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特表2024-531363Cav3.1遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】Cav3.1遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240822BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61P25/08
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509506
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 KR2022012269
(87)【国際公開番号】W WO2023022504
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0108274
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596071752
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】キム,デス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジングク
(72)【発明者】
【氏名】イ,イェウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミンソン
(72)【発明者】
【氏名】イ,シンジョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,スジン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA12
4C086ZA22
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、多様なT型カルシウムチャネルのα1Gサブユニット関連疾患を治療するためのものであって、より具体的には、配列番号1を標的とする、Cav3.1をコードする遺伝子の発現抑制用アンチセンスオリゴヌクレオチド及びそのパーキンソン病、てんかん、本態性振戦、うつ病、不安障害、及び意識不明を含む多様な神経精神疾患の治療のための用途を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示される核酸配列を標的とする、Cav3.1をコードする遺伝子の発現抑制用アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号1で示される核酸配列とハイブリダイズ可能な核酸分子であって、11~30ntの長さを有する、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記DNA、RNAまたはDNA/RNAキメラ核酸分子である、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号20または配列番号21の核酸配列を含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
ホスホジエステル(PO)骨格の一部または全部が、ホスホロチオエート(PS)、ホスホロジチオエートまたはメチルホスホン酸で置換されている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
糖部分の2’-OHの一部または全部が改変されている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
糖部分の2’-OHが、-O-CH(-OMe)、-O-CH-CH(-OEt)、-O-CH-CH-O-CH(-MOE)、-O-CH-CH-CH-NH、-O-CH-CH-CH-OH、-OFまたは-Fで置換されている、請求項6に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
糖部分に追加的な環が形成されたヌクレオチド類似体を少なくとも1つ以上含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
ヌクレオチド類似体がロック核酸(LNA)である、請求項8に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
ヌクレオチド類似体が、全ヌクレオチドのうち少なくとも33%である、請求項8に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
ギャップマーである、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
ギャップマーが、両末端に3-7ntの長さのRNAユニットおよび前記RNAユニットの間に存在する8-12ntの長さのDNAを含む核酸分子である、請求項11に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
RNAの一部または全部がLNAである、請求項12に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、パーキンソン病治療用薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、うつ病治療用薬学的組成物。
【請求項16】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、本態性振戦治療用薬学的組成物。
【請求項17】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、てんかん治療用薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、不安障害治療用薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、意識不明状態回復用薬学的組成物。
【請求項20】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドをパーキンソン病を病んでいる個体に投与する段階を含む、前記個体のパーキンソン病の治療方法。
【請求項21】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドをうつ病を病んでいる個体に投与する段階を含む、前記個体のうつ病の治療方法。
【請求項22】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを本態性振戦を病んでいる個体に投与する段階を含む、前記個体の本態性振戦の治療方法。
【請求項23】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドをてんかんを病んでいる個体に投与する段階を含む、前記個体のてんかんの治療方法。
【請求項24】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを不安障害を有した個体に投与する段階を含む、前記個体の不安障害の治療方法。
【請求項25】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを意識不明状態の個体に投与する段階を含む、前記個体の意識回復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアンチセンスオリゴヌクレオチド及びその使用に関し、より具体的には、パーキンソン病、本態性振戦、てんかん、うつ病、意識不明などの疾患の治療に効率的なCav3.1遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、脳幹の中央に存在する脳黒質のドーパミン系神経が破壊されることにより、動きに障害が表われる疾患を意味する。ドーパミンは、脳の基底核に作用して我々が所望のとおりに体を精巧に動くようにする重要な神経伝達系物質であって、パーキンソン病の症状は、脳黒質緻密部のドーパミン系神経が60~80%程度消失された後に明確に表われ、病理検査を施行すれば、脳と末梢神経との多様な部位に発病性αシヌクレインタンパク質が沈着されて生じたレビー小体を確認することができる。パーキンソン病は、アルツハイマー病に次ぐ平凡な退行性脳疾患であって、60歳以上で1%の有病率を示し、年を取るほど発病率が増加する。
【0003】
パーキンソン病の核心的または古典的運動特性には、運動緩慢症、震え、及び硬直が含まれるが、歩行及び均衡、眼球運動調節、言語及び飲み込み、膀胱調節などの変化など他の多くの運動関連の症状がある。パーキンソン病患者で運動緩慢症は、運動振幅、運動速度及び運動開始の困難の減少として表われる。眼球筋肉(断続運動開始を遅らせる結果)、言語筋肉(さらに柔らかくなり、時には不明な言語に繋がる)、四肢筋肉(手先の器用さ減少に繋がる)を含む多くの筋肉グループの自発的な制御に影響を及ぼしうる。患者は、ボタン押し、書き込み及びツールの使用のような微細運動作業の困難を訴えるが、震えは、可変的である。全部ではないが、ほとんどの患者は、震えの症状を有する(McGregor1,2 and Alexandra B.Nelson1,Neuron 101:1042-1056,2019)。
【0004】
病因と関連して、パーキンソン病は、全体患者の5~10%のみ遺伝によって発生し、その他のほとんどは、特発性であって、パーキンソン病の環境的要因についての研究では、1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)、殺虫剤(ロテノン、パラコート)、重金属(マンガン、鉛、銅)、一酸化炭素、有機溶媒、微量金属原素などの毒素露出、頭部損傷などの要因をパーキンソン病の発病原因として指摘されている。
【0005】
脳黒質のドーパミン系神経が破壊される原因は、まだ正確に知られていない。
【0006】
1960年代の後半から現在までパーキンソン病の治療には、レボドパが利用され始めたが、これは、治療の画期的な開始であるだけではなく、いまだに抗パーキンソンの効果が最も大きな薬物として認められている。現在、適切な薬物治療に助けられて、パーキンソン病患者は、相当期間良質の生を保持することができ、死亡率は減少した。しかし、レボドパの長期治療は、病気の進行と共に多くの問題を起こす。すなわち、レボドパ使用以後、6年以上経過すれば、約75%の患者は、運動変動(motor fluctuation)、異常運動症及び他の合併症を経験する(Im et al.,J.Korean Neurol.Assoc.19(4):315-336,2001)。
【0007】
