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特表2024-531391可変電流密度における水の電気分解方法
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  • 特表-可変電流密度における水の電気分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】可変電流密度における水の電気分解方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/04 20210101AFI20240822BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240822BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240822BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20240822BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20240822BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/02
C25B15/023
C25B9/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024510343
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022072861
(87)【国際公開番号】W WO2023021034
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】21191769.5
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507128654
【氏名又は名称】インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヌッツォ, ダニエーレ
(72)【発明者】
【氏名】スポンチアド, ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】ペレーゴ, ミケーレ
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BA17
4K021BB03
4K021BB04
4K021BB05
4K021BC09
4K021CA05
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA10
(57)【要約】
本発明は、電解装置で水をアルカリ水電解するための方法、及び当該方法を行うために構成された電解装置に関し、当該電解装置は、少なくとも1つの電解セルを備え、当該電解セルは、アノードが設けられたアノード区画、カソードが設けられたカソード区画、及び前記アノード区画と前記カソード区画との間に配置されたセパレータを有するものである。本方法は、閾値電流密度までの稼働電流密度では、前記カソード区画で発生した水素が、前記セパレータを通じて、前記アノード区画へと移動することを制限するように、また閾値電流密度を超える稼働電流密度では、前記アノード区画で発生した酸素が、前記セパレータを通じて、前記カソード区画へと移動することを制限するように、閾値電流密度を選択することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解装置で水を電気分解するための方法であって、当該電解装置は、少なくとも1つの電解セルを備え、当該電解セルは、アノードが設けられたアノード区画、カソードが設けられたカソード区画、及び前記アノード区画と前記カソード区画との間に配置されたセパレータを有するものであり、前記方法は、
アルカリ性アノード液を前記アノード区画に、アルカリ性カソード液を前記カソード区画に供給すること、
可変電流を可変稼働電流密度で前記電解セルに印加することによって水電気分解を行い、前記カソードで水素ガスを、前記アノードで酸素ガスを発生させること、
前記カソード液と前記水素ガスとの混合物を前記カソード区画から、前記アノード液と前記酸素ガスとの混合物を前記アノード区画から排出すること、
前記水素ガスを前記カソード液から、前記酸素ガスを前記アノード液から、分離すること、
を含み、
閾値電流密度までの稼働電流密度では、前記カソード区画で発生した水素が、前記セパレータを通じて、前記アノード区画へと移動することが制限されるように、及び
前記閾値電流密度を超える稼働電流密度では、前記アノード区画で発生した酸素が、前記セパレータを通じて、前記カソード区画へと移動することが制限されるように、
閾値電流密度が選択されるとともに、水電気分解が行われる、方法。
【請求項2】
前記閾値電流密度までの稼働電流密度では、前記アノード区画における前記セパレータにかかる液圧が、前記カソード区画における前記セパレータにかかる液圧よりも高く、
前記閾値電流密度を超える稼働電流密度では、前記カソード区画における前記セパレータにかかる液圧が、前記アノード区画における前記セパレータにかかる液圧よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
