気位置にあるときに放熱器4へ向かう気流の流通を遮断することを容易にするようにである。
【0050】
ハウジング2は、混合域89内、即ち、第1空気ダクト10や第2空気吐出ダクト12の上流側に配置された調節フラップ36をも備えている。その調節フラップ36は、(
図2に示す)第1空気吐出ダクトへ向かう気流を遮断する位置と、(
図1に示す)当該第1空気吐出ダクトへ向かって気流を誘導する位置との間で可動となっている。各図に示すように、調節フラップ36は、一方の位置から他方へ移動するために、縦方向Lと平行な回動の軸線周りに回動することができる。調節フラップ36は、当該遮断位置において気流を遮断することのできる少なくとも1つの分枝体を備えている。
【0051】
より特定的には、図示例において調節フラップ36は、当該調節フラップが周りを回動する回動の軸線を定める本体40と、本体40を半径方向へ延長する互いに略垂直に配置された2つの分枝体とを備えている。それらの分枝体は、本体40とは反対側の第1端部46を備えた第1の分枝体42、および本体40とは反対側の第2端部48を備えた第2の分枝体44である。図示例においては、本発明を限定することなく、各端部46,48が面取りされている。
【0052】
第1の分枝体42はこの場合、誘導位置にあるか遮断位置にあるかの調節フラップ36の位置に応じて、混合域89から第1空気吐出ダクト10へ向かう気流の通過を誘導および/または遮断するのを助ける。
【0053】
第2の分枝体44は、調節フラップが遮断位置にあるときには気流が第1空気吐出ダクト10へ向かうのを防止して第2空気吐出ダクトへ向かって空気を誘導し、調節フラップが誘導位置にあるときには気流が第1空気吐出ダクト10の方へ差し向けられるのを許容して第2空気吐出ダクトへ向かう空気の通過を遮断するように、第2空気吐出ダクト12へ向かう空気の通過を遮断したり許容したりするのを助ける。
【0054】
上記のことから、調節フラップ36、特に分枝体42,44が、本体40によって定められる回動の軸線周りの回動によって一方の位置から他方へ移動する、ということを理解されたい。この回動中に、第1の分枝体42の自由端が、混合域89内に形成された案内路38に沿って移動する。
【0055】
かくして画定される案内路38は、ハウジング2の止め壁50から伸びる弧を成している。止め壁50は混合域89内へと伸びており、調節フラップ36が遮断位置にあるときに第1の分枝体42が、その止め壁50上で止まるか、または止め壁50と向かい合って止まる。
【0056】
より精確には、止め壁50は、主として縦方向に、調節フラップの回動の軸線と平行に伸びて、補助ダクト9と混合域89とを部分的に画定する側壁52からの横方向の突起を形成している。
【0057】
かくして、より特定的には
図2に示すように、調節フラップ36が遮断位置にあるときには、あり得る変形例に応じて、第1の分枝体42の第1端部46が止め壁50と向き合うか、または止め壁50に当たって止まり、第2の分枝体44の第2端部48が、第1空気吐出ダクト10を部分的に画定する暖気誘導壁18と向き合う。対照的に、より特定的には
図1に示すように、調節フラップ36が誘導位置にあるときには、第1の分枝体42の第1端部46が止め壁50から遠ざかって暖気誘導壁18と向き合うのに対して、第2の分枝体44の第2端部48は冷気誘導壁20と向き合う。
【0058】
本発明によれば、ハウジング2は、側壁52を延長するデフレクター54を備えている。そのデフレクター54は、調節フラップ36の案内路38の一部分に沿って伸びるように止め壁50から突き出ている。デフレクター54は、気流を初期の経路から逸らすように構成された要素を備えている。
【0059】
デフレクター54は、止め壁50から突き出て、ここでは主として鉛直方向V(即ち、調節フラップ36の回動の軸線の縦方向と、デフレクターの横方向とに略垂直な方向)に伸びている。この鉛直方向の突起は、デフレクター54が第1空気吐出ダクト10を横切って伸びて、第1空気吐出ダクト10を通る気流の通路断面を縮小するようなものである。