最近、本発明者らによって、大脳の淡蒼球(globus pallidus)からの抑制性基底核入力(basal ganglia input)を光遺伝学的光刺激させる場合、腹側視床ニューロン(ventrolateral thalamic neuron)で活性電位と抑制-後の期間の間に筋肉収縮を誘導し、このような活性電位と筋肉収縮は、T型カルシウムチャネルの腹側視床での局所的ノックアウトによる抑制-後の反発性撃発(rebound firing)を示す神経集団の減少によって減少すると確認することにより、T型カルシウムチャネルとパーキンソン病の病理現象との相関関係を究明した(Kim et al.,Neuron 95:1181-1196,2017)。
【0008】
電圧依存性カルシウムチャネルは、神経細胞の活性によって細胞内のカルシウム濃度を増加させる役割を行うが(Tsien,R.W.,Annu.Rev.Physiol.45:341-358,1983)、電圧依存度によって高電圧依存性(high-voltage dependent)及び低電圧依存性(lowvoltage dependent)チャネルに分類される(Tsien,R.W.et al.,Trends Neurosci.18,52-54,1995)。T型カルシウムチャネルは、代表的な低電圧依存性カルシウムチャネル(low votage-gated calcium channel)であって、哺乳類では、α1サブユニット(subunit)に対する遺伝子型によってCav3.1(α1G)、Cav3.2(α1H)、及びCav3.3(α1I)の3種が存在する(Perez-Reyes,E.,Physiol.Rev.83:117-161,2003)。そのうち,α1Gカルシウムチャネルは、視床核で神経細胞の多発性発火(burst firings)の生成に関与し、最近、重要な病理学的な機能が明らかになった(Kim,D.et al.,Science 302,117-119,2003;Kim,D.et al.,Neuron 31:35-45,2001)。α1Gカルシウムチャネルと関連した病理現象としては、腹痛(大韓民国特許第868735号)、癲癇(大韓民国特許第534556号)、不安障害(大韓民国特許第958291号)、ドラベ症候群(大韓民国公開特許公報第10-2019-0139302号)、非可逆的脳損傷による前頭葉機能障害(大韓民国公開特許公報第10-2013-0030011号)、神経因性疼痛(Choi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、113(8):2270-2275,2016;WO2006064981A1)、アンジェルマン症候群(Angelman syndrome)及び/またはプラダー・ウィリ症候群(Prader-Willi syndrom)(WO2017070680A1)、うつ病(CN108853510A)、リウマチ性関節炎(WO2020203610A1)、集中力障害(大韓民国特許第1625575号)、糖尿病(CN10264172A)及び本態性振戦(大韓民国特許第958286号)などが存在する。おもしろい点は、Cav3.1 T型カルシウムチャネルがノックアウトされた形質転換マウス(Cav3.1-/-)の場合、致死性ではなく、表面上としては、正常に発達するという点である。
【0009】
このような病理学的症状を改善するためには、T型カルシウムチャネルの機能を遮断する薬物が必要であるが、次のような問題点がある。第1に、エトスクシミドを含む多様なT型カルシウムチャネル遮断剤が前述した3種のT型カルシウムチャネルの間の高い相同性によってCav3.1のみ選択的に抑制しにくい。第2に、臨床でZrotinという商標で使用中であるエトスクシミドの場合、神経信号を作り出すが、重要な電圧依存性Naチャネル及びKチャネルも抑制し(Leresche et al.,J.Neurosci.18(13):4842-4853,1998)、頭痛、めまい、嘔吐などの副作用が知られている。第3に、カルシウムチャネルの構造的類似性によってカルシウムチャネル抑制剤がNタイプ、P/Qタイプのような他種のカルシウムチャネルに対する交差作用が発生するが、Nタイプ、P/Qタイプチャネルは、あらゆる神経で神経伝達物質の分泌に重要なので、遮断する場合、脳機能及び生命に重大な支障を招く。第4に、Cav3.1チャネルに選択的に作用する遮断剤であるとしても、心臓神経で発現されるCav3.1の機能を妨害して心臓機能に異常を招く恐れがある(Mangoni et al.,Circ.Res.98:1422-1430,2006)。
【0010】
このような理由で、Cav3.1遺伝子のみを標的とするsiRNAやshRNAのような核酸分子基盤の薬物も開発されているが、これらは、レンチウイルスのような別途のベクターに導入しなければならず、定位注入装置(stereotaxic injector)のような非常に侵襲的な装置を用いて局所的に正確に必要とする脳部位に注入を要するなど、実際の臨床に適用するには大きな問題点を有している。
【0011】
これにより、α1G T型カルシウムチャネル(Cav3.1)のみを選択的に抑制しながら、他の副作用のない新たな種類の薬物を開発する必要性が切実な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述したさまざまな問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、より効率的にα1G T型カルシウムチャネルの発現を抑制することにより、パーキンソン病のようなα1G T型カルシウムチャネルの抑制によって治療が可能な薬物を提供することである。しかし、このような課題は、例示的なものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によれば、配列番号1で示される核酸配列を標的とするCav3.1遺伝子発現抑制用アンチセンスオリゴヌクレオチドが提供される。
【0014】
本発明の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含むパーキンソン病治療用薬学的組成物が提供される。
【0015】
本発明の他の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含むうつ病治療用薬学的組成物が提供される。
【0016】
本発明の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含む本態性振戦治療用薬学的組成物が提供される。
【0017】
本発明の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含むてんかん治療用薬学的組成物が提供される。
【0018】
本発明の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含む不安障害治療用薬学的組成物が提供される。
【0019】
本発明の他の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含む意識不明状態回復用薬学的組成物が提供される。
【0020】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドをパーキンソン病を病んでいる個体に投与する段階を含む前記個体のパーキンソン病の治療方法が提供される。
【0021】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドをうつ病を病んでいる個体に投与する段階を含む前記個体のうつ病の治療方法が提供される。
【0022】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを本態性振戦を病んでいる個体に投与する段階を含む前記個体の本態性振戦の治療方法が提供される。
【0023】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドをてんかんを有した個体に投与する段階を含む前記個体のてんかんの治療方法が提供される。
【0024】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを不安障害を有した個体に投与する段階を含む前記個体の不安障害の治療方法が提供される。
【0025】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを意識不明状態にある個体に投与する段階を含む前記個体の意識回復方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、従来のT型チャネル遮断剤とは異なって、Cav3.1遺伝子の発現のみ特異的に抑制するだけではなく、生体内投与時に、副作用がほとんどなくて、Cav3.1活性と関連した多様な疾患、例えば、パーキンソン病、神経因性疼痛、集中力障害、不安障害などの疾患の治療に非常に効率的に使われる。しかし、本発明の効果が、前述した内容に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの標的であるcacna1g遺伝子の同型体13のゲノムDNA構造とそれを標的に考案されたアンチセンスオリゴヌクレオチド候補の標的位置とを示すゲノム地図である。
図2】本発明の一実施例によって製造されたアンチセンスオリゴヌクレオチドであるギャップマー(gapmer)の構造と使われた改変の種類とを概略的に示す概要図である。
図3】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド候補を細胞に形質感染させた時、cacna1g遺伝子のノックダウン効率を示すグラフである。
図4】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド候補を細胞に処理時に、処理濃度によるcacna1g遺伝子の発現抑制程度を比較した結果を示すグラフである。
図5A】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの毒性及び生体内cacna1g遺伝子の発現調節能力を分析するための実験スケジュールを概略的に示す概要図である。
図5B】本発明の一実施例による8種のアンチセンスオリゴヌクレオチド候補を実験動物に投与後、7日経過時までの生存率を示すグラフである。
図5C】前記実験動物から摘出された脳でのcacna1g遺伝子の発現程度をqRT-PCRで測定した結果を示すグラフである。
図6A】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドのCav3.2に対する交差反応有無を測定するために行われたqRT-PCR分析結果を示すグラフである。
図6B】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドのCav3.3に対する交差反応有無を測定するために行われたqRT-PCR分析結果を示すグラフである。
図7A】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドのパーキンソン病の治療効果を検証するための動物実験スケジュールを示す概要図である。
