(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】低い貯蔵温度でシール完全性を維持するための容器蓋システムおよび密閉アセンブリ
(51)【国際特許分類】
B65D 41/62 20060101AFI20240822BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20240822BHJP
B65D 39/00 20060101ALI20240822BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B65D41/62 100
A61J1/05 315D
A61J1/05 313
B65D39/00 200
B65D1/02 212
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510450
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022041311
(87)【国際公開番号】W WO2023034088
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】クリスティ,デイン アルファンソ
(72)【発明者】
【氏名】サラフィアン,アダム ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジアンタオ
【テーマコード(参考)】
3E033
3E084
4C047
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA01
3E033CA07
3E033CA11
3E033DA04
3E033DA08
3E033DB03
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3E033EA10
3E033GA02
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA32
3E084AB05
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
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3E084GB12
3E084HA03
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3E084HD04
3E084LA17
3E084LB02
3E084LB07
4C047AA05
4C047BB01
4C047CC01
4C047CC04
4C047DD03
4C047DD05
4C047DD06
4C047DD35
4C047GG07
4C047GG37
(57)【要約】
密閉医薬品容器は、フランジであって、裏面と、その裏面から延在する、フランジの外径roを規定する外面と、外面と密閉医薬品容器に開口を画成する内面との間に延在する上面とを有するフランジを備える。上面は、開口と外面との間に延在し、ro未満の半径rsrを有する密閉領域を含む。密閉医薬品容器は、シール部分の下面で上面と接触するシール部分および上面に対して栓を圧縮するキャップを含む密閉アセンブリも備える。圧縮後、栓のシール部分は、上面に隣接するrsr未満の圧縮径rscを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉医薬品容器において、
肩部、
前記肩部から延在する首部、および
前記首部から延在するフランジであって、
該首部から延在する裏面と、
該裏面から延在する、前記フランジの外径r
oを規定する外面と、
該外面と前記密閉医薬品容器に開口を画成する内面との間に延在する上面であって、
該開口と該外面との間に延在し、r
o未満の半径r
srを有する密閉領域、および
該密閉領域と該外面との間に延在する移行領域、
を有する上面と、
を有するフランジ、並びに
密閉アセンブリであって、
前記開口に挿入される挿入部分と、シール部分の下面で前記上面と接触する該シール部分とを有する栓、および
前記上面に対して該栓を圧縮するキャップ、
を備え、前記栓のシール部分が、前記上面に隣接するr
sr未満の圧縮径r
scを有する、密閉アセンブリ、
を備えた密閉医薬品容器。
【請求項2】
前記シール部分が、前記上面の前記密閉領域上に配置されたシール面を含み、該シール面は、前記キャップが前記上面に対して前記栓を圧縮した結果として該密閉領域に形状が一致する少なくとも一部分を有する、請求項1記載の密閉医薬品容器。
【請求項3】
前記シール面が、前記密閉領域上の前記移行領域の半径方向内側に配置された外周縁を含む、請求項2記載の密閉医薬品容器。
【請求項4】
前記シール面の外周縁が、前記密閉領域の内縁の半径方向外側に配置されている、請求項3記載の密閉医薬品容器。
【請求項5】
前記密閉医薬品容器が-45℃以下の温度に冷却されたときに、該密閉医薬品容器のヘリウム漏れ速度がその温度で1.4×10
-6cm
3/秒以下となるように、前記上面で圧縮が維持される、請求項1記載の密閉医薬品容器。
【請求項6】
前記栓が20重力ポンド(約89N)未満の残留シール力を前記上面に印加するように、該栓が前記キャップで該上面に対して圧縮されている、請求項5記載の密閉医薬品容器。
【請求項7】
前記密閉医薬品容器が-80℃に冷却されたときの前記シール部分と前記上面との間の第2の接触面積が、該密閉医薬品容器が室温であるときの該シール部分と該上面との間の第1の接触面積の少なくとも約10%である、請求項1記載の密閉医薬品容器。
【請求項8】
前記シール部分が、不均一な半径方向寸法を有する、請求項1記載の密閉医薬品容器。
【請求項9】
前記シール部分が、前記上面から軸方向にずれた位置で半径方向寸法において階段状移行部を含む、請求項8記載の密閉医薬品容器。
【請求項10】
前記栓のシール部分が、
前記フランジの上面と接触する接触下部、および
前記キャップと直接接触する上部、
を有し、
前記上部は、該上部の少なくとも一部分が前記移行領域の上に軸方向に延在するように前記圧縮径r
scより大きい半径方向寸法r
upを有し、
前記接触下部は、r
up未満の半径方向寸法を有する、請求項8記載の密閉医薬品容器。
【請求項11】
密閉医薬品容器を密閉する方法において、
肩部、該肩部から延在する首部、および該首部から延在するフランジを有する密閉医薬品容器であって、該フランジは、
前記首部から延在する裏面、
前記裏面から延在する、前記フランジの外径を規定する外面、および
前記外面と、開口を画成する前記密閉医薬品容器の内面との間に延在する上面であって、半径r
srを有する密閉領域を含む上面、
を有する、密閉医薬品容器を提供する工程、
前記密閉医薬品容器中に医薬組成物を入れる工程、
挿入部分とシール部分を有する栓を含む密閉アセンブリを提供する工程、
前記栓の上に、前記フランジに対して金属含有キャップを圧着させ、それによって、前記上面に対して前記シール部分を圧縮する工程であって、該シール部分は、該金属含有キャップで圧縮される前に、0.85
*r
sr以下の該シール部分の下縁での非圧縮径r
ucを有する、工程、および
前記密閉医薬品容器を-45℃以下の温度に冷却する工程であって、該密閉医薬品容器の冷却後、該密閉医薬品容器のヘリウム漏れ速度がその温度で1.4×10
-6cm
3/秒以下であるように前記上面で圧縮が維持される工程、
を有してなる方法。
【請求項12】
前記シール部分が、前記金属含有キャップで一旦圧縮されたら、r
o未満の圧縮径r
scを有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記密閉医薬品容器が-80℃に冷却されたときの前記シール部分と前記上面との間の第2の接触面積が、該密閉医薬品容器が室温であるときの該シール部分と該上面との間の第1の接触面積の少なくとも約10%である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記シール部分が、不均一な半径方向寸法を有する、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記シール部分が、前記上面から軸方向にずれた位置で半径方向寸法において階段状移行部を含む、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2021年8月31日に出願された米国仮特許出願第63/239226号の米国法典第35編第119条の優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、広く、医薬組成物を貯蔵するためのガラス容器などの、容器蓋システム、およびガラス容器を密閉するための栓に関する。
【背景技術】
【0003】
バイアルや注射器などの医薬品容器は、典型的に、収容材料の完全性を維持するために、栓や他の蓋で密閉される。蓋は、典型的に、合成ゴムや他のエラストマーから製造される。そのような材料は、容器の内部を密閉するために容器に挿入し易くする弾性と高い透過抵抗を有益に有する。しかしながら、典型的に使用される蓋の材料の弾性は、低温では低下することがある。例えば、蓋の材料として現在使用されている合成ゴムは、-70℃以上かつ-30℃以下の転移温度を有するであろう。そのような合成ゴムから作られた蓋は、転移温度より低いと、固体として挙動し、ガラスと、容器に蓋を固定するために使用される圧着キャップの熱膨張係数の間の比較的大きい差を補うために弾性的に膨張することができないであろう。このことを考えると、医薬品容器のための既存の密閉アセンブリは、-30℃以下の温度では機能しないであろう。
【0004】
