(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】抗菌性ナイロン6材料、その調製方法およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08G 69/14 20060101AFI20240822BHJP
C08G 69/48 20060101ALI20240822BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C08G69/14
C08G69/48
C08L77/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510265
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 CN2022113177
(87)【国際公開番号】W WO2023020559
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110960422.3
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】陶友華
(72)【発明者】
【氏名】宗保寧
(72)【発明者】
【氏名】王献紅
(72)【発明者】
【氏名】劉偉
(72)【発明者】
【氏名】陳金龍
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB03
4J001EA06
4J001EA37
4J001EE23C
4J001FA06
4J001FB01
4J001FC01
4J001GA02
4J001GE05
4J001JA01
4J001JA13
4J001JB50
4J002CL011
4J002FD181
4J002GC00
4J002GG02
4J002GL00
(57)【要約】
本発明は、抗菌性ナイロン6材料、その調製方法およびその用途であり、抗菌性ナイロン6材料は、式(I)で表される構造を有し、各R
1基および各R
2基は、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-18アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択され、または同じ窒素原子上のR
1基およびR
2基が、結合したN原子とともに、5員~7員の飽和もしくは不飽和の複素環を形成し;各R
3基は、水素(H)、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-18アリール基、および置換または非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択され;xは0.02~0.30の範囲、yは0.70~0.98の範囲であり、x+y=1である。本発明の抗菌性ナイロン6材料は、広範囲で高い抗菌効果と良好な抗菌耐久性を有し、公衆衛生材料として繊維製品、日用品、建築材料、包装材料、各種パネル等に広く使用することができる。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される構造を有する抗菌性ナイロン6材料:
【化1】
ここで、
各R
1基および各R
2基は、C
1-24直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-18アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR
1基およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~7員の飽和もしくは不飽和複素環を形成し;
各R
3基は、水素(H)、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-18アリール基、および置換または非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択され;ならびに
xおよびyはそれぞれ、式(I)中の繰り返し単位の総量に対する、
【化2】
の構造を有する繰り返し単位のモル比および
【化3】
の構造を有する繰り返し単位のモル比を表し、xは0.02~0.30、好ましくは0.03~0.25、より好ましくは0.04~0.20の範囲であり;yは0.70~0.98、好ましくは0.75~0.97、より好ましくは0.80~0.96の範囲であり、x+y=1であり;
ここで、「置換」という表現は、前記基が、C
1-18直鎖状または分枝状アルキル基、好ましくはC
1-12直鎖状または分枝状アルキル基、より好ましくはC
1-6直鎖状または分枝状アルキル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていることを意味する、抗菌性ナイロン6材料。
【請求項2】
各R
1基および各R
2基は、C
1-12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-10アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-16アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR
1基およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~6員の飽和もしくは不飽和複素環を形成し、好ましくは、各R
1基および各R
2基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、アリル、フェニル、およびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR
1基およびR
2基は、結合したN原子とともに、テトラヒドロピロリル基もしくはヘキサヒドロピリジル基を形成し;ならびに
各R
3基は、水素(H)、C
1-12直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-10アリール基、および置換または非置換のC
7-16アラルキル基からなる群から独立して選択され、好ましくは、各R
3基は、水素(H)、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、フェニルおよびベンジルからなる群から独立して選択される、請求項1に記載の抗菌性ナイロン6材料。
【請求項3】
式(I)中の繰り返し単位の総数が、10~2500、好ましくは20~1000、より好ましくは20~500の範囲であり;および/または
前記抗菌性ナイロン6は、重量平均分子量が2000~500000、好ましくは5000~200000、より好ましくは5000~100000である、請求項1または2に記載の抗菌性ナイロン6材料。
【請求項4】
70重量%から100重量%未満、好ましくは80重量%から100重量%未満、より好ましくは90重量%から100重量%未満の、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌性ナイロン6材料、ならびに0重量%から30重量%まで、好ましくは0重量%を超えて20重量%まで、より好ましくは0重量%を超えて10重量%までの、前記抗菌性ナイロン6材料とは異なる、
【化4】
の構造を有する繰り返し単位および/または
【化5】
の構造を有する繰り返し単位を含む、少なくとも1種のポリマー、を含むナイロン6組成物であって、ここで前記基R
1、R
2、およびR
3が請求項1で定義した通りである、ナイロン6組成物。
【請求項5】
補強剤、充填剤、強靭化剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、蛍光増白剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、離型剤およびこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を0~30重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0~10重量%、さらに含有する、請求項4に記載のナイロン6組成物。
【請求項6】
以下の工程:
1)下記式(II)で表される構造を有する環状リジンモノマーを提供する工程であって、
【化6】
ここで、前記R
1およびR
2基は、C
1-24直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-18アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または前記R
1およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~7員の飽和もしくは不飽和複素環を形成する、工程;
2)前記環状リジンモノマーおよびカプロラクタムモノマーを、2:98~30:70、好ましくは3:97~25:75、より好ましくは4:96~20:80のモル比で開環重合に供し、下記式(III)で表される構造を有するコポリマーを得る工程、
【化7】
3)前記コポリマーを、下記式(IV)で表される構造を有するハロゲン化物と反応させ、
R
3-Hal (IV)
ここで、前記R
3基は、水素(H)、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-18アリール基、および置換または非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から選択され、
Halはハロゲンを表し、好ましくは塩素、臭素またはヨウ素、より好ましくは塩素または臭素であり、
下記式(I)で表される構造を有する抗菌性ナイロン6を得る工程、
【化8】
を含む、抗菌性ナイロン6材料の調製方法であって、
ここで、「置換」という表現は、前記基が、C
1-18直鎖状または分枝状アルキル基、好ましくはC
1-12直鎖状または分枝状アルキル基、より好ましくはC
1-6直鎖状または分枝状アルキル基から選択される1つ以上の置換基によって置換されていることを意味する、方法。
【請求項7】
前記R
1およびR
2基は、C
1-12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-10アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-16アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または前記R
1およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~6員の飽和または不飽和複素環を形成し、好ましくは前記R
1およびR
2基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、アリル、フェニル、およびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または前記R
1およびR
2基は、結合したN原子とともに、テトラヒドロピロリル基またはヘキサヒドロピリジル基を形成し;ならびに
前記R
3基は、水素(H)、C
1-12直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-10アリール基、および置換または非置換のC
7-16アラルキル基からなる群から選択され、好ましくは前記R