機械的な圧力が、前記セパレータへと前記カソードを押圧するために、前記カソードにかけられるか、又は前記セパレータへと前記アノードを押圧するために、前記アノードにかけられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アノード区画における水素の、酸素に対する比率が、4体積%を下回るように保たれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カソード区画における酸素の、水素に対する比率が、4体積%を下回るように保たれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水素ガスを前記カソード液から、前記酸素ガスを前記アノード液から分離した後、前記カソード液が、前記カソード区画へとリサイクルされ、前記アノード液が、前記アノード区画へとリサイクルされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水素ガスを前記カソード液から、前記酸素ガスを前記アノード液から分離した後、
前記閾値電流密度までの稼働電流密度では、前記カソード液が前記カソード区画へとリサイクルされ、前記アノード液が前記アノード区画へとリサイクルされ、
前記閾値電流密度を超える稼働電流密度では、前記カソード液及び前記アノード液が少なくとも断続的に混合され、当該混合物が、前記カソード区画及び前記アノード区画へとリサイクルされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
当該稼働電流密度が、25kA/mまでの範囲にある、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記閾値電流密度が、2~10kA/mの範囲内で選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水電気分解が、100barまでの範囲の絶対液圧で行われる、請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アノード区画と前記カソード区画との液圧差が、-100~100mbarの間の範囲に維持される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記セパレータが隔膜である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルカリ性アノード液及び前記アルカリ性カソード液が、アルカリ金属水酸化物の水溶液を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
水の電気分解を行うための電解装置であって、当該電解装置は、少なくとも1つの電解セルを備え、当該電解セルは、アノードが設けられたアノード区画、カソードが設けられたカソード区画、及び前記アノード区画と前記カソード区画との間に配置されたセパレータを有するものであり、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を行うために構成されている、電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変電流密度で水を電気分解する方法、特にアルカリ水電解のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の燃焼によるエネルギー生成に伴う二酸化炭素放出を減少させるために、化石燃料を再生可能エネルギーで置き換えるための世界的な取り組みが行われている。多くの再生可能エネルギー源、例えば風力エネルギーや太陽エネルギーは通常、本質的に断続的であったり変動したりするため、利用可能な再生可能エネルギーと、家庭や産業で必要とされるエネルギーとの間にはしばしば、所与の時点で不均衡が生じる。水素ガスは、さまざまな産業用途(燃料電池における電気エネルギー生成を含む)で使用されている。工業規模において水素は主に、例えば水蒸気改質などのプロセスで天然ガスから製造されるため、これらの水素及び二酸化炭素は、エネルギー生産における「二酸化炭素排出量(carbon footprint)」の削減にはあまり適していない。しかしながら、天然ガスの水蒸気改質の代替として、再生可能エネルギー源を用いる場合には、炭素排出を伴わない水の電気分解によって水素を製造することもできる。そのため、再生可能エネルギーによる水の電気分解により得られる水素ガスは、多くの産業プロセスにおける水素源として、また再生可能エネルギーの蓄電媒体として、大きな役割を果たすことが期待されている。アルカリ水電解は、高価な貴金属ベースの触媒を必要としないため、工業規模で水素を製造するための水電解の特に有望な変法である。アルカリ水電解は通常、電気化学セルにおいて40~90℃の温度範囲で行われ、アノードを備えるアノード区画と、カソードを備えるカソード区画とが、適切なセパレータ、例えば隔膜又は膜によって区切られている。pHが7より高いアルカリ性水溶液、例えばKOH水溶液が、電解質としてセルに供給され、カソード区画における電極とアノード区画における電極との間、すなわちカソードとアノードとの間に電流が流れ、その電位差(セル電圧)は通常、1.6~2.4Vである。これらの条件では、水がその構成要素に分割され、カソードには気体状の水素が生じ、アノードには気体状の酸素が生じる。アルカリ性媒体では、カソードでの水素発生反応を以下のようにまとめることができる:
