(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】毛髪繊維をスタイリングするための改良された組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240822BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240822BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240822BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/42
A61K8/06
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510244
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 IB2022057741
(87)【国際公開番号】W WO2023021455
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522413102
【氏名又は名称】ランダ ラボ (2012) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】アブラモビッチ,サジ
(72)【発明者】
【氏名】アッシャー,タマール
(72)【発明者】
【氏名】コジョカロ,ニール
(72)【発明者】
【氏名】カートン,イーシャイ
(72)【発明者】
【氏名】ブラフシュタイン,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA072
4C083AB082
4C083AB222
4C083AB332
4C083AB412
4C083AC102
4C083AC372
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC681
4C083AC682
4C083AC782
4C083AC912
4C083AD152
4C083AD162
4C083CC32
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE25
4C083EE29
4C083FF05
(57)【要約】
本開示は、哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするための方法に関する。本方法は、フェノール系モノマー及び水溶性吸湿剤を含むヘアスタイリング組成物を毛髪に適用すること、前記モノマー及び水溶性吸湿剤を毛髪内に浸透可能にさせること、及び前記モノマーを硬化させて、毛髪が天然の形状に戻る傾向に打ち勝つことができるポリマーを内部に形成すること、を含む。毛髪が所望の形状に改変された状態で硬化が行われると、得られるポリマーは改変形状を維持することができ、吸湿剤はヘアスタイリング効果を長持ちさせることができる。このようなヘアスタイリングに適した組成物及びそれを調製可能なキットもまた開示される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然の形状を有する哺乳類の毛髪繊維をスタイリングする方法であって、前記方法は:
a)個々の毛髪繊維にヘアスタイリング組成物を適用することであり、ここでヘアスタイリング組成物は、10,000g/mol以下の平均分子量を有する少なくとも1つのエネルギー硬化性水不溶性フェノール系モノマー(phenol-based monomer:PBM)、少なくとも1つの極性水溶性吸湿剤(water-soluble hygroscopic agent:WHA)、及び水を含むこと;
b)PBM(複数可)及びWHA(複数可)の毛髪繊維中への少なくとも部分的な浸透を確実にするために、ヘアスタイリング組成物を少なくとも5分間、毛髪繊維と接触させたままにすること;及び
c)毛髪繊維内のPBMの少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させるようにエネルギーを適用することであり、ここで前記硬化は毛髪繊維が少なくとも50℃の温度である間に起こり、その結果、処理された毛髪繊維が得られること;
を含み、
ここで前記ヘアスタイリング組成物は、0.1wt%未満の低分子反応性アルデヒド(small reactive aldehyde:SRA)を含有し、SRAは、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択される、前記方法。
【請求項2】
エネルギーは、毛髪繊維が所望の改変形状にある間に適用され、改変形状は、天然の形状とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのPBMは、一般式I:
【化1】
であり、式中、
IX. R
1、R
2、R
3、及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、又は直鎖状、分枝状、若しくは環状の、置換若しくは非置換の、C
1~C
20アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アリル、C
1~C
8芳香族エステル、若しくはC
1~C
8非芳香族エステルであり;かつ
ii)R
4は、水素原子、ヒドロキシル、又は飽和若しくは不飽和のC
XH
Yアルキルであり、ここでXは15以下の整数であり、かつYは2X+1-nに等しく、nは0、2、4、及び6から選択される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのPBMは、一般式VII:
【化2】
であり、式中、
i)R
1、R
2、及びR
3の少なくとも1つは、直鎖状、分枝状、若しくは環状の、置換若しくは非置換のC
1~C
8の芳香族又は非芳香族エステルから形成されるカルボキシレート置換基であり、非カルボキシレートのR
1、R
2、又はR
3は、水素原子又はヒドロキシル基であり;かつ
ii)R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又はヒドロキシル基であり;
少なくとも1つのPBMの合計濃度は、任意に、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、少なくとも0.1wt%、少なくとも0.15wt%、少なくとも0.2wt%、又は少なくとも0.25wt%であり;かつさらに任意に多くとも5wt%、多くとも3wt%、又は多くとも2wt%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水溶性吸湿剤又はそれぞれの水溶性吸湿剤は、以下の構造的特徴:
i)WHAは非電解質であること;
ii)WHAは、水との水素結合エネルギーが少なくとも21kJ/mol、少なくとも22.5kJ/mol、少なくとも25kJ/mol、又は少なくとも27.5kJ/molであること;
iii)WHAは、水との水素結合エネルギーが多くとも40kJ/mol、多くとも35kJ/mol、又は多くとも32.5kJ/molであること;
iv)WHAは、水との水素結合エネルギーが21kJ/mol~40kJ/mol、22.5kJ/mol~35kJ/mol、又は27.5kJ/mol~32.5kJ/molであること;
v)WHAは、水への溶解度が25℃の温度で測定して、水の重量に対して5wt%以上、10wt%以上、20wt%以上、又は30wt%以上であること;
vi)WHAは、水への溶解度が25℃の温度で測定して、水の重量に対して150wt%以下、125wt%以下、100wt%以下、又は75wt%以下であること;
vii)WHAは、水への溶解度が25℃の温度で測定して、水の重量に対して5wt%~150wt%、10wt%~125wt%、20wt%~100wt%、又は30wt%~75wt%の範囲であること;
viii)WHAは、ヘアスタイリング組成物又はその水相への溶解度が25℃の温度で測定して、組成物又はその水相の重量に対して5wt%以上、10wt%以上、20wt%以上、又は30wt%以上であること;
ix)WHAは、ヘアスタイリング組成物又はその水相への溶解度が25℃の温度で測定して、組成物又はその水相の重量に対して、140wt%以下、110wt%以下、80wt%以下、又は50wt%以下であること;
x)WHAは、ヘアスタイリング組成物又はその水相への溶解度が25℃の温度で測定して、組成物又はその水相の重量に対して、5wt%~140wt%、10wt%~110wt%、20wt%~80wt%、又は30wt%~50wt%の範囲であること;
xi)WHAは、融解温度(T
m)が25℃以上、35℃以上、又は45℃以上であること;
xii)WHAは、融解温度(T
m)が200℃以下、180℃以下、又は160℃以下であること;
xiii)WHAは、融解温度(T
m)が25℃~200℃、35℃~180℃、又は45℃~160℃の範囲であること;
xiv)WHAは、沸騰温度(T
b)が100℃以上、120℃以上、又は140℃以上であること;
xv)WHAは、沸騰温度(T
b)が300℃以下、250℃以下、又は225℃以下であること;
xvi)WHAは、沸騰温度(T
b)が100℃~300℃、120℃~250℃、又は140℃~225℃の範囲であること;
xvii)WHAは、蒸気圧が25℃で測定して、2.3kPa以下、1.0kPa以下、0.1kPa以下、10Pa以下、又は1Pa以下であること;及び
xviii)WHAは、蒸気圧が25℃で測定して、1mPa以上、10mPa以上、又は50mPa以上であること;
のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法:
【請求項6】
ヘアスタイリング組成物は、架橋剤及び硬化加速剤から選択される少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含み、硬化促進剤は、毛髪繊維内のPBMと同じ相に存在するように適合されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
硬化促進剤は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、0.001wt%~5wt%、0.005wt%~5wt%、0.01wt%~5wt%、0.05wt%~5wt%、0.01wt%~2.5wt%、0.05wt%~2wt%、0.1wt%~2.5wt%、又は0.2wt%~2wt%の合計濃度で存在する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ヘアスタイリング組成物は、PBM及び硬化促進剤のうちの少なくとも1つと交差重合することができる少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つの補助重合剤をさらに含み、官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、及び二重結合から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ヘアスタイリング組成物は水中油型エマルションであり、少なくとも1つのPBMはエマルションの油相に存在し、かつ少なくとも1つのWHAはエマルションの水相に存在し、ヘアスタイリング組成物は任意に少なくとも1つの共溶媒をさらに含み、少なくとも1つの共溶媒は水中油型エマルションの形成に十分な量で存在し、かつ少なくとも1つの共溶媒は毛髪繊維内のPBMと同じ相に存在するように適合されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ヘアスタイリング組成物を毛髪繊維に適用する前に、以下の工程のうちの1つ又は複数:A- 少なくとも1つのPBM、及び/又は少なくとも1つの硬化促進剤、及び/又は少なくとも1つの補助重合剤を水と混合する前に予備重合すること、及び/又はB- a)毛髪繊維を洗浄すること;b)毛髪繊維を乾燥させることであり、前記乾燥は、任意に、毛髪繊維を少なくとも40℃の温度に少なくとも5分間加熱することによって行われること、及びc)前処理組成物を毛髪繊維に適用すること、のうちの少なくとも1つによって毛髪繊維を前処理すること、
を実施する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前処理組成物は、以下の構造的特徴を特徴とするオイル:
i. オイルは、水への溶解度が25℃の温度で測定して、水の重量に対して、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、又は1wt%以下であること;
ii. オイルは、ヘアスタイリング組成物内での混和性が25℃の温度で測定して、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、又は1wt%以下であること;
iii. オイルは、蒸気圧が20℃の温度で測定して、40パスカル未満、35パスカル未満、又は30パスカル未満であること;
iv. オイルは、蒸気圧が20℃の温度で測定して、0.1パスカル超過、0.2パスカル超過、又は0.5パスカル超過であること;
v. オイルは、毛髪繊維の表面エネルギーよりも低い表面張力を有し、オイルの前記表面張力は、任意に、35mN/m以下、30mN/m以下、又は25mN/m以下であること;
vi. オイルは、毛髪浸透能力が毛髪繊維の重量に対して、多くとも5wt%、多くとも4wt%、多くとも3wt%、多くとも2wt%、又は多くとも1wt%であること;
vii. オイルは、絶対値で、組成物のゼータ電位ζ
cと少なくとも5mV異なるゼータ電位ζ
oを有すること;及び
viii.オイルは、PBM(複数可)の硬化に対して阻害活性を実質的に欠くこと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程b)の後に、[I]少なくとも部分的な硬化をもたらすエネルギーを適用する前に、すすぎ液で繊維をすすぐことによって、毛髪繊維表面から過剰なヘアスタイリング組成物を除去することであって、ここですすぎ液は、任意に、洗浄剤及び硬化促進剤のうちの少なくとも1つを含むこと、及び[II]硬化促進剤を含む硬化組成物を毛髪繊維に適用すること、のうちの少なくとも1つをさらに含み、及び/又は、工程c)の後に、[III]洗浄液で繊維を洗浄すること、及び[IV]コンディショニング液で繊維をコンディショニングすることであって、ここでコンディショニング液は、任意に、工程c)において知覚される熱から繊維を保護する役割を果たすこと、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
処理された繊維及び未処理の繊維は、熱分析によって測定して、互いに4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示す、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
組成物のpHは、毛髪繊維中へのPBM(複数可)及びWHA(複数可)の少なくとも一部の浸透を可能にし、前記pHが、1~3.5又は5~11の範囲である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
哺乳類の毛髪繊維の形状を改変するためのヘアスタイリング組成物であって、前記組成物は、a)平均分子量が10,000g/mol以下の少なくとも1つのエネルギー硬化性水不溶性フェノール系モノマー(PBM);b)少なくとも1つの極性水溶性吸湿剤(WHA);及びc)水;を含み;ヘアスタイリング組成物は、以下の特徴:
a- ヘアスタイリング組成物は、0.1wt%未満の低分子反応性アルデヒド(SRA)を含有し、SRAは、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択されること;
b- ヘアスタイリング組成物は、1wt%未満のアミノ酸を含有すること;
c- ヘアスタイリング組成物は、1wt%未満のペプチドを含有すること;及び
d- ヘアスタイリング組成物は、1wt%未満のタンパク質を含有すること;
のうちの1つ又は複数をさらに特徴とする、前記ヘアスタイリング組成物。
【請求項16】
少なくとも1つのPBMは、一般式I:
【化3】
であり、式中、
i)R
1、R
2、R
3、及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の、置換若しくは非置換のC
1~C
20アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アリル、C
1~C
8芳香族エステル、又はC
1~C
8非芳香族エステルであり;かつ
ii)R
4は、ヒドロキシル、又は飽和若しくは不飽和のC
XH
Yアルキルであり、ここでXは15以下の整数であり、かつYは2X+1-nに等しく、nは0、2、4、及び6から選択される、
請求項15に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項17】
少なくとも1つのPBMは、一般式VII:
【化4】
であり、式中、
i)R
1、R
2、及びR
3の少なくとも1つは、直鎖状、分枝状若しくは環状の、置換若しくは非置換のC
1~C
8芳香族エステル又はC
1~C
8非芳香族エステルから形成されるカルボキシレート置換基であり、非カルボキシレートのR
1、R
2、又はR
3は、水素原子又はヒドロキシル基であり;かつ
ii)R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又はヒドロキシル基である、
請求項15又は16に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項18】
少なくとも1つのPBMは、A)カルボキシレート置換基がR
1であるオルトヒドロキシ安息香酸誘導体であり、PBMは、サリチル酸アミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸4-tert-ブチルフェニル、サリチル酸シクロヘキシル、サリチル酸メチル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリシン、及びサルサレートを含む群から選択されるサリチレートであり;B)カルボキシレート置換基がR
2であるメタヒドロキシ安息香酸誘導体であり、PBMは、3-ヒドロキシ安息香酸メチル及び3-ヒドロキシ安息香酸フェニルを含む群から選択され;又はC)カルボキシレート置換基がR
3であるパラヒドロキシ安息香酸誘導体であり、PBMは、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸エチル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェニル、4-ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、及び4-ヒドロキシ安息香酸N-プロピルを含む群から選択される、請求項17に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項19】
PBMのヒドロキシ安息香酸環は、1つ又は複数のヒドロキシル基によってさらに置換されており、カルボキシレート置換基に対する2つ以上のヒドロキシル基の環上の相対的な位置は、2,3-ジヒドロキシ-安息香酸;2,4-ジヒドロキシ-安息香酸;2,5-ジヒドロキシ-安息香酸;2,6-ジヒドロキシ-安息香酸;3,4-ジヒドロキシ-安息香酸;3,5-ジヒドロキシ-安息香酸;2,3,4-トリヒドロキシ-安息香酸;2,4,6-トリヒドロキシ-安息香酸、及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸から選択され;及び/又はカルボキシレート置換基は、ヒドロキシル基又はアミン基でさらに置換されている、請求項18に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項20】
水溶性吸湿剤又はそれぞれの水溶性吸湿剤は、以下の構造的特徴:
i)WHAは非電解質であること;
ii)WHAは、水との水素結合エネルギーが少なくとも21kJ/mol、少なくとも22.5kJ/mol、少なくとも25kJ/mol、又は少なくとも27.5kJ/molであること;
iii)WHAは、水との水素結合エネルギーが多くとも40kJ/mol、多くとも35kJ/mol、又は多くとも32.5kJ/molであること;
iv)WHAは、水との水素結合エネルギーが21kJ/mol~40kJ/mol、22.5kJ/mol~35kJ/mol、又は27.5kJ/mol~32.5kJ/molの範囲であること;
v)WHAは、水への溶解度が、25℃の温度で測定して、水の重量に対して、5wt%以上、10wt%以上、20wt%以上、又は30wt%以上であること;
vi)WHAは、水への溶解度が、25℃の温度で測定して、水の重量に対して150wt%以下、125wt%以下、100wt%以下、又は75wt%以下であること;
vii)WHAは、水への溶解度が、25℃の温度で測定して、水の重量に対して、5wt%~150wt%、10wt%~125wt%、20wt%~100wt%、又は30wt%~75wt%の範囲であること;
viii)WHAは、ヘアスタイリング組成物又はその水相への溶解度が25℃の温度で測定して、組成物又はその水相の重量に対して、5wt%以上、10wt%以上、20wt%以上、又は30wt%以上であること;
ix)WHAは、ヘアスタイリング組成物又はその水相への溶解度が25℃の温度で測定して、組成物又はその水相の重量に対して、140wt%以下、110wt%以下、80wt%以下、又は50wt%以下であること;
x)WHAは、ヘアスタイリング組成物又はその水相への溶解度が25℃の温度で測定して、組成物又はその水相の重量に対して、5wt%~140wt%、10wt%~110wt%、20wt%~80wt%、又は30wt%~50wt%の範囲であること;
xi)WHAは、融解温度(T
m)が25℃以上、35℃以上、又は45℃以上であること;
xii)WHAは、融解温度(T
m)が200℃以下、180℃以下、又は160℃以下であること;
xiii)WHAは、融解温度(T
m)が25℃~200℃、35℃~180℃、又は45℃~160℃の範囲であること;
xiv)WHAは、沸騰温度(T
b)が100℃以上、120℃以上、又は140℃以上であること;
xv)WHAは、沸騰温度(T
b)が300℃以下、250℃以下、又は225℃以下であること;
xvi)WHAは、沸騰温度(T
b)が100℃~300℃、120℃~250℃、又は140℃~225℃の範囲であること;
xvii)WHAは、蒸気圧が25℃で測定して、2.3kPa以下、1.0kPa以下、0.1kPa以下、10Pa以下、又は1Pa以下であること;及び
xviii)WHAは、蒸気圧が25℃で測定して、1mPa以上、10mPa以上、又は50mPa以上であること;
のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つを特徴とする、請求項15~19のいずれか1項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項21】
少なくとも1つのWHAのそれぞれは、カルボキサミド、単糖類、及び二糖類からなる群から選択される、請求項15~20のいずれか1項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項22】
少なくとも1つのWHAは、一般式RC(=O)NR’R’’を有するカルボキサミドであり、式中、R、R’及びR’’は、それぞれ独立して、直鎖状、分枝状若しくは環状の、置換若しくは非置換の炭素原子数6を超えない有機基、又は水素原子を表し、Rの有機基は、任意に第2のカルボキサミド基を含み、前記カルボキサミドは、尿素、メタンアミド、エタンアミド、プロパンアミド、ブタンアミド、シクロプロパンカルボキサミド、シクロブタンカルボキサミド、シクロペンタンカルボキサミド;シクロヘキサンカルボキサミド;エタンジアミド、プロパンジアミド、ブタンジアミド、ペンタンジアミド、ヘキサンジアミド;アラニンアミド、アスパラギンアミド、グルタミンアミド、グリシンアミド、及びプロリンアミドからなる群から選択される、請求項21に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項23】
A- 少なくとも1つのPBMの合計濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、少なくとも0.1wt%、少なくとも0.15wt%、少なくとも0.2wt%、又は少なくとも0.25wt%であり;かつ任意に、多くとも5wt%、多くとも3wt%、又は多くとも2wt%であり;及び/又は
B- 少なくとも1つのWHAの合計濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、少なくとも10wt%、少なくとも12.5wt%、少なくとも15wt%、少なくとも17.5wt%、又は少なくとも20wt%であり;かつ任意に、多くとも50wt%、多くとも48wt%、多くとも46wt%、多くとも44wt%、多くとも42wt%、多くとも40wt%、多くとも38wt%、多くとも36wt%、又は多くとも34wt%である、
請求項15~22のいずれか1項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項24】
ヘアスタイリング組成物は、架橋剤及び硬化加速剤から選択される少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含み、硬化促進剤は、毛髪繊維内のPBMと同じ相に存在するように適合され、ここで、少なくとも1つの硬化促進剤の合計濃度は、任意に、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、少なくとも0.001wt%、少なくとも0.005wt%、少なくとも0.01wt%、又は少なくとも0.05wt%であり;かつさらに任意に、多くとも5wt%、多くとも2.5wt%、又は多くとも2wt%である、請求項15~23のいずれか1項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項25】
少なくとも1つの硬化促進剤は少なくとも1つの架橋剤であり、任意に、少なくとも2つのシラノール基を有し、かつ分子量が多くとも1,000g/molである反応性シラン、反応性シランとアミノシランとの混合物、多塩基酸、ポリオール、ポリアミン、モノ-及びジ-グリシジル、ジイソシアネート、アリル化合物、ポリフェノール、アクリレート、有機グリシジル基又はメタクリレート基を結合してなるシルセスキオキサン、及び最大15個の炭素原子を含み、二重結合の開口時に少なくとも2つのラジカルを形成できる数の二重結合を含む、直鎖、分岐又は環状のアルケン化合物、から選択される、請求項24に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの硬化促進剤は、縮合重合及び付加重合のうちの少なくとも1つに適した硬化加速剤であり、任意に金属錯体、金属石鹸、金属サレン、及び有機過酸化物から選択される、請求項24又は25に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項27】
ヘアスタイリング組成物は、PBM及び硬化促進剤のうちの少なくとも1つと交差重合可能な少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つの補助重合剤をさらに含み、官能基は:ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、及び二重結合から選択され、ここで補助重合剤の濃度は任意に、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、0.01wt%~2wt%、0.05wt%~2wt%、0.1wt%~1.7wt%、又は0.1wt%~1.5wt%である、請求項15~26のいずれか1項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項28】
ヘアスタイリング組成物は:A- 少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC
1~C
10アルコール、水混和性エーテル、非プロトン性溶媒、エステル、及び鉱油又は植物油からなる群から選択される共溶媒であって、共溶媒は前記組成物の形態を制御する量で存在し、ヘアスタイリング組成物の前記形態は水中油型エマルション又は単相組成物である、前記共溶媒;及び/又はB- 乳化剤、湿潤剤、増粘剤及び電荷調整剤を含む群から選択される添加剤、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項15~27のいずれか1項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項29】
ヘアスタイリング組成物は、ガラス転移温度(T
g)が50℃以下である、請求項15~28のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項30】
前記組成物のpHは、毛髪繊維中へのPBM(複数可)及びWHA(複数可)の少なくとも一部の浸透を可能にし、前記pHが1~3.5又は5~11の範囲である、請求項15~29のいずれか1項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項31】
哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするためのキットであって、前記キットは:
i)10,000g/mol以下の平均分子量を有する少なくとも1つのエネルギー硬化性水不溶性フェノール系モノマー(PBM)を含有する第1のコンパートメント;及び
ii)少なくとも1つの極性水溶性吸湿剤(WHA)、及び
i)水;
ii)共溶媒;及び
iii)pH調整剤;
のうちの少なくとも1つを含有する、第2のコンパートメント、
を含み、
ここで、第2のコンパートメントの内容物は、毛髪繊維中へのモノマーの少なくとも一部の浸透を増加させるように選択されたpHを有する液体であり;かつ
これらのコンパートメントを混合することで、単相組成物又は水中油型エマルションを生成し;かつ
第1のコンパートメントのPBMの少なくとも1つ及び第2のコンパートメントのWHAの少なくとも1つはそれぞれ、請求項15~30のいずれか1項に記載のヘアスタイリング組成物のPBM又はWHAである、前記キット。
【請求項32】
少なくとも1つのa)架橋剤及び硬化加速剤から選択される硬化促進剤;b)補助重合剤;及び/又はc)共溶媒をさらに含む、請求項31に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、哺乳類の毛髪などのケラチン性繊維をスタイリングするための組成物、キット、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類(例えば、ヒト)の毛髪繊維は層状構造であり、最も外側の層は毛小皮(キューティクル)であり、ケラチンタンパク質でできた薄い保護層であり、毛皮質(コルテックス)と毛髄(メデュラ)とで構成される中央の毛幹を取り囲んでいる。この毛小皮層は、屋根の屋根板のように、積層式に互いに重なり合う鱗片状の細胞から形成されている。毛髪繊維の物理的な外観と形状は、繊維内のケラチン鎖間の様々な相互作用によって決まり、ケラチンのアミノ酸組成は、可能な相互作用の種類の要因となる。システイン側鎖はジスルフィド結合の形成を可能にするが、他のアミノ酸残基は水素結合、疎水性相互作用、イオン結合、クーロン相互作用などのより弱い相互作用を形成することができる。繊維内のそのような反応基の存在、繊維に沿ったそれらの割合、並びに繊維の構成に起因する能力により、これらの相互作用の発生及び繊維又は複数のそのような繊維によって構成される毛髪の外観が決定される。
【0003】
隣接する2つのシステイン残基のチオール側鎖の間に形成することが可能なジスルフィド共有結合は、繊維の構造の安定性、耐久性及び機械的特性の主な原因となり、様々な手順によるこれらの結合の破壊は、永久的なヘアスタイリング(主に縮毛矯正(ストレート)化又はウェーブ化)の最も現代的な方法の背後にある機序である。
【0004】
「日本の縮毛矯正(Japanese straightening)」と呼ばれるそのような手順の1つは、例えばメルカプタン又は亜硫酸塩などの還元剤を使用してジスルフィド結合を選択的に切断し、それによりケラチンが機械的に弛緩した後、遊離スルフヒドリル基が再酸化され、髪は目的のスタイリングを達成するのに適した形状を保つ間に、ジスルフィド結合が工程の最後に再結合される。髪を所望の形状(ストレートかウェーブかは問わず)に永久的に適合させるためのさらなるストレスを誘発するために、ホットアイロン又はヘアドライヤーなどの様々なスタイリング手段を用いることができる。
【0005】
毛髪の永久的なスタイリングの別の手順は、pHが11.0超過の強アルカリ剤など、さらに強い還元剤を使用するものである。この条件下では、pHにより膨潤した毛髪にアルカリ剤が深く浸透する際に選択性が低い様式でジスルフィド結合が切断され、ジスルフィド結合の可能な再配列を破壊することが可能である。
【0006】