3基は、水素(H)、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記環状リジンモノマーが、式(V)で表されるアミノカプロラクタム上の第一級アミン基を保護基で保護することにより、工程1)において提供される、請求項6または7に記載の方法。
【化9】
【請求項9】
前記工程1)が、前記アミノカプロラクタムを、前記R
1および/またはR
2基を有するアルデヒドおよび/またはハロゲン化炭化水素と反応させることによって達成され、好ましくは、前記アミノカプロラクタムを、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、塩化ベンジル、1,5-ジブロモペンタン、臭化アリル、臭化ドデシル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬と反応させることによって達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程2)が触媒の存在下で実施され、好ましくは前記触媒が、カルベン試薬、グアニジン試薬、アミジン試薬、ホスファゼン試薬、アルカリ金属、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属アルコキシド、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは水素化ナトリウム、水素化カリウム、t-BuP
4、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、DBU、TBD、ナトリウム、カリウム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程2)における前記環状リジンモノマーおよび前記カプロラクタムモノマーの合計量と前記触媒とのモル比が、(10~50):1、好ましくは(10~30):1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程2)における前記開環重合が、以下の構造を有する活性化剤の存在下で実施され;
【化10】
ここで、Rはメチル、エチル、フェニル、t-ブチルフェニルおよびトリフルオロメチルフェニルからなる群から選択され;
好ましくは、工程2)における前記環状リジンモノマーおよび前記カプロラクタムモノマーの合計量と、前記活性化剤とのモル比は(10-50):1、好ましくは(10-30):1である、請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
以下の特徴の1つ以上を有する、請求項6~12のいずれか1項に記載の方法:
工程2)の反応条件は、140~180℃の重合温度、3~6時間の反応時間を含む;
工程3)で使用される式(IV)で表されるハロゲン化物は、塩酸、ヨウ化メチル、臭化エチル、臭化ブチル、ブロモヘキサン、ブロモシクロヘキサン、臭化ベンジルまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される;
工程3)の反応が、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、シクロヘキサノール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒中で、40~70℃の反応温度、および10~12時間の反応時間を含む反応条件下で行われる;および/または
工程3)がさらに、前記コポリマーと前記ハロゲン化物の反応生成物を酢酸エチル中で沈降させ、遠心分離し、乾燥して抗菌性ナイロン6を得る工程を含む。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌性ナイロン6材料、請求項4または5に記載のナイロン6組成物、または請求項6~13のいずれか1項に記載の方法により得られた抗菌性ナイロン6材料を含む、物品。
【請求項15】
繊維製品、日用品、建築材料、包装材料及びパネルからなる群から選択される、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性高分子材料の技術分野に係り、特に抗菌性ナイロン6材料、その調製方法およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界に存在する微生物は多種多様である。日常生活において、微生物は人と密接かつ無差別に関係しており、細菌、真菌、ウイルスなどの一部は病原性細菌として人の健康、さらには生命をも著しく危険にさらしている。例えば、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)、結核、SARS、および新型コロナウイルス(2019-nCoV)は、すべて細菌または微生物のまん延によって引き起こされる。アウトブレイクに苦しんだ後、細菌または微生物が人々の健康や生活環境に与える害に、人々はますます注意を払うようになり、使用される製品の品質や機能に対する要求もますます高くなっている。したがって、新しい抗菌材料の開発が重要になっている。抗菌性高分子材料は、抗菌性高分子材料上に存在する細菌、真菌等の微生物を抑制および死滅させることができ、衛生、医療、環境保護等の分野で広く利用されている。
【0003】
ポリカプロラクタム(通称ナイロンまたはチンロン)は、軽量、高強度、耐摩耗性、弱酸性溶剤、弱塩基性溶剤および一部の有機溶剤に対する耐性、成形加工の容易性等の優れた特性を有し、繊維、エンジニアリングプラスチック、フィルム等の分野で広く使用されている。しかしながら、ナイロン6(PA-6)の分子鎖セグメントには極性の強いアミド基が存在するため、水分子と水素結合を形成しやすく、環境中の水分を吸収しやすく、それによって細菌および真菌の格好の繁殖場所となっている。ナイロン6材料は、日常生活のいたるところに存在するため、抗菌機能を有するナイロン6材料を開発することは、細菌の感染や伝播を効果的に低減または回避することができ、人々の生活環境の改善や疾病の減少に重要な意義を有する。
【0004】
現在、市販されている抗菌性ナイロン6材料は、主にポリカプロラクタムと低分子抗菌剤を配合して調製されており、例えば、CN107652669、CN107793748、CN108047709を参照されたい。これらの抗菌性ナイロン6材料は、安全性、環境親和性、ならびに抗菌効果および耐久性の点で多くの問題を有している。
【0005】
したがって、環境にやさしく、持続的かつ効率的な抗菌性能を有する、新規な抗菌性ナイロン6材料の開発は非常に重要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、抗菌機能を有する新規なナイロン6系材料、その調製方法およびその適用を提供することであり、このナイロン6系材料は、配合によって得られる抗菌性ナイロン6系材料の抗菌耐久性の低さ、安定性の低さなどの欠点を克服することができ、低コストで、調製が単純で、大量生産に適している。
【0007】
【化1】
ここで、各R
1基および各R
2基は、C
1-24直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-18アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR
1基およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~7員の飽和または不飽和複素環を形成し;
各R
3基は、水素(H)、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-18アリール基、および置換または非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択され;ならびに
xおよびyはそれぞれ、式(I)中の繰り返し単位の総量に対する、
【化2】
の構造を有する繰り返し単位のモル比および
【化3】
の構造を有する繰り返し単位のモル比を表し、xは0.02~0.30の範囲であり;yは0.70~0.98の範囲であり、x+y=1であり;
ここで、「置換」という表現は、基が、C
1-18直鎖状または分枝状アルキル基から選択される1つ以上の置換基によって置換されていることを意味する。
【0008】
別の態様において、本発明は、70重量%以上100重量%未満の本発明による抗菌性ナイロン6材料、ならびに0重量%以上30重量%以下の、前記抗菌性ナイロン6材料とは異なる、
【化4】
の構造を有する繰り返し単位および/または
【化5】
の構造を有する繰り返し単位を含む、少なくとも1種のポリマー、を含むナイロン6組成物を提供し、ここで基R
1、R
2およびR
3は本明細書において上記に定義した通りである。
【0009】
別の態様において、本発明は、抗菌性ナイロン6材料を調製するための方法を提供し、方法は以下の工程:
1)下記式(II)で表される構造を有する環状リジンモノマーを提供する工程であって、
【化6】
ここで、R
1およびR
2基は、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-18アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、またはR
1およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~7員の飽和もしくは不飽和複素環を形成する、工程;
2)環状リジンモノマーおよびカプロラクタムモノマーを、2:98~30:70のモル比で開環重合に供し、下記式(III)で表される構造を有するコポリマーを得る工程、
【化7】
3)このコポリマーを、下記式(IV)で表される構造を有するハロゲン化物と反応させ、
R
3-Hal (IV)、
ここで、R
3基は、水素(H)、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-18アリール基、および置換または非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から選択され、
Halはハロゲンを表し、
式(I)で表される構造を有する抗菌性ナイロン6を得る工程、
【化8】
を含み、ここで、「置換」という表現は、基が、C
1-18直鎖状または分枝状アルキル基から選択される1つ以上の置換基によって置換されていることを意味する。
【0010】
本発明による抗菌性ナイロン6材料は、広範で高い抗菌効果を有し、抗菌耐久性及び安定性が良好であり、公衆衛生材料として繊維製品、日用品、建築材料、包装材料、各種パネル等に広く使用することができ、低コストで、調製が単純で、大量生産が容易である。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、本発明による抗菌性ナイロン6材料、本発明によるナイロン6組成物、または本発明による方法によって得られた抗菌性ナイロン6材料を含む物品を提供する。
【0012】
好ましくは、物品は、繊維製品、日用品、建築材料、包装材料及びパネルからなる群から選択される。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点については、本明細書の以下の詳細な説明において詳述する。
本明細書の一部を構成する図面は、本発明の理解を助けるために提供されるものであり、限定的であると考えられるべきではない。本発明は、本明細書における以下の詳細な説明と組み合わせて図面を参照して解釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る抗菌性ナイロン6材料の合成経路を示す模式図である。
【
図2】実施例1で得られたジメチル保護環状リジンモノマーおよびカプロラクタムモノマーのコポリマーの核磁気共鳴スペクトルである。
【
