(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】エアレーションされた菓子
(51)【国際特許分類】
A23G 3/52 20060101AFI20240822BHJP
A23G 4/14 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A23G3/52
A23G4/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510334
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2022073775
(87)【国際公開番号】W WO2023025935
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】セリゲタ トレス, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ラジディス, アリストディモス
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GG09
4B014GG12
4B014GG13
4B014GL04
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP04
4B014GP12
4B014GP14
4B014GP27
(57)【要約】
本発明は、エアレーションされた水ベース菓子製品及びそれを製造する方法に関する。特に、本発明は、加水分解エンドウマメタンパク質などの凝集した植物由来タンパク質と、糖とを含む、安定な酸性水性ムースに関する。一態様では、本発明は、5.5未満のpH及び0.67未満の水分活性を有する、植物ベースである、エアレーションされた水ベース菓子であって、該エアレーションされた菓子が、30重量%~90重量%の糖と、1重量%~8重量%の凝集したタンパク質と、を含む、エアレーションされた水ベース菓子を提供する。凝集した植物由来タンパク質は、エアレーションされた水ベース菓子を安定化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアレーションされた水ベース菓子であって、
5.5未満のpHを有し、
0.67未満の水分活性を有し、
30重量%~90重量%の糖を含み、
1重量%~8重量%の植物ベースタンパク質を含み、
前記タンパク質は、前記エアレーションされた水ベース菓子を安定化させる、エアレーションされた水ベース菓子。
【請求項2】
前記菓子が、ムース又はフォームである、請求項1に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項3】
前記菓子が、2~5、又は2~4.2のpHを有する、請求項3に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項4】
前記タンパク質が、凝集したタンパク質であり、好ましくは、加熱により凝集したタンパク質又は酸により凝集したタンパク質である、請求項1又は2に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項5】
前記タンパク質が、加水分解タンパク質である、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項6】
前記タンパク質が、前記エアレーションされた菓子の少なくとも2重量%、任意選択で少なくとも2重量%、少なくとも2.2重量%、少なくとも3重量%、又は少なくとも3.3重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項7】
40重量%~90重量%の糖を含み、前記糖が、
少なくとも2種類の異なる糖、又は
10%~70%、10%~65%、20%~60%、若しくは40%~60%の糖転化率の転化糖を含むか、又はこれらからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項8】
少なくとも2種類の糖が存在し、前記糖のうちの1種類が、総糖含有量の少なくとも20重量%を形成するフルクトースである、請求項7に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項9】
60重量%~80重量%の糖を含む、請求項7又は8に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項10】
次の:
動物由来製品、
脂肪、
親水コロイド、
界面活性剤、
乳化剤、
食物繊維、
ゲル化剤、
増粘剤、及び
卵由来製品、
のうち、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は8つを実質的に又は全く含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子:。
【請求項11】
前記エアレーションされた菓子の前記水分活性が、0.45より大きく0.64以下又は0.59以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項12】
前記エアレーションされた菓子のバルク粘度が、10~25Pa.S、任意選択で10~16Pa.Sである、請求項1~11のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項13】
60%~200%、より好ましくは60%~160%のオーバーランを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項14】
少なくとも0.8gr/cm
3のかさ密度にエアレーションされている、請求項1~13のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項15】
3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.1重量%未満の固化剤、任意選択でゼラチン又はペクチンを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項16】
果実、果汁若しくは果実濃縮物を、任意選択で10重量%~30重量%含む、及び/又は
コーヒー、ココア若しくはカラメルから任意選択で選択される1つ以上の香味料を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項17】
前記エアレーションされた菓子が、少なくとも1ヶ月間安定であり、安定性が、目に見える液体分離、フォーム崩壊又は糖結晶化がないことによって評価される、請求項1~16のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項18】
前記エアレーションされた菓子が、4℃又は18℃で6ヶ月間安定である、請求項1~17のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項19】
5重量%~25重量%の果実濃縮物、
2重量%~4重量%のタンパク質単離物、
70%未満の転化率を有する80重量%~90重量%の転化糖シロップを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子。
【請求項20】
チョコレート、好ましくはチョコレートシェルに部分的に又は完全に囲まれた若しくは包まれた請求項1~19のいずれか一項に記載のエアレーションされた水ベース菓子を含む、完成菓子製品。
【請求項21】
エアレーションされた水ベース菓子を製造する方法であって、
(i)水性液体塊を形成するステップであって、前記水性液体塊が、
5.5未満のpHを有し、
0.67未満の水分活性を有し、
少なくとも30重量%の糖を含み、
1重量%~8重量%の凝集した植物由来タンパク質を含む、ステップと、
(ii)前記水性液体塊にエアを導入するステップと、を含む、方法。
【請求項22】
少なくとも前記タンパク質及び糖を、任意選択で水中にて、50℃以上の温度で混合することによって前記液体塊を製造するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
エアレーション用菓子であって、
5.5未満のpHを有し、
0.67未満の水分活性を有し、
少なくとも30重量%の糖を含み、
1重量%~8重量%の凝集した植物由来タンパク質を含む、エアレーション用菓子。
【請求項24】
エアレーション用菓子を製造する方法であって、
(i)糖と、加水分解エンドウマメタンパク質とを含む水性混合物を形成するステップであって、前記加水分解エンドウマメタンパク質が前記混合物中に1重量%~8重量%で存在する、ステップと、
(ii)前記混合物を少なくとも50℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは80℃~95℃に加熱して、前記タンパク質を凝集させるステップと、を含む、方法。
【請求項25】
エアレーションされた菓子用の安定化剤としての、植物タンパク質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物ベースである、エアレーションされた水ベース菓子製品及びそれを製造する方法に関する。特に、本発明は、凝集した植物由来タンパク質と、糖と、を含む、安定な酸性水性ムースに関する。
【背景技術】
【0002】
エアレーションされた菓子製品は、長い間喫食されてきた。かかる菓子製品は職人的プロセス及び工業的プロセスの両方で製造される。過去10年間にわたって、飲食産業では、従来の動物由来成分と置き換えて植物ベースの代替物を利用する製品への劇的な需要増加が見られた。しかしながら、多くの動物由来成分は、望ましい食物構造の創出及び維持において極めて重要な機能的役割を果たすので、これらの好適な置き換え物を見出すことは極めて困難であり得る。十分に確立された成分を植物ベースの代替物に置き換えることは、機能性を再現しようとすると、特に特定の食物微細構造が必要とされる場合には、単なる置き換えほど単純ではない。
【0003】
チョコレート菓子では、様式、製造方法及び流通経路は、製品が周囲条件において典型的には9~12ヶ月間微生物学的に安定であることを必要とする。この安定性は、製品の水分活性が、病原性細菌、酵母及びカビの増殖を防止するのに十分低いことを確保することによって実際に達成される。チョコレート製品の水分活性の上限は0.67である。ウエハース又はビスケットの要素を備えた製品は、湿分に敏感な該要素に典型的な官能特性を保護するために、より低い水分活性要件(典型的には0.45未満)を有する。
【0004】
この低い水分活性は、通常、水ベースの系の使用を回避することによって達成され、ひいては、菓子には脂肪ベースのフィリングが主に使用されていることが説明される。脂肪ベースのフィリングはうまくエアレーションすることができるが、「重厚である」と知覚され、かかるフィリングが提供するテクスチャは、消費者がエアレーション構造を連想するムース、ミルクセーキ及びホイップクリームのものとはかけ離れている。栄養の観点から、脂肪ベースのフィリングは飽和脂肪酸(SFA)も含有しており、概して、水ベースの系の主構成成分である糖よりも高いカロリー価(calorific value)を有する。
【0005】
水ベースの系は、より軽やかでより柔らかい知覚を備え、SFAを含まず、より低いカロリー価を有するが、製品の糖分と大いに関係している。限度はあるものの、固形分の全てが水に懸濁されることで、水分活性は顕著に増加し得ることから、これらの水ベースの系の水分活性は難易度の高い課題である。この課題には、水の一部を保湿性が高い糖アルコール(例えば、ソルビトール又はグリセロール)で置き換えることによって、又はより多くの糖を添加して系の固形分を増加させることによって対処することができる。糖の選択は、高い総固形分及び約20℃でなお流動する系を達成するために重要である。また、系中の糖は、この高TSでは準安定状態にあるので、経時的に結晶化することがない。この技術は当該技術分野で公知であり、糖アルコールの使用は普及しているが、消費者は製品ラベルについて十分に満足しているわけではない。