【0060】
図1から
図3に示す実施形態において、デフレクター54と止め壁50とは一体型の組立品を形成している。即ち、デフレクター54が、ハウジング2のこの壁と同じ材料で一体的に形成されている。それらは、一方ないし他方の破壊を伴うことなく互いに分離することができないのである。より概略的には、デフレクターが側壁52の延長によって側壁52と一体的に作られ、止め壁50が側壁とデフレクターとの間の境界を成している。より特定的には、本発明によるハウジング2は、このデフレクター54と共に、ある1つの射出成型プロセスによって獲得され得るが、デフレクターは止め壁50と同時に成型されるのである。
【0061】
デフレクター54は、止め壁に近い基部と、第1空気吐出ダクト10の通路断面を部分的に画定する先端部60とを伴った先細り形状を有している。基部が、先端部の横方向寸法よりも大きい横方向寸法を有しているのである。より特定的には、デフレクターは、交わり合って先端部60を形成する内面56と外面58とを備えている。内面56は、混合域89の方を向いており、調節フラップ36が遮断位置にあるときには、その調節フラップと向かい合っている。外面58は、第1空気吐出ダクト10の方を向いており、先端部の延長において第1空気吐出ダクト10を部分的に画定している。この定義の結果として、止め壁50は、側壁52とデフレクターの内面56との突出部分を形成している。止め壁が、側壁とデフレクターの内面との間で、横向きの境界を形成しているのである。
【0062】
上記で言明したように、デフレクターは、案内路の一部分を辿りつつ、止め壁を越えて側壁を延長している。より特定的には、調節フラップの第1の分枝体の自由端部が辿る案内路38の一部分に亘って、デフレクターの内面56が伸びている。この目的のために、図示の実施形態においては、この内面56が、調節フラップ36の案内路38によって形成される弧に実質的に対応した形状の湾曲を有している。換言すれば、内面56は凹形の形状を有しているが、その凹形の曲率半径が、上述した調節フラップ36の案内路38における弧の半径と実質的に等しくなっているのである。調節フラップ36が案内路38を辿りながら、例えば遮断位置から誘導位置へ通過するときには、第1の分枝体42の第1端部46が、側壁52から突き出たこの止め壁50から、デフレクター54の内面56に沿って進むのである。
【0063】
上記で言明したように、デフレクター54は、止め壁50からの距離が先端部60へ向かって増大するにつれて薄くなる先細り形状を有している。デフレクター先端部を越えて通過する気流に対する妨害(これは、内面と先端部との間が鋭い縁部や突条の場合に発生するかもしれないものである)を引き起こさないように、先端部60は丸められた縁部を有している。
図1から
図3に示す例では、先端部60が概して平坦な形状を有し、この先端部の縁部が(内面56との接続部分において)丸められている。かくして、当該接続部分は、第1空気吐出ダクトへ向かって流れるように企図された気流の一部が第2空気吐出ダクト12の方へ差し向けられるよう、この一部を逸らすように、デフレクター54の形状の急変部分を成してはいるが、第1空気吐出ダクトへ向かって流れ続ける一部の気流は乱流にならないように丸められた縁部を有しているのである。
【0064】
図4に示す変形実施形態において、デフレクターは略三角形の形状を有している。その略三角形の形状は、全体的に丸められた形状を有して内面を外面に連結する(止め壁50に近接して配置された基部とは反対側の)先端部60を伴っている。この変形例では、本発明を限定することなく、デフレクターが(既述のように、案内路の少なくとも一部分に亘って伸びるように企図された)内面と実質的に同一の湾曲の外面を伴った対称形状を有している。
【0065】