図3】実施例1で得られた抗菌性ナイロン6材料のDSC融点試験図である。
【
図4】実施例2で得られた抗菌性ナイロン6材料のDSC融点試験図である。
【
図5】実施例3で得られた抗菌性ナイロン6材料のDSC融点試験図である。
【
図6】実施例4で得られた抗菌性ナイロン6材料のDSC融点試験図である。
【
図7】実施例5で得られた抗菌性ナイロン6材料のDSC融点試験図である。
【
図8A】比較例1で得られたナイロン6材料のStaphylococcus aureusに対する抗菌効果を示す写真である。
【
図8B】実施例5で得られたナイロン6材料のStaphylococcus aureusに対する抗菌効果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面およびその具体的な実施形態を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の具体的な実施形態は、例示のみを目的として提供されるものであり、何ら限定を意図するものではないことに留意されたい。
【0016】
本発明の文脈において記述される数値範囲の端点を含む任意の特定の数値は、その正確な値に限定されるものではなく、当該正確な値に近いすべての値、例えば当該正確な値の±5%以内のすべての値をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、本明細書に記載された任意の数値範囲に関して、範囲の端点間、各端点と範囲内の任意の特定の値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値との間に任意の組み合わせを作成して、1つ以上の新しい数値範囲を提供することができ、ここで、前記新しい数値範囲も、本願明細書に具体的に記載されているとみなされるべきである。
【0017】
特に断りのない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有し、用語が本明細書で定義され、その定義が当技術分野における通常の理解と異なる場合、本明細書で提供される定義が優先するものとする。
【0018】
本発明において、「置換」という用語は、基が、C1-18直鎖状または分枝状アルキル基、好ましくはC1-12直鎖状または分枝状アルキル基、より好ましくはC1-6直鎖状または分枝状アルキル基から選択される1つ以上の置換基で置換されていることを意味する。
【0019】
本発明の文脈において、明示的に記載された事項に加えて、記載されていない事項または事柄は、何ら変更されることなく、当該技術分野において公知のものと同じであると考えられる。さらに、本明細書に記載された実施形態のいずれかを、本明細書に記載された別の1つ以上の実施形態と自由に組み合わせることができ、このようにして得られた技術的解決策またはアイデアは、本願の当初の開示または当初の説明の一部とみなされ、そのような組み合わせが明らかに不合理であることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示または予期されていない新規事項であるとみなされるべきではない。
【0020】
本明細書で引用した特許文献および非特許文献(参考書および雑誌論文を含むが、これらに限定されない)はすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0021】
上述したように、第1の態様において、本発明は、下記式(I)で表される構造を有する抗菌性ナイロン6材料を提供する:
【化9】
ここで、各R
1基および各R
2基は、C
1-24直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-18アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR
1基およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~7員の飽和または不飽和複素環を形成し;
各R
3基は、水素(H)、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-18アリール基、および置換または非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択され;ならびに
xおよびyはそれぞれ、式(I)中の繰り返し単位の総量に対する、
【化10】
の構造を有する繰り返し単位のモル比および
【化11】
の構造を有する繰り返し単位のモル比を表し、xは0.02~0.30の範囲であり、yは0.70~0.98の範囲であり、x+y=1である。
【0022】
好ましい実施形態において、各R1基および各R2基は、C1-12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基(例えばアルキル基またはアルケニル基、好ましくはアルキル基などの、C1-8直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、C1-6直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、C1-4直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基)、置換もしくは非置換のC3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC6-10アリール基、および置換もしくは非置換のC7-16アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR1基およびR2基は、結合したN原子とともに、5~6員の飽和もしくは不飽和複素環を形成し;ならびに、各R3基は、水素(H)、C1-12直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基(例えばアルキル基またはアルケニル基、好ましくはアルキル基などの、C1-8直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、C1-6直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、C1-4直鎖状または分岐状脂肪族ヒドロカルビル基)、置換または非置換のC3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC6-10アリール基、および置換または非置換のC7-16アラルキル基からなる群から独立して選択される。
【0023】
さらに好ましい実施形態において、各R1基および各R2基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、アリル、フェニルおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR1基およびR2基は、結合したN原子とともに、テトラヒドロピロリル基またはヘキサヒドロピリジル基を形成し;ならびに、各R3基は、水素(H)、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、フェニルおよびベンジルからなる群から独立して選択される。
【0024】
さらにより好ましい実施形態において、R1基およびR2基は、すべて同じであり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、アリル、およびベンジルからなる群から選択されるか、または同じ窒素原子上のR1基およびR2基は、結合したN原子とともに、テトラヒドロピロリル基またはヘキサヒドロピリジル基を形成し;ならびに、R3基は、すべて同じであり、水素(H)、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロヘキシルおよびベンジルからなる群から選択される。
【0025】
特に好ましい実施形態において、全てのR1基およびR2基は、同じであり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、アリル、およびベンジル、特にエチル、プロピル、ブチル、およびベンジルからなる群から選択されるか、または同じ窒素原子上のR1基およびR2基は、結合したN原子とともに、ヘキサヒドロピリジル基を形成し;ならびに、全てのR3基は、同じであり、水素(H)、エチル、シクロヘキシルおよびベンジル、特にエチルからなる群から選択される。
【0026】
好ましい実施形態において、式(I)中のxは0.03~0.25の範囲、より好ましくは0.04~0.20の範囲、例えば0.08~0.20、0.12~0.20または0.16~0.20の範囲であり;yは0.75~0.97の範囲、より好ましくは0.80~0.96の範囲、例えば0.80~0.92、0.88~0.80または0.84~0.80の範囲であり、x+y=1である。
【0027】
好ましい実施形態において、式(I)で表される抗菌性ナイロン6材料の繰り返し単位の総数は10~2500、好ましくは20~1000、より好ましくは20~500の範囲である。
【0028】
好ましい実施形態では、抗菌性ナイロン6材料は、2000~500000、好ましくは5000~200000、より好ましくは5000~100000の重量平均分子量を有する。
【0029】
第2の態様において、本発明は、70重量%以上100重量%未満の本発明による抗菌性ナイロン6材料、ならびに0以上%30%以下の、先述した抗菌性ナイロン6材料とは異なる、
【化12】
の構造を有する繰り返し単位および/または
【化13】
の構造を有する繰り返し単位を含む、少なくとも1種のポリマー、を含むナイロン6組成物を提供し、ここで基R
1、R
2およびR
3は本明細書において上記に定義した通りである。
【0030】
好ましい実施形態において、ナイロン6組成物は、80重量%以上100重量%未満、より好ましくは90重量%以上100重量%未満、例えば91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%の、本発明による抗菌性ナイロン6材料、および0重量%を超えて20重量%以下、より好ましくは0重量%を超えて10重量%以下、例えば0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%の、先述した抗菌性ナイロン6材料とは異なる少なくとも1種のポリマーを含む。
【0031】
いくつかの特定の実施形態において、抗菌性ナイロン6材料とは異なるポリマーは、xが0.02~0.30の範囲外であり、yが0.70~0.98の範囲外であり、およびx+y=1であることを除いて、式(I)と類似の構造を有する。
【0032】
好ましい実施形態において、本発明によるナイロン6組成物は、0重量%以上30重量%以下、好ましくは0重量%以上20重量%以下、より好ましくは0重量%以上10重量%以下、例えば0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%の、強化剤、充填剤、強靭化剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、蛍光増白剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、離型剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含む。
【0033】
