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特表2024-531374タキソールコンジュゲート化合物、これを含む医薬組成物およびそれらを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】タキソールコンジュゲート化合物、これを含む医薬組成物およびそれらを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/06 20060101AFI20240822BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240822BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 5/08 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 5/10 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07K5/06
A61K31/337
A61P17/00
A61P27/02
A61P35/00
A61K47/64
C07K7/06
C07K7/08
C07K5/08
C07K5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510251
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 US2022040797
(87)【国際公開番号】W WO2023023276
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/235,073
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524061895
【氏名又は名称】エヌ1 ライフ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ザン, シャオユー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, リン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB22
4C076BB24
4C076BB27
4C076BB31
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA57
4C086NA02
4C086NA05
4C086NA12
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA89
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
タキソール輸送体化合物、医薬組成物、それらの調製方法、および増殖性、皮膚もしくは眼疾患または障害の処置あるいは予防におけるそれらの使用方法が、本明細書において提供される。式(I)およびその部分式(sub-formula)のタキソール輸送体コンジュゲート化合物、該化合物を含む組成物、該化合物を生成する方法、ならびに処置および診断において、該化合物および組成物を使用する方法が、本明細書において提供される。式(I)および部分式の化合物、ならびにそれらの実施形態は、増殖性、皮膚もしくは眼障害を処置または予防するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(X):
【化8】
の化合物または薬学的に許容されるその塩であって、式(X)の前記化合物は、式(X)のすべての立体異性体の総重量と比較して、式(I):
【化9】
の化合物を、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約95重量%または約99重量%含み、nは、1~20から選択される整数である、式(X)の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
式(X)の前記化合物が、式(I)の前記化合物を約90重量%含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(X)の前記化合物が、式(I)の前記化合物を約95重量%含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(X)の前記化合物が、式(I)の前記化合物を約99重量%含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(I):
【化10】
の化合物または薬学的に許容されるその塩であって、式中、nは、1~20から選択される整数である、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
前記化合物が、ジアステレオマー過剰である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%のジアステレオマー過剰である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約50%含まない、少なくとも約60%含まない、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約80%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約97%含まない、少なくとも約99%含まないまたは100%含まない、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約90%含まない、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約95%含まない、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約97%含まない、請求項8に記載の化合物。
【請求項12】
nが6~10の整数である、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
nが8である、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、式(II):
【化11】
によるものか、または薬学的に許容されるその塩である、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物が、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約50%含まない、少なくとも約60%含まない、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約80%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約97%含まない、少なくとも約99%含まないまたは100%含まない、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記化合物が、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約90%含まない、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約95%含まない、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
薬学的に許容される塩である、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
HCl塩である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
TFA塩である、請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
請求項1に記載の式(X)の化合物を含む組成物。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、および1種もしくは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項23】
増殖性、皮膚または眼疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の請求項1~20のいずれか一項に記載の化合物、治療有効量の請求項21に記載の組成物、または治療有効量の請求項22に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項24】
治療に使用するための、請求項1~20のいずれか一項に記載の化合物、請求項21に記載の組成物または請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
増殖性、皮膚または眼疾患の処置において使用するための、請求項1~20のいずれか一項に記載の化合物、請求項21に記載の組成物または請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項26】
増殖性、皮膚または眼疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1~20のいずれか一項に記載の化合物、請求項21に記載の組成物または請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
前記疾患が、脳がん、肝臓がん、卵巣がん、胃がんまたは結腸直腸がんである、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項28】
前記疾患が、頭頸部がん、口腔がんまたは顎顔面がんである、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項29】
前記化合物が腹腔内投与される、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項30】
前記化合物が吸入により投与される、請求項29に記載の方法または使用。
【請求項31】
前記化合物が経口投与される、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項32】
前記化合物が舌下投与される、請求項31に記載の方法または使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本出願は、すべての目的のため、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年8月19日出願の米国仮出願第63/235,073号の利益を主張する。
【0002】
タキソールコンジュゲート化合物;該化合物を含む医薬組成物;該化合物を生成する方法;ならびに治療のために該化合物および組成物を使用する方法が、本明細書において提供される。本化合物および組成物は、例えば、増殖性、皮膚もしくは眼疾患または状態を処置および予防する方法、増殖性、皮膚もしくは眼疾患または状態を検出する方法、ならびに増殖性、皮膚もしくは眼疾患または状態を診断する方法において有用である。
【背景技術】
【0003】
背景
長年にわたる多くの進歩があるにもかかわらず、がんは、依然として世界規模での健康上の懸念であり続けている。がんは世界中で主要な死因の1つである。2018年には、世界中で、新たながん症例が1,810万件であり、がん関連死亡は950万件であった。2040年までに、年間の新たながん症例数は、2,950万件、およびがん関連死亡数は、1,640万件に増加すると予想されている。国立がん研究所(米国)および世界保健機関を参照されたい。
【0004】
肝臓がんは、サブサハラアフリカおよび東南アジアにおいて一般的である。肝臓がんは、これらの国々の多数において、最も一般的なタイプのがんである。800,000名を超える人々が、全世界にわたり、毎年、このがんの診断を受けている。肝臓がんはまた、全世界において、がん死亡の主要原因でもあり、毎年、700,000件を超える死亡を占めている。
【0005】
卵巣がんは、女性におけるがん死亡の5番目の主要原因であり、米国では、推定22,000名の女性が診断を受け、15,500名の死亡を占めている。
【0006】
胃がんは、世界で4番目に最も一般的ながんであり、がん死亡の2番目の主要原因である。胃がん死亡の40%が、肝臓転移を有している一方、53~60%が、腹膜癌腫症を有する。全身化学療法は、7か月のメジアン生存を提供する。しかし、腹膜への広がりがある場合、メジアン生存は、1~3か月しかない。
【0007】
結腸直腸がんは、米国で診断された、3番目に最も一般的ながんである。結腸直腸がんは、年間、約49,700名の死亡を引き起こしており、がん死亡の2番目に最も一般的な原因となっている。患者のほぼ10%が、診断時に腹膜への広がりを有しており、これは、結腸直腸がんを有する患者では、2番目の主な死因である。腹膜播種を有する結腸直腸がんを有する患者の場合のメジアン全生存は、24か月である。
【0008】
現在、腹膜内(IP)化学療法の承認を具体的に受けている化学療法剤は存在しない。現行のIP化学療法の臨床研究はすべて、静脈内(IV)適用向けに設計された薬物の適応外使用によって行われてきた。
【0009】
世界規模では、皮膚疾患は、すべての疾患の中で、4番目に最も一般的なものであり、世界人口のほとんど3分の1が罹患している。Flohr, 2021, Brit. J. Dermatol. 184(2):189-190。2013年現在、皮膚疾患は、世界の疾患負荷の1.79%に寄与している。Karimkhani et al., 2017, JAMA Dermatol. 153(5):406-412。
【0010】
眼状態は、2021年時点では、世界中で推定22億の人々が罹患している。これらの症例のほぼ半分が、予防することができたはずであるか、または未だに処置によって対処されていない。2013年における眼疾患の世界規模での負荷は、Ono et al., 2010, Am. J. Public Health 100(9):1784-1788に報告されている通り、全世界での疾患負荷の4.0%と推定された。
増殖性、皮膚または眼疾患および状態を処置する追加の治療法が必要とされている。増殖性、皮膚または眼疾患および障害を処置するための、腹腔内投与に有効な新規治療法もまた必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Flohr、Brit.J.Dermatol.(2021)184(2):189~190
【非特許文献2】Onoら、Am.J.Public Health(2010)100(9):1784~1788
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
式(I)およびその部分式(sub-formula)のタキソール輸送体コンジュゲート化合物、該化合物を含む組成物、該化合物を生成する方法、ならびに処置および診断において、該化合物および組成物を使用する方法が、本明細書において提供される。式(I)および部分式の化合物、ならびにそれらの実施形態は、増殖性、皮膚もしくは眼障害を処置または予防するのに有用である。ある特定の実施形態では、本化合物は、増殖性、皮膚もしくは眼障害を処置または予防するために、腹腔内投与により使用することができる。ある特定の実施形態では、本化合物は、増殖性障害を処置または予防するために、経口投与により使用することができる。式(I)および部分式の化合物、ならびにそれらの実施形態は、増殖性、皮膚もしくは眼疾患または状態の検出、および増殖性、皮膚もしくは眼疾患または状態の診断に有用である。
【0013】
一態様では、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩:
【化1】
(式中、nは、1~20の整数である)
が提供される。
【0014】
本化合物は、(D-Arg)に結合したアセチル化L-システインアミノ酸残基を含む。本記載は、少なくとも部分的に、同じ位置にD-システインを含む対応する化合物に比べると、この化合物では、特性が実質的に改善されたという発見に基づいている。ある特定の実施形態では、本化合物は、D-システイン化合物に比べて、水溶解度の改善をもたらす。ある特定の実施形態では、本化合物は、D-システイン化合物に比べて、P-グリコタンパク質相互作用の低下をもたらす。ある特定の実施形態では、本化合物は、D-システイン化合物に比べて、薬物放出の延長をもたらす。生物学的実施例2、3および4に記載されている通り、非天然D-アミノ酸は、プロテアーゼによる開裂に抵抗性があることが知られているので、上記のことは、とりわけ驚くべきことである。ある特定の実施形態では、本化合物は、D-システイン化合物に比べて、標的化された薬物放出の改善をもたらす。ある特定の実施形態では、本化合物は、D-システイン化合物に比べて、がん細胞系に対する効力の改善をもたらす。例えば、生物学的実施例6に記載されている通り、化合物3(L-システイン化合物)の腫瘍阻害率は、9.6mg/kgで投与された場合、90±8%であった一方、化合物5(D-システイン化合物)の腫瘍阻害率は、同じ用量で投与された場合、わずか79±11%であった。さらに、この用量および実験条件下では、化合物3は、実験マウスに対して、明白な急性毒性作用を有さなかった一方、化合物5は、動物の死亡を引き起こした。ある特定の実施形態では、本化合物は、D-システイン化合物に比べて、薬物耐性がん細胞系に対する効力の改善をもたらす。これは、生物学的実施例2に例示されており、化合物3は、多剤耐性乳がん(MCF7/ADR)細胞系に対して、437.5nMのIC50値を示した一方、化合物5は、>1000nMのIC50を示した。ある特定の実施形態では、本化合物は、これらの改善の組合せ、またはこれらの改善のすべてを達成する。ある特定の態様では、本化合物は、増殖性、皮膚または眼疾患の処置および予防の方法に有用である。
【0015】