その他、「ケラチン縮毛矯正」及び「オーガニック縮毛矯正」と呼ばれる施術は、「ブラジリアンストレート」を含み、半永久的とみなされ、アルデヒド類、すなわちホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド生成剤、又はグルタルアルデヒドが大量に使用され、ほとんどの縮毛矯正剤には2~10%のそのような化学薬剤を含有している。ホルムアルデヒド放出剤とも呼ばれるホルムアルデヒド生成剤の例としては、グリオキシル酸及びその誘導体(例えば、グリオキシロイルカルボシステイン)などが挙げられ、これらの一部は防腐剤として一般的に使用されている。これらのアルデヒド系薬剤又はアルデヒド生成薬剤は、毛髪繊維のケラチンと反応し、架橋剤として作用するため、新しい毛髪の形態及び形状を長持ちさせることができる。ホルムアルデヒドとグルタルアルデヒドは発がん性があるとされ、目及び鼻の炎症、並びに皮膚、目、及び肺のアレルギー反応を引き起こす可能性がある。そのため、これらの物質は労働安全衛生局(OSHA)により有害とみなされ、ヘアスタイリング製品メーカーは、これらの物質を0.2重量パーセント(wt%)以下に制限することを義務付けられており、一部の管轄区域では、組成物の重量に対してさらに0.1wt%以下を義務付けているところもある。OSHAは、いくつかのケラチントリートメントを試験し、そして製品が「ホルムアルデヒドフリー」として販売されているか、又は成分リストにおいてホルムアルデヒドを含まない場合でさえ、多くの製品が溶液中にホルムアルデヒドを含有していること、又は加熱によりホルムアルデヒドのガスが排出されることがわかり、「非ホルムアルデヒド」含有ケラチン矯正製品の主張する安全性について社会的に疑義を抱かせた。このような製品では、ホルムアルデヒドが単にホルムアルデヒド生成剤に置き換わっている可能性があると報告されている。このような製品は、毛小皮の下にある毛髪繊維にある程度浸透するが、主に表面的被覆によって作用すると考えられており、この外部保護の鞘が、この方法による滑らかさ及び光沢の効果の基礎となっている。しかしながら、これは一時的な効果で、この被覆は毛髪から水分を奪い、保護的なケラチン含有被覆が薄くなると、毛髪はもろくなり、乾燥し、くすむ結果となる。
【0007】
一部の永久的又は半永久的な矯正方法では、効果を長期間維持するために専用のシャンプーを使用する必要があり、このような製品は、そのような各処理が髪の形状に影響を与える特定の化学反応に適合している。さらに、そのような方法は、髪の色、髪のスタイルをさらに改変したい、又は自然なスタイルに戻したい場合の柔軟性がほとんどなく、そのような工程では通常、髪にさらにダメージを与える新しい永久的な処理を行うか、又は髪の再成長を待つ必要がある。
【0008】
毛髪繊維のケラチンタンパク質を構成するアミノ酸には、水分子の存在下で極性及び/又は荷電の側鎖間で形成され得る水素結合など、非共有結合性の弱い結合を形成できる側鎖も含有する。このような水素結合は、毛小皮鱗片(cuticle scales)の外表面、及び該鱗片の内部又はその下のアミノ酸間で形成される。この水素結合を熱(例えば、フラットアイロン又はドライヤーなど。それによって髪から水分を除去可能)で破壊し、乾燥又は冷却で再結合することで、一時的なヘアスタイリングが可能になる。このような方法は、毛髪にダメージを与える試薬を使用しないが、環境の相対湿度など水に対してそのように形作られた繊維が敏感であるため、その効果は一過性のものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ヘアスタイリング方法のパーマネント、セミパーマネント、又はテンポラリ(一時的)の間における分類は、通常、髪が天然の形状を取り戻すのに必要なシャンプーの回数に依存する。パーマネントな方法は、新しい毛髪繊維の成長を必要とするほど十分に過酷であり得、一部の非一時的なスタイリングは自発的に元に戻り得るが、このような方法自体、ダメージ(損傷)を与える可能性がある。
【0010】
したがって、毛髪の損傷及び有害な試薬の必要性を減らし、同時に有利に毛髪のスタイル及び形状を長持ちさせるヘアスタイリング方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
本開示は、とりわけ、ヘアスタイリングの従来の方法に関連する欠点の少なくともいくつかを克服するために開発された、毛髪繊維のスタイリングのための、組成物、キット、及びそれらを含む、又は使用する方法に関する。本明細書で使用されるとおり、毛髪の「スタイリング」とは、視覚的に検出可能かつ望ましい方法でその形状を改変する任意の行為を含み、波状、巻き毛状、又はコイル状の場合、毛髪をまっすぐにするか、又は弛緩させることを含み;又は逆に、髪が希望よりも比較的まっすぐである場合は、髪を巻き毛にすることを含み;したがって、毛髪繊維が巻き毛である生来の傾向が任意に増加又は減少することである。
【0012】
有利なことに、本教示による硬化性組成物及び方法は、毛髪繊維内のジスルフィド結合の切断又はその分子構造の永久的な変化なしに、一時的又は永久的なヘアスタイリングを可能にする。したがって、毛髪繊維が、本教示に従ってスタイリングする前の天然の(改変されていない)形状で、ある数の硫黄結合を有する場合、改変した形状を有するようにスタイリングされた繊維は、本質的に同じ数の硫黄結合を示す。あるいは、本組成物及び方法の無害性は、天然の毛髪繊維と本質的に同じ物理化学的構造を示す改変した毛髪繊維によって評価することができる。例えば、いくつかの実施形態では、毛髪繊維の機械的特性は、本組成物及び方法によって損なわれることはなく、かつ特定の実施形態では、いくつかの特性が改善されることさえある。毛髪繊維の化学構造が悪影響を受けないということは、例えば、熱分析によって実証することができ、その場合、改変と天然との毛髪繊維は、それぞれ本組成物及び本方法によって処理又は未処理のものであり、少なくとも1つの本質的に同様の吸熱温度を示し得る(種々の方法、例えば、DSC、DMA、TMA、及び同様の熱重量測定法によって決定可能である)。2種の材料又は毛髪繊維の吸熱温度は、互いに4°C、3°C、2°C、又は1°C以内であれば、本質的に類似しているとみなすことができる。特定の実施形態では、参照として機能する処理繊維及び未処理繊維の吸熱温度は、同じ熱分析法によって測定され、DSCが好ましい。
【0013】
本発明の第1の態様では、繊維の形状を天然の形状から所望の改変形状に改変することによって哺乳類の毛髪繊維をスタイリングする方法が提供され、該方法は以下を含む:
a)個々の毛髪繊維に、ヘアスタイリング組成物を適用して毛髪繊維を被覆すること、ここで前記ヘアスタイリング組成物は、少なくとも1つの水不溶性フェノール系モノマー(phenol-based monomer:PBM)、少なくとも1つの水溶性吸湿剤(water-soluble hygroscopic agent:WHA)、水、任意にPBMと混和性の1つ又は複数の硬化促進剤、及びさらに任意に少なくとも1つの補助重合剤を含む;
b)PBM(複数可)及びWHA(複数可)の毛髪繊維中への少なくとも部分的な浸透を確実にするのに十分な時間、ヘアスタイリング組成物を毛髪繊維と接触させたままにすること;及び
c)毛髪繊維にエネルギーを適用して、毛髪繊維内に浸透したHPMの少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させること。ここで前記部分的な硬化は任意に毛髪繊維が所望の改変形状の間に起こる。
【0014】
本組成物のpHは、毛髪繊維中へのPBM及びWHAの浸透を促進するように選択することができ、前記pHは、浸透が、もしあれば、最小となる処理対象の繊維の等電点とは異なる。いくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物のpHは、pH 1~pH 3.5、又はpH 5~pH 11の範囲である。
【0015】
いくつかの実施形態では、PBM(複数可)及びWHA(複数可)を含むヘアスタイリング組成物を適用する工程a)の前に、以下の工程のうちの1つ又は複数が実行される:
A- 少なくとも1つのPBM、及び/又は少なくとも1つの硬化促進剤、及び/又は少なくとも1つの補助重合剤を、水と混合する前に予備重合する工程;及び/又は
B- a)毛髪繊維を洗浄すること;
b)毛髪繊維の複数の水素結合の少なくとも一部の切断を確実にするのに十分な温度及び時間、毛髪繊維を乾燥させること;及び
c)毛髪繊維に前処理組成物を適用すること
のうちの少なくとも1つによって毛髪繊維を前処理する工程。
【0016】
再スタイリング及び脱スタイリングの文脈でより詳細に説明するように、本発明の方法によって処理された毛髪繊維に改変形状を与える実際のスタイリング工程は、毛髪繊維が以前の(例えば、未改変/天然の/改変とは別の)形状に戻る傾向を克服できるポリマーを徐々に形成するモノマーの硬化と必ずしも同時に行われる必要はない。一度、毛髪の繊維の中にポリマーが形成されると、後で所望の際にその形状を改変することができる。この処理方法は、繊維の全体的な形状を改変する時系列に関係がないスタイリングの方法とみなすことができ、これは単に繊維内のポリマーの形成が容積を提供可能であるためであり、この処理方法はまた、変化の検出可能性の程度に関係がないスタイリング効果とみなすこともできる。
【0017】
いくつかの実施形態では、毛髪繊維内に浸透したエネルギー硬化性のフェノール系モノマーの少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させるために適用されるエネルギーは熱エネルギーであり、熱は、伝導(例えば、スタイリングアイロンによる直接接触)、対流(例えば、熱風ブロワー、ヘアドライヤーの使用)、又は放射(例えば、セラミック遠赤(IR)放射ヘアドライヤーの使用)によって毛髪繊維に伝達される。他の実施形態では、適用されるエネルギーは、より一般的には電磁波(EM:electromagnetic)であり、上述のIR放射に加えて、例えば紫外線(UV)放射を含んでもよい。PBMの中には、熱エネルギー(加熱)により主として又は単独で硬化可能なものもあれば、電磁エネルギーにより主として又は単独で硬化可能なものもある。前者は熱硬化性モノマーとも呼ばれ、後者はEM硬化性モノマーとも呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、PBMは両方の機構によって硬化可能であり得、その場合、それらはハイブリッド硬化性モノマーと呼ばれることがある。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明の方法により処理された繊維及び未処理の繊維(又は類似の対応するもの)は、熱分析によって測定して、互いに4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示す。
【0019】
簡潔にするために、毛髪のスタイリングのための本発明の方法において適用され得るヘアスタイリング組成物の調製に役立ち得る材料を、組成物、それらの成分の所望の特性、及びそれらの相対的な割合に言及して以下に詳述し、これらの特徴は、本方法のために必要な変更を加えて適用される。
【0020】
本発明の第2の態様では、本明細書にさらに詳述されるスタイリング方法又はヘアスタイリング組成物によって達成される第1の改変された毛髪形状である毛髪形状を有する毛髪繊維を再スタイリングする方法が提供され、該再スタイリング方法は以下を含む:
A- 第1の形状を有し、かつ内部に軟化温度を持つ合成ポリマーを含有する毛髪繊維にエネルギーを適用することであり、ここで合成ポリマーは、その軟化温度よりも低い温度で毛髪繊維に形状を提供することができ、エネルギーの適用は、毛髪繊維内の合成ポリマーを軟化するのに十分な時間であること;及び
B- 毛髪繊維が所望の再スタイリングの第2の改変された毛髪形状である間にエネルギーの適用を終了することであり、ここで第2の改変された毛髪形状は前記第1の形状と同じか又は異なること。
【0021】
いくつかの実施形態では、所望の第2の形状を有する繊維は、熱分析によって測定されるとおり、合成ポリマーを欠く未処理繊維に対して4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示す。
【0022】
いくつかの実施形態では、工程Aにおける再スタイリングのための熱エネルギーの適用は、少なくとも5分間、ポリマーの軟化温度を超える温度、例えば少なくとも50℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、再スタイリングの温度は、毛髪繊維内の残留水の量をさらに減少させるのに十分に高い。
【0023】
本発明の第3の態様では、本明細書でさらに詳述されるスタイリング方法又はヘアスタイリング組成物によって達成される改変された毛髪形状を有する毛髪繊維を脱スタイリングする方法が提供される。すなわち、軟化温度を有する合成ポリマーを内部に含む毛髪繊維のスタイリング方法を提供することであり、前記合成ポリマーは、その軟化温度よりも低い温度にある時に毛髪繊維に一形状を付与することができ、前記脱スタイリング方法は以下を含む:
I- 第1の形状を有する毛髪繊維にエネルギーを適用することであり、ここで全記エネルギーの適用は、毛髪繊維が少なくとも10分間、少なくとも40℃であるか、又は好ましくは少なくとも45℃であるように、毛髪繊維内の合成ポリマーを軟化させるのに十分な時間であること;
II- 前記エネルギーの適用中に水を適用して、合成ポリマーの軟化によって解放された水素結合の少なくとも部分的な再形成を可能にすること;及び
III- 毛髪繊維が自然な未改変の形状である間にポリマーが軟化していない形状を取り戻すことを可能にするように、毛髪繊維が人為的な拘束を欠いている間に前記エネルギーと水との適用を停止すること。
【0024】
いくつかの実施形態では、自然な未改変の形状を有する繊維は、熱分析によって測定されるとおり、合成ポリマーを欠く未処理繊維に対して4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示す。
【0025】
本発明の方法及び組成物により前もって処理された毛髪(すなわち、WHA(複数可)の存在下でPBMの架橋によりin situで合成されたポリマーを内部に含む毛髪繊維)を再スタイリング又は脱スタイリングする能力は、従来の方法がさらに毛髪形状を変えるために適切な組成物の適用を通常必要とする当該分野において有利かつ予期されなかったことである。
【0026】
本明細書で使用されるとおり、毛髪繊維に関して「処理された」という用語は、本発明の組成物を用いて、又は方法によって処理された繊維を指し、逆に「未処理」という用語は、本明細書で開示される組成物を用いて、又は方法によって処理されなかった毛髪繊維を指す。
【0027】
本方法及び組成物によって処理された毛髪は、例えば処理された毛髪の機械的特性に関して、及び/又は処理することができる毛髪の種類などに関して、さらなる利点を示し得る。例えば、従来のスタイリング方法は、一般的に毛髪の機械的特性に悪影響を及ぼすが、本教示に従って処理された毛髪繊維は、対応する未処理の繊維における同じ特性と少なくとも等しい少なくとも1つの引張特性(例えば、毛髪繊維の弾性率、破断応力、及び靭性)を示し得る。さらに、又は代わりに、本発明の方法及び組成物は、従来の毛髪手段、例えばブリーチ又はカラーリングによって、すでに処理された髪に適用できるが、従来のスタイリング方法は適合しない可能性がある。
【0028】
本発明の第4の態様では、哺乳類の毛髪繊維の形状を改変するためのヘアスタイリング組成物が提供され、該ヘアスタイリング組成物は以下から選択される:
a)単相組成物。ここで単相は、少なくとも1つの水不溶性フェノール系モノマー(PBM)、少なくとも1つの水溶性吸湿剤(WHA)、毛髪繊維中へのPBM(複数可)及びWHA(複数可)の少なくとも一部の浸透を増加させるように選択されたpHを有する水、並びに共溶媒を含み、単相は、任意に、それと混和性の1つ又は複数の硬化促進剤をさらに含む;及び
b)水中油型エマルション。ここでエマルションはa)少なくとも1つの水不溶性フェノール系モノマー(PBM)及び任意にそれと混和可能な1つ又は複数の硬化促進剤を含む油相;及びb)少なくとも1つの水溶性吸湿剤(WHA)を含有し、かつPBM(複数可)及びWHA(複数可)の少なくとも一部の毛髪繊維への浸透を増加させるように選択されるpHを有する水相、からなる。
前記ヘアスタイリング組成物は、本明細書においてさらに詳述され、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0029】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物は、0.2wt%未満の小反応性アルデヒド(small reactive aldehyde:SRA)を含み、SRAは、組成物の総重量に対して、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択される。他の実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、組成物の総重量に対して0.1wt%未満、0.05wt%未満、0.01wt%未満、0.005wt%未満、又は0.001wt%未満のSRAを含有する。
【0030】
前述の態様のいずれかの実施形態において使用され得る水溶性吸湿剤、又は複数である場合にはそれぞれの水溶性吸湿剤は、以下の特徴の少なくとも1つを特徴とする:
i)WHAは溶解時(例えば、水中又は水溶液若しくは水相中)に実質的にイオン化しない極性非電解質であること;
ii)WHAは、水分子が水分子間で形成し得る水素結合よりも強い水素結合を水分子と形成することができ、言い換えれば、WHAは水との水素結合エネルギーが、少なくとも21キロジュール/mol(kJ/mol)、少なくとも22.5kJ/mol、少なくとも25kJ/mol、又は少なくとも27.5kJ/molであること;
iii)WHAは、水との水素結合エネルギーが多くとも40kJ/mol、多くとも35kJ/mol、又は多くとも32.5kJ/molであること;
iv)WHAは、水との水素結合エネルギーが21kJ/mol~40kJ/mol、22.5kJ/mol~35kJ/mol、又は27.5kJ/mol~32.5kJ/molの範囲であること;
v)WHAは、水への溶解度が25℃の温度で測定して、水の重量に対して5wt%以上、10wt%以上、20wt%以上、又は30wt%以上であること;
vi)WHAは、水への溶解度が25℃の温度で測定して、水の重量に対して150wt%以下、125wt%以下、100wt%以下、又は75wt%以下であること;
vii)WHAは、水への溶解度が25℃の温度で測定して、水の重量に対して、5wt%~150wt%、10wt%~125wt%、20wt%~100wt%、又は30wt%~75wt%の範囲であること;
viii)WHAは、25℃の温度で測定して、ヘアスタイリング組成物又はその水相への溶解度が、組成物又はその水相の重量に対して、5wt%以上、10wt%以上、20wt%以上、又は30wt%以上であること;
ix)WHAは、25℃の温度で測定して、ヘアスタイリング組成物又はその水相への溶解度が、組成物又はその水相の重量に対して、140wt%以下、110wt%以下、80wt%以下、又は50wt%以下であること;
x)WHAは、25℃の温度で測定して、ヘアスタイリング組成物又はその水相への溶解度が、組成物又はその水相の重量に対して、5wt%~140wt%、10wt%~110wt%、20wt%~80wt%、又は30wt%~50wt%の範囲であること;
xi)WHAは、融解温度Tmが25℃以上、35℃以上、又は45℃以上であること;
xii)WHAは、融解温度Tmが200℃以下、180℃以下、又は160℃以下の融解温度Tmであること;
xiii)WHAは、融解温度Tmが25℃~200℃、35℃~180℃、又は45℃~160℃の範囲であること;
xiv)WHAは、沸騰温度Tbが大気圧で測定して水の沸騰温度よりも高く、換言すれば、WHAは、沸騰温度Tbが100℃以上、120℃以上、又は140℃以上であること;
xv)WHAは沸騰温度Tbが300℃以下、250℃以下、又は225℃以下であること;
xvi)WHAは、沸騰温度Tbが100℃~300℃、120℃~250℃、又は140℃~225℃の範囲であること;
xvii)WHAは水よりも揮発性が低いため、蒸気圧が水の蒸気圧よりも小さく、言い換えれば、WHAは、蒸気圧が25℃で測定して2.3キロパスカル(kPa)以下であり、好ましくは1.0kPa以下、0.1kPa以下、10Pa以下、又は1Pa以下であること;
xviii)WHAは、蒸気圧が25℃で測定して1mPa以上、10mPa以上、又は50mPa以上であること;
xix)WHAは、蒸気圧が1mPa~1kPa、1mPa~0.1kPa、1mPa~50Pa、1mPa~10Pa、又は1mPa~1Paの範囲であること;
xx)ヘアスタイリング組成物の重量に対して1wt%以下の濃度で、WHAはヘアスタイリング組成物のpHに実質的に干渉せず、WHAの前記濃度の存在下でのヘアスタイリング組成物のpHは、WHAの非存在下でのヘアスタイリング組成物のpHの半対数以内であること;及び
xxi)WHAは、ヘアスタイリング組成物に意図された濃度で化粧品として使用することが規制当局により承認されていること。
【0031】
いくつかの実施形態において、WHAは、(例えば、水を含有する又は水からなる液体中に)溶解した場合に実質的にイオン化しない極性非電解質である。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、このようなイオン化の欠如は、ヘアスタイリング組成物及びそれによって処理された毛髪繊維のそれぞれの電荷を維持するのを助けると考えられる。これらの種のそれぞれの帯電は、PBM(複数可)及びWHA(複数可)の毛髪表面への運動に有利なゼータ電位差及び勾配を提供することができ、それにより毛髪に浸透することができ、そこで重合することにより、本明細書で教示されるようにスタイリングに有利となる。
【0032】
いくつかの実施形態において、WHAは、極性水溶性吸湿剤であり、水素結合エネルギーに関して上記の特徴ii)~iv)のそれぞれに記載された特性の少なくとも1つを満たす。いくつかの実施形態において、特徴i)~iv)又はii)~iv)を満たすWHAは、さらに、その水への溶解性に関して上記の特徴v)~vii)のそれぞれに記載された特性の少なくとも1つを満たす。いくつかの実施形態において、特徴i)~iv)、ii)~iv)、i)~vii)又はii)~vii)を満たすWHAは、さらに、ヘアスタイリング組成物中又はその水相中での溶解性に関する上記の特徴vii)~x)のそれぞれに記載された特性の少なくとも1つを満たす。いくつかの実施形態において、特徴i)~iv)、ii)~iv)、i)~vii)、ii)~vii、i)~x)又はii)~x)を満たすWHAは、室温(約25℃)で液体であるが、代替的に固体であることができ、かつさらに、その融解温度に関して上記の特徴xi)~xiii)のそれぞれに記載された特性の少なくとも1つを満たす。いくつかの実施形態において、特徴i)~iv)、ii)~iv)、i)~vii)、ii)~vii)、i)~x)、ii)~x)、i)~xiii)、又はii)~xiii)を満たすWHAは、室温で固体であり、かつさらに、その沸騰温度に関して上に列挙した特徴xiv)~xvi)のそれぞれに記載された特性の少なくとも1つを満たす。いくつかの実施形態において、特徴i)~iv)、ii)~iv)、i)~vii)、ii)~vii)、i)~x)、ii)~x)、i)~xiii)、ii)~xiii)、i)~xvi)、又はii)~xvi)を満たすWHAは、室温で固体であり、かつさらに、その蒸気圧に関して上記に列挙した特徴xvii)~xix)のそれぞれに記載の特性の少なくとも1つを満たす。いくつかの実施形態において、特徴i)~iv)、ii)~iv)、i)~vii)、ii)~vii)、i)~x)、ii)~x)、i)~xiii)、ii)~xiii)、i)~xvi)、ii)~xvi)、i)~xix)、又はii)~xix)を満たすWHAは、室温で固体であり、かつさらに、ヘアスタイリング組成物のpHに対するその最小限の影響に関して上に挙げた特徴xx)を満たす。好ましくは、WHAの規制状態及び化粧品用途の本発明のヘアスタイリング組成物におけるその濃度の適合性に関する特徴xxi)は、特徴i)~xx)又はii)~xx)のいずれの組み合わせに適用され、かつ特に本段落で特に想定される組み合わせに適用される。
【0033】
本材料の特定の特性(例えば、溶解性又はその欠如)が報告される液体に関して使用される場合、「水」という用語は、適用される測定に慣用されるように、約7のpH及び25℃で18.2メガオーム・cm-1の抵抗率を有する純粋な脱イオン水又は二重蒸留水を指し得る。しかし、文脈から明らかなように、水は、ヘアスタイリング方法で従来使用されている水道水を含む、異なる等級の液体を指してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物は、PBM及び硬化促進剤の少なくとも1つと交差重合することができる少なくとも1つの官能基を含む補助重合剤をさらに含み、該官能基は:ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、及び二重結合から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、乳化剤、湿潤剤、増粘剤及び電荷修正剤を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0036】
本発明の第5の態様では、哺乳動物の毛髪繊維をスタイリングするためのキットが提供され、前記キットは:
少なくとも1つの水不溶性フェノール系モノマー(PBM)を含有する第1のコンパートメント;及び
少なくとも1つの水溶性吸湿剤(WHA)と:
1. 水;
2. 共溶媒;及び
3. pH調整剤;
のうちの少なくとも1つとを含有する、第2のコンパートメント、
を含み、
ここで、第2のコンパートメントの内容物は、毛髪繊維中へのPBM(複数可)及びWHA(複数可)の少なくとも一部の浸透を増加させるように選択されるpHを有する液体であり;かつ
これらのコンパートメントを混合することにより、明細書でさらに詳細に説明され、添付の請求項に記載されるとおり、単相組成物又は水中油型エマルションとしてヘアスタイリング組成物を生成する。
【0037】
いくつかの実施形態において第1のコンパートメントの少なくとも1つのPBMは、キット内に配置される前に予め重合される。
【0038】
いくつかの実施形態において、キットのコンパートメントの混合により調製されたヘアスタイリング組成物はすぐに使用でき、一方では他の実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、コンパートメントの混合及び/又は毛髪繊維への適用の前にエンドユーザーによってさらに(例えば、水道水で)希釈される必要がある。
【0039】
いくつかの実施形態では、架橋剤(縮合硬化及び/又は付加硬化に適したもの)及び硬化加速剤から選択される少なくとも1つの硬化促進剤が、ヘアスタイリング組成物内、キット内、又はそれを用いる方法においてさらに含まれる。本組成物及び方法は、いくつかの実施形態において、前記プレポリマーの付加硬化及び縮合硬化の両方を組み合わせて可能にする2つ以上の種類の架橋剤を含んでいてもよい。このような硬化促進剤は、それが第1又は第2のコンパートメントの成分のいずれか1つとそれぞれ自発的に(例えば、室温で)反応しない場合に、第1又は第2のコンパートメントに配置することができる。あるいは、硬化促進剤は、単相組成物又は水中油型エマルションとしてのヘアスタイリング組成物の調製時に、第1及び第2のコンパートメントと混合されるように、別の追加のコンパートメントに配置されてもよい。
【0040】
キットのコンパートメント(及びそれぞれの内容物)は、望ましい保管温度(例えば室温を超えない温度)でキットを保管する間、製品の有効性を低下させるようないずれの反応を回避又は低減するように選択される。いくつかの実施形態では、PBM(複数可)の予備重合の有無にかかわらず、第1及び/又は第3のコンパートメントは、不活性環境、好ましくは不活性ガス下、例えばアルゴン又は窒素下に維持される。同様の理由で、前記コンパートメントは、放射線に対して不透明性であるか、又は内容物の安定性に有害な要因に対して密閉されるように選択することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、キットの第1のコンパートメントは、少なくとも1つの補助重合剤をさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、キットは少なくとも1つの共溶媒をさらに含み、これは第1、第2、又は別の追加のコンパートメントに含有されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、キットは、以下を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む:乳化剤、湿潤剤、増粘剤、及び電荷調整剤。少なくとも1つの添加剤が油混和性である場合、第1のコンパートメントに配置してもよい。少なくとも1つの添加剤が水混和性である場合、第2のコンパートメントに配置してもよい。添加剤は、別個の追加のコンパートメントに入れることもできる。
【0044】
本開示のさらなる目的、特徴及び利点は、以下に続く詳細な説明に記載され、一部は、本明細書から当業者に容易に明らかになるか、又は本明細書及び特許請求の範囲、並びに添付図面に記載された本開示を実施することによって認識されるであろう。本開示の実施形態の様々な特徴及びサブコンビネーションは、他の特徴及びサブコンビネーションを参照することなく採用することができる。
【0045】
図面の簡単な説明
次に、本開示のいくつかの実施形態について、添付の図を参照しながら例としてさらに説明する。同様の参照数字又は文字は、対応する又は同様の構成要素を示している。本明細書は、図と共に、本開示のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。図は説明のためのものであり、より詳細な実施形態の構造的詳細を示そうとするものではなく、本開示の基本的理解に必要なものである。明確さ及び表示の便宜のため、図に描かれている物体の一部は必ずしも縮尺通りに示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1Aは、電圧1.20kVでの走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)と組み合わせた集束イオンビームミリングによって撮影された画像であり、参照となる未処理の毛髪繊維の断面を示す。
図1Bは、FIB-SEMで撮影した画像であり、
図1Aと同じ参照の未処理の毛髪繊維の断面を示し、ただし電圧10kVでのものである。
【
図2】
図2Aは、電圧1.20kVでのFIB-SEMで撮影した画像であり、本発明の一実施形態による水中油型エマルションで処理された毛髪繊維の毛髪の洗浄サイクルの前の断面を示す。
図2A’は、
図2AのFIB-SEM像を模式的に示したものである。
図2Bは、FIB-SEMによって撮影された画像であり、毛髪の洗浄サイクルの前の
図2Aと同じ処理の毛髪繊維の同じ断面を示す。この画像は電圧10kVで撮影された。
図2B’は、
図2AのFIB-SEM像を模式的に示したものである。
【
図3】
図3Aは、電圧1.20kVでFIB-SEMで撮影した画像であり、
図2A又は
図2Bと同じ水中油型エマルションで処理した毛髪繊維の16回の毛髪洗浄後の断面を示す。
図3Bは、FIB-SEMによって撮影された画像であり、
図3Aに示されるのと同じ処理の毛髪の16回の毛髪洗浄後の同じ断面を示し、この画像は電圧10kVで撮影された。
【
図4】
図4Aは、未処理の巻き毛の黒色の毛髪繊維の写真である。
図4Bは、本発明の一実施形態によるヘアスタイリング組成物で処理された巻き毛の黒色の毛髪繊維の写真を示す。
【
図5】
図5は、毛髪試料の熱分析のプロットの一連の示差走査熱量測定(DSC)を示し、参照の未処理の毛髪試料、2種の市販の方法によって処理された毛髪試料、及び本発明の一実施形態による無害と仮定される組成物によって処理された一毛髪試料を含む。
【
図6】
図6は、本教示の一実施形態によるヘアスタイリング方法の簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
本開示は、a)巨大分子(例えば、ポリマー)を生成する任意の適切な反応によって重合を受けることができる、少なくとも1つの水不溶性フェノール系モノマー(PBM)と、b)硬化ポリマーによって与えられるヘアスタイリングの耐久性を長持ちするように、硬化ポリマーの活性を延長し得る少なくとも1つの材料とを含む、毛髪繊維をスタイリングするための組成物、及びより特に硬化性組成物に関する。硬化ポリマーの効果を高めることができる材料は、水分子と結合することができる水溶性吸湿剤(WHA)である。このようなWHAは、硬化ポリマーと、毛髪ケラチンと、及び/又は他の毛髪成分と、不利益に相互作用してしまう可能性のある水分子を、PBMの硬化によって可能になる拘束された形状に影響を与える様式で隔離すると考えられている。
【0048】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、驚くべきことに、WHA(複数可)は、水溶性であり、処理された毛髪をすすいだ後、又はシャンプーの度に比較的容易に毛髪繊維から流れ出て、わずか数回(例えば、5回未満、4回未満、又は3回未満)で消失すると予想されるにもかかわらず、ヘアスタイリングの持続時間に関して保護/延長効果を提供することを発見した。本発明者らは、予想外に、WHAは、単離された「吸水」体として、又は本発明のモノマーから硬化されるポリマーとの相互作用において、又は硬化されたポリマーと毛髪繊維の天然成分との相互作用において、又は毛髪繊維の天然成分との相互作用において、又は任意の同様の作用機序又はそれらの組み合わせにおいて、毛髪繊維内に十分に残存することが可能であると推測している。このように、毛髪内にWHAが予想外に長時間存在することで、通常であれば時間の経過と共に観察される、PBMによって得られるスタイリング効果の損失が低減又は遅延される。言い換えると、WHAを欠く組成物がN回の洗浄サイクルに耐える所望のヘアスタイリングを提供する場合、WHAをさらに含む同様のヘアスタイリング組成物は、さらにM回の洗浄サイクルに耐える所望のヘアスタイリングを提供する。ここでMはNより大きく、他のすべての条件(例えば、適用条件)は同じである。
【0049】