図示しない変形実施形態において、ハウジング2は、当該ハウジングやその壁体から独立して(適切な場合には、ハウジングを製造するのに用いられるのとは別個の成型作業によって)製造されたデフレクター54を有していることが可能である。そして、デフレクターが今回はハウジング2と一体を成さないように、止め壁50から突出する側壁52の延長部分に配置される。そのような(複数の順次の製造作業を用いることを伴う)変形例によって、壁体とは異なる材料でのデフレクターの製造が可能となる場合もあり得る。
【0066】
これらの変形例のそれぞれにおいて、デフレクターは、第1空気吐出ダクトへ気流が進入せねばならぬ箇所での、この気流の通過に対する障害物として広がるように企図されている。デフレクターが気流への相当の影響を有するよう、特に車室内に存在する空気の温度の均一化に対して影響を有するよう相当の部分を逸らすようにするため、デフレクターの鉛直方法寸法(即ち、止め壁50とデフレクターの先端部60との間で測ったデフレクターの高さH)が15から25ミリメートルとなっている。より特定的には、そのようなデフレクターの高さHは、20ミリメートル程度であってよい。
【0067】
また、それにもかかわらず、デフレクターが過剰な圧力降下を引き起こすことなく、車室の下方部分内へと開いた空気吹出口に向かって空気が流通できるようにするために、デフレクターの所での第1空気吐出ダクト内の通路断面が、気流の相当量の通過を許容するに足るだけ大きく残されている。より特定的には、第1空気吐出ダクトの通路断面が、デフレクター54と暖気誘導壁18との間における30から50ミリメートルの間の第1寸法D1を有するように、デフレクターが当該第1ダクトを横切って伸びている。
【0068】
上記のことから(下記でより詳細に説明することとなるように)、デフレクター54は、第1空気吐出ダクト10へ向かう気流(特に、暖気流)の通路内に、気流の一部を第2空気吐出ダクトの方へ強制的に差し向けるように配置されている、ということを理解されたい。気流のこの(デフレクターによって逸らされる)一部が第2空気吐出ダクト12へ流れることを可能とするために、調節フラップは次のように寸法が決められている。即ち、調節フラップ36が誘導位置にあるとき、フラップの端部(ここでは、第1の分枝体42の第1端部46)と暖気誘導壁18との間で形成される漏出通路62が形成されるようにである。
【0069】
漏出通路62は、調節フラップ36が誘導位置にあるときに第1の分枝体42の第1端部46と暖気誘導壁18との間で測った第2寸法D2が、5から15ミリメートルの間であるように寸法が決められている。第2寸法D2は、
図1に示すように、第1の分枝体42の主たる大きさ(長さ)の方向の延長において測られる。この第2距離D2は、10mmであることが有利である。この漏出通路62の第2寸法D2は、ハウジングの壁体と調節フラップとの間での(図示の、調節フラップの回動の軸線に垂直な断面における)最小寸法として定義され得る、ということに留意されたい。
【0070】
この漏出通路62は特に、調節フラップと、この調節フラップによって部分的に遮断されるダクトを画定する壁体との間に従来残された作動用の間隙に対しては、過大に寸法が決められている。特に漏出通路62は、調節フラップ36が誘導位置にあるときに第2の分枝体44の第2端部48と冷気誘導壁20との間に残される作動用の間隙に対して、過大に寸法が決められている。この作動用の間隙は、暖房制御フラップ24の位置にかかわらず、主ダクト8からの薄い気流を許容するように設計されている。それは、ガラスの表面の方に向けられた(1つないし複数の)空気吹出口へ継続的に給気して、意図的に曇り取り機能をもたらすためである。漏出通路62の第2寸法D2は、今しがた説明したような作動用の間隙の第3寸法D3よりも大きくなっている。より特定的には、第3寸法D3は1ミリメートルから4ミリメートルの間であってよい。この第3寸法D3は、
図1に示すように、第2の分枝体44の主たる大きさ(長さ)の方向の延長において測られる。
【0071】