図7B】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与1週間経過後、行われた開放場検査で側方回転移動距離を測定した結果を示すグラフである。
図7C】前記開放場検査で移動距離を測定した結果を示すグラフである。
図7D】前記開放場検査で移動速度を測定した結果を示すグラフである。
図7E】前記動物実験で本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与1週間経過後、1日間隔で5日間加速ロータロッド検査を行って測定された墜落時までの経過時間を測定した結果を示すグラフである。
図7F】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの作用機序を確認するために行われた組織化学分析の結果を示す一連の図面である。
図8A】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの本態性振戦の治療効果を検証するための動物実験スケジュールを示す概要図である。
図8B】本態性振戦による震えの症状の測定のための装置を概略的に示す概要図である。
図8C】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与時に、震え症の程度をスペクトログラム(spectrogram)の形態で測定した結果を示す図面である。
図8D】前記図8Cの結果を定量化して示す一連のグラフであって、左側は、震え期間を測定した結果であり、右側は、経時的な震えの強度を定量化して示したものである。
図9A】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの慢性的・持続的ストレスによるうつ病に対する治療効果を検証するための社会的ストレスによるうつ病動物実験スケジュールを示す概要図である。
図9B】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与後、5日目から10日間の社会的ストレスを与える過程と17日経過後、行われた慢性社会的うつ病(social defeat stress-induced depression)の検査方法を概略的に示す概要図である。
図9C】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与時に、慢性うつ病の尺度を定量化して示す一連のグラフであって、左側は、Cav3.1 mRNA発現程度をqRT-PCRで定量化して示したものであり、中央は、社会的相互作用時間を測定して示したものであり、右側は、社会性指数を測定して示したものである。
図10A】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの短期間急性ストレスによるうつ病に対する治療効果を検証するための強制水泳動物実験スケジュールの概要図である。
図10B】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与時に、強制水泳による急性うつ病の尺度を定量して示すグラフであって、左側は、Cav3.1 mRNA発現程度をqRT-PCRで定量化して示したものであり、右側は、ストレス程度の尺度である不動時間(immobility time)を測定した結果を示す。
図11A】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドのてんかんの治療効果を検証するための動物実験スケジュールを示す概要図であって、アンチセンスオリゴヌクレオチド投与12日経過後、脳電図(EEG)探針挿入術を行い、14日目に欠神発作を誘導するGBL(70mg/kg)を処理前後30分間EEGを測定する実験過程を示す。
図11B】前記実験動物で本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与時に、EEG測定結果、欠神発作-特異的なEEG波長帯でSpike and wave discharge(SWDs)の減少程度を定量化して示す一連のグラフであって、左側は、SWDの持続期間を示し、SWD総時間を示し、右側は、SWDの回数を示す。
図12A】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの麻酔剤であるアバチンによる意識喪失に対する治療効果を検証するための動物実験スケジュールを示す概要図である。
図12B】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与時に、アバチンによる意識消失後、回復までの時間(LORR:Loss of Righting Reflex)を測定して意識消失の治療効果を検証した結果を示すグラフである。
図12C】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドのエタノール処理後、覚醒効果を検証するためのさらに他の動物実験スケジュールを示す概要図である。
図12D】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与時に、低濃度のエタノールによる覚醒程度を測定して意識消失の治療効果を検証した結果を示す一連のグラフであって、左側は、実験動物の速度を測定した結果であり、中央は、実験動物の移動距離を測定した結果を示し、右側は、実験動物の回転頻度を測定した結果を示す。
図12E】高濃度(3.5g/kg)のエタノールを処理した後,意識消失に至るまでかかる時間(LORR latency)を測定して示すグラフである。
図13A】本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)の標的配列近隣を標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドを利用した動物実験スケジュールを概略的に示す概要図である。
図13B】本発明の一実施例による多様なアンチセンスオリゴヌクレオチド投与後、7日経過時まで実験動物の生存率を測定して示すグラフである。
図13C】本発明の一実施例による多様なアンチセンスオリゴヌクレオチド投与後、7日経過時に、実験動物を犠牲にして摘出した脳でCav3.1の発現程度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
用語の定義:
本明細書で使われた用語「オリゴヌクレオチド」は、天然ホスホジエステル連結によって共に連結される天然核酸塩基(nucleobase)及びペンタフラノシル基(糖)形成ヌクレオシドから形成されるポリヌクレオチドを意味する。したがって、用語「オリゴヌクレオチド」は、天然種または天然亜単位またはこれらの密接な相同体から形成される合成種を称する。
【0029】
本明細書で使われる用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチド、望ましくは、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)またはDNAとRNAとが混在されたDNA/RNAハイブリッド核酸分子をいずれも含む概念である。本用語は、単に分子の1次構造に関するものである。したがって、この用語は、二本鎖または一本鎖DNA及び二本鎖または一本鎖RNAを含む。
【0030】
また、用語「オリゴヌクレオチド」は、天然型ではない人工型であって、天然オリゴヌクレオチドの機能と類似した機能を行う部分を含む。オリゴヌクレオチドは、糖部分、核酸塩基部分または改変されたヌクレオチド間の連結を有しうる。可能な改変のうち、望ましい改変は、糖部分の2’-O-アルキル誘導体、特に、2’-O-エチルオキシメチルまたは2’-O-メチル、及び/またはヌクレオチド間の骨格に対するホスホロチオエート、ホスホロジチオエートまたはメチルホスホン酸である。
【0031】
本明細書で使われる用語「ヌクレオシド間結合基」という用語は、2個のヌクレオシド、例えば、DNAユニット間、DNAユニットとヌクレオチド類似体間、2個の非LNAユニット間、非LNAユニットとLNAユニット間、2個のLNAユニット間など2個のヌクレオシドを共有結合させることができる基を意味する。天然型核酸分子には、このようなヌクレオシド間結合基としてホスホジエステルが使われるが、このようなホスホジエステルは、前述したように、ホスホロチオエートのような類似した結合で置換が可能である。このような結合基は、下記のような構成の群から選択される何れか1つまたはそれ以上である:-O-P(O)-O-、-O-P(O,S)-O-、-O-P(S)-O-、-S-P(O)-O-、-S-P(O,S)-O-、-S-P(S)-O-、-O-P(O)-S-、-O-P(O,S)-S-、-S-P(O)-S-、-O-PO(R)-O-、O-PO(OCH)-O-、-O-PO(NR)-O-、-O-PO(OCHCHS-R)-O-、-O-PO(BH)-O-、-O-PO(NR)-O-、-O-P(O)-NR-、-NR-P(O)-O-、-NR-CO-O-、-NR-CO-NR-、-O-CO-O-、-O-CO-NR-、-NR-CO-CH-、-O-CH-CO-NR-、-O-CH-CH-NR-、-CO-NR-CH-、-CH-NR-CO-、-OCH-CH-S-、-S-CH-CH-O-、-S-CH-CH-S-、-CH-SO-CH-、-CH-CO-NR-、-O-CH-CH-NR-CO-、-CH-NCH-O-CH-(ここで、Rは、水素または炭素数1~4のアルキル基である)。
【0032】
本明細書で使われる用語「標的とする」は、特定の核酸配列と相補的にハイブリダイズすることができるということを意味する。
【0033】
本明細書で使われる用語「ハイブリダイズすることができる」、「ハイブリッド化することができる」、「ハイブリダイズ」または「ハイブリッド化」は、通常、二重螺旋デュープレックスまたはトリプレックス(オリゴヌクレオチドが二本鎖からなる場合)を形成するように2本の鎖の核酸に、相補的塩基の間のワトソン・クリック(Watson-Crick)結合としても公知された、水素結合の形成を意味するために使われる。
【0034】
本明細書で使われる用語「Cav3.1をコードする遺伝子」は、T型カルシウムチャネルのα1Gサブタイプをコードする遺伝子のイントロンとエキソンとを含むcacna1gのゲノム配列を意味する。前記cacna1g遺伝子は、ヒトの場合、染色体17上に存在し、NCBI Reference Sequence:NC_000017.11基準に66,760bpのサイズを有すると知られている。
【0035】
本明細書で使われる用語「Cav3.1をコードする遺伝子の生成物」は、cacna1gゲノム配列で転写されて生成されるmRNA配列を意味する。前記mRNAは、スプライシングが起こる前、そして、スプライシングが起こった後、いずれもを含みうる。
【0036】