別の態様では、式(I)の化合物を含む組成物が提供される。一部の実施形態では、本組成物は、医薬組成物である。任意の好適な医薬組成物が使用されてもよい。さらなる態様では、式(I)の化合物またはその実施形態またはその医薬組成物を含むキットが、本明細書において提供される。
【0016】
別の態様では、本明細書に記載されている化合物または組成物を使用する方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、本方法は処置のためのものである。一部の実施形態では、本方法は診断方法である。一部の実施形態では、本方法は分析方法である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物または組成物は、疾患または障害を処置するために使用される。一部の態様では、疾患または障害は、増殖性、皮膚または眼疾患および状態から選択される。ある特定の実施形態では、疾患はがんである。ある特定の実施形態では、疾患は、皮膚科的なものである。ある実施形態では、疾患は、眼科的なものである。
【0017】
同様に、治療のための本明細書に記載されている化合物およびその組成物の使用が本明細書において提供される。同様に、増殖性、皮膚もしくは眼疾患または障害の処置のための、本明細書に記載されている化合物およびその組成物の使用が本明細書において提供される。同様に、医薬を製造するための、本明細書に記載されている化合物およびその組成物の使用が本明細書において提供される。同様に、増殖性、皮膚もしくは眼疾患または障害の処置のための医薬を製造するための、本明細書に記載されている化合物およびその組成物の使用が本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、疾患は、脳がん、肝臓がん、卵巣がん、胃がんまたは結腸直腸がんである。ある特定の実施形態では、疾患は、頭頸部がん、口腔がんまたは顎顔面がんである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、生物学的実施例1に記載されている、MCF7/MBA-MD-231細胞における、TAX(タキソール)、化合物5および化合物3の濃度に対する抗増殖細胞死滅率を提示する。
【0019】
図2A図2Aは、生物学的実施例1に記載されている、Hep 3B細胞における、TAX(タキソール)、化合物5および化合物3の濃度に対する抗増殖細胞死滅率を提示する。
【0020】
図2B図2Bは、生物学的実施例1に記載されている、Hep G2細胞における、TAX(タキソール)、化合物5および化合物3の濃度に対する抗増殖細胞死滅率を提示する。
【0021】
図2C図2Cは、生物学的実施例1に記載されている、MCF7/ADR細胞における、タキソール、化合物5および化合物3の濃度に対する抗増殖細胞死滅率を提示する。
【0022】
図2D図2Dは、生物学的実施例1に記載されている、DLD-1細胞における、タキソール、化合物5および化合物3の濃度に対する抗増殖細胞死滅率を提示する。
【0023】
図2E図2Eは、生物学的実施例1に記載されている、HCT116細胞における、タキソール、化合物5および化合物3の濃度に対する抗増殖細胞死滅率を提示する。
【0024】
図2F図2Fは、生物学的実施例1に記載されている、CNE1細胞における、タキソール、化合物5および化合物3の濃度に対する抗増殖細胞死滅率を提示する。
【0025】
図2G図2Gは、生物学的実施例1に記載されている、22Rv1細胞における、タキソール、化合物5および化合物3の濃度に対する抗増殖細胞死滅率を提示する。
【0026】
図3図3は、生物学的実施例5に記載されている、21日間の実験の経過にわたる、ビヒクルと比較した、化合物5および化合物3を投与したマウスの体重変化のグラフである。
【0027】
図4図4は、化合物5または化合物3の投与中および投与後の、腫瘍成長の指標である、腫瘍の蛍光面積のグラフである。生物学的実施例6において記載されている通り、化合物5または化合物3は、矢印によって表示されている、時間点0、5および10に投与され、ビヒクルと比較した。
【0028】
図5図5は、化合物5または化合物3の投与後の21日目の平均腫瘍重量のグラフである。腫瘍重量は、生物学的実施例6に記載されている通り、ビヒクルと比較した。
【0029】
図6A図6Aは、ビヒクル、タキソール(10mg/kg)または化合物3(9.6mg/kg、2.5mg/kgと等モル)を投与したマウスから取り出された腫瘍の画像である。腫瘍は、生物学的実施例6に記載されている通り、21日間の実験の21日目における、各群中の6匹のマウスから取り出した。
【0030】
図6B図6Bは、ビヒクル、タキソール(10mg/kg)または化合物5(9.6mg/kg、2.5mg/kgと等モル)を投与したマウスから取り出した腫瘍の画像である。腫瘍は、生物学的実施例6に記載されている通り、21日間の実験の21日目における、各群中の6匹のマウスから取り出した。
【0031】
図7図7は、腫瘍重量の比較のグラフである。腫瘍はすべて、実験の最終日の後に得た。生物学的実施例6に記載されている通り、化合物5および化合物3を投与したマウスを、タキソールおよびビヒクルを投与したマウスと別個に比較した。図7は、ビヒクルを投与したマウス、タキソールを投与したマウス、および化合物5を投与したマウスと、化合物3を投与したマウスとを比較したグラフである。
【0032】
図8図8は、生物学的実施例6に記載されている、化合物5および化合物3を投与したマウスの腫瘍阻害率(tumor inhibitory rate)(IR)を比較したグラフである。
【0033】
図9図9は、生物学的実施例7に記載されている、雌BALB/cヌードマウスにおける、化合物3処置、ビヒクル処置およびタキソール処置NCI-H460-luc2頭蓋内モデルのカプラン-マイヤー生存曲線である。
【0034】
図10図10は、化合物3の投与中および投与後の、腫瘍成長の指標である、腫瘍の蛍光面積のグラフである。生物学的実施例8において記載されている通り、化合物3を、矢印によって表示されている時間点0、5および10に投与し、ビヒクルと比較した。
【0035】
図11図11は、生物学的実施例8に記載されている、17日目の、ビヒクルと比較した、化合物3を投与したマウスの腫瘍の蛍光面積を比較したグラフである。
【0036】
図12図12は、化合物3の投与後の17日目の平均腫瘍重量のグラフである。腫瘍重量は、生物学的実施例8に記載されている通り、ビヒクルと比較した。
【0037】
図13図13は、化合物3の投与中および投与後の、腫瘍成長の指標である、腫瘍の蛍光面積のグラフである。生物学的実施例9において記載されている通り、化合物3を、矢印によって表示されている時間点0、5および10に投与し、ビヒクルと比較した。
【0038】
図14図14は、生物学的実施例9に記載されている通り、21日目における、ビヒクルと比較した化合物3を投与したマウスの腫瘍の蛍光面積を比較したグラフである。
【0039】
図15図15は、化合物3の投与後の21日目の平均腫瘍重量のグラフである。腫瘍重量は、生物学的実施例9に記載されている通り、ビヒクルと比較した。
【0040】
図16図16は、生物学的実施例10に記載されている通り、SKOV-3-GFP細胞(6×10/120μL/マウス)を注入した後の、ビヒクル(PBS)を投与したマウスにおける、腹水の形成の画像である。
【0041】
図17A図17Aは、生物学的実施例10に記載されている通り、SKOV-3-GFP細胞(6×10/120μL/マウス)を注入した後の、化合物3(9.6mg/kg)を投与したマウスの画像である。血性腹水は観察されなかった。
【0042】
図17B図17Bは、生物学的実施例10に記載されている通り、SKOV-3-GFP細胞(6×10/120μL/マウス)を注入した後の、化合物3(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)を投与したマウスの画像である。血性腹水は観察されなかった。
【0043】
図18図18は、生物学的実施例10に記載されている、SKOV-3-GFP細胞(8×10/120μL/マウス)を注入した後の、ビヒクル(PBS)を投与したマウスにおける、腹水の形成の画像である。
【0044】
図19図19は、ビヒクル投与マウスおよび化合物3を投与したマウスから取り出した腹水を比較した画像である。生物学的実施例10に記載されている通り、マウスに、SKOV-3-GFP細胞(6×10/120μL/マウスまたは8×10/120μL/マウス)の注入後にビヒクルを投与したか、またはマウスに、SKOV-3-GFP細胞(6×10/120μL/マウス)の注入後に化合物3(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)を投与した。ビヒクル投与マウスから抜き出した腹水は、化合物3を投与したマウスから抜き取った腹水と比べると、一層多く、かつ血性であった。
【発明を実施するための形態】
【0045】
例示的な実施形態の説明
増殖性、皮膚もしくは眼疾患または状態を処置するのに有用なタキソールコンジュゲート化合物が、本明細書に記載されている。
【0046】
定義
特に定義しない限り、本明細書において使用される、当技術の用語、表記および他の科学用語はすべて、本開示に関する当業者によって一般に理解される意味を有することが意図されている。一部の場合、一般に理解される意味を有する用語が、明確にするためおよび/または速やかに参照できるよう、本明細書において定義されている。本明細書において記載または参照される技法および手順は、一般に、十分に理解されており、当業者によって従来の方法論を使用して一般に使用される。特に明記しない限り、適切な場合、市販のキットおよび試薬の使用を含む手順が、一般に、製造業者が明確にしているプロトコルおよび条件に準拠して行われる。
【0047】
本明細書において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、特に文脈が明白に示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0048】
用語「約」は、指定値、ならびにその値より上および下の範囲を示し、これらを包含する。ある特定の実施形態では、用語「約」は、指定値±10%、±5%または±1%を示す。ある特定の実施形態では、用語「約」は、指定値±その値の1標準偏差を示す。ある特定の実施形態では、例えば、対数尺度(例えば、pH)では、用語「約」は、指定値±0.3、±0.2または±0.1を示す。
【0049】
本明細書において提供される化合物を指す場合、以下の用語は、特に示さない限り、以下の意味を有する。特に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における用語に関して複数の定義がある場合、特に明記しない限り、この項目にある定義が優先する。
【0050】
用語「保護基」は、本明細書において使用する場合、および別段の指定がない限り、そのさらなる反応を阻止するため、または他の目的のため、酸素、窒素またはリン原子に付加される基を指す。幅広い酸素および窒素保護基が、有機合成の当業者に公知である。(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Greene, et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, Fourth Edition, 2006を参照されたい)。
【0051】
「薬学的に許容される塩」とは、本明細書において提供される化合物の任意の塩であって、その生物学的特性を保持しており、毒性がないか、または他の点で薬学的使用にとって望ましくないものではない、任意の塩を指す。このような塩は、当分野で周知の様々な有機および無機対イオンから誘導されてもよい。このような塩には、以下に限定されないが、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、樟脳酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸などの、有機酸または無機酸を用いて形成される酸付加塩、または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、(a)金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンまたはアルミニウムイオンまたはアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛および水酸化バリウム、またはアンモニアなど)によって置き換えられている場合、または(b)非限定的に、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレン-ジアミン、クロロプロカイン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、N-メチルグルカミン ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウムなどを含めた、脂肪族、脂環式または芳香族有機アミンなどの有機塩基で配位している場合に形成される塩が含まれる。
【0052】
薬学的に許容される塩には、例としておよび非限定的に、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウム塩などがさらに含まれ、化合物が、塩基性官能基を含有する場合、非毒性の有機酸または無機酸の塩(ハロゲン化水素、例えば、塩酸塩および臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エタンスルホン酸塩、1,2-エタン-ジスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、4-クロロベンゼンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、4-トルエンスルホン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸塩、グルコヘプトン酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert-ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩、ムコン酸塩など)が含まれる。
【0053】
組成物に関する用語「実質的に含まない」または「実質的に非存在下」とは、化合物の指定される鏡像異性体またはジアステレオマーを少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%または90重量%、ある特定の実施形態では、95重量%、98重量%、99重量%または100重量%;またはある特定の実施形態では、95%、98%、99%または100%含む組成物を指す。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法および化合物において、本化合物は、2つの鏡像異性体のうちの1つを実質的に含まない。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法および化合物において、本化合物は、2つのジアステレオマーのうちの1つを実質的に含まない。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法および化合物において、本化合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを実質的に含まない。
【0054】
用語「エピマー」とは、少なくとも2つのステレオジエン中心またはキラル中心の1個だけに反対の立体配置を有する一対のジアステレオマーの一方のことである。例えば、式(I)の化合物およびD-システインアミノ酸を含む対応する化合物は、エピマーである。
【0055】
同様に、組成物に関する用語「単離された」とは、化合物を少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、75重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、または99%~100重量%含む組成物を指し、残りは、他の化学種、鏡像異性体またはジアステレオマーを含む。
【0056】
本明細書において使用する場合、「鏡像異性体過剰率(ee)」とは、例えば、単一ステレオジエン中心を含有するキラル物質の純度を説明する、無次元のモル比を指す。例えば、鏡像異性体過剰率ゼロは、ラセミ(例えば、鏡像異性体の50:50混合物であるか、または1つの鏡像異性体が他方よりも過剰に存在しない)を示す。さらなる例として、鏡像異性体過剰率99は、ほぼ立体的に純粋な鏡像異性体化合物である(すなわち、1つの鏡像異性体が、他方よりも大過剰である)ことを示す。鏡像異性体過剰率、%ee=([(R)-化合物]-[(S)-化合物])/([(R)-化合物]+[(S)-化合物])×100((R)-化合物>(S)-化合物である場合);または%ee=([(S)-化合物]-[(R)-化合物])/([(S)-化合物]+[(R)-化合物])×100((S)-化合物>(R)-化合物である場合)。
【0057】
本明細書において使用する場合、「ジアステレオマー過剰率(de)」とは、1個より多いステレオジエン中心を含有するキラル物質の純度を説明する、無次元のモル比を指す。例えば、ジアステレオマー過剰率ゼロは、ジアステレオ異性体の等モル混合物であることを示す。さらなる例として、ジアステレオマー過剰率99は、ほぼ立体的に純粋なジアステレオマー化合物である(すなわち、1つのジアステレオマーが、他方よりも大過剰である)ことを示す。ジアステレオマー過剰率は、eeと類似の方法により計算することができる。当業者によって理解される通り、deは、パーセントde(%de)として、通常、報告される。%deは、%eeと類似の方法で計算されてもよい。
【0058】
「溶媒和物」とは、非共有結合性分子間力によって結合した、化学量論量または非化学量論量の溶媒をさらに含む、本明細書において提供される化合物またはその塩を指す。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
【0059】