本発明は、同出願人の国際特許公開第(WO)第2021/224784号に対する改良物であり、その内容は、ここに完全に記載されているかのようにあらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0050】
本明細書で使用されるとおり、モノマーという用語は、単一の繰り返し分子のみを含むことを意味せず、毛髪繊維に浸透するいずれの分子の能力に適していると考えられるようにその繰り返し数が10,000g/mol、5,000g/mol、又は3,000g/molを超えない分子量をもたらす限り、短いオリゴマーを含んでもよい。ヘアスタイリング組成物は、適切な重合に必要であり得る任意の化合物と共にエネルギー硬化性モノマーを毛髪繊維の内部に送達することを可能にしながら、その繊維内でそのような化合物がモノマーとその場所で混和されることを可能にする。モノマーと混和性であり、かつそれらの硬化を促進する前記化合物は、硬化促進剤及び/又は共溶媒であり得る。同様に、ヘアスタイリング組成物は、好ましくは極性水溶性吸湿剤(WHA)である吸湿剤を毛髪繊維内に送達することを可能にする。
【0051】
毛髪繊維内で作用して重合を促進するか、又は形成されたポリマーによって得られるスタイリング効果に対する損傷を軽減、遅延又は防止する化合物を、モノマーと同じ相、又は別個の相において送達することができる。したがって、本教示によるヘアスタイリング組成物は、単相組成物又は水中油型エマルションとすることができ、この両方は典型的には、少なくとも一部のモノマー、及びそれらの好適な組み立てのため、及び硬化ポリマーとしての効果の維持のために必要な任意の他の材料、の浸透を容易にするように適合されたpHを有する。促進性のpHは、a)毛髪鱗片の十分な開口、及び/又はb)毛髪繊維及びヘアスタイリング組成物の十分な帯電(例えば、ゼータ電位によって測定可能)を促進することによって作用することができ;かつpH 1~pH 3.5又はpH 4の範囲の酸性、又はpH 5~pH 8の範囲の弱酸性~弱アルカリ性、又はpH 8~pH 11の範囲のアルカリ性のいずれかであり得、好ましくはpH 9~pH 11であり得る。言い換えればpHは、毛髪の等電点以外の範囲にあれば、毛髪繊維への浸透に有利と判断され、毛髪繊維とその健康状態によって、3.5~5、4~5、又は3.5~4の間でわずかに変動してもよい。
【0052】
これらのヘアスタイリング組成物の調製方法及び使用方法、並びにそのような組成物の調製を可能にするキット及びそれを用いたヘアスタイリングも記載されている。
【0053】
本明細書の教示の原理、用途及び実施態様は、添付の明細書及び図を参照することにより、よりよく理解され得る。本明細書に提示された明細書及び図を熟読すれば、当業者は、過度の努力又は実験なしに、本開示を実施することができる。
【0054】
少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、本明細書に規定される構成要素及び/又は方法の構造の詳細及び配置への適用において必ずしも限定されないことが理解される。本開示は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行することが可能である。本明細書で使用されている語句及び用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではない。例えば、本発明の利点を説明するために頭髪について言及することが多いが、本発明の教示は、いくつかの選択肢を挙げると、ウィッグ、ヘアエクステンション、又はまつ毛にも同様に適用されることは明らかである。したがって、耐久性のあるヘアスタイルを提供することは、人間対象に取り付けられた毛髪、ウィッグ又はヘアエクステンションに対するものであってもよく、用語はさらに、一例として、まつ毛に耐久性のあるまつ毛の形状を提供することを含む。
【0055】
材料、方法及び実施例を含む前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、本開示の単なる例示であり、請求される本開示の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みを提供することを意図しており、必ずしも制限的であることを意図しないことが理解されるであろう。
【0056】
本発明の一態様では、哺乳類の毛髪繊維の形状を改変することによって哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするための方法が提供される。
【0057】
本発明の方法の第1の工程では、液状のヘアスタイリング組成物を個々の毛髪繊維上に適用する。この液状組成物は、水と:i)少なくとも1つの水不溶性フェノール系モノマー(PBM)及び少なくとも1つの水溶性吸湿剤(WHA)と、を含む単相組成物又は水中油型エマルションである。ヘアスタイリング組成物が単相として提供される場合、前記液体のモノマーと水部分との混和性を確保するために十分な量の適切な共溶媒が提供され、WHAと共溶媒とを含有する水性媒質は、モノマーの重合に望ましい他の任意の材料(例えば、任意の硬化促進剤、及び/又は補助重合剤)又は該組成物の形態及び適用性に望ましい他の任意の材料(例えば、湿潤剤、増粘剤など)の混和性に対してさらに適合性がある。ヘアスタイリング組成物が二相性エマルションとして提供される場合、共溶媒はもし存在するならば、モノマーと任意の硬化促進剤との混和性を少なくとも確保するために提供され、ここでモノマーはエマルションの油相に存在し、WHAはエマルションの水相に存在する。一般的に、油相は連続的な水相中に微小液滴として分散され、そのため組成物は水中油型エマルションを形成し、これはさらに乳化剤を含んでもよい。
【0058】
本発明の方法及び組成物に適した特定の化合物を詳述する前に、硬化が進行するように設定されている場合及び/又はその限り、モノマー(及びそれらの重合を促進する任意の薬剤)が毛髪繊維内に浸透し、かつ互いに混和性であるという上述の能力の他に、材料(モノマーと混和しない水相に存在し得る、得られる硬化されたポリマーによって提供されるスタイリング効果への水による損傷を防止するものを含む)は、スタイリング組成物、その調製方法、及びその使用方法と、適合性であることがより一般的には必要である。「適合性」とは、モノマー、硬化促進剤、補助重合剤、共溶媒、水溶性吸湿剤、又は本組成物の任意の他の適合性成分が、任意の他の化合物の有効性、又は最終組成物を調製又は使用する能力に悪影響を及ぼさないことを意味する。「適合性」には化学的、物理的、又はその両方があり、相対的な量に依存し得る。例示すると、硬化促進剤は、モノマー間を架橋すること、及び/又は他の方法ではプロセスを加速することに適合した官能基を有する場合、適合性があると考えられる。共溶媒は、関連物質が同じ相にある間に重合が進行するのに十分遅い揮発速度を持っていれば、適合性があると考えられる。材料は、組成物のpH、又は該組成物の調製中若しくはヘアスタイリングのための該組成物の使用中に供され得る温度に影響されない場合、適合性があると考えられる。必須ではないが、すべての材料は、調製及び使用を容易にするために、室温で液体であり得るか、又は固体の場合、組成物の液体成分と容易に混和し得る(例えば、室温で固体のWHAは、水又は任意の他の水性媒質に容易に溶解し得る)。さらに、室温で液体の材料は、固体の材料に比べて毛髪の感触が向上すると考えられている。材料が室温で固体であり、その溶解に加熱が必要な場合、その融点は、熱硬化性モノマーの硬化を通常より早く引き起こすことなく、またその他としては重合能力に影響を与えることなく、その溶解を選択的に促進するために適合した加熱温度に対して十分に低い必要がある。必要に応じて、ヘアスタイリング組成物、特に毛髪繊維に浸透するためのモノマー及びその他の硬化性成分を室温で液体に保つために、可塑剤を含有させることが可能である。
【0059】
このような化合物は、通常、毛髪の鱗片が適切に開いた後に、毛髪繊維内に浸透することができるという前提条件に戻ると、いずれの特定の理論に拘束されることを望むことなく、より大きな分子よりも小さな分子の方が繊維内に容易に移行することができると考えられている。分子の物理的なサイズは、さらなる因子(特別な構造及び「稠密性(compactness)」の有無など)に依存し得るが、化合物の分子量は、繊維に浸透する能力を推定するのに役立ち得る。いくつかの実施形態において、毛髪繊維内で重合するための材料(例えば、モノマー及び架橋剤)、又はそのような重合を促進するための材料(例えば、補助重合剤、共溶媒、及び硬化加速剤)、又は形成されたポリマー又はその効果に対する損傷を低減、遅延、又は防止するための材料(例えば、WHA)は、10,000g/mol以下、5,000g/mol以下、3,000g/mol以下、2,500g/mol以下、2,000g/mol以下、1,500g/mol以下、又は1,000g/mol以下の平均分子量(MW)を有する。
【0060】
既知の化学式を持つ分子の分子量は、その構成原子の分子量に基づいて計算することができ、その場合、平均分子量は単に特定の分子に割り当てられた分子量である。ポリマーのような未知又は多様な化学式で形成される化合物の場合、関連分子の集団の平均分子量は、材料の供給元から提供され得るか、又は以下のような標準的な方法で独自に決定することができる:例えば高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー、光散乱法、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析法MALDI-TOF MSなど。これらの一部の方法はASTM D4001又はISO16014-3に記載されている。平均分子量は、数又は重量で見積もることができ、どちらも本明細書に包含される。
【0061】
一実施形態において、少なくとも1つのPBMは、一般式Iであり:
【化1】
式中、
R
1、R
2、R
3、及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、直鎖状、環状、若しくは分枝状の置換若しくは非置換の、C
1~C
20アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アリル、C
1~C
8芳香族エステル(例えば、C
1~C
8フェニルエステル)、又はC
1~C
8非芳香族エステル(例えば、C
1~C
8グリコールエステル)であり;かつ
R
4は、水素原子、ヒドロキシル、又は飽和若しくは不飽和のC
XH
Yアルキルであり、ここでXは15以下の整数であり、かつYは、2X+1-nに等しく、nは0、2、4、及び6から選択される。
【0062】
いくつかの実施形態において、R1、R2、R3、及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル、メチル、2-プロペニル、フェニルアセテート、フェニルカルボキシレート、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノカルボキシレート、又はメトキシである。他の実施形態では、R4は、水素原子、ヒドロキシル、又はC15H31-nアルキルであり、ここでnは、0、2、4、及び6から選択される。
【0063】
実施形態では、組成物が、R4がヒドロキシルであり、かつR1、R2、R3、及びR5がすべて水素原子である、式Iの少なくとも1つのPBMを含み、モノマー、すなわちベンゼン-1,3-ジオールは、レゾルシノールとしても知られ、次いで組成物はさらに式Iの少なくとも第2のPBM、レゾルシノール以外の第2のPBM、及び任意に硬化促進剤をさらに含むことが必要となる場合がある。
【0064】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPBMは、以下の一般式II~Vのいずれかから選択される:
【化2】
【0065】
PBMのC15H31-n側鎖は、不飽和度の異なる炭化水素(アルキル)置換基であり、すなわち、飽和(n=0)、モノエン(n=2)、ジエン(n=4)、及びトリエン(n=6)の炭化水素側鎖であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、本組成物のPBMの少なくとも1つを構成する一般式IIの化合物は、カルダノール誘導体である。このような誘導体は、3-ペンタデシルフェノール(n=0)、3-[ペンタデカ-8-エニル]フェノール(n=2)、3-[ペンタ‐デカ-8,11-ジエニル]フェノール(n=4)、3-[ペンタデカ-8,11,14-トリエニル]フェノール(n=6)及びこれらの配座異性体からなる群から選択することができる。
【0067】
他の実施形態では、本組成物のPBMの少なくとも1つを構成する一般式IIIの化合物は、カルドール誘導体である。このような誘導体は、5-ペンタデシルベンゼン-1,3-ジオール(n=0)、5-[ペンタデカ-8-エニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=2)、4-[ペンタデカ-8,11-ジエニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=4)、5-[ペンタデカ-8,11-ジエニル]-ベンゼン-1,3-ジオール(n=4)、5-[ペンタデカ-9,12-ジエニル]-ベンゼン-1,3-ジオール(n=4)、5-[ペンタデカ-8,11,14-トリエニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=6)及びそれらの配座異性体からなる群から選択することができる。
【0068】
さらに他の実施形態では、本組成物のPBMの少なくとも1つを構成する一般式IVの化合物は、2-メチルカルドール誘導体である。このような誘導体は、2-メチル-5-ペンタデシルベンゼン-1,3-ジオール(n=0)、2-メチル-5-[ペンタデカ-8-エニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=2)、2-メチル-5-[ペンタデカ-8,11-ジエニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=4)、2-メチル-5-[ペンタデカ-8,11,14-トリエニル]ベンゼン-1,3-ジオール(n=6)及びそれらの配座異性体からなる群から選択することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、本組成物の少なくとも1つのPBMは、カシューナッツ殻液(CNSL:cashew nut shell liquid)又はその一成分である。
【0070】
CNSLはカシューナッツの殻中に黒っぽい粘性のある油状の液体として生成し、ナッツの工業的加工時に副産物として得られる。CNSLの成分は、以下に記載されるとおり、R
4側鎖が炭化水素側鎖の第8、第11又は第14炭素の少なくとも1つから選択される1つ又は複数の位置で非共役不飽和の程度が異なる、上記一般式II~IVのフェノール化合物である。
【化3】
【0071】
天然CNSLはまた、一般式VIで表されるアナカルド酸を含有し:
【化4】
式中、C
15H
31-n側鎖は、CNSLの他の成分について上述したとおりである。天然由来のCNSL中のアナカルド酸の量は60~70wt%である。しかしながら、技術グレード又は商業グレードのCNSLには、アナカルド酸はCNSL工程中に脱炭酸し、主にカルダノール(式II)に変換するため、1wt%未満しか含まれていない。特定の実施形態では、本発明で使用されるCNSLは、0.5wt%未満、0.3wt%未満、0.2wt%未満、又は0.1wt%未満のアナカルド酸を含有する。
【0072】
CNSL成分のそれぞれの飽和及び不飽和誘導体は、様々な量で存在することができる。例えば、CNSL内のカルダノールは、モノエン誘導体60wt%、ジエン誘導体10wt%、及びトリエン誘導体30wt%から構成することができる。これらの誘導体の量の測定は、分子蒸留法、薄層クロマトグラフィー(TLC)/ガス液体クロマトグラフィー(GLC)、TLC-質量分析法などの方法を用いて行うことができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPBMは、式VIIであり:
【化5】
式中:
i. R
1、R
2、及びR
3の少なくとも1つは、直鎖状、分枝状、若しくは環状の、置換若しくは非置換の、C
1~C
8芳香族エステル又はC
1~C
8非芳香族エステルから形成されるカルボキシレート置換基であり、カルボキシレートでないR
1、R
2及びR
3(非カルボキシレートのR
1、R
2又はR
3とも称される)のいずれかは、水素原子又はヒドロキシル基であり;かつ
ii)R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又はヒドロキシル基である。
【0074】
芳香環に結合した1つのヒドロキシル基と1つのカルボキシレートとを有する式VIIのPBMは、ヒドロキシ安息香酸の誘導体とみなすことができ、この2つの基は他方に対して一方がオルト、メタ、又はパラの位置にある。
【0075】
いくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物の少なくとも1つのPBMは、カルボキシレート置換基がR1であるオルト-ヒドロキシ安息香酸誘導体であり、このようなPBMは、2-ヒドロキシベンゾエート又はサリチレートとして知られており、PBMは、サリチル酸アミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸4-tert-ブチルフェニル、サリチル酸シクロヘキシル、サリチル酸メチル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリシン、及びサルサレートを含む群から選択される。いくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物の少なくとも1つのPBMは、カルボキシレート置換基はR2であるメタ-ヒドロキシ安息香酸誘導体であり、PBMは、3-ヒドロキシ安息香酸メチル及び3-ヒドロキシ安息香酸フェニルを含む群から選択される。いくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物の少なくとも1つのPBMは、カルボキシレート置換基がR3であるパラヒドロキシ安息香酸誘導体であり、PBMは、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸エチル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェニル、4-ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、及び4-ヒドロキシ安息香酸N-プロピルを含む群から選択される。
【0076】
前述のPBMは、式VIIの芳香環上の単一のヒドロキシル基の存在に適した命名法によって命名されているが、これは限定的であると解釈されるべきではなく、いくつかの実施形態において、PBMのヒドロキシ安息香酸環は、1つ以上のヒドロキシル基によってさらに置換され得、カルボキシレート置換基に対する2つ以上のヒドロキシル基の環上の相対的な位置は:2,3-ジヒドロキシ-安息香酸;2,4-ジヒドロキシ-安息香酸;2,5-ジヒドロキシ-安息香酸;2,6-ジヒドロキシ-安息香酸;3,4-ジヒドロキシ-安息香酸;3,5-ジヒドロキシ-安息香酸;2,3,4-トリヒドロキシ-安息香酸;2,4,6-トリヒドロキシ-安息香酸;及び3,4,5-トリヒドロキシ-安息香酸から選択され、カルボキシレート基は環上の1位とみなされる。
【0077】
さらに、直鎖状、分岐状若しくは環状のC1~C8芳香族又は非芳香族エステルで形成されたカルボキシレート基は、側鎖に沿ってヒドロキシル基又はアミン基でさらに置換することができる。
【0078】
特定の実施形態において、本ヘアスタイリング組成物の少なくとも1つのPBMは、2-ヒドロキシ安息香酸フェニル(又はサリチル酸フェニル)、サリチル酸ベンジル、3-ヒドロキシ安息香酸フェニル、4-ヒドロキシ安息香酸フェニル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシ安息香酸フェニル、2,4-ジヒドロキシ安息香酸フェニル、2,5-ジヒドロキシ安息香酸フェニル、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸フェニル、及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸フェニルを含む群から選択される。
【0079】
PBMのヒドロキシル(-OH)基(複数可)は、ベンゼン芳香環に結合した側鎖の不飽和度の変化と共に、ヒドロキシル基又は飽和炭化水素以外の場合に、PBMを高度に重合可能な物質とし、様々な重合反応(例えば、縮合又は付加を介するもの)が可能である。理論に束縛されることを望まないが、PBMは、そのヒドロキシル基と他の縮合重合可能な基との縮合によって重合することができると考えられ、一方、適切な側鎖の不飽和は、適切な条件下で、付加重合の基礎となることができる。
【0080】
以前に記載されかつ本明細書でさらに詳述されるPBMは、一般に本質的に油性であり、すなわち、実質的に水に混和せず、したがって、適切な量の適切な共溶媒が存在しない場合、水中油型エマルションの油相に存在する。いくつかの実施形態において、PBM(又は水不溶性とみなされる任意の他の材料)の残留溶解度は、純水の重量に対して、かつより適切には該液体のpHにおいてそれらが配置されるべき水性環境の重量に対して、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、1wt%以下又は0.5wt%以下である。言い換えれば、1重量部以下の材料が20重量部の液体に溶解するであろう(例えば、100gの水に対して5g未満の材料、混合物の総量は105gであり、組成物全体における材料のwt%は約4.76%である)。溶解性は肉眼で評価することができ、溶解性組成物(例えば、単相組成物)は、一般的に室温で透明である(濁っていない)。この状態は、代わりに、溶液の屈折率を測定し、水中の既知の量のPBMを用いた検量線と比較することによって定量することができる。
【0081】
本教示による水不溶性PBMは、典型的には水中油型エマルションであるヘアスタイリング組成物を形成するが、適切な量の適切な共溶媒の存在下(例えば、30wt%を超える)では、代替的に単相組成物を形成することも可能である。
【0082】
いくつかの実施形態では、重合を促進するために、本発明のヘアスタイリング方法に適合するヘアスタイリング組成物(例えば、単相又は水中油型エマルション)は、少なくとも1つのPBMに加えて、ii)架橋剤及び硬化加速剤から選択される少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含む。架橋剤とは、硬化工程に積極的にかかわり、生じるポリマーネットワークに組み込まれる化合物を指し、硬化加速剤は、代わりに又はさらに、硬化を(例えば、重合温度を下げるか、又はその速度を上げることによる)触媒又は活性化することが可能である。硬化促進剤は、毛髪繊維内で重合する際に油性モノマーと同相になるように、好ましくは油混和性である必要がある。なお、ヘアスタイリング組成物を毛髪に適用した後に硬化加速剤を使用する場合、そのような工程で使用する硬化加速剤は、加速剤が水性であるとすれば、水溶性であることが可能である。
【0083】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、縮合硬化機構を介してモノマーと反応することができ、「縮合硬化性架橋剤」と称し得る。他の実施形態では、架橋剤は付加硬化機構を介してモノマーと反応することができ、「付加硬化性架橋剤」と称し得る。いくつかの実施形態において、同じ硬化促進剤が、架橋剤(ポリマーネットワークを組み込むもの)として、硬化加速剤(その形成を触媒するもの)としての両方で作用し得る。毛髪繊維の内部で毛髪繊維を所望の改変形状に拘束することができるネットワークを形成するための架橋し得るモノマー及び硬化促進剤の種類にかかわらず、生じる内部形成ポリマーはまた、合成骨格とも呼ぶことができる。この用語は、モノマーが必ずしも人工的である(天然に存在しない)ことを意味するものではなく、生じるポリマーがin situで合成され、かつ毛髪繊維内に天然に存在しないことを意味するものである。簡単に言えば、外来ポリマーが毛髪繊維を所望の形状に「固定」することで、繊維が本来持っている力に打ち勝ち、その他としては天然の形状を有すること、あるいは取り戻すことを可能にする。この「機械的」な比喩は、所望のスタイリング効果又は形状を維持することを可能にするポリマーの作用の、任意の他の、あるいは付加的な(例えば化学的な)作用機序を排除することを意図したものではない。例えば、ポリマーは、代替的又は付加的に、水分バリアとして作用することができ、外部環境から最内層のケラチンタンパク質への水分子の移行を防止、低減、又は遅延させることができる。本発明の方法によりスタイリングされた毛髪成分に不必要に水分子が到達することは、毛髪繊維が徐々に天然の形状に戻ることを可能にする程度にそのようなタンパク質内の水素結合を元の状態に戻す可能性がある。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明のヘアスタイリング組成物及び方法に好適な架橋剤は、2つ以上の架橋官能基を有し、この2つの架橋官能基が存在することだけでポリマーの鎖延長が起こり、PBMが化学式にそのような連結官能基を含む場合には、このプロセスは架橋剤の非存在下で追加的に又は代替的に起こり得る。比較的高い架橋密度を有する重合体ネットワークが所望され、かつその硬化のために架橋剤が組成物中に含まれる場合、有利には、3つ以上の架橋官能基を有し、それによって形成される三次元ネットワークの密度が増大する。いくつかの実施形態において、架橋剤は多官能性であり、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、又は8個以上の架橋官能基を有し、そのような官能基は通常、架橋剤1分子あたり10個を超えて存在しない。さらに、又は代替的に、比較的高い架橋密度は、比較的高い濃度の架橋剤(又はPBMに対する架橋剤の高い比率)を使用することによって得ることができる。比較的高い架橋密度を有する毛髪繊維内のPBMの硬化によって形成されるポリマーは、比較的低い架橋密度を有する対応物よりも、それによりスタイリングされた毛髪により強い骨格を形成することが期待される。しかし、本発明者らは、状況によっては、比較的低い架橋密度で形成されたポリマーも適していることを発見した。これは特に、毛髪繊維が、例えば健康状態の結果、又はブリーチ若しくはカラーリングなどの毛髪に有害な従来の施術を受けた結果、損傷している場合である。損傷した毛髪繊維は、その外表面に不連続が見られることがあり、健康な毛髪繊維と比較して、より多くの水分が毛幹に浸透することを可能にする。毛髪繊維が高温にさらされる場合(例えば、ホットアイロンによるスタイリング又は熱風による乾燥の間)、毛髪の毛皮質(コルテックス)内に存在しうる残留水分が爆発的な蒸発を起こすことがあり、損傷した毛髪繊維の欠陥をさらに拡大させるか、又は水分の今後の浸透を加速させる新たな微小孔を形成する可能性があり、高温加熱の度に伴うそのような空隙の増加は、毛髪の完全性を著しく損ない、毛髪の切れ毛につながる可能性がある。
【0085】
理論に束縛されることは望まないが、比較的低い架橋密度で形成されたポリマーは、熱可塑的に挙動すると考えられ、すなわち、加熱時に可逆的に柔らかくなり、可鍛性になることができ、一方、冷却時及び周囲温度では十分に硬く、処理された毛髪に所望のスタイルを維持することができる。架橋密度が比較的低いポリマーの相対的な「流動性」は、毛髪繊維の加熱時に、特に損傷した毛髪に存在する、又は形成される可能性のある孔又は空隙を封鎖又は密封することを可能にする。この「密封効果」によって、時間の経過と共に毛髪内部への水の再侵入が低減し、その後の加熱時に捉えられた水が爆発的に蒸発する可能性及び/又はその程度が低減することが期待される。このような水の再侵入の低減は、損傷した毛髪と損傷していない毛髪の両方にとって望ましい可能性があり、したがって、比較的低い架橋密度を有することにより熱可塑性挙動を有するポリマーを形成する組成物は、両方の毛髪形態に適用することができる。
【0086】
それゆえ、いくつかの実施形態において、比較的低い架橋密度を有する重合体ネットワークが所望される場合、架橋剤は、比較的低い数の架橋官能基を有するように選択され得、及び/又は比較的低い濃度(又はPBMに対する架橋剤の低い比率)で組成物中に存在し得る。
【0087】
当業者によって容易に理解される他の特徴は、本明細書で教示されるように、硬化性モノマーによって形成される重合体ネットワークの比較的低い架橋密度又は逆に比較的高い架橋密度を促進し得る。例えば、相対的に短い架橋剤(例えば、相対的に低いMWを有する)は、より緩いネットワークを形成する可能性がある相対的に長い架橋剤(例えば、相対的に高いMWを有する)よりも、より密な架橋/よりタイトな3Dネットワークを有するポリマーを形成する可能性がある。架橋剤の単一の特徴だけでは、それで調製されたヘアスタイリング組成物が、一旦重合されると、比較的低い架橋密度/熱可塑性挙動を有する傾向があるかどうかを決定することはできないことが強調される。それでも、相対的に低い架橋官能基量を有する相対的に長い架橋剤の相対的に低い濃度は、相対的に高い架橋官能基量を有する相対的に短い架橋剤の相対的に高い濃度を用いて調製されたものよりも、相対的に低い架橋密度を有する硬化ポリマーの形成に有利であると予想される。
【0088】
架橋剤によって促進される重合の分野の当業者には容易に理解されるように、そのような化合物は、典型的には、モノマーの架橋性基と架橋剤の対応する反応性基との間の少なくとも化学量論反応に対応する量で存在する。特に硬化がより複雑なポリマーの形成に向かって進むにつれて、モノマー及び成長するオリゴマーの架橋性基の一部が妨害される場合、このような最小限の量が架橋剤の過剰分に対してすでに提供されていた可能性がある。それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、特に、架橋剤がモノマーと反応する能力の他に互いに反応し得る場合、単に化学量論的濃度を超過してそのような硬化促進剤を含むことが望まれていた可能性がある。
【0089】
適切な縮合硬化性架橋剤は、少なくとも2つのシラノール基を持ち、分子量が最大1,000g/molの反応性シランから選択することができ、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン(例えば、Dynasylan(登録商標)AMEO)、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピル(ジエトキシ)-メチルシラン、メチルトリエトキシシラン、又はN-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]エチレンジアミン;反応性シランとアミノシランの混合物(例えば、Evonik Dynasylan(登録商標)SIVO 210);コハク酸、アジピン酸、又はクエン酸などの多塩基酸;ひまし油などのポリオール;ヘキサメチレンジアミン又はヘキサメチレンテトラミンなどのポリアミン(任意にマレイン酸ジアルキル、例えばマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、又はマレイン酸ジブチルなどと結合したもの。それらの反応生成物。可能なマイケル反応を介して、本明細書で教示される条件下で本発明のモノマーと反応することができる活性架橋剤を生成する);モノ及びジ-グリシジル、例えば(3-グリシジルオキシプロピル)-トリメトキシシラン又はポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル;ジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート又は4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート);アリル化合物、例えばヘキサン酸アリル、又は1-メチル-4-(プロパ-1-エン-2-イル)シクロヘキサ-1-エン(リモネン);及びタンニン酸などのポリフェノールが挙げられる。特定の実施形態では、縮合硬化性架橋剤はアミノプロピルトリエトキシシランである。
【0090】
多官能性架橋剤としては有機グリシジル基又はメタクリレート基を結合してなるシルセスキオキサンであり得る。このようなハイブリッド分子は、有機基(複数)がそのコアに結合している1つの内部無機ケージコア(inner inorganic cage core)を含有する。架橋能を高め、架橋ポリマーネットワークに高い密度を与える、8個の基が存在することができる。このような多官能性架橋剤にはグリシジルPOSS(登録商標)Cage Mixture EP0409又はグリシジルメタクリルPOSS(登録商標)Cage Mixture MA0735などが挙げられ、Hybrid Plastics(米国)から市販されている。特定の実施形態では、このようなハイブリッド架橋剤は、架橋剤アミノプロピルトリエトキシシランと共にヘアスタイリング組成物に使用される。
【0091】
有利には、必ずしも必要ではないが、架橋剤は、組成物のpHを変更する役割をさらに果たし得、それらを含む組成物が適用される毛髪繊維の毛小皮の鱗片の開きを促進し、PBM、又はその一部が毛幹に浸透することを可能にし得る。
【0092】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本教示によるPBMは、十分に小さい分子(例えば、10,000g/mol以下のMWを有する)であり、少なくとも部分的に繊維幹に浸透し、そこでその後エネルギー(例えば、モノマーの重合を誘導するのに適した熱又は電磁気)の適用時に重合することができると考えられる。PBMの毛髪繊維への浸透は、FIB-SEMなどの顕微鏡的手法によって観察及びモニターすることができる(例えば