4 H2O + 4 e- → 4 OH- + 2 H2 (1)
【0003】
カソード区画で発生した水酸化物イオンは、セパレータを通じてアノード区画に移動し、アノードでの酸素発生反応は、以下のようにまとめることができる:
4 OH- → O2 + 2 H2O + 4 e- (2)
【0004】
工業プロセスでは、通常、複数のセルが直列スタック構成、すなわち直列に接続された多数の電解セルに配置される。各区画で発生した電解質と気体との混合物は、各セルから除去され、気体状の生成物が液状の電解質から分離され、液体状の電解質がスタックのセル区画へとリサイクルされ、こうしてセル/スタックが連続的に稼働可能になる。上記式(1)及び(2)から分かるように、カソード区画では、アノード区画よりも2倍のモル等量で、水が生成する。そこで、両方の区画における電解質のバランスを保つため、アノード液(アノード区画における電解質)、及びカソード液(カソード区画における電解質)を通常は、気液分離後にともに混合して、それから電解装置に送り戻す。
【0005】
個々が直列に接続された多数の電気化学/電解セルを含むアルカリ水電解用の工業規模のスタックは、高電流密度における公称負荷での稼働のために、セル電圧と水素純度の点で最適化されている。特に再生可能エネルギーに頼る場合、電気エネルギーの利用可能性及び/又はコストは稼働中に変動するため、高電流密度で設計された公称負荷をはるかに下回る電流密度であっても、電気分解を行うことが可能であるのが望ましい。
【0006】
アルカリ水電解に使用されるセパレータは、水素ガス及び酸素ガスのそれぞれに対してなおも透過性が残っているため、稼働中に、濃度勾配に基づくカソード区画からアノード区画への水素の拡散、及び濃度勾配に基づくアノード区画からカソード区画への酸素の拡散が起こる。現行の安全要件を満たすには、カソード区画における酸素の、水素に対する(OTH)濃度、及びアノード区画における水素の、酸素に対する(HTO)濃度が4体積%を超えないように、好ましくは2体積%を超えないように、電解装置を稼働する必要がある(いずれの場合でも、混合物の爆発下限はおよそ4体積%)。公称高電流密度稼働の間、セパレータを通じて反対側の区画から移動する残留気体は、アノード及びカソードでそれぞれ生成される大量の気体によってかなり希釈されるため、これらの安全要件を満たすことは一般的に問題にならない。しかしながら電流密度が低く、各電極で生成される「所望の気体」が少ない場合、反対側の区画から移動する気体が、上記の安全閾値以上のHTO又はOTH比率につながり得る。
【0007】
欧州特許出願第3604642号(EP 3604642 A1)、及び豪州特許出願第2019374584(AU 2019374584 A1)(国際出願WO 2020/095664 A1に基づく)には、気液分離タンクを備えるアルカリ水電解装置により水素を生成するための、水電気分解システム及び水電気分解方法が記載されており、当該分離タンクは、気体と電解質との混合物のための流入口を備えるものであり、当該流入口は、分離タンク内の電解質の液体表面よりも高い位置に配置されている。酸素及び水素それぞれのために異なる分離タンクを使用し、また分離タンクにおける液面を適切に管理することによって、生成する水素の純度を改善することが可能になる。さらに、専用の精製装置を用いることができる。
【0008】
米国特許出願第2013/337368号(US 2013/337368 A1)には、アノードセパレータ要素と、カソードセパレータ要素とから構成される水電気分解セル用のセパレータが記載されており、これらのアノードセパレータ要素及びカソードセパレータ要素は、相互に間隔を空けて離れており、内部バイパスチャネルを形成する。溶存気体を含まない電解質を当該バイパスチャネルに供給することにより、アノード区画及びアノード区画への逆洗浄流が確立され、セパレータを通じた各気体種の移動を低減させることができる。
【0009】
よって本発明の課題は、稼働中に変わり得る幅広い電流密度範囲にわたるセル電圧及び気体純度の観点で性能を最適化するアルカリ水電解を用いた水の電気分解方法をもたらすことである。
【0010】
[発明の概要]
本発明の様々な態様は、添付特許請求の範囲に記載されている。
【0011】
本発明は、電解装置で水を電気分解するための方法に関し、当該電解装置は、少なくとも1つの電解セルを備え、当該電解セルは、アノードが設けられたアノード区画、カソードが設けられたカソード区画、及びアノード区画とカソード区画との間に配置されたセパレータを有するものであり、当該方法は、
アルカリ性アノード液をアノード区画に、アルカリ性カソード液をカソード区画に供給すること、
可変電流を可変稼働電流密度で電解セルに印加することによって水電気分解を行い、カソードで水素ガスを、アノードで酸素ガスを発生させること、
カソード液と水素ガスとの混合物をカソード区画から、アノード液と酸素ガスとの混合物をアノード区画から排出すること、