【0006】
水ベースの菓子フィリングの主な利点は、かかるフィリングが、親水コロイドの使用によって容易に調節され得る柔らかいテクスチャを有することである。かかるフィリングはまた、果実、コーヒー及びカラメルからのものなどの水ベースの香味料を非常に効率的に送達する。最後に、かかるフィリングは製品の脂肪含有量にもSFA含有量にも寄与せず、且つ植物性脂肪よりも低価格である。
【0007】
水ベースの系のエアレーションは可能であるが、タンパク質又は界面活性剤などの界面活性分子が必要とされる一方、脂肪系では脂肪結晶が気泡を安定化する。界面活性分子が必要とされることに加えて、(柔らかいテクスチャの利点を得るために)粘度が低いという事実により、エアレーションされた水ベース製品の品質保持期限全体を通して安定な気泡を提供することは非常に困難である。
【0008】
国際公開第2014/017525(A)号は、ホエイタンパク質凝集体を含有する低脂肪又は無脂肪の気泡含有エマルジョンを記載している。アイスクリームについて説明されており、オーバーラン(体積増加、又は「ホイップ能」)安定性が-18℃で測定された。タンパク質凝集体溶液のpHレベルは、5.5~7(中性pH)である。
【0009】
欧州特許第1839495(B1)号は、ホエイタンパク質ミセル及びタンパク質強化冷凍デザートにおけるそれらの使用を記載している。この製品のpHは5.8~6.6である。
【0010】
国際公開第2018148390(A1)号は、脂肪含有製品と混合された常温保存可能なムースを記載している。
【0011】
欧州特許第3197293(A)号は、ホイップ可能な食品製品、ホイップされた食品製品、及びそれらを製造する方法を記載している。ホイップ可能な食品製品は、5重量%未満の脂肪を有し、約0.5重量%~約30重量%の食物繊維と、約50重量%~約95重量%の水と、最大約5重量%のタンパク質と、最大約5重量%の食用デンプンと、最大約5重量%の乳化剤と、最大約5重量%の親水コロイドと、を含む。
【0012】
米国特許第7700144(B2)号は、エアレーションした高タンパク質食品組成物を記載している。組成物は、親水コロイド及び添加繊維を含む。
【0013】
国際公開第2007/008560(A9)号は、安定化された食用フォーム及び安定性が向上した口当たりのよいフォームのための処方物を記載している。ある特定の実施形態では、処方物は、ベース液体(ミルクなど)、界面活性剤、多糖、及び多糖と分子相互作用することが可能なポリマーを含む。
【0014】
典型的には、水ベースの系のエアレーションは、上記のように、ホエイタンパク質などの動物由来タンパク質に依拠する。しかしながら、食物アレルギー、又は動物製品を摂取することに対する環境的、倫理的、道徳的及び宗教的異存を有する消費者により、非動物由来成分を有する製品がますます求められている。
【0015】
所望の香りプロファイルを生成するために低pHが必要とされる食品用途では、ホエイタンパク質単離物(WPI)の水性系が優れた発泡特性を示すことができる。低pHでの高溶解度は、酸性の液体(例えば、コーヒー、果汁など)における主な発泡剤として特に魅力的である。したがって、このような用途に関し、WPIを有効な植物ベースで置き換えるには、同様の濃度で使用した場合にpH3付近で高い起泡性及び溶解度を有するものになる。
【0016】
フォーム形成能に関して研究されてきた植物ベースの成分の1つの特定のクラスは、豆果(例えば、ダイズ、ヒヨコマメ、エンドウマメ)由来のタンパク質である。例えば、ヒヨコマメを水に単に浸漬することによって得られるタンパク質及び炭水化物の水溶液(アクアファバ)は、同じ条件下で卵白アルブミンと同等の起泡性を示すことが示されている。しかしながら、これらの植物由来タンパク質は、それらの天然の状態では低pH条件で制限を有することが多くの場合見出されている。
【0017】
消費者に訴求力のあるテクスチャ及び外観を有するとともに栄養面での利益並びに好ましい製造特性及び保管特性を有する、改善された植物ベースの食品が依然として必要とされている。
[発明の概要]
【0018】
本発明は、植物由来タンパク質を使用して液体分離(drainage)及び糖結晶化に対して安定化された、ムース及びフォームなどの、植物ベースである、エアレーションされた水性菓子に関する。特に、本発明は、植物由来のタンパク質と、糖と、を含む、エアレーションされた酸性水性菓子に関する。タンパク質は、好ましくは加水分解されており、好ましくは加水分解されたエンドウマメタンパク質(HPP)である。糖は、好ましくは異なる糖のブレンドであり、より好ましくはフルクトースを含む。
【0019】
本発明の第1の態様は、エアレーションされた水ベース菓子であって、糖と、植物由来タンパク質とを含み、5.5未満のpH及び0.67未満の水分活性を有する、エアレーションされた水ベース菓子を提供する。pHは、好ましくはpH 2~pH 5、より好ましくは約pH 3~pH 4である。水分活性は、好ましくは0.45超かつ0.67未満、例えば0.5~0.6である。いくつかの実施形態では、水分活性は、0.64未満又は0.59未満である。
【0020】
菓子は、30重量%~90重量%の糖と、1重量%~8重量%の植物由来タンパク質と、を含む。タンパク質は、エアレーションされた水ベース菓子を安定化する。
【0021】
菓子は、水ベースであり、脂肪ベースではない。
【0022】
エアレーションされた水ベース菓子は水を含む。水は、糖シロップ又は他の成分(例えば、果汁などの香味料)の一部として存在してもよく、及び/又は別個に添加される水として存在してもよい。転化糖シロップは、通常、約20重量%~30重量%の水又は約20重量%~25重量%の水を含有し、例えば、例示の転化「IS221」シロップの約23重量%は水である。
【0023】
別個に添加される場合、水は、好ましくは、総成分の0.1重量%~10重量%、例えば、1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、1重量%~8重量%、2重量%~8重量%又は3重量%~7重量%で添加される。全ての供給源からの総含水量は、好ましくは5重量%超かつ40重量%未満、より好ましくは30重量%以下、例えば10重量%~30重量%である。いくつかの実施形態では、含水量は、10重量%~20重量%、例えば、約14重量%、15重量%若しくは16重量%、又は例えば、約10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、17重量%、18重量%、19重量%若しくは20重量%である。一実施形態では、全ての供給源からの総含水量は、約20重量%~27重量%、例えば、約25重量%、又は約21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、26重量%若しくは27重量%である。
【0024】
最も好ましい実施形態では、総含水量は、10重量%~30重量%、好ましくは12重量%~27重量%、より好ましくは15重量%~25重量%である。
【0025】
重量%での含水量は、二酸化硫黄の存在下での水とヨウ素との反応に基づくカールフィッシャー滴定によって試料中の水の量を測定することによって導出することができる。この導出は、重量既知の試料をメタノール、n-ヘキサン溶媒に混合し、次いで、ボルタンメトリーによって検出される当量点までカールフィッシャー試薬(ヨウ素、二酸化硫黄、塩基、及びアルコールなどの溶媒から構成される)で滴定し、水の量を特定して、試料の湿潤性の計算を可能にすることを伴う。
【0026】
エアレーションされた菓子は、0.67未満、好ましくは0.45超かつ0.67未満の水分活性を有する。いくつかの実施形態では、エアレーションされた水ベース菓子は、0.64以下、0.62以下、又は0.59以下の水分活性を有する。水分活性は、好ましくは0.45より大きい。水分活性は、いくつかの実施形態では、0.5~0.59、例えば約0.54であってもよい。本発明による好適な水分活性としては、0.66、0.65、0.64、0.63、0.62、0.61、0.60、0.59、0.58、0.57、0.56、0.55、0.54、0.53、0.52、0.51、0.50、0.49、0.48、0.47及び0.46が挙げられる。好ましい水分活性としては、0.64、0.63、0.62、0.61、0.60、0.59、0.58、0.57、0.56、0.55、0.54、0.53、0.52、0.51及び0.50が挙げられる。
【0027】
水分活性(「Aw」)という用語は、当該技術分野において周知であり、溶液中の水の蒸気分圧を水の標準状態の蒸気分圧で割ったものを指す。食品科学の分野では、標準状態は、同一温度下での純水の蒸気分圧として定義されることが最も多い。この特定の定義を用いると、純粋な蒸留水は、ちょうど1の水分活性を有する。0.80の水分活性は、蒸気圧が純水の蒸気圧の80パーセントであることを意味する。水分活性値は、好ましくは、当該技術分野で知られているように、抵抗式電解湿度計、キャパシタンス湿度計又は露点湿度計のいずれかによって得られる。本発明による水分活性値は、最も好ましくは、試料を密封容器に封入することによって導出される。ヘッドスペース内のエアの相対湿度は、試料の水分活性と平衡する。平衡状態ではこれらは等しく、静電容量センサを使用してヘッドスペースの相対湿度を測定し、試料の水分活性を導出することができる。
【0028】
エアレーションされた菓子は、好ましくはムース又はフォームである。
【0029】
エアレーションされた菓子は、5.5未満、好ましくは2~5.4のpHを有する。いくつかの実施形態では、エアレーションされた菓子は、約4.2以下のpH、例えば、2~4.2のpH、2~4のpH、2.5~4のpH、2.5~3.5のpH、又は2.9~3.1のpH、例えば約pH 3を有する。いくつかの実施形態では、pHは2.9超である。
【0030】
好ましい実施形態では、pHは、2~4.2、好ましくは2.25~4、好ましくは2.5~3.75、最も好ましくは3.0~3.75である。以下の実施例に示されるように、これらのpH範囲は、ホイップ特性とテクスチャとの間の最適なバランス(デポジット特性に影響を与える)を提供し、並びに全体的な味に肯定的に寄与する。
【0031】
pHは、好ましくは、周囲条件で、好ましくは20℃の温度で、当該技術分野で公知の装置を使用して測定される。
【0032】
本発明のエアレーションされた水ベース菓子組成物のpHは、更なるpH調整を必要とすることなく、成分そのものによって提供され得る。しかしながら、pHの低下が必要な場合、食品用の酸を好ましくは添加してpH制御を補助する。例えば、使用され得る食品用の酸は、好ましくは、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、葉酸、フマル酸、及び乳酸、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。酸は、任意の好適な形態、例えば粉末で添加することができる。好ましい実施形態では、エアレーションされた水ベース菓子は、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは0.2重量%~3.5重量%、より好ましくは0.3重量%~3.0重量%の量の酸を含み、好ましくは、これらの範囲は、酸の重量に関するものであり、いずれの溶媒(例えば、水)の重量に関するものでもない。好ましくは、これらの百分率は、好ましくは粉末の形態で添加される酸の乾燥重量に関する。
【0033】
いくつかの実施形態では、pHは2~4、例えば約3であり、含水量は10重量%~20重量%、例えば約14重量%である。
【0034】