ある生体物質(例えば、血液、血清、タンパク質、幹細胞、および他の腐りやすい生体液)は、有用な状態でいるために、従来のエラストマーのガラス転移温度より低い温度で貯蔵する必要がある。例えば、特定のRNA系ワクチンは、活性状態でいるために、ドライアイス温度(例えば、約-80℃)または液体窒素温度(例えば、約-180℃)で貯蔵する必要があるであろう。そのような低温では、閉鎖部材(例えば、ガラスまたはポリマー容器、栓、アルミニウムキャップ)に寸法変化が生じ、シールの完全性に問題が発生し、中に貯蔵された物質が潜在的に汚染されるかもしれない。
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の態様は、密閉医薬品容器において、肩部;肩部から延在する首部;および首部から延在するフランジであって、首部から延在する裏面と、裏面から延在する、フランジの外径roを規定する外面と、外面と密閉医薬品容器に開口を画成する内面との間に延在する上面であって、開口と外面との間に延在し、ro未満の半径rsrを有する密閉領域、および密閉領域と外面との間に延在する移行領域を有する上面とを有するフランジ;並びに密閉アセンブリであって、開口に挿入される挿入部分と、シール部分の下面で上面と接触するシール部分とを有する栓、および上面に対して栓を圧縮するキャップを備え、栓のシール部分が、上面に隣接するrsr未満の圧縮径rscを有する、密閉アセンブリを備えた密閉医薬品容器を含む。
【0006】
本開示の第2の態様は、シール部分が、上面の密閉領域上に配置されたシール面を含み、そのシール面は、キャップが上面に対して栓を圧縮した結果として密閉領域に形状が一致する少なくとも一部分を有する、第1の態様による密閉医薬品容器を含む。
【0007】
本開示の第3の態様は、シール面が、密閉領域上の移行領域の半径方向内側に配置された外周縁を含む、第1から第2の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0008】
本開示の第4の態様は、シール面の外周縁が、密閉領域の内縁の半径方向外側に配置されている、第1から第3の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0009】
本開示の第5の態様は、密閉医薬品容器が-45℃以下の温度に冷却されたときに、密閉医薬品容器のヘリウム漏れ速度がその温度で1.4×10-6cm3/秒以下となるように、上面で圧縮が維持される、第1から第4の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0010】
本開示の第6の態様は、栓が20重力ポンド(約89N)未満の残留シール力を上面に印加するように、栓がキャップで上面に対して圧縮されている、第1から第5の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0011】
本開示の第7の態様は、栓が15重力ポンド(約67N)未満の残留シール力を上面に印加するように、栓がキャップで上面に対して圧縮されている、第1から第2の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0012】
本開示の第8の態様は、密閉医薬品容器が-80℃に冷却されたときのシール部分と上面との間の第2の接触面積が、密閉医薬品容器が室温であるときのシール部分と上面との間の第1の接触面積の少なくとも約10%である、第1から第7の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0013】
本開示の第9の態様は、密閉医薬品容器が-180℃に冷却されたときのシール部分と上面との間の第2の接触面積、および密閉医薬品容器が室温であるときのシール部分と上面との間の第2の接触面積が、10.0%以上である、第1から第8の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0014】
本開示の第10の態様は、シール部分が、不均一な半径方向寸法を有する、第1から第9の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0015】
本開示の第11の態様は、シール部分が、上面から軸方向にずれた位置で半径方向寸法において階段状移行部を含む、第1から第10の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0016】
本開示の第12の態様は、栓のシール部分が、フランジの上面と接触する接触下部、およびキャップと直接接触する上部を有し、その上部は、上部の少なくとも一部分が移行領域の上に軸方向に延在するように圧縮径rscより大きい半径方向寸法rupを有し、接触下部は、rup未満の半径方向寸法を有する、第1から第2の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0017】
本開示の第13の態様は、フランジの外径roが6.5mmと等しく、密閉医薬品容器が-80℃以下の温度に冷却されたときに、上面とシール部分との間の接触面積が75mm2以上である、第1から第12の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0018】
本開示の第14の態様は、密閉医薬品容器において、中心軸;開口;開口を周囲から取り囲むフランジであって、首部から延在する裏面と、裏面から延在する、フランジの外径roを規定する外面と、上面であって、中心軸に平行にそれを通って延在する面を通じて撮られた密閉医薬品容器の断面において、上面は、開口の第1の側に配置された第1の直線セクションおよび開口の第2の側に配置された第2の直線セクションを含み、第1と第2の直線セクションの外端が、中心軸に垂直な方向に互いから距離2*rsrだけ離れて配置されている、上面;および上面と外面との間に延在する移行領域を備えたフランジ;および密閉アセンブリであって、開口に挿入される挿入部分と、上面と接触するシール部分とを有する栓、および上面に対して栓を圧縮するキャップを備え、シール部分が、上面に隣接するrsr未満の圧縮径rscを有する、密閉アセンブリを備えた密閉医薬品容器を含む。
【0019】
本開示の第15の態様は、断面の第1と第2の直線セクションが、中心軸に垂直に延在する面に対してある角度で延在し、上面の円錐セクションの部分である、第14の態様による密閉医薬品容器を含む。
【0020】
本開示の第16の態様は、シール部分が、第1と第2の直線セクション上に配置されたシール面を含む、第1から第15の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0021】
本開示の第17の態様は、シール面が、移行領域の半径方向内側に配置された外周縁を含む、第14から第15の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0022】
本開示の第18の態様は、シール面の外周縁が、第1と第2の直線セクションの内端の半径方向外側に配置されている、第14から第17の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0023】
本開示の第19の態様は、密閉医薬品容器が-45℃以下の温度に冷却されたときに、密閉医薬品容器のヘリウム漏れ速度がその温度で1.4×10-6cm3/秒以下となるように、上面で圧縮が維持される、第14から第18の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0024】
本開示の第20の態様は、栓が20重力ポンド(約89N)未満の残留シール力を上面に印加するように、栓がキャップで上面に対して圧縮されている、第14から第19の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0025】
本開示の第21の態様は、栓が15重力ポンド(約67N)未満の残留シール力を上面に印加するように、栓がキャップで上面に対して圧縮されている、第14から第20の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0026】
本開示の第22の態様は、密閉医薬品容器が-80℃に冷却されたときのシール部分と上面との間の第2の接触面積が、密閉医薬品容器が室温であるときのシール部分と上面との間の第1の接触面積の少なくとも約10%である、第14から第21の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0027】
本開示の第23の態様は、密閉医薬品容器が-180℃に冷却されたときのシール部分と上面との間の第2の接触面積、および密閉医薬品容器が室温であるときのシール部分と上面との間の第2の接触面積が、10.0%以上である、第14から第22の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0028】
本開示の第24の態様は、シール部分が、不均一な半径方向寸法を有する、第14から第23の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0029】
本開示の第25の態様は、シール部分が、上面から軸方向にずれた位置で半径方向寸法において階段状移行部を含む、第14ら第24の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0030】
本開示の第26の態様は、栓のシール部分が、フランジの上面と接触する接触下部、およびキャップと直接接触する上部を有し、その上部は、上部の少なくとも一部分が移行領域の上に軸方向に延在するように圧縮径rscより大きい半径方向寸法rupを有し、接触下部は、rup未満の半径方向寸法を有する、第14から第25の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0031】