本発明の組成物において使用するのに適した添加剤は、ナイロンの製造および加工において従来使用されている任意の添加剤であってよく、本発明において特に限定はない。例えば、本願の組成物に使用するのに適した充填剤は、活性炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、雲母などを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で一般的に使用されているものであってよく;本願の組成物に使用するのに適した酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤などを含むがこれらに限定されない当該技術分野で一般的に使用されているものであってよい。
【0034】
第3の態様において、本発明は、抗菌性ナイロン6材料を調製するための方法を提供するものであり、以下の工程を含む:
1)下記式(II)で表される構造を有する環状リジンモノマーを提供する工程であって、
【化14】
ここで、R
1およびR
2基は、C
1-24直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-18アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、またはR
1およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~7員の飽和もしくは不飽和複素環を形成する、工程;
2)環状リジンモノマーおよびカプロラクタムモノマーを、2:98~30:70のモル比で開環重合に供し、下記式(III)で表される構造を有するコポリマーを得る工程、
【化15】
3)コポリマーを、下記式(IV)で表される構造を有するハロゲン化物と反応させ、
R
3-Hal (IV)
ここで、R
3基は、水素(H)、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-18アリール基、および置換または非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から選択され、
Halはハロゲンを表し、
式(I)で表される構造を有する抗菌性ナイロン6を得る工程。
【化16】
【0035】
図1は、本発明による抗菌性ナイロン6材料を調製するための合成経路を示す概略図である。
【0036】
好ましい実施形態において、R1およびR2基は、C1-12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基(例えばアルキル基またはアルケニル基、好ましくはアルキル基などの、C1-8直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、C1-6直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、C1-4直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基)、置換もしくは非置換のC3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC6-10アリール基、および置換もしくは非置換のC7-16アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、またはR1基およびR2基は、結合したN原子とともに、5~6員の飽和または不飽和複素環を形成し;R3基は、水素(H)、C1-12直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基(例えばアルキル基またはアルケニル基、好ましくはアルキル基などの、C1-8直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、C1-6直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、C1-4直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基)、置換または非置換のC3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC6-10アリール基、および置換または非置換のC7-16アラルキル基からなる群から選択され;ならびにHalは、塩素、臭素またはヨウ素を表す。
【0037】
さらに好ましい実施形態では、R1基およびR2基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、アリル、フェニルおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、またはR1基およびR2基は、結合したN原子とともに、テトラヒドロピロリル基またはヘキサヒドロピリジル基を形成し;R3基は、水素(H)、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択され;ならびにHalは、塩素、臭素またはヨウ素を表す。
【0038】
さらに好ましい実施形態では、R1基およびR2基は同じであり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、アリル、およびベンジルからなる群から選択されるか、またはR1基およびR2基は、結合したN原子とともに、テトラヒドロピロリル基またはヘキサヒドロピリジル基を形成する;R3基は、水素(H)、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、およびベンジルからなる群から選択され、Halは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。
【0039】
特に好ましい実施形態では、R1基およびR2基は同じであり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、アリル、およびベンジル、特にエチル、プロピル、ブチル、およびベンジルからなる群から選択されるか、またはR1基およびR2基は、結合したN原子とともに、ヘキサヒドロピリジル基を形成する;R3基は、水素(H)、エチル、シクロヘキシルおよびベンジル、特にエチルからなる群から選択され;そしてHalは塩素または臭素、好ましくは臭素を表す。
【0040】
本発明による方法の好ましい実施形態において、環状リジンモノマーは、式(V)で表されるアミノカプロラクタム上の第一級アミン基を保護基で保護することにより、工程1)において提供される。
【化17】
【0041】
例えば、保護基は、本明細書において上記に定義したR1基およびR2基であり得、本明細書では詳細に説明しない。
【0042】
さらに好ましい実施形態において、前記工程1)は、前記アミノカプロラクタムを、R1および/またはR2基を有する対応するアルデヒドおよび/またはハロゲン化炭化水素と反応させることにより実施され、好ましくは、前記アミノカプロラクタムを、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、塩化ベンジル、1,5-ジブロモペンタン、臭化アリル、臭化ドデシル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬と反応させることにより実施される。
【0043】
ある種のさらに好ましい実施形態において、工程1)で使用されるアミノカプロラクタムは、L-リジン塩酸塩から以下のようにして調製することができる:i)L-リジン塩酸塩に対してメチルエステル化を行い、メチルエステル化L-リジンを得ることであって、好ましくは、溶媒としてメタノール、触媒としてメチルエステル化試薬および濃硫酸を扱い、還流条件下で8~10時間反応させて、メチルエステル化L-リジンを得ること;ii)メチルエステル化L-リジンをメタノール溶媒中で塩基性溶液と反応させてアミノカプロラクタムを得ることであって、好ましくは室温で10~12時間反応させた後、濃縮、再結晶してアミノカプロラクタムを得ること。
【0044】
好ましい実施形態において、工程2)で使用される環状リジンモノマーとカプロラクタムモノマーとのモル比は、3:97~25:75、より好ましくは4:96~20:80である。
【0045】
好ましい実施形態において、工程2)は、触媒の存在下で実施され、好ましくは、触媒は、カルベン試薬、グアニジン試薬、アミジン試薬、ホスファゼン試薬、アルカリ金属、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属アルコキシド、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。さらに好ましくは、触媒は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ホスファゼン塩基(t-BuP4)、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、TBD(1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン)、ナトリウム、カリウム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、環状リジンモノマーおよびカプロラクタムモノマーの合計量と、工程2)で使用する触媒とのモル比は、(10~50):1、好ましくは(10~30):1である。
【0047】
さらに好ましい実施形態では、工程2)の開環重合は、以下の構造を有する活性化剤の存在下で行われる:
【化18】
ここで、Rはメチル、エチル、フェニル、t-ブチルフェニルおよびトリフルオロメチルフェニルからなる群から選択される。
【0048】
さらに好ましくは、環状リジンモノマーおよびカプロラクタムモノマーの合計量と、工程2)で使用する活性化剤とのモル比は、(10~50):1、好ましくは(10~30):1。
【0049】
好ましい実施形態では、工程2)の反応条件として、重合温度140~180℃、反応時間3~6時間が含まれる。
【0050】
好ましい実施形態において、工程3)で使用される式(IV)で表される構造を有するハロゲン化物は、塩酸、ヨウ化メチル、臭化エチル、臭化ブチル、臭化ヘキシル、臭化シクロヘキシル、臭化ベンジル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、塩酸、臭化エチル、臭化シクロヘキシル、臭化ベンジル、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0051】
好ましい実施形態において、工程3)の反応は、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、シクロヘキサノール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒中で実施され、より好ましくはトリフルオロエタノール溶媒中で実施される。さらに好ましくは、工程3)の反応条件として、反応温度40~70℃、反応時間10~12時間が含まれる。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態では、工程3)はさらに、コポリマーとハロゲン化物との反応生成物を酢酸エチル中で沈降させ、遠心分離し、乾燥して抗菌性ナイロン6材料を得ることを含む。
【0053】
第4の態様において、本発明は、本発明による抗菌性ナイロン6材料、本発明によるナイロン6組成物、または本発明による方法によって得られた抗菌性ナイロン6材料を含む物品を提供する。
【0054】
いくつかの好ましい実施形態では、物品の少なくとも一部が抗菌性ナイロン6材料から作られている。
【0055】
好ましい実施形態において、物品は、例えばマスク、防護服、タオル、カーペット、クリングフィルム、自転車のハンドル等の、繊維製品、日用品、建築材料、包装材料及びパネルからなる群から選択される。