水素ガスをカソード液から、酸素ガスをアノード液から、分離すること、
を含み、
閾値電流密度までの稼働電流密度では、カソード区画で発生した水素が、セパレータを通じて、アノード区画へと移動することが制限されるように、及び
閾値電流密度を超える稼働電流密度では、アノード区画で発生した酸素が、セパレータを通じて、カソード区画へと移動することが制限されるように、
閾値電流密度が選択されるとともに、水電気分解が行われる。
【0012】
水を電気分解する方法が、例えば再生可能エネルギーを電気エネルギー源として使用することに起因して、変化する電流密度で行われる場合、電流密度は、最小稼働電流密度と最大稼働電流密度との間で、変化することになる。そこで本発明では、閾値電流密度を稼働電流密度の範囲内(すなわち、電解装置の最小稼働電流密度を上回り、かつ最大稼働電流密度を下回る)に規定することが提案され、これにより稼働電流密度の範囲は、2つの範囲に、つまり、最小稼働電流密度から閾値電流密度にわたる低電流密度範囲と、閾値電流密度を上回り最大電流密度にわたる高電流密度範囲とに、下位区分される。本発明ではさらに、低電流密度範囲及び高電流密度範囲のそれぞれにおいて異なったやり方で、セパレータを通じた気体の移動について積極的に影響をもたらすべきこと、特に当該移動を制限すべきことが提案される。低電流密度範囲では安全性への配慮が特に重要であり、本発明では、アノード区画におけるHTO比率が危機的なレベルに達するのを避けるために、カソード区画で発生した水素が、セパレータを通じてアノード区画へと移動することを、純粋に濃度勾配に基づく移動と比較して積極的に制限することが提案される。高電流密度範囲では、安全性への配慮はそれほど重要ではなく、生成される水素の純度という観点で、稼働を最適化することができる。よって本発明では、アノード区画で発生した酸素が、セパレータを通じてカソード区画へと移動することを、純粋に濃度勾配に基づく移動と比較して、可能な限り積極的に制限することが提案される。
【0013】
稼働中にセパレータを通じて気体が移動することを積極的に制限することは、様々な手段により達成可能である。例えば、セパレータに対する酸素及び水素の透過性は、セパレータの機械的及び電気化学的な特性によって影響を受ける。例えば、セパレータに機械的な作用をもたらすことにより、セパレータの細孔径分布を変えることが考えられる。しかしながらこのような解決策では、セル設計の複雑さが増大することにより、コストが高くなる傾向にある。よって、セパレータは変えないままにする方が好ましい。むしろ、本発明者らは、濃度勾配に基づくセパレータを通じた気体の移動に加えて、片方の区画における電解質の液圧を、他方の区画における液圧よりも高くすることによって、気体の移動に対して積極的に影響を与えることができることを観察した。よって、本発明の好ましい実施形態によれば、閾値電流密度までの稼働電流密度では、アノード区画においてセパレータにかかる液圧が、カソード区画においてセパレータにかかる液圧よりも高く、こうしてカソード区画からアノード区画への水素の移動が制限される。
【0014】
同様に、閾値電流密度を超える稼働電流密度では、カソード区画においてセパレータにかかる液圧が、アノード区画においてセパレータにかかる液圧よりも高く、アノード区画からカソード区画への酸素の移動が制限される。
【0015】
本発明の文脈において差圧は、カソード区画における液圧から、アノード区画における液圧を引いたものとして測定される。したがって、正の差圧は、カソード区画における圧力が、アノード区画における圧力よりも高いことを意味し、一方で負の差圧は、アノード区画における圧力が、カソード区画における圧力よりも高いことを意味する。
【0016】
カソード区画とアノード区画との差圧は、様々な手段により発生させることができる。例えば、電解質の再循環は通常、カソード液ポンプ及びアノード液ポンプを用いて達成される。所望の液圧を達成するために、カソード区画及びアノード区画の出口にある調整可能なバルブ(電流密度に応じて調整される)を用いることができる。代替的には、水素及び酸素分離容器内の液面を、各排出ラインを介してアノード区画及びカソード区画内部の液圧に影響をもたらすために調整することができる。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、カソードに機械的な圧力をかけて、カソードをセパレータに押圧し、ひいてはセパレータをアノードに対して押圧する。この実施形態は、従来のゼロギャップセル構成において好ましく、この際、カソード弾性要素によって、電極がセパレータに対してしっかりと押圧されることが保証され、その結果、セル電圧が最小化され、ひいてはエネルギー消費量が削減される。ゼロギャップセル構成は、アノード区画で弾性要素を用いて、アノードをセパレータに対して、次いでセパレータをカソードに対して押圧することによっても、達成可能である。しかしながら、本発明の文脈においては、カソード弾性要素を使用するのが好ましい。カソード弾性要素を用いれば、弾性要素をカソード又は集電体/バイポーラプレートのいずれかに溶接する必要なく、カソードとカソード集電体又はバイポーラプレートとの間の電流伝達を効率的にすることができる。特に負の差圧がかかる場合、カソード区画に弾性要素があることにより、セパレータがアノード電極から脱落するのを回避するのに役立ち得る。セパレータがアノード電極から脱落すると、セル電圧の増加により、セルの性能が損なわれてしまう。