第2寸法D2が第3寸法D3よりも大きいという事実によって、調節フラップ36の第2端部48に近接した作動用の間隙によって作り出される通路の所よりも寧ろ、調節フラップ36の第1端部46に近接した漏出通路62の所での気流の交換が促進される。これにより、車両の上方部分(特に、ガラスの表面)に関連付けられた(1つないし複数の)吹出口への、蒸発器出口から間隙を通過する冷気よりも寧ろ、混合域から当該通路を通過する暖気の供給が促進される。上述したような種々の値は、暖房、通気、および/または空調システムの最適な働きを定めるために、本件発明者らによる計算によって得られたものであって、互いに独立して考慮され得るものである。本件発明者らによる計算はまた、ハウジングの寸法にかかわらず当て嵌まる、言及した種々の寸法同士の間の値の比率に関するものでもある、ということに留意されたい。例えば、リフレクターの高さは、説明した範囲内での値とは無関係に、第1空気吐出ダクトの通路断面に対応した第1寸法D1の半分程度の値を有することが有利である。同時に、この(第1空気吐出ダクトの通路断面に対応した)第1寸法D1は、(混合域から第2空気吐出ダクトへ向かう空気漏出通路に対応した)第2寸法D2の値の3倍ないし4倍程度の値を有することが有利であり得る、ということに留意されたい。最後に、この第2寸法D2は、(主ダクトから第2空気吐出ダクトへ向かっての空気の漏出に対応した)第3寸法D3の3倍ないし4倍程度のものであってよい、ということに留意されたい。
【0072】
本発明は、
図1および
図2に示すように暖房制御フラップ24が暖房位置にあるときに特に有利なものである。
【0073】
この状況においては、矢印F1で示すように、外部からやって来て蒸発器6を通過する気流は、暖房位置にある暖房制御フラップ24によって大部分が、放熱器4を収容している補助ダクト9の方へ差し向けられる。気流は、矢印F2で示すように放熱器4を通過することによって加熱されてから、主として側壁52によって差し向けられて補助ダクト9内を混合域89へ向かって流通する。
【0074】
図1に示すように、調節フラップ36が誘導位置にあるとき、放熱器4からの暖気流は、混合域を通過した後、主として第1空気吐出ダクト10の方へ差し向けられる。より特定的には、暖気流は特に、側壁52に沿って進行してから、調節フラップ36の第1の分枝体42、デフレクター54の内面56、および暖気誘導壁18によって画定される通路を通って、矢印F3で示すように流通する。そして暖気流の大部分は、矢印F4で示すように第1空気吐出ダクト10を通って流通する。
【0075】
言明したように、特にデフレクターの存在によって、暖気流の一部が、調節フラップと暖気誘導壁18との間に配置された(第2寸法D2の)漏出通路を、矢印F5で示すように第2空気吐出ダクト12へ向かって流通するように通過する。主ダクト8内の空気と第2空気吐出ダクト12との間の温度差と、調節フラップ36と第1空気吐出ダクト10との間を流通する気流とによって、暖気流の一部が第2空気吐出ダクト12の方へ吸い出される。また、デフレクター54の内面56の凹形の形状によって、暖気流の少なくとも一部の、調節フラップ36の第1端部46へ向かう方向付けが助長される。最後に、調節フラップと冷気誘導壁20との間に存在する作動用の間隙は、漏出通路62の寸法に対して十分に小さくなっている、ということに留意されたい。それは、第2空気吐出ダクトの所で中へ吸い出される空気が、主ダクトからやって来る冷気よりも寧ろ、混合域からやって来て漏出通路62を通過する暖気となるようにするためである。
【0076】
かくして第2空気吐出ダクト12の方へ吸い出される、暖気流の一部によって、第2空気吐出ダクト12を通じて放出される空気と、第1空気吐出ダクト10を通じて放出される空気との間における温度差の減少が促進される。この温度差の減少によって、自動車両の運転者および/または(1人ないし複数人の)乗客の、より良好な温度の知覚が促進されるのである。
【0077】