図2B及び3B。以下でさらに言及する)。毛髪繊維が所望の変更形状にある間に重合が達成される場合、得られるフェノール系オリゴマー(PBO)及びフェノール系ポリマー(PBP)は、繊維を改変形状に維持し得、又は繊維が天然の(改変されていない)形状に戻る力を遅らせ得る。このような工程については、以下の項でより詳しく説明する。
【0093】
本ヘアスタイリング方法の第1の工程として個々の繊維に適用され得る組成物に戻ると、架橋剤リンカーは、存在する場合、それらが追加的に提供し得るいかなる効果にもかかわらず、PBMとの組み合わせの前に、例えば、水による少なくとも部分的な加水分解を受けることができる。あるいは、加水分解促進剤を用いて、架橋剤とPBMとの組み合わせ後に加水分解を誘導することもできる。このような加水分解の適切な促進剤は、サリチル酸及び乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、酒石酸、アゼライン酸又はプロピオン酸などの4~6のpHを有する(又はそれを組成物に提供する)酸であり得る。加水分解促進剤は、毛髪繊維に適用される組成物中に存在することができ、及び/又は毛髪繊維上に後で塗布することができる。いずれにせよ、適切な架橋剤の部分的な加水分解は、架橋剤の活性を高め、PBMの重合につながる縮合を促進すると期待される。加水分解促進剤は、硬化加速剤の一種とみなすことができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、PBMを含むヘアスタイリング組成物、及びそれを使用する本発明の方法に適した硬化加速剤は、縮合重合に適しており、例えば、アセチルアセトネート又はナフテナートなどの金属カルボキシレートを含む金属錯体(例えば、金属:Co、Mn、Ce、Fe、Al、Zn、Zr、Se又はCuを有するもの);アルミニウムトリ-sec-ブトキシドなどのアルコキシドとの金属錯体;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸;Fe又はMnとのN,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン錯体などの金属サレン錯体;p-トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、又はスルホコハク酸などの強酸;及びNaOH、KOH、NH4OHなどの強塩基から選択することができる。
【0095】
この文脈では、化合物は単純化のために主な役割に従って分類されているが、そのような機能は必ずしも他のものと排他的ではないことに留意されたい。例えば、硬化加速剤(例えば、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド)は一般的には硬化触媒として使用されるが、架橋性基を有することができ、このような場合、硬化加速剤は架橋剤としても機能し、形成されたポリマーネットワークに組み込まれることができる。別の例では、補助重合剤として機能するマレイン酸ジブチルは、共溶媒としても機能し、PBMと水相中の水との混和性を高めることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明のPBMは、共役又は非共役二重結合などの少なくとも1つの付加硬化性基をさらに含有することができ、モノマーがPBMのヒドロキシル基を介して起こる縮合重合と付加重合との両方を受けることを可能にする。例えば、PBMがCNSLである場合、そのR4位の非共役不飽和アルキル側鎖により、適切な条件下で付加硬化させることでこのような重合を可能にする。付加硬化に適した条件には、側鎖の二重結合を開いてラジカルを形成し、それにより付加重合を開始するための硬化加速剤を組成物内で使用することが含まれ得る。代わりに、又はさらに、架橋剤自体が付加重合性基を含有してもよく、その基の活性化によってラジカル形成がもたらされる。架橋剤上の活性化された基は、PBM上の活性化された基と反応することができ、あるいは同じ種類の活性化された分子が互いに反応することができる。架橋剤中に存在し得るそのような付加重合可能な基は、メタクリレート基(例えば、市販のGlycidyl Methacryl POSS(登録商標)Cage Mixture MA0735などのシルセスキオキサン(silsesquioxane)ケージコアに存在するもの)であり得る。付加重合に適した硬化加速剤には、過酸化ベンゾイル、過安息香酸tert-ブチル、過酸化ジ-tert-ブチル;過酸化ジベンゾイルのオルト及びパラ-メチル及び2,4-ジクロロ誘導体(ortho- and para-methyl and 2,4-dichloro derivatives of dibenzoyl peroxide);過酸化ジクミル、過酸化アルキル(例えば、過酸化ラウロイル、及び過酸化2-ブタノン)、過酸化ケトン、及び過酸化ジアシルなどの有機過酸化物が含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態では、PBM及び/又は架橋剤が共役又は非共役の少なくとも1つの二重結合(これは架橋剤をPBMとの付加硬化に適したものにする)、及び特に少なくとも2つの二重結合(例えば、短いジエン)を含有する場合、大気中の酸素への曝露により、自動酸化反応を誘発し、ラジカルの形成をもたらし、重合又は架橋が付加機構によって、任意に専用の硬化加速剤の非存在下で、進行することが可能となり得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、付加硬化に適した架橋剤は、最大15個の炭素原子を含み、二重結合の開口時に少なくとも2つのラジカルの形成を可能にする数の二重結合を含む、直鎖状、分岐状、又は環状のアルケン化合物である。例えば、アルケンは、アルケン鎖内に位置する場合、少なくとも2つの二重結合を含有することができ(例えば、ミルセン(C10H16)、ゲラニオール、(C10H18O)、カルボン(C10H14O)及びファルネセン(C15H24)などの短い脂肪油又は短いモノテルペン)、又はアルケン鎖の末端に位置する少なくとも1つの二重結合を含有することができる。したがって、アルケン鎖の両末端に二重結合を持つ短いアルケン架橋剤(例えば、1,5-ヘキサジエン又は1,5-ヘキサジエン-3,4-ジオールなど)もまた好適である。
【0099】
鎖の両端に末端二重結合を有するさらなる架橋剤としては、ジアリルエーテル(例えば、ジ(エチレングリコール)、ジビニルエーテル又は2,2-ビス(アリルオキシメチル)-1-ブタノール);ジアリルスルフィド;ジアリルエステル(例えば、ジアリルアジペート);アクリレート(例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリメチロールプロパントリメタクリレート);ジアリルアセタール(例えば、3,9-ジビニル-2,4,8,10-テトラ-オキサスピロ[5.5]ウンデカン);トリアリルシアヌレート;及びトリアリルイソシアヌレートが含まれる。PBMの付加硬化に適した架橋剤にはまた、置換又は非置換のビニル芳香族化合物(例えば、スチレン又はビニルトルエン);ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ステアリン酸ビニル又は桂皮酸ビニル);及びビニルアルコール(例えば、10-ウンデセン-1-オール)が含まれる。架橋剤の混合物を使用する場合、架橋剤の少なくとも1つは2つのラジカルを提供できる必要があり、別の架橋剤は任意に二重結合の開口時に1つのラジカルのみを提供できる必要がある。
【0100】
単独で、又は本発明のヘアスタイリング組成物の追加成分と組み合わせでのいずれかの添加硬化によるPBMの重合は、標準的な方法によってモニターすることができる。例として、組成物のヨウ素値は、二重結合が開いて他のモノマー又は適切な成分と架橋するため、減少すると予想される。したがって、本発明の任意の特定の組成物を用いた毛髪繊維の内側部分における合成ポリマーの形成は、適用及び硬化前の組成物のヨウ素値を、毛髪繊維内に浸透かつ硬化した後に毛髪繊維から抽出された物質のヨウ素値との比較により決定することによって追跡することができる。合成内部ポリマーを含む材料は、拡散によって毛髪繊維から抽出し(例えば、水及び/又はIPAなどの適切な抽出液に毛髪試料を40~70℃で2~12時間浸漬することによる)、濃縮して試験方法に適合した試料を得ることができる。ヨウ素価は、ASTM D-1959に記載されているような標準的な方法によって測定することができる。
【0101】
本教示による組成物及び方法は、生体対象から分離した毛髪繊維上(例えば、毛皮上又はかつら上)に適用及び実施することができるが、それらは典型的には、生哺乳類対象の毛髪、特にヒト頭皮への適用を意図したものである。したがって、毛髪繊維の形状を満足に改変することができる組成物において、以下に詳述するとおり多数の架橋剤、硬化加速剤又は他の薬剤及び添加剤を使用することができるが、そのような成分はすべて、並びにPBMは、好ましくは化粧品的に許容できるものとする。成分、組成物、又はそれから作られる製剤は、過度の毒性、不安定性、アレルギー反応などがなく、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪と接触して使用するのに適していれば「美容的に許容できる」とみなされる。一部の成分は、関連法規に従い、比較的低い濃度で存在する場合、「化粧品として許容できる」とし得る。
【0102】
意図されるヘアスタイリング組成物が単相組成物である場合、それらは、PBMが少なくとも1つの水溶性吸湿剤及び適切な共溶媒を含有する連続水相に溶解している場合に達成される。意図されるヘアスタイリング組成物が水中油型エマルションである場合、それらは、水溶性吸湿剤も含有し、任意に適切な共溶媒をさらに含み得る連続水相中にPBMが油滴として乳化分散される場合に達成される。硬化促進剤は、存在する場合、それらが毛皮質に送達され得る相に関係なく、毛髪繊維中にある間、モノマーと混和性である必要がある。
【0103】
いくつかの実施形態において、硬化性ヘアスタイリング組成物の水相は、a)毛髪繊維及びとりわけPBMを含む組成物に適切な帯電を提供するのに適したpH、b)媒質中の化合物の適切な溶解性(又は逆にその欠如)を提供するのに適したpH、及び/又はc)浸透を促進するための毛髪の鱗片の適切な開きを提供するpHを有する。酸性pH(例えば、約1~3.5の範囲)もそのような効果を可能にし得るが、いくつかの実施形態では、硬化性ヘアスタイリング組成物の水性相はアルカリ性pHを有する。他に対して非中性のpHの選択は、モノマー及び硬化促進剤の化学的性質に依存する可能性があり、酸性又は塩基性pHに本質的に寄与するものもあれば、一方のpHで他方のpHよりも強いものもある。
【0104】
いくつかの実施形態において、本組成物のWHAは、低濃度(例えば、組成物の重量に対して1wt%以下)で添加される場合、組成物のpHを実質的に干渉しないことに留意されたい。そのような濃度では、ヘアスタイリング組成物のpHは、典型的には、そのような化合物が半対数以下までpHを減少又はpHを増加させるようにWHA(複数可)の存在下又は非存在下で類似している。例示として、ヘアスタイリング組成物が、WHA(複数可)なしでpHが7.5を有する場合、多くとも1wt%の吸湿剤の添加は、pHをpH 7~pH 8の範囲の値に調整する可能性があり、pHの変化は、いくつかの実施形態において、0.4-log以下、0.3-log以下、0.2-log以下、又は0.1-log以下である。図に戻ると、WHA(複数可)なしで7.5のpHを有する組成物は、そのような低濃度のWHA(複数可)の存在下で、それぞれ7.1~7.9、7.2~7.8、7.3~7.7、又は7.4~7.6の範囲のpHを有することができる。しかしながら、一部のWHAは、低濃度であっても組成物に望ましい(例えば、毛髪の鱗片の開きを促進し、及び/又は毛髪の浸透を促進するように適合される)pHを達成するのに有利に寄与し得、同時にその他のWHAは、それらが存在する濃度においてそのようなpH調節効果を有し得るために、これは必須ではない。
【0105】
本発明のヘアスタイリング組成物のpHは、とりわけ毛髪の鱗片を持ち上げてモノマーの浸透を促進するために、任意の所望の非中性pHを有するように調整することができるが、このような機構は、繊維毛皮質内にモノマーを導入する追加の方法の存在を排除するものではない。例えば、それらの重合に、又は得られるポリマー(又はその効果)の保護に、必要なモノマー及び薬剤は、毛髪環境とその毛皮質との間の直接的な移動のために十分に開かれているか否かにかかわらず、毛髪の鱗片を通って拡散するのに十分な極性をさらに有し得る。
【0106】
スタイリング組成物の形態に関係なく、また理論に拘束されるものではないが、アルカリ性pHは、毛髪繊維の表面を帯電させることにより(一般に繊維上に存在する帯電可能な基、例えばカルボキシル基に起因して)、とりわけ毛小皮の鱗片の開放、ひいてはとりわけ毛幹へのモノマーのより良好な浸透を可能にすることに寄与すると考えられる。アルカリ性pHはまた、ヘアスタイリング組成物の帯電にも寄与し、毛髪と組成物との間のゼータ電位差(Δζ)を増加させ、その結果、両者の間の勾配が高くなり、より良好な接触のための毛髪繊維への組成物成分の移動が促進される。
【0107】
いくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型エマルション)は、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも8.5、少なくとも9、少なくとも9.5、又は少なくとも10のpHを有する。典型的には、組成物のpHは、pH 11を超えない。特定の実施形態では、組成物のpHは7~9、7.5~9、8~10.5、9~10.5、又は9.5~10.5である。
【0108】
ヘアスタイリング組成物のそのようなアルカリ性pHは、PBMが存在する油相を水相により適切なpHで(例えば、それぞれエマルション又は単相を形成するように)分散又は溶解することによって達成することができる。水相のpHは、所望のpHを維持するために適合された任意の濃度で、任意の適切なpH調整剤を使用することによって調整することができる。このような薬剤としては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、又は水酸化カリウムなどの塩基が挙げられる。また、pH調整剤は、モノエタノール-アミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、コカミドモノエタノール-アン、アミノメチルプロパノール又はオレイルアミンなどのアミンであってもよい。あるいは又はさらに、性質上塩基性であるヘアスタイリング組成物の他の成分が、該組成物(例えば、エマルション)のアルカリ性のpHを提供又は寄与してもよい。例えば、「Dynasylan(登録商標)AMEO」及び「Dynasylan(登録商標)SIVO 210」として商品化されている架橋剤は、それらのアミン基の点において、このような効果を有している。
【0109】
逆に、4.5以下、4以下、又は3以下の酸性のpHも、毛髪の鱗片の開きに寄与することができる。典型的には、そのような酸性pHを有するヘアスタイリング組成物のpHは、少なくとも1、少なくとも1.5、又は少なくとも2であり、一般的には、1~4、1~3、1~3.5、2~4、又は2~3.5である。このような酸性pHは、pH調整剤として酸を用いて得ることができ、少し例を挙げれば、酢酸、過塩素酸、及び硫酸などから選択することができる。あるいは、又はさらに、性質上酸性であるヘアスタイリング組成物の他の成分が、該組成物(例えば、エマルション)の酸性pHを提供又は寄与してもよい。例えば、トリエトキシシリルプロピルマレイン酸及びトリヒドロキシシリルエチルフェニルスルホン酸として知られる架橋剤は、それぞれの酸性基の点において、このような効果を有している。
【0110】
上記で例示したとおり、組成物中に存在する多数の化合物は、任意のその特定の特性又は機能に寄与することができる。主要な役割としてその目的に特化しているかどうか、又はそれを達成するように本質的に寄与しているかどうかにかかわらず、組成物に求められる特性は一般に平衡状態でモニターされる。例示として、本教示によるヘアスタイリング組成物が、特定の範囲内のpH、極性、電荷、又は目的の他の任意の特性を有することが所望される場合、そのような特性は、(組成物の調製が完了した時点で同様の値を得ることができた場合でさえ)、組成物を調製した後12時間に任意に決定することができる。
【0111】
PBMを溶解して単相組成物を製造する連続相又は水中油型エマルションのいずれかにおける水相は、少なくとも1つの水溶性吸湿剤(WHA)をさらに含む。このような吸湿剤は、水相中に溶解しており、重合を可能にするヘアスタイリング組成物の成分と共に毛髪繊維内に浸透すると考えられ、かつ毛髪繊維内に形成された架橋PBMネットワークの隙間に定着すると考えられる。(例えば、熱エネルギーの適用中に)水分が除去されると、吸湿剤は結晶化し、その結果、形成されたポリマーネットワークは、その中に絡み合った吸湿剤の結晶を含有するようになるか、又は別個の結晶体を形成するようになる。吸湿剤の結晶化した状態は、その吸水能力を高め、ひいては毛髪繊維に浸透するいずれの水分子(例えば、環境の空気湿度からのもの)を隔離して除去する能力を高め、その結果、毛髪のスタイリングを長持ちさせることができると考えられている。逆に、結晶化したWHAは、例えば本組成物で予め処理されかつスタイリングされた毛髪繊維を再スタイリング又は脱スタイリングする方法において、適切な条件下で水分子の脱離もまた行い得る水分子の内部リザーバーとして機能することもできる。
【0112】
本発明の目的に適した吸湿剤は、水に可溶性であり、pH約7.0の純脱イオン水に対する溶解度が、水の重量に対して5wt%超過、より一般的には6wt%超過、7wt%超過、8wt%超過、9wt%超過、又は10wt%超過である。いくつかの実施形態では、WHAは、脱イオン水の重量に対して15wt%以上、20wt%以上、又は30wt%以上の溶解度を有する高溶解性である。いくつかの実施形態において、WHAは、液体のpHにて処理される水性環境の重量に関して類似の溶解度を有する。例示としては、WHAは、純水の重量に対してだけでなく、ヘアスタイリング組成物の重量に対して(単一の水相の場合)、又は組成物の水相において(エマルションの場合)、5wt%超過の溶解度を有するべきである。特に断りのない限り、すべての値は大気圧下で室温で測定したものである。
【0113】
いくつかの実施形態では、WHAは水に高度に溶解し、水の重量に対して最大150wt%、最大125wt%、最大100wt%、又は最大75wt%の溶解度を有することができる。言い換えれば、最大150重量部、最大125重量部、最大100重量部、又は最大75重量部のWHAが100重量部の水に溶解する。液体の重量に対するWHAの溶解度は、WHAを含有する液体中のWHAの濃度と同義ではないことが強調される。例として、WHAと水とが混合物の唯一の構成成分であると仮定すると、純水の重量に対して最大150wt%の溶解度を有するWHAの濃度は、水性混合物の重量に対して最大60wt%である可能性があり、このWHAの相対濃度は、他の構成成分(例えば、PBM)を添加して完全なヘアスタイリング組成物を形成するにつれてさらに減少するようになる。溶解度は、WHA以外のすべての水混和性材料を含有する水相において同じ、又はわずかに低い可能性があり、WHAは、いくつかの実施形態において、組成物又はその水相の重量に対して、最大140wt%、最大110wt%、最大80wt%、又は最大50wt%の溶解度を有する。
【0114】
本組成物に使用される吸湿剤は、室温では液体であることが可能であるが、毛髪繊維内への残存性をさらに高めるために、有利には固体である。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのWHAは、融解温度Tmが約25℃より高い。特定の実施形態においてWHAのTmは体温よりも高いか、又は極端な条件下では外部温度よりも高く、これは、頭皮と接触している毛髪繊維内でWHAが液化し、繊維から浸出する可能性があることは望ましくないためである。したがって、WHAは好ましくは、Tmが37℃以上、40℃以上、45℃以上、又は50℃以上である。いくつかの実施形態では、融解温度Tmは、約250℃未満、約200℃未満、約180℃未満、又は約160℃未満である。
【0115】
さらに、WHA(複数可)は、水を除去するように毛髪繊維を処理する場合(例えば、毛髪を乾燥する場合)、WHAが容易に蒸発しないように、水の沸点よりも高い沸点Tbを有するように選択することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのWHAは、Tbが100℃以上、120℃以上、又は140℃以上である。いくつかの実施形態では、WHAはTbが300℃以下、250℃以下、又は225℃以下である。材料を特徴付ける温度(例えばTm、Tbなど)は、一般的に、その製造元から提供されるが、ASTM E794-06又はASTM 3418に記載されているとおり、示差熱分析(DTA)、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)などを用いた標準的な方法により容易に求めることができる。
【0116】
同様の理由により(例えば、毛髪繊維内にWHAが長時間残存する可能性を高めるために)、WHA(複数可)は、水の蒸気圧よりも低い蒸気圧(すなわち、2.3kPa未満)を有するように選択することができる。いくつかの実施形態において、WHAは、25℃で測定して、1.0kPa以下、0.5kPa以下、0.1kPa以下、10パスカル(Pa)以下、又は1Pa以下の蒸気圧を有する。いくつかの実施形態において、WHAは、25℃で測定して、1ミリパスカル(mPa)以上、10mPa以上、又は50mPa以上の蒸気圧を有する。材料の蒸気圧は、一般的にはその製造元によって提供されるが、例えばASTM E1194、ASTM D2879、又はASTM E1782に記載されているように、例えばDTA又はDSCを使用する標準的な方法によって容易に決定することができる。
【0117】
水分子の結合について吸湿剤を他の化合物との競合の中で有利にするために、好適なWHAは、好ましくは(純水中の)水分子同士の水分子の水素結合エネルギーよりも大きい水分子との水素結合エネルギー(又は水素結合性エネルギー)を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのWHAは、少なくとも21kJ/mol、少なくとも22.5kJ/mol、少なくとも25kJ/mol、又は少なくとも27.5kJ/molの水分子との水素結合エネルギーを有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのWHAは、最大40kJ/mol、最大35kJ/mol、又は最大32.5kJ/molの水との水素結合エネルギーを有する。材料の水素結合エネルギーは、文献から入手することもでき、或は経験的又は半経験的アプローチ、例えば密度汎関数理論(DFT)計算による既知のコンピューターシミュレーションによって推定することもできる。様々な水素結合性錯体における水素結合の形成及び結合の相対的強度を示す実験的研究は、一般的に、赤外線(IR)、核磁気共鳴(NMR)、マイクロ波、電子分光法、ラマン分光法などの分光学及び結晶学による。例えば、(WHAに見られるような)アミン基と水との間の水素結合エネルギーは約29kJ/molと報告されており、一方、純水中の水分子の水素結合エネルギーは約21kJ/molである。
【0118】
吸湿剤は、組成物の電荷に実質的に影響を与えたり修飾したりしないことが望ましく、したがって、非イオン性又は非電解質であるWHAが好ましい。しかしながら、ヘアスタイリング組成物のゼータ電位が毛髪のゼータ電位と十分に異なるような量で存在する限り、毛髪繊維の表面への組成物の移行及びそこでの保持を促進するように、イオン性吸湿剤を使用することができる。デルタゼータ電位のヘアスタイリングに対する効果、とりわけPBM及びWHAの比較的大きな浸透を可能にすることが期待される比較的高い絶対値、及び比較的長く続くスタイリング効果を以下でさらに詳しく説明する。
【0119】
本組成物に(適切と考えられる他の任意の材料として)使用される吸湿剤は、分散液の安定性に実質的に悪影響を及ぼさないこと、例えば、エマルションの崩壊(例えば、相分離)につながる可能性のあるエマルション液滴のサイズ及び/又はそのサイズ分布に悪影響を及ぼさないことなど、がさらに望まれる。本組成物は、エマルションである場合、数マイクロメートルを超えない油滴を有することができる(例えば、D90≦20μm及び/又はD50≦10μm、5μm、2μm、又は1μmを有し、D10、D50、及びD90などのパラメーターは、回折光散乱(DLS)によって測定可能である)。
【0120】
いくつかの実施形態において、水溶性吸湿剤は:アミド(例えば、脂肪族アミド及びアミノ酸アミドを含むカルボキサミド);単糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、又はマンノース);二糖(例えば、スクロース又はラクトース);及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0121】
一実施形態において、WHAは、一般式RC(=O)NR’R’’を有するカルボキサミドであり、式中、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、有機基又は水素原子を表す。いくつかの実施形態において、Rは第2のカルボキサミド基を含み得る。例えば、メタンアミド(ホルムアミドとも呼ばれる)及び尿素はカルボキサミドであり、ここでRはそれぞれH又はNH2であり、かつR’及びR’’はどちらも水素原子である。R、R’、及びR’’は、一般的には比較的短い分子構造であり、例えば、短い直鎖状、分岐状、又は環状の、置換又は非置換の、1~6個の炭素原子を有する飽和アルキルである。Rが前述のような短いC1~C6アルキルであり、かつR’=R’’=Hであるカルボキサミドには、a)十分な量の炭素原子を持つ場合に分岐することができる短いアルキルの例として、エタンアミド(アセトアミドとも呼ばれる)(R=CH3)、プロパンアミド(R=CH2CH3)及びブタンアミド(R=CH2CH2CH3);b)短い環状アルキルの例として、シクロプロパンカルボキサミド、シクロブタンカルボキサミド、シクロペンタンカルボキサミド、及びシクロヘキサンカルボキサミド;及びc)ジアミドの例として、エタンジアミド(オキサミドとしても知られている)、プロパンジアミド(マロンアミドとしても知られている)、ブタンジアミド、ペンタンジアミド、及びヘキサンジアミド、が挙げられる。尿素のように、2つ以上のアミン基を持つカルボキサミドはアミノ酸に関することができ、そのようなカルボキサミドはアミノ酸アミドと呼ばれることが多い。このWHA化合物の群には、アラニンアミド、アスパラギンアミド、グルタミンアミド、グリシンアミド、及びプロリンアミドが含まれる。特定の実施形態では、WHAは尿素である。
【0122】
単相組成物及び水中油型エマルションは、一般的に、水及び共溶媒のそれぞれが含有し得る相対量によって互いに異なるため、以下に各種類について別個に説明する。特定の種類の組成物に適した水と共溶媒との相対量は、モノマー、硬化促進剤、補助重合剤、WHA、又は他の添加剤、並びにそれらのそれぞれの量にも依存するために、それぞれの種類の組成物に適した濃度の範囲に重複がある可能性があることに注意されたい。
【0123】
いくつかの実施形態では、単相組成物中の水の濃度は、単相組成物の重量に対して少なくとも2wt%、少なくとも5wt%、少なくとも10wt%、少なくとも15wt%、又は少なくとも20wt%である。いくつかの実施形態では、水の濃度は、単相組成物の重量に対して、多くても80wt%、多くても60wt%、多くても40wt%、多くても35wt%、又は多くても30wt%である。特定の実施形態では、水の濃度は、単相組成物の重量に対して、2~80wt%、2~60wt%、2~20wt%、2~15wt%、10~40wt%、10~30wt%、又は15~40wt%である。
【0124】
いくつかの実施形態において、水中油型エマルション中の水の濃度は、水中油型エマルションの重量に対して、少なくとも40wt%、少なくとも45wt%、又は少なくとも50wt%である。いくつかの実施形態において、水の濃度は、水中油型エマルションの重量に対して多くても70wt%、多くても65wt%、又は多くても60wt%である。特定の実施形態では、水の濃度は、水中油型エマルションの重量に対して40~70wt%、40~65wt%、又は45~65wt%である。
【0125】
いくつかの実施形態では、水中油型エマルション中の水溶性吸湿剤の濃度は、水中油型エマルションの重量に対して、少なくとも10wt%、少なくとも12.5wt%、少なくとも15wt%、少なくとも17.5wt%、又は少なくとも20wt%である。いくつかの実施形態では、水中油型エマルション中のWHAの濃度は、水中油型エマルションの重量に対して、多くとも50wt%、多くとも48wt%、多くとも46wt%、多くとも44wt%、多くとも42wt%、多くとも40wt%、多くとも38wt%、多くとも36wt%、又は多くとも34wt%である。他の実施形態では、水中油型エマルション中のWHAの濃度は、10wt%~50wt%、12.5wt%~48wt%、15wt%~46wt%、17wt%~44wt%、又は20wt%~42wt%である。
【0126】
水は、本組成物の唯一の「液体担体」でなくてもよく、いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、少なくとも1つの共溶媒をさらに含有することができる。少なくとも1つの共溶媒は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC1~C10アルコール、例えばメタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、プロピレングリコール、1-ペンタノール、1,2-ペンタンジオール、2-ヘキサンジオール、ベンジルアルコール、又はジメチルイソソルビド;水混和性エーテル、例えば、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン、又は1-メトキシ-2-プロパノール;非プロトン性溶媒、例えばケトン(メチルエチルケトン、アセトンなど)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、n-メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド;エステル、例えば安息香酸C12~15アルキル;及び鉱物油又は植物油、例えばイソパラフィン流体、オリーブ油、ヤシ油、又はヒマワリ油から選択することができる。特定の実施形態では、共溶媒はイソプロピルアルコールである。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、油性共溶媒(例えば、安息香酸C12~15アルキル)もまた、最終組成物の疎水性に寄与することができる。
【0127】
当業者には容易に理解されるように、これらの共溶媒の一部は、相が異なるエマルションの調製中に、又は油相が水性共溶媒相に溶解される単一相の調製中に、油相のPBMと、水相と、又は両方と部分的に、構わず混合することができる。したがって、以下において共溶媒の合計濃度に言及する場合、多くの状況が包含される:a)単一の共溶媒が使用され、PBM又は水相のいずれかと混合される場合;b)単一の共溶媒が使用され、PBM及び水相の両方と混合される場合;及びc)2種以上の共溶媒が使用され、PBM及び水相の少なくとも一方と混合される場合。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、共溶媒は、とりわけPBMの浸透を容易にするように油相の表面張力を改善し、及び/又はPBM内の混和性架橋剤を、存在する場合には、増加させ、及び/又は単相組成物を形成するために水相内のPBMの混和性を増加させると考えられる。
【0128】
いくつかの実施形態では、単相組成物中の共溶媒の合計濃度は、単相組成物の重量に対して少なくとも20wt%、少なくとも30wt%、少なくとも40wt%、又は少なくとも50wt%である。共溶媒の最大用量は、選択されるPBM、及び追加成分の存在に依存し得る。いずれにしても、共溶媒の濃度は、組成物が単相組成物の形態となるような濃度である。いくつかの実施形態では、これらの共溶媒の合計濃度は、単相組成物の重量に対して、多くても80wt%、多くても75wt%、又は多くても70wt%である。特定の実施形態では、共溶媒の合計濃度は、単相組成物の重量に対して20~70wt%、30~70wt%、又は35~65wt%である。
【0129】
いくつかの実施形態では、水中油型エマルション中の共溶媒の合計濃度は、水中油型エマルションの重量に対して、少なくとも1wt%、少なくとも3wt%、少なくとも5wt%、又は少なくとも7wt%である。共溶媒の最大用量は、選択されるPBM、及び追加成分の存在に依存し得る。いずれにしても、共溶媒の濃度は、組成物がエマルションの形態となるような濃度である。いくつかの実施形態では、共溶媒の合計濃度は、水中油型エマルションの重量に対して、多くとも20wt%、多くとも18wt%、又は多くとも15wt%である。特定の実施形態では、共溶媒の合計濃度は、水中油型エマルションの重量に対して、1~20wt%、5~18wt%、又は7~15wt%である。
【0130】
単相組成物及び水中油型エマルションは、任意の適切な方法によって調製することができる。例えば、本発明の組成物は、PBM(複数可)を含み、したがって油相の優勢部分を含む第1の混合液と、WHA(複数可)が溶解するであろう水相の優勢部分を含む第2の液体とを混合することによって製造することができる。任意の所望の添加剤を含む、「PBMコンパートメント」及び「水性コンパートメント」をそれぞれ形成するこれらの別個のサブ組成物はそれぞれ、水中油型エマルションの化合物の一部が実際に部分的に2相の間を移行し得ることを除外できないため、それぞれ2相のいずれかの優勢な部分を含むと言う。例えば、重合性副組成物を考慮すると、PBMは、水とわずかに混和する可能性があり、及び/又は水性サブ組成物と優勢に混合される時に水相と一部融合することができる、水とある程度の混和性を示す共溶媒(又はエマルションの他の任意の成分)の存在下で調製されてもよい。2つの相を混合する際、一方が他方に溶解すると、エマルションではなく単相組成物が得られる。