本開示の第27の態様は、フランジの外径roが6.5mmと等しく、密閉医薬品容器が-80℃以下の温度に冷却されたときに、上面とシール部分との間の接触面積が75mm2以上である、第14から第26の態様のいずれかによる密閉医薬品容器を含む。
【0032】
本開示の第28の態様は、密閉医薬品容器を密閉する方法において、肩部、その肩部から延在する首部、およびその首部から延在するフランジを有する密閉医薬品容器であって、そのフランジは、首部から延在する裏面、その裏面から延在する、フランジの外径を規定する外面、およびその外面と、開口を画成する密閉医薬品容器の内面との間に延在する上面であって、半径rsrを有する密閉領域を含む上面を有する、密閉医薬品容器を提供する工程;密閉医薬品容器中に医薬組成物を入れる工程;挿入部分とシール部分を有する栓を含む密閉アセンブリを提供する工程;栓の上に、フランジに対して金属含有キャップを圧着させ、それによって、上面に対してシール部分を圧縮する工程であって、シール部分は、金属含有キャップで圧縮される前に、0.85*rsr以下のシール部分の下縁での非圧縮径rucを有する、工程;および密閉医薬品容器を-45℃以下の温度に冷却する工程であって、密閉医薬品容器の冷却後、密閉医薬品容器のヘリウム漏れ速度がその温度で1.4×10-6cm3/秒以下であるように上面で圧縮が維持される工程を有してなる方法を含む。
【0033】
本開示の第29の態様は、シール部分が、金属含有キャップで一旦圧縮されたら、ro未満の圧縮径rscを有する、第28の態様による方法を含む。
【0034】
本開示の第30の態様は、栓が上面に対して圧縮されて、20重力ポンド(約89N)以下の残留シール力を提供するように、金属含有キャップが圧着される、第28から第29の態様のいずれかによる方法を含む。
【0035】
本開示の第31の態様は、密閉医薬品容器が-80℃に冷却されたときのシール部分と上面との間の第2の接触面積が、密閉医薬品容器が室温であるときのシール部分と上面との間の第1の接触面積の少なくとも約10%である、第28から第30の態様のいずれかによる方法を含む。
【0036】
本開示の第32の態様は、密閉医薬品容器が-180℃に冷却されたときのシール部分と上面との間の第2の接触面積、および密閉医薬品容器が室温であるときのシール部分と上面との間の第2の接触面積が、10.0%以上である、第28から第31の態様のいずれかによる方法を含む。
【0037】
本開示の第33の態様は、前記温度が-80℃以下である、第28から第32の態様のいずれかによる方法を含む。
【0038】
本開示の第34の態様は、前記温度が-180℃以下である、第28から第33の態様のいずれかによる方法を含む。
【0039】
本開示の第35の態様は、上面が、密閉領域とフランジの外面との間に延在する移行領域をさらに含み、シール部分が、密閉領域と接触するシール面を含み、そのシール面の外周縁が、栓の圧縮の結果として移行領域と接触しない、第28から第34の態様のいずれかによる方法を含む。
【0040】
本開示の第36の態様は、シール部分が、不均一な半径方向寸法を有する、第28から第35の態様のいずれかによる方法を含む。
【0041】
本開示の第37の態様は、シール部分が、上面から軸方向にずれた位置で半径方向寸法において階段状移行部を含む、第28から第36の態様のいずれかによる方法を含む。
【0042】
本開示の第38の態様は、栓のシール部分が、フランジの上面と接触する接触下部、およびキャップと直接接触する上部を有し、その上部は、上部の少なくとも一部分が移行領域の上に軸方向に延在するように圧縮径rscより大きい半径方向寸法rupを有し、接触下部は、rup未満の半径方向寸法を有する、第28から第37の態様のいずれかによる方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図面に示された実施の形態は、実質的に、説明のためであり、例示であり、請求項に定義された主題を限定する意図はない。説明に役立つ実施の形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示されている、以下の図面と併せて読まれた場合に、理解することができる。
【
図1A】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、密閉医薬品容器の断面図
【
図1B】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、
図1Aの密閉医薬品容器の一部分の断面図
【
図1C】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、
図1Aの密閉医薬品容器の栓、フランジの上面、およびフランジの外面の間の寸法関係を示す概略図
【
図2】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、密閉医薬品容器の一部分の断面図
【
図3A】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、25℃の温度での第1のガラス容器のフランジに対して圧縮された第1の栓のシミュレーション結果を示す図
【
図3B】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、-80℃の温度での
図3Aの第1のガラス容器のフランジに対して圧縮された第1の栓のシミュレーション結果を示す図
【
図3C】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、-180℃の温度での
図3Aの第1のガラス容器のフランジに対して圧縮された第1の栓のシミュレーション結果を示す図
【
図4A】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、25℃の温度での第2のガラス容器のフランジに対して圧縮された第2の栓のシミュレーション結果を示す図
【
図4B】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、-80℃の温度での
図4Aの第2のガラス容器のフランジに対して圧縮された第2の栓のシミュレーション結果を示す図
【
図4C】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、-180℃の温度での
図4Aの第2のガラス容器のフランジに対して圧縮された第2の栓のシミュレーション結果を示す図
【
図5】ここに記載された1つ以上の実施の形態による、複数の異なる温度での
図3A~4Cの第1と第2の栓および第1と第2のガラス容器の間の接触面積をプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0044】
ここで、比較的低い貯蔵温度(例えば、-30℃以下、-40℃以下、-50℃以下、-60℃以下、-70℃以下、-80℃以下、-100℃以下、-125℃以下、-150℃以下、-175℃以下、-180℃)で容器の密閉完全性を維持する密閉アセンブリを備えた密閉医薬品容器の実施の形態を詳しく参照する。そのような低い貯蔵温度での容器の密閉完全性の維持を促進するために、ここに記載された密閉ガラス容器は、ガラス容器と、容器および栓の特定の既存の組合せを上回って改善された密封性を提供するために、ガラス容器の構造に基づいて特別に設計された栓とを備えることがある。本開示による栓は、ガラス容器の開口に挿入されるように設計された挿入部分およびガラス容器の上面と接触してシールを形成するシール部分を含むことがある。このシール部分は、キャッピング後に、栓が上面に対して圧縮されたときに、シール部分が、ガラス容器の上面のシール領域に関連する半径方向寸法rsr以下の半径方向寸法rscを有するように選択された半径方向寸法を有することがある。その結果、フランジに隣接するシール部分の外周縁は、密閉領域の外縁の半径方向内側に配置されることがある。その外周縁は、上面の密閉領域と接触した状態にあることがある。密閉領域は、栓と上面との間に接触圧の均一な分布の確立をもたらす特性(例えば、5nm以下のRa値を有する、および/または5μm以上の表面高さ変動がない)を有するように構築されることがある。そのような均一な接触圧は、容器が比較的低い貯蔵温度に冷却されたときに、栓と上面との間に比較的大きい接触面積(例えば、13mmのバイアルについて75mm2以上)を維持するのに役立ち、それによって、容器の密閉完全性を維持する可能性を増すことができる。
【0045】
ここに記載された栓は、圧着プロセス中に、特定の既存の密閉容器に使用される量よりも少ない量の栓の圧縮で低い貯蔵温度での容器の密閉完全性を維持するのも促進することがある。既存の医薬品容器は、圧着過程で密閉されて、20重量ポンド(約89N)を超える(例えば、25重量ポンド(約111N)以上となり、10%超かつ20%以下の栓の圧縮となる)残留シール力を生じることがある。ここに記載された栓により改善されたシールは、より低い残留力で容器の密閉完全性を維持することができる(例えば、圧着後に8%以下の残留公称歪みを有する栓がもたらされる)。残留シール力がそのように低下することにより、より単純かつ効率的な圧着過程の使用が促進され、それによって、製造費が低下するであろう。キャッピング中に使用される残留力がより低いと、キャッピング中に栓を過剰に圧縮する恐れも低下するであろう。既存の密閉アセンブリは、低い貯蔵温度で容器の密閉完全性を維持するために、栓の圧縮を増加させることに依存することがある。栓の圧縮がそのように増加すると、バイアルが損傷を受けるであろう。栓を過剰に圧縮せずに高品質のシールを促進することにより、ここに記載された密閉アセンブリは、バイアルが損傷を受ける恐れを低下させることができる。