【0018】
本発明による方法の1つの実施形態において、アノード区画における水素の、酸素に対する比率(HTO)は、4体積%を下回るように保たれる。好ましくは、水素の移動が、アノード区画におけるHTO比率が2体積%を下回るレベル、より好ましくは1.5体積%を下回るレベルに、制限される。
【0019】
本発明による方法の1つの実施形態において、カソード区画における酸素の、水素に対する比率(OTH)は、4体積%を下回るように保たれる。好ましくは、酸素の移動が、カソード区画におけるOTH比率も2体積%を充分に下回るレベル、より好ましくは1.5体積%を充分に下回るレベルに、制限される。
【0020】
水素ガスをカソード液から、酸素ガスをアノード液から分離した後、カソード液はカソード区画へとリサイクルされ、アノード液はアノード区画へとリサイクルされる。アルカリ水電解では通常、同じ電解質がアノード液及びカソード液として使用され、電解質におけるアルカリ性濃度は、アノード区画及びカソード区画のそれぞれにおいて、同じままである。しかしながら前述のように、アノード区画及びカソード区画においてそれぞれ生成又は消費される水の量が異なるため、両区画におけるアルカリ濃度が不均衡だと、稼働時間が長すぎてしまうことになる。
【0021】
同じ電解質をアノード液及びカソード液として使用する場合、水素/酸素の気体分離後にアノード液とカソード液とを混合し、当該混合物をカソード区画及びアノード区画へとそれぞれリサイクルすることにより、このような不均衡を回避することができる。電解装置を高い電流密度で稼働させる場合、カソード液とアノード液とが不均衡になる危険性は増大するので、カソード液とアノード液との混合物をリサイクルすることは、低電流密度よりも高電流密度において、より効果的である。よって、本発明による1つの実施形態では、水素ガスをカソード液から、酸素ガスをアノード液から分離した後、閾値電流密度までの稼働電流密度では、カソード液及びアノード液を別々にリサイクルし、すなわち、カソード液をカソード区画にリサイクルし、アノード液をアノード区画にリサイクルし、閾値電流密度を超える電流密度では、カソード液とアノード液とを少なくとも断続的に混合し、当該混合物を、カソード区画及びアノード区画のそれぞれへと、リサイクルする。よって、閾値電流密度を超える稼働電流密度では、アノード液とカソード液とを連続的に混合することができ、当該混合物を、カソード区画にリサイクルされる供給物と、アノード区画にリサイクルされる供給物とに分ける。この実施形態によれば、閾値電流密度を超える稼働電流密度では、カソード液とアノード液との不均衡が検出された場合、当該不均衡が検出されている限りにおいて、リサイクルされたカソード液とアノード液との混合を、断続的にのみ、行うことができる。この稼働モードにより、アノード液とカソード液とのループを分離されたままに保つことによって、低電流密度稼働の間、最適化された気体純度が保証される。結果として生じるアルカリ濃度不均衡の蓄積は、許容可能と考えられる。低電流密度稼働は通常、高電流密度稼働モードの例外であるとともに、水の生産及び消費が比較的少ないことと関連しており、このため、高電流密度モードに比して、不均衡の度合いが少ないからである。高密度電流密度稼働の間、バランスの取れた最適なアルカリ濃度が、アノード区画とカソード区画の双方で維持される。アノード液とカソード液との混合に起因する気体汚染は、許容可能と考えられる。なぜならば、高電流密度では気体生産速度が高いため、不所望な気体はそれぞれ、著しく希釈されるからである。
【0022】
好ましくは、本発明の方法における稼働電流密度は、25kA/mまでの範囲にある。原理的には、最小稼働電流密度は非常に低くてよく(ただ0kA/mを超えていればよい)、最大稼働電流密度は、約25kA/mである。好ましくは、稼働電流密度は、1~20kA/mの範囲にある。
【0023】
稼働電流密度の範囲内において、低電流密度稼働モードと高電流密度稼働モードとを区切る閾値電流密度は、2~10kA/mの範囲内、好ましくは3~6kA/mの範囲内で選択される。例えば、閾値電流密度は、4kA/mであり得る。
【0024】
好ましくは、本発明による方法のアルカリ水電解は、最大100barの範囲、通常は最大50barの範囲の絶対液圧で行われる。
【0025】
本発明の1つの実施形態によれば、アノード区画とカソード区画との液圧差は、-100~100mbarの範囲、好ましくは-50~50mbarの範囲に維持され、例えば+20~-20mbarの範囲である。絶対値としての最小液圧差(すなわち、正又は負の符号を考慮しない)は、1mbar、好ましくは10mbarである。
【0026】
1つの実施形態では、セパレータが隔膜である。
【0027】
好ましくは、アルカリ性アノード液及びアルカリ性カソード液が、アルカリ金属水酸化物の水溶液を含む。特に好ましくは、アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択される。
【0028】