タンパク質は、好ましくは凝集していてもよい。凝集したタンパク質は、好ましくは、熱によって、例えば、50℃以上、60℃以上、70℃以上又は80℃以上、例えば、50℃から約100℃の間、60℃から約100℃の間、60℃から約100℃の間、例えば、50℃から約95℃の間の温度に加熱することにより凝集している。いくつかの実施形態では、タンパク質は、80℃~95℃の間に加熱することにより分離される。あるいは、凝集は、酸性pH、例えばpH 2~5、例えばpH 2、3、3.5又は4への曝露により誘導され得る。タンパク質は、菓子に含有させる前に凝集させることができるが、タンパク質を天然(非凝集)形態で菓子混合物に添加し、菓子製造プロセスの一部として、例えば、加熱又は酸性菓子との接触によって凝集させると、製造プロセスを簡略化することができる。
【0035】
好ましい実施形態では、凝集は、2分超、5分超、又は10分超の期間にわたって行ってもよい。例えば、期間は、1時間未満、45分未満又は30分未満であってもよい。例えば、2分~1時間である。
【0036】
凝集したタンパク質は、凝集した植物由来タンパク質である。
【0037】
例えば、好ましくは、植物由来タンパク質は、ヘンプ(hemp)、亜麻、アマランス、豆果類、例えば、エンドウマメ、マメ、ダイズ、レンズマメ、ヒヨコマメ、若しくはピーナツなど、木の実、例えば、アーモンド及びヘーゼルナッツなど、穀類、例えば、イネ、コムギ、若しくはオオムギなど、から選択することができる。
【0038】
好ましい実施形態では、タンパク質は、ソラマメ、ヒヨコマメ、ピーナッツ、及びエンドウマメタンパク質、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。非常に好ましい実施形態では、タンパク質は加水分解される。理論に束縛されるものではないが、加水分解は、存在するタンパク質構造の多様性(variability)を高めてフォームをより安定にすると考えられる。具体的には、加水分解は、タンパク質のサイズをより低分子量のペプチドに減少させることで、表面張力をより良好に低下させ、より良好なフォームを生成させると考えられる。しかしながら、特定のタンパク質源(例えば、ソラマメタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、ピーナッツタンパク質及びエンドウマメタンパク質)は、本発明において存在する他の特徴のおかげで、加水分解せずともこの安定性を提供することができる。
【0039】
これらのタンパク質源は、加水分解エンドウマメタンパク質などの加水分解タンパク質の形態で好都合に添加してもよく、これらの条件は当該技術分野で公知である。加水分解エンドウマメタンパク質は、高い割合で加水分解エンドウマメタンパク質を含有するので、好都合に使用することができる。加水分解エンドウマメタンパク質は、典型的には、グロブリン、アルブミン及びグルテニンを含む多数の異なるタンパク質を含有する。
【0040】
好ましい実施形態では、植物タンパク質濃縮物又は単離物は、好ましくは40重量%~100重量%のタンパク質、好ましくは50重量%~90重量%又は60重量%~80重量%のタンパク質を含む。
【0041】
本発明の菓子中の1重量%~8重量%のタンパク質は、実際のタンパク質の重量%であり、タンパク質を提供するために使用することができるタンパク質濃縮物又は単離物の重量%ではない。例えば、菓子中に1重量%のタンパク質が必要とされる場合、90重量%のタンパク質を含む1.12重量%のタンパク質単離物を使用して、必要とされる1重量%のタンパク質を提供することができる。別の例では、菓子中に5重量%のタンパク質が必要とされる場合、80重量%のタンパク質を含む6.25重量%のタンパク質濃縮物を使用して、必要とされる5重量%のタンパク質を提供することができる。
【0042】
植物由来タンパク質、好ましくは、加水分解エンドウマメタンパク質は、菓子の1重量%~8重量%で存在する。いくつかの実施形態では、植物由来タンパク質は、菓子の2重量%~8重量%の量で、又は菓子の2重量%~5重量%の量で、任意選択で、少なくとも2重量%又は少なくとも3重量%で存在する。好適な量の例としては、約1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、5.5重量%及び6重量%、並びにこれらの例示的な量の間の全ての範囲が挙げられる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、2.5重量%~8重量%、2.5重量%~6重量%、又は2.75重量%~6重量%で存在する。
【0043】
エアレーションされた菓子は、30重量%~90重量%の糖、例えば40重量%~90重量%の糖を含む。いくつかの実施形態では、糖は、40重量%~80重量%、40重量%~70重量%、50重量%~90重量%、50重量%~90重量%、又は60重量%~90重量%で存在する。いくつかの実施形態では、糖は、70重量%~90重量%、例えば75重量%~90重量%、例えば80重量%~90重量%で存在する。
【0044】
いくつかの実施形態では、糖は、糖シロップである。好適な糖シロップとしては、完全転化糖シロップ、好ましくは40~70デキストロース当量(「DE」)のグルコースシロップ、フルクトースグルコースシロップ(グルコースフルクトースシロップ、イソグルコース又はフルクトースコーンシロップとも呼ばれることがある)、高フルクトースシロップ、コーンシロップ、オートムギシロップ、コメシロップ、イナゴマメ抽出物シロップ又はタピオカシロップ、又はこれらのシロップの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。
【0045】
エアレーションされた菓子中の糖の望ましくない結晶化は、特に糖が2種類以上の異なる糖を含むか又はそれらから構成された場合に、低減又は回避される。一実施形態では、異なる糖のブレンドは、少なくとも10%、但し70%未満、60%未満、50%未満又は40%未満の糖転化率(すなわち、加水分解度)を有する転化糖により提供される。いくつかの実施形態では、糖は、20%~60%、30%~50%又は40%~50%の糖転化率(すなわち、加水分解度)の転化糖である。不完全な転化(加水分解)による転化糖は、部分転化糖として知られている。
【0046】
菓子中のこの糖混合物は、少なくとも1種類の還元糖と少なくとも1種類の非還元糖との混合物を含んでもよい。スクロースは非還元糖であるが、デキストロース及びフルクトースは還元糖である。部分転化シロップは、スクロース(非還元糖)、デキストロース(還元糖)及びフルクトース(還元糖)を含む。エアレーションされた菓子中の糖は、好ましくは、少なくとも10%、但し70%未満の還元糖を含み、残部は非還元糖である。いくつかの実施形態では、糖は、10%~60%の還元糖、20%~60%の還元糖、又は30%~50%の還元糖を含む。実施例は、40重量%~50重量%(具体的には41重量%~49重量%)の還元糖を含む糖混合物の使用を示している。還元糖と非還元糖との混合物は、部分転化糖シロップとして提供してもよい。
【0047】
本質的に全てのスクロースがデキストロース及びフルクトースに分解されている、完全に加水分解された(約97%転化された)転化シロップは、エアレーションされた製品中で結晶化し得る。部分的に加水分解されたシロップ、例えば10%超、但し70%未満加水分解され、好ましくは60%未満加水分解(転化)されたシロップは、本発明によればより安定であり、結晶化に対して抵抗性である。
【0048】
転化糖は、完全に転化された糖シロップであってもよく、部分的に転化された糖シロップであってもよい。完全に転化された糖シロップはグルコース及びフルクトースのみを含む。部分的に転化された糖シロップは、グルコース、フルクトース及びスクロースを含み、好ましい。
【0049】
一実施形態では、菓子中の糖は、部分的に加水分解された転化シロップを含むか、又はこれから構成される。別の実施形態では、糖は、スクロース、部分的に又は完全に転化されたシロップ、及びグルコースの混合物を含むか、又はこれらから構成される。更なる実施形態では、糖は、スクロース、フルクトース及びグルコースの混合物を含むか、又はこれらから構成される。
【0050】
糖混合物中にフルクトースが存在することが非常に好ましい。好ましくは、糖の10重量%~50重量%(すなわち、糖の1/10~1/2、好ましくは少なくとも1/5)がフルクトースである。より好ましくは、糖の約20重量%~30重量%、例えば20重量%~25重量%がフルクトースである。このような状態は、様々な糖に富む成分(例えば、粉末糖、デンプン由来シロップ又は転化糖シロップ)をブレンドすることによって、又はスクロース、デキストロース及びフルクトースを含む部分転化された糖シロップを使用することによってのいずれかで達成することができる。
【0051】
これにしたがって、本発明によれば、糖の混合物が、好ましく使用される。
【0052】
好ましい実施形態では、エアレーションされた菓子は糖ミックスを含み、菓子は5重量%~30重量%のスクロースと、5重量%~30重量%のグルコースシロップと、35重量%~75重量%のフルクトースグルコースシロップと、を含む。
【0053】
より好ましい実施形態では、エアレーションされた菓子は糖ミックスを含み、菓子は10重量%~25重量%のスクロースと、10重量%~25重量%のグルコースシロップと、45重量%~65重量%のフルクトースグルコースシロップと、を含む。
【0054】
好ましい実施形態では、エアレーションされた菓子は、40重量%~85重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%の総単糖類及び二糖類を含む。
【0055】
非常に好ましい実施形態では、糖混合物を含む上記組成物は、約4.2以下のpH、例えば2~4.2のpH、好ましくは2~4のpH、より好ましくは2.5~4のpHを有する。
【0056】
糖シロップが使用される場合、糖シロップは、菓子の水性要素を好都合に提供することができ、その結果、追加の水が必要とされない。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の菓子は、糖シロップと、凝集したタンパク質と、1つ以上の香味料とから本質的に構成され得る。いくつかの実施形態では、菓子は、50重量%~90重量%(例えば、65重量%~90重量%)の転化(部分又は完全、好ましくは部分)糖シロップと、1重量%~8重量%(例えば、2重量%~6重量%)の凝集したタンパク質と、風味料又は他の食品添加物(agent)によって提供される残部と、を含むか、それらから構成されるか、又は本質的にそれらからなる。
【0057】
実施例に示されるように、糖シロップと、凝集した加水分解タンパク質と、香味料とからなる、エアレーションされた安定な菓子が提供された。シロップは、いくつかの実施形態では、50重量%~90重量%、65重量%~90重量%、75重量%~90重量%、又は90重量%~90重量%で存在してもよい。凝集したタンパク質は、本明細書に記載される任意の量、例えば、1重量%~8重量%、2重量%~6重量%又は3重量%~5重量%、例えば、約2.5重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、又は約5重量%で存在してもよい。香味料は、菓子の1重量%~30重量%、例えば5重量%~25重量%又は約10重量%~20重量%で存在してよい。
【0058】
以下の実施例に記載の菓子の非限定的な例は、80重量%~90重量%(例えば、86重量%~87重量%)の糖シロップと、3重量%~4重量%のタンパク質と、10重量%の香味料(例えば、コーヒー顆粒)と、を含む。実施例はまた、2重量%~2.5重量%(例えば、2.3重量%)の凝集したタンパク質と、65重量%~70重量%(例えば、68重量%~69重量%)の部分転化糖シロップとに加えて、香味料を含む、別の非限定的な例示的な菓子の良好な提供を示している。
【0059】
いくつかの実施形態では、エアレーションされた菓子中の糖の総量は、60重量%~80重量%、又は60重量%~70重量%である。
【0060】