【0046】
ここに用いられているように、「表面粗さ」という用語は、Ra値またはSa値を称する。Ra値は、フィルタード粗さ(filtered roughness)の中心線からの偏差で決定されるフィルタード粗さプロファイルの算術平均値の尺度である。例えば、Ra値は、関係式:
【0047】
【0048】
に基づいて決定することができ、式中、Hiは表面の表面高度測定値であり、HCLは、フィルタードプロファイルのデータ点の中での中心線(例えば、最大と最小の表面高度値の間の中心)表面高度測定値に対応する。Sa値は、数式1の実外挿(real extrapolation)で決定することができる。ここに記載されたRaまたはSa値を決定するためのフィルタ値(例えば、カットオフ波長)は、ISO 25718(2012)に見つかるであろう。表面高度は、光学干渉計、スタイラス系表面形状測定装置、またはレーザ共焦点顕微鏡などの様々な機器で測定することができる。ここに記載された表面(例えば、シール面またはその部分)の粗さを評価するために、実際的に大きい測定領域を使用して、大きい空間規模に亘り生じることのある変動性を評価すべきである。
【0049】
ここに用いられているように、「容器密閉完全性」という用語は、汚染物質の侵入の確率を維持する、またはガス透過率の可能性をガラス容器内に貯蔵される物質に基づく所定の閾値より低く減少させるために、閾値サイズより大きい間隙を含まない、ガラス容器と密閉アセンブリとの間(例えば、ガラス容器のシール面と栓との間)の界面でのシールの維持を称する。例えば、実施の形態において、容器密閉完全性は、USP<1207>(2016)に記載されたヘリウム漏れ試験中にヘリウム漏れ速度が1.4×10-6cm3/秒以下であれば、維持される。
【0050】
ここに用いられているように、「約」という用語は、量、サイズ、配合物、パラメータ、および他の数量と特徴が、正確ではなく、正確である必要はないが、公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、および当業者に公知の他の要因を反映して、所望に応じて、近似である、および/またはそれより大きいかまたは小さいこともあることを意味する。値または範囲の端点を記載する上で、「約」という用語が使用される場合、言及される特定値または端点は含まれる。本明細書における数値または範囲の端点に「約」が付いているか否かにかかわらず、2つの実施の形態:「約」で修飾されているもの、および「約」で修飾されていないものが記述される。範囲の各々の端点は、他方の端点と関係してと、他方の端点とは関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0051】
ここに用いられているような方向を表す用語-例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部-は、描かれている図面に関してのみ使用され、絶対的な向きを暗示する意図はない。
【0052】
ここに用いられているように、名詞は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の対象を含む。それゆえ、例えば、成分に対する言及は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、そのような成分を2つ以上有する態様を含む。
【0053】
ここで
図1Aを参照すると、医薬製剤を貯蔵するための密閉医薬品容器100の1つの実施の形態が、断面で概略示されている。密閉医薬品容器100は、ガラス容器102およびガラス容器102の開口105を通じてガラス容器102に連結された密閉アセンブリ104を備える。ガラス容器102は、概して、本体112を備える。本体112は、ガラス容器102の内面114と外面116の間に延在し、中心軸Aを有し、概して、内部容積118を取り囲む。
図1Aに示されたガラス容器102の実施の形態において、本体112は、概して、壁部分120および床部分122を含む。壁部分120は、踵部分124を通じて床部分122に移行する。図示された実施の形態において、ガラス容器102は、フランジ126、フランジ126から延在する首部128、胴部115、および首部128と胴部115との間に延在する肩部130を含む。実施の形態において、ガラス容器102は、中心軸Aに対して軸対称であり、胴部115、首部128、およびフランジ126の各々は、実質的に円筒形である。本体112は、
図1Aに示されるように、内面114と外面116の間に延在する壁厚T
Wを有する。
【0054】
実施の形態において、ガラス容器102は、USP<660>に準拠するタイプ1Bのホウケイ酸ガラス組成物などのホウケイ酸ガラス組成物を含む、USP<660>に定義されたタイプI、タイプIIまたはタイプIIIのガラスから形成されることがある。あるいは、ガラス容器102は、ここに全て引用される米国特許第8551898号明細書に開示されたものなどの、他のやり方でタイプIの基準を満たすアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物、またはここに全て引用される米国特許第9145329号明細書に記載されたものなどのアルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラス組成物から形成されることがある。実施の形態において、ガラス容器102は、ここに全て引用される米国特許第100273049号明細書に開示されている耐熱性コーティングなどのコーティングを備えることがある。実施の形態において、ガラス容器102は、ソーダ石灰ガラス組成物から構成されることがある。実施の形態において、ガラス容器102は、0×10-7/K以上かつ100×10-7/K以下(例えば、30×10-7/K以上かつ70×10-7/K以下)の熱膨張係数を有するガラス組成物から構成される。
【0055】
ガラス容器102の壁厚TWは、実施に応じて様々であってよい。実施の形態において、ガラス容器102の壁厚TWは、6ミリメートル(mm)以下、例えば、4mm以下、2mm以下、1.5mm以下、または1mm以下であることがある。いくつかの実施の形態において、壁厚TWは、0.1mm以上かつ6mm以下、0.3mm以上かつ4mm以下、0.5mm以上かつ4mm以下、0.5mm以上かつ2mm以下、または0.5mm以上かつ1.5mm以下であることがある。実施の形態において、壁厚TWは、0.9mm以上かつ1.8mm以下であることがある。壁厚TWは、ガラス容器102内の軸方向位置に応じて、変動することがある。
【0056】
図1Aに示されるように、フランジ126は、裏面132、外側フランジ面136、および上面138を有する。外側フランジ面136は、ガラス容器102の外面116の一部である。外側フランジ面136は、フランジ126の外径を規定することがある。実施の形態において、外径は、13mm、20mm、または13mmと20mmの間である。任意のサイズのガラス容器(例えば、ISO 8362-1による、2Rバイアル、4Rバイアル、8Rバイアル、15Rバイアル、20Rバイアル、25Rバイアル、30Rバイアル、50Rバイアル、および100Rバイアル)。上面138は、ガラス容器102の外面116の密閉領域180を画成することがある。密閉領域180は、上面138の内縁140と外縁142との間に半径方向に延在することがある。実施の形態において、密閉領域180は、内縁140と外縁142との間に延在する外面116の円錐領域(例えば、外面116が円錐プロファイルにしたがうところ)を構成する。実施の形態において、上面138は、密閉領域180内で、比較的低い表面粗さ(例えば、5μm以下のRa値)を有し、5μm以上の表面高さ変動および表面欠陥を含まない。上面138のそのような均一性は、上面138と栓(例えば、ここに記載された栓106)との間の接触を維持して、ガラス容器102が比較的低い温度に(例えば、-45℃以下、-80℃以下、-180℃以下に)冷却された場合にシールを維持することを有益に促進する。実施の形態において、密閉医薬品容器は、毎分3℃以下の速度でここに記載された低い貯蔵温度に冷却されることがある。
【0057】
実施の形態において、フランジ126は、上面138と外側フランジ面136との間に延在する移行領域144をさらに含む。実施の形態において、移行領域144内では、ガラス容器102の外面116は、密閉領域180内の表面プロファイル(例えば、円錐表面プロファイル)と外側フランジ面136(例えば、円柱表面プロファイル)との間で移行する。移行領域144は、実施に応じて、様々な形態を取ることができる。実施の形態において、移行領域144は、外面116が上面138から外側フランジ面136へと直接移行するような角部を構成する。実施の形態において、移行領域144は、上面138から面取り角度で延在する面取り部を構成する。実施の形態において、移行領域144は、曲率半径を有するフィレットを構成する。以下により詳しく記載されるように、移行領域144と栓(例えば、ここに記載された栓106)のシール面の相対的な位置付けは、密閉医薬品容器100が比較的低い貯蔵温度で確実に密閉完全性を維持するための重要な要因である。
【0058】
ここで
図1Aおよび1Bを参照すると、実施の形態において、中心軸Aを通り、それに平行に延在する面を通じて撮られたフランジ126の上面138の各断面は、第1の直線部分170および第2の直線部分172を含む。第1と第2の直線部分170、172は、ガラス容器102の開口105の互いに反対側に配置されている。
図1Bに示されるように、第1の直線部分170は第1の外端174(例えば、上面138の外縁142に配置された、