図2に示すように、調節フラップ36が遮断位置にあるとき、放熱器4からの暖気流は、主として第2空気吐出ダクト12の方へ差し向けられる。より特定的には、暖気流は特に、側壁50に沿って進行してから、調節フラップ36の第1の分枝体42と暖房制御フラップ24とによって画定される空間に向かって、図に矢印F6で示すように流通する。そして暖気流は、冷気誘導壁20と調節フラップ36の第2の分枝体44との間を流通してから、矢印F7で示すように第2空気吐出ダクト12内を流通する。調節フラップのこの位置においては、デフレクターは特定の効果を有していない、ということに留意されたい。
【0078】
図3に示すように暖房制御フラップ24が通気位置に有るときには、デフレクター54の存在と、漏出通路62の寸法とによって、調節フラップ36が
図1に示す状況と同様に空気誘導位置にあるとき、通気用の冷気の一部が、第2空気吐出ダクト12の方へ差し向けられることが可能となる。
【0079】
蒸発器6からやって来る気流は、暖房制御フラップ24が通気位置にあって補助ダクト9への進入を遮断しているときには、大部分が矢印F8で示すように主ダクト8内へと差し向けられる。
【0080】
調節フラップ36が誘導位置(この位置で当該フラップは同時に、車室の上方部分内へと開いた吹出口と関連付けられる第2空気吐出ダクトへの直接的な進入を遮断する)にあるときには、主ダクト内を流通する冷気流が主として第1空気吐出ダクト10の方へ差し向けられる。より特定的には、冷気流は、暖房制御フラップ24と調節フラップ36の第2の分枝体44とによって、矢印F9で示すように混合域89およびデフレクター54の方向に差し向けられる。そして冷気流の大部分が、矢印F10で示すように第1空気吐出ダクト10を通じて流通する。
【0081】
図3に(特に、矢印F11で)示すように、冷気流の一部は、第1の分枝体42の第1端部46と暖気誘導壁18との間に設けられた漏出通路62を通過し、第2空気吐出ダクト12へ向かって流通することができる。上記で特定されてきたように、調節フラップの案内路に沿って伸びるデフレクター54の内面56における凹形の形状と、第1の分枝体42の第1端部46と暖気誘導壁18との間で形成される漏出通路の寸法D2とによって、この一部の気流の形成が促進される。それにより、必要ならばガラスの表面の曇り取り機能をもたらすために、車室の上方部分内へと開いた空気吹出口と関連付けられる第2空気吐出ダクトへの十分な給気が可能となるのである。
【0082】
説明してきたばかりの本発明によって、空気を加熱する局面において、車両の床の所に配置される吹出口と、もっと高く配置される吹出口(例えば、ガラスの表面の所の吹出口など)との間で、車室内へと送り出される空気の温度を均一化することにより、車両の乗員乗客による知覚を改善することが可能となる。この均一化は特に、(車両の床の所に配置された吹出口の方へ空気が差し向けられることを可能とする)第1空気吐出ダクトの入口の所におけるデフレクターの存在によって可能とされている。このデフレクターは、暖房の局面において、もっと高く位置した上方空気吹出口に向かって暖気流の一部を誘導することを可能とするのである。かくして、車室内の空気の温度階層化が弱められ、自動車両の運転者および/または(1人ないし複数人の)乗客による温度のより良好な知覚が促進される。
【0083】
但し本発明は、本明細書で説明されたり例示されたりした手段や構成に限定されるものではなく、本明細書で説明されたり例示されたりした如何なる等価な手段や構成にも及び、また如何なる等価な手段や構成、並びに、それらの手段同士の技術的に機能する如何なる組合せにも及ぶものである。