「同位体組成」とは、所与の原子に関して存在する各同位体の量を指し、「天然同位体組成」とは、所与の原子に関する、天然同位体組成または存在量を指す。それらの天然同位体組成を含む原子はまた、本明細書において、「非濃縮」原子と呼ばれることがある。特に指定されない限り、本明細書において引用される化合物の原子は、その原子の任意の安定な同位体を表すことが意図される。例えば、特に明記しない限り、位置が水素(H)と具体的に表示される場合、その位置は、その天然同位体組成の水素を有すると理解される。
【0060】
「同位体濃縮率(isotopic enrichment)」とは、ある分子中の所与の原子において、その原子の天然同位体の存在量の代わりに、特定の同位体の量を取り込んでいる割合を指す。例えば、所与の位置における1%の重水素(D)濃縮とは、所与の試料中の分子の1%が、指定された位置に重水素を含有することを意味する。重水素の天然分布は、約0.0156%であるので、非濃縮出発原料を使用して合成された化合物中の任意の位置における重水素濃縮率は、約0.0156%である。本明細書において提供される化合物の同位体濃縮率は、質量分析法および核磁気共鳴分光法を含む、当業者に公知の従来の分析方法を使用して求めることができる。
【0061】
「同位体濃縮された」とは、ある原子が、その原子の天然同位体組成以外の同位体組成を有することを指す。「同位体濃縮された」とはまた、少なくとも1個の原子を含有する化合物が、その原子の天然同位体組成以外の同位体組成を有することを指す。
【0062】
本明細書において使用する場合、用語「EC50」とは、特定の試験化合物によって誘導される、誘発される、または賦活化される、特定の応答の最大発現の50%で用量依存的応答を引き出す、特定の試験化合物の投与量、濃度または量を指す。
【0063】
本明細書において使用する場合、および別段の指定がない限り、用語「IC50」とは、このような応答を測定するアッセイにおいて、最大応答の50%阻害を達成する、特定の試験化合物の量、濃度または投与量を指す。
【0064】
本明細書において使用する場合、用語「対象」、および「患者」は、互換的に使用される。用語「対象(単数)」および「対象(複数)」とは、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス)および霊長類(例えば、カニクイザルなどのサル、チンパンジーおよびヒト)を含む哺乳動物などの動物、およびある特定の実施形態では、ヒトを指す。ある特定の実施形態では、対象は、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタなど)またはペット(例えば、イヌまたはネコ)である。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0065】
本明細書において使用する場合、用語「治療剤(単数)」および「治療剤(複数)」とは、障害、または1つもしくは複数のその症状の処置あるいは予防において使用することができる、任意の薬剤を指す。ある特定の実施形態では、用語「治療剤」とは、本明細書において提供される化合物を含む。ある特定の実施形態では、治療剤とは、障害、または1つもしくは複数のその症状の処置あるいは予防に有用であることが知られている、あるいはこれらのために使用されてきた、あるいは現在、使用されている薬剤のことである。
【0066】
「治療有効量」とは、状態を処置するため、対象に投与されると、その状態に対するこのような処置を行うのに十分な化合物または組成物の量を指す。「治療有効量」は、とりわけ、化合物、疾患または障害、およびその重症度、ならびに処置される対象の年齢、体重などに応じて様々となり得る。
【0067】
任意の疾患もしくは障害を「処置すること」またはその「処置」とは、ある特定の実施形態では、対象において存在する疾患または障害を改善することを指す。別の実施形態では、「処置すること」または「処置」とは、少なくとも1つの身体的パラメータを改善することを含み、このパラメータは対象によって認識されないことがある。さらに別の実施形態では、「処置すること」または「処置」とは、身体的(例えば、認識可能な症状の安定化)、または生理的(例えば、身体的パラメータの安定化)のどちらか一方、またはそれらの両方で、疾患または障害をモジュレートすることを含む。さらに別の実施形態では、「処置すること」または「処置」とは、疾患もしくは障害の発生を遅延させることまたは予防することを、あるいは疾患もしくは障害の再発を遅延させることまたは予防することを含む。さらに別の実施形態では、「処置すること」または「処置」とは、疾患もしくは障害の発生を予防すること、または疾患もしくは障害の再発を予防することを含まない。さらに別の実施形態では、「処置すること」または「処置」とは、疾患もしくは障害のどちらかを低減またはなくすこと、あるいは疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状の進行を抑制すること、あるいは、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状の重症度を軽減することを含む。
【0068】
本明細書において使用する場合、使用される用語「予防剤(単数)」および「予防剤(複数)」とは、障害、または1つもしくは複数のその症状の予防に使用することができる任意の薬剤を指す。ある特定の実施形態では、用語「予防剤」とは、本明細書において提供される化合物を含む。ある特定の他の実施形態では、用語「予防剤」とは、本明細書において提供される化合物を指さない。例えば、予防剤とは、障害の発生、発達、進行および/または重症度(severity)を妨害あるいは遅延させるのに有用なことが知られている、あるいはこれらのために使用されてきた、あるいは現在、使用されている薬剤のことである。
【0069】
本明細書において使用する場合、句「予防有効量」とは、障害に関連する1つもしくは複数の症状の発達、再発または発生の予防あるいは低減をもたらすのに十分な、あるいは別の治療法(例えば、別の予防剤)の予防的効果を増強または改善するのに十分な、治療法(例えば、予防剤)の量を指す。
【0070】
式(I)~(II)の化合物
増殖性、皮膚もしくは眼疾患または障害を処置あるいは予防するのに有用なタキソールコンジュゲート化合物が、本明細書に提供されている。本化合物は、本明細書に記載されている通りに調製することができ、治療法または診断に使用することができる。ある特定の実施形態では、治療法は、増殖性、皮膚もしくは眼疾患または障害の処置である。
【0071】
本明細書に記載されている実施形態は、引用されている化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物を含む。
【0072】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物:
【化2】
(式中、nは、1~20から選択される整数である)が提供される。ある特定の実施形態では、nは1である。ある特定の実施形態では、nは2である。ある特定の実施形態では、nは3である。ある特定の実施形態では、nは4である。ある特定の実施形態では、nは5である。ある特定の実施形態では、nは6である。ある特定の実施形態では、nは7である。ある特定の実施形態では、nは8である。ある特定の実施形態では、nは9である。ある特定の実施形態では、nは10である。ある特定の実施形態では、nは11である。ある特定の実施形態では、nは12である。ある特定の実施形態では、nは13である。ある特定の実施形態では、nは14である。ある特定の実施形態では、nは15である。ある特定の実施形態では、nは16である。ある特定の実施形態では、nは17である。ある特定の実施形態では、nは18である。ある特定の実施形態では、nは19である。ある特定の実施形態では、nは20である。ある特定の実施形態では、nは、6~10の整数である。好ましい実施形態では、nは8である。
【0073】
ある特定の実施形態では、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物:
【化3】
が提供される。
【0074】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、ゼロより高いdeまたは%deを有する。例えば、ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約10のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約25のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約50のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約75のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約80のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約85のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約90のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約95のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約97のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約98のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約99のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、100のdeまたは%deを有する。
【0075】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約50%含まない、少なくとも約60%含まない、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約80%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約97%含まない、少なくとも約99%含まないまたは100%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約85%~95%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約90%~95%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約85%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約90%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約95%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約97%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーが100%含まない。
【0076】
ある特定の実施形態では、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約50%含まない、少なくとも約60%含まない、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約80%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約97%含まない、少なくとも約99%含まないまたは100%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約85%~95%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約90%~95%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約85%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約90%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約95%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約97%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーが100%含まない。
【0077】
ある特定の実施形態では、式(X)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、互変異性体および/または混合物:
【化4】
が提供され、式(X)の化合物は、式(X)のすべての立体異性体の総重量と比較して、式(I)の化合物:
【化5】
を少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約99重量%または100重量%含み、nは、1~20から選択される整数である。
【0078】
ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は、式(X)の立体異性体のすべての総重量に比べて、重量基準で、式(I)の化合物を少なくとも約50%またはそれより多く含む。ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は、式(X)の立体異性体のすべての総重量に比べて、重量基準で、式(I)の化合物を少なくとも約75%またはそれより多く含む。ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は、式(X)の立体異性体のすべての総重量に比べて、重量基準で、式(I)の化合物を少なくとも約80%またはそれより多く含む。ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は、式(X)の立体異性体のすべての総重量に比べて、重量基準で、式(I)の化合物を少なくとも約85%またはそれより多く含む。ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は、式(X)の立体異性体のすべての総重量に比べて、重量基準で、式(I)の化合物を少なくとも約90%またはそれより多く含む。ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は、式(X)の立体異性体のすべての総重量に比べて、重量基準で、式(I)の化合物を少なくとも約95%またはそれより多く含む。ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は、式(X)の立体異性体のすべての総重量に比べて、重量基準で、式(I)の化合物を少なくとも約97%またはそれより多く含む。ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は、式(X)の立体異性体のすべての総重量に比べて、重量基準で、式(I)の化合物を少なくとも約98%またはそれより多く含む。ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は、式(X)の立体異性体のすべての総重量に比べて、重量基準で、式(I)の化合物を少なくとも約99%またはそれより多く含む。一実施形態では、式(X)の化合物は、100重量%の式(I)の化合物である。
【0079】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約50~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約60~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約70~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約75~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約80~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約85~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約90~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、95~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約97~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約98~100の範囲のdeまたは%deを有する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、約99~100の範囲のdeまたは%deを有する。
【0080】