本発明はまた、本発明による方法を行うための電解装置に関する。当該電解装置は、閾値電流密度までの稼働電流密度では、カソード区画で発生した水素が、セパレータを通じてアノード区画へと移動するのを積極的に制限するように、また閾値電流密度を超える稼働電流密度では、アノード区画で発生した酸素が、セパレータを通じてカソード区画へと移動するのを制限するように、配置構成されており、これは例えば、セルのカソード区画とアノード区画との間に適切な差圧を確立することによって行われる。
【0029】
以下では本発明を、特定の好ましい実施形態及び対応する図面との関連で、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による方法を行うのに適した電解装置の電解セルの構成要素についての、概略的な分解図である。
図2】本発明による方法を行うのに適した電解装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、電解セルの主要な構成要素の概略的な分解図を示すものであり、当該構成要素は、本発明の方法を行うために使用可能なアルカリ水電解装置の電解セルスタックの一部を形成するものである。電解装置はセルスタックを含み、当該セルスタックは、電気的に直列に接続された個々の電解セル10を多数、含むものである。図1には、1つの電解セル10の構成要素のみが描かれている。このスタックでは、構成要素の連続が、黒い点で示されるように繰り返される。各電解セル10は、バイポーラプレート11により区切られ、アノード区画12とカソード区画13とを備え、これらの区画は隔膜14によって分離されている。アノード区画12は、円周方向のアノードフレーム15を備え、当該アノードフレームは、アノード集電体16及びアノード(アノード電極)17を収容する。アノード集電体16は、バイポーラプレート11のアノード側と、アノード17との間に機械的及び電気的な接続をもたらす。アノード集電体16は、弾性要素であり得るが、剛性要素であるのが好ましく、アノード集電体16は、バイポーラプレート11のアノード側に、またアノード17の裏側に溶接されていてよい。カソード区画13は、円周方向のカソードフレーム18を備え、当該カソードフレームは、カソード集電体19及びカソード(カソード電極)20を収容する。カソード集電体19は好ましくは、カソード20を隔膜14に対して押圧する弾性要素である。
【0032】
セル構成要素はさらに、アルカリ性電解質をカソード区画及びアノード区画へと供給するためのチャネル(図1では1つのチャネル21のみが見える)と、水素/カソード液の混合物、及び酸素/アノード液の混合物をそれぞれ排出するための流体チャネル22、23とを備える。電解質供給のために2つのチャネルを用いることにより、1つのチャネル21は、スタックのアノード区画12に供給を行うことができ、1つのチャネル(図1では見えない)は、スタックのカソード区画13に供給を行うことができる。スタックを出た後、電解質を流体チャネル22、23のそれぞれについて別個に再循環させることができるか、又はセル10のスタックに再度入る前に、再び混合することができる。以下でより詳細に説明するように、これにより、実際の稼働条件に応じて別個の再循環モードが確立される。
【0033】
スタックの要素はさらに、様々な要素を一体的にクランプして、組み立てられたスタックを形成するためのタイロッド用の開口部(図1には図示せず)を備えることができる。特定の用途に応じて、スタックは、少数の電解セル(例えば5~20個のセル)から多数のセル(例えば100個より多くのセル)を備えることができる。
【0034】
本発明によるアルカリ水電解装置の稼働スキームを可視化するため、図2には、本発明による方法を行うために適した電解装置24の概略図が示されている。電解装置24は、スタック25を備え、当該スタックは、多数の電解セル10(例えば、図1に示した電解セル)を有し得る。電気エネルギー源は、参照番号26で示されている。電気エネルギー源は、水電気分解を行うために必要な最小電圧で直流(DC)を提供するあらゆる種類の電気エネルギーであり得る。電解装置24に供給される電気エネルギーの直流(DC)源は、本来的にAC又はDCのエネルギー源から導出され得る。通常は、所望のDC源を得るために、変圧器及び/又は整流器が設けられる。好ましくは、電気エネルギー源が、可変電流をもたらす源、例えば再生可能エネルギー源である。本発明の意味合いにおける可変電流は交流(AC)ではなく、経時的に変化し得る強度を有する直流(DC)であるが、当該強度は、本質的に電極レベルにおける電流密度が稼働の間に変動し得るように同じ分極を保つものである。電流は、電線27、28を介してスタック25に供給される。稼働の間、電流密度jは、適切なセンサ29により連続的に又は周期的に監視され、制御ユニット30は、測定された電流密度を、予め規定された閾値電流密度jと比較する。低電流密度稼働モード(すなわち、閾値電流密度jまでの電流密度j)では、カソード区画で発生した水素がセパレータを通じてアノード区画へと移動することが、カソード区画における水素圧よりも、アノード区画において高い酸素圧を確立すること(Δp = pH2 - pO2 < 0)によりスタックのカソード区画とアノード区画とに負の差圧Δpを確立することによって、積極的に制限される。