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両の暖房、通気、および/または空調システム(1)のハウジング(2)であって、少なくとも第1空気吹出ダクト(10)および第2空気吹出ダクト(12)を含む複数のダクトを備え、前記第2空気吹出ダクト(12)は前記車両における車室の上方部分内へ開くように構成され、前記第1空気吹出ダクト(10)は前記車両における車室の下方部分内へ開くように構成されており、当該ハウジング(2)は、前記第1空気吹出ダクト(10)へ向かう気流を遮断する位置と、前記第1空気吹出ダクト(10)へ向かって気流を誘導する位置との間で可動な調節フラップ(36)を備え、当該調節フラップ(36)は、案内路(38)に従って一方の位置から他方の位置へ移動し、当該ハウジング(2)は、前記調節フラップ(36)が前記遮断する位置にあるときにその調節フラップ(36)が対向して伸びているところの少なくとも1つの止め壁(50)を備えている、ハウジング(2)において、
前記調節フラップ(36)の前記案内路の一部分に沿って伸びるように前記止め壁(50)から突き出るデフレクター(54)を備えたことを特徴とするハウジング(2)。
【請求項2】
前記デフレクター(54)は、前記調節フラップ(36)が遮断する位置にあるときに当該調節フラップ(36)と対向する内面(56)を備え、この内面(56)は、前記調節フラップ(36)の前記案内路の前記一部分に実質的に対応した形状の湾曲を有している、請求項1に記載のハウジング(2)。
【請求項3】
前記デフレクターは、前記第1空気吹出ダクト(10)を部分的に画定すると共に丸められた縁部を有した先端部(60)を備えている、
請求項1に記載のハウジング(2)。
【請求項4】
前記止め壁(50)と前記デフレクター(54)の前記先端部(60)との間で測った前記デフレクター(54)の寸法が15から25ミリメートルの間である、
請求項3に記載のハウジング(2)。
【請求項5】
前記デフレクター(54)は、前記止め壁(50)からの距離が増えるにつれて薄くなって行く先細り形状を有している、
請求項1に記載のハウジング(2)。
【請求項6】
前記第1空気吹出ダクト(10)は、特に空気通路の他方の側で前記デフレクター(54)に対向して配置された暖気誘導壁(18)によって画定され、前記デフレクター(54)は、前記第1空気吹出ダクト(10)の通路断面が、当該デフレクター(54)と前記暖気誘導壁(18)との間で30から50ミリメートルの間の距離を有するように、前記第1ダクトを横切って伸びている、
請求項1に記載のハウジング(2)。
【請求項7】
前記デフレクター(54)と前記止め壁(50)とが一体型の組立品を形成している、
請求項1に記載のハウジング(2)。
【請求項8】
前記第1空気吹出ダクト(10)を部分的に画定する暖気誘導壁(18)を備え、前記調節フラップ(36)は、当該調節フラップが前記気流を誘導する位置にあるときに当該調節フラップ(36)と前記暖気誘導壁(18)との間に漏出通路(62)が設けられることで前記気流の一部が前記第2空気吹出ダクト(12)へ向かって通過することが可能となるよう前記ハウジング内に収容されている、
請求項1に記載のハウジング(2)。
【請求項9】
前記第2空気吹出ダクト(20)と前記第1空気吹出ダクト(18)との間の接続域(19)の反対側で前記第2空気吹出ダクト(12)を部分的に画定する冷気誘導壁(20)を備え、前記調節フラップ(36)は、当該調節フラップが前記誘導する位置にあるときに自らの端縁部(48)が前記冷気誘導壁(20)に対向して置かれる分枝体(44)を備え、前記漏出通路(62)の寸法(D2)は、前記調節フラップ(36)が誘導する位置にあるときに前記端縁部(48)と前記冷気誘導壁(20)との間で測った寸法(D3)よりも大きい、
請求項6に記載のハウジング(2)。
【請求項10】
暖房、通気、および/または空調システム(1)のための
請求項1から9のいずれか一項に記載のハウジング(2)と、ガラスの表面と、車室とを備えた自動車両であって、前記第1空気吹出ダクト(10)が当該車両における前記車室の下方部分内へ開いているのに対して、前記第2空気吹出ダクト(12)は前記車室の上方部分内へ開いている、自動車両。
【国際調査報告】