【0131】
水中油型エマルションが、PBMコンパートメントと、WHAを含む水性コンパートメントとを混合することによって調製される場合、2つのコンパートメントを設定した比率で混合する際に、最終的な水中油型エマルション中の所望の濃度を達成するのに適したそれぞれの成分量を含むことができる。例示として、いくつかの実施形態において、PBMコンパートメント中のすべてのPBM(2つ以上の場合)の組み合わせの濃度は、PBMコンパートメントの重量に対して、少なくとも2wt%、少なくとも4wt%、又は少なくとも6wt%である。いくつかの実施形態では、PBMの濃度は、PBMコンパートメントの重量に対して、多くとも40wt%、多くとも35wt%、多くとも30wt%、多くとも25wt%、多くとも20wt%、多くとも15wt%、多くとも13wt%、又は多くとも12wt%である。特定の実施形態において、PBMの濃度は、PBMコンパートメントの重量に対して2~40wt%、2~35wt%、2~30wt%、2~25wt%、2~20wt%、2~15wt%、4~13wt%、又は6~12wt%である。
【0132】
本教示による単相組成物及び水中油型エマルションは、PBMコンパートメント及びWHAを含む水性コンパートメントの混合物を溶解又は乳化すること以外の任意の追加の適切な方法によって調製することができるため、PBMの濃度は、代替的に、総計/最終の組成物(例えば、単相又はエマルション)の重量によって提供される。
【0133】
いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型エマルション)中のPBM(2つ以上の場合)の合計濃度は、組成物の総重量に対して、少なくとも0.1wt%、少なくとも0.15wt%、少なくとも0.2wt%、又は少なくとも0.25wt%である。いくつかの実施形態において、PBMの濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して多くとも5wt%、多くとも3wt%、又は多くとも2wt%である。特定の実施形態では、PBMの濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して0.1~5wt%、0.15~3wt%、又は0.2~2wt%である。
【0134】
いくつかの実施形態では、PBMは、早期かつ望ましくない重合を誘発する可能性のある環境要因(例えば、酸素)を低減又は除去するために、アルゴン又は窒素下などの不活性雰囲気中に維持される。
【0135】
いくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物中に存在する架橋剤(2つ以上の場合)の合計濃度は、組成物(例えば、水中油型エマルション)の総重量に対して、多くとも5wt%、多くとも2.5wt%、又は多くとも2wt%である。いくつかの実施形態において、架橋剤の合計濃度は、組成物の総重量に対して少なくとも0.001wt%、少なくとも0.005wt%、少なくとも0.01wt%、少なくとも0.05wt%、少なくとも0.1wt%、又は少なくとも0.2wt%である。特定の実施形態において、架橋剤は、組成物の全重量に対して、0.001~5wt%、0.005~5wt%、0.01~5wt%、0.05~5wt%、0.01~2.5wt%、0.05~2wt%、0.1~2.5wt%、又は0.2~2wt%の合計濃度で存在する。PBM(複数可)とそれらの架橋剤との重量あたりの重量比を考慮する場合、この比は、1:15~10:1、1:15~7.5:1、1:15~5:1、1:10~2.5:1、1:10~2.5:1、又は1:5~5:1であり得る。
【0136】
熱可塑性挙動を有する重合体骨格を得るために、比較的低い架橋密度を有する重合体ネットワークを形成するための組成物が望まれる場合、比較的低濃度の架橋剤を使用することができる。そのような場合、架橋剤は、組成物の全重量に対して、0.001wt%~0.5wt%、0.05wt%~0.3wt%、又は0.07wt%~0.2wt%の合計濃度で存在することができる。PBM(複数可)とそれらの架橋剤との重量あたりの重量比を考慮する場合、比較的低い架橋密度に適合する比は、10:1~2.5:1、又は7.5:1~2.5:1であり得る。
【0137】
硬化プロセスが熱エネルギーに関与する場合、架橋剤は、ヘアスタイリング組成物の貯蔵及び/又は適用中の自然硬化を防止又は低減するために、周囲温度に対して相対的に上昇した温度及び/又は室温で十分に遅い速度にて、硬化をもたらすように選択されることが好ましい。生対象への使用が可能であるように、適切な架橋剤の硬化温度は高すぎる必要はなく(例えば、毛髪繊維が50℃~60℃である)、架橋剤の硬化温度と硬化速度の両方は、妥当な条件での硬化をもたらすように選択することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、硬化加速剤(2つ以上の場合)の合計濃度は、PBM(複数可)の重量に対して、多くとも50wt%、多くとも45wt%、又は多くとも40wt%、多くとも35wt%、多くとも30wt%、多くとも25wt%、多くとも20wt%、多くとも15wt%、多くとも10wt%、又は多くとも5wt%であり、任意に硬化加速剤はPBM(複数可)の少なくとも0.01wt%で存在する。ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型エマルション)全体の重量に対して硬化加速剤の量を考えると、それらは一般に非常に低い濃度で存在する。いくつかの実施形態では、硬化加速剤の合計濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、多くても5wt%、多くても3wt%又は多くても2wt%であり、硬化加速剤は任意にヘアスタイリング組成物の少なくとも0.001wt%で存在する。
【0139】
過酸化物を付加重合の硬化加速剤として使用する場合、その量は毛髪を脱色する能力の観点から慎重に検討する必要がある。したがって、過酸化物の量は、重合を活性化するのに十分な量であり、毛髪を著しく脱色しない程度に少ないことが必要である。
【0140】
いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物中に存在する硬化促進剤の濃度(すなわち、付加重合又は縮合重合に使用されるかどうかにかかわらず、架橋剤及び硬化加速剤の合計濃度)は、ヘアスタイリング組成物の合計に対して、0.001wt%~15wt%、0.001wt%~10wt%、0.001wt%~5wt%、0.05wt%~15wt%、0.1wt%~10wt%、又は0.5wt%~5wt%である。
【0141】
いくつかの実施形態では、単相組成物又は水中油型エマルションは、ヘアスタイリング組成物の1つ又は複数の特性を高めるように適合された、少なくとも1つの添加剤をさらに含んでもよい。添加剤としては、例えば、補助重合剤、乳化剤、湿潤剤、増粘剤、荷電調製剤、又はその他のヘアスタイリング組成物に従来含まれる成分(例えば、香料)などを挙げることができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、ポリマー形成を増強及び促進するために補助重合剤を添加することができる。このような補助重合剤は、PBMの重合性基と共に、又は架橋剤又は適当な硬化加速剤の官能基(複数可)と共に、架橋に利用可能ないずれの官能基の濃度を増加させる少なくとも1つの官能基を有する。補助重合剤に含まれる官能基の濃度が高いほど、架橋促進の程度がより高くなることに寄与すると考えられている。少なくとも1つの官能基の存在を考慮すると、補助重合剤は、成長するポリマーネットワークに結合することができる。好ましくは、補助重合剤の官能基の密度は、10,000g/mol未満、5,000g/mol未満、又は3,000g/mol未満の分子量を有する補助重合剤を使用できる程度に十分に高くする必要があり、そのような大きさは毛幹に浸透する能力を妨げない。
【0143】
補助重合剤に含まれる官能基は、ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、アミン基(-NH2)、又はカルボニル基(C=O)であり得る。適切な補助重合剤はまた、無水物、イソシアネート、及びイソチオシアネートなどの官能基を有していてもよく、これらは、例えば、アミン架橋剤と反応することが可能である。他の適切な補助重合剤は、該組成物中に存在する他の反応物によってさらに官能化され得る基、例えば二重結合を有することができ、これは(例えば、アミン架橋剤によって、又は代替的にマイケル付加反応、あるいはさらに反応性ラジカルを含むように「活性化」したPBMによって)開裂が可能である。
【0144】
例示的な補助重合剤は、以下から選択することができる:シェラック、ロジンガム、アルキル又はアリール置換マレエート及びサリチレート(例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル及びサリチル酸2-エチルヘキシル);セバシン酸エステルなどの油性ジエステル(例えば、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル));テルペン及びテルペノイド(例えばスクアレン及びリコペン)を含む炭素原子数16以上のアルケン鎖を有する脂肪油;脂肪アミン;(例えばオレイルアミン);及びアラキドン酸、リノール酸、及びリノレン酸などの非共役不飽和脂肪酸;レチノイン酸、エレオステアリン酸、リカン酸、及びプニカ酸などの共役脂肪酸;及びザクロ種子油、チアシード油、シソ種子油、ラズベリー種子油、及びキウイ種子油などの共役又は非共役二重結合を含有する脂肪酸のトリグリセリド。補助重合剤として機能し得るアルケンは、より多くの炭素原子(例えば、13以上)及び場合によっては1分子あたりのより多くの二重結合(例えば、3以上)を有することによって、架橋剤として機能し得るアルケンと区別される。さらに、不飽和アルケン鎖を有する補助重合剤は、100g薬剤あたりのヨウ素価がヨウ素100g以上であることを特徴とすることができ、このような値は通常400を超えない。
【0145】
シェラックなどの熱可塑性挙動を有する補助重合剤は、熱可塑性挙動を有する重合体ネットワークの形成を補助することができ、一方、脂肪油のような熱可塑性挙動を欠く補助重合剤は、比較的高い架橋密度を有する重合体ネットワークの形成を補助することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明の目的のために使用される補助重合剤は疎水性であり、毛髪繊維内での架橋増強の他に、水分の浸透に対して毛髪を保護することを助ける可能性もある。
【0147】
特定の実施形態では、補助重合剤は、昆虫の分泌物から採取される天然の生体付着性樹脂であるシェラックであり、これは多くの合成化学的同等物を有する。一般に精製されたワックス抜きシェラック(wax free shellac)は、平均分子量が約600~1,000g/molであり、その真の構造については様々な成分の混合物であり、議論があるが、オレフィン及びアルデヒドの官能基と共にヒドロキシル基及びカルボキシル基の繰り返し単位を含むことがわかっている。シェラックは、最大150mg KOH/gの可変の酸価で提供され得、該酸価は一般的に65~90mg KOH/gの範囲であり、ヒドロキシル価は一般的に180~420mg KOH/gである。シェラックの酸価は、通常、製造元から提供され、これはまた、例えば既知量のシェラックを水酸化カリウム(KOH)塩基で滴定する酸塩基滴定のような従来の方法によっても求めることができる。例えば、ASTM D664に記載されている手順に従い、酸価はシェラック1グラムあたりのKOHのミリグラムで表される。
【0148】
いくつかの実施形態では、補助重合剤(2つ以上の場合)の合計濃度は、ヘアスタイリング組成物の重量に対して、0.01wt%~2wt%、0.05wt%~2wt%、0.1wt%~1.7wt%、又は0.1wt%~1.5wt%である。
【0149】
ヘアスタイリング組成物は、水中油型エマルションである場合、エマルションの形成を容易にするため、及び/又はその安定性を長持ちさせるために、乳化剤をさらに含有することができる。いくつかの実施形態では、乳化剤は非イオン性乳化剤であり、好ましくは親水性-親油性バランス(HLB:hydrophile-lipophile balance)値がグリフィンの尺度で、2~20、7~18、10~18、12~18、12~17、12~16、12~15、又は13~16である。適切な乳化剤は、水溶性(例えば、HLB値が8~20)であり、例えば、ポリソルベート(Tweensとして市販されていることが多い)、ソルビタンのエステル誘導体(Spanとして市販されていることが多い)、アクリルコポリマー(例えば、Synthalen(登録商標)W2000として市販されている)及びそれらの組み合わせであるか、又は油溶性であり、例えばレシチン及びオレイン酸などである(例えば、2~8のHLB値を有する)。他の機能のために選択されたヘアスタイリング組成物のいくつかの構成要素も、乳化剤として機能することができることに留意されたい。例えば、一般に補助重合剤として使用されるリノール酸は、その極性頭部と脂肪鎖とにより、乳化剤としても機能することができる。
【0150】
PBMの毛髪繊維への浸透を促進するために、該組成物は、適切な接触を可能にするために、毛髪繊維上に適切に広がることができることが必要である。適用時に該組成物が毛髪繊維を十分に被覆することで、毛細管現象によるものと思われるモノマーの毛髪への浸透が進み、所望の形状を拘束することができる合成ポリマーが形成されると期待される。ミリニュートン/メートル(mN/m)で測定されるヘアスタイリング組成物の表面張力を、毛髪繊維の表面エネルギーよりも低く調整することによって、表面の適切な濡れ性を理論的に改善することができる。このような特性は、標準的な方法、例えばASTM D1331-14、方法Cに記載された手順に従って決定することができる。
【0151】
いずれの種類の毛髪改変処理によって以前に処理されていない生来の毛髪繊維は、一般的に約25~28mN/mの表面エネルギーを有するが、損傷毛髪は一般的に高い表面エネルギーを有し、例えば化学的に脱色された毛髪繊維は、31~47mN/mの範囲である。損傷及び非損傷の毛髪の間の多くの差異のうち、非損傷毛髪で天然由来の脂肪酸が多く存在することは、表面エネルギーが相対的に低くなることに寄与していると考えられている。上記の範囲を考慮すると、25mN/m未満の表面張力を有する組成物を用いて行う場合、すべての毛髪の種類において適切な濡れが観察されると仮定することができる。表面張力が低すぎるヘアスタイリング組成物は、モノマーの浸透に関する限りでは、期待される結果をもたらさないことが、意外にも見出されたのである。本発明者らは、直感に反して、理論的に適切と考えられるよりも相対的に高い表面張力を有する組成物が、本発明の目的により適していることを見出した。理論に縛られることはないが、毛幹内の脂肪酸の不在により、毛髪内で感知される表面エネルギーが、毛髪の外表面で測定可能な表面エネルギーよりも十分に高いと考えられ、毛幹に浸透することを意図した組成物の特定の範囲の表面張力の選択が必要とされる。
【0152】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、25~60mN/m、25~55mN/m、25~50mN/m、25~45mN/m、25~40mN/m、25~35mN/m、又は30~40mN/mの表面張力を有している。
【0153】
生来の毛髪に好適な本発明の組成物はまた、以前に処理された毛髪繊維にも好適である。しかしながら、いくつかの実施形態において、スタイリング組成物は、損傷した毛髪を十分に被覆するのに適合した表面張力を示すことができるが、一方で、生来の毛髪繊維に対しては十分に満足のいくものでない。
【0154】
湿潤剤は、その表面張力を前述の適切な範囲のいずれかになるように低下させることができる任意の適切な濃度で、組成物に添加することができる。湿潤剤の例としては、シリコーン系、フッ素系、炭素系、又はアミンアルコール系を挙げることができる。シリコーン系湿潤剤としては、シリコーンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製SIU100など)を挙げることができる。フッ素系湿潤剤としては、ペルフルオロスルホン酸(ペルフルオロオクタンスルホン酸など)、又はペルフルオロカルボン酸(ペルフルオロオクタン酸など)などを挙げることができる。炭素系の湿潤剤は、エトキシル化アミン及び/又は脂肪酸アミド(例えば、コカミドジエタノールアミン)、脂肪アルコールエトキシレート(例えば、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル)、ソルビトールの脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート及びアルキルポリグルコシド(例えば、ラウリルグルコシド)が挙げられる。アミン官能化シリコーンは、湿潤剤(アモジメチコン又はビスアミノプロピルジメチコンなど)、並びにアルカノールアミン(2-アミノ-1-ブタノール及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなど)としても使用できる。湿潤剤が添加される場合、典型的には、ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型エマルション)中に、該組成物の重量に対して、少なくとも0.001wt%、少なくとも0.01wt%、又は少なくとも0.1wt%;多くても1.5wt%、多くても1.4wt%、又は多くても1.3wt%;任意に0.001~1.5wt%、0.01~1.4wt%、又は0.1~1.3wt%の濃度で存在する。
【0155】
あるいは、又はさらに、異なる機能を果たすためにヘアスタイリング組成物に存在する成分の一部が、ヘアスタイリング組成物の表面張力に寄与することもある。例えば、架橋剤であるアミノプロピルトリエトキシシラン(例えば、Dynasylan(登録商標)AMEO)は、組成物の表面張力を低下させることができ、一方、補助重合剤及び乳化剤として使用できるリノール酸は、組成物の表面張力を上昇させることができる。したがって、ヘアスタイリング組成物の表面張力は、そのような成分の適切な濃度を選択することによって調整することができる。共溶媒は、形成され得るヘアスタイリング組成物の種類に対して、その化学式及び相対濃度によって寄与することに加えて、毛髪繊維に対する組成物の湿潤能力に寄与することもできる。
【0156】
いくつかの実施形態では、所望の粘度を提供するために、一般に水中油型エマルション又は水性コンパートメントの水相に増粘剤を添加することができる。粘度は、個々の毛髪繊維をすべて満足に被覆するように組成物を毛髪に容易に適用できるように十分に低く、しかし毛髪繊維上に十分な時間残留し、滴下を防止するために十分に高いことが必要である。粘度が比較的低いと、拡散及び/又は毛細管現象によるPBMの毛髪への浸透も促進される。例示的な増粘剤は、ヒアルロン酸、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリル-ジメチル-アンモニウムクロリド)コポリマー(ポリクオタニウム7、例えばDow Chemicals製)、四級化ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム10、例えばDow Chemicals製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。増粘剤は、添加される場合、典型的には、水相又は単相の重量に対して、少なくとも0.1wt%;多くても10wt%;任意に0.5wt%~5wt%の濃度である。
【0157】
毛髪繊維の表面へのPBMの移動及び/又は保持を促進し、次いで、そこへの浸透を増加させ得るために、好ましくは、組成物と毛髪とのゼータ電位の間に差が存在すべきである。例えば、ヘアスタイリング組成物のそのpHにおけるゼータ電位(又はζc)は、同じpHにおける哺乳類の毛髪繊維のゼータ電位(又はζh)よりも負又は正であることが好ましい。場合によっては、組成物に使用される成分は、他の機能に加えて、ゼータ電位値のこのような勾配を達成するための組成物の十分な帯電を提供することができる。例えば、pH調整剤、湿潤剤及び/又はアミン系架橋剤は、水中油型エマルションの好適な帯電に寄与し得る。いくつかの実施形態では、電荷調整剤と呼ばれるこの効果に専用の薬剤を、組成物に添加することができる。説明のために、水不溶性の非反応性アミノシリコーンオイルをエマルションの油相に添加して、ゼータ電位を調節することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では組成物のゼータ電位ζcとその処理対象の毛髪繊維ζhのゼータ電位との差はまた、ゼータ差又はデルタゼータ電位(Δζc-h)とも呼ばれ、絶対値で少なくとも5mV、少なくとも10mV、少なくとも15mV、少なくとも20mV、少なくとも25mV、少なくとも30mV、又は少なくとも40mVである。いくつかの実施形態では、Δζc-hの絶対値は、5~80mV、10~80mV、10~70mV、10~60mV、15~80mV、15~70mV、15~60mV、20~80mV、20~70mV、20~60mV、25~80mV、25~70mV、25~60mV、30~80mV、30~70mV、30~60mV、35~80mV、35~70mV、又は35~60mVの範囲内である。このような値は、とりわけPBM(複数可)を(例えば液滴として)WHA(複数可)と共に浸透させるために毛髪繊維に向かって作動する初期電荷勾配を設定するために好ましい。理解できるように、このような勾配は、最初に組成物の材料が毛髪外表面に蓄積してゼータ電位が変化するにつれて、時間の経過と共に減少する。このプロセスは自己終了的で、勾配が低くなりすぎると(例えば、デルタゼータ電位が5mVより低くなったとき)毛髪への組成物の移動が停止する。ゼータ電位は、分散粒子の電荷の測定に適したあらゆる装置を用いて、標準的な方法で測定することができる。
【0159】
本組成物はまた、化粧品組成物に慣用される他の任意の添加剤、例えば防腐剤、酸化防止剤、殺菌剤、防かび剤、キレート剤、ビタミン及び香料、又はヘアスタイリング組成物に慣用される、例えばヘアデタングル剤(もつれほぐし剤)及びヘアコンディショニング剤を含んでよく、その性質及び濃度は、本明細書においてさらに詳述する必要がない。
【0160】
本組成物は、ヘアスタイリング組成物が適用される形態に慣用される他の任意の添加剤、例えば組成物が噴霧される場合に推進剤を含んでいてもよく、その性質及び濃度は本明細書においてさらに詳述される必要はない。
【0161】
前記材料の混合及び/又は乳化は、当該技術分野で知られている任意の方法によって行うことができる。手動での振とうも十分であるが、ボルテックス、オーバーヘッドスターラー、マグネティックスターラー、超音波分散機、高剪断ホモジナイザー、ソニケーター、及び遊星遠心ミルなど、様々な装置を使用することができ、典型的にはより均一な組成、例えば水中油型エマルションの水相中のより均一な油滴の集団、を得ることができる。
【0162】
いくつかの実施形態において、ヘアスタイリング組成物は、PBMコンパートメントとWHAを含む水性コンパートメントとの内容物を混合又は乳化することによって調製することができ、それぞれの部分が準備できた直後にこの組み合わせが行われる。しかし、別の実施形態では、2つのコンパートメントの混合を保留することができる。特に、組成物が、完全な最終組成物において別個の相に分離しやすいPBM(複数可)と少なくとも1つの硬化促進剤(例えば、架橋剤)とを含む場合、同じ重合可能なコンパートメントにおいてそのような材料の予備重合を可能にすることが所望され得る。いくつかの実施形態において、予備重合工程は、PBM(複数可)及び硬化促進剤の単独混合物に対して行われ、工程に悪影響を及ぼし得るか、又は単に遅延させ得る追加の材料を含む場合には、PBMコンパートメントの内容物全体に対して行われない。他の実施形態において、予備重合は、硬化促進剤又はPBMコンパートメントの任意の他の成分と組み合わせる前に、PBM(複数可)単独で実施される。このような予備重合は、「自己予備重合」と呼ぶことができる。理論に縛られることなく、PBM(複数可)がCNSLのような不飽和側鎖を含有する場合、このような自己予備重合は、適切な条件(例えば、高温)で二重結合が開裂することによって起こると考えられ、これにより付加重合を介して他のCNSL分子との重合に利用できるラジカルを形成する。
【0163】
このような予備重合には、必要であれば、硬化促進剤の存在下であろうとなかろうと、混合した組成物の適用後の毛髪繊維内での重合を著しく遅らせる程度に、PBMコンパートメントの添加剤との混合時及び/又は水性コンパートメントの内容物との混合時にモノマーと硬化促進剤とが異なる相に分離することを防止するのに十分長い時間を有することが必要である。しかし、予備重合は、このプロセスで形成され得るオリゴマー(架橋剤自体又はモノマー自体のもの、又は架橋剤とモノマーと他のものとのもの)が、組成物の適用後に毛髪繊維内に浸透するように十分小さいままであるように十分に短い必要がある。予備重合は、予備重合されるコンパートメントに存在する関連するビルディングブロック(例えば、モノマー及び/又は架橋剤)を消費して、オリゴマー(組成に関係なく)の形成をもたらすと考えられている。このプロセスは、モノマーと硬化促進剤の予備重合混合物の粘度が時間と共に上昇することによってモニターすることができる。予備重合工程は、室温などの周囲条件で行うことができるが、例えば混合物の加熱など、重合を誘発及び/又は増強するのに適合した任意の手段によってさらに加速することができる。予備重合工程は、予備重合反応を妨害する可能性のある環境因子(例えば、酸素)を低減又は除去するために、アルゴン又は窒素下などの不活性雰囲気中で行うことができる。予備重合の条件は、実施される場合、PBMの種類、及び選択された架橋剤に依存する場合もある。いくつかの実施形態では、予備重合は、20℃~60℃、25℃~60℃、30℃~60℃、又は40℃~60℃の温度、又は100℃~150℃又は150℃~200℃などの高温で、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、少なくとも120分間又は少なくとも180分間行うことができる。典型的には、予備重合の期間は、比較的穏やかな温度で行われる場合、24時間、18時間又は12時間を超えないが、しかし、8時間未満、5時間未満、又は4時間未満を必要とする比較的高い温度(例えば、150℃~200℃)で行われる場合は、短縮することができる。予備重合後、添加剤を予備重合コンパートメントに任意に添加することができ、及び/又は水性コンパートメントをそれと組み合わせて、ヘアスタイリング組成物を形成することができる。
【0164】
ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型エマルション)は、その調製後、又はそれが好適に安定かつ効力を維持する期間内に、容易に適用することができる。例えば、エマルションの場合、PBMがin vitroで完全に重合していないことを条件として、油滴がその所望のサイズ範囲内(例えば、数マイクロメートル以下、典型的には10μm未満)である限りは、組成物を適用することが可能である。より一般的には、ヘアスタイリング組成物は、毛髪繊維に少なくとも部分的に浸透してそこで重合するような十分な量のPBMが利用可能である限り、使用可能とすることができる。いくつかの実施形態では、単相組成物又はエマルションは、その溶解又は乳化から長くても30分以内、又は長くても20分以内、長くても10分以内、又は長くても5分以内に毛髪繊維に適用される。
【0165】
いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物を単相組成物として、又は水中油型エマルションとして適用する前に、毛髪繊維を前処理することができる。
【0166】
ヘアスタイリング組成物を適用する前に行うことができる一般的な前処理は、前洗浄処理であり、毛髪繊維を洗浄するために、毛髪製品の汚れ又はグリースなどの毛髪に存在する可能性のある残留物を除去する。これは、ラウリル硫酸ナトリウムなどの、任意の適切な洗浄剤を適用し、この洗浄の後、過剰の水で毛髪繊維をすすぐことによって行うことができる。
【0167】
別の前処理には(これは洗浄の後に行うことも、独立して行うこともできる)、前乾燥処理であり、すすぎ水又は残留水分を毛髪から除去することができる。この毛髪繊維からの水分子の除去は、一般に、毛髪を加熱することによって達成され、毛小皮の表面及び/又は毛幹内のいずれかに形成され得た水素結合を切断すると考えられている。
【0168】
本明細書で使用される場合、文脈から明らかでない限り、又は別段の記載がない限り、「残留水分」という用語は、毛髪繊維に関して、湿気にさらされた毛髪に由来する(例えば、周囲の湿度又は毛髪の湿潤の結果として)、毛小皮の鱗片の外面上、その鱗片の間及び/又は下(すなわち、毛皮質又は毛髄質内)のいずれかに存在する水を指す。当然のことながら、毛髪は常に周囲の湿度にさらされており、湿度はほとんどゼロになることはないため、残留水分を完全に除去することは実現が非常に困難である。それにもかかわらず、低レベルの残留水分は主に熱(すなわち加熱)のエネルギーを毛髪に適用することによって達成可能、又は一時的に達成可能である。わずかなレベルの残留水分を達成するのに十分な熱を、任意の従来の方法、例えば、ヘアドライヤー又はフラットアイロン若しくはカーリングアイロンを十分な時間使用することによって、毛髪に適用することができる。毛髪中の水分子の量を減少させるために使用される方法に関係なく、そのような工程は、乾燥処理又は乾燥工程と代替的に呼ぶことができる。
【0169】
少なくとも波状の外観を有する毛髪を考慮する場合、十分な乾燥により波が一時的に軽減されるため、乾燥前処理により水素結合が十分に切断されたことを容易に視覚的に評価することができ、所望によりそのような工程の最後に毛髪繊維が完全に平らにされる。あるいは、直毛の場合のように、乾燥前処理の期間を、使用する乾燥装置の機能及び毛髪繊維に適用し得る温度として任意に設定することができる。例えば、約200℃の熱伝導温度で毛髪に直接当てることができるフラット又はカールアイロンは、数分以内に水素結合を十分に切断することができるが、従来のヘアドライヤーは、用いられる毛髪からの距離に応じ、熱伝達によって比較的低い温度を適用する場合があり、比較的長い乾燥期間が必要になるであろう。通常、毛髪繊維の乾燥は、毛髪繊維の領域を少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、又は少なくとも100℃の温度まで、一度に5秒以下加熱することによって行うことができ、このような乾燥処理は、加熱が毛髪の小束の一方の端からもう一方の端まで進行する場合に小束に対して最大5分かかる。
【0170】
いくつかの実施形態では、そのような乾燥処理後(実施する場合)及び/又は本組成物の適用前の残留水分レベルは、毛髪繊維の重量に対して、多くても5wt%、多くても4wt%、多くても3wt%、多くても2wt%、又は多くても1wt%である。そのような量は、例えば、熱重量分析、又は光熱過渡放出放射測定などの近赤外技術を使用する標準的な方法によって決定することができる。
【0171】
あるいは、又はさらに、ヘアスタイリング組成物が毛髪繊維に浸透したケラチンポリマー内及び/又は材料内の水素結合の開裂にとりわけ寄与し得る加熱は、a)組成物の適用中に任意に適用される(例えば、組成物は適用前に加熱される)加熱;b)毛髪繊維上の組成物のインキュベーション中に任意に適用される加熱;及び/又はc)組成物の適用後に毛髪繊維のスタイリング中に適用される加熱である。水素結合への作用に関係なく、加熱は、もしあれば、毛髪繊維内のモノマー/オリゴマーの拡散速度及び/又はポリマーの硬化を促進する。
【0172】
第3の可能な前処理は(これは、洗浄及び/又は乾燥後、又は独立して実施することができる)、ヘアスタイリング方法の実施中に毛髪繊維上に残ることを意図した前処理組成物の適用を含む。毛髪の前処理組成物は、ヘアスタイリング組成物の適用中、特に熱の適用中に毛髪繊維を保護することができ、本方法の工程の実行を容易にすることができ、及び/又はヘアスタイリング組成物の特性を増強することができる。
【0173】
毛髪の前処理組成物は、本発明の組成物及び方法によって求められる効果を損なわないものであるべきであり、例えば、毛小皮の開口、スタイリング組成物の毛髪表面への移動、スタイリング組成物の毛幹への浸透、PBM(複数可)の重合又はWHA(複数可)の求められる活性、及び任意の同様の効果を妨げないものであるべきである。
【0174】
一般的に、毛髪の前処理組成物は、ヘアスタイリング組成物で処理する前に、繊維の表面に極薄の油性層を形成するように毛髪繊維に適用することができるオイルからなる。
【0175】
いくつかの実施形態において、この前処理工程又は毛髪の前処理組成物に使用されるオイルは、25℃の温度で測定した水の重量に対して、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、又は1wt%以下の水への溶解度を有する。
【0176】
本発明の方法に適した毛髪の前処理組成物を実現する因子は、ヘアスタイリング組成物のためにすでに記載した特性のいくつかと共通点があり、簡単に述べるにとどめる。
【0177】
第1に毛髪の前処理組成物(前処理オイルと呼ぶこともできる)は、毛髪繊維を適切に濡らす必要がある。そのためには、前処理組成物又は組成物中のオイルは、毛髪繊維の表面エネルギーよりも低い表面張力を有するべきである。いくつかの実施形態において、前処理組成物又はオイルは、35mN/m以下、30mN/m以下、又は25mN/m以下の表面張力を有する。