一部の実施形態では、その化合物の指定される立体異性体を実質的に含まない、式(I)~(II)のいずれかの化合物の組成物が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、その化合物の指定される立体異性体を実質的に含まない、式(I)~(II)のいずれかの化合物の組成物であって、指定される立体異性体が反対のD-システインアミノ酸エピマーである、組成物が本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、本開示の方法および化合物において、本化合物は、他の立体異性体を実質的に含まない。ある特定の実施形態では、本開示の方法および化合物において、本化合物は、反対のD-システインアミノ酸エピマーを実質的に含まない。一部の実施形態では、本組成物は、少なくとも約50重量%、60重量%、70重量%、75重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%または99重量%~100重量%の上記化合物である化合物を含み、残りは、他の化学種または立体異性体を含む。一部の実施形態では、本組成物は、式(I)または(II)の化合物の重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを少なくとも約50%、60%、70%、75%、85%、90%、95%、98%または99%~100%含まない、式(I)または(II)の化合物を含む。一部の実施形態では、その化合物の指定される立体異性体を実質的に含まない、式(I)~(II)のいずれかの化合物の組成物が、本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、本開示の方法および化合物において、本化合物は、他の立体異性体を実質的に含まない。一部の実施形態では、本組成物は、少なくとも約50重量%、60重量%、70重量%、75重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%または99重量%~100重量%の上記化合物である化合物を含み、残りは、他の化学種または立体異性体を含む。
【0081】
同位体濃縮化合物
同様に、以下に限定されないが、式(I)~(II)のいずれかの同位体濃縮化合物を含む、同位体濃縮化合物が本明細書において提供される。
【0082】
薬物動態(「PK」)、薬力学(「PD」)および/または毒性プロファイルを改善する、医薬品の同位体濃縮(例えば、重水素化)は、いくつかのクラスの薬物内において既に実証されてきた。例えば、Lijinsky et al., Food Cosmet. Toxicol., 20: 393 (1982); Lijinsky et al., J. Nat. Cancer Inst., 69: 1127 (1982); Mangold et al., Mutation Res. 308: 33 (1994); Gordon et al., Drug Metab. Dispos., 15: 589 (1987); Zello et al., Metabolism, 43: 487 (1994); Gately et al., J. Nucl. Med., 27: 388 (1986); Wade D, Chem. Biol. Interact. 117: 191 (1999)を参照されたい。
【0083】
薬物の同位体濃縮は、例えば、(1)望ましくない代謝産物を低減または排除するため、(2)親薬物の半減期を増大するため、(3)所望の効果を達成するために必要な用量数を低減するため、(4)所望の効果を達成するために必要な用量の量を低下するため、(5)活性代謝産物のいずれかが形成される場合、その形成を増大させるため、および/または(6)特定の組織において、有害な代謝産物の生成を低減するために使用され得る。薬物の同位体濃縮はまた、併用療法が意図的であるか否かにかかわらず、併用療法にとって、より有効および/またはより安全な薬物を生成するために使用することができる。
【0084】
その同位体の1個に関する原子の置き換えは、化学反応の反応速度の変化をしばしばもたらす。この現象は、速度論的同位体効果(Kinetic Isotope Effect)(「KIE」)として知られている。例えば、C-H結合が、化学反応において律速段階の間に切断される場合(すなわち、最高の遷移状態エネルギーを伴うステップ)、その反応性水素を(より重い)同位体で置換することにより、反応速度の低下が引き起こされる。重水素速度論的同位体効果(Deuterium Kinetic Isotope Effect)(「DKIE」)は、KIEの最も一般的な形態である。(例えば、Foster et al., Adv. Drug Res., vol. 14, pp. 1-36 (1985); Kushner et al., Can. J. Physiol. Pharmacol., vol. 77, pp. 79-88 (1999)を参照されたい)。
【0085】
DKIEの大きさは、C-H結合が切断される所与の反応の速度と、水素が重水素に置き換えられており、かつC-D結合が切断される同じ反応の速度との間の比として表すことができる。DKIEは、約1(同位体効果がない)から非常に大きな数(50またはそれより大きいなど)までの範囲であり得、重水素が水素の代わりに置き換えられた場合、この反応は、50分の1またはさらに遅くなり得ることを意味する。
【0086】
水素をトリチウム(「T」)に置き換えると、重水素よりもさらに強固な結合をもたらし、数値上、一層大きな同位体効果をもたらす。同様に、以下に限定されないが、炭素の場合、13Cまたは14C;硫黄の場合、33S、34Sまたは36S;窒素の場合、15N;および酸素の場合、17Oまたは18Oを含む、他の元素の同位体の置換が、同様の速度論的同位体効果をもたらすことがある。
【0087】
哺乳動物の身体は、治療剤などの異物をその循環系から排除するため、様々な酵素を発現する。このような酵素の例には、腎排出のために、これらの異物と反応して、これらを一層、極性の中間体または代謝産物に変換する、シトクロムP450酵素(「CYP」)、エステラーゼ、プロテアーゼ、レダクターゼ、デヒドロゲナーゼおよびモノアミンオキシダーゼが含まれる。医薬化合物の最も一般的な代謝反応の一部は、炭素-水素(C-H)結合の、炭素-酸素(C-O)または炭素-炭素(C=C)パイ結合のどちらかへの酸化を含む。得られた代謝産物は、生理的条件下、安定なことがあるか、または不安定なことがあり、実質的に異なるPK/PD、および親化合物に比べて、急性および長期毒性プロファイルを有し得る。多数の薬物の場合、このような酸化は速い。したがって、これらの薬物は、多くの場合、複数のまたは高い一日用量の投与を必要とする。
【0088】
したがって、本明細書において提供される化合物のある特定の位置における同位体濃縮によって、天然同位体組成を有する類似の化合物と比べて、本明細書において提供される化合物の薬理学的、PK、PD、および/または毒性学的プロファイルに影響を及ぼす、検出可能なKIEが生じる。
【0089】
組成物および使用
医薬組成物および投与方法
本明細書において提供される化合物は、当分野において利用可能な方法および本明細書において開示されている方法を使用して、医薬組成物に製剤化され得る。本明細書において提供される化合物のいずれも、適切な医薬組成物中で提供され得、好適な投与経路によって投与され得る。一実施形態では、式(X)の化合物を含む医薬組成物であって、式(X)のすべての立体異性体の総重量と比較して、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約99重量%または100重量%の式(I)の化合物、および1種または複数の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0090】
一実施形態では、式(I)の化合物、および1種もしくは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物であって、反対のD-システインアミノ酸エピマーを重量基準で少なくとも約50%含まない、少なくとも約60%含まない、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約80%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約99%含まないまたは100%含まない、医薬組成物が提供される。一実施形態では、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約85%~95%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約90%~95%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約85%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約90%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約95%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約97%含まない。一実施形態では、式(I)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを100%含まない。
【0091】
一実施形態では、式(II)の化合物、および1種もしくは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物であって、反対のD-システインアミノ酸エピマーを重量基準で少なくとも約50%含まない、少なくとも約60%含まない、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約80%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約99%含まないまたは100%含まない、医薬組成物が提供される。一実施形態では、式(II)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約85%~95%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約90%~95%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約85%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約90%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約95%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを約97%含まない。一実施形態では、式(II)の化合物を含む医薬組成物は、重量基準で、反対のD-システインアミノ酸エピマーを100%含まない。
【0092】
本明細書において提供される方法は、本明細書において提供される少なくとも1つの化合物、および1種または複数の適合可能かつ薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を投与するステップを包含する。この文脈では、用語「薬学的に許容される」は、連邦政府または州政府の規制機関により承認を受けていること、あるいは米国薬局方、または動物において、およびある特定の実施形態では、ヒトにおいて使用するための他の一般に認識されている薬局方に列挙されていることを意味する。用語「担体」は、治療剤が一緒に投与される、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全および不完全))、賦形剤またはビヒクルを含む。このような薬学的担体は、水、および石油、動物、植物または合成起源の油を含めた油(ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など)などの滅菌液体とすることができる。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合、担体として使用され得る。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、特に注射溶液の場合、液体担体として使用することができる。好適な薬学的担体の例は、Martin, E.W., Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0093】
臨床実施では、本明細書において提供される医薬組成物または化合物は、当分野で公知の任意の経路によって投与され得る。例示的な投与経路には、以下に限定されないが、経口、吸入、舌下、頬側、動脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、鼻、非経口、肺内および皮下経路が含まれる。一部の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物または化合物は、非経口投与される。一部の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物または化合物は、経口投与される。
【0094】
非経口投与向け組成物は、エマルションまたは滅菌溶液であり得る。非経口組成物は、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)を含んでもよい。これらの組成物はまた、湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤および安定化剤を含有することができる。滅菌が、いくつかの方法で、例えば、細菌フィルターを使用して、放射線により、または加熱により行われ得る。非経口組成物はまた、使用時に、滅菌水、または任意の他の注射可能な滅菌媒体に溶解され得る、滅菌固体組成物の形態で調製され得る。
【0095】
一部の実施形態では、本明細書において提供される組成物は、医薬組成物または単一単位剤形である。本明細書において提供される医薬組成物および単一単位剤形は、予防有効量または治療有効量の、1種もしくは複数の予防用化合物または治療用化合物を含む。
【0096】
本医薬組成物は、1種または複数の薬学的賦形剤を含んでもよい。任意の好適な薬学的賦形剤が使用されてもよく、当業者は、好適な薬学的賦形剤を選択することが可能である。好適な賦形剤の非限定例には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが含まれる。特定の賦形剤が、医薬組成物または剤形に組み込むのに好適かどうかは、以下に限定されないが、剤形が対象に投与される方法、および剤形中の具体的な化合物を含めた、当分野で周知の様々な要因に依存する。組成物または単一単位剤形は、所望の場合、微量の湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝化剤を含有することもできる。したがって、以下に提供される薬学的賦形剤は、例を意図しており、限定ではない。追加の薬学的賦形剤には、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Handbook of Pharmaceutical Excipients, Rowe et al. (Eds.) 6th Ed. (2009)に記載されているものが含まれる。
【0097】
一部の実施形態では、本医薬組成物は、消泡剤を含む。任意の好適な消泡剤が使用されてもよい。一部の態様では、消泡剤は、アルコール、エーテル、油、ワックス、シリコーン、界面活性剤およびそれらの組合せから選択される。一部の態様では、消泡剤は、鉱油、植物油、エチレンビスステアラミド、パラフィンワックス、エステルワックス、脂肪アルコールワックス、長鎖脂肪アルコール、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル、ケイ素グリコール、フルオロシリコーン、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールコポリマー、ポリジメチルシロキサン-二酸化ケイ素、エーテル、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ソルビタントリオレエート、エチルアルコール、2-エチル-ヘキサノール、ジメチコン、オレイルアルコール、シメチコンおよびそれらの組合せから選択される。
【0098】
一部の実施形態では、本医薬組成物は、共溶媒を含む。共溶媒の例示的な例には、例えば、エタノール、ポリ(エチレン)グリコール、ブチレングリコール、ジメチルアセトアミド、グリセリンおよびプロピレングリコールが含まれる。
【0099】
一部の実施形態では、本医薬組成物は緩衝剤を含む。緩衝剤の例示的な例には、例えば、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、水酸化物、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、グリシン、メチオニン、グアーガムおよびグルタミン酸一ナトリウムが含まれる。
【0100】
一部の実施形態では、本医薬組成物は、担体または充填剤を含む。担体または充填剤の例示的な例には、例えば、ラクトース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、キトサン、ステアリン酸、キサンタンガムおよびグアーガムが含まれる。
【0101】
一部の実施形態では、本医薬組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤の例示的な例には、例えば、d-アルファトコフェロール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、ドクサートナトリウム、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ラウリン酸、マクロゴール15ヒドロキシステアレート、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシルグリセリド、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステルおよびビタミンEポリエチレン(グリコール)スクシネートが含まれる。
【0102】
一部の実施形態では、本医薬組成物は、固化防止剤を含む。固化防止剤の例示的な例には、例えば、リン酸カルシウム(三塩基性)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよび酸化マグネシウムが含まれる。
【0103】