本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、望ましくは、Cav3.1をコードする遺伝子またはその生成物と特異的にハイブリダイズする。本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Cav3.1をコーディングする遺伝子のDNA及び/またはこれらの遺伝子から誘導されるmRNAとハイブリダイズすることができる。特に、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Cav3.1をコードするmRNAでイントロン37及びエキソン38部位を含む配列番号1で示される核酸配列を標的とする。すなわち、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、位置のみ適切であれば、スプライシング前またはスプライシング後のCav3.1をコードするmRNAのいずれもとハイブリダイズすることにより、Cav3.1の発現を抑制することができる。本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズするのに十分に同じヌクレオチドを含む。
【0037】
本明細書で使われる用語「特異的ハイブリダイゼーション」は、特に、特異的固定(fixation)が必要な条件下で非標的された配列にオリゴヌクレオチドの非特異的固定を避けるように十分な程度の相補性があるということを意味する。オリゴヌクレオチドが特異的にハイブリダイズする標的核酸配列と100%相補的である必要はない。特に、少なくとも約80%の相補性程度を有するオリゴヌクレオチドが、標的物として選択された核酸と特異的にハイブリダイズすることができる。
【0038】
本明細書で使われる場合、「LNAユニット」、または「LNAモノマー」、「LNA残基」、「ロック核酸ユニット」、「ロック核酸モノマー」または「ロック核酸残基」という用語は、二重環ヌクレオシド類似体を意味する。LNAユニットは、WO1999014226A、WO2000056746A、WO2000056748A、WO200125248A、WO2002028875A、WO2003006475A及びWO2003095467Aに詳しく記載されている。LNAユニットは、またその化学式と定義されうる。したがって、本発明に使われたような「LNAユニット」は、その化学式が下記の構造式で表われる化合物を意味する:
【化1】
(構造式1a)または
【化2】
(構造式1b)
(前記構造式において、Xは、O、S及びNRで構成される群から選択され、前記Rは、Hまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Yは、CHである)。
前記構造式1a及び構造式1bにおいて、Xが、Sである場合、「チオLNAユニット」と称され、Xが、NRである場合、「アミノLNAユニット」と称され、Xが、Oである場合、「オキシLNAユニット」と称される。
【0039】
本明細書で使われる用語「ギャップマー(gapmer)アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、ジムノシス(gymnosis)と称される過程によって形質感染製剤なしにも、細胞内に吸収されてRNase H活性化誘導によって標的mRNA発現を妨害する、両末端のLNA配列の間に中央DNA配列を含む短い一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドを意味する(Hvam et al.,Mol.Ther.25:1710-1717,2017)。したがって、一種のRNAであるLNAとDNAとが連結された一種のハイブリッド核酸分子である。両末端のLNAは、ヌクレアーゼに対する抵抗性と標的配列に対する高い親和度とを有させ、内部のDNA配列は、DNA/RNAハイブリッド(hybrid)でRNA特異的分解を誘導するRNase H活性化部位として作用する。通常、両末端のLNAは、3~5ntの長さを有し、中央のDNAは、10nt程度の長さを有する。但し、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの両末端のRNAは、塩基としてウラシル(U)の代わりに、チミン(T)を使用することができる。
【0040】
発明の詳細な説明:
本発明の一観点によれば、配列番号1を標的とする、Cav3.1をコードする遺伝子の発現抑制用アンチセンスオリゴヌクレオチドが提供される。
【0041】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1で示される核酸配列とハイブリダイズ可能な核酸分子であって、例えば、11~30ntまたは12~29ntの長さを有しうる。望ましい実施形態において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、13~28ntの長さを有するが、さらに望ましくは、14~27nt、15~26nt、16~25nt、17~24nt、18~23ntまたは19~22ntの長さを有しうる。さらに具体的には、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ntの長さを有しうる。
【0042】
本発明の一実施例による前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、7~30ntの長さを有する核酸分子である。前記配列番号1で示される核酸配列は、Cav3.1をコードする遺伝子のエキソン38とこれと隣接したイントロン37の3’末端の一部とを含む。望ましくは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号20または配列番号21で示される核酸配列を含み得る。
【0043】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッド核酸分子であり、ホスホジエステル(PO)骨格の一部または全部が他の形態、例えば、ホスホロチオエート(phosphorothioate、PS)、ホスホロジチオエート(phosphoro dithioate)またはメチルホスホン酸(methylphosphonate)で置換されたものであり、糖部分の2’-OHの一部または全部が改変されていてもよく、このような2’-OHの改変の例としては、-O-CH(-OMe)、-O-CH-CH(-OEt)、-O-CH-CH-O-CH(-MOE)、-O-CH-CH-CH-NH、-O-CH-CH-CH-OH、-OFまたは-Fで置換されたヌクレオチド類似体が含まれる。
【0044】
選択的に、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、糖部分が改変されたヌクレオチド類似体、例えば、また、糖部分に追加的な環が形成された、いわゆるLNA(locked nucleic acid)ユニットを含みうる。前記LNAは、前述した通りである。全体ヌクレオチドのうち少なくとも約30%は、ヌクレオチド類似体であり、例えば、少なくとも約33%、例えば、少なくとも約40%、例えば、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、例えば、少なくとも約66%、例えば、少なくとも約70%、例えば、少なくとも約80%、または少なくとも約90%がヌクレオチド類似体である。本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド類似体配列のみからなるヌクレオチド塩基配列からなりうる。
【0045】
このようなオリゴヌクレオチドの骨格及び糖部分の改質は、標的配列とのハイブリダイゼーションの安定性を高めるか、体内で核酸分解酵素などによって分解されることにより、体内半減期が顕著に減少する現象を抑制して薬物安定性及び薬物動態学的特性を改善するためである。
【0046】
本発明の望ましい改変にはキメラオリゴヌクレオチドが含まれる。オリゴヌクレオチドは、少なくとも2個の化学的に異なる領域(それぞれ1つ以上のヌクレオチドを含む)を含む。特に、これらは、1つ以上の有利な特性、例として、より優れた生物学的安定性、増加した生物学的利用性、増加した細胞耐火または標的RNAに対する親和性の増加を付与する改変されたヌクレオチドを含む1つまたは数個の領域からなる。
【0047】
同じ長さを有する2個の配列の核酸の間の相補性の程度は、2個の配列を整列した後、第1配列と第2配列とに相補的な配列を比較することで決定される。相補性の程度は、ヌクレオチドが比較される2個の配列の間で同じ位置の数を決定し、同じ位置の数を位置の総数で割り、得た結果に100を乗算して、これらの2個の配列間の相補性の程度を得るように計算される。
【0048】
本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ギャップマーであり、前記ギャップマーは、両末端に3~5ntの長さのRNAユニットとLNAとの間に存在する8~12ntの長さのDNAを含む核酸分子である。この際、前記RNAユニットは、少なくとも1つ以上のLNAを含みうる。
【0049】
本発明の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含むパーキンソン病治療用薬学的組成物が提供される。
【0050】
パーキンソン病とCav3.1との相関関係は、先行文献によく記述されている(Park et al.,Front.Neural Circuits,7:172,2013;Rubit et al.,Eur.J.Neurosci.,36(2):2213-2228,2012;Xiang et al.,ASC Chem.Neurosci.2(12):730-742,2012)。その上に、本発明者らは、Cav3.1、特に、イントロン37-エキソン38を含む領域に特異的に結合してCav3.1の発現を抑制しながらも、他の副作用のない本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、パーキンソン病モデル動物の異常筋肉症状を顕著に緩和させることができるということを実験的に立証した。したがって、Cav3.1の発現を特異的に抑制することができる本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、パーキンソン病の治療において、非常に効率的な治療剤になりうる。
【0051】
本発明の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含むうつ病治療用薬学的組成物が提供される。
【0052】
最近の研究結果によれば、T型カルシウムチャネルが不安-関連行動と相関関係があるという報告がある。具体的に、T型カルシウムチャネルが開かれる場合、不安-関連行動が誘導され、逆に、T型カルシウムチャネル遮断体の投与時に、不安症状が減少すると報告された(Kaur et al.,J.Basic Clin.Physiol.Pharmacol.,31(3):20190067,2020)。それだけではなく、本発明者らは、Cav3.1遺伝子が的中された形質転換マウスでうつ病関連症状が緩和されるということを実験的に確認した。したがって、Cav3.1遺伝子を標的とする本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、うつ病の治療にも使用が可能である。それだけではなく、本発明者らは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、うつ病の治療に効果的であるということを動物実験を通じて立証した。