【0178】
第2に、毛髪繊維上に留まり、エネルギーの適用中に蒸発しないようにするために、所望であれば、毛髪の前処理組成物又は組成物中のオイルは、プロセス中に本質的に不揮発性であるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、前処理オイルは、40Pa未満、35Pa未満、又は30Pa未満の蒸気圧を有する。他の実施形態では、オイルは0.1Pa超過、0.2Pa超過、又は0.5Pa超過の蒸気圧を有する。いくつかの実施形態では、前処理オイルは、0.1Pa~40Pa、0.2Pa~35Pa、又は0.5Pa~30Paの蒸気圧を有する。オイルの蒸気圧は温度25℃で測定される。
【0179】
所望の毛髪の前処理組成物による毛髪繊維の被覆を容易にするために、両者の間の静電引力を促進することができ、毛髪の前処理組成物(例えばオイル前処理)は、好ましくは、毛髪繊維のゼータ電位(ζh)と十分に異なるゼータ電位(ζo)を有する。前処理組成物のζoもまた、とりわけ毛髪繊維上に形成されたオイル前処理層へのPBMの誘引を可能にするために、スタイリング組成物のゼータ電位(ζc)と十分に異なるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、前処理組成物と毛髪との間のデルタゼータ電位(Δζo-h)及びスタイリング組成物と前処理組成物との間のデルタゼータ電位(Δζc-o)は、絶対値で、少なくとも5mV、少なくとも10mV、少なくとも15mV、少なくとも20mV、少なくとも25mV、少なくとも30mV、又は少なくとも40mVである(すべて絶対値)。いくつかの実施形態では、Δζo-h及びΔζc-oの絶対値は、5~80mV、10~80mV、10~70mV、10~60mV、15~80mV、15~70mV、15~60mV、20~80mV、20~70mV、20~60mV、25~80mV、25~70mV、25~60mV、30~80mV、30~70mV、30~60mV、35~80mV、35~70mV、又は35~60mVの範囲内にある。
【0180】
毛幹に優先的に浸透する材料は、PBM(複数可)のin situでの重合に関与するか、又は重合を促進するものであることが好ましいため、毛髪に実質的に浸透できない毛髪の前処理組成物を選択することが有益であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、前処理オイルは、毛髪繊維の重量に対して、重量増加が多くとも5wt%、多くとも4wt%、多くとも3wt%、多くとも2wt%、又は多くとも1wt%として測定される毛髪浸透能力を有する。毛髪繊維に浸透する能力の有無にかかわらず、毛髪の前処理組成物は、ヘアスタイリング組成物の求める活性に悪影響を及ぼしてはならない(例えば、in vitroで試験可能であるとおり、その重合を妨げてはならない)。
【0181】
毛髪の前処理組成物は、様々な有益な効果を提供し得るが、本発明のいくつかの実施形態では、そのような利益の1つは、混和性の観点からヘアスタイリング組成物と非相溶性である前処理油を選択することによってもたらされる。例えばオイルの混和性は25℃の温度で測定されるヘアスタイリング組成物の重量に対して、例えば5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、又は1wt%以下である。このような場合、毛髪の前処理組成物は、毛髪表面に薄い油性層を形成し、その上にヘアスタイリング組成物の過剰な疎水性液滴が付着し得ると考えられる。したがって、前処理剤の薄い層は、スタイリング組成物の成分の浸透を可能にする一方で、その存在は、毛髪繊維に浸透しなかったヘアスタイリング組成物の部分の除去を容易にする。余分なスタイリング組成物は、前処理油の層と共に、例えば、毛髪を洗浄するか、又は拭き取ることによって除去することができる。このような場合、前処理オイルは、前処理オイルがない場合に同じヘアスタイリング組成物で処理された毛髪繊維と比較して、より早い段階で毛髪繊維の外観、感触、及び/又はくし通り性を改善することができる。
【0182】
いくつかの実施形態において、前処理組成物は、シリコーンオイルから選択されるオイルである。
【0183】
前述の任意の前処理工程のいずれか1つが以前に実施されたか否かにかかわらず、ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型エマルション)は、毛髪繊維に適用され、一般的には少なくとも5分間毛髪上に維持され、毛小皮の鱗片が膨潤して開くことが可能となり、したがって、PBM、WHA及び硬化促進剤(存在する場合)の少なくとも一部が毛幹に到達することを可能にする。毛皮質への浸透を促進するために、内部重合に関与又は促進する分子、あるいはポリマーの結果として生じる効果を保護する分子(例えば、PBM、硬化促進剤、WHA、共溶媒)は、好ましくは2nm未満、1.8nm未満、又は1.6nm未満の分子直径を有する。本発明者らは、毛幹内でモノマーが毛髪繊維の水素結合の少なくとも一部に結合することができ、それにより水にさらされたときに毛髪繊維が以前の天然の状態に再形成するのを防ぐことができると考えている。PBMはさらに、又はかわりに、以前に切断された水素結合に結合することなく重合し得る。作用機序に関係なく、毛髪繊維に含浸したモノマーの硬化から生じるポリマーは、毛髪繊維を新しい形状に拘束することができる。本発明の硬化性組成物は、水(周囲水又は湿潤時に適用される水)が毛髪に到達するのを防止するか、又はその到達を低減させ、それにより水素結合が再び形成される能力を低下、又は遅延させ、毛髪が天然の形状に戻る能力を遅延させると考えられる。WHAはさらに、水の隔離に寄与することができ、又はスタイリングに関してポリマーの所望の効果を促進する他の相互作用に寄与することができる。本発明のヘアスタイリング方法に、ポリマーに、及びスタイリングへのその効果の持続時間に関するWHAの作用機序にかかわらず、WHAは便宜上、保護効果又は延長効果を提供すると言われている。簡単のために、この方法は水素結合の切断、及びその後の重合又は毛髪成分と相互作用を行い得るPBM又は他の成分へ結合することによって切断された結合を妨害という観点から説明されているが、これは観察されたスタイリング効果の根底にあるさらなる根拠を除外することを意味するものではない。
【0184】
モノマーが毛髪繊維に含浸し、例えば毛髪繊維中の切断された水素結合の少なくとも一部と結合するのを確実にするのに十分な時間が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも35分間、少なくとも40分間、少なくとも45分間、又は少なくとも50分間、毛髪繊維に接触したままにするか、又は適用したままにすることができる。いくつかの実施形態では、組成物が毛髪繊維に適用されたままである時間、あるいはインキュベーション時間と呼ばれる時間は、多くても12時間、多くても10時間、多くても5時間、多くても2時間、又は多くても1時間である。特定の実施形態では、組成物は、5分間~30分間、10分間~60分間、30分間~12時間、30分間~5時間、40分間~2時間、又は50分間~2時間の期間、毛髪繊維上に維持される。従来の縮毛矯正方法は、より長い時間を必要とする場合があり、3~4時間、又はさらには6~8時間の適用を必要とする場合もあることに留意されたい。
【0185】
本組成物は、周囲温度で毛髪繊維上に適用されて維持され得るが、この工程は、代替的に、少なくとも約30℃、又は少なくとも約40℃の高温で実施され得る。いくつかの実施形態において、組成物が毛髪繊維と接触して維持され得る温度は、最大約60℃、最大約55℃、又は最大約50℃である。特定の実施形態では、液体組成物は、15℃~23℃、23℃~60℃、25℃~55℃、又は25℃~50℃の温度範囲で毛髪繊維上に維持される。
【0186】
前記時間の後、これにより個々の毛髪繊維内に組成物のPBM及びWHAの少なくとも一部が十分に浸透することを可能にし、モノマーは、任意に硬化促進剤の存在下で、エネルギーの適用により、その後に少なくとも部分的に重合して、それにより少なくとも部分的な硬化が達成される。
【0187】
PBMの重合時に、毛髪繊維内よりも液体組成物内でより容易に評価可能であるとおり、得られたポリマーはガラス転移温度(Tg)の上昇が生じる。いくつかの実施形態では、完全な硬化時に、得られるPBPは、少なくとも50℃、少なくとも100℃、少なくとも150℃、又は少なくとも200℃のTgを有する。そのようなTgは、重合したPBMが、暑い気象条件下、熱水(約45℃)で髪を洗うとき、又はサウナ(約70℃)などの温度が上昇した環境下にあるときでさえも、損なわれないままであることを可能にする。毛髪繊維内に形成された合成ポリマーは、そのTgのおかげで、そのような条件又は処理に影響を受けないままであるため、本教示による組成物及び方法を用いて達成される毛髪の改変された形状はそのままである。
【0188】
いくつかの実施形態において、組成物の少なくとも部分的な硬化(したがって、毛髪繊維のスタイリング)を可能にするエネルギーは、少なくとも約80℃、少なくとも約100℃、少なくとも約120℃、又は少なくとも約140℃の温度で適用される熱エネルギーである。いくつかの実施形態では、加熱温度は最大で220℃、又は最大で200℃である。特定の実施形態では、少なくとも部分的な硬化を達成するために適用される温度は、80℃~220℃、100℃~220℃、120℃~220℃、又は140℃~200℃の範囲である。モノマーを少なくとも部分的に硬化させるために加熱装置によって提供される温度は、一般に、毛髪繊維によって感知される温度よりも高いことを理解されたい。十分長い滞留時間(毛髪セグメントが熱にさらされる期間)が与えられれば、毛髪繊維の温度は最終的に加熱温度に到達し得るが、これは一般的にはそうではなく、硬化が行われ得る毛髪繊維の温度は、一般的には少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、又は少なくとも約60℃の温度である。毛髪繊維への不可逆的な損傷を防止するために、少なくとも部分的な硬化工程中の毛髪繊維の温度は、望ましくは180℃以下、140℃以下、又は100℃以下である。少なくとも部分的な硬化は、天然の形状を改変するように、例えば、ヘアドライヤー、フラットアイロン又はカールアイロンによって、毛髪を所望の形状にスタイリングしながら行うことができる。この工程では、その間、形状を改変するために毛髪繊維を動的又は静的に機械的に拘束する(例えば、くし又はブラシで引っ張るか、ローラーでロールするか、又はスタイリングアイロンで接触させる)ので、代替的にスタイリング工程と呼ぶことができる。
【0189】
このような温度では、少なくとも部分的に硬化するのに必要な時間は、一般に短時間である。通常、100℃以上の温度を感知する個々の毛髪繊維の領域は、数秒以内でPBMの部分重合を局所的にもたらすことができ、一方、約50℃の低い温度に達する毛髪繊維は、数分(例えば、5分)までの時間を必要とする場合がある。毛髪が加熱される、つまり硬化に適した特定の温度を感知する必要のある時間は、改変される毛髪の形状及び形成される新しい形状に依存し得る。比較的穏やかな改変であれば、比較的より劇的な形状の変化よりも短い時間で済むこともある。
【0190】
毛髪繊維が適切な温度であるべき時間の期間は、溶解又は乳化される対象の組成物の油相を毛髪処理に意図された温度にさらし、液相が固化(すなわち、硬化)を開始するのにかかる時間を測定することによってin vitroで独立して試験することが可能である。哺乳類対象を考慮する場合、部分的な硬化工程(言い換えれば、それ自体の毛髪のスタイリング)のために割り当てられる時間の量は、とりわけ、毛髪の種類、頭皮の毛髪の密度及び長さ、並びに熱を供給するために使用する装置及びその程度に依存するであろう。したがって、髪の頭皮全体のレベルでは、部分的な硬化に数分かかることがあるが、一般的には1時間未満である。このような考察は、毛髪繊維の他のあらゆる処理に適用され、本明細書で提供される時間の期間は、一般に、同時に処理できる任意の毛髪繊維の量に適した期間を指す。毛髪の頭皮全体が、毛髪繊維の異なる一束に対して同じ処理を繰り返すことによって段階的に処理される場合、頭皮全体に対する処理の期間は、同時処置の個々の繰り返しの実際の回数に応じた期間の合計とすることができる。例えば、毛髪繊維の第1の一束の同時処理に5分間必要であり、毛髪頭皮全体が4つの一束で構成されているとすると、約20分で処理が完了するであろう。
【0191】
少なくとも部分的な硬化の前に、任意に、液体組成物の過剰分を、すすぎ液で毛髪繊維をすすぐことによって毛髪繊維の外表面から除去し、その結果、毛髪繊維の表面に厚い被覆の形成を防止し、それによって毛髪に粘着性及び粗い感触を与えないようにする。このような被覆の除去は、先に述べたとおり、オイルの前処理などの適切な前処理組成物を適用することによって、さらに促進することができる。また、すすいだ毛髪繊維は熱伝導が向上し、部分的な硬化が加速されることもある。
【0192】
あるいは、又はさらに、ヘアスタイリング組成物の適用及び毛髪繊維上でのそのインキュベーションの後、及び任意にすすぎの後、しかしヘアスタイリングの前に、硬化促進剤からなる第2の組成物を、PBMを含浸させた毛髪繊維に適用することが可能である。この任意の工程で使用され得る組成物は、硬化性組成物と呼ぶことができる。これはヘアスタイリング組成物について以前に記載した架橋剤及び硬化加速剤から選択される同じ硬化促進剤を含有し、かつ一般的には、硬化組成物は硬化加速剤からなる。ヘアスタイリング組成物とは対照的に、硬化促進剤(例えば、硬化加速剤)は、毛髪繊維への硬化組成物の適用を比較的短時間(例えば、5分間~15分間、又はそれ未満)にすることができる過剰量(例えば、5wt%)で硬化組成物に存在することができる。硬化性組成物は、すすぎ液に加えて、又はすすぎ液の代わりに、毛髪繊維をすすぐ役割をさらに果たすことができる。
【0193】
所望の改変形状を達成するのに十分な、少なくとも部分的な硬化の後、毛髪繊維は組成物のさらなる硬化を確実にするために、さらなるエネルギー、好ましくは熱の適用によるさらなる硬化を任意に受けることができる。さらなるエネルギーは、上述のスタイリング器具、例えば、ヘアドライヤー、又はスタイリングアイロンの使用によって適用することができる。いくつかの実施形態では、さらなる硬化は、第3の工程の少なくとも部分的な硬化について記載したとおりの温度で、一般的には部分的な硬化の場合よりもかなり長い時間、実施することができる。例えば、毛髪繊維が20分以内に特定のスタイリング装置で所定の温度で少なくとも部分的な硬化を可能にする組成物で処理される(頭皮全体の繊維が所望の改変形状を示すことによって確立される)場合、さらなる硬化に有利な任意の追加加熱工程は、少なくとも40分間、少なくとも同じ条件下で行われることになる。部分的な硬化は繊維の形状を改変する間に達成されるが、本明細書でさらなる硬化と呼ばれる工程は、毛髪繊維が所望の改変形状となった際に適用されるので、所望の形状に適合するように繊維を同時に機械的に拘束することはもはや必要でない。さらなる硬化により、毛髪繊維内のPBMの重合度を高めることが期待されるが、完全硬化(例えば、その後、重合がもはや行われなくなること)することは予期されない。
【0194】
いくつかの実施形態では、(例えば、スタイリング工程及び任意にさらなる硬化の間に達成される)加熱硬化の後、毛髪繊維は、水への露出を減らすために、洗わずに維持することができ、該当する場合、硬化がさらに進行することを可能にする。毛髪繊維の洗浄を回避できる期間は、毛髪の種類、それに適用される組成物、天然の形状を改変するために用いられる手順、温度、相対湿度、所望の改変形状及び前記改変の所望の持続時間に依存し得る。一般的には、毛髪繊維が約40~60RH%の相対湿度で室温に維持されると仮定すると、毛髪の洗浄は、少なくとも部分的硬化(例えば、機械的拘束を含むスタイリング)又は任意のさらなる硬化工程(例えば、機械的拘束なしの加熱)の終了後少なくとも18時間で行われてもよい。場合によっては、少なくとも24時間、少なくとも36時間、又は少なくとも48時間、洗浄を延期することができる。通常、本方法によりスタイリングした毛髪の洗髪は、スタイリングから長くても1週間以内に行われる。本発明に従ってスタイリングされた毛髪は、従来の方法で必要とされることが多いように、スタイリング効果を損なわないための特定のシャンプーの使用に制限されず、任意のシャンプーで洗浄することができる。とはいえ、通常のシャンプーは、硬化促進剤を含めることにより改善することができる。
【0195】
有利なことに、本発明のヘアスタイリング組成物及びそれに従う方法によって処理された毛髪は、現行の特定のケアから解放されるだけでなく、本発明の教示は、他の毛髪処理(例えば、ブリーチ、カラーリング、スタイリングなど)を以前に受けた毛髪繊維にも適することができる。このような従来の処理は、一般的に毛髪に損傷を与え、例えば物理的及び/又は化学的な構造変化を課し、従来の方法(例えば、オーガニック又は日本式)によるスタイリングなど、その後の毛髪処理の妨げになる可能性がある。例えば、ブリーチした毛髪は日本の方法では、ブリーチ薬品がこの方法に必要な毛髪成分に影響を与えるため、効果的にストレートにならない可能性がある。対照的に、本発明の組成物は、毛髪繊維を、受けた可能性がある以前の毛髪処理に関係なく、効果的にスタイリングすることができる。
【0196】
図1A及び1Bは、毛髪に付着した残留物を除去するために、5%のラウリル硫酸ナトリウムを含有した水道水で洗浄した毛髪繊維のFIB-SEM画像を示し、参照となる未処理の毛髪繊維の毛小皮の鱗片のより良好な可視化が得られた。
図1Aは、重なる毛小皮の鱗片11を走査型電子顕微鏡(SEM)及び集束イオンビーム(FIB)により撮影したものを示し、これはZeiss Crossbeam340顕微鏡を用いて毛髪繊維の断面で実施した。断面は、SEMカラムから54°の角度で、30kV及び100pAでイオン化ガリウムを試料に衝突させて実行され、その画像は×20Kの倍率、1.20kVの電圧、及び5mmの作動距離で、SEMカラムとレンズ内検出器とを使用して撮影した。
図1Bは、同じ毛髪繊維の別のFIB-SEM像であるが、作動距離は4.9mm、電圧は10kVである(この電圧では毛小皮の鱗片は見えない)。
【0197】
図2A及び2Bは、実施例5の工程4に記載されるとおり毛髪繊維をスタイリングした直後、すなわち毛髪繊維を洗浄する工程5の前に、本発明の水中油型エマルション(特に、実施例3に記載されるとおり調製されたエマルションPU6)で処理された毛髪繊維の、上述のように撮影されたFIB-SEM画像を示す。画像は2つの異なる電圧で撮影され、低い方では毛小皮とその輪郭の可視性が高められ、高い方では組成物の可視性が高められた。画像は同じ断面で撮影されたため、それぞれの電圧で収集された情報を複合させるために、互いに「重ね合わせる」ことができる。
図2Aは、電圧1.20kV、作動距離5mmで撮影され、毛小皮11が、毛小皮-毛小皮細胞膜複合体(cuticle-cuticle cell membrane complex:CMC)を示すと思われる暗色線21で区切られ、互いに層状であるのがわかる。この電圧では、硬化したヘアスタイリング組成物を見ることはできない。毛髪構造をよりよく説明するために、
図2Aの概略図を
図2A’に示す。
図2Bは、同じ毛髪繊維の画像であるが、電圧10kV、作動距離4.9mmで撮影したものであり、これにより、毛小皮の輪郭は薄れるが、硬化した組成物は明るい層22として見えるようになり、これにより毛小皮の数層を通って毛髪繊維に浸透したことがわかる。
図2B’は、
図2Bの概略的な描写であり、硬化した組成物は、毛髪繊維(それ自体は、斜線領域として表示)内のまばらに点在する白色領域として示される。
【0198】
本発明の方法は、毛髪が湿気にさらされた後でも-大気湿度に由来する水分であれ、毛髪の濡れ又は洗浄の後であれ-毛髪繊維を所望の形状に維持する、耐久性のあるヘアスタイリングを提供するものである。5回以上のシャンプー洗浄後でもスタイリング形状は、有意に検出可能な様式で影響されることがなく、ヘアスタイリングを長期間維持することができる。実施例で実証されるように、いくつかの実施形態では、本教示によるヘアスタイリング組成物及び方法は、処理された毛髪が10回以上のシャンプー洗浄、20回以上のシャンプー洗浄、30回以上のシャンプー洗浄、40回以上のシャンプー洗浄、又は50回以上のシャンプー洗浄に耐える能力によって証明されるように、毛髪形状の持続的な改変をもたらす。
【0199】
図3A及び3Bは、エマルションPU6を適用することで処理した毛髪繊維のFIB-SEM画像であり、縮毛矯正し、その後16回の洗浄サイクルで洗浄した。縮毛矯正及び洗浄手順は実施例4及び5にそれぞれ記載される。画像は上記のとおり撮影した。
図3Aは、電圧1.20kV、作動距離4.7mmで撮影した断面を示し、
図3Bは、スタイリングされた毛髪繊維の同じ断面を示し、画像は電圧10kV、作動距離4.6mmで撮影した。
図3A及び3Bは、16回の洗浄後でさえ、毛髪繊維内に硬化した組成物が存在することを示している。
【0200】
この「洗浄耐性」の一部は、繊維の外表面に残っている散在性被覆に起因することを排除することはできないが、発明者は、そのような外部被覆は洗浄によって比較的急速に摩耗する傾向があり、本教示に従い毛髪をスタイリングする能力が主にPBMの内部重合に起因する可能性があると推測する。この一過性の散在性被覆は比較的薄く、通常は初期の厚さ1μmを超えず、多くの場合0.5μm未満の厚さである。それ自体、本教示に従って処理された毛髪繊維を、繊維を望ましい形状に拘束する数ミクロンの連続的な外部被覆による従来のスタイリング方法に対して区別することに注目されたい。理論に束縛されることを望むものではないが、毛髪繊維のこの一時的な薄い被覆は、内部に浸透したモノマーが硬化をさらに促進し重合を強化するように、内幹を一時的に保護し、それによりヘアスタイリングの耐久性を延ばすことができると考えられている。以下に例示するように、本方法による毛髪のスタイリングは一時的な被覆がない状態で維持される。この被覆の回避は、毛髪繊維にオイルの前処理を施すことによって容易になり得る。
【0201】
本明細-書で使用する場合、5~9回のシャンプー洗浄に耐えることができる改変形状を提供する組成物は、短期間のスタイリング効果を有すると称することができる。10~49回のシャンプーサイクルに対する洗浄耐性を与える組成物は半永久的なスタイリングを提供すると言え、一方、50回超過のシャンプーに対して洗浄耐性を与える組成物は永久的なスタイリングを提供すると言える。
【0202】
縮毛矯正した髪の形状を持続的に維持するために、このような周囲収縮構造に依存する方法は、しばしば髪の健康及び自然な外観に有害であることがわかっているため、連続した外部被覆(本長持ちするスタイリング効果にとっては重要ではない)を急速になくすことは有利であると考えられる。
【0203】
図4Aは、毛髪繊維のねじれ(例えば谷42と山44)が明確に検出できる、天然の未処理の巻き毛の黒髪の房を示す。PU6として本発明に記載のヘアスタイリング組成物で処理し、フラットアイロンでストレートにした同様の毛髪の試料を、比較のために
図4Bに示す。見てわかるとおり、処理した毛髪繊維はねじれの数が、未処理の参照と比べて劇的に減少している。
【0204】
代替品は典型的には髪に、そしてしばしば健康に有害であるが、本発明の組成物及び方法は、長持ちするヘアスタイリングに特に有益であり、さらに又はあるいは、短期間のヘアスタイリングに使用することができ、毛髪繊維は2~4回のシャンプー洗浄後に天然の元の形状に戻ることができる。
【0205】
図5は、従来の縮毛矯正方法が毛髪に損傷を与えることを示すDSC研究の結果を示し、本発明のヘアスタイリング組成物に予想されるような、無害なヘアスタイリング方法から期待される影響を示している。図からわかるように、本発明の組成物で処理した場合に現れるであろう毛髪繊維の試料の曲線は、未処理の天然の毛髪試料の曲線と同程度であり得、これにより著しい構造変化がない、すなわち毛髪への損傷がないことを示すことができる。一方、市販の縮毛矯正剤(オーガニック及び日本製)のDSC曲線は、天然の毛髪曲線からかなり変化しており、このような劇的なヘアスタイリング方法を使用した場合に予想される構造変化を示している。DSC研究は、以下の実施例11でさらに詳述する。
【0206】
有利には、本教示による組成物により処理された毛髪繊維は、熱分析により測定して、同様の未処理繊維から4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示すと期待される。
【0207】
本発明組成物で処理した毛髪繊維に対する本発明組成物の非損傷効果は、以下の実施例12に記載されているように、様々な機械的パラメーターを処理した毛髪繊維と未処理の毛髪繊維との間で比較することができる引張試験によって確認又は代替的に確率することができる。従来のオーガニック縮毛矯正を用いてスタイリングされた繊維は、未処理の繊維と比較して劣った機械的特性を示すことが予想されるが、本発明に従って処理された繊維は、同様の性質を有する未処理の繊維と同様の、あるいはそれよりも優れた挙動を示す可能性がある。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、このような改善された特性、あるいは少なくとも著しい劣化がないことは、毛髪繊維の内部に重合型のPBMが存在することに由来すると考えられる。
【0208】
本発明により処理された毛髪繊維が未処理の毛髪と少なくとも同程度に良好であることが期待される1つの機械的パラメーターは、ひずみ-応力曲線の破断点で測定される、毛髪を破断させるのに必要な圧力(又は断面積あたりの力)、又は破断応力に関する。第2の力学的パラメーターは毛髪の靭性であり、これは毛髪が破断するまでに吸収できるエネルギー量(すなわち、ひずみ-応力曲線下の面積)を推定するものである。弾性率は、毛髪繊維の弾性改変に対する抵抗力を示すもう1つの機械的パラメーターであり、本発明の方法で処理された繊維は、未処理の毛髪と少なくとも同等であることが期待される。
【0209】
いくつかの実施形態において、本教示による組成物によって処理された毛髪繊維は、引張特性分析によって測定される場合、以下のうちの少なくとも1つを示す:
i)同様の未処理繊維の破断応力より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、又は少なくとも25%大きい破断応力;及び
ii)同様の未処理毛髪繊維の95%以上、100%以上、105%以上、110%以上、115%以上、又は120%以上の靭性。
【0210】
本発明の方法は、縮毛矯正、カール、又は中間形状をもたらすことなど、任意の所望のヘアスタイル及び形状に適しており、毛髪は、その自然の未改変形状よりもウェーブが少ない形状に延びる。
【0211】
有利なことに、本発明の組成物は、新たな組成物の適用を必要とせずに再スタイリングを可能にする。それゆえ、上述の実施形態である、毛髪繊維の形状を天然の形状から第1の改変形状に改変するように機能する方法を一通り終えた後に、毛髪繊維は、第2の改変形状に再形成することができる。これは、毛髪繊維を、第1の成形中に形成されたポリマーのTg又は軟化温度を超える温度にすることによって達成することができ、それゆえ、「少なくとも部分的な軟化」と呼ばれることがある。このような少なくとも部分的な軟化の工程の間及び/又はその後に、毛髪繊維は、所望の第2の形状に形成される。その後、毛髪を所望の形状に維持しながら、温度をTg又は軟化温度未満に低下させることにより、ポリマーは第2の形状を保持するのに適した拘束構造を回復させることができる。あるいは温度を毛髪に冷風を当てるなどして積極的に下げることが可能である。第2の改変形状は、第1の改変形状と同じでもよいし、又は異なっていてもよい。この革新的な再スタイリング方法は、繊維内に前もって浸透したポリマーの軟化に関して記載したが、この軟化を達成するために加えられる加熱は、水分量を下げるようにさらに機能し得ると考えられている。先に説明したとおり、残留水分がなくなることで、次いで水素結合に影響を与え、軟化停止時に再形成されたポリマーの効果が高まると考えられる。
【0212】
有利には、本発明の組成物は、所望により「脱スタイリング」を可能にし、このことは、本発明に従って処理された毛髪繊維が、スタイリングの効果が時間と共に消失するのを待たずに、又は自然に形作られた毛髪繊維の再成長を待たずに、元の形状を取り戻すことができることを意味する。これは、前もってスタイリングした毛髪繊維を、水の存在下で、該温度がポリマーを軟化させ、かつ水が毛髪繊維に浸透するのに十分な時間、ポリマーのTg又は軟化温度を超える温度に共することによって達成することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、そのような脱スタイリング処理は、ポリマーの軟化をもたらし、したがって水素結合を形成しやすい毛髪繊維の部分とポリマーが形成ていたであろう結合をある程度切断できる可能性があると考えられている。脱スタイリング処理中に水が存在すると、そのような分子が毛髪に浸透し、その結果、未処理の毛髪に自然に生じる水素結合の少なくとも一部を再形成することが可能になる。毛髪繊維の元の水素結合の再形成の程度と、軟化をもはやサポートしなくなった低温まで冷却し戻したときにポリマーがとり得る形態とに応じて、脱スタイリングは部分的又は完全になされ、それに応じて毛髪は元の形状に少し戻るか、又はより近く戻ることができる。脱スタイリングプロセスは、毛幹内に残っているポリマーの形状にのみ影響を与えると考えられているため、脱スタイリングの後、所望により、毛髪繊維は、再スタイリングについて先に記載したとおり、さらなるスタイリング処理を受けることができる。
【0213】
毛髪繊維内の合成ポリマーのTg又は軟化温度は、例えばin vitroで実験的に評価することができる。再スタイリング又は脱スタイリングされる毛髪の試料は、そのような方法で処理される毛髪の頭皮から採取され、意図された再/脱スタイリング液(例えば、水)中に配置することができる。この段階では、試料の毛髪繊維は特定の改変形状を有している。温度を徐々に上げていき、その温度による形状を緩和する能力をモニターすることができる。毛髪繊維が改変形状を失い、天然の形状に戻るときの温度をポリマーの少なくとも部分的な軟化に適しているとする。適切な温度は、試料の定温放置時間にも依存する。あるいは、先に記載した方法に従ってin vitroでのフェノール系モノマー(PBM)を重合することによって形成されるフェノール系ポリマー(PBP)のTgは、標準的な熱分析法、例えばASTM E1356に記載されているようなDSCによって決定され得る。いくつかの実施形態において、ポリマーのTg又は軟化温度は、少なくとも40℃、少なくとも50℃、又は少なくとも60℃であり、このような軟化温度は一般に80℃を超えない。再スタイリング又は脱スタイリングを達成するために毛髪繊維をそのような温度にさらすべき時間も同様に決定することができる。一般的に、このような処理は少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、又は少なくとも60分間継続され、一般的に4時間又は3時間を超えず、比較的高い温度では比較的短い軟化時間を必要とする。ヘアスタイリング組成物は、必要に応じて、再スタイリング又は脱スタイリングに必要な温度及び時間に関する案内と共に販売することができる。
【0214】
有利には、本発明の組成物及び方法は、成長する毛髪のスタイリングに適している。ヘアスタイリング組成物の最初の適用によって形成された合成ポリマーは、モノマーの適用時に頭皮の上に利用可能な毛髪繊維の部位に位置すると予想される。時間の経過と髪の成長とにより、このような部位は頭皮からだんだんと遠ざかる部分に見られるようになり、頭皮に隣接する新しく成長した髪には、このような内部スタイリング骨格を欠いている。このような毛髪の成長後、後の時期に適用されるヘアスタイリング組成物は、おそらく新しく成長した部位に主に作用し、先に処理された部位は、前もって形成された合成ポリマー及び結晶化WHAによってすでに「占有」されると考えられる。しかし、説明したとおり、既存のポリマーは毛髪繊維の再スタイリング又は脱スタイリングを可能にするので、新しい部位で新たに形成されるであろうポリマーと機能的に融合し、既存のものと新たに成長したものの繊維全体に沿って「スタイリングの連続性」を提供することができる。
【0215】
本発明はさらに、哺乳動物の毛髪繊維をスタイリングするための液体組成物を提供し、液体組成物は:
本明細書に記載されている、少なくとも1つのPBM;
本明細書に記載されている、少なくとも1つのWHA;
水、及び
1つ又は複数の共溶媒;
を含む硬化可能な単相組成物であり、
液体組成物は、毛髪繊維内へのPBM(複数可)及びWHA(複数可)の少なくとも一部の浸透を促進するように適合されたpHを有する。
【0216】
本発明はさらに、哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするための液体組成物を提供し、液体組成物は以下を含む硬化可能な水中油型エマルションであり:
本明細書に記載の少なくとも1つのPBMを含有する油相;及び
水、及び本明細書に記載の少なくとも1つのWHAを含有する水相であって、水及び/又は水相は、毛髪繊維内へのPBM(複数可)及びWHA(複数可)の少なくとも一部の浸透を促進するように適合されたpHであるもの;
油相及び水相の各々は、任意に、1つ又は複数の共溶媒をさらに含み;及び
油相は水相中に分散される。
【0217】
いくつかの実施形態では、単相組成物又は水中油型エマルションは、任意に、上記及び本明細書でさらに詳述するとおり、架橋剤及び硬化加速剤から選択される少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含有する。
【0218】
いくつかの実施形態では、液体ヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型エマルション)は、任意に、上記及び本明細書でさらに詳述するとおり、乳化剤、湿潤剤、増粘剤、補助重合剤及び電荷調整剤を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含有する。