図1A参照のこと)を含むことがあり、第2の直線部分172は第2の外端176(例えば、これも上面138の外縁142に配置された、
図1A参照のこと)を含むことがある。第1の外端174と第2の外端176は、上面138の2
*r
srと等しい長さを有する直径の端部である。上面138の密閉領域180は、中心軸Aに垂直にそこから外縁142まで延在する半径方向距離で測定して、半径r
srを有することがある(
図1A参照のこと)。半径r
srは、上面138がしたがう円錐プロファイルから外面116が逸脱する移行領域144の内端と、中心軸Aとの間の半径方向距離に相当することがある。
【0059】
図1Bに示されるように、第1の直線部分170は第1の内端182を含み、第2の直線部分172は第2の内端184を含む。第1の内端182と第2の内端184は、上面138の内側境界を描く2
*r
irと等しい長さを有する直径の端部である。第1と第2の内端182および184は、密閉領域180の内径r
irを規定することがある。上面138は、第1と第2の内端182および184の半径方向内側に、密閉領域180の表面プロファイルから逸脱し、内面114に移行し(
図1A参照)、開口105の端部を形成する。
【0060】
図1Aおよび1Bを参照すると、密閉アセンブリ104は、栓106およびキャップアセンブリ108を含む。実施の形態において、栓106は、適切な弾性材料(例えば、ブチルゴム)から構築されることがある。実施の形態において、栓106は、シリコーン、もしくはフルオロシリコーン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)エラストマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、およびポリブタジエンなどの、他の低Tgエラストマー(例えば、-20℃以下、-30℃以下、または-40℃以下のガラス転移温度Tgを有する)から構成されることがある。すなわち、本開示は、特定の材料から構成された栓に限定されない。
【0061】
図1Aおよび1Bに示された実施の形態において、栓106は、挿入部分117およびシール面121を有するシール部分119を含む。挿入部分117は、ガラス容器102の密閉中、シール面121がガラス容器102のフランジ126の上面138と接触するまで、開口105に挿入される。次に、シール部分119が、キャップアセンブリ108を圧着することによって上面138に押し付けられて、シール面121と上面138との間にシールを形成する。実施の形態において、挿入部分117が省かれることがあり、栓はシール部分119のみを含むことがある。
【0062】
キャップアセンブリ108は、金属部分148およびプラスチック部分150を含むのが示されている。金属部分148は、その底部分152が裏面132と接触するように、フランジ126の裏面132の周りに圧着される(
図1A参照)。実施の形態において、フランジ126の裏面132に直接接触する金属部分148の底部分152の長さは、-80℃以下の貯蔵温度で栓106内に残留シール力が維持されるのを促進するために、1mm以上の長さを有する。実施の形態において、プラスチック部分150は、金属部分148の内縁156を受け入れて、金属部分148の上部158を栓106の上面160に保持する保持特徴154(例えば、スロット、キャビティ、窪み、孔など)を含む。実施の形態において、圧着過程中、栓106は開口105に挿入され、圧着中に金属部分148に圧縮力が印加される。栓106の圧縮により、金属部分148が適所に圧着された後に栓106に対する圧縮を維持する残留シール力がフランジ126内に生じる。実施の形態において、残留シール力は、5重量ポンドから25重量ポンド(約22Nから約111N)まで、または25重量ポンド(約111N)より大きいと様々であり、5%と19%の間の、または残留シール力がより大きい場合には、それより大きい公称栓歪みをもたらすことがある。
【0063】
実施の形態において、ガラス容器102とキャップアセンブリ108の様々な態様は、比較的低い貯蔵温度での容器の密閉完全性の維持するように設計されてきた。例えば、
図1Bは、キャップアセンブリ108がガラス容器102に圧着される前の非圧縮状態にある栓106を示している。図から分かるように、シール部分119は非圧縮径r
ucを有する。実施の形態において、栓106は、シール部分119が、0.95
*r
sr以下の半径r
ucを有する非圧縮状態にある(室温で)実質的に円柱形のフランジであるように構成されている。すなわち、シール部分119は、非圧縮状態にあるときに、外面116の密閉領域180の半径r
srの最大95%である半径r
ucを有することがある。実施の形態において、r
ucは、r
sr未満であり、かつ(r
ir+r
sr)/2以上であるように選択される。シール部分119のそのような寸法は、キャッピング中にシール部分119が上面138に対して圧縮されているときに、シール面121が移行領域144と接触するのを有益に防ぎつつ、それでもまだしっかりしたシールを形成するのに十分な接触面積を提供する。
【0064】
図1Aに示されるように、栓106のシール面121は、上面138に対して圧縮されたときに、外周縁164を構成する。実施の形態において、外周縁164は、栓106が圧縮状態にあるときに、栓106のシール面121と外面166との間の移行部を示す。
図1Aに関してここに記載された栓106の様々な表面(例えば、シール面121および外面166)の正確な終点は、圧縮されていない状態のときに、栓106の形状に正確に対応しないことがあるのが理解されよう。
図1Aに示されるように、ここに記載された栓106の寸法の結果として(例えば、フランジ126の外周形状に実質的に対応する外周形状を有し、0.85
*r
sr以下の非圧縮径r
ucを有するシール部分119)、シール面121の外周縁164は、上面138の移行領域144の半径方向内側に配置されている。すなわち、外周縁164は、キャッピング中に圧縮された後、外面116の密閉領域180上に配置されている。
【0065】
密閉領域180は、比較的低い表面粗さを有し、5.0μm以上の表面高さ変動を含まないので、外周縁164をそのように位置付けることにより、シール部分119と上面138との間の界面で圧縮の分布が均一になる。その結果、ここに記載された栓106の寸法により、界面に沿った特定の地点で栓106の圧縮が集中する(例えば、シール面121の特定のセグメントと上面138の特定のセグメントとの間の接触圧が、その界面での別のセグメントでの接触圧の200%を超える場所)のが有益に避けられる。接触圧がそのように集中すると、シール部分119と上面138との間の接触面積が減少し、シールが比較的低い貯蔵温度で損なわれる可能性が増す傾向にあるであろう。
【0066】
図1Aおよび1Bに示された栓106は、フランジ126の外側フランジ面136のものに匹敵する半径方向寸法を有するシール部分を含むように設計された栓を上回って改善された性能を提供する。そのような同等の寸法は、そのような栓と移行領域144との間の接触をもたらすことがある。調査により、移行領域144と栓との間の接触は、接触圧を栓と移行領域144との間の界面に集中させ、比較的低い貯蔵温度で上面138との接触面積を減少させる傾向にあることが分かった。
図1Aおよび1Bに示された栓106は、シール面121とフランジ126との間の重複範囲を減少させることにより、低い貯蔵温度で接触面積を増加させる可能性があるという直感に反した予期せぬ結果を提供する。
【0067】
図1Cは、フランジ126の外側フランジ面136、移行領域144、および上面138の半径方向寸法、並びに栓106の圧縮半径方向寸法r
scを概略示している。密閉領域180は、半径方向位置r
ir(例えば、
図1Bに示された第1と第2の内端182および184を含む)と半径方向位置r
sr(例えば、
図1Bに示された第1と第2の外端174および176を含む)との間で半径方向に延在することがある。実施の形態において、上面138は、r
irとr
srとの間の円錐プロファイルにしたがう。半径r
srは、移行領域144の内側境界を描くことがある。
図1Cに示されるように、圧縮半径方向寸法r
scは、キャップアセンブリ108により上面138に対して圧縮されたときの、シール部分119の半径方向寸法を表すことがある。実施の形態において、圧縮半径方向寸法r
scは、シール部分119が圧縮状態にあるときの、中心軸Aとシール面121の外周縁164(
図1A参照)との間の半径方向距離を表す。シール部分119が圧縮されることにより、シール面121(
図1A参照)からの軸方向距離の関数として一定ではない半径方向距離を有するシール部分119がもたらされることがあるのが分かるであろう。図示された圧縮半径方向寸法r
scは、上面138と接触した、またはそれに隣接したシール部分119の半径方向寸法を示す。
図1Cに示されるように、フランジ126の外径r
o(外側フランジ面136により規定される)は、上面138により規定された密閉領域180の半径r
srより大きく、この半径は圧縮半径方向寸法r
scよりもまだ大きい。実施の形態において、キャップアセンブリ108により圧縮された後のシール部分119の最も外側の地点は、移行領域144の半径方向内側にあり、栓106がキャップアセンブリ108により圧縮されている程度にかかわらず、シール部分119と移行領域144との間の接触がないことを確実にする。
【0068】
図2は、別の密閉医薬品容器200の一部を断面で概略示している。密閉医薬品容器200は、
図1A~1Cに関してここに記載された密閉医薬品容器100と類似の構成要素を備えることがある。したがって、そのような同様の構成要素の組込みを示すために、同様の参照番号が
図2に含まれている。密閉医薬品容器200は、