【0056】
本発明によれば、本発明に係る抗菌性ナイロン6材料または本発明に係るナイロン6組成物を用いて、物品またはその一部を従来の方法、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、カレンダリング成形等により製造することができ、その操作および条件は当業者に周知であり、実際の必要に応じて選択することができるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0057】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
特に指定のない限り、以下の実施例で使用した試薬は市販品であり、分析グレードの純度を有する。
【0059】
以下の実施例および比較例において、得られたアミノカプロラクタム中間体およびナイロン6材料の核磁気共鳴スペクトルは、重水素化ジメチルスルホキシドとトリフルオロ酢酸の混合溶媒を用い、Burker AV-300液体超伝導核磁気共鳴分光計により室温で測定した;重量平均分子量は、Waters515 Gel Permeation Chromatograph(Waters Corporation社、米国)を用い、0.02mol/Lトリフルオロ酢酸ナトリウムを含むヘキサフルオロイソプロパノールを溶離液として用いた。
【0060】
以下の実施例および比較例において、得られたナイロン6材料の融点は、米国TAインスツルメンツ社製Q2000 DSC7 Differential Scanning Calorimeter(DSC)を用い、次のようにして測定した:試料5mgを秤量し、DSC7 Differential Scanning Calorimeterの試料槽に入れ、50ml/分の窒素気流下、10℃/分の昇温速度で25℃から250℃まで加熱し、融点を検出した。
【0061】
実施例1
(1)アミノカプロラクタムの調製
546g(3mol)のL-リジン塩酸塩と1.5Lのメタノールを2L三口フラスコに秤量し、176ml(3.3mol)の濃硫酸(98%)を均圧式滴下漏斗を用いて滴下し、機械的に攪拌した。濃硫酸滴下後、溶液は清澄な状態になったので、2L一口フラスコに移し、還流条件下で8時間反応させ、メチルエステル化リジンを得た。
【0062】
メチルエステル化リジンを50L反応ケトルに移し、そこに28.5Lのメタノールを加え、さらに機械的に撹拌し、メタノール中の水酸化ナトリウム溶液(2Lのメタノールに480gの水酸化ナトリウムを溶解した溶液)を滴下し、室温で10~12時間反応させた。得られたものを濃縮、再結晶し、核磁気共鳴水素スペクトル分析による純度90%のアミノカプロラクタムを収率80%で得た。
【0063】
(2)ジメチル保護アミノカプロラクタムの調製
30g(234mmol)の工程(1)で得られたアミノカプロラクタムを秤量し、500mlのメタノールに溶解し、42g(514mmol)のホルムアルデヒド溶液(37質量%)、および3gの10%パラジウム炭素を加え、水素雰囲気下で24時間反応させた。得られたものを吸引濾過、濃縮、再結晶し、ジメチル保護アミノカプロラクタムを収率92%、核磁気共鳴水素スペクトル分析による純度98%で得た。
【0064】
(3)抗菌性ナイロン6材料の調製
0.5g(3.2mmol)の工程(2)で得られたジメチル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25mlの丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0065】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果を
図2に示す。
1H NMR (DMSO-d
6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0066】
得られたコポリマー中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であり、これは
図2のh位のピークの積分面積に対するf位のピークの積分面積の比として計算された。残余の溶液に1g(19.2mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)で示されるカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率92%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は8500、融点は210.6℃であり、そのDSC融点試験図を
図3に示す。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0067】
実施例2
2g(12.8mmol)の、実施例1の工程(2)で得られたジメチル保護アミノカプロラクタム、18g(0.16mol)のカプロラクタム、0.54g(3.5mmol)のN-ホルミルカプロラクタム活性化剤を50ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、0.14g(3.5mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0068】
180mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0069】
残余の溶液に4.2g(38.4mmol)のブロモエタンを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた後、反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)で示されるカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率95%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は10000、融点は199.5℃であり、そのDSC融点試験図を
図4に示す。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約8%であった。
【0070】
実施例3
3g(19.2mmol)の、実施例1の工程(2)で得られたジメチル保護アミノカプロラクタム、17g(0.15mol)のカプロラクタム、0.74g(3.4mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性剤を50ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、0.14g(3.4mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0071】
150mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0072】
残余の溶液に6.3g(57.6mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた後、反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)で示されるカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率90%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は12000、融点は185.7℃であり、そのDSC融点試験図を
図5に示す。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約12%であった。
【0073】
実施例4
4g(25.6mmol)の、実施例1の工程(2)で得られたジメチル保護アミノカプロラクタム、16g(0.14mol)のカプロラクタム、0.56g(3.3mmol)のN-アセチルカプロラクタム活性化剤を50ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、0.13g(3.3mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0074】
180mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0075】
残余の溶液に8.4g(77.8mmol)のブロモエタンを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた後、反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)で示されるカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率89%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は15000、融点は176.3℃であり、そのDSC融点試験図を
図6に示す。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約16%であった。
【0076】
実施例5
5g(32mmol)の、実施例1の工程(2)で得られたジメチル保護アミノカプロラクタム、15g(0.13mol)のカプロラクタム、0.87g(3.2mmol)のN-tert-ブチルベンゾイルカプロラクタム活性化剤を50mlの丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、0.13g(3.3mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0077】
160mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0078】
残余の溶液に10.5g(96mmol)のブロモエタンを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた後、反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)で示されるカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率85%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は18000、融点は167.5℃であり、そのDSC融点試験図を
図7に示す。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約20%であった。
【0079】
実施例6
0.5g(3.2mmol)の、実施例1の工程(2)で得られたジメチル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.48g(1.7mmol)のN-トリフルオロメチルベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25mlの丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0080】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0081】