【0219】
有利なことに、本教示によるヘアスタイリング組成物は、既知の発がん性化合物を含まない。例えば、いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、許容可能な微量のそのような化合物を含み、これは管轄に応じて、組成物の重量に対して、0.5wt%未満のホルムアルデヒド、0.2wt%未満のホルムアルデヒド、0.1wt.未満のホルムアルデヒドとすることができ、又はさらに、0.05wt%未満のホルムアルデヒド、0.01wt%未満のホルムアルデヒド、0.005wt%未満のホルムアルデヒド、0.001wt%未満のホルムアルデヒドの許容できる基準レベル未満とすることができ、あるいは全くホルムアルデヒドを含まないとすることができる。ホルムアルデヒドを生成又はホルムアルデヒドとして作用する可能性のある製品(例えば、グリオキシル酸及びその誘導体、又はその他のホルムアルデヒド遊離剤)、グルタルアルデヒドを生成及びグルタルアルデヒドとして作用する可能性のある製品(例えば、2-アルコキシ-3,4-ジヒドロピラン)に対して同じ制限濃度が適用される。これらの有害化合物は、それぞれの前駆体又は置換形態を含み(ホルムアルデヒド生成化合物又はホルムアルデヒド放出剤とも呼ばれる)、例えばクオタニウム-15(例えばDowicil(商標)200;Dowicil(商標)75;Dowicil(商標)100;Dowco(商標)184;Dowicide(商標)Qを含む。Dow Chemical Company製);イミダゾリジニル尿素(Germall(商標)115など、Ashland);ジアゾリジニル尿素(Germall(商標)IIなど);ブロモニトロプロパンジオール(ブロノポール);ポリオキシメチレン尿素;1,2-ジメチロール-5,6-ジメチル(DMDM)ヒダントイン(Glydant として売買);トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン(Tris Nitro);トリス(N-ヒドロキシエチル)ヘキサヒドロトリアジン(Grotan(登録商標)BK);及びヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウムが挙げられ、本明細書では、個別に及び集合的に、低分子反応性アルデヒド(SRA)と呼ぶことができる。
【0220】
有機化学の当業者には理解されるように、SRA分子はそれ自体がアルデヒドである必要はなく、ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドなどの有害なアルデヒドを形成(例えば、加水分解、分解、反応などによる)できる限り、さらなる化学族であっても良い。このような形成は、熱を加えるなどの、ヘアスタイリングによくある条件が引き金となることがある。そのような前駆体のいくつかは、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドに完全に変換でき、SRAの1分子は、任意に中間生成物を介して、理想的な条件下でホルムアルデヒドの1つ又は複数の分子を生成するが、これは極端な場合であり得、他の前駆体は部分的にしか変換しない場合がある。ヘキシミニウム塩は後者の一例である。
【0221】
いずれにせよ、SRA化合物がホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒド以外であると仮定すると、組成物中のそれらの重量は、それによって形成され得るホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドの最終重量を超過するであろう。特定の実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、組成物の重量に対して、0.5wt%未満のSRA、0.2wt%未満のSRA、0.1wt%未満のSRA、0.05wt%未満のSRA、0.01wt%未満のSRA、0.005wt%未満のSRA、0.001wt%未満のSRA、又はSRAなしの含有量である。理解されるとおり、ヘアスタイリング組成物は、ヘアスタイリング方法において(例えば、組成物の加熱時に)検出されないレベルのホルムアルデヒドを含むか又は生成する場合、SRA分子を本質的に含まないものとみなされる。
【0222】
ホルムアルデヒドは毛髪タンパク質と反応するため、本ヘアスタイリング組成物にホルムアルデヒドが実質的に存在しないことは、処理された毛髪繊維にその反応生成物が存在しないことに対応している。ホルムアルデヒドの反応生成物は、それが反応するアミノ酸に依存し、例として、システインとの反応はチアゾリジン及びヘミチオアセタールを生成し、ホモシステインとの反応はチアジナン及びヘミチオアセタールを生成し、トレオニンとの反応はオキソゾリジンを生成し、ホモセリンとの反応は1,3-オキサジナンを生成する。このような反応生成物は、NMRなどの標準的な方法によって毛髪繊維中で検出することができる。
【0223】
したがって、本発明の方法によって、又は本発明の組成物を用いてスタイリングされた哺乳類の毛髪繊維は、0.2wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満、0.01wt%未満、0.005wt%未満、0.001wt%未満を含有すること、又はホルムアルデヒドとアミノ酸との間の反応生成物を著しく欠いていることを特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、本教示に従って処理された哺乳類の毛髪繊維は、NMRによって測定できるとおり、チアゾリジン、ヘミチオアセタール、チアジナン、オキソゾリジン及び1,3-オキサジナンの少なくとも1つを検出できないレベルで含有する。システインは正常なヒトケラチンタンパク質のアミノ酸リピートの最大18%を占めることがあるので、毛髪繊維にチアゾリジン及び/又はヘミチオアセタールがないことは、以前に毛髪の処理に使用した組成物にホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド形成産物がないことに対応する最も重要なマーカーとなり得る。
【0224】
いくつかの実施形態では、ヘアスタイリング組成物は、アミノ酸、ペプチド及び/又はタンパク質を実質的に欠いている。本組成物に存在しないタンパク質は、ケラチン及びコラーゲンなどの天然に存在するタンパク質であり得、又はそれらの合成及び/又は修飾(例えば、加水分解)形態であってもよく、欠如しているペプチドは、そのようなタンパク質のより小さい断片であってもよい。簡単のために、このようなペプチドは、それらが一部である可能性のあるより大きなタンパク質に従って命名されることがあり、例えば、毛髪処理に最も頻繁に使用されるタンパク質を考えると、ケラチン関連ペプチド又はコラーゲン関連ペプチドと称することができる。
【0225】
アミノ酸、ペプチド又はタンパク質、特にケラチン、コラーゲン及びそれらの関連ペプチドが、組成物の1wt%以下を構成し、それらのそれぞれの濃度がヘアスタイリング組成物の重量に対して、0.5wt%以下、0.1wt%以下、又は0.05wt%以下であることが好ましい場合には、本発明による組成物は、そのような物質を実質的に欠いているものとされる。いくつかの実施形態では、そのような物質は、それに応じて、組成物に対して実質的に存在しない(例えば、約0wt%)。そのような生体分子の存在又は非存在は、例えば、飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF:matrix-assisted laser desorption/ionization)によるものを含む、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)及び関連技術による標準的な方法によって決定することが可能である。
【0226】
したがって、本発明の方法によって、又は本発明の組成物を用いてスタイリングされた哺乳類の毛髪繊維は、追加的に又は代替的に、天然に形成されたもの以外のペプチド及びタンパク質を著しく欠いていることを特徴とすることができる。毛髪繊維が天然に存在するタンパク質又はその関連ペプチド断片を用いて従来の方法で処理されれば、対照的に、本発明の方法によってスタイリングされた毛髪繊維は、毛髪繊維に天然に存在するタンパク質のペプチドを著しく欠いていることを特徴とすることができる。
【0227】
本発明による組成物及びそれを用いてスタイリングされた哺乳動物の毛髪繊維は、追加的又は代替的に、組成物中又は毛髪繊維内のWHAの存在を特徴とすることができ、これは、考えられるWHAに適した任意の方法によって決定することができる。
【0228】
毛髪繊維内の物質を検出しようとする場合、抽出後に検出されるいずれのレベルが毛髪繊維の内部のみに由来することを確実にするために、毛髪繊維は通常、判定中の物質を含まない洗浄剤で十分に洗浄され、すすぎ(例えば、少なくとも10回)が行われる。例示すれば、検出される物質がWHAであり、本発明のヘアスタイリング組成物又は方法において使用される物質が尿素である場合、毛髪繊維を洗浄するために使用される洗浄剤には尿素が含まれず、十分な抽出(例えば、水などの適切な液体中で、好ましくは70℃などの高温で、最大12時間)の後、処理された毛髪繊維の試料から得られた抽出物中の尿素の存在は、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)、X線回折法(XRD)、又は医薬の目的で一般的に使用される標準的な実験室法により検出することができる。
【0229】
本発明のヘアスタイリング組成物の同定は、組成物の必須成分又はヘアスタイリングされた繊維からの抽出物中に特徴的な官能基、例えばフェノールなどの官能基を検出することによっても行うことができ、このような官能基は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)のような当該分野で知られている任意の方法によって検出することができる。
【0230】
要約すると、繊維内に合成高分子を形成する、本発明の少なくとも部分的に硬化したPBMをその内部に含む哺乳類の毛髪繊維は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを特徴とすることができる:
i)毛髪繊維の重量に対して、0.2wt%未満のホルムアルデヒドとアミノ酸との反応生成物を有することであり、ここで前記反応生成物はチアゾリジン、ヘミチオアセタール、チアジナン、オキソゾリジン、及び1,3-オキサジナンチアゾリジンを含む群から選択されること、
ii)DSCなどの熱分析によって測定されるとおり、未処理の毛髪繊維に対して、4℃以内、3℃以内、2℃以内、又は1℃以内の少なくとも1つの吸熱温度を示すこと;
iii)引張分析によって測定されるとおり、同様の未処理の毛髪繊維の破断応力より、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、又は少なくとも25%大きい破断応力を有すること;
iv)引張分析によって測定されるとおり、同様の未処理の毛髪繊維の95%以上、100%以上、105%以上、110%以上、115%以上、又は120%以上の靭性を有すること;
v)ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド形成化学物質、グルタルアルデヒド、及びグルタルアルデヒド形成化学物質から選択される小反応性アルデヒド(SRA)が毛髪繊維の重量に対して0.2wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満、0.01wt%未満、0.005wt%未満、又は0.001wt%未満であること;及び
vi)尿素の存在を示す電気化学的インピーダンス分光法(EIS)シグナルなどのWHAの存在を示す信号を示すこと。
【0231】
一実施形態において、哺乳類の毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i);上記に列挙した少なくとも特徴ii);上記に列挙した少なくとも特徴iii);上記に列挙した少なくとも特徴iv);上記に列挙した少なくとも特徴v);又は上記に列挙した少なくとも特徴vi)を満たす。一実施形態において、哺乳類の毛髪繊維は、上記に列挙した少なくとも特徴i)及びii);上記に列挙した少なくとも特徴i)及びiii);上記に列挙した少なくとも特徴i)及びiv);上記に列挙した少なくとも特徴i)及びv);上記に列挙した少なくとも特徴i)及びv);上記に列挙した少なくとも特徴i)及びvi);上記に列挙した少なくとも特徴iii)及びiv);上記に列挙した少なくとも特徴i)、iii)及びiv);上記に列挙した少なくとも特徴i)、ii)、iii)及びiv);上記に列挙した少なくとも特徴i)、ii)、iii)、iv)及びv)、又は上記に列挙した少なくとも特徴i)、ii)、iii)、iv)、v)及びvi)を満たす。
【0232】
本発明はまた、哺乳類の毛髪繊維をスタイリングするためのキットを提供し、該キットは;
I. 少なくとも1つのPBMを含有する第1のコンパートメント;及び
II. 少なくとも1つのWHAと:
1)水;
2)共溶媒;及び
3)pH調整剤;
のうちの少なくとも1つとを含有する、第2のコンパートメント、
を含み、
第2のコンパートメントの内容物は、モノマーの少なくとも一部の毛髪繊維への浸透を増大させるように選択されるpHを有する液体であり;
これらのコンパートメントの内容物の混合により、上記及び本明細書にさらに詳述されるヘアスタイリング組成物(例えば、単相又は水中油型エマルション)を生成する。
【0233】
いくつかの実施形態では、該キットの構成要素は、不活性環境下、好ましくは不活性ガス、例えば、アルゴン又は窒素下、及び/又は組成物の効力を低下させ得る有害反応をキットの保管中に防止又は低減する他の任意の適切な条件下で種々のコンパートメントにパッケージされ、かつ保持される。例えば、キットは30℃未満、27℃未満、又は25℃未満など、重合を誘発しない温度で保管することが必要である。
【0234】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのPBMは、キットの第1のコンパートメントに配置される前に予備重合される。
【0235】
本キットは、縮合硬化性架橋剤又は付加硬化性架橋剤である、少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含んでもよい。前記硬化促進剤はまた、重合を促進するために用いられる、上記のとおりの硬化加速剤であってもよい。硬化促進剤(架橋剤又は硬化加速剤である)は、これらのコンパートメントの成分のいずれか1つとの反応性に応じて、第1又は第2のコンパートメントに配置することができる。例えば、ポリアミン系架橋剤は、室温ではPBMと反応しないので、第1のコンパートメントに含めることができる。あるいは、硬化促進剤がいずれかの成分と自発的に反応する傾向がある場合、別のさらなるコンパートメントに配置してもよい。反応性シラン架橋剤は、そのような一例であり、PBMと同じコンパートメントに入れると、室温でも反応してしまうため、キットにおいて別個に配置するであろう。
【0236】
本キットは、任意に、先に詳述したとおり、共溶媒、乳化剤、湿潤剤、増粘剤、補助重合剤及び電荷調整剤のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよく、これらは、上記のコンパートメントのいずれか1つに含められるか、又は別のさらなるコンパートメントに含められてもよい。このような添加物の配置を考える場合、油溶性成分は油性成分を多く含有するコンパートメント(例えば、第1のコンパートメント)に、水溶性成分は水性成分を多く含有するコンパートメント(例えば、第2のコンパートメント)に配置することが好ましい。
【0237】
本キットには、通常、エンドユーザーに様々なコンパートメントの混合方法を案内するリーフレットが含まれており、その順序はそれぞれのコンパートメントの成分の性質及び/又は内容物(含有量)に依存する場合がある。一般に、提案された混合及び適用の方法は、その効力及び意図された用途に適した時間内に適用するように、有効かつ安全な組成物の調製を可能にするものである。例えば、硬化促進剤としてシラン誘導体を含有する第3のコンパートメントがキットに含まれる場合、リーフレットには、まず硬化促進剤をPBMと混合し、次に水性コンパートメントの内容物を添加することが示され得る。逆に、硬化促進剤が存在するがシラン誘導体でない場合 第1のコンパートメントに含まれ、別の第3のコンパートメントの必要性を不要にすることができる。
【0238】
いくつかの実施形態では、最終ヘアスタイリング組成物を毛髪繊維に適用する前に、そのようなリーフレットで指示され得るとおりに、様々なコンパートメントの成分が混合される。そのような場合、得られた組成物は、毛髪繊維に適用する直前に使用してもよいし、毛髪繊維に適用する前に未適用のまま、最大3時間、最大2.5時間、最大2時間、最大1.5時間又は最大1時間、維持することができる。
【0239】
同様に、水中油型エマルションを適用するタイミング及び期間も、所望のスタイリングの持続性に応じて考えられる限り提案することができる。例えば、短期間のスタイリングが望まれる場合、組成物は、より長持ちするスタイリングが望まれる場合よりも、比較的より遅くに、及び/又はより短い期間適用することができる。
【実施例】
【0240】
実施例
材料
以下の実施例で使用した物質を以下の表1に示す。報告された特性は、各供給元から提供された製品データシートから取得又は推定したものである。特に断りのない限り、すべての材料は入手可能な最高純度のものを購入した。N/Aは、情報が得られないことを示す。
【表1】
【0241】
以下の実施例では、簡潔にするために、上表に示した頭文字で材料を参照することがある。例えば、「AMEO」は「Dynasylan(登録商標)AMEO」を指し、「IPA」は「イソプロピルアルコール」を指す。
【0242】
装置
共焦点レーザー顕微鏡:Lext 5000(Olympus、日本)
示差走査熱量計:DSC Q2000(TA Instruments、米国)
フラットアイロン:Babyliss(登録商標)I-Pro 235 Intense protect
ガスクロマトグラフ GC-MS:GCD G1800A(HP、米国)
ヘアドライヤー:Itamar superturbo Parlux 4600(Parlux(登録商標)、イタリア)
オーブン:
乾燥炉、TZ-150L(Zhengzhou Brother Furnace Co.、中国)
マッフル炉:30/1300(スノール、ドイツ)
ポテンショスタット:VSPモジュラー5チャンネルポテンショスタット(BioLogic、フランス)
ソニケーター;DC-1500H(MRC Lab、イスラエル)
撹拌ホットプレート:C-MAG HS 7コントロール(IKA、ドイツ)
引張試験機:MTT157(Dia-Stron、英国)
ボルテックスミキサー:Vortex-Genie 2(Scientific Industries、米国)
ゼータ電位:Malvern Zetasizer NanoS(Malvern Instruments Ltd.、英国)
【0243】
実施例1:ストック溶液の調製
I. PS/DBMストック液
20mlのカップにサリチル酸フェニル(PS)5gとマレイン酸ジブチル(DBM)5gを入れ、このカップをドライヤーで30秒間、完全に溶解するまで加熱した。得られたPS/DBMストック液(重量比1:1)を、環境湿度とこのストック液との反応を低減するためにモレキュラーシーブ4Åと混合し、ストック液のさらなる使用の前に、残留水分を確実に低減し、好ましくは除去するために、少なくとも3日間維持した。
【0244】
II. PS/DBM/POSS(EP0409)ストック液
20mlのカップに0.05gのGlycidyl POSS(登録商標)Cage MixtureEP0409を入れ、室温で撹拌しながら、先に調製した1.95gのPS/DBMストック液と合わせ、2.5wt%のPOSS(登録商標)EP0409、48.75wt%のPS及び48.75wt%のDBMを含有する均一溶液を得た。
【0245】
III. PS/DBM/POSS(MA0735)ストック液
20mlのカップに0.1gのGlycidyl POSS(登録商標)Cage MixtureMA0735を入れ、室温で撹拌しながら、先に調製したPS/DBMストック1.9gと合わせ、5wt%のPOSS(登録商標)MA0735、47.5wt%のPS、47.5wt%のDBMを含有する均一溶液を得た。
【0246】
IV. シェラックストック液
20mlのカップに2gのシェラックと8gのオレイルアミンとを入れた。マグネティックスターラーを備えたホットプレート上にカップを置き、混合物を攪拌しながら160℃で40分間保持し、20wt%のシェラックの均質なストック液を得た(これを「20%シェラックストック液」と呼ぶ)。別のシェラックストック液も同様に、シェラック3gとオレイルアミン6gを混合して調製し、これは33.3wt%のシェラックを含有するため、「33.3%シェラックストック液」と呼ぶ。
【0247】
V. Al(OBu)3ストック液
20mlのカップに、8gのアルミニウムトリ-sec-ブトキシド(Al(OBu)3)を、約5分間攪拌しながら室温で2gの2-ブタノールと合わせて、均一な溶液を得た。
【0248】
VI. PS/DBM/POSS(MA0735)/BPOストック液
20mlのカップに、0.05gのGlycidyl POSS(登録商標)Cage MixtureMA0735と0.05gの過酸化ベンゾイル(BPO)を入れ、室温で攪拌しながら、先に調製した1.9gのPS/DBMストック液と合わせ、均一な溶液を得た。
【0249】
本実施例で調製したこれらのストック溶液は、モレキュラーシーブで一度乾燥させた後、以下の実施例に記載するように、水中油型エマルションの調製に使用した。
【0250】
実施例2:PBM及びWHAを含有する水中油型エマルション
PBMコンパートメント
20mlのバイアル瓶に、PS/DBMストック液1gを入れ、AMEO 1g及び20%シェラックストック0.5gと合わせ、各成分の添加後、バイアル瓶の内容物をボルテックスで約10秒間混合した。得られた混合物をマグネティックスターラーを備えた20mlのカップに移し、室温で約80分間撹拌し、PBM相の予備重合を可能にした。
【0251】
次に、0.4gの予備重合PBM相を別の20mlカップに入れ、0.4gのIPAと合わせ、ボルテックスで混合してPBM混合物(PBMコンパートメントとも呼ぶ)を得た。
【0252】
本教示によるヘアスタイリング組成物が好適に硬化可能である能力は、その構成成分の実態、それらの濃度及び相対的割合に基づいて、この初期段階でin vitroで評価することができる。予備重合したPBM相の試料を、160℃のホットプレートに接触させた顕微鏡用スライドガラス上で自己水平化させた。2~3分以内に連続的な乾燥被覆を形成することができる混合物は、さらなる研究用の適切な候補と考えられ、この方法は、毛髪繊維上での試験に先立って、多数の組成物のスクリーニングを可能にした。
【0253】
水性コンパートメント:
水溶性吸湿剤として尿素を含有する水溶液を調製した。100mlのプラスチックカップに、pH 10の40%尿素水溶液16g(別途水酸化アンモニウムを用いて調整)を入れ、2gのIPAを加え、得られた水性混合物(水性コンパートメントとも呼ぶ)を手動で約10秒間混合した。
【0254】
水中油型エマルション:
PBM混合物を入れたバイアル瓶の内容物を水性混合物を入れたカップに加え、エマルション(「乳白色」の外観)が得られるまで約10秒間手動で激しく混合した。このエマルションを「PBM-尿素1組成物(PBM-Urea 1)」、又は「PU1」と呼ぶ。尿素を含まない比較例の水中油型エマルション(「PBM-尿素なし1(PBM-No Urea 1)」又はPNU1)を、PU1と同様に調製したが、ここでは16gの40%尿素水溶液を、pHを10に調整した16gの水で置き換えた。
【0255】
2つのコンパートメントのそれぞれにおいて、成分、添加剤、用量が異なって含有する、他の水中油型エマルションも同様に調製した:
POSS(登録商標)EP0409を含有するPU2。これは上述のPS/DBMストック液の代わりに、実施例1で調製したPS/DBM/POSS(EP0409)ストック液を用いて調製した;
POSS(登録商標)MA0735を含有するPU3。これは上記のPS/DBMストック液の代わりに、実施例1で調製したPS/DBM/POSS(MA0735)ストック液を用いて調製した;及び
POSS(登録商標)MA0735と過酸化ベンゾイルとを含有するPU4。これは上記のPS/DBMの代わりに、実施例1で調製したPS/DBM/POSS((MA0735)/BPOストック液を用いて調製した。過酸化ベンゾイルは、POSS(登録商標)MA0735架橋剤のアクリレート基の活性化を促進する役割を果たす。
【0256】
これらの組成物を表2に報告する。表に報告する値は、エマルションの総重量に対する各成分の濃度wt%に対応するが、ただし、予備重合PBM相の値(これはその特定の混合物中の係る成分の重量パーセントに対応する)を除く。数値は最も近い2桁の数値に切り上げているため、それらの合計が100wt%に正確に一致しない場合がある。
【0257】
【0258】
アルデヒド、特にホルムアルデヒドの存在は、標準的な方法(一般にアルデヒドについてはNIOSH 2539、特にホルムアルデヒドについてはNIOSH 2541)に従い、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)によって組成物中に確認することができる。PU1組成物の試料を220℃で1時間保持し、これにより試料の揮発性成分の気化に加えて、PBMの少なくとも部分的な硬化を可能にし、ホルムアルデヒドの存在又は形成について試験した。検出器(Hewlett-Packard GCD、モデルG1800A)で測定した濃度は1ppm未満(すなわち0.0001wt%以下)であることがわかり、該ヘアスタイリング組成物にはこのようなSRAが実質的に含まれていないことを確認した。
【0259】
実施例3:PBM、WHA及び硬化加速剤を含有する水中油型エマルション
水中油型エマルションPU5~PU14を、実施例2に記載したように調製し、ここでは20%又は33.3%のシェラックストック液と、硬化加速剤としてAl(OBu)3とを用い、これはPBMの予備重合のためにPBM相に添加した。
【0260】
PU5及びPU6をベースとする比較例の水中油型エマルションを、PNU1について先に行ったように尿素の非存在下で調製した。これらはPNU5及びPNU6と呼ぶ。
【0261】
これらの組成物を表3A及び3Bに報告する。表に報告する値は、エマルションの総重量に対するwt%での各成分の濃度に対応するが、ただし、予備重合PBM相の値は除く。これはその特定の混合物における係る成分の重量パーセントに対応する。
【0262】
【0263】
注目すべきことに、組成物PU12、PU13、及びPU14は、専用の架橋剤(本実施例の他の組成物に含有されるAMEOなど)を欠いており、硬化加速剤Al(OBu)3は、これらの組成物において架橋剤としても機能すると考えられる。
【0264】
架橋剤又は硬化加速剤の量が比較的少ない組成物は、架橋剤としても作用する場合、熱可塑的に挙動するポリマーを形成すると考えられる。組成物の熱可塑性を確認するため、PU12、PU13及びPU14のそれぞれ2滴(約0.05g)をピペットでスライドガラス上に滴下し、2枚目のスライドガラスを1枚目のスライドガラスに押し付けて広げ、均一な厚さの薄層を形成した。2枚目のスライドを取り除き、各組成物の層を保持するスライドガラスを、160℃の温度に加熱したホットプレート上に5分間置いた。これによりこれらの組成物は触ると粘着性になった。その後、スライドガラスをホットプレートから外し、組成物を室温まで冷却し、固化させた。この工程は、スライドグラスを60~70℃の温度に加熱することで繰り返され、これにより組成物は再び粘着性を帯び、ホットプレートから取り出して冷却すると再び固化した。この挙動は熱可塑性組成物と一致し、低架橋密度のポリマーネットワークの形成を示すと考えられる。
【0265】
組成物PU12及びPU13の調製を繰り返し、水性コンパートメント中の脱イオン水のpHを7.5~10で変化させ、いずれのpHが毛髪繊維及び乳化液滴の最適なそれぞれの帯電を提供し得るかを評価した。この目的のために、尿素を中性pHの水と合わせて、得られた溶液を室温で一晩維持してpHを平衡に到達させるという違いを有するが、水性コンパートメントを実施例2に記載したように調製した。その後、水酸化アンモニウムを加えて目的のpHを調整した(pH値7.5、8.0、8.5、9.0、及び10.0)。
【0266】
実施例4:PBM-WHA組成物のpHに対する毛髪帯電依存性
PBM-WHA組成物のpHがゼータ電位に及ぼす影響を試験した。pHを7、8、9と変化させた組成物PU13の試料を実施例3に記載したように調製し、各試料のゼータ電位を測定した。
【0267】
表4は、様々なpH値における組成物PU13(ζPU13)の測定されたゼータ電位をミリボルト(mV)単位で示したものである。また、表には、文献から知られている生来の毛髪のゼータ電位値(ζh)、及び組成物と毛髪の間のゼータ電位差の絶対値(△ζPU13-h)も示されている。
【0268】
【0269】
上の表からわかるとおり、試験したすべてのpH値は、組成物の毛髪への送達を可能にする、スタイリング組成物と生来の毛髪繊維との間の十分なゼータ電位差を促進するのに適切であることがわかった。ブリーチした毛髪は生来の毛髪よりも負の結合部位が多いことが知られているため、そのゼータ電位は生来の毛髪と比較してさらに負になると予想され、その結果、本組成物によって示されるデルタゼータ電位はさらに上昇することになるであろう。したがって、少なくとも7.0~9.0の範囲のpHにより、生来の毛髪又はブリーチした毛髪のいずれに対しても、PU13を送達するのに適合した帯電を可能にすることが期待される。
【0270】
実施例5:PBM-WHA組成物を使用した縮毛矯正
WHAと組み合わされた(又は組み合わされていない)少なくともPBMを含有する本発明組成物の縮毛矯正(ストレート化)能力を試験するために使用した毛束は、ブラジル人起源の巻き毛の黒髪(長さ約30cm)であった。各毛束はエポキシ接着剤で一端を接着してまとめ、接着した先端を含めて約0.6~1.3gの重さであった。使用した毛髪は生来の毛髪(いずれの前処理をしていないもの)、ブリーチした毛髪、カラーリングした毛髪のいずれかであった。
【0271】
ブリーチは、ブリーチ製品のパッケージの説明書に従い、以下のいずれかを用いて実施した:
A - 青色抗オレンジブリーチパウダー(「Blu Bleach decolor」、Elgon、イタリア)及び9%酸素クリーム(Afrodita Cosmetics、イスラエル)を1:2のw/w比で組み合わせたもの;
B - 青色抗オレンジブリーチパウダー(「Blu Bleach decolor」、Elgon、イタリア)及び12%酸素クリーム(Professionnel Oxydant Cream、L’Oreal社製、フランス)を1:2のw/w比で組み合わせたもの;又は
C - 4wt%の水酸化アンモニウム溶液(より低いアンモニウム濃度の製品を模倣するため)及び9%の酸素クリーム(Afrodita Cosmetics、イスラエル)を1:2のw/w比で組み合わせたもの。
【0272】
カラーリングは、「Kolston naturals」カラークリーム(Wella、スイス)を使用し、製造元の指示に従って実施した。
【0273】
巻き毛の毛束(生来、ブリーチ、カラーリングのいずれか)を、5%のラウリル硫酸ナトリウムを含む水道水で38~40℃の温度で洗浄し、毛髪に付着した物質(例えば、汚れ又は油分)を取り除き、過剰な水道水ですすぎ、ブロー乾燥又は室温で少なくとも1時間吊り下げて乾燥させ、これにより毛束は天然の形状を取り戻した。
【0274】
清浄な毛髪試料に適用された基本的な処理及び縮毛矯正の手順を
図6に模式的に示す。これは、以下でさらに記載される、様々な工程の簡略化された図を示す。簡単のために、本実施例において、組成物又は方法は、通常、毛髪繊維の「完全な平坦化」を表す用語である「矯正(ストレート化)」と称することができるが、この用語は、毛髪が天然の形状よりもウェーブの少ない形状に伸ばされる、あらゆる顕著な形状変更を包含することを意図している。
【0275】
手順:
1.組成物の適用(
図6の工程S-01に描かれているとおり):実施例2~3で調製したものなどのヘアスタイリング組成物(例えば、水中油型エマルション)を約15~20g入れた100mlのプラスチックカップに毛束を浸した。
2.組成物の定温放置(
図6の工程S-02に描かれているとおり):とりわけPBM及びWHAが毛髪繊維内に少なくとも部分的に浸透することを可能にするように、種々の組成物中に浸漬された毛束試料を入れたカップを、特に明記しない限り、室温で1時間維持した。
3.毛髪繊維のすすぎ(
図6の工程S-03に描かれているとおり):このように処理された毛束を十分にすすぎ、毛髪繊維の表面から余分な組成物を除去した。特に断りのない限り、毛髪繊維を約38~40℃の水道水で10~20秒間すすぎ、ヘアドライヤーで2~3分間乾燥させた。
4.毛髪繊維のスタイリング(
図6の工程S-04に描かれているとおり):次いで、すすいで乾燥させた処理された毛束を、束の長さに応じて220℃の温度で約2~3分間(約30~50回通す)、房が完全に乾燥し、所望の改変形状になるまで、フラットアイロンを使用してストレートにした。この工程により、PBM(複数可)の少なくとも部分的な硬化が可能になる。
5.毛髪繊維の洗浄(