【0053】
本発明の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含む本態性振戦治療用薬学的組成物が提供される。
【0054】
本発明者らは、Cav3.1(T型カルシウムチャネルのα1Gサブユニット)を特異的に抑制することにより、本態性振戦を治療することができるということを究明した(大韓民国特許第958286号)。したがって、本発明の一実施例によるCav3.1の発現を特異的に抑制することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本態性振戦の治療に使われる。また、本発明者らは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、本態性振戦の治療に使用可能であるということを動物実験を通じて立証した。
【0055】
本発明の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含むてんかん治療用薬学的組成物が提供される。
【0056】
T型カルシウムチャネルを特異的に抑制するT型カルシウムチャネル遮断剤が視床の急発火を減少させ、それにより、発作症状を抑制すると知られている(Powell et al.,Br.J.Clin.Pharmacol.,77:729-739,2014;Casillas-Espinosa et al.,PLoS One,10:30130012,2015)。したがって、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、てんかんの治療に使用が可能である。それだけではなく、本発明者らは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、癲癇、すなわち、てんかんの治療に使用可能であるということを動物実験を通じて立証した。
【0057】
前記薬学的組成物において、前記てんかんは、欠神発作である。
【0058】
本発明の他の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含む不安障害治療用薬学的組成物が提供される。
【0059】
本発明者らは、不安障害モデル動物であるホスホリパーゼβ4(Phospholipaseβ4、PLCβ4)の遺伝子がノックアウト(knock-out)されたマウスにT型カルシウムチャネル選択的遮断剤であるミベフラジルを投与する場合、前記マウスで低下した記憶消滅能力が正常に戻り、ミベフラジル及びエホニジピン(efonidipine)を正常マウスのMDに投与すれば、前記マウスで恐怖記憶が早く消滅し、前記消滅した記憶の回想能力が減少することを確認した(大韓民国特許第958291号)。したがって、本発明の一実施例によるCav3.1の発現を特異的に抑制することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、不安障害の治療に使われる。
【0060】
本発明の他の一観点によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含む意識不明状態回復用薬学的組成物が提供される。本発明の発明者らは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドを意識不明が誘導された実験動物に投与する場合、意識回復が促進されるということを実験的に立証した。したがって、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、昏睡状態を含めた意識不明状態にある患者の意識の回復のための薬物として使用が可能である。
【0061】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドをパーキンソン病を病んでいる個体に投与する段階を含む前記個体のパーキンソン病の治療方法が提供される。
【0062】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドをうつ病を病んでいる個体に投与する段階を含む前記個体のうつ病の治療方法が提供される。
【0063】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを本態性振戦を病んでいる個体に投与する段階を含む前記個体の本態性振戦の治療方法が提供される。
【0064】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドをてんかんを病んでいる個体に投与する段階を含む前記個体のてんかんの治療方法が提供される。
【0065】
前記方法において、前記てんかんは、欠神発作である。
【0066】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを不安障害を有した個体に投与する段階を含む前記個体の不安障害の治療方法が提供される。
【0067】
本発明の他の一観点によれば、治療的に有効な量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを意識不明状態の個体に投与する段階を含む前記個体の意識回復方法が提供される。
【0068】
前記組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができ、前記担体以外に薬学的に許容可能な補助剤、賦形剤または希釈剤をさらに含みうる。
【0069】
本明細書で使われる用語「薬学的に許容可能な」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、通常の胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはそれと類似した反応を起こさない組成物を言う。前記担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油が挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含みうる。
【0070】
また、本発明の一実施例による薬学的組成物は、哺乳動物に投与時に、活性成分の迅速な放出、または持続または遅延された放出が可能に当業者に公知の方法を使用して製剤される。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態を含む。
【0071】
本発明の一実施例による組成物は、多様な経路に投与されるが、望ましくは、脊椎腔内注射(intrathecal injection)、頭蓋内注射(intracranial injection)、またはオンマヤリザーバー(Ommaya reservoir)を通じた脳室内注射(intracerebroventricular injection、ICV)を通じて投与される。投与方法が多少侵襲的であるという点を考慮して投与地点に挿入されたカテーテルに適切に連結された貯蔵庫とポンプとを含む投与装置を通じて所定の間隔で自動投与も可能である。選択的に自動投与装置の代わりに、手動で適切な間隔で1日1回または数回に分けて投与することができ、週1回、週2回、月1回などの間隔で投与され、投与期間も、特に限定されるものではない。
【0072】
本発明の一実施例による組成物は、一般的に使われる薬学的に許容可能な担体と共に適した形態に製剤される。薬学的に許容される担体としては、例えば、水、適したオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコールのような非経口投与用担体などがあり、安定化剤及び保存剤をさらに含みうる。適した安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適した保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル-またはプロピル-パラベン及びクロロブタノールがある。また、本発明による組成物は、その投与方法や剤形によって必要な場合、懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、酸化防止剤などを適切に含みうる。前記に例示されたものを含めて、本発明に適した薬学的に許容される担体及び製剤は、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences、最新版]に詳しく記載されている。
【0073】
前記組成物の患者に対する投与量は、患者の身長、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間及び経路、一般的な健康、及び同時に投与される他の薬物を含む多くの要素によって異なる。薬学的に活性であるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、100ng/体重(kg)~10mg/体重(kg)の量で投与され、さらに望ましくは、1~500μg/kg(体重)で投与され、最も望ましくは、5~50μg/kg(体重)で投与されるが、前記要素を考慮して投与量が調節される。
【0074】
本明細書で使われる用語「治療的に有効な量(therapeutically effective amount)」は、医学的治療に適用可能な合理的な恵み/危険の比率で疾患の治療に十分な量を意味し、有効容量レベルは、個体の種類及び重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使われる薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決定されうる。本発明の組成物の治療的に有効な量は、0.5μg/kg~1g/kg、さらに望ましくは、10μg/kg~500mg/kgであるが、有効投与量は、患者の年齢、性別及び状態によって適切に調節される。
【0075】
本明細書で使われる用語「治療」は、ある疾病、障害、または問題を治療、治癒、緩和するために計画された体系的過程と活動とを意味する。根本的には、疾病の病因を除去するか、病巣を発病以前の状態に修復することが最終的な目標であるが、たとえ、疾病の病因を除去するか、病巣を原状への修復することができないとしても、疾病の症状を除去または緩和する症状の軽減も、治療の範疇に含まれる。また、本発明の一実施例による薬物を症状が発現されて前に投与することにより、当該症状が表われないようにするか、表われても、緩和されて表われることにより、患者が日常生活を営むのに大きな支障がないようにする予防的行為も、治療の範疇に属する。したがって、本発明の一実施例による薬学的組成物は、疾病予防の用途として使われ、本発明の一実施例による治療方法は、疾病の症状の予防方法を含む。