医薬組成物と共に使用され得る他の賦形剤には、例えば、アルブミン、抗酸化剤、抗菌剤、抗真菌剤、生体吸収性ポリマー、キレート剤、制御放出剤、希釈剤、分散剤、溶解増強剤、乳化剤、ゲル化剤、軟膏基剤、浸透促進剤、保存剤、可溶化剤、溶媒、安定化剤および糖が含まれる。これらの作用物質の各々の具体例は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Handbook of Pharmaceutical Excipients, Rowe et al. (Eds.) 6th Ed. (2009), The Pharmaceutical Pressに記載されている。
【0104】
一部の実施形態では、本医薬組成物は、溶媒を含む。一部の態様では、溶媒は、滅菌等張性生理食塩水溶液などの生理食塩水溶液、またはデキストロース溶液である。一部の態様では、溶媒は注射用水である。
【0105】
一部の実施形態では、本医薬組成物は、マイクロ粒子またはナノ粒子などの微粒子形態にある。マイクロ粒子およびナノ粒子は、ポリマーまたは脂質などの、任意の好適な物質から形成されてもよい。一部の態様では、マイクロ粒子またはナノ粒子は、ミセル、リポソームまたはポリマーソームである。
【0106】
一部の実施形態では、水は、一部の化合物の分解を促進する恐れがあるので、化合物を含む無水医薬組成物および剤形が、本明細書においてさらに提供される。
【0107】
本明細書において提供される無水医薬組成物および剤形は、無水物または低水分含有成分、および低水分または低湿度条件を使用して調製することができる。ラクトース、および一級または二級アミンを含む少なくとも1種の活性成分を含む医薬組成物および剤形は、製造、包装の間に水分および/もしくは湿度と実質的な接触がなされる場合、ならびに/または保管が予期される場合、無水であり得る。
【0108】
無水医薬組成物は、その無水性質が維持されるよう、調製して保管することができる。したがって、無水組成物は、水への曝露を防止することが知られている物質を使用して包装され得、こうして、無水組成物は、好適な処方キット中に含まれ得る。好適な包装の例には、以下に限定されないが、気密ホイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックが含まれる。
【0109】
本明細書において提供されるラクトース不含組成物は、当分野で周知の賦形剤を含むことができ、例えば、米国薬局方(USP)SP(III)/NF(XVI)において列挙されている。一般に、ラクトース不含組成物は、薬学的に適合可能かつ薬学的に許容される量で、活性成分、結合剤/充填剤および滑沢剤を含む。例示的なラクトース不含剤形は、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ化デンプンおよびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0110】
同様に、化合物が分解する速度を低下させる1種または複数の賦形剤を含む医薬組成物および剤形が提供される。本明細書において、「安定剤」と称される、このような賦形剤には、以下に限定されないが、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤が含まれる。
【0111】
非経口剤形
ある特定の実施形態では、非経口剤形が提供される。非経口剤形は、以下に限定されないが、皮下、静脈内(ボーラス注射を含む)、吸入、筋肉内および動脈内を含めた、様々な経路によって対象に投与され得る。それらの投与は、通常、混入物質に対する対象の自然防御を迂回するので、非経口剤形は、通常、滅菌であるが、または対象への投与前に滅菌されることが可能である。非経口剤形の例には、以下に限定されないが、注射の準備ができた溶液、注射用の薬学的に許容されるビヒクル中に溶解するまたは懸濁させる準備ができた乾燥製品、注射する準備ができた懸濁物、エマルション、および吸入する準備ができた噴霧液滴が含まれる。
【0112】
非経口剤形をもたらすよう使用することができる好適なビヒクルは、当業者に周知である。例には、以下に限定されないが、注射用水USP;以下に限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液および乳酸加リンゲル注射液などの水性ビヒクル;以下に限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル;および以下に限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクルが含まれる。
【0113】
吸入による薬物送達向け剤形には、噴霧体、非水性吸入器、乾燥粉末吸入器およびジェット式または超音波式ネブライザーが含まれる。
【0114】
本明細書において開示されている1つまたは複数の化合物の溶解度を増大する賦形剤もまた、非経口剤形に組み込まれ得る。
【0115】
経口剤形
ある特定の実施形態では、経口剤形が提供される。経口剤形は、以下に限定されないが、舌下、唇下および頬側を含めた、様々な経路によって対象に投与され得る。経口投与に典型的な剤形には、丸剤、錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤、液剤、懸濁剤またはエマルションが含まれる。剤形はまた、区画化を特徴とし得る。例えば、剤形が丸剤、錠剤またはカプセル剤である場合、異なる賦形剤または賦形剤の様々な濃度を有する異なる層の物質を有してもよい。例えば、経口投与経路向けに、化合物の生体利用率を増強するために、腸溶コーティングされた経口錠剤が使用されてもよい。腸溶コーティングは、錠剤が胃酸で破壊されないことを可能にする、賦形剤の層となる。一実施形態では、経口剤形は、経口崩壊性錠剤である。一実施形態では、経口剤形は、チュアブル錠剤である。
【0116】
投与量および単位剤形
ヒト治療剤では、医師は、予防的処置または治癒的処置に従い、および年齢、体重、状態および処置される対象に特異的な他の因子に従い、最も適切と考える薬量を決定する。
【0117】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される組成物は、医薬組成物または単一単位剤形である。本明細書において提供される医薬組成物および単一単位剤形は、予防有効量または治療有効量の、本明細書に記載されている1種または複数の予防用化合物または治療用化合物を含む。
【0118】
障害、または1つもしくは複数のその症状の予防あるいは処置に有効な化合物あるいは組成物の量は、疾患または障害の性質および重症度、ならびに化合物が投与される経路に応じて様々となろう。頻度および投与量はまた、行われる具体的な治療法(例えば、治療剤または予防剤)、障害の重症度、疾患または障害、ならびに投与経路、ならびに対象の年齢、身体、体重、応答および過去の病歴に応じた各対象に特異的な因子により様々となろう。有効用量は、in vitro、または動物モデル試験系に由来する用量-応答曲線から外挿することができる。
【0119】
ある特定の実施形態では、組成物の例示的な用量には、対象または試料重量1キログラムあたりの化合物のミリグラム量またはマイクログラム量(例えば、1キログラムあたり約10マイクログラム~1キログラムあたり約50ミリグラム、1キログラムあたり約100マイクログラム~1キログラムあたり約25ミリグラム、または1キログラムあたり約100マイクログラム~1キログラムあたり約10ミリグラム)が挙げられる。ある特定の実施形態では、対象における、障害、または1つもしくは複数のその症状を予防、処置、管理あるいは改善するために投与される、化合物の重量に基づく、本明細書において提供される化合物の投与量は、対象の体重1kgあたり、0.1mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、10mgもしくは15mgであるか、またはそれより多い。別の実施形態では、対象における、本組成物、あるいは障害、または1つもしくは複数のその症状を予防、処置、管理または改善するために投与される本明細書において提供される組成物の投与量は、0.1mg~200mg、0.1mg~100mg、0.1mg~50mg、0.1mg~25mg、0.1mg~20mg、0.1mg~15mg、0.1mg~10mg、0.1mg~7.5mg、0.1mg~5mg、0.1~2.5mg、0.25mg~20mg、0.25~15mg、0.25~12mg、0.25~10mg、0.25mg~7.5mg、0.25mg~5mg、0.25mg~2.5mg、0.5mg~20mg、0.5~15mg、0.5~12mg、0.5~10mg、0.5mg~7.5mg、0.5mg~5mg、0.5mg~2.5mg、1mg~20mg、1mg~15mg、1mg~12mg、1mg~10mg、1mg~7.5mg、1mg~5mgまたは1mg~2.5mgである。
【0120】
用量は、好適なスケジュールに準拠して、例えば、毎週、1回、2回、3回または4回、投与され得る。一部の場合、当業者に明白な通り、本明細書において開示されている範囲外の化合物の投与量を使用することが必要となることがある。さらに、臨床医または処置医師は、対象の応答と関連付けて、治療法を中断する、調節するまたは終了する方法および時機を認識していることが留意される。
【0121】
当業者によって容易に認識される通り、様々な疾患および状態に対して、様々な治療有効量が適用可能となり得る。同様に、本明細書において提供される化合物または組成物に関連する有害作用を引き起こすには不十分であるか、またはこれを低減するには十分であるが、このような障害を予防、管理、処置または改善するのに十分な量もまた、本明細書において記載されている投与量および用量頻度スケジュールによって包含される。さらに、対象に、本明細書において提供される組成物の複数回の投与量が投与される場合、すべての投与量が必ずしも同じである必要はない。例えば、対象に投与される投与量は、組成物の予防作用または治療作用を改善するために増加されてもよく、または特定の対象が経験する1つまたは複数の副作用を低減するよう低下させてもよい。
【0122】
ある特定の実施形態では、処置または予防は、本明細書において提供される化合物もしくは組成物の1つまたは複数の負荷用量で開始されて、この後に1つまたは複数の維持用量が続き得る。
【0123】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される化合物または組成物の用量は、対象の血液または血清における化合物の定常状態濃度を達成するために投与され得る。定常状態の濃度は、当業者に入手可能な技法に準拠して測定することによって決定することができるか、または身長、体重および年齢などの対象の身体的特徴に基づくことができる。
【0124】
ある特定の実施形態では、同じ組成物の投与が繰り返されてもよく、投与は、少なくとも1日間、2日間、3日間、5日間、10日間、15日間、30日間、45日間、2か月間、75日間、3か月間または6か月間だけ分離されていてもよい。他の実施形態では、同じ予防剤または治療剤の投与が繰り返されてもよく、投与は、少なくとも1日間、2日間、3日間、5日間、10日間、15日間、30日間、45日間、2か月間、75日間、3か月間または6か月間だけ分離されていてもよい。
【0125】
治療適用
治療適用に関して、本化合物は、ボーラスとして静脈内にまたは一定期間にわたる連続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、吸入または腫瘍内経路によって、哺乳動物、ある特定の実施形態では、ヒトに、当分野で公知のもの、および本明細書において議論されるものなどの投与形態に好適な薬学的に許容される投与量で投与される。本化合物はまた、局所および全身性の治療作用を発揮するよう、腫瘍周辺、病変内または病変周辺経路によって好適に投与される。ある特定の実施形態では、本化合物は、例えば舌下により、当分野で公知のもの、および本明細書において議論されるものなどの経口投与形態に好適な薬学的に許容される投与量で、哺乳動物、ある特定の実施形態では、ヒトに投与される。例えば、本開示の化合物は、液体形態または固体形態として、ヒトに経口投与されてもよい。固体剤形には、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が含まれる。このような固形剤形において、化学実体は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの1種または複数の薬学的に許容される賦形剤、ならびに/またはa)例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアカシアなどの結合剤、c)例えば、グリセロールなどの保湿剤、d)例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケートおよび炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)例えば、パラフィンなどの溶解遅延剤、f)例えば、四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)例えば、カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤、ならびにi)例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、ならびにそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝化剤も含んでもよい。同様のタイプの固体組成物もまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中に充填剤として使用されてもよい。一実施形態では、経口剤形は、経口崩壊性錠剤である。
【0126】
本明細書において提供される化合物は、本明細書に記載されている任意の疾患または障害(例えば、増殖性、皮膚もしくは眼疾患または障害)の処置に有用となり得る。
【0127】
ある特定の実施形態では、疾患または障害はがんである。ある特定の実施形態では、疾患または障害は、脳がん、肝臓がん、卵巣がん、胃がんまたは結腸直腸がんである。ある特定の実施形態では、疾患または障害は、脳がんである。ある特定の実施形態では、疾患または障害は、肝臓がんである。ある特定の実施形態では、疾患または障害は、卵巣がんである。ある特定の実施形態では、疾患または障害は、胃がんである。ある特定の実施形態では、疾患または障害は、結腸直腸がんである。
【0128】
ある特定の実施形態では、疾患または障害は、頭頸部がん、口腔がんまたは顎顔面がんである。
【0129】
がんの好適な例には、乳がん(例えば、侵襲性乳管がん、非侵襲性乳管がん、炎症性乳がん)、前立腺がん(例えば、ホルモン依存性前立腺がん、ホルモン非依存性前立腺がん)、膵臓がん(例えば、膵管がん)、胃がん(例えば、乳頭状腺癌、粘液腺癌、腺扁平上皮癌)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫)、結腸がん(例えば、胃腸管間質腫瘍)、直腸がん(例えば、胃腸管間質腫瘍)、結腸直腸がん(例えば、家族性結腸直腸がん、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、胃腸管間質腫瘍)、小腸がん(例えば、非ホジキンリンパ腫、胃腸管間質腫瘍)、食道がん、十二指腸がん、舌がん、咽頭がん(例えば、鼻咽腔がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、唾液腺がん、脳腫瘍(例えば、松果体星状細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫、びまん性星状細胞腫、退形成性星状細胞腫)、神経鞘種、肝臓がん(例えば、原発性肝臓がん、肝外胆管がん)、腎がん(例えば、腎細胞がん、腎盤および尿管の移行上皮がん)、胆管がん、子宮内膜がん、子宮頚がん、卵巣がん(例えば、上皮性卵巣がん、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、低悪性度卵巣腫瘍)、膀胱がん、尿道がん、皮膚がん(例えば、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌)、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん)、副甲状腺がん、鼻腔がん、副鼻腔がん、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、ユーイング腫瘍、子宮肉腫、軟組織肉腫)、血管線維腫、網膜の肉腫、陰茎がん、睾丸腫瘍、小児固形腫瘍(例えば、ウィルムス腫瘍、小児腎腫瘍)、カポジ肉腫、AIDSによって引き起こされるカポジ肉腫、上顎洞の腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫および白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病)が含まれる。
【0130】
ある特定の実施形態では、疾患は、皮膚科的なものである。ある特定の実施形態では、疾患は、ざ瘡瘢痕化、光線性角化症、加齢斑(肝斑)、アトピー性皮膚炎(湿疹)、自己免疫疾患、基底細胞癌、水疱性類天疱瘡、口腔灼熱症候群、カルシフィラキシス、がん、口内炎、慢性じんましん、結合組織障害、接触性皮膚炎、皮膚ループス、皮膚T細胞リンパ腫、皮膚炎、皮膚筋炎、エーラス-ダンロス症候群、表皮水疱症、肢端紅痛症、遺伝性皮膚障害、移植片対宿主病、環状肉芽腫、グレーブス病、毛髪疾患、脱毛、血管腫、化膿性汗腺炎、好酸球増多症候群、多汗症、皮膚のかゆみ(掻痒)、ケロイド、クリッペル-トレノネー症候群、扁平苔癬、口唇がん、リンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌、黒子、モルフェア、粘膜疾患、爪疾患、腎性全身性線維症、神経線維腫症、非黒色腫皮膚がん、口腔扁平苔癬、脂肪織炎、天疱瘡、色素沈着障害、多形日光疹、原発性胆汁性胆管炎、乾癬、壊疽性膿皮症、酒さ、強皮症、皮膚がん、皮膚感染、くも状静脈、皮膚の扁平上皮癌、スティーヴンス-ジョンソン症候群、皮下脂肪疾患、日光アレルギー、下肢静脈瘤、脈管異常、脈管炎、白斑、外陰部皮膚障害およびしわからなる群より選択される。
【0131】