本発明のエアレーションされた菓子は、植物由来タンパク質によって安定化されている。したがって、ゲル化剤又は固化剤(setting agent)などの追加の食品添加物を任意選択で含めることができるが、それらは要件とされない。エアレーションされた菓子は、好ましいテクスチャ及び口当たりを提供するので、脂肪は要件とされず、除外することができ、それによって、より健康によい無脂肪製品を提供する。これにしたがって、いくつかの実施形態では、エアレーションされた水ベース菓子は、脂肪、親水コロイド、ゲル化剤若しくは固化剤及び/又は増粘剤を実質的に又は全く含まない。
【0061】
本発明において、「実質的に又は全く含まない」という用語は、好ましくは、エアレーションされた菓子が、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.1重量%未満、又は、最も好ましくは0重量%の当該成分を含むことを意味する。
【0062】
いくつかの非常に好ましい実施形態では、エアレーションされた菓子は、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.1重量%未満、又は、最も好ましくは0重量%の脂肪を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、エアレーションされた菓子は、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.1重量%未満、又は0重量%の、ゼラチン又はペクチンなどの固化剤を含む。
【0064】
本発明のエアレーションされた菓子は、卵白タンパク質又はアルブミンなどの卵白からの精製タンパク質を含む、卵ベースのホイッピング剤(whipping agent)などの動物由来タンパク質を必要としない。これにしたがって、卵タンパク質は本発明のエアレーションされた菓子に存在しないことが好ましい。いくつかの実施形態では、エアレーションされた菓子は、卵タンパク質を全く含まない。いくつかの実施形態では、非常に好ましい植物由来のエアレーションされた菓子は、卵由来のいかなる成分も全く含まない。いくつかの非常に好ましい実施形態では、エアレーションされた菓子は、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.1重量%未満、又は、最も好ましくは0重量%の、卵に由来する成分を含む。
【0065】
本発明のエアレーションされた菓子は、ホエイタンパク質を含む乳ベースのホイッピング剤などの動物由来タンパク質を必要としない。これにしたがって、ホエータンパク質は本発明のエアレーションされた菓子に存在しないことが好ましい。いくつかの実施形態では、エアレーションされた菓子は、乳タンパク質を全く含まない。いくつかの実施形態では、エアレーションされた植物由来菓子は、乳由来のいかなる成分も全く含まない。いくつかの非常に好ましい実施形態では、エアレーションされた菓子は、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.1重量%未満、又は、最も好ましくは0重量%の、乳由来成分を含む。
【0066】
本発明のエアレーションされた菓子は、界面活性剤の添加を必要としない。タンパク質は、好ましくは、必要な界面安定化及び/又はプラトー境界安定化を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、界面活性剤は添加されない。一実施形態では、人工界面活性剤、合成界面活性剤又は化学界面活性剤は存在しない。一実施形態では、本発明のエアレーションされた菓子中には、0.1重量%未満の界面活性剤が存在する、又は検出可能な界面活性剤が存在しない。
【0067】
本発明のエアレーションされた菓子は、植物由来タンパク質以外の安定剤を必要としない。
【0068】
しかしながら、ある特定の実施形態では、安定化を改善するために、親水コロイド/ゲル化剤/固化剤/増粘剤が存在してもよい。これにしたがって、いくつかの実施形態では、エアレーションされた水ベース菓子は、親水コロイド、ゲル化剤若しくは固化剤及び/又は増粘剤を含有する。いくつかの実施形態では、エアレーションされた菓子は、5重量%以下、3重量%以下、又は2重量%以下の上記成分を含む。いくつかの実施形態では、エアレーションされた菓子は、0.5重量%以上、1重量%以上、又は1.5重量%以上の上記成分を含む。例えば、0.5重量%~5重量%又は1重量%~3重量%である。これらの成分の性質は特に限定されないが、好ましくは、ゼラチン又はペクチン、最も好ましくはペクチンであり得る。理論に束縛されるものではないが、ペクチンが存在すると、ペクチンとタンパク質との間に凝集がもたらされ、安定化を補助する。
【0069】
好ましくは、エアレーションされた菓子中には脂肪が存在せず、したがって脂肪乳化剤は必要とされない。一実施形態では、本発明のエアレーションされた菓子は乳化剤を含まない。
【0070】
本発明のエアレーションされた菓子は繊維を必要としない。一実施形態では、本発明のエアレーションされた菓子は、非常に低繊維であるか、又は繊維を含まない。
【0071】
いくつかの実施形態では、エアレーションされた水ベース菓子は、少なくとも10Pa.s、例えば10Pa.s~50Pa.s、又は、好ましくは10~25Pa.sのバルク粘度を有する。より好ましくは、菓子は、約10~20Pa.S、最も好ましくは10~18Pa.S、又は10~16Pa.Sの粘度を有する。
【0072】
上記の粘度は、続く記載のように、好ましくは25℃で評価することができる。振動レオロジー測定を行うことによって、エアレーションされていない塊のレオロジー特性を測定した。これらの測定は、やすり掛けクエットジオメトリー(sanded Couette geometry)(CC27-SN23479)及び温度制御のためのペルチェシステムを備えた、Physica MRC 500レオメーター(Anton Paar)を使用して実施した。クエットの形状は、下部外筒(カップ)(半径14.46mm)と上部内筒(ボブ)システム(半径13.33mm、長さ40mm)とから構成された。試料を低粘度シリコーン油(Sigma Aldrich Ltd,Singapore)で覆って、測定中の蒸発を回避した。試料を25℃で5分間静置した後、実験を開始した。振動剪断測定中に課した周波数(1Hz)及び歪み(0.5%)は、線形応答レジーム内で選択した。
【0073】
エアレーションされた菓子は、少なくとも50%、例えば約100%以上のオーバーランで非常に顕著にエアレーションすることができる。オーバーランは、いくつかの実施形態では、少なくとも125%又は少なくとも150%であり得る。オーバーランは、いくつかの実施形態では、最大500%の高さであり得る。
【0074】
オーバーランは、好ましくは60%~200%、より好ましくは60%~160%である。
【0075】
いくつかの実施形態では、菓子は、0.9gr/cm3以下、0.8gr/cm3以下、例えば0.6gr/cm3以下、例えば約0.4g/cm3のかさ密度までエアレーションされる。密度の上限を制御することによって、エアレーションされた水ベース菓子組成物のホイップ能が好ましくは最適化される。より低いかさ密度数は、よりエアレーションされていることを意味する。いくつかの実施形態では、菓子は、0.1gr/cm3以上、例えば0.2gr/cm3以上、例えば0.3g/cm3以上のかさ密度までエアレーションされる。密度の下限を制御することによって、このような組成物を菓子製品にデポジットさせるのに必要な流動特性が最適に制御される。したがって、実施形態では、かさ密度は、0.1gr/cm3~0.9gr/cm3、例えば0.2gr/cm3~0.8gr/cm3である。かさ密度という用語は、密度が総体積を含む場合、すなわち、エアレーションされた水ベース菓子中に存在する細孔(又は空隙若しくは気体など)を含む場合、使用される。
【0076】
好ましい実施形態では、かさ密度は、好ましくは0.4gr/cm3~0.8gr/cm3、より好ましくは0.45gr/cm3~0.75gr/cm3、最も好ましくは0.50gr/cm3~0.70gr/cm3である。これらの密度範囲は、このような組成物を菓子製品、好ましくは菓子シェルにデポジットさせるのに必要なホイップ能と流動特性との間のバランスを提供する。
【0077】
本発明の、植物ベースである、エアレーションされた水ベース菓子は、好ましくは、1つ以上の香味料を含む。好ましくは、これらの香味料は、組成物に対して香味料としてだけではなく寄与し、例えば、かさ増し、栄養特性などに寄与し得、すなわち、好ましくは、これらの香味料は、高強度香味料組成物ではない。香味料は、菓子の1重量%~30重量%、例えば、約10重量%~20重量%又は1重量%~10重量%で含まれてもよい。香味料は、好ましくは、菓子の酸性(pH 5.5以下)の性質と一致し、すなわち、風味料は、好ましくは酸性であり、及び/又は「柔らかな酸味(tart)」若しくは「爽やかな酸味(tangy)」として認識される。このような香味料は、任意選択で10重量%~30重量%又は1重量%~10重量%の果実、果汁、乾燥果実又は果実濃縮物を含むか、又はそれらから構成されてもよい。他の好適な香味料としては、コーヒー、好ましくは脱水コーヒー粉末/顆粒(例えば、インスタントコーヒー)又はカラメルが挙げられる。
【0078】
コーヒーが香味料として使用される場合、菓子のpHは自然に低下する。カラメル香味料の場合、好適な酸を添加し、必要なpHを維持することができる。果汁(juice)が香味料として使用される場合、果汁のタイプ及び量に応じて、所望のpHを達成するためにクエン酸の添加を必要とする場合も必要としない場合もある。
【0079】
香味料が糖、例えば果汁、乾燥果実又は果実濃縮物を含む場合、別個の成分として添加される糖の量は応じて低減される。
【0080】
植物ベースである、エアレーションされた水ベース菓子は安定である。安定とは、菓子が、製造と、消費者による摂取との間に許容可能な品質保持期限を有し、その結果、摂取の時点で許容可能な外観、味及びテクスチャを有することを意味する。ムースについて、安定とは、ムースが単一の塊として認識可能であり、液相への目に見える分離も開始しておらず(すなわち、目立った液体分離が生じていない)、目に見える糖結晶化も生じていないことを意味する。
【0081】
好ましくは、エアレーションされた菓子は少なくとも1ヶ月間安定である。安定性は、通常、消費者が許容可能であると判断するものによって決定されるが、本明細書の実施例に記載されるように、液体分離安定性、ムース崩壊及び/又はムース泡の粗大化に基づいて正式に評価することもできる。
【0082】
簡単に言えば、ムース又はフォームの液体分離は、フォーム又はムースの底部に液体が溜まることを指す。安定なムース又はフォームは、設定時間後に目に見える液溜まりがないものである。したがって、3ヶ月間安定なムースは、3ヶ月後に目に見える液溜まりを示さない。6ヶ月間安定なフォームは、6ヶ月後に目に見える液溜まりを示さない。同じ注釈がムースの崩壊に適用され、すなわち、安定なムースは上記期間にわたって崩壊しない。
【0083】
安定なムース又はフォームは、目に見える糖結晶化を示さない。6ヶ月間安定なフォームは、6ヶ月後に目に見える糖結晶化を示さない。
【0084】
いくつかの実施形態では、植物ベースである、エアレーションされた水ベース菓子は、少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間安定である。
【0085】
安定性は、周囲温度、好ましくは20℃若しくは18℃で、又は冷蔵温度、好ましくは4℃で評価することができる。
【0086】
好ましい実施形態では、本発明のエアレーションされた水ベース菓子は、冷凍も焼成もされず、すなわち、本発明は、好ましくは0℃未満及び100℃超の温度に曝露されていない、周囲温度又は冷蔵温度の組成物に関する。冷凍又は焼成は、本発明の水ベースの組成物に所望される、エアレーションされた「泡たっぷり(foamy)」な口当たりとは本質的に異なる組成物を提供する。冷凍は、固化した混合物を提供し、水ベースのタンパク質混合物を焼成することは、よりメレンゲに類似したテクスチャをもたらし得る。
【0087】