図1A~1Cに関してここに記載された密閉アセンブリ104と構造が異なる密閉アセンブリ202を含む。密閉アセンブリ202は、栓204およびキャップアセンブリ108を含む。栓204は、挿入部分206およびシール部分208を含む。挿入部分206は、密閉医薬品容器200の開口105に挿入されるように作られており、一方で、シール部分208は、フランジ126の上面138に対して圧縮される。
【0069】
実施の形態において、シール部分208は、非圧縮状態にあるときに、不均一な半径方向寸法を有する。
図2に示されるように、例えば、シール部分208は、半径方向寸法において階段状移行部214を含む。この階段状移行部214は、シール部分208の上部210と接触下部212との間の境界を定める。図示された実施の形態は、接触下部212と上部210が互いに異なる(例えば、各々が実質的に均一な半径方向寸法を有する)ように階段状移行部214を含んでいるが、階段状移行部214を含まない実施の形態も考えられ、本開示の範囲に含まれることを理解すべきである。例えば、実施の形態において、シール部分208は、挿入部分206に近接して半径方向寸法が徐々に減少する。そのような実施の形態において、シール部分208の外面230の少なくとも一部分は、テーパーまたは円錐プロファイルにしたがうことがある。実施の形態において、外面230は、栓204の幾何学的中心に向かって内側に湾曲している。実施の形態において、シール部分208は、シール部分208が異なる半径方向寸法を有する3つ以上のセクションを含むように半径方向寸法に複数の移行部を含む。実施の形態において、シール部分208の半径方向寸法は、シール部分208の半径方向寸法が、シール部分208がキャップアセンブリ108の金属部分148と接触するところよりもシール部分208のシール面218で小さくなるように周期的または非周期的関数にしたがう軸方向位置の関数として変動する。不均一な半径方向寸法を有する多種多様な異なる栓が、考えられ、本開示の範囲に含まれる。
【0070】
図2に示された実施の形態において、接触下部212はフランジ126の上面138と接触して、シールを形成する。上部210は、密閉医薬品容器200のキャッピング中に、キャップアセンブリ108の金属部分148に対して圧縮されることがある。
図2に示されるように、階段状移行部214の結果として、接触下部212は、非圧縮状態にあるときに、上部210の半径方向寸法r
up未満の半径方向寸法r
cpを有する。実施の形態において、上部210の半径r
upは、ガラス容器102の特定のサイズのバイアルの従来使用されている栓に関連するものに相当する(例えば、r
upは、6.5mm以上かつ10mm以下であることがある)。
【0071】
実施の形態において、上部210の増加した半径方向寸法rupは、キャッピング中にガラス容器102に対してキャップアセンブリ108を中心に配置するのを促進することによって、既存のキャッピングプロセスの使用に役立つ。キャップアセンブリ108のシール部分208と金属部分148との間の半径方向寸法の差のために、例えば、栓204の圧縮が中心軸Aに対するキャッピングシステム(図示せず)のアライメントの影響を受けやすくなることによって、キャッピングがより難しくなることがある。上部210は、金属部分148と栓204との間に延在する半径方向間隙216の大きさを減少させ、それによって、キャッピング中のキャップアセンブリ108のアライメントに役立つ。
【0072】
接触下部212の半径方向寸法r
cpは、
図1A~1Cに関してここに記載された栓106のシール部分119の非圧縮半径方向寸法r
ucと類似の基準に基づいて選択されることがある。実施の形態において、例えば、r
cpは、0.85
*r
sr以下(例えば、0.80
*r
sr以下、0.75
*r
o以下、0.70
*r
o以下、0.65
*r
or以下、0.60
*r
sr以下、0.55
*r
o以下、0.50
*r
sr以下)であることがある。密閉領域180の半径方向寸法と比べてそのように減少した接触下部212の半径方向寸法は、栓204のシール面218の外周縁220が、密閉領域180上で移行領域144の半径方向内側に配置されるのを有益に支援する。外周縁220をそのように配置することにより、キャッピング後の接触圧の分布が均一になり、比較的低い貯蔵温度で高品質のシールを維持するのに役立つであろう。
【0073】
図2に示されるように、接触下部212は、非圧縮状態にあるときに、軸方向寸法232を有することがある。実施の形態において、軸方向寸法232は、キャッピング中に栓204が圧縮された後、階段状移行部214がガラス容器102に接触しないように十分に大きく選択される。実施の形態において、軸方向寸法232は、シール部分208の軸方向寸法234の10%以上(例えば、15%以上、20%以上)である。そのような軸方向寸法232は、階段状移行部214がフランジ126の上面138と接触するのを有益に防ぐことができ、もし接触した場合には、シール部分208の変形が生じ、その接触面積が減少するであろう。
【0074】
図3A~3Cは、本開示の例示の実施の形態による密閉医薬品容器300の性能のシミュレーション結果を示す。密閉医薬品容器300は、ガラス容器302および栓304を含むのが示されている。栓304は、
図1A~1Cに関してここに記載されたキャップアセンブリ108に構造が似ているキャップアセンブリ(図示せず)により、ガラス容器302のフランジ306に対して圧着されている。フランジ306は、外面308、上面310、および外面308と上面310との間に延在する移行領域312を含むのが示されている。実施の形態において、上面310は、
図1A~1Cに関してここに記載されたフランジ126の上面138と構造が似ており、円錐領域を画成する。移行領域312は、ガラス容器302の外面が外面308と上面310との間の移行部で湾曲しているフィレットを含むのが示されている。移行領域312は、上面310の外周縁を描く内端314を含むのが示されている。
図3Aに示されるように、栓304は、上面310に対して圧縮された後、栓が、フランジ306の上面310により画成された円錐領域のものよりサイズが大きい外面316を含むように構成される。その結果、栓304のシール面317は、移行領域312上に配置された外周縁319を含む。
【0075】
図3A~3Cに示されたシミュレーションは、約25重量ポンド(約111N)(例えば、24.7重量ポンド(約110N)以上かつ25.6重量ポンド(約114N)以下)の残留シール力を提供するようにキャップアセンブリ(図示せず)により圧着されたときのフランジ306に対する栓304の圧縮を予測している。次に、有限要素解析を行って、冷却プロセスをシミュレーションした。冷却プロセスにおいて、医薬品容器300と栓304を1℃/分の冷却速度で-80℃および-180℃に冷却した。それぞれ、25℃、-80℃、および-180℃でのフランジ306に対する栓304の接触状態が、シール状態を示すために示されている。
図3Aに示されるように、25℃では、栓304の圧縮により、上面310の全てを覆う連続接触面積が生じ、この温度でのガラス容器302の効果的な密閉を示している。しかしながら、シミュレーション結果に示されるように、接触圧は、移行領域312の内端314では不均一であり、第1のピーク領域318を含んでいる。
図3Bに示されるように、密閉医薬品容器が-80℃に冷却されたときに、栓304とフランジ306との間の接触圧は、不均一な半径方向分布を有している。接触圧は、移行領域312の内端314から半径方向外側に延在する第1のピーク領域318と、第1のピーク領域318からずれた第2のピーク領域320(例えば、上面310の内縁にある)を含む。それゆえ、第1のピーク領域318と第2のピーク領域320との間に延在する比較的低い接触圧の領域321が上面310に沿ってある。理論で束縛する意図はないが、この領域321は、シール面317と移行領域312との間の接触による栓304の変形(例えば、フランジ306に対して圧縮されたときに内端314の周りで栓304が曲がる結果として)から生じると考えられる。比較的接触圧が低い領域321は、温度が25℃である場合と比べて、栓304とフランジ306との間の接触面積の減少を示し、-80℃で容器の密閉完全性が喪失する可能性が増加することがある。
図3Cに示されるように、接触面積は、密閉医薬品容器300が-180℃に冷却されたときに、より一層、減少する。-80℃での接触圧分布に存在した第2のピーク領域320は、-180℃では存在しない。理論で束縛する意図はないが、これは、栓304の体積収縮およびそのガラス転移温度より低い温度による栓304の形状回復能力の減少のためであろう。移行領域312上の比較的高い接触圧の第1のピーク領域318を含む不均一な接触圧分布は、栓304の変形の結果として、低い貯蔵温度での接触面積の減少に寄与すると考えられる。
【0076】
図4A~4Cは、本開示の例示の実施の形態による密閉医薬品容器400の性能のシミュレーション結果を示す。密閉医薬品容器400は、ガラス容器402および栓404を含むのが示されている。栓404は、
図1A~1Cに関してここに記載されたキャップアセンブリ108に構造が似ているキャップアセンブリ(図示せず)により、ガラス容器402のフランジ406に対して圧着されている。フランジ406は、外面408、上面410、および外面408と上面410との間に延在する移行領域412を含むのが示されている。実施の形態において、上面410は、
図1A~1Cに関してここに記載されたフランジ126の上面138と構造が似ており、円錐領域を画成する。移行領域412は、ガラス容器402の外面が外面408と上面410との間の移行部で湾曲しているフィレットを含むのが示されている。移行領域412は、上面410の外周縁を描く内端414を含むのが示されている。