ある実施形態では、疾患は、眼科的なものである。ある特定の実施形態では、疾患は、加齢黄斑変性、弱視(amblyopia)(弱視((lazy eye))、無眼球症および小眼球症、乱視、ベーチェット病、ビエッティ結晶性ジストロフィ(Bietti’s crystalline dystrophy)、眼瞼炎、眼瞼けいれん、白内障、大脳性視覚障害(CVI)、眼欠損症、色覚異常、輻輳不全、角膜状態、糖尿病性網膜症、ドライアイ、遠視(farsightedness)(遠視(hyperopia))、飛蚊症、緑内障、特発性頭蓋内圧亢進症、ロービジョン、黄斑浮腫、黄斑円孔、黄斑前膜、近視(nearsightedness)(近視(myopia))、眼ヒストプラスマ症候群(ocular histoplasmosis syndrome)(OHS)、結膜炎、老視、希少疾患、屈折異常、網膜剥離、網膜色素変性、網膜芽細胞腫、未熟児網膜症、シュタルガルト病、アッシャー症候群、ぶどう膜炎および硝子体剥離からなる群より選択される。
【0132】
ある特定の実施形態では、有効量の本明細書において提供される化合物または薬学的に許容されるその塩の投与を含む、処置のための方法が、本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に、疾患または障害の処置に有効な量の本明細書に記載されている化合物を、疾患もしくは障害の処置または予防に有効な第2の薬剤と組み合わせて投与するステップを包含する。ある特定の実施形態では、本化合物は、本明細書の他の場所に記載されている通り、医薬組成物または剤形の形態にある。
【0133】
一部の実施形態では、対象は、処置を受けたことがない対象である。さらなる実施形態では、対象は、以前に治療法を受けたことがある。例えば、ある特定の実施形態では、対象は、単剤の処置レジメンに応答していない。
【0134】
ある特定の実施形態では、他の治療法に関連する1つまたは複数の有害事象のために、対象は、ある他の治療法を中断した対象である。ある特定の実施形態では、対象は、本明細書において提供される方法の投与前に、ある他の治療法を受けたことがあり、その治療法を中断している。さらなる実施形態では、対象は、治療を受けたことがあり、本明細書において提供される化合物の投与と共にその治療を継続して受けている。本明細書において記載されている化合物は、当業者の判断に応じて、疾患または障害の処置のための他の治療法と共に共投与され得る。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法または組成物は、疾患または障害の処置のための低下した用量の他の治療法と共に共投与され得る。
【0135】
診断適用
一部の実施形態では、本明細書において提供される化合物は、診断適用に使用される。これらの適用は、例えば、増殖性、皮膚もしくは眼疾患または障害などの、疾患または障害のための診断および/あるいは予後を行うのに有用となり得る。
【0136】
いくつかの診断適用および予後適用または実施形態では、本化合物は、検出可能な部分で標識されてもよい。好適な検出可能な部分には、以下に限定されないが、放射性同位体、蛍光標識および酵素-基質標識が含まれる。別の実施形態では、本化合物は、標識されている必要はなく、本化合物の存在は、本化合物に特異的に結合する、標識化抗体またはその抗原結合断片を使用して検出され得る。
【0137】
キット
一部の実施形態では、本明細書において提供される化合物は、キットの形態(すなわち、所定量の試薬と手順を実施するための指示との包装された組合せ物)で提供される。一部の実施形態では、手順は、診断アッセイである。ある特定の実施形態では、手順は、治療的手順である。
【0138】
一部の実施形態では、本キットは、本化合物を再構成するための溶媒をさらに含む。一部の実施形態では、本化合物は、医薬組成物の形態で提供される。
【0139】
一部の実施形態では、キットは、本明細書において提供される化合物または組成物、必要に応じた第2の薬剤または組成物、および障害を処置するための使用に関する情報を医療提供者に提示する指示を含むことができる。指示は、印刷形態、またはフロッピー(登録商標)ディスク、CDもしくはDVDなどの電子媒体の形態で、またはこのような指示を得ることができるウェブサイトアドレスの形態で提供されてもよい。本明細書において提供される化合物もしくは組成物、または第2の薬剤もしくは組成物の単位用量は、対象に投与されると、化合物もしくは組成物の治療的または予防的に有効な血漿中レベルが、少なくとも1日間、対象において維持され得るような投与量を含むことができる。一部の実施形態では、化合物または組成物は、滅菌水性医薬組成物または乾燥粉末(例えば、凍結乾燥)組成物として含まれ得る。
【0140】
一部の実施形態では、好適な包装が提供される。本明細書において使用する場合、「包装」には、系において慣用的に使用される固体マトリックスまたは材料を含み、対象に投与するのに好適な、本明細書において提供される化合物および/または第2の薬剤を固定した境界値内に保持することが可能である。このような材料には、ガラスおよびプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート)ボトル、バイアル、紙、プラスチック、プラスチック-ホイルラミネート封筒などが含まれる。e-ビーム滅菌技法を使用する場合、包装は、内容物の滅菌を可能にするほど十分に低い密度を有するべきである。
【0141】
調製および合成手順
一部の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、スキーム1に概説されている通りに調製される。本出願における化合物の合成は、ここに例示されているこのような一般反応スキームに限定されない。個々の化合物のそれぞれの詳細な合成に関しては、実施例の項目を確認されたい。
スキーム1
タキソール-S-S-LG+HS-CH-C(AcNH-)-CO-(D-Arg)-NH
【0142】
スキーム1。式IまたはIIの化合物は、チオ-ペプチド、例えば、4-メルカプトブタノエート-(D-Arg)-NHとジチオ-タキソール誘導体との反応によって調製することができる。スキーム1では、LGは、脱離基であり、nは、1~20の整数、例えば、8である。例示的な反応条件は、以下の実施例に提示されている。
【実施例
【0143】
化合物の調製
本明細書に記載されている反応に使用される化合物は、市販の化学物質から、および/または化学文献に記載されている化合物から始める、当業者に公知の有機合成技法に従い作製される。「市販の化学物質」は、Acros Organics(Pittsburgh、PA)、Advanced ChemBlocks,Inc(Burlingame、CA)、Aldrich Chemical(Milwaukee、WI、Sigma ChemicalおよびFlukaを含む)、AK Scientific(Union City、CA)、AstaTech,Inc.(Bristol、PA)、Aurum Pharmatech LLC(Franklin Park、NJ)、Combi-Blocks,Inc.(San Diego、CA)、Enamine(Monmouth Jct.、NJ)、Fisher Scientific Co.(Pittsburgh、PA)、Frontier Scientific(Logan、UT)、TCI America(Portland、OR)およびVWR(Radnor、PA)などの標準市販供給業者から得る。特定の反応物および類似した反応物は、大部分の公共図書館および大学図書館において、ならびにオンラインデータベースから入手可能な、米国化学会のChemical Abstract Serviceによって用意されている既知化学物質のインデックスから、必要に応じて特定される。
【0144】
本明細書に記載されている化合物の調製に有用な反応物の合成を詳述する、またはそれらの調製を記載する論文に対する参照を提示する好適な参考書には、例えば、“Synthetic Organic Chemistry”, John Wiley & Sons, Inc., New York; S. R. Sandler et al., “Organic Functional Group Preparations,” 2nd Ed., Academic Press, New York, 1983; ”T. L. Gilchrist, “Heterocyclic Chemistry”, 2nd Ed., John Wiley & Sons, New York, 1992; and J. March, “Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure”, 4th Ed., Wiley-Interscience, New York, 1992; R. C. Larock “Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations” 2nd Edition (1999) Wiley-VCH, ISBN: 0-471-19031-4; “Organic Reactions” (1942-2000) John Wiley & Sons, in over 55 volumes;および“Chemistry of Functional Groups” John Wiley & Sons, in 73 volumesが挙げられる。一部の化合物は、保護基の適用を必要とする。このような保護の必要性は、当分野の技術の範囲内にある。保護基の一般的な記載およびそれらの使用に関しては、T.W. Greene, P.G.M. Nuts, and Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York, 1999を参照されたい。
【0145】
分析方法および機器
【0146】
本明細書に記載されている反応によって調製される化合物は、当業者に公知の分析技法に準拠して特徴づけられる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、混合物中の各構成成分を分離、同定および定量するために使用される、分析化学における技法である。逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)は、疎水性固定相を使用するHPLC技法である。分取スケールの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(分取HPLC)は、ある量の純粋な化合物が生じる分離技法である。液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の物理的分離能と質量分析法(MS)の質量分析能とを併せ持つ分析化学技法である。
[00103] 本明細書に記載されている分析技法を詳述する好適な参考書としては、例えば、Lloyd R. Snyder et al., “Practical HPLC Method Development” 2nd Ed., Wiley-Interscience; New York, 1997; Michael W. Dong, “HPLC and UHPLC for Practicing Scientists” 2nd Ed., Wiley; 2019; Marvin C. McMaster, “LC/MS: A Practical User’s Guide”, Wiley-Interscience, 2005 and Stavros Kromidas, “The HPLC-MS Handbook for Practitioners” 1st Ed., Wiley-VCH, 2017が挙げられる。
【0147】
実施例中に使用される略語は、以下を含む。
【表12】
【0148】
特に明記されていない限り、試薬および溶媒は、商業的供給業者から受領したまま使用した。無水溶媒およびオーブン乾燥ガラス器具は、水分および/または酸素に敏感な合成変換の場合に使用した。反応時間および収率は、最適化しなかった。実施例番号および化合物番号は、同じである。
(実施例1)
Ac-L-システイン(パクリタキセル-4-メルカプトブタノエート)-D-アルギニン-NH(1)
【化6】
工程A. Ac-L-システイン-D-アルギニン-NH(1)
【0149】
ペプチド合成装置のFmoc戦略によって、RinkアミドMBHA樹脂(2.0mmol、0.383mmol/g、5.23g)を固体支持体として使用し、化合物1を調製した。所望の配列の完了を達成した後に、14.4gのペプチド樹脂を得て、これを次に、TFAカクテル(TFA:チオアニソール:フェノール:EDT:HO=87.5:5:2.5:2.5:2.5)で3時間、処理して、固体支持体からペプチドを開裂させて、側鎖保護基をすべて除去した。得られた懸濁物をろ過して、固体樹脂を除去し、ペプチドを含有するろ液を10倍の冷エーテルに入れて沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって収集し、冷エーテルで2回、洗浄し、真空下で乾燥すると、1.74gの粗製化合物が得られた。粗製化合物1は、TFA緩衝液(緩衝液A:HO中の0.1%TFA;緩衝液B:80%ACN+20%HO中の0.1%TFA)を用いる分取HPLCによって精製し、1.04gの純粋な化合物1であるAc-L-システイン-D-アルギニン8-NHがTFA塩(90%純度、59.6%収率)として得られた。
工程B. Ac-L-システイン(パクリタキセル-4-メルカプトブタノエート)-D-アルギニン-NH(3)
【0150】
化合物1(1.3当量、1.00g、0.430mmol)および化合物2(1当量、0.353g、0.331mmol;Rodrigues et al., 1995, Chem Biol 2:223-227; Dubikovskaya et al., 2008, Proc Natl Acad Sci. 105:12128-12133)のDMF(70ml)溶液に、撹拌しながら、DIPEA(5.2当量、0.30ml、1.72mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩、撹拌し、化合物1が完全に消費されるまで、HPLCおよびMSによってモニタリングした。HOでクエンチした後、反応混合物をさらに2時間、撹拌した。化合物3の粗生成物をACN/HOにより希釈し、次いでTFA緩衝液(緩衝液A:HO中の0.1%TFA;緩衝液B:80%ACN+20%HO中の0.1%TFA)を用いる精製のため、RP-HPLCにロードした。所望のペプチドを含有する画分を収集し、凍結乾燥して、543mgの化合物3、Ac-L-システイン(パクリタキセル-4-メルカプトブタノエート)-D-アルギニン-NHを、オフホワイト粉末として得た(98.3%純度)。コンジュゲーションおよび精製後の収率は、化合物2に基づいて69.5%である。LCMS:計算値:2365.7;実測値:2365。
(実施例2)
Ac-D-システイン(パクリタキセル-4-メルカプトブタノエート)-D-アルギニン-NH(5)
【化7】
工程A. Ac-D-システイン-D-アルギニン-NH(4)
【0151】
ペプチド合成装置のFmoc戦略によって、RinkアミドMBHA樹脂(10.0mmol、0.316mmol/g、32.7g)を固体支持体として使用し、化合物4を調製した。所望の配列の完了を達成した後に、71.3gのペプチド樹脂を得て、これを次に、TFAカクテル(TFA:チオアニソール:フェノール:EDT:HO=87.5:5:2.5:2.5:2.5)で3時間、処理して、固体支持体からペプチドを開裂させて、側鎖保護基をすべて除去した。得られた懸濁物をろ過して、固体樹脂を除去し、ペプチドを含有するろ液を冷エーテルに入れて沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって収集し、冷エーテルで2回、洗浄し、真空下で乾燥すると、13.4gの粗製化合物4が得られた。粗製化合物4は、TFA緩衝液(緩衝液A:HO中の0.1%TFA;緩衝液B:80%ACN+20%HO中の0.1%TFA)を用いる分取HPLCによって精製し、次いで、HCl緩衝液(緩衝液A:HO中の0.05%HCl;緩衝液B:80%ACN+20%HO中の0.05%HCl)を使用するHCl塩へのイオン交換により、4.49gの純粋な化合物4であるAc-D-システイン-D-アルギニン8-NHがHCl塩として得られた(95%純度、33.4%収率)。
【0152】
工程B. Ac-D-システイン(パクリタキセル-4-メルカプトブタノエート)-D-アルギニン-NH(5)
化合物4(1.3当量、0.930g、0.546mmol)および化合物2(1当量、0.447g、0.420mmol)のDMF(50ml)溶液に、撹拌しながら、DIPEA(5.2当量、0.382ml、2.19mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩、撹拌し、化合物4が完全に消費されるまで、HPLCおよびMSによってモニタリングした。反応混合物をHOでクエンチした後、さらに2時間、撹拌した。化合物5の粗生成物をACN/HOにより希釈し、次いで、TFA緩衝液(緩衝液A:HO中の0.1%TFA;緩衝液B:80%ACN+20%HO中の0.1%TFA)を用いる精製のため、RP-HPLCにロードした。所望のペプチドを含有する画分を収集し、凍結乾燥して、818mgの化合物5であるAc-D-システイン(パクリタキセル-4-メルカプトブタノエート)-D-アルギニン8-NHがオフホワイト粉末として得られた(97.9%純度)。コンジュゲーションおよび精製後の収率は、化合物2に基づいて82%である。LCMS:計算値:2365.7;実測値:2365.5。
【0153】
生物学的実施例1
細胞毒性アッセイ - CCK8がん細胞
ペプチド薬コンジュゲートの細胞毒性、およびがん細胞の増殖のその阻害を研究するため、CCK-8アッセイを適用した。最初に、100μLのDMEM培地を用いて、2~10×10個の細胞(異なる細胞系の成長速度に応じる)を、通常の培養培地中、96ウェルプレートの各ウェルに播種した。次に、この細胞を4~5%COと共に、37℃で一晩、培養した。異なる用量(Hep3B、Hep G2およびMCF7/MBA-MD-231の場合、4000、2000、1000、500nM;MCF7/ADR、22Rv1、CNE1、HCT116、DLD-1の場合、1000、333.3、100.0、33.33、3.333、1.000、0.333nM)のタキソールおよびペプチド薬を加えた。48~72時間のインキュベーション後、CCK-8溶液を各ウェルに加えた。次に、細胞を37℃で4時間、インキュベートした。光学密度は、マルチスキャン分光計(PerkinElmerのEnSpire Multilabel Plate Reader)を使用して、450/650nmにおいて測定した。光学密度は、試料中の生存細胞の数に直線的に比例する:
【数1】
【0154】
MCF7/ADR、22Rv1、CNE1、HCT116、DLD-1細胞系に関するプレートのレイアウトを以下に示す。
【表13】
【0155】
ペプチド薬コンジュゲート化合物3(L-システインリンカー)の場合、抗増殖と濃度との間に良好な相関関係が存在することが見出され、MCF7/MBA-MD-231および肝臓がんHep 3B細胞において、化合物5(D-シスチンリンカー)が観測された。タキソールに関する濃度向上による阻害変化は、観測されなかった。顕著に強力ながん細胞阻害が、高いコンジュゲート濃度時に観測された。どちらのペプチド薬のコンジュゲートも、タキソールよりも良好ながん細胞死滅特性をもたらした。化合物3は、乳がんMCF7/MBA-MD-231(図1)および肝臓がんHep 3B細胞(図2A)のどちらの場合でも、すべての試験濃度において、化合物5に比べると、がん細胞阻害に実質的に優れていた。タキソールは、4μMの用量において、肝臓がんHep 3B細胞を11.5%しか阻害しなかった一方、化合物5(D-システインリンカー)は、23.2%の抗増殖を有した。化合物3(L-システインリンカー)は、化合物5(D-システインリンカー)およびタキソールに比べて、36.0%のがん細胞阻害で、実質的に一層高い効力をもたらした(表1A)。
【表1A】
【0156】
Hep G2細胞中の化合物5および化合物3の阻害が、図2Bに示されている。化合物3の抗増殖作用は、2000nMの濃度では、タキソールおよび化合物5の抗増殖作用よりも高かった。
【0157】
MCF7/ADR、22Rv1、CNE1、HCT116、DLD-1における増殖実験からの結果を、表1Bおよび図2C~2Gに示す。化合物3は、試験したすべての細胞系において、化合物5に比べて、より低いIC50値を示した。重要なことに、化合物3は、多剤耐性乳がん(MCF7/ADR)細胞系に対して、437.5nMのIC50値を示した一方、化合物5およびタキソールはどちらも、>1000nMのIC50を示した。
【表1B】
【0158】
生物学的実施例2
緩衝液中での安定性
化合物5(1mM)および化合物3(1mM)の作業溶液を調製した。緩衝溶液(199μL)を調製し、14個のインキュベーション管に分割した。次に、これらの管を37℃で15分間、事前加温した。5μMの最終濃度の場合、1mMの化合物5の作業溶液を7個のインキュベーション管に加え(各1μL)、5μMの最終濃度の場合、1mMの化合物3の作業溶液を7個のインキュベーション管に加えた(各1μL)。化合物5の場合、有機溶媒の最終濃度は、0.5%とした。各試料を37℃で0、4、8、24、48、72または120時間、インキュベートした。アッセイを二連で行った。0、4、8、24、48、72または120時間のインキュベーション後、内部標準を含有する、2%FAを含むメタノール(4℃未満に事前に冷却処理した)1000μLを添加することによって、反応をクエンチした。試料のすべてを10分間、ボルテックスした。各試料から150μLの上清を新しいプレートに移した。LC-MS/MS(冷却器温度:15℃)によって分析するため、150μLの純水を各試料に加えた。計算はすべて、Microsoft Excelを使用して行った。抽出したイオンクロマトグラムからピーク面積比を求めた。各時間点に残留する化合物の割合を以下の式によって計算した:
残留率t分(%)=(ピーク面積比t分/ピーク面積比0分)×100
式中、
ピーク面積比t分は、t分時における試験化合物のピーク面積比であり、
ピーク面積比0分は、ゼロ時間点における試験化合物のピーク面積比である。
【0159】
傾きの値kは、インキュベーション時間曲線に対する、親薬物の残留百分率の自然対数の線形回帰によって求めた。
【0160】
in vitro半減期(in vitro t1/2)は、傾きの値から求めた:
in vitro t1/2=(0.693/k)
【0161】
タキソール濃度(nM)の出現=
ピーク面積比 t分/ピーク面積比(タキソール:5μM)×5000
【0162】
タキソールの%出現=
ピーク面積比 t分/ピーク面積比(タキソール:5μM)×100
【0163】
データ処理に関する規則を表2に示す。
【表2】
【0164】
緩衝水溶液中の化合物5および化合物3の安定性を様々なpHで研究し、結果を表3に示す。予想外なことに、化合物3の半減期は、試験したすべてのpHにおいてより長く、最長の半減期は、pH5.5の溶液中であった。数値は、2つの並行実験の平均値を表す。緩衝水溶液中において、L-Cys-D-arg8により置換された化合物3の半減期が一層長いことは、リンカーの加水分解に対して優れた安定性があるという予想外の知見である。非天然アミノ酸の存在は、プロテアーゼ開裂に対して一層の抵抗性となることが知られているので、D-Cys-D-arg8を有する化合物5は、化合物3よりも安定であることが予期された。
【表3】
【0165】
生物学的実施例3
血漿中の安定性
試験化合物の作業溶液をPBS(pH7.4)中で調製した。このアッセイにおいて、ヒト、サル、イヌおよびマウスの血漿に関し、プロパンテリンを陽性対照として使用した。このアッセイでは、ラット血漿の陽性対照としてメビノリンを使用した。1mMのプロパンテリン作業溶液をアセトニトリル中で調製した。1mMのメビノリン作業溶液をDMSO中で調製した。各細胞に関して、475μLの血漿のインキュベーション緩衝液をインキュベーションプレートに加え、37℃で15分間、事前加温した。事前インキュベーション後、25μLの作業溶液(試験化合物または対照化合物)を血漿にスパイクした。化合物5および化合物3の場合、有機濃度の最終濃度は0%とした。タキソールの場合、有機溶媒の最終濃度は0.25%とした。アッセイを二連で行った。反応試料を37℃でインキュベートした。50μLのアリコートを0、0.25、0.5、1、2、4、6、8および24時間時に反応試料から採取した。反応を450μLの氷冷クエンチ溶液を添加することによって停止した(内部標準を含有する、2%FAを含むメタノール)。試料はすべて、10分間、ボルテックスし、次いで、3,220gで30分間、遠心分離し、タンパク質を沈殿させた。各ウェルから100μLの上清を新しいプレートに移した。上清を超純水により希釈した。試料をLC-MS/MSによって分析した。計算はすべて、Microsoft Excelを使用して行った。抽出したイオンクロマトグラムからピーク面積比を求めた。各時間点に残留する化合物の割合を以下の式によって計算した:
【0166】
残留率t分(%)=ピーク面積比t分/ピーク面積比0分×100
式中、
ピーク面積比t分は、t分時における対照と試験化合物とのピーク面積比であり、
ピーク面積比0分は、ゼロ時間点における対照と試験化合物とのピーク面積比である。
【0167】
傾きの値kは、インキュベーション時間曲線に対する、親薬物の残留百分率の自然対数の線形回帰によって求めた。
【0168】
in vitro半減期(in vitro t1/2)は、傾きの値から求めた:
in vitro t1/2=(0.693/k)
【0169】
データ処理に関する規則を表4に示す。
【表4】
【0170】
これらの結果が表5に示されている。化合物3は、ヒト、イヌ、ラットおよびマウスの血漿中では、化合物5よりも半減期が長いことを示した。化合物5のペプチド構成成分は、動物における天然プロテアーゼに抵抗性があることが知られている非天然アミノ酸だけからなるが、化合物3は、驚くべきことに、化合物5よりも安定であった。化合物3の様々な種における血漿の半減期が一層長いことは、化合物3は、in vivoで化合物5よりも安定であり得ることを示唆する。
【表5】
【0171】
生物学的実施例4
化合物3および化合物5の生存中の薬物動態
一般手順:単回用量研究をCD-1マウスにおいて行った。群(各群中、12匹の動物)にタキソール(10mg/kg)、化合物3(38.4mg/kg)または化合物5(38.4mg/kg)のいずれかの腹腔内(IP)用量を投与した。投与後の予め決めた時間において、研究動物から逐次的血漿試料または終末血漿試料(時間点あたりn=3)を収集した。各マウスから2回の逐次的採血(眼窩採血)および1回の終末採血を行った。すべての工程に関し、試料は予め冷却した管に収集した。生存期を完了すると、LC-MS/MSを使用して試料を分析した。
【0172】
アッセイ手順:マウス血漿中の検体の分析に関しては、50.0μLのアリコートの各研究試料を、メタノール中の5%ギ酸200μLを使用して、タンパク質沈殿により抽出した。250ng/mLのトルブタミドおよび1000ng/mLのタキソール-d5を含有する、25.0μLのメタノールを添加することによって内部標準を加えた。
【0173】
化合物5および化合物3の分析に関しては、4000rpmで10分間の遠心分離後、LC-MS/MS分析のため、150μLの上清を清浄な96ウェル収集プレートに移した。
【0174】
タキソール分析に関しては、4000rpmで10分間の遠心分離後、75.0μLの上清を75.0μLの脱イオン水を含有する清浄な96ウェル収集プレートに移した。次に、このプレートに栓をして、LC-MS/MS分析の前に3分間、1650rpmでボルテックスした。
【0175】
標準の調製および品質管理:マウス血漿中の化合物3の較正標準を、5.00、10.0、50.0、100、200、250、450および500ng/mLの濃度で、ブランクマウスの血漿中、濡れた氷上で調製した。低品質対照([LQC]、15.0ng/mL)、中品質対照([MQC]、120ng/mL)および高品質対照([HQC]、400ng/mL)は、ブランクマウスの血漿中で調製した。
【0176】
マウス血漿中のタキソールの較正標準を、2.50、5.00、25.0、125、625、1250、2250および2500ng/mLの濃度で、ブランクマウスの血漿中、濡れた氷上で調製した。LQC(7.50ng/mL)、MQC(120ng/mL)およびHQC(2000ng/mL)をブランクマウスの血漿中で調製した。
【0177】
較正標準溶液およびQC溶液をすべて、新しく調製し、使用後に廃棄した。
【0178】
試料分析:マウスの血漿試料を生存体から得て、-80℃に設定した冷凍庫中に保管した。
【0179】
研究試料を2バッチで分析した。最小でも、各バッチは以下を含めた:研究試料に加え、一組の較正標準、マトリックスブランク(ブランクマウスの血漿)、対照-ゼロ試料(内部標準を含むブランクマウスの血漿)および3種の濃度レベル(低、中および高)の二連のQC試料。各バッチ内で、研究試料を較正標準またはQC試料によって挟んだ。
【0180】
データ取得および処理:LC-MS/MSデータの取得は、AB SCIEX API6500+質量分析計に連結した、Agilent1290 Infinity II HPLCシステムで行った。Analyst1.6.3ソフトウェアを使用して、クロマトグラムを積分した。加重(1/x2、x=濃度)線形回帰を使用して較正曲線を生成し、回帰はAnalyst1.6.3ソフトウェアを使用して行った。試料中の検体の濃度は、較正曲線に基づいて、検体と内部標準とのピーク面積比を使用して計算した。
【0181】
データ計算
【0182】
較正曲線を計算するために使用した線形式は、以下の通りであった:
y=ax+b
(式中、
yは、ピーク面積比を表し、
aは、線の傾きを表し、
xは、濃度を表し、
bは、y切片を表す)。
【0183】
百分率として表される正確度(または、その名目値に対する測定値の近さの程度)は、次の通り計算した:
%正確度=(測定値)/名目値)×100
【0184】
百分率として表される、(その名目値からの測定値の)偏差またはDEVは、以下の通り計算した:
%DEV=(測定値-名目値)/(名目値)×100
【0185】
標準偏差(SD)は、以下の通り計算した:
【数2】
式中、
xは、試料濃度を表し、
【数3】
は、平均試料濃度を表し、
nは、試料サイズを表す。
【0186】
百分率として表される、精度または変動係数(CV)は、以下の通り計算した:
%CV=(標準偏差)/平均×100。
【0187】
受け入れ基準:較正標準およびQCデータが、以下およびSOP BA-018、非規制研究に関する生物学的分析用試料分析に記載されている受け入れ基準を満たしている場合、分析バッチを受け入れた。
【0188】
較正標準:較正標準を受け入れるためには、各標準に関する逆計算濃度は、その名目濃度の100%±25%でなければならなかった。試行を受け入れるためには、最小で標準の67%が、これらの基準を満たさなければならなかった。
【0189】
品質管理試料:QC試料を受け入れるためには、その測定濃度は、名目濃度の100%±25%でなければならなかった。あるバッチを受け入れるためには、曲線範囲内のすべてのQC(LQC、MQCおよびHQC)試料の少なくとも3分の2、および各濃度レベル(低、中および高)におけるQC試料の少なくとも半分の測定濃度が、それらのそれぞれの名目濃度の100%±25%でなければならなかった。
【0190】
CD-1マウスにおける化合物3、化合物5およびタキソールの薬物動態の定量的生体分析からの結果を表6Aおよび表6Bに示す。結果は、マウスの各群(化合物3、化合物5およびタキソール)の平均値である。
【表6A】
【表6B】
【0191】
化合物3および化合物5は、異なるペプチド/リンカー構造を有する。化合物3は、リンカーペプチドとしてL-システインを含有し、化合物5は、リンカーペプチドとしてD-システインを含有する。化合物5は、非天然のD-システインリンカー-ペプチドにより置換されているので、この化合物は、化合物3よりも安定であることが予期されるが、表6Aおよび表6Bに示されている通り、化合物3の方が、予想外なことに安定であった。
【0192】
生存マウスのPK研究において、化合物5および化合物3は異なる挙動をした。例えば、in vivo半減期、親化合物のCmax、AUCおよびAUC比に関して異なる値が観察された。化合物3から放出されたタキソールのT1/2は、化合物5から放出されたタキソールのT1/2よりも33.3%長かった。化合物3から放出されたタキソールのAUCもまた、化合物5から放出されたタキソールのAUCよりもかなり高かった。さらに、化合物3のT1/2は、21.675時間であった一方、タキソールのT1/2は、わずか2.99時間であった。タキソール/化合物3のAUC比は、タキソール/化合物5のAUC比よりも20倍高く、タキソールの放出効率は化合物5よりも化合物3の方が高いことを反映した。さらに、化合物3の投与後のタキソールのAUCは、タキソール投与後のタキソールのAUCよりも高かった。
【0193】
化合物5のCmaxは、化合物3のCmaxよりも100倍を超えて高く、このことは、少なくとも一部は、化合物5の処置動物において、急性毒性および動物の死亡があった理由を説明することができる。
【0194】
生物学的実施例5
安全性:投与後の動物の体重変化
方法
【0195】
動物:雌の胸腺欠損ヌードマウスをこの研究に使用した。実験マウスは、Shibefu(北京)Biotechnology Co.,Ltd.(QC番号:SCXK Beijing2019-0010)から購入し、ケージ、食物、および放射線照射またはオートクレーブ処理により滅菌した寝床を備える、高効率微粒子空気フィルター(HEPA)によるろ過環境に維持した。
【0196】
ヒト卵巣がんの腹膜播種転移モデルの確立:対数増殖期のヒト卵巣がん(SKOV-3-GFP)細胞を、0.25%トリプシンで消化して、リン酸緩衝液(PBS)で2回、すすぎ、遠心分離して、血清不含RPMI1640培地で懸濁した。ヒト卵巣がんの腹膜播種転移モデルを確立するために、細胞懸濁物(6×10/120μL/マウス)を各実験マウスの腹膜腔に注入した。
【0197】
群、試験物品および処置プロトコル:細胞接種後の4日目に、すべてのマウスにFluorVivo Model-100(INDEC biosystems、CA、USA)を使用して、全身イメージングを供した。平均腫瘍負荷からの小さな逸脱を有するマウスをこの研究に登録した。すべての動物を異なる研究群(各群中に6匹のマウス)に無作為に割り当てた。投与スケジュールは、Q5D(0、5、10日目)とし、投与体積は、10μl/gとし、投与経路は、腹腔内注入とした。化合物3または化合物5の各用量は、9.6mg/kg(2.5mg/kgのタキソールと等モル)とし、タキソールの各用量は、10mg/kgとした。タキソールの作業溶液は、6mg/mLのストック溶液から調製した一方、化合物をPBS(pH7.4)に溶解し、0.22μmのフィルターに通してろ過した。
【0198】
実験マウスのモニタリング:研究の期間中、実験マウスのすべての死亡または病的状態の徴候について毎日、確認した。この研究の期間の間、FluorVivo imaging system、Model100/Mag(INDEC BioSystems、CA、USA)を用いて、1週間あたり3回、腫瘍進行の画像を取得した。マウスの体重を研究期間の間、1週間あたり3回、測定した。
【0199】
研究エンドポイント:投与後21日目に、過剰の麻酔剤を吸入させることによって、動物を安楽死させた。腫瘍はすべて、イメージング(同じ曝露条件下)するために露出し、この後に、腫瘍を取り除き、電子天秤(Sartorius BS 124S、Germany)で秤量した。次に、腫瘍試料をホルマリン溶液中に保管した。ビヒクル群中のマウスはすべて、腹水を生じ、これを収集して、-80℃の冷蔵庫で保管した。
【0200】
効力評価に使用した統計学的方法:異なる群中の体重および腫瘍負荷の比較を、α=0.05(両側)でEXCELでのt検定を使用して解析した。
【0201】
体重:体重変化率を図3に示す。表7Aは、化合物3に関する体重変化を提示しており、表7Bは、化合物5に関する体重変化を提示している。どちらの化合物も、表7Aおよび表7Bに示される通り、タキソールと別個に比較した。ビヒクルは対照であった。