これは例えば、流体チャネル22、23を含む気体の出口に設けられた適切なバルブ31、32を、例えば制御ユニット30を介して制御することにより、達成することができ(図1)、ここで流体チャネル22、23は、カソード液及びアノード液のそれぞれのために、再循環ライン22a、23aの初期部分へと排出する。このようにして、水素の移動が制限され、最適な酸素純度が保証される。この稼働モードは、高いH純度が必要とされる場合、生産能力についてわずかなペナルティと関連し得る。これは、カソード区画へと移動する酸素によって初期の水素純度が乏しくなるからであり、酸素のうちある程度がカソード区画に移動しすることに起因し、これは、触媒を用いて水素及び酸素を組み合わせることにより後続の水素精製工程において排除することができるが、生産能力のわずかな損失を伴う。この低電流密度スキームでは、カソード液(すなわちカソード区画に供給される電解質)及びアノード液(すなわちアノード区画に供給される電解質)について別個の循環路(circuit)を維持することにより、電解質について二重循環モードを確立することができる。カソード区画とアノード区画との間における関連する電解質の不均衡は、この低電流レジームでは、許容可能である。なぜならば、低電流密度では、不均衡が確立されるまでに長い時間がかかるからであり、また、平衡の定常状態は、高電流密度の場合よりも、不均衡の度合いが低いからである。しかしながら二重循環レジームでは、最適な気体純度が維持される。アノード液とカソード液とが、別個に保たれるからである。
【0035】
図2には、アノード液及びカソード液の再循環が、ライン部22a、22b、22c、22dを有する再循環ラインによって、及びライン部23a、23b、23c、23dを有する再循環ラインによって、概略的に描かれており、当該ライン部へと、各電解質チャネル18、19(図1)がつながっている。ポンプ、好ましくはカソード液及びアノード液について別個のポンプ33、34が、再循環をもたらすために設けられていてよい。
【0036】
図2の例では、スタックからライン部22a、23aを介してそれぞれ排出された、水素/カソード液の混合物及び酸素/アノード液の混合物がそれぞれ、気液分離機35、36に供給され、当該気液分離機から、水素はライン37を介して、酸素はライン38を介して排出される。水素が失われたカソード液は、カソード液再循環ラインのライン部22bを介して排出される一方、酸素が失われたアノード液は、アノード液再循環ラインのライン部23bを介して排出される。
【0037】
閾値電流密度を超える電流密度(j>j)では、カソード区画とアノード区画との間に、正の差圧が確立される。このようにして、カソード区画における比較的高い水素圧は、アノード区画における酸素圧よりも高くなり、これによりアノード区画からカソード区画への酸素の移動が積極的に制限される(Δp = pH2 - pO2 > 0)。この稼働モードでは、最適な水素純度が維持されるものの、ここでもまた、生産能力におけるわずかなペナルティと関連することがあり、これは、隔膜を横切ってアノード区画に入る水素と関連した水素損失によって示される。カソード区画及びアノード区画における電解質濃度は例えば、カソード液及びアノード液のための電解質チャネル(図1ではカソード液のための電解質チャネルを「21」で示し、アノード液のための電解質チャネルは図1では見えない)の入口41、42に設けられた導電性センサ39、40によって測定することができ、すなわちここで、カソード液及びアノード液それぞれの再循環ラインのライン部22d、23dは、スタック25に戻る。導電性不均衡について特定の閾値を下回ると、最適な気体純度を保つために、低電流密度に似た二重循環モードが維持され得る。特定の閾値を上回ると、混合循環モードを確立することができ、その際にはカソード液及びアノード液が、スタックへと再循環される前に混合される。本発明の特定の実施形態において、高電流密度条件では、混合循環モードが唯一の循環モードになり得る。
【0038】
図2に示したように、適切なバルブ43、44、45、46によって混合循環モードを確立することができ、これにより、スタック25からのアノード液及びカソード液が、ライン22e、23eを介して混合チャンバ47に供給されることが保証され、それから22f、23fを介してスタックに、またそれぞれカソード液及びアノード液のための再循環ラインの残りの部分22d、23dに、再循環される。
【0039】
二重循環モードでは、混合チャンバ47が、カソード液及びアノード液再循環ラインのライン部22c、23cを介してブリッジされる。
【0040】
高電流密度モードでは、アノード区画における酸素生成が、HTO比率が安全閾値を下回ったままであることが保証されるほど充分に高い。低電流密度モードにおいて、アノード区画におけるHTO比率は、カソードからアノードへの正味水素流束(net hydrogen flux)が、差圧Δpによって最小化されるという事実によって、低く保たれる。すなわち、カソードからアノードへの水素の純粋拡散流束が、アノードからカソードへの対流流束(主に酸素だが水素も含まれる)によって緩和される。これに関連した、カソード区画におけるOTH比率の穏やかな(moderate)上昇は、許容可能である。なぜならば、安全目的にとってOTHは、HTOよりも、危機的な度合いが低いからである。本発明の好ましい実施形態では、弾性要素(図1参照)をカソード区画に設けることができ、これによって、穏やかな負の差圧Δpであっても、ゼロギャップセル構成を維持可能なことが保証される。