図4Aに示されるように、栓404は、上面410に対して圧縮された後、栓404が、上面410に関する半径方向寸法より小さい半径方向寸法を有する外面416を含むように構成されている。その結果、栓404のシール面417の外周縁419は、圧縮後に上面410上に配置されることがある。
【0077】
図4A~4Cに示されたシミュレーションは、約17重力ポンド(約76N)の残留シール力を提供するようにキャップアセンブリ(図示せず)により圧着されたときのフランジ406に対する栓404の圧縮を予測している。次に、有限要素解析を行って、それぞれ、25℃、-80℃、および-180℃でのフランジ406に対する栓404の圧縮をシミュレーションした。
図4Aに示されるように、25℃では、シール面417と上面410との間の接触圧は、上面410の全てに亘り比較的均一であり、高品質のシールを示すと予測される。
図3Aに示された栓304とは対照的に、フランジ406に対する栓404の圧縮により、上面410にどのような接触圧のピークも生じない。理論で束縛する意図はないが、均一な接触圧の分布は、特に比較的低い貯蔵温度で、シール面417が移行領域412と接触しない、またはその上に延在しない結果(接触したり、延在したりすると、栓404は、形状が上面410から逸脱するであろう)であると考えられる。
【0078】
図4B~4Cに示されるように、栓404とフランジ406との間の接触面積は、密閉医薬品容器が、それぞれ、-80℃および-180℃に冷却されたときでさえ、比較的一貫したままである。栓404とフランジ406との間の接触圧は、
図3A~3Cに関して記載された栓304に存在する間隙がなく、上面410の実質的に全てに亘り、0.0001MPaより大きい。これらのシミュレーション結果に示されるように、シール面417と移行領域412との間の接触を避けると、シール面317が移行領域312と接触した、
図3A~3Cに関してここに記載された栓303の場合よりも均一な接触圧の分布が有益に提供される。これらの結果は、特定の既存の栓よりも、低い貯蔵温度での容器の密閉完全性を維持する可能性が高い、よりしっかりしたシールを提供する上でのここに記載された栓の有効性を示す。
【0079】
図5は、キャップアセンブリ(図示せず)を使用して、ここに記載された栓304および404が上面310および410に対して圧着されている、様々な貯蔵温度に冷却された
図3A~4Cに関してここに記載された栓304および404の性能のシミュレーションのプロット500を示す。プロット500を作成するために行ったシミュレーションにおいて、フランジ306および406の外径は、13mmであった。栓304は、25.1重力ポンド(約112N)の残留シール力を提供するように上面310に対して圧着された。栓404の2つのシミュレーションは、17.7重力ポンド(約79N)および14.1重力ポンド(約63N)の残留シール力で行った。トレース502は栓304のシミュレーション結果を示し、一方で、トレース504および506は、それぞれ、17.7重力ポンド(約79N)および14.1重力ポンド(約63N)の残留シール力を提供するために、上面410に対して圧着された栓404のシミュレーション結果を示す。プロット502に示されるように、栓304は、-75℃より高い温度で175mm
2を上回る接触面積および室温で約200mm
2の接触面積を提供する。しかしながら、-75℃より低い温度では、この接触面積は、25mm
2より小さく、そして、-120℃より低い温度で20mm
2より小さく減少する。そのような結果は、-80℃以下の温度での容器の密閉完全性が喪失する可能性が比較的高いことを示す。
【0080】
図5に示されるように、栓404は、室温でわずかに小さい接触面積(約150mm
2の)を提供した。これは、半径方向寸法の減少と使用した残留シール力の小さいことによると予測された。しかしながら、-75℃より低い温度では、接触面積は75mm
2を上回ったままである。両方の残留シール力により、-80℃以下の温度で約80mm
2の比較的一貫した接触面積が得られた。栓404について、室温での接触面積またはシール表面積に対する-80℃での接触面積またはシール表面積の比は、63%より大きかった。このことは、そのような比が5%より小さかった(例えば、約4.4%)、栓304で得られた結果と対照をなす。実施の形態において、栓404とフランジ406との間の接触面積は、貯蔵温度にかかわらず、上面410の表面積の10%以上に維持される。実施の形態において、その接触面積は、-80℃または-180℃以下の温度で75mm
2以上に維持される。そのような接触面積は、
図3A~3Cに示された栓304を上回る、低い貯蔵温度で容器の密閉完全性を維持する可能性を著しく増加させる。そのような結果は、ここに記載された栓の有効性を示す。それに加え、栓404は、栓の圧縮が低下する(減少した残留シール力により示される)性能の改善を提供する。それゆえ、本開示の栓は、現行のアセンブリに使用されているものより単純化されたキャッピングプロセスを使用して、医薬品容器のキャッピングを容易にし、それによって、生産効率を提供することがある。
【0081】
先の記載に鑑みて、-70℃以下の貯蔵温度で容器の密閉完全性を維持できる密閉ガラス容器が開示されていることを理解すべきである。改善されたシールは、もっぱら、ガラス容器の外面の非円錐領域との接触を避けるためにガラス容器を密閉するのに使用される栓を構造化することにより達成されることがある。栓と、ガラス容器の外面上の移行領域(例えば、面取り部、フランジ、角)との間の接触を避けることによって、接触圧の均一な分布が達成されることがあり、これにより、低い貯蔵温度で比較的大きい接触面積を維持するのが促進されるであろう。
【0082】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程を特定の順序で行うことを必要とすると解釈されることも、またはどの装置についても、特定の向きが要求されていることも決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に挙げていない場合、または装置の請求項が、個々の構成部材に対する順序または向きを実際に列挙していない場合、もしくはそれらの工程が特定の順序に限定されるべきことが、請求項または説明において他に具体的に述べられていない場合、もしくは装置の構成部材に対する特定の順序または向きが列挙されていない場合、順序または向きがいかようにも暗示されることは決して意図されていない。このことは、工程の配列、操作の流れ、構成部材の順序、または構成部材の向き;文法構成または句読法に由来する明白な意味;および明細書に記載された実施の形態の数またはタイプに関する論理事項を含む、解釈に関するどの可能性のある非表現基準にも適用される。
【0083】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に、様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。それゆえ、本明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変および変更を、そのような改変および変更が特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入るという前提で、包含することが意図されている。
【0084】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0085】
実施形態1
密閉医薬品容器において、
肩部、
前記肩部から延在する首部、および
前記首部から延在するフランジであって、
該首部から延在する裏面と、
該裏面から延在する、前記フランジの外径roを規定する外面と、
該外面と前記密閉医薬品容器に開口を画成する内面との間に延在する上面であって、
該開口と該外面との間に延在し、ro未満の半径rsrを有する密閉領域、および
該密閉領域と該外面との間に延在する移行領域、
を有する上面と、
を有するフランジ、並びに
密閉アセンブリであって、
前記開口に挿入される挿入部分と、シール部分の下面で前記上面と接触する該シール部分とを有する栓、および
前記上面に対して該栓を圧縮するキャップ、
を備え、前記栓のシール部分が、前記上面に隣接するrsr未満の圧縮径rscを有する、密閉アセンブリ、
を備えた密閉医薬品容器。
【0086】
実施形態2
前記シール部分が、前記上面の前記密閉領域上に配置されたシール面を含み、該シール面は、前記キャップが前記上面に対して前記栓を圧縮した結果として該密閉領域に形状が一致する少なくとも一部分を有する、実施形態1に記載の密閉医薬品容器。
【0087】
実施形態3
前記シール面が、前記密閉領域上の前記移行領域の半径方向内側に配置された外周縁を含む、実施形態2に記載の密閉医薬品容器。
【0088】
実施形態4
前記シール面の外周縁が、前記密閉領域の内縁の半径方向外側に配置されている、実施形態3に記載の密閉医薬品容器。
【0089】
実施形態5
前記密閉医薬品容器が-45℃以下の温度に冷却されたときに、該密閉医薬品容器のヘリウム漏れ速度がその温度で1.4×10-6cm3/秒以下となるように、前記上面で圧縮が維持される、実施形態1に記載の密閉医薬品容器。
【0090】
実施形態6
前記栓が20重力ポンド(約89N)未満の残留シール力を前記上面に印加するように、該栓が前記キャップで該上面に対して圧縮されている、実施形態5に記載の密閉医薬品容器。
【0091】
実施形態7
前記栓が15重力ポンド(約67N)未満の残留シール力を前記上面に印加するように、該栓が前記キャップで該上面に対して圧縮されている、実施形態5に記載の密閉医薬品容器。
【0092】
実施形態8