【表7A】
【表7B】
【0202】
図3および表7Aおよび表7Bに示されている通り、実験の終了時に、PBS群中のマウスの体重は、実験の経過にわたり、16%および3%低下した。タキソール(10mg/kg)を投与したマウスの群は、実験の経過にわたり、約7~15%、体重が増加した。化合物5(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)群は、実験の経過にわたり、体重の変化はなかった。化合物3の群(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)中のマウスの体重は、約13%、増加した。ビヒクル(PBS)群中の体重と比較すると、体重は、約24%高かった。
【0203】
38.4mg/kgの化合物3および化合物5の体重に及ぼす影響を評価した別の実験において、腫瘍を有するマウスを、3回のQ5D用量後、38.4mg/kgの化合物3または化合物5により処置した。21日目に、化合物3の処置マウスの体重変化は、+22.1%であり、化合物5の処置マウスの体重変化は、-2%であった。化合物5による処置マウスは、横臥し、その自発的活動が低下した。投与を完了して数時間後に、これらのマウスは、概して良好な状態にあり、正常な食欲を有した。この群中のマウスの1匹が、18日目に死亡したことが発見された。マウスを化合物3(38.4mg/kg)で処置した場合、実験の間、動物の死亡は報告されなかった。
【0204】
化合物3の安全性プロファイルは、化合物5の安全性プロファイルよりも良好であった。化合物5の3回の用量で動物を処置した後に、マウスは、体重がほとんどか全く増加しないことを示した。しかし、マウスは、化合物3による処置後、体重の増加を示し、このことは、これらの動物の良好な回復または治療的応答を示している。腫瘍の消滅および/または縮小が大きいほど、生存および体重増加に関する転帰が良好であった。化合物3による処置後の体重の増加は、証明された薬物であるタキソール(パクリタキセル)の体重増加に類似した。
【0205】
生物学的実施例6
転移性卵巣がんモデルにおける効力
方法:この方法は、生物学的実施例4に関して記載されているものと同じとした。12匹の動物の群(各群中、12匹の動物)にタキソール(10mg/kg)、化合物3(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)または化合物5(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)のいずれかの腹腔内(IP)用量を投与した。
【0206】
各群における腫瘍進行:腫瘍成長および進行の画像を、FluorVivoイメージングシステム、Model100/Mag(INDEC、CA、USA)を用いて、この研究の期間の間、1週間あたり3回、取得し、各群の平均腫瘍面積を画像解析の結果にしたがって計算した。
【0207】
各群のエンドポイント腫瘍負荷:投与後の21日目に、腹腔内の腫瘍を切除して、これを秤量することによって、各群の腫瘍負荷を計算した。これらの結果を表8Aおよび表8Bに示す。どちらの化合物も、表8Aおよび表8Bに示された通り、タキソールと別個に比較した。ビヒクルは対照であった。
【表8A】
【表8B】
【0208】
表8Aおよび表8Bに示されている通り、21日目に、タキソール(10mg/kg)群の平均腫瘍蛍光面積は、ビヒクル(PBS)群の約8~16%であった(化合物5の一連の実験では、P=0.000002であり、化合物3の一連の実験では、P=0.00050396である)。9.6mg/kgの化合物5(タキソール2.5mg/kgに等モル)を投与した群の平均腫瘍蛍光面積は、それぞれ、各々のビヒクル(PBS)群の10%であり、ビヒクル(PBS)群と比べて、統計学的に有意な差異があった(P=0.000002)。化合物5は、腹膜播種ヒト卵巣がんマウスモデルに対して良好な腫瘍阻害作用を示したが、1匹の動物は、実験の終了前の18日目に死亡した。
【0209】
化合物3の群の平均腫瘍蛍光面積は、ビヒクル(PBS)群の約20%であり、化合物3とビヒクル群との間に、統計学的に有意な差異が存在した(P=0.00000215)。化合物3(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)を投与したマウスの3つの群の平均腫瘍蛍光面積は、タキソール(10mg/kg)群の約100%であり、化合物3を投与した3つの群におけるマウスの平均腫瘍重量は、タキソール(10mg/kg)群における平均腫瘍重量とは有意な違いはなかった。平均蛍光面積も図4に示す。
【0210】
化合物3(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)群の平均腫瘍重量は、ビヒクル群の約10%であり、タキソール(10mg/kg)群と同じ範囲内であった。とりわけ、タキソール(10mg/kg)群と比較して、化合物3投与群(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)におけるマウスの平均腫瘍重量に統計学的に有意な差異は存在しなかった。タキソールおよび化合物3は、同等の腫瘍阻害作用を示した一方、化合物5は、タキソールよりも有効性が約10%低かった。化合物3は、化合物5よりも少なくとも10%良好な腫瘍阻害作用を示した。図5は、21日目における、それらの各々のビヒクルと比較した、化合物3および化合物5の投与群の場合の平均腫瘍重量のグラフである。これらの結果も、表9Aおよび表9Bに示す。
【0211】
図6Aおよび図6Bは、それらの各々のビヒクルおよびタキソールに比べて、化合物3および化合物5を投与した群の場合の、取り出した腫瘍の写真画像である。各群における6匹のマウスからの腫瘍を図6Aおよび図6Bに示す。図7は、化合物3および化合物5と、それらの各々のタキソール群およびビヒクル群とを比較したグラフである。
【表9A】
【表9B】
【0212】
腫瘍阻害率(IR):腫瘍IRは、以下の式に準拠して、最終的な平均腫瘍重量に基づいて計算した:
IR(%)=(1-処置(t)/対照(c))×100
【0213】
図8および表10Aおよび表10Bは、実験の終了時における各群中の平均IRを示す。
【表10A】
【表10B】
【0214】
腹膜播種のマウスモデルおよびヒト卵巣がんの転移モデルの効力結果により、化合物3の腫瘍阻害作用は、化合物5の腫瘍阻害作用よりもかなり良好であることが示された。化合物5の腫瘍阻害率は、9.6mg/kgにおいて79±11%であった一方、化合物3の腫瘍阻害率は、9.6mg/kgにおいて90±8%であった。この用量および実験条件下では、化合物3は、実験マウスに対して、明白な急性毒性作用を有さなかった一方、化合物5は、動物の死亡を引き起こした。
【0215】
生物学的実施例7
脳がんに対する化合物3の効力
細胞培養:ルシフェラーゼでマーキングしたNCI-H460-luc2ヒト頭蓋内細胞を、10%熱不活化ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを追加補充した、ATCC製剤化RPMI1640培地中での単層培養物として、in vitroで、空気中5%COの雰囲気中、37℃で維持した。腫瘍細胞を、トリプシン-EDTA処理によって、毎週2回、慣用的に継代培養した。対数成長期に成長した細胞を採取し、腫瘍接種のために計数した。
【0216】
腫瘍接種および動物の群分け:雌BALB/cヌードマウスを、アバチン(20μL/g)で麻酔をかけた。動物に、疼痛緩和のため、手術の30分後に、10mg/kgのカルプロフェンを腹腔内投与した。
【0217】
麻酔をかけたマウスを適切な位置においた。手術領域を70%エタノール溶液で準備した。滅菌外科用メスを使用して、頭頂後頭葉骨(parieto-occipital bone)の上から、ほぼ1cm長で矢状切開を行った。次に、露出した頭蓋骨表面を0.9%の生理食塩水に浸漬した綿のスワブを使用して清浄した。腫瘍細胞の注入前に、滅菌した25ゲージの鋭利なニードルを使用して、ブレグマの右2mmかつ冠状縫合の1mm前部に頭蓋骨に穿刺し、それによって腫瘍細胞を注入するための開口部を作製した。細胞をシリンジに抜き取る前に、細胞懸濁物の内容物を指で軽く叩くことによって混合した。シリンジに所望量の細胞懸濁物を充填し、気泡を回避するよう特別に注意を払った。次に、シリンジの外側をアルコールスワブで清浄して、いかなる粘着細胞も含まない外側を拭った(このことは、頭蓋外腫瘍の定着および成長の防止に役立った)。適切な注入深さが達成されることを確実するために、P20ピペットマンチップの尖った先端を外科用メスによって、3mm長で切り落とした。先端のこの部分をシリンジの上から取り付けて、注入深さが制限されるようにし、シリンジニードルの先端が、頭蓋骨の下面から3mmになるようにした。シリンジを頭蓋骨に対して垂直に、先に作製した穴に入れた。そして、細胞懸濁物をゆっくりと注入した(20%Matrigel中に、1×105個のNCI-H460-luc2細胞を含有する3μLの懸濁物を、1分間かけて注入すべきである)。細胞の脳室内注入およびその後の脊髄播種は、適切な角度でのシリンジ挿入によって防止した。注入が完了すると、ニードルをさらに1分間その位置で静置し、次に、ゆっくりと引き抜いた。穴は医療用吻合接着剤(OB)で閉じた。鉗子を使用して、頭皮を頭蓋骨の上に引き寄せて、切開部を外科用縫合糸により閉じた。麻酔から完全に回復するまで、マウスを保温した。
【0218】
腫瘍埋め込み後、4日目に動物を選別し、無作為化した(それらの生物発光密度に基づく)。表11に示す通り、所定のレジメンに準拠して処置を開始した。
【0219】
観察:慣用的なモニタリングの間、動物の運動性、食物および水の消費量(見た目のみ)、体重の増/減(体重は、毎週2回または毎日、測定した)、眼/髪のつやの喪失(eye/hair matting)、およびプロトコルに明記されている任意の他の異常作用などの通常の挙動に対する腫瘍成長および処置のあらゆる影響を毎日、確認した。死亡および観察された臨床徴候は、各サブセット内の動物の数に基づいて記録した。
【0220】
生物発光測定およびエンドポイント:外科的に接種されたマウスの体重を秤量し、150mg/kgの用量でルシフェリンを腹腔内投与した。ルシフェリン注射の10~15分後に、動物を酸素とイソフルランとの混合ガスにより事前に麻酔した。動物が完全な麻酔状態になると、IVIS(Lumina II)イメージングシステムによる生物発光測定のため、マウスをイメージングチャンバーに移動した。
【0221】
主要エンドポイントは、腫瘍の生物発光成長が、遅延、低下または消滅し得るかどうかを決定することであった。体重を週に2回、またはマウスが明らかな病的状態を示した場合は、1日1回、測定した。原発腫瘍および転移腫瘍を含む動物の全身の生物発光を測定し、プロトコルに従って、週に1回、記録した(生物発光データは図示せず)。20%を超える明らかな体重減少を伴う瀕死状態、または通常の食事が不可能な動物、または麻痺した動物を死にかけていると定義した。
【0222】
各群のメジアン生存時間(日数)を、群内の動物の生存時間に基づいて計算し、処置群およびビヒクル群におけるメジアン生存時間に従って、延命率(ILS)を解析した。
【0223】
統計解析:群分け後、7日目でもすべての動物が依然として生存しており、したがって、薬物投与後の7日目に得られたデータに対して、T検定により群間の生物発光の差の統計解析を行った。SPSS17.0を使用して、すべてのデータを解析した。p<0.05を統計的に有意であるとみなした。
【0224】
生存時間をカプラン-マイヤー法により解析した。関心事象は、動物の死亡であった。生存時間は、投与開始から死亡までの時間として定義した。各群に関して、メジアン生存時間および対応する95%信頼区間を計算した。カプラン-マイヤー曲線もまた各群に対して構築し、ログランク検定を使用して群間の生存曲線を比較した。
【0225】
生存時間:雌BALB/cヌードマウスにおけるNCI-H460-luc2ヒト頭蓋内モデルの生存に対する化合物3およびパクリタキセル(タキソール)処置の効果を表11に示した。エンドポイント時では、化合物3の38.4mg/kg群中のマウスの1匹が、依然として生存した。
【0226】
各群における動物の生存を、図11および表11に示す。ビヒクル群のメジアン生存時間(MST)は、14日間であった。パクリタキセル(10mg/kg)群および化合物3(38.4mg/kg)群のMST値は、それぞれ、10日間(95%信頼区間:7.60~12.40日間)および14日間(95%信頼区間:11.61~16.39日間)であった。
【表11】
a. 中間生存時間 (MST)±標準誤差。
b. p値は、処置群とビヒクル群との比較により得た。
c. p値は、処置群とパクリタキセル10 mg/kg群との比較により得た。
d. p値は、処置群と化合物3 9.6 mg/kg群との比較により得た。
e. p値は、処置群と化合物3 19.2 mg/kg群との比較により得た。
【0227】
生物学的実施例8
膵臓がんに対する化合物3の効力
生物学的実施例5に記載されている手順に従い、マウスにヒト膵臓がん(BXPC-3)細胞を注入し、化合物3(9.6mg/kg)QD5で処置(0日目、5日目および10日目に投与)し、化合物3の効力を研究した。腫瘍の蛍光面積を研究の経過にわたり測定し、図10に示される通り、蛍光面積は、研究の経過にわたり、化合物3を投与したマウスに比べ、ビヒクル投与したマウスではより大きな程度で増加した。図11は、ビヒクル投与マウスおよび化合物3を投与したマウスの研究の17日目の蛍光面積を比較するグラフである。図12は、17日目における、ビヒクルを投与したマウスと化合物3を投与したマウスの腫瘍重量を比較するグラフである。
【0228】
生物学的実施例9
胃がんに対する化合物3の効力
生物学的実施例5に記載されている手順に準拠して、マウスにヒト胃がん(NUGC-4)細胞を注入し、化合物3(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)をQD5で処置(0日目、5日目および10日目に投与)し、化合物3の効力を研究した。腫瘍の蛍光面積を、この研究の経過にわたり測定した(図13)。PBSを投与したマウスにおいて、ほぼ15日目の後に、血性腹水の形成により、蛍光読取りが妨げられた。化合物3を投与したマウスでは、蛍光は、この研究の経過にわたり低下した。図14は、研究の21日目の、ビヒクル投与マウスおよび化合物3を投与したマウスの蛍光面積を比較するグラフである。図15は、21日目における、ビヒクル投与マウスと化合物3を投与したマウスの腫瘍重量を比較するグラフである。
【0229】
生物学的実施例10
腹水の消滅
実施例5に記載されている手順に準拠して、SKOV-3-GFP細胞(腹膜腔内に注入された6×10/120μL/マウスまたは8×10/120μL/マウスの細胞懸濁物)を注入したマウスの腹水の形成に関して研究した。マウスにビヒクル(PBS)、タキソール(10mg/kg)または化合物3(9.6mg/kg)を投与した。化合物3で処置したマウスでは、血性腹水は観察されなかった。PBS群およびタキソール群は、動物における悪性腹水の形成が観察された。
【0230】
図16および図18は、SKOV-3-GFP細胞(それぞれ、6×10/120μL/マウスまたは8×10/120μL/マウス)の注入後に、ビヒクルを投与したマウスの画像である。示される通り、血性腹水が観察された。図17Aおよび図17Bは、SKOV-3-GFP細胞(6×10/120μL/マウス)の注入後に、化合物3(9.6mg/kg、タキソール2.5mg/kgと等モル)を投与した2匹のマウスの画像である。示される通り、血性腹水は観察されなかった。図19は、ビヒクルまたは化合物3を投与したマウスから取り出された腹水の比較である。図19に示されている通り、ビヒクル投与マウスから血性腹水が取り出されたが、化合物3投与マウスからは取り出されなかった。
【0231】
均等物
上述の開示は、独立した有用性を有する、複数の異なる実施形態を包含し得る。これらの実施形態のそれぞれが開示されてきたが、多くの変形形態が可能であるので、本明細書において開示および例示されている、それらの特定の実施形態は、限定的な意味とみなされるべきではない。実施形態の主題は、本明細書において開示されている様々な要素、特徴、機能および/または特性のすべての新規かつ非自明の組合せおよび部分組合せを含む。以下の特許請求の範囲は、新規かつ自明ではないとみなされる特定の組合せおよび部分組合せを特に指摘している。特徴、機能、要素および/または特性の他の組合せおよび部分組合せにあるような代替実施形態は、本出願、本出願に起因する優先権を主張する出願、または関連出願において主張され得る。このような特許請求の範囲はまた、異なる実施形態を対象とするか、または同じ実施形態を対象とするかにかかわらず、および元の特許請求の範囲と比較して範囲がより広い、より狭い、等しいまたは異なるかにかかわらず、本開示の主題内に含まれるものとみなされる。
【0232】
本明細書または図面に記載されている任意の実施形態からの1つまたは複数の特徴は、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書または図面に記載されている任意の他の実施形態の1つまたは複数の特徴と組み合わされてもよい。
【0233】
本明細書において引用されている、刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物または特許出願のそれぞれがあたかも、具体的かつ個々に、参照により組み込まれているよう示されているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれている。前述の開示は、理解を明確にするため、例示および実施例によってある程度詳細に記載されているが、本開示の教示と照らし合わせると、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、ある特定の変更および修正がそれらになされ得ることが当業者には容易に明白であろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
【国際調査報告】