図6の工程S-05に描かれているとおり):次に、スタイリングされた毛束を、毛髪繊維に標準的なシャンプーを約30秒間指ですり合わせることによって洗浄し、毛髪の先端から先端までを完全にカバーし、毛髪と密接に接触するようにした。その後、シャンプーした毛束を約38~40℃の水道水ですすぎ、同様にヘアコンディショナーで約30秒間「マッサージ」し、再び同じ温度の水道水ですすいだ。すすいだ毛束をヘアドライヤーで十分に乾燥させた。特に断りのない限り、標準シャンプーはイスラエルのSaryna Key社のShea Natural Keratin Shampoo、ヘアコンディショナーは米国、Unilever社のTRESemmeのPro Collection、Biotin+Repair7を使用した。
【0276】
容易に理解されるように、上述の手順の工程は例示的なものであり、異なる条件下で実施されてもよい。ヘアスタイリングの手順には、さらに工程が含まれることもある。そのような任意の工程S-00(
図6において破線の輪郭で示される)は、工程1の組成物を適用する前の毛髪繊維の前処理を含み、ここで、毛髪繊維を洗浄することができ、及び/又は例えば、フラットアイロンを使用して200℃などの高温で毛束の上を数回通して残留水を毛髪束から除去することができ;及び/又は前処理組成物(例えば、油)を適用することができる。
【0277】
別の任意の工程は、毛髪繊維内で一旦、少なくとも部分的に硬化した重合可能なスタイリング組成物をさらに硬化させることを含む。この工程は、スタイリング工程4又は洗浄工程5の後に、ストレート化し乾燥させた毛束を、ヘアドライヤーを用いてさらなる加熱にさらし、以前の工程において毛髪繊維中ですでに少なくとも部分的に重合したPBMのさらなる硬化を促進することを含むことができる。毛髪試料は、例えば、ブラシ上に保持し、ヘアドライヤーを毛束の上を短距離で約15回移動させ、150~220℃の温度の空気を吹き付け、それにより毛髪繊維が最大でも220℃の高温を数秒間感知するようにすることができる。
【0278】
あるいは、又はさらに、過剰量の硬化促進剤を含む硬化性組成物を、例えばそのような材料を含有する専用溶液ですすぐことによって、短時間適用してもよい。同様に、毛髪繊維をスタイリング(S-04)する前に、毛髪を、スタイリング中に適用される温度に起因し得る損傷から毛髪を保護する製剤で処理することができる(以下に記載する)。このような熱保護製剤は、スタイリングのために適用される温度よりも高い温度で比較的高い発煙点を有するオイルを含むか、又はそれらからなり得る。この目的のために、シリコーンオイルを使用することができる。あるいは、スタイリング組成物は、そのような熱保護を提供する薬剤を含むことができ、例えば、適切な潤滑剤(例えば、シリコーンオイル)をPBMに添加することができ、その油は、スタイリング中にPBMを保護するために溶出することを可能にする水中油型エマルションを形成するようにPBMと非混和性であり、したがってPBMは重合するのに十分な活性を維持する。一般に、適切な非混和性オイルは、エマルションが熱で解離したときに移動するように、PBMの密度よりも低い密度を有する。このような組成物は、実施例3で調製したPU7(それぞれ異なる種類のシリコーンオイルを使用)の2つの型によって例示される。
【0279】
実施例6:毛髪の縮毛矯正の耐久性
実施例5に記載した本発明の組成物で処理した毛束を、洗浄工程5の後48時間から始まる一連の洗浄に供した。それぞれの洗浄サイクルにおいて、毛束は実施例5の洗浄工程5に記載されているとおり、シャンプー及びコンディショナーで洗浄した。洗濯サイクルは1日に5回まで、通常は少なくとも順に1時間以内に行った。
【0280】
洗浄の後に、実施例5の矯正手順の最後に最初に得られる任意の種類の改変形状を含む、毛束が「縮毛矯正(ストレート化)」のままである洗浄の回数は、本組成物及び方法によって提供されるヘアスタイリングの耐久性の指標である。この数値は、適用及び試験された条件下で特定の組成物によって得られる「洗浄耐性(wash resistance)」とも呼ぶことができる。洗浄耐性は、訓練を受けた操作者が定性的に視覚的に評価することができ、結果は、形状の変化が視覚的に検出可能になるまでの洗浄サイクルの回数を示す。あるいは、洗浄耐性は、例えば、代表的な数の繊維において、スタイリング処理後及び所望の量の洗浄サイクル後に毛髪試料の長さを測定することによって、及び/又はストレートヘアからの逸脱(例えば、山と谷(peaks and dips)の数を数えることによって、定量化することができる。長さは、毛繊維を伸ばしたり引っ張ったりせずに、定規に沿って毛繊維を配置して測定することができる。毛髪繊維の「ねじれ」の数は、繊維上に見られる振幅(最小及び最大)の数を数えることによって得ることができる。ねじれの数は毛髪の長さで規格化することができ、考慮した処理後の規格化したねじれの数を、処理前の規格化したねじれの数(参照値)で割ることにより、真直効率を算出することができる。真直効率は、参照に対するパーセンテージで表すことができる。洗浄前及び考慮される洗浄サイクルでの測定(例えば、長さ、ねじれの数、真直度の効率)が類似している限り(例えば、互いに10%以内)、又は訓練を受けた操作者が視覚的変化を検出できない限り、毛髪繊維は、「洗浄耐性」がある。同様に、このような方法は、ヘアスタイリング組成物の効果を評価するために用いることができる。
【0281】
表5A及び5Bは、実施例5に記載したとおり処理され矯正された毛髪束に適用された、実施例2~3の組成物の洗浄耐性を示す。結果は、訓練されたオペレーターによって定性的に評価された。表5Aは、様々な組成物(様々なpHで調製)で処理した生来の毛髪で試験した最大洗浄耐性を示す。PU7について報告される値は、Silwax(登録商標)B116を含むものとSilwax(登録商標)H416を含むものの両方の組成物に適用される。
【0282】
【0283】
上記の表からわかるように、水溶性吸湿剤(本実施例ではWHAは尿素である)を含むすべてのPU1~PU13組成物は、6サイクル以上の洗浄耐性を提供し、90回以上の洗浄耐性に達し、これにより毛髪繊維内へのPBMの少なくとも部分的な浸透及びそこでの重合が裏付けられた。毛髪繊維内へのヘアスタイリング組成物の少なくとも一部の浸透に関するこれらの結論は、
図2A、2B及び3Bを参照して先に報告したFIB-SEM分析によってさらに裏付けられる。
【0284】
表において、報告された洗浄サイクル数の前の記号≧は、実験がこの段階で中断されたことを示し、そのため、これらの組成物によって与えられる洗浄耐性は、報告された値よりも大きいか、あるいはさらに著しく大きい可能性がある。
【0285】
比較すると、尿素を欠く組成物(すなわち、PNU1、PNU5、及びPNU6)によって処理された毛髪繊維は、5回以下の洗浄まで毛髪のストレート化がもたらされた。したがって、本実施例では、WHAが存在することにより、WHAを含まない同様の組成物の洗浄耐性の少なくとも5倍に洗浄耐性が向上した。PNU1と比較したPU1の場合、WHAの影響はさらに劇的であり、洗浄耐性は20倍超過増大した。先に説明したとおり、WHAは比較的水溶性が高く、非常に早い段階で洗い流されると予想されていた点で、この結果は非常に意外である。毛髪繊維内に浸透したWHAは、そこに復元力のある捕水体、及び/又は硬化ポリマー及び/又は毛髪成分との相互作用を形成すると考えられる。
【0286】
いくつかのヘアスタイリング組成物の有効性は、以前に処理された毛髪、すなわちブリーチ又はカラーリングされた毛髪、でも試験され、洗浄耐性の結果は、繰り返し実験の加重平均として表5Bに報告される。
【0287】
【0288】
以前にブリーチ又はカラーリングによって処理された毛髪繊維は、加重平均が少なくとも7回の洗浄に耐え、加重平均が23回もの洗浄サイクルに達し、これにより本発明のヘアスタイリング組成物が損傷した毛髪にも有効であることが示された。
【0289】
以上のように、実施例4で実証されるとおり、満足のいくゼータ電位差を得るにはpH7~9が適切であることがわかったが、試験した組成物は、5~10というさらに広いpH範囲にわたって生来の毛髪と損傷した毛髪(ブリーチした毛髪又はカラーリングした毛髪)の両方に有効性と耐久性を示した。理解されるように、ヘアスタイリング組成物のpH以外の要因が、繰り返しの洗浄に対するスタイリング効果の耐性によってここで評価されるとおり、その効力に影響を及ぼす可能性がある。
【0290】
第2の一連の実験において、ヘアスタイリング手順は、ヘアスタイリング組成物の適用、毛髪との定温放置、及び洗い流しの後に、毛髪繊維をその後の熱によるストレート化から保護すること、及び/又は、毛髪繊維が別個に分離したままであることを確実にすることを意図した工程、を含むように変更した。この目的のために、工程4のアイロンを行う前に、フッ素化シリコーン潤滑剤(Fluorosil(登録商標)J15、Siltech製)を、工程3の最後に得られた乾燥した毛髪に適用した。これは、工程2でPU6を用いて処理した毛髪繊維に対して行われた。興味深いことに、未変更の手順で処理した毛髪試料は25サイクルの洗浄耐性を達成したが、一方で潤滑剤によるさらなる毛髪試料の前処理の利益を享受した毛髪試料は、最大39洗浄サイクルに対してスタイリングされた形状を維持することに成功した。これらの結果は、ヘアスタイリング方法にさらにこのような工程が含まれる場合、その有益な効果をサポートするものである。
【0291】
実施例7:毛髪のオイルでの前処理
実施例5に記載された毛髪繊維のスタイリングは満足のいく結果をもたらしたが(実施例6に記載の得られた洗浄耐性によって証明されるとおり)、この手順は、オイルの前処理工程を含むことによって変更することができる。
【0292】
適切なオイルの選別
浸透の欠如:
オイルの候補の毛髪への浸透は、以下のように評価することができる:本発明の組成物によって処理されていない毛髪繊維の一群を秤量し、試験オイルが入ったカップに毛髪への浸透が可能な十分な時間入れる。その後、毛髪繊維をオイルから取り出し、きれいに拭き取り、再び秤量した。オイルに浸す前の重量と比較した毛髪の重量の増加は、オイルが繊維に浸透したことに起因する可能性がある。重量の増加が5%未満のオイルは、前処理オイルとしてさらに選別するのに適していると考えられる。
【0293】
重合阻害の欠如:
オイルの候補による阻害活性は、提案される前処理オイルとの適合性を試験するように、試験オイルの薄い層をスライドガラス上に塗布し、続いて本教示による硬化性スタイリング組成物の層を塗布することによって評価することができる。その後、スライドガラスを、適切な温度で十分な時間エネルギーの適用に供して、スタイリング組成物の完全硬化を誘導する(例えば、ホットプレート又はオーブン内に置く)。硬化したスタイリング剤層を有するスライドを冷却する。その後、硬化した層をスライドから剥がし、スライド上のその下に塗布された残留オイルを拭き取る。オイルと接触していた硬化した組成物の側が粘着性のままであれば、これは硬化が完全でなかったことを示しており、この場合、試験オイルはヘアスタイリング組成物の適切な重合を阻害する効果を有すると考えられる。逆に、以前にオイルと接触していた側面も、空気と接触していた側面も同様に粘着性がない場合、試験オイルは前処理オイルとしてさらに選別するのに適していると考えられる。
【0294】
混和性の欠如:
オイルの候補とオイルに適用するスタイリング組成物との混和性は、以下のように試験した。0.05gの試験オイルを0.95gの調査下のヘアスタイリング組成物に加え、10秒間ボルテックスで十分に混合し、混合物を相分離させた。スタイリング組成物と非混和性であることが判明したオイルは、前記組成物を後で適用するための前処理オイルとして適しているとみなされた。
【0295】
Silquat(登録商標)J2-2B、Silamine(登録商標)C-300、Silwax(登録商標)J1016、Silube(登録商標)CO Di-10、及びSilube(登録商標)TMP D219は、PU5 組成物との混和性がないことが判明し、Silube(登録商標)TMP D219はさらにPU6との混和性がないことが判明した。
【0296】
選択されたオイルによる前処理
生来の毛髪繊維を、ヘアスタイリング組成物を適用する実施例5に記載の手順の第1の工程の前に、選択された各オイルで前処理した。
【0297】
100mlのプラスチックカップに、20gのIPAと0.2gの前処理オイルを手動で混ぜた。実施例5に記載のとおり、予めラウリル硫酸ナトリウムで洗浄し、すすぎ及び乾燥させた毛束を、各種オイル/IPA混合液に浸し、室温で5分間維持した。その後、毛束を水道水ですすぎ、完全に乾くまで数分間ブローした。
【0298】
次に、実施例5に記載の手順に従って、実施例3で調製したPU5又はPU6組成物を用いて前処理した毛束をそれぞれスタイリングし、実施例6に記載したとおりスタイリング処理の耐久性を試験した。
【0299】
組み合わせで使用した前処理オイルとスタイリング組成物とを、洗浄耐性の結果と共に表5に示す。
【0300】
【0301】
本研究で試験したオイルの前処理は、訓練されたオペレーターによって評価されるとおり、それを使用して試験した組成物のスタイリングすることを可能にし、同時に試験されたすべての毛束の感触及びくし通りを改善した。PU6でスタイリングした毛髪繊維を、処理した毛髪繊維の外表面に最初に形成され得る一過性の被覆に対するSilube(登録商標)TMP D219の効果を評価するために、FIB-SEM顕微鏡で分析した。オイルで前処理していない毛髪繊維は、2回洗浄しただけで最大1μmの一過性の被覆を示したが(後に洗い流された)、オイルで前処理した毛髪繊維は、同じ回数洗浄しても、その外面に検出可能な一過性の被覆を示さなかった。
【0302】
実施例8:毛髪繊維中の尿素の検出
当業者によって容易に理解されるように、本組成物について本明細書に開示されるような成分の存在は、目的の成分(例えば、PBM、WHA、硬化促進剤など)の同定に適合された任意の標準的な方法によって、そのような分析に適合された任意の適切な装置を使用して、組成物中で検出され得る。しかしながら、本実施例は、ヘアスタイリング組成物の適用後に毛髪繊維に浸透が成功した組成物の成分の検出に関するものである。特に、本発明の組成物はPBM及びWHAを含有するため、本研究は特に尿素(すなわちWHA)の検出に関する。
【0303】
本発明の組成物で処理した毛髪試料から得た抽出物中の尿素の検出は、くし形(interdigitated)金電極を用いた電気化学的インピーダンス分光法(EIS)により行った。くし形電極を、尿素の電気酸化を促進する電気触媒であるニッケルコバルト酸化物(NiCo2O4)で被覆し、その結果、導電種が形成され、溶液の導電率が増加した。このような技術を用いることで、微量の尿素を検出することができる。
【0304】
NiCo2O4の合成
コバルト酸ニッケルは、塩化コバルト1.300g、塩化ニッケル六水和物1.185g、尿素2.000g、及び蒸留水75mLを150mlのガラスコップに入れ、マグネティックスターラーを用いて均一な溶液が得られるまで30分間撹拌して調整した。成長溶液を入れたカップをアルミホイルで密封し、温度95℃の予熱乾燥オーブンに5時間保持した。形成された沈殿物を成長溶液からろ別し、蒸留水で洗浄し、室温で一晩維持して乾燥させた。得られた乾燥粉末をマッフルオーブンで500℃の温度で3時間焼成した。
【0305】
NiCo2O4被覆くし形電極の作製
4mgの焼成NiCo2O4粉末及び1mlのイソプロピルアルコールを20mlのガラスバイアルに入れ、15分間超音波処理した。5%のNafion(商標)溶液0.5mlを加え、ボルテックスミキサーで混合して懸濁液を得た。
【0306】
くし形金電極(Eltek、イスラエル)を、次のようにドロップキャスト法によってNiCo2O4-Nafion(商標)溶液で被覆した:溶液4滴(約100μl)を電極のくし形部分に配置し、電極を室温で3時間維持して液体を蒸発させ、これにより電極表面にNiCo2O4とNafion(商標)の乾燥被覆を形成した。
【0307】
毛髪繊維の抽出試料の調製
2つの毛束(各毛束は異なる供給源からのもの)を実施例5に従って組成物PU12で処理し、尿素を含まない洗浄剤で12回洗浄し、この物質の外部痕跡を除去した。
【0308】
各毛束の毛髪繊維10本を、それぞれ2gの蒸留水を入れた20mlのバイアル2本に入れ、バイアル瓶を70℃のオーブンに入れ、200RPMで絶えず振とうした。12時間後、バイアルをオーブンから取り出し、室温まで冷却した。それぞれの毛髪試料を濾過し、得られた抽出物をインピーダンス分析用に移した。
【0309】
PBM-尿素組成物で処理されておらず、単に5%のラウリル硫酸ナトリウムを含む水道水で12回洗浄し、すすいだ毛髪繊維を用いて、参照抽出物試料を同様に調製した。
【0310】
電気化学インピーダンスの測定
抽出液中の尿素検出は、以下の酸化反応(電極を被覆するNiCo
2O
4電極触媒によって触媒される)であり、それによって導電性イオンが形成される反応に従って、溶液の電気化学インピーダンス測定に基づいて行った:
【化6】
【0311】
生成したイオンは、その濃度に比例する溶液中のインピーダンス変化に寄与し、そのため試験溶液中の尿素濃度を示す。
【0312】
電気化学インピーダンス測定は、周波数応答解析(FRA)を備えたポテンショスタット(EC-Lab(登録商標)ソフトウェアと組み合わせたもの)を定電位モードで使用し、100kHz~1Hzの周波数範囲及び一定の電位:0mV又は850mVの尿素酸化電圧(以前の測定のとおり)のいずれかで室温で実行した。2電極セットアップの従来の組み立てが使用され、ここでは作用電極ケーブルをNiCo2O4被覆くし形電極の一方の側に接続し、対電極と参照電極とを一緒にくし形電極のもう一方の側に取り付けた。NiCo2O4被覆くし形電極を、各スキャンの前に手作業で水で洗浄することにより清浄にし、続いて圧縮空気ブロワーで乾燥した。
【0313】
インピーダンス測定の実行を、2つの試験試料のそれぞれに対して実施した。最初に定電位工程が実行され、選択された各電位を電極に10秒間適用した(酸化反応を開始するために850mVの電位を適用し、0mVの電位を参照として適用した)。
【0314】
各抽出液についてZfitデータ処理により抵抗値(R)を算出し、次いで導電率(C=1/R)に換算した。計算された導電率値を使用して相対導電率変化(ΔC/C)を決定した。ここでΔCは850mVでの導電率と0mVでの導電率との差を0mVでの導電率で割ったものである。さらに、導電率の変化を試料の質量(m)で割り、規格化した値を得た。この方法の検出限界は、未処理の標準試料に従って測定した結果、約0.001mg-1であった。
【0315】
2種類の抽出物試料のインピーダンスを測定し、(ΔC/C)/m値を算出したところ、平均0.024mg-1であり、これにより抽出物中に尿素が存在することが示された。毛髪繊維の内容物の抽出は、12回の洗浄サイクルの後に行われたため、抽出物中に検出された尿素は、実際に毛髪繊維に浸透した組成物PU12に由来すると考えられる。
【0316】
比較実験では、10本の毛髪繊維を20mlの40%尿素溶液に1時間浸漬した。その後、繊維を尿素溶液から取り出し、前述のとおり12回洗浄した。洗浄した繊維から抽出試料を得て、上記のとおりインピーダンス測定を行った。
【0317】
高濃度の尿素にさらされた毛髪繊維を12回洗浄した後に得られた(△C/C)/mの値は0.002mg-1であり、尿素非存在下で得られる0.001mg-1のベースラインに近かったことから、毛髪繊維内外に存在した尿素のほとんどが洗い流されたことが示された。この値は、組成物PU12で処理した毛髪で得られた値よりも低いことから、本教示によるヘアスタイリング組成物は、尿素の存在によって支持されるように毛髪繊維に浸透しただけでなく、毛髪からの尿素の洗い流しを制限又は低減したことが示唆される(これは比較実験に示されるように、高分子スタイリング組成物がない場合にはより自由に起こる)。
【0318】
実施例9:PBM-WHAを含有する組成物で処理した毛髪の再スタイリング
実施例6で試験されたような洗浄耐性が十分であるとみなされる(例えば、少なくとも10回の洗浄サイクル又は他の設定されたサイクル数に耐えることによって繊維内のPBPの形成を確認することなど)洗浄耐性を示す、実施例2~3で調製されたような組成物で処理された毛髪試料は、実施例5の工程4に記載されるような再スタイリング処理、例えば毛髪繊維のストレート化を受けることができる。この熱処理は、毛髪繊維を再スタイリングするために、形成されたポリマーを十分に軟化させて毛髪繊維の形状を再形成することが期待される。再スタイリングは、元のスタイリング処理によって提供されたのと同じ形状にすることも、繊維に適用できる任意の他の第2の修正形状にすることもできる。熱を加えた後、毛髪試料は室温に戻るまで冷却され、ポリマーが硬く/軟化していない構造を取り戻すことが可能である。このように再スタイリングされた毛髪試料は、実施例6に記載されるとおり洗浄サイクルに供され、再形成されたポリマーの耐性とWHAの継続的な保護効果とを評価することができる。
【0319】
実施例10:PBM-WHAを含有する組成物で処理された毛髪の脱スタイリング
実施例6で試験されたような洗浄耐性が十分であるとみなされる(例えば、少なくとも10回の洗浄サイクル又は他の設定されたサイクル数に耐えることによって繊維内にPBPが形成されることを確認すること)洗浄耐性を示し、かつなおスタイリングされた(ストレート化)形状である、実施例2~3で調製されたような組成物で処理された毛髪試料は、毛髪が元の(改変されていない、例えば巻き毛)形状を取り戻すことを可能にする脱スタイリング処理を受けることができる。
【0320】
スタイリングした毛髪試料を、pH 10.5のアンモニウム溶液である脱スタイリング液約15gを入れた100mlのプラスチックカップに浸すことができる。その後、カップをデジタルオービタルシェーカーに配置し、60℃で1時間振とうする。このようにして「脱スタイリング」された毛髪試料の外観は、脱スタイリング処理の効果を評価するために、天然の未処理の毛髪試料の外観と比較される。本発明者らは、以前の記載のとおり、毛髪試料をさらに再スタイリングする能力によって確認できるとおり、脱スタイリング処理によって毛髪繊維内に取り込まれた合成ポリマーが除去されることはないと推測している。
【0321】
実施例11:示差走査熱量測定(DSC)試験
ケラチン毛髪繊維は、多くの熱分析法において特徴的な吸熱ピークを示し、それぞれのピークは、様々な温度付近で起こる化学変化を示している。実施例5及び6に従って処理した毛髪試料をDSCで分析して、毛髪繊維の物理化学的特性に対する実施例2~3の組成物の効果を評価し、同じ毛髪の種類の未処理の参照と比較することができる。
【0322】
参照の毛髪試料と処理毛髪試料とを通常のハサミで小さい断片(約2mmの長さ)に切断した。各測定では、毛髪片約5mgを70μlのDSCの白金製るつぼに配置した。測定中、るつぼは開けたままにした。
【0323】
試料を示差走査熱量計に入れ、DSC測定を行った。具体的には、窒素下で10℃/分間の速度で400℃まで加熱しながら、データ取得と保存を行った。
【0324】
保存されたデータはプロットされ、各毛髪試料のDSC曲線が得られ、吸熱点の値が取り出される。改変された毛髪繊維と天然の毛髪繊維が、少なくとも1つの本質的に類似した吸熱温度を示す場合、この改変を達成した組成物は無害であるとみなされる。2種の材料又は毛髪繊維の吸熱温度は、互いに4°C、3°C、2°C、又は1°C以内であれば、本質的に類似しているとみなすことができる。
【0325】
図5は、本発明が提案するような、毛髪を損傷しないヘアスタイリング方法が、従来の方法とは対照的に、どのように毛髪を無傷に保ち得るかを示すDSC研究の結果である。図からわかるように、本発明の無害と仮説される組成物で処理した毛髪繊維の試料の曲線は、未処理の天然の毛髪試料の曲線に匹敵し、顕著な構造変化がないことを示している。プロットの下部の実線は、未処理の黒髪繊維の曲線を表している。毛髪繊維の特徴的な温度である234.5℃と250℃との2つの吸熱が観測された。234.5℃付近の第1の吸熱は繊維中のα-ケラチンの溶融を示し、250℃付近の第2の吸熱はケラチンの分解とジスルフィド結合の切断を示すと考えられる。
【0326】
対照的に、未処理の参照に対して実際に試験した市販の縮毛矯正法(オーガニック及び日本式)のDSC曲線は、天然の毛髪試料の曲線からかなりの変化を示しており、このような劇的なヘアスタイリング法を使用した場合に予想される構造変化を示している。
【0327】
このような測定は、代わりに、熱機械分析(TMA)又は動的機械分析(DMA)など、他の熱分析方法から得ることもできる。
【0328】
実施例12:毛髪繊維の力学的特性
実施例4及び5に従って処理した毛髪試料を引張試験により分析し、毛髪繊維の機械的特性に対する本発明の組成物(実施例2~3で調製したものなど)の効果を評価し、同じ毛髪の種類の未処理の参照と比較した。
【0329】
参照試料とPU6処理毛髪試料とのそれぞれから10本の毛髪繊維を採取し、3日間同じ条件下(例えば、温度25℃、湿度45%RH(相対湿度))に維持して標準化した。次に、毛髪繊維を30mmの長さに切断し、典型的な楕円形の毛髪繊維の最大半径と最小半径の両方を考慮して、共焦点レーザー顕微鏡によって代表的な断面を測定した。引張パラメーター、破断点での伸張、破断応力、靱性及び弾性率は、試験した毛髪繊維について引張試験機により測定した(100%伸長限界、20mm/分の伸長速度、2gのゲージ力、5gの破断検出限界、及び2000gの最大力)。処理した毛髪試料の10本の繊維の平均結果を、参照試料の結果と比較した。
【0330】
PU6で縮毛矯正した毛髪繊維は、未処理の毛髪繊維に匹敵する破断点での伸張、破断応力、及び靭性を有し、平均結果は統計的に有意でない程度に軽度に高い。弾性率においてのみ、本組成物によって処理された試料は未処理の試料よりも高いことがわかった。これらの結果は、2つの異なる供給源から得た毛髪繊維のセットで観察された。比較のために、オーガニックの縮毛矯正で処理した毛髪繊維(DSC実施例で示したように、損傷を与えることが知られている)は、一般的に未処理の参照よりも劣り、ひいては本発明の方法で処理した毛髪繊維よりも劣ることがわかった。例えば、本発明の方法で縮毛矯正した毛髪試料は、未処理の毛髪よりも10%高い靭性を示したが、オーガニック技術で縮毛矯正した毛髪試料は30%低い靭性を示した。同様に、本発明の方法で縮毛矯正した毛髪試料は、未処理の毛髪より6%高い破断応力を示したが、対照的に、オーガニック技術で縮毛矯正した毛髪試料は、12%低い靭性を示した。本結果の統計的有意性にかかわらず、本発明の方法及び組成物は、少なくとも毛髪繊維を損傷せず、改善する可能性さえあると確信をもって言うことができる。
【0331】
これらの観察結果は、本発明の組成物及び方法で処理した単一の試料についてなされたものであるが、他の組成物にも適用できる傾向を示していると考えられる。
【0332】
一般に、処理された毛髪繊維の破断応力は、同様の未処理繊維の破断応力より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%高いと期待される。さらに、処理された毛髪繊維は、同様の未処理の毛髪繊維の95%以上、100%以上、105%以上、110%以上、115%以上、又は120%以上の靭性を有することが期待される。オーガニックの縮毛矯正のような陰性コントロールは、この特定のパラメーターに影響を与えないために、処理及び未処理の試料の弾性率は、少なくとも同等であると期待される。
【0333】
実施例13:ヘアスタイリング組成物のフィールド試験
本教示によるヘアスタイリング組成物は、少なくとも25cmを超える長さの毛髪を有するヒトボランティアで試験することができる。ボランティアは、波状から巻き毛状の毛髪を有し、その毛髪は、生まれながらの未着色、又は従来の着色製剤で着色されているかのいずれかである。特定の組成でスタイリングされた研究グループの毛髪は、少なくとも6人を含み、異なるサブグループを形成することができる。すべてのボランティアは、清潔で乾燥した毛髪で試験手順に参加し、各ボランティアは、伸ばされていない毛髪の長さ、代表的な芯と毛髪繊維に沿った山と谷の数、及び以前に記載の試料組成物の有効性を試験するための同様のパラメーターに関するベースライン値を割り当てられる。
【0334】
本試験は、実施例4及び5に記載されたin vitro手順と原理的に類似しているが、以下の変更がある。第一に、増粘剤が、定温放置期間中、組成物が毛髪に保持されるのに十分な粘度を持つように配合される。第二に、毛髪はビーカーに浸漬されないため、増粘した組成物を毛髪繊維の個々の群にブラシで一度に塗布することができ、毛髪繊維の各芯は、その後、頭皮全体の毛髪が試験されるヘアスタイリング組成物で被覆されるまで、すでに被覆された毛髪繊維の周囲で折り畳まれるアルミニウム箔で包まれる。塗布後、ヘアスタイリング用試料は、定温放置の時間(例えば、室温で1時間)の間、毛髪繊維上にとどまることが可能である。その後、毛髪を約35~40℃の水道水で十分にすすぎ、ドライヤーで2~3分間乾燥させる。次に、ボランティアの毛髪を保護潤滑剤(例えば、シリコーンオイル)で前調整し、その後、フラットアイロンを用いて、毛髪の各芯に対して220℃の温度で約2~3分間(約30~50回通す)、毛髪が完全に乾燥し、所望の修正形状になるまで矯正する。縮毛矯正された毛髪繊維は、シャンプーとコンディショナーとで洗浄され、乾燥される。この段階で髪は「スタイリングされた(スタイリング済み)」と定義される。各ボランティアのスタイリングされた毛髪を再度分析し、未処理のベースラインから変更された毛髪の長さ、代表的な芯及び繊維に沿った山と谷の数の新しい値を決定する。これらのパラメーターは、本研究に沿って所定の時点で測定され、記録される。
【0335】
上に詳述したとおり毛髪を「スタイリングした」時点から、ボランティアは2日に一度、規定の時間に髪を洗浄し、洗浄した毛髪の外観と、より定量的な変化を与えるパラメーターを再び測定し、記録する。少なくとも10回の洗浄サイクル(22日間)安定な改変形状を提供する組成物は、成功とみなされる。
【0336】
明確さのために別々の実施形態の文脈で説明されている本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されることも可能であることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載されている本開示の様々な特徴もまた、別個に、又は任意の適切な下位組み合わせにおいて、あるいは本開示の任意の他の記載の実施形態において適切に、提供され得る。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしでは作用しない場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴とはみなされない。
【0337】
本開示は、説明のためだけにその提示された様々な特定の実施形態に関して記載されたが、そのような具体的に開示された実施形態は、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書における出願人の開示に基づき、当業者には、このような実施形態の他の多くの代替形態、修正、及び変更が生じるであろう。したがって、そのような代替形態、修正、及び変更をすべて包含することを意図しており、本開示の精神と範囲、及びそれらの意味及び同等性の範囲内にある変更にのみ拘束される。
【0338】
本開示の明細書及び特許請求の範囲において、動詞「含む(comprise)」、「含む(include)」、及び「有する(have)」、並びにそれらの活用形のそれぞれが、動詞の1つ又は複数の目的語が必ずしも、該動詞の1つ又は複数の主語の特徴、メンバー、工程、構成要素、要素又は部分の完全なリストではないことを示すために使用される。なお、これらは、本教示の組成物も列挙された構成要素から本質的になる、又はそれらからなる、並びに本教示の方法もまた、列挙されるプロセスの工程から本質的になる、又はそれらからなると考えられる。
【0339】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は複数形の参照を含み、文脈が明確に指示しない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」を意味する。A及びBの少なくとも一方は、A又はBのいずれかを意味することを意図しており、かついくつかの実施形態では、A及びBを意味する場合がある。
【0340】
特に断りのない限り、選択のための選択肢のリストの最後の2つの構成要素の間に「及び/又は」という表現を使用することは、リストされた選択肢のうちの1つ又は複数の選択が適しており、それを行うことができることを示す。
【0341】
別段の記載がない限り、本技術の実施形態の特徴に関する範囲の外側境界が開示に記載されている場合、その実施形態では、特徴の可能な値は、記載の外側境界の間の値と同様に、記載されている外側境界を含み得ることが理解されるべきである。
【0342】
本明細書で使用されるとおり、別段の記載がない限り、本技術の実施形態の1つ又は複数の特徴の状態又は関係の特性を修飾する「実質的に(substantially)」、「ほぼ(approximately)」及び「約(about)」などの形容詞は、条件又は特性が、意図された用途の実施形態の動作に許容される公差内、又は実行される測定及び/又は使用される測定機器から予想される変動内に定義される。「約」及び「およそ」という用語が数値の前にある場合、+/-15%、又は+/-10%、又はなお+/-5%のみを示し、場合によっては正確な値を示すことを意図している。さらに、特に断りのない限り、本開示で使用されている用語(例えば数字)は、そのような形容詞がなくとも、関連する用語の正確な意味から逸脱してもよく、しかし、本発明又はその関連部分が、記載のとおり、かつ当業者が理解するとおり、動作及び機能することを可能にする許容範囲を有すると解釈されるべきである。
【0343】
本開示は、特定の実施形態及び一般に関連する方法の観点から説明されてきたが、実施形態及び方法の変更及び並べ替えは、当業者には明らかであろう。本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって限定されるものではないと理解されたい。
【0344】
本明細書で参照される特定のマークは、第三者のコモンロー商標又は登録商標である場合がある。これらのマークの使用は例示であり、説明的なものとして解釈される、又は本開示の範囲をこれらのマークに関連する物質のみに限定するものではない。
【国際調査報告】