代替の実施形態では、本発明の菓子を冷凍し、冷凍菓子を提供してもよい。この冷凍は、周知の特に限定されない技術を使用して、例えば、-20℃~-18℃の冷凍庫を2~6時間の所要時間使用して達成することができる。しかしながら、より好ましい実施形態は、常温製品又は冷蔵製品である。
【0088】
一実施形態では、本発明の、植物ベースである、エアレーションされた水ベース菓子は、2重量%~5重量%の植物由来タンパク質、好ましくは加水分解エンドウマメタンパク質と、10重量%~30重量%のスクロースと、50重量%~80重量%の転化糖シロップと、任意選択で0重量%~2重量%の安定剤、好ましくはペクチンと、を含む。残部は、好ましくは水と、任意選択で香味料とである。好ましくは、pHは2~4である。
【0089】
1つの非限定的な例では、植物ベースである、エアレーションされた水ベース菓子は、20重量%のスクロースと、61.1重量%の転化糖(80ブリックス)と、3.7重量%のHPPと、1重量%のペクチンと、残部の水と、任意選択で香味料と、を含み、クエン酸でpH 3.0に調整される。
【0090】
本発明の第2の態様は、本発明のエアレーションされた水ベース菓子を含む完成菓子製品を提供する。好ましくは、エアレーションされた水ベース菓子は、チョコレート、キャンディ又は甘いもののフィリングを形成する。これにしたがって、一実施形態は、チョコレート、好ましくはチョコレートシェルに囲まれた、又は包まれた、エアレーションされた水ベース菓子を提供する。
【0091】
本発明の第3の態様は、エアレーションされた水ベース菓子を製造する方法であって、液体塊にエアを導入することを含み、液体塊が、2~5.5のpH、及び0.67未満、好ましくは0.45超の水分活性を有する、方法を提供する。液体塊は、少なくとも30重量%の糖と、1重量%~8重量%のタンパク質と、を含む。
【0092】
液体塊にエアを導入するステップは、空気の機械的導入(例えば、ホイップ)又はガス注入(例えば、窒素ガス)を含むことができる。本発明の第3の態様の方法は、エアが導入される液体塊を製造するステップを含むことができる。このステップは、少なくともタンパク質及び糖を、任意選択で水中にて、50℃以上、好ましくは80℃~95℃の温度で混合することを含むことができる。この混合ステップは、成分が第1の温度(例えば、50℃以上)で混合され、次いで、第2の、通常はより高い温度、例えば、70℃以上、例えば、80℃~95℃の間の温度に変更される、2段階加熱ステップを含むことができる。この加熱ステップは、良好な混合及び強固なタンパク質凝集を確保するのに有用であり得る。
【0093】
本発明の第4の態様は、エアレーションに適した菓子であって、
菓子が、5.5未満のpH及び0.67未満の水分活性を有し、
少なくとも30重量%の糖と、1重量%~8重量%の植物由来タンパク質と、を含む、菓子を提供する。
【0094】
本発明の第5の態様は、
エアレーションに適した菓子を製造する方法であって、
(i)糖と、加水分解エンドウ豆タンパク質とを含む、水性混合物を形成するステップであって、加水分解エンドウ豆タンパク質が混合物中に1重量%~8重量%で存在する、ステップと、
(ii)混合物を少なくとも50℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは80℃~95℃の間に加熱して、タンパク質を凝集させるステップと、を含む、方法を提供する。
【0095】
この方法は、(iii)凝集したタンパク質を含む混合物にエアを導入するステップを更に含むことができる。
【0096】
本発明の第6の態様は、エアレーションされた菓子を安定化させる方法であって、
凝集したタンパク質、好ましくは凝集したエンドウマメタンパク質を、
エアレーション前に菓子に添加するステップを含む、方法を提供する。
【0097】
本発明の第7の態様は、凝集したエンドウマメタンパク質の、
ムースなどのエアレーションされた菓子のための安定化剤としての使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】pH3.0での、1.0重量%のペクチン(HM)と、20.0重量%のスクロースと、61.1重量%の転化糖と、を添加した3.7重量%のWPI及びHPPについての、フォームオーバーラン測定である。
【
図2-1】pH3.0での、1.0重量%のHMペクチンと、20.0重量%のスクロースと、61.1重量%の転化糖と、を含有する3.7重量%のWPI及びHPP溶液についての、フォーム構造データである。 a)より複雑にした処方物のフォームオーバーランである。
【
図2-2】pH3.0での、1.0重量%のHMペクチンと、20.0重量%のスクロースと、61.1重量%の転化糖と、を含有する3.7重量%のWPI及びHPP溶液についての、フォーム構造データである。 b)気泡サイズ分布である。 c)及びd)それぞれWPIフォーム及びHPPフォームの顕微鏡写真である。
【
図3】HPPのモデルレシピ、ラズベリーレシピ及びスクロース無添加のラズベリーレシピについての、フォームオーバーラン測定である。
【
図4】意図された1.0重量%ペクチン(HM)の代わりに2.4重量%ペクチン(HM)を組み込んだ発泡ラズベリーレシピの、調製から30分後、室温(約25℃)で3週間保管後、及び3週間冷蔵保管(約4℃)後である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明者らはチョコレート用フィリングなどの、植物ベースである、エアレーションされた水ベース菓子の実現可能性についての理解を深めて、驚くべき技術を開発した。このようなフィリングは、特にクリーンラベル製品に関し消費者によって望まれている。
【0100】
本発明者らは、植物由来タンパク質を使用して酸性のフォーム及びムースを安定化させる方法という重要な課題に対処するため、系統的研究を行った。
【0101】
重要な科学的課題は、動物由来タンパク質も他の動物由来製品も使用することなく、ムースの品質保持期限中に水性ムース及びフォームを液体分離及び粗大化に対して物理的に安定化させる方法であった。
【0102】
ムースは、主に2つのタイプの不安定化を受ける:i)気泡からの液体の分離、ii)構造の崩壊、及びiii)合体及びオストワルド成長による気泡サイズ分布の粗大化。オストワルド成長は、小さな気泡からより大きな気泡への、ラプラス圧力の差によるエアの移動である。
【0103】
理論に束縛されるものではないが、ムースのプラトー境界の液体分離は、バルク液体粘度を増加させて(i)糖タイプ、ii)湿分含有量(又は水分活性)、iii)温度、若しくはiv)親水コロイドを介して)隣接する気泡間の液体流を減少させることによって、及び/又はv)プラトー境界をタンパク質凝集体で詰まらせ/塞いで流れを制限することによって、遅くすることができる。
【0104】
ムース気泡の粗大化は、i)気泡の収縮に対する抵抗性を提供して、合体を防止する、且つオストワルド成長を潜在的に遅らせる、粘弾性界面を持たせることによって遅らせることができる。
【0105】
実施例に示すデータは、植物由来タンパク質を用いて周囲温度の水性ムース及びフォームを物理的に安定化させるこれらのアプローチの妥当性を示している。
【0106】
本発明は、5.5未満のpH及び0.67未満の水分活性を有する、植物ベースである、エアレーションされた水ベース菓子を提供する。菓子は、糖と、凝集した植物由来タンパク質と、を含む。凝集した植物由来タンパク質は、エアレーションされた水ベース菓子を安定化させる。菓子は、好ましくは30重量%~90重量%の糖と、1重量%~8重量%の凝集した植物由来タンパク質と、を含む。
【0107】
本発明の一態様は、エアレーションされた菓子製品、好ましくはフォーム又はムースであって、加水分解エンドウマメタンパク質(HPP)を用いて作製され、エアレーションされた菓子製品が、約5.5未満のpHの酸性であり、30重量%~90重量%の糖により高粘性であり、0.67未満、好ましくは0.5~0.64又は0.5~0.59のAwを有する、エアレーションされた菓子製品、好ましくはフォーム又はムースを提供する。製品は、加熱処理に供されるHPPによって安定化され、好ましくは親水コロイド/増粘剤を含有しない(又は任意選択の親水コロイド/増粘剤のみを含有する)。
【0108】
理論に束縛されるものではないが、粘度は、これらのフォームにおける液体分離を制御すると考えられる。脂肪が存在しないので、均質化は必要とされない。エアレーションされた製品は、4℃から最高で室温の温度で、液体分離することなく数ヶ月間安定である。
【0109】
いくつかの実施形態は、脂肪を含まず、親水コロイドも増粘剤も含有せず、2~4のpHを有する、安定なフォームを提供する。
【0110】
続くレシピは、通常の果実含有処方物の特性を再現するように設計された。比較のために、2種類の発泡剤として、ホエイタンパク質単離物(WPI)及び加水分解エンドウマメタンパク質ブレンド(HPP)を選択した。全体のpHは、クエン酸を使用してラズベリー濃縮物レシピ(pH3.0±0.1)のpHと一致させた。モデル系において使用した転化糖が20質量%の水(80ブリックス)を含有していたことを、水対糖の比がモデル及び果実含有レシピと同じになるようにレシピ処方において考慮したことには留意されたい。
【0111】
【0112】
果実含有処方物の化学組成を再現するためのモデルレシピ。
【0113】
これらの例示的な実施形態は、本発明が、凝集したタンパク質と糖とを含むエアレーションされた酸性水性菓子に関することを反映している。
【0114】
一般に、菓子の分野では、香味剤及び着色剤を添加して、製品の味及び視覚的訴求力を強化する。これらの添加物は概して特性が強く、高度活性成分として、活性成分の溶解度に応じて水ベース又は油ベースのマトリックス中に少量添加される。エアレーションされた水ベース菓子に、添加物(好ましくは着色剤及び/又は香味剤、好ましくは色及び/又は香味を提供するのみのために添加される化合物、すなわち、例えば上記の果汁濃縮物とは異なり顕著な栄養、増量などの特性などを提供しない化合物)が含まれる実施形態では、添加物は水溶性である(すなわち、油溶性ではない)。「可溶性」という用語は、当該技術分野で理解されている意味、すなわち、周囲条件、好ましくは20℃で特定の媒体に溶解する能力という意味を有することが理解される。
【0115】
凝集したタンパク質
実施例は、凝集した、植物由来の加水分解タンパク質、特に加水分解エンドウマメタンパク質(HPP)による、酸性ムースの安定化を示している。加熱凝集はまた、低剪断バルク粘度を強化し、エアレーションされたフォーム及びムースを安定化させることが示されている。
【0116】
本発明は、概して、高糖の、任意選択で無脂肪系、又は水ベースの系において酸性条件下で安定化されたフォームを作製するための、タンパク質の使用に関する。タンパク質は、好ましくは、凝集した植物由来タンパク質である。上述したように、植物タンパク質は、好ましくは豆果に由来する。豆果は、マメ科(Fabaceae)(又はLeguminosae))の植物であり、このような植物の種子(豆類とも呼ばれる)である。豆果は、主にヒトによる摂取のために、畜産飼料及びサイレージのために、並びに土壌を強化する緑肥として、農業生産される。
【0117】
次の豆果:レンズマメ、ヒヨコマメ、マメ(beans)、及びエンドウマメ、例えば、インゲンマメ、シロインゲンマメ、ウズラマメ、ハリコットマメ、アオイマメ、バターマメ、アズキ、ムングマメ、ゴールデングラム(golden gram)、緑豆(green gram)、黒緑豆(black gram)、ウラド豆、ソラマメ、ベニバナインゲン、ツルアズキ(rice beans)、ガルバンゾマメ、クランベリーマメ、グリーンピース、サヤエンドウ、スナップエンドウ、スプリットピー及び黒目豆、落花生(ピーナッツ)、並びにバンバラマメは、本発明による組成物に使用することができる。好ましくは、豆果は、レンズマメ、ヒヨコマメ、ササゲ、ソラマメ、及びグリーンピース又はイエローピース(yellow pea)から選択される。好ましくは、豆果は、エンドウマメ又はソラマメである。好ましくは豆果は、エンドウマメ、特に凝集した加水分解エンドウマメタンパク質である。