残余の溶液に100mlの塩酸溶液(6M)を加え、室温で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)を有するカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率85%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量6000、融点212.4℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0082】
実施例7
0.5g(3.2mmol)の、実施例1の工程(2)で得たジメチル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0083】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0084】
残余の溶液に15.6g(96mmol)のブロモシクロヘキサンを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)で示されるカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率95%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は20000、融点は208.6℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0085】
実施例8
0.5g(3.2mmol)の、実施例1の工程(2)で得たジメチル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0086】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0087】
残余の溶液に16.4g(96mmol)の臭化ベンジルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)を有するカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率98%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は50000、融点は206.3℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0088】
実施例9
(1)ジエチル保護アミノカプロラクタムの調製
30g(234mmol)のアミノカプロラクタムを秤量し、500mlのメタノールに溶解し、56.6g(514mmol)のアセトアルデヒド溶液(40質量%)、および3gの10%パラジウム炭素を加え、水素雰囲気下で24時間反応させた。得られたものを吸引濾過、濃縮、再結晶し、ジエチル保護アミノカプロラクタムを収率88%で得た。当該ジエチル保護アミノカプロラクタムの核磁気共鳴水素スペクトル分析による純度は95%であった。
【0089】
(2)抗菌性ナイロン6の調製
0.59g(3.2mmol)の、工程(1)で得られたジエチル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0090】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.75-3.63,3.34-3.12,2.78-2.62,2.50-2.40,1.61-1.28.
【0091】
残余の溶液に1g(19.2mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)を有するカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率82%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は13000、融点は208.2℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0092】
実施例10
(1)ジプロピル保護アミノカプロラクタムの調製
30g(234mmol)のアミノカプロラクタムを秤量し、500mlのメタノールに溶解し、29.9g(514mmol)のプロピオンアルデヒド、および3gの10%パラジウム炭素を加え、混合物を水素下で24時間反応させた。得られたものを吸引濾過、濃縮、再結晶を行い、ジプロピルで保護されたアミノカプロラクタムを収率89%で得た。当該ジプロピル保護アミノカプロラクタムは、核磁気共鳴水素スペクトル分析によると97%の純度を有していた。
【0093】
(2)抗菌性ナイロン6材料の調製
0.68g(3.2mmol)の工程(1)で得られたジプロピル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0094】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.85-3.53,3.30-3.10,2.88-2.52,2.40-2.28,1.71-1.18.
【0095】
残余の溶液に1g(19.2mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)を有するカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率93%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は18000、融点は201.7℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0096】
実施例11
(1)ジブチル保護アミノカプロラクタムの調製
30g(234mmol)のアミノカプロラクタムを500mlのメタノールに溶解し、37.1g(514mmol)のブチルアルデヒド、および3gの10%パラジウム炭素を加え、水素雰囲気下で24時間反応させた。得られたものを吸引濾過、濃縮、再結晶し、ジブチル保護アミノカプロラクタムを収率86%で得た。
【0097】
(2)抗菌性ナイロン6の調製
0.77g(3.2mmol)の工程(1)で得られたジブチル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0098】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.95-3.73,3.30-3.10,2.58-2.42,2.30-2.10,1.60-1.08.
【0099】
残余の溶液に1g(19.2mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)を有するカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率86%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は25000、融点は201.1℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0100】
実施例12
(1)ジベンジル保護アミノカプロラクタムの調製
30g(234mmol)のアミノカプロラクタムを500mlのアセトニトリル中に秤量し、56ml(491mmol)の塩化ベンジル、および46.8g(351mmol)の炭酸カリウムを加え、80℃で6時間撹拌下で反応させた。得られたものを1M塩酸で洗浄し、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、吸引濾過、濃縮、再結晶し、ジベンジル保護アミノカプロラクタムを収率85%で得た。当該ジベンジル保護アミノカプロラクタムの核磁気共鳴水素スペクトル分析による純度は95%であった。
【0101】
(2)抗菌性ナイロン6材料の調製
0.99g(3.2mmol)の、工程(1)で得られたジベンジル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0102】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 7.35-7.12,5.52-5.36,3.75-3.63,3.24-3.10,2.51-2.38,1.81-1.28.
【0103】
残余の溶液に1g(19.2mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)を有するカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率93%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は50000、融点は196.5℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0104】
実施例13
(1)N,N-ヘキサヒドロピリジルアミノカプロラクタムの調製
30g(234mmol)のアミノカプロラクタムを500mlのアセトニトリル中に秤量し、80.7g(351mmol)の1,5-ジブロモペンタン、および46.8g(351mmol)の炭酸カリウムを加え、80℃で6時間撹拌下で反応させた。得られたものを1M塩酸で洗浄し、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、吸引濾過、濃縮、再結晶し、N,N-ヘキサヒドロピリジルアミノカプロラクタムを収率75%で得た。当該N,N-ヘキサヒドロピリジルアミノカプロラクタムの核磁気共鳴水素スペクトル分析による純度は90%であった。
【0105】
(2)抗菌性ナイロン6材料の調製
0.63g(3.2mmol)のN,N-ヘキサヒドロピリジルアミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0106】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 5.53-5.31,3.70-3.53,3.32-3.12,2.55-2.40,1.61-1.18.
【0107】
残余の溶液に1g(19.2mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)を有するカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率88%でえた。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は20000、融点は193.8℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0108】
実施例14
(1)ジアリル保護アミノカプロラクタムの調製
30g(234mmol)のアミノカプロラクタムを500mlのアセトニトリルに秤量し、59.4g(491mmol)の臭化アリル、および46.8g(351mmol)の炭酸カリウムを加え、80℃で6時間撹拌下で反応させた。得られたものを1M塩酸で洗浄し、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、吸引濾過、濃縮、再結晶し、ジアリル保護アミノカプロラクタムを収率78%で得た。当該ジアリル保護アミノカプロラクタムの核磁気共鳴水素スペクトル分析による純度は97%であった。
【0109】
(2)抗菌性ナイロン6の調製
0.67g(3.2mmol)のジアリル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0110】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 4.53-4.23,3.95-3.73,3.44-3.22,2.53-2.40,1.81-1.38.