【0041】
先の例示的な実施形態についての説明は、網羅的ではなく、例示を意図したものに過ぎないことが理解されるべきである。当業者であれば、本開示の思想又は範囲から逸脱しない限りにおいて、開示された対象の実施形態について、特定の追加、削除、及び/又は修正を行うことができるであろう。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解装置で水を電気分解するための方法であって、当該電解装置は、少なくとも1つの電解セルを備え、当該電解セルは、アノードが設けられたアノード区画、カソードが設けられたカソード区画、及び前記アノード区画と前記カソード区画との間に配置されたセパレータを有するものであり、前記方法は、
アルカリ性アノード液を前記アノード区画に、アルカリ性カソード液を前記カソード区画に供給すること、
可変電流を可変稼働電流密度で前記電解セルに印加することによって水電気分解を行い、前記カソードで水素ガスを、前記アノードで酸素ガスを発生させること、
前記カソード液と前記水素ガスとの混合物を前記カソード区画から、前記アノード液と前記酸素ガスとの混合物を前記アノード区画から排出すること、
前記水素ガスを前記カソード液から、前記酸素ガスを前記アノード液から、分離すること、
を含み、
閾値電流密度までの稼働電流密度では、前記カソード区画で発生した水素が、前記セパレータを通じて、前記アノード区画へと移動することが、前記アノード区画において前記セパレータに、前記カソード区画において前記セパレータにかかる液圧よりも高い液圧をかけることによって制限されるように、及び
前記閾値電流密度を超える稼働電流密度では、前記アノード区画で発生した酸素が、前記セパレータを通じて、前記カソード区画へと移動することが、前記カソード区画において前記セパレータに、前記アノード区画において前記セパレータにかかる液圧よりも高い液圧をかけることによって制限されるように、
閾値電流密度が選択されるとともに、水電気分解が行われる、方法。
【請求項2】
機械的な圧力が、前記セパレータへと前記カソードを押圧するために、前記カソードにかけられるか、又は前記セパレータへと前記アノードを押圧するために、前記アノードにかけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アノード区画における水素の、酸素に対する比率が、4体積%を下回るように保たれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カソード区画における酸素の、水素に対する比率が、4体積%を下回るように保たれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記水素ガスを前記カソード液から、前記酸素ガスを前記アノード液から分離した後、前記カソード液が、前記カソード区画へとリサイクルされ、前記アノード液が、前記アノード区画へとリサイクルされる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水素ガスを前記カソード液から、前記酸素ガスを前記アノード液から分離した後、
前記閾値電流密度までの稼働電流密度では、前記カソード液が前記カソード区画へとリサイクルされ、前記アノード液が前記アノード区画へとリサイクルされ、
前記閾値電流密度を超える稼働電流密度では、前記カソード液及び前記アノード液が少なくとも断続的に混合され、当該混合物が、前記カソード区画及び前記アノード区画へとリサイクルされる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
当該稼働電流密度が、25kA/mまでの範囲にある、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記閾値電流密度が、2~10kA/mの範囲内で選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水電気分解が、100barまでの範囲の絶対液圧で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アノード区画と前記カソード区画との液圧差が、-100~100mbarの間の範囲に維持される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記セパレータが隔膜である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ性アノード液及び前記アルカリ性カソード液が、アルカリ金属水酸化物の水溶液を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水の電気分解を行うための電解装置であって、当該電解装置は、少なくとも1つの電解セルを備え、当該電解セルは、アノードが設けられたアノード区画、カソードが設けられたカソード区画、及び前記アノード区画と前記カソード区画との間に配置されたセパレータを有するものであり、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を行うために構成されている、電解装置。
【国際調査報告】