【0118】
凝集したタンパク質は、好ましくは、加熱、例えば、50℃以上、60℃以上、70℃以上又は80℃以上、例えば、80℃~95℃の温度への加熱により凝集している。あるいは、凝集は、酸性pH、好ましくはpH 2~pH 5への曝露により誘導されてもよい。
【0119】
好ましい実施形態では、凝集は、2分超、5分超、又は10分超の期間にわたって行われてもよい。例えば、期間は、1時間未満、45分未満又は30分未満であってもよい。例えば、2分~1時間である。
【0120】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、ムースの少なくとも2重量%、任意選択で少なくとも2重量%若しくは少なくとも2.2重量%、又は少なくとも3重量%若しくは3.3重量%の量で存在する。好ましい効果は、高濃度の凝集したタンパク質で得ることができる。
【0121】
糖
実施例はまた、糖を使用して液体分離に対する安定化を示す。特に、温度、含水量及び糖タイプの相互作用は、ムースの液体分離を制御する。
【0122】
液体の分離によって引き起こされるムースの不安定化は、バルク粘度を制御することによって制御することができる。望ましくない糖結晶化は、糖ブレンドによっても制御することができる。組み合わされると、これらの特徴は、数週間又は数ヶ月、例えば6ヶ月以上安定である、エアレーションされた菓子を提供する。
【0123】
エアレーションされた菓子は、好ましくは糖が多く、例えば、40重量%~90重量%の糖を含む。いくつかの実施形態では、エアレーションされた菓子中の糖の総量は、60重量%~80重量%である。
【0124】
いくつかの実施形態では、糖は、糖シロップである。好適な糖シロップとしては、好ましくは40~70デキストロース当量(「DE」)のグルコースシロップ、フルクトースグルコースシロップ、高フルクトースシロップ、コーンシロップ、オートムギシロップ、コメシロップ、又はタピオカシロップが挙げられる。これらのシロップのうち2つ以上の混合物を使用することができる。
【0125】
このようなシロップは、当該技術分野において周知である。グルコースシロップは当該技術分野において周知であり、デンプン、概して植物性デンプンの加水分解によって得られる。グルコースシロップは、Glucose Syrups,Technology and Applications,Peter Hull,Wiley-Blackwell 2010に記載されている。
【0126】
好ましい実施形態では、グルコースシロップは、35~95の範囲、好ましくは35~70又は40~70の範囲、より好ましくは35~63の範囲のDE値を有する。
【0127】
同様に、フルクトースグルコースシロップは、デンプン、概して植物性デンプンの加水分解、次いでフルクトースを生成するための異性化から調製される。従来のコーンシロップの調製と同様、デンプンは酵素によってグルコースに分解されてもよい。フルクトースコーンシロップを製造するために、コーンシロップをD-キシロースイソメラーゼによって更に処理して、そのグルコースの一部をフルクトースに変換する。一般的な商業的に使用されているシロップは、「HFCS 42」及び「HFCS 55」であり、この命名法は、それぞれフルクトースの乾燥重量が42%及び55%である組成を指し、残部は、典型的にはグルコース、又はグルコース及びある量のその他の炭水化物である。
【0128】
好ましい実施形態では、フルクトースグルコースシロップは、概ね、5重量%~75重量%、好ましくは20重量%~70重量%、より好ましくは30重量%~60重量%、より好ましくは35重量%~55重量%のフルクトースを含有する。これらの百分率は乾燥固形分基準である。
【0129】
好ましい実施形態では、フルクトースグルコースシロップは、概ね、5重量%~75重量%、好ましくは20重量%~70重量%、より好ましくは30重量%~60重量%、より好ましくは35重量%~55重量%のグルコースを含有する。これらの百分率は乾燥固形分基準である。
【0130】
エアレーションされた菓子中の糖の望ましくない結晶化は、糖が少なくとも2種類の異なる糖、好ましくはフルクトースを含むか、又はこれらから構成された場合に回避することができる。糖の好適なブレンドは、少なくとも10%、但し70%未満、60%未満、50%未満、又は40%未満の糖転化率の転化糖によって提供される。40%~50%の転化率が、実施例において望ましい結果を提供することが示されている。いくつかの実施形態では、糖は、20%~60%、30%~50%又は40%~50%の糖転化率(すなわち、加水分解度)の転化糖である。
【0131】
糖ミックス中にフルクトースが存在することが非常に好ましい。好ましくは、糖の10重量%~50重量%(すなわち、糖の1/10~1/2、好ましくは少なくとも1/5)がフルクトースである。より好ましくは、糖の約20重量%~30重量%、例えば20重量%~25重量%がフルクトースである。このような状態は、様々な糖に富む成分(例えば、粉末糖、デンプン由来シロップ又は転化糖シロップ)をブレンドすることによって、又はスクロース、デキストロース及びフルクトースを含む部分転化された糖シロップを使用することによってのいずれかで達成することができる。
【0132】
好ましい実施形態では、エアレーションされた菓子は糖ミックスを含み、菓子は5重量%~30重量%のスクロースと、5重量%~30重量%のグルコースシロップと、35重量%~75重量%のフルクトースグルコースシロップと、を含む。
【0133】
より好ましい実施形態では、エアレーションされた菓子は糖ミックスを含み、菓子は10重量%~25重量%のスクロースと、10重量%~25重量%のグルコースシロップと、45重量%~65重量%のフルクトースグルコースシロップと、を含む。
【0134】
スクロースは非還元糖であり、デキストロース及びフルクトースは還元糖であることから、菓子中のこの糖の混合物は、還元糖の百分率として特定することもできる。これにしたがって、エアレーションされた菓子中の糖は、好ましくは、少なくとも10%、但し70%未満の還元糖を含み、残りは非還元糖である。いくつかの実施形態では、糖は、10%~60%の還元糖、20%~60%の還元糖、又は30%~50%の還元糖を含む。実施例は、40重量%~50重量%(具体的には41重量%~49重量%)の還元糖を含む糖混合物の使用を示している。還元糖と非還元糖との混合物は、部分転化糖シロップとして提供してもよい。
【0135】
本質的に全てのスクロースがデキストロース及びフルクトースに分解されている、完全に加水分解された(約97%転化された)転化シロップは、エアレーションされた製品中で結晶化し得る。部分的に加水分解されたシロップ、例えば10%超、但し70%未満、好ましくは60%未満加水分解(転化)されたシロップは、本発明によればより安定であり、結晶化しない。
【0136】
一実施形態では、糖は、部分的に加水分解された、転化されたシロップを含むか、又は転化されたシロップから構成される。別の実施形態では、糖は、スクロース、部分的に又は完全に転化されたシロップ、及びグルコースの混合物を含むか、又はこれらから構成される。更なる実施形態では、糖は、スクロース、フルクトース及びグルコースの混合物を含むか、又はこれらから構成される。
【0137】
これにしたがって、本発明によれば、糖の混合物が、好ましくは使用される。好ましくは、混合物は、フルクトースを含む。
【0138】
転化糖は、完全に転化された糖シロップであってもよく、又は、好ましくは、部分的に転化された糖シロップであってもよい。完全に転化された糖シロップはグルコース及びフルクトースのみを含む。部分的に転化された糖シロップは、グルコース、フルクトース及びスクロースを含み、好ましい。
【0139】
これにしたがって、糖のバランス又は糖の混合物が、好ましくは提供される。
【0140】
実施例において使用される糖の混合物の例は、スクロース、転化シロップ(それ自体が、スクロース、グルコース及びフルクトースを含有する)及びグルコースの混合物を含む。
【0141】
実施例のいくつかにおいて使用される「221」部分転化糖シロップは、British Sugar plc,Peterborough,United Kingdomから「Partial Invert Syrup 221」として入手可能である。このシロップは、砂糖大根から製造された、上白糖の淡い麦わら色の飲料水溶液である。このシロップは、フェーリング溶液及びメチレンブルー指示薬を使用するLane&Eynon滴定によって測定されたとき、41~49%の還元糖を含む。Invert 221は、部分転化糖シロップであり、したがって、ある割合の非加水分解スクロースを、等しい分率のフルクトース及びデキストロースと共に含む。完全に転化された糖シロップ(フルクトース及びデキストロースのみ)と比較して、Invert 221は結晶化する傾向がより小さい。
【0142】
IS221の代替物は、スクロースとフルクトース-グルコースシロップとのミックスである。
【0143】
いくつかの実施形態では、エアレーションされた菓子中の糖の総量は、60重量%~90重量%、例えば75重量%~85重量%である。
【0144】
好ましい実施形態では、エアレーションされた菓子は、40重量%~85重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%の総単糖類及び二糖類を含む。
【0145】
エアレーション
ムースの作製は、エアの機械的導入(ホイップ)若しくはガスの注入(例えば、窒素又は二酸化炭素)のいずれか又は両方による、液体塊へのエアの導入を伴う。
【0146】
本発明者らは、菓子フィリング用の常温保存可能(ambient)で安定な水性ムースを作製した。本発明者らはまた、本発明の水性フォームが少なくとも6ヶ月間及び最大17ヶ月間安定であることができることを実証した。
【0147】
エアレーションされた菓子は、チョコレートシェル又はコーティングに詰められてもよい。いくつかの実施形態では、ボンボンシェルを使用することができ、他の実施形態では、タブレットも使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明によるエアレーションされたフィリングを含有する、完成菓子製品を提供する。
【0148】
既存の装置を使用して、本発明によるエアレーションされた菓子を製造することができ、任意選択で、チョコレートシェルに該菓子を詰めることができる。フィリングを含むチョコレート製品について通常の生産能力(シェル製造、デポジット、離型(baking off))とは別に、フィリングを製造する能力が必要とされる。フィリングの製造には、水ベースの成分の混合及び調理、並びにその後のそれらのエアレーションが必要である。フィリング塊の調製は、80~90℃への加熱能力を有するバッチタンク内で行うことができる。フィリングのエアレーションは、CIPシステムを備えた専用の水ベースのラインに接続された連続型エアレーション装置(例えば、Mondomix)内で行うことができる。
【0149】
菓子フィリング組成物
上述したように、本発明のエアレーションされた水ベース菓子は、好ましくは、菓子製品用フィリングを提供するための組成物である。
【0150】
本発明のフィリング組成物は、サンドイッチ、ビスケット、ウエハースなどの複合製品、又はその他の複合菓子製品で使用するための、菓子フィリングであってもよい。フィリング組成物は、例えば複合製品の上部に使用するためのトッピング、又はスプレッドを提供することもできる。
【0151】
しかしながら、本発明のフィリング組成物の最も有利な使用は、チョコレート製品又はチョコレート類似物製品中のフィリングとしての使用である。
【0152】
この使用が有利であるのは、本発明が、フィリング及び最終製品のテクスチャにも官能特性にもあまり影響を与えることなく、安定性を増大させるという理由のためである。このことは、喫食体験が製品にとって重要である菓子製品にとって、特に重要である。
【0153】