【0111】
残余の溶液に1g(19.2mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)を有するカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率92%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は18000、融点は200.3℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0112】
実施例15
(1)ジドデシル保護アミノカプロラクタムの調製
30g(234mmol)のアミノカプロラクタムを500mlのアセトニトリル中に秤量し、122.4g(491mmol)の臭化ドデシル、および46.8g(351mmol)の炭酸カリウムを加え、80℃で6時間撹拌下で反応させた。得られたものを1M塩酸で洗浄し、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、吸引濾過、濃縮、再結晶し、ジドデシル保護アミノカプロラクタムを収率70%で得た。当該ジドデシル保護アミノカプロラクタムの核磁気共鳴水素スペクトル分析による純度は90%であった。
【0113】
(2)抗菌性ナイロン6材料の調製
1.49g(3.2mmol)の、工程(1)で得られたジドデシル保護アミノカプロラクタム、9.5g(84mmol)のカプロラクタム、0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0114】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.65-3.43,3.24-3.02,2.758-2.32,2.20-2.06,1.51-1.18.
【0115】
残余の溶液に1g(19.2mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、一般式(I)を有するカチオン性ポリ(ε-リジン)由来の抗菌性ナイロン6材料を収率89%で得た。当該抗菌性ナイロン6材料の重量平均分子量は80000、融点は185.6℃であった。抗菌性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約4%であった。
【0116】
比較例1
9.5g(84mmol)のカプロラクタム、および0.37g(1.7mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、70mg(1.7mmol)の水素化ナトリウムを加え、180℃のオイルバス中で窒素雰囲気下、6時間反応させ、融点222.3℃の従来のナイロン6を得た。
【0117】
比較例2
0.25g(1.6mmol)の、実施例1の工程(2)で得られたジメチル保護アミノカプロラクタム、36.2g(320mmol)のカプロラクタム、1.41g(6.5mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25mlの丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、260mg(6.5mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0118】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0119】
残余の溶液に1g(19.2mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離後、乾燥して、カチオン性ポリ(ε-リジン)由来の変性ナイロン6材料を収率98%で得た。当該変性ナイロン6材料の重量平均分子量は50000、融点は219.5℃であった。変性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約0.5%であった。
【0120】
比較例3
15.6g(100mmol)の、実施例1の工程(2)で得られたジメチル保護アミノカプロラクタム、11.3g(100mmol)のカプロラクタム、0.87g(4mmol)のN-ベンゾイルカプロラクタム活性化剤を25ml丸底フラスコに秤量し、40℃で30分間パージした後、160mg(4mmol)の水素化ナトリウムを加え、窒素保護下、180℃のオイルバス中で6時間反応させた。
【0121】
100mlのトリフルオロエタノールを加えて溶解し、得られた材料の一部を取り出して核磁気共鳴特性評価を行った。結果は以下の通りである:1H NMR(DMSO-d6,300MHz) δ 3.70-3.61,3.13-3.02,2.76-2.72,2.51-2.50,1.81-1.18.
【0122】
残余の溶液に65.3g(600mmol)の臭化エチルを加え、40℃のオイルバス中で12時間反応させた。反応液を酢酸エチルで沈降させ、遠心分離し、乾燥して、カチオン性ポリε-リジン由来の変性ナイロン6材料を収率60%で得た。当該変性ナイロン6材料の重量平均分子量は13500であり、非晶質であるため融点は測定されなかった。変性ナイロン6材料中のε-リジン由来の共重合単位のモルパーセンテージは約40%であった。
【0123】
【0124】
抗菌効果試験
抗菌効果は、中国国家標準GB/T 31402-2015に従い、培養時間、培養温度を実情に応じて調整し、以下に示すようにして試験された:実施例1~15で得られた抗菌性ナイロン6材料および比較例1~3で得られたナイロン6材料をそれぞれ0.75cm×0.75cmの正方形のシートにプレスし、紫外線ランプで30分間殺菌した後、あらかじめ作製した菌液を滴下し、PEフィルムで覆い、37℃で6時間培養した。その後、菌液を3分の超音速処理に供し、100倍に希釈し、固形養分媒体上にて37℃で20時間培養した。比較例1で得られた従来のナイロン6材料をコントロールとして使用した。試験菌はStaphylococcus aureus(S.aureus)ATCC6538およびEscherichia coli(E.coli)ATCC25922を用いた。試験結果を表2に示す。
【0125】
【0126】
機械的特性試験
実施例1~15で得られた抗菌性ナイロン6材料および比較例1~3で得られたナイロン6材料をそれぞれ40mm×4mm×2mmの棒状に射出成形し、引張試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0127】
【0128】
表2のデータから明らかなように、本発明の抗菌性ナイロン6材料は、従来のナイロン6材料と実質的に同等の抗菌効果を有し、かつ機械的特性も良好である。これに対し、比較例2のナイロン6材料は抗菌能が不十分であり、比較例3のナイロン6材料は機械的特性が劣る。
【0129】
図8Aおよび
図8Bは、比較例1で得られたナイロン6材料と実施例5で得られたナイロン6材料との間の、Staphylococcus aureusに対する抗菌効果を比較した写真であり、示されている斑点は生菌コロニーである。図から明らかなように、本発明の抗菌性ナイロン6材料は、比較例1で得られた従来のナイロン6材料と比較して、Staphylococcus aureusに対して顕著な抑制効果を有している。
【0130】
本発明は、本明細書において上記に、好ましい実施形態を参照して詳細に例示されているが、これらの実施形態に限定されることを意図するものではない。本発明の発明概念に従って様々な変更を行うことができ、これらの変更は本発明の範囲内であるものとする。
【0131】
上記の実施形態に記載された様々な技術的特徴は、矛盾することなく任意の適切な方法で組み合わせることができ、不必要な繰り返しを避けるために、本願では様々な可能な組み合わせは記載されていないが、そのような組み合わせも本願の範囲内であることに留意されたい。
【0132】
さらに、本発明の様々な実施形態は、その組み合わせが本発明の精神から逸脱しない限り、任意に組み合わせることができ、そのような組み合わせた実施形態は、本発明の開示とみなされるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される構造を有する抗菌性ナイロン6材料:
【化1】
ここで、
各R
1基および各R
2基は、C
1-24直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-18アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR
1基およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~7員の飽和もしくは不飽和複素環を形成し;
各R
3基は、水素(H)、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-18アリール基、および置換または非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択され;ならびに
xおよびyはそれぞれ、式(I)中の繰り返し単位の総量に対する、
【化2】
の構造を有する繰り返し単位のモル比および
【化3】
の構造を有する繰り返し単位のモル比を表し、xは0.02~0.30、好ましくは0.03~0.25、より好ましくは0.04~0.20の範囲であり;yは0.70~0.98、好ましくは0.75~0.97、より好ましくは0.80~0.96の範囲であり、x+y=1であり;
ここで、「置換」という表現は、前記基が、C
1-18直鎖状または分枝状アルキル基、好ましくはC
1-12直鎖状または分枝状アルキル基、より好ましくはC
1-6直鎖状または分枝状アルキル基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていることを意味する、抗菌性ナイロン6材料。
【請求項2】
各R
1基および各R
2基は、C
1-12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-10アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-16アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR
1基およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~6員の飽和もしくは不飽和複素環を形成し、好ましくは、各R
1基および各R
2基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、アリル、フェニル、およびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または同じ窒素原子上のR
1基およびR
2基は、結合したN原子とともに、テトラヒドロピロリル基もしくはヘキサヒドロピリジル基を形成し;ならびに
各R
3基は、水素(H)、C
1-12直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-10アリール基、および置換または非置換のC
7-16アラルキル基からなる群から独立して選択され、好ましくは、各R
3基は、水素(H)、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、フェニルおよびベンジルからなる群から独立して選択される、請求項1に記載の抗菌性ナイロン6材料。
【請求項3】
式(I)中の繰り返し単位の総数が、10~2500、好ましくは20~1000、より好ましくは20~500の範囲であり;および/または
前記抗菌性ナイロン6は、重量平均分子量が2000~500000、好ましくは5000~200000、より好ましくは5000~100000である、請求項1または2に記載の抗菌性ナイロン6材料。
【請求項4】
70重量%から100重量%未満、好ましくは80重量%から100重量%未満、より好ましくは90重量%から100重量%未満の、請求項
1に記載の抗菌性ナイロン6材料、ならびに0重量%から30重量%まで、好ましくは0重量%を超えて20重量%まで、より好ましくは0重量%を超えて10重量%までの、前記抗菌性ナイロン6材料とは異なる、
【化4】
の構造を有する繰り返し単位および/または
【化5】
の構造を有する繰り返し単位を含む、少なくとも1種のポリマー、を含むナイロン6組成物であって、ここで前記基R
1、R
2、およびR
3が請求項1で定義した通りである、ナイロン6組成物。
【請求項5】
補強剤、充填剤、強靭化剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、蛍光増白剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、離型剤およびこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を0~30重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0~10重量%、さらに含有する、請求項4に記載のナイロン6組成物。
【請求項6】
以下の工程:
1)下記式(II)で表される構造を有する環状リジンモノマーを提供する工程であって、
【化6】
ここで、前記R
1およびR
2基は、C
1-24直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-18アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または前記R
1およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~7員の飽和もしくは不飽和複素環を形成する、工程;
2)前記環状リジンモノマーおよびカプロラクタムモノマーを、2:98~30:70、好ましくは3:97~25:75、より好ましくは4:96~20:80のモル比で開環重合に供し、下記式(III)で表される構造を有するコポリマーを得る工程、
【化7】
3)前記コポリマーを、下記式(IV)で表される構造を有するハロゲン化物と反応させ、
R
3-Hal (IV)
ここで、前記R
3基は、水素(H)、C
1-24直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-12脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-18アリール基、および置換または非置換のC
7-30アラルキル基からなる群から選択され、
Halはハロゲンを表し、好ましくは塩素、臭素またはヨウ素、より好ましくは塩素または臭素であり、
下記式(I)で表される構造を有する抗菌性ナイロン6を得る工程、
【化8】
を含む、抗菌性ナイロン6材料の調製方法であって、
ここで、「置換」という表現は、前記基が、C
1-18直鎖状または分枝状アルキル基、好ましくはC
1-12直鎖状または分枝状アルキル基、より好ましくはC
1-6直鎖状または分枝状アルキル基から選択される1つ以上の置換基によって置換されていることを意味する、方法。
【請求項7】
前記R
1およびR
2基は、C
1-12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換もしくは非置換のC
6-10アリール基、および置換もしくは非置換のC
7-16アラルキル基からなる群から独立して選択されるか、または前記R
1およびR
2基は、結合したN原子とともに、5~6員の飽和または不飽和複素環を形成し、好ましくは前記R
1およびR
2基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、アリル、フェニル、およびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または前記R
1およびR
2基は、結合したN原子とともに、テトラヒドロピロリル基またはヘキサヒドロピリジル基を形成し;ならびに
前記R
3基は、水素(H)、C
1-12直鎖状または分枝状脂肪族ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
3-6脂環式ヒドロカルビル基、置換または非置換のC
6-10アリール基、および置換または非置換のC
7-16アラルキル基からなる群から選択され、好ましくは前記R
3基は、水素(H)、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記環状リジンモノマーが、式(V)で表されるアミノカプロラクタム上の第一級アミン基を保護基で保護することにより、工程1)において提供される、請求項6または7に記載の方法。
【化9】
【請求項9】
前記工程1)が、前記アミノカプロラクタムを、前記R
1および/またはR
2基を有するアルデヒドおよび/またはハロゲン化炭化水素と反応させることによって達成され、好ましくは、前記アミノカプロラクタムを、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、塩化ベンジル、1,5-ジブロモペンタン、臭化アリル、臭化ドデシル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬と反応させることによって達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程2)が触媒の存在下で実施され、好ましくは前記触媒が、カルベン試薬、グアニジン試薬、アミジン試薬、ホスファゼン試薬、アルカリ金属、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属アルコキシド、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは水素化ナトリウム、水素化カリウム、t-BuP
4、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、DBU、TBD、ナトリウム、カリウム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6
または7に記載の方法。
【請求項11】
工程2)における前記環状リジンモノマーおよび前記カプロラクタムモノマーの合計量と前記触媒とのモル比が、(10~50):1、好ましくは(10~30):1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程2)における前記開環重合が、以下の構造を有する活性化剤の存在下で実施され;
【化10】
ここで、Rはメチル、エチル、フェニル、t-ブチルフェニルおよびトリフルオロメチルフェニルからなる群から選択され;
好ましくは、工程2)における前記環状リジンモノマーおよび前記カプロラクタムモノマーの合計量と、前記活性化剤とのモル比は(10-50):1、好ましくは(10-30):1である、請求項6
または7に記載の方法。
【請求項13】
以下の特徴の1つ以上を有する、請求項6
または7に記載の方法:
工程2)の反応条件は、140~180℃の重合温度、3~6時間の反応時間を含む;
工程3)で使用される式(IV)で表されるハロゲン化物は、塩酸、ヨウ化メチル、臭化エチル、臭化ブチル、ブロモヘキサン、ブロモシクロヘキサン、臭化ベンジルまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される;
工程3)の反応が、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、シクロヘキサノール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される溶媒中で、40~70℃の反応温度、および10~12時間の反応時間を含む反応条件下で行われる;および/または
工程3)がさらに、前記コポリマーと前記ハロゲン化物の反応生成物を酢酸エチル中で沈降させ、遠心分離し、乾燥して抗菌性ナイロン6を得る工程を含む。
【請求項14】
請求項
1に記載の抗菌性ナイロン6材料、請求項
4に記載のナイロン6組成物、または請求項
6に記載の方法により得られた抗菌性ナイロン6材料を含む、物品。
【請求項15】
繊維製品、日用品、建築材料、包装材料及びパネルからなる群から選択される、請求項14に記載の物品。
【国際調査報告】