【0076】
以下、実施例及び実験例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明は、以下で開示される実施例及び実験例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態として具現可能なものであって、以下の実施例及び実験例は、本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【実施例
【0077】
実施例:Cacna1g標的アンチセンスオリゴヌクレオチドの考案
本発明者らは、T型カルシウムチャネルの3種の同型のうち、α1Gサブユニット(Cav3.1)をコードする遺伝子であるcacna1gを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)候補20種を標的特異性及び安定性などを考慮して考案した(図1及び表1)。また、本発明者らは、アンチセンスオリゴヌクレオチド構造で従来に安定的でありながらも、効果的であると知られた、内部の10ntのDNA配列及び5’末端及び3’末端にそれぞれ2’-MOE改変骨格を有する各5ntのRNA配列を含むギャップマーを使用した。前記ギャップマーのうち、DNA部分は、糖どうしで連結する結合で通常のホスホジエステル結合(PO bond)の代わりに、ホスホロチオエート結合(PS bond)が使われ、RNA部分は、最後の配列の両先端のみPS結合が使われ、残りのRNA部分は、PO結合が使われた(図2)。一方、RNA部分に含まれるウラシル(U)は、いずれもチミン(T)に代替し、あらゆるシトシン(C)は、メチル化シトシンで置換され、これは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの安定性をさらに高めるためである。
【0078】
【表1】

【0079】
実験例1:1次スクリーニング
本発明者らは、前記表1に記載のように、cacna1g mRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド候補物質を考案した後、それをMycrosynth社(Germany)に依頼して製造した。前記アンチセンスオリゴヌクレオチドをA549細胞にリポフェクタミン試薬を用いて200nMの濃度で処理して形質感染させた後、48時間経過後、細胞をlysis and RT kit(TOYOBO、Japan)で溶解させ、逆転写反応を行った。その後、Taqman probeとqRT-PCRプリミックス(TOYOBO、Japan)とを利用したqRT-PCRを行って、cacna1g遺伝子発現レベルを測定した。具体的なqRT-PCRのためのプローブ及びプライマー情報は、下記表1に記載の通りである。その結果、図3から確認されるように、繰り返して50%以上遺伝子発現がノックダウンされるa80、a82、a91、a92などアンチセンスオリゴヌクレオチド8種を選別した。
【0080】
実験例2:2次スクリーニング
引き続き、本発明者らは、前記実験例1から選定された8種のアンチセンスオリゴヌクレオチドを対象にしてリポフェクタミン試薬を用いて、2種の濃度(100nM及び400nM)で細胞内吸収及びcacna1g遺伝子のノックダウンが可能であるかを調査した。
【0081】
その結果、図4から確認されるように、8種のアンチセンスオリゴヌクレオチドいずれも400nMの濃度では、非常に優れたノックダウン効率を示した。但し、a80、a82及びa84の場合、100nMの濃度では、ノックダウン効率が他のアンチセンスオリゴヌクレオチドよりも低く表われた。
【0082】
実験例3:毒性分析及び生体内遺伝子発現調節分析
本発明者らは、実験例1及び実験例2の細胞実験結果に基づいて本発明の一実施例による8種のアンチセンスオリゴヌクレオチド候補の安定性及び薬理効果を検証するために動物実験を行った。
【0083】
具体的に、本発明者らは、P0週齢の雄性C57BL/6J野生型マウスを各グループ当たり4~6頭ずつ分けた後、各実施例のアンチセンスオリゴヌクレオチド(1mM)を頭脳の両側半球にそれぞれ2μlずつ総4μl(25μg)を脳室内(ICV)注射で投与した後、7日経過後、生存率を測定し、生き残ったマウスの脳組織を摘出して、脳組織でのcacna1g遺伝子の発現レベルを前述した実験例1に記載のqRT-PCRを用いて測定した(図5A)。
【0084】
その結果、図5Bから確認されるように、a88を投与したマウスは、6時間内にいずれも斃死し、a86の場合、総6頭のうち、4頭が斃死し、a82の場合、5頭のうち、2頭が斃死し、a84は、6頭のうち、2頭が斃死して、相当な毒性があるということが確認された。一方、a89、a91及び92は、6頭のうち、1頭が斃死するか、最初から斃死した実験動物がないと確認されて相対的に安全なアンチセンスオリゴヌクレオチド候補物質であるということが確認された。一方、AS-Cav3.1_20merの場合、先行文献でCav3.1をノックダウンさせるために使われた陽性対照群であるが(Bourinet et al.,EMBO J.24:315-324,2005)、マウスとラットのみで配列が相補的であり、猿とヒトとを含む霊長類遺伝子とは相補的ではなく、その他の遺伝子と交差反応を起こす確率が高い関係で最初のスクリーニング実験のみで陽性対照群として使用し、以後、in vivoスクリーニングでは排除した。
【0085】
また、実際の動物実験での遺伝子発現阻害効果を確認した結果、図5Cから確認されるように、a82及びa84の場合、細胞実験とは異なって、生体内条件では、cacna1g遺伝子発現抑制効率が低く表われ、a86、a89、a91、及びa92の遺伝子発現抑制効率に優れていると確認された。
【0086】
これにより、本発明者らは、図5B図5Cとの結果を総合して、a91及びa92を最終候補物質として選定した。
【0087】
実験例4:交差反応の分析
T型カルシウムチャネルのαサブユニットは、3種の同型体(isotype)が存在し、これらの間の相同性は非常に高い。特に、これらの3種の同型体のαサブユニットは、発現される器官及び組織が異なって、これらに対する非差別的な遮断剤は、全身投与時に、標的器官ではない場所のT型カルシウムチャネルまで遮断することにより、多様な副作用が表われると知られている。このような交差反応性のために、現在まで開発されたT型カルシウムチャネル遮断剤は、実際の臨床使用時に、深刻な副作用を示していると知られている。
【0088】
したがって、他の同型体の発現は抑制せずとも、αサブユニット(Cav3.1)のみの発現を選択的に抑制することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドを開発することがより安全な薬物の開発での先行要件となる。
【0089】
これにより、本発明者らは、前記最終候補物質として選別されたa91及びa92がCav3.1のみを選択的に抑制するか否かを動物実験を通じて調査した。
【0090】
このために、具体的に、本発明者らは、P0週齢の雄性C57BL/6J野生型マウスにa91及びa92(1mM)をそれぞれ頭脳の両側半球にそれぞれ2μlずつ総4μl(25μg)を脳室内(ICV)注射で投与した後、7日経過後、マウスの脳組織を摘出して、脳組織でのcacna1g(Cav3.1)、cacna1h(Cav3.2)及びcacna1i(Cav3.3)遺伝子の発現レベルを表1に記載のプライマー及びプローブを用いて、前述した実験例1に記載のqRT-PCRを用いて測定した(図5A)。
【0091】
【表2】
【0092】
その結果、図6A及び図6Bから確認されるように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91及びa92)は、他の同型体をコードする遺伝子の発現は抑制せずとも、cacna1gの発現のみを特異的に抑制するということを確認することができた。したがって、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、他の同型体の発現には影響を及ぼさず、単にα1Gサブユニットの発現のみを選択的に抑制することにより、α1Gサブユニットが関与した多様な疾患の治療に効率的に使われるということが分かる。
【0093】
実験例5:パーキンソン病の治療効果の分析
前記実験例1ないし実験例4の結果から、本発明者らは、cacana1g関連疾患のうち、代表的な疾患として知られたパーキンソン病に対して、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが治療効果を示すか否を調査した。
【0094】
5-1:治療効果の検証
このために、具体的に、本発明者らは、6-OHDA(6-hydroxydopamine)を投与したマウスをパーキンソン病モデル動物として製造した後、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)200μgを7~8週齢の雄性C57BL/6J野生型マウスに脳室内注射を通じて投与し、1週間経過後、開放場の分析を行った(図7A)。
【0095】
その結果、図7Bから確認されるように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド注入1週間経過後、開放場の分析結果、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)投与時に、減少した同側回転を示した。
【0096】
6-OHDAを線条体(striatum)に一側の半球のみに(unilateral)注射して誘導したパーキンソン病モデルマウスの場合には、注射した方向に繰り返して回転する表現型を特徴的に示した(Thiele et al.,J.Vis.Exp.,60:e3234,2012)。図7B及び図7Cの実験に使用したラットの場合、左側半球に位置した線条体に6-OHDAを注射したために、左側方向に回転する表現型を見せる。このように注射した方向のような方向に回転する態様を同側回転(ipsilateral rotation)と言う。図7Bの場合、6-OHDAのみを注射したマウスグループの場合には、移動距離に比べて、同軸回転の比率が増加し、6-OHDAモデルに追加的にCav3.1-ASO(a91)を200μg脳室内注射したマウスの場合、同側回転の比率が減少した。これは、Cav3.1-ASO 200μg注射を通じて6-OHDAによるパーキンソン病関連病的表現型が減った態様を示すということを意味する。
【0097】
図7Cの場合には、当該マウスが30分間移動した距離を測定したものである。Cav3.1-ASO 200μgをさらに投与したラットの場合、陰性対照群レベルに動きが減少したと見られるが、統計的にあらゆるグループでの移動距離が有意な差を示さなかった。また、図7Dは、当該マウスの移動速度を測定したものである。移動速度も、前記移動距離と類似にCav3.1-ASO 200μgをさらに投与したラットの場合、陰性対照群レベルに動きが減少したと見られるが、統計的にあらゆるグループで移動速度が有意な差はなかった。