更に、チョコレート及びチョコレート類似物の品質保持期限は比較的長いため、フィリングには長期の品質保持期間安定性が重要である。すなわち、フィリングは、チョコレートと同じ期間、安定であることが必要とされる。長期の品質保持期間安定性が重要とされることが、ビスケットの品質保持期限がチョコレートよりも短いサンドイッチビスケットのためのフィリングの製造と比べたときのフィリングチョコレート製品の違いである。しかしながら、水性ベースのフィリングの場合、安定性及び湿分保持の制御は菓子製品にとって特に重要であり、湿分の漏出は製品の腐敗につながることがある。
【0154】
本発明の一実施形態は、本発明のフィリング組成物を含む食品を提供し、好ましくは、食品は、菓子製品、好ましくはチョコレート(又はその等価物、例えばコンパウンド)製品である。
【0155】
非常に好ましい実施形態では、本発明は、本発明のフィリングで充填された、充填チョコレートシェル又は充填チョコレート類似物シェルを提供する。
【0156】
好ましい実施形態では、本発明のフィリングは、焼成されていない、すなわち、フィリングがデポジットされた後に更なる調理を必要とする食品には含まれない。
【0157】
一実施形態では、本発明のフィリングの製品重量の5~95%、好ましくは10~90%、好ましくは20~70%、又は30~50%を構成する、本発明のフィリングで充填された、充填された食品製品、好ましくは充填されたチョコレート製品、好ましくはチョコレートシェルが提供される。
【0158】
好ましくは、製品の残部は、製品を実質的に取り囲む(例えば、完全に取り囲む)コンパウンド又はチョコレートなどのチョコレート様材料のシェルである。したがって、一実施形態では、チョコレート様材料は、製品の5~95重量%、好ましくは10~90重量%、好ましくは30~80重量%、又は50~70重量%を構成し得る。
【0159】
本発明の別の実施形態は、チョコレート製品の外層で囲まれた本発明のフィリングを含むチョコレート菓子製品、例えば、プラリネ、チョコレートシェル製品、トリュフ、充填されたタブレット、及び/又はチョコレートコーティングされたウエハース又はビスケットを提供し、それらのいずれかは層状であってもなくてもよい。チョコレートコーティングは、エンロービング、コールドスタンピング(冷凍コーン(frozen cone)、コールドフォーミングなど)、又はモールディングなどの任意の好適な手段によって塗布され又は作製され得る。
【0160】
フィリングを含むチョコレート製品に関する上記の実施形態は非常に好ましい。
【0161】
一実施形態では、本発明の組成物は、有用には(本明細書で定義されるような)チョコレート製品であってもよく、より有用にはチョコレート又はチョコレートコンパウンドであってもよい。用いられ得るいかなる他の法的規定とも無関係に、乳成分(粉乳など)と共に、25重量%~35重量%のカカオ固形分含有量を含む本発明の組成物は、本明細書で略式に「ミルクチョコレート」と呼ばれ得る(この用語は、同様の量のココア固形分又はその代替物を含有する類似のチョコレート製品を含む)。用いられ得る任意の他の法的規定とは無関係に、35重量%超のカカオ固形分含有量(最大100%(すなわち、純カカオ固形分))を含む本発明の組成物は、また、本明細書で略式に「ダークチョコレート」と呼ばれ得る(この用語は、同様の量のココア固形分又はその代替物を含有する類似のチョコレート製品を含む)。
【0162】
本明細書で使用される「チョコレート」という用語は、任意の法域におけるチョコレートの法的規定を満たす任意の製品(及び/又はそれが製品となるものである場合はその成分)を意味し、また、カカオバター(CB)の全て又は一部が、カカオバター同等物(CBE)及び/又はカカオバター置き換え物(CBR)で置き換えられた製品(及び/又はその成分)も含む。
【0163】
いくつかの法域ではコンパウンドがカカオ固形分の最小量の存在によって法的に規定され得るにもかかわらず、本明細書で使用される用語「チョコレートコンパウンド」は、(文脈が明らかにそうでないことを示していない限り)任意の量のカカオ固形分(カカオリカー/カカオマス、カカオバター及びカカオ粉末を含む)の存在によって特徴付けられるチョコレート様類似物を意味する。
【0164】
本明細書で使用される用語「チョコレート製品」は、カカオバター(CB)、カカオバター同等物(CBE)、カカオバター置き換え物(CBR)及び/又はカカオバター置換物(CBS)を含む、チョコレート、コンパウンド及び他の関連材料を意味する。したがって、チョコレート製品は、チョコレート及び/又はチョコレート類似物をベースとした製品を含み、したがって、例えば、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、又はホワイトチョコレートをベースとすることができる。
【0165】
文脈が明確に示さない限り、そうでなければ、本発明において、任意の1つのチョコレート製品を何らかの他のチョコレート製品の代わりに使用することができ、チョコレートという用語もコンパウンドという用語も本発明の範囲を特定の種類のチョコレート製品に限定するものとみなされるべきではないこともまた理解されるであろう。好ましいチョコレート製品はチョコレート及び/又はコンパウンドを含み、より好ましいチョコレート製品はチョコレートを含み、最も好ましいチョコレート製品は、主要な法域(ブラジル、EU及び/又は米国など)で法的に規定されるチョコレートを含む。
【0166】
本発明の別の好ましい実施形態では、食品は、複数の層のウエハース、チョコレート製品、ビスケット及び/又は焼成食品を含み、それらの間に挟まれたフィリングを有し、チョコレート製品(例えば、チョコレート)である少なくとも1つの層又はコーティングを有する多層コーティングチョコレート製品を含む。最も好ましくは、多層製品は、サンドイッチビスケット、クッキー、ウエハース、マフィン、押出スナック及び/又はプラリネから選択されるチョコレート製品菓子製品(例えば、本明細書に記載される)を含む。このような製品の一例は、フィリングをサンドイッチし、チョコレートでコーティングされた、焼成ウエハース及び/又はビスケット層の多層ラミネートである。
【0167】
別の態様によれば、本発明によるフィリング組成物を含む、複合製品が提供される。複合製品は、例えば、本発明のフィリング組成物をフィリング又はトッピングとして含むサンドイッチ、ビスケット、クラッカー、ウエハース、又はベーカリー食品製品であり得る。
【0168】
具体的には、本発明で使用される焼成食品は、甘くてもよく、又はセイボリーなものであってもよい。好ましい焼成食品は、焼成された穀物食品を含むこともでき、この用語には、穀類及び/又は豆類を含む食品が含まれる。焼成された穀類食品がより好ましく、最も好ましくは、ウエハース、クラッカー、クッキー、マフィン、押出しスナック、及び/又はビスケットなどの焼成された小麦食品である。
【0169】
ウエハースは、平坦であっても、成形されてもよく(例えば、アイスクリームのためのコーン又はバスケット)、ビスケットは多くのさまざまな形状を有し得る。より好ましいウエハースは、セイボリーなものではない(non-savoury)ウエハースであり、例えば、甘い香味又はプレーンな香味を有するウエハースである。
【0170】
本発明を、以下の非限定的な実施例により更に詳細に記載する。
【実施例】
【0171】
概要
概説すると、この研究課題は、高糖及び低pHである、エアレーションされた水ベース菓子の系の安定性に対する植物由来タンパク質の寄与を理解することを目的とした。この系は、発泡剤としてHPPを使用するモデルレシピである。このような処方物は、ある割合の果実材料(濃縮果汁及び/又は果実ピューレ)を含み得る。この調査のため、総糖含有量及び酸度を維持するために、果実含有量を糖、水及び酸で置き換えた、モデルレシピを選択した。最終塊のawを、長期間にわたり周囲条件での保存時の微生物安定性を可能にする許容可能な(0.67以下)ものとするために必要とされる糖のタイプのバランスをとる目的で、転化シロップを使用した。使用される糖のタイプは、塊の粘度を制御し、加工(エアレーション、ポンピング、デポジットなど)に許容可能なレベル内に保つために重要であった。フィリングを含有する製品に見込まれる品質保持期限は、9~12ヶ月である。
【0172】
実施例1:ホエイタンパク質単離物及び加水分解エンドウマメタンパク質フォームの特性
植物由来タンパク質/タンパク質凝集体による発泡組成物の安定化
Kerry Inc.製の3.7重量%Hyfoama(登録商標)加水分解エンドウマメタンパク質(HPP)及びArla Foods Ingredients Ltd.製の3.7重量%Lacprodan(登録商標)DI-9224ホエイタンパク質単離物(WPI)の溶液を調製し、それらの元々のpH、及び無水クエン酸を使用してpH3.0に調整した場合の両方で分析した。
【0173】
溶液粘度の変動も表面活性に影響を及ぼし得るので、Sigma-Aldrich Ltd.製の20重量%スクロース(≧99.5%)をPH3.0のタンパク質溶液に添加しての試験も行った。
【0174】
記載したように各液体溶液を調製し、30℃に冷却した後、更に分析及び処理した。冷却した溶液を、ホイップ用アタッチメントを備えたHobart N50ミキサー(Hobart,USA)に加え、速度3で5分間ホイップした後、得られたフォームを取り出して分析した。250gの溶液の初期バッチでは、ミキサーが効果的にホイップするには不十分であることが分かった。この結果を考慮して、バッチサイズを倍にして500gにした。
【0175】
フォームのオーバーランは、発泡後の液体溶液の体積増加を百分率で表し、その「発泡性」の数値表示を与える。この値は、行われる発泡プロセスに加えて液体溶液の特性に応じて大きく変化し得る。例えば、より少ないホイッピング回数は、より小さい気泡ほど効率的に充填されない、より大きい気泡を溶液に組み込むことで、より高いオーバーランを生じ、ひいてはより大きいフォーム体積(より高いオーバーラン)をもたらし得る。逆に、より短いホイップ時間は、より少ないエアを系全体に組み込み、ひいてはより小さいフォーム体積(より低いオーバーラン)を生成し得る。
【0176】
オーバーランを測定するために、液体試料を透明な試料ポットに入れ、へりまで満たした後、デジタル天秤で小数点第3位まで秤量した。発泡後、ポットを再び満たし、スチール定規を使用して平らにした後、秤量した。次いで、オーバーランを式1に従って計算した。
【0177】
【0178】
充填不良が最終測定値に劇的に影響を及ぼしたので、透明なポットは、発泡試料ポットでの効率的な充填を監視することができることを確保するものであった。しかしながら、試料装填中にポットの底部に加圧によりエアキャビティが形成されるため、問題が生じた。これは必然的に、フォームに関するより多くの物理的操作に加え、品質不良な充填を意味した。この問題を克服するために、フォームポットの底部の周りに一連の1mmの穴を作製して、キャビティを除去し、迅速で効率的な試料充填を可能にした。
【0179】
pH3で、純粋なタンパク質間でオーバーランに顕著な差があり、HPPのオーバーランは、それぞれ2094%及び949%でWPIのオーバーランの約2倍であった。(
図1)
【0180】
実施例2:植物由来タンパク質を含む、エアレーションされた組成物の安定化
植物由来タンパク質/タンパク質凝集体による常温保存可能な水性フォームの安定化
ムースの作製、特に酸性pHでのムースの作製は、気泡の界面を安定化する界面活性分子の使用を必要とする。乳化剤の重要な役割は、最初に界面張力を低下させることによって気泡の生成を容易にし、機械的ホイッピングプロセス中及び長期保管中の両方において、合体に対して気泡を迅速に安定化させることである。本発明は、WPIを市販の加水分解エンドウマメタンパク質(HPP)で置き換えて、高メトキシル(HM)ペクチン及びスクロースを増粘剤として使用した、非常に安定な低pHの水性フォーム系を作製することに焦点を当てている。発泡前のこれらの系のゼータ電位及び表面張力を用いて、オーバーラン、構造及びレオロジーに基づいて測定された比較可能なフォームによってタンパク質の機能性を評価した。
【0181】
材料