前記密閉医薬品容器が-80℃に冷却されたときの前記シール部分と前記上面との間の第2の接触面積が、該密閉医薬品容器が室温であるときの該シール部分と該上面との間の第1の接触面積の少なくとも約10%である、実施形態1に記載の密閉医薬品容器。
【0093】
実施形態9
前記密閉医薬品容器が-180℃に冷却されたときの前記シール部分と前記上面との間の第2の接触面積、および該密閉医薬品容器が室温であるときの該シール部分と該上面との間の第2の接触面積が、10.0%以上である、実施形態1に記載の密閉医薬品容器。
【0094】
実施形態10
前記シール部分が、不均一な半径方向寸法を有する、実施形態1に記載の密閉医薬品容器。
【0095】
実施形態11
前記シール部分が、前記上面から軸方向にずれた位置で半径方向寸法において階段状移行部を含む、実施形態10に記載の密閉医薬品容器。
【0096】
実施形態12
前記栓のシール部分が、
前記フランジの上面と接触する接触下部、および
前記キャップと直接接触する上部、
を有し、
前記上部は、該上部の少なくとも一部分が前記移行領域の上に軸方向に延在するように前記圧縮径rscより大きい半径方向寸法rupを有し、
前記接触下部は、rup未満の半径方向寸法を有する、実施形態10に記載の密閉医薬品容器。
【0097】
実施形態13
前記フランジの外径roが6.5mmと等しく、
前記密閉医薬品容器が-80℃以下の温度に冷却されたときに、前記上面と前記シール部分との間の接触面積が75mm2以上である、実施形態1に記載の密閉医薬品容器。
【0098】
実施形態14
密閉医薬品容器において、
中心軸、
開口、
前記開口を周囲から取り囲むフランジであって、
首部から延在する裏面と、
前記裏面から延在する、該フランジの外径roを規定する外面と、
上面であって、前記中心軸に平行にそれを通って延在する面を通じて撮られた前記密閉医薬品容器の断面において、該上面は、前記開口の第1の側に配置された第1の直線セクションおよび該開口の第2の側に配置された第2の直線セクションを含み、該第1と第2の直線セクションの外端が、前記中心軸に垂直な方向に互いから距離2*rsrだけ離れて配置されている、上面、および
前記上面と前記外面との間に延在する移行領域、
を備えたフランジ、および
密閉アセンブリであって、
前記開口に挿入される挿入部分と、前記上面と接触するシール部分とを有する栓、および
前記上面に対して前記栓を圧縮するキャップ、
を備え、前記シール部分が、前記上面に隣接するrsr未満の圧縮径rscを有する、密閉アセンブリ、
を備えた密閉医薬品容器。
【0099】
実施形態15
前記断面の第1と第2の直線セクションが、前記中心軸に垂直に延在する面に対してある角度で延在し、前記上面の円錐セクションの部分である、実施形態14に記載の密閉医薬品容器。
【0100】
実施形態16
前記シール部分が、前記第1と第2の直線セクション上に配置されたシール面を含む、実施形態14に記載の密閉医薬品容器。
【0101】
実施形態17
前記シール面が、前記移行領域の半径方向内側に配置された外周縁を含む、実施形態16に記載の密閉医薬品容器。
【0102】
実施形態18
前記シール面の外周縁が、前記第1と第2の直線セクションの内端の半径方向外側に配置されている、実施形態17に記載の密閉医薬品容器。
【0103】
実施形態19
前記密閉医薬品容器が-45℃以下の温度に冷却されたときに、該密閉医薬品容器のヘリウム漏れ速度がその温度で1.4×10-6cm3/秒以下となるように、前記上面で圧縮が維持される、実施形態14に記載の密閉医薬品容器。
【0104】
実施形態20
前記栓が20重力ポンド(約89N)未満の残留シール力を前記上面に印加するように、該栓が前記キャップで前記上面に対して圧縮されている、実施形態19に記載の密閉医薬品容器。
【0105】
実施形態21
前記栓が15重力ポンド(約67N)未満の残留シール力を前記上面に印加するように、該栓が前記キャップで前記上面に対して圧縮されている、実施形態19に記載の密閉医薬品容器。
【0106】
実施形態22
前記密閉医薬品容器が-80℃に冷却されたときの前記シール部分と前記上面との間の第2の接触面積が、該密閉医薬品容器が室温であるときの該シール部分と該上面との間の第1の接触面積の少なくとも約10%である、実施形態14に記載の密閉医薬品容器。
【0107】
実施形態23
前記密閉医薬品容器が-180℃に冷却されたときの前記シール部分と前記上面との間の第2の接触面積、および該密閉医薬品容器が室温であるときの該シール部分と該上面との間の第2の接触面積が、10.0%以上である、実施形態14に記載の密閉医薬品容器。
【0108】
実施形態24
前記シール部分が、不均一な半径方向寸法を有する、実施形態14に記載の密閉医薬品容器。
【0109】
実施形態25
前記シール部分が、前記上面から軸方向にずれた位置で半径方向寸法において階段状移行部を含む、実施形態24に記載の密閉医薬品容器。
【0110】
実施形態26
前記栓のシール部分が、
前記フランジの上面と接触する接触下部、および
前記キャップと直接接触する上部、
を有し、
前記上部は、該上部の少なくとも一部分が前記移行領域の上に軸方向に延在するように前記圧縮径rscより大きい半径方向寸法rupを有し、
前記接触下部は、rup未満の半径方向寸法を有する、実施形態24に記載の密閉医薬品容器。
【0111】
実施形態27
前記フランジの外径roが6.5mmと等しく、
前記密閉医薬品容器が-80℃以下の温度に冷却されたときに、前記上面と前記シール部分との間の接触面積が75mm2以上である、実施形態14に記載の密閉医薬品容器。
【0112】
実施形態28
密閉医薬品容器を密閉する方法において、
肩部、該肩部から延在する首部、および該首部から延在するフランジを有する密閉医薬品容器であって、該フランジは、
前記首部から延在する裏面、
前記裏面から延在する、前記フランジの外径を規定する外面、および
前記外面と、開口を画成する前記密閉医薬品容器の内面との間に延在する上面であって、半径rsrを有する密閉領域を含む上面、
を有する、密閉医薬品容器を提供する工程、
前記密閉医薬品容器中に医薬組成物を入れる工程、
挿入部分とシール部分を有する栓を含む密閉アセンブリを提供する工程、
前記栓の上に、前記フランジに対して金属含有キャップを圧着させ、それによって、前記上面に対して前記シール部分を圧縮する工程であって、該シール部分は、該金属含有キャップで圧縮される前に、0.85*rsr以下の該シール部分の下縁での非圧縮径rucを有する、工程、および
前記密閉医薬品容器を-45℃以下の温度に冷却する工程であって、該密閉医薬品容器の冷却後、該密閉医薬品容器のヘリウム漏れ速度がその温度で1.4×10-6cm3/秒以下であるように前記上面で圧縮が維持される工程、
を有してなる方法。
【0113】
実施形態29
前記シール部分が、前記金属含有キャップで一旦圧縮されたら、ro未満の圧縮径rscを有する、実施形態28に記載の方法。
【0114】
実施形態30
前記栓が前記上面に対して圧縮されて、20重力ポンド(約89N)以下の残留シール力を提供するように、前記金属含有キャップが圧着される、実施形態28に記載の方法。
【0115】
実施形態31
前記密閉医薬品容器が-80℃に冷却されたときの前記シール部分と前記上面との間の第2の接触面積が、該密閉医薬品容器が室温であるときの該シール部分と該上面との間の第1の接触面積の少なくとも約10%である、実施形態28に記載の方法。
【0116】
実施形態32
前記密閉医薬品容器が-180℃に冷却されたときの前記シール部分と前記上面との間の第2の接触面積、および該密閉医薬品容器が室温であるときの該シール部分と該上面との間の第2の接触面積が、10.0%以上である、実施形態28に記載の方法。
【0117】
実施形態33
前記温度が-80℃以下である、実施形態28に記載の方法。
【0118】
実施形態34
前記温度が-180℃以下である、実施形態28に記載の方法。
【0119】
実施形態35
前記上面が、前記密閉領域と前記フランジの外面との間に延在する移行領域をさらに含み、
前記シール部分が、該密閉領域と接触するシール面を含み、
前記シール面の外周縁が、前記栓の圧縮の結果として前記移行領域と接触しない、実施形態28に記載の方法。
【0120】
実施形態36
前記シール部分が、不均一な半径方向寸法を有する、実施形態28に記載の方法。
【0121】
実施形態37
前記シール部分が、前記上面から軸方向にずれた位置で半径方向寸法において階段状移行部を含む、実施形態36に記載の方法。
【0122】
実施形態38
前記栓のシール部分が、
前記フランジの上面と接触する接触下部、および
前記キャップと直接接触する上部、
を有し、
前記上部は、該上部の少なくとも一部分が前記移行領域の上に軸方向に延在するように前記圧縮径rscより大きい半径方向寸法rupを有し、
前記接触下部は、rup未満の半径方向寸法を有する、実施形態36に記載の方法。
【符号の説明】
【0123】
100、200、300、400 密閉医薬品容器
102 ガラス容器
104、202 密閉アセンブリ
105 開口
106、204、304、404 栓
108 キャップアセンブリ
112 本体
114 内面
115 胴部
116、308、408 外面
119、208 シール部分
120 壁部分
121、218 シール面
122 床部分
124 踵部分
126、306、406 フランジ
128 首部
130 肩部
132 裏面
136 外側フランジ面
138、310、410 上面
140 内縁
142 外縁
144、312、412 移行領域
148 金属部分
150 プラスチック部分
152 底部分
154 保持特徴
158、210 上部
164、220 外周縁
166 外面
180 密閉領域
206 挿入部分
212 接触下部
214 階段状移行部
216 半径方向間隔
318 第1のピーク領域
320 第2のピーク領域
【国際調査報告】