【0098】
本発明者らは、引き続き、運動能力に対する評価指標として加速ロータロッド検査を行った。前記実験動物に対してアンチセンスオリゴヌクレオチド注入1週間経過後、1日間隔で加速ロータロッド検査を行った。
【0099】
その結果、図7Eから確認されるように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、濃度-依存的に、そして、試験日数が増加するほど運動能力が向上するということを示した。一方、6-OHDAのみ投与された陰性対照群の場合、運動能力失調現象は、時間が経過しても、全く改善されなかった。
【0100】
5-2:機序の確認
本発明者らは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド作用機序が、実際にドーパミンニューロンの死滅以後に作用したか否かを確認した。
【0101】
このために、本発明者らは、具体的に、前記実験例5-1の実験動物でパーキンソン病誘発薬物とした知られた6-OHDA薬物を脳の線条体に投与し、投与当日、アンチセンスオリゴヌクレオチドを共に投与した。6-OHDA投与は、一週間以内に細胞死を誘導し、アンチセンスオリゴヌクレオチドの作用は、一週間程度の時間が必要なので、本実験方法としてはドーパミンニューロンの死滅抑制効果を期待しにくい。ドーパミンニューロンの死滅を測定するために、5週経過後、実験動物を犠牲にさせた後、脳を摘出して冷凍薄片機(cryotome)で組織薄片を製造した後、ドーパミン性神経細胞特異的マーカーであるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)に特異的に結合する抗体を用いて線条体及び黒質(substantia nigra)に対する組織化学分析を行った。その結果、図7Fで示すように、何の薬物を投与していない対照群のドーパミンニューロンは、正常に表われたが、6-OHDA投与したあらゆるグループでドーパミンニューロンの死滅が観察された。これは、本実施例で使われた実験方法では、アンチセンスオリゴヌクレオチドがドーパミンニューロンの死滅に影響を与えなかったが、ドーパミンニューロンが死滅した後、ドーパミンニューロンの消失によって発生する異常な運動ニューロンの信号伝達を遮断することにより、作動するということを示す。
【0102】
実験例6:本態性振戦の治療効果の分析
本発明者らは、引き続き、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、本態性振戦の治療に効果があるか否かをharmaline-誘導本態性振戦モデルマウスを対象とした動物実験を行うことで調査した。
【0103】
このために、具体的に、図8Aに示したように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)200μgを7~8週齢の雄性C57BL/6J野生型マウスに脳室内投与した後、2週経過後、振戦誘導物質であるharmalineを9mg/kgの容量で腹腔投与し、8~10分経過後、図8Bに示されたような装置を用いて震え症(tremor)検査を行った。
【0104】
その結果、図8C及び図8Dで示すように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、対照群(野生型)や比較群(対照ASO投与群)と比較して振戦を有意に抑制すると表われた。
【0105】
前記結果は、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、本態性振戦の治療に効果的であるということを示すものである。
【0106】
実験例7:うつ病の治療効果の分析
本発明者らは、引き続き、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、うつ病の治療に効果があるか否かをストレス-誘導うつ病モデルマウスを対象とした動物実験を行うことで調査した。
【0107】
7-1:慢性社会的ストレスモデルでの効果
まず、本発明者らは、図9Aに示された実験スケジュールと図9Bに示された具体的な方法とを用いてうつ病の尺度を調査したが、具体的に、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)200μgを7~8週齢の雄性C57BL/6J野生型マウスに脳室内注入した後、5日目から10日間、他の攻撃性個体を実験動物が留まっているケージに合飼することにより、社会的敗北ストレス(social defeat stress)を加えた後、17日目に社会的相互作用を測定することにより、ストレスによるうつ病の程度を測定した。
【0108】
その結果、図9Cで示すように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与された実験動物は、Cav3.1発現が減少する一方、社会的相互作用は、ほぼ対照群レベルに回復された。これは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、社会的ストレスの減少に非常に効果的な物質であるということを示すものである。
【0109】
7-2:短期急性ストレスモデルでの効果
引き続き、本発明者らは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、急性うつ病に対する治療効果があるかを確認するために、強制水泳検査(forced swimming test)を行った。
【0110】
具体的に、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)200μgを7~8週齢の雄性C57BL/6J野生型マウスに脳室内投与し、3週経過後、図10Aに示したように、水槽に落とし、ストレスによって表われる不動時間を測定することにより、ストレス指数を把握した。
【0111】
その結果、図10Bから確認されるように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、脳でCav3.1の発現を顕著に下げただけではなく、ストレスの徴候である不動時間が顕著に減少するということを確認した。これは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、慢性ストレスはもとより、短期ストレスに対する耐性を有させる物質であるということを示す結果である。
【0112】
実施例8:てんかんの治療効果
本発明者らは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、てんかんの治療にも使用が可能であるか否かを調査した。
【0113】
具体的に、本発明者らは、図11Aに示したように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)を200μgを7~8週齢の雄性C57BL/6J野生型マウスに脳室内投与し、12日経過後、EEG探針挿入施術を行い、14日経過後、欠神発作(absence seizure)を誘発するγ-ブチロラクトン(GBL)を70mg/kg投与した。GBL投与後、30分前と後とに、それぞれ脳電図(electroencephalogram、EEG)を測定し、アンチセンスオリゴヌクレオチド投与から42日経過時に、実験動物を犠牲にさせ、脳を摘出してCav3.1 mRNA発現レベルを測定した。
【0114】
その結果、図11Bから確認されるように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、スパイク及び波長放電(spike and wave discharge、SWD)の頻度及び10分当たり回数いずれも有意に減少させた。
【0115】
これは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、てんかん、特に、欠神発作の治療に効果的であるということを示す結果である。
【0116】
実験例9:意識回復の効果
昏睡状態またはコーマ(coma)は、医学で深い意識不明状態を意味する。いわゆる、「植物人間」と呼ばれる昏睡状態にあるヒトは覚ますことができず、苦痛や光、音など外部の刺激にも反応しない。昏睡状態の原因としては、薬物などの中毒、物質代謝異常、中枢神経系疾病、低酸素症や脳卒中のような疾患などが知られているが、昏睡状態は、自動車事故や墜落など、脳に加えられた外傷よって発生する。残念ながら、このような昏睡状態の患者の意識を回復させる薬物は報告されていない。
【0117】
前記実験例8で考察したてんかんの主要症状は、意識の喪失である。また、てんかんとT型カルシウムチャネルと欠神発作との相関関係がよく知られており、T型カルシウムチャネルのα1Gサブユニットの発現抑制を通じて欠神発作の症状が緩和されるということを立証した前記実験例8の結果から、本発明者らは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、意識回復に効果的であるか否かを確認しようとした。
【0118】
このために、具体的に、本発明者らは、図12Aに示したように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)200μgを7~8週齢の雄性C57BL/6J野生型マウスに脳室内投与し、11日経過後、麻酔剤であるAvertin 400mg/gkを腹腔投与して意識喪失(loss of righting reflex、LORR)を誘導した。以後、意識喪失時間(loss of righting reflex、LORR duration)を測定した。その結果、図12Bから確認されるように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)投与群では、意識喪失時間が有意に減少した。
【0119】
また、本発明者らは、意識喪失モデルのうち、アルコール-誘導意識喪失モデル動物を用いて、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、アルコール-誘導意識喪失を迅速に回復させるか否かを調査した。
【0120】
具体的に、図12Cに示された実験スケジュールどおりに、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)200μgを7~8週齢の雄性C57BL/6J野生型マウスに脳室内投与し、12~13日経過後、20%エタノール水溶液をエタノール基準に0.6g/kg投与量で腹腔投与後、30分間開放場で実験動物の行動を動画で撮影した後、コンピュータソフトウェア(EthoVision、Noldus、Netherland)を用いて実験動物の移動速度、移動距離及び回転頻度を測定した。また、二日経過後、高濃度(3.5g/kg)のエタノールを腹腔投与して意識喪失を誘導し、意識喪失までかかる遅延時間(LORR latency)を測定した。また、本発明の一実施例によるオリゴヌクレオチド(a91)投与から21日経過後、実験動物の犠牲にさせた後、脳を摘出してCav3.1遺伝子発現程度を測定した。