フォームの液相の物理的及び化学的特性は、フォームの系の形成、構造及、続いて泡持ち(longevity)の基礎となる。表1の処方は、低pH、高糖のフォームを記載しており、WPI又はHPPのいずれかを主な発泡剤とし、高メトキシル(HM)ペクチン、スクロース及び転化糖(80ブリックス)を粘度調整剤として使用してフォームの安定性を補助した。クエン酸を添加して、酸性度をpH 3.0に調整した。
【0182】
上記実施例1に示されるように、HPP単独では、WPI単独よりも多くのオーバーランを生じる。しかしながら、十分に確立された成分を植物ベースの代替物に置き換えることは、機能性を再現しようとすると、特に特定の食物微細構造が必要とされる場合には、単なる置き換えほど単純ではない。本発明者らは、通常の果実含有処方物の特性を再現するように設計したモデルレシピにおいて、HPPがその有利な特性を維持することを見出した。
【0183】
HPPは、Kerry Inc.からHyfoama(登録商標)加水分解エンドウマメタンパク質の形態で入手し、WPIは、Arla Foods Ingredients Ltd.製のLacprodan(登録商標)DI-9224ホエイタンパク質単離物から構成されていた。スクロース(≧99.5%)は、Sigma-Aldrich Ltd.(UK)から入手した。標準的な市販の転化糖及び無水クエン酸を使用した。HMペクチンとしては、柑橘類の果皮由来のGrindsted(登録商標)Pectin XSS 100(DuPont Danisco)を使用した。水は、使用前に現場で、15.0MΩ・cmに精製した。
【0184】
【0185】
試料の調製
乾燥成分及び湿潤成分を、デジタル天秤を用いて別個に秤量した。湿潤成分(水及び転化糖)をラップフィルムで覆い、実験室用ホットプレート/スターラー上に置いた後、連続的に撹拌しながら80℃の温度に加熱した。この加熱ステップを実施し、添加したペクチン及びタンパク質の溶解速度を上げ、凝集を増強し、ひいては、形成されると分散させるのにかなりの時間がかかる粉末凝集の形成を回避した。スクロースの高い溶解度は、スクロースが液体成分の加熱中に添加され得ることを意味した。
【0186】
タンパク質及びペクチンを、連続的に撹拌しながら、80℃で30分間にわたって徐々に添加し、粉末凝集の形成を回避した。この凝集形成は、WPIを安定化タンパク質として使用する場合に特に問題であることが見出されたが、HPPは、はるかに容易に分散することが見出された。
【0187】
所望のpH3.0に達するために、デジタルpHプローブを使用して、クエン酸粉末を徐々に添加する際のpHを記録した。pH3.0に達したところで溶液を回収し、80℃で更に10分間撹拌した。次いで、溶液を室温(約21℃)に放冷した後、発泡及び/又は分析を行った。
【0188】
冷却した溶液を、ホイップ用アタッチメントを備えたHobart N50ミキサー(Hobart,USA)に500gのバッチで添加し、速度3で5分間ホイップした後、得られたフォームを取り出して分析した。フォーム構造に対する試料移動の影響を最小限にするために、フォームを直ちにプラスチック試料ポットに移し、保管前に密封した。
【0189】
試料の分析
光学顕微鏡法
Leica DM 2500 LED顕微鏡(Leica Microsystems GmbH,Germany)を使用して、明視野透過(BF)モード又は微分干渉コントラスト(DIC)モードのいずれかで、未発泡試料及びその後形成されたフォーム構造の物理的特徴を観察した。これらの観察は、マイクロメートル及びミリメートルの長さスケールにわたる物理的構造の存在を強調表示するための倍率範囲にわたって取得された。
【0190】
フォーム気泡サイズは、より洗練された非破壊式撮像技術(例えば、X線マイクロトモグラフィー)の分解能より小さいことが見出されたので、気泡サイズ分布もまた、光学顕微鏡法によって得た。気泡数及び面積を、ImageJソフトウェア(NIH,UK)における適切な画像閾値化及び分析を使用して測定し、気泡面積は、球形(本明細書の場合に適切)を仮定することによって近似気泡直径に変換した。
【0191】
フォームのオーバーラン
フォームのオーバーランを測定するために、液体試料を透明な試料ポットに入れ、へりまで満たした後、デジタル天秤で小数点第3位まで秤量した。発泡後、ポットを再び満たし、平らにした後、秤量した。次いで、オーバーランを式1に従って計算した。
【0192】
【0193】
フォームの半減期
フォームの安定性を測定するために、フォームの高さを観察し、フォームの半減期についての値、t1/2を得た。この値は、フォームの高さがその初期値の半分に達するのに要した時間を表す。フォームは室温(約21℃)で保管した。タイムラプスのカメラ設定を使用した最初の一定の観察にもかかわらず、半減期がこの試験の期間をはるかに超えることは明らかであった。この後、フォームの高さの見た目を1ヶ月に1回観察した。
【0194】
処方物の発泡
表1の完全なHPP及びWPI処方物については389%及び309%の平均フォームオーバーランが測定され、HPPの発泡性に見込まれた、WPI発泡性と比較しての増大が示された(
図2のa)。
【0195】
構造分析によりフォーム構造が示した差異はわずかであり、いずれの処方物(
図2のb)でも、球状気泡(
図2のc及びd)が同様のサイズ分布で均一に分散していた。全体として、いずれのレシピの気泡も、直径dが0μm<d<20μmの範囲であり、平均気泡直径は1μm<d≦3μmであり、5μm<d≦11μmの中間範囲にわたって気泡数の変動は少ししかなかった。最大の変動は、最大及び最小の気泡について見られ、その結果、HPPはWPIよりも大きな多分散度を示した。1平方ミリメートル当たりのおよその総気泡数は、HPPよりもWPIの方が高く、1.6%増加した。これは主に、1μm<d≦3μmの範囲内のより小さい気泡の発生率が22%高く、より高い気泡充填密度を生じたことによるものであった。WPIの、気泡のより高い充填密度と、より大きな気泡d>11μmの105%の減少とは、HPPと比較して減少していたオーバーランとよく相関していた。
【0196】
WPIフォームに関して留意すべき重要な点は、WPIフォームにはHPPフォームとの類似性が多くあるにもかかわらず、固形分WPI-ペクチン凝集体の存在が変わらずに主要な問題であることであった。いずれのフォームも滑らかな外観を有していたが、WPIをより詳細に検査したところ、サイズが3mmほどの大きさであろう大きな固形分凝集体の分散が存在していることが明らかとなった。この凝集体は、WPIとペクチンとの間で形成された初期凝集から生じた可能性があり、フォームのテクスチャに顕著な影響を及ぼすことが予想されていた。HPPフォームにはこの問題がなかった。
【0197】
別の重要な差異は、HPP及びWPIによって安定化されたフォームのオーバーランに対するスクロースの影響である。HPPのオーバーランは、スクロースを含有する処方物において14%だけ減少し、スクロースが系に対して実質的に効果を示さなかったことを示唆したが、WPIのオーバーランは、20重量%のスクロースの添加により117%の減少を示した。
【0198】
フォームの安定性
表1の処方物のWPIフォーム及びHPPフォームは、いずれも室温(約21℃)で並外れた泡持ちを示し、半減期は形成後17ヶ月を超えた。
図9から分かるように、フォームの安定性は、増粘剤(すなわち、HMペクチン、スクロース及び転化糖)の包含によるフォームの粘度の上昇とともに増大するという見込まれた傾向に従った。理論に束縛されるものではないが、この傾向は、液体分離の発生の減少が、不均化及び気泡破裂を減少させるように作用する気泡サイズ及び気泡-気泡接触の減少傾向と組み合わされることによる可能性が最も高い。
【0199】
実施例3.HPPラズベリー果汁濃縮物のレシピ
比較のための果実レシピとしては、ラズベリー果汁濃縮物の2とおりの処方物を選択した。1つはモデル処方物と直接比較することができ、1つは転化糖の代わりにスクロースを使用した。レシピは、タンパク質と、ペクチンと、水と、糖と、の比率が全ての場合で同じになるように計算した。結果を表2及び表3に示す。更なるレシピは、2.4重量%のペクチンを含有した。
【0200】
【0201】
【0202】
表2及び表3に示したラズベリー溶液のホイッピングは、実質的に同一のフォームのオーバーランを生じた(
図3)。起泡性に関して、元のラズベリーレシピとスクロース無添加ラズベリーレシピとの間には少ししか差異が見られなかった。
【0203】
図4は、ペクチン含有量を1.0重量%から2.4重量%に増加させた様々なラズベリーレシピからの顕微鏡画像の例を示す。3週間後、これらのフォームでは、液体高さにおいて感知可能な増加は少ししか見られず、フォームが安定であり、長い半減期を有することが示唆された。
【0204】
全体として、HPPは、エアレーションされた菓子において、WPIの好適な植物ベースの代替物であるだけでなく、その取扱い、使用の柔軟性及び最終的な発泡系に得られるテクスチャに関して顕著な改善を示すとみなされた。HPPのフォームは、並外れて安定であることが見出され、レシピの調製は、成分が分散するのにより長くかかったWPIと比較して、比較的速く容易であった。加えて、HPPは、WPIにおいて見出された、大きな固形分凝集によるテクスチャへの強力な負の影響を示さなかった。
【0205】
本明細書で記載される実施例及び実施形態は、例示目的のみのためであり、それらに照らして様々な改変又は変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に含まれる対象であることが理解される。本明細書で引用される全ての刊行物、配列受託番号、特許、及び特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0206】
本明細書で記載される態様は、特定の実施形態、装置、又は構成に限定されず、したがって、当然ながら変更することができる。本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明するためのものであり、本明細書で具体的に定義されない限り、限定することを意図するものではない。
【0207】
本明細書全体を通して、文脈が別段のものを要求しない限り、語句「含む(comprise)」及び「含む(include)」並びにその変形(例えば、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」)は、記載の成分、特徴、要素若しくはステップ、又は成分、特徴、要素若しくはステップの群を包含するが、あらゆる他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外することを意味するものと理解される。
【0208】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)には、別段の明らかな指示がない限り、複数の参照物も含まれる。
【0209】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表される場合、別の態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用によって近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解される。更に、範囲の各々の端点は、他の端点に関して、及び他の端点とは独立しての両方で重要であることが理解される。
【0210】
当業者であれば、本明細書に記載の様々な実施形態の組み合わせが具体的に企図される(そのような組み合わせが不適合ではない範囲で)ことを理解する。例えば、1つのセクションにおいて、本明細書が、記載される組成物における使用のための特定のタンパク質を記載し、別のセクションにおいて、本明細書が、記載される組成物における使用のための特定の糖を記載する場合、本明細書はまた、特定の糖と組み合わせて特定のタンパク質を含む組成物を具体的に企図する。同じことが、本明細書に記載される組成物及び方法の記載された範囲及び任意の記載された特徴にも当てはまる。
【国際調査報告】