【0121】
その結果、図12Dで示すように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与群では、さらに活発な動きが観察され、意識喪失遅延時間の場合、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド投与群が、対照群に比べて、さらに長い時間を示した。
【0122】
これは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、Cav3.1遺伝子の発現を特異的に抑制することにより、意識喪失状態の患者の意識回復を促進することができるということを意味するものであって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、既存に適切な治療剤が存在しなかった昏睡状態に置かれている患者の意識回復誘導剤として開発が可能な有望な物質であるということを示す結果である。
【0123】
実施例21-23:ASO標的部位の確認
前記実施例及び実験例の結果から、本発明者らは、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドの標的位置をさらに正確に特定しようとした。
【0124】
このために、下記表4のように、cacna1gゲノム遺伝子の位置を考慮して配列番号1内から選択され、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)近隣位置の標的配列を複数で定めた後(a4、a7、及びa11)、これらの安全性及びCav3.1発現抑制率を調査した。
【0125】
【表3】
【0126】
前記表3でゲノム上の位置は、GenBank Reference Sequence NC_000017.11 REGION:50560715..50627474に記載のcacna1g遺伝子のゲノム核酸配列を基準としたものである。
【0127】
具体的に、本発明者らは、P0週齢のC57BL/6J野生型マウスを各グループ当たり4~6頭ずつ分けた後、前記表3に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド(1mM)を頭脳の両側半球にそれぞれ2μlずつ総4μl(25μg)を脳室内(ICV)注射で投与した後、7日経過後、生存率を測定し、生き残ったマウスの脳組織を摘出して、脳組織でのcacna1g遺伝子の発現レベルを前述した実験例1に記載のqRT-PCRを用いて測定した(図13A)。
【0128】
その結果、図13Bで示すように、本発明で新たに考案したアンチセンスオリゴヌクレオチドは、a4を除いては、対照群及び本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチド(a91)と比較して類似しているか、優れた生存率を示して安全性が高いと確認された。
【0129】
また、Cav3.1発現に及ぼす影響を調査した結果、図13Cで示すように、新たに考案されたアンチセンスオリゴヌクレオチドのうち、a11は、a91よりは多少弱いが、有意なCav3.1 mRNA発現抑制能を示し、a4及びa7の場合も、たとえ統計的に有意ではなかったが、Cav3.1 mRNA発現を抑制する態様を示した。統計的に有意ではない原因は、各実験群別に一個体ずつ対照群に比べてむしろさらに高い遺伝子発現率を示すことによるものであって、これは、実験上のエラーによるものと判断され、実験頭数を増加させる場合、統計的に有意なレベルの遺伝子発現の減少を示すと判断される。
【0130】
以上の結果から確認されるように、本発明で選定したcacna1gゲノム遺伝子上の位置は、予想とは異なって、スプライシングされる前、mRNAの3’末端に近い位置であって、イントロン37及びエキソン38を含む配列番号1内の位置であれば、如何なる部位を選択しても、Cav3.1 mRNAの発現を効率的に減少させて、α1G T型カルシウムチャネルと関連した神経疾患の治療に有用に使われるということが分かる。
【0131】
前述したように、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、他の同型体T型カルシウムチャネルの発現には影響を与えないながらも、α1Gサブユニットの発現を選択的に抑制するだけではなく、他の副作用なしにα1Gサブユニットと関連した疾患、特に、パーキンソン病の治療において、非常に驚くべき効果を示した。したがって、本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、パーキンソン病はもとより、うつ病、本態性振戦、てんかん、不安障害、意識不明など多様な退行性神経疾患などのT型カルシウムチャネルのα1Gサブユニットと関連した多様な疾患の治療剤として使用が可能である。
【0132】
本発明は、前述した実施例及び実験例を参考にして説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な改変及び均等な他実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【0133】
本発明の一実施例によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、α1G T型カルシウムチャネルの発現を選択的に抑制することにより、パーキンソン病、うつ病、本態性振戦、てんかん、意識喪失などの神経精神疾患はもとより、意識不明状態の患者の意識回復のための医薬として使用が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
図13C
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示される核酸配列を標的とする、Cav3.1をコードする遺伝子の発現抑制用アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号1で示される核酸配列とハイブリダイズ可能な核酸分子であって、11~30ntの長さを有する、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記DNA、RNAまたはDNA/RNAキメラ核酸分子である、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号20または配列番号21の核酸配列を含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
ホスホジエステル(PO)骨格の一部または全部が、ホスホロチオエート(PS)、ホスホロジチオエートまたはメチルホスホン酸で置換されている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
糖部分の2’-OHの一部または全部が改変されている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
糖部分の2’-OHが、-O-CH(-OMe)、-O-CH-CH(-OEt)、-O-CH-CH-O-CH(-MOE)、-O-CH-CH-CH-NH、-O-CH-CH-CH-OH、-OFまたは-Fで置換されている、請求項6に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
糖部分に追加的な環が形成されたヌクレオチド類似体を少なくとも1つ以上含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
ヌクレオチド類似体がロック核酸(LNA)である、請求項8に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
ヌクレオチド類似体が、全ヌクレオチドのうち少なくとも33%である、請求項8に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
ギャップマーである、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
ギャップマーが、両末端に3-7ntの長さのRNAユニットおよび前記RNAユニットの間に存在する8-12ntの長さのDNAを含む核酸分子である、請求項11に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
RNAの一部または全部がLNAである、請求項12に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、パーキンソン病治療用薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、うつ病治療用薬学的組成物。
【請求項16】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、本態性振戦治療用薬学的組成物。
【請求項17】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、てんかん治療用薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、不安障害治療用薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、意識不明状態回復用薬学的組成物。
【請求項20】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドをパーキンソン病を病んでいる非ヒト哺乳動物個体に投与する段階を含む、前記個体のパーキンソン病の治療方法。
【請求項21】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドをうつ病を病んでいる非ヒト哺乳動物個体に投与する段階を含む、前記個体のうつ病の治療方法。
【請求項22】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを本態性振戦を病んでいる非ヒト哺乳動物個体に投与する段階を含む、前記個体の本態性振戦の治療方法。
【請求項23】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドをてんかんを病んでいる非ヒト哺乳動物個体に投与する段階を含む、前記個体のてんかんの治療方法。
【請求項24】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを不安障害を有した非ヒト哺乳動物個体に投与する段階を含む、前記個体の不安障害の治療方法。
【請求項25】
治療的に有効な量の請求項1から請求項13のうち何れか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを意識不明状態の非ヒト哺乳動物個体に投与する段階を含む、前記個体の意識回復方法。